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1: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:00:03 ID:???00
吟子(私たちが急に上級生になれるわけじゃない……前に、姫芽がそんなことを言っていた)
吟子(それはどうしようもなく正しくて、不変の事実……だったはず、なのに)チラッ
さやか「──小鈴先輩。ここのステップについて相談したいことが……」
小鈴「あ! さやかちゃん、そこはね、ここをこう……」タタッ
慈「ねぇねぇ、姫芽先輩ー、めぐちゃんのダンスの振り付け、どう思いますか?」クルクル
姫芽「おぉ~、すごく良いね~。うん、アタシはこれを踊るめぐちゃんの姿が輝いて見えるよ~」
吟子「……」ジー
「どうしたんですか? ぼんやりして……?」
花帆「あたしたちも、練習しましょうよ! 吟子“センパイ”!」ニコッ
吟子「……そう、だね」
吟子(…………あぁ、なんでこうなったんだっけ……)
吟子(それはどうしようもなく正しくて、不変の事実……だったはず、なのに)チラッ
さやか「──小鈴先輩。ここのステップについて相談したいことが……」
小鈴「あ! さやかちゃん、そこはね、ここをこう……」タタッ
慈「ねぇねぇ、姫芽先輩ー、めぐちゃんのダンスの振り付け、どう思いますか?」クルクル
姫芽「おぉ~、すごく良いね~。うん、アタシはこれを踊るめぐちゃんの姿が輝いて見えるよ~」
吟子「……」ジー
「どうしたんですか? ぼんやりして……?」
花帆「あたしたちも、練習しましょうよ! 吟子“センパイ”!」ニコッ
吟子「……そう、だね」
吟子(…………あぁ、なんでこうなったんだっけ……)
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2: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:01:02 ID:???00
────
──回想
梢「──さて、ラブライブ!地方予選まで後少し……いつも以上に、気合を入れて練習に励みましょう!」パンッ
花帆「はい! 地方予選を乗り越えて、全国まで行って……今年こそは絶対! 優勝しましょうね、梢センパイ!」グッ
花帆「吟子ちゃんも、一緒に頑張ろうね! 目指せ優勝!」
吟子「そうだね。私も、本気で勝ちに行きたいから」
吟子(ラブライブ!……その地方予選まで後少し。それは、もうすぐこの一年が終わってしまうことも意味していた)
吟子(来年になったら、もう三年生の先輩方は卒業の季節で……どうなってしまうのか、私には全くわからない)
──回想
梢「──さて、ラブライブ!地方予選まで後少し……いつも以上に、気合を入れて練習に励みましょう!」パンッ
花帆「はい! 地方予選を乗り越えて、全国まで行って……今年こそは絶対! 優勝しましょうね、梢センパイ!」グッ
花帆「吟子ちゃんも、一緒に頑張ろうね! 目指せ優勝!」
吟子「そうだね。私も、本気で勝ちに行きたいから」
吟子(ラブライブ!……その地方予選まで後少し。それは、もうすぐこの一年が終わってしまうことも意味していた)
吟子(来年になったら、もう三年生の先輩方は卒業の季節で……どうなってしまうのか、私には全くわからない)
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3: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:02:02 ID:???00
梢「ふふっ、といってもまずは準備運動から念入りに、よ。何事も、基礎をおろそかにしてはいけないもの」クスッ
花帆「はーい! 入念に身体をほぐさないとですね!」
梢「そうね。花帆、私が支えるからまずはストレッチをしましょうか」ニコッ
吟子(……そう言って、普段通り笑う梢先輩を見ていると、私は不思議に思ってしまう)
吟子(梢先輩は……卒業して蓮ノ空から居なくなることに、どんな気持ちでいるのかな。……私達にはまだ、何も言ってくれない)
花帆「はーい! 入念に身体をほぐさないとですね!」
梢「そうね。花帆、私が支えるからまずはストレッチをしましょうか」ニコッ
吟子(……そう言って、普段通り笑う梢先輩を見ていると、私は不思議に思ってしまう)
吟子(梢先輩は……卒業して蓮ノ空から居なくなることに、どんな気持ちでいるのかな。……私達にはまだ、何も言ってくれない)
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4: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:03:02 ID:???00
梢「ほら、花帆。背中押すわよ」ギュー
花帆「ま、待ってください、梢センパイ!? そんなに押されたら、あたし壊れちゃいますよ!?」ムギュ
梢「ふふっ、花帆なら、まだまだ伸ばせるわよね」ニコッ
花帆「こ、これ以上は無理ですってー!?」
吟子(私は、ラブライブ!大会が、卒業の季節が、近づくにつれずっとそのことばかり考えていて)
吟子(だから……周りの様子なんて、全く気がつかなかった)
グラッ…
梢「! っ、吟子さん!」
吟子「…………え」
吟子(見ると、レッスンルームの鏡が、私の方に倒れてきて──)
花帆「ま、待ってください、梢センパイ!? そんなに押されたら、あたし壊れちゃいますよ!?」ムギュ
梢「ふふっ、花帆なら、まだまだ伸ばせるわよね」ニコッ
花帆「こ、これ以上は無理ですってー!?」
吟子(私は、ラブライブ!大会が、卒業の季節が、近づくにつれずっとそのことばかり考えていて)
吟子(だから……周りの様子なんて、全く気がつかなかった)
グラッ…
梢「! っ、吟子さん!」
吟子「…………え」
吟子(見ると、レッスンルームの鏡が、私の方に倒れてきて──)
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5: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:04:02 ID:???00
──
────
「──大丈夫ですか!? 起きてください!」
吟子「……んん」
花帆「ああ、よかったぁ……もう、心配したんですよ!」ホッ
────
「──大丈夫ですか!? 起きてください!」
吟子「……んん」
花帆「ああ、よかったぁ……もう、心配したんですよ!」ホッ
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6: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:05:02 ID:???00
吟子「……? なんで敬語……?」
花帆「? 何を言ってるんですか?」
吟子「何って……いつもはもっと砕けた喋り方でしょ、友達みたいに、とか言って……」
花帆「よく分かりませんけど……? あたしはいつもこうですよ、吟子“センパイ”?」
吟子「………………え?」
花帆「? 何を言ってるんですか?」
吟子「何って……いつもはもっと砕けた喋り方でしょ、友達みたいに、とか言って……」
花帆「よく分かりませんけど……? あたしはいつもこうですよ、吟子“センパイ”?」
吟子「………………え?」
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7: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:06:02 ID:???00
吟子(──古くから鏡は、不思議な力を持つものだとされてるし、実際、そんな鏡にまつわる小説だって読んだことがある)
吟子(だけどまさか、本当に……)
吟子(そう、私は……現実とは違う世界、“鏡の中”に迷い込んだんだ)
吟子(だけどまさか、本当に……)
吟子(そう、私は……現実とは違う世界、“鏡の中”に迷い込んだんだ)
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8: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:07:02 ID:???00
────
吟子(……これから一体、どうすれば……)
吟子「……」
花帆「あー! 吟子センパイ、また暗い顔してますよ! どうしたんですか?」ヒョコッ
梢「花帆先輩も、心配していることですし……何か悩み事でしたらお話、お聞きしますよ、吟子先輩」ニコッ
吟子「! あ……えっ、と…………」
吟子(……これから一体、どうすれば……)
吟子「……」
花帆「あー! 吟子センパイ、また暗い顔してますよ! どうしたんですか?」ヒョコッ
梢「花帆先輩も、心配していることですし……何か悩み事でしたらお話、お聞きしますよ、吟子先輩」ニコッ
吟子「! あ……えっ、と…………」
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9: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:08:02 ID:???00
吟子(この世界で少しの間、過ごしてみて……私にも、わかったことがある。ここでは、学年が裏返しのように反転していた)
吟子(一年生は三年生に。二年生は変わらず同じ学年で、三年生は一年生に……だから、梢先輩はこの世界では一年生)
吟子(そして私は……スリーズブーケで最上級生、ということになってしまう。私が、二人の先輩なんて……)
梢「……? 吟子先輩、どうされたんですか?」
吟子「……っ」
吟子(二人になんて言えば良いのか……わからなくて、押し黙ってしまう)
花帆「? 吟子センパイ……?」
吟子(……私が、花帆先輩や梢先輩にとっての“先輩”であるはずが、ない。だって私は、二人を導くことなんてとても──)
「二人とも~、そこまでにしてあげて? 吟子ちゃん、困ってるかもしれないから~」
吟子(一年生は三年生に。二年生は変わらず同じ学年で、三年生は一年生に……だから、梢先輩はこの世界では一年生)
吟子(そして私は……スリーズブーケで最上級生、ということになってしまう。私が、二人の先輩なんて……)
梢「……? 吟子先輩、どうされたんですか?」
吟子「……っ」
吟子(二人になんて言えば良いのか……わからなくて、押し黙ってしまう)
花帆「? 吟子センパイ……?」
吟子(……私が、花帆先輩や梢先輩にとっての“先輩”であるはずが、ない。だって私は、二人を導くことなんてとても──)
「二人とも~、そこまでにしてあげて? 吟子ちゃん、困ってるかもしれないから~」
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10: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:09:02 ID:???00
吟子「! ……姫芽」
姫芽「……吟子ちゃん、アタシに任せて、ね」コソッ
姫芽「──そういえばアタシ、吟子ちゃんに用事があったんだ~。少し借りるから、二人はその間別の練習しててくれる~?」
花帆「は、はい! わかりました、姫芽先輩!」
梢「承知しました。では行きましょう、花帆先輩」ニコッ
花帆「そうだね、梢ちゃん!」ギュッ
タッタッタッ…
姫芽「……吟子ちゃん、アタシに任せて、ね」コソッ
姫芽「──そういえばアタシ、吟子ちゃんに用事があったんだ~。少し借りるから、二人はその間別の練習しててくれる~?」
花帆「は、はい! わかりました、姫芽先輩!」
梢「承知しました。では行きましょう、花帆先輩」ニコッ
花帆「そうだね、梢ちゃん!」ギュッ
タッタッタッ…
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11: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:10:02 ID:???00
吟子「……」
吟子(……本当に、現実と全く違うんだ。あんな風に二人が話しているところなんて、想像もできなかった)
姫芽「……さて」クルッ
姫芽「どうしたの~、吟子ちゃん? ずっと心ここに在らず、って感じだったけど……」
吟子「あ……ご、ごめん、姫芽……」シュン
吟子(この世界で唯一変わらないのは、同学年の二人との関係だけ。……でも、今の私じゃ、こうやって迷惑をかけてしまう)
吟子(……本当に、現実と全く違うんだ。あんな風に二人が話しているところなんて、想像もできなかった)
姫芽「……さて」クルッ
姫芽「どうしたの~、吟子ちゃん? ずっと心ここに在らず、って感じだったけど……」
吟子「あ……ご、ごめん、姫芽……」シュン
吟子(この世界で唯一変わらないのは、同学年の二人との関係だけ。……でも、今の私じゃ、こうやって迷惑をかけてしまう)
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12: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:11:02 ID:???00
姫芽「謝ることじゃないよ~。でもアタシ、吟子ちゃんのことはよく見てるからさ~」ニコッ
姫芽「……何かあったの、吟子ちゃん~?」
吟子「…………それ、は」
吟子(……まさか、こことは違う世界から来た、なんて姫芽にも言えるわけがない)
吟子「ううん……大丈夫だよ。ただ少し、ボーッとしてただけだから」
姫芽「……何かあったの、吟子ちゃん~?」
吟子「…………それ、は」
吟子(……まさか、こことは違う世界から来た、なんて姫芽にも言えるわけがない)
吟子「ううん……大丈夫だよ。ただ少し、ボーッとしてただけだから」
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13: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:12:02 ID:???00
吟子(そう言って、誤魔化してしまえば……この場くらいは乗り切れる、かな……?)チラッ
姫芽「……“大丈夫”、ね~…………今の吟子ちゃんの様子じゃ、その言葉、あんまり説得力ないかもなぁ~」
吟子「え……」ガーン
吟子(だ、ダメだった……まさか“大丈夫”という言葉を信じてもらえないなんて、そんな人、私くらいしかいないんじゃないかな……)ズーン
姫芽「あぁ、そ、そんなに落ち込まないで、吟子ちゃん~! アタシはただ、吟子ちゃんが無理をしてる気がしただけなんだよ」
吟子「……無理をしてる……?」
姫芽「そうそう。いつもの吟子ちゃんだったら、あの後輩二人を引っ張るカッコいい先輩、って感じを常に崩さないからさ~」
姫芽「……今日の吟子ちゃんは、そんな余裕もない感じで~……だからアタシ、吟子ちゃんのこと、つい心配しちゃったんだ」
姫芽「……“大丈夫”、ね~…………今の吟子ちゃんの様子じゃ、その言葉、あんまり説得力ないかもなぁ~」
吟子「え……」ガーン
吟子(だ、ダメだった……まさか“大丈夫”という言葉を信じてもらえないなんて、そんな人、私くらいしかいないんじゃないかな……)ズーン
姫芽「あぁ、そ、そんなに落ち込まないで、吟子ちゃん~! アタシはただ、吟子ちゃんが無理をしてる気がしただけなんだよ」
吟子「……無理をしてる……?」
姫芽「そうそう。いつもの吟子ちゃんだったら、あの後輩二人を引っ張るカッコいい先輩、って感じを常に崩さないからさ~」
姫芽「……今日の吟子ちゃんは、そんな余裕もない感じで~……だからアタシ、吟子ちゃんのこと、つい心配しちゃったんだ」
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14: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:13:02 ID:???00
吟子「姫芽……」
吟子(鏡の中の世界でも、姫芽は……私を心配してくれる優しい仲間のままなんだ。なんて、頼もしいんだろう)
姫芽「吟子ちゃん。本当に、無理してない~?」
吟子「…………ごめん。少しだけ、疲れちゃってるかも」
吟子(だから、私は正直に……と言っても、別の世界から来たことは伏せて、それとなく不調を伝えることにした)
吟子(鏡の中の世界でも、姫芽は……私を心配してくれる優しい仲間のままなんだ。なんて、頼もしいんだろう)
姫芽「吟子ちゃん。本当に、無理してない~?」
吟子「…………ごめん。少しだけ、疲れちゃってるかも」
吟子(だから、私は正直に……と言っても、別の世界から来たことは伏せて、それとなく不調を伝えることにした)
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15: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:14:02 ID:???00
姫芽「そっか~……うん、それならさ、少し見学でもしない? みらくらぱーく!とかDOLLCHESTRAとかの練習~!」
吟子「? 見学……?」
姫芽「そうそう、小鈴ちゃんにも話してあるんだ~。最近の吟子ちゃんは頑張りすぎてたからさ、息抜きも兼ねて、ね~?」ニコッ
吟子「それは……」
吟子(私のこと、元気づけようとしてくれてるのかな……優しいな、姫芽は)
吟子「? 見学……?」
姫芽「そうそう、小鈴ちゃんにも話してあるんだ~。最近の吟子ちゃんは頑張りすぎてたからさ、息抜きも兼ねて、ね~?」ニコッ
吟子「それは……」
吟子(私のこと、元気づけようとしてくれてるのかな……優しいな、姫芽は)
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16: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:15:02 ID:???00
吟子(……まだ現実の世界に戻る方法もわからないし、今は不安ばかりで、寄り道をしていて良いのか、なんてことも思う)
吟子「……」
吟子(だけど……実際、この世界で姫芽は、ううん、姫芽だけじゃない、小鈴だって……“先輩”をしているはずで)
吟子(純粋に──見てみたかった。二人の、そんな姿を。私とは違う、現実とも違う、“先輩”の姿を)
吟子「……」
吟子(だけど……実際、この世界で姫芽は、ううん、姫芽だけじゃない、小鈴だって……“先輩”をしているはずで)
吟子(純粋に──見てみたかった。二人の、そんな姿を。私とは違う、現実とも違う、“先輩”の姿を)
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17: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:16:02 ID:???00
吟子「……じゃあ、見学、させてもらおうかな」ニコッ
姫芽「! やった~! というか、アタシが吟子ちゃんにぜひ見てほしいんだよ~! 尊きめぐるりが、すごいのなんのって~!!!」ブンブン
吟子「あぁ……めぐるり、ね……」
吟子(……こういうところも、姫芽はあんまり変わってないんだ)
姫芽「! やった~! というか、アタシが吟子ちゃんにぜひ見てほしいんだよ~! 尊きめぐるりが、すごいのなんのって~!!!」ブンブン
吟子「あぁ……めぐるり、ね……」
吟子(……こういうところも、姫芽はあんまり変わってないんだ)
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18: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:17:02 ID:???00
吟子(それにしても……何が何だかわからないままに、現実とは違う世界に来てしまうなんて)
吟子(……私が、ここに迷い込んだのには何か理由があるのかな? 鏡にまつわる不思議なお伽話には、大抵そういうものがある)
吟子(それに、あの鏡は……蓮ノ空の“伝統”を映し続けていた、歴史あるもの。長く愛されたものには、魂が宿るとも言われてるし……)
吟子(きっと、そんな鏡なら、この世界を私に映した意図があっても、おかしくはない……なんて、少し空想染みた考えかもしれないけど、そう思ってしまう)
吟子(……私が、ここに迷い込んだのには何か理由があるのかな? 鏡にまつわる不思議なお伽話には、大抵そういうものがある)
吟子(それに、あの鏡は……蓮ノ空の“伝統”を映し続けていた、歴史あるもの。長く愛されたものには、魂が宿るとも言われてるし……)
吟子(きっと、そんな鏡なら、この世界を私に映した意図があっても、おかしくはない……なんて、少し空想染みた考えかもしれないけど、そう思ってしまう)
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19: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:18:02 ID:???00
吟子(まぁ、理由がなんであれ……とにかく、鏡の中にずっといていいわけがない)
吟子(だって私は……現実で、蓮ノ空のみんなと一緒にラブライブ!に挑むんだから)
吟子(なんとかして、鏡の中から脱出する方法も、見つけなきゃ)グッ
吟子(だって私は……現実で、蓮ノ空のみんなと一緒にラブライブ!に挑むんだから)
吟子(なんとかして、鏡の中から脱出する方法も、見つけなきゃ)グッ
0
20: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:19:02 ID:???00
────
吟子「さて、まずは……DOLLCHESTRAの練習を見学しに来たんだけど……」ジー
綴理「ん……さやせんぱい……」ムニャ…
さやか「綴理ちゃん! 起きてください、もう練習の時間ですよ!」
綴理「……さやのお弁当が、一個、二個……」
さやか「お弁当なら明日も作ってあげますから! 起きてください!」ユサユサ
小鈴「あはは……二人とも仲がいいなぁ……」
吟子「……」
吟子(後輩を起こしてあげる先輩……現実より、寧ろこっちの方が正しいのでは……?)
吟子「さて、まずは……DOLLCHESTRAの練習を見学しに来たんだけど……」ジー
綴理「ん……さやせんぱい……」ムニャ…
さやか「綴理ちゃん! 起きてください、もう練習の時間ですよ!」
綴理「……さやのお弁当が、一個、二個……」
さやか「お弁当なら明日も作ってあげますから! 起きてください!」ユサユサ
小鈴「あはは……二人とも仲がいいなぁ……」
吟子「……」
吟子(後輩を起こしてあげる先輩……現実より、寧ろこっちの方が正しいのでは……?)
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21: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:20:03 ID:???00
────
小鈴「──ワン、ツー、スリー、フォー、ワン、ツー、スリー、フォー……」
小鈴「……そこまで!」パンッ
さやか「ふぅ……小鈴先輩、どうでしたか?」
小鈴「さやかちゃん、ダンス、昨日よりも元気で良かったよ! 徒町、先輩として鼻が高い!」
さやか「! あ、ありがとうございます」ペコリ
小鈴「──ワン、ツー、スリー、フォー、ワン、ツー、スリー、フォー……」
小鈴「……そこまで!」パンッ
さやか「ふぅ……小鈴先輩、どうでしたか?」
小鈴「さやかちゃん、ダンス、昨日よりも元気で良かったよ! 徒町、先輩として鼻が高い!」
さやか「! あ、ありがとうございます」ペコリ
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22: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:21:02 ID:???00
綴理「二人とも、すごい。ボクも頑張る」グッ
さやか「ふふっ、ありがとうございます。ですが綴理ちゃんも、以前よりずっと上達していますよ」
綴理「そうなの? ボク、すごい?」
さやか「はい。後輩に抜かされないよう、わたしも気を引き締めなければなりませんね」クスッ
さやか「ふふっ、ありがとうございます。ですが綴理ちゃんも、以前よりずっと上達していますよ」
綴理「そうなの? ボク、すごい?」
さやか「はい。後輩に抜かされないよう、わたしも気を引き締めなければなりませんね」クスッ
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23: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:22:02 ID:???00
綴理「でもさやは、ボクの目標だから。さやせんぱーい」
さやか「……そうは言っても、あなたはあなたで技術がすごすぎるんですよね……!」ハァ
小鈴「確か綴理ちゃん、この前、さやかちゃんの振り付けを一目見ただけで完全に覚えてたっけ……」
さやか「こ、後輩のダンスに自信を打ち砕かれないよう、わたしも頑張ります……」
綴理「?」
さやか「……そうは言っても、あなたはあなたで技術がすごすぎるんですよね……!」ハァ
小鈴「確か綴理ちゃん、この前、さやかちゃんの振り付けを一目見ただけで完全に覚えてたっけ……」
さやか「こ、後輩のダンスに自信を打ち砕かれないよう、わたしも頑張ります……」
綴理「?」
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24: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:23:02 ID:???00
小鈴「……えっと、それじゃあ! 少し休憩してから、さっきのダンスパート、もう一回だけ見直してみよっか!」パンッ
さやか「え……い、至らない点がありましたか、小鈴先輩?」
綴理「さやのダンスはすごかったよ。水色にきらめいてた」
小鈴「徒町も、そう思うよ! でも……まだちょっと、直せるところがあって、ここなんだけど……」
さやか「……! なるほど、確かにそうですね。見落としていました……」
小鈴「ここさえ直せば、徒町とは違う、さやかちゃんらしいダンスになると思う! だから……一緒に頑張ろ、さやかちゃん!」ニコッ
さやか「! はい、小鈴先輩……!」
さやか「え……い、至らない点がありましたか、小鈴先輩?」
綴理「さやのダンスはすごかったよ。水色にきらめいてた」
小鈴「徒町も、そう思うよ! でも……まだちょっと、直せるところがあって、ここなんだけど……」
さやか「……! なるほど、確かにそうですね。見落としていました……」
小鈴「ここさえ直せば、徒町とは違う、さやかちゃんらしいダンスになると思う! だから……一緒に頑張ろ、さやかちゃん!」ニコッ
さやか「! はい、小鈴先輩……!」
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25: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:24:02 ID:???00
吟子「…………すごい」
吟子(あの小鈴が、DOLLCHESTRAでちゃんと“先輩”してるなんて……)
吟子(いや……思えば小鈴は、現実でも周りのいいところを見つけるのが上手だったっけ……そっか、変わってなんかないんだ)
吟子「小鈴……」ジー
吟子(……現実の小鈴も、二年後には、あんな風になるのかな)
吟子(…………私たちもいつか、“先輩”になるときが来るんだって……今まで全然、考えもしてなかった)
吟子(でも……それはいつか、現実になるんだって、この光景を見てようやく実感してしまった気がする)
吟子「……」
吟子(あの小鈴が、DOLLCHESTRAでちゃんと“先輩”してるなんて……)
吟子(いや……思えば小鈴は、現実でも周りのいいところを見つけるのが上手だったっけ……そっか、変わってなんかないんだ)
吟子「小鈴……」ジー
吟子(……現実の小鈴も、二年後には、あんな風になるのかな)
吟子(…………私たちもいつか、“先輩”になるときが来るんだって……今まで全然、考えもしてなかった)
吟子(でも……それはいつか、現実になるんだって、この光景を見てようやく実感してしまった気がする)
吟子「……」
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26: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:25:03 ID:???00
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姫芽「──吟子ちゃん、吟子ちゃん~、こっちこっち~!」
吟子「姫芽……? みらくらぱーく!の練習は?」
姫芽「いやぁ、そろそろ始めるところなんだけどさ~、その前に見てよ、あれ~……」
吟子「……?」チラッ
姫芽「──吟子ちゃん、吟子ちゃん~、こっちこっち~!」
吟子「姫芽……? みらくらぱーく!の練習は?」
姫芽「いやぁ、そろそろ始めるところなんだけどさ~、その前に見てよ、あれ~……」
吟子「……?」チラッ
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27: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:26:02 ID:???00
慈「ねぇるりちゃん! 姫芽先輩が来る前に、私のダンスパート、少し見てくれないー?」ギュー
瑠璃乃「……めぐちゃん。ルリいちおー、めぐちゃんの先輩なんだけど……近くない?」
慈「えー? でも幼馴染なんだし、そんなの関係ないでしょー? めぐちゃんは、ずーっとるりちゃんの隣に居たんだから」ギュー
瑠璃乃「けどなぁ……高校では先輩とか意識したほうが、良いのかも、とかルリ思うけど……」
慈「んー……でも、先輩とかそういうの以前に……めぐちゃんは、るりちゃんのことが大好きだからなぁー♡」ギュッ
瑠璃乃「……めぐちゃん。ルリいちおー、めぐちゃんの先輩なんだけど……近くない?」
慈「えー? でも幼馴染なんだし、そんなの関係ないでしょー? めぐちゃんは、ずーっとるりちゃんの隣に居たんだから」ギュー
瑠璃乃「けどなぁ……高校では先輩とか意識したほうが、良いのかも、とかルリ思うけど……」
慈「んー……でも、先輩とかそういうの以前に……めぐちゃんは、るりちゃんのことが大好きだからなぁー♡」ギュッ
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28: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:27:02 ID:???00
瑠璃乃「! もー……仕方ないなぁ、めぐちゃんは。……じゃあ代わりに、ルリ、今度“先輩”として勉強教えてあげるから」ニコッ
慈「え゛……べ、勉強はちょっと……」
瑠璃乃「めぐちゃんは、ルリを追いかけてきてくれるんでしょ? ちゃんと勉強すれば、卒業した後も離れ離れになんかならないし……ルリ、めぐちゃんとずっと一緒に居たいから!」フフッ
慈「るりちゃん……! もう、大好きー♡」ギュッ
慈「え゛……べ、勉強はちょっと……」
瑠璃乃「めぐちゃんは、ルリを追いかけてきてくれるんでしょ? ちゃんと勉強すれば、卒業した後も離れ離れになんかならないし……ルリ、めぐちゃんとずっと一緒に居たいから!」フフッ
慈「るりちゃん……! もう、大好きー♡」ギュッ
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29: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:28:02 ID:???00
姫芽「はぁ……めぐるり尊い……」
吟子「……姫芽は、いつも変わらないね」
姫芽「いやぁ、だってさ~。あの二人、小学生の頃からずーっと、一度も離れずに生きてきたんだって~! 幼馴染さいこう~」ニヤニヤ
吟子「そうなんだ……」
吟子(鏡の中だから、二人の関係性も変わってるんだ……どっちにしろ、姫芽は変わらないみたいだけどね)
吟子「……」
吟子(…………“卒業した後も離れ離れになんかならない”、か……)
吟子「……姫芽は、いつも変わらないね」
姫芽「いやぁ、だってさ~。あの二人、小学生の頃からずーっと、一度も離れずに生きてきたんだって~! 幼馴染さいこう~」ニヤニヤ
吟子「そうなんだ……」
吟子(鏡の中だから、二人の関係性も変わってるんだ……どっちにしろ、姫芽は変わらないみたいだけどね)
吟子「……」
吟子(…………“卒業した後も離れ離れになんかならない”、か……)
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30: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:29:02 ID:???00
────
小鈴「──今日も練習お疲れ様、二人とも!」
姫芽「うんうん~、小鈴ちゃんも吟子ちゃんも、今日一日頑張ったねぇ~」
吟子「いや、私は今日、見学してるだけだったけど……」
吟子(練習も終わり、ここは姫芽の部屋。姫芽に誘われて、小鈴も含め、三人でくつろいでいた)
吟子(現実と同じように、この世界でも私達は何かと一緒に居ることが多いみたいで……少し、嬉しい)
小鈴「──今日も練習お疲れ様、二人とも!」
姫芽「うんうん~、小鈴ちゃんも吟子ちゃんも、今日一日頑張ったねぇ~」
吟子「いや、私は今日、見学してるだけだったけど……」
吟子(練習も終わり、ここは姫芽の部屋。姫芽に誘われて、小鈴も含め、三人でくつろいでいた)
吟子(現実と同じように、この世界でも私達は何かと一緒に居ることが多いみたいで……少し、嬉しい)
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31: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:30:02 ID:???00
姫芽「そうだ、吟子ちゃん。体調の方はどう~? 見学、少しは気分転換になったかなぁ?」
吟子「あ……うん。疲れだって、少しは無くなったかな。ありがと、姫芽」
姫芽「ふふ、どういたしまして~」ニコッ
小鈴「良かったぁ……吟子ちゃん、ずっと最上級生として頑張るぞ! みたいな感じで余裕が無さそうだったから、徒町も心配してたんだ!」
吟子「あぁ……ごめん、小鈴にまで心配かけて……」
吟子(…………最上級生……やっぱり、そうなんだよね。私が……)
吟子「あ……うん。疲れだって、少しは無くなったかな。ありがと、姫芽」
姫芽「ふふ、どういたしまして~」ニコッ
小鈴「良かったぁ……吟子ちゃん、ずっと最上級生として頑張るぞ! みたいな感じで余裕が無さそうだったから、徒町も心配してたんだ!」
吟子「あぁ……ごめん、小鈴にまで心配かけて……」
吟子(…………最上級生……やっぱり、そうなんだよね。私が……)
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32: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:31:02 ID:???00
姫芽「まぁ、吟子ちゃんが回復したなら何よりだよ~。あの二人も、吟子ちゃんのこと大好きだし、喜ぶんじゃないかな~」ウンウン
吟子「…………そうかもね。梢せんぱい……こほん、梢さんも、花帆さんも」
吟子(この世界では……私が、花帆先輩や梢先輩に尊敬されるような立場にいるわけで)
吟子(あぁ、きっと花帆先輩なんかは、まるで現実での梢センパイに対するのと同じくらい、楽しそうに私に話しかけて──)
小鈴「──あれ?? 吟子ちゃん、どうしたのその呼び方?」
吟子「…………そうかもね。梢せんぱい……こほん、梢さんも、花帆さんも」
吟子(この世界では……私が、花帆先輩や梢先輩に尊敬されるような立場にいるわけで)
吟子(あぁ、きっと花帆先輩なんかは、まるで現実での梢センパイに対するのと同じくらい、楽しそうに私に話しかけて──)
小鈴「──あれ?? 吟子ちゃん、どうしたのその呼び方?」
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33: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:32:02 ID:???00
吟子「!? あ、えっと……呼び方、変だったかな……」
吟子(しまった……ついうっかりと、一瞬だけ、“せんぱい”と口にしたのはまずかったかもしれない……)
姫芽「うんうん、アタシも思ったよ~。だって吟子ちゃん、いつもは呼び捨てにしてるもんね──花帆ちゃんのこと~」
吟子「…………え?」
吟子(しまった……ついうっかりと、一瞬だけ、“せんぱい”と口にしたのはまずかったかもしれない……)
姫芽「うんうん、アタシも思ったよ~。だって吟子ちゃん、いつもは呼び捨てにしてるもんね──花帆ちゃんのこと~」
吟子「…………え?」
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34: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:33:02 ID:???00
小鈴「そうだよ、吟子ちゃん! 徒町から見て、いつだって吟子ちゃんは、口を開けば花帆花帆、口癖のように言ってたのに……!」
吟子「え、そ、そんなに……!?」
姫芽「うんうん~、あるときからいきなり、吟子ちゃんが花帆ちゃんのことを呼び捨てで呼ぶようになったんだよね~」
小鈴「徒町も、あれはビックリだった……!」ウンウン
吟子「……!?」
吟子(私が……花帆先輩を呼び捨てに!?!?)
吟子「え、そ、そんなに……!?」
姫芽「うんうん~、あるときからいきなり、吟子ちゃんが花帆ちゃんのことを呼び捨てで呼ぶようになったんだよね~」
小鈴「徒町も、あれはビックリだった……!」ウンウン
吟子「……!?」
吟子(私が……花帆先輩を呼び捨てに!?!?)
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35: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:34:02 ID:???00
姫芽「呼び方が変わるなんて……あの時なにか、花帆ちゃんとの仲に変化でもあったのかにゃ~?」ニヤ
吟子「い、いや……何でもないし、今もちょっと言い間違えただけ! 花帆せ……花帆は、なんかこう、距離感が近いから!」コホン
姫芽「ふふ、まぁそうだね~。花帆ちゃんは誰に対しても友達みたいな距離感で、いつ見ても元気そうだよね~」ウンウン
小鈴「あぁ、確かに! 花帆ちゃんって、いつも元気で、見てるこっちまで楽しくさせられちゃうよね」
吟子(こっちの花帆先輩も……同じなんだ)
小鈴「…………本当、ずっと見ていたくなるんだけどなぁ」ポツリ
吟子「? ……小鈴?」
吟子「い、いや……何でもないし、今もちょっと言い間違えただけ! 花帆せ……花帆は、なんかこう、距離感が近いから!」コホン
姫芽「ふふ、まぁそうだね~。花帆ちゃんは誰に対しても友達みたいな距離感で、いつ見ても元気そうだよね~」ウンウン
小鈴「あぁ、確かに! 花帆ちゃんって、いつも元気で、見てるこっちまで楽しくさせられちゃうよね」
吟子(こっちの花帆先輩も……同じなんだ)
小鈴「…………本当、ずっと見ていたくなるんだけどなぁ」ポツリ
吟子「? ……小鈴?」
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36: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:35:02 ID:???00
姫芽「! まぁ……アタシも、今小鈴ちゃんが言いたいことは、わかるよ。あんなに可愛い後輩と、離れちゃうのは嫌だよね~……」
小鈴「……うん。徒町も、少しは気持ちの整理がついた気がしたんだけど……」ハハ
小鈴「徒町、DOLLCHESTRAで綴理ちゃん、さやかちゃんがどんなスクールアイドルになるのか、ずっと隣で見ていたかったなぁ……」
姫芽「そうだよね~……アタシも、めぐちゃん、るりちゃんの輝かしいスクールアイドル活動を最後まで追い続けたかったよ~」ウンウン
吟子「……! ……そっか」
吟子(私達は最上級生。つまり──この世界で、卒業して蓮ノ空から居なくなるのは、私達なんだ)
小鈴「……うん。徒町も、少しは気持ちの整理がついた気がしたんだけど……」ハハ
小鈴「徒町、DOLLCHESTRAで綴理ちゃん、さやかちゃんがどんなスクールアイドルになるのか、ずっと隣で見ていたかったなぁ……」
姫芽「そうだよね~……アタシも、めぐちゃん、るりちゃんの輝かしいスクールアイドル活動を最後まで追い続けたかったよ~」ウンウン
吟子「……! ……そっか」
吟子(私達は最上級生。つまり──この世界で、卒業して蓮ノ空から居なくなるのは、私達なんだ)
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37: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:36:03 ID:???00
────
──翌日
花帆「吟子センパイ! こんにちはー!」
吟子「花帆せ……花帆。今日も元気だね」
花帆「もちろんですよ! だってあと少しで、大好きな吟子センパイと一緒に、ラブライブ!に挑めるんですもん!」ニコッ
吟子「……そう、だね。あと、ほんの少しで……」
花帆「ですです! 絶対、優勝しましょうね、吟子センパイ!」
梢「私も、初めてのラブライブ!楽しみにしていますね。吟子先輩、今日もご指導よろしくお願いします」ペコリ
──翌日
花帆「吟子センパイ! こんにちはー!」
吟子「花帆せ……花帆。今日も元気だね」
花帆「もちろんですよ! だってあと少しで、大好きな吟子センパイと一緒に、ラブライブ!に挑めるんですもん!」ニコッ
吟子「……そう、だね。あと、ほんの少しで……」
花帆「ですです! 絶対、優勝しましょうね、吟子センパイ!」
梢「私も、初めてのラブライブ!楽しみにしていますね。吟子先輩、今日もご指導よろしくお願いします」ペコリ
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38: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:37:03 ID:???00
吟子「あ……梢、さん」
梢「? はい、どうされましたか?」
吟子「…………えっと」
吟子(昨日の話を聞いてから……私は、どうしても意識してしまう)
吟子(卒業してしまう側から見て……後輩は、どういった存在なのか。当事者になって、嫌になるくらい実感してしまった)
吟子(……この世界で瑠璃乃先輩が言っていたことを思い出す。あれだって、現実の反転……つまり、“卒業した後は離れ離れになる”)
吟子(そして、私が元の世界に戻れば、それは……避けようのない現実として、向こうでも襲いかかってくるんだ)
梢「? はい、どうされましたか?」
吟子「…………えっと」
吟子(昨日の話を聞いてから……私は、どうしても意識してしまう)
吟子(卒業してしまう側から見て……後輩は、どういった存在なのか。当事者になって、嫌になるくらい実感してしまった)
吟子(……この世界で瑠璃乃先輩が言っていたことを思い出す。あれだって、現実の反転……つまり、“卒業した後は離れ離れになる”)
吟子(そして、私が元の世界に戻れば、それは……避けようのない現実として、向こうでも襲いかかってくるんだ)
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39: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:38:02 ID:???00
吟子(梢先輩も、綴理先輩も、慈先輩も……みんな、蓮ノ空から居なくなってしまう。……それは、今の私にとって向き合いたくない“現実”なのかもしれなくて)
吟子「……一つ、質問してもいいでしょうか?」
梢「? ええ、私に答えられることであれば何でも構いませんよ」ニコッ
吟子(だから……同じ状況である私には、今何ができるのか。そして……後輩に、何を与えたいのか。その糸口を、見つけたかった)
吟子「梢さんは──私が卒業した後のこと、どう思っていますか?」
吟子「……一つ、質問してもいいでしょうか?」
梢「? ええ、私に答えられることであれば何でも構いませんよ」ニコッ
吟子(だから……同じ状況である私には、今何ができるのか。そして……後輩に、何を与えたいのか。その糸口を、見つけたかった)
吟子「梢さんは──私が卒業した後のこと、どう思っていますか?」
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40: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:39:02 ID:???00
梢「卒業した後……ですか。そう……ですね。もう、すぐそこに迫っていますものね」
吟子「……はい」
吟子「私は、梢さんが、どう思っているのか知りたくて……」
梢「ふふっ……吟子先輩は、随分と心配性なんですね。そんなに焦る必要なんて、ありませんよ」クスクス
吟子「……はい」
吟子「私は、梢さんが、どう思っているのか知りたくて……」
梢「ふふっ……吟子先輩は、随分と心配性なんですね。そんなに焦る必要なんて、ありませんよ」クスクス
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41: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:40:03 ID:???00
吟子「え……で、でも、卒業したら梢さんのこと、私は見守りたくても、会いたくても、難しくなってしまいますし……」
梢「吟子先輩。そうですね……私から言えることは、一つ」
梢「私は、あなたの……吟子先輩の想いを受け継ぎます。なので、安心してください」ニコッ
吟子「……想い?」
梢「ええ。吟子先輩が、この蓮ノ空で私達に教えてくださったこと、吟子先輩が秘めた熱い願い、その全てを、私はずっと先の代にまで受け継ぎたい」
梢「そうやって、想いが決して消えずに繋がっていくことが…………“伝統”というものでしょう?」クスッ
吟子「!」
梢「吟子先輩。そうですね……私から言えることは、一つ」
梢「私は、あなたの……吟子先輩の想いを受け継ぎます。なので、安心してください」ニコッ
吟子「……想い?」
梢「ええ。吟子先輩が、この蓮ノ空で私達に教えてくださったこと、吟子先輩が秘めた熱い願い、その全てを、私はずっと先の代にまで受け継ぎたい」
梢「そうやって、想いが決して消えずに繋がっていくことが…………“伝統”というものでしょう?」クスッ
吟子「!」
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42: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:41:02 ID:???00
吟子「……後輩に繋いでいく想いは、伝統となって消えない……」
梢「きっと、そうしてみせますよ。それが、後輩として私にできることですから」ニコッ
吟子「梢さん……」
吟子(あぁ、やっと……わかった気がする)
梢「きっと、そうしてみせますよ。それが、後輩として私にできることですから」ニコッ
吟子「梢さん……」
吟子(あぁ、やっと……わかった気がする)
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43: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:42:02 ID:???00
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──レッスンルーム
ガチャ
吟子「誰もいない……よね」
吟子「……」フゥ
吟子「会いに来たよ──鏡さん」
吟子(私の真正面に、あの日あの時、現実の世界で私に倒れ込んできた鏡がある。私をただ、じっと見つめる鏡……)
吟子「……あなたは、私を助けようとしてくれたんだね」
──レッスンルーム
ガチャ
吟子「誰もいない……よね」
吟子「……」フゥ
吟子「会いに来たよ──鏡さん」
吟子(私の真正面に、あの日あの時、現実の世界で私に倒れ込んできた鏡がある。私をただ、じっと見つめる鏡……)
吟子「……あなたは、私を助けようとしてくれたんだね」
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44: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:43:02 ID:???00
吟子(レッスンルームの鏡は、蓮ノ空の伝統を長い歴史の間、ずっと映し続けている。その歴史の中の“迷い”も、同様に)
吟子(その中にはきっと、私と同じような人もいて……それで、先輩方の卒業を前に悩んでいた私に、鏡は、この世界を見せたんだ)
吟子(時が経って、いずれは一年生も最上級生になり……後輩を引っ張っていく。それは、決して変わらない伝統)
吟子「だから……私も、必ずそうなるんだ」
吟子(その中にはきっと、私と同じような人もいて……それで、先輩方の卒業を前に悩んでいた私に、鏡は、この世界を見せたんだ)
吟子(時が経って、いずれは一年生も最上級生になり……後輩を引っ張っていく。それは、決して変わらない伝統)
吟子「だから……私も、必ずそうなるんだ」
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45: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:44:02 ID:???00
吟子(ずっと……梢先輩が卒業を前にして、何を思い、何を願っているのかわからなかった)
吟子(……でも、ようやく気づけたよ)
吟子(私は、スクールアイドル百生吟子として──梢先輩の想いを受け継いでいかなきゃいけないんだ、ってことに)
吟子「……ねぇ、鏡さん。私は、もう大丈夫だよ」ニコッ
吟子「今の私に、鏡が映す世界なんていらない。……答えなら、ちゃんと見つけたから」
吟子(……でも、ようやく気づけたよ)
吟子(私は、スクールアイドル百生吟子として──梢先輩の想いを受け継いでいかなきゃいけないんだ、ってことに)
吟子「……ねぇ、鏡さん。私は、もう大丈夫だよ」ニコッ
吟子「今の私に、鏡が映す世界なんていらない。……答えなら、ちゃんと見つけたから」
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46: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:45:03 ID:???00
吟子「……」フゥ
吟子「だから……」
吟子(今の私がすることは、一つ……!)
吟子「──せーのでこの壁を……壊す……!」グッ
パリーン‼︎
吟子「……っ!」
吟子(鏡が割れると同時に、その破片が、光を乱反射した。そして、辺り一面がその真っ白な光に包まれて──)
吟子「だから……」
吟子(今の私がすることは、一つ……!)
吟子「──せーのでこの壁を……壊す……!」グッ
パリーン‼︎
吟子「……っ!」
吟子(鏡が割れると同時に、その破片が、光を乱反射した。そして、辺り一面がその真っ白な光に包まれて──)
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47: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:46:02 ID:???00
──────
────
「──吟子ちゃん! 吟子ちゃーん!!」
吟子「…………んん……ここ、は……」パチリ
花帆「! 吟子ちゃんが起きた……! よ、良かったぁ……!!」
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「──吟子ちゃん! 吟子ちゃーん!!」
吟子「…………んん……ここ、は……」パチリ
花帆「! 吟子ちゃんが起きた……! よ、良かったぁ……!!」
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48: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:47:02 ID:???00
吟子「……? えっと、何が起きて……」
梢「吟子さん、倒れてきた鏡に頭を打って……丸一日ほど気を失っていたのよ? 具合の方は大丈夫かしら?」
吟子「ぁ…………そっか」
吟子(元の世界に、戻って来れたんだ……)
梢「吟子さん、倒れてきた鏡に頭を打って……丸一日ほど気を失っていたのよ? 具合の方は大丈夫かしら?」
吟子「ぁ…………そっか」
吟子(元の世界に、戻って来れたんだ……)
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49: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:48:02 ID:???00
花帆「吟子ちゃん、吟子ちゃん! あたし、ほんっとうに心配したんだよー……!! どこも痛くない?」ギュー
吟子「!? ちょ、抱きついてこないで……!」
花帆「だってー……吟子ちゃんに何かあったら、って怖くて……」グスッ
吟子「だ、大丈夫だって。大袈裟すぎだよ、“花帆”」ニコッ
花帆「……………………えっ!?!?!?」
吟子「!? ちょ、抱きついてこないで……!」
花帆「だってー……吟子ちゃんに何かあったら、って怖くて……」グスッ
吟子「だ、大丈夫だって。大袈裟すぎだよ、“花帆”」ニコッ
花帆「……………………えっ!?!?!?」
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50: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:49:02 ID:???00
吟子「? どうしたの、花帆……」ハッ
吟子(もしかして、私……!?)
花帆「~~~っ!! 吟子ちゃん、吟子ちゃん!! 今、あたしのこと“花帆”って……!!!」
吟子「あ……」
吟子(あぁぁ……!! な、何言うとるん、私……!?)
花帆「お願いお願い! 吟子ちゃん、もう一回だけ呼び捨てで言ってみて! “花帆”って!!」
吟子「い、言わない! ああ、もう……//」プイッ
吟子(もしかして、私……!?)
花帆「~~~っ!! 吟子ちゃん、吟子ちゃん!! 今、あたしのこと“花帆”って……!!!」
吟子「あ……」
吟子(あぁぁ……!! な、何言うとるん、私……!?)
花帆「お願いお願い! 吟子ちゃん、もう一回だけ呼び捨てで言ってみて! “花帆”って!!」
吟子「い、言わない! ああ、もう……//」プイッ
0
51: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:50:02 ID:???00
梢「ふふっ、仲が良くて何よりだわ」クスッ
吟子「! ……梢、先輩。あの…………」
梢「? どうかしたのかしら、吟子さん?」
吟子「……少し、お話ししたいことがありまして」コホン
梢「……?」
吟子「私──梢先輩と一緒に、絶対ラブライブ!を優勝したいです。そして梢先輩の想いを受け継ぎたい……改めて、そう思いました」
吟子「! ……梢、先輩。あの…………」
梢「? どうかしたのかしら、吟子さん?」
吟子「……少し、お話ししたいことがありまして」コホン
梢「……?」
吟子「私──梢先輩と一緒に、絶対ラブライブ!を優勝したいです。そして梢先輩の想いを受け継ぎたい……改めて、そう思いました」
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52: ◆Gz45vsqC★ 2024/12/13(金) 19:51:02 ID:???00
梢「……! ふふっ……ええ、頑張りましょうね、吟子さん」ニコッ
吟子「はい。残り少ない期間も、よろしくお願いします」ペコリ
花帆「あ、二人ともずるいですよ! あたしを置いて秘密のお話してー! 何話してたの、吟子ちゃん?」
吟子「……さっきから、私を揶揄ってばかりの花帆先輩には内緒。どうせ、いずれわかることだから」
花帆「えー!? そんな、吟子ちゃんー!」
吟子「……さ、練習に戻ろ」プイッ
花帆「ぎ、吟子ちゃんが冷たい……!」
吟子(先輩方が卒業した後も、私が、伝統を引き継いでいけるように……)
吟子「一緒に頑張ろうね、先輩」ニコッ
おしまい
吟子「はい。残り少ない期間も、よろしくお願いします」ペコリ
花帆「あ、二人ともずるいですよ! あたしを置いて秘密のお話してー! 何話してたの、吟子ちゃん?」
吟子「……さっきから、私を揶揄ってばかりの花帆先輩には内緒。どうせ、いずれわかることだから」
花帆「えー!? そんな、吟子ちゃんー!」
吟子「……さ、練習に戻ろ」プイッ
花帆「ぎ、吟子ちゃんが冷たい……!」
吟子(先輩方が卒業した後も、私が、伝統を引き継いでいけるように……)
吟子「一緒に頑張ろうね、先輩」ニコッ
おしまい
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53: ◆iG4IsKOg★ 2024/12/13(金) 22:49:08 ID:???00
乙でした!先輩後輩逆転いいなぁ
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55: ◆Eg7cNlvD★ 2024/12/14(土) 11:15:19 ID:???00
よかった乙!
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56: ◆gI9yHAp1★ 2024/12/14(土) 11:52:39 ID:???00
面白かった
引用元: https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/11210/1734084003/