4: (しまむら) 2023/04/24(月) 20:45:38.71 ID:A+IVgmmu
>>1
代行ありがとうございます。
蓮短編です。
代行ありがとうございます。
蓮短編です。
6: (しまむら) 2023/04/24(月) 20:47:06.64 ID:A+IVgmmu
梢「この学校、結構山奥にあるでしょう?敷地の外もすぐ森だし。一度出たことのある花帆さんならわかると思うけれど」
花帆「あはは…そうですね」
梢「だからね。ちゃんと頑丈な鉄格子をはめておかないと……“来る”のよ」
花帆「く、来る…?何がですか…?カワウソ…?」
梢「カワウソよりもっと大きいものよ。例えば……野犬とか、熊とか」
花帆「く、熊ぁ!?」
花帆「あはは…そうですね」
梢「だからね。ちゃんと頑丈な鉄格子をはめておかないと……“来る”のよ」
花帆「く、来る…?何がですか…?カワウソ…?」
梢「カワウソよりもっと大きいものよ。例えば……野犬とか、熊とか」
花帆「く、熊ぁ!?」
7: (しまむら) 2023/04/24(月) 20:50:48.48 ID:A+IVgmmu
梢「ええ。万が一猛獣が来ても大丈夫なように。けど、これは副次的な理由なの」
花帆「へ?他にも理由があるってことですか?」
梢「そうよ。実は他にも……動物以外も、来てしまうから」
花帆「動物以外?え?人ですか?」
梢「動物でも、人でもないモノ…かしら。皆が寝静まった頃になると、夜霧に乗ってやってきて……開いている窓から腕を伸ばして、寝ている生徒を攫っていくの」
花帆「えぇっ!?」
梢「だから、蓮ノ空の寮の窓には厳重に一台鉄格子がついてるの。万が一……もう二度と、突然生徒が居なくならないように」
花帆「ひぃっ!助けてさやかちゃん!」
花帆「へ?他にも理由があるってことですか?」
梢「そうよ。実は他にも……動物以外も、来てしまうから」
花帆「動物以外?え?人ですか?」
梢「動物でも、人でもないモノ…かしら。皆が寝静まった頃になると、夜霧に乗ってやってきて……開いている窓から腕を伸ばして、寝ている生徒を攫っていくの」
花帆「えぇっ!?」
梢「だから、蓮ノ空の寮の窓には厳重に一台鉄格子がついてるの。万が一……もう二度と、突然生徒が居なくならないように」
花帆「ひぃっ!助けてさやかちゃん!」
9: (しまむら) 2023/04/24(月) 20:53:28.83 ID:A+IVgmmu
さやか「もう……乙宗先輩、花帆さんをからかうのもほどほどにして下さいね」
梢「ふふっ、ごめんなさいね。花帆さんの反応がどうしても可愛らしくて」
花帆「えっえっ、じゃあ……今のは冗談?」
梢「ええ。これは作り話」
花帆「も〜!梢センパ〜イ!」ポカポカ
梢「花帆さんは表情がころころ変わるから、見ていて飽きないわね。でも、野犬や熊は本当よ。フェンスもあるし、この近くまで来ることは滅多に無いけど…自分から山の方には行かないようにね」
梢「ふふっ、ごめんなさいね。花帆さんの反応がどうしても可愛らしくて」
花帆「えっえっ、じゃあ……今のは冗談?」
梢「ええ。これは作り話」
花帆「も〜!梢センパ〜イ!」ポカポカ
梢「花帆さんは表情がころころ変わるから、見ていて飽きないわね。でも、野犬や熊は本当よ。フェンスもあるし、この近くまで来ることは滅多に無いけど…自分から山の方には行かないようにね」
11: (しまむら) 2023/04/24(月) 20:55:23.29 ID:A+IVgmmu
花帆「はぁ、びっくりした〜。さやかちゃんも怖かったよね?」
さやか「確かにびっくりはしましたけど……後半の話は明らかに怪談じゃないですか。流石に騙されませんよ。ですよね、綴理先輩」
綴理「うん。その通りだ」
さやか「ほら、綴理先輩もこう言って……」
綴理「確かそれって、“山のにおい”がついてる子が連れてかれちゃうんだよね。ボクも知ってるよ」
さやか「へ?」
梢「そうね。一度でも山に行った子、山で迷った子なんかは特に“あちら側”の存在だと勘違いしてしまうのよ。例えば……花帆さんみたいな、ね」
花帆「きゃあぁぁぁ!?」
さやか「確かにびっくりはしましたけど……後半の話は明らかに怪談じゃないですか。流石に騙されませんよ。ですよね、綴理先輩」
綴理「うん。その通りだ」
さやか「ほら、綴理先輩もこう言って……」
綴理「確かそれって、“山のにおい”がついてる子が連れてかれちゃうんだよね。ボクも知ってるよ」
さやか「へ?」
梢「そうね。一度でも山に行った子、山で迷った子なんかは特に“あちら側”の存在だと勘違いしてしまうのよ。例えば……花帆さんみたいな、ね」
花帆「きゃあぁぁぁ!?」
14: (しまむら) 2023/04/24(月) 20:57:58.53 ID:A+IVgmmu
花帆「うぅ〜、梢センパイも綴理センパイも嫌いです!」
梢「あらあら。ちょっとからかい過ぎちゃったかしら。許してくれる?花帆さん」
花帆「も〜。許しますけど〜」
さやか「私もちょっと怖かったです。お二人共、怖い話上手ですね…」
梢「そう言って貰えるとからかい甲斐があるわ。私も去年、先輩に聞かされたものよ」
花帆「嫌な伝統だなぁ……こんな話してたせいで、身体冷えてきちゃいましたよ。ちょっとランニングしてきます!」
梢「いってらっしゃい。無理しないようにね」
花帆「はーい!」
さやか「乙宗先輩って意外とお茶目ですよね。それに綴理先輩も。あんまり悪乗りして冗談言わないで下さいよ」
綴理「冗談?ボク、何か言ったっけ?」
さやか「……へ?」
梢「あらあら。ちょっとからかい過ぎちゃったかしら。許してくれる?花帆さん」
花帆「も〜。許しますけど〜」
さやか「私もちょっと怖かったです。お二人共、怖い話上手ですね…」
梢「そう言って貰えるとからかい甲斐があるわ。私も去年、先輩に聞かされたものよ」
花帆「嫌な伝統だなぁ……こんな話してたせいで、身体冷えてきちゃいましたよ。ちょっとランニングしてきます!」
梢「いってらっしゃい。無理しないようにね」
花帆「はーい!」
さやか「乙宗先輩って意外とお茶目ですよね。それに綴理先輩も。あんまり悪乗りして冗談言わないで下さいよ」
綴理「冗談?ボク、何か言ったっけ?」
さやか「……へ?」
16: (しまむら) 2023/04/24(月) 21:05:06.29 ID:A+IVgmmu
夜
花帆「よーし、今日の配信もしたし、ストレッチもやったし、復習もしたし、宿題も終わらせた!今日のやることはおしまい!結構遅くなっちゃったなぁ」
花帆「消灯時間過ぎてるし、早めに寝ないと怒られちゃうよ」
ガタガタガタッ!
花帆「わっ!って、風かぁ。窓が揺れるなんて…すごい強くなってきてる……」
『窓から腕を伸ばして、寝ている生徒を攫っていくの』
花帆「……っ!」ゴクリ
花帆「よーし、今日の配信もしたし、ストレッチもやったし、復習もしたし、宿題も終わらせた!今日のやることはおしまい!結構遅くなっちゃったなぁ」
花帆「消灯時間過ぎてるし、早めに寝ないと怒られちゃうよ」
ガタガタガタッ!
花帆「わっ!って、風かぁ。窓が揺れるなんて…すごい強くなってきてる……」
『窓から腕を伸ばして、寝ている生徒を攫っていくの』
花帆「……っ!」ゴクリ
17: (しまむら) 2023/04/24(月) 21:06:24.21 ID:A+IVgmmu
花帆「窓の外は……」キィー
花帆「な、何もいないよね……あ、あはは」
花帆「あれは梢センパイの悪い冗談だし!正体見たり枯れ尾花!怖がる必要なんて全然……」
ザザザッ!
花帆「ひゃっ!?今度は何〜!?」
花帆「き、木の枝が揺れてる音…?うぅ〜、枯れ尾花でも怖いのは怖いよ〜!梢センパイの話頭から離れないし、このままじゃ怖くて寝れないや」
花帆「どうしよう……そうだ!」
花帆「な、何もいないよね……あ、あはは」
花帆「あれは梢センパイの悪い冗談だし!正体見たり枯れ尾花!怖がる必要なんて全然……」
ザザザッ!
花帆「ひゃっ!?今度は何〜!?」
花帆「き、木の枝が揺れてる音…?うぅ〜、枯れ尾花でも怖いのは怖いよ〜!梢センパイの話頭から離れないし、このままじゃ怖くて寝れないや」
花帆「どうしよう……そうだ!」
18: (しまむら) 2023/04/24(月) 21:07:50.43 ID:A+IVgmmu
梢「……」スヤスヤ
コンコン
梢「んっ……?気のせい…?」
コンコンコン
梢「寮母さんかしら?はい……」
花帆「こ、梢せんぱぁい」
梢「か、花帆さん!?どうしたの?何故私の部屋に……」
花帆「あたし……あたし……」
梢「と、取り敢えず部屋に入って頂戴。見つかったら花帆さんも怒られちゃうわ」
コンコン
梢「んっ……?気のせい…?」
コンコンコン
梢「寮母さんかしら?はい……」
花帆「こ、梢せんぱぁい」
梢「か、花帆さん!?どうしたの?何故私の部屋に……」
花帆「あたし……あたし……」
梢「と、取り敢えず部屋に入って頂戴。見つかったら花帆さんも怒られちゃうわ」
22: (しまむら) 2023/04/24(月) 21:10:12.83 ID:A+IVgmmu
花帆「あたし、昼間の話を思い出して……そしたら窓の外が急に怖くなっちゃって、それで…」
梢「そうだったの……」
花帆「うぅ〜……センパイ…」
梢「花帆さん、ごめんなさいね。流石に良くない冗談だったわ」
梢「そしたら……今日は一緒に寝ましょうか」
花帆「えっ!?良いんですか?」
梢「ええ、もちろん。怖がらせちゃったお詫びに……なるかはわからないけれど」
花帆「なる!なります!やった〜、梢センパイとおとまりだ〜!」
梢「あんまり大きな声は出さないでね。秘密だもの。でもそんなに喜んでもらえるなんて。それじゃあ、ベッドに行きましょう?」
花帆「はい!秘密のおとまり〜」
梢「そうだったの……」
花帆「うぅ〜……センパイ…」
梢「花帆さん、ごめんなさいね。流石に良くない冗談だったわ」
梢「そしたら……今日は一緒に寝ましょうか」
花帆「えっ!?良いんですか?」
梢「ええ、もちろん。怖がらせちゃったお詫びに……なるかはわからないけれど」
花帆「なる!なります!やった〜、梢センパイとおとまりだ〜!」
梢「あんまり大きな声は出さないでね。秘密だもの。でもそんなに喜んでもらえるなんて。それじゃあ、ベッドに行きましょう?」
花帆「はい!秘密のおとまり〜」
25: (しまむら) 2023/04/24(月) 21:18:49.76 ID:A+IVgmmu
花帆「えへへ……梢センパイのベッド、あったかくて…いいにおい…」
梢「は、恥ずかしいわねえ……あまり嗅がないで頂戴?」
花帆「え〜?お花みたいで素敵ですよ?梢センパイの優しいにおいがします!」
梢「もう…」
花帆「にしても、なんだか新鮮です。梢センパイはきちっと制服着てるところばっかりだったから……パジャマ姿は初めて見たかも」
梢「は、恥ずかしいわねえ……あまり嗅がないで頂戴?」
花帆「え〜?お花みたいで素敵ですよ?梢センパイの優しいにおいがします!」
梢「もう…」
花帆「にしても、なんだか新鮮です。梢センパイはきちっと制服着てるところばっかりだったから……パジャマ姿は初めて見たかも」
26: (しまむら) 2023/04/24(月) 21:21:41.65 ID:A+IVgmmu
梢「そうね。寮生活とはいえ、就寝前に誰かと会うことはそう多くないもの」
花帆「梢センパイのパジャマ、すっごく可愛いですよ!とーっても似合ってます!」
梢「そうかしら…?寝間着をあまり意識したことはないのだけれど」
花帆「はい!もうそれでステージに出られるくらい!」
梢「それは流石に……でも、褒めてくれてありがとう」
梢「花帆さんのも可愛らしいわ。良く似合ってるじゃない」
花帆「ありがとうございます!……あっ!今度パジャマ配信なんてのはどうですか!?パジャマパーティーみたいで楽しいと思うんです!」
梢「パジャマで……花帆さんらしい発想ね。あまりだらしのないところを見せるのは憚られるけれど……ええ。良いと思うわ」
花帆「はい!一緒に配信しましょうね!」
梢「ふふ、楽しみにしているわね」
花帆「梢センパイのパジャマ、すっごく可愛いですよ!とーっても似合ってます!」
梢「そうかしら…?寝間着をあまり意識したことはないのだけれど」
花帆「はい!もうそれでステージに出られるくらい!」
梢「それは流石に……でも、褒めてくれてありがとう」
梢「花帆さんのも可愛らしいわ。良く似合ってるじゃない」
花帆「ありがとうございます!……あっ!今度パジャマ配信なんてのはどうですか!?パジャマパーティーみたいで楽しいと思うんです!」
梢「パジャマで……花帆さんらしい発想ね。あまりだらしのないところを見せるのは憚られるけれど……ええ。良いと思うわ」
花帆「はい!一緒に配信しましょうね!」
梢「ふふ、楽しみにしているわね」
27: (しまむら) 2023/04/24(月) 21:24:25.77 ID:A+IVgmmu
梢「…そうだわ。花帆さん。思い出させる訳ではないけれど……鉄格子の本当の理由を知りたくないかしら?本当のことを知れば、少しは怖くなくなると思うの」
花帆「本当の、理由ですか?それってまた怖いのじゃ……」
梢「安心して。もう怖い話はしないわ。理由は大きく分けて二つあるの。まず一つは……中から外へ行かないように」
花帆「中から…って、あたしたちってことですか?やっぱりここは牢獄!?」
梢「違うのよ。特に夜の山は暗いし、足元も見えなくなるでしょう?下手に外に出ちゃうと、遭難しちゃう恐れもあるの。だからフェンスと同じように、安全のため脱走させないようにというのが一つ」
花帆「本当の、理由ですか?それってまた怖いのじゃ……」
梢「安心して。もう怖い話はしないわ。理由は大きく分けて二つあるの。まず一つは……中から外へ行かないように」
花帆「中から…って、あたしたちってことですか?やっぱりここは牢獄!?」
梢「違うのよ。特に夜の山は暗いし、足元も見えなくなるでしょう?下手に外に出ちゃうと、遭難しちゃう恐れもあるの。だからフェンスと同じように、安全のため脱走させないようにというのが一つ」
28: (しまむら) 2023/04/24(月) 21:27:15.67 ID:A+IVgmmu
花帆「うぐ……も、もう一つは?」
梢「もう一つは、外から中へ入ってこないように、よ」
花帆「外からって……オバケですか!?怖い話はしないって言ったのに!」
梢「うふふ、けれど残念。入ってくるのはお化けではないわ」
花帆「じゃあ…熊?」
梢「それも外れ。正解は……枝」
花帆「えだ?えだって、あの枝ですか?木の?」
梢「そうよ。寮の外は木が多いでしょう?金沢はそこまで多い訳ではないけれど…たまに嵐が来ると、木の枝が折れて飛んでくることがあるの」
花帆「それはそれで怖いですね…」
梢「もう一つは、外から中へ入ってこないように、よ」
花帆「外からって……オバケですか!?怖い話はしないって言ったのに!」
梢「うふふ、けれど残念。入ってくるのはお化けではないわ」
花帆「じゃあ…熊?」
梢「それも外れ。正解は……枝」
花帆「えだ?えだって、あの枝ですか?木の?」
梢「そうよ。寮の外は木が多いでしょう?金沢はそこまで多い訳ではないけれど…たまに嵐が来ると、木の枝が折れて飛んでくることがあるの」
花帆「それはそれで怖いですね…」
29: (しまむら) 2023/04/24(月) 21:31:13.69 ID:A+IVgmmu
梢「そうなの。もし部屋の窓ガラスにでも当たったら、大変なことになるわ。昔、校舎の方の鉄格子が付いていない窓に当たって…大きく割れてしまったこともあったらしいの。だから、寮の窓の外には鉄格子がはめてあるのよ。一応の防御策ね」
花帆「へぇ〜、そうだったんですか……」
梢「もちろん他にも、猛獣や不審者が入ってこれないようにっていうのもあるけれどね。ほら、蓮ノ空って全寮制の女子高でしょう?セキュリティ対策は万全を期しておきたいみたい」
花帆「なるほど……あ、そう言えば入学した時にさんざん校則とか時間厳守とか言われたけど、実際はそこまで厳しい訳じゃないですよね」
梢「ええ。それも、大事な女子たちを預かる建前上って感じかしら。アクセサリーとかを付けてる子も多いし、申請すれば校外に行くことも案外簡単にできるもの」
梢「入学した時の喚起も……一年生に脅しをかけて、最初に規則を意識させるためのものね。もちろん、だからといって無視していい訳でもないから、そこは頭に入れておきなさいね」
花帆「へぇ〜、そうだったんですか……」
梢「もちろん他にも、猛獣や不審者が入ってこれないようにっていうのもあるけれどね。ほら、蓮ノ空って全寮制の女子高でしょう?セキュリティ対策は万全を期しておきたいみたい」
花帆「なるほど……あ、そう言えば入学した時にさんざん校則とか時間厳守とか言われたけど、実際はそこまで厳しい訳じゃないですよね」
梢「ええ。それも、大事な女子たちを預かる建前上って感じかしら。アクセサリーとかを付けてる子も多いし、申請すれば校外に行くことも案外簡単にできるもの」
梢「入学した時の喚起も……一年生に脅しをかけて、最初に規則を意識させるためのものね。もちろん、だからといって無視していい訳でもないから、そこは頭に入れておきなさいね」
30: (しまむら) 2023/04/24(月) 21:34:58.29 ID:A+IVgmmu
花帆「梢センパイ、すっごく物知りですね!」
梢「ありがとう。でも、昼間の話だって同じようなものなのよ?」
花帆「へ?」
梢「山っていうのは、本当に怖い場所だから。色々なところで信仰として『山に対する禁忌』が多く伝えられてるのは、山で下手なことをするのは本当に命にかかわるからなの」
梢「何があるかわからないし、何がいるかもわからない。だから山への恐怖感を与えるために、あのお話も代々一年生に語られてきたの。伝承を教訓として受け継がせるためにね」
花帆「そうだったんですか…」
梢「他にも色々あったかしら。シシノケっていう妖怪の話だとか、カワウソに化かされた話だとか…昼間の話にも、確かモチーフがあったはずよ。つまりは実在の怪談ってことね」
花帆「そ、そこまで言わなくても良いですよ!また怖くなっちゃいます!」
梢「ありがとう。でも、昼間の話だって同じようなものなのよ?」
花帆「へ?」
梢「山っていうのは、本当に怖い場所だから。色々なところで信仰として『山に対する禁忌』が多く伝えられてるのは、山で下手なことをするのは本当に命にかかわるからなの」
梢「何があるかわからないし、何がいるかもわからない。だから山への恐怖感を与えるために、あのお話も代々一年生に語られてきたの。伝承を教訓として受け継がせるためにね」
花帆「そうだったんですか…」
梢「他にも色々あったかしら。シシノケっていう妖怪の話だとか、カワウソに化かされた話だとか…昼間の話にも、確かモチーフがあったはずよ。つまりは実在の怪談ってことね」
花帆「そ、そこまで言わなくても良いですよ!また怖くなっちゃいます!」
31: (しまむら) 2023/04/24(月) 21:38:51.76 ID:A+IVgmmu
梢「そう?じゃあ、ここまでにしておきましょうか。明日も朝練があるし、そろそろ寝ないとね。実は私も誰かと一緒に寝るのは初めてで……少し興奮してしまったのかもしれないわね。ごめんなさい」
花帆「いえいえ!センパイのお話、知らないことばっかりで楽しかったです!今度また色々聞かせてください」
梢「ええ。色々面白いお話を蓄えておかなきゃね」
花帆「……それで、あの。センパイ」
梢「どうしたの?」
花帆「センパイのお陰であんまり怖くは無くなったんですけど……でもやっぱりちょっと怖くて。今日だけは……手繋いで寝ても、良いですか…?」
梢「……ええ。もちろんよ」ギュッ
花帆「いえいえ!センパイのお話、知らないことばっかりで楽しかったです!今度また色々聞かせてください」
梢「ええ。色々面白いお話を蓄えておかなきゃね」
花帆「……それで、あの。センパイ」
梢「どうしたの?」
花帆「センパイのお陰であんまり怖くは無くなったんですけど……でもやっぱりちょっと怖くて。今日だけは……手繋いで寝ても、良いですか…?」
梢「……ええ。もちろんよ」ギュッ
33: (しまむら) 2023/04/24(月) 21:43:19.25 ID:A+IVgmmu
花帆「わぁ…えへへ。センパイの手、すべすべで柔らかくて……なんだか安心します」
梢「花帆さんの手は、とっても暖かいわね」
花帆「そうですか?体温高いのかなぁ」
梢「体温もそうだけれど……貴女は、いつも周りをあたためてくれる存在よ。太陽みたいに眩しくて、素敵な……ね」
花帆「そ、そこまで言われると照れちゃいますよ」
梢「ふふっ、そう?でもこれは冗談でもなく…私の本心だから、ね?」
花帆「ひゃあ……」
梢「花帆さんの手は、とっても暖かいわね」
花帆「そうですか?体温高いのかなぁ」
梢「体温もそうだけれど……貴女は、いつも周りをあたためてくれる存在よ。太陽みたいに眩しくて、素敵な……ね」
花帆「そ、そこまで言われると照れちゃいますよ」
梢「ふふっ、そう?でもこれは冗談でもなく…私の本心だから、ね?」
花帆「ひゃあ……」
34: (しまむら) 2023/04/24(月) 21:44:02.18 ID:A+IVgmmu
花帆「もう……あの、梢センパイ」
梢「なにかしら?」
花帆「色々、ありがとうございました。あたし……なんだかいい夢が見れそうです」
梢「……私もよ。昼間は怖い思いをさせてしまった分、今夜は安心して眠ってね。おやすみなさい、花帆さん」
花帆「はい。おやすみなさい。梢センパイ」
梢「なにかしら?」
花帆「色々、ありがとうございました。あたし……なんだかいい夢が見れそうです」
梢「……私もよ。昼間は怖い思いをさせてしまった分、今夜は安心して眠ってね。おやすみなさい、花帆さん」
花帆「はい。おやすみなさい。梢センパイ」
36: (しまむら) 2023/04/24(月) 21:45:47.72 ID:A+IVgmmu
梢「……さん。花帆さん」
花帆「うぅ〜ん……むにゃ……」
梢「花帆さん。朝よ。起きて頂戴?」
花帆「んん…?あれ、梢センパイ…?なんで?」
花帆「あっ……そっか。あたし、梢センパイの部屋で寝たんだった」
梢「良く眠れたかしら?少し狭かったと思うのだけれど……」
花帆「いえ!梢センパイが隣にいてくれたので、すっごく安心できました!」
梢「なら良かったわ。さて、もうすぐ朝練よ。花帆さんも身支度があるでしょうし、一度部屋に戻ってまた集合しましょう。寮母さんにバレないように、こっそりね?」
花帆「うぅ〜ん……むにゃ……」
梢「花帆さん。朝よ。起きて頂戴?」
花帆「んん…?あれ、梢センパイ…?なんで?」
花帆「あっ……そっか。あたし、梢センパイの部屋で寝たんだった」
梢「良く眠れたかしら?少し狭かったと思うのだけれど……」
花帆「いえ!梢センパイが隣にいてくれたので、すっごく安心できました!」
梢「なら良かったわ。さて、もうすぐ朝練よ。花帆さんも身支度があるでしょうし、一度部屋に戻ってまた集合しましょう。寮母さんにバレないように、こっそりね?」
37: (しまむら) 2023/04/24(月) 21:47:59.18 ID:A+IVgmmu
花帆「はい!……あの、センパイ」
梢「何かしら?」
花帆「また……お部屋に泊まりに来ても、良いですか?その……こ、怖くて眠れなくなっちゃった時とか!」
梢「ふふっ、もちろんよ。あんまり毎日は困るけれど……バレない程度なら、いつでもいらっしゃい」
花帆「わぁ…!ありがとうございます!」
花帆「じゃああたし、着替えてきますね!」
梢「花帆さんは朝から元気ね。……でも、そうね」
梢「私も……いつもより気持ちよくて、少し寝坊してしまったみたいね。これも花帆さんのおかげかしら。……たまにはこういうのも、悪くはないわね」
梢「何かしら?」
花帆「また……お部屋に泊まりに来ても、良いですか?その……こ、怖くて眠れなくなっちゃった時とか!」
梢「ふふっ、もちろんよ。あんまり毎日は困るけれど……バレない程度なら、いつでもいらっしゃい」
花帆「わぁ…!ありがとうございます!」
花帆「じゃああたし、着替えてきますね!」
梢「花帆さんは朝から元気ね。……でも、そうね」
梢「私も……いつもより気持ちよくて、少し寝坊してしまったみたいね。これも花帆さんのおかげかしら。……たまにはこういうのも、悪くはないわね」
38: (しまむら) 2023/04/24(月) 21:49:06.62 ID:A+IVgmmu
花帆「ふわぁ……梢センパイのベッド、気持ちよかったなぁ……究極の安眠ベッドだね。一家に一台欲しいくらい。あそこならいつでも寝れちゃうよ!」
花帆「寮母さんにも見つからなかったし、大丈夫そうかな。あんな体験ができたなら、昨日の怪談も聞けてよかったかも」
花帆「ただいま〜、なんて。誰もいないけどね」ガチャ
花帆「……ん?あれ?」
花帆(なんか…違和感があるような。何かが……いつもと違う?)
花帆「寮母さんにも見つからなかったし、大丈夫そうかな。あんな体験ができたなら、昨日の怪談も聞けてよかったかも」
花帆「ただいま〜、なんて。誰もいないけどね」ガチャ
花帆「……ん?あれ?」
花帆(なんか…違和感があるような。何かが……いつもと違う?)
39: (しまむら) 2023/04/24(月) 21:50:47.93 ID:A+IVgmmu
花帆「……あっ、そうだ枕!枕が見当たらないんだ。え?あたし……昨日枕どこかにやったっけ?」
花帆「梢センパイのところには持ってってないし、洗ったり動かしたりした記憶も無いんだけどなぁ……」
ビュウゥゥゥ…
花帆「わぁ!?」
花帆「なーんだ、風かぁ。……風?」
花帆「あ、そっか。あたし、窓の外を確認してすぐ怖くなって部屋を飛び出したから……窓閉めずに出ちゃってたんだ」
花帆「嫌だなぁ……虫とか入ってないと良いんだけど」
花帆「梢センパイのところには持ってってないし、洗ったり動かしたりした記憶も無いんだけどなぁ……」
ビュウゥゥゥ…
花帆「わぁ!?」
花帆「なーんだ、風かぁ。……風?」
花帆「あ、そっか。あたし、窓の外を確認してすぐ怖くなって部屋を飛び出したから……窓閉めずに出ちゃってたんだ」
花帆「嫌だなぁ……虫とか入ってないと良いんだけど」
40: (しまむら) 2023/04/24(月) 21:52:07.77 ID:A+IVgmmu
花帆(……あれ?窓が空いてて……あたしの枕が見当たらない。昨日は確かにあったはずなのに。……この状況、どこかで聞いたことがあるような)
梢『動物でも、人でもないモノ、よ。皆が寝静まった頃になると、夜霧に乗ってやってきて……窓から腕を伸ばして、寝ている生徒を攫っていくの』
綴理『確かそれって、山のにおいがついてる子が連れてかれちゃうんだよね』
梢『昼間の話にも、確かモチーフがあったはずよ。つまりは実在の怪談ってことね』
花帆「……ま、まさか……ね」
ビュウゥゥ……
花帆「……」ゴクリ
梢『動物でも、人でもないモノ、よ。皆が寝静まった頃になると、夜霧に乗ってやってきて……窓から腕を伸ばして、寝ている生徒を攫っていくの』
綴理『確かそれって、山のにおいがついてる子が連れてかれちゃうんだよね』
梢『昼間の話にも、確かモチーフがあったはずよ。つまりは実在の怪談ってことね』
花帆「……ま、まさか……ね」
ビュウゥゥ……
花帆「……」ゴクリ
41: (しまむら) 2023/04/24(月) 21:54:42.33 ID:A+IVgmmu
花帆(それからあたしは、時々……特に風の強い日なんかは、梢センパイの部屋にお邪魔して一緒に寝ることが多くなった)
花帆(梢センパイはあたしが甘えているだけと思ってるみたいだけど……実際のところ、甘えと恐怖のどちらが本心なのか……あたしにもわからない)
花帆(ただ一つ、確実にはっきりしてることがある。部屋で寝る時も、梢センパイの部屋で練る時も……あたしは絶対に、窓が閉まってるのを確認してから寝るようになった)
花帆(梢センパイはあたしが甘えているだけと思ってるみたいだけど……実際のところ、甘えと恐怖のどちらが本心なのか……あたしにもわからない)
花帆(ただ一つ、確実にはっきりしてることがある。部屋で寝る時も、梢センパイの部屋で練る時も……あたしは絶対に、窓が閉まってるのを確認してから寝るようになった)
43: (しまむら) 2023/04/24(月) 21:58:56.08 ID:A+IVgmmu
おわり
金沢は伝承も多いので、沼津と同じくホラーに向いてると思います。
ネタは昨日書いたssスレのレスから戴きました。若干テイストは異なったとは思いますが、ご提供ありがとうございました。
金沢は伝承も多いので、沼津と同じくホラーに向いてると思います。
ネタは昨日書いたssスレのレスから戴きました。若干テイストは異なったとは思いますが、ご提供ありがとうございました。
44: (たこやき) 2023/04/24(月) 22:01:39.24 ID:FfzJXyL5
素晴らしい作品だったわね、雰囲気もこれからの季節に中々合っていたと思うわ
次も期待しているわ
次も期待しているわ
45: (たこやき) 2023/04/24(月) 22:02:44.23 ID:qJnsg2K6
先輩(後輩)の部屋に夜に会いにいく後輩(先輩)ってシチュか?
それなら書いた者やがホラーテイストが同居してて素敵やんけ
それなら書いた者やがホラーテイストが同居してて素敵やんけ
51: (しまむら) 2023/04/24(月) 22:08:52.26 ID:A+IVgmmu
>>45
そこから着想を得てます。
素敵なシチュ、ありがとうございました!
そこから着想を得てます。
素敵なシチュ、ありがとうございました!
46: (もんじゃ) 2023/04/24(月) 22:03:28.85 ID:xY/JuTA4
百合としてもホラーとしても楽しめる、一粒で二度美味しい作品だったわね
素晴らしいわ
素晴らしいわ
47: (もんじゃ) 2023/04/24(月) 22:04:54.73 ID:Ejdw+mJZ
乙
素敵なssをありがとね
素敵なssをありがとね
48: (もんじゃ) 2023/04/24(月) 22:05:43.85 ID:L9FF2oue
アレンジを加えてこれまでと趣向の異なるお話しを読めて良かったです
これからも、皆さんにきらめきを届けてくださると嬉しいわ
これからも、皆さんにきらめきを届けてくださると嬉しいわ
50: (あら) 2023/04/24(月) 22:08:39.73 ID:9gzQWjnf
質もさることながらこの速さ…
驚嘆に値するわ
驚嘆に値するわ
52: (泡盛) 2023/04/24(月) 22:09:01.82 ID:sY/6LXeC
怖いよ怖いよ
53: (もんじゃ) 2023/04/24(月) 22:13:36.80 ID:/JbPCWJB
なぜか梢センパイが枕2つ持ってるんだよね…
54: (もんじゃ) 2023/04/24(月) 22:17:33.84 ID:GQ8FSbLv
……あれ?さやの部屋、枕が2つあるんだ
55: (SIM) 2023/04/24(月) 22:26:31.95 ID:c4vuO4s7
麻布狸穴町…というかどちらかといえば東麻布の法務局の近くなのだけれどアル ァインっていうS 専用ホテルをご存じかしら
わたくし女囚の檻っていうお部屋が好きなのだけれどそことなにか通じるものを感じているわ
花帆さん、あとはあまり説明いらないわよね?
わたくし女囚の檻っていうお部屋が好きなのだけれどそことなにか通じるものを感じているわ
花帆さん、あとはあまり説明いらないわよね?
56: (もんじゃ) 2023/04/24(月) 22:28:09.94 ID:j8x4Zqs6
>>55
…梨子さん、帰りますわよ
…梨子さん、帰りますわよ
57: (もんじゃ) 2023/04/24(月) 22:52:42.53 ID:FGIG48d4
メンバー全員が寮生活っていうのも素敵なシチュエーションですわね…
綴理先輩が「分かる」タイプなのも解釈一致ですわ
あの方にはどんな世界が見えているのでしょうね…
綴理先輩が「分かる」タイプなのも解釈一致ですわ
あの方にはどんな世界が見えているのでしょうね…
59: (たまごやき) 2023/04/25(火) 00:12:51.09 ID:EQrK0U2U
枕を持っていったのは梢先輩でしょう?
簡単な叙述トリックだったわね
簡単な叙述トリックだったわね
61: (もんじゃ) 2023/04/25(火) 07:56:27.79 ID:sl/mOTYJ
シシノケって有名な洒落怖だな
あんなものが突然窓の外に出てきたらそりゃビビる
あんなものが突然窓の外に出てきたらそりゃビビる
49: (SB-iPhone) 2023/04/24(月) 22:07:16.50 ID:oYcdqrtF
キャラの解像度が素晴らしいSSね
全員がまるで生きているようで読んでいて声が聞こえてくるわ
これからも蓮ノ空SSを書いてくれると嬉しいのだけれど
全員がまるで生きているようで読んでいて声が聞こえてくるわ
これからも蓮ノ空SSを書いてくれると嬉しいのだけれど
引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1682336009/