【SS】侑「さてと…今日も濃厚なレズ本を漁りますか……w」【ラブライブ!虹ヶ咲】

ゆう SS


6: (茸) 2023/01/05(木) 18:27:52.77 ID:LONIHola
侑「さてと…早速漁っちゃいますかぁ…wおほっwしずかす本にエマかり本しおぽむ本まで!!ここは宝庫かな?w買い占めますかっ?w買い占めちゃいますか?w」

侑「ふぅ…ちょっと興奮しちゃった…とりあえずここら一帯は全部買うかな、私絶倫だし(自慢)」

侑「店員さん!ここら一帯全部貰っても大丈夫ですか?」

店員「えっと、ここら全部……ですか?」

侑「はい!お願いします!」

店員「あの…金額、凄いことになりますけど……」

侑「はい大丈夫です!(最近貯金してたしな…)」

店員「分かりました。では25万になります。」

侑「……。」
 
7: (茸) 2023/01/05(木) 18:30:00.56 ID:LONIHola
侑「25万?」

店員「25万です。」

侑「……」

店員「……」

侑「…ちょっと待ってくださいね、ちょっと。」

侑「あーもしもし?うん!あのアキバにあるさ~そうそう、うんそこにクレカ持って来てくれる?うん!ありがとう!やっぱり親友だよ!」

侑「あ、すんませんwすぐにツレが来るんでwうすw」

店員(ウザイな…)
 
10: (茸) 2023/01/05(木) 18:40:24.16 ID:LONIHola
栞子「あのー、持ってきたんですけど、何かあったんですか?親にバレたら怒られるんで早くしたいんですけど」

侑「あー、アレだよアレ、同好会での必要経費と言うか。」

栞子「え、でも本ですよね?…」

侑「……後で一緒に見よ?意味がきっと分かるから」

栞子「はぁ……で、一体どういう本なんですか?」

侑「哲学…否、扉を開く本だね。大まかに言えば人類開拓と言っても過言じゃないよ。」

栞子「壮大ですね……とりあえず分かりました。払いますね、」

侑「あざっすw」

栞子「これで」ブラックカード

店員「はい(めちゃくちゃドヤ顔)」

栞子「フンッ」(キメ顔)

店員「ありがとうございましたー」

侑「流石栞子さんっすwすげーっすw」
 
12: (茸) 2023/01/05(木) 18:44:00.10 ID:LONIHola
栞子「どこで読むんですか?その大量の本…ってか持つの手伝いますよ?」

侑「や、私が持つよ。これぐらいは。」

侑「……ごめんやっぱり持って?」

栞子「…はい。」

侑「ごめんね?w」

栞子「いえ、…大丈夫です。」

侑「とりあえず私の家行こっか、今日はシオッティーの扉、開けちゃうよ?w」

栞子「(急に馴れ馴れしいな……)」

侑「ってか本重っ…」

栞子「そりゃ何百冊もありますから……」
 
17: (茸) 2023/01/05(木) 19:19:37.22 ID:LONIHola
侑宅

侑「ぁぁぁあ!!つがれだぁぁ!!シオッティー!水!」

栞子「えっあっえっ、どこにあるんですか??」

侑「ないならシオッティーのオシッコでいいよ。」

栞子「………」

侑「引かないでよーwwほら、早速本読むよ?」

栞子「は、はい!読みます!」

侑「栞子ちゃんはさー、何のカップリングが好き?」

栞子「あの、カップリング…というのはどういう意味ですか?」

栞子「あの……そもそもこれ何ですか?R18ってみえるんですけど…私達ダメじゃないですか?…」

侑「あー…カップリングからかぁ…こりゃレズレベル1だなぁ…。
年齢に関しては大丈夫✌だよ私達25と26だから。」

栞子「違いますけど?…とりあえずその、教えて貰えます?」

侑「とりあえず、任せなよ。虹ヶ咲のMUR大先輩たー私の事だから。」

栞子「バカにされてません?それ」
 
19: (茸) 2023/01/05(木) 19:23:16.45 ID:LONIHola
デーノゾエリッテノトーウミエリッテノハーセンソーシテテー
シオポムガミタイデス! アーナイネソリャ ジダイハユウポムガセイシタカラ

かれこれ1時間

栞子「完璧です。予備知識は完璧です。」

侑「ん、仕上がったね、#最高の自慰行為で呟けるぐらいには知識あるよ。例えるなら歩くニコニコ大百科だね。」

栞子「それは嬉しくないです。それより早く読みたいです!いっぱい!」

侑「おwいいねーんじゃ早速読みふけっちゃいますかw」

栞子「はい!ユメノトビラ開けます!」
 
22: (茸) 2023/01/05(木) 19:36:07.32 ID:LONIHola
かれこれ自慰して8時間

侑「いやー流石の私も疲れたね!疲れたよ…」

栞子「…はいっ!疲れました!もうイけません!多分お嫁にも行けませんっ!」

侑「はぁっ!ぁぁあ!後2冊っ!」

栞子「………あのー、これ多分同人誌じゃないですよ?」

侑「ファッ?!何で?!騙された?私騙された?!訴えようよ!栞子ちゃん家の力使って!それかしずくちゃんの家の力で!多分ヤクザでしょ!あれ!」

栞子「落ちついて下さい。そもそもお金払ったのは私ですし、違うのが紛れいるのは侑さんが一帯を買ったから、それに桜坂家はヤクザではありませんよ。」

侑「そっかー!納得納得wで、それなに?」

栞子「かなり古い……古文書?……とは少し違うような」
 
23: (茸) 2023/01/05(木) 19:41:26.33 ID:LONIHola
侑「へー、内容は?」

栞子「……よく分からないですね、日記帳?のような。」

侑「お!じゃあ今から解読しちゃう?」

栞子「いえ、先程両親からブチギレのLINEが止まらないので今日は帰ります。明日同好会の皆さんに頼みましょう、エマやしずくさんのような多方面に知識がある方なら分かるかもしれませんから。」

侑「おっそうだな、ってか親ブチギレてるんだwAB型が最下位だったからかな?w私がショパン今から引こうか?w」

栞子(ウッザ…)

栞子「それでは帰りますね。お疲れ様でした。」

侑「あ!ちょ待ち!これあげるよ!」

栞子「これは?…」

侑「ローター。まぁ絆の証……ってやつ?」

栞子「………!侑さん!ありがとうございましたっ!」

侑「ふん。いけよ、親が、怒ってんだろ?」

栞子「そうでした。帰りますね」
 
28: (たこやき) 2023/01/05(木) 21:37:12.74 ID:ZnVLYneE
翌日

侑「ふぁぁ!よく寝た!!」
時計12時

侑「マジでよく寝てんじゃん(ブチギレ)」

侑「とりあえず行くか~…学校付いたらシオッティーにイチャモンつけよw」

侑「おっすw」

歩夢「あ!侑ちゃん!も~なんで朝起きなかったの?体揺さぶっても起きなかったし…後、ああいう本はちゃんと隠した方がいいよ…?///」

侑「ごめんごめん!w(なんで平然と不法侵入してるんだろ…)」

愛「あ!ゆうゆ~!ちゃんと学校来たんだぁ!エライ!愛さんが褒めてあげよう!」

侑「ん、ママ。愛してるよ。」

歩夢「………🙂」

侑「💦💦」

ランジュ「あ!やっと来たのね?!遅かったじゃない!」

侑「うーん、昨日色々あってねぇ、その件で今から栞子ちゃんの髪飾り分捕りに行くんだけど」

菜々「侑さん、兎にも角にも遅刻は違反行為ですから、今から生徒会室に来てください。」

侑「のぞえり本とことうみ本。他にも良いの揃ってるよ?」

菜々「ではお昼にしましょうか♪遅刻なんてどうでもいいです!」
 
29: (たこやき) 2023/01/05(木) 21:44:02.56 ID:ZnVLYneE
同好会室

侑「それでさ~ダイヤちゃんがさ~~あーダイヤちゃんってのは黒澤じゃなくてー」

かすみ「みなさーん!!かすみんの到着ですよぉー?!」

しずく「遅くなってしまい申し訳ありません」

ミア「ごめん!先に食べてて良かったのに」

璃奈「りなちゃんボード、ごめんなさい」

栞子「あの…私が遅刻したせいなんです…申し訳ありません!」

侑「あ!シオッティー!髪飾り分捕ってやる!!!」

エマ「侑ちゃん?暴力はダメだよね?」

侑「そっすよねwマジでwほら、お前も謝れよ!はやく…エマさん怒ったら怖いんだよ…」

栞子「あっあっ、申し訳ないです…」

エマ「よろしい☺」

侑(絶対怒らせんとこ……)

果林「それで?栞子ちゃんはなんで遅刻したの?道に迷ったりした?」

彼方「お寝坊さんじゃないかなぁ?」

栞子「あー、いやそれがですね」

栞子「あるものの解読をしてまして一一一」
 
30: (たこやき) 2023/01/05(木) 21:55:26.56 ID:ZnVLYneE
エマ「へーそれがこの日記帳かぁ」

せつ菜「なんというか……うーん……読めなくはないですが…」

彼方「なんか読みにくいね」

かすみ「しず子ーこれ分かる?」

しずく「うーん……この書き方はやっぱり日記だね…でも内容は、ちょっと汚れすぎてて」

璃奈「あの、放課後までこれ。預かってていい?」

璃奈「なんとか汚れ、取ってみる」

ミア「さすが璃奈だね👏」(ドヤ顔)

栞子「あ、私も手伝いますよ!」

璃奈「大丈夫。汚れだけをとる機械がある」

栞子「すごいですね…そんなものが…」

璃奈「アンリミテッドルールブック(りなちゃんボードキメ顔)」

せつ菜「あ!璃奈さん!!!それは物語シリーズの斧乃木余接さんの!!!私の推しキャ(以下略)」

エマ「じゃあまた放課後に!」

歩夢「私も友達に詳しい子がいるから聞いてみるね?」

侑「みんなありがとう!私のジュエルだよ!!」

栞子(パクられた……)シュン
 
35: (たこやき) 2023/01/05(木) 22:48:48.95 ID:ZnVLYneE
放課後

璃奈「汚れ取れたよ。」

侑「お!!じゃあ早速!」

璃奈「やっぱり中身は日記だったみたい。」ペラ

6月15日
和子が母屋の扉に指を挟んで流血し、爪が黒くなって腫れる

6月16日
明美が発熱し嘔吐する 浩二が臭いと言い明美を殴る

6月18日
裏の畑に猪がでる 唐芋がいくつかくわれる

6月20日
和子が階段の手摺に目をぶつけ、病院へ行く

6月23日
明美の歯が腐る

6月29日
タエが玄関にて転び、上がり框に頭をぶつける

しずく「…………」

エマ「うわ……」

かすみ「なんというか……気持ち悪いですね、これ」

歩夢「……次のページもある…」

7月5日
洋子がだれやみの酒をこぼし、浩二に耳を蹴られる

7月12日
ぬか床に蛆が涌く

7月27日
たみ子が芋がゆの入った器を膝に落し火傷する

8月4日
目が合った

8月7日
先日の夕刻から洋子に狗が懸かり、夜毎に気狂いのごとく哮る

8月11日
信雄がフケジロに遭ったと泣きだす

8月14日
明美が脛振にあい、左目を潰される

8月16日
嘘をつかれる
 
37: (たこやき) 2023/01/05(木) 22:52:43.08 ID:ZnVLYneE
ミア「これジャパニーズホラー?ジャパニーズホラー?」

栞子「………」

侑「え、私こんなの持ち歩いてたの?お祓い行こ……」

果林「ねぇぇぇ!!私のこういうの苦手なんだけど!!さいっっあく!!」

エマ「ん~かわいそうなかりんちゃん~♡♡おいで~~♡♡」

彼方「ねぇこのフケジロってなんなんだぜ?」

せつ菜「さぁ……!!分かりません!!!!」

彼方「分からないなら大声出さないで欲しいぜ……」

ランジュ「誰か分からないの?これ」

愛「うーん……愛さんのコミュニティでわかる人がいないか聞いてみようか?」

璃奈「さすが」

愛「じゃあ、ちょっと写真撮らせてもらうね?」
 
40: (たこやき) 2023/01/05(木) 23:01:42.81 ID:ZnVLYneE
愛「んあ?なんだこれ、写真?」

その写真は家族写真の様なものでした。
ただ不可解な点としてふすまから少女が顔を覗かしていたり、目が片方潰れていたりしたのです。

歩夢「………え」

かすみ「え、なんなんですかこれ。」

エマ「侑ちゃん。これどこで手に入れたの?」

侑「いや……メロブで。」

しずく(絶対嘘だ)

彼方(流石に嘘だ)

璃奈(嘘、下手。)

エマ「嘘つかないで?」

侑「いや!!マジなんです!!ホントなの!!ねぇ?シオッティー!!」

栞子「ええ、事実です…実際に私もその場にいましたから…気づいたのは帰宅後ですが。」

しずく(マジなんだ…)

彼方(マジかよ…)

璃奈(ほんとだった…)
 
43: (たこやき) 2023/01/05(木) 23:06:18.33 ID:ZnVLYneE
せつ菜「うーーんよく分かりませんが、メロブにあったなら大丈夫じゃないですか?だってメロブですよ?メロブ」

侑「ま、そっかwメロブだしね、メロブ。」

愛「……なんというかさ。これ本当に大丈夫なやつ?」

ミア「同感だね。そこらの心霊写真と一緒には見えないよ。」

歩夢「……あのさ。とりあえずこれは置いといて、今日は帰らない?愛さんのコミュニティの人を待と?」

栞子「……はい。とりあえず私の方も何かないか調べてみます。」

エマ「私も知り合いに掛け合ってみるね、、いい?みんな。絶対にこれ以上1人で踏み込んじゃダメだよ?絶対にだよ?」

しずく「かすみさん?大丈夫?ほら、一緒に帰ろ?」

かすみ「うん…」
 
44: (もんじゃ) 2023/01/05(木) 23:09:17.39 ID:UnjsXjhT
日記のキャラの名前は元ネタある?
 
56: (もんじゃ) 2023/01/06(金) 00:50:58.75 ID:BVuA7u5h
>>44
これ↓ ネタバレ注意だけど
tp://scp-jp.wikidot.com/scp-536-jp
 
58: (もんじゃ) 2023/01/06(金) 02:36:17.37 ID:MfvXCstF
>>56
あざす
SS完結後に確認します
 
45: (たこやき) 2023/01/05(木) 23:11:41.81 ID:ZnVLYneE
………

侑「エマさんはああいうけどさ、やっぱり気になるよねぇ、うーん……あれ?まだページあるじゃん」ペラッ

侑「…………………これ、やばくね?」

その後は急いで部室を出てとにかく学生寮に向かいました。
いち早く知らせなきゃいけない気がしたから。
いち早く。いち早く。知らせなきゃ。
そう。知らせないといけない。エマさん達に。


エマ「?あれ、侑ちゃん、どうかした?」

侑「あの!!えっと!!あの……え……あれ?

私。何しに来たんだっけ。」

果林「もーその歳で認知症?」

彼方「あるよね~すぐ忘れちゃうやつ~」

エマ「うーん、とりあえずお菓子食べる?」

侑「是非!」

何をしに来たかは忘れたけど。まぁいっか。どうせ忘れるぐらいの用事だし…

あれ、じゃあなんで私は走ったんだろう。なんで学生寮まで会いに来たんだろう…あれ?
 
49: (たこやき) 2023/01/05(木) 23:23:12.81 ID:ZnVLYneE
翌日
侑「ふぁぁ!よく寝れねーよ……寝れたらおかしいわ…」
時計12時

侑「ん、怪奇現象来たわ」

侑「もしもーし、もしもーし!あ、愛さん?うん。そうそう!昨日のやつさ~いや怪奇現象起きてさ!マジで!いや~起きたら12時で~………え、解読できたの?マジかよ…すぐ向かうね!」

学校

侑「おっすw」

歩夢「もー、2日連続遅刻だよ?ちゃんと朝ごはんは食べてきた?卵焼きおいしかった?」

侑「うん!おいしかったよ、ありがとう歩夢。(コイツ勝手に料理までしてたのか…)」

菜々「あの…昨日の件なんですが…」

ランジュ「栞子と愛の活躍である程度絞り込めたのよね!」

愛「私っていうよりコミュニティの子達だけどね、とりあえず放課後に集まろっか」

侑「じゃ、かすみちゃんにちょっかいかけに行くかな~」
 
51: (たこやき) 2023/01/05(木) 23:35:23.66 ID:ZnVLYneE
侑「かすみちゃーーん……がいない。」

しずく「はい…なんか体調崩しちゃったみたいで…」

侑「そっかぁ…」

璃奈「……(心配。)」

ミア「……(璃奈可愛いな)」

栞子「…やはり」


放課後


エマ「日記の事、何か分かったって聞いたけど…」

愛「うん!…って言っても何かいい事が判明した訳じゃないから」

彼方「進歩は進歩だよ~分からないままじゃ何もできないし、」

しずく「そうですよ。とにかく見てみましょう!」

栞子「あ、あの。!その事なんですけど。」

果林「?」

栞子「えっと、いや確信はないんですよ。ないんですけどね?
多分これかなり良くない物なんです。だから、あの。」

エマ「そういうのが本当に苦手な人は踏み込まない方が良いって事だよね?」

栞子「はい…」
 
52: (たこやき) 2023/01/05(木) 23:39:08.70 ID:ZnVLYneE
彼方「……彼方ちゃんは残るぜ~?!3年生だし」

ミア「ぼ、ボクだって!!」

果林「1人だけ蚊帳の外……は余計に怖いしね。」

エマ「私は勿論。」

しずく「…私も残ります。」

ランジュ「無問題ラ!」

璃奈「残る。」

愛「もっちー私も!」

歩夢「侑ちゃんと一緒だよ?」

侑「ぽまえら……!!」

侑「よしっ!!んじゃ解読してやろう!!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会!!いくぜ!!」
 
53: (たこやき) 2023/01/05(木) 23:43:50.35 ID:ZnVLYneE
せつ菜「……っ!あの!!」

侑「あっ、そういやせつ菜ちゃん…ずっと黙ってるから気づかなかった」

せつ菜「すみません、私は抜けても構いませんか?ずっと、ずっと、ずっと気持ち悪いんです」

せつ菜「ずっとなんです。ずっと」

せつ菜「原因が分からないモヤモヤが私を侵食していくんです。意味のわからない単語や身に覚えの無い記憶。臭い匂いや気持ち悪い感触が込み上げてきて……すみません、うぷッ」

エマ「せつ菜ちゃん?!大丈夫?!」

せつ菜「っっは!嫌なんです!もう!!見たくないんです!!気持ち悪いですよ。。」

栞子「あっあっ」
 
55: (たこやき) 2023/01/05(木) 23:47:20.41 ID:ZnVLYneE
エマ「とりあえず私は今からせつ菜ちゃん落ち着かせて、意味があるかは分からないけど、とりあえず神社に行ってみるよ」

果林「私も!私行くわ!」

栞子「………」

璃奈「…責任感じなくていい。誰も悪くないから。」

彼方「そうだぜ~?きっと大丈夫だって」

しずく「……一緒でした。せつ菜先輩の今の反応、かすみさんと。」

歩夢「それって…」

しずく「はい。かすみさんもでした、”身に覚えがない記憶や匂いが込み上げてくる”と」

愛「……どうしよっか、これ。」
 
74: (茸) 2023/01/08(日) 16:39:25.07 ID:KuaEZgmo
しずく「………とりあえず私はかすみさんの家に行ってきます、もし、かすみさんが動ける状態ならエマさん達に連絡を取って、一緒にお祓いに向かいます…。」

璃奈「私も。かすみちゃんの家、一緒に行く。」

愛「じゃあ、私達はとりあえず解読しよっか。」

歩夢「……大丈夫なの?こんな状態だし。」

愛「分からない…けど、やるっきゃないでしょ…」

栞子「……」

栞子「あの、ランジュにお願いがあるのですが。」

ランジュ「何?もしかしてランジュにしかできない事?」

栞子「いや、そんな事はないです。」

ランジュ「…そう」シュン
 
76: (茸) 2023/01/08(日) 17:05:11.48 ID:gdx8/OFF
栞子「ですが、ランジュが一番適任でして」

ランジュ「やるわ!!!」

栞子「助かります。と、言うのも実は先日私の方でこの本がどうやって売りに出されたのか、何故あのような場所(メロブ)にあったのか、等を調べるためにお店側の名簿や記録を辿ることで、この日記を記した人物がいた場所を特定するに至りました。

もっとも何故あのような場所にあったのか等は分からなかったんですがね。もっと不思議な事を言うと記録には幾らで売却されたのか、等も記されておらず実際担当の職員数名に日記のことを聞いても”記憶にない”の一点張りでしたから。」

栞子「ただ、場所自体は絞り込めましたから。今からその場所に赴いて、この日記について聞きこみをして欲しいのです。」

ランジュ「任せなさい!ランジュがバッチリ聞いてきてあげるわ!」

彼方「お!それなら彼方ちゃんも行くぜ~!3年生だからね!」

ミア「…2人が心配だしボクも行くよ。3年生だからね」ドヤッ
 
79: (たこやき) 2023/01/08(日) 20:58:10.68 ID:p5NC7lw5
ランジュ「で、その場所って言うのは?」

栞子「宮崎県児湯郡にある米良村のです。その中に居住していた穏坊家の成員が書いたものだと。」

ランジュ「じゃあ日記について、ついでに穏坊家について調べればいいのよね?……移動手段は?」

栞子「私が用意するので安心してください」

彼方(良かったぜ…)

侑「じゃあ、私達はその間に日記を解読ってことで、おけ?いいよね?決定で!」

栞子「早速ですが、もう車の用意はできているので、早速向かって貰っても大丈夫でしょうか?」

ランジュ「無問題ラ!」





彼方「じゃあ、何か分かり次第栞子ちゃんに連絡するよ~」

しずく「私達もかすみさんに何かあれば栞子さんに連絡しますね」

侑(私じゃないんだ…)
 
80: (たこやき) 2023/01/08(日) 21:11:40.73 ID:p5NC7lw5
……

愛「さてと、じゃあ色々分かったことを説明していくね。

まず、7月5日にある”だれやみ”

これは宮崎県の小さな村なんかに伝わる民俗語彙「ダリヤメ」の転訛じゃかいかなって教えて貰ったんだ。「晩酌」や「焼酎」を意味する言葉として今でも残ってて、大分県にも同じ語彙が残ってるみたい。

んで次、8月11日の”フケジロ”
このフケジロってのは「外精霊」を指してるんじゃない?って、外精霊ってのは九州各地で無縁仏を意味する民俗語彙らしいんだけど…特に宮崎県全域では盆にやって来る餓鬼の霊を指してこのように表現するらしいよ。
だからさっきの栞子ちゃんの話だとこの日記の”フケジロ”は餓鬼だね。」

栞子「では…この信雄という方は餓鬼に遭遇した、という事でしょうか?」

愛「恐らくね、まぁ正直な話餓鬼についてなんて全く分からないんだけどね、この先餓鬼については書かれてないし……まぁいいや

じゃあ次ね、8月14日、”脛振”
これは九州地方特に長崎とか福岡においては遊郭を冷やかしつつ夜道を歩き回る男を指して「スネフリ」と表現してたんだって、ただ成城大学民俗学研究所が出版した『山村採集手帖』によるとね、児湯郡にある小さな村ではは夜遅くに村の男性が密かに女性のもとを訪れる、所謂「夜這い」を表す民俗語彙としてこの語が用いられてたみたいなんだ。」

歩夢「その小さな村のって…」

愛「…うん、米良村だろうね。」
 
82: (たこやき) 2023/01/08(日) 21:20:42.08 ID:p5NC7lw5
愛「だからね、多分明美って子は誰かに夜這いされた挙句左目を潰されたんだと思う。」

栞子「……」

愛「………今回分かったのはこれぐらい。」

歩夢「なんて言うか…家族の関係自体、あまり良くなかったのかな?…」

侑「多分だけど、この夜這いをしたのとか、嘘をついたもの。それって”家族間”の話じゃないと思うんだ。
だってね、今まで家族内の問題だと、しっかり名前って言う主語があるの。だから、この主語ない日記に関してはその餓鬼がやったんじゃないかな?」

愛「でも、それだと”フケジロ”だけ書いてあるのは違和感じゃない?」

侑「……」

愛「ゆうゆの家族間の話じゃないって推測は正しいと思うけど、餓鬼がやった。って言うのはちょっと違うのかも。」

侑(もう二度と喋らねぇ…)
 
83: (たこやき) 2023/01/08(日) 21:29:42.90 ID:p5NC7lw5
栞子「うーん…早速行き詰まりましたね。どうしましょう…」

カーミカザリーツヨクームスビナオシテー
栞子「はい、三船です。………あ、エマさんですか?…はい。………はぁ、分かりました。ではそちらはお任せしますね。」

侑「怒ってた?エマさん怒ってた?」

栞子「いえ…せつ菜さんですが、どうやら眠ってしまってから起きないそうで、このままでは神社にも迎えないので親御さんに連絡して、このまま学生寮に連れて帰るみたいです。」

歩夢「そっか…無事ならいいけど。」

愛「せっつー…大丈夫かなぁ、」

栞子「…とりあえず今日は皆さん泊まり込みで調べましょう!今の時間が15時半、恐らく17時にはランジュ達が向こうに到着するので、それまでは出来ることをしましょう。」

侑「流石に早くない?法的にさ、大丈夫?」

栞子「はい!お金があればなんとかなりました。」

侑(脱税してそ~…)
 
84: (たこやき) 2023/01/08(日) 21:33:39.01 ID:p5NC7lw5
かすみ宅

かすみ母「ごめんねぇ?この子ずっとこんな感じで」

しずく「いえいえ、むしろ急に押しかけてこちらこそ申し訳ありません。」

璃奈「ぺこり。」

かすみ母「もし良かったら今日は泊まって行って?晩御飯も作っちゃうから♪」

しずく「いいんですか?!ありがとうございます!」

璃奈「ありがとうございます。」

かすみ母「ふふっ、張り切っちゃうわよ~~ それじゃ、ごゆっくり」


しずく「……かすみさん、大丈夫かな。」

璃奈「……心配。」
 
91: (たこやき) 2023/01/09(月) 20:43:20.95 ID:dQrzT0F/
………

ランジュ「やっっっと着いたわね!!」

彼方「急に大声出すなよ(ガチギレ)」

ランジュ「ラ……」

ミア「日も暮れかけてるし、早く終わらせよう。報告もしなきゃなんだろう?」

ランジュ「ランジュに任せなさい!!」


ランジュ「ここにいる人で~~!!ランジュの事嫌いな人~~!!いるかしら~~!!」

彼方「おいアイツ止めろ!ってかなんで栞子ちゃんはアイツ適任だと思ったんだぜ?!なぁ!!」

ミア「ランジュ!COME BACK!!引かれてるから!ヤバい集団来たって思われてるから!」
 
94: (たこやき) 2023/01/10(火) 00:54:15.05 ID:XixmSYWU
彼方「まぁ…うん。とりあえず彼方ちゃんに任せて欲しいぜ…」

彼方「栞子ちゃん達からのメールには日記のフケジロが餓鬼やらなんとか…って言ってたな…とりあえず聞いてみよ~」

ランジュ「私は何をすればいいのかしら?!」

彼方「黙ってて欲しいぜ。」

ランジュ「ラ……」

彼方「あの~この日記についてなんですけど~」

村人「………分かりません。」

彼方「じゃあ、この穏坊家に関しては何かご存知ありませんか?」

村人「…………分かりません。」

村の方は少しの間を溜めて”分かりません”と答えました。
そんなはずが無いのに。この村にはまだ空き家として穏坊家が残っているんだから。知らないはずがない。それなのに分からない。の一点張り、どうしても気がかりだった。
いやさ、日記を知らないのはまだ分かるけど、あの家族知らないことはないでしょ。まるで、何かバレたくないことがあるみたいだと思いました。
 
97: (たこやき) 2023/01/11(水) 00:41:39.37 ID:HRLS8icT
…………

オッヒルヤスミニー レンシュウシヨウカナー

栞子「はい三船です……彼方さん、はい、少し待ってくださいね。」

栞子「皆さん、彼方さん達から連絡です。」

侑「お!やっとか~いやぁ!疲れてたとこなんだよね」

愛「やwゆうゆはなんかウロチョロしてただけじゃんw」

歩夢「可愛かったね」

栞子「それじゃスピーカーにしますね」

彼方「やっほ~彼方ちゃんだぜ~そこには誰がいるの?」

栞子「私と侑さんと歩夢さんと愛さんです。しずくさんと璃奈そんはかすみさんのお家で宿泊するそうで、エマさんと果林さんとせつ菜さんは学生寮に帰ってきています。」

彼方「そっか~……じゃあさ、今からで悪いんだけど。エマちゃん達呼んでくれる?」

愛「おっけー!ちょまち~」

侑「丁寧にね、エマさん怒ったら怖いから」
 
99: (たこやき) 2023/01/11(水) 00:48:13.10 ID:HRLS8icT
……………

エマ「ってことで、呼ばれてきたけど何か進展あった?」

愛「いや、カナちゃんが呼んでって言うからさ~」

侑「うっすw」

果林「あ、せつ菜なら大丈夫よ?今は爆睡してるから」

彼方「こっちもミアちゃんとランジュちゃんが爆睡したおかげでこうやって彼方ちゃんが報告しなきゃだよ~」

彼方「……いや、2人を呼んだのはね、報告もそうなんだけど、多分さ、これあんまり踏み込んでいいものじゃなかったんだよ。

何人にも聞きこみをしたよ、やり方や聞き方を変えて。それでね、最後に纏めた時にさ、あ、これ危険なやつだって。なんていうのかな。禁忌とかそういう類のもので。」

彼方「とにかくさ、なるべく皆に聞いて欲しいんだよ。関わったからには、あの村の事。」
 
100: (たこやき) 2023/01/11(水) 00:58:11.92 ID:HRLS8icT
彼方「あの村にはさ、餓鬼に纏わる信仰が色濃く残ってるみたいなんだ。いつまでも外で遊んで家に帰ろうとしない子供に親は「 餓鬼精霊が来るぞ」って脅し文句をつかってたし。畑の作物などが荒らされると「ガキサンが入った」って言うの。嘗て飢饉や凶作が多く発生した地域にこんな感じの伝承が多く残ることが珍しくないみたいだから、その事自体は不思議には思わなかったんだけどね。

でもさ。この村には、他ではあんまり見聞きしたことの無い風習があったんだよ。その地域に住んでいる人々は、餓鬼に対して施しをしなきゃなんだって。

そもそもさ、餓鬼にも様々な解釈があるみたいでさ、それが餓鬼は3種類に大別出来るんだって。残飯などを食べる者、何も食べられない者、そして人の膿や涙を食べる……というよりも、それしか食べることが許されていない者、って分類。この村では、餓鬼と言えば専ら一番最後に書いた者の事を指すみたいなんだ。
じゃあ、それに対して、一部の村民はどのように施しを与えるのか。

餓鬼が啜る為の膿や涙を、色々な方法で調達しなければならないんだって。

勿論、今の時代にも残っている風習ではないよ?それこそ飢饉とかが発生して生活もままならなかった昔に、口減らしも兼ねて行われたみたいで。実際、私たちが見た感じ村は平和で穏やかで、そんな事が行われてる形跡は全くなかったよ。でもね。

あの日記の内容とか、あの家の事を聞いた時の村人、特に年老いた人の反応はさ、違和感しかなかったんだよ。だからかな、日が完全に暮れてからは聞きこみよりも、そんな違和感から来る恐怖が大きすぎてね。…………うん。これで終わり。彼方ちゃん達、明日には着くと思うから。後は任せたよ?………じゃ、おやすみ~」
 
105: (たこやき) 2023/01/13(金) 00:21:59.66 ID:muyXfL39
………

栞子「……なんというか、ようやく分かりましたね。」

愛「…うん。この日記の意味そういう事だったんだね。」

栞子「まず1つ目の分からなかった点、日記の主語がなかったものは餓鬼がやっていた、しかし何故かフケジロには主語があった。
これに関しては餓鬼とフケジロは違う存在だから…でしょう。
というのもですね、このフケジロを供養しないと餓鬼になると一説には言われているみたいなんです。

じゃあ、嘘ってなんの事なんでしょうね。」

愛「もしかして…」

エマ「……多分そういう事だよね。村人の方達が分からないって一貫した事、恐らく穏坊家に対して良い印象がなかった、もしくは後ろめたい何かがあった。
じゃあ、その場合村人は被害者、もしくは加害者になるけど、まぁ加害者って考えるのが無難だね。
そして日記の内容、これさ膿や吐瀉物、涙が出るような不幸を記録してるんだよ。そう、多分供養しようとしたんじゃないかな?

でもね、嘘をつかれたんだよ、日記の最後にそう書いてあるように、餓鬼に?……違う多分”村”に。
きっとさ、この家族は生贄みたいなものなんだよ。」
 
106: (たこやき) 2023/01/13(金) 00:25:28.48 ID:muyXfL39
エマ「村人達は嘘の供養方法を教え、餓鬼の生贄した。
多分だけどこういう事なんでしょ、だから彼方ちゃんは私達に見て欲しかったんじゃない?関わったからには。」

果林「……お祓いでも行く?」

侑「そっすねw」

愛(危機感ないな…)

栞子「なんというか……はい。悲しい話ですね」

歩夢「まぁそれ以上に不気味だけどね、」

エマ「とりあえず今日は皆泊まってよ。明日彼方ちゃん達が帰ってきたら皆でお祓いにでも行こ?」

侑「もちっすw任せてくださいw」
 
108: (たこやき) 2023/01/13(金) 01:03:04.87 ID:muyXfL39
かすみ宅

かすみ「うぅん……」

しずく「!!!かすみさん!」

璃奈「!」

かすみ「あれ?しず子にりなこ?何してるのさ」

しずく「心配だからお見舞いですっ!!」

璃奈「もう大丈夫?」

かすみ「うん!寝起きも可愛いかすみんです!♡」

しずく「も~!」

かすみ「って、もう21時じゃん!2人とも泊まっていくの?」

しずく「はい、私も璃奈さんももうご飯もお風呂も入りました!」

かすみ「なんか満喫してるし~!」

かすみ「とりあえずなんかする?」

しずく「オフィーリアの話とか?」

かすみ「それ気になる?…」

璃奈「じゃあ、はんぺん」

かすみ「動物ばっかり!!」

しずく「じゃあかすみさん何かしてくださいよ」

かすみ「うーーん、じゃあかすみんの故郷の話……とか?」

璃奈「気になる」

かすみ「あんまり可愛くないからしたくないけど…仕方ないからしてあげる!」
 
109: (たこやき) 2023/01/13(金) 01:09:58.49 ID:muyXfL39
………

自分の家の中の光景。
2人が思い出せる限り鮮明なものを、思い浮かべてみて?
今2人が住んでいる家でも、いわゆる実家でも構わないから。

恐らく殆どの人が昼間かもしくは夕方あたりの、たとえ夜だったとしても煌煌とした電気の点いた、明るい光景を想像した事と思うの。

家って言うのは特別な思い出は残らなくとも日常的に目にし、記憶に残っていく場所。2人が今までに過ごしてきた生活の中で、記憶として占める割合の最も多い場面が思い出されることが一般的でしょ?
………かすみんの場合、それはいつも真っ暗なの。
自分の家と聞いて想像するかすみんの記憶は、電気も点かず、昼であっても何処か薄暗い。
それがかすみんの家であり、かすみん……私が日常的に目にしてきた風景だったの。

それは、四畳程度の和室の中での記憶。
夕方ぐらいかな。薄っぺらい布団だけが敷かれた、暗く〇風景な部屋。電気は点いてなくて、障子の向こうから僅かに漏れ出る赤い太陽光だけが部屋の中を照らしています。私はそこで、ただ座ってるの。
何の音も無く。ただ私は、薄暗い和室に、ぽつんと座っている。

家の中の光景と聞いて私が思い出すのは、このような場面。季節はいつなのか、私が何歳ぐらいの頃のことなのか、それらは判然としないのですが、何故かそんな場面だけが私の中に焼き付いて、残っているの。
いや、そんな場面だけ、というのは、少し違うかな。それだけではないの。
 
111: (たこやき) 2023/01/13(金) 01:31:04.91 ID:muyXfL39
その薄暗く、狭苦しい和室に、女の子が一人、寝かされているの。
私が和室に、恐らく正座で座っているんだけど、その膝の先、拳二つ分くらいの間を空けて、女の子の顔の右目側が手前に見えるようなかたちで、薄っぺらな布団が敷かれ、その子が横になっていね。
夕焼けが漏れ出た障子がその女の子を隔てた向こう側にあり、逆光のようになっているから顔は分からないんだけどね。そして。
その子が一体誰なのかを、私は全く思い出すことが出来ないの。

ただそういった場面だけが自分の記憶の中に残っていて、それが自分の家であること、敷かれた布団の中に女の子が寝かされていることは覚えているのに、それがどんな人で、どんな声をしているといった詳細は、思い出そうにもどこかで突っかかったように、記憶が出てこなくなるの。

そもそもその記憶には、声とかの音の情報が欠落しててさ、
それこそ一枚の写真のように、場面の情報だけがあって、その前後のあらゆる情報が抜け落ちてるの。簡単に言えば、そのような一場面としての記憶だけが、「自分の家に関する記憶」として私の中に居座っているような、そんな状態なの。

思い出すたび、不思議な気分になるの。
私は何をしていたんだろう。
何を話しただろう。
朧気ながら、何かを話したような記憶はある、ただ、どうしても思い出せない。
 
112: (たこやき) 2023/01/13(金) 01:34:14.30 ID:muyXfL39
しかし不思議と、それに対して、悲しいとか寂しいとか、或いは郷愁のような、そういった感情はあまり湧いて来ないんだ。
強いて言うなら、それは恐怖。
恐怖というのが、一番近いかな。私の中でその思い出は、理由もわからないんだけど、おそろしい記憶として、いつまでもこびりついているの。
こわい。
それは、とてもこわい記憶。とても、いやな記憶なのです。
そんな、「いやだった」という感触のようなものだけが、私の中にいつまでも残ってる。

私の故郷は、宮崎県の山あいの、小さな村の中にあるんだ。
煤けたような色合いをした木造の平屋で、瓦葺きの屋根の上には所々に大きな石が乗せられてるようなボロ屋。
これは私の家に限らず、周りに在る幾つかの家でも同じようなことが行われていたの。
雨風に耐え切れず落ちてしまった屋根瓦の代わりに、手ごろな大きさの石を乗せて対処をするんだって。本当は応急処置的な意味合いが強かったんだろうけど、ここらではわざわざ屋根を施工し直すような家の方が珍しいと言って良いと思う。

勿論、長い目で見たらそんなことをしている方が不便な事は多かったと思う。現に私の家でも屋根は石を置いているところから傷み、天井には人の頭ほどの大きさの黒ずんだ点が幾つも出来ていたはず。雨漏りによって、木でできた天井は、そこの部分からじゅくじゅくと腐っていくの。
 
113: (たこやき) 2023/01/13(金) 01:38:15.31 ID:muyXfL39
だから私の家の中は、いつも湿っていたの。じめじめとした空気がいつでも充満して、息苦しいような感じがする。日本家屋なんだから。本来は吸放湿性もそれなりに有る筈なのんだけどね、服がなんとなく肌に張り付いて、寝転ぶと畳や垢などの粘ついた感触がまとわりつくような、じっとりとした湿気をいつでも感じているの。

多分、湿気を調節するとか、空気を入れ替えるとか、家が家として持っているそうした機能が、この家にはもう失われていたんだと思う。例えるなら、死んでしまった人が代謝も何もせず腐っていくような感じ…みたいな。
恐らくもう、家として死んでるの。暗くて、湿っていて、臭い。和室の、畳の、藺草の香りなんてものはとうに失われている。土や木の死臭と、それから何とも言えない人間の生活臭が籠って、どろどろと発酵している。

玄関の前に立ってるの。扉は引き戸になっていて、木枠の中にもやもやとした擦り硝子が嵌め込まれている。取手、というよりも指を掛けられる程度の凹みが扉の右側に付いていて、それを左方向に引く。がらがらと気持ちよく開くことはまずなくて、どこかで引っかかるような感触がするから力を込めて半ば無理矢理に開かなきゃダメなの。

扉を開けて家の中に入ると、そこは狭い玄関。至る所に蜘蛛の巣が張られていて、砂や綿埃が隅の方に溜まってる。上がり框の角の部分が一か所だけ削れたようにへこんでいて、煤けた茶色の色あいの中でその部分だけが薄黒く変色している。

靴箱とかも無いから、靴がいつでもぐちゃぐちゃに置かれてる。
玄関に入って左の隅には乾ききった泥がこびり付いた黒い長靴が並べられているんだけど、使われているのを見たことは一度もなかった。
 
129: (茸) 2023/01/15(日) 15:54:30.50 ID:CtpHPCDc
狭くて黒い穴の中から、思わずくらくらとしてしまうような臭気がふき出して、そこら一帯に充満してるの。換気のための小さな窓は開いているんだけど、そんなものでは気休めにもならなくて。
ものを食べて飲んで、味や栄養といった良いところだけを吸収して、残った搾り滓を排泄してるから、それがどろどろとした暗い穴の中に堆積して発酵して、そしてまた堆積する。
そんなもの、おそろしくて仕方なかったの。

昔おじいちゃんが聞かせてくれたお話なんだけどね。
この世界に餓鬼として生まれてしまった者の中には、どんなに 飢かつ えていても糞便しか食することの出来ない餓鬼がいるらしいの。飢餓と苦しみに喘ぎ、臭い臭いと泣き喚きながら、蛆の蠢く糞を咀嚼し、小便や下痢の混じったそれらをぐちゃぐちゃと啜る。だからお不浄とは、餓鬼の 禰かたしろ でもあるんだと、皺の多い顔を悲しそうに歪めて、話してくれた。
もし、あの穴の中に、そんな餓鬼が居たら。暗い暗い、澱みきった穴の底で、骨と皮だけになって腹が不自然に膨れた者たちが、涙を流して悶え苦しんでいたら。そう思うとあまりにもこわくて、おそろしくて仕方なかったの。
だから幼い私が便を垂れるときは、いつも目を瞑っていたことを覚えてる。
ただ、隠して、自分の心のそとに追いやる。おそろしいことに対してあの頃の私にできた対処法は、それだけしか無かったから。
 
130: (茸) 2023/01/15(日) 15:57:43.26 ID:CtpHPCDc
そんなお不浄、そして台所に繋がる扉の向かい側にも、先程の廊下を隔ててひとつの扉。つまり玄関から廊下を見ると両側の壁に扉がひとつずつ、向かい合わせて設置されているようなかたちだね。
左側の扉は台所だったけど、右側の扉は、仏間に繋がってる。
扉を開けると、真正面に貧相な仏壇が見えるの。そして仏間に入って右側の壁には襖があるんだけど、そこを開けた事はないね。
あまり仏間には入りたくなかったから。

仏間には、いつもおばあちゃんが居た。祖母はいつも、ぼろぼろの 裂織ふるぎぬ を着て、この辺りでは 敷布しっご と呼ばれる綿無しの座布団を仏前に敷いて、昼も夜もそこに背中を丸めて座ってた。
時折、祖母は思い出したかのように歌を歌うんだ。痰の絡んだがらがらの声で、何を歌っているのかは殆ど聞き取れないのですが、恐らくは何かの童謡だと思う。調子も外れていて、正直聞くに堪えないものだったけどね。

おばあちゃんは毎日毎日、そうやってでたらめに歌を歌っては、一晩中そこで泣き明かすの。
とうに肌も髪も脂など無く、かさかさに乾いているのに、涙は涸れないのかな。
とうに声も舌も潰されているのに、おばあちゃんはまるで駄々をこねる子供のように、おお、おお、と泣き喚いてね。

何だか、その声を聞いているとこちらも悲しくなってくるから、いつも仏間の扉の前を通るときは速足で歩くの。扉一枚を隔てても、まぁその泣き声や叫び声は、こっちに聞こえてくるけどね。
 
131: (茸) 2023/01/15(日) 16:00:13.16 ID:CtpHPCDc
そして、それら台所と仏間に繋がる二つの扉を通り過ぎた先。廊下の突き当りには、四枚の薄汚れた襖が立ってる。二枚ずつの襖が、真ん中にある太い柱で仕切られているようなかたちで。これらは全て居間に繋がっており、この居間が私の家の中ではいちばん広い場所になるの。

ただ、広いと言ってもたかが知れててね、壁には幾つもの茶箪笥が並んでいたり、長持が積み上げられていたりするから、むしろ狭苦しいような圧迫感さえ覚えるぐらい。
あの長持には一体何が入っているのか、幼い私は凄く気になったの、幼子から見たら、木製の重く大きな長持は、それだけで興味を引くものだったから。何回かパパに聞いた事があるんだけど、結局教えてくれることはなかったな。あれの中を見ようとすると、何処から見ていたものかパパが血相を変えて飛んできて、私を殴って叱りつけるの。
何故か、いつもあと少しの所で、気付かれちゃうの。

居間にある家具は、それらの箪笥と長持と、あとは部屋の中央あたりに置かれた炬燵だけ。炬燵は季節を問わず、そのまま出されてる、炬燵布団も、ずっとそのまま。もしかしたら何かの刺繍が施されていたりしているのかもしれないけど、今は色も抜けて手垢や汚れが染み付いて、良く分からない肌色と黄土色のまだら模様になってるな。
 
132: (茸) 2023/01/15(日) 16:08:07.16 ID:CtpHPCDc
人間の脂と、吐瀉物と、それからこの家の死臭の、とてもいやな匂いがする。こびり付いた吐瀉物が固まって、布団の所々でざらざらとした感触がした、洗えば良いのに、といつも思うけど、この炬燵はいつまでもぐずぐずと居間に留まってる。

昔は、この居間でよく遊んだな、洒落た遊び道具などは昔からなかったけど、ただ走り回っているだけでも凄く楽しかったの。
私には一歳年下の弟がいたの。私にとって年下の家族はその弟だけだったから、私が特に彼を気にかけていたのを何となく覚えてる。弟は私と違って運動が出来たから、木登りでも 根木打ねんがらうち でも、体を動かす遊びをすれば彼は夢中になり、そしていつの間にか何処かへ行ってしまうの。山を分け入って、夕暮れの森の中を探し回ったことも何度もあった。

今はもう、見る影もありません。

体を動かすどころか、ものを食むことも出来ないのです。

だから、いつからかママは弟のために、特別に料理を拵えていたの。菜と稗と、あとは少しの麦味噌を雑炊のように湯で炊いて、それをぐちゃぐちゃと潰したものだと思う。一匙ずつ冷まして、弟の口に押し込むようにして与えるの。ママは食事の度、芋や米粉の粥を甘みがするからとお腹一杯食べていた嘗ての弟の話をしては、大粒の涙を流しながら笑ってた。
私はいつも目を逸らしていた。
おばあちゃんの姿を思い出してしまうから。
ただ、矢張り私にとっても、弟は大切な存在だったの。弟を除いたら、私の家族はおばあちゃんと両親しか居ない、だからこそ私は、どこか漠然と感じていた寂しさのようなものを、弟と話したり遊んだりすることで、紛らわせようとしていたのだと思う、だから、私は。
私の。
私の家族は。
 
139: (たこやき) 2023/01/18(水) 20:26:43.48 ID:HCUwtbpH
あの女の子は、一体誰なのか。
考えてみれば不思議だった。私の家族構成はさっき言った通り、祖父母と両親、そして私と弟。この六人家族だし私の物心が付いたころからそれは変わってない。
でも私は、あの夕焼けが障子から漏れ出た薄暗い和室の。布団だけが敷かれた〇風景な部屋の、あの記憶を。私の家の記憶だと認識しているから。
だとしたら。私の家に敷かれた布団に寝かされていたあの子は、一体誰なのか。
少なくとも、親戚筋ではない。私が知る限り、親類縁者に女児と言える人は一人もいなかったと思うから。親類の中では、私と私の弟が一番に若いはずなの。その次に年齢が近い人はというと多分一回りほど上になると思う。
じゃあ近所の誰かか。いや多分それも違う。そもそも、私の家に親族以外が招かれることなど、殆どないんだから。だから、誰か別の家の人が来ていたのなら、それを忘れているなんて事はまず無いと思うのに。
あの記憶は、一体何なんだろう。
 
140: (たこやき) 2023/01/18(水) 20:29:23.39 ID:HCUwtbpH
一番信憑性が高いのは、記憶の齟齬だと思う。親戚か、或いは友人か。とにかく、自分が会ったことのある誰かの姿を再構成して、自分の記憶の中でのみ作り出した、一種の幻覚のようなものであると考えれば、筋は通るのかもしれない。

でも、それにしては、記憶が余りにも鮮明すぎる。一場面の記憶でしかないのに、自分の中で奇妙なほどに生々しい質感を持って、あの光景が居座っているから。
畳と畳の間に挟まっていた綿埃。布団の向こうに見える障子のさらに上、長押のあたりから垂れる、蜘蛛の巣の影。掛け布団の端にとまった蝿。

普通の思い出でも中々想起できないような、露骨なほどに詳細なところまで、私は鮮明に思い出すことが出来るから。

それに。記憶の中での私は、確かにあの子と、会話をしていたの。
いや、最初に書いた通り、声や音に関する情報は、この記憶からすっぽりと抜け落ちてしまっているんだけど。私の中でその場面は、とても、とても静かなものだから。ただ、何かを話したのだという記憶というか、実感は、しっかりと残っている。
そしてその感触は、わたしにとって、とてもおそろしいものになっていて。
 
141: (たこやき) 2023/01/18(水) 20:31:01.81 ID:HCUwtbpH
例えるなら、夢の記憶みたいな。
なにか、こわい夢を見た後に目が覚めたとして、心の中には、さっきまで見ていた夢の後味が残っている。そんな時、あんな事があったからこわい思いをしているんだ、という因果は、多くの場合で抜け落ちてしまっているから。

ただ、おそろしいという感情だけが、ひとつの実感として残る。
いわゆる悪夢を見た後のような、そんな感じに近いの。
鮮明でありながらも、どこかぼんやりとしている。
あれらはまさに、私にとっては、とおい夢のような記憶になってるの。

あの子は、誰なんだろう。
あの子と、何を話したんだろう。
私は、何を言ったんだろう。
そして、あの場所は。
障子から赤い夕陽が漏れている、薄暗く狭苦しい和室。どこまでも静かな、あの部屋は。
 
142: (たこやき) 2023/01/18(水) 20:32:43.78 ID:HCUwtbpH
仏間。
そういえば、あの仏間にある襖の向こうにある、あの部屋は、どうだったかな。
そう考えたところで、私は自分の考えを打ち消す。
そもそも、私はあの部屋に行った事も無いんだから。祖母がいつまでも座っていて、泣き喚いているのがいやだったんだろうね。それにあの和室が仏間に隣接しているのなら、薄っぺらな、汚れた襖越しに、その泣き声が漏れ聞こえている筈だし。そんなに静かな記憶として残っている訳が無い。

そこで。
私は、思い出したの。
私は、一度だけ、あの襖の向こうに行っていた。

少しずつ、とおくにあった記憶を、手繰り寄せる。
あれは。
私が、小学六年生のときの、お盆のことだった。
夏の終わりの、着ていた 小衣まぶり が背中に貼り付くような、酷くじめじめとした日、西の林を越えたところにある、 青癩おんぼ のお堂から戻ってきた私は、家の玄関の前に立つ。
 
143: (たこやき) 2023/01/18(水) 20:35:24.78 ID:HCUwtbpH
私の家はね、宮崎県の山あいの、小さな村の中にあるの。
煤けたような色合いをした木造の平屋で、瓦葺きの屋根の上には所々に大きな石が乗せられている。

これは私の家に限らず、周りに在る幾つかの家でも同じようなことが行われていたかな。雨風に耐え切れず落ちゃった屋根瓦の代わりに、手ごろな大きさの石を乗せて対処をするの。本当は応急処置的な意味合いが強かったんだろうけど、ここらではわざわざ屋根を施工し直すような家の方が珍しいと言って良いと思うよ。
屋根を直してはいけないの。

もやもやとした擦り硝子の嵌め込まれた玄関の扉は、建付けが悪いのか強引に力を入れないと開かない。利き手を扉の右側のへこんだ部分に掛け、力を込めて左側に引くの。
ごとごとと引っかかるような音を立てて、扉は開く。

蜘蛛の巣が張り、埃を被った玄関が見える、履いていた草履を脱いで廊下に上がると、ぎしりという床板の軋む音と共に、じゃりじゃりとした感触を裸足に感じる。

廊下の両側の壁には木製の扉がひとつずつ付いており、左は台所とお不浄に、右は仏間に繋がっている、その扉の前まで歩いて、右を向く。目の前には、仏間に繋がる扉が見えた。
何だか、とても静かだった。おばあちゃんのがらがらの泣き声も、痰が絡んだ歌声も、なにも聞こえない。仏間に人がいる気配すらしなかった。
 
144: (たこやき) 2023/01/18(水) 20:37:03.10 ID:HCUwtbpH
案の定、扉を開けてもおばあちゃんの姿は無かったの。
薄っぺらい座布団だけが仏壇の前に残っていたけど、その上にいつも背中を丸めて座っている筈のおばあちゃんは、居なかった。

仏間に入り、そして後ろ手に扉を閉める。
扉を閉める直前。
台所とお不浄に繋がる扉の向こうから、
かすかに、おばあちゃんの泣き喚く声が聞こえてきた気がしましたが。
扉を閉めると、再び何も聞こえなくなった。

仏間に入って右側の壁には、襖が取り付けられている。
正面にある仏壇や座布団から目を逸らし、右のほうを向き、私は襖の前に立つ。
襖は居間に繋がるそれとは違い、不自然に感じるくらいに綺麗だった。
汚れていたり、色褪せたような印象は殆ど感じない。
私は。
 
145: (たこやき) 2023/01/18(水) 20:39:09.98 ID:HCUwtbpH
取っ手に指を引っ掛け、するすると襖を開く。
玄関の引き戸とは違い、それは拍子抜けするほど簡単に開いた。
襖の先には。
四畳ほどの、薄暗い和室が広がっていた。向こうの壁は、障子になっている。電気は点いていないけど、不気味なほどに赤い陽光が、ぼんやりと、障子越しに差し込んできた。その薄暗く赤黒い和室の中心には、色の褪せた、汚くて薄い布団が敷かれていて、中に小さな女の子が寝かされていた。

私は、和室の中に入り、襖を閉めて、その布団の前に座る。
正座をした、その膝の先。拳二つ分くらいの間を空けて、女の子の顔の右目側が手前に見える、夕焼けが漏れ出た障子が逆光のようになり、顔はよく見えないけど。

私も、その子も、何も喋らなかった。しばらく、私はただそこに座っていたの。女の子はこちらに気付いていないのか、或いはこちらのことをまるで意に介していないのか、私の方を見向きもしなかったな。
 
146: (たこやき) 2023/01/18(水) 20:41:12.82 ID:HCUwtbpH
とても、静かだった。
恐らくは数分、長くても十分程度だったんだろうけど、凄く長い時間が過ぎていったように、私には感じた。そうしているうちに目が慣れてきたんだけど、暗闇の中で見たその女の子の顔は、私の知るどんな人とも異なっていた。
記憶違いじゃ無かったの。
五歳か、六歳くらいでしょうか。私や私の弟よりも、ずっと小さいんだろうね。
彼女はずっと、目を瞑っていた。
眠っているのかな。
それとも。

私は。
とても、とても長い沈黙のあとで。
その女の子に、話しかけた。

きみは、何処から来たの。

彼女は。
ゆっくりと目を開いて、首だけをこちらに傾けて。
私を凝視した。
とおい夢のような記憶の中にいた、ずっと開けたことの無かった襖の向こうにいた、薄暗い部屋の中で敷かれた布団に寝かされていた、私よりも弟よりもずっと若い、私の知るどんな人とも違う顔の、その女の子は。
しろく爛れた口を開けて。
 
147: (たこやき) 2023/01/18(水) 20:42:19.36 ID:HCUwtbpH
「おまえもつれていこうか」

って言ったの。

私は、あまりにもこわくて、おそろしかったから。
立ち上がって、うしろの襖を開けて、和室を出て。
その記憶を、とおくに隠して、忘れてしまったの。
ただ隠して、自分の心のそとに追いやったの。
幼い私にできることは、それしか無かったから。
もう、あの子のことを知っている人は、いないのかな。
そう思うと、少し寂しいような気もするな。
 
148: (たこやき) 2023/01/18(水) 20:47:02.23 ID:HCUwtbpH
…………

かすみさんの話は異常だった。
語りぐさも内容も普段のかすみさんとはかけ離れていたし、正直耳を塞ぎ今すぐにでも、この場所から逃げたしたかった。

でもね、異常なのはそこじゃないの。
明らかにおかしいんだよ、語り方が。
人に話すと言うよりは、記憶を思い出すように、まるでその記憶を辿るような。そんな話し方だったの。

それにさ、そんなわけないんだよ、かすみちゃんのお母さんは凄く綺麗な方だしかすみちゃんにそんな兄弟はいない。
そもそもかすみちゃんは昔から綺麗な服を着ていたのを、私も璃奈さんも知っているから。

だから今話したかすみさんの記憶はかすみさんの記憶じゃないんだって、直感だけど、そう感じた。
でもさ、もしそうならこれからかすみちゃんはどうなるの?
だって戻す手段なんてないでしょ?記憶が変わっちゃったなら。
 
149: (たこやき) 2023/01/18(水) 20:50:26.09 ID:HCUwtbpH
……そう考えている内に動き出さなきゃって、気づいたから。

しずく「……璃奈さん。」

璃奈「もう電話してる、待って。」

かすみ「何が??」

璃奈「、愛さん?今そこにせつ菜さんいる?」

愛「ん?せっつー?多分学生寮で寝てるけど……確認して欲しいこと?今すぐに?……分かった。うん。」

侑「何?なんかあった?」

愛「いや……なんかりなりーからせっつーに、故郷の話を聞いて欲しいって言われて。」

侑「ファッ……もう分かんねぇな……」
 
150: (たこやき) 2023/01/18(水) 20:54:07.39 ID:HCUwtbpH
エマ「……じゃあ、とりあえず寮に戻ろっか?」

栞子「…そうですね。」


学生寮


愛「あ、せっつー!起きてるじゃん!」

せつ菜「はい!皆さん!ご迷惑かけて申し訳ありませんでした!!!」

侑「うるっさ!」

歩夢「元気そうで良かったよ。」

愛「病み上がり急で、悪いんだけどさ、ちょっと聞いていい?」

せつ菜「任せてください!何でも聞いてください!」

愛「せつ菜の故郷についてなんだけど……」

せつ菜「?それは勿論いいですけど、あんまり面白くないですよ?」

せつ菜「私の故郷は宮崎県の山あいの、小さな村の中に………」


おわり
 
151: (たこやき) 2023/01/18(水) 20:54:29.65 ID:HCUwtbpH
終わりです。ここまで読んで頂きありがとうございました。
 
153: (もんじゃ) 2023/01/18(水) 23:05:05.66 ID:YgqVYMP+
おつおつ
スレタイからは想像できないシリアスホラー良かったぞ
 

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1672909907/

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