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■約20000文字■ 朝靄かかる蓮ノ空の玄関口。狙い通り、あたしが今日最初に登校する生徒らしい。
兎の髪飾りの位置を直した後、静かな決意を固めて玄関へと入った。
やや憂鬱な気分で靴箱にローファーを入れる。がたん、収納する音が静かな玄関によく響いた。
一階の廊下に差し掛かると、壁に掲示板があった。蓮ノ空で行われるイベントや催し物が掲示され、新聞部の記事もこちらに掲載されている。
だが、今回は様相がまるで違っていた。他の掲示物を押しのけるように、中央に堂々と一枚の紙が貼ってあった。
『独牢』
最も目を引くのはその二文字の熟語。その下には詳細な地図が掲載されており、知らない誰かが見れば宝物の場所を書いているように見えるだろう。
花帆「……ごめんなさい」
つい、そんな一言が口からまろび出た。あたしの選んだ道は没義道。最低で愚劣極まりない選択だった。
だが、背に腹は代えられないように、苦悶に喘ぐ仲間を放っておけるはずがなかった。
掲示板から視線を外したあたしは、自分の教室へと向かう。
でも最後にもう一度、『独牢』の二文字を見た。
花帆「……なんて、読むのかな」
白々しくそう零し、暗い気持ちを引き摺って教室へと移動した。
2023年9月11日 21:10
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