【長編SS】歩夢「パラレルワールド?」【ラブライブ!虹ヶ咲】 | ラブライブ!まとめ ぷちそく!!

【長編SS】歩夢「パラレルワールド?」【ラブライブ!虹ヶ咲】





ぽむSS
1:(しまむら) 2021/05/12(水) 22:03:31.00 ID:h5BrssJP
「──ゆむ! ──っ!!」

(……わたしを呼ぶ声が……聞こえる?)

(あたまがぼーっとして……よくききとれない)

(……目もよくみえない……)

(どうしたんだろ……わたし……)

「────!! ──!!」

「────めです! ──さん!!」

(からだが……なんだか……さむい)

(……ねむい……や……)

「──!!」

「──歩夢ッ!!」


最後に耳に届いたのは、愛おしい子の声。

──私の意識はそこで途絶えた。

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1622990026/

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1620824611/

3:(しまむら) 2021/05/12(水) 22:04:58.48 ID:h5BrssJP
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

ピー ピー

歩夢「…………」

歩夢(……え?)

歩夢(ここ……どこ……?)


「え? 上原さん?」


歩夢「……?」

歩夢(視界がぼやける。知らない天井と、横から知らない人の声が、耳に届く)

歩夢(頭がぼーっとする)


「せ、先生! 上原さんが目を覚ましました!! 先生ー!!」 タッタッタッタ


歩夢「?」

6:(しまむら) 2021/05/12(水) 22:08:25.40 ID:h5BrssJP




「よかった……よかった……!! 先生、本当にありがとうございます」

歩夢(泣きながらお医者様? に頭を下げるお母さん)

歩夢(私、病院にいるみたいだった)

歩夢(どこの病院だろ? というか私、なんでこんな所にいるんだろう?)

歩夢(同好会の皆は、どこ?)

歩夢(……分からないことが多すぎる……)

「それでは、今日の所は入院でまた明日検査しましょう。その結果で退院できる日も決められると思います」

歩夢母「分かりました」

「では、私はここで。あとはご家族でゆっくりして下さい。では、失礼します」


スタスタ


歩夢「……」

9:(しまむら) 2021/05/12(水) 22:13:25.52 ID:h5BrssJP
歩夢「ねぇ、お母さん?」

歩夢母「へ? お母さんって……?」

歩夢「?」

歩夢「お母さんはお母さんだよね?」

歩夢母「え、えぇ……そうなんだけど……」

歩夢母「えっと……」

歩夢「?」キョトン

歩夢(お母さん、どうしたんだろう? すごく驚いてる。とりあえず、今の状況を聞かないと)

歩夢「ここ、病院だよね? どこの病院?」

歩夢母「お、お台場にある総合病院よ。あなた……事故にあって……数日間、意識がなかったの」

歩夢「へ……?」

歩夢(数日間も……? 事故!?)

歩夢「事故って……!」

歩夢母「車にぶつかったのよ……本当に目が覚めて良かった……」

歩夢「!!」

歩夢「お、お母さん!」

歩夢「侑ちゃんも巻き込まれてないよね!?」


歩夢母「え? 歩夢……」

歩夢母「ゆうちゃんって……誰? お友達?」

歩夢「──は?」

14:(しまむら) 2021/05/12(水) 22:18:28.68 ID:h5BrssJP
歩夢「誰って……」

歩夢「侑ちゃんだよ? マンションの隣の部屋に住んでる高咲侑ちゃん! 私と幼馴染で、お母さんも侑ちゃんのお母さんと仲良しじゃん!」

歩夢母「高咲さん……? マンション?」

歩夢母「歩夢……本当にどうしちゃったの?」

歩夢母「私達の家はマンションじゃなくて一軒家だし、隣の家の人もそんな苗字じゃないわよ?」

歩夢「──え?」


お母さんから発せられた言葉は──信じられないものだった。


歩夢母「……記憶が混乱してるのかも……そうよね、起きたばっかりだもんね」

prrrrrr!! ピッ

歩夢母「もしもし上原です。──は、はい。娘は大丈夫──え!? トラブル? わ、分かりました。すぐに向かいます」

ピッ

歩夢母「ごめん、歩夢……私、お仕事行かなきゃいけなくなっちゃった」

歩夢「…………」

歩夢母「歩夢?」


その後のお母さんの言葉は覚えていない。
適当に返事をしてた気がするし、無反応だったかもしれない。

……侑ちゃんを……知らない?

嘘だよ。そんなの嘘だ。──嘘だよ!!

17:(しまむら) 2021/05/12(水) 22:24:13.23 ID:h5BrssJP
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

歩夢(……お母さんのあの反応、嘘ついてるようには見えなかった)

歩夢(本当に……侑ちゃんを知らないみたいだった)

歩夢(それに……私が事故にあった?)

歩夢(記憶を整理しなきゃ……)

歩夢(私は、上原歩夢)

歩夢(虹ヶ咲学園に通う、普通科2年)

歩夢(スクールアイドルだ)

歩夢(メンバーの皆もちゃんと覚えてる)

歩夢(皆と、侑ちゃんと……スクールアイドルフェスティバルを無事に終わらせて)

歩夢(いつもの日々が戻ってきた。侑ちゃんも音楽科に無事転科できて……楽しい日々を過ごしていた。そして、スクールアイドルの練習をしてた。そして──)

歩夢「──ッ! あたま、いったい……っ!!」


急に頭が痛くなる。
ズキン、ズキンと──痛む。

頭が割れそう……!!

21:(しまむら) 2021/05/12(水) 22:29:25.29 ID:h5BrssJP
落ち着くまでに、時間が掛かった。

でも、大丈夫。ちゃんと記憶はある。

歩夢「……侑ちゃん……せつ菜ちゃん……愛ちゃん……みんな……」

歩夢「!!」

歩夢(そ、そうだ! スマホ!! 数日間入院してたんだもんね!? 皆からメッセージが届いているはずだよ!) キョロキョロ

歩夢(あった! スマホ!)


ベッドの横にあるテーブルに置いてあった私のスマホ。
画面はバキバキだったけれど、電源は付いた。
そのまま急いで私はメッセージアプリを起動する。

歩夢(侑ちゃん……!)


きっと友達リストの一番上に侑ちゃんの名前が表示される。

──そう思っていた。


歩夢「へ……?」


そこに私のよく知る大好きなこの名前は──無かった。

歩夢「うそ……」

歩夢「なんで……?」

歩夢「侑ちゃんの名前も……同好会の皆の名前が……」

歩夢「ひ、一つもない……!!」


メッセージアプリに登録されている人は──お母さんだけだった。

25:(しまむら) 2021/05/12(水) 22:33:44.08 ID:h5BrssJP
歩夢「みんなは……? かすみちゃんは……? せつ菜ちゃんも、愛ちゃんも」

歩夢「果林さんもエマさんも彼方さんもしずくちゃんも璃奈ちゃんも……」

歩夢「──侑ちゃんも!」

歩夢「な、なんで……名前がないの……!?」

歩夢「なんで……なんで……」

歩夢「なんでよ!! ──なんでよぉ!!」


ここは、どこ?

私は……上原歩夢?

もう、わけが分からなかった。

一軒家? 侑ちゃんがいない? 同好会メンバーの名前がひとつも登録されていない?

分からない。何もかも、分からなくて──怖い。

分からないことが多すぎて、怖くて震えが止まらない。

涙を流しながら、私は毛布に隠れるように包まり……夜を過ごした──。

27:(しまむら) 2021/05/12(水) 22:38:10.17 ID:h5BrssJP
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

〜数日後〜

歩夢「……」

歩夢(無事に退院した私は、知らない家と上原歩夢の部屋で数日間過ごした)

歩夢(……殺風景な部屋だった。私が好きだった、侑ちゃんが小さい頃にゲームセンターで取ってくれたヘビとかのぬいぐるみも何も無く、好きだった可愛いお洋服も全然なかった)

歩夢(私の知らない部屋だった)

歩夢(そして、今日は5月10日)

歩夢(私が過ごしていた日々は……最後に認識していた季節は10月)

歩夢(制服も冬服に切り替わる衣替えの時期だった)

歩夢(でも……今は5月……わけが分からなかった)

歩夢(ただ、今はショックも受けない。泣き疲れてしまった)

歩夢(今日から……学校へ行くことになった)

歩夢(幸い、今の私が通っている学校は虹ヶ咲学園で、私がよく知る大好きな場所だった)

歩夢(学生証を見た時は、自分の知る唯一のものがそこに載っていて泣いてしまった)

29:(しまむら) 2021/05/12(水) 22:43:21.81 ID:h5BrssJP
歩夢(そして……)

ピローン

歩夢「?」

─────────

お母さん:歩夢、今日から学校だよね?

お母さん:私は今日も遅くなっちゃうけど、気を付けて行ってきてね?

─────────


歩夢(……お母さんは、仕事ですごく忙しくて中々家にいない)

歩夢(私のよく知るお母さんは、仕事せず専業主婦だった)

歩夢(それに……お父さんはいなかった)

歩夢(私が小さい頃に亡くなったと聞いた……)

歩夢「……ほんと……」

歩夢「わけがわからないよ……」

歩夢「わたし……誰なの……?」

31:(しまむら) 2021/05/12(水) 22:49:00.55 ID:h5BrssJP
歩夢「行ってきます……」


よく分からない家に挨拶をして、家を出る。

地図アプリを使って、学校までの道のりを検索し歩く。

髪がゆさゆさと揺れる。
いつものシニヨンが部屋に無く、使い古されたヘアゴムしか無かった。

何もセットしないのも気になったから、後ろで髪を一つ結びにする。珍しくポニーテールだ。

まぁ……学生証に載ってる私がポニーテールにしていたからそうしただけなんだけれどね。


スタスタ


……侑ちゃんに、会いたい。

どこにいるの? 侑ちゃん?

歩夢「……侑ちゃん……」ウルウル


泣きそうになる。
泣いたって意味が無いのはここ数日で痛いほど知ってるのに。

──そして、その時だった。

「よぉ」

歩夢「え?」

私のよく知るこの子の……同好会の子の声が耳に届いた。

愛「……」

歩夢「──!!」

目の前に、宮下愛ちゃんがいた。

37:(しまむら) 2021/05/12(水) 22:53:25.64 ID:h5BrssJP
愛「……ひさ──」


バッ──ギュッ!!


私は気が付くと──愛ちゃんに抱きついていた。

愛「は? は……?」

歩夢「……愛ちゃんだ……愛ちゃん……!!」

愛「ちゃ、ちゃん!?」

歩夢「ひっぐ……! ぁぅ……っ……!!」ポロポロ

愛「え、えぇ……」

歩夢「ごめんね……急に泣いて……でも……でも……」

歩夢「愛ちゃんに会えて……嬉しくて……!!」ギュッ

愛「…………」

愛「──ッだぁぁぁぁああああ!!」

愛「や、やりづれぇよ!! とにかく早く離れてくれよ!」

愛「──上原!!」

歩夢「──え?」

41:(しまむら) 2021/05/12(水) 22:57:56.21 ID:h5BrssJP
歩夢「うえ……はら?」

歩夢「上原!?」

愛「お前は上原歩夢だろうが!!」

歩夢「そ、そうだけど……」


愛『ちーっす! 歩夢! 今日も練習頑張ろーね!』

愛『歩夢と歩む! なんつって!』


愛ちゃんの声を思い出す。

今、なんて呼ばれた……?

う、上原!?


愛「だいたい! 愛ちゃんってなんだよ!」

愛「いつもみたいに宮下って呼べよ! やりづらい!」

歩夢「え、えぇ……」

愛「っち、退院したって愛トモに聞いたから決着付けに来たのに……なんなんだよマジで」

歩夢「……」ポカーン

愛「たく……そんじゃ、決着つけようぜ」

歩夢「け、決着って何の!?」

愛「は?」

47:(しまむら) 2021/05/12(水) 23:09:31.64 ID:h5BrssJP
愛「お前……本当に大丈夫なのか?」

歩夢「……だ、大丈夫じゃないと思う……」

愛「……」

愛「ちっ」

愛「……出直す」

歩夢「え、えぇ!?」

歩夢「が、学校は!?」

愛「……お前本当に大丈夫か? 行かねーっつの」

歩夢「……」

愛「まぁ、気を付けた方がいいぞ」

愛「お前とケンカしたい奴は、山ほどいるんだからな」

54:(しまむら) 2021/05/12(水) 23:17:52.49 ID:h5BrssJP
〜虹ヶ咲学園 校門〜

スタスタ

歩夢「……」

歩夢(わ、わけがわからないよぉ……!!)

歩夢「け、ケンカって何!?」

歩夢「わけがわからないよぉ!!」


ザワザワ


歩夢「あっ」

「え……?」

「ど、どうしたのあの人……」

「というかあれ……狂犬の上原歩夢さんじゃない」

「え? あの不良の……?」

「学校来たんだ……」


歩夢「!!」

歩夢「っ……!」 バッ


タッタッタッタ!!


歩夢(わかんない……わかんない……わかんない!!)

62:(しまむら) 2021/05/12(水) 23:33:39.29 ID:h5BrssJP
歩夢「はぁ、はぁ」

歩夢(適当に走って来ちゃって……)

歩夢「──!!」

─スクールアイドル同好会─

歩夢「あっ……!」

歩夢(同好会のプレート……!)

歩夢「って事は……同好会はあるんだ!」

歩夢「……」

歩夢(でも……愛ちゃんみたいに……)

歩夢「っっ!」

歩夢(……怖がるな、歩夢)

歩夢(怖がったって、何も変わらない)

歩夢(自分で、歩み始めるんだ)

歩夢(……中に、入ろう)


私は同好会の部室をノックする。

反応は無し。鍵は、開いてる。

歩夢「……」ゴクリ

歩夢「失礼します」

66:(しまむら) 2021/05/12(水) 23:59:04.60 ID:h5BrssJP
スタスタ

歩夢「……」

歩夢(誰も……いない?)

キョロキョロ

歩夢「!?」

「スヤスヤ……」

歩夢「え……?」

歩夢「あっ……!」

歩夢(あのソファで寝てる人は……ブランケットに包まっている人は……!)

タッタッ!

歩夢「あ、あの! 彼方さ──」

歩夢「へ?」


しずく「……すぅ……すぅ……」

歩夢「しずく……ちゃん?」

しずく「……ん〜?」

しずく「……」ポー ウトウト

67:(SB-iPhone) 2021/05/13(木) 00:00:20.45 ID:gGYKOo/5
お絵かき支援
no title

101:(しまむら) 2021/05/13(木) 01:37:38.18 ID:k3V/uw6w
描き溜めない為ゆっくり更新になりますが完結目指して頑張ります。
見てくれてる方、レスくれる方々ありがとうございます。

>>67
反応遅れてしまって申し訳ない。イラストありがとう! 励みになります!

70:(しまむら) 2021/05/13(木) 00:05:33.61 ID:k3V/uw6w
しずく「ふわぁぁぁ……」

しずく「ん〜……」

しずく「誰?」

歩夢「えっ、えっとぉ……」

歩夢「わ、私はその……」

しずく「……」

しずく「!?」

しずく「う、上原歩夢さん!?」ガタッ

歩夢「う、うん……」

しずく「え、えぇ……」

歩夢「……」

74:(しまむら) 2021/05/13(木) 00:16:30.67 ID:k3V/uw6w
しずく「……」

しずく「──まぁ、とりあえず。座りません?」

しずく「あとなにか飲みますー?」

歩夢「え?」

歩夢「い、いいの……?」

しずく「だって」

しずく「なんかよーじがあったから来たんですよね?」

しずく「ならお客様じゃん」

しずく「座って座って〜」

歩夢「!!」パァァァァ

歩夢「うんっ!」ニコッ

しずく「」ポカーン

歩夢「ん?」

しずく「上原歩夢さん……ですよね?」

歩夢「うん」コクリ

しずく「……」

しずく「ふふっ」クスクス

しずく「ようこそ、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会へ」ニコッ

歩夢「!! ──うん!」

76:(しまむら) 2021/05/13(木) 00:27:31.32 ID:k3V/uw6w
しずく「あたしの名前は桜坂しずく。1年生でーす」

歩夢「……うん。よろしくね」

歩夢(やっぱり、私のよく知るしずくちゃんとは違う)

歩夢(でも……愛ちゃんもしずくちゃんも)

歩夢(見知った顔の子が目の前にいるのは)

歩夢(嬉しいや……)

しずく「でも、こんな幽霊部員ばかりの同好会に何の用事があったんです?」

歩夢「えっと……」

歩夢「誰かいるかなって思って……」

しずく「え、えぇ……」

しずく「そんな理由で授業中のこんな時間にここ来たんですか?」クスクス

歩夢「あっ……」

歩夢(そっか……もう授業始まっちゃってるのか……)

しずく「上原さんって面白い人なんだね。全然不良じゃないじゃん」

歩夢「……しずくちゃん」

歩夢「歩夢って呼んでほしい……」

しずく「え? わ、わかりました」

しずく「なら歩夢さんでいきますね。あたし後輩だし」ニコッ

しずく「よろしくね、歩夢さん」

歩夢「──うん!」ニコッ

79:(しまむら) 2021/05/13(木) 00:37:24.82 ID:k3V/uw6w
歩夢「しずくちゃん。私、スクールアイドル同好会に入りたいの」

しずく「え!? マジっすか!?」

しずく「やー、部員が増えるのは嬉しいですけど……本当ここは幽霊部員しかいないよ?」

歩夢「……それでも、入りたい」

しずく「……わかった」

しずく「まぁ、部員が増えたら部費も増えるし……あたし達的には嬉しいし大歓迎ですからね」

しずく「とりあえず部長のかな姉に話しないとだねぇ」

歩夢「か、かな姉?」

しずく「あっ、ごめん。部長の近江彼方さんの事だよ」

歩夢「彼方さんが部長……?」

しずく「え、うん」

しずく「知ってるの? かな姉のこと」

歩夢「……うん」

しずく「そーなんだ」

歩夢「他の部員メンバー……教えてもらっていい?」

しずく「いーよ」

84:(しまむら) 2021/05/13(木) 00:52:38.43 ID:k3V/uw6w
しずく「まずは部長の近江彼方さん」

しずく「そしてあたし桜坂しずくと、その同級生の中須かすみ」

歩夢(かすみちゃんもちゃんといるんだ! よかった)

しずく「以上っす」

歩夢「え?」

歩夢「さ、3人だけ?」

しずく「うん」

歩夢「……優木せつ菜ちゃんは?」

しずく「え?」

しずく「誰……?」

歩夢「……ううん。なんでもない」

しずく「虹ヶ咲の生徒?」

歩夢「……うん。多分」

しずく「た、多分?」


驚くよね、しずくちゃん。
申し訳ない気持ちはある。初対面の子に、不良と呼ばれている私からこんな対応されたら困るのは分かる。

──でも、気を遣える余裕はなかった。


しずく「ウチの生徒なら、生徒会長の中川菜々生徒会長にきーてみれば? 全生徒の名前を覚えてるって言ってるし」

歩夢「!! ──菜々ちゃんはいるんだね!?」

しずく「う、うん。てか歩夢さんも虹ヶ咲学園の生徒なんだし知ってるっしょ?」

歩夢「あっ……うん。ごめん」

しずく「……まっ、あんまり深くは聞かないよーにするよ。色々事情がありそうですし」

歩夢「!!」

歩夢(しずくちゃん……優しいなぁ)

歩夢「……ありがとう」ニコッ

しずく「ん。気にしないで〜。ゆったりまったりがあたしのポリシーなんでね」

86:(しまむら) 2021/05/13(木) 01:06:20.72 ID:k3V/uw6w
歩夢「それにしても、エマさんも同好会メンバーじゃないんだ……」ボソボソ

歩夢(後でエマさんの事も菜々ちゃんに聞いてみよ)

歩夢「しずくちゃん、最後に聞いていい?」

しずく「いいっすよ〜」

歩夢「高咲侑ちゃんって子も……知らないよね?」

しずく「? うん、ごめん。知らないよ」

歩夢「……わかった。ありがとうね」

しずく「はいはい〜」

しずく「ふわぁぁぁああ……色々話してたら眠くなってきちゃったよ」

歩夢「そう言えばしずくちゃん。授業は参加しなくていいの?」

しずく「へ?」

しずく「あー、今日の午前中は自習だからね」

しずく「早々に課題終わらせて、絶賛おサボり中だよ」

歩夢「そ、そうなんだ」

歩夢(真面目なのか真面目じゃないのか分からないなぁ……)

しずく「……ごめん、歩夢さん。すやぴしていい?」

歩夢「うん。いいよ」

歩夢「ふふっ、なんかしずくちゃん彼方さんみたいだね」ニッコリ

しずく「……まぁ、あの人見て過ごしてきましたからねー」

歩夢「え?」

しずく「あたしとかな姉は幼馴染なんだよね」

しずく「……妹の遥も同じで……あたしの親友」

歩夢「え? 幼馴染?」

しずく「うん」

歩夢(しずくちゃんって鎌倉に住んでるんじゃなかったっけ?)

しずく「……かな姉……昔は今のあたしみたいな感じだったのになぁ」ボソッ

歩夢「ん? しずくちゃん何か言った?」

しずく「いーえ、なんでもないよ〜」

しずく「それじゃあ、ごめん」

しずく「おやすみなさい……すやぁ……」zzz

89:(しまむら) 2021/05/13(木) 01:12:56.43 ID:k3V/uw6w
私の知らない世界。

ここはどこなの? わけが分からなかった。

けど、愛ちゃんはいた。しずくちゃんもいた。他のメンバーの名前も聞けた。

怖い気持ちがないと言えば、嘘になる。
私が過ごした日々はどこに行ったのか考えると、震えが止まらない。

──でも、立ち止まっていてはいけない。立ち止まったって、何も始まらない。
自分で、歩むしかないんだ。


今の気持ちはただ一つ。侑ちゃんに会いたい。

例え今の侑ちゃんが……私を知らなくたって……あなたの顔が見たい。

──侑ちゃん、私……絶対にあなたを見つけるから。

だから──私に勇気を下さい。

93:(しまむら) 2021/05/13(木) 01:30:48.80 ID:k3V/uw6w
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

愛「ってな感じで、上原のやつ全くの別人になってたんすよね」

愛「どー思います?」

愛「エマさん」

エマ「…………」


──ここは上原歩夢の知らない世界。


かすみ「みなさーん! 可愛いかすみんがぁ〜来ましたよ〜?」

かすみ「……いや、違うな」

かすみ「もっと声のトーンをあげて、指の位置も頬に近くする。……そうした方が可愛いね。……よし、もう少し練習しよう」ブツブツ


──彼女のよく知る同好会メンバーも、この世界には存在する。


彼方「…………」カキカキカキカキ

彼方(よし、この授業の内容も昨日復習したからバッチリだ。……もう少し先の内容も予習できそう)

彼方(……勉強しなきゃ……もっともっと……もっともっともっと……!)


──しかし、生き方が一緒とは限らない。


璃奈「……ふふ、ふふふふ……!」ニコニコ

璃奈「よしよし……この開発が上手くいけば……!」

璃奈「ふっふっふっふ……!!」カタカタカタカタ


──少しの運命の歯車のズレ。それが生き方を左右させ、別の人生を歩む事もある。


果林「わぁ……!!」

果林「ここが虹ヶ咲学園……!」

果林「おっきい校舎……!!」キラキラ


──ここはそんな世界。上原歩夢の知らない世界。

──歩夢は高咲侑を探すために、歩み始める。

98:(しまむら) 2021/05/13(木) 01:35:36.17 ID:k3V/uw6w
【Members walking together】

【NEXT】

【中須かすみ】

123:(しまむら) 2021/05/13(木) 21:42:04.72 ID:k3V/uw6w
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


しずくちゃんが寝てしまった為、私は彼女にブランケットをかけ、部室を出る。

教室に戻る為に廊下を歩くが、とても静かだ。

──それもそうだ。今は授業中だし。

1限目の授業中に戻るのは、勉強している子達に申し訳ない。適当に校舎内を探索して時間を潰すことにした。

虹ヶ咲学園は、私のよく知る学園と変わりなかった。
皆とよく練習した広場や、せつ菜ちゃんが歌った屋上。よく知る景色がそこにあった。


歩夢(ついこの前まで見てたのに、なんだか懐かしい気分)


──そして、耳にチャイムの音が届く。1限が終わったみたい。


歩夢(授業サボるのなんて、人生で初めてだなぁ)

歩夢(侑ちゃんに言ったら……なんて言われるかな?)

歩夢「……会いたい……」

歩夢「侑ちゃんに……会いたい……」


自分の気持ちを抑えることができず、呟いてしまう。


歩夢(……教室に戻ろう)

歩夢(授業は受けなきゃ)


スタスタスタスタ




125:(しまむら) 2021/05/13(木) 21:52:28.32 ID:k3V/uw6w
2限目から教室に戻り、席につく。


ザワザワ、ザワザワ

歩夢「……」

歩夢(うぅ……すごく注目されてる……)


「う、上原さん……教室にいるの珍しくない?」

「しっ! 聞こえるって……!」

「なにかされないか心配なんだけど……」

「だから聞こえるって言ってるでしょ!!」

「アンタが一番声でかいっての」


ザワザワザワザワ


歩夢「……」

歩夢(教室、居づらいなぁ)

歩夢(ねぇ、今の私……上原歩夢は)

歩夢(どんな子だったの? そんなに不良だったの……?)

歩夢(知りたいけれど、知るのが怖い気持ちもある)

歩夢(早く、放課後にならないかなぁ)

127:(しまむら) 2021/05/13(木) 22:04:29.72 ID:k3V/uw6w
地獄の授業を過ごし、一日が終わる。

ちなみに授業自体が地獄だというわけではなく、周りからのヒソヒソ話が耳に届いてしんどかった。
授業の内容は、知っている内容だった。それもそうだ。今は5月。私の最後の記憶は10月。もう習った内容だった。

歩夢(毎日予習復習してたから、簡単に思えちゃった)

歩夢(……侑ちゃん、ちゃんと勉強してるかなぁ)


窓から外の景色を見ながら、今の侑ちゃんが何をしてるのか考える。

そんな風に物思いに耽ていると、帰りのホームルームが始まる。


「えー、ホームルーム中ですが……。本日、中川生徒会長からリモートで全生徒に伝えたい内容があるとの事です。各自机のタブレットで今から送信するメールアドレスからに乗ってるURLからアクセスして──」

歩夢「!!」


ホームルーム中の先生に声に反応し、教室がざわつく。めんどくさい、早く帰りたい。可愛い生徒会長を見れるからいいじゃん。どんな内容なのかな? 等々、クラスメイトの皆がそれぞれ反応する。


歩夢(菜々ちゃんが見れる!)


一方、私もドキドキする気持ちを抑え、机のタブレットを急いで操作する。

129:(しまむら) 2021/05/13(木) 22:25:52.08 ID:k3V/uw6w
歩夢(よし、URLあった……アクセスもできた!)


虹ヶ咲学園の生徒だけがアクセスできる動画サイトに入る。

生放送だろうか? 講堂の中心部がタブレットに映る。演説台が見える。

そして、誰かの足音がマイク越しに耳に届く。
誰かは知っている。先生が仰っていた。


歩夢(菜々ちゃん……!)


タブレットの画面に中川菜々ちゃんが現れる。

──しかし、そこに現れたのは私が知る中川菜々ちゃんではなかった。


歩夢(え?)

歩夢「せつ菜ちゃん……?」ボソッ


綺麗な真っ直ぐ伸びたロングヘアーの子が映る。
三つ編みはされていない。メガネもかけていない。私が知る中川菜々ちゃんではなく、制服に身を包んだ優木せつ菜ちゃんがそこにいた。



菜々『……』

菜々『あー、あー』

菜々『マイク、大丈夫ですか?』

130:(しまむら) 2021/05/13(木) 22:32:12.59 ID:k3V/uw6w
菜々『ん、大丈夫みたいですね』

菜々『それでは……これよりリモート集会を始めます』

菜々『……』スッ


歩夢(え?)

歩夢(め、メガホン……?)


菜々『──』スゥゥゥゥ

菜々『皆さぁぁぁぁぁぁぁんッ!!!!』

菜々『こんにちはぁぁぁぁぁあああああああ!!』ペカー


──キィィィィィィィイイイインッ!!


歩夢「!?!?!?」ビクッ!!

137:(しまむら) 2021/05/14(金) 00:46:16.81 ID:VSTq6p1j
歩夢(耳、いったぁ……!!)

歩夢(すっごいハウリングしてるよ!?)


菜々『あ、あれ? 思いの外、変な感じになっちゃいましたね?』

『当たり前でしょ!? マイクとメガホンの音重ねる、おバカがどこにいるんですか!!』

菜々『ひぃ!! そんなに怒らないで下さいよ副会長!!』

菜々『真面目にやりますから!』

菜々『──さっ! それではいきますよー!』ペカー


「え? え? なに今の!?」

「めっちゃでっかい音だったねぇ……やっぱり中川生徒会長は面白いね〜」

「あれ? 音がよく聞こえないんだけど?」


ザワザワ、ザワザワ


歩夢「……」

歩夢「……ぷっ」

歩夢「あっははは!」ニッコリ

「!?」「!!」「!?」

歩夢「はぁ……せつ菜ちゃん」

歩夢「変わらないなぁ」ニコニコ

「「「……」」」

140:(しまむら) 2021/05/14(金) 00:57:43.13 ID:VSTq6p1j
〜生徒会室 前〜

歩夢「……」

歩夢(放課後、私は生徒会室の前に来た)

歩夢(エマさんの事や、もしかしたら学校内にいるかもしれない侑ちゃんの事も聞きたいし)

歩夢(せつ菜ちゃんと、話がしたい)

歩夢「……」ドキドキ

歩夢(急に来ちゃって大丈夫だったかな? アポ取りとか必要だったかな!?)

歩夢(今になって心配になってきたよぉ〜!)

「どうしたんですか?」

歩夢「ひゃあっ!!」ビクッ!!

菜々「ひゃ、ひゃあ!?」

歩夢「はぁ、はぁ……ビ、ビックリした……」

菜々「……」

菜々「……いいです……」

歩夢「え?」

菜々「すっごく声がかわいいです!!」

歩夢「!?」

142:(しまむら) 2021/05/14(金) 01:09:17.32 ID:VSTq6p1j
菜々「まるでアニメのキャラみたいでした!」ギュッ

菜々「あなた、普通科2年の上原歩夢さんですよね!?」

菜々「かなり素行が良くない人だという印象でしたが、だいぶ落ち着きましたね!? まるで別人の精神が入っているかのようです!」

菜々「ただ、あの荒れてたあなたからのギャップが素晴らしいですね!」

菜々「ギャップ萌えです! 是非ともその力を虹ヶ咲学園の楽しい学校活動に活か──」

歩夢「ち、近い! 近いよぉ!////」カァァァァァ

菜々「あっ、ごめんなさい。ついテンションがあがってしまいました」ペカー

歩夢「もう……」

143:(しまむら) 2021/05/14(金) 01:14:06.75 ID:VSTq6p1j
菜々「それで、上原歩夢さん。生徒会室に何か御用ですか?」

歩夢「あっ、えっと……その、せつ菜ちゃんに──」


バンッ!!


歩夢「!?」

菜々「……」

菜々「い、いま……なんて言いました……?」

歩夢「え? その……せつ菜ちゃんって」

菜々「な、なななななな……!!///」

菜々「!!」キョロキョロ

菜々「ちょ、ちょっと中に入ってください!!」ギュッ

歩夢「え、えぇ!?」


ガチャン!!

菜々「……よし、誰もいない。皆さんも戻ってこない……」

菜々「……上原歩夢さん」

歩夢「は、はい」

菜々「……なぜ」

菜々「なぜ私の裏垢名を知ってるんですか……!?」

歩夢「う、裏垢!?」

145:(しまむら) 2021/05/14(金) 01:22:30.77 ID:VSTq6p1j
菜々「あぁ……だ、誰にもバラしたことなかったのに……!!」

菜々「な、なぜあなたが知ってるんですか!?」

歩夢「せつ菜って裏垢名なの?」

菜々「へ?」

歩夢「……」

菜々「……」

菜々「し、知らなかったんですか?」

歩夢「う、うん」

菜々「……で、ではなぜせつ菜と……?」

歩夢「な、なんとなくかなぁ」

歩夢(本当は菜々ちゃんって呼ぼうとしたのに間違えちゃったことは言わないようにしよう)

菜々「っ〜〜〜〜〜!!///」

菜々「い、いま聞いた裏垢名がせつ菜という情報は忘れて下さい!!」プイッ

歩夢「う、うん。忘れるね。知られたくないことは人間誰にもあるもんね……」

菜々「え? は、話が分かる方ですね……! 私はあなたを誤解していました……!」

菜々「上原歩夢さん、優しいじゃないですか! 感謝です!」

歩夢(お礼されるような事一切してないんだけど……)

147:(しまむら) 2021/05/14(金) 01:32:26.80 ID:VSTq6p1j
歩夢「ただ、その」

歩夢「上原歩夢って呼び方は、やめてほしいかも……」

菜々「え? あぁ、そうですね。ごめんなさい」

菜々「全生徒の名前はフルネームで覚えているので、つい」ペカー

歩夢「えっと。良かったら歩夢って呼んでほしいかな」

菜々「え? は、はい」

菜々「……」

歩夢「?」

菜々「あなた、本当にあの虹ヶ咲学園の狂犬と呼ばれていた歩夢さんなんですか?」

菜々「あまりにも様子が……」

歩夢「…………」

菜々「……まぁ、何かあったんでしょう。あなたが真面目になったのなら生徒会長として喜ばしい限りです」

菜々「さ、話がだいぶ逸れてしまいましたが、何か用事があったんですよね?」

歩夢「うん」

歩夢「聞きたいことがいくつかあって……」

菜々「聞きたいこと?」

150:(しまむら) 2021/05/14(金) 01:45:16.46 ID:VSTq6p1j
歩夢「虹ヶ咲学園の生徒について聞きたいことがあって」

歩夢「まずは、エマ・ヴェルデさんの事について聞きたいの」

菜々「え、エマさんについてですか!?」

歩夢「そ、そんなに驚く?」

菜々「いやだって……エマさん、虹ヶ咲学園ではとっても有名な方なので……」

歩夢「そ、そうなの?」

菜々「虹ヶ咲学園で一番の不良でその親玉として有名です」

歩夢「」

菜々「あの宮下愛さん等の不良集団もエマさんに付いているみたいです」

歩夢(え、えぇ……)

菜々「ただ、私が1年生の頃はエマさんは真面目で普通の方だったんですよね」

菜々「気がつけば不良の方々から崇拝される人になり、親玉になってたんです」

菜々「何があったんでしょうね」

菜々「今も誰とも喧嘩していませんし……。むしろあなたと宮下愛さんの方が沢山喧嘩していましたからね」

歩夢「……」

158:1(茸) 2021/05/14(金) 07:49:37.26 ID:i5wz8nr8
歩夢「ありがとう、菜々ちゃん」

歩夢「あともう一人聞きたい子がいてね」

菜々「なんでしょう?」

歩夢「高咲侑ちゃんって、虹ヶ咲学園にいる?」

菜々「高咲……侑?」

菜々「申し訳ございません……存じ上げませんね。全生徒覚えていますが、その方は虹ヶ咲学園の生徒ではありませんね」

歩夢「……そっか」

歩夢「分かった……」

歩夢(侑ちゃん、他の学校の生徒なのかな?)

歩夢(もしかしたら、お台場に住んでいないかも……)

菜々「歩夢さん? 歩夢さーん?」

歩夢「!? な、なに?」

菜々「大丈夫ですか? なんだかすごく悲しそうな目をしてたので……」

歩夢「あっ……ごめんね。大丈夫」

菜々「……そうですねぇ」

菜々「私、結構他校にも知り合いがいるので」

菜々「その方々にも高咲侑さんって子を知らないか聞いてみますよ」

歩夢「ほ、ほんと!?」

菜々「えぇ」ニコッ

菜々「生徒会長足るもの、生徒の為に動く事は当然の事です」

菜々「真面目になった歩夢さんへのご褒美でもあります!」

歩夢「あ、ありがとう! せつ菜ちゃん!」

菜々「菜々です!!」

歩夢「──あっ、ご、ごめん……あはは」

菜々「全くもう……」

161:(茸) 2021/05/14(金) 08:05:48.84 ID:i5wz8nr8
歩夢「本当にありがとうね。菜々ちゃん!」

歩夢(侑ちゃんを探す為の手がかりになりそう! 本当に助かるなぁ)

prrrrrr!!

菜々「あっ、ごめんなさい。私のスマホですね。ちょっと電話出ますね?」

歩夢「うん」コクリ

ピッ

菜々「もしもし。──はい。ええ、大丈夫です。この後の生徒会活動が終わったら帰りますよ。はい! もう、そんなに心配しないでください、大丈夫ですから。──うん。ではまた」

ピッ

菜々「ふぅ、ごめんなさい。話を折ってしまって」

歩夢「お母さん?」

菜々「はい!」ペカー

歩夢「そっか」ニコッ

歩夢「時間使わせちゃってごめんね? 私もそろそろ部活に行くよ」

菜々「部活? 歩夢さん、何かの部活に入ったのですか?」

歩夢「まだ正式な入部はしてないけれど、スクールアイドル同好会に……」ニコニコ

菜々「スクール……アイドル?」

歩夢「うん!」

菜々「へ〜、意外ですね。私はスクールアイドルについてはよく知りませんが、応援してます」ニッコリ

歩夢「──え?」

歩夢「菜々ちゃん、スクールアイドル……好きじゃないの?」

菜々「はい? 好きじゃないというよりも」

菜々「単純にあまり興味ありませんね」

歩夢「」

菜々「今は生徒会の活動が楽しいですし! 勉強もしなければいけませんので!」ニコッ

歩夢「…………」

菜々「歩夢さん? 歩夢さーん?」


信じられなかった。

せつ菜ちゃんが……スクールアイドルに興味がない……?

162:(茸) 2021/05/14(金) 08:17:43.64 ID:i5wz8nr8
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

スタスタ

歩夢「……」

歩夢(ショックだった)

歩夢(せつ菜ちゃんが……スクールアイドルじゃないし、興味もないなんて……)

歩夢(私の憧れのせつ菜ちゃんが……大好きなライバルのせつ菜ちゃんが……)

歩夢(ここにはいないの……?)


せつ菜『歩夢さん!』

せつ菜『始まったのなら、貫くのみです!』


歩夢「っっ……!!」

歩夢(泣くな、上原歩夢。泣いちゃダメ)


せつ菜ちゃんから言われた言葉を思い出す。

あの時、せつ菜ちゃんが背中を押してくれたから──私はスクールアイドルとして、一歩成長する事が出来た。

侑ちゃんとも仲直り出来た。

私がスクールアイドルになるきっかけを作ってくれたせつ菜ちゃんが……ここにはいないの?


歩夢「……」

歩夢「……っ……!!」ポロポロ


気が付くと私は涙を流していた。ダメだ、我慢できないや。
周りに誰かいるかなんて、分からない。そんな事気にする余裕がなかった。

歩夢「……ひっぐ……ひぐ……っ、……!!」ポロポロ

歩夢(せつ菜ちゃん……!)




スタスタ ──ピタッ


「!?」ビクッ

「…………」

「……」

スタスタ

164:(茸) 2021/05/14(金) 08:22:48.53 ID:i5wz8nr8




〜同好会部室前〜


─スクールアイドル同好会─

歩夢「……」

歩夢(切り替えなきゃ)

歩夢「……よし」

歩夢「侑ちゃん……私、頑張るよ」


自分を鼓舞するように、侑ちゃんの名前を呟く。
心が折れてはダメだ。

歩夢(せつ菜ちゃんだって、スクールアイドルに……この後興味を持ってくれるかもしれない。だから、頑張らなきゃ)

歩夢「よし!」

歩夢(部室に入ろう)


ノックを3回する。中からしずくちゃんのどうぞーという声が聞こえる。


歩夢(これが私の、夢への一歩)

歩夢「失礼します」

ガチャ

165:(茸) 2021/05/14(金) 08:28:37.53 ID:i5wz8nr8
パンッ!! パーン!!

歩夢「へ!?」ビクッ!!


突然耳に届く大きな音。そして、足元に散らばるリボン。


歩夢(く、クラッカー!?)

しずく「ようこそ!」ニコニコ

かすみ「スクールアイドル同好会へー!」ニコニコ

歩夢「」ポカーン

しずく「いやぁ、待ってましたよ〜?」

かすみ「しずくから聞きましたよ? 新しく入部してくれる人が来──」

歩夢「あ、あはは」ニコニコ

かすみ「──は?」

歩夢「え?」

かすみ「……」ジー

歩夢「?」

かすみ「……しずく」

しずく「どしたん?」

かすみ「ちょっとこっち来てッ!!」ガシッ

しずく「へ!?」

タッタッタ!!

167:(茸) 2021/05/14(金) 08:35:36.97 ID:i5wz8nr8
かすみ「この人、虹ヶ咲学園の狂犬、上原歩夢さんじゃない!」

しずく「え? そうだよ? 言ってなかったっけ?」

かすみ「聞いてないって!」

しずく「あっ、そっかごめーん。今日からスクールアイドル同好会に入部する上原歩夢さんだよ〜」ニコッ

かすみ「は? は???」

かすみ「冗談だよね?」

しずく「冗談でわざわざ昼休みにクラッカー買いに行く〜?」

かすみ「……」


歩夢「……」

歩夢(すっごいヒソヒソ話されてる……まぁ、仕方ないか……)


かすみ「……ちっ」

しずく「舌打ちすんなって。可愛い顔が台無しだよ〜?」

かすみ「うっさい。私が可愛いのは当たり前でしょ」

スタスタ

かすみ「えっと、上原先輩?」

歩夢「あっ、は……はい」

かすみ「お引き取りいただけますか?」ニコッ

歩夢「──え?」


しずく「は?」

179:(しまむら) 2021/05/14(金) 22:39:51.89 ID:VSTq6p1j
しずく「何考えてんのかすみ! 入部希望者の人に!」

かすみ「しずくこそ何考えてんの!?」

かすみ「この人は、不良だよ!?」

かすみ「そんな人が急にスクールアイドル同好会に入りたいなんておかしいでしょ!」

歩夢「わ、私は! 本当にスクールアイドルになりたくって!」

かすみ「はっ!! どうせ思い付きですよね?」

かすみ「なんです? 何かスクールアイドルの動画でも見て、感化されたんですか?」

かすみ「でもですね。私はあなたの入部、認めませんから!」プイッ

しずく「なんでそんな酷いこと言うのさ! なりたいって言ってんだから、入れてあげればいいじゃん!」

かすみ「触らぬ神に祟りなしって言葉があるでしょ!? この人を入部させて、この人を狙う人とかに……しずくとか彼方先輩が巻き込まれたらどーすんのさ!!」

しずく「っっ……! 心配してくれてるのは嬉しいけど──心配し過ぎだって!」

歩夢「…………」

182:(しまむら) 2021/05/14(金) 22:48:30.82 ID:VSTq6p1j
かすみ「まぁ、そういう事です。上原先輩。もう一度言いますが、お引き取りいただけますか?」ピシッ

かすみ「だいたい、不良でケンカばかりしているあなたがスクールアイドルになりたいって言っても、信用できません」

かすみ「部室から出て行ってください」プイッ

歩夢「……」

歩夢「わかった」

かすみ「……聞き分けがよくて──」

歩夢「そうだよね。不良の私がスクールアイドルになりたいって言っても、信用出来ないよね?」

かすみ「は?」

歩夢「でも、私……スクールアイドルになりたいの」

歩夢「だから、かすみちゃんに信用してもらえるように頑張る。ケンカも絶対にしない。もう、悪いこと絶対にしないから」

歩夢(そもそも……今の私じゃケンカなんて怖くて出来ないけど)

かすみ「ッ!! そういう事じゃ──」

歩夢「私、本気だから」

かすみ「っ!」

しずく「歩夢さん……」

歩夢「……」

歩夢(かすみちゃんから拒絶されるの、本当はすごく辛い)

歩夢(けど、このかすみちゃんも)

歩夢(絶対に優しくっていい子だ。しずくちゃんと彼方さんを守る為に、体を張ってくれてるんだ)

歩夢(だってかすみちゃん……さっきからずっと身体震えてるもん。怖いのかもしれない)

歩夢(二人のために……ありがとうね。かすみちゃん。今の私がこんなことを考えるのは、おこがましいかもだけど)

184:(しまむら) 2021/05/14(金) 23:09:49.99 ID:VSTq6p1j
かすみ「……っ」

かすみ「そんなにスクールアイドルになりたいなら、勝手になればいいじゃないですか! なんでわざわざ同好会に入りたいんですか!」

歩夢「そ、それは」

歩夢「……皆とまた一緒にいたいから……」ボソッ

かすみ「なっ!?」

かすみ「話した事もないのに何言ってんですか!」

歩夢「……ごめん」

かすみ「──っ、大体!」

しずく「だあああああああああッ!!」

歩夢「!?」

かすみ「!?」

しずく「──少し落ち着けかすみ!!」

かすみ「……」

しずく「歩夢さんがこう言ってるんだから、見てあげようよ」

しずく「少しもチャンスをあげないまま絶対に認めないってのは、意地悪だよ」

かすみ「!!」

かすみ「……わかりました」

かすみ「どうせ変わらないと思いますけどね」プイッ

歩夢「!! ありがとう、かすみちゃん。私、本気だから。見ててね」ニコッ

かすみ「!?」

かすみ「……ふんっ!」

188:(しまむら) 2021/05/14(金) 23:23:47.97 ID:VSTq6p1j
しずく「あっ、そーだ歩夢さん!」

しずく「ちょいちょい〜。こっち来て?」

歩夢「え? うん」

しずく「連絡先、交換しよーよ!」

歩夢「!!」

歩夢「い、いいの?」

しずく「え? 当たり前じゃん」

しずく「あたしは歩夢さん大歓迎だし」

しずく「かな姉も入部していいよって連絡来てたよ?」

かすみ「なっ!! ──たくっ、本当にこの能天気コンビは……!!」

歩夢「……」

しずく「まぁ、でも……かすみがあたし達を心配してくれてる気持ちも、正直ありがたいと思ってる。この子の気持ちも蔑ろにしたくない。だからさ、歩夢さん」

しずく「かすみに認められるように、頑張ってね!」

しずく「あたし、見てるからっ」ニコッ

歩夢「しずくちゃん……」

かすみ「……ちっ」

しずく「だから舌打ちすんなって〜。ごめんね歩夢さん、あたしの旦那が」ニコニコ

かすみ「誰が旦那だ!!」

歩夢「……ふふっ、二人は仲良しさんなんだね」

しずく「もち!」

かすみ「…………」プイッ

歩夢「──2人とも、ありがとう」

歩夢「私、頑張るから!」

192:(しまむら) 2021/05/15(土) 00:15:03.65 ID:LHLDsnsA
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

歩夢「行ってきます!」


お母さんは今日もいないけれど、挨拶をして家を出る。
かすみちゃんに認めてもらえるように、頑張らなきゃ。そう思うと自然と、力が湧いてきた。

困難かもしれない。みんなの様子を見て分かるように、私は相当悪い子だったのかもしれない。信頼してもらえるのに、時間は掛かると思う。けど、頑張らないと!

歩夢「よーし」グッ

歩夢(まずは、クラスのみんなから認めてもらわないと。どうやっ──)

スタスタ

愛「……よぉ」

歩夢「!! 愛ちゃん」

愛「だから愛ちゃんって呼ぶなって……」

愛「まぁもういいや。──昨日ぶりだなぁ、上原」

歩夢「……もしかして、ケンカのお誘い?」

愛「おっ? 話が早いじゃん。やっと調子戻って──」

歩夢「やらないよ」

愛「は?」

歩夢「私、もう二度とケンカしない」

歩夢(した事ないけど……前の私はしてたみたいだし、ハッキリ言わないとダメだよね?)

愛「な、なんでだよ! 本当お前どうしたんだよ!!」

歩夢「スクールアイドルになりたいから」

愛「は? はぁ!?」

愛「す、スクールアイドル!?」

歩夢「うん。だから、不良もやめる」

愛「」ポカーン

195:(しまむら) 2021/05/15(土) 00:37:27.13 ID:LHLDsnsA
愛「ふ、ふざけんなよ!!」

歩夢「ふざけてないもん」

愛「……」

歩夢「それに、愛ちゃんとケンカ自体したくないし」

愛「は、はぁ!? 今更何言ってんだよ!!」

愛「アタシとお前がどんだけ──」

歩夢「愛ちゃんとは、友達でいたいもん」

愛「!?」

愛「は、はぁ!?///」

愛「上原お前、何言って──」

歩夢「その上原って言うのも……やめてほしいかな……」

歩夢「じゃあ、私は学校行くから」

歩夢「またね、愛ちゃん」フリフリ

スタスタ

愛「……」

愛「……わ、わけわかんねぇ……」

愛「わけわかんねぇよー!!」

199:(しまむら) 2021/05/15(土) 00:46:37.05 ID:LHLDsnsA
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

〜教室〜

ザワザワ、ザワザワ

歩夢「……」


「きょ、今日は朝からいるね」

「どーしちゃったの上原さん」

「……何が悪いもの食べたんじゃ……」


歩夢(大丈夫、大丈夫)

歩夢(少しずつ、認めてもらわないと)


ガラガラ

「皆さんおはようございます。そろそろ朝のホームルーツ始めますよ? 誰かプリント配るの手伝ってくれる方、いませんか?」

歩夢「先生、私──手伝います」スッ

「え? う、上原さん?」

歩夢「プリント、配ります」

「……お、お願いします。ありがとうございます」


ザワザワザワザワ

歩夢「……」

歩夢(一歩一歩、少しずつ……頑張ろう)

201:(しまむら) 2021/05/15(土) 00:53:01.84 ID:LHLDsnsA




「この問題、分かる方いますか?」

歩夢「はい!」

「!? う、上原さん? ど、どうぞ。では答えを書いてもらえるかしら……」

歩夢「はい」ガタッ

ザワザワ





ポロッ

(あっ、まずい……消しゴム落としちゃった)

スッ──

歩夢「はい、これ落としたのあなただよね?」

「!? あ、そ、そうです! ご、ごめんなさい!!」

歩夢「ううん、大丈夫だよ? 消しゴムって落ちやすいよね?」ニコッ

「!? あ、ありがとうございます……上原さん……」

歩夢「いえいえっ」ニッコリ

ザワザワザワザワ




205:(しまむら) 2021/05/15(土) 01:08:23.59 ID:LHLDsnsA
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

私、中須かすみはあまりスペックの高い人間ではなかった。それは小さい頃から自分が一番理解していた。
勉強も得意ではないし、運動も同じ。

でも、私には自慢出来ることが一つだけあった。

「かすみちゃんは本当に可愛いね」

そう、私は見かけは良かったんだ。皆から可愛いとチヤホヤされるのは、とても心地よかった。

私は、皆からチヤホヤされる為に生まれたんだ。バカな私は小さい頃、そんな風に考えながら生きていた。正直、調子に乗っていた。

──でもある時、スクールアイドルとの出会いをきっかけに……気が付いた。井の中の蛙だった。

207:(しまむら) 2021/05/15(土) 01:19:38.13 ID:LHLDsnsA
『みんなー! 今日は私達のライブを見に来てくれて、ありがとうー!』


かすみ『』ポカーン

かすみ『……』

かすみ『か、かわいい……!!』キラキラ


お母さんから連れていってもらったデパートの屋上で、ライブをやっているスクールアイドルを見た。

本当に、可愛かった。
キラキラしていて、まるで自分とは違う生き物なのではないかと錯覚した。

歌う彼女達は楽しそうで、お客さんも一緒に盛り上がる。──キラキラしていて、本当に可愛かった。

中須かすみの可愛さなんかとは、レベルが違った。
一気に自分が惨めに思えてきた。恥ずかしくなった。


かすみ『……私も、なりたい』

かすみ『スクールアイドルに……本当に可愛い! スクールアイドルに!』


何がチヤホヤされる為に生まれた、だ。
そんなわけないだろ。──そう気がつけたのは、スクールアイドルのおかげ。

調子に乗っていた私の人生は、そこで変わったんだ。

211:(しまむら) 2021/05/15(土) 01:28:38.79 ID:LHLDsnsA
どうすればもっと可愛くなれるのか? 自分を磨く為に“可愛さ”を研究し、努力した。
動作、お化粧、性格、愛される為の立ち回り。スクールアイドルの為に色々な研究をした。

そして生まれたのが、スクールアイドルのかすみん。

かすみんは小悪魔系で少しいじられやすいキャラの女の子。皆から愛されて、チヤホヤされるアイドル。

中須かすみが目指す、最強で世界一、誰よりも可愛いスクールアイドルのかすみん。

まだまだ完璧なかすみんにはなれていないけれど……私はそんな可愛いスクールアイドルを目指して、日々努力してるんだ。

213:(しまむら) 2021/05/15(土) 01:32:23.05 ID:LHLDsnsA
しずく「かすみー? かーすーみー?」

かすみ「ん? どうしたのしずく?」

しずく「いやいや、こっちのセリフ。ぼーっとしてるけど……どしたん?」

かすみ「あぁ、少し物思いに耽てただけだよ」

しずく「ふーん」

かすみ「ストレッチ、終わった?」

しずく「もちもち」

かすみ「ん、分かった。なら練習しようか」

かすみ「てか、しずくが私と練習したいって誘うなんて珍しいね」

しずく「いやぁ、私もいちおースクールアイドルですし? 練習もしないとね〜」

かすみ「毎日ちゃんと練習しなよ……」

214:(しまむら) 2021/05/15(土) 01:41:13.57 ID:LHLDsnsA
かすみ「まぁでも〜、しずくが毎日練習したらライバルになっちゃうからぁ〜。かすみんとしてはそのままでいいかもぉ」

しずく「でたかすみんモード。相変わらず切り替えが凄いね」

かすみ「モードとか出たとか言うなっつの」

しずく「ホントすごいんだけど……」

かすみ「この私とかすみんのギャップ差もいずれ武器に出来そうだね。まだまだかすみんは可愛くなれる。……現状、私が足を引っ張ってるから、頑張らないと」

しずく「真面目だねぇかすみは……今でも充分可愛いけどなぁ」

かすみ「それは当たり前。まだまだ伸ばせるよって話。語尾の伸ばし方も、もう少し自然体にして……甘えるような声を──」

しずく「あー、はいはい! かすみのアイドル論は長くなるからまた今度聞かせて!」

かすみ「むぅ……仕方ないな」ジトー

217:(しまむら) 2021/05/15(土) 01:54:35.86 ID:LHLDsnsA
しずく「そーいえばさ」

かすみ「ん?」

しずく「歩夢さん、最近すごく頑張ってるみたいよ?」

かすみ「!!」

しずく「ここ数日、別人になったって校内でも噂話が耐えないね。狂犬が優しくて可愛くなったって言われてるよ」

かすみ「……私の耳にも情報は届いてるよ」

しずく「今日なんかボランティア活動してるらしいよ?」

かすみ「……点数稼ぎが露骨だね」

しずく「人生の貴重な時間を使ってやる点数稼ぎなら、認めてあげてもいいんじゃない? ボランティア活動は偽善って呼ぶ人もいるけど、何もしないよりは遥かにマシっしょ」

かすみ「……」

しずく「しかも、それだけじゃない。お台場海浜公園でスクールアイドルの練習をしてるって目撃情報もあるし、本気でスク──」

かすみ「んだよ……」ボソッ

しずく「え?」

かすみ「だから嫌いなんだよ。不良……」

しずく「……かすみ?」

222:(しまむら) 2021/05/15(土) 02:05:50.06 ID:LHLDsnsA
かすみ「なんなの? 前はケンカばかりしてた不良が」

かすみ「少し良い事し始めたら……変わっただの、優しくなっただの……」

かすみ「できるんなら、なんで最初からその“良い事”をしてこなかったんだよ」

しずく「……」

かすみ「よく漫画とかでもあるよね。不良が猫とか拾って優しくしたり、公正して良い子になって……周りからチヤホヤされだす展開」

かすみ「私、あれ本当に嫌いなの」

かすみ「地道にコツコツ、毎日頑張った人よりも! 悪い事してた不良とか、そんなやつらが少し良い事しただけで……チヤホヤされる」

かすみ「理不尽にしか思えない」

しずく「かすみ……」

かすみ「あの人が……上原先輩が努力してるのは分かるよ」

かすみ「でも私はそんな展開が──」

しずく「私は結構好きかな。その展開」

かすみ「!」

しずく「話の途中だったのに、ごめんねかすみ」

かすみ「……別にいいよ」

しずく「ありがとう」

225:(しまむら) 2021/05/15(土) 02:32:26.30 ID:LHLDsnsA
しずく「私は、その人が好きで……不良とかになったわけじゃないと思うの」

しずく「家庭環境とか……周りの人の影響だったり、何か道を外したくなる出来事があったのかもしれない」

しずく「人の生き方ってさ。何かがきっかけで、簡単に変わってしまうものだと思う」

かすみ「!!」

しずく「そんな人達が、何かをきっかけに更正しようと思って、努力するのって──とっても素敵な事じゃない?」ニコッ

かすみ「……」

しずく「私は、歩夢さんがそんなに悪い人には見えない。不良って言われてるのが、皆の勘違いだったんじゃない? って思っちゃうくらいだよ」

かすみ「……」

しずく「あっ──ご、ごめんごめん! 熱弁し過ぎたね。いやぁ、あたしらしくなかったよね? あははは〜……」

かすみ「…………」

かすみ(そう言えば私)

かすみ(あの人がなんでスクールアイドルになりたいかとか……何も理由、聞いてないや)

かすみ(何も聞かずに……突き放してた)

かすみ「……」

しずく「か、かすみー?」

かすみ「ごめん、しずく」

かすみ「今日の練習、一人でやってて」

かすみ「用事が出来た」

しずく「!!」

しずく「……ん、分かった」

しずく「行ってらっしゃい」ニコッ

かすみ「うん。ありがとう」

かすみ「──行ってきます」

247:(しまむら) 2021/05/16(日) 11:38:06.19 ID:xC9EA03T
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

上原先輩を探す為、虹ヶ咲学園周辺を歩き回る。
中々見つからない。

当然、連絡先も知らないので自分で探すしかない。
かなり非効率だ。原始人になった気分。

でも、直接会って話を聞きたい。別に、しずくの話を聞いてあの人の評価が変わったわけじゃない。


かすみ(何も知らないまま、否定し続けてた自分にムカついただけ)

かすみ(そう……それだけだもん)


最終的に行き着いた先は──お台場海浜公園。

スクールアイドルの練習をしているという目撃情報もある。中は広いけれど、ここにいる可能性がある。──探そう。

249:(しまむら) 2021/05/16(日) 11:52:43.92 ID:xC9EA03T
スタスタ

かすみ「!!」


歩夢「……」


かすみ(いた)


お台場海浜公園の中心部に上原先輩はいた。
木に囲まれた場所で一人目を瞑りながら立っている。何してるんだろう?

まるでお祈りをしているかのように、手を組みながら静かに立っている。

ボランティア活動を終えた後なのだろうか? お菓子、手作りされたかのようなぬいぐるみが入れてある袋が、近くのベンチに置かれている。
大事に扱うかのように、下にハンカチが敷かれている。ボランティア活動のお礼で貰ったのかな?

詳細は不明だ。私は木の影に隠れながら様子を探る。


かすみ(──って、なんで私隠れてんだろ)

かすみ(ぱぱっと話聞いて──)


そんな事を考えていた。──でも、この後私は何も考えられなくなった。


歩夢「──」スゥゥゥゥ


目を瞑っていた上原先輩は、静かに深呼吸をして──世界を変えた。

250:(しまむら) 2021/05/16(日) 11:58:58.76 ID:xC9EA03T
歩夢「飛び立てる Dreaming Sky」

歩夢「一人じゃないから」

歩夢「どこまでも 行ける気がするよ」

歩夢「空の向こう────」

251:(しまむら) 2021/05/16(日) 11:59:21.25 ID:xC9EA03T
【Dream with You】

253:(しまむら) 2021/05/16(日) 12:17:28.95 ID:xC9EA03T
桜の花びらが、舞い上がる。

これは、なに?

先程の景色は消え去り、歌う彼女を中心に──世界が変わる。

制服に身を包んでいたはずなのに。彼女は今は、ピンク色のドレスに身を包ませている。

これは、なに? 困惑する私を置き去りにするかのように、上原先輩は歌い続ける。

笑顔で、可愛く。一生懸命、歌う。


──ずっと隠してたの ココロの奥──

──芽生えてた気持ちを見ないフリして──


上原先輩は──キラキラと輝いていた。

心臓が鼓動する。ドクンドクンと、胸の高鳴りを感じる。
まるで、“あの時”と同じような感動が私に舞い降りる。

──私のなりたいスクールアイドルが、そこにいた。

254:(しまむら) 2021/05/16(日) 12:26:33.99 ID:xC9EA03T
上原先輩の歌が終わる。
気が付けば、桜の花びらが消えていた。

いつの間にか、お台場海浜公園に戻ってきていた。


歩夢「はぁ、はぁ」


肩で息をする上原先輩の表情は、笑顔。歌う事が楽しいんだろうなと、表情でわかる。

──かわいい。


パチパチパチパチパチ

歩夢「ん?」


かすみ「わぁ……!!」パチパチパチパチパチ


歩夢「か、かすみちゃん?」

かすみ「!?」ハッ!!

かすみ「あ、あれ!? 私、何を……!?」


自分を忘れて、拍手していた。無意識で。


歩夢「き、聞いてたの?」

かすみ「っ〜〜〜〜〜!!////」

かすみ「拍手なんてしてません!!」

歩夢「え、えぇ!?」


自分でも、無理があるとは思った。

256:(しまむら) 2021/05/16(日) 12:38:07.70 ID:xC9EA03T
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

目の前で拍手をしていたかすみちゃん。
今は顔を赤くしながらそっぽを向いてしまったが、とても可愛い。

なんだか懐かしい気分。しずくちゃんの合同演劇祭が終わった時も同じような感じで拍手してたと思う。

歩夢「かすみちゃん、見てくれてたんだ」

歩夢「ありがとうね」ニコッ

かすみ「は!? 何がですか!?」

歩夢「いや、拍手してくれた事。嬉しいや」

かすみ「だから拍手なんてしてませんってば!」

歩夢「ふふっ、そうだね」ニコニコ

かすみ「だぁぁぁぁああ!! ニコニコ笑うな!!」

歩夢「ごめんね?」ニコニコ

かすみ「絶対ごめんって思ってないでしょ!」

257:(しまむら) 2021/05/16(日) 12:48:38.76 ID:xC9EA03T
歩夢「そういえばかすみちゃん。なんでここにいるの?」

かすみ「そ、そうだった」

かすみ「上原先輩に聞きたいことがあったんでした」

歩夢「私に、聞きたいこと?」

かすみ「はい」

かすみ「単刀直入に聞きます」

かすみ「なんで……スクールアイドルになりたいんですか?」

歩夢「!!」

258:(しまむら) 2021/05/16(日) 13:05:39.96 ID:xC9EA03T
歩夢「私がスクールアイドルになりたい理由……?」

かすみ「はい」

かすみ「私にあれだけ言われても諦めないんです。何か理由があるんですよね?」

かすみ「不良を辞めて、善行を尽くしてまでやりたい理由が」


私がスクールアイドルになりたい理由。──ここで、もう一度スクールアイドルになりたい理由、かぁ。

私がスクールアイドルを始めた理由。そのきっかけは──ひとりの女の子。そして、一緒にそれを見た侑ちゃんの為。
最初は侑ちゃん一人だけのために、スクールアイドルを続けていた。

でも、次第にその思いは変わった。私は自分の為に、そして私を応援してくれる皆の為に、スクールアイドルを続けようと誓った。

私が人生で初めて、自分から歩み始めることが出来た事。大切で、大好きなスクールアイドルとは、何があっても離れたくなかったんだ。
わからない事だらけで、怖いけれど──私はスクールアイドルでいたいの。スクールアイドルが大好きだから。

それに、侑ちゃんを見つける手掛かりにもなるかもしれない。

だから、自分の為になりたいだけだよ。


歩夢「かすみちゃん」

歩夢「私」


自分の気持ちを正直に伝えようと思っていた。

でも、私の口が自然と動き──


歩夢「──わたしね」

歩夢「あの子と約束したの」

歩夢「スクールアイドルになるって」


──私の考えていなかった事を発した。

260:(しまむら) 2021/05/16(日) 13:26:51.97 ID:xC9EA03T
歩夢「わたし、本当はケンカなんてしたくない」

かすみ「!!」

歩夢「わたしは……あの子と一緒に、ずっと一緒にいたかっただけ……!」

歩夢「でも……それはもう叶わない夢だから」

歩夢「だから……だから……わたしは……それが許せなくて……!!」

かすみ「」ポカーン

歩夢「!! あ、あれ……?」

歩夢(私、何言ってるの!?)

歩夢「えっと、えと! かすみちゃん!」

歩夢「私がスクールアイドルになりたい理由は──」

かすみ「もーいいですよ」

歩夢「え?」

かすみ「別に、大丈夫です」

かすみ「上原先輩の、スクールアイドル理由が一応ちゃんとあるってことが分かったので、大丈夫です」

かすみ「約束って、プライベートに関わる話だと思うので……あまり深く突っ込みません。なんとなくとか、そういうのじゃないのがわかりましたので……いいです」

歩夢「……」

261:(しまむら) 2021/05/16(日) 13:37:35.54 ID:xC9EA03T
あの子? 侑ちゃんの事?

分からない。私は侑ちゃんの事を話そうとしたわけじゃない。それに、約束? あの子との約束?

そんな話するつもり無かったのに、勝手に口が動いた。
自分で自分に困惑するのは、初めてのことだった。


歩夢「………………」

かすみ「上原先輩?」

歩夢「あっ……ご、ごめんねかすみちゃん!」

歩夢(今はかすみちゃんと話してるのに、考え込むのはダメだ。かすみちゃんに失礼だよね)

歩夢「と、とりあえず私! 早くかすみちゃんに認めて貰えるように頑張るから!」

かすみ「その話なんですけど」

歩夢「え?」

かすみ「もう、大丈夫です。あなたのスクールアイドル同好会入部を認めます」

歩夢「え!? かすみちゃん……私の事、信用してくれたの?」

かすみ「いや、全然? そんなすぐに人の評価が変わるわけないじゃないですか」

歩夢「えぇ……」

262:(しまむら) 2021/05/16(日) 13:47:25.35 ID:xC9EA03T
かすみ「ただ……その……」

かすみ「近くにいてくれた方が……あなたのことをよく見れるなって思っただけです」

かすみ「……そ、それだけです!」プイッ

歩夢「か、かすみちゃん……!」パァァァァァ

かすみ「と、とりあえず! あなたの噂を聞いたり、わざわざ探したりするのがめんどくさいんですよ! だから同好会に入部して、先輩の努力の結果を証明してくだ──」

バッ!! ──ギュッ!!

かすみ「!?!?!?////」カァァァァァ

歩夢「かすみちゃん!」

歩夢「ありがとう……!!」

歩夢「私、頑張るから!!」ギュュュュュ

かすみ「あ、あわわわわわ……!!」

かすみ「な、なに急に抱きついてんですか! あっついから離れてよ!!////」

歩夢「頑張るから……! 私を見ててね、かすみちゃん!」ニコッ

かすみ「は、話を聞いてくださいよ!!////」



かすみ「──歩夢先輩!!」

263:(しまむら) 2021/05/16(日) 13:49:23.03 ID:xC9EA03T
【Members walking together】

【NEXT】

【中川菜々】

274:(しまむら) 2021/05/16(日) 22:11:27.86 ID:xC9EA03T
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

かすみ「そういえば歩夢先輩」

かすみ「スクールアイドルとしての紹介動画、撮ってませんよね?」

歩夢「紹介動画?」


放課後、部室。
椅子に座りスマホをイジりながら、かすみちゃんが私に言う。


かすみ「はい」

かすみ「スクールアイドルになったんですから、これからはどんどん自分を売り出していかないと」

しずく「おー、なら今日は紹介動画撮る? あたし撮影役やりたい〜」

かすみ「いや、そろそろしずくも紹介動画撮りなさいよ……1ヶ月放置してるよ?」

しずく「あははは……まぁ、ゆったりまったりやろうよ」

しずく「ほら! あたし達スクールアイドル同好会はソロ活動メインだから、その辺自由にやれるのが良い所じゃん?」

かすみ「はぁ……まったくこの子は……」

275:(しまむら) 2021/05/16(日) 22:17:31.23 ID:xC9EA03T
歩夢「…………」

かすみ「ん? どうしました歩夢先輩?」

歩夢「その紹介動画って、動画サイトにあげたりするの?」

かすみ「え? まぁ紹介動画ですからね。当然アップしますよ?」

歩夢「そうだよね……大丈夫かな? ほら、私がスクールアイドルになったのを知って……その……私を狙う人に何かされたりとか……」

かすみ「あー、それなら大丈夫です」

かすみ「私、ここら辺の不良達について色々調べたんです」

歩夢「え?」

かすみ「親玉であるエマ・ヴェルデさんから言われてるみたいなんですよね」

かすみ「不良同士以外で喧嘩したり、一般の子を襲ったりしたりするのは御法度らしいんです」

歩夢「!!(エマさん……やっぱり親玉なんだ……)」

かすみ「だから、私達一般人は何かされる心配はありません」

かすみ「まっ、歩夢先輩の場合は当事者ですから、逆恨みされる可能性はありますけどね〜」

歩夢「…………」

かすみ「じょ、冗談ですよ。何か言って下さいよ」

歩夢「あっ……違うの。ご、ごめんね?」

しずく「てかさ、よくそんなこと調べられたねかすみ。誰から聞いたん?」

かすみ「かすみんのファンから聞きましたっ!」キャピ

しずく「へ〜」

かすみ「もっと興味持て」

276:(しまむら) 2021/05/16(日) 22:24:31.96 ID:xC9EA03T
かすみ「というか、なんでここら辺でケンカばかりしてた歩夢先輩がそのエマ・ヴェルデさんの御法度ルール知らないんですか」

歩夢「あ、あはは……ごめんね」

かすみ「いや、謝ることじゃないですけど……」

かすみ「──まっ、それに大丈夫な理由はそれだけじゃありません」

歩夢「え?」

かすみ「私はもう不良を辞めて、スクールアイドルになったんですって堂々と言えばいいんですよ」

歩夢「!!」

しずく「あっ、確かに〜。もう歩夢さんはカタギの人間ですもんね?」

かすみ「カタギって……。まぁ、そういう事」

かすみ「何言われたって、もう不良は辞めたって言えばいいんですよ」

かすみ「それを皆からちゃんと認めてもらう。その覚悟でスクールアイドルになったんでしょ? 歩夢先輩」

歩夢「──うんっ!」

歩夢「私、頑張るから」グッ

歩夢「かすみちゃんだけじゃなく、皆から認められるように──頑張る」ニコッ

かすみ「……ん」プイッ

しずく「ありゃ? かすみ、照れてる?」

かすみ「照れてないッ!///」

277:(しまむら) 2021/05/16(日) 22:30:42.38 ID:xC9EA03T
かすみ「まぁ、そういう事です」

かすみ「なので気にせず、歩夢先輩の紹介動画撮りましょう」

しずく「隊長! カメラの準備は完了しました!」ピシッ

かすみ「よし、桜坂隊員。しっかりとバッテリー確認も忘れずにな」

しずく「アイコピー!」

かすみ「はぁ……」

かすみ「──それじゃ歩夢先輩? 準備は良いですか?」

歩夢「あっ、う、うん!」

かすみ「……そうですねぇ、普通に動画撮るだけじゃ面白──再生回数は伸びないので」

歩夢(今面白いって言おうとしなかった!?)

かすみ「とびっきりかわいい、かすみんみたいな感じでいきましょっ! 歩夢せんぱい!」

歩夢「か、かすみんみたいな感じ?」

かすみ「えぇ!」

かすみ「そうですねぇ〜歩夢せんぱいはぁ〜、少しうさぎさんっぽいので〜」

歩夢「」

かすみ「あゆぴょんって言う、うさぎさんキャラでいってみましょう!」

しずく「えぇ……」

歩夢「……」

歩夢(私はあゆぴょんから逃れる事が出来ない運命なんだね……)

歩夢(でも、逃げちゃダメだよね? かすみちゃんがこう言ってるんだから、ちゃんとやらないとだよね?)

279:(しまむら) 2021/05/16(日) 22:34:45.63 ID:xC9EA03T
かすみ「とまぁ、冗談は置いと──」

歩夢「分かった。やるね」

かすみ「え?」

歩夢「しずくちゃん、カメラよろしくお願いします」

しずく「えっ? う、うん。りょうかい〜」

かすみ「あ、あの……」

歩夢「──」スゥゥゥゥ

歩夢「お願いします!」

しずく「ん」コクリ


ピピッ

280:(しまむら) 2021/05/16(日) 22:42:54.41 ID:xC9EA03T
歩夢「新人スクールアイドルのあゆぴょんだよ〜!」

歩夢「臆病だから、寂しいと死んじゃうの〜」

歩夢「だから、皆であゆぴょんの事を応援してね?」

歩夢「えへへ」ニコッ

歩夢「ぴょん♪」


ピピッ

かすみ「」

しずく「」


歩夢「はぁ、はぁ、はぁ……////」

歩夢(は、恥ずかしかったぁ……!!)

歩夢(可愛いってやっぱり怖いよぉ……!!)

しずく「──い」

歩夢「へ? し、しずくちゃん?」

282:(しまむら) 2021/05/16(日) 22:48:06.90 ID:xC9EA03T
しずく「歩夢さん」

しずく「かっっっっっっわいい!!」

しずく「まじかわなんですけど!!」

歩夢「あ、ありがとう……」

しずく「あたし、あゆぴょんのファンになります! かすみんのファン辞めます!」

かすみ「なんでよ!!」

歩夢「か、かすみちゃん。どうだったかな?」

かすみ「…………」

かすみ「なんかムカつくので普通のやつ撮りましょう」プイッ

歩夢「えぇ!?」

しずく「歩夢さんが可愛いからって嫉妬すんな〜?」

かすみ「うっさい!」

285:(しまむら) 2021/05/16(日) 23:15:21.50 ID:xC9EA03T
ガラガラ

彼方「んー? あれ? みんな随分楽しそうだね」

しずく「あっ! かな姉!」パァァァァァ

しずく「おはよ〜! 久しぶりじゃん!」ギュッ!!

彼方「おー、しずくちゃん。元気だった?」

しずく「うん! ──えへへ」ニコニコ ギュッ

かすみ「彼方先輩、こんにちは」

彼方「あっ、かすみちゃん。こんにちは〜。最近練習に全然来れなくてごめんね?」

かすみ「ほんとですよ。しずくとずっと二人きりなの疲れるのでもっと練習に来てくださいよ」

彼方「え? しずくちゃんと二人きりなの幸せじゃない?」ギュッ

しずく「だよね!? かな姉分かってる〜! かすみには理解できないみたいだよ?」ギュッ

かすみ「ほんとこの能天気コンビは……」

歩夢「あ、あの! こんにちは、彼方さん!」

歩夢「えっと、初め……まして。普通科2年の上原歩夢です」ペコリ

彼方「おー、君が新入部員の歩夢ちゃんだね? しずくちゃんから沢山話聞いてるよ?」

彼方「私は勉強とアルバイトで忙しいから、中々部活来れないけどこれからよろしくね」ニコッ

歩夢「!! は、はい!」ニコッ

歩夢(彼方さんの笑顔……なんだか懐かしい。安心するなぁ)

288:(しまむら) 2021/05/16(日) 23:29:57.65 ID:xC9EA03T
かすみ「というか、彼方先輩。今日はアルバイト休みなんですか?」

彼方「んーん、違うよ。今日もアルバイトあるよ。その前に部室に用がある子がいて、部長として対応する必要があったんだ」

彼方「お待たせしてごめんね? 入って大丈夫だよー」

ガラガラ

歩夢「あっ──」

菜々「こんにちは、皆さん。楽しそうでなによりです!」ニコニコ

しずく「ありゃ、かいちょーじゃん。こんにちは〜」ペコリ

かすみ「どうもです」

菜々「1年生の桜坂しずくさんと中須かすみさんですね! こんにちは!」

歩夢「菜々ちゃん……」

菜々「あぁ、歩夢さん! こんにちは!」

菜々「最近の歩夢さんの噂はよく聞いていますよ? 勿論良い方の!」

菜々「不良から真面目な学生への変化、偉いですよ! その調子でもっと充実した学校生活を謳歌して下さいねっ!」ペカー

歩夢「あはは……ありがとう」

290:(しまむら) 2021/05/16(日) 23:44:40.29 ID:xC9EA03T
菜々「さて、と」

菜々「ふむふむ。やはり人数が一人増えたので、椅子とかロッカーを増やした方が良さそうですね」

彼方「助かるよ生徒会長。色々ありがとうね」ニコッ

菜々「いえいえ! 生徒のサポートが私の役目なので!」

菜々「そうですね。この時期にはもう仮入部期間も終わっていて、新入部員もあまりいないと思いますが10名分くらいの用意をしますね」

しずく「おぉ! 助かる〜!!」

菜々「では申請書はこちらになりますので、部長の近江彼方さんの印鑑と記入をお願いします」スッ

彼方「うん、分かったよ」

菜々「ではまずはここを──」テキパキテキパキ


歩夢「…………」

歩夢(せつ菜ちゃん……生徒会長として一生懸命頑張ってるんだね)

歩夢「……な、菜々ちゃん」

菜々「ん? どうしたんですか? 歩夢さん」

歩夢「あの……」

歩夢「一緒にスクールアイドル、始めてみない?」

菜々「──え?」

294:(しまむら) 2021/05/17(月) 00:32:39.60 ID:gfHy1ZAY
歩夢「ほ、ほら! 生徒会のお仕事だけだと疲れちゃうし、リラックスさせる為に──」

菜々「歩夢さん。お誘いは嬉しいですが……遠慮しておきます」

歩夢「っ!」

菜々「確かに私、歌うのとか好きですけれど」

菜々「スクールアイドルになりたいとは別に思わないんです」

菜々「そんな私がスクールアイドルになっても、大好きでスクールアイドルをやっている方々に失礼になっちゃうので!」ニッコリ

歩夢「……っ……」

歩夢「そ、そうだよね……ごめんね……変なこと言って」

歩夢「菜々ちゃんと同じ部活仲間になりたかったから……つい……ね」ニコッ

菜々「ふふっ、そうでしたか」ニッコリ

歩夢「……」

かすみ(ん? 歩夢先輩、なんか、元気なくなっちゃった?)

かすみ(何かあったのかな?)

296:(しまむら) 2021/05/17(月) 00:40:26.11 ID:gfHy1ZAY
彼方「生徒会長、終わったよ。お待たせしました」

菜々「ありがとうこざいます!」

菜々「おぉ、さすが特待生で優等生の近江彼方さんですね。字が綺麗で見やすいです!」

彼方「照れますな」

菜々「──では、私はこれで! 良い学生生活を!」

スタスタ

歩夢「…………」

かすみ「歩夢先輩?」

歩夢「へ?」

かすみ「どうしたんですか? さっきから」

かすみ「元気、ないよ?」

歩夢「ご、ごめんね! 大丈夫だから! ──あ、あゆぴょんで少し疲れちゃったのかも」

かすみ「……そうですか」

300:(しまむら) 2021/05/17(月) 00:55:44.02 ID:gfHy1ZAY
彼方「さて、と。私もそろそろ帰ろうかな」

しずく「えっ!? もう? もっとゆっくりすればいいじゃん! バイトまでまだ時間あるでしょ?」

彼方「んー、アルバイトまで勉強したいしなぁ……」

しずく「……かな姉、最近頑張りすぎだよ! 気持ちは分かるけど……」

しずく「ちゃ、ちゃんと寝てるの!?」

彼方「寝てるよ? 4時間くらいは毎日寝てる」

しずく「ぜ、全然足りないよ! 15分くらい仮眠取りなって! ほら、私……ひざ枕するから!」

彼方「大丈夫だって」

彼方「しずくちゃん。私が勉強頑張る理由、知ってるでしょ?」

しずく「っっ!」

彼方「もっとちゃんと休むから。だから今は頑張らせてよ、しずくちゃん。いい子だから……ねっ?」ニコッ ナデナデ

しずく「…………」

彼方「……ごめんね……」ボソッ


彼方「──さて、それじゃ私も行くね。みんなまたね〜」フリフリ

かすみ「あっ、お疲れ様でした!」

歩夢「お疲れ様です。彼方さん」ペコリ

スタスタスタスタ

しずく「…………」

かすみ(たくっ、こっちもこっちで元気なくなってるし……)

かすみ「──ほら、2人とも! 動画作成の続きやりますよ?」

かすみ「スクールアイドルの基本は笑顔! 基本中の基本だよ? 分かった?」

歩夢「……うん! ごめんね、かすみちゃん」グッ

しずく「……ん」コクリ

かすみ「じゃあ即実行!」

かすみ「はい! 笑顔笑顔〜! かすみんと一緒に笑顔作りましょ〜!」ニコニコ




309:1(茸) 2021/05/17(月) 08:57:03.42 ID:W/4JCNWA
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

誰かから必要とされる人間になりなさい。

──それが両親からの教えでした。

生徒会長である私、中川菜々は充実した学校生活を謳歌している。

勉強も一生懸命頑張り、好成績をキープ。学生のみんなの為に頑張る。そして、趣味であるアニメやマンガも全力で楽しむ。それが私の今の生活だ。

勉強や生徒会活動。楽しいけれど、疲れないかと言えば嘘になります。当然疲労も溜まりますし、ストレスだって同じように溜まる。

それを発散させるのが、優木せつ菜の役割

SNSの裏垢。鍵をかけているため誰一人フォロワーはいないしフォローしてる人もいない。


──────────

優木せつ菜:今日も疲れたああああああああ!! あの先生私を便利屋として使い過ぎです!!

優木せつ菜:あのアニメ、途中までとても良かったのにどうして最後あんな展開にしてしまったのでしょう……。信じられないです!

優木せつ菜:やろうと思っていた事を「あれやらないの?」って言われるの本当に腹立ちます!!

──────────


ふと思った日常の不満やストレスを書き連ねるだけのSNSアカウント。──優木せつ菜。
歩夢さんからせつ菜という名前を聞いた時は肝を冷やしました。

こんなアカウントを見られたら、終わりだ。

生徒会長の威厳が失われる。私は完璧で、誰かから必要とされる人間にならないといけないんだ。

愚痴を呟いているアカウントを持っているだなんて……そんな隙を見せてはいけないんです。

310:(茸) 2021/05/17(月) 09:01:15.10 ID:W/4JCNWA
菜々母「菜々。この前のテスト結果、すごいじゃない! この成績をキープすれば良い大学にいけそうね」

菜々「うん! 私、もっと頑張ります!」

菜々母「……菜々、頑張ってくれてるのは嬉しいけれど……もう少し自分の好きな事をしてもいいのよ?」

菜々「え? 好きな事……?」キョトン

菜々母「えぇ。学生なんだし、勉強や生徒会の事以外したって──」

菜々「大丈夫ですよ、お母さん」ペカー

菜々「私、今すごく充実しているので! アニメや漫画もありますしっ」

菜々母「そ、そう?」

菜々「はい!」


そう、私は充実した学校生活を謳歌している。いや、出来ています。

何かあれば、優木せつ菜がいる。

私はこれでいいんです──。

312:(茸) 2021/05/17(月) 09:06:27.66 ID:W/4JCNWA
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

スタスタ


菜々(さてさて、次のやる事は……)


「上原さん、プリント日誌運ぶの手伝ってくれてありがとうね? 結構重くってさ、あれ」

歩夢「わかるわかる。クラスメイトの人数も多いから大変だよね? また何かあったら手伝うから」ニコッ

「!! う、うん! ありがとう。ま、またね!///」

歩夢「うんっ」ニコニコ フリフリ

スタスタ


菜々(あれは……歩夢さん)

菜々「……ふふっ」クスクス

スタスタ

菜々「歩夢さん! こんにちは!」

歩夢「あっ、菜々ちゃん」

歩夢「……こんにちは」ニコッ

菜々「日直の方でしょうか? 手伝ってたんですか?」

歩夢「うん。日誌を職員室に届けようとしてたんだけど、重そうだったから」

菜々「本当に変わりましたね、歩夢さん。素晴らしいです!」

菜々「歩夢さんを虹ヶ咲学園の狂犬と呼ぶ方は、もういませんね!」

歩夢「あはは……」

313:(茸) 2021/05/17(月) 09:15:05.27 ID:W/4JCNWA
歩夢「前の私……酷かったんでしょ?」

菜々「?(なんで疑問形?)」

菜々「いや、まぁ本当にケンカばかりしていましたよね」

歩夢「……ごめんなさい」

菜々「別に、謝る必要ありませんよ」

菜々「不良の時の歩夢さんも、私は別に嫌いじゃありませんでしたし」

歩夢「え?」

菜々「ケンカしまくりでしたが……不良同士だけでしたし。まぁ、誰も私に近付くなというオーラが出ていて、まるで世界を恨んでいるかのようで、常に目付き悪かったですからね」

菜々「怖くはありました」

歩夢「…………」

菜々「でも、不良同士の方々の、拳で語ると言うのも青春と言えば青春! あまり良い事とは言えませんけどね。私は漫画みたいで嫌いじゃないです!」

菜々「もちろん、行き過ぎはダメですけどねっ」

歩夢「……」

菜々「あっ、ケンカといえば私、あの漫画大好きなんですよ! 最後のリンダとの戦いが──」

歩夢「ふふっ」クスクス

菜々「? 歩夢さん?」

314:(茸) 2021/05/17(月) 09:30:48.03 ID:W/4JCNWA
歩夢「ううん。ごめんね急に」

歩夢「今の菜々ちゃん、楽しそうだなって思って」ニコッ

菜々「えぇ!」

菜々「学校生活、楽しいです!」ペカー

歩夢「そっか……。──うん!」

歩夢「なら、良かった」ニッコリ

菜々「?」

歩夢「──夢はいつか、輝きだすんだ」

菜々「え?」

歩夢「私の大好きな歌の歌詞」ニコッ

菜々「……」ポカーン

歩夢「……急にごめんね?」

歩夢「菜々ちゃんは今、スクールアイドルに興味無いかもしれないし、やりたいとは思ってないかもだけど」

歩夢「私、やっぱり菜々ちゃんと一緒にスクールアイドルになりたい」

菜々「……」

菜々(歩夢さん、なんでそんなに私と一緒にスクールアイドルをやりたいのでしょうか……?)

歩夢「でも、これは私のわがままになっちゃうから──もう言わない。今の菜々ちゃんの枷になりたくないもん」ニコッ

菜々「歩夢さん……」


笑顔の歩夢さんだったけれど、どこか寂しそうだった。おかしい。笑顔の筈なのに、どうしてそんなに辛そうなんですか? 歩夢さん。

その事を聞こうと思っていたのですが──


歩夢「菜々ちゃん」

歩夢「私、今度ソロライブやる事になったの」

歩夢「放送室借りてアナウンスとかするから、良かったら見に来てね」ニッコリ

菜々「──はい! 絶対に見に行きます!」

歩夢「……うん!」


歩夢さんは最後まで、寂しそうに笑顔を浮かべていた。

326:(しまむら) 2021/05/18(火) 04:00:09.56 ID:3X/QNNx9
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

〜生徒会〜

菜々「では、この議題については以上となります。何か質問や確認したい事はありますか?」

副会長「私は特にはありません」

菜々「分かりました。他は──」


ザザッ

かすみ『あーあー、テステス』

かすみ『みなさーん! 楽しい放課後をお過ごしですか〜!?』

かすみ『ナンバーワンスクールアイドルのぉ、かすみんで〜す!』


菜々「!?」

「え? なになに?」

副会長「校内放送?」


かすみ『突然のお知らせですが──本日この後! かすみんの先輩である上原歩夢先輩のソロライブを開催しまーす!』

かすみ『場所は部室棟屋上でーす! 時間はぁ──』


菜々「え? え!?」

菜々(きょ、今日なんですか!? 歩夢さんのライブ!?)

ガタッ

菜々「あ、えっと! 皆さんごめんなさい! 本日の会議は終了で! 何か追記で確認したい事ある場合にはメッセージ送ってください!」

スタスタ

副会長「か、会長?」

「なんか急いでましたね、中川会長」

「ですね〜。てか上原先輩のライブだってさ! 見に行ってみる?」

「暇だし行ってみようか〜」




327:(しまむら) 2021/05/18(火) 04:12:51.50 ID:3X/QNNx9
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

スタスタ ガラガラ

かすみ「歩夢先輩、今日のライブの告知終わったよ」

歩夢「うんっ。放送聞いてたよ。ありがとうねかすみちゃん」

かすみ「それは全然構わないんですけど……」

しずく「いやぁ、まさか当日告知でライブするとは思わなかったよ」

しずく「色々準備はしてたけどさ」

歩夢「事前に告知しちゃうと、何かトラブルが起きるかもしれないでしょ?」

かすみ「まぁ」

しずく「カタギになったとは言えまだ油断出来ないもんね〜」

かすみ「だからカタギって言い方……」

歩夢(──菜々ちゃん、見に来てくれるかな?)

しずく「あと、まぁ歩夢先輩なら大丈夫でしょ」

かすみ「え? なにが?」

歩夢「?」

しずく「今日のライブ、絶対成功するよ。今日に向けて色々準備、頑張ってたもん」

しずく「この新しく歩夢さんが作った曲、良い歌だし」ニコッ

歩夢「しずくちゃん……!」

かすみ「……」

かすみ「歩夢先輩」

歩夢「?」

かすみ「……その……」

かすみ「て、適当なライブしたら許しませんからね! やるからには必ず成功させて下さい!」プイッ

しずく「照れてますなぁかすみ〜」ニヤニヤ

かすみ「照れてないッ!!////」

歩夢「かすみちゃんも……!」

歩夢「ありがとう! 2人とも!」

歩夢「私、頑張ってくるから!」

しずく「うん! 音響サポートとかは任せてね〜」

かすみ「……行ってらっしゃいです」

歩夢「うんっ──行ってきます!」ニコッ

329:(しまむら) 2021/05/18(火) 04:20:26.26 ID:3X/QNNx9
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

スタスタ

愛「ちょ、ちょっと! エマさん! どうしたんですかそんなに急いで!」

エマ「……さっきの校内放送、聞いたでしょ?」

愛「上原のライブのやつですよね? まさか……み、見に行くんですか!?」

エマ「うん」

愛「え、えぇ……」

スタスタ

愛「あっ、ちょっと! 置いて行かないでくださいよ!」

愛「……ちっ、久しぶりに学校に来たら、あいつのライブがあるとかタイミング悪すぎだろ……!」

愛「──って! エマさん! 待って下さいよ!」

タッタッタッタ

331:(しまむら) 2021/05/18(火) 04:27:51.81 ID:3X/QNNx9
彼方「…………」カキカキカキカキ


ピローン


彼方「ん?」


──────────

ラブリーしずくちゃん:かな姉ー!

ラブリーしずくちゃん:今日歩夢さんのソロライブあるんだよ〜

ラブリーしずくちゃん:虹ヶ咲学園の生徒専用動画サイトで生中継もするから観てあげてちょ!

ラブリーしずくちゃん:今URL貼るね!

──────────


彼方(あー、今日ソロライブやるんだ歩夢ちゃん)

彼方(ライブ告知は当日行うって前言ってたもんね)

彼方(直接応援できなくて、ちょっと申し訳ないなぁ……)

彼方「……勉強のキリもいいし観てみよ」

彼方「ブレード、どこあったっけなぁ」

332:(しまむら) 2021/05/18(火) 04:33:33.37 ID:3X/QNNx9
璃奈「ふわぁぁぁ……ねっむ」

璃奈「情報処理学科なのに、なんで現代文の勉強とかしなきゃいけないの? 納得いかないんだけど」

璃奈「はぁ……開発だけしてたい……理系の勉強だけしてたい……」

璃奈「文系滅べ」


ワイワイ、ガヤガヤ


璃奈「ん?」

璃奈(なんか部室棟前が騒がしいなぁ……うるさ)

璃奈「……そー言えばなんか誰かがライブやるってさっき校内放送あったっけ」

璃奈「………………」

璃奈「たまには暇つぶし……しよーかな」

スタスタ

333:(しまむら) 2021/05/18(火) 04:39:07.33 ID:3X/QNNx9
果林「………………」

果林「うぅ……!」

果林「3201の教室ってどこにあるのー!?」

果林「うぅ……補習あるのにぃ……」シクシク

果林「ここどこだよぉ……」

果林(この学校! 広すぎるのよぉ!)

果林「まぁ! そこがいいとこなんだけどね!」

果林「……でもこれじゃ間に合わないよー!!」

果林「どうしよー!!」


ワイワイ、ガヤガヤ


果林「ん?」

果林「なんかめっちゃ人集まってる!」

果林(はっ! そーだ! あそこにいる人達に教室まで案内してもらお! わたしかしこい!)

果林「思ったなら即実行が朝香果林の格言! 早速取り掛かろー!」

果林「すみませーん!」ニコッ

スタスタ

335:(しまむら) 2021/05/18(火) 04:55:50.71 ID:3X/QNNx9
部室棟の屋上には直接入れなかった。部室棟入口前は屋上がよく見えるので、そこを観客席にするのでしょうか。

──もうすぐライブが始まってしまう。急がないと!

菜々(歩夢さん、急過ぎますよ!)

スタスタ

菜々「!?」

菜々(ひと、多いですね……)


予測的中。部室棟入口前に人が沢山集まっていた。
ただ、観客席というものではない。適当に人が集まって、自然とそこが観客席として機能し始めた成り行きのものでした。

本当に、急遽のソロライブなんですね。歩夢さん。

とりあえず私もその人の集まりに混ざる。辺りはザワついている。

校内で有名な不良、上原歩夢さんの初ライブ。いや、元不良と例えた方がいいですね。今の歩夢さんを不良と呼ぶのは、とても失礼な気がします。
皆さんも歩夢さんのライブに興味津々みたいです。


菜々「……」

菜々「あっ!」


スタスタ、スタスタ


歩夢「…………」


部室棟屋上をステージにして、歩夢さんが現れる。
周りの人達がもっとザワつき始める。

──少しうるさいくらいと思うくらい。

しかし、歩夢さんはそのうるさい観客席とは真逆で、とても静かだった。

お祈りをするかのように、目を瞑り、手を組む。静かに、深呼吸をしている。
ピンクを基調としたライブ衣装に身を包ませた歩夢さんは、とても可愛らしかった。

336:(しまむら) 2021/05/18(火) 04:59:30.06 ID:3X/QNNx9
歩夢「──皆さん」

歩夢「本日はお集まり頂き、ありがとうございます」ニコッ

歩夢「……余計な事は言いません」

歩夢「今はただ」

歩夢「私の歌を聞いて下さい」ニコッ

歩夢「──」スゥゥゥゥ


歩夢さんが話し始めた瞬間、辺りは静まり返った。

そして歩夢さんは──世界を変えた。

337:(しまむら) 2021/05/18(火) 05:06:31.25 ID:3X/QNNx9
歩夢「今は小さな」

歩夢「小さな 蕾だけど」

歩夢「いつの日にか きっと」

歩夢「咲かせましょう」



歩夢「大輪の花─────────!!」

338:(しまむら) 2021/05/18(火) 05:07:14.48 ID:3X/QNNx9
【開花宣言】

339:(しまむら) 2021/05/18(火) 05:20:04.58 ID:3X/QNNx9
菜々「」


言葉が出なかった。息を吸う事も忘れていたかもしれません。

歩夢さんが歌い始めると、世界が変わった。

私の周りにいた人達はいなくなり、歩夢さんしか見えなくなった。
辺り一面には桜の木と、その花びらが舞う。綺麗な蕾も囲まれており、歩夢さんの歌に呼応するかのように、少しずつ咲き始める。


──今は小さな 小さな蕾だけど──

──あなたがくれた愛を 育んで──

──力いっぱい 空に伸びてゆくんだ──

──いつの日にか きっと──

──咲かせましょう──

──大輪の花──



菜々「──す、すごい……!」


胸の高まりが治まらない。

これは、何ですか?

ドクンドクンと、胸がドキドキする。笑顔で歌う歩夢さんが目に焼き付く。耳が心地いい。手汗が止まらない。心臓の鼓動が治まらない。

これは、何ですか? 言葉に出来ない感情。

ただ、自然と思い浮かんだ言葉は──

──大好き。

それだけでした。

340:(しまむら) 2021/05/18(火) 05:26:01.31 ID:3X/QNNx9
歩夢さんが歌い終わると、周りからは歓声が上がった。
想像以上に良い、かわいい、本当にあの上原歩夢なのか。等々、皆さん各々感想を語る。ライブ前よりもザワついてました。


菜々「……!」ドキ、ドキ


私は、何も言えなかった。

ただ、ただ──胸に手を当てながら立ち尽くしてました。

これが──スクールアイドル……!!


──この瞬間、私の人生が変わったのでした。

341:(しまむら) 2021/05/18(火) 05:31:22.82 ID:3X/QNNx9
愛「………………」

エマ「……ごい」

愛「え……?」

エマ「すごい……!」

愛「……」

愛「っ、……ッ!////」

「わ、わかる!! 凄かったよね!?」

エマ「え?」

果林「わたしも! たまたま見てたんだけど!」

果林「ほんとーに凄かった!! 感動しちゃったぁ!」

果林「はぁ……かえーしきゃのー!」ニコニコ

果林「あなたも感動したよね!?」ギュッ!!

エマ「ふぇ!?」ビクッ!

愛「──!! おい! お前エマさんになに──」

果林「あなたも感動したよね!?」

愛「え?」

果林「これが……スクールアイドル!」

果林「すごきゃ〜!!」キラキラ キャッキャ

愛「……っ……////」

エマ「…………」

342:(しまむら) 2021/05/18(火) 05:48:49.03 ID:3X/QNNx9
璃奈「いやぁ……歌って良いもんなんだね」

エマ「!?」ビクッ!

愛「!?」ビクッ!

果林「ん〜?」

璃奈「たまたま、なんとなく見ただけなんだけど」

璃奈「端的に言うと、すっごい感動しちゃったね」

璃奈「歌には精神的疲労回復、癒し効果などのヒーリング機能もあるって学術的に証明されてるんだよね」

璃奈「これは良いモノが見れたよ」

璃奈「うん……上原歩夢さん」

璃奈「すき」グッ

愛(な、何だこのチビ……)

果林「わかるわかる! すごかったよね、上原歩夢ちゃん! わたしもすき!」

璃奈「話がわかるおねーさんだね」

果林「──よし! 決めた!」

エマ「え?」

果林「わたしもスクールアイドルになる!」

愛「!?」

果林「──ってぇ!! 私そういえば補習だったんだぁ!!」

果林「ね、ねぇ! あなた3201の教室まで案内してくれない!?」

エマ「え? わ、私が……?」

果林「うん!」ニコニコ

エマ「別にいいけど……」

愛「え!?」

果林「ほんと!? やったら〜! どーもよい!」

果林「あなた、お名前なに!?」

エマ「え、エマ・ヴェルデ……」

果林「エマね! わたしは朝香果林! よろしくねエマ!」ニコッ

エマ「──う、うん! よろしくね果林ちゃん!」ニッコリ

愛「………………」

愛「……上原……」

愛「っっ……」

344:(しまむら) 2021/05/18(火) 05:56:26.87 ID:3X/QNNx9
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

〜数日後〜

ライブは無事、成功に終わった。
反響も良く、校内で色々な子に声を掛けられることが増えた。


歩夢「はい、できたよ」

「わぁ……!! ありがとうございます! 歩夢さん!」

歩夢「いーえ」ニコッ


サインも求められることが増えた。私のサインなんて、そんなに価値があるようには思えないんだけどなぁ……。
でも、とっても嬉しい。

スタスタ

菜々「歩夢さん、こんにちは」

歩夢「あっ! 菜々ちゃん!」

歩夢「こんにちは」ニコッ

菜々「はい」ニコッ

歩夢「どーしたの?」

菜々「歩夢さん」

菜々「今日の放課後……お時間頂けますか?」

歩夢「放課後? うん、別に大丈夫だよ。何かあるの?」

菜々「……講堂に来て頂きたいんです。歩夢さん一人で」

歩夢「え? 私一人で?」

菜々「はい」

菜々「お待ちしております」ニッコリ

歩夢「わ、分かった」

菜々「ありがとうございます! それでは……」

スタスタ

歩夢「……?」

歩夢「菜々ちゃん……どうしたんだろ?」

345:(しまむら) 2021/05/18(火) 06:05:15.04 ID:3X/QNNx9
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

放課後、私は菜々ちゃんとの約束通り講堂に一人でやって来た。

中に入るけれど……。

歩夢(え? く、暗い……)

歩夢「菜々ちゃん? 菜々ちゃーん?」


菜々「歩夢さん、ここです」


菜々ちゃんの声が聞こえると同時に、講堂の中心部にライトがつく。
そこには菜々ちゃんがいた。


歩夢「え?」

菜々「歩夢さん。あなたに見てほしいものがあるんです」

菜々「見やすい席におかけ下さい」ニコッ

歩夢「う、うん」スタッ

菜々「……歩夢さん」

歩夢「?」

菜々「──後で謝罪させてください」

歩夢「な、なにを?」キョトン

菜々「そして、見てて下さい。聞いて下さい」

菜々「私の──大好きを!」ニコッ

歩夢「──え?」

346:(しまむら) 2021/05/18(火) 06:06:58.50 ID:3X/QNNx9
菜々「走り出した!」

菜々「思いは強くするよ」

菜々「悩んだら」

菜々「君の手を握ろう──────」

347:(しまむら) 2021/05/18(火) 06:07:59.63 ID:3X/QNNx9
【CHASE!】

348:(しまむら) 2021/05/18(火) 06:15:05.83 ID:3X/QNNx9
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

歩夢さんのライブを見た後、私はありとあらゆる時間を使ってスクールアイドルについて調べました。

スクールアイドルに興味がない? 私は──なんて損な人生を歩んでいたんだろうか。

あんなに胸がドキドキするものを、知らなかっただなんて……。

今の思いは、一つしかなかった。スクールアイドルになりたい。

歩夢さん。お誘い断ってしまってごめんなさい。

私、スクールアイドルになりたいです。
その為に、大好きを詰め込んで──歌も作ってきました。


菜々「足を踏み出す 最初は怖いかも」

菜々「でも 進みたい」

菜々「その心があれば」



歩夢「」


歩夢さんの表情は、見えない。いや、見ている余裕がない。
動きながら歌うのは、なんて難しいんでしょう。音も少し外してしまう所がある。この前の歩夢さんのライブの凄さがわかる。

──でも、楽しい……!!

349:(しまむら) 2021/05/18(火) 06:17:47.75 ID:3X/QNNx9
菜々「なりたい自分を」

菜々「我慢しないでいいよ」

菜々「夢はいつか」

菜々「ほら」

菜々「輝き出すんだ──────!!」

350:(しまむら) 2021/05/18(火) 06:22:49.13 ID:3X/QNNx9
菜々「はぁ、はぁ、はぁ……!」


歌い終わり、息が上がる。自分の全力を、出し切ったからか……とても、疲れました。
ただ、疲れて座るのは今度。今はこの思いを私の憧れの人に伝えなければ……!
そう思い、私は歩夢さんに声をかける。けど──


菜々「歩夢さん! 私もスク──」



菜々「──え?」


歩夢「ひっぐ……! っ……ひぐ……!!」


菜々「あ、歩夢……さん……?」


歩夢さんは──泣いていた。

351:(しまむら) 2021/05/18(火) 06:32:27.25 ID:3X/QNNx9
菜々「……あ、歩夢さん?」


顔を両手で覆い隠し、歩夢さんは肩を揺らしながら泣いている。

まるでひとりぼっちになってしまった、迷子の女の子のように泣いていた。

ち、違う。私は──歩夢さんに泣いて欲しかったんじゃ……!!

私は歩夢さんの元まですぐに走り、駆け寄る。


菜々「あ、歩夢さん! ごめんなさい! 私、スクールアイドル断ったのにこんな」

歩夢「違う……違うの……っ……!!」

歩夢「違うのぉ……!!」

菜々「あ、歩夢さん……」

歩夢「……私……私……!!」

歩夢「もう……せつ菜ちゃんに……会えないと思ってたのに……!」

歩夢「ひっぐ……! ぁぅ……!!」

歩夢「本当に……泣いちゃって……」

歩夢「ごめんなさい……!!」ポロポロ

菜々「歩夢さん……」


せつ菜に……会えない?

なんでそんなに、泣いてるの……?

疑問しか思い浮かばない。──でも、今はそんなのどうでもいい。

352:(しまむら) 2021/05/18(火) 06:38:33.01 ID:3X/QNNx9
菜々「歩夢さん」


ギュッ


歩夢「!!」

菜々「我慢しなくて……いいです」

菜々「誰だって……泣きたい時はあります。理由は勿論気になりますけど……」

菜々「後で……いくらでも話、聞けますから。私も謝りたいことやあなたに伝えたい事が沢山あるので」

菜々「沢山お話しましょう」

菜々「だから今は」

歩夢「思いっきり泣いていいよ」ギュュュュ

歩夢「!! せつ菜ちゃん……!!」

歩夢「ッ──」

ギュッ!!





歩夢「──うああああああああああああッ!!!!」

361:1(茸) 2021/05/18(火) 07:37:41.62 ID:LwZB3sKK
>>352 誤字修正



菜々「歩夢さん」


ギュッ


歩夢「!!」

菜々「我慢しなくて……いいです」

菜々「誰だって……泣きたい時はあります。理由は勿論気になりますけど……」

菜々「後で……いくらでも話、聞けますから。私も謝りたいことやあなたに伝えたい事が沢山あるので」

菜々「沢山お話しましょう」

菜々「だから今は」

菜々「思いっきり泣いていいよ」ギュュュュ

歩夢「!! せつ菜ちゃん……!!」

歩夢「ッ──」

ギュッ!!





歩夢「──うああああああああああああッ!!!!」

353:(しまむら) 2021/05/18(火) 06:39:57.83 ID:3X/QNNx9
今はただ──この人を守りたいって思った。

354:(しまむら) 2021/05/18(火) 06:41:03.14 ID:3X/QNNx9
【Members walking together】

【NEXT】

【宮下愛】

381:1(茸) 2021/05/19(水) 09:17:58.38 ID:m4zIh9b1
「ねぇねぇ! 歩夢ちゃん!」

「んー?」


──これは、夢だろうか? 見覚えのある教室。なんだか懐かしい気分になる。ここは、小学校?


歩夢(教室の隅にいるあの子達……私と)

歩夢(侑ちゃん?)


そこには私と、小さい頃の侑ちゃんがいた。
小学生1、2年生くらいの時かな?

そんなの2人の様子を私は第三者視点で見つめていた。


「この雑誌見て! これ!」

「わぁ……可愛いお姉さん達がいっぱいうつってるねぇ」

「だよねだよね!? スクールアイドルっていうんだって!」

「スクールアイドル?」

「うん!」


楽しそうに話している。侑ちゃんの笑顔は、今と変わらず見ているこっちまで楽しくなってくる。
……そう言えば私、昔は歩夢ちゃんって呼ばれてたなぁ。


「はぁ……可愛いなぁ……──ねぇねぇ!」

「どうしたの?」

「歩夢ちゃん、スクールアイドルになってみない!?」

「え、えぇ!? わたしが!?」

「うん! 歩夢ちゃん可愛いしぜったいなれるよ! スクールアイドルに!」

「……うーん……自信ないなぁ」

「そっかぁ……ざんねん……」

「でも……」

「ん?」

「──若葉ちゃんがそう言うなら、がんばってみようかなぁ」ニコッ


歩夢(──え?)

382:(茸) 2021/05/19(水) 09:22:04.76 ID:m4zIh9b1
ガバッ!!

歩夢「はぁ、はぁ、はぁ……!」

歩夢「ゆ、夢……?」


若葉……ちゃん? 私、侑ちゃんと話してたんじゃないの?

先程見た夢、所々違和感を覚える。

──私、小さい頃にスクールアイドルの話……してたっけ?


歩夢「ッッ!!」ズキッ!!

歩夢「あたま……いったい……ッ……!!」ズキ、ズキ

歩夢「はぁ……はぁ……はぁ……!!」

歩夢「…………」

歩夢(治まってきた……)


頭が割れそうになった。まだ少し痛い。
私が今の上原歩夢になってから──今みたいに頭が痛くなる事が、時々ある。

意識が飛びそうになるくらい痛くなる時だってある。なんなんだろ、この頭痛……。


歩夢「…………」

歩夢「学校いる時とか、歌ってる時は……起きないといいなぁ……」

384:(茸) 2021/05/19(水) 09:27:16.21 ID:m4zIh9b1
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

彼方「はい、入部届け受け取ったよ〜」

彼方「えっと……」

「……」ニコニコ

彼方「優木せつ菜ちゃん……?」

せつ菜「はい!」ペカー

「「「…………」」」

歩夢「あ、あはは……」

386:(茸) 2021/05/19(水) 09:30:34.11 ID:m4zIh9b1
せつ菜「中川菜々改めまして、優木せつ菜です! 皆さん、これからよろしくお願いします!」

かすみ「中川会長、本当にそのキャラでいくんだ」

せつ菜「せつ菜です! あとキャラではありません! 私は優木せつ菜ですから!」

しずく「いやぁ、中川かいちょーが全校集会で改名宣言! って旗持ちながら」

しずく「今日から私は優木せつ菜です!」ペカー

しずく「──ってやった時はまじでウケたわ。中川かいちょー面白いからあたし好きなんだよね」

せつ菜「ありがとうございます! あとせつ菜です!」

彼方「まぁ、スクールアイドル同好会としては部員が増えるのは嬉しいしありがたいから大歓迎だけどねぇ〜。よろしくね、菜々ちゃん」ニコッ

せつ菜「ありがとうございます! 彼方さんっ! これからよろしくお願いしますっ」

せつ菜「せつ菜です!!」ペカー

387:(茸) 2021/05/19(水) 09:35:22.98 ID:m4zIh9b1
歩夢「な、菜々ちゃん」クイクイ

せつ菜「ん? なんですか歩夢さん?」

せつ菜「あとせつ菜です!」ペカー

歩夢「……せつ菜ちゃん」

歩夢「大丈夫なの?」

せつ菜「え?」

歩夢「その……裏垢名なんじゃないの?」ヒソヒソ

せつ菜「あぁ、ご心配なく」

せつ菜「もうあのアカウント消しましたので!」

せつ菜「今の私には、必要ありませんからっ」

歩夢「……そっか」ニコッ

せつ菜「それに」

歩夢「?」

せつ菜「これでいつでもせつ菜に会えますよ」

せつ菜「歩夢さん」ニコッ

歩夢「!!」

せつ菜「ふふ」クスクス

歩夢「せつ菜ちゃん……」

歩夢「ありがとう」ニコッ

せつ菜「はい!」

歩夢「でも私、せつ菜ちゃんや菜々ちゃんとかじゃなくて……あなたが好きだから」

歩夢「あんまり名前に拘らないで大丈夫だからね?」

せつ菜「っ!!////」カァァァァァ

せつ菜「は、はい……////」

歩夢「ふふっ」クスクス

395:(しまむら) 2021/05/19(水) 23:27:08.32 ID:/ATcnxFz
かすみ「……歩夢先輩。なに2人でコソコソ話して笑ってるんですか?」ジトー

歩夢「あっ、かすみちゃん」

せつ菜「かすみさんも混ざりますか?」

かすみ「はぁ……そういうことではありません」

かすみ「ライブが終わったからと言って、油断してはダメですよ歩夢先輩」ピシッ

かすみ「ライブもまだまだでしたし、私が満足する出来ではありませんでしたよ? もっと練習しないとです」

歩夢「そ、そうだよね……もっと頑張らないと」

かすみ「そうです。なので私とダンスレッスンを一緒に──」

しずく「かすみ、歩夢さんのライブ中めっちゃ楽しそうにサイリウム振ってたじゃん」

しずく「しかもライブ終わった後もめっちゃ満足そうだったじゃん」

歩夢「え? そうなの?」

かすみ「…………」

かすみ「ふん!」ペシンッ!!

しずく「いったぁ!! ──暴力反対!!」

かすみ「うっさい!」プイッ

396:(しまむら) 2021/05/19(水) 23:35:48.07 ID:/ATcnxFz
彼方「でも、本当に良いライブだったよ歩夢ちゃん。私もやる気出たし、今日は練習参加するよ」

歩夢「え? 本当ですか? ありがとうございますっ」

せつ菜「素晴らしいライブでした! もしかしたら私みたいに、スクールアイドルを始めたいと言う方が現れるかもしれませんよ?」

歩夢「えー? それはさすがに……」


コンコンコン


彼方「ん? お客さんかな? はーい」 スタスタ

せつ菜「ほら! 早速入部希望者が来たのかもしれません!」

歩夢「いやいや、それはないよせつ菜ちゃん」

しずく「あたし知ってるよこれ」

かすみ「なにが?」

しずく「これ、フラグ回収ってやつだよ」


彼方「空いてますよ? どうぞー」


ガチャ!

「失礼しまーす!」

「失礼するよ」


歩夢「──あっ」

398:(しまむら) 2021/05/19(水) 23:51:47.82 ID:/ATcnxFz
歩夢(果林さんと、璃奈ちゃん!)


果林「……」ニコニコ

璃奈「……」

せつ菜「あなた方は──ライフデザイン学科の朝香果林さんと、情報処理学科の天王寺璃奈さんじゃないですか!」

果林「こんにちは! 会長!」

璃奈「ん」ペコリ

彼方「おぉ〜果林ちゃんじゃん。どうしたの?」

果林「あっ! 彼方! なんでここにいるの!?」

彼方「私、スクールアイドル同好会の部長なんだ。だからここにいるの」

果林「へぇ〜!!」キラキラ

しずく「知り合いなの? かな姉」

彼方「うん。クラスは違うけど学科は同じなんだよね。授業被ったりもしてるよ」

果林「彼方はいつも勉強助けてくれるから助かってるよ〜!」ニコニコ


歩夢「」

歩夢(か、果林さん?)

歩夢(あの人、果林さんだよね!?)

399:(しまむら) 2021/05/20(木) 00:06:23.09 ID:zOvSbmqv
歩夢(声高すぎない!?)


かすみ「げっ……天王寺璃奈……!?」

せつ菜「? どうしたんですか、かすみさん」

かすみ「いや……その……」

璃奈「おや? かすみちゃんだ」

かすみ「…………」

璃奈「そうか、あなたもスクールアイドルだから同好会に所属してるんだね。これは助かるよ。知り合いがいるのといないのじゃ、居心地の良さに雲泥の差があるからね」


歩夢(璃奈ちゃんは……少し口調が違うくらいだけど……あんまり変わら──)


璃奈「それに、あなたの可愛い理論と私の考える可愛い理論について語れるね」ニヤニヤ

かすみ「話長いからやだし、私あなたのこと苦手だから付き合いたくない。帰って」

璃奈「照れるなよかすみちゃん」ニコッ

かすみ「照れてない!!」


歩夢(あっ、全然違った……)

歩夢(でも、笑ってる璃奈ちゃん可愛いなぁ。笑ってなくても可愛いけど)

400:(しまむら) 2021/05/20(木) 00:17:24.09 ID:zOvSbmqv
かすみ「──って、いま居心地がとか言ってたけど……ま、まさか?」

果林「そう! わたし達!」

璃奈「スクールアイドルになりたくてやってきたよ」グッ

かすみ「」

せつ菜「おお!! 予想的中です!!」

しずく「まさかまさかの新入部員増加ブーストだねぇ」

彼方「すごいねぇ〜」ニコニコ

しずく「ねぇ〜」ニコニコ

歩夢(私の知る人達が……少しずつ集まってくる……!)

歩夢「ふふっ、嬉しいなぁ」ボソッ ニコニコ

402:(しまむら) 2021/05/20(木) 00:21:43.48 ID:zOvSbmqv
果林「あっ!!」

歩夢「へ?」

タッタッタッタ! ──ギュッ!!

果林「上原歩夢ちゃんだよね!?」

歩夢「は、はい」コクリ

果林「はぁぁぁぁぁ!」

歩夢「!?」

果林「近くでみるとほんっとかえーしきゃー!」

歩夢「へ? か、かえ……?」

果林「あぁ、ごめん! 可愛いねー!」

歩夢「え、えぇ!?」

果林「わたし、あのライブ見てあなたのファンになったの! 会いたかったよー!」ギュッ!!

歩夢「か、果林さん!?(スキンシップが激しすぎるよ!?)」

果林「んー、予想通り歩夢ちゃんやわらきゃ〜!」ギュュュュ

歩夢「えぇ……」

せつ菜「むっ……」ムスー

せつ菜「…………」ギュッ

歩夢「せつ菜ちゃん!?」

せつ菜「寒かったのであっためてほしいです」

歩夢「今の気温、26℃あるよ……?」

408:(しまむら) 2021/05/20(木) 00:40:47.22 ID:zOvSbmqv
歩夢「と、とりあえず動けないです……」

せつ菜「そうですね。果林さんがくっついたままだと歩夢さんが動けないですもんね。離れて下さい、果林さん!」ニコッ

歩夢「いや、せつ菜ちゃんもだよ?」

果林「あぁ、かんべんよー」スッ

せつ菜「いいんですよ果林さん」ペカー

歩夢「……」

璃奈「果林さんと同様、私もあなたのライブを見てスクールアイドルになりたくなったよ」

璃奈「歩夢さんのライブはとても良いものだった」

璃奈「端的に言うなら、素晴らしい」

歩夢「ほ、ほんと? ありがとうね璃奈ちゃん」ナデナデ

璃奈「!?///」ビクッ!

歩夢「──あっ、ご……ごめんね? つい撫でちゃった」

璃奈「なぜかな? 出会ったばっかなのに何故かナデナデしてもらえるくらい好感度が高い。以前から私を知っているかの様な手馴れた動作だった」

璃奈「さては歩夢さん……私の事すきだね?」

かすみ「は?」

歩夢「あ、あはは……」

璃奈「私は私をすきな人がすきなんだ」

歩夢「え?」

璃奈「イメージ通り歩夢さんは優しい人だし……歩夢さん、すき」ギュッ

歩夢「あ、ありがとう」

歩夢(なに!? みんな大胆過ぎるよ……!)

歩夢(でも、なんだか賑わってて)

歩夢(楽しい)

414:(しまむら) 2021/05/20(木) 00:59:55.74 ID:zOvSbmqv
かすみ「はぁ……騒がしくなりそうですね。急にこれだけ新入部員が増えるとなると」

彼方「イスとかロッカー増やしてもらってて良かったよね」

かすみ「せつ菜さん入部後にすぐもう1人部員が増えましたもんね」

璃奈「おいおいかすみちゃん。果林さんを省くんじゃないよ。可哀想」

かすみ「頭の中お花畑なの?」

果林「えぇ!? わ、わたし入部認めてもらえないの!?」

果林「ひどい!!」シクシク

かすみ「彼方先輩! クセが強い部員増えすぎなんですけど!! 助けて!!」

彼方「みんな個性的で可愛いね〜」ニコッ

しずく「まともなのは歩夢さんとかな姉だけだね」

しずく「──あっ、あとあたしかぁ」ニコニコ

かすみ「能天気コンビが!!」

415:(しまむら) 2021/05/20(木) 01:10:11.14 ID:zOvSbmqv
歩夢「あっ、みんなごめんなさい。私ちょっと飲み物買ってくるね?」

果林「あっ! わたしも行きたいっ」

果林「わたし方向音痴でさぁ〜。道迷っちゃうから案内してほしい!」

歩夢「いいですよっ(自販機すぐそこなんだけどね……)」

果林「やったら〜! ありがとう!」バンザーイ

歩夢(かわいいなぁ。違和感凄いけど……)

しずく「歩夢さん、行ってらっしゃい〜」フリフリ

せつ菜「うぅ……飲み物、買い忘れてれば良かったです……」ボソッ


スタスタ ガチャ



「──あっ」

歩夢「え?」

果林「ん?」

愛「…………」

歩夢「愛ちゃん?」

416:(しまむら) 2021/05/20(木) 01:20:18.55 ID:zOvSbmqv
愛「……」

果林「あっ! あなた、あの時エマと一緒にいた子!」

歩夢「え?」

愛「なっ!!」

果林「歩夢ちゃん、この子もライブ見てたの!」

果林「部室前にいたって事は、入部希望!?」

愛「な……なぁ……!!」プルプル

愛「──んなわけあるか! 馬鹿かよ!!」プイッ

果林「なっ! ば、馬鹿じゃないもん!」

愛「うるせぇ!」

歩夢「愛ちゃん、私に用事? それとも本当に……」

歩夢「あっ! それよりもライブ見てくれてたんだね!」

歩夢「ありがとうっ」ニコッ

愛「──ッ!!」

愛「……なんでもねぇよ」

歩夢「え?」

愛「なんでもないっつの!!」バッ

タッタッタッタ!!

歩夢「あ、愛ちゃん!?」

果林「足はっやいね〜。すごきゃ〜」

歩夢「……ごめんなさい果林さん。私、愛ちゃん追いかけて来ます!」

果林「え?」

タッタッタッタ!!

果林「あ、歩夢ちゃーん!?」

417:(しまむら) 2021/05/20(木) 01:28:30.51 ID:zOvSbmqv
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

歩夢「愛ちゃん!」

歩夢「待って──愛ちゃん!」

愛「っ、んだよ!!」

歩夢「!!」ビクッ

愛「…………」

歩夢「え、えっと……その……」

歩夢「な、何か用事でもあったの?」

愛「だからなんでもねぇって言っただろ……追いかけて来んな」

歩夢「で、でも急に愛ちゃんが──」

愛「ッ──!! その!!」

愛「愛ちゃんってのやめろッ!!」

歩夢「ひっ!」ビクッ!!

愛「!!」

歩夢「……ご、ごめんね……?」

愛「…………」

愛「なぁ」





愛「お前……誰なんだ?」

歩夢「え?」

418:(しまむら) 2021/05/20(木) 01:39:01.10 ID:zOvSbmqv
愛「……アタシが知ってる上原歩夢は」

愛「アタシを絶対にちゃん付けなんてしないし」

愛「笑顔も向けない」

愛「怒鳴り声にもビビったりしない」

愛「アタシを見て泣いたりしない」

愛「抱きついたりしない」

愛「あんな歌を……歌わない……」

愛「……あんたみたいな優しい目をしてない……」

歩夢「……」

愛「なぁ」

愛「……あんた……誰なんだよ」

歩夢「わ、私は……!」

愛「──アタシが憧れてた上原歩夢を」

愛「返してくれよ……!」

歩夢「」


悲しそうな愛ちゃんの表情が──私の目に焼き付いてしまった。

419:(しまむら) 2021/05/20(木) 01:39:19.87 ID:zOvSbmqv
つづく。

433:(しまむら) 2021/05/20(木) 20:02:14.46 ID:zOvSbmqv
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

アタシの実家はもんじゃ焼き店を営んでいる。幅広い年齢層から人気だ。
名前は「もんじゃ みやした」。有名人も常連として訪れるとかで、結構有名みたい。

その為か両親は共働きで忙しく、アタシの為に時間を使ってはくれなかった。
いや、別にネグレクトされたりとかではなく、一定の愛情は注いでくれた。

家族を養う為に一生懸命働いているんだ。その時点で感謝はしている。

……ただ、寂しくないかと言えば、嘘になる。

ほぼ年中無休だし、働き過ぎだと思ったし、授業参観とか運動会の応援くらいは来てくれよと思っていた。

──でも、アタシは平気だった。


愛『おばーちゃん! 見て!』

愛『アタシ、テストで100点取った!』

愛『クラスでアタシだけだってさ!』


アタシには、大好きなおばーちゃんがいたからだ。

436:(しまむら) 2021/05/20(木) 20:12:16.38 ID:zOvSbmqv
アタシはおばーちゃんの怒った所、見たこと無かった。
いつも笑顔で優しくって、可愛い。自慢のおばーちゃん。

すごくアタシに優しくしてくれて本当に大好きだった。

目元がアタシと似てて、アタシは自分の容姿が大好きになり自信が持てた。共通点があって、嬉しかったなぁ。

あと、おばーちゃんが作るぬか漬けは、本当に大好きだった。世界一美味しい。
小学生の頃大好物は何って友達に聞かれた時、おばーちゃんが作るぬか漬けと答えたくらい。

それくらい大好きだった。

両親は忙しかったし、たまには休んでアタシとの時間を過ごしてくれって思っていたけれど!
おばーちゃんがいたから……平気だった。


でもそんな優しいおばーちゃんが──ある日突然、亡くなった。

437:(しまむら) 2021/05/20(木) 20:13:30.87 ID:zOvSbmqv
愛『うそ』

愛『そんなの絶対に……嘘だよ……』


アタシが中学一年生の時だった。

別に、重い病気があったりとかではなかった。
もっと、長生きするはずだった。

そう、おばーちゃんはもっと長生きするはずだったんだ。

たまたま引いた風邪が原因で、おばーちゃんは体調を崩し、病院に行き、入院して──ある時に亡くなった。


愛『嘘だよ……そんなの、嘘だよッ!!』


信じられなかった。

アタシはその事実を知らされた時、信じられないくらい泣いた。

だってさ、風邪だよ?

それが原因で亡くなるだなんて、思っていなかった。

お葬式は静かに行われたけれど……アタシは正直放心状態だったからあんまり覚えていない。

お店も臨時休業。アタシの両親への休んでくれと言う想いは、皮肉にもおばーちゃんの死で実現されてしまった。

アタシは、これからひとりぼっちになるのかな?

それとも、両親が少しはアタシに構ってくれるようになるのかな?

色々な思いがあったけれど──とにかくアタシは泣いた。

438:(しまむら) 2021/05/20(木) 20:20:00.08 ID:zOvSbmqv
愛『……………………』


おばーちゃんが亡くなって、数日。

結果を発表しよう。


愛『………………』


両親は今日も元気に働いていた。

アタシはひとりで部屋に蹲っていた。

いつもと変わらない日常。

変わった事はと言えば、おばーちゃんがいない。

それだけだった。

……それだけ?


愛『…………』

愛『ふざけんな』


真面目に生きるのが──馬鹿らしくなった。

440:(しまむら) 2021/05/20(木) 20:34:33.72 ID:zOvSbmqv
愛『…………』


世の中に、何故か無性に腹が立ってしまった。自分で語るのもあれかもしれないけれど、アタシは荒れた。

何をしても楽しくない。ただ、生きててイライラする。負の感情が収まらない。

色々な思いがあった。上手く言葉が見つからないけれど──世の中がクソにしか思えなかった。


愛『……ねぇ……』

愛『今、アタシにぶつかったよね?』

『は?』


ケンカをよくするようになったのは、これがきっかけ。

学校にガラの悪い子がいたけれど、そいつがアタシにぶつかって何も言わずに去ろうとした。
……めちゃくちゃ、腹が立ってしまった。

442:(しまむら) 2021/05/20(木) 20:41:58.05 ID:zOvSbmqv
結果、ボコボコにしてしまった。

ケンカしても、いいことはない。手は痛いし、身体だって痛くなる。

──ただ、スカッとしてしまった。

そこからはケンカに明け暮れる日々。

何やってんだろうなって思う事は沢山あった。

でも、他にやる事もしたいこともなかった。

アタシには、ケンカしかなかったんだ。サイコーな事も、楽しい事も……何も無かった。

──ただ、勉強はした。学校はサボったけれど、上から数えた方が早いくらいの成績はキープした。
ケンカだって、アタシと同じく荒れてる奴らとしかしなかった。

おばーちゃんの顔に泥を塗りたくなかったからだ。

いや……不良になってる時点で、泥は塗ってるか……。


愛『…………』

愛『ねぇ』

愛『おばーちゃん』

愛『こんなろくでもないアタシだけど』

愛『アタシがそっち行った時』

愛『怒ってくれる……?』


こうしてアタシは、高校一年生になった。

446:(しまむら) 2021/05/20(木) 21:22:28.97 ID:zOvSbmqv
歩夢『ねぇ』

歩夢『そこに立たれるの』

歩夢『邪魔なんだけど』


入学式初日。

虹ヶ咲学園に入学し、最初に聞いた他人の言葉はこれだった。
校舎の大きさに驚き、少し感動して見上げてる時。

そんな時に、わざわざアタシにそんな事言う奴がいた。


愛『あ?』

愛『こんなに道広いんだから少しズレて歩けば良いだろーが』

歩夢『……こんな道のド真ん中で校舎見上げながら立たれると邪魔なんだって言ってるんだけど?』

歩夢『日本語分からないの? 頭悪そ〜』

愛『……アタシ、この学校で一番成績の良い情報処理学科の新入生なんだけど。普通科と偏差値の差が凄いの知ってるか?』ニコニコ

歩夢『…………』

愛『はっ』

愛『ちゃんと調べてからマウント取れよ。ばーか』

歩夢『……』

歩夢『ふふっ』

愛『あ?』

歩夢『頭の良い情報処理学科の人も、あんなお子ちゃまみたいな表情で学校見るんだね』

歩夢『頭脳は大人、見かけはお子ちゃまなんだね』クスクス

愛『』ピキッ

愛『おい』

愛『今アタシの事、馬鹿にしただろ?』

歩夢『……最初から馬鹿にしてるよ?』

歩夢『頭良くても、そんな事も分からないんだねぇ』

448:(しまむら) 2021/05/20(木) 21:28:57.13 ID:zOvSbmqv
愛『……』

歩夢『……』

愛『表出ろ』

歩夢『……ここ外だっつの』

歩夢『ばーか』

愛『ッッ……!!』プルプル

愛『ケンカする時のお約束だろうが!!』

歩夢『知らないっての』

歩夢『てか、声デカいんだけど』

歩夢『それに、さっきから余計な事ばっかペラペラ喋ってさ』

愛『』

歩夢『ほんっと』

歩夢『弱い犬ほど良く吠えるんだよなぁ』

愛『』ブチッ


アタシの入学式初日は、こんな感じだった。

452:(しまむら) 2021/05/20(木) 21:34:58.85 ID:zOvSbmqv
愛『……』

愛『……いってぇ……』


結果、アタシはボコボコにされた。

ケンカで負けたのは、初めてだった。


愛(クソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソが)

愛『ッ、ッッ……!!』


あまりにも悔しかった。1発もアタシの殴りは当てられなかったし、一番腹立たしいのはアタシの顔を殴らなかった事。


愛『舐めやがって……!』


サイテーな入学式初日。

その次の日から、アタシのあいつを追う日々が始まった。

456:(しまむら) 2021/05/20(木) 21:52:45.86 ID:zOvSbmqv
愛『おい』

歩夢『……』

愛『昨日はよくもやってくれたなぁ……!』

歩夢『……はぁ……』

歩夢『なんの用?』

愛『決着付けるぞ』

歩夢『はぁ?』

歩夢『10対0でわたしの勝ちでしょ』

愛『まだアタシは負けを認めてねーんだよ』

歩夢『……そんなくだらない事言う為にわざわざ普通科の教室まで探して来たの?』

歩夢『こんな広い学校の中でご苦労さまだね〜。暇人だね〜』


めちゃくちゃ広い校内だから、確かに苦労はあった。やっとの思いで見つけた、この目の前の女は……アタシを馬鹿にするように煽り続ける。


歩夢『その頭のしっぽを揺らしながらここまで来たんだね』

歩夢『んー、えらいえらい。可愛いワンちゃんだぁ〜……ナデナデしてあげよーか?』

愛『……ッッ』プルプル

愛『てめぇもアタシと同じ髪型してんだろーが!!』バンッ!!

歩夢『……机叩くなよ』

歩夢『うるさい』

458:(しまむら) 2021/05/20(木) 21:57:46.72 ID:zOvSbmqv
ザワザワザワザワ

『え? なに? ケンカ?』

『こわ……』

『……絶対にあぁいうヤンキーっているよねぇ』

ヒソヒソヒソヒソ


歩夢『…………』

歩夢『ねぇ』

歩夢『静かにしててくれる?』

歩夢『うるさいんだけど』


背筋が凍るかのような、とても冷たい一言だった。
教室の中が一気に静まり返る。


歩夢『……場所変えよ』

愛『!!』

歩夢『昨日みたいにまたボコボコにしてあげるよ』

歩夢『このバカ犬が』


この日の上原は、なぜだか機嫌が悪そうだった。

462:(しまむら) 2021/05/20(木) 22:09:46.51 ID:zOvSbmqv
愛『…………』


結果、アタシはまたボコボコにされた。昨日と全く同じ展開だった。

化け物かよ。


愛『…………』

愛『上原歩夢……かぁ』


初めてあった、自分よりもケンカの強い人間。

それに、上原はアタシと同じ目をしてて……何故か気になった。

あの、世の中をクソだと思い込んでいる、何も楽しい事が無い目。


愛『おい、てめぇ』



愛『おい、上原』



愛『上原』


アイツを追う日々は、少し楽しかった。

470:(しまむら) 2021/05/20(木) 22:45:42.36 ID:zOvSbmqv
歩夢『ねぇ』

歩夢『もうわたしに、関わるのやめてよ』

愛『は?』

歩夢『……』

愛『なんでだよ』

歩夢『……嫌いなの』

歩夢『人が』

愛『…………』

歩夢『だから、もうわたしに関わるの──』

愛『いやだね』

歩夢『はぁ?』

愛『なんでアタシがお前の言うこと聞かなきゃいけないんだよ』

歩夢『……』

愛『……それに』

愛『アタシはまだお前に負けたって思ってないから』

愛『決着付けるまで、付きまとってやるからな』

歩夢『…………』

歩夢『……ふふっ』

愛『んだよ』

歩夢『少しはわたしに攻撃当てられるようになってから言いなよ』

歩夢『宮下』


──この後日、上原は事故にあったって聞いた。

476:(しまむら) 2021/05/20(木) 23:46:38.76 ID:zOvSbmqv
ろくでもないアタシだけど、慕ってくれる子達はいた。
そんな子達が集まって出来た愛トモ。その子達から聞いたんだ。

交通事故みたいだった。車にはねられたって聞いた。

病院に搬送されて、入院中らしい。


愛『……』

愛『上原……』


心配ではあった。

でも、アイツなら平気だろう。

だって、あの上原だ。アタシよりも強くて、アタシと似た目をしていて──いつの間にかアタシの憧れの人になってた、上原歩夢。

そんなアイツが、こんなのでいなくなるわけない。

そう思っていた。

そして案の定、上原が退院したという話を聞いた。

──ほら、予想通りだ。アイツは帰ってきた。

これで、決着を付けられる。

478:(しまむら) 2021/05/20(木) 23:52:09.12 ID:zOvSbmqv
愛『……ひさ──』


バッ──ギュッ!!


アタシは気が付くと──上原に抱きつかれていた。


愛『は? は……?』

歩夢『……愛ちゃんだ……愛ちゃん……!!』

愛『ちゃ、ちゃん!?』

歩夢『ひっぐ……! ぁぅ……っ……!!』ポロポロ

愛『え、えぇ……』

歩夢『ごめんね……急に泣いて……でも……でも……』

歩夢『愛ちゃんに会えて……嬉しくて……!!』ギュッ

愛『…………』


アタシが会いに行った上原歩夢は……別人になっていた。

479:(しまむら) 2021/05/20(木) 23:57:58.98 ID:zOvSbmqv
最初は事故って頭が混乱でもしたんだろうなと思っていた。
でも、今のアイツを見る度に──


歩夢『私、もう二度とケンカしない』


歩夢『愛ちゃんとは、友達でいたいもん』


歩夢『その上原って言うのも……やめてほしいかな……』



歩夢『──皆さん』

歩夢『本日はお集まり頂き、ありがとうございます』ニコッ

歩夢『……余計な事は言いません』

歩夢『今はただ』

歩夢『私の歌を聞いて下さい』ニコッ


──アタシの知っている上原歩夢がいなくなったの事が、分かった。

481:(しまむら) 2021/05/21(金) 00:08:35.61 ID:6e3tJVW0
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

愛「……」

歩夢「……」

愛「……あんたに言ったってしょうがないかもだけどさ」

歩夢「え?」

愛「今のあんたは、皆から好かれてるよ」

愛「ただアタシは」

愛「アタシと同じ目をした……上原歩夢に……戻ってほしいよ……」

歩夢「…………」

愛「……」

愛「それじゃ……アタシ──」

歩夢「──いよ」ボソッ

愛「え?」

歩夢「──ッ!!」

歩夢「私だってッ!!」

歩夢「元に、戻りたいよ!!」ポロ、ポロ

愛「うえ……はら?」キョトン

486:(しまむら) 2021/05/21(金) 00:17:57.47 ID:6e3tJVW0
歩夢「幸せな日々が、無くなっちゃったんだよ!」

歩夢「同好会の皆と過ごしてた日々が、急に無くなってて!」

歩夢「気が付いたら私は一人になっちゃってて! みんな私の事を不良の上原歩夢だって怖がってて!」

歩夢「ケンカなんて、した事ない私を……怖がって!」

歩夢「みんな……みんな……別人になってて……」

歩夢「でも……それでも……前に進まなきゃいけないと思って……頑張って……!」

歩夢「皆もいい子で……やっぱりみんなのこと好きなんだって思えて……!!」

歩夢「楽しいけれど……嬉しい事もあるけど……」

歩夢「……私は……私は……!!」

歩夢「……前の……上原歩夢の日々に……!」

歩夢「もどりたい……!」

愛「…………」

歩夢「……っ……!!」ポロポロ

歩夢「ゆうちゃんに……」

歩夢「会いたいよぉ……っ……!!」ポロポロ

愛「…………」

487:(しまむら) 2021/05/21(金) 00:27:55.83 ID:6e3tJVW0
愛「…………」

歩夢「ひっぐ……っ……!!」ポロポロ

愛「…………」


スタスタ


歩夢「っ……っ、……!!」

歩夢(どこかに行っちゃう、愛ちゃん)

歩夢(八つ当たりだって、分かってる)

歩夢(急にこんな事言い出して、絶対に何言ってるんだろうって思われた)

歩夢(でも……ごめんなさい……)

歩夢「…………」

歩夢(耐えられなかった)


スタスタ


愛「…………」

愛「ん」スッ

歩夢「へ……?」

愛「水、飲みなよ」

歩夢「…………」

歩夢「……うん……」スッ

愛「……ちょっと座ろ。あそこにベンチあるし」

愛「歩ける?」

歩夢「……うん……」

愛「ん」

489:(しまむら) 2021/05/21(金) 00:34:37.47 ID:6e3tJVW0
愛「……」

歩夢「……」

愛「……」

歩夢「……」

愛「あのさ」
歩夢「あの」

愛「!!」

歩夢「!!」

愛「……先、いいよ」

歩夢「……ううん。先に愛ちゃんからでいいよ」

愛「……分かった」

歩夢「……ありがとう」

愛「…………」

愛「……アタシといつ最初にケンカしたのか……」

愛「覚えてる?」

歩夢「……ううん。覚えてない」

愛「……そっか……」

歩夢「というか、ね……」

歩夢「私、知らないの」

歩夢「今の上原歩夢が過ごしてきた日々」

歩夢「全部」

愛「え?」

491:(しまむら) 2021/05/21(金) 00:49:43.57 ID:6e3tJVW0
歩夢「愛ちゃん」

歩夢「私ね」

歩夢「狂犬の上原歩夢とは……言葉の通りの別人なの」

愛「え?」

歩夢「……私は……」

歩夢「マンションに住んでて、大好きな幼馴染の侑ちゃんが隣に住んでいて、楽しい日々を過ごしてた」

歩夢「そして、スクールアイドルに出会って、スクールアイドルになって」

歩夢「スクールアイドル同好会に入って……皆と楽しい日々を過ごしてたの」

愛(マンション……?)

歩夢「同好会の皆のこと、本当に大好きなの。同好会のメンバーは」

歩夢「せつ菜ちゃん、かすみちゃん、しずくちゃん、璃奈ちゃん、彼方さん、果林さん」

歩夢「そして」

歩夢「エマさんと」

歩夢「愛ちゃん」

愛「──は?」

愛「アタシ……!?」

歩夢「うん」

歩夢「私が知ってる皆は、スクールアイドルだった」

愛「…………」

歩夢「そんな皆と過ごしてた。スクールアイドルフェスティバルも開催できて、無事に終わって、10月を迎えた」

歩夢「……楽しかったなぁ」

愛「……」ポカーン

493:(しまむら) 2021/05/21(金) 01:09:50.05 ID:6e3tJVW0
歩夢「何言ってるんだって思うよね」

歩夢「私の頭、おかしくなっちゃったのかなって思うよね」

愛「!! そんなこと──」

歩夢「実際に頭おかしくなっただけなら、どれだけ良かったんだろ」ニコッ

愛「!!」

歩夢「今は5月で、私が最後に見た景色と季節は10月。こんなわけがわからないものが……現実だったの」

歩夢「痛みは感じるし、夢じゃない。時間だって変わらずに、無情にも動くし」

愛「……」

歩夢「……本当にごめんなさい。急にこんな事言って」

愛「……あんた……もしかして」

愛「別世界の……人間なのか?」

歩夢「…………」

歩夢「よく、わかんない」

歩夢「別世界の存在だなんて、現実だとは思えないもん……」

歩夢「──でも、私も上原歩夢なの」

歩夢「ただ……今の、この上原歩夢と私は別人」

歩夢「私が知る同好会の皆も……別人だし……」

歩夢「便利な事で例えるなら、別世界の上原歩夢」

歩夢「……なのかも……」

愛「…………」

494:(しまむら) 2021/05/21(金) 01:21:49.62 ID:6e3tJVW0
愛「……」

愛「聞いたことがある」

歩夢「え?」

愛「この現実とは別に、もう1つの現実が存在する」

愛「もしもこうだったらどうなっていたのか」

愛「そういう、歯車のズレで生まれる……並行世界」

愛「SF作品の中だけでなく、理論物理学で存在について語られている世界の可能性の話。そんな並行世界を──」



愛「──パラレルワールドって、言うらしい」

歩夢「パラレルワールド?」

501:(しまむら) 2021/05/21(金) 01:54:51.27 ID:6e3tJVW0
愛「例えば──マンションに住んでいる幼馴染がいたとするだろ? 幼馴染はAとBの2人だとする。Aは本来202に住む予定。Bは203に住む予定だったとする」

愛「そのまま予定通り202と203で住んだAとBは、仲良く過ごし人生を歩む」

歩夢「うん」

愛「じゃあ、その人達の部屋の番号が逆になったとしたら」

愛「たったそれだけで全く別の人生になる」

歩夢「え? 部屋が逆になっただけなのに……?」

愛「本来の予定とのズレ。部屋の番号が逆になるってことは、その前に何かあったのかもしれない。内装確認した時に気に入らない箇所を見つけたのか、窓からの景色が気に食わなかったのか、なんとなくで気が変わったりとか等々──それら可能性は全ての現象に影響してくるんだ」

愛「その人達が、例え同じ人物だったとしても、な」

歩夢「…………」

愛「そんなありえたかもしれない可能性が世界を分岐させて、並行世界として生まれる。それがパラレルワールドって言うらしい」

歩夢「……難しいや」

愛「まぁ、今が語った事も1つの理論でしかない」

愛「正解は存在しねぇし、誰にも分からないんだよな」

歩夢「…………」

愛「……なるほど、ねぇ……」

歩夢「え?」

愛「そりゃ……別人だなって思うわけだ……」

愛「スクールアイドルやってた上原が……不良の上原の人格になったんだもんなぁ……」

愛「別人な……わけだよ……」

歩夢「愛ちゃん……」

502:(しまむら) 2021/05/21(金) 02:00:31.97 ID:6e3tJVW0
愛「……なぁ」

歩夢「?」

愛「アタシが知ってる上原歩夢は……」

愛「消えちゃったのか……?」

歩夢「……わかんない」

歩夢「でも、私……思ってない事を喋っちゃった時があったの」

愛「え?」

503:(しまむら) 2021/05/21(金) 02:04:16.73 ID:6e3tJVW0
──────────

歩夢『──わたしね』

歩夢『あの子と約束したの』

歩夢『スクールアイドルになるって』


歩夢『わたし、本当はケンカなんてしたくない』

歩夢『わたしは……あの子と一緒に、ずっと一緒にいたかっただけ……!』

歩夢『でも……それはもう叶わない夢だから』

歩夢『だから……だから……わたしは……それが許せなくて……!!』

──────────

504:(しまむら) 2021/05/21(金) 02:09:13.50 ID:6e3tJVW0
歩夢「私の意志とは別に、発された言葉だったの」

歩夢「……私の存在しない記憶も……あるし」

歩夢「あの時の言葉が……上原歩夢の本心かは分からないけれど」

歩夢「……この子の、上原歩夢の──本当の思いだったんじゃないかなって思いたいかな……」

愛「……」

歩夢「というか愛ちゃん」

愛「え?」

歩夢「私の言葉……信じてくれるの?」

歩夢「こんな……わけわからない話なのに」

愛「……信じるしかないだろ」

愛「アタシ、あんたが嘘ついてるように思えないし」

歩夢「……」

506:(しまむら) 2021/05/21(金) 02:29:16.05 ID:6e3tJVW0
愛「あのさ」

愛「あんたのよく知るアタシの事……教えてくれない?」

歩夢「……うん、いいよ」

愛「……」

歩夢「愛ちゃんはね、とっても面白くて明るくって、可愛い子なの」

愛(別人じゃねーか……)

歩夢「璃奈ちゃんと仲良しでね。部活の助っ人にたくさん呼ばれて部室棟のヒーローって呼ばれててね」

歩夢「出会ったばかりの私にも優しくしてくれたの。あなたと一緒で、私のよく知る愛ちゃんも優しい子なんだぁ」ニコッ

愛「……」

歩夢「あとね、よくダジャレを言って場を和ませてくれるの」

愛「え?」

歩夢「よく言うダジャレはね」

歩夢「愛してるよ、愛だけに」

歩夢「って言うの」

愛「────」

507:(しまむら) 2021/05/21(金) 02:30:05.03 ID:6e3tJVW0
愛『おばーちゃん! 見て!』

愛『アタシ、テストで100点取った!』

愛『クラスでアタシだけだってさ!』

『おー、すごいね愛ちゃん。いい子いい子〜』

愛『えへへ〜!!』

愛『おばーちゃん大好き!』

『ほんと? 私も愛ちゃんの事、愛してるよ』

『愛だけに、ね』

愛『きゃはは!』

愛『おばーちゃんのダジャレ、ほんっと面白い!』

愛『大好きー!』

510:(しまむら) 2021/05/21(金) 02:33:27.97 ID:6e3tJVW0
歩夢「愛ちゃん?」

歩夢「愛……ちゃん……?」





愛「ッ……、っ……!!」ポロポロ

愛「ぁ……ちが……これ……っ……!!」ポロ、ポロ

愛「ぅぁ……ぁ、ぐっ……ひぐ……っ……!!」

歩夢「あ、愛ちゃん……?」

歩夢「──愛ちゃん!!」

514:(しまむら) 2021/05/21(金) 02:43:20.46 ID:6e3tJVW0
愛「……っ……そっか……」

愛「そっちのアタシは……幸せなんだね……!」

愛「アタシ……不良になんかなっちゃって……」

愛「何やってんだろうなぁ……っ……!」ポロポロ

歩夢「──っ愛ちゃん!」

ギュュュュ

歩夢「愛ちゃんは愛ちゃんだよ!」

歩夢「不良になってたって、変わらない! あなたは、私の知る愛ちゃんと変わらない……優しい愛ちゃんだよ……!!」

愛「……っ……」

歩夢「それに……泣きたい時は……我慢しなくていい……」

歩夢「大丈夫だから……ね?」ポロポロ

歩夢「泣いて……いいから……」ポロポロ

愛「──っ!!」

愛「うん……! うん……ッ……!」ギュッ

愛「……ありがとう……っ……!!」ギュュュュ

歩夢「…………」

ギュュュュ




515:(しまむら) 2021/05/21(金) 02:48:17.53 ID:6e3tJVW0
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

愛「……ごめん。急に泣いたりして」

歩夢「ううん。大丈夫だよ」

歩夢「……」シュン

愛「? ……どしたん?」

歩夢「んーん」

歩夢「せつ菜ちゃんみたいにかっこよく励ましたかったのに……」

歩夢「愛ちゃんが悲しんでる姿見てたら……私も悲しくなっちゃって……泣いちゃってさ……」

歩夢「かっこ悪いなぁって……」

愛「…………」

愛「ぷっ」

歩夢「え?」

愛「あっはっはっはっは!」

歩夢「え? えぇ!?」

愛「誰もあんたにかっこよさなんて求めてないっつの」

愛「そんな小動物みたいな雰囲気してて、何言ってんだか」

歩夢「……うぅ……ひどい……」

愛「──まぁ、でも」

愛「あんがとね」ニカッ

歩夢「愛ちゃん……」

歩夢「うん!」ニコッ

517:(しまむら) 2021/05/21(金) 02:52:34.58 ID:6e3tJVW0
愛「ねぇ」

愛「あんたの知るアタシってさ、スクールアイドルやってるんだよね?」

歩夢「うん」

愛「……アタシも……スクールアイドルになれっかな?」

歩夢「え?」

愛「……あんたの歌」

愛「めっちゃ良かったんだよね」

愛「正直言って、心打たれた」

歩夢「ほ、ほんと?」

愛「うん」コクリ

愛「……上原と別人みたいだなって思って……めちゃくちゃ複雑な気分だったけど……」

愛「良い……ライブだったよ」

歩夢「あ、ありがとう///」

愛「照れんなっての。こっちが恥ずかしくなる」

歩夢「ご、ごめん」

愛「謝んなって」

518:(茸) 2021/05/21(金) 02:55:49.56 ID:6Oz9S5Zc
愛「ろくでもないアタシだけど──」

歩夢「!! ──そんな事ない!」

愛「!!」ビクッ!

歩夢「愛ちゃんは、ろくでもない人なんかじゃないよ」

愛「……」

歩夢「愛ちゃんなら、絶対にスクールアイドルになれる」

愛「!!」

歩夢「……なろうよ。スクールアイドルに!」

歩夢「私と一緒に、ね?」ニッコリ

愛「…………」

愛「うん!」ニコッ

519:(しまむら) 2021/05/21(金) 03:02:02.35 ID:6e3tJVW0
愛(なぁ、上原)

愛(お前が今どうなってるのか分からないけど)

愛(いつか会えるって信じてる)

愛(だからその時は……決着つけような)

愛(スクールアイドルとして)

愛「……ねぇ」

歩夢「ん?」

愛「歩夢って、呼んでいい?」

歩夢「!!」

愛「上原の事……本当は苗字じゃなくて名前で呼びたかったんだよね」

歩夢「愛ちゃん……! ──大歓迎だよ!!」

ギュッ!!

愛「!!////」カァァァァ

愛「お、おい! 恥ずかしいから離れろって!」

歩夢「あっ……ごめんなさい」

愛「た、たくっ……まぁ、いいけどさ」

520:(しまむら) 2021/05/21(金) 03:09:04.02 ID:6e3tJVW0
愛「まぁ、これからもよろしくな」

愛「歩夢」ニコッ

歩夢「────」

歩夢「わたしも思ってたよ。──あなたのこと、名前で呼びたいって」

愛「え?」

歩夢「こちらこそよろしくね」

歩夢「愛」ニコッ

愛「」ポカーン

歩夢「──あ、あれ? 今私なんて言っ……愛ちゃんの事……あれ!?」

愛「あはは!」

歩夢「!?」

愛「……部室行こっか」

愛「歩夢!」

521:(しまむら) 2021/05/21(金) 03:09:54.14 ID:6e3tJVW0
【Members walking together】

【NEXT】

【エマ・ヴェルデ&朝香果林】

523:(しまむら) 2021/05/21(金) 03:10:01.58 ID:6e3tJVW0
つづく。

550:(しまむら) 2021/05/22(土) 20:48:46.07 ID:si2qFWeK
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

どこまでも広がっていく、スカイブルーの空。

わたしが日本に来て初めて見た空は、とても綺麗だった。


エマ『わぁ……!!』

エマ(ここが、虹ヶ咲学園……!)

エマ(おっきい〜! 広い! 最高だよ〜!!)

エマ(よーし! ここでわたしはなるんだ)

エマ『──スクールアイドルに!』グッ


わたしは“2年生”の春から虹ヶ咲学園にやってきた。

昔、スイスで小さい頃に観たスクールアイドルの動画に感動し、わたしは憧れた。

沢山勉強して、スクールアイドルになる為に日本へやってきた。

ただ、本来は3年生から来る予定だったし、そのつもりで日本語の勉強もしていた。

──でも、我慢出来ずわたしは一年早めに日本へやって来てしまった。早くスクールアイドルになりたかったんだ。

551:(しまむら) 2021/05/22(土) 20:52:48.58 ID:si2qFWeK
エマ(まだ、日本語はマスター出来ていないけれど)

エマ(頑張るぞ〜!)

エマ『オー!』


そう、スクールアイドルになりたかった。





「はぁ、ほんと親ってムカつくわ」

「そーいえば、東雲で主に活動してる不良集団が愛さんのファンらしいよ?」

「は? 愛トモはあたし達だけなんだが?」

「愛トモの適性があるか調べる為に、殴り込みに行くかぁ」

「だなぁ〜! どーします? エマさん!」

「姉御!!」

「マム!」

ザワザワザワザワ


エマ「………………」

エマ(──どうしてこうなったの!?)

552:(しまむら) 2021/05/22(土) 20:56:15.51 ID:si2qFWeK
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

〜放課後 部室〜


かすみ「──ぜんっぜん違います! まだ恥ずかしさが残っていますよ!」

かすみ「正しくはこうです」

かすみ「えへっ、かすみんだよっ?」キャピッ

かすみ「──です!」

かすみ「わかりましたか?」

かすみ「愛先輩」

愛「…………」

554:(しまむら) 2021/05/22(土) 21:29:39.38 ID:si2qFWeK
かすみ「返事は?」

愛「だぁぁぁあああああ!! 分かってるよ!!」

愛「恥ずかしいんだっつーの!!」

かすみ「何が恥ずかしいんですか! スクールアイドル舐めてるんですか!?」

かすみ「スクールアイドルというのは時にあざとく、笑顔は可愛く、常に笑ってファンの子達に歌を届けなくてはいけないんです!」

かすみ「スクールアイドルにとって何が必要なのか。そこにハッキリとした答えはありません」

かすみ「ファンの皆さんに喜んでもらえるものならどれも正解です」

愛「……」

555:(しまむら) 2021/05/22(土) 21:34:03.11 ID:si2qFWeK
かすみ「ただ、求められるものはあります」

愛「!!」

かすみ「それに答える為には──スクールアイドルとしての自分を作れるように、努力するしかないんです」

かすみ「あざとさはちゃんとした武器です。可愛い自分を作る為には、絶対に必要なスキルです」

愛「……」

かすみ「スクールアイドルになりたいんですよね?」

かすみ「歩夢先輩のような」

愛「──あぁ!」

愛「アタシ、やるよ。あんがとな、かすみ」

かすみ「……その意気ですっ」ニコッ


しずく「──でさでさぁ〜」

璃奈「うんうん」

せつ菜「…………」ドキ、ドキ


かすみ「…………」

557:(しまむら) 2021/05/22(土) 21:56:54.05 ID:si2qFWeK
しずく「もうあたし、最近ヒーローモノに本当にどハマりしちゃってさ」

しずく「某作品のエンドゲームまで観てたんだよね」

しずく「その中でさぁ〜もぉ超絶、めちゃくちゃ良いシーンがあってね?」

しずく「えぇ〜ん……ブラック・ウィドウ〜……!!」シクシク

しずく「──ってなってたんよ。そしたらね、あたしの肩からね、ぬるぬる! って降りてく、小さな虫さんがいたんだよ」

しずく「こっちが良い気分で映画観てるのに……ッ!! ってなっちゃってさぁ」

しずく「もうあたし、気持ちはヒーローになってたから」

しずく「100万回殺すッ!!」

しずく「──って言ってそのまま素手でバァン! ってその虫さんやっつけちゃったよね」

璃奈「草」

せつ菜「ワイルド過ぎません!?」

璃奈「歩夢さんよりしずくちゃんの方がよっぽど狂犬でしょ」

せつ菜「ヒーローというよりもヴィランですよその行動は」

しずく「あははは〜!」


かすみ「…………」

かすみ「──」スゥゥゥ

かすみ「私達練習中ッ!!」

しずく「!?」ビクッ!

璃奈「!?」ビクッ!

せつ菜「!?」ビクッ!

558:(しまむら) 2021/05/22(土) 22:20:30.67 ID:si2qFWeK
しずく「急にびっくりした……どしたんかすみ」

かすみ「自分の行動と発言覚えてないの!?」

かすみ「私達練習中なんだけど! 堂々とサボらないでよ!」

しずく「むぅ……いやいや、あたし達さっきまでボーカル練習してて休憩中だからサボりじゃないんですけど〜?」

璃奈「そーだそーだ〜」

せつ菜「ま、まぁまぁお二人共。愛さんとかすみさんの練習を妨げてしまったのは事実ですから」

せつ菜「2人とも、ごめんなさい」ペコリ

愛「い、いやいや! 別にいいって! 頭上げてくれよせつ菜」

かすみ「……まともなのはせつ菜先輩だけです」

しずく「つってもここ部室じゃん? そのパフォーマンス練習なら外で練習すればいいじゃん」

かすみ「まだ練習段階なのに、部員以外の誰かに見られる可能性があるのは可哀想でしょ!」

愛(良い奴かよ……)

せつ菜(良い人ですね……)

しずく「まぁ確かに……ごめんなさい」ペコリ

愛「いやいや、大丈夫だってしずく! ──かすみもそんなに怒んなくて大丈夫だから。な?」

かすみ「まぁ愛先輩がそう言うなら」

かすみ「……でも私も怒鳴ったりしてごめん」ペコリ

559:(しまむら) 2021/05/22(土) 22:27:11.04 ID:si2qFWeK
ガラガラ スタスタ

果林「たっだいま〜!」

彼方「ランニングから戻ったよ」

歩夢(うん! やっぱりこの身体動きやすいなぁ。体力もあるし)

歩夢「あれ? みんな部室にいるの?」

かすみ「かすみん、愛せんぱいとパフォーマンス練習してましたっ!」

歩夢「ふふっ、そうなんだ」ニコッ

かすみ「はい!」

愛「中々奥が深いわ。スクールアイドルって」

かすみ「──そんなの当たり前です。だからこそ楽しいんですよ。スクールアイドルは」

彼方(相変わらずかすみちゃんの切り替えはすごいなぁ……)

560:(しまむら) 2021/05/22(土) 22:39:42.61 ID:si2qFWeK
果林「なになに!? 面白そーな練習だね!」

果林「わたしもやりたいっ!」

かすみ「え? 果林先輩もですか?」

かすみ「うーん……でも果林先輩は最初からあざといですからね……他のパフォーマンスをやるとしたら──」

果林「あざ……? まぁよく分からないけれど、ライブの時にファンの皆の前でやるようなやつを今やればいいんだよね?」

かすみ「え、まぁ……そうですね」

果林「それじゃ、わたし少しやりたい事があるの! 皆見ててっ!」

愛「おう」

しずく「すごいやる気だね〜」

彼方「ね〜」

561:(しまむら) 2021/05/22(土) 22:46:31.82 ID:si2qFWeK
果林「やるよ!」

果林「──」スゥゥゥゥ

果林「はぁい」

果林「セクシー系スクールアイドルの、朝香果林よ?」

果林「セクシーで情熱的なパフォーマンスで、みんなの事を魅了させて」

果林「あ・げ・る♡」

かすみ「」

しずく「」

愛「」

せつ菜「」

彼方「」

歩夢「わぁ〜……!!」パァァァァ

歩夢(か、果林さんだ……! 私がよく知る!)

果林「えへへ、どーかな?」

「「「誰!?」」」

果林「え!?」

563:(しまむら) 2021/05/22(土) 23:07:30.37 ID:si2qFWeK
せつ菜「声の高さが全然違ったんですけど……」

彼方「す、すごいね〜……」

果林「えへへ〜、どーもよい!」

果林「わたしさ、モデルに憧れてるんだ」

果林「クールでカッコよくて、セクシーで! 絵になるようなモデルになりたいの!」

果林「普段のわたしとは真逆だけどさ……」

果林「そんな人になりたいから、わたしは──自分の目指す憧れの人の! そんなスクールアイドルを作り上げようと思ってるの!」

果林「ちょっと演技みたいだけどねっ」

しずく「!!」

璃奈「ん? しずくちゃん、どうしたの?」

しずく「……んーん! なんでもな〜い」ニコッ

564:(しまむら) 2021/05/22(土) 23:18:04.79 ID:si2qFWeK
果林「そんなスクールアイドルも、ありだよね!? かすみちゃん!」

かすみ「あったりまえです! 自分の目指すスクールアイドルがちゃんと決まってて、素晴らしいですよ果林せんぱい!」グッ

愛「自分の目指す……スクールアイドルかぁ」

愛「まずはアタシ、それを見つけないとだな」

歩夢「ふふっ、ゆっくりで大丈夫だと思うよ? 愛ちゃん」

愛「ちなみに歩夢はどんなスクールアイドルを目指してんの?」

歩夢「私? 私は──皆の為のスクールアイドルかなぁ」ニコッ

愛「優等生発言だな……」

かすみ「元不良なんですけどね、歩夢先輩」

愛「それについてはアタシは何も言えねぇからやめてくれ」

565:(しまむら) 2021/05/22(土) 23:29:06.88 ID:si2qFWeK
せつ菜「うおおおお! なんかすごくやる気が出てきました!」

璃奈「うむ。私も一緒だね」

しずく「だね〜。あたしも気合い入れないとですなぁ」

かすみ「では皆さん! 引き続き練習頑張りましょう!」

「「「おー!」」」

歩夢「ふふっ」ニコニコ

歩夢(人数が増えて、賑やかになってきたスクールアイドル同好会)

歩夢(楽しいし、大好きだけど)

歩夢(まだ、エマさんがいない)

歩夢(……エマさん、不良の親玉だって聞いたけれど)

歩夢(本当なのかな?)

575:(しまむら) 2021/05/23(日) 10:53:10.61 ID:uiSIl6MK
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

日本に来たばかりのわたしは、とにかく日本語を覚えるのに必死だった。

スクールアイドルとして歌を歌う為には、日本語をしっかりとマスターしなければいけない。だから──必死だった。

周りの子達の日本語を理解するのも中々難しく、会話に混ざるのも大変だった。

でも、虹ヶ咲学園の子達は優しい子ばかりだった。留学生のわたしを優しく迎え入れてくれた。
友達、と呼べる程の仲ではなかったかもしれないけれど……。

──でも、ある時にわたしは日本語の使い方を間違えてしまったんだ。
特に致命的なミス等ではなく、普通に聞き流せるレベルのものだったけれど、クラスメイトのある一言が……わたしは耳に深く残ってしまった。


『エマさん、その日本語変だよ〜』

エマ『──え?』


なんてことも無い日常会話。でも──耳に残った。

変? ……変、なの? わたしの日本語?


エマ『……ご、ごめんなさい!』

『へ!? え、エマさん!?』


スイスで日本語を勉強して数年。日本に来て数ヶ月。

でも、わたしの日本語はまだ変だと言われてしまうレベルのものだった。

──わたし、なれるの? スクールアイドルに。

小さい頃にスイスで観たスクールアイドルの子の様に、なれるの?

……自信が、なくなってしまった。
もっと勉強してから来ればよかった。

後悔しても遅かったかもしれないけれど、わたしはネガティブな事ばかり考えてしまった。

576:(しまむら) 2021/05/23(日) 11:02:15.69 ID:uiSIl6MK
エマ『………………』スタ、スタ、スタ

エマ(もっと……頑張らないと……)

エマ(日本語……マスターしないと)


ザワザワザワザワ


エマ「?」

エマ(なんだかすごい賑わってる。何かあったのかな?)


『ねぇねぇ! また狂犬がケンカしてるらしいよ』

『またぁ!? ほんと怖いんだけど……見えない所でやってほしいよ……』

『よく女子高生で殴り合いできるよね』

『狂犬は一発も受けてないみたいだけどね』

『それもいつものだね』


エマ(け、ケンカ!?)

エマ(た、大変!)

エマ(止めないと!)


エマ『あ、あの!』

『え?』

エマ『その、ケンカ……どこで、やってるの!?』

『へ?』

577:(しまむら) 2021/05/23(日) 11:13:28.15 ID:uiSIl6MK




エマ『……』タッタッタッタ

エマ『!!』ピタッ

エマ(いた!)


愛『はぁ……はぁ……!!』

歩夢『ほんと毎回毎回──あなたしつこいんだけど』

歩夢『そんなに殴られるのが好きなの?』クスクス

愛『好きなわけ、ねぇだろうが!!』 ヒュッ!!

歩夢『おっとっと』ヒョイ

歩夢『あははっ。女の子の顔を狙うなんて、ナンセンスだね♪』

愛「ッ!! こ、この……ッ!!」プルプル

愛『絶対一発入れてやるからなァ……!!』

歩夢『……やれるもんならやってみなよ』


明らかに、やり過ぎだと思った。

金髪の女の子が、一方的にやられている。
周りには……それを見るギャラリーの子達もいる。

──なんで誰も止めないの?

少しイラッとしたけれど、今はこのケンカを止めることが最優先だ。


エマ『だ、ダメッ!!』

愛『へ?』

歩夢『は?』

578:(しまむら) 2021/05/23(日) 11:26:16.21 ID:uiSIl6MK
歩夢『…………』

エマ『…………』

愛『お、おいあんた! 何して……危ねぇから離れろって!』

エマ『やだ!』

愛『!?』

エマ『ケンカ……ダメ』

愛『え、えぇ……』

歩夢『……ふふっ』クスクス

エマ『!!』ビクッ!

歩夢『なんですか? あなた急に』

歩夢『ケンカを止めるのが美徳とでも思ってるんですか? 何か漫画やドラマでも見て影響されたんですかぁ?』

エマ『ち、違う! でも、ケンカ……ダメだよ』

歩夢『……』

歩夢『ムカつくなぁ』

愛『!! ──おい、上原! カンケーねぇ奴は巻き込むなよ!!』

歩夢『は? 関係ない?』

歩夢『ケンカ止めに介入して来たんでしょ? ならもう関係あるんじゃない?』

愛『ッッッ』

歩夢『それにさぁ……』

歩夢『ムカつくんだよねぇ』

歩夢『──こういう偽善者が、いっちばんね』ギロリ

エマ『!!(こ、この子……目が怖い)』

エマ(で、でもビクビクしちゃダメ! 怒ってる子から目を逸らしちゃ、ダメだ!)

エマ『……』ジッ

歩夢『……』

579:(しまむら) 2021/05/23(日) 11:38:57.23 ID:uiSIl6MK
ザワザワザワザワ


エマ『なんでケンカしちゃったの……? 理由があるなら、わたし聞くから』

歩夢『……』

歩夢『話して何かしてくれるんですか?』

エマ『で、できること……あるかもしれない』

歩夢『ははっ、面白いこと言いますねぇ』

歩夢『そういう場合、大抵なにも出来ませんよ?』

エマ『……』

歩夢『……個人の問題に首突っ込んでさ。あなたみたいな人は……最終的には何もしてくれないんだよ』

愛『……上原?』

歩夢『このケンカ見てるだけの野次馬よりもタチが悪いね』

エマ『……』

歩夢『──中途半端な偽善が一番いらないの』

シュッ!!

愛『!! 避け──』

パシッ

歩夢『──へ?』

エマ『……』ギュュュュ

愛『……と、止めた?』

歩夢『』ポカーン

580:(しまむら) 2021/05/23(日) 12:09:18.50 ID:uiSIl6MK
エマ(よ、良かった。なんとか止めることが出来た)

エマ(海外だとケンカばっかりだからね……兄弟ケンカも多いし)

エマ(でも、ケンカなんて何も生まないからダメ!)

歩夢『……離してよ』

エマ『……ケンカやめるって言わなきゃ離さない』

歩夢『──ッ!! わたしに触んないでよ!!』

エマ『!!』ビクッ!

エマ『……ねぇ。何があったの話してみてよ』ギュュュュ

エマ『何か出来ること──』


ピピー!!


菜々『あなた達! 何してるんですか!! この騒ぎはなんですか!?』


愛『やっべ、生徒会だ』

歩夢『……』

パシッ

エマ『あっ……ま、待って!』

歩夢『待ちません。帰ります。さよなら』スタスタ

愛『おい! 上原! ──待てよ!』タッタッタッタ!!


エマ『…………』


後に知った。
わたしがケンカを止めた2人は、虹ヶ咲学園で有名な不良だった事。

宮下愛ちゃんと、上原歩夢ちゃん。

ケンカを止める事ができて、本当に良かったと思っていた。

ただ……この日見た──歩夢ちゃんの悲しい目が、わたしは気になってしまった。

──そして同時に、この日からわたしの日常は変わってしまったのでした。

581:1(茸) 2021/05/23(日) 13:32:41.89 ID:6yxsIxk2
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

ザワザワザワザワ

エマ『へ?』


学生寮の前は人で賑わっていた。な、なんの騒ぎ?


愛『エマさん!』

エマ『え? え???』

愛『アタシ達、あなたについて行くことに決めました!』

エマ『???』


何も言えなかった。よく見ると皆、中々に制服を着崩している。


愛『上原の攻撃を防いだエマさんは……最高にクールでした』

愛『多くは語らないスタイルもかっこよかったです!』

エマ『ち……ちが──』

エマ(言いたい事は沢山あったけれど言えないだけだったの! 難しくて言葉にできなくて……!!)

愛『アタシ達の親玉になってください! エマさん! 愛トモの皆もついて行くって言ってます!』

『よろしくお願いします! エマさん!』

『昨日の上原との戦い、見てた子いたみたいだけどほんと凄かったみたいだよ』

『あの狂犬の攻撃防ぐなんて只者じゃないよな。アタシ前5秒でボコボコにされたよ』

『エマさんには私達の頭になる適性があるよ!』

ザワザワザワザワ!!

エマ『………………』

エマ(どうしてこうなったの!?)

582:(茸) 2021/05/23(日) 13:39:23.27 ID:6yxsIxk2




エマ(こうしてわたしの周りには人が増えた)

エマ(噂というものはすぐに広がるもので)

エマ(わたしは気が付けば不良の親玉と呼ばれるようになっていました)

エマ(上手く話せないわたしは流れるままに、そんな日常を過ごしてしまい)

エマ(気が付けば……3年生になっちゃってた……)


「エマさん!」

エマ「ん? どうしたの〜?」

「今度英語の補習があるんすけど……少し教えてほしい所がありまして」

エマ「うん。いいよ」

「ありがとうございます!」

「勉強も出来て、クールでかっこいい……エマさん本当に素晴らしい人だよな……」

「溢れ出る母性も推せるぜ……」

エマ「あ、あはは……」


ただ、幸いにもこの子達は悪い子ではなかった。友達のいないわたしを慕ってくれるし、ケンカは極力しないで! と頼んだら控えてくれるようになった。

同じ立場の子達とはケンカしてるみたいだけれど……一般の子達には絶対に手を出さないって言ってくれてる。

全てのケンカは抑制できないけれど、わたしがこうして親玉と呼ばれているのも意味はあるのかもしれない。

でも……わたしは──。


エマ(スクールアイドルに──なりたいよ)

583:(茸) 2021/05/23(日) 13:45:57.25 ID:6yxsIxk2
「そーいえば、愛さんスクールアイドルになるみたいですよ?」

エマ「へ?」

エマ「愛ちゃんが……?」

「はい」コクリ

「ちょっと前に連絡あったよねー」

「もう本格的に練習もしてるみたいっすよ」

「この前スクールアイドルのかすみんと一緒に練習してたの見たよ」

「か、かすみん? 誰?」

「だから最近こっち来てなかったのか愛さん」

エマ「…………」

エマ(愛ちゃんが……スクールアイドル!? あの愛ちゃんが!?)

584:(茸) 2021/05/23(日) 13:49:13.88 ID:6yxsIxk2
エマ「…………」

「? どーしたんすか? エマさん」

エマ「え!? いや……な、なんでもない」


「あいきゃんしーざすたーらい!♪」

ガラガラ!! ──バァン!!


エマ「!?」

「「「!?」」」

果林「みんなお待たせー! ミーティングってこの教──」

エマ「か、果林ちゃん?」

果林「あれ? エマ!?」

果林「ってみんなは!?」

果林「あれ? ここ……3301の教室じゃないの?」キョトン

エマ「えっと……ここは3201だよ?」

果林「ま、間違えた! また教室間違えちゃったよぉ!!」

果林「この学校広すぎ!!」

585:(茸) 2021/05/23(日) 13:53:09.48 ID:6yxsIxk2
「な、なんだアイツ……」

「エマさんに馴れ馴れし過ぎね?」

「つーか誰?」

果林「ん? わたしはスクールアイドルの朝香果林だよ!」

エマ「!?」

エマ「スクール……アイドル?」

果林「うん!」

果林「──あっ! そーだ!!」パァァァァ

果林「ねぇねぇ! エマ!」ギュッ

エマ「え!?」

果林「エマもスクールアイドルにならない!?」

エマ「──へ?」

588:(茸) 2021/05/23(日) 14:19:37.40 ID:6yxsIxk2
果林「わたし、今スクールアイドル同好会に入ってるの!」

果林「この前歩夢ちゃんのライブ一緒に見てたのも何かの縁だし、エマも一緒にやろーよ!」ニコッ

エマ「わ、わたしが……え?」

果林「ほら! エマ可愛いし、同じ3年生の彼方もいるよ!」

エマ「…………」

エマ(スクールアイドル……!?)

果林「しかも今度ね! 同好会の皆と講堂借りてライブもやるから! 今から練習すれば間に合うよっ」

エマ「…………」

果林「ね?」ニッコリ


息が詰まる。
自信がなくて、自分から歩み出せなかったスクールアイドルへの一歩。

589:(茸) 2021/05/23(日) 14:22:21.05 ID:6yxsIxk2
エマ「い、良いのかな……」

果林「え?」

エマ「わたし……スクールアイドルになって……」

「「「!?」」」

果林「当たり前じゃん!」ニコッ

エマ「!!」

果林「まぁまぁ、とりあえずさっ」

エマ「え?」

果林「これからミーティングがあるから、始めるか始めないかはその内容を見学してからでもいいし」

果林「教室まで一緒に行こーよ!」

果林「てか案内して!」ニッコリ

エマ「う、うん……わかった!」

「「「え、エマさん!?」」」

エマ「ご、ごめんねみんな! 少し席外すね?」

果林「えへへ〜! かんべんよ〜!」

タッタッタッタ!!

「「「……」」」

「「「え、エマさん取られたぁ!!」」」

590:(茸) 2021/05/23(日) 14:24:13.56 ID:6yxsIxk2
つづく。
帰ったら続き更新します。
現在エマ&果林編は半分くらいです。

596:(しまむら) 2021/05/23(日) 21:12:50.45 ID:uiSIl6MK
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


かすみ「…………」イライラ

歩夢「……(かすみちゃん、すごく機嫌悪そう)」

彼方「果林ちゃん遅いね」

しずく「何かあったんかなぁ?」

せつ菜「道に迷ってるのかもしれませんね」

璃奈「探しに行くかい?」

愛「確かに」


タッタッタッタッ!!


愛「おっ? 来たんじゃね?」


バァン!!


果林「お、お待たせしま──」

かすみ「遅いですッ!!」

果林「ひぃ!!」ビクッ!

かすみ「今……何時だと思ってます?」ニコニコ

果林「じゅ、16時半です」

かすみ「集合時間は?」ニコニコ

果林「じゅ、16時です」

かすみ「……」ニコニコ

果林「あ、あはは……か、かんべんよ?」

かすみ「……」

かすみ「遅刻するのは仕方ないですけど、せめて連絡はしなさいッ!!」

果林「ひ、ひぃぃぃぃ!! ごめんなさい〜!!」

かすみ「たくっ」プイッ

歩夢「あ、あはは……」

歩夢「果林さん。かすみちゃんはその、果林さんを心配しててですね? その……」

果林「わ、わかってる……本当にごめん……」

「ち、違うの! 果林ちゃんの事、あまり怒らないで!」

歩夢「え?」

598:(しまむら) 2021/05/23(日) 21:27:46.77 ID:uiSIl6MK
エマ「……」

愛「え、エマさん!?」

歩夢「!!」

歩夢(エマさん……)

かすみ「え?」

かすみ「……不良の親玉のエマ・ヴェルデさん?」

エマ「……うん」

エマ「──あっ! でも今はその事は触れないで!」

エマ「果林ちゃんは……わたしをここへ連れてきてくれる為に遅れちゃったの」

彼方「ど、どういうこと?」

果林「あっ! そうそう!」

果林「エマもスクールアイドルになろって、わたしが誘ったの!」

かすみ「は?」

しずく「まじ!?」

かすみ「……果林先輩、本気で言ってるんですか?」

果林「うん! まぁでも決めるのはエマだけどね!」

かすみ「いや、私が言いたいのはそういう事ではなくてですね……」

エマ「あ、あの!」

かすみ「?」

エマ「わたし……その、皆さんに伝えたいことがあるの」

せつ菜「伝えたいこと、ですか?」

エマ「う、うん!」

エマ「わたしね……本当はその……──」




601:(しまむら) 2021/05/23(日) 21:46:52.67 ID:uiSIl6MK
「「「……」」」

エマ「だから……そのね」

エマ「わたし、スクールアイドルになりたいの」

バンッ!!

愛「……」

エマ「あ、愛ちゃん!?」

璃奈「おそろしく早い土下座。私じゃなきゃ見逃しちゃうね」

愛「も、申し訳ございませんでした!!」

エマ「ど、どうしたの!? 制服汚れちゃうよ!?」

愛「いやだって……」

愛「エマさんに変な噂立ったの完全にアタシのせいじゃないですか!!」

愛「そ、それのせいで……! 本当に申し訳ございません!!」

エマ「だ、大丈夫だよ! ほら、わたしも愛トモのみんなと交流できたし、楽しかったし!」

愛「え、エマさん……」

せつ菜「確かにおかしな話だと思っていたんですよね。エマさんの悪い噂は全然聞きませんでしたし」

果林「てか、エマって不良って言われてたの? 周りの子達も友達だと思ってたよー」

しずく「まぁ友達なのは間違ってなかったっぽいけどね」

果林「ってことは! エマ!」

果林「スクールアイドルになろうよ! 思いっきり!」

エマ「…………」

果林「なりたかったんだよね? スクールアイドル!」

エマ「……うん……」

エマ「でも……わたし……不安で……」

603:(しまむら) 2021/05/23(日) 22:13:47.26 ID:uiSIl6MK
歩夢「エマさん」

歩夢「不安な気持ち、私もすごく分かりますよ」

歩夢「私もいまだに歌う前とかは不安になっちゃいます」

エマ「え? あんなに良いライブして……歌ってたのに?」

歩夢「見ていてくれたんですか? ありがとうございます」ニコッ

エマ「う、うん!」

エマ「ほ、本当に良いライブだったよ! 凄かった!」

歩夢「……そんな言葉が、私の不安な気持ちを飛ばしちゃってくれるんです」ニッコリ

エマ「え?」

歩夢「良かった、凄かった。聞いてくれた子達からそう言って頂けるの、本当に嬉しいの」

エマ「……」

歩夢「──スクールアイドルを始めるきっかけは、何でもいいんです」

エマ「……」

歩夢「エマさん。不安で一歩も進まないのは、絶対に後悔に繋がっちゃいます」

エマ「!!」

歩夢「一緒に始めましょう、エマさん!」

歩夢「私、あなたと一緒に歌いたい」

エマ「歩夢ちゃん……」

604:(しまむら) 2021/05/23(日) 22:19:58.30 ID:uiSIl6MK
歩夢(──エマさん、本当に良かったです)

歩夢(エマさんが不良の親玉と呼ばれていて、すごく不安だったけれど)

歩夢(でも、そう呼ばれていたのだって)

歩夢(エマさんが優しいからだ)

歩夢(この世界のエマさんも……私の知るエマさんと同じで、とっても優しい人)

歩夢(──ううん。エマさんだけじゃない)

歩夢(みんな、優しいんだ)

歩夢(みんな──本質は一緒で)

歩夢(私の大好きな子達だ)

歩夢「……一緒に始めましょう!」

歩夢「スクールアイドル!」

605:(しまむら) 2021/05/23(日) 22:26:32.57 ID:uiSIl6MK
彼方「私達、スクールアイドルはね」

彼方「皆ソロなんだよ」

エマ「ソロ?」

彼方「うん。他のスクールアイドルみたいにグループじゃないから、自分の好きなようなスクールアイドルを目指せるの」

彼方「あなたが目指すスクールアイドルに、自分のペースでね」

エマ「自分のペースで……」

彼方「うん」ニコッ

彼方「だから初心者にはオススメだよ? 一緒にスクールアイドル始めよーよ」

彼方「なんなら部長の私は幽霊部員だからね、なんでもありの良い部活だよ〜」ニコニコ

エマ「え!?」

かすみ「彼方先輩、最後の一言で台無しです」

607:(しまむら) 2021/05/23(日) 22:36:41.70 ID:uiSIl6MK
かすみ「まぁ、でも……彼方先輩の言う通りですね」

かすみ「どこかの誰かさんの影響を受けてか、最近スクールアイドル志望の子が多いんです」

歩夢「あはは……」

かすみ「部員も増えています。余計なの一人いますけどね」

璃奈「おいおい、誰の事だい?」

しずく「璃奈、今良いシーンだから静かに」シー

璃奈「ん」グッ

エマ「……」

かすみ「あなたのスクールアイドルの為に日本まで来た行動力、私は尊敬します」

かすみ「その熱意と行動力を活かさないのは、勿体ないです」

かすみ「だから……一緒に始めましょう。スクールアイドル」

歩夢「かすみちゃん……!」

かすみ「……ふんっ///」プイッ

608:(しまむら) 2021/05/23(日) 22:42:21.83 ID:uiSIl6MK
せつ菜「エマさん!」

せつ菜「私も、スクールアイドルになったばかりですが……本当に楽しいんですよ!」

せつ菜「一緒に始めましょう!」

しずく「あたしも大歓迎〜!」

しずく「人数が増えれば賑やかになるし!」

しずく「サボり魔のあたしですら在席を許されてる良い部活だよ?」ニコッ

しずく「一緒にやろーよ! スクールアイドル!」

璃奈「私も同じタイミングで始めてくれる人がいるのは助かる」

璃奈「それに、あなたはあの時一緒に歩夢さんを見ていたし。これも何かの縁だよ」

璃奈「端的に言うなら、一緒にやろう」

エマ「……!」

609:(しまむら) 2021/05/23(日) 22:53:09.42 ID:uiSIl6MK
愛「エマさん!」

エマ「愛ちゃん……」

愛「アタシ、あなたに謝りたい事ばかりです」

愛「スクールアイドルになったのも、本当はすぐに報告したかったんですけれど……自信をつけてからにしたかった……」

愛「その……えっと……言葉選びが下手でごめんなさい。──い、色々言いたい事ありますけど!」

愛「話したい事ばっかりあるので! 一緒に同じ部活で……スクールアイドル、始めましょう!」

愛「お願いします!」ペコリ

エマ「……!!」


果林「エマ」

果林「やりたいと思った時から」

果林「きっともう始まってるんだよ」

エマ「──」

610:(しまむら) 2021/05/23(日) 22:54:03.32 ID:uiSIl6MK
エマ「わ、わたし!!」

エマ「スクールアイドルに」

エマ「──なりたい!!」

612:(しまむら) 2021/05/23(日) 23:01:26.59 ID:uiSIl6MK
エマ「だからわたしを、スクールアイドル同好会に──」

歩夢「エマさん!」バッ

ギュッ!!

エマ「あ、歩夢ちゃん!?(こ、こんな子だったっけ!?)」

歩夢「エマさんがスクールアイドル同好会に入ってくれて……嬉しい……!」ギュュュュ

エマ「歩夢ちゃん……!」

果林「あ! ズルい! わたしも混ぜてよー!」ギュッ!!

エマ「か、果林ちゃん!?」

彼方「あー、私も混ざる!」

せつ菜「私もです!」

璃奈「私も便乗しよう」

しずく「あたしもー!」

かすみ「はぁ……全くみんな暑苦しいですよ?」

愛「あ、アタシも混ざる!!」

かすみ「──え?」


ワイワイガヤガヤ


かすみ「……」

かすみ「わ、私も混ぜてくださいよ!!」バッ

614:(しまむら) 2021/05/23(日) 23:22:47.47 ID:uiSIl6MK
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

〜講堂 控え室〜

せつ菜「っ〜〜〜〜〜!!」

せつ菜「ついに来ましたね! ライブの日が!」

せつ菜「お客さんもたっくさん来てました!」ペカー

歩夢「ふふっ、せつ菜ちゃん燃えてるね」ニッコリ

せつ菜「はい! こんな大勢の前でライブできるんですから、本当に楽しみです!」

歩夢「楽しみにしてるね!」

せつ菜「はい!」

せつ菜「──ただ、歩夢さんは出なくてよかったんですか?」

せつ菜「歩夢さんだけでなく、しずくさんも彼方さんも璃奈さんも……」

歩夢「私はほら……前ライブやらせてもらったし、今回は皆のサポートをしたかったから」

しずく「歩夢さんと同じで、あたしもサポートしたかったからね〜」

璃奈「私は単純にまだ曲が出来てない」

彼方「私はさすがに勉強優先だし、中途半端にライブするのは申し訳ないからね。サポートはいくらあっても困らないし、今日はフォローに回るよ」

しずく「……」

せつ菜「なるほどですね……いつか皆さんとライブしたいですね」ペカー

歩夢「うん!」

せつ菜(歩夢さんとライブ共演したかったなぁ……)

616:(しまむら) 2021/05/23(日) 23:36:30.96 ID:uiSIl6MK
愛「…………」ソワソワ

かすみ「愛先輩、今日の例の動きについてなんですが」

愛「!!」ビクッ!!

愛「な、なんだ!?」

かすみ「えぇ……そんなにビックリします?」

愛「う、うるせぇな! 集中してたんだよ!」

かすみ「あれぇ〜? もしかして、緊張してますか〜?」ニヤニヤ

愛「し、してねぇよ!!」

かすみ「……大丈夫ですよ、愛先輩」

かすみ「練習、してきたでしょ?」

愛「!!」

かすみ「努力は裏切りません」

かすみ「それに、あなたは運動神経も良ければ歌も上手い。非常に高いスペックの持ち主です」

かすみ「期待してますよ」ニコッ

愛「かすみ……」

かすみ「まっ、何かあったらフォローくらいはしてあげますよ! スクールアイドルとしては、かすみんの方が先輩ですからね!」エッヘン!

愛「……乗せるのが上手いな、かすみは」

かすみ「褒めても何もあげませんからね」

愛「ぷははっ、かすみんから切り替えるの早すぎだろ!」

かすみ(よし、良い感じに緊張解れたみたいだね)

617:(しまむら) 2021/05/23(日) 23:48:16.07 ID:uiSIl6MK
果林「はぁぁぁ……!」

果林「エマのライブ衣装、かえーしきゃー!」

エマ「そ、そうかな?」

果林「うん! 今日のライブ、楽しもーね!」ニッコリ

エマ「う、うん!」

エマ「………………」

果林「エマ? 大丈夫?」

エマ「う、うん! 大丈夫……!」

エマ(緊張で、胸が痛くなってきた……が、頑張らないと……)

エマ(頑張らないと……頑張らないと……!!)

果林「?」

果林(エマ……?)

619:(しまむら) 2021/05/24(月) 00:12:19.78 ID:u5mHBfvt
かすみ「──では皆さん。今日のライブの流れを再確認します」

かすみ「歌うの順番としてはせつ菜先輩、愛先輩、私、エマ先輩、果林先輩の順番です」

かすみ「せつ菜先輩が最初に歌ったその後、愛先輩がせつ菜先輩のMCに合流します」

かすみ「せつ菜先輩バック後には、私と愛先輩が例の歌を披露。その後は愛先輩のソロと私のソロを披露します」

かすみ「そして、エマ先輩はステージ裏から歌いながらステージに入場。そのままソロ披露を続けます」

かすみ「トリは果林先輩です」

果林「あいさー!」

せつ菜「つ、遂に始まりますね!! 皆さん頑張りましょう!!」

愛「だな! 頼りにしてるからな。せつ菜っ」

せつ菜「私も同じ気持ちですよ! 愛さん!」ペカー

エマ「……」

かすみ「ん? エマ先輩?」

エマ「え!?」

かすみ「大丈夫ですか?」

エマ「あはは……ちょっと緊張しちゃって……」

かすみ「……あなたは練習通り、綺麗な歌声をそのまま披露すれば良いんですよ。リラックスです」

かすみ「マッサージでもしてあげましょーか?」

しずく「お? セクハラか〜? かすみ〜」

彼方「やらしいな〜かすみちゃん〜」

かすみ「うっさいよ! この能天気コンビ!」

エマ「あ、あはは……だ、大丈夫!」

エマ「わたし、頑張るね!」

かすみ「……何かあったらすぐに言ってくださいね?」

エマ「う、うん!!」

しずく「……」

彼方「……」

かなしずかす(大丈夫かなぁ……)

620:(しまむら) 2021/05/24(月) 00:22:52.50 ID:u5mHBfvt
歩夢『──それでは! まもなく公演開始です! みなしゃ! ……み、皆さん! 楽しんでいきましょう!!』


パチパチパチパチ!! ──アユムチャンカワイイー!!


歩夢「うぅ……大事な所で噛んだ……」

璃奈「歩夢さん可愛すぎなんだけど。一生推すよ。すき」

歩夢「あ、ありがとう」

璃奈「──よし。音響セッティングも問題なさそうだね。ここは任せてよ歩夢さん」

歩夢「うん! よろしくね璃奈ちゃん! 後でしずくちゃんがこっち来てサポートするからっ」

璃奈「うい」グッ

タッタッタッタッ!!


璃奈「……」

璃奈「皆、ファイトだ」グッ

璃奈「……それにしても……」

璃奈(ライブ前の、このワクワク感。いいね)

璃奈「私もいつかやってみたいもんだね。……ライブ」

621:(しまむら) 2021/05/24(月) 00:30:53.26 ID:u5mHBfvt
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

せつ菜「みんなー? 元気ー?」

せつ菜「優木せつ菜です!」

せつ菜「わぁぁぁぁぁ!! 綺麗な景色ですね……!」

せつ菜「最高のパフォーマンスを見せるので、皆さん盛り上がる準備は出来ていますかー!?」


「「「わぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」


せつ菜「ッ!!」ゾワゾワ!!

せつ菜(き、気持ちいい……!)

せつ菜(最高っ!!)

せつ菜「では! 1曲目、いきましょう───!!」

622:(しまむら) 2021/05/24(月) 00:36:26.61 ID:u5mHBfvt
せつ菜「ミュージック、スタート!!」


♪〜


せつ菜「ワン、ツー」

せつ菜「ワン、ツー」

せつ菜「ワンツースリフォー」

せつ菜「──ハイッ!!」


「「「──ハイ! ハイ! ハイ! ハイ!」」」


せつ菜「好きなこと」

せつ菜「私だって ここに見つけたんだ」

せつ菜「力 いっぱい 頑張れるよ」

せつ菜「本当の自分だから────♪」

623:(しまむら) 2021/05/24(月) 00:36:50.11 ID:u5mHBfvt
【MELODY】

624:(しまむら) 2021/05/24(月) 00:48:29.96 ID:u5mHBfvt
愛「!! 始まったな、ライブ」

歩夢「うん!」

歩夢「わぁぁぁぁぁ……!!」

歩夢(せつ菜ちゃんのライブ、やっぱりすごい!!)

かすみ(初ライブであのパフォーマンス……凄すぎるでしょ)

歩夢「せつ菜ちゃん、かっこいいなぁ」ウットリ

かすみ「…………」プクー

かすみ「歩夢先輩。私の歌もちゃんと聞いてて下さいね?」

かすみ「この前のあなたのライブより凄いのやりますから!」

歩夢「うん! 楽しみにしてるね、かすみちゃん!」ニコッ

かすみ「!! ……ふんっ! 期待してて下さい////」プイッ

彼方(甘えベタなネコみたいだなぁかすみちゃん)

彼方(さて、と。私も自分の仕事しないとね)

彼方「──愛ちゃん。この後のMCの流れ、もう一回復習するよ? いい?」

愛「わかった!」




625:(しまむら) 2021/05/24(月) 00:58:52.22 ID:u5mHBfvt
愛「そんじゃ──行ってくる!」

愛「歩夢! しっかり見とけよ!」

歩夢「うん! 頑張ってねっ! 愛ちゃん!」

愛「あぁ!」ニコッ


タッタッタッタッ!!


彼方「よーし。愛ちゃんがせつ菜ちゃんのMCに合流したね。かすみちゃん、準備できてる?」

かすみ「かすみんはいつでも大丈夫です!」

彼方「おっけ〜!」


エマ(わたしの出番が……近づいてくる)

エマ(大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫)

エマ「……はぁ……はぁ……!」

果林「……エマ?」

エマ(大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫)

エマ(成功、させなきゃ!)

エマ(スクールアイドルの初ライ──)

エマ(──あれ?)クラッ


バタンッ!!


果林「──え?」キョトン

彼方「エマちゃん……?」


エマ「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……!!」


歩夢「え、エマさん!?」

627:(しまむら) 2021/05/24(月) 01:07:59.36 ID:u5mHBfvt
かすみ「え、エマ先輩?」

彼方「エマちゃん! 大丈夫!?」

エマ「はぁ、はぁ……はぁっ……ッ……はぁ……!!」

彼方(か、過呼吸を起こしてる……!!)

彼方「エマちゃん! 大丈夫、大丈夫だよ」

彼方「息を吸って、ゆっくり……ゆっくりで大丈夫。ゆっくり息を吐き出して?」

エマ「ッ……!!」コクンコクン

果林「え、エマ……」

歩夢「……エマさん……」


エマ(な、なんで?)

エマ(なんでいま……)


『エマさん、その日本語変だよ〜』


エマ(あの時のこと……思い出すの……?)

628:(しまむら) 2021/05/24(月) 01:22:50.27 ID:u5mHBfvt
かすみ「え、えっと……」

彼方「!!」

彼方(まずい、ライブはもう始まってるのに)

彼方(中止には、できない。少しでも時間を稼ぐしかない。エマちゃんが落ち着くまで)

彼方「歩夢ちゃん、エマちゃんの背中を優しくさすってあげて」

歩夢「は、はい!」

彼方「かすみちゃん」

かすみ「!!」

彼方「少し、MCの時間を伸ばしてほしい。愛ちゃんとの歌が終わった後のね」

かすみ「……分かりました」

彼方「大丈夫そうだったり、通常進行に戻して良いタイミングとかに関しては、しずくちゃんに連絡してかすみちゃんに連絡するようにする」

かすみ「分かりました! ──では、行ってきます!」

彼方「うん! よろしくね!」


プルルルル ピッ


しずく『かな姉、どうしたの?』

彼方「しずくちゃん、この後かすみちゃん達のMCなんだけど──」


エマ「わ、わたし……ごめ……なさ……!!」

歩夢「だ、大丈夫ですよエマさん!」

果林「……エマ……」

629:(しまむら) 2021/05/24(月) 01:29:43.26 ID:u5mHBfvt
タッタッタッタ

かすみ「みなさーん!」

せつ菜「かすみさん!」

愛「おっ! 待ってたぞかすみーん!」

かすみ「お待たせしましたぁ〜!」キャピッ

かすみ「会場の皆さんも、今日は集まってくれてありがとうございます〜!!」

せつ菜「──ではでは! 後は任せましたよ、お二人共!」

かすみ「はーい! 先輩また後でね〜!」

愛「みんな! せつ菜にもう一度拍手を頼む!」


パチパチパチパチ!!


せつ菜「あははっ! みんな、またねー!」

せつ菜(ライブ……最高過ぎます!!)


タッタッタッタ


かすみ「ではでは、この後は皆さんに特別な歌をお届けしちゃいますよ〜?」

かすみ「愛先輩〜! 準備は良いですか〜?」

愛「まっかせて!」

630:(しまむら) 2021/05/24(月) 01:40:59.33 ID:u5mHBfvt
愛(よし、この後はかすみとステージ真ん中に行って、背中を合わせる)

愛(そんで、照明が暗くなるから……タイミングを合わせて歌う!)

ササッ ピタッ

愛(よし、順調! 照明も暗くなったし、後は──)

かすみ「…………」

カチッ

愛(へ? かすみ、マイクの電源切った?)

かすみ「愛先輩。何も反応せずそのまま聞いてください」ボソッ

愛「!?」

かすみ「トラブルが起きました。なのでMCの時間を少し伸ばしますので、アドリブが入ります。合わせて下さい」ボソボソ

愛(え、えぇ!? そんなこと出来──)

かすみ「愛先輩なら出来ます」ボソッ

かすみ「あなたは天才ですから。頼りにしてます」ボソッ

愛「!!」

愛「……」コクン

かすみ「……」コクン

カチッ

かすみ「ではでは! ミュージックスタート〜!」

631:(しまむら) 2021/05/24(月) 01:45:28.45 ID:u5mHBfvt
♪〜

かすみ「Hey!」

愛「Love!」

かすみ「Come on!」
愛「Come on!」

かすみ「かすみん!」
愛「愛さん!」

632:(しまむら) 2021/05/24(月) 01:47:39.64 ID:u5mHBfvt
【ダイアモンド -デュエットver-】

634:(しまむら) 2021/05/24(月) 02:00:56.82 ID:u5mHBfvt
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

彼方(まずい。もうすぐ2人の歌も終わっちゃう……! エマちゃんの呼吸は落ち着いてきたけれど……!)

エマ「……ご、ごめんなさい……みんな」

エマ「やっぱり……わたし……」

エマ「スクールアイドルに……なれないよ……!」

果林「ど、どうして?」

歩夢「沢山練習してきたじゃないですか……」

エマ「──いの」

果林「え?」

エマ「怖いの……!!」

エマ「わ、わたし……日本語変だし、自信がない……!!」

エマ「わたし……昔スイスで観た……スクールアイドルの子の様になれる……自信が、ない!」

果林「──エマ!!」

果林「あなたはスクールアイドルになりたいの!? その憧れた子になりたいの!?」

エマ「!!」

636:(しまむら) 2021/05/24(月) 02:15:28.21 ID:u5mHBfvt
果林「……エマはエマでしょ? その子は憧れの子かもしれないけれど、エマじゃない!」

果林「エマは……エマ・ヴェルデっていうスクールアイドルになりたくて日本に来たんでしょ!?」

果林「違うの!?」

エマ「わ、わた……わたしは……!」

果林「それにね」

果林「エマは日本語、上手だよ」

果林「わたしなんかよりも──ずっと!」

エマ「!!」

果林「海外に来て、そこに住んで、そこの人達と意思疎通ができるんでしょ? すごいよ」

果林「わたしには同じ事、できないよ」

エマ「……」

果林「……怖い気持ちは分かる。わたしだって怖い!!」

エマ「かりん……ちゃん……」

果林「でも……ここで立ち止まっていても……何も生まれないよ」

果林「わたし達は、スクールアイドルになったんでしょ!?」

果林「だったら……だったら……一歩、踏み出さなきゃ……!!」

果林「こんなスタート地点で立ち止まってちゃ……ダメだよ!!」

果林「エマ!!」ポロ、ポロ

エマ「果林ちゃん……っ!!」ポロポロ

637:(しまむら) 2021/05/24(月) 02:24:22.12 ID:u5mHBfvt
歩夢「……」

歩夢「──彼方さん。私、1曲歌ってきます」

彼方「え? で、でも歩夢ちゃんの音源の準備……今日は……」

歩夢「いりません。アカペラでそのまま歌います」

彼方「!?」

歩夢「──エマさん!」

スタスタ

エマ「あ、歩夢ちゃん……」

ギュッ

エマ「え?」

歩夢「私、エマさんの歌……大好きです」ギュュュュ

歩夢「今から歌ってくる歌は……お客さんにもですけれど、あなたにも届けたい歌です」

歩夢「この前考えた歌なんですけど、名前は──」

歩夢「─────」ヒソヒソ

エマ「!!」

歩夢「ふふっ」ニッコリ

スタッ

歩夢「じゃあ、行ってきます!」

果林「歩夢ちゃん……」

エマ「…………」

歩夢「……エマさん」

歩夢「私、あなたの歌──聞きたいな」ニコッ

エマ「!!」

タッタッタッタ

638:(しまむら) 2021/05/24(月) 02:31:13.55 ID:u5mHBfvt
かすみ(ッ、彼方先輩まだですか!?)

かすみ(MCは適切な時間を超えると、会場の空気がダレる!)

愛「ッ……!!」

かすみ(愛先輩も限界にな──)

タッタッタッタ

歩夢「みんなー!」

愛「へ?」

かすみ「!!」

かすみ「あー! 歩夢先輩〜!」

歩夢「えへへっ、こんにちはかすみちゃん!」

かすみ「制服姿でどうしたんですかぁ〜?」

かすみ「あっ! もしかして衣装忘れちゃったんですね〜?」ニヤニヤ

歩夢「ち、違うもん! もー!」プクー

歩夢「──とまぁ、茶番はここまでです!」

歩夢「皆さんこんにちは! スクールアイドルの上原歩夢ですっ!」ニコッ

歩夢「実は今日のサプライズだったんですけれど、1曲聞いて欲しい歌があるの!」


「「「わぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」

639:(しまむら) 2021/05/24(月) 02:34:36.63 ID:u5mHBfvt
歩夢「えへへ、ありがとうございますっ!」

歩夢「まだ作ってる途中の歌だから、音はないけれど──聞いてくださいっ!」

歩夢「──」スゥゥゥゥ

642:(しまむら) 2021/05/24(月) 02:39:21.11 ID:u5mHBfvt
エマ「……」

──────────

歩夢『今から歌ってくる歌は……お客さんにもですけれど、あなたにも届けたい歌です』

歩夢『この前考えた歌なんですけど、名前は──』

──────────

643:(しまむら) 2021/05/24(月) 02:40:29.99 ID:u5mHBfvt
【夢への一歩】

644:(しまむら) 2021/05/24(月) 02:55:38.75 ID:u5mHBfvt
エマ「夢への……一歩」


──果てしない 道でも一歩一歩──

──諦めなければ 夢は逃げない──


エマ「」


──隣に あなたがいてくれるから──

──逆境も不安も 乗り越えていけるよ──


エマ「」


──ありがとう──

645:(しまむら) 2021/05/24(月) 02:59:08.47 ID:u5mHBfvt
エマ「っ!!」

エマ「みんな、ごめんなさい!」

エマ「わたし──スクールアイドルになってきます」

果林「エマ!!」パァァァァ

彼方「エマちゃん!」


スタスタ

かすみ「……なんとかなったみたいですね」

エマ「か、かすみちゃん……ごめ──」

かすみ「謝らなくて大丈夫です、エマ先輩」

エマ「……」

かすみ「ダメなところも武器に変えるのが、一人前のアイドルですよ」

エマ「!!」

かすみ「それに、あなたがするべきことは謝ることじゃないです」

かすみ「集まってるファンの子達に……最高の時間を届ける事だよ」

かすみ「……行ってらっしゃい、エマ先輩」ニコッ

エマ「──うん!!」

エマ「行ってきます」ニコッ

647:(しまむら) 2021/05/24(月) 03:10:15.90 ID:u5mHBfvt
エマ「──」スゥゥゥゥ


歩夢ちゃんの、夢への一歩が歌い終わる。

会場は大歓声に包まれている。

わたしはこの後、歌いながら入場する。そして、そのまま歌う。

……緊張はする。迷惑だって、沢山かけちゃった。本当にごめんなさい。

──そして同時に、本当にありがとう。

みんな大好き。

そして、今からわたしがみんなに届ける歌も──わたしが大好きな歌。

スイスにいた時、何百回と聞いた歌。
今日はそれをお借りして、歌わせて貰うことにした。

その歌の名前は──

648:(しまむら) 2021/05/24(月) 03:12:46.18 ID:u5mHBfvt
【哀温ノ詩】

649:(しまむら) 2021/05/24(月) 03:35:36.15 ID:u5mHBfvt
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


──ライブが終わり数日後。

再び平和な時間が戻ってきた。

でも、少し前と変わったことがある。それは──


「エマさん! 今度のライブ、いつやるんですか!」

エマ「え? うーん。この前やったばかりだからなぁ」

「一週間後くらいにはやりますか!?」

エマ「さすがにそれはないよ〜」

「生き甲斐が……」

「週一くらいでやってほしいよね」

「スクールアイドルの方々の体力が持たないっしょそれ」

「ライブを企画する適正を持って、校内で企画する?」

「それあり!」

エマ「あはは……」


──わたしを慕ってくれる子達が、すっかりスクールアイドルにハマったみたい。同好会のライブに来てくれたみたい。

サイリウム振る手を怪我したくないからケンカも二度としないって言われました。

スクールアイドルの影響力って本当に強い……。

650:(しまむら) 2021/05/24(月) 03:38:40.78 ID:u5mHBfvt
タッタッタッタッ!!

果林「あれ!? ここどこ!?」

エマ「あっ、果林ちゃん」

果林「!! エマー!!」

エマ「!? ど、どうしたの果林ちゃん?」

果林「科学室の行き方が分からないよー!!」

エマ「えー? また? もー、仕方ないなぁ〜」

エマ「案内してあげるね!」ニッコリ

果林「ほんと!? やったら〜!!」バンザーイ

エマ「えへへ!」ニッコリ

エマ「──あっ、みんなごめんね? ちょっと果林ちゃん送ってくるね?」

「「「あっ……はい」」」

果林「いやはや、かんべんよ〜」


タッタッタッタ!!


「「「…………」」」

「「「またエマさん取られた……」」」

651:(しまむら) 2021/05/24(月) 03:40:52.32 ID:u5mHBfvt
果林「ねぇねぇ! エマ!」

エマ「ん? どーしたの?」

果林「えへへ!」

果林「なんかエマ、少し明るくなったよね」

エマ「え? そ、そーかなぁ?」

果林「うん!」

果林「前より笑うようになったし」

果林「あの時のライブのおかげ?」

エマ「ふふっ、そうだね」ニコッ

果林「立ち直った後のエマの歌……本当に良かったもん。わたし泣いちゃったよ〜」

エマ「それ何回も聞いたよ果林ちゃん〜」

果林「ほんと?」

果林「あー、でもエマの歌ばっかり目立ってたけど……ラストを締めたわたしの歌も評価してほしいんだよなぁ……」

エマ「それも何回も聞いたよ」

果林「え? そーだっけ?」

エマ「4回は聞いてるよ?」

果林「意外と少なかった!」

エマ「いや多いと思うよ?」

652:(しまむら) 2021/05/24(月) 03:46:47.20 ID:u5mHBfvt
エマ「ちなみにわたし、果林ちゃんの『Starlight』大好きだよ? かっこいいし、普段可愛い果林ちゃんとのギャップがエモエモだよ〜!」

果林「え、えも?」

果林「まぁ、よく分からないけどありがとうね!」

エマ「うん!」

エマ「……ふふっ」ニコニコ

果林「? どーしたのエマ?」

エマ「んーん」

エマ「スクールアイドルになって良かったなって思ったのっ」ニコッ

果林「えへへ! 私もそう思う!」


──果林ちゃん。あの時わたしをスクールアイドルに誘ってくれて、ありがとうね。

654:(しまむら) 2021/05/24(月) 03:48:04.39 ID:u5mHBfvt
エマ「果林ちゃん!」

果林「?」

エマ「これからも一緒に」

エマ「一歩一歩」

エマ「歩いていこうね!」ニコッ

果林「──うんっ!」ニッコリ






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