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■約28000文字■2020/02/13(木) 17:30:43.10 ID:mgW1r0zW
「記憶を徐々に失う病、かぁ……」
私は、海をながめていた。寄せては返す波の音が、今はただただ空虚で頭に響く。
いつもであれば、ここは心落ち着く場所であるはずだったけど――とても、落ち着けるような状態ではなくて。
記憶を徐々に失う病――唐突に、目の前に突きつけられた現実。
一昨日、道を急いでいたら、転んで頭を打ってしまった。
思い切り打ち付けたわけじゃないけど、頭を打つということの危険性は把握しているつもりで……念のためにと、病院に向かった。
そこで頭の状態を詳しく診てもらって、転んだ際の出血や内傷はないと聞いて――ほっとした、その直後に言い渡されたことだ。
「見たことも聞いたこともない症例だが、脳が記憶を失うように作用している」――と。病名は、進行性記憶障害――
そう聞いた時、医者が何を言っているか全く分からなかった。言葉の意味が理解できないのではなく、現実感がない――
「そんなことあるはずない」とも思ったし、失礼と分かっていても「医者の酷い勘違いじゃないか」とも考えた。
医者から一言、明日もう一度状態を診るから必ず来るようにと言われた。
その言葉は印象的で、昨日になっても忘れることなどなく、やっぱり何かの間違いだと軽い気持ちで病院へと向かった。
「間違いない」そう、深刻そうな表情で告げた医者の表情も……脳裏に焼き付いている。
(やっぱり、何かの間違いだよ……)
だって、何も忘れていない。今まで過ごしてきた時間も、思い出も、この綺麗な海を何度も眺めていたことも。
Aqoursのみんなのことだって、欠けている記憶など全く思いつかなくて――大好きなみんなと過ごした日々は、今も昨日の出来事のように思い出せる。
2022年11月18日 23:10
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