歩夢「君の超高校級の心は輝いてるかい?」【長編SS】【スクスタ】

AqoursーSS


979: 2019/08/23(金) 19:19:22 ID:.D1apNcw

     Chapter5

キボウハドコニ? (非)日常編

980: 2019/08/23(金) 19:19:58 ID:.D1apNcw
────学園生活20日目

歩夢(この日……私がベッドから身体を起こしたのは、昼前のことだった)

歩夢(せつ菜ちゃんが死んだ)

歩夢(その事実を受け入れるには、1日そこらじゃ到底足りなかったのだ)

歩夢(超高校級だなんだと言われていても、結局は高校生)

歩夢(親友の死をすんなり受け入れられるような、超高校級の精神は持ち合わせていない)

歩夢(自分が何の超高校級かさえ忘れていた私なら尚更……なのだろうか)

歩夢(そんなことを考え、僅かな空腹を覚えつつ)

歩夢(私は、食堂に向かった)

981: 2019/08/23(金) 19:20:34 ID:.D1apNcw
────昼、食堂

歩夢「……おはよう」

しずく「あ、おはようございます」

ダイヤ「……もう昼ですわよ」

璃奈「ちょうどこれからお昼ご飯(・v・)」

梨子「歩夢ちゃんの分も、ちゃんと用意してるからね」

花丸「食べ終わったら、校舎の探索ずらね」

鞠莉「……」

歩夢(みんな、何気ないように、普通に接してくれる)

歩夢(でも、やっぱりそれは、どこか取り繕った普通だ)

歩夢(『大丈夫?』)

歩夢(流れ込んで来る無言の気遣いが、胸に痛い)

歩夢(だからこそ……昨日のことを思い出してしまう)

982: 2019/08/23(金) 19:21:05 ID:.D1apNcw
歩夢「……」

歩夢(それでも、せつ菜ちゃんに頼まれたんだ)


せつ菜『私は居なくなりますけど……私の想いは、あなたに託します』

せつ菜『だから、歩夢。あなたは決して、諦めないでください』


歩夢(ここで立ち止まっているワケにはいかない)

歩夢(死んだみんなの想いを背負って、私たちは生きているんだ)

梨子「食欲がないなら、無理にとは言わないから……」

歩夢「……ううん、食べるよ」

歩夢(みんなで生きて、ここから脱出する。今はそれだけを考えよう)

983: 2019/08/23(金) 19:21:48 ID:.D1apNcw
歩夢「ところで、千歌ちゃんは……」

ダイヤ「っ……」

歩夢「……? 何か、あったんで──」

鞠莉「その話は後でするわ。まずは、食べたら4階の探索をしましょう」

歩夢「……」

歩夢(今こうして“みんな”の中に入っていない千歌ちゃん)

歩夢(今までも、事あるごとに様子がおかしくなる人は居た)

歩夢(自分の怪我のこと、記憶を失っていたこと、大切な人が死んだこと。理由は色々ある)

歩夢(でも、彼女のそれは……今までの誰よりもその期間が長い)

歩夢(そのことだけが少し、気掛かりだった)

984: 2019/08/23(金) 19:22:39 ID:.D1apNcw
────校舎4階



しずく「ここが……虹ヶ咲学園の4階……」

歩夢(前回は開いていなかったシャッターが、今度こそ開いていた)

璃奈「あまり部屋は多くなさそうだね(・v・)」

歩夢「うん。でも、何だか……」

歩夢(漂って来る空気は、今までのそれより少し冷たくて……)

歩夢「……嫌な雰囲気」

ダイヤ「出てくるのは、鬼か蛇か……」

花丸「セイウチにはあまり会いたくないずらね」

鞠莉「あら、なかなかジョーク利いてるじゃない」

梨子「……ジョークなの?」

歩夢「さあ……?」

985: 2019/08/23(金) 19:23:35 ID:.D1apNcw
────武道場

梨子「……桜ね」

しずく「……桜ですね」

歩夢(そういう2人は桜内と桜坂……という冗談を、喉の寸前で抑え込む)

歩夢(武道場は、板の間と砂利のエリアに分かれている)

歩夢(板の間は真ん中にビニールの畳が張られていて、ここで剣道や柔道なんか出来そうな雰囲気)

歩夢(砂利のエリアには両サイドに何故か桜の木が植わっていて、向こうの壁には3つの的が設置されていた)

梨子「どのロッカーにも、弓と矢がセットで入ってたわ」

しずく「もしかしたら、あの的も含めて弓道部の人が使っていたのかも知れません」

しずく「この“園田”と名前が掘られた弓なんて、かなり使い込まれていますけど、大事に扱われていたような感じがして……」

梨子「虹ヶ咲の卒業生の中に、超高校級の弓道部が居たりしたのかもね」

986: 2019/08/23(金) 19:24:18 ID:.D1apNcw
歩夢(超高校級の弓道部……その単語を、私は聞いた覚えがある)

歩夢(【虹ヶ咲学園・極秘プロジェクト】……)

歩夢(鞠莉さんが解析を進めていたノートパソコンの中にあったファイルだ)

歩夢(超高校級の医者、超高校級の占い師、超高校級の幸運、そして超高校級の弓道部)

歩夢(過去、虹ヶ咲学園が超高校級の才能を研究し続けて来たらしいレポートの中に、その肩書はあったのだ)

しずく「──しっかり当てたら、格好いいんでしょうね」

梨子「ダイヤさんあたりは似合いそうだけど──」

歩夢(……そういえば、ノートパソコンの解析はどうなったのだろう)

歩夢(談笑を交わす2人の邪魔をしないよう、私はそっと武道場を後にした)

987: 2019/08/23(金) 19:25:14 ID:.D1apNcw
────情報処理室

ガチャガチャガチャ!

ダイヤ「……どうやら、鍵が掛かっているみたいですわね」

歩夢「地図だと、この部屋の向こうにも部屋があるみたいなんだけど……」

ダイヤ「校則で扉を壊せない以上は、鍵を探すか諦めるしかないのでしょう」

ダイヤ「ところで、地図と言えば……歩夢さんは気付きました?」

歩夢「気付いたって、何にですか?」

ダイヤ「今までの階にあった“ある物”が、この階にはないことです」

歩夢「え、えーっと……何だろう?」

ダイヤ「ぶっぶー、時間切れですわ。後で食堂に集まった時にお話します」

歩夢(今までの階にあって、この階にない物……?)

988: 2019/08/23(金) 19:25:55 ID:.D1apNcw
────生物室

ガチャガチャガチャ!

歩夢(ここの扉にも、鍵が掛かっている)

歩夢(扉の僅かな隙間から、うっすらと冷たい空気が漂っていて……)

鞠莉「……」

歩夢(そして、閉ざされた扉の前に……鞠莉さんが立っていた)

歩夢「あの……鞠莉さん」

鞠莉「千歌っちのことでしょう?」

歩夢「あ……それもあるんですけど、ノートPCのことも少し気になっていて……」

鞠莉「……」

歩夢(鞠莉さんは『oh……』と言わんばかりの苦々しい顔で、頭を抱えるジェスチャーをした)

歩夢(そして、誰にも聞かれたくないといった様子で、私に耳打ちを始めた)

989: 2019/08/23(金) 19:26:50 ID:.D1apNcw
鞠莉「昨日……裁判が終わったあと、部屋に来た千歌っちに襲われた」

歩夢「……!?」

鞠莉「スタンガンでね。多分、武器庫から持ってきたんでしょうけど……」

歩夢「いや、そうじゃなくって……」

歩夢(なんでこの人はそういうことをさらっと言いのけるの……!?)

鞠莉「特にケガらしいケガはなかったから、私の心配は大丈夫よ。ただ、パソコンは部屋からlostしていたけどね」

歩夢「lost、って……なくなってたんですか?」

鞠莉「千歌っちが持ち去った……って信じたいわね。ダイヤたちがそれをするとは思いたくないし」

990: 2019/08/23(金) 19:27:42 ID:.D1apNcw
鞠莉「目的はよく分からないけどね。だから悪いけど、解析結果はお預け」

歩夢「……」

歩夢(パソコンを千歌ちゃんが持ち去った)

歩夢(仮にそうだとしても、プログラム知識豊富な鞠莉さんですら手を焼いていた代物なのに)

歩夢(実は彼女が超高校級のプログラマーだった、とかでもない限り解析は難しいんじゃないだろうか?)

歩夢(でも、今までプログラマーだった素振りなんて見せてなかったし……)

歩夢(そもそも千歌ちゃんは、何の超高校級なんだろう?)

歩夢(武器庫に行ってるんだから、自分の才能も知ってる筈だけど……)

991: 2019/08/23(金) 19:28:18 ID:.D1apNcw
────多目的室

璃奈「本当に、多目的室って感じだね(・v・)」

歩夢(隅に置かれたホワイトボードや、部屋の真ん中を陣取る折り畳み式の机と椅子)

歩夢(会議室としても使えるし、机と椅子を退ければ体育館ほどではないがスペースを確保出来る)

歩夢(相変わらず小窓が塞がれているのを除けば、どこにでもある多目的室。そうとしか表現出来ない、実にシンプルな部屋だ)

歩夢「この様子だと第2多目的室も特に何もなさそうだし、食堂に──」

璃奈「ねえ、歩夢ちゃん(・v・)」

歩夢「どうしたの?」

璃奈「その……あんまり、背負い過ぎないでね(>_<。)」

歩夢「……えっ?」

992: 2019/08/23(金) 19:29:22 ID:.D1apNcw
璃奈「前に進まないといけない。そればかり考えても、どこかで躓いちゃうから(>_<。)」

璃奈「私はもう、みんなに躓いて欲しくない。悲しい出来事は、もう見たくない(>_<。)」

歩夢「っ、だから私は……」

璃奈「止まっても、いいんだよ。後ろに戻ったって、いいんだよ(>_<。)?」

璃奈「愛ちゃんがノートに書いてたことの、受け売りだけど……」

璃奈「最後に前に進めていれば、きっと大丈夫だから(・v・)」

歩夢「璃奈ちゃん……」

璃奈「ここにはみんな居る。だから……ひとりで抱え込むのは、駄目だよ(・v・)」

歩夢「……ありがとう」

歩夢(愛ちゃんのノートで、結果的に私が励まされちゃった)

歩夢(それに関しては、ノートを璃奈ちゃんに渡すよう言ってくれたかすみちゃんのお陰……なのかな?)

歩夢(……きっと、大きく矛盾しているんだろうけど)

993: 2019/08/23(金) 19:31:00 ID:.D1apNcw
────食堂

ダイヤ「ぶっぶーーーーーですわ!!」

歩夢(梨子ちゃんが作ってくれたクッキーを食べながら、私たちはダイヤさんの大声を聞いていた)

歩夢(調査報告があらかた済み、4階の構造に関するクイズをみんなにも出していたのだ)

ダイヤ「本当に、皆さんはきちんと4階を見て回ったのですか?」

鞠莉「lockされた部屋が多かったから、みんなに任せてたわよ」

ダイヤ「部屋の話ではありません。あの階全体を見れば、気付く筈です」

しずく「あっ……もしかして、階段でしょうか?」

璃奈「階段(・v・)?」

しずく「だって、地図を見ればほら……“上への階段がない”じゃないですか!」



歩夢「……あっ!」

994: 2019/08/23(金) 19:32:15 ID:.D1apNcw
ダイヤ「ピンポーン、正解ですわ」

ダイヤ「そう。この虹ヶ咲学園は、4階で打ち止めということになるのです」

歩夢「じゃあ、ついにこの学園の全貌が……」

梨子「だったら、後は隠された謎を解き明かすだけなのね? それで……この学園を出られるのよね?」

鞠莉「ここからが大変でしょうけど、やるしかないわね」

歩夢(少しずつ見えて来た“希望”。それに向かって、みんなも活力を取り戻しつつあった)

花丸「……本当に、そうなのかな」

歩夢(ただ、1人を除いて)

璃奈「どうしたの、花丸ちゃん(・v・)?」

花丸「その様子だと……誰も、第2多目的室は見てない、ずらね……」

995: 2019/08/23(金) 19:32:47 ID:.D1apNcw
歩夢(真っ青な顔で喋る花丸ちゃん。どう見ても様子がおかしい)

璃奈「もう片方の多目的室には入ったけど……特に何もなかったよ(・v・)?」

ダイヤ「もしかして、職員室の時のように写真が落ちていたりしたのです?」

花丸「……そういうのじゃない。あんなの、見ちゃ駄目だよ」

梨子「そこまで言われると気になっちゃうじゃない。二度手間だけど、見に行く?」

歩夢(報告会も終わり、折角だからとみんな食堂を後にする)

歩夢(今思えば、それは単なる好奇心だったのだろう)

歩夢(見るなと言われれば見たくなる。この異様な学園に閉じ込められていても、それは変わらない)

歩夢(或いは、幾つもの死に立ち会ったせいでどこか感覚がおかしくなったのか)

花丸「……マルは止めたずらよ」

996: 2019/08/23(金) 19:33:38 ID:.D1apNcw
歩夢(けれども……私たちは忘れていた)

歩夢(好奇心は猫をも〇すし、ここは明らかに異常な学園であるということを)

歩夢(そして私たちは、第2多目的室の扉の先に──)

歩夢(4階を訪れてから感じていた“嫌な雰囲気”の正体を見た)

997: 2019/08/23(金) 19:34:21 ID:.D1apNcw
────校舎4階、第2多目的室

「きゃあああああああああっ!?」

歩夢(最初に悲鳴を上げたのは、誰だっただろう)

歩夢(けれどもそんなことは、どうだっていい)

歩夢「何……これ……」

歩夢(最初は、常識のラインを遥かに超えた視覚情報)

歩夢(壁にや床、天井にまで飛び散った、幾つもの乾いた赤黒い飛沫)

歩夢(争った形跡と形容するにしても痛々しい、刃物の傷や、千切れたロープ類など……)

歩夢(次に飛び込んで来るのは、鼻を劈く嗅覚情報)

歩夢(強烈で不快なそのニオイは、血と脂と、体液かも知れない何かが混ざったような……)

歩夢(“死”のニオイ。そう表現せざるを得なかった)

998: 2019/08/23(金) 19:34:57 ID:.D1apNcw
歩夢(つまり、この部屋はかつて……)

鞠莉「……惨いわね。まるで、虐〇でも起きたみたい」

歩夢(尋常ならざる出来事があった部屋。それこそが、この第2多目的室という地獄だった)

しずく「こ、ここで、何があったんですか……!?」

歩夢(分かるワケがない。分かりたくもない)

歩夢(脳が逃避を望んだ結果、一つの結論に達する)

歩夢「モノっちーが……これを……?」

モノっちー「またボクのせいなの?」

モノっちー「そうやって何でもかんでもボクのせいにして……グロいもん見たからって、少しは考える脳ミソを持ちなよ!」

梨子「あなたが何もしていなければ、こんな風になる筈……」

999: 2019/08/23(金) 19:35:36 ID:.D1apNcw


      【!】
これまでの状況をセーブしますか?

  〔はい〕   いいえ

1000: 2019/08/23(金) 19:37:34 ID:.D1apNcw

1: 2019/08/23(金) 19:36:54 ID:.D1apNcw
※ラブライブ×ダンガンロンパ 2スレ目です
※そのため死亡描写あり〼
前スレ:
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1506186240/

2: 2019/08/23(金) 19:38:46 ID:.D1apNcw


      【!】
前回の続きからSSを再開致します
よろしいでしょうか?

    前回終了時の状態
  Chapter.5 (非)日常編
 
  〔はい〕   いいえ

3: 2019/08/23(金) 19:39:25 ID:.D1apNcw
モノっちー「いやいや、むしろ逆なんだよネ」

璃奈「逆……(>_<。)?」

モノっちー「ボクはこの部屋を“当時のままにしておいた”。保存資料みたいなものだよ」

モノっちー「以上、それなりに意地悪なヒントでした」

モノっちー「でもさ。この学園に来る前でも、毎日のように事件や事故のニュースはあったでしょ?」

モノっちー「どんなに凄惨な出来事でも、年月が経てば風化していくんだ」

モノっちー「忘れられないように保存していたボクは、むしろ感謝されるべきなのかもネ」

モノっちー「うけけけけ……」

歩夢(当時のままにしておいた……?)

歩夢(モノっちー以外の誰かが、こんなことを……?)

4: 2019/08/23(金) 19:40:16 ID:.D1apNcw
────夜、歩夢の個室

ピンポーン

歩夢「……?」

歩夢(就寝アナウンスのしばらく後。突然、インターホンが鳴った)

歩夢(鞠莉さんの一件から、気を付けろと忠告は受けている)

歩夢(もし千歌ちゃんだとしたら──)ガチャリ

千歌「……」

歩夢「……」バタン

歩夢(扉をすぐに閉めるように。その言いつけ自体は守ったのだが……)

千歌「……危ないなあ。挟んだ衝撃で暴発したら、大変なことになっちゃうよ?」

千歌「歩夢ちゃんを撃ちたくはないからさ。少し、話を聞いてもらえないかな?」

歩夢(……結局、拳銃の脅迫に負けた私は、彼女を部屋に招き入れることになってしまった)

5: 2019/08/23(金) 19:41:08 ID:.D1apNcw
歩夢「……何しに来たの?」

千歌「余計なことをしなければ撃つつもりはないから、あんまり警戒しないでよ」

千歌「余計な発言だったら、幾らでも受け付けるからさ」

歩夢「……ノートパソコンを盗んだのも、あなただよね」

千歌「まあそうなるね。ところで……歩夢ちゃんは見た? 第2多目的室」

歩夢「……っ」

千歌「その様子だと……見てないか、見ても大した発見は出来てないのかな?」

歩夢「そんなことを言いに来たんだったら……」

千歌「出ていけって? むしろ、歩夢ちゃんが出て行って、みんなをインターホンで起こした方が早いんじゃないかな?」

千歌「でないと、これの餌食になっちゃうかもね……と言いたいところだけど、中身は空っぽなんだよ、ほら」カチャリ

歩夢「……」

歩夢(弾倉の中には、弾が一発も入ってない。ただのハッタリだったのか)

6: 2019/08/23(金) 19:41:59 ID:.D1apNcw
千歌「私はただ、手伝いをしてあげたいんだ」

歩夢「どういうこと?」

千歌「ここから脱出するための、だよ。というわけで、ちょっと耳貸してよ。モノっちーに聞かれたら不味いでしょ?」

歩夢「……」

歩夢(言われるがまま、彼女の話に耳を傾ける)

千歌「第2多目的室にも、小窓とそれを覆う鉄板があった。それくらいは知ってるよね?」

千歌「実はあの部屋の鉄板、少し外れ掛かってるんだ」

歩夢(あの部屋の、窓の鉄板が……?)

千歌「そう。だからさ、それを外せば学園の外に出られるんじゃないかな」

歩夢(外に……出られる……?)

7: 2019/08/23(金) 19:42:34 ID:.D1apNcw
千歌「この学園の秘密とか、モノっちーの正体とか。色々気にはなるだろうけど、そういうのは脱出してからでいいんだよ」

千歌「まずは安全な場所に逃げる。それでいいと思わない?」

歩夢(千歌ちゃんの話は、もっともだ)

歩夢(この学園を脱出さえしてしまえば、モノっちーも迂闊に手出しは出来ないだろう)

千歌「でもさ。全員があの部屋に行って、モノっちーに気付かれたらおしまいでしょ?」

千歌「だから、私がモノっちーの注意を引きつけておく」

千歌「その上で……これを使って欲しいんだ」

歩夢(そう言って、何かの箱を渡された)

歩夢(中を確認して見ると、ドライバーやレンチ、ハンマーなどなど。いわゆる工具セットだ)

千歌「流石に、4階から逃げるとなればロープは準備しておいた方がいいかもね」

千歌「そういうワケだからさ。頼んだよ」

8: 2019/08/23(金) 19:43:33 ID:.D1apNcw
歩夢「……待って。だったら、鞠莉さんを襲う必要はあったの?」

千歌「ちゃんと理由はあるよ。けど、話すのはここを無事に出られたら」

歩夢「……」

千歌「じゃあね。おやすみ、歩夢ちゃん」

歩夢「お、おやすみ……」

歩夢(渡された箱を手にしながら、考える)

歩夢(確かに、千歌ちゃんの話は筋が通っている。脱出してしまえば、全てを終わらせることが出来る)

歩夢(その筈なのに……この感覚は、何だろう?)

歩夢(何かが歯に詰まっているような違和感は……何なんだろう?)

歩夢(大切な何かを忘れているような……)

9: 2019/08/23(金) 19:44:15 ID:.D1apNcw
歩夢(……っ、何を考えているんだ、私)

歩夢(疑問を全て投げ出してでも、ここを出ることが最優先の筈)

歩夢(だったら、答えは決まっている)

歩夢(……そう言い聞かせて、私は布団に体を潜らせた)

10: 2019/08/23(金) 19:44:57 ID:.D1apNcw
~モノっちー劇場~

悪意とは関わるな……そういう考えが、世間に蔓延っているよネ。

けど、本当にそれでいいのかなって、ボクは思うんだ。

悪意を持った人は、どこからでも湧いて来る。

突然、自分が悪意にさらされる時が来るかも知れない。

そういった時のために少しは悪意を知っておくべきだと、ボクは思うんだ。

悪意を知っていれば、それに対する対処が思いつく。

悪意を知っているから、友人だと思っていた人が悪意を持っている可能性に気付くことが出来る。

要は、一種の予防接種みたいなものだネ!

……けど気を付けて欲しいのは、予防接種とはウイルスを身体に投与するもの。

付き合い方を間違えると、オマエもウイルスに乗っ取られるかも知れないよ……?

11: 2019/08/23(金) 19:46:01 ID:.D1apNcw
今回はここまで。
2スレ目突入です。もうしばらくお付き合い頂ければ、幸いです。

16: 2019/11/04(月) 22:57:38 ID:ypS3Bcfk
────学園生活21日目

キーンコーンカーンコーン

モノっちー『おはようございます、朝7時になりました』

モノっちー『さてさて、今日も1日頑張っていきましょう』

プツン

歩夢(昨日の千歌ちゃんの話が、脳裏にこびりついている)

歩夢(学校からの脱出……どうにかしてみんなに伝えたいけど、どうやって伝えよう?)

歩夢(モノっちーに気付かれないようにする必要があるけど……)

歩夢「……あれ?」

歩夢(ベッドから身を起こして食堂に向かおうとすると、ドアの下に折りたたんだ紙が挟まれていることに気が付いた)

17: 2019/11/04(月) 22:58:21 ID:ypS3Bcfk
歩夢(拾い上げ、その紙に書かれた文章に目を通す)


『決行は今日の夜9時半』

『その頃になったら、私はモノっちーの注意を引き付ける』

『あとは、歩夢ちゃん次第だよ ちゃんと全員で脱出してね チカ』


歩夢「……」

歩夢(どうやら、責任重大な役目を任されたらしい)

歩夢(今日1日を使って……上手く、みんなに声を掛けて行くしかなさそうだ)

18: 2019/11/04(月) 22:59:07 ID:ypS3Bcfk
────食堂

歩夢「璃奈ちゃん、ちょっといい?」

璃奈「どうしたの(・v・)?」

歩夢(朝食を食べ終えた私は、準備を整え始める。脱出のため、全員に話を通す必要があるからだ)

歩夢(まずは、たまたま近くに居た璃奈ちゃん)

鞠莉「何なに、二人とも内緒の話?」

歩夢「あはは……まあ、そういうところ、かな?」

鞠莉「じゃあ、私たちは一旦退散しておきましょうか」

しずく「え、あ、はい!?」

梨子「ちょっと、まだお皿洗ってないのに……」

鞠莉「いいからいいから♪」

歩夢(ウインクをして、鞠莉さんは残っていた人たちを食堂から引き上げさせた)

19: 2019/11/04(月) 22:59:47 ID:ypS3Bcfk
歩夢「……」

璃奈「……(・v・)」

歩夢(いざ2人になってみると、どことなく気まずい)

歩夢(普段はお喋りなのに「自由に喋ってください」と言われると途端に喋れなくなるような……そんな現象)

璃奈「前に言ってたよね。私、恥ずかしいから顔を隠してるって(・v・)」

歩夢(結局、璃奈ちゃんから話題を提供される体たらく。この調子で残りのみんなに話を通せるのかちょっと不安)

歩夢(でも今は、璃奈ちゃんの話を聞いてあげよう)

歩夢「うん、その璃奈ちゃんボード、お手製なんだよね」

璃奈「実はね。もしこの学園を出られたら、ボードを取りたいって思ってるの(・v・)」

歩夢「ボードを……?」

20: 2019/11/04(月) 23:00:26 ID:ypS3Bcfk
璃奈「私、子供の頃から感情を表に出すのが苦手で。仏頂面、ロボットみたいってよく言われてた(・v・)」

歩夢「だから……どうにかしたい、って思ったの?」

璃奈「うん。最初は、周りの人たちを真似していけば感情豊かになれるかなあって思ったの(・v・)」

璃奈「真似事をしていくうちに、いつの間にか顔も声もコピー出来るようになってた(・v・)」

歩夢「それが……璃奈ちゃんの、才能のキッカケだったんだ」

璃奈「そう。気が付いたら、変装師とかディスガイザーとか、そう呼ばれるようになった(・v・)」

璃奈「何となく響きが格好良いって思ってたし、変装のクオリティを高めて行くのはとっても楽しかったよ(・v・)」

璃奈「でも、どんなに人の笑顔や怒った顔を真似しても“天王寺璃奈”の顔は固いままだった(>_<。)」

璃奈「ずっと誰かに変装したままってワケにはいかない。だから、璃奈ちゃんボードに頼るしかなくなった(>_<。)」

歩夢「……」

21: 2019/11/04(月) 23:01:08 ID:ypS3Bcfk
歩夢(どういう言葉を、掛けてあげればいいのだろう)

歩夢(感情を学ぶためだった筈の変装が才能になり、本来の目的を見失ってしまった)

歩夢(そんな、残酷で皮肉めいた境遇を語る璃奈ちゃんに、どんな言葉を……)

璃奈「でもね。ここでみんなと過ごしていると、すっごく楽しかった(・v・)」

歩夢「えっ……?」

璃奈「モノっちーは、学生生活の記憶を奪ったって言ってた。私も、どのくらい記憶が飛んだのかは分からない(・v・)」

璃奈「でも、段々分かって来た。元の学生生活は、きっと私に沢山の表情をくれていたんだろうって(・v・)」

璃奈「居なくなっちゃったみんなも、元の学校ではきっと優しくて、私に笑顔をくれたんだろうって。証拠はないけど、信じられる(・v・)」

璃奈「だから……色んな顔をくれたみんなに、恥じないようにしたいんだ。だから私は、ボードを取りたい(・v・)」

璃奈「きっと……元の私も、そうしていただろうから(・v・)」

22: 2019/11/04(月) 23:02:11 ID:ypS3Bcfk
璃奈「さ、流石に誰かを〇して出ようとは思ってないよ(?□!)!?」

歩夢「ふふっ、分かってるよ」

歩夢(心配した私が馬鹿だったらしい。彼女は彼女なりに、境遇と向き合って生きている)

歩夢(或いは……向き合うキッカケをくれたのが、ここで過ごしたみんなだったのだろうか)

歩夢(愛ちゃんは、今の彼女の姿を見守ってくれているだろうか……。っと、いけないいけない)

歩夢「ねえ、璃奈ちゃん」

璃奈「?」

歩夢「実は、4階の血だらけの部屋なんだけど──」

歩夢(誰も犠牲にならずに、ここから脱出する。そのプランについて、しっかり根回ししておかないと……)

歩夢(感傷に浸るのは、全てを終えた後だ)

23: 2019/11/04(月) 23:02:49 ID:ypS3Bcfk
────夕方、鞠莉の部屋

鞠莉「いらっしゃい。遅かったわね、歩夢」

歩夢「あはは……」

歩夢(どうやら、私は鞠莉さんにちょっとした苦手意識があるみたい)

歩夢(核心を突いた推理や、PCから情報を取り出せるその頭脳には、何度も助けられた)

歩夢(けれども、どうにも核心を突きすぎる時があるような……何もかもを見透かされるような気分になる時が、日常的に多々ある)

鞠莉「それで? 計画の準備は整っているの?」

歩夢「どこで知ったんですか……」

歩夢(今だって、これから話そうとしていたことを逆に耳打ちで質問して来るし……)

24: 2019/11/04(月) 23:03:23 ID:ypS3Bcfk
鞠莉「あなたが花丸と二人で図書室に居た時にね。ちょっと盗み聞きさせてもらったわ」

歩夢「……まあ、いいです。鞠莉さんが最後だから」

歩夢(そうして私は、鞠莉さんに事のあらましを小声で説明し始める)

歩夢(既に鞠莉さん以外の全員に話を通してある、虹ヶ咲学園からの脱出計画)

歩夢(計画実行は9時半。その時間になれば、第2多目的室の窓を破って脱出するのだ)

歩夢(ロープはしずくちゃんが準備してくれている。劇団に所属して間もない頃、裏方作業として学んだらしい)

歩夢「──ということなんです」

鞠莉「……なるほどね」

歩夢(千歌ちゃんの名前を出した時、鞠莉さんは露骨に怪訝な表情を浮かべる。けれども、私の話を黙って聞いてくれた)

25: 2019/11/04(月) 23:03:53 ID:ypS3Bcfk
鞠莉「正直なところ。立案者が立案者だから、あんまり信用したくないのは事実」

鞠莉「でも……」

歩夢(そう言って、再び声のボリュームを小さくする)

鞠莉「確かに、あの部屋の窓……鉄板のネジが欠けていたし、緩んでいるように見えた」

鞠莉「あの部屋が血だまりになる過程で起きた副産物……かはまだ分からないけど」

鞠莉「嘘を言っているワケでもなさそうなのよね……」

歩夢「は、はぁ……」

歩夢(いつの間に、そんなことまで気付いていたのだろう。やっぱりこの人には敵わない)

鞠莉「いいわ、そのプランに乗ってあげる。ただし、安全の確保はしっかりとね?」

歩夢「は、はい!」

26: 2019/11/04(月) 23:04:33 ID:ypS3Bcfk
鞠莉「ああ、それと歩夢。あなた紅茶は好き?」

歩夢(鞠莉さんからの承諾を得たあと。部屋を出ようとする私に、彼女は問う)

歩夢「の、飲めないことはないですけど……」

歩夢(言いながら、既に鞠莉さんはポットとティーカップの準備をしている。いつの間に部屋に持ち込んでいたんだろう)

鞠莉「じゃあ……ちょっと、世間話に付き合ってもらおうかしら」

歩夢「……えっ」

鞠莉「ほら、折角の機会だしね。あなたに一方的に喋らせるわけにはいかないもの」

歩夢「い、一方的……でしたっけ?」

鞠莉「小原グループがどんなものか、知っておいて損はないと思うけど?」

歩夢(『逃げるなんて許さない』と、圧力を纏った笑顔)

歩夢(個室以外で話を持ち掛けるべきだったと後悔したが、もう手遅れのようだ)

27: 2019/11/04(月) 23:05:47 ID:ypS3Bcfk
────夜、食堂

歩夢「……」ボーッ

花丸「歩夢ちゃん……何かあったずら?」

ダイヤ「鞠莉さんの長話に付き合うことになったみたいです」

花丸「あぁー……」

歩夢(二人の会話が、何となく聞こえてくる)

歩夢(夕食を食べに来ない私と鞠莉さんを梨子ちゃんが呼びに来るまで、マシンガントークでハチの巣にされていたんだ)

歩夢(……小原グループとして、世界各地で活躍する鞠莉さん)

歩夢(その財力は、あくまで小原鞠莉個人の範疇でも、虹ヶ咲学園サイズの建物なら軽く建てられる代物だという)

歩夢(高校生でありながら既に幾つかのホテルの経営に携わっているらしく、それで得た資産らしい)

歩夢(記憶を奪われた約3年間にどれだけの資産を築いたかまでは分からないが……何にせよ、気の遠くなる話だ)

28: 2019/11/04(月) 23:06:18 ID:ypS3Bcfk
歩夢(その割には、あまり小原家という場所を快く思ってなさそうな発言が目立った)

歩夢(というよりも、家族と何らかの確執がある……そんな様子)

歩夢(本人は自由を望んでおり、ホテルの経営も自ら雇った部下に全て任せている)

歩夢(『私はただ、気の合う友達と楽しく過ごせればよかった』という鞠莉さんの言葉が、妙に心に刺さる)

歩夢(とはいえ……それでも、自分の家の事を大切に思っている)

歩夢(『卒業した者は将来の成功が約束されている学園』を卒業すれば、代々続いてきた小原家が、少なくとも自分の代で滅ぶことはない)

歩夢(結局彼女は、自分の事よりも家の事を取り、入学することになった)

歩夢(その選択が後悔するべきものだったのか。記憶を失った今では分からない)

歩夢(だが、コロシアイ学園生活の中でも気の合う人だらけだったのだから、記憶を失う前の自分は、きっと後悔していなかったのだろう……)

29: 2019/11/04(月) 23:06:54 ID:ypS3Bcfk
歩夢(というのが鞠莉さんの話を大雑把にまとめたものなのだが……)

歩夢(長い! その上テンポが速い! そしてテンションが上がると外国語が混じるから脳が追い付かない!)

歩夢(……でも。こんな話が出来るのも、学生生活の醍醐味だった)

歩夢(最初の事件が起きる前のかすみちゃんだって、自分のことを惜しみなく話してくれた)

歩夢(彼女が洒落にならない行動を取るようになったのだって、元を正せば原因はモノっちーの筈だ)

歩夢(勿論、彼女自身かなり悪戯好きな面があったが……きっと、それ自体は問題じゃないと信じたい)

歩夢(そんな風に人を狂わせてしまった学園から、もうすぐ脱出する)

歩夢(私と同じく、みんなどこか落ち着かないようで。夕食を食べ終えても、全員が食堂に残っていた)

歩夢(そして。食堂に掛けられた時計が、9時半に近づいて来る)

歩夢(千歌ちゃんの姿は一度も見ていないが、きっと上手くやってくれるだろうと信じる)

歩夢(必要な物をそれぞれ持ち……全員で、第2多目的室へと向かった)

30: 2019/11/04(月) 23:07:37 ID:ypS3Bcfk
────9時半前、第2多目的室

しずく「これで……終わるんですね」

璃奈「3週間くらい、ここに閉じ込められていたんだね……(>_<。)」

花丸「でも、これでようやく外に出られるずら」

ダイヤ「……安心するのは、外の様子を確認してからです」

鞠莉「4階ともなればかなりの高さでしょうし、今は夜だから、うっかりして落ちてしまう可能性も高い」

歩夢「……」ゴクリ

歩夢(工具箱から取り出したボックスドライバーで、窓を塞ぐ鉄板のネジを外して行く)

歩夢(その横では、しずくちゃんが壁のフック状になっている部分にロープを結びつける)

31: 2019/11/04(月) 23:08:25 ID:ypS3Bcfk
しずく「ロープ、結び終わりました」

歩夢「私も、鉄板はこれで外れる筈」

歩夢(「よいしょ」の掛け声のもと、そこそこの重さを持った鉄板が外れる)

歩夢(窓の外は……漆黒。夜だから仕方ないか)

花丸「真っ暗……」

璃奈「街の灯りすら見えないけど、ここって東京だったよね……(・v・)?」

梨子「でも、今は気にしている暇はなさそうよ」

鞠莉「歩夢、懐中電灯を貸してくれる? 私が最後に降りるから、それまで照らしてあげるわ」

ダイヤ「一応軍手は持って来てあります。これをつければ、手を怪我せずに済むかと」

32: 2019/11/04(月) 23:09:01 ID:ypS3Bcfk
歩夢(残っているのは6人。千歌ちゃんを入れれば、7人。たった3週間で、私たちは多くの仲間を失った)

鞠莉「みんな、ちょっと離れて。このトンカチで窓をぶち破るから」

しずく「そうしたら、ロープを降ろして……」

花丸「これで、日常に戻れるずら」

歩夢(日常……)

歩夢(この窓の向こうにあるのは、いつもの退屈で平和な日常で)

歩夢(私たちは……帰れるんだよね。その、日常に)

鞠莉「行くわよ。この学園から卒ぎょ──」

歩夢(掛け声と共に、鞠莉さんがハンマーを振り上げ……)

33: 2019/11/04(月) 23:09:32 ID:ypS3Bcfk

鞠莉「────は?」

歩夢(突然、その手が止まった)

歩夢(目を大きく見開いて。まるで、窓の外に『信じられない物』を見たかのように)

34: 2019/11/04(月) 23:10:23 ID:ypS3Bcfk
鞠莉「嘘……そんな、筈……」

ダイヤ「どうしたんです、鞠莉さん」

歩夢(その言葉を皮切りに、みんなが窓と、鞠莉さんに駆け寄る)

歩夢(空気を読んだのだろう。誰かが懐中電灯の電源を入れ、窓の外に──)

35: 2019/11/04(月) 23:11:14 ID:ypS3Bcfk
歩夢(……最初に映ったのは、大きな“魚”だった)

歩夢(ライトの照らす角度が変わる。下の方……恐らく1階に相当する部分には、コンクリートの地面のような何かが見える)

歩夢(よく見たら……海藻? 海藻が生えている?)

歩夢(今度は、小さな魚。群れを成して“泳いでいる”)

歩夢(明かりが、震え始める)

歩夢(私たちの身体を、寒気が走る)

歩夢(考えたくない。理解したくない)

歩夢(それでも、誰かが……震えた声で、こう言った)

36: 2019/11/04(月) 23:12:00 ID:ypS3Bcfk



「海の……底?」

37: 2019/11/04(月) 23:12:36 ID:ypS3Bcfk
千歌「ゲームクリアおめでとう。これでコロシアイは終わりだよ」

歩夢「ち、か、ちゃん……?」

歩夢(いつの間にか……多目的室の扉に、彼女は立っていた)

ダイヤ「あ、あなた……モノっちーを引き付けておくのでは……」

千歌「もうそういうのはいいよ、ダイヤさん。みんなも見たんでしょ、窓の外」

梨子「見た、っていうか……」

璃奈「どうなってるの……(>_<。)?」

千歌「みんな暗い顔してるけど、お楽しみはこれからだよ。ここから、ネタばらしの時間なんだからさ」

花丸「ネタばらし……?」

千歌「それと同時に……最後の動機発表、ってところかな」

歩夢「動機、発表……!?」

38: 2019/11/04(月) 23:13:35 ID:ypS3Bcfk
鞠莉「ちょっと待ちなさい! 動機、って……」

千歌「遮るなら、話してあげないよ?」

ダイヤ「鞠莉さん、今は……彼女の話を聞くべきです」

鞠莉「っ……」

千歌「じゃあ、始めるよ。20XX年……地球の温暖化は深刻なものになって、南極や北極の氷が大幅に溶けだした」

歩夢(いきなりスケールが大きすぎて、何のことを言っているのか分からない……が、みんな黙って彼女の話を聞く)

千歌「このままだと海面上昇で世界のほとんどが水没するし、もはやそれを避けることは不可能な領域に入ったんだ」

千歌「そこで政府は、虹ヶ咲学園との協力の末、ある計画を実行することにしたんだ」

千歌「それが……“希望隔離計画”」

39: 2019/11/04(月) 23:14:19 ID:ypS3Bcfk
歩夢「希望、隔離計画……?」

千歌「鞠莉ちゃんは心当たりあるんじゃない? あのパソコンの中に入ってたでしょ?」

歩夢(みんなが、一斉に鞠莉さんの方を向く)

鞠莉「……確かに【持ち出し厳禁】のフォルダの中に、その名前のファイルはあったわ」

鞠莉「でも、判ったのはその名前だけ。詳細までは解析出来なかったし、どうしてあなたが──」

千歌「希望隔離計画っていうのはね。海に沈んだ後の地球を、超高校級のみんなの力で再生させるためのもの」

千歌「地球が一度滅ぶまで、超高校級の生徒たちにはコールドスリープをしてもらう」

千歌「扉の開かない生物室があったでしょ? あそこで私たちは、ずっと眠ってたんだ」

千歌「うっすら冷気が漂っていたのも、そのためだね」

40: 2019/11/04(月) 23:15:15 ID:ypS3Bcfk
歩夢「……」

歩夢(まるでSFのような話を、急には信じられるわけがない。だが……)

花丸「じゃあ、ここは……海面上昇が起きた後の、虹ヶ咲学園、ってことずら……?」

千歌「そういうことだよ」

歩夢(ここが海の中である理由を説明するには、十分すぎる話だった)

千歌「だから、その窓を破ろうとしても本当は無駄なんだよ。水圧に耐えるために、学園側が分厚いガラスに変えたからさ」

千歌「ある意味、この学園自体が巨大な“シェルター”ってワケだね」

しずく「じゃあ、私たちは……どのくらい、コールドスリープをしていたと言うんですか……?」

千歌「ざっと80年ってところかな。多分、本来なら元号が1つか2つは変わってると思うよ」

しずく「はち、じゅ……!?」

千歌「倒れるのはまだ早いよ、ここからが『絶望』の本番なんだから」

41: 2019/11/04(月) 23:16:03 ID:ypS3Bcfk
梨子「これ以上、何かあるの……?」

千歌「不思議だと思わない? そんなシェルターの中で、どうしてコロシアイなんて物が発生したのか」

千歌「何より、どうしてこの部屋が血まみれなのか」

千歌「実はね……希望隔離計画を実行した大人たちは、とんでもない見落としをしていたんだ」

千歌「言うなれば、超高校級のみんなは“地球の希望”を賭けた大切な存在。でもその中に、とんでもない人が紛れ込んでいたんだよ」

千歌「その人はまず、何人かを勝手に起こして、この部屋で〇し合いをさせた。そうして、ここは惨劇の舞台になった」

歩夢「……」

千歌「でも、その人は気付いたんだよね」

千歌「ただ〇し合いをさせるだけじゃなくて、もっとエンターテイメントに富んだコロシアイゲームにすれば……もっと楽しいんじゃないか、って」

千歌「だからモノっちーを作って、みんなの記憶を奪って。このコロシアイ学園生活は、幕を開けることになったんだ」

42: 2019/11/04(月) 23:16:55 ID:ypS3Bcfk
千歌「というわけで白状するけど……それを起こしたのが、私なんだよね」

歩夢「……えっ?」

千歌?「だから、このコロシアイ学園生活の黒幕は私、高海千歌……いや」





穂乃果「《超高校級の絶望》高坂穂乃果なんだよ」

43: 2019/11/04(月) 23:18:00 ID:ypS3Bcfk
ダイヤ「超高校級の、絶望……高坂、穂乃果……!?」

歩夢「その名前って……!」

穂乃果「果南ちゃんはいいところまで行ってたよね。最後に、自分の部屋に手掛かりを残しておくなんてさ」

穂乃果「でも結局果南ちゃんは死んじゃったし、手掛かりの意味が分かる前に、私が種明かししちゃったんだけどね」

鞠莉「そんなことより、答えなさい! あなたが、このコロシアイを引き起こしたのね!?」

穂乃果「だからそう言ってるでしょ? 私が黒幕」

穂乃果「どうしてこんなことを、って顔をしてるね」

穂乃果「ただ単に、台無しにしたくなっただけだよ」

璃奈「台無し……(>_<。)?」

穂乃果「人類の希望が全滅。しかも、その原因は仲間内での〇し合い……こんなに最悪な結末はないでしょ?」

花丸「理解に、苦しむずら……」

穂乃果「まあ、それが《超高校級の絶望》だからね。深く考えても無駄だよ」

穂乃果「絶望的な思考っていうのは、希望を持っていた人たちには受け入れられないだろうからね」

44: 2019/11/04(月) 23:18:41 ID:ypS3Bcfk
梨子「何よ、それ……」

しずく「嘘、ですよね……嘘だと言ってください……」

穂乃果「悪いけど、嘘じゃないんだよね。みんなの帰るべき町も、みんなを待ってくれていた家族も」

穂乃果「劇団も財閥も図書館もコンサートホールも何もかも……全部、海の底に沈んだんだよ」

穂乃果「みんなで仲良く、眠っていた間にね」

歩夢「……証拠は」

歩夢「証拠は……あるの?」

歩夢(震えた声で、目の前の《絶望》に問いかける)

歩夢(《絶望》が、嘘であるように。最後の抵抗)

45: 2019/11/04(月) 23:19:38 ID:ypS3Bcfk
穂乃果「──中川菜々ちゃん」

歩夢「っ!?」

歩夢(……けれども。その抵抗は、あっさりと打ち砕かれた)

穂乃果「せつ菜ちゃんって、子供の頃から偽名……いや、彼女に言わせるなら芸名を名乗ってたんだよね」

穂乃果「本名は中川菜々。アイドル活動を夢見る彼女は、昔から芸名で過ごしていた」

穂乃果「歩夢ちゃんも、優木せつ菜として過ごした時間の方が長い……そうでしょ?」

歩夢「ど、どうして、それを……」

穂乃果「みんなも、在学中に知っていた筈なんだけど……記憶を失っちゃったら、覚えてる筈ないもんね」

穂乃果「歩夢ちゃんだけは、子供の頃から知っていたけど……どうして私が知っていたんだろうね?」

穂乃果「これで信じてもらえた?」

穂乃果「私が、みんなの記憶を奪った張本人……このコロシアイ学園生活の、黒幕だって」

歩夢「……」

46: 2019/11/04(月) 23:20:34 ID:ypS3Bcfk
鞠莉「……」

穂乃果「怖い顔してるけど……もう、遅いんだよ」

穂乃果「死んだ命も滅びた世界も、戻ることはないんだ」

鞠莉「もう、いい……分かったわ」

歩夢(鞠莉さんが、ハンマーを手に取る)

鞠莉「それでも私はあなたを……っ!」

歩夢「鞠莉さん、駄目です──!」

歩夢(何をするのかに気付き、止めようとするが……)



──パァン!

47: 2019/11/04(月) 23:21:13 ID:ypS3Bcfk
花丸「け……拳銃!?」

穂乃果「動かない方がいいよ。今度はちゃんと入ってるからね」

歩夢(「ほら」と彼女は天井を銃口で示す)

歩夢(天井には小さく、弾が貫いた穴が空いていた)

穂乃果「……」ダッ!

歩夢(そして。急に駆け出したかと思うと、拳銃に足が竦んだ私たちを掻い潜り……)

璃奈「……え(?□!)」

ダイヤ「り、璃奈さん!?」

歩夢(璃奈ちゃんを捕まえて、こめかみに拳銃を押し当てていた)

穂乃果「今度こそ動かないでよ。目の前で、大切な仲間を〇されたくなければね」

歩夢(……人質だ)

48: 2019/11/04(月) 23:22:09 ID:ypS3Bcfk
穂乃果「さてと。黒幕の私から、最後の動機だよ」

穂乃果「外の世界は滅んでいる。あなたたちはここから出る理由を失った」

穂乃果「もう、このコロシアイゲームは終わり。あとは好きにしていいよ」

穂乃果「でも……余計な真似をしたら、分かってるよね」

歩夢(ぐい、と銃口を璃奈ちゃんに押しつける)

穂乃果「私に逆らったら……最悪な結末が待ってるかもね」

穂乃果「“エマちゃんのように”」

しずく「……っ」

歩夢(その言葉の意味を……私たちは、痛い程知っている)

歩夢(そして、私たちはどうすることも出来ないまま。彼女と、連れ去られた璃奈ちゃんを見送ることになって)

歩夢(後に残ったのは……絶望的な真実だけだった)

49: 2019/11/04(月) 23:22:42 ID:ypS3Bcfk
梨子「……」

花丸「……」

しずく「……」

鞠莉「……」

ダイヤ「……」

歩夢(みんな、無言だった)

歩夢(当然だ。全ての真実は、明かされてしまったのだから)

歩夢(外の世界は、もはや存在しない。生き残っているのは、私たちだけ)

歩夢(それなのに。その記憶を奪われて、無意味なコロシアイをして)

歩夢(何もかも無意味……それが、このコロシアイゲームの結末)

50: 2019/11/04(月) 23:23:16 ID:ypS3Bcfk
梨子「こんなことに、なるなんて……」

ダイヤ「ルビィやサファイアたちは、何のために死んだというのですか……っ」

鞠莉「……」

花丸「もしかしたら……かすみちゃんは、武器庫をクリアしてこの事を知ってしまっていのかも……」

花丸「だから自暴自棄に……なんて、考えても無駄ずらね。もう、終わったことなんだし」

歩夢(そう。終わったことなんだ)

歩夢(これ以上続けることに、意味なんてないんだ)

歩夢(もう、意味なんて……)

歩夢(……)

歩夢(……)

歩夢(……)

51: 2019/11/04(月) 23:24:00 ID:ypS3Bcfk
────夜、歩夢の部屋

歩夢(気付けば、みんな部屋に戻っていた)

歩夢(そして気付けば、ベッドの上に寝転がっていた)

歩夢「……」

歩夢(既に10時を過ぎている筈だが、モノっちーの定時アナウンスもない)

歩夢(夜時間を知らせるチャイムだけは鳴っていた気がするが……もう、どうでもいい)

歩夢(ただ、絶望から逃げたくて)

歩夢(いとも容易く砕かれた、前へ進む意思なんかには見向きもせず……)

歩夢(眠りに落ちていた)

52: 2019/11/04(月) 23:25:01 ID:ypS3Bcfk
~モノっちー劇場~

そういえばオマエらは、このモノっちー劇場を喋っているのが誰かって気付いてる?

実は話者がモノっちーじゃなくて、喋り方が似ている別の誰か……とか、考えたりしない?

こう言うと、今ここで喋ってる誰かが茶色と黒の可愛いセイウチじゃないように見えて来るよネ。

ボクをボクたらしめる証拠って、何なんだろうネ?

ほら、段々とボクがモノっちーではない、胡散臭い何者かに見えて来たでしょう?

……まあ、やっぱり喋ってるボクはモノっちーなんだけどネ。

53: 2019/11/04(月) 23:25:44 ID:ypS3Bcfk
────学園生活22日目

キーンコーンカーンコーン

『……』

『……』

プツン

歩夢(……今朝も、モノっちーは姿を見せることはなかった)

歩夢(やっぱり……昨日で、すべて終わったんだ)

歩夢(だから、アナウンスをする意味はない。チャイムは精々、健康的な生活をといった配慮だろう)

歩夢(でも……もう、意味はない)

歩夢(コロシアイをする意味も、外に出る意味も、生きる意味も)

歩夢(無意味、無意味、無意味)

54: 2019/11/04(月) 23:26:23 ID:ypS3Bcfk
歩夢(きっとここからは……ただの、蛇足のお話)

歩夢(時間を無駄に消費するだけの、エピローグにすら満たない何か)

歩夢「……」

歩夢(他のみんなはどうしているんだろう、なんて一瞬考えたりもしたけれど)

歩夢(せつ菜ちゃんを喪った時とは、わけが違う)

歩夢(今度こそ気力を削がれた私は……)

キーンコーンカーンコーン

歩夢(夜になっても、ほとんどベッドと一体化していた)

55: 2019/11/04(月) 23:26:59 ID:ypS3Bcfk
~モノっちー劇場~

ホールインワンって知ってる?

ゴルフで、最初にボールを打った時にカップインした時のことを指すあれだよ。

アマチュアだと12000球に1回、プロでも4000球に1回と言われているんだ。

実力も運も求められる、まさしく素晴らしいプレーだネ。

それを賞賛して、ちょっとしたお祭り騒ぎになったりもするけど……

どういうわけか、ご祝儀を払ったり豪華な食事を振舞ったり、そういうのをするのはホールインワンを出した本人なんだ。

それによる急な出費に対応するため、ホールインワン保険という代物まで存在するんだって。

……出過ぎたことをすると痛い目に遭うという、典型的な例だよネ。

56: 2019/11/04(月) 23:27:33 ID:ypS3Bcfk
────学園生活23日目

キーンコーンカーンコーン

『……』

『……』

プツン

歩夢(……)

歩夢(璃奈ちゃんは……大丈夫なのかな)

歩夢(……)

歩夢(……ダメだ。頭が働かない)

歩夢(身体、も……)

歩夢(……)

歩夢(……)

57: 2019/11/04(月) 23:28:26 ID:ypS3Bcfk
────夜、歩夢の部屋

歩夢(今、何時だろう……)

歩夢(……チャイム……鳴ったんだっけ?)

歩夢(……)

ピンポーン

歩夢「……え?」

歩夢(突然のインターホンに、反射的に身体が飛び起きる。一体誰が……?)

歩夢「いてて……」

歩夢(体の節々が痛いのを我慢して、ドアの方へと向かった)

歩夢(そして、ゆっくりドアを開けると……)

58: 2019/11/04(月) 23:29:09 ID:ypS3Bcfk
花丸「……」

歩夢「花丸、ちゃん……?」

歩夢(言いながら、自分の声が少し掠れていることに気が付いた)

歩夢(昨日今日と誰とも会話をしてなかったから、仕方ないのだが……)

花丸「少し、来て欲しいところがあるずら」

歩夢(そう言って、耳を貸して欲しいとジェスチャーを取る)

花丸「穂乃果さんの話で、気になったことがあるんだ。ちょっと、それを確かめたくって……」

59: 2019/11/04(月) 23:29:45 ID:ypS3Bcfk
歩夢「……」

歩夢(その名前を出されて、思わず躊躇う。今更何を確かめるというのだ)

花丸「変な事を頼んでるのは分かってる。でも……これだけは確かめたいって、気になっちゃって」

歩夢「……分かった。どこに行くの?」

花丸「付いて来れば分かるずら」

歩夢(どうせ、答え合わせの裏付けでしかない。この虹ヶ咲学園は、絶望のどん底なんだ)

歩夢(だったら、これより下がることはないだろう。花丸ちゃんの誘いを断る理由もなかった)

歩夢(それに……たまには動いておかないと、多分、本当に動けなくなる)

歩夢(それだけは、何となく嫌だった)

60: 2019/11/04(月) 23:30:22 ID:ypS3Bcfk
────情報処理室前

歩夢「ここって確か……」

花丸「うん。情報処理室だよ」

歩夢「いやそうじゃなくって、この部屋って鍵が掛かってたよね」

花丸「……」

歩夢(花丸ちゃんから、返事がない)

歩夢「ねえ、花丸ちゃん……」

61: 2019/11/04(月) 23:31:33 ID:ypS3Bcfk
バチバチィッ

歩夢「なっ……!?」

歩夢(返事を求めようと振り返った私の身体を、突然電撃が走る)

歩夢(倒れる寸前、私は不可解な物を目にすることになった)

歩夢(そこに居たのは、花丸ちゃんだけじゃない)

歩夢(その手にスタンガンを構え、被服室にあったうちっちーの着ぐるみを来た誰かが一緒に立っている)

歩夢(あれは……だ、れ……)

バタン



花丸「……」

62: 2019/11/04(月) 23:32:51 ID:ypS3Bcfk
~モノっちー劇場~

実は、今日でモノっちー劇場は最終回なんだ。

辛いネ、哀しいネ。

だから最後にボクから、オマエらへ伝えたいことがあるんだ。

「死をエンターテイメントにしていいのは物語の中だけなんだ」ってことをネ。

死というものは本来、忌避すべきもの。

例えどんなに嫌われた人であっても、その死を笑い物にするのは倫理観が壊れているとボクは思うんだ。

というワケでここまで来たオマエらには、最後までこの

『歩夢「君の超高校級の心は輝いているかい?」』

というコロシアイエンターテイメントを楽しんで欲しいんだ。

それがボクからのお願いだよ。



……途中から主題が変わっちゃったネ?

63: 2019/11/04(月) 23:33:39 ID:ypS3Bcfk
────学園生活24日目

「──さん、歩夢さん!」

歩夢「……ん、あれ?」

ダイヤ「どうやら、あなたが最後のようですよ」

歩夢(状況が飲み込めない)

歩夢(昨日、花丸ちゃんに連れられて情報処理室に向かって、気絶させられて……)

歩夢(ひとまず、周りを見渡す。どうやらここは……第2ではない多目的室──第1多目的室と呼ぼう──だ)

歩夢(そしてここには……穂乃果さんと璃奈ちゃん、そして梨子ちゃん以外の全員が居る)

花丸「……」

歩夢(……花丸ちゃんの姿もだ)

64: 2019/11/04(月) 23:34:15 ID:ypS3Bcfk
ダイヤ「全員、ここに連れて来られたようです」

歩夢「えっ……」

しずく「あの着ぐるみは何だったのでしょう……」

歩夢「しずくちゃんも、着ぐるみを見たの!?」

しずく「え、ええ……」

鞠莉「というより……多分、全員が着ぐるみに襲われた」

鞠莉「気になることは多いけど、まずはここを出──」

歩夢(疑問だらけの中、一旦この場を収めようとした鞠莉さんの言葉を遮るように……)

歩夢(突然、それは始まった)

65: 2019/11/04(月) 23:35:05 ID:ypS3Bcfk
ゴォッ!

しずく「ひ、火が!?」

歩夢(真っ赤な炎が、廊下を踊り始める)

鞠莉「ッ!?」

花丸「消火器……嘘、置いてないずら!?」

しずく「このまま、焼け死ぬしかないんですか!?」

ダイヤ「皆さん、落ち着いてください! 口を押えて姿勢を低く!」

歩夢(急いで扉を閉める鞠莉さん。慌てふためくみんな)

歩夢(この部屋は、廊下に面した一箇所しか出入り口がない。火の手がこちらまで来たら一巻の終わりだ)

歩夢(……だが、およそ10秒後)

66: 2019/11/04(月) 23:35:47 ID:ypS3Bcfk
歩夢「水の、音?」

しずく「もしかして……スプリンクラーが作動したのでしょうか?」

花丸「た、助かったずら……」

ダイヤ「ですが油断はなりません。煙を吸わないよう、慎重に行動しましょう」

歩夢(やがて、スプリンクラーの音も聞こえなくなる)

鞠莉「どうやら、収まったみたいね……」

しずく「と、とにかく! 一旦食堂まで行きませんか? あそこなら煙も来ないでしょうし……」

歩夢(そうして、私たちは順番に第1多目的室を出て行く)

歩夢(しずくちゃん、花丸ちゃん、梨子ちゃん……次が、私)

67: 2019/11/04(月) 23:36:29 ID:ypS3Bcfk
歩夢「……?」

歩夢(不意に、第2多目的室の方が気になった)

ダイヤ「歩夢さん、どうかしました?」

歩夢(ドアは開いている。中に何かあるが……煙でよく見えない)

鞠莉「そっちに何かあるの?」

歩夢「……」

歩夢(先に行こうとした3人も、心配して戻って来る)

歩夢(何か……何か、嫌な予感がしてたまらないのだ)

歩夢(一歩、また一歩。煙を吸い込まないように、奥へと進んで行く)

68: 2019/11/04(月) 23:37:57 ID:ypS3Bcfk
歩夢(自然と呼吸を止めているのは……煙を吸わないためだけではないのかも知れない)

歩夢(そんな筈はないと信じて、また次の一歩を踏み出す)

歩夢(けれども……いつもそうだった)

歩夢(絶望は決して待ってくれない)

歩夢(そして……煙の中で、見た。見てしまった)

69: 2019/11/04(月) 23:38:36 ID:ypS3Bcfk

落ちている拳銃。

焼けているが、顔の絵の端っこが僅かに見える……スケッチブックと思しき物の残骸。

そして、着ぐるみを着ているものと、そうでないもの。

2つの……焼け焦げた、ヒト……。

70: 2019/11/04(月) 23:40:19 ID:ypS3Bcfk
今回はここまで。
既存の章の一部含めスクスタの設定と幾つか矛盾することになりましたが、これはこれということで。

74: 2019/12/13(金) 22:38:14 ID:9e.uoI0w

     Chapter5

キボウハドコニ?  非日常編

75: 2019/12/13(金) 22:38:45 ID:9e.uoI0w
歩夢(これは、何?)

歩夢(何が起きたの!?)

花丸「な、何ずら、これ……」

鞠莉「……」

しずく「酷い……」

歩夢(困惑、動揺……いや、混乱?)

歩夢(とても、冷静では居られなかった)

ダイヤ「2人分の焼死体……惨たらしいですわね……」

76: 2019/12/13(金) 22:39:38 ID:9e.uoI0w
歩夢(惨たらしい。ダイヤさんの言葉は、的確だった)

歩夢(今までも、死体は何度も見て来た。見て来てしまった)

歩夢(けれども……いま目の前に転がっている2つは、そのどれよりも凄惨で)

歩夢(“絶望”……そう表現せざるを得なかった)

ダイヤ「ですが……こうなってしまっては、誰が死んだのかも……」

鞠莉「それを解き明かすカギは……これらでしょうね」

歩夢(そう言って、鞠莉さんは2つの物品を手に取る)

歩夢(拳銃と、スケッチブックらしき物の残骸)

歩夢(私たちは、それらの持ち主をよく知っている)

花丸「拳銃は、穂乃果さんが持っていて……」

しずく「それは、璃奈ちゃんボードじゃ……」

77: 2019/12/13(金) 22:40:28 ID:9e.uoI0w
歩夢(そう。だとしたら、ここに転がっている2つの死体は……いや、待って欲しい)

歩夢「じゃあ────梨子ちゃんは?」

ダイヤ「えっ?」

歩夢「だって、梨子ちゃんも居ないんだよ? だったら、このどっちかが梨子ちゃんの可能性もあるんじゃ……」

歩夢(そう。行方不明者は3人、目の前の焼死体は2つ)

歩夢(単純に考えるなら、誰か1人が見当たらないことになるのだが……)

鞠莉「もしかしたら、そういったところも含めて学級裁判で──学級裁判?」

ダイヤ「どうかしたのですか?」

鞠莉「ねえ。“死体発見アナウンス”は?」

歩夢「?」

鞠莉「いつもならそろそろアナウンスがある筈でしょう? 死体が発見されました~って」

78: 2019/12/13(金) 22:41:04 ID:9e.uoI0w
しずく「もしかして……モノっちーを操っていた黒幕が亡くなったから?」

花丸「そ、そんなことってあり得るずら?」

鞠莉「考えられない話ではないでしょう?」

歩夢(黒幕が死んだから、アナウンスが鳴らない。確かに、理にはかなっている)

歩夢(けど、黒幕が死んだということは……)

歩夢「じゃあ……コロシアイは、終わった……の?」

歩夢(だとしたら、この様相は何だ? 誰かが黒幕と刺し違えたりでもしたのだろうか?)

歩夢(いや、それ以前に。確かめないといけないことがある)

歩夢「ねえ、ちょっと気になる場所があるんだけど……」

79: 2019/12/13(金) 22:41:44 ID:9e.uoI0w
────情報処理室

歩夢「開いた……」

歩夢(情報処理室。視聴覚室と役割が被るが、てっきりパソコンが多く設置している部屋だろうと思っていた)

歩夢(何故か開いた扉の向こうに広がっていたのは……奇妙な光景だった)

しずく「モニター……ですよね」

ダイヤ「しかも、映し出されているのは……」

歩夢(あったのはパソコンではなく、壁面に埋め込まれた幾つものモニター)

歩夢(それらは全て、私たちが過ごしているこの虹ヶ咲学園の様々な場所を映し出している)

歩夢(若干煤けているが、もちろん死体のある第2多目的室も)

歩夢(それが意味するのは……)

鞠莉「監視カメラの映像のようね」

80: 2019/12/13(金) 22:42:31 ID:9e.uoI0w
花丸「じゃあ、この部屋って……」

歩夢(この学園において、監視カメラの映像を必要とするのは1人しか居ない)

鞠莉「間違いないわ。黒幕の部屋よ」

しずく「黒幕の、部屋……」

ダイヤ「奥にも扉があるようですが……」

ガチャガチャガチャ!

ダイヤ「こちらには入ることは出来ませんわね」

しずく「確か、地図にも奥の部屋は描いてありましたね」

鞠莉「ええ。おおかた黒幕のもう1つの部屋ってところかしら」

モノっちー「御名答、あの奥はボクのパーソナルスペースだよ」

81: 2019/12/13(金) 22:43:08 ID:9e.uoI0w
歩夢「……えっ?」

モノっちー「えっ?」

ダイヤ「なっ……」

モノっちー「な?」

花丸「ずらぁああぁぁあぁあっ!?」

モノっちー「うけけけけけ……オマエら、久しぶりじゃねえの」

歩夢「も、モノっちー!?」

しずく「死んだ筈じゃなかったんですか!?」

モノっちー「ボクが死んだなんて、ご冗談を抜かしおるのう若造めが!」

82: 2019/12/13(金) 22:44:01 ID:9e.uoI0w
花丸「だって、チャイムは鳴っても、アナウンスはしなくなって……」

モノっちー「それだよそれ。記憶喪失だったことをバラした時もそうだけど、オマエらやっぱりいい顔してくれるよ」

モノっちー「希望が踏みにじられる瞬間の顔……うん、やっぱり心地いいよネ」

ダイヤ「まさか、そのためだけに沈黙を貫いていたというのですか……!?」

歩夢(モノっちーが、生きていた……? じゃあ、それが意味するのって……)

鞠莉「待ちなさい! あそこに死体があって、あなたが動いているということは……」

モノっちー「察しがいいネ。今か今かと待ち詫びていたんだけど、ようやくこれを言えるよ」

83: 2019/12/13(金) 22:45:08 ID:9e.uoI0w

ピンポンパンポーン

モノっちー『死体が発見されました。一定の捜査時間の後、“学級裁判”を開きます』

モノっちー『オマエら、死体発見現場の第2多目的室にお集まりください!』

プツン

ピンポンパンポーン

モノっちー『死体が発見されました。一定の捜査時間の後、“学級裁判”を開きます』

モノっちー『オマエら、死体発見現場の第2多目的室にお集まりください!』

プツン

84: 2019/12/13(金) 22:47:05 ID:9e.uoI0w
モノっちー「そう、コロシアイは終わらない。まだまだ続くんだよ!」

モノっちー「あっはははははははははは……!」

歩夢(連続で流れた、2つの死体発見アナウンス)

歩夢(黒幕は生きていて、コロシアイは続行される……)

歩夢(悪意を煮詰めたモノっちー……いや、その向こうに居る黒幕の高笑いに、思わず目が眩みそうになる)

歩夢(じゃあ、あの死体は……)

モノっちー「とりあえずモノっちーファイルは置いといてやるからさ。好きなだけ捜査しなよ!」

モノっちー「まあ特殊な事件だし、あんまりアテにはならないかも知れないけどネ」

モノっちー「じゃあ、頭を振り絞って頑張ってネ! うけけけけけ……」

85: 2019/12/13(金) 22:47:45 ID:9e.uoI0w
歩夢(高笑いと共に……モノっちーは去っていった)

歩夢(意味も理屈も分からない事実と、数多の疑問)

歩夢(そして、絶望を残して……)

歩夢(しばらくの間、私たちはその場に立ち尽くしていた)

鞠莉「死んだのは……梨子と璃奈で、確定ね」

花丸「……」

しずく「じゃあ、〇したのは……」

ダイヤ「それはまだ分かりませんが……間違いなく、高坂さんが一枚噛んでいるでしょうね」

86: 2019/12/13(金) 22:48:28 ID:9e.uoI0w
鞠莉「捜査を始めましょう。とにかく、今は手掛かりが欲しい」

歩夢(そう……始めるんだ)

歩夢(全てを解き明かして、希望を掴むために)

歩夢(でも、ここで言う“希望”って何なんだろう?)

歩夢(外の世界は滅んでいるのに。どのみち、私たちには破滅の未来しか残されていないのに)

歩夢(……)

歩夢(……不安でも、やるしかないんだ)

歩夢(答えを間違えれば、絶望まっしぐらなんだ)

歩夢(それだけは……モノっちーの思い通りにだけは、絶対にさせない!)

87: 2019/12/13(金) 22:49:09 ID:9e.uoI0w
捜査開始!

歩夢(何はともあれモノっちーファイル……と、目を通そうとする私だったが)

歩夢(『特殊な事件だから、アテにはならないかも』というモノっちーの言葉の意味を、すぐに実感することになった)


『死体発見現場となったのは校舎4階、第2多目的室』

『黒焦げになったため、被害者の身元及び外傷、死因等は不明』

『ただし、死体の心臓付近には矢が突き刺さっている』



『死体発見現場となったのは校舎4階、第2多目的室』

『黒焦げになったため、被害者の身元及び外傷、死因等は不明』

『また、被害者は着ぐるみを着用していた』


《モノっちーファイル5》《モノっちーファイル5-2》のコトダマを入手しました。

88: 2019/12/13(金) 22:49:43 ID:9e.uoI0w
歩夢「たった、これだけ……」

鞠莉「ファイルはいつも作っていたから、便宜上とりあえず作りましたって感じね」

しずく「これじゃあ、ほとんど何も分からないじゃないですか……!?」

ダイヤ「被害者の身元すら書かれていませんが……もはや、分かり切ったようなものでしょう」

鞠莉「とりあえず、あの死体を調べる必要がありそうだけど……」

花丸「うっ……」

歩夢(2番目の事件からずっと検死を任されていた花丸ちゃん。だが、今回ばかりは及び腰な様子だ)

歩夢(……無理もない。今回の死体は黒焦げで、今までのどれよりも凄惨で、直視するに堪えないものだから)

89: 2019/12/13(金) 22:50:32 ID:9e.uoI0w
鞠莉「……まあいいわ。あまりそういった知識はないけど、死体は私が調べるわ」

鞠莉「あの様子じゃ、死亡推定時刻も割り出せそうにないし」

花丸「申し訳ないずら……」

ダイヤ「では、私はあの第2多目的室自体を調べて来ましょう」

花丸「じゃあ、オラは第1多目的室の方を……」

しずく「私は……少し気になるところがあるので。失礼します」

歩夢(こうして、みんな散り散りになった)

歩夢「……よし」

歩夢(私も、頑張らなきゃ……!)

90: 2019/12/13(金) 22:51:09 ID:9e.uoI0w
歩夢(そういえば、この情報処理室には何か手掛かりはあるのだろうか)

歩夢(と、一通りこの部屋を物色してみたが……)

歩夢「……何もないや」

歩夢(この部屋にあるのは、大量のモニターと1つのパソコン)

歩夢(モニターの向こうでは、みんながせっせと捜査に励んでいる様子が見える)

歩夢(パソコンの方は……どうやら、別館の監視カメラの映像が見られるようだった)

歩夢(つまりこの部屋は、黒幕が私たちを監視するための部屋でしかないのだ)

歩夢(奥の部屋には入れないが……きっとこの奥で黒幕はモノっちーを操作しているのだろう)

91: 2019/12/13(金) 22:51:47 ID:9e.uoI0w
歩夢「……ん?」

歩夢(そもそも。昨日、花丸ちゃんに連れられてここに来た時は、まだこの部屋には入れなかった筈だ)

歩夢(あのあと、着ぐるみを着た何者かに襲われて意識を失った私)

歩夢(あの時襲われたことが気になってここに来たら、何故か扉が開いていた)

歩夢(……どういうことなんだろう?)

歩夢「一応、覚えておいた方がいい……のかな?」

歩夢(それに、あの襲撃事件は……きっと、今回の事件で重要になって来る筈だ)

《開いていた情報処理室》《上原歩夢襲撃事件》のコトダマを入手しました。

92: 2019/12/13(金) 22:52:26 ID:9e.uoI0w
────被服室・衣装倉庫

歩夢(情報処理室のモニターには、ここに来ているしずくちゃんの姿があった)

しずく「歩夢さんも、やっぱり着ぐるみが気になりますか?」

歩夢「う、うん。というか、しずくちゃんもあの着ぐるみに……?」

しずく「昨日、夜時間のチャイムが鳴るよりも前のことだったんですが……」

歩夢(……それからしずくちゃんは、昨晩起きた出来事を話してくれた)

歩夢(夜時間を告げるチャイムが鳴るより前、誰かが部屋のインターホンを押したこと)

歩夢(開けると、目の前には大きなうちっちーの着ぐるみ)

歩夢(悲鳴をあげるよりも早く、電撃のような感覚を食らって気を失った……らしい)

93: 2019/12/13(金) 22:53:04 ID:9e.uoI0w
しずく「──ということだったんです」

歩夢「ありがとう、しずくちゃん。じゃあ、その着ぐるみについてなんだけど……」

歩夢(私の時と同じで、犯人はうちっちーの着ぐるみを用いてしずくちゃんを気絶させたんだろう)

歩夢(けれど……彼女の話の中に出て来た着ぐるみと、私を襲った着ぐるみ、その2つには決定的な違いがあった)

歩夢「私が襲われた時は、茶色だった気がしたんだけど……」

歩夢(襲われた着ぐるみについて、彼女は『灰色のうちっちー』と口にした)

歩夢(だが……私が見たうちっちーは『黒色要素を取っ払ったモノっちー』。つまり、茶色のモノっちーだった)

歩夢(照明のせいで見え方に差が出来た……だけなんだろうか?)

94: 2019/12/13(金) 22:53:40 ID:9e.uoI0w
モノっちー「それはだネ、君たち忘れたのかい?」

しずく「わっ!?」

歩夢「忘れたって……何を?」

モノっちー「うちっちーには初代と2代目が居る。このフロアが解放された時、渡辺さんと高海さんとボクがそんな話をしていたでしょうよ」


曜『ちなみに、初代うちっちーの着ぐるみもあったよ!』

歩夢『初代うちっちー?』

千歌『んーとね……そもそもうちっちーって、沼津のマスコットキャラクターなんだ』

曜『最初は人っぽい造形だったんだけど、後から今の丸っこい着ぐるみにデザインが変更されたんだよ』

モノっちー『そうそう。パイセンにはお世話になってたよネ』

95: 2019/12/13(金) 22:54:20 ID:9e.uoI0w
モノっちー「まあ今となっちゃ、渡辺さんは別人だとバラしちゃったし、高海さんも別の名前を出したけどネ」

しずく「そのことは今はいいんです。それより、初代うちっちーというのは……」

モノっちー「早い話が、灰色の方が初代で茶色の方が2代目。そう覚えといてくれた方がいいネ」

歩夢「でも……2つとも、この部屋からなくなってるんだね。他に着ぐるみはないし……」

モノっちー「それはボクに聞かれても困るよ。ボクは学級裁判を公正に運営する立場なんだから、オマエらの頭で考えてちょうだい」

モノっちー「ああ、でもそうだネ。公正に裁判を運営すると言ったからには、この情報は出しておこうか」

モノっちー「初代うちっちーは人型だって言ってたでしょ? でも、この学園に置いてある初代うちっちーの着ぐるみは、2代目うちっちーと同じサイズ・形だからネ」

しずく「じゃあ、違うのは色だけなんですね?」

モノっちー「ボクから与えられる情報はここまでだよ。後でしっかりと他の人たちにも情報共有しておくよーに!」

《桜坂しずく襲撃事件》《2つの着ぐるみ》のコトダマを入手しました。
《上原歩夢襲撃事件》のコトダマの情報を更新しました。

96: 2019/12/13(金) 22:55:02 ID:9e.uoI0w
────第1多目的室

花丸「……昨日の夜?」

歩夢「うん。あの時、どうして情報処理室に行こうと思ったの?」

花丸「情報処理室? そんなところには行ってないずらよ?」

歩夢「えっ……?」

歩夢(正直なところ。昨日の出来事のせいもあって、私はずっと花丸ちゃんを疑っていた)

歩夢(実行犯ではなくとも、着ぐるみの人物の協力者ではないかとばかり思っていた)

歩夢(ところが、何度聞いても返って来るのは「知らない」「行ってない」といった答えばかり)

歩夢(それどころか……)

97: 2019/12/13(金) 22:56:16 ID:9e.uoI0w
花丸「そもそも昨日は大変な目に遭ったし……」

歩夢(花丸ちゃん自身も、着ぐるみの人物に襲われたと話し始めたのだ)

歩夢(しずくちゃんの時と同じく、部屋に訪れた着ぐるみによる襲撃)

歩夢(時間は分からないが、夜時間のチャイムはまだ鳴っていなかったという)

歩夢「ちなみに……そのうちっちーの着ぐるみは、何色だったの?」

花丸「茶色だけど……それがどうかしたずら?」

歩夢「……」

歩夢(私の時と同じ、2代目の方……)

歩夢(花丸ちゃんが嘘をついているのかは、まだ分からない)

歩夢(けど。もし嘘じゃないとしたら、昨日私が見た花丸ちゃんは……)

歩夢(いや……“彼女”に限って、そんな事をする筈……?)

《国木田花丸襲撃事件》のコトダマを入手しました。

98: 2019/12/13(金) 22:57:07 ID:9e.uoI0w
花丸「ところで歩夢ちゃん、ちょっと見てもらいたい物があるんだけど」

歩夢(花丸ちゃんが示したのは、第1多目的室唯一の出入り口である引き戸)

歩夢(みんながここで目を覚ました時は、部屋を出ようとした矢先に火事が起きて大変なことになった)

歩夢(結局、その火自体はスプリンクラーで消し止められたんだけど……)

花丸「これ……糸、だよね」

歩夢「本当だ……取っ手に絡まってる」

no title


歩夢「確かにドアノブ付近で絡まってるけど……でも、この糸はどこにも繋がってないよ?」

花丸「火事で燃えたのかも知れないずらね」

歩夢「うーん……」

99: 2019/12/13(金) 22:57:49 ID:9e.uoI0w
歩夢(ごく僅かに垂れていた、ドアに絡まっていない先端の方を手に取ってみる)

歩夢「燃えちゃったなら、先っぽが焦げていてもおかしくないけど……別に焦げているわけじゃ……えっ!?」

花丸「どうしたずら?」

歩夢「糸が……溶けた……?」

歩夢(絡まっていた糸は、スプリンクラーのお陰でところどころ濡れている。現に、先端部分がそうだった)

歩夢(そこに触れると、まるで糸が溶けたように消えた……ということは)

花丸「これって、水に溶ける糸だったの?」

歩夢「……うん。間違いないよ」

歩夢(あの時の火事騒動……そして、溶ける糸……)

歩夢(これらが意味するものって……?)

《火事騒動》《溶ける糸》のコトダマを入手しました。

100: 2019/12/13(金) 22:58:26 ID:9e.uoI0w
────第2多目的室

歩夢(第2多目的室では、鞠莉さんが死体を、ダイヤさんが部屋全体の捜査をしていた)

歩夢(火事が起きた直後は煙が充満していたこの部屋も、今では

歩夢「あの……2人とも、少し訊きたいことがあるんですけど」

歩夢(作業を中断させるようで悪いが……2人にも襲撃事件のことを聞いておかないといけない)

鞠莉「その話だったら──」

ダイヤ「その件でしたら──」

鞠莉・ダイヤ「「……」」

歩夢(タイミングほぼ同時。2人の言葉が綺麗に被った)

歩夢(ちょっとしたコントを挟んで……最初に口を開いたのは、ダイヤさんの方だった)

101: 2019/12/13(金) 22:59:33 ID:9e.uoI0w
ダイヤ「私、梨子さんの姿を見たんですよ」

歩夢「えっ?」

ダイヤ「ですが、皆さんの言う『着ぐるみ』の姿を見ることはありませんでした」

ダイヤ「或いは……背後からの奇襲だったので、単に視界に映らなかっただけかも知れませんが」

歩夢(ダイヤさんの話をまとめるとこうだ)

歩夢(襲撃されたのは、少なくとも夜時間のチャイムより後)

歩夢(お手洗いからの帰り、偶然、学生寮から校舎の奥へ歩いて行く梨子ちゃんの姿を見かけた)

歩夢(気になって、後をつけて行った結果。校舎3階から4階への階段付近で背後からスタンガンらしき物の攻撃を受けたのだという)

歩夢(目が覚めた時には、第1多目的室でみんなと一緒だった。結局、梨子ちゃんが4階のどこへ向かったのかは分からないらしい)

《黒澤ダイヤ襲撃事件》のコトダマを入手しました。

102: 2019/12/13(金) 23:00:40 ID:9e.uoI0w
ダイヤ「私が知っているのは、ここまでです。次は鞠莉さんの番ですよ」

鞠莉「ん~……その前に、この部屋に色々落ちてたんでしょ? そっちの話をお願いしてもいいかしら」

ダイヤ「……まあ、いいでしょう」ハァ

ダイヤ「死体発見直後は煙が充満していたので、その時点では気付かない物が多かったですが……」

ダイヤ「まずは、スケッチブックと拳銃。いずれも、死体の傍に落ちていた物です」

鞠莉「矢が刺さった方の死体の傍にスケッチブックが落ちていて、拳銃は着ぐるみの傍」

ダイヤ「ちなみに、弾は一発も入っておりませんでした」

歩夢「……」

歩夢(拳銃は穂乃果さんが持っていた物と同じ形で、スケッチブックの持ち主は言うまでもなく……)

《焼け焦げたスケッチブック》《拳銃》のコトダマを入手しました。

103: 2019/12/13(金) 23:02:00 ID:9e.uoI0w
ダイヤ「そして……死体の傍ではなく、どちらかといえば扉の傍に落ちていたものです」

歩夢(そう言って、ダイヤさんが取り出したのは……)

歩夢「ライターと……弓?」

ダイヤ「発見した時点で火は既に消えていましたが、出火の原因はこのライターでしょうね」

ダイヤ「犯人が死体を燃やすために火を放ったのではないかと」

鞠莉「……」

歩夢(犯人が火を……? じゃあ、まだ行方の分からない“誰か”が火を放ったっていうの……?)

ダイヤ「こちらの弓は“園田”と名前が掘られている以外、特に何の変哲もないカーボン製の物です」

鞠莉「だったら犯人は、その弓を使ってこの死体を矢で射たのかしら?」

ダイヤ「恐らくは。いずれもドアの付近に落ちていました。

ダイヤ「正確な位置関係はこうです」



《落ちていたライター》《落ちていた弓》のコトダマを入手しました。

104: 2019/12/13(金) 23:02:55 ID:9e.uoI0w
鞠莉「さてと、じゃあ次は私の番ね。とりあえず、私が調べた中で判ったことだけど……」

鞠莉「まず、着ぐるみの死体。こっちは、お腹の部分に何らかの傷があった」

鞠莉「何の傷なのかは……ごめんなさい、焼けてしまっていて、私じゃよく判らなかったわ」

歩夢「ま、鞠莉さんが謝ることないですよ」

鞠莉「……もう1つの死体。こっちは、見たところ矢以外の傷はなさそうね」

鞠莉「ただ、この矢について少し気になることがあってね」

歩夢「気になるところ?」

鞠莉「矢じりに穴が空いているのよ。その穴を覗いたら、シャフト……でいいのかしら?」

ダイヤ「日本では矢幹と呼んだりしますね」

鞠莉「そうそう、その部分にも穴が空いていて、向こうが覗ける状態……つまり“細い何かであれば通せる状態”だったのよ」

鞠莉「何となく、引っ掛かるのよね……」

《鞠莉の検死報告》のコトダマを入手しました。

105: 2019/12/13(金) 23:03:53 ID:9e.uoI0w
鞠莉「それから、私が襲われた時の話だったわね」

歩夢「……はい」

鞠莉「……」

歩夢(私とダイヤさんに向かって、鞠莉さんはいつものように耳打ちの体勢を要求する)

歩夢(そして、声を落として……)

鞠莉「ハッキリ言うわ。私は花丸と璃奈を疑っている」

歩夢「っ……」

歩夢(予想はしていた。私が襲われた時がそうだったのだから、いつか槍玉に上がる時が来るだろうとは思っていた)

歩夢「鞠莉さんも……花丸ちゃんに?」

鞠莉「ええ、そうね。しかも──」

106: 2019/12/13(金) 23:04:46 ID:9e.uoI0w
歩夢(鞠莉さんが話してくれた内容は、衝撃的すぎるものだった)

歩夢(花丸ちゃんが鞠莉さんの部屋に訪れた時、鞠莉さんは警戒心を露にしていた)

歩夢(無理もない。既に一度、穂乃果さんに襲撃を受けているのだから)

歩夢(だが……廊下の方で、気を失っているしずくちゃんを連れ出そうとする着ぐるみの姿を目撃したのだという)

歩夢(『何をしているのだ』と糾弾しようとして……背後から自身も電撃を受けた、というものだ)

ダイヤ「では……やはり」

歩夢「やっぱり着ぐるみの人物以外にも、誰かがこの事件に関わっている……」

鞠莉「それが花丸か、花丸に変装した璃奈かはハッキリしないけどね」

歩夢「……」

歩夢(璃奈ちゃんが変装している可能性……キッパリと言われてしまった)

歩夢(もし本当だとしたら……璃奈ちゃんはどうしてこんなことを……)

《小原鞠莉襲撃事件》のコトダマを入手しました。

107: 2019/12/13(金) 23:05:49 ID:9e.uoI0w
ピンポンパンポーン

モノっちー『さてと、皆さんお待たせしました』

モノっちー『というか待っているのはボクの方だネ』

モノっちー『待ち遠しいよ。まるでライブを前日に控えた人のように気分が高揚しているよ』

モノっちー『ボクはもう待ちきれません! というワケでオマエらー!』

モノっちー『赤い門の前に集合でーす! 全員集まるようにー!』

プツン

108: 2019/12/13(金) 23:07:33 ID:9e.uoI0w
歩夢「全員で……」

鞠莉「結局、3人目は見つかったのかしらね」

ダイヤ「姿が見えないのは、梨子さん、璃奈さん、高坂さん」

ダイヤ「それに対して……死体は、2つ」

歩夢「また……低温倉庫の時みたいになってるのかな」

鞠莉「流石に、あそこのスイッチは壊れちゃってるから同じ手は使えないでしょうけど……」

鞠莉「また別のどこかに隠したのか、或いは……いえ、行きましょうか」

109: 2019/12/13(金) 23:08:20 ID:9e.uoI0w
────赤い門

しずく「──だから、開いてたんですよ! 生物室が!」

花丸「わ、分かったから落ち着くずら」

歩夢「どうしたの?」

しずく「そのままの意味です。開かずの生物室が、入れるようになっていたんです!」

ダイヤ「生物室が……?」

しずく「中はとっても寒かったんですけど……」

鞠莉「それで、中には何があったの?」

しずく「沢山のロッカーです。それも、横にランプの点いた」

110: 2019/12/13(金) 23:08:57 ID:9e.uoI0w
歩夢(しずくちゃんの話によると、ロッカーの数はざっと見た感じで30くらい)

歩夢(触ってみたが、いずれもロックが掛けられているのか、中を見ることは出来なかったという)

歩夢(もう少し調べてみようとしたが……チャイムが鳴ったので諦めたということだ)

《開いていた生物室》のコトダマを入手しました。

鞠莉「しまったわね……開いていることに気付いていれば、そこも詳しく調べられた筈なのに」

ダイヤ「過ぎたことを悔やんでも仕方ありません。どのみち……話の続きは、この先ですることになるのですし」

歩夢(そして、全員エレベーターに乗り込む)

歩夢(行方不明の3人目を残して……エレベーターは、地下へと潜り始めた)

111: 2019/12/13(金) 23:09:37 ID:9e.uoI0w
歩夢(会話は、一切ない)

歩夢(もうこれが最後であるように……そう願いながら、これで5度目)

歩夢(自然と、どのくらいでエレベーターが裁判場に着くのかも分かってしまった)

歩夢(10、9、8、7……心の中でカウントダウンをする)

歩夢(そして、そのカウントダウン通りに……エレベーターは、停止した)

112: 2019/12/13(金) 23:10:38 ID:9e.uoI0w
────地下???階、裁判場

モノっちー「今更どうって言うこともないよネ」

モノっちー「あ、模様替えについては何か言ってくれてもいいよ? 廃墟風っていうのも、マニアにとってはたまらないものでしょ?」

歩夢(3人目の姿は……ここにはなかった)

歩夢(隣で、私の手助けをしてくれたせつ菜ちゃんの姿も……なかった)

モノっちー「あ、どうって言うことが1つあったよ」

モノっちー「もう1人の人物については、裏で待機してもらってるからネ」

歩夢「……えっ!?」

歩夢(3人目が……待機している!?)

モノっちー「ま、そんなワケだから……とっとと始めようじゃないか」

モノっちー「極上の学級裁判を!」

113: 2019/12/13(金) 23:11:32 ID:9e.uoI0w
歩夢(最後に特大級の疑問符を打ち上げて……5度目の裁判が、始まろうとしていた)

歩夢(被害者は誰なのか? 犯人は誰なのか?)

歩夢(何もかもが分からない、今回の事件)

歩夢(けれども、答えを間違えれば……私たちは全滅する)

歩夢(だったら、戦うしかない)

歩夢(この凄惨な事件の裏にある真実を、掴み取るしかない)

歩夢(全てを明らかにするためにも……みんなで戦うんだ)

歩夢(絶望というドス黒い意思が漂う、この学級裁判を──!)

114: 2019/12/13(金) 23:13:22 ID:9e.uoI0w
~学級裁判準備~
3人の行方不明者と、2つの焼死体。
着ぐるみによる襲撃事件は、何の目的で行われたのか?
残された手掛かりを繋ぎ合わせて、導き出せる答えとは──?

コトダマリスト
『死体発見現場となったのは校舎4階、第2多目的室』
『黒焦げになったため、被害者の身元及び外傷、死因等は不明』
『ただし、死体の心臓付近には矢が突き刺さっている』

《モノっちーファイル5-2》
『死体発見現場となったのは校舎4階、第2多目的室』
『黒焦げになったため、被害者の身元及び外傷、死因等は不明』
『また、被害者は着ぐるみを着用していた』

《開いていた情報処理室》
昨日の夜の時点では鍵が掛かっていた部屋。
いつの間にか鍵が開いていて、中に入れるようになっていた。
中は監視カメラの映像を確認する部屋で、奥に黒幕の部屋と思しき場所がある。

115: 2019/12/13(金) 23:14:33 ID:9e.uoI0w
《上原歩夢襲撃事件》
昨晩、花丸に連れられて情報処理室前まで行った際に起きた。
2代目うちっちーの着ぐるみを着た何者かが、スタンガンで歩夢を気絶させた事件。

《桜坂しずく襲撃事件》
昨晩、夜時間のチャイムが鳴るよりも前。
部屋に訪れた初代うちっちーの着ぐるみに襲われたという。

《2つの着ぐるみ》
被服室・衣装倉庫から消えていた、初代うちっちーと2代目うちっちーの着ぐるみ。
初代は灰色で、2代目は茶色のカラーリング。
モノっちーいわくサイズや形に違いはないらしい。

《国木田花丸襲撃事件》
昨晩、夜時間のチャイムが鳴るよりも前。
部屋に訪れた2代目うちっちーの着ぐるみに襲われたという。

《火事騒動》
第1多目的室を出ようとした時、廊下と第2多目的室で発生した火事。
現在はスプリンクラーで鎮火している。

116: 2019/12/13(金) 23:15:41 ID:9e.uoI0w
《溶ける糸》
no title

第1多目的室の扉の取っ手に絡まっていた。
スプリンクラーの水で溶けてしまっている。

《黒澤ダイヤ襲撃事件》
昨晩、夜時間のチャイムが鳴った以降の出来事。
校舎へと向かう梨子の姿を偶然見かけ、後をつけて行った。
その途中、校舎3階から4階の階段付近で背後から襲われたという。

《焼け焦げたスケッチブック》
矢が刺さった方の死体の傍に落ちていた。
ほとんど燃えてしまっているが、顔のイラストらしき物の一部が見える。

《拳銃》
着ぐるみを着ていた方の死体の傍に落ちていた。
高坂穂乃果が持っていた物と同一の型で、残弾は0発。

《落ちていたライター》
何の変哲もない、一般的なライター。
第2多目的室を入ってすぐの所に落ちていた。

117: 2019/12/13(金) 23:16:40 ID:9e.uoI0w
《落ちていた弓》
園田と名前が掘られた弓。
第2多目的室を入ってすぐの所に落ちていた。
落ちていた物の位置関係は下記参照。


《鞠莉の検死報告》
着ぐるみの死体は、腹部に何らかの傷があった。
もう片方の死体に刺さっていた矢は中央に細い穴が空いており、細い物なら通る状態だった。

《小原鞠莉襲撃事件》
花丸が部屋に訪れ、鞠莉はそれを警戒していた。
しかし、しずくが着ぐるみによって攫われようとしている現場を目撃。
それを止めようとして、背後から電撃を受けたという。

《開いていた生物室》
捜査中、入れるようになっていた生物室。
しずくによれば、中には30ほどの、横にランプのついたロッカーがあったという。
いずれもロックが掛かっているのか、開けることは敵わなかったらしい。

121: 2020/01/27(月) 21:47:35 ID:uq8dLs4I

 学 級 裁 判 
  開   廷!

122: 2020/01/27(月) 21:48:13 ID:uq8dLs4I
モノっちー「まずは学級裁判の簡単な説明を行いましょう」

モノっちー「学級裁判では“誰がクロか”を議論し、最終的に投票で全てを決定します」

モノっちー「正しいクロをオマエらの過半数が指摘出来れば、クロだけがオシオキ」

モノっちー「不正解だった場合は、クロは卒業、残ったシロは全員オシオキです!」

モノっちー「ちなみに、ちゃんと誰かに投票してネ。投票を放棄した人もオシオキだからネ?」

ダイヤ「……もはや、卒業というルールは意味を為さなくなってしまいましたね」

しずく「それでも、間違えてしまえば処刑されることには変わりありません」

歩夢(そう……間違えるわけにはいかない)

歩夢(私たち全員の命が懸かっているんだ)

123: 2020/01/27(月) 21:48:46 ID:uq8dLs4I
鞠莉「議論を始める前にモノっちーに訊いておきたいんだけど、どうして行方不明者さんは裏で待機しているのかしら?」

しずく「そうですよね。この場に出てきてくれた方が、議論が進む筈です」

モノっちー「あー、早い話がエンタメ性だよ」

花丸「え、エンタメ性?」

モノっちー「その人の要望でネ。前回のように消えた人の行方を気にしてたら、話がしっちゃかめっちゃかになるだろうからってさ」

モノっちー「何より、こういう演出にした方が裁判が盛り上がるしネ!」

歩夢(姿を見せていないのは璃奈ちゃん、梨子ちゃん、穂乃果さん)

歩夢(そして裁判場には、前回と同じように……?マークの付いた遺影が、3つ)

歩夢(あくまでモノっちーは、被害者不明で押し通すつもりのようだ)

124: 2020/01/27(月) 21:49:26 ID:uq8dLs4I
モノっちー「まあそういうワケだから、議論を始めちゃってよ」

鞠莉「釈然としないけど……まあいいわ。最後の1人が誰かも分かり切ってるし」

ダイヤ「それは確かなんですか?」

鞠莉「高坂穂乃果……彼女しか考えられないわ」

しずく「……やっぱり、そうなんですね」

花丸「……」

歩夢「確かに、コロシアイの黒幕が死んだってことは考えにくいけど……」

歩夢「でも……決めつけるのもまだ早い気がするんだ」

歩夢(この事件は、そんなに単純な話じゃないような気がする。それに、今の話には何か違和感がある)

歩夢(何なんだろう、この違和感……?)

125: 2020/01/27(月) 21:50:07 ID:uq8dLs4I
【ノンストップ議論 開始!】
[|黒澤ダイヤ襲撃事件>
[|焼け焦げたスケッチブック>
[|拳銃>
[|小原鞠莉襲撃事件>

鞠莉「間違いないわ。待機しているのは高坂穂乃果よ」

しずく「穂乃果さんは【璃奈さんを連れ去って】いましたから……いつでも〇すことが出来た筈です」

花丸「スケッチブックも落ちてたし……璃奈ちゃんは《被害者の1人》ってことになるずらね」

ダイヤ「梨子さんの姿は昨晩見かけましたが……私はそのあと背後から襲撃されています」

ダイヤ「つまり、犯人は【梨子さん以外の誰か】ということになります」

しずく「梨子さんもこの事件の被害者となると……」

鞠莉「高坂穂乃果が死んだ【根拠がない】以上、確定よ」

花丸「じゃあ、穂乃果さんが2人を〇した犯人……?」

歩夢(……違和感の正体が、掴めたかも知れない)

歩夢(やっぱり、決めつけるには早すぎる!)

126: 2020/01/27(月) 21:50:51 ID:uq8dLs4I
[|拳銃>→【根拠がない】

歩夢「それは違うよ!」

Break!

歩夢「待ってください鞠莉さん。穂乃果さんが被害者かも知れない根拠、ありましたよね?」

鞠莉「……」

歩夢「現場に落ちていた拳銃は、穂乃果さんの持っていた物」

歩夢「穂乃果さんが死んだ時に落とした可能性だってある筈です」

鞠莉「……」フッ

歩夢(……えっ?)

127: 2020/01/27(月) 21:51:44 ID:uq8dLs4I
鞠莉「何を言い出すかと思えば……そんな物、使わなくなったから現場に放置しただけでしょう」

鞠莉「そもそも、コロシアイが続いている時点で黒幕の高坂穂乃果は生きている……これは事実なのよ?」

歩夢「その話についても……不可解な点があるんです」

ダイヤ「不可解な点?」

しずく「というか、不可解まみれですけど……」

歩夢「とにかく一度、全員で整理しておきたい話が──」

鞠莉「くすんだ推理は邪魔なのよ」

反論!

鞠莉「歩夢。あなたが何を言いたいかは分かってる」

鞠莉「それでも……この場だけは譲れない。この事件を起こしたのは、高坂穂乃果よ!」

128: 2020/01/27(月) 21:52:16 ID:uq8dLs4I
【反論ショーダウン 開始!】
[|2つの着ぐるみ>
[|火事騒動>
[|落ちていたライター>
[|小原鞠莉襲撃事件>

鞠莉「コロシアイが続いているってことは……」

鞠莉「間違いなく黒幕は生きている……」

鞠莉「そして、黒幕を名乗った高坂穂乃果こそがこの事件を起こした」

鞠莉「それは揺るぎない事実よ……!」

──発展──
それだけじゃ、私には納得しきれません
    何か根拠はあるんですか……?

鞠莉「全員を襲って多目的室送り。そのあと【火事を仕組んだ】」

鞠莉「こんな大掛かりな犯行を【1人で行なえた】のは穂乃果しかいないわ」

鞠莉「だって、私たちはあの部屋で眠らされていたのよ?」

歩夢(鞠莉さんの話には明らかな間違いがあるけど……分かって言ってる?)

歩夢(意図は分からないけど……だったら違う切り口。鞠莉さんが知らない事実で攻めるしかない!)

129: 2020/01/27(月) 21:52:55 ID:uq8dLs4I
[|2つの着ぐるみ>→【1人で行なえた】

歩夢「その言葉、斬らせてもらうよ!」

Break!

歩夢「……鞠莉さん。あなたの意図は、まだ私には分かりません」

歩夢「でも。今回の犯行は、少なくとも1人で行なえるものじゃないんですよ」

鞠莉「それは私が襲われた時の話をしているのかしら? だったら、あれはただのジョークだったと言ってあげるわ」

歩夢(……やっぱりそうだ。鞠莉さんは“何らかの意図”を持って、高坂穂乃果犯人説を強く推している)

歩夢(けれど、それじゃあ駄目なんだ)

歩夢「着ぐるみを着た誰かが、私たちを襲った。そこまでは鞠莉さんも知っていますよね」

鞠莉「ええ。うちっちーの着ぐるみが、せっせと犯行に──」

歩夢「今回の事件には、2種類の着ぐるみが使われているんです」

130: 2020/01/27(月) 21:53:31 ID:uq8dLs4I
鞠莉「……何ですって?」

歩夢「鞠莉さんは、しずくちゃんが着ぐるみに襲われている姿を目撃したと言ってましたね」

歩夢「その着ぐるみは、何色でした?」

鞠莉「だから、あれは」

ダイヤ「鞠莉さん、冗談を言っている場合ではありません」

鞠莉「……灰色よ」

しずく「はい。確かに、灰色でした」

歩夢「でも、私と花丸ちゃんを襲ったのは茶色の着ぐるみだったんです」

歩夢「そもそも。衣装倉庫に2種類の着ぐるみがあったことは、モノっちーが証言してくれている……」

歩夢「そうだよね、モノっちー」

モノっちー「へえ、その通りでごぜえますよ嬢ちゃん」

131: 2020/01/27(月) 21:54:06 ID:uq8dLs4I
しずく「しかも、2つの着ぐるみは衣装倉庫から消えていたんです」

ダイヤ「1つは、死体となって姿を現したわけですが……」

歩夢「こうなると、一概に穂乃果さんだけが犯人とは言えなくなりますよね、鞠莉さん?」

鞠莉「……」

花丸「でも、もう片方の着ぐるみはどこに消えたずら……?」

鞠莉「火事で燃えた、なんて言わないでしょうね?」

歩夢「え、っと……」

歩夢(助けを求めるように、周囲のみんなに視線を飛ばす)

歩夢(けれども……どうやら、捜査中にもう1つの着ぐるみを見つけた人は居なさそうだ)

132: 2020/01/27(月) 21:55:00 ID:uq8dLs4I
鞠莉「……時間の無駄ね。モノっちー、いい加減高坂穂乃果を連れて来なさい」

モノっちー「えぇ~、もう? 早すぎない?」

しずく「誰だったとしても、容疑者の1人が不明のままというのは歯痒いです」

しずく「当人に出て来てもらわないことには、議論も進め辛いですし」

ダイヤ「それに。容疑者が出てくれば、誰かさんの主張が本当かどうかもハッキリするでしょう」

モノっちー「……仕方ないネ。じゃあいいよ、登場してもらいましょっか」

モノっちー「容疑者様の、お成~り~!」

歩夢(モノっちーが合図を促すと、後ろのカーテンが開き)

歩夢(通路らしきスペースから、のっしのっしと歩いてきたのは……)

133: 2020/01/27(月) 21:55:36 ID:uq8dLs4I
歩夢「う、うちっちー!?」

ダイヤ「なっ……!?」

歩夢(私たちの前に姿を現したのは……茶色の着ぐるみ)

歩夢(モノっちーの言葉を借りるなら“2代目うちっちー”の着ぐるみだ)

???「どう、驚いた?」

花丸「その声って……」

鞠莉「やっぱり、生きていたのはあなたなのね……高坂穂乃果!」

うちっちー穂乃果(以下、穂乃果)「やあ。久しぶりだね」

134: 2020/01/27(月) 21:56:19 ID:uq8dLs4I
穂乃果「多分、みんな疑問だらけだよね。だからとりあえず、あの時みたいに順番に答えていこっか」

穂乃果「まず、私がどうして裏で待機していたのか。それはモノっちーに頼んだからなんだ。そうでしょ?」

モノっちー「ええまあ、裁判を盛り上げるためにと頼まれましてネ」

モノっちー「学級裁判が盛り上がるなら、エンターテイナーとして乗らない手はないでしょうよ」

ダイヤ「随分と贔屓するのですね」

穂乃果「そんなわけで、私は議論がいい感じに温まって来るまでずっと隠れていることにしたんだ」

穂乃果「次にみんなが気になっているのは、私の恰好だよね」

鞠莉「そうね。さっさと姿を見せたらどうなのかしら?」

135: 2020/01/27(月) 21:56:56 ID:uq8dLs4I
穂乃果「そう怒らないでよ。あなたみたいに〇気の強い人が居るから、これを着てるんだよ」

鞠莉「……はぁ?」

穂乃果「私が外の世界の秘密を喋った時、鞠莉ちゃん、ハンマーで殴りかかって来ようとしたでしょ?」

穂乃果「まさか裁判中に〇しに来るなんて考えたくないけど……一応、この下にはヘルメットも被ってたりするんだよね」

穂乃果「というわけで、私がこの恰好なのはただの自己防衛だよ。納得してもらえた?」

しずく「……本当に、穂乃果さんなんですか?」

穂乃果「私は正真正銘、《超高校級の絶望》高坂穂乃果だよ?」

しずく「いえ。顔を出さない限りは、別の人物の可能性だって考えられます」

穂乃果「それって、声真似でもしてるってこと? そんなの出来る人なんて……いや、居たか」

穂乃果「そうだよね、歩夢ちゃん?」

【怪しい人物を指名しろ!】

136: 2020/01/27(月) 21:57:39 ID:uq8dLs4I
→【天王寺璃奈】

歩夢「璃奈ちゃんのことだよね。あなたが言いたいのって」

穂乃果「そうだよ~。確かに私が璃奈ちゃんだったら、高坂穂乃果の声を真似することだって可能だよね」

穂乃果「けどその場合、現場にあった2つの死体って……穂乃果と梨子ちゃん。その2人になるんだよ」

花丸「璃奈ちゃんって……どこかに監禁されてたんだよね?」

ダイヤ「仮に、監禁されてる最中に何らかのきっかけで穂乃果さんを〇してしまったとしても……梨子さんを〇す理由がありませんわ」

しずく「そう……ですよね。やっぱり、あの着ぐるみが璃奈さんというのは少し無理がありますよね」

花丸「じゃあ、やっぱりあの中身は穂乃果さんで、この事件の犯人も……」

ダイヤ「こうなってしまえば、それが自然ですわね。鞠莉さんも先程からそう仰っていましたし」

137: 2020/01/27(月) 21:58:22 ID:uq8dLs4I
鞠莉「……」

ダイヤ「……鞠莉さん?」

鞠莉「……ええ。そうね」

歩夢(……? 何だろう、今の鞠莉さんの間は)

歩夢(あれ程、穂乃果さんを疑っていた割に……何かが変だ)

穂乃果「じゃあみんな、私に投票するってことでいいのかな?」

穂乃果「無理もないよね。璃奈ちゃんを監禁した上に、この着ぐるみがみんなを気絶させてまわったりしたんだからさ」

花丸「この場合……どのボタンを押せばいいずら?」

モノっちー「ああ、彼女に投票する場合は、高海さんのボタンを押してくれればOKだよ」

歩夢「待って! 投票はまだ早いよ!」

138: 2020/01/27(月) 21:59:03 ID:uq8dLs4I
しずく「何か、不都合がありましたか?」

歩夢「容疑者が現れて、すぐに投票を促す。本当に、それで終わりにしていいのかな?」

花丸「でも、穂乃果さんも反論して来ないし……」

歩夢「だって、穂乃果さんは裁判を盛り上げるためと言って、わざわざ隠れてたんだ」

歩夢「それなのにこの展開は……いくらなんでも、盛り上がりとは程遠いよね?」

モノっちー「そうなっちゃったら、ボクとの約束と食い違っちゃうよネ」

しずく「ですけど、穂乃果さんは自分から犯人だって認めているんですよ?」

歩夢「だとしても……何か、おかしいんだ」

歩夢「彼女には、何か企みがあるのかも知れない。このまま投票するのは、彼女の手のひらの上で踊らされている気がするんだ」

鞠莉「企みって……歩夢、あなたは“私たちの中に犯人がいる”と言いたいの?」

歩夢「そ、そこまで言ってるわけじゃ……でも──」

139: 2020/01/27(月) 21:59:44 ID:uq8dLs4I
穂乃果「あはは、歩夢ちゃんは疑り深いね」

穂乃果「でもそうだよ。実は私、この事件の犯人じゃないんだ」

花丸「さっきと言ってることが真逆ずら」

しずく「犯人じゃないと言われても……その着ぐるみを使っている以上、怪しさ満点です!」

穂乃果「怪しいだけじゃ、私を犯人だとは言い切れないよね」

歩夢「……とにかく。穂乃果さんが来たせいで言いそびれちゃったけど、これを機にハッキリさせておくべきことがあるんだ」

ダイヤ「何を明らかにするのです?」

歩夢「みんなの身に降りかかった襲撃事件。それを、一度整理しておきたいんだよ」

歩夢「そうすることで、何か新しく見えて来ることもある筈だから」

140: 2020/01/27(月) 22:00:31 ID:uq8dLs4I
鞠莉「……そうね」

ダイヤ「それでは、時系列から整理していきましょうか」

しずく「じ、時系列って言われても……」

穂乃果「誰から順番に襲われたのかってことでしょ~。そんなの分かるの?」

歩夢「分かるよ。と言っても、まだ部分的だけど……」

穂乃果「へぇ、そうなんだ」

歩夢「梨子ちゃんと、最初から行方が分からない璃奈ちゃんについては一旦保留することになるけど……」

歩夢「その2人を除けば、一番最後に襲われたのはダイヤさんになるんだ」

ダイヤ「私が?」

歩夢(ダイヤさんが一番最後になる理由。その指標になるのは……)

【時計】
【チャイム】
【気温】

正しい選択肢を選べ!

141: 2020/01/27(月) 22:01:02 ID:uq8dLs4I
→【チャイム】

歩夢「今ここに居る私、しずくちゃん、ダイヤさん、鞠莉さん、花丸ちゃん」

歩夢「その中で、ダイヤさんの襲撃だけが、夜時間のチャイムより後に起きているからなんだ」

ダイヤ「確かに、チャイムは既に鳴った後でしたわね。梨子さんを追っている最中、背後から」

しずく「梨子さんを見たんですか!?」

ダイヤ「ええ。夜中に校舎へ向かう姿が見えたので」

花丸「となると、梨子ちゃんはダイヤさんの後に……?」

穂乃果「そうかもね~」

鞠莉「あなたは余計な口を挟まないで」

ダイヤ「とにかく、この調子で襲撃事件の順番を明らかにして行きましょう」

142: 2020/01/27(月) 22:01:39 ID:uq8dLs4I
【ノンストップ議論 開始!】
[|上原歩夢襲撃事件>
[|桜坂しずく襲撃事件>
[|国木田花丸襲撃事件>
[|小原鞠莉襲撃事件>

花丸「残りの私たちがどういう順番で襲われたのか……」

穂乃果「それを明らかにしてみよーう!」

しずく「全員【夜時間のチャイムよりも前】に襲われたんですよね」

ダイヤ「残っているのは鞠莉さん、花丸さん、歩夢さん、しずくさんの4人ですが……」

鞠莉「この中に《時系列が分かる人たち》が居た筈よ」

しずく「そうなんですか?」

花丸「でも【時計なんて見てない】し……」

花丸「正確な時間は分からない筈だよね?」

歩夢(4人の中で、時系列がハッキリしているのは……)

143: 2020/01/27(月) 22:02:16 ID:uq8dLs4I
[|小原鞠莉襲撃事件>→《時系列が分かる人たち》

歩夢「それに賛成だよ!」

Break!

歩夢「鞠莉さんが襲われた時、しずくちゃんが連れ去られるところを見たって言ってましたよね?」

しずく「私が?」

鞠莉「そうよ。私が襲われた時点で、既にしずくは気絶させられた後だった」

鞠莉「つまり、少なくともしずく→私は、そう時間が掛からないうちに起きた襲撃ね」

穂乃果「あれれ? さっき鞠莉ちゃん、それは冗談だって」

鞠莉「冗談を言ってる場合じゃなくなった。それだけよ」

144: 2020/01/27(月) 22:02:52 ID:uq8dLs4I
ダイヤ「となると、残りは歩夢さんと花丸さんですが……」

歩夢「多分……私たち2人には、目安がないんだ」

花丸「……」

歩夢「その代わり……さっきの、鞠莉さんの話の続きにもなるんだけど」

歩夢「この襲撃事件に、穂乃果さん以外の人物が関わっている、明確な根拠があるんだ」

しずく「えぇっ!?」

歩夢「鞠莉さんなら……それを分かっている筈ですよ」

鞠莉「あなたも随分と食えないことをするのね。まあいいけど」

鞠莉「それで、どうなのかしら。花丸?」

145: 2020/01/27(月) 22:03:35 ID:uq8dLs4I
花丸「……」

花丸「ずらっ!?」

鞠莉「とぼけないで。あなた、今回の襲撃事件に関わってるでしょ」

花丸「そ、その質問は歩夢ちゃんにもされたけど……マルは知らないずら!」

しずく「歩夢さん、何か知っているんですか?」

歩夢「……うん。私は昨日、夜時間のチャイムより前に、花丸ちゃんに呼び出されたんだ」

歩夢「どうしても気になることがあるから、って、情報処理室の前までね」

歩夢「そこで……襲われたんだ。穂乃果さんが着ている、その着ぐるみに」

花丸「だ、だったら、オラが直接手を出したわけじゃ──」

146: 2020/01/27(月) 22:04:11 ID:uq8dLs4I
鞠莉「あら? 私を襲ったのは、あなたの筈だけど?」

花丸「……っ」

鞠莉「あの時、私の部屋に来たのはあなただった」

鞠莉「そして、襲われて気絶したしずくを連れ去ろうとするグレーのうちっちーを見掛けた」

鞠莉「それを止めに入ろうとしたら……“後ろから電撃を受けた”。あの時すぐ近くに居た花丸、あなたにしか不可能よ?」

花丸「そ、そんなこと言われても本当に知らないんだって!」

ダイヤ「知らないと言われても、現に2人がそう証言して居ますし……」

しずく「まさか、花丸さんがもう1人居たなんてことは──あっ!?」

しずく「もしかして……璃奈さんが?」

147: 2020/01/27(月) 22:05:00 ID:uq8dLs4I
歩夢「……そうなんだよ。どうしても、この可能性に辿り着いてしまうんだ」

歩夢「“花丸ちゃんに変装した璃奈ちゃんが、この事件に関わっている”」

鞠莉「もし目の前の花丸が本物で、本当に何も知らないのだとしたら。それしかないわね」

ダイヤ「ですが……どうして、璃奈さんがこんなことを?」

鞠莉「脅されてやったか……或いは“高坂穂乃果の仲間だったから”でしょうね」

歩夢「えっ……!?」

鞠莉「果南のメモにあったでしょう。『コウサカホノカと、その仲間に気を付けて』って」

鞠莉「そう。最初から穂乃果は、連れ去るフリをして仲間である璃奈を回収した」

歩夢(璃奈ちゃんが、穂乃果さんの仲間……!?)

歩夢(だったら……だったら、食堂で話したことは、何だったの……?)

148: 2020/01/27(月) 22:05:49 ID:uq8dLs4I
穂乃果「あはは、面白い話だね」

穂乃果「だとしたら……その仲間が死んじゃったことにならない?」

鞠莉「自分で言ったでしょう。絶望的な思考は、私たちには受け入れられ難いものだって」

穂乃果「あー、言ったねそういえば」

鞠莉「ただ面白いからか、用済みになったから捨てたのか……今となっては些細なこと」

鞠莉「とにかく──」

穂乃果「じゃあ受け入れられないついでに、1つ面白い話をしてあげるよ」

穂乃果「そこに居る花丸ちゃんは、花丸ちゃんじゃないよ」

鞠莉「……は?」

花丸「え……っ!?」

149: 2020/01/27(月) 22:06:42 ID:uq8dLs4I
穂乃果「まさか議論がこんな方向に向かうなんて思ってなくてさ。だから、私としては不本意なんだけど……」

穂乃果「ごめんね、バラしちゃった☆」

ダイヤ「ちょっと待ってください! その話が本当なら、今までの前提が覆りますわよ!?」

歩夢「死んだのは梨子ちゃんと璃奈ちゃんじゃなくて、梨子ちゃんと花丸ちゃんってことになって……」

しずく「ここに居る花丸さんは……」

花丸「違うよ! オラは正真正銘、《超高校級の作家》国木田花丸ずら!」

しずく「変装なら、剥がせば分かるのでしょうか……?」

花丸「やめるずら! 痛いことしないで!」

150: 2020/01/27(月) 22:07:15 ID:uq8dLs4I
歩夢「本当に……璃奈ちゃんなの?」

花丸「だから、違うってば!」

歩夢「……証拠はある?」

花丸「証拠、って……だったら、オラが璃奈ちゃんだっていう証拠を出すずら!」

花丸「あんな着ぐるみの言うことを、みんなは真に受けるの!?」

歩夢「……っ」

穂乃果「本人の記憶に聞いてみればいいんじゃないかな」

ダイヤ「……?」

穂乃果「例えば、花丸ちゃんは知ってるけど璃奈ちゃんが知らないことを訊いてみたり
……なんてね」

151: 2020/01/27(月) 22:07:52 ID:uq8dLs4I
歩夢(今のは、ヒントのつもりなのだろうか)

歩夢(穂乃果さんが何をしたいのか、まだ分からない)

歩夢(もし、この花丸ちゃんが璃奈ちゃんの変装なら……)

歩夢(どうしてこんなことをしたのかも、皆目見当がつかない)

歩夢(それでも。もしそれが事実なら、暴かないといけない)

歩夢(花丸ちゃんが知っていて、璃奈ちゃんが知らないこと……)

歩夢(この質問をぶつけて──!)

152: 2020/01/27(月) 22:08:31 ID:uq8dLs4I
【理論武装 開始!】

花丸「オラは正真正銘、本物の国木田花丸だって!」

花丸「それが真実なんだって、言ってるのに……」

花丸「歩夢ちゃんは、オラの言うことが信じられないの!?」

花丸「穂乃果さんの言うことを信じるの!?」

花丸「こんなの、校正の必要があるずら!」

花丸「おかしいよ、歩夢ちゃん……」

花丸「お願いだから、信じてよ……」

花丸「オラは……私は……」


花丸?「【私が天王寺璃奈だっていう証拠はないよ!】」

      △曲
○で歌った      □夕食会
      ×しずくが

153: 2020/01/27(月) 22:09:01 ID:uq8dLs4I
→×□○△ [|しずくが夕食会で歌った曲>

歩夢「これで……終わりだよ!」

Break!!!

歩夢「あなたが花丸ちゃんなら……夕食会の出し物で、しずくちゃんが歌った曲、分かるよね?」

花丸?「……!?」

しずく「そういえば……あの時璃奈さんは、曜さんの変装で保健室に居て……!」

花丸?「あ、えっと……ど忘れ、しちゃったかも……」

しずく「そんな筈ありません。『夜の女王のアリア』を歌い終えたあと、花丸さんは得意げに“曲の正式名称”を語っていました」

154: 2020/01/27(月) 22:09:43 ID:uq8dLs4I
花丸『確か、夜の女王のアリアって、魔笛に出てくる2曲のことを示していて……』

花丸『1曲目は“ああ、恐れおののかなくてもよいのです、わが子よ!”」』

モノっちー『そして2曲目は“復讐の炎は地獄のように我が心に燃え”。まあ実際は、こっちの方が有名だから、“夜の女王のアリア”で十分通じるんだけどネ』

しずく『……ご存知でしたか』


歩夢「どうなの!? あなたが花丸ちゃんなら、正しい曲名も分かるよね!?」

花丸?「え、あ、その……うぅ……」

穂乃果「もういいよー璃奈ちゃん。お疲れ様」

歩夢(穂乃果さんはそう言うと、花丸ちゃんの姿をした彼女に向って何かを放り投げ……)

155: 2020/01/27(月) 22:10:17 ID:uq8dLs4I
璃奈「……(>_<。)」

歩夢(彼女はスケッチブックを手に……何日かぶりに、私たちの前に姿を現した)

ダイヤ「璃奈さん……!」

鞠莉「そんな、馬鹿な……!?」

穂乃果「鞠莉ちゃんの推測は面白かったけど……ちょっと考えすぎだったね~」

穂乃果「彼女が今回の計画に協力した理由、正解は“私が脅したから”。それだけだよ」

穂乃果「命が惜しければ……ってやつだね」

しずく「そんなことのために、花丸さんと梨子さんを……」

ダイヤ「その上、わざわざ璃奈さんを花丸さんとして行動させたということは……」

鞠莉「……投票結果を間違える可能性を、そこに用意した?」

156: 2020/01/27(月) 22:10:59 ID:uq8dLs4I
鞠莉「思い返してみれば、私や歩夢の襲撃は怪しい人物がハッキリしすぎていた」

鞠莉「もしその話をキッカケにして、花丸に投票していたら……」

穂乃果「本物の花丸ちゃんは既に死んでいるからね。み~んな不正解」

歩夢「ちょっと待ってよ! それじゃあまるで、この事件の犯人が璃奈ちゃんだって……」

璃奈「私じゃ……ない(>_<。)」

歩夢「……え?」

璃奈「私は犯人じゃない! 火事が起きた時、みんなと一緒に居たんだよ(>_<。)」

しずく「そう言えば、あの火事の謎がまだでしたね……」

157: 2020/01/27(月) 22:11:52 ID:uq8dLs4I
ダイヤ「出火の原因は第2多目的室に落ちていたライターです。恐らく、事前にガソリンか何かを撒いていたのでしょう」

ダイヤ「そうでなければ、あの火の回りようの説明がつきませんわ」

しずく「だとしたら、犯人は火事が起きた時にライターで火をつけたことになります!」

ダイヤ「つまり、第1多目的室に居た我々には火災を起こすことは不可能……」

穂乃果「だったら火事を起こせたのって……もしかして私だけ?」

穂乃果「……と見せかけて、やっぱり私以外にも可能なんだよね~♪」

璃奈「……(>_<。)」

歩夢(火事を起こすことが、穂乃果さん以外にも可能?)

歩夢(だとしたら……)

158: 2020/01/27(月) 22:12:24 ID:uq8dLs4I
【ノンストップ議論 開始!】
[|火事騒動>
[|溶ける糸>
[|落ちていたライター>
[|落ちていた弓>

穂乃果「あの火事は、私以外にも起こせるんだよ」

ダイヤ「出火の直接的な原因は【ライターだった】筈です」

鞠莉「私たちは全員、第1多目的室に押し込められていた」

鞠莉「だから、ライターに直接触れることは出来ない……」

しずく「そうなると、触れる機会があるのは《穂乃果さん》か《被害者のどちらか》だけですし……」

しずく「私たちに【火をつけるのは不可能】ですよね?」

穂乃果「ところであのライターって、立てたまま置くことが可能なんだよね~」

璃奈「……(>_<。)」

歩夢(火事が起きた理由……可能性として考えられるのは……)

159: 2020/01/27(月) 22:13:38 ID:uq8dLs4I
[|溶ける糸>→【火をつけるのは不可能】

歩夢「それは違うよ!」

Break!

歩夢「もしかしたら……同時に行われたのかも知れない」

ダイヤ「同時に、とは?」

歩夢「あの火事って、私たちが第1目的室を出ようとしたタイミングで起きたことだったよね」

しずく「そうですけど……それが何か?」

歩夢「多分その扉に、仕掛けが施されていたんだ。第2多目的室に置かれている、ライターと連動した仕掛けがね」

歩夢「実際、第1多目的室のドアノブには、糸が結ばれていたんだよ。スプリンクラーで溶ける、水溶性の糸が!」

160: 2020/01/27(月) 22:14:26 ID:uq8dLs4I
ダイヤ「す、水溶性の糸……!?」

鞠莉「その仕掛けを作った人は、スプリンクラーで糸が消えることまで想定内だったってところかしらね」

穂乃果「歩夢ちゃんの話を聞いてると、糸が残っちゃったみたいだけどね」

歩夢「それに、あのライターがあったのは、第2多目的室の扉のすぐ傍」




歩夢「こんな風にライターと繋がっていたら、どうかな」

しずく「なるほど……扉を開けた時に糸が引っ張られ、ライターが倒れることで火事になるわけですね!」

161: 2020/01/27(月) 22:14:59 ID:uq8dLs4I
歩夢「どうかな、穂乃果さん。あなたが言いたいのって、こういうことなんでしょ?」

穂乃果「正解だよ。これなら、私が現場から離れた場所に居ても火事は起きるよね」

ダイヤ「そうやって、死体の身元を判らなくさせた上で……今回の裁判に臨んだわけですか」

しずく「でも、これでおおよその謎は解けました。やっぱり、犯人は穂乃果さん──」

穂乃果「それはどうかな?」

しずく「……えっ?」

穂乃果「いくら謎が解けたって言ってもさ。私が犯人だってことに繋がる直接の証拠はないよね?」

ダイヤ「あなた、先ほどから何度も自分が犯人であるような振る舞いをしているではありませんこと?」

穂乃果「うん、そうだね。確かに、火事を仕組んだのは私だけど……」

162: 2020/01/27(月) 22:15:38 ID:uq8dLs4I
穂乃果「まさか……忘れちゃいないよね? 学級裁判のルール」

歩夢「忘れるって、どのルールのことを言ってるの?」

穂乃果「今度の事件ってさー、矢が刺さった死体があったよね?」

ダイヤ「捜査に携わっていないあなたが、どうしてそれを……」

鞠莉「その死体が、どうかしたのかしら」

穂乃果「矢で人を〇すのって、直接手で突き刺す方法と……もう1つあったよね」

鞠莉「弓で射ること……でしょう?」

穂乃果「うん。そもそも、弓矢って本来はそうやって使う物だからね」

しずく「穂乃果さんは、何が言いたいのでしょうか?」

璃奈「……(>_<。)」

歩夢(穂乃果さんの“自分が犯人ではない”という主張と、一連の問いかけ)

歩夢(もしかして、これらが意味するものって……)

【コトダマ一覧より選択】

163: 2020/01/27(月) 22:16:37 ID:uq8dLs4I
→【落ちていた弓】

歩夢「第2多目的室の扉の近くに落ちていた弓……」

歩夢「もしかして、あれも仕掛けられた物だったの?」

穂乃果「だいせいか~い! 扉を開けることで動く仕掛けは、ライターだけじゃなかったんだ」

穂乃果「自動的に発射される矢も、私が用意した罠なんだよ」

しずく「……罠!?」

鞠莉「扉を開けた人が弓を作動させ、その先に居る人物を射ることになるトラップ」

鞠莉「つまり、扉を開けた人物こそが、この事件のクロに仕立て上げられるもの……」

164: 2020/01/27(月) 22:17:30 ID:uq8dLs4I
ダイヤ「いえ、それは不自然です! 弓が落ちていたのは事実ですが、あの位置ではまともに弦を張れるかどうか……」

鞠莉「火事の中で、偶然床に落ちただけだとしたら……?」

ダイヤ「っ……だとしても、やっぱり不可解ですわ!」

ダイヤ「仮に、弦を張れるよう仕掛けを施していたとしても……その程度の仕掛けでは、矢が狙った位置に届くかどうか……」

歩夢「それは……違うんです、ダイヤさん」

歩夢「一連の仕掛けには、必ず狙った位置に矢を飛ばせる工夫があったんです」

歩夢(そうだ。鞠莉さんと一緒に、確認している筈の手掛かり)

歩夢(穂乃果さんが仕組んだ、悪意の正体……)

【コトダマ一覧より選択】

165: 2020/01/27(月) 22:18:01 ID:uq8dLs4I
→【鞠莉の検死報告】

歩夢「死体に刺さった矢には、細い穴が開いていた……」

歩夢「そこに、ライターの仕掛けにも使われた糸が組み合わさると……」

鞠莉「ガイド線の役割を果たして、矢は狙った場所へ飛んで行く」

鞠莉「これが……高坂穂乃果の仕掛けたトラップの全貌よ」

ダイヤ「そん、な……」

璃奈「……(>_<。)」

穂乃果「さてと。ここまで解いた頭のいいみんななら、もうクロが誰か分かってるんじゃないかな?」

歩夢(……その人物は、第1多目的室の扉を開けて、ライターと弓の仕掛けを作動させた)

歩夢(私が感じていた“あの人”への違和感の正体も、ようやく分かった気がする)

歩夢(きっと、事件の真相に気づいていたんだ。そう、その人は──)

【怪しい人物を指名しろ!】

166: 2020/01/27(月) 22:18:34 ID:uq8dLs4I
→【小原鞠莉】

歩夢「鞠莉さん……なんですよね」

鞠莉「……」


鞠莉『気になることは多いけど、まずはここを出──』


歩夢「あの時、ああ言ってみんなを第1多目的室から出そうと、扉を開けた……」

鞠莉「……そうよ」

ダイヤ「っ……」

穂乃果「ああ、鞠莉ちゃんなんだ、犯人」

167: 2020/01/27(月) 22:19:42 ID:uq8dLs4I
鞠莉「……」

鞠莉「……」ハァ

鞠莉「出来ることなら……高坂穂乃果、あなたを道連れにしてやりたかったわ」

しずく「道連れ……?」

歩夢「もしかして、裁判が始まってすぐ、穂乃果さんが犯人だって決めつけてたのも……」

鞠莉「そうよ。わざと投票を間違えさせて、あなたたち全員ごと、穂乃果を葬るつもりだった」

鞠莉「その後で、私もあなたたちの後を追うつもりだったわ」

ダイヤ「そんな……っ!?」

穂乃果「すっごい、そんなこと考えてたんだ」

鞠莉「でも……もう、それもオシマイよ。結局、全て暴かれちゃったわ」

168: 2020/01/27(月) 22:20:32 ID:uq8dLs4I
歩夢「……まだ、終わりじゃないかも知れない」

鞠莉「……?」

歩夢「まだ、希望が残っているかも知れないんだ」

穂乃果「歩夢ちゃーん、事件はもう終わったんだよ」

歩夢「穂乃果さんじゃなくて、あなたに訊いてるの……璃奈ちゃん」

璃奈「……えっ(?□!)」

歩夢「璃奈ちゃんは、ここでこの事件を終わりにしていいの?」

璃奈「いや……だって、謎は全部解かれたんじゃ(?□!)」

169: 2020/01/27(月) 22:21:17 ID:uq8dLs4I
歩夢「まだ、璃奈ちゃんだけが知っていることがあるかも知れない」

歩夢「それに、まだ全ての謎が解けきったわけじゃないんだ」

歩夢「例え、鞠莉さんが犯人だって結果が変わらなかったとしても……」

歩夢「少しでも希望がある限り、諦めるわけにいかないんだよ!」

璃奈「……(・v・)」


せつ菜『私は居なくなりますけど……私の想いは、あなたに託します』

せつ菜『だから、歩夢。あなたは決して、諦めないでください』


歩夢(せつ菜ちゃんに言われたことを行動に移す……今が、その時かも知れない)

歩夢(彼女も一度、かすみちゃんの仕組んだ罠で犯人にされかけたことがあった)

歩夢(あの時だって、諦めずに議論を進めた先に別の真相があったんだ)

170: 2020/01/27(月) 22:21:57 ID:uq8dLs4I
歩夢「まだ……投票には、行かせないよ」

穂乃果「……」

穂乃果「……」フフッ

穂乃果「勝負だね、歩夢ちゃん。いいよ、思いっきり楽しもうよ」

穂乃果「この学級裁判を──!」

171: 2020/01/27(月) 22:22:32 ID:uq8dLs4I

 学 級 裁 判 
   中  断

172: 2020/01/27(月) 22:23:26 ID:uq8dLs4I
~モノっちー劇場 番外編~

せつ菜「そして、いつものようにモノっちー劇場番外編が始まりました」

せつ菜「ですが、色んな事情により、すぐに幕を下ろすのでした」

せつ菜「あ、そういえば皆さんご存知でしたか?」

せつ菜「このモノっちー劇場番外編も、今回で最終回なんだそうですよ?」

179: 2020/02/28(金) 21:00:55 ID:9utAojC.

 学 級 裁 判
   再  開

180: 2020/02/28(金) 21:01:51 ID:9utAojC.
穂乃果「それで……投票には行かせないって言ったけど」

穂乃果「次に何を話すかは、決まった?」

歩夢「……」

璃奈「……(>_<。)」

鞠莉「無駄よ、歩夢」

ダイヤ「鞠莉さん……」

鞠莉「璃奈と花丸の入れ替わりという保険を用意した上で、高坂穂乃果は弓矢と糸のトラップを仕組んだ」

鞠莉「間違いなく、私がこの事件のクロなのよ」

鞠莉「私が〇し……」

181: 2020/02/28(金) 21:02:29 ID:9utAojC.
歩夢「その事なんだけど……」

鞠莉「……?」

歩夢「確かに穂乃果さんは、幾つもの罠を準備した」

歩夢「それを作動させてしまった鞠莉さんを、この事件のクロとして糾弾するのは簡単なこと」

歩夢「でも……今まで出てきた話だけでは、ハッキリしないことが2つあるんだよ」

しずく「ハッキリしないことが、2つ?」

歩夢(これは、あくまで可能性の話。徒労に終わるだけかも知れない)

歩夢(けれども……まだ、何かが残されている気がするんだ)

歩夢(璃奈ちゃんにも色々訊いておきたいけど、その前にハッキリさせておかないといけないこと)

歩夢(まず1つ目は……)

【閃きアナグラム 開始!】
い し ぼ く の が じ ひ ゃ う し こ(ダミー無)

182: 2020/02/28(金) 21:03:01 ID:9utAojC.
→【ひがいしゃのしぼうじこく(被害者の死亡時刻)】

歩夢「そもそも……鞠莉さんが作動させたのって、本当に人を〇す罠だったのかな?」

璃奈「……(・v・)」

穂乃果「どういう意味かな、歩夢ちゃん。諦めないって気持ちが先行しすぎておかしくなっちゃった?」

鞠莉「ドアを開けた直後に火事は起きたのよ? トラップが仕掛けられていたのは確かだわ」

歩夢「……被害者を矢で〇すだけなら、何も、火事と同時じゃなくってもいい」

歩夢「私たちが多目的室を出るより前から“既に〇されていた可能性”だってあるよね」

しずく「部屋を出るより前、って……」

ダイヤ「まさか、あの時点で被害者は亡くなっていたと……!?」

183: 2020/02/28(金) 21:03:47 ID:9utAojC.
歩夢「今回のモノっちーファイルは、ほとんど情報が記載されていなかったよね?」

歩夢「……“被害者の死んだ時刻”すら」

穂乃果「ふーん……それが歩夢ちゃんの言う、ハッキリしないことなんだ」

穂乃果「確か、2つあるって言ってたけど……」

穂乃果「もう1つは、何なのかな?」

歩夢「穂乃果さんの目的が、鞠莉さん……いや、誰かをクロにすることだったとしたら」

歩夢「どうしても説明がつかないこと」

歩夢「それは……」

【水溶性の糸】
【死体の数】
【着ぐるみ】

正しい選択肢を選べ!

184: 2020/02/28(金) 21:04:32 ID:9utAojC.
→【死体の数】

歩夢「あの現場に、2つも死体があったこと……」

歩夢「それこそが、クロ=鞠莉さんで終わらせるわけに行かない一番の決め手だよ」

しずく「……? それのどこがおかしいんでしょうか?」

歩夢「誰かをクロにしたいだけなら、2人も〇す必要はない」

歩夢「火事が死因ならともかく、今回使われたのは矢を使ったトリックだからね」

ダイヤ「確かに……穂乃果さんにとっては、矢が刺さった死体が転がり出ればいいだけの話です」

ダイヤ「もう片方の死体は、傷こそあったようですが、矢はどこにも刺さっていませんでしたからね」

185: 2020/02/28(金) 21:05:24 ID:9utAojC.
鞠莉「っ……じゃあ、歩夢が言いたいことはこうね?」

鞠莉「被害者が死んだタイミングと、トラップとは関係ない死体があった理由」

鞠莉「それらがハッキリしない限りは、私がクロだと断定は出来ない……」

しずく「ということは、鞠莉さんがクロじゃないとしたら……」

しずく「前もって被害者を矢で〇せる人なんて、1人しか居ません……よね?」

歩夢「うん。それが出来たのは、第2多目的室に居なかったただ1人……」

歩夢「穂乃果さん、あなただよ」

穂乃果「……」

穂乃果「お見事! って言えばいいのかな。確かに、私が真犯人って可能性も出てきたね」

186: 2020/02/28(金) 21:06:06 ID:9utAojC.
ダイヤ「つまり、鞠莉さんが犯人だと力説し、彼女への投票を促したあなたの行動は……」

歩夢「私たちを間違った結末に誘導する、本当の罠」

歩夢「あなたの狙いは、投票を間違えさせて、私たちを全滅させることだった……」

穂乃果「うーん……少し、話が飛躍しちゃってない?」

歩夢(……えっ?)

穂乃果「確かに、私にも弓矢を使うチャンスがあった。あったけどさ……」

穂乃果「罠で死んだのかそれより前に〇されていたかの判断はつかない筈だよ?」

穂乃果「……絶対にね」

187: 2020/02/28(金) 21:06:37 ID:9utAojC.
しずく「そんな筈ありません! きっとその謎も解ける筈です!」

しずく「だって、脅されていたとはいえ、璃奈さんが知って──」

穂乃果「ああ。ちなみに璃奈ちゃんに訊いても無駄だよ」

穂乃果「彼女には計画の途中で気絶して貰ったからさ」

穂乃果「真相を知っている人になっちゃう前に、国木田花丸として……ね」

璃奈「……(>_<。)」

歩夢「……」

歩夢(矢が放たれたのは火事より前か、火事と同時か)

歩夢(その判断がつくかどうかは……)

【判断はつく】
【判断はつかない】

正しい選択肢を選べ!

188: 2020/02/28(金) 21:07:17 ID:9utAojC.
→【判断はつかない】

歩夢「……悔しいけど、穂乃果さんの言う通り」

歩夢「璃奈ちゃんも知らないのなら……確かめる有力な手掛かりは、どこにもない」

しずく「そんな……!?」

穂乃果「肝心の死体は焼けちゃって、マトモに確かめようがないもんね~」

穂乃果「医学に詳しい彼方ちゃんや、知識があった花丸ちゃん」

穂乃果「今まで検死して来た2人は、もう居ないんだもの」

ダイヤ「まさか……それが、あなたが花丸さんを〇した狙いですか!」

穂乃果「そうだよ。火事を起こしたのは、死んだ時間を分からせないため」

穂乃果「花丸ちゃんを〇したのは、それでも解かれる可能性を潰すため」

189: 2020/02/28(金) 21:08:09 ID:9utAojC.
穂乃果「だから、ここから先は推理なんて出来ないんだ」

穂乃果「この先の真相は、誰にも分かりはしないんだよ」

穂乃果「……“当事者の私以外には”ね」

歩夢「も、もしかして……それが、穂乃果さんの用意した、本当の、罠だったの……!?」

穂乃果「声が震えちゃってるよ、歩夢ちゃん。さっきまでの意気込みはどこに行ったの?」

しずく「本当の罠、って……」

鞠莉「どうやら今回の事件のメイントリックは……被害者不明でも、人物入れ替わりでも、まして自動〇人トラップでもなかったようね」

穂乃果「あはは、今頃気づいた? そうなんだよ、この事件の本当のトリックは……」

穂乃果「“犯人不明”ってことなんだよ!」

190: 2020/02/28(金) 21:08:50 ID:9utAojC.
歩夢「犯人、不明……」

歩夢(改めて、その言葉を噛み締める)

歩夢「誰にも、分からない犯行……。全てを知っているのは、穂乃果さんだけ……」

歩夢(呪詛のように、口から言葉がこぼれ出る)

歩夢(一縷の希望にすがって、それを手繰り寄せた私たちは。とんでもないものを叩きつけられたのだ)

歩夢(あまりにも巨大な“絶望”を……)

穂乃果「……」フフッ

191: 2020/02/28(金) 21:09:24 ID:9utAojC.
穂乃果「推理出来る部分は、ここでおしまい。ここから先は、勘で犯人を当てるしかないんだよ」

歩夢「勘、で……?」

しずく「そんな、無茶苦茶すぎます!」

穂乃果「でも、それがルールなんだよ。学級裁判における、絶対的なルールなんだよ」

穂乃果「というわけで、クロは私か、それとも鞠莉ちゃんか……」

穂乃果「どちらか選ばなかった人も、オシオキの対象になるからね」

穂乃果「さあ。クロとシロの運命を分ける、ワックワクでドッキドキの投票ターーーイム!」

192: 2020/02/28(金) 21:09:56 ID:9utAojC.

▶【高坂穂乃果】
▶【小原鞠莉】

投票するのはどっち?

193: 2020/02/28(金) 21:10:36 ID:9utAojC.

   VOTE

高坂 小原 ???

194: 2020/02/28(金) 21:11:18 ID:9utAojC.
モノっちー「ちょっと! ボクは投票タイムだなんて一言も言ってないよ!?」

歩夢(パニックだらけの脳内に突如響いたのは……モノっちーの大声だった)

穂乃果「え~、別にいいでしょ?」

モノっちー「よくない、よくないネえ」

穂乃果「でも、モノっちーは困る理由がないよね? みんなはともかく、あなたは犯人を知ってるんだし」

穂乃果「今までもそうだったでしょ」

モノっちー「……えっ?」

195: 2020/02/28(金) 21:11:53 ID:9utAojC.
モノっちー「……」

モノっちー「そ、そう……だネ」

ダイヤ「……? 何ですか、今の反応は」

モノっちー「いや、は、犯人でしょ? 知って、るけど……」

鞠莉「……どうして、あなたが冷や汗を垂れ流すのかしら」

しずく「というか、ロボットが汗を垂らすってあるんですね」

璃奈「もしかして……“モノっちーも犯人が分からない”の(・v・)?」

モノっちー「い、いやいやいやいや、な、ななななななな何が分からないって?」

196: 2020/02/28(金) 21:12:24 ID:9utAojC.
歩夢(なんだろう……この、モノっちーの反応)

歩夢(璃奈ちゃんの言うように“モノっちーすら犯人を把握していない”のだとしたら、この反応も頷けるけど……)

歩夢(そんなこと、あり得るのかな……?)

歩夢「いや……モノっちーって、今まで監視カメラで全ての犯行を把握していた、よね」

歩夢「前回の事件だって、事の一部始終を見せつけてきたわけだし」

モノっちー「そ、そそそその通りだよ!」

歩夢「それが、今回に限って、犯人を把握していないなんて──」

歩夢「──今回に限って?」

歩夢「……!」ハッ

197: 2020/02/28(金) 21:12:57 ID:9utAojC.
歩夢(もしそうだとしたら、前提が大きく覆ることになるけど……)

歩夢「ねえ、みんな。ちょっと聞いて欲しいんだ」

鞠莉「何かしら?」

歩夢「穂乃果さんの真の狙いは……私たちに分からない犯行を起こすことじゃなかったのかも知れない」

歩夢「“モノっちーにも分からない犯行を起こすこと”だったのかも知れないんだよ!」

ダイヤ「モノっちーにも、分からない犯行?」

穂乃果「……」

しずく「一瞬、モノっちーの反応でそれを考えましたけど……歩夢さん、やっぱりそれは考えられませんよ」

歩夢「どうしてそう思うの?」

しずく「どうしてって……穂乃果さんは黒幕なんですよ? だったら、そんなことをする理由がないじゃないですか」

198: 2020/02/28(金) 21:13:37 ID:9utAojC.
歩夢「だったら穂乃果さんは……“黒幕じゃなかった”のかも知れない」

しずく「えっ……!?」

歩夢「そもそも。黒幕だってことは、穂乃果さん自身がそう言い出しただけだった」

歩夢「それに関して、モノっちーは何も言ってないよね?」

璃奈「嘘だった、っていうの……(?□!)!?」

しずく「ですが……第2多目的室の窓から脱出しようとした時、穂乃果さんは外の世界の真実を話していたじゃないですか!」

鞠莉「せつ菜の本名の話だってそうね。歩夢、あなたの反応からして、中川菜々っていうのは……」

歩夢「それは……本当の話、だけど」

歩夢「でも、今なら分かるんだ。黒幕じゃなくても、それを知る機会があったってことを」

歩夢(そうだ。外の世界の秘密やせつ菜ちゃんの本名を知ることが出来たタイミングは……)

【黒澤ルビィの事件】
【近江彼方の事件】
【渡辺曜?と宮下愛の事件】
【松浦果南と中須かすみの事件】

正しい選択肢を選べ!

199: 2020/02/28(金) 21:14:29 ID:9utAojC.
→【松浦果南と中須かすみの事件】

歩夢「前回の事件で、彼女は捜査のために武器庫のゲームをやったんだよね」

歩夢「私の才能……私たちのプロフィールを知っていたことが、そこで追及されていた……」


千歌?『うん、私は武器庫に入れるよ。あのロシアンルーレットをクリアしたからね』

しずく『あっさり認めるんですね』

千歌?『隠すつもりはなかったよ。ただ、聞かれると面倒だなーって』


歩夢「だったら、そこにせつ菜ちゃんの本名が載っていても、何もおかしくはないよね?」

歩夢「それだけじゃない。モノっちーは、こうも言っていた筈だよ」


モノっちー『クリア特典は……“この学園の秘密に関する重大なヒント”や“オマエらの学生生活に関する重要な手掛かり”だよ!』

200: 2020/02/28(金) 21:15:13 ID:9utAojC.
歩夢「この学園の秘密に関する重大なヒント……これって“外の世界の秘密”と考えられるんじゃないかな」

ダイヤ「では、穂乃果さんは……武器庫で得た情報を元に、私たちに喋っただけで……」

鞠莉「実際は、コロシアイの黒幕とは何も関係がなかった……どうなの、モノっちー?」

モノっちー「いや、ボクに訊かれても困るんだけど……」

歩夢「答える義務がある筈だよ。今あなたは、1人の参加者によってコロシアイの根本そのものを揺るがされている」

歩夢「モノっちー自身にとっても、この展開は望んでないんじゃないかな?」

璃奈「どうなの。答えて(>_<。)!」

穂乃果「答えなくっていいよ。口出しするゲームマスターなんて、これを観る人は望んでないでしょ?」

201: 2020/02/28(金) 21:15:59 ID:9utAojC.

モノっちー「……」ハァ

モノっちー「口出ししまくってるのは、オマエの方なんだけどネ」

202: 2020/02/28(金) 21:16:58 ID:9utAojC.
歩夢「……!」

モノっちー「面白い展開になりそうだったし、ここまでずーっと放置してたけどネ」

モノっちー「オマエの頼みに便乗して、わざわざ朝と夜の定時放送も止めてやったりもしたけど」

モノっちー「やっぱり、記憶を取り戻してたんだネ」

ダイヤ「な、何の話をしているのですか……?」

穂乃果「……」

モノっちー「ああ、今のは大きめの独り言だよ。だから、今から話す方が本題」

モノっちー「“このコロシアイの運営に、その着ぐるみ女は何一つ関わっちゃいない”よ」

モノっちー「黒幕なんて、ただの嘘っぱちなんだよネ」

しずく「なっ……!?」

203: 2020/02/28(金) 21:17:56 ID:9utAojC.
モノっちー「オマエらが騙されてただけの話だよ。そして、大体は今しがた議論された通りだネ」

モノっちー「ロシアンルーレットを“最高難易度でクリアした”彼女は、そこで得た情報をキッカケに計画を立てた」

歩夢(……最高難易度?)

モノっちー「自動〇人トラップなんて面白いことをしようとしていたから、ボクはほったらかしにしていたけど……」

モノっちー「まさか、ボクを罠にかけるための事件だったとはネ! ビックリ仰天だよ」

穂乃果「……そこまで言っちゃうなんて、卑怯だね」

モノっちー「ま、半分は私怨だよ。勝手にゲームを乗っ取ろうとしたオマエへのネ」

穂乃果「ふーん……」

鞠莉「この険悪なムード……間違いなさそうね」

歩夢「うん。穂乃果さんは、黒幕でも何でもなかったんだ」

204: 2020/02/28(金) 21:18:55 ID:9utAojC.
ダイヤ「ですが……主催を乗っ取って、穂乃果さんは何がしたかったのでしょう?」

穂乃果「……」

ダイヤ「そもそも、穂乃果さんではないとしたら、この残酷な催しを仕組んだのは一体誰なんですか?」

モノっちー「……」

璃奈「……2人とも、肝心なところはだんまり(・v・)」

鞠莉「そういう璃奈は、何か知ってるのかしら?」

璃奈「わ、私は……途中で気絶させられちゃったから……(>_<。)」

歩夢「それでも、途中まで何があったかは知ってる筈なんだ。話して、欲しい」

穂乃果「私からもお願いしたいね。少し議論の方向がズレてるみたいだしさ」

穂乃果「黒幕が誰かって話じゃなくて、犯人が誰かって話をしようよ」

モノっちー「そればっかりは、オマエに同感だネ」

205: 2020/02/28(金) 21:19:48 ID:9utAojC.
しずく「ですが……モノっちーにも犯人が分かっていないのなら、誰がどう判断を下すのでしょうか?」

穂乃果「それはみんなが気にすることじゃないよ。モノっちーに任せればいいだけ」

穂乃果「ただ、間違えるわけにはいかないよ? この狂ったゲームを仕組んだ張本人としてね」

モノっちー「……オマエ、最初からそれが狙いだったんだネ」

穂乃果「うん。海未ちゃんやことりちゃん、それにみんなの命を奪ったあなたへの仕返しだからね」

歩夢「仕返し……?」

穂乃果「ああ、細かいことは気にしないで。それより、璃奈ちゃんの話を聞こうか」

穂乃果「いいよ璃奈ちゃん、自分のしたことを話しちゃって」

206: 2020/02/28(金) 21:20:33 ID:9utAojC.
璃奈「わ……分かった(>_<。)」

璃奈「……私がやったのは、歩夢ちゃんを情報処理室まで連れて行ったことと、しずくちゃんを攫うタイミングで鞠莉さんを部屋から誘い出して、気絶させたこと(>_<。)」

歩夢「昨晩花丸ちゃんとして動いていたのは、全部璃奈ちゃんだったんだね」

鞠莉「わざわざ変装までして、随分と手荒くやってくれたものね」

璃奈「ああでもしないと、鞠莉さんは絶対に警戒するからって……ごめん(>_<。)」

鞠莉「愛の時と違って、完全に脅迫されていたんでしょう? だったら、これ以上は責めないわ」

璃奈「……梨子ちゃんを気絶させたのも、私なんだ(>_<。)」

ダイヤ「り、梨子さんを……!?」

207: 2020/02/28(金) 21:21:48 ID:9utAojC.
しずく「そういえば、ダイヤさんは梨子さんの後を追っていたんでしたね」

ダイヤ「ええ。そうなると、私が襲われた時、璃奈さんたちが居たのは……」

璃奈「4階だよ(・v・)」

ダイヤ「……そうなりますわね」

歩夢「だとしたら、ダイヤさんを襲うことが出来たのは……」

歩夢「2つの着ぐるみのどちらか、ってことになるんじゃないかな」

ダイヤ「或いは、着ぐるみから出ていたか。どちらにせよ、穂乃果さんと……おや?」

璃奈「ど、どうしたの(・v・)?」

ダイヤ「璃奈さんは、着ぐるみを着用することはなかったのです?」

璃奈「な、なかったけど……(・v・)」

208: 2020/02/28(金) 21:22:47 ID:9utAojC.
鞠莉「……それだと変ね。穂乃果以外に“もう1人”着ぐるみの人物が居た筈なんだけど」

鞠莉「しかも、もう1つの着ぐるみは死体となって発見された……」

璃奈「ほ、本当だよ。私は、着ぐるみなんて着なかった(・v・)」

ダイヤ「だとしたら、もう1人は一体……」

歩夢「……」

歩夢(私たちは、梨子ちゃんを含めて襲撃事件に遭っていた)

歩夢(そして、襲撃する側だった穂乃果さんと璃奈ちゃんは、ここに居る)

歩夢(それに、事件のおおよそが見えた今……穂乃果さん以外が嘘や隠し事をしているとは思えない)

歩夢(だとしたら……もう1人の着ぐるみの中身として、考えられるのは……)

【怪しい人物を指名しろ!】

209: 2020/02/28(金) 21:23:46 ID:9utAojC.
→【国木田花丸】

歩夢「花丸ちゃん……?」

しずく「えっ……?」

歩夢「花丸ちゃんが、襲撃事件に関わっていたとしたら……?」

ダイヤ「彼女は被害者なんですよ? それなのにどうして……」

鞠莉「ただの被害者じゃなかった、ってことでしょう」

ダイヤ「なっ……」

鞠莉「だから璃奈を花丸に変装させたのよね? この後で入れ替わりトリックをやる布石のために」

穂乃果「どうしてだっけ……。忘れちゃった☆」

210: 2020/02/28(金) 21:24:28 ID:9utAojC.
歩夢「どうして花丸ちゃんが穂乃果さんと一緒に行動したのか、今となっては分からないけど……」

歩夢「でも……穂乃果さんがモノっちーと対立している今なら、何となく分かる気がするんだ」

モノっちー「“ボクに一泡吹かせるために、協力して事件を起こした”ってことでしょ?」

モノっちー「まったく意地が悪いよネ。天王寺さんを監禁した高坂さんの個室に、国木田さんはドアから紙を入れてたんだからさ」

歩夢「それって……!」

モノっちー「ああ、中身は知らないよ。ボクはただ、監視カメラで見た情報をオマエらに伝えただけです」

モノっちー「でも……国木田さんが関わっている証拠としては、十分なんじゃない?」

穂乃果「……」

211: 2020/02/28(金) 21:25:13 ID:9utAojC.
鞠莉「……とにかく、これでハッキリしたわね」

璃奈「花丸ちゃんも……計画に絡んでいたんだ(>_<。)」

しずく「随分と大掛かりな計画ですけど……結局、穂乃果さんはどうやってモノっちーを罠にかけるつもりだったのでしょう」

ダイヤ「そうですわね。矢の刺さった死体がいつ〇されたのかは、やっぱりモノっちーに筒抜けの筈です」

ダイヤ「監視カメラで映像を見ている以上、モノっちーにも分からない犯行というのには無理があります」

ダイヤ「にも関わらず、モノっちーは犯人が分かっていないようだった……」

歩夢(……きっと、そこに今回の謎が詰まっている筈なんだ)

歩夢(だとしたら……突き止めないといけない)

212: 2020/02/28(金) 21:26:30 ID:9utAojC.
【ノンストップ議論 開始!】
[|モノっちーファイル5>
[|モノっちーファイル5-2>
[|火事騒動>
[|拳銃>

モノっちー「ボクにも犯人が分からない事件……」

璃奈「どうやって、起こしたのかな(・v・)」

鞠莉「何か《校則の穴》を突いたのかしらね」

ダイヤ「火事を起こしたことには、何か意味があるのでしょうか」

ダイヤ「《被害者が分からない》とか……そんな筈はありませんわね」

しずく「監視カメラが《壊されていた》りしたのでしょうか?」

モノっちー「いや? 監視カメラは全部動くよ」

歩夢(モノっちーにも犯人が分からなかった理由……)

歩夢(もしかして、あの人が言っていたあの事なんじゃないかな……?)

213: 2020/02/28(金) 21:27:07 ID:9utAojC.
[|モノっちーファイル5-2>→《被害者が分からない》

歩夢「それに賛成だよ!」

Break!

歩夢「……私たちは、一番大事なことを見落としていたのかも知れない」

ダイヤ「大事なこととは?」

歩夢「矢が刺さっていない、もう1人の被害者のことだよ」

穂乃果「……それの、どこが大事なのかな?」

歩夢「果南さんたちの事件でも、槍玉にあがったことだけど……」

歩夢「2つの死体が同時に出た場合、投票の対象になるのは“先に起きた事件の犯人”だった筈」

鞠莉「前回の裁判での口ぶりからして……モノっちーも、それを肯定していたわね」

214: 2020/02/28(金) 21:27:56 ID:9utAojC.
モノっちー『実際、優木さんの介入がなかったら、この事件は更にややこしいことになってただろうネ』

モノっちー『内通者と反乱分子。どちらが正道でどちらが邪道なのか……それを問う議論で、泥沼に入ってたと思うよ』


モノっちー「うん、その通りだネ。当初は、松浦さんと中須さんの2択になっていたのは事実だよ」

モノっちー「多分、先に命を落とすのは中須さんだったんじゃないかなあ。だから、本来クロになってたのは──」

鞠莉「その話はしないくていいわ。続けて頂戴、歩夢」

歩夢「……今回の事件に当てはめた場合。モノっちー自身も、犯人が分かっていないってことは」

歩夢「“着ぐるみの中に居た被害者がいつ死んだのかが分かっていない”ってことになるんだ」

歩夢「いや。そもそも……“被害者の正体すら分かってない”んじゃないかな」

215: 2020/02/28(金) 21:28:43 ID:9utAojC.
璃奈「えっ……(?□!)」

歩夢「そう考えると、モノっちーファイルの情報があまりにも足りてなかったことも頷けるんだ」

歩夢「花丸ちゃんのファイルは、変装した璃奈ちゃんが居るからわざと名前を伏せたのかも知れないけど……」

歩夢「もう片方のファイルにも何も書いていないってことは──」

しずく「それは狂言ではありませんか?」

反論!

しずく「……やっぱり、歩夢さんの話はおかしいです」

歩夢「ど、どこがおかしいの?」

しずく「結論を急ぎ過ぎています。少し、落ち着いてください!」

216: 2020/02/28(金) 21:29:37 ID:9utAojC.
【反論ショーダウン 開始!】
[|2つの着ぐるみ>
[|火事騒動>
[|鞠莉の検死報告>
[|開いていた生物室>

しずく「確かに、そのような方法なら……」

しずく「モノっちーの目を誤魔化すことは簡単かも知れません」

しずく「でもその方法自体、何の証拠もない推論じゃありませんか?」

─発展─
いや……証拠はあるよ
   モノっちーファイルに何も書いてないこと
      モノっちーは死体の中身を知らなかったから
         ファイルに何も書くことが出来なかったんだ

しずく「確かに【着ぐるみを着たまま】なら、中身は分からないでしょうけど」

しずく「そもそも、その被害者が亡くなったのは【火事によるもの】です」

しずく「これじゃあ、鞠莉さんが扉を開けた時と【同じタイミング】ですよ?」

歩夢(そういえば、しずくちゃんは死体を調べていなかった)

歩夢(彼女の知らない事実で、その主張を切り崩せる筈!)

217: 2020/02/28(金) 21:30:44 ID:9utAojC.
[|鞠莉の検死報告>→【火事によるもの】

歩夢「その言葉、斬らせてもらうよ!」

Break!

歩夢「着ぐるみの被害者も、火事より前に〇されていた可能性はあるんだ」

しずく「火事より、前に?」

歩夢「ですよね、鞠莉さん」

鞠莉「そうね。矢のトラップと偽黒幕さんの演説のせいで、完全に失念していたけど……」

鞠莉「被害者の腹部には、何かの傷があった。死体が死体だから、詳細は確認しようがなかったけど……」

鞠莉「その傷が死因の可能性は、十分あるわね」

しずく「そ、そうだったんですか……って、それでも歩夢さんの話はおかしいですよ!」

218: 2020/02/28(金) 21:31:25 ID:9utAojC.
しずく「その傷が致命傷だったとしても……やっぱり、モノっちーには犯人が筒抜けじゃないですか!」

穂乃果「そうだね。その傷をつけることが出来たのは、私か璃奈ちゃんの2人だけだよ」

鞠莉「逆から考えればいいのよ」

しずく「逆から……?」

鞠莉「モノっちーは、犯人を知らないことを認めている。つまり、矢の死体は裁判の投票先に関わって来ない」

璃奈「鞠莉さんか穂乃果さんか、その2択だと分かっているから……だよね(・v・)」

鞠莉「となれば、当てなければいけないクロは“着ぐるみの死体を〇した人物”」

鞠莉「私たちは気を失っていた以上、〇せたのは2人だけ……これじゃあやっぱり、モノっちーが犯人を知らないわけがないのよ」

219: 2020/02/28(金) 21:32:33 ID:9utAojC.
鞠莉「傷が誰につけられたのか、それをモノっちーが知らない理由が成立するパターンはただ1つ」

鞠莉「“被害者の正体すら把握出来ていない”としか、考えられないのよ」

しずく「だ、だとしても!」

しずく「行方不明になっているのは梨子さんと花丸さんで、死体も2人分なんですよ!? それなのに、被害者の正体が分からないなんて……」

歩夢「だったら……そのどちらかは“死んでいない”のかも知れない」

しずく「……えっ?」

穂乃果「それは変じゃない? だったら、着ぐるみの死体は何だったの?」

穂乃果「まさか、作り物だなんて言わないよね?」

歩夢「その手掛かりは……きちんと、あったんだよ」

歩夢(そうだ。本人でも、それが意味するものに気づかないうちに見つけてくれていた、あの手掛かり……)

【コトダマ一覧より選択】

220: 2020/02/28(金) 21:33:28 ID:9utAojC.
→【開いていた生物室】

歩夢「手掛かりを見つけてくれたのは……しずくちゃん、あなただよ」

しずく「私が……?」

歩夢「捜査の最中、しずくちゃんは生物室に足を運んだんだよね」

しずく「そ、そうですけど……中にあったのは、ロッカーらしき物ばかりでしたよ?」

歩夢「あの部屋は、とても寒かった筈だよ。廊下に冷たい空気が流れてくるくらいには」

しずく「確かに……中は、低温倉庫のような寒さでした」

穂乃果「別に、寒いことはおかしいなんてことないでしょ? みんながコールドスリープしていた部屋なんだからさ」

歩夢「それって……そのロッカー1つ1つには“人を入れられる容量がある”ってことだよね?」

穂乃果「……」

ダイヤ「まさか、そのロッカーって……!」

歩夢(そうだ。生物室の、本当の役割は……)

【閃きアナグラム 開始!】

び あ し ょ つ い う ん れ (ダミー有)

221: 2020/02/28(金) 21:34:08 ID:9utAojC.
→【れいあんしつ(霊安室)】

歩夢「あの生物室は……霊安室の役割を持っていたんじゃないかな」

璃奈「霊安室って……病院で遺体を保存したりする、あれ……だよね(・v・)」

鞠莉「本当に霊安室なのかしら、モノっちー?」

モノっちー「うん、そうだネ」

鞠莉「ビンゴ♪ つまり、着ぐるみの死体の正体は、生物室から持ち出した“過去に死んだ誰か”の物だったってことよ」

ダイヤ「……だから、その死体を〇した犯人を当てなければいかないとなる、というワケですか」

歩夢「どうかな、穂乃果さん」

穂乃果「……」

穂乃果「……あっはははははははは!」

222: 2020/02/28(金) 21:34:50 ID:9utAojC.
歩夢「……?」

鞠莉「何がおかしいのかしら」

穂乃果「生物室から死体を持ち出したぁ? そんなこと出来るわけないでしょ」

穂乃果「そもそも生物室には、鍵が掛かっていたんだよ? それなのにどうして、死体を持ち出せるっていうの?」

しずく「で、でも! 捜査の時には、現に鍵は掛かっていなかったんですよ!?」

歩夢「そうだよ。そのお陰で、死体の入れ替えに気づけ──」

モノっちー「ああ、だって……鍵を開けたのはボクだからネ」

歩夢「──っ!?」

223: 2020/02/28(金) 21:35:35 ID:9utAojC.
歩夢「ど、どういうこと!?」

モノっちー「ぶっちゃけ言わせてもらうけどさ。着ぐるみ女が使ったトリックの全貌は、このボクには大体お見通しなんだ」

モノっちー「ところが、そいつはボクの目を盗んで……大掛かりな罠を仕組んだんだよ」

鞠莉「その罠のお陰で、あなたは犯人の特定が出来なくなった、と」

穂乃果「……」

モノっちー「でも学級裁判は開かなきゃいけないからネ。こうして、オマエらにも謎解きをさせているんだよ」

モノっちー「情報処理室の鍵も解除されていたでしょう? あれも含めて、全部ボクがやったことなんだ」

モノっちー「全ては、裁判に参加するオマエらへの公平な情報として。ついでに、身勝手な人へのやり返しとして……ネ」

穂乃果「公平な情報、ねえ。それを喋っちゃうのは本当に公平なの?」

モノっちー「うけけ……ボクを罠にかけて、オマエがいい気になってたのが悪いんだよ」

224: 2020/02/28(金) 21:36:19 ID:9utAojC.
モノっちー「ちなみに、生物室と情報処理室のロックを解除したのは火事が起きた頃だよ」

しずく「それじゃあ……穂乃果さんは、生物室から死体を持ち出せないじゃないですか!?」

モノっちー「そう、黒幕でもなんでもないそいつには、生物室には入れなかった」

モノっちー「何なら……生物室が開いていたことも、たった今知った筈だよ」

穂乃果「……で、でも。これで、歩夢ちゃんたちの推理は振り出しに戻っちゃったね」

穂乃果「死体の入れ替えなんて、本当は起きてなかった。今までの推理は、全くの的外れなんだよ!」

穂乃果「モノっちーは犯人を分かっていない。みんなは事件の真相が分かっていない」

穂乃果「この様子なら、私の1人勝ちってことに──」

歩夢「それは……違うよ」

穂乃果「……ん?」

歩夢「やっぱり、死体の入れ替えがあったのは確かな筈なんだ」

225: 2020/02/28(金) 21:37:06 ID:9utAojC.
ダイヤ「ですが、現に穂乃果さんは生物室に入れなかったんですよ?」

ダイヤ「生物室に入れなければ、死体を回収することなど……」

歩夢「1つだけ……例外があるんだ」

ダイヤ「例外……?」

歩夢「裁判が終わったあと、今までは全て死体が綺麗に片付いていた」

歩夢「きっと全部、生物室のロッカーに収められていたんだろうね」

歩夢「しずくちゃんは、ランプの数は30近くって言っていたから……もしかしたら、第2多目的室の壁や床に飛び散っていた血も……」

璃奈「確かに、あそこで死んじゃった人たちも、そのロッカーの中に入ってるのかも(・v・)」

歩夢「でも……1人だけ“ロッカーに入っていない可能性がある”死体があるんだ」

歩夢(その死体は──)

【怪しい人物を指名しろ!】

226: 2020/02/28(金) 21:37:51 ID:9utAojC.
→【中須かすみ】

歩夢「モノっちーですら回収出来なかった、唯一の死体」

歩夢「かすみちゃんだよ」

しずく「あの死体が、かすみさん……!?」

鞠莉「前回の事件で、低温倉庫のスイッチはせつ菜が破壊したんだったわね」

ダイヤ「そのせいで、かすみさんの居た部屋は誰も入れなくなっていた筈ですが……」

璃奈「そこから死体を持ち去った……って、こと(?□!)?」

歩夢「うん。死体の入れ替えがあったんだとしたら……彼女しか、居ない」

歩夢「それにかすみちゃんなら……死体の傷が腹部にあったことも、頷けるよね」

璃奈「そっか……お腹を刺されていたから……(・v・)!」

227: 2020/02/28(金) 21:39:25 ID:9utAojC.
ダイヤ「ですが……確か、かすみさんは背中も刺されていたのではありませんでしたか?」

鞠莉「……言い訳になるけれど、見逃した可能性は高いわね」

穂乃果「見逃したなんて……そんな都合のいい話があるの?」

鞠莉「死体はあんな状態だったし、そもそも私は、彼方や花丸ほど検死に精通してない。理由としては不十分かしら?」

穂乃果「別にいいよ、そんな細かい話は」

穂乃果「だって……大きな疑問点は、まだまだ残ってるんだからね……!」

歩夢(……分かっている。説明のつかない事柄は、まだ幾つか残っているんだ)

歩夢(でも……今度こそ、ようやく掴んだ光なんだ。みんなで見つけ出した、希望なんだ)

歩夢(絶対に、逃がしたりはしない──!)

228: 2020/02/28(金) 21:40:10 ID:9utAojC.
【ノンストップ議論 開始!】
[|モノっちーファイル5-2>
[|2つの着ぐるみ>
[|拳銃>
[|鞠莉の検死報告>

穂乃果「みんなの推理によると……」

穂乃果「私は低温倉庫から【かすみちゃんの死体】を運び出して【着ぐるみに入れた】んだったよね?」

鞠莉「ええ。【火事で焼かれる】ことを想定してね」

穂乃果「でも。モノっちーの監視の隙をついて、上手く倉庫から死体を持ち出せたとしても……」

穂乃果「【モノっちーに見つからずに】第2多目的室まで運ぶ必要があるんだよ?」

穂乃果「どうやってそんなことをしたのかな?」

ダイヤ「《直接担ぐ》のは、いささか目立ちますし……」

しずく「何かに入れて持ち運んだのでしょうか……?」

穂乃果「いやいや、持ち運ぶにしても【目立っちゃう】よね?」

モノっちー「まあ、流石に気付くネ」

歩夢(どうやってバレずに死体を運び出したのか……まずはそれを解き明かすんだ!)

229: 2020/02/28(金) 21:40:50 ID:9utAojC.
[|2つの着ぐるみ>→【目立っちゃう】

歩夢「それは違うよ!」

Break!

歩夢「……目立たずに運ぶ方法はあるよ。着ぐるみを使えばいいんだからね」

ダイヤ「着ぐるみに入れて持ち運んだ、ということでしょうか?」

璃奈「で、でも。もう1つの着ぐるみには、花丸ちゃんが入ってたんだよね(・v・)?」

歩夢「問題ないよ。“自分が入っている着ぐるみに死体を入れた”んだからね」

しずく「うっ……死体と一緒に行動していた、ってことですか!?」

鞠莉「確かにあの着ぐるみなら、もう1人くらいは詰め込むスペースがありそうね」

歩夢「そうやって、かすみちゃんの死体を低温倉庫から持ち出した後は──」

穂乃果「行くよ、全力で!」

反論!

穂乃果「そんな方法、本当に出来ると思ってるの?」

歩夢「出来なかった、筈はないよ」

穂乃果「いいや。無理なものは、無理なんだよ──!」

230: 2020/02/28(金) 21:41:59 ID:9utAojC.
【反論ショーダウン 開始!】
[|モノっちーファイル5>
[|モノっちーファイル5-2>
[|開いていた情報処理室>
[|2つの着ぐるみ>

穂乃果「かすみちゃんの死体を低温倉庫から持ち出した?」

穂乃果「着ぐるみに入れて?」

穂乃果「出来ない。そんな方法は、絶対に出来ない」

穂乃果「歩夢ちゃん……それはただの妄想だよ」

─発展─
   妄想なんかじゃない
      そもそも、かすみちゃんの死体は……
         着ぐるみに入った状態で発見されたからね

穂乃果「私が運んだのか花丸ちゃんが運んだのか、それは置いとくとしても……」

穂乃果「そもそも、倉庫から運び出すのはかなり【大変な作業】になるよね」

穂乃果「【一瞬の隙】を突いたわけでもないなら……モノっちーも知ってるんじゃないかな?」

穂乃果「だって、歩夢ちゃんの推理通りなら【死体を着ぐるみに入れる】時間が必要なんでしょ?」

歩夢(今だから分かる。今回の犯行がやけに大掛かりだったのには、このためだったんだ……!)

231: 2020/02/28(金) 21:42:49 ID:9utAojC.
[|開いていた情報処理室>→【モノっちーも知ってる】

歩夢「その言葉、斬らせてもらうよ!」

Break!

歩夢「確かに……運び出すのには時間が掛かるだろうね」

穂乃果「うん。まさか、トリックを使って素早く行動した……なんて言わないよね?」

歩夢「そもそも……モノっちーは、事の全てを監視カメラで把握出来ていたのかな」

モノっちー「……」

しずく「ど、どういう意味なのですか?」

歩夢「モノっちーが犯人を知らない理由は、やっぱり“監視カメラを見ていなかった”ことにある筈」

鞠莉「普通に考えたら、見てないなんてことは起こり得ない。モノっちーの中身もヒトなら、ミスくらいは起こすでしょうけど」

璃奈「……でも、そんな都合のいい話があるの(・v・)?」

232: 2020/02/28(金) 21:43:52 ID:9utAojC.
歩夢「それはきっと……情報処理室にあったパソコンのせいだよ」

ダイヤ「パソコンが……?」

歩夢「校舎や学生寮を撮影した監視カメラの映像は、全て壁に掛かったモニターに映っていた」

歩夢「きっと、今までもそうやって監視して来たんだろうね」

歩夢「でも……“別館を撮影した映像”は違う」

歩夢「それを見るには、パソコンを操作する必要があったんだ」

しずく「じゃあ、モノっちーが死体を運び出すところを知らなかったのは……」

歩夢「“壁のモニターに気を取られている隙に起きた出来事”だったから」

歩夢「そうでなければ、モノっちーがわざわざ“公平な推理の材料”として情報処理室の鍵を開ける必要もないからね」

歩夢「前回の裁判で、音のない監視カメラの映像を見せて来たりもしたけれど……」

鞠莉「さしずめ“映像オンリーだから、起こったことに気付きにくい”ってところかしら」

鞠莉「襲撃事件を幾つも起こしていたんだから、そっちに意識を取られてもおかしくないもの」

233: 2020/02/28(金) 21:44:51 ID:9utAojC.
歩夢「穂乃果さんが襲撃事件を起こした理由は、私たちを1か所に集めるためだと思っていた」

歩夢「でも……本当は違ったんだよ」

ダイヤ「多発的に事件を起こすことで、モノっちーに決定的な瞬間を見せない為……ですか」

歩夢「間違ってない筈だよ、モノっちー」

モノっちー「……ノーコメント。流石にセンシティブすぎる話題だからネ」

穂乃果「コメントする必要はないよ。だって、みんな机上の空論で疑問を解消したつもりだろうけど……」

穂乃果「まだ、大事な疑問が残っているからね」

ダイヤ「まだ、何か?」

穂乃果「そもそも、低温倉庫のスイッチは壊されていたのに……どうやって、死体を運び出したのかな?」

穂乃果「モノっちーにも回収出来なかったなら、私や花丸ちゃんにも不可能だよね?」

234: 2020/02/28(金) 21:45:55 ID:9utAojC.
歩夢「……」

しずく「歩夢さん。事件の時、スイッチを確認したから分かるんです」

しずく「あれは、専用の道具がないと直すのは不可能だと思いますし……」

歩夢「工具箱は……校舎から脱出しようとした時に、私が第2多目的室に置きっぱなしにして来た。あとで回収することは可能だった筈だよ」

ダイヤ「そういえば捜査の時、どこにも見当たりませんでしたわね」

しずく「で、ですけど……専門の知識がないと、穂乃果さんや花丸さんにも、修理は難しいんじゃ……」

穂乃果「そうだね。私はメカニックでもないし、発明家でもないよ」

穂乃果「花丸ちゃんは作家だけど……本から得た知識程度で、どうにかなるのかな?」

歩夢「どうにかなった可能性はあるよ」

穂乃果「……えっ?」

235: 2020/02/28(金) 21:46:46 ID:9utAojC.
歩夢「穂乃果さんは、自分のことを《超高校級の絶望》だって言ってたけど……」

歩夢「本当に、そうなの?」

穂乃果「……」

璃奈「そっか。穂乃果さんの才能って、分かってないままだったね(・v・)」

鞠莉「もっと言えば、千歌っちとして接していた頃の才能も分かってないまま」

鞠莉「あの時は、あなたが黒幕だっていうフェイクと、絶望だなんて大げさな肩書に騙されたけど……」

鞠莉「本当の才能は、何だったのかしら?」

穂乃果「……この状況で、私が喋ると思う?」

歩夢「穂乃果さんが喋らなくっても……手掛かりは、既にあったんだよ」

歩夢(そう。この裁判中で、引っかかる発言をした人がいたんだ)

【小原鞠莉】
【天王寺璃奈】
【モノっちー】

正しい選択肢を選べ!

236: 2020/02/28(金) 21:47:47 ID:9utAojC.
→【モノっちー】

歩夢「さっき、穂乃果さんが黒幕じゃないって話をした時……モノっちーが言っていたんだ」

歩夢「“武器庫のゲームを最高難易度でクリアした”って」


モノっちー『オマエらが騙されてただけの話だよ。そして、大体は今しがた議論された通りだネ』

モノっちー『ロシアンルーレットを“最高難易度でクリアした”彼女は、そこで得た情報をキッカケに計画を立てた』


歩夢「ロシアンルーレットは、銃に弾をこめる運試し」

歩夢「難易度を上げようとしたら……弾の数を増やすしかないよね」

ダイヤ「ですが、それでクリアしようとすれば、相当な運が……っ!」ハッ

ダイヤ「まさか、彼女の才能は……」

歩夢「……うん。考えられる可能性は、これしかないよ」

【超高校級の不運】
【超高校級の幸運】
【超高校級の美少女】
【超高校級の若女将】

正しい選択肢を選べ!

237: 2020/02/28(金) 21:48:24 ID:9utAojC.
→【超高校級の幸運】

歩夢「自分の運に頼って、狙った結果を引き寄せる……」

歩夢「自分の運によって、壊されたスイッチが稼働する……」

歩夢「《超高校級の幸運》だったとしたら……どうかな」

璃奈「超高校級の、幸運……(?□!)」

穂乃果「で、でも……エマちゃんだって、幸運の才能だったんだよ?」

穂乃果「同じ才能の人が2人居るだなんて、あり得るのかな」

歩夢「《超高校級の幸運》は、毎年虹ヶ咲学園が抽選をして、一般の学生から募集を掛けている」

歩夢「そう……“毎年”ね」

鞠莉「ここで生活を過ごしていくうちに、私たちは“学年が違う”ことを知った……」

鞠莉「だから、高坂穂乃果が《超高校級の幸運》であったとしても何もおかしくはない……ということね」

238: 2020/02/28(金) 21:49:31 ID:9utAojC.
穂乃果「……っ」

歩夢「エマちゃんの事件のお陰で、どこか勘違いをしていたのかも知れない」

歩夢「幸運と言っても、結局は普通の高校生……無意識にそう思っていたのかも知れない」

歩夢「でも、超高校級なんだ。こんなことが出来てもおかしくはないよね」

ダイヤ「そうなると、死体を運び出したのは穂乃果さんなのでしょうね」

ダイヤ「とはいえ、どこかで着ぐるみの中身を移し替える必要はありましたが……」

歩夢「多発的な襲撃事件を監視カメラ越しに見せつけることで、その過程をモノっちーに知られないようにしたんだ」

歩夢「そもそも、情報処理室に呼び出したことにも意味があったのかも知れない」

しずく「意味……ですか」

歩夢「鍵が掛かっている部屋には入れない。もし破ろうとしたら、モノっちーは校則違反を知らせなければいけない」

歩夢「そうやって……“黒幕を情報処理室の奥の部屋に釘付けにさせておく”狙いがあったんだ」

歩夢「情報処理室自体には、モノっちーを操作したりする機械なんかは、どこにもなかったからね」

239: 2020/02/28(金) 21:50:25 ID:9utAojC.
歩夢「つまり。この事件のクロは……同時に見つかった死体の中でも、先に〇された方の犯人」

歩夢「かすみちゃんを〇したクロ……せつ菜ちゃんだってことになる」

歩夢「そして、既にクロはオシオキが完了しているか──」

穂乃果「まだ終わってないよ!」

歩夢「……えっ?」

穂乃果「歩夢ちゃんもみんなも……肝心なことを忘れているよ。とびっきりの、謎」

鞠莉「まだあるのかしら? あなたに反論の余地が」

穂乃果「着ぐるみの死体がかすみちゃんなら……梨子ちゃんはどこへ行ったの?」

240: 2020/02/28(金) 21:51:17 ID:9utAojC.
しずく「それは……かすみさんと入れ替えで、低温倉庫の中に」

穂乃果「それじゃあ意味がないよ。監視カメラを見たら、中に居ることがバレちゃうからね」

鞠莉「とはいえ、学校のどこかに隠したとしか考えられないけど……」

ダイヤ「どうなのですか、モノっちー。あなたなら、梨子さんの居場所を知っている筈ですよ」

モノっちー「……」

歩夢「きっと……モノっちーにも犯人が分からない理由が、これなんだ」

璃奈「どういうこと(・v・)?」

歩夢「着ぐるみの死体がかすみちゃんか梨子ちゃんか。穂乃果さんのせいで、モノっちーにも確証が持てなくなった」

歩夢「だからこうして、私たちに解かせようとしているんだ。消えた3人目の行方を……」

241: 2020/02/28(金) 21:52:24 ID:9utAojC.
穂乃果「だったら……どこに消えたかなんて、分かるのかな?」

歩夢「分かるよ」

穂乃果「っ!?」

歩夢「梨子ちゃんは、監視カメラが絶対に届かない“ある場所”に居るんだ」

穂乃果「……」

歩夢「この事件の、最後の真実……」

歩夢「明らかにしてみせるよ!」

242: 2020/02/28(金) 21:53:23 ID:9utAojC.
【理論武装 開始!】

穂乃果「あの死体は梨子ちゃんだよ」

穂乃果「かすみちゃんなんかじゃない」

穂乃果「他の可能性なんて考えられないよ」

穂乃果「ふざけるのはそろそろ終わりにしようよ」

穂乃果「歩夢ちゃんは何も分かってない」

穂乃果「どうしてモノっちーに力を貸すの?」

穂乃果「モノっちーのせいで、みんな死んだのに……」

穂乃果「あなたに、私の痛みなんて分からない!」


穂乃果「【梨子ちゃんはどこへ消えたっていうの!?】」

      △:ぐるみ
□:中         ○:着
      ×:の

243: 2020/02/28(金) 21:54:18 ID:9utAojC.
→○△×□ [|着ぐるみの中>

歩夢「これで……終わりだよ!」

Break!!!

歩夢「梨子ちゃんの居場所は……あなたが着けている、その“着ぐるみの中”だよ!」

穂乃果「……」

しずく「あ……あの中に、梨子さんも居るんですか!?」

鞠莉「てっきり大浴場のどこかにでも眠らせていると思ったけど、違うのね」

鞠莉「あそこには監視カメラがないから、隠すにはちょうど良いでしょう」

歩夢「勿論、その可能性もあるけど……穂乃果さんの目的を考えると、そうとは考えにくい」

歩夢「彼女の目的は、このゲームそのものを破壊することだと思うから……」

244: 2020/02/28(金) 21:55:04 ID:9utAojC.
モノっちー「ゲームの破壊、ネ……」

歩夢「“黒幕でさえ犯人を間違えた”“コロシアイゲームは成立していない”」

歩夢「それをこの場で証明するためには……梨子ちゃんが、穂乃果さんの“手の届く場所”に居る必要がある」

鞠莉「なるほど。だから文字通り手の届く場所……あの着ぐるみの中ってわけね」

歩夢「……うん」

穂乃果「……」

穂乃果「全然違うよ。妄想もいいところだね」

歩夢「妄想なんかじゃない。これまでの全てを振り返って……あなたにも認めさせる」

歩夢「これが事件の真実だよ!」

245: 2020/02/28(金) 21:55:38 ID:9utAojC.
【クライマックス推理】
ACT.1
穂乃果さんと璃奈ちゃん、そして花丸ちゃん。
複数の人が作り上げた大掛かりなトリックを、紐解いて行くよ……。
まず穂乃果さんは、自分の計画のために璃奈ちゃんを脅迫した。
これから起こす事件のために……花丸ちゃんに変装させたんだ。
その裏で穂乃果さんは、本物の花丸ちゃんとも繋がっていた。
璃奈ちゃんに知らせなかったのは、自分以外に真相を知っている人を出さないためだろうね。

ACT.2
璃奈ちゃんが最初に誘い出したのは、私。
着ぐるみを着た本物の花丸ちゃんが合流して、私を気絶させる。
そこから2人は、しずくちゃんと鞠莉ちゃんを気絶させたりして、多発的に襲撃事件を起こしたんだ。
その裏では……穂乃果さんが、今回の事件の肝になることを実行していた。
襲撃事件の監視にモノっちーが気を取られているうちに……低温倉庫から、あるモノを運び出したんだ。
壊れたスイッチの問題も……彼女が持つ超高校級の幸運の才能なら、クリア出来たんだよ。

ACT.3
そうやって運び出されたのは……前回の事件から放置されていた、かすみちゃんの死体。
それを着ぐるみの中に入れて、穂乃果さんは別館を後にしたんだ。
梨子ちゃん、ダイヤさんを気絶させて……最後に、璃奈ちゃんを気絶させる。
何も知らない花丸ちゃんとして、このあと学級裁判の場に立ってもらうためにね。
その裏では、着ぐるみの中身の入れ替えが行われていたんだ。
梨子ちゃんは穂乃果さんの着ぐるみに、花丸ちゃんは着ぐるみから出て、そこにかすみちゃんの死体が。
ただ、襲撃事件を隠れ蓑にしたお陰で……モノっちーでさえ、その実態を把握することが出来なくなっていたんだ。

246: 2020/02/28(金) 21:56:28 ID:9utAojC.
ACT.4
こうしてモノっちーを欺く準備を終えた穂乃果さんは、次に私たちを騙すための準備を始めた。
私たちに用意された偽の真相……罠に掛かった人物がクロになるトリックのためにね。
そのために穂乃果さんは、梨子ちゃん以外の気絶させたみんなを第1多目的室に放り込んだ。
そして廊下と、死体発見現場になる第2多目的室にガソリンを撒き、ライターを準備した。
結局、花丸ちゃんがここで死んだのか、本当に罠で死んだのか……今となっては分からない。
でも、議論の焦点をそこに向かわせること自体が、穂乃果さんの仕組んだ本当の罠だったんだ。

ACT.5
次に穂乃果さんが準備したのは、意図的に火事を起こす仕掛け。
水溶性の糸を第1多目的室の扉に括り付けて、それをライターと結んだ。
こうすることで、閉じ込められた私たちが扉を開けようとした瞬間、倒れたライターが火事を起こす。
糸が水溶性だったのは、火でも燃えなかった場合を考慮して、消火設備のスプリンクラー頼みにするためだろうね。
仕上げに用意したのは、弓。
置いたのか、セットしたのか……とにかく、扉を開けた人がクロになる可能性を生むようにしたんだ。

ACT.6
こうして全ての準備を終えた穂乃果さんは、着ぐるみに身を潜めて裁判に臨んだ。
気絶したままの梨子ちゃんを、一緒の着ぐるみに入れたまま。
最後まで私たちを……いや、何よりモノっちーを騙しきって、本当の黒幕を倒すために。
扉を開けた人物か穂乃果さん、どちらかがクロだと指名させたあとで、梨子ちゃんの姿を出すために。
この事件で指摘されるべきクロ……かすみちゃんを〇したせつ菜ちゃんは、既にこの世を去っていると糾弾するために。
これが、穂乃果さんたちが協力して作り上げた、犯人不明トリックの全貌だよ。

247: 2020/02/28(金) 21:57:23 ID:9utAojC.
歩夢「一連のトリックは、あなたの才能があったからこそ成立した……」

歩夢「そろそろ、その着ぐるみを脱ぐ時だよ」

歩夢「《超高校級の幸運》高坂穂乃果さん……!」


COMPLETE!!!

248: 2020/02/28(金) 21:58:30 ID:9utAojC.
歩夢「この推理が合っているかどうかは……着ぐるみを脱げば、分かる話だよ」

穂乃果「……その前に、今度こそ投票だよ」

鞠莉「まだ粘るつもりかしら」

穂乃果「当たり前だよ……まだ私は負けてない。モノっちーが負ければ、このコロシアイを台無しに出来るんだ」

歩夢「いいや……穂乃果さん」

歩夢(言いながら、着ぐるみの方へと歩き出す)

穂乃果「こ、来ないで!」

しずく「逃げないでください!」ガシッ

璃奈「どうしてこんなことをしたのか……ちゃんと答えて(>_<。)!」ガシッ

ダイヤ「もう、逃げ場はありません」

歩夢「あなたの……負けだよ」

穂乃果「違う、私は──」

249: 2020/02/28(金) 21:59:12 ID:9utAojC.

「もうやめて!」

250: 2020/02/28(金) 21:59:48 ID:9utAojC.
歩夢「────!」

歩夢(着ぐるみの中から……穂乃果さんのものとは違う、もう1つの声がした)

穂乃果「っ!? は、離して……」

歩夢(予想外の出来事が起きたらしく……穂乃果さんが困惑している)

歩夢(私は、中で何かが暴れている着ぐるみの頭を外し……)

穂乃果「……」

梨子「……」

歩夢(最後の行方不明者が……ようやく、その姿を現した)

251: 2020/02/28(金) 22:00:36 ID:9utAojC.
モノっちー「ぐぬぬ……」

モノっちー「本当……やってくれたよネ」

モノっちー「いいよ。状況が状況だから……」

モノっちー「この学級裁判の中止を、ここに宣言するよ!」


    学 級 裁 判  
      閉  廷

252: 2020/02/28(金) 22:01:19 ID:9utAojC.
穂乃果「……」

梨子「まずは……心配させてごめん、かな?」

梨子「それから……ただいま」

ダイヤ「……おかえりなさい」

穂乃果「……」

歩夢(穂乃果さんは……私たちの方に、睨むような視線を向けていた)

穂乃果「……結構、しっかり縛ったつもりだったんだけどなあ」

梨子「……ごめんなさい」

しずく「り、梨子さんが謝ることなんて……」

253: 2020/02/28(金) 22:02:08 ID:9utAojC.
鞠莉「とにかく……話してもらうわよ」

穂乃果「……」

歩夢「お願いだよ、穂乃果さん。璃奈ちゃんと……花丸ちゃんのためにも」

穂乃果「……」ハァ

穂乃果「トリックの関係で、璃奈ちゃんだけは動いてもらう必要があったけど……」

穂乃果「元々、花丸ちゃんを巻き込むつもりはなかったんだ」

璃奈「……どういうこと(>_<。)?」

穂乃果「花丸ちゃんは……私が黒幕だっていう“嘘”に気付いていたんだよ。そして、手紙を入れて来た」

254: 2020/02/28(金) 22:03:13 ID:9utAojC.
『────だったり、武器庫の件だったり。以上の理由から、穂乃果さんが黒幕だとは考えられない』

『きっと穂乃果さんは、璃奈ちゃんの力を借りて、コロシアイを壊そうとしているんですよね』

『だったら、私も協力します』

『どうしても信用出来ないなら、大浴場で待ってます 国木田花丸』


穂乃果『……』

璃奈『穂乃果、さん……(>_<。)?』

穂乃果『……何でもない、よ!』

バチバチィ!

璃奈『ぅ……』ドサッ

穂乃果『……』

255: 2020/02/28(金) 22:03:59 ID:9utAojC.
穂乃果「気付かれてしまった以上は、巻き込むしかなかった」

穂乃果「でも予想外だったのは……“花丸ちゃんから、今回の事件のためのトリックを提案してきた”ことだよ」

歩夢「は、花丸ちゃんが!?」


花丸『……どうかな。きっとこれなら、モノっちーを騙せると思うけど』

穂乃果『……本気で、言ってるの?』

花丸『ずら?』

穂乃果『この計画だと……花丸ちゃんが、死ぬことになるんだよ?』

花丸『それでも……穂乃果さんが考えたトリックよりは、モノっちーを騙しやすい筈だよ』

花丸『ううん……幸運の才能に頼っても、穂乃果さんの計画は隙だらけで失敗するずら』

穂乃果『……っ』

256: 2020/02/28(金) 22:04:53 ID:9utAojC.
穂乃果「……私が最初から考えていたのは、璃奈ちゃんの才能と、かすみちゃんの死体を利用すること」

穂乃果「でも……それとは別に、モノっちーには“本当に人が死んだ瞬間”を見せないといけない。花丸ちゃんはそう言ったんだ」

ダイヤ「花丸さんが、そんなことを……」

鞠莉「それでも……花丸を〇すことに乗ったのは、あなたの方でしょう」

穂乃果「私だって、〇したくはなかったよ!」

鞠莉「っ……」

穂乃果「もう……嫌だったんだ。これ以上、誰かが死ぬのは」

穂乃果「曜ちゃん……ううん。“花陽ちゃん”が死んで……全部、思い出しちゃったんだよ……」

しずく「ハナヨちゃん……?」

歩夢「曜ちゃんとして接していた子の、本当の名前なんだよね」

穂乃果「……うん」

257: 2020/02/28(金) 22:05:46 ID:9utAojC.
────3度目の裁判の後、穂乃果の自室

千歌?『あの曜ちゃんの正体も』

千歌?『私の才能も』

千歌?(……私の、本当の名前も)

千歌?(海未ちゃんやことりちゃんたちが、死んじゃったことも……)

穂乃果『全部、思い出しちゃった』

穂乃果(……でも、どうしよう?)

穂乃果(ただコロシアイを終わらせようとしても、絶対に上手くいかない)

穂乃果(モノっちーを学級裁判で騙すことが出来れば……何とか、コロシアイを壊せないかな?)

穂乃果(でも……学級裁判をやるってことは、誰かが死ななきゃいけない……)

穂乃果(どうすれば……)

258: 2020/02/28(金) 22:07:02 ID:9utAojC.
穂乃果「だから……せつ菜ちゃんが起こした事件の全貌を知った時、これしかないって思った」

穂乃果「かすみちゃんの死体を使えば、これ以上誰も死なずに、事件を起こせるから……」

モノっちー「でも、残念でした。結局、みんなの手で真相は暴かれちゃったワケだネ!」

穂乃果「……」

穂乃果「……ごめんね、みんな」

穂乃果「璃奈ちゃんも……ごめんね。どうしても、あなたの力が必要だったんだ」

穂乃果「梨子ちゃんも、巻き込んでごめんね。誰か1人は、着ぐるみの中に入ってないといけなかったんだ」

穂乃果「それに……私の本心は、絶対に知られるわけにいかなかったから」

穂乃果「怖い思いをさせちゃって……本当に、ごめんね」

梨子「……」

璃奈「穂乃果さん……(>_<。)」

しずく「ですが……どうして花丸さんは、自分を〇させるような真似をさせたのでしょう」

穂乃果「……その答えになるかは、分からないけど」

259: 2020/02/28(金) 22:08:12 ID:9utAojC.
────昨晩、第2多目的室

穂乃果『……本当に、いいの?』

花丸『うん。前回の事件で、色々思うところがあったから……ね』

穂乃果『……深くは聞かないでおくよ』

花丸『ただ……1つ心残りがあるとすれば』

穂乃果『……?』

花丸『オラが今までに書いた小説には、歩夢ちゃんのような優しい探偵さんは出てこなかったから』

花丸『あんな人を主人公にした本を書けなかったことが……ちょっぴり、残念、かな』

穂乃果『……そっか』

花丸『バイバイ、穂乃果さん。みんなにもよろしく頼んだずら』

穂乃果『……っ』グッ

ヒュッ

260: 2020/02/28(金) 22:09:10 ID:9utAojC.
歩夢「……」

鞠莉「彼女は……自ら〇されることを、望んだ……」

穂乃果「だから私は……勝たなくちゃいけなかったんだ」

ダイヤ「花丸さんの想いを無駄にしないために……ですか」

モノっちー「うけけけけ……さっきも言ったけど、結局は無駄な苦労になったネ」

モノっちー「この件をキッカケに、ボクはより警戒するようになる」

モノっちー「オマエは黒幕じゃないことをバラされて、同じ手は使えない」

モノっちー「何より国木田さんは、ただの無駄死にになっちゃったんだからネ!」

歩夢(モノっちーの不愉快な笑い声が、裁判場にこだまする)

歩夢(……これで、良かったんだろうか)

歩夢(希望を見つけ出すために謎を解いた結果……却って、希望を閉ざしてしまったのではないか……?)

261: 2020/02/28(金) 22:10:22 ID:9utAojC.
モノっちー「まあ……寛大なボクは、オマエの取った行動は不問にしておいてやるよ」

モノっちー「だから、オシオキはしない。でも次からは、妙な真似が出来ないように校則を──」

穂乃果「……その必要はないよ」

モノっちー「……うん?」

穂乃果「本当に凄いね、歩夢ちゃん。花丸ちゃんが監修したトリックを、全部解いちゃうなんて」

歩夢「え、えっと……」

穂乃果「心配しなくていいよ。ここまでしても解かれる可能性は十分あるって、事件を起こす前からずっと思っていたから」

穂乃果「ううん。きっとみんななら全部解いちゃうだろうって、信じてたから」

歩夢「信じてたなら、どうして……」

穂乃果「……どうして、だろうね」

穂乃果「やっぱり……歩夢ちゃんと一緒に、何かをやりたかったんだと思う」

穂乃果「幼稚園の時みたいに、ね」

262: 2020/02/28(金) 22:11:26 ID:9utAojC.
歩夢「そ、それって……!?」

穂乃果「もしかして、今まで忘れてたの? ちょっと酷いなあ」

穂乃果「お遊戯会の時……歩夢ちゃんの手を引っ張って行ったんだよ?」

歩夢(おぼろげな記憶の中にいる少女。私が夢を歩き出すキッカケになった少女)

歩夢(それが……穂乃果さんだったのか)

穂乃果「きっとあなたならやり遂げられる、輝ける。精一杯のときめきを放ってくれる、って……そう、思っていたから」

穂乃果「間違ってなかったよ。だって歩夢ちゃんは《超高校級の歌姫》になったんだもの」

穂乃果「だから……私は、これで満足したよ」

263: 2020/02/28(金) 22:12:02 ID:9utAojC.
歩夢(そう言うと……オレンジ色の髪をした彼女は、おもむろにポケットから何かを取り出した)

歩夢(それが“何かのスイッチ”であるということに気付いた時には……)

カチッ

歩夢(小さな音が鳴り)

ドォン!

歩夢(どこかで……大きな音がした)

264: 2020/02/28(金) 22:13:13 ID:9utAojC.
しずく「な、何事ですか!?」

梨子「今のって、爆発!?」

モノっちー「……まさか、オマエ!」

穂乃果「武器庫にあった爆弾は小さくて、鉄の扉は壊せない」

穂乃果「でも……“学園長室の扉の鍵”なら、壊せるよね」

モノっちー「────高坂穂乃果ァァァァァァァッ!」


ウーーーッ ウーーーッ ウーーーッ


璃奈「こ、今度は何(?□!)!?」

鞠莉「鍵の掛かった扉を壊したってことは……校則を破ったってこと」

鞠莉「つまりこれは……」

歩夢「校則違反を知らせるサイレン!?」

265: 2020/02/28(金) 22:14:10 ID:9utAojC.
穂乃果「最後の手段なんだ。謎が全て解かれたり、モノっちーが駄々をこねたりした時のためのね」

歩夢「な、何をしてるの!? 校則を破ったら……」

穂乃果「大丈夫だよ、歩夢ちゃん」

穂乃果「これでモノっちーは、追いつめられる側になった」

穂乃果「あとは……あの絶望を倒すだけだよ」

モノっちー「クソッ……こうなったら……」

モノっちー「こ、校則違反者へのオシオキを、準備させて頂きました!」

穂乃果「それから、鞠莉ちゃん」

歩夢(今度は、爆弾のスイッチが入っていたのとは逆のポケットから……何かが放り投げられた)

266: 2020/02/28(金) 22:15:34 ID:9utAojC.
鞠莉「これは……USBメモリ?」

穂乃果「私の部屋の、ベッドの下を調べて。外の世界についての“嘘”も、分かる筈だから」

鞠莉「外の……!? いえ、分かったわ」

穂乃果「きっとモノっちーは、最後の勝負を挑んで来る」

穂乃果「今までよりも大きな、最後の絶望を叩きつけてくる」

穂乃果「でも絶対に……負けないで」

穂乃果「あ、それから! 大事なことを忘れてた!」

穂乃果「エマちゃんの幸運も……信じてあげて」

歩夢「そ、それって、どういう……」

モノっちー「それでは、張り切って参りましょう……なんて言ってられるかよ!」

穂乃果「みんな……」

モノっちー「オシオキターーーーーーーイム!」

267: 2020/02/28(金) 22:16:13 ID:9utAojC.

穂乃果「ファイトだよ!」

268: 2020/02/28(金) 22:17:46 ID:9utAojC.

       EMERGENCY
コウサカさんがこうそくいはんをおかしました。
    おしおきをかいしします。

269: 2020/02/28(金) 22:19:10 ID:9utAojC.
高坂穂乃果が連れて来られたのは……ベルトコンベア。

学校の机と椅子の上に座らされ、身動きが取れないようになっています。

ベルトコンベアの向こうには……ピストン運動を続ける、巨大な鉄の塊。

どうやらモノっちーは、このプレス機で彼女を潰すつもりのようです。


      〈(無名のオシオキ)〉
   《超高校級の幸運 高坂穂乃果処刑執行》

270: 2020/02/28(金) 22:19:53 ID:9utAojC.
ドスン、ドスン。

鈍い音を立て、鉄の塊は上下します。

ゆっくりと、そちらへと流れるベルトコンベア。

穂乃果の目の前にあるのは教壇を模したセットと、教師の恰好をしたモノっちー。

黒板に書かれているのは、幾つもの暴言。

校則違反をした彼女へ向けられた、罵詈雑言です。

モノっちーは「分かっているのか!?」と言いたげに、鞭を教壇に叩きつけます。

穂乃果はその光景を、黙って見続けています。

しかし、その額には……やはり、玉のような汗が浮かんでいました。

271: 2020/02/28(金) 22:20:52 ID:9utAojC.
ドスン、ドスン。

鉄の塊が上下するたびに、ベルトコンベアにも振動が伝わります。

ガチャガチャ……ガチン!

おや……? どうやら、彼女を椅子に縛り付けていた拘束が、外れたようです。

振動のせいで壊れたのでしょうか……流石は、超高校級の幸運です。

焦ったモノっちーが、穂乃果に飛び掛かろうとします。

力づくで抑え込むつもりのようですが……彼女は、するりと抜け出しました。

逃げようとすれば、今すぐにでも逃げられます。

ですが……穂乃果の取った選択肢は、違いました。

覚悟を決めたような顔で、プレス機の方へと駆け出したのです。

やがて、後に残されたのは……。

血に染まったベルトコンベアと鉄の塊、そして。

返り血を浴び、苛立ちを抑えきれない表情のモノっちーでした。

272: 2020/02/28(金) 22:21:53 ID:9utAojC.
モノっちー「うぐ、ぐぬぬぬぬぬぬ……」

歩夢(穂乃果さん……いや、穂乃果ちゃんは、死んだ)

歩夢(最後までモノっちーに盾を突くような形で、消えていった)

歩夢(泣きたい。悲しい。私にとって、もう1人の幼馴染だった筈の人が、居なくなったんだ)

歩夢(いや……もしかしたら、私は既に泣いているのかも知れない)

歩夢(でなければ……口の中にしょっぱい味がしみこんで来ることなんてないだろうから)

歩夢(でも……立ち止まっちゃいけないんだ)

歩夢「行こう……穂乃果ちゃんが残してくれた、手掛かりを見つけに」

273: 2020/02/28(金) 22:22:59 ID:9utAojC.
歩夢(私の言葉を皮切りに……みんな、エレベーターへと乗り込んで行く)

歩夢(そして、裁判場を去る間際。モノっちーは、私たちに向かって叫んだ)

モノっちー「次に行われるのは、最後の学級裁判だよ」

モノっちー「詳しくは、後で学園中にアナウンスしてやるよ」

モノっちー「絶対にオマエらを絶望させてやる」

モノっちー「オマエらへの仕返しを、終えてみせる」

モノっちー「バッドエンドまっしぐらにしてやるから、覚悟しておくんだネ……」

歩夢(仕返しという言葉が少し引っ掛かったが……そんなもの、モノっちーに言われる筋合いはない)

歩夢(むしろ、仕返しをするのは私たちだ)

274: 2020/02/28(金) 22:23:44 ID:9utAojC.
歩夢(穂乃果ちゃんが繋いでくれた希望で、絶望を打ち破ってみせる)

歩夢(そして……私たちは、これから望むことになる)

歩夢(希望と絶望のぶつかり合い)

歩夢(全ての謎が解き明かされる)

歩夢(最後の“学級裁判”を──)

275: 2020/02/28(金) 22:24:47 ID:9utAojC.
Chapter5 END



To be continued……


プレゼント“役目を終えたスイッチ”を獲得しました。

278: 2020/03/29(日) 20:41:00 ID:kxPgDpz6
────幕間 ある夏の昼下がり

「ねえ花丸ちゃん、しず子知らない?」

「しずくちゃんなら居ないずらよ」

「あれ、そうなの?」

「確か、公演でしばらく沼津に行ってる筈だよ」

「じゃあ花丸ちゃんでいいや。遊びに行かない?」

「マルは一服したら、原稿を仕上げないといけないから……ごめんね」

「マキちゃんみたいなこと言わないでよ」

「ああ……薬の調合で忙しいって言ってたずらね。昨日見かけた時も髪がボサボサだったよ」

「なんか、危険な薬が出来ちゃったとか……毒とかじゃないよねアレ」

「ヘビから作る薬って言ってたから……可能性はあるずらね」

「うえぇ!? わ、私、ヘビはダメなんだけど」

「だったら、しばらくは研究室に近寄らない方がいいよ。きっと地獄絵図だし」

279: 2020/03/29(日) 20:41:45 ID:kxPgDpz6
「むー……。りな子は鞠莉先輩たちとどっか行ったし、ルビィちゃんたちは実家に帰ってるし」

「それに、他のみんなはどこかに出掛けて寮に居ないし……」ブツブツ

「しずくちゃんの演劇でも見に行ったら?」

「今から行っても間に合わないでしょ。彼方先輩とか、何人かは見に行ったみたいだけど」

「とにかく、今日はかすみちゃんの遊び相手にはなれないずら」

「アイス奢るから……ダメ?」

「た……食べ物で釣ろうとしても、ダメずらよ」

「ぐぬぬ、今日は頑固だ」

「じゃあ部屋に戻るから、絶対に邪魔しないでね? またダイヤさんたちに目を付けられても、今度は庇いきれないから」

「ちぇー」

───
──


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