【SS】璃奈「白紙の地図」【ラブライブ!虹ヶ咲】

SS


1: (しまむら) 2021/07/03(土) 22:36:41.29 ID:RmlVYIM3
朝、目が覚める。

顔を洗う。

髪を整える。

昨日あらかじめ作っておいたご飯を食べる。

天気予報を見る。

服を着替える。

授業の予習、復習をしておく。

2: (しまむら) 2021/07/03(土) 22:38:13.68 ID:RmlVYIM3
玄関に向かう。



 

璃奈「行ってきます」

挨拶をして家を出る。

外に出ると、私の世界は段々と彩られる。

「あ!天王寺さん、おはよー」

「この前のライブ可愛かったよ!私もボードが欲しいなぁ〜」

「今日のお昼も一緒にご飯食べていい?」

璃奈「うん。私も一緒に食べたい。璃奈ちゃんボード『ワクワク』!」

4: (しまむら) 2021/07/03(土) 22:43:21.55 ID:RmlVYIM3
「やったね!じゃあ私たちは先に行ってるね」

「今日の小テストの勉強全然してないんだけど〜…」

「じゃあ璃奈ちゃんに・・・・・」

私の大切な友達。

自分で言うのは恥ずかしいけれどこれも私自身が変われたおかげ。

そして。

「りな子~!おはよ~!」

「おはよう、璃奈さん」

私の大切な親友。

5: (しまむら) 2021/07/03(土) 22:48:58.35 ID:RmlVYIM3
璃奈「おはようっ」

かすみ「ねぇねぇ〜今日の小テストまた居残りになっちゃうよ〜!」

しずく「また予習してこなかったの?」

かすみ「予習なんかする暇かすみんにはありません!」

しずく「かすみさん…」

璃奈「ごめんなさい。今日は私も教えられないから頑張って」

かすみ「えぇ〜?!助けてよ〜!」

しずく「じゃあ今日は私が手伝ってあげるね。璃奈さんも毎回教えてて疲れてそうだし…」

かすみ「え、いいの?ありがとう!」

7: (しまむら) 2021/07/03(土) 22:53:50.61 ID:RmlVYIM3
かすみ「…ってりな子は別に関係ないじゃん!」

しずく「結構関係あると思うけど…」

璃奈「私は大丈夫だよ。小テスト頑張ってね」

かすみ「うぅ…りな子ぉ〜!」ムギュー

璃奈「うぅ…璃奈ちゃんボード『苦しい』…」

しずく「かすみさんってば調子いいんだから…」

璃奈「しずくちゃん、かすみちゃんの小テスト任せた」

しずく「うん!任せて」ニコッ

かすみ「よーし!じゃあかすみんの教室まで競走だよしず子!」

しずく「あ!待ってよかすみさーん!」

しずく「璃奈さん!また放課後で!」

璃奈「うん!」

あの二人を見ているだけで心がワクワクする。

8: (しまむら) 2021/07/03(土) 22:58:36.62 ID:RmlVYIM3
——

放課後 同好会部室

せつ菜「今日も頑張って練習しましょう!」

9人「おー!」

かすみ「愛せんぱい!今日は負けませんからね〜!」

愛「お!今日も練習場所まで競走?『きょう』だけに!」

愛「じゃあよーい…」

かすみ「先手必勝ですよ愛せんぱい!」ピュー

愛「あ!こらー!待て待てー!」

せつ菜「お二人とも廊下を走ってはいけませんよー!」

しずく「じゃあ私たちも行こっか」ニコッ

璃奈「うん」

9: (しまむら) 2021/07/03(土) 23:04:01.66 ID:RmlVYIM3
璃奈「そういえばかすみちゃんの小テストどうだったの?」

しずく「なんとか合格できたらしいよ」

璃奈「それはよかった」

しずく「もうちょっと勉強してほしいかな…学科も違うから教室の移動も大変だし…」

璃奈「私もそう言ってるんだけど忙しいってずっと言ってて…」

しずく「確かに最近はずっと忙しいもんね」

璃奈「しずくちゃんも演劇部で忙しそう」

しずく「そうだね、最近はいろんなところから呼ばれてるから…」

璃奈「電車通勤もすごく大変そう…」

しずく「たまに寝過ごしちゃう時があるかな…」

璃奈「お休みとかしないの?」

しずく「忙しい以上に楽しいからね」ニコッ

しずく「璃奈さんも楽しい?」

璃奈「うん!楽しい!」

この同好会に入ってから外の世界はずっと暖かくて…

とっても鮮やか。

10: (しまむら) 2021/07/03(土) 23:09:24.21 ID:RmlVYIM3
──

放課後 帰り道

かすみ「う〜ん!今日も疲れたぁ〜…」

かすみ「というか聞いてよりな子!今日の小テストちゃんと受かったよ!」

璃奈「しずくちゃんから聞いたよっ、璃奈ちゃんボード『ハッピー』!」

かすみ「しず子がすごい厳しくてびっくりしたよぉ…」

しずく「かすみさんがしっかり勉強してれば私も教える必要ないんだからね?」

かすみ「むぅ…それはそうなんだけどさ…」

璃奈「あ、私はここで曲がらなきゃ」

かすみ「あ、そっか」

しずく「じゃあまた明日、ばいばい」

璃奈「うん。ばいばい」

かすみ「ばいばーい!」

今日もすごく楽しかった。

夜ご飯、何にしようかな。

11: (しまむら) 2021/07/03(土) 23:14:36.71 ID:RmlVYIM3
——

サクッサクッサクッ

料理は苦手な方だけどなんとかできるようになってきた。

お父さんとお母さんが忙しいからこその成果なのかもしれない。もちろん皮肉ではないのだけれど。

璃奈「………」

お料理はとっても楽しいけれど…合宿の時にみんなで作った時のことを思い出すとやっぱり…

璃奈「……はぁ…」

璃奈「…羨ましい」

12: (しまむら) 2021/07/03(土) 23:19:34.08 ID:RmlVYIM3
──

璃奈「いただきます」

璃奈「……」モグモグ

シーーーン

今日は野菜炒めを作った。我ながらよくできてると思う。

ピロン

かすみちゃんからメッセージ?

かすみ(明日の夜空いてる?)

璃奈(うん。空いてるよ)

かすみ(じゃあ一緒に夜ご飯食べない?)

かすみ(しず子もくるよ!)

璃奈(わかった。どこで食べるの?)

かすみ(まだ決めてないんだよね〜明日までに決めてくるね!)

璃奈(楽しみ!)

かすみ(お腹空かせておいてよ〜?)

璃奈(わかった!)

空腹を表現するスタンプと一緒にメッセージを打つ。

──

璃奈「チガウスガタ チガウカタチ♪」

やっぱりあの二人と一緒にいれるって思うだけで心が弾む。

食器を棚に入れる作業でさえ楽しいと感じる。

明日はどんなお話が聴けるかな。先生とか授業の愚痴かな。スクールアイドルのことかな。コッペパンのお話かな。演劇のお話かな。

璃奈「分け合う 温もり ありがとう♪」

早く明日になってほしいな。

13: (しまむら) 2021/07/03(土) 23:24:48.99 ID:RmlVYIM3
───

璃奈「あわわわわわ……寝坊…」

今日が楽しみであまり眠れなかった。

少しでも夜更かししてしまうと絶対寝坊してしまう。

璃奈「よかった…すごく晴れてる…」

落ち着いて準備すれば十分間に合う時間。

今日は最高の1日になりそう。

15: (しまむら) 2021/07/03(土) 23:29:25.26 ID:RmlVYIM3
───

しずく「璃奈さーん!」

かすみ「おっはよー!」

璃奈「おはよう、今日のかすみちゃん元気だね」

かすみ「だって今日は早起きできたし、小テストもないし、しず子とりな子と一緒にご飯食べられるんだもん!」ニコニコ

しずく「そうだね、私も今日はいつもより元気かも!」

璃奈「私もだよ。璃奈ちゃんボード『燃えてきた〜』!」

しずく「今日は同好会の練習があるんだよね?」

かすみ「うん!いっぱい運動してお腹ぺこぺこにしよー!」

しずく&璃奈「おー!」

16: (しまむら) 2021/07/03(土) 23:34:22.10 ID:RmlVYIM3
———

放課後

璃奈「今日はどこに行くかってかすみちゃんから聞いてる?」

しずく「そういえば私も知らないんだよね」

璃奈「かすみちゃんがくるまでわからないんだね」

しずく「どこに行くと思う?」

璃奈「うーん…夜ご飯だから…」

璃奈「愛さんのお店とか」

しずく「私もそうかなって思ってる!」

17: (しまむら) 2021/07/03(土) 23:41:03.91 ID:RmlVYIM3
かすみ「お待たせー!」

かすみ「もうお腹ぺこぺこ…」

しずく「今日は3人ともすごく動いたもんね」

璃奈「どこで夜ご飯食べるの?」

しずく「かすみさんが来るまで私と璃奈さんで予想してみたよっ」

かすみ「じゃあ…せーので言ってみる?」

かすみ「せーの…」

かすみ&しずく&璃奈「愛さん(せんぱい)のお店!」

かすみ「あはははっ!当たってる〜!」ニコニコ

しずく「やったね璃奈さん!」ニコッ

璃奈「うん!璃奈ちゃんボード『ハイタッチ』!」

かすみ&しずく&璃奈「いえーい!」パチンッ

かすみ「じゃあ早速しゅっぱーつ!」

かすみ「えいえい」

かすみ&しずく&璃奈「おー!」

18: (しまむら) 2021/07/03(土) 23:47:36.76 ID:RmlVYIM3
——

愛「お!いらっしゃいませー!」

かすみ「予約してた中須でーす!」

愛「しずくとりなりーとかすみんの3人だよね?」

しずく「お客さんの数、すごいですね…」

愛「いつもこんな感じだから慣れっこだよー」

愛「それに忙しいってことはお客さんが来てくれるってことだから超嬉しいしね!」

夜なのにとっても暖かい雰囲気。

いろんなところから笑い声が聞こえてきて私の心がすごくポカポカしてる。

愛「じゃああそこの席で待っててもらっていいかな?」

しずく「わかりました!!」

璃奈「しずくちゃん、すごい張り切ってる」

しずく「そ、そうかな…?」

かすみ「練習中にお腹鳴ってたよね、しず子」ヒソヒソ

しずく「ちょっ、かすみさん!///」

璃奈「お昼ご飯ちゃんとたべた?」

しずく「えぇっと…ほんの少し?かな?」

璃奈「お腹いっぱいになっちゃったらしずくちゃんにあげるね」

しずく「そんなに食べられないよ?!」

かすみ「しず子をぷくぷくにさせちゃおっかな〜」ニヤニヤ

しずく「もう!2人にもたくさん食べさせるんだからねっ」

19: (しまむら) 2021/07/03(土) 23:54:20.51 ID:RmlVYIM3
———

愛「お待たせしましたー!」

かすみ&しずく&璃奈「おぉ…!」

しずく「愛さん、お手本見せてもらってもいいですか?」

璃奈「プロの技、見てみたい」

愛「そこまでいうなら魅せちゃおっかな!」

愛「って言っても結構簡単なんだよね」

そう言いながら愛さんは慣れた手つきで具材を刻みながら炒め、ドーナツのような円を作る。

かすみ「なんで輪っかを作ってるんですか?」

20: (しまむら) 2021/07/03(土) 23:59:43.95 ID:RmlVYIM3
愛「輪っかの中に汁を入れるんだよねー」ジュー

愛「少し待ってから具材と汁を混ぜ込んで…」

愛「広げて…」

ジュー

璃奈「いい匂い…」

愛「完成!」

かすみ「うわぁ…!美味しそう…!」

しずく「早速食べてもいいですか!」

愛「うん!召し上がれ!」

愛「じゃあ私はまだお仕事あるからお暇するね、ごゆっくりー!」

21: (しまむら) 2021/07/04(日) 00:04:45.65 ID:blNiZYPj
——

かすみ&しずく&璃奈「いただきます!」

かすみ「…」モグモグ

しずく「………!」モグモグ

璃奈「…」モグモグ

しずく「美味しい…!」

かすみ「むぅ…悔しいけど美味しすぎる…」

璃奈「美味しい…」モグモグ

しずく「次は私がやってみてもいい?」

かすみ「じゃあその次はかすみんね!」

かすみ「りな子がアンカーでいい?」

璃奈「任せて。璃奈ちゃんボード『むんっ』!」

璃奈「しずくちゃん、頑張って!」

22: (しまむら) 2021/07/04(日) 00:09:36.90 ID:blNiZYPj
しずく「よーし…」

しずく「えいっ」ジュー

璃奈「すごくかっこいい」

しずく「えへへ、ありがとう!」

ジュー

ジュー

ジュー



あれ?こんなに炒めて大丈夫なの?

かすみ「そろそろ汁入れたほうがいいんじゃ…」

しずく「あれ?愛さんってどこまで炒めてたっけ…」

璃奈「汁も混ぜて炒める時間も考えないと…」

しずく「あ!完全に忘れてたよ…」

23: (しまむら) 2021/07/04(日) 00:15:14.98 ID:blNiZYPj
かすみ「じゃあ急いで入れよっ!」ジュー

しずく「あ!かすみさんの番はまだでしょ?!」

璃奈「じゃあ私も手伝うね」マゼマゼ

しずく「璃奈さんまで?!」

かすみ「3人で作れば最高のもんじゃ焼きができるよ!」

3人で…最高の。

私の地図が彩られていく。この2人のおかげで。

24: (しまむら) 2021/07/04(日) 00:20:32.67 ID:blNiZYPj
——

かすみ「あー!おいしかったー!」

璃奈「いい感じに焦げてておいしかった」

かすみ「だから言ったでしょ〜?3人で作れば最高だって!」

璃奈「うん。とってもおいしかった!」

しずく「本当だね、また一緒に行きたいな」

璃奈「しずくちゃんはお腹いっぱいになった?」

しずく「うん!」

かすみ「しず子をぷくぷくにさせようと思ったのに忘れてた…」

しずく「かすみさんも璃奈さんも夢中で食べてたね」ニコッ

かすみ「だって思ったより」

ぽつ…

ぽつぽつ…

ザーーー…

かすみ「え?!雨?!」

璃奈「あわわわ、璃奈ちゃんボード濡れちゃう…」

折り畳み傘がカバンにあったはず。

25: (しまむら) 2021/07/04(日) 00:25:15.66 ID:blNiZYPj
璃奈「…ない」

かすみ「りな子、傘持ってきてないの?」

璃奈「うん…今日の天気予報見てなかった…」

しずく「よかったら傘入る?」

璃奈「ごめんなさい、ありがとう」

しずく「困った時はお互いさまだよ」ニコッ

少しだけ狭いけれどしずくちゃんの温もりが感じられる。

しずく「もっと寄ってもいいよ?」

璃奈「あ、ありがとう」

27: (しまむら) 2021/07/04(日) 00:31:18.17 ID:blNiZYPj
しずくちゃんの髪の匂いがふわっと香る。

もっと───。

かすみ「りな子ってやっぱり朝には弱いんだね〜」

璃奈「夜中まで家事とか動画編集とかしてるとやっぱり遅くなっちゃう」

しずく「璃奈さんも大変なんだね」

璃奈「しずくちゃんほどじゃないよ」

かすみ「かすみんが朝起こしてあげてもいいよ!」

しずく「かすみさんが早起きしてるイメージあるまりないよ…」

かすみ「しず子とりな子と一緒に学校行く時はちゃんと起きてますぅ!」

璃奈「確かにかすみちゃんが遅れてきたことあんまりな…」

───もっとみんなと近くにいたい。

28: (しまむら) 2021/07/04(日) 00:37:05.31 ID:blNiZYPj
それでも。

璃奈「…あ」

璃奈「ごめんなさい。私はここで」

かすみ「あ、りな子って違う電車に乗らなきゃだもんね」

璃奈「うん。しずくちゃん、ありがとう」

しずく「せっかくだから私の傘つかっていいよ」

璃奈「いいの?しずくちゃんのお家遠いのに…」

しずく「私は大丈夫!今度は私がかすみさんの傘に入れてもらうね」

かすみ「かすみん宅急便でしず子を駅まで送りまーす!」

しずく「じゃあ最後までよろしくね?」

かすみ「流石に最後まではむりー!」

しずく「じゃあ璃奈さんまた明日!」

璃奈「うん。ばいばい、本当にありがとう」

29: (しまむら) 2021/07/04(日) 00:42:50.01 ID:blNiZYPj
しずく「困った時は、ね?」ニコッ

かすみ「またねー!」

かすみ「駅のコンビニで折り畳み傘とか売ってるかな?」

しずく「多分売ってると思うよ?お金は・・・・・」

後ろから2人の声が聞こえる。

それを耳にしながら独りで帰るのは寂しいけれど…

璃奈「明日が待ってるよね」

今日はいい思い出だけを持って帰ろう。

30: (しまむら) 2021/07/04(日) 00:48:03.30 ID:blNiZYPj
——

ピロン

ガチャ

璃奈「ただいま」

シーーン

璃奈「まだいない…」

もう9時近いのに…2人ともまだ帰ってきてないんだ。

私が寝た後に帰ってきて、起きる頃にはもういない。

こんな生活、何年続けてるんだろう。

璃奈「…………」

璃奈「…何年続くんだろう…………」

ワイシャツもアイロンがけしないと…。

31: (しまむら) 2021/07/04(日) 00:57:22.16 ID:blNiZYPj
───

スー

スー

アイロンがワイシャツを擦る音だけが響く。



なんだろう、このキモチ。

喪失感?孤独感?

色で例えるなら…



白?



璃奈「…明日も、行こうかな」

あの暖かさ、世界の鮮やかさ、忘れられない。

32: (しまむら) 2021/07/04(日) 01:02:23.22 ID:blNiZYPj
——

愛「いらっしゃいませー!ってりなりーじゃん!」

璃奈「こんばんは」

今日も愛さんの店は活気に満ち満ちてる。

愛「今日は1人で?」

璃奈「うん。いきなり来ちゃってごめんなさい。予約とかした方がよかった?」

愛「全然だいじょーぶ!少し待ってくれれば席開くと思うから待っててね!」

璃奈「わかった、ありがとう」

璃奈「ふぅ…」

璃奈「……暖かい」

33: (しまむら) 2021/07/04(日) 01:07:57.56 ID:blNiZYPj
——

愛「お待たせ!席空いたよ!」

璃奈「ありがとう」

愛「1人じゃ寂しいでしょ?愛さんも一緒に食べていい?」

璃奈「お仕事はいいの?」

愛「仕事より大事なモノを優先するのは当たり前っしょ?」ニコッ

璃奈「…ありがとう」

愛「もんじゃの素もってくるからちょっと待っててね!」

璃奈「うん」

———

愛「2日連続で来るなんてもしかして虜になっちゃった?」

璃奈「うん。もんじゃ焼きすっごく美味しい」モグモグ

璃奈「あとお店の雰囲気がすっごく心地よかった」

愛「雰囲気?」

璃奈「あんまり上手くいえないけど…心があたたかくなるみたいな」

愛「あはははっ!なんかエマっちみたい!」

34: (しまむら) 2021/07/04(日) 01:13:30.78 ID:blNiZYPj
愛「でも確かにそうかも」

愛「お客さんたちが嬉しそうに食べてると、心があったかくなるなぁ」

愛「それこそ、やなことなんて忘れちゃうよ」ニコッ

璃奈「それって、人がいるから?」

愛「ん?どゆこと?」

璃奈「人がいると自然と明るい雰囲気になるの?」

愛「そりゃそうだよ〜!」

愛「だって一人で勉強してる時とみんなで勉強してる時って絶対みんなで勉強してる時の方が楽しくない?」

愛「つまりはそーゆーこと!」

35: (しまむら) 2021/07/04(日) 01:20:09.02 ID:blNiZYPj
璃奈「…確かに」

確かにそう。

かすみちゃんとかクラスの子達に勉強を教えてる方が一人きりの時よりもずっと楽しい。

愛「一人で落ち着ける時間も大事だけど、やっぱりみんなで盛り上がった方が楽しいっしょ?」ニコッ

璃奈「うん」

璃奈「…また来ていい?」

愛「全然大歓迎だよー!せっかくだからかすみんとかしずくも連れてきてよっ!」

璃奈「うん。ありがとう」

璃奈「ごちそうさまでした。おいしかった」

愛「ありがとうございましたー!またねー!」

36: (しまむら) 2021/07/04(日) 01:26:29.77 ID:blNiZYPj
——

璃奈「…………」

夜の街を独りで歩く。

『一人で落ち着ける時間も大事だけど、やっぱりみんなで盛り上がった方が楽しいっしょ?』

愛さんの言葉を思い出す。

今すぐ愛さんのお店に戻ってたくさんお話ししたい。

それでも、家に帰らなくちゃいけない。

璃奈「早く、明日になって欲しい」

私の地図の真ん中って、どんな色だったんだろう。

40: (しまむら) 2021/07/04(日) 13:25:17.60 ID:blNiZYPj
───

ピロン

ガチャ

璃奈「…ただいま」

シーーーン

璃奈「…わかってる」

とりあえずお母さんたちのためにご飯を作ってあげないと。

41: (しまむら) 2021/07/04(日) 13:33:49.46 ID:blNiZYPj
───

翌日 朝

璃奈「むぅ………」

璃奈「…あれ」

パチリ、と目が覚める。

今何時だろう。

璃奈「…5時?」

もしかしたら。

まだお母さんとお父さんが…。

小走りでリビングに向かう。

ガチャッ

璃奈「おかあ…」



 





 

璃奈「…」

顔、洗わなくちゃ。

髪整えなきゃ。

ご飯作らなくちゃ。

…………

璃奈「楽しいことだけ、考えないと」

42: (しまむら) 2021/07/04(日) 13:41:33.16 ID:blNiZYPj
──

玄関に向かい、靴を履き、廊下に目を向ける。

 

璃奈「行ってきます」



 





 

璃奈「誰か」

璃奈「返事して…」

パタン

この場所は、こんなにも白い場所だったんだ。

43: (しまむら) 2021/07/04(日) 13:52:56.65 ID:blNiZYPj
——

ウィーン

璃奈「はぁ…はぁ…はぁ…」

マンションのロビーから逃げるように走る。

逃げるなんて表現、おかしいけれど。

璃奈「ふぅ……」

璃奈「……!」

外の世界ってこんなに色とりどりだったっけ。

あの場所とは全く違う、色とりどりな世界…。

…ふと、並木道の木を触る。

木が心地よい風で優しく揺れる音。

木の感触。

どこからか吹いてくる潮の匂い。

淡青色に塗りつぶされた空。

味覚以外の感覚を全部使って外の世界を味わう。

璃奈「すぅー…はぁー…」

あの場所では味わえない感覚。


「お〜い!」


この声も…ここでしか聞けない。

44: (しまむら) 2021/07/04(日) 13:57:18.55 ID:blNiZYPj
本当に幸せな音。

かすみ「りな子〜!」

璃奈「あ、かすみちゃんっ!」

シルバーアッシュの髪を靡かせながら元気よく向かってくる。

その姿を見るだけで、自然と明るい気持ちになる。

璃奈「しずくちゃんは?」

かすみ「しず子は寝坊しちゃったから先行ってていいよーだって!」

璃奈「しずくちゃんが寝坊するなんて珍しいね」

かすみ「最近は演劇部がすっごい忙しいから寝不足なのかも?」

45: (しまむら) 2021/07/04(日) 14:03:58.22 ID:blNiZYPj
璃奈「兼部、すごく忙しそう」

かすみ「かすみんだったら授業中絶対寝ちゃう!」

璃奈「いつも寝てそうだけどかすみちゃんって結構真面目なんだね」

かすみ「ちゃんと授業は受けてるよぉ!たまーに寝ちゃうけど…」

璃奈「かすみちゃんも忙しいってしずくちゃんも言ってたけど家で何かやってるの?」

かすみ「…コッペパン作りとか…ほかのスクールアイドルの動画見たりとか…」

璃奈「『あー…』」

かすみ「ちょっとぉ!そのボードはどーゆー意味なの!?」

かすみ「りな子も朝苦手なの知ってるんだからね!」

璃奈「うぅ…確かに私も人のこと言えない…」

かすみ「やっぱりみんな朝は苦手なんだね!」ニコッ

かすみ「じゃあ今日は二人で一緒に小テストの勉強しよっ!」

璃奈「うん!」

かすみちゃんは私の手を引っ張る。

46: (しまむら) 2021/07/04(日) 14:07:50.28 ID:blNiZYPj
こうやっていつも私を引っ張ってくれる。

私の小さい手をいつも包んでくれる。もちろんしずくちゃんも。

璃奈「…ありがとう」

かすみ「ん?なんか言った?」

璃奈「ありがとう、かすみちゃん」

かすみ「急にどうしたの?」ニコッ

璃奈「かすみちゃん達のおかげで、毎日が楽しい」

かすみ「なにそれ!」

かすみ「かすみんもりな子といると楽しいよっ!」ニコニコ

47: (しまむら) 2021/07/04(日) 14:12:21.99 ID:blNiZYPj
———

かすみ「んん〜!やっっと授業終わったぁ〜!」

かすみ「聞いてよしず子!今日もりな子に教えてもらって満点だった!」

しずく「かすみさん…」

璃奈「私も今日は予習できてなかったからかすみちゃんと勉強できてよかった」

しずく「璃奈さんが予習できてないなんて珍しいね」

あんなに朝早く起きたのに予習するの、忘れてた。

璃奈「今日は少しだけ忙しくて」

かすみ「そうそう!かすみんたちってみんな忙しいからね!」

しずく「…………」ジー

かすみ「だ、だってコッペパンを作るの楽しくて時間忘れちゃうんだもん!」

しずく「じゃあそのコッペパン、私たちに食べさせてほしいな?」

璃奈「かすみちゃんのコッペパン、食べてみたい」

かすみ「今日は持ってきてないんだよね…」

璃奈「それは残念…」

しずく「せっかくコッペパンのお話になったことだし、近くにコッペパンのキッチンカーあるから食べてみない?」

璃奈「私も食べたい。璃奈ちゃんボード『お腹ペコペコ』…」

かすみ「かすみんのお腹もペコペコだよ〜…」

かすみ「おっきいロボットの近くにある広場だよね?」

しずく「そうだね、何の味があるか私もわからないから楽しみ!」

48: (しまむら) 2021/07/04(日) 14:16:15.19 ID:blNiZYPj
——

璃奈「しずくちゃんは何にする?」

しずく「うーん…何にしようかな…」

かすみ「かすみんはふかふかブルーベリーミルクコッペパン!」

璃奈「こんがりカプレーゼコッペパン、気になる」

しずく「美味しそう!私もそれにしようかな」

かすみ「え〜!?じゃあ私もそれにする〜!」

しずく「みんな一緒の味にするの?」ニコッ

璃奈「ほんとにいいの?」

かすみ「ん〜いろんな種類食べてみたいもんね〜」

璃奈「みんなで違うコッペパン買ってみんなで分けよう」

しずく「じゃあ私はずんだもちコッペパンにしてみるね!」

璃奈「すごく美味しそう…」

かすみ「もしかしたら夜ご飯食べれなくなっちゃうかもよ〜?」ニコニコ

かすみ「すみませーん!これとこれとこれ一つずつお願いします!」

49: (しまむら) 2021/07/04(日) 14:23:28.15 ID:blNiZYPj
———

かすみ「はい、どーぞ!」

しずく「すごく美味しそう!」

璃奈「すごい…ふわふわ!」

かすみ「いただきます!」パクッ

璃奈「いただきます」モグモグ

かすみ「ほれほいひい!(これおいしい!)」

かすみ「りな子のやつちょーだい!」

璃奈「うんっ」

かすみ「ありがと!」

かすみ「…………」モグモグ

かすみ「すっごくおいしい!」

璃奈「かすみちゃんの貰っていい?」

かすみ「もっちろん!」

かすみちゃんの買ったコッペパンはまるでブルーベリーソースのベッドの上にクリームとブルーベリーが仲良く寝ているよう。

食べるのは少しもったいないけれど…。

璃奈「…………」モグモグ

璃奈「…おいしい!」

しずく「本当に?かすみさんっ、私もほしいな」

かすみ「うん!しず子のもね!」

しずく「私のは手で分けづらいんだよね…」

しずく「璃奈さん、あ〜ん」

璃奈「あ、うん。あ〜ん」

おいしい。

本当においしい。

おいしいし、甘い。

甘い。

この雰囲気も。

私の地図はこうやって塗りつぶされていく。

50: (しまむら) 2021/07/04(日) 14:23:40.91 ID:blNiZYPj
璃奈「おいしい…」

しずく「うん!おいしいよね!」

かすみ「かすみんにもかすみんにもぉ!」

しずく「別にコッペパンは逃げたりしないから大丈・・・・・・」

だから。

だから、帰りたくない。

帰りたくない。

やだ。

後ろを振り向いて、振り向いた先。

そこには光輝くPC、重低音の効いたスピーカー。暖かみを感じる暖色の照明…色々なモノがそこにはある。

だけど、それは、全部、無機質。

表情のないただのモノ。それらは生きていない。

微笑みかけてくれない。

何も彩らせてくれない、白紙の世界。

───そう、白紙。

私の地図の真ん中は何にも彩られていない。

51: (しまむら) 2021/07/04(日) 14:32:02.83 ID:blNiZYPj
かすみ「りな子?どうしたの?」

かすみちゃんが顔を覗かせる。

しずく「もしかしてずんだもち苦手だった?ごめんね」

璃奈「ううん、ずんだもちは好きだよ」

かすみ「もしかして眠かったりする?」

しずく「最近は帰る時間も遅くなったりすることあるもんね、勉強もしなくちゃいけないし…」

かすみ「かすみん達に気を使わなくても大丈夫だからね?」

かすみちゃん達には私の顔、暗く見えたんだ。

璃奈「私は平気。むしろとっても楽しい。璃奈ちゃんボード『ハッピー』!」

咄嗟にボードで顔を隠す。

…「盾」としてボードを使ったのは久しぶりかもしれない。

かすみ「かすみんもハッピーだよりな子ぉ〜!」ムギュー

しずく「…私もだよ?」

ハッピー。今、この瞬間は。

だからこそ、この瞬間を呪いたくなる。

こんな幸せなことを知ってしまったら、後戻りなんてできない。

でも後戻りしなくちゃいけない。

地図に記されている───

白紙の場所に帰らなきゃいけない。

私はそこの住民だから。そこには家族が一緒にいれる場所があるから。

52: (しまむら) 2021/07/04(日) 15:00:13.65 ID:blNiZYPj
ガチャ

璃奈「ただいま」

璃奈「夜ご飯…」

璃奈「…………」

璃奈「…やっぱりやめよう」

コッペパンでお腹いっぱいなのもあるけど、それ以上に私の心が食べたいと言ってない。

ピロン

しずくちゃんからだ。

しずく(何かあったら私達を頼ってね!)

璃奈(全然大丈夫。変な心配かけてごめんなさい)

陽気なスタンプを何個か送って元気を取り繕う。

でも、この人には空元気だってお見通しなんだろう。

それだけ、しずくちゃんと仲良くなれた。もちろんかすみちゃんとも。



いや、仲良くなってしまったから私の地図が彩ら

璃奈「黙って」

ネガティブな私を追い払う。

璃奈「ふわぁ…」

もう…今日は…

53: (しまむら) 2021/07/04(日) 15:17:33.30 ID:blNiZYPj
———

トントン

細い何かが私を優しく叩く。

トントン

璃奈「…むぅ……」

母「璃奈」

璃奈「あ、お母さん!」

夢じゃないよね?

母「おはよう」

璃奈「おはようっ」

璃奈「今日は……」

璃奈「……!」

もう一限が始まってる?

せっかくお母さんに会えたのに…学校に行かなきゃ…

54: (しまむら) 2021/07/04(日) 15:32:11.69 ID:blNiZYPj
ギュッ

璃奈「…お母さん?私、学校…」

母「璃奈、今日は休んで欲しいの」

璃奈「どうして?」

母「洗濯物もそのままだったし、制服のまま寝てたし、すごくうなされてたから」

母「お母さんも今日は休もうかなって」

璃奈「…わざわざ休んでくれたの?」

母「当たり前だよ、璃奈が心配だもん」

璃奈「…わかった。ありがとう、お母さん」

璃奈「でも体調は本当に大丈夫だから家の家事とかはやる」

母「ありがとう、やっぱり優しいな、璃奈は」ナデナデ

璃奈「…///」

母「でも元気なら今日はちょっとお出かけしない?」

璃奈「でも…ズル休み…」

母「ほんの少しだけハメ外してもいいんだよ?」

母「真面目なところはほんとお父さんに似てるねー、そこが璃奈のいいところなんだけど」ニコッ

璃奈「…///」

母「じゃあ朝ごはん作ってくるね」

璃奈「うん」

お母さんの背中をこうやって見るの、何ヶ月ぶりだろう。

…もしかして

今日は一日お母さんと一緒にいれるの?

55: (しまむら) 2021/07/04(日) 15:35:59.77 ID:blNiZYPj
───

母「できたよー」

璃奈「ありがとう」

久しぶりに食べるお母さんのご飯。

私の作ったご飯よりずっとおいしそう。

母「璃奈」

璃奈「何?」

母「毎日朝ごはん作ってくれて本当にありがとう」

璃奈「夜ご飯のついでに作ってるから平気」

母「3人分作るの大変でしょ?私たちは大丈夫だからね」

璃奈「最近は上達してきてるからお料理も楽しい」

璃奈「まだまだお母さんには追いつけないけれど…私の料理、美味しい?」

56: (しまむら) 2021/07/04(日) 15:42:27.61 ID:blNiZYPj
母「すごくおいしいよ!この前の野菜炒めなんて私のよりおいしかったよ」ニコッ

お母さんはそう言って私の頭を撫でる。

璃奈「…恥ずかしい」

璃奈「いただきます」モグモグ

母「そんなに急がなくても大丈夫だよ」ニコニコ

母「さて…今日はどこに行きたい?」

璃奈「私は、今日は家にいたい」

母「本当にいいの?平日だからどこも空いてて遊びやすいと思うよ?」

璃奈「ここでお母さんと一緒にいたい」

白紙の場所でお母さんと一緒いたい。

それだけでここの存在が変わる気がする。

寂しい場所なんて思わなくなるはず。

母「じゃあ…一緒にご飯とか作ってみる?」

璃奈「うん!」

57: (しまむら) 2021/07/04(日) 15:54:18.97 ID:blNiZYPj
───

母「お昼まで結構時間あるねー」

お母さんと一緒に食器を棚に戻す。

お母さんと一緒に作業をするのがこんなにも楽しいなんて。

母「なにかやりたいことある?」

璃奈「うーん…」

母「今日はなんでもきいてあげるね!」

璃奈「…一緒にゲームとかやりたい」

母「わかった!じゃあ璃奈のやりたいやつやってみよ?」

58: (しまむら) 2021/07/04(日) 15:59:45.73 ID:blNiZYPj
———

ピーッピーッピーッ!

アナウンサー「ここで試合終了の笛!」

アナウンサー「ビッグクラブ同士の一戦、5対1で勝ったのは・・・」

母「わああああああああ!!璃奈強すぎるよおおおおお!!!」

璃奈「お母さん、本気出して」

母「これでも本気出してるんだからねっ!」

母「もしかして私の使ってるチームが弱いとか?」

璃奈「…お母さんが使ってるチーム、今年のヨーロッパで一番強いチーム」

母「…ほんとに?じゃあ璃奈のチームは?」

璃奈「一昨年で3番目か4番目に強いチームだと思う」

母「ええ?!」

母「むぅ…ヨーロッパナンバーワンの誇りにかけて次は勝つからね!」

59: (しまむら) 2021/07/04(日) 16:05:51.12 ID:blNiZYPj
璃奈「私も負けない!」

こんな大画面で、しかもお母さんとゲームをやるの、何年ぶりだろう。

本当に、本当に…何年ぶりだろう…。

璃奈「……」ジワリ

視界がぼやけ、画面がよく見えない。

母「いっけええええええええ!!」

アナウンサー「ゴルゴルゴルゴルゴーーール!」

アナウンサー「前半5分という早い時間帯での先制!これは大きい!」

母「いえーい!璃奈相手に先制しちゃった〜!!」

璃奈「…あ!」

母「このまま勝っちゃうけどいい?」ニコッ

璃奈「大人げない…!絶対負けない!」

60: (しまむら) 2021/07/04(日) 16:30:17.60 ID:blNiZYPj
───

母「ふぅーー!つーかーれーたーー!」

璃奈「上達早すぎる…」

母「でも引き分けじゃなくて勝ちが良かったなぁ~」

グゥ~

璃奈「…あ」

母「………」ニヤニヤ

母「お昼ご飯作ろっか」ニヤニヤ

璃奈「うん…///」

61: (しまむら) 2021/07/04(日) 16:35:56.64 ID:blNiZYPj
───

母「ん~…何作ろっか…」

璃奈「冷蔵庫の中、あんまりなかったかも」

カパッ

中にあったのはじゃがいも、にんじん、ズッキーニ、キャベツ、玉ねぎ…

璃奈「お肉がない…」

母「ほんとだ…」

璃奈「私、買ってくる」

お母さんと一緒に…なんて、

母「私も行くね!」

璃奈「…いいの?」

母「当たり前じゃん!」

母「じゃあ着替えてくるね!」

璃奈「…うん!」ジワリ

同好会、愛さんのお店で感じたあの暖かさ…。

やっと…ここで感じられた…。

やっと私の家が…色とりどりに…。

62: (しまむら) 2021/07/04(日) 16:38:39.12 ID:blNiZYPj
―――

母「すごい可愛いじゃん!そのワンピースいつ買ってたの?」

璃奈「少し前にお友達と一緒に買った」

私が着ているのは白いレースワンピース。

シンプルだけど雲を纏っているようで心地いい。

───

しずく『この服絶対璃奈さんに合うと思う!』

璃奈『こんな服、私に合うかな』

かすみ『じゃあ試着室に行こうね~』

璃奈『あわわわわわ…そんなに押さないで~…』

――

璃奈『…どうかな?』

かすみ&しずく『うわぁ…!』

かすみ『これに似合う靴、後で買いに行こっ』

しずく『そうだね、もっと可愛くなるはず…』

璃奈『うぅ…璃奈ちゃんボード『照れ照れ』…』

―――

かすみちゃん達と買いに行ったことを思い出す。

ファッションなんて全然考えたことなかったから、すごく楽しかった。

母「こんな可愛い子と一緒に出かけられるなんて本当私って幸せ者だなー」ニコニコ

璃奈「もう…恥ずかしいから先出てる」

母「褒めてるから別にいーじゃん」ニコッ

母「そういえば今日は何作るの?」

璃奈「今考えてるのはカレー」

母「お!いいじゃんいいじゃん!」

母「お父さんが泣いちゃうくらい美味しいの作ろうね!」

璃奈「うん!」

63: (しまむら) 2021/07/04(日) 16:46:01.00 ID:blNiZYPj
―――

買い物を手早く済ませ、キッチンに食材を並べる。

母「今日は璃奈が私をリードしてね?」

璃奈「そんなに重く捉えなくてもいいと思う…」

母「璃奈殿!私は何からやればいいですか!」

璃奈「お母さん…」

璃奈「じゃあお母さんはお肉を切って」

母「御意!」

璃奈「私は…野菜を切って…」

64: (しまむら) 2021/07/04(日) 16:50:19.47 ID:blNiZYPj
サクッサクッサクッ

スッッ、スッッ

二つの包丁がそれぞれの食材を切る音。

いつもなら同時に聞こえるはずのない音。

璃奈「…………」

じわり、と視界がまた歪む。

この1秒1秒が本当に幸せ。

璃奈「二人でお料理するの、本当に楽しい」

母「私もだよー!生きててよかった…」

璃奈「大袈裟すぎ」

母「ほんとにそう思ってるんだからねっ」

白紙の場所がいろんな色に染められていく幸福感。

一生味わっていたい。

65: (しまむら) 2021/07/04(日) 16:55:11.90 ID:blNiZYPj
―――

璃奈「完成…!」

母「おおーーー!」

母「美味しそうとかそういうレベルじゃないね!」

璃奈「どんなレベル?」

母「さいっっっっこうに美味しそうだよ!」

璃奈「ちょっとわかる気がする…」

母「早速食べよ!」

璃奈「うん!」

璃奈&母「いただきます!」

お母さんの切った野菜。一口サイズとは言えないほどに小さく切られている。

この小ささ……小学生の時を思い出す。

口の小さな私に合うように細かく食材を切ってくれていた。

66: (しまむら) 2021/07/04(日) 17:01:52.88 ID:blNiZYPj
───

璃奈『…………』パクパク

母『……』ニコニコ

璃奈『……』パクパク

璃奈『…?』

璃奈『おかあさん、どうしたの?』

母『ん?なんでもないよー?』

璃奈『ぜったいなにかかくしてる』

母『じゃあ当ててみて?』

璃奈『うーん…』

璃奈『明日のおしごとお休みにならないかな?って思ってる』

母『それも当たりだけどもっと大事なこと考えてるかなー』

璃奈『大事なこと?』

璃奈『…むずかしい……分かんない』

母『じゃあ答え言っていい?』

璃奈『うん』

母『ご飯食べてる時の璃奈も可愛いなぁ…って』

璃奈『お、おかあさんもかわいい』

母『璃奈の方が100倍かわいいんだからね!』

璃奈『おかあさんの方が1000倍かわいいっ』

母『璃奈の方が1億倍可愛いぞ~!』

璃奈『おく?』

母『億っていうのは来年習うかな?』

璃奈『お母さんに教えてもらいたい』

母『じゃあご飯食べ終わったら一緒にお勉強しようね!』

璃奈『うん!いっしょ!』パクパクパクパク

母『あははっ!そんなに急がなくても大丈夫だよっ』ニコッ

楽しい思い出。

67: (しまむら) 2021/07/04(日) 17:24:29.52 ID:blNiZYPj
―――

母『ごめんね、最近ご飯一緒に食べれなくて…』

璃奈『大丈夫』モグモグ

璃奈『別にご飯も無理して作らなくてもいいよ』

母『…………ごめんね』

璃奈『暗い表情、お母さんらしくない』

母『…ありがとう』ニコッ

璃奈『私も来年で中学生なんだからご飯くらい作れるよ』

璃奈『お母さんはゆっくり休んで』

母『…………うん、ありがとう、璃奈』ニコッ

ほんのちょっぴり、苦い思い出。

大切な記憶が蘇る。

68: (しまむら) 2021/07/04(日) 17:42:51.13 ID:blNiZYPj
———

 



 

…もう高校生だよ、お母さん。

小学生の時より、ずっと大きくなったんだよ。

璃奈「……」モグモグ

母「美味しい?」

璃奈「うん…」グスン

璃奈「うん…うん…」ポロポロ

璃奈「美味しいよ…お母さん…」ポロポロ

璃奈「美味しい………」ポロポロ

69: (しまむら) 2021/07/04(日) 18:21:30.96 ID:blNiZYPj
母「璃奈…」グスン

母「そうだよね、美味しいよね」

母「ごめんね…」ポロポロ

母「ごめんね、ごめんね、ごめんね…!」ポロポロ

璃奈「うわあああん…」ポロポロ

璃奈「もう一人はいやだ…」ポロポロ

わがままだってわかってる。

叶わない願いだってわかってる。

70: (しまむら) 2021/07/04(日) 20:19:50.30 ID:blNiZYPj
それでも。

それでも。

璃奈「もう独りぼっちは嫌…」

かすみちゃん、しずくちゃん、愛さん…

同好会のみんなと会って、一緒に笑って、努力して…

繋がることの楽しさを知って…

繋がれない寂しさを知ってしまって…

璃奈「ずっと一緒にいて…お母さん…」ポロポロ

母「璃奈…」ナデナデ

璃奈「…」グスン

78: (しまむら) 2021/07/05(月) 12:53:17.68 ID:UVGqGYy8
何分泣いたんだろう。

お母さんの胸の中で泣いたのは何年ぶりだろう。

母「……ごめんなさい」

母「できることならこのまま璃奈とここにいたい」

母「それでもわたしは…」

璃奈「…大丈夫」

璃奈「私はもう大人だから」

璃奈「ずっとここにいる」

こんな嘘つきたくない。

けどお母さんの悲しむ顔なんかもう見たくない。

璃奈「私は待ってるから」

母「璃奈…」

母「ほんっと、璃奈って優しいね」

母「本当にありがとう、大好き」

璃奈「…今日は……」

母「なに?」

璃奈「今日はずっとこのままでいたい」ギュッ

母「うん、私も」ギュッ

今日は目一杯、甘えたい。

79: (しまむら) 2021/07/05(月) 13:09:48.66 ID:UVGqGYy8
———

朝、目が覚める。

顔を洗う。

髪を整える。

昨日あらかじめ作っておいたご飯を食べる。

天気予報を見る。

服を着替える。

授業の予習、復習をしておく。

玄関に向かう。



 

ここまで、一人きり。

正直、すごく寂しい。

でも私には家族がいる。それを知っているから。

璃奈「…頑張ろう」

パタン

80: (しまむら) 2021/07/05(月) 13:31:43.00 ID:UVGqGYy8
———

ロビーから出る。

お母さんと一緒に出かけたの、ほんの数十時間前なんだ…。

璃奈「…」

璃奈「早く会いたい」

…きっとまた微笑みかけてくれる。

同好会のみんなだっている。

外も中も全部鮮やかな私の世界。

みんなと繋がって白紙の地図を思う色に塗りつぶしていく。

例え独りぼっちで過ごすことになっても。

これからもずっと、そうでありたい。

璃奈「行ってきます…!」

81: (しまむら) 2021/07/05(月) 15:56:58.95 ID:UVGqGYy8
───

放課後

侑「璃奈ちゃん元気になった?」

果林「ちょっとでも辛くなったら休憩しなさいね、頑張りすぎても良くないわよ」

璃奈「ありがとう、璃奈ちゃんボード『がんばるぞー!』」

かすみ「頑張っちゃだめなのりな子!ちょっとでも疲れてたら休んでよね!絶対だよ!」

璃奈「かすみちゃん、心配しすぎ」

愛「でもかすみんの言う通りだよ?りなりーって無理しちゃう性格だからさ」

しずく「病み明けだからほどほどにね?」

同好会のみんなが心配してくれる。昨日お母さんが見せてくれた鮮やかな色と同じ。

璃奈「みんなありがとう、ほどほどに頑張る」

かすみ「だから頑張っちゃダメなんだってばー!」

しずく「あははっ!かすみさんの言う通りにしなきゃまた怒られちゃうからほどほどにね?」ニコッ

かすみ「しず子はどっちの味方なの?!」

本当にいろんな色があって、楽しい。

ずっとこのままでいたい。

82: (しまむら) 2021/07/05(月) 17:22:18.30 ID:UVGqGYy8
───

あっという間に部活も終わってしまった。
 

今日は家で何をしようかな。


同好会のPR動画とかも作ってみようかな。


みんな喜んでくれるかな。


どんな動画にしてみようかな。


でもほどほどにしないとまた夜更かししちゃいそう。
 

ガチャ

璃奈「ただいま」

83: (しまむら) 2021/07/05(月) 19:19:49.45 ID:UVGqGYy8
璃奈「…………っ」

 



 





璃奈「あれ…………」

どくん、と心臓が大きく高鳴る。

 







 

どくん、どくん。胸の痛みがとまらない。

昨日まで鮮やかな色に染まっていたキッチン、リビング…

全部白く染められている。

84: (しまむら) 2021/07/05(月) 19:45:00.69 ID:UVGqGYy8
璃奈「なんで…!」

結局お母さんがいないと私は何もできないの?色づかせられないの?

あの日々に逆戻りなの?何も変わらないの?

璃奈「違う…」

目を閉じて…

いい思い出だけ思い出して…

璃奈「…………」

璃奈「…ふぅ……」

早速ご飯作って、スクールアイドルのお勉強とかやらないと。

85: (しまむら) 2021/07/05(月) 20:08:27.34 ID:UVGqGYy8
―――

サクッサクッ

リズム良く野菜を切ってフライパンに入れる。

ジュー

グツグツ








 






あれ?

料理ってこんなに静かだったかな。

璃奈「…もう!」

いい思い出だけ…いい思い出だけ…

86: (しまむら) 2021/07/05(月) 20:47:18.28 ID:UVGqGYy8
―――

璃奈「いただきます」

今日の夜ご飯は今まで作ってきた中で一番の出来かも。

璃奈「すごく美味しい…」

モグモグ

モグモグ

一番の出来。



お母さんの感想、聞いてみたいな。








 


…あれ。

ご飯を食べる時って、こんなに寂しかったっけ。

璃奈「…っ」

璃奈「もう、やめて、お願い」

87: (しまむら) 2021/07/05(月) 20:59:27.07 ID:UVGqGYy8
―――

ピーッピーッピーッ‼︎

アナウンサー「劇的な幕引きです!」

アナウンサー「後半のアディショナルタイムになんと3得点!!」

アナウンサー「ビッグクラブ同士の・・・・・・」

璃奈「…………」

嬉しくない。

隣が寂しい。

どんなに料理がうまく行っても、どんなに気分良く帰ってこれても、どんなに明日が楽しみでも…。

誰も何も答えてくれない。

お母さんの鼓動も聞こえない。

璃奈「はぁ…はぁ…はぁ…」

璃奈「うぅ…」グスン

璃奈「もう嫌…」グスン

89: (しまむら) 2021/07/05(月) 21:15:14.57 ID:UVGqGYy8
───
放課後。

もう放課後。

かすみ「今日の家庭科の授業で作ったかすみん特製サンドイッチ食べさせてあげたかったな~」

しずく「どういうサンドイッチ作ったの?」

かすみ「この前食べたブルーベリーのコッペパンあったじゃん?それを参考にし・・・・・・」

二人がそばにいると本当に楽しい。

やっぱり一緒にいることって本当に幸せなんだ。



家に帰ることが、怖い。

今日は家にお母さん、いてほしい。

お願い。

90: (しまむら) 2021/07/05(月) 21:27:14.18 ID:UVGqGYy8
かすみ「だよね!りな子っ!」

一緒に夜ご飯、また食べたい。

また一緒にゲームしたい。

しずく「…璃奈さん?」



叶わない夢なんてことはわかってる。

…こんなに、こんなに辛い思いしなくちゃいけないのなら。

ずっと暖かい世界なんてなければいいのに。

璃奈「やめて」

かすみ「…え?」

璃奈「あっ…」

璃奈「ごめんなさい、かすみちゃんのことじゃないの」

かすみ「うん…」

91: (しまむら) 2021/07/05(月) 21:40:06.67 ID:UVGqGYy8
璃奈「本当にごめんなさい」

璃奈「今日はお買い物してから帰るからこの道から帰るね…ばいばい」

しずく「うん…わかった」

かすみ「りな子!待って!かすみんたちも行くから!」

これが正解なのかもしれない。

璃奈「…やめて…………」

かすみ「ねぇー!りな子ーー!」

璃奈「もうやめて…………」

広げたくない。

塗り潰したくない。

こんなに寂しい思いをしなくちゃいけないのなら。



 

私はもう地図なんていらない。

92: (しまむら) 2021/07/05(月) 23:01:09.59 ID:UVGqGYy8
―――

璃奈「ただいま」

璃奈「…………」

璃奈「…おかえり」

ピロンピロン、ピロンピロン

かすみちゃんからの電話。

ピロンピロン、ピロンピロン

ピロンピロン、ピロンピロン

ピロンピロン、ピロンピロン

ピロンピロン、ピロンピロン

璃奈「ごめんなさい…」

ブチッ

95: (しまむら) 2021/07/06(火) 09:39:40.46 ID:rUEEwTe3


璃奈「…………」



ずっとそばにいてほしい。

そばにいてほしかった。

璃奈「お母さん」

声をかけたら微笑みかけてほしかった。

96: (しまむら) 2021/07/06(火) 09:47:15.56 ID:rUEEwTe3
璃奈「お母さん」

あの優しい声で返事をしてほしかった。

璃奈「お…かあ…さ…」

璃奈「…ああ…だめ…」

テストでいい点数を取ったら言葉で褒めて欲しかった。

お母さんの朝ごはん、毎日食べたかった。

何か悪いことがあったら相談に乗ったり、背中を押してほしかった。

 

キモチが止まらなくなる。

 

…初めてのライブ、観に来て欲しかった。

スクールアイドルフェスティバルに来てほしかった。

行ってきます、って言ったら、行ってらっしゃいって言ってほしかった。

ただいま、って言ったら、おかえりって言ってほしかった。

璃奈「もう…いや…」

こんな私、大っ嫌い。

97: (しまむら) 2021/07/06(火) 10:37:34.15 ID:rUEEwTe3
───

朝、目が覚める。

学校…行きたくない。

リビングにも行きたくない。

ピーンポーン

璃奈「…?」

98: (しまむら) 2021/07/06(火) 10:53:50.15 ID:rUEEwTe3
かすみ「りな子…」

璃奈「あ……かすみちゃん…」

かすみ「今、少しだけ会える?」

璃奈「嫌」

璃奈「…ごめんなさい」

しずく「…………」

かすみ「…どうして?」

璃奈「……………」

璃奈「私はこのままでいいから」

しずく「だめだよ、そんな…」

かすみ「りな子が元気じゃないとかすみんたちも元気じゃなくなっちゃうよ…」

99: (しまむら) 2021/07/06(火) 11:28:12.58 ID:rUEEwTe3
璃奈「…ごめんなさい」

しずく「インターホン越しじゃなくて直接お話したいな」

しずく「…だめかな?」

璃奈「…ごめんなさい」

かすみ「……でもりな子が」

璃奈「やめて…」

璃奈「もういや…………」

璃奈「これ以上私を幸せにしないでっ!!!」

全部白くていい。

天王寺璃奈が今まで送ってきた生活に戻るだけ。

璃奈「…ごめんなさい、もう来ないで」

100: (しまむら) 2021/07/06(火) 12:50:14.58 ID:rUEEwTe3
———

璃奈『————————————————————————————————』

『——————————』

『——————————』

璃奈『———————————————』

『———————』

『————』zzz….

……

璃奈『…大好き』

101: (しまむら) 2021/07/06(火) 12:55:15.50 ID:rUEEwTe3
———

璃奈「うぅ…」

璃奈「寒い…」

いつの間にかソファで寝ていた。

璃奈「…暖かかった……」

よく覚えてないけれど…

誰かと一緒にいて…

その誰かは笑顔で…

私も幸せなキモチが溢れていて…

璃奈「…………」グスン

やっぱり…

璃奈「寂しい…」

璃奈「もういや…」

102: (しまむら) 2021/07/06(火) 13:00:11.73 ID:rUEEwTe3
ピロン、ピロン

しずくちゃん…

璃奈「もしもし…」グスン

しずく「璃奈さん大丈夫…?」

しずく「泣いてるの?」

しずくちゃん…

かすみ「え?!りな子泣いてるの?!」

しずく「あ!私のスマホ…」

かすみ「りな子〜!?大丈夫!?」

かすみちゃん…

璃奈「うぅ…」ポロポロ

璃奈「うわあああん…」ポロポロ

かすみ「りな子…」

しずく「…………」

璃奈「ごめんね…」グスン

璃奈「もう切るね」グスン

しずく「今から璃奈さんのところに行っていい?」

かすみ「私も行くねっ」

璃奈「え…でも…」グスン

しずく「じゃあまた後で!」

プツン

プー、プー、プー



璃奈「…ありがとう」

103: (しまむら) 2021/07/06(火) 13:12:53.94 ID:rUEEwTe3
———

ピーンポーン

璃奈「…はい」

かすみ「中須です」

しずく「桜坂です」

ガチャ

璃奈「ごめんね、今日はがっこ」

ムギューーー!!

104: (しまむら) 2021/07/06(火) 13:13:30.90 ID:rUEEwTe3
璃奈「……わっ!?」

璃奈「かすみちゃん…」

かすみ「やっぱり何かあったんじゃん、りな子…」

璃奈「わ、私は…」

ムギュッ

璃奈「しずくちゃん…」

しずく「ハグするとストレスがなくなるんだって」

二人からの優しい温もりが私を包む。

…だめ。

もう親友を心配させたくない。

だから泣いちゃだめ。あの時みたいに。

あのライブの時みたいに…

泣いちゃ…

璃奈「…………」グスン

105: (しまむら) 2021/07/06(火) 13:20:07.52 ID:rUEEwTe3
かすみ「大丈夫だよ」

かすみ「大丈夫、大丈夫…」ナデナデ

しずく「その荷物、私たちにも背負わせてほしいな」

しずく「大きな荷物も三人でもてば軽くなるよ?」ニコッ

璃奈「でも…それは二人に…」グスン

かすみ「…そんなこと今更気にすること?」ニコッ

かすみ「私たちとりな子の仲でしょ?」

璃奈「…………」

璃奈「…私は……私は…」

璃奈「うぅ…」ポロポロ

しずく「ゆっくりでいいから言ってみて?」

106: (しまむら) 2021/07/06(火) 16:14:50.38 ID:rUEEwTe3
璃奈、だめだよ。

璃奈「私はずっとそばにいてくれる家族が欲しかった…」

だめ。

璃奈「何年も一人で…それが当たり前だって思ってて…」

だめだってば。

璃奈「でも…みんなと出会って…」



璃奈「繋がることの暖かさを知って…」

…でも

璃奈「もう一人ぼっちは嫌になって…」

この二人なら、いいかな…

璃奈「だけどここはずっと独りで…寂しくて…冷たくて…」

璃奈「みんなと楽しくお話ししててもここの事を思い出して…辛くて…」

璃奈「もうこのままじゃ家が嫌いになりそうで…」

璃奈「…でもお母さんたちのために……お母さんの…」

璃奈「大好きな…お母さんの…」ポロポロ

107: (しまむら) 2021/07/06(火) 16:29:56.00 ID:rUEEwTe3



かすみ「……………」ナデナデ

しずく「………」グスン

しずく「辛いよね…辛かったよね…」グスン

かすみ「うぅ…うわああん…」ポロポロ

しずく「かすみさんまで泣いちゃったら…ダメだよ…」ポロポロ

すごく…すごく悲しくて涙が止まらない。



…なのに…………。

暖かくて…こころが落ち着いてくる。

光が私をほどいてくれるような…。

108: (しまむら) 2021/07/06(火) 17:01:57.66 ID:rUEEwTe3
───

璃奈「…………」グスン

しずく「落ち着いた?」

璃奈「…うん」

璃奈「しずくちゃん達も大丈夫?」

しずく「私たちは全然大丈夫だよ」ニコッ

しずく「だよね?かすみさん?」

かすみ「かすみんはまだこうしてたい…」グスン

しずく「璃奈さんが動けないよ?」ニコッ

かすみ「しず子だって目まだ赤いくせに…もっとギュッてしてたいんでしょ?」

しずく「か、かすみさんもでしょっ」

かすみ「かすみんは目が赤くても可愛いからいいもん」

かすみ「ね、りな子?」

109: (しまむら) 2021/07/06(火) 17:15:58.55 ID:rUEEwTe3
かすみちゃんの目、少しだけ赤くなってるけれど…

その赤みがとってもきれいに見えるくらい、屈託のない笑顔。

璃奈「…可愛い」

かすみ「でしょ~?」ニコッ

璃奈「…二人とも、本当にありがとう」

璃奈「身体がすごく軽くなった気がする」

しずく「『気がする』じゃだめだと思うよ?」

しずく「私たちで解決できないかな?」

璃奈「ありがとう、でも大丈夫」

璃奈「こうやって一緒にいてくれるだけで私は元気になれるから」

しずく「でもそれじゃ…」

なんの解決にもならない。それは分かってる。

でも、これ以上迷惑もかけたくない。

110: (しまむら) 2021/07/06(火) 17:33:51.15 ID:rUEEwTe3
かすみ「またりな子がだめだめな顔してるー…」

かすみ「どーせ『二人に迷惑かけちゃう』とか思ってるんでしょ?」

璃奈「うん…」

かすみ「もぅ…なんでかすみんの周りには頑固な子しかいないの…」

呆れているような雰囲気を出してるけど…なだめるような、やさしく諭すような、そんな声のトーンで。

かすみ「たまにはぜーーんぶかすみんたちに頼ってもいいんだよ?」

璃奈「全部…?」

かすみ「うん!ぜーーーんぶ!」

しずく「全部……」

しずく「……………」

しずく「…ねえ璃奈さん」

璃奈「どうしたの?」

111: (しまむら) 2021/07/06(火) 17:51:44.59 ID:rUEEwTe3
しずく「…いつもは璃奈さん一人でやってきたことを、今度は三人でいっしょにやってみない?」

璃奈「?それってどういう…」

かすみ「…?」

一人でやってきたこと?

しずく「例えば…」

しずく「毎日学校まで一緒の道で登校したり…」

しずく「毎日ずっと一緒の帰り道で帰ったり…」

かすみ「…あ!」

しずく「気づいた?」ニコッ

しずく「じゃあかすみさんも言ってみて?」

かすみ「え?!」

かすみ「え…えーっとぉ…」

112: (しまむら) 2021/07/06(火) 18:06:01.70 ID:rUEEwTe3
かすみ「ま、毎日おやすみって言ったり…///」

しずく「うん!それもあるねっ!」

しずく「毎日おはようって言い合ったり…」

しずく「毎日…」

毎日…

璃奈「一緒に朝ご飯を食べたり…?」

しずく「…!」

しずく「うん!一緒にっ!」

しずく「もちろん一緒に作ったり?」

かすみ「一緒にコッペパン作ったり!」

しずく「そうだね!コッペパンも作ろうね!」

璃奈「一緒に…一緒に勉強して…お昼寝して…買い物したり…?」

しずく「勉強も一緒なら楽しそうだね!」

113: (しまむら) 2021/07/06(火) 18:33:29.81 ID:rUEEwTe3
璃奈「私が…本当にいいの…?」

かすみ「りな子が元気ならかすみんたちも元気になるからね!」

たくさんの楽しい日々が待っている。絶対に。

かすみ「んん~考えただけでかすみんワクワクが止まらないよ~!」

私も同じきもち。この二人とならどんな白紙の場所でも塗りつぶせる。

そんな予感がする。

璃奈「でも少しだけ考えさせて」

私に一番最初に色をくれた人…私に地図をくれた人に相談しなきゃ。

その人に私は『待ってる』って言ってしまったから。

114: (しまむら) 2021/07/06(火) 18:45:24.91 ID:rUEEwTe3
―――

母「ただいま~」

璃奈「おかえり」

母「夜遅くまで待っててくれてありがとね」

母「それで…メールで言ってた大事なお話って?」

 

ありのままを全部話す。

家にいると寂しさを感じること。

同好会のみんなのおかげで毎日が楽しいこと。

みんなと繋がれば繋がるほど家に帰ってきたとき、独りぼっちでいることがとってもつらくなること。

だからこそ、お母さんと一緒にいろいろなことをした日、本当に幸せだったこと。

もう家に独りぼっちでいることが本当に嫌になってしまったこと。

これ以上、家が白紙のままの場所だという記憶を重ねたくないこと。

親友が手を差し伸べてくれたこと。支えてくれたこと。

お母さんとお父さんのことが大好きなこと。

心の底から…

心の底から大好きなこと。

璃奈「私は―――」

115: (しまむら) 2021/07/06(火) 19:03:13.76 ID:rUEEwTe3
―――

朝、目が覚める。

目を開けた方向にはもう見慣れた顔がすやすやと寝息を立てている。

璃奈「かすみちゃん、起きて」ユサユサ

かすみ「んん…むぅ…」

かすみ「かすみんはまだかわいぃぃ…」

璃奈「学校に遅れちゃうよ」

しずく「あ、璃奈さん起きたんだね、おはよう」

璃奈「うん、おはよう」

璃奈「しずくちゃんはいつ起きたの?」

しずく「私もさっき起きたばかり」

しずく「先に洗面台使っちゃえば?かすみさんは私が起こしとくね」

璃奈「うん、わかった」

しずく「かすみさん起きてー」ユサユサ

しずく「朝早く起きて小テストの勉強しようって言ったのかすみさんでしょ?」ユサユサ

かすみ「しず子もいっしょにねよ~よ~…」

しずく「またそんなこ・・・・・・・」

幸せな音が起きてからすぐに聞こえてくる。

116: (しまむら) 2021/07/06(火) 19:09:33.83 ID:rUEEwTe3
───

顔を洗う。

…一緒に買ったコップと歯ブラシが三つ。

髪を整える。

トテトテ…トテトテ…

眠そうな足音が聞こえてくる。

かすみ「りな子~…おはよぉ…」ムギューッ

璃奈「うん、おはよう」

かすみ「ここ使っていい?」

璃奈「私としずくちゃんはもう終わったからゆっくりでいいよ」

かすみ「ありがとぉ…ふわぁ…」

璃奈「じゃあわたしは洗濯物を…」 

かすみ「ねーねーりな子ぉ…」

璃奈「どうしたの?」

117: (しまむら) 2021/07/06(火) 19:18:08.73 ID:rUEEwTe3
かすみ「かすみんまだ眠い…」

かすみ「りな子もねよーよ~…」

璃奈「しずくちゃんがいるからって頼っちゃダメ」

かすみ「え~別にちょっとくらいいいじゃ~ん…」

璃奈「この前もちょっとだけって言って一緒に寝坊しちゃったの忘れたの?」

かすみ「今日はしず子がいるから起こして貰えるってばぁ…」

かすみ「それにりな子だって眠そう…」

璃奈「確かにまだまだ寝たいけど…」

かすみ「かすみんたちまだパジャマだし…あと5分だけ…」

璃奈「…5分だけだよ?」

かすみ「えへへ~…りな子やさしぃ~…」

118: (しまむら) 2021/07/06(火) 19:22:30.40 ID:rUEEwTe3
───

璃奈「しずくちゃんが気づかないかもしれないから目覚ましもかけとくね」

かすみ「だいじょーぶだからぁ…」

かすみ「りな子…おいで~……」

璃奈「…ほんとうに少しだけだからね?」

かすみ「うん…ぅん…」ムギュッ

かすみ「…………」zzz….

トクン、トクン、と優しい音が私を包む。

……

璃奈「…大好き」

私は起きてようと思ってたけど…

しずくちゃんがいるから大丈夫かな…………

119: (しまむら) 2021/07/06(火) 19:27:41.44 ID:rUEEwTe3
───

璃奈「むぅ…」

璃奈「あれ、目覚まし…」

璃奈「……って、あれ?しずくちゃん?」

制服のまま私の隣ですやすやとしずくちゃんが寝ている。

とっても綺麗…。

しずく「んん……」

しずく「むぅ…あれ、璃奈さん…」

しずく「…って!もしかして私寝てた?!」

璃奈「……もしかして」

しずく「かすみさん起きてーー!!遅刻だよー───!?」

璃奈「あわわわわわ……目覚まし時計ならなかったの?」

しずく「…私がオフにしちゃった…………」

璃奈「しずくちゃんが?!」

しずく「2人とも幸せそうに寝てたから…起こすのもかわいそうだなーって思って…」

120: (しまむら) 2021/07/06(火) 19:34:16.99 ID:rUEEwTe3
璃奈「それで一緒に布団に?」

しずく「…だって璃奈さんたちだけで寝るなんてずるいもん」

かすみ「もぉ…2人ともうるさいよぉ…」

璃奈「かすみちゃん、このまま寝てたら本当に遅刻しちゃう」

かすみ「だって5分だけだから大丈夫……」

璃奈「30分くらい経ってる…」

かすみ「え?!」ガバッ

かすみ「うわぁ!ほんとだ!ちょっとしず子ぉ~~!」

しずく「か、かすみさんたちが寝てたのが悪いんだよっ///」

かすみ「寝癖も治さなきゃ~!」

かすみ「先に洗面所使うね!」

ドタドタと洗面所に駆けていくかすみちゃん。

しずく「璃奈さん、私の制服についてるホコリ取ってもらってもいい?!」

璃奈「落ち着いて、少しだけ急げば十分間に合うよ」

しずく「そうだね、深呼吸…深呼吸…」

しずく「どうしても朝は時間に厳しくなっちゃう癖が治らないんだよね」

璃奈「そこがしずくちゃんのいいところだから治さなくてもいいと思う」

璃奈「私とかすみちゃんは朝に弱いから、しずくちゃんがいると安心する」

しずく「安心だなんて…別に大したことじゃないよ」

璃奈「ちょっと耳赤くなってる」

しずく「もう、璃奈さんっ///」

121: (しまむら) 2021/07/06(火) 19:38:16.48 ID:rUEEwTe3
───

璃奈「はい、終わったよ」

しずく「…………」

璃奈「しずくちゃん?」

しずく「璃奈さん」

璃奈「ど、どうしたの?」

しずく「大好きだよ」

璃奈「!?!?////」

しずく「あははっ!これでおあいこだね!」

璃奈「もう…しずくちゃん…!///」

かすみ「誰か使っていいよ~…って、ちょっとー、二人で何してるんですかー」

しずく「別に何もしてないよ?」

かすみ「ふーん…まぁ別にいいけど…」ゴニョゴニョ

かすみ「朝ごはんの準備しとくねっ」

しずく「遅刻しかけてるの忘れちゃってた…」

しずく「私もかすみさんのお手伝いしてくるねっ、璃奈さんはゆっくり着替えてきていいよ」

『大好きだよ』

大好き…。

しずく「璃奈さん?まだ眠いの?」ニコッ

璃奈「私も大好き」

しずく「……うん!ありがとう!」

璃奈「あ…」

頭の中の言葉が声に出てしまった。

璃奈「も、もう行って…///」

しずく「これで私の勝ちだね」ニコニコ

璃奈「『恥ずかしい…』」

122: (しまむら) 2021/07/06(火) 19:42:23.40 ID:rUEEwTe3
――――

昨日あらかじめ作っておいたご飯を食べる。

三人で一緒に。

天気予報を見る。

今日は快晴みたい。

授業の予習、復習をしておく。

璃奈「…………」カキカキ

しずく「…………」カキカキ

かすみ「…………」カキカキ

かすみ「…………」カキカキ 

123: (しまむら) 2021/07/06(火) 19:46:07.91 ID:rUEEwTe3
璃奈「かすみちゃん、何してるんだろう?」ヒソヒソ

しずく「うーん、美術の課題とか?」ヒソヒソ

かすみ「…………」カキカキ

かすみ「…できた!」

かすみ「ねぇりな子!」

璃奈「なに?」

かすみ「じゃーん!かすみんボード!」

璃奈&しずく「…………」ジー

かすみ「……かすみんボード!」

璃奈&しずく「……はぁ」

かすみ「うぅ…分かったよぉ!ちゃんと勉強するからぁ!」

124: (しまむら) 2021/07/06(火) 19:51:32.53 ID:rUEEwTe3
―――

玄関に向かう。

しずく「忘れ物はないよね?」

かすみ「うん!早く行こっ!」

璃奈「私、とってくるものあるから先外出てて」

かすみ「おっけ~!」

パタン

璃奈「…………」

振り返って廊下を見る。

どこにも白い場所がない。寂しい感情が湧かない。

璃奈「暖かい…」

二人のおかげで私の地図の中心は彩られ続ける。

彩られ続けることで、どんな景色が待ってるんだろう。

ガチャ

かすみ「りな子~何忘れてきたの?」

璃奈「あ、かすみちゃん」

璃奈「もうとってきたから早く学校行こう」

かすみ「うん!」

かすみ「それでなにとってきたの?」

璃奈「色々」

かすみ「色々?」

璃奈「早く行こっ、しずくちゃんも待ってると思うし」

しずく「私もいるよ?」

璃奈「待たせちゃってごめんなさい」

しずく「全然大丈夫だよ」ニコッ

かすみ「じゃあ…」

璃奈「行ってきますっ」
しずく「行ってきます!」
かすみ「行ってきまーす!」

おしまい

125: (しまむら) 2021/07/06(火) 19:55:39.97 ID:rUEEwTe3
璃奈っぽさを出すために地の文を少し変えつつ投下したので読みづらいところもあったと思いますが、最後までご覧いただき本当にありがとうございました

132: (しうまい) 2021/07/07(水) 00:42:01.27 ID:HjHgH6cR
すごくすき
みんな幸せになって

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1625319401/

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