【SS】かのん「海辺の旅館でリゾートバイト!」可可「楽しそうデス~!」【ラブライブ!スーパースター!!】

Liella!ーSS


2: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 08:58:48.18 ID:w/R+pcfE
夏休みも間近に迫ったある日のこと…

可可「海に行きましょう!」

かのん「いきなり!?」

すみれ「ほんとに唐突ね、いったいどうしたのよ」

可可「どうしたもこうしたもないのデス!最近暑すぎるのデス!屋上で練習が出来ないくらい暑いのデス!!」

恋「たしかに、例年と比べても今年の夏は特に暑いかもしれませんね」

可可「デス!来週からは夏休みも始まってきっともっと暑くなります!なので海に遊びに行って少しでも涼しくなりたいのデス!」

3: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 08:59:58.47 ID:kz8athx2
千砂都「なるほど!最近はラブライブ!のことばっかりだったからたまには羽を伸ばすのもいいね!」

すみれ「遊びに行くのはいいとして、まずは衣装作りの費用をどうにかするのが先でしょ?次のライブは特に気合いを入れなきゃだから豪華な衣装にするためにお金が必要だって昨日話してたばっかじゃない」

可可「うっ、たしかに…」

かのん「あ!じゃあさ、海辺の旅館でバイトさせて貰えばいいんじゃないかな」

恋「バイト?」

かのん「うん!夏になれば海の近くの旅館って忙しくなるだろうし、バイトを募集してるところもあると思うんだ!」

すみれ「なるほど、海の近くならお金を稼ぎながら海で遊ぶこともできるってわけね」

4: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 09:00:40.78 ID:kz8athx2
可可「さすがかのん!賢いです!」

千砂都「そうと決まったらまずは旅館を探さないとだね。肝心のバイト先が決まらないと計画も立てられないし」

かのん「そうだね!じゃあみんな夏休みのスケジュール教えて貰ってもいいかな」

ワイワイガヤガヤ
ーーー
ーー

5: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 09:02:13.69 ID:kz8athx2
かのん「というわけで!夏休み初日から1週間、海辺の旅館でリゾートバイトをすることが決まったよ!」

恋「私と千砂都さんはお家の用事等で3日後の合流となりましたが、旅館の方はそれで大丈夫でしたか?」

かのん「うん!その分沢山働いてくれれば特に問題ないって!」

可可「くぅー!今から楽しみデス〜!」

千砂都「よーっし!沢山稼ぐぞー!」

一同「おーっ!」

こうして、私たちの長いリゾートバイトが幕を開けてしまったのでした…。

夏休み当日

すみれ「夏だ!」

可可「海だ!」

かのん「リゾートバイトだぁー!!」

すみれ「潮風が気持ちいいわね…♪」

可可「はやく千砂都やレンレンとも一緒に遊びたいのデス」

かのん「前半3日間は私達が頑張らないとね!それじゃ、旅館に挨拶に行こっか」

可可「はいデス!」

6: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 09:02:55.36 ID:kz8athx2
可可「ここがバイト先の旅館デスね」

すみれ「旅館って言うより民宿よね、なんとか荘みたいな」

かのん「おばあちゃん家感あるよね。あ、おばあちゃんと言えばね、おばあちゃんの作るパエリアが…」

すみれ「いいから、中に入りましょう」

ガラガラ

すみれ「すみませーん」

???「あ、こんにちは!今日からバイトする子達ですよね!お待ちしてました!」

中から私たちと同じくらいの女の子が出迎えてくれた。名前はみさきちゃん。この近くで育った女の子らしい。

7: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 09:03:53.96 ID:kz8athx2
みさき「それでは、こちらへどうぞ」ニコッ
ーーー
ーー



みさき「旅館の中は、客室が4部屋、みんなで食事する広間が1つ、従業員住み込み用の部屋が2つで計7つのお部屋があります。」

かのん「広間っていうのは、私たちが今いるこの部屋のことだよね」

みさき「はい、今女将さんが来ると思うのでこちらで少々お待ちください。あ、なにか飲み物持ってきますね」タタタッ

すみれ「ありがとう」

可可「すみれにも見習って欲しいくらいいい子なのデス〜」

すみれ「おだまり」

女将「あらあら、かわいいバイトさんたちね」スススッ

一同「こ、こんにちは!」

女将「こんにちは、私は女将のまきこ。あんたたちの紹介するからみさきちゃんと旦那呼んでくるわね」

女将さんにみさきちゃん、そして旦那さんもいて私たちを含む計6人でこの民宿を切り盛りしていくことになった。
ある程度自己紹介が済んだ時、女将さんが言った。

8: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 09:05:08.64 ID:kz8athx2
女将「客室はそこの右の廊下を突き当たって左右にあるからね。そんであんたたちの寝泊りする部屋は、左の廊下の突き当たり。
あとは荷物置いてから説明するから、ひとまずゆっくりしてきな。」

可可「あれ、客室って2階じゃないのデスか?」

女将「違うよ〜2階は今は使ってないのよ」

可可「なるほどデス」

かのん「まだシーズンじゃないからかな」コソッ

すみれ「そのうち解放するんでしょ多分」コソッ

ー住み込み用の部屋

かのん「ふぅーーー!!いい景色!」

すみれ「これから大変なこともあるだろうけど、いい人ばかりだし、ここでなら楽しくやっていけそうね」

可可「海で遊ぶのも楽しみデス!」

すみれ「あんたは本当にそればっかりね…」

可可「もちろんちゃんとお金も稼ぐデスよ。1週間頑張っていきましょーー!」

一同「おーーー!」

9: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 09:06:51.88 ID:kz8athx2
2日後

すみれ「本当にいいバイト見つけたわね、女将さんたちは優しいし」

可可「デスデス!しかもお金もたんまり稼げるのデス!」

かのん「でも、もうすぐシーズンでしょ?明日からちぃちゃん達も一緒とはいえ忙しくなるよね」

すみれ「そうね…そういえば、2階ってもうそろそろ解放するのかしら」

可可「しないと思いますよー、2階には女将さんたちが住んでいるのデス」

かのすみ「え?」

10: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 09:07:55.48 ID:kz8athx2
すみれ「そうなの?」

可可「いや、分かりませんが女将さん可可達とご飯を食べた後2階にご飯持って行きますよね?」

かのん「そうなんだ。ごめん、私は見たことないかな」

すみれ「私も。そっか、あんた夕方玄関の掃除してるもんね」

可可「そうデス。なので女将さんのことはよく見かけるのデス!お盆にご飯を持って2階へと消えていくのデスよ」

すみれ「ふーん、でも上に住んでるなら最初に私たちに言うんじゃない?」

可可「たしかに」

かのん「まぁいいや、明日も早いしもう寝ようよ」

可可「そうですね、すみれと水鉄砲対決して今日も疲れたのデス」

すみれ「あ、明日は負けないわよ!覚悟してなさい!おやすみ!」

可可「おやすみデス〜」

かのん「おやすみ〜」

12: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 09:12:56.58 ID:kz8athx2
次の日

千砂都「うぃっすー!」

恋「遅くなりました」

かのん「あ、ちぃちゃん!恋ちゃん!」

可可「ようこそ、可可の旅館へ!」

すみれ「別にあんたの旅館じゃないでしょ」

恋「皆さんちゃんとお仕事に取り組んでいるようでよかったです」

千砂都「ねーっ!何かやらかしてクビになってたらどうしようって恋ちゃんと電車の中で話してたんだ」

かのん「あはは、さすがにそれはないよ〜」

可可「たしかにどっかのギャラクシーならやらかしそうなのデス」

すみれ「あんたも人のこと言えないでしょうが」ポコッ

可可「いてっ」

13: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 09:13:58.38 ID:kz8athx2
恋「うふふ、冗談ですよ。もう夕飯は済んだのですか?」

かのん「うん!今からお風呂入るところだったんだ〜。そうだ、恋ちゃんとちぃちゃんも一緒に行こうよ!」

千砂都「うん!そうする!」

可可「やっといつもの5人が揃ったのデス〜!」
ーーー
ーー

14: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 09:17:12.56 ID:kz8athx2
千砂都「ふぅ〜いいお湯だった〜!」コーラゴクゴク

かのん「あはは、ちぃちゃん工事現場のおじさんみたい‪w」

千砂都「うぃーっす!うぃーっす!リエラ建設会社ですうぃーっす!」

恋「‪w‪w‪w‪w‪w」

すみれ「絶対そんなんじゃないでしょ‪w」

可可「レンレンが死にかけてるのデス!‪w」

すみれ「ほんとこのネタ好きよね」

恋「だって‪w‪w‪w面白すぎてw‪w‪w‪w」

一同「‪w‪w‪w‪w‪w‪w」

かのん「ふぅ…笑った…あ、そういえばさ」

可可「んー?」

かのん「私今日女将さんが客室からこっこり出てくるところ見たんだよね」

すみれ「待って、それ私も見たことある」

かのん「本当に?なんで言ってくれなかったの!」

可可「可可は見たことないのデス」

すみれ「なら少し黙ってなさい。何か用があるんだと思ってたし変に疑ってギクシャクするの嫌じゃない」

かのん「たしかに」

15: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 09:21:29.42 ID:kz8athx2
恋「旅館ですし女将さんが客室から出てくるのはおかしくないのでは」

かのん「そっか、2人は今夜到着したからまだお仕事の説明受けてないんだよね」

可可「女将さんは基本部屋の掃除とかはしないから客室に行くことはほとんどないのデス。」

すみれ「そういうのは昼間お手伝いに来てるみさきちゃんって女の子がやることになってるの」

かのん「そう、しかもこっそり出てきたから余計気になっちゃったんだよね」

可可「昨日のこともありますしね」

千砂都「昨日のこと?」

すみれ「ここの2階って今は使ってないんだけど、可可が2階にご飯を持っていく女将さんを見かけるって言うのよ」

かのん「2階に女将さんたち住んでるのかなって思ったんだけどそんな説明は私たちされてないし、女将さん、私たちと一緒にご飯食べるんだよね」

恋「なるほど、女将さんの怪しい動きが気になるという訳ですね…」

すみれ「そういうこと。残り4日だし見て見ぬふりする?でもやっぱり少し気になるわよね…」

16: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 09:24:00.37 ID:kz8athx2
千砂都「じゃあさ、後ろつけちゃえばいいんじゃない?」

かのん「いやいやいや、絶対バレるよ」

千砂都「あはは、まあね」

すみれ「なんで言ったのよ…」

一同「…」

恋「それでは、女将さんが何か不審な動きをしていたら報告する、というのはどうでしょう」

かのん「そうしよっか、5人で考えても拉致があかないし…てか恋ちゃんちょっとノリノリだね」

恋「そんな話されたらちょっと気になるじゃないですか」

千砂都「そうだよ、私たち今日ここに来たばかりなのに女将さんが怪しいなんて言われたらねぇ」

かのん「あはは…ごめんね」

可可「それじゃあ今日はトランプして寝るのです」

千砂都「いいね!ババ抜きしようババ抜き!」

恋「今日は負けませんよ!」

ワイワイ
ーーー
ーー

17: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 09:28:45.01 ID:InnaqIog
次の日の夜

可可「みんな、ちょっと来て欲しいデス」

すみれ「あんたが来なさいよ」

可可「うるさいデス」

千砂都「どうしたの?」

恋「進展があったのですか?」

かのん「恋ちゃんほんとノリノリだね」

可可「はい!可可、いつも女将さんが2階に上がっていくと言いましたよね。いつもは階段に入っていくところまでしか見てなかったのデスが、今日は出てくるまで待ってたのデス」

千砂都「おお、さっそく…」

可可「そしたら女将は5分ほどで降りてきたのです!」

すみれ「それで?」

可可「女将さんは可可達とご飯を食べていマス。なのに上にご飯を持っていくということはデスよ」

恋「上に誰かがいる?」

可可「そうなりマスよね」

すみれ「でもそんな人見たことないし話すら聞いてないわよね」

千砂都「病人か誰かって説もあるよね」

可可「それは可可も思ったのデス!でも5分でご飯を完食するって結構元気デスよね」

かのん「そこで決めるのはどうかと思うけどね…」

18: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 09:30:07.20 ID:InnaqIog
可可「でも怪しいデスよね。怪しいことは報告する決まりだったのデス!だから報告シマシタ!」

すみれ「ちょっと得意げなのが腹立つわね…」

かのん「ねぇ、私ちょっと怖くなってきちゃった」

恋「たしかにちょっと不気味ですよね…」

一同「……」

一同「2階には何があるんだろう…」

千砂都「やっぱりかのんちゃんも気になる?」

かのん「うん、怖いけど少し気になるかな」

恋「そういえば2階へ行く道ってどこにあるのですか?」

すみれ「玄関を出て外にあるわ。壁伝いに進んで角を曲がるとそこの壁に階段に続くドアがあるの」

恋「なるほど、屋内には2階へ行く道が見当たらなかったので疑問に思ってましたが外にあったのですね」

20: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 09:31:29.83 ID:InnaqIog
千砂都「やっぱりつけてみる?」

すみれ「いつまで言ってんのよそれ」

千砂都「でも気になるでしょ?」

すみれ「それは…でもバレたらどうするのよ」

千砂都「その時はみんなで怒られればいいよ」

可可「それじゃ、明日は早めにお仕事済ませて女将さんの後をつけてみますか」

恋「そうしたいのですが、かのんさんはどうしますか?怖いなら私と一緒にお部屋で待っていても大丈夫ですよ?」

かのん「いや、行くよ。やっぱり気になるし…」

恋「無理はしないでくださいね」

かのん「ありがとう」

21: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 09:32:40.75 ID:InnaqIog
千砂都「それじゃ明日は仕事が終わったら5人で女将さんをつけてみますか」

可可「そうしましょう!今夜はUNOをやるのデス!」

千砂都「よーっし!今日は負けないぞー!」

すみれ「負けた人は変顔インスタに投稿ね!」

かのん「おーっ!言ったなー?」

恋「絶対に負けません!」

ワイワイガヤガヤ
ーーー
ーー

22: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 09:33:25.33 ID:InnaqIog
次の日の夜

可可「全員いるデスカ?」

かのん「可可ちゃんすみれちゃんちぃちゃん恋ちゃん、あれ1人足りない?」

すみれ「自分を入れ忘れるんじゃないわよまったく…」

千砂都「大丈夫、全員いるね」

恋「大丈夫ですか?やっぱり怖いなら部屋で…」

かのん「大丈夫!大丈夫だよ…」

千砂都(本当に大丈夫かな…)

可可「!!女将さんが来ました!隠れるデス!」|サッ

女将「」スススッ

5分後

女将「」スススッ

すみれ「確かに早いわね」

可可「デスよね!」

かのん「何があるんだろう、上」

千砂都「見に行ってみる?」

かのん「私めっちゃびびってるけど…」

恋「私もです…」

すみれ「とりあえずドアの前まで行ってみましょう」

25: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 09:37:14.01 ID:InnaqIog
>>23

わかる、めっちゃ好き

24: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 09:36:06.48 ID:InnaqIog
ドアの前

千砂都「鍵とか閉まってない?」

すみれ「分からない。とりあえず開けるわよ」

ガチャ…

可可「うっ」

恋「可可さん、どうかしましたか?」

可可「なんか…臭くないですか…?」

すみれ「はぁ?あんたふざけてるの?」

可可「ふざけてないのデス!匂わないのデスカ?もっと開ければ分かりマス!」

ギィー…

かのん「この埃の臭い?」

可可「あれ、匂わなくなったデス」

すみれ「あんたねぇ…こんな時までふざけるんじゃないわよ。私なにかあったら絶対あんたのこと置いてくからね。今心に決めたわ」

千砂都(すみれちゃんめっちゃびびってるな…)

可可「すみません…でも本当に匂ったのです、生ゴミっぽい臭いが…」

すみれ「…わたしも言いすぎたわ、ごめんなさい」

千砂都「あ…」

かのん「どうしたの?」

恋「中を見てください」

26: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 09:38:32.60 ID:InnaqIog
かのん「すごく狭いね…」

すみれ「これ行くとなると誰か1人ね…」

かのん「行くの!?」

すみれ「当たり前でしょ、気になるじゃない」

かのん「私は無理だよ」

すみれ「でしょうね、あんたが行ったら失神しちゃうわ」

恋「ここはかのんさん以外のメンバーでジャンケンをして負けた人が行くということにしませんか?」

可可「そうしましょう!どうせすみれが負けるのです」

すみれ「よっしゃ絶対負かす」

千砂都「よーっし、じゃあいくよー
最初はグー、ジャンケン…」

27: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 09:42:36.92 ID:InnaqIog
ーーー
ーー


すみれ(もう…なんで毎回私が負けるのよ)

すみれ(でもいいわ、気になるから上に行こうって言い出したのは私だし。言い出しっぺの宿命ってやつね…)

〜回想〜

すみれ「なにかあったら私に伝えなさいよ!それと私を置いて逃げないでね!」

可可「大丈夫です、すみれと違って可可は仲間を見〇しにはしないのデス」

すみれ「さっきのことは本当に悪かったわよ。でも本当に置いてかれたら私の命の保証は出来ないからね」

千砂都「大丈夫、みんなで待ってるよ」

かのん「死なないでね」

すみれ「大丈夫よ、それじゃ行ってくるわ」

恋「お気をつけて…」

〜回想終わり〜

28: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 09:46:07.68 ID:w/R+pcfE
すみれ(微妙に光が差し込んでるわね)ソロソロ

すみれ(うぅ…やっぱり1人だと心細いわ…)

パキッパキッ

すみれ「!!」

すみれ(なにこのパキパキ音…そうだ、下は!)バッ

可可(大丈夫なのデス)グッ

千砂都(異常無しだよ)グッ

すみれ(親指立ててくれてる…異常無しの合図ね…)

すみれ「…」コクッ

すみれ(進みましょう)

30: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 09:50:08.26 ID:kz8athx2
パキッパキッ

パキッパキッ

パキッパキッ

パキッパキッ

すみれ(ここまで来ると入口からの光がほとんど届かないわね)

すみれ(怖い…帰りたい…)

すみれ(ひえぇ…これは本当になにか出るかもしれないわね…)

パキッパキッパキッ

すみれ(この音も激しくなってる気がするし…)

すみれ(てか私なにか踏んでる?もしかして虫?)ゾクッ

すみれ(みんなは…)バッ

かのん(今のところ大丈夫)グッ

恋(気をつけてください)グッ

すみれ(逆光でほとんど見えないけど親指立ててくれてる…)コクッ

すみれ(ん、突き当たり…)

すみれ「うっ!!」

すみれ(臭い…生ゴミと下水が入り交じったような匂い…)

すみれ(なになになになに)キョロキョロ

33: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 10:11:04.61 ID:kz8athx2
すみれ「!!」

すみれ(なにこれ…踊り場の角に…)

すみれ(なんでご飯が大量に積み上げてあるの?)

すみれ(蝿もこんなにたかてっるのに…どうして気が付かなかったのかしら…)

すみれ「!」

すみれ(ドアがある…)

すみれ(でもなんで…?なんでドアの淵にベニヤ板が打ち付けられてるの)

すみれ(それに大量に貼ってあるこれは…お札よね。見たことある…)

すみれ(なにか閉じ込めてますって雰囲気全開じゃない!)

34: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 10:13:21.11 ID:kz8athx2
すみれ(間違いだったんだ…こんな所に来ようだなんて考えてしまったのは…)

すみれ(帰ろう)

ガリッ

すみれ(!?)










ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ

36: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 10:32:44.68 ID:kz8athx2
すみれ(な、なんの音?ドアの向こうから引っ掻かれてる?)

ドアの向こう「ひゅーっひゅーっ」

すみれ(なに…呼吸音?誰?誰かそこにいるの?)

ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ

ひゅーっひゅーっ

すみれ(後ろに…だめ…足が動かない…)

ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ

ひゅーっひゅーっ

37: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 10:33:24.14 ID:kz8athx2
すみれ(だめ…みんなのところに帰らなきゃ)スッ

ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ

ひゅーっひゅーっ

すみれ(よし、後ろには向けたわ…)

ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ

ひゅーっひゅーっ

……

41: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 12:00:14.32 ID:kz8athx2
すみれ(あれ、音が止んだ?)

……





バン!!!

ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ

42: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 12:07:05.91 ID:w/R+pcfE
すみれ(なんで?さっきまでドアの向こうから聞こえて…)

すみれ(なのになんで天井から聞こえてくるのよ)

すみれ(もうだめ…何も出来ない…)ブルブル

すみれ(助けて…)

ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ

すみれ「っ!!」

すみれ(今…端っこの方でなにか動いたわ…)

すみれ(なに…なんなの…)スッ

可可「すみれ!早く降りてくるのです!!」

恋「大丈夫ですか!?」

すみれ「!!」

すみれ(みんな…!)ダダダダダダダッ

かのん「大丈夫すみれちゃん!?」グスンッ

すみれ「なんとかね…てかなんであなたが泣いてるのよ…」

千砂都「なんともない?目瞑って1段抜かししながらすごい勢いで戻ってきたけど」

すみれ「部屋に戻ってから話すわ…一旦ここから離れましょ…」

43: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 12:08:15.25 ID:w/R+pcfE
ーーー
ーー

住み込み用の部屋

一同「……」

千砂都「何があったの?上に何かあったの?」

すみれ「…」

恋「千砂都さん、今はそっとしておきましょう」

千砂都「そうだよね、ごめん」

すみれ「いいえ、大丈夫よ…」

すみれ「ここで情報を共有しなかったら私が行った意味がないしね」

恋「ですが…」

すみれ「大丈夫よ」

かのん「あ、あのすみれちゃん、ひとつ聞いてもいいかな…」

すみれ「ええ」

かのん「あの、上で…」












かのん「上で何食べてたの?」

44: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 12:09:59.55 ID:w/R+pcfE
すみれ「は?」

可可「すみれ、上についてすぐしゃがみこんで何かを必死に食べてマシタ。というか口に詰め込んで…」

かのん「それにその胸元の汚れ…」

すみれ「はぁ?ってなにこれ!!」

胸元を見てみると大量の汚物がついていた。

すみれ「おぇぇえ!!」

千砂都「すみれちゃん!」

恋「私がトイレまで連れていきます!」


トイレ

すみれ「おぇえぇええ」

恋「大丈夫ですか?」サスサス

すみれ「ありがとう…うぷっ」

すみれ(どういうこと?上に行った時の記憶は全部ある。あの時のパキパキ音、引っ掻く音、呼吸音。忘れるはずがない。)

すみれ(ベニヤ板に大量のお札、そして積み上げられた腐った残飯…私の服や手についてるこれ、あの残飯よね…)

すみれ(どういうこと?あの子たちの言う通り私は上であの残飯を貪ってたって言うの…?)

すみれ(気が狂いそう……)

すみれ「おえええぇえぇえ」

恋「すみれさん!」サスサス

45: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 12:12:11.07 ID:w/R+pcfE
ーーー
ーー

千砂都「戻ってきた」

かのん「すみれちゃん、大丈夫?」

すみれ「ええ、何とか落ち着いたわ…」

可可「すみれ!」

すみれ「…なによ」

可可「何があったか、話してくれませんか?」

可可「ちょっとすみれ…尋常じゃないデス」

すみれ「…笑わないで聞いてね」

可可「そんなことする人ここにはいないのデス。安心してくれていいのデスよ」

すみれ「ありがとう…」グスッ

ーーー
ーー

47: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 12:16:58.05 ID:w/R+pcfE
すみれ「っていうわけ。なにか閉じ込めてありそうな雰囲気だったわ」

かのん「ひぃ…」グスッ

千砂都「そっか、私たちが見てたすみれちゃんと全然違うね…」

可可「…」

恋「怖かったでしょう…」

すみれ「当たり前でしょ…あなたたち本当に行かなくてよかったわね」

千砂都「ごめんね、一人にしちゃって」

すみれ「いいってば、言い出しっぺは私なんだし」

すみれ「ていうかさっきから脚が…」ヒリヒリ

恋「あれ、すみれさん脚が傷ついていませんか?」

すみれ「本当ね、細かい切り傷がたくさん…いつついたのかしら」

可可「…救急箱持ってくるデス」タッ

かのん「あれ?足になにか付いてる…」ヒョイ

かのん「……ひっ!!」ポイッ

千砂都「なにこれ…うわっ」

すみれ「なによ…」

千砂都「それ、よく見てみなよ…」

すみれ「い、言ってよ怖いから…」

千砂都「それ…爪じゃない?」

一同「…………」

48: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 12:39:43.10 ID:kz8athx2
すみれ(あのガリガリって音…壁を引っ掻いてた音だったのね…。そしてあのパキパキって音も何かを踏んだ感触この爪を踏んだせいだったんだわ…)

すみれ(そしてこの爪はきっと壁の向こうのナニカの…)

すみれ(きっとあの残飯を食べた時、そして階段を降りる時にこの爪のおかげで怪我をしたのね…)

すみれ「……」

かのん「私、もうここにいたくないな」

すみれ「そうね、ここにはいられないわ」

恋「全員同じ意見でしょう。早急に立ち去らねば」

千砂都「明日女将さんに言おう」

恋「言って行くのですか?」

千砂都「お世話になったのは事実だしね。かのんちゃん達は5日間、私達も一日だけだけどお世話になったし」

千砂都「それに謝らなきゃ行けないことだもん」

可可「でも今回のこと、女将さん怪しさナンバーワンデスよ?もしあそこに行ったって言ったらどんな顔されるか…可可は見たくないのデス」

すみれ「それは言わないわよ、普通にやめるってことでしょ」

千砂都「うん、ここまで親切にしてもらって黙っては出ていけないよ。明日の朝挨拶に行こう」

49: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 12:44:26.92 ID:kz8athx2
かのん「じゃ、荷物まとめて今日は寝ようか」

すみれ「そうね、とりあえず私は布団敷くからみんな荷物まとめちゃいなさい」

千砂都「ありがとう」

可可「レンレン」

恋「どうしたのですか?」

可可「今日は寝る場所…交換して欲しいのデス」

恋「別に構いませんが…壁がなくて大丈夫なのですか?」

可可「今日は内側がいいのデス…勝手を言ってごめんなさい」

恋「大丈夫ですよ、無理なさらずに」

可可「ありがとう」

可可「……」

すみれ「どうしたのよ」

可可「すみれ…」

すみれ「あんたらしくないわね、昨日の私の変顔でも見て元気だしなさい」

可可「あはは、ありがとうデス」

すみれ「……」

すみれ「さっきは救急箱持ってきてくれてありがとう、助かったわ」

50: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 12:50:20.19 ID:kz8athx2
可可「お安い御用なのデス。スクールアイドルは脚を出すことも多いので怪我をしたら応急処置をしないといけないのデス」

すみれ「ふふ、そうね」

可可「…すみれ」

すみれ「なによ」

可可「ごめんなさい。可可よりすみれの方がずっと怖い思いをしまシタ。」

可可「それなのに可可がこんなんでごめんなさい…助けに行けなくて本当に…」

すみれ「もう、調子が狂うじゃない!いつも通りのあんたでいなさいよ!ほら、布団敷いてくるから荷物まとめてらっしゃい」

可可「ありがとう…」

すみれ「…」

すみれ(『可可より怖い思い』って何よ)

51: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 13:01:17.07 ID:kz8athx2
夜中

すみれ(みんな寝たかしら…)

すみれ(それよりも引っかかるわね、さっきの可可の言葉…)

すみれ(『 可可より怖い思い』ってなによ…あの子は下から眺めてただけじゃない)

すみれ(あれかしら、降りてくる時の私の顔がまずかったのかしら…)

すみれ(それとも単に私の体験談が怖かったってこと…?)

すみれ(はぁ…やめよう。相手の言葉に過敏になりすぎてるわ。かんがえても仕方ないじゃない)

すみれ(帰ったらみんなで原宿スイーツ食べに行くわよ。残りの夏休みエンジョイしなくちゃ!)

ーーー
ーー

52: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 13:01:58.13 ID:kz8athx2
チュンチュン

カノンスマホ「オキテーオキテクダサイー」ピッ

スミレスマホ「グソクムシーグソクムシー」ピッ

可可「!!」ビクッ

恋(可可さん…)

かのん「朝だね…皆眠れた?」

すみれ「いいえ、まったく…」

千砂都「私も…」

恋「かのんさんは?」

かのん「私も…全然」

可可「…」

恋「この様子だとみんな眠れてないみたいですね」

千砂都「仕方ないよ、あんなことがあったのに冷静に寝ていられるわけがないもん」

かのん「さて、女将さんのところに行かなきゃね、私ちょっと髪の毛整えるね」

53: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 13:03:06.16 ID:kz8athx2
かのん「」ドライヤーカチッ

可可「!」ビクッ

恋「…すみれさん、ちょっといいですか」

すみれ「どうしたの?」

恋「その、可可さんの様子なのですが…」

すみれ「恋も気づいてたのね。やっぱりあの怯え方は異常よね」

恋「ええ、物音ひとつひとつに反応しているところを見ると相当怯えているみたいですね」

すみれ「…恋、あの子昨日私に言ってきたのよ」

恋「なにを?」

すみれ「『可可よりも怖い思いしていたのに助けに行けなくてごめん』って」

恋「『可可よりも怖い思い』…?」

すみれ「やっぱり気になるのはそこよね。あの子は恋達と下から私を見ていただけだものね…特に変わったこともなかったんでしょ?」

恋「ええ、昨日の体験談以外のことは特には…」

すみれ「あの子も…なにか見たのかしら」

恋「まさか。一緒にいた私は何も見ていないのに?」

すみれ「それもそうよね…」

54: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 13:13:41.18 ID:w/R+pcfE
恋「可可さん」スッ

可可「!!」ビクッ

恋「大丈夫ですか?寝ていないからか少し疲れているようですが…」

可可「うるさいデス!!!」

恋「っ!」ビクッ

かのちさすみ「!?」

恋「可可さん!?」

可可「大丈夫かって?大丈夫なわけないのデス!可可もすみれも死ぬような思いしてるデス!!」

可可「あっ…」

恋「…」

可可「あっ…可可…そのっ…」シュン

すみれ「可可、恋は昨日からずっとあなたのことを心配していたのよ。…謝りなさい」

可可「…ごめんなさい…可可を気にしてくれていたのに…冷静じゃありませんでシタ…」

恋「いえ、私こそ少し無神経でした」

すみれ「…可可、話して頂戴」

可可「…」

すみれ「私、昨日みんなが最後まで話を聞いてくれたおかげですごく楽になったの。だから可可にも1人で抱え込ませるような真似はしたくないの」

56: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 13:15:34.75 ID:w/R+pcfE
可可「……」グスッ

すみれ「大丈夫、みんなあなたの味方よ」

千砂都「ゆっくりでいいからね」

かのん「怖いけど…私も聞くよ」

恋「可可さん…」

可可「分かりました」

千砂都「可可ちゃん…!」

すみれ「ありがとう。えっと…色々気になるところはあるんだけど」

すみれ「まず、あなたが昨日から言ってる『怖い思い』とかさっき言ってた『死ぬ思い』について聞かせてほしいの」

かのん「あの時可可ちゃんは私達と一緒に下からすみれちゃんを眺めてたよね」

可可「そうデス…ずっと下から見てマシタ」

可可「…そして今も見ているのデス」

57: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 13:16:53.60 ID:w/R+pcfE
4人「…『今も』?」

千砂都「……もうちょっと詳しく教えて貰える?」

可可「可可はあの時みんなと一緒に下にいましたが、ずっと見ていたのデス」

すみれ「見ていたって、上に昇っていく私のことをよね」

可可「違うのデス…いや、最初はそうだったのデスガ…」

恋「……何が見えたのですか?」

可可「多分…影だと思いマス」

恋「影?」

可可「はい、はじめはすみれの影だと思っていたのですが、すみれが上で何かを食べている時もその影はずっと動いていたのデス」

すみれ「…っ」ゾクッ

可可「すみれの影が小さくなるのはちゃんと見えたし可可達の影も足元にありマシタ」

可可「それで…それ以外に動き回る影が3つ…いや4つくらい…」

一同「……」

すみれ(冗談でしょ?いや、でも可可はこんな時にくだらない冗談をいう子じゃないわ…冗談だと思いたいけど…)

58: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 13:19:46.78 ID:w/R+pcfE
すみれ「あそこには私しかいなかった」

可可「分かってマス」

すみれ「そもそもあのスペースに人が4,5人も入れるわけがないわ」

千砂都「あの階段は人ひとりがやっと通れるくらいの狭さだしね」

可可「あれは人ではないのデス…」

可可「それに、どう考えても人では無理なのデス」

かのん「どういうこと?」

可可「…全部壁に張り付いてマシタ」

恋「えっ…」

可可「蜘蛛みたいに全部壁の横とか上に張り付いてたんデス…それでもぞもぞ動いてて…それで…それで…ハァハァ…」グスッ

千砂都「落ち着いて!」サスサス

かのん「大丈夫、みんないるよ!」サスサス

可可「スゥ…ハァ…あれは人ではありまセン…元から人では無いのですが形も人じゃなくて…いや、人の形はしてるけど違くて…」

一同「……」

恋「人間の形をしたナニカが壁に張り付いていたってことですか?」

可可「…」コクッ

59: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 13:20:40.64 ID:w/R+pcfE
すみれ(嘘でしょ…この子が見たのって…)バクバクバク

すみれ(影じゃないわよね…仮に影だったとしてもそこにナニカがいたから影がてきたわけで…)バクバクバク

すみれ(じゃあなに?私は自分の周りを這い回る何かに気が付かないであの残飯をもりもり食べていたってこと…?)バクバクバク

すみれ(壁を引っ掻く音も…呼吸音も…向こう側からじゃなく私の近くでなっていたの…?)バクバクバク

かのん「すみれちゃん」

すみれ「な、なに」

かのん「大丈夫?」

すみれ「え、ええ、なんとか」

可可「レンレン」

恋「はい?」

可可「さっきは取り乱してしまって本当に申し訳なかったデス…」

恋「いえ、こちらこそすみませんでした…帰ったら原宿スイーツをご馳走させてください」

可可「あはは、ありがとう…」

60: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 13:23:02.42 ID:w/R+pcfE
一同「……」

千砂都「そういえばさっき、『今も見てる』って言ってたけど…」

可可「あ、あれはちょっと…錯乱してマシタ!今は大丈夫デス!」

かのん「……」

かのん(可可ちゃん、明らかに無理してる)

かのん(目も…私たちの方じゃなくて違うところを見ているような…)ゾクッ

一同「……」

かのん「可可ちゃん、話してくれてありがとう。大丈夫、絶対1人にしないからね」

すみれ「また何かあったら遠慮なく言いなさい」

可可「ありがとうデス…」

千砂都「そろそろ朝ご飯の時間だけど」

恋「なるべく早い方がいいですよね、ご飯を食べた後にすぐ言いましょう」

かのん「そうだね」

可可「可可は今日は朝ご飯は要らないのです」

61: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 13:24:20.18 ID:w/R+pcfE
可可「ちょっと調べたいことがあるのデス、あんまり時間もないのでみんなで行ってきてクダサイ」

恋「わかりました、みさきさんに頼んでおにぎり作って貰いますね。ですが1人で大丈夫ですか?」

可可「大丈夫デス、レンレンは本当に優しいデスね」

恋「…無理はなさらずに」

廊下

すみれ「可可…なにか隠してるわよね」

かのん「ここまで話した可可ちゃんが敢えて隠してることだよ、聞いたら私…発狂しちゃうかも」

恋「無理して聞くのは可哀想ですよね、そっとしておきましょう…」

千砂都「それより本当に1人にして大丈夫だったかな」

かのん「1人にしないって言ったばかりなのに…」

すみれ「いいんじゃない?あの子が1人になりたがったんだし。…とはいえ心配よね、ご飯食べたらすぐに戻ってあげましょう」

すみれ「てか…」

恋「?」

62: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 13:27:32.80 ID:w/R+pcfE
すみれ「辞める当日に朝ごはんいただくってどうなの?」

ちされんかの「あっ…」

恋「言われてみれば確かに…」

かのん「他人がやってたら絶対突っ込むよね」

千砂都「普通に食べる気でいたけどおかしいよね」

一同「…」

一同「ま、いっか」

女将さん「おはよう、よく眠れた?」

一同「!?」ビクッ

すみれ(今、私の脚見たわよね)

かのん(こんな挨拶、いつもはしないのに…初日以来だよ)

恋「おはようございます、遅れてしまい申し訳ありません」

恋「いつも通りに」コソッ

かのん「ごめん、ありがとう」コソッ

千砂都「あ、みさきちゃんいますか?」

女将さん「いるわよ、みさきちゃーん」

63: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 13:36:36.38 ID:w/R+pcfE
みさき「はい、どうしました?」

千砂都「可可ちゃん今体調崩してて部屋で寝てるからおにぎりでも作って貰えたらと思って」

みさき「いいですよ、それより可可ちゃん、今日は寝ていた方がいいんじゃ…」

一同「……」

すみれ(「もう辞めるから大丈夫」とはさすがに言えないわよね…)

朝食中

一同「……」モグモグ

女将さん「…」ニコニコ

かのん(女将さん、完全に箸が止まってるよ…)モグモグ

千砂都(ずっとすみれちゃんの方を見てる…?すみれちゃん、時々ご飯みたいな)モグモグ

すみれ(……気分悪いわ)モグモグ

恋(旦那さんやみさきちゃんも女将さんの異変に気づいてますね…さっきから女将さんとすみれさんをチラチラと…)

一同「…」

一同(食べにくい!!)

65: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 13:38:54.41 ID:w/R+pcfE
食後、廊下

かのん「すみれちゃんずっと見られてたよね」

すみれ「あ、気付いた?すごく食べにくかったわよ」

千砂都「しかも旦那さん達も完全に気づいてたよね、女将さんとすみれちゃんを交互にチラ見してたし」

恋「辞める話、聞かれてしまっていたのでしょうか…」

一同「……」

可可「はい、どうしても今日がいいんデス、お願いします…はい、ありがとうございます!」

かのん「あれ、部屋の中から可可ちゃんの声がする」

千砂都「電話中みたいだね」

可可「はい、はい、必ずお伺いしますので…お願いシマス」

恋「帰った後すぐにどこかに行くんでしょうか」

すみれ「詮索はしないであげましょう」

可可「ふぅ…」ピッ

すみれ「可可」ガチャ

可可「す、すみれ!」ビクッ

66: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 13:43:06.21 ID:w/R+pcfE
すみれ「女将さんたちのとこに挨拶、行くわよ」

可可「分かりマシタ」


広間

かのん「女将さん、いないね」

千砂都「またあそこに行ってるのかな」

恋「変な想像はやめましょう、今日でお別れなのですから」

千砂都「そうだね、ごめん」

すみれ(うっ…2階に消えていく女将さんの姿がフラッシュバックして…)

すみれ(あの残飯にまたご飯をのせているの…?なんのために…?)

すみれ(忘れましょう、恋の言う通り今日でここを辞めるんだから)

可可「みさきさん、女将さんはどこデス?」

みさき「ああ、この時間はお花に水やりですね、多分すぐ戻ってきますよ」

みさき「あ、可可ちゃん」

可可「はいっ」

みさき「すぐおにぎり作るから待っててね」タタタッ

可可「あ、ありがとう」

68: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 13:46:34.00 ID:w/R+pcfE
女将「あら、どうしたのよあんたたち」

恋「女将さん…」

かのん「あの、ちょっと話があるんですけど大丈夫ですか?」

女将「なんだい深刻そうな顔して…」

千砂都「勝手を承知で言います、私たち今日でここを辞めさせてもらいたいんです」

一同「お願いします」

女将「…」

一同「…」

女将「そうかい、わかったよ、ほんとにもうしょうがない子達だよ」ニコッ

女将「それじゃあ、お給料用意してくるからあんたたちは使った部屋の掃除してきなさい」

恋「ありがとうございます」


住み込み用の部屋

千砂都「意外とあっさりだったね」

かのん「ていうか女将さん、私たちが辞めるって言っても眉ひとつ動かさなかったよね」

千砂都「まるで知ってたみたいに…?」

かのん「待って、今朝のこともあるしすごく怖い」

すみれ「仕事の後は海で遊んだりしてたから部屋はそんなに汚れてないわね」

かのん「トランプとかUNOやったくらいだもんね」

恋「さて、ささっとお掃除して広間に向かいますか。可可さん、大丈夫ですか?」

可可「大丈夫デス、お掃除しましょう」

69: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 13:54:47.87 ID:w/R+pcfE
広間

女将 旦那 みさき「……」

かのん「短い間でしたが、お世話になりました。勝手を言ってすみません」

一同「ありがとうございました」

女将「こっちこそ、短い間だったけどありがとね。これ、少ないけど…」

千砂都(お給料と…なにこれ)

恋「あの、この巾着袋は?」

女将「あぁ、それはここで作ってる御守りみたいなものよ、帰ってからも元気でね」ニコッ

恋「ありがとうございます」

みさき「仲良くしてくれてありがとう、スクールアイドルがんばってね!」

かのん「よかったらいつか遊びに来てよ、ステージも見て欲しいし」

みさき「うん、約束する!あ、可可ちゃんこれおにぎり。みんなの分もあるから」

可可「最後までありがとうデス。今度一緒にスイーツ食べに行きまショウね」

みさき「うん!楽しみにしてるね」

すみれ(なんか…昨日死にそうな思いしたのに)

すみれ(お世話になった人との別れってそういうの関係なしに悲しいわね…)

70: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 13:57:22.63 ID:w/R+pcfE


旦那「駅まで送っていこうか?」

可可「いえ、タクシーを呼んだので大丈夫デス」

千砂都「本当にお世話になりました」

女将「元気でね」

みさき「遊びに行くね」

旦那「…」

恋「女将さんたちもお元気で。それでは、さようなら」

一同「ありがとうございました」


タクシーの中

運ちゃん「駅まででいいんだよね?」

可可「あ、行き先を変更したいのデス。このメモの場所に向かって貰えマスか」

恋「可可さん?」

運ちゃん「大丈夫?結構かかるけど」

可可「大丈夫デス」

可可「…行かなきゃならないところがアリマス。皆さんも一緒に」

一同「…」

4人(どこに行くんだろう…)

かのん(今朝の可可ちゃんの様子を見たらとてもじゃないけど聞けないよね…)

運ちゃん「あれ、後ろは走ってる車、お客さんたちの知り合いじゃない?」

71: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 14:01:30.62 ID:w/R+pcfE
一同「!?」

かのん「あの車…」

すみれ「あれって旅館の軽トラよね」

千砂都「中に乗ってるのは旦那さんだね、手振ってる」

恋「なにか忘れ物でもしたのでしょうか」

可可「すみません、ちょっと止めてください」




旦那「そのまま帰ったらだめだ」

72: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 14:03:53.57 ID:w/R+pcfE
可可「帰りません、こんな状態で帰れるはずがないのデス」

千砂都「なに、どういうこと?」

旦那「すみれ」

すみれ「は、はひっ」

旦那「おめぇ、あそこ行ったな?」

一同「!!」ドクン

すみれ(なんで知ってるのよ…)

すみれ「…はい」

旦那「…はぁ」

一同「…」

旦那「このまま帰ったら完全に持ってかれちまう。なぁんであんなとこ行ったんだかな…」

旦那「まぁ元はと言えば俺がちゃんと言わなかったのが悪いんだけどよ」

すみれ「え、どういうこと?持ってかれるってなによ」

可可「大丈夫デス!今からみんなでお祓いに行くのデス!そのためにもう向こうに話してあるのデス!」

73: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 14:06:49.40 ID:w/R+pcfE
すみれ(なに…お祓いって…憑かれてたってこと…?)

すみれ(え、私死ぬの?この流れは死ぬってことよね)

すみれ(なんで行ったんだって?行くなってんなら最初から言っておきなさいよ…)

すみれ「…」

旦那「お祓いだって?」

可可「はいデス」

旦那「おめぇ、見えてんのか?」

可可「…」

恋「可可さん、見えてるって…」

可可「ごめんなさい、今はまだ聞かないで欲しいデス」

すみれ「いい加減にしなさい!なんなのよさっきから!」

旦那「やめとけすみれ、おめぇら逆に可可に感謝しなきゃならねえぞ」

74: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 14:11:39.11 ID:w/R+pcfE
千砂都「でも言えないってことはないんじゃないですか?」

旦那「おめぇらはまだ見えてねえんだ。1番あぶねえのは可可なんだよ」

4人「えっ」

可可「…」

すみれ「なんで可可なんですか?あそこに実際に行ったのは私なのに」

旦那「わかってるさ、でもお前はまだ見えてねぇんだろ?」

恋「さっきから見えてるとか見えてないとかってなんの話ですか?」

旦那「知らん」

恋「はぁ?」

75: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 14:20:19.43 ID:w/R+pcfE
旦那「真っ黒だってことだけだな、俺の知ってる情報は」

かのん「どういうこと…」

旦那「だがなぁ…お祓いに行ってもどうにもならんと思うぞ」

千砂都「どうしてですか?」

旦那「前にも同じようなことがあったからだ、詳しいことは言えんが…」

かのん「でも、行ってみなきゃわからない」

旦那「それはそうだな」

かのん「だったら…」

旦那「それでだめだったらどうするつもりなんだ?」

かのん「…」

旦那「可可にはもう見えちまってるんだ。見えてからはとんでもなく早いぞ」

76: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 14:24:06.44 ID:w/R+pcfE
可可「うっ…うぇえん…」グスッ

かのん「可可ちゃん!」

可可「うぁあああああぁあぁあああ!!」グスッグスッ

千砂都「可可ちゃん!」

恋「可可さん!」

運ちゃん「お客さんたち、大丈夫ですか?」

一同「……」

可可「うっ…うっ…」グスッ

旦那「あぁ、すまんね。呼び出しておいて申し訳ないんだが、こいつらはここで降ろしてもらえるか?」

運ちゃん「えっでも…」

旦那「料金は俺が払う」

恋「どういうつもりですか?」

77: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 14:26:19.84 ID:w/R+pcfE
旦那「俺がなんでお前らを追いかけて来たか分かるか?ただついてきただけじゃねえ」

旦那「事の発端を知る人がいる。その人のところまで連れて行ってやる」

旦那「もう時間がない、俺を信じろ」

すみれ「可可…」

可可「おねが…しま…す」グスッ

一同「……」

旦那「よし、可可は助手席、他の奴らは荷台に乗れ」

すみれ「は?」

旦那「時間がねえ早くしろ」

恋「仕方ありません、我慢しましょう」

千砂都「可可ちゃんを助けなきゃ」

すみれ「…分かったわよ」

79: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 15:23:42.17 ID:w/R+pcfE
15分後

旦那「着いたぞ」

かのん「普通の一軒家みたいだね」

恋「横に鳥居がありますよ」

千砂都「ほんとだ、その後ろに石段が続いてるね」

すみれ「私たちが行くのは鳥居の方?」

旦那「いや、一軒家の方だ。こっちに来い」

可可「みなさん大丈夫デシタカ?」

すみれ「なんとかね、死ぬほど尾てい骨が痛いけど」

千砂都「すみれちゃん、軽トラが揺れる度に変な声出してたよね」

すみれ「うっさい!」

可可「あはは…」

かのん(すみれちゃん余裕あるな…)

恋「ほら、行きましょう」

80: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 15:31:44.53 ID:w/R+pcfE
ピンポーン

旦那「聞かれたことにだけ答え よ」

一同「…」

ガラガラ

巫女「お待ちしておりました。どうぞこちらへ」

旦那「急にすまねえな。行くぞお前ら」

座敷

巫女「この部屋です」

すみれ(中にお坊さんがいるわね)

坊さん「どうぞ」

旦那「入れ」

かのん「失礼します」

坊さん「……禍々しい」ボソッ

一同「…」

旦那「座れ」

一同「失礼します」スッ

81: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 15:35:20.85 ID:w/R+pcfE
坊さん「旦那、この子ら全部で5人かね」

旦那「ええそうなんですわ。この可可ってやつはもう見えちまってるんですわ」

坊さん「…」

旦那「…」

一同「…」

坊さん「堂に行ったというのは彼女ですか?」

旦那「いえ、実際に行ったのはこのすみれってやつで」

坊さん「ふむ」

旦那「可可は下から覗いてただけらしいんですわ」

坊さん「そうですか」

坊さん「…」

坊さん「可可さん、この様な経験は初めてですか?」

82: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 15:38:31.95 ID:w/R+pcfE
可可「この様な経験…?」

坊さん「そうです、この様に霊を見たりする経験のことです」

可可「……ないデス」

坊さん「そうですか。不思議なこともあるものです」

可可「あの…可可…」

坊さん「はい」

可可「可可、死んじゃうんデスカ…?」ガクガク

4人「…」

坊さん「…そうですね。このまま行けば確実に」

可可「……」ピタッ

かのん「え、死ぬって…」

坊さん「持っていかれるという意味です」

千砂都「わかんないよ…」

坊さん「話がわからないのは当然です。すみれさん」

すみれ「はいっ」

84: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 21:00:03.28 ID:kz8athx2
坊さん「すみれさんは堂へ入った時、何か違和感を感じませんでしたか?」

すみれ(堂って2階のあそこのことよね…)

すみれ「音が聞こえました。変な過呼吸音が。そして2階のドアにはお札のようなものが沢山貼ってありました」

坊さん「そうですか。気づいているかもしれませんがあそこには、人ではないものがいます」

一同「…」

坊さん「おそらくすみれさんはその存在を耳で感じた。本来ならば人には感じられないものなのです。誰にも気づかれずにひっそりとそこにいるものなのです…よっこらせ」スッ

坊さん「可可さん、今は見えていますか?」

可可「いえ、たださっきから音がすごいデス…」

恋「音…?」

可可「壁を引っ掻く音が…」

坊さん「ここには入れないということです。幾重にも結界を貼っておきました。その結界を必死に破ろうとしているらしいですね」

坊さん「しかし、皆さんがいつまでもここへ留まることは出来ないのです。今からここを出ておんどうへ行きます。…可可さん」

可可「…」

坊さん「ここを出ればまたあのもの達が現れます。また苦しい思いをすると思います。でも必ず助けますから、気をしっかり持って付いて来てくださいね」

可可「…」コクコク

85: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 21:03:44.69 ID:kz8athx2


お坊さん「鳥居の先の石段を登って行きます」ザッザッ

かのん「あれ、旦那さんは?」

恋「さっきお坊さんと何か話した後にどこかへ行ってしまいましたよ」

千砂都「なんか…知ってる人がいなくなってちょっと心細いね」

一同「……」

かのん「で、できるだけ寄り添って行こうよ」

すみれ「そうね、可可あんたは真ん中に来なさい」

可可「ありがとう…」

一同「……」ザッザッ

可可「…」キョロキョロ

恋(可可さん、ひどく憔悴してる…)

千砂都(ずっと1人で抱えてたんだもんね…気づけなくてごめんね)

86: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 21:12:27.36 ID:kz8athx2
一同「…」ザッザッ

すみれ「登りきっちゃったわね」

千砂都「てことはここが目的地?」

お坊さん「いえ、まだ先です」

恋「あ、あの奥の鳥居の先ですか?」

かのん「ほんとだ、まだ鳥居があるね」

お坊さん「そうです、もう少し歩いてもらいます」

お坊さん「可可さん」

可可「はいっ」ビクッ

お坊さん「アレはどんな感じですか?」

4人「…」

可可「2本足で立ってマス…ずっとこっちを見ながら…ついてきマス…」

4人「!?」

すみれ(は?ついてきてる…?)

かのん(嘘でしょ…私たち本当に助かるのかな…)

かのん(でも可可ちゃんは私たちよりずっと怖い思いしてるんだよね…)

88: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 21:18:01.65 ID:kz8athx2
坊さん「そうですか、もう立ちましたか。よっぽど可可さんに助けてもらったのが嬉しかったんでしょうね」

坊さん「でももう時間が無い。急がなくてはなりません」

坊さん「行きますよ」ザッザッ

一同「はい」ザッザッ


おんどう前

坊さん「着きました」

恋「…小屋?」

千砂都「ここに来る途中、大きなお寺みたいな建物を見かけたけど…こっちはすごくちっちゃいね」

坊さん「裏へ回ります、みなさんもついてきてください」ザッザッ

一同「…」ザッザッ

坊さん「ここで一晩過ごしていただきます。憑き物を祓うためです。ここには明かりが一切ありません、そして夜が明けるまで決して言葉を発してはいけません」

坊さん「もちろんスマホもダメです。音や明かりを発するものは全て。食ったり寝たりすることもいけません」

千砂都「あ、あの…」

坊さん「はい?」

千砂都「お、おトイレは…///」

恋「千砂都さん…」

千砂都「だって…」

坊さん「…中にトイレはありません。どうしてもしたくなった時はこれをお使いください」スッ

恋「これは…布袋?」

坊さん「大丈夫です、絶対に漏れないようになっています」

かのん(マジか…)

89: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 21:19:39.98 ID:kz8athx2
坊さん「さて、この竹筒の中の水をお飲みください。身体を清めてからこの中に入っていただきます」

一同「ゴクッゴクッ」

すみれ「そういえば、夏なのに全然水分とってなかったわね」

千砂都「それどころじゃなかったからね」

かのん「お水、美味しいね」

可可「はぁ…ミズワタルシミ…」

恋「逆…」

坊さん「それでは、中へお入りください」

かのん「じゃあ私から入るね」スッ

恋「では次は私が」スッ

可可「それじゃ可可も…」

可可「うっ!!」ダッ

すみれ「ちょっと可可!?」

可可「おえぇええぇえええ」ビチャビチャ

千砂都「どうしたの!?大丈夫!?」

かのん「可可ちゃん!」

恋「可可さん!」

90: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 21:20:48.39 ID:kz8athx2
坊さん「あなたたち、堂へ言ったのは今日ではないですよね?」

千砂都「はい、昨日の夜です」

坊さん「おかしい…一時的とはいえ身を清めたはずなのにおんどうの中に入れないなんて」

坊さん「…ヒップバッグ?」

可可「え、このバッグがナニカ…?」

坊さん「みなさん、こちらに滞在している間、誰かから何かを受け取ったりしませんでしたか?」

かのん(なんかあったかな…みさきちゃんの連絡先くらいしか…でもそういうのじゃないよね)

千砂都「…そうだお給料!」

恋「あ、あと巾着袋も」

すみれ「おにぎりもあるわよね、貰い物に入るなら」

坊さん「可可さん、その中のどれかを今持っていますか?」

可可「おにぎりは置いてきた大きい鞄にはいってマスが…その他はこのバッグに入っているのデス」

坊さん「出してもらっても?」

可可「はいデス…」スッ

坊さん「給料袋はただの給料袋ですね…巾着は…」

坊さん「!!…これは」

91: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 21:21:53.35 ID:kz8athx2
かのん「なになに…えっ…!」

恋「爪…!?」

千砂都「すみれちゃんの脚についてたのと似てるね」

すみれ「ええ、おそらく同じものでしょう」

可可「おえぇ…」ビチャ

かのん「ごめん…私も気分悪い…おえっ」ビチャビチャ

坊さん「…」

坊さん「みなさんの荷物を全て預かります。ポケットに入ってるものも全て出してください」

恋「わかりました。私の巾着袋は置いてきた鞄の中に入っていますので、処理して貰ってもよろしいですか?」

坊さん「わかりました、他の方は…」

ーーー
ーー

92: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 21:24:46.12 ID:kz8athx2
坊さん「今度は中に入れましたね、それでは今から一晩この小屋で過ごしてもらいます」

坊さん「私を含め他の者もみな本堂のほうにおります。明日の朝まで誰もここに来ることはありません」

坊さん「そして、壁の向こうのものと会話をしてはなりません。このおんどうの中でも言葉を発してはなりません。居場所を教えてはなりません。」

坊さん「これらをくれぐれもお守りいただけますよう、お願いします」

一同「…」コクッ

坊さん「それでは…」スーッ

93: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 21:25:46.10 ID:kz8athx2
一同「……」

かのん(中は意外と涼しいな…これなら一晩くらいはなんとかなりそう)

かのん(よく見ると古い建物だからかところどころ小さい穴がある…光が入ってくるからみんなの顔も確認できる)

一同「…」

かのん(こんなに近くにいるのに話すことが出来ないなんて…心細いな)

かのん(みんな、大丈夫だよ)コクッ

恋(ええ)コクッ

千砂都(夜は長いけど頑張ろう)コクッ

すみれ(ここから出たら残りの休みを満喫するわよ)コクッ

可可(みんなと一緒なら…)コクッ

一同「……」

かのん(なんか不思議…話せないのに、頷くことしか出来ないのに)

かのん(なんとなくみんなが考えてることがわかる)

94: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 21:27:00.76 ID:kz8athx2
ーーー
ーー

かのん(ここに入ってどのくらい経っただろう)

かのん(1時間くらい経ったかな…それともまだ30分?)

かのん(みんなと顔を合わせることも少なくなっちゃった…みんな別の方向向いてるし)

かのん(……外、まだ明るいな)

ガサゴソ

かのん(なに…?ってちぃちゃん!?)

千砂都(えへへ、持ってきちゃった)

恋(メモ帳とペン…まったく)

すみれ(なにやってんのよ…)

すみれ(でもこれで意思の疎通は出来るわね、おいで可可)テマネキ

可可(…)スススッ

カキカキカキカキ

千砂都:みんな、大丈夫?

恋:私は今のところは…みなさんは?

すみれ:私も今のところは大丈夫

かのん:可可ちゃんは?

可可:可可も今は大丈夫なのです。何も見えないし聞こえません。

一同「……」

95: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 21:41:32.87 ID:kz8athx2
千砂都:夜になったら話せなくなるから今のうちに話そう

かのん:そうだね

すみれ:今何時くらいかしら

恋:さぁ、5時くらいでしょうか

可可:ここに来たのは1時くらいですよね

かのん:もう3時間経ってたんだ、まだ1時間くらいだと思ってた

恋:時計がないから正確な時間はわかりませんが

千砂都:まだまだ長いね

すみれ:お腹空いたわ

千砂都:私も

恋:お昼、食べていませんからね

かのん:トマト食べたい、ハンバーグもいい

すみれ:やめて、お腹空くじゃない

96: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 21:42:57.67 ID:kz8athx2
一同「…」

千砂都:なにがあっても最後まで頑張ろう

かのん:私、叫んじゃったらどうしよう

すみれ:口ん中になにか突っ込んどきなさい

可可:突っ込むものなんてないのです

かのん:服脱いでおこうか

恋:やめなさい、仮にも女の子なんですから

恋:というか何も起きない、そう信じましょう

97: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 21:45:03.02 ID:kz8athx2
一同「…」

恋(私は何を言っているのでしょう…お坊さんはなにも起きないとは言っていないのに)

恋(むしろこれから何が起こるか予想しているような口振りで私たちに忠告していました…)

恋(はやく時間が過ぎて欲しいけど、夜が来るのがすごく怖い…)

一同「……」

恋(私の一言で空気が重くなってしまいました…)

すみれ「…」カキカキ

すみれ:なにか話しましょう、時間がもったいないわ

千砂都:じゃ、帰ったらなにするかとか

恋:いいですね、私はまずツタヤですね

可可:なんでツタヤ?

恋:2週間前に借りたDVDまだ返してなくて…

かのん:どんだけ延泊!?

すみれ(ナイスよ、恋)

恋(少しは場が和んだでしょうか…)

可可:可可はお坊さんに言われたことを必ず守ります

可可:まだ死にたくありません

一同「……」

98: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 21:46:08.06 ID:kz8athx2
千砂都(死にたくない、か…)

千砂都(そんな言葉、本気で口にしたことも思ったこともないよ)

千砂都(でも今は本気でそう言ってる人がいる…心の底から…)

千砂都(大丈夫だよ、可可ちゃん)ギュッ

可可(千砂都…)ギュッ

ーーー
ーー

99: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 21:55:31.88 ID:kz8athx2
ミーンミンミンミンミン

すみれ(そろそろ日が暮れるわね…)

すみれ(はじめは蝉がうるさかったけどだんだん耳が慣れてきちゃったわ…)

すみれ(……ん?)

ヒューッヒューッ

すみれ(な、なに?蝉の声じゃない何かが聞こえる…)

ひゅーっひゅーっ

すみれ(あの呼吸音だ…)

100: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 21:57:11.99 ID:kz8athx2
すみれ(そうだ、可可)

すみれ(可可には聞こえてないのかしら。あの子呼吸音について話してたっけ…あれは聞いたことないのかしら。それとも単に気づいてないだけ?)

すみれ「…」

可可「…」キョロキョロ

可可(すみれ…?)

可可「…っ!」

すみれ(可可、こっちに気づいたわね)

すみれ(でもなにか様子がおかしいわね、私の肩越しを真っすぐ見つめて…)

すみれ(え?何かいるの?)

かのん(すみれちゃん…?可可ちゃん…?)

すみれ(かのんもこっちに気づいたみたいね、でも可可みたいになにかを見つけた様子はない…)

すみれ(…振り返ってみる?いいや、出来るわけないじゃない)

101: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 22:05:06.45 ID:kz8athx2
ひゅーっひゅーっ

すみれ(やだ…こわい…)

ひゅーっひゅーっ

すみれ(気持ち悪い…)

ひゅーっひゅーっ

すみれ「……」

ズリズリズリズリ

すみれ「!?」

すみれ(なに…?おんどうの外から音が…)

すみれ(なにかを引きずりながらおんどうの周りを回ってるような音が…)

スススッ

かのん「…」ギュッ

恋「…」ギュッ

千砂都「…」ギュッ

すみれ(みんな…みんなにもこの音、聞こえてるのね…)ギュッ

一同「……」バクバクバクバク

ひゅーっひゅーっ

きゅっ…きゅえっ……

ひゅーっひゅーっ

すみれ(なに?なんか変な音を挟むようになったわね…)

すみれ(だめ…こわい……目閉じてましょ…)キュッ
ーーー
ーー

102: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 22:09:51.77 ID:kz8athx2
すみれ(あれから何分経ったかしら…結構経ったと思うけどほんの5分かもしれないわね…)

すみれ(目開けて見たらおんどうの中が真っ暗になってるしだいぶ経ったってことかしら)

すみれ(あの変な音は消えたけど暗いとまた別の怖さがあるわね…)

すみれ(さっきからずっと手繋ぎっぱなしってことはみんなもここから動いてないってことよね)

すみれ(右に恋、左にかのん、その横に千砂都だったわよね確か…可可はこっちに来なかったけど…)

すみれ(そうだ可可、あの子大丈夫かしら)

すみれ(暗くてどこにいるかわからないけどとりあえず可可がいた方へ行ってみましょう)

すみれ(ええい、あんたたちも来なさい!)グイッ

ちさかのれん(!)スッ

すみれ(言葉が交わせないのがもやもやするけど、可可が心配なのはみんな一緒よね)

恋(すみれさん?…可可さんのところへ行くつもりなのでしょうか)

恋(となるとすみれさんは両手が塞がっているので私が先陣を切る必要がありますね)

恋(えっと…可可さんがいたのはたしかこっちの方…)スススッ

103: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 22:11:19.08 ID:kz8athx2
恋(なるべく音を立てないように…誰か1人でもパニックになれば終わる…)

恋(ん、壁まできたのでしょうか…固いものに触れました)ピトッ

恋(おかしい…可可さんがいた方向へ来たのに可可さんがいない…)

恋(どこですか、可可さん)

千砂都(可可ちゃんがいた方に来たのに可可ちゃんがいない…とりあえず折り返した方がいいのかな。そうすると端っこの私から行かないと、か)

千砂都(暗すぎて意思の疎通が出来ないのが心細いなぁ…でもひとりでいる可可ちゃんはもっと寂しい思いしてるだろうし)

千砂都(…はやく可可ちゃんを見つけなきゃ)スススッ

千砂都(と思ってたら壁についちゃった…こっちにもいないか)

千砂都(壁伝いに進んでみよう)

104: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 22:13:33.93 ID:kz8athx2
かのん(こっちにも可可ちゃんいないか…あ、ちぃちゃんが壁伝いに進んでる)

かのん(可可ちゃん、さっき明らかに様子がおかしかったよね。ズリズリって音が外から聞こえた時私は怖くてすぐ近くにいたすみれちゃんの手を握ったんだけど)

かのん(可可ちゃんはすみれちゃんの後ろをずっと見てた…私には何も聞こえなかったし見えなかったけど可可ちゃんにはなにか見えたのかな)

かのん(ん、ちぃちゃんの動きが止まった?)

かのん(うわわ、ちょっとちぃちゃんいきなり手を引っ張らないで)ズイッ

かのん(…小刻みに震える人の感触……可可ちゃんだ!)

可可(みんな…?)プルプル

かのん(怖かったよね、ひとりにしちゃってごめんね)ギュッ

可可(かのん…?)ギュッ

すみれ(よかった…可可見つかったみたいね…ふぅ)

105: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 22:19:15.46 ID:kz8athx2
すみれ(…でもちょっと待って、これって本当に可可なの?)

すみれ(よく考えたら、さっきからずっと右手を握っているのも私が恋だと思ってるだけで本当は違うなにかかも)

すみれ(暗くてなにも見えないせいで疑心暗鬼になっちゃってるわ…)

すみれ(ん、誰かに引っ張られてる…位置的にこれはかのんの手かしら)

すみれ(どこかに連れていこうとしてるの?どこに?)

すみれ(あ、月明かり…隙間から明かりが入ってきてる)

すみれ(どうして気づかなかったのかしら、暗闇に目が慣れるっていうのを聞いたことがあるけれど怖くてそれどころじゃなかったからかしらね)

すみれ(かのんも怖いはずなのに…感謝しなきゃ)

すみれ(あ…みんなが見える)

107: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 22:27:14.08 ID:kz8athx2
すみれ(端っこに千砂都、その隣に可可、真ん中にかのんがいて私、そして右に恋)

すみれ(大丈夫、みんないるわね)

恋(かのんさんがここへ連れてきてくださったおかげでみなさんの顔を確認することが出来ました)

恋(お互いの顔が見えるだけでこんなにも安心出来るものなのですね)

恋(…可可さんの顔、汗と涙でぐっしょり濡れてる…)

恋(何があったのか、何を見たのか…聞くまでもありませんね)

一同「……」

「可可ちゃん」

一同「!?!?」

かのん(この声…みさきちゃん?)

可可(怖いデス……)ギュッ

千砂都(大丈夫、みんないるから)ギュッ

かのん(もうひとりにしないからね)ギュッ

「おにぎり作ってきたよ〜」

すみれ(この声、みさきちゃんよね…みさきちゃんの声なのに…)

恋(抑揚がまったくない…まるで機械のようなトーンで…)

「可可ちゃん」

一同「……」ギュッ

108: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 22:35:20.22 ID:kz8athx2
「………」

「可可ちゃん」
「おにぎり作ってきたよ」
「いらっしゃいませ〜」
「可可ちゃん」
「おにぎり作ってきたよ」
「いらっしゃいませ〜」
「可可ちゃん」
「おにぎり作ってきたよ」
「いらっしゃいませ〜」

可可「……」ガクガクガクガク

かのん(可可ちゃんっ!)ギュッ

恋(お坊さんはおんどうには誰も来ないとおっしゃっていました…それにこの無機質な喋り方…)

恋(外にいるのは絶対にみさきさんではありませんよね…)ギュッ

すみれ(かのんと恋の手に力が入った…この子達にも聞こえてるのね)

「可可ちゃん」
「おにぎり作ってきたよ」
「いらっしゃいませ〜」
ガタガタガタガタ

すみれ(と、扉が揺れてる…)

すみれ(なによ、扉こじ開けて入ってくるつもりなの?)

109: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 22:42:02.64 ID:kz8athx2
千砂都(この扉を突破されたらどうすればいいの…全速力で逃げる…?)

千砂都(お坊さんたちは本堂にいるって言ってたからそこまで…いやいや本堂ってどこ!?)

「可可ちゃん」
「おにぎり作ってきたよ」
「いらっしゃいませ〜」
ガン!ガン!ガン!ガン!

千砂都(何この音…扉に体当たりしてる…?嘘でしょ?本当に突破される?)

110: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 22:45:22.62 ID:kz8athx2
かのん(何してるの…?どんどん左に移動してる…?)

かのん(待って、私たちのいる壁際、隙間があいてるけど)

かのん(こっちに向かって移動してきてない?)

かのん(もし隙間から中が見えたら?もし中から外にいるものが見えたら?)

かのん(…ここから離れなきゃ、みんな!)スッ

スススッ

かのん(なんとか中央に移動できた…)

かのん(外のものも移動してる…ゆっくりだけど、確実に)バクバクバクバク

かのん(心臓がうるさい…止まれ…あれに気づかれたくない…いや、もう気づかれてるのかもしれないけど…)

かのん(もうそろそろ隙間のところに来る…)

111: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 22:48:29.19 ID:kz8athx2
ガン!ガン!

すみれ(あそこ、さっき私たちがいたところね…)

すみれ(離れてなかったら危なかったわ…あの状況で動けるかのんは本当に強いと思うわ。相当怖いはずなのに…)

ガン!ガン!

すみれ(!!!)

すみれ(み、見ちゃった…)ガクガク

すみれ(真っ黒い顔に細長い白目…)

すみれ(あれ、見えなくなった…)

ガン!

すみれ(ひいぃぃいいっ!!)

すみれ(なに、今の間は…外で仰け反ってたってこと?)

すみれ(体当たりだと思ってたこの音、頭をうちつけてる音だったってわけ?)

すみれ(だめ…見たくないのに…ものすごく怖いのに…)

すみれ(目が離せない)

「可可ちゃん」
「おにぎり作ってきたよ」
「いらっしゃいませ〜」

すみれ(すごい勢いで頭を壁にぶつけてる…それでも淡々と喋り続けてる…)

すみれ(人間とかけ離れすぎてる…これが人ならざるものなんだ…)

112: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 22:51:02.10 ID:kz8athx2
すみれ(あいつの姿は見えなくなった…多分移動したんだわ)

すみれ(だめ、あいつが頭をうちつけているところをどうしても想像しちゃう…)

すみれ(はやく…はやく消えて……)

「可可ちゃん」
「おにぎり作ってきたよ」
「いらっしゃいませ〜」

ーーー
ーー

114: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 22:54:50.04 ID:kz8athx2
チュンチュン

すみれ(あれからどのくらい経ったのかしら…)

すみれ(いつのまにかあいつの声は聞こえなくなってて…気がついたら陽の光が差し込んでて)

すみれ(こんなに夜が長いと思ったのははじめてよ…)

恋(朝…になったのですよね)

恋(外から雀の鳴き声や生活音が聞こえ始めてきました)

恋(すみれさん…音が隙間の位置へ来た辺りから様子がおかしかった…)

恋(やはり何か見えたのでしょうか…私には何も見えませんでしたが)

ザッザッ

一同「!?」

ガチャガチャ

かのん(なに!?またあいつが…?)

キィー…

一同「!!!」

115: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 22:58:43.32 ID:kz8athx2
可可「お坊さん…」

坊さん「みなさん…よく頑張ってくれました」ウルッ

すみれ「終わったの…?終わったのよね…」

かのん「本当に…?」

一同「……」

一同「よっしゃーーーーーー!!」

可可「怖かった…怖かったデス…」グスッ
グスッ

すみれ「可可、あんたほんとよく頑張ったわね…」グスッ

かのん「生きてる…私たち生きてるよ!!」グスッ

千砂都「本当に?本当に全部終わったんだよね!?」グスッ

恋「みなさん、お疲れ様でした…」グスッ

坊さん「本当によく…頑張ってくれました…」ニッコリ

すみれ(あぁ…お坊さんから懐かしいお線香の匂いがする…)

すみれ(ちゃんと生きてるんだ…私…)

116: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 23:02:39.20 ID:kz8athx2
ーーー
ーー

ザッザッ

千砂都「ここ、来る時にも通ったよね。おっきいお寺」

かのん「ここが本堂なのかな」

ーーー!!ーー!

一同「……」

すみれ「ね、ねえ、今人の叫び声みたいなの聞こえた?」

かのん「う、うん、聞こえたけど…」

すみれ「今のって…女将さんの声じゃない…?」

4人「!?」

恋「まさか…」

千砂都「でも確かに女将さんの声に聞こえないこともないような…」

すみれ「あ、そういえば可可」

可可「ん?」

117: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 23:06:22.92 ID:kz8athx2
すみれ「もう、見えないわよね」

一同「…」

可可「…大丈夫デス、もう見えマセン。助かったデス。ありがとうすみれ」

すみれ「そう、よかったわ」ホッ

恋「なんて話してたら、着いたみたいですよ」

千砂都「帰ってきたんだ…」

一軒家前

巫女「お疲れ様でした。お風呂を用意してあるのでまずは入浴してきてください」

かのん「お風呂…?」

一同「…」

かのん「あはは、私たち結構匂うね…///」

恋「ま、まぁ夏ですしね…///」

千砂都「よ、よーし!みんなでなかよくお風呂入ろう!!」

すみれ「まぁ、ひとりで入れる勇気なんてないしね」

可可「みんなで入った方が楽しいのデス!」
ーーー
ーー

118: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 23:09:43.13 ID:kz8athx2
可可「ふぅー…いいお湯だったのデス…」

恋「なんか…お風呂に入ったら安心して眠くなってきちゃいました」

かのん「お風呂から上がったら座敷に行ってって言われたよね…座敷ってここ?」

千砂都「あ、見て!ご飯とお布団が用意してある!」

すみれ「これ食べてまずは休めってことでしょうね、正直くたくただし」

かのん「わーい!ご飯だー!」

可可「美味しそうな焼きジャケです…!」

119: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 23:16:35.73 ID:kz8athx2
千砂都「恋ちゃん、いちごもあるよ!」

恋「あら本当、嬉しいですね」

千砂都「ちょっとあれやってよあれ‪w」

恋「あれですか?いきますよ…」

一同「…」

恋「好きな食べ物はいちごですが特にこだわりはありません」スンッ

一同「‪w‪w‪w‪w‪w‪w‪w」

すみれ「ないんかい‪w‪w‪w」

恋「いいじゃないですか別に‪wそれよりはやく食事にしましょう」

かのん「じゃあこれ食べたら寝よっか」

すみれ「そうね、それじゃあ」

一同「いただきまーす!」

ーーー
ーー

120: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 23:20:02.97 ID:kz8athx2
すみれ「お坊さんに呼ばれたけど」

恋「この顔を見ると起こせませんよね…」

かのん「1番大変な思いをしたのは可可ちゃんだからね」

千砂都「このまま寝かせておきたいね」

可可「むにゃむにゃ…ジャンボパフェ…あと3つしか食べられない…」

一同「ふふっ…」

一同「……」

かのん「って食べすぎだよそれは!!お腹壊すよ!!」

すみれ「ほら可可起きなさい、お坊さんのところへ行くわよ!」

可可「ふぇ…ジャンボパフェは…?」

恋「帰ったら食べに行きましょう、今はお坊さんの所へ」

可可「はいデスー」

千砂都「あはは…」

121: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 23:24:22.16 ID:kz8athx2
坊さん「お、皆さん来ましたね」

可可「おはようございますデス」

坊さん「よく眠れましたか?ここへ呼んだのは全てをお話するためです」

一同「…」

坊さん「見せたいものがあります、みなさんついてきてください」

ーーー
ーー


可可「…」キョロキョロ

坊さん「もう大丈夫のはずです。可可さん、すみれさん、どうですか?」

可可「大丈夫デス…何も見えマセン」

すみれ「私も平気です」

坊さん「そうですか」ニッコリ

坊さん「さて、つきました」

千砂都「ここって…」

恋「おんどうへ行く時に見かけた大きなお寺ですよね」

坊さん「ここが本堂です」

かのん「やっぱりここが…」

坊さん「さ、中のお座敷へ案内します。みなさんはそこで少し待っていてください」

恋「わかりました」

122: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 23:27:30.90 ID:kz8athx2
本堂の中

一同「…」

千砂都「なんか落ち着かないね」

かのん「そうだね」

可可「なんでショウ?見せたいものって」

すみれ「あ、お坊さん来たわよ」

坊さん「おまたせしました、事の発端をお見せしますね」スッ

一同「…」

一同(なにこれ…?)

坊さん「みなさん、これがなにかわかりますか?」

千砂都「なんだろ…これ」

可可「乾燥したきくらげ?」

すみれ「ばか、そんなわけないでしょ」

かのん「これ、私見たことあるかもしれない…」

恋「もしかして、臍の緒では?」

4人「臍の緒?」

123: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 23:30:40.55 ID:kz8athx2
坊さん「よくご存知ですね。葉月さんの言う通りこれは臍の緒です」

可可「可可、初めて見ました」

すみれ「私も」

千砂都「私も見たことないかな」

恋「私は見たことあります」

かのん「私も」

坊さん「葉月と澁谷さんはきっと親御さんにみせてもらったのでしょう。こういうものは大切に取っておく方が多いですから…」

坊さん「この臍の緒も、それはそれは大切に保管されていたものなのです」

一同「…」

坊さん「母親の胎内では、親と子は臍の緒で繋がっており、今ではその絆や出産の記念にと、それを大切に方が多いのですが、臍の緒には様々な言い伝えがあり、昔はそれを信じるものも多くいたのです」

恋「言い伝え?」

坊さん「はい、昔の人はそういう言い伝えを非常に大切にしていましたので。いまとなっては迷信として語られるだけですが」

坊さん「臍の緒は主に”子を守る”という意味を持っていますが解釈は様々で。」

坊さん「”子が九死に一生の大病を患った際に煎じて飲ませると命が助かる”とか”子に持たせるとその子を命の危険から守る”というのがありますが親が子を思うところでは共通しているのです」

一同「へぇ…」

124: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 23:36:48.78 ID:kz8athx2
坊さん「ひとつ、この土地の昔話をしてもよろしいですか?今回の事に関わるお話として聞いていただきたいのです」

一同「…」コクッ

坊さん「それでは」

坊さん「この土地に住む者も、臍の緒に纏わる言い伝えを深く信じておりました。土地柄、ここでは昔から漁を生業として生活する者が多くおりました。」

坊さん「漁師の家に子が生まれると、その子は物心がつく頃から親と共に海に出るようになります。
ここでは、それがごく普通のしきたりだったようです」

坊さん「漁は危険との隣り合わせであり、我が子の帰りを待つ母親の気持ちは、私には察するに余りありますが、それは深く辛いものだったのでしょう。」

坊さん「いつしか母親達は我が子に御守りとして臍の緒を持たせるようになるのです」

坊さん「海での危険から命を守ってくれるように、そして行方のわからなくなったわが子が、自分の元へと帰ってこれるようにと」

125: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 23:42:45.72 ID:kz8athx2
千砂都「帰ってくる?」

坊さん「ええ、まだ体の小さな子は波にさらわれることも多かったそうで。」

坊さん「行方の分からなくなった子は、何日もすると死亡したことと見なされますが、突然我が子を失った母親は、その現実を受け入れることができず、何日も何日もその帰りを待ち続けるのだそうです」

坊さん「そうしていつからか、子に持たせる臍の緒には、”生前に自分と子が繋がっていたように、子がどこにいようとも自分の元へ帰ってこれるように”と、命綱の役割としての意味を孕むようになったらしいのです」

一同「……」

すみれ(皮肉な話ね…本来は海の危険から身を守る御守りとしての役割を成すものが、いざ危険が起きたときの命綱としての意味も持ってるなんて)

すみれ(母親はどんな気持ちで子供を送り出していたのかしら…)

126: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 23:45:55.63 ID:kz8athx2
坊さん「実際、臍の緒を持たせていた子が行方不明になり無事に帰ってくることはなかったそうなのですが…」

坊さん「ある日、”子供が帰ってきた”と涙を流して喜ぶ1人の母親が現れます。しかしこれを聞いた周囲の者はその話を信用せず、とうとう気が狂ってしまったかと哀れみさえ抱いたそうです。」

坊さん「何故なら、その母親が海で子を失ったのは3年も前のことだったからです」

一同「……」

かのん「う、運良くどこかに流れ着いて今まで生きてたとか…」

坊さん「そうですね。始めはそう思った者もいたようです。そして母親に子供の姿を見せてほしいと言い出した者もいたそうなのです」

恋「それで?」

坊さん「母親はその者に言ったそうです。”もう少ししたら見せられるから待っていてくれ”と」

127: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 23:52:00.13 ID:kz8athx2
かのん(待っていてくれって…なんで?)

かのん(帰ってきたなら見せられるはずじゃないの…?)

坊さん「もちろんその話を聞いて村の者は不振に思ったそうですが、子を亡くしてからずっと伏せっていた母親を見てきた手前、強く言うことができずそのまま引き下がるしかできなかったそうです」

坊さん「しかし次の日、同じ事を言って喜ぶ別の母親が現れるのです。そしてその母親も、子の姿を見せることはまだできないという旨の話をする。
村の者達は困惑し始めます」

一同「…」ゾワッ

坊さん「前日の母親は既に夫が他界し、本当のところを確かめる術が無かったのですが、この別の母親には夫がおりました」

坊さん「そこで村の者達は、この夫に真相を確かめるべく話を聞くことになったそうです」

坊さん「するとその夫は言ったそうです。”そんな話は知らない”と。母親の喜びとは反対に、父親はその事実を全く知らなかったのです」

128: (もんじゃ) 2021/09/01(水) 23:53:49.96 ID:kz8athx2
坊さん「村人達が更に追求しようとすると、”人の家のことに首を突っ込むな”とついには怒りだしてしまったそうです」

一同「…」

恋(まぁ、そうですよね…周りの人に家の中のことをごちゃごちゃ聞かれたらいい気はしないでしょう…)

恋(まして亡くなったお子さんのことなんて…)

坊さん「その後何日かするとある村の者が、最初に子が戻ってきたと言い出した母親が、昨晩子共を連れて海辺を歩く姿を見たと言い出します」

坊さん「暗くてあまり良く見えなかったが、手を繋ぎ隣にいる子供に話しかけるその姿は、本当に幸せそうだったと。」

坊さん「この話を聞いた村の者達は皆、これまでの非を詫びようと、そして子が戻ってきたことを心から祝福しようと、母親の家に訪ねに行くことにしたそうです」

129: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 00:00:42.26 ID:jKyjUFMO
坊さん「家に着くと、中から満面の笑顔で母親が顔を出したそうです。村の者達はその日来た理由を告げ、何人かは頭を下げたそうです」

坊さん「すると母親は、”何も気にしていません。この子が戻って来た、それだけで幸せです”と言いながら、扉に隠れてしまっていた我が子の手を引き寄せ、皆の前に見せたそうです」

坊さん「その瞬間、村の者達はその場で凍りついたそうです」

一同「……」

坊さん「その子の肌は、全身が青紫色だったそうです。そして体はあり得ない程に膨らみ、腫れ上がった瞼の隙間から白目が覗き、辛うじて見える黒目は左右別々の方向を向いていたそうです」

すみれ「…」

坊さん「そして口から何か泡のようなものを吹きながら母親の話しかける声に寄生を発していたそうです。それはまるでカラスの鳴き声のようだったと聞きます」

かのん「カラス…」

坊さん「村の者達は、子供の奇声に優しく笑いかけ、髪の抜け落ちた頭を愛おしそうに撫でる母親の姿を見て、恐怖で皆その場から逃げ出してしまったのだそうです」

千砂都(そりゃそうだよね)

131: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 00:07:12.92 ID:jKyjUFMO
坊さん「散り散りに逃げた村の者達はその晩、村の長の家に集まり出します。何か得体の知れないものを見た恐怖は誰一人収まらず、それを聞いた村の長は自分の手には負えないと判断し、皆を連れてある住職の元へ行くことにします」

すみれ「その住職って…」

坊さん「はい、私の御先祖に当たる人物らしいです」

一同「…」

坊さん「続けますね。寺に着くとまず結界を強く張った一室に母親を入れ、話を聞こうとします。しかし、一瞬でも子と離れた母親は、その不安からかまともに話をできる状態ではなかったと聞きます」

坊さん「ついには子供を返せと、住職に向かってものすごい剣幕で怒鳴り散らしたのだそうです」

恋「それで…どうなったのですか?」

坊さん「子を想う母は強い。住職が本気で押さえ込もうとしたその力を跳ね飛ばし、そのまま寺を飛び出してしまったのだそうです」

132: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 00:14:30.70 ID:jKyjUFMO
坊さん「その後、村の者と従者を何人か連れて母親の家に行きましたが、そこに母と子の姿はなかったそうです」

坊さん「そして家の中には、どこのものかわからない札が至る所に貼り付けられ、部屋の片隅には腐った残飯が盛られ異臭が立ち込めていのだとか」

すみれ(同じだ…あの時私が見たものと)

坊さん「そこに居た者は皆同じことを思いました。母親は子を失った悲しみから、ここで何かしらの儀を行っていたのだと」

坊さん「そして信じ難いことだが、その産物としてあのようなモノが生まれたのだと。その想いを悟った村の者達は、母親の行方を村一丸になって捜索します」

坊さん「住職はすぐさま従者を連れ、もう一人の母親の家に向かいますが、こちらも時既に遅しの状態だったそうです」

坊さん「得体の知れないモノに語りかけ、子の名前を呼ぶ母親に恐怖する父親。その光景を見た住職は、経を唱えながらそのモノに近づこうとしますが、子を守る母親は住職に白目を向き、奇声を発しながら威嚇してきたのだそうです」

一同「…………」

133: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 00:22:12.42 ID:jKyjUFMO
坊さん「村の者は恐れ、一歩も近寄れなかったと言います。しかし住職とその従者は臆することなくその母親とそのモノに近づき、興奮する母親を取り押さえ寺へ連れ帰ります。暴れる母親を抱えながら、背後から付いて来るモノに経を唱え、道に塩を盛りながら少しずつ進んだのだそうです」

坊さん「寺に着くと住職は母親をおんどうへ連れて行き、体を縛りその中に閉じ込めたのだそうです」

千砂都「そんなことを…」

坊さん「仕方がなかったのです。親と子を離すのが先決だった、そうしなければ何もできなかったのでしょう」

千砂都「っ……」

坊さん「……」

一同「……」

134: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 00:30:01.61 ID:jKyjUFMO
坊さん「母親の体には自害を防ぐための処置が施されたようですがその詳細は分かりません。その後、おんどうの周りに注連縄を巻きつけ、住職達はその周りを取り囲むようにして座り経を唱え始めたそうです」

坊さん「中から母親の呻き声が聞こえましたが、その声が子に気づかれぬよう、全員で大声を張り上げながら経を唱えたそうです」

坊さん「住職達が必死に経を唱える中、いよいよ子の姿が現れます。子は親を探し、おんどうの周りをぐるぐると回り始めます」

坊さん「何を以って親の場所を捜すのか、果たして経が役目を成すのかもわからない状態で、とにかく住職達は必死に経を唱えたのです」

可可「それで…どうなったデスカ…?」

坊さん「おんどうの周りを回っていたそのモノは、次第に歩くことを困難とし、四足歩行を始めたそうです」

坊さん「その後、四肢の関節を大きく曲げ、蜘蛛のように地を這い回ったそうです」

坊さん「それはまるで、人間の退化を見ているようだったと。その後、なにやら呻き声を上げたかと思うとそのモノの四肢は失われ、芋虫のような形態でそこに転がっていたのだとか」

坊さん「そしてそのモノは夜が明けるにつれて小さくすぼみ、最終的に残ったのが、臍の緒だったのです」

135: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 00:35:25.53 ID:jKyjUFMO
恋「なんか…不思議な感覚ですね」

恋「まるで自分たちの話に毛が生えて昔話として語られているかのような…」

かのん「ちょっと待って、ということはもしかしてその臍の緒って…」

坊さん「はい、今朝おんどう奥の岩の上に転がっていたものです」

かのん「マジか…」

すみれ「なんで、私たちなんですか?」

坊さん「詳しくはわかりません。この寺には、代々の住職達の手記が残されていますが、母親でない者にこのような現象が起きた事例は見当たりませんでした」

坊さん「何より、肝心の母親の行った儀式について。これがまだ謎に包まれたままなのです」

136: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 00:46:08.13 ID:wT5D8k0b
可可「母親に聞かなかったんデスカ?」

坊さん「聞かなかったのではなく、聞けなかったのです」

千砂都「…どういうことですか?」

坊さん「住職達がおんどうを開け中を確認すると、疲れ果ててぐったりした母親がいたそうです」

坊さん「子を求めて一晩中叫んでいたのでしょう。すぐさま母親を外に運びだし手当てをしましたが、目を覚ました時には、母親は完全に正気を失っておりました」

坊さん「二度も子を失った悲しみからなのか、はたまた何か禍々しいモノの所為なのか、それも分かりかねますが」

一同「……」

坊さん「そして村の者が捜索していたもう一人の母親ですが、一晩経を読み上げ疲れ果てた住職達の元に、発見の知らせが届いたそうです」

坊さん「近海の岸辺に遺体となって打ち上げられていたと。母親は体中を何かに食い破られており、それでいて顔はとても幸せそうだったとあります」

坊さん「何が起きたのかはわかりませんが、住職の手記にはこうありました。”子に食われる母親の最後は、完全な笑顔だった”と。」

一同「…」

坊さん「遺体となって見つかった母親の家は、村の者達による話し合いで取り壊されることとなり、その際に家の中から母親の書いたものらしいメモが見つかったそうです」

137: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 00:50:21.63 ID:wT5D8k0b
すみれ「メモ?」

坊さん「はい、簡単に言うと儀式を始めてからの我が子を記録した成長記録のようなものでした」

坊さん「内容を簡単にまとめたものをお見せします」スッ

○月?日 堂の作成を開始する
×月?日 変化なし
・・・
△月?日 △△(子の名前)が帰ってくる
△月?日 移動が困難な状態
△月?日 手足が生える
△月?日 はいはいを始める
△月?日 四つ足で動き回る
△月?日 言葉を発する
△月?日 立つ

138: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 00:54:07.96 ID:wT5D8k0b
一同「……」

住職「これは簡単にまとめたものですが、本来のものはこの成長記録に母親の心情がビッシリと書き連ねてあったらしいです」

坊さん「ちなみにもう一人の母親は、屋根裏に堂を作っていたらしく、父親はその存在に全く気づいていなかったらしいです」

坊さん「私もすべてを理解しているとは言えませんが、この母親の成長記録と住職の手記を見比べると、そのモノは自分の成長した過程を遡るようにして退化していったと考えられませんか?」

千砂都「本当だ…」

坊さん「これ以降手記には、非常に稀ですが同じような事象の記述が見られます。だがその全てに、母親達がいつどのようにしてこの儀を知るのかが明記されていないのです」

坊さん「それは全ての母親が、命を落とす若しくは、話すこともままならない状態になってしまったことを意味しているのです」

坊さん「早期に発見出来れば未然に防ぐこともできると思うのですが…」

139: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 00:57:34.26 ID:wT5D8k0b
坊さん「今回の現象は初めてのことで、私自身もとても戸惑っているのです。何故母親ではないあなたがそのモノを見つけてしまったのか。子の成長は母親にしか分からず、共に生活する者にもそれを確認することはできないはずなのです」

すみれ(ありなの?そんなデタラメな話…)

一同「……」

可可「あ、あの…」

坊さん「はい」

可可「あの、母親って…もしかして女将さんデスカ…?」

4人「!」

坊さん「…はい、その通りです」

一同「…」

坊さん「女将さんはこの村の者ではなく、旦那さんに嫁ぎこの村へやって来ました。」

坊さん「息子を1人儲け、非常に仲の良い家族でした」

坊さん「女将さんの息子も、漁に出るようになるのですが数年前のある日、海で行方不明になってしまいます」

坊さん「大規模な捜索もされたが、結局行方は分かりませんでした」

坊さん「悲しみに暮れた女将さんでしたが、周囲から慰めを受け、少しずつですが元気を取り戻していきました。」

坊さん「旅館もそれなりに繁盛し、周囲も事件のことを忘れかけた頃、急に旅館が2階部分を閉鎖することになりました」

坊さん「周りは不振に思いましたが、そこまで首を突っ込むことでもないと、別段気にすることはありませんでした」

千砂都(そしてこの結果か…)

坊さん「どこから情報を得たのかは不明ですが女将さんは2階へ続く階段に堂を作り上げそこで儀式を行っていました」

坊さん「そしてその産物が皆さんに憑いてきたという訳ですが、ここがこれまでの事例と違う点なのです」

一同「…」

坊さん「本来儀式を行った女将さんに憑くはずの子が、第3者のあなた達に憑いてしまった」

坊さん「考えられる違いは、女将さんは息子に臍の緒を持たせていなかったということです」

坊さん「村の人たちは昔からの風習で未だに続けている人もいますが、旦那さんが言うには女将さんはその風習すら知らなかったらしいのです」

坊さん「そして妙な話ですが2階を閉鎖したというのにバイトを5人も雇った」

140: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 01:08:29.28 ID:wT5D8k0b
坊さん「旦那さんも初めは反対したらしいのですが、『息子が恋しい。同年代くらいの子達がいれば息子が帰ってきたように思える』と泣きつかれ、渋々承知したそうです。」

坊さん「…これは私の憶測ですが女将さんは初めから、帰ってきた息子が俺達を親として憑いていくことを知っていたんではないんでしょうか…」

一同「…」

坊さん「…あなた達をあのおんどうに残したこと、本当に申し訳なく思います。」

坊さん「しかし、私は女将さんとあなた達の両方を救わなければなりませんでした」

坊さん「あなた達がここにいる間、私達は女将さんを本堂で縛り、先代が行ったように経を読み上げました。あのモノがおんどうへ行くのか、本堂へ来るのか分からなかったのです」

恋「つまり、アレは私達に憑いてきましたが、これまでの事例からいくと母親の女将さんにも危険が及ぶと読んでの行動だったのですね」

坊さん「その通りです。本当に申し訳ありませんでした…」

一同「…」

141: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 01:18:52.16 ID:wT5D8k0b
すみれ(べ、別にお坊さんが謝ることじゃないでしょ?私たちは命を救ってもらったわけだし…)

すみれ(可可だってきっと…)チラッ

可可「…いきません…」

すみれ「可可?」

可可「納得いきマセン…自分の息子が帰ってくれば人の命なんてどーでもいいのデスカ…」

坊さん「…」

可可「全部吐かせるのデス!なんでこんな目に遭わせたのか、それができないなら可可が直接会って聞いてやるデス!」

かのん「ちょっと可可ちゃん!」

恋「落ち着いてください!」

可可「旦那さんだって知っていたんデスよね?それなのになんで言ってくれなかったのデスカ?」

坊さん「…旦那さんは知らなかったのです」

可可「嘘つかないでクダサイ!知っているようなことを言ってイマシタ!」

千砂都「可可ちゃん!」

坊さん「この話は、この土地には深く根付いています。旦那さんが知っていたのは伝承としてでしょう」

143: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 01:29:47.51 ID:jKyjUFMO
可可「ふざけないでください!早く会わせるのデス!あの人たちに会わせるのデス!」

すみれ「そこまでにしなさい可可」

可可「すみれ…」

すみれ「お坊さんが嘘を言っているように見える?…気持ちは分かるけど少し冷静になりなさい」

可可「…すみませんデシタ。可可、命を救ってもらったのに…」

坊さん「いえ、可可さんの言い分ももっともです」

坊さん「この話をすると決めた時点で、あなた達には全てをお見せしようと思っておりました。女将さんのいる場所へ案内します」スッ

坊さん「ついてきてください」

144: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 01:33:41.55 ID:jKyjUFMO
ーーー
ーー

坊さん「女将さんは本堂へはおりません、この渡り廊下を渡った先におります」

ーーー!ー!バタンッバタンッ

かのん「この音って…」

恋「今朝鳥居の家に向かう時に聞いた音と一緒ですよね」

千砂都「誰かのうめき声と何人かのお経?…それになにかが暴れているような音」

すみれ「かなり大きいわね」

可可「あの…お坊さん…さっきは」

坊さん「気にしていませんよ」

坊さん「さて、女将さんはこの中です」

ーーー!ー!ーーー!

バタンッ!バタンッ!バタンッ!

145: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 01:41:45.80 ID:jKyjUFMO
坊さん「開けますよ」スーッ

一同「ーーー!!」

バタンッ!バタンッ!バタンッ!

女将さん「ーーー!!ーーーーー!!!」

千砂都(なに…この状況)

千砂都(女将さんはいたよ、女将さんはいたけど…でも…)

恋(身体を縛られ、呻き声をあげながらエビのようにはねる女将さんに…)

恋(それを囲んでお経を唱えるたくさんのお坊さん)

可可「女将さん…」

坊さん「この状態が今朝から収まらないのです」

一同「……」

かのん「わたし、ここにいるのキツイです…」

すみれ「私も…」

坊さん「それでは一旦外に出ましょうか」

146: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 01:50:47.25 ID:jKyjUFMO


恋「なぜ…憑き物払いは成功したのではないのですか?」

坊さん「確かに、あなた達を親と思い憑いてきたものは祓うことができたのだと思います。現にあなた達がいて、ここに臍の緒がある。しかし…」

可可「そっか…可可が見たのはひとつじゃありませんデシタ…」

すみれ「そうね、たしか影は4つあったって言ってたわよね」

坊さん「ひとつではないのですか!?」

可可「は、はいデス…」

坊さん「……」

一同「…」

坊さん「あなた達は鳥居の家に行ってください。そしてあの部屋を一歩も出ないでください。後で人を行かせます!」ダッ

すみれ「ちょっ…」

一同「……」

かのん「もしかして私たち…置いてけぼりくらった…?」

千砂都「みたいだね…」

147: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 02:06:01.53 ID:wT5D8k0b
一同「……」

可可「あ、さっきのお坊さん達が出てきまシタ」

千砂都「ほんとだ」

恋「丸まった布団を運んでいますがあの中身は…」

一同「…」

かのん「…行こっか」

すみれ「ええ」

148: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 02:09:54.29 ID:wT5D8k0b
ー次の日の朝

すみれ「昨日はあれから何も無かったわね」

恋「別のお坊さんが来てここで一晩過ごすように言われただけでしたね、その後はトランプをやったりUNOをやったり」

かのん「えー、パーだよ〜」

可可「違うのデス!今日は絶対グーデス!」

すみれ「なんか…昨日まであんなだったのに平和ね」

恋「女将さんはどうなったのでしょう…」

千砂都「その話は今はしないようにしようよ」

恋「そうですね、すみません」

かのん「あーーー!負けたー!!」

可可「可可は勝ったのデス!」

すみれ「あなたたち、さっきから何してるのよ」

かのん「めざましじゃんけん」

すみれ「……本当のんきね」

150: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 02:20:55.44 ID:wT5D8k0b
ガラッ

坊さん「みなさんおはようございます。朝食を食べたら客間の方へ来てください」タタッ

かのん「あ、お坊さん…って行っちゃった」

恋「はやく朝食を食べてお坊さんの所へ向かいましょう」

千砂都「そうだね」
ーーー
ーー

151: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 02:22:55.38 ID:wT5D8k0b
坊さん「それでは皆さん、昨日の話の続きをします」

恋「よろしくお願いします」

坊さん「みなさんの憑き物祓いは無事成功しました、完全に終わりました」

坊さん「可可さん達に憑いてきたモノは1匹で、それは退化を遂げて消滅しました」

かのん「よかった…」ホッ

坊さん「ですが、女将さんを救うことは出来ませんでした…」

一同「えっ…」

恋「救えなかったって…」

千砂都「女将さんは…亡くなったんですか…?」

坊さん「いえ、そうではないのです」

一同「……」

すみれ(どういうこと…ずっとあの状態なのかしら)

すみれ(エビみたいな…?)

152: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 02:30:11.56 ID:wT5D8k0b
すみれ「ずっとあの状態なんですか?」

坊さん「…」

一同「…」

坊さん「…女将さんの今の状態は憑き物を祓うとかそういう次元の話でなく、もっと別のものに起因しているのです」

坊さん「女将さんが行った儀式は、この地に伝わる「子を呼び戻す儀」とは似て非なるものでした」

坊さん「どこかでこの儀の存在と方法を知った女将さんは、息子を失った悲しみからこれを実行しようと試みるのですが、肝心の臍の緒は自分の手にありました…」

坊さん「ここからは私の憶測ですが、女将さんはこれを試行錯誤しながら完成系に繋げたんだと思います」

坊さん「自分の信念の元に。しかしそこから得た結果は、本来のものとは別のものでしたが…」

可可「…堂の中にいたモノの中に息子さんはいたのデスカ?」

坊さん「それは…わかりません」

可可「…」

153: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 02:32:08.42 ID:wT5D8k0b
坊さん「この儀の結末は非常に残酷なものでしかないのですがそれを重々承知の上で、母親達は時にその禁断の領域に足を踏み入れてしまうのです」

坊さん「子を失う悲しみがどれ程のものなのか、我々には推し量ることしかできないが、心に穴の開いた母親がそこを拠り所としてしまうのは、いつの時代にもあり得ることだと思うのです」

坊さん「…これで私の話は終わりです」

恋「あの…」

坊さん「はい」

恋「女将さんは…もう助からないのでしょうか…」

坊さん「…すみません、私たちにもこれからのことはなにもわからないのです」

恋「そうですか…」

一同「…」

ガラッ

一同「!!」

かのん「旦那さん…」

旦那「…」
ーーー
ーー

154: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 02:34:05.33 ID:wT5D8k0b
すみれ「これ以降、私たちの身には何も起きないんですよね?」

坊さん「大丈夫です、それではあちらでもお元気で」

坊さん「アイドル活動も、頑張ってください」ニコッ

恋「タクシーまで呼んで下さって…ありがとうございました」

坊さん「いえいえ、一応昨日の夜みなさんに付き添った者を同乗させますので」

かのん「本当にお世話になりました。それでは…」
ーーー
ーー

155: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 02:36:53.56 ID:wT5D8k0b
一同「…」

同乗したお坊さん「ペラペラ」

すみれ(お坊さんの話が終わったすぐ後に旦那さんが来たけど)

すみれ(やつれ切ってたわね…顔も土色になって…)

すみれ(その後私たちに泣きながら謝ってきたけど…正直泣きすぎて何言ってるのかよく分からなかったわね)

すみれ(それが私たちへの申し訳なさからくるものか、女将さんの招いた結果を思ってのことかはわからなかったけど…)

同乗したお坊さん「ペラペラ」

すみれ(てかこの人さっきからずっとひとりで話してるわね…空気読めないのかしら)

同乗したお坊さん「それにしても、子が親を食うなんて蜘蛛みたいな話だよな」

一同「…」

同乗したお坊さん「お前達、ここで聞いた儀法は試すんじゃねーぞ。自己責任だぞ」

すみれ(死にかけたのに試すわけないでしょ)

すみれ(私たちの気持ちを和らげようとしてるんだか本気でアホなんだか…)

すみれ(…でも、確かにひとつわかることがある。ひとつだけわかることが…)

156: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 02:38:35.81 ID:jKyjUFMO
ー駅

かのん「…あのお坊さんずっとひとりで喋ってたね」

千砂都「そのことなんだけど、私ちょっとひっかかることがあって」

可可「なんデスカ?」

千砂都「あのお坊さん、車の中で『結果は自己責任』って言ってたよね」

恋「それがどうかしたのですか?」

千砂都「憑き物を祓ってくれたお坊さんも言ってたけどあの義の方法ってその結果と一緒にこの地に伝わってるんだよ」

千砂都「同乗してくれたお坊さん、義を試した人が最後どうなるのか知っているような口ぶりだった。でも憑き物を祓ってくれたお坊さんは女将さんのこれからのことは分からないって…」

千砂都「あの人が知っていて、憑き物を祓ってくれたお坊さんが知らないはずないよね」

一同「…」

すみれ(ひとつだけ、わかること。それはー)

すみれ「つまり私たちは、真実を隠されて教えられたってことね」

千砂都「…そういうこと」

一同「……」

157: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 02:43:41.44 ID:jKyjUFMO
恋「少し…ショックですね」

かのん「信頼してただけにね…お坊さんは『これからは大丈夫』って言ってたけど、それも本当かどうか…」

可可「……」

すみれ「そ、それは大丈夫でしょ!私も可可も何も見えないし感じないんだし!
そうよね、可可?」

可可「はい…」

すみれ「ほら、さっさと帰って残りの夏休み満喫するわよ!嫌な事件いつまでも引きずってられないでしょ!」

千砂都「そうだね、帰ったらスイーツ食べに行かなきゃだもん」

可可「そうデス!ジャンボパフェ食べに行くのデス!」

恋「ふふ、さすがに3つは食べないでくださいね」

かのん「さすがにお腹壊すからね」

可可「?」

すみれ「それじゃ、帰ろっか」

4人「うん!」

こうして、私たちの夏休みが幕を開けた。最初の1週間は終わっちゃったけど…夏休みはまだまだこれから!楽しいことがたくさん待ってるはず。…なんて、できるだけポジティブなことを考えながら私たちは海のそばにあるあの村を後にした。



かのん「海辺の旅館でリゾートバイト!」可可「楽しそうデス〜!」 [完]

159: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 03:20:31.31 ID:jKyjUFMO
あ、短いですが後日談あります
朝起きたら書こうと思います

161: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 09:07:48.72 ID:jKyjUFMO
後日、かのんの家

この5人が揃うとどうしてもあの時の話になってしまう

すみれ「ほんと、あの時かのんが私たちを月明かりの方へ連れて行ってくれて助かったわ」

かのん「わたしはすみれちゃんや可可ちゃんと違って何も見えなかったし聞こえなかったからね、その分少し余裕があったのかも」

かのん「ただ、アレがおんどうから離れていく時に変な声が聞こえたんだ。カラスの鳴き声みたいな…」

可可「可可はそれ、聞こえなかったのデス」

すみれ「私も」

恋「私も聞こえませんでした」

千砂都「私も聞こえなかったな」

かのん「そっか…じゃあ私だけだったんだね」

かのん「てか鳥居の家に着いた時のすみれちゃんも割と余裕あったよね、千砂都ちゃんと漫才してたし」

すみれ「漫才じゃないわよ…可可に少しでも元気になって欲しかったの。千砂都があそこでいじってくれたのはナイスだったわ」

可可「すみれ…」

162: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 09:09:28.14 ID:jKyjUFMO
千砂都「ねぇ、カラスで思い出したんだけどさ」

かのん「なぁに、ちぃちゃん?」

千砂都「私この前のこと、音楽科の子達に話しちゃったのね」

恋「それで?」

千砂都「うん、それでその子たち面白半分で旅館に電話したらしいの」

すみれ「…最低ね」

千砂都「まぁ話しちゃった私も悪かったよね…話を戻すんだけど、そしたら普通のおばさんが出たんだって」

千砂都「その子たち女将さんかどうか確認しろって言ってきたの。…そしてね、そのおばさんの後ろでずっとカラスが鳴いてたんだって」

可可「……絶対無理デス」

恋「ですね、女将さんが無事でも無事じゃなくても私たちにその後を知る勇気なんてありません…」

一同「……」

恋「そういえば」

163: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 09:10:47.52 ID:jKyjUFMO
恋「かのんさんの目覚まし…あれ自分の声ですよね…‪w」

千砂都「そうそう‪wリエラジの時の‪w‪w‪w」

かのん「い、いいじゃん!気に入ってるんだから!!///」

かのん「そんなこと言ったらすみれちゃんだってグソクムシだったよ!!」

すみれ「なによ!悪い!?」

可可「グソクムシ言うなって言う割には気に入ってるんじゃないデスカ~」ニヤニヤ

すみれ「うるさいわね!ニヤニヤしないの!」

164: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 09:12:18.73 ID:jKyjUFMO
恋「あ、もうひとつ話があるのですが」

すみれ「もういいわよ!グソクムシの話は!」

恋「違います!…東北に住んでる私の祖母にみなさんの話をしたら、祖母がみなさんに会いたいみたいで…」

恋「せっかくなので皆さんで東北へ遊びに行きませんか?」

千砂都「本当?行く行く!」

かのん「まだ夏休みは始まったばかりだしね!次は東北かー!」

可可「楽しくなってきたのデス!」

すみれ「それじゃ、明後日出発しましょう!」

かのん「随分急だね!?」

すみれ「どうせ予定ないでしょ?始まったばかりとはいえ夏休みは有限なのよ!」

千砂都「私もしばらくバイト休みだしね」

可可「よーし!」

恋「それじゃあ次は東北へ…」

一同「レッツゴー!!!」

すみれ「…ふふっ」

つづく

165: (もんじゃ) 2021/09/02(木) 09:27:15.70 ID:jf5U3ihv
長くなってしまい申し訳ないです。とりあえず終わりです。SSを書くことがはじめてなので読みにくい部分もあったと思いますが最後まで見てくださった方はありがとうございました。シリーズ化しようと思っているので上で出た渦人形の話なんかもそのうち書こうかなと思います!それでは、ご縁がありましたらその時はまたよろしくお願いします。

一応過去作 澁谷かのん、ユキノオー説
【ラブライブ!】渋谷かのん、ユキノオー説
1:名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/08/25(水) 09:40:48.67 ID:PkshqKxN 長かった夏休みが終わろうとしている中、いかがお過ごしだろうか。 私は今日も同級生のダンスレッ...

168: (ぎょうざ) 2021/09/02(木) 11:09:19.26 ID:Jjha0vg8
ユキノオー説との落差で草

169: (らっかせい) 2021/09/02(木) 14:54:28.95 ID:tsIUlHE5

次回も楽しみにしてます

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1630454254/

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