真姫「いつだってずっと」

真姫ーまきー物憂げな SS


1: 2020/08/29(土) 21:36:10.34 ID:jFd0mtU8
どんなに手を尽くしても、考え抜いてやりぬいて、出来る限りの全てを注ぎ込んでも、それでも結果が伴わないなんてことはままあるはずだ。

作曲活動での作業は進まず。挙句、作詞担当の海未とはお互いの意見がまとまることがなく。イライラが募り、一方的に八つ当たりに近いような発言を浴びせてしまった。

さらにその様子を見てなだめに入った穂乃果や希にも当たり散らすような態度をとってしまい、いたたまれなくなって私は部室を飛び出した。

やることなすことなにもかもがうまくいかず、心がささくれている。

ーーー誰にも優しくしたくないし、優しくされたくない

どこ行く当てもなく暗いピアノのある部屋へ逃げ込んだ


真姫「私...何やってんだろう...」

2: 2020/08/29(土) 21:37:03.45 ID:jFd0mtU8
誰かに対して攻撃的になってしまいがちな自分の性分が恨めしい。

椅子に座る気力もなく、その場にしゃがみこんで顔をうずめる。

みっともない姿を見せたくないし、優しく慰めてほしいわけでもない。

真姫「なんで...あんな風に言ったのよ...」

今さらこんなことを言ったところで仕方がないのについ口にだしてしまう。

部室に戻るにもみんなに顔を合わせずらい
あんな態度をとってしまったからもしかしたらみんなに嫌われてしまったかも...

私にとってμ'sのメンバーは大切な友達なのに...
μ'sは私にとって大切な居場所であるのに...

全部がなくなってしまうのではないかと考えてしまう
怖い...

一体どうすればいいの...

真姫「誰か...誰か助けて...」

3: 2020/08/29(土) 21:37:46.02 ID:jFd0mtU8
そっとドアが開かれる音が聞こえる

誰かが入ってきたようだ。一体誰だろう?

あの場に居合わせてはいなかったが、いつもみんなをまとめている絵里だろうか
それとも部長のにこちゃん?

感情に任せてメンバーを傷つけ、グループの和を乱した私を許してくれるのかな...
それとも追い出されるのかな...

誰であっても怖くて顔をあげられない

こんなときいつだって私は臆病だ。

4: 2020/08/29(土) 21:38:47.82 ID:jFd0mtU8
「真姫ちゃん。ここに居たんだね」

おっとりとして、甘く蕩けるような声が聞こえる。
この声は...花陽だ。

真姫「なによ...私のことなんて放っておいたらいいでしょ。今誰の顔もみたくないのよ」

表情は見えないがきっと今の言葉で傷つき、今にも泣きだしそうな表情をしているに違いない

もうなにもかもが面倒くさい。こんな私に花陽だって愛想をつかせてどこかへ行けばいい。
こんな私のことなんて無視しちゃえばいいんだ。そんなことを思いつつ、目を閉じる。

5: 2020/08/29(土) 21:40:04.12 ID:jFd0mtU8
花陽「真姫ちゃんのこと放っておけないよ。みんな心配して探してるんだよ」

どうして...なんで優しくするのよ...

真姫「もう私のことなんていいでしょ!私は大丈夫っ!だからもうどこかへ行ってよ!」
  「言うこときいてくれない花陽なんて嫌いよっ!」

こんなこと言ったらいけないのに...私は最低だ

ほんとは花陽が心配してくれているのが嬉しいのに...
どうして私は素直になれないのよ...

少しの沈黙のあと私の頭をなでるかのように手が置かれた。

花陽「私は嫌われてもいいよ。真姫ちゃんが泣き止んでくれるなら。」
  「あのね真姫ちゃん。そうやってずっとしゃがみこんだままだとしんどいよ。そんなの大丈夫と言わないよ」

ああ...どうしてこの子はこんなにも人の心に敏感なんだろう。
優しくて温かい...

カッと頭に血がのぼって、目の奥が熱くなる。
それが激高によるものか、慟哭によるものか分からないまま花陽に抱き着いていた。

花陽「真姫ちゃん...大変だったんだね。気づいてあげらなくてごめんね...」

いつだって小泉花陽という女の子は温かくて...優しい...

12: 2020/08/29(土) 21:43:30.31 ID:jFd0mtU8
真姫「私...みんなに酷いこと言っちゃったの...」

花陽「大丈夫だよ。みんな今はすっかり落ち着いて、真姫ちゃんのことを心配してるよ」

真姫「海未に酷いことを...それに心配してくれた穂乃果や希にも...」
  「私...最低だ...」

花陽「真姫ちゃんはそんな酷いこと言わない子なのみんな知ってるよ。上手くいかなくて辛かったんだよね。」
  「そんな酷いこと言っちゃったからまた辛かったんだ...ごめんね。気づいてあげらなくて」

真姫「私...μ'sのメンバー失格よ...」

花陽「違うよ...そんな悲しいこと言わないで真姫ちゃん。μ'sは真姫ちゃんがいて9人みんな揃ってμ'sなんだよ」
  「真姫ちゃんの代わりなんてだれも居ないよ。だから...そんなこと言わないで」

真姫「...ありがとう花陽」

いつだって私は花陽に甘えてしまう。

14: 2020/08/29(土) 21:44:42.22 ID:jFd0mtU8
花陽「ねえ。真姫ちゃん」

真姫「なに...?はなよ?」

花陽「一緒にみんなのところへ戻ろう。海未ちゃんたちだって心配してるから...」

真姫「うん...。私みんなのところへ行かなきゃ...心配かけてごめんねって謝りたい」

花陽「うんっ!えへへ。真姫ちゃん大丈夫だよ。いい子いい子」

そっと私を包み込むような手の感触
小さな子供をあやすようなその仕草に照れくささもあったけど、心地良い。
ささくれていた心も落ち着いてきた。

真姫「ねえ。花陽」

花陽「あっ...ごめんね。恥ずかしかったよね...」

真姫「違うの...もう少しだけ...もう少しだけこのままでいたいの。ちゃんとみんなのもとに戻るから...」
  「だから...もう少しだけ...いい?」

花陽「うん。じゃあもう少しだけここでお休みしようね」

真姫「うん...」

こんな風に甘えられるのは...花陽の前だけだ。

15: 2020/08/29(土) 21:46:25.06 ID:jFd0mtU8
私よりも身長だって小さくて、いつも自信なさげで
控えめで、ふわふわとおっとりしていて
誰かが手を引いてあげないといけないと思うほど隙だらけで
守ってあげたくなるような女の子なのに

人の心にだれよりも敏感でいて
優しく、温かく寄り添っていてくれる

私が自分の思考の中に溺れそうになって、息もできないぐらい苦しくなるたびにこの子はそっと栓を抜くかのように手を差し出してくれる

いつだって困ってる私を助けてくれるのは...花陽だった。

真姫「ありがとう...花陽」

花陽「えへへ///どういたしまして」

その柔らかな笑顔に今日も私は救われる。

19: 2020/08/29(土) 21:47:29.20 ID:jFd0mtU8
凛「真姫ちゃんはかよちんの前だと素直な気がするにゃ」

何気ない凛との会話の中で唐突に言われたことがあった。

その時私はどんな表情をしていたのだろう

ただ、表情は分からないがその時何かに気づかれてしまったのではないかと不安を覚えたことは明確に覚えている

穂乃果やにこちゃんと同じくらい普段とぼけたことを言うことがある凛だけど、意外と人のことを見ている。

花陽の前で私が素直でいられる理由なんて...
あの子のことを私が好きだと思っているからに決まっている。

凛にそんなことを言われる前から私はあの子に恋をしていたんだ。

22: 2020/08/29(土) 21:50:04.03 ID:jFd0mtU8
小泉花陽という女の子は私が高校生になってから初めて出来た友達

これまでも友達が居なかったわけでもなかったが、彼女は特別だった。

普段はオドオドしていて自信なさげなのに、好きなものに関しては真っすぐでひたむきで
一生懸命な姿は誰よりも輝いていた。
ずっとこの姿をそばで見ていたいと思っていた。

ただ...そんな花陽のそばには常に凛がいて
花陽が尊敬の目で眺めていたのはリーダーである穂乃果と同じようにアイドルを愛しているにこちゃんだった
いつだって私はそんな花陽の姿を眺めているだけで、どこかそんな彼女が遠かった。

そんな複雑な気持ちを抱いているのは彼女に恋をしているからだと理解するにはそう時間がかからなかった。

23: 2020/08/29(土) 21:51:12.54 ID:jFd0mtU8
誰よりも優しくて、愛おしい花陽が大切にする友達に囲まれて

μ'sという花陽が大切に思うその場所に私がいて

その中に私の居場所があるだけで十分だったのに...

花陽にとって唯一の存在でありたいなんて思うようになっていただなんて...

いつだって私は花陽のことになると欲張りになってしまう

24: 2020/08/29(土) 21:53:22.10 ID:jFd0mtU8
凛「かよちんよく似合ってるにゃ~」

花陽「えへへ///凛ちゃんありがとう」

花陽が次のLIVEで着ることになる衣装を試着している

ことり「うんっ!すっごく可愛いよ~かよちゃん。やっぱりかよちゃんに似合う衣装のこと凛ちゃんにも意見聞いて良かったよ」

ことりはそんな風に言っているけど...
私だって...花陽と同じクラスで...
それこそ凛には敵わないけど...凛の次くらいに花陽と一緒に居るんだから
私にだって意見を聞きにきてもよかったじゃない...

いつだって私は花陽のことに関して間に合わないでいる

25: 2020/08/29(土) 21:54:14.07 ID:jFd0mtU8
にこ「真姫ちゃん顔怖いよ~ほらっ!スマイル~スマイル~♪」

真姫「誰が怖い顔よっ!そんな顔してないわよ」

花陽「あの...真姫ちゃん...もしかして私衣装似合ってないかな...?」

真姫「いや...えっと...違うのっ!衣装...すっごく可愛いわ。素敵よ///」

花陽「そっか。えへへ///真姫ちゃんがそう言ってくれるの嬉しいな///ありがとう真姫ちゃん」

凛「あっ~真姫ちゃん顔真っ赤だよ~照れてる照れてる~」

にこ「照れてる真姫ちゃんも可愛いニコ♪にこの次ぐらいにね」

真姫「2人とも茶化さないでよっ!」

全く...にこちゃんや凛のせいで恰好がつかないじゃない...

いつだって私は花陽の前だと恥ずかしい姿を見せてばかりだ...

26: 2020/08/29(土) 21:55:17.78 ID:jFd0mtU8
凛「うう...もう勉強したくないにゃ...」

真姫「そんなこと言ったって仕方ないでしょ...ほらあとちょっとよ」

凛「もういいよ~疲れたからおしまいにしようよ...」
 「助けてっ~かよちん~」

花陽「あわわっ...びっくりするからいきなり抱き着かないでよ~凛ちゃん」

凛の赤点回避にむけてみんなで勉強してるのに当の本人は早々とギブアップしている

凛だってちゃんとすれば出来るはずなのに...勿体無い

それにしても花陽に抱き着く必要ないじゃない...

私だって...同じようにしたいのに...

いつだって私は凛に遅れをとってしまう。

27: 2020/08/29(土) 21:56:03.02 ID:jFd0mtU8
凛「真姫ちゃんここ分かんないよ~」

真姫「さっきからそればっかりじゃない...困るんだけど」

花陽「あの...真姫ちゃんここ教えてもらっていいかな?」

真姫「いいわよ。どこが分からないの?」

凛「あっー!真姫ちゃん贔屓してるにゃー!」

別に質問されたのが花陽相手だから答えてるわけではない...
多分...

28: 2020/08/29(土) 21:57:17.67 ID:jFd0mtU8
真姫「ちょっと待って...ここはえっと...」

マズい...分からないわ
せっかく私を頼ってくれてるのに
肝心な時に頭が回らないから嫌になるわ...

絵里「あら?もしかしてここ分からないの?ここはほらこうするのよ」

花陽「えっと...あっ...ほんとだ。絵里ちゃんありがとうっ!」

絵里「ふふふっ。花陽は覚えが早くて助かるわ」

絵里がどこからともなくやってきてすんなり解決していった
絵里のこのスマートな立ち回りが羨ましい...

絵里「真姫が2人に勉強教えてくれてたのよね?ありがとう」

真姫「...別に」

いつだって私は花陽を助けるのに遅れてしまう

33: 2020/08/29(土) 21:59:09.41 ID:jFd0mtU8
凛「...真姫ちゃん」

真姫「なによ...」

凛「ふふん。別に~。真姫ちゃんも可愛いとこあるなって思っただけだから」

真姫「なにそれ...意味わかんないんだけど」

凛「なんでもないにゃ~」

凛は時々妙なこと言う

34: 2020/08/29(土) 22:00:18.89 ID:jFd0mtU8
暑い...暑いわ...

夏休みに入っても私達μ'sは精力的に活動を続けている。

自分たちがしたいことをしているだけだけど...この暑さはどうにかならないものかと思う...

今は休憩時間
私は丁度よさげな日陰を見つけてそこに1人ポツンと座り込む

誰かと話をしようかと思ったけど、こうやって1人で静かに座って、みんなが何を話しているか眺めるのも嫌いではなかった

暑いし...今はこのままがいいのかもしれないわね

35: 2020/08/29(土) 22:01:11.20 ID:jFd0mtU8
真姫「ひゃ...つめたい...」

ぼんやりとみんなの姿を眺めているところに突然ほっぺたに冷たい感触があったから変な声出してしまった

真姫「ちょっと...やめてよ。びっくりするじゃない」

こんなことをするのは...希か凛のどちらかだと思っていたけど...

花陽「あはは...真姫ちゃんごめんね。」
  「絵里ちゃんとにこちゃんがみんなのためにアイス持ってきてくれたみたいだから真姫ちゃんにもっていってあげようと思って」

まさか花陽だとは...思ってなかった

舌をチラリと出して申し訳なさそうに謝る花陽...

全く...ズルいじゃない...そんな顔するなんて

私はいつだって花陽に対して甘い...

36: 2020/08/29(土) 22:02:41.08 ID:jFd0mtU8
花陽「真姫ちゃんの隣に座ってもいい?」

真姫「別に...花陽の好きなようにしたらいいじゃない」

こんな時、いつだって思っていることと違うことを言ってしまう自分がなんとも恨めしい

なんだかまた一段と暑くなった気がする...
隣に座る花陽に伝わってしまうのではないかと心配になるくらい胸が高鳴り
頬も熱くなっている気がする...

こんな風になっているのは真夏のせいだけじゃないことは自分が1番分かってる

いつだって私は花陽の前だとドキドキしてばかりだ

37: 2020/08/29(土) 22:03:31.68 ID:jFd0mtU8
「...」
「...」

2人で隣に座っているはずなのに、会話が出てこない

気まずいなんて思われてるのかしら...

μ'sに入ってから少しずつ口下手なところもなおったと思ってたのに

いつだってわたしは花陽の前だと言葉に詰まってしまう

38: 2020/08/29(土) 22:04:39.48 ID:jFd0mtU8
花陽「今日も暑いね」

真姫「そうね」

会話を弾ませることができない...

真姫「花陽は...夏は好き?」

なんなのよ...その質問
あまりの私自身の口下手さに顔をうずめたくなる

花陽「夏は好きだよ。みんなでプールで遊んだりするのも好きだし、お祭りで花火を眺めるのも好きだから夏は好きかな」
  「真姫ちゃんはどうなの?」

真姫「私は...暑いの苦手だから夏は好きじゃない...」
  「でも...μ'sに入ってから...こうやってだれかと過ごすのも楽しいって思えたから。夏も悪くないって思えたの」

花陽「そっか!私も真姫ちゃんやμ'sのみんなで居るの楽しいから一緒だね」

いつだって花陽は眩しいと思えるぐらいまっすぐだ

41: 2020/08/29(土) 22:06:10.78 ID:jFd0mtU8
隣に座っている花陽が笑いかけてくれる
いつだって花陽は真っすぐで温かくて優しい

花陽のことを好きになった日はおぼろげなのに...
好きという気持ちが変わることはなかった。

やっぱり私は花陽のことが好き...

花陽のそばにいると私は素直でいられる
自分の気持ちに正直でいられる

でも...もし花陽に私の思いを伝えてしまったら...
今と同じように笑いかけてくれるのかな
拒絶...されてしまったら...

そう思うと、どうしようもなく怖くなる。

いつだって私は臆病風に吹かれて...
花陽に本当に伝えたいことが伝えられないでいる

42: 2020/08/29(土) 22:07:41.04 ID:jFd0mtU8
花陽「あっ...真姫ちゃん。アイス溶けちゃってる...」

真姫「ほんとだ...ぼんやりしてて気づかなかったわ」

花陽「少し手に付いてる...ほらっ!良かったら私のハンカチで拭いてもらっていいよ」

真姫「ありがとう...でも大丈夫よ。ちょっと今から手を洗ってくるから」
  「ねえ...花陽」

花陽「どうしたの?真姫ちゃん?」

真姫「アイス溶けちゃったから...また今度...みんなで食べにいきましょうね」

花陽「うんっ!みんなと一緒だと楽しいし、アイスだって美味しいよねっ」
  「楽しみだねっ!真姫ちゃん」

真姫「そうね...」

本当は...みんなとじゃなくて、あなたと2人だけでって言おうとしたんだけどね

自分が思っていた言葉と違う言葉が自分の口から出てきてしまいなんだか泣きたくなる

いつだって私は肝心な時になると逃げてばかりだ。

43: 2020/08/29(土) 22:08:53.94 ID:jFd0mtU8
暑いなあ...

溶けてなくなってしまったアイスのように

私のこの思いも全て溶けてなくなってしまえばいいのに...
そうすればこんなに苦しい思いをしなくていいのに
いつだって私はそんな馬鹿げたことばかり考えてしまう

44: 2020/08/29(土) 22:10:01.11 ID:jFd0mtU8
授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響く

お昼休みになったことだし、いつものように花陽と凛と一緒にお弁当を食べようと声を掛けようとするのだけど...

花陽がどこかソワソワとした様子を見せながら教室を飛び出した姿が見えた。

一体花陽はどうしたのかしら...

あとをつけるなんて...本当はしたくないのだけど...
気になるし...仕方ないのよね...

何かあるのなら一言くらい言ってくれたっていいじゃない...

いつだって私は花陽のことが気になって仕方がない...

45: 2020/08/29(土) 22:11:34.09 ID:jFd0mtU8
凛「真姫ちゃん~。か~よちん。一緒にお弁当食べようよ~」

真姫「いいけど...。でも花陽がどこかへ行ってしまったのよ」

凛「かよちんならトイレにでも行ったんじゃないかにゃ?」

真姫「トイレへ行ったように見えなかったんだけど...心配だわ」
  「そうだっ!私も用事があったんだ...凛先にお昼食べてて」

凛「えっー!真姫ちゃんほんとに用事あるの?」

真姫「別になんだっていいでしょ!というわけだからごめんね!凛!」

後ろから凛の真姫ちゃん過保護すぎにゃー!なんて聞こえたけど...
もうどうだっていいわ...花陽が心配なんだから...仕方ないじゃない

凛の言うようにいつだって私は花陽のことになると過保護になってしまう。

まあでも...凛だって人のこと言えないぐらい過保護だと思うけどね

46: 2020/08/29(土) 22:13:02.13 ID:jFd0mtU8
中庭...音楽室...購買...
心当たりの場所を順番に回っていってるけど見当たらない。

他に居そうなところは...あとは部室かしら?
部室の前に立ち、扉を開けようとすると...
中から声が聞こえてきた。

「ねえねえ。せっかくなんだから早く見せてよ~」

「ちょ...ちょっと待って!やっぱり恥ずかしいよ...」

「かよちゃん心配しなくても大丈夫だよ。今部室には私達しか居ないから...恥ずかしがらなくったって平気だよ」

花陽は部室に居たのね...
それにあと部室に居るのは穂乃果とことりかしら?

それにしても部室に誰も居ないからって穂乃果とことりは花陽に何をしようとしてるのよっ!

49: 2020/08/29(土) 22:14:42.78 ID:jFd0mtU8
真姫「花陽っ!大丈夫なの!?」
  「穂乃果!ことり!花陽になにをしようとしてるのよっ!やめてあげてよっ!」

ことり「真姫ちゃん...?」

穂乃果「なにって...花陽ちゃんが今度披露するソロ曲の作詞をしてきたみたいだから見てあげてるところだったんだけど...」

作詞...?花陽はなにもされてないみたいだし...良かった...

真姫「人騒がせなことしないでよ...それに作詞なら海未に見てもらえばいいじゃない...」

穂乃果「あはは...それもそうなんだけど、海未ちゃんに見せる前に自信がないから見て欲しいって花陽ちゃんにお願いされちゃったんだよ」

真姫「そ...そうだったんだ...」

花陽「あの...真姫ちゃん心配してくれたんだね...ごめんね。ちゃんと言えばよかったね」

真姫「いや...その謝ることなんてないわ...。私のほうも早とちりしちゃってごめんなさい」

勝手に1人であれこれ考えて、騒ぎ立てたのは私だけだったみたいで、恥ずかしい...

いつだって私は花陽のことになると余裕がなくなってしまう。

50: 2020/08/29(土) 22:16:02.77 ID:jFd0mtU8
凛「あっー!かよちんも真姫ちゃんも部室に居たんだね!お昼休み終わっちゃうよ~」

花陽「凛ちゃん?なんで凛ちゃんも部室に来たの?」

凛「えへへ~。それはね。真姫ちゃんがかよちんのことが心配であとつけてたから凛もそれについてきんたんだよっ!」

花陽「そうだったんだ...。心配してくれてたんだね。真姫ちゃんありがとう」

真姫「べ...別にお礼を言われることなんてしてないわよ...」

穂乃果「えへへ。花陽ちゃんも凛ちゃんも真姫ちゃんもみんな仲良しみたいで微笑ましいなあ」
   「それより真姫ちゃんは慌てて扉を開けたみたいだけど...何を早とちりしちゃったの?」

真姫「いや...その...えっと...///」

ことり「ちょっと...穂乃果ちゃん...真姫ちゃん恥ずかしいみたいだからやめてあげようよ...」

穂乃果「えっー!だって気になっちゃうもん。ねえ真姫ちゃん穂乃果とことりちゃんが花陽ちゃんになにをしようとしてるって思ったの?教えてよ~」

51: 2020/08/29(土) 22:17:01.14 ID:jFd0mtU8
凛「真姫ちゃん顔すっごく赤いにゃ!ねえねえ凛にも教えてよ~なんで慌ててたの~?」

ことり「凛ちゃんまで...ねえ2人ともやめてあげようよ~」

ただ色々考えちゃって、心配になって...冷静に考える余裕がなかっただけ...

色々聞かれてしまうと恥ずかしいから本当に勘弁してほしい...

本当に花陽が心配だったんだから...

花陽のことになると普段の私でいられないぐらい余裕がなくなってしまう...

52: 2020/08/29(土) 22:17:52.39 ID:jFd0mtU8
花陽「真姫ちゃんほんとに心配してくれてたんだ...えへへ///嬉しいな」

真姫「ほんと...心配だったんだから。それに作詞のことなら私や凛にだって相談してくれたっていいじゃない...」

花陽「うーん。そうなんだけど...今度のソロ曲はいつもそばにいてくれる真姫ちゃんや凛ちゃんのことを考えながら作詞してたから、恥ずかしくなっちゃって」

頬をほんのり赤く染めながら、はにかんだ様子でそんなことを言ってくる。

ほんとにこの子は...無自覚なのか知らないがどうしてこうも可愛いことが言えるのよ...
ほんとにズルい

真姫「そう...ならLIVEで披露してくれる日を楽しみにしてるわ」

花陽「うんっ!ちゃんと見ていてね真姫ちゃん」

いつだって私は花陽に敵わない

53: 2020/08/29(土) 22:18:39.58 ID:jFd0mtU8
絵里「なんとか...次のLIVEまでに新曲を間に合わせることができそうね」

海未「そうですね。2人に相談してよかったです。ありがとうございます」

絵里と海未と私の3人で次のLIVEで披露する曲について打ち合わせを行い、すんなり段取りも決めることができた。
こうしてしっかり打ち合わせを行うことが出来て、充実した話し合いが行えてたのに、どこかもの足りないなんて思ってしまう。

あれやこれやと話が二転三転しながらも9人みんなで話を進める方が私は好きなのかもしれない。

今まではこんなこと思うことなんてなかったのに...
すっかり私もμ'sのみんなに影響されちゃったみたいね。

54: 2020/08/29(土) 22:20:06.16 ID:jFd0mtU8
絵里「ふぅ...」

海未「今日は随分とため息をついていますが...絵里大丈夫ですか?」

海未の言うように会議中も絵里はどこかくたびれた様子で、ため息をつく様子が見られた。

真姫「絵里は気苦労多そうだもんね...無理はしないでよ」

絵里「会議中だったのにごめんなさいね2人とも。無理はしてないんだけど...つい勉強頑張りすぎちゃって」

海未「そうなのですね。でも真姫の言うように無理してはいけませんよ」

絵里の成績ならあまり頑張りすぎなくてもいいんじゃないかしら...
と思ったけど、何事にも手が抜けないのは絵里らしいわよね。

絵里「2人とも心配してくれてありがとうね。でもだらけることなんて出来ないから」

同じ立場である希とにこちゃんはマイペースにかまえているのに...
少しはこのストイックなところをあの2人は見習うべきだと思う...

55: 2020/08/29(土) 22:21:15.24 ID:jFd0mtU8
絵里「まあでも...何かこう...癒しみたいなものが欲しいなんて思うのよね」

珍しい...。こうやって本音みたいなものが漏れるのもよほど疲れているからだろうか
それとも、似たタイプの海未がいるからだろうか

私はともかく、海未なら落ち着いてしっかりとした回答をしてくれると思ってるからこの場で打ち明けたのね。

海未「癒し...ですか。それなら花陽なんてどうでしょう?」

前言撤回。海未だって時々妙なことを言い出すんだったわ...。

絵里「花陽...?ごめんなさい海未。あなたが何を言いたいのか少し...分からないわ」

真姫「そうね...。ねえ海未。花陽は人なのよ。ものなんかじゃないのよ」

海未「私は別に花陽のことを物扱いしてるわけではないのですが...。その...花陽のほっぺたのことを言っているのです」
  「穂乃果とことりが言っていたので触らせてもらいましたが、なかなか心地よくて癒された気がしたことがあったのです」

真姫「それ聞いてどう考えても、物扱いしてるようにしか見えないんだけど...」

56: 2020/08/29(土) 22:22:24.07 ID:jFd0mtU8
絵里「まあでも…海未がそこまで言うほどなんだから、私も触らせてもらおうかしら?」

全く…海未が妙なことを言うから絵里だって悪ノリしちゃうじゃない

真姫「2人して何やろうとしてるのよ…」

花陽「絵里ちゃんたちもう打ち合わせ終わった?」

うわっ…なんでこの子はまたこんなタイミングで来ちゃうのよ

海未「打ち合わせはもう終わりましたよ。それにしてもいいところに来てくれましたね」

絵里「ええ。ほんとグッドタイミングね♪花陽♪」

57: 2020/08/29(土) 22:23:49.61 ID:jFd0mtU8
花陽「…?3人でなんの話をしてたの?」

絵里「ねえ花陽。少しの間だけでいいからほっぺたを触らせてもらっていい?海未からあなたのほっぺたに触ると癒されるって聞いて試したくなったの」

真姫「もうっ!絵里も何言ってるのよ!花陽、断ってもいいんだからね」

花陽「えへへ。真姫ちゃん心配してくれてありがとう。ちょっと恥ずかしいけど…
   ミューズのみんなにだったらいいよ。それに絵里ちゃんお疲れみたいだったから少しでも癒しになったらいいなって思うし」

絵里「ふふっ。真姫は駄目って言ってるけど、花陽本人がいいって言ってくれてるから触らせてもらうわね」

花陽「うんっ!絵里ちゃん触ってもいいよ」

なによ…私だって遠慮しているのに…絵里はズルい

海未「ふふふっ」

真姫「なによ…海未」

海未「いえ。真姫は花陽に優しいのですね」

真姫「別に…」

58: 2020/08/29(土) 22:25:17.30 ID:jFd0mtU8
真姫「花陽にだけってわけじゃないんだけど」

海未「それもそうですね」

絵里「ハラショー!ほんとに癒されるわ」

花陽「あわわっ。いきなり抱き着かれたらびっくりしちゃうよぉ絵里ちゃん」

真姫「ちょっと絵里っ!」

絵里「ほんと温かいわ。ねえ花陽もうすこしだけこのままで居てもいいかしら?」

花陽「いいよ絵里ちゃん。たくさん癒されちゃってください」

真姫「…」

59: 2020/08/29(土) 22:26:47.80 ID:jFd0mtU8
海未「ごめんなさい…真姫」

真姫「なんで…海未が謝るのよ」

海未「真姫はその…嫉妬とかそういったものとは無縁だと思っていましたから…」

真姫「私だって…するわよ…こんなことしちゃいけないのに…」

海未「私だってそうですよ。どうしても穂乃果やことりのことになると冷静でいられなくなることがあります。真姫も私と同じなのかもしれませんね」

海未はこう言ってくれたけど…

私と海未の「思い」は恐らく違う。海未は純粋に穂乃果とことりのことを大事にしたいという気持ちであって、とても美しいものだ
私の花陽への「思い」は重くて、ジメジメとしている独占したいなんて思いが含まれている。

μ'sのみんなやクラスメイト、他の誰にだって触れてほしくないなんて思っている

いつだって私はこんな醜い思いを抱えている

60: 2020/08/29(土) 22:28:06.81 ID:jFd0mtU8
私が好きになった小泉花陽という女の子は
優しくて温かくて、眩しいと感じるほどキラキラ輝いている。

私のこの思いを向けてしまえば、キラキラ輝いている彼女のことを汚してしまうのではないかなんて馬鹿げたことを考えてしまう
大好きなあの子を汚したくない、傷つけたくない

いつだってあの子にはキラキラ輝いていてほしい

だから私は花陽に触れることができない…
いつからか触れてしまうのが怖いと感じるようになってしまった

61: 2020/08/29(土) 22:29:44.07 ID:jFd0mtU8
花陽「まーきちゃん」

真姫「花陽…なんでいきなり抱き着いてくるのよ」

花陽「絵里ちゃんが真姫ちゃんが寂しそうにしてるって言ってたから心配になっちゃって嫌だったかな?」

真姫「嫌じゃないわ…花陽はこんなことするの嫌じゃない?私に触っても平気?」

花陽「私も真姫ちゃんに触れるの嫌じゃないよ。大丈夫だよ真姫ちゃん。真姫ちゃんはとっても温かいよ」

真姫「そう…」

いつだって花陽は人の心に敏感で…温かい

62: 2020/08/29(土) 22:32:23.39 ID:jFd0mtU8
花陽「あのね。真姫ちゃん。私μ'sのみんなみたいにスタイルもよくないから、ずっと自分の身体のことが嫌いだったの」

花陽「でもね…μ'sに入って、凛ちゃんや真姫ちゃん、それにみんなが私のこと可愛いって言ってくれたりしてくれたから、ほんの少し自分を好きになれたんだ」

花陽「自分のことを好きになることが出来て、今こうしてみんなと楽しく過ごすことが出来たのは、ずっと真姫ちゃんが勇気をくれてたおかげなんだよ」

花陽「真姫ちゃんありがとうっ!」

どうしてこの子はこんなにも真っすぐでいられて、素直で優しいんだろう…

私にないものを持っていてずっと羨ましいと思っていた
出会った日からずっといつだってこの子のようになりたかった

私とは正反対の位置にいる花陽のことが…

いつだって私には遠くに感じていた
こんなに近くでいるはずなのに…

63: 2020/08/29(土) 22:34:06.92 ID:jFd0mtU8
「真姫ちゃんって花陽に優しいわよね」

部室でにこちゃんと希の3人でだらだらと話をしている時
唐突ににこちゃんが私にむけて言ってきた。

真姫「なによそれ…別に花陽だけってわけじゃないわ」

希「まあ真姫ちゃん。にこっちはちょっとやきもち焼いてるだけやから」

にこ「勝手に嫉妬してるなんて決めないでよっ!希」

そうよね…いつものやっかみよね…
なんだかいつもより身構えてしまうじゃない

希「でも、にこっちが言うことも分かるな。真姫ちゃんは花陽ちゃんと一緒にいる時いつもより雰囲気が柔らかい気がする」

もしかして…気づかれたのかしら…

私が恋をしている花陽は女の子で…普通ではないもの

もし、みんなに気づかれてしまったら…怖がられてしまうかもしれない
拒絶されてしまったら…

64: 2020/08/29(土) 22:36:11.05 ID:jFd0mtU8
それに花陽だって…そんな子が居るμ'sのことが嫌いになってしまうかもしれない…
怖いなんて思うかもしれない

私の好きという思いがあの子が大切にしているものを壊してしまうかも…

μ'sのみんなは優しいし、そんなことありえないと信じているけど…

怖い…

何よりも花陽に拒絶されたら…
あの子から笑顔を奪ってしまったら

65: 2020/08/29(土) 22:37:06.75 ID:jFd0mtU8
あの子のことを傷つけてしまったら…

いつだって私は花陽のことを思うとたまらなく臆病風に吹かれてしまう

66: 2020/08/29(土) 22:39:28.31 ID:jFd0mtU8
希「…大丈夫よ真姫ちゃん。真姫ちゃんにとって花陽ちゃんは高校で出来た初めての友達だって前言ってたから、やっぱり特別に思うんやね」

そう…あの子は私の大切な友達…
おかしなことなんてなにもないはず…なのに…

にこ「誰だってそんな特別な存在っているもんよ。特に女の子なんだし、別に茶化してるわけじゃないから。真姫ちゃんにとっても素敵なことだって言ってるのよ」

花陽は大切な友達…
なのに...どうしてこんなに辛くなるんだろう

真姫「これまでも…友達が居なかったわけじゃないの。でも…あの子は一緒に居て心の底から安心して付き合うことが出来るって初めて思えた子で…それに、私が終わったと思ってた音楽をもう一度始めるきっかけを作ってくれたから…だから…だから」

いつだって花陽には知らず知らずのうちに助けられてきた
だから…傷つけたくないずっと笑っていてほしい
そのために、この思いは隠し通さないといけない

67: 2020/08/29(土) 22:41:27.86 ID:jFd0mtU8
にこ「それだけ…真姫ちゃんにとって花陽は特別な存在なのよ。そんな子って一生得難い存在なんだから…大事にしなさいよ」

真姫「でも…私は…凛やミューズのみんなと同じようにあの子になにもしてあげられない…」
  「どうやったら大事に出来るかなんて…分からないの…」

穂乃果「違うよっ!真姫ちゃんっ!」

にこ「うわっ!びっくりするからいきなり扉を開けないでよっ!」

希「おっと!穂乃果ちゃんはさっきまでの話を扉の向こうで聞き耳たててこっそり聞いてたんやね~」

穂乃果「ちょ…希ちゃん!わしわしのかまえやめてよっ!穂乃果は真姫ちゃんが悩んでたみたいだから力になってあげたかったの!」

穂乃果「あのね!真姫ちゃん。花陽ちゃんはねいつも言ってたよ。ミューズに入ることが出来たのは真姫ちゃんが励ましてくれて、勇気をくれたからだって」
   「だからねっ!真姫ちゃんはなにもしてあげてないなんて真姫ちゃんがおも…」

にこ「喉乾いたから、穂乃果ちゃんちょっと付き合ってほしいにこ~」

71: 2020/08/29(土) 22:43:52.28 ID:jFd0mtU8
穂乃果「ちょっとにこちゃん!今から真姫ちゃんに教えてあげるとこだったのに押さえつけないでよっ!」

にこ「そんなの真姫ちゃんが自分で気づくことが大事なんだから…おせっかいやかなくていいのよ。ほらジュースおごってあげるから行くわよ」

真姫「ねえ希…穂乃果が言いかけてたけど、私本当に分からないの…」
   「どうしてあげればいいの…」

希「真姫ちゃんは何もしてあげられてないなんて言ってたけどね。花陽ちゃんは真姫ちゃんに対してそんな風に思ってないよ。だから大丈夫よ。大事にしたいって思ってるならどうすればいいのかなんてきっと分かる」
 「自分自身で答えを見つけないといけないの」

真姫「でも…私本当に…」

希「大丈夫…真姫ちゃんは優しいし、いい子だから。自信持って」

私はいい子なんかじゃない…
そんな言葉が浮かびあがるけど…声に出せない
こんなにもあたたかな言葉を掛けてくれるみんなにも嘘をついている

花陽のことは誰よりも大事にしてあげたいという気持ちはあるのだけど…
いつだって私の気持ちの中には独占浴や嫉妬なんていった醜い利己的な感情が含まれている

こんな気持ちを持つ自分が本当にあの子を大事にしてあげることは出来るのだろうか…

私は花陽に…何もしてあげられない
いつだって私は…どうしてあげたらいいのか分からない

74: 2020/08/29(土) 22:44:51.18 ID:jFd0mtU8
「真姫ちゃん…ごめんね…。私…寂しくて…」

私の大好きなあの子が泣いている
優しいあの子が泣いている

お願いだから泣かないで…
あなたには笑っていてほしいの

それなのに言葉が出ない
目からとめどなく溢れる涙をぬぐってあげられない
小さく震える肩を抱き寄せることすらできない

76: 2020/08/29(土) 22:46:49.64 ID:jFd0mtU8
いつもみんなで練習する屋上に
私と花陽の2人だけ…

3学期になって3年生のメンバーは学校に来ることが少なくなってきていて
3年生が卒業してしまうことを嫌でも意識してしまう

そんな日々が続いているから、花陽は元気がなかった。
こんな時に限って2年生のメンバーは生徒会の活動で忙しそうだし

頼みの凛だって、このところ先生に捕まって補習をうける日が続いている

元気のない花陽を凛や穂乃果たちは元気づけていたけど…
私はそれを眺めるくらいしかできなかった。

何もできない自分が不甲斐なくて
何もしてあげられない自分への苛立ちと一向に進展しない状況が苦しくて
花陽と2人でいる時間がどこかぎくしゃくしてしまっていた

77: 2020/08/29(土) 22:50:04.46 ID:jFd0mtU8
花陽「ごめんね。真姫ちゃん。元気ださないといけないのに…」

寂しい思いをしている彼女に、
誰かを思って涙を流す彼女に
私はどんな言葉をかけてあげたらいいのだろう…

花陽「私…μ'sのみんなが大好きで…3年生のみんなが大好きだから…やっぱり寂しくて…辛いの…」

花陽の目からあふれる涙をどうやったらとめてあげられるのだろう

いつだって花陽の隣には凛が居て…
この子の手を引くのは私じゃなかった…

こんな時凛なら…
μ'sのほかの誰かなら

こんなに近くにいるはずなのに
こんなにも花陽のことを思っているのに触れることすらできない

いつだって私は…花陽になにもしてあげられない

79: 2020/08/29(土) 22:52:35.23 ID:jFd0mtU8
この手でどんなに甘美な音を奏でることは出来たとしても
この手では涙を拭うことも、触れることも手を引くこともできない

花陽「真姫ちゃん…」
  「どうして泣いてるの…?」
自分が寂しい思いをしていて泣いているはずなのに
涙が出るほど辛い思いをしているのに
この子はどうして他人の心配ができるのだろう

私はそんなことができるあなたが羨ましくて、あなたが遠くに感じる

真姫「私は…凛のようにμ'sのみんなみたいに…出来ないの…」   
  「あなたの涙をとめることができない…」

いつだったそうだった…
花陽のことが好きなのに…

いつだって臆病風に吹かれて
怖くて…何もできなかった

82: 2020/08/29(土) 22:54:18.38 ID:jFd0mtU8
真姫「私は…花陽になにをしてあげればいいのか分からないの…」
  「あなたのことが…好きなのに…」

自分のくだらないエゴなのかもしれない

けど…ずっと笑顔を見ていたい
笑っていてほしい、傷つけたくない
いつだってそう思ってたのに…

いつだって私はあなたを助けてあげることに遅れてしまう
だから…せめて…笑わせることぐらい簡単だと思っていたのに

83: 2020/08/29(土) 22:55:51.39 ID:jFd0mtU8
真姫「私には…何が出来るのよ…」

希やにこちゃん、μ'sのみんなが思っているほど

私はいい子なんかじゃない…

「ごめんなさい…花陽…」
どうすればあの子は笑ってくれるの
どうすればあの子の涙を止められるの
どうすればあの子は笑ってくれるの
どうすればあの子を…大事に出来るの

どうすれば…大好きなあの子の隣に居ることが出来るの

いつだって…どんな時もずっと…そう思ってたのに…

84: 2020/08/29(土) 22:57:46.42 ID:jFd0mtU8
「真姫ちゃん」

花陽の温かくて優しい声が聞こえる
ぼやけたたままの視線の先に、花陽の姿が…にじんで見える

真姫「今ここに居るのが私なんかじゃなかったらよかったのに…」

花陽「そんな悲しいこと言わないで…今ここにいてくれるのが真姫ちゃんでよかったよ」
  「真姫ちゃん…あのね…私も真姫ちゃんのことが…好きだよ…」

真姫「私の好きと…あなたの好きは違うの…」
  「だからそんなこと…言わないで…」

こんなに近くでいるはずなのに
気持ちはすれ違うばかりで、花陽があまりにも遠いように感じる
今すぐにでも触れて、抱きしめたいのに怖い…
このままあの子を不幸にしてしまうんじゃないかと考えて触れることすらできない

真姫「ごめんね…花陽。私には…あなたが遠くに感じるの」

85: 2020/08/29(土) 22:59:07.67 ID:jFd0mtU8
―――温かい…
小さく震えていた身体にぬくもりを感じる
いつだって遠くに感じて
触れることすらできなくて
温かくて、まぶしいぐらいに感じていた
花陽に…確かに今触れている
「大丈夫だよ」
「私はここにいるよ」

花陽「今ここにいてくれて、同じ気持ちでいてくれるのが…真姫ちゃんでよかった…」
  「真姫ちゃんは何もしてあげられないって言うけど、いつだって真姫ちゃんは私に勇気をくれてたんだよ」
  「だから…ずっと怖くて伝えられなかったけど…真姫ちゃんがここにいてくれるから…伝えるね」

 

「私…真姫ちゃんのことが誰よりも好きだよ」

86: 2020/08/29(土) 23:01:37.81 ID:jFd0mtU8
「私は真姫ちゃんのことが好きです」
そうやって同じ言葉を何度も伝えてくれる

温かな優しいあの子の声が、スッと胸に染み込んでいく

臆病風に吹かれて、触れることすら出来ないでいて
みっともなく今にも崩れ落ちてしまいそうな身体を
強がってばかりいて…ほんとはだれより臆病な心を
花陽は支えてくれている。

真姫「私があなたの隣にいていいの?何もしてあげられない私が…あなたのそばに…」

花陽「真姫ちゃんは今のままでいいんだよ。ここにいるありのままの真姫ちゃんのことが好きだから…」

いつだって…手に入らないものを手に入れようとして…
ずっと近くにあった大切なものを見失っていた

今のままで…私はよかったんだ…

89: 2020/08/29(土) 23:05:26.72 ID:jFd0mtU8
花陽「私ね…これからさきもずっと。大好きな真姫ちゃんといたいの。だから真姫ちゃんこれから私達がμ'sでいられなくなったとしても、高校を卒業したあとも私のそばにいてくれますか?」

真姫「私で…いいの?花陽はこれからのことが怖くない?」

花陽「大丈夫だよ。いつだって勇気をくれた真姫ちゃんがそばに居てくれるなら、どんなことも一緒に乗り越えていける気がするの」
  「どんなに間違えたって、失敗したって一緒にやり直すことが真姫ちゃんとなら出来るよ」
  「いつだって2人で一緒だよ。一緒に乗り越えていこうね」

このぬくもりをくれるのはいつだって花陽だけだ

私が恋をした小泉花陽という女の子だけ…

臆病風が吹きやんだわけではないけれど…今ならずっと伝えられなかったことを伝えられる

真姫「いつだって私は…この先ずっとあなたの隣でいたい」

いつも、いつまでも、いつまでたっても、この先ずっと
いつだって、どんな時だってずっと花陽の隣に



おしまい

96: 2020/08/29(土) 23:13:20.78 ID:jFd0mtU8
正直こんな風になるなんて思わなかったよ...

102: 2020/08/29(土) 23:26:19.60 ID:jFd0mtU8
こんなに粘着されるなんて考えてなかったから
ご感想頂けて本当に嬉しいです...
読んでくださりどうもありがとうございます。

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1598704570/

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