1: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:34:45.37 ID:CZboSJTp
――私、トリアタマなんだ
2: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:35:15.47 ID:CZboSJTp
曜 「えっ、なんて?」
千歌 「トリアタマ。知ってる?」
曜 「あぁ…3歩歩いたら全部忘れるってやつ?」
千歌 「そうそう。すごいよね! だって歩くだけで忘れちゃうんだよ?」
曜 「それをすごいって言うのかは分からないけど…」
千歌 「でもさ…」
曜 「ん?」
千歌 「トリアタマ。知ってる?」
曜 「あぁ…3歩歩いたら全部忘れるってやつ?」
千歌 「そうそう。すごいよね! だって歩くだけで忘れちゃうんだよ?」
曜 「それをすごいって言うのかは分からないけど…」
千歌 「でもさ…」
曜 「ん?」
3: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:35:53.17 ID:CZboSJTp
千歌 「あれって逆に言えば、歩きさえしなければ何も忘れないってことでしょ?」
曜 「……何が言いたいの」
千歌 「―私ね、生まれてから今日までのこと、全部覚えてるんだ。」
車椅子に座った千歌ちゃんは、生まれつき膝より先のない足を擦り、ニッコリと微笑んだ。
ーーーーーー
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曜 「……何が言いたいの」
千歌 「―私ね、生まれてから今日までのこと、全部覚えてるんだ。」
車椅子に座った千歌ちゃんは、生まれつき膝より先のない足を擦り、ニッコリと微笑んだ。
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4: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:36:20.66 ID:CZboSJTp
千歌 「私ね、自分が生まれた時のお母さんの顔を覚えてるんだ」
曜 「へぇ、すごいじゃん」
千歌 「すごい…のかなぁ」
曜 「すごいよ。その時のお母さんの顔って、見たくても見れないし、覚えていたくても覚えていられないものだし」
千歌 「そっか…」
千歌 「私ね、お母さんの顔見たくなかったの」
曜 「へぇ、すごいじゃん」
千歌 「すごい…のかなぁ」
曜 「すごいよ。その時のお母さんの顔って、見たくても見れないし、覚えていたくても覚えていられないものだし」
千歌 「そっか…」
千歌 「私ね、お母さんの顔見たくなかったの」
5: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:36:58.81 ID:CZboSJTp
曜 「なんで?」
千歌 「だって、脚がないんだよ? それも生まれつき。お母さんに出会うのが怖かったんだ」
曜 「もしかして、お腹の中にいた時のことも?」
千歌 「覚えてるよ。…暖かかった。すごく暖かったけど、ここから1度でたら、こんな暖かさを感じることはもうないかもって思ってた」
曜 「そんなこと…」
千歌 「事前にわかってるとはいえ、いざ私を目にしたら、きっと嫌われる。だからずっと、お腹の中にいたかった」
千歌 「だって、脚がないんだよ? それも生まれつき。お母さんに出会うのが怖かったんだ」
曜 「もしかして、お腹の中にいた時のことも?」
千歌 「覚えてるよ。…暖かかった。すごく暖かったけど、ここから1度でたら、こんな暖かさを感じることはもうないかもって思ってた」
曜 「そんなこと…」
千歌 「事前にわかってるとはいえ、いざ私を目にしたら、きっと嫌われる。だからずっと、お腹の中にいたかった」
7: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:38:07.98 ID:CZboSJTp
千歌 「…外の世界に出た時、すごく寒かったんだ」
曜 「暖かいお腹の中から、急に裸で外に出されるんだもんね」
千歌 「うん…私、すごく震えてた。でもそれが寒かったからか、怖かったからなのか、自分でもわからなかった」
曜 「……お母さん、どんな顔してたの?」
千歌 「……笑ってた」
曜 「暖かいお腹の中から、急に裸で外に出されるんだもんね」
千歌 「うん…私、すごく震えてた。でもそれが寒かったからか、怖かったからなのか、自分でもわからなかった」
曜 「……お母さん、どんな顔してたの?」
千歌 「……笑ってた」
8: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:38:38.47 ID:CZboSJTp
千歌 「お母さんに抱っこされた時、震えも自然に止まったんだ。暖かくて…安心して…」
千歌 「チラって顔を見てみたら、お母さん笑ってたの。おかしいでしょ?」
曜 「どうして?」
千歌 「だって脚が無いのに…お母さん私の脚になんて目もくれないで、ずぅっと私の顔を見てたんだよ」
曜 「…でも、嬉しかったでしょ?」
千歌 「うん。…おかげで今、こうやって曜ちゃんともお喋りできてるし」
曜 「…私のお母さんは、どんな顔してたのかな」
千歌 「チラって顔を見てみたら、お母さん笑ってたの。おかしいでしょ?」
曜 「どうして?」
千歌 「だって脚が無いのに…お母さん私の脚になんて目もくれないで、ずぅっと私の顔を見てたんだよ」
曜 「…でも、嬉しかったでしょ?」
千歌 「うん。…おかげで今、こうやって曜ちゃんともお喋りできてるし」
曜 「…私のお母さんは、どんな顔してたのかな」
9: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:39:54.69 ID:CZboSJTp
千歌 「笑ってたよ。…きっと」
曜 「あははっ…。なんでかな、千歌ちゃんが言うと、きっとそうだって思えるよ」
千歌 「絶対そう。トリアタマの私が保証する!」
曜 「…うん、ありがとう、千歌ちゃん」
ーーーーーー
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曜 「あははっ…。なんでかな、千歌ちゃんが言うと、きっとそうだって思えるよ」
千歌 「絶対そう。トリアタマの私が保証する!」
曜 「…うん、ありがとう、千歌ちゃん」
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10: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:40:33.68 ID:CZboSJTp
千歌 「幼稚園の頃のこととか、覚えてる?」
曜 「どうだろう…。曖昧に…って感じかな」
千歌 「私たちの通ってた幼稚園、毎日お弁当だったんだけど、それは?」
曜 「あぁ、それなら覚えてる! 千歌ちゃんのお弁当、可愛いって評判だったよね」
千歌 「うん。私、いつどんな中身のお弁当を持たされてたか、全部覚えてるんだ」
曜 「羨ましいなぁ。あんなに可愛いお弁当を毎日持たせてもらえるなんて」
千歌 「でも私ね、幼稚園の頃、お弁当が大嫌いだったの」
曜 「どうだろう…。曖昧に…って感じかな」
千歌 「私たちの通ってた幼稚園、毎日お弁当だったんだけど、それは?」
曜 「あぁ、それなら覚えてる! 千歌ちゃんのお弁当、可愛いって評判だったよね」
千歌 「うん。私、いつどんな中身のお弁当を持たされてたか、全部覚えてるんだ」
曜 「羨ましいなぁ。あんなに可愛いお弁当を毎日持たせてもらえるなんて」
千歌 「でも私ね、幼稚園の頃、お弁当が大嫌いだったの」
11: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:41:25.24 ID:CZboSJTp
曜 「えっ…あんなに可愛いかったのに?」
千歌 「お家が旅館だから、具材も凝ってたんだけど…。他の子より、野菜がちょっと多かったんだ」
曜 「あぁー…たしかに。千歌ちゃんのお母さん、バランスとかすごく気遣ってそうだもんね」
千歌 「実際中身も、旅館で出すような料理が入ってたりしてたんだけど、それが嫌だった」
曜 「子どもの頃って、和食とかあまりすすまないもんね」
千歌 「私もみんなみたいに、エビフライとかハンバーグが良かったんだけど…いつも我慢して食べてた」
千歌 「お家が旅館だから、具材も凝ってたんだけど…。他の子より、野菜がちょっと多かったんだ」
曜 「あぁー…たしかに。千歌ちゃんのお母さん、バランスとかすごく気遣ってそうだもんね」
千歌 「実際中身も、旅館で出すような料理が入ってたりしてたんだけど、それが嫌だった」
曜 「子どもの頃って、和食とかあまりすすまないもんね」
千歌 「私もみんなみたいに、エビフライとかハンバーグが良かったんだけど…いつも我慢して食べてた」
12: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:42:02.82 ID:CZboSJTp
千歌 「でもある日、限界がきて、お母さんに文句言っちゃったんだ」
『おかあさんのおべんとうきらい!! はんばーぐとかがいいっ!!』
『千歌…ごめんね。お母さん、千歌のことなんも分かってなかったね』
曜 「そうだったんだ…」
千歌 「お母さん、そんな私を怒ったりしないで、お弁当の中身を変えてくれたんだ」
『おかあさんのおべんとうきらい!! はんばーぐとかがいいっ!!』
『千歌…ごめんね。お母さん、千歌のことなんも分かってなかったね』
曜 「そうだったんだ…」
千歌 「お母さん、そんな私を怒ったりしないで、お弁当の中身を変えてくれたんだ」
13: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:42:48.49 ID:CZboSJTp
千歌 「ハンバーグとか、グラタンとか。私の好きなものばっかり」
千歌 「でも…ちっとも美味しくなかった」
曜 「千歌ちゃん…」
千歌 「流石に朝からそういう料理を作るのは大変だから、冷凍食品だったんだ。だからかも」
千歌 「ある日ね、今までのお弁当が恋しくなって、旅館で出す料理をつまみ食いしたの」
千歌 「でも…ちっとも美味しくなかった」
曜 「千歌ちゃん…」
千歌 「流石に朝からそういう料理を作るのは大変だから、冷凍食品だったんだ。だからかも」
千歌 「ある日ね、今までのお弁当が恋しくなって、旅館で出す料理をつまみ食いしたの」
14: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:43:24.35 ID:CZboSJTp
千歌 「……すっごく苦かった。はっきり言って、あの時の私には食べれたもんじゃなかった」
曜 「えっ、でも…」
千歌 「そう。お弁当の中にあった料理は食べれてたのに…だよ。それで気付いたんだ」
千歌 「確かに品目は同じだったけど、ちゃんと私向けに作ってくれてたんだ、お母さん」
千歌 「旅館の料理のついでなんかじゃなかった。ちゃんと私が食べれるような味付けで…それに可愛く盛り付けてくれて…」
曜 「…すごいんだね、お母さん」
曜 「えっ、でも…」
千歌 「そう。お弁当の中にあった料理は食べれてたのに…だよ。それで気付いたんだ」
千歌 「確かに品目は同じだったけど、ちゃんと私向けに作ってくれてたんだ、お母さん」
千歌 「旅館の料理のついでなんかじゃなかった。ちゃんと私が食べれるような味付けで…それに可愛く盛り付けてくれて…」
曜 「…すごいんだね、お母さん」
15: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:44:07.07 ID:CZboSJTp
千歌 「私、つまみ食いした人参を片手に、泣いて謝りに行った。お弁当のこと、つまみ食いしたこと…」
千歌 「お母さん、軽く私にデコピンして、それから優しく抱きしめてくれた。車椅子に乗ったまま、私ずっとお母さんの胸の中で泣いてた」
千歌 「…次の日から、お弁当は元に戻った」
曜 「美味しかった?」
千歌 「うん。とっても」
千歌 「お母さん、軽く私にデコピンして、それから優しく抱きしめてくれた。車椅子に乗ったまま、私ずっとお母さんの胸の中で泣いてた」
千歌 「…次の日から、お弁当は元に戻った」
曜 「美味しかった?」
千歌 「うん。とっても」
16: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:44:39.75 ID:CZboSJTp
曜 「私は自分の好きなものばっかり入れてもらってたなぁ」
千歌 「それはそれで、幸せじゃない?」
曜 「でも私、幼稚園のころ食べるのが下手っぴで、いつも先生に手伝ってもらってたっけ」
千歌 「でも曜ちゃん、すごく嬉しそうだったよ」
曜 「…うん。だって、すごく美味しかったし」
千歌 「それだけじゃ、ないでしょ?」
曜 「……うん、そうだね。そうかも」
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千歌 「それはそれで、幸せじゃない?」
曜 「でも私、幼稚園のころ食べるのが下手っぴで、いつも先生に手伝ってもらってたっけ」
千歌 「でも曜ちゃん、すごく嬉しそうだったよ」
曜 「…うん。だって、すごく美味しかったし」
千歌 「それだけじゃ、ないでしょ?」
曜 「……うん、そうだね。そうかも」
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17: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:45:08.10 ID:CZboSJTp
千歌 「中学の頃、大喧嘩したことあったよね、私たち」
曜 「それは私も覚えてる。あの時は本当にごめん」
千歌 「ううん、私の方こそ。…曜ちゃんがあんなに弱ってたなんて全然気付けなくて…」
曜 「…あの時私、千歌ちゃんが羨ましかった。いや、それは今もだけど…」
千歌 「うん…」
曜 「それは私も覚えてる。あの時は本当にごめん」
千歌 「ううん、私の方こそ。…曜ちゃんがあんなに弱ってたなんて全然気付けなくて…」
曜 「…あの時私、千歌ちゃんが羨ましかった。いや、それは今もだけど…」
千歌 「うん…」
18: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:45:47.97 ID:CZboSJTp
曜 「その体でも、いつも元気いっぱいで。いつも前を向いて、希望を持ってて…」
曜 「千歌ちゃんは私の唯一の理解者だって…同じような境遇にいる人同士だからこそ、分かり合えるって思ってたのに…」
曜 「私には千歌ちゃんの気持ちがわからなかった。どうしてそんな状態で、希望を持って生きていられるのか理解出来なかったんだ」
千歌 「曜ちゃん…」
きゅっと、千歌ちゃんが私の手を握る。
感触は感じないが、確かなあたたかさを感じた
――私、渡辺曜は、義手だった。
生まれつき、両手を失っていた。
曜 「千歌ちゃんは私の唯一の理解者だって…同じような境遇にいる人同士だからこそ、分かり合えるって思ってたのに…」
曜 「私には千歌ちゃんの気持ちがわからなかった。どうしてそんな状態で、希望を持って生きていられるのか理解出来なかったんだ」
千歌 「曜ちゃん…」
きゅっと、千歌ちゃんが私の手を握る。
感触は感じないが、確かなあたたかさを感じた
――私、渡辺曜は、義手だった。
生まれつき、両手を失っていた。
20: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:46:32.47 ID:CZboSJTp
曜 「私たちは一心同体…」
千歌 「お互いに無い部分を補い合って、誰にも負けない最強のコンビになるんだって、小学生の時に言い出したんだっけ」
曜 「思えば私、千歌ちゃんのこと何も分かっちゃいなかったんだ。自分のことを理解してほしいって思っていながら、相手を理解しようとしてなかった」
千歌 「曜ちゃん…」
曜 「千歌ちゃんを表面上でしか捉えてなかった。明るく振舞ってた千歌ちゃんも、いっぱい無理して、いっぱい苦しんでたのに」
千歌 「そんな、私なんて…」
曜 「千歌ちゃんはすごいよ。私、千歌ちゃんのことすごく尊敬してるんだ」
千歌 「……私は普通怪獣」
曜 「えっ…?」
千歌 「お互いに無い部分を補い合って、誰にも負けない最強のコンビになるんだって、小学生の時に言い出したんだっけ」
曜 「思えば私、千歌ちゃんのこと何も分かっちゃいなかったんだ。自分のことを理解してほしいって思っていながら、相手を理解しようとしてなかった」
千歌 「曜ちゃん…」
曜 「千歌ちゃんを表面上でしか捉えてなかった。明るく振舞ってた千歌ちゃんも、いっぱい無理して、いっぱい苦しんでたのに」
千歌 「そんな、私なんて…」
曜 「千歌ちゃんはすごいよ。私、千歌ちゃんのことすごく尊敬してるんだ」
千歌 「……私は普通怪獣」
曜 「えっ…?」
21: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:47:09.38 ID:CZboSJTp
千歌 「普通になりたくて、普通に縛り続けられた、普通怪獣ちかちー」
曜 「千歌ちゃん…」
千歌 「いつか普通になれる日が来るって夢見て、必死に前を向いて生きてきた」
千歌 「……でももう、限界かも」
曜 「…ねぇ、千歌ちゃん」
曜 「千歌ちゃん…」
千歌 「いつか普通になれる日が来るって夢見て、必死に前を向いて生きてきた」
千歌 「……でももう、限界かも」
曜 「…ねぇ、千歌ちゃん」
22: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:47:43.14 ID:CZboSJTp
ー
曜 「義足、つけてみない?」
曜 「義足、つけてみない?」
23: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:48:19.72 ID:CZboSJTp
千歌 「……ダメだよ」
曜 「どうして…?」
千歌 「私はトリアタマだもん。義足をつけて、歩いたら…きっと私は今までのことを忘れる」
千歌 「生まれつき足がなくて苦しんだこと…支えてくれた人のこと…お母さんの顔も、お弁当も…全部…ぜんぶ…」
曜 「…私のことも、忘れちゃう?」
千歌 「……うん、きっと」
曜 「それでも私は、千歌ちゃんに前に進んでほしい」
曜 「どうして…?」
千歌 「私はトリアタマだもん。義足をつけて、歩いたら…きっと私は今までのことを忘れる」
千歌 「生まれつき足がなくて苦しんだこと…支えてくれた人のこと…お母さんの顔も、お弁当も…全部…ぜんぶ…」
曜 「…私のことも、忘れちゃう?」
千歌 「……うん、きっと」
曜 「それでも私は、千歌ちゃんに前に進んでほしい」
25: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:49:00.59 ID:CZboSJTp
千歌 「曜ちゃん、分かってるの? 全部忘れちゃうんだよ?」
千歌 「新しい世界に進むってことは、前までいた世界のことを忘れるってことなんだよ!?」
曜 「私はそうは思わないかな」
千歌 「曜ちゃん…」
曜 「きっと今の世界で覚えたことは、新しい世界でも千歌ちゃんの心に残り続けてる」
曜 「……たとえ、忘れちゃったとしても」ギュッ
千歌 「曜ちゃん…」
千歌 「新しい世界に進むってことは、前までいた世界のことを忘れるってことなんだよ!?」
曜 「私はそうは思わないかな」
千歌 「曜ちゃん…」
曜 「きっと今の世界で覚えたことは、新しい世界でも千歌ちゃんの心に残り続けてる」
曜 「……たとえ、忘れちゃったとしても」ギュッ
千歌 「曜ちゃん…」
26: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:49:34.80 ID:CZboSJTp
曜 「私、この手をつけたおかげで、千歌ちゃんをこうやって抱きしめられるようになった」
千歌 「……苦しい」
曜 「あははっ、ごめん」
曜 「…あとは千歌ちゃんだよ」
千歌 「えっ…?」
曜 「私は出来る限り、千歌ちゃんに歩み寄った。あとは千歌ちゃんがこっちに、ほんの少しだけ近づくだけ」
千歌 「……苦しい」
曜 「あははっ、ごめん」
曜 「…あとは千歌ちゃんだよ」
千歌 「えっ…?」
曜 「私は出来る限り、千歌ちゃんに歩み寄った。あとは千歌ちゃんがこっちに、ほんの少しだけ近づくだけ」
27: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:50:51.08 ID:CZboSJTp
千歌 「……曜ちゃんは」
曜 「ん?」
千歌 「曜ちゃんは、私が忘れちゃっても、そばにいてくれる…?」
曜 「当たり前でしょ。さっきも言ったじゃん」
曜 「お互いに無い部分を補い合う、最強のコンビだよ、私たち」
千歌 「…そうだったね。ありがとう、曜ちゃん」
ーーーーーー
ーーーー
ーー
曜 「ん?」
千歌 「曜ちゃんは、私が忘れちゃっても、そばにいてくれる…?」
曜 「当たり前でしょ。さっきも言ったじゃん」
曜 「お互いに無い部分を補い合う、最強のコンビだよ、私たち」
千歌 「…そうだったね。ありがとう、曜ちゃん」
ーーーーーー
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28: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:51:25.04 ID:CZboSJTp
~リハビリテーション室~
曜 「千歌ちゃん、頑張って…!」
千歌 「ふぐっ…ぐぬぬ……!」
1歩、2歩…確実に、ゆっくりと。
千歌ちゃんは生まれて初めての歩みを始める。
曜 「千歌ちゃん…! すごい…っ!」
千歌 「やった…! やったよ、曜ちゃ…」
千歌ちゃんが嬉しそうに、私の方に振り向く。
だが、その表情は私の顔を見た瞬間に失われた。
大きく目を見開き、口をパクパクさせる。
曜 「……千歌ちゃん?」
曜 「千歌ちゃん、頑張って…!」
千歌 「ふぐっ…ぐぬぬ……!」
1歩、2歩…確実に、ゆっくりと。
千歌ちゃんは生まれて初めての歩みを始める。
曜 「千歌ちゃん…! すごい…っ!」
千歌 「やった…! やったよ、曜ちゃ…」
千歌ちゃんが嬉しそうに、私の方に振り向く。
だが、その表情は私の顔を見た瞬間に失われた。
大きく目を見開き、口をパクパクさせる。
曜 「……千歌ちゃん?」
29: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:51:55.61 ID:CZboSJTp
千歌 「よ……う、ちゃん…?」
1歩、千歌ちゃんが私の方に歩み寄る。
その時…千歌ちゃんの目の色が、変わった気がした。
千歌 「あれ…っ、わたし…。どうして……」
曜 「千歌ちゃん、大丈夫…?」
千歌 「…………あなた…」
千歌 「…………誰?」
ーーーーーー
ーーーー
ーー
1歩、千歌ちゃんが私の方に歩み寄る。
その時…千歌ちゃんの目の色が、変わった気がした。
千歌 「あれ…っ、わたし…。どうして……」
曜 「千歌ちゃん、大丈夫…?」
千歌 「…………あなた…」
千歌 「…………誰?」
ーーーーーー
ーーーー
ーー
30: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:52:24.13 ID:CZboSJTp
曜 「……何も、覚えてない?」
千歌 「……うん。家族のことは覚えてるんだけど」
曜 「私の、ことは?」
千歌 「……ごめんなさい」
千歌 「…あの、どうしてまだ私のそばにいるんですか?」
曜 「敬語」
千歌 「……ごめん」
千歌 「……うん。家族のことは覚えてるんだけど」
曜 「私の、ことは?」
千歌 「……ごめんなさい」
千歌 「…あの、どうしてまだ私のそばにいるんですか?」
曜 「敬語」
千歌 「……ごめん」
31: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:52:56.15 ID:CZboSJTp
曜 「どうしてだろ。諦めたくないのかな」
千歌 「無駄だよ。私、やっぱりトリアタマなんだ」
曜 「……大丈夫だよ、きっと」
千歌 「なにが? 何が大丈夫なのっ!? 私、すぐにみんなのこと忘れちゃうのに…!」
曜 「なら、千歌ちゃんが歩くたびに、そばに居る」
千歌 「えっ…?」
曜 「私は、いつでもそばに居るから。私達、最強のコンビでしょ?」
千歌 「無駄だよ。私、やっぱりトリアタマなんだ」
曜 「……大丈夫だよ、きっと」
千歌 「なにが? 何が大丈夫なのっ!? 私、すぐにみんなのこと忘れちゃうのに…!」
曜 「なら、千歌ちゃんが歩くたびに、そばに居る」
千歌 「えっ…?」
曜 「私は、いつでもそばに居るから。私達、最強のコンビでしょ?」
32: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:53:36.32 ID:CZboSJTp
千歌 「最強の…コンビ?」
曜 「千歌ちゃんが歩く先、新しい世界に、いつでも私はいるから。それなら、忘れることはないでしょ?」
千歌 「私……私は……」
『……私たちは、最強のコンビだから』
ーーーーーー
ーーーー
ーー
曜 「千歌ちゃんが歩く先、新しい世界に、いつでも私はいるから。それなら、忘れることはないでしょ?」
千歌 「私……私は……」
『……私たちは、最強のコンビだから』
ーーーーーー
ーーーー
ーー
34: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:54:08.17 ID:CZboSJTp
「……か…ん! ち……ちゃ……!」
曜 「千歌ちゃん!!」
千歌 「……はっ!! い、今何時間目!?」
梨子 「もうお昼よ。ほら、ご飯食べよ?」
曜 「あっ、ごめん、先にお手洗い行ってもいい?」
千歌 「あっ、私も行くー」
曜 「千歌ちゃん!!」
千歌 「……はっ!! い、今何時間目!?」
梨子 「もうお昼よ。ほら、ご飯食べよ?」
曜 「あっ、ごめん、先にお手洗い行ってもいい?」
千歌 「あっ、私も行くー」
35: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:54:32.94 ID:CZboSJTp
梨子 「じゃあ、私ここで待ってるね」
曜 「ごめんねー、じゃあ行こ?」
千歌 「うん!」
差し出された機械的な手を握る。
そして義足をつけた普通怪獣は、また新たな1歩を踏み出した。
ーー
終
曜 「ごめんねー、じゃあ行こ?」
千歌 「うん!」
差し出された機械的な手を握る。
そして義足をつけた普通怪獣は、また新たな1歩を踏み出した。
ーー
終
36: (ささかまぼこ) 2017/11/23(木) 23:55:13.12 ID:CZboSJTp
Twitterで拝見したとあるマンガを見て感銘を受け、気付けば書き終えていました…。
いつもと違う雰囲気の作品をここのところ書き続けているので、そろそろまた前の作風のものを作りたいと思います。
読んでいただきありがとうございました。
過去作もぜひお願いします。
鞠莉 「〇人鬼 果南」
千歌 「人間オークション…?」
善子 「私たち、友達よね?」 曜 「こんなの友達じゃないッ!」
鞠莉 「果南を叩いたらお金が出てきた」
いつもと違う雰囲気の作品をここのところ書き続けているので、そろそろまた前の作風のものを作りたいと思います。
読んでいただきありがとうございました。
過去作もぜひお願いします。
鞠莉 「〇人鬼 果南」
千歌 「人間オークション…?」
善子 「私たち、友達よね?」 曜 「こんなの友達じゃないッ!」
鞠莉 「果南を叩いたらお金が出てきた」
引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1511447685/