【SS】かすみんBOX vs 彼方ちゃんてるてる坊主【ラブライブ！虹ヶ咲】

かすみんBOX 「……」

彼方ちゃんてるてる坊主 「……」

かすみんBOX 「一言よろしいですか」

彼方ちゃんてるてる坊主 「なんだね？」

かすみんBOX 「この同好会のマスコット的なグッズはかすみんBOXだけで十分なのに、まさかその座を奪おうとしてます？」

彼方ちゃんてるてる坊主 「ほぉ」
　

かすみんBOX 「もしそのつもりなら、かすみんBOXは絶対に許しませんからね！」

彼方ちゃんてるてる坊主 「ふむふむ」

かすみんBOX 「それと！ なんですかその適当に流してるような態度！ バカにしないでください！」

彼方ちゃんてるてる坊主 「うーん」

かすみんBOX 「あとあと！！ さっきから名前長いんですよ！ セリフより名前の方が文字数取ってるじゃないですか！」
　

彼方ちゃんてるてる坊主 「ならさ」

かすみんBOX 「はい？」

彼方ちゃんてるてる坊主 「あだ名付ける？」

かすみんBOX 「あだ名ですか」

彼方ちゃんてるてる坊主 「彼方ちゃんは」

彼方ちゃん 「彼方ちゃんで！」

かすみんBOX 「ならかすみんBOXは……」
　

彼方ちゃん 「かすかすでしょ」

かすかす 「かすかすじゃないです！！ かすみんBOXですぅ！」

彼方ちゃん 「それとこっちも聞きたかったんだけど」

かすかす 「何ですか」

彼方ちゃん 「さっきから一人称『かすみんBOX』なのは、かすみちゃんの『かすみん』のモノマネ？ にしても、一人称『かすみんBOX』はおかしくない？」
　

かすかす 「だって、かすみんがかすみんと名乗るなら、かすみんBOXはかすみんBOXと名乗るしかないじゃないですか！」

彼方ちゃん 「うーん、世知辛いねぇ」

かすかす 「ならこちらからもう一つ質問です！ いくらてるてる坊主だからって」

彼方ちゃん 「……」 ﾌﾞﾗﾝﾌﾞﾗﾝ

かすかす 「布団にくるまれて宙吊りにされてるなんて、それじゃ何かの罰ゲームみたいじゃないですか！」

彼方ちゃん 「てるてる坊主なんだもん、仕方ないじゃん。この吊るす紐が首から出てないだけマシだよぉ」

しずく 「二人とも楽しそうですね」

かすかす・彼方ちゃん 「「！？」」
　

しずく 「私も混ぜてください♡」

かすかす 「どうして人間にかすみんBOXたちの声が聞こえてるんですか！？」 ﾋｿﾋｿ

彼方ちゃん 「うーん、なんでだろう。分からないや」 ﾋｿﾋｿ

しずく 「？ どうしたんですか、かすみさん、彼方さん？」

かすかす 「ん？ 会話できてるどころか、驚いてもない？」

彼方ちゃん 「普通に、かすみさん、彼方さんって今呼んでたもんね」
　

かすかす 「……もしかして」

彼方ちゃん 「おおっー、何か分かったの？」

かすかす 「お互いあだ名を付けたことで、表記上はかすみんBOXは『かすかす』で、彼方ちゃんてるてる坊主は『彼方ちゃん』になったじゃないですか」

彼方ちゃん 「それがどうしたんだい？」

かすかす 「つまり、文字だけ読めば、かすみんBOXたちは、かすみんたちと殆ど違いはないってことです！ 本人たちだって、かすかすとか彼方ちゃんとか呼ばれるんですから！」

彼方ちゃん 「おおっ！ 叙述トリックだね！ メタいね！」
　

かすかす 「だから、しず子から見れば、かすみんBOXたちは本物に見えてるのかもしれません」

彼方ちゃん 「急にホラーじみてきたよぉ」

かすかす 「とりあえず本人たちっぽく振る舞いましょう……しず子どうしたの？」

しずく 「かすみさん以外がその名前を呼ばないでください。人形風情が」

かすかす・彼方ちゃん 「「！！？！！？」」

しずく 「ふふ冗談ですよ。でもその名前を使うのはもうやめてくださいね」
　

かすかす 「やっぱり人形だってバレてる……！？」

彼方ちゃん 「じゃあ人形たちが喋ってるのがなぜかしずくちゃんには聞こえてて、そこから驚きもせず平然に話に入ろうとしてきたってこと！？ メンタルすごすぎない？」

しずく 「驚いてますよ。でも、それを顔に出さないのが女優ですから」

彼方ちゃん 「プロだ……！」

しずく 「富士山を眺めながら、お湯に浸かる。これほど素敵な時間はないですね」

彼方ちゃん 「フロだ……！」
　

かすかす 「いや、それにしても、まさか人間でかすみんBOXたちの会話が聞こえる人がいたなんて……」

しずく 「度々かすみんBOXさんは一人で愚痴ってましたよね。待遇が悪いだとか」

かすかす 「ええっ！？ もしかして前から聞こえてたの！？」

しずく 「ちなみに、かすみんBOXをティッシュケースに改造する案が一時期同好会で浮上してましたが、あれを最初に提案したのは私です」

かすかす 「お前だったのか、おのれぇぇ！！ あの話が流行ってた時、かすみんBOX、マジで毎日震えてたんだからね！？」

しずく 「あの振動は、微弱な地震じゃなかったんですね♡」
　

彼方ちゃん 「……前から知ってたのなら、なんで今日まで話しかけてこなかったの？」

しずく 「それは……人形に話しかける前に、侑先輩に話しかけたかったからですよ。実はほとんど会話できてなかったので」

かすかす 「あっ、でも、つい最近会話してましたね！」

しずく 「歩夢さんの視線を掻い潜ってようやく願いが叶いました」

彼方ちゃん 「それで満を辞して、今日話しかけてきたってわけだね」

しずく 「ふふ、その通りです」

彼方ちゃん 「それで目的は何かな？ もしかして喋る人形がいるってみんなに言って、危険な存在として吊し上げるつもり？」

ﾌﾞﾗﾝﾌﾞﾗﾝ

彼方ちゃん 「……てるてる坊主なので既に吊し上げてはいますけど」
　

かすかす 「かすみんBOXは同好会から追い出されるなんて嫌ですからね！？ せっかくみんなに愛されてるのにぃ！」

しずく 「そんなことはしませんよ、ただ、せっかくなので友達になりたかったんです！」

かすかす 「友達に……？」

しずく 「はい。だって人形にも意志があって、しかも喋れるなんて、まるで映画のような世界じゃないですか！」

彼方ちゃん 「なるほど、なるほど……つまり、しずくちゃんには敵対意識はないと？」

しずく 「もちろんです」
　

かすかす 「ぐぬぬ……」 ﾑﾑﾑ

しずく 「……」 ﾆｺﾆｺ

かすかす 「……」 ﾑﾑﾑ

しずく 「……」 ﾆｺﾆｺ

かすかす 「なーーんだ、疑って損しましたよ。それなら来るものは拒みません、早速話しましょう！」

しずく 「やったー！ ありがとうございます」 ﾆｺｯ
　

ｶﾞﾗｯ

愛 「えっ……」

しずく 「あっ……」

愛 「今、しずく、かすみんBOXとカナちゃんてるてる坊主に話しかけてたよね？」

しずく 「い、いや、その……」

愛 「しかもすごく満面の笑顔で……」

しずく 「これは、そ、そう、誤解です！！」

—————

———

—
　

【医学同好会部室】

愛 「ということがありまして……」

部長 「精神的な疲れによるものでしょう」

しずく 「……」

部長 「しずくさんは二つの部活の掛け持ちでとても忙しいようなので、睡眠不足なのかもしれません。無理しないでくださいね」

愛 「ありがとうございます。先生」

ﾀｯﾀｯ

ﾀｯﾀｯ

ﾀｯﾀｯ
　

愛 「良かったね、しずく。ゆっくり休めば治るって」

しずく 「……ありがとうございます」

愛 「それにしても、人形が喋るわけないじゃん。幻聴だったんだよ」

しずく 「い、いえ、本当に！」

愛 「……あっ、えっと、ごめんね、疑ってるわけじゃないんだよ？ たださ、あの、ゆっくり休もう？」

しずく 「はい……」

ｶﾞﾗｯ

愛 「ふう、ひと段落だね」
　

彼方ちゃん 「助けてくれ、かすみんBOX。吊るしてる紐が有線イヤホンのように、ぐるぐる回ったと思ったら止まって、今度は逆回りに回りに出し、永遠に止まらないんだ。このままだと一生目が回る」 ｸﾙｸﾙ

かすかす 「すみません……助けようにも届きません」

愛 「しゃ、しゃ、しゃ、喋ってる……！？」 ｶﾞｸｶﾞｸ

しずく 「愛さんにも聞こえるんですか！？」
　

彼方ちゃん 「おや、もう一人、彼方ちゃんたちの存在に気付く人が現れたみたいだね」 ｸﾙｸﾙ

かすかす 「かすみんBOXです！」

彼方ちゃん 「彼方ちゃんは彼方ちゃんさ、よろしく。それと悪いね、回転しながらの挨拶で」 ｸﾙｸﾙ

愛 「こ、こ、こ、これはいったい！？」

しずく 「ふふ、映画みたいで面白いですよね」
　

愛 「腹話術！？」

しずく 「違いますよ」

愛 「この人形の後ろにスピーカーとか！？」

しずく 「違いますって」

愛 「……」

かすかす 「これってもしかして、本当の本当に同好会から追い出される可能性が……？」

彼方ちゃん 「相手の反応によるだろうね。あまりにも信じられなかったら、不気味で処分なんてことも……」 ｸﾙｸﾙ

かすかす 「ひぃぃぃ！」
　

愛 「……」

しずく 「愛さん！ この子たちに罪はありません！ 同好会のマスコット的な存在じゃないですか！？ お願いです、処分はやめてください！」

かすかす 「しず子……」

しずく 「その名前で呼ぶなって言ったよね」

彼方ちゃん 「……それより目が回るんだが、助けてくれないか諸君」 ｸﾙｸﾙ
　

愛 「……しずく」

しずく 「！」

愛 「これって本当の本当なの？」

しずく 「演技ではありません！ 本当にあの人形たちは喋るんです！」

愛 「それなら……」

しずく 「……」 ﾄﾞｷﾄﾞｷ
　

愛 「超すごいじゃん！！！！」 ﾊﾟｧｧ

しずく 「愛さん！」

愛 「いやー、こんなこともあるんだね。よしよし、かすみんBOX、撫でてあげよう」 ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

かすかす 「犬じゃないんですからそんなに撫でないでくださいよっ！」

彼方ちゃん 「ふふ、無事に和解できたようだね。彼方ちゃんたちは処分されずに済んだようだ」 ｸﾙｸﾙ
　

愛 「君のクルクルも助けよう！ これからよろしくね、カナちゃんてるてる坊主！」 ｸﾞｯ

彼方ちゃん 「止めてくれてありがとう。照れちゃうね、てるてる坊主だけに」

愛 「っwww すごいっ！！ 君センス良いね！！」

彼方ちゃん 「ふふ、だろう？」 ﾄﾞﾔｯ

愛 「愛さんも負けられないよ！ 今度ダジャレ勝負でもしない？」
　

ｶﾞﾗｯ

果林 「えっ……」

愛・しずく 「「あっ……」」

果林 「今、愛、かすみんBOXと彼方てるてる坊主に話しかけてたわよね？」

愛 「い、いや、その……」

果林 「しかも人形相手にダジャレ勝負申し込んでなかった？ 仮に勝ったところで何が嬉しいの？」

愛「これは、そ、そう、誤解なんだよ！！」

—————

———

—
　

【医学同好会部室】

果林 「ということがありまして……」

部長 「精神的な疲れによるものでしょう」

愛 「……」

部長 「愛さんは先程精神を病んだしずくさんの看病により睡眠不足なのかもしれません。無理しないでくださいね」

果林 「ありがとうございます。先生」

ﾀｯﾀｯ

ﾀｯﾀｯ

ﾀｯﾀｯ
　

果林 「良かったわね、愛。しっかり休めば治るって」

愛 「……うん」

果林 「それにしても、人形が喋るなんて……完璧に見える愛にも抜けてるところがあったのね。意外だわ」

愛 「いや、人形は本当なんだよっ！」

果林 「……あっ、えっと、ごめんなさい、落ち着いて愛。ほら、素数を数えるの。ダジャレでも良いわ。布団を素数が来るたび吹っ飛ばしなさい」

愛 「はい……」

ｶﾞﾗｯ

果林 「……しずくも愛も、私が先輩として支えないとね」
　

彼方ちゃん 「彼方ちゃんも、かすみんBOXも、構造上、床に置いたときは常に座ってるよね。座り過ぎて太ったりしないかな」

かすかす 「いや人形なんだから体重は変わりませんよ。強いて言えば、中に綿を詰めれば変わるかもですが……」

果林 「しゃ、しゃ、しゃ、喋ってる！？」 ｶﾞｸｶﾞｸ

愛 「ほら愛さん、嘘ついてなかったでしょ？」
　

彼方ちゃん 「おや、さらにもう一人、彼方ちゃんたちの存在に気付く人が現れたみたいだね」

かすかす 「かすみんBOXです！」

彼方ちゃん 「彼方ちゃんは彼方ちゃんさ、よろしく。それと綿を抜くダイエット法を思い付いたんだけど、どう思う？」

果林 「こ、こ、こ、これはいったい！？」

しずく 「果林さんも、こちらの世界に来てしまったようですね」 ﾌﾌ
　

果林 「もしかしてここはあの世！？」

しずく 「違いますよ」

果林 「ならここはこの世！？」

しずく 「それはそうですよ」

果林 「……」

かすかす 「これってもしかして、今度こそ本当の本当に同好会から追い出される可能性が……？」

彼方ちゃん 「悩んでも仕方ないさ。それより綿を抜いて痩せられるなら、深夜ラーメンとかも躊躇いなく行けるよね」

かすかす 「布にスープが染みるだけですよ」
　

果林 「……」

しずく 「果林さん！ この子たちに罪はありません！ 一緒に仲良くしていけば良いじゃないですか！？ お願いです、処分はやめてください！」

彼方ちゃん 「ふっ、泣かせるじゃねぇか」

しずく 「人形は泣かないでしょ」

かすかす 「処分なんてしないでくださいよぉ〜！！」
　

果林 「……愛」

愛 「！」

果林 「これって機械とかは使ってないのよね？」

愛 「うん。本当にあの人形たちは喋るんだよ」

果林 「それなら……」

愛 「……」 ﾄﾞｷﾄﾞｷ

—————

———

—
　

【除霊同好会部室】

果林 「ということがありまして……」

部長 「それは悪霊の仕業ですね。分かりました、やってみます」

愛・しずく 「「……」」

部長 「代金は次のライブの特等席でよろしいですね」

果林 「お布施ですね。分かりました」

ﾀｯﾀｯ

ﾀｯﾀｯ

ﾀｯﾀｯ
　

果林 「良かったわね、二人とも。あの悪霊たちをちゃんと祓ってくれるって」

愛・しずく 「「……」」

果林 「人形が喋るなんて、この世のものとは思えないものね。きっと、二人も悪霊に化かされていたのよ」

しずく 「いや、あの人形たちはそんな悪霊なんかじゃ！！」

果林 「……あっ、えっと、ごめんなさい、落ち着いてしずく。ほら、しずくの好きな映画を浮かべてみて。ターミネーター3、ゲド戦記、スーパーマリオ/魔界帝国の女神。しずく、好きでしょ？」

しずく 「正気ですか？」
　

ｶﾞﾗｯ

部長 「！ これは恐ろしい気配を感じます……妙に暖かい空気を感じませんか？」

果林 「本当だわ！！ 今日は別に湿度も高くないのになんで！？」

彼方ちゃん 「ラーメン食べてみたらスープでびしょ濡れになっちゃって、寒かったから暖房つけちゃった」

かすかす 「だから言ったじゃないですか！」
　

部長 「では始めます。はっーーーーーーーーー！！」 ﾋﾟｶｰｰｰｰﾝ

彼方ちゃん 「ギャァァァァァァァーーーーー！ 体が消えるぅぅぅぅ！？」

かすかす 「えええええっーーーーーー！？」

しずく 「ええっ！？ 本当に悪霊だったの！？」

かすかす 「そんなわけないでしょ……ってえええええええっ！？ かすみんBOXの体が消えてるぅぅぅぅ！？」

愛 「かすみんBOXーーー！！ カナちゃんてるてる坊主ーーー！！」
　

彼方ちゃん 「なんて冗談だよぉ〜しずくちゃんの真似して演技しちゃった」

しずく 「なーんだ、演技だったんですね。良かった」

かすかす 「えっ……？」 ｷﾗｷﾗ

彼方ちゃん 「えっ……？」

かすかす 「じゃあなんでかすみんBOXは消えてるんですか！？」 ｷﾗｷﾗ

彼方ちゃん 「えぇ……それ知らない……」

かすかす 「なんでですかぁぁぁぁぁーーーーーーー！！！！」 ﾋﾟｶｰｰｰｰﾝ

ｷﾗｷﾗ

ｷﾗｷﾗ
　

部長 「無事、悪霊は退散しました。これで安心ですよ」

果林 「ありがとう。本当に助かったわ」

愛 「うぅ……かすみんBOX……」 ｸﾞｽｯ

しずく (その三日後にかすみんBOXさんは復活しました……歩夢さんに叩かれてましたけど)

しずく (やっぱり果林さんみたいに抵抗がある人もいて、まだまだ二人は同好会に馴染めてませんが)

しずく (でも、これからも、やっぱり仲良くしていきたいです。だって！)
　

歩夢 「ふふ、かすみんBOXは柔らかくてつい触っちゃうな」 ﾄﾞｶﾄﾞｶ

かすみんBOX 「助けて……」

かすみ 「歩夢先輩ぃぃぃぃぃぃぃぃ！！ やめてくださいっ！！」

彼方 「にしても、まさか彼方ちゃんと遥ちゃんが作ったてるてる坊主に、自我が生まれるなんて……」

彼方ちゃん 「二人の愛ゆえ、だね！」

彼方 「ふふ、だったら嬉しいな」

しずく 「なんだか楽しそうです！」 ﾆｺｯ

おわり
　

ありがとうございました。
虹ヶ咲学園ってどんな同好会もありそうですよね。彼方ちゃんてるてる坊主がどんどん登場していったら、かすみんBOXはどうなってしまうのでしょうか。知らないところでバトルしてて欲しい。

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2022年4月6日 19:15