【SS】梨子「堕天使と夜明け」【ラブライブ！サンシャイン！！】

よしりこ「「……」」

梨子「……で、何？」

善子「申し訳ないっ！」

梨子「バスを逃したから私の家に泊まるって……」

善子「フッ、移動手段を逃したのはきっと天界からの妨害、何か深いワケが……」

梨子「まあ、私はいいけどね。善子ちゃん」ﾌﾌｯ

善子「そう言ってくれると思ったわ！　さすが我がリトルデー……ヨハネよ！」

「……」

善子「お、お泊まり会みたいなものかしら……？」

梨子「そ、そうね……」

梨子（こ、こうやって二人きりでいると……）

善子（いつも話してるのに、ちょっと緊張する……）

「「あ、あのっ……」」

梨子「……善子ちゃんからどうぞ？」

善子「ヨハネ。リリーからでいいわよ」

梨子「リリー禁止って言ったわよね？　それより、善子ちゃんから……」

善子「ヨハネ。若干リリーの方が早かったし……」

梨子「リリーは禁止！　善子ちゃんの方がちょっと早かったわ！」

善子「ヨハネ！　だーっ！　リリーの方が早かったって！」

梨子「善子ちゃん！」

善子「リリー！」

よしりこ「むむむ……」

梨子「……はあ。わかった、私から言うわ」

善子「そうそう、それでいいの。それで？」


梨子「本当に大したことじゃないんだけど……前に、運命について話したことは覚えてる？」


善子「見えない力はあると思う、そう言ってたわね」

梨子「そう。それでね」

善子「なによ」


梨子「今こうして二人でいるのも、きっと、見えない力が働いたんじゃないかなって……」

善子「り、こ……」

梨子「ほら、今日の善子ちゃんは盛大につまずいて転んで、バスを逃したでしょう？」

善子「うぐ……そ、その話は……」

梨子「あの時、善子ちゃんの足元に大きな石が転がっていなければ、きっとこうはならなかった」

善子「……」

梨子「善子ちゃんはあの時『不幸だ』って言ってたけど」

梨子「私は――今この時間を作ってくれたあの出来事を、幸運ととらえることもできるんじゃないかって……そんなことを思ったの」

善子「フッ、なるほど」

梨子「えっ？」

善子「つまりリリーは、この堕天使ヨハネと共に過ごす時間を幸せなものととらえていると……」

梨子「ええ、そんなところ」ｸｽｯ

善子「……少しは照れなさいよ」ﾎﾞｿｯ…

梨子「それで、善子ちゃんは？」

善子「ヨハ……はあ、もういいわ。私が言いかけたことは……」

善子「その、梨子のピアノが聴きたいなってふと思って……」

梨子「私の？」

善子「た、ただのわがままよ。無理そうなら諦めるけど」

梨子「……いいの。一応リトルデーモンってことになってるしね、弾いてあげる」

善子「一応って……じゃあ、ありがたく聴かせてもらうわ」

梨子「うんっ」

ｶﾞﾀｯ…

梨子「……ふ～っ……」

善子「ねえ、梨子。今もこういう時って緊張するの？」

梨子「ちょっとね。でも、善子ちゃんやみんなといるうちに、少しずつ楽に弾けるようになってきた気がする」

善子「そ、そう。それなら良かったけど……」

梨子「じゃあ、弾くね」

善子「ええ」

…ﾀﾝ､ﾀﾗﾗﾝ♪

善子（……）

～♪

…ﾀﾝ♪

梨子「はい、おしまい」

善子「綺麗なメロディね」

梨子「ふふっ、ありがとう」

善子「……ま、まあ？　私が本気を出せばこのくらいは弾け」

梨子「……ピアノを甘く見てるでしょ」ｼﾞﾄｰ

善子「……ごめんなさい」

梨子「わかればよろしい。さ、今日はお風呂に入って寝よっか？」

善子「え～っ！？　もうちょっと遊んだりお話したり……」

梨子（こ、こういうところは子供っぽい……）

梨子「……まあ、でもそうかも。せっかくだし、もうちょっと起きてても……」

善子「よっし！　じゃあさっそくゲームでも……」

梨子「ゲーム！？　善子ちゃんに勝てるわけないじゃない！？」

善子「だからやるのよ！」

梨子「……わかった、そのかわり私が勝つまで寝ないわよ！」ﾋﾞｼｯ

善子「どんとこいよ！」

…

……

梨子「……ん……」ﾊﾟﾁｯ

梨子（そっか、あの後寝て……）

善子「ぐ～……すぴ～……ふ、ふふふ……」

梨子「……ふふっ。え～っと……今の時間は……まだこんな時間？」

梨子「早く目がさめちゃった……よっと」ｽﾀｯ

梨子「……ちょっと外に出てみようかな」ｶﾞﾁｬ…ﾊﾞﾀﾝ

梨子「……」

ｻﾞｻﾞｰﾝ…

梨子「綺麗な浜辺……」

梨子（……思えば、全部ここから始まったんだっけ）

梨子「……」

ｻﾞｻﾞｰﾝ…

梨子「ふう……こうやって座れば、いつまでも眺めていられそう」ｻﾞｯ…

ｻﾞｰｯ…ｻﾞｻﾞｰﾝ…

善子「……梨子？」

梨子「わあっ！？　よ、善子ちゃん！？」

善子「な、何をそんなに驚いてるのよ……私だって、目が覚めたら梨子がいなくてびっくりしたんだから」

梨子「そ、それはそうね。ごめんなさい……」

善子「別にいいわよ……よっと」ｻﾞｯ

「……」

ｻﾞｻﾞｰﾝ…

善子「……もう空は白んでるのね」

梨子「そうだね……」

梨子（……昨日は二人きりだとちょっと緊張したりもしちゃったけど……）

善子（今この時は、不思議と……自然体でいられる）

「……」

「「あ、あのっ……」」

善子「……私から言うわ」

梨子「はいはい、じゃあ善子ちゃんからどうぞ」ｸｽｯ

善子「……いい？　一度しか言わないからよく聞きなさい」


善子「……ありがと」ﾎﾞｿｯ

梨子「……ふふっ、こちらこそ」

善子「……それで、梨子の言いたいことは？」

梨子「一度しか言わないからよく聞いてね？」

善子「……」


梨子「……ありがと」ﾆｺｯ


善子「……こちらこそ」ﾌﾟｲｯ

梨子「あっ、善子ちゃんっ！」

善子「なによ」

梨子「顔そむけてないで、前を向いてみて！」

善子「前？　何よ、もう……」ｸﾙｯ

ﾊﾟｱｯ…

善子「……あ……」

ﾊﾟｱｱｯ…

「「わあ……！」」

善子「す、すごい……綺麗な日の出ね」


梨子「うん。本当に、すごく綺麗……って、わっ！？」


ｷﾞｭｯ…


梨子「よ、善子ちゃん？」


善子「……いいでしょ、手をつなぐくらい」


梨子「……もちろんっ」


ｷﾞｭｳｯ…




おしまい

以上です、ありがとうございました