「えぇ！？　金沢のお盆って今日からなんですか！？」【蓮ノ空】

「えぇ！？　金沢のお盆って今日からなんですか！？」
　朝のラウンジに小鈴ちゃんの驚き声が響き渡った。
　あたしは耳を押さえながら頷く。
　でも他県から来てるとびっくりするよね。去年のあたしも、今の小鈴ちゃんと同じリアクションしてたし。
　県内でも金沢市だけらしいんだけど、地元の子たちからしたら、むしろ八月のお盆に驚くそうだ。
　去年のあたしはそれを知らずに、『梢センパイ！　土曜日、どこか遊びに行きませんか？』と誘って、
『ごめんなさい、花帆さん……その日はお墓参りがあるの……』
　って困らせちゃった、苦い思い出があったり。(デートは日曜日にした)
　だから、小鈴ちゃんにはそうなってほしくないという、あたしなりのセンパイ心……なんだけど……。
「花帆先輩、ありがとうございました！　徒町、ちょっと用事が出来たので行ってきますね！！」
「え？　あ、うん……？」
　あたしは、『ちぇすとおお！』と叫びながら走っていく小鈴ちゃんの背中をぼんやりと見送った。
～
　それから二日後の夜。ラウンジにて。
　あたしは姫芽ちゃんから貰った甘いゼリーを食べていた。なんでも小鈴ちゃん、あの後、姫芽ちゃんのところに行ったらしい。
　

> (デートは日曜日にした)
花帆ちゃんはさぁ…
　

私は吟子さんと映画館デートしたことあるんですよ
　

文豪さん文豪さん…ひめすずお盆デートの詳細を…
　

>ひめすずお盆デートの詳細を…
　今年もお盆の季節がやってきた。
　姫芽はＰＣの電源を落とし部屋の中をぐるりと見渡して、よしと頷く。ＧＷには戻らなかったから、これが蓮ノ空に入学してから初めての帰省になる。
　お姉ちゃんと会うの自体は、そう久しぶりでもないんだけど。
(でも、今日はアタシひとりだけかな)
　昨夜届いたメッセージによれば、今日の迎え火は、どうしても抜けられないお仕事の用事があるのでごめんねらしい。
　金沢以外では、八月のお盆が主流らしいので、こういったことも、そう珍しくはない。
(大丈夫だよ。ちゃ～んとアタシがお迎えしとくから)
　メッセージ越しに、手を合わせて謝る姉の幻影を見て微笑む。
　今更寂しくなんてないよ。それに、今日はるりちゃんせんぱいの配信もあるから。
　さて、そろそろ出発しようとドアノブを握ったところで、廊下からどたどたと音が近づいてきた。
　聞き慣れた、『ちぇすとーー……！！』って、なぞの気合いも一緒に。
🏆
　墓前に吊るしたキリコ(木や紙で作られた灯籠)の中に火を灯す。
　お父さん、お母さん。今年はね、アタシだけじゃなくって、友達も来てくれたんだよ。紹介するね。
　

あっちょっと泣く
　

>>136
……地味にこれ徒町ずっと姫芽ちゃんちにお泊まりなのでは？
　

>>136
>……地味にこれ徒町ずっと姫芽ちゃんちにお泊まりなのでは？
土曜日は安養寺家に向かう途中のスーパーで人数分のキリコを買って
姉の分も含めて準備した姫芽ちゃんが2つ、小鈴ちゃんが１つを吊るして
「みっつ吊るすのは初めてだな～……」
　って薄く微笑みながら呟く姫芽ちゃんに、何かを言いかけて、でも小鈴ちゃんは静かに寄り添うだけで。
みたいな感じ(+るりちゃん配信)に1日目が終了してお泊まり突入なんですよ…！
明日、明後日の未来がどうなるかは神ならぬ身にはわかりかねるけど、
『今更だけど徒町がいたら姉妹水入らずのお邪魔になるよね……よし！　明日は徒町どこかに行ってよう！』
とか考えてるので、多分に姫芽ちゃんに首根っこ引っ掴まれるんですよ…！
　

金沢のお盆のこと全然知らなかったんですよ…！