【SS】かすみ 「最近コッペパンが怖い」【ラブライブ!虹ヶ咲】

SS


4: (やわらか銀行) 2021/11/07(日) 18:58:20.79 ID:OcZlbUyB
かすみ 「」 ガクガク

しずく 「かすみさん……」

璃奈 「かすみちゃん、あんなに震えてる。心配……しずくちゃんは何か知らない?」

しずく 「えっと、かすみさんはコッペパンに震えてて」

璃奈 「コッペパンに? どういうこと?」

しずく 「あれはテレビを見ていたときです」






5: (やわらか銀行) 2021/11/07(日) 18:59:17.61 ID:OcZlbUyB
しずく 「テレビ今何やってるんだろう……あっ、アンパンマンか」

かすみ 「へぇー、これがアンパンマンかぁ」

しずく 「えっ、もしかしてかすみさん、アンパンマン見たことないの?」

かすみ 「うっ……実は恥ずかしいんだけどアンパンマン見たことないんだよね。どんな内容なのかな」

しずく 「……」 ジッー

アンパンマン! アタラシイカオヨ!

かすみ 「……」 ジッー

バイバイキーン!

6: (やわらか銀行) 2021/11/07(日) 18:59:45.56 ID:OcZlbUyB
しずく 「かすみさん、面白いね、アンパンマン」

かすみ 「……」 ガクガク

しずく 「かすみさん?」

かすみ 「ひぃぃぃ! しず子はパンじゃないよね!?」

しずく 「……はい?」






7: (やわらか銀行) 2021/11/07(日) 19:00:31.34 ID:OcZlbUyB
しずく 「ジャムおじさんが作ったパンは喋るし動く……だからもしかして、同好会や周りの人もみんなパンで出来てるかも、っていう幻想に囚われちゃったらしくて」

璃奈 「アンパンマンでそんな見方する?」

かすみ 「ひぃぃぃ! りな子はパンじゃないよね!?」

璃奈 「うん」

かすみ 「いや嘘だ!! しず子だってパンなんでしょ!?」

しずく 「嘘じゃないって言ってるのに」

かすみ 「ジャムおじさんからそう言えって命令されてるんでしょ!? 作り手には何も言えないから……!」 ガクガク

璃奈 「陰謀論くらい何とでも言い返されてしまう……」

8: (やわらか銀行) 2021/11/07(日) 19:01:35.73 ID:OcZlbUyB
かすみ 「みんなパンで……そしていずれかすみんもパンにされてしまう……。うぅ、せめてコッペパンにされたいなんて……」

しずく 「好きなものになれるなら本望じゃない? かすみさん」

かすみ 「ひぃぃぃ! やっぱりしず子もパンたちの一味なんだ!!」

璃奈 「しずくちゃん、不安になってる人にとどめを刺しちゃいけないと思う」

しずく 「つい」

9: (やわらか銀行) 2021/11/07(日) 19:02:12.66 ID:OcZlbUyB
かすみ 「こうなったらかすみんもパンで対抗しなくちゃ……!」 キリッ

璃奈 「?」

しずく 「?」

かすみ 「パンの諸君……聞いてっ! かすみんは今からパンの軍隊を作り、本物のスクールアイドル同好会を取り戻すっ!!」

璃奈 「?」

しずく 「?」

かすみ 「……っ、やっぱり言っても無駄なんだね。さようなら、パンスクールアイドル同好会」 スッ

タタタタッ

璃奈 「行っちゃった……なんて言えば良かったんだろう」

しずく 「……きっとそれは誰にも分からないよ。璃奈さん、パンでも食べに行く?」

璃奈 「うん」






10: (やわらか銀行) 2021/11/07(日) 19:04:56.34 ID:OcZlbUyB
果林 「また迷っちゃったわ……学校で迷うなら、逆にどこなら迷わないのよ。実家?」

エマ 「果林ちゃん? こんなところでどうしたの?」

果林 「あぁ、エマ。今ちょうど迷っ……いや、散歩してたところなの」

エマ 「そうなんだ、迷っ……えっと、散歩していたところだったんだね」

果林 「ええ」

エマ 「うん」

13: (やわらか銀行) 2021/11/07(日) 19:08:37.91 ID:OcZlbUyB
果林 「……」

エマ 「……」

果林 「ほら、行きましょう、部活」

エマ 「うん!」

果林 「……」

エマ 「……」

果林 「エマ?」

エマ 「?」

果林 「ほら一歩前進!」

エマ 「果林ちゃんが先歩いても良いんだよ?」

14: (やわらか銀行) 2021/11/07(日) 19:09:44.69 ID:OcZlbUyB
果林 「私は良いのよ」

エマ 「なんで?」

果林 「ふふ、言わせないでよ」

エマ 「?」

果林 「私は貴方についていきたいのよ、エマ」 ニコッ

エマ 「果林ちゃん……!」 キュン

彼方 「……果林ちゃん、迷ってるだけだよね~?」

果林 「!?」

エマ 「あ、彼方ちゃん!」

15: (やわらか銀行) 2021/11/07(日) 19:14:07.58 ID:OcZlbUyB
果林 「そそそそそんな訳はないんじゃないかしら?」

エマ 「大丈夫だよ、果林ちゃん。知ってるから」 ニコッ

果林 「!!?」

彼方 「とりあえず彼方ちゃんは部室で昼寝をしたいから、早く行くね~」 トコトコ

果林 「……最近ドラクエにハマってるから、まるでドラクエのように彼方についていくわ。そう、ドラクエの真似をしてるだけだから!」 トコトコ

彼方 「ちなみにドラクエの進捗はどんな感じなの?」

果林 「迷ってて全然先に進めてないわ」






16: (やわらか銀行) 2021/11/07(日) 19:19:38.89 ID:OcZlbUyB
果林 「? どうしたのよ、みんな。部室の前に立って」

愛 「……あはは、実はみんな部室から追い出されちゃったんだよね。かすみんに」

璃奈 「まさか本当にあんなことがあるなんて……」

しずく 「悪い夢でも見てるんでしょうか」

彼方 「悪い夢 それだとしても 夢は良き~」

しずく 「変な俳句を詠まないでくださいよ! 彼方さん!」

せつ菜 「川柳ですね!!!! 季語がないですから!!!!」

17: (やわらか銀行) 2021/11/07(日) 19:21:32.49 ID:OcZlbUyB
侑 「おおっー! せつ菜ちゃんのボリューム大の声を間近で聴くと耳がキーンとするね! そこも含めてときめくYO!!」 キーン

歩夢 「侑ちゃん……?」

エマ 「何があったの?」

愛 「実は愛さんたちにそっくりなパンたちに襲われて……」

果林 「? 愛、天然キャラはもう十分なのよ?」

彼方 「もしかして果林ちゃん、自覚あるの?」

18: (やわらか銀行) 2021/11/07(日) 19:23:41.21 ID:OcZlbUyB
侑 「本当なんだよ果林さん!! かすみちゃんがパンで私たちを作っちゃったの! そして、そのパンたちに場所を奪われて……」

果林 「そんな工藤新一じゃないんだから」

彼方 「星新一のことかな?」

愛 「この扉を開けてみれば分かるよ。ただ、好戦的だから気をつけて」

果林 「……いいわ、そのパンとやらに、一言三年生としてビシッと言ってあげる」

ガチャ

20: (やわらか銀行) 2021/11/07(日) 19:31:22.08 ID:OcZlbUyB
かすみ 「……来ましたね、偽果林先輩」

パン果林 「ふふ、所詮偽者が何をしに来たのかしら」

果林 「驚いた、本当にパンが喋ってるわ……」

かすみ 「パンはどっちですか、良いです、果林先輩があなたを倒しちゃいますから。やってください、果林先輩」

パン果林 「任せて」

果林 「……!」

果林 (ここは先輩らしく、暴力を使わず丁寧に言葉の力だけで説得する。国語の授業、努力賞の成績がある私が負けるはずないわ)

21: (やわらか銀行) 2021/11/07(日) 19:38:25.36 ID:OcZlbUyB
果林 「建設的な議論をしましょう?」

パン果林 「議論なんて必要ないわ」 バシッ

果林 「!?」 ヒリヒリ

愛 「言ったでしょ、好戦的って……」

かすみ 「またあなたですか、偽愛先輩。ならもう一度愛先輩に殴られてください」

パン愛 「パンチする……パンだけに!」 ブンッ

愛 「同じ攻撃は食らわないよっ!」 シュン

パン愛 「なら蹴りで終わらせる! まさにけりをつけるだね!」 ブンッ

愛 「それも当たらないっ! ……さっきから思ってたけど、もしかしてかすみんの中の愛さんってダジャレしか喋ってないイメージ?」 シュン

24: (やわらか銀行) 2021/11/07(日) 20:13:33.80 ID:OcZlbUyB
果林 「おおっ……さすが愛同士の戦い、見てるだけでも伝わってくる熱気だわ!」

かすみ 「……? 偽果林先輩。果林先輩はどうしたんですか?」

果林 「なんか水分補給をするって自販機に向かってから帰ってきてないわ」

かすみ 「えぇ……」

しずく 「どうやらパンたちはかすみさんのイメージから作り上げられてるから、それぞれの特徴がより極端になってるみたいですね」

果林 (……かすみちゃんのイメージで作られている。それって)

25: (やわらか銀行) 2021/11/07(日) 20:15:02.94 ID:OcZlbUyB
パン彼方 「ふふ、かすみちゃん。頑張ってるねぇ、えらいえらい」 ナデナデ

かすみ 「うぅ~彼方先輩、流石に恥ずかしいですよぉ///」 テレテレ

パン侑 「照れてるかすみちゃんも可愛いYO! かすみちゃん!! 私と付き合おう!!」

パン歩夢 「侑ちゃん……?」

パンしずく 「かすみさんは私と付き合ってるんですよ?」

かすみ 「もう二人とも~かすみんを取り合わないでくださいよ~」 エヘヘ

26: (やわらか銀行) 2021/11/07(日) 20:15:44.69 ID:OcZlbUyB
パンせつ菜 「恋愛はあまり分かりませんが、かすみさんは私の大親友ですよ!!!!」

パン璃奈 「私も、かすみちゃんはとっても大事な親友」

かすみ 「二人とも……! 嬉しいですけど、かすみんはみんなの人気者ですからね~……なんて冗談です。ずっーーと親友ですから!」

パンエマ 「彼方ちゃんばっかりじゃなくて、私にも頭撫でさせてもらえないかな? かすみちゃん」 ナデナデ

かすみ 「もうエマ先輩まで~!!///」 テレテレ

果林 (……なんというか、かすみちゃんの願望と偏見がすごい出てるわね)

27: (やわらか銀行) 2021/11/07(日) 20:16:52.74 ID:OcZlbUyB
果林 「なるほどね」

かすみ 「……分かったような顔してどうしたんですか? 偽果林先輩」 ムスッ

果林 「かすみちゃんがこんな暴走を始めたのも、周りがパンなのかもっていう思い込みに落ちてしまったのも、全ては不安が原因。自分が同好会のみんなに愛されてるか、それが不安でたまらなかったからなのね……」

彼方 「撫でてほしいなら言ってくれればいくらでも撫でるのに~」

エマ 「私だってかすみちゃん、抱きしめてあげるよ!」

かすみ 「偽物の言葉なんて聞きません……っ」

36: (やわらか銀行) 2021/11/08(月) 01:30:37.68 ID:XzzHhdBj
侑 「つ、付き合うのは少し照れちゃうなぁ……あはは///」

しずく 「かすみさんの中の私はあんなにかすみさんにデレデレなの……?///」

歩夢 「……」

歩夢 (私が侑ちゃんばっかりなの、かすみちゃんにもバレバレってことだよね……うぅ、それはちょっと恥ずかしいかも///)

せつ菜 「かすみさん!!!! 私はあなたにとっての仲間で、大親友でいたいです!! だからパンじゃなくて私たちを信じてください!!!!」

璃奈 「かすみちゃん……かすみちゃんは、まだ私たちに距離を感じてるの?」

かすみ 「……う、うるさいですっ!!」

37: (やわらか銀行) 2021/11/08(月) 01:31:33.11 ID:XzzHhdBj
愛 「かすみんっ!」

かすみ 「!?」

パン愛 「……あはは、ごめん、負けちゃった」

愛 「この拳は封印してたけど、大事な友達を取り戻すためだからね。かすみん、愛さんたちは離れたりしない。カリンがライブをしたときも分かったでしょ? 愛さんたちはライバルであり仲間なんだから!」

かすみ 「……」

果林 「ね? みんな、かすみちゃんの味方でしょ? だからパンじゃなくて、私たちにその想い。ぶつけなさい!!」

かすみ 「!」

かすみ (そうだ……かすみんは、かすみんは一人なんかじゃ……)

38: (やわらか銀行) 2021/11/08(月) 01:33:05.09 ID:XzzHhdBj
パンジャムおじさん 「……かすみくん」

かすみ 「! なんです、ジャムおじさん?」

侑 「ええっ!? あれってジャムおじさん!?」

愛 「……パンのジャムおじさんだから、通称パンジャムおじさんってところかな」

せつ菜 「なんというかパンなのかジャムなのかおじさんなのかいまいち分からない名前ですね……」

歩夢 「ジャムなのかおじさんなのかいまいち分からないのは元々だけどね」

しずく 「!」

39: (やわらか銀行) 2021/11/08(月) 01:34:24.87 ID:XzzHhdBj
しずく (かすみさんは確かテレビを見て恐怖を感じたんだよね。そして、かすみさんのパンはかすみさんのイメージが濃く反映される。つまり、あのパンジャムおじさんは、かすみさんがイメージしたまんまの、闇のパン職人……)

しずく 「かすみさん!! 逃げて!!」

パンジャムおじさん 「かすみくん。世の中は全てパンであるべきとは思わないかい?」

かすみ 「えっ?」

パンジャムおじさん 「なら君も、そして、君の友達も、みんなパンにしてしまえばいいんだ。だって、アンパンマンは君なんだから」

愛 「かすみん!! 逃げてっ!!」

パンジャムおじさん 「まずはかすみくん、君をパンにしてあげよう」 スッ

かすみ 「ジャムおじさん……!?」

かすみ (逃げられない! でも分かる。目の前に自分の死が来てることを……!)

41: (やわらか銀行) 2021/11/08(月) 20:15:30.33 ID:XzzHhdBj
かすみ 『先輩~!!』 モギュッ

侑 『もう、かすみちゃんったら』 アハハ

かすみ 『せつ菜先輩! かすみんは可愛くスクールアイドルをやりたいんですよ!!』

せつ菜 『か、かすみさん……』

かすみ (これはひょっとして走馬灯ってやつですか……? えっ、本当に死んじゃうパターン?)

かすみ (まるで周りが止まってるように、ゆっくり見える。愛先輩も、果林先輩も、あの位置からじゃおそらく間に合わない。かすみんはパンが大好きだけど……まさかこんな死に方をするなんて……)

42: (やわらか銀行) 2021/11/08(月) 20:16:58.60 ID:XzzHhdBj
?? 『お願いします!! みなさん! 力を貸してください!』

?? 『もちろんだよ! みんなでこのパンを届けよう!!』

かすみ (これもまた走馬灯……? でも、こんな記憶はなかったはず……)

?? 『大変!! 近くで爆発が起きたよ!! ここも危ない!! 一旦離れよう!!』

?? 『でも、苦しんでいる人にこそ、パンを配らなきゃいけないんです。きっと、みんなお腹を空かしてるはずだから』

?? 『……なら、みんな覚悟を決めよう。そして、パンを最後まで届けるんだ』

?? 『『おおっーーー!』』

かすみ (この記憶は一体……)

43: (やわらか銀行) 2021/11/08(月) 20:17:52.15 ID:XzzHhdBj
アンパーーーーンチッ!

ドカーン

かすみ 「へっ?」

愛 「何が起きたの!?」

パン愛 「かすみん大丈夫!?」

モクモク

モクモク

アンパンマン 「大丈夫かい、かすみちゃん?」

エマ 「アンパンマン?」

侑 「アンパンマンが実在していたなんて……!」

44: (やわらか銀行) 2021/11/08(月) 20:18:51.33 ID:XzzHhdBj
パン果林 「違うわよ」

果林 「ってパンの私? 無事帰って来れたのね」

パン果林 「通行人にドラクエ方式でついていったら帰って来れたわ」

せつ菜 「違うとは……一体どういうことなんですか?」

パン果林 「あのアンパンマンも、正確にはパンアンパンマン。アニメのアンパンマンではなく、かすみちゃんが願いを込めて作ったイメージのアンパンマンなの。調理室にいたのを私が連れてきたわ」

しずく 「かすみさん、生産者であるジャムおじさんには恐怖を感じていたけど、アンパンマンにはヒーローを見てるような眼差しだったから……」

パン果林 「きっと、ヒーローとして、かすみちゃんを助けてくれたのね」

45: (やわらか銀行) 2021/11/08(月) 20:20:12.53 ID:XzzHhdBj
アンパンマン 「かすみちゃん」

かすみ 「!」

アンパンマン 「生き物はみんな支え合うんだ。そして、パンは、そんなみんながお腹を空かせないように、ずっと笑顔でいるために、元気を与える存在なんだ。決して誰かを傷つけるものじゃない」

かすみ 「アンパンマン……」

果林 「そういえば、あなた、パンって言われたこと否定しないのね。偽者って言われてるも同然なのよ?」

パン果林 「さっきまでは私たちは本当に自分のことを本物だと思ってたの。でも、かすみちゃんが自分が妄想に囚われてることに気付いたから、私たちも自分たちの正体に気付いてしまった」

パン愛 「あはは、結局、愛さんたちは偽者だったってことだね」

46: (やわらか銀行) 2021/11/08(月) 20:21:12.40 ID:XzzHhdBj
侑 「……」

侑 「そんなこと言わないでよ」

パン果林 「えっ?」

侑 「……確かにパンであって人じゃないのかもしれない、でも。かすみちゃんの願いが込められて、それでこの世に生まれてきた。そんな、もう一つの同好会のみんなを、偽者なんて言えないよ」

愛 「ゆうゆ……」

パン愛 「あはは、君はいつも優しいね。ありがとう」

47: (やわらか銀行) 2021/11/08(月) 20:22:22.82 ID:XzzHhdBj
アンパンマン 「そしてかすみちゃん、君はもう一人じゃない。同好会のみんながいてくれる。それに君が作るパンはたくさんの人を笑顔にしてるから、もう、不安になる必要はないんだよ」

かすみ 「……」

かすみ (かすみんはずっと不安でした。自分のわがままでせつ菜先輩とすれ違ってしまったこともありましたし、自分が、同好会にいても良いのかって。でもみんなは、こんなに)

果林 『ね? みんな、かすみちゃんの味方でしょ? だからパンじゃなくて、私たちにその想い。ぶつけなさい!!』

かすみ (こんなにかすみんを必要としてくれた。それがこんなにも嬉しいことだなんて……)

かすみ 「うぅ……」 ポロポロ

48: (やわらか銀行) 2021/11/08(月) 20:26:10.50 ID:XzzHhdBj
せつ菜 「かすみさん!?」

歩夢 「かすみちゃん……」

せつ菜 「歩夢さん! かすみさんが泣いています……何か悲しいのでしょうか」 アセアセ

歩夢 「ううん、あれは悲しくて泣いてるんじゃないと思うよ、せつ菜ちゃん。あれはきっと」

歩夢 (嬉し涙だから……)

49: (やわらか銀行) 2021/11/08(月) 21:12:57.99 ID:XzzHhdBj
キラキラ

パン果林 「あら、もう時間なのね」

侑 「パンのみんなが消え始めてる!?」

パン愛 「元々愛さんたちは不思議な奇跡によって生まれた存在だから……かすみんの願いが叶った今、もう消える定めなんだよ」

侑 「そ、そんな……せっかく会えたのに……!」

パン彼方 「かすみちゃん。今度はちゃんと、同好会のみんなと向き合うんだよ?」 ニコッ

パンエマ 「かすみちゃんを撫でる権利は、少し悔しいけど本物の私に譲るね」 ニコッ

かすみ 「彼方先輩……エマ先輩……」

50: (やわらか銀行) 2021/11/08(月) 21:13:41.02 ID:XzzHhdBj
パン侑 「かすみちゃん! かすみちゃんはとっても可愛いけど、優柔不断なところがあるから、ちゃんと私かしずくちゃんかは決めなよ?」

パンしずく 「いっそ三人で付き合うのはどうですか?」

パン歩夢 「いっそ四人で付き合っちゃって、でも人数が多いから侑ちゃんと私、しずくちゃんとかすみちゃんの二人組に分けてみるのはどうかな?」

侑 「なんというか……///」

しずく 「パンの私たちの会話を聞くの……///」

歩夢 「恥ずかしいかも……///」

51: (やわらか銀行) 2021/11/08(月) 21:31:47.13 ID:XzzHhdBj
パンせつ菜 「もう一人の私! かすみさんの大親友として、よろしくお願いしますね!!!!」

せつ菜 「もちろんです!!!!」

パン璃奈 「上手く気持ちは言葉にしないと伝わらないから、ちゃんと頑張ってね」

璃奈 「うん。ありがとう、もう一人の私」

キラキラ

侑 「うぅ……! みんなぁ……」 ポロポロ

パン果林 「……侑を泣かせてしまってるのに、なんだか嬉しくなっちゃってる自分がいるわ。おかしいかしら、愛?」

52: (やわらか銀行) 2021/11/08(月) 21:32:28.87 ID:XzzHhdBj
パン愛 「ううん、そんなことないと思うよ。愛さんも嬉しくなっちゃってるから。こんなに別れを悲しんでくれる人がいる、それは幸せだよ。そして」

かすみ 「……」 ポロポロ

パン愛 「かすみん」

かすみ 「!」 ポロポロ

パン愛 「愛さんたちを作ってくれて、ありがとう」 ニコッ

バイバイ






53: (やわらか銀行) 2021/11/08(月) 21:33:32.71 ID:XzzHhdBj
モグモグ

侑 「ん~~!! 今日もかすみちゃんのコッペパンは美味しい!!」

かすみ 「えへへ♪ そう言ってくれると嬉しいです!!」

エマ 「かすみちゃんのパンはいつも美味しい!」

彼方 「遥ちゃんの分を持って帰ってもいいかな? すごく美味しかったから遥ちゃんにも食べさせたくなっちゃったよ~」

かすみ 「もちろん!!」

かすみ (あの不思議な一日から一週間が経って、スクールアイドル同好会はすっかり元の日々に戻ってました。でも、誰一人、あの日のことを、あのもう一つの同好会のことを、忘れたりはしていません)

54: (やわらか銀行) 2021/11/08(月) 21:34:15.16 ID:XzzHhdBj
かすみ (ただ、一つだけ疑問があって……)

かすみ 「あのとき走馬灯で見た、記憶になかった映像、あれは一体何なんだったんでしょうか? う~ん、不思議です」

かすみ (まあ何はともあれ、今日も同好会のみんなと頑張っていくだけです!!)

せつ菜 「かすみさん!! こっちにもコッペパンお願いします!! 楽しみで待ちきれません!!」

かすみ 「はーい、ちょっと待っててください~!」 タタタッ

55: (やわらか銀行) 2021/11/08(月) 21:35:36.05 ID:XzzHhdBj
むかし、むかし、世界は戦いばかりでした。

多くの人が飢え、倒れてゆく中、必死にコッペパンを作っては届ける少女がいました。
コッペパンは特別栄養価が高いわけではなかったけれど、何も口にできないくらい疲れてる人々にとって、そのシンプルな味わいは有り難かったのでした。

ある日、彼女の近くで多くの人が怪我をしてしまいます。急いでパンを届けようとしますが、あまりの大人数で、どうしても足りないのです。
そこで、近くにいた九人の少女に助けを求めました。その九人は快く承諾してくれました。

そしてパンを届け終わる頃には、十人の絆が生まれていて、違う場所へ向かおうとした少女の手を握り、みんなで各地を回ることにしたのです。

56: (やわらか銀行) 2021/11/08(月) 21:53:20.44 ID:XzzHhdBj
どこも荒れ果てていましたが、パンを配り終わる頃には多くの人が少し笑って、ありがとうと言ってくれるのです。それだけで、少女たちには十分でした。

しかし、ある日、戦場でパンを配る彼女たちにも、命の危機が訪れたのです。

爆発が頻繁に起き、逃げなければ死んでしまうような場所で、それでも彼女たちは一人でも空腹を満たし、救いたいと駆け抜けたのです。

そして大きな爆発の中、十人は致命傷を負ってしまいました……。

意識が遠のいていく中、その少女は強く思いました。どうか来世では、本当にただ、パンが幸せの象徴でありますように。そして、運命を共にしたこのみんなと、また出会えますように、と。

この話は誰も覚えてませんし、知りません。
でも消えた訳じゃないのです。
来世で少女はコッペパンを作ることが大好きだったのですから。

おわり

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1636278938/

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