【SS】かすみ(21)「大女優の桜坂しずくとスーパーアイドルかすみんが付き合ってるなんて、誰も思わないよね」【ラブライブ!虹ヶ咲・スクスタ】

かすみん SS


6: 2021/01/31(日) 20:47:16.43 ID:K96rq/s3
しずく(21)「あはは…そうかもね。でも大女優なんて恐れ多いよ。まだ新人の方だもん」

かすみ「いや、朝ドラの主演に抜擢されるのは世間で言う大女優だと思うけど」

しずく「たまたまだよ。オーディションの審査員が、前のドラマの現場にいた人でね」

かすみ「でもさ、それってしず子の演技力や人間性が評価されてるってことでしょ?誇っていいんじゃない?」

しずく「…うん、ありがとう」

かすみ「まあ、そんなしず子とこうして一緒にいるのはかすみんなんだけどね」フフン

しずく「………」

かすみ「…え。なに?何か言ってよ」ムッ

しずく「かすみさん、今日どうしたの?…最近会えてなかったから寂しくなっちゃった?」ニコ

かすみ「はぁ!?///そ、そんなわけないじゃんっ//」アタフタ

13: 2021/01/31(日) 20:50:08.48 ID:K96rq/s3
しずく「今夜のえ ち激しかったし…そうかなって」

かすみ「それはしず子もでしょっ///かすみんがまだ髪乾かしてるのに、じゃれてきたのは誰だっけ?」

しずく「え~?誰かなぁ」ニコ

かすみ「ふーん?もう我慢できないよ~って甘えてきたの覚えてないんだぁ」

しずく「う……///」

かすみ「あーあ。かすみんはあったかいベッドでしたかったのに、硬い床で押し倒されて…」

しずく「わ、わかった!もうわかったから…///」

かすみ「何がわかったの?ね~しず子ぉ」グリグリ

しずく「むぅ……いじわる」

かすみ「にひひ、やっぱりしず子の方が寂しかったんじゃん?かすみんの勝ちー」

14: 2021/01/31(日) 20:53:52.52 ID:K96rq/s3
しずく「そんなの…当たり前だよ」ギュッ

かすみ「へっ…」キョトン

しずく「私たち大人になったよね。高校生の時はいつも一緒にいられたけど、今は違う」

しずく「お互いに将来の目標があって、夢があって…だから頑張らなくちゃいけないのはわかってるよ」

しずく「でもやっぱりね、ふとしたときに…どうしようもなく不安になるんだ。胸がきゅぅって締めつけられて…苦しくて…」

かすみ「ん、どうしたの…?」

しずく「あ…ごめん。ひとりごとだと思って。最近寒いから、気が滅入っちゃって…」

かすみ「……あのさ」

かすみ「私はしず子のことが好きだから、こうして一緒にいるの。しず子だから…こういうことも、するんだよ?」

しずく「………うん」

かすみ「かすみんはアイドルだから、女優の仕事のことはわからないけど……辛いときは頼って?しず子の弱いとこもっと見せて欲しい」

15: 2021/01/31(日) 20:57:57.44 ID:K96rq/s3
しずく「…ありがとう。かすみさんは優しいね」ニコッ

かすみ「そ、そんなの…あたりまえじゃん…///」

しずく「それで…あと少しで日付変わるけど、どうしよっか?もう寝ちゃう?」

かすみ「しず子、明日朝から仕事なんだから…そろそろ寝た方がいいでしょ」

しずく「うーん……そうだよね」

かすみ「スケジュール合わせるし、またすぐ会えるって」

しずく「…はぁ。このまま朝がこなければ、かすみさんとずっとこうして抱き合っていられるのにね……」ボソッ

かすみ「……しず子?」

しずく「ごめん、最後にもう一度キスしてもいい…?」

かすみ「…え?何度だってしてもいいよ、恋人なんだから」

しずく「何度も?…ふふっ、それだと終わりどころがわからないよ?♡」

かすみ「あー、そんなこともあった気が…なら1回だけにしよ?」

16: 2021/01/31(日) 21:04:21.00 ID:K96rq/s3
しずく「…わかった。こっち向いて?」

かすみ「ん…」


prrrrrrr!!


しずく「…………」ピタ

かすみ「あ、電話……鳴ってるけど」

しずく「だめ。私だけ見て…」グイッ

かすみ「へっ、んむぅ……///」

しずく「っはぁ……♡かすみさん…すき、だいすき…♡ぁむ……ちゅっ…♡♡」

かすみ「あっ…ぅ、はげし…///んっ……♡」


prrrrrrr!!


かすみ(でなくていいのかな……たぶん、仕事の電話だよね…)

しずく「ふぅっ…… ♡かわいぃ……かわいいよ♡かすみさん……♡」トロン

かすみ(あー、これ……寝れないやつだ)

19: 2021/01/31(日) 21:07:42.56 ID:K96rq/s3
───────


チュン チュン


かすみ「……ん~…しず子ぉ…」ゴロン

かすみ「ねぇ~…かまってよぉ……」スカッ


かすみ「ふぇ……?」 パチ


シーーン


かすみ「……うぐ。しず子早いの忘れてた」


かすみ(はぁ…今何時なんだろ……。11時?)

かすみ(結構寝ちゃった……まあ仕事は夜からだし別にいいけど)

かすみ(それに昨日遅かったから…って、いつ終わったんだっけ。結局、あの後もっかいやった気がするから…えーと……)ボーッ


ガサッ

かすみ「あ……メモ?」ピラッ

20: 2021/01/31(日) 21:11:26.98 ID:K96rq/s3
かすみさんへ♡

おはよう。昨日はごめんね。
テーブルに朝ごはんがあるから、温めてから食べてね。
ダイエットもいいけど、ちゃんと栄養は取らなくちゃダメだよ?
私はドラマの撮影があるから、もう行くね。

愛してるよ xoxo しずく



かすみ「……しず子ってばカッコつけちゃってさ」

かすみ「でも………ふふふ…♡」デレデレ

かすみ「はぁ、幸せだなあ…」ニヤニヤ


ピンポーン


かすみ「びゃぁあああ!?」ビクー

かすみ「こんな時間に…!あ、もう昼か」


ピンポーン


かすみ「もー!ちょっと待ってくださいよ!」ダダッ

21: 2021/01/31(日) 21:15:52.05 ID:K96rq/s3
かすみ「ぁ、モニター見ればいいんだ。居留守使えば…」チラッ


侑(22)「こんにちは~!おーい?」

歩夢(21)「侑ちゃん…帰ろう?出てこないし、お仕事なんじゃ…」

侑「それがね、しずくちゃんが家にいるって言ってたんだよ。おかしいな~」

歩夢「そうなんだ…まだ寝てるのかな?」


かすみ(な、なんで侑先輩と歩夢先輩がかすみんの住んでるマンションに!?)


ピンポンピンポーン

かすみ(こんな急に会えるわけないじゃないですか…!髪ボサボサだしっ…)


侑「おーい!かす…」

ガチャッ!!

かすみ「ちょっとぉ!!部屋の前で名前呼ばないでくださいよ…!」ヒソヒソ

22: 2021/01/31(日) 21:19:42.24 ID:K96rq/s3
侑「あっ!ごめんごめん…!」モガッ

かすみ「全くもう…かすみんはアイドルなんですから、もうちょっと気を使ってくださいよ」プンプン

侑「ほんとだよね~。いやぁ、私ってばうっかり…」

歩夢「あ、あの…かすみちゃん、その格好は…///」

かすみ「なんですかぁ?そんな顔を赤らめて…」

歩夢「えーっと…その……ねえ?侑ちゃん」チラ

侑「冬なのに半袖のTシャツと下着だけって寒くない?…あと、鎖骨あたりに赤い虫刺されがあるけど大丈夫?」

かすみ「あ゙っ………///」カァァ

歩夢「えぇと……私たちしばらくロビーにいるから、支度しておいてくれるかな…?」

侑「え?なに、歩夢?」

歩夢「ほら行くよ侑ちゃん…!」グイッ

バタン!

かすみ(さ、最悪っっ……!!)ドサッ

25: 2021/01/31(日) 21:23:37.32 ID:K96rq/s3
───────



かすみ「ごほんっ…!さっきは失礼しました、どーぞっ」ガチャ

侑「わーい!失礼しまーす!」

歩夢「お邪魔します…!」

かすみ「そ、それにしても~急に来ることないじゃないですかぁ。びっくりしましたよっ、本当に…!」

侑「ごめんね、サプライズだったんだ。それにしても…懐かしいなぁ!いつぶりだっけ?」

歩夢「私たちの成人式のときに、みんなが集まってくれたとき以来かな?」

かすみ「2年前くらいですかね…。てか先輩たち、就活で忙しいんじゃなかったんですか?」

侑「もう2人とも終わったよ。だから暇なんだよね、この時期」

歩夢「侑ちゃんがね、かすみちゃんに会いに行こうって言い出して…でも電話が繋がらなかったから、しずくちゃんに連絡してみたの」

26: 2021/01/31(日) 21:29:15.29 ID:K96rq/s3
かすみ「な、なんでかすみんじゃなかったらしず子なんですか…?」

侑「え?ほら、2人って高校の時から仲良かったでしょ?」

かすみ「へっ?そうですかね~…」

侑「あれ、違ったかなぁ?」

かすみ「それはまあ……かすみんとしず子は親友ですからね。侑先輩がそう思っても不思議じゃないですよ」

歩夢「そういえば、しずくちゃんすごいよね。最近は毎日のようにテレビで見かけるし。朝ドラの主役も決まったんだよね」

侑「しずくちゃんは昔から才能あったもんね~。大学に進学してから入った劇団で、すぐ芸能界にスカウトされたんだっけ?」

かすみ「そうですよ。それも、あの有名芸能人が多数在籍するオハラエンターテインメントですからね!」フフン

侑「ってことは…大学生しながら、女優もやってるの?」

かすみ「はい、単位とるの大変みたいですけど。…かすみんは高校卒業してすぐ芸能界に入ったので、大学のことはあまりわからないです」

28: 2021/01/31(日) 21:32:21.47 ID:K96rq/s3
侑「すごいなぁ…しずくちゃん、忙しいだろうね」

歩夢「かすみちゃんは次の新曲いつでるの?」

かすみ「え?うーんと…そうですね~、もうすぐとしか…」メソラシ

歩夢「そうなんだ…楽しみにしてるね」ニコ

侑「うんうん!私たちね、この前のシングル買ったんだよ!」

かすみ「ほんとですか!?ありがとうございまーすっ♡さっすが先輩方ですねぇ♡」

侑「だって昔からかすみちゃんのこと応援してたからね!これからも頑張ってね♪」ニコニコ

かすみ「あ、はい…!もちろんですよ!」

歩夢「それでかすみちゃん…これって、聞いてもいいのかな?」

かすみ「なんですか~?」

歩夢「パン、目玉焼き、ベーコン、シーザーサラダの横に、ハートマークのカードが置いてあるけど…これは?」

かすみ「どっひゃぁぁっ!!忘れてた…!」

歩夢「あと…色違いのコップが2つ、洗面所には歯ブラシが2つ、玄関にはサイズの違う靴が並んでたけど…」

31: 2021/01/31(日) 21:37:09.21 ID:K96rq/s3
かすみ「あの短時間でどこまで見てるんですか!?歩夢先輩って探偵かなにかでしたっけ…?」

歩夢「ち、違うの…!その、気になっちゃって…///かすみちゃんってね、誰かとお付き合いしてるのかなって…」

侑「えぇぇぇぇ!!誰なの!?」ガタッ

かすみ「ち、違いますよ…!!これは、えぇと…その…!」ブンブン

歩夢「…だよね。かすみちゃんはアイドルだし、そんなわけないよね……」

侑「なーんだ、期待しちゃったよ。ちなみに…このカードには何が書いてあるの?」ピラッ

かすみ「だ、ダメですぅ!!これは見せられません!!」

歩夢「……えっ♡やっぱりそういう関係の人が…」

侑「え!?そうなの!?」ガタン

かすみ「あぁもう…!だから、恋人じゃなくて……しず子ですってば!たまに泊まりに来るんです!」

34: 2021/01/31(日) 21:41:58.59 ID:K96rq/s3
歩夢「…なんだ、しずくちゃんかぁ」ホッ

侑「よかった~。世紀のスキャンダルになるところだったね、かすみちゃん!」

かすみ「先輩方……出版社かどこかに内定決まったんですかぁ?もうやめてくださいよ、そんなわけないじゃないですか。ぷいっ」

侑「ごめんごめん。久々だったから、悪ふざけしたくなったんだ」

歩夢「私も、色々聞いてごめんね。好奇心が勝っちゃって…」

かすみ「いいんですよ、別に。久々に話せて嬉しかったですから!…またスーパーアイドルかすみんに会いに来てくださいね、えへっ♡」ニコッ

侑「わぁ…♡♡かすみちゃん可愛いなぁ!」

歩夢「だって本業がアイドルだもん…スクールアイドルの頃のかすみちゃんとは、違うもんね」

かすみ「……っ!はい、そうですね」メソラシ

35: 2021/01/31(日) 21:48:56.99 ID:K96rq/s3
侑「今日はありがとう!また連絡するね!ばいばーい!」ブンブン

歩夢「お邪魔しました」ニコ

かすみ「次はかすみんに連絡してから来てくださいね!!」

侑「はーい!」


ガチャッ バタン


かすみ「………っすぅ…」

かすみ「やばい、疲れたぁ……」ハァ

かすみ「侑先輩も歩夢先輩も、容赦なさすぎですよぉ…危うくしず子との関係がバレるところだった……」


───

歩夢「だって本業がアイドルだもん…スクールアイドルの頃のかすみちゃんとは、違うもんね」

───


かすみ「歩夢先輩が言ってた言葉……。スクールアイドルのかすみんじゃなくて、今の私はアイドルの中須かすみ…その通りなんですけどね」

かすみ「はぁ。私だって、頑張ってるんだけどな……。努力してるつもりなのに…」

36: 2021/01/31(日) 21:54:45.10 ID:K96rq/s3
かすみ「な、か、す、か、す、み…」ポチポチ


Idolfan@1234
かすみんって子、スクールアイドル出身なのに芽が出ないよね~
最初は期待されてたはずなのにな


Idolfan@8765
歌もダンスも飛び抜けてるわけじゃないからパッとしないよね
過去の動画みたら今とあまり変わらなかったよ、スクールアイドルの延長って感じ


Idolfan@9999
シングルの売上も下がってきてるしそろそろ引退かなw
あの媚びたような声がマジきついわ


かすみ「…きもっ」ボソ

かすみ「かすみんのなにを知ってるんですか…!」

かすみ「はぁぁぁぁ……やっぱエゴサなんてするもんじゃないな…」

かすみ「しず子、今頃仕事してるんだろ…会いたいなぁ…」

37: 2021/01/31(日) 21:58:51.72 ID:K96rq/s3
───────


~都内 某スタジオ~


しずく「──私、あなたの事が好きなんですっ!」

「無理なんだよ!身分が違いすぎる。社長令嬢と、ただのフリーターじゃ…」

しずく「そんなしがらみを捨ててしまいたいと思うほどに、愛してしまったんです。…私じゃ、ダメですか?」

「さくら……俺も、愛してる!」

ギュゥッ

しずく「……嬉しい」

「……君のこと、守ってみせるから」



監督「カーット!2人ともいい感じだな!確認とれたら、みんな休憩挟むぞー」


『了解っすー!』
『はーい!』

38: 2021/01/31(日) 22:01:14.75 ID:K96rq/s3
監督「あ、そうだ。しずくちゃんさぁ…最近いい演技するようになったよなぁ」

しずく「え?あ、ありがとうございます…!恐縮ですっ…」ペコ

監督「なんていうか、少女から女になったような…そんな感じ?恋愛ドラマやらせたら右に出るものないね~」

しずく「いえいえ、そんな…」ニコ

監督「やっぱ私生活が影響してたりする?ほら、彼氏がいるとか」

しずく「……!」ビク

監督「ねぇどうなのよ?誰にも言わないからさ、おじさんにコソッと教えてくれない?」

しずく「い、いえ…いませんよ」ニコニコ

監督「いや~しずくちゃんこんなに可愛いのに、世の中の男が放っておくわけないでしょ!ちなみに芸能界だと、誰に告白されたの?」

しずく「あはは………うーん…」チラ

39: 2021/01/31(日) 22:04:59.39 ID:K96rq/s3
カメラマン「ちょっと監督、清純派の桜坂さんに彼氏なんているわけないじゃないですかー」

美術スタッフ「そうですよ、彼女はまだまだこれからなんですから。ってかセクハラっすよ!」

監督「お前らうるせぇなー!ちょっと気になっただけだろうが!」

しずく「ご期待に添えなくて申し訳ありませんが…私、本当に彼氏いないので」ニコ

監督「なんだ…てっきりそっちの方かと思ったよ。いやぁ、これからしずくちゃんのハートを射止める男が羨ましいぜ~」


しずく「…すみません、お化粧直ししてきますね。失礼します」

俳優「あ、まって桜坂さん」グイッ

しずく「…はい?」

俳優「急にごめん。良かったらなんだけど、今度飯でもどう?会員制の店にするから撮られる心配はしなくていいよ」ヒソヒソ

41: 2021/01/31(日) 22:09:05.92 ID:K96rq/s3
しずく「えっと……スケジュールがまだわからなくて…」

俳優「なにも二人っきりじゃないからさ。俳優仲間連れてくるし、月9やってるプロデューサーとかも来るよ」

しずく「そうなんですか…」

俳優「こういうとこで交友関係広げとくのって、大事だと思うけどなぁ」

しずく「……あの、考えさせてください…」

俳優「そっか、じゃあ連絡先だけ交換しようか。また返事してね」

しずく「わかりました」


ピッ

俳優「ありがとう!じゃあ休憩終わりにまた」スタスタ

しずく「はい、お願いします」ニコッ


しずく(……うぅ。どうしよう)

47: 2021/01/31(日) 22:16:35.08 ID:K96rq/s3
ピロン♪

しずく(あっ…LINEだ。かすみさん?)


かすみ<家に侑先輩と歩夢先輩がきたんだけど!

しずく<うん、聞かれたから

かすみ<正直に答えすぎ!まあいいけど、楽しかったし

しずく<ごめん…朝ごはんは食べた?

かすみ<うん。でも目玉焼きそこそこ焦げてた

しずく<え!そうだったの。ごめんね、寝ぼけてたんだと思う

かすみ<別にいーけど!しず子の作ってくれるものはなんでも美味しいし

かすみ<ねぇそれよりさ、今夜もうち来る?仕事そんなに遅くならないし

しずく<スケジュール詰まってて難しいかも。今日も深夜まで仕事なの

かすみ<そっか。ごめん。また連絡するから!


しずく(…怒っちゃったかな?)

しずく(早く仕事が終わればな…。私だって会いたいよ…)

48: 2021/01/31(日) 22:22:36.52 ID:K96rq/s3
───────


~お台場芸能事務所~


かすみ「…しず子、今日も忙しいんだ」

かすみ「はぁ……つまんないの」クタリ


かすみ(昨日会ったのがそもそも2週間ぶりだったし…次はいつになるのかな)


マネージャー「ごめん、お待たせ」ガチャ

かすみ「あ、おはようございます」

マネージャー「今からの仕事だけど、うちの事務所の子が体調不良で休んじゃったから代打でラジオ出てもらっていい?」

かすみ「あれ、今日はレコーディングするってこの前言ってませんでした?」

マネージャー「うーん…上層部の判断で、アリスちゃんのシングルを先に発売するみたい。だからちょっと待ちで」

かすみ「アリス……またあの子ですか…」

マネージャー「仕方ないよ。百年に一度とかいわれてるルックスの現役高校生アイドルで、人気急上昇中なんだし」

49: 2021/01/31(日) 22:25:56.14 ID:K96rq/s3
かすみ「わかってますよ。需要の優劣くらい…悔しいですけど」

かすみ(ま、可愛くて人気はあっても、性格が最悪なんだよねその子…)

かすみ(うちの事務所そんなに大きくないのに社長がどこからか拾ってきて、あっという間に売れたスーパーアイドル…)

かすみ(ぶっちゃけ面白くないけど……今のかすみんとあの子じゃ、比べ物にならないくらい人気差があるし)


マネージャー「じゃあラジオ局行くから、メイク終わったら来てね」

かすみ「はーい」

マネージャー「ロビーで待ってるよ」スタスタ


ガチャッ

アリス「わぁ♡おはようございます♡」

マネージャー「うわ、アリスちゃん!?ごめんね!すぐ出ていくから」

50: 2021/01/31(日) 22:28:33.16 ID:K96rq/s3
アリス「気にしなくて大丈夫ですよぉ。アリス、メイク直しに来たんですからぁ♡♡」キラキラ

マネージャー「はぁ…可愛い……じゃなくて、仕事仕事!!」ダダッ


アリス「…うふっ♡あの人わかりやすくてかわいい♡」

かすみ(うわ、時間被るとかついてない…。トイレでメイクすればいっか)


アリス「あっ、せんぱーい♡おはようございまぁす♡少しお話しませんかぁ?」

かすみ「……なに?」

アリス「むむ?あれれ?元気ないですねぇ…どうかしたんですかぁ?」

かすみ「別になんでもないですよ。じゃあ」

アリス「もしかして…後輩のアリスが順番に割り込んじゃったから、怒ってます?♡」

かすみ「……!」

アリス「最近はMV作るの大変じゃないですかぁ。お金も人もたくさんいるし。社長は先輩より私の方が価値があるって判断しただけですよ?」

51: 2021/01/31(日) 22:31:41.27 ID:K96rq/s3
かすみ「……っち…」

アリス「あ~こわぁい♡ファンの前ではあんな顔してるのにぃ、裏では舌打ちとかしちゃうんだぁ」

かすみ「いまチヤホヤされてるからって、勘違いしない方がいいと思うけど」

アリス「……ふぅん。それ、実体験ですよね?」

かすみ「──っ、」ビク

アリス「スクールアイドルとか知りませんけどぉ、少しキャーキャー言われたくらいで勘違いして、芸能界に入ってきた先輩のありがたいお説教ですかぁ?」ニヤニヤ

アリス「可哀想ですよね…。今までのやり方が通用しなくて。でも当たり前ですよ?アマチュアとプロは"違う"んですから」

アリス「今までに芸能界で活躍されてるスクールアイドル出身の方は何人かいますけど……先輩、その中の一員になれてるんですかぁ?」

かすみ「……っ…」ギリ

52: 2021/01/31(日) 22:34:42.94 ID:K96rq/s3
アリス「そうですね~。例えば…女優の桜坂しずくさんとか?向こうはうちよりも大手事務所だし、褒めるのは癪ですけど…最近グイグイきてますよね…」

アリス「やっぱり生まれ持った才能ですかね?そういう人って羨ましいなぁ…努力しなくてもできちゃうんだから」

アリス「でもああいう女ほど、裏で何してるかわかんないですよね。可愛い顔してるけど腹黒そ~。清純派女優って看板がまず嘘っぽいし♡」キャハ

かすみ「……にを、知ってんの」

アリス「はい?」キョトン

かすみ「だからっ、桜坂しずくの何を知ってそんなこと言えんの!?」

アリス「……あはは…え…?なんですか?急にマジになっちゃって…」

かすみ「生まれ持ったものがあるって…それアンタのことですよね。実力がない分、若さと顔の良さだけで売ってるんだから」

53: 2021/01/31(日) 22:37:22.53 ID:K96rq/s3
アリス「…ぁ?」ピキ

かすみ「そんな人間が…寝る間も惜しんで努力してる人のこと馬鹿にするなんて、笑えるって話ですよ」

アリス「…ふっ、ふふふふ……危なぁい…ついブチ切れそうになりましたぁ……。セーフですぅ♡」ニコニコ

かすみ「ケンカ売ってきたのはそっちなんだから、謝りませんよ」フイッ

アリス「ふーん……なるほどなるほど…。わかりましたよ、思い出しましたぁ。そういえば先輩って桜坂しずくと一緒の高校でしたねぇ」

かすみ「……!」

アリス「だからそんなに怒ってるんですね?でも、今の私たちはアイドルであり"商品"なんですよ」

アリス「他人の肩を持ってあげたところで、自分の売上や人気があがるわけじゃない。桜坂さんは女優として成功してるのに、先輩はそれでいいんですかぁ?」

54: 2021/01/31(日) 22:41:41.70 ID:K96rq/s3
アリス「…馴れ合うのは結構ですけど、一応プロなんですから、そこは忘れないでくださいねぇ?」

かすみ「……ほんっと、嫌な女!」

アリス「あ、ちょっと…!」


ガチャッ バタン!


アリス「…ありゃ、行っちゃいました」


アリス(それにしても先輩の反応…不思議ですねぇ、すっごく怖い顔してましたし。あんな顔初めて見ましたぁ)

アリス(ただの旧友に対するものじゃないような…なんでしょう?)

アリス(ふふっ。アリス気になっちゃう♡)

アリス(ちょっと探りを入れてみますか…優位に立つには弱みを握るのが一番っていいますし)

86: 2021/02/01(月) 21:08:30.92 ID:MND1RLNk
───────


~数日後・オハラエンターテイメント~


マネージャー「しずくちゃん、今からするCM撮影なんだけど…実はコラボ企画でね」

しずく「コラボ、ですか…?」

マネージャー「世界的に有名なファッションデザイナーでね。スクールアイドル繋がりで、オファーがきたんだよ」

しずく「スクールアイドル??」


ガチャッ


??「失礼しま~す♡」

マネージャー「あ、本日はよろしくお願いいたします!」


ことり(28)「こんにちは~南ことりです♡」

しずく「…!桜坂しずくと申しますっ」ペコ

しずく(わぁ…綺麗な人だなぁ…//)

87: 2021/02/01(月) 21:11:58.61 ID:MND1RLNk
ことり「や~ん♡可愛い…♡いまおいくつですかぁ?」グイッ

しずく「ひゃぅ…///あの、21ですっ」

ことり「そっかあ、まだまだこれからだね♪いいなぁ~」

しずく「え?でもあの…南さんも、同じくらいの年齢ですよね…?」

ことり「もう、お世辞うまいなぁ…♡私は28だよ?」

しずく(えっ…若い……!)

ことり「桜坂さんには、私がプロデュースしたお洋服をPRしてもらおうと思ってます♪」

しずく「精一杯がんばります…!」

ことり「うふふ♡どんな服にしようかなぁ…うーん…♡そうだなぁ」

しずく「…あの、少しだけ聞いてもいいですか?」

ことり「うん?いいよっ♡」

88: 2021/02/01(月) 21:16:25.85 ID:MND1RLNk
しずく「南さんもスクールアイドルだったんですよね…?その、失礼なんですけどグループ名とか…」

ことり「えっと、音ノ木坂学院のμ'sっていうんだ~。UTX学園のA-RISEってグループと同じ時期に活動してたんだよ♪」

しずく「A-RISEって、2年前に解散したあのA-RISEですか…?」

ことり「うん、そうだよ。私たちもプロにならないかって誘われてたけど…スクールアイドルでいることを選んだから」ニコ

しずく「……そうなんですね」

ことり「その頃からかなぁ。スクールアイドル出身の子が芸能界で活躍し始めたのは…」

ことり「もう引退しちゃったけど、スクールアイドルからソロのアイドルになった矢澤にこちゃんも、μ'sのメンバーだったんだよ」

しずく「矢澤さん…。あ、にっこにっこにーの人ですね!かすみさ……友達から聞きました。今は芸能事務所を運営されてるとか」

ことり「矢澤プロダクションってところだよ。今じゃ大手事務所だよね。アイドルの子がたくさん在籍してて…」

89: 2021/02/01(月) 21:19:31.77 ID:MND1RLNk
ことり「そうだ。しずくちゃんのお友達で、芸能活動している人はいるの?」

しずく「はい!私と同じ事務所に、朝香果林さんという方がいて…高校時代の先輩なんです。今はモデルをされていますね」

ことり「果林ちゃんとはお仕事で何度かご一緒したことあるよ。そうなんだ、しずくちゃんのお友達だったんだね~」

しずく「最近は海外でお仕事されてるので、会う機会は少なくなってしまいましたが…」

ことり「私が会ったのもイタリアのファッションイベントだからね。すごく可愛らしい人だったよ♪」

しずく「あと、もうひとり……中須かすみさんって子がいて、彼女はソロでアイドルをしてるんです」ニコ

ことり「ソロアイドル……?」

しずく「はい。すごく可愛いんですよ」

ことり「あのね、さっきニュースでやってたんだけど……その子がグループに所属するって」

しずく「……え?」

ことり「ほら、これ…」

90: 2021/02/01(月) 21:22:28.24 ID:MND1RLNk
【速報】
お台場芸能事務所が人気急上昇アイドルのアリスを筆頭に、所属のソロアイドルで5人グループを結成すると発表!
メンバーはアリス、中須かすみ…


しずく「うそ……何も聞いてない…」

ことり「今はアイドルの数が多いから、ファンの取り合いになってるもんね。グループで売り出した方がいいってなったのかなぁ」

しずく「……この事務所って、最近人の出入り激しいですよね」

ことり「うん、そうだね。芸能界は基本的にそうかもしれないけど、ここは特にすごいよね」

ことり「私のお友達に聞いた話によると、所属タレントを駒にしか見てないって…。本人の意思や想いなんてものは、尊重されないみたい」

しずく「…私たちは、ソロのスクールアイドルとして活動してたんです。それを今更になって、彼女が方針転換するなんてありえません」

ことり「心配してるの?」

しずく「へ?あの……えっと…」

ことり「……いいよ?電話してきても」

しずく「えっ。いや、でも今はお仕事が」

ことり「お友達なんでしょ?そういう繋がりは、大切にした方がいいよ♡」ニコッ

しずく「……すみません、すぐに戻ります!」ダダッ


ことり「…ふふっ♡いいなぁ♡」

マネージャー「あ、あのすみません…!うちの桜坂が仕事に私情を…」

ことり「構いませんよ~。親友は大切にした方がいいって、私が一番よく知ってるんですから♡」

91: 2021/02/01(月) 21:26:04.06 ID:MND1RLNk
───────



かすみ『…もしもし、しず子?』

しずく『かすみさん…今、電話大丈夫?』

かすみ『うん。事務所にいないから』

しずく『え?どこにいるの』

かすみ『近くにある喫茶店……ムカついたから、飛び出してきちゃった』

しずく『やっぱりあのニュース、本当なんだね』

かすみ『うん。もう決まってたらしくて、さっき聞かされた。ニュースになる1時間前くらいかな…もうすぐ記者会見もあるし』

しずく『……そんなの、酷いよ。かすみさんがどんな想いでやってきたか…事務所の人がよくわかってるはずなのに』

かすみ『仕方ないじゃん。かすみん、人気ないんだから』

しずく『っ、そんなこと……』

かすみ『もういいよ、気を使わなくても。……ごめんね?しず子、仕事の話しないようにしてくれてたのに』

92: 2021/02/01(月) 21:30:26.18 ID:MND1RLNk
しずく『……かすみさん、私っ』

かすみ『でも、いいの。かすみんがアイドルであることには変わりないんだし。グループでも何とかやってくよ』

しずく『………』

かすみ『…まっ、あのグループの中で一番可愛いのはかすみんだから!任せといて!』

しずく『…辛いことがあったら、相談して』

かすみ『ありがと!しず子優しい~』

しずく『本当はね…今日の仕事全部放り出して、かすみさんに会いに行きたいよ』

かすみ『っ、そんなの絶対ダメ!しず子は、 ちゃんと女優のお仕事しなよ!』

かすみ『かすみんは、しず子がキラキラしてる姿を見るのが大好きなの。毎日頑張ってることも、知ってるから』

しずく『…うん』

かすみ『……あ、そうだ。来週の月曜日まだ空いてる?確認したら私も休みだったから』

しずく『待ってね、えーっと……うん。空いてるよ』

93: 2021/02/01(月) 21:37:01.05 ID:MND1RLNk
かすみ『りょーかい。じゃあまたその日にね。……ばいばい』

しずく『うん…また』ピッ



しずく(かすみさん、強がってたけど絶対落ち込んでるよね…?)

しずく(…ううん。そうじゃなくて、心機一転グループでやっていこうとしてるのかも)

しずく(きっとそうだ。はぁ…かすみさんはこんなにも前向きに努力してるのに、私って……)

しずく(いつまでも甘えてちゃいけないのはわかってる。でも、心がまだ大人になりきれてない)

しずく(かすみさんは女優という夢を叶えてる私が好きで、こんなにも応援してくれてるのに。弱気になってる暇なんてない…もっと頑張らなきゃ……)


ピコン♪

俳優<お疲れ様。この前の話、決めてくれた?


しずく(……以前の私なら、愛想笑いで誤魔化して、こんなの参加しようとも思わなかった)

しずく(でも…私も、変わらなきゃいけないんだ……)ポチポチ


しずく<行かせていただきます

俳優<ほんと!?嬉しいよ!時間と場所は他のみんなと調整するからね!

しずく<はい。次の撮影の時に、また聞かせてください


しずく「……よし。今日も頑張らなくちゃ」

96: 2021/02/01(月) 21:44:05.78 ID:MND1RLNk
───────


~1時間後・璃奈のマンション~


記者「それでは!新生アイドルグループ、シャノワールの皆さんです!」

ワーワー!! キャー!!


璃奈(21)「あ、始まった」

愛(22)「え!?ちょっと待ってー!」ピコピコ

璃奈「…そのゲーム、楽しい?」

愛「りなりーが勧めてくれたやつだよ?ちなみに、めっちゃ面白い!」

璃奈「そっか、よかった」

愛「セーブセーブっと…!」


アリス「みなさん、本日はお集まりいただきありがとうございまぁす♡」フリフリ

記者「突然の発表に、SNS上では驚きの嵐でしたね!」

アリス「嬉しいですぅ♡」

97: 2021/02/01(月) 21:47:29.39 ID:MND1RLNk
記者「グループ名の由来などあれば、聞いてもよろしいですか!?」

アリス「シャノワールは、フランス語で黒猫って意味なんです。黒猫が不吉だというのは迷信で、本来は幸運の象徴とされているんですよ♡」

記者「なるほどなるほど!それではファンにメッセージをどうぞ!」

アリス「ファンの方々を始め、みーんなに応援してもらえるように頑張りますので、よろしくお願いしますね♡」キラリン


璃奈「う……なんかこの人、苦手…」

愛「えーそうかな?すっごくアイドルって感じじゃない?」

璃奈「それは確かに…。でも、かすみちゃんの方が、魅力的」

愛「あれ?かすかす、なんか浮かない顔してるね」

璃奈「…ほんとだ。心配」

98: 2021/02/01(月) 21:52:18.20 ID:MND1RLNk
愛「やっぱりソロからグループって、不安だよね。うちらの同好会はずっとそうだったんだし」

璃奈「でも…ううん。きっと、かすみちゃんなら大丈夫だと思う」


記者「…それでは、次はかすみんに質問です!このグループで、これからどうしていきたいですか!?」

かすみ「え~っとお、かすみんの魅力をいっぱい出していこうかなって思います♡それこそ、かすみんしか見えなくなっちゃうくらいに…♡」キュルン

記者「おぉ、さすがはかすみんですね!」

アリス「……」ニコニコ


愛「わお、かすかすやるね~」

璃奈「…うん。すごい」

愛「見習って、愛さんも卒研頑張らないとな~。りなりーも研究ファイト!」

璃奈「あう…そうだった」ガク

100: 2021/02/01(月) 21:56:25.63 ID:MND1RLNk
愛「みんながそれぞれの道に進んでるのを見るとさ、自分もやるぞ~ってなるよね!」ニコ

璃奈「……うん。今は離れ離れだけど、みんなの気持ちは繋がってる。負けないようにがんばる」

愛「りなりー……大人になったねえ。よぉし、愛さんが抱っこしてあげよう!」ギュウウ

璃奈「わ、わわっ……//」

愛「そいえば、こういうとき璃奈ちゃんボードだとなんて言ってたっけ?」

璃奈「……てれてれ?」

愛「あ~それそれ!もうボード使わなくなっちゃったから、忘れてたよ」

璃奈「やっぱり、変かな…?」

愛「そんなことない!りなりー、ちゃんと笑えるようになったじゃん?」

璃奈「…そうかな?久しぶりに愛さんのダジャレ聞いたら、笑えるかも」

愛「おっ、それなら…今日も寒いし温かい飲みもの飲みたいよね~。ホットする!なんつって」

璃奈「……璃奈ちゃんボード、うむむ」

愛「ありゃ、厳しいなぁ!ゆうゆなら今の爆笑だったのに~」

123: 2021/02/02(火) 19:07:29.55 ID:U++IzXJJ
───────


~都内 某テレビ局~


マネージャー「じゃ、今から深夜のバラエティ番組の収録だから。よろしく」

他メンバー「記者会見終わったばっかなのに~…」

マネージャー「今が頑張り時だろ?じゃあ先方と挨拶してくるから準備しとけよ」スタスタ


かすみ(ソロからグループになって、目に見えて忙しくなった。気に入らないけど…今は耐えるしかないよね)

アリス「せんぱ~い?さっきのはどういう事ですかね?」ピキピキ

かすみ「え、なにが?」

アリス「記者会見ですよ。私より目立たないでくださいねって、お願いしましたよねぇ!」

かすみ「別に目立とうと思ってやってませんけど?…それでもそう見えたなら、それはもうかすみんのオーラが強すぎたんですねぇ」

アリス「くぅぅぅぅぅ…!!!」ギリ

124: 2021/02/02(火) 19:11:29.12 ID:U++IzXJJ
かすみ「あーあ、つかれた。休憩しよっと」

他メンバー「まぁまぁアリスちゃん。この後すぐ収録なんだし、仲良くしようよ…」

アリス(中須かすみ…!絶対に、その鼻を折ってやるんだから…!!)


ガチャッ

スタッフ「すみません!こっちの手配ミスで、楽屋が足りなくて…他の出演者と合同で使っていただけますか?」

アリス「はい?いいですけど……」

スタッフ「あ、他の方といっても同じアイドルチームとしてご出演いただく人ですので…」ペコペコ


トコトコ


他メンバー「うそ…!あの人って、今のアイドル界を牽引してる超人気ソロアイドルの…」

アリス「く、黒澤ルビィ……」ボソッ

125: 2021/02/02(火) 19:14:16.33 ID:U++IzXJJ
ルビィ(24)「…おはよう」

他メンバー「お、おはようございますっ!!」ペコ


トコトコ ストン

かすみ(少し離れた椅子に座って、こっちに背を向けちゃったけど……ルビィさんどうしたんだろう?)

かすみ(なんか、テレビで見る印象と違うような…)


他メンバー「あの、みんなで挨拶しにいきませんか?」

アリス「あ、うん…そうね」


アリス「お台場芸能事務所の、シャノワールでーす♡本日はよろしくお願いいたしますぅ♡」 ペコ

他メンバー『よろしくお願いします!』ペコ


ルビィ「……うゆ」コクン

ルビィ「矢澤プロダクションの、黒澤ルビィ。よろしく」

アリス「は、はいい♡それではまた、本番で…」ニコニコ

126: 2021/02/02(火) 19:18:35.76 ID:U++IzXJJ
ルビィ「……」スチャッ


かすみ(え、今度はイヤホンつけて…読書?)

かすみ(噂には聞いてたけど、ルビィさんって馴れ合わない人なんだ…。昔は明るい人だったらしいけど)


アリス「……なによアイツ。お高くとまっちゃって、むかつく」ボソッ

他メンバー「アリスさん、ここじゃまずいですよ」

アリス「どうせ聞こえやしないわよ」

かすみ「…なにイラついてるの?」

アリス「はぁ?こっちが聞きたいですよ。悔しくないんですか、こんな風に圧倒されて…!」

アリス「私たちが目指すべきはアイドルの頂点。そのためには、現時点でその場所にいるあの人を倒さないといけないってのに…」

かすみ「…あぁそういうこと」

アリス「先輩、私の足引っ張らないでくださいね。そもそも…このグループはアリスのためにできたようなものなんですよ?」

127: 2021/02/02(火) 19:23:28.15 ID:U++IzXJJ
アリス「つまり、先輩を始めとした皆さんには、ちゃんとバックダンサーを務めてもらわないといけないんです」

かすみ「はいはい…」


スタッフ「すみませーん、現場入りお願いしまーす!」

アリス「わかりましたぁ♡さ、行くわよ!」 タッ

他メンバー「はーい!」ゾロゾロ


かすみ(こんな毎日続くと思うと…頭がおかしくなりそうだよ)

かすみ(でも…頑張らなきゃ。しず子に負けないように…しず子にふさわしい私でいられるように)


ルビィ「ねぇ」

かすみ「ひぅっ……ぇ、かすみんですか?」

ルビィ「うん。今あなたしかいないよね?」

かすみ「えっと、その…なんでしょう。かすみん何かしましたか」ヒキツリ

ルビィ「初めて私と会った時のこと、覚えてる?」

128: 2021/02/02(火) 19:27:25.47 ID:U++IzXJJ
かすみ「ルビィさんとかすみんが?………あっ」


かすみ(そうだ…思い出した。あれは確か、かすみんがデビューしたばかりの頃)

かすみ(ルビィさんのファンだったかすみんが、楽屋に押しかけて…勝手に挨拶して…)

かすみ(尊敬してますって、ルビィさんのようなアイドルになりますって言って…マネージャーさんにめちゃくちゃ怒られたんだ)


ルビィ「…思い出したみたいだね。まぁ無理もないよ、3年くらい前のことだもん」

かすみ「あ、あの時は…失礼言ってすみませんでした!!」ペコッ

ルビィ「そんなのはもういいよ。私が聞きたいのは別のこと……なんでまだアイドルやってるの?」

かすみ「…はい?」キョトン

ルビィ「楽しくなさそうだし、嫌々やってるように見える。だから、それでも続ける理由なんだろうなって思って」

かすみ「そ、そんなわけないじゃないですか。かすみんはアイドルになりたくて…この世界に入ったんですよ。夢を叶えるのに理由が必要ですか?」

ルビィ「ふぅん。憧れのアイドルになれて、それで満足しちゃったんだ。……その程度なんだね」

129: 2021/02/02(火) 19:31:32.37 ID:U++IzXJJ
かすみ「……えっ」

ルビィ「目標もなくただ毎日を過ごしてるだけのあなたは、つまらないって言ってるんだよ」

かすみ「そんなことっ……」

ルビィ「そんなこと?なに?」

かすみ「あっ…う……」

ルビィ「ほら言い返してみなよ、中須かすみさん。何のためにアイドルやってるのか教えてよ」

かすみ「わ、私は……大切な人のために、アイドルやってるんです。その気持ちに嘘はないし、手を抜いたことだってないです!」

ルビィ「……大切な人?」

かすみ「…はい。私はその子に褒められたくて、笑って欲しくて……少しでもその子に近づきたくて、アイドルやってるんです。だから、」

ルビィ「へぇ……。じゃあその人とは、もう会わない方がいいね」

かすみ「ルビィさん…?なに、言って……」

ルビィ「だってその人、あなたを腐らせるだけだから」

130: 2021/02/02(火) 19:35:21.74 ID:U++IzXJJ
かすみ「………っっ…」ドクン

ルビィ「どうしたの?すごく動揺してるけど…図星だった?」

かすみ「いくら先輩でも…いっ、言っていいことと、悪いことがありますよ……!!」

ルビィ「本当のことを教えてあげただけだよ。心当たりが無いなら、なに言ってるんだって嘲笑う場面でしょ?」

かすみ「適当なこと言わないでっ…!!」

ルビィ「もうわかってるんでしょ?その子は、あなたにとって都合のいい逃げ場なんだよ」

かすみ「ちが……」

ルビィ「…いつまでそこで足踏みしてるつもり?スクールアイドルをやっていた頃のあなたは、もっと輝いてたよ」

かすみ「ルビィさんにっ…何がわかるんですかっ…!私の苦しみも、痛みも、わからないくせに…!」

ルビィ「あなたのことはスクールアイドルの頃から知ってたし、高校卒業という節目で音楽を辞めず、芸能界に入ってくれたのは嬉しかったよ」

ルビィ「そんなあなたが私の前で大きな夢を語ってくれたとき…思ったんだ。こうやって、次のスターが現れるんだなって」

ルビィ「…だからね、心底失望したんだよ。上に登ってこようともせず、ずっとぬるま湯に浸かってるあなたに」

かすみ「勝手に期待して、幻滅して……あげく、私の人生まで否定するつもりですか…!?」

131: 2021/02/02(火) 19:38:03.83 ID:U++IzXJJ
ルビィ「……確かにそうだね。あなたから見れば、私は嫌なやつだね」

ルビィ「…うん。もう何も言わないよ。でも不快な気持ちにさせたお詫びに、アドバイスさせて」

ルビィ「お互いを高め合えない関係は、負の連鎖しか生み出さない。手遅れになる前にそんなものは…」

かすみ「──っ!それ以上、口を開くなら…」 ガタッ

ルビィ「殴りたいならそうしなよ。でも頭に血が上って手が出るようじゃ、まだまだ子どもだね」

かすみ「ぐっ……」


ガチャッ

スタッフ「おふたりとも!本番近いので、よろしくお願いしまーす!」


ルビィ「…引き止めて悪かったね。いこっか」

かすみ「ルビィさんのこと…アイドルとして、尊敬してました」

ルビィ「………」

かすみ「でも、もう今は敵にしか見えません。……さよなら」

ガチャ バタン


ルビィ「……ルビィも、お姉ちゃんを言い訳にしてた頃は…あの子みたいに苦しかったんだろうな…」ポツ

132: 2021/02/02(火) 19:41:28.38 ID:U++IzXJJ
───────


~某スタジオ~


監督「おい、次のセット早く入れろよ!」

スタッフ「すみません!!」

監督「…ったくよぉ!ちんたら仕事してんじゃねーぞ!」


しずく(今日の現場、長いなぁ…)ボーッ

しずく(あ、薬飲まなくちゃ。時間経つの早くてすぐ忘れちゃう…)


~~~~~~


男性医師「そうですね。やはり、自律神経の乱れによる睡眠障害だと考えられます」

しずく「…そうですか」

男性医師「他にも食欲不振や、慢性的な頭痛があるとのことですが…過労が原因ですね」

しずく「うーん…。でも私、そんなに疲れていません」

男性医師「あなた自身がそう思っていなくても、身体は疲れているということですよ」

男性医師「とりあえず、お薬を出しておきますね。必ず分量を守って服用してください。あと、ストレスを抱え込まないように」

しずく「はい、ありがとうございます」


~~~~~~

133: 2021/02/02(火) 19:45:16.89 ID:U++IzXJJ
しずく(メイクさんに目の下のクマを指摘されて、芸能界でも有名な総合病院を受診してみたはいいものの…)

しずく(先生の言う通り薬を飲んではいるけど、正直、効果があるのかすらわからないよ…)


俳優「しずくちゃん、お疲れ様。今日もハードだね」

しずく「わっ…はい!お疲れ様です」ニコ

俳優「隣座っていい?あ、その薬…」

しずく「これは…その、最近疲れやすいみたいなので、病院でもらったんです」ガサッ

俳優「西木野総合病院か。俺も前に足をやった時、お世話になったよ」

しずく「そうなんですね……」

俳優「それよりさ、桜坂さん。プライベートは何してるの?趣味とか聞いてもいい?」

しずく「家ではよく台本を読み込んでます。趣味は演劇鑑賞とか…」

俳優「偉いなぁ。でも仕事に真面目すぎると、息が詰まっちゃうよ」

しずく「好きでやってることなので、平気です」

俳優「そっか。そういうとこ、尊敬しちゃうな」

134: 2021/02/02(火) 19:50:26.66 ID:U++IzXJJ
しずく「あの…懇親会のことですけど」

俳優「あ、そうそう。日程決まったよ。来週の月曜日でどう?」

しずく(来週の月曜……って、かすみさんと会う約束してた日だ…)

俳優「桜坂さんのマネージャーさんに確認取ったら、その日オフだって聞いたから」

しずく「あ、あの……その日は家族と予定が」

俳優「いやぁ…月9のプロデューサーがさ、桜坂さんが来るって知ったとたん盛り上がっちゃって」

俳優「桜坂さんってこういうのにあんま参加したことないでしょ?だからみんな楽しみにしてるみたいなんだ」

しずく「………」

俳優「桜坂さんを呼んだ俺の面子もあるし…もちろん、来てくれるよね?」ニコ

しずく「……わかり、ました」ニコ

俳優「ありがとう。詳細はまたLINEで送るけど、タクシー使って地下駐車場で降りてね」

俳優「店はクラブだからドレスコードよろしくね。それと次の日に仕事ある人が多い関係で、昼過ぎから始めようと思ってるんだ」

しずく「…はい。よろしくお願いします」

俳優「こちらこそ。じゃあ後半もよろしく」スタスタ

135: 2021/02/02(火) 19:55:05.14 ID:U++IzXJJ
しずく(……かすみさん。ごめん)

しずく(電話で伝えようかな……ううん、ちゃんと話せる気がしない…)ポチポチ


しずく<来週の月曜日、急に仕事が入って会えそうにないの。ごめんね


しずく(既読はつかない…あたりまえだよね。もう夜中だし、今頃は夢の中かな)


監督「よし、次テイクで終わらせるぞ!巻きで!!」

『はーい!!』


しずく「行かなきゃ……っ、あれ…」フラッ

しずく(眩暈が……以前まではこんなことなかったのに…)


俳優「桜坂さん、大丈夫!?」

しずく「あっ……すみませんっ、もう平気です…」

俳優「無理しないでよ。俺は君のこと、大切に思ってるんだから」

俳優「…もちろん、役者仲間としてね」

136: 2021/02/02(火) 19:58:17.04 ID:U++IzXJJ
───────


~翌日・かすみ宅~


かすみ(……そっか、会えないんだ)

かすみ(なんて返信しよう。気にしないで?仕事なら仕方ないよね?……寂しいから会いたいよ?)

かすみ(だめ、最後のはナシ。しず子を困らせるだけだもん)


かすみ「はぁ……今週は色々ありすぎたから、しず子に相談したかったんだけどな…」

かすみ「時間をみて電話すれば、話す機会は持てるけど…」

かすみ「……いや、でもただでさえ忙しいしず子に迷惑かけたくないし…やめた方がいいよね」


かすみ(とりあえずなにか返事を…)

ピロン


しずく<本当に、ごめんなさい

137: 2021/02/02(火) 20:01:42.53 ID:U++IzXJJ
かすみ(あ、やば。既読スルーしてた)


かすみ<いや気にしてないってば!電話きて返せなかっただけ

しずく<また埋め合わせはするから

かすみ<それより元気なの?ちゃんとご飯食べてる?

しずく<食べてるよ。コンビニで買ったものばかりだけど

かすみ<家にちゃんと帰れてるの?

しずく<うん。お風呂入ってすぐ寝るだけなんだけどね

かすみ<そっか

しずく<じゃあ、またね。今日は大学なの

かすみ <気をつけてね


かすみ「…よし決めた。来週の月曜日、しず子が家に帰ってきたらびっくりさせちゃお」

かすみ「掃除、洗濯、料理……全部やってあげたらしず子、なんていうかな」ニンマリ

139: 2021/02/02(火) 20:05:31.90 ID:U++IzXJJ
───────


~数日後・都内高級クラブ~


『乾杯ーっ!』


金髪の男「本日はお集まりいただきありがとうございます!会場貸切の会員制ですので、どうぞ安心してお楽しみ下さい!」


しずく(昼間から、こんなところでお酒だなんて……悪いことしてるみたい)


俳優「桜坂さん。グラス空いてるよ」カチャ

しずく「…ありがとうございます」ニコ

俳優「来てくれて嬉しいよ。でも、居心地悪そうだね」

しずく「その…私、あまりこういう経験がないので気後れしてしまって」

俳優「無理もないよ。各界の著名人がたくさんいるもんね。俺も最初は驚いたけど人脈は築けるし、何より楽しいし、いい事づくめだよ」

しずく「はい…名刺もたくさんいただきました」

俳優「桜坂さんは美人だし、人柄もいいし、仕事には困らないと思うけどね」

しずく「お世辞でも、嬉しいです。ありがとうございます」ニコ

俳優「お世辞じゃないよ。本当に、可愛いと思ってるよ。……ねぇ、しずくちゃんって呼んでもいいかな?」

しずく「へっ……?構いませんけど…」

140: 2021/02/02(火) 20:10:30.97 ID:U++IzXJJ
俳優「ありがとう。しずくちゃんは、どういう男が好みなの?」

しずく「えぇと……あまり考えたことなくて」

俳優「筋肉質な男かな?それともスレンダーな男?…顔は、イケメンがいいよね。ちなみに、俺の顔はどう思う?」

しずく「その…かっこいいと思いますよ。役者さんですし、当たり前かもしれませんが」

俳優「俺はさ…君みたいに可憐で、優しくて、清純な女性が好きなんだよね」

しずく「…なんですか、急に」

俳優「ねぇ…俺たち付き合わない?しずくちゃんのこと絶対幸せにするし、大事にするから」ギュッ

しずく「あのっ、困ります…!」

俳優「…だめかな?彼氏いないんでしょ?」

しずく「いませんけど…でも、」

俳優「俺たち世間でお似合いのカップルになれるよ。しずくちゃん、素直になってよ」

しずく「……私、好きな人がいるので」

俳優「………え?」

しずく「だから、ごめんなさい」

俳優「……あ、あははっ……そうなんだ…。それって誰か聞いてもいい?」

しずく「…言えません」

俳優「……そっか、いや、ごめんね。さっきのことは忘れてよ」ニコ

しずく「……いえ、こちらこそすみません…」

俳優「じゃあせめてさ、役者仲間として…お酌に付き合ってくれる?」

しずく「…はい、もちろんです」ニコ

142: 2021/02/02(火) 20:14:06.73 ID:U++IzXJJ
───────


~夕方・しずく宅~


かすみ「お邪魔しまーす…」ガチャ

かすみ「まぁ、しず子がいないのはわかってるんだけど、一応ね…」


かすみ(マンションのセキュリティキーと部屋の合鍵渡されてるとはいえ、コソコソしてたら怪しまれるもん)


ゴソゴソ

かすみ「鍋の具材は全部買ってきたし、かすみんのお泊まりセットも持ってきたし……うん。完璧♡」

かすみ「まず掃除からしよっかな?あんまり散らかってはないけど……ホコリはたまるもんだし」キュッキュッ

かすみ「…あ、服脱ぎっぱなしじゃん。忙しいからってこれはダメだよね。これはカゴに集めて…」ポイポイ

かすみ「洗濯機に放り込んで…」ポチッ

ガコンガコン


かすみ「……よし。掃除が終わったら、腕によりをかけてかすみん特製♡愛情たっぷり鍋を作りますよ!」

144: 2021/02/02(火) 20:19:26.71 ID:U++IzXJJ
~数時間後~


かすみ「……はぁ。しず子、遅いなぁ」ポツ

かすみ(テレビ見るのも飽きちゃった…どうしよう)

チッチッチッ

かすみ(早く帰ってこないかなぁ……)ボーッ


ガチャガチャ


かすみ「あっ…」トテテ

かすみ(しず子だ…帰ってきた!よーし、びっくりさせちゃお…!)

ギィィ

かすみ「おかえり、しず…」


俳優「今日はありがとう。気分はどうかな?」

しずく「少しマシになりました…大丈夫です…」

俳優「顔がまだ赤いよ。熱があるんじゃないかな…看病してあげようか?」

しずく「あの、本当にもう……」



かすみ「え……しず子………?」

166: 2021/02/05(金) 01:57:32.68 ID:Eu48bR9J
しずく「あっ……」

俳優「え、誰?」

かすみ「……は??」
俳優「しずくちゃん、この子とルームシェアしてたの?…ひとり暮らしだって言ってなかった?」

しずく「かすみ、さん……なんでうちに…」ゾク

かすみ「一体どういうこと…?仕事だって言ってたじゃん…その格好……」

俳優「怖がらせるのはよくないな。彼女、震えてるじゃないか。一体しずくちゃんとどういう関係なの?」

かすみ「…っ、それはこっちの台詞ですよ!!なんでしず子と一緒にいるんですか!?」

俳優「俺はしずくちゃんを送りに来ただけだよ。付き合いで結構飲ませちゃったし、危ないと思って」

かすみ「なに、言って……しず子…!」

しずく「………」ウツムキ

かすみ「ねぇ。急に仕事が入ったんじゃなかったの…?だから私との約束、断ったんだよね」

しずく「………ごめん」

かすみ「っ……!!」バシッ

しずく「いっ、ぅ…」ドサ

俳優「お、おい!女優の顔を殴るとかなに考えてんだよ!?」グッ

167: 2021/02/05(金) 02:00:29.21 ID:Eu48bR9J
しずく「…やめてください!!この人は悪くないんです!」

俳優「しずくちゃん!?でもっ」

しずく「もう、帰ってください……」

俳優「放っておけるわけないだろ!ほら、口から血がでて…」

しずく「言うことを聞いてください……お願いしますっ…!」ウルウル

俳優「…わかった。熱くなってるとこ悪いけど、しずくちゃんは俺とクラブに行ってただけだよ」

俳優「……じゃあ、また」スタスタ


シーン…


かすみ「…私よりも、あいつといる方がいいんだ」

しずく「かすみさん……信じてもらえないかもしれないけど、私はあの人となんの関係も…」

かすみ「信じられるわけない」

しずく「…そうだよね」

かすみ「どうして?……なんで嘘ついたの」

しずく「そんなつもりないの。業界の人が集まる懇親会に誘われて……私、これも仕事なんだって思って」

168: 2021/02/05(金) 02:03:56.08 ID:Eu48bR9J
かすみ「へぇ…それであの男と一緒にいたんだ。でもさ、酔わされて顔赤くしてるしず子に説得力なんてないよ」

しずく「違う…!かすみさんは知らないかもしれないけど、あの人は」

かすみ「知ってるよ。今しず子がとってる恋愛ドラマの相手役でしょ」

しずく「…うん。だから、彼はただの役者仲間なの」

かすみ「……何いってんの?」

しずく「え……?」

かすみ「私がいなかったらあいつ、適当な理由つけて絶対部屋に上がり込んでたよ。それで今頃は……っ、想像したくもない!」フイッ

しずく「……かすみさんの思ってるような人じゃないよ」

かすみ「はぁ…?ただの優しいだけの男が、フラフラになるまで飲ませるわけないじゃん!その気があるから、そういう下衆なことするんだよ!」

しずく「確かにあの人には告白されたけど……私はきちんと断ったもん。好きな人がいるって言ったら、諦めてくれたよ」

かすみ「告白された?ははっ…しず子ってさ、高校の頃から優等生だったけど……ほんっとバカだよね」

しずく「……!」

かすみ「簡単に人を信じすぎなんだよ。そうやって騙されて、いいようにされるんだろうね」

169: 2021/02/05(金) 02:10:30.45 ID:Eu48bR9J
しずく「なんで、そんな酷いこと言うの…」ウルウル

かすみ「しず子はいいよね。全てが上手くいってるから、悩みなんてないんだろうね。私のことだって、いつかは捨てるんでしょ?」

しずく「ぐすっ…もう、やめてよ……」ポロポロ

かすみ「私は毎日苦しくて、辛くて、でも…それでもしず子に相応しい人であろうって頑張ってるのに…!」

かすみ「しず子はさ、人気も実力も敵わない後輩に見下されたことある?憧れてた先輩に全てを否定されたことある?」

かすみ「ないでしょ、色んな人に守られてるんだからあるわけないよね。だから私の気持ちなんてわかるわけない!」

かすみ「…なのに。しず子はそんな私を、裏切ったんだよ」


しずく「……しかったよ」

かすみ「なに?言い訳なら、もっと大きな声で言いなよっ!」

しずく「私だって、苦しかったんだよ……。かすみさんの期待に答えるのが…!」

かすみ「なっ……」ビクッ

170: 2021/02/05(金) 02:14:12.89 ID:Eu48bR9J
しずく「私が女優として頑張ってる姿を見るのが好きって…かすみさん、いつも言ってくれたよね。初めはね、ただただ嬉しかったの」

しずく「でも、次第にそれがプレッシャーになっていった。…それでも私は、かすみさんが応援してくれてるんだからって、自分に言い聞かせてきたのに」

かすみ「…私のせいって言いたいの?今回の場合はしず子が悪いんじゃん!開き直らないでよ!」

しずく「今回のことは正直に伝えようとも思ったけど…かすみさんは悲しむだろうし、嫌がるでしょ。だからやめたの」

かすみ「それは……あたりまえじゃん!付き合ってるんだからっ。しず子だって、かすみんが他のやつと一緒にいていいの!?」

しずく「…それがかすみさんのためになるなら、辛いけど、私は受け入れるよ」

かすみ「はぁ…!?」

しずく「かすみさん…私たちはもう子どもじゃないでしょ。自分のために、嫌なことも乗り越えていかなくちゃいけないんだよ」

かすみ「……あっそ。そういう建前があるから、あんなやつにヘラヘラしてたんだ」

172: 2021/02/05(金) 02:18:54.54 ID:Eu48bR9J
しずく「…っ、なんでわかってくれないの!?私はかすみさんのために、こんなに頑張ってるのに…!」

かすみ「うるさいうるさいっ…!!かすみんのためなんて言わないで!どうせそれも嘘なんでしょ!」

しずく「違うって言ってるでしょ……!」ギュ

かすみ「かすみんに触んないでよ!!」パシッ

しずく「もうっ、意地はらないで!いい加減、子どもみたいに嫉妬するのやめようよ…!私はかすみさんのものじゃないもん!」

かすみ「…う……っぁ…」ウルウル

しずく「あっ…違うの、私はただ…!」

かすみ「しず子なんてもう知らない!!大っ嫌い!」タタッ



しずく(あぁ……やっちゃった)

しずく(だめだ、私。全然冷静になれなかった…)

しずく(全て私が悪いのに……かすみさんにあんな顔させるつもりなんて、無かったのに)

しずく(やっぱり、疲れてるのかな…)ハァ

173: 2021/02/05(金) 02:22:31.95 ID:Eu48bR9J
─────


~翌朝・かすみ宅~


ピピッ…ピピッ!!

かすみ(アラーム……うるさ…もう朝なの…)


ピピピピ!!

かすみ「だぁあ!うっさい!!」ポカッ


ピッ…

かすみ「ねむい…昨日、早くベッド入ったのに……」ズーン


かすみ(今日のスケジュールなんだっけ…。あぁ、深夜枠の歌番組か…)

かすみ(収録は昼からだけど、朝からリハするって言ってたな……早く行かなきゃ…)ムクッ


かすみ「よっと……あれ…?」フラッ

かすみ「やばい。なに、これ」ズキズキ


かすみ(頭が割れるように痛い……)

かすみ(それに、気持ち悪い…。吐きそう)

かすみ(昨日はこんなこと無かったのに、なんで?いっぱい泣いたからかな…?)

かすみ(立ってられない……おさまるまで、寝転んでよう)ゴロン

175: 2021/02/05(金) 02:25:38.18 ID:Eu48bR9J
かすみ「……うぅ…」ズキッ

かすみ「いたい……たすけて、しず……」


かすみ(…って、なに言ってるの私!)

かすみ(昨日あんなことがあったのに、まだそんなこと…ばかばかっ)

かすみ(でも……こういう事があったとき、しず子はいつも慰めてくれたな…。頭なでなでされるの、好きだったなぁ……)

かすみ(…バカだな、私。しず子があの人のことを好きになるわけないってわかってたのに、意地になっちゃってさ…)

かすみ(最近は嫌なことばっかで…気持ちが不安定だったのかも)


ピロン♪

かすみ(あっ…しず子!?)


マネ<業務連絡。リハの前に雑誌の取材入ったから30分前には来るように


かすみ(……なんだ)

かすみ(ってか、しず子から電話もLINEもきてない…。やっぱり怒ってるよね)

かすみ(今までケンカしたらどっちから謝ってたっけ…?お互い頑固だから仲直りするのに時間かかるんだよね……)



かすみ「…もーやだ」

176: 2021/02/05(金) 02:30:18.69 ID:Eu48bR9J
─────


~数時間後・某テレビ局 楽屋~


しずく(午前中の仕事、全然上手くいかなかった……)ズーン

しずく(グルメ番組って難しい。ただ笑顔でコメントしてくれればいいよって、言われてもね…)


コンコン


しずく「はい…どうぞ?」


アリス「おはようございまーす♡」ガチャ

しずく「あっ……!すみません。私、入る楽屋間違えてましたか?」

アリス「いえいえ大丈夫です♡私たちの楽屋は東館の方ですから、間違えてませんよ!」

しずく「…えっと、それでは私に何かご用ですか?」

アリス「私のこと、ご存知ですかぁ?」ニコ

しずく「へっ…うーんと……」


しずく(桃色髪のツインテールに、可愛い装飾がほどこされた衣装……どこかで見たような…)


しずく「もしかして…アリス、さんですか?」

177: 2021/02/05(金) 02:34:00.43 ID:Eu48bR9J
アリス「わぁぁっ♡♡ご存知だったんですね、アリスすっごく嬉しいです♡」

しずく「その、以前テレビでお見かけして…」

アリス「そうなんですか♡それでは改めて自己紹介を…今の私は、シャノワールのアリスと申しますぅ♡」

しずく「ご丁寧にありがとうございます。私は桜坂しずくと申します」ニコ

アリス「わ~♡カワイイ笑顔ですねっ♡さすが大人気の女優さんですね♡」

しずく「いえいえ、そんな…」

アリス「……実はですね。ここに来たのは、折り入ってご相談させていただきたいことがあって」

アリス「うちのメンバーに中須かすみって子がいるんですけど…」チラ

しずく「……!」ピク

アリス「…その子から、今日の収録を欠席するって連絡がきたんですよぉ。昨日まで元気だったのに、いきなりですよ?」

しずく「えっ…」

アリス「私すっごく心配になっちゃって…。それで、何かあったんですかってマネージャーさんに聞いてみたら、なんと体調不良らしいんですよぉ」

178: 2021/02/05(金) 02:37:38.78 ID:Eu48bR9J
しずく「そ、それは……心配ですね…」メソラシ

アリス「はい。それで、桜坂さんは何か心当たりありますか?」ニコ

しずく「へっ……?」ビクッ

アリス「桜坂さんとかすみんは、同じ高校に通ってたお友達なんですよね?だから、何か聞いてるかな~って思ったんです♡」

しずく「な、なるほど…。それで私のところに足を運んでくださったんですね」

アリス「実はぁ、今日だけじゃないんですよね。最近ずっと調子悪そうで…その度に私がケアしてあげてるんですよ」

しずく「…そう、だったんですか」

アリス「アリスはかすみんのこと、すごく尊敬してるんです。こんなキャラの後輩だから、かすみんはもしかしたらアリスのこと嫌いかもしれないけど…」

アリス「でも、いつも見習わせてもらってます!そんな先輩だから、アリスは少しでも力になりたいんです…!」ウルウル

しずく「そこまで彼女を思ってくださるお気持ちは嬉しいですが、私も今はどうすることもできなくて……すみません…」

アリス「…いいんです。ご無理を言ってこちらこそすみません」クスン

179: 2021/02/05(金) 02:40:34.52 ID:Eu48bR9J
しずく「あの、私がこんなこと言うのはあつかましいんですけど……」

アリス「はい?なんでしょうか」

しずく「かすみさんのこと、どうかよろしくお願いします…!」ペコッ

アリス「は、はぁ…?」キョトン

しずく「勘違いされやすいですが、彼女はアイドルに対して本当に真っ直ぐで、真面目な人なんです。だから同じメンバーとして仲良くしてあげてください…!」


アリス(なっ……なに、この人)

アリス(初対面の人間に深々と頭下げちゃって…!きもっ…!!)

アリス(あ……でもこれを逆手に取れば…)


アリス「もちろん、任せてください♡」

しずく「ありがとうございますっ…」

アリス「だから、これからも色々とご相談させていただいてもいいですか?良かったら連絡先を教えてもらいたいんですけど~」

しずく「はい、ぜひ!」


アリス(……これは面白いことが試せそうね)ニヤリ

180: 2021/02/05(金) 02:43:51.68 ID:Eu48bR9J
─────


~数日後・お台場芸能事務所~


かすみ「…迷惑かけて、ごめんなさい」

他メンバー「復帰してくれて良かった~。もう大丈夫なの?」

かすみ「うん。なんとか頭痛もおさまってきたし…」

アリス「そうなんですかぁ…すっごく心配したんですよ、先輩?」

かすみ「……急になに?」

アリス「急にって…アリスは確かに先輩のこと好きじゃありませんけど、今は同じグループの仲間なんですから、心配くらいしますよぉ」

かすみ「あっそう。信じてないけど」

他メンバー「まぁまぁふたりとも…」

アリス「だから今日のダンスレッスン終わったら、先輩の復帰お祝い会しませんか?」

かすみ「は?いや…」

他メンバー「わー!!いいですね!やりましょう!」

アリス「もちろん、5人だけで♡シャノワールの絆を深めるためにも必要なことですよね?」

かすみ「………」プイッ

アリス「っと…先輩は素直じゃないけど、さっさと練習終わらせて行くわよ♡」

他メンバー「はーい!!」

181: 2021/02/05(金) 02:46:33.73 ID:Eu48bR9J
─────


~その夜・都内 居酒屋~


かすみ「…なんで、アイドルがこんな安っぽいとこに来なくちゃいけないのっ!」

他メンバー「まあまあかすみちゃん…落ち着いて」

かすみ「大体、私以外みんな未成年なのになんで居酒屋なわけ?」

アリス「居酒屋のご飯って美味しいじゃないですか。ちゃんと個室を選んだんですし、わがまま言わないでくださいよぉ」プンプン

かすみ「1時間くらいしたらすぐ帰るから!」

アリス「は~い♡わかりましたぁ」

店員「いらっしゃいませ、お飲み物をお伺いいたします」

アリス「えーっと、とりあえず…未成年の私たちはソフトドリンクで♡先輩は何かお酒飲みますかぁ?」

かすみ「いらない」

アリス「じゃあ、みんなそれで♪」

店員「かしこまりました。次に、コースですが…」

182: 2021/02/05(金) 02:49:56.25 ID:Eu48bR9J
かすみ(…あの日からしず子に会ってないし、連絡を取り合ってもない)

かすみ(もうこのまま疎遠になっちゃうんじゃないかって…不安に押しつぶされそうになるのに、電話する勇気もでない)

かすみ(しず子も、かすみんと同じ気持ちなのかな?それとも…もう……)


アリス「……せんぱーい、なにボーッとしてるんですか?ほらドリンクきてますよぉ?」スッ

かすみ「レモンサワーが良かったんだけど…」

アリス「コーラも美味しいですよ?」ニコ

他メンバー「しゅわしゅわ~」

かすみ「はぁ……もうなんでもいいや…」

アリス「それで、先輩は最近どうですか?悩みとかあったりしますぅ?」

かすみ「あるとしてもあんたには話さない」

アリス「ふ、ふーん……あっそうですか~」ピキピキ


店員「失礼します~。シーザーサラダと牛タンになります~」ゴトン


他メンバー「わー美味しそうー!」

アリス「ちゃんと均等に分けてよ?」

他メンバー「うん、わかった」

183: 2021/02/05(金) 02:54:55.55 ID:Eu48bR9J
店員「それと、アルコールのレモンサワーになります。ごゆっくり~」ゴト


かすみ「…は?」

アリス「やっぱ肉にはお酒よね~♪」

かすみ「いや、まだ高校生でしょ!なにしれっと酒頼んでんのっ!」

アリス「えーだって…先輩さっき年確されてましたし、大人が注文したことにすればいいじゃないですか」

かすみ「こんなとこ、誰かに見られてたらどーすんの!?」

他メンバー「た、確かに…」

アリス「う~……そうですね。悔しいけど先輩の言う通り…。でもどうしましょう?これ」

かすみ「……飲めるの私だけだし、もったいないから飲むけど」

アリス「すみません…ありがとうございます」

かすみ(酔ってまた体調崩したら嫌だけど、まあ一杯くらいなら大丈夫だよね…)


アリス「あ、乾杯の前に写真撮りませんかぁ?ブログにのせたいので!色々突っ込まれると面倒なので、お酒はこっちに隠しますねぇ♡」ゴトン

かすみ「ほんっと用意周到というか…」

他メンバー「なら私のカメラで撮りましょ~♪はい、何枚かいきますよ~?♡」パシャッ

カシャッ! パシャパシャ!!


アリス「……よし、おっけー♡じゃあ改めて…」


「カンパーイっ!!」

184: 2021/02/05(金) 02:58:34.37 ID:Eu48bR9J
─────


~夜・しずく宅~


しずく「はぁ……つかれた…」ガチャ


しずく(帰ってくる度に……あの日のことを思い出しちゃうな…)

しずく(かすみさん、家のこと全部やってくれてた。きっと私の帰りを待ってたんだよね)

しずく(そんな思いを裏切ったのは私…。だから、私から謝るべきだよね。それはわかってるんだけど……)

しずく(毎日大学と仕事場の往復で、精神と肉体的な疲労が積み重なって…今はそれどころじゃない……)

しずく(あと少しすれば大学が春休みになる。そうしたら改めてかすみさんにちゃんと謝ろう…)


prrrrr!!


しずく「えっ……もう遅い時間なのに。マネージャーさんかな…」グッタリ


着信: アリスさん


しずく「え……アリスさんが、私に電話…?」ピッ

185: 2021/02/05(金) 03:01:32.70 ID:Eu48bR9J
アリス『あっ!桜坂さんですか?』

しずく『あの、一体どうし…』

アリス『大変なんですぅ!かすみんがすっごく酔っちゃって……』

しずく『えっ??』

アリス『もうアリス達じゃどうしようもなくて、困ってるんです』

しずく『いや、なんで私に……そちらの事務所の方に迎えにきてもらうとか、』

アリス『最初は5人だったんですけど、実は途中から他のアーティストの方々と合流してお食事してるんです』

アリス『私達はアイドルなので、事務所からはこういうの止めなさいって言われてて…だからマネージャーも呼べないんですよぉ』

しずく『はぁ…そうなんですか……』

アリス『それで今、かすみんが相手グループの男性とすっごくいい感じに…というか、言い寄られてて』

しずく『っ……!?』

アリス『私達はやめときなよって言ったんですけど…かすみんは酔ってるからか、全然聞いてくれないんです』

186: 2021/02/05(金) 03:07:01.87 ID:Eu48bR9J
しずく『……どこですか?』

アリス『…はい?』

しずく『今、どの店にいるんですか?』

アリス『…え?もう遅い時間帯なのに、桜坂さんが来てくださるんですか?』

しずく『そうですっ、早く教えてください…!!』

アリス『……わかりました♡それじゃメッセで、場所の地図をはりますね』

しずく『あの…!かすみさんのこと、ちゃんと見ててあげてください!』

アリス『…りょうかいですぅ』


ピッ……ツーツー…


しずく(もうっ、バカって私に言ったくせに…!同じことして!)

しずく(……待っててかすみさん。今、行くからね)

187: 2021/02/05(金) 03:11:53.92 ID:Eu48bR9J
─────


~都内・居酒屋~


店員「あ、あのお客様…!今は満室ですので、予約がないと…」

しずく「待ち合わせです!」

店員「ひいっ…」


しずく(2階の左手、突き当たりの部屋……早く行かなきゃ)スタスタ

しずく(……ここかな?思ったより静かだけど…)


ガラッ


しずく「かすみさん…!!」

他メンバー「ひゃっ!びっくりしたぁ~…」

しずく「あ、あれ…?」

他メンバー「あの…!どなたですか?帽子とマスクじゃわからなくて…」

アリス「あっ♡桜坂しずくさん、本当に来てくださったんですねぇ…」

他メンバー「えー!?女優の桜坂しずくさん?きゃっ…生で見ちゃった//」

しずく「あの!かすみさんは……」

188: 2021/02/05(金) 03:15:37.96 ID:Eu48bR9J
アリス「ここですよ、私の隣で机に突っ伏してます」


かすみ「うぅ………」


しずく「良かった…。ところで、男性グループの皆さんは…??」

他メンバー「ん…?」

アリス「あー!実は、もう帰られまして。でも良かったです!かすみんを連れて帰るのは骨が折れそうなので!」

しずく「かすみさん、大丈夫なんですか?その、ぐったりしてるように見えるんですけど……」

アリス「よくわからないんですけど、お酒たくさん飲んじゃったみたいで…。もう解散するのでお願いしていいですか?」

しずく「は、はい…」

アリス「ほら…かすみん、立てる?」ニコ

かすみ「あっ、う……」ヨロヨロ

しずく「すみません…ご迷惑をおかけして。ありがとうございました。失礼します」ペコッ

スタスタ


他メンバー「美人さんでしたね…///なんか照れちゃいました。かすみん羨ましいなぁ」

アリス「ふふっ、そうね♡あのおふたり…本当に仲良しなんですねぇ♡」

他メンバー「かすみちゃんもすごく素直だったし…なんか、長年付き合ってるカップルみたいですね!」

アリス「…ほんとに♡あ!アリス、急用を思い出したからちょっと電話してくるね」

189: 2021/02/05(金) 03:18:18.89 ID:Eu48bR9J
─────


~路地~


しずく「かすみさん……上手く歩けないでしょ?支えてあげるからじっとして」

かすみ「ひゃっ、あ…///」ビクッ

しずく「もう……どれだけ飲んだの…」ナデナデ

かすみ「ん……///」

しずく「ここは道幅が狭くてタクシー呼べないから、とりあえず大通りに出ないと…。寒いけど少し歩くよ?」

かすみ「……ぅん…」コクン

しずく(すごくしおらしいというか、幼いというか…。いつもこうなら可愛いんだけど)


しずく「もうっ。マスクずれてるよ、ほら…」

しずく「ここ、段差あるから気をつけて」

しずく「寒くない?コート貸してあげようか?」


しずく(なんか、小さい子の面倒みてるみたい。一応ケンカしてるのに、私ってちょろいのかな……)ウウン

190: 2021/02/05(金) 03:21:55.99 ID:Eu48bR9J
かすみ「……しず子ぉ…」

しずく「…ん、なに?」

かすみ「っく……クラクラする……///」

しずく「大丈夫?転ばないでよ…?」

かすみ「はっ、はぁっ……///」ゼェ

しずく「かすみさん、顔すごく赤いけど…おでこ触るよ?」ピトッ

かすみ「んー……///」

しずく「わ、すごい熱。風邪ひいちゃったのかな…」

かすみ「う…きもち、わるい……」

しずく「え、ちょっ、ちょっと待って!」

しずく(この辺りは人通りも疎らだけど、人の目があるし……あ、そこの裏路地なら…!)

しずく「こっち行こうね、もう少し我慢して?」

かすみ「うー………」

191: 2021/02/05(金) 03:27:36.63 ID:Eu48bR9J
しずく「…ほら、ここなら吐いてもいいから。マスク外してあげるね」

かすみ「しず子……?」ギュゥッ

しずく「……どうしたの、かすみさん」

かすみ「かお、みたい……ほんとにしず子…?」ジー

しずく「えぇ……もう、なにいってるの…。ほら私でしょ?」パサッ

かすみ「…ほんとだ。しず子………っふふ…」ニコニコ

しずく「落ち着いた?もう少し歩けば…」

かすみ「すぅき♡」チュ

しずく「ぁむっ……!?」

かすみ「ふぅ…ちゅ…っ、れろっ……///」

しずく「んんんっっ……///」ペチペチ

かすみ「やらぁ…///ほっぺたたいちゃ……」

しずく「ぷはっ……///もうっ、何してるの…!」

192: 2021/02/05(金) 03:32:05.84 ID:Eu48bR9J
かすみ「なにって、ちゅーだけど…」

しずく「いきなりすぎてびっくりしたじゃない…!///」

かすみ「むぅ……おこっちゃやだ……」ウルウル

しずく「わ、わかった。もう怒らないから泣かないで…!」

しずく(かすみさんの様子、やっぱり変だよね…。一緒にお酒を飲んだときは、こんな風にならなかったのに)


かすみ「ねぇしず子は~かすみんのこと、すき?」ギュ

しずく「…大好きだよ。だから今日は私の家で大人しくしてようね?」ナデナデ

かすみ「やだ」

しずく「え?」

かすみ「……もっかい、ちゅーしてくれたら…いいよ♡」ボソッ

しずく「もう……舌は入れないからね」

かすみ「ん…」

しずく「じっとして……んっ」チュッ

かすみ「んー…えへへっ…///」ニコニコ

しずく「ほら、行くよかすみさん」

かすみ「…手つないで?」

しずく「……はいはい」ギュー


しずく(本当はタクシーにかすみさんだけを乗せればいいと思ってたんだけど…ひとりにするの危なそうだもんね…)チラリ

216: 2021/02/06(土) 22:27:39.53 ID:zU+DqpnU
─────


~しずく宅~


しずく「ほら、お水飲んで」

かすみ「……んくっ…んく…」ゴクン

しずく「とりあえずは安心かな…?もう、心配かけないでよ」

かすみ「あぅ…ごめん……」

しずく「どうしてお酒なんて飲んだの?それも、こんなになるまで」

かすみ「…飲んだのは一杯だけだもん。そしたら段々身体が熱くなってきて…頭がくらくらした」

しずく「一杯だけで?…疲れてたりすると、酔いが回りやすいのかな」

かすみ「わかんない。何もしてないのに、涙が出てきて……しず子に会いたくなったの」

しずく「なにそれ…」


かすみ「……しず子、その…この前のことだけど」モジモジ

しずく「待って!それ以上言わないで…!」ギュッ

かすみ「ちょっ…!なに、びっくりしたぁ…」

217: 2021/02/06(土) 22:33:52.99 ID:zU+DqpnU
しずく「…私、かすみさんに酷いこと言ったよね。本当にごめんなさい」

かすみ「やめてよ…かすみんだって、しず子に謝らなくちゃいけないことあるのに」

しずく「ううん、あの日は私がどうかしてたよ…変に気を使ってしたことが全部空回りした。だから、もうそういうのは無し」

しずく「私はかすみさんのことが好き。それも友達としてじゃなく、恋人として。その気持ちに素直になりたいの!」

かすみ「あうぅ……しず子、大胆すぎっ…///」

しずく「こうやって面と向かって言わないと、かすみさんわかってくれないでしょ?」ニコ

かすみ「いつからそんな恥ずかしいセリフ言えるようになったの!高校生のときは、すぐ顔真っ赤にしてたのにっ」

しずく「むー…昔の話はやめてよ……///」

かすみ「かすみんだって同じ気持ちだよ、しず子のこと大好き。世界中の誰よりも、しず子のこと愛してるって自信あるくらい!」

しずく「……ありがとう。嬉しい…///」

かすみ「だからね、これからもずっと一緒にいたい…。おばあちゃんになっても、こうしてふたりで笑ってたいよ」

しずく「えっと……これってプロポーズなの?」

218: 2021/02/06(土) 22:39:13.97 ID:zU+DqpnU
かすみ「え゛!?ち、違うもん…!///」

しずく「ふふっ。なに慌ててるの?」

かすみ「そういうのじゃないってば…!」

しずく「…え?そうなんだ…」シュン

かすみ「むぅぅ…わかっててやってるでしょっ///」

しずく「私が断るとでも思った?」ニコ

かすみ「思わない……と、嬉しい…///ただそういうのは、綺麗な夜景が見えるとこで言いたかっただけ!」

しずく「ふっ…あははっ…!かすみさんって意外とロマンチストだよね、可愛い」

かすみ「もー!だから言いたくなかったの…!///しず子なんてもう知らないっ」プク

しずく「ごめんごめん。怒らないで、かすみさん」

かすみ「…一緒に寝てくれたら許してあげる」

しずく「はーい。じゃあお風呂入ろっか?かすみさん先に行ってきなよ」

かすみ「うん……でも、ふたりで入りたい…//」

しずく「言うと思った。いいよ♡」

219: 2021/02/06(土) 22:42:36.70 ID:zU+DqpnU
かすみ「なんか、こうやって話すの久しぶりな気がして…変な感じ。いつもなら毎日連絡とってるから余計にね」

しずく「そうだね…あ、これって今までの最長記録じゃない?」

かすみ「喧嘩の記録なんていらない!」

しずく「次に長かったのは…侑さんたちの卒業式のときかな?ほら、私が侑さんのボタンもらったら、かすみさんが拗ねちゃって…」

かすみ「はー?しず子だって、かすみんがせつ菜先輩のリボンもらったら不機嫌になってたじゃん!」

しずく「…そんなことあったかな?」

かすみ「あの戦争を忘れたの!?信じらんないんだけど!」

しずく「うーん…歩夢さんが、かすみさんにすごく嫉妬してたのは覚えてるんだけど」

かすみ「ひうっ…!!ほんとに怖かったんだから、思い出させないでっ」

しずく「あとは…そうだなぁ。私が演劇部ばかりに顔を出してた時と、ロッカーにラブレターが入ってた時も長引いたような……」

かすみ「も、もういいからっ///そういうことはさっさと忘れなよ!ばか!」

しずく「ばかじゃないもん。かすみさんがせつ菜さんのリボンを、すごく嬉しそうに見せてきたこともちゃんと覚えてるよ」

かすみ「うわ、やっぱ覚えてるんじゃん…!いじわる」

220: 2021/02/06(土) 22:46:40.59 ID:zU+DqpnU
しずく「そういうのも大切な出来事だから。私はかすみさんとの思い出を、ずっと覚えてたいの」

かすみ「……っ///さっさとお風呂入ろ!」フイッ

しずく「また照れてる♡かすみさん可愛いよ」ニコ

かすみ「ぐっ…。ベッドに行ったら覚えてなよ…」

しずく「はーい♡楽しみにしてるね」


かすみ「……あ。忘れてた」

しずく「ん?」

かすみ「あの日、しず子のほっぺ叩いてごめん!」

しずく「あぁ…大丈夫だよ?そんなに気にしてないもん」

かすみ「私が気にするの!口の中切れたの、治った…?」

しずく「うん、もうすっかり…ほら」

かすみ「そっか…良かった。しず子、かすみんのほっぺも叩いていいよ」

しずく「えっ。かすみさんってそっち系……でも私にはそんな趣味ないし、どうしようかな」

かすみ「そういう話じゃなーい!!///」

223: 2021/02/06(土) 22:52:47.73 ID:zU+DqpnU
─────


~翌朝~


しずく(もうあさ……まだねむいのに……)パチッ


しずく「……かすみさ…おきて…」ユサユサ

かすみ「ん……」

しずく「おきなきゃ、ほら…」

かすみ「うぅん……もうちょっと…」ゴソ

しずく「仕事、遅れちゃうよ」

かすみ「はぁ……わかった」

しずく「ん…先にシャワー浴びる?」

かすみ「……うん」

しずく「朝ごはん作るけどパンでいいよね…?」

かすみ「うん。いちごジャムがいい…」トコトコ

しずく「わかった」


しずく(今日は大学だからいつもの時間に家を出ればいいかな…)ポチッ

しずく(あれ?スマホの電源つかない…。そっか、昨日充電するの忘れてたんだ)

しずく(お風呂の後、なし崩しに始まっちゃったからなぁ…)


かすみ「しず子ー!着替えおいといてー」

しずく「あ、はーい!」

224: 2021/02/06(土) 22:58:41.05 ID:zU+DqpnU
─────


ガチャガチャ


かすみ「う~寒い」

しずく「電気切ったし、鍵もかけたし…よし。下降りよっか」

かすみ「…しず子ってさあ。主婦に向いてるよね」

しずく「このくらいで?でもありがとう」

かすみ「うん、絶対向いてる。もう少し歳とったら母親の役とかハマりそう」

しずく「家族ドラマだと今は娘役ばかりだけど、いつかやってみたいなぁ」

かすみ「まあ母親っていっても、ネチネチと料理にケチつける姑役なんだけどねー」ニヤリ

しずく「…ふーん。さっき渡したお弁当返してくれる?」

かすみ「うそうそ、ごめんなさい!!」


ワイワイ…ガヤガヤ


かすみ「…ん?なんか外が騒がしいね」

しずく「ほんとだ。なんだろう…」

226: 2021/02/06(土) 23:03:01.33 ID:zU+DqpnU
かすみ「こんな朝から、ロビー前でたむろするなんて迷惑すぎ…」


パシャパシャ!!

かすみ「っ、まぶし……」


「……あっ!!今、自宅マンションから出てきました!」

「おい!押すなよっ!こっちが先に場所取りしてただろうが!」

「えー、さっそく当事者にお話を聞いてみましょう!」


かすみ「えっ…なに?どういうこと…?」


女性記者「失礼します!お台場テレビの者ですが、おふたりが恋愛関係にあるというのは本当ですか?」


しずかす「───っ!?」ビクッ


女性記者「どうなんでしょうか!?」

227: 2021/02/06(土) 23:08:09.84 ID:zU+DqpnU
かすみ「な、何を言ってるのか全然わかりませんっ!」

しずく(すごい人の数…これが全て報道関係者だとしたら、ほとんどのメディアが来てることになる…っ)


かすみ「しず子っ…これって一体…」ヒソヒソ

しずく「黙って。私に合わせて…!」コソッ


女性記者「答えになっていませんが!」

しずく「あの、私たち急いでるので。それに勝手な憶測で話されても困ります!」

かすみ(なんで、こんなことになってるの。かすみんとしず子の関係性を示す証拠なんてないのに…)


男性記者「こちら朝夕新聞です。昨夜、銀座の裏路地でキスをしていたという誌面の内容は事実ですか?」

かすみ(……は??昨日は確か…居酒屋にしず子が迎えに来てくれて、そのままタクシーに乗ったんじゃ…)

かすみ(さっきからこの人たち何言って…しず子もそう思うよね?)チラ

しずく「っ……」ゴクッ

かすみ(うそ、なんで不安そうな顔してんの…)

228: 2021/02/06(土) 23:12:57.39 ID:zU+DqpnU
男性記者「沈黙は肯定と捉えてよろしいですか?」

しずく「い、いえ…。あまりに突拍子もない質問に驚いてしまって。見間違えじゃないでしょうか」ニコ

男性記者「否定されるのですか?明日発売の週刊誌に、その瞬間の写真が掲載されるとのことですが」

かすみ「写真って…そんなの嘘です!確かに銀座には行きましたけど、全く身に覚えが…」

しずく「っ、まだその写真を見ていないのでコメントできません。それと、これ以上は正式に事務所を通してください!」

男性記者「待ってください!桜坂さんはともかく、中須さんはアイドルとして活動をされているのに、このような関係を持つことは許されているんですか?」

女性記者「中須さん!相手が女性だとはいえ、ファンの方々に対してどう思われますか?また、他のメンバーの皆さんは知っているんですか?」

かすみ「あぅ……その、かすみんはっ……」ウル


かすみ(早く、否定しなきゃ…。でも、昨日ちゃんとお互いの気持ちを確かめ合ったのに……こんな形で…)

しずく「私たちはただの友人関係です!私が彼女にそれ以上の…恋愛感情を持つなんて、ありえませんっ」

かすみ「あっ………」

230: 2021/02/06(土) 23:17:30.08 ID:zU+DqpnU
しずく「…かすみさん、走るよ!」グイッ


記者A「あ、ちょっと!!待って!」

記者B「落ち着け、向こうは徒歩だぞ!そう遠くには行けない!」


タッタッタッ…!

かすみ「はぁ…はっ、どうするつもり…!?」

しずく「事務所の車が見えたけど、もう人混みに囲まれてた。だからこうするしかないの!」

かすみ「でも、こうやって走るのも…ずっとは無理だよ!」

しずく「うん…。それに、たぶん最寄りの交通機関は先回りされてる。とりあえず建物内に入って迎えを待つしか…」


キキーッ!!


かすみ「うわっ!なに、この車…?まさかもう追っ手が」

??「良かった~間に合ったみたい。早く乗って」

かすみ「いやいや、いかにも怪しい車に乗れるわけないじゃないですか!」

しずく「あなたは……。かすみさん、乗せてもらうよ。この人は大丈夫だから」

かすみ「へっ……」キョトン

231: 2021/02/06(土) 23:21:25.66 ID:zU+DqpnU
─────



ことり「テレビの中継が目に入ってね。前に住んでたことのあるマンションだから場所はすぐわかったし…私達、たまたま近くにいたから」

しずく「すみません……本当に助かりました」

ことり「ううん、気にしないで♡」

??「全く…ことりの思いつきには毎回驚かされます」

ことり「ごめんなさ~い……引き返してもらって、ありがとう」

??「構いませんが、久々の帰国で私達の出迎えがなかったら穂乃果は寂しがるかもしれませんね」

ことり「あ、このままだと間に合わないかぁ……。メッセージ送っておけばわかってくれるかな?」

??「凛と花陽も行くみたいですし、ふたりにも伝えておけば大丈夫だと思いますよ」

しずく「お話し中にすみません…運転されてる方は、どなたですか?」

ことり「この人は私の大切な幼馴染のひとりで、海未ちゃんだよ♡」

海未(28)「ことりのお知り合いの方、とだけ聞いています。大変でしたね」

しずく「はい…私は桜坂しずくと申します。乗せていただいて、本当にありがとうございました」

234: 2021/02/06(土) 23:24:46.20 ID:zU+DqpnU
かすみ「あのー……かすみん、完全に蚊帳の外って感じなんですけど」

ことり「中須かすみちゃんだよね?スクールアイドル出身って聞いてから、親近感わいちゃって…こっそり応援してたんだぁ♡」

かすみ「うぇ!?あ、ありがとうございます…」

しずく「ことりさんとは元スクールアイドル繋がりで、前にお仕事で一緒になったの。ほら、世界的に有名なファッションデザイナーの南ことりさんだよ」

かすみ「へぇ……」

かすみ(ん?元スクールアイドル、南ことり、園田海未……い、いやまさか…)

かすみ「えーと、もしかして…第2回ラブライブで優勝したμ'sの……?」

ことり「うん、そうだよ♡」

かすみ「……しず子、そういうのはもっと早く教えてよっ!」

しずく「えっ?あ、ごめん…?」キョトン


ことり「それより、ふたりとも大丈夫?世間ではスキャンダルって形で報道されてるけど…」

しずく「そうですね……正直、参りました。みなさん誤解されているようで…」

236: 2021/02/06(土) 23:30:00.68 ID:zU+DqpnU
ことり「聞いてもいいかなぁ?……しずくちゃんの大切な人って、かすみちゃんのことだよね?」ニコ

しずく「へっ…!?いや、あのっ……」

ことり「ふふっ、わかっちゃうよ♡距離感だったり、かすみちゃんに対しての柔らかい話し方とかね」

ことり「初めて会った時も、かすみちゃんのことになると見てられないくらいに動揺してたもんね♡」

しずく「えぇと……うぅ…///」

かすみ「…あのっ!しず子とは、遊びで付き合ってるわけじゃないんです。だから…」

ことり「茶化してるわけじゃないよ?甘酸っぱいなぁって思って♡それに、口外するつもりもないし安心して」ニコ

ことり「ちなみに私の好きな人も女の子なんだぁ♡可愛くて、カッコよくて…すごく優しいんだよ?」

海未「んん…ごほんっ……///」

かすみ「あう…。それなら、いいですけど」

海未「と、とりあえず…ここから近いオハラエンターテインメントの方へ向かいますね。これからの事を相談するべきでしょうし」

しずく「はい…すみません。お世話になります」

239: 2021/02/06(土) 23:34:25.90 ID:zU+DqpnU
かすみ「しず子……昨日こと、聞きたいんだけど。写真って本当に事実なの…?」

しずく「……ごめんね、私が悪いの」

かすみ「え??」

しずく「外であんなことしちゃいけないってわかってたのに、かすみさんを介抱し切れなかったから…。私も誘惑に負けちゃったし」

かすみ「そっか、でも私も全然覚えてなくて…ごめん」

しずく「かすみさんは相当酔ってたから。たぶん後をつけられてて…撮られたんだと思う。だから写真は本物だよ」

かすみ「どうしよう。このままじゃ…」

しずく「キスのことは…お互いに酔ってたって誤魔化すしかないよ。否定し続ければ信じてもらえると思う……」

かすみ「…しず子は、それでいいの?」

しずく「えっ。なに言ってるの…?」

かすみ「い、いや……なんでもない」

しずく「ダメだよ。かすみさんはアイドルなんだから…!これがきっかけで辞めるなんてことになったら……私はそんなの嫌だよ」

かすみ「そうだよね……。私はもちろん、しず子も仕事に影響でるだろうし…」

しずく「うん……そうだね」

かすみ「…大丈夫だよ。こんな話題、すぐ飽きられるって」


海未「…着きましたよ」

しずく「じゃあ、また連絡するね」

かすみ「…わかった」

240: 2021/02/06(土) 23:38:33.84 ID:zU+DqpnU
─────


~翌日~


侑「…うーん。みんな連絡つかないんだ」

歩夢「きっと、ふたりとも大変なんだよ」

せつ菜(22)「しかし、心配ですね…」

愛「かすかすもしずくも芸能人なんだし、部外者の愛さん達ができることは少ないけどね」

璃奈「うん。なにかしてあげたくても、力には
なってあげられない…」

侑「…それでも、こうして集まってるんだからみんな優しいよね」


ガチャッ

彼方(23)「ごめんね~。遅くなっちゃったよ~」

侑「あ!彼方さん、お仕事お疲れ様!」

せつ菜「これで全員ですか?」

彼方「果林ちゃんとエマちゃんはヨーロッパにいるからね~」

歩夢「ふたりもいてくれたら心強いんだけどね…」

愛「…もうそろそろだっけ?会見始まるの」

241: 2021/02/06(土) 23:42:02.26 ID:zU+DqpnU
せつ菜「みたいですね。しずくさんは所属事務所から正式に事実ではないとだけ発表されましたが、かすみさんは…」

侑「かすみちゃんはアイドルだから…疑惑を完全に払拭するためにも、あえて矢面に立たせることにしたんだろうね」

璃奈「……でも、そんなのかわいそう」

歩夢「そうだね…」

彼方「でもね、遥ちゃんが言ってたよ。アイドルの恋愛沙汰は絶対にダメなんだって……」

侑「…遥ちゃんは元気ですか?この前ライブに行ったよって伝えたら、すごく喜んでくれて」

彼方「うん、元気だよ~。でも、人数の多いアイドルグループだから色々大変みたい」

彼方「グループだと、誰かひとりのトラブルが全体に影響しちゃうから…人間関係が一番大事なんだって」

愛「……そもそもさ、あのふたりって本当にそういう関係なのかな」

せつ菜「ど、どうなんでしょうか…。私には仲のいい友人同士に見えましたが」

璃奈「…学校ではよく一緒にいたね」

歩夢「うん…。でも、特にそんな素振りはなかったよ」

侑「そうだね、これだけは推測になっちゃうし、話しても仕方ない……あっ」

せつ菜「侑さん?どうかしましたか?」

侑「うーん……少し前に、かすみちゃんの家に遊びに行ったんだけど。よくしずくちゃんが泊まりに来るって言ってたな…」

242: 2021/02/06(土) 23:45:57.41 ID:zU+DqpnU
愛「……ゆうゆ、それマジ?」

璃奈「…週刊誌には、半同棲状態だったって書いてある」

せつ菜「その、週刊誌というものを私はまだ見ていませんが…写ってるのは本当におふたりなんですか?」

歩夢「…抱き合ってキスしてるところは顔がはっきり写ってるし、そうだと思うよ。タクシーから降りて連れ立って歩く写真は、背丈でしか判断できないね」

せつ菜「そんな……たとえそうだとしても、これって隠し撮りですよね。…その方々は酷いことしているという実感はないのでしょうか」

愛「芸能人にも肖像権はあるけど、報道の自由って権利もあるんだよ。…難しい話だけどね。これで生活してる人もいるし」

彼方「そうだね~…。裁判で訴える人もいるみたいだけど、自分のイメージとか、裁判で事細かに説明しなきゃいけないのを鑑みて、あんまり一般的じゃないみたいだね…」


記者『えー、シャノワールのメンバーが壇上にあがりました。今から会見が行われます』


璃奈「…始まった」

せつ菜「かすみさん…すごくやつれて見えます。大丈夫でしょうか」

243: 2021/02/06(土) 23:48:55.44 ID:zU+DqpnU
記者『今回の件について桜坂しずくさんは否定されていますが、どうなんでしょうか?』

かすみ『桜坂さんとは私生活でも交流のあった、所謂友人関係で……週刊誌に書かれているような間柄ではありません』

記者『では路地裏でキスをした後、桜坂さんの自宅マンションへ行ったのは事実ですか?』

かすみ『それは……本当です。でも酔ってて、あまり覚えてなくて…。すみません』

記者『それでは今回の件について、何か言いたいことはありますか?』

かすみ『…ファンのみなさま、関係者のみなさま、そしてメンバーに謝りたいと思ってます。ご迷惑とご心配をおかけして申し訳ありませんでした』

記者『ソロからグループとして活動していた矢先の事件でしたが、これについては…』

アリス『はい!それはリーダーであるアリスがお答えします♪』

記者『はぁ…?』

アリス『今回のことを聞かされた時は、本当にびっくりしちゃいました。まさかかすみんにスキャンダルが…しかも相手は女の子ですよ?』

244: 2021/02/06(土) 23:51:04.62 ID:zU+DqpnU
アリス『私たちはアイドルなんです。誰かのものになっちゃいけない…それはアリスが最も大切にしていることでもあります』

アリス『だから勘違いされるような行動をすること自体がいけないんです。でも、かすみんは本当に反省してて…だから許してあげてください!』

アリス『そして、私たちシャノワールをこれからもよろしくお願いしますっ!』ペコ

パチパチパチパチ!!

記者『流石はリーダー、しっかりとしたコメントですね』

アリス『ありがとうございます♡』

記者『それでは最後に、中須さんにお尋ねします。これからどのように活動されていく予定ですか?』

かすみ『…今までと変わらず、アイドルとして、誠心誠意がんばります』

記者『それでは、以上で会見を終了させていただきます。スタジオへお返しします!』

ワイワイ ガヤガヤ


侑「……かすみちゃん、今にも泣いちゃいそうだったね」

せつ菜「私はやっぱり納得できません…。こんな風に世間に晒される必要があったのでしょうか」

245: 2021/02/06(土) 23:56:25.27 ID:zU+DqpnU
愛「でもさ、かすかすはよく頑張ったよ。こうやってちゃんと否認すれば、人の噂も七十五日っていうし…時間が経てば話題にすらあげられなくなると思う」

彼方「そうだねぇ…。私たちはただ、応援してるよって言ってあげるのが一番いいのかもしれないね~」

侑「うん。それに、これでファンの人も納得してくれたよね…?」

璃奈「そういう人もいる。でもSNSやネット掲示板を見る限りだと、信じてない人も多い…と思う」

侑「え?どういうこと……?」

璃奈「…粗探しのようなことが行われてて、ネット上で拡散してしまってる」

侑「粗探し…って、例えばなに?」

璃奈「しずくちゃんのインタビュー記事で結婚願望が濁してあったり、女優なのに爪が短く切られてるのはそういう事だ、とか」

璃奈「過去にかすみちゃんがSNSにあげた写真の中で身につけていたネックレスが、しずくちゃんとお揃いとか……他にも色々ある」

せつ菜「もう聞いていられませんっ…!否認されているのに、ここまでするなんて酷すぎます!」

愛「うーん…やっぱさ、付き合ってるんじゃない?」

彼方「うむむ……ふたりのことをよく知ってる私たちからすれば、可能性がないとは言えないけど…」

250: 2021/02/07(日) 00:01:23.36 ID:gGZV33eL
侑「あぁ、だめだ…。何の根拠もないのに、私も段々そう思えてきた……」

歩夢「……いけないことなの?」

せつ菜「…歩夢さん?」

歩夢「女の子同士だと、そういう関係になっちゃいけないってこと?」

愛「いや、そういうことじゃないよ。ただ、立場とか…色々あるじゃん、それぞれにさ」

歩夢「仮にそうだとしても……かすみちゃんとしずくちゃんは、好きになった相手が女の子だっただけなんじゃないかな」

歩夢「好きな人と一緒にいたいって思うのはみんな同じだよね。だから私は…もしそうなら、そっと応援してあげたいなって思うの」

侑「歩夢……うん、私も同じ気持ちだよ」

璃奈「かすみちゃんとしずくちゃんは、大切な友達。これからも仲良くしたい」

せつ菜「はい!事実がどうであれ私たちは仲間として、おふたりを支えましょう!」

愛「…そっか。そうだよね。本人が選んだ道を否定する権利なんてないもんね、愛さんもそれに賛成!」

彼方「…ふふっ、すご~い。果林ちゃんとエマちゃんも同じこと言ってたよ」

侑「え?そうなの……!?」

彼方「うん。さっきね~、メッセージもらったの。近況報告としてツーショットも付けてくれて~」

愛「えー!写メみたい!」

せつ菜「私も見たいです!」

彼方「はいはい、順番ね~」

251: 2021/02/07(日) 00:07:51.12 ID:gGZV33eL
─────


~同刻・楽屋~


アリス「へぇ、本当に嘘ってことでいいんですか~?」

かすみ「そうだって、何度も言ってるじゃん…」

アリス「…あれれ?たくさん迷惑かけたのに、そんな態度でいいんですかぁ?」

かすみ「っく……」

アリス「急にコメントを求められたりして大変だったんですよ~?ねぇ?」チラ

他メンバー「う、うん…」

かすみ(ほんっと嫌なやつ……!)


アリス「それにしても…まさかお相手が桜坂しずくさんなんて、びっくりですよぉ」

アリス「酔った勢いとはいえ女同士でキスとか……気持ち悪い。もしかしてアリスたちのことも、そういう目で見てたんですかぁ?」

かすみ「は…!?」

アリス「そもそも着替えとか同じ部屋だし、いつ襲われてもおかしくなかったって思うと…ぐすっ、アリス怖いです」

かすみ「………っ」ギリ

他メンバー「アリスちゃん、そのくらいにしようよ。かすみちゃん俯いて動かなくなっちゃったし…」

253: 2021/02/07(日) 00:10:54.66 ID:gGZV33eL
アリス「まぁそうね、かすみんも反省してるみたいだからこれくらいに……」


ガンッッ!!

アリス「ひぃっ!?び、びっくりした……急にイス蹴りあげるなんて、何考えて…」

かすみ「ははっ……なにそれ?興味ないっつーの」

アリス「っ……」ゾクッ

かすみ「……ちょっと、席外すね」

他メンバー「う、うん……」ブルブル

アリス「待ちなさいよっ…!中須かすみっ!」

かすみ「…まだなにかあるの」

アリス「これからもアイドルとしてやっていきたいなら…潔白が証明されるまで、紛らわしいことはしないことね!」

アリス「つまり、桜坂しずくと関わるのをやめなさいってことよ!それがもう一度私たちとやり直す条件よ!」

かすみ「………」


ガチャ バタンッ


アリス「なんなのよ、あいつ……」

255: 2021/02/07(日) 00:14:02.50 ID:gGZV33eL
他メンバー「アリスちゃん…。これからどうしよう?私たち、人気グループになれるのかな?」

アリス「…なれるわよ。今回の件だってメンバーのスキャンダルとはいえ、いい売名行為になったわ」

アリス「中須かすみはグループの足を引っ張ってるわけだけど、世間では残りのメンバー…つまり私たちに同情的でしょ」

アリス「だって私たちはあの子を見捨てなかったんだから。ここで良い印象を与えて、人気に繋げるわよ」

他メンバー「かすみちゃんは確かに色んな人に迷惑をかけちゃったけど、こんなの可哀想だよ…」

アリス「はぁ?何言ってんの、そんな生半可な気持ちじゃ、この芸能界でやっていけないわよ!」

他メンバー「そっか…そうだよね」

アリス「えぇ……とにかく今はみんなで力を合わせてやっていきましょ。もちろんあの子も含めて、ね」ニコ


prrrrr!!

アリス「…ごめんなさい。電話だわ」スタスタ


アリス『どうも、こんにちはぁ♡会見は見てましたか?』

俳優『そりゃもちろん。いい気味だぜ』

258: 2021/02/07(日) 00:18:01.12 ID:gGZV33eL
アリス『うまくいきすぎて怖いですけどねぇ』

俳優『本人が否定してても、世間じゃマジだと思われてるだろうな』

アリス『あんな風に撮られちゃ言い逃れできませんよね~。あなたからもらった薬、効果てきめんでしたよ♡』

俳優『海外でしか売ってない代物だからな。媚薬なんて可愛いもんじゃない、成分表が怖くて見れないくらいのやつさ』

アリス『こっわぁ…そりゃかすみんもあんな風になりますよねぇ。半分くらいをレモンサワーに混ぜただけですよ?』

俳優『いや、半分って多いだろそれ。適量はもっと少ないぞ』

アリス『詳しいですねぇ。桜坂さんに使えなかったんですから、別にアリスがどうしようがいいじゃないですか』

俳優『あれは、あんたのとこのメンバーに邪魔されたんだよ!今思い出しても腹が立つぜ…!』

アリス『女に負けてるようじゃ…おっと、何でもありません♡』

俳優『それで、リーク代として週刊誌からいくらもらったんだよ?あのふたりの後をつけるように電話したんだろ?』

アリス『お金はもらってませんよ?アリスが欲しかったのは、グループの売名ができる機会と自身の好感度ですから』

俳優『はぁ…?変わってるな。もっと陰湿だと思ってた』

アリス『競争相手を陥れて意中の女を手に入れようとしてる、あなたに言われたくありませんけど~?』

俳優『うるさいな…!とりあえず感謝はしておくよ』

アリス『それでは、さようなら。もう連絡してこないでくださいね~♡』


ピッ…


アリス「もう少し…もう少し頑張れば、私もトップアイドルの一員になれる……」ボソッ

261: 2021/02/07(日) 00:23:23.99 ID:gGZV33eL
─────


かすみ「…くそっ、くそ……」

かすみ「っすぅ……はぁ…」

かすみ「…ものに当たるの、良くなかったな……」


かすみ(あれからしず子と話せてないし、向こうから連絡がくることもない…)

かすみ(さっきあいつに言われたように、事務所からは接触するなって通達されてる……多分しず子も同じなんだろうなぁ)

かすみ(外であんなことした私のせい…だよね)


かすみ「……あの時に認めちゃえば、よかったのかな」ボソッ


かすみ(っ、だめ!何いってんの)

かすみ(私がアイドルを辞めさせられるだけじゃない、しず子にだって影響がでちゃう)

かすみ(それに……しず子はすぐに否定したし。女優だってイメージが大事なんだから、あたりまえだよね)

かすみ(でも、それでも……会えないのは辛いよ…)


かすみ「はぁぁぁっ……」

かすみ「……んくっ……ぁうぅっ……」ポロポロ


かすみ(しず子……いま何してるのかな…)

282: 2021/02/09(火) 23:18:38.18 ID:/8axdZ8w
─────


男性医師「あまり良い状態とは言えませんね」

しずく「先生もご存知かと思いますが、その…色々ありましたので」

男性医師「ニュースを見た時は驚きましたよ。しかし根も葉もない噂をたてられて、大変でしたね」

しずく「……はい」

男性医師「事務所の方々はメンタル面も含めて、きちんとフォローしてくれていますか?」

しずく「事実確認をされた後、今後は気をつけるようにとお叱りを受けました。関係各所には、これ以上この件について触れないよう、お願いしてくださって…」

男性医師「時間が経てば、騒ぎもおさまるでしょう。あまり気にしすぎないようにしてくださいね」

しずく「…はい、ありがとうございます」ニコ

男性医師「しかし不眠や立ちくらみなどの症状がまだあるようなので、お薬は変わらず出しておきますね」

しずく「あの…仕事が忙しくて次は早くに来られそうにないので、多めに処方していただけませんか?」

男性医師「本当は2週間分なんですけど…そういうことなら、1ヶ月分出しておきますね。お大事に」

しずく「ありがとうございます。失礼します」ペコ

283: 2021/02/09(火) 23:31:11.81 ID:/8axdZ8w
しずく(…あれから、人の目がすごく気になるようになった)

しずく(普段はしないサングラスもつけるようにして、できるだけ周囲に関わらないよう過ごしてきた)

しずく(それでも人がコソコソと内緒話をしていると、自分の噂をされているような気がして、胸が締めつけられるように苦しくなった)

しずく(背後から足音がすると、恐怖で足がすくんだ。好奇の目に晒されていると、平常心を保つのが精一杯だった)

しずく(人からどう見られているのか人一倍気にしてしまう私にとって、それらは何よりも耐え難い苦痛になっていて……)


ドンッ

しずく「きゃっ……!」

??「っと……下向いて歩いてたら、危ないわよ」


しずく(もう、何やってるの…私。毎日こんなことばかり考えてるから…)

しずく「あっ……」

??「………え?」

しずく(…って、すごく綺麗な女の人。ここに書いてあるのは名前かな?……脳外科医、西木野…)

285: 2021/02/09(火) 23:34:31.88 ID:/8axdZ8w
真姫(27)「ヴェ……//そんなに見ないでよ…」

しずく「す、すみませんっ///……気をつけます、それではっ!」タッタッ

真姫「あっ、ちょっと……!」


シーン


真姫(う…サングラス落としてるって言いたかったのに……)

男性医師「おーい!ありゃ、もう行っちゃったか…」

真姫「何かあったの?」

男性医師「あ、西木野先生お疲れ様です。実はさっきの方、僕の担当で…次の診察の日程調整するの忘れてたんですよね」

真姫「ふぅん。あなたの患者ってことは彼女、心療内科に通院してるのね」

男性医師「はい、そうですよ」

真姫「そう…随分と若そうなのに、色々あるのね。人は見かけによらないってことね」

286: 2021/02/09(火) 23:41:22.78 ID:/8axdZ8w
男性医師「まぁ、ここだけの話ですけど…内緒ですよ?あの人は桜坂しずくさんっていう女優さんで」ヒソヒソ

真姫「あの子が?まぁ名前言われても、あまりテレビ見ないからわからないわ」

男性医師「確か、元々はスクールアイドルやられてたらしいですよ。虹ヶ咲学園って高校で」

真姫「スクールアイドルね…。昔と違って最近は数自体が多いから、珍しくもなくなったわね」

男性医師「彼女は今人気の女優さんなんですけど、最近スキャンダルがあったんですよ。そこからですかね、通院の頻度が増えたのは…」

真姫「へぇ…。そうだ、これ返しといて。その彼女がさっきぶつかった時に落として行ったの」

男性医師「あ、了解です。ところで今夜非番の人たちで飲み会するんですけど、どうですか?」

真姫「パス。もう早くから予定埋められてるのよ」

男性医師「お!相手はまたあの人ですか?いやぁ、一途ですねぇ~先生も。羨ましいなぁ!」

真姫「……何か言った?」

男性医師「い、いえ!!なんでも!」

287: 2021/02/09(火) 23:43:57.28 ID:/8axdZ8w
─────


~都内・スタジオ~


パンパンパンパン
ワンツースリーフォー


ダンストレーナー「かすみちゃん、ワンテンポ遅れてるよ!」

かすみ「…はい!」


パンパンパンパン
ファイブシックス セブン…


ダンストレーナー「かすみちゃんフリが少し違う、左手はこう!」

かすみ「っ、はい!」

アリス「………」イライラ

ダンストレーナー「よし、一度休憩しよっか!」


他メンバー「う~やっとだ~」グデ

アリス「…ちょっと、先輩!さっきからどういうつもりです?フリが頭に入ってないんですか!?」

289: 2021/02/09(火) 23:48:58.30 ID:/8axdZ8w
かすみ「たまたまじゃん…」ボソ

アリス「いや、何回間違えてるんですか?この曲だけじゃないですよね。他のだって立ち位置がズレてたり…プロの意識が足りないというか、」

かすみ「はぁ…本番で合えばそれでいいでしょ。それまでには間に合わせるから」

アリス「本番はもう今月末なんですよ、なにを悠長な…!」

他メンバー「まぁまぁ、アリスちゃん落ち着い…」

アリス「落ち着いてられません!そもそもこの人、やる気の欠片もないじゃないですか!」

かすみ「…もうほっといて。私は私のやり方でやる」

アリス「っぐ……ファーストライブに泥を塗ったら許さないからねっ!!」

290: 2021/02/09(火) 23:52:14.88 ID:/8axdZ8w
─────


~数時間後・公園~


かすみ「はー……」ボーッ


かすみ(あんなことがあったのに謹慎処分もなく、アイドルとして活動させてくれてるのは感謝してる…)

かすみ(私はやっぱりアイドルが好き。歌うのも踊るのも、生きてるって感じがする)

かすみ(でもあれから目に見えてミスが多くなった。強く指摘されるのもあたりまえなくらいに…)

かすみ(でも、とにかく毎日毎日、あいつと顔を付き合わせなきゃいけないのが辛い…気にしないようにはしてるけど)

かすみ(…しず子に、相談できたらな……。せめて声だけでも聞けたら)


??「…泣いてるの?」


かすみ「ふぇっ?」ドキッ

??「あっ、急にごめんね。よくこのベンチで昼食を取ってるんだけど、今日は可愛らしい先客がいたから…」

かすみ「あ、あの…なんかすみません…」

291: 2021/02/09(火) 23:56:01.75 ID:/8axdZ8w
??「ハンカチ、使って。隣に座ってもいいかな?」

かすみ「どうぞ、ありがとうございま…」

かすみ(…って、この人なんなの!?突然すぎて反射的に返事しちゃったけど、もしかして週刊誌のまわし者だったり…)


梨子(25)「ありがとう。私、桜内梨子っていいます」ニコ

かすみ「えーと……さようなら」

梨子「あ、ごめんね。警戒しないで…!別に怪しい人じゃないの!」アセアセ

梨子「ほらここ。私、ピアニストなのよ」ピラッ

かすみ(音楽コンサートinお台場ホール……?あ、出演者の欄にお姉さんの顔が写ってる…)

梨子「…ね?少しは信じてくれる?」

かすみ「まぁ…桜内さんが怪しい人じゃないのはわかりました。いきなり過ぎてびっくりしましたけど」

梨子「あなたがすごく悲しそうだったから、話を聞いてあげられたらなって思ったの。あと、下の名前で呼んでくれていいのよ」

かすみ「あ、はい…。お気持ちは嬉しいですけど、初対面の人に話せるようなことじゃなくて」

梨子「そっか。なら別の方法で、元気になってもらおうかな」ニコ

292: 2021/02/09(火) 23:59:16.42 ID:/8axdZ8w
かすみ「へっ……むぐっ…!?」

梨子「これはね、私特製のサンドイッチなの♡」

かすみ「ぁう…きゅ、急になにを……!ってあれ、美味し…」モグモグ

梨子「私も辛いことがあると、よくここに来て泣いてたから。だからあなたを見かけた時、まるで自分を見てるような気になっちゃって…」

かすみ「あむっ……それで、ナンパついでに餌付けですか」ゴクンッ

梨子「うーん…少し聞こえが悪いような……」

かすみ(この人、少し天然なだけで悪い人じゃなさそう…)

かすみ「…これは友達の話なんですけどね。自分の夢を叶えるのか、好きな人とずっと一緒にいるのか……そのどちらかを選ぶなら、梨子さんはどうしますか?」

梨子「………」

かすみ「………梨子さん…?」

梨子「あっ、ごめんね?どっちを取るかって話よね。そうだなぁ……私はどっちも選びたいかな」

かすみ「どっちもって、答えになってないんですけど…」

梨子「確かに両立させるのは難しいかもしれないわね。でも私は…夢を叶える方を選んで、少し後悔してるから」ニコ

293: 2021/02/10(水) 00:04:18.87 ID:o8T/FYWm
かすみ「えっ…?梨子さんはピアニストになるのに、恋を諦めたってことですか」

梨子「その想いを伝えたことはないし、所謂片想いってものよ。でもいいの、今はそれで良かったんだって思えるようになったから」

かすみ「……そんな風に言えちゃうんですね」

梨子「あなたも歳を取れば、考え方も変わってくるわ」

かすみ「私はその子のこと、大好きなんです。でも自分の夢も諦めきれない……これって欲張りですかね」

梨子「…それは私が決めることじゃないわね。あなた自身が選ぶことよ。どこまでが強欲かなんて、人それぞれ認識は違うもの」ニコ

かすみ「私自身が……うぁっ、違うんですよ!?今のは全部友達の話で…///」

梨子「ふふっ♡ごめんなさい。あなたが大切な友人に似てたから…つい、からかいたくなっちゃった」

かすみ「うぅ……///」

梨子「そうだ。これ、良かったら受け取って?」

かすみ「……チケットですか?」

梨子「明日も公演があるの。もし時間があったら、見にきてね」

かすみ「えっ!?い、いやこんなの受け取れません…!」

梨子「いいの、私の話し相手になってくれたお礼なんだから」

かすみ「そうですか…ありがとうございます」


かすみ(…やっぱりこの人は、いい人だ)

294: 2021/02/10(水) 00:08:22.83 ID:o8T/FYWm
─────


~某テレビ局・スタジオ~



監督「じゃあ次、一番の山場とるから気合い入れてけよ!」

スタッフ「了解っすー!」


俳優「今日でクランクアップだね。色々ドラマ撮ってきたけど、キスシーンは未だに慣れないなぁ」

しずく「え?フリだけでいいって聞いてますけど…」

俳優「そうそう。カメラの画角でキスしてるように見せるから、本当にする必要はないんだよ」

しずく「あの…またリテイクになったら、すみません」

俳優「あ~気にしないで?ミスするのも無理ないよ、あんなスキャンダルがあったんだし。可哀想に…大変だったね」


スタッフ「すみません監督!新人が小道具落として壊しちゃったみたいで…少し時間ください!」

295: 2021/02/10(水) 00:13:09.03 ID:o8T/FYWm
監督「何してんだよ全く…!おふたりさん悪いね、声かけるまで休憩しといて!」

しずく「はい…!わかりました」

俳優「はーい、了解です」


しずく(もうこれ以上はセリフ飛ばせない…。気を引き締めなきゃ…)

俳優「…大丈夫?」

しずく「少し緊張してるだけです」

俳優「良かったら練習付き合おうか?」

しずく「いえ…!お時間いただくなんて申し訳ないので」

俳優「いつも頑張ってるからさ、力になってあげたいんだ。……とかいうのは建前で、俺も自信ないから練習したいんだよね」ニコ

しずく「そういうことなら…すみません、よろしくお願いします」

俳優「じゃあここじゃなんだし、俺の楽屋で練習しよっか」

296: 2021/02/10(水) 00:15:14.88 ID:o8T/FYWm
─────


~楽屋~


しずく「さくらの部屋のシーンからでいいですか?」

俳優「うん、そこからやろっか。……そうそう、あの子とは最近会ってるの?」

しずく「あの子って…」

俳優「中須かすみちゃん」

しずく「えぇと…会ってませんよ。色々とややこしくなるので」ニコ

俳優「ふーん…。初めて会った時は何も思わなかったけど、あの子ってよく見たら可愛いよね」

しずく「そう、ですかね……」

俳優「アイドルだけあって顔の良さは言う事ないし、身長が低めなのもいいよね。子どもっぽい愛らしさってやつがあって、男心をくすぐるというか…」

しずく「………」

俳優「…しずくちゃん?どうかした?」

298: 2021/02/10(水) 00:21:23.78 ID:o8T/FYWm
しずく「あ、いえ……時間も無いので、もう始めませんか?」

俳優「……いいよ。やろっか」ニコ

俳優(へぇ…露骨に話を変えたのは、嫌な話題だったからだな。やっぱあの女とまだそういう関係なのかよ…)



しずく『もう、終わりにしたいんです』

俳優『なんで急に別れ話なんか…!どうしちまったんだよ、さくら』

しずく『…さようなら』

俳優『家のために、好きでもない婚約者に身を捧げるのか!?本当にそれでいいのかよっ…!』

しずく『私なんてそんな程度なんです!結局は、言いなりの人形で……』

ギュッ

俳優『…人形は、こんな風に温かくないよ』

しずく『っ……』

俳優『さくら……』グイッ


俳優「……あぁ、ほんとに可愛いね」

299: 2021/02/10(水) 00:30:17.70 ID:o8T/FYWm
しずく(ん…?こんなセリフ台本に…)


俳優「…俺が、本当のキスってやつを教えてあげるよ」グッ

しずく「ま、待ってください…!」

俳優「…どうしたの?これ練習だよ、役作りは大事でしょ」

しずく「……嫌です」

俳優「しずくちゃん…もう自分に素直になろうよ、優しくするから」

しずく「私は、好きでもない人と…こんなことしたくありませんっ…!」

俳優「あのさぁ……女とあんなやらしいキスするのに、なに純情ぶってるんだよ。ほら俺の顔見ろよ、いい男だろ?」

しずく「……きもちわるい」ボソ

俳優「は…??なに、言って…」

しずく「やですっ……やめてくださいっ!」

俳優「ふざけんな!キスのひとつくらい、減るもんじゃないだろ!」

しずく「っ……!!」ドンッ

俳優「いってぇ…何してくれてんだよ!」

しずく「急にどうしたんですか……!さっきまで、あんなに優しかったのに」

300: 2021/02/10(水) 00:38:20.16 ID:o8T/FYWm
俳優「…そりゃ好みの女には何度だって優しくもするさ!ただこの俺を二回も拒絶したのは、お前が初めてだけどな!」

俳優「さっきなんて言いやがった?気持ち悪いだと…!?この俺に恥をかかせやがって!あのガキくさい女に負けるとか、ありえねぇだろ!!」

しずく「…私のことをどう言おうが構いませんが、彼女のことを貶めるのはやめてください!」

俳優「くそっ…!マジで何がいいんだ、俺なら女の細い指よりも気持ち良くさせてやれるのにな!バカな女だよ本当に…」

しずく「あなたのことは尊敬もしていましたし、役者仲間として好意を抱いていました。でも、もう顔も見たくありません…!」

俳優「っ、この…!!」


ドンドン!

スタッフ「あの、大きい音が聞こえたんですが大丈夫ですかー!?」


俳優「ちっ……」

しずく「…では、取り引きですね」

俳優「はぁ…?」

しずく「あなたがつまらない虚言を吐き続けるなら、私は今の一連の流れに対して然るべき手段を取ります」

俳優「……けっ!そういうことかよ。いいぜ、受け入れてやるよ。もう関わりたくもねぇしな」

俳優「だがお前らが普通の道を歩めると思うなよ!ずっとここにいたいなら、さっさと目を覚ますべきだな!」

しずく「…あなたに言われるまでもなく、私の心はもう決まっているので」

316: 2021/02/13(土) 13:47:26.24 ID:x8gVG7wF
─────
~翌日・お台場ホール~


ザワザワ


かすみ「……本当に来ちゃったし」ボソ


かすみ(あの後は自然な流れで梨子さんに連絡先を渡され、戸惑いつつもそれを受け取ってしまった)

かすみ(警戒心を解ききれない私に、梨子さんは嫌なら無理しなくてもいいと言ってくれたけど…)


モギリ「チケットを確認させていただきます」

かすみ「あ、はい…」


かすみ(あれだけ大きくニュースで取り上げられたんだもん。変装してたって声や話の内容で、私が中須かすみだって気づいてもおかしくない)

かすみ(でも多分…あの人は本当にわかってないと思う。じゃなきゃこんなことしないよね)


モギリ「お客様、お越しいただき誠にありがとうございます。VIP席となりますのでご案内いたします」

かすみ「ふぇ、びっぷせき…?」

モギリ「こちらです」


かすみ(少し話をしたとはいえ見ず知らずの人に、こんないい席をあげちゃうとか…梨子さんって聖人すぎない?)スタスタ

317: 2021/02/13(土) 13:51:13.89 ID:x8gVG7wF
かすみ(…あれ。VIP席っていうからダンディなおじさんとか宝石を身につけたマダムがいっぱいいると思ったのに、数人の女の人しかいない)

かすみ(まぁ…こっちの方がいっか。身バレしても困るもん)ストン
ブーッ!


かすみ(照明が暗くなって、幕があがった…。もう始まるんだ)


梨子「………」スッ


かすみ(……えっ。あの人が昨日のお姉さん?ピンクのドレス着てると、より大人っぽく見える…なんか別人みたい…)ゴク


梨子「……♪」

ポロロン …♪タララン♪


かすみ(……すごい。上手く言葉にできないけど、とにかく圧倒される……これがプロなんだ)


??「梨子ちゃんキレイだなぁ…」

??「しーっ!演奏中はダメだってば…!」ヒソヒソ

??「わっ、そうだった…!」ボソ


かすみ(えぇ……何この人たち…)

かすみ(ここにいるってことは全員が有名人とか?でもそんな風に見えないし…)

かすみ(金髪の女性はいかにもお金持ちっぽいけど、他の3人は……なんだろ。お付きの人とか?)

かすみ(それにしては、はしゃぎ過ぎな気もする…まぁいっか。梨子さんの演奏に集中しなきゃ)

331: 2021/02/14(日) 18:59:01.21 ID:OFAoyYM/
─────



アナウンス「ただ今より後半の部に入るため、休憩時間とさせていただきます。再開は…」


千歌(25)「もう凄かったねぇ…!」

果南(26)「おっ。千歌が寝てないなんて珍しいね」

千歌「流石にちゃんと起きてるもん!梨子ちゃんのステージなんだよ?」

曜(25)「でも、昨日は寝るの遅かったんじゃなかった?」

千歌「そうなの~!団体旅行のお客さんが3件も入ってたからね!」

鞠莉(26)「繁盛してていいじゃない♪また沼津に行く時は泊まりにいくわね、梨子も連れて!」

千歌「もちろん!お安くするよ~!」


かすみ(……なるほど。梨子さんのお友達なんだね、同い年くらいにも見えるし)


曜「そういえばさ、ルビィちゃん来なかったんだね。久々に会いたかったな~!」

かすみ(へっ……?)

332: 2021/02/14(日) 19:06:35.17 ID:OFAoyYM/
鞠莉「そうなの。声はかけたんだけど、どうしても外せない仕事が入ったみたいでね」

果南「いやぁ…アイドルってのは大変だね。私は家を継いでおいて正解だったみたい」

曜「えーっ!でもさ、果南ちゃんのアイドルも見てみたいよね?ピンク一色のすっごく可愛い衣装とかさぁ」

果南「もう、曜は調子のらないの」


かすみ(この人たち今確かに、ルビィちゃん、アイドル、って言った…)

かすみ(そのふたつの単語に共通するのって……黒澤ルビィのことだよね…?)ドクン


鞠莉「ところで、そっちの3人は来てないの?」

曜「花丸ちゃんは、今回はごめんって断られちゃった。締切が近くて今は大忙しみたい!」

果南「善子先生は毎日頑張ってるよ。この前なんて子どもたちを店に連れてきてくれてさ、楽しかったな~」

千歌「ダイヤさんはこの時期、家を離れられないんだって。ルビィちゃんによろしくって言ってた!むぅぅ…今回はみんな揃うと思ったのになぁ」

鞠莉「じゃあ今度はそっちで同窓会しましょ♪ルビィちゃんはなんとしても連れていくから、ノープロブレムよ!」

333: 2021/02/14(日) 19:12:35.19 ID:OFAoyYM/
曜「あれ?ルビィちゃんって鞠莉さんの事務所から、にこさんの所に移ったんじゃなかった?」

鞠莉「そうよ。うちは俳優とかモデルが多いから、マネジメントの手法がそっち寄りなのよ。にこっちの事務所ならもっと上を目指せるでしょ?」

果南「ルビィちゃんは本当にストイックだね。どこまで遠くに行っちゃうんだろうって、たまに心配になるよ」

千歌「ルビィちゃんはずっとルビィちゃんだよ!小さくて、可愛くて、みんなの妹みたいな存在だもん」

鞠莉「まぁ…一時はどうなるかと思ったけど、ダイヤとも無事に仲直りできたみたいでほっとしたわ」

曜「うんうん。やっぱさ、大人になってもルビィちゃんはダイヤさんに敵わないよね~」


かすみ(え?あのルビィさんに、ここまで好き放題言える人達って……一体何者なの?)

かすみ(千歌、果南、曜、花丸、善子、ダイヤ、鞠莉、ダイヤ……)

かすみ(これは会話の中で出てきた個人名だけど、今の芸能界にこんな人達はいない。うーん……)

かすみ(そういえばさっきの会話、昔からルビィさんの事をよく知ってるような言い草だったな…)


かすみ「……あっ、」

334: 2021/02/14(日) 19:21:50.22 ID:OFAoyYM/
千歌「そうだ!ここに来るまでにね、鞠莉さんの事務所の名前をどこかで見た気がするんだけど…何だったかなぁ?」

果南「大きい会社なんだし毎日のように見るんじゃない?」

曜「ネットニュースに載ってたやつだよね?内容はあんまり覚えてないけど」

鞠莉「あ~スキャンダルね?桜坂しずくっていう女優さんの…」

曜「あっ、それそれ!」

鞠莉「まぁ他の写真も買い取ったし、本人も否定してくれたから、大丈夫だと思ってたんだけど…騒ぎが収まらなくてね」

千歌「そっかぁ…芸能界って大変なんだね」

鞠莉「飛び火して他のタレントにまで素行調査が及んでるみたいでね。聞いた話だと、事務所内の空気は相当悪くなってるみたいなのよ」


かすみ「あのっ、すみませんでした!!」ペコッ


千歌「わぁっ!うぅ…びっくりしたぁ…!」

鞠莉「……あなたは?」ニコ

かすみ「私は、お台場芸能事務所の中須かすみっていいます…!」

果南「かすみちゃん?鞠莉の知り合いなの?」

曜「…あ、テレビで会見してた子だ!」

335: 2021/02/14(日) 19:27:43.20 ID:OFAoyYM/
かすみ「……はい。そうです」

鞠莉「それで、どうしたの?私に何か御用かしら?」

かすみ「そちらの事務所に迷惑かけて、ごめんなさいって…お伝えしたくて。いま話を盗み聞きしてたのも謝りますっ!」

かすみ「その上で、なんですけど……桜坂しずくのこと、これからもよろしくお願いします!」ペコッ

かすみ「私は、自分の夢を追いかけます。だからあの子にも夢を叶えて欲しいんです」

鞠莉「んー…そもそも私はその子に直接会ったことないし、事務所がオハラグループの傘下にあるってだけの繋がりだから、そこまでする義理はないのよね」

かすみ「あの子に肩身の狭い思いをして欲しくないので…勝手ですけど、あなたにお願いしました」

鞠莉「あなたたちはお友達なんでしょう?世間の目なんて無視して、それで突き通せば、一緒にいたって何も言われないわ」

かすみ「一緒にいたら、また迷惑かけちゃうと思うので。それに本当はわかってるんです…未だに逃げ道を探してる自分がいることに」

鞠莉「……そう、わかったわ。でもあなたはそれでいいの?」

336: 2021/02/14(日) 19:39:01.90 ID:OFAoyYM/
かすみ「…いいえ。今の私はカッコよくないので、夢を叶え終わったら、あの子を迎えに行きます!」

曜「うへっ…それって…//」

果南「ふぅん、可愛い顔して結構カッコいいこと言うんだね」

千歌「んーと…どういうこと?ねぇねぇ曜ちゃん、どういう意味ー?」

曜「え、私なの…!?」

鞠莉「んもぅ。梨子ってば、こうなることを予想してここで引き合わせたのかしら…」

果南「いや、多分たまたまじゃないかな」


かすみ(梨子さんの話を思い出す…。梨子さんは夢を叶えて、今こんなにも輝いてる)

かすみ(夢もしず子も、両方追い求められるなら、そうするべきだけど)

かすみ(でも実際はそんなに上手くいかない。このままじゃどっちも中途半端に、終わってしまう)

かすみ(だから、これでいい。今やれることを精一杯やるしかない)

338: 2021/02/14(日) 19:46:39.16 ID:OFAoyYM/
かすみ(ルビィさん、今やっとわかりましたよ。あなたの言いたかったことが)


かすみ「…待ってなよ!アリス!!」ビシッ


梨子「ひっ!?」ビクッ


千歌「あ、梨子ちゃんだ!おーいっ!」ブンブン

曜「ありゃ。すごいタイミングで入ってきたね」

梨子「えっと…これはどういうこと?」

鞠莉「ねぇ梨子、彼女が誰かわかってて今日ここに招待したの?」

梨子「いいえ、まだ名前を聞いてないので…もしかしてお知り合いでしたか?」

鞠莉「えっ……そんな子を、どうして?」

梨子「この子は公園で会ったお友達なんです。おそらく高校生くらいですけど、なにか悩んでるみたいだったので元気づけてあげようと思って」ニコ

果南「ほらね?」

鞠莉「えぇ……でもあなたらしいわね」ニコ

梨子「へっ……?」キョトン

かすみ「わ、私はもう高校生じゃありませんよぉ!!」

339: 2021/02/14(日) 19:52:48.16 ID:OFAoyYM/
─────


~数日後~


しずく「ぅく……」ズキ


しずく(最近は頭痛もおさまらない…。吐き気もひどいし)

しずく(先生からもらった薬も、もう効かなくなってきた…)

しずく(ダメだなぁ…私って。かすみさんにあんな偉そうなこと言ったのに、結局依存してたのは私の方だったんだね)

しずく(期待されてるから、求められるから、私はずっと頑張れてたんだ。…贅沢な悩みだったんだよ)


「──ちゃん、しずくちゃん!」


しずく「あっ、はい?」

マネージャー「窓の外眺めちゃってどうしたの。最近多いね」

しずく「すみません…」ニコ

マネージャー「…やっぱ疲れてるよね。それならこのオファーは断ろっか」

しずく「えっ?」

マネージャー「実はさ、上から通達があって…しずくちゃんがこれ以上キツそうなら仕事量を調節しようかなって」

340: 2021/02/14(日) 20:00:00.08 ID:OFAoyYM/
しずく「っ、そんな…!」ガタッ

マネージャー「しずくちゃんは大学にも通ってるでしょ、だからへこたれるのも仕方ないよ」

しずく「嫌です」

マネージャー「嫌って…」

しずく「私はまだやれます…!ここで休んでしまったら、ダメになってしまいそうで怖いんですっ」

マネージャー「…まぁ、そりゃそうだよね。スキャンダルの後に露出が減れば、世間は芸能界から干されたって思うだろうね」

マネージャー「この世界は入れ替わりが激しいからさ。今のオファーも別の誰かに回ることになるわけだし…」

マネージャー「そのことを思えば、多少は我慢してでも努力しないとね。…まぁこれは持論だから強制は、」

しずく「わかっています。だから今まで通りでいたいんです…お願いします」

マネージャー「そっか、了解」


マネージャー「…そういえば中須さんたちのグループ、今月末にファーストライブやるんだってね」

しずく「そう、なんですね…」

マネージャー「CDもそこそこは売れたみたいだし、スキャンダルが売名になってしまってるパターンかな。あーあ、うちにもメリットがあればなぁ」

341: 2021/02/14(日) 20:03:44.22 ID:OFAoyYM/
しずく「………」


prrrr!!


マネージャー「電話、誰からかな?」

しずく「えっと…侑さんです。高校の時の、先輩です」

マネージャー「…中須さんじゃないよね?約束したでしょ、もうしばらくは関わらないって」

しずく「私のスマホを管理してるんですから、特定の人物と頻繁に連絡を取り合っていれば、すぐにわかってしまうと思いますけど」

マネージャー「…うん。出ていいよ、本当みたいだからね。自分は席外すからさ」ガタン


ピッ

しずく『侑さん、何の用ですか?前も言いましたけど私は平気で…』

侑『突然ごめんね。でも今日は私が話をしたいわけじゃないんだ。今代わるから』

しずく『え…?』ドキ


かすみ『……やっほ。元気?』

しずく『ぅ、かす…』

かすみ『待って!私の名前呼んじゃダメだよ、こっちは侑先輩のスマホ借りてるからまだ誤魔化せるけど』

しずく『うん…それで、急にどうしたの』

かすみ『私さ、しず子に伝えたいことがあって』

しずく『…待って。私から言わせて……ごめんね』

かすみ『ふぇ…?』

342: 2021/02/14(日) 20:14:17.55 ID:OFAoyYM/
しずく『……私ね、全然わかってなかった。アイドルを続けて欲しいってそればかり考えちゃって、あなたの気持ちを無視してたの』

かすみ『まぁ…しず子ってばすぐに否定しちゃうから、やっぱり迷惑かけたんだって思ったし、もうこのまま終わっちゃうのかもって考えたりもしたよ』

かすみ『でも、もうそれはいいの。しず子は私を守るために自分からそう言ってくれたんだよね、わかってるから』

しずく『……ありがとう』

かすみ『だからね、』

しずく『うん。もう私たち充分頑張ったよね』

かすみ『…ん?』

しずく『さっきまではね、自分の心を押し込めて、もっともっと頑張らなくちゃいけないんだって思ってたけど…こうして声聞けたら、そんなのどうでも良くなっちゃった』

しずく『私ね、仕事辞めようと思うの。そうしたらずっと一緒にいられるでしょ?』

かすみ『……何、言ってんの?』

しずく『なにって…ふたりで芸能界を引退するの。だから電話してきてくれたんだよね?もうこんな生活、耐えられないよね』

かすみ『待って…違う。私は本当の意味で夢を追いかけようと思うって、そう伝えたかったんだよ』

しずく『……!』

かすみ『そりゃしず子のことは大好きだし、一緒にいたいとも思うよ。でも私はやっぱり、アイドルでいたい』

344: 2021/02/14(日) 20:28:18.86 ID:OFAoyYM/
かすみ『そして、もう誰にも、何も言わせないくらいの人間になりたい。ルビィさんに好き勝手されっぱなしじゃ、悔しい』

かすみ『だからさ、それぞれに夢を叶えようよ。しず子が私に合わせる必要なんてない。でも、その後でいいなら…』

しずく『……ずるいよ』

かすみ『…ん?』

しずく『なんで、一緒に諦めてくれないの』

かすみ『──えっ…』

しずく『私がその言葉をかけて欲しい時に、自分自身から逃げてたくせに……今になってこんな綺麗ごと言うなんて、ずるいよ!』

しずく『理由が欲しかったんでしょ、アイドルを辞める理由が…!だからこうして、私がそれを作ってあげてるのに…自分勝手すぎるよ!』

しずく『それに、私にこれ以上どう頑張れって言うの?どこまでやれば、認めてくれるの…!』

かすみ『そうじゃないよ、落ち着いて聞いて。私はもう、しず子のためにアイドルやるの辞めようと思う』

しずく『っ……』

かすみ『だからしず子も、私のために女優やるのやめなよ。……昔から言ってたじゃん、大女優になるんでしょ?』

かすみ『そんな人は、誰かのためにって考えちゃだめなんだよ。私のために夢を捨てないでよ』

しずく『…やだ』

かすみ『は…?』

しずく『やだやだやだやだっ…!』

かすみ『ちょっと…』

しずく『バカっ…!もういい、もう知らないっ』

かすみ『待っ…』


ツーツー…

346: 2021/02/14(日) 20:33:21.78 ID:OFAoyYM/
─────


かすみ「はぁ…。切られるとは思わなかった」

侑「大丈夫?なんか慌ててたけど…」

かすみ「すみません、協力してもらったのに」

歩夢「もしかして…喧嘩しちゃった?」

かすみ「いや、喧嘩というか一方的に拒否されただけなので…。でもあのしず子が、あんな癇癪おこすなんて思わなかったです」

かすみ「私に子どもっていうくせに、どっちが子どもなんだか…」

侑「まぁ、しずくちゃんは意外とそういうところあるもんね」

歩夢「それで、このままにしておいていいの?」

かすみ「連絡しても取り合ってくれないでしょうし、しばらく時間をおくしかないですね…」

侑「そっか…心配だなぁ。あ、そういえば今週末のライブチケット取れたよ!」

かすみ「え…!!そんなの言ってくれたらあげたのに!」

侑「ふっ…こういうのはね、自分で取るからこそ価値があるんだよ」

歩夢「他の虹学メンバーの分もあるから、皆で応援しにいくね」ニコ

かすみ「ほんとですか…!嬉しいです!」


かすみ(本当はしず子にも見て欲しかった。でも客席に呼ぶわけにはいかないし、仕方ないよね……)

かすみ(心残りもあるけど今はライブに集中しなきゃ…)

347: 2021/02/14(日) 20:42:57.95 ID:OFAoyYM/
─────


~月末・ライブ会場 舞台袖~



「アンコール!アンコール!」


他メンバー「いやぁ…盛り上がってますね!」

アリス「えぇ。でもまだ終わりじゃないわ、アンコールのあと、次のライブツアーを発表するんだから」

他メンバー「はい!あ~緊張してきた…!」

かすみ「ちゃんと休まないと次のパフォーマンスに響くよ」

他メンバー「そ、そうですよね!」

アリス「…あなたにそんな風に言われる筋合いはないですけど、今までの曲は全て完璧でしたね」

かすみ「あたりまえでしょ、プロなんだから」

アリス「悔しいですが…認めざるを得ませんねぇ。何が先輩をそこまでさせるのか、わかりませんけど」

かすみ「今日はステージを見て欲しい人がたくさん客席にいるから、気を抜けないだけ」


かすみ(この前のお礼に梨子さんを招待したら、鞠莉さんたちも一緒に来てくれたらしい)

かすみ(だからルビィさんが客席にいるって聞いた時も、特に驚かなかった)

かすみ(それに虹学のメンバーに、私の元々のファンの人たち…みんなが来てくれてるんだ)

349: 2021/02/14(日) 20:47:49.96 ID:OFAoyYM/
かすみ(だから、やり遂げなきゃ。このライブは絶対に成功させる…!)


タタッ

スタッフ「かすみちゃん!なんか緊急の連絡みたいで、電話を繋いで欲しいって言われてて…」

かすみ「…はい?こんなときに誰ですか?」

スタッフ「それが、南ことりさんっていう人なんだけど」

かすみ「なんでことりさんが……かわってください」


かすみ『もしもし、急にどうしましたか?』

ことり『かすみちゃん…!大変なのっ』

かすみ『大変って、今から私…』

ことり「しずくちゃんが緊急搬送されたらしいの!」

かすみ『へっ……』

ことり『詳しいことはわからないけど、今から私とのお仕事だったのに姿が見えなくて、確認してもらったら…』

ことり『自宅で意識のない状態で倒れてたんだって…!騒ぎになってるから、もうすぐニュースにも出ちゃうと思う』

353: 2021/02/14(日) 20:54:46.91 ID:OFAoyYM/
かすみ『は…?なんで、しず子が……』

ことり『救急車は西木野総合病院に向かったみたいなの、私も今から行くつもり!』

かすみ『意識がないって…救急車って…どういうことですか?』

ことり『机の上に大量の錠剤が散らばってたみたいで、それが関係あるかもしれないって』

かすみ『……わかりました、教えてくれてありがとうございます。それでは』


アリス「ちょっと、どこに行くつもりですか!?」

かすみ「…どこだっていいでしょ。止めないでよ」

アリス「行かせませんよ!今はファーストライブの真っ只中、私たちの大切な未来のために、途中放棄なんて許さない!」

他メンバー「かすみん!まだアンコールが残ってるんですよ、そんな勝手なこと…」

かすみ「だとしても、私は…!」

アリス「一方的に契約を破れば、どうなるか想像つきますよね!?」

アリス「ただでさえ事務所に迷惑をかけているのに、ファーストライブさえも放り出したら、待ってるのは解雇ですよ!」

かすみ「っく……」

355: 2021/02/14(日) 20:58:21.83 ID:OFAoyYM/
アリス「アイドルという夢にしがみつくあなたに、選択の余地なんてありません!馬鹿なこといってないで、早く頭を切り替えてください!!」


かすみ(そうだ……もう後がないのは、わかってる)

かすみ(客席には私を待ってる大勢の人がいる。今の電話も無かったことにしてしまえば…)

かすみ(ライブが終わったあと、みんなと同じようにニュース速報で知ったことにすれば……何も不自然じゃない)

かすみ(でも、でも……このことを知った上で、私はステージで笑えるのかな)

かすみ(誰よりも輝いてるかすみんに、なれるのかな…)


スタッフ「準備整いました!いつでもいけます!」

他メンバー「はーい!」

かすみ「………行かなきゃ」

アリス「は…?」

かすみ「私は、自分に嘘はつきたくない…!」ダッ

アリス「ちょっと…!!!さっきの話っ、わかってるんですか!?」

他メンバー「あわわ…!?本当にかすみん行っちゃいましたよ…!」

アリス「あーもう!!いいから、4人でやり遂げるわよ!あんなの必要ないわ!」

388: 2021/02/20(土) 14:09:19.88 ID:7CnXZIOf
─────


~病院前~


ザワザワ


アナウンサー「はい、今は西木野総合病院に来ています。こちらに桜坂しずくさんが運び込まれたとのことです」

アナウンサー「ご覧の通り凄い人だかりです。各社メディアが続々と集まってきている状況で……」


「向こうから入ったらしいぞ!」

「カメラおさめたか!?」

「一台だけ撮れてます!」


ガヤガヤ


スタッフ「これ読んでこれ!」

アナウンサー「えー……たった今、最新の情報が入りました。アイドルの中須かすみさんが裏口から病院内に入ったとのことです!」

アナウンサー「しかし、彼女は現在ライブに出演しているはずではという声もあり、現場は混乱に包まれています」

アナウンサー「このおふたりといえば、近頃世間を騒がしたとあるニュースが思い浮かびますが…今回のことと関係があるのでしょうか!?」

389: 2021/02/20(土) 14:16:59.56 ID:7CnXZIOf
─────


~病院内~


かすみ「ことりさん……!」

ことり「かすみちゃん…!?ごめんね、今日がライブだったんだよね。私、気が動転しちゃって、すぐに知らせなくちゃって思って…」

かすみ「それはもういいんです。それで、しず子は…!?」

真姫「彼女ならそこのICUにいるわ。今は眠ってるけど、命に別状はないから安心しなさい」

かすみ「そ、そうですか…。えっと、失礼ですけどあなたは?」

ことり「真姫ちゃんだよ。ここのお医者さんで専門は違うけど、しずくちゃんが心配で付き添ってくれたみたいなの」

真姫「ちょっ、一言余計なのよ!///」

かすみ「すみません…助けてくださって、ありがとうございますっ」ペコッ

真姫「私は別に何もしてないわよ…」ゴニョ

かすみ「えっと…何があったのか、聞いてもいいですか?」

真姫「端的に言えばオーバードーズね。あぁ、薬の過剰摂取のことよ」

かすみ「薬…??」

真姫「彼女、うちに通院してたのよ。そこで処方されたものと、市販の睡眠薬を同時に服用したせいで意識が混濁したんだと思うわ」

かすみ「えっ…!通院って、しず子は病気だったんですか!?でもそんなの全然知らな…」

真姫「病気、ではないわね。彼女の場合は心の療養が必要だったのよ」

390: 2021/02/20(土) 14:27:25.77 ID:7CnXZIOf
かすみ「心……?今回のことも、思い詰めてってことですか!?」

真姫「私も最初はそれを疑ったけど、昏睡状態にまでなってないから、意図的に多量服用したわけじゃないわ」

真姫「おそらく日常的に基準量を超えて服用していたせいで薬が効きにくくなっていて、無意識のうちに過剰摂取したのね」

真姫「で、徐々に意識が朦朧として倒れたってわけ」

かすみ「……そう、なんですか」

真姫「まぁ中毒を起こす量ではあったから胃洗浄はさせてもらったし、もう二度とこんな馬鹿なことはしないでしょうね」

かすみ「その…しず子はもう大丈夫なんですよね」

真姫「えぇ。しばらくしたら目が覚めると思うわ。このまま容態が安定すれば個室に移ってもらうから、面会はそこでしなさい」

かすみ(良かった……、ほんとに良かったよ)ホッ


真姫「それはそうとして…本当に良かったの?」

かすみ「何がですか?」

真姫「ライブ中だったんでしょ。それを放り出して、ここに来るなんて」

かすみ「あー……」

391: 2021/02/20(土) 14:34:22.62 ID:7CnXZIOf
真姫「ことりが連絡したって聞いたけど、それはそうとして、後回しにすることもできたじゃない」

かすみ「うぅ…そうですけど、居てもたってもいられなくて…」

真姫「…あなたは彼女の、ただの友達なんでしょ?そこまで気にかける意味がわからないんだけど」

ことり「あ…真姫ちゃん、あのね……」

かすみ「何も変じゃないですよ。しず子は私の大切な……恋人なんですから」

真姫「ヴぇ………」ポカーン

ことり「かすみちゃん…あんまりにもサラッと言うから、真姫ちゃんが固まっちゃったよ?」

かすみ「…でもダメなんです。そんな大事な人のこと、私は全然わかってませんでした」

かすみ「もっと早く気付いてあげられてたら、あの時にもっと寄り添ってあげられてたら……って、今はそんな気持ちで胸が苦しいんです」

かすみ「上辺ばかり見て、本当の声は聞こえないふり……自分に都合のいいことだけ受け入れて、嫌なことは見て見ぬふりしてた」

かすみ「だからいいんです。きっと、これは神様からの罰なんですよ」

ことり「かすみちゃん……そんなこと、」

392: 2021/02/20(土) 14:41:03.81 ID:7CnXZIOf
真姫「…罰ね。本当にそうなら、彼女は遠い所へ行っていたと思うわよ」

かすみ「………」

真姫「神様なんて、あってないようなものなんだから。今は一緒にいられることに感謝して、大人しくしてなさい」

かすみ「……はい。ありがとうございました」ペコ

ことり「かすみちゃん、どこに行くの?」

かすみ「今夜はずっとここにいるつもりなので、少し休憩します。衣装のまま飛び出してきちゃったし…」

真姫「それなら私の部屋を貸してあげるから、シャワーでも浴びてから休んでなさい。これ鍵よ、部屋は左の角を曲がった先にあるわ」

かすみ「…色々とすみません」スタスタ


ことり「…あれ、優しいね?真姫ちゃんは今日が初対面なはずなのに~」

真姫「別に。こういう無鉄砲な子は放っておくと危ないでしょ」

ことり「ふふっ♡素直じゃないなぁ♡」

真姫「からかわないで…。彼女は良い子だから面倒見てあげて欲しいって、梨子から連絡がきたのよ」

ことり「梨子って…Aqoursの梨子ちゃんのこと?」

真姫「そう。ピアノ仲間なのよ、向こうはプロだけど」

ことり「そっか、かすみちゃんは顔が広いんだねぇ」

393: 2021/02/20(土) 14:47:31.84 ID:7CnXZIOf
─────


~翌朝~


しずく(……あったかい。おひさまみたい)

しずく(……すべすべしてて、やわらかい)

しずく(それに、いいかおり……なんだろう、これ)

しずく(よくしってる……ほっとする、におい)

しずく(前にもこんなことあったような……いつだっけ…)

しずく(でも、小鳥のさえずりも、うるさいアラーム音も聞こえない……おかしいなぁ…)


しずく「……んっ…」パチ


かすみ「すぅ……すぅ…」

しずく「ふぇ……かすみさん……?」


しずく(なんで、椅子に座ったまま寝てるんだろう……?ベッドの端にもたれかかるくらいなら、一緒にお布団の中にいればいいのに…)

しずく(………あれ?ここ私の部屋でも、かすみさんの部屋でもない……真っ白だ)

しずく(それに左腕の違和感。よく見たら、点滴の針が刺さってる……)

395: 2021/02/20(土) 14:56:17.80 ID:7CnXZIOf
しずく(ということは、この場所……病室?)

しずく(私はなにを…確か普段通りに起きて、身支度をして……それから…)


かすみ「ゔぁ…!やば、寝てた…!」ガバッ

しずく「あっ……」

かすみ「へっ」


シーーーン


しずく「かすみさん……その、私…」

かすみ「しず子っっ!」ギュム

しずく「わっ…!」

かすみ「良かった……!!このまま起きなかったらどうしようって、思った」ギュゥ

しずく「そんな、大袈裟だよ」

かすみ「大袈裟なんかじゃない!」デコピン

しずく「あうっ……」

かすみ「本気で心配したんだよ。もし何かあったらどうしようって、どう責任取ればいいんだろって、夜中ずっと考えてたんだから!」

しずく「えっと…記憶がまだあやふやなんだけど…」

かすみ「毎日頑張ってたから、心も体も疲れちゃったんだよね。でも、薬は決められた量しか飲んじゃダメだよ……もうこんなこと、しないで」

396: 2021/02/20(土) 15:04:38.10 ID:7CnXZIOf
しずく「………そっか。ごめんなさい、思い出したよ」

かすみ「もう体は平気?」

しずく「うん。喉は少し痛いけど…大丈夫」

かすみ「…あのね、しず子。この前のこと、もう一度話そ?」

しずく「この前……?あっ。あの時はね、本当に余裕がなくて…」

かすみ「わかってる。余裕がなかったのは私も一緒だよ。目の前のことに必死で、本当に向き合わなきゃいけないことも、見えてなかった」

かすみ「だからね、しず子…」ズイ

しずく(あぅ……///顔、近いよ…///)


かすみ「しず子が私のこと、ずっと好きでいてくれるなら……これからも一緒にいたいって思ってる」

しずく「かすみさん…」

かすみ「私は頭良くないし、才能もないし、お金もないし…頼りないかもしれないけど、でも……」

しずく「でも…?なんだろう。可愛い、とか?」ニコ

かすみ「そ、そう!世界で一番可愛いかすみんが、しず子のこと絶対幸せにするから……!」

かすみ「だから…!この想いに答えてくれたら嬉しい……です……///」

しずく「……ずるいよ、かすみさん」ギュゥ

しずく「ずっと好きでいてくれたら…って、私がどれだけかすみさんのこと大好きか、知ってるでしょ」

397: 2021/02/20(土) 15:10:01.32 ID:7CnXZIOf
しずく「それに、かすみさんは今でも私の憧れなんだよ?こんなに魅力的な人、他に知らないもん」

しずく「幸せにしてくれるのも嬉しいけど…私は、かすみさんと一緒に幸せになりたいな。辛いことも、ふたりで乗り越えていきたいよ」

かすみ「うん……ありがと…」ウル

しずく「ねぇ、覚えてる…?高校生の頃、私に告白してくれた時のこと」

かすみ「あぅ……//お、覚えてない…かも」

しずく「今と同じこと言ってたよ。あの時はびっくりしたけど……でも、自分の気持ちに素直になれて良かったって、今でも思うの」

しずく「…かすみさんは私のこと、まだ好きでいてくれてる?」

かすみ「何いってんの?あたりまえじゃん…大好きだよ」

しずく「…ふふっ。こうして話すのも、久しぶりだね」

かすみ「あれから、ずっと会えてなかったもん…寂しかった」

しずく「うん、私も」

かすみ「だから…ね、少しだけ……」チュ

しずく「んっ……」


ガラッ!!


侑「しずくちゃん!もう大丈夫……あっ」

398: 2021/02/20(土) 15:14:13.82 ID:7CnXZIOf
かすみ「ゆ、侑せんぱっ……///」


果林(23)「あらあら…お邪魔しちゃったかしら」

しずく「果林さん…!?どうして日本に…」

果林「向こうでの仕事に区切りがついたから、昨日帰国したのよ。もちろんエマも一緒にね」

エマ(23)「かすみちゃん、しずくちゃん久しぶりだね~♪仲良しさんで微笑ましいなぁ♡」

かすみ「うぐ…果林先輩にエマ先輩、それに歩夢先輩まで……」

歩夢「ごめんね、止められなくて…。侑ちゃん、いきなり開けちゃダメだよ…!」

侑「ご、ごめん…!やっと面会していいって言われたから、つい…」テレ

歩夢「もう…仕方ないなぁ」ポム

かすみ「いや、それ私たちが言うセリフですよね」

しずく「皆さん、わざわざ私のために…ご心配をおかけしてすみません」

侑「本当はね、昨日の段階で他のみんなも来てたんだよ。でも朝にならないと面会できないって言われて、また日を改めるって」

しずく「そうだったんですか……またお礼をさせてください」

399: 2021/02/20(土) 15:18:08.07 ID:7CnXZIOf
歩夢「気にしないで、しずくちゃん。みんなすごく心配してたけど、かすみちゃんがそばに居るなら大丈夫だろうって言ってたから」

しずく「えっ…あ、あの……」

果林「今さら隠すことなんてないのよ?可愛い妹分のことなんて、お姉さんたちには全てわかっちゃうんだから」

しずく「果林さん……」

エマ「それで、色々あったみたいだけど…ふたりとも平気なの?」

かすみ「平気…と言いたいところですけど。そんなわけにもいきませんよね」

歩夢「あの後ね、かすみちゃんがアンコールに姿を見せなかったから、何があったんだろうってなって…」

歩夢「その後、しずくちゃんが搬送されたってニュースがテレビで流れたんだけど、そこの中継先に、かすみちゃんの姿があったから…すごい騒ぎだったよ」

しずく「えっ……?」

かすみ「待って、しず子。わざと言わなかったわけじゃないよ。でも私は後悔なんてしてないから」

しずく「かすみさん…ライブ中に、私の所へ来たってこと…?」

かすみ「……うん」

しずく「それで……どうなったの?」

400: 2021/02/20(土) 15:30:07.63 ID:7CnXZIOf
かすみ「んー……まだ連絡はとってないよ。でもライブを放り出してきたわけだし、何らかの処分はされると思う」

かすみ「ま、そもそもうちの事務所は恋愛禁止だから、結局は契約違反で解雇って形になるかな…」

しずく「そんな……ごめんなさい」

かすみ「謝らないでよ。もうあのグループで踊らなくていいんだって思うと、むしろ晴れやかな気持ちになるし」

しずく「……本当に、それでいいの?かすみさんは自分の夢を諦められるの?私のせいでそうなってしまったなら…何か別の方法で…」

かすみ「もう決めたことだよ、しず子。さっき話してくれたでしょ。私はしず子と一緒に幸せになりたい」

かすみ「…それにさ。自分の夢も、恋も、両方を叶えたいだなんて、欲張りすぎたんだよ」

かすみ(そう……やっぱり梨子さんが正しかった。二兎追うものは一兎も得ずって言葉があるくらいだもん、これで良かったんだ)

かすみ「私がそう決めたんだから、しず子は何も気にしなくていいんだよ。はい、もうこの話は終わり!」

しずく「……かすみさんの言いたいことはわかるよ。でもね、私はまた前を向こうとしてた人を、こうして引き止めてしまった」

しずく「以前の私なら、これで口実ができたって…そう考えたと思う。だけどそんな都合のいい人間になりたくない」

しずく「だから私は、これから先ずっとこの罪悪感と向き合うよ。忘れることなんて…かすみさんが許しても、私自身が許さない」

かすみ「……そっか…」

401: 2021/02/20(土) 15:35:46.24 ID:7CnXZIOf
果林「少し、いいかしら?かすみちゃんはアイドルを辞めるとしても…しずくちゃんはどうするつもり?」

果林「今回こうして体調を崩したのも、ストレスが原因なんでしょう?でも少し休めば…」

しずく「私は…いえ、私も、引退しようかと思ってます」

かすみ「しず子……」

しずく「これも私のけじめのひとつだよ。かすみさんが私を選んでくれたなら、私もそうするのが…」

かすみ「………」

果林「…そう。正直、残念すぎる選択ね。しずくちゃんはもう少し聡明だと思っていたけれど……」

エマ「果林ちゃん…!?急にそんなこと、」

果林「私はしずくちゃんの先輩なんだし、このくらい言っても許されるでしょう?」

侑「でもこれ以上、頑張りすぎるのは…」

果林「まだ若いのに、夢を諦めるなんてもったいないと思っただけよ。あなた達、優しすぎるのよ」

果林「お互いを思いやりすぎて、結果的には、相手の人生にまで深く干渉してしまってる。……まぁ、それもひとつの形なのかもしれないけど、私は嫌ね」

エマ「果林ちゃん…もう、やめようよ。ふたりだって、それは充分すぎるくらいわかってると思うよ…」

果林「…そうね。つい、感情的になってしまったわ。何も関わりのない私がここまで言うべきじゃなかったわね、ごめんなさい」

402: 2021/02/20(土) 15:43:07.17 ID:7CnXZIOf
しずく「わかってます。果林さんが…そう言いたくなるのは。私が事務所に入るか迷っていた時に、相談にのってくれたんですから」

果林「ただ……うぅん、やっぱり忘れて。これもここで話す必要はないわ」


コンコン ガチャ

真姫「…話し中悪いけど。かすみちゃん、だったわよね?」

かすみ「は、はい!」

真姫「報道陣が昨夜からずっと病院の周りにいるのよ。あなたが出てくるのを待ってるみたいなんだけど」

かすみ「…すみません、ご迷惑でしたよね。今から行こうと思ってたので、すぐにでもそうします」

真姫「えぇ、助かるわ。それと……あなたにも、面会希望者がきてるわよ。事務所の関係者って話だけど」

しずく「はい…わかりました」

かすみ「じゃあ…行ってくるね。もう誤魔化せないだろうし、正直に言おうと思ってるけど…それでいい?」

しずく「…うん」

かすみ「わかった。また連絡するね」


ガチャ バタン


歩夢「かすみちゃん…本当に、やめちゃうんだよね…」

侑「それも選択のひとつだからね。私たちはただ見守ってあげるしかないよ」

果林「じゃあ私は私で、少し動いてみようかしら。エマも一緒に来てくれる?」

エマ「…さっき話してくれたことだよね。大丈夫だよ」

403: 2021/02/20(土) 15:46:50.50 ID:7CnXZIOf
─────


~病院前~


ザワザワ


スタッフ「来たぞ、カメラ回せ!早く中継繋げ!」


女性記者「──こちら、西木野総合病院前です!今、中須かすみさんが出てきました!これからインタビューを試みてみます!」

女性記者「失礼します…!桜坂さんの体調について、お聞きしてよろしいでしょうか?」

かすみ「所属事務所から正式に発表があると思いますが…命に別状はないと聞きました」

女性記者「昨夜、中須さんはライブ中にも関わらず、ここへ急行したと話題になっていますが、その理由はなんでしょうか?」

かすみ「それは……」

女性記者「やはり、以前の噂は事実ですか!?」

かすみ「……はい」

女性記者「…!!」

かすみ「もうこれ以上、ファンの方々にも自分自身にも嘘をつきたくないので…。私は桜坂しずくさんと、恋人関係にあります」

かすみ「今回の件についてもファンの皆様をはじめ、関係者の皆様、事務所の方々、メンバーにご迷惑をかけたこと、今ここで謝らせてください」

かすみ「…すみませんでした」ペコ


パシャパシャ!!

404: 2021/02/20(土) 15:52:30.64 ID:7CnXZIOf
女性記者「そ、それでは…今後について、どうされるおつもりですか?グループを脱退するという事ですか?」

かすみ「はい。先程連絡があって、そう話し合いました。所属事務所からも今日付けで退所します」

女性記者「えー、それはアイドルからタレントに転身するということでしょうか…?」

かすみ「いえ…もう需要なんてないでしょうし、芸能界を引退しようと思ってます」

女性記者「えっ…!?」

かすみ「今までお世話になりました、ありがとうございました」


ザワザワ…!!

かすみ「じゃあ、私はこれで…」

女性記者「皆さん、お聞きになりましたでしょうか…!!まさかの、電撃引退ということになります!」


??「あ、いたいた…全く、小さいから人混みに埋もれて見えなかったわ」

かすみ「…へっ?」

??「あなたが中須かすみさん、よね?」

かすみ「そ、そうですけど…」

女性記者「あぁーっと!!ここで急展開です!突然、サングラスをした中学生が中継カメラの前に乱入しました!」

405: 2021/02/20(土) 15:58:01.19 ID:7CnXZIOf
??「誰が中学生よ!!せめて高校生でしょうが!ってかそんな歳じゃないのよ!」

スタッフ「おい早くつまみ出せ!もっと根掘り葉掘り聞けば、視聴率がもっと…」

希(29)「ちょ…!はぁ、間に合わんかった。中継終わるまで待てばって言ったのに…まぁいっか」

スタッフ「は…?あの……一般の人がこういう場に来られるのは、」

希「あ~、うちら通りすがっただけなので、お構いなく。それにこのままにしておいた方が、面白い絵が撮れると思いますよ?」

スタッフ「いやいや、どういう意味…」

絵里(29)「突然申し訳ありません。私たち、こういう者なんですけど」スッ

スタッフ「や、矢澤プロダクション!?」


かすみ「矢澤にこさん…?」

にこ(29)「そうよ。初対面よね、こんにちは」

かすみ「こ、こんにちは…!!あの、何のご用でしょうか…」

にこ「何って…こんな道端に可愛い子がいたから、声をかけただけよ♡」ニコ

かすみ(わ、本物だ…。私がスクールアイドルやってた頃に、トップアイドルだった、にこにーだ…)

にこ「そうそう、これ私の名刺」スッ

かすみ「あ……ありがとうございます…?」

にこ「ねぇ、もう一度アイドルやってみない?その気が少しでも残ってるなら、だけど」

406: 2021/02/20(土) 16:02:11.24 ID:7CnXZIOf
かすみ(は……??この人、なにいって…)


にこ「…ん、大丈夫?聞こえてる?うちに入らないかってスカウトなんだけど」

かすみ「ま、待ってください……!!なんで私なんかを、」

にこ「そうね。ぶっちゃけ、私は今まで気に止めても無かったし、数多くいるアイドルの一人だと思ってたわ」

にこ「でも気が変わったのよ。うちのエースが推薦したのも大きいけど…なぜか私の古い知り合い達からも同じ名前が出たから、どんな偶然なのよって笑っちゃったわ」

にこ「同時に、強く興味がわいたのよ。どんな手を使ったら、そこまで人を惹き付けられるのかってね」

かすみ「推薦…?エースって…まさか」

にこ「黒澤ルビィよ。あの子の才能を枯らすのはもったいないって直談判されてね。ルビィが他人の評価をするなんて滅多にないのに」

にこ「なんでも、ファーストライブのあなたの姿を見て、そう思ったらしいわ」

かすみ「っ、ルビィさんが……」

407: 2021/02/20(土) 16:07:21.14 ID:7CnXZIOf
にこ「ま、答えは急がないから。気が向いたらこの番号に連絡して」

かすみ「矢澤さん…!でも、もう私は……心に決めた大切な人がいて、だから…」

にこ「あー、さっきそんなこと言ってたわね」

かすみ「いや、そうじゃなくて…アイドルが、こんなの…許されませんよ」

にこ「そう?面白いじゃない、恋人のいるアイドル…前例のない新しい形。この時代じゃ量産型のアイドルよりも価値があると思うわよ」

かすみ「………」

にこ「あ、勘違いしてもらったら困るから言うけど、私は慈善事業をしてるわけじゃなくて営利目的であなたと話してるから。だから、余計なことは考えなくていいの」

かすみ「……わかり、ました。考えてみます…」

にこ「安心しなさい。うちには元敏腕マネージャーがいるから、なんとかなるわよ」ニコ

希「いやぁ…。うちら教育とか運営管理とか、なにかと忙しいし。特別手当もらっても足りひんかな~」

絵里「そうね。2週間くらい休暇でももらいましょうか」

にこ「はぁぁ!?ちょっとぉ!そこは無言で頷いてればいいのよっ!」

409: 2021/02/20(土) 16:12:16.50 ID:7CnXZIOf
─────


~同刻・病室~


真姫「はぁ……にこちゃんってば、中継されてるの忘れてるわよね」

鞠莉「ふふっ♡この感じ、久しぶりね~。またスクールアイドル同窓会でも開こうかしら!」

しずく「…その様子だと、こうなるってわかってたんですね」

鞠莉「さぁね。それで、あなたはどうなの?」

しずく「私は……」

真姫「医者として意見するなら、このまま続ければいつか身体を壊すかもしれないわね」

真姫「まぁそれも、今までの環境にいれば、の話よ。あなたみたいに真面目で不満を溜め込むタイプは、精神的な支えが必要で…」

真姫「その役割をあの子が担ってくれるなら、また変わってくるかもしれないけど」

しずく「……そうですね」

鞠莉「それで、今日私がここに来たのは、あなたの率直な意見を聞きたかったからよ」

鞠莉「私は経営者だけど、多くの社員が下にいるから、ひとりひとりに向き合うのは難しいわ」

鞠莉「でもあの子に、あんな風に頼まれてしまったから、最後まで責任を持ちたいの」

しずく「…ありがとうございます」

411: 2021/02/20(土) 16:17:22.02 ID:7CnXZIOf
しずく「私は小さい頃から、女優になるのが夢でした。でも、いざそれが叶ってしまったら、次の目標が見えなくなったんです」

しずく「ですから…かすみさんに認めてもらいたい、喜んでもらいたいという名目を作って、今までやってきました」

しずく「…でもそれは間違ってるんだって、最近になって、ようやく気付くことができました」

しずく「だからもう一度考えてみます。誰かのためじゃなく、自分の夢のために、また努力を積み重ねることができるのか…」

鞠莉「えぇ…構わないわよ。ただ、私たちはあなたが戻ってきてくれるのを待ってるわ」ニコ

しずく「すみません。何度も何度も、ご迷惑をおかけして…」

鞠莉「…そこに関しては問題じゃないわ。もうすぐ表沙汰になると思うし、あなた達に吹いていた向かい風は、追い風になるから」

しずく「……えっ?」

鞠莉「売られた喧嘩は買うのみよ!」

真姫「物騒なこと言わないでよ…。それに、その情報は確かなんでしょうね?」

鞠莉「果林ちゃんのお友達に、記者の人がいるらしいのよ。なんでも、最近気になる噂が流れてるみたいでね…」

しずく「あの、何の話だか私にはさっぱり…」

鞠莉「あなたは何もしなくていいのよ。少し話は聞かせてもらうかもしれないけど、お姉さん達に任せなさい♪」

413: 2021/02/20(土) 16:22:33.98 ID:7CnXZIOf
─────


~1ヶ月後・矢澤プロダクション~


かすみ「えーっと…次、何でしたっけ?」

侑「はい!次は、歌番組だよ。タクシー呼んであるから少し休憩してから行こっか!」

かすみ「侑先輩ってば、すっかりマネージャーとして様になってますねぇ…流石って感じです」

侑「えへへ…照れるなぁ。かすみちゃんは今日も可愛いよ!」

かすみ「あたりまえじゃないですか!かすみんはスーパーアイドルなんですからっ」

侑「あの時、自分の気持ちに素直になって良かったよ。私はスクールアイドルが好きで…それと同じように、キラキラしてるアイドルも大好きなんだって」

かすみ「内定してた会社があったのに、うちの事務所へ入社したって聞いた時は驚きましたけど…今となっては違和感すら無くなってきました」

侑「私は昔も今も、かすみちゃんのマネージャーができて嬉しいよ!」

かすみ「う…。かすみんも嬉しいですけど、その……歩夢先輩とはちゃんと話し合ったんですか?」

侑「へっ?なんで歩夢?」

かすみ「いやいや、歩夢先輩って侑先輩のこと好きですよね。仕事とはいえ、ずっとかすみんと一緒にいるわけですから…」

416: 2021/02/20(土) 16:32:10.10 ID:7CnXZIOf
侑「あー、実はね……あの騒動があった後、歩夢から告白されたんだ」

かすみ「えぇぇぇっ!?聞いてませんよっ!」

侑「あ、ごめん。他のみんなには言ってあるんだけど、かすみちゃんだけ忘れてたかも」

かすみ「しず子も知ってたの!?なんですかそれ…」

侑「歩夢ね、かすみちゃん達に勇気もらったんだって言ってたよ。私も自分の気持ちに素直になるって」

かすみ「そ、そうですか…///感謝されるとは思ってなかったです」

侑「うん!だから、私がかすみちゃんと一緒にいても全然平気だってさ。まぁ歩夢は世界一可愛いし、そうなんだけどね」

かすみ「あーはいはい……怖いのでこれ以上はやめときます…」

侑「じゃあ私、絵里さんに会ってくるね。昨日の報告がまだなんだ」

かすみ「わかりましたぁ」


かすみ(私たちを取り囲んでいた色々な問題は、徐々にではあるけど、解決に向かっていった)

かすみ(にこさんからのスカウトを受けるつもりだと話した時……しず子は、嬉しそうに微笑んでくれた)

418: 2021/02/20(土) 16:40:37.70 ID:7CnXZIOf
かすみ(反対に、しず子はすぐに復帰することを選ばなかった。まずは体調を整えることを優先したからだ)

かすみ(私は無理しなくていいよって言ったけど、しず子はいつもの笑顔で、「私は演劇と、役者としての自分が好き」だと返した)

かすみ(…それから私たちは、鞠莉さんに紹介してもらったマンションの一室で、一緒に暮らしてる)

かすみ(家に帰ったらしず子がご飯を作って待っていてくれるのが、間違いなく、今の原動力になってると思う)

かすみ(あぁ、早く会いたいなぁ…。今日こそ早く帰らなきゃ)


かすみ「えへへ……」ニマニマ

ルビィ「うゆ…」

かすみ「ルビィさ……!?ゴホッゴホッ…!」

ルビィ「さっきから呼んでたけど、一人で笑ってたから怖いなって…帰るところだった」

かすみ「す、すみません…///気づかなくて」

ルビィ「…まぁいいよ。私もよくあるもん」

かすみ「それで…ルビィさん、どうしましたか?」ドキドキ

ルビィ「………ん」スッ

かすみ「え…これ、おまんじゅう?」

ルビィ「そう、ミカン味。実家に帰ったとき、千歌ちゃんが渡しといてって」

かすみ「えーと…?わざわざありがとうございます…」

420: 2021/02/20(土) 16:47:06.84 ID:7CnXZIOf
ルビィ「それと、これは私から。頑張りすぎるのもよくない」スッ

かすみ(ブラックの缶コーヒー?流石ルビィさん、ストイックだなぁ。あんまり好きじゃないけど、後で飲もう)

ルビィ(いちごオレとボタン押し間違えただけだけど…喜んでるからいっか)


ルビィ「そうそう。アリスって子、事務所移籍したみたいだね」

かすみ「あ…そうなんですね」

ルビィ「小さい事務所だよ。またアイドルするのかわからないけど、難しいだろうね」

かすみ「まぁ…あんな風にリークされたら、厳しいかもですね…」

ルビィ「…あんなことされて、怒ってないの?」

かすみ「あ…いや、怒ってますし、顔も見たくないくらいには嫌いですよ。…でもあの子のアイドルに対する姿勢は本物だったから、残念だなって」

かすみ「グループじゃなくて、ソロで輝くタイプですね…ああいうのは」

ルビィ「ふーん…。まぁ、いいんじゃない。でもわからないのは、なんで表沙汰になったのかだけど」

かすみ「しず子に付きまとってた俳優が、全部吐いたんですよ。こいつに関しては、ざまぁみろって感じですけど」

421: 2021/02/20(土) 16:49:04.68 ID:7CnXZIOf
ルビィ「所持、不倫、脱税、傷害罪…か。この人、ヤバいね。芸能界から追放されるだけはある」

かすみ「不思議なのは、あの騒動のすぐ後のタイミングでそれが週刊誌に載って、逮捕されたことですけど…」

ルビィ「…まぁ、色々あったんだろうね」


ガチャ!!


侑「かすみちゃん、準備オッケーだよ!」

ルビィ「…じゃあ今夜の歌番組もよろしくね」

かすみ「はい…!よろしくお願いします!」

ルビィ「穂乃果さんも出るらしいし、紹介してあげるよ。またね」トコトコ

侑「ルビィさん、お疲れ様です!」

ルビィ「うゆ」


侑「……うゆ?」

422: 2021/02/20(土) 16:51:07.56 ID:7CnXZIOf
─────


~数時間後~


璃奈「あ、始まった」

愛「うぉー!かすかすぅ!」ブンブン

彼方「ペンライト持ってくるなんて、本気だねぇ~」

歩夢「みんな~、お皿運んでくださーい!」

せつ菜「はい!!皆さんお手伝いしましょう!」

しずく「すみません…手伝ってもらって。でもお客様なんですから、全部私がやりますよ?」

エマ「いいんだよ~♪こういうのも楽しいもん♪」

果林「…それにしてもこの部屋、かすみちゃんの趣味が強くない?」

愛「おー確かに!いたるところにアイドルグッズ置いてあるもんね」

せつ菜「最新のスクールアイドルものが多くて、私は一日中いたいくらいです!」

しずく「いいんです、私はかすみさんが好きなものを眺めてる姿を見るのが好きなので」ニコ

璃奈「…いま、頭の中がぐるぐるした」


アナウンサー『本日は、超豪華なアーティストが勢揃いしています!』

アナウンサー『最初に…世界的に活躍するソロシンガー、高坂穂乃果さん!』

穂乃果『日本のみんなー!今日は飛ばしてくよー!』

424: 2021/02/20(土) 16:54:13.13 ID:7CnXZIOf
アナウンサー『誰もが認めるトップアイドル、黒澤ルビィさん!』

ルビィ『よろしくね♡今夜もがんばルビィ!』

アナウンサー『人気急上昇中のソロアイドル、中須かすみさん!』

かすみ『みーんなぁ♡かすみんだよ~~♡♡』フリフリ


彼方「う、かすみちゃん輝いてるんだぜ…」

愛「おぉ…頭の上にハートマークが見える見える…」


アナウンサー『それではいきましょう!トップバッターを飾ってもらうのは、中須かすみさんです!』


せつ菜「しずくさん!始まりますよ!」

エマ「後は私たちがやっておくから、大丈夫だよ」

果林「そうよ、ちゃんと見てあげないと後で大変でしょ?」

しずく「すみません…ありがとうございます」ニコ


かすみ『今まで私のことを応援して…支えてくれたみんなのために歌います!』


しずく(かすみさん…。私たち、諦めなくて良かったね)

しずく(温かい人達に囲まれて、幸運だったね)

しずく(…これからもっと、幸せになろうね)

425: 2021/02/20(土) 16:56:33.59 ID:7CnXZIOf
色々ラスト考えましたがハッピーエンドにしました
長いことありがとうございました

426: 2021/02/20(土) 17:00:31.36 ID:nA6bD4Kj
しずくとかすみどっちかは仕事やめて常に家にいて片方を支える方が精神的に安定しそうだと思ったけど
お互いに前向きに夢を追えるならそれはそれでいいな、またストレスたまって折れたりしなければ
ハッピーエンドにしてくれてありがとう

427: 2021/02/20(土) 17:01:06.85 ID:Zg6zxji0
おつでした。現実的に考えたら色々ともっと大変なんだろうけど、そこだけ現実に合わせる必要なんてないしね
やっぱりハッピーエンドで良かった。しずくちゃんもそう遠くないうちに復帰できそうだし

428: 2021/02/20(土) 17:02:24.26 ID:FLaDCey/
ハッピーエンドでよかったわ
乙です

429: 2021/02/20(土) 17:04:47.06 ID:8SBd1jLU
現実的に考えたら厳しいだろうけど、やっぱりハッピーエンドが一番だよね。乙です。

430: 2021/02/20(土) 17:38:59.07 ID:tmeh0NbQ
安易に夢よりも愛を選ぶ展開にせずポジティブに両方を取るエンドは良かったと思う
ハッピーエンドで本当に良かった、純愛しずかすをありがとう

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1612093383/

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