歩夢「君の超高校級の心は輝いてるかい?」【長編SS】【スクスタ】

AqoursーSS


500: 2018/06/26(火) 22:04:41 ID:v5I.QDzw

     Chapter3

キリングフレンド (非)日常編

501: 2018/06/26(火) 22:05:27 ID:v5I.QDzw
────学園生活11日目

キーンコーンカーンコーン

モノっちー『おはようございます、朝7時になりました』

モノっちー『さてさて、今日も1日頑張っていきましょう』

モノっちー『なお、本日より新たに校則を追加しました。オマエら、後で電子生徒手帳を確認しておくように!』

プツン


~校則~

11.電源管理等の関係上、隠し部屋への侵入を禁止します(これに伴い、隠し部屋への扉を施錠させて頂きました)。

12.鍵の掛かった扉の破壊、こじ開け等を禁じます。ただし捜査に必要な場合はこの限りではありません。

502: 2018/06/26(火) 22:06:54 ID:v5I.QDzw
────食堂

愛「それっぽいこと言ってるけどさ~。絶対、裁判場に侵入されないために追加したんだって、アレ!」

ダイヤ「やはり、愛さんもそう考えますか」

愛「まあね。あ、おはよー歩夢、せっつん」

歩夢「うん、おはよう」

せつ菜「例の……新しい校則の話ですか」

ダイヤ「ええ、まあ」

歩夢(あんなことがあって起きてからまだ一夜しか経っていないけれど、それでも人間はお腹が減る生き物)

歩夢(朝食を食べながらの雑談は、11、12番目の校則に関する話題で持ち切りだった)

歩夢(彼方ちゃんの死、エマちゃんの取った行動。モノっちーが校則を追加した背景は、間違いなくそこにある)

歩夢(ただその議題を話すのは、当然食堂にいた面々に限った話で……)

503: 2018/06/26(火) 22:08:08 ID:v5I.QDzw
せつ菜「そういえば、果南さんたちの姿が見えませんが?」

璃奈「言われてみれば、そうだね(・v・)」

歩夢(この場にいない人は……というより、いる人を数えた方が早い)

歩夢(私とせつ菜ちゃん、ダイヤさん、愛ちゃん、璃奈ちゃん、梨子ちゃん)

歩夢(残りのみんなは……まだ顔を見せていない)

ダイヤ「恐らく……」

梨子「一応、止めたんだけど……仕方ないわよね」

歩夢「?」

愛「そういや、さっき曜とかがかすみの部屋に入ってったけど……」

歩夢(みんながいない原因は……すぐに分かった)

504: 2018/06/26(火) 22:10:09 ID:v5I.QDzw
────かすみの個室

かすみ「カンベンしてくださいよ~。かすみん、これから朝御飯を食べる予定だったんですから」

果南「だったら、トレイに入れて持ってくるよ」

かすみ「手足を縛られた状態でどうやって食べろっていうんですか~」

曜「知らない。自分で考えて」

かすみ「食べさせてくれないんですか~? 例えば~……果林先輩とか」

果林「それはどういう意味かしら」

かすみ「果林先輩、曜先輩たちを抑えようとはしてくれていたじゃないですか。それに、その手の人たちには需要あるらしいですよ~?」

果林「……私はあなたの母親になったつもりはないわ。大体、乱暴はよしなさいとは言ったけれど、あなたの処遇については考える必要があるのよ」

かすみ「リーダー気取りは大変なんですね」

果林「……」

505: 2018/06/26(火) 22:11:00 ID:v5I.QDzw
歩夢「ちょっと……これ、どういうこと?」

花丸「見ての通りずら」

しずく「かすみさんを縛って、部屋に閉じ込めておく……みたいです」

果南「彼方やエマが死んだのだって、元を辿ればかすみが原因みたいなものでしょ?」

せつ菜「でも、ここまでしなくても……」

花丸「かすみちゃんは……オラたちを『せつ菜ちゃん犯人説』に誘導しようとしていた。もしかしたら、オラたちもみんなオシオキされていたのかも知れないずら」

歩夢「だからって……」

千歌「ルビィちゃんの時と、昨日ので2回。放っておくと、また何をやるか分からない……んだよね、曜ちゃん」

曜「うん。ごめんね、千歌ちゃん。こうするしかないから……」

千歌「ううん、いいよ。乱暴は嫌いだけど……仕方ないよね」

歩夢「……」

506: 2018/06/26(火) 22:12:05 ID:v5I.QDzw
────校舎2階、3階へ続く階段前

千歌「やっぱり……開いてるね、シャッター」

歩夢(あのあと、私たちは食堂で今後のことを話し合った)

歩夢(かすみちゃんの処遇は……ひとまず、代替案が見つかるまでああしておくらしい)

歩夢(そして……その議論に鞠莉さんは出席していなかった)

歩夢(相変わらず、例のPCと睨めっこしているのだという)

せつ菜「先に行ってますよ、歩夢」

歩夢「……うん」

千歌「歩夢ちゃん、具合悪いの?」

歩夢「ううん、そうじゃないんだけどね……」

千歌「?」

歩夢(大丈夫、だよね)

歩夢「行こっか」

歩夢(言い聞かせながら、私たちは階段を上って行った)

507: 2018/06/26(火) 22:14:45 ID:v5I.QDzw
────校舎3階

歩夢「今度の教室は……」





千歌「教室に美術室、被服室と衣装倉庫、職員室とその隣が学園長室」

歩夢「長い廊下を渡って、音楽室……」

千歌「梨子ちゃんが喜びそうな部屋がいっぱいだね。美術室とか音楽室とか!」

歩夢「うん。それに、職員室と学園長室……」


鞠莉『ええ。あなたたちのページは、入力データが消去された痕跡があるのよ』

鞠莉『2人が才能を思い出せないこと、もしくは……他に消されたページと関係があるかも知れないわね』


歩夢(もしかしたら……)

千歌「歩夢ちゃん?」

歩夢「……なんでもない。行こ、千歌ちゃん」

508: 2018/06/26(火) 22:16:25 ID:v5I.QDzw
────美術室

千歌「おおー……凄いね。絵とか彫刻とか、いっぱい飾ってる」

歩夢「その割には……絵の具とかキャンパスとか彫刻刀とか、そういうのがあんまりないような?」

愛「ああ、それなら……多分、1階の倉庫に揃ってたんじゃない?」

璃奈「実際、この前梨子さんは倉庫から画材を持ってきてたみたいだし(・v・)」

歩夢(言われてみれば……画材が全部美術室に置いていたら、ダイヤさんたちの絵は描けなかったのかも知れない)

愛「画材はどこに? あそこの倉庫に! なんてね」

「「……」」

千歌「……ねえ、この部屋って冷房掛かってたっけ?」

歩夢「さ、さぁ……?」

歩夢(寒さから逃げるように、私たちは美術室を後にした)

歩夢(愛ちゃん、口を尖らせていたような気がするけど……あれはキツいよ!)

509: 2018/06/26(火) 22:17:24 ID:v5I.QDzw
────被服室

せつ菜「凄いです歩夢! 隣の衣装倉庫に、いっぱいアイドル衣装がありました!」

歩夢(被服室に入るなり、目を輝かせたせつ菜ちゃんが話しかけて来た)

せつ菜「これはかの有名なニチアサアイドルアニメの衣装で、初めて登場した時のエピソードは──」

歩夢(これはマズい。せつ菜ちゃん……いつぞやかのかすみちゃんみたいに、だいぶ『スイッチ』入ってる気がする)

果林「衣装だけじゃないわ。初心者でも少し教えれば衣服が作れるようなミシンや、アイロン……かなり充実した設備ね」

???「アイドル衣装以外にも、色んな服があったし……」

???「こーんなのもあったよ!」

歩夢「……えっ!?」

歩夢(衣装倉庫からのっしのっしと歩いてきたのは、大きなモノっちー……じゃなくて)

千歌「曜ちゃん! 何してるの?」

うちっちー(曜)「えへへ……いつか着てみたかったんだよね、これ!」

歩夢(うちっちーの着ぐるみを来た、曜ちゃんだった)

510: 2018/06/26(火) 22:18:41 ID:v5I.QDzw
千歌「凄いね、こんなのもあるんだ……」

曜「ちなみに、初代うちっちーの着ぐるみもあったよ!」

歩夢「初代うちっちー?」

千歌「んーとね……そもそもうちっちーって、沼津のマスコットキャラクターなんだ」

曜「最初は人っぽい造形だったんだけど、後から今の丸っこい着ぐるみにデザインが変更されたんだよ」

モノっちー「そうそう。パイセンにはお世話になってたよネ」

千歌「……うえぇ」

果林「……相変わらず、出て来る時は急ね」

モノっちー「いやぁ。本家サマのグッズは沼津に行けばいっぱい買えるからネ。ボクもいつかはあそこに並ぶのが夢だよ」

歩夢(言うだけ言って……いつものように、モノっちーは姿を消した)

千歌「うーん……なんだか、大好きなものを汚された気分だよ」

曜「うん、私も同感」

511: 2018/06/26(火) 22:20:27 ID:v5I.QDzw
果林「ところで歩夢ちゃんたち……ファッションに興味はないかしら?」

歩夢「?」

千歌「そういえば、果林ちゃんって超高校級のコーディネーターだったね」

果林「ええ。流行や雰囲気、体格、その日の気分やイベント。それらに合わせて、みんなの衣服を整えていくっていうのは、結構楽しいものよ」

せつ菜「分かります分かります! 今日などんな衣装でステージに立とうとか、どんな格好でお客さんたちを喜ばせようとか、悩みすぎて時間が足りないくらいです!」

果林「せつ菜ちゃんの場合はちょっと違うけれど……でも、本質は一緒ね」

果林「人は外見だけじゃないとは言うけれど、その人を表す判断材料の一つであることは間違いないわ。いつも誰に見られても恥ずかしくない恰好でいる、これって結構難しいのよ」

果林「その点、璃奈ちゃんはある意味では凄いと思うわ。顔を見せられないことを逆手に取って、小柄な体格と合わせて一つのキャラクターを作り上げてるんだもの」

果林「……っと、ごめんなさい、話しすぎちゃったわ。ちなみに、衣装作りもある程度は出来るから、何か必要だったら言ってね」

歩夢(果林さんのファッションコーディネート……凄く気になるけれど、今は3階の探索を優先することにした)

歩夢(ちなみに、曜ちゃんとせつ菜ちゃんは果林さんに連れられて衣装倉庫に行った)

千歌「多分……着せ替えのお人形さんコースだね」

512: 2018/06/26(火) 22:23:03 ID:v5I.QDzw
────職員室

歩夢(職員室……本来ならば、先生たちがデスクワークに励みながら、学生たちの今後を話し合ったりする場所)

歩夢(けれど……)

花丸「誰もいないずら……」

ダイヤ「全く……この学園はどうなっているんですの!?」

歩夢(頼れる教員の姿はどこにもなく、コピー機や、ずらりと並んだ教員デスク……)

歩夢(そして、花丸ちゃんとダイヤさんがいるだけだった)

花丸「机や棚なんかは一通り調べたけど、何も入ってなかったよ」

ダイヤ「それに、相変わらず窓には鉄板……そんなに、私たちを外に出したくないのですか」

モノっちー「もしかしたら……外の世界が見せられない理由があったりして」

千歌「また出た……」

花丸「……外を見せられないって、どういうこと?」

モノっちー「……どういうことなんだっけ? まあいいや」

ダイヤ「ちょっと、お待ちなさ──おや?」

513: 2018/06/26(火) 22:24:15 ID:v5I.QDzw
歩夢「どうかしたんですか?」

ダイヤ「写真……ですわね」

千歌「モノっちーが落としていったのかな?」

花丸「こ、これって……!」

歩夢(私たちは、一枚の写真をじぃっと見つめる)

歩夢(そこに写っていたのは……)

ダイヤ「彼方さんと……」

千歌「エマちゃん、だよね」

歩夢(その写真の季節は、夏なのだろうか。2人が仲良くかき氷を食べている姿が写っていた)

歩夢(何故、この学園で初めて出会った筈の2人が? ……というより、疑問はそこだけじゃない)

花丸「なんで……“窓に鉄板がない”ずら?」

歩夢(写真は、どう見ても学校の教室を写している。けれど、その教室の窓からは青空が広がっていて……)

514: 2018/06/26(火) 22:28:55 ID:v5I.QDzw
歩夢(いつ撮った? 誰が撮った? どこで撮った? 何故撮った……はちょっと違う)

歩夢(浮かんだ大量の疑問符は……不意に、そして強制的にかき消されることになる)

モノっちー「あっ、見たな!」ヒョイ

ダイヤ「なっ……」

モノっちー「いやぁ、落とし物したかも知れないって戻って来て正解だったよ」

モノっちー「ほら、よくあるよネ。ちゃんと鍵かけたかな、ガスの元栓閉めたかなって心配になって、何度も家に戻るヤツ」

モノっちー「大体は大変なことになんてなる筈ないから、心配しなくたっていいんだけどネ」

モノっちー「見ろよ、このしがらみに囚われていない、幸せそうな青春の顔を!」

千歌「この写真、何か知ってるの?」

モノっちー「秘書がやりました!」

ダイヤ「……は?」

歩夢(意味不明なことを叫んで、モノっちーは足早に消えて行った)

歩夢(……勿論、写真はひったくられた)

515: 2018/06/26(火) 22:30:49 ID:v5I.QDzw
────学園長室前

ガチャガチャガチャ!

千歌「……開かないね」

果南「鍵が掛かってるみたいだよ。頑張れば破れそうだけど……校則がね」

歩夢「そういえば……ここに来る途中にもあったね、大きな扉」

果南「廊下の真ん中にあった扉でしょ? あれも開かないし……もしかしたら、外に繋がってるのかな?」

千歌「えっ……それじゃあ、3階から飛び降りることになっちゃうの!?」

果南「倉庫にロープがあるから、心配しなくていいよ」

千歌「うーん……」

果南「シャッターは下りてるけど、4階に続く階段もあるし……この学園、どこまで続くんだろうね」

歩夢「……」

歩夢(入れない学園長室、か)

516: 2018/06/26(火) 22:31:39 ID:v5I.QDzw
────音楽室

歩夢(音楽室というより、大ホールと呼ぶに相応しいその部屋では……)

歩夢(綺麗な旋律と歌声が、完全防音の中を反響していた)

梨子「~♪」

しずく「~♪」

歩夢(グランドピアノを鳴らす梨子ちゃんは、今まで見られなかったピアニストとしての才能を遺憾なく発揮していて)

歩夢(舞台に立って歌うしずくちゃんは、そこだけスポットライトを独占しているよう……)

歩夢(まるでこのホールは、2人のためにあるのではないか……そう、錯覚するほどだった)

千歌「すごいね、2人とも」ヒソヒソ

歩夢「……うん」

歩夢(音楽室を調べることも忘れて、ひとしきりプチミュージカルを鑑賞した私たち)

歩夢(抜かりなく調査済だったことを梨子ちゃんたちから聞かされ、4人で食堂に戻ることとなった)

517: 2018/06/26(火) 22:32:32 ID:v5I.QDzw
────歩夢の個室

キーンコーンカーンコーン

モノっちー『えー、夜10時になりました。ただいまより夜時間に──』

歩夢「ふーっ……」

歩夢(ぼふん。倒れ込むように、ベッドにダイブ)

歩夢(結局、今回の探索でも、外への出口は見つからなかった)

歩夢(相変わらず窓には鉄板。一体、いつになったらお日様を拝めるのだろう)

歩夢(……その頃には、私たちはどうなっているのだろう)

歩夢(例の写真についても、誰もが「分からない」としか答えるほかなかった)

歩夢(そして。新しい校則のせいで調べられてはいないけれど)



歩夢(多分、3階の隠し部屋はここだろう、という結論になった)

歩夢「教室大の広さ、か……」

歩夢(もしかして……消えた名簿と、関係があったりするのかな……?)

518: 2018/06/26(火) 22:33:36 ID:v5I.QDzw
~モノっちー劇場~

物語を構成する上で大事な要素の一つとして『フラグ』というものがあります。

生死や恋愛、勝ち負け……とにかく「こういう展開になったら、こんな結末になるんじゃないか?」と、受け手が簡単に勘づくものの総称ですネ。

ところが。そういったフラグが使い尽くされた結果、それを逆手に取った展開が喜ばれることもあります。

伝説の剣を手にする直前で、勇者が魔王に敗れたり。

あからさまに怪しい人物が、順当に犯人だったり。

いかにもな発言をしたキャラクターが、程なくして退場したり。

とはいえ。そういった『フラグ潰し』も主流になり、一周まわって王道の方がウケがいい、なんてこともあったりします。

そういったフラグ管理の循環は、もう何周目になるのでしょうネ。

世のクリエイターは何度、期待と裏切りを連鎖させたのでしょうネ。

……え? これは何かのフラグなのかって?

それはボクにも分からないよ。

521: 2018/08/29(水) 23:26:16 ID:eRwJC8Yk
────学園生活12日目

キーンコーンカーンコーン

モノっちー『おはようございます、朝7時になりました』

モノっちー『さてさて、今日も1日頑張っていきましょう』

プツン

歩夢(……また、この檻のような学園での1日が始まる)

歩夢(虹ヶ咲に入学する前、いわば春休みの不規則だった生活習慣が改善されつつあるのが……何とも皮肉だ)

522: 2018/08/29(水) 23:27:53 ID:eRwJC8Yk
────昼頃、食堂

歩夢(いつものように、梨子ちゃんが作ってくれた食事をみんなで食べる)

歩夢(今日のお昼ご飯である海鮮丼が放つ独特の生臭さと、少しぎこちない雰囲気を漂わせながら……)

鞠莉「Good morning everyone!」

歩夢(朝からずっと続いていたムードをぶち壊したのは、場違いなくらい元気な……というより、深夜テンションの延長上にいる鞠莉さんだった)

ダイヤ「もうお昼です。朝食には手をつけなかったそうですね」

鞠莉「ごめんなさいね。徹夜明けで疲れてたのよ」

花丸「じゃあ、あの『ぷろぐらむ』っていうのは解析が終わったの?」

鞠莉「それが行き詰っちゃったのよ。しばらく目と頭を休めないと、脳みそがpanicよ」

千歌「鞠莉ちゃんでも、限界があるんだね……」

鞠莉「ある程度のラインまで解析されることは、向こうも想定済みだったみたいね。そこにたどり着いた途端に別のプログラムが起動して、身動きが取れなくなったのよ」

鞠莉「お陰でPCを強制シャットダウンさせる羽目になってね、再起動したら、解析はリセット。これまでの努力が大体パー」

鞠莉「まあ、職員室のコピー機で印刷はしてあるから、見たかったら言ってちょうだい」

523: 2018/08/29(水) 23:28:54 ID:eRwJC8Yk
歩夢(ずぞぞぞぞ、とわざとらしい音を立てながら、鞠莉さんは紅茶を口にする)

ダイヤ「鞠莉さん、あなた──」

歩夢(我慢ならなかったダイヤさんが口を開いたのと同時に、彼女は私たちにある質問を投げかけた)

鞠莉「そういえば、あなたたちは何も覚えてないの? “虹ヶ咲学園に籍を置いていた”のに」

ダイヤ「……は?」

鞠莉「花丸たち1年生や、才能も思い出せない歩夢と千歌っちは仕方ないとして、2年生と3年生が“どんな高校生活を送っていたのか思い出せない”なんて……」

鞠莉「ヘンだと思わない?」

愛「……どゆこと?」

璃奈「私たちはみんな、年がバラバラだって話になったことがあったよね。それのことを言ってるんじゃないかな(・v・)?」

鞠莉「ええ。歩夢には話したけれど、生徒プロフィールまでは解析が出来ていたのよ」

524: 2018/08/29(水) 23:30:28 ID:eRwJC8Yk
歩夢(鞠莉さんは、淡々と明かされた事実を披露し始める)

歩夢(私たち18人は、虹ヶ咲学園の14期生から16期生までとしての学籍があることになっていた)

歩夢(載っていたのは、全員のプロフィール……といっても、持っている才能、生年月日や血液型、アレルギー持ちか否か、といった簡易的なもの)

歩夢(血液型までは、電子生徒手帳にも載っていた情報だ。アレルギーに関しても本人が分かっている以上、特に気にすることではない)

歩夢(それらより気になるのは、私と千歌ちゃんを含めた10人近くの名簿データが消えていること。そもそも、消えたデータは誰の物なのかハッキリしていない)

鞠莉「ここまでが、解析で明らかになったこと。何を言いたいか、分かったかしら?」

花丸「……オラたちはみんな、虹ヶ咲学園の入学式に向かう途中で意識を失って、気が付いたら教室にいた」

花丸「それなのに、鞠莉さんたちは既に2、3年ここで学園生活を送ったことになっている……」

千歌「ちょっと待ってよ! それじゃあ、まるで私たちが……」

梨子「虹ヶ咲学園で過ごした記憶を、失ってる……!?」

愛「そ、そんなバカなことあるワケ……」

花丸「あるずら。根拠なら、いっぱい……」

愛「……は?」

525: 2018/08/29(水) 23:31:39 ID:eRwJC8Yk
璃奈「しずくちゃんが大怪我を負ったことを覚えていないのは、ここで過ごしている間にあった『何か』を忘れているのかも……(>_<。)」

花丸「そもそも職員室で見つけたあの写真だって……普通に考えたら“彼方ちゃんとエマさんが一緒に学園生活を送っていた”ことの証明になる……」

モノっちー「まあ、それで正解だからネ」

愛「!?」

モノっちー「ぶっちゃけ、学年が違う段階で察して欲しかったんだけどネ。いつ気づくかず~っと待ってたんだよ」

モノっちー「というワケで、オマエらは虹ヶ咲学園で、1年から3年を過ごした仲間なのでしたー!」

モノっちー「例の写真も、その学生生活のワンシーンなんだよ。どう、楽しそうでしょ?」

歩夢「……」

モノっちー「どしたの? 折角、謎が一つ解けたっていうのにさ」

梨子「いや、だって……」

「「……」」

526: 2018/08/29(水) 23:32:40 ID:eRwJC8Yk
モノっちー「絶望的だよネ。オマエらは、そのクラスメイト間で〇し合ってたんだからさ」

歩夢(そういう、ことだ)

歩夢(モノっちーの言葉を信じるなら、私たちはきっと、元の学園生活では友達だったのだろう)

歩夢(なのに、その記憶を失って、友達同士でコロシアイなんて……)

千歌「……こんなことをさせて、私たちをどうしたいの」

モノっちー「何度も言ってるじゃん、ボクはオマエらが絶望する顔を見たいんだって。うけけ、今のオマエらの表情は及第点だよ!」

ダイヤ「……虹ヶ咲学園に、何か恨みでも持っているのですか」

モノっちー「それはどうだろうネ。あると言えばあるし、ないと言えばない……」

モノっちー「まあ、然るべき時まで黙秘権を行使させてもらうよ。それまでに何人生き残ってるかな……うけけけけけ」

歩夢(神出鬼没。好きなだけ喋って、モノっちーは姿を消す)

歩夢(いつもどこに消えているのか……なんて疑問は、今回に限っては微塵も浮かばなかった)

527: 2018/08/29(水) 23:33:40 ID:eRwJC8Yk
愛「……嘘、だよね。うん、嘘だ」ガタッ

愛「ご馳走様。……部屋、戻ってる」

璃奈「待って、愛ちゃん(?□!)!」

愛「ごめん……ちょっと、1人にさせて」

璃奈「……(?□!)」

ダイヤ「……無理もありません。動機ビデオか、それ以上にショッキングな話ですから」

千歌「どうしよう……この話、曜ちゃんたちにする……?」

鞠莉「正直、あまりオススメはしないわね。この話をキッカケに〇人が起きる可能性だってないとは言い切れないもの」

梨子「でも、愛ちゃんのことを話さないワケにもいかないし……」

鞠莉「Fmm……そういえば、他のみんなはどこに行ったのかしら?」

花丸「えっと……確か、曜ちゃんと果南ちゃんがプールで……」

千歌「しずくちゃんが、せつ菜ちゃんと果林さんに連れられて……多分、被服室かな?」

梨子「衣装がどうの、って話をしてたから、多分……」

鞠莉「……かすみは?」

ダイヤ「彼女は、自室で頭を冷やして貰うことになりました」

528: 2018/08/29(水) 23:34:42 ID:eRwJC8Yk
鞠莉「そう……効果があるとは思えないけどね」

ダイヤ「ですが、何もしないよりはいい、というのが皆さんの判断です」

鞠莉「まあね。毒薬なんて危ない物をもち、だ、し……」

鞠莉「……っ」

歩夢(食事に手をつけようとして、鞠莉さんは寸前で手を止めた)

鞠莉「毒薬はどうなったの?」

花丸「えっ、と……」

鞠莉「もしかして、放置したまま?」

千歌「大丈夫だよ。かすみちゃんはしばらく、あの部屋から出てこないし……」

鞠莉「……」ダッ!

歩夢(血相を変えて、食堂を飛び出す鞠莉さん)

歩夢(彼女が向かった先は、勿論……)

529: 2018/08/29(水) 23:35:30 ID:eRwJC8Yk
────かすみの部屋

かすみ「……」

鞠莉「何とか言ったらどうなの、かすみ」ガサゴソ

歩夢(目に飛び込んできたのは、引き出しやクローゼット、部屋の中を物色している鞠莉さんの姿)

歩夢「これは、何が……」

鞠莉「見つからないのよ、毒薬が」

歩夢「え……?」

鞠莉「まずいことになったわ。このままだと、私たちは全滅しかねない」

歩夢(毒薬、全滅。それらの熟語から、ただならぬ事態になっているのは確かだ)

歩夢(……けれど)

歩夢「ど、どういうことかちゃんと説明してください!」

鞠莉「……みんなを、食堂に集めてくれるかしら」

かすみ「かすみんは行かなくていいんですか~?」

鞠莉「あなたは信用出来ない」

530: 2018/08/29(水) 23:36:14 ID:eRwJC8Yk

かすみ「……」

かすみ「……そうですか」

531: 2018/08/29(水) 23:37:06 ID:eRwJC8Yk
────食堂

せつ菜「無自覚〇人!?」

鞠莉「ええ。一番警戒しなければならないのは、無差別に、そして無自覚に起きる〇人よ」

果南「話が全然見えないんだけど……どういうこと?」

果林「かすみちゃんが毒を持っていなかったってことは、既にかすみちゃんがどこかにやったか、誰かが奪った後ってことよ」

曜「誰かが奪ったなんて、そんな……」

ダイヤ「どちらにせよ、私たちは有るかどうかも分からない毒薬に怯える日々を過ごす羽目になります」

ダイヤ「例えば、厨房の食材。どれかに毒薬が仕掛けられていたとしたら、どうなりますか?」

歩夢「誰が死ぬか分からない状況が、出来上がる……」

鞠莉「それだけじゃないわ。以前、モノっちーはこう言っていた」


モノっちー『ちなみに学級裁判において、議論する内容の終着点は“最後にトドメを刺した人物が誰か”になります』

モノっちー『たとえ〇意がなくとも、引き金を引いた人間がクロになってしまうのですよ』

532: 2018/08/29(水) 23:38:34 ID:eRwJC8Yk
鞠莉「このルールは見事に適用され、彼方とエマが犠牲になった」

しずく「……」

鞠莉「さっきの話にこのルールを当てはめると……もう、分かったかしら?」

花丸「“誰が毒入り料理を口にするか分からない。その上、誰がその料理を出してしまったのか、突き止めることはほぼ不可能”……」

鞠莉「ええ。もしそんな事態に陥ったら、ほとんど全滅と言っていいでしょうね」

梨子「そんな……」

果林「何か……対策はあるのよね? まさか、飲まず食わずで餓死しろなんてことはないでしょうし」

ダイヤ「幸いなことに、厨房には缶詰や菓子類といった保存食が用意されています。……種類は心もとないですが」

ダイヤ「しばらくの間は、それらで凌ぐしかないでしょうね」

鞠莉「いい? これは強制よ。誰か1人が命を落とす、だけで終わる話じゃないの」

璃奈「あとで……愛ちゃんにも、伝えておく(>_<。)」

ダイヤ「そうしてくれると、助かります」

533: 2018/08/29(水) 23:39:41 ID:eRwJC8Yk
鞠莉「というわけで、ごめんなさいね、梨子。しばらくあなたの料理は食べられそうにないわ」

梨子「ううん、こんな状況だし……」

千歌「でも、やっぱりさ……」

千歌「また、みんなでご飯食べたり、お茶会したり……出来るようになるといいね」

千歌「曜ちゃんも、そう思うよね」

曜「……」

千歌「曜ちゃん?」

曜「え、あ……そうだね! 千歌ちゃんの言う通りであります!」

千歌「むー……話、聞いてなかったでしょ」

曜「ごめんごめん」

ダイヤ「……とりあえず、当面の方針は決まりましたわね」

鞠莉「一応、モノっちーにも交渉してみるわ。あまり期待は出来ないでしょうけど」

歩夢(こうして私たちの、毒薬という見えない影に怯える生活が幕を開けた)

歩夢(飲食物が何もない、というワケではないから、しばらくの我慢で済む……)

歩夢(そんな流れになって、この日は解散となった)

534: 2018/08/29(水) 23:40:39 ID:eRwJC8Yk
────夜、プール

ザパァ

曜「……」ゼェ ゼェ

キーンコーンカーンコーン

モノっちー『えー、夜10時になりました。ただいまより夜時間になります』

モノっちー『まもなく、食堂はドアをロックされますので、立ち入り禁止となります』

モノっちー『それでは皆さん、おやすみなさい』

モノっちー『ああそうそう。オマエ、結構ギリギリだったからね。もう少しあがるのが遅れていたらサイレン鳴ってたからね』

プツン

曜「……」

535: 2018/08/29(水) 23:41:30 ID:eRwJC8Yk
~モノっちー劇場~

世界三大〇〇、四天王、五人囃子……何かしら、数が決まっている事柄。

全て知ったら死ぬ、ともっぱら噂の『学校の七不思議』もその1つ。

ところで、学園を管理するボクはいつも思うんです。

何故『七つ』なんでしょうネ。

一説には『七』という数字は、人間が感知出来る数の限界だったから、とも言われているそうです。

八百屋だとか八百万の神だとか、嘘八百だとか。

『八』には数えきれないほど多い、という意味があるから……なんだそうな。

でもネ、それって『八』じゃなくて『八百』なんじゃない?

人間、意外と799までは認知出来るんじゃない?

やるじゃん、人間。

というワケで、ボクは今日も学園の七九九不思議を考えるのに忙しいんだ。

アイデアはいつでも募集しているよ。

536: 2018/08/29(水) 23:42:22 ID:eRwJC8Yk
────学園生活13日目

キーンコーンカーンコーン

モノっちー『おはようございます、朝7時になりました』

モノっちー『さてさて、今日も1日頑張っていきましょう』

プツン

537: 2018/08/29(水) 23:43:19 ID:eRwJC8Yk
────食堂

せつ菜「今日はコンビーフですか……」モッシャモッシャ

璃奈「今となっては貴重なタンパク質だね……(・v・)」モグモグ

花丸「う~……やっぱりひもじいずら……」

果林「かすみちゃんと愛ちゃんにも届けて来るわね」

歩夢(未開封のペットボトルと缶詰を丁寧に洗って、口にする)

歩夢(空腹を訴える者がいれば、手が加えられていないことを念入りに確認したスナック菓子を提供する)

歩夢(ダイヤさんが言っていた通り、確実に安全な飲食物の種類は、極端に少ない)

歩夢(今までとは違った意味で、死と隣り合わせの生活)

歩夢(最悪の事態に陥らないために最善を尽くす心労)

歩夢(満足な食事が摂れないことによる栄養の偏り)

歩夢(ゆっくりと、そして確実に私たちの間に落とされる影)

歩夢(それらがハッキリと効果を表したのは……夕方のことだ)

538: 2018/08/29(水) 23:44:32 ID:eRwJC8Yk
────保健室

ドタドタドタドタ

バン!

千歌「曜ちゃん!」

果林「シーッ。気を失っているから、静かに」

千歌「あ、ごめん……曜ちゃんが大怪我したって聞いたから……」

果南「プールで盛大にやらかしたみたいだね。正直、大人しくしてもらった方が都合がいいよ」

千歌「ちょっと……果南ちゃん、なんでそんな言い方なの!?」

果南「……」フン

千歌「果南ちゃんってば!」

歩夢「2人とも、落ち着いて……」

539: 2018/08/29(水) 23:45:15 ID:eRwJC8Yk
歩夢(事の発端は、昨日。曜ちゃんと果南さんがプールに行っていた時のこと)

歩夢(数日前の水泳大会で上手く泳げなかった曜ちゃんは、果南さんに水泳のレッスンを受けていた)

歩夢(“海が第二の実家”と自称する果南さんに教われば、きっと『以前のように速く泳げる』と)

歩夢(けれど、いくらレッスンを受けても、曜ちゃんの泳力は満足できる領域に戻らなかった)

歩夢(それで焦った彼女は、夜時間ギリギリまで自主練をしていたのだ)

歩夢(そして、無理がたたり──今に至る)

果南「ここに来る前から、曜のことはダイバー仲間に聞いてたよ。超高校級の船乗りであると同時に、水泳選手にも劣らない泳力だって」

果南「広い海で活動する曜は、海難事故の現場に遭遇することも多かったんだ。事故現場での人命救助に役立っていたらしいよ」

梨子「だから、泳げなくなったことに焦っていた……」

果林「ここ最近、様子がおかしかったものね」

540: 2018/08/29(水) 23:46:06 ID:eRwJC8Yk
歩夢(事の発端は、昨日。曜ちゃんと果南さんがプールに行っていた時のこと)

歩夢(数日前の水泳大会で上手く泳げなかった曜ちゃんは、果南さんに水泳のレッスンを受けていた)

歩夢(“海が第二の実家”と自称する果南さんに教われば、きっと『以前のように速く泳げる』と)

歩夢(けれど、いくらレッスンを受けても、曜ちゃんの泳力は満足できる領域に戻らなかった)

歩夢(それで焦った彼女は、夜時間ギリギリまで自主練をしていたのだ)

歩夢(そして、無理がたたり──今に至る)

果南「ここに来る前から、曜のことはダイバー仲間に聞いてたよ。超高校級の船乗りであると同時に、水泳選手にも劣らない泳力だって」

果南「広い海で活動する曜は、海難事故の現場に遭遇することも多かったんだ。事故現場での人命救助に役立っていたらしいよ」

梨子「だから、泳げなくなったことに焦っていた……」

果林「ここ最近、様子がおかしかったものね」

541: 2018/08/29(水) 23:47:03 ID:eRwJC8Yk
千歌「……」

果林「とりあえず、応急処置は済ませたわ。出血が酷いようだったから、輸血もしておいたわ」

梨子「輸血パックまであるなんて、ちょっとした医療施設ね……」

果南「電子生徒手帳に血液型も載ってて助かったよ。とりあえず、曜が起きたら説教だね」

千歌「……私、ずっと曜ちゃんの傍にいる」

果林「無茶は言わないの。居眠りしてしまったら、校則に引っ掛かってしまうんだから」

モノっちー「そうだネ。事が事だしベッドで寝てるそいつはOKだけど、付き添いの居眠りは許されることじゃないよ」

千歌「何? 今は構ってる場合じゃないんだけど」

モノっちー「校則に関する案件が出たから、念押ししに来ただけだよ。それにしても、よりによって彼女がねえ……うけけけけけ」

歩夢「……行っちゃった」

果林「定期的に顔を出さないと死ぬ病気、かしらね……」

542: 2018/08/29(水) 23:48:01 ID:eRwJC8Yk
千歌「……曜ちゃんの馬鹿」

千歌「泳げなくても、曜ちゃんは曜ちゃんだよ」

千歌「記憶をなくしても、超高校級じゃなくなっても……私はずっと、曜ちゃんの友達だよ」

歩夢「千歌ちゃん……」

果林「とりあえず、一旦食堂に行きましょうか。みんなに詳しく話す必要があるし」

543: 2018/08/29(水) 23:48:52 ID:eRwJC8Yk
曜「────」

千歌「……また来るね、曜ちゃん」

歩夢(こうして、また無駄に一日が過ぎて行く)

歩夢(脱出の手掛かりも、私の才能も、毒の行方も。何もかも五里霧中のまま)

544: 2018/08/29(水) 23:49:47 ID:eRwJC8Yk
~モノっちー劇場~

あらやだ。あの子たち、あんな過ごし方でどうにかなると本当に思ってるみたいですよ!

なんだって、それは本当かいハニー?

そうなのよ、困ったものよね~。

大丈夫さハニー、これを使えばナベにこびりついた頑固な汚れだってイチコロさ!

あら、流石ジョニーね!

545: 2018/08/29(水) 23:50:55 ID:eRwJC8Yk
────学園生活14日目

キーンコーンカーンコーン

モノっちー『おはようございます、朝7時になりました』

モノっちー『さてさて、今日も1日頑張っていきましょう』

モノっちー『オマエら、このあと10時から全校集会があります。体育館に集まってください!』

モノっちー『部屋に閉じこもっている人も閉じ込められている人も、全員揃わないと、揃ってオシオキだからネ。その辺注意するように!』

モノっちー『ああ、流石に気を失っている人は連れて来なくていいよ。そもそも話を聞きようがないしネ』

プツン

歩夢「全校集会……」

歩夢(また、動機の発表だろうか。ある意味、この極限状態そのものが動機になりかねないのに……)

546: 2018/08/29(水) 23:51:56 ID:eRwJC8Yk
────体育館

愛「……」

かすみ「これじゃ、まるで連行されてるみたいじゃないですか」

果林「文句言わないの」

せつ菜「みんな、疲れきってますね……」

歩夢「仕方ないよ、こんな状況だし」

ダイヤ「さて。そろそろ時間ですわね」

鞠莉「鬼が出るやら、蛇が出るやら……」

モノっちー「残念、出て来るのはセイウチだよ! というワケで、保健室の子以外はみんな揃ってるネ」

果南「私たち、十分厳しい状況なんだよ。まさか、このタイミングで動機発表だなんて言わないよね」

モノっちー「そのまさか、動機発表に決まってますけど?」

歩夢(瞬間、周囲から「うげぇ……」といった雰囲気が流れてくる)

モノっちー「ボクは小原さんの交渉で考えました。今回は、毒薬騒動からオマエらを救うことも出来る、画期的な動機だよ!」

千歌「私たちを……救う?」

547: 2018/08/29(水) 23:52:47 ID:eRwJC8Yk
モノっちー「ずばり! 明日の夕食会は、音楽室で行ないます!」

モノっちー「ある条件をクリア出来れば、ボクからご褒美をプレゼントします」

かすみ「既に怪しさ満点の話ですね」

璃奈「今は言ってる場合じゃない。それより、詳細は(・v・)?」

モノっちー「夕食会……明日の午後6時までに、事件が起きること。もしくは、その夕食会で、オマエらがボクを満足させるパフォーマンスを披露すること」

モノっちー「そのどちらかの条件を満たせば、毒薬がどうなったかを教えてあげましょう! ついでにカレーライスも振舞っちゃうよ」

モノっちー「勿論、カレーライスに毒やヘンな薬は入ってません。オマエら、ここしばらくロクな食事が出来てなかっただろうしネ」

せつ菜「それなら楽勝です! あのステージなら、あっという間に私の独壇場に出来ます!」

モノっちー「ああ、1人で盛り上がってるところ悪いんだけど……オマエの舞台を彩るためにも照明とか音響とか、ちゃんと演出も考えてよネ?」

モノっちー「それに1人じゃダメだよ。出し物は最低3つ、それぞれ違う人が担当するってのが条件だよ」

548: 2018/08/29(水) 23:54:20 ID:eRwJC8Yk
鞠莉「なるほど。今回の動機のコンセプトは『団結』と言ったところかしらね?」

鞠莉「モノっちーを満足させるには、私たちが団結しなければならない」

鞠莉「その団結に異を唱える者が行動……〇人を起こしても、モノっちーにとっては万々歳」

モノっちー「まあ、そんなところだネ」

千歌「でも、大丈夫だよね? 梨子ちゃんとしずくちゃんもいるし……」

しずく「……分かっています。皆さんのため、一肌脱ぎましょう」

梨子「大勢の前でピアノを弾くのは久しぶりだけど……頑張らないとね」

モノっちー「どうやら、出演者は決まったみたいだネ。演目は自由だけど、才能を遺憾なく発揮してよネ?」

モノっちー「うけけけけけ……お友達同士の団結力と、超高校級と言われる連中の才能。楽しみにしているよ」

モノっちー「というワケで、今日の全校集会は終わり! 起立、礼、解散!」

549: 2018/08/29(水) 23:55:50 ID:eRwJC8Yk
────食堂

千歌「……曜ちゃん、まだ寝てた」

果林「そっとしておきなさい。さて、出し物の話だけれど……」

鞠莉「出演者は決まり。となれば、残りのみんなで音響や照明を担当することになるわね」

梨子「あ……出来れば、誰かにピアノを運ぶのも、お願いしたいかなぁ。せつ菜ちゃんとしずくちゃん、ステージを幅広く使うだろうし」

しずく「1人で運ぶのは難しいでしょうね……補助キャスターがついているとはいえ、結構重そうです。3人くらい必要ですね」

果南「じゃあ、私と……ダイヤ、鞠莉。いいよね?」

ダイヤ「……承知しました」

鞠莉「OK♪ そうすると運ぶ時間を考えて、梨子の出番は最初か最後がいいけど……」

せつ菜「はい、はい! トップバッターは私がやりたいです! いいですよね梨子さん!?」

梨子「う、うん。いいけど……」

550: 2018/08/29(水) 23:56:36 ID:eRwJC8Yk
歩夢「気合入ってるね、せつ菜ちゃん」

せつ菜「当たり前じゃないですか! こんな形だけど、ようやく私のスクールアイドルとしてのパフォーマンスを披露出来るんですから!」

せつ菜「皆さん、どんな曲がいいと思いますか!? やっぱり最初なので、テンションの上がる曲がいいでしょうか!?」

花丸「ど、どんな曲と言われても……」

千歌「あまりアイドルの曲って分からないし……」

璃奈「せつ菜ちゃんのオススメでいいんじゃないかな(・v・)?」

しずく「舞台裏の楽器倉庫に、色んな音源がありましたよ。多分、せつ菜さんのお気に入りも──」

せつ菜「分かりました、行って参ります!」バビューン!

果南「早っ!?」

歩夢「あはは……せつ菜ちゃん、昔からこんな感じだったから」

歩夢「幼稚園の頃、一緒に遊びに行った時だって……」

歩夢「……」

歩夢(……あれ?)

551: 2018/08/29(水) 23:58:25 ID:eRwJC8Yk
千歌「どうかしたの?」

歩夢(……なんで、思い出せないんだろ)

歩夢(確か、せつ菜ちゃんとお母さんたちで、デパートに行った筈……)

歩夢(途中でアイドルショーをやってて……あれ?)

千歌「あーゆーむーちゃん?」

歩夢「あ、ううん、何でもないよ。それより、まだ決まってないのは照明と音響だっけ?」

ダイヤ「ですわね。機材の構造上、この役はアナウンスも兼ねることになりそうです」

愛「だったらさ~」

花丸「うーん……マルは機械類、苦手だし……」

愛「おーい」

璃奈「私、声あまり大きくないし……(>_<。)」

愛「愛さんを無視しないでおくれよーぅ……拗ねちゃうぞ?」

552: 2018/08/29(水) 23:59:28 ID:eRwJC8Yk
璃奈「……引き籠ってたクセに(`∧´)」

愛「悪かったって! この通りだから!」ピース

果林「笑顔でピースされても、どの通りなのかさっぱりね……」

璃奈「それより、もう具合は大丈夫なの(・v・)?」

愛「大丈夫! 愛さん完全……とはいかないけど、復活だよ」

愛「なんというか、せっつんに助けてもらった感じ……かな。底抜けに元気な姿見てたら、私も頑張らなきゃ、って思ってさ」

愛「というワケで、照明、音響その他諸々は愛さんに任せてくれたまえよ! 一度目は通したけど、あのくらいの機材ならチャチャっと使えるね」ビシッ

千歌「うん。愛ちゃんなら声も良く通るし、盛り上げるにはピッタリだよ!」

鞠莉「ええ、適任だと思うわ」

花丸「台本ならお任せずら♪」

愛「げっ。愛さん、自由に喋りたいんだけど……」

果林「進行役がしゃしゃり出てどうするのよ……」

璃奈「でも、良かった。愛ちゃんが元気になって」

梨子「この調子で、曜ちゃんも元気になってくれるといいわね」

553: 2018/08/30(木) 00:01:01 ID:8PS0Mxyo
歩夢(こうして、私たちは解散となった)

歩夢(しずくちゃんたちは、リハーサルのために音楽室に向かったようだ)

歩夢(本番まで時間はないけれど、急ピッチで進めるのも十分楽しいようだ)

歩夢(暗かった雰囲気も、着実に良い方向に動いている)

歩夢「大丈夫……モノっちーの思惑通りには、絶対にさせない」

歩夢(……でも)

歩夢(あの日、せつ菜ちゃんと遊びに行った記憶)

歩夢(なんで……才能や学生生活だけじゃなくて“その日の出来事まで思い出せない”んだろう……?)

歩夢(何とも言えない不安は、私の中にこびりついていた)

554: 2018/08/30(木) 00:02:12 ID:8PS0Mxyo
~モノっちー劇場~

『御』ってさ、便利な漢字だよネ。

これを付けておけば、多少の違和感こそあれど、大体の言葉は丁寧になるワケだし。

「おみおつけ」なんて、漢字で書いたら「御御御付」だよ。どんだけ丁寧にしたらいいんだ!

御モノっちー……なんとなく、おしとやかさが増したかな?

やっぱり、世界に必要なのは丁寧さなのかもネ。

御〇人、御処刑、御泥棒、御戦争、御不治の病……。

ギスギスした話題も、いっきにトゲが無くなるかと思ったけど……そうでもなさそうだよ。

というワケで、御覚悟!

555: 2018/08/30(木) 00:03:22 ID:8PS0Mxyo
────学園生活15日目

キーンコーンカーンコーン

モノっちー『おはようございます、朝7時になりました』

モノっちー『さてさて、今日も1日頑張っていきましょう』

プツン

歩夢(今日は……夕方から、音楽室で食事会)

歩夢(短いようで異様に長く感じた缶詰生活から、ようやく抜け出せる……)

歩夢(そう思うと、腹の虫が一斉にわめきだした)

556: 2018/08/30(木) 00:04:37 ID:8PS0Mxyo
────食堂

せつ菜「~~~~♪」モグモグ

ダイヤ「せつ菜さん。楽しみなのは分かりますが、少々行儀が悪いです」

せつ菜「す、すいません」

せつ菜「……~♪」

花丸「早く夕方にならないかなー……」

しずく「梨子さん。あの場面のセリフ、やっぱりこうした方がいいでしょうか?」

梨子「えーと……」

愛「みんな、浮足立ってるね」

歩夢「うん。愛ちゃんも、楽しみでしょ?」

愛「え!? ま、まぁ……そうだね。愛さんも楽しみだよ!」

歩夢「……?」

557: 2018/08/30(木) 00:05:33 ID:8PS0Mxyo
果南「そういえば、璃奈の姿が見えないけど……」

愛「あー……りなりー、昨日は舞台装置の手伝いしてたから。疲れて寝てるんじゃない?」

しずく「璃奈さんだけ、途中で切り上げていましたね」

愛「愛さんも足、軽くやっちゃったんだよね~……たはは」

果林「まったく……笑うことじゃないわよ。擦り傷で済んだから良かったけど」

梨子「ごめんね、手伝わせちゃって……」

鞠莉「そういえば。生徒名簿のコピー、誰か知らないかしら」

果南「生徒名簿のコピー?」

鞠莉「ええ。昨日、どこかに置き忘れたっぽいのよね」

鞠莉「まあ、知らないならいいわ。また職員室で印刷すればいいだけだし」

558: 2018/08/30(木) 00:06:44 ID:8PS0Mxyo
鞠莉「それじゃ、また夕方会いましょう。お昼の缶詰、先に貰っておくわよ」

千歌「あ、それ……ミカンの缶詰! 私も狙ってたやつ!」

鞠莉「Sorry、早い者勝ちよ」

千歌「ぐぬぬぬぬぬ……」

歩夢「まあまあ。食事会が終わったら、普通のミカンも食べられるようになるよ」

千歌「それは……そうなんだけどさぁ」

果南「そういえば、まだ曜は寝てる?」

千歌「うん。さっきも見に行ったけど、まだ寝てた」

果林「そう……随分と、派手に打ったみたいね」

千歌「うん。曜ちゃん、夕方には来れるかなぁ……」

559: 2018/08/30(木) 00:08:47 ID:8PS0Mxyo
────夕方、音楽室

果林「……いよいよね」

千歌「結局、曜ちゃんは来なさそうだね」

モノっちー「さてと。ボクはこの席で見させてもらうよ」

歩夢「……」

ブーーーーー

歩夢(開演のブザーが鳴る。すると、ステージの両脇からは白い煙が出て来た)

花丸「……火事?」

鞠莉「スモークね。これがないと、ステージの照明が観客席まで届かないらしいわ」

560: 2018/08/30(木) 00:09:52 ID:8PS0Mxyo
愛『レディース&ジェントルマーン……って、ジェントルマンはどこにもいないね』

愛『今宵は、お集まり頂きましてありがとうございます。司会進行は私、宮下愛が務めさせて頂きます』

果南「だいぶ、様になってますね」

ダイヤ「お静かに」シー

愛『それじゃあ、まずはトップバッター。《超高校級のスクールアイドル》優木せつ菜のプチライブ!』

愛『曲は“ネガイゴトアンサンブル”! 私が大好きだった曲を、みんなも大好きになって欲しい、とのことです!』

愛『それじゃ、行ってみよーう!』

561: 2018/08/30(木) 00:11:01 ID:8PS0Mxyo
歩夢(空間を裂くようなレーザー照明と薄赤色の照明。せつ菜ちゃんは、その中心でパフォーマンスを始めた)

せつ菜「きっとShooting Love Shooting Heart♪」

せつ菜「もっと高く高く♪」

モノっちー「Fooooo!」

歩夢(!?)

モノっちー「フッフーゥ↑」

歩夢(いつの間にか、モノっちーはサイリウムを両手に、いわゆる『コール』と呼ばれるものをしていた)

歩夢(つまり、十分ライブを楽しんでいる……筈)

せつ菜「今は小さなタマゴも いつか 高く高く 飛んでゆけるよね♪」

モノっちー「イエッタイガー!」

歩夢(……概ね、好評?)

562: 2018/08/30(木) 00:13:07 ID:8PS0Mxyo
パチパチパチパチ

せつ菜「ありがとうございましたー!」

パチパチパチパチ


せつ菜「ふー……」

歩夢「お疲れ様、せつ菜ちゃん」

鞠莉「冷たい水、用意してるわよ」

せつ菜「ありがとうございます!」ゴクゴク

モノっちー「うんうん。やっぱり、ライブってのはこうでなきゃネ」

モノっちー「近頃は家虎がどうだ、改造サイリウムがどうだって騒がれてるけど。ここじゃあ外圧を気にする必要はないもの」

せつ菜「むー……厄介コール、本当はお断りなんですけどね」

せつ菜「モノっちーさん、外ではやらないでくださいよ?」

モノっちー「うけけけけけ。分かってるよ」

果林「2人が何を喋ってるのか……よく分からないわね」

歩夢「多分、アイドル関係だとは思うけど……」

563: 2018/08/30(木) 00:14:46 ID:8PS0Mxyo
愛『さて、テンションがブチ上がったところで、次は《超高校級の演劇部》桜坂しずくによる歌劇!』

愛『本日はお時間の都合により1曲だけとなっていますが、その才能は遺憾なく発揮されることでしょう!』

愛『曲はモーツァルト作曲のオペラ“魔笛”より“夜の女王のアリア”』

愛『それでは、どうぞごゆっくり……』

歩夢(薄水色の照明とともに、しずくちゃんは姿を現した)

しずく「Der Hölle Rache kocht in meinem Herzen──」

歩夢(いきなり、かなりの高音で始まった曲)

歩夢(聞いたことがある。この曲は音域がかなり高く、相当訓練を積んだ女性でないと、綺麗に音程が取れないらしい)

564: 2018/08/30(木) 00:15:44 ID:8PS0Mxyo
歩夢(並の人間では、途中で喉を潰してしまう。特に顕著なのは、サビの部分だ)

しずく「meine Tochter nimmermehr. hahahahaha──」

歩夢(片腕が使えない代わりと言わんばかりに、ずば抜けた歌唱力で私たちを圧倒する)

しずく「──Rachegötter, hört der Mutter Schwur!」

パチパチパチパチ

しずく「……」

歩夢(やがて。荘厳なオーケストラと共に、その舞台は幕を閉じる)

歩夢(丁寧にお辞儀をして、しずくちゃんは舞台から降りて来た)

歩夢(入れ替わりに、果南さんたちが席を立つ。ピアノの搬入準備だ)

果林「お疲れ、しずくちゃん」

しずく「歌劇をやったのは久しぶりでしたが、充実感があります」

モノっちー「うけけけ……曲名を正確に言わなかったのは、わざとかな?」

果南「曲名?」

565: 2018/08/30(木) 00:16:51 ID:8PS0Mxyo
花丸「確か、夜の女王のアリアって、魔笛に出てくる2曲のことを示していて……」

花丸「1曲目は“ああ、恐れおののかなくてもよいのです、わが子よ!”」

モノっちー「そして2曲目は“復讐の炎は地獄のように我が心に燃え”。まあ実際は、こっちの方が有名だから、“夜の女王のアリア”で十分通じるんだけどネ」

しずく「……ご存知でしたか」

モノっちー「まあネ。分かりやすく才能を発揮するにはもってこいの曲だし、概ね満足かな」

千歌「じゃあ、もしかして……」

モノっちー「それはどうかな。あとは、桜内さんだネ」

モノっちー「総合評価だからネ。ここで台無しになったら……どうなるかな」

愛『それじゃあ、最後は《超高校級の芸術家》桜内梨子によるピアノ演奏!』

愛『曲は、桜内梨子オリジナル“海に還るもの”』

愛『それではどうぞ、ごゆっくり──』

歩夢(ステージに、薄いピンクの照明が灯り、舞台袖から梨子ちゃんが姿を現す)

千歌「頑張れ、梨子ちゃん……」

歩夢(私も、“頑張れ”と心中で呟いた)

566: 2018/08/30(木) 00:18:34 ID:8PS0Mxyo
梨子「……」スッ

梨子「~♪」

歩夢(優しいメロディーが、音楽室を包み込む)

歩夢(梨子ちゃんが滑らせる指から奏でられる音色が、自然と体の力を抜かせる)

歩夢(次第に、音が体に染み込んで来るような、不思議な感覚に囚われて……)

梨子「~♪」


モノっちー「……」

モノっちー「……うけけ」


歩夢(そして。曲がサビに入ろうかといったところで──)

567: 2018/08/30(木) 00:19:27 ID:8PS0Mxyo


ドガッ!



歩夢(──不意に、それは終わりを告げた)

568: 2018/08/30(木) 00:20:59 ID:8PS0Mxyo
歩夢「な……!?」

花丸「何の、音……!?」

果林「何か、“降って”こなかった!?」

歩夢(4つ目の出し物? いや、違う。出し物は3つだった筈だ)

歩夢(ステージの上では、梨子ちゃんが慌てた表情でグランドピアノに駆け寄っていた)

歩夢(そして)

梨子「ひっ……」

歩夢(小さな悲鳴。それを見て、私たちは一目散にステージへと駆ける)

569: 2018/08/30(木) 00:22:15 ID:8PS0Mxyo
梨子「ひ、人が……、上、から……」

歩夢(ステージの上から降って来たモノは、人の形をしていた)

歩夢(人は、見慣れたボードを顔に着けていた)

歩夢(けれども背丈は、私たちの知っている“彼女”のものではない)

歩夢(何より。その人が着ている衣服は……)

歩夢「……」

歩夢(“璃奈ちゃんボード”を、そっと剥がす)

570: 2018/08/30(木) 00:26:03 ID:8PS0Mxyo


璃奈ちゃんボードの下にあったのは、患者服姿の

冷たくなった《超高校級の船乗り》渡辺曜の、死体……。

573: 2018/09/14(金) 22:51:02 ID:rhNgBjp6

     Chapter3

キリングフレンド  非日常編

574: 2018/09/14(金) 22:52:01 ID:rhNgBjp6
歩夢(それはさながら……空から降って来た絶望のようだった)

歩夢(その絶望は……コンサートの終わりを意味していた)

千歌「曜、ちゃん……?」

しずく「嘘、ですよね……」

愛「……」

果南「……っ」

歩夢(なんで、こうなってしまうんだろう)

歩夢(この夕食会が終われば、みんなで仲良くご飯を食べて)

歩夢(彼女もそのうち目を覚ます筈だって、信じてたのに)

歩夢「なんで……」


モノっちー「うけけ……例のアレ、やっちゃいますか。ちょっと席外すよん」

575: 2018/09/14(金) 22:52:50 ID:rhNgBjp6
ピンポンパンポーン

モノっちー『死体が発見されました。一定の捜査時間の後、“学級裁判”を開きます』

モノっちー『オマエら、死体発見現場の音楽室にお集まりください!』

プツン


モノっちー「ほいっと、ただいま」

モノっちー「ほとんどここ(音楽室)にいるから、放送で流す必要もなかったんだけど……まあ、いない人もいるしネ」

モノっちー「さてと。カレーの準備をしながら、まだ来ていない人たちを待ちましょう」

576: 2018/09/14(金) 22:53:38 ID:rhNgBjp6
~数分後~

モノっちー「……来ないネ」

鞠莉「いま居ないのは……かすみと璃奈ね」

せつ菜「あの……かすみさんって、まだお部屋で縛られているんじゃ……」

モノっちー「まったくもう、これじゃあカレーを振舞えないじゃないか!」

愛「じゃあ、愛さんが呼んで来るよ。もしかしたら……りなりーに何かあったのかも知れないから」

歩夢(愛ちゃんの手にあるのは、曜ちゃんの死体についていた“璃奈ちゃんボード”だった)

果林「なるべく早く戻って来るようにね」

愛「大丈夫だって。かすみは縛られたままなんでしょ? だったら連れて来るのは簡単だよ」

タッタッタッ……

577: 2018/09/14(金) 22:54:54 ID:rhNgBjp6
愛「二人とも、部屋に居たよ」

璃奈「……(>_<。)」

かすみ「今度の被害者は……曜先輩みたいですね」

歩夢(……しばらくして、愛ちゃんは二人を連れて帰って来た)

モノっちー「さてと。じゃあ、全員が揃ったところで……」

モノっちー「ぱらぱぱっぱぱー! カレーライス~……と、モノっちーファイル3~!」

モノっちー「オマエら、これでしっかりと腹ごしらえして、万全の態勢で学級裁判に臨むように!」

モノっちー「あ、モノっちーファイルは食べ物じゃないからネ。『※食べられません』とか書いてないけど間違えないようにネ?」

花丸「流石にそこまで悪食じゃないずら……」

モノっちー「というワケで、ボクはこの辺で──」

鞠莉「待ちなさい」

モノっちー「ん?」

鞠莉「動機発表の時、言ったわよね。毒薬の行方も教える、と」

モノっちー「ああ……そもそもあの毒薬は、オマエらが心配するだけ無駄だったんだよ」

ダイヤ「どういう意味ですの?」

578: 2018/09/14(金) 22:55:44 ID:rhNgBjp6

モノっちー「毒薬は毒薬だけど、飲食物に混ぜたところでまったく意味がないモノだからネ!」

579: 2018/09/14(金) 22:56:33 ID:rhNgBjp6
せつ菜「……は?」

モノっちー「文字通りの意味だよ。それなのに、オマエらは意味のないクスリにビクビクして……あー面白かった」

モノっちー「というワケだから……特別に配膳も済ませたし、さっさと食って働け野郎共!」

歩夢「……」

歩夢(モノっちーに怒鳴られ、私たちは出された食事を胃袋に押し込んでいく)

歩夢(……モノっちー特製のカレーライスは、憎たらしいほど、が付くほどに美味しかった)

歩夢(なんの心配もなく食事が出来るということが、こんなにも有難いことだったなんて……)

歩夢「……ご馳走様でした」

歩夢(ゆっくりと……身体の底から活力が湧いてくるようだった)

歩夢(周りのみんなも、食べ終えたようだ)

歩夢(始めなきゃ……ね)

580: 2018/09/14(金) 22:58:24 ID:rhNgBjp6
捜査開始!

歩夢「まずは……」

歩夢(モノっちーファイルを手に取り、情報を確認する)

『被害者となったのは超高校級の船乗り、渡辺曜。死体発見現場は校舎3階、音楽室』

『死亡推定時刻は昨晩18:00頃、発見は翌18:30頃、夕食会の最中』

『後頭部を強く打った形跡あり。左腕に針の跡が1か所あるが、それは輸血及び点滴のチューブを繋いだ際のもの』

『また、被害者の体内から毒物及び点滴以外の薬品類は一切検出されていない』

せつ菜「……一瞬、眠っている間に毒を盛られたかと思いましたが、そうではないみたいですね」

歩夢「そうみたいだね。今回も死因が書いてないのは気になるし……」

歩夢(それに、この死亡推定時刻って……)

《モノっちーファイル3》のコトダマを入手しました。

581: 2018/09/14(金) 22:59:02 ID:rhNgBjp6
歩夢(次は……曜ちゃんの死体を調べよう)

歩夢「何か見つかった?」

花丸「……傷らしい傷は、後頭部だけだったずら」

鞠莉「死因が分からないから何とも言えないけれど……曜の死体で気になるのは2つね」

せつ菜「2つ?」

鞠莉「1つは患者服のヒモ。腰に巻いて結ぶ紐なんだけど……どういうワケか濡れているのよね」

歩夢(本当だ。少し乾いているけど……確かに湿っている)

花丸「もう1つは、曜ちゃんの顔。こっちも触ってみたら分かるよ」

せつ菜「肌色の……ファンデーションですかね?」

鞠莉「恐らくね。ただ、曜本人が化粧するとは考えにくいし……」

花丸「犯人は死化粧でもやろうとしたずら……?」

《患者服の紐》《ファンデーション》のコトダマを入手しました。

582: 2018/09/14(金) 22:59:43 ID:rhNgBjp6
せつ菜「次は……キャットウォークを調べに行きませんか?」

歩夢「キャット……?」

せつ菜「ステージの上、あの照明器具がぶら下がっている場所のことです」

歩夢「なるほど……」


────舞台・キャットウォーク

歩夢「やっぱり……曜ちゃんはここから落とされたのかな」

せつ菜「だと思います。つまり、梨子さんがピアノを演奏している時、犯人はここにいたってことですよ!」

かすみ「だといいんですけどね~」

せつ菜「……何か見つけたんですか?」

かすみ「ずっとお部屋にいた私に分かる筈ないじゃないですか。あ、でもあそこに付いてた跡とロープは気になるかなーってくらいです」

かすみ「じゃ、かすみんはこの辺で失礼しまーす」

歩夢「あ、走ると危ないよー」

<ワカッテマース

583: 2018/09/14(金) 23:01:00 ID:rhNgBjp6
歩夢(かすみちゃんの話が気になったので、照明器具を調べてみる)

歩夢「とはいえ、どれも少しばかり埃をかぶっている程度で……ん?」

歩夢(3列並んだ照明機のうち……音楽室の座席の方から見て、一番手前、その真ん中)

歩夢(まるで溝のように、不自然に埃の付いていない部分があった)

歩夢「しかも、ここの真下は……」




歩夢「ちょうど、グランドピアノ……曜ちゃんの死体が落ちて来た場所……」

せつ菜「見つけましたよ、歩夢!」

歩夢「え?」

せつ菜「ロープの束です! 犯人はこれを使って、曜さんをこの照明器具にぶら下げていたんじゃないでしょうか?」

歩夢「……」

歩夢「確かに、そういう方法もあるかも……」

歩夢(ロープの両端は、切ったような痕跡は見当たらない……)

《照明機》《ロープの束》のコトダマを入手しました。

584: 2018/09/14(金) 23:02:29 ID:rhNgBjp6
歩夢「ねえせつ菜ちゃん。ここに来る道って、あのハシゴしかないんだよね?」

せつ菜「ええ。危険だから、あまり来ないように……って話になっていましたよ」

歩夢「確か、ハシゴの下って……」


────舞台袖(上手側)

愛「うん。ちょうど、アタシが音響とか照明とか色々やってたところだね」

歩夢「やっぱり……」

せつ菜「ということは、夕食会の最中に誰かがここを通ったら、すぐに分かりますよね?」

愛「うん。ピアノを運び終えたダイヤっちたちはここを通ったけど……それ以外は誰も見なかったよ」

せつ菜「誰も、ですか」

愛「間違いないよー。せっつんはステージから直で降りてたし、しずくっちは下手側から出たからね」

愛「それに、あの3人もすぐにそこの扉から客席に戻ってたよ」

せつ菜「うーん……愛さんに見つからずに、キャットウォ-クから曜さんを落とす方法……」ブツブツ

歩夢「……」

《キャットウォークのハシゴ》《愛の証言》のコトダマを入手しました。

585: 2018/09/14(金) 23:03:10 ID:rhNgBjp6
────舞台袖(下手側)

せつ菜「スモークが?」

梨子「うん。元々、せつ菜ちゃんの番だけじゃなくて、ショーが終わるまではもつ筈だったんだけど……」

しずく「どうやら、途中でスモークが切れてしまっていたようなんです」

歩夢(そう言って、しずくちゃんが差し出して来たのは、スモークを発生させる手作りの箱……らしいのだが)

歩夢「何も入ってないように見えるけど……」

しずく「いえ、それは全部気体になったんです。ドライアイスの煙を使っていましたから」

歩夢「ドライアイスって……あのドライアイス?」

梨子「うん。モノっちーに訊いたら、冷凍庫に保存してあることを教えてくれたから……」

しずく「それで、必要分を持ってきて、発砲スチロール製のこの箱に入れていたんです」

せつ菜「分量を間違えた、というワケではないんですよね」

しずく「それはありません! 劇団に入る前に、演出のお勉強もしましたから。量はキッカリ、出し物が終わるまでだった筈です」

歩夢(これも……手掛かりになるのかな?)

《ドライアイス》のコトダマを入手しました。

586: 2018/09/14(金) 23:03:53 ID:rhNgBjp6
せつ菜「あと、調べないといけないところは……」

歩夢「それなら、話を聞いておきたい人が居るんだよね。まずは璃奈ちゃん、かな」


璃奈「……璃奈ちゃんボードについて(・v・)?」

歩夢「うん。璃奈ちゃんの付けてるそれって、複数あるのかなーって」

璃奈「ないよ、これはお手製(・v・)」

果林「昨日、夕食会の準備をしている時にもその話になったわね」

果林「確か、持ち方をちょっと工夫するだけで、前が見えるようになる……だったかしら」

璃奈「うん。ただ普通に持つだけじゃ、何も見えない。けど、実は紙にちょっとだけ穴が開いてる(・v・)」

璃奈「でも、この持ち方を知っているのは私だけ。だから、普通は視界を確保するのは無理(・v・)」

せつ菜「愛さん、土下座までして持ち方を教えて貰おうとしていましたけど……」

璃奈「いくら愛ちゃんでもこれだけはダメ! 璃奈ちゃんボード、大事なものなの(`∧´)!」

587: 2018/09/14(金) 23:04:53 ID:rhNgBjp6
歩夢「でも、曜ちゃんの死体に被せられていたってことはさ……」

璃奈「うん、なくしちゃってた。昨日、お風呂に入ってる間に……(>_<。)」

歩夢「お風呂、って……」

璃奈「大浴場の方だよ。やっぱり、お部屋のシャワーだけだと不便だから……こっそり夜中に入ってるの(・v・)」

果林「じゃあ、犯人はそこを狙って、璃奈ちゃんボードを盗んだってことかしらね」

璃奈「かも知れない。脱衣所のカゴに入れてたから……(>_<。)」

璃奈「あ。でも、夜中に入ってること、誰にも言ってなかったよ(>_<。)」

せつ菜「……そもそも、何のために犯人はボードを盗んだのでしょう」

歩夢「それなんだよね……。どうせ、すぐに被害者が誰か分かっちゃうのに」

璃奈「そういえば。愛ちゃんが持ってきた璃奈ちゃんボード、裏に両面テープが付いてたんだけど……(>_<。)」

果林「曜ちゃんの顔に貼り付けていたんでしょうけど、何がしたかったのかさっぱり分からないわね」

《璃奈ちゃんボード》《璃奈の証言》のコトダマを入手しました。

588: 2018/09/14(金) 23:05:27 ID:rhNgBjp6
歩夢(音楽室で調べられそうなことは、もうなさそうかな……)

歩夢「ねえ、千歌ちゃんがどこに行ったか知ってる?」

せつ菜「そういえば……いつの間にかいませんね」

果林「千歌ちゃんなら、音楽室を出てどこかに行ったわよ」

璃奈「探さないといけないね(・v・)」

歩夢「そっか……。じゃあ、先に保健室に行こっか」

せつ菜「ですね。何か手掛かりがあるかも知れませんし」

果林「私たちの方でも、千歌ちゃんを探しておこうかしら」

せつ菜「助かります!」

589: 2018/09/14(金) 23:06:18 ID:rhNgBjp6
────保健室

歩夢(保健室にいたのは、ダイヤさんと果南さん。2人は、何かを話し込んでいたようだ)

ダイヤ「──では、その情報だけで犯人を特定するのは難しい、ということですか」

果南「……そうなるね」

歩夢「何の話をしていたんですか?」

果南「曜がここに運び込まれてから、誰が来たかって話だよ」

ダイヤ「千歌さんが何度かここを訪れたことだけはハッキリとしているのですが……」

果南「入院の面会とはワケが違うからね。いつでも自由に来れるから」

果南「……まあ、千歌なら何か知ってるかもしれないけど」

せつ菜「そうですか……」

ダイヤ「とはいえ、何も手掛かりがなかったというワケではありませんよ」

歩夢(そう言ってダイヤさんは、曜ちゃんが寝かされていたベッドの布団をめくった)

歩夢(そこにあったのは……)

590: 2018/09/14(金) 23:07:13 ID:rhNgBjp6
歩夢「……!」

ダイヤ「AB型の輸血パックと点滴。これは、曜さんに繋いでいたものでしょう。血液型も曜さんと一致しているようですし」

ダイヤ「チューブが繋がったままだと音楽室に運ぶには邪魔になるから、ここで外した……概ね、そんなところでしょうね」

ダイヤ「ですが、問題はこちら」

せつ菜「これって、ハンマーですよね……」

ダイヤ「最初は、落ちて来た衝撃で曜が死んだと思ってたけどさ。多分、本当の凶器はこのハンマーなんだろうね」

果南「後頭部にしか傷がないのも、これで説明出来るからさ」

歩夢(確かに、モノっちーファイルの外傷の話はこれで納得が出来るけど……)

歩夢「それにしては……シーツもハンマーも、綺麗すぎないかなぁ……?」

せつ菜「洗ったり、取り換えたりしたのではないでしょうか」

歩夢「うーん……」

歩夢(何かが引っ掛かるんだよね……)

《輸血パックと点滴》《ハンマー》のコトダマを入手しました。

591: 2018/09/14(金) 23:08:31 ID:rhNgBjp6
歩夢「あとは、千歌ちゃんを探すだけなんだけど……」


ピンポンパンポーン

モノっちー『は~いお待たせ、みんなのアイドルモノっちーだよ~ん』

モノっちー『今日は~、学級裁判をやろうと思うんですよ、てへ☆』

モノっちー『……うん、このキャラはやっぱり没だネ。テコ入れの道はまだまだ険しいネ』

モノっちー『というワケで、いつもの赤い門の前にお集まりください!』

モノっちー『うけけ……オマエらの知恵比べ、楽しみにしてるよ』

プツン


歩夢「そんな……このタイミングで……」

せつ菜「前回の捜査もそうでしたが、相変わらず狙ったようなタイミングで打ち切ってくれますね」

果南「まあまあ。千歌もどうせ来るんだし、話は後でもいいんじゃないかな」

果南「……多分、歩夢も同じことが気になっているんでしょ?」

ダイヤ「とにかく、あの場所に向かいましょう」

592: 2018/09/14(金) 23:09:10 ID:rhNgBjp6
────赤い門の前

歩夢(アナウンスを聞いたみんなが、集まって来る)

梨子「……」

花丸「……」

璃奈「……(>_<。)」

鞠莉「……」

かすみ「……」

歩夢(誰も口を開かない。言うべき言葉を探り合っているような……そんな雰囲気だ)

千歌「……」

歩夢(そして。最後の1人、千歌ちゃんが姿を現したところで門が開き、エレベーターもその口を開ける)

593: 2018/09/14(金) 23:09:46 ID:rhNgBjp6
歩夢「ねえ、千歌ちゃん……」

千歌「……」

果南「千歌、歩夢が呼んでるよ」

千歌「これだけは言わせて。“私は今朝、曜ちゃんがベッドで寝ているのを見た”。間違いなく、死んでなかった」

果南「……だよね。今朝、そんなやり取りをした記憶があるからさ」


果南『そういえば、まだ曜は寝てる?』

千歌『うん。さっきも見に行ったけど、まだ寝てた』


果南「いよいよ、モノっちーファイルも信用出来なくなって来たかもね……」

千歌「……」

《千歌の証言》のコトダマを入手しました。

594: 2018/09/14(金) 23:10:21 ID:rhNgBjp6
花丸「3人とも、何やってるずらー!」

しずく「もうみんな乗ってますよー!」

果南「ごめんごめん、今行くよ」

歩夢「行こっか、千歌ちゃん」

千歌「……」

千歌「嘘つき」

歩夢「……え?」

千歌「……」

歩夢(それっきり、千歌ちゃんは一切口を開こうとせず)

歩夢(気まずい雰囲気のまま、私たちはエレベーターに乗り込み……)

歩夢(エレベーターは、降下を始めた)

595: 2018/09/14(金) 23:11:22 ID:rhNgBjp6
歩夢(鉄の箱は、振動を繰り返しながら落ちてゆく)

歩夢(こんなことを、あと何回やらなければいけないんだろう)

歩夢(燦然と輝く絶望と真っ暗な希望が、頭の中で交錯する)

歩夢(希望も絶望もグチャグチャになって、腐った何かへと様相を変え……)

歩夢(……やがて、鉄の箱は動きを止めた)

596: 2018/09/14(金) 23:12:22 ID:rhNgBjp6
────地下???階・裁判場

モノっちー「いらっしゃ~い! 模様替えはモノっちーちゃんにお任せ~!」

モノっちー「今回は海原をモチーフにした背景にしてみたんだよネ。照明もわざわざ青っぽい雰囲気にしてみたりさ!」

モノっちー「というワケでオマエら、心ゆくまで学級裁判を楽しんじゃって頂戴な!」

歩夢(モノっちーの掛け声で、みんな席につく)

歩夢(ぽつぽつと目立ち始めた空席を見ながら、覚悟を決める)

597: 2018/09/14(金) 23:13:12 ID:rhNgBjp6
歩夢(これが3度目の、学級裁判……)

歩夢(《超高校級の船乗り》渡辺曜ちゃん……)

歩夢(彼女は、泳げなくなったことに悩んでいた)

歩夢(才能を活かして人命救助活動をする彼女だからこそ、だったのだろう)

歩夢(けれども、彼女は努力していた。泳力を取り戻そうとしていた)

歩夢(そんな彼女の努力を終わらせた犯人が……私たちの中にいる)

歩夢(私はその人を、許せない)

歩夢(友達を裏切った犯人を……きっと許せないだろう)

歩夢(だから、それを見つけ出す)

歩夢(希望と絶望が連鎖する、この“学級裁判”で──!)

598: 2018/09/14(金) 23:14:01 ID:rhNgBjp6
~学級裁判準備~
衆人環視の中起きた事件は、夕食会を血塗られたパーティへと変えてしまった。
目撃証言と噛み合わない手掛かり、不鮮明な死因……。
謎だらけの事件を紐解き、隠された真実を明るみに晒せ!

コトダマリスト
《モノっちーファイル3》
被害者は渡辺曜。死亡推定時刻は昨晩18時頃、発見は夕食会の最中。
後頭部を強く打った形跡があり、輸血、点滴のチューブを繋いだ際の跡も見つかっている。
体内から毒物及び点滴以外の薬品類は一切検出されていない。

《患者服の紐》
被害者が着ていた患者服がはだけないよう、腰に巻いて結ぶもの。
何故か少し濡れていた。

《ファンデーション》
被害者の顔には、何故か肌色のファンデーションが塗られていた。

《照明機》



 を参照。
何かの跡がついており、その真下は死体が落ちて来た場所である。

599: 2018/09/14(金) 23:15:32 ID:rhNgBjp6
《ロープの束》
キャットウォークで見つかったもの。
両端に切ったような痕跡はない。

《キャットウォークのハシゴ》
舞台袖からキャットウォークに向かう、唯一の道。
ここを通る際には、舞台袖(上手側)を必ず通ることになる。

《愛の証言》
夕食会の最中、ずっと舞台袖(上手側)にいた愛。
途中、ピアノを運び終えたダイヤ、果南、鞠莉の3人がそこを通ったが、
3人ともすぐに客席に戻っており、それ以外の人は見ていないという。

《ドライアイス》
スモークとして使われていたもの。
しずく曰く3つの出し物すべてが終わるまでもつ筈だったが、何故か減っていた。

《璃奈ちゃんボード》
死体の顔に貼り付いていたもの。
璃奈がいつも付けていたものであり、唯一無二。
裏には両面テープがついていた。

《璃奈の証言》
璃奈はいつも、夜中にこっそり大浴場に入っている。
その際、脱衣所に置いていた璃奈ちゃんボードを何者かに盗まれた可能性が高いらしい。

600: 2018/09/14(金) 23:16:38 ID:rhNgBjp6
《輸血パックと点滴》
気を失っていた曜につけられていたもの。
至って普通の輸血パック(AB型)と、至って普通の点滴。
チューブに繋がった状態で、保健室に放置されていた。

《ハンマー》
保健室、曜が寝ていたベッドに落ちていた。
シーツ共々、綺麗なままだった。

《千歌の証言》
今朝、千歌は保健室で寝ている曜を目撃していた。
その時点でまだ息はあったという。

604: 2018/09/30(日) 20:06:56 ID:nUU6goz6

 学 級 裁 判 
  開   廷!

605: 2018/09/30(日) 20:08:10 ID:nUU6goz6
モノっちー「まずは学級裁判の簡単な説明を行いましょう」

モノっちー「学級裁判では“誰がクロか”を議論し、最終的に投票で全てを決定します」

モノっちー「正しいクロをオマエらの過半数が指摘出来れば、クロだけがオシオキ」

モノっちー「不正解だった場合は、クロは卒業、残ったシロは全員オシオキです!」

モノっちー「ちなみに、ちゃんと誰かに投票してネ。投票を放棄した人もオシオキだからネ?」

かすみ「今回の事件、かすみんはあんまり流れを把握出来てないんですよね~。ほら、ずっとお部屋でしたから」

かすみ「順を追って説明して欲しいんですけど……お願い出来ますか?」

鞠莉「あなたは場を引っ掻き回すだけでしょう」

かすみ「うーん……それを言われちゃうと痛いです。けど事件が起きた時、璃奈さんもそこには居なかったんですよねえ?」

かすみ「だったら、彼女のためにも説明は必要だと思うんですけど」

606: 2018/09/30(日) 20:09:11 ID:nUU6goz6
ダイヤ「璃奈さんをダシにするのは感心できませんが……仕方ありませんわね」

せつ菜「こういうのは、ずっと観客席にいた人たちに説明して貰った方が分かりやすいかも知れません」

花丸「じゃあ、オラが説明するずら」

璃奈「……お願い(・v・)」

花丸「まずは、夕食会の出し物が決まったところから。出し物の順番は、せつ菜さん、しずくちゃん、梨子さんの順番だった」

果林「せつ菜ちゃんが小さなライブ、しずくちゃんが歌劇、梨子ちゃんがピアノだったわね」

花丸「それから、ピアノを運ぶ係として、ダイヤさん、鞠莉さん、果南さんの3人が。音響と照明、アナウンスは愛さんが担当することになったんだ」

かすみ「結構本格的だったみたいですね。かすみんも見たかったですよ~」

花丸「本番になって、せつ菜さんとしずくちゃんの催しは、何事もなく進行していった」

梨子「けれど、最後。私がピアノを弾いている最中に……何かが、グランドピアノめがけて落ちて来た」

璃奈「……それが、曜ちゃんだったんだね(>_<。)」

607: 2018/09/30(日) 20:10:12 ID:nUU6goz6
果林「死体は患者服を着ていて、何故か、璃奈ちゃんボードを付けていた……」

愛「で、それをりなりーに届けるついでに、2人を呼びに行ったのがアタシだった」

花丸「……ここまでが、今回の事件の大雑把なまとめずら」

果南「曜が患者服だったのは、2日前、曜がプールで大怪我を負ったからだよ」

果南「気を失ったままだったから、保健室に寝かせていた……一応、補足」

かすみ「ありがとうございます、よく理解出来ました。ね、璃奈さん?」

璃奈「……ありがとう(・v・)」

しずく「うーん……考えれば考えるほど、今回も謎だらけな気がします」

鞠莉「謎が多いなら、順番に片づけて行けばいいだけ……そうでしょ、歩夢」

歩夢「え、あ、はい!」

歩夢(でも……実際、今回の事件は分からないことが多すぎる)

歩夢(それでも……やるしかないんだ!)

千歌「……」

608: 2018/09/30(日) 20:11:11 ID:nUU6goz6
【ノンストップ議論 開始!】
[|モノっちーファイル3>
[|ファンデーション>
[|璃奈ちゃんボード>

かすみ「まずは前提の確認なんですけど~……」

かすみ「曜さんの死因は、少なくとも【落下の衝撃によるものではない】という話でいいですよね?」

璃奈「……なんでそうなるの(・v・)?」

果林「今回のモノっちーファイルにも【死因は書いていなかった】筈……よね」

愛「あれ? だったら【突き落とされて死んだ】可能性だってあるんじゃないの?」

梨子「死因不明……早速、大きな壁にぶち当たっちゃったわね」

せつ菜「【毒が関係していない】のは確かですから……ん~……?」

果南「ちょっとかすみ、収拾がつかなくなってるんだけど」

かすみ「私のせいにしないでください!」

歩夢(色んな可能性が考えられる死因……とりあえず、ないと言い切れる可能性からしらみ潰しにするしかなさそうだね)

609: 2018/09/30(日) 20:12:10 ID:nUU6goz6
[|モノっちーファイル3>→【突き落とされて死んだ】

歩夢「それは違うよ!」

Break!

歩夢「待って愛ちゃん。突き落とされて死んだとは考えられないよ」

歩夢「曜ちゃんは……少なくとも、落ちてくるより前には〇されていたんだと思う」

愛「なんでそう言い切れるのさ」

歩夢「曜ちゃんの死亡推定時刻は昨日の18時。つまり、落ちて来た曜ちゃんは既に死体だったってことなんだよ」

愛「あれ、そうなの?」

花丸「モノっちーファイルに書いてあったずらよ」

かすみ「しっかりしてくださいよ愛先輩。モノっちーファイルは、一番ハッキリとしている手掛かりなんですから」

愛「……悪かったよぅ。そんなに責めなくってもいいじゃん」

610: 2018/09/30(日) 20:13:28 ID:nUU6goz6
ダイヤ「ともかく、犯人の行動パターンはおおよそ2つといったところでしょう」

ダイヤ「昨日のうちに保健室に曜さんを〇し、音楽室まで運んだか。或いは目を覚まさない曜さんを運び、音楽室で〇したか」

ダイヤ「曜さんは重体でしたから、目を覚まして自分から行動した線は薄いと見ていいでしょう」

千歌「……あり得ない」

ダイヤ「千歌さん。あり得ないと言われましても、何があり得ないのでしょう」

千歌「やっぱり、曜ちゃんが死んだのは昨日なんかじゃないよ」

梨子「千歌ちゃん、その話はもう終わったことで」

千歌「終わってない」キッパリ

しずく「何か、根拠があるんですか?」

千歌「……」

かすみ「あーもう、議論が進まないじゃないですか!」

歩夢(千歌ちゃんが言いたいこと……やっぱり、アレのことだよね)

【コトダマ一覧より選択】

611: 2018/09/30(日) 20:14:24 ID:nUU6goz6
→【千歌の証言】

歩夢「今の流れに水を差すんだけど……千歌ちゃんは今朝、曜ちゃんが保健室で寝ていたのを見たらしいんだ」

歩夢「しかも、その時点ではまだ生きていた……だよね、千歌ちゃん」

千歌「……」

果南「ちょっと。千歌が黙ったら話が進まないでしょ」

ダイヤ「千歌さん、この裁判が始まった時から虫の居所が悪そうですが……何かあったのですか?」

千歌「……」

梨子「ねえ、喋ってくれないと分からないよ!」

かすみ「どーせ、千歌先輩の嘘でしょう? 議論をかく乱させるための……あっ」

かすみ「もしかしたら、千歌先輩が曜先輩を〇した犯人だったりして」

愛「いやいや、それはないっしょ」

ダイヤ「千歌さんは曜さんと仲が良かった筈です。仲の良い人を〇すなんて……もう、考えたくありません」

612: 2018/09/30(日) 20:15:32 ID:nUU6goz6
しずく「ですが、千歌さんの証言を信じられないのも確かです」

せつ菜「千歌さん以外に、今日保健室に足を運んだ人はいませんか?」

「「……」」

果林「いない、みたいね」

かすみ「というワケで、千歌先輩の証言は聞かなかったことにしましょう。歩夢先輩も、こんな人に付き合わせれて大変でしたね」

歩夢「え、あー……」

千歌「あるよ、1つだけ」

歩夢(……え?)

千歌「ずっと黙ってたけど……あるよ。私の証言と死亡推定時刻、そのどっちもが成り立っちゃうパターン」

梨子「いや……それは無理があるんじゃない? まさか、死んだ人間が生き返ったなんて言うつもりなの?」

花丸「もしくは、何らかの方法で死亡推定時刻を誤認させたか……」

モノっちー「推理小説でありがちな“部屋の温度をいじるとかで、死亡推定時刻を誤認させる方法は一切通用しない”とだけは言っておくよ」

モノっちー「ボクには監視カメラがあるんだ。死亡推定時刻なんて言い方をしてるけど、大体の〇害時刻だと思ってくれていいよ」

千歌「そんな面倒な方法じゃなくて……“私が見た曜ちゃんが偽物だった場合”だよ」

613: 2018/09/30(日) 20:16:34 ID:nUU6goz6
しずく「曜さんが偽物……?」

鞠莉「あなたが見た曜は誰かの変装だった、ということでしょ?」

千歌「うん、そうだよ」

せつ菜「ですが、変装だなんてそんな──」ハッ

ダイヤ「その方法なら、矛盾が起きませんが……」

千歌「うん。あの人なら、それが簡単に出来る」

千歌「そうやって、私を騙したんだよね」

千歌「歩夢ちゃんも……もう、分かったよね」

歩夢(寝ている曜ちゃんに変装が出来た人……)

歩夢(それは……)

【怪しい人物を指名しろ!】

614: 2018/09/30(日) 20:17:23 ID:nUU6goz6
→【天王寺璃奈】

歩夢「璃奈ちゃん……だよね」

璃奈「……(・v・)」

歩夢「《超高校級のディスガイザー》……変装師」

歩夢「前に言ってたよね。背は変えられないけれど、見聞きさえしていれば他人の顔と声を真似られる、って……」

歩夢(けど、本当に璃奈ちゃんが……?)

果林「今回の場合、ベッドに入って、ただ眠っている曜ちゃんを演じるだけだから……」

千歌「十分可能、だよね」

璃奈「……(・v・)」

かすみ「まさか、璃奈さんまでだんまりを使う気ですか~?」

梨子「このまま反論がないなら、決定になっちゃいそうけど……」

愛「ま、待ってよ! それだとおかしくない?」

璃奈「……愛ちゃん(・v・)?」

615: 2018/09/30(日) 20:18:02 ID:nUU6goz6
愛「りなりーが犯人だったら、曜をキャットウォークから落とすタイミングがないじゃん! だってりなりーはずっと部屋にいたんだよ!?」

花丸「……言われてみれば、そうずらね」

鞠莉「実は私も、それが気になっていたのよね~。璃奈が音楽室に姿を現したのは事件発生後、愛が連れて来たから」

鞠莉「つまり。私たちの中で唯一曜に変装出来る彼女には、事件発生時に鉄壁のアリバイがあるのよ」

果南「〇害時刻の謎が解けたと思ったら、今度はアリバイの壁……」

かすみ「だったら、そこにトリックがあるのかも知れません」

愛「トリックって、どんなトリックなのさ」

かすみ「それはかすみんに言われても困りますよ~。曜先輩が落ちた瞬間を見たワケじゃないんですから」

歩夢「でも、ただ落とすだけじゃダメなんだ。キャットウォークに登るには、舞台袖上手側のハシゴを通る以外に方法がないし……」

愛「それに、アタシがずっと舞台袖にいた。途中でダイヤっち、果南、マリーの3人がそこを通ったけど、りなりーの姿は見てないよ」

616: 2018/09/30(日) 20:18:59 ID:nUU6goz6
かすみ「本当ですか~? 璃奈さんを庇っている……とかはナシですよ?」

愛「庇ってるワケじゃないって! アタシは本当のことを言ってるだけだよ」

歩夢「確かに怪しいけど、愛ちゃんの話はやっぱり信じていいと思う。璃奈ちゃんが個室……少なくとも音楽室に居なかったのは確かだし」

梨子「けれども、この問題を解決しないことには、真相を解明出来ないのよね」

花丸「容疑者は1人、完璧なアリバイ……」

せつ菜「やはり、あのロープがトリックの肝ではないでしょうか」

果林「ロープ?」

せつ菜「キャットウォークに落ちていた物です。あれを使えば、アリバイを確保出来る……かも知れません」

617: 2018/09/30(日) 20:19:50 ID:nUU6goz6
【ノンストップ議論 開始!】
[|ロープの束>
[|照明機>
[|愛の証言>

せつ菜「トリックに必要なのは、あのロープです」

千歌「それをどう使うの?」

せつ菜「犯人はまず、照明機に【曜さんの死体をくくりつけて】おいたんです」

せつ菜「その後、愛さんや私たちが来るより早くからキャットウォークに隠れていて……」

せつ菜「タイミングを見計らい【ロープを切って】曜さんを落としたのではないでしょうか」

せつ菜「そして、私たちが死体に気を取られている隙に、こっそり音楽室から抜け出すんです」

果南「そんなに上手く行くかなぁ……」

花丸「トリックとは、地道な作業の塊ずらよ」

しずく「ですが【最初からキャットウォークに潜んで】いれば、誰かに見つかることもありませんね」

璃奈「……(・v・)」

歩夢(せつ菜ちゃんの推理には、無理がある……。それを証明出来る証拠を、突きつけるんだ!)

618: 2018/09/30(日) 20:20:28 ID:nUU6goz6
[|ロープの束>→【ロープを切って】

歩夢「それは違うよ!」

Break!

歩夢「ロープを切って落としたっていうのは……考えられないんじゃないかな」

せつ菜「どうしてですか?」

歩夢「あのロープの両端、どっちの断面も、先端は綺麗じゃなかったんだ」

歩夢「普通、何かでロープを切ったら、綺麗な切断面が出来上がる筈だよね?」

歩夢「それに隠れていたんだったら、わざわざロープで固定しておく理由もないと思うんだ。直接落とせばいい話だし……」

鞠莉「そもそも、犯人の目的がアリバイを確保することだとしたら、キャットウォークに上ったこと自体が不自然なのよ」

しずく「どうして不自然なんですか?」

鞠莉「死体が落ちた時……つまり、梨子の演奏中のアリバイが欲しいのなら、一緒に音楽室で演奏を聴いていればいい」

花丸「璃奈ちゃんが犯人だとしたら、誰にも姿を目撃されないまま犯行を行ったことになる。それは、犯人の心理を踏まえると矛盾していることになる……」

鞠莉「そういうことよ。合ってるわよね、歩夢」

歩夢(そ、そこまでは考えられていないよ……!)

619: 2018/09/30(日) 20:21:18 ID:nUU6goz6
ダイヤ「では、犯人は璃奈さんではない。と言いたいのですね?」

鞠莉「ええ。けれど、今回の事件に一枚噛んでいるのは間違いないと思うわ」

千歌「……共犯者がいる、ってこと?」

鞠莉「f㎜……それも考えにくいのよねえ」

梨子「学級裁判のルールじゃ、ここから出られるのは誰かを〇した人だけだった筈……」

果南「共犯者って、それに含まれるの?」

モノっちー「含まれないよ。クロになるのは、〇人を実行した人ただ1人だネ」

鞠莉「でしょうね。つまり、誰かの〇害に協力を申し出たところで、卒業出来るというメリットはないのよ」

かすみ「ここから出ること以外にも、その人にとってはメリットがあったかも知れませんよ? 例えば、曜先輩が邪m──」

千歌「……かすみちゃん」

かすみ「じょ、冗談ですって千歌先輩! そんなに睨まないでくださいよ~」

620: 2018/09/30(日) 20:23:15 ID:nUU6goz6
梨子「なんだか、議論が振り出しに戻っちゃったわね……」

しずく「手掛かりは結構出てきましたが、どれも矛盾するものばかりで……」

果林「そうかしら。可能性はまだあるわよ」

梨子「どんな可能性なの?」

果林「璃奈ちゃんにしか、曜ちゃんに変装することが出来ない。でも、璃奈ちゃんにはアリバイがある」

果林「だったら“曜ちゃんをキャットウォークから落としたのは別の誰かだった”可能性は十分あると思わないかしら」

ダイヤ「それは、共犯の話をしているのですか? だとしたら、既にその話は否定され──」

果林「……共犯なんて、優しい話じゃないわ。“利用した”のよ」

璃奈「利用……(・v・)?」

果林「璃奈ちゃんを騙して、曜ちゃんに変装させた」

果林「そして、璃奈ちゃんに完璧なアリバイがある間に、音楽室で死体を落とす。こうすれば、一見打ち破れない矛盾が出来上がるのよ」

果林「実際そうだったんじゃないかしら、愛ちゃん」

愛「……え?」

621: 2018/09/30(日) 20:25:22 ID:nUU6goz6
果林「璃奈ちゃんと仲の良いあなたなら、彼女を騙して犯行のお手伝いをさせることは……可能よね」

愛「いやいやいやいや、なんでそうなるの!?」

歩夢「待って果林さん。愛ちゃんは、ずっと夕食会の進行役をやってた筈だよ?」

歩夢「それに、キャットウォークに上るにはあのハシゴしかなくて、愛ちゃんは誰も、みてな……」ハッ

果林「気づいたみたいね、歩夢ちゃんも」

かすみ「んー……つまりどういうことなんですか~?」

果林「何も私だって、仲がいいからって理由だけで疑っているワケじゃないわ」

果林「舞台袖を通った人は、ダイヤちゃんたち以外にはいない……それを証言したのは、愛ちゃんだったわね」

果林「けど、その“愛ちゃん自身がキャットウォークに行っていた”としたら、全ての辻褄が合うのよ」

千歌「時間は十分あるし、愛ちゃんなら誰かに見つかる心配もない……」

622: 2018/09/30(日) 20:26:00 ID:nUU6goz6
愛「ちょ、ちょっと待ってよ。愛さん、本気で疑われてる?」

しずく「疑われてるというか……」

花丸「最重要容疑者ずら」

歩夢(今思い返せば……今朝の愛ちゃん、どこか様子がおかしかったんだ)


歩夢『うん。愛ちゃんも、楽しみでしょ?』

愛『え!? ま、まぁ……そうだね。愛さんも楽しみだよ!』

歩夢『……?』

果南『そういえば、璃奈の姿が見えないけど……』

愛『あー……りなりー、昨日は舞台装置の手伝いしてたから。疲れて寝てるんじゃない?』


歩夢(なんだろう。上手く言い表せないけれど、何かを隠しているような……)

623: 2018/09/30(日) 20:26:39 ID:nUU6goz6
歩夢「ねえ。愛ちゃんが犯人じゃないなら、璃奈ちゃんには何も頼み事はしてないってことだよね?」

愛「し、してるワケないじゃん!」

璃奈「……(・v・)」

歩夢「だったら──」

ダイヤ「ぶっぶーーーーーですわ!!」

反論!

ダイヤ「皆さん、憶測で物を語り過ぎではありませんか?」

ダイヤ「愛さんが疑わしいことは確かです。しかし、璃奈さんとは仲が良かったのですよ?」

歩夢「で、でも……」

ダイヤ「それに、穴があるのです。あなたたちの推理には……!」

624: 2018/09/30(日) 20:28:18 ID:nUU6goz6
【反論ショーダウン 開始!】
[|ファンデーション>
[|愛の証言>
[|璃奈の証言>

ダイヤ「愛さんが璃奈さんを利用した。まず、この前提に無理があるのです」

ダイヤ「保健室で寝ていた筈の曜さんに化けてもらう。この時点で、璃奈さんは不自然に思った筈です」

ダイヤ「計画としては、いささかリスクが大きすぎると思いますが」

─発展─
確かにリスキーだけど……
  それが実行された可能性は、ないと言い切れないよ

ダイヤ「一度までなら、何かしら誤魔化しの言い訳はあったでしょう」

ダイヤ「ですが、曜さんが亡くなったのは昨日の夕方」

ダイヤ「【定期的に訪れる千歌さん】の目を欺くためには……」

ダイヤ「昨日と今朝、璃奈さんに【二度のお願い】が必要になります」

ダイヤ「疑わしさが増すだけで、計画としては御粗末すぎるのですよ」

確かに、ダイヤさんの言い分は一理ある。でも、それを否定出来る証拠があった筈だ!

625: 2018/09/30(日) 20:29:00 ID:nUU6goz6
[|璃奈の証言>→【二度のお願い】

歩夢「その言葉、斬らせてもらうよ!」

Break!

歩夢「二度目のお願いは、必要ないんだ」

ダイヤ「まさか事前に頼んでおいたとでも?」

歩夢「ううん、その必要もない。璃奈ちゃんボードを夜中のうちに盗んでおけばいいことなんだ」

ダイヤ「……あのボードが?」

せつ菜「確か……夜中、大浴場に入っている間に、なくなっていたんですよね」

璃奈「……うん(・v・)」

歩夢「顔を見られるのが恥ずかしいから、璃奈ちゃんボードで顔を隠している。裏を返せば“璃奈ちゃんボードがなければ人前に出られない”んだ」

歩夢「けど、誰かに変装した状態なら璃奈ちゃんボードは使わない……現に、私たちはその光景を見ている筈だよ」

梨子「ルビィちゃんに化けた時……ね」

626: 2018/09/30(日) 20:30:03 ID:nUU6goz6
歩夢「犯人はそこに付け込んだ。璃奈ちゃんボードを奪うことで、暗に“もう一度曜ちゃんに変装しろ”と脅しをかけたんだ」

歩夢「いや、もしかしたら……『もう一度やってくれたら、ボードは返す』くらいのやり取りはどこかであったかも知れない」

鞠莉「そうやって、他人を利用する……なるほど、考えたわねえ」

愛「……」

かすみ「ちょっと待ってください。いや、愛先輩が怪しいのは分かるんですけど……」

かすみ「もし璃奈さんがボードを2つ所持していたら、折角立てた計画が破綻しちゃいますよ?」

花丸「1つしかなかったと思うずらよ。死体が発見されて、愛さんが璃奈ちゃんとかすみちゃんを呼びに行く時に、ボードを持って行ったし……」

愛「それは……りなりーの物だし、ないと困るんじゃないかなーって、一応持って行っただけだよ」

かすみ「何にせよ、あんなもの簡単に作れそうじゃないですか。顔を隠せればいいんですから……」

歩夢「いや……そういうワケでもないんだ」

歩夢(かすみちゃんが知らない、璃奈ちゃんボードの秘密……)

【死体の顔に貼り付いていた】
【唯一無二】
【裏に両面テープが付いていた】

正しい選択肢を選べ!

627: 2018/09/30(日) 20:31:04 ID:nUU6goz6
→【唯一無二】

歩夢「あのボードは一つしかないんだよね、璃奈ちゃん」

璃奈「……うん、お手製。よく見ないと分からないけど、璃奈ちゃんボード、穴が開いてる(・v・)」

璃奈「そうしないと、前が見えなくて危険だから……(>_<。)」

かすみ「あー、やっぱり前見えてるんですねアレ」

梨子「特別な持ち方をしないと前は見えないけれど、それを知っているのは璃奈ちゃんだけ。そんな話をしていたわ」

璃奈「視界を確保出来るように穴を開けるの、大変。予備は作っておきたいけど、なかなか手が伸びないの(>_<。)」

かすみ「なるほど、そういうことでしたか」

璃奈「でも……璃奈ちゃんボードを盗んだの、本当に愛ちゃんなの(>_<。)?」

愛「いや、えっと……」

璃奈「……昨日みたいに、私を利用するつもりだったの(>_<。)?」

歩夢(……えっ?)

628: 2018/09/30(日) 20:32:00 ID:nUU6goz6
果南「昨日みたいに……って、まさか」

璃奈「愛ちゃんが犯人だなんて信じたくないけど……やっぱり、そうなんだね(>_<。)」

璃奈「バレちゃったから白状するよ。曜さんに変装していたのは私(>_<。)」

千歌「愛ちゃんに頼まれたから?」

璃奈「……うん、大体みんなが推理した通り。昨日、私は愛ちゃんにお願いされた(>_<。)」


愛『りなりー、ちょっと頼みがあるんだけどさ』

璃奈『……なに? 音楽室に戻って、明日の調整の続きをするんじゃなかったの(・v・)?』

愛『いやー……ちょっと、超高校級のディスガイザーさんの力を借りたいというか……』

璃奈『いいけど……誰に変装して欲しいの?』

愛『曜だよ。目を覚ましたはいいんだけど……なんか、プールに行きたいらしくてさ』

愛『それで、千歌ちーがお見舞いに来た時に何言われるか分からないから、何とかしたいんだって。曜に頼まれちゃってさ』

璃奈『……まあ、いいよ。いつまで(・v・)?』

愛『プールの校則があるし……夜時間になるまでだって』

629: 2018/09/30(日) 20:33:01 ID:nUU6goz6
愛「……」

璃奈「……あの時は、別に変だとは思わなかった。保健室に行ったら、曜さんもいなかったし(・v・)」

璃奈「夜時間になって、こっそり大浴場に入って……問題は、その後だった(・v・)」

梨子「璃奈ちゃんボードが盗まれたのね」

璃奈「……うん。それに、お部屋に戻ったら、こんな紙が置いてたんだ(・v・)」スッ


『明日の朝、もう一度曜に変装しろ』


璃奈「どうすればいいか分からなかった。けど、璃奈ちゃんボードが見当たらないし、そのままじゃ出るに出られなかったから……(>_<。)」

ダイヤ「だから、紙に書かれていた要求を呑んだのですね」

璃奈「……うん(>_<。)」コクリ

《璃奈への手紙》のコトダマを入手しました。

鞠莉「まあ、仕方ないわよね。手紙の主がボードを奪った……そう考えるのが自然でしょうし」

630: 2018/09/30(日) 20:34:33 ID:nUU6goz6
璃奈「そのあとは……途中で寝ちゃいそうになったから、こっそりお部屋に戻った(>_<。)」

璃奈「しばらくしたら、死体発見アナウンスが流れて……愛ちゃんが、ボードを持ってきた(>_<。)」

璃奈「かすみちゃんの部屋に寄ってから、音楽室に行って……あとは、みんなと一緒だった(>_<。)」

果南「ありがと、璃奈」

しずく「けど、これでハッキリしましたね……」

愛「……」

かすみ「愛先輩、そろそろゲロっちゃった方がいいんじゃないですか~?」

愛「……ない」

愛「知らない……あんな手紙、アタシ知らないよ……」

果林「璃奈ちゃんの証言と手紙がある以上、知らないじゃ通らないと思うけど?」

愛「本当だって! りなりーに頼み事をしたのは認めるけど……」

愛「手紙なんて出してないし、ボードを盗った覚えなんてないよ!」

631: 2018/09/30(日) 20:35:50 ID:nUU6goz6
愛「……信じて貰えるとは思ってないよ。けど、アタシは罠に嵌められた」

千歌「その罠って、璃奈ちゃんに裏切られたこと?」

果林「今まで黙っていながら、自分に疑いが向けられると矛先を逸らすのね」

梨子「な、何もそこまで責めなくっても……」

鞠莉「でも、犯人かどうかは兎も角、璃奈に曜の変装を依頼したことは認めるのよね」

愛「だから、それは罠に嵌められたせいで……」

歩夢「だったら……その罠の中身を教えて欲しいんだ」

せつ菜「お願いします。何かの手掛かりが掴めるかも知れません」

璃奈「……(>_<。)」

愛「……分かったよ。昨日、夕食会の準備で愛さんたちは音楽室にいたんだ」

愛「ひと段落したところで、早めの夕食……缶詰を取りに、食堂に行ってさ」

愛「準備の続きまで時間があったから、適当にふらついてたんだけど……」

愛「……今思い返せば、何で保健室なんか行ったんだろうね」タハハ

632: 2018/09/30(日) 20:37:05 ID:nUU6goz6
歩夢「保健室に行ったの?」

愛「うん。昨日の17時過ぎだったかな……ふらっと通りかかってね」

愛「そしたら……眠らされた。誰かに、薬を嗅がされたみたいなんだ」

かすみ「刑事ドラマなんかでよく見るやつですね。シロロヘルム……でしたっけ?」

花丸「クロロホルムのことを言ってるずら? 確かに推理小説でも使われるけど、本来あの使い方で眠らせるのは難しいよ」

モノっちー「ちなみに、そんなクロロホルムが推理小説でよく使われるようになったのは何故だと思う?」

モノっちー「19世紀半ば、イギリスのジェームズ・シンプソンという医師があの薬の効果に目をつけ、全身麻酔手術を成功させたんだ」

モノっちー「そして、彼はエディンバラ大学というイギリスの大学で教師をしていたんだけど……」

モノっちー「なんとビックリ! あのコナン・ドイルは、その人の講義を受けていたんだよネ」

花丸「だから、その講義がキッカケとなった可能性が高い。うん、有名な話ずらね」

梨子「普通は知らない話だと思うけど……」

633: 2018/09/30(日) 20:38:08 ID:nUU6goz6
せつ菜「えっと……愛さん、続きを話して貰ってもいいですか?」

愛「……保健室で眠らされたところからだったね。起きたら、何故かベッドの下にいてさ」

愛「そんなこと知らずに起きようとしたもんだから……ほら、これ」

歩夢(そう言って、愛ちゃんは前髪をペロンとめくる)

鞠莉「あら、少し腫れてるわね」

愛「ゴチーンとね。で、ベッドの下から抜け出したら……曜がいなくなってた」

愛「輸血のチューブなんかは放置されてて……代わりに、ハンマーが置いてたんだ」

千歌「だったら、なんでその段階で曜ちゃんを探さなかったの」

愛「……私が犯人になっちゃったかも知れなかったから」

歩夢「犯人に……?」

愛「前回のエマちーの時だってそうだったじゃん! 何も悪いことしてないのに、ただ停電を復旧させただけで人〇し扱いされて……」

愛「アタシはそれが許せなかった。許せなかったけど……あの時、いざ自分がその立場に立たされたら、怖くなって……」

愛「もしかしたらって思って……でも、頭まわんなくて……」

634: 2018/09/30(日) 20:39:28 ID:nUU6goz6
愛「だって、何がキッカケで犯人にされるか分からないし……」

愛「とにかく、誤魔化さなきゃって……慌てて保健室を出たら、りなりーの姿が……」

璃奈「……(>_<。)」

歩夢(必死に言い訳を連ねる愛ちゃんの声は、途中から泣きそうなものになっていて)

歩夢(というより、実際に泣いているのかも知れない。コロシアイ生活の中でも、元気を忘れなかった彼女が……)

歩夢(怖かったんだろう。私たちが記憶を奪われた学友だったこと、いきなり襲われたこと……)

歩夢(誰よりも友好的だったせいで、数多の負担が心のダムを崩壊させてしまったんだ)

果南「……話を続けたいところだけど、この様子じゃね」

愛「……」グスッ

果林「愛ちゃん、疑ったのは悪かったわ。だから、もう落ち着いて──」

愛「──」ウェッ

歩夢(愛ちゃんから、僅かに嗚咽が漏れる。もうしばらく掛かりそうだな、とみんなが思っていた──)

635: 2018/09/30(日) 20:40:43 ID:nUU6goz6

愛「……っ!?」ゲホッ

歩夢(──彼女の口から、およそ人間が吐いていいレベルじゃない量の血が飛び出るまでは)

636: 2018/09/30(日) 20:41:22 ID:nUU6goz6
璃奈「愛ちゃん(?□!)!?」

愛「な……ぁ……」

ダイヤ「どうしたのですか!?」

愛「……ぁ、れ……?」

歩夢(その顔から、血の気が引いて行く。ただ事ではない……のだけは確かだ)

愛「……」フラッ

バターン!

果林「ちょっと、しっかりしなさい!」

しずく「誰か、救急車を!」

かすみ「来るワケないじゃないですか!」

千歌「……」


ピンポンパンポーン

637: 2018/09/30(日) 20:42:10 ID:nUU6goz6

モノっちー「死体が発見されました。一定の捜査時間の後、再び“学級裁判”を開きます」

638: 2018/09/30(日) 20:42:53 ID:nUU6goz6
《超高校級の船乗り》渡辺曜を〇した犯人は誰なのか……謎だらけだった議論は、再び暗礁に乗り上げた。

最重要容疑者だった《超高校級のギャル》宮下愛の死をもって──

639: 2018/09/30(日) 20:44:34 ID:nUU6goz6

 学 級 裁 判 
   中  断

645: 2018/10/21(日) 00:27:02 ID:W98FetnY
歩夢(疑問符が、頭の中でパンクしそうになっていた)

歩夢「どうして……?」

モノっちー「それはボクが言いたいセリフだよ」

モノっちー「学級裁判って、誰が死んだかを議論するための物であって、そこで誰かを〇す場ではないんだよネ」

モノっちー「でもまあ、何度か裁判やっていれば、いつかはこうなる日が来るよネ。それに、連続〇人なんてワクワクする展開じゃないか!」

果南「これのどこがワクワクなのさ……」

モノっちー「何にせよ、モノっちーファイルは用意したよ。お手元の端末をアップデートしておいたからさ」

ピローン

歩夢(モノっちーファイルから軽い電子音がした)

歩夢(……どうやら、新しいページが追加されたらしい)

646: 2018/10/21(日) 00:28:32 ID:W98FetnY
かすみ「ねえモノっちーさん。さっき『連続〇人』って言いましたけど……曜先輩と愛先輩を〇した犯人って、同じなんですか?」

モノっちー「モクヒケンヲコウシシマース」ボウヨミー

鞠莉「だったら、犯人が別々だった場合……私たちは、その両方に投票すればいいのかしら」

モノっちー「ああ、それは違うよ。オマエらが投票するのは、最初の事件……渡辺曜さん〇しの犯人だけ」

ダイヤ「でしたら、愛さんを〇した犯人は……」

モノっちー「“学級裁判で1つの事件が処理される前に別の事件が発生した場合、投票対象となるクロは最初に起きた事件のクロです”」

モノっちー「“また、卒業出来るクロも最初に起きた事件のクロのみとなります”。……まあ、要は早い者勝ちだネ。あとで校則に追加しておくよ」

647: 2018/10/21(日) 00:29:34 ID:W98FetnY
果林「まるで愛ちゃんの死が無駄、みたいな言い方ね。幾らなんでも酷すぎないかしら?」

モノっちー「無駄だよ無駄、連呼してあげるよ。無駄無駄無駄無駄ァ!」

モノっちー「宮下愛さんを〇した犯人は〇し損、宮下愛さんは〇され損、ってことになるんだよネ」

モノっちー「とはいえ、捜査はやってもらわないといけないんだよネ。まあ、形式上ってやつ?」

モノっちー「というワケで、現場は裁判場なので、捜査もこの中で! 退出は認められないし、捜査時間も短めだからネ。はい、よーいスタート」

千歌「……」

璃奈「……」

歩夢(よっぽど、愛ちゃんの死が不意打ちだったらしい。特に、璃奈ちゃんは……)

歩夢(彼女たちのためにも……しっかり捜査しないと!)

648: 2018/10/21(日) 00:30:45 ID:W98FetnY
Re:捜査開始!

歩夢(アップデートされたモノっちーファイルには2ページ目……愛ちゃんに関する情報が載せられていた)

『2番目の被害者となったは超高校級のギャル、宮下愛』

『死体発見現場は裁判場、死亡時刻は学級裁判の最中』

『死因は毒〇であり、体内からそれに至った毒物が検出されている』

『また、おでこの辺りに軽い腫れと、左足に擦り傷がある』

歩夢「毒、〇……」

歩夢(あの苦しみ方は、確かにそんな感じだったけど)

歩夢(まさか、本当に起きてしまうなんて……)

《モノっちーファイル3-2》のコトダマを入手しました。

649: 2018/10/21(日) 00:32:05 ID:W98FetnY
歩夢(次は……愛ちゃんの死体を調べよう)

歩夢(彼女の死体は……さっき、倒れた時のままだ)



花丸「……」

歩夢「何か見つかった?」

花丸「頭と足の怪我以外には、何も。何かを持っているワケでもないみたいだし……」

歩夢「……そっか」

花丸「一応、口の中も確認してみたんだ。推理モノでよく使われる毒〇って、口から特徴的なニオイが出るから……」

歩夢「アーモンド臭、って言うんだっけ」

花丸「うん。けど、そういうニオイはしなかったから……少なくとも“ついさっき毒を口にした、ってことはない”と思うずら」

《愛の死体》のコトダマを入手しました。

650: 2018/10/21(日) 00:32:56 ID:W98FetnY
モノっちー「──ダメダメ! 学級裁判はまだ終わってないんだからさ」

せつ菜「……ケチですね」

梨子「諦めましょう。仕方ないわ」

歩夢「どうしたの?」

梨子「音楽室に戻って、確認しておきたいことがあったんだけど……」

せつ菜「モノっちーさん、私たちをここから出すつもりはないそうです」プンスカ

歩夢「じゃあ、確認しておきたいことって……」

梨子「みんなに配られたカレーライスよ」

せつ菜「あの中に毒が入っていた可能性は、捨てきれませんからね」

651: 2018/10/21(日) 00:34:22 ID:W98FetnY
歩夢「……でも、どうやって確認するつもりだったの?」

せつ菜「それは勿論、食べて──」

歩夢「……もし入っていたら、せつ菜ちゃんも死んじゃうと思うよ」

せつ菜「あっ……」

歩夢(カレーライスに毒が入っていた可能性、か)

歩夢「ねえモノっちー。あのカレーって、モノっちーが配っていたよね」

モノっちー「そうだネ。ボクが大きな鍋から、プラスチックの器に入れて、オマエらに配っていったんだよ」

歩夢「……」

モノっちー「とにかく、多少の質問なら受け付けてあげるから、退出は認めないよ」

歩夢(前にモノっちーが言ってたことが本当なら……)

歩夢(愛ちゃんが毒を摂取した方法が、今回の事件の鍵……?)

《カレーライス》のコトダマを入手しました。

652: 2018/10/21(日) 00:35:31 ID:W98FetnY
歩夢(他に気になるのは……愛ちゃんの動向と、毒薬がどんなものだったのか……)

歩夢(動向を知っていそうな人と言えば……)

しずく「昨日、ですか?」

歩夢「うん。死ぬ前の愛ちゃんの言葉が本当だとしたら、何か不自然なことをしてるかもって思って」

果林「昨日と言えば……食堂で出し物の詳細を決めてから、ほとんど音楽室で準備をしていたわね」

しずく「あ、でも。愛さん、怪我をして保健室に行ったんですよね」

歩夢「保健室に……それっていつ?」

果林「夕食の休憩より後……というか、夜時間になる前ね。派手にすっ転んでたわ」

果林「だから、軽く処置だけはしたのよね。絆創膏はいいって断られたけど」

歩夢(左足の擦り傷は、その時に出来たようだし……)


愛『愛さんも足、軽くやっちゃったんだよね~……たはは』


歩夢(愛ちゃんが今朝言っていたのは、このことみたいだね)

《夕食会の準備》のコトダマを入手しました。

653: 2018/10/21(日) 00:37:14 ID:W98FetnY
歩夢(あとは毒薬についてだけど……)

ダイヤ「……」

鞠莉「……」

果南「ねえ、何とか言ったら?」

かすみ「……」

歩夢(当のかすみちゃんは、3年生たちに詰問されている真っ最中だった)

歩夢「かすみちゃんが喋らない?」

ダイヤ「ええ。ずっとあの調子です」

かすみ「……」イライラ

歩夢(というか……不機嫌そう?)


ピンポンパンポーン

モノっちー「はーい、終わり。記録は10分30秒でした」

モノっちー「感想ですが……オマエら、とっとと学級裁判を再開させやがれ!」

654: 2018/10/21(日) 00:38:28 ID:W98FetnY
歩夢(本当に……駆け足の捜査だった)

歩夢(モノっちーに促されるように、みんな渋々と席に戻って行く)

歩夢(……いつの間にか、愛ちゃんの死体は回収されていた)

かすみ「……今回の犯人だけは、許すワケにいきません」ボソッ

歩夢「……えっ?」

かすみ「ん? かすみんの顔に何か付いてますか?」

歩夢「いや、別に……」

655: 2018/10/21(日) 00:39:42 ID:W98FetnY
歩夢(そして、3回目の学級裁判が再び幕を開ける……)

歩夢(《超高校級のギャル》宮下愛ちゃん……)

歩夢(彼女は、コロシアイの中でも常に前向きだった)

歩夢(前回の裁判のあと、しずくちゃんを励ましてくれたのも彼女だった)

歩夢(一度、モノっちーのせいで躓いたことはあったけれど……)

歩夢(それでも、起き上がった。起き上がろうとしていた)

歩夢(そんな彼女を〇した犯人が……私たちの中にいる)

歩夢(愛ちゃんを〇したのは、曜ちゃんを〇したのと同じ人?)

歩夢(そうでなければ、2番目の犯人は勝ち逃げになるのかも知れない)

歩夢(……それでも、私は真実を見つけ出す)

歩夢(学級裁判という絶望の渦の中で──!)

656: 2018/10/21(日) 00:41:11 ID:W98FetnY
~モノっちー劇場 番外編~

愛「そういやさ、エマちーって海外生まれなんでしょ?」

エマ「うん。スイス生まれだよ」

愛「海外といったらさー……アレ、ないの? ミドルネームってやつ」

エマ「うーん……考えたことなかったなあ」

善子「何、真名作り?」

ルビィ「そういう話じゃないと思うけど……」

彼方「……琴凪(コトナギ)とかどう?」

曜「どうして?」

彼方「エマ・琴凪・ヴェルデ、エマ・コトナギ、えまことなぎ……ふふっ」

エマ「わぁ、すっごく幸運に満ちてそう!」

ルビィ「あ、気に入ったんだ……」

657: 2018/10/21(日) 00:43:24 ID:W98FetnY
~Re:学級裁判準備~
遂に起きてしまった連続〇人。2人目の死は、彼女たちの間に大きな影を落とした。
犯人は同一人物なのか? 何故、彼女たちは死ななくてはいけなかったのか?
先の見えない学級裁判が、再度その幕を開ける──

コトダマリスト
前半:>>598-600

658: 2018/10/21(日) 00:47:44 ID:W98FetnY
追加コトダマリスト
《璃奈への手紙》
『明日の朝、もう一度曜に変装しろ』
昨晩、璃奈の部屋に置かれていた物。璃奈はこれに従い、今日の朝も保健室にいた。

《モノっちーファイル3-2》
2番目の被害者となったは超高校級のギャル、宮下愛。
死体発見現場は裁判場、死亡時刻は学級裁判の最中。
死因は毒〇であり、体内からそれに至った毒物が検出されている。
また、おでこの辺りに軽い腫れと、左足に擦り傷がある。

《愛の死体》



被害者は何も所持しておらず、口から特徴的なニオイ(アーモンド臭)もしなかった。

《カレーライス》
夕食会でモノっちーが配った物。
配膳は全てモノっちーが行っており、大きな鍋に入っていた。

《夕食会の準備》
愛、しずく、果林、せつ菜、梨子、璃奈が行っていたもの。
途中、夕飯のためにしばらく休憩を挟んでおり、璃奈は休憩の後から参加していない。
また、終わり際に愛は足の怪我を負った。

678: 2018/11/16(金) 17:35:29 ID:ZM48T4fg

 学 級 裁 判
   再  開

679: 2018/11/16(金) 17:36:28 ID:ZM48T4fg
鞠莉「オシオキの対象となるのは曜を〇したクロのみ。愛を〇した人はクロにはならず、そもそもこの学園から出られるワケではない……」

鞠莉「みんな、この前提自体は理解出来ているわね?」

しずく「分かってはいますけど……」

璃奈「……」

ダイヤ「愛さんの事件を放置、というワケにもいきませんわね」

千歌「……」

せつ菜「今後みんなで協力するにしても、〇人犯がいるかも知れないというのは落ち着きませんからね」

かすみ「そういう人は、私みたいに縛られちゃうかもですね」

果林「……とにかく、愛ちゃんの事件についてもしっかり話し合う。そういうことね、鞠莉ちゃん」

鞠莉「ええ」

680: 2018/11/16(金) 17:37:14 ID:ZM48T4fg
しずく「あの、すいません。その愛さんについてなんですけど……」

しずく「これって……犯人、分かるんですか?」

歩夢「どういうこと、しずくちゃん?」

しずく「さっき私たちが食べたカレーライス……。毒って、あの中に入ってたんですよね?」

しずく「あの時、誰がどんな行動を取っていたかなんて思い出せませんし……」

しずく「鞠莉さんが恐れていた“誰が犯人になるか分からない事件”になってしまうのでは……」

かすみ「分からなくてもいいんじゃないですか? それで私たちがオシオキされることもないんですし」

梨子「大問題よ」

歩夢「ううん。そもそも、それについては心配ない……と思うよ」

しずく「何か、根拠があるのでしょうか?」

歩夢(しずくちゃんの心配が杞憂に終わると言える根拠。それは……)

【コトダマ一覧より選択】

681: 2018/11/16(金) 17:37:59 ID:ZM48T4fg
→【カレーライス】

歩夢「あのカレーライスをみんなに配ったのは、モノっちーだったんだ」

歩夢「大きな鍋から、プラスチックの器に入れて、私たち1人1人に配っていった……そうだよね?」

モノっちー「はい、その通りでございます」

果南「だったらモノっちーが犯人……じゃ、ないんだろうね」

花丸「つまり、愛さんの目を盗んで毒を入れることは出来ないってことずらね」

歩夢「うん。鍋の中に毒が入れられていたら、私たちは今頃全滅しているだろうし……」

歩夢「それに、あの時のモノっちーの言葉がどうしても引っ掛かるんだ」


モノっちー『毒薬は毒薬だけど、飲食物に混ぜたところでまったく意味がないモノだからネ!』


歩夢「あの時は、ようやくマトモな物を食べられるってことであまり気にしなかったけど……」

歩夢「これって、カレーに毒を混ぜちゃったら、それで毒〇は出来ないってことになるよね?」

しずく「それも……そうですね。ありがとうございます」

682: 2018/11/16(金) 17:39:24 ID:ZM48T4fg
せつ菜「そもそも……何故犯人は名乗り出ないのでしょうか」

果南「バレたらオシオキされるワケだし、普通は名乗り出ないんじゃない?」

ダイヤ「いいえ。曜さんの事件ならともかく、愛さんの事件は裁判の対象外です」

ダイヤ「オシオキの対象になることもない以上、名乗り出てもいいのではないか……ということですね」

せつ菜「はい。だから、名乗り出て欲しいんです」

璃奈「……」

歩夢(少しの無言。互いに、疑いを含んだ視線が飛び交う……)

歩夢(けれど)

梨子「……出てこないわね」

歩夢(誰も「私が〇しました」とは言わなかった)

683: 2018/11/16(金) 17:40:03 ID:ZM48T4fg
せつ菜「どうして……出てきてくれないんですか……」

果林「……名乗り出たくても出られなかった、可能性もあるわね」

せつ菜「そんなワケないじゃないですか。そりゃ、気不味いとかはあるかも知れませんけど……」

果林「違うわ。私が考えてるのは……犯人が既に死んでいる場合」

果林「“愛ちゃんが自分から毒を飲んだ”としたら、どうかしら」

璃奈「……え(・v・)?」

歩夢「まさか……自〇!?」

果林「彼女は裁判中に死んだ。となると、自〇を疑うべきだと思うのよ」

鞠莉「“鍵の掛かった場所に入れない”。この校則のお陰で、裁判場に彼女を〇す何かを仕掛けるというのは不可能」

鞠莉「確かに、自〇の線はないと言い切れないわ」

梨子「愛ちゃんが自〇する理由なんてあるの?」

かすみ「普通はないですが……曜先輩を〇したのが、本当は愛先輩だったとしたらということですね?」

684: 2018/11/16(金) 17:40:45 ID:ZM48T4fg
果林「……ええ、そうなるわね」

ダイヤ「では、先程の愛さんは嘘を吐いていたと?」

果林「流石に分からないわ。けれど、自〇する理由と言えばそれくらいでしょう?」

かすみ「内容の是非はどうあれ、愛先輩は隠し事をしていましたからね」

かすみ「オシオキが嫌だから、先に自〇してやろう……。ありえない話ではないですね」

花丸「もしそうだとして……犯人が自〇だった場合って、どこに投票すればいいのかな?」

モノっちー「同じだよ。この虹ヶ咲学園では“自分という人間を〇した”という意味で、自〇も立派な〇人」

モノっちー「その場合、既にクロは死んじゃってるのでオシオキは発生しないけど……まあ、仕方ないよネ」

しずく「待ってください! なんで愛さんが自〇という前提なんですか!」

千歌「じゃあ、しずくちゃんは自〇じゃないって証拠は出せるの?」

しずく「……っ」

685: 2018/11/16(金) 17:41:35 ID:ZM48T4fg
梨子「ちょっと千歌ちゃん、急にそんな言い方……」

千歌「ねえ、忘れてないよね? 本来、曜ちゃんを〇した犯人を見つける裁判だった筈だよ」

千歌「それなのに、黙っていたらいつの間にか愛ちゃんを〇した犯人を見つける議論になって」

千歌「しかも、曜ちゃんを〇した上で自〇した?」

千歌「私だって、こんな結末は悔しいよ。けど、それは違うって言える証拠がないじゃん」

千歌「何かを仕掛けようにも、ここには裁判にならないと入れないんでしょ?」

歩夢(確かに……愛ちゃんが自〇したという話には、かなりの信憑性がある)

歩夢(〇害現場が何の仕掛けも出来ない裁判場である以上、やっぱり……)

かすみ「ありますよ。自〇じゃないって証拠」

千歌「……?」

かすみ「毒薬が液体だってことを踏まえれば、すぐに分かることだと思うんですけど」

歩夢「え、液体?」

686: 2018/11/16(金) 17:42:18 ID:ZM48T4fg
【ノンストップ議論 開始!】
[|モノっちーファイル3-2>
[|愛の死体>
[|夕食会の準備>

かすみ「言ってませんでしたっけ? 毒が液体だって話」

果林「初耳よ、それ」

かすみ「前の事件で【彼方先輩に飲ませた】って言ったじゃないですか。とっくに気付いてると思ってたんですけど……」

鞠莉「それだけだと【錠剤やカプセル】の可能性も否定出来ないわね」

花丸「胃の中に入ってしまえば同じずらよ」

かすみ「とにかく。毒薬が液体である以上、愛先輩は《自〇じゃない》のは確かです」

しずく「どうしてその2つが繋がるのか、さっぱり分からないんですけど……」

千歌「どうせまた《かすみちゃんの嘘》だよ」

璃奈「……」

歩夢(毒が液体なら、自〇じゃない。そう言える根拠って……?)

687: 2018/11/16(金) 17:43:01 ID:ZM48T4fg
[|愛の死体>→《自〇じゃない》

歩夢「それに賛成だよ!」

Break!

歩夢「そっか……そういうことだったんだ!」

せつ菜「何が分かったのですか?」

歩夢「死体を調べて分かったことなんだけど……愛ちゃん、何も持ってなかったんだ」

千歌「……毒を飲み込んだなら、何も持ってないのはおかしくないでしょ?」

歩夢「毒薬が錠剤やカプセルなら、それでいいかも知れない。けど、液体ならそうはいかないんだ」

歩夢(自〇を否定出来る、決定的な理由。それは……)

【持ち運べない】
【飲み込むタイミングがない】
【口に合わない】

正しい選択肢を選べ!

688: 2018/11/16(金) 17:43:34 ID:ZM48T4fg
→【持ち運べない】

歩夢「液体の毒を飲んだなら……それを持ち運ぶための容器はどこに行ったのかな?」

千歌「……!」

歩夢「さっきも言った通り、愛ちゃんは何も持っていなかった……それは、容器になりそうな物もなの」

ダイヤ「まさかとは思いますが……容器を愛さんの死体からくすねた人は居ませんよね?」

「「……」」

梨子「誰も……居なさそうね。死んだ愛ちゃんがどこかに隠せる筈もないし」

歩夢「だったら間違いないよ。愛ちゃんは裁判中に毒を飲んだワケじゃない……」

歩夢「つまり、自〇なんかじゃなかったんだ!」

璃奈「……本当に、そうなの?」

鞠莉「いや。まだ可能性は残っているわ」

歩夢(えっ?)

689: 2018/11/16(金) 17:44:09 ID:ZM48T4fg
ダイヤ「鞠莉さん。折角の空気を……」

鞠莉「空気を読めないと言われても仕方ないわ。でも、可能性は潰しておく必要があるのよ」

しずく「その、可能性というのは……」

鞠莉「裁判中に服毒したワケじゃないなら、その毒は、間違いなく遅効性ということになる」

果南「ちこーせい?」

花丸「飲んでから効果が出るまでに、ある一定の時間を必要とする物ずら。すぐに効果が出る物は、即効性」

鞠莉「そう。だとしたら“遅効性の毒を前もって飲んでいた可能性”が残されているのよ」

鞠莉「どうなのかしら、かすみ」

かすみ「……」

かすみ「えっ、なんで私なんですか?」

690: 2018/11/16(金) 17:45:02 ID:ZM48T4fg
鞠莉「とぼけても無駄よ。さっきの捜査で、幾ら訊いてもあなたが喋らなかった毒薬の詳細」

鞠莉「いい加減、吐いてもいいんじゃないかしら」

かすみ「……はいはい、分かりましたよ」

かすみ「そうですよね。毒の詳細を知っているのは、かすみんと犯人しか居ませんもんね」

歩夢「お願いだよ、かすみちゃん。愛ちゃんが自〇じゃないって証明出来るのは、かすみちゃんだけだから……」

かすみ「じゃあ、土下座してください」

歩夢「えっ……?」

かすみ「冗談ですよ~。歩夢先輩が割って入ったから話がややこしくなっちゃったじゃないですか」

かすみ「さてと。茶番はここまでにして……毒薬の詳細でしたよね」

かすみ「最初に説明しておかないといけないのは、あの毒は“モノっちーさん特製の毒”だったってことです」

梨子「モノっちー特製の……?」

691: 2018/11/16(金) 17:45:51 ID:ZM48T4fg
モノっちー「推理モノでやっちゃいけないことの定石。それらを纏めて『ノックスの十戒』なんて言ったりするんだ」

モノっちー「その1つに『未発見の毒薬、難解な科学的説明を要する機械を犯行に用いてはならない』って決まりがあるんだけど……」

モノっちー「残念。ここ、虹ヶ咲学園はボクのフィールドだからネ! ノックスの十戒なんてクソ食らえなんだよ!」

花丸「もしかして……“本来存在しないような毒薬”ってことずら?」

モノっちー「まあ、そういうことだネ。“とある人が作った薬をボクが改良した”物なんだよ」

せつ菜「とある人って、誰なんですか?」

モノっちー「しーん……」ボウヨミー

せつ菜「……そこは黙秘ですか」

かすみ「とにかく、あの毒薬はかなり特殊で、使用方法が限られているんですよ」

かすみ「液体だ、という話は既にしました。そして、即効性か遅効性か……これについては、鞠莉先輩の推理通りです」

鞠莉「問題はそこよ。一口に遅効性といっても、摂取してからいつ効果が表れるのか……そこが分からないと、何とも言えないわ」

かすみ「“この毒はとっても遅効性! 体内に取り込むと、半日程度で全身にまわるゾ!”」

かすみ「“やがて、数時間で血を吐いて相手は死ぬ! これで気になるあの子の命を奪ってみせよう!” ……注意書きには、こう書いてましたね」

692: 2018/11/16(金) 17:46:40 ID:ZM48T4fg
果南「なんか、随分と腹の立つ書き方だね……」

せつ菜「ですが、これならある程度、愛さんが毒を飲んだ時間を絞れそうです」

歩夢「半日程度で全身にまわって、数時間で死ぬ……」

歩夢「少なくとも半日前……つまり、今朝の時点で、愛ちゃんは既に毒を飲んでいたことになるよね」

しずく「あれ? それって変じゃないですか?」

梨子「変って?」

しずく「夕食会まで、私たちはどこに仕掛けられているか分からない毒を警戒していた筈です」

しずく「万が一を考えて、缶詰やペットボトルで過ごしていたような……そんな状態で、どうやって毒を飲ませたんでしょう?」

ダイヤ「確かに……疑問ですわね」

歩夢(その通りだ。愛ちゃん〇しにおける一番の謎……『どうやって毒を摂取したのか』)

歩夢(これが判らないと、犯人が誰かも──)

かすみ「……あの、皆さん何か勘違いしてません?」

693: 2018/11/16(金) 17:47:26 ID:ZM48T4fg
花丸「勘違い、って……」

ダイヤ「毒の詳細を話したのは、あなたでしょう」

鞠莉「……どうやら、まだ続きがあるみたいね?」

かすみ「あのですね、さっきから毒を“飲んだ”って言ってますけど……」


かすみ「あの毒は“飲んでも死ぬワケじゃない”んですよ?」


「「……」」

歩夢「えぇっ!?」

果南「幾らなんでも、話が飛びすぎじゃない?」

かすみ「そうですか? 今の情報だけで、十分な手掛かりになると思うんですけど」

果南「いや、そうじゃなくてさ……」

694: 2018/11/16(金) 17:48:05 ID:ZM48T4fg
梨子「愛ちゃんが毒〇なのは事実なのよ? モノっちーファイルにも書いてたじゃない」

かすみ「確かに書いてましたね。“体内から毒物が検出された”と」

歩夢(モノっちーファイルには……)

『死因は毒〇であり、体内からそれに至った毒物が検出されている』

歩夢「もしかして!」

鞠莉「そういうことだったのね……」

千歌「……ちゃんと説明して」

歩夢「毒物が検出されたのは体内から。この文が、既に罠だったんだ」

せつ菜「罠、ですか」

歩夢(毒を飲ませる必要なんてない。ある場所から、体内に毒を入れたとしたら……?)

歩夢(そう、その場所は……)

【鼻】
【血管】
【目】

正しい選択肢を選べ!

695: 2018/11/16(金) 17:48:57 ID:ZM48T4fg
→【血管】

歩夢「血管だよ! 何らかの方法で、血液の中に毒を入れたんだ!」

せつ菜「け、血管!?」

梨子「確かに『体内』ではあるけれど……でも、血液って!」

歩夢「だとしたら、音楽室でモノっちーが言ってたことがようやく繋がるんだ……」


モノっちー『毒薬は毒薬だけど、飲食物に混ぜたところでまったく意味がないモノだからネ!』


歩夢「あれは『毒を直接飲まないといけない』って意味じゃない。『特別な方法でないと毒〇出来ない』ってことだったんだよ!」

花丸「道理で意味がない筈ずら。血液毒は、基本的に経口摂取したところで意味がないものだし……」

ダイヤ「では、私たちはそんな物のために騒いでいたと……!?」

かすみ「ま、実際そういうことなんですよね~」スッ

歩夢(そう言って、かすみちゃんが取り出したのは1つの瓶)

歩夢(ラベルにはドクロマークと『毒〇専用の毒』……)

歩夢「って、毒薬!?」

696: 2018/11/16(金) 17:50:01 ID:ZM48T4fg
かすみ「ええ、そうです。皆さんが待ち望んでいた、毒薬の在処ですよ」

鞠莉「ちょっと貸しなさい!」パシッ

歩夢(焦った表情の鞠莉さんが、隣の席のかすみちゃんから瓶をひったくった)

歩夢(そして、注意書きに目を通す……)

鞠莉「……」

鞠莉「“※この毒はとっても特殊! 主にヘビ毒をホンワカパッパしているため、毒〇するには血管に入れる必要があるゾ!”」

かすみ「ちゃんと書いてるでしょ、鞠莉先輩?」

鞠莉「……間違い、ないわね」

果林「じゃあ、愛ちゃんはこの毒で……」

璃奈「……ねえ、かすみちゃん(`∧´)」

697: 2018/11/16(金) 17:50:44 ID:ZM48T4fg
璃奈「愛ちゃんは自〇じゃない、〇された。それは分かったよ(`∧´)」

璃奈「じゃあ、なんでかすみちゃんがその瓶を持ってるの(`∧´)?」

かすみ「……」

璃奈「愛ちゃんを〇した犯人だから、じゃないの(`∧´)?」

かすみ「だったらどうします? 私に投票しますか?」

かすみ「そんなことをしたら、曜さんを〇した犯人に喜ばれるだけですし……」

歩夢「そもそも……かすみちゃんに犯行は無理だと思うよ。璃奈ちゃん」

果林「かすみちゃんが部屋に拘束されていたのは、曜ちゃんの死体が発見されるまで」

果林「そして、曜ちゃんの死体が発見されてから、裁判中に愛ちゃんが死ぬまでにはせいぜい2、3時間といったところかしら」

ダイヤ「毒を盛る時間が足りない……ということですね」

果南「だったら、かすみはなんで毒を持ってるのさ? 確か、鞠莉が部屋を探した時には見つからなかったんでしょ?」

698: 2018/11/16(金) 17:52:02 ID:ZM48T4fg
かすみ「だから、先輩たちは結論を急ぎすぎなんですってば。別に大した理由じゃないですよ」

かすみ「ある人の個室から、取り返したってだけですから」

せつ菜「いや、大したことあるじゃないですか!?」

しずく「この中の誰かが、かすみさんの部屋から毒薬を持ち去ったってことですよね!?」

ダイヤ「それもかすみさんの嘘……と言ったところで堂々巡りですわね」

かすみ「最初から怪しいとは踏んでいたんですよね~。次に〇人を実行するならあの人だろうって」

かすみ「けど、参りましたよ。曜先輩の方のモノっちーファイルには毒物類は一切検出されていないなんて書いてるものですから」

かすみ「でも、当たりでした。まさか2つ目の事件が起きるなんて……」

かすみ「さて。そろそろ皆さんも分かったんじゃないですか?」

かすみ「──愛先輩を〇した犯人が」ニヤリ

璃奈「……」

歩夢(その人物は、かすみちゃんの部屋から毒を盗み、愛ちゃんを遅効性の毒で〇した)

歩夢(毒の摂取方法、効果が表れる時間。それらを踏まえると、犯人は──)

【怪しい人物を指名しろ!】

699: 2018/11/16(金) 17:52:52 ID:ZM48T4fg
→【朝香果林】

歩夢「あなたなんじゃありませんか……果林さん?」

梨子「か、果林さんが!?」

せつ菜「待ってください歩夢。まさか、果林さんが犯人だなんて……」

果林「……」

せつ菜「果林、さん?」

璃奈「……どうなの? 本当に、愛ちゃんを〇したの(>_<。)?」

ダイヤ「その沈黙は、肯定と見てよろしいの──」

果林「少し考え事をしていただけよ。ねえ歩夢ちゃん、私を犯人だと言うなら、根拠はあるのよね?」

歩夢「……あります」

果林「だったら、聞かせて頂戴」

歩夢(果林さんが犯人だという根拠。それは……)

【コトダマ一覧より選択】

700: 2018/11/16(金) 17:53:34 ID:ZM48T4fg
→【夕食会の準備】

歩夢「昨日、夕食会の準備中に愛ちゃんは怪我をしたんだったよね」

しずく「はい。軽い擦り傷でしたけど、血は出ていたから処置した方がいいと……」

しずく「……まさか」

歩夢「その処置を担当したのも、果林さんだったよね?」


果林『夕食の休憩より後……というか、夜時間になる前ね。派手にすっ転んでたわ』

果林『だから、軽く処置だけはしたのよね。絆創膏はいいって断られたけど』


歩夢「だったら……その時に、傷口から毒を染み込ませることは簡単だった筈だよ?」

歩夢「絆創膏を使わない処置……消毒液に入れて、ね」

歩夢「どう、果林さん。何か反論は──」

果林「ないわ」

701: 2018/11/16(金) 17:54:12 ID:ZM48T4fg
歩夢(……えっ?)

かすみ「あれ、ないんですか? てっきり、反論するものかと」

果林「ないわよ。流石に、部屋から毒を持ち出されることまでは想定外だったもの」

鞠莉「じゃあ、認めるのね? 愛を〇したこと」

果林「ええ。むしろ、ここから覆そうとしたところで、見苦しいだけだわ」

果林「それなら、潔く認めた方がいいでしょう?」

璃奈「……なんで」

璃奈「なんで、愛ちゃんを〇したの(`∧´)!」

せつ菜「そうですよ! なんで今まで黙っていたんですか!」

果林「そうね。璃奈ちゃんには恨まれてもおかしくないし、せつ菜ちゃんには悪いことをしたわ」

果林「……でも、その話は裁判が終わってからでもいいんじゃないかしら」

梨子「裁判が……終わってから?」

702: 2018/11/16(金) 17:55:04 ID:ZM48T4fg
果林「この学級裁判で探すべきは、先に死体が発見された曜ちゃんの事件の犯人」

果林「私は愛ちゃんを〇したけれど、曜ちゃんは〇していないわ」

果林「だから、議論を続ける必要があるのよ」

璃奈「……嘘だよ。曜ちゃんも、果林さんが〇したんでしょ(`∧´)」

果林「だったら、落ちて来た死体にはどう説明を付けるのかしら」

璃奈「……落ちて来た死体(`∧´)?」

花丸「曜ちゃんの死体が落ちて来たのは、梨子ちゃんがピアノを弾いてる最中だった」

花丸「でも、果林さんは、ずっと観客席にいた。それは、その場に居たみんなが覚えている筈ずら」

ダイヤ「歩夢さんと花丸さん、千歌さんと果林さんは常に観客席。私と鞠莉さん、果南さんはピアノを運び出した時に席を立っただけ」

歩夢「せつ菜ちゃん、しずくちゃん、梨子ちゃんはそれぞれ自分の番に席を立っていて……愛ちゃんは、ずっと舞台裏にいた」

果林「つまり……ずっと席にいた私に、死体を落とすことは出来ないのよ」

果林「だから、私は曜ちゃんを〇した犯人じゃない。十分、根拠じゃないかしら」

703: 2018/11/16(金) 17:55:41 ID:ZM48T4fg
千歌「どうせ、それも何かのトリックなんでしょ?」

果林「だったら、そのトリックって何なのかしら」

かすみ「このまま議論しても結末は変わりませんって。投票に移ってもいいんじゃないですか?」

鞠莉「もし違ったら……私たちは、曜を〇した犯人に喜ばれるだけね」

せつ菜「このままだと、愛さんが怪しいのは変わらないんじゃ」

花丸「それも含めて、議論するべきずら」

しずく「……すっかり、意見が割れましたね」

梨子「これは……アレ、かな」


モノっちー「オフコース!」

\待った!/

704: 2018/11/16(金) 17:56:18 ID:ZM48T4fg
モノっちー「おおっと、何やら議論が盛り上がって来た!」

モノっちー「こういう時は……ポチっとな」

歩夢(モノっちーがスイッチを押すと……以前と同じ、2列の議席が姿を現す)

ダイヤ「また……やるのですね」

モノっちー「さあさあ席替えだよ! 全員揃ったら、議論開始!」

歩夢(果林さんは確かに怪しい。それに、愛ちゃんを〇したことは許せない)

歩夢(けれど……それだけで終わらせちゃいけない。まだ、全ての謎が解けたワケじゃないんだ)

歩夢(だから、話し合うべき点をハッキリさせて……みんなに納得してもらうしか、ない!)

705: 2018/11/16(金) 17:57:25 ID:ZM48T4fg

        意
        見
        対
        立

       
  【これ以上議論を……】
  

[|続けない!> V S <続ける!|]
 天王寺璃奈    上原歩夢
  高海千歌    朝香果林
  桜内梨子    優木せつ菜
  松浦果南    国木田花丸
 桜坂しずく    黒澤ダイヤ
 中須かすみ    小原鞠莉
   
  【議論スクラム 開始!】

706: 2018/11/16(金) 17:58:25 ID:ZM48T4fg
璃奈「愛ちゃんも曜ちゃんも果林さんが〇したに決まってる……(`∧´)!」

千歌「保健室に押し入って、曜ちゃんを〇したんでしょ?」

梨子「凶器の毒だって、果林さんの部屋にあったんだし……」

果南「最初からルールの追加を盾にする気だったんじゃないの」

しずく「音楽室での一件も、何かトリックを使ったのではないでしょうか」

かすみ「結論は変わりませんよ。根拠もしっかりありますから」

VS

歩夢「だから、その【トリック】について話し合うべきなんだよ!」

果林「だったら、その【根拠】について話してちょうだい」

せつ菜「曜さんの身体から【毒】は検出されていない筈です!」

花丸「【保健室】には誰でも入れたずら」

ダイヤ「【果林】さんが曜さんも〇したとは限りませんわ」

鞠莉「それはないわね。【ルール】の追加は2人が〇された後よ」

707: 2018/11/16(金) 17:59:37 ID:ZM48T4fg
璃奈「愛ちゃんも曜ちゃんも【果林】さんが〇したに決まってる……(`∧´)!」 ダイヤさん!
ダイヤ「【果林】さんが曜さんも〇したとは限りませんわ」
Break!

千歌「【保健室】に押し入って、曜ちゃんを〇したんでしょ?」 花丸ちゃん!
花丸「【保健室】には誰でも入れたずら」
Break!

梨子「凶器の【毒】だって、果林さんの部屋にあったんだし……」 せつ菜ちゃん!
せつ菜「曜さんの身体から【毒】は検出されていない筈です!」
Break!

果南「最初から【ルール】の追加を盾にする気だったんじゃないの」 鞠莉さん!
鞠莉「それはないわね。【ルール】の追加は2人が〇された後よ」
Break!

しずく「音楽室での一件も、何か【トリック】を使ったのではないでしょうか」 私が!
歩夢「だから、その【トリック】について話し合うべきなんだよ!」
Break!

かすみ「結論は変わりませんよ。【根拠】もしっかりありますから」 果林さん!
果林「だったら、その【根拠】について話してちょうだい」
Break!

708: 2018/11/16(金) 18:00:30 ID:ZM48T4fg

「「「「「「これが私たちの答えだ!」」」」」」

        全   論   破
          All Break!

709: 2018/11/16(金) 18:01:24 ID:ZM48T4fg
歩夢「やっぱり、曜ちゃんを〇した謎が解けてない以上、慌てて投票するのは危険じゃないかな」

歩夢「それに、かすみちゃんの言ってた“根拠”もまだ聞けてないしね」

ダイヤ「どうなんですか、かすみさん」

かすみ「……いや、自分で言っておいて何ですけど、自信がなくなって来ちゃったんですよね」

かすみ「確証を持たせるためにも、曜先輩の死体落下について話し合って欲しいんですけど……」

果林「まったく、しょうがない子ねえ」

しずく「ですが……愛さんが犯人でないと仮定すると、どうやって落としたのでしょう」

鞠莉「それを話し合えばいいだけのことよ」

千歌「……」

710: 2018/11/16(金) 18:02:14 ID:ZM48T4fg
【ノンストップ議論 開始!】
[|ロープの束>
[|照明機>
[|ドライアイス>

花丸「犯人が死体を落とした方法……」

梨子「キャットウォークに《誰かがいた》じゃ、説明がつかないのよね」

せつ菜「やはり、何かで《固定した》のだと思いますが……」

果林「ロープを切った話は、既に歩夢ちゃんに否定されていたわね」

璃奈「結んでおいたロープが【自然とほどけた】とか(・v・)?」

梨子「それだと……私の番までもたずに落ちてきちゃうと思うけど」

かすみ「でも、照明機にあった跡からして……」

かすみ「あそこに【何かを仕掛けた】のは間違いないと思いますよ?」

歩夢(犯人が仕掛けたトリック……それって、何が考えられるんだろう?)

711: 2018/11/16(金) 18:03:23 ID:ZM48T4fg
[|ドライアイス>→《固定した》

歩夢「それに賛成だよ!」

Break!

歩夢「そっか……その手があった!」

せつ菜「どんな手なんですか?」

歩夢「ドライアイスだよ! あれを使って、曜ちゃんの死体を固定したんじゃないかな?」

梨子「死体を固定って……どうやるの?」

歩夢「そのために必要な道具は、ドライアイスだけじゃないんだ。最初に重要なのは、どこに固定しておくか、なんだよ」

せつ菜「それって、照明機の跡が付いてたところですよね?」

歩夢「うん。犯人は、あの場所で固定することを選んだ。次に重要なのは、曜ちゃんが着ていた患者服の紐を、水で濡らしておくことなんだけど……」

鞠莉「……凍らせたのね!」

歩夢「間違いないよ」

712: 2018/11/16(金) 18:04:03 ID:ZM48T4fg


歩夢「あのとき落ちて来た死体は……」



歩夢「本当は、こうやって照明機に固定されていたんだ。“ドライアイスを接着剤のようにして”ね」

花丸「時間が来たら氷が溶けて、死体が落ちてくる……」

しずく「ドライアイスが減っていたのは、そういう理由だったんですね……!」

歩夢「患者服の紐が塗れていた理由も、これで説明が付くし……」

歩夢「この方法なら、愛ちゃん以外でも、曜ちゃんを落とすことは可能だよ」

梨子「じ、じゃあ、私たちがもし上を向いていたら……」

かすみ「死体とばっちり目が合っていたかも知れませんね♪」

せつ菜「ちょっとしたホラー体験じゃないですか……」ガクガク

璃奈「……もしかして、璃奈ちゃんボードに両面テープがついてたのも」

鞠莉「顔から剥がれて落ちないよう、固定しておいたんでしょうね」

713: 2018/11/16(金) 18:04:40 ID:ZM48T4fg
果南「……結局、ロープは何も関係ないんだね。たまたまそこに置いてただけ、ってことでいいのかな」

歩夢「曜ちゃんの死体が照明機に固定されていたことを考えると……そこに運ぶため、だったんじゃないかな?」

歩夢「だって、曜ちゃんの死体を運ぶためには、どうしてもハシゴを上る必要があるし……」

ダイヤ「おんぶ紐の要領で、自分に死体を括りつけたのですね。まさか、担いでハシゴを上るワケにもいきませんし」

果南「なるほど……」

歩夢「これでどうかな、かすみちゃん。さっき言ってた“根拠”、話せそう?」

かすみ「歩夢先輩は随分と、私に気を掛けるんですね。まあ、いいですけど」

かすみ「問題ありません。果林先輩が犯人だという根拠としては、十分です」

果林「……」

714: 2018/11/16(金) 18:06:03 ID:ZM48T4fg
かすみ「皆さん。学級裁判で勝ち残るコツって、何だと思います?」

せつ菜「急に何を言い出すんですか」

かすみ「重要な質問です。答えてください」

ダイヤ「勿論、皆で協力して、犯人が誰かを……」

かすみ「それは多数側の視点です。では、少数側……つまり犯人、クロならどう立ち回ればいいと思いますか?」

果南「知らないよ。誰かを〇すワケでもないし……」

かすみ「ただ誰かを〇し、トリックを用いて演出する。それも大切なんですけど……それだけだと足りないんです」

かすみ「学級裁判で勝ち残るには『誰かを犯人に仕立て上げること』。これこそが重要だと、私は考えるんです」

歩夢「それが……根拠?」

かすみ「思い出してください。この裁判で愛先輩に疑いの目が掛かった理由って、何でしたっけ?」

715: 2018/11/16(金) 18:06:48 ID:ZM48T4fg
歩夢「それは……」


果林『璃奈ちゃんを騙して、曜ちゃんに変装させた』

果林『そして、璃奈ちゃんに完璧なアリバイがある間に、音楽室で死体を落とす。こうすれば、一見打ち破れない矛盾が出来上がるのよ』

果林『実際そうだったんじゃないかしら、愛ちゃん』


かすみ「それに、果林先輩はやたらと愛先輩を疑っていましたよね~」

果林「仕方ないでしょう。愛ちゃん以外、あの時は死体を落とす方法が浮かばなかったのよ」

かすみ「だったら……途中で“愛先輩は自〇だ”って説を引っ張り出したのは、何故なんですか? それも“曜先輩を〇した犯人だから”って動機を付けて」

果林「……は?」

かすみ「よく考えてください。愛先輩を〇した犯人である果林先輩は、裁判の対象外……つまり“クロじゃない”んです」

かすみ「だったら“曜先輩を〇したことに耐え切れず自〇した愛先輩”という図式は、果林先輩にとってあまりよろしくないんですよ」

かすみ「……愛先輩に投票したら、自分も死んでしまうことになるんですから」

716: 2018/11/16(金) 18:07:32 ID:ZM48T4fg
ダイヤ「……言われてみれば、確かに矛盾していますわね」

果南「ええっと……つまり?」

花丸「愛さんを〇した果林さんなら、愛さんが自〇だなんて推理を出してはいけない」

花丸「何故なら、自〇する動機が“曜さんを〇したこと”になってしまうから……ということずら」

しずく「自分から疑いを逸らそうとしても、自〇行為になってしまうんですね……」

かすみ「ええ。ところが、果林先輩がクロだったとしたらどうでしょう」

鞠莉「全ての罪を愛になすり付け、自分は学級裁判に勝利出来る……なるほど、一理あるわね」

果林「……一理?」

果林「そんな話が……一理?」

果林「ふざけるのも……大概にしなさいよぉ!!!」

717: 2018/11/16(金) 18:08:34 ID:ZM48T4fg
かすみ「あれ、気づいてないんですか?」

果林「……何がよ」

かすみ「いまの話以外でも、既に先輩は自白してしまっているんですよ?」

かすみ「自分が犯人だ……って」

果林「だったら、それを言ってみなさいって言っているでしょう!?」

梨子「ちょ、ちょっと、2人とも落ち着いて!」

果林「理不尽に疑われて、落ち着いていられるもんですか!」

かすみ「私はいつだって冷静沈着ですよ~♪」

かすみ「……さて。任せましたよ、歩夢先輩」

歩夢「え、えぇっ!? どういうこと!?」

718: 2018/11/16(金) 18:09:34 ID:ZM48T4fg
【ノンストップ議論 開始!】
※【ウィークポイント】を記憶(キャプチャー)して、新しいコトダマにしろ!

果林「私は犯人じゃないって言ってるでしょう!?」

かすみ「曜先輩を〇せたのは……果林先輩しかいないんですよ?」

果林「だったら、証拠はあるのかしら?」

果林「【死体を落とした方法】が根拠かしら?」

果林「【璃奈ちゃんボードを付けていた】ことが怪しいのかしら?」

果林「【濡れていた患者服の紐】? それとも【あんな死因】?」

千歌「怪我をした曜ちゃんを手当てしたよね?」

果林「それが証拠? 【あの怪我】が?」

果林「そもそも、保健室に連れて来たのは果南ちゃんよ」

果林「一体、この話のどこに手掛かりがあるって言うのかしら!?」

かすみ「……歩夢先輩も分かりましたよね? 【果林先輩のミス】」

かすみ「私じゃ信用ないみたいですから」

歩夢(かすみちゃんが言う“ミス”……それって……)

719: 2018/11/16(金) 18:10:37 ID:ZM48T4fg
[|果林先輩のミス>→【あんな死因】

歩夢「その矛盾、撃ち抜いてみせる!」

Break!

歩夢「果林さん……説明、してください」

果林「何を、かしら」

歩夢「“あんな死因”って、曜ちゃんの死因のこと……ですよね」

果林「そうよ。それが何……ッ」

梨子「あれ? 確か、曜ちゃんの死因って……」

歩夢「そう。愛ちゃんの死因や、〇害に使われたトリック。それから、曜ちゃんの死体落下については言及された」

歩夢「でも、曜ちゃんの死因はまだハッキリしていないんだよ」

歩夢「それなのに何故果林さんは“あんな死因”だなんて、まるで知っているようなことが言えるんですか!?」

果林「ぐっ……!?」

かすみ「誰も知らない筈のことをついうっかり口走る……」

かすみ「それって、自分が犯人だからってことですよね?」

720: 2018/11/16(金) 18:11:19 ID:ZM48T4fg
鞠莉「かすみ。あなた、とことん果林をブラフに掛けたわね」

かすみ「何の話ですか~?」

鞠莉「善子の時と同じ。犯人を焦らせて、決定的な手掛かりを出させた」

鞠莉「そのスジの才能あるわよ、あなた」

かすみ「褒め言葉として受け取っておきますね」

璃奈「……でも、これでハッキリしたんだね。この事件の真犯人(・v・)」

歩夢「うん、間違いないよ。曜ちゃんを〇した犯人は──」

【怪しい人物を指名しろ!】

721: 2018/11/16(金) 18:12:07 ID:ZM48T4fg
→【朝香果林】

歩夢「果林さん、あなたです。曜ちゃんを〇したのも、あなただ!」

果林「ぐ、ぎぎ……」

果林「だ、だったら、その“死因”ってのは何だったのかしら?」

果林「肝心の死因が分からないんじゃ、私が犯人と言いきれないんじゃない?」

歩夢「え、ええっと……」

花丸「こういう時は逆算だよ、歩夢ちゃん」

花丸「これが出来るのはこの人しかいない、じゃない。この人はこれをした、を探すずら」

果南「けど果林が曜にしたことって、それこそ保健室に運んできて、輸血とか手当てして……」

歩夢「……」

歩夢(もしかして……あの時から、既に?)

【閃きアナグラム 開始!】

つ け い い ゆ け (ダミー無)

722: 2018/11/16(金) 18:12:47 ID:ZM48T4fg
→【いけいゆけつ(異型輸血)】

歩夢「曜ちゃんに使った輸血パック……もし、あれの血液型が違っていたら、どうなるのかな」

鞠莉「異型輸血……本人の血液型と異なる型の血液を輸血した際に起きる、ある種アレルギー反応のようなものね」

鞠莉「対処が遅れた場合、2、3日で死に至る。死亡推定時刻を踏まえても、合致するでしょうね」

歩夢「逆に言えば、果林さんが取った行動で死因に直結する物は、あれくらいしかないんだ……」

ダイヤ「保健室にあったハンマーではないのですか?」

歩夢「それもないと思うんだ。確かに、プールで負った怪我のお陰で誤魔化しは利きそうだけど……」

歩夢「そんなことをしたら、ハンマーだけじゃなく、ベッドのシーツも血で汚れると思うんだ」

歩夢「曜ちゃんに変装した璃奈ちゃんに、気づかれるだろうしね」

璃奈「……うん。シーツは全然汚れてなかったよ (・v・)」

723: 2018/11/16(金) 18:13:52 ID:ZM48T4fg
果林「ねえ。確定事項のように語っているけれど……」

果林「さっき、鞠莉ちゃんはアレルギー反応って言ったわよね」

鞠莉「ええ、そうね。死ぬまでに時間が掛かるとも」

果林「そんな〇し方をしたら……顔色も悪くなるんじゃないかしら?」

花丸「死体の顔に塗られていたファンデーションは、そのためだったずらね」

果林「っ!?」

花丸「これは推測だけど……多分、果林さんは別の計画を立てていたんじゃないかな」

せつ菜「別の、計画?」

花丸「だって、璃奈ちゃんボードを被せるなら、わざわざファンデーションを塗る意味はない」

歩夢「もしかして、愛ちゃんが偶然保健室に来ちゃったから……」

花丸「愛さんを犯人に仕立てて最後は〇す……そう、計画を変更せざるを得なかった」

歩夢「だとしたら、愛ちゃんは口封じで──」

果林「っははははははははははは!」

反論!

724: 2018/11/16(金) 18:14:39 ID:ZM48T4fg
果林「あー……面白い。面白くてお腹がよじれちゃいそう」

果林「愛ちゃんを〇したのは口封じ……」

果林「だとしたら、まだ説明がつかないことがあるんじゃないかしら!?」

かすみ「ありゃりゃ、何だか情緒不安定になってますけど大丈夫ですか?」

果林「うるさい、うるさいうるさいうるさい!」

果林「どうなのよ、答えられるなら答えてみなさい!」

【反論ショーダウン 開始!】
[|患者服の紐>
[|照明機>
[|キャットウォークのハシゴ>

725: 2018/11/16(金) 18:16:00 ID:ZM48T4fg
果林「愛ちゃんに罪をなすりつけて、口封じ……」

果林「そもそも、罪のなすりつけ自体が無理だと思わないかしら?」

果林「それとも、私の失言1回程度で、その謎をスルーするつもり?」

─発展─
罪のなすりつけって……死体落下だよね?
    その方法ならさっき議論した筈だよ
        ドライアイスで凍らせたってさ

果林「っふふふふ……まだ分からないの?」

果林「凍らせて死体を固定したとしましょう」

果林「でも、死体が落ちないくらいガチガチに凍っていたんじゃ……

果林「【いつ落ちるかは分からない】んじゃないかしら?」

果林「夕食会の最中に死体を落とさないと……」

果林「アリバイ工作も意味を成さないわよ!?」

歩夢(死体がいつ落ちるのか……その謎、今なら自信を持って言える)

歩夢(こんな苦し紛れの反論なんかに……!)

726: 2018/11/16(金) 18:17:00 ID:ZM48T4fg
[|照明機>→【いつ落ちるかは分からない】

歩夢「その言葉、斬らせてもらうよ!」

Break!

歩夢「待って。狙ったタイミングで死体を落とす方法ならあるよ」

果林「無理よ。ずっと席に居た私に──」

歩夢「3つの照明機は……それぞれ、違う色のスポットライトだったよね」

歩夢「1つ目は赤色……せつ菜ちゃんに使われた物。2つ目の薄水色は、しずくちゃんの番で使われた」

歩夢「そして最後……ピンク色の照明を使った照明機。あそこに曜ちゃんを吊るしておいたんだ」

果林「まさか、照明が点くだけで死体が落ちるとでも?」

歩夢「……照明を点けた時に、照明機が発する熱。これなら、死体を括りつけていた氷を溶かせるよね」

果林「──っ!?」

鞠莉「死体落下トリックの一番の肝は、愛自身にそのスイッチを押させることだったってワケね」

果林「う、ぅぅぅっ……!」

果林「…………ふふ」

727: 2018/11/16(金) 18:17:36 ID:ZM48T4fg
果林「うふふふふふふふふふふっ」

しずく「だ、大丈夫なんですか本当に……」

果林「ねえモノっちー。確か電子生徒手帳には、持ち主の血液型が表示されるのよね」

モノっちー「はい。その通りでございます」

果林「だったら、曜ちゃんの生徒手帳に何て書いてあったか……言えるわね?」

モノっちー「AB型だネ」

果林「ねえ歩夢ちゃん。あなたが保健室で見つけた輸血パック……何型かしら?」

歩夢「……AB型、だよ」

果林「だったら、異型輸血だなんて起こる筈ないわよねえ!?」

果林「つまり、あなたの推理は根本から間違っているのよ!」

歩夢「っ……」


千歌「────超高校級の船乗り、渡辺曜」

728: 2018/11/16(金) 18:18:27 ID:ZM48T4fg
歩夢「千歌、ちゃん?」

千歌「誕生日、2002年4月17日、AB型」

千歌「……重度の魚介アレルギー」

歩夢(……!?)

果林「急に何を言い出すかと思ったら……」

歩夢(いや、違う……でも、こんなことって……)

歩夢「やっぱり……間違っているのは果林さんだよ」

果林「……はあ?」

歩夢(どんなに残酷な真実でも、やらなくちゃいけないんだ……)

歩夢(この事件に、決着をつけるために……!)

729: 2018/11/16(金) 18:19:27 ID:ZM48T4fg
【理論武装 開始!】

果林「私は愛ちゃんを〇しただけよ!?」

果林「曜ちゃんはAB型、輸血パックもAB型」

果林「歩夢ちゃんの方こそ、間違っているんじゃない?」

果林「あなたの推理は乱れているわ!」

果林「今すぐ謝ってちょうだい」

果林「謝って」

果林「謝って」

果林「謝って」


果林「【あの輸血パックじゃ、曜ちゃんを〇すのは不可能よ!】」

      △:プロフィール
□:虹ヶ咲       〇:生徒
      ×:学園

730: 2018/11/16(金) 18:20:09 ID:ZM48T4fg
→□×〇△  [|虹ヶ咲学園生徒プロフィール>

歩夢「これで……終わりだよ!」

Break!!!

歩夢「千歌ちゃん。いまのって、虹ヶ咲学園の生徒プロフィール……だよね」

千歌「……そうだよ。鞠莉ちゃんが印刷したものを、こっそり持ち帰った」


鞠莉『そういえば。生徒名簿のコピー、誰か知らないかしら』

果南『生徒名簿のコピー?』

鞠莉『ええ。昨日、どこかに置き忘れたっぽいのよね』

鞠莉『まあ、知らないならいいわ。また職員室で印刷すればいいだけだし』


鞠莉「千歌っちが持っていたのね……」

ダイヤ「ですが、それが証拠になるのでしょうか?」

歩夢「思い出して欲しいんだ。毒薬騒動が起きる直前の昼食を……」

731: 2018/11/16(金) 18:20:57 ID:ZM48T4fg
歩夢〈いつものように、梨子ちゃんが作ってくれた食事をみんなで食べる〉

歩夢〈今日のお昼ご飯である海鮮丼が放つ独特の生臭さと、少しぎこちない雰囲気を漂わせながら……〉


歩夢「魚介類アレルギーの曜ちゃんは、食べられなかった筈なんだ」

梨子「でも、曜ちゃんは完食してたわよ?」

歩夢「だからこそ、おかしいんだ。アレルギーで食べられない筈の物を、どうして食べられたのか……」

歩夢「それに、本人の記憶では泳げた筈の曜ちゃんが、泳げなくなっていたこと……」

しずく「……私と同じようなことが、曜さんにも?」

鞠莉「骨髄移植で血液型が変わり、その記憶も奪われた……まあ、そう考えるのが妥当でしょうけれど」

ダイヤ「それだと、アレルギーの方が説明出来ませんわ。入学時に持っていたアレルギーが在学中に完治していたとしても、その記憶を奪われていれば……」

千歌「別人だったんだよ」

果南「別人……?」

732: 2018/11/16(金) 18:21:41 ID:ZM48T4fg
千歌「あの曜ちゃんは、本当は曜ちゃんじゃなかった。曜ちゃんのフリをした“嘘つき”だった」

千歌「別人なら、血液型も違うかも知れない。本当は、AB型じゃない別の誰かだったんだよ」

歩夢「……」

果林「……ねえ。さっきから、何の話をしているのかしら?」

果林「私は、あの輸血パックでは曜ちゃんを〇せない、って話をした筈よ」

果林「それなのに、これは一体何の茶番かしら?」

果林「曜ちゃんが別人ですって? そんな話、私は絶対に認めないわ──」

かすみ「だったら、決定的な証拠を出しましょうか?」

果林「──よ?」

733: 2018/11/16(金) 18:22:26 ID:ZM48T4fg
歩夢「あるの? 証拠……」

かすみ「残念ながら、曜先輩の正体についての証拠ではありません」

かすみ「ですが、果林先輩が犯行に関わっている、明らかな証拠だと思いますよ」スッ

歩夢(そういって、かすみちゃんが取り出したのは……)

梨子「紙の……束?」

せつ菜「ぱっと見、20枚近くありそうですけど……」

かすみ「覚えてませんか? ルビィさんたちの事件で、謎が複雑化する原因にもなった見張りの……」

かすみ「順番決めに使った、くじ引きです」ニィ


果林『言いたいことは分かるから大丈夫。それを防止するために、裏に2人以上のサインを書くのよ』

果林『そうすれば、このくじは複製出来ない唯一無二のものになるでしょう?』


歩夢「あの時の……!」

734: 2018/11/16(金) 18:23:17 ID:ZM48T4fg
かすみ「もしかしたらと思って、持って来ておいて正解でしたよ。これでハッキリさせられますよね」

かすみ「“果林先輩の筆跡”と、“璃奈さんに送られた手紙の筆跡”が」

果林「……」

かすみ「あれ、どうしたんですか? 汗びっしょりですよ?」

果林「……」

かすみ「というワケで、こういうのは得意なイメージがありそうな……ダイヤ先輩、お願いします♪」スッ

ダイヤ「……分かりました」

かすみ「ほら、璃奈さんも手紙出してください」

ダイヤ「……少し、時間が掛かります」

かすみ「だったら……最後のまとめは、歩夢先輩にお願いします」

璃奈「……お願い、歩夢ちゃん。もう、こんな事件は……早く、終わらせて(>_<。)」

歩夢「……分かった」

735: 2018/11/16(金) 18:24:12 ID:ZM48T4fg
【クライマックス推理】
ACT.1
今回の事件は、動機が発表されるずっと前から始まっていた。
プールで大怪我を負った曜ちゃんを、果南ちゃんと犯人が手当てしたんだ。
その手当てに用いられた輸血パックは……どういうワケか、曜ちゃん本人の血液型と違っていたんだ。
故意か事故か、私は事故だったと信じたい。
だっていつも私たちの前に立ってくれた人がこんなことをするなんて、信じられないから。

ACT.2
犯人が、いつ曜ちゃんの異変に気付いたかは分からない。
けれどその異変は、悪くなった顔色が物語っていた。
だから犯人は、肌色のファンデーションを塗ることで、ひとまずその場を凌ぐことにしたんだろうね。
実際、千歌ちゃんの目は欺けていたようだったし……。
でも、モノっちーからの動機が発表された日、犯人にとって予想外の出来事が起きた。
愛ちゃんが、偶然保健室に来てしまったんだ!

ACT.3
犯人は慌てて、愛ちゃんに薬を嗅がせて眠らせた。
恐らく、曜ちゃんが死んだのもこの頃。
この時点で犯人の用意していた何らかの計画は狂っていた筈だけれど、犯人は新しい計画を行うことにしたんだ。
愛ちゃんに全ての罪をなすりつけ、最後は自〇に見せかけて〇す、恐ろしい計画を……!
計画の下準備として、曜ちゃんの死体を一旦隠し、愛ちゃんをベッドの下に押し込める。
その間に犯人は、かすみちゃんの部屋から持ち出した毒薬を、消毒液の中に入れておいたんだ。
かすみちゃんが証拠を幾つも持っていたのは、持ち出したのが誰かに気付いてたんだろうね。

736: 2018/11/16(金) 18:25:06 ID:ZM48T4fg
ACT.4
目を覚ました愛ちゃんは、曜ちゃんが消えたことに焦った筈だよ。
そして、前回の裁判もあって怖くなった愛ちゃんは……ある行動に出た。
璃奈ちゃんに、曜ちゃんに変装してもらうようお願いする。
この行動が犯人にとって計算済みだったかは分からないけれど、犯人はこれも計画に加えたんだ。
その為に璃奈ちゃんボードを盗み、彼女を人前に出られなくした上で、手紙を使って脅迫したんだよ。
一方で、夕食会の準備の終わり。
怪我をした愛ちゃんに、手当てとして毒入り消毒液を使う。
そう。この毒は、血管に入ることで初めて作用する遅効性の毒だったんだ……!

ACT.5
夜時間になり、脱衣所から璃奈ちゃんボードを盗んだ犯人は、大掛かりな仕掛けの準備を始めた。
隠しておいた死体を音楽室……ハシゴを上った先にあるキャットウォークに運んだ。
ロープは、このとき死体を安全に上に運ぶため使ったんだろうね。
そこで犯人は、あらかじめ濡らしておいた患者服の紐を照明機にくくり付けた。
更に、ドライアイスでその紐を凍らせ、接着剤の要領で、曜ちゃんの死体は照明機に固定された。

ACT.6
そして、訪れた夕食会。
梨子ちゃんの出番で使われたピンク色の照明の電源が入ると、照明機が熱を発する。
こうして、凍らせていた紐が溶け、死体はグランドピアノめがけて落下。
その間、犯人はずっと観客席にいて、絶対的なアリバイを確保しながら、愛ちゃんに容疑を被せることに成功した。
最後は、遅効性の毒が回り、裁判中に愛ちゃんが毒死する……。
こうして犯人は2人の人間を操り、自分の都合のいいように事件をコントロールしようとしたんだ。

737: 2018/11/16(金) 18:25:41 ID:ZM48T4fg
歩夢「超高校級のコーディネーター、朝香果林さん」

歩夢「あなたがこの連続〇人の犯人です!」

   COMPLETE!!!

738: 2018/11/16(金) 18:26:49 ID:ZM48T4fg
歩夢「……これが、この事件の真相だよ」

璃奈「……そう、なんだね(>_<。)」

果林「ま、まだよ……まだ手紙が……」

ダイヤ「果林さん」

ダイヤ「……もう、投票に移りましょう」

果林「……」

歩夢(ダイヤさんの言葉で、みんなは確信する)

歩夢(長かった裁判に、ようやく終止符が打たれるのだと……)

モノっちー「んじゃあ、行っちゃいましょうか、いつものヤツ!」

モノっちー「皆さん、お手元のスイッチで投票しちゃってください!」

モノっちー「ああそうそう。ちゃんと誰かに投票してネ? 投票を放棄した人も……オシオキだからさ」

739: 2018/11/16(金) 18:27:19 ID:ZM48T4fg

   VOTE

果林 果林 果林
   GUILTY


 学 級 裁 判 
   閉  廷

740: 2018/11/16(金) 18:28:09 ID:ZM48T4fg
モノっちー「うんうん、じゃあ結論から言っちゃおうっか」

モノっちー「またまた大正解! これで3連続だよ!」

モノっちー「正体不明の誰かさんと《超高校級のギャル》宮下愛さんを〇したクロは……」

モノっちー「《超高校級のコーディネーター》朝香果林さんなのでしたー! どんどんどん、ぱふぱふっ」

歩夢「正体不明、って……」

千歌「本当に、曜ちゃんじゃなかったんだね」

モノっちー「そうなんだよネ。とある事情から、彼女は渡辺曜さんとしてこの学園で生きていたワケだけど……」

モノっちー「よりによって、その彼女が死ぬとはネ! お陰で彼女に用意しておいたとっておきの絶望を話しそびれちゃったよ」

璃奈「……だったら。だったら愛ちゃんは、何で死ななくちゃいけなかったの(>_<。)」

モノっちー「さあ? そんなの、クロに訊けばいいじゃん!」

モノっちー「もっとも、話が出来る状態じゃあないだろうけどネ」

741: 2018/11/16(金) 18:28:55 ID:ZM48T4fg
果林「……」

歩夢(果林さんの視界には、もう私たちは映っていなかった)

歩夢(空白、後悔、虚無……そして絶望)

歩夢(それらをごちゃまぜにしたような目で、どこか遠くを見ていた)

モノっちー「さてと、時間も押し迫ってることだし……」

璃奈「待って……」

モノっちー「《超高校級のコーディネーター》朝香果林さんのために、スペシャルなオシオキを用意しました!」

璃奈「愛ちゃんのこと……」

モノっちー「それでは張り切って行きましょう! オシオキターイム!」

璃奈「謝って貰ってない……(>_<。)」

742: 2018/11/16(金) 18:30:02 ID:ZM48T4fg

     GAME OVER
アサカさんがクロにきまりました。
   おしおきをかいしします。

743: 2018/11/16(金) 18:31:00 ID:ZM48T4fg
朝香果林が首輪で連れて来られたのは、南国ビーチ……のように作られた、安っぽいセット。

水着にパーカーの出で立ちは、さながらファッションかグラビア雑誌の撮影のようです。

ですが、両手両足には鎖が繋がれ……おっと、サングラスをかけたモノっちーが現れました。

どうやら、撮影会が始まるようです。



   〈南国ビーチ・de・Starlight!?〉
《超高校級のコーディネーター 朝香果林処刑執行》

744: 2018/11/16(金) 18:31:36 ID:ZM48T4fg
太陽を模した照明ライトが、ジリジリと果林を照らしています。

モノっちーがスイッチを押すと鎖が動き、彼女は様々なポーズを取らされます。

パシャリ、パシャリ。

その度に、モノっちーは三脚に立てかけたカメラのシャッターを切ります。

パシャリ、パシャリ。

一方の果林は、ライトの温度が相当なものらしく、汗がびっしょり。

さっきまでの冷や汗がどれかなんて、分からなくなってしまいました。

尚も照りつける照明ライト。

幾らなんでも、これは身体がアツくなりすぎです。

その証拠に、どこからか焦げ臭いニオイ……セットの端に、火が付いたようです。

745: 2018/11/16(金) 18:32:19 ID:ZM48T4fg
慌てふためくモノっちー。

鎖で逃げられない果林を放って、さっさと撤収します。

そして、モノっちーが居なくなり、火の勢いが強くなった頃……。

セットの中に、どこからともなく雨が降り始めました。

雨の勢いは徐々に強くなり、彼女の体温を奪っていきます。

それでも雨は弱まらず、それどころか吹雪へと姿を変えました。

果林は顔を青ざめさせ、ガタガタと身体を震わせますが……逃れることは出来ません。

ビュオオオオオオッ

おや……吹雪が強くなりすぎて、画面がホワイトアウトしてしまいました。

吹雪が収まった頃、モノっちーが再び姿を現し、ホワイトアウトした画面を直します。

そこに映っていたのは、魅力的なポーズのまま氷漬けになった、朝香果林の姿でした──

746: 2018/11/16(金) 18:33:25 ID:ZM48T4fg
歩夢(……終わった)

歩夢(今までの〇人と違い、果林さんは保身のために愛ちゃんを〇した)

歩夢(それでも、みんなに謝って、どうにか前に進めないワケでもなかった)

歩夢(けれども……その機会が来ることはなかった)

璃奈「……」

歩夢(彼女に掛けられる筈だった謝罪の言葉も、なかった)

花丸「璃奈ちゃん……大丈夫、ずら?」

しずく「今はそっとしてあげましょう。私もそうなる筈でしたし……あのとき励ましてくれた彼女は、もう……」

歩夢(……愛ちゃんが居なくなった)

歩夢(ムードメーカーで、みんなを励ます立場にあった彼女が、居なくなった)

歩夢(その事実は、璃奈ちゃんだけじゃなく、私たちの心にも少なからず影を落としていた)

歩夢(……やがて。1人、2人と、裁判場を後にした)

747: 2018/11/16(金) 18:33:58 ID:ZM48T4fg

────夜時間前、璃奈の部屋

璃奈「……」

コンコン

璃奈「……」

ガチャリ

歩夢「居る……よね」

璃奈「……」

歩夢「これ、届けておいた方がいいかなって思ったから……愛ちゃんの部屋にあったんだって」

璃奈「……ノート(>_<。)?」

歩夢「多分、璃奈ちゃんに渡した方が良いかなって思ったから」

歩夢(本当は……裁判場を去る直前に、かすみちゃんに頼まれたことなんだけど)


かすみ『歩夢先輩。愛先輩の部屋に何かあったら……持って行ってあげてください』ボソッ

748: 2018/11/16(金) 18:34:55 ID:ZM48T4fg
璃奈「……」

歩夢(璃奈ちゃんは、しばらくそのノートを見つめる)

歩夢(何が書いていたかは分からない。分からないままで、いい)

璃奈「ぐすっ……」

璃奈「うわああああああああああああああんっ!」

ギュッ

歩夢(だって、こんな風に泣き崩れる彼女を)

歩夢(今まで溜めていたあらゆる感情を爆発させたように泣く彼女を、放ってはおけなかったから)

璃奈「嫌だよ、愛ちゃん……」

璃奈「なんで、なんで居なくなっちゃったの……」

璃奈「バカ、バカ、バカバカバカ!」

歩夢(……釣られて、私も泣いていた)

歩夢(こんな目に遭っている理不尽への涙なのか、友達を喪った悲しみなのか)

歩夢(けれども、私たちは前に進まないといけない)

歩夢(それが、生き残った私たちに課せられた義務だから……)

749: 2018/11/16(金) 18:36:04 ID:ZM48T4fg
────校舎3階、音楽室

かすみ「だから毒薬は処分しましたって。鞠莉先輩たちと一緒に、トラッシュルームに捨てたじゃないですか」

「────」

かすみ「もう毒はどこにも仕掛けられていません。そんなに信用ならないなら、モノっちーさんにでも聞いてください」

「────、────?」

かすみ「……彼方先輩に毒を飲ませた理由、ですか? 死体に、しかも意味のない経口摂取」

かすみ「だからあれは、モノっちーファイルがどこまで正確なのかを試したかっただけですってば」

かすみ「いい加減しつこいですよ。もしかして、せつ菜先輩あたりに頼まれたとかじゃないですよね?」

「────」

かすみ「そうじゃない? なら、この話は終わりです」

かすみ「どうしても私が憎いなら、私を〇したらどうですか?」

かすみ「そんなことをしたら、あなたもクロになりますけどね」

750: 2018/11/16(金) 18:36:45 ID:ZM48T4fg
────千歌の部屋

千歌「……」

千歌「そっか」

千歌「そういうことだったんだね」

千歌「分かっちゃった」

千歌「あの曜ちゃんの正体も」

千歌「私の才能も」



千歌「全部、思い出しちゃった」

751: 2018/11/16(金) 18:37:19 ID:ZM48T4fg
Chapter3 END

no title


To be continued……


プレゼント“お手製カーディガン”を獲得しました。

761: 2018/12/31(月) 18:01:11 ID:VfeQwAbI
歩夢(……夢を、見た)

歩夢(幼稚園、年中だった頃のお遊戯会)

歩夢(緊張して泣き出しちゃった私に、掛けられた言葉)

「いっしょだから大丈夫だよ。ふたりで思いっきり楽しんじゃおうよ」

歩夢(私は今でも、その言葉を覚えている)

歩夢(けれどもそこから先……お遊戯会がどうなったのかは、覚えていない)

歩夢(その言葉を掛けてくれた人さえも、思い出せなかった)


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