【SSコンペ】しいたけ「それだけの犬」【ラブライブ!サンシャイン!!】

SS


1:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 19:51:34.31 ID:nslEd3oR
ラブライブ!SSコンペを開催します!
https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1685782999/

宜しくお願いします。
 
2:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 19:52:34.78 ID:x1lhh7VP
「おっはよぉー!」


千歌「しいたけ!おはよう!」

しいたけ「……」

千歌「んふふぅ~♪」スッ

千歌「ぃよ~しよしよし!」ワシャワシャ

しいたけ「……」

千歌「よしよしよしぃ~」ワシャワシャ

千歌「しいたけは可愛いねぇ~良い子だねぇ~」

千歌「今日もとぉ~ってもアンニュイだよぉ~」ワシャワシャ

しいたけ「……」
 
3:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 19:53:36.74 ID:4ZjTEAqn
プイッ

千歌「あれ?」

しいたけ「……」

千歌「しいたけ?どうしたの?」

しいたけ「……」

千歌「オーイ、しいたけ~」

千歌「もしもぉ~し!」

しいたけ「……」


しいたけ「……」



──私の名は、"ボルゾイ"
 
4:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 19:54:28.17 ID:4ZjTEAqn
この港町、内浦の平和を守っている

ボルゾイ・ウルフハウンド



千歌「どうしたの?」

しいたけ「……」



誓って、"しいたけ"なんて言う名では無い。
 
5:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 19:55:09.43 ID:4ZjTEAqn
「千歌ちゃ~ん!朝ごはん出来たから運んで~!」


千歌「おっ」

千歌「はいはーい!今行くー!」

千歌「しいたけ、中入ろ!」

しいたけ「……」

千歌「……しいたけ?」

しいたけ「……」

千歌「???」
 
6:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 19:57:33.13 ID:cu8y3rjD
"しいたけ"

なぜ、犬の私に菌糸類の名前を付けたのかは、甚だ疑問ではあるが

それは、このマヌケそうな面をした、古旅館の三女が適当に付けたであろう名前が、そのまま定着してしまっただけ。と言う話だからだ。

つまり、しいたけとは世を忍ぶ仮の名前

そうなんだ。
 
7:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 19:59:11.72 ID:JtP8vpvk
千歌「ん~」

千歌「お前は、相変わらずなに考えてるか分かんないねぇ~」

しいたけ「……」


しかし、こうして同じ屋根の下に住み、同じ釜の飯を食っている(いない)以上、
このおぼこ(未通女)も、私の家族には違いない。


千歌「しいたけ~?もしも~し?」

しいたけ「……」


で、ある以上

おぼこの意思は、出来るだけ尊重すべきだし、ある程度の融通は効かせなければならないだろうさ。
 
8:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:00:12.50 ID:JtP8vpvk
千歌「う~ん」

千歌「もうちょっとだけ、賢そうな顔だったらなぁ~」

しいたけ「……」


……不本意ではある。

しかし、それは致し方ないこと
いくら使命がある身とは言え、家族は大事だ

家族を守り、家の番を見る。

それが私の本懐であり、生存理由の一つなのだから、そこに異論を挟む余地はない。
 
9:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:01:31.08 ID:v24FmLGe
「アッハッハッハッ!」


美渡「賢そうな顔とかムリムリ!」

しいたけ「……」

美渡「だってさ」ムニッ

しいたけ「……」ビヨ~ン

美渡「こぉ~んなに皮が弛んでるんだもん、キリッとなんてなり様がないよ」パッ

しいたけ「……」ポヨン

千歌「アハハ、そうだよねぇ」

千歌「可愛さは十分なんだけどねぇ~」プニ

しいたけ「……」
 
10:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:03:05.35 ID:v24FmLGe
美渡「しいたけ、キリッとしてみて」スッ

しいたけ「……」

美渡「こう、ね。目尻を上げて、ベロをしまってぇ……」グニグニ

しいたけ「……」

美渡「……どう?キリッとした?」

千歌「アッハッハッハッ!!ふっ、福笑いの失敗したやつ~っ!」

しいたけ「……フスッ」

美渡「笑ったのは千歌だからな?噛むなら千歌だぞ?」

しいたけ「……」


高海美渡。この古旅館の次女。

恐らく、この家で一番わたしを世話し、そして同じくらい弄くり回す、生意気なおぼこだ。
 
11:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:04:16.79 ID:v24FmLGe
「二人とも、しいたけが可哀想でしょう?」


志満「きっと、機嫌悪くしちゃったわよ?」

美渡「私は大真面目にやったんだけど!」

千歌「アッハッハッハッ!!」

美渡「うっさい!バカ千歌ぁ!」

千歌「ヒィ~!」

志満「もう……」

しいたけ「……」

志満「酷いわよねぇ?しいたけ」ナデナデ
 
13:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:05:00.57 ID:v24FmLGe
こっちは高海志満。

この古旅館の長女で、本人もそれを自覚している。


志満「うふふ♪今日も可愛いわねぇ」ナデナデ

しいたけ「……」


つまり、自分の立場を、だ。

日々の態度とお触りの頻度からも、それを察することが出来る。
 
14:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:05:55.97 ID:v24FmLGe
志満「ほら、早く食べちゃいなさい」

千歌「ウックックックッ……!」

美渡「いつまで笑ってんだよ」

志満「千歌ちゃん、今日は館内の掃除当番だから、お願いね?」

千歌「ッ……は、はぁ~い」カチャ

志満「お散歩係りは……」

美渡「あー、わたしわたし」

志満「そう、お願いね」

美渡「はいほ~」モグモグ

しいたけ「……」


……熊の置物よ。

その内、私もそこに並ぶのだろうか
 
16:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:08:56.97 ID:VKmM2SxY
「しいたけぇ~」


美渡「散歩行くよぉ~散歩~」

しいたけ「……」

美渡「どうした?なんか元気ないぞ~?」

美渡「散歩だよ、さ~ん~ぽ~」

しいたけ「……フスッ」

美渡「それ行くぞ~い」

しいたけ「……」


全ての犬が、散歩と聞いて飛び跳ねると思ったら大間違いだと言うことを、このおぼこにも知ってほしいものだし、そして私はしいたけではない。
 
17:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:11:13.34 ID:xnucx6Kf
美渡「ふんふふ~ん♪」

しいたけ「……」


このおぼこの散歩は、寄り道が多過ぎる
そして、姦しい事この上ない。


美渡「今日はどのルートで行こうかねぇ」

美渡「海?海岸?それとも船着場?」

美渡「残念!ぜぇーんぶ海でしたぁー!アッハッハッハッ!」

しいたけ「……」

美渡「──あ、ちょっとタイム」
 
18:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:12:28.27 ID:xnucx6Kf
【コンビニ】


しいたけ「……」


ほれ見ろ、やっぱり今日も寄り道さ。


美渡「すぐ戻るからなぁ~」ウィ-ン……

しいたけ「……」


コンビニエンスストア。
中に入った事はないが、大凡の見当はつく


< アッハッハッハッ!

しいたけ「……」


買わない漫画は面白いかい?
 
19:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:14:14.33 ID:xvFNZ17j
「……おや」


しいたけ「!」

善子「現れたわね、ジェヴォーダンの獣よ」

しいたけ「……」

善子「その禍々しき獣性を繋ぎ止める冥府の鎖も、其方にはか細き絹の糸でしかないのであろう」

善子「感じます……その身に巣食う、繕うことさえ叶わない闇の波動を、ヒシヒシと」

しいたけ「……」

善子「果たして、我がリトルデーモンの軍勢を持ってしても、地を噛み砕く其方の顎門を止めることは叶うのか……クックックッ」
 
21:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:14:47.44 ID:xvFNZ17j
──津島善子。

この、売れない演歌歌手の様な名を持つ女が
しかして、私と同じ悲しみを抱いた、隣町に住む同胞だと言うのだ。
 
22:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:15:47.62 ID:xvFNZ17j
善子「クックックッ」


ヤツの真名はヨハネ。

天上より堕天した運命を背負い、天界の者との戦いの日々を送る、夜の徒──


善子「貴方も、そろそろ私の眷属、リトルデーモンになってみない?」

しいたけ「……」


──などと言う妄言を吐きながら、うちの三女と、その友人周りを籠絡せんと曰う、中々の歌舞伎者なのだ。

その、怪しげな身なりで隣町を闊歩する姿は、宛ら生きる亡者を彷彿とさせる。
 
23:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:16:39.37 ID:xvFNZ17j
善子「月の欠けた夜、水面に写る橋を渡って、私に逢いに来なさい。さすれば──」

「ごめぇーんしいたけ!」

善子「!?」

美渡「ん?あれ?」

善子「あっ、ど、ど、どうも!」

美渡「なんだ、善子ちゃんじゃん。買い物?」

善子「は、はいっ、そうなんですぅ!」

美渡「そんな緊張しないでよぉ~、知らない人ってワケじゃないんだしさ」

善子「そ、そうですよねぇ~、あはは……」

善子「~っ」

しいたけ「……」
 
24:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:17:30.87 ID:xvFNZ17j
……仕方ないねぇ。


グイグイッ

美渡「ん?」

しいたけ「……」グイッ

美渡「ごめん善子ちゃん、しいたけが早く行きたいって」

善子「ぜ、全然大丈夫です!こちらこそ、邪魔しちゃってごめんなさい!」

美渡「そんな事ないよ。じゃ、またね!」サッ

善子「は、は~い」フリフリ

しいたけ「……」チラッ

善子「!」


同胞よ、君に幸あれ。
 
25:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:18:27.20 ID:xvFNZ17j
──────
───



美渡「~♪」

しいたけ「……」


そう言えば、

少し前まで、この界隈を荒らしていた【クソ猫・父ちゃんズ】の連中を、最近とんと見かけなくなった。


< 美渡ちゃん、こんにちは~

美渡「おじさん、こんにちはー!」

しいたけ「……」
 
26:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:19:46.36 ID:I8bdjopB
アイツらの悪行と言ったら、そこいらの庭で糞を垂れるのは当たり前。

やれ、車の上で爪研ぎだの、道行く人間に猫パンチだの、ノミの付いた身体でごろにゃんだの

オマケに、奴ら全員マタタビ常習犯なものだから、マタタビ切れを起こすたび、近場のペットショップを襲撃しているとも聞く。

そんな、碌でもない連中だったのだが、ここ二ヶ月程はなんの噂もたっていない。

みな揃って、猫島へでも移住したのだろうかねぇ?


しいたけ「……フスッ」


まぁ、それなら結構なことだよ。
 
27:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:20:41.95 ID:b1N2wd2D
[なにが結構なんだ?]


しいたけ「──ッ!?」グッ

美渡「ほぁ?」

しいたけ「グルルルルルルッッ」

美渡「ぇ、え?」

しいたけ「ッッッ」


ブチ猫「マーォ」
:よぉ、ボケ犬。

クロ猫「ハァーッ!」
:相変わらずだな。

ミケ猫「アーォ!」
:マヌケな面だ、見ろよオイ。
 
28:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:23:42.19 ID:eohQK8Ba
美渡「うわ、野良猫三匹!?」

しいたけ「グルルルルッ」


……アンタら、

よくもノコノコと、私の前にツラを出せたもんだね。


しいたけ「ゥオンッ!!」


クソ猫・父ちゃんズッ!!!


ブチ猫「ホニャオニャオニャオニャオッ」
:……これだきゃあ、言っといてやる。
 
29:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:24:50.04 ID:oLdfOGPa
ブチ猫「フギャアッ!!」
:俺達は【キャット・トゥーチャーズ】だっ!!

クロ猫「フゥーッ」
:間違えんじゃねぇ!犬っころがっ!

ミケ猫「マ~オッ」
:クソはテメェに塗りたくってやるぜ


美渡「しいたけ!ダメだよ!」

しいたけ「ハロロロロ……ッ!」


上等じゃあないか。
 
30:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:26:59.74 ID:gquH+Z5+
寂れた街の番、ボルゾイ・ウルフハウンドに喧嘩を売るとは、

お前たち、悲しいくらいにバカ猫だねぇ。


ブチ猫「ニギャア~」
:ぼ、ボルゾイだぁ~?

ミケ猫「フギャ!」
:テメェ、そんな名前じゃねぇーだろうよぉー!

クロ猫「シャー!」
:オイ、鏡って知ってっかぁー?

しいたけ「ガロロロロロッ!!」


……言い遺す言葉はそれだけかい?
 
31:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:28:18.52 ID:XDd2eyQa
美渡「お、おい!しいたけ!」

しいたけ「ガァッ!!!!」バッ!


くたばりなっ!!!!


「ジュティーちゃ~ん!ハニーちゃ~ん!プロムちゃ~ん!」


しいたけ「!?」キキィ-ッ

美渡「!」


飼い主「あらぁ!ジュティーちゃんやっと見つけたわ~!」

ブチ猫「フギャ!?」
:やべぇぞオイ!?
 
32:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:29:05.06 ID:XDd2eyQa
飼い主「プロムちゃんとハニーちゃんも見っけ~!」

クロ猫「アニョウニョウニョウ!」
:あのババァ!俺らが脱走したのに気付きやがった!!

ミケ猫「グゥ~っ」
:ババア!!その名で呼ぶんじゃねぇ!!

飼い主「みんなぁ~!ちゅーる!」サッ

ブチ猫「ペロペロ」

クロ猫「ペロペロ」

ミケ猫「ペロペロ」


美渡「……」

しいたけ「……」
 
33:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:29:46.61 ID:XDd2eyQa
飼い主「ごめんなさいねぇ、今連れて帰るからぁ」

美渡「あ…ははっ、どうも」

飼い主「ハイハイ!みんなケージに入ったわねぇ?」

ブチ猫「ペロペロ」

クロ猫「ペロペロ」

ミケ猫「ペロペロ」

飼い主「はい、じゃあ帰りましょうねぇ~」

飼い主「それではぁ~」ペコ

美渡「あ、は、はぃ」ペコ
 
34:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:33:33.48 ID:L+0I2l7E
美渡「……」

しいたけ「……」


ふん、ザマァないね。


美渡「全部、あのオバさんの猫だったんだね。なんかビックリした」

美渡「──てゆーか、しいたけ!」

しいたけ「……」

美渡「野良猫とケンカなんてすんじゃないの!危ないじゃん!」

しいたけ「……」プイッ


尊厳を賭けて戦えないのは、腰抜けのやる事さ。私は違う。
 
35:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:36:13.47 ID:kRdilM5m
美渡「……」

美渡「……怪我したらどーすんの」スッ

しいたけ「!」

美渡「アンタが怪我したら、みーんな悲しむんだよ」ナデナデ

しいたけ「……」

しいたけ「……フスッ」

美渡「さ、帰ろ?」

しいたけ「……」


知っていたさ、そんな事。


……知っていたさ
 
36:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:48:24.42 ID:rhrw9/xg
『ねぇ、見てみて!』


千歌『この子、"ボルゾイ"ってゆーんだって!』

美渡『すっごいシュッとしてる』

志満『足長いわねぇ~』

しいたけ『……』

千歌『しかもさ、狩猟犬"ウルフハウンド"だって!カッコイイよねぇ~!』

美渡『顔もなっが~、お姉さんビックリだ』

志満『そうねぇ。まさに番犬って感じがするわぁ』

美渡『うわっ!?』
 
37:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:49:32.43 ID:Aso4JRED
美渡『見た!?今の!弾丸みたいに走ってったよ!』

千歌『見た見た!一瞬消えたのかと思っちゃったもん!』

志満『お腹のとこ、キュッと引き締まってるわねぇ』

美渡『スリムをそのまま具現化したみたいな犬じゃない?』

千歌『だよねぇ~』チラッ

しいたけ『……』


千歌『あの子と散歩してたら、みんな羨ましがるかなぁ~』

しいたけ『……』


……知っていたさ、
 
38:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:50:07.61 ID:Aso4JRED
「私が、ボルゾイの様にはなり得ない事は」
 
39:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:50:38.78 ID:Aso4JRED
「ただ、悔しかったんだ」

「家の奴らにとって、私と言う犬は誇るに足らない、ひと山幾らの凡犬でしかないだろう、あの言い草が」

「だから、気付かせたかった」

「お前たちの番犬は、こんなにもこの家を、街を想い、そして守っている」

「そんな、唯一無二の犬なのだと」

「あの熊の置物の様に、いつの日か埃に塗れ、忘れ去られる様な存在にはなりたくなかった」
 
40:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:51:52.42 ID:Aso4JRED
「だから、振り向いて欲しかったのさ」

「愛情の再確認。お前たちが、そうするに足る存在なのだ。と」

「私の気持ちなんざ、てんで気付いちゃいないと、そう思ってたんだけどねぇ」

「それが、実は毎日のドッグフードと同じくらい、充分なほど貰ってただなんて」

「……」

「……いや、知っていた」

「知っていたさ」


『私の、大事な家族たちよ』
 
41:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:53:24.03 ID:T0henvAj
………………
………



千歌「おーい!しいたけぇー!」

千歌「しいたけー!」


「わん!」


千歌「おっ」

しいたけ「ハッハッハッ!」

千歌「あはは、やっと機嫌直してくれたんだね。良かった~」

しいたけ「わん!」

千歌「今日のお散歩係りは千歌だよ~、嬉しいでしょ~?」

しいたけ「わぅ~ん」

千歌「ぃよ~しよしよし!」ワシャワシャ

千歌「しいたけは良い子だねぇ~」

しいたけ「ハッハッハッ!」

千歌「さてっと、それじゃあ行こっか!」
 
42:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 20:54:26.96 ID:T0henvAj
千歌「んー!今日もいい天気だねぇー!」

千歌「日は高くて、波は穏やか。湿度は低くて暖かい!」

千歌「なんにも文句ないね!」

しいたけ「うぉん!」

千歌「今日はどこまで行こっか?思い切って沼津辺りまで行っちゃう?」

千歌「さすがに遠いかぁ、私がへばっちゃうもんねぇ」

千歌「それとも──」

しいたけ「……」

千歌「あっ」


「……」
 
43:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 21:04:47.51 ID:WM4jq375
千歌「ボルゾイだぁ……」

しいたけ「……」

千歌「……」

千歌「本物もカッコいいね」

千歌「足は長いし、顔は小っちゃいし」

しいたけ「……」

千歌「……よしっ」

千歌「こんにちわー!」

しいたけ「!」

「あら、こんにちは」
 
44:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 21:05:48.78 ID:WM4jq375
千歌「その子、すっごくカッコいいですね!」

「ありがとう」

「貴方のワンちゃんも、とってもカッコいいわね」

千歌「えへへ~、ありがとうございます~」

しいたけ「……」

ボルゾイ「……」

「それじゃあね」

千歌「あ、は~いどうも~」

「さ、行きましょう」

ボルゾイ「……」フイッ
 
45:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 21:06:38.13 ID:WM4jq375
──じゃあな、同胞。


しいたけ「!?」


千歌「はぇ~」

千歌「いやぁ~、それにしても足なっがいねぇ~」

千歌「毛もツヤツヤだぁ~」

しいたけ「……」

千歌「……でも」

千歌「私は、やっぱりしいたけの方がいいな」

しいたけ「……」

千歌「さて、お散歩の続きだぁ~」
 
46:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 21:07:38.13 ID:RGVM6EJE
『ちか』


千歌「へ?」

しいたけ「……」

千歌「……」

千歌「……もしかして、呼んだ?」

しいたけ「……」

千歌「……」

千歌「あははっ」



……私の名は"しいたけ"

ボルゾイになりたかった、一匹の女。
 
47:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 21:08:16.40 ID:RGVM6EJE
千歌「ねぇ、やっぱり沼津まで行っちゃおっか!」

しいたけ「わん!」

千歌「目標!曜ちゃんちに行って、曜ちゃんのお腹に突撃すること!」

しいたけ「ぅおん!」

千歌「あははっ!」


今日も、この退屈極まりない内浦の平和を
余すことなく、この身体で満喫している


千歌「ぃよーし!しゅっぱーつ!」

しいたけ「わぉーん!」
 
48:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 21:08:35.24 ID:RGVM6EJE
──ただ、それだけの犬なのだ。
 
49:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2023/06/04(日) 21:08:44.85 ID:RGVM6EJE
お粗末さまでした。
 

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1685875894/

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