【長編SS】善子・ルビィ「未来通信」【ラブライブ!サンシャイン!!】

SS


1: 2017/05/26(金) 11:23:48.37 ID:Tw5kVguq.net
『─ねえねえ、聞こえる?』

『私の声、ちゃんと届いてる?』

『…………』

『……まだ答えられないみたいだね』

『…ねえ、貴女はそろそろこっちに来ることは出来ないの?』

『うーん、早く遊びに来てほしいんだけどなぁ……』


『私、もう待ちくたびれちゃったよ……』








善子「…………ん……」パチ

善子「…また、あの夢……」ボーッ

2: 2017/05/26(金) 11:24:44.81 ID:Tw5kVguq.net
善子「これで四回目ね……」フワァ

善子「この夢を見始めてから…」ノビー

善子「…それにしても、よくもまあ聞いてもいないのにベラベラと好き勝手言ってくれるじゃない」

善子「アラームのつもり?夢の世界に目覚ましなんていらないっての」フンッ

3: 2017/05/26(金) 11:25:36.29 ID:Tw5kVguq.net
善子「……」

善子「……でも今日は、少しだけ…違ったわね」スタッ

善子(今回は声だけじゃなくて……)



善子(ぼんやりとだけど…姿が見えた気がした)

4: 2017/05/26(金) 11:26:26.72 ID:Tw5kVguq.net



善子「しかしまあ、本当に変よね……」キュッ

善子(普通は夢の内容を覚えてる、なんてことは長くて一日程度しか持たない)シャコシャコ

善子(よっぽど印象的なものでもなければ)ペッ


善子(…だけど私が見てる夢の内容は、誰かが喋ってるのをただただ聞いているだけ)ガラガラガラ

善子(たったそれだけの、大したことのない…あっけないほどつまらない夢…)バシャバシャ

善子(なのに何故か…私はそれを覚えていて、しかも似たようなものを立て続けに見ている)キュッ


善子「問題はそこなのよねえ…」ウーン

5: 2017/05/26(金) 11:30:06.66 ID:Tw5kVguq.net
善子「……」


善子「やっぱり“アレ”が原因なのかしら?」

善子「もしそうだとすれば、今日も多分……」

善子「…まあ、今ここで考えたところで何が分かるってわけでもないし」

善子「……確信を得るためにも、まずは学校に行かなくちゃね」ガチャッ

善子「いってきます──」バタンッ


……


6: 2017/05/26(金) 11:30:50.59 ID:Tw5kVguq.net
─学校、一年生教室


花丸「─ふーん、善子ちゃんまたその夢見たんだ?」

善子「ええ、これで四回目…ホントしつこいんだから」ハァー

花丸「あはは……あっ、そういえばルビィちゃんもそんな感じの夢を見たらしいね?」

善子「……それ、本当なの?ルビィ」

ルビィ「えっ?うん、誰かがルビィに話しかけてきて…でもルビィはそれに返事をすることが出来ないんだぁ…」

ルビィ「昨日も同じ夢を見たから、今日で二回目だね」

7: 2017/05/26(金) 11:31:25.76 ID:Tw5kVguq.net
善子「そうなの……」

善子(やっぱりルビィも見てた……)

花丸「でも不思議だね、二人して似たような夢を続けて見るなんて」

ルビィ「そうだねぇ、もしかしたら花丸ちゃんもそのうち聞こえたりするかもね?」ニコッ

花丸「あはは、そうかもしれないずら」


善子(これで確信したわ…間違いないわね)

8: 2017/05/26(金) 11:32:12.79 ID:Tw5kVguq.net
ルビィ「そうなったらお揃いだね!」

花丸「うん!……ってどうしたの善子ちゃん?さっきからずーっと黙って」

善子「……ん、いやまあ…ちょっと考え事よ」

花丸「考え事…ずら?」

善子「ええ……ルビィ」

ルビィ「?」キョトン


善子「今日の昼休み、ちょっといいかしら?──」

9: 2017/05/26(金) 11:35:10.52 ID:Tw5kVguq.net
─昼休み、屋上


ルビィ「──儀式?……それって前にルビィと善子ちゃんがやったあの?」

善子「その可能性が高いわ、私とルビィだけが関係してて…その上、つい最近起きた出来事っていったら」

善子「一週間前に行った、あの黒魔術の儀式しか思い浮かばないのよ」

10: 2017/05/26(金) 11:36:31.55 ID:Tw5kVguq.net
ルビィ「……確かにそうかも、ルビィもそれ以外に何か特別なことってなかったし…」

ルビィ「でもまさか、本当に成功しちゃうなんて……」

善子「それは私も驚いているけど…とにかく、あの儀式が関係していることは間違いないと思う」

善子「まあ…すぐに発動したわけじゃなくてタイムラグが生じたから、気付くのに時間がかかったけどね」

12: 2017/05/26(金) 11:37:50.05 ID:Tw5kVguq.net
善子「それに…段々と夢の内容がはっきりしてきているのよ……術の効力が強くなってきている、と考えてもいいかもしれないわね」

ルビィ「じゃあ今日ルビィの夢の中で誰かが見えたのも……」


善子「えっ?」

ルビィ「…善子ちゃん?」

善子「ルビィも、見えたの……?」

ルビィ「うん、誰なのかまだはっきりとは分からないけど……善子ちゃんも?」

善子「ええ…でも、だとしたら可笑しいわ」

13: 2017/05/26(金) 11:38:42.02 ID:Tw5kVguq.net
善子「ルビィが見たのは二回目に対して、私は四回目…どうしてルビィのほうが経過が早いわけ?」


ルビィ「わからない……でも」

ルビィ「それならルビィも気になる事があるよ?」

善子「……どんなこと?」

ルビィ「ルビィと善子ちゃんは二人で一緒に儀式をやったはずだよね?」

善子「ええ、間違いないわ」

ルビィ「なのになんでルビィと善子ちゃんで夢を見始めた日がずれたのかな?」

14: 2017/05/26(金) 11:39:43.61 ID:Tw5kVguq.net
善子「それは……」


善子・ルビィ「……」


ルビィ「……分からないことだらけだね」

善子「そうね…ただ、一つだけはっきりしているのは─」ユビサシ

善子「今日もその夢を見るだろうってこと」

ルビィ「……うん」

15: 2017/05/26(金) 11:40:40.94 ID:Tw5kVguq.net
善子「そしてもし、術の効力が本当に強くなっているなら……今日の夢で」

ルビィ「誰がルビィたちを呼んでいるのか……分かるかも」

善子・ルビィ「…………」


善子「…とりあえず今日のところはこれくらいでやめましょうか」

ルビィ「うん、続きはまた明日…夢を見た後、だね」

善子「ええ、それじゃ教室に戻りましょうか…ずら丸が待ってる」クルッ

ルビィ「そうだね、行こっか」スタスタ


……


16: 2017/05/26(金) 11:46:06.09 ID:Tw5kVguq.net
─そして真夜中


善子「…………」スゥスゥ


……


18: 2017/05/26(金) 11:47:00.77 ID:Tw5kVguq.net



善子「……何度も見た景色…真っ白で、何もない空間…やっぱりね」

善子「さあ早く現れなさい……今度こそあんたの正体、見破ってやるわ」


『へぇ、今回はちゃんと人の姿になっているんだ』


善子(…あれ?この声どこかで………)

モヤモヤモヤ

善子「っ!急にもやが出てきた……!?」

善子(多分これが声の正体なんだろうけど……でもまだ全然見えない…!)ジッ

19: 2017/05/26(金) 11:47:46.00 ID:Tw5kVguq.net
『それじゃダメだよ』


善子「っ!?」

『もっと意識を集中させて』

善子「意識を……?」

善子「……」フゥーッ

『そうそう、そんな感じ』


善子「!もやが晴れていく……」

20: 2017/05/26(金) 11:48:28.49 ID:Tw5kVguq.net
善子「これでやっと…………!?」

?「……やっと見えた?」



善子「えっ……嘘でしょ……?」

?「初めまして、だいぶ遅かったね?」ニコッ

善子「ル、ルビィ!?」

21: 2017/05/26(金) 11:49:41.27 ID:Tw5kVguq.net
ルビィ「─善子ちゃん!?どうしてここに!?」

善子?「善子?……誰かしら、その人」


ルビィ「えっ…善子ちゃんじゃ…ないの……?」

善子?「私は善子、なんて人知らないわよ?」

22: 2017/05/26(金) 11:50:19.37 ID:Tw5kVguq.net
善子「いや待ちなさいよ!その声、その姿!どう考えてもルビィじゃない!」

ルビィ?「そんなこと言われてもなぁ……」ウーン

善子「……ルビィじゃないっていうなら、それなら…あんた一体誰よ!?」


ルビィ?「私?私は…あなた達の願いから“生まれた”存在」

23: 2017/05/26(金) 11:50:58.92 ID:Tw5kVguq.net
ルビィ「願い?」

善子?「そう、確かにあなたを呼んだのは私だけど…その原因を作ったのはあなた達のほうよ?」



ルビィ「それってもしかして…」

24: 2017/05/26(金) 11:51:47.34 ID:Tw5kVguq.net
善子「儀式…のことよね」

ルビィ?「正解…でもまあ、それしか考えられないよね」

善子「そうだったの……」


善子「……」

善子「……ねえ、今まで夢の中でずっと私を呼んでたのは…本当にあんたなの?」

25: 2017/05/26(金) 11:52:33.91 ID:Tw5kVguq.net
ルビィ?「うん、そうだよ……どうして?」

善子「いや…別に……」

善子(今の話…確かに嘘は言ってないと思う……)

善子(でもなんか、私が今までに聞いてきた声と違うような……思い過ごしかしら?)

26: 2017/05/26(金) 11:53:20.60 ID:Tw5kVguq.net
ルビィ?「ふーん?…じゃあ次は私から質問、いいかな?」

善子「何かしら?」


ルビィ?「あなたの名前はなんていうの?」

善子「…私?私は津島善子よ」

善子「……あっ、じゃなかった!ヨハネよヨハネ!」

ルビィ?「へぇー、善子ちゃんかぁ……」

善子(あああぁぁ!しまったーーーーーーー!!)アタマカカエ

27: 2017/05/26(金) 11:53:55.20 ID:Tw5kVguq.net
ルビィ?「いい名前だね……ってどうしたの善子ちゃん?」



善子「……いや、何でもないわ……」ガクッ

ルビィ?「…?それならいいけど」

29: 2017/05/26(金) 11:54:35.96 ID:Tw5kVguq.net
善子?「へえ、ルビィっていうの……何だか変わった名前ね」

ルビィ「うん、ルビィもそう思う」

善子?「でもそうね…悪くはないと思うわよ?」クスッ

ルビィ「えへへっ、ありがとう」ニコッ

ルビィ「…あっそうだ、ねえねえあなたの名前はなんていうの?」



善子?「…………」

善子?「それは……」

30: 2017/05/26(金) 11:55:36.90 ID:Tw5kVguq.net
善子「言えない?どうして?」

ルビィ?「どうしてもっていうか、どうにもならないっていうか…とにかく色々あるの」

善子「……」

善子(なんか、これ以上聞いても無駄っぽいわね……)

善子「ふーん、そう……なら」

善子「……よし、決めた!」


ルビィ?「?」キョトン

善子「この堕天使ヨハネが今から貴女に名前を授けてあげるわ!」

31: 2017/05/26(金) 11:56:20.45 ID:Tw5kVguq.net
ルビィ?「えっホントに!?ホントに名前くれるの!?あははっ、嬉しいなぁ!」パァッ

善子「ええ、よく聞きなさい…貴女の名前は──」

ルビィ?「うんうん!」

善子「堕天使ニルヴァーナよ!」





ルビィ?「…………え?」

32: 2017/05/26(金) 11:57:11.03 ID:Tw5kVguq.net
ルビィ?「……」

善子「クックック…感動のあまり言葉も出ないようね…!」



ルビィ?「……あの…ちなみに、どうしてそんな名前になったのかなぁ?」

善子「あんたのそっくりさんのルビィって名前と掛けてるのよ、あとはそう…なんか格好いいじゃない!」

ルビィ?「それってつまり、名前の響きだけってことだよね……」

ルビィ?(ニルヴァーナって言葉の意味は知らないんだ……)

33: 2017/05/26(金) 11:57:59.44 ID:Tw5kVguq.net
善子「どう?気に入ったでしょ!」


ルビィ?「……いや、無理かなぁ…」メソラシ

善子「何でよっ!」

ルビィ?「だって人につけていい名前じゃないよ…それ」

善子「え?そ、そうなの?……じゃあどうしようかしら」

34: 2017/05/26(金) 12:07:44.37 ID:Tw5kVguq.net
善子「…………」ウーン

ルビィ?「……ねえねえ、善子ちゃん」

善子「…なによ?」

ルビィ?「善子ちゃんで良ければさ…私のことルビィって呼んでくれないかな?」


善子「どうして?」

ルビィ?「ほら、私ってその子のそっくりさんみたいだし…そっちのほうが分かりやすいでしょ?」

ルビィ?(またニルヴァーナ…みたいな名前が出てくるのは嫌だしね)

35: 2017/05/26(金) 12:08:28.34 ID:Tw5kVguq.net
善子?「ふーん、善子ねえ……」

ルビィ「駄目、かな?」

善子?「…いいんじゃないの、別に名前にこだわってるわけでもないし」

善子?「それくらい普通のほうがいいわ」

ルビィ「あはは……そっか」


ルビィ(今の言葉、善子ちゃんが聞いたら怒りそうだなぁ……)

36: 2017/05/26(金) 12:09:11.97 ID:Tw5kVguq.net
善子「……まあ確かに、そういうことなら」

ルビィ?「じゃあ決まりだね、今から私はルビィってことで」



夢ルビィ「これからよろしくね、善子ちゃん」エヘヘ

善子「ええ、よろしく」

善子「…って、ちょっと待って……これから?」

37: 2017/05/26(金) 12:09:54.47 ID:Tw5kVguq.net
夢善子「ええ、私の姿が見えるようになった今…こっちに来ることはそう難しくなくなったはずよ」

ルビィ「それって、また夢の中の善子ちゃんに会いに行けるってこと?」


夢善子「…まあ来るかどうかはルビィ次第だけどね」

ルビィ「そっか…うん、分かった!ルビィ、絶対にまた善子ちゃんに会いに行くよ!」

夢善子「……ふーん///それじゃあ勝手にすれば?///」

ルビィ「うん!そうする!」ニコッ

38: 2017/05/26(金) 12:10:41.00 ID:Tw5kVguq.net
善子「─となると私は夢と現実の世界を行き来することが出来るようになったってことよね?」

夢ルビィ「ん、そうなるね」


善子「…………いい……」

夢ルビィ「……えっ?」

善子「いいじゃないそれ!凄く堕天使っぽいわ!」バッ

夢ルビィ「そ、そうかなぁ……」アセッ

善子「ええ!だってこんな体験、滅多に出来るものじゃないでしょ!……あっ、そうだ!」

39: 2017/05/26(金) 12:11:27.51 ID:Tw5kVguq.net
夢ルビィ「……なにかな?」

善子「それならこの出来事にも名前をつけるべきよね!えーと、夢と現実だから……」

夢ルビィ「いや善子ちゃん、別に名前はつけなくても…「決めたわ!」

善子「名付けて夢現(むげん)生活!……うーん!我ながらいいネーミングね!」ウンウン



夢ルビィ「……」

夢ルビィ「…まあ善子ちゃんがそれでいいなら……うん」

40: 2017/05/26(金) 12:12:09.20 ID:Tw5kVguq.net
夢善子「─さてと、まあ今回は初対面ってことだし…このあたりで帰ったら?」

ルビィ「えっ、もう?折角だしもうちょっと……」

夢善子「……あのさ、ルビィ」


夢善子「……長居するのもあんまり良くないわよ」

ルビィ「?」

41: 2017/05/26(金) 12:12:57.77 ID:Tw5kVguq.net
夢善子「…とにかく、今日のところはもう帰りなさい……いいわね?」

ルビィ「……わかったよ、じゃあまた明日ね善子ちゃん」

夢善子「ええまた明日……」


夢善子「…っとその前に、一つだけ」

ルビィ「ん?」

夢善子「ルビィ──」

42: 2017/05/26(金) 12:13:38.79 ID:Tw5kVguq.net
……




─チュンチュン




善子「………ん……」パチ

善子(もう朝なんだ……)


善子「……眩しぃ……」

43: 2017/05/26(金) 12:14:29.67 ID:Tw5kVguq.net
善子「…………」ボーッ

善子(結局、肝心なことは分からずじまいだった…)

善子(いや、それどころか謎が増えただけのような気が……)ハァー


善子「……だけど…」


『─善子ちゃん、夢の世界へようこそ』


善子「夢の世界……か」ポツリ


……


44: 2017/05/26(金) 12:15:09.80 ID:Tw5kVguq.net
こうして私たちの不可思議な日常─夢現生活がその幕を開けた。


この出来事がどれほど後の私たちに影響を与えることになるのか……それを知り得ないままに。

50: 2017/05/26(金) 19:14:16.61 ID:Tw5kVguq.net
─夢現生活、2日目

善子「…ってことがあったわけよ!どう!?凄いでしょずら丸!」

花丸「ほえー…夢の中にルビィちゃんが…未来ずらあ……」

ルビィ「へえー…善子ちゃんのところにはルビィが出てきたんだね」


善子「…え?ルビィは違うの?」

ルビィ「うん、ルビィのところには善子ちゃんのそっくりさんが来たよ」

51: 2017/05/26(金) 19:15:08.86 ID:Tw5kVguq.net
善子「それってつまり……」

花丸「善子ちゃんのとこにはルビィちゃんが、ルビィちゃんのとこには善子ちゃんが来た…ってことずら?」

花丸「……うーん、やっぱり不思議な夢だねえ」


善子「……どういう事なのかしら?」

ルビィ「さあ?ルビィも全然分からないよ……」


善子(互いが互いの夢に干渉してるってこと?…………いや、でも昨日あの子は)

善子(…自分は私たちの願いによって生まれた存在……そう言ってたわよね…)

52: 2017/05/26(金) 19:15:46.41 ID:Tw5kVguq.net
善子(…ああもう!考えれば考えるほど頭の中がぐちゃぐちゃになりそう……)

善子(夢の中の私たちってあんなに訳わかんない存在だったの?)

花丸「……善子ちゃん?」

ルビィ「大丈夫?さっきからずーっとそんな感じだけど……」

善子「ええ、平気よ……」

53: 2017/05/26(金) 19:17:08.67 ID:Tw5kVguq.net
善子(……まあいいわ、どうせ今全てが分からない…教えられないっていうのなら)


善子(…まずは一個ずつ解明していったほうがよさそうね)

善子(聞き出せる情報、全部聞きだしてやるわ…)

54: 2017/05/26(金) 19:17:51.67 ID:Tw5kVguq.net



夢ルビィ「理由?善子ちゃんと黒澤ルビィに儀式の効果の差があった?」

善子「ええ、というか…なんであんたルビィの名字知ってるのよ?私まだ言ってないわよ」

夢ルビィ「ああ、それはね…ちょーっとだけ善子ちゃんの記憶を覗かせてもらったからだよ」



善子「……まっっった謎を増やして!!」

夢ルビィ「わわっ、どうしたの善子ちゃん」

55: 2017/05/26(金) 19:18:37.70 ID:Tw5kVguq.net
善子「どうしたもこうしたもないわよ!ルビィ!あんたそれはしっかり説明してくれるんでしょうね!?」

夢ルビィ「え?……まあ、うん…それくらいなら……」

善子「じゃあ説明よろしく」

夢ルビィ「は、はい…」


夢ルビィ(な、なんか今日の善子ちゃん怖いなぁ……)

57: 2017/05/26(金) 19:19:28.76 ID:Tw5kVguq.net
夢善子「そうね…それも説明しておくべきかしら…どっちにしろ昨日はそんな暇がなかったから言えなかったけど」

ルビィ「うん、お願い善子ちゃん」

夢善子「分かったわ……いい?ルビィ、私が出来ることは基本的に二つ……」


夢善子「夢を見ている人間に呼びかけてこちらの世界に来れるよう促すこと…それと」

夢善子「連れてきた対象の記憶を読み取ること……この二つよ」

ルビィ「???」


夢善子(理解してないわね……ちょっと難しく言い過ぎたかしら?)

58: 2017/05/26(金) 19:20:31.10 ID:Tw5kVguq.net
夢善子「……えーと…そうね、簡単に言えば一つ目は迷子センターのアナウンスみたいなものよ」

夢善子「どこに行けばいいのか迷っている子を、ここに居ますよってこっちから知らせる感じ」


夢善子「二つ目は……ニュースみたいなものだと思ってくれたらいいわ」

夢善子「いつ、何時何分に、何が起こったか…それを私はルビィを通して観てるってわけ」

ルビィ「なるほど、そうだったんだ……凄いね善子ちゃん!」ニコッ

夢善子「いやまあ…大したことでもないでしょ、これくらい……///」

59: 2017/05/26(金) 19:22:19.94 ID:Tw5kVguq.net
善子「でも記憶が読み取れるなら、最初の自己紹介なんて必要なかったんじゃないの?」

夢ルビィ「ううん、そうとも言えないよ?」

善子「なんでよ?」

夢ルビィ「二つ目の能力なんだけどさ…対象が私の姿を確認しないと使えないんだよね」

夢ルビィ「だから昨日の時点では本当に何も知らなかったの」

60: 2017/05/26(金) 19:23:06.78 ID:Tw5kVguq.net
善子「ふーん、結構不便なのね」

夢ルビィ「まあ意思疎通が取れればこっちのものだけど」

善子「……で儀式の話に戻るけど」


夢ルビィ「…ねえ、本当にそれ言わなきゃダメ?昨日から説明ばっかりでつまらないんだけど」

61: 2017/05/26(金) 19:24:19.42 ID:Tw5kVguq.net
夢ルビィ「私、そろそろ善子ちゃんと楽しいお話しがしたいなぁ……」

善子「あのねえ…碌に説明もしないで一方的に帰らせるあんたが悪いんでしょうが!」

夢ルビィ「うぅ……それはそうかもしれないけど……」

善子「それに謎っていうのは、どうしても知りたくなるものでしょ?」


夢ルビィ「……」

善子「さあ、分かったなら聞かせてもらうわよ……話ならその後にいくらでもしてあげるから」

夢ルビィ「……約束だからね?」

62: 2017/05/26(金) 19:25:15.38 ID:Tw5kVguq.net
夢善子「─ふーん、成程……ルビィ、それは恐らくだけど二人の関係が術者とその補佐だったからじゃない?」

ルビィ「どういうこと?」


夢善子「実際に術を発動する人とそのサポートに回る人って具合に、二人は互いに役割を分けていたんじゃないかしら?」

ルビィ「うーん、確かに呪文を唱えていたのは善子ちゃんだったけど……」

夢善子「なら決まりね、自分たちにかける魔術の場合…大抵は術者のほうに影響が色濃く出るわ」

夢善子「津島善子のほうが夢の内容を早く知ることが出来たのも、きっと同じ理屈なんじゃないかしら」

ルビィ「そうなんだ……」

63: 2017/05/26(金) 19:26:26.60 ID:Tw5kVguq.net
善子「……え?でもそれって可笑しくない?だって今の理屈でいくならさ」

善子「影響を強く受ける私のほうが、あんたに早く出会えられるんじゃないの?」

夢ルビィ「ああ、それは多分好奇心の違いじゃないかな?」

善子「好奇心?」

夢ルビィ「うん、夢の続きが気になるとか…早く会いたいとか…そういう想いの強さの違いだと思うよ」

夢ルビィ「ほら、善子ちゃん気になってはいたみたいだけど、結構鬱陶しそうにしていたし…」


善子「うぐっ……た、確かに…」

64: 2017/05/26(金) 19:28:07.94 ID:Tw5kVguq.net
夢善子「そういった好奇心が強いほど、夢の世界とリンクしやすくなるのよ」

夢善子「ルビィのほうが結果が出やすかったっていうのも、あんたの想いがそれほど強かったってわけ」

ルビィ「そっか……」


夢善子「ただそれは……」

ルビィ「善子ちゃん?」

夢善子「…いいえ、何でもないわ…………忘れて」

ルビィ「…?」

65: 2017/05/26(金) 19:29:11.48 ID:Tw5kVguq.net
夢善子(ただ…リンクしやすいってことは逆に言えば、それだけこちらに囚われやすいということでもある……)

夢善子(今のところ特に問題はないけど、それがいつ起きるか……)



夢善子(少し警戒を強くした方がよさそうね……)

66: 2017/05/26(金) 19:30:28.08 ID:Tw5kVguq.net
夢ルビィ「…どうかな?これでちょっとは納得してくれた?」

善子「まあ少しは…」

夢ルビィ「良かったぁ、じゃあ今度は善子ちゃんが私のお願い聞く番だからね?」

善子「…それなんだけどルビィ、あんたどうして記憶が読み取れるのにわざわざ私に聞こうとするわけ?」


夢ルビィ「……」

夢ルビィ「はぁーっ…分かってないなぁ善子ちゃんは」

夢ルビィ「私はね、善子ちゃんの口から聞きたいんだよ」

67: 2017/05/26(金) 19:31:33.37 ID:Tw5kVguq.net
ルビィ「ルビィが直接……」

夢善子「ええ…たとえ記憶を辿ったとしても、所詮それはただの情報でしかないわ」

夢善子「ルビィ…私が欲しいのはね、そんなんじゃないのよ」

ルビィ「……」



夢善子「ただ貴女と話がしたい、それだけなの」

68: 2017/05/26(金) 19:32:28.25 ID:Tw5kVguq.net
善子「……」


夢ルビィ「…だからさ「わかったわよ」

善子「それくらい、毎日聞かせてあげるわ」

夢ルビィ「…ホント!?」

善子「本当よ、だから今日のところは一回帰らせてもらえる?」

夢ルビィ「うん!善子ちゃん、私楽しみに待ってるからね!」

善子「はいはい……」クスッ

69: 2017/05/26(金) 19:33:35.75 ID:Tw5kVguq.net
夢ルビィ「またね善子ちゃん!」ブンブン

善子「ええ、また明日…」フリフリ


善子「……」

善子「本当、ズルいわよね……」ハァー

善子「あんな顔されたら、断られるわけないじゃない……」


……


70: 2017/05/26(金) 20:07:56.72 ID:Tw5kVguq.net
─夢現生活、3日目


善子「─それで今日はずら丸とルビィと私の三人で買い物に行って……」

夢ルビィ「うんうん」

善子「その後は色々なところで食べ歩きしながら、スクールアイドルのことについて話し合ったりしたわ」

夢ルビィ「へえー」

71: 2017/05/26(金) 20:09:09.56 ID:Tw5kVguq.net
夢ルビィ「善子ちゃんは本当にその二人と仲がいいんだねぇ」ニコニコ

善子「そうかしら?」

夢ルビィ「だって善子ちゃん、話してるとき凄く楽しそうだったよ?」

善子「あんたの勘違いでしょ」

夢ルビィ「ほら、今も顔がニコニコしてるもん」


善子「はぁ!?///」

72: 2017/05/26(金) 20:09:49.64 ID:Tw5kVguq.net
善子「でたらめなこと言わないでよ!」

夢ルビィ「おかしなこと言ってるのは善子ちゃんのほうだよ?」

夢ルビィ「だって自分が今どんな顔してるか、見ることなんて出来ないからねぇ」クスッ

善子「くっ!!///」

73: 2017/05/26(金) 20:10:50.75 ID:Tw5kVguq.net
夢善子「本当に好きなのね、その二人のこと」

ルビィ「うん、大好き……善子ちゃんも花丸ちゃんもルビィの大切なお友達だから」

夢善子「そう……」

夢善子「でもルビィ、今の話…ちょっとだけ違うんじゃないかしら?」


ルビィ「え?」

74: 2017/05/26(金) 20:11:31.19 ID:Tw5kVguq.net
善子「なに?まだ何か気になることでもあるわけ?」

夢ルビィ「さっきのさ、二人はお友達ってところ?変じゃないかなぁって」

善子「どこが変なのよ」

夢ルビィ「だからさ……」


夢ルビィ「友達以上の関係になりたい子がいるんじゃないの?ってはなし」

善子「………………は?」

75: 2017/05/26(金) 20:12:34.40 ID:Tw5kVguq.net
ルビィ「そ、それは……」

夢善子「ルビィ、私前にも言ったわよね?私はあなた達の願いによって生まれた存在だって」

ルビィ「う、うん…言った」

夢善子「つまり私のこの姿は、貴女が夢の中で会いたいと思った人物そのものなのよ」

ルビィ「─!?」

夢善子(まあそれだけじゃないんだけど)

夢善子「それほどの強い想い…本当に唯の友達で止まれる程度のものなのかしらね?」

ルビィ「……」

76: 2017/05/26(金) 20:13:30.77 ID:Tw5kVguq.net
善子「……えっ…あのさ…」


善子「ルビィの夢には私が出たって…言ってたんだけど……それって」

夢ルビィ「……へぇ~♪」

夢ルビィ「良かったね、それ多分両想いってことでしょ?」

善子「っ!///」カアァ

夢ルビィ「さて、それを知った善子ちゃんは明日どうするのかなぁ?……楽しみだなぁ?」ニコニコ


善子「……いい性格してるわねあんた」ジロッ

77: 2017/05/26(金) 20:14:28.67 ID:Tw5kVguq.net
夢善子「…まあ知ってしまった以上、普段通り…というわけにはいかないだろうけど」

夢善子「けれどこれも関係を深めるチャンスだと思えばいいんじゃない?」


ルビィ「……出来るかな?」

夢善子「幸いなことに、二人はこの出来事を共有しているわ」

夢善子「もしかすると、向こうももう気づいているかもしれないわね」

ルビィ「それってつまり……」

夢善子「あとはルビィ次第ってことよ」

78: 2017/05/26(金) 20:15:15.67 ID:Tw5kVguq.net
夢ルビィ「折角だしデートにでも誘ってみれば?次の日は休日でしょ?」

善子「はぁ!?///デートって!///」

夢ルビィ「えへへっ、善子ちゃんは可愛いね」

善子「今その顔と声でそれ言うのやめてくれる!?///」

79: 2017/05/26(金) 20:15:55.52 ID:Tw5kVguq.net
夢ルビィ「あはははっ!いやー、春だねぇ~♪」ニヤニヤ

善子「もう秋よ!///」

夢ルビィ「そうだね!顔が赤く染まってるもんね?」

善子「うっ、うるさああああああああい!!///」カオマッカ


……


87: 2017/05/27(土) 12:01:48.87 ID:4NVkCbYv.net
─夢現生活、4日目


ルビィ「……」

善子「……」


善子(なんだかんだで誘ってしまった…)

ルビィ「ねえ善子ちゃん、これからどこに行くの?」

善子「え……?」

88: 2017/05/27(土) 12:02:17.44 ID:4NVkCbYv.net
ルビィ「?…善子ちゃん行きたいところ、ないの?」


善子「……あっ…」

善子(……しまった!つい勢いで決めたから、予定何も立ててない!)

89: 2017/05/27(土) 12:02:51.08 ID:4NVkCbYv.net
善子「……ごめんルビィ…特に、決めてなかったわ……」


ルビィ「……」

善子「……」

善子(きっと怒ってるわよね……そりゃそうよね、自分から誘ったくせに行き先を決めていないなんて)


ルビィ「……善子ちゃん」

善子「な、何かしら?」

90: 2017/05/27(土) 12:04:24.07 ID:4NVkCbYv.net
ルビィ「ルビィ、お腹空いちゃった…まずは何かご飯でも食べに行こうよ、ね?」ニコッ

善子「…え?ええ、そうね…そうしましょうか」


善子(……もしかしてルビィ…私に気を遣って……?)

善子(あぁ、だとしたら私…何かすごい情けなくなってきたわ……)

善子(ごめんなさいルビィ…)

91: 2017/05/27(土) 12:05:11.38 ID:4NVkCbYv.net



ルビィ「いただきます」

善子「いただきます」

ルビィ「……」モグモグ

善子「……」パクパク

ルビィ「……」ピタッ


ルビィ「……ねえ善子ちゃん」

善子「?」パクパク

92: 2017/05/27(土) 12:05:45.37 ID:4NVkCbYv.net
ルビィ「夢の中のルビィたちって、ルビィたちが今一番会いたいって思ってる人なんだってこと……知ってた?」

善子「……っ!ゴホッ…ゴホッ!」

ルビィ「だ、大丈夫……?」

善子「急になんてこと言い出すのよ……!」ツーン

93: 2017/05/27(土) 12:06:30.02 ID:4NVkCbYv.net
ルビィ「ご、ごめんなさい……」


善子「……」

善子「…知ってるわ、昨日聞いた」

ルビィ「そっか…じゃあ今日ルビィを呼んだのも?」

善子「ええ…ルビィに伝えたいことがあって……でもそれは」

善子「食事が終わってからにしましょうか」


ルビィ「……そうだね」

95: 2017/05/27(土) 12:07:24.43 ID:4NVkCbYv.net



ルビィ「それでルビィに伝えたいことって?」

善子「それは……」

善子「……」



善子「…私ね、この数日で気付いたことがあるのよ」

ルビィ「うん」

96: 2017/05/27(土) 12:08:14.25 ID:4NVkCbYv.net
善子「それまでは多分…とかそうなんじゃないか…とか、あんまり自信がなかったんだけど」

善子「でもね」

善子「昨日、それを指摘されて…ようやく自分の気持ちがはっきりと分かったの」

ルビィ「……」

善子「ルビィ──」


善子「私、ルビィのことが好きだわ」

97: 2017/05/27(土) 12:09:10.91 ID:4NVkCbYv.net
善子「いっつも私についてきて、津島善子としての私も…堕天使ヨハネとしての私も受け入れてくれる…そんなルビィが」

善子「ずら丸は興味がないからって理由で儀式をルビィとばかり行ってきたのも…」

善子「今思えば、ただの建前だったのかもしれないわね」

ルビィ「……」


善子「きっとただ、私がルビィと一緒にいたかっただけ」

善子「……ねえルビィ、ルビィは私のこと…どう思ってる?」

98: 2017/05/27(土) 12:09:54.24 ID:4NVkCbYv.net
ルビィ「……」

ルビィ「…うん、ルビィも善子ちゃんのことが好きだよ」

ルビィ「今まで4号として善子ちゃんのお手伝い、結構してきたけど……」

ルビィ「多分もうそのときから、ルビィは善子ちゃんのことが好きだったんだと思う……だって」


ルビィ「好きじゃなかったら、こんなに助けたいって思わないもん」

善子「ルビィ……」

99: 2017/05/27(土) 12:10:49.16 ID:4NVkCbYv.net
ルビィ「善子ちゃん、ルビィは善子ちゃんのことが大好きです」

ルビィ「ルビィと…付き合ってください」


善子「……」

善子「……なんで私から言い出したのにルビィが告白してるのかしら?」

100: 2017/05/27(土) 12:11:28.52 ID:4NVkCbYv.net
ルビィ「クスッ…そうだね、おかしいね」

善子「フフッ…ええ、本当に……」


ルビィ「…ねえ善子ちゃん、それで返事は?」

善子「そんなの…分かりきってるでしょ?」

善子「──喜んで」


……


101: 2017/05/27(土) 12:12:19.30 ID:4NVkCbYv.net
─夢現生活、10日目


善子「……ってことがあったわけよ」

花丸「なるほど…先週そんなことがあったなんてマル知らなかったずら」

花丸「じゃあ二人が付き合えるようになったのは、夢の中の二人のおかげでもあるんだね!」

ルビィ「うん!今日もまた改めてありがとうって言わなくちゃ!」

善子「……まあ、結果としてはそうなったから…そうね、言わなくもないけど……」ボソボソ

花丸「善子ちゃん素直じゃないずら」クスッ

102: 2017/05/27(土) 12:13:07.59 ID:4NVkCbYv.net
ルビィ「えへへっ、本当だね」

善子「なっ!…あんたたちは知らないからそう言えるのかもしれないけど!」

花丸「?何か問題でもあるの?」


善子「……あっちのルビィ、意外と面倒くさいやつなんだからね」

善子「言ったら言ったで、絶対にからかってくるわよ…間違いないわ……」タメイキ

花丸「そうかなあ…喜んでくれると思うよ?」

善子「どうかしらね……」

103: 2017/05/27(土) 12:15:28.34 ID:4NVkCbYv.net



夢ルビィ「ありがとう?へえ~善子ちゃんがありがとうかあ……」

夢ルビィ「雨でも降るのかな?」ニコッ

善子「空もない空間に雨が降るわけないでしょ」

善子(ほらね)

夢ルビィ「空が見えるくらい奇跡的ってことだよね?」

善子「……あんた普段どんな目で私を見てるの」

104: 2017/05/27(土) 12:16:20.04 ID:4NVkCbYv.net
夢ルビィ「ごめんごめん冗談だよ、ありがとうくらい普通に言うよね?だって善子ちゃんは善い子だから」ニコッ

善子「あんたに言われるとなんか馬鹿にされてる気がするんだけど」

夢ルビィ「善子ちゃんこそ普段どんな目で私を見てるのさ」

善子「あんたの場合、日頃の行いのせいだけどね」

夢ルビィ「酷いなぁ、善子ちゃん」

善子「あんたもね」



夢ルビィ・善子「……フフッ!」クスクス

105: 2017/05/27(土) 12:17:12.83 ID:4NVkCbYv.net
善子「─はぁーーっ、けどまあ…なんていうの?」

夢ルビィ「なに?」

善子「もうあれから一週間以上経ったのよね…」

夢ルビィ「うん、時間が経つのは早いね」

善子「そうね…」

106: 2017/05/27(土) 12:17:54.66 ID:4NVkCbYv.net
善子「……そういえば」

夢ルビィ「ん?」

善子「こうやってあんたと話を続けていったら気付いたことがあるんだけど」

夢ルビィ「へぇ、それってなにかな?」

107: 2017/05/27(土) 12:18:38.58 ID:4NVkCbYv.net
夢善子「─大人っぽい?私が?」

ルビィ「うん、なんかすっごく落ち着いているっていうか…」

夢善子「別に…私は、ルビィとちゃんと話がしたいから、そうしているだけなんだけど」


ルビィ「ほら、そういうところ」

夢善子「?」

ルビィ「ルビィの言ったことをちゃんと聞いてくれて、それから返事をしてくれる感じ…」

ルビィ「待つことに慣れているって言えばいいのかなぁ?」

108: 2017/05/27(土) 12:19:37.39 ID:4NVkCbYv.net
夢ルビィ「やんちゃ坊主……もうちょっと違う言い方ないのかな?」ジトメ

善子「ないわ」キッパリ

夢ルビィ「ひどいよ善子ちゃん……」

善子「とにかく、そこがあんたとルビィの違うところだと思うわけ」

善子「ルビィは人見知りだけど…あんたの場合、初対面でも意外と会話出来そうだし」

109: 2017/05/27(土) 12:20:37.76 ID:4NVkCbYv.net
夢ルビィ「ふーん、でもさ…それっておかしいことじゃないよね?」

夢ルビィ「だって私が黒澤ルビィに似てるのは声や姿だけでしょ?」

善子「中身が完全に別人なら、その言い訳も通用したかもね」


夢ルビィ「…というと?」

善子「会話している最中、あんたからちょくちょくルビィっぽいところが出てるのよ」

110: 2017/05/27(土) 12:21:38.06 ID:4NVkCbYv.net
夢善子「…つまり、性格の違いに多少の差はあるけど、基本的には津島善子と一緒で…」

夢善子「だから私のことを姿だけの別人だとは思えない…そういうことかしら?」

ルビィ「うん、やっぱり善子ちゃんは夢の中でも善子ちゃんなんだなぁって思うこと、結構あるの」

夢善子「そう……」

ルビィ「でもルビィは今話してる善子ちゃんも好きだよ?いつも落ち着いてて、余裕があって、カッコいいもん!」パァッ


夢善子「……まあルビィがそう言ってくれるなら、そうね…これで良かったのかしら……///」ポリポリ

ルビィ(うん、そうやって照れくさそうに顔を逸らすところ…やっぱり善子ちゃんだなぁ……)クスッ

111: 2017/05/27(土) 12:22:33.42 ID:4NVkCbYv.net
夢ルビィ「活発ってことだよね?」

善子「いや、やんちゃでしょ」

夢ルビィ「変えようよそこは!」バッ

善子「なんでそこは食い下がるのよ……」

夢ルビィ「なんでもだよ!」

善子(こういう変に頑固なところ……本当、ルビィにそっくりよね…)

112: 2017/05/27(土) 12:23:30.05 ID:4NVkCbYv.net
夢ルビィ「善子ちゃん!善子ちゃんはもうちょっと言い方を考えた方がいいと思う!」

善子「そこまで目くじら立てなくてもいいじゃない、ルビィは別になんとも思ってないわよ?」

夢ルビィ「それはアレだよ!恋人だからえこひいきしてるんでしょ!」

善子「はあ!?///なにバカなこと言ってんのよあんた!」

夢ルビィ「じゃあ私にももっと素直になってくれたっていいじゃん!」

善子「誰がいつ素直じゃなかったのよ!」

夢ルビィ「いつでもだよ!」


ギャーギャーワーワー

114: 2017/05/27(土) 12:24:27.64 ID:4NVkCbYv.net
夢善子「─ルビィ」

ルビィ「なあに?」


夢善子「……静かね」

ルビィ「…そうだね」

115: 2017/05/27(土) 12:27:05.15 ID:4NVkCbYv.net
夢善子「でも、悪くない静かさだわ」

ルビィ「うん、落ち着くっていうのかな……隣に善子ちゃんがいるから、すごく安心するの」

夢善子「そうね…私も同じよ」フフッ

ルビィ「えへへっ、そっか」

116: 2017/05/27(土) 12:28:46.44 ID:4NVkCbYv.net
ルビィ「ねえ善子ちゃん」

夢善子「なに?」

ルビィ「この時間がずっと続けばいいのにね」


夢善子「…………」

夢善子「……なにバカなこと言っているの」

ルビィ「え?」

117: 2017/05/27(土) 12:30:42.07 ID:4NVkCbYv.net
夢善子「ルビィが大切にするべきなのは津島善子との時間でしょ?」

ルビィ「そうだけど、それがどうかしたの?」

夢善子「分かっているならいいわ……ただ」

ルビィ「?」


夢善子「……こっちにあまり囚われちゃ駄目って注意しただけよ…それだけ」

ルビィ「そっか、ありがとう善子ちゃん」

夢善子「いいえ、どういたしまして」

118: 2017/05/27(土) 12:31:29.36 ID:4NVkCbYv.net
ルビィ「それじゃ、ルビィそろそろ行くね」

ルビィ「バイバイ、善子ちゃん」テヲフリ

夢善子「ええ、また明日…」テヲフリ


夢善子「……」

夢善子「……気をつけてね、ルビィ……」


……


119: 2017/05/27(土) 12:34:34.30 ID:4NVkCbYv.net
読みづらさについては気づきませんでした…すみません
ですが、これからもこのやり方が続くので大目に見てもらえると助かります。

120: 2017/05/27(土) 12:48:56.65 ID:4NVkCbYv.net
再開します。

121: 2017/05/27(土) 12:49:43.96 ID:4NVkCbYv.net
─夢現生活、15日目


ルビィ「……」スゥスゥ

「…ルビィ」

ルビィ「……」スゥスゥ

「……起きなさいルビィっ!」

ルビィ「っ!?」ビクッ


ルビィ「……あれ…?お姉ちゃん……?」パチ

ダイヤ「あれ?じゃないでしょう…学校、遅刻しますわよ?」ジロッ

122: 2017/05/27(土) 12:50:44.96 ID:4NVkCbYv.net
ルビィ「えっ……うわっ、もうこんな時間!?」アワワッ

ダイヤ「はぁ…早く用意しなさい、待っててあげるから」

ルビィ「うん、ごめんなさいお姉ちゃんっ……!」バタバタ


ダイヤ「はぁ……全く、あの子の寝坊助っぷりは相変わらずですわね……」タメイキ


ダイヤ「……ですが、最近はやけにその頻度が多くなっているような……」

ダイヤ(気のせいでしょうか……?)

123: 2017/05/27(土) 12:51:32.66 ID:4NVkCbYv.net
─放課後、一年生教室


ルビィ「─それで今日お姉ちゃんに怒られちゃった…」アハハ…

花丸「それは災難だったね……でも確かに」

花丸「最近のルビィちゃんはいつもちょっと眠そうずら」

ルビィ「そうかな?」

花丸「うん、あと善子ちゃんも」

124: 2017/05/27(土) 12:52:06.86 ID:4NVkCbYv.net
ルビィ「善子ちゃんも?」

花丸「まあ善子ちゃんはどうせ夜更かしでゲームとかしてるからなんだろうけど」

ルビィ「うーん…どうだろう?」

花丸「それしか考えられないずら」

125: 2017/05/27(土) 12:52:59.81 ID:4NVkCbYv.net
花丸「…ただなんにせよ、あんまり支障が出たら困るのにね?授業にもついていけなくなるし」

花丸「ルビィちゃんも気をつけたほうがいいよ?善子ちゃんみたいになっちゃうから」

ルビィ「うん、ありがとう花丸ちゃん…それとごめんね?心配かけて」

花丸「ルビィちゃんのためだもん、心配するのは当然ずら!」

ルビィ「そっか……えへへっ、花丸ちゃん大好き!」

花丸「マルもルビィちゃんが大好きずら!」


……


126: 2017/05/27(土) 12:53:57.65 ID:4NVkCbYv.net
ルビィ「それじゃあまたね、花丸ちゃん!」

花丸「うん!また明日!」


ルビィ「……」

ルビィ「…眠そう……花丸ちゃんはそう言ったけど……」



ルビィ「でもね花丸ちゃん…ルビィ、たくさん寝てるんだよ……?」

127: 2017/05/27(土) 12:54:40.73 ID:4NVkCbYv.net
─バス内


善子「……」ウトウト

「…善子ちゃん?」

善子「……」ウトウト

「……善子ちゃんってば!」


善子「……ん…曜、さん……?」ボーッ

128: 2017/05/27(土) 12:55:27.29 ID:4NVkCbYv.net
曜「あ、起きた?バス、そろそろ着いちゃうよ」

善子「……あれ…もうそんな時間だったの……?」

曜「えっ、そうだけど……」

曜「……」


曜「…あのさ、善子ちゃん」

善子「なに?」

129: 2017/05/27(土) 12:56:04.53 ID:4NVkCbYv.net
曜「最近、眠そうだよね?ひょっとして疲れてる?」ジーッ

善子「……そうかしら?」

曜「うん、さっきだって話聞いてなかったじゃん」

善子「…ごめん……」

130: 2017/05/27(土) 12:57:04.36 ID:4NVkCbYv.net
曜「ううん、気にしてないけどさ……疲れてるならちゃんと休んだほうがいいよ?」

曜「無理して倒れたら、皆心配しちゃうからさ」アハハッ

善子「ええ、そうするわ……ありがとう曜さん」

曜「うん、それじゃあまたねっ!」タッ


善子「……」

善子(ちゃんと休んだほうがいい、か……でもね曜さん、私は)



善子(むしろ休み過ぎてるくらいなんだけど……)


……


135: 2017/05/28(日) 01:20:21.05 ID:hdPTqMU0.net
─夢現生活、20日目


「津島…津島……」

花丸「善子ちゃん善子ちゃん」ユサユサ

善子「むにゃ……ヨハネよ……」


花丸「…起きるずらっ!」ペシッ

善子「……あだっ!…何すんのよずら丸!」

花丸「当てられてるよ」クイッ

136: 2017/05/28(日) 01:21:34.09 ID:hdPTqMU0.net
善子「何が……」チラッ

先生「この問いの答えをだよ」ユビサシ

善子「あっ……」

先生「……分かる?」

善子「…いえ……」

先生「…はぁーっ……国木田、代わりに答えてあげて」

花丸「あっ、はい……」ガタッ


善子「……」

137: 2017/05/28(日) 01:23:36.74 ID:hdPTqMU0.net



花丸「どうしたの善子ちゃん、とうとう授業中にまで居眠りしちゃって」

善子「…つい、なのよ……私は眠るつもりなんて全然……」

花丸「はぁ…言い訳もボケてきたずらね……ねえ、ルビィちゃんからも何か言ってあげてよ?」タメイキ


ルビィ「……えっ?なんの話し?」キョトン

花丸「……?だから、さっき善子ちゃんが授業中に当てられてたでしょ?」

花丸「でも善子ちゃんは寝ちゃってたから答えられなくて……」

ルビィ「へぇ、そんなことがあったんだ……」

138: 2017/05/28(日) 01:24:34.86 ID:hdPTqMU0.net
花丸「えっ……ルビィちゃん?」

善子「…まさか、あんたも眠ってたの?」

ルビィ「うん、そうみたい……」

善子「……」


花丸「ルビィちゃんまで……ねえ二人とも本当にどうしちゃったの?」

花丸「少なくともマルの知ってる二人は…どんなに眠たくても授業中に居眠りなんてしないよ?」

139: 2017/05/28(日) 01:25:28.73 ID:hdPTqMU0.net
善子・ルビィ「……」

善子「そう言われても……」

ルビィ「気付かないの……眠たいってことにも」

花丸「ど、どういうことずら……?」


善子「……ルビィも同じみたいね、言葉通りの意味よ」

善子「眠たいから寝ているわけじゃないのよ、気付いたら既に眠りに落ちているの」

140: 2017/05/28(日) 01:26:24.27 ID:hdPTqMU0.net
花丸「…分からないよ、マルには分からない……二人が何を言っているのか…」

善子「でしょうね…なんせ私達にも分からないんだから」

ルビィ「どうしてこうなったのかも…なんにも……」

花丸「……」


善子「…とにかく、ずら丸の言うことももっともよ…私たちも出来るだけ起きているようにするから」

ルビィ「うん、今度はルビィが当てられるかもしれないしね」

花丸「……それなら、いいけど…」

141: 2017/05/28(日) 01:27:09.14 ID:hdPTqMU0.net



善子「それじゃあまたね、ずら丸」テヲフリ

ルビィ「またね、花丸ちゃん」バイバイ

花丸「うん……」フリフリ



花丸「……」

142: 2017/05/28(日) 01:29:10.52 ID:hdPTqMU0.net
花丸「……気付いたら眠っている…善子ちゃんはそう言ってたけど……」

花丸「でもそんなの可笑しいよ…それじゃまるで、夢の世界に連れていかれてるみたい…………っ!?」ハッ


花丸「まさか……」

花丸「…でも、もしも…マルの考えてることが当たっているとしたら……?」

花丸「……もし、そうなら……」

花丸「善子ちゃん……ルビィちゃん…………」ギュッ


……


143: 2017/05/28(日) 01:30:20.44 ID:hdPTqMU0.net
─夢現生活、23日目


善子「─急にどうしたのよ、大事な話があるなんて」

夢ルビィ「うん、本当は嫌なんだけど……でもこれ以上は流石に見てられないよ」

善子「?何を言っているのよあんたは?」


夢ルビィ「…善子ちゃん、本当に分からないの?」

善子「分からないから聞いてるんでしょうが」

夢ルビィ「…そう……あのね、善子ちゃん」

夢ルビィ「もうここには来ないでほしいの」



善子「…………は?」

144: 2017/05/28(日) 01:31:18.61 ID:hdPTqMU0.net
ルビィ「えっ……来ないでって、どういうこと……?」

夢善子「……」

ルビィ「善子ちゃん、ルビィのこと嫌いになっちゃったの…?」

夢善子「そんなこと、あるわけないでしょ」

ルビィ「じゃあ、どうして……」

夢善子「いいから私の話を聞いて……お願い」

ルビィ「……」

145: 2017/05/28(日) 01:32:16.93 ID:hdPTqMU0.net
善子「危険って…どういうことよ」

夢ルビィ「そのまんまの意味、善子ちゃんは今とても危ないの」

善子「だから何が……」

夢ルビィ「夢の世界に囚われすぎてる」

善子「!?」

146: 2017/05/28(日) 01:33:02.99 ID:hdPTqMU0.net
夢善子「……ルビィ」

夢善子「最近貴女から読み取れる記憶が、最初に出会った頃より少なくなってきている……この意味、分かるかしら?」

ルビィ「……」

夢善子「…こっちに居る時間が長くなってきているってことよ」


ルビィ「でもそれだけじゃ……」

147: 2017/05/28(日) 01:34:17.94 ID:hdPTqMU0.net
夢善子「それだけじゃないわよ」

ルビィ「えっ…」

夢善子「…ねえルビィ」

夢善子「あんた最近、現実の世界でも睡眠が足りないと感じたり、急に眠気が襲ってきたりしてるんじゃない?」

夢善子「いや、もしくは──」

夢善子「自分の知らないうちに眠りについている……とかかしら?」

ルビィ「!」


夢善子「……やっぱりね」

148: 2017/05/28(日) 01:35:11.58 ID:hdPTqMU0.net
夢ルビィ「それが何よりの証拠だよ、善子ちゃんはね…こっちの世界に段々引っ張られてきているの」

夢ルビィ「最初は少しずつ…だけど確実に」

夢ルビィ「現実よりも夢のほうに時間が傾いていくの……そして今は」


夢ルビィ「…一気に夢の世界に傾く、その一歩手前まで来てる」

149: 2017/05/28(日) 01:35:59.73 ID:hdPTqMU0.net
善子「…もし、踏み込めば……?」

夢ルビィ「…もう止まらない」

夢ルビィ「一度沈むところまでいくと、それは急速的に人を飲み込むの……つまり」

夢ルビィ「あっという間に夢の世界の住人になっちゃうってこと」

150: 2017/05/28(日) 01:36:41.65 ID:hdPTqMU0.net
善子「そんな……」

夢ルビィ「分かった?…今のままじゃ、本当に危ないんだよ」


善子「…」

善子「……ねえ、一つ聞いてもいいかしら」

151: 2017/05/28(日) 01:37:25.67 ID:hdPTqMU0.net
夢ルビィ「なに?」

善子「さっき引っ張られてきているって言ってたわよね」

善子「……もし、もしもよ…それが最後までいったとして……」

善子「それで私が夢の世界の住人になったら……その先は一体、どうなるの?」


夢ルビィ「…………それは」

152: 2017/05/28(日) 01:39:04.19 ID:hdPTqMU0.net
夢善子「…このまま最後までいけば、もう眠りから覚めることは……ない」

夢善子「現実の世界に戻ることが出来ないまま…その一生を」

夢善子「この夢の世界で送ることになるのよ」

ルビィ「……」

夢善子「もう二度と、現実の世界の人達には会えなくなる」

夢善子「ルビィ、あんたそれでもいいの?」

153: 2017/05/28(日) 01:40:47.01 ID:hdPTqMU0.net
夢ルビィ「いいわけないよね、だから言ったの…もう来ないでって」

夢ルビィ「全部が手遅れになる前にね」

善子「……」

夢ルビィ「本当はもっと早く気付くべきだった…でも私は」

夢ルビィ「善子ちゃんとの話に夢中で、浮かれていて……そのことが頭から抜け落ちていた……」

善子「ルビィ……」

夢ルビィ「本当にごめんなさい……」

154: 2017/05/28(日) 01:41:46.23 ID:hdPTqMU0.net
善子「……別に、責めるつもりなんてないわよ」

善子「何度もここに来た私にも責任はあるし……まだ間に合うならいいじゃない」

夢ルビィ「……ありがとう」

善子「ただ……次はいつ会えるの?」

夢ルビィ「……分からない、落ち着いたその時だけど…それがいつになるかは……」



善子「そう……」

155: 2017/05/28(日) 01:43:14.57 ID:hdPTqMU0.net
善子「まあ、仕方ないわよね……今はこっちの問題のほうが先だし…それに」

善子「もう二度と会えないってわけじゃないんでしょ?」

夢ルビィ「うん……」

善子「…ならその時が来るまで、信じて待つわ」

夢ルビィ「……善子ちゃんは、強いんだね…」


善子「そんなことないわよ…私だって」

善子「都合のいい可能性に縋っているだけなんだから……」


……


156: 2017/05/28(日) 01:46:18.02 ID:hdPTqMU0.net
夢善子「─ルビィ……だから、もうここには……」


ルビィ「……ゃだ……」

夢善子「……ルビィ?」

ルビィ「嫌だよ……ルビィ、善子ちゃんと離れたくない……」

夢善子「……仕方ないじゃない、もう帰れなくなるんだから」

157: 2017/05/28(日) 01:47:16.91 ID:hdPTqMU0.net
ルビィ「でも、このままじゃ…善子ちゃんが一人ぼっちになっちゃうよ……?」

夢善子「……」

夢善子「…そんなの、今どうでもいいでしょ」




ルビィ「…………は?」ピク

158: 2017/05/28(日) 01:48:23.34 ID:hdPTqMU0.net
ルビィ「……善子ちゃん……今、なんて言ったの?」

ルビィ「どうでもいいって、なに?」

夢善子「だから、今の問題に比べたら……こんなの」


夢善子「些細なことでしょ?」

ルビィ「っ!」プツン

159: 2017/05/28(日) 01:49:22.66 ID:hdPTqMU0.net
夢善子「ほらルビィ、今ならまだ「ふざけないでよっ!!」

ルビィ「どうでもよくなんてないよっ!!」

夢善子「!?」

160: 2017/05/28(日) 01:50:13.38 ID:hdPTqMU0.net
夢善子「ルビィ……?」

ルビィ「なんでそういうこと言うの!?善子ちゃん自分がどうなってもいいの!?」

夢善子「なっ…そんなこと言ってないでしょ、私はただ……」

ルビィ「ただ何さ!」

夢善子「今ルビィが危ないから、それに比べたらってだけの話で」

ルビィ「今はルビィのことなんてどうでもいいよ!」

夢善子「っ!ふざけないで!!」

161: 2017/05/28(日) 01:51:03.83 ID:hdPTqMU0.net
夢善子「ルビィ、あんた自分の置かれてる状況が分かってるの!?もう戻れなくなるかもしれないのよ!?」

夢善子「軽々しくどうでもいいなんて言葉を口にするのはやめなさい!!」

ルビィ「だったら善子ちゃんもやめなよ!さっきルビィが言ったのはそういうことでしょ!?」

ルビィ「なのになんで!どうして!今ルビィが怒っている理由も分からないのさ!!」

162: 2017/05/28(日) 01:51:53.75 ID:hdPTqMU0.net
夢善子「それくらい分かってるわよ!でもっ!!」

夢善子「あんたと私じゃ立場が違うでしょうが!!」

ルビィ「それこそどうでもいいでしょ!!立場なんて関係ないっ!!」

夢善子「あるわよっ!!」

ルビィ「ないよっ!!」

163: 2017/05/28(日) 01:53:06.54 ID:hdPTqMU0.net
夢善子「私は優先順位の違いを言ってるの!!それくらいルビィにも分かるでしょ!!」

ルビィ「分からないよ!小難しい言葉でルビィから逃げる善子ちゃんの言いたいことなんて!!」

夢善子「逃げてるのはあんたのほうじゃない!!現実を見ようともしないで!」

ルビィ「じゃあ善子ちゃんは今のルビィが見えてるの!?見えてないじゃん!!」

ルビィ「ルビィの気持ちも知らないで勝手なことばかり言わないでよ!!」

夢善子「勝手はどっちよ!!」

ルビィ「だから善子ちゃんだって言ってるでしょ!!」

164: 2017/05/28(日) 01:54:22.58 ID:hdPTqMU0.net
夢善子「─いい加減にしなさいっ!ルビィ、貴女今までの思い出もこれからの思い出も全部捨てるつもり!?」

ルビィ「でもこのままじゃ善子ちゃんとの思い出がなくなっちゃうじゃん!!」

夢善子「だからそれは次会ったときにって言ってるじゃない!!」

ルビィ「次っていつなの!?明日!?来週!?はぐらかしてるだけじゃないの!?」

夢善子「それは……っ!」

ルビィ「ほらやっぱり分からないじゃん!!」

165: 2017/05/28(日) 01:55:23.71 ID:hdPTqMU0.net
夢善子「!…今確定していることよりよっぽどマシよ!」

ルビィ「だからそうやって比べるのやめてよ!!」

夢善子「いいから早く帰りなさい!」

ルビィ「嫌だ!絶対に帰りたくないっ!」

夢善子「だからっ!戻れなくなるって何度言わせれば気が済むの!!」

ルビィ「戻れなくなってもいいよ!!」

166: 2017/05/28(日) 01:56:14.72 ID:hdPTqMU0.net
夢善子「嘘をつくのはやめなさい!!」

ルビィ「嘘なんかじゃないっ!!」

夢善子「なに意地張ってるのよ!そんなことして何になるの!!」

ルビィ「違うっ!意地張ってるのは善子ちゃんだよ!そうやって大人ぶって本当の気持ち隠して!!」

夢善子「隠してなんか……っ!」

ルビィ「嘘だっ!善子ちゃんだって!本当はルビィと離れるの嫌なくせに!!」

夢善子「っ!!」

167: 2017/05/28(日) 01:58:27.96 ID:hdPTqMU0.net
ルビィ「ハァーッ……ハァーッ……」

夢善子「……」



ルビィ「…………嘘つかないでよ」

ルビィ「そんな嘘…全然っ…嬉しくないよっ……!」ポロポロ

ルビィ「ちゃんと言ってよっ……!」


夢善子「ルビィ……」

ルビィ「…善子ちゃんの…本当の気持ち、聞かせてよ……」ポロポロ

夢善子「…………私は」

168: 2017/05/28(日) 01:59:26.38 ID:hdPTqMU0.net
夢善子「…私っ……だって…………!」ギュッ



……


173: 2017/05/29(月) 01:33:05.87 ID:nFbPjR5+.net
─夢現生活、24日目


─学校、一年生教室


花丸「……」

善子「……」

花丸「……善子ちゃん」

善子「……なに?」

174: 2017/05/29(月) 01:34:07.14 ID:nFbPjR5+.net
花丸「……ルビィちゃん、来てないね…」

善子「…………そうね…」

花丸「……」

善子「……」

花丸「……ねえ善子ちゃん……」


─ピロンッ

175: 2017/05/29(月) 01:34:50.24 ID:nFbPjR5+.net
善子・花丸「……!?」バッ


善子「鞠莉さんから…連絡……」

花丸「放課後、全員部室に集合……緊急会議……」

善子・花丸「……」

花丸「…善子ちゃん、やっぱりさっきのは無し……放課後までとっておくよ」

善子「…ええ、分かったわ…………」

176: 2017/05/29(月) 01:35:43.71 ID:nFbPjR5+.net
─そして放課後、部室


鞠莉「……さて、皆揃ったみたいね」

千歌「え?鞠莉さんちょっと待って、まだルビィちゃんがいないよ?」

ダイヤ「……千歌さん、いいんです……今日はそのことについての話ですから」

鞠莉「……」

千歌「そうなの?ならいいけど」

177: 2017/05/29(月) 01:36:39.24 ID:nFbPjR5+.net
果南「あっ、話の前にさ…ダイヤ、鞠莉、ちょっといい?」

鞠莉「何かしら、果南」

果南「それって、今日ダイヤと鞠莉が朝いなかったこととも何か関係してるの?」

鞠莉「……ええ」

ダイヤ「……鞠莉さんには私から無理を言って協力させて頂きました、その方が今はいいと思いましたから……」

果南「?よく分からないなあ、どういうこと?」


ダイヤ・鞠莉「……」

178: 2017/05/29(月) 01:37:53.68 ID:nFbPjR5+.net
ダイヤ「そうですね……そろそろ…本題に入りましょうか」

鞠莉「……ダイヤ、大丈夫…?」

ダイヤ「平気ですわ……ありがとうございます、鞠莉さん…」

ダイヤ「…今回皆さんに集まってもらったのは、さっきも言いましたが…ルビィのことについてです」


鞠莉「……昼休みじゃなくて放課後に皆を呼んだのは…今日の授業に集中してもらいたかったから……」

四人「……?」

善子・花丸「……」

179: 2017/05/29(月) 01:39:10.07 ID:nFbPjR5+.net
ダイヤ「……私がそれに気づいたのは今日の朝のことでした…」

ダイヤ「いつも通り、ルビィを起こしに行って……でも」ギュッ

ダイヤ「そこで何かが可笑しいと……拭いきれない違和感が、私の中に押し寄せてきました」

ダイヤ「…いつもは寝ぼけていても返事だけはしてくれるルビィが…私の呼びかけに答えてくれないんです」

180: 2017/05/29(月) 01:40:00.35 ID:nFbPjR5+.net
ダイヤ「もちろん、何度も…何度も呼びました、ですが…ずっと目を閉じたままで……」フルフル


ダイヤ「……っ……!」ジワッ

ダイヤ「ルビィは……ルビィはっ…今もまだ目を覚ましていないんですっ……!」

善子・花丸「!!」

181: 2017/05/29(月) 01:40:53.82 ID:nFbPjR5+.net
梨子「え……?」

曜「ダイヤさん……それって…どういうこと……?」


ダイヤ「…ルビィは、昨日の夜からずっと…寝たきりで、動いていないんです……」

ダイヤ「起きて…こないんです」

ダイヤ「…もしかしたら、ルビィはこのまま……」

果南「ちょ、ちょっと待ってよダイヤ……」

ダイヤ「……」


果南「あ……いや、その……」

182: 2017/05/29(月) 01:41:31.52 ID:nFbPjR5+.net
果南「……あのさ…まだそうだって決まったわけじゃないし……ね?」

果南「…ほら、よくあるじゃん?疲労が溜まって一日中寝ちゃってた、とかさ?」


ダイヤ「…」

鞠莉「…」

183: 2017/05/29(月) 01:42:21.61 ID:nFbPjR5+.net
果南「……えーと、だからさ…ルビィちゃんもきっとそうなんじゃ……」



ダイヤ「……」

ダイヤ「…………だけなら…」

果南「え?」

184: 2017/05/29(月) 01:43:14.63 ID:nFbPjR5+.net
ダイヤ「それだけなら取り越し苦労で済みますわよ!」バンッ

果南「っ!?」

鞠莉「ダイヤ!落ち着いてっ!」ダキッ


ダイヤ「……最初は私だってそう思いましたわよ…そう思いたかったっ……でも!」

ダイヤ「今日の朝からルビィは…どんどん冷たくなっているんですよ!?ずっと触れていたらこっちが寒くなるくらいに!」ポロポロ

果南「!!」

185: 2017/05/29(月) 01:44:22.45 ID:nFbPjR5+.net
ダイヤ「ただ眠っているだけなら…本当にただそれだけなら……どれだけ……」

鞠莉「ダイヤ……」ギュ



果南「…………ごめん」


曜「…あの、それで……ルビィちゃんは今どこに…?」

186: 2017/05/29(月) 01:45:04.58 ID:nFbPjR5+.net
鞠莉「今は私のホテルの一室で眠っているわ…一応暖房も効かせてるけど……望み薄ね」

梨子「そんな…!どうしてですか!?」

鞠莉「信じられないかもだけど、私には…ルビィがそれを拒んでるとしか思えないのよ……少なくとも、外的要因じゃどうにもならない」

千歌「心の問題…ってこと?」

鞠莉「ええ…多分」

187: 2017/05/29(月) 01:45:51.82 ID:nFbPjR5+.net
四人「…………」



花丸「……」

花丸「……ねえ、善子ちゃんは知ってるんじゃないの」

花丸「ルビィちゃんがどうしてこうなっちゃったのか」

188: 2017/05/29(月) 01:46:51.99 ID:nFbPjR5+.net
ダイヤ「花丸さん……?」

鞠莉「…どういうこと、善子」


花丸「…ルビィちゃんと一緒にさ、マルによく話してくれたよね……夢のお話し」

花丸「それと今のルビィちゃんに何か関係があるんじゃないの?」

善子「…………」

花丸「話して善子ちゃん」

善子「……それは──」


……


189: 2017/05/29(月) 01:47:49.08 ID:nFbPjR5+.net
鞠莉「─つまり今ルビィの意識は夢の中にあって……」

ダイヤ「そうなった原因は夢の中の善子さんと離れたくなかった可能性が高いと……そういうことですか?」

善子「…………多分、だけど…」

千歌「そんな…!それじゃルビィちゃん……」

梨子「本当に帰ってこないかもしれないってこと……?」

曜「…でも、そっか……ここ数日善子ちゃんが眠そうだったのって、そういうことだったんだね……」

190: 2017/05/29(月) 01:49:17.43 ID:nFbPjR5+.net
花丸「……」

花丸「それでおめおめと自分だけ戻ってきたんだ、善子ちゃん」

果南「ちょっと花丸ちゃん、そんな言い方……」

鞠莉「ねえ花丸…善子だって自分のことで……「そうよ」

六人「!!」


善子「あんたの言う通りよ……」

191: 2017/05/29(月) 01:50:11.05 ID:nFbPjR5+.net
花丸「……」



花丸「…なにしてるの」

善子「……」

花丸「ねえ」

善子「……」

花丸「善子ちゃん、なにしてるの」

善子「…………」

193: 2017/05/29(月) 01:51:16.82 ID:nFbPjR5+.net
花丸「黙っててどうにかなるの」

善子「……」

花丸「どうするのこれから」

善子「……」

花丸「何とか言ってよ!!」

善子「……」

花丸「……いい加減に──!」グイッ

花丸「っ!?」

195: 2017/05/29(月) 01:52:33.80 ID:nFbPjR5+.net
善子「………ごめ……なさぃ……花丸…私は……」ポロポロ


花丸「な、なに泣いてるのさ…一人だけ……そんなのズルいよ…卑怯だよ……!」

花丸「…なっ、泣きたいのは…こっちだよ!……ダイヤさんも……皆、だってそうだよ!!」ギュゥ

花丸「善子ちゃん…だけじゃ……うぅっ………あぁぁぁ………」

善子「……花丸………」ポロポロ

花丸「返してよ、善子ちゃん…ルビィちゃんを……かぇしてよぉ……!」ポロポロ


……


196: 2017/05/29(月) 01:54:26.69 ID:nFbPjR5+.net
─夜、ホテルオハラ


ダイヤ「……」




『…とにかく、一旦解散しましょう?』

『続きは私のホテルで…それに、ルビィの様子も見ておきたいでしょ?来るかどうかは皆次第だけどね』

『…決めたら私に連絡して今日の夜、ここに来て頂戴…許可は取っておくから』


197: 2017/05/29(月) 01:55:25.82 ID:nFbPjR5+.net
ダイヤ「…結局、全員来たのですね……」

鞠莉「ええ、明日から休日に入るっていうのも大きかったみたい…」

鞠莉「みんな割とすんなりオッケーが貰えたそうよ」


ダイヤ「そうですか……」

果南「千歌は結構時間がかかったみたいだけどね……でも、向こうも察してくれたみたい」

果南「一大事……だからさ」

198: 2017/05/29(月) 01:56:04.39 ID:nFbPjR5+.net
鞠莉「……」

ダイヤ「……」


果南「…ねえダイヤ、鞠莉、二人はさ……」

果南「まだ諦めていないよね?」

199: 2017/05/29(月) 01:56:57.39 ID:nFbPjR5+.net
ダイヤ「…当然ですわよ」

鞠莉「もうこれ以上、失いたくないもの」

果南「だよね…良かった、それが聞けて」

果南「きっとさ、まだあると思うよ…私達にも出来ることが」


果南「だからさ、私ちょっと行ってくるよ…それをやりに」

200: 2017/05/29(月) 01:57:46.35 ID:nFbPjR5+.net
鞠莉「ふーん奇遇ね、私もなのよ……」

ダイヤ「私も……フフッ、どうやら考えていることは皆同じのようですわね」

鞠莉「みたいね」

果南「うん、じゃあさ二人とも……」


三人「また明日に」

201: 2017/05/29(月) 01:58:54.30 ID:nFbPjR5+.net



花丸「……」


コンコン


花丸「?どちら様……?」

果南「花丸ちゃん、いる?入るね?」ガチャッ

花丸「あっ、果南さん……どうしたの?」

果南「ん?いやまあ…少し気になったもんだから」

果南「あのさ、花丸ちゃん…」

202: 2017/05/29(月) 01:59:33.97 ID:nFbPjR5+.net
善子「……」

鞠莉「ハーイ善子、お邪魔するわよ~」ガチャッ

善子「鞠莉さん……何の用?」

鞠莉「んー、大したことじゃないわよ?」

鞠莉「あのね善子…」

203: 2017/05/29(月) 02:00:00.12 ID:nFbPjR5+.net
果南・鞠莉「ちょっと外に出てみない?」

204: 2017/05/29(月) 02:00:32.98 ID:nFbPjR5+.net
続きは昼頃に書きます

211: 2017/05/29(月) 11:16:13.90 ID:nFbPjR5+.net



鞠莉「うーん、潮風が気持ちいいわねえ…」テクテク

善子「……」テクテク

鞠莉「こうしているとスッキリするわよね?」クルッ

善子「……」


鞠莉「…やっぱり出来ない?」

善子「……当たり前じゃない」

212: 2017/05/29(月) 11:16:51.62 ID:nFbPjR5+.net
鞠莉「…そうよね、あんな事があったんだもの……それに」

鞠莉「善子は当事者だから余計に責任を感じちゃってるのも…分かるわよ」

善子「……なら「でもね」

鞠莉「だからといって放っておけるわけないじゃない、仲間なんだから」

善子「鞠莉さん……」

213: 2017/05/29(月) 11:17:38.89 ID:nFbPjR5+.net
鞠莉「善子…まだ言い足りないこと、あるんじゃないの?」

鞠莉「話してみなさい、大分スッキリするわよ?経験者が言うんだから間違いないわ」フフッ

善子「……」

善子「……ありがとう鞠莉さん」


善子「あのね、私は──」

214: 2017/05/29(月) 11:18:15.95 ID:nFbPjR5+.net



果南「やっぱりここの星空はいいね、綺麗で、広くて……」ノビー

花丸「……」

果南「花丸ちゃんもそう思うでしょ?」ニコッ

花丸「……ううん、だって今…マルの心は汚れているから……」ウツムキ

215: 2017/05/29(月) 11:18:55.51 ID:nFbPjR5+.net
果南「……そっか、でもさ」

果南「海は…そんな花丸ちゃんの心も受け入れてくれると思うよ?」

花丸「海が……本当に…?」

果南「うん、海は広くて深いからね……器の大きさが違うんだよ」

果南「それは私もダイビングやってるからさ、よく分かってるつもり」

216: 2017/05/29(月) 11:19:40.32 ID:nFbPjR5+.net
花丸「……」

果南「心の声、海に向かって思い切り叫んでみなよ」

果南「ほら、そういうのって一昔前のドラマにもよくあったでしょ?……それに」

果南「私たちは高校生で…今が一番そのときなんだからさ」

花丸「……」


花丸「……マルは──」

217: 2017/05/29(月) 11:20:26.07 ID:nFbPjR5+.net



善子「最初は、ただの好奇心だったの…願いを叶える、なんて書いてあったから」

善子「もちろん鵜呑みにしたわけじゃないわ、もしも…って思ってただけ」

鞠莉「そう」

善子「でもそのもしもは現実に起きちゃって、けどそれは夢の中で……初めはただそのことに戸惑うだけだったけど」

善子「でも……嬉しかった、私とルビィ、二人だけの秘密が出来たことも」


善子「夢の中のあの子に出会えたことも」

218: 2017/05/29(月) 11:21:16.72 ID:nFbPjR5+.net
鞠莉「……」

善子「だけどそのことに浮かれすぎてたんでしょうね…何がいけないことなのか、自分の身に何が起きているのか」

善子「考えようともしなかった……ただあの子に会いたくて、話したくて……」

善子「気がついたら、最初の目的なんてもうどうでもよくなってた」

鞠莉「……」

善子「そしてそれは、きっとルビィも同じで……」

善子「もっと周りをよく見ていれば……それくらい分かったはずなのにっ……!」ギュッ

219: 2017/05/29(月) 11:22:04.64 ID:nFbPjR5+.net
善子「私のせいなのっ……!ルビィのこと…知ったつもりで、本当は何一つ知らなかった!!」

善子「だからっ…今こんなことになってる!」

善子「何が彼女よ!何が堕天使よ!許されないでしょこんなの!!」

善子「こんな……上っ面ばかりっ…………!」

善子「最っ低……!」ポロポロ


鞠莉「……善子」

220: 2017/05/29(月) 11:22:56.60 ID:nFbPjR5+.net
鞠莉「……まだよ」ポンッ

善子「え……」

鞠莉「まだ終わってないわよ」

善子「なんでよ……何でそんなこと言えるの…なにか、あるの?」


鞠莉「ないわよ、根拠なんて……どこにもない」

鞠莉「だけど一つだけ分かっていることがあるわ」

善子「……なに?」

鞠莉「諦めたらそこで全部が終わるってことよ」

221: 2017/05/29(月) 11:23:46.26 ID:nFbPjR5+.net
鞠莉「このまま何もしなかったら、ルビィは私たちの前から消えるわ…間違いなくね」

鞠莉「それなら今は足掻くときじゃないの?」

鞠莉「たとえ可能性が見つからなくても、無くなったとしても」

鞠莉「それでも私は止まりたくない……だって」

鞠莉「諦めたら気持ちなんて伝わらないって…知ってるから」

善子「……」

222: 2017/05/29(月) 11:24:55.51 ID:nFbPjR5+.net
鞠莉「善子……顔を上げて、前を向いて」

善子「……」

鞠莉「もし…立てないほど重いものが貴女の背中に乗っているなら、私たちが支えるから」



鞠莉「だからもう一人で抱え込まないで」

善子「っ!」

鞠莉「ねえ善子、貴女はAqoursのメンバーで……そのAqoursは貴女の他にまだ8人もいるのよ?」

鞠莉「それだけいれば軽いわよ、これくらい……そうでしょう?」ニコッ

善子「鞠莉さん……!」ポロポロ

223: 2017/05/29(月) 11:25:44.04 ID:nFbPjR5+.net
鞠莉「だから今貴女に出来ることはこれからに備えてゆっくり休むこと」

鞠莉「貴女の戦いはまだ終わっていないんだから……ね?」

善子「……」

善子「…そう……そうよね……」

善子「ありがとう鞠莉さん……鞠莉さんの言った通り、だいぶスッキリしたわ」

鞠莉「フフッ、そうでしょう?私の言うことに間違いなんてないんだから」

224: 2017/05/29(月) 11:26:31.78 ID:nFbPjR5+.net
善子「クスッ、そうね……でも」

善子「鞠莉さんも休んだほうがいいわよ」

善子「目……腫れてるから」

鞠莉「…………そうね、そうするわ」

善子「ええ、それじゃまた明日ね…鞠莉さん」スタスタ



鞠莉「……」ハァー

鞠莉「……バレちゃったかあ、明るい場所に出なければ良かったわね…」ポロポロ

225: 2017/05/29(月) 11:27:21.84 ID:nFbPjR5+.net



花丸「最初に聞いたときはね、本当に何してるの?って思ったよ」

花丸「どうしてそんなに傍にいるのに気づいてあげられなかったの?って」

花丸「ずっと前から知ってたはずなのになんでって」

花丸「ルビィちゃんのこと…大好きだったんじゃなかったの?って」


花丸「善子ちゃんの話を聞いてマルは……マル自身に頭に来たの」

226: 2017/05/29(月) 11:28:18.37 ID:nFbPjR5+.net
花丸「マルも知ってた…二人から何回も聞いていたし、何となくそんな不安はあったのに」

花丸「結局何も出来なかった自分にイラついた」

花丸「でもどうしようもなくて……それで善子ちゃんのせいにして…」

花丸「八つ当たり…したんだ……」


果南「…そうだったんだね」

227: 2017/05/29(月) 11:28:51.95 ID:nFbPjR5+.net
果南「……あのさ」

果南「ダイヤから伝言預かってるんだ、花丸ちゃんに」


花丸「…マルに?」

果南「うん“あまり善子さんを責めないであげてください”だってさ」

花丸「えっ……どうして……?だってダイヤさんが一番……」

228: 2017/05/29(月) 11:29:34.67 ID:nFbPjR5+.net
果南「非があるのは善子ちゃんだけじゃない、こうなった責任はルビィちゃんにもあるからって」

花丸「…厳しいんだね……」

果南「それも優しさだよ、ダイヤなりのさ」

果南「花丸ちゃんもそれはよく分かっているんじゃない?」



花丸「…………うん」

229: 2017/05/29(月) 11:30:16.74 ID:nFbPjR5+.net
果南「花丸ちゃん……さっきの話もさ、同じことが言えるんじゃないかな?」

果南「これって誰か一人だけのせいじゃないでしょ」

花丸「……」

果南「自分ばっかり責めたって……辛いだけだよ」


果南「けど……それでも許せないっていうなら」

230: 2017/05/29(月) 11:30:52.05 ID:nFbPjR5+.net
果南「またこうして私たちに話しに来てよ、自分を許せるようになるまで……きっと力になれると思うからさ」

果南「そのための、仲間でしょ?」

花丸「……うん」

花丸「…ありがとう果南さん……」グスッ

果南「うん、いいね…だいぶ顔が晴れてきた」

231: 2017/05/29(月) 11:31:38.35 ID:nFbPjR5+.net
花丸「果南さん…マル、明日善子ちゃんに謝ってくるずら」

果南「そっか……頑張れ」

花丸「果南さんのおかげだよ、マルの悩みを聞いてくれたから……」

果南「それくらいいいよ、悩みなんて誰にでもあるしね」

果南「私にだってあるんだから」

232: 2017/05/29(月) 11:32:33.80 ID:nFbPjR5+.net
花丸「え?」



果南「……ぁー……」カオニテヲアテ

花丸「果南さんの、悩み?」

果南「…………言ってもいいのかな?」

花丸「マルが聞いてあげるよ?」

果南「……そっか…うん…あのね、私さ……」

果南「分からないことがあるんだ」

233: 2017/05/29(月) 11:33:18.35 ID:nFbPjR5+.net
果南「…さっきね、花丸ちゃんに会う前に一回泳いできたんだけど……なんでだろう?」

果南「時間は結構経ってるはずなのに……ホント、参っちゃうよね」クルッ


花丸「……っ!…果南さん……」

果南「さっきから顔の辺りだけ全然乾かないんだ……」ポロポロ

234: 2017/05/29(月) 11:33:55.10 ID:nFbPjR5+.net
花丸「果南さん……」

果南「ごめっ……やっぱり私無理だった…花丸ちゃんを元気づけようって、そう思ってきたのにっ……」ポロポロ

花丸「……」


ダキッ


果南「……!?」

花丸「そんなことないよ、マルは果南さんのおかげで救われたずら」

果南「花丸ちゃん……」

235: 2017/05/29(月) 11:34:30.83 ID:nFbPjR5+.net
花丸「だから今度はマルの番」

花丸「果南さん……泣いてもいいんだよ?」ギュッ

花丸「きっと海は…果南さんのこと、受け入れてくれるはずずら」

果南「!!」ブワッ

果南「…うん……うんっ……!」ポロポロ


……


236: 2017/05/29(月) 11:35:16.30 ID:nFbPjR5+.net
果南「……うん、もういいよ花丸ちゃん、結構落ち着いた」

花丸「……そっか」

果南「いや、でもまあ…なんだろう?一応励ましに来たつもりだったんだけどね?」

果南「まさか自分が慰められることになるなんて……はは…情けないなあ……」ポリポリ

花丸「誰にだって、弱いところはあるよ」


果南「……そうだね、それもそうか…」

237: 2017/05/29(月) 11:35:46.98 ID:nFbPjR5+.net
果南「花丸ちゃん、今日はありがとう私に付き合ってくれて」

花丸「ううん、こちらこそありがとうずら」

果南「……じゃあお互い様だね」ニコッ

花丸「そうだね、お互い様……」クスッ

238: 2017/05/29(月) 11:36:28.92 ID:nFbPjR5+.net
果南「花丸ちゃん、明日も頑張ろうね?」

花丸「うん、一緒にね」

花丸「それじゃあ、おやすみなさい果南さん」テヲフリ

果南「はい、おやすみ」フリフリ



果南「……」フゥーッ

果南「…なんか、予定と結構違うことになっちゃったけど……でも」

果南「これはこれでいい…のかな?」アハハ

239: 2017/05/29(月) 11:37:47.19 ID:nFbPjR5+.net



千歌「…ねえ曜ちゃん」

曜「なに?」

千歌「ルビィちゃん、起きないね……」

曜「うん……」

千歌「…手、冷たいね」ギュ

曜「……うん」ギュ

240: 2017/05/29(月) 11:38:23.23 ID:nFbPjR5+.net
千歌「曜ちゃん」

曜「なに?千歌ちゃん」

千歌「寒くなったときはさ…ギューってやれば暖かくなるよね?」


曜「……そうだね」

千歌「でもルビィちゃん、冷たいままだね…」

曜「っ!」

241: 2017/05/29(月) 11:39:07.97 ID:nFbPjR5+.net
千歌「どうすれば暖かくなるんだろうね?」

曜「それは……」

千歌「……」



曜「……ごめん、分からない」

千歌「ううん、私こそごめん……」

千歌・曜「……」

242: 2017/05/29(月) 11:39:41.98 ID:nFbPjR5+.net
千歌「……曜ちゃん」

曜「……なに?」

千歌「私…まだ納得いかない」

千歌「納得できない」

曜「……」

243: 2017/05/29(月) 11:40:24.17 ID:nFbPjR5+.net
千歌「……今日さ、部室で」

千歌「ルビィちゃんはあっちの世界のほうがいいからって、善子ちゃんはそう言ってたけど…」

千歌「でも……でもさ、そんなのあり得ないよ」

曜「千歌ちゃん…」

千歌「だってさ……それが本当なら、どうしてルビィちゃんこんなに辛そうなの?」

曜「……」


千歌「笑ってよルビィちゃん、本当に幸せなら…笑ってよ……」ポロポロ

244: 2017/05/29(月) 11:40:58.17 ID:nFbPjR5+.net
千歌「私はこんなルビィちゃん…見たくないよ……」ポロポロ

千歌「嫌だ……こんなの私嫌だよっ…………!」

曜「千歌ちゃんっ……!」ダキッ

千歌「曜ちゃん…うぅっ……うわあぁぁぁぁん!!」


……


245: 2017/05/29(月) 11:41:33.12 ID:nFbPjR5+.net
曜「……ぐすっ……千歌ちゃん、大丈夫……?」

千歌「…うん、へーき……」

千歌「……」



千歌「…あのさ曜ちゃん」

246: 2017/05/29(月) 11:42:07.04 ID:nFbPjR5+.net
千歌「私、やっぱり諦めきれない」

曜「っ!」

千歌「諦めたくないよっ!」

曜「…私もだよ千歌ちゃん、こんなの…認めたくないから……だから!」

247: 2017/05/29(月) 11:42:41.57 ID:nFbPjR5+.net
千歌「そうだよ……そうだ」

千歌「きっと何かあるはずだよ!探そう、私達で!」

曜「うん!きっとみんなも同じ事思ってるよ!」


千歌「曜ちゃん……うん!」

248: 2017/05/29(月) 11:43:45.30 ID:nFbPjR5+.net
千歌「このままじゃ駄目だよね……!」

千歌「いつまでも…くよくよしてられないよね!」

曜「そうだよ千歌ちゃん!こんな時こそ元気にいかなくちゃ!だって私たちは──」

千歌・曜「CYaRonなんだから!!」

249: 2017/05/29(月) 11:44:28.69 ID:nFbPjR5+.net



梨子「……」ポロンッ…

梨子「…………」ハァーッ


パチパチパチ


梨子「──!?」バッ

ダイヤ「─素晴らしい演奏でしたわよ、梨子さん」ニコ

梨子「……え?…ダイヤさん……?」

250: 2017/05/29(月) 11:45:02.59 ID:nFbPjR5+.net
ダイヤ「お疲れの様子ですね……少し、休んだらどうですか?」

梨子「……あの、どうしてここに?」


ダイヤ「……」

ダイヤ「ここに来たのに、特別深い理由はありません……ただ」

梨子「ただ?」

251: 2017/05/29(月) 11:45:35.26 ID:nFbPjR5+.net
ダイヤ「…辛いことがあった日の夜に一人でいると…きっと孤独と静寂に押し潰されてしまいそうですから……」

ダイヤ「そしてそれはきっと、私だけではないでしょう…」

ダイヤ「皆、同じだと思うのです」

梨子「だから、私に会いに……?」

252: 2017/05/29(月) 11:46:00.23 ID:nFbPjR5+.net
ダイヤ「ええ、梨子さん一人を放っておくことなど出来ませんからね」

梨子「ダイヤさん…ありがとうございます」

ダイヤ「いえ…私のためでもありますから」

253: 2017/05/29(月) 11:46:38.35 ID:nFbPjR5+.net
梨子「─ダイヤさん」

ダイヤ「なんでしょうか?」

梨子「あの…ルビィちゃんのこと、ですけど……」

ダイヤ「……」


梨子「私、信じてみたいんです…またルビィちゃんがここに戻ってくる……そんな奇跡を」

ダイヤ「奇跡、ですか?」

254: 2017/05/29(月) 11:47:22.66 ID:nFbPjR5+.net
梨子「はい、私は一度体験してますから……」

梨子「奇跡はあり得ないことじゃないって、そう思ってます」

ダイヤ「……」

梨子「私と千歌ちゃんが出会えたのは、スクールアイドルのおかげでした」

梨子「そしてそのスクールアイドルが奇跡を生んでくれたなら……」


梨子「今、私達が出来ることって……歌うことなんじゃないかなって」

255: 2017/05/29(月) 11:48:00.22 ID:nFbPjR5+.net
ダイヤ「歌、ですか」

梨子「歌には不思議な力があります、奇跡を呼ぶ力が……」

ダイヤ「そう、ですね……私もそう思いますわ」

梨子「なら…届かせましょうダイヤさん、ルビィちゃんに私達の歌を」

ダイヤ「ええ……ですが」

256: 2017/05/29(月) 11:48:38.65 ID:nFbPjR5+.net
ダイヤ「それは、目覚めの歌を……ですか?」

梨子「……」

梨子「…………いいえ」


梨子「“愛のうた”…ですよ」


……


257: 2017/05/29(月) 11:49:40.57 ID:nFbPjR5+.net
─深夜、夢の世界


ルビィ「……」スゥスゥ

夢善子「……」

夢善子(夢の中で眠りにつき始めた…もう本当にマズい)

夢善子(いつこっちに染まりきっても可笑しくない状態…時間も、もうほんの僅かしか残されていないっていうのに……)


夢善子「私には何も出来ない……それどころか」

夢善子「こうなった原因を作ってしまった……」

258: 2017/05/29(月) 11:50:22.08 ID:nFbPjR5+.net



『私だってルビィと一緒にいたいわよ!』

『ルビィと離れたくなんかない!行かないでっ!!』



259: 2017/05/29(月) 11:51:01.44 ID:nFbPjR5+.net
夢善子「……」

夢善子「……やっぱり無理矢理にでも帰しておくべきだったのよ…………」

夢善子「…こうなることは、分かってたじゃない……何やってんのよ」


夢善子「馬鹿じゃないのっ!私は!!」ギリッ

260: 2017/05/29(月) 11:52:07.28 ID:nFbPjR5+.net
ルビィ「…………」スゥスゥ

夢善子「ルビィっ……!」ギュッ


「んしょっ…ここでいいかな」

「どうもー、お邪魔しまーす」スタッ

夢善子「っ!?──誰!?」バッ

夢善子「……って、なんだ…あんただったの…驚かせないでよ……」



夢ルビィ「なんだ…ってひどいなぁ、久々に会ったっていうのに」アハハ

270: 2017/05/30(火) 10:13:48.78 ID:kvC5PYOM.net
夢善子「久々ってあんたねえ…私たちにはそれぞれ役目があったから、今まで会わなかったんでしょうが」

夢善子「それなのに自分の持ち場から離れて…一体何しに来てんのよ」ジロッ

夢ルビィ「そのことなんだけどね、ちょっと色々あってさ……」

夢善子「……ふーん、そう…」


夢善子「……まあ大体予想はつくけどね」

271: 2017/05/30(火) 10:14:27.35 ID:kvC5PYOM.net
夢ルビィ「そりゃその子の様子見てたらそうだよねぇ…黒澤ルビィ、だよね?」ジーッ

夢ルビィ「こうして間近で見ると本当に私にそっくりだなぁ…でもまあ、当然といえば当然だけどね」

夢ルビィ「だって私たちは「ちょっと」

夢善子「世間話だけしに来たのなら帰ってくれないかしら」


夢ルビィ「……それもそうだね」

272: 2017/05/30(火) 10:15:14.68 ID:kvC5PYOM.net
夢ルビィ「でもその前にさ、一ついい?」




夢ルビィ「……どうしてその子、ここにいるの?」

夢善子「……」

夢善子「……私のせいよ、私が行かないでって言ったから」

273: 2017/05/30(火) 10:15:53.90 ID:kvC5PYOM.net
夢ルビィ「……」



夢ルビィ「そっか……ねえ」

夢善子「なに……」

─パアンッ!

274: 2017/05/30(火) 10:16:29.61 ID:kvC5PYOM.net
夢善子「……っ……」ヒリヒリ

夢ルビィ「……」


夢ルビィ「あのさ…深くは聞かないよ、多分それなりに事情があったと思うから」

夢ルビィ「でも失態だから殴った、文句ないよね?」

夢善子「…………ないわ」

夢ルビィ「そう、良かった、じゃあこの件はこれで終わりね」

275: 2017/05/30(火) 10:17:11.03 ID:kvC5PYOM.net
夢善子「……いいの?」

夢ルビィ「問題が山積みだから…一々気にしている余裕なんて今の私達にはないよ」

夢善子「……ごめんなさい……それと」


夢善子「聞かせてくれるかしら……そっちで、何があったのか…」

夢ルビィ「うん、そのために来たんだから」

276: 2017/05/30(火) 10:18:00.25 ID:kvC5PYOM.net
夢ルビィ「…じゃあ本題に入ろっか」

夢善子「……ええ、お願い」

夢ルビィ「あのね、私の声…善子ちゃんに届かなくなっちゃった」

夢善子「……理由は?」


夢ルビィ「今日ね、その子が目を覚まさないってことで…だいぶ騒ぎになったの」

夢ルビィ「それで善子ちゃん、自分が原因だって責任感じちゃって……」

夢善子「成程…意識が逸れてしまったってわけね」

277: 2017/05/30(火) 10:18:48.01 ID:kvC5PYOM.net
夢ルビィ「…元々、私たちはこっちに誘導するってだけで、来るか来ないかは本人次第だったから」

夢善子「ええ、今まで津島善子はあんたに会うために常にこの世界を意識してた」

夢善子「だから簡単にこの世界に行き来できたわけだけど…今回のその事件がきっかけで」

夢善子「今、あの子の頭には…夢のことなんてこれっぽちも思い浮かんでこないってわけね」

夢ルビィ「まあ、そんなところかな」

278: 2017/05/30(火) 10:19:37.96 ID:kvC5PYOM.net
夢ルビィ「そういうわけで、こっちからいくら呼びかけても反応はなし…連れて来ようにもこんな状況じゃお手上げだよ」

夢善子「……」



夢善子「……嘘ね」

夢ルビィ「……」

夢善子「ねえ、何か考えがあるんじゃないの?だからあんたはこうして私に会いに来た、違うかしら?」

279: 2017/05/30(火) 10:20:28.52 ID:kvC5PYOM.net
夢ルビィ「…鋭いなぁ、流石善子ちゃん」

夢善子「やめて、ルビィ以外からそれ、聞きたくないの」

夢ルビィ「いやいや、私も一応ルビィなんだけどね……はぁ、まあいっか」

夢ルビィ「今はとにかくこっちの問題を何とかしなくちゃ、だもんね」

夢善子「……」

夢ルビィ「それじゃあ私の考え、聞いてもらおうかな」

夢善子「…ええ」

280: 2017/05/30(火) 10:21:06.17 ID:kvC5PYOM.net
夢ルビィ「まずは結論から言うね、私は…あっちへの通信を図るために貴女の力を借りに来たの」

夢善子「……順を追って説明してもらいましょうか」

夢ルビィ「うん、さっきも言ったと思うけど…今善子ちゃんには私の声は届かない」

夢ルビィ「だから私たち自身とは関わりが無くて、尚且つ善子ちゃんと黒澤ルビィに深く関係している人間にコンタクトを取ることにしたの」

281: 2017/05/30(火) 10:21:55.32 ID:kvC5PYOM.net
夢ルビィ「それなら私たちと関係ない分だけ…彼女たちを介してノイズが入れやすくなる」

夢善子「成程ね…二人に繋がりのある人間なら、確かにルビィたちほど波長が合わなくても届くかもしれない……」


夢善子「私たち二人の力を合わせて、現実への通信距離を広げれば……!」

夢ルビィ「可能性は見えてくる……!」

282: 2017/05/30(火) 10:22:22.96 ID:kvC5PYOM.net
夢善子「そしてそれを可能に出来る存在…つまり、受信候補に入るのは彼女たちの親族……もしくは──」


夢善子「Aqoursの中の誰か……」

夢ルビィ「うん、ただ問題なのは……」

夢善子「双方にとって重要な人物ってところね…」

283: 2017/05/30(火) 10:23:16.08 ID:kvC5PYOM.net
夢善子「黒澤ダイヤは?ルビィの姉でAqoursのメンバーでもある彼女なら」

夢ルビィ「ダメだよ、重要度が黒澤ルビィに傾き過ぎてる…」

夢善子「けど他のメンバーじゃ少し弱いわよ?…それこそギリギリ」

夢ルビィ「うん……でも、もしかしたら……」


夢ルビィ「……ねえ、一回貴女の記憶、覗かせてもらってもいいかな?何か分かることがあるかも」

夢善子「?……いいけど、収穫あるかしら」

夢ルビィ「…………」スッ

284: 2017/05/30(火) 10:23:44.76 ID:kvC5PYOM.net
夢ルビィ「……ふぅ」

夢善子「……どうだった?」

夢ルビィ「うん…………いたよ、たった一人だけ」

夢善子「…本当に?ねえ、それって一体誰なの……?」

285: 2017/05/30(火) 10:24:18.62 ID:kvC5PYOM.net
夢ルビィ「多分、私の記憶を覗いたほうが早いよ」

夢善子「記憶を……?」スッ


夢ルビィ「でも驚いたぁ…まさかこの子が」

夢ルビィ「黒澤ルビィと津島善子、どちらの過去にも深く関わっていたなんてね」

286: 2017/05/30(火) 10:25:02.73 ID:kvC5PYOM.net
夢善子「…!これって……まさか」

夢ルビィ「…気づいた?そう、二人の親友──国木田花丸ちゃん」

夢ルビィ「……二人にとって大切な存在の彼女ならきっと…ううん、もうそれに賭けるしかないんだよ」

夢ルビィ「だって時間は待ってくれないから」


夢善子「…なりふり構っていたら、間に合わない……か」

夢善子「……分かったわ、やってみましょう……私の力─貴女に預ける」

夢ルビィ「ん、ありがと」

287: 2017/05/30(火) 10:25:44.82 ID:kvC5PYOM.net
夢善子「…………ねえ」ポワ

夢ルビィ「んー?」スッ

夢善子「大丈夫よね?…力を合わせれば、届くわよね?」スッ

夢ルビィ「……うん、きっと大丈夫だよ……だって私たちは元々──」ギュッ


夢ルビィ「二人で一つだからね」クスッ

夢善子「……ええ、そうね」ギュッ

288: 2017/05/30(火) 10:26:47.16 ID:kvC5PYOM.net
夢善子「……」シュゥゥ



夢ルビィ「……確かに受け取ったよ」フワリ


夢善子「…っ!…はぁーっ……やっぱり……キッツいわね…………!」ガクッ

夢善子「…ねえ、ちゃんと……成功、させなさいよ…」フラフラ

夢ルビィ「分かってる…必ず連れてくるから、だからその子のことお願いね」

夢善子「…言われるまでもないわね……それに、待つことには慣れているの…」

夢ルビィ「クスッ、だよね…それじゃ行ってくるよ」トンッ

289: 2017/05/30(火) 10:27:56.74 ID:kvC5PYOM.net
夢ルビィ「またあとでね」スゥーッ

夢善子「…ええ、気をつけて……」



夢善子「……」

夢善子「……はぁーーっ…」グッタリ

ルビィ「…………」スゥスゥ

夢善子「…ねえルビィ、私たち、いつまで持つかしらね……」ピト


……


290: 2017/05/30(火) 10:28:34.11 ID:kvC5PYOM.net



夢ルビィ「……」スゥーハァー


夢ルビィ「……よし!」フゥーッ

夢ルビィ「あーテステス、マイクテス……花丸ちゃーん!国木田花丸ちゃーーん!!聞こえたら返事してーーーーーー!!」

291: 2017/05/30(火) 10:29:41.55 ID:kvC5PYOM.net
─花丸の夢


花丸「……」


ハナ    マル   チャン


花丸「……?なんだろう、何か聞こえてくる……」


チャン  マルチャン


花丸「……え?この声……」

ハナマルチャーン!

花丸「ルビィちゃんっ!?」バッ

292: 2017/05/30(火) 10:30:22.66 ID:kvC5PYOM.net
『花丸ちゃん!?やった!届いたっ!!』

花丸「ルビィちゃんどこにいるの!?返事して!」

『……あー、やっぱり姿までは見えないかぁ…』

『ねぇ花丸ちゃん、そのまま聞いてくれる?』


花丸「そんな…ルビィちゃん、どうして出てきてくれないの……?」

293: 2017/05/30(火) 10:31:02.23 ID:kvC5PYOM.net
『いやぁ…まあ私にも色々あってね…』

花丸「えっ…私……?」

『ん?それがどうかしたの?』


花丸「……ねえ、貴女ってもしかして夢の中のルビィちゃん?」

『えっ、すごい!どうして分かったの!?』

花丸「だってルビィちゃんは自分のこと私、なんて言わないから」

『へぇー…それにすぐ気づけるなんて、やっぱり花丸ちゃんを選んだのは正解だったみたいだね』

294: 2017/05/30(火) 10:31:39.68 ID:kvC5PYOM.net
花丸「選ぶ?マルを?」

『そう、今こうして花丸ちゃんを呼んだのはお願いがあるからなの』

花丸「……お願いって?」

『善子ちゃんをもう一度私たちの世界に連れてきてほしいの』

花丸「!?……どういうことずら……?」

295: 2017/05/30(火) 10:32:07.57 ID:kvC5PYOM.net
『今日善子ちゃんから聞いたでしょ?黒澤ルビィが今、こっちの世界にいるってこと』

花丸「うん……」

『私たちもそれをどうにかしたいんだけどさ…でもね、私たちじゃ駄目なんだよ』

『やっぱりあの子を連れ戻せるのは善子ちゃんしかいないの』

296: 2017/05/30(火) 10:32:48.62 ID:kvC5PYOM.net
花丸「……つまり善子ちゃんが夢の世界に行けば、ルビィちゃんを助けられるってこと?」

『そう……思いたい』



『…正直な話をするとね、可能性は低いの……本当に助けられるかどうか、それは分からない』

花丸「……」

『でもね』

『それでも私はこの可能性に賭けてみたい』

297: 2017/05/30(火) 10:33:30.78 ID:kvC5PYOM.net
花丸「!!」

『花丸ちゃんはさ、どう思う?』

花丸「マルは……マルも賭けたい」

花丸「ルビィちゃんを……助けたいからっ!」

『クスッ、じゃあ決まりだね』

『善子ちゃんによろしく伝えておいて、明日待ってるからねって』

298: 2017/05/30(火) 10:34:04.18 ID:kvC5PYOM.net
花丸「うん、必ず伝えるずら」

『ありがとう、それじゃあ……』


『またね、花丸ちゃん』

花丸「えっ……?」

299: 2017/05/30(火) 10:34:33.58 ID:kvC5PYOM.net
花丸「…………」


花丸「またね…ってどういうことだろう……?」

花丸「……でも、これで明日マルのやることは決まった」

花丸「善子ちゃんを、夢の世界に連れていく!夢のルビィちゃんが言った通りにね」

300: 2017/05/30(火) 10:35:02.57 ID:kvC5PYOM.net
花丸「……ってあれ…?」

花丸「……夢の……ルビィちゃん……?」




花丸「……あっ…そうか…」

花丸「…そういえば、前にルビィちゃん言ってたっけ……」

301: 2017/05/30(火) 10:35:40.23 ID:kvC5PYOM.net



『でも不思議だね、二人して似たような夢を続けて見るなんて』

『そうだねぇ、もしかしたら花丸ちゃんもそのうち聞こえたりするかもね?』

『あはは、そうかもしれないずら』



302: 2017/05/30(火) 10:36:25.90 ID:kvC5PYOM.net
花丸「……」

花丸「ねえルビィちゃん…マルにも聞こえたよ、ルビィちゃんの声が」

花丸「だから…もうちょっとだけ待っててね、今、助けに行くから……必ず」


……


303: 2017/05/30(火) 10:36:53.43 ID:kvC5PYOM.net
そして…最終日



─夢現生活、25日目

304: 2017/05/30(火) 10:37:20.54 ID:kvC5PYOM.net
続きは夜に書きます

308: 2017/05/30(火) 20:37:58.59 ID:kvC5PYOM.net
ダイヤ「─どうしたのですか花丸さん、急に全員集まるよう声をかけるなんて」

花丸「うん、皆に聞いてもらいたいことがあるの」

果南「聞いてもらいたいことって?」

花丸「……」


花丸「今日の夜、マルの夢に向こうの世界のルビィちゃんが来たんだ…声しか聞こえなかったけど」

七人「!?」

309: 2017/05/30(火) 20:38:40.01 ID:kvC5PYOM.net
善子「えっ……なんで……」

花丸「理由はマルにも分からない、でも夢の中でルビィちゃんはこう言ってた」

花丸「善子ちゃんをこっちに連れてきて、ルビィちゃんを連れ戻してほしいって」

花丸「待ってるからねって夢の中のルビィちゃんは言ってたずら」

善子「!!」

310: 2017/05/30(火) 20:39:23.14 ID:kvC5PYOM.net
善子「ルビィ、あの子……」

善子「……」


善子「でもそんなこと……「出来るかどうかじゃないでしょ」

鞠莉「やらなきゃ…ねえ善子?私が昨日言った言葉…忘れてないわよね?」

善子「鞠莉さん……」

善子「……」

善子「そうね」

311: 2017/05/30(火) 20:39:51.38 ID:kvC5PYOM.net
善子「でもそれなら一つだけ……ずら丸」

花丸「なに?」

善子「あんたも一緒に来てくれない?」

花丸「えっ?」

312: 2017/05/30(火) 20:40:21.33 ID:kvC5PYOM.net
花丸「出来るの?そんなこと……」

善子「前に聞いたのよ、あの子たちは他人が見ている夢に呼びかけてこっちの世界に来られるよう誘導しているって」

善子「声が聞こえた今…あんたにも行ける可能性があるかもしれない」

花丸「……」

善子「どうする?」


花丸「…勿論、答えは決まっているよ」

善子「フフッ、そうよね」

313: 2017/05/30(火) 20:41:07.32 ID:kvC5PYOM.net
ダイヤ「……結論は出たようですわね」

ダイヤ「夢の世界…ということは決行は夜になりますか」

善子「そうね…そこで全てが決まる」

鞠莉「帰って来れるか、来られないか……」

千歌「絶対大丈夫だよ!善子ちゃん、何か手伝ってほしいことがあったら言ってね!ぜーんぶ協力するから!」

善子「千歌さん、ありがとう」

314: 2017/05/30(火) 20:41:50.52 ID:kvC5PYOM.net
果南「それに解決策が見つかったからって、私たちだけ善子ちゃんたちに任せっきりなのも良くないしね」ニコ

曜「まだやれることがないか探してみるよ!」ヨーソロー!

善子「みんな……」

梨子「……」


梨子「……ねえ善子ちゃん」

善子「なに?梨子さん」

315: 2017/05/30(火) 20:42:24.03 ID:kvC5PYOM.net
梨子「私たちは夢の世界に行けないわ……だけど」

梨子「夢を歌うことは出来るから」


善子「え?」

梨子「フフッ…私たちの歌で応援してあげるってこと、頑張ってね善子ちゃん」ニコ

善子「……ええ、ありがとう梨子さん」

316: 2017/05/30(火) 20:42:50.62 ID:kvC5PYOM.net
千歌「よーし!それじゃあ善子ちゃんと花丸ちゃんは夜に備えて休んでてね!」

曜「私たちは全員で他に何が出来るか考えるから!」

花丸「うん!」

善子「任されたわ!」

317: 2017/05/30(火) 20:43:23.11 ID:kvC5PYOM.net
ダイヤ「では、行きましょうか皆さん」クルッ

果南「うん、頑張ってね花丸ちゃん」タッ

鞠莉「善子、勝利のフラッグを掲げてきなさい」スタスタ

善子「ええ!」

花丸「ありがとう果南さん!マル頑張るよ!」

318: 2017/05/30(火) 20:44:08.50 ID:kvC5PYOM.net
シーン…


善子・花丸「……」

花丸「行っちゃったね」

善子「ええ」


花丸「……善子ちゃん」

善子「何かしら」

花丸「昨日はごめんなさい」ペコリ

319: 2017/05/30(火) 20:44:37.65 ID:kvC5PYOM.net
善子「……あんたは間違ってないわよ」

花丸「間違ってなくても傷つけたことに変わりはないずら」

善子「……」

花丸「だから、ごめんなさい」

320: 2017/05/30(火) 20:45:14.07 ID:kvC5PYOM.net
善子「もういいわよ、気にしてないから」


善子「……ねえ花丸」

花丸「……」

善子「連れ戻すわよ、私達で」フッ

花丸「……うん!」ニコッ


……


321: 2017/05/30(火) 20:45:56.24 ID:kvC5PYOM.net



千歌「歌?」

梨子「ええ、昨日ダイヤさんにも話したけど…ルビィちゃんに私たちの歌を届けるの」

梨子「そのこと自体には特に意味はないかもしれない……けど」

梨子「私は無意味にしたくないの……この想いを…願いを…」

322: 2017/05/30(火) 20:46:28.35 ID:kvC5PYOM.net
曜「梨子ちゃん……」

果南「いいんじゃない?私たちらしくて」

鞠莉「ええ、いつの時代もラブソングは人の支えになってきたわ」

ダイヤ「ならば今でもそれは通用するはずです……出来ますわよ私達なら」

323: 2017/05/30(火) 20:47:43.94 ID:kvC5PYOM.net
曜「クスッ、そうだね……それに0なら0でも構わないよね、だって──」

千歌「0から1にするのが私たちAqoursだから!」

梨子「千歌ちゃん、曜ちゃん……!」

千歌「梨子ちゃん!歌おう!響かせようよ私たちの歌を!」

梨子「……ええ!」

千歌「よぉーし!それじゃいくよ皆!Aqoursーーーーーーーーー!!」


「「「「サーンシャイーーーーーーン!!!」」」」


……


324: 2017/05/30(火) 20:48:16.11 ID:kvC5PYOM.net
そして時間は過ぎ、真夜中


─夢の世界

325: 2017/05/30(火) 20:48:52.56 ID:kvC5PYOM.net
夢ルビィ「……待ってたよ」

善子「…たった一日会わなかっただけなのに、随分と久しぶりな気がするわね」

夢ルビィ「クスッ…そうだね」

善子「…………」


夢ルビィ「花丸ちゃんならまだ来ないよ?」

善子「!あんたなんで……」

326: 2017/05/30(火) 20:49:29.80 ID:kvC5PYOM.net
夢ルビィ「何となく来るんじゃないかなぁって思っただけだよ、ただの勘」

善子「そう……」

善子「……ねえ、ずら丸が来るのに時間がかかってるのってもしかして…」

夢ルビィ「流石…善子ちゃんは察しがいいね、花丸ちゃんはこっちに来るのが初めてだからさ…ちょっと遅くなるの」

327: 2017/05/30(火) 20:50:30.31 ID:kvC5PYOM.net
夢ルビィ「とは言っても、もうすぐ着くとは思うけど…私と善子ちゃんの協力もあるわけだしね」

夢ルビィ「それに、何より想いの強さが違うから……ただの好奇心とは比べ物にならないほど…」

夢ルビィ「だから大丈夫だよ」

善子「……そうね」

328: 2017/05/30(火) 20:51:04.46 ID:kvC5PYOM.net
夢ルビィ「まあ……何はともあれさ、本当によかったよ来てくれて……まず一個目の賭けは成功したみたい」

善子「賭け?」

夢ルビィ「うん、善子ちゃんがここに戻ってこられるかどうかのね……そして二つ目は」

善子「ルビィを連れて帰れるか?」

夢ルビィ「正解、まあ一番重要なのはここだよね」

329: 2017/05/30(火) 20:51:39.65 ID:kvC5PYOM.net
善子「出来るわよ、やってみせる」

夢ルビィ「いいね、その迷いがないって感じ」

善子「迷いは消してもらったわ、私は…一人じゃないから」


夢ルビィ「……そっか、なんかいいねそういうのって」クスッ

330: 2017/05/30(火) 20:52:14.04 ID:kvC5PYOM.net
夢ルビィ「私もいつかは……」

善子「ルビィ……?」

夢ルビィ「…あっと、ごめん何でもないんだ」

善子「それならいいけど……」

善子「……」


善子「…ねえルビィ」

夢ルビィ「ん?」

331: 2017/05/30(火) 20:52:50.80 ID:kvC5PYOM.net
善子「ずら丸を待ってる間に…一つ、聞かせてもらってもいいかしら?」

夢ルビィ「いいよ、なに?」

善子「…ルビィ、あんたは一体何者なの?あんたの本当の姿って…正体って…誰なの?」

夢ルビィ「……」

夢ルビィ「……難しい質問だなぁ…うーん、そうだね…」

332: 2017/05/30(火) 20:53:34.06 ID:kvC5PYOM.net
夢ルビィ「今はまだ何者でもない…が答えかな?」アハハ

善子「……なにそれ、余計分からなくなったんだけど…」

夢ルビィ「それはまあ…知られたら困るからね、でも嘘は言ってないよ、これも一つの真実」

善子「……」


夢ルビィ「そんなに考えなくてもいずれ分かるよ、全部が終わった後にね…」

夢ルビィ「答え合わせはそれまでお預け、ごめんね善子ちゃん?」

333: 2017/05/30(火) 20:54:23.16 ID:kvC5PYOM.net
善子「……仕方ないわね」

夢ルビィ「ありがとう善子ちゃん…大丈夫、必ず話すよ」

夢ルビィ「私信じてるから、きっと二人は無事に帰ってきてくれるって」

善子「ルビィ……」

「ずらぁっ!?」

善子「!?」

夢ルビィ「あっ、来たみたいだね」

334: 2017/05/30(火) 20:55:14.10 ID:kvC5PYOM.net
花丸「ここが夢の世界…本当に真っ白なんだ……」

善子「ずら丸っ!」タッ

花丸「あっ善子ちゃん!それと…………っ!?」

夢ルビィ「今晩は、花丸ちゃん」ニコッ

花丸「ルビィ…ちゃん…………?」

335: 2017/05/30(火) 20:56:02.92 ID:kvC5PYOM.net
夢ルビィ「うん、夢の世界のほうだけどね」

花丸「凄い…本当にルビィちゃんにそっくりずら……」

花丸(…でも……あれ?なんか……ちょっとだけ…)ジーッ


花丸「……」

花丸「……あの「ずら丸」

花丸「!」

善子「気になるのは分かるけど、ボーっとしている暇はないわよ」

336: 2017/05/30(火) 20:56:45.77 ID:kvC5PYOM.net
花丸「善子ちゃん…うん、そうだったね」


夢ルビィ「…じゃあ二人とも揃ったわけだし、本題に入ろうか」

善子「ええ」

夢ルビィ「これから二人には黒澤ルビィがいるエリアの方に移動してもらうよ」

夢ルビィ「ここからそれほど遠くはないと思うけど、急いだほうがいいことは明白だよね」

善子「そうね」

夢ルビィ「さて、その場所だけど……」スッ

337: 2017/05/30(火) 20:57:30.12 ID:kvC5PYOM.net
夢ルビィ「ここからずっと先─その先に黒澤ルビィはいるよ」ユビサシ

善子「…なんにも見えないんだけど」

夢ルビィ「それだけ遠ざかってるってこと…早く行かないと、距離は遠くなる一方だよ?」

夢ルビィ「いたちごっこみたいな感じ、こっちの追いかける速度が速くないと一生捕まらない」

花丸「じゃあすぐに行かなくちゃ!」

善子「もたもたしてる暇なんてないってわけね」

夢ルビィ「うん、でもきっと大丈夫…あの子のことを想いながら走っていけば、きっとすぐだから」

338: 2017/05/30(火) 20:58:11.09 ID:kvC5PYOM.net
夢ルビィ「さぁ、私が出来るのはここまで……頑張ってね二人とも」

花丸「え?」

善子「あんたは…来ないの?」

夢ルビィ「まあホントは行きたいんだけど、色々あったからちょっと疲れちゃって…」エヘヘ


夢ルビィ「それに、夢の世界から連れ戻すことが出来るのは“現在”を生きてる人だけなんだ」

夢ルビィ「だから、あとは二人に任せるよ」ニコッ

339: 2017/05/30(火) 20:58:48.60 ID:kvC5PYOM.net
善子「そう、分かったわ…色々ありがとうね、ルビィ」

夢ルビィ「えへへっ、どういたしまして」

夢ルビィ「さ、早く……」

善子「ええ、行くわよずら丸」タッ

花丸「うん、善子ちゃん!」タッ

夢ルビィ「花丸ちゃん!花丸ちゃんも頑張ってね!」

340: 2017/05/30(火) 20:59:23.76 ID:kvC5PYOM.net
花丸「……」ピタッ

夢ルビィ「…あれ?どうしたの花丸ちゃん?」キョトン

花丸「……あの、マル…あなたに聞きたいことが…」


夢ルビィ「……」

夢ルビィ「…なあに?」

花丸「あなたってもしかして…」

善子「ずら丸っ!何してるのよ早く行くわよ!」ダッ

341: 2017/05/30(火) 21:00:12.38 ID:kvC5PYOM.net
花丸「あっ…」

夢ルビィ「らしいけど?」ニコッ

花丸「……ごめんなさい、やっぱり今のは聞かなかったことにしてほしいずら!」ペコリ

花丸「─待ってよ善子ちゃん!置いてかないで!」タッ

342: 2017/05/30(火) 21:00:50.31 ID:kvC5PYOM.net
夢ルビィ「……」フフッ

花丸「……」チラッ



花丸(善子ちゃんは気付いてないのかな…)タタタタッ

花丸(あの子、確かにルビィちゃんにそっくりだったけど…でも、なんでだろう?マルにはほんの少しだけあの子が──)

花丸(善子ちゃんに見えたような……)


……


343: 2017/05/30(火) 21:01:40.35 ID:kvC5PYOM.net



ルビィ「……ん…」パチ

夢善子「あら、やっと起きたみたいね」

ルビィ「善子ちゃん…?おはよう…」ゴシゴシ

夢善子「ええ…おはよう、ルビィ」

ルビィ「…?なんか元気ないね…顔色も良くないし、善子ちゃん大丈夫?」ジーッ


夢善子「……問題ないわよ、ちょっと疲れているだけ」

344: 2017/05/30(火) 21:02:28.68 ID:kvC5PYOM.net
夢善子(本当はこの姿を保っているだけで精一杯なんだけど…言えないわよね)

夢善子「それよりもルビィ…私の心配よりも自分のことを気に掛けたほうがいいわよ」

ルビィ「え?」

夢善子「……あんたさっき寝てたでしょ?夢の世界で眠りにつくのはここではデッドライン…」

夢善子「恐らく…もう貴女は現実の世界では意識不明の昏睡状態に陥っているはずよ」


ルビィ「……それって…もう、帰れないってこと?」

345: 2017/05/30(火) 21:03:11.94 ID:kvC5PYOM.net
夢善子「いいえまだ、でも…もうじきそうなってしまうわ」

ルビィ「……そっか」

夢善子「……後悔はないの?」

ルビィ「……」

ルビィ「それは、みんなと離れるのは嫌だけど…でも、ルビィは善子ちゃんと一緒に……」

346: 2017/05/30(火) 21:03:50.91 ID:kvC5PYOM.net
夢善子「…」

夢善子「……間違いだらけね、それに…嘘ばっかり」

ルビィ「えっ……」

夢善子「ねえルビィ、その“善子ちゃん”って私のことじゃないでしょ?」

ルビィ「!」

347: 2017/05/30(火) 21:04:39.26 ID:kvC5PYOM.net
ルビィ「どうして……」

夢善子「誤魔化したって無駄よ、私には分かるんだから」



ルビィ「……“記憶”があるから?」

夢善子「“思い出”があるからよ」

ルビィ「っ……」

夢善子「ルビィ、あんたの言う“善子ちゃん”って津島善子のことを言ってるんでしょ?」

夢善子「なら尚更、あんたは早く帰らなきゃ駄目なのよ」

夢善子「あの子はこっちの世界の住人じゃない」

348: 2017/05/30(火) 21:05:31.15 ID:kvC5PYOM.net
ルビィ「……」

ルビィ「でも……」

夢善子「ルビィ、私だってね…迷ったわよ……でもね、やっぱり駄目だった」

夢善子「貴女には向こうで幸せになって欲しかったから」

ルビィ「善子ちゃん……でも、でもルビィは……っ!」

夢善子「……」チラッ


夢善子「…まあ、ここから先は直接話し合うべきよね」フッ

ルビィ「……えっ?」

349: 2017/05/30(火) 21:06:17.70 ID:kvC5PYOM.net
夢善子「そろそろ来るわよ、ルビィ、あんたが本当に大切に想っている人“たち”が」

夢善子「だから私の役目はここまで」

夢善子(もう、限界みたいだしね……)

ルビィ「善子ちゃん?何を言って……」

夢善子「最後の勝負ってことよ、思いっきり負けてきなさい」

ルビィ「…勝負?負ける?」

夢善子「そのうち分かるわ」

夢善子「…さてと、もう時間みたいだし私はそろそろ行くわね」スッ

350: 2017/05/30(火) 21:06:57.95 ID:kvC5PYOM.net
ルビィ「善子ちゃん!?」


夢善子「──ああ、でもその前に」

夢善子「夢の世界に逃げてきたあんたに、一つだけ言っておくことがあったわ……私への自戒も込めてね」クルッ

ルビィ「っ!」

夢善子「ルビィ、自分の気持ちにだけは嘘をつくのをやめて…そこからは絶対に逃げないで」

351: 2017/05/30(火) 21:07:42.14 ID:kvC5PYOM.net
ルビィ「善子ちゃん……?」

夢善子「それじゃ、頑張ってね」スゥッ

ルビィ「えっ…ま、待って善子ちゃん!」




「──呼んだ?」

352: 2017/05/30(火) 21:08:21.06 ID:kvC5PYOM.net
ルビィ「!?」バッ

花丸「ルビィちゃん…!やっと見つけたっ……」ハァハァ

善子「迎えに来たわよ、ルビィ」フゥーッ


ルビィ「善子ちゃん…?それに、花丸ちゃんまで……」

ルビィ「どうして……?」

353: 2017/05/30(火) 21:08:54.52 ID:kvC5PYOM.net
善子「まだ寝ぼけているみたいね」

花丸「さっきも言ったよ、迎えに来たって」

ルビィ「……」

善子「ルビィ、私たちは……」


善子「終わらせに来たのよ、この長い夢をね」

354: 2017/05/30(火) 21:09:33.25 ID:kvC5PYOM.net



夢善子「……ルビィ」

「はぁーっ…ボロボロだね、なんて言うんだっけそういうのって……虫の息、だったかな?」

夢善子「……」

「まあどっちにしても…それじゃもうあの子たちにも姿は見えないだろうね」

夢善子「……それはあんたも同じでしょ」

夢ルビィ「えへへっ、まあね」

355: 2017/05/30(火) 21:10:12.93 ID:kvC5PYOM.net
夢ルビィ「それにしても…全く、無茶するんだから……」

夢善子「……結局来たのね…こっちに……」

夢ルビィ「あの子たちのこと、見届けたいからさ……それにあなたのことも放っておけなかったし」

夢善子「……」

夢ルビィ「ねぇ、あんまり無理しないでよ?それ一応、私の体でもあるんだからね?」

356: 2017/05/30(火) 21:10:52.14 ID:kvC5PYOM.net
夢善子「……そうね、でも私には出来なかった」

夢善子「……あの子の前でみっともないところを見せるなんてこと…したくなかったの」

夢善子「だって言ってくれたから…善子ちゃんは…余裕があって、カッコいいって……」


夢善子「だから最後まで……ルビィにとって、カッコいい私でありたかった……」

357: 2017/05/30(火) 21:11:46.10 ID:kvC5PYOM.net
夢ルビィ「……」

夢善子「…本当の私はあの子の言った通り、意地を張ってるただの馬鹿だけどね……」

夢善子「けれど、それでもよかった…あの子が、ルビィが笑ってくれるなら……」

夢善子「たとえ馬鹿でも貫き通そうって、そう…思ったの……」


夢ルビィ「…………大丈夫、ちゃんと伝わってるよ…私はそう信じてる」

夢ルビィ「……だからあなたも信じてよ、私だって…ルビィなんだからさ」

364: 2017/05/31(水) 11:56:36.92 ID:xCSzlyEU.net



ルビィ「終わらせに来たって、どういうこと善子ちゃん?」

ルビィ「…ねえ、善子ちゃんは知ってるよね?今ルビィたちが帰っちゃったら」

ルビィ「次はいつあの子たちに会えるか分からないんだよ?」

善子「ええ、知ってるわよ……けどねルビィ」

善子「だからって皆を放っておいていい理由にはならないでしょ」

花丸「ルビィちゃん、ルビィちゃんはマルたちより夢の世界のほうが大事なの?」

ルビィ「違うよっ!そんなことないっ!でも……!」

365: 2017/05/31(水) 11:57:21.33 ID:xCSzlyEU.net
ルビィ「あの子にはルビィしかいないんだよ!?」

ルビィ「ルビィは別にいいよ、帰ったら善子ちゃんも花丸ちゃんもお姉ちゃんもいるから!」

ルビィ「学校だってあるし、スクールアイドルだってあるから!」

ルビィ「でも向こうの善子ちゃんたちは!?こんな真っ白で何もないところで!たった一人で!」

ルビィ「ルビィたちが来るのを待ってなくちゃいけないんだよ!?それがいつになるかも分からないのに!!」

善子・花丸「!」


ルビィ「そんなの置いていけるわけないよ!出来るわけない!」

366: 2017/05/31(水) 11:58:10.02 ID:xCSzlyEU.net
花丸「ルビィちゃん……」

善子「…………」



ルビィ「…あの子が寂しい思いをするのにルビィだけ楽しい生活を送るなんて…そんなの嫌だよ……」

ルビィ「ねえ……二人はそれでもルビィを連れ戻すの?」

花丸「それは……」

ルビィ「ルビィは…帰りたくない」

367: 2017/05/31(水) 11:58:48.61 ID:xCSzlyEU.net
善子・花丸「……」


善子「……そうね、ルビィの言いたいことも分かるわ」

善子「私もあの子のことが大切だから」

ルビィ「それなら…「だけどね」

善子「それはただ可能性を捨てているだけなんだって、気付いたの」

ルビィ「え……?」

368: 2017/05/31(水) 11:59:36.68 ID:xCSzlyEU.net
善子「最初に話を聞いたとき…私たちもあの子たちもこう思ったはずよ、本当はもう会えなくなるかもしれないって」

ルビィ「……」

善子「でもね、それは間違いだった」


花丸「……善子ちゃん?」

ルビィ「何が、間違いなの……?」

善子「そうやって悲観的に考えることがよ、ルビィ、思い出してよ…私たちはどうしてあの子たちと出会うことが出来たのかを」

ルビィ「それは……」

369: 2017/05/31(水) 12:00:12.86 ID:xCSzlyEU.net
善子「願ったからでしょ、会いたいって、たったそれだけだけど…そこに余計なものなんてなかった」

善子「純粋な願いにね、余計なものなんていらないのよ……それに」

善子「私たちはそんな気持ちであの子たちに会いに行ってたかしら?…違うわよね、そうじゃないでしょ!?」

善子「悲しみじゃなくて喜びが!楽しみが!私たちとあの子たちを何度も!何度も引き合わせたんでしょうが!」

ルビィ「!」

370: 2017/05/31(水) 12:00:48.57 ID:xCSzlyEU.net
善子「ルビィ!会えなくなる現実がなんだっていうのよ!そんなの私たちがどうにかすればいいじゃない!」

善子「今よりもっと強くなって!もうこんなことに負けないように頑張って!すぐに会いに行けばいいじゃない!」

ルビィ「善子ちゃん……」

ルビィ「…でも、ルビィ一人じゃ!「一人じゃないよ」

花丸「みんながいるよ!」


ルビィ「花丸ちゃん……」

371: 2017/05/31(水) 12:01:31.76 ID:xCSzlyEU.net
花丸「ルビィちゃんさっき言ったよね、ルビィちゃんには善子ちゃんもマルもダイヤさんもいるって!」

花丸「でもそれだけじゃないよ!Aqoursのみんなだっている!」

ルビィ「!」

花丸「それにルビィちゃん前にマルに話してくれたよね、スクールアイドルは夢と勇気を与えてくれるんだって!」

花丸「それなら今度はルビィちゃんがあの子たちに夢を与えてあげなよ!あの子たちが寂しくならないように!」

372: 2017/05/31(水) 12:02:09.34 ID:xCSzlyEU.net
ルビィ「ルビィが……夢を……」

花丸「…でも、それでもまだルビィちゃんが一歩踏み出す勇気が出ないって言うなら……マルが!」

善子「私が!」

『─私たちが勇気を分けてあげるよ!!』

ルビィ「──!?えっ……!?な、なんで……」


ルビィ「どうしてみんなの声が聞こえるの!?」

373: 2017/05/31(水) 12:02:42.60 ID:xCSzlyEU.net
善子「やっぱり来たわね」

花丸「うん…マルも多分来るんじゃないかなって、そう信じてた……」

ルビィ「善子ちゃん、花丸ちゃん…?」


ルビィ「分からない、分からないよ…なんで……?みんなはここには来れないはずなのに……」

374: 2017/05/31(水) 12:03:08.90 ID:xCSzlyEU.net
善子・花丸「……」


花丸「……ねえルビィちゃん、本当にそうかな?」

善子「ルビィ…私たちには分かるわよ、ルビィを助けたい……皆がその願いを歌に乗せて、それが声になって届いているの」

善子「ルビィにこの想いを伝えるためにね」

375: 2017/05/31(水) 12:03:45.45 ID:xCSzlyEU.net
ルビィ「そんな、どうして……そこまで…」

花丸「ルビィちゃん、分からないの?それはね」

善子「皆ルビィのことが好きだからでしょ……だって」

善子「好きじゃなかったら、こんなに助けたいって思わないもの……そうでしょう?」

ルビィ「!」

376: 2017/05/31(水) 12:04:41.16 ID:xCSzlyEU.net
『えへへっ、そーいうことなのだ!!ルビィちゃん、助けに来たよ!』

『海賊CYaRon、ただいま到着であります!!』

ルビィ「千歌さん…曜さん……」

『あれ!?反応悪いなー、もしかして忘れちゃった?』

『ほら、ルビィちゃん思い出して!あの時のこと!』

ルビィ「あの時……?」


──


377: 2017/05/31(水) 12:05:13.30 ID:xCSzlyEU.net



『──え?次の衣装は海賊…ですか?』

『そう、海賊!カッコいいでしょ!?』

『うゅ……でもルビィに海賊なんて出来るかなぁ……』

『ルビィちゃんなら大丈夫だよ!ほら、ダイヤさんからよくプリンとかアイスとか取ってるじゃん!』

『それはちょっと違うような……』

『そうだよ、まだまだ甘いね千歌ちゃんも』

378: 2017/05/31(水) 12:05:49.95 ID:xCSzlyEU.net
『なにをーーー!?……あっ、曜ちゃんさっきの甘いはプリンやアイスをかけた……』

『かけてない、かけてない……あのね千歌ちゃん』

『気づかれずに盗るのはさ“怪盗”なんだよ』

『でもね、そうじゃないんだ……私たちは“海賊”だから』

『つまり?』

『欲しいものは奪う!取られたら力尽くで奪い返す!それこそ命を懸けてね』

379: 2017/05/31(水) 12:06:24.31 ID:xCSzlyEU.net
『成程…曜ちゃん、カッコいいね海賊!!』

『でしょ!?これからCYaRonは海の荒くれものになるのであります!!』

『了解であります船長!ほら!ルビィちゃんも!』

『えぇっ!?でもルビィは……』

『大丈夫だよルビィちゃん、海賊はね…荒くれものだけど仲間は大切にするんだ』

『だからルビィちゃんが困っていたら、私たちがすぐに助けに行くよ!!』

『全速前進ヨーソロー!ってね!!』



380: 2017/05/31(水) 12:07:04.77 ID:xCSzlyEU.net
ルビィ「──っ!!」

『ルビィちゃん!今がそのときなんだよ!!』

『取られたら力尽くで奪い返す!命を懸けて!!』

『たとえそれが夢の世界でも関係ないっ!』


『今のCYaRonは、ううん……私たちAqoursはルビィちゃんを取り戻しに来た海賊だ!!』

ルビィ「千歌さん、曜さん……!!」

381: 2017/05/31(水) 12:07:42.87 ID:xCSzlyEU.net
ルビィ「ルビィは……!」

『ねえ、ルビィちゃんはどうして私たちがここに来れたと思う?…答えは簡単だよ!』

『それはね、ルビィちゃんの助けてって声が聞こえたから!ね、梨子ちゃんっ!』

『ええ、音を…声を…聞き取るのは得意なのよ私』

382: 2017/05/31(水) 12:08:23.52 ID:xCSzlyEU.net
『それからの進路は私が決めたよ!』

『船の舵取りはこの渡辺曜ちゃんにお任せヨーソロー!』

『たとえ荒波が来ても大丈夫、海のことなら詳しいんだ』

『資金援助等は小原家が完全バックアップよ!』

『そして船の提供は……』


『私たち……黒澤家のものですわ』

383: 2017/05/31(水) 12:09:12.56 ID:xCSzlyEU.net
ルビィ「!お姉ちゃん……」

『あら?何を驚いているのですか、ルビィ?私たちは元々─』

『伝統ある網元の家系でしょう?』

『そう!つまりこの船はルビィちゃんのものでもあるってこと!』

ルビィ「……あっ…」

『おいでよルビィちゃん!一緒に夢を探しに行こうっ!!』

『一人が無理なら皆で見つければいいんだよ!』


ルビィ「みんなで……!」

384: 2017/05/31(水) 12:09:53.33 ID:xCSzlyEU.net
花丸「クスッ……そうと決まれば」

善子「当然、やるわよね!アレを!」

『流石二人とも!わかってるね!』

ルビィ「えっ……アレって…?」



『…号令ーーーーーーー!!』

385: 2017/05/31(水) 12:10:35.96 ID:xCSzlyEU.net
『Aqours!集合ーーーーーーーーー!!』

ルビィ「っ!?千歌さん……」

『番号ーーーーーー!!…1っ!』

『2!』

『3!』

386: 2017/05/31(水) 12:11:06.97 ID:xCSzlyEU.net
花丸「4っ!!」

ルビィ「……」

善子「……」

善子「……5っ!!」

ルビィ「!…善子ちゃんっ……!」

387: 2017/05/31(水) 12:11:45.09 ID:xCSzlyEU.net
『6!』

『7!』

『8!』


ルビィ「……」

善子「ルビィ!」

花丸「ルビィちゃん!」

善子・花丸「みんなが待ってる!!」

388: 2017/05/31(水) 12:12:19.51 ID:xCSzlyEU.net
ルビィ「……っ!みんな……!」

花丸「言ってルビィちゃん!」

善子「これが……最後よ!」


善子「ルビィ、終わらせなさい!他の誰でもない!貴女自身で!!」

389: 2017/05/31(水) 12:12:59.58 ID:xCSzlyEU.net
ルビィ「…………」

ルビィ「ルビィは……」


『─ルビィ、自分の気持ちにだけは嘘をつくのをやめて…そこからは絶対に逃げないで』


ルビィ「……ルビィはっ!!」

ルビィ「…9ーーーーーーーーー!!」

390: 2017/05/31(水) 12:13:46.30 ID:xCSzlyEU.net
花丸「…ルビィちゃんっ!」

善子「フフッ、遅いのよ!全く!」

ルビィ「ごめんなさい二人とも!でも…ルビィやっと決めたよ!」

ルビィ「もう迷わない!今度はルビィがあの子たちの願いを叶えるんだ!」

ルビィ「だってルビィには──」


ルビィ「みんながいるからっ!!」

391: 2017/05/31(水) 12:14:35.15 ID:xCSzlyEU.net
『……うん、やっと揃ったね!よぉーし!それじゃ……!』


花丸「0から!」

善子「1に!」

ルビィ「……Aqoursーーーーーーー!!」


「「「「サーーーンシャイーーーーーーーーーン!!」」」」

392: 2017/05/31(水) 12:15:30.70 ID:xCSzlyEU.net




キラッ




夢善子「……!?…えっ?なに……これ…………」

夢ルビィ「……何もない…真っ白な世界が、色づいていく……」

夢善子「…空が、海が……見える……それに、星が……こんなにも……!」

夢ルビィ「…………綺麗……」

393: 2017/05/31(水) 12:16:16.83 ID:xCSzlyEU.net



三人「!!」


花丸「これって、流星群……?」

善子「凄い数…まるで星の雨ね……」

ルビィ「夜なのに、キラキラ輝いてる……星が…輝かせてるんだ……」

394: 2017/05/31(水) 12:16:47.71 ID:xCSzlyEU.net
花丸「うわぁ…マル、初めて見たずら…」

善子「私も、フフッ……たまにはこういうのもいいわね」

ルビィ「……」


ルビィ「ねえ善子ちゃん」

善子「なに?」

395: 2017/05/31(水) 12:17:29.47 ID:xCSzlyEU.net



夢善子「…でも、どうして?……あの子たちはこっちの世界に入ることは出来ないのに…」

夢善子「それなのに……なんでここまで出来るの……?」

夢ルビィ「…………」

夢ルビィ「…多分さ、理屈じゃないんだよ…こういうのって……」



夢ルビィ「それに、ねえ…感じるでしょ?この愛が」

夢ルビィ「聞こえるでしょ?……この歌が」

396: 2017/05/31(水) 12:18:08.44 ID:xCSzlyEU.net
夢善子「……分かるわよ、私にも…」

夢ルビィ「今……みんながあの子を助けるために願ってた、歌っていた…だから」

夢善子「…想いは一つだけど、一人だけのものじゃない……そしてそれは」

夢ルビィ「たくさんの想いが積み重なって、理屈を超える奇跡に変わるんだよ…きっとね」

397: 2017/05/31(水) 12:18:51.33 ID:xCSzlyEU.net



ルビィ「…この星は、奇跡が連れてきてくれたのかなぁ?」


善子「…………」クスッ

善子「…ルビィ、それは逆よ、星が奇跡を連れてきたの……そう…あの星が、私たちの船だから」

ルビィ「船?…ルビィたちの?」

善子「ええ、だってこれ……」

善子「願いを叶える流れ星なんでしょ?」

398: 2017/05/31(水) 12:19:23.79 ID:xCSzlyEU.net



夢善子「……奇跡、か…本当に起きるものなのね……」

夢ルビィ「そうだね、でもさ……」

夢ルビィ「それくらい、あってもいいでしょ?だってここは──」


夢ルビィ「“夢の世界”なんだから」

399: 2017/05/31(水) 12:20:12.55 ID:xCSzlyEU.net
夢善子「………プッ…アハハハッ!なるほどね!それは確かに」



夢善子「…ロマンチックで、いいじゃないのっ……!」ポロポロ

夢ルビィ「……夢なんて、ロマンがあってなんぼでしょっ……?」ポロポロ

夢ルビィ「……だからみんなっ…生きていけるんだよっ……!」グスッ

夢ルビィ「…だから生きたいって……そう願ってもいいんだよっ!……ね?そうでしょ善子ちゃんっ!」

400: 2017/05/31(水) 12:20:53.30 ID:xCSzlyEU.net



ルビィ「…ねぇ善子ちゃん、ルビィもいつかあの星みたいに…皆みたいに輝けるかな?」

善子「もちろん、私が傍にいるんだもの…出来ないはずないわ」

ルビィ「そっか…そうだね」クスッ

花丸「マルたちもいること、忘れないでほしいずら!」ニコッ

ルビィ「うん、分かってるよ花丸ちゃん!」エヘヘッ

401: 2017/05/31(水) 12:21:25.20 ID:xCSzlyEU.net
善子「─さてと、それじゃあ帰りましょうか私たちの世界へ」

ルビィ「うん!」


ルビィ「……あっ…」

ルビィ「……やっぱりちょっと待って」パシッ

善子「え?」フリムキ

402: 2017/05/31(水) 12:21:56.01 ID:xCSzlyEU.net
ルビィ「……」

花丸「…ルビィちゃん?」


ルビィ「……その前に…ルビィ、二人に言わなくちゃいけないことがあるの」

ルビィ「…聞いてくれる?」

善子・花丸「なに?」

403: 2017/05/31(水) 12:22:34.53 ID:xCSzlyEU.net
ルビィ「うん…あのね、ルビィ二人に嘘ついていたの…ホントはね?本当はずっと……」


ルビィ「……」

ルビィ「…ずっと……!!」フルフル



ルビィ「…帰りたい…って思ってた……!!」ポロポロ

善子・花丸「……!」ジワッ

404: 2017/05/31(水) 12:23:29.64 ID:xCSzlyEU.net
ルビィ「怖かった!もう善子ちゃんにも花丸ちゃんにも会えないんだって思うと怖くて仕方がなかった!!」

ルビィ「でもっ…!あの子のことも放っておけなかったから…だからっ……!」


善子「…ルビィ」ダキッ

ルビィ「善子ちゃん……」

善子「知ってるわよ、ルビィが優しい子なのはちゃんと知ってるから」ポンポン

ルビィ「…ルビィ…ずっと言ってたの……助けて…誰か助けて……って…」ギュゥ

花丸「うん」グスッ

405: 2017/05/31(水) 12:24:21.51 ID:xCSzlyEU.net
ルビィ「そうしたらね、二人が来てくれた…みんなが来てくれた……」


ルビィ「……ぅれし…かった……」ポロポロ

善子「ルビィ…もう大丈夫よ、これからは離れたりしない…ずっと…ずっと一緒だから」ギュッ

花丸「何があってもね、だってルビィちゃんはマルの大切な友達だもん」

ルビィ「善子ちゃん……花丸ちゃん……」グスッ

ルビィ「ありがとう…ルビィ、二人に会えてよかった」ゴシゴシ



ルビィ「みんなに会えてよかった」

406: 2017/05/31(水) 12:25:01.38 ID:xCSzlyEU.net
善子「そう…」フフッ

花丸「そっか…」クス

ルビィ「うん…そうなの」ニコッ



ルビィ「……」

ルビィ「あっ、そうだ…それとね善子ちゃん」

善子「なに?」

407: 2017/05/31(水) 12:26:07.79 ID:xCSzlyEU.net
ルビィ「あのね、さっきの勝負なんだけど…」

ルビィ「ルビィが思ってたよりずっと…ずっと…みんなの想いが強すぎたから……」

ルビィ「ルビィ、負けちゃったよ」ニコッ

善子「…………?」ポカン

ルビィ(ありがとう善子ちゃん…待っててね、ルビィ頑張ってまた貴女に会いに行くからね……絶対の絶対だよ)

ルビィ「だから……またね」クルッ







『─ええ…お疲れ様、ルビィ』


……


408: 2017/05/31(水) 12:26:54.82 ID:xCSzlyEU.net



ルビィ「…………」




ルビィ「……ん……」パチ

409: 2017/05/31(水) 12:27:27.94 ID:xCSzlyEU.net
千歌「あっ……」

曜「目を……覚ましたっ……」

梨子「体温も、戻ってるわね…」



ルビィ「…千歌、さん?……曜さん……梨子さんも……」ポーッ

410: 2017/05/31(水) 12:28:09.49 ID:xCSzlyEU.net
千歌・曜「─ルビィちゃんっ!!」ダキッ


ルビィ「わわっ……どうしたんですか…?」

千歌「よかった…本当によかったよぉ……!!」ポロポロ

曜「もう会えないかと思ってた……!ルビィちゃん…!!」ポロポロ

梨子「おかえりルビィちゃん、二人とも凄く心配してたのよ?…でもよかった、元気になって」グスッ

411: 2017/05/31(水) 12:28:44.41 ID:xCSzlyEU.net
ルビィ「……」



ルビィ「……あぁ…そっか、ルビィ…」




ルビィ「帰ってきたんだ……」


善子「そういうことね」フフッ

花丸「起きてくるのが遅かったから、ちょっとだけ心配だったけど」ニコッ

ルビィ「善子ちゃん、花丸ちゃん…」

412: 2017/05/31(水) 12:29:30.19 ID:xCSzlyEU.net
鞠莉「まあ、善子ならやってくれるって私は信じていたけどね?」

果南「鞠莉、泣きながら言っても説得力ないよ?」グスッ

鞠莉「うるさいわね、仕方ないじゃない……」ポロポロ

ルビィ「鞠莉さん、果南さん……」

「果南さん、からかうのはそれくらいにしてあげてください」




ルビィ「…………あっ……」

413: 2017/05/31(水) 12:30:01.51 ID:xCSzlyEU.net
ダイヤ「……」スタスタ

ルビィ「お姉ちゃん……」

ダイヤ「……」


ルビィ「あの、ルビィは……」


─パアンッ!

414: 2017/05/31(水) 12:30:41.83 ID:xCSzlyEU.net
ルビィ「……ぃた……」


花丸「ダイヤさん……」

ダイヤ「眠気覚ましですわ」

ダイヤ「…ルビィ、貴女自分がどれほど周りに迷惑をかけたか分かっているんですか?」

ダイヤ「どれほど皆さんを心配させたと思っているんですか」

415: 2017/05/31(水) 12:31:38.48 ID:xCSzlyEU.net
ルビィ「…お姉ちゃん……」

ダイヤ「少しは恥を知りなさい」

ダイヤ「貴女の我が儘で、誰かを巻き込むのはやめて」

ダイヤ「分かった?」



ルビィ「……はい」

ダイヤ「……」

416: 2017/05/31(水) 12:33:02.57 ID:xCSzlyEU.net
ダイヤ「…………でも」

417: 2017/05/31(水) 12:34:02.45 ID:xCSzlyEU.net
─ダキッ


ルビィ「……!」

ダイヤ「…………ルビィ」

ダイヤ「無事で…よかった……っ!!」ポロポロ

ダイヤ「生きていてくれて…本当によかった………!」


ルビィ「お姉ちゃん……!」

ルビィ「……ごめん…なさいっ……!」ポロポロ


……


418: 2017/05/31(水) 12:35:10.69 ID:xCSzlyEU.net



鞠莉「─さて、それじゃあルビィも戻ってきたわけだし、今日はウチでパーティーね!!」

千歌・曜「おぉー!!」キラキラ

梨子「え…でも、いいんですか?」

果南「気を遣わなくたっていいよ、それに今日は特別な日なんだからこれくらいはね?」

鞠莉「そういうこと!!ほら、梨子もこっち来て!」グイグイ

梨子「わわっ、鞠莉さん!?」

419: 2017/05/31(水) 12:36:06.14 ID:xCSzlyEU.net
ダイヤ「……やれやれ、一息ついたかと思えばこれですか…」

花丸「みんなせわしないずら」

ダイヤ「全くですわ……しかし」

花丸「マルたちも同じだから人のこと言えないよね?ダイヤさん」

ダイヤ「フフッ、そうですわね……行きましょうか花丸さん」スタスタ

花丸「うん…善子ちゃん、ルビィちゃん、二人も早く来てね!」スタスタ

善子「ええ」

ルビィ「うん!すぐ行くよ!」

420: 2017/05/31(水) 12:36:51.90 ID:xCSzlyEU.net
─シーン…


善子・ルビィ「……」

ルビィ「…みんな行っちゃったね」

善子「そうね」

善子・ルビィ「……」


善子「……ルビィ」

ルビィ「なに?善子ちゃん」

421: 2017/05/31(水) 12:37:28.55 ID:xCSzlyEU.net
善子「終わったわね」

ルビィ「そうだね、終わっちゃった」

ルビィ「……」

ルビィ「…………善子ちゃん」

善子「ん?」

422: 2017/05/31(水) 12:38:05.14 ID:xCSzlyEU.net
ルビィ「一緒に頑張ろうね、またすぐにあの子たちに会えるように」

善子「……ええ、勿論よ」


ルビィ「それで次会ったら…たくさん、たくさん思い出を話すの」

善子「そうね、きっとあの子たちもそれを楽しみに待ってるわ」

ルビィ「だから、ルビィもっともっと頑張るね?」

善子「ええ、あの子たちを驚かせてやりましょう?私たちはこんなに凄いことをやってきたんだってね」

ルビィ「えへへっ、そうだね!」

423: 2017/05/31(水) 12:38:41.00 ID:xCSzlyEU.net
善子「クスッ…じゃあ、そろそろ行きましょうか」スッ

ルビィ「うん」

善子「……いや、ちょっと待って」クルッ

ルビィ「……善子ちゃん?」



善子「……ねえ、ルビィ」ギュ

ルビィ「……なに?」ギュ

424: 2017/05/31(水) 12:39:16.38 ID:xCSzlyEU.net
善子「お帰りなさい」ニコ

ルビィ「!」

ルビィ「……うん」


ルビィ「ただいま、善子ちゃんっ!」ニコッ

425: 2017/05/31(水) 12:39:58.19 ID:xCSzlyEU.net
─かくして約一ヶ月に及んだ一連の夢現騒動は、白く澄み渡った夜明けと共に終わりを告げ…


やがて太陽が天に昇るころ、その眩しさを目に焼きつけながら…私たちはようやく普通の日常に帰ってこれたのだと、そう強く実感した

426: 2017/05/31(水) 12:40:39.46 ID:xCSzlyEU.net
善子「─はずだったのよ……そのはずなのに」

ルビィ「うん…」


善子「なんで私たち…またこの世界に来てるわけ?」

ルビィ「も、もしかして…まだ何か問題があったんじゃ……」


「それは違うよ」

「私たちが呼んだの」

善子・ルビィ「!?」フリムキ

427: 2017/05/31(水) 12:41:22.60 ID:xCSzlyEU.net
夢ルビィ「二人とも、元気そうで何よりだねぇ」エヘヘ

夢善子「…まあ、まだ精神に問題があったら、ここへ呼んだりなんかしないけどね」

夢ルビィ「アハハ、それもそっか」


善子「あんた……それにその隣にいるのって…!」

ルビィ「あわわ…ルビィがもう一人いるよぉ!?」

428: 2017/05/31(水) 12:41:52.51 ID:xCSzlyEU.net
夢ルビィ「え?分かってたことじゃん?」

夢善子「何をそんなに驚いているのよ?」

善子「それはそうだけど!!」

ルビィ「でももう一人の自分に会うだなんて、分かっててもビックリするよ!?」

429: 2017/05/31(水) 12:42:23.62 ID:xCSzlyEU.net
夢ルビィ「まぁまぁ二人とも落ち着いて、そんなに慌てないでよ」

善子「いや無理に決まってるでしょ!」

夢善子「なら無理やりにでも落ち着かせなさい」

ルビィ「滅茶苦茶だよ!」

430: 2017/05/31(水) 12:43:05.90 ID:xCSzlyEU.net
夢ルビィ「滅茶苦茶かぁ……」アハハ

夢善子「そうは言ってもねえ…さっさと切り替えないと話が進まないでしょうが」

夢善子「はぁーっ…全く、時間は限られているっていうのに…」タメイキ


善子・ルビィ「……え?」

善子「……ちょっと待って、話?…ということは」

ルビィ「もしかして…そのためにルビィたちを?」

431: 2017/05/31(水) 12:43:43.57 ID:xCSzlyEU.net
夢ルビィ「うん、二人に話さなくちゃいけないこと…まだあるからさ」

夢善子「こうして呼んだわけ」

善子・ルビィ「……」


善子「成程ね……まあ大体理解はしたわ、けど…」

ルビィ「でも、ルビィが二人で善子ちゃんも二人でしょ?これじゃあ、こんがらがって分かりづらいよ…」

432: 2017/05/31(水) 12:44:32.23 ID:xCSzlyEU.net
夢善子「ああ、確かにそれもそうね」

夢ルビィ「なら元の姿に戻っちゃおうか、この際だから」

ルビィ「…元の、姿?」

善子「えっ……ま、待って!じゃああんたたちの本当の姿ってもしかして!?」


夢善子「ええ、私たちは元々──」スゥッ

夢ルビィ「二人で一つ、なんだよ──」フワッ

433: 2017/05/31(水) 12:45:13.24 ID:xCSzlyEU.net
─ピカッ


?「……」シュゥゥッ

善子「なっ、融合!?」

ルビィ「ふ、二人が合体しちゃった!?」

少女「…ふぅーっ、これでよしっと……」

434: 2017/05/31(水) 12:46:07.00 ID:xCSzlyEU.net
少女「ね?これで大分紛らわしくなくなったでしょ?」ニコッ





善子・ルビィ「……」


善子「ルビィ…なんか私、頭おかしくなりそうだわ……」

ルビィ「うん、ルビィも……」

435: 2017/05/31(水) 12:46:48.11 ID:xCSzlyEU.net
少女「……うーん、まあちょっと受け入れられないかもしれないけどさ」

少女「頑張って受け入れて?」

善子「いやいや冗談きついわよ…………っていうか……えっ!?」


善子「…ちょっとあんた、その声─!」

少女「声?」

ルビィ「…あーっ!思い出した!」

少女「なにが?」キョトン

436: 2017/05/31(水) 12:47:24.76 ID:xCSzlyEU.net
善子「しらばっくれるんじゃないわよ!その声、私が最初に夢の中で聞いた声じゃないの!」

ルビィ「ルビィも同じだよ!ルビィが最初に聞いた声、確かこんな感じだった!」

善子「はぁーっ…通りで、最初に夢の中のルビィと会ったときに違和感を覚えたわけだわ……」

ルビィ「あの時の声ってあなたのだったんだね……」


少女「あちゃーバレちゃったか……」タハハ

437: 2017/05/31(水) 12:48:27.61 ID:xCSzlyEU.net
少女「…そうだよ、あなた達を呼んだのは私」


少女「これが私の……本当の姿だよ」ニコッ





─P.S. 夢現生活、26日目

443: 2017/06/01(木) 12:55:47.83 ID:7k2MqaDO.net



ルビィ「やっぱり……」

善子「…だったら分からないことがあるわね」

善子「……ねえ、どうしてわざわざ二人の姿に分けたの?」

少女「二つの場所に一人分の体を同時に存在させる…なんてこと出来ないからね」

少女「二人と関わるためには、こうするしかなかったの」

ルビィ「…じゃあ、ルビィたちの性格がちょっとだけ違ったのは?」

444: 2017/06/01(木) 12:56:28.37 ID:7k2MqaDO.net
少女「急いで分けたから私の性格の配分が極端になっちゃったのかもね」

少女「流石に二人そろって同じ時間帯に来る…なんて予想できなかったし」

ルビィ「そう、だったんだね……」


善子「……聞きたいことはまだあるわよ、あんた前に言ったわよね…こっちからは呼びかけることしか出来ないって」

少女「うん」

善子「なのに今日あんたは私たちの意思に関係なく、私たちをこの世界に連れてくることが出来た……どうして?」

445: 2017/06/01(木) 12:57:12.11 ID:7k2MqaDO.net
少女「…確かに善子ちゃんの言う通り、私には二人を連れてくるなんてことは出来ないよ……基本的には、ね」

少女「けど今回のは特別、一回だけ私の意思であなた達を連れてこられるの」

善子「だったらどうしてあの時……「これをやるとさ」

少女「さよならすることになっちゃうから」

ルビィ「え……?」

善子「は……?」



少女「だから出来なかったんだ…二人にちゃんと全てを伝えるその時まで……」

446: 2017/06/01(木) 12:57:52.31 ID:7k2MqaDO.net
善子「……待ちなさいよ…私たちはつい昨日……」

少女「分かってるよそれくらい……だけどさ」

少女「正直なところ、私も力を使いすぎたの……はっきり言って、いつまでこの世界に留まれるか分からない」

少女「だから二人を呼んだの、どうせ消えるならその前に言いたいこと全部言わなきゃって」


善子・ルビィ「……」

447: 2017/06/01(木) 12:58:43.15 ID:7k2MqaDO.net
ルビィ「……分かったよ、話して」

善子「ルビィ……」

ルビィ「…だって、それが今のルビィたちに出来ることだから……」

善子「…………そうね」


少女「…ありがとう二人とも」

448: 2017/06/01(木) 12:59:25.01 ID:7k2MqaDO.net
少女「じゃあ、まずは二人に謝らせてほしいの」

少女「私のワガママで、こんなことに巻き込んでしまって…本当にごめんなさい」

善子・ルビィ「……」


善子「……何言ってんのよ、元々は私たちの儀式が原因でしょ」

ルビィ「それにあなたはルビィに散々注意してくれたよ?だから謝らないで、悪いのはルビィの方だから」

449: 2017/06/01(木) 13:00:08.49 ID:7k2MqaDO.net
少女「……そっか、うん…でもね、やっぱり謝っておきたかったの」

善子「……律儀なのね」

少女「…遺伝じゃない?きっと」

善子「?」

少女「ま、それはいいか……」

450: 2017/06/01(木) 13:00:49.70 ID:7k2MqaDO.net
少女「……さて、それじゃ謝罪も済んだことだし答え合わせにいこうか」

少女「さぁ、なんでも質問どうぞ」

善子「なら、そうね…あんたの目的は何だったの?」

少女「目的?」

善子「ええ…私たちを呼んで、あんたは何がしたかったの?」

少女「……ああ、それならもうとっくに答えてるよ」


善子「え?」

少女「二人とお話しがしたかったの」

451: 2017/06/01(木) 13:01:36.08 ID:7k2MqaDO.net
善子「…いや、確かに言ってたけど…話しがしたかったって…」

ルビィ「それだけ……?」

少女「うん」

善子「……本当に?」

少女「どうしてそんなに不思議そうなの?」

善子「……だってそれは……」

ルビィ「他にも何かあると思ってたから…」

452: 2017/06/01(木) 13:02:25.13 ID:7k2MqaDO.net
少女「……もしかして二人とも、私の目的がちっぽけなものだと思ってる?」

善子・ルビィ「……」

少女「…まあその気持ちもわからなくはないけどさ……だけど」

少女「……」


少女「…ねえ、知りたいと思う心ってそんなに小さなことかな?」


少女「私にとって大切な二人のこと……もっと知りたいって思うのは…大事なことでしょ?」

453: 2017/06/01(木) 13:02:58.62 ID:7k2MqaDO.net
少女「善子ちゃん、謎っていうのはさ…どうしても知りたくなるものなんでしょ?」

善子「……」

少女「ルビィ、言ったよね?ちゃんと話がしたいからそうしているんだって」

ルビィ「……」

454: 2017/06/01(木) 13:03:52.87 ID:7k2MqaDO.net
少女「私はね、私の知らない二人を知りたかった……本当にただそれだけなの」

少女「……二人が一体どんな人間なのか、気になったから……だって私は──」

善子・ルビィ「……?」


少女「……私は……」





少女「……ごめん、やっぱりこれだけは言えない……」

455: 2017/06/01(木) 13:05:13.95 ID:7k2MqaDO.net
善子「……全部話すって言ったわよね?」

少女「……そうだけど、この一線だけは越えちゃいけないの」

善子「……」



少女「…………でもね」

少女「そのヒントなら、教えてあげられるかな…」

456: 2017/06/01(木) 13:06:06.46 ID:7k2MqaDO.net
ルビィ「…ヒント?」

少女「うん、それは前に私が答えをぼかしたやつなんだけど……」

少女「ここまで来るのに色々ありすぎて…二人とも、もう忘れちゃったみたいだね」

ルビィ「……答え?ルビィたち、前にその質問をあなたにしたことがあるの?」

善子「ねえ……その質問って、なに?」

少女「…それはね……」


少女「最初に私が名前を言えなかった理由だよ」

457: 2017/06/01(木) 13:06:47.21 ID:7k2MqaDO.net
善子・ルビィ「……あっ……」

ルビィ「そういえば…」

善子「確かに…どうして今までずっと言わなかったのよ」

少女「……」クスッ

少女「どうしても言えなかったんだよ、だって私の名前は──」


少女「まだ決まっていなかったんだから」

458: 2017/06/01(木) 13:07:51.29 ID:7k2MqaDO.net
善子「……決まってなかった…?」

ルビィ「…え?それって……どういうこと?」

少女「ほら、最初に言ったでしょ?私は…あなた達の願いから“産まれた”存在なんだって」


善子「…意味分からないわよ」

少女「うーん、そんなに難しいことかなあ?ねえ…そもそも二人はさ、願いってなんだと思う?」

459: 2017/06/01(木) 13:08:45.00 ID:7k2MqaDO.net
善子「それは……」

ルビィ「ルビィたちがこうなりたいって思うことでしょ?」

少女「惜しいね、ここでの願いはそれだけじゃないの…こうなりたい、だけじゃないんだよ」

ルビィ「……違うの?」

少女「うん、だってさ…願いって──」

少女「近い将来、こうなったらいいな…って意味も含まれてるでしょ?」

善子・ルビィ「……!」

460: 2017/06/01(木) 13:09:37.81 ID:7k2MqaDO.net
少女「気付いたみたいだね」

少女「そう、私は…近い“未来”にそうなって欲しいという二人の願いから産まれてきたんだよ」

少女「これが私の真実」


善子「!それって……あんた、まさか…!」

ルビィ「ルビィたちの……!」

461: 2017/06/01(木) 13:10:30.01 ID:7k2MqaDO.net
少女「ストップ、それ以上は言っちゃだめ」

ルビィ「な、なんで……?」

少女「さっきも言ったよ、この一線だけは越えちゃいけない」

少女「現実ではまだ決まったわけじゃないからさ、一応ね……」

少女「それにこれも言ったはずだよ?私はまだ何者でもないって……今ね、それを口にすると流石にちょっと不味いから」

少女「だから今は、あなた達の心の中だけに留めておいて」

462: 2017/06/01(木) 13:11:23.82 ID:7k2MqaDO.net
善子「……分かったわよ…だけど……」


善子「……だけど……」


善子「それなら尚更さよならなんてしたくないわよ!!」

少女「……」

ルビィ「善子ちゃん……」

善子「私だって分かってるわよもう無理だってことくらい!でも気持ちを抑え なんて…そんなの出来るわけないでしょ!!」

463: 2017/06/01(木) 13:12:02.63 ID:7k2MqaDO.net
善子「あんた、いつかはまた会えるって言ってたわよね!?なによ!最後の最後であんたは私に嘘つくの!?」ポロポロ

少女「……」

善子「答えなさいよ!」



少女「…嘘じゃないよ」

少女「私は善子ちゃんに嘘はつかない」

464: 2017/06/01(木) 13:13:11.35 ID:7k2MqaDO.net
善子「なら……!」

少女「ねえ善子ちゃん、私が言ったさよならは夢の世界のほうだよ?」

善子「!」

少女「善子ちゃん…私は信じてる、夢だけじゃなくて現実の世界にも奇跡は起きるんだって」

善子「奇跡……?」

少女「うん、だって現実には──」

少女「奇跡を起こせるスクールアイドルがいるんだよね?」


善子・ルビィ「……っ!」

465: 2017/06/01(木) 13:14:10.79 ID:7k2MqaDO.net
少女「ねえ、二人はさ…スクールアイドルなんでしょ?」

少女「だったらもう一度私に見せてよ…奇跡が起きる瞬間を」

少女「今度はここじゃないどこかで」



少女「私にも、夢見させてよ」

善子・ルビィ「……」

466: 2017/06/01(木) 13:15:08.41 ID:7k2MqaDO.net
ルビィ「……ぅん……うん!」グスッ


ルビィ「分かったよ!ルビィ頑張る!頑張って頑張って奇跡を起こして!いつかあなたに会いに行く!!」ダキッ

ルビィ「だからルビィもさよならなんて言わないよ!」

少女「ルビィ……ありがとう、私待ってるからね」

ルビィ「絶対だよ!?絶対にまた会いに行くから!」ギュゥ

少女「うん、分かってるってば」ニコッ

467: 2017/06/01(木) 13:15:44.20 ID:7k2MqaDO.net
善子「……」

少女「…ねえ、善子ちゃんのほうは私に何か言いたいこととかないの?」


善子「…………そうね」

善子「じゃあ一個だけ」ポン

少女「……」

少女「…なあに?」

468: 2017/06/01(木) 13:16:25.61 ID:7k2MqaDO.net
善子「今度は……今度は私たちが貴女を迎えに行くから……必ずね……だから、その時が来るまでちゃんと待ってなさいよ」

善子「分かった?」ホホエミ



少女「…」

少女「……分かった、約束ね」ユビキリ

善子「フフッ、ええ…約束」ユビキリ

469: 2017/06/01(木) 13:17:12.06 ID:7k2MqaDO.net
─スゥーッ


善子「!なにこれ…急に……」

ルビィ「ルビィたちの身体が…透けてる……」

少女「…そろそろ限界みたいだね」

少女「それじゃ…最後の最後にもう一つだけ」

少女「ルビィ、善子ちゃん…今までありがとう、楽しかったよ」ニコッ


ルビィ「…うんっ!ルビィもあなたと会えて本当に楽しかった!」ニコッ

善子「私もね、いい思い出が出来たわ」クスッ

少女「そっか…嬉しいな」

470: 2017/06/01(木) 13:17:44.13 ID:7k2MqaDO.net
少女「ねえ、約束…忘れないでね」

善子「フフッ、当然」

ルビィ「絶対に忘れないよ!」

少女「そう、それなら安心だね」

少女(これで私も…ようやく眠れそう……)

471: 2017/06/01(木) 13:18:34.98 ID:7k2MqaDO.net
少女「それじゃあ二人とも…お元気で」

善子「ええ、また会いましょう……」スーッ

ルビィ「バイバイ!……」スーッ

少女「……うん」ニコッ










──またね、お母さん。

472: 2017/06/01(木) 13:19:19.23 ID:7k2MqaDO.net
……




善子・ルビィ「……ん…………」パチ

善子・ルビィ「……朝……」


ルビィ「……帰ってきたんだね」

善子「……そうみたいね」

473: 2017/06/01(木) 13:20:15.92 ID:7k2MqaDO.net
七人「…………」スゥースゥー

ルビィ「みんなはまだ寝てるみたい」

善子「そう……ねえルビィ」

ルビィ「ん?」


善子「ちょっと外に出ましょうか」ニコ

474: 2017/06/01(木) 13:21:04.16 ID:7k2MqaDO.net
─スタスタ


善子「潮風が気持ちいいわね……こうしていると心がスッキリするみたい…」

ルビィ「そうだね」

ルビィ「……」

ルビィ「善子ちゃん」

善子「なに?ルビィ」


ルビィ「また頑張らなきゃいけない理由が増えちゃったね」ニコッ

善子「ええ、そうね」フフッ

475: 2017/06/01(木) 13:21:41.77 ID:7k2MqaDO.net
ルビィ「でもね、ルビィはなんだかそれが凄く嬉しいの」

善子「私も、希望って言えばいいのかしらね…こういうのって」

ルビィ「うん、きっと……」

善子「……」

善子「ルビィ」

ルビィ「なに?」

476: 2017/06/01(木) 13:22:08.63 ID:7k2MqaDO.net
善子「……思えば儀式のときから不思議なことばかり起きたわよね」

ルビィ「うん、本当に色々あったね」

善子「でもそれが今一つに繋がって、こうして私たちの希望になっている」


ルビィ「……そうだね」

477: 2017/06/01(木) 13:22:46.30 ID:7k2MqaDO.net
ルビィ「……」

ルビィ「ねぇ善子ちゃん、ルビィ気になる事があるの」

善子「何かしら?」

ルビィ「ルビィたちとあの子を会わせてくれた儀式の……魔術の名前って一体何だったんだろうって」

善子「……」

ルビィ「善子ちゃん、分かる?」

478: 2017/06/01(木) 13:23:34.96 ID:7k2MqaDO.net
善子「…ううん、分からない…儀式は魔術書を参考にしたんだけど」

善子「…そこだけ結構ボロボロで、あまり読めなかったのよ」

善子「だから本来の術名は私にも分からないわ」


ルビィ「…そっか」

479: 2017/06/01(木) 13:24:34.30 ID:7k2MqaDO.net
善子「……」

善子「……ただ」

ルビィ「え?」

善子「…もし、私がこの魔術に名前を付けるとするなら……そうね」





善子「─“未来通信”ってところかしら」

486: 2017/06/02(金) 02:37:17.74 ID:ctCrTvAY.net
……







─それから時は過ぎ……十年後

487: 2017/06/02(金) 02:38:00.26 ID:ctCrTvAY.net
─黒澤家


花丸「ふぅ…落ち着くずらあ……」ズズッ

ダイヤ「そうですわね……」コトン

ダイヤ「……」

ダイヤ「……花丸さん」

花丸「なに?ダイヤさん」

ダイヤ「あれからもう五年が経つのですね……」


花丸「……うん、早いね…」

488: 2017/06/02(金) 02:39:01.74 ID:ctCrTvAY.net
ダイヤ「今でも鮮明に思い出せますわ…ルビィが成人式を迎えたすぐその後」

花丸「善子ちゃんがルビィちゃんを嫁に迎えて連れていっちゃったんだよね」

ダイヤ「…ええ、全く……あの後黒澤家は大騒ぎだったんですのよ?」ハァーッ

花丸「でもみんなが…特にダイヤさんが頑張って説得してくれたから特に大事にはならなかったずら」

ダイヤ「ルビィも善子さんも必死に食らいついてましたからね……それに」

ダイヤ「……あの子たちの熱意は本物でした…私に出来るのはそれを支えることだけですから」ズズッ

花丸「……そっか、やっぱりダイヤさんは凄いね」

489: 2017/06/02(金) 02:39:58.05 ID:ctCrTvAY.net
花丸「……」

花丸「……ねえダイヤさん」

ダイヤ「はい」

花丸「マルね…今でもたまに思うことがあるんだ」

ダイヤ「何を、ですか?」

490: 2017/06/02(金) 02:40:31.01 ID:ctCrTvAY.net
花丸「もしかしたら、あのとき二人が見ていたのは夢じゃなくて二人の理想だったんじゃないかなって」

ダイヤ「……」

花丸「だから二人はきっと…それを叶えるためにここから離れたんだと思うよ?」


ダイヤ「……ええ、そうかもしれませんね」クスッ

491: 2017/06/02(金) 02:41:31.02 ID:ctCrTvAY.net
花丸「フフッ、そうだよ……きっとそう…」

花丸「ルビィちゃんも善子ちゃんも本当に強くなったずら」

ダイヤ「ええ、少なくとも…黒澤家というしがらみに囚われることはないくらいに」

花丸「そこは経験が活きたのかな?」

ダイヤ「どうでしょうかね、それこそ夢の話ですから」

花丸「……だからかもね、多分…二人なりに形として残したかったのかも」


花丸「現実に……自分たちが体験した夢の軌跡をね」

ダイヤ「……成程、それは流石に思い浮かびませんでしたわ」

492: 2017/06/02(金) 02:42:28.37 ID:ctCrTvAY.net
ダイヤ「しかし…だとすれば、もうすぐそこまで来ていることでしょうね」

花丸「うん、理想が現実に変わる……その瞬間が」



─ピロンッ



花丸「……ん?お知らせ?」

ダイヤ「あら?同時に着信ですか……珍しいですね」

花丸「そうだね、一体何だろう…………あっ…」

ダイヤ「…あらまあ……」

493: 2017/06/02(金) 02:42:55.84 ID:ctCrTvAY.net
花丸「ダイヤさん……これって…」

ダイヤ「ええ……」



ダイヤ「噂をすれば影が差す……フフッ、おめでたいですわね」

494: 2017/06/02(金) 02:43:45.16 ID:ctCrTvAY.net



善子「…ルビィ、気分はどう?……悪くない?」

ルビィ「ううん、でも…結構疲れちゃった……」

善子「そう、お疲れ様…ルビィ」

ルビィ「ありがとう、よっちゃん」ニコッ


善子「…あの、それで……どっちだったの?」

ルビィ「クスッ、分かってるくせに……」

495: 2017/06/02(金) 02:44:18.02 ID:ctCrTvAY.net
善子「……そっか、そうなのね…」

ルビィ「うん…そうなの」ニコッ

ルビィ「……」

ルビィ「ねえ、よっちゃん」

善子「なに?」

496: 2017/06/02(金) 02:44:54.01 ID:ctCrTvAY.net
ルビィ「やっとここまで来たね」

善子「……ええ」



ルビィ「…あっ、そうだ…何かいい名前、あった?」

善子「そうね…決めているものが一つだけ」

497: 2017/06/02(金) 02:45:31.64 ID:ctCrTvAY.net
ルビィ「ふーん…それって大丈夫なの?」

善子「大丈夫よ、前回の反省をちゃんと活かしているんだから」

ルビィ「フフッ…そっか」

善子「そうよ、これでも結構考えたのよ?」



善子(今思い返してみれば…多分、あの時からずっと……)

498: 2017/06/02(金) 02:46:37.29 ID:ctCrTvAY.net



『ふーん、そう……なら』

『……よし、決めた!』

『この堕天使ヨハネが今から貴女に名前を授けてあげるわ!』



499: 2017/06/02(金) 02:47:07.99 ID:ctCrTvAY.net
善子(あれから随分と長くなってしまったけれど……)

善子(でもね…あのときの約束、今でもずっと覚えているのよ)

善子(いつか貴女に聞かせてあげたいってそう願ってたから)


善子「遅くなってごめんなさい…でも、ようやく迎えに来れたわ」

500: 2017/06/02(金) 02:47:59.65 ID:ctCrTvAY.net
ルビィ「喜んでくれるかな?」

善子「ええ、きっと──」


だから今、貴女にあげるね

これは私たちが貴女に送る、最初の素敵なプレゼント。


善子「──ねえ、受け取ってくれる?」

501: 2017/06/02(金) 02:48:34.22 ID:ctCrTvAY.net
「貴女の名前は────」

502: 2017/06/02(金) 02:49:23.90 ID:ctCrTvAY.net
──








人は、夢を見る

503: 2017/06/02(金) 02:49:55.02 ID:ctCrTvAY.net
「…えー、今日からこのクラスに転校生がやって来ます」


たとえ幼くともそれは大きく…たとえ衰えどもそれは変わらず

いつまでも、心の中にあり続ける

504: 2017/06/02(金) 02:50:39.41 ID:ctCrTvAY.net
「みんな仲良くするように、それじゃ自己紹介お願いね」


だけど人は、どうやって夢を残すだろうか…どうやって夢を与えるだろうか…

私はこう思う…聞こえるまで、届くまで、歌い続けるだけだと

かつてのあの人達がそうしたように──


「はいっ!」

505: 2017/06/02(金) 02:51:13.82 ID:ctCrTvAY.net
想いは受け継がれる……愛の歌を知った子は期待を胸に抱きながら

自分自身の新たな夢を、この世界で探していくの

そしてこれは…きっとその第一歩


「皆さんはじめまして!」

506: 2017/06/02(金) 02:52:04.84 ID:ctCrTvAY.net
人は、夢を見る





人に、夢を語る

507: 2017/06/02(金) 02:52:46.64 ID:ctCrTvAY.net
少女「私の名前は──!」




そうして物語は続いていくんだ。

508: 2017/06/02(金) 02:53:09.86 ID:ctCrTvAY.net
─“未来”に向かってね。

509: 2017/06/02(金) 02:53:55.14 ID:ctCrTvAY.net
終わりです。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました

510: 2017/06/02(金) 03:06:34.30 ID:DtduTeNh.net

久しぶりに良いものが読めた

513: 2017/06/02(金) 06:21:34.44 ID:ya61weab.net
これはいいな
ずっと見ていたい世界観だわ

514: 2017/06/02(金) 06:27:33.32 ID:Gz6DWtOT.net
完走乙!
まさに近未来ハッピーエンドで待ってるよって感じだ
名前を想像する余地をもたせるのも良きかな~

520: 2017/06/02(金) 22:31:26.43 ID:VH7mdOwM.net
乙乙
なにこれめっちゃ泣ける

522: 2017/06/03(土) 18:16:48.77 ID:giVNMckF.net
おつおつ
最高の物語ありがとう

引用元: undefined

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