【SS】勝手に【ラブライブ 第3期】を作ってみた ~ダイジェスト ~

SS


1: (しうまい) 2022/01/29(土) 10:11:08.71 ID:haK/joQt
第1話(1-1)

『音ノ木坂の春』



4月。
新入生を迎える音ノ木坂。
校内は明日に控える入学式の準備が、忙しなく行われていた。

時を同じくして、校舎の屋上には元『μ's』の新2年生3人の姿があった。
進級を機に練習着を新調した彼女たちは、明後日に予定されている『部活紹介を兼ねた新入生歓迎会で披露する曲』の練習をしていた。

「何人くらい入部するのかにゃ」
「雪穂ちゃんと亜里沙ちゃんは確定として…」
「10人くらい?」
「そんなに来たら、部室に入りきらないでしょ」
「確かに」
 

2: (しうまい) 2022/01/29(土) 10:13:06.80 ID:haK/joQt
(1-2)

「そうしたらさ、屋上(ここ)に屋根をつけて、新しく部室を作ろうよ!」
『明日の準備』を終えた穂乃果たちが合流した。
「わぁ、素敵!雨の日も練習できるネ!」
「そんなお金がどこにあるのですか!」
海未が呆れて、穂乃果とことりに言う。

「!!」
一瞬の間をおいて、5人が真姫の顔を見た。

「ヴェ~…何それ!?意味わかんない」
彼女のリアクションに一同が笑った。



練習を終え、部室に戻り、ポスターやチラシを手分けして作成する6人。
それぞれが去年のことを想い出しながら作業している。

「あれから、1年経ったのですね」
そう呟いた海未に、5人は感慨深げに頷いた。
 
3: (しうまい) 2022/01/29(土) 10:15:07.10 ID:haK/joQt
第2話(2-1)

『2人…だけ?』



入学式が終わり、1年生の教室。

「絢瀬亜里沙です」
ひときわ目立つ金髪碧眼の美少女の自己紹介に、クラスメイトがざわついた。

「ひょっとして…絢瀬って…あの?」

「はい。宜しくお願い申し上げます!!」
無邪気に微笑む亜里沙。
どよめく一同。



一方…



「高坂…雪穂です…」
眼鏡を掛けた彼女は控えめに言ったが、やはりクラスメイトはざわめいた。

「ひょっとして…高坂って…あの?」

「う、うん…まぁ…」
ちょっと困った顔で、返答する雪穂。
どよめく一同。
 
4: (しうまい) 2022/01/29(土) 10:17:07.18 ID:haK/joQt
(2-2)

雪穂と亜里沙は放課後、スクールアイドル研究部の部屋のドアを叩く。
キラキラと眩しく輝く制服姿の2人に、中にいた上級生たちは「おぉ…」と感嘆の声を上げた。

「よっ!有名人!」
穂乃果が茶化す。

「からかわないでよ…」
妹は少し怒った。

『μ'sの絵里と穂乃果』の妹が入学した。
その話は同級生ならず、あっと言う間に上級生にも伝わり、入学初日にして注目の的だ。
廊下を歩くだけでも視線が突き刺さる。

「さすがにちょっと恥ずかしいです」
亜里沙は苦笑した。

「それより、お姉ちゃん、明日の発表会頑張ってよね!」
「皆さん、楽しみにしています!」

「まっかせるにゃ~!!」
凛が無い胸をドンッと叩く。
 
5: (しうまい) 2022/01/29(土) 10:19:19.33 ID:haK/joQt
(2-3)

翌日。

披露した曲は『これからのSomeday』。
割れんばかりの歓声と拍手。
ステージは大成功に終わった。
勢いそのままに勧誘活動を行う6人。



しかし…



ポスターを眺めたり、部室の前を行ったりきたりする者はいるものの…3日経っても入部希望者が来ない。

「う~ん…誰も入ってこないねぇ…」
1年前のファーストライブが穂乃果の脳裏によぎった。
 
6: (しうまい) 2022/01/29(土) 10:20:42.50 ID:haK/joQt
第3話(3-1)

『ゆきあり勧誘大作戦』



雪穂と亜里沙は、自分たちしか入らないなら、それはそれでいいと思っていた。
気心が知れてる2人だけの方が、やりやすい。
しかし、姉たちが落ち込んでいる姿を見ると、いたたまれない気持ちにもなる。

μ'sの人気がない…というのも納得がいかなかった。
そこで取り敢えず、クラスメイトに片っ端から声を掛けてみた。

結果、数人、興味がありそうな者を見つける。
 
7: (しうまい) 2022/01/29(土) 10:22:48.80 ID:haK/joQt
(3-2)

まずは勧誘のポスターをガン見していた、黒髪ショートボブの『倉田桃子(くらたとうこ)』。

「アイドルの知識なら負けないけど…表舞台に立つ柄じゃないから…見ているだけで充分」…という、どこかで聴いたようなセリフを発する。
身長も『にこ』より低そうに見え、そこにコンプレックスを持っているようだった。



次にセミロングの黒髪と、フレームレスのメガネが印象的な『二階堂和香(にかいどうわか)』。
彼女は、穏やかそうな外見とは違い、趣味はヒップホップ…だとクラスの自己紹介で述べていた。

「踊ることは好きだけど、ジャンルが違うし…それに…「『見ゅ』の看板が大きすぎて…一緒にステージに立つなんて畏れ多い」と言った。
 
8: (しうまい) 2022/01/29(土) 10:25:03.73 ID:haK/joQt
(3-2)

そして、部室の前で何度か見掛けたことのある、明るい色の髪を緩く三つ編みにしており、かなり長身の『北見奈美(きたみなみ)』。

「スクールアイドル研究部ねぇ…興味はあるわ。でも…あなたたちが入るとなると話は別よ。想定外。どう見ても私は引き立て役になるじゃない…」と『偉大なる姉を持つ2人』に、拒否反応を示す。



確かに…μ'sメンバーの…関係がごくごく近い者たち以外…は、穂乃果と絵里に妹がいたことなど知る由もない。
ましてや、音ノ木坂に入学して…さらにはスクールアイドルを始めようとは…思いもよらなかったことだろう。



それを聴き、頭を悩ませる6人と2人…。
 
9: (しうまい) 2022/01/29(土) 10:27:06.39 ID:haK/joQt
(3-4)

入部に躊躇している同級生に、雪穂と亜里沙の必死の勧誘活動が始まる。

まずは「μ’sは特別な存在ではない」と力説した。
(にこと花陽は別として)みんな、スクールアイドルの知識などなく、全員が素人だったこと。
ラブライブの優勝は、周囲の協力と本人たちの努力で手に入れた優勝だったこと。

その話を聴いて、驚く彼女たち。

そして、次に『いかに姉がダメダメか作戦』を展開。
『穂乃果や絵里のポンコツ、グダグダエピソード』に、彼女たちは徐々に心を許していく。

最後に…「自分たちもゼロからのスタート」「挑戦者」…だと語った。

その成果が実り、体験入部を経て、ついに更なる3人と…
なりゆきで…桃子の家にホームスティしているブラジルからの留学生…日本のアニメ大好きな褐色の肌を持つ『デルフィナ ダ シルバ』…が入部することになった。
 
10: (しうまい) 2022/01/29(土) 10:31:56.15 ID:haK/joQt
第4話(4-1)

『禁止を禁止』



「どうしたの!!」
一同は桃子を見て驚きの声を上げた。
彼女の黒髪は一部ピンク色に染められていた。
インナーカラーというヤツだ。

「自分を変える為の…決意の現れです!」
「お、思い切ったことをしたね…」
「はい!今日からはこれを機に『ケイティ』って呼んでください!」
「ケイティ?」
「私、桃子って書いて『とうこ』って読むんですけど『ももこ』って呼ばれることが多くて…。私はとうこです!って意味で、倉田のKと桃子のTで…」
「ケイ…ティ…」
「あ、なるほど…」

(ちょっと、にこちゃんっぽいところがあるなぁ…)
穂乃果たちは、みんなそう思った。



そんなこんながあって、12人での練習が始まった。
 
11: (しうまい) 2022/01/29(土) 10:34:16.35 ID:haK/joQt
(4-2)

練習は常に騒がしい。

「お姉ちゃん、もう少し、優しく教えてよ」
「えぇ!?これくらいのこと、わかるじゃん」
「お姉ちゃんのバカ!」
「海未ちゃん、雪穂がバカって言ったよ」
「そういうことは家でやってください」
「だって、雪穂が…」
「穂乃果さん!海未さんに迷惑を掛けちゃだめですよ。ですよね?」
「は、はい…その通りです…」
「ぷぷぷ…亜里沙に怒られてる…」
「雪穂!あとで覚えてなさいよ!」

…と一事が万事、この調子である。
 
12: (しうまい) 2022/01/29(土) 10:36:34.74 ID:haK/joQt
(4-3)

雪穂も亜里沙も、身内であるが故に上級生を『さん付け』で呼ぶ。
いや、これまでのμ'sの取り決めは『先輩後輩禁止』であったのだから、その呼び方は間違ってはいない。

だが、あとから入った4人は…さすがにそうもいかず『〇〇先輩』と呼んでいる。
最初は…彼女たちのやり取りを微笑ましく見ていたメンバーも…さすがに度が過ぎると感じるようになっていた。

上級生も、そこは気になっていた。
どうしても、自分たち『μ's』の話が主体となってしまう為、雪穂たち2人をつい『身内扱い』しがちで、無意識のうちに『ほか4人』と区別して接することが多い。
これは良くない。



意を決した花陽はある決断を下す。
 
13: (しうまい) 2022/01/29(土) 10:39:25.04 ID:haK/joQt
(4-4)

「今日から『先輩・後輩禁止』を『禁止』です。みんなといるときは…雪穂ちゃんは穂乃果ちゃんのことを『お姉ちゃん』じゃなくて『穂乃果先輩』と呼んでね」

「は、はい!」

「私たちも、亜里沙ちゃんと雪穂ちゃんを特別視しないから…」

「はい!」

「穂乃果ちゃんも…学校では妹としてではなく、後輩として接してください!」

「うん、わかったよ」

「あ、改めまして…宜しくお願いします。穂乃果先輩」
「うん、雪穂ちゃん」

「…」
「…」

「うひゃあ…気持ち悪い!!」
2人の声がシンクロした。

音ノ木坂の屋上に、大きな笑い声が響く。



兎にも角にも、こうしてスクールアイドル研究部は、上下関係の厳しい部活へと生まれ変わったのだった…。
 
14: (しうまい) 2022/01/29(土) 10:41:09.42 ID:haK/joQt
第5話(5-1)

『怖がらなくてもいいじゃない』



真姫は悩んでいた。

「そこはもっと、のびのびと歌って!」
「何回も同じこと言わせないの!そこのアクセントを直して」

あの口調、あの性格が災いして、後輩と上手く接することが出来ないからだ。

海未も練習の時は鬼と化すが、普段は穏やかだ。
『彼女の本来の姿(?)』を知らない者からすれば、文武両道の大和撫子。
下級生から憧れの存在として、ファンも多い。

もちろん亜里沙もその一人。
そして『日本文化オタク』であるデルフィナも、海未の事を好いてるらしい。
 
15: (しうまい) 2022/01/29(土) 10:43:46.37 ID:haK/joQt
(5-2)

それに比べて私は…。

部員以外の1年生からは『孤高のピアニスト』と呼ばれていると聴いて、苦笑した。

「カッコいい!凛もそういうあだ名が欲しいにゃ」

凛はそう言うけど…つまり、それは『ひとりぼっち』って意味でしょ?
気にしない素振りはしてるけど、内心、傷ついているのよ。



どのように接したらいいか悩んでいるのは、1年生も同じだった。
必要最低限なこと以外喋らない真姫に対して、雪穂と亜里沙でさえ自ら話し掛けることができない。
 
16: (しうまい) 2022/01/29(土) 10:46:10.26 ID:haK/joQt
(5-3)

このままじゃいけない…。

真姫は思い切って、絵里に電話をした。



「私の場合は…先輩後輩を禁止して距離を縮めたけど…それは花陽がやめたっていうし…」
「あったとしても変わらないわよ」
「そうかしら…でも…そうね…無理をしなくてもいいんじゃない?いずれ、時が解決するわ」
「そういうもの?」
「自分を信じなさい。私は見ゅに入って変わったわ…真姫はどう?」
「…」
「あなただって1年前の真姫じゃないでしょ?まずは挨拶から初めてみたら」
「挨拶…ね…」



「お、おはよう…」
次の日の朝、後輩に会った真姫は先に声を掛けた。
彼女たちは驚いた顔をしたが、すぐ、にこやかに「おはようごうざいます!」と返事があった。
 
17: (しうまい) 2022/01/29(土) 10:49:06.25 ID:haK/joQt
(5-4)

「真姫ちゃんが、先に挨拶なんて…熱あるにゃ?」
「ないわよ」
「それじゃあ、雪でも降るのかにゃ」
「どうしてそうなるのよ!花陽、凛が虐めるの…何とか言って」
「ふふふ…凛ちゃん、そんなこと言っちゃダメだよ」
「にゃ?真姫ちゃんは、かよちんといるとすぐ甘えんぼさんになるにゃ」
顔を赤らめる真姫を、凛が冷やかす。
「ちょっと凛!」

「ひょえ~真姫先輩も、あんな表情するんだね」
「…デレる真姫先輩…なんか意外な一面を見た気がする…」
「そういえば…花陽先輩といるときの真姫先輩って、すごく穏やかな顔をしてるよね」
「ナルホド、ナルホド」
「なにが、なるほどなの?」
「ツマリ真姫先輩ハ、花陽先輩ノコトガ…」
「あっ!」
デルフィナの言わんとすることを理解した一同。

イチャつく2人を想像して顔がにやける。
「なぁんだ、真姫先輩も可愛いところあるじゃん」
真姫の意図とは少し違ったようだが、どうやら後輩との距離は少し縮まったようだった。



「くちゅん!」
「ほら、真姫ちゃん、風邪ひいたんじゃない」
「だから、違うってば!」



先を歩く3人の姿を、ぼーっと見つめる雪穂。
「どうかした?」
「!!…ううん、なんでもない…さ、行こう!」
 
18: (しうまい) 2022/01/29(土) 10:51:15.96 ID:haK/joQt
第6話(6-1)

『わかってるにゃ』



「だいたい、穂乃果はいつだって、いい加減すぎるんです!」
「部屋に入ってくるなり騒がしいわね、一体何したのよ」
「あはは…生徒会の書類の上に、ジュースをこぼしちゃってさぁ…」
「穂乃果ちゃんらしいにゃ」
「らしい…で済まされる話じゃありません!!そもそも…」
「海未ちゃん、海未ちゃん…あんまり雪穂ちゃんの前で、怒るのは良くないと思うよ…」
「そうだよ!ことりちゃんの言う通り!一応、穂乃果にだって姉の威厳というものがあるんだから」
「あっ…それは失礼しました」

「ねっ?前に言ったでしょ?高坂穂乃果はみんなが崇め立てるようなスターじゃないんだって…」
雪穂の言葉に同級生がクスクスと笑った。
 
19: (しうまい) 2022/01/29(土) 10:52:54.47 ID:haK/joQt
(6-2)

「そういう凛ちゃんも、職員室で先生に怒られてたよね?」
「にゃ?…テストの点数が少しだけ足りなくて…ゴメン!かよちん、今日の夜、勉強教えて欲しいにゃ…」
「えっ…あっ…うん…じゃあ、ご飯食べたら行くね?」
「ちょっと、いい加減にしなさい。人にばっかり頼らないの!そんなんじゃ1年生もついてこないわよ…」
「わ、わかってるにゃ…」
「花陽も甘やかすのやめなさいよ。あなただって部長を任されて、いっぱいいっぱいなんでしょ?」
「う…うん…それは…まぁ…でも…」
「そんな調子じゃ、また『赤点取ったら活動中止!』なんて言われるわよ…あなたたち1年生も…勉強はちゃんとやりなさい」
 
20: (しうまい) 2022/01/29(土) 10:56:11.47 ID:haK/joQt
(6-3)

真姫ちゃんのバカ!
凛が悪いのはわかってるにゃ…。
わかってるけど…さ…。
1年生の見てる前で言わなくてもいいと思うんだけどなぁ…。



凛は落ち込んだ。
悩みに悩んだ末、希に電話した。

「凛、かよちんに迷惑かけないようにしたい。このままじゃ、かよちんに嫌われちゃうにゃ…あと、後輩にバカにされないようになりたいにゃ」
「バカにはしてないんやない?」
「でも今度の1年生、みんな頭良さそうなんだよ」
「こればかりは、自分が頑張るしかないと思うんやけど…」
「魔法のおまじないみたいなのはない?」
「ウチはにこっちやないからなぁ…魔法使いは始めてないんやけど」
「?」
「いや、別に…まぁ、神頼みしても…努力しない人には応えてくれないと思うよ」
「うにゃ…」
「う~ん…そうしたら、朝一、神社のお掃除なんてどうやろか?ウチが紹介するよ」
「えっ?」
「昔から早起きは三文の徳…っていうやろ。自分の心を清めるつもりで、朝練の前に行ってご奉仕する。そういう習慣を付ければ、自ずとやるべきことがきちっと出来るようになるんやないかなぁ」
「凛には無理だにゃ」
「やらないうちから、諦めたらいかんよ!相手は神様やん。頑張る姿はちゃんと見てくれるよ」
「…」
 
21: (しうまい) 2022/01/29(土) 10:57:37.18 ID:haK/joQt
「あれ?凛ちゃん、今日は早いね!」

朝練をしにきた花陽が驚く。

「そう言う、かよ〇〇〇そ」

「わ、私は…ほら…朝ごはんの準備があるから、早起きなだけで…」

「凛、知ってるよ…かよちん、毎日、夜遅くまで練習日誌を書いてるよね?」

「ん?それは…ほら、趣味みたいなもので…」

「それなのに凛、何もしないで…勉強教えてだなんて…」

「真姫ちゃんの言葉なら気にしなくて…」

「それじゃダメなの!凛がダメなの!」

「凛ちゃん?」

「あのね…かよちん…今までゴメンにゃ…」

「へっ?」

「凛…やるにゃ!かよちんに捨てられたくないから」

「捨てる?凛ちゃんを?」

「な、何でもない!さぁ、ストレッチを始めるにゃ!!」





継続は力なり…や!

がんばれ、凛ちゃん!

ジョギング途中と思われる、フードを被ったパーカー姿の胸が大きい女性は…境内の木の陰から、そっと呟いた。
 
22: (しうまい) 2022/01/29(土) 11:00:03.21 ID:haK/joQt
第7話(7-1)

『部長SOS』



今年も昨年同様、オープンキャンパスが開催されることとなり、穂乃果たちに「ライブをやってほしい」と理事長から声が掛かった。
ところが…二つ返事で快諾したものの2年生と3年生は、なかなかパフォーマンスが上がらない。

理由は明らかだ。
μ'sとして過ごした、1年間があまりにも濃密だった故の…燃え尽き症候群。
にこ達が抜け、後輩を迎えての活動を再開した6人であったが…ライブに向けて気持ちを高めていくことが、これほど大変だったとは…。

3年生は生徒会の活動で抜けることも多い。
また1年生が6人となったことで、2年生負担も(昨年の穂乃果たちと比べれば)単純に倍である。
こうなると…曲と詞はストックがあるものの…衣装やセット、機材の制作や準備などまでは手が回らなくなる。

「こんな中途半端な状態でライブなんて…」
後輩がいないところで、彼女たちはうなだれていた。
 
23: (しうまい) 2022/01/29(土) 11:01:32.32 ID:haK/joQt
(7-2)

「頼ってみたら?」
花陽がにこに相談すると、彼女は即座にそう答えた。
「えっ?」
「放送部とか美術部とか…もちろん、アイツらだってヒマじゃないだろうけど…『自分たちの作品を発表する場がひとつ増える』と思ったら、手伝ってくれるんじゃない?」
「そう上手くいくかな…」
「アタシと違って…アンタなら大丈夫よ」
「にこちゃん…」
「μ'sのキャッチフレーズは?」
「みんなで叶える物語…」
「わかってるじゃない!その『みんな』に『アイツら』も入れてあげなさいよ」
「う、うん…」
「さぁ、そうとわかったら電話急げよ」
(善は…だけどね…)
花陽はスマホの向こうの先輩にツッコミを入れた。



次の日…

にこのアドバイスを受けたスクールアイドル研究部の部長は、各部室を走り回ったのだった。
 
24: (しうまい) 2022/01/29(土) 11:03:22.99 ID:haK/joQt
第8話(8-1)

『感謝、感激、あおぞライブ』





初めは冷たくあしらわれた花陽であったが、その熱意が実を結び、各部の協力を取り付けることが出来た。

校庭に組む巨大なセットは美術部が、衣装は手芸部がそれぞれ手掛けることとなった。
そして、それをネット中継するのは、放送部と新聞部。
各部が学校をアピールする為、力を合わせる。



「そうだ!この気持ちだ!」
久々に味わう…心をひとつにしてステージを作り上げていく高揚感。
『12人揃ったステージの初披露』に向けて、やる気が湧いてきた。

ところが…今度はそれと反比例するように1年生のテンションが落ちていく。
上級生たちが本気を出せば出すほど、パフォーマンスの差が開いていく。
彼女たちの本気に圧倒された雪穂は「やっぱり『高坂穂乃果』って凄いんだ…」と改めて姉の存在感の大きさに驚き、自分の力の無さに落ち込む。
 
25: (しうまい) 2022/01/29(土) 11:06:00.86 ID:haK/joQt
(8-1)

そんな彼女に、花陽が声を掛ける。
「穂乃果ちゃんはやっぱり凄いねぇ。あの眩しさは、誰にも真似できないよ」
「普段、あんなにいい加減なのに…ズルいと思いませんか?」
「あはは…でも、それが穂乃果ちゃんだから」
「なんか悔しいんですよね…」
「お姉ちゃんとして見ちゃうから…だよね?…正直、私には姉妹(きょうだい)がいないから、その気持ちはわからないけど…雪穂ちゃんは雪穂ちゃんとして頑張るしかなんだよ。だって、高坂雪穂はこの世に1人しかいないんだから」
「…先輩…」

その言葉に力をもらい、雪穂は自分を取り戻した。
 
26: (しうまい) 2022/01/29(土) 11:07:51.19 ID:haK/joQt
(8-2)

迎えた当日。

各部の協力と『縁の下の力持ち(ヒフミトリオ)』の活躍…そしてなによりも1年生たちの練習の成果もありライブは無事終了。
観客の評価も上々だった。
協力してくれた各部に、穂乃果たちは饅頭を配りながら礼を言って回った。
「その替わり、私たちが困ったときには、助けてくれよな」
「もちろんだよ!なんでも言って!」

だが…ネットでの反響は、なかなか手厳しコメントが並んだ。

「仕方ないですね。私たちに求められる基準はμ'sなのですから」
海未の言葉に頷く部員たち。
 
27: (しうまい) 2022/01/29(土) 11:09:22.80 ID:haK/joQt
(8-3)

「花陽…あんた何を見てきたの?」
こっそり観に来ていたにこが、スマホ越しにダメ出しをした。
「ダンスは良かったわ。歌も上手だった。初めてにして上々の出来だったと思うわ」
「あ、ありがとう…」
「でも…アタシからは合格点があげられない。彼女たちに笑顔がなかったわ!必死に歌って踊った!ただそれだけ…素人なら、それだけでも凄いと褒めてもらえるかもしれないけど、アンタたちはスクールアイドルなのよ!あれじゃあ、お客さんを笑顔にはできないわ」
「た、確かに…」
「魔法の言葉を忘れてない?」
「魔法の言葉?」
「いい?これからの練習に、必ず『にっこにっこに~』を入れなさいよ!」

冗談めかしく彼女は言ったが、その通りだと花陽は首を縦に振った。
 
28: (しうまい) 2022/01/29(土) 12:02:19.70 ID:haK/joQt
第9話(9-1)

『違うけど、一緒』



屋上での練習。

「これくらいで根をあげているようでは、まだまだです!!特に亜里沙と雪穂!あなたたちが1年生を引っ張らないと」
海未が鬼教官と化す。

「情けないなぁ…もう少し出来ると思ってたのに…」
「μ’sの曲の振付けは全部完コピしたのに…マネと本気は違うってことか…」
亜里沙と雪穂が嘆く

「まぁまぁ…私たちだって最初から出来たわけじゃないんだし…」
「あんまり厳しくするのもどうかと思うよ」
「それはわかっていますが…」
 
29: (しうまい) 2022/01/29(土) 12:05:19.72 ID:haK/joQt
(9-2)

「先輩!もう1回お願いします!」
和香が海未に直訴した。
「大丈夫ですか?少し休んでもいいのですよ?」
「私、負けたくないんです!雪穂にも!亜里沙にも!先輩たちにも!そして…」
「そして?」
「あ…いえ…」

「私もです!私も…自分を変える為に入部したんです!ちょっとのことで逃げちゃダメなんです!」
桃子が呼応した。

「私も同じです!」
「私モデス!」
奈美とデルフィナも、海未に主張する。。
 
30: (しうまい) 2022/01/29(土) 12:08:04.03 ID:haK/joQt
(9-3)

「勝ち負けって…私たちは運動部じゃないんだから」
穂乃果が苦笑した。

「いえ、それでも…先輩たちと一緒に踊るなら、同じレベルにならないと…先輩たちの足を引っ張るわけには…」
「ふふふ…まるで1年前の花陽を見てるようですね」
「海未ちゃん…」
「花陽に限らず、μ'sって負けず嫌いの集まりだったわ」
「真姫ちゃんもにゃ」
「うるさいわねぇ…」
「ちゅんちゅん!」

亜里沙と雪穂はお互いの顔を見る。
「そんなこと言われたら…」
「やらない訳にはいかないでしょ」
2人は「せ~の…」で立ち上がり、再び、ステップを踏み出した。



(負けたくない…か…そうね…アイツには絶対…)
和香が心の中で呟く。

(負けたくない…うん!そうだよ。私はお姉ちゃんとは違うんだから!)
奈美は拳を固く握った。
 
40: (しうまい) 2022/01/30(日) 09:53:12.50 ID:jpLHuYiE
第10話(10-1)

『夏だ!海だ!合宿だぁ!』



夏休み。

昨年に続き、西木野家が所有する海辺の別荘で合宿をすることになった。
はしゃぐ部員たちに「学業は疎かにしないように」と理事長が釘を刺す。
「わ、わかりました」と穂乃果と凛は目を伏せながら答えた。

さぁ『ラブライブの一次予選突破』と『秋の文化祭』に向けて、地獄の特訓(?)の開始です!



※海未が立てた初日のスケジュール

前泊からの朝6時起床。
日が高くなる前に砂浜をランニング
続いて発声練習
その後朝食
休憩のあと、自由時間
昼食&お昼寝
14時から16時まで勉強
16時から18時まで4人ずつに分かれてのソフトバレーボール大会

A班…海未、花陽、和香、桃子
B班…穂乃果、真姫、亜里沙、奈美
C班…ことり、凛、雪穂、デルフィナ

18時から日没まで筋トレ
(砂浜で1時間耐久2ステップ大会あり)
休憩のあとクールダウン
夕食(バーベキューです♡)
シャワータイム
ゲーム大会
花火
就寝
 
44: (しうまい) 2022/01/30(日) 22:16:43.87 ID:jpLHuYiE
(10-2)

ブラジルからの留学生、デルフィナ。
元々身体能力は、1年生の中でも『群を抜いていた』が、ランニングでは海未に負けない持久力と、凛に負けない瞬発力を見せつけ、改めて一同を驚かせた。

ただし、その後の自由時間で『泳げない』ことが判明し「名前はデルフィナ(スペイン語でイルカの意味)なのに?」と弄られる。

ソフトバレーボール大会では海未と和香、穂乃果と奈美、凛とデルフィナがポイントゲッターとなり、白熱した展開に。

初日の夕食はバーベキュー。
※花陽は飯盒でご飯を炊く。
※凛は鍋でインスタントラーメンを似る。
※真姫はトマトを焼いている。
※海未は花陽の炊いたご飯で、チャーハンを作る。
※穂乃果は焼きそばをパンに挟み、例の台詞を言う。
※ことりはレアチーズを焼いて、ベイクドチーズケーキにしようとしている…。



ゲーム大会は『恒例のトランプ』。
お約束の如く、後輩にもババ抜きで負ける海未。
それならば…と『UNO』に挑むも、敢え無く撃沈。
どうやら彼女は、勝負事の才能が全くないようだ…。
 
45: (しうまい) 2022/01/30(日) 22:21:15.65 ID:jpLHuYiE
>>44
誤→ラーメンを似る
正→ラーメンを煮る

あと、ちょいちょい『μ's』の表記が『見ゅ』になってたりします。
すみません。
 
55: (光) 2022/02/01(火) 21:56:51.84 ID:mox2Ulvw
(11-2)

「にこちゃん、知り合い?」
「知り合いも何も…アタシと一緒にスクールアイドルをやってた北見千代の妹だって…」

「えぇ!?」

「にこちゃん、気付かなかったの?」
「わかる訳ないじゃない!北見に妹がいたのは知ってたけど…まさか入って来るなんて思ってないし…顔も似てないし…姉貴よりデカイし…そんなの言われなきゃわからないわよ」
「奈美ちゃんも、どうして今まで教えてくれなかったの?」
「皆さんに余計な気を遣わせちゃうかと思って…」
「いや…でもそこはさ…」と言って、穂乃果は言葉を詰まらせた。

「いや、だからどうして…アンタが…」
替わりに、にこが問う。

「姉は…矢澤先輩のこと、尊敬してます。『私は途中で逃げちゃったけど、矢澤は最後までやり抜いたから、あのステージに立てた』って」

「尊敬?恨まれてるのかと思ったわ。あれから話したことなんか一度もなかったし」

「初めはそうだったかもしれません…でも…今は…。『私がやめたからこそ、最高の仲間に巡り合えてたんだ』って言ってます」

「…」

「でも…もちろん、本心じゃないと思います。やっぱり、悔しかったんだろうな…って。それで…私は…姉が果たせなかった夢を実現させたいと…」

思いもかけない告白に驚く一同。

「私が入っていいのかどうか…葛藤もありました。だけど雪穂たちが誘ってくれて…」
「確かに…ずっと部室の前をウロウロしてたもんね?」



「矢澤先輩…私、ここにいてもいいですか?」



「そ、そんなこと…好きにすればいいじゃない」
にこは少し涙ぐみながら答えた。

「にこっちは素直やないなぁ」
「本当ね」
「うるさいわねぇ」

「そっか…そうだったんだ…」
「うん、よし、頑張ろう!一緒に頑張ろう!」
花陽と穂乃果が、彼女の想いに頷いた。
 
56: (光) 2022/02/01(火) 22:31:53.94 ID:1LQ2F7Hn
(11-3)

「なんだか青春してるわね」
「そうやね」
穂乃果や花陽たちの成長を、喜ぶ絵里と希。
そして…その仲間に加われない寂しさ…も感じたのだった。



落ちる夕日を見ながら絵里が呟く。
「若いっていいなぁ…」
「いや、ウチらもまだ19歳やし…昔を懐かしむのは早過ぎないん?」
「そうよ!勝手におばさん扱いしないでよ!」
「ふふ…そうね…」
「まぁ…気持ちはわからなくもないけどなぁ」
「はいはい!真夏のこの時期に、なに、湿っぽいことを言ってるのよ!アタシたちはアタシたち!今を精一杯生きるのよ!」
「さすが、にこね!」
「さぁ、それじゃ帰ろうか」



『みんな、頑張ってね!』
3人は車内から、遠くに消えていく後輩の姿に向かって手を振った。





「それで…私たちはいつ、家に帰れるのかしら?」
「そうやねぇ…いつやろ?」
「いつやろ…じゃなくて…カーナビくらい付けておきなさいよ!!」
「仕方ないやん…そこまでの資金がなかったんやから…いや、そもそも…えりちが曲がるとこを間違えて教えたのが悪いんよ」
「だから、最初に言ったじゃない…地図は苦手って…」

「お腹空いた…」
「暗いわ…怖いわ…」

「あぁ!うるさい!!そんなん言うならワシワシして静かにさせるでぇ」

「あっ!バカ!」
「希!ハンドル!ハンドル!」
 
60: (しうまい) 2022/02/02(水) 22:05:35.12 ID:tm7AXz2/
第12話(12-1)

『止まない雨』



「1年生だけでストリートライブ?」
「可愛い子には旅させろ!…的な?」
「うん!ここまで1年生のステージは、オープンキャンパスの時だけだったでしょ?ラブライブの予選に向けて、少しでも場数を踏んだ方がいいと思うんだ」
そう提案したのは花陽だ。

「確かに…私たちはなんだかんだで数回行ってきましたからね」
「場数って言うけど…海未や花陽と違って、1年生は結構堂々としてるじゃない」
「痛いところを突いてきますね…」
「でも、予選となると、緊張感は別物にゃ」
「そうだね」
「よし、やらせてみよう!」


こうして1年生の単独ストリートライブが決定。
披露する曲と衣装は『昨年使ったもの』を手直しして流用することとした。
 
61: (しうまい) 2022/02/02(水) 22:19:20.34 ID:tm7AXz2/
(12-2)

当日。

天気は良くない。
今にも降り出しそう…とは、こんな空模様を言うのだろう。

1年生はお揃いの衣装を着て、街角に立った。
初めから用意された舞台でパフォーマンスを行うのではない。
忙しなく行き交う人たちに、自分たちの存在をアピールしなければならない。

「今からライブをします!良かったら観ていって下さい!」

だが現実は厳しい。
4人、5人は足を止めても、それが大人数になることはなかった。

注目されすぎるのプレッシャーだが、素通りされて見てもらえないのも、それはそれで虚しい。

そんな気持ちが焦りに繋がり…声が出なくなったり、歌詞やフリを間違えたりするなどして…結果は散々だった。

拍手より、失笑の方が多く聴こえた。
少なくとも彼女たちには、そう感じられた。



そんな様子を、遠巻きにUTXの生徒が数人眺めていた。

「あれは…和香?…」

ひとりがポツリと呟いた。
 
62: (しうまい) 2022/02/02(水) 22:50:36.27 ID:tm7AXz2/
(12-3)

翌日は…昨夜から降り続く雨の為、屋上での練習は中止となり部室での活動となった。

ネットを見ると、昨日のライブは酷評の嵐。

やはりと言うべきか…姉たちの活躍を知っているファンからの…亜里沙と雪穂への風当たりが強い。
「どうしても、お姉ちゃんと比較されちゃうのね…」
「叩かれることは覚悟してたけど…こうストレートに書かれると、結構ヘコむなぁ」

それだけではなかった。
容姿に対する誹謗や中傷も見られた。

「ヒドイデス」
「まぁ、上手くいかなかったのは事実だから…それは仕方ないにしても…」
「デカすぎるとか、肌の色がどうだとか…そんなことは関係ないじゃない」
「本当に!ムカつく」
怒りを露にする1年生たち。

「気にしない、気にしない。ネットの書き込みなんてこんなものだよ」
「練習するしかないにゃ。練習して、上手くなって、そいつらを見返してやればいいんだよ!」
「そうね。大丈夫、あなたたちなら出来るわ」

「そんな簡単に言わないでください。私は先輩たちとは違うんです!!」
噛みついたのは桃子だった…。
 
63: (しうまい) 2022/02/02(水) 23:06:19.91 ID:tm7AXz2/
(12-4)

「私が…私が足を引っ張ってるのはわかってるんです…」
「桃子ちゃん?」
「ケイティ?何ヲ言ッテルノ!?」
「ごめん…私から誘っておいて…だけどさ…私みたいに歌もダンスも下手で…おまけにチビがやっていけるほど甘くはなかったんだよ…あはは…妄想だけにしておけば良かった…」

そこまで言って、いきなり彼女は部室を飛び出した。

「ケイティ!!」
「桃子!」

慌ててデルフィナたちが追いかける。
虚を突かれた上級生は、出遅れた。

「デルちゃん!」
「雪穂ちゃん!」
「任せたわよ!」

走りゆく背中に2年生が叫んだ。



雨は夕方過ぎには止む予報となっていたが、暗くなっても、まだ降り続いている。

どれくらい経っただろうか。
雪穂から連絡が入り、花陽たちは…状況を聴き駆けつけた穂乃果たちと共に…1年生の荷物を持って『彼女の居場所』へと向かった。
 
66: (しうまい) 2022/02/03(木) 20:35:31.56 ID:P6hcCjw4
第13話(13-1)

『ほんの少しの勇気』



桃子は公園にいた。
ブランコに座り泣きじゃくる彼女を、デルフィナが差し出した傘が覆っていた。

「自分を変えたい」

髪を染め、ケイティと呼んで欲しいと言い…必死に過去の自分と抗ってきた桃子。
しかし、ネットでの評価を見て、ふと『本来の自分の姿』を思い出してしまったのだろう。

「私は和香ちゃんみたいにダンスも得意じゃないし、デルみたいに運動神経も良くないし…奈美ちゃんみたいにスクールアイドルに思い入れもない。やっぱり、興味本位で入っちゃいけない世界だったんだ…」

「ソンナ事ナイヨ!アノ時、ケイティハ、ミンナニ負ケナイッテ練習頑張ッタデショ!」
デルフィナはそう言った。
 
68: (しうまい) 2022/02/03(木) 22:23:25.41 ID:P6hcCjw4
(13-2)


(でも…やる気がない…って言ってる人と、私はこれから一緒にやっていけるの?…)

(お姉ちゃんも、こんな感じだったのかな…だとしたら…私が止めても説得力がないかも…)

自分たちに彼女を止める権利があるのだろうかと悩む和香と奈美。
2人の考えは「続けるべき」「辞めるべき」の間で揺れ動いている。

そうしているうち…自分たちもどう話せば良いのか、わからなくなっていた。
 
69: (しうまい) 2022/02/03(木) 22:38:00.23 ID:P6hcCjw4
(13-3)

静寂を嫌うかのように、雪穂が語り掛けた。

「あのさぁ…あなたたちは知らないかもしれないけど…お姉ちゃん…一度、μ'sを辞めてるんだよ…」

「えっ?」

「こんな雨の日だった…。次の日にライブがあるっていうのに、夜、走りに行って…結局熱を出して…ステージは途中で中止になってさ」

「穂乃果先輩が?」
雪穂と亜里沙以外は、初めて聴く話だった。

「バカは風邪ひかないっていうのにね…。それが原因でμ'sはバラバラになって…1回はラブライブの出場を諦めたんだ…」
「私のお姉ちゃんが…そうした方がいいって…」

「絢瀬先輩が?」

「うん…体調を崩してまで…スクールアイドルをやる意味があるのかな…って」
亜里沙は、その時を思い出しながら話した。
 
70: (しうまい) 2022/02/03(木) 22:44:11.08 ID:P6hcCjw4
(13-3)

「…そして、部員は一時、にこさんと今の2年生だけになったの。私は正直悔しかったよ。普段はいい加減で、どうしようもないお姉ちゃんだけど…μ'sの高坂穂乃果は眩しいほど輝いてたから。これで終わるのはもったいない!!って思ってた」
「私も…お姉ちゃんが、あんなに楽しそうに歌ったり、踊ったりするの初めて見たから…その姿がもう見られないのかなって思ったら、涙が出ちゃって…」
「でも、みんな戻ってきた!みんなでひとつになって…A-RISEに勝って…ラブライブで全国優勝した」
「だから…頑張って続けようよ。頑張って続けて、みんなをアッと言わせようよ」
熱く語る2人。
溢れる想いに、言葉が止まらない。

しかし、桃子には届かない。
「私は先輩とは違…」



「甘ったれんじゃないわよ!」
桃子が言い訳をしようとした瞬間、彼女たちの後方から大きな声が聴こえた。
 
76: (しうまい) 2022/02/04(金) 20:09:14.68 ID:H+oo/3WI
(13-5)

「矢澤先輩!!」
振り替えると、そこに、にこがいた。

「どうしてここに?」

「偶然通りかかったのよ…どこかで見た顔がいるな…と思ったら、アンタたちで…驚かそうと思って、そうっと近づいたら、くだらない話をしてるから、イライラしてきて…」

「クダラナイ話ジャナイデス!!」
デルフィナが噛みつく。

「くだらないわよ!やらなくて後悔するくらないら、やって失敗する方が、よっぽどマシだと思わない?」

「やらなくて後悔するより、やって失敗…」

「合宿で奈美のアネキの話を聴いたでしょ?」

「!!」

「そういう事よ。いい?アタシたちが何の努力もしないでやってきたと思ってるの?…そんなわけないじゃない!みんな必死に努力したわよ!アタシと凛なんて、川に落ちて死にかけたんだから」

「それ…関係あります?」
雪穂が冷たくツッコんだ。
 
77: (しうまい) 2022/02/04(金) 21:28:34.54 ID:H+oo/3WI
(13-6)

「ま、まぁ…それはそれとして…アンタは自分を変えたいと思って、入部してきたんでしょ?ここでやめたら何も変わらないわよ!」

「…」

「そのメッシュは飾りなの?昔の自分からの脱却を誓った証じゃないの?歌うことが、踊ることが…スクールアイドルが嫌いならやめればいいわ。でもそうじゃないなら頑張りなさいよ!上手いとか上手くないとか…そんなのは二の次よ!ニ・ノ・ツ・ギ!もちろんラブライブに出て優勝するには、実力が大事だけど…でもそれだけじゃないわ」

「情熱…ですね…」

「亜里沙の言う通りよ。アンタの中に…もっと楽しく歌いたい、踊りたい!みんなと頑張りたい!…その気持ちがあるなら、辞めるなんて軽々しく言わないことね」

「先輩…」

「わかったら、今日は帰りなさい。バカ穂乃果みたいに風邪ひくわよ…」



その会話を遠巻きに見つめる穂乃果たち。

「さすが、にこですね」
「いやいや『バカ穂乃果』はどうかと思うよ」
「私たちの出る幕、無くなっちゃったね♡」
「あとは…桃子ちゃんがどうするか…だにゃ」
「そうね…あとは彼女の気持ちの問題ね…」
「…そうだね…」



「明日は雨、上がるかな?」
 
78: (しうまい) 2022/02/04(金) 22:55:44.38 ID:H+oo/3WI
(13-7)

彼女たちは、先日ストリートライブを行った場所にいた。

6人が楽しそうに歌って踊る姿を見て、徐々に人が集まってくる。
ひとしきりパフォーマンスが終わると、拍手が沸き起こった。



それをUTXの学生が遠巻きに見ている。
「あのロングヘアが『おりお』の友達だっけ?」
その中のひとりが、仲間に問う。
「友達?…違うわ…単なる『裏切り者』よ…」
おりお…と呼ばれた少女は不機嫌そうに言い放つと、くるりと向き直って人ごみの中に消えて行った。



少し離れて6人を見守っていたのは、2人の女性。

その片方が、もうひとりに語りかける。
「…妹を宜しく頼むな…」
彼女の唇は、そう動いた。

「それはアイツらに言いなさいよ!アタシは、こう見えて、ヒマじゃないんだがらぁ」
かつての宇宙ナンバーワンアイドルは、穂乃果たちに視線を送る。



「なんだかんだありましたが、雪穂は姉と違って、しっかりと1年生を纏めています」
「海未ちゃん…『姉と違って』は余計だよ」
「そうだよね!穂乃果ちゃんがこうだから、雪穂ちゃんがああなったんだよ」

「ん?…ことりちゃん、それって誉めてる?」

「ちゅん?」

「まぁ、なんにせよ…良かったじゃない。上手くいって」
「もうあんな思いはしたくないもんね!…ね?かよちん!」

「うん!」







「それでは…今日はもう1曲やります!一生懸命歌うので聴いてください!」



「『Oh,Love&Pease!』」





勝手に【ラブライブ!】3期のタイトルを作ってみた。

~完~
 

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1643418668/

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