【SS】穂乃果「わりとベタな」海未「私たちのこ、ここ…こい物語」

SS


6: (もんじゃ) 2022/03/19(土) 00:15:57.44 ID:MwRpxPHI
side ことり


 いつまでも続くものというのはないのでしょう。
 変わらないと思っていたものも、ゆっくりと変化しているものなのです。
 たとえそれがどんなに・・・。
 



みなさんこんにちは。ことりです。

これからお話しするのは、μ'sを結成して解散して、色々なことがあってから一年後のお話です。

私たちは高校三年生になり、今後どういった進路にすすむのかという問題に直面しました。

海未ちゃんは推薦で教職課程のある女子大に、わたしは海外の服飾の大学に進学が決まりましたが、穂乃果ちゃんはだいぶ悩んでいるようでした。

海未ちゃんはそんな穂乃果ちゃんに対して厳しくしかりつけながらも優しく見守っていました。

私は勝手に、どんなことがおこるとしても、二人ならきっと大丈夫なんだろうなぁって、そう思ってました。
 
8: (もんじゃ) 2022/03/19(土) 00:21:11.05 ID:MwRpxPHI
11月のおわり頃だったでしょうか。
心地よい風が吹く秋が終わり、コートを出さないとつらくなるような、そんな寒い冬が訪れようとする日のことです。
 

私たちはいつものように(旧)部室で、ミューズメンバー(旧一二年生)とアリサちゃんと雪穂ちゃんの8人でダラダラとおしゃべりをしていました。
アリサちゃんが絵里ちゃんの愚痴を言って、雪穂ちゃんは穂乃果ちゃんの愚痴を言って、穂乃果ちゃんが言い訳をして…
そして海未ちゃんは二人に対しての熱いお説教をすることを決意して…


本当にいつも通りの、日常の一風景でした。

ところが、凛ちゃんがふとこぼした
「来年、にこちゃんのぞみちゃんえりちゃんと一緒にどっか行きたいにゃあ・・」
という言葉をきっかけに、来年の進路のことに話題が移った時のことです。

穂乃果ちゃんが唐突に(本当に唐突に!)、言ったのです。

穂乃果「ごめん、それ行けないかも。」

こういう話しにいつも一番に飛び付く穂乃果ちゃんの返答に、みんな困りぎみです。

はなよ「えっ、ど、どうしたの、穂乃果ちゃん?」

と、はなよちゃんが代表して質問します。
そしたら、穂乃果ちゃんが言うのです。

穂乃果「実はね、来年からアメリカに行くことになって…」

真姫・凛・はなよ・アリサ「「「「えーーーーーー」」」」

まさしく衝撃の発言です。みんなびっくりしてました。
妹の雪穂ちゃんですら聞いていなかったのでしょう、目が点になっています。

雪穂「き、きいてないよ、お姉ちゃん!!!」

穂乃果「ごめーん、雪穂にもまだ言ってなかったね。」
 
9: (もんじゃ) 2022/03/19(土) 00:24:52.19 ID:MwRpxPHI
穂乃果「去年アメリカに行ったときに、なんか注目されたらしくってね・・。」

穂乃果「ことりちゃんのお母さん経由で、アメリカの音楽の学校に来ないかっていう推薦が来たんだって!」

そうなんです。
お母さんや穂乃果ちゃんから口止めされてましたが、実はそういう話がきていたんです。

凛「す、すごいにゃぁ」

はなよ「ほ、本当にすごいことですよっ・・」

穂乃果「そんなことないよぉ、たまたまだって…」

穂乃果ちゃんはこうやって謙遜しますが、実はこれ、本当にものすごい事なんです。
そういう話が出ること自体めずらしいですし、ぜひ来てくれってすごーく熱烈な勧誘をされたらしくって♡

真姫「学費とかは大丈夫なの?」

穂乃果「うん、何かホームステイ先でベビーシッター?、みたいなのをするとすごく安くしてくれるらしくて」

そこら辺については、私のお母さんも協力して、お金がほとんどかからないやつを選べたそうです。

雪穂「わ、わたし聞いてないよ、お姉ちゃん」

穂乃果「ごめんね、お母さんたちにはもう伝えたんだけどねぇ。」

すでに、親御さんのご了承は頂いています。
つまり、話しは結構先の方まで進んでいるのです。
 
10: (もんじゃ) 2022/03/19(土) 00:27:40.98 ID:MwRpxPHI
穂乃果ちゃんの、突然のカミングアウトに場が静まり返ってしまいます。
そして、みんな驚きすぎたのでしょう、目が点になっています…

雪穂「あ、あのお姉ちゃんが、メジャーデビュー!?」

穂乃果「そんなに驚かれることかなぁ…」

ただただ呆然としてる雪穂ちゃん!

亜里沙「すっ、すごいですよっ!穂乃果さん!!」

穂乃果「ぐえっ。あ、ありがとう、アリサちゃん…」

さすがロシアってくらい激しいハグをする亜理砂ちゃん!

はなよ「こんな話、スクールアイドルの歴史上初ですよっ!」

凛「さすが穂乃果ちゃんだにゃあ…」

穂乃果「えへへ、ありがとう。」

称賛と祝福をする、りんぱなちゃん。

真姫「もうっ、いっつも話が急なんだからっ!」

穂乃果「ごめんね、まきちゃん」

と、怒る真姫ちゃんでしたが、

真姫「途中でべそかいて帰ってこないでよ!」

と、応援しています。

「素直になれないまきちゃん、かわいいぃぃ♥」

と、ことりは心の中でそう思いました!

真姫「ちょっと!声にで出るわよっ!ことり!!」
 
12: (もんじゃ) 2022/03/19(土) 00:40:36.49 ID:MwRpxPHI
こうして、穂乃果ちゃんの挑戦を応援しようとする私たちでしたが、
一人だけ反対する人がいました…

海未「無謀ですよ。」

そう、海未ちゃんです。

海未ちゃんは小さい声で、そうつぶやきました。
その声はとっても冷たくて…
まるで、何を考えているのかさとらせないかのように無表情でした…


時が戻ったかのように、部室が再び静まり返りました。
それでも、穂乃果ちゃんは言います。

穂乃果「うん、無謀だとは思う。でもやってみたいんだ。」

その表情は、新しい何かを見つけたように希望に満ち溢れていて…

穂乃果「去年の三月にアメリカに行ってライブをやったじゃん、すっごく楽しかったよね。」

穂乃果「でも私、それだけで終わりたくないんだ・・」

回りの人を魅了するような輝きがあって…

穂乃果「わたし、あの時の光景が忘れられない。もう一度見たい。」

穂乃果「でもきっと、それを見るためには日本にいて何かをするんじゃだめで、もっといろんなことを学ばないとダメなんだ・・」

人を引き付けるような夢があって…

穂乃果「だから、アメリカに留学して、いろんなことを勉強するの」

穂乃果「私、ここでこの道を選ばなかったら、一生後悔すると思うから・・」

でも、強い覚悟は感じさせられて…

穂乃果「それに、新しい環境で色々やってみたいんだ。一人でどれくらいのことができるのかなぁっていうのも気になるし…」

アリサ「穂乃果さん・・・」

もう全て決めてるんだなって、そう思わせられてしまう口ぶりでした。
 
13: (もんじゃ) 2022/03/19(土) 00:41:40.49 ID:MwRpxPHI
穂乃果「急な話でごめんね。みんなにはもっと前に話したかったんだけど・・・」

と、申し訳なさそうに言う穂乃果ちゃん

穂乃果「図々しいとは思うんだけど、みんなには応援してほしいなぁって・・・」

穂乃果「ダメ、かなぁ…」

と、自信なさげに呟く穂乃果ちゃん。

ことり「わたしは応援する。穂乃果ちゃんならきっと出来るよ♡」

穂乃果「ことりちゃん・・・」

雪穂「もう、いっつも急なんだから…」

はなよ「ホームシックとかにならないかなぁ…」

と、心配しつつも

アリサ「応援しますよ!穂乃果さん!!」

凛「応援するにきまってるにゃっ!!」

真姫「何かあったら、私たちにすぐに連絡しなさいよ。」

と、応援するメンバーたち・・

なんやかんや、ほとんどのみんなは応援するみたいでした。

穂乃果「みんな、ありがとう……」
 
14: (もんじゃ) 2022/03/19(土) 00:45:16.68 ID:MwRpxPHI
再び活気があふれだした部室。
ほとんどのみんなが、穂乃果ちゃんを応援するみたいでした・・

そう、ただ一人を除いて・・

海未「それでも、わたしは・・・私は反対です。」

小さくかったですが、よく通る声でした。
海未ちゃんは依然として反対みたいです。

みんな戸惑っているみたいです。穂乃果ちゃんもちょっと首をかしげています。

はなよ「えっ、どうして?」

海未「それは・・・」

凛「それは?」

海未「それは・・・その・・・」

ゆきほ・アリサ「その?」

海未「えっとー・・・・・」

しばしの悩んだすえに、

海未「と、とにかくどうしてもです!!!」

と、わりと理不尽な理由で反対します。

はなよ「えっー!!!ど、どうしてもぉ!」

なんだか、海未ちゃんらしくありません。

真姫「なにそれ、理由になってないわよ。」

海未「それは、まぁ…」

凛「それはさすがに横暴だと思うよ」

海未「いえ、その…」

真姫ちゃんと凛ちゃんからつっこまれます。
海未ちゃんにしては珍しく、凛ちゃんの意見にタジタジです。

海未「で、ですが・・・」

なんだか、すでに反対という結論を出していて、
それを認めさせるために理由を探している、そんな印象を受けました。
 
15: (もんじゃ) 2022/03/19(土) 00:54:33.87 ID:MwRpxPHI
海未「あっ、そうですっ!」

そしたら海未ちゃんは、名案をひらめいたかのようにして言いました。

海未「アメリカといえば英語です・・。言語が英語なのですよ。」

海未「しかし穂乃果、あなたは英語を話せるんですか?」

そういった海未ちゃんはずいぶんと得意げな顔でした。

海未「アメリカに留学するのであれば英語を話せることは必須です。」

海未「しかし英語なんて、そうそう簡単に話せるようになるものではありません。」

ことり「まぁ、それは、たしかにそうかなぁ」

と、ここは一応海未ちゃんに助け船を出します。

海未「そうです。そうですよ。」

わが意を得たとばかりに海未ちゃんはうなずきながら、

海未「それにそもそも、穂乃果が一人で留学なんて出来るわけがありません!」

と、断言します。そして、

海未「あの、穂乃果ですよ…」

と、ずいぶんとひどいことを言います。
穂乃果ちゃんも苦笑いです。

雪穂「まぁ、それはそうかも・・・」

雪穂ちゃんが海未ちゃんの方へ姿勢を傾け、海未ちゃんサイドに付きます。

海未「そうです、そうです、そうですとも。」

味方を得て勢いにのる海未ちゃんは、さらに何か言おうとしますが、
ここで、アリサちゃんが首をかしげて言います。

アリサ「でも、反対の理由にはちょっと弱いような・・・」

真姫ちゃんも言います。

真姫「そうよ、ほのかもそこらへんは承知してるはずよ、でしょ。」

穂乃果「あはは、まぁ、いろいろ勉強中だよ。」

と、穂乃果ちゃんは苦笑いします。
ですが…
 
16: (もんじゃ) 2022/03/19(土) 00:59:06.61 ID:MwRpxPHI
雪穂「あれ?でもお姉ちゃん、この前英語のテストでクラス一位取ってなかったっけ?」

海未「はっ!!」

アリサ「それに、この前TOEFLで高得点を取ったんじゃなかったでしたっけ?」

海未「なっ!!」

穂乃果「あはは、実はね…」

そうなんです。
実は穂乃果ちゃん、ここ最近、英語に関してはものすごい勢いで成績を伸ばしているのです。
中間テストは98点、期末テストは100点だったでしょうか?
(穂乃果ちゃんがそんな高得点取るなんて、びっくりですよね・・)

海未ちゃんは特訓の成果が出たと喜んでましたが、単に留学に向けた準備だったのでしょう。

えっ、TOEFLって留学希望者向けでしょ?あれで高得点って…

凛「じゅ、準備バッチリにゃっ!!」

はなよ「それなら、大丈夫じゃないかなぁ…」

そう、実は人知れず努力をしていた穂乃果ちゃんなのでした。
 
17: (もんじゃ) 2022/03/19(土) 01:01:09.43 ID:MwRpxPHI
訂正

えっ、TOEFLって留学希望者向けでしょ?あれで高得点って…

→真姫「えっ、TOEFLって留学希望者向けでしょ?あれで高得点って…」
 
18: (もんじゃ) 2022/03/19(土) 01:18:59.54 ID:MwRpxPHI
再び形勢不利になった海未ちゃん
熱が入ってきたのでしょうか、椅子から立ち上がって話し出します。

海未「で、ですが・・」

何かを言って反対しようとする海未ちゃん…

すると、穂乃果ちゃんが立ち上がって海未ちゃんの目の前に向かいます。

穂乃果「海未ちゃんっ」

そして海未ちゃんの方へ向かい、海未ちゃんをギュっと抱きしめます。

海未「ほ、穂乃果・・」

海未ちゃんはちょっと戸惑い気味です・・
しかし、穂乃果ちゃんは海未ちゃんを抱きしめながら言います。

穂乃果「海未ちゃんの気持ちも分かるよ。私だって無謀だって思うもん。」

穂乃果「私が一年前にこんなことを言い出したら、絶対に止めるもん・・」

と、どこか自信なさげに言います。

海未「でしたら、日本に残って・・・」

海未ちゃんは優しく、穂乃果ちゃんに問いかけます。
ですが、穂乃果ちゃんはかぶりをふります。

穂乃果「でも、それじゃダメなんだよ。日本にいたら先に進めない、そこで満足しちゃうから・・」

穂乃果「私はもう一歩先に進みたい。そのために、アメリカに留学したいの!」

穂乃果ちゃんは熱く語ります。

穂乃果「海未ちゃんには応援してほしい。笑顔で穂乃果を送り出してほしい。」

穂乃果「だって海未ちゃんは、幼馴染で、穂乃果にとって一番大切な味方だから。」

海未ちゃんをぎゅっと抱きしめていた穂乃果ちゃんでしたが、
穂乃果ちゃんは海未ちゃんから離れ、海未ちゃんの目をぎゅっと見つめます。

穂乃果「ダメ・・かな・・?」

さりげないい方でしたが、その口調からは強い覚悟と決心が伝わってきます。

海未「そ、その言い方は、ずるいです・・・」

穂乃果ちゃんの覚悟に、海未ちゃんもタジタジです。

穂乃果「ダメ?海未ちゃん・・・」

海未「ダ、ダメです、だって・・・」

穂乃果「だって?」

海未ちゃんは困ったようにして、穂乃果ちゃんと距離を取ろうとしますが、
穂乃果ちゃんの視線が海未ちゃんをとらえて離しません。
 
19: (もんじゃ) 2022/03/19(土) 01:24:25.22 ID:MwRpxPHI
海未ちゃんは答えに窮し、穂乃果ちゃんの視線から逃げるようにしてそっぽを向きます。

その結果…







私と視線が合いました

海未「こ、ことりぃ、何で笑ってるんですかぁ!!!」

ことり「ピィ!!!」

ば、ばれてしまいました。
二人のやりとりが可愛らしくって、ついついニマニマしてしまいましたっ♡

うっ、海未ちゃんの視線が鋭い・・
誤魔化そうと思った私は・・

ことり「コトリハ、ワラッテナーイデースヨーォ」

なんて、茶化してみましたが・・

はなよ「ことりちゃん・・・」

うっ、はなよちゃんの視線が冷たいです・・・

でも、だって…
いじらしいじゃないですか、海未ちゃん・・♡

海未ちゃんがこんなに反対する理由なんて、一つしかありません♡

とはいえ本人は…
いえきっと、穂乃果ちゃんも気づいてないのでしょう・・・
 
20: (もんじゃ) 2022/03/19(土) 01:26:11.42 ID:MwRpxPHI
海未「まったく、ことりはしょうがないですね・・・」

そう言って海未ちゃんは、穂乃果ちゃんをおしのけて部室の出口へと向かいます。

穂乃果「待って、海未ちゃん」

止めようとした穂乃果ちゃんでしたが、
有無も言わせない海未ちゃんの目力にたじたじ・・
何も言えないみたいでした・・。

海未「とにかく、私は反対ですからね、穂乃果。」

と、力強く言い切ります。

海未「では、みなさん、お先に失礼します。」

そういって海未ちゃんは、逃げるようにして、
足早に部室から去っていきました。
 
21: (もんじゃ) 2022/03/19(土) 01:32:34.14 ID:MwRpxPHI
さて、海未ちゃんが出て行ってからしばらくして部室…

凛「珍しいにゃぁ、海未ちゃん・・」

と、凛ちゃんが口火を切り、

アリサ「そうですね、あんな海未さん初めて見ました。」

真姫「なんだか、自分の意見を無理やり押し通したって感じだったわね。」

雪穂「今回ばかりは、お姉ちゃんのほうに分があるのかなぁ・・」

と、みんな口々に今日の海未ちゃんの様子をいぶかっていました。
まぁ、そう思うのも仕方ないですね・・

そうしたら、はなよちゃんがおずおずと私に聞きます。

はなよ「ねぇ、ことりちゃん、もしかして何か心当たりあるの?」

みんなの視線がこっちへと向かってきます。

ことり「うーん、まぁ、理由はなんとなくわかるけど・・・」

本当はバッチリわかります。
海未ちゃんがどれほどいじらしいのかを大きな声で言いたいぐらいです♡

ことり「でも・・・・」

少し寂しそうなほのかちゃんが視線に入ります

ことり「でも、それは穂乃果ちゃんと海未ちゃんの問題だから、二人で解決しないと。」

そうなんです。

これは穂乃果ちゃんと海未ちゃんの、かわいらしいロミオとジュリエットのお話なのです。

いつもだったら、私が介入して二人は仲直りするのですが、
来年には私だって留学で二人のそばに居られないのです。

だから、今日の事は二人で考えて、二人で結論を出さないといけないのです・・・




穂乃果ちゃんはすごく寂しそうに、海未ちゃんが出ていった扉を見つめていました。

いつまでも、いつまでも・・・
 
8: (もんじゃ) 2022/03/19(土) 22:48:04.81 ID:UAiW0C7e
Side 絵里


ついこの間まで、上着を着ずとも夜中出歩けていましたが、
近頃は寒すぎて外に出るのもおっくうになってしまいますね。

皆様はいかがお過ごしでしょうか?


こちらは、愛しの愛しのエリーチカですっ!

本日はエリーチカの自宅から、近況をお届けしまぁ~す!



さてさて本日、かわいい後輩から突然、電話がかかってきました。

どうやら悩みごとがあって、誰かに相談したかったみたいね。

もう猪突猛進なんだから、うちの後輩ちゃんっ♡



夜空は果てしない真っ暗闇で、
酔っぱらいの笑い声も聞こえないくらいに静かな夜でしたが、

たまたま起きていた?
後輩思いの優しいエリーチカは、
グラスを片手にリビングのイスに座り、話を聞いてあげることにしたのでした・・
 
11: (もんじゃ) 2022/03/19(土) 22:50:24.55 ID:UAiW0C7e
絵里「で、海未の様子がおかしいから、私なら何か知ってるんじゃないかって思って、電話かけてきたのね?」

穂乃果「うん。ごめんね、絵里ちゃん。こんなこと相談して。」

と、申し訳なさそうに穂乃果は言います。

絵里「うふふ、そこはいいのよぉ、穂乃果」

仕方ないことです。

確かにかしこかわいいエリーちかなら知ってると思うことでしょう。

後輩のこともお見通しな、
ハラショー、な先輩ですからね!

ですが、です。

されど、です。

絵里「でもね、ほのか…」

私は若干怒気を含め、飲みかけのグラスを置き、

時計を確認し、電話の向こうにいる穂乃果に言います。
 
12: (もんじゃ) 2022/03/19(土) 22:54:43.21 ID:UAiW0C7e
絵里「いま何時だと思ってんのよぉ!!」

今何時だと思いますか?
夜の4時なんですよっ!

普通、こんな時間に電話する?

穂乃果「えっ、朝の4時だよ?」

絵里「よ・る・の4時よ!!!」

普通はみんな寝てる時間です~
亜里沙なんてぐっすり寝ていま~す!

穂乃果「あっ、ごめーん、ついうちの手伝いの感覚で」

絵里「はぁ・・・」

まったく、本当にこの子は・・!!

てへっ、とか言って舌を出してるのが目にうかぶわ・・。

穂乃果「えへへへ・・・」

絵里「まったく、久しぶりに連絡をよこしたと思ったら・・」

穂乃果「は、ははは・・・」
 
13: (もんじゃ) 2022/03/19(土) 22:57:33.12 ID:UAiW0C7e
あぁ、こんな感じなのに許してしまう、
母性に満ち溢れたエリーチカも悪いんでしょうけどねぇ…

穂乃果「いや、思いついたらいてもたってもいられなくなっちゃって…」

でしょうね、だと思ったわ!
穂乃果らしいというか…いや、本当に変わらないわねぇ。

絵里「はぁ、よりによって、こんな寒い日に・・・」

今夜は上着を着こんでいても冷気が肌身に染み入ってくるような、とんでもなく寒い日でした。
家の中もずいぶんと冷えているようです。

絵里「うぅ、寒い・・」

穂乃果「いや、本当にごめんねぇ・・」

絵里「ごめんで済むならトラブルバスターズは存在しないわよ…」

もうっ…
この寒さだったら部屋の中も暖房つけた方がいいんじゃないかしら。

亜里沙は暖房付けずに寝ちゃったらしいけど・・・

こっそり暖房付けちゃいましょ。

エリーチカ、暖房をつける、の巻きぃ…
なんて馬鹿なことを考えながら、私はゴソゴソと、暖房器具をいじります。
そして、穂乃果に問いかけます。

絵里「で、いったい何がどうなってそうなったの?」

と、私は話を本題に戻します。

穂乃果「あ、そうそう、それでね・・・」
 
14: (もんじゃ) 2022/03/19(土) 22:59:25.54 ID:UAiW0C7e
そういって穂乃果は昨日おこったことを話してくれました

そう、この時期になって・・・

進路という重大な話を!!!

いまさら、わたしたちに!!!

話してくれました!!!

いまさらぁ!!!




絵里「いや、遅いわよ!!!」

穂乃果「ふぇっ!?」

絵里「決まってから話す!?そんな重要な話!!」

穂乃果「あ、あははは・・・」

本当にこの子はぁ!!!!
 
15: (もんじゃ) 2022/03/19(土) 23:05:09.17 ID:UAiW0C7e
絵里「本当、そういうことはもう少し早めに言ってくれてもよかったのに…」

と、穂乃果のあまりの暴挙についつい愚痴を漏らすと、

穂乃果「ごめんね、絵里ちゃん。」

と、穂乃果は申し訳なさそうに言うとともに、

穂乃果「でも、もう決めたことだから」

と、言うのです。
ああ、もうその口ぶりで分かります。穂乃果の強い決心が・・

絵里「そう…。」

穂乃果の相も変わらない行動力に、ついついため息がこぼれます。

絵里「もう、止めないわ・・」

電話越しに、穂乃果が息をのむ音が聞こえた気がしました。

絵里「でもね・・」

絵里「もしアメリカで困ったことがあったら、私たちに相談すること!絶対にね!」

ただし、その次は優しく言います。
なんだかんだ、エリーチカは穂乃果に甘いのです。

穂乃果「ふふっ、絵里ちゃん…」

嬉しそうに、でも少しくすぐったさそうにして、穂乃果は笑っていました。

絵里「頑張ってね、応援するわ、穂乃果。」

穂乃果「ありがとう、絵里ちゃん」

絵里「あっ、でもこのこと希やにこにもちゃんと伝えなさいよ」

穂乃果「はーい。」

と、穂乃果はのんきそうに言います。

もうっ、何が「はーい」よ・・
無邪気なんだから・・

でも、そんな穂乃果の無邪気さが、なんだかおかしくなってきちゃって…

絵里「ふふっ、ふふふっ」

ほのか「ふふっ、あははっ」

深夜のテンションっていうやつなのでしょうか。

しばらくの間ずっと、二人で笑いあっていました・・
 
16: (もんじゃ) 2022/03/19(土) 23:10:23.37 ID:UAiW0C7e
ひとしきり笑い終わった後、私は穂乃果に言います。

絵里「でも、そう・・・アメリカねぇ。」

少し感慨深いものがあります。

絵里「さびしく・・、なるわね・・。」

穂乃果「うん・・・」

でもそれは、穂乃果も一緒だったのでしょう・・。
電話口の向こうから聞こえる声も、何だかずいぶんと寂しそうです。

絵里「さみしがりやな穂乃果に、アメリカ留学なんて耐えられるのかしら」クスッ

穂乃果「むぅ、そんなこと言わないでよぉ」

と、怒ったように穂乃果は言います。

絵里「ふふっ、ごめんなさい。でも・・・」

ふいに、私は穂乃果が電話をかけてきた要件を思いだします。

穂乃果「でも?」

絵里「でもきっと、それは穂乃果だけじゃないんでしょうね・・・」

ふとした静寂が訪れます。

穂乃果「海未ちゃんの、こと・・?」

絵里「うーん・・・」

これはどこまで言っていいのかしら・・・
というか、まずそもそも穂乃果と海未はどこまで分かってるのかしら?

絵里「ねぇ、ことりは何か言ってた?」

穂乃果「いや、それがね・・・」

~ことり「うーん、それはね、穂乃果ちゃんが自分で考えないとだめだよぉ」チュンチュン~

穂乃果「っていう感じでね。何にも教えてくれなかった。」

絵里「あ~~~」

穂乃果「それになんか、ずっとニコニコしてたんだ。」

これはあれね、言わない方がいいやつね。
っていうか何も分かってないわね、たぶん二人とも。

エリーチカ、賢いから分かるわよっ!

穂乃果「絵里ちゃん、何かニヤニヤしてない?」

絵里「し、してないわよぉ!」

くっ、なんでこういうところは鋭いのよ…
 
17: (もんじゃ) 2022/03/19(土) 23:14:10.30 ID:UAiW0C7e
穂乃果「どうしたら海未ちゃん、許してくれるのかなぁ?」

絵里「うーん、そうねぇ…」

いやぁ…、そもそもの問題がそこじゃないからねぇ…
海未はいつもみたいに穂乃果を心配してるだけじゃないのよ・・

絵里「そうねぇ…」

正直、海未の気持ちは手に取るようにわかるわけだけど・・・

絵里「うん、私も教えることは出来ないわ。」

穂乃果「えぇ・・」

まぁ、私が教えるのは無粋よね。
とはいえ…

絵里「でも、ヒントはあげてもいいわよ」

と、私は先輩らしく後輩に対して優しさを見せることにしました。

穂乃果「えっ、本当に!?ありがとう、教えて!」

と、穂乃果は前のめりになって言ってきます。
さて、どう伝えようかしら?

グラスの中の氷をおしゃれにカランコロンさせながら、ほろほろと考えて、
結局私は、二人の間にある問題の本質を突くことにしました。

絵里「ねぇ、穂乃果・・」

絵里「穂乃果は海未にどうしてほしいの?」

優しく、語りかけるようにして、
二人が気づいていない一番の問題点を指摘します。
 
18: (もんじゃ) 2022/03/19(土) 23:24:17.32 ID:UAiW0C7e
穂乃果はしばらくのあいだ考え続けた結果、

穂乃果「応援してほしい・・。のかなぁ?」

という答えを返してきました。

絵里「・・・。疑問形なのね?」

穂乃果「いや、だって、なんだかわからなくて・・」

頼りない…
でも、いつもとはだいぶ違う答えね・・

穂乃果「なんていえばいいんだろう・・・」

穂乃果「誰がいなくたって寂しいんだよ…」

穂乃果「ことりちゃんや三年生のみんながいなくなるのだってさみしいし・・。」

うん、まぁ、そうでしょうね。

穂乃果「でもっ、海未ちゃんがいないのは、その…」

穂乃果「カラダの一部がなくなっちゃうような…」

穂乃果「さみしさっていうよりは、その…胸が締め付けられるような苦しさがあって…」

おっ、これは・・

穂乃果「実はね、みんなにギリギリまで言わなかったのは、海未ちゃんに言うのが怖かったからなの・・」

穂乃果「言っちゃうと、ずっととなりにいた海未ちゃんと、離れ離れになることを認めちゃう気がして」

穂乃果「おかしいよね、アメリカに行くって決めたのは穂乃果なのに…」

あぁ、気づき始めたのね、
でも…

穂乃果「なんでかなぁ、絵里ちゃん?」

と、困ったように尋ねてきます。
困ってしまうのはこちらです。
そこまで思い至っていながら、なぜ気づかないのよぉ・・
 
19: (もんじゃ) 2022/03/19(土) 23:25:17.18 ID:UAiW0C7e
でもまぁ、私はそうは言わずに、

絵里「ここまでヒントあげたのよ、あとは自分で考えなさい、穂乃果?」

クスクスと笑いながら少し意地悪な返答をしました。

穂乃果「うぅー、もう、いじわるぅー。」

絵里「ふふっ」

頼ってきた後輩を無下にするのはいい気分はしないけど、
まぁ、外野がガヤガヤいうべき問題ではないわよね・・

穂乃果「むぅ、わかったよぉ。」

穂乃果「決めた。わたし海未ちゃんと二人きりで話し合ってみる。」

と、穂乃果は今日一番大きい声で、高らかに宣言します。

頑張ってね、二人とも!!
私はちょっとふらふらとする頭を押さえながら、
心の中で優しく応援するのでした・・
 
20: (もんじゃ) 2022/03/19(土) 23:33:12.06 ID:UAiW0C7e
そして小一時間ほど、
くだらない話やちょっとしたうわさ話を穂乃果としていたら、
とうとうお空に朝日が昇り始めました。

穂乃果「あっ、もうこんな時間。」

絵里「そうねぇ、時がたつのは早いわ・・」

穂乃果「そうだねぇ、じゃあ私これから学校だからもう切るね」

あら、切るときはずいぶん、さっぱりしてるのね・・・
私はまだまだ話したりないのにぃ・・

絵里「はいはい、また連絡してね。」

ですがまぁ、そんな姿を穂乃果に見せることはなく、
私はクールな先輩っぽく言いました。

穂乃果「うん、もちろん。」

そうして、私が電話を切ろうとしたとき・・
穂乃果が、穂乃果が言ったのです・・・

穂乃果「あっ、そうだ、絵里ちゃん、あんまり夜遅くまで飲み歩いてちゃダメだよ!!」

絵里「ぎくっ!!!」

な、なんでそのことを・・・

絵里「し、知らないわぁ」

と、わたしは空になった梅酒のビンを机のしたに隠します。

穂乃果「今日もお酒飲んでたんでしょお?」

絵里「えっ、えぇ…」

どうしよう、何かバレてる。

穂乃果「いつもと違ってなんか明るかったよ、絵里ちゃん?」

ぐっ、たしかにほろ酔いでハイテンションだったかも…

絵里「そ、そう?」
 
21: (もんじゃ) 2022/03/19(土) 23:37:34.85 ID:UAiW0C7e
ま、まずい・・
バレてる、バレてる・・

絵里「いいわ、とりあえず私が今飲んでたかどうかは置いておきましょう!」

と、ここは話をそらす作戦。
電話の向こうからほのかの苦笑いが聞こえた気がしたけど、勘違いよね?

絵里「だ、誰から聞いたの?」

と、情報漏洩をした人を潰す作戦に切り替え。

たぶんにこよね?にこから聞いたのよね?

希は意外と口固いし、犯人はにこしか考えられないわぁ!
きっと、先日飲みすぎてちょっと過激なイタズラしたことを根にもってるチカね?

穂乃果「えっ?違うよ?」

と、思ったのに違うらしい。

穂乃果「亜里沙ちゃんから聞いて…」

絵里「あっ、亜里沙が…」

穂乃果「亜里沙ちゃん、すっごく怒ってたよ!」

な、何が原因かしら?

この前、晩御飯すっぽかして女友達と飲み歩いて、最終的に夜の4時に家に帰ってきたことかしら?
しかも、その時間にかえって来て早々に、亜里沙を叩き起こしてダル絡みしたことかしら?
そのうえ、酔っ払ってアリーチカにベロチューしかけたことかしら?

まずい、心当たりがありすぎる・・・
 
22: (もんじゃ) 2022/03/19(土) 23:40:28.18 ID:UAiW0C7e
穂乃果「あんまりひどいようだと、海未ちゃんが絵里ちゃんのこと怒りに行くって!」

う、うそでしょ・・
ま、まずいわぁ?

絵里「ほ、ほのか、違うのよ、ほの…」

穂乃果「あっ、ごめんね、絵里ちゃん。そろそろお家のお手伝いしないと・・」

と言って、穂乃果は電話を切りました。

絵里「えっ、待って、穂乃果、穂乃果ぁ~~」

あれ、ホントに切ったの?
ウ、ウソでしょ?
くっ、この変にマイペースなところはホント変わらないわねっ!


困ったエリーチカは、アリーチカに頼んで、許してもらうことにしました

ドタバタと音を立てて、亜理砂の寝室前に行きます。

絵里「亜里沙、亜里沙ぁ」ドアドンドン

絵里「あのね、お姉ちゃん、酔っ払ってたの、悪気はなかったの」ドアバンバン

絵里「だから許して、お願いっ!!」ドケザッ

と、懸命に謝ります

亜里沙「おねぇちゃん、うるさいっ!」

と、亜理砂の怒る声、

絵里「お姉ちゃんからの一生のお願い、海未には言わないで、ホントに怖いから。」

私は、般若のごとき海未を思い浮かべて恐怖します。


あ、ありさ、ありさぁ…

もうっ、イマナンジダトオモッテンノ

オネガイッ、オネガイッ、ハナシヲッキイテッ

・・・・・・・・・



こうして、エリーチカと可愛い後輩との深夜の逢瀬は終わったのでした、チャンチャン
 
40: (もんじゃ) 2022/03/20(日) 15:05:09.85 ID:z+vf8k6m
にっこにっこにー!

こんにちは、愛しの元スクールアイドル、にこにーでぇす!

にこにーはぁ、短大一年生♡

ゼミに課題にアルバイト、時々サークルって感じで
とぉってもぉ、とぉってもぉ、忙しいにこにーなんだけどぉ、
今日はぁ、とっても、とっても、びっくり!

希「にこっち、早く肉取りや、焦げちゃうやん?」

海未「にこ、遠慮しなくて大丈夫ですよ。肉はまだたくさんありますから。 」

希「海未ちゃん、それうちのセリフやで!」

海未「はっ!確かにそうですね・・」

にこ「ふっふっふっ・・」

な、なんと…

希家で開催されたっ!

海未と希の焼肉パーティーにっ!

招待されちゃいましたっ!

にこ「って、なんでよっ!」

海未「へっ、お肉嫌いでしたか?」

にこ「違う、そうじゃないっ!」

思わず古い返しをしてしまう。

にこ「いきなり、おうち焼き肉に誘われたことを怒ってるのよっ!」

にこ「しかも無理やり希ん家に連行されたしっ!!」

そうなんです。
にこにぃは、短大の授業終わりにこの二人によって希家へと連行されたのです。
もうめちゃくちゃですっ!信じられますかっ?
 
41: (もんじゃ) 2022/03/20(日) 15:06:45.56 ID:z+vf8k6m
にこ「にこだって暇じゃないのよっ!」

と、苛立ちのあまり悪態をついていたら、
希のやつはニヨニヨしながらこっちをみてきます。

にこ「な、なによっ!」

希「うん?別になんにもないで?」 

と、何かあるくせに何にもないとほざきます。
     
えっ、それじゃあなんで来てるん?
無視すれば良かったのにぃ~?

希のやつが、目でそう問いかけてきます。

うるさいわよっ!
にこだってそれが出来ればやってましたっ!!

そりゃだって、こいつら…

にこ「なんであんたら・・、校門の前なんかで待ち伏せしてるのよっ!」

にこ「あろうことか、『矢澤にこ様御一行』なんてプラカードまで持って!!」

そうです、この二人、あろうことか授業が終わって家に帰る所だったにこにーを、
段ボール製のプラカードまで用意して校門前で待ちぶせていたのですっ!

おかげで同クラの子にずっとクスクス笑われてたんだからっ!
 
42: (もんじゃ) 2022/03/20(日) 15:12:23.08 ID:86pV6BMB
にこ「普通そんなことしないわよっ!」

と、怒鳴ったら

海未「すみません、一応止めたのですが」

と、海未が申し訳なさそうに言います。

にこ「知ってるわよ。海未のことは責めないわ・・」

海未は、まぁ、そういうことでしょうね。

待っている間もすごい恥ずかしそうにしてたもん、だから…

にこ「問題はあんたよ、希っ!」

と、指をさして言ってやる。こいつが主犯だってことはわかりきっているのよ。
そしたら…

希「だってぇ、にこっちたまにぃ、うちらのことむしするやぁん?」

と、悪びれもせずに言います。
身体を無駄にくねくねさせながら…。
これには、さすがのにこも堪忍袋の緒がキレたわね

だって…

にこ「そりゃ、あんたらの呼び出しが、だいたい酒絡みだからじゃない!」

そう、ここ最近のこいつら(希と絵里ね!)の呼び出しなんて、
だいたいがそんなもんなんです。
そんで、ろくな目に合わない!

希「一応反省してるやん?」

にこ「と、どの口がっ!!」

いや、この前なんか酔っぱらった絵里にディープキスされかけたからね、
ほんと、あのエセロシア…
しかも、そんな状況を止めもせずに、希のやつずっと笑ってやがったし…

苛立ちを込めて希を睨み付けてやると、
やつは涼しいかおで口笛を吹いています。

海未は同情するような表情でこっちを見てきます。

私の味方は海未だけです。
 
43: (もんじゃ) 2022/03/20(日) 15:14:35.37 ID:86pV6BMB
希「大丈夫や、今日はエリちいないから・・」

にこ「大丈夫ってなによ…」

でもまぁ、確かに珍しく絵里はいないわね…
いつもだったら絶対いるのに。

にこ「なんでいないのよ?」

希「今日も飲みの予定があったんやって、みとっちと」

にこ「みと…。あぁ、高海さん?」

希「そや」

海未「たかみさん、とは?」

希「えりちの大学の友達やね。」

と希はいうけど、実際は絵里の飲み友達で、伊豆から来た絵里の同期ね(一浪してるから一個上だけど)。
かわいい妹さんがいるそうで、シスコンの絵里とは気が合うんでしょ。

希「まぁ、先約があったんなら仕方ないやろ?」

海未「そうですね…」

ん…?

にこ「ちょっと待って、あたしは?」

希「にこっちはひまやろ?」

にこ「なんでよっ!」

今日はたまたま予定なかったけど、私だって忙しいのよっ!

希「いや、今日もやろ?」

い、一々心を読むなっ!
まぁ、そうだけど…






希「それに、な?」

と、希は一呼吸して

希「今日の焼き肉会は海未ちゃんからの要望なんや。」

にこ「えっ、海未からの要望だったの!?」
 
44: (もんじゃ) 2022/03/20(日) 15:18:30.76 ID:86pV6BMB
意外だわ・・
海未はそういうの一人で抱え込むか、穂乃果かことりに話すものだと思ってたから。

希「後輩には内緒の相談があるんやて?」
 
希「相談やったら、のんべぇいたらしづらいやろ?」

希「だからぶっちゃけ、今日はえりち誘わない予定やったんよね・・」

と、苦笑い。

にこ「案外気が利くのね。」

そうだった、こういうところはいいやつよね、希って。

海未「ありがとうございます、希。」

希「ええよ、ええよ。」

そういわれると、私も矛をおさめざるえないじゃない…
でもまぁ、仕方ない、そういうことなら…

にこ「わかったわよ、にこも相談にのるっ!」

海未「にこ…。ありがとうございます。」

と、海未はずいぶん嬉しそうな表情でした。

それを見た希は、イタズラが成功したかのような微笑みで

希「なんやかんや言いつつ、後輩思いやねぇ?」
 
と、言うのです。

にこ「ぐっ、ぐぅ…」

そりゃ、あの海未が相談って言うなら聞くに決まってんじゃない…

海未「にこ・・」

希「おっ、照れてるなぁ」

にこ「う、うるさいわよっ!」

こいつら、ほんともうっ…

なんか納得いかないけど、仕方ない…

このにこにー!海未の一世一代の大相談にのってあげようじゃないのっ!
 
45: (もんじゃ) 2022/03/20(日) 15:20:49.71 ID:86pV6BMB
って、思ってました…

海未「と、いうわけなんです…」

海未「アメリカに行くなんて、おかしくありませんか?」

海未「そんなもの、誰だって反対しますよね?」

何よ、この相談…

海未「にこも希もそう思いますよね?」

アア、アタマイタイ…

希の方を見ると…

エ、エガオガヒキツッテル…

そりゃ、そうなるわよ…

にこ「どうするのよ、希」コゴエ

希「どうって、気づいてもらうしかないやん?」コゴエ

それを誰も出来なかったからこうなっちゃったんでしょうに…

海未「どうしました?二人とも」

と、海未はとぼけた表情で訪ねてきます。



いや、どうしたらいいのかしらね・・
っていうか海未のやつ、この段階に至ってもまだ何も気づいていないのね…
 
46: (もんじゃ) 2022/03/20(日) 15:22:13.87 ID:86pV6BMB
にこ「あのね海未…」

まぁ、にこにーって優しいから怒らないけど、

にこ「色々言いたいけど、それはまず置いとくわ…」

どうしてもとげのある口調にはなるわよ…

海未「は、はぁ…」

予想外の返答に困った様子を見せる海未、

にこ「なんで海未は、そう思ったのよ?」

海未「なんでって、無謀だからですよ…」

と、憮然とした表情で答える海未でした。
いや、そうじゃなくて…

あぁもう、何て言えば良いのだか…

すると、口下手なにこに変わって希が答えを引き取ってくれる

希「たとえばや。他の人が夢をおいたいいうたら、海未ちゃんどうする?」

おぉ、さすが希(口調は大阪のペテン師みたいだけど…)!!

海未「応援します!」

希「そうやな、じゃあことりちゃんでも?」

海未「もちろんです!」

希「じゃあ、ほのかちゃんは?」

海未「反対です!」

希「なんで?」

海未「なんでって、ですからそれは、無謀…で…」

希「それだけ?」

海未「それだけって…」

その問いを承けて、少し戸惑いを見せる海未でしたが、

海未「あれ、なんで私、こんなに反対してるのでしょうか?」

と、はたと気づいたように呟きます。

にこは思わず、希と目を合わせる。

あぁ、ようやく気づいたのね…

希「そこや、そこを考えや」

と、希は身を乗り出して問いかける。
 
47: (もんじゃ) 2022/03/20(日) 15:26:45.45 ID:86pV6BMB
海未「うーん…」

しばらくの長考の末、

海未「いや 、なのでしょうか?」

海未「ほのかと離れることが…」

と答えを出しました。
って、疑問系なのね、まぁ自分でもわからないんでしょうけど…
でも、この答えは今までの海未だったら出せていない気がする…

にこも身を乗り出します。   

にこ「穂乃果と離れることが、何で嫌なの?」

と、本質をついた質問をします。

海未「そ、そうですね…」

海未はにこにーの剣幕に少し気おされながらも・・

海未「今までずっと私の隣には穂乃果がいましたからね…」

海未「側に穂乃果がいないことが、離れてしまうことが考えられない…

海未「…のでしょうか?」

と、言いました。
き、きたっ!

希「それやそれ!」

にこ「それはどうしてなの?」

海未が悩みながらも言葉を絞り出す、

海未「穂乃果とは、今までずっと一緒にいて、彼女にとって私は一番の味方で…隣にいる関係が当たり前だと思っていて…」

海未「だからきっと、この関係はおばあちゃんになるまで続くと思っていて…」

と、ここで言葉を切る

海未「はっ!」

海未「待ってください、あと少しでわかりそうです。」

希「ほんま?」

にこ「やったぁ!」

ようやく、ようやく気づいたのね。
長かったわぁ…

いや、焦れったかった…
側にいる私たちも結構苦痛だったからね…
あまりにもどかしすぎて…
 
49: (もんじゃ) 2022/03/20(日) 15:31:06.54 ID:86pV6BMB
と、分かりそうといった言った海未でしたが・・

海未「うーん…」

考える時間めちゃくちゃ長くない?
希のやつ、飽きて新しい肉取り入ったうえに、肉焼き始めてるわよ。




まぁ、それくらい長い沈黙の果てに、
海未が手をたたいて言いました、

海未「あっ、わかりました。」

と、大きな素振りで手をたたき言いました。
海未にしては珍しいオーバーリアクションでした

にこ「おおっ!」

希「ようやくやん?」

私たちはほっと一息つき、海未の答えを待ったのです。



そして海未は言いました…   

海未「ようやく分かりましたよ…この感情が何なのか…」



海未「これは…母性ですよね!」

と…。






にこ「は?」

希「えっ?」

う、嘘でしょ?
 
50: (もんじゃ) 2022/03/20(日) 15:36:31.00 ID:86pV6BMB
海未「長い付き合いですからね、私の母性が目覚めた・・のでしょうか?」

自信なさげな口ぶりでしたが、その表情は晴れ晴れとしたもので、
自分の出した答えが間違っているとは露ほども思っていないようでした。

海未「それで私は、心配のあまり穂乃果に執着してしまったのですね。」

海未「改めて言葉にすると恥ずかしいですし、穂乃果相手というのも癪ですが…」

海未「いやはや、ようやくわかりましたよ。」

呆然とする私たち、

海未「あれ?違いました?」

あまりのむちゃくちゃっぷりに、

にこ「アホや、アホがおるで」

希「宇宙ナンバーワンアイドルもお手上げにこぉ」

どうしよう逆になっちゃった…
 
51: (もんじゃ) 2022/03/20(日) 15:39:58.46 ID:86pV6BMB
海未「ち、違うのですか?」

にこ「違うわよ、びっくりするぐらい違うわよっ!」

海未「ええっ…」

若干あきれ顔の海未・・
いや、こっちがあきれたいわっ!

希「小説とか読む設定やんっ?」

海未「設定ってなんですか!?」

希にしては珍しく、口調が強いです、
まぁそりゃ、この頓珍漢ぷりだったら、そうなるでしょうね。

海未「推理小説とか読みますよ。」

にこ「そっちかぁ…」

希「確かに恋愛ものは読まなさそうやな…」

うーん…
そりゃ気づかないわね…

海未「東○圭吾とか読みますよ。」

なにをどや顔で…
しかも私でも知ってる人あげてるし、読んだことないけど。

希「いや、そっちならあるんやない?」

海未「はい?」

にこ「あっ、そうね!」

そっか、ドラマでみたやつでも動機があれなやつあったわ

希「ミステリーいうても、別の要素があることあるやん?」

にこ「そうよ、恋愛要素もあるミステリーだってあるじゃない?」

希「そうそ…。あれ?」

そうよ!
たしか再放送で見た「流○の絆」にもそういう要素あった気がする!

にこ「それ読めば穂乃果へのそれが恋だって…」

希「あっ、にこっち!」

なによ、せっかくいいところで…。はっ!

海未「へっ?」
 
52: (もんじゃ) 2022/03/20(日) 15:47:12.12 ID:86pV6BMB
その時、ボンッ、と何かが弾けるような音がした気がしました。

海未「こっ、こい…」

海未「恋!?」

海未「ふ、二人揃ってなにをいうのですか…?」

と、震える声で海未は言います。

ヤバい、やらかした、ここ一年で1番…
うっ、希の視線が冷たい…

海未「私が…ほのかに…こ、こいっ…」

と、わかりやすいくらい動揺する海未。
ちょっと言葉を失っているようでした。

だけど、否定はしないのね・・
いつもだったら「違いますっ!」とか、「ありえませんっ!」とか言いそうなのに…

穂乃果と離れ離れになるっていうんで、色々心当たりがあるのかしら?

あれ?
じゃあこれ、結果オーライじゃない?

海未「なら、私が離れたくなかったのは・・」

にこ「好きな人に側にいてほしいと思うことは自然なことよ?」

希「は・や・く…振り向いてぇ~♪」

海未「で、では、今までの私の葛藤や逡巡は・・」

にこ「恋わずらいじゃない?」

希「目覚め始めた戸惑いもぉ、なんだかぁ悪くない♪」

海未「じゃああの…穂乃果とうちの母がする、お姑さんごっこは…」

にこ「なにバカなことやってんのよ?」

希「お母さん公認や~ん?」

海未「・・・・・・・」オロオロ

いつもは食事中も行儀正しい海未ですが、焦りと驚きのせいか、
机に肘をのせ、頭を抱えてうんうん唸っています。


海未「こい…私が…穂乃果に…?」

本当に気付いてなかったのね・・・
余りの戸惑いっぷりに若干かわいそうになるわ
 
53: (もんじゃ) 2022/03/20(日) 15:50:13.96 ID:86pV6BMB
そしたら、希がよせばいいのに追い打ちをかける・・

希「海未ちゃん?」

海未「な、なんでしょう・・?」

さっきまで神妙な顔してたのに、にやっと満面の笑みを浮かべていました。
うん、性格悪いわぁ、こいつ・・

希「海未ちゃん、恋や!」

海未「池で口を開けてエサを待つ魚ですか?」

にこ「鯉じゃないわよっ!」

希「海未ちゃん、恋なんよ?」

海未「不健康な人がしてはいけない味付けですか?」

にこ「濃い口醤油じゃないわよっ!」

希「恋やで?」

海未「じ、事件性があるやつですよね?」

にこ「故意じゃないわよっ!」

わざとやってるんじゃないでしょうね、このやり取り。
 
54: (もんじゃ) 2022/03/20(日) 15:54:27.05 ID:86pV6BMB
まぁでも、この慌てようだと本当に混乱してるんでしょうね。
にもかかわらず、希はニヤニヤしながら

希「で、どう思うん、穂乃果ちゃんのこと?」

海未「それは…」

希『あ・れ・れ? 幼なじみだからって、恋に落ちちゃうわけではないからねっ!』

海未「ぐっ、ぐぅぅ…」

ホント性格悪いわぁ。
親友であることを恥じるレベルよ…

海未は希の歌にのたうち回ったあと、

海未「私が穂乃果に恋なんて…うそ…ですよね?」

と、上目遣いで、自信なさげに問いかけてくる。

にこ「にこたちが嘘つくワケないでしょ!?」

この期に及んでまだ言うか…

希「海未ちゃん、恋は落ちるもんや。気づかないうちにな!」ドヤッ

こいつはホント、よーいうわ…

にこ「まぁ、でも、わかった?海未の穂乃果への恋心は?」
 
55: (もんじゃ) 2022/03/20(日) 16:02:16.23 ID:86pV6BMB
海未「いえ、その…」

にこ「その?」

海未「ま、まだわからないのです…その、恋とかについて人と話したことがないので……」

と、消え入りそうなほどの小声で言う。

なるほどねぇ、海未は照れ屋だからねぇ・・

にこ「って、話したことなくたって自覚しなさいよっ!あんたらずっとイチャついてたじゃないよッ!最後のライブが終わったあとなんて、特にっ!」

海未「・・」ビクッ

にこ「いつでもどこでも甘ったるい雰囲気だして、りんとまき以外みんな気づいてたからねっ!」

海未「そ、そんな…」

にこ「それでまだ恋が分からない?どんだけ鈍感なのよっ!おバカっ!」

希「にこっち、いうなぁ…」

あっ、しまった、心の中でいうつもりが、声に出してた。

海未「くっ…」

すると、海未はにこの言葉によるダメージのせいか、机に突っ伏してしまいました。
あ~、うん、悪いことしちゃったわね…
 
56: (もんじゃ) 2022/03/20(日) 16:04:18.14 ID:86pV6BMB
海未は動揺しているのでしょうか、頭を抱えながら机につっぷしてうんうん唸り始めてしまいました。
声をかけたのですが反応がなく・・
どうやら自分の世界に入ってしまったのでしょう。

私と希はそっとしておいたほうが良いのかなと思って、
特に海未に声をかけることもなく、おしゃべりしながら焼き肉を食べていました。

そうしていると、海未は、突然顔をあげて、

海未「か、帰りますっ!」

と、言うのです。

にこ「そと、雨降ってるわよ!?」

希「焼き肉もまだ残ってるで!?」

と、私たちは口々に海未を止めたのですが、

海未「1人で考えさせてくださいっ!」

と、今まで見たことないくらいに顔を真っ赤にさせて
そして・・

海未「にこ、希、本日はありがとうございました。私は帰りますっ!」

と言い残し、音を立てて椅子を引き、大慌てでリビングのドアを開けて、
一目散に玄関へと駆けて行きました。

ゴンッ、ドンッ、ガシャガシャ、バーン…

ずいぶんと大きな音をたてながら…
 
57: (もんじゃ) 2022/03/20(日) 16:15:49.71 ID:86pV6BMB
海未の急な行動に反応もできずに、

にこ「行っちゃった…」

希「行っちゃったなぁ…」

と、つぶやくしかない私たち・・

にこ「帰る時頭ぶつけてたわよね?」

希「あと、傘忘れとるなぁ。数日後に大雨降る言うてたのになぁ?」

にこ・希「うーん…」

海未の様子に少し不安を覚えるのでした・・。


さて焼き肉を食べながらも、しばらくの間海未を心配していた私たちでしたが、
希はいつの間にか吹っ切れたようで

にこ「大丈夫かしら、海未?」

なんて、私が希に問うと、

希「まぁ、なんとかなるやん?」

と、無責任な返答をされました。

にこ「んな、無責任な・・」

希「ちゃうでにこっち。」

と、言います。

希「うちらはヒントをあげることはできる、でも決めるのはあの二人。」

と、希はいつになく真面目な顔で言い切ります。

希「うちは信じとる、あの二人ならきっと、一番良い答えを見つけられるって!」

そして、とびきりの笑顔でこっちを見てきます。

にこ「そっ…」

まぁ、希がなんとかなるっていうなら、きっとなんとかなるんでしょうね…
あの二人のことは、当人同士の解決に委ねることにしました。

そうなればまずは…
 
58: (もんじゃ) 2022/03/20(日) 16:18:29.12 ID:86pV6BMB
そうなればまずは…

にこ「ひとまずこの肉どうにかしないと…」

希「あっ、そうやん!」

にこ「この大量の肉、保存できそうなの?」

希「出来るで。でもまぁ今日食べちゃいたいなぁ…。美味しいやつやし…。」

にこ「となるとまぁ・・・」

にこ・希「「・・・・・・・・」」

にこ「絵里たち呼ぶの?」

希「それしかないやろなぁ…」

にこ「うわぁ…」

希「そんな顔しちゃアカン。仕方ないやろ、2人で食べきれる量やないで?」

にこ「そうだけどねぇ…」

にこ「今あの2人呼んだらここが地獄になるわよ、絶対に…。」

希「まぁちょっと、電話かけてくるなぁ…」
 
59: (もんじゃ) 2022/03/20(日) 16:23:43.38 ID:86pV6BMB
モシモシエリチ、ウチコナイ?ニクアルデ?

オサケハエリチカイナ?ウチサケノマナイシ。

エッ、アリサチャンガクチキイテクレナイ?

キクカラキクカラ、ソンナトコデナイチャアカンヨ!




こうして私たちは、今夜も酔っ払った絵里たちの面倒を見なければならなくなったのでした…

チャンチャン
 
66: (もんじゃ) 2022/03/21(月) 21:18:34.47 ID:y27fuD+3
皆様、こんばんは、海未です。

穂乃果が突然にアメリカへ行く宣言をして、
希とにこと一緒に焼き肉を食べて、
それから数日後のとある寒い冬の日のことです。

その日は珍しく季節外れの激しい雨が降っておりました。

ここ数日のあいだ続いているモヤモヤとしたこの気持ちを
この雨が洗い流してくれればと、そう思いました…。

希やにことの話すなかで、
私のなかの本当の気持ちに気づいてしまいました。

気持ちを整理したいと思い、
部活も休み穂乃果たちとも話さず、
一人でああだこうだと考えながら、日を重ねていました。


そうそう、亜里沙から泊めて欲しいと電話がかかってきましたが、
1人になりたいからと断ったこともありましたね。

絵里の酒乱に対して堪忍袋の緒が切れたようで、
お酒を控えないと許さないと言って、家出したようです。
今は高坂家に泊まっているみたいです。


さて、矢のように降り注ぐ雨は、
まるで他者がその中へ入ってくるのを拒むようで、
それは今の私の心の中と同じようだと思いました。

ですが・・
こういう日に限って

~ピンポーン~
 
67: (もんじゃ) 2022/03/21(月) 21:22:21.18 ID:y27fuD+3
~園田家の玄関~

扉の前には見知ったシルエットがありました。

海未「はい…」

と、戸を開ければ

穂乃果「家出、してきちゃった!」

と、そこにはやけに笑顔な穂乃果がいたのです。

海未「連絡もなく、家出って…」

かないませんね、あなたには…

海未「泊まりに来ただけでしょうに…」

穂乃果の家出自体はよくあることでしたが、

穂乃果「えへへ、そうともいうかな」

このタイミングは、そういうことでしょう。

いつもそうです。
私は、あなたに会いたくなくて、ハリボテの壁を作ってたのに、
その壁をあなたはいつも易々と壊してしまうのです。

海未「どうぞ、ご随意に」

穂乃果「おっ邪魔しまぁす♪」

かってしったる我が家のごとく入ってくる穂乃果、

海未「一応言いますが、今日は父も母も不在ですから」

穂乃果「へっ、あっ…そっかぁ、そうだったね…」
 
68: (もんじゃ) 2022/03/21(月) 21:25:36.31 ID:y27fuD+3
今日は仕事があって両親はいないのです。
すると、穂乃果はため息をつき、

穂乃果「じゃあ、お姑さんごっこはなしかぁ」

なんて言います。

いえ、もともとされても困ってましたけど…
ほのかが園田家へ嫁入りしていて、うちの母が姑で、そんな茶番を何年も繰り返していました。

海未「全く、変わらないですね…」

変わらない、そこに力をいれて話した私に対して、

穂乃果「そうかなぁ?」

と、苦笑いをしてやんわりと否定する穂乃果。
探り合うような、ふとした静寂が訪れました。

怖くなった私は、それを誤魔化そうとして、

海未「あぁ、晩ごはんは私が作ったものでよろしいでしょうか?」

と、尋ねました。

穂乃果「えっ、海未ちゃん作ったの?」

海未「はい、両親不在なのですから」

今日は中華を作る予定でした。

穂乃果「やったぁ!久しぶりに海未ちゃんの手料理だあぁ!」

海未「はぁ、全く…」

いつもと同じような私たちのやり取りでした。

でも、今夜の話をきっかけに何かが大きく変わる、そんな気がしました。
何だか怖いなと思いました。
 
69: (もんじゃ) 2022/03/21(月) 21:28:16.39 ID:y27fuD+3
~数時間後~
~海未の部屋~

穂乃果「あっ、海未ちゃんもお風呂でた?」

海未「ええ。」

お風呂を出て、自分の部屋に戻ると、
そこにはパジャマ姿の穂乃果がずいぶんとくつろいだ表情でベッドの上にいました。

はなから泊まるつもりだったのでしょう。

穂乃果「いやぁ、お風呂気持ち良かったよぉ!」

海未「そうですか」

と、私のベットの上でのたまいます

海未「なぜ、私のベットで寝てるのです?」

いつものことですが、穂乃果は私のベッドに入ってきます。

穂乃果「なにを今さらぁ?」

あきれてしまいますが、
でも、今日のそれはいつもと違う気がしました…

いつものように2人で一緒のベットに入り、電気を消そうとしたとき…

穂乃果「ねぇ、海未ちゃん?電気消す前に、話があるんだ」

と、穂乃果はいつになく真面目な表情で聞いてきました。
 
70: (もんじゃ) 2022/03/21(月) 21:30:43.63 ID:y27fuD+3
とうとう、なのですね…

海未「アメリカの…話ですね?」

穂乃果はうなずき、視線をあわせてきます。

あぁ、この話はしたくない。
私は思わず、目線を反らします。

穂乃果「聞いて、海未ちゃん…」

にもかかわらず、穂乃果はそっと手を私の顔に挟んで言うのです。
  
穂乃果「離れ離れになるなんて、考えたことなかったよ。」

いやです…

穂乃果「ずっと一緒だったもんね、私たちって。それこそ、お互いの家の仕事のスケジュールだって分かっちゃうぐらいに…。いつも一緒だった。」

いやです…

穂乃果「それでいつも穂乃果の一番の味方だった。μ'sだって、海未ちゃん最初はあんなに恥ずかしがってたのに、穂乃果と一緒にやってくれたもんね。」

いやです…

穂乃果「そんな海未ちゃんがこんなに反対するなんて、それだけ穂乃果が心配なんだよね。海未ちゃんの気持ちもわかるよ。」

いやですっ…

穂乃果「だけど私は、それでもアメリカに行きたい。海未ちゃんには穂乃果を応援して欲しい。」

絶対に…いや…です…

穂乃果「わがままだって言うのは分かってる。でも、海未ちゃんが応援してくれない限り、穂乃果はアメリカへ行けないと思うの…」

そう言って私の頬から手を離し、「答え」を待つ穂乃果。
私の「答え」を聞かずに旅立つこともできたでしょうに…

あなたは残酷なのですね・・。

そんな無謀なこと認められない…
応援したくない…
一緒にいてほしい…

様々な思いが、私の頭のなかを駆け巡るなか、

海未「どうしても、行くのですか…」

絞り出せたのはその一言だけでした
 
71: (もんじゃ) 2022/03/21(月) 21:37:19.03 ID:y27fuD+3
穂乃果「うん…」

穂乃果「応援、してくれない?」

と、問いかけてきます。

真剣な表情でした。
あの穂乃果がこんな表情をするなんて、少し前なら考えもつきませんでした。

きっとあの経験が穂乃果を大きく変えたのでしょう。
だからこそ、アメリカ留学もきっと本気で言っているのでしょう。

だから…
だからこそ私は覚悟を決めて、

海未「あなたには、行ってほしくない」

と、心からの言葉を伝えます。

どうして…
穂乃果の目がそう訴えかけてきます。

あぁ、いつもだったら私がこういう目をするのに…

普段と立場が逆転していることが少しおかしくて、
でも、それだけ私は無理を言っているのだと気がついて、
心がかき乱されてしまいます。

海未「わがまま…ですよ。私の…はじめての…」

途切れ途切れになりながら、私は穂乃果に伝えます。
そんな私に対して、何も言わずに穂乃果は答えを待ちます。

でもそんな真面目な顔がおかしくて、

海未「ふふっ…」

私はふと笑ってしまいました。

でも、その穂乃果の表情からは確かな覚悟も伺えました。
絶対にアメリカに行くという…

いっそ泣いてしまえばひき止められるのでしょうか?
無理ですよね、今のあなたはそんなに甘くない…
でも…

海未「あなたには、あなただけには、私のそばを離れて欲しくないのです。」

それでも私はあなたに伝えます。

穂乃果「どうして…」

穂乃果は、とても不思議そうに呟きます。
私は居ずまいをただし、穂乃果へと向き合います。
 
72: (もんじゃ) 2022/03/21(月) 21:38:51.04 ID:y27fuD+3
私があなたに本心を伝えれば、きっと今までの関係ではいられなくなる。
拒絶されるかもしれない…
気持ち悪がられてしまうかもしれない…
それはきっと、私には耐えられない…
私にとってあなたは、何よりも大切な存在だから…

怖い、本当に怖い…

でも…言わなければならない…
あなたの真剣な言葉に向き合わなければならない…

海未「ふぅ・・」

大きく息を吐いて呼吸を整えます。
 
73: (もんじゃ) 2022/03/21(月) 21:40:39.15 ID:y27fuD+3
私は穂乃果へと向き合います。

海未「何から言えば良いのか、いえ、全て伝えるべきなのでしょう。」

私は覚悟を決めました。そして、

海未「きっと私は、あなたに恋をしてしまったのでしょう。」

小さな声でなんでもないことのように、そうつぶやきました、

穂乃果「えっ…」

聞こえたのでしょう、ほのかが驚いた顔でこちらを見ます。

海未「いつも先頭で走っているあなたは、とても眩しかった。」

思えば一年前もそうでした…

海未「私はそんなあなたを支えたいと、あなたの一番の味方でありたいと思っていました。これまでと同じように。」

無茶ばかりするあなたは、とても心配でしたけど、どこか眩しくて、

海未「でも、それだけではなくなってしまったのです。」

今までと同じ関係を望みながら、その関係に新しい名前をつけたいと思った…

海未「私はいつの間にか…」

今までの関係性で満足出来なくなってしまった…

海未「あなたを、高坂穂乃果を愛してしまったのです。」

そうきっと…
本当に変わっていったのは、私の方だったのでしょう…
 
74: (もんじゃ) 2022/03/21(月) 21:51:18.65 ID:y27fuD+3
私の伝えた言葉に対して、

穂乃果「海未ちゃん…」

穂乃果は驚いたような、納得したような表情でした。
私は言葉を続けます。そして、

海未「私はこれからも…あなたと一緒にいたい…側で支え続けたい…」

海未「他の誰よりも近くに…あなたの一番近くに居たいのです…」

今の一番の気持ちをそのままに伝えます。

海未「ですから、アメリカに行かないで、日本にいてくれませんか?」

あぁ、なんて簡単なことだったのでしょうか、
これが今の私の正直な気持ちだったようです。

海未「私はあなたと離れたくありません、穂乃果。」

最後の言葉だけはつっかえることもなく、スッと話せたような気がします。
そして、

海未「あなたは、どう思うのですか?」

と、逆に問いかけます。

きっと、ここまで来たら引き返せない
私の手は知らず知らずのうちに震えていました。

少しだけ、間が開きました。
私は膝の上に手を置き、穂乃果の答えを待ちます。
 
待っている間、時計の針の音が無駄に大きく聞こえました。
でも、それと同じくらいに、私の心臓の鼓動は大きく響いていたと思います。
 
75: (もんじゃ) 2022/03/21(月) 21:54:43.96 ID:y27fuD+3
幾ばくの時が過ぎたのでしょうか?

穂乃果は、しばし逡巡しているようでしたが、
ふと名案を思い付いたように、

穂乃果「そうだよ、海未ちゃんも一緒に、アメリカに行けばいいんだよ!」

と、大きな声で言うのです。
自分の耳を疑いました。耳がおかしくなったのかと…
軽く耳を触りましたが、いたって正常でした。

穂乃果を見やると、ずいぶんと真剣な表情でした。
どうも、空耳ではないようです。

海未「な、なにをいうのですか」

穂乃果の突飛さは知っていましたが、これは随分と…。
まるで、赤子のようなことを言い出します。

穂乃果「そうだよ!そうだよっ!」

穂乃果は言葉を続けます。

穂乃果「だって、だって、そうじゃん。海未ちゃんが私と離れたくないなら、一緒にアメリカに行けばいいんだよ!」

そして…名案を思いついたかのように…

穂乃果「そうすれば、アメリカに行ったって何の心配もない!海未ちゃんと一緒だったらどこへだって飛べる。」
 
何か…重要なことに気づいたかのように…

穂乃果「そうだよっ、そうしようっ!!」

笑いながら、でもすがるように…

穂乃果「ねっ、穂乃果も…穂乃果も海未ちゃんと離れたくないよ…」

そして、どこか力なさげに穂乃果は私に問いかけてきました。
 
76: (もんじゃ) 2022/03/21(月) 21:57:11.95 ID:y27fuD+3
懐かしい…

目の前にいるにいる穂乃果は、私のよく知る昔の穂乃果でした。

一人でのアメリカ留学を決めた穂乃果でも、
スクールアイドルとして輝く穂乃果でもない、
幼くて、さみしがりやで、甘えたがりな、穂乃果でした。

しかし私は、そんな穂乃果の戯れ言を断らなければいけません。
首を大きくふって言います。

海未「無理ですよ。」

当たり前のことではないですか。

海未「私は園田の家を継ぐのです。この街で生きていくのです。」

それが私の夢であり、宿命ですから。

海未「あなたにはついていけません。アメリカにも、行けません…」

だからそんな、現実逃避みたいなこと、出来るわけないじゃないですか。
スクールアイドルの時とは…違うのです。

海未「離ればなれになるのです…」

なぜでしょうか、小さな水滴が私の手のひらの上に落ちました。

穂乃果「でもっ、でもっ…」

しかし、言い淀みながらも、
なおもその絵空事にすがろうする穂乃果…
彼女の意図するところはきっと…

ですが…

海未「いい加減になさい!穂乃果!」

そんな穂乃果の甘えに対し、ピシャリと、厳しく言います。

穂乃果「・・・・・」ビクッ

穂乃果は何も言わなくなりました。
自分が言っていたことの、愚かさに、子どもっぽさに気づいたのでしょうか。
 
77: (もんじゃ) 2022/03/21(月) 22:00:18.19 ID:y27fuD+3
私と穂乃果の間に、再び張りつめた静寂が訪れます。
穂乃果はずいぶん居心地が悪そうでした。
しかしそれでも…私は…敢えて踏み込みます。

海未「あなたは…それでも…」

それが穂乃果を追い詰めることに…
私と穂乃果の関係を大きく変えることになると…
そう知りながら…

海未「それでも…行くというのですか…?」

最後の問い掛けのつもりでした。

穂乃果の答え次第ではきっと、何もかもが大きく変わってしまう。
今までの私たちではいられなくなってしまう…

まるで心臓の中に別の生物がいるんじゃないかってくらい、
熱くてドロドロしたものが、心の中を這いずり回っています。
私はそれにつられて、叫びだしたくなるような、大声をあげて泣き出したくなるような…

あぁ、心も体も歪んで壊れてしまいそう…
 
78: (もんじゃ) 2022/03/21(月) 22:03:50.72 ID:y27fuD+3
私は穂乃果の答えを待ちました。
ずいぶん長くまっていたような気もします。
でも、実際の時間に直したら一分もたっていなかったかもしれません。

静寂は穂乃果によって破られました。

穂乃果「ううっ…」

穂乃果は急に…

穂乃果「う、うわぁぁぁぁぁぁぁああん…」

ずいぶんと大きな声をあげて、泣き出してしまいました。

ベットの上でうつぶせになって、
ワンワンワンワンと…
それはもうまるで赤ちゃんみたいに…

穂乃果「いやだっ・・、いやだよ・・。」

えぇぇ…
いや、先ほどまでのシリアスな感じはなんだったのでしょうか…
何だか色々肩透かしです。

きっとにこがいたら「何バカやってんのよ!?」と、穂乃果を叱り飛ばしたのではないでしょうか?

でも、聞かなければ始まりません。  

海未「な、なぜ泣くのですっ!」

と、強めな口調で聞きます。

穂乃果「だって・・、だってぇ・・!」

だってじゃありません!
そこはこう…ピシッと穂乃果が答えを言うところでしょうに…
もう、しまりませんね… 
 
79: (もんじゃ) 2022/03/21(月) 22:08:28.58 ID:y27fuD+3
そんな私の胸のうちを知ってか知らずか…

穂乃果「いやだよぉ…」

と、子供みたいに駄々をこねます、ベットの上に寝転がり、涙声で言います。

穂乃果「穂乃果だって、海未ちゃんと離れたくない」

顔をぐしゃぐしゃにしながら、

穂乃果「海未ちゃんに話せなかった」

声もぐちゃぐちゃにして…

穂乃果「きっと、話したら、さよならすることを離れ離れになることを認めることになっちゃうから。」

あぁ、よく見たら鼻水まで垂らしてます…。
もうっ、だらしない…

さっきまでの覚悟を決めた穂乃果はどこに行ってしまったのでしょう…

でも、彼女の言葉はそれほど大きい声で言ったわけではないのになぜかすっと入ってきました。
穂乃果のウソ偽りのない、心からの言葉なのだと思います。

その事に可笑しくなってしまった私は、ふと笑ってしまいました。
重要なことを話しているはずなのに、
穂乃果のせいでどうにも…

でも、その方が穂乃果らしい…
いえ、私たちらしいのではないでしょうか?

そう思うとダメですね、笑いが堪えきれなくなってコツコツと笑ってしまいました。
 
80: (もんじゃ) 2022/03/21(月) 22:10:54.16 ID:y27fuD+3
私の笑い声が聞こえたのか、穂乃果は涙を流しながらも少し不服そうにしてました。

穂乃果「笑うことないじゃん…」

頬を膨らませて、拗ねたように言います。
ご機嫌を損ねてしまいましたかね?

そんな穂乃果でしたが、
うつぶせで寝ていたベッドから勢いをつけて起き上がり、

穂乃果「あのね…」

と言って、こちらに姿勢を向けます。
目の横に残った涙を服で無理矢理ぬぐい、

ずいぶん真面目な顔をして、

穂乃果「まだはっきりとはわからないけど、私も海未ちゃんと同じ気持ちだと思う。」

と、そして一呼吸置いて、

穂乃果「好き、好き…」

と…

穂乃果「高坂穂乃果は、園田海未さんのことが好きです…。」

と、言いました。

その表情は緊張しているようでしたが、どこか晴れ晴れとしていました。

でも、依然として涙と鼻水で顔が濡れてたせいか、
どうにも情けなさも感じられましたが…
 
81: (もんじゃ) 2022/03/21(月) 22:13:39.33 ID:y27fuD+3
さて、愛の告白をした後も依然としてしゃくっていた穂乃果でしたが、
急に居ずまいをただし、鼻水と涙をティッシュでふき取り、
こちらへと顔を向けます。

穂乃果「だけど、だけどね…」

少し悲しそうな表情で、

穂乃果「私は、アメリカに行く、行きたい。」

と、つっかえることもなくすっきりとした口調で言います。
言い方と表情こそ晴れ晴れとしていましたが、
よく見れば穂乃果の手も震えていました。

そして穂乃果は言うのです。

穂乃果「私もっ、海未ちゃんとは離れたくない…この町で一緒に暮らしたいよ…」

穂乃果「でも…それでもっ…私は夢をかなえたいっ!アメリカに留学したいっ!!」

その口ぶりはどこか悲しそうでしたが、

穂乃果「アメリカに行く…アメリカで歌を歌う…この町にはいられない…」

穂乃果「だから…海未ちゃんのお願いは聞けない…」

なぜだか強い覚悟が感じられて…

穂乃果「ごめん…ね…」

あぁきっと、
もう何を言ってもその決心は変わらないんだなって、そう思わされてしまうのです。

ただ、そう言った後は私から顔をそらしてうつむいてしまいました。
私の返答が怖いのでしょうか。
こういうところは変わらないのですね。
 
82: (もんじゃ) 2022/03/21(月) 22:15:12.37 ID:y27fuD+3
頃合いでしょう…

海未「ふふっ、すみません。」

そう言って、私は穂乃果の方へ行き、彼女を後ろから強く抱き締めます。
そして…

海未「行きなさい…穂乃果…」

と、言います。

穂乃果「えっ…!」

穂乃果は驚いたようにこちらを見ます。
私は優しく語り掛けます…

海未「本当は今でも行ってほしくないですよ…」

海未「でも、それがあなたの夢だというのなら…あなたに強い覚悟があるのであれば…」

海未「あなたにとって一番の味方である私に、反対できるわけないじゃないですか…」

今までもずっとそうだったじゃないですか…

海未「だから…応援しますよ、穂乃果…」

今日一番言いたくなかったはずのセリフを、
一切言いよどむことなく、スラスラと言えてしまいました。

私は言いたいことを言えたので、穂乃果を抱きしめていた腕を振りほどきます。

穂乃果「海未ちゃん…」

穂乃果「ありが…とう…。ありがとう…」

穂乃果は少しうるんだ瞳で、感謝の言葉を伝えたのち、
また泣きだしてしまいました。
 
83: (もんじゃ) 2022/03/21(月) 22:18:06.94 ID:y27fuD+3
海未「泣き虫はやめたと思ったのに、また泣くのですね…」

と、私はからかうように穂乃果に言います。

穂乃果「う、海未ちゃんだって…」

穂乃果「海未ちゃんだって泣いてるじゃん!」

おや、確かに頬の辺りに水滴があると思っていたのですが、これは私の涙でしたか…
思っていた以上に、私は動揺していたようですね。
まだまだ修行が足りませんね。

少し自嘲気味に笑いました。

そんな私に対して、穂乃果は自らの手をそっと手を伸ばして手を握ってきます。
そして言うのです、

穂乃果「私ね、アメリカに行くよ!もっとたくさんの人に歌を届けるために!」

と、希望に満ち溢れた表情で…

その勢いに、私は少し戸惑い気味になりながら穂乃果を見ます。
すると穂乃果は、

穂乃果「でもっ、いつか絶対っ、このまちに帰ってくるっ!」

と、私の目を見つめて言います。
続けて、

穂乃果「だからっ、この街で待ってて、海未ちゃん!」

穂乃果「穂乃果がロミオで、海未ちゃんがジュリエットなんだからっ!」

と、高らかに宣言します。
何ですか、それは…意味が分かりません…
言っている本人はずいぶん大真面目なようでしたが…
 
84: (もんじゃ) 2022/03/21(月) 22:21:56.09 ID:y27fuD+3
私は穂乃果の勢いに気圧されながらも、

海未「い、いつまで待っていれば良いんですか?」

と、尋ねました。ちょっと声が高くなってしまったかもしれません。
すると、

穂乃果「分かんないっ!」

と、返されました。

海未「え、えぇ…」

そんな…それは困りますよ…

海未「ある程度具体的に言ってもらえないと…さすがに困ります…」

穂乃果「じゃあ、アメリカでやりたいことを全部終わらせてからっ!」

な、何年後ですか…、それはいったい…

海未「そ、それじゃあ、おばあちゃんになってしまいますよ…?」

なんて言葉を返したら、

穂乃果「それでもっ!」

穂乃果「私はっ、海未ちゃんがそばにいて欲しい!」

めちゃくちゃです、自分の願望しか言っていません。

しかもこれ、
よくよく考えると定職についてない夢追い人が恋人に言いそうなセリフナンバーワンじゃないですか…

それでも…

海未「はい、私でよければ…」

私が出す答えは最初から決まっていました。

海未「あなたのことを、いつまでも、待ち続けていますよ…」

海未「穂乃果…」
 
85: (もんじゃ) 2022/03/21(月) 22:24:40.57 ID:y27fuD+3
そして私たちは、眠りにつくまで2人で、色んな話をしました。

アメリカに留学したらどこに住むのか…
私が教員を志したのはなぜか…
アメリカではどんな勉強をするのか…
将来一人暮らしはするのか…

きっと知らず知らずのうちに話すことを避けていた、
漠然とした将来の夢です。
私たちが今後どんな変化をしていくのか、していきたいのかを話しました。

変化を嫌った私だったら、ちょっと前までなら踏み込めなかった話題です。

ずいぶんと長い間話していたような気がします。


ロマンチックなことを期待される方もいたでしょうか?

残念ながら、話しつかれたのか穂乃果は先に寝てしまいました…
全く、どうにも残念なロミオです…

海未「穂乃果・・」

私は穂乃果に軽く声をかけてみましたが…

穂乃果「ZzzZzz」

ダメですね、眠っています。ずいぶんと気持ちよさそうに…
何だかイラっとしてしまいます。

私がどれほどの覚悟で今日を迎えたと思っているのでしょうか…

腹いせのつもりで、私はそんな穂乃果の額に軽い口づけをしました。

今になって思うと、はしたないような気もします…
知らず知らずのうちに、私は浮かれていたのかもしれません。

幼馴染と離れ離れになってしまうことで初めて自覚した恋心、
そしてそれはお互いがお互いに思っていたことで、
結局二人は本心を伝え合って結ばれる。

海未「ふふっ」

そうですね、言葉にするとずいぶん…

海未「ベタな…ベタな、恋物語でしたね…。」
 
89: (もんじゃ) 2022/03/21(月) 22:51:01.33 ID:y27fuD+3
それではエピローグ的な最終エピソードを2つ、短いです。

(ちなみに次の話は、色々考えて穂乃果の一人称は意図的に「穂乃果」にしています。悪しからず。)
 
90: (もんじゃ) 2022/03/21(月) 22:52:53.38 ID:y27fuD+3
~翌日、園田家、海未部屋~

ZzzZzz

海未「穂乃果っ!穂乃果っ!」

眠い、眠い、すごくねむ~い…
穂乃果はずいぶんおねむです…

昨日は夜遅くまで海未ちゃんといっぱいお話して、
愛の告白までしたのです。

なのでぇ…

穂乃果「う~ん、もうちょっとだけぇ…」

もう少しだけ、眠らせてぇ…


穂乃果「あいたっ」

痛い痛い、誰かが穂乃果のこめかみをぶちました!

寝ぼけている穂乃果にこんなことするのは誰でしよう?

海未「いつまで寝てるのですかっ!」

海未ちゃんでした…

海未「早くおきなさい、朝ごはんは作ってありますから!」

そう言って、今度は穂乃果のお尻の辺りを叩きます。
乙女に対してあんまりです。

恨みを込めて海未ちゃんをにらみましたが、
涼しい顔で受け流します。

穂乃果「うぅ、海未ちゃんめぇ…」

海未ちゃんはやっぱり海未ちゃんなのです。
昨日はあんなに泣いてたくせに…
こうなったら、このことをことりちゃんに…

海未「ほ、の、か・・!」

((( ;゚Д゚)))
般若が見えた…

うぅ、海未ちゃんが怖いので辞めました・・
 
91: (もんじゃ) 2022/03/21(月) 22:56:05.15 ID:y27fuD+3
海未ちゃんは、そんな穂乃果を見て、
うんざりしたようにため息をつきます。

穂乃果「そんな反応することないじゃん…」

少し傷つきます。
傷ついた穂乃果はようやく起きました。

海未「仕方ないではないですか…」

そう言いながら、海未ちゃんは起きようとする穂乃果を無理矢理押し止め、
ベットの上に座らせます。そして、

海未「アメリカに行ったら私はいないのですから」

と、寂しそうに言います。

穂乃果「あはは…そうだね…」

海未ちゃんは穂乃果がアメリカに行くことを応援してくれるようです…

少しいやそうな表情でしたが…

さて、そんな海未ちゃんは穂乃果のとなりに座り、
ゴホンゴホンとわざとらしい咳払いをして…

海未「でも…」

と、そっと穂乃果の肩へともたれかかり、

海未「たまには帰ってきてくださいね…。」

と、どこか寂しそうにでも何だか甘えるように…

海未「私もさみしい…ですから…。」

と、言うのでした。


~完~
 
92: (もんじゃ) 2022/03/21(月) 22:58:02.34 ID:y27fuD+3
~おまけ~

穂乃果「あっ、なんかグループラインに写真がアップされてる・・」

海未「何か書いてあるのですか?」

穂乃果「うーん・・手書きの紙だねぇ・・えっと・・・」

穂乃果「『誓約書。わたくし絢瀬絵里は、一ヶ月ぐらいの間お酒を控えること、そして今後はお酒を飲んで破廉恥なことをしないことをここに誓います。もし破った場合は・・・』」

海未「『亜里沙の考えた罰を甘んじて受けること、より一層厳しい禁酒令を課されることを認めます・・』」

穂乃果「な、なんだろうね、これ?」

海未「さぁ・・?」

穂乃果「な、何だか怖いなぁ…」

海未「でも、気持ちは分かりますよ?」

穂乃果「えっ!?」

海未「例えばもし、穂乃果が何らかの不義理をした場合は…」

穂乃果「場合は…?」

海未「うふふっ…」

穂乃果「えっ!?」

海未「ふふっ…」

穂乃果「わ、笑ってないで…」

海未「うふふふっ…」

穂乃果「え~…」

穂乃果(これ、一番怖いやつじゃん…)


~こんどこそ、完~
 
93: (もんじゃ) 2022/03/21(月) 23:02:06.13 ID:y27fuD+3
これにて、
【ss】穂乃果「わりとベタな」海未「私たちのこ、ここ…こい物語」(同時上映「絢瀬絵里の禁酒令」)
は、終わりです。


こんな無駄に長い作品をお読みくださりありがとうございました。
読んでくださった皆様が少しでも楽しんでいただければ幸いです。

コメントもありがとうございます。大変励みになりました。


私、基本的にコメディばっかり(たまにハートフル?もの)書いてるせいか、こういった恋愛ものを書くのは難しかったです。
強引な展開もちょっと多かったかもしれません。反省点や後悔もかなり多いです…
あと、地の文で書くのも久々で書いててムズムズしました…

次は雰囲気を変えて、ちょっとHなコメディss書きたいと思います。

改めて、お読みくださりありがとうございました。
 

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1647616091/

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1647696976/

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