善子「最後ノート?」【ラブライブ!SS】

Guilty KissーSS


1: 2017/11/20(月) 23:14:56.96 ID:EDIKlp6Z
 -沼津


??「そのノートに名前を書かれた人の……」

善子「ま、まさか……死ぬ……なんてことが!?」

??「それはデスノートやね。これは名前を書かれた人の最後、死因が見れるノートや」

善子「死因?」

??「生き物は必ず死ぬ。でも死に方は様々……これにはそれが見える」

善子「はぁ……」
 

2: 2017/11/20(月) 23:15:28.45 ID:EDIKlp6Z
善子「そんな物があるとして、どうしてこんな路地裏の露天商なんかで売られてるのよ」

??「そこはそれ、スピリチュアルやん?」

善子「だいたいいつか死ぬのは当然だし、それがわかったところでどうしようもないし…」

??「キミは、運命ってものを信じる?」

善子「ふ、愚問ね。この身はすでに堕天の運命に導かれ、いづれ訪れるであろうラグナロクによって…」

??「あーはいはい、信じてるってことね」

善子「最後まで聞きなさいよ!」
 

3: 2017/11/20(月) 23:16:03.87 ID:EDIKlp6Z
??「でもね、そんなものは最後の最後にどうしようもなくなった時、自分を納得させるだけの詭弁やん?」

善子「え?」

??「すべては運命だった、だから仕方がないって……なんやそれって思うやんか…」

善子「ど、どういう事?」

??「運命は抗えるもの。でも人は人生においてその可能性に気づく事はない」

善子(な、なにこの雰囲気……)ゴクリ

??「運命というものがあるとして、それに抗えるのはそれを知る者だけなんよ」

善子「知る者だけ……?」
 

4: 2017/11/20(月) 23:16:49.74 ID:EDIKlp6Z
??「このノートに書かれた人が最後どうなるのかが分かる。わかるという事は?」

善子「わかるという事は……運命を知る事……」

??「覆す方法はそれだけ。運命を知るという事は、干渉できるという事…」

善子「本当にこれにそんな力が……」ゴクリ

??「っていう売り文句のノートやけど、実際はわからんけどね~」

善子「って、なによそれっ!」

??「でも、カッコイイって思ったやろ?」ニヤ

善子「う………」ドキッ
 

6: 2017/11/20(月) 23:17:43.96 ID:EDIKlp6Z
??「その最後ノート最後の一冊やし、お安くしとくよ?」

善子「最後って、こんなものが複数あるの?」

??「人気商品やってん」

善子「信憑性もありがたみもなんにもないじゃない…」

??「どないするー?」

善子「普通のノートとして見てもいいデザインだから買うけど…なんかなー」

??「ふふ、毎度ありなんよ」
 

7: 2017/11/20(月) 23:18:31.90 ID:EDIKlp6Z
 -善子ちゃんのお部屋


善子「効果はどうせ嘘だろうけど、今度の生放送で使えそうよねこのデザイン」

善子「…………」


善子「た、ためしに名前を……」サッ

善子「えっと取説によると、その人物をイメージしながら名前を書くとその人物の死亡年齢、死因が表記されるか…」

善子「自分の名前はダメなのね。その場でどんどん死因が変わっちゃうから……よくわからないわね」

善子「…………」
 

8: 2017/11/20(月) 23:19:16.85 ID:EDIKlp6Z
善子「どうしよう…いざ書くとなっても、もし本当だとして、誰の名前を書いていいのか……」

善子「でもきっと冗談だろうし、て、適当でいいわよね……よ、よし……」ゴクリ…


 サラサラ……


善子「……………」


 黒澤ルビィ


善子「な、なんとなくルビィの名前書いちゃったけど、あの子って長生きしそうなイメージだから…きっと…」

善子「………あっ!」
 

9: 2017/11/20(月) 23:19:58.32 ID:EDIKlp6Z
 黒澤ルビィ
 享年94歳 老衰にて死亡


善子「え、ちょ……文字が浮かび上がって…これ……」

善子「ほ、本物じゃないのよぉ!!」ガタッ

善子「てかホントに長生きねルビィ!」


善子「ってどうしよう……300円でえらいもん手にしちゃった……」

善子「………た、ためしにもう一人……」ドキドキ


 サラサラ……


善子「もう一人長生きしそうな………」


 小原鞠莉
 

12: 2017/11/20(月) 23:21:04.43 ID:EDIKlp6Z
善子「あ、また文字が………」


 小原鞠莉
 享年155歳 冷凍睡眠施設が地震により倒壊、圧迫死


善子「……………」


善子「小原家すげー……」

善子「と、とにかくこれは本物……で、いいのよね?」
 

13: 2017/11/20(月) 23:21:51.90 ID:EDIKlp6Z
善子「人の最後を知ることが出来る最後ノート……」

善子「ふ、ふふ……これは死の天使ザルエラがこの堕天使ヨハネにもたらした聖典!」クワッ


善子「……いやまぁ300円なんだけど……でもどうすんのよコレ……」

善子「そ、そうだ、ためしに……」


 サラサラ……


善子「さすがにないかな……」ドキドキ


 株式会社プシロード
 

14: 2017/11/20(月) 23:22:35.02 ID:EDIKlp6Z
善子「あ………」


 株式会社プシロード
 創業22年目にブランド力低下により他社に吸収合併され商標登録を移譲、抹消される


善子「な、生々しい……」

善子「というか企業名でも運命がわかるのね……まぁ知ったところでどうしようもないけど」

善子「えっとじゃあ次は……」


 サラサラ…


善子「ルビィが長生きならきっと……」


 黒澤ダイヤ
 

15: 2017/11/20(月) 23:23:23.95 ID:EDIKlp6Z
善子「お、でてきた……どれどれ」


 黒澤ダイヤ
 享年37歳 急性くも膜下出血により死亡


善子「……………」

善子「やば………なんかマジっぽいのでちゃった……」

善子「てか急性くも膜下出血ってなに? ダイヤって病気もちなの?」

善子「これはちゃんと調べれば回避できるのかな……明日ちゃんと確認しないと…」
 

16: 2017/11/20(月) 23:24:20.45 ID:EDIKlp6Z
善子「んー……本物だって確信もないけど、マジっぽいのきたら対処に困るし、あと一人だけ書いて終わろ…」

善子「ちょっと気になっちゃうのは…と……」


 サラサラ……


善子「人の運命を盗み見てる気がして興奮と同時に後ろめたさもあるわねコレ…」

善子「あ、でてきた…えーっと…」


善子「嘘でしょ……」


 桜内梨子
 享年17歳 観覧車の落下事故による内臓損傷により死亡
 

17: 2017/11/20(月) 23:25:13.02 ID:EDIKlp6Z
善子「そんな……17歳って……この前の誕生日会でそう言ってたから……」

善子「梨子が……リリーが………一年以内に死ぬ…ってこと?」

善子「じ、冗談よねこれ……こんな事ホントにあるわけ……」



善子「あるわけ……」ジワ

善子「グス………梨子ぉ………」


善子「…………」
 

18: 2017/11/20(月) 23:26:02.75 ID:EDIKlp6Z
善子「ううん違う……これは何もしなかったらそうなるって事よ……」

善子「私はそれを知った……梨子の運命を知ることが出来た……なら後は…」

 グシグシ

善子「運命に干渉して……回避してみせる!絶対に死なせたりしない!!」グッ



善子「……………………」


善子「でも何月何日に事故にあるとか書いてないし…どうすれば……」
 

19: 2017/11/20(月) 23:27:11.21 ID:EDIKlp6Z
善子「情報としてあるのは、17歳のうちに観覧車の事故に巻き込まれるって事…」

善子「落下事故によるものという事は乗っていたか近くにいた…どこかの観覧車で……でも静岡だけでもけっこうあるよね……」

善子「うーん……とにかく梨子を観覧車のある場所に行かせなければいいのかなぁ?」


善子「明日行くなんて事、ないと思うけど……LINEで聞いて見ようかな…」

 ピコン

ヨハネ『いきなりなんだけど、近々観覧車に乗りに行く予定ある?』


善子「遊園地にいく予定のほうがよかったかな……あーでも観覧車だけあるところもあるし…」

善子「あ、既読ついた……」


善子「………………」
 

21: 2017/11/20(月) 23:28:25.33 ID:EDIKlp6Z
 -次の日


善子「結局返信なしのままか……読んで寝ちゃったのかな?」

善子「こうなったら学校で直接聞いてみよっ」


 -通学用バス車内


善子「あれ、曜が乗ってこない……寝坊かな?」
 

22: 2017/11/20(月) 23:29:15.30 ID:EDIKlp6Z
 -二年生教室


善子「えーっと……」キョロキョロ

むつ「あれ、善子ちゃんじゃんどしたの?」

善子「ヨハネよっ…て、あの、梨子を探しているんだけど…」

むつ「そういえばさっき曜と千歌を連れてどこかに行ったよ」

善子「むぅ…すれ違いか……」

むつ「もうじきHRはじまるよ?」

善子「仕方ない、出直すわ」

むつ「要件伝えようか?」

善子「いえ、大丈夫です」
 

23: 2017/11/20(月) 23:30:00.91 ID:EDIKlp6Z
ルビィ「おはよ~善子ちゃん」

花丸「おはよーずら」

善子「…………」


ルビィ「ど、どうしたの?」

善子「いつも元気ねルビィ」

ルビィ「え、ど、どうして?」

善子「なんでもないわ。いつまでも健康的にね」

ルビィ「ぅゅ……?」
 

24: 2017/11/20(月) 23:30:46.31 ID:EDIKlp6Z
 -放課後 二年生教室


善子「なんだっていうのよ……休み時間も昼休みもすぐにいなくなって……」ハァハァ…

むつ「来てる事は伝えてあるんだけどねぇ…」

善子「放課後と同時にダッシュで帰ったってどういう事なのよ!」

むつ「なんだかすごく慌てていたみたいだから、用事でもあるんじゃないの?」

善子「LINE通知で二年生三人が練習休むって連絡だけして……なんなのよ……」
 

25: 2017/11/20(月) 23:31:28.77 ID:EDIKlp6Z
鞠莉「今日はちかっち達が急用らしくてお休みだから、基礎練メインにしてフォーメーション練習は次にしましょうか」

果南「そうだね、とりあえず走り込みに行こうか」

善子「……………」ジー


鞠莉「ん、どうしたの?」

善子「いや……えっと……」

鞠莉「ん?」

善子「小原家って冷凍睡眠施設とかあるの?」

鞠莉「っ!?」ビクッ

善子「へ?」
 

27: 2017/11/20(月) 23:32:09.94 ID:EDIKlp6Z
鞠莉「善子……」ズイ

善子「え、ちっ近い……」

鞠莉「そんなのあるわけないじゃない、冗談にしてもおもしろくないわよ」ボソ

善子「」


ダイヤ「なにしてますのー?」

ルビィ「行くよ~善子ちゃん」


鞠莉「今いくわ~」

善子「…………」


善子(触れてはいけない闇だったみたい……)
 

28: 2017/11/20(月) 23:33:09.42 ID:EDIKlp6Z
果南「はいもっと声だして~~!!」スタタタ

鞠莉「いっちに、さーんしっ!」タタタ…

ルビィ「ごー……ぉぉ」ヘロヘロ…

ダイヤ「ルビィ、まだ始まったばかりですよ!」タタタ


善子「……………」


花丸「ルビィちゃん、がんばるずら~」トットットッ

ルビィ「う、うん…ふひ……最近の花丸ちゃんは元気だね……」ヘロヘロ
 

29: 2017/11/20(月) 23:34:14.66 ID:EDIKlp6Z
善子「ねえダイヤ」

ダイヤ「え、なんですか善子さん?」

善子「急性くも膜下出血って知ってる?」

ダイヤ「急になんですの?」

善子「いや、知ってるかなって……」

ダイヤ「名前程度の知識はありますが、専門的な事になるとわかりませんね」

善子「そう……」

ダイヤ「それがなにか?」

善子「発症率とか、予防法とか知ってる?」
 

30: 2017/11/20(月) 23:35:04.36 ID:EDIKlp6Z
ダイヤ「え……さすがにそこまでは……」

善子「じゃあ今度一緒に調べましょ」

ダイヤ「えぇ?」


果南「二人で話てるなんて珍しいね」タッタッタ…

ダイヤ「果南さん……それがその……」

善子「ん………あっ……えっと、て、テレビでやってたのよ!」

ダイヤ「急性くも膜下出血の事ですか?」

善子「そう! な、なんかね、黒髪の日本人は特に発症率が高いってやってたのよ!」
 @ヨハネジョークです

果南「な、なんか難しい話?」
 

31: 2017/11/20(月) 23:36:03.47 ID:EDIKlp6Z
ダイヤ「まぁ…それは怖いですね」

善子「でしょ? 私とダイヤがまさに黒髪だから心配になったのよ」

ダイヤ「そうですか。お気遣い感謝しますわ」

善子「だからそのための対策というか、そういうのがあるなら今のうちからやっておきましょ!」

ダイヤ「それなら一度じっくりと調べるべきですわね」

善子「そうそう。だから今度…」

ダイヤ「今日の練習が終わったらすぐに調べましょう!」

善子「え? あ、いや…今日は……」

ダイヤ「善は急げと言いますし、部室のパソコンを使いましょう」

善子「ち、ちょっと~!」
 

32: 2017/11/20(月) 23:36:58.59 ID:EDIKlp6Z
 -夜 善子部屋


善子「だあぁぁぁ疲れた~~~」ドサッ

善子「結局よくわかんないうちにみんなで病気のあれこれを勉強する会になっちゃうし…」

善子「こうしてる間に梨子が観覧車事故に巻き込まれてなきゃいいんだけど……」ピピッ

 prrrrrrrrrrr……

善子「LINEは無視する、電話には出ない……なんなのよもうっ!」

善子「こんなんで運命に干渉とか、ほんとに出来るものなのかな……」パサッ


善子「あ………」
 

33: 2017/11/20(月) 23:37:53.72 ID:EDIKlp6Z
 黒澤ダイヤ
 享年71歳 脳血管疾患により死亡


善子「か、変わってる!?」

善子「なんかまた違う病名になってるし……ダイヤって病死なのは変わらないって事?」

善子「それでも寿命が全然違う! やっぱり運命は変えられるのよ!」ペラッ


 小原鞠莉
 享年25歳 航空機事故により焼死


善子「…………………え?」
 

37: 2017/11/20(月) 23:39:52.84 ID:EDIKlp6Z
善子「な、なんで? なんでマリーまで変わってるの?」

善子「冷凍睡眠はどうなったの? なんで?」

善子「それに25歳って……そんな……減っちゃった……」



善子「私がよけいな事を言ったから? だからマリーの運命がどこかで変わったって言うの?」

善子「これじゃ……私のせいでマリーが……ぅっ…」


善子「……………」


 桜内梨子
 享年17歳 観覧車の落下事故による内臓損傷により死亡
 

38: 2017/11/20(月) 23:40:53.70 ID:EDIKlp6Z
善子「まだ……梨子もマリーもまだよ……このままなんて、絶対ダメ…」グシッ

善子「マリーはまだ時間がある。私のせいで短くなったんだとしたら絶対このままにはさせないけど…」

善子「やっぱり先に梨子の問題ね。とにかく一回会わないと……」


LINE シーン…


善子「なーんでずっと無視するのよぉぉ!!」

善子「明日も会えなかったら最終手段にでてやるんだから!」
 

73: 2017/11/21(火) 22:32:04.29 ID:5JpaejuF
 -次の日


善子「え……?」

いつき「今日千歌達お休みだって」

善子「さ、三人とも?」

いつき「うん。どうしたんだろーね」

善子「……………」

いつき「善子ちゃん?」

善子「ありがとうございます!」ダッ

いつき「あっ………」
 

74: 2017/11/21(火) 22:32:38.98 ID:5JpaejuF
ルビィ「あれ、善子ちゃん?」

花丸「慌ててどうしたの? もうじきHR始まるずらよ?」

善子「今日は帰る、先生に言っといて!」バッ

ルビィ「え? 善子ちゃん??」

花丸「…………」


 -校門前


善子「運命は変えられる……だけど、過ぎてしまったら過去はきっとどうしようもない!」タタタ…

善子「だったら梨子の運命を変えるまで、もう何が何でも…!」タッタッタ…


??「善子ちゃん!!」
 

75: 2017/11/21(火) 22:33:43.75 ID:5JpaejuF
善子「えっ!?」ビクッ

梨子「ど、どこ行くの!?」

善子「り、梨子ぉ?」
 
梨子「もうHR始まってる時間だよ……どこに行くの?」

善子「どこって…梨子こそこんなところで何してるのよ! ずっとLINEの返信もしないで!」

梨子「それは……その……」

善子「それにいきなり休むなんて……だから私、今からあなたの家に行こうと」

梨子「え?」
 

76: 2017/11/21(火) 22:34:20.37 ID:5JpaejuF
善子「ねえ聞いて梨子、あなた観覧車に…」

梨子「やめて!!」

善子「!?」ビクッ

梨子「どうして急にそんな話をしてきたの?」

善子「な、なにを…」

梨子「千歌ちゃんが遊園地のチケットをくれた時、嫌な予感がしたの…タイミングが良すぎるって…」

善子「梨子……?」
 

77: 2017/11/21(火) 22:36:14.01 ID:5JpaejuF
梨子「お願い善子ちゃん……私すごく変な事言うかもしれないけど、聞いて欲しいの!」

善子「待って、それなら私も梨子に言わなきゃいけない事がっ!」

梨子「遊園地に……ううん、観覧車には絶対近づかないで欲しいの!!」

善子「なによそれ、こっちこそ遊園地とか観覧車のある場所に行かないようにして…!」


梨子「え?」

善子「へ?」
 

78: 2017/11/21(火) 22:37:23.90 ID:5JpaejuF
梨子「も、もしかして……」

善子「まさか……」


善梨「「最後ノート!?」」


梨子「………」

善子「………」
 

80: 2017/11/21(火) 22:38:10.10 ID:5JpaejuF
善子「そういうことなの? 梨子……」

梨子「まって、善子ちゃんも?」


善子「桜内梨子、享年17歳……」

梨子「っ! つ、津島善子、享年16歳……」



善子「観覧車の落下事故による内臓破損により…」

梨子「観覧車の落下事故にまきこまれ頭部陥没により…」


善子「死亡………」

梨子「…………」ゾクッ
 

81: 2017/11/21(火) 22:39:25.58 ID:5JpaejuF
善子「ノート……持ってたんだ……」

梨子「う、うん……」

善子「そっか……私が……」ブルッ

梨子「よ、善子ちゃん?」

善子「どどど、どうしよー…自分が一年以内に死ぬって言われたら、な、なんか…震えが…」

梨子「それは私もだよ。よくわからない寒気が…」

善子「とと、とにかく先生に見つかったら何か言われそうだし、部室行きましょっ!」

梨子「そ、そうだね」
 

82: 2017/11/21(火) 22:40:15.23 ID:5JpaejuF
 -スクールアイドル部部室


梨子「こんな時間にここにいるのは変な感じがするね」カチャ

 ガララ…

善子「私は帰るって言って飛び出してきちゃったし」

梨子「私は学校にお休みの連絡いれちゃってるし…」

善子「ってそういうのはこの際いいわ」

梨子「見つかったら怒られそう…」

善子「それよりもっ!」

梨子「うん……」
 

83: 2017/11/21(火) 22:40:57.86 ID:5JpaejuF
善子「一昨日からまったく連絡つかなくなってたのって、ノートのせい?」

梨子「うん。私があのノートを露天商で買ったのが三日前かな」

善子「やっぱあの露天商なんだ」

梨子「最初は人の運命とかそういうのは信じてなかったの、ただあのノートが…」

善子「ん?」

梨子「その…善子ちゃんが好きそうだなって思って買ってみたの」

善子「わ、私?」

梨子「この前私の誕生日にプレゼントくれたでしょ。そのお礼のつもりで…」

善子「そ、そう…」
 

84: 2017/11/21(火) 22:41:50.77 ID:5JpaejuF
梨子「でもちょっと気になっちゃって…ほんとに軽い気持ちでね、善子ちゃんの名前を書いちゃったの」

善子「ふむ…」

梨子「ほんと、ごめんなさい…」

善子「え、どうして?」

梨子「だって……なんだか人の人生を盗み見ているようで、すごく悪い事に思えて」

善子「なに言ってるのよ、それを言ったら私だってあなたの名前書いてるわけだし……」

梨子「う、うん……」

善子「それに、そのおかげで私も梨子も運命を回避できるわけだしね」

梨子「で、でもあのノートに出てたのって本当だと思う……」
 

85: 2017/11/21(火) 22:42:37.25 ID:5JpaejuF
善子「どういう事?」

梨子「私、善子ちゃんの名前を書いて、その後に一年以内に観覧車事故に遭うってでたからほんとに怖くなって…」

善子「最初がそれだったら私は逆に信じにくいけどねぇ」

梨子「違うの…私もすぐに信じることはできなかったから、ためしたの……」

善子「他の人の名前も書いたって事?」

梨子「うん…………おばあちゃん」

善子「おばあちゃん?」

梨子「もう亡くなってるんだけど、おばあちゃんを思い浮かべながら名前を書いたら、ちゃんと昔の日付がでたから」

善子「なるほど、そういう確認の仕方もあるのね」
 

86: 2017/11/21(火) 22:43:28.15 ID:5JpaejuF
梨子「それで、あのノートは本物だってわかったから怖くなって……」

善子「その気持ちはわかるわ、私も同じだったから」

梨子「それでどうしようかと悩んでたら、千歌ちゃんと曜ちゃんが遊園地のチケットもらったからみんなで行こうって言ってきたの」

善子「もしかしてその遊園地って……」

梨子「観覧車のあるところ……」

善子「………」ゾクッ

梨子「絶対行っちゃダメって千歌ちゃんにお願いしたけど、善子ちゃんが危険かもしれないなんて信じてもらえそうになくて…」

善子「まぁ普通信じないわよね」
 

87: 2017/11/21(火) 22:44:13.00 ID:5JpaejuF
梨子「その時だよ、善子ちゃんからLINEがきたの」

善子「あー……それで……」

梨子「千歌ちゃん達を説得しても、善子ちゃん自身が遊園地に行こうとしてるのかと思ったら、どうしていいか…」

善子「こっちはこっちで返事こないから焦ったわよ」

梨子「うん。だから遊園地の事は絶対に伏せておこうと思って。千歌ちゃんに言わないようにしてもらってたの」

善子「そういえば三人でなにしてたのよ、今日も休みだって言うし」

梨子「そ、それはその……」
 

88: 2017/11/21(火) 22:45:01.80 ID:5JpaejuF
梨子「運命がほんとに変わるなら、変わるまで絶対に善子ちゃんを観覧車のある場所に行かせないようにと思って…」

善子「え?」

梨子「でも善子ちゃんとその話をしたらなんだかズルズル流されそうで怖くて……」

善子「つまり……」

梨子「ごめんなさい。曜ちゃんと千歌ちゃんにも協力してもらって、その……見てたの…」

善子「か、監視してたってこと?」

梨子「学校では私と千歌ちゃんが…お家の周辺は曜ちゃんに……」

善子「それで昨日すぐいなくなってたの……よく二人が協力してくれたわね」

梨子「そ、それは……うん、けっこう強引に……」
 

89: 2017/11/21(火) 22:45:51.41 ID:5JpaejuF
善子「もしかして今日、家の周辺にずっと曜がいるってこと?」

梨子「だって、どのタイミングで善子ちゃんが出かけるのかわからなかったから…」

善子「え、いまも?」

梨子「うん…………あっ」


 prrrrr… ピッ


梨子「もしもし曜ちゃん? ごめんね、善子ちゃん家の監視もういいの。うん、無理いってゴメンね、ありがとう」

善子「ん、じゃあどこかに千歌も潜伏してるってこと?」

梨子「あああ、千歌ちゃんもだー!」
 

90: 2017/11/21(火) 22:47:06.30 ID:5JpaejuF
 -善子ちゃんのお部屋


善子「いま誰もいないから遠慮なくどーぞっ」ガチャ

梨子「お、お邪魔しますー」

善子「まずは確認ね、えっと……」バサッ

梨子「こんな時間に学校じゃなくて善子ちゃんの部屋にいるのって、変な感覚…」

善子「それは私も同じよ。っと、どれどれ……」

梨子「あ、善子ちゃん、もし運命が変わっていても言わないでね!」

善子「いいの?」

梨子「だ、だって自分が死ぬ年齢がわかるなんて、やっぱり怖いもの……」

善子「ふむ……」ペラッ
 

91: 2017/11/21(火) 22:47:56.98 ID:5JpaejuF
 桜内梨子
 享年37歳 薬物過剰投与により死亡


善子「……………………」

梨子「ん、どうしたの? もしかして…変わってない?」

善子「う、ううん…だ、大丈夫……変わってるよ……」

梨子「そう。よかったー………はぁ…」


善子(どういう状況なんだろ、これ……でも……)


梨子「あ、私も帰ったら善子ちゃんの確認しておくね」

善子「お、お願いね……」パタ
 

92: 2017/11/21(火) 22:48:50.37 ID:5JpaejuF
梨子「はー…なんだか一気に気持ちが楽になった気がする」

善子「たぶん、私達二人とも遊園地には行かないって決めたから……やっぱり原因はその遊園地だったのね」

梨子「それならもう大丈夫ってことだよね?」

善子「少なくとも私は当分観覧車には近づきたくないわ」

梨子「うん。でも運命はやっぱり変えられるんだね」

善子「知っていれば、干渉できる……ね」

梨子「なんだか安心したらお腹空いてきちゃった」

善子「ふふっなによそれ…」

梨子「だ、だって夕べも善子ちゃんをどうすれば助けられるか、そればっかりで…」

善子「あ……うん……ありがと……」
 

93: 2017/11/21(火) 22:49:56.22 ID:5JpaejuF
善子「ちょっと待ってて、簡単なのしかないけど昼食にしましょ」

梨子「ありがとう、いただくね」

善子「適当に寛いで待ってて」

梨子「うん。あ、テレビつけていい?」

善子「いいわよ」


 パタン…


善子「……………」

善子「薬物の過剰投与って、前にテレビで言ってたのだと、確か……」


善子「自〇……じゃ……」
 

94: 2017/11/21(火) 22:50:42.05 ID:5JpaejuF
梨子「善子ちゃん!!」バンッ

善子「ひゃあ!! な、なによ急に!」

梨子「来て、テレビで…っ!」

善子「?」



『現場は依然としてパニック状態です!! まだ消防は到着していません!! 被害はさらに拡大しそうです!!』


善子「え、なにこれ?」

梨子「遊園地の新アトラクションを紹介してたテレビの生放送……これ、私達が行く予定だったとこ……」

善子「え………」
 

95: 2017/11/21(火) 22:51:42.33 ID:5JpaejuF
『午後1時13分、突然観覧車の一部が落下しました!! 周辺の状況は以前として不明ですが少なくとも数人が巻き込まれ……』


善子「…………これ…私達が巻き込まれるはずだった事故……なの?」

梨子「そんなはずないよ、だって千歌ちゃんが予定していたのは週末だよ。週末にみんなで行こうって…」

善子「じ、じゃあこれは関係ない事故ってこと…よね?」

梨子「これが本来あったものなら、週末に遊園地が営業してるなんて……考えられないよ……」

善子「なにが言いたいのよ……」

梨子「これ、私達のせいじゃないの? 私達が運命を変えたから……だから!」

善子「ば、バカな事言わないで! そんなのなんの確証もないじゃない!」

梨子「だって、こんな事故があった後に私達がここに行く事だって絶対にない! だったら…そう言う事じゃないの?」
 

96: 2017/11/21(火) 22:55:06.97 ID:5JpaejuF
『今入ってきた情報です! 事故に巻き込まれたと思われる4歳の女の子が、心肺停止状態で病院に搬送され……』


善子「……………」

梨子「……………」


『そして母親と見られる女性も病院へ搬送されましたが、先ほど死亡が確認されました』


善子「……っ!?」ビクッ

梨子「………!!」



梨子「う……あぁ…っ…わああああぁぁぁ!!!」

善子「…………」
 

97: 2017/11/21(火) 22:55:46.82 ID:5JpaejuF
続くぅ…

121: 2017/11/22(水) 22:59:48.31 ID:86NjP02H
 -数日後 スクールアイドル部部室


ルビィ「今日も梨子ちゃん、お休みなんですね」

曜「うん……」

果南「千歌は何か聞いてないの?」

千歌「風邪だって聞いたけど…」

ダイヤ「季節の変わり目ですし、最近特に寒い日もありましたからね」

鞠莉「ダイヤは最近元気そうね」

ダイヤ「実はこの間から健康のためにと始めた事があるのです」

ルビィ「ぅゅ…ルビィも一緒にやるように言われて……」

花丸「二人とも元気ずら」
 

122: 2017/11/22(水) 23:00:19.01 ID:86NjP02H
善子「…………」

千歌「ねえ善子ちゃん」

善子「ん…な、なに?」

千歌「後でちょっといいかな。話があるんだ」

曜「私も」

善子「……………」


果南「じゃあみんなランニング行くよ~」

千歌「はーい。じゃ、後でね」

善子「あ…………ん……」
 

123: 2017/11/22(水) 23:01:03.04 ID:86NjP02H
果南「ここのところ、なかなか9人揃わないねー」

鞠莉「そうねー。体調管理には気を付けないとねー」

ダイヤ「お二人ともわたくしが始めた健康法を取り入れてみますか?」

果南「それってホントに効果あるの?」

ダイヤ「すぐに効果がでるわけではないでしょうが、何事も続ける事が大事なのです」

果南「それなら私だって毎朝走ってるし」

ダイヤ「それもとても大事だと思いますわ」

鞠莉「そういうのが当たり前になるくらい続けられるってすごいわね」

ダイヤ「やはり健康なのがなにより大事ですから」


善子「………………」
 

124: 2017/11/22(水) 23:01:40.83 ID:86NjP02H
ルビィ「善子ちゃんどうしたの?」

善子「え、なに?」

ルビィ「最近なんだか…その、元気がないっていうか」

善子「そんなことないわよ? ほら、まだまだ全然走れるし!」

ルビィ「でも堕天使だって言わないし……」

善子「それは……た、たまたまよ」

ルビィ「そうなの? それならいいんだけど」

花丸「……………」
 

125: 2017/11/22(水) 23:02:30.68 ID:86NjP02H
 -放課後 スクールアイドル部部室


千歌「みんな帰った?」

曜「うん、確認したよ」

善子「…………」


千歌「さて、じゃあ善子ちゃん」ズイ

善子「な、なによ…」

千歌「梨子ちゃんに何したの?」

善子「え?」

曜「今梨子ちゃんが学校を休んでる理由って、善子ちゃんが原因なんでしょ?」

善子「どうして…そうなるの……」
 

126: 2017/11/22(水) 23:03:08.99 ID:86NjP02H
千歌「この間梨子ちゃんがすごい辛そうに、必死になって善子ちゃんの事話してた」

曜「あれはさすがに冗談とは思えなかったよ」

善子「そう……」

千歌「善子ちゃんが危ないからって、ムチャクチャな事もお願いされたんだよ」

善子(張り込みの事かな…)

曜「すごく真剣で、ホントにやばいかなって雰囲気もあったから協力したよ。でも…」

千歌「突然もういいって連絡があって、その後からだよ……梨子ちゃんが部屋からでてこなくなったの」

善子「…………」
 

127: 2017/11/22(水) 23:03:38.71 ID:86NjP02H
曜「ねえ、何かあったんでしょ?」

千歌「ケンカでもしたの?」

善子「……………それは」

曜「善子ちゃんも最近ずっと元気ないし、心配だよ」

千歌「ねえ善子ちゃん」

善子「ん……うん……」

千歌「何かあったんだね…」
 

128: 2017/11/22(水) 23:04:31.58 ID:86NjP02H
善子「梨子には……私からちゃんと話すから…」

曜「なにがあったのかは、教えられないって事?」

善子「…………」

千歌「善子ちゃん…」

善子「ご、ごめんなさい……でも、ちゃんと…するから……」

曜「………」

千歌「そう……」

善子「………」
 

129: 2017/11/22(水) 23:05:22.16 ID:86NjP02H
千歌「それじゃ、梨子ちゃんの事お願いね」

曜「いいの? 千歌ちゃん…」

千歌「二人の間に何があったのかはわからないけど、善子ちゃんがちゃんとするって言ってるんだし」

善子「…………」

曜「まぁ問題がそこにあるんだったら、私達のはただのお節介だし……ん、わかったよ」

千歌「そのかーわりっ」

善子「は、はい」

千歌「梨子ちゃんが何か問題を抱えているのなら、助けてあげてね」

善子「ん……絶対、なんとかする……」

曜「それでも、二人じゃどうにもならなくなったらいつでも言うんだよ」

千歌「私達はいつでも力になるから」

善子「うん、わかってる……」
 

130: 2017/11/22(水) 23:06:09.75 ID:86NjP02H
 -善子ちゃんのお部屋


善子「はぁ………」バフッ


LINE シーン……


善子「わかってるけど……私が何を言っても……」ピッ


 prrrrrrrrr……


善子「…………………」ピッ

善子「でない……か……」
 

131: 2017/11/22(水) 23:06:54.22 ID:86NjP02H
善子「………」ペラ


 小原鞠莉
 享年25歳 航空機事故により焼死


善子「鞠莉の事も放っておけない……でも正直、なにをすれば運命が変わるのかが…」

善子「………………」


善子「もうっ!」ガバッ
 

132: 2017/11/22(水) 23:07:32.60 ID:86NjP02H
 -桜内家


善子「勢いで行くのよ、津島善子っ」


 ピンポーーン  ガチャ

『はーい』

善子「ああ、あのっ、夜分遅くすいません、津島です」

『津島さん……あ、善子ちゃん?』

善子「そうです」

『今開けるからちょっと待ってねー』

善子「はい…」
 

133: 2017/11/22(水) 23:08:35.77 ID:86NjP02H
 ガチャ

梨子ママ「こんばんはー善子ちゃん」

善子「こんばんは」

梨子ママ「こんな時間にどうしたの? お母さんのおつかい?」

善子「いえ、あの…梨子……さんいますか?」

梨子ママ「ん……あの子いまちょっと……」

善子「いるんだったらあがっていいですか? 話があるんです」

梨子ママ「え…でも今は……」

善子「ちゃんと会って話さないといけないんです」

梨子ママ「もしかして、あの子が何か悩んでいる原因を知っているの?」

善子「はい。だからお願いします!」
 

134: 2017/11/22(水) 23:09:35.81 ID:86NjP02H
 -梨子ちゃんのお部屋


梨子ママ「梨子ー、お友達よー」


 …………。


梨子ママ「ずっとこんな調子で……」

善子「中にいるんですよね? 梨子ーー!!」


 ゴソゴソッ


善子「ん、ちゃんといるのね。梨子ー! 開けてくれるー?」


 …………。


善子「開けないならこっちらか開けるわよっ!」グッ

梨子ママ「あの子、中から鍵をかけていて……」
 

135: 2017/11/22(水) 23:10:34.10 ID:86NjP02H
善子「梨子ー、10秒以内に開けないとこのドア蹴破るわよ~!」

梨子ママ「まぁ過激」

善子「言っておくけど、ヨハネは本気よ! 10~~9~~…」

梨子ママ「若者の勢いはすごいわね」

善子「8~……76543…」ググッ


 ダダダダッ  ガチャ!


善子「2……あら、せっかく堕天流奥義を繰り出すチャンスだったのに」

梨子「はぁ、はぁ…ふぅ…」

梨子ママ「元気そうで良かったわ梨子。ちょっと待っててね、今お茶を持ってくるわ」

善子「ありがとうございますー」
 

136: 2017/11/22(水) 23:11:22.90 ID:86NjP02H
梨子「むちゃくちゃするんだから…」

善子「未遂よ。それよりも……」ズカズカ

梨子「ち、ちょっと善子ちゃん」

善子「いつまでふさぎ込んでるのよ!」

梨子「……………」

善子「みんな心配してるわ。事情を知らないんだから当然だけど…」

梨子「……………」

善子「それでも、気にするななんて軽い事も言えないのもわかるけど…でもっ」
 

137: 2017/11/22(水) 23:12:12.84 ID:86NjP02H
善子「私は梨子のおかげで死なずにすんだ事、感謝してる」

梨子「……………」

善子「梨子が死なずにすんだのもよかったって思ってる」

梨子「……それは」

善子「あの事故が私達とは関係ないとは、正直私も言い切れない…それでも」

梨子「…………」

善子「前、向かないと……。顔を上げて梨子…」

梨子「私は割り切れないよ……どうしても…」
 

138: 2017/11/22(水) 23:12:47.35 ID:86NjP02H
善子「梨子の性格だと、気に病むなっていうほうが難しいわよね……」

梨子「ごめんね……」

善子「ねぇ、ちょっと外いかない?」

梨子「え?」

善子「海沿いの風にあたりたいわ」

梨子「もう冬だよ?」

善子「いーの! ほら行きましょっ」ギュッ

梨子「あ、ちょっとまって、上着だすから~」
 

139: 2017/11/22(水) 23:13:20.08 ID:86NjP02H
梨子ママ「あら、こんな時間にお出かけ?」

梨子「海岸いくだけだから」

善子「すぐ戻ります」

梨子ママ「それじゃお茶はやめて温かいスープでも作ってるわ~」

梨子「ありがとうお母さん」



梨子ママ「もう大丈夫なのかしら?」
 

140: 2017/11/22(水) 23:14:10.04 ID:86NjP02H
 -海岸沿い


善子「うっひゃ~~~さむ~~~い!!!」

梨子「だから言ったじゃないのー」

善子「こんな寒い思いするのも、生きてるおかげ!」

梨子「善子ちゃん……」

善子「本当は、明日行く予定だったんでしょ……遊園地」

梨子「うん……」

善子「何もしなかったら、私達二人とも死んでいたかもしれない」

梨子「そう……だね……」
 

141: 2017/11/22(水) 23:15:06.85 ID:86NjP02H
善子「でももう遊園地には行かない。どのみち休園しちゃってるし」

梨子「うん…」

善子「ノートの運命も変わった…だから私達は死なない……すくなくとも明日は…」

梨子「でも、そのせいで死なずにすんだ人が死んじゃって……」

善子「それなら梨子はあのまま私と一緒に死んだ方がよかったって思える?」

梨子「そんなわけ……ないよ……」

善子「私もよ。梨子が助かって良かったって思ってる」

梨子「そんなの私だってそうだよ。だけど何度考えてもダメなの……私が…」

善子「………」


梨子「私が……あの人を〇したんだって…そう思えて……」
 

142: 2017/11/22(水) 23:15:47.39 ID:86NjP02H
善子「そんなわけないでしょ!」

梨子「それが言いきれないから、私……気持ちが前を向いてくれないの……どうしようもないのよ…」

善子「……………」


「それは傲慢というやつだよ、梨子ちゃん」


梨子「!?」

善子「え?」
 

143: 2017/11/22(水) 23:16:33.80 ID:86NjP02H
花丸「こんばんは、二人とも」

善子「え、なんであんたがここにいるわけ?」

梨子「花丸ちゃん!?」

花丸「梨子ちゃんが心配で夜な夜なお家の周りを徘徊していたずら」

梨子「え、私?」

花丸「冗談ずら」

善子「あ、あんたね~……」

花丸「そんな事より、梨子ちゃん…」スス・・・

梨子「え…‥」
 

144: 2017/11/22(水) 23:17:22.37 ID:86NjP02H
花丸「自分のせいで人の運命が狂ったなんて考えはおこがましいずらよ」

梨子「ど、どうして…?」

善子「知ってるの? 私達がしていたこと…」

花丸「さぁ、マルにはさっぱりずら」

善子「もうっなんなのよ~!」

花丸「でもこれだけは言えるずら」

梨子「?」
 

145: 2017/11/22(水) 23:18:14.28 ID:86NjP02H
花丸「人は生きている限り、生に執着すべきもの。それを放棄するのは許されない行為ずら」

善子「何を言って……」

花丸「今の梨子ちゃんずら」

梨子「……………」

花丸「本来死んでいたかもしれない運命を回避できたのに、そこに意味を見いだせずにいる」

善子「あんたやっぱり知ってて……」

花丸「人一人がどうこうできる運命なんて、せいぜい自分自身のことだけだよ、梨子ちゃん」

梨子「でも…あれは……」

花丸「あの日あの時間に、あの女の人はどの道死にゆく運命だった。そのシチュエーションが変わっただけ…」
 

146: 2017/11/22(水) 23:19:01.46 ID:86NjP02H
梨子「え……?」

花丸「二人の事故死という起因がハズレた先にあの女の人がいただけずら。だから梨子ちゃんが重荷を感じる事はないよ」

善子「………さっきから一体何を言ってるの?」

花丸「人は日々生きるために必死ずら。そこにはその人自身がもつ魂の輝きがある。その生を全うするために必死に…」

梨子「…………」

花丸「その道を自分のせいで歪めてしまっただなんて、神様にでもなったつもりずらか?」

梨子「そ、そんな事は……ない…けど……」

花丸「それなら自身の幸運に感謝して、日々を生きることに怠慢になっちゃダメすら」
 

147: 2017/11/22(水) 23:19:35.23 ID:86NjP02H
梨子「私……良かったのかな……」

花丸「良いも悪いも、梨子ちゃんは自身の運命をただ、回避しただけずら」

善子「私もそうだってこと?」

花丸「さっきも言ったように、人がどうこうできるのはせいぜい自分自身だけだよ、善子ちゃん」

善子「そ、そうなの?」

梨子「正直嘘でも本当でも、そう言ってくれて嬉しいよ」

花丸「生きる事に前向きになったのなら、真意は気にしなくてもいいずら」

善子「てか、あのノートの事知ってたんだ」
 

148: 2017/11/22(水) 23:20:14.24 ID:86NjP02H
花丸「ノート? 何の事ずらか?」

善子「え、だから最後ノート……」

花丸「それはよくわからないずら」

梨子「じゃあどうして私達の事………」

 スッ…

花丸「さて、さすがにこれ以上外にいたら風邪をひいてしまうずら」

善子「え、ちょっとどこ行くのよ!?」

花丸「梨子ちゃんが大丈夫ならマルは帰ってお風呂入るずら~」

梨子「は、花丸ちゃん!?」


花丸「それじゃまた週明けに~おやすみずら~~」タッタッタ…
 

149: 2017/11/22(水) 23:20:54.92 ID:86NjP02H
梨子「行っちゃった………」

善子「って足速! もう見えなくなっちゃった……」

梨子「なんだかいつもの花丸ちゃんっぽくなかったね」

善子「時々変な事言うのは前からだったけど、さっきのはね……」


梨子「でも、おかげで気持ちが少し楽になったかな」

善子「もう大丈夫なの?」

梨子「正直じゃあもう気にしないって、元気よく言えるわけじゃないけど」

善子「うん…」

梨子「それでも生きる事に前向きに……か」
 

150: 2017/11/22(水) 23:21:33.14 ID:86NjP02H
善子「もう学校これそう?」

梨子「ごめんね、心配かけて」

善子「ホントよ……って、それは私が言う言葉じゃないわ」

梨子「他のみんなにも謝らないと……」

善子「そうそう、千歌達も心配していたし、ダイヤ達も…………」

梨子「善子ちゃん?」


善子「…………………」


『人一人がどうこうできる運命なんて、せいぜい自分自身のことだけだよ』


善子「………………」

梨子「どうしたの?」
 

151: 2017/11/22(水) 23:22:26.68 ID:86NjP02H
 黒澤ダイヤ
 享年71歳 脳血管疾患により死亡

 小原鞠莉
 享年25歳 航空機事故により焼死


善子「じゃあ、あれはなんだっていうの……?」

梨子「善子ちゃん?」

善子「二人とも私が言った事で最後が変わってる……死ぬ運命が……」

梨子「死ぬ!? だ、誰が?」

善子「そうよ、自分自身の運命しかかえられないなんてことだと説明がつかない……」

梨子「ねえ、どういう事なの? 誰か死ぬってノートで見たの?」

善子「マリーが……」

梨子「えっ鞠莉さんが?」


善子「そうだ、まだだ……これ、まだ終わってない!!」
 

152: 2017/11/22(水) 23:23:46.01 ID:86NjP02H
続くのです…

165: 2017/11/23(木) 23:08:10.56 ID:Wwa7lEQg
 -桜内家


梨子ママ「あらおかえりなさい、寒かったでしょう」

梨子「もうすっかり冬だよぅ……」

梨子ママ「たまごスープ作ってあるから飲みなさい」

善子「ありがとうございます」

梨子「部屋に持って行くから先に行ってて」

善子「わかったー」



梨子ママ「あら、善子ちゃんはお泊りかしら?」
 

166: 2017/11/23(木) 23:08:49.89 ID:Wwa7lEQg
 -梨子ちゃんのお部屋


善子「梨子が来る前にもう一度確認しておこ」ドサッ

 ゴソッ… ペラ

善子「ダイヤは寿命がかなり延びた……マリーはすごく短くなった…」

善子「ダイヤに原因となる病気に関する話題をしたのは私」

善子「マリーのは直接的じゃないかもしれないけど、おこした行動としては施設の話をふっただけ…」

善子「でもこうして運命が変わっているのは事実よね…うーん……」

 ガチャ

梨子「おまたせー」
 

167: 2017/11/23(木) 23:10:00.01 ID:Wwa7lEQg
善子「ズ……あ~~生き返るわ~」ヨハー

梨子「ほんとだね~」ハワー


梨子「それ、善子ちゃんの最後ノート?」

善子「うん。確認してたんだけど、やっぱりそのまま……」

梨子「見ていい?」

善子「んと、このページまでね、その先には梨子のが……」

梨子「……うん」

善子(すぐそこに自分の最後が書いてあるなんて、やっぱり私でも見るのは嫌だな…)
 

168: 2017/11/23(木) 23:10:40.76 ID:Wwa7lEQg
梨子「あれ…どこに書いてあるの?」

善子「どこって、これこれ、ここに小原鞠莉って」

梨子「書いてないけど……というか、最初のページから真っ白だよ?」

善子「え?」バッ

 パラパラ…

善子「ううん、ちゃんと書いてあるわよ、ここにほらっ」

梨子「…………ごめんなさい、やっぱり何も見えない……」

善子「どういう事?」
 

169: 2017/11/23(木) 23:11:54.04 ID:Wwa7lEQg
梨子「もしかして……」ゴソゴソ

善子「それって、梨子のノート?」

梨子「うん。えっと、ここ見て、おばあちゃんの事が書いてあるけど……」サッ

善子「…………」



善子「何も書いてない……けど…まさか」

梨子「これ、ノートの所有者にしか見えないんじゃないかな?」

善子「所有者……この場合最初に書き込んだ人専用になるってこと?」

梨子「たぶん……」
 

170: 2017/11/23(木) 23:12:35.64 ID:Wwa7lEQg
善子「そういえば取説に自分の名前は書けないってあったけど他に何かあったっけ?」

梨子「ううんそれだけだったよ」

善子「なによそれ、不備じゃないの?」

梨子「そもそも誰が作ったのかわからないし、しょうがないよ」

善子「じゃあ口で説明するしかないわけね…えっと……」
 

171: 2017/11/23(木) 23:13:31.43 ID:Wwa7lEQg
 ―――


梨子「鞠莉さんが……」

善子「私のせいだとしても、ダイヤのはいい……と、思うんだけど…」

梨子「うん、それは私もいいと思うよ。でも……」

善子「さっき花丸が言ってたじゃない、運命を変えられるのは自分自身だけだって」

梨子「そうだね。私はその言葉に救われたし、あのタイミングで花丸ちゃんが適当な事言うのも不自然だと思う」

善子「どういう事なのかな……」

梨子「もう一度聞いて見ればいいんじゃないかな?」

善子「ん………それもそうか」ピッ
 

172: 2017/11/23(木) 23:14:14.28 ID:Wwa7lEQg
 prrrrrr…… ピッ


花丸『はい、国木田です』

善子「あ、ずら丸、いまちょっといい?」

花丸『善子ちゃん? なんずら?」

善子「さっき言ってた運命がどーたらの事なんだけど…」

花丸『えー……マル、割と意味深な立ち去り方したのに……』

善子「そういうのはどうでもいいのよ、こっちはもっと大事なの!」

花丸「はいはい、なにかな?」

善子「自分自身にしか変えられないの件についてだけど……」
 

173: 2017/11/23(木) 23:15:16.11 ID:Wwa7lEQg
 ――――


花丸『……………』

善子「それで、私がしたことでマリーの運命を大きく変えちゃってるんじゃないかって…」

花丸『ふむ……』

善子「さっきの話が本当だとするなら、これってどういう事なのかなって」

花丸『なるほど、わかったずら』

善子「ホント?」

花丸『取り敢えず善子ちゃんには2つ、言うことがあるずら』

善子「う、うん……」
 

174: 2017/11/23(木) 23:16:18.06 ID:Wwa7lEQg
花丸『まず1つそれは善子ちゃんが原因ではないずら』

善子「そ、そうなの? でも……」

花丸『起因、きっかけにはなってるけど、それで運命が変わるほどの効果はないずらよ』

善子「ん、どういう事?」

花丸『それと2つ目……』

善子「え、ちょ……」

花丸『湯冷めする前にマルはもう寝るずら……』

善子「ちょっと待ちなさいよ!」

花丸『明日、善子ちゃんのトコに行くから、その時説明してあげるずら』

善子「私んとこね……わ、わかった」

花丸『それじゃーおやすみずら~……』ピッ
 

175: 2017/11/23(木) 23:17:08.83 ID:Wwa7lEQg
善子「というわけで、詳しい話は明日うちでするってさ」

梨子「そう……でもホントにどういう事なのかな?」

善子「梨子に対してもそうだけど、ただこっちを安心させるためにって事じゃないよね?」

梨子「私はそれよりも気になる事があるんだけど…」

善子「なに?」

梨子「花丸ちゃんって、何者なの?」

善子「さぁ? お寺の娘だからなんかそういう知識があるんじゃない?」

梨子「そうなのかなー?」
 

176: 2017/11/23(木) 23:18:08.82 ID:Wwa7lEQg
善子「とにかく明日うちに行って待機してましょ」

梨子「そうだね」

善子「じゃ、今日はとっとと寝ましょう。最近ずっと考え事しててゆっくり寝てなかったし」

梨子「うん………え!?」

善子「んーちょっと狭いけどなんとか」モゾモゾ

梨子「よ、よシこちゃん!?」

善子「なに? あ、もしかしてベッド使われたくなかった?」

梨子「じゃなくてっ! と、泊まっていくの?」

善子「私が来た時点でもうバスは終わってるんだし、歩いて帰れっていうの?」

梨子「そんな事は言わないけど…」
 

177: 2017/11/23(木) 23:18:45.13 ID:Wwa7lEQg
 コンコン… ガチャッ


梨子ママ「善子ちゃ~ん、お風呂はいるでしょー?」

善子「ありがとうございます~」

梨子「えぇー………」


善子「あ、別に私床でもいいわよ? 毛布かしてくれるなら」

梨子「そんな事言わないよー……」

善子「そう…じゃ一緒に寝ましょ」

梨子「は、はわわ…」
 

178: 2017/11/23(木) 23:19:41.24 ID:Wwa7lEQg
 -次の日 善子ちゃんのお部屋


善子「あと5分ほどで着くって、ずら丸」

梨子「うん」

善子「まず確認しておくけど、出来るかどうかで、もし出来るなら……」

梨子「勿論手伝うよ。だって放っておけないもん」

善子「ん……ありがと」

梨子「きっと人の運命を知るって、こういう事だと思うの」

善子「ん、どういう事?」

梨子「知っている人の運命を視ちゃうとね、もうそれは一緒に背負ってるのと同じなんだよ」
 

179: 2017/11/23(木) 23:20:19.93 ID:Wwa7lEQg
梨子「だからこの問題がいい方向に解決したら、それで終わる方がいい」

善子「ノートはもう使わないってことね。それは私もそう思う」

梨子「善子ちゃんは私が死んじゃう日を知っていて、私は善子ちゃんの日を知ってる」

善子「うん…」

梨子「例えどこかで何かあって、それが変わってしまったとしても、言わないようにしよ?」

善子「ん…………」


 桜内梨子
 享年37歳 薬物過剰投与により死亡


善子「…………」
 

180: 2017/11/23(木) 23:21:04.99 ID:Wwa7lEQg
梨子「善子ちゃん?」

善子「あっ…うん。そうね…そうしましょう…」

梨子「私ももう軽はずみで名前なんて書いたりしないから…」

善子「私は軽はずみで色々書いちゃったわよ」

梨子「え……ダイヤさんと鞠莉さん以外にも書いたの?」

善子「…………」

梨子「書いたのね?」

善子「だ、大丈夫よ! 問題あるような事はなかったし……」
 

181: 2017/11/23(木) 23:23:36.97 ID:Wwa7lEQg
梨子「とにかく、もうこれっきりにしようね」

善子「わかってるってば…」


 ピンポーン


善子「来たわね、ちょっと出てくる」ガチャ

梨子「うん………」


梨子「……………」

梨子「勝手なのは十分理解しているけど……」



梨子「ごめんね善子ちゃん……」
 

182: 2017/11/23(木) 23:24:48.59 ID:Wwa7lEQg
続くぅ……

199: 2017/11/24(金) 23:22:24.99 ID:Cexp8Im/
花丸「梨子ちゃんこんにちはずら~」

梨子「花丸ちゃんおはよう」

善子「さて、さっそくだけど色々聞かせてもらうわよ」

花丸「善子ちゃんはせっかちずら~」

善子「それだけ本気なのよっ!」

花丸「はいはい。それより先に見せて欲しいものがあるずら」

善子「なによ…」

花丸「昨日善子ちゃんが言ってたノートずら」
 

200: 2017/11/24(金) 23:23:04.23 ID:Cexp8Im/
善子「見せるのはいいけど、意味はないわよ?」

花丸「どういう事ずら?」

梨子「どうも最初に書き込んだ人以外には文字が見えないようなの」

花丸「ほうほう。それは不思議なノートずら」

善子「これだけど、見るだけなら問題ないから」

花丸「ふむ……」ペラ

梨子「…………」
 

201: 2017/11/24(金) 23:23:48.56 ID:Cexp8Im/
花丸「これはどこで手に入れたの?」

善子「沼津の露天商で買ったのよ」

梨子「あ、私も」

花丸「露天商……」

善子「あれから見かけなくなったけど、もう沼津にはいないのかな?」

梨子「なにか色々用途不明なもの売ってたよね」

善子「私は最初にこのノートに目が行ったから他はあんまり見てないわ」

梨子「なんだったかな……願い札とか好感度がどうとか、普通のアクセサリーとかはなかったかな」
 

202: 2017/11/24(金) 23:24:26.48 ID:Cexp8Im/
花丸「了解ずら。そっちはなんとかしておくずら」

善子「ん、なんとかするって?」

花丸「変な物売らないようにお願いするずら」

梨子「花丸ちゃん、あの露天商の居場所知ってるの?」

花丸「探せば見つかるんじゃないかな?」

善子「楽観的ねー」

花丸「ま、それはさておき……」
 

203: 2017/11/24(金) 23:25:04.83 ID:Cexp8Im/
善子「昨日の続きね」

花丸「そうずらね」

梨子「ん……」ゴクッ


花丸「そうだね……その前に一つ、二人に質問を…」

善子「ん?」

梨子「……」


花丸「二人は、運命的な出会いって信じるずら?」
 

204: 2017/11/24(金) 23:25:41.71 ID:Cexp8Im/
善子「運命的な出会い……」

梨子「…………」

花丸「人でなくても、物でもいいずら」

善子「ん……あんまり自分で意識した事はないけど…」

梨子「これは運命だーっていうほどの出来事とか、そういう事?」

花丸「ようは自分の人生観に影響を与えるような、衝撃のワンシーン! とか、そういうの」

善子「うーん………」

梨子「……………」

花丸「ってまぁ、聞いておいてなんだけど、そういうのは自分で認識するのは難しいんだけどね」

善子「なによそれっ」
 

205: 2017/11/24(金) 23:26:29.40 ID:Cexp8Im/
花丸「それでも確実に自分の中の何かを変える要因、存在というのはあるずら。で…次に…」サッ

善子「ん、私の最後ノート?」

花丸「これに善子ちゃんが書いたような事が実際あったとして、善子ちゃんがダイヤさんと鞠莉ちゃんに言った言葉はそれに値するか」

梨子「鞠莉さんのほうはよくわからないけど、ダイヤさんのはテレビの情報をただ伝えたってだけだよね?」

善子「そうよ。ちょっと情報を盛った部分もあるけど…」

花丸「それは例えば……」スッ…

 トテトテ… ガラ

善子「って、なにベランダ開けてるのよ、寒いじゃない!」
 

206: 2017/11/24(金) 23:27:15.63 ID:Cexp8Im/
花丸「善子ちゃん、ちょっとここから飛び降りて欲しいずら」チョイチョイ

善子「はぁ?」

梨子「え?」

花丸「………………」


善子「な、なによそれ、そんな事するわけないでしょ!?」

花丸「堕天使の翼とやらで飛べないずらか?」

善子「ぐ……だ、堕天使は冬は冬眠するの!」

梨子「えー……」

花丸「んふ、なるほど冬眠ときたずら」クス

善子「ん~~もうっなんなのよ!」
 

207: 2017/11/24(金) 23:27:59.82 ID:Cexp8Im/
 ガラ… ピシャ

花丸「つまりこういう事ずら」

善子「はぁ?」

梨子「どういう事?」

花丸「マルがお願いした事で善子ちゃんには選択肢が発生したけど、運命的でもなんでもない無茶ぶりに善子ちゃんはNoと言う」

善子「あたりまえでしょ!」

花丸「善子ちゃんがダイヤさん達にした事って、この程度のことずら」

梨子「それって、つまりほとんど意味がないってこと?」

花丸「二人の運命が変わったというのなら、それは善子ちゃんの言葉とは関係のないところで意志を決定づける事があったという事」

善子「で、でもこんなにハッキリと、すぐに変わるなんて……」
 

208: 2017/11/24(金) 23:28:41.99 ID:Cexp8Im/
花丸「まぁちょっと極端に言ったけど、例えば善子ちゃんの言葉が小さな起因となる事も考えられるずら」

善子「また起因?」

花丸「うん。さらに例えになるけど、そうだねぇ……」チラ

梨子「ん?」


花丸「梨子ちゃん、お金頂戴、今持ってるの全部」

梨子「へ?」

善子「はぁ?」
 

209: 2017/11/24(金) 23:29:31.36 ID:Cexp8Im/
花丸「と、ここでマルがいきなりお願いしても梨子ちゃんは躊躇するずら」

梨子「それはそうだよ、全部だなんて。ちゃんと理由を聞きたいし…」

善子「また無茶ぶり?」

花丸「で、ここでまた例えばだけど梨子ちゃんが事前に善子ちゃんからこういう事を聞いていれば?」

梨子「?」

花丸「マルちゃんが今とてもお金に困っていて、すぐにでも必要な状況なんだって」

善子「マルちゃんて……」

梨子「ん……あ、そうだね……そう言われていたらすぐに否定はしないかも…」

花丸「そこでマルが、ワケは後で話すから頂戴って言ったら?」


梨子「困ってるんだったら……うん、渡すかも……」
 

210: 2017/11/24(金) 23:30:38.70 ID:Cexp8Im/
花丸「今の場合善子ちゃんの言葉が一つの判断材料だったわけだけど、お金を渡す事を決定したのは梨子ちゃん本人ずら」

梨子「なるほどね。善子ちゃんがお金をあげて欲しいという事を言っていないから、決定したのは私…」

善子(そういう意味だとマリーには何かしてっていう事は言ってない……でもダイヤには……)

花丸「勿論状況によってこれが前後する事もあるずら」

善子「ん?」

花丸「ダイアさんが善子ちゃんに言われてすぐに健康法を取り入れたっていう話」

善子「まさに今それを考えていたところだけど……」

花丸「それはもうダイヤさんの中で、何かしよう、したほうがいいかもって意識があったんじゃないかな」

梨子「自分の病気を知っていたって事?」

花丸「細かい理由は本人に聞いて見ればいいと思うずら。善子ちゃんはあくまで小さな起因でしかないの」
 

211: 2017/11/24(金) 23:31:45.76 ID:Cexp8Im/
善子「ねえ、ちょっと待って!」

梨子「善子ちゃん?」

花丸「ん?」

善子「色々と教えてくれて感謝するわ……でも私が知りたいのはそういう事じゃないの!」

花丸「ふむ……」


善子「私のせいかどうかはもうわからないけど、本来すごく長生きする予定だったマリーの運命をどうやったら変えられるかって事よ!」

梨子「鞠莉さん……25歳だっけ……」

善子「そう。そんな運命を知ってしまって、少しでも自分に原因があるならなんとかしたいって思うのは当然でしょ!?」
 

212: 2017/11/24(金) 23:32:38.70 ID:Cexp8Im/
花丸「でもそれは善子ちゃんじゃなくて、鞠莉ちゃんが絶対にこうするって決めた何かに起因している事の結果……」

善子「そ、それがなんだっていうのよ……」

花丸「それを変えるという事は、鞠莉ちゃん自身の決意を覆させる必要があるずら。それが出来る?」

梨子「自分自身で…決めさせる……」

善子「そ、そんなの簡単よ! このままだとマリーは25歳で事故にあうからって言えば……」

梨子「…………」

花丸「自分の運命を知らずに変えてしまうほどの決断を、そんな嘘か本当かわからない事で変えるずら?」

善子「………じ、じゃあノートを見せて………!?」

梨子「…………」
 

213: 2017/11/24(金) 23:33:26.21 ID:Cexp8Im/
梨子「他の人に見せられないノートじゃ、意味はないと思うよ……」

善子「だったら、何か実例を挙げて……」

梨子「だから……それが見えないんでしょ?」

善子「………………」

花丸「強引な方法とすれば、善子ちゃんが預言者となってそれを信じさせるとかしかないずら」

善子「預言者……」

花丸「人の死を予言して、それを当てていけばもしかしたら信用してくれるかもしれないけど……」

梨子「それは…ノートを使って?」

花丸「それも、鞠莉ちゃんより早く死ぬ人を見つけ出す必要があるずら。突然死んで驚かれるくらいの人。お年よりとかは無理ずら」

善子「ぐ………」
 

214: 2017/11/24(金) 23:34:13.34 ID:Cexp8Im/
梨子「善子ちゃん……もうノートは使わないって……」

善子「で、でもそれでマリーが……」

梨子「それに、善子ちゃんは耐えられる? そんなにたくさんの人の死を間近にして……」

善子「…………」

梨子「私は無理。絶対に耐えられないよ、そんなの……」


花丸「本来運命というのはそういうものずら。だから皆最後の言葉として使う事が多いんだよ」

善子「じゃあなんなのよこのノートは!!」

梨子「……………」

花丸「それは………確かなことを言えば、一つだけ……」
 

215: 2017/11/24(金) 23:35:33.56 ID:Cexp8Im/
花丸「悪魔のノートだよ、それは…」

梨子「!?」ビクッ

善子「………っ!」ドキッ


花丸「しかも明確な悪意はなく、ただ人に運命という重さを積み重ねさせるだけで何もしない、酷いノートずら」

善子「でも! これがなかったら私も梨子も死んでいたのよ? それはどう説明するのよ!」

花丸「説明もなにも、マル達はきっと二人の死をとても悲しんで、受け止めるのにたくさんの時間を必要としたはずずら…」

梨子「…………」

花丸「だから幸運なんだよ。拾った命なら、ただそれに感謝して精一杯生きるだけでいいずら」

善子「じゃあずら丸はマリーをこのままにしていていいわけ? 私には出来ないよそんなこと!」
 

216: 2017/11/24(金) 23:36:44.08 ID:Cexp8Im/
花丸「話が平行線になるずら」

善子「理由が必要だったからって、あんたにマリー達の事を教えたのは今だと申し訳なくも思うけど…」

梨子「人の運命を知るって、そういうことだよね」

花丸「マルは鞠莉ちゃんの寿命が分かっても、何もしないし、何もできないずら」

善子「………………」


花丸「ただ……悲しくなるだけだよ………」

善子「ぅっ………ぅぅ……」

梨子「…………」
 

217: 2017/11/24(金) 23:37:44.62 ID:Cexp8Im/
花丸「マルは善子ちゃんと梨子ちゃんに重荷を感じて欲しくないだけずら」

梨子「花丸ちゃん……」

善子「それでもよ………私は絶対に諦めないわよ!」

花丸「善子ちゃん……」

善子「さっき言ってた、運命的な出来事をマリーにさせればいいんでしょ?」

花丸「簡単に言うとそういう事だけど、鞠莉ちゃん自身にしかわからないような事をどうやって?」

善子「そこはこの……」ババッ
 

218: 2017/11/24(金) 23:38:44.63 ID:Cexp8Im/
善子「だ、堕天使ヨハネの溢れ出る圧倒的カリスマ性をもってすれば!」ギュイン

花丸「意味が分からないうえに冬は冬眠するんじゃなかったずら?」

善子「う、うっさいわね!」


梨子「ふ、ふふ…」

善子「ちょっと梨子まで何笑って……」

梨子「ううん、違うの……ただ善子ちゃんがひさしぶりに調子が戻ったなって」

善子「なによ、私はいつもと変わりないわよ!」

花丸「真面目なのかどうかいつも曖昧ずら」

善子「大真面目よ!」
 

219: 2017/11/24(金) 23:39:33.15 ID:Cexp8Im/
梨子「そうだね。大真面目だよ、いつでも…」

善子「梨子……」

梨子「善子ちゃんがやると決めた以上、私は出来る限り協力する」

花丸「梨子ちゃんにしてはアグレッシブずら」

善子「ふふ、当然よ! この私、ヨハネのリトルデーモンならねっ!」

梨子「あれ、私リトルデーモンだったんだ?」

善子「そうでしょ!? って、いいのよそこは、ハイって言っておきなさいよ!」

梨子「ふふ、はいはい」


花丸「やれやれずら」
 

220: 2017/11/24(金) 23:40:32.31 ID:Cexp8Im/
 -夜 善子ちゃんのお部屋


善子「とりあえず週明けからすぐに行動を開始するわ!」

梨子『具体的に何をするの?』

善子「マリーに近況とか色々聞いて、なにが決定的だったのか調べるところかなぁ?」

梨子『じゃあ私は果南ちゃんやダイヤさんにそれとなく聞いてみるね」

善子「頼んだわ」

梨子『……………』

善子「ん………どうしたの?」

梨子『善子ちゃんは、やっぱり自分の運命とか気になる?』

善子「何よ急に…」
 

221: 2017/11/24(金) 23:41:07.74 ID:Cexp8Im/
梨子『もしもね、私が………』

善子「うん」

梨子『……………』

善子「ん?」

梨子『ごめんなさい、なんでもない……』

善子「なによっ気になるわね!」

梨子『ほんとになんでもないから……』

善子「まぁ…いいけど……」

梨子『……………』
 

222: 2017/11/24(金) 23:41:57.42 ID:Cexp8Im/
善子「そういうことだから、週明けからよろしくね」

梨子『うん、がんばるね』

善子「それじゃ切るわね~ おやすみ」

梨子『うん、おやすみなさい』


 ピッ  …………。


善子「………………」
 

223: 2017/11/24(金) 23:43:10.35 ID:Cexp8Im/
善子「人の運命は自分自身にしか変えられない……か」

 ゴソッ… ペラ…

善子「これがただのお節介だというのなら、それでもいい…」


 小原鞠莉
 享年25歳 航空機事故により焼死

 桜内梨子
 享年37歳 薬物過剰投与により死亡


善子「私の自分勝手な我儘だとしても、それでもいい…」

善子「私は堕天使……そこに正義を気取るつもりなんてない…」

善子「ただ無事に……長生きしてくれれば……」
 

224: 2017/11/24(金) 23:44:09.71 ID:Cexp8Im/
『マルは善子ちゃんと梨子ちゃんに重荷を感じて欲しくないだけずら』


善子「ずら丸………」

善子「そういえばあいつ、遊園地事故の話をした時もやけに冷静だったよね……」


『花丸ちゃんって、何者なの?』


善子「ずら丸はずら丸で……それ以外なんて……」


善子「………………」


 スッ…
 

225: 2017/11/24(金) 23:45:11.05 ID:Cexp8Im/
善子「国……木……田……は…」サラッ



善子「ってなにやってんの私! もうノートは使わないって決めたでしょ!」


 国木田花


善子「そうよ、あいつは他の誰でもない、国木田花丸…それだけよ……」


 パタン……
 

226: 2017/11/24(金) 23:46:05.07 ID:Cexp8Im/
続くー…

254: 2017/11/26(日) 14:12:11.00 ID:R5c4fOOg
 -週明けの月曜日 校門前


ルビィ「善子ちゃんおはよ~」

ダイヤ「おはようございます」

善子「おはよっ」


ルビィ「どうしたの?」

善子「ん、ちょっと人を待ってるのよ」

ルビィ「そうなんだ。じゃぁ先に行ってるね~」

ダイヤ「それでは」

善子「はいよ」
 

255: 2017/11/26(日) 14:13:44.72 ID:R5c4fOOg
善子「……………」チラ


ルビィ「ぅぅ、今日の体育お外かー寒いだろうなー」

ダイヤ「なにを情けない事を……ルビィも朝の舞踊をはじめますか?」

ルビィ「え、えー……それはちょっと…」


善子「ふふ…」


梨子「なにかいい事でもあったの?」

善子「ひゃぁっ!」

梨子「わっ」
 

256: 2017/11/26(日) 14:14:24.45 ID:R5c4fOOg
善子「驚かせないでよっ」

梨子「ご、ごめんね…こっちも驚いたけど」

善子「ん、んっん……おはよ」

梨子「うん? おはよう」

善子「先週も言ったけど、今日から作戦開始よ! いい?」ビシッ

梨子「そうだね、がんばる」

善子「それでこそ我がリトルデーモンよ!」

梨子「はいはい」
 

257: 2017/11/26(日) 14:14:59.57 ID:R5c4fOOg
鞠莉「あら、二人して校門デートかしら?」

果南「朝から何言ってんのさ」


梨子「あ、おはようございます鞠莉さん、果南さん」

善子「デートってなによ!」

鞠莉「あら~お似合いよ? ねえ果南」

果南「それは否定しないけどね。梨子ちゃん、もう体調はいいの?」

梨子「はい、ご心配おかけしました」

鞠莉「やっぱり梨子は笑顔のほうが断然キュートね」

梨子「えっ…あ……」
 

258: 2017/11/26(日) 14:15:48.83 ID:R5c4fOOg
善子「そんなことよりマリー!」

鞠莉「ん、なぁに?」

善子「今日ちょっと時間いい? 話があるのよ」

鞠莉「あら、善子がそんな事言うなんて珍しいわね。いいわよー」

善子「練習終わりでいい?」

鞠莉「オッケー、じゃあ終わったら理事長室にいらっしゃい」

善子「それでいいわ。それじゃまた放課後…」

梨子「あ、善子ちゃんまって~」


果南「なにかあるのかな、善子ちゃん」

鞠莉「………………」
 

259: 2017/11/26(日) 14:16:27.83 ID:R5c4fOOg
 -放課後 スクールアイドル部部室


千歌「いやー、やっぱ9人揃ってこそだね!」

曜「そうだね、あらためて梨子ちゃんおかえり!」

梨子「みんな心配かけてごめんね、もう大丈夫だから」

花丸「元気になってなによりずら~」

ルビィ「うんうん」

果南「それじゃ今日は基礎練習の後はフォーメーション練習中心にしようか」

ダイヤ「そうですわね」

鞠莉「それじゃさっそく行きましょ!」
 

261: 2017/11/26(日) 14:17:31.85 ID:R5c4fOOg
果南「はいもっと元気に~!」タッタッタ

鞠莉「いっちに~さーんしっ!」タッタッタ

ルビィ「ご、ごー……ぉぉ」ヘロヘロ…

花丸「ルビィちゃんがんばるずら~!」トットット

曜「花丸ちゃん最近調子いいみたいだねー」タッタッタ

千歌「最初の頃にくらべて体力ついたよねー…ふぃ…」タタタ…

善子「…………」
 

262: 2017/11/26(日) 14:18:28.41 ID:R5c4fOOg
梨子「ダイヤさんー」

ダイヤ「はい、なんでしょう?」

梨子「最近新しい健康法を取り入れたって言ってましたけど」

ダイヤ「あら、梨子さんも興味が?」

梨子「少し…。実際効果のほうはどうなんですか?」

ダイヤ「効果はわかりませんね」

梨子「え?」

ダイヤ「ただ、今の自分が元気なのがそうなのかもしれませんし、きっとこれを体感するとなると…」

梨子「ふむ」

ダイヤ「やめた時くらいですかね?」

梨子「やめた時?」

ダイヤ「それくらいに自然となっているのがそうなのかもしれないという事です」
 

263: 2017/11/26(日) 14:19:13.39 ID:R5c4fOOg
梨子「つまり、やっぱり続ける事が大事ということですか?」

ダイヤ「それを生活の一部になるほどに。なので誰にでもできる簡単な事ではないと思っていますわ」

梨子「そうまでしてやろうって決めたのには理由があるんですか?」


善子(うまいわねリリー)


ダイヤ「ん……そうですね、きっかけがあったのは確かです」

梨子「それは?」

ダイヤ「ふふ、それは人それぞれでしょうから、秘密ですわ」

梨子「えー気になりますぅ」


善子「…………」
 

264: 2017/11/26(日) 14:20:11.45 ID:R5c4fOOg
梨子「あれから粘ってみたけどダメだった……」シュン…

善子「ご苦労様」

梨子「ダイヤさんの例が鞠莉さんの件の参考になればと思ったんだけど……」

善子「ダイヤも言ってたけど、運命的な部分もきっと人それぞれなんでしょ」

梨子「善子ちゃんはこれから理事長室?」

善子「ええ。たぶん曖昧な事を言ったところで運命なんて変えられない。だから直接言ってくるわ」

梨子「大丈夫なの?」

善子「わからないけど、これでダメなら別の方法を考えるだけよ」

梨子「うん。そうだね、がんばって善子ちゃん」
 

265: 2017/11/26(日) 14:21:06.65 ID:R5c4fOOg
 -理事長室


 コンコン…


鞠莉「はーい、どうぞ~」

善子「お邪魔します」

鞠莉「ふふ、いらっしゃい」

善子「無理言っといてあれだけど、理事長の仕事とかそういうのはいいの?」

鞠莉「あら、そういうとこ気にかけてくれるだなんて、優しいのね善子」

善子「そういうんじゃないって……平気ならいいのよ」

鞠莉「ま、そこ座りなさい。今コーヒー淹れてあげるわ」

善子「ん………」
 

266: 2017/11/26(日) 14:21:44.65 ID:R5c4fOOg
鞠莉「それで~? 改まってのお話しとは?」カチャカチャ

善子「…………」

鞠莉「雰囲気から察するに冗談を言いに来たわけではないのでしょう?」コポコポ…

善子「も、勿論よ」

鞠莉「学校の事?」

善子「違うわ……ええっと、なんというか……」

鞠莉「はいどうぞ」カチャ


善子「……………」
 

267: 2017/11/26(日) 14:22:19.10 ID:R5c4fOOg
善子「まず一つ聞いて欲しいの」

鞠莉「なぁに?」

善子「最近、一大決心した事ってある?」

鞠莉「急になんの話?」

善子「もしあるなら、それを少し考え直して欲しいというか、違う選択肢はないのかなーとか…」

鞠莉「んん?」

善子「とにかく! このままじゃダメなの!」

鞠莉「私が何か決めた事が、善子にとってダメな事ってこと?」

善子「違うわ、マリーにとってよ!」
 

268: 2017/11/26(日) 14:22:47.38 ID:R5c4fOOg
鞠莉「いまいち要領を掴みづらい話ね」

善子「とにかく、そういうのあるの、ないの?」

鞠莉「……………」

善子「どうなの……?」


鞠莉「そうね、あるわよ」

善子「!!」

鞠莉「でもそれは決して覆す事のない決定で、考え直すとか他の選択肢とかは無いわね」

善子「どうしてよ?」
 

269: 2017/11/26(日) 14:23:35.45 ID:R5c4fOOg
鞠莉「どうしてって……それほどの一大決心って事よ」

善子「むぅ……」

鞠莉「むしろそれがどうして私にとってダメな事なの? あなた何か知ってるの?」

善子「それは……」

 スタスタ…

善子「え?」

鞠莉「んしょっ」ドサッ

善子「な、なんで隣に……」

鞠莉「そういえば前にうちの施設について話してたわね」ズイ

善子「えと…近い……」
 

270: 2017/11/26(日) 14:24:18.28 ID:R5c4fOOg
鞠莉「あんなくだらない計画、とっくに頓挫しているものだと思っていたけど、善子はあの情報をどこで?」

善子「え? どこって……別に私は…」

鞠莉「アングラネットでそういうのが出回っているのかと調べたけどそうでもない。でも適当にする話にしては…ねぇ?」

善子「あの、だから近いのよマリー」

鞠莉「もしかして急に変な事を言い出したのと何か関係があるのかしら?」

善子「それは私には分からないわ。マリーが決めた事だし…」

鞠莉「どうも話が噛み合わないわね。じゃあ聞くけど、私の何がダメになるのかしら?」

善子「それは………」
 

271: 2017/11/26(日) 14:25:01.15 ID:R5c4fOOg
鞠莉「言えないこと?」

善子「ううん。ちゃんと言うって決めてるから……でも、きっと信じられないって思うわよ」

鞠莉「構わないわよ、言ってみて」

善子「…………ん」ゴクッ



善子「このままだとマリー、あなたは若くして死んじゃうのよ」

鞠莉「……………」

善子「具体的には、えっと……」

鞠莉「………待って」
 

272: 2017/11/26(日) 14:25:39.62 ID:R5c4fOOg
善子「え?」

鞠莉「あー…なるほどね…………最後ノートか」

善子「うぇっ!? な、なんで知ってるのぉ!?」

鞠莉「それ私も持っているからよ」

善子「な…………」

鞠莉「冗談じゃなく、ワケのわからない事を言う理由に私の寿命が関係しているとなれば、そういう事でしょ?」

善子「う………うん…」

鞠莉「私の名前、書いたんだ」

善子「そ、それに関してはつい、出来心というか……その時は深く考えていなかったのよ…」

鞠莉「………………」

善子「……ごめんなさい」
 

273: 2017/11/26(日) 14:27:10.61 ID:R5c4fOOg
鞠莉「オッケーいいわよ」

善子「でも、私……」

鞠莉「それで、私の寿命があまりに短かったと?」

善子「違うの……最初は長かったのよ。すごく…」

鞠莉「あら、寿命の長さが変わるなんて事があるの?」

善子「運命は知っていれば干渉できる。露天商がそう言ってたんだけど…」

鞠莉「露天商……ああ」

善子「でもそれに決定力は無くて、干渉できても結局運命を決定づけるのは本人にしかできなくて、それをマリーがしたから…」

鞠莉「私の寿命は短くなった…と」

善子「う、うん……」

鞠莉「それが施設とどういう関係が?」

善子「最初のすごく長い寿命の時の死因が、その施設の事故によるものだったから……」
 

274: 2017/11/26(日) 14:27:59.06 ID:R5c4fOOg
善子「それでも、ただなんとなくそういう施設あるのかって聞いただけで、あんなに変わるだなんて思わなかったのよ」

鞠莉「でも短くなってしまった寿命に、善子は責任を感じているのね?」

善子「だって、私のせいみたいなものだし……」

鞠莉「ふふ、なんだかんだで堕天使さんは優しいのね」

善子「ちょっと、こっちはマジメに…!」

鞠莉「ありがとう、そこまで考えてくれていて」

善子「マリー……じ、じゃあ…」


鞠莉「でも、いいわ。今のままで」
 

275: 2017/11/26(日) 14:28:59.54 ID:R5c4fOOg
善子「え……な、なんで?」

鞠莉「なんで…か……そうね、それは私の寿命がどうこうより大事な決断をしたからかな?」

善子「で、でもそれじゃマリーが……」

鞠莉「勿論、長生きできるものならそれは嬉しい事だけど、でも寿命の長さだけが人生で大事なもの?」

善子「え? 人生で………」


鞠莉「例えばそうね……」

鞠莉「やりたい事もなく無意味に長く時を過ごすのと、やりたい事を全力でやりきる短い人生と、善子はどっちがいい?」

善子「それは…………」
 

276: 2017/11/26(日) 14:29:45.67 ID:R5c4fOOg
鞠莉「私は私の人生においてすごく大事な決断をしたと思っているわ。その決断を覆す事によって寿命が延びたとしても、それは意味がある?」

善子「そんなのわからないじゃない。生きていれば色んな事があるんだし…」

鞠莉「そうね。でも私は今の私にできる事、必要な事として決めた事がある。それはきっと人生においてとても大事な部分なの」

善子「マリー……」

鞠莉「その思い切った決断をさせてくれたのは最後ノートだったけどね」

善子「マリーも……名前を書いたの?」

鞠莉「最初はジョークだろうって使わなかったわ。だけどある日、一人だけ書いてみたの」

善子「一人だけ……それでそのノートを信じることが出来たの?」
 

277: 2017/11/26(日) 14:30:29.00 ID:R5c4fOOg
鞠莉「字が浮かび上がる事だけならトリックで説明がつくけど、そうじゃない具体的な内容がでてきたからね」

善子「それって……」

鞠莉「…………」

善子「ああ、いい、やっぱいい! 人の運命を知るともう、面倒なことしかないんだから!」

鞠莉「そうね、本当に面倒な事だわ。でもきっと私が書いた人の事は善子にはなんの影響もないわよ」

善子「ん?」


鞠莉「私はね、パパの名前を書いたの」

善子「パパ……?」
 

278: 2017/11/26(日) 14:31:28.29 ID:R5c4fOOg
鞠莉「そう、パパ……小原グループの総帥ね」

善子「そうだったの…」

鞠莉「パパは典型的な仕事人間だからね。グループの存続と、規模の拡大に毎日やっきになっていたわ」

善子「けっこうあちこちで見るわね、小原グループ」

鞠莉「それでね、何年か前にパパが秘密裏に動かしているプロジェクトがあるというのを知ったの」

善子「……」ゴクッ

鞠莉「総帥としてのパパは、次代の後継者探しに力を入れるのと同時に、自らを延命させる手段も構築しようとしていた…」

善子「それって、冷凍睡眠?」

鞠莉「そうみたいね。体が老いていく前に未来の技術に託すための延命装置」

善子「そうなんだ…」
 

279: 2017/11/26(日) 14:32:23.51 ID:R5c4fOOg
鞠莉「私はその考えはあまり好きじゃなかったわ」

善子「………」

鞠莉「なんだか、見苦しいって思えちゃったのよ。悪あがきしてるだけっていうか…」

善子(うぅ、ちょっとカッコイイマッドサイエンティストの設定を重ねてたわ……)

鞠莉「学校の統廃合問題の時もそう。パパにはダメそうなら次を見つければいいという程度の話だったのよ…」

善子「そんな……」

鞠莉「私はそれよりも、今あるすべての事に全力で取り組むちかっちのような姿勢のほうがずっとステキに思えたわ」

善子「それは……私もそう感じる…」

鞠莉「そして計画自体はしばらく私の耳に入ってこなかったからてっきり頓挫したと思って安心していたのよ」

善子「あ、もしかして私が言った事で……」
 

280: 2017/11/26(日) 14:34:28.45 ID:R5c4fOOg
鞠莉「正直善子が口にした時、あんなくだらない計画がネットで広まっているんじゃないかと本気で嫌だったわ」

善子「そうだったの……」

鞠莉「パパはまだそんな事をしているのかとイライラした気持ちもあってね、その勢いでつい書いたのよ。その計画の行く末の意味もかねて」

善子「パパはどう……」

鞠莉「冷凍睡眠施設の起動時に発生した事故で亡くなっていたわ……そう遠くない未来に…」

善子「事故……」

鞠莉「きっとコソコソ進めていた計画の実行時によるものなんだろうけど、正直失敗しているのならよかった……」

善子「…………」

鞠莉「だけど、それが最後だなんて………方法はいいと思えない事だけど、それでも……パパがそんなので死ぬのなんて…」

善子「それで……マリーは何を決断したの?」
 

281: 2017/11/26(日) 14:35:25.05 ID:R5c4fOOg
鞠莉「パパとちゃんと向き合って、生きていきたいから……その計画を中止させたわ」

善子「そんな事できる権限とかあるんだ……」

鞠莉「権限というより、計画関係者にちょっと話を通しただけよ」

善子「そんな簡単なものなの?」

鞠莉「ふふ、そこは深く追及しないほうがいいわよ?」ニッ

善子「」ゾクッ


鞠莉「でも、結局は無意味だったみたいだけどね」

善子「え?」
 

282: 2017/11/26(日) 14:36:22.89 ID:R5c4fOOg
鞠莉「ノートの死因が変化したけど、パパはそれでも同じ年に事故にあって亡くなるってでてるのよ…」

善子「え……あ……起因が変わっても運命まで変わらない……」

鞠莉「昔読んだ本になんだか似たような事が書いてあったのを思い出したわ。死の運命からは逃れられないと」

善子「それは、本人が大きく決断する必要のある事……きっとマリーのパパはそれで計画を諦めていないのよ」

鞠莉「そうか…そういう事……でもいいわ」

善子「え?」

鞠莉「少し計画の内容を見たのだけど、研究環境のせいか、施設に入れる人数は一人だけだったの」

善子「一人……?」

鞠莉「自分一人だけ延命しようだなんて、傲慢にもほどがあるわ」

善子「一人……」
 

283: 2017/11/26(日) 14:37:19.59 ID:R5c4fOOg
鞠莉「それでもノートのおかげでパパの寿命を知る事が出来た。だから決めた事があるの」

善子「…………」

鞠莉「私、高校を卒業したらパパの会社で一緒に働くの。今でもパパの考えは理解しにくい部分もあるけど…」

善子「…………」

鞠莉「少しでも傍にいて……善子?」

善子「………そうか」

鞠莉「どうしたの?」


善子「マリー……聞いて……」
 

284: 2017/11/26(日) 14:38:12.70 ID:R5c4fOOg
続くー…

301: 2017/11/27(月) 23:00:51.03 ID:0x2XjB9W
 -夜 善子ちゃんのお部屋


善子「はぁ……」ボフッ


善子「…………」


 prrrr…


善子「ん………梨子か……」


 prrr… ピッ


善子「…………はい」

梨子『あ、もしもし善子ちゃん?』
 

302: 2017/11/27(月) 23:01:48.02 ID:0x2XjB9W
善子「うん……」

梨子『いま電話大丈夫? 今日の事聞きたいんだけど…』

善子「………ん」

梨子『善子ちゃん?』

善子「あ…うん……わかった……」

梨子『何かあったの?』

善子「あった……あったけど……何も……」

梨子『どういう事?』
 

303: 2017/11/27(月) 23:02:30.56 ID:0x2XjB9W
善子「何も変わらなかった……マリーは……今のままでいいって…」

梨子『え、でもそれだと……』

善子「明確な年齢は言ってないけど、マリーは今のまま……ただいつも通りに生きていくって」

梨子『……………』

善子「マリーね、卒業したらお父さんの仕事を手伝うって、海外に行くんだって…」

梨子『……………』

善子「どれくらいの時間を海外で過ごすのかわからないけど……もしかしたらもう会えなくなるのかな…」

梨子『善子ちゃんは、それでいいの……?』

善子「いいも悪いもないのよ……この話は、もう……終わり…」
 

304: 2017/11/27(月) 23:03:31.78 ID:0x2XjB9W
梨子『鞠莉さんは運命を受け入れたって事?』

善子「受け入れるとか、そういう問題でさえなかったのよ。逆にこっちが色々教えられた…」

梨子『んー……?』


善子「梨子はさ、運命は変えられるって思う?」

梨子『え……実際私達はそれで助かったんじゃ……』

善子「そうね、私達の今は幸運……。でもさ、かならずしも幸運が続くと保証されるわけじゃない…」

梨子『どういう事なの?』

善子「私がお節介でマリーの運命を変えたとして、それで寿命が延びる事ってあるのかな?」

梨子『だって、そのために動いていたんだし…』

善子「変わった運命がさ、もっと酷い事になる可能性だって…あったんじゃないかな……」
 

305: 2017/11/27(月) 23:04:33.38 ID:0x2XjB9W
梨子『…………それは』

善子「だから……もうイタズラに運命をかき乱すような事は…しないほうがいいって……」

梨子『それは…鞠莉さんが?』

善子「ううん……私がそう思った事よ…」

梨子『そう……じゃあ善子ちゃんはこれから……』

善子「これから……」

梨子『……………』

善子「ごめん……今日はもう疲れたから切るわ…」

梨子『うん…じゃあまた明日、学校でね……』ピッ
 

306: 2017/11/27(月) 23:05:15.35 ID:0x2XjB9W
善子「ふぅ……………」パタ…


善子「桜内……梨子…………37歳……」

善子「はぁ……これが梨子の人生が不幸である確証には……ならない……」

善子「変な死因だけどね………でも……」


 ――――


善子「マリー……聞いて……」

鞠莉「ん?」
 

307: 2017/11/27(月) 23:05:47.93 ID:0x2XjB9W
善子「その施設は一人用だった……それで気になる事が……」

鞠莉「…………」

善子「マリー……あなたの最初の死因……」

鞠莉「待って!!」

善子「っ!」


鞠莉「いい、言わなくていいわ……」

善子「え、でも……」
 

308: 2017/11/27(月) 23:06:19.81 ID:0x2XjB9W
鞠莉「……………」

善子「……マリー」


鞠莉「私のママね…」

善子「ママ?」

鞠莉「そう、私のママ…元々体の弱い人だったのよ……いつも薬を服用しないといけないほどに」

善子「そうなんだ……」

鞠莉「そんなママが亡くなったのが五年前……」

善子「え……」
 

309: 2017/11/27(月) 23:07:07.57 ID:0x2XjB9W
鞠莉「今にして思えばその頃からかな、パパが何か知らないところで動き始めたの……」

善子「それって……」

鞠莉「ん………」スッ


鞠莉「コーヒー、もう一杯いる?」

善子「ち、ちょっとマリー、それより…」

鞠莉「いいの、それ以上は言わないで」カチャカチャ

善子「どうして……」
 

310: 2017/11/27(月) 23:07:57.22 ID:0x2XjB9W
鞠莉「私の中にある想いが……決意が全部崩れてしまいそうで……怖いのよ」

善子「怖い……それはマリーのパパが…」

鞠莉「施設が一人用だっていうのは知っていたけど、私の死因……施設に関係するんでしょ?」

善子「そ、そうよ…マリーは…」

鞠莉「だからそこまでっ! その先は絶対に口にしないで……お願いよ」

善子「マリー……」

鞠莉「私だって薄々感じているのよ。でもそれを確定させないで……このまま曖昧なままでいさせて……」

善子「ん………」
 

311: 2017/11/27(月) 23:08:38.35 ID:0x2XjB9W
鞠莉「もしも善子の言おうとしている事が私の考えている事だとしたら、それはダメなの……」コポコポ…

善子「ダメって何が?」

鞠莉「だって……もしもそうだとしたら、パパへの気持ちが……まったく違うものになってしまうもの」

善子「でもそれはマリーの…」

鞠莉「だからいいの、今のままで……もしかしたらっていう可能性の話で終わっていて欲しいのよ」

善子「マリーはそれでいいの?」

鞠莉「いいわよ。それに自分の決断で運命が変わったとして、それがかならずいい方向にいくとは限らないしね」

善子「え……?」

鞠莉「ん、だってそうでしょ? 変わる運命がもっと酷い事になる事だってあるじゃない?」

善子「…………」
 

312: 2017/11/27(月) 23:09:30.11 ID:0x2XjB9W
鞠莉「……………」

善子「もっと…酷い事……」


鞠莉「善子」

善子「え、あ、なに?」

鞠莉「わからないからこそ、人は毎日精一杯生きていく事ができるって、そうは思わない?」

善子「………それは」


『人は日々生きるために必死ずら。そこにはその人自身がもつ魂の輝きがある。その生を全うするために必死に…』


善子「あ………」


『その道を自分のせいで歪めてしまっただなんて、神様にでもなったつもりずらか?』


善子「そう……そう言う事……」
 

313: 2017/11/27(月) 23:10:20.36 ID:0x2XjB9W
鞠莉「自分の死ぬ時がわかった人生なんて、きっと何もかも色あせてつまらないものになるわ」

善子「日々を生きる事を怠慢になってはダメ……」

鞠莉「ん、そういう事ね」

善子「マリーは……これからどうするの?」

鞠莉「さっき言った通りよ。パパの運命を知ってしまったんだもの。私はその時まで精一杯生きるわ」

善子「……………」

鞠莉「善子は、どうするの?」


 ―――――


善子「私は……」
 

314: 2017/11/27(月) 23:11:06.91 ID:0x2XjB9W
 -数日後 スクールアイドル部部室


ルビィ「はわー…おいしいねぇ」

花丸「極楽ずら~」

善子「ふっ……この堕天使ヨハネへの貢物としては合格ね」ビシッ

千歌「鞠莉ちゃんありがとう、とってもおいしい~」

ダイヤ「海外のお菓子といっても色々あるのですね」

曜「あー果南ちゃんそれ狙ってたのに~」

果南「へへーん、早い者勝ちだよっ」ヒョイ

鞠莉「イタリアに行ってたパパからのお土産にってもらったジャンドゥーヤだけど、好評でなによりだわ」

花丸「至福の時ずら~」パクパク

善子「ちょっとずら丸! 一人で食べすぎよ!」
 

315: 2017/11/27(月) 23:11:58.08 ID:0x2XjB9W
梨子「………………」


千歌「梨子ちゃんどうしたの? 食べないの?」

曜「なんだか元気ないね?」

梨子「ううん、大丈夫だよ。頂くね」スッ

善子「……………」

梨子「うん………おいしい……」


善子「梨子……」

梨子「…………」
 

316: 2017/11/27(月) 23:12:58.83 ID:0x2XjB9W
善子「まだ気にしてるの?」

梨子「……………」

善子「すぐに割り切れっていうのは無責任かもだけど…その……」

梨子「…………」

善子「元はと言えば私が口にしたことで梨子が……」

梨子「違うの」

善子「え……?」

梨子「鞠莉さんの事は鞠莉さん自身の問題で、私に出来る事はない……わかってる…」

善子「じゃあなにをそんなに……」

梨子「…………」ジー
 

317: 2017/11/27(月) 23:14:01.73 ID:0x2XjB9W
善子「ん、なによ……」

梨子「ねえ善子ちゃん。今週末にさ、ちょっと付き合ってくれないかな?」

善子「な、なによ突然……」

梨子「忙しいなら無理にとは……」

善子「別にいいわよ。我がリトルデーモンのお願いとあらばね」ニッ

梨子「…………うん、ありがとう」

善子「…………ねえ梨子、あなたなにを…」


千歌「梨子ちゃん達、練習いくよ~」

梨子「今行く~」スッ

善子「梨子…‥」


梨子「行きましょ、善子ちゃん」
 

318: 2017/11/27(月) 23:14:39.86 ID:0x2XjB9W
続くっ!

337: 2017/11/28(火) 23:45:19.22 ID:yEtmjGYm
千歌「ねえねえ今度のライブでさ、ひさしぶりにユニット曲やらない?」

曜「ユニットというとシャロン、ギルキス、アゼリアでやるんだね」

ルビィ「今度のってことは、地元中学校の学園祭にゲストで呼ばれてるライブですか?」

果南「いいねそれ、ユニットごとの新曲はまだ披露する場が少なかったからね」

ダイヤ「確かに、浦の星のスクールアイドルとして名を残すのはAqours以外にもありますしね」

花丸「楽しそうずら~」

鞠莉「ナイスアイディアね、ちかっち!」

千歌「えへへ」
 

338: 2017/11/28(火) 23:45:59.44 ID:yEtmjGYm
善子「ふふ、再びあのギルティな装束に身を包む事になるとは…」ギラン

鞠莉「えーどうせやるなら新しい衣装でよりギルティに攻めるべきじゃない?」

善子「ふむ……それもありね」

鞠莉「曲も少しアレンジを利かせてみるのもおもしろいわね」

善子「梨子……リリーはどう思う?」


梨子「……………」


鞠莉「梨子?」

梨子「……あ、ごめんなさい…なに?」

善子「………」
 

339: 2017/11/28(火) 23:46:51.76 ID:yEtmjGYm
果南「それじゃ、週末は各ユニットで集まって細かい部分を決めるってことで」

千歌「そうだね」

ダイヤ「それでは果南さんと花丸さんは週末うちにいらっしゃいますか」

果南「ゆっくり打ち合わせするとなるとダイヤのところがいいね」

花丸「了解ずら」

千歌「それじゃ、曜ちゃんとルビィちゃんはうちかなー?」

ルビィ「わかりました~」

曜「衣装ちょっとアレンジしたいからまとめて持って行くね」


鞠莉「それじゃ私達は……」
 

340: 2017/11/28(火) 23:47:32.79 ID:yEtmjGYm
善子「…………」

梨子「…………」

鞠莉「善子、梨子……どうしたの?」

善子「なんでもないわ……それより場所はどうする?」

梨子「…………」

鞠莉「うちに来る?」

梨子「鞠莉さんのところだと落ち着かないというか、脱線しちゃいそう…」

鞠莉「じゃあ梨子の家?」

善子「隣の千歌達と遊んじゃいそうじゃない?」

鞠莉「ふむ、じゃあ善子の家ね」

善子「え……」
 

341: 2017/11/28(火) 23:48:42.15 ID:yEtmjGYm
鞠莉「消去法で言ったらそうなるでしょ?」

善子「あ……」

梨子「善子ちゃんの都合がよければだけど……」

善子「いいの? 週末何か用事があったんじゃ?」

梨子「んー……じゃあ土曜日に集まって、日曜日に付き合ってくれる?」

善子「梨子がそれでいいならいいけど……」

鞠莉「あらなに、週末デート? 私お邪魔だったかしらー?」

善子「そういうんじゃないわよっ!」

梨子「…………」
 

342: 2017/11/28(火) 23:49:27.61 ID:yEtmjGYm
 -土曜日 善子ちゃんのお部屋


鞠莉「oh-摩訶不思議なアイテムが満載ね!」キラキラ

善子「あんまり弄らないでよ?」

鞠莉「あ、これこの前の放送で使ってたランプね! んー怪しいデザインだわ~」

善子「え…マリー私の放送見てるの!?」

鞠莉「勿論かかさずチェックしてるわよ?」

善子「ちょっとやめてよ恥ずかしいじゃない!」

鞠莉「えー? 毎回楽しそうでいいじゃない。私はあの放送好きよ?」

善子「ん……そ、そう……」

鞠莉「そういえば先週は放送してなかったね」
 

343: 2017/11/28(火) 23:50:06.41 ID:yEtmjGYm
善子「先週はまぁ……色々あったし……」

鞠莉「そうなの」


 ピンポーン


善子「梨子が来たみたいね、出てくるわ」

鞠莉「オッケー」

善子「変なトコいじらないでよ?」

鞠莉「わぁかってるわよ~♪」ヒラヒラ


 バタン…


鞠莉「……………んふ」
 

344: 2017/11/28(火) 23:51:12.76 ID:yEtmjGYm
梨子「こんにちは善子ちゃん」

善子「よく来たわね、マリーはもう来ているわよ」

梨子「曲をアレンジしたいって鞠莉さんが言ってたから、いくつか譜面を用意してきたの」

善子「相変わらずそういう仕事はやいわね」

梨子「なにかしていないと、気持ちが落ち着かなかったから……」

善子「………そう」

梨子「…………」

善子「あ、先に部屋行ってて、お茶持って行くわ」

梨子「うん、ありがとう」
 

345: 2017/11/28(火) 23:51:56.15 ID:yEtmjGYm
善子「梨子……たぶん、明日の用事って……」カチャカチャ

善子「…………」コポコポ…


善子「梨子が思いつめる内容なんて、一つしか…ないわよね……」


善子ママ「善子、このお菓子もよかったらもっていきなさい」

善子「ん、ありがと」

善子ママ「せっかくお友達が来てるのに何暗い顔してるのよ」ムニー

善子「ちょ…やめてって……」
 

346: 2017/11/28(火) 23:52:38.68 ID:yEtmjGYm
善子ママ「ふふ、でも良かったわ、あなたにお友達がたくさんできて」

善子「なによ急に……」

善子ママ「だって善子ったら友達作るの下手だったでしょ、昔から」

善子「む……ぅ……」

善子ママ「それが今じゃアイドルをやっているだなんて、ふふ…人生何があるかわからないわね」

善子「んもういいでしょっ! それもらっていくから!」タッ



善子ママ「ホント、どこで運命的な出会いをするか、わからないものね」
 

347: 2017/11/28(火) 23:54:31.96 ID:yEtmjGYm
 ガチャ

善子「おまたせ……って……」

梨子「あ、善子ちゃん……」

鞠莉「………………」


善子「マリー…それ、私の最後ノート?」

鞠莉「ん……」コクッ

善子「ちょっと机あさったのね!」

鞠莉「ごめん……でもこれ、私も梨子も中身は見えないんでしょ?」

善子「ん、知ってたの?」

梨子「それは私が……鞠莉さんがふいにノートを手にしたから」

鞠莉「中を見るつもりはなかったわよ。だってこれ私の事が書いてあるんでしょう?」

善子「そうよ……」
 

348: 2017/11/28(火) 23:55:15.36 ID:yEtmjGYm
鞠莉「それよりも、梨子もノートの存在を知っていて、所有者のルールみたいなのも知っていた」

梨子「…………」

鞠莉「梨子も持ってるのね、ノート」

梨子「はい……」

鞠莉「……………」


善子「これ、マ…お母さんから、食べなさいって」ガチャ

梨子「ありがとう」

鞠莉「…………」


善子「マリー?」

鞠莉「もしかして最近梨子がずっと元気がない理由ってこれ?」
 

349: 2017/11/28(火) 23:56:09.07 ID:yEtmjGYm
梨子「……っ!?」ビクッ

善子「マリー、急になにを…」

鞠莉「なにって梨子が元気ないの、知らないとでも思っていたの?」

梨子「え……」

鞠莉「私だけじゃなくみんな気にしてるわ。だから何かあればいつでも力になるつもりでいた」

善子「みんなも……」

鞠莉「どうやら原因は善子との間に起きたトラブルみたいだからそっと見守っていたんだけどね」

梨子「私と善子ちゃんは別に……」

鞠莉「でも、二人の間にある共通するものがノートなら、これに関係するのでしょう?」パサ
 

350: 2017/11/28(火) 23:56:59.37 ID:yEtmjGYm
善子「…………」

鞠莉「その様子だと、どうやら私の事も知っていたみたいね」

梨子「えっ?」

鞠莉「梨子はちょっと表情にでやすいのね。ま、そこがキュートな部分でもあるのだけど」

梨子「あ……あぅ……」

善子「それは…ごめんなさい、私が相談したの」

鞠莉「別に責めるつもりもないし、善子の気持ちは嬉しかったからもういいわ」

善子「ん……うん……」

鞠莉「善子の中ではなにかふんぎりがついたのかしら?」

善子「私は……」
 

351: 2017/11/28(火) 23:58:17.74 ID:yEtmjGYm
善子「最初はどんなに我儘な事だとしても、マリーにはって……そう考えてた」

梨子「……………」

善子「でもこの前マリーと話して、自分の行動がどれだけ無責任なのかっていうのを考えさせられた」

鞠莉「かならずしも良い方向に行くとは限らないってやつね」

善子「今見えているもの以上の事も起こりうるかもしれない。そんな未来を自分の身勝手で引き寄せてしまったらって…」


梨子「……………ぅっ」


善子「だからマリーの言う通り、今ある可能性を信じて進むほうがいいのかなって……」

鞠莉「そう。強いのね、善子は…」

善子「別に……………梨子?」

鞠莉「?」
 

352: 2017/11/28(火) 23:59:07.99 ID:yEtmjGYm
梨子「うっ……っ……ん、ぅぅ……」ポロポロ

善子「梨子!?」

鞠莉「どうしたの?」


梨子「う…ああぁ……ぁぁぁぁ……」


善子「なんで……どうしたのよ梨子!」ガッ

梨子「ひぅっ…だ、だって……だって……善子ちゃん……が……」ボロボロ

鞠莉「善子? 善子がどうしたの?」


梨子「ぅぅ、わあぁぁぁぁぁっ!!」
 

353: 2017/11/28(火) 23:59:58.65 ID:yEtmjGYm
善子「…………」

鞠莉「…………」


善子「もしかして私……死ぬのかな?」


梨子「っ!?」ビクッ

鞠莉「え?」

善子「これって……そういう事なんでしょ?」

梨子「ひぐっ……だって、だって……善子ちゃん…ぇぅっ…」

鞠莉「ちょっと梨子、落ち着いて…っていうのはしんどいか……えーと…」
 

354: 2017/11/29(水) 00:00:48.60 ID:rk6J5j/Z
善子「なんとなく、最近の梨子を見ていたら、そうなんじゃないかなって」

鞠莉「ど、どういう事?」

梨子「善子ちゃんが……なにかしようとすると……すぐ……ぅぅ…」

善子「えー……そっかぁ……へぇ……」ブルッ

鞠莉「善子!?」

善子「もしかして、もうすぐ……なのかな?」

梨子「……………っ!」

鞠莉「善子……梨子………」
 

355: 2017/11/29(水) 00:01:59.58 ID:rk6J5j/Z
梨子「さ、最初は…善子ちゃん、私と一緒だったよね……」

善子「最初……えぇ、そうね……」

鞠莉「あなた達、お互いの名前を?」

梨子「でも、それは回避できた……できたはずなんです!」

善子「ええ、少なくとも私達二人なにもしなければすでに死んでいたのよね……」

鞠莉「死んで……そうなの?」

善子「でもお互いにそれを変えようと必死になって、ちゃんとノートの死因は変わったんです。寿命も……」

梨子「ぅぅ……」

鞠莉「でも善子だけが……変わっていなかったってこと?」

梨子「違います……」

善子「え?」
 

356: 2017/11/29(水) 00:03:14.21 ID:rk6J5j/Z
梨子「善子ちゃんもちゃんと変わってた……でも、おかしいんです…」

善子「なにが……?」


梨子「あれから善子ちゃんの死因と寿命……毎日変わるんです……善子ちゃんが何か行動するたびに!!」


善子「…………」ドキッ

鞠莉「そんな……」


梨子「でも、善子ちゃんが鞠莉さんのところへ行ってから……もう何もしないって決めたところで、運命は動かなくなっちゃった」

善子「それが………」
 

357: 2017/11/29(水) 00:04:08.95 ID:rk6J5j/Z
梨子「来年………」

善子「えっ」ビクッ

梨子「このままだと、善子ちゃんは来年………死んじゃうの!!」

鞠莉「…………」ゴクッ

梨子「人の運命はイタズラに変えるものじゃない…それはわかってるけど…誰かに言うものでもないって…わかってるけど!」

善子「…………」ブルッ

鞠莉「梨子………」


梨子「でもやっぱり嫌です! 私だけがそれを知っていて、どうしていいかわからなくて……」
 

358: 2017/11/29(水) 00:05:08.85 ID:rk6J5j/Z
善子「梨子……だから……」

梨子「それに変わっていく善子ちゃんの運命……だんだんと短くなってて……」

鞠莉「それって…?」

梨子「最初は94歳だったの……すごく長くて、良かったって思って……でも次に71歳になってて……」

善子「94……71……」

梨子「どんどん下がって……だから私、今何かしたらもう……無理なんじゃないかって……」

鞠莉「そうだったの……」スッ

梨子「ん………鞠莉さん?」

 ギュッ

鞠莉「辛かったわね……梨子」

梨子「えぅっ……ぅぁぁぁ…」
 

359: 2017/11/29(水) 00:07:19.20 ID:rk6J5j/Z
鞠莉「そんな辛い事、一人で背負わなくてもいいのよ」

梨子「でも……どうしていいかわからなくて……もし明確な時期とか言って…回避しようとしたら、終わってしまいそうで……」

善子「さっきの告白も場合によっては十分怖いわよっ」

梨子「ごめんなさい……」

善子「でも……そっか……私がね……」

鞠莉「善子……無理に……」

善子「ねえ、二人にお願いがあるんだけど」

梨子「ん……なんでもする…」

鞠莉「なにかしら?」



善子「今日……ずっと一緒にいてくれない? たぶん、一人になったら……私ダメだから……」ボロッ
 

360: 2017/11/29(水) 00:08:04.18 ID:rk6J5j/Z
続きまっ

374: 2017/11/29(水) 23:35:06.67 ID:rk6J5j/Z
 -夜 善子ちゃんのお部屋


善子「……結局あまり進まなかったわね、ライブの打ち合わせ」

鞠莉「仕方ないわよ」

梨子「………うん」

善子「……………」

鞠莉「明日、梨子はどうするつもりだったの?」

梨子「え?」

鞠莉「善子とどこか出かける予定だったのでしょ?」

梨子「はい……」

善子「そういえば……」
 

375: 2017/11/29(水) 23:35:53.87 ID:rk6J5j/Z
梨子「正直、どこに行こうとかそういう予定はなかったんです」

鞠莉「あら、そうなの?」

梨子「ただ善子ちゃんと……町を歩きたかっただけで…」

善子「梨子……」

梨子「それで、どこかのタイミングで今日の話を……でも…きっと一人じゃ無理だったと思います」

鞠莉「辛いわよね……」

善子「…………」


 prrrrrr…


鞠莉「おっと、電話だわ……果南から」ピッ
 

376: 2017/11/29(水) 23:36:31.03 ID:rk6J5j/Z
鞠莉「もしもし果南、どうしたのー?」


善子「ねえ梨子…」

梨子「ん…‥?」


鞠莉「あらそうなの、それはよかったわね」


善子「よかったら、明日どこか行きましょ」

梨子「え、でも……善子ちゃん……」


鞠莉「こっちは…んー…まだね」
 

377: 2017/11/29(水) 23:37:21.57 ID:rk6J5j/Z
善子「いいわよ、そんなに気を使わないで…」

梨子「私はいいけど……」


鞠莉「ダ、ダイジョーブよっ、心配ナッシン……」


善子「今はただ……全部忘れて遊びたい気分よ」

梨子「うん……遊びたいね…」


鞠莉「あら、花丸がそんな事を?」


善子「ルビィやずら丸……みんなとも……」

梨子「…………っ!」
 

378: 2017/11/29(水) 23:38:16.78 ID:rk6J5j/Z
梨子「花丸ちゃん……」

善子「え?」

梨子「そうよ、花丸ちゃんに相談できないかな?」

善子「ずら丸に……」


鞠莉「オッケー、それじゃまた来週ね」ピッ


梨子「どうして善子ちゃんだけがこんなにも不安定なのか、何かわかるかも!」

善子「ん……」
 

379: 2017/11/29(水) 23:38:59.24 ID:rk6J5j/Z
鞠莉「どうやら果南達はもう準備完了したみたいよ」

梨子「アゼリアもう終わったんですか」

鞠莉「あと、花丸が善子と梨子を心配していたらしいわ。ちゃんとやれてるのかなって」

善子「え……」

梨子「花丸ちゃん……」

鞠莉「それで明日まるまる空いたからこっちの様子を聞いてきたみたい」

善子「…………」

梨子「それじゃ果南さん達……花丸ちゃんも明日空いているってことですか?」

鞠莉「予定はわからないけど、アゼリアとしての作戦会議は完了したって言ってたわ」
 

380: 2017/11/29(水) 23:39:54.90 ID:rk6J5j/Z
梨子「私、花丸ちゃんに電話するね」ピッ

鞠莉「ん、なにかあるの?」

善子「えっと………」

梨子「何かできる事があるなら、私はなんでもする……諦めるなんて無理だもん」prrrr…

善子「梨子……ありがとう」

鞠莉「花丸が何か鍵を握っているの?」

善子「正直よくわからないわ。なんだか少し前からあいつの雰囲気なんか違う感じがするし」

鞠莉「雰囲気が違う……それって……」


梨子「あ、もしもし花丸ちゃん? 今ちょっといいかな?」
 

381: 2017/11/29(水) 23:41:00.03 ID:rk6J5j/Z
 -次の日 花丸ちゃんの家


鞠莉「へー、ここが花丸の家……っていうかお寺なのね」

梨子「初めて来ました」

善子「念のため言っておくけど、別にこのお寺に住んでるわけじゃないわよ?」

鞠莉「あらそうなの?」

善子「あっちに見える母屋がそうよ」

梨子「母屋ってすごく大きいような……」


花丸「あ、みんなきたずら~」トテトテ


梨子「花丸ちゃん、おはよう」
 

382: 2017/11/29(水) 23:41:37.39 ID:rk6J5j/Z
鞠莉「お邪魔するわねー」

梨子「お邪魔します」

善子「すっごいひさしぶりだわ、あんたの家来るの」

花丸「ホントずらー」


鞠莉「oh-囲炉裏があるわよ!?」

梨子「すごーい、本格的……」

花丸「ちょっと待ってて、お茶淹れてくるずら」

善子「ん……」

梨子「ありがとー」
 

383: 2017/11/29(水) 23:42:19.76 ID:rk6J5j/Z
鞠莉「梨子、見て見て熊がいるわ!」

梨子「木彫りですよ鞠莉さん。でも、大きい……」

善子「…………」


鞠莉「………」ソー

梨子「………」?


鞠莉「善子!」バッ ギュッ

善子「え、なに!? って、く、くるし!」

鞠莉「暗い顔ばっかりだと、未来も暗くなっちゃうわよ」グイグイ

梨子「ま、鞠莉さん…」
 

384: 2017/11/29(水) 23:43:48.00 ID:rk6J5j/Z
鞠莉「大丈夫、きっと大丈夫よ!」ギュー

善子「そ、その前に……マリーに〇されそうよ……!」

梨子「はわわ……」オロオロ

 サッ

鞠莉「ん、元気に前を向いて、バカじゃないかってくらいポジティブに、ね?」

善子「なによそれ……」クスッ

梨子「でも…そうだよね、下を向いていたら大事な事まで見落としちゃう…だから……」

善子「わかってるわよ……私だって諦めるのは嫌だし」

鞠莉「当然ね!」ハグッ

善子「ってまたー!?」
 

385: 2017/11/29(水) 23:44:26.62 ID:rk6J5j/Z
花丸「みんなで楽しそうずら」カチャカチャ

鞠莉「花丸も入る~?」ギュー

善子「だから重いってーのっ!」

花丸「暑苦しいのはいいずら。はいこれ」サッサッサッ

梨子「ありがとう、花丸ちゃん」

鞠莉「こっちの丸いのは?」

花丸「ぼたもちずら、おいしいずら~」

善子「そういうところは、あいかわらずね」

花丸「ん?」

善子「やっぱりずら丸はずら丸……よね」

花丸「どうしたの善子ちゃん?」
 

386: 2017/11/29(水) 23:45:32.50 ID:rk6J5j/Z
梨子「あ、あの! 花丸ちゃん、昨日電話で言ってたことなんだけど…」

花丸「大事な相談があるって事だったけど、なんずら?」

鞠莉「…………」

善子「…………」


梨子「えっと……順を追って説明していくね……」


花丸「?」

―――
――

 

387: 2017/11/29(水) 23:46:25.33 ID:rk6J5j/Z

――
―――


花丸「はい、善子ちゃんこっちにきて」チョイチョイ

善子「ほ、ほんとに変な事しないわね!?」キョロキョロ

花丸「善子ちゃんに変な事してマルになんの得があるずら?」

善子「ないならいいけど……って一言余計よ!」


鞠莉「…………」ドキドキ

梨子「…………」ジー


花丸「ここが一番落ち着くずら……」スゥー

善子「お堂……かってに使って大丈夫なの?」

花丸「ここじゃないと出来ないことがあるから、いいよ。大切な善子ちゃんのためずら」

善子「ぅ……」
 

388: 2017/11/29(水) 23:47:13.82 ID:rk6J5j/Z
鞠莉「何が始まるのかしら?」

梨子「わかりません…けど、花丸ちゃんが善子ちゃんに起こっている事を調べるって言うのなら……今は…」

鞠莉「お寺の娘ってそういう事も出来るのねー」

梨子「そうなんでしょうか……」

鞠莉「ん?」

梨子「なんだか、今回の事を話す花丸ちゃんって、諭すような……すごく達観しているというか…」

鞠莉「雰囲気が違うってやつ?」

梨子「はい……まだそれほど長い付き合いじゃないので知らない部分だけなのかもしれませんけど」

鞠莉「ふむ…」
 

389: 2017/11/29(水) 23:47:49.84 ID:rk6J5j/Z
花丸「それじゃ善子ちゃん、そこに座って正面に見える仏像の方に向いて」

善子「う、うん…‥あ、正座とかのほうがいい?」サッ

花丸「気楽にしてていいずら」

善子「そう…」

花丸「そうしたらただじっとしていて。難しい事は何もないから」スー

善子「ん………?」

花丸「マルのこの人差し指をじっと見つめて……視界の中に後ろの仏像が収まるように……」

善子「わ、わかった……」

花丸「そのままじっとしているずら……」スッ
 

390: 2017/11/29(水) 23:48:39.04 ID:rk6J5j/Z
善子「……………………」

花丸「……………………」


梨子「……………」ドキドキ

鞠莉「……………」ドキドキ


善子「……………っ?」ポァ

花丸「…………動かないで」
 

391: 2017/11/29(水) 23:49:10.46 ID:rk6J5j/Z
鞠莉「善子の体……光ってない?」

梨子「は、はい……それに、なにか筋のような……え!?」ポァ

鞠莉「り、梨子? あなたもなんだか薄っすらと光ってない?」

梨子「な、なにこれなにこれ?」パァ…

花丸「梨子ちゃんも動かないで!」

善子「……………」パァ…

梨子「はは、はいっ!」パァ…


鞠莉「あ、二人の体から光の……糸?」

花丸「まぁ大体予想はしていたけど、やっぱりずら」
 

392: 2017/11/29(水) 23:49:48.81 ID:rk6J5j/Z
善子「あ…………」パァァァァ…

梨子「光が………」パァァァァ…

鞠莉「糸のようなものが……繋がった……」


花丸「二人が強い因果関係にあるという事ずら」


善子「因果関係?」

梨子「それって……」


花丸「ん、もういいかな」パチン

 スッ

鞠莉「あ、消えた」
 

393: 2017/11/29(水) 23:51:05.92 ID:rk6J5j/Z
善子「え、あ、っと…」ペタペタ

花丸「別に体には変化はないよ」

梨子「今のって…なに?」

花丸「二人の縁……因果の糸で結ばれているのを現したものずら」

梨子「え、縁!?」ドキ

善子「なによそれ、意味わかんないんだけど……」

鞠莉「というか、ホントに魔法みたいなものだったの?」

花丸「順を追って説明するから、取り敢えず……」

善子「ん………」ゴクッ


花丸「お茶にするずら」

善子「またかーい!」
 

394: 2017/11/29(水) 23:52:33.41 ID:rk6J5j/Z
 -内浦 松月


花丸「いただきま~~~す」パクッ

鞠莉「梨子も善子も好きな物頼んでいいわよ?」

善子「いや、なんでそんなのんびりしてられるのよ…」

梨子「さっきの事が気になって……」

花丸「ちゃんと説明するから安心するずら」パクパク

善子「むー……じゃあコレ!」ビシ

梨子「んん、じゃあ私も……」

鞠莉「オッケー、店員さ~ん」
 

395: 2017/11/29(水) 23:53:18.37 ID:rk6J5j/Z
花丸「はむはむ……んっ…はぁ、おいしいずら~」

鞠莉「それで花丸、そろそろ本題に入らない?」

花丸「話には聞いた事があったけど、マル自身も見るのは初めてだったずら」

善子「それってさっきの?」

花丸「違うずら。因果の鎖に捕らわれた者ずら」

梨子「???」

善子「なに、あんたまでそういう事言うようになったの?」

花丸「善子ちゃんの堕天使とは次元が違うずら」

善子「なによっ」

鞠莉「どぅどぅ」
 

396: 2017/11/29(水) 23:55:32.54 ID:rk6J5j/Z
花丸「本来人が人の死の運命を視る事なんて無理。意識すらしない事」

善子(あれ、また雰囲気が……)

花丸「それを可能にするのがあの最後ノート。ホントに悪魔のノートだよ…」

梨子「前にも言ってたね……」

鞠莉「悪魔のノート…」


花丸「人の運命を視ると言う事はすなわち、その人と因果の糸でつながる事を意味するずら」

善子「さっきの現象の事?」

花丸「あれはもっと特別かな……特に知人だったり親しい仲の人物の運命を視るのはとても強い因果に囚われるの」

鞠莉「親しい人物……私もパパと結ばれているのかしら?」

梨子「……………」


花丸「因果の鎖に繋がれた者は自身の運命さえも歪めてしまうほどに他者に左右されてしまう。もとより人一人の運命でさえ不安定なもの」


花丸「善子ちゃんはそんな状況を背負いすぎてるの」

梨子「背負いすぎ……あ、もしかして」
 

397: 2017/11/29(水) 23:57:12.98 ID:rk6J5j/Z
善子「そうね……私はそう意味で言うと、四人分の運命を背負っている事になるのね」

鞠莉「それはまた……とんでもないことなのね」

花丸「善子ちゃんの場合、さらに全員が親しい関係であるという事」

梨子「一人の運命を視るだけでもすごいのに……それを四人も……」

善子「…………」

花丸「それでもこんな事態になるのはマルも想定外だったよ」

鞠莉「どういう事?」

花丸「運命に翻弄されることはあっても、起因と死因、これに自身の運命が引きずり込まれている状態…」

善子「またそれ……」

花丸「ようは善子ちゃんは、他の四人分の死因に自身の運命が引っ張られているんだよ」

梨子「…………あ!」
 

398: 2017/11/29(水) 23:58:34.22 ID:rk6J5j/Z
梨子「もしかして……善子ちゃんの寿命が変わっていったのって……」

花丸「細かい年齢は言っちゃダメだよ梨子ちゃん」

梨子「はっ…そ、そうだね…」チラ

鞠莉「なるほど、そこには私のも含まれていたわけね……」

善子「じゃあ私が来年に……その……」

花丸「話を聞く分に、それは本来あった梨子ちゃんの運命だね」

梨子「え? でも私の最初の運命はもう回避されてるんじゃ……」

花丸「ここまで他の運命に翻弄されて、引きずり込まれるのって……善子ちゃんなかなかの不幸体質だね」

善子「ほ、ほっといてよ」
 

399: 2017/11/29(水) 23:59:14.37 ID:rk6J5j/Z
花丸「梨子ちゃんが今言った通り、本当なら梨子ちゃんの運命に呑まれた善子ちゃんはとっくに死んでいてもおかしくない」

梨子「!?」ドキ

善子「……‥」ゴクッ

鞠莉「マジ……みたいね。じゃあどうして善子は無事でいられるの?」


花丸「それは、ズバリ梨子ちゃんずら」ビシ


梨子「え、わ、私!?」

善子「梨子が?」

鞠莉「oh-」
 

400: 2017/11/30(木) 00:00:06.56 ID:bFMxOtS9
花丸「人の運命を垣間見る事の出来るノートで因果の鎖に引っ張られる善子ちゃんの運命……魂を逆に引っ張っているのが梨子ちゃん」

梨子「もしかして……私が善子ちゃんの名前を書いて、運命を視たから?」

花丸「本当なら善子ちゃんはとっくに引きずり込まれて、梨子ちゃんの本来の運命と同じように……少し前に死んでいた」

鞠莉「おぅ……」

花丸「それを梨子ちゃんの変わった新しい運命で繋ぎとめているのが今のノートにある寿命」

善子「梨子の運命が私を……」

花丸「でもただ名前を書いて相手の運命を視てもここまで強い因果関係になるのは難しいの」

梨子「え、まだなにかあるの?」

花丸「二人とも、運命を決定づける事、何かをやった覚えはある?」

善子「え? 何かって……?」

梨子「んん?」
 

401: 2017/11/30(木) 00:00:48.89 ID:bFMxOtS9
花丸「例えば同じ運命の道を一瞬でも交わったとか……」

鞠莉「なに、エ い事?」

善子「なによエ い事って!」

梨子「し、してないです!!」

花丸「何かあったはず……でないと二人はこうはならないずら」

鞠莉「こうって?」

花丸「それは……」


善子「あ……………」

梨子「あっ!」
 

402: 2017/11/30(木) 00:01:34.26 ID:bFMxOtS9
『桜内梨子、享年17歳……』

『っ! つ、津島善子、享年16歳……』

『観覧車の落下事故による内臓破損により…』

『観覧車の落下事故にまきこまれ頭部陥没により…』

『死亡………』


善子「もしかして、あの時……?」

梨子「そういう事……なの?」


花丸「二人が運命を交差させ、本来の運命から逃れたその時に、二人は…」

鞠莉「二人は?」


花丸「運命共同体になったずら」
 

403: 2017/11/30(木) 00:02:22.40 ID:bFMxOtS9
 -夜 善子ちゃんのお部屋


善子「…………」ボフッ

善子「運命……共同体、か……」ゴソ…


 ペラ…


善子「これは……私の因果が原因……」


 桜内梨子
 享年37歳 薬物過剰投与により死亡


善子「梨子………」
 

404: 2017/11/30(木) 00:03:26.23 ID:bFMxOtS9
 ―――――


善子「私と梨子が……」

梨子「運命、共同体……」

鞠莉「よくわかんないけど梨子がいれば善子は大丈夫ってこと?」

花丸「そう呑気にしてもいられないずら」

善子「え…?」

花丸「梨子ちゃんも間接的にとはいえ、鞠莉ちゃんの運命を視ているよね?」

善子「あ……え、じゃあもしかして他の四人のも?」

梨子「他の人のは年齢はわかるけど、誰が誰かまでは……」

鞠莉「っていうか年齢だけなら私も聞いてるんだけど…?」

花丸「それでも梨子ちゃんが因果の鎖に囚われていく可能性にはなるずら」

鞠莉「あれ、私は大丈夫なの?」
 

405: 2017/11/30(木) 00:04:11.68 ID:bFMxOtS9
善子「囚われると……どうなるの?」ゴクッ

梨子「………」

花丸「善子ちゃんのような体質なら同じように運命が引きずられる……けどそうじゃないなら」

鞠莉「ないなら……」

花丸「寿命が短くなるずら」

梨子「え……」ドキ

善子「…………」

花丸「そう極端ではないかもしれないけど、そこはハッキリした事は言えないね」

鞠莉「その因果の鎖だかなんだかはどうにかできないの?」
 

406: 2017/11/30(木) 00:05:16.16 ID:bFMxOtS9
花丸「方法として、あるといえばあるずら」

鞠莉「それは、善子も梨子も助かるという事?」

花丸「助かるというよりか、運命に引きずられることなく、自身で変えた運命に沿って生きる事は…」

梨子「そ、それ本当?」

善子「方法は…あるんだ……」

花丸「でもそのためにはいくつか問題があるずら……」


 ―――――


善子「……………」

善子「梨子……絶対に、助けてみせるんだから……っ!」グッ
 

407: 2017/11/30(木) 00:05:46.63 ID:bFMxOtS9
続くぅ……

419: 2017/11/30(木) 23:22:12.35 ID:bFMxOtS9
 -週明け 浦の星女学院 一年生教室


ルビィ「おはよう善子ちゃん、今日も寒いねー」

善子「おはよ…そうね」


花丸「善子ちゃんおはよ~ずら」

善子「おはよ……」


 ―――――


鞠莉「問題って?」

花丸「少しマルのほうで確認する事があるから、来週中には説明するずら」

梨子「善子ちゃんは……それまで……」

花丸「梨子ちゃんが繋ぎとめてくれているから、今以上に悪くなる事はないと…思うけど…」
 

420: 2017/11/30(木) 23:23:13.59 ID:bFMxOtS9
花丸「それでも何がきっかけで歯車が動き始めるかわからないから、十分に注意はしてね」

梨子「う、うん…分かった!」


 ―――――


善子「…………」

花丸「どうしたずら?」

善子「ん……なんでも……」

ルビィ「そういえば善子ちゃんとこはもう決まったの?」

善子「え、なに?」

ルビィ「今度のライブでやるユニット曲の打ち合わせ! ルビィ達は昨日ようやく決まったんだ」

善子「ユニット曲……ううん、まだよ」
 

421: 2017/11/30(木) 23:24:27.62 ID:bFMxOtS9
ルビィ「楽しみだよね~ライブ」

花丸「ルビィちゃんとこは衣装を新しくするんだっけ?」

ルビィ「うん、今曜ちゃんと相談してるんだ~」

花丸「楽しみにしてるずら~」

善子「……………」


花丸「善子ちゃん」

善子「な、なに?」

花丸「お昼休みに屋上に来て欲しいずら」

善子「もしかして何かわかったの?」

花丸「それもあるけど、その前にみんなにお説教ずら」

善子「え………」
 

422: 2017/11/30(木) 23:28:29.75 ID:bFMxOtS9
 -お昼休み 屋上 


 ギィ… バタン


善子「寒っ…」ブル

花丸「来たね……」

善子「なによ、わざわざこんなところで……」


 ギィ…


梨子「あれ、善子ちゃん?」

鞠莉「善子も呼ばれてたのね」

善子「梨子、マリー?」
 

423: 2017/11/30(木) 23:29:07.01 ID:bFMxOtS9
花丸「メールでお昼に屋上に来てって連絡しておいたの」

鞠莉「先週言ってた事についてね?」

梨子「もしかして方法が?」

花丸「それもあるけどその前に三人とも、こっちに来て」チョイチョイ

善子「…………」

鞠莉「ん?」

梨子「わっ、風が冷たいね」
 

424: 2017/11/30(木) 23:29:41.78 ID:bFMxOtS9
花丸「はいそこに整列」

鞠莉「ん、なにするの?」

花丸「そんなに時間もないから早くするの!」

梨子「っ!」ササッ

善子「なんなのよ……」


花丸「まず三人に言っておきたい事があります」

鞠莉「…………」

梨子「………‥」

善子「………‥」
 

425: 2017/11/30(木) 23:30:27.98 ID:bFMxOtS9
花丸「人は本来運命なんてものに左右される事なく、日々を一生懸命生きるものです」

善子「…………」


花丸「悩み苦しみ、時には立ち止まってしまう事があっても、自らの決断で生きてこそ…」

鞠莉「…………」


花丸「そこには人本来の姿があり、善悪もない、純粋で無垢な輝きがあります」

梨子「輝き……」


花丸「だけど今の三人は見えない運命に翻弄され、その足が止まってしまっている」

善子「そうはいっても……」
 

426: 2017/11/30(木) 23:31:39.60 ID:bFMxOtS9
善子「知ってしまった以上、気にするななんて言えないでしょ……」

鞠莉「そう…ね……」

花丸「知ればどうなるか、分かりもしないのに手をだすからそうなるの。言ってしまえば、自業自得」

梨子「そんな……」

花丸「だいたい人の死に際を覗き見るなんて、マルに言わせたら悪趣味極まりない」

善子「そんな言い方……」

鞠莉「それでも、私は知れて良かった事がある。知らずに後悔せずにすんだ事があるわ」

花丸「身勝手だね」

鞠莉「身勝手結構よ! 確かに足は止まってしまってるかもしれない」

梨子「鞠莉さん……」
 

427: 2017/11/30(木) 23:32:28.37 ID:bFMxOtS9
鞠莉「二人の事情を知っていても何もできない、花丸に頼るしかできない…情けないわ……でもね」

善子「マリー…」


鞠莉「ノートを使う事を決めたのも自分、二人の力になろうと決意した気持ちも、今の苛立つ気持ちも全部私の決断の末…」

花丸「ふむ……」

鞠莉「私はそこに悩みや苦しみがあっても、ひとかけらの後悔もないわ」

花丸「ん……鞠莉ちゃんらしいね」


花丸「二人は、後悔してる?」

善子「…………」

梨子「…………」
 

428: 2017/11/30(木) 23:33:15.91 ID:bFMxOtS9
梨子「私は……今は不安しかない……」

善子「梨子……」

梨子「私自身の運命だとか、寿命は正直考えてない……ただ、善子ちゃんが無事にいられるように願うだけ…」

花丸「今の二人の問題が解決することが、かならずしも善子ちゃんを助けるものじゃなくても?」

善子「え?」ドキッ

梨子「因果の鎖に囚われる前の善子ちゃんの運命は誰にもわからないから……かな?」

花丸「うん」

梨子「でも、分からないからこその、人生なんでしょ?」

花丸「その通りだよ。二人はあまりにも脱線し続けている…」

梨子「そのことに関してなら、私は感謝するよ」
 

429: 2017/11/30(木) 23:34:17.48 ID:bFMxOtS9
梨子「だって私も善子ちゃんも、奇跡のような幸運を得て今いるんだもん」

善子「そうね。だからこれから先に起こる事は、すべてこの幸運の延長にあるもの…」

花丸「善子ちゃんもそこに後悔はない?」

善子「後悔はもうどこかでした気がするわ。だからもういい……」

梨子「私はこのまま何もできないままに時間を迎えてしまったら、きっと自責と後悔で動けなくなるかも」

善子「だからあがくんでしょ、私達」

梨子「うん、そうだね」

花丸「それがわかっているなら今の時間も大事にすることだよ」

鞠莉「不安なのはみんな同じよ……」
 

430: 2017/11/30(木) 23:35:17.74 ID:bFMxOtS9
善子「結局、ずら丸の言いたい事ってあれでしょ……」

花丸「ん?」

善子「ギルキスだけユニット曲の構成できてないからとっととやれって事でしょ?」

梨子「え、そうなの?」

鞠莉「ふふ、そういう事なのかもね」

花丸「顔を上げて前を向けって意味ならそれでもいいかな」


善子「でもそれならわからない事もあるのよ……」

花丸「ん?」
 

431: 2017/11/30(木) 23:36:15.85 ID:bFMxOtS9
善子「運命に干渉できるノートなんてものがあって、その方法はこの際どうでもいいわ、ヤバイものみたいだし」

花丸「ふむ」

善子「なんかずら丸って、そういう道にはずれた行為っていうのをすごく嫌がってるじゃない?」

花丸「そうだね」

善子「でも今回それと似たような行為で私達を助けてくれるのはどうして?」

梨子「善子ちゃん……」

善子「助けてくれるのは素直に感謝するし、もう二度とこんな馬鹿な真似はしないって反省もするけど、それだけ?」

花丸「マルは人の道をはずす存在を正すためにいるからね」

鞠莉「お寺の娘ってそんなことまでしてるの?」

善子「…………」
 

432: 2017/11/30(木) 23:37:18.47 ID:bFMxOtS9
花丸「そのへんの理由は放課後説明しようとしたんだけど、マルにも目的があるの」

梨子「目的?」

花丸「最後ノートをすべて処分する事」

鞠莉「ノートの処分……それが花丸の言う、正すってこと?」

花丸「そう。マルはあのノートの存在を見過ごすことは出来ないの」

梨子「………?」

善子「妙な言い回しをするのね」

花丸「マルの溢れ出る正義感がそうさせるの」
 

433: 2017/11/30(木) 23:37:53.36 ID:bFMxOtS9
善子「なんだかはぐらかしてない?」

花丸「そうずら?」

梨子「ねぇ、花丸ちゃんって……」


鞠莉「って、もうお昼休み終わるわっ!」

花丸「おーじゃあ続きは放課後にやるずら」

善子「ん………まぁいいけど」

梨子「うん……」
 

434: 2017/11/30(木) 23:38:43.44 ID:bFMxOtS9
 -放課後 スクールアイドル部部室


果南「それじゃ鞠莉達はもう少し残って作業するんだね」

鞠莉「ええ、ユニット曲の打ち合わせもはやいとこ終わらせて全体練習もしたいしね」

ルビィ「花丸ちゃんもまだ帰らないの?」

花丸「ちょっと用事ずらー」


ダイヤ「みなさんあまり遅くならないようにしてください」

千歌「それじゃまたね~」

曜「善子ちゃん、お先に!」ビシッ
 

435: 2017/11/30(木) 23:39:26.50 ID:bFMxOtS9
善子「…………」

梨子「みんな帰った……かな?」

鞠莉「必要なら理事長室に移動する?」

花丸「そんなに時間は取らないから大丈夫ずら」


善子「それじゃ、頼むわ」

花丸「うん。まずは最初に、いくつか問題があると前に言ったのを覚えてる?」

梨子「善子ちゃんが自身の運命に沿って生きていくために……だったかな?」

花丸「そう、そのために行うちょっとした儀式のようなものなんだけど……」
 

436: 2017/11/30(木) 23:40:20.99 ID:bFMxOtS9
花丸「ズバリ、用意するものがあるずら!」ビシッ

善子「儀式……黒魔術的な!?」ゴクリ

梨子「な、なんだろ……」


花丸「善子ちゃんを因果の鎖でがんじがらめにしている相手、もしくはその持ち物が一つ」


鞠莉「因果関係にある相手というと、この場合は……」

善子「ルビィ、ダイヤ、梨子、マリーの四人かな」

梨子「相手もしくは持ち物か……」
 

437: 2017/11/30(木) 23:42:05.19 ID:bFMxOtS9
花丸「梨子ちゃんと鞠莉ちゃんに関してはもう本人がいるのだし必要ないずら」

善子「じゃあダイヤとルビィに……」

鞠莉「事情を説明するわけにもいかないわね」

梨子「余計に巻き込んじゃう可能性だってありますし…」

花丸「うん。だからダイヤさんとルビィちゃんの持ち物。因果関係がなるべく強い物が理想ずら」

善子「例えばどういうの?」

花丸「ダイヤさんと善子ちゃんの間にある物でなるべく大切にしている物、ルビィちゃんの場合も同じ」

善子「え……私とダイヤにそういうのってないかも……」

花丸「無い場合はダイヤさん本人が大切にしている物を本人から借りる事……これがギリギリ譲歩できる条件ずら」

鞠莉「それって善子が借りないとダメなの?」
 

438: 2017/11/30(木) 23:43:34.42 ID:bFMxOtS9
花丸「というのは……鞠莉ちゃんが借りるという事?」

鞠莉「大切な物を借りるとなるとそれなりに交渉が必要でしょ?」

梨子「善子ちゃんだと、また変な儀式に使うのかと勘ぐられて断られるかも…」

善子「変な儀式ってなによっ!」


花丸「んー……正直条件としては無理ではないけど、実際にその物を持ってきて見て見ないことには……」

鞠莉「じゃあそれは私が用意するわ」

善子「それじゃルビィのほうは私が……」

梨子「大丈夫?」

善子「ふ……ルビィも我がリトルデーモンの一人、何も問題ないはず!」

梨子「念のため私も聞いて見るね」

鞠莉「頼むわね」

善子「ちょ~~っと!」
 

439: 2017/11/30(木) 23:45:51.70 ID:bFMxOtS9
花丸「ま、こっちはなんとかなると思うからいいんだけど、本題はこっち……」

鞠莉「まだ必要なものがあるのね」

花丸「今回の出来事の大本、元凶、因果の集約点となっているもの……」


善子「最後ノートね……」

梨子「あ………」


花丸「そのノート、マルが売り歩いていた露天商を捕まえて聞き出したずら」

梨子「え、花丸ちゃんあの人見つけたんだ」

花丸「本人に悪い事をしているという自覚はなかったからね、まだ沼津にいたずら」
 

440: 2017/11/30(木) 23:46:44.67 ID:bFMxOtS9
花丸「ただ問題なのは、ノートは全部で5冊あって、所在不明なのが2冊あるという事……」

梨子「2冊……」

鞠莉「売った相手はわからないのね?」

花丸「露天商はよく覚えていないみたいだったから……」

鞠莉「うーん……売った時期がなんとかわかれば……」


梨子「そういえば……」

花丸「なにか知ってる?」

梨子「いえ、私が買った時、ノートは5冊あったと思うんだけど……あんまり役には立たないかな…」

鞠莉「………………」
 

441: 2017/11/30(木) 23:48:22.20 ID:bFMxOtS9
善子「あ、それなら私が買った時は最後の1冊だったっけ……」

鞠莉「ホント!? それはいい情報だわ!」ガタッ

花丸「正直マルにはそのへんの捜索には限界があるのだけど、鞠莉ちゃんなにか方法があるずら?」

鞠莉「梨子が買った日にちと時刻、善子が買った日にちと時刻、その二つがわかればなんとかなるかも」

善子「まじなの!?」

梨子「一体どういう方法で……?」


鞠莉「ふふ、任せておきなさい! 小原家が必ず残り2冊のノートを見つけてみせるわ!」ババッ

花丸「おー」

梨子「鞠莉さんカッコイイ」

善子「眩しいわマリー!」
 

442: 2017/11/30(木) 23:49:05.80 ID:bFMxOtS9
続くでョ…

460: 2017/12/01(金) 23:41:22.41 ID:Wo7bsYW6
 -夜 善子ちゃんのお部屋


善子「ふぅ………」ボフッ

善子「……………」


 prrrr…


善子「ん、時間通りね」ピッ

梨子『わっ、はやい』

善子「そっちこそ、私が帰ると同時にタイミングいいわね」

梨子『あ、ごめんね、少しゆっくりしたいよね』

善子「いいわよ、それより……」

梨子『聴いてくれた?』

善子「バスの車内で一通り聴いたわ、さすがね」
 

461: 2017/12/01(金) 23:42:28.73 ID:Wo7bsYW6
梨子『候補として厳選したけれど、どうかな?』

善子「そうね……私は3つ目のが好きかな」

梨子『なるほど…じゃああのアレンジで他も合わせてみるね』

善子「梨子の意見は?」

梨子『私は善子ちゃんの感性にまかせるよ』

善子「いいの、それで?」

梨子『鞠莉さんがノート捜索にかかりっきになるからってこっちを任せてくれたんだし、いいよそれで』

善子「そう。それじゃ衣装のほうもあのアレンジに合わせて少し弄ってみるわ」

梨子『楽しみにしてるね』
 

462: 2017/12/01(金) 23:43:44.25 ID:Wo7bsYW6
善子「ふふ、最初の頃はこんな短いスカートやだ~って言ってたのにね」

梨子『い、今でもあれは恥ずかしいよっ』

善子「似合ってるのに」

梨子『うん……そう言ってくれて、私も自信を持つことが出来たよ』

善子「ホントの事だからね」

梨子『私はユニットをきっかけに、Aqours以外のたくさんのものを見れた気がするよ』

善子「そう、それなら誘ったかいがあったというものだわ」

梨子『ほんとにありがとう』

善子「………急にどうしたの?」
 

463: 2017/12/01(金) 23:44:22.63 ID:Wo7bsYW6
梨子『ううん、ただ言いたくなったの』

善子「そういうのはライブ終わりにでもまた聞かせて」

梨子『………………』

善子「…………梨子?」


梨子『善子ちゃんは、運命的な出会いって信じる?』

善子「なんだか前にも聞いたわね、それ」

梨子『私は………信じてるよ』

善子「へぇ……」

梨子『善子ちゃんは?』
 

464: 2017/12/01(金) 23:45:10.53 ID:Wo7bsYW6
善子「んー……内緒」

梨子『えーズルイ…』

善子「ズルイって………えっと……」

梨子『うんうん』

善子「正直私の中で運命っていう言葉自体、少し曖昧になってるから……」

梨子『それは……信じてないって事?』

善子「信じるというより、認識が変わったってのがあるから」

梨子『ん…そうなんだ。でもそれは少しわかるよ』

善子「ただ梨子の言う運命的出会いっていうのは、否定はしない…かな」
 

465: 2017/12/01(金) 23:47:08.44 ID:Wo7bsYW6
善子「運命かどうかはともかく、大切にしたいって思う出会いなら、あったから…」

梨子『え、なにそれ気になるよー?』

善子「これはホントに内緒!」

梨子『ケチ~』

善子「ケチでいいの! それより曲の構成決めるわよ!」

梨子『もう、わかりましたよーっと……えっとじゃあセットリスト決めよっか……』

善子「……………」

梨子『各ユニットで2曲づつって事だから、さっきのアレンジでやってみたいのはやっぱり…』

善子「…………ん」

梨子『善子ちゃん、聞いてる?』

善子「聞いてるわよ。それで、やってみたいのって?」

梨子『ん、えっとね……』


――――
―――
――
 

466: 2017/12/01(金) 23:47:57.70 ID:Wo7bsYW6
 -数日後 スクールアイドル部部室


ルビィ「え、今日ルビィの家に?」

善子「そう、ちょっと相談したい事があるのよ」

梨子「ルビィちゃん、アイドルに詳しいからその知識に助けて欲しいかなーって」

ルビィ「うん、大丈夫だよ」

善子「よかった、じゃあ練習終わったらすぐに行きましょう」



梨子「これで後はルビィちゃんに色々と聞き出して……」

善子「あの子の事だから、大切にしているものってアイドル関係のグッズとかそういうのだと思うけど」
 

467: 2017/12/01(金) 23:48:39.97 ID:Wo7bsYW6
鞠莉「………………」


梨子「鞠莉さん、私達今日ルビィちゃんの家に行ってきますね」

鞠莉「………………」

善子「マリー?」

鞠莉「っ………あ、ソーリー……なに?」

梨子「大丈夫ですか? すごく疲れているようですけど……」

鞠莉「ん、ちょっと徹夜続きでね……ふぁ…ぁ…」

善子「ノート探しで?」
  ?
Rock54: Caution(BBR-MD5:0be15ced7fbdb9fdb4d0ce1929c1b82f)

468: 2017/12/01(金) 23:49:27.83 ID:Wo7bsYW6
花丸「ノート見つかったずら?」ヒョコッ

善子「わっ、聞いてたのね」

鞠莉「ん…………」

梨子「鞠莉さん?」


鞠莉「ノートは見つかったわ……」


花丸「本当!?」ズズイ

鞠莉「正確には、持ち主が…ね……」

梨子「すごいですね、一体どうやって…?」
 

469: 2017/12/01(金) 23:50:07.67 ID:Wo7bsYW6
鞠莉「露天商が商売をするには、道路の使用許可申請が必要なのよ」

善子「それは聞いたことがあるわね」

花丸「マルもその情報を元にあの露天商をとッ捕まえたずら!」

鞠莉「加えて、沼津市では安全性の問題から使える場所は限られているの」

梨子「普通の道路上じゃダメってことですか?」

鞠莉「監視の行き届かない裏でコソコソされたら危ないからね、だから場所はある程度決まっている」

善子「ふむ…」

鞠莉「そしてその場所というのが、監視カメラの映像範囲内に収まる場所……」

梨子「監視カメラ?」
 

470: 2017/12/01(金) 23:51:07.71 ID:Wo7bsYW6
鞠莉「近くの店舗だったり商店街の店外カメラだったりと、じつは交差点の少しはずれたところにもあるわ」

善子「ぜ、全然気づかなかったわ……」

花丸「監視カメラ……それはマルも知らなかったずら……」

梨子「じゃあ鞠莉さんが数日なにかやってたのって……」


鞠莉「ちょっと自治体、組合にも協力してもらってね、露天商がノートを売ったとされる時間内の映像を全部チェックしてたの」


梨子「え、じゃあ私が買った時間から善子ちゃんが買った時間までを全部ですか?」

花丸「すごいずら……」

善子「それで寝不足から元気がなかったのね」

鞠莉「…………」
 

471: 2017/12/01(金) 23:51:58.68 ID:Wo7bsYW6
梨子「鞠莉さん?」

鞠莉「元気がないというより、ちょっと解らない事があってね…だから……」クルッ

花丸「ん?」

鞠莉「花丸、今日の練習終わりにちょっと時間いい?」

花丸「ノートに関する事ならいくらでも」

善子「なによその解らない事って……」

鞠莉「…………」

梨子「鞠莉さん、何か問題が?」

鞠莉「ごめん、私には正直因果関係とかちょっとややこしくて十分に理解しきれていないから…」

善子「どういう事よ…」
 

472: 2017/12/01(金) 23:53:21.46 ID:Wo7bsYW6
鞠莉「私の持っている情報をそのまま善子と梨子に伝えて問題があるのかないのか、それを花丸に判断して欲しいのよ」

花丸「ふむ……わかったよ」

善子「私達が知って何か問題がある可能性って……」

梨子「なんだろう?」

鞠莉「気にしすぎかもしれないけど、安易にしていい状況でもないしね」

花丸「そうだね、状況はやっぱりギリギリなのは変わりないから」


 ガチャ


ダイヤ「申し訳ありません、遅くなりました」

千歌「ダイヤさん、生徒会お疲れ様です」

果南「もう、だから手伝おうかって言ったのに」
 

473: 2017/12/01(金) 23:54:28.68 ID:Wo7bsYW6
ダイヤ「他の役員の方たちの手前、それもどうかと思いまして……」

果南「それもそうか」

曜「よっし、みんな揃ったし早く練習しよ!」

千歌「う~~早く練習したいぃぃ!」バタバタ

ルビィ「ちかちゃんすごいやる気だね」

千歌「ライブ全体のセットリストも決まったし、早く体動かしたいんだよ~」

梨子「うん、楽しみだねライブ」

鞠莉「……………」ジ…

善子(ん、マリー……なんだか険しい顔ね……ん?)


ダイヤ「それでは軽く柔軟をしてからランニングにまいりましょう」


善子(ダイヤを……見ているの?)
 

474: 2017/12/01(金) 23:55:20.44 ID:Wo7bsYW6
続きます……そして明日はまた状況によっては更新できないかもしれませんー
度々の保守感謝です

495: 2017/12/03(日) 17:56:15.41 ID:CO5/sjJi
 -黒澤さんの家


ルビィ「ど~ぞ~」

梨子「お邪魔します」

善子「お家の人は?」

ルビィ「今はルビィだけかなー」

善子「そう…」

ルビィ「お姉ちゃんもアゼリアで自主練してから帰るって」

善子「気合はいってるのねーダイヤ」
 

496: 2017/12/03(日) 17:57:00.41 ID:CO5/sjJi
ルビィ「お姉ちゃん最近ホントに元気いいんだよ」

梨子「ルビィちゃんはダイヤさんのやってる健康法はやってないの?」

ルビィ「えぇっと……すごく早起きしないといけなくて…ルビィにはちょっと……」

善子「あーそれは私も無理そうだわ」

梨子「それを毎日続けるなんて、すごいね」

ルビィ「うん。でもそのせいで前より早く寝るようになっちゃって、ちょっと寂しいかな……」

善子「よく聞く健康マニアの悪いタイプにならなきゃいいけどね」
 

497: 2017/12/03(日) 17:57:38.57 ID:CO5/sjJi
ルビィ「それで、聞きたい事ってなにかな?」

善子「えーっと……」

梨子「じつはギルキスの新衣装でちょっと新しい分野に挑戦しようってなってね」

ルビィ「新衣装! そうなんだ~楽しみ」

善子(ここは梨子に任せとこ)

梨子「そこでちょっと色んなアイドル衣装を見て参考にしたいと思ってね」

ルビィ「そういう事ならルビィの秘蔵のコレクションを持ってくるね!」タッ

梨子「ありがとう」


 タタタ…


善子「ダイヤの時もそうだけど、口がうまいわね梨子」

梨子「そうかな?」
 

498: 2017/12/03(日) 17:58:35.44 ID:CO5/sjJi
善子「このまま梨子に任せていたほうがスムーズに行きそうだわ」

梨子「なるべくがんばるけど、フォローはして欲しいなぁ」


ルビィ「……………」タッ


善子「ふ、ヨハネのリトルデーモンとして存分にその話術をふるいなさい」ビシッ

梨子「最近ヨハネのでてくるタイミングがおかしくない?」

善子「ヨハネはヨハネよ! ずっと!」

梨子「えーそれには苦言を呈すよ?」

善子「いーじゃないのよっ」
 

499: 2017/12/03(日) 17:59:38.41 ID:CO5/sjJi
ルビィ「……………」ジー


梨子「って、ルビィちゃん!?」サッ

善子「い、いたのなら何か言いなさいよ!」

ルビィ「いやー……ホント最近仲がいいよね、二人~」

善子「なによ急に……」

梨子「き、聞いてたのルビィちゃん?」

ルビィ「会話はよく聞こえなかったけど、甘々トークしてたんだろうな~ってのはわかったよ!」

梨子「甘々!? し、してないよ? ね?」

善子(ここに来た理由を変に勘繰られてないなら大丈夫か…)
 

500: 2017/12/03(日) 18:00:28.28 ID:CO5/sjJi
ルビィ「ん、でも二人とってもいい雰囲気だよ?」

梨子「もしかして、みんなそういうの噂してるの?」

善子「この話題はもういいから……」


ルビィ「あ、これ! 言ってたルビィの秘蔵コレクションだよ!」ドサドサッ

善子「おーどれどれ……」

梨子「ラブライブ・スクールアイドル名鑑……こんなのあるんだね」

ルビィ「第一回大会から決勝大会に出場した全スクールアイドルを完全網羅してるんだよ!」

善子「ルビィがよく言ってるμ’sのもあるんだ」

ルビィ「それは……うん、これ!」キラキラ

梨子「善子ちゃんμ’s見てなかったの?」

善子「名前くらいなら知ってるわよ。ただライブ衣装とか、そこまで詳しくないし」

ルビィ「勿論μ’sもすごいけど、他にもたくさんステキなスクールアイドルがいるんだよ」
 

501: 2017/12/03(日) 18:04:17.63 ID:CO5/sjJi
善子「一つ一つ見ていくのはしんどそうね……」

ルビィ「毎年決勝大会の規模も大きくなって、参加グループがすごく増えたから」

梨子「あ、これ可愛いー」

ルビィ「わかりますか!? そのグループはね……」

善子「……………」


梨子「これもいいなぁ、テーマなんだろう?」

ルビィ「それは北欧神話で、グループが神話をモチーフにしているんです!」

善子「……………」


梨子「これはまた……大胆というか……」

ルビィ「かなり攻めたセクシー路線です。本戦でとれちゃったとかなんとか…」

善子「ホントなんでもありね」
 

502: 2017/12/03(日) 18:05:22.30 ID:CO5/sjJi
梨子「いくらでも見ていられるね」

ルビィ「そう言ってもらえるとルビィも嬉しいです」

善子「……………」


ルビィ「あっ、ルビィお茶を出すのを忘れてました! ごめんなさいちょっと行ってきますっ」タタッ

善子「あー、別にいいわよー……行っちゃった」

梨子「~♪」

善子「ってかなに普通に楽しんでるのよ、作戦は?」

梨子「それはちゃんと考えてるけど、これがいいのは本当だし」

善子「それならいいんだけどっ」

梨子「あ、ねぇ見てこのグループ、ちょっと小悪魔風で善子ちゃんに似てない?」

善子「ふ……この程度まだまだね」

梨子「でもここに載ってるグループは全部決勝大会に出場してるよ?」

善子「ぐ……そ、それは私達も同じでしょ!」
 

503: 2017/12/03(日) 18:05:58.95 ID:CO5/sjJi
梨子「ふふ、そうだね。ということは来年には私達も載るのかな」

善子「愚問ね、優勝グループとしてその歴史に未来永劫刻まれるのよ!」

梨子「うん。がんばろうね…」

善子「ん…………当然よ……」


ルビィ「やっぱり仲いいね」ヒョコ


善子「わぁっ」

梨子「ル、ルビィちゃんいつのまに背後に?」

ルビィ「お茶どーぞ」サササッ

梨子「ありがとう……」

善子「…………」

ルビィ「~♪」ニコニコ
 

504: 2017/12/03(日) 18:07:10.49 ID:CO5/sjJi
 -夜 善子ちゃんのお部屋


 prrrr… ピッ


善子「あ、もしもしずら丸?」

花丸『はいはいなんずら?』

善子「ルビィから必要そうなもの借りることが出来たけど…」

花丸『了解ずら。鞠莉ちゃんのほうも予定通りいけばすぐに揃えられそうだって』

善子「ノート持ってる人のところに交渉に行ったって事?」

花丸『交渉というほど難しい事でもなさそうだけど。だってノートを持っていたの……』

善子「ん……………」ゴクッ


花丸『ダイヤさんと鞠莉ちゃんのお父さんずら』
 

505: 2017/12/03(日) 18:08:00.66 ID:CO5/sjJi
善子「…………え?」

花丸『だから、ダイヤさんと鞠莉ちゃんのお父さん。すごく身近にあったずら、ノート』

善子「そんな……え、じゃあなに、ダイヤもノートを使った可能性があるって事?」

花丸『そこは鞠莉ちゃんが何か聞き出すと思うけど、問題は鞠莉ちゃんのお父さんのほうだね』

善子「……………まさか」


花丸『実際に鞠莉ちゃんに会ってお堂で視て見ないとわからないけど、お父さんと強く結びついている可能性がある』

善子「それだと、どうなるの……?」

花丸『マル達は善子ちゃんを因果の鎖から解放するために動いてるの』

善子「うん……」

花丸『それは因果の糸を消し去るものじゃなくて、正常な状態にするもの』

善子「正常って……自分自身で変えた運命に沿うって事でいいのよね?」

花丸『そう。でないと善子ちゃんも梨子ちゃんも切った途端に大変な事になる』
 

506: 2017/12/03(日) 18:08:40.29 ID:CO5/sjJi
花丸『今回善子ちゃんは体質的にその影響を特に強く受けているのだけど、鞠莉ちゃんも似たような状態にある可能性があるの』

善子「それって、マリーも他人の運命に引きづられるって事?」

花丸『鞠莉ちゃんの場合は善子ちゃんみたいにたくさん名前を書いてるわけじゃないから……でも……』

善子「ん、なによ…気になるとこで切らないでよ」

花丸『マルだってなんでも知ってるわけじゃないから……こんな状況はじめてだからね』

善子「なんか専門家っぽかったけど、そういう事もあるのね」

花丸『マルは専門家なんてものじゃないよ~』

善子「目的があるとか言ってたじゃない」

花丸『それはマル個人の事だから。あ、それより……』

善子「個人ねぇ……ん、なに?」
 

507: 2017/12/03(日) 18:09:44.49 ID:CO5/sjJi
花丸『鞠莉ちゃんがノートを集めてきたら、すぐに儀式を行うよ』

善子「わ、わかってるわ……」

花丸『善子ちゃんが普通の人間になるために、がんばらないとね』

善子「普通ってなによ、私は普通よ!」

花丸『堕天使は普通の人間だったずら……』

善子「んぐっ……いいのよ今は!」

花丸『ま、なんにせよ2,3日中にすべて解決できるといいかな』

善子「そうね……そこは頼むわ」

花丸『条件さえ整えば難しい事でもないからそこはまかせるずら』

善子「まずはマリーの戦果を期待ね」

花丸『きっと大丈夫ずら。それじゃマルはお風呂に入って寝るずら』

善子「はいよ、じゃあまた明日ね」

花丸『おやすみ~ずら~』ピッ
 

508: 2017/12/03(日) 18:10:31.00 ID:CO5/sjJi
善子「……………」

善子「これでうまくいけば……私は………」


 prrrrr……


善子「ん、電話………あっ」


 prrrrr… ピッ


善子「もしもし、マリー?」

鞠莉『ハーイ善子!』

善子「どうしたの? あ、ノートはどうなったの?」
 

509: 2017/12/03(日) 18:11:21.23 ID:CO5/sjJi
鞠莉『ノートは手に入れたわ、二冊とも……』

善子「お、やったわね!」

鞠莉『……………』

善子「ノートってダイヤと……その、マリーのパパが持っていたって聞いたけど……」

鞠莉『ええ……ホント、世間は狭いわね……』

善子「マリー?」

鞠莉『ダイヤから借りる、ダイヤの大切な物もなんとかなったわ』

善子「ダイヤがノートを持ってるんなら、大切な物ってノートにならないの?」

鞠莉『ダイヤにとってノートは重要でもなかったみたいよ』

善子「どういう事?」

鞠莉『それより善子………』
 

510: 2017/12/03(日) 18:11:58.49 ID:CO5/sjJi
善子「なに?」

鞠莉『花丸………』

善子「ん、ずら丸がどうしたの?」

鞠莉『善子は花丸の事どう思ってる?』

善子「なによ突然…」

鞠莉『最近の花丸を見てて、どう感じてる?』

善子「なんか話が見えないんだけど、ずら丸はずら丸でしょ?」

鞠莉『うん……そうね、あの子は私達の良く知る花丸だわ…でも……』

善子「何が言いたいの?」



鞠莉『あの子、何か隠してるわ』


――――
―――
――
 

511: 2017/12/03(日) 18:12:32.89 ID:CO5/sjJi
続くっ…

530: 2017/12/04(月) 23:10:06.49 ID:EJwfaRrQ
 -翌日の浦の星女学院 一年生教室


ルビィ「あ、善子ちゃんおはよ~」

善子「おはよー……」

ルビィ「ありゃ、元気ないねっ…もしかして徹夜でアイドル名鑑読んでたの?」

善子「え、あ…そうよ……おかげでいい衣装ができそうよー……」

ルビィ「それは楽しみだな~」

善子(そういえば衣装も作らないといけないのよね……)


花丸「善子ちゃんおはよ~ずらっ」


善子「!」ドキ

ルビィ「あれ、そういえば花丸ちゃんどこ行ってたの?」

花丸「マル、今日日直だったずら」
 

531: 2017/12/04(月) 23:11:00.42 ID:EJwfaRrQ
花丸「ん、どうかしたの?」

善子「なんでもないわよ……お、おはよ」

花丸「そういえば……」スッ

善子「………」


花丸「鞠莉ちゃんから連絡きたずら。ノートが揃ったみたいだね」ボソッ


善子「えっ……あ、そうね……」

花丸「ホントにどうかした?」

善子「なんでもない…わ」
 

532: 2017/12/04(月) 23:11:44.44 ID:EJwfaRrQ
花丸「それより、今日のお昼にまた屋上に集まるずら、作戦会議するよ」

善子「……………」

花丸「善子ちゃん?」

善子「ずら丸……あんたって……」

花丸「ん?」

善子「…………ん………ごめん、なんでもないわ」

花丸「おかしな善子ちゃんずら」

善子「あ、マリーと梨子には私から連絡しておくわ」

花丸「わかったずら~」
 

533: 2017/12/04(月) 23:12:35.22 ID:EJwfaRrQ
ルビィ「なんの話ー?」

花丸「今度のライブの話ずらっ」

ルビィ「えー気になるー」

花丸「ちょっとアドバイスしてるだけだよ~」


善子「………………」


善子(昨夜マリーが言っていた事……ちゃんと梨子とも話さないと……)

善子(でもホントにどういう事なの……ずら丸、あんた……)


 -鞠莉『明日みんなで話すまで、花丸とは不必要に会話しないで』


善子「……………」
 

534: 2017/12/04(月) 23:13:55.15 ID:EJwfaRrQ
 -お昼休み スクールアイドル部部室


梨子「お待たせっ」ガラッ

鞠莉「来たわね」

善子「………」

梨子「花丸ちゃんは?」

善子「日直の用事で先生に呼ばれて職員室に行ってる…」

鞠莉「その後屋上に行くはずだから、ここには来ないわ」

梨子「でも、ほんとにどういう事なんですか?」

鞠莉「…………」

梨子「花丸ちゃんが何かを隠しているっていうのは?」

善子「私もそれを先に聞きたいわ」
 

535: 2017/12/04(月) 23:15:35.84 ID:EJwfaRrQ
鞠莉「私がダイヤのところでノートを預かったのは聞いてる?」

梨子「はい……まさかダイヤさんと鞠莉さんのお父さんが持っているだなんて…」

鞠莉「監視カメラで見つけた時は驚いたわ」

善子「大企業の総帥がそういうトコ行くのってイメージないけど……」

鞠莉「パパはホテル経営もしてるからね、時折内浦や沼津の町を視察してるのよ」

梨子「それであの露天商に……」

鞠莉「そうね。ちなみにダイヤは他の小物と一緒にノートを買ったみたい。あの露天商、口は上手かったしね」

善子「って、買った経緯はいいのよ」

梨子「そうだね」
 

536: 2017/12/04(月) 23:16:39.72 ID:EJwfaRrQ
鞠莉「ダイヤは最後ノートに関しては深く意識していなかったわ」

梨子「ん、それは信じていなかったという事ですか?」

鞠莉「ただ名前を書いた人物に、適当な死亡時期が表示されるジョークグッズのような認識だったみたい」

善子「そこの原理にはなんの疑問を持たないのね」

鞠莉「家柄上、進んだ化学に疎いところがあるからね、すごいですわねってそれだけだったわ」

梨子「そうなんですか……一体誰の名前を書いたのかな……」

鞠莉「ダイヤがノートに信憑性がないとハッキリ認識したのは、その人物にありえない事が書かれていたから…」

善子「その人物って……まさか……」
 

537: 2017/12/04(月) 23:18:14.85 ID:EJwfaRrQ
鞠莉「最初はルビィを書いたみたい。ただの好奇心か、気になったっていうその心情は今はいいとして、ダイヤは書いた」

善子「ルビィは私も書いちゃったから……えっと、具体的な年齢は言わない方がいいのよね」

鞠莉「私もダイヤには言わないようにお願いしたわ。ただ、すごく長生きしていて、ジョークであっても嬉しかったって」

善子(きっと私と同じだ……)

鞠莉「次に祖父と祖母の名前を書いたみたい。内容は聞かなかったけど……」

梨子「け、結構書いてるんですね」

善子「大丈夫なの? そんなに書いていて……」

鞠莉「そして次にダイヤは、その時ルビィと遊ぶために家に来ていた人物を、なんとなく書いたの」

善子「それが、ずら丸……?」
 

538: 2017/12/04(月) 23:19:33.19 ID:EJwfaRrQ
鞠莉「そこでダイヤはこのノートがホントにただのジョークグッズだって思ったのよ」

梨子「ど、どうしてですか……?」

善子「……………」ゴクッ


鞠莉「ノートの表示だと、花丸はもう死んでいる事になっていたからよ……」


梨子「……………え?」

善子「死ん………?」

鞠莉「………………」


 prrrrrr…!!


善子「!!?」ビクッ

梨子「きゃっ」ドキ

鞠莉「…」
 

539: 2017/12/04(月) 23:20:27.96 ID:EJwfaRrQ
善子「あ………花丸……から……」


 prrrrrrr…… prrrrrrr……


梨子「お……屋上に私達がいないから……」

鞠莉「……………」


 prrrrrrr…… prrrrrrr……


善子「どど、どうしよう!?」

梨子「ま、鞠莉さん今の話本当なの?」

鞠莉「ええ、ダイヤが笑いながら話してたわ。花丸の場合はもう死んでる事になっていて、悪趣味なジョークグッズだと」
 

540: 2017/12/04(月) 23:21:54.29 ID:EJwfaRrQ
 prrrrrr…… プツッ


善子「切れた……」

梨子「ねぇ、ほんとにそうだとして……じゃあどういう事なんですか?」

鞠莉「それを聞いて私も不思議に思ったわ。でもちょっと考えてみて、ひっかかる事があるのよ」

善子「な、なにが?」

鞠莉「花丸に色々と教えてもらったじゃない、運命やら因果やら」

梨子「そうですね。私達の認識がいかに甘かったか、釘を刺されました」

善子「やっぱりあいつ専門家よね?」

鞠莉「でね、その話にあった事……さっきも善子が気を付けていたじゃない」

善子「ん?」

鞠莉「相手の運命を知るという事は、背負うのと同義……だから不用意に話すものじゃない」

梨子「だから私達も年齢とか具体的な事はなるべく………あっ!!」ガタッ
 

542: 2017/12/04(月) 23:22:45.69 ID:EJwfaRrQ
善子「いきなりどうしたのよ、驚くじゃない!」

梨子「そうだよ、そういえば……」

鞠莉「ね、善子にまとわりつく因果の鎖について話していた時も、私達花丸を専門家のように頼っていた…」

善子「んん?」

梨子「だからそこに何も疑問を持ってなかった……」

善子「ちょっと二人だけで進めないでよっ!」

梨子「わからない? 私達みんな花丸ちゃんに相談してた……包み隠さず……」

善子「それは、あいつがなんか色々知っているような……口ぶり……で……」

鞠莉「…………」

善子「あ………そういうこと……なの?」
 

543: 2017/12/04(月) 23:24:05.04 ID:EJwfaRrQ
鞠莉「私達、お互いに注意していたのに、花丸には全部話してる」

梨子「それって、善子ちゃんのような因果の糸や鎖だか、そういうものに含まれるんじゃ……」

善子「そういう意味じゃすべてを知ってるあいつは……中心みたいなもの……でも花丸は……」

鞠莉「なんともない……というより、そもそもノートが本物だとしたら…」

梨子「花丸ちゃんは……死んでいる……?」

善子「……………」

鞠莉「……………」

梨子「じゃあ花丸ちゃんは……あの花丸ちゃんは……誰?」
 

544: 2017/12/04(月) 23:25:06.92 ID:EJwfaRrQ
鞠莉「……私ね、パパがノートを持っている事、その使い道とその結果が今の運命だとしたら…」

善子「ん?」

鞠莉「そのノートをパパの元から手に入れるためには、絶対に話にださないといけないじゃない?」

梨子「そ、そうですね……」

鞠莉「そこで花丸に相談したのよ。お互い知らないと思っている事を、お互いが知っているという事はどういう事になるのか」

善子「マリー……パパに話したの?」

鞠莉「えぇ……」

梨子「じゃあ鞠莉さんはいま……」

鞠莉「パパに話したわ。私がノートを持っている事。善子からもらった情報を合わせてすべて知っているという事……」

善子「もしもマリーのパパがノートを使っていたとしたら、そこには……」
 

545: 2017/12/04(月) 23:26:28.04 ID:EJwfaRrQ
鞠莉「ええ、私の名前を書いたらしいわ」

梨子「じゃあ、お互いに……」

善子「そうか………ノートが絡んでいるからマリーのパパは信念を曲げなかったのね」

鞠莉「死因が変わろうと自ら運命を変えない限り、起因は変わらない。つまりパパの運命はノートを得る事によって決めた後の事だったのよ」

梨子「それで、今はどうなったんですか?」

鞠莉「そこを花丸に相談したんだけど、私達のその決断できっと運命は大きく変わる事になる。でもそれは善子と梨子のようなもの」

善子「運命、共同体?」

鞠莉「ええ、善子のように縁の深い因果をたくさん取り込んでいる状態ではないから、ぶれることはないって」
 

546: 2017/12/04(月) 23:27:24.24 ID:EJwfaRrQ
梨子「じゃあ今鞠莉さんの寿命って……」

鞠莉「さぁ? また大きく変わったんでしょうね。良いか悪いかは別として……」

善子「それはきっと、マリーのパパと深く繋がったんじゃない?」

鞠莉「花丸もそう言ってたわ。私の運命はパパと深い繋がりを持った。まぁもともと親子なんだし因果の糸はあったらしいけどね」

梨子「じゃあ状況は悪くはなってないんですね?」

鞠莉「花丸が言うにはね……私はその時の花丸の言葉……もっとややこしい言葉を使っていたけど、信じようと思ったわ」

梨子「鞠莉さんは花丸ちゃんの事……」

鞠莉「だから少しでも早くとノートの事も伝えた。でも心に引っかかる部分もあるから……」
 

547: 2017/12/04(月) 23:28:15.95 ID:EJwfaRrQ
善子「じ、じゃあマリーの因果と私の因果にも影響あったのかな?」

鞠莉「それはどうかな……やっぱり聞いて見ないと……」

梨子「花丸ちゃんに………」

善子「あいつ、わけわかんな事言うし、正直まだよくわかってないけど……」


鞠莉「善子は信じる? 花丸の事……」

善子「私は………」


 ガラッ



花丸「みんな見~つけたっ」
 

548: 2017/12/04(月) 23:29:05.52 ID:EJwfaRrQ
続く……

567: 2017/12/05(火) 23:28:21.42 ID:dG8ZiH82
鞠莉「は、花丸……」

梨子「っ………」ドキッ

善子「ずら丸………」ゴクッ


花丸「もう、みんなこないから朝4時の悪夢が蘇ったずらー」トットット…


鞠莉「……………」

梨子「……………」


花丸「善子ちゃん、電話にもでてくれないし……」ススッ
 

568: 2017/12/05(火) 23:29:11.15 ID:dG8ZiH82
善子「ずら丸……あんたって……」

花丸「それよりノート揃ったんだし、明日儀式をやるずら!」

梨子「花丸……ちゃん……」

花丸「ホントはすぐにやりたいところなんだけど、マルにも少し準備が必要なの」

鞠莉「花丸………花丸っ!」


花丸「……………なんずら?」


善子「あんた……ノート集めて何がしたいの?」

花丸「なにって、あんな物は人の運命を惑わすだけの悪魔のノートだってこの前にもいったずら」

梨子「そのノートを処分するって……」

花丸「この世にあっていい物じゃないからね」
 

569: 2017/12/05(火) 23:29:54.13 ID:dG8ZiH82
鞠莉「じゃあ本当に……信じていいのね?」

花丸「何を言ってるの?」

善子「だって……あんた……」

花丸「ノートの処分は勿論だけど、マルはノートによって歪んでしまった善子ちゃんの因果を正したいの」


梨子「そ、そうだよね……やっぱり花丸ちゃんは花丸ちゃんだよね?」

花丸「さっきから何を言ってるずら?」

鞠莉「ふー……いつもの花丸じゃないの……驚かさないで……」

花丸「も~! 待ち合わせにこないうえになんずら!?」

善子「ごめん、悪かったわよ」
 

570: 2017/12/05(火) 23:30:30.33 ID:dG8ZiH82
梨子「ホント、ビックリしたけど……」

鞠莉「じゃあダイヤが言ってたのは何かの間違いだったのかしらね」

花丸「なにかあったずら?」

善子「マリーが、花丸がもう死んでるなんて言うから、変な事いっぱい想像しちゃったわ」

花丸「あー………」

梨子「でも花丸ちゃんはちゃんと……」


花丸「まぁじっさいマルは死んでるけど……」


鞠莉「え……?」

梨子「へ?」

善子「は……?」
 

571: 2017/12/05(火) 23:31:10.92 ID:dG8ZiH82
花丸「もしかして、ダイヤさんマルの名前書いたの? それだときっと驚いたかな」

善子「何言って……え?」

花丸「あ、逆にマルの事を視たのなら冗談だって思う事もあるのかな?」

梨子「は、花丸ちゃん?」

花丸「ダイヤさんはそのあたり、なんて言ってたずら?」

鞠莉「ちょっとまって花丸……」

花丸「見た感じマルに対する態度もそう変わっていないし、やっぱり冗談だと……」


善子「待ちなさいよ!!」バンッ


花丸「………………」

善子「なんなの、なに平然としてるの? 自分が死んでるって、よくそんな事言えるわね!」
 

572: 2017/12/05(火) 23:32:01.00 ID:dG8ZiH82
花丸「でも、本当にマルは……」

善子「じゃあ今私の目の前にいるあんたは何なの!? 幽霊とか亡霊とか、そういうのとか言うワケ!?」

花丸「マルは……マルずら……」

善子「解んないって! ずら丸は友達が死んでましたって言われて、平気でいられるの!?」

梨子「善子ちゃん……」

善子「いきなりあんたが死んでたなんて言われて、私達がなにもなかったように話を進められると本気で思ってるの!?」

花丸「……………」

善子「それって今私におこってる事よりももっと問題なんじゃないの!?」

花丸「…………そんな事、ないよ」

鞠莉「花丸……話してくれない?」

梨子「花丸ちゃん……」
 

573: 2017/12/05(火) 23:33:07.33 ID:dG8ZiH82
花丸「話すと言っても……んー……」

善子「自分の生死を平然と口にしといて、あとなにを迷うのよ」

花丸「いやぁ、どうやって説明したものか……」

梨子「なにかまたややこしい状況になっちゃうの?」

鞠莉「因果がどうとかの話?」

花丸「ううん、結局のところ今のマルには影響のない事なので、みんなに余計な心配をかけるだけかなぁと」

善子「じゃあなんで自分が死んでいるって事サラっと言うのよ!」

花丸「だって、そこを否定したらダイヤさんのノートに信憑性もなくなって、そこから全体的に広がる事だってあるわけだし」

鞠莉「私達がノートをジョークグッズの類だと思うって事?」

花丸「そう。ただでさえ善子ちゃんは不安定な状況なのに、余計な事で時間を無駄にしたくないずら……」

梨子「それで儀式を急いでいたの?」

花丸「それもあるし、マルの本能がそうさせるの」
 

574: 2017/12/05(火) 23:33:58.77 ID:dG8ZiH82
善子「なによ、じゃあ死んでますってサラっと流して強引に儀式までやろうとしてたの?」

花丸「まー思った以上に善子ちゃんの熱い言葉が聞けて嬉しかったずら」

善子「バカにすんな!!」

花丸「ぁぅ……」

鞠莉「そこは同感。私達がそんなに薄情に思われていたなんて」

梨子「私達、やっぱり花丸ちゃんの事信じたいの」

花丸「ご、ごめんなさい……」

善子「だから儀式は明日やるってのは分かったわ、でもそれまでにちゃんと話して……」
 

575: 2017/12/05(火) 23:34:54.25 ID:dG8ZiH82
花丸「ん………あ、でもお昼休みもう終わるずら」

善子「んも~~! そのマイペースなのがなんかムカつくわねー!」

梨子「ふふっ……」

鞠莉「………………」

善子「じゃあ放課後! 練習終わったらここで話す! いいわね!」

花丸「わ、わかったずら……」

梨子「でもよかった……花丸ちゃんがやっぱり花丸ちゃんで」

花丸「もう……最初からそう言ってるずら……」

鞠莉「ん……そうね」
 

576: 2017/12/05(火) 23:35:55.22 ID:dG8ZiH82
善子「ってわりと時間ギリじゃないの! 走るわよずら丸!」ダッ

花丸「廊下を走ってはいけないずら」タッ

善子「構わないわよっ!」ダダダダ…


 ピロリン


善子「ん、LINE? マリーから……」ピッ


シャイ煮『さっきのはきっと花丸なりの優しさよ』


善子「ん?」 ピロリン


シャイ煮『私達の空気、最初に比べてずっと明るかったのは、花丸が死を意識させないようにしてくれたからだと思うわ』


善子「…………」
 

577: 2017/12/05(火) 23:36:34.06 ID:dG8ZiH82
善子「そんなの………」  ピロリン


シャイ煮『あのままの流れでいたら、本当に私達は前へ進めなくなっていたかもしれない』


善子「わかってるわよ……」  ピロリン


シャイ煮『だから、私達は花丸を信じる。それだけ決まれば……いいわよね?』


善子「……………」

花丸「善子ちゃん、走りながら携帯いじると危ないよ?」スッ

善子「えっ?」 ゴツン!

花丸「だから言ったのにー」タッタッタ

善子「いっつつ……」

花丸「お先ずら~~~♪」スタタタタ


善子「なによ……嬉しそうにしちゃって……」
 

578: 2017/12/05(火) 23:37:35.66 ID:dG8ZiH82
 -放課後 スクールアイドル部部室


ダイヤ「花丸さん、果南さん! 今日も自主練していきますわよ!」

果南「ホント気合入ってるね~ダイヤ」

ダイヤ「当然です! アゼリアがその名でライブができる機会はそう多くないのですから!」

花丸「あー………」


鞠莉「悪いわね~ダイヤ、今日は花丸はうちが借りていくわ!」ギュッ

花丸「はぅっ」

ダイヤ「え、なぜですの?」

果南「ギルキスは練習しないの?」

善子「や、やってるわよ」
 

579: 2017/12/05(火) 23:38:16.76 ID:dG8ZiH82
ルビィ「梨子ちゃん善子ちゃん、新しい衣装は間に合いそう?」

梨子「んえっ!?」

曜「ギルキスだけ急に衣装変更するっていうからちょっと気になってたんだけど」

千歌「大丈夫そう? ライブ来週だよ?」

善子「だ、大丈夫よ。この堕天使ヨハネの新たなる漆黒の聖衣、楽しみにしていなさい」

ルビィ「漆黒の聖衣~」キラキラ

千歌「なんだかよくわかんないけど、すごいの作ってるんだね」

梨子「う、うん……まぁ……」

曜「もし手伝えることがあったら言ってね」

梨子「ありがとう」
 

580: 2017/12/05(火) 23:39:09.46 ID:dG8ZiH82
梨子「何気に日数まずいんじゃないのかな?」コソッ

善子「デ、デザインさえ決まればなんとかなるわよっ」コソコソ


ダイヤ「とにかくライブに向けて一日たりとも無駄にできないのです。花丸さんはこちらに!」グイグイ

花丸「ずらー……」

鞠莉「こっちも大事な要件だって言ってるでしょ!」グイ

花丸「ず~ら~……」

果南「ちょっと鞠莉、強引だよ?」


梨子「……………」

善子「……………」
 

581: 2017/12/05(火) 23:40:07.94 ID:dG8ZiH82
鞠莉「え、今日はやめとく?」

梨子「花丸ちゃんの話は勿論大事で、気になりますけど…」

善子「ライブの準備が遅れているのは……まぁ……若干やばかったりもするし?」

鞠莉「むぅ……あ、じゃあ夜にっ…」

花丸「夜はダメずら~、マルも準備しないといけない事があるずら」

善子「明日の儀式は…絶対なのよね?」

花丸「可能な限り急ぐべきだよ」

梨子「と、とりあえずその儀式のため集まった時に話を聞くという事で…」

鞠莉「私はそれでもいいけど……善子は?」
 

582: 2017/12/05(火) 23:41:01.16 ID:dG8ZiH82
花丸「……………」

善子「いいわよそれで……ずら丸の事、信じるって決めたんだし」

梨子「うん、そうだね」

花丸「ありがとずら……」


ダイヤ「なにやってますの、行きますわよ~!」

花丸「今行くずら~~」タッ


鞠莉「じゃあ今日は……」

梨子「本気で作業しよ!」

善子「ふ、余裕よ!」ビシッ
 

583: 2017/12/05(火) 23:41:50.33 ID:dG8ZiH82
 -夜 善子ちゃんのお部屋


善子「ふ、ふふ……ついに完成したわ……」フラフラ


 ピッ ピッ……


善子「画像送信っと……はぁ……」バタッ

善子「衣装のデザインは出来た……曲のアレンジはマリーと梨子が仕上げてくれる……」

善子「デザインさえ決定すれば既存の衣装を弄るだけでなんとかなる……」

善子「完成した曲とじっさいにフォーメーション練習には……週末を返上すれば……」


善子「今出来る事はやった……あとは………」
 

584: 2017/12/05(火) 23:42:26.32 ID:dG8ZiH82
 ピロリン


善子「えっと……マリーは……ん、オッケーってことね」


 ピロリン


善子「梨子は……ん、こっちもオッケー。じゃあ後は作るだけね……」


 prrrr…


善子「ん……梨子?」ピッ

善子「もしもし」

梨子『善子ちゃん、ごめんね作業終えたばかりなのに…』

善子「いいわよ、どうせ横になってボーっとしてるだけだし」
 

585: 2017/12/05(火) 23:43:10.73 ID:dG8ZiH82
梨子『ん…………』

善子「どうしたのよ…」

梨子『いよいよ、明日だね』

善子「あ、儀式ね……うん」

梨子『……………』

善子「梨子……?」


梨子『うまくいくかな……』

善子「いってくれないと困るわよ」

梨子『そうだね……』
 

586: 2017/12/05(火) 23:44:04.85 ID:dG8ZiH82
梨子『……………』

善子「どうしたのよ……」

梨子『儀式が終わったらね、その……善子ちゃんの寿命はまたわからなくなるんだよね…』

善子「そうらしいわね」

梨子『運命が変わったら……運命共同体って、どうなるのかな?』

善子「そのへんは良く分からないわね。言葉のイメージだと一蓮托生みたいなものみたいだけど」

梨子『うん……そうだね……一蓮托生……運命を共にする……』

善子「なにか気になる事でもあるの?」

梨子『えっと……花丸ちゃんがね、私の運命が善子ちゃんを繋ぎとめているって言ってたじゃない?』

善子「そうね」

善子(そのせいで梨子の寿命もひっぱられて短くなっているとも……)
 

587: 2017/12/05(火) 23:44:52.21 ID:dG8ZiH82
梨子『すべてが解決したら私達、運命共同体じゃなくなっちゃうのかなって……』

善子「さぁねぇ……わからないわ」

梨子『そっか…わからないよね』

善子「それにあんまり興味もないし」

梨子『え……そうなんだ………』

善子「前にも言ったけど、運命とかそういうものの認識がちょっと変わったからね」

梨子『よく堕天の運命がどうとか言ってたのに……』

善子「ぐ……い、いいのよそれは……」

梨子『あやふやだなぁ…』

善子「ふ、ふん……」
 

588: 2017/12/05(火) 23:45:41.81 ID:dG8ZiH82
梨子『とにかく明日……がんばろ』

善子「儀式そのものは簡単だってことだけど」

梨子『そうなんだ』

善子「条件がそろえばって言ってたから、そういう意味なら明日は完璧でしょ」

梨子『そっか…じゃあ明日儀式が終わったらどうする?』

善子「衣装作るに決まってるじゃない!」

梨子『はは、そうだね。手伝う』

善子「頼むわ……」

梨子『ん……じゃあもう切るね、また明日……おやすみなさい』

善子「おやすみー」  ピッ


善子「………………」


善子「運命共同体なんかより、もっと強いものがあるのよ…リリー」
 

589: 2017/12/05(火) 23:46:31.10 ID:dG8ZiH82
 -次の日 早朝


 prrrrr…… prrrrr……


善子「ふぁ……ぁ、ん……」モゾモゾ ピッ

善子「あい……」

花丸『おはよう善子ちゃん! 儀式の準備はできてるので、マルの家に来て欲しいずら』

善子「む…………こんな時間から?」

花丸『儀式の都合上、人目の少ないうちがいいからね』

善子「そう、わかったー……ふあぁ……」

花丸『それじゃまた後で~ずらっ』ピッ


善子「んしょ………ふぅ………行きますか」
 

590: 2017/12/05(火) 23:47:28.58 ID:dG8ZiH82
続くっ

601: 2017/12/06(水) 23:24:06.96 ID:5g1C5P/5
 -花丸ちゃんの家 境内


鞠莉「あ……ふ……こんな時間に呼び出されるとは思ってなかったわー」

梨子「おはようございます。うぅ、寒い……」


善子「おはよ……ぜぇ…ぜぇ……」


梨子「善子ちゃんどうしたの!?」

善子「なにって、バスもでてないから自転車飛ばしてきたのよ……ふぃ…」

鞠莉「連絡くれたら車を回してあげたのに」

善子「いいわよこれくらい……」
 

602: 2017/12/06(水) 23:25:21.99 ID:5g1C5P/5
花丸「みんなよくきてくれたずら」ザッ

善子「あ、ずらま……」

梨子「わー花丸ちゃん可愛い!」

鞠莉「oh-もしかして巫女服ってやつ?」

花丸「それは神社だよ。これはただの作務衣ずら」

善子「普通そんなにフリルやリボンはついてないと思うんだけど?」

花丸「こ、これは前にルビィちゃんが色々つけてくれたの……」

善子「いいんじゃないの?」

花丸「ん……あ、それよりみんな準備はいい?」
 

603: 2017/12/06(水) 23:25:54.90 ID:5g1C5P/5
善子「ノートとルビィから借りたアイドル名鑑」ドシッ

梨子「私もノートを…」

鞠莉「ノート三冊とダイヤに借りた、私達が初めてスクールアイドルとして作った衣装よ」

梨子「え、すごい! わぁ、シンプルだけど王道ならではの可憐さがでてますねー」

善子「よく借りられたわね、そんなの」

鞠莉「ま、そこは企業秘密よ」

花丸「うん、それで大丈夫だと思うずら」

善子「すぐに始めるの?」

花丸「ここじゃなくて、儀式の準備をしている場所があるからマルについてきて」
 

604: 2017/12/06(水) 23:26:34.62 ID:5g1C5P/5
 -お寺の裏山 


鞠莉「へー、遠くから見ているだけじゃわからなかったわね、こんな場所があるなんて」

梨子「森だと思っていたけど、ここだけ開けてるんだ……」

善子「おぉ、なんかいい雰囲気の場所じゃない?」

花丸「よくわかんない黒魔術とかしないでね」


花丸「ここずら」ザッ


鞠莉「これって、焚火?」

善子「なにこれ、キャンプファイヤーでもするの?」

花丸「儀式の際にね」

梨子「周辺に置いてある台座はみたいなのは?」
 

605: 2017/12/06(水) 23:27:21.79 ID:5g1C5P/5
花丸「ある法則に沿って配置してあるその台座に、アイドル名鑑とダイヤさんの衣装を置いて」

善子「ここでいいの?」ズシッ

鞠莉「オッケー」サッ

花丸「次に焚火の前にある台座にみんなのノートを置いて」スッ カチッ

梨子「あ、ここね」


 ボゥッ!


善子「あっつ!」

鞠莉「花丸ー、火を点けるなら先に言って!」

花丸「ごめんずらー」

梨子「び、びっくりしたー」
 

606: 2017/12/06(水) 23:28:10.00 ID:5g1C5P/5
善子「あーでもまだ寒いから丁度いいわねー」

梨子「いや、これちょっと…熱い…」

鞠莉「すごい勢いね~」

花丸「善子ちゃんはノートを置いた台座の前に、鞠莉ちゃんはその右隣、梨子ちゃんは左隣へ」

善子「え、ここ……ちょっと熱いんだけど…?」

鞠莉「近いわねー…」

梨子「はぅ……」

花丸「ガマンするずら~」
 

607: 2017/12/06(水) 23:28:52.14 ID:5g1C5P/5
花丸「そのままそこに立っていて、しばらく時間を待つから」

善子「えぇ、この熱いのそのままなのね…」ジリジリ

鞠莉「ガマン……ガマン……」ジリジリジリ…

梨子「あぅ……き、きついよ?」ジリジリジリ…

花丸「じきに慣れるずら~」

善子「慣れるか!」


 ザッザッ…


梨子「花丸ちゃん?」

花丸「時間が来るまで、少しマルの話をするずら……」

善子「ん………」

鞠莉「話してくれるのね」
 

608: 2017/12/06(水) 23:31:14.94 ID:5g1C5P/5
花丸「ダイヤさんがマルの死因を見て信じられないのも無理のない話だったずら…」

善子「それはあんたがもう……死んでいるから……?」

花丸「それと、死因ずら」

鞠莉「死因……目の前の花丸は元気そのものなのに、ほんとにどういうワケ?」

花丸「えっと、マルも一度どういうのか見ておきたいから……っと」パサッ

善子「それ、私の最後ノート……」


花丸「善子ちゃん、ためしにここにマルの名前を書いてみて欲しいずら」


梨子「え、それって…!」

善子「何言ってんのよ、そんな事したら余計に因果の鎖ってのが絡んでくるんじゃないの?」

鞠莉「…………」
 

609: 2017/12/06(水) 23:32:10.12 ID:5g1C5P/5
花丸「マルの場合は大丈夫ずら……はいこれ、ペンも用意してあるから」スッ

善子「い、嫌よ! あれだけもうノートは使うなと言っておいて……」

花丸「ノートは今日、確実に処分する。でもこの先同じような物が出てきた時、マルにとっての経験としておきたいの」

鞠莉「それって、ノートはまだあるっていう事?」

梨子「え?」

花丸「ノートかどうかは分からない。だけど人を惑わす呪いはこの世界にはたくさんある。どういう形で現れるかも様々」

梨子「呪い………」ゴクッ

善子「それとこれに何の意味が……」

花丸「マルはこれからも人に害をなす存在は許すことが出来ない。そういう運命を背負ってしまったからね」

善子「どういう事よ……?」
 

610: 2017/12/06(水) 23:32:53.53 ID:5g1C5P/5
花丸「それを教えるという意味でも書いて見て。どういう表現がされるのかも、知っておきたいの」

善子「……………」

梨子「善子ちゃん……」

鞠莉「善子……」


善子「わ、わかったわよ!」バッ


花丸「ゴメンね。あんまりいい気分じゃないかもだけど、表示される内容をそのまま教えて」

梨子「…………」

鞠莉「…………」


善子「…………」
 

611: 2017/12/06(水) 23:33:38.71 ID:5g1C5P/5
善子(そういえば前に書こうとして辞めたところがある……)


 国木田花


善子(……………丸……)サラッ


 国木田花丸


善子「………………」ドキドキ…


善子「あ、でてきた……」

梨子「ノートは…なんて?」

鞠莉「………」ゴクッ

花丸「……………」


善子「なにこれ………」


 国木田花丸
 享年15歳 死神に魂を刈り取られ死亡
 

612: 2017/12/06(水) 23:35:16.15 ID:5g1C5P/5
善子「し、死神?」ビクッ

梨子「え?」

鞠莉「どういう事なの?」

花丸「………………」

善子「享年15歳……死神に魂を刈り取られ……死亡……」

梨子「死神……?」

鞠莉「魂を刈り取られって……なによそれ……」


花丸「なるほど、マルは死神ということか……」


善子「なんなのよこれ、ずら丸!」

梨子「ほ、ほんとなの善子ちゃん」

鞠莉「花丸……自分が死神って……?」
 

613: 2017/12/06(水) 23:36:24.12 ID:5g1C5P/5
花丸「落ち着くずら善子ちゃん」

善子「だってこれって……普通の死因じゃないじゃない!」

花丸「そう。マルはあの日、突然死んだの……」

梨子「15歳って……今年の事?」

花丸「正確には、今年の7月。沼津の花火大会の後ずら」

鞠莉「え、でも花丸はずっと私達と一緒に……」

花丸「うん。マルはマルで、それは変わらない。でも魂は違う……」

善子「なによそれ……中身は別人だっていうの?」

花丸「ううん、ちゃんと国木田花丸。でも国木田花丸は、一度死んでいるの」

梨子「死神に〇されたって言う事?」

鞠莉「でも自分の事を死神って……」
 

614: 2017/12/06(水) 23:37:31.59 ID:5g1C5P/5
花丸「マルは自分がどういう存在なのかはよくわかっていないの」

善子「はぁ? どういう事?」

花丸「マル自身……えっと、この場合はマルの中にいる存在、もう一つの魂の事」

梨子「??」

花丸「意識としてそこにあったのは、この土地を守るという意識。たぶんマルは土地神や土着神だったずら」

鞠莉「……ん?」

善子「あんたは沼津の土地神だっていうの?」

梨子「あ、善子ちゃん意味わかるの?」

善子「言葉のニュアンスとしてはね……」
 

615: 2017/12/06(水) 23:39:07.51 ID:5g1C5P/5
花丸「いつからそこにいて、いつから町を見守っていたのか曖昧なんだけど、それはきっとマルと一緒になったからかな」

鞠莉「死神っていうのはどういう事なの?」

花丸「それは、認識の違いずら」

梨子「??」

花丸「マルは最後ノートの事を悪魔のノートと呼んだよね」

善子「そうだったわね」

花丸「でも、人によってはそれは誰かの運命に干渉して救う事も出来るかもしれない、奇跡のノートでもある」

梨子「それが良いか悪いかという以前の認識って事ね」

花丸「つまりノートの死因に死神とでるという事は、そのノートを作った誰かにはマルのような存在はそう認識されているという事ずら」

鞠莉「じ、じゃあ花丸は死神じゃ……ないってこと?」
 

616: 2017/12/06(水) 23:42:02.51 ID:5g1C5P/5
花丸「それはわからないずら」

善子「なんでよ」

花丸「土地に仇なす存在に、マルはきっと容赦のない存在であったはずだから……」

善子「守るために………〇すって事?」

梨子「……………」

鞠莉「じゃあどうして、花丸は死んだの?」

花丸「それは………」

善子「なによ、ずら丸が何か土地に対して悪い事をしたっていうの!?」

梨子「よ、善子ちゃんっ」

花丸「動いちゃダメだよ善子ちゃん。もうじき儀式が始まる…」

善子「ぐっ……いいからワケを話しなさいよ!」
 

617: 2017/12/06(水) 23:42:45.80 ID:5g1C5P/5
花丸「………マルは、昔から霊感がすごかったの」

梨子「霊感……」

鞠莉「よく聞くけど実際どういうのが霊感が強いというのかわからないアレよね?」

花丸「明確な差でいえば視えるか視えないか、存在に触れられるかどうか……そしてマルは視る事も触る事も出来たの」

梨子「でもそれって昔からなんでしょ? どうして急に……」

花丸「確かに子供の頃から他の人とは違うものをたくさん視ていて、それにはもう慣れた生活だったの」

善子「むぅ……なんかちょっと特別っぽいわね……」

鞠莉「なんでそこで悔しそうにするのよ」

花丸「ふふ、善子ちゃんが天使がどうとか言ってる横で何かが浮遊していたの、知らないでしょ?」

善子「いっ…ち、ちょっとそういうのは今はいいのよ……」
 

618: 2017/12/06(水) 23:43:35.28 ID:5g1C5P/5
花丸「今では曖昧になった以前のマルにもお互いに視えている存在として認識はしていたの」

梨子「花丸ちゃんがし……えっと、土地神様を視ていたって事?」

花丸「マルも視ていたし、同時にマルも視ていた……お互いに」

鞠莉「ややこしい表現ね」


花丸「あの日……マルは意識していなかったけど、ただそこを浮遊いているだけだったけど、マルとすごく近くにいた」


善子「……?」

花丸「お寺に続く石階段の途中で、マルはマルとすれ違った……それをマルは視線で追ってしまった」

梨子「えっと……うん……?」

鞠莉「あとでわかりやすく教えて……」

花丸「いつもの通いなれた階段で、意識をマルに向けたから、マルは足を踏み外した」

善子「………」ゴクッ

花丸「マルも本来干渉しないような存在だったけど、お互い存在を認識していたから、とっさにバランスを崩すマルに手を伸ばしてしまった」

梨子「え、まさか……それだけで?」
 

619: 2017/12/06(水) 23:44:41.10 ID:5g1C5P/5
花丸「石階段から転げ落ちるマルはその途中、マルに触れてしまった……触れてはいけない存在だったマルに……」

善子「でもそれって、助けようとしたんでしょ?」

花丸「そんなの関係なかったの。マルはそういう存在だったのを、そうして知ったの」

鞠莉「……………」

花丸「階段から落ちたマルは死んでいた。でも原因はマルにあった……」

梨子「まって、じゃあ花丸ちゃんは今……」

花丸「どうしてそうしたのか、今のマルと同調しているマルには曖昧…ただ善子ちゃんの言う通り、助けようとしたんだと思う…」

善子「それで………」

花丸「今のマルには漠然としているけど、それでも明確な目的があるの……」

善子「ややこしい言い方ね…」
 

620: 2017/12/06(水) 23:45:47.52 ID:5g1C5P/5
花丸「この土地に蔓延る人に仇なす存在は消滅させる。ただそれだけが目的」

善子「なによそれ……じゃあこれからどうするのよ」

花丸「これから?」

善子「ノートを処分したら、あんたはどうするのかって」

花丸「マルはマル本来の人生を歩みつつ、そういう存在がいれば動くだけ……」


鞠莉「んーつまり、なんだか色々わかってない事もあるけど、花丸はその……人間でいいわけ?」

花丸「勿論ずら」

梨子「神様なのかなって思っていたけど……」

花丸「そんな曖昧なものじゃないちゃんとした人間、国木田花丸だよ、梨子ちゃん」

善子「…………それでもあんたは……」


花丸「っと、話し込んでるうちに時間ずら」
 

621: 2017/12/06(水) 23:46:51.66 ID:5g1C5P/5
鞠莉「儀式を行うのね」

梨子「ん……」

善子「ちょっとまってまだ聞きたい事が…」

花丸「時間を逃すわけには行かないから、それは終わってからにして欲しい」サッ

梨子「えっと、どうすれば……」

善子「むぅっ……」

花丸「じっとしているだけでいいよ、マルがやることを見守っていて欲しいずらっ」スッ

善子「わかったわよ…はい、ノート……」

花丸「うん。すぐに終わらせて、善子ちゃんを更生させるずら」

善子「不良か!」

梨子「ふふ…」
 

622: 2017/12/06(水) 23:48:00.39 ID:5g1C5P/5
花丸「いまからマルがノートを焚火に投げ込むから、そこで善子ちゃんの因果の鎖は切れます」

鞠莉「それだけでいいの?」

花丸「ただ焼くだけだと、善子ちゃんは死にます」

善子「は、はぁ!?」ドキッ

梨子「大丈夫……なの?」

花丸「運命に干渉し、因果に深く干渉した意識、それを一方的に破棄する行為。これを世界は認めないの」

鞠莉「タダで捨てる事は出来ないって事?」

花丸「すべての行動はいつか自身に返る。良い事も悪い事も……それすなわち…」

善子「……………」ゴクッ


花丸「因果応報ずら」
 

623: 2017/12/06(水) 23:49:33.11 ID:5g1C5P/5
梨子「因果応報……聞いた事あるかも」

善子「わ、私がやったことが返ってくるって事?」

花丸「ある意味では逆流するとも言うけど、なんにせよ善子ちゃんが結んだ因果の糸はすべて善子ちゃんに返り…」

鞠莉「…………返り…?」ゴクッ

花丸「善子ちゃんを因果の渦に飲み込もうとする」

善子「」ゾクッ

梨子「で、でも大丈夫なんでしょ? なにかするんだよね?」

花丸「勿論、そのために縁を起点として善子ちゃんに結ぶ。ようは渦に引きずり込まれないように因果の糸で繋ぎとめるの」

鞠莉「そのためにそれぞれ必要なわけね」

善子「…………」ドキドキ…
 

624: 2017/12/06(水) 23:50:41.89 ID:5g1C5P/5
花丸「善子ちゃんに返る因果は全部で4つ。それを繋ぎとめるための縁も4つ」

梨子「私と、鞠莉さんと……」

鞠莉「ルビィのアイドル名鑑に、ダイヤの衣装ね」

善子「な、なんか聞く分にはすごく頼りないんだけど……本や衣装で大丈夫なの?」

花丸「大丈夫ずら。そこはマルを信じるずら」

善子「ど、どっちのずら丸を………あ、いやいいわ……」

梨子「うん。花丸ちゃんはずっと花丸ちゃん」

鞠莉「正直私はさっぱり理解できてないけど、ようは死んだけど生き返ったって事でしょ?」

花丸「あはは、それでもいいずらっ」

善子「信じてるわ。だから……」

花丸「うん。それじゃ始めるね」サッ
 

625: 2017/12/06(水) 23:52:12.51 ID:5g1C5P/5
花丸「人が持つ魂の輝きとその運命を悪戯にかき乱す存在を……マルは許さないずら」ババッ


 ボワッ!  ボボボボ…


梨子「ノートが……」

鞠莉「随分勢いよく燃えるのね……」

善子「…………」


花丸「きた!」


 ドンッ! ドンッ! ドドッ! ゴォッ


梨子「な、なにあれ?」

鞠莉「火の中から黒い筋が……あれが因果の糸?」

善子「…………!」グッ
 

626: 2017/12/06(水) 23:53:05.26 ID:5g1C5P/5
梨子「善子ちゃん!!」

善子「………あぅ…」

鞠莉「花丸! 黒い糸が善子に!!」

花丸「大丈夫、視て……」


善子「…………?」


梨子「あ、光ってる……」パァ

鞠莉「ワオッ! これってマリーも!?」パァ

花丸「それが縁の糸、善子ちゃんとみんなを繋ぎとめる絆……」

梨子「あ、衣装と本も光ってる」
 

627: 2017/12/06(水) 23:53:49.87 ID:5g1C5P/5
善子(う、くっ……なんか足元からすごい引きずり込まれる感じ……でも……)


梨子「善子ちゃん!」パァァ

鞠莉「善子!!」パァァ


善子(みんなからのびた光が私を繋ぎとめてくれている……これなら…)


花丸「いま4つの因果が善子ちゃんの体を突き抜けて、大地に溶け込んだ……これで……」


 ズオォォォォォ…! ドンッ!


善子「!?」ビリッ

梨子「きゃあ!」ビリッ

鞠莉「ば、爆発!?」
 

628: 2017/12/06(水) 23:54:49.94 ID:5g1C5P/5
花丸「え……?」

梨子「は、花丸ちゃん! 焚火がすごい……燃え上って……」

鞠莉「なんなの……炎が……黒く染まってる……」

善子「え…な、なに?」


花丸「なにこれ……こんな因果の塊……見た事ない………」

梨子「だ、大丈夫だよね?」

花丸「……………」


 ブオオォォ! ゴアァ


善子「ひっ!」

鞠莉「炎が! 花丸!!」

花丸「ど、どうして……これだけの運命をどこに内包してたの……ノートには4人しか……!?」
 

629: 2017/12/06(水) 23:55:41.35 ID:5g1C5P/5
善子「う………ああああああああぁぁっ!!」

梨子「善子ちゃん!!」

鞠莉「様子がおかしい……花丸! 花丸!!」


善子(あ、ああっ、な、なにこれ、頭の中に何かが………意識が…引きずり込まれそう……!)


梨子「善子ちゃん! きゃあ!!」

鞠莉「どうしたの? っ!?」ビクッ


善子(ま、真っ暗になっちゃった…どうしたの、これ、なんなの!?)


梨子「花丸ちゃん! 善子ちゃんの足元に渦が! 善子ちゃんが沈んじゃう!!」

花丸「どういうこと……どういうことなの……?」


善子「ぐっ……う、ああぁ……!!」
 

630: 2017/12/06(水) 23:56:35.20 ID:5g1C5P/5
花丸「善子ちゃん! ノートに何を書いたの!?」バッ

梨子「え…?」

鞠莉「何を……」

花丸「これだけの因果、数人書いた程度じゃ起こりえない!! 他に何か書いていたの!?」


善子「ぐ……うぅぅ……!」


梨子「苦しそう……どうにかならないの?」

鞠莉「善子の体が沈んでいる!!」

花丸「善子ちゃん!!」
 

631: 2017/12/06(水) 23:57:22.70 ID:5g1C5P/5
梨子「うぅ…や、やだーー!!」ガッ

鞠莉「梨子!?」

梨子「善子ちゃんを、連れて行かないで!!」ググッ

花丸「梨子ちゃん!? 梨子ちゃんも引きずり込まれちゃうよっ!!」

鞠莉「くっ!」ダッ

花丸「鞠莉ちゃん!!」


鞠莉「梨子! その腕、絶対に離すんじゃないわよ!!」ググッ

梨子「はいっ!!」グググッ

鞠莉「花丸! 私達が繋ぎとめてるうちに、なんとかして!!」グッ!
 

632: 2017/12/06(水) 23:58:50.94 ID:5g1C5P/5
花丸「善子ちゃん、がんばって答えて! 起因がわからないとマルは動けないの!」ガッ

善子「うぅ……ぁ……ぁ……」

花丸「ノートに何を書いたのか、思い出して! がんばって!!」


善子(あぁ…なんだか感覚が……私、まだ生きてるよね……えっと……何を書い……?)


梨子「善子ちゃん!!」


善子(梨子……そうだ、こんなところで死にたくない……私はこれからも……梨子と……)グッ


善子「…ぅ……………ぁ…」ググ

花丸「なに?……………うん……」ガバッ



花丸「………ぷし……ろーど?」
 

633: 2017/12/06(水) 23:59:34.56 ID:5g1C5P/5
続くー…もうじき終わります……Zzz

655: 2017/12/07(木) 23:12:21.94 ID:4cENyyvV
花丸「ぷしろーどって言ったんだね? 間違いない?」

善子「ぅ………ん……」コクッ

花丸「ぷしろーど……ぷしろーど……」


花丸「ぷしろーどってなに!?」


梨子「も、もしかしてプシロードの事を言ってるのかな?」ググッ

鞠莉「あのゲームとかの?」グイー

花丸「知ってるの? 具体的に何か教えて欲しい!」
 

656: 2017/12/07(木) 23:13:00.33 ID:4cENyyvV
梨子「よ、善子ちゃんが好きなゲームやキャラクターを作ってる会社だったと思うけど…っ!」グググ…

花丸「会社ぁ!?」

鞠莉「株式会社プシロードね、確か……」グッ


花丸「なんてものを書いてるの!」グッ


梨子「善子ちゃんそんなの書いてたんだ……でもそんなの意味があるの?」

鞠莉「人の名前以外でもいけたんだ」

花丸「こっちのほうが問題だよ!!」
 

657: 2017/12/07(木) 23:13:43.65 ID:4cENyyvV
梨子「ど、どうして? んん…!」ググッ

鞠莉「そんなにマズイ事なの?」グググ

花丸「マズイよ! 会社って、小規模だけど国と同じなんだよ!」

梨子「国? 国家ってこと?」ググググ…

鞠莉「そんな大袈裟なもの!?」ズルズル…


梨子「ま、鞠莉さんっ! 善子ちゃんの体が…もう!」ズル…

鞠莉「こ、腰まで…!? んんっ、花丸ーー!!」ズルズル…

花丸「人の因果ではなく、人の想いが集束する環境、器……」

梨子「善子ちゃん!!」
 

658: 2017/12/07(木) 23:14:26.87 ID:4cENyyvV
花丸「たくさんの人が運命を預ける場所、集団意識を象徴するもの……そんなものに干渉して…!」

梨子「じ、じゃあこれって…!?」ズル…

花丸「会社と運命を共にした何か……因果をも飲み込んでいる存在…」

鞠莉「そんな……なんとかならないの!?」ズル… ググッ

梨子「よ、善子ちゃんが!!」


善子(あれ……なにも聞こえなくなった……体も軽い……私どうなったのかな……)


鞠莉「梨子、善子の体を後ろから持ち上げて! 私は前から!」ガッ ググ

梨子「は、はい!!」サッ
 

659: 2017/12/07(木) 23:15:09.33 ID:4cENyyvV
花丸「えっと……人の集団意識……それらに宿り束ねる存在……」ブツブツ


善子「………………」

梨子「善子ちゃん!!」ギュゥゥゥゥ!

鞠莉「善子!!」ググ…!


花丸「崇められる象徴……この場合会社という組織だから…えーっと…」ブツブツ


鞠莉「り、梨子!? あなたまで足が沈んでるわよ!!」

梨子「え? きゃっ!」ズ…

鞠莉「どうして? こっちは地面に遮られているのに?」


梨子「………運命共同体…だから?」
 

660: 2017/12/07(木) 23:16:04.39 ID:4cENyyvV
鞠莉「そんな、それじゃこのままだと梨子も一緒に!?」

梨子「……………っ!」


善子「…………梨……子…?」


鞠莉「花丸! 花丸まだなの!!」ググ

花丸「わかった! これは厳密には集合意識じゃなく、そこに生まれた鎮守神の類!!」バッ

鞠莉「なんとかなるの?」

花丸「アプローチの仕方さえ間違えなければ……でも…時間が少しかかって…」

鞠莉「なんでもいいから、できるならやって!!」ググググ

花丸「わ、わかったー!」
 

661: 2017/12/07(木) 23:16:51.92 ID:4cENyyvV
梨子「よ、善子……ちゃん……!」ズズズ…

善子「………………」

鞠莉「くっ……そ、もう…腕も、掴めない……」ズルズル…


善子(体の感覚がなくなって……どうなったのかな……)


梨子「ま、鞠莉さ……もうっ…!」ズズズ…

鞠莉「梨子! あなたの腕をこっちに伸ばして!」ガッ

梨子「ご、ごめんなさい…もう……」ズズ…

鞠莉「梨子!!」
 

662: 2017/12/07(木) 23:17:43.51 ID:4cENyyvV
 ズズ…… ズズズズ……


鞠莉「梨子!! 善子!!」ガッ


 …………。


鞠莉「む…うぅっ!!」ドンッ

鞠莉「くぅっ…くそっ! くそっ!!」ドンッ ガリッ


花丸「―――――」ブツブツ…


鞠莉「花丸!! 梨子も…善子も……っ!!」ガッ

花丸「…………まだだよ…まだ、終わりじゃない」
 

663: 2017/12/07(木) 23:18:57.96 ID:4cENyyvV
 ―――――


善子「………………」


善子(もうなんの音もしなくなったな……)


善子「……………」キョロキョロ

善子(どうなったんだろ、私……渦に飲み込まれちゃったのかな……)

善子「…………ぁ…」


善子「ん、声がでる……」

善子「おーーい! 梨子ー! マリー! ずら丸ー!」


善子「………………」 シーン…


善子「ちょっと……梨子!! マリー!!」
 

664: 2017/12/07(木) 23:19:40.48 ID:4cENyyvV
善子「……………えっと…冗談ならやめてよね!」

善子「……………………」


     ヨシコチャン


善子「っ!? 梨子!! どこ!?」キョロキョロ


  ヨシコチャン


善子「聞こえてるわ! どこなの!?」

善子「……………」
 

665: 2017/12/07(木) 23:20:22.33 ID:4cENyyvV
  フワッ


善子「ん……だ、誰……?」


      ヨシコチャン


善子「な、なにかいる……後ろに……」


  ヨシコチャン       
       ヨシコチャン


善子「梨子……声はするのに視えない……でも……」

 スッ…

善子「あ………あったかい……」

善子「なにかが触れている感覚……優しい、あったかい気持ち……」スッ


善子「梨子……なの?」
 

666: 2017/12/07(木) 23:21:10.58 ID:4cENyyvV
梨子「善子ちゃん!!」バッ

善子「うわあぁぁ!!」

梨子「きゃっ!!」ビクッ

善子「な、なんでいきなり目の前に現れるのよ!!」

梨子「なに言ってるの、ずっと呼んでたんだよ?」

善子「あ、そうなの……なんだか声はすごく遠くから聞こえてたような…」

梨子「私も善子ちゃんの声、目の前に姿はあるのに、すごく遠くから聞こえていたよ」

善子「ん………」

梨子「善子ちゃん……」

善子「な、なに?」
 

667: 2017/12/07(木) 23:21:59.83 ID:4cENyyvV
梨子「ごめん、繋ぎとめられなかった……」

善子「あー……じゃあここって……」

梨子「たぶん……真っ暗だね……」

善子「因果の渦とかいうやつかしら?」

梨子「かも………」

善子「で、どうして梨子までいるのよ?」

梨子「それは、たぶん私も善子ちゃんと運命を共にする存在だったから……かな?」

善子「一緒に引きずり込まれたってこと……はぁ……」

梨子「善子ちゃん?」


善子「ごめんなさい……」
 

668: 2017/12/07(木) 23:22:40.22 ID:4cENyyvV
梨子「うん、いいよ」

善子「でも…私のせいで梨子まで……」

梨子「私達はなるべくしてなった運命共同体……でしょ?」

善子「何言ってるのよ……梨子は何もしてないじゃない……」

梨子「善子ちゃん?」

善子「梨子は…ただ私を助けようとしてくれただけよ……でも私は違う……」

梨子「…………」

善子「私はおもしろがってたくさん名前を書いた……ルビィもマリーもそう、ダイヤの時にちょっとやばいって思った……」

梨子「ん………」

善子「それでやめようと思ったけど……最後にもう一度だけ、気になったから……気になっちゃったから……」

梨子「うん」

善子「梨子の名前を書いた………」
 

669: 2017/12/07(木) 23:23:17.75 ID:4cENyyvV
梨子「私も気になったから、善子ちゃんの名前を書いたよ」

善子「私とは……」

梨子「同じだよ。ノートが本物かもしれないって思ったら、千歌ちゃんでも曜ちゃんでもなく、すぐに思い浮かんだのは善子ちゃんだった」

善子「ぅ……」

梨子「そして二人で運命を乗り越えて死を回避した……」

善子「でもそのせいで……私達……」

梨子「うん。一蓮托生だもんね」

善子「なんでそんなに落ち着いていられるのよ」

梨子「それは、善子ちゃんと一緒だから」

善子「ぐっ………あ、そう……」プイ

梨子「あれ、もしかして照れた?」

善子「照れてないっ!」
 

670: 2017/12/07(木) 23:24:05.12 ID:4cENyyvV
梨子「ふふ……でも落ち着いているというより、やっぱり安心したからかな」

善子「なにがよ……」

梨子「だってさっきまで善子ちゃん、黒い炎みたいなのに包まれてホントに苦しそうだったから…」

善子「もうあんまり覚えてない……」

梨子「だからかな、今のケロっとしてる善子ちゃんを見たらね……」

善子「なんか単純な扱いをされてるようだわ」

梨子「ふふ、どうだろうね」

善子「むぅ……」
 

671: 2017/12/07(木) 23:24:34.29 ID:4cENyyvV
梨子「……………」

善子「……………」


梨子「私達、いつまでこうしているのかな?」

善子「ずっと浮いてるのかわかんない変な感覚だったけど、慣れるものね」

梨子「善子ちゃんだけハッキリ見えるのに、周りには何もないし……」

善子「ずっとここにいるのかしら……?」

梨子「そうなのかなー」


善子「……………」

梨子「……………」
 

672: 2017/12/07(木) 23:25:20.84 ID:4cENyyvV
善子「お腹空いたらどうしよう?」

梨子「そういうの気になる?」

善子「だって食べないと死んじゃうでしょ」

梨子「自分がどういう状態なのかわからないけど、不思議とそういう感覚はないよ」

善子「もしかしてもう二人とも死んでいるのかしら?」

梨子「そうなのかも?」


善子「あー……死んでるのかもね」

梨子「なんだか軽いね……」
 

673: 2017/12/07(木) 23:26:02.11 ID:4cENyyvV
善子「うん。でもきっと梨子がいなかったら私ずっと泣いていたと思う」

梨子「私も善子ちゃんがいなかったらって考えたくもない…」


善子「じゃあしょうがない……ここでずっと暮らそうか」

梨子「なにもできないけど……」

善子「ん………」スッ ギュッ

梨子「きゃっ!?」

善子「あ、ごめん……」

梨子「ううん、ただ触れられる事に驚いただけだよ…」

善子「お互いに触る事はできるのね……」
 

674: 2017/12/07(木) 23:26:39.52 ID:4cENyyvV
梨子「これならしばらく退屈しなくていいかな?」

善子「なによ、エ い事でもするつもり?」

梨子「バ、バカな事言わないで!」

善子「その反応は可愛いけど、ずっとそうだとちょっと寂しいかも……」

梨子「え?」

善子「あーいや、なんでもない」

梨子「二人だけなのに隠し事?」

善子「隠し事じゃなくて、今じゃないって思うし……」

梨子「むぅ…」
 

675: 2017/12/07(木) 23:27:17.57 ID:4cENyyvV
善子「あ………見て…」

梨子「ん? あ………」


 ポァ…


善子「私と梨子……糸で繋がっていたのね」

梨子「気づかなかった……これって、いつのまに……」

善子「二人しかいないけど、こうやって繋がりを感じられるのはいいわね」

梨子「ん………そうだね」

善子「触ると……あ、感触はあるんだ」

梨子「光ってはいるけど、これって縁の糸ってやつかな」

善子「そういえばずら丸が言ってたわね……」
 

676: 2017/12/07(木) 23:28:02.26 ID:4cENyyvV
梨子「花丸ちゃん……鞠莉さん………」

善子「どうしてるかな……」

梨子「鞠莉さんは渦に呑まれる事はなさそうだったけど、私達がいなくなったから……」

善子「………………」

梨子「心配、してるかな……」

善子「一人じゃライブもできないしね」

梨子「そういう問題?」

善子「だってせっかく準備したギルキスのライブも……」

梨子「ライブ………」

善子「ライブか……」


梨子「やりたかったね、ライブ……」

善子「そうね……」
 

677: 2017/12/07(木) 23:28:31.53 ID:4cENyyvV
梨子「千歌ちゃん達、大丈夫かな……」

善子「ルビィ達も、大丈夫かな……」


梨子「……………」

善子「……………」


梨子「ね、ねえ……善子ちゃん………」

善子「きっと同じことを考えていたわ」

梨子「そうだね……私達……」

善子「うん………」
 

678: 2017/12/07(木) 23:29:22.02 ID:4cENyyvV
梨子「未練……たくさんあるね」

善子「やりたい事、やっぱりたくさんある」

梨子「Aqoursもギルキスももっと続けたい……」

善子「まだまだ私もやりたい事があったわ。リトルデーモンもまだぜんぜんだし!」


梨子「だから……もう一回……みんなに会いたい……」

善子「会いたい……ううん、会わないと!!」

梨子「うん! 私やっぱり………」

善子「やっぱり…………」



  「 帰りたい 」
 

679: 2017/12/07(木) 23:29:59.52 ID:4cENyyvV
   キラッ


善子「ん?」

梨子「あ、見て善子ちゃん! 上!」

善子「なにか……降りてくるわね……あれは……」


梨子「………糸?」


善子「ふ………ふふ……」

梨子「あは、どうやらお迎えが来たみたいだね」

善子「そうね。頼りになるわホントに」


梨子「二本……縁の糸………」

善子「きっとマリーとずら丸ね」
 

680: 2017/12/07(木) 23:30:41.50 ID:4cENyyvV
梨子「………………」

善子「………梨子?」

梨子「これで帰ったら、全部終わるのかな……」

善子「そうだといいわね」

梨子「私と善子ちゃんはどうなってるのかな?」

善子「どうって……なにかある?」

梨子「運命共同体は……そのままなのかな?」

善子「随分とそこに拘るわね」

梨子「……………だって」

善子「大丈夫よ!」ギュ

梨子「あ………」
 

681: 2017/12/07(木) 23:31:47.61 ID:4cENyyvV
善子「運命共同体なんかじゃくたって、梨子がこの手を離さない限り…」

梨子「うん………離さない!」ギュゥ


善子「あなたはこのヨハネのリトルデーモンよ、永遠に」

梨子「うん!」

善子「そこには何者にも立ち入る事の出来ない、堕天の契約がなされているのよ!」

梨子「んー………うん、もう堕天でもなんでもいい!」

善子「なんでもって……ふっ、まあいいわ」ギュッ



梨子「善子ちゃん……」

善子「帰りましょう……梨子」
 

682: 2017/12/07(木) 23:32:28.47 ID:4cENyyvV
続くー…

693: 2017/12/08(金) 23:10:59.81 ID:VVX0FyzK
―――
――



善子「…………………」パチッ


善子「ん…………まぶしっ………」


 ザッ…


梨子「善子ちゃん、起きた?」スッ

善子「梨子……えっと……空が見える」

梨子「うん。帰ってきたよ……」

善子「そっか………」
 

694: 2017/12/08(金) 23:11:52.77 ID:VVX0FyzK
梨子「体、大丈夫?」

善子「ええ、なんだかスッキリしてる」

梨子「起きれる?」グッ

善子「ありがと、大丈夫。それより……」スッ


鞠莉「グッモーニンッ、善子」


善子「マリー…って、ずら丸どうしたの!?」

花丸「…………」

鞠莉「色々無理してたみたい、今は眠ってるわ」
 

695: 2017/12/08(金) 23:12:41.50 ID:VVX0FyzK
善子「そう……」


花丸「あー……起きてるずら~」


鞠莉「あらそうなの?」

花丸「でも鞠莉ちゃんの膝枕が気持ちいいからもう少しこのままでー…」フニフニ

鞠莉「ふふ、いいわよ」ギュー

善子「ずら丸……」

花丸「んー?」

善子「ありがとね、その……色々と」

花丸「貴重な体験したずら…」
 

696: 2017/12/08(金) 23:13:18.30 ID:VVX0FyzK
善子「マリーも…ありがと……」

鞠莉「ふむ…殊勝な善子もいいわね」

梨子「そうですね」クスッ

善子「だっ……ん、もう……ホントに……ありがとう……」ポロッ

鞠莉「あらあら、堕天使の涙ね」クスッ

梨子「善子ちゃん……」

善子「う、うる……さ……ぅぇ……ヒック…」ボオボロ…

花丸「終わりよければすべてよし……ずら」
 

697: 2017/12/08(金) 23:14:36.01 ID:VVX0FyzK
鞠莉「花丸は大丈夫なの? 体」ナデナデ

花丸「マルは人間だけど、ちょっと特別なの」ゴロゴロ

善子「なに…なにかあったの?」

鞠莉「渦に糸を垂らして、二人を吊り上げた時ね…」

梨子「釣りみたいですね」

鞠莉「善子にまとわりつく黒い塊を花丸が……あれは何をしたの?」

花丸「善子ちゃんの変わりに受けただけだよ」

善子「受けたって……それって私に返ってきた因果を花丸が肩代わりしたってこと?」

花丸「そんな大袈裟なものじゃないけどね、でも善子ちゃんの因果はもう清算されたから安心ずら」

梨子「ほんとに大丈夫なの?」
 

698: 2017/12/08(金) 23:15:21.53 ID:VVX0FyzK
花丸「ノートにマルの名前を書いても無事なのは、今のマルが因果の環からはずれた存在だからなの」

善子「なにそれ?」

花丸「説明しだすとややこしいんだけど、善子ちゃんに合わせて言うなら…条件付きの無敵モードみたいなもの?」

善子「無敵って、チートじゃないの…」

鞠莉「よくわからないけど、すごいのね花丸」ナデナデ

花丸「えへへ~」ホワー


梨子「あ………」


善子「どうしたの?」

梨子「あ、あの花丸ちゃん」

花丸「なんず~ら~?」
 

699: 2017/12/08(金) 23:15:52.05 ID:VVX0FyzK
梨子「その……私と善子ちゃん……」チラ

善子「………ん?」

花丸「?」

梨子「…………………」ギュッ

鞠莉「?」


梨子「ごめん、なんでもない……」

花丸「いいの?」

梨子「うん。もうあまり意味のない事だし…」

善子「梨子、もしかして」
 

700: 2017/12/08(金) 23:16:32.85 ID:VVX0FyzK
梨子「それに、知ることが必ずいい事に繋がるわけでもないって、今回わかったから」

花丸「その通りずら」ムクッ

鞠莉「もういいの?」

花丸「うん、ありがとうずらっ」スッ


花丸「さて、梨子ちゃんも善子ちゃんも鞠莉ちゃんも、まだ運命を知りたいと思う?」


善子「私はいいわ。面倒事しかおこらないし」

梨子「私も……」

鞠莉「知る事の責任……重みは私達には分不相応ってのはわかるわ」

花丸「そう。マルも含め、運命なんてものを認識し、干渉するなんて人には荷が重すぎるずら」
 

701: 2017/12/08(金) 23:17:19.05 ID:VVX0FyzK
花丸「だからこそ、日々を精一杯生きる姿こそが、人の魂を……」

善子「またそれ? この前も聞いたわよ」

花丸「大事なことずらー!」


鞠莉「oh-!大変!」バッ


梨子「ど、どうしたんですか鞠莉さん!?」

鞠莉「いつのまにかとっくに学校はじまってたわ……」

梨子「え……あーーー!!」

花丸「あぅ、完全に遅刻ずら……」
 

702: 2017/12/08(金) 23:18:07.73 ID:VVX0FyzK
善子「そういえば儀式の邪魔になるかもってマナーモードにしてたけど……うわっ」

梨子「千歌ちゃんと曜ちゃんからメールと電話がすごい……」

花丸「マルのほうにもルビィちゃんから……」

鞠莉「こっちもよ、まったく心配性なんだから」

梨子「とりあえず無事解決したなら、急いで学校行こっ」

善子「えー……もう今日はいいんじゃないの?」

鞠莉「ちょっと疲れたわね~」

梨子「もう、理事長自らサボろうとしないでください!」

花丸「マルはおなかすいたずら……」

鞠莉「あ、じゃあこれから何か食べに行きましょ!」

善子「賛成~!」

花丸「食べるずら~」

梨子「もう、花丸ちゃんまで!」
 

703: 2017/12/08(金) 23:19:01.99 ID:VVX0FyzK
善子「梨子!」

梨子「なーにー?」

善子「一蓮托生よ!」ガッ

梨子「え…ちょ、私は行くなんて……」グッ

善子「一緒よ、これからも!」

梨子「…………善子ちゃん」

善子「私のリトルデーモンでしょ! しっかりついてきなさい!」

梨子「それとこれとはちが~~う!」


―――
――

 

704: 2017/12/08(金) 23:19:53.61 ID:VVX0FyzK

――
―――


 -市内の中学校 体育館特設ステージ横


ルビィ「わぁ~すごい! カッコイイ!」キラキラ

善子「ふ、当然よ……この堕天使ヨハネの溢れる魔力を内包した新たな聖衣!! とくと見るがいい!」ビシッ

梨子「シャロンの新しい衣装もとっても可愛いわよ」

曜「でしょっ? ルビィちゃんと一緒に作り直したんだ!」クルクル

千歌「可愛いよねーこの衣装」

善子「ちょっとスルーしないで!」


鞠莉「oh-、とってもステキな衣装ね果南!」

果南「鞠莉もカッコイイじゃん」

鞠莉「ふふ、そうでしょ?」
 

705: 2017/12/08(金) 23:20:31.49 ID:VVX0FyzK
ダイヤ「さ、ユニットトップバッターはシャロンですわよ、準備してください!」パンパン

花丸「ルビィちゃんがんばるずら~」

ルビィ「うん、見ててね!」トテテテ…

千歌「じゃー行ってきまーす!」

曜「最初の勢いが大事だからね、がんばろう!」

梨子「がんばってっ!」グッ


善子「次は私達なんだから、アップはじめておきましょ」

鞠莉「そうね、梨子!」

梨子「はーい」
 

706: 2017/12/08(金) 23:21:06.41 ID:VVX0FyzK
ダイヤ「わたくし達も準備しますわよ!」

果南「トリコリコステッキのリボン取れちゃった…」ポロッ

ダイヤ「なぜ今!? もう、しょうがないですわね……」カチャカチャ

果南「おーさすがダイヤ、器用だねぇ」

ダイヤ「これくらいならお裁縫とそう変わりません」


花丸「最後までバタバタずら」
 

707: 2017/12/08(金) 23:21:33.33 ID:VVX0FyzK
鞠莉「花丸、ちょっとアップ手伝って」

花丸「ん、マルでいいずら?」

鞠莉「二人一組でやったほうが早いし、ちょっと聞きたい事があるのよ」


善子「梨子ー、柔軟手伝って」

梨子「うん」グッ


花丸「いくずら~」ググッ

鞠莉「んっ……もっと強くてもいいわよー」ググ

花丸「わかったずら」グイグイ
 

708: 2017/12/08(金) 23:22:07.82 ID:VVX0FyzK
花丸「それで、聞きたい事ってなんずら?」グイグイ

鞠莉「ちょっと個人的に気になってる事をねー」グニグニ


善子「いたたたたたた!」ビシッ ビキビキ

梨子「全然柔らかくならいないね、善子ちゃん」ゴキッ


鞠莉「ダイヤがノートに名前をたくさん書いたのに大きな影響がでていないのって、信じていなかったからよね?」

花丸「あ、そっちの話ね。うん、ダイヤさんはノートを信じなかった、これは大きい事だよ」

鞠莉「たったそれだけって言うか、そんなんで極端な差がでるのってどういう事なの?」
 

709: 2017/12/08(金) 23:23:12.71 ID:VVX0FyzK
花丸「知って、認識して、意識する。これだけで人が世界に与える影響というのは思いのほか大きいものずら」

鞠莉「ふむ……認識としてあるかないか…確かに気持ちとしては大切ね」

花丸「同じ物を視る時も、知っているかそうでないかで自身の行動基準に大きな影響がでるのと同じずら」

鞠莉「あ、じゃあさ、私はノートの事も知っていたし、その重要性も認識していた。そして梨子から色々話を聞いたわ」

花丸「ふむ……」


善子「いっつつ……やりすぎよ……」

梨子「ちゃんと家で毎日柔軟体操してる?」


鞠莉「それなのに善子と私でこんなに差異がおこるのはどうして?」

花丸「んーそれは単純な話かな」
 

710: 2017/12/08(金) 23:24:10.65 ID:VVX0FyzK
鞠莉「ん?」

花丸「梨子ちゃんにとっての縁……関係性の決定的な違いずら」

鞠莉「人と人の縁……友好関係が運命に大きく影響を与えるとかそういうの?」

花丸「うん。でも決して梨子ちゃんと鞠莉ちゃんに縁が無いわけじゃないの」

鞠莉「じゃあどういうこと?」


善子「交代よ、交代!」

梨子「はいはい、んしょっ」


花丸「梨子ちゃんにとっての運命的な出会い、なにより優先すべき対象となったのが相手じゃ、そこに差があるのは当然ずら」

鞠莉「あぁ……そういう事……ふふ」
 

711: 2017/12/08(金) 23:24:47.03 ID:VVX0FyzK
善子「行くわよ、とりゃー!」グギギギギ

梨子「痛っ! ちょっとこれもう柔軟じゃないよ!」グキグキ

善子「ふ、まだまだねリリー」

梨子「もう、やったわね!」バッ

善子「ぬあっ、奇襲とは卑怯な!」ササッ

梨子「油断大敵よっ」



鞠莉「仲いいわねー」

花丸「ホントずら~」
 

712: 2017/12/08(金) 23:25:28.28 ID:VVX0FyzK
ダイヤ「そろそろギルキスもスタンバイお願いしますわ」

梨子「あ、はーい」

鞠莉「それじゃ、最高にギルティなステージを見せてあげますか」

善子「ふふ、この日を境にまたリトルデーモン達が多く誕生するのね」

梨子「そうだといいわね」クスッ

善子「なるわよ!」


花丸「マル達はここでじっくり見させてもらうずら~」

果南「がんばってねー」

ダイヤ「気合ですわよ! 気合!」
 

713: 2017/12/08(金) 23:26:28.19 ID:VVX0FyzK
善子「よしっ………」

梨子「もうすぐだね」

鞠莉「色々あったけど、またこうしてライブが出来て、なによりだわ」

善子「ふ……そうね」

梨子「これからも、もっとみんなとこうしてライブやりたいね」

善子「…………ん、出来るわよ……」

鞠莉「梨子と善子の運命が今はもうわからないように、私とパパの運命も不明……でも」

梨子「大丈夫だよ、きっとみんな長生きする!」

善子「どういう根拠よそれ」

梨子「根拠というか……前向きに生きていくための、ちょっとした希望かな」
 

714: 2017/12/08(金) 23:27:28.21 ID:VVX0FyzK
鞠莉「希望ね……何も知らないまま生きるにはそれくらいあったほうがいいわよね」

梨子「何も分からないから、毎日を一生懸命生きる……この言葉、今だとよくわかる」

鞠莉「そうね……」

善子「…………………」

梨子「善子ちゃん?」


善子「大丈夫よ、梨子はきっと長生きするわ」

梨子「それは……どうして?」


善子(私の運命を繋ぎとめるために自らの寿命を縮めた……つまり、そういう事よね)


善子「堕天使と運命を共にするリトルデーモンなら当然よ」

梨子「答えになってないよ?」

善子「答えは……」ギュッ

梨子「あ………」キュッ

善子「これから時間をかけて証明してあげるわ」グッ

梨子「…………善子ちゃん」
 

715: 2017/12/08(金) 23:29:27.47 ID:VVX0FyzK
鞠莉「善子、梨子! さぁ、出番よ!」

善子「行くわよ、リリー!」

梨子「………うんっ!」


善子(未来の事は誰にもわからないこそ、今を精一杯生きる……考えてみれば当たり前の事よね)

善子(ただそれだけ……だけどそのたった一つを、共に歩んで行けるなら、きっとどこまでだって行けるよ…)


善子「行くわよ!」


鞠莉「愛こそすべて!」

梨子「愛こそすべて!」

善子「愛こそすべて!」


 「ギルティ・キス!!」

 

716: 2017/12/08(金) 23:29:53.19 ID:VVX0FyzK
 善子「最後ノート?」

  終わり 
 

717: 2017/12/08(金) 23:30:39.12 ID:VVX0FyzK
この先鞠莉ママでてきたらただひたすらに、ゴメンナサイ……

718: 2017/12/08(金) 23:31:39.15 ID:riNJ3Dup
乙!!!
引き込まれて毎日の楽しみになってた
おわるの少し寂しいくらい

719: 2017/12/08(金) 23:33:38.90 ID:907hxJ+s
乙!
ハッピーエンドで良かった
終わるのが惜しい

721: 2017/12/09(土) 00:00:35.60 ID:WKBjyOeh
乙!面白かった

726: 2017/12/09(土) 01:47:35.50 ID:NW4JVR6h
確かにラストうやむや感はあるな
だがすげー読みごたえあった。ありがとう!

727: 2017/12/09(土) 02:30:54.99 ID:bPCEZuyA
未来の僕らは知ってるよってそういう…

728: 2017/12/09(土) 05:43:55.39 ID:c2W6Aqhe
乙乙
面白かった

722: 2017/12/09(土) 00:44:13.71 ID:9K3VKQYY
乙でした!
素晴らしいヨハリリだった…
読んでてすごく面白かったからまたSS書いてください

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1511187296/

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