【SS】せつ菜「しずくさんに避けられてる気がします…」【ラブライブ!虹ヶ咲】

せつな SS


1: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 19:39:26.41 ID:b2uerZKp
しずせつ

2: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 19:41:05.44 ID:b2uerZKp
昼休み



しずく「かすみさん、お昼一緒に食べよ?」

かすみ「あー、ごめん。かすみんちょっとお昼用事があるの」

しずく「あ、そうなんだ」

かすみ「せつ菜先輩に話があるって言われて」

しずく「…また何かいたずらしたの?」

かすみ「ち、ちがうよ!でも何の話かは分かんない…」

しずく「…ふーん…」

かすみ「しず子、気になるんでしょ~?」

しずく「…少し」

かすみ「ほんとに少しかなぁ?」

しずく「かすみさん!」

3: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 19:42:18.05 ID:b2uerZKp
かすみ「にししっ。じょーだんだよ!」

しずく「もう、言わなきゃよかった…」

かすみ「ごめんごめん。言える内容なら教えてあげるから!」

しずく「…約束だよ?」

かすみ「うんうん。まぁ侑先輩と歩夢先輩も一緒みたいだから」

かすみ「それほど秘密ってわけじゃないと思う」

しずく「そうなんだ…」

しずく(それは私や他の皆さんには秘密ってことに…)

かすみ「それじゃあね」

しずく「いってらっしゃい」

しずく(……)

しずく(言えない話だったらそれはそれで…)

しずく(…気にしてもどうしようもないよね)

4: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 19:43:25.11 ID:b2uerZKp
部室




せつ菜「すみません、集まっていただいて」

侑「全然いいけど、どうしたの?」

せつ菜「実は、皆さんにご相談があるんです」

かすみ「…」

せつ菜「聞いていただけますか?」

歩夢「…私たちでよければ。でも、私たちだけでいいの?」

侑「他のみんなには話せないこと?」

せつ菜「そういうわけではありませんが…」

せつ菜「いえ、一人だけ話せない方はいます」

歩夢「うん…?」

せつ菜「…私、しずくさんに避けられてる気がするんです」

かすみ(…あー…)

5: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 19:44:55.94 ID:b2uerZKp
侑「え、そうかな?全然気付かなかったけど…」

歩夢「うーん、言われてみるとあんまり二人が話すところは見ないかな」

侑「でも元からと言えば元から?って言っていいのか分からないけど」

侑「5人だけの時はもっと仲良かったの?」

かすみ「…特段今と変わりないと思いますよ」

せつ菜「おっしゃる通りなんですが」

せつ菜「私と接してるときのしずくさん、どこかぎこちないんです」

せつ菜「皮肉ではなく、しずくさんはいい子ですから」

せつ菜「そういうのを態度に出すってことはあまり考えられません」

かすみ「…確かにしず子らしくはないですねぇ」

せつ菜「なので余計に気になってしまうんです…」

6: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 19:46:27.46 ID:b2uerZKp
侑「心当たりとかは?」

せつ菜「…1つだけ思い当たったことはあります」

歩夢「それがこの三人?」

せつ菜「そうです。同好会再結成組の皆さんです」

かすみ「なるほど…」

せつ菜「私はあまり人に嫌われるようなことはしてないつもりです」

せつ菜「…自分で言うのも何ですが。あるとすれば、同好会廃部の件くらいです」

かすみ「まぁ少しゴタゴタはありましたけど…」

侑「そしたらかすみちゃんもだし、彼方さんとエマさんは?」

せつ菜「…実際のところは分かりません。彼方さんとエマさんは優しいので。」

せつ菜「しずくさんは演劇部と兼任という立場ですから」

せつ菜「廃部になったと思ったらやっぱり存続、なんて言われたら…」

歩夢「演劇部にも迷惑がかかっちゃう、みたいな話?」

侑「うーん。分かるような気がしないでもない」

7: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 19:48:04.88 ID:b2uerZKp
せつ菜「ただでさえあの時の私は自分勝手が過ぎました」

せつ菜「かすみさんは不満があれば本気でぶつかってきてくれますから」

せつ菜「自惚れでなければ許してもらえているのかなって思ってますけど…」チラッ

かすみ「気にしてませんよ!かすみんも思うところがありましたから」

せつ菜「ありがとうございます」ホッ

侑「…でもね、この際言っちゃうけど」

侑「実はせつ菜ちゃんが戻ってきてくれる前に、一度みんなで話したことあるんだ」

侑「本人が辞めたがってるんだからそっとしておくべきじゃないかって」

せつ菜「……」

侑「でもみんな、せつ菜ちゃんのいない同好会は嫌だって言ってくれた」

せつ菜「そうなんですか…それは嬉しいですが…」

8: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 19:49:56.87 ID:b2uerZKp
侑「かすみちゃん、エマさん、彼方さん。もちろんしずくちゃんも」

侑「むしろせつ菜ちゃんに負担をかけてしまっていたんじゃないかって」

侑「せつ菜ちゃんに頼りっぱなしで申し訳ないって言ってた」

侑「あの言葉が嘘だとは私は思えないよ」

せつ菜「……そうですよね。皆さんなら…」

歩夢「っていうか、もうあれから結構経ってるよね」

歩夢「今更になってそれを蒸し返すっていうのも考えにくくないかな?」

かすみ「まぁ、そこに不満があるなら避けられるっていうのも変な気がしますね」

せつ菜「…おっしゃる通り、やっぱり自分でも根拠としては弱いと思ってます」

せつ菜「ただ、お三方に相談しようと思ったのは一応別の理由もあります」

9: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 19:51:38.25 ID:b2uerZKp
せつ菜「しずくさんの親友であるかすみさん、同じユニットとして歩夢さん」

せつ菜「そして、マネージャーの立場としての侑さん」

侑「それで私たちかぁ。なるほど…」

歩夢「頼ってくれるのは嬉しいけど、今のところは分からないかな…」

侑「せつ菜ちゃんもそこまで言うってことは、それなりに根拠があるんだよね?」

侑「とりあえずそれを聞かせてほしいかな」

せつ菜「はい。最初は気にも留めてなかったんですが、こう重なると」

かすみ「…例えばどんなことですか?」

せつ菜「まず、話してるときにほとんど目を合わせてもらえません」

かすみ「…」

せつ菜「これだけなら別にと思いますが、この間のことなんですけど…」


――――
―――
――

10: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 19:53:27.04 ID:b2uerZKp
廊下




菜々「…」スタスタ

菜々(ん…あれは)

しずく「…」

菜々(あ……)

菜々「しずくさん」

しずく「!」クルッ

菜々「おはようございます」

しずく「あ、菜々さん」

菜々「すみません、少し前向いてください」

しずく「…?はい」

菜々「……」サワ

しずく「!?」

11: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 19:55:12.74 ID:b2uerZKp
菜々「…」シュルッ

キュッ

菜々「はい、できました」

しずく「えっと、何を…」

菜々「リボンが解けかけてました」

菜々「…うん、ばっちり。今日もよくお似合いです」

しずく「――っ、あ、ありがとうございます」

しずく「すみません私急ぐのでっ」

菜々「え、あ、はい」

しずく「…」ダッ

菜々「あ、走ると危ないですよ!」

菜々「……」





13: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 19:56:59.29 ID:b2uerZKp
せつ菜(さて、今日はなんのトレーニングにしましょう)

しずく「…」

せつ菜(あ、しずくさんお一人…ボイストレーニング教わろうかな)

せつ菜「しずくさん、あの」

しずく「っ、すみません、私ちょっとお手洗いに…」ペコッ

タッタッタ…

せつ菜「あ、はい」ポツーン

せつ菜(間、悪かったでしょうか…)

愛「せっつー!」ポンッ

せつ菜「あ、愛さん」

愛「暇なら一緒に走りにいかない?」

せつ菜「…いいですね!行きます!」





14: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 19:58:37.58 ID:b2uerZKp
別の日・部室




せつ菜「…」

せつ菜「…」ペラッ


ガチャ


しずく「あ…」

せつ菜「…?…あぁ、しずくさん」

せつ菜「こんにちは、お疲れ様です」

しずく「はい、こんにちは」

しずく「他の皆さんはまだ…?」

せつ菜「みたいですね」

せつ菜「…」

しずく「…」ストン

せつ菜「…」ペラッ

15: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:00:13.24 ID:b2uerZKp
しずく「…」チラチラ

せつ菜「…」ペラッ

しずく「…」ソワソワ

せつ菜「…?」チラッ

しずく「…!」フイッ

せつ菜「…どうかなさいました?」

しずく「え、えーっと…あ、何を読んでるんですか?」

せつ菜「これですか?先日発売されたラノベの新刊です!」

しずく「もしかして今話題の?」

せつ菜「!!!」

せつ菜「知ってるんですか!?」ガタッ

しずく「」ビクッ

16: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:01:44.77 ID:b2uerZKp
しずく「す、少しだけですけど…」ドキドキ

せつ菜「…すみません」ストン

しずく「い、いえ…」

せつ菜「…」

しずく「…」

せつ菜(いけない、引かれるテンションになってしまった…)

せつ菜(せっかく気を使って話しかけてくださったのに…)

せつ菜(落ち着いて…)

せつ菜「しずくさ」

しずく「わ、私忘れ物取ってきますっ」ガタッ

せつ菜「は、はい」


ガチャ

バタン


せつ菜「…」




17: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:03:06.28 ID:b2uerZKp
――
―――
――――



せつ菜「…それから、ですね…」

歩夢「も、もう分かったよ、ありがとう!」アセアセ

かすみ(せつ菜先輩の表情が死んでいく…)

侑「なるほどね。まぁせつ菜ちゃんの言うことも一理ある…」

侑(といえばあるけど…ねぇ歩夢、ひょっとしてこれ…)ヒソヒソ

歩夢(うーん、今の話だけじゃちょっと分からないかも)

侑(まぁ、そうだね…)

せつ菜「こういうの本当は良くないんでしょうけど、あえて聞きます」

せつ菜「かすみさん、しずくさんから何か聞いてたりしませんか?」

かすみ「…かすみんも特に何も」

かすみ「しず子自分のことあまり話さないタイプですし」

18: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:04:52.50 ID:b2uerZKp
せつ菜「そうですよね…」シュン

かすみ(……)

かすみ「もう、そんな顔しないでください。かすみんも協力しますから!」

せつ菜「かすみさん!」パァ

かすみ「それとなく話しながらしず子の気持ち探ってみますよ」

せつ菜「ありがとうございます!」ペカー

侑「まぁ正直かすみちゃんが頼りだよね」

歩夢「そうだね、しずくちゃんのことは…ほかに協力頼めそうなのは璃奈ちゃんかな」

侑「同じ学年のほうが何かと話しやすいかもね」

せつ菜「そうですね。璃奈さんにも今度聞いてみようと思います」

歩夢「私たちもできることはしてみるよ」

19: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:06:19.04 ID:b2uerZKp
かすみ「とりあえずはそんなところですかねぇ」

せつ菜「はい。貴重なお昼休みにありがとうございました」

侑「ううん。また何かあったらいつでも言ってよ」

歩夢「私たちも、分かったことがあったら言うね」

せつ菜「…すみません、お願いします」

かすみ「ふふーん、かすみんに任せてください!」

侑「よ、かすみちゃん!」

かすみ「えへへ、もっと褒めてくれてもいいんですよ!」

歩夢「えらいえらい♪」ナデナデ

かすみ「なんか馬鹿にしてませんか!?」

歩夢「えぇ、そんなことないよ」ニコニコ

かすみ「まぁいいですけどっ」




20: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:07:44.22 ID:b2uerZKp
かすみ(…さて)

~♪

しずく『もしもしかすみさん?』

かすみ「あ、うん」

かすみ(出るのはやっ)

しずく『…それで…』

かすみ「…正直にいうね」

しずく『……』

かすみ「しず子にとってある意味いい話でも悪い話でもあったよ」

しずく『え……』

かすみ「とりあえずゆっくり話したいから」

かすみ「今日の夜、反省会ね」

しずく『……へ?』

21: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:09:26.04 ID:b2uerZKp




かすみ『それではただいまより、桜坂しずくさんの反省会をはじめます!』

しずく「……」

璃奈『うん……』

かすみ『もー二人ともテンション低い!』

しずく「いや、自分の反省会って言われたら…」

璃奈『私、状況が分からない』

かすみ『仕方ないなぁ。それじゃあまずは、りな子に事情説明から!』

かすみ『ほら、しず子』

しずく「う、うん」

璃奈『しずくちゃんどうかしたの?』

しずく「あのね、璃奈さんに相談に乗ってほしいことがあるの」

璃奈『うん?いいよ、なんでも言って』

しずく「…私、せつ菜さんのことが好きになっちゃったの」

22: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:10:56.84 ID:b2uerZKp
璃奈『…そうなんだ』

璃奈『つまり、恋愛相談?』

しずく「はい///」

璃奈『そっかぁ』

かすみ『ね、ねぇりな子。なんか反応薄いけど…まさか知ってた?』

璃奈『んー。知らなかった。けど、そんな気はしてた』

しずく「え!?」

かすみ『うそぉ、なんで!?』

璃奈『しずくちゃん、いつもせつ菜さんの事見てたから』

しずく「見られてたの…恥ずかしい///」

23: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:12:18.67 ID:b2uerZKp
璃奈『私、いつもみんなの事見てるの』

かすみ『どゆこと?』

璃奈『同好会のみんなから感情表現を学ぼうと思って』

しずく「なるほど…」

璃奈『しずくちゃんも私と同じだと思ってた』

璃奈『でも違った。しずくちゃんがせつ菜さんを見る目は…』

しずく「ううん。最初は璃奈さんと同じだった」

しずく「せつ菜さんっていろんな顔があるでしょ?」

璃奈『顔?』

しずく「うん。スクールアイドルとして、生徒会長として」

しずく「アニメやラノベ好きな一面も…全部違う顔」

璃奈『ふむふむ』

24: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:13:43.34 ID:b2uerZKp
しずく「私がスクールアイドルを始めたのは演劇のためになるとおもって。」

しずく「だから、スクールアイドルとしても、演技の勉強としても」

しずく「せつ菜さんは私の目標になって、憧れになって」

しずく「そうしてずっと見ているうちに…」

璃奈『惚れちゃったんだね』

しずく「…うん///」

璃奈『しずくちゃんかわいい』

しずく「や、やめて///」

かすみ『というわけで、りな子にも協力してほしい!」

璃奈『そういうことならもちろん応援する。でも、私も別に恋愛には詳しくない』

かすみ『大丈夫!かすみんもだから!』

璃奈『…大丈夫ってなんだっけ?』

かすみ『てへっ☆』

25: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:15:06.20 ID:b2uerZKp
しずく「全然いいの、話聞いてくれるだけでも嬉しいから」

璃奈『そう…うん、分かった』

しずく「それでかすみさん。反省会ってどういうこと?」

かすみ『そうそれ!…しず子さぁ』

しずく「な、何…?」

かすみ『せつ菜先輩から逃げすぎ!』

しずく「う…なんでそれを…」

かすみ『お昼にせつ菜先輩から直接聞いたんだよ』

かすみ『せつ菜先輩、何て言ってたか分かる?』

かすみ『しず子に避けられてる気がするって、落ち込んでたんだよ?』

しずく「あ……」

26: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:16:21.98 ID:b2uerZKp
しずく「じゃあ、今日のせつ菜さんの話って」

かすみ『うん、せつ菜先輩のお悩み相談。しず子の態度の事でね』

しずく「ごめんなさいせつ菜さん…」

璃奈『でも、好きな人を前に冷静でいるのは難しい』

かすみ『まーそれは分かるよ。でもさ、それこそ今回の一番の反省点!』

かすみ『しず子が逃げるのは百歩譲って仕方ないとして』

かすみ『照れたり恥ずかしがるのはわざと隠してるよね?』

しずく「…だって、それを見せちゃったら気付かれちゃうよ」

かすみ『その結果がただ避けてるだけって印象になってるの!』

しずく「あぅ…」

かすみ『それを隠せるなら逃げるのも我慢しなよ!』

しずく「無理だよ…最初は我慢して冷静な演技してるんだけど」

しずく「いつの間にか頭真っ白になっちゃうし…」

27: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:17:49.90 ID:b2uerZKp
璃奈『それならいっそ隠さなくてもいいかも』

しずく「えぇ!?それはダメだよ!恥ずかし過ぎるよ…」

かすみ『いーじゃん!ちょっとくらい見せちゃっても大丈夫だよ』

しずく「でも…」

かすみ『ほら、いい話でもあり悪い話でもあるって言ったでしょ?』

かすみ『今、理由はともかくせつ菜先輩はしず子の事が気になってるの!』

しずく「うん…」

かすみ『もっと意識させるためにアピールはしなきゃ』

しずく「でも、そんないきなり気持ちをさらけ出すなんて…」

璃奈『何も全力でってわけじゃない』

かすみ『うんうん。あの子私に気があるかも?って思わせるだけでいいんだよ』

28: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:19:09.91 ID:b2uerZKp
しずく「…そうだね。私やってみる」

璃奈『うん。しずくちゃんなら大丈夫』

かすみ『まぁまずは逃げ出す癖を直そうよ』

しずく「それは私も直したいんだけど、話をするだけで頭回らなくなっちゃうの」

璃奈『緊張しちゃう?それとも何話したらいいかってこと?』

しずく「うーん…両方かも。どうしたらいいかな…」

かすみ『話すこと考えておいて、会話のイメージとかしてみたら?』

かすみ『なんでもいいからまずはせつ菜先輩と話すことに慣れていこうよ』

璃奈『私、たまにせつ菜さんとアニメの話する』

しずく(…いいなぁ)

かすみ『あ、それいいじゃん。せつ菜先輩の読んでるラノベ知ってるでしょ?』

しずく「あれはちょっと有名になったから聞いたことあるってだけだよ?」

かすみ『それでもいいよ。せつ菜先輩に借りて読んでみてさ、その話したらいいよ」

29: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:20:37.13 ID:b2uerZKp
しずく「…それは…」

かすみ『何、どうしたの?』

しずく「仮にね、せつ菜さんにラノベ読みたいですって言ったら」

しずく「きっと喜んで貸してくれると思う」

璃奈『うん』

しずく「でも、せつ菜さんは純粋にラノベに興味があると思って貸してくれるのに」

しずく「私はその気持ちを利用するみたいで、なんか罪悪感が…」

かすみ『…もう、しず子甘い!!』

しずく「えっ」

かすみ『そんな甘いこと言ってたらせつ菜先輩誰かに取られちゃうよ!』

しずく「!?」

31: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:22:16.68 ID:b2uerZKp
かすみ『せつ菜先輩といえば、素性が謎に包まれたスクールアイドルで』

かすみ『校内を歩いてたら時々名前を聞くこともあって』

かすみ『一度見ただけの人を魅了しちゃうかっこいいパフォーマンス』

かすみ『侑先輩、歩夢先輩、副会長さんとかね』

璃奈『私と愛さんも、せつ菜さんのゲリラライブに惚れて同好会に入った』

かすみ『PVのコメントではラブライブに出られるレベルって言われてるんだよ』

しずく「そ、そうなんだ…」

かすみ『しず子にはライバルがたくさん要るってことを自覚しなきゃダメ』

しずく「……」

璃奈『かすみちゃん…』

かすみ『…焦らせるようなこと言っちゃったけどさ』

かすみ『しず子は凄い有利な立場にいるんだよ』

しずく「…どういうこと?」

32: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:23:46.03 ID:b2uerZKp
かすみ『せつ菜先輩のファンが、せつ菜先輩に会おうと思ったらどうすると思う?』

しずく「えっと、イベントとか、ライブとか?」

かすみ『そう、それしかないの。だって優木せつ菜って生徒はいないから』

かすみ『校外のファンはもちろん、校内でだって滅多に会えないんだよ』

しずく「あ…」

かすみ『いつでも会えるのはせつ菜先輩の正体を知ってる私たちだけ』

かすみ『だったらもう使えそうな武器はなんでも使っていこうよ』

璃奈『それは私も賛成。身近な関係という強みを使わない手はない』

璃奈『それに、ラノベだって読んだ結果好きになっちゃえば問題ない』

しずく「そう、だね…うん。私やるよ」グッ

かすみ『その意気だよ、がんばれしず子!』

33: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:25:14.34 ID:b2uerZKp
しずく「かすみさん、璃奈さん、ありがとう。こんなに真剣に聞いてくれて」

しずく「私ひとりじゃきっと何もできないから、嬉しいよ」

しずく「二人とも、すごく頼もしい」

かすみ『えへへ、そうでしょ?』

璃奈『さすがかすみちゃん』

しずく「かすみさん素敵♪」

かすみ『うんうん』

璃奈『かすみちゃんはすごい』

しずく「私もうかすみさんがいないとダメ…」

かすみ『…言い過ぎじゃない?///』

しずく「…ふふっ」

璃奈『かすみちゃんかわいい』

かすみ『…やっぱりからかってた!』

しずく(…本当に感謝してるよ。ありがとう)

――――
―――
――

34: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:26:32.57 ID:b2uerZKp
数日後・朝



しずく(そろそろ話してみようかな)


―――いきなり話しかけてもきっと私は冷静でいられない

―――一緒に練習したいとか、ラノベを貸してほしい。それだけ

―――そんな大層な話ではない。でもイメージはしておきたかった

―――また逃げ出してしまわないように。まずは…


菜々「しずくさん?」

しずく(―――!)

菜々「おはようございます」

しずく「あ、お、おはようございます」

菜々「はい。空気も澄んでいて気持ちのいい朝ですね」

しずく「そ、そうですね」

35: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:27:47.96 ID:b2uerZKp
しずく(今会うとは思わなかった…ああ…どうしよう)

菜々「……」

しずく(えっと、何話すんだっけ…)

しずく(練習…いや、今言っても…)

菜々「…今日は同好会のほう来られるんですか?」

しずく「え、あ、はい」

菜々「そうですか。ではまた放課後にお会いしましょう」

しずく「っ、菜々さん!」

菜々「はい?」

しずく「…いえ、なんでもありません。また後ほど」ペコッ

菜々「?…はい、それでは」


―――頭の中で繰り返した台詞も

―――あなたの目を見るだけで、うまく言えないの

37: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:29:17.49 ID:b2uerZKp
昼休み


しずく「はぁ…」

かすみ「…どしたの、さっきから」

しずく「今日の朝、たまたませつ菜さんに会っちゃって」

しずく「予想してなかったから焦っちゃってうまく話せなかったの」

璃奈「あらら」

かすみ「そっか…まぁなんていうか、災難?だったね」

しずく「こんな調子で大丈夫かな…」

璃奈「…かすみちゃん」

かすみ「…うん。しず子、ちょっと動かないで」スッ

しずく「…?」


―――かすみさんの手には虹色のペンダント

―――それをそのまま首から掛けられる


しずく「綺麗…どうしたの?これ」

38: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:31:02.40 ID:b2uerZKp
璃奈「この間かすみちゃんと一緒に見つけてね」

璃奈「気休めかもしれないけど、私たちからのお守りみたいなもの」

かすみ「かすみんたちはいつでもしず子のこと応援してるけど」

かすみ「ずっとは見守ってあげられないから、それを代わりにしてねってこと!」

しずく(虹色…かすみさんと璃奈さんだけじゃなく、みんなから勇気を貰えそうな)

しずく「うん…ありがとう。すっごく嬉しい」ギュ

璃奈「しずくちゃんファイト。璃奈ちゃんボード『むんっ』」

かすみ「今日は練習出るんでしょ?」

しずく「うん」

かすみ「じゃ、まずはそこからだね」




39: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:32:21.17 ID:b2uerZKp
放課後



しずく(…よし)

しずく「せつ菜さん」

せつ菜「…、はい?」

しずく「今日の練習、一緒にやりませんか?」

せつ菜「…はい!もちろんです!」

せつ菜「それじゃあまずは柔軟しましょうか!」





せつ菜「押します」グイー

しずく「はい」

しずく(押されてるだけなのにドキドキする…バレてないよね…)

しずく(…せつ菜さんの手…あったかい)

40: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:34:05.62 ID:b2uerZKp
せつ菜「痛くありませんか?」

しずく「…はい…とってもいいです…///」

せつ菜「へ?」

しずく「あ、いや、大丈夫です!」アセアセ

しずく「代わりますっ」

せつ菜「…?お願いします」


璃奈(…大丈夫かな)ジー


しずく「いきます」グッ

せつ菜「お願いします」

しずく「…」

しずく(…せつ菜さん…せつ菜さん)ググッ

せつ菜「…っ」

41: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:35:26.26 ID:b2uerZKp
しずく(……)グググッ

せつ菜「っ、しずくさん、ちょっと痛いです…」

しずく「あっ!」パッ

しずく「すみません!大丈夫ですか!?」サー

せつ菜「あはは…大丈夫ですよ」

しずく「うぅ…ごめんなさい…」シュン


かすみ(しず子なにやってんの…)チラ


しずく(はぁ…)

せつ菜「…すこし走りますか!」

しずく「えっ」

せつ菜「ほら、行きましょう!」ギュッ

しずく「ぁ…///」

42: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:36:45.96 ID:b2uerZKp
せつ菜「はっ、はっ…」

しずく「ふ、…ふ、…」

しずく(気を使わせちゃった…)

ガッ

しずく(ぁ、転―――)


ガシッ


せつ菜「危ない…間に合いました」

しずく「ぁ、あ、は、はひ///」

しずく(近い、近い近い///)

しずく(こんな距離で見つめられたらどうにかなっちゃう///)バクバク

せつ菜「…?大丈夫ですか?」

43: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:38:10.56 ID:b2uerZKp
しずく(落ち着かなきゃ…)プルプル

せつ菜(…震えてる…)

せつ菜「…立てますか?」

しずく「あ…はい」

しずく(…助かったような、残念なような)

せつ菜「足痛めたりしてませんか?」

しずく「ん、大丈夫そうです。ありがとうございます」トントン

せつ菜「いえ、怪我がなくて良かったです」

せつ菜(やっぱり、私の事苦手なんでしょうか…)

せつ菜(それならどうして一緒に練習なんて…)




44: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:39:39.61 ID:b2uerZKp
しずく「お疲れ様です。今日はありがとうございました」

せつ菜「こちらこそ、誘ってもらえて嬉しかったです!」

しずく「また、ご一緒してもいいですか…?」

せつ菜「もちろんです!」

せつ菜(…しずくさんから誘ってもらえるとは思わなかったけど)

せつ菜(やっぱり様子がおかしいです)

せつ菜(おそらくかすみさんが何かしてくれたんでしょうけど…)

せつ菜(……)

しずく「…あの、話変わるんですけど」

せつ菜「?」

しずく「せつ菜さんがこの間部室で読んでたラノベ、私も読みたいなって」モジモジ

せつ菜「……」

しずく「…だめですか?」チラ

45: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:40:53.36 ID:b2uerZKp
せつ菜「いえ、そうじゃないんですが…」

しずく(あ、あれ…思ってた反応と違う…。嫌なのかな…)

しずく(難しい顔してる。まぁ、避けられてる人から急に迫って来られたら…)

せつ菜「…ちょっと後ろ向いてください」

しずく「えっ…?は、はい」クルッ

しずく(何だろ急に?)

せつ菜「…」


こちょこちょこちょ

しずく「ひゃう!?ひっ、や、あはは!」ビクッ

せつ菜「…」ワキワキ

しずく「やめ!、くっ、私、ひひ、くすぐりダメなんです!///」ピクピク

せつ菜「…ふふ、すみません」パッ

46: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:42:06.31 ID:b2uerZKp
しずく「はぁ…はぁっ…」

しずく「もう、急に何するんですかっ///」プクー

せつ菜「…やっと、自然な顔してくれましたね」

しずく「へ…」

せつ菜「今日のしずくさん、らしくありません」

せつ菜「きっとかすみさんからお話を聞いたんですよね?」

しずく(…ばれてる)

しずく「…はい」

せつ菜「すみません。野暮なこと言ってしまって」

せつ菜「それと…私のせいで何か嫌な気持ちにさせていたらすみません」

しずく「あ、それはっ」

せつ菜「しずくさんが私に歩み寄ってくれて嬉しかったです」

せつ菜「ですが、そんな強張った顔させて…無理させてしまってすみません」

47: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:43:22.13 ID:b2uerZKp
しずく(せつ菜さんは何も悪くないのに、謝らせてしまうなんて、私の…)

せつ菜「情けないのですが、いまだに私はしずくさんの気持ちが分かりません」

せつ菜「もしよろしければ直接聞かせてください…」

しずく(―――私の馬鹿っ)

しずく「ごめんなさい!」

しずく「違うんです。私は、ただせつ菜さんと仲良くなりたかっただけなんです」

せつ菜「……え!?」

しずく「いざ話そうとするとなんだか気恥ずかしくて、何話したらいいかなって…」

しずく(流石に好きだから、とは言えないけど)

しずく「変な態度取ってしまって本当にすみませんでした」ペコッ

しずく「もし許してもらえるなら、私とお友達としてやり直させてください」


―――あんなにあたふたしてたのが嘘みたい

―――取り繕った言葉は全然言えないのに。演劇部の私には皮肉な話

48: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:45:00.37 ID:b2uerZKp
せつ菜「―――、あ、えっ」

せつ菜(嫌われていると思ったら好意を持たれていたとは…)

しずく「…もう、嫌になっちゃいましたか…?」

せつ菜「い、いや、そんなことありません!」

せつ菜「こちらこそよろしくお願いします!」

しずく「…あぁ、よかった…」グスッ

せつ菜「な、泣かないでください」オロオロ




侑「あーあ、泣かしちゃって。せつ菜ちゃんいけないんだー」

せつ菜・しずく「!?」


歩夢「侑ちゃん、二人の邪魔しちゃだめだよっ」

かすみ「でもこんなところでいい雰囲気になられても困りますぅ!」

璃奈「完全に二人の世界に入ってた」

49: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:46:28.87 ID:b2uerZKp
せつ菜(まだ皆さんが居ること忘れてました!)アセアセ

しずく「~~~///」

せつ菜「私たち帰ります!行きましょう!」ギュッ

しずく「わ、せつ菜さん!?」

せつ菜「お疲れ様でした!!」

しずく「お、お疲れ様でしたっ」


バタン


歩夢「もう、侑ちゃんが変なこと言うから」

侑「いやぁ、初々しくてつい」

かすみ「…とりあえずうまくいきそうでよかったですよ」

歩夢「かすみちゃん、頑張ってくれたんだね」ナデナデ

かすみ「えへへ。まぁりな子と一緒に背中押してあげただけですけどね」

侑「そっか…璃奈ちゃんもありがとう」

璃奈「『にっこりん』」

50: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:47:53.75 ID:b2uerZKp
せつ菜「すみません。話す場所考えるべきでしたね」

しずく「いえ…それより、どこへ?」

しずく「下駄箱は逆方向ですよね」

せつ菜「生徒会室です。ラノベ読みたいとおっしゃってたので」

しずく「……?」

しずく「どういうことでしょう」

せつ菜「家では禁止されてるので、少し生徒会室に隠してるんです」

しずく「…職権乱用じゃないですか?」クスッ

せつ菜「私の大好きを守るためです!」

しずく「ふふっ、せつ菜さんでもそういうことするんですね」

せつ菜「あはは。内緒にしてくださいね?」

しずく「分かりました♪」

51: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:49:13.49 ID:b2uerZKp
「あの、すみません」



せつ菜「?」クルッ

副会長「優木せつ菜ちゃん、ですよね?」

せつ菜「あ」

せつ菜(しまった、せつ菜の姿のままでした)

せつ菜「は、はい」

副会長「やっぱり!あの、私ファンなんです」

しずく(……!)

副会長「こんなところで会えるなんて…あ、握手してくださいっ」

せつ菜「…はい、いいですよ!」ペカー

ギュ

副会長「!…ありがとうございます///」

副会長「あと、非常に差し出がましいのですが、一緒に写真撮ってもらっても…」

せつ菜「もちろんです!」

しずく「それなら私が撮りましょうか」

副会長「すみません、桜坂さん。お願いします」

52: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:50:35.40 ID:b2uerZKp
パシャッ


副会長「ありがとうございます!…次のライブ、絶対観に行きます」

せつ菜「そうですか、ふふ。嬉しいです!」

副会長「そ、それでは…///」テッテッテ


しずく(…せつ菜さんのファン。かすみさんの言う通りたくさんいる、私の…)

しずく(ツーショット写真、羨ましい。ある意味ファンだからこそ頼めること)

せつ菜「ふー…少し焦りました。生徒会室で会っていたら危なかったです」

しずく「そうですね」

しずく(私の立場ではそこに別の意味が生まれてしまうから頼めない)

せつ菜「髪編んでくるので少し待っててもらえますか?」

しずく(でも、あれくらい私も素直にならなきゃダメかな…)

しずく(親しいという強みを使わない手はない、だよね)

しずく「…私が編みますよ」

せつ菜「いいんですか?」

しずく「はい。やらせてください」

53: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:51:56.83 ID:b2uerZKp
しずく「…失礼しますね」

せつ菜「はい!お願いします!」

しずく「…」スッスッ

しずく(…さらさら…)

せつ菜「…なんだかくすぐったいですね」

しずく「す、すみません」

せつ菜「あぁ、いえ。こそばゆい?と言いますか」

せつ菜「こうして髪を他人に触れられることってないので」

しずく「…嫌でしたら…」

せつ菜「嫌ではありません、けど…なんだか変な気分です///」

しずく(…私は今変な顔してるかも…///)

54: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:53:12.89 ID:b2uerZKp
しずく「はい、できました」

しずく(終わっちゃった…)

菜々「ありがとうございます」スチャ

しずく(見た目だけでなく、雰囲気も別人みたいになっちゃう)

しずく「…」ジー

しずく(菜々さんで居ること、好きなことを我慢するのは辛くないのかな)

しずく(私は…)

菜々「…?どこか変でしょうか?」

しずく「いえ、大丈夫です」

菜々「また誰かに会わないうちに行きましょうか」

しずく「はい」




55: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:54:26.95 ID:b2uerZKp
生徒会室


菜々「…」ゴソゴソ

菜々「…ふぅ」

菜々「ここにあるのはこれだけですね」

菜々「残りの続きは家にあるんですけど」

菜々「とりあえずこれ全部持っていかれますか?」

しずく「いいんですか?」

菜々「私はもう何度も読み込んだので」

しずく「本当に好きなんですね、この作品」

菜々「はい。ですから、しずくさんが興味をもってくれて嬉しいです」ニコ

しずく(…やっぱり少し罪悪感あるけど)ズキッ

しずく(…うん。これを機に好きになっちゃえば…)

菜々「ブックカバーもありますけど、使いますか?」

しずく「あ、お借りします」

56: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:55:39.41 ID:b2uerZKp
電車内



しずく(さっそく読んでみようかな)

しずく(考えてなかったけどこの時間、ラノベ読むのにちょうどいいかも)

しずく(……)ペラ

しずく(あまりイメージだけで語るのも良くないけど)ペラ

しずく(こういうのってなんとなくご都合主義って思っちゃう)ペラ

しずく(……)

しずく(…ふーん…)ペラ

しずく(……)

しずく(…!…)

しずく(……)ペラ

しずく(……)ペラ、ペラ


――――
―――
――

57: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:56:53.89 ID:b2uerZKp
翌日




しずく「菜々さんっ」

菜々「ん…しずくさん?どうされ」

しずく「来てください!」グイッ

菜々「え、ちょ、ちょっと!」

しずく「…」スタスタ

菜々「どこ行くんですか!」

しずく「とりあえず人がいないところです」

菜々「どうしてですかっ」

しずく「菜々さんのためです」



「ねぇ、見て。生徒会長が1年の子に引っ張られてる…」

「あれスクールアイドルの子じゃない?ほら、合同演劇の時の」

「あ、ほんとだ。どういう状況なんだろ…」



菜々(私が聞きたいです!)

58: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:58:09.82 ID:b2uerZKp
空き教室



しずく「…」キョロキョロ

菜々「…誰かに見られたらまずいんですか?」

しずく「…菜々さん…」ガシッ

菜々「!?」

しずく「私…」

菜々(な、何…?)ドキドキ

しずく「ラノベ、完全にはまってしまいました!」キラキラ

しずく「お借りした分は昨日のうちに全部読んでしまって」

菜々(あぁ、そういう…)

菜々「そうですか?お気に召したようで嬉しいです」

59: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 20:59:36.77 ID:b2uerZKp
しずく「私、アニメや漫画ってご都合展開が多いなってイメージでしたが」

しずく「こんなに引き込まれるものだとは思っていませんでした」

しずく「偏見ってやっぱり良くないですね…」

菜々「でも、好きになってもらえたんですよね。なら良かったです」

菜々「…まったく読まずに否定されることだってありますからね」

しずく(!…それって…)

菜々「それで、続きを読みたいって話でしょうか」

しずく「…はい。お借りしてもいいですか?」

菜々「もちろんです。けれど流石に持ってきてはいないので…」

菜々「よろしければ、放課後うちに寄っていかれます?」

しずく「あ、じゃあお言葉に甘えます」

60: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:00:57.64 ID:b2uerZKp
しずく「って、それより突然お連れしてしまってすみません」

しずく「昨日読み終わってからもうそればっかり考えてて…」

菜々「そこまでハマってもらえたら、こちらとしても本望ですね」クス

菜々「ですが、夜更かしは感心しませんね。夜通し読んでたんですか?」

しずく「え、なんで分かったんですか!?」

菜々「……」ゴソゴソ

菜々「どうぞ」スッ

しずく(手鏡?)

菜々「少しクマができてますよ」

しずく「!!」バッ

しずく(さ、最悪…!よりによってせつ菜さんにこんな顔見せるなんて!)

菜々「しずくさんもスクールアイドルなんですから、気を付けないといけませんよ」

61: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:02:56.96 ID:b2uerZKp
しずく「あ…はい…」

しずく(そうだけど、それどころじゃないよぉ)ズーン

菜々「…そうでなくとも、せっかくの可愛いお顔が台無しになってしまいますから」

しずく「はぇ!?///」

しずく(今可愛いって…!)チラッ

菜々「?」

しずく(この…!せつ菜さんの天然たらし系主人公っ)

しずく(さっきとは真逆の意味で顔が見せられないっ///)

菜々「ん。そろそろ休み時間終わるので行きますね」

しずく「は、はい」

ガラッ

バタン


しずく(とりあえずメイクで誤魔化そう…)




62: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:04:12.21 ID:b2uerZKp
放課後・部室


ガチャ

彼方「……zzz」

せつ菜(…珍しい、机で寝てるなんて)


―――いつのまに運び込まれたのかも分からないソファ

―――普段は彼方さんの特等席だけど


せつ菜(……)チラッ

しずく「……すぅ」

せつ菜(これではお昼寝同好会ですね)

せつ菜「もう、風邪引きますよ」


―――彼方さんには脱ぎっぱなしのカーディガンをかけてあげ

―――しずくさんには毛布を掛けてあげようと近づく

―――起こさないようにそっと手を伸ばし


ガシ


―――腕を掴まれた

63: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:05:31.20 ID:b2uerZKp
しずく「…」

せつ菜(び、びっくりした)ドキドキ

せつ菜「起こしてしまいましたか?」

しずく「………」

せつ菜(いや、寝てますね。どうしましょう)クイクイ

しずく「ん…だめ…」グイ

せつ菜「わっ!」グラッ

しずく「ぉふぃーりぁ…」ギュー

せつ菜(!?///)

しずく「…」スリスリ

せつ菜「」

しずく「すー…すー…」ギュー

64: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:06:41.49 ID:b2uerZKp
せつ菜(そんなベタな…じゃなくて)

せつ菜(ど、どうしたら)

しずく「えへへ…♡」

せつ菜(かわいい)キュン

せつ菜(じゃなくて!無防備系のヒロインですか!)

せつ菜(…いやそうでもなくて!あぁもう!///)

しずく「…すー…」

せつ菜(吐息がくすぐったいっ///)

せつ菜(彼方さんもいるし、出来れば起こしたくないのですが…)

せつ菜(と、とりあえず顔が近すぎます///少し強引にでも…)ググ

65: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:07:49.19 ID:b2uerZKp
しずく「んぅ…めっ…」グイッ

せつ菜(!?)


―――逃げようとすると的確にロックされて逃げられない

―――実は起きてるのでは


せつ菜(な、わけありませんよね)

しずく「えへ…いいこ…いいこ♡」ナデ

せつ菜(…っ…これ、普段とのギャップが…///)ドキドキ

しずく「…んー♡」

せつ菜(……?)

せつ菜(いや、まって、まさか)バクバク

せつ菜(しずくさ…あ、だめ―――)ギュ


ちゅ


せつ菜(―――)

せつ菜「」コテン


――――
―――
――

66: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:09:04.94 ID:b2uerZKp
しずく「ん…」パチ

せつ菜「…」

しずく(!?!?)ビクッ

しずく(え、なんで、なにこれ!?)ドキドキ

せつ菜「…」

しずく(寝て…るの?なんで、一緒に)

しずく(…私が、せつ菜さんに抱き着いてる…)

しずく(うぅ…何も分からない…///)チラッ

せつ菜「…」

しずく(…でも、ちょっぴり幸せ///)ドキドキ

しずく(もう少しこのままで…)

せつ菜「…」

しずく(…)

68: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:10:13.38 ID:b2uerZKp
しずく(…だめだよ私。それは絶対やっちゃだめ)

しずく(……)


―――せっかく少し仲良くなれたんだから

―――そんなせつ菜さんへの裏切りになっちゃう


しずく(……)


―――でも、ちょっとだけなら、バレなければ…

―――悪魔の囁きが私を誘惑する


しずく(一瞬触れるだけ。寝てる間なら、きっと…)

しずく(卑怯な私でごめんなさい。でも、好きなの…)

しずく(どうか、起きないで…)

しずく(……?)チラ

69: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:11:45.11 ID:b2uerZKp
彼方「…」ジー

しずく「!?」

彼方「…あ、おはよう~」

しずく「」

彼方「どうぞ、続けて?」

しずく「」パクパク

彼方「やー、まさかしずくちゃんがねぇ」

彼方「意外と大胆なんだね~」

しずく「」キョロキョロ

彼方「大丈夫。彼方ちゃんしかいないぜぇ」

70: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:12:56.88 ID:b2uerZKp
しずく「大丈夫じゃ、ないんですけど…///」カァ

彼方「ん~、でもね、そろそろ…」


ガチャガチャ

しずく「!?」

「あれ~、鍵掛かってるよ」

「まだ誰も来てないのかしら」

「そんなに急いで来てないけどなぁ」


しずく(鍵…)

彼方「彼方ちゃんでなければ死んでいた」キリ

しずく「…ありがとうございます…///」

彼方「まぁ、言いふらす趣味はないから安心してよ~」


彼方「ごめーん。ちょっとまっておくれ、着替えてるんだ」

「あ、彼方ちゃん」

「なるほど。分かったわ」

71: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:14:08.38 ID:b2uerZKp
彼方「ほら、今のうちに起こして上げなよ~」

しずく「は、はい」

彼方「白雪姫…」ボソ

しずく「っ!///」

彼方「あ、眠り姫のほうがよかったかな?」

しずく「彼方さんっ///」

彼方「あはは。ま、次は起きてる時にもできるといいね~?」

しずく「もう、勘弁してください///」



しずく「せつ菜さん、起きてください」ポンポン

せつ菜「…?」パチ

しずく「おはようございます」

せつ菜「…」クシクシ

72: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:15:16.20 ID:b2uerZKp
せつ菜「…」ポケー

しずく「大丈夫ですか?」フリフリ

せつ菜(…しずくさん……ぁ!!!)


彼方「お待たせ~、今開けるよ~」

ガチャ

エマ「彼方ちゃん、ありがとう♪」

果林「あら、せつ菜としずくちゃんも居たのね」



「きゃああ!」

ガタガタン!



エマ・果林「!?」



せつ菜「はぁ!、はぁ!」

しずく「ど、どうしたんですか」オロオロ

せつ菜「え、あ、すみません」アセアセ

73: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:16:34.92 ID:b2uerZKp
せつ菜「な、なんでもないです///」

しずく「それは無理がありますよ…大丈夫なんですか?」ジッ

せつ菜「っ///」バッ

せつ菜「大丈夫ですから、あんまり見ないでください…///」

しずく(なんでしょうこの反応…寝顔見られて恥ずかしい、は無いですよね)


―――せつ菜さんのこの過剰な反応に

―――さっきの彼方さんの違和感ある台詞が引っ掛かる

・・・・・

彼方「あはは。ま、次は起きてる時にもできるといいね~?」

・・・・・

―――次は、起きてる時、にも…?

―――さっき寝てる時はできなかったのに

―――ちょっとまって

―――起きてる時、寝てる時って……誰の話?

74: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:17:45.17 ID:b2uerZKp
しずく(嘘…)クルッ

彼方「…」ニヤニヤ

しずく(ま、まさか!///)チラッ

せつ菜「ぅぅ…///」

しずく「せ、せつ菜さん…?」

せつ菜「な、な、ななんでしょうかっ///」

しずく(これは…!本当に!?本当に私したの!?)

果林「せつ菜、どうしちゃったのよ…」

エマ「やっぱり体調悪いんじゃ…」

せつ菜「いえほんとなんでもないですから!!」

せつ菜「…///」チラチラ

しずく「~~~///」

彼方(青春だねぇ)

75: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:19:07.88 ID:b2uerZKp
帰り道


しずく(確か私はオフィーリアとじゃれてる夢を見てた)

しずく(その通りに動いてたとしたら、せつ菜さんにも同じことを…)

しずく(せつ菜さんのあの様子、多分本当にしちゃってるよね)

しずく(しにたい。こっそりしちゃおうとか思ってたのが余計恥ずかしい)

しずく(まぁ、それはそれとして…)

菜々「せっかくですから、他の作品もいくつか持っていかれますか?」

しずく「いいんですか?」

菜々「はい。是非読んでいただきたいお勧めがいくつかあるんです」

しずく「それは楽しみです」

しずく(すっかり元通り。もう少し引きずってくれてもいいのに)ムー

菜々「…?どうかしました?」

しずく「いえ、なんでもっ」

76: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:20:17.24 ID:b2uerZKp
中川家・玄関前



菜々「どうしましょう。上がっていかれますか?」

しずく「いえ。時間も時間ですので、ここでお待ちします」

菜々「分かりました。すぐ戻りますね」


ガチャ


菜々「ただいまー」

バタン

しずく(……)

しずく(ここがせつ菜さんのお家…)


ガタン!

しずく(……何?)


ガチャン!

菜々「…っ!」ダッ

しずく「菜々さん!?」

せつ菜母「菜々!どこ行くの!待ちなさい!」

77: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:22:09.04 ID:b2uerZKp
しずく「え…」

せつ菜母「あ、あら…あなたは?」

しずく「あ、え、えっと…し、失礼します!」ペコッ

しずく「…」ダッ

せつ菜母「…」

せつ菜母「はぁ…間違えたかしら…」







菜々「はぁ、はぁ…!」

菜々「……」

しずく「菜々さんっ!!」

シュルッ

スッ

せつ菜「…」

しずく「はぁ…はぁ…」

しずく「突然…、どうして…」

78: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:23:19.16 ID:b2uerZKp
せつ菜「…」

しずく「家で、何があったんですか?」

せつ菜「…バレました」

しずく「えっ」

せつ菜「スクールアイドルのこと。アニメのこと。漫画のこと」

せつ菜「全部、親にバレちゃってました…あはは」

しずく「…嘘……」

しずく(なんて声を掛けたらいいか分からない…何を言えば…)

せつ菜「すみません。こんなこと言っては気を遣わせてしまいますよね」

せつ菜「大丈夫です。これは私の家の問題なので」

しずく「…そんな…」

しずく(そんな言い方…)

せつ菜「でも、ラノベをお貸しする約束は守れなさそうです」

しずく「…そんなの!」

79: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:24:28.46 ID:b2uerZKp
しずく「そんなの今はどうだっていいです!」

しずく「何が大丈夫なんですか!」

しずく「せつ菜さんのそんな悲しそうな顔、見たことありませんよ!」

せつ菜「…もう、せつ菜は…」

せつ菜「…優木せつ菜は今日限りでおしまい、ですね」

しずく「っ、なんで…」

しずく「なんでいつも諦めちゃうんですか!」グスッ

しずく「同好会再結成の時も!今も!自分さえ我慢すればいいって…」

せつ菜「…っ」

しずく「私は嫌です!せつ菜さんにスクールアイドルやめてほしくありません!」

しずく「もっとラノベのお話したいです!アニメでも漫画でも構いません!」

80: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:25:42.68 ID:b2uerZKp
しずく「スクールアイドル、大好きなんでしょう!?」

せつ菜(…私がその言葉を言われる側になるとは)

しずく「逃げ出してきたってことは、やめたくないんですよね?」

せつ菜「…私だって、嫌です…でも、どうしたら…」

せつ菜「誰かに期待されるのは嫌いじゃありません。できるだけ応えたいと思います」

せつ菜「ですが反抗したことはありません…私には、抗い方が分かりません」

しずく「…家出しましょう」

せつ菜「…はい?」

しずく「優等生の中川菜々さんが家出の不良少女になる、というのはどうでしょう」

せつ菜「……いや、それは流石に…」

しずく「まぁ家出は言い過ぎですが。でも、今日は帰りたくないですよね?」

せつ菜「まぁ、はい…」

しずく「幸い週末ですから、私の家来ませんか?」

しずく「ちょっと…いえ、かなり遠いですが」

せつ菜「…そうですね、もうやけくそです。お邪魔します」

――――
―――
――

81: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:27:11.49 ID:b2uerZKp
桜坂家




せつ菜(何ですかこの家…)

せつ菜(しずくさんってかなりのお嬢様…?)

しずく「オフィーリア、ただいま♪」ナデナデ

オフィーリア「クゥーン」

せつ菜(オフィーリア…あっ///)

しずく「ほら、せつ菜さんにも挨拶しよ?」

オフィーリア「わんっ」パタパタ

しずく「せつ菜さんもよかったら撫でてあげてください」ナデナデ

せつ菜「ぁ、は、はい…///」プルプル

しずく「くす、いい子ですから、大丈夫ですよ?」

せつ菜(そういうことじゃないんですけど!)ナデ、ナデ

オフィーリア「」ペロ

せつ菜「ひゃあ!!」ドサ

しずく「……くすっ」

せつ菜「~~~///」カァ

82: (光) 2021/08/28(土) 21:27:20.21 ID:z7tc0pZj
ん? 何が起きたんだ?

84: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:30:32.18 ID:b2uerZKp
>>81のことでしたら、突然なめられて尻もち着いただけです


しずく母「もう、いきなり酷いじゃない」

しずく「お母さんが変な事言おうとするからだよ!」

しずく母「はいはい」

しずく「せつ菜さん、もう行きましょう!ね!」グイグイ

せつ菜「は、はい。ではお世話になります」

しずく母「遠慮しないでね」フリフリ





しずく「騒がしくしてしまってごめんなさい。お恥ずかしいところを…」

せつ菜「ふふっ、仲良いんですね」

しずく「あ…はい…」

しずく(しまった、今のせつ菜さんには…)

せつ菜「嫌味ではありませんよ。本当に、微笑ましくて」

しずく(大丈夫、なんて無責任なことは言えないけど)

しずく「絶対、せつ菜さんのご両親に認めてもらいましょう」

せつ菜「そうですね。ここまで来たらやるしかありません!」

しずく(少し、元気が出たみたいでよかった)

83: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:28:19.09 ID:b2uerZKp
しずく「ただいま」

しずく母「おかえり。あら…」

しずく「さっき電話で話した友達だよ」

せつ菜「突然で本当にすみません。お邪魔します」ペコ

しずく母「いえいえ。でもお友達っていうからてっきりかすみちゃんかと…」

しずく母「もしかして、あなた優木せつ菜ちゃん?」

せつ菜「えっ、そうですが…どうして知ってるんですか?」

しずく「!!!」

しずく母「かすみちゃんじゃないとしたら、この子の…」

しずく「だ、だめぇ!///」ガバッ

しずく母「んむ」モゴモゴ

しずく「余計な事言わなくていいの!!」アセアセ

せつ菜「…?」

85: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:31:54.40 ID:b2uerZKp
しずく「そういえば、お家の方からは何かありました?」

せつ菜「一応、友達の家にお邪魔しているとは伝えたんですが」

せつ菜「あ、返信来てますね。えっと…」

せつ菜「『分かりました。とりあえず今は何も言わないから』」

せつ菜「『あまりご迷惑にならないうちに帰ってきなさい』と」

せつ菜「…ほんと、ご迷惑ですよね…個人的な事情で…」

しずく「…」

せつ菜「すみまsむぐっ」

しずく「私が勝手に招いただけなので謝らないでください」

しずく「どうしてもとおっしゃるなら、別の言葉が聞きたいです♪」

せつ菜「…私、あの場にしずくさんが居なかったら多分腐ってました」

せつ菜「本当に、ありがとうございます」

しずく「どういたしまして♪」

86: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:33:06.20 ID:b2uerZKp
しずく「でも、どうしましょうか…こうしてるだけじゃ…」

せつ菜「…」

しずく「うーん。やっぱり直接説得しか…」

せつ菜「…しずくさんは優しいですね」

しずく「え?」

せつ菜「私はその優しさに今すごく救われてるんですが」

せつ菜「どうして、そんなに私に良くしてくださるんですか?」

しずく「それ、は…」


―――確かに。いくら仲間として放っておけなかったといっても

―――私とせつ菜さんのこれまでの間柄からしたら当然の疑問

―――いつか聞かれるのは覚悟していた

―――首から下げたペンダントをそっと握りしめる

―――お願い、私に勇気をください

88: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:34:26.24 ID:b2uerZKp
しずく「好きだからです」

せつ菜「…へ?」

しずく「せつ菜さんのことが、好きです。あなたをお慕いしています」

せつ菜「―――な、何を」

しずく「あなたの姿を追いかけ続けて…もう、ただの後輩ではいられないんです」

しずく「せつ菜さんのことも、せつ菜さんの大好きなことも」

しずく「全部ひっくるめて愛してるんです」

せつ菜「ま、待ってください///」アタフタ

しずく「嬉しいことも、悲しいことも、一緒に背負いたいんです」

しずく「私は絶対に、あなたの味方ですから」ギュッ

せつ菜「…あ、う///」カァ

87: (光) 2021/08/28(土) 21:33:40.39 ID:W+cBm/p+
すみません
>>76でせつ菜が玄関開けたらいきなり母に怒鳴られたのかと勘違いしただけです

89: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:36:50.01 ID:b2uerZKp
>>87
すみません、分かりづらかったかもしれません


しずく「分かってもらえましたか…?」

せつ菜「あっ///あ、はい、もう、それは…///」プシュー

しずく「ふふっ、せつ菜さんったらゆでだこみたい」ツンツン

せつ菜「あんな真っ直ぐに大好きを伝えられたら、誰だって…!///」

しずく「せつ菜さんだから、伝えたんです♡」

せつ菜「も、もう、勘弁してくださいっ///」

しずく「…」ギュー

せつ菜「…あの」

しずく「はい?」

せつ菜「そろそろ、離れていただいても…」

しずく「嫌です」

せつ菜「」

90: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:38:01.35 ID:b2uerZKp
せつ菜「どうしてですか!」

しずく「好きだからです♡」

せつ菜「それはもう聞きました!///」

しずく「もう全てをさらけ出してしまったので、我慢する必要ないかなって」

せつ菜「一旦でいいですから!落ち着かせてください!」

せつ菜「心臓に悪すぎてどうにかなりそうです!」

しずく「えっ。確かめてもいいですか?」スッ

せつ菜「はい、どう…いやダメですよ!何言ってるんですか!///」

しずく「えへ♡」

せつ菜「さらけ出し過ぎです!しずくさんはお嬢様なんですからそんな破廉恥な…」

しずく「今の私は、ただのせつ菜さんの後輩です…」ギュ

せつ菜「さっきただの後輩ではいられないって言いましたよね!?」

しずく「それはそれです♡」

91: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:39:09.33 ID:b2uerZKp
せつ菜(もう、ほんとに…可愛い顔して、私の心をかき乱して…)

せつ菜(でも憎めない。それだけ、あのしずくさんが心を開いてくれている)

せつ菜(その事実に正直嬉しさが込み上げてくる)

しずく「それより、私告白したつもりなんですけど…」

せつ菜「――っ」

せつ菜(当然。答えなければならない…しかし…)

しずく「大丈夫です。それなりに覚悟は決まってますから…」プルプル

せつ菜(…大丈夫なはず、ありませんよね…)

せつ菜「分かりました。…多分、最低な事言うと思いますが、聞いてください」

せつ菜「しずくさんの大好き、伝わりました。すごく嬉しかったです」

せつ菜「これほどドキドキするのは多分初めてのことで、私も戸惑っています」

しずく「…」

92: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:40:24.97 ID:b2uerZKp
せつ菜「ですが、少し考える時間をください」

せつ菜「しずくさんの真剣な想いに対して、誠意をもって答えたいんです」

せつ菜「今は告白されたばかりで、この胸のドキドキの正体がはっきりしません」

せつ菜「告白されたからではなく、ちゃんとしずくさんが好きなのかどうか」

せつ菜「分かるまで待ってはもらえませんか?」

しずく「……つまり、保留ですか」

せつ菜「…はい」

しずく「……」

せつ菜(いくら御託を並べてもしずくさんからしたら生〇しですよね…)

しずく「…はぁー…よかった」

せつ菜「えっ」

しずく「最低な事っていうから、てっきり振られるのかと思いました」

せつ菜「いやでも、保留なんてどっちつかずな状態、嫌じゃないんですか?」

93: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:42:16.51 ID:b2uerZKp
しずく「そうですけど…逆に言えば、脈ありの可能性が残ってるわけです」

しずく「それにさっきのせつ菜さんの様子を見ると、悪い印象もなさそうなので」

しずく「これからのアピール次第ってことにもなりますね♪」

せつ菜「…強いですね」

しずく「…友達が勇気をくれました」

しずく(ありがとう、かすみさん、璃奈さん。私、もう少し頑張れそうだよ)

せつ菜「…私も、見習おうと思います」

しずく「…?」

せつ菜「明日帰ります。変に考えず、真っ直ぐぶつかってみようと思います」

しずく(…!)

せつ菜「気持ちを伝えるにはそれが一番だと、今しずくさんから学びました」

せつ菜「ですが…ひとつ、お願い聞いてもらえませんか?」

しずく「なんでしょうか」

せつ菜「私と一緒に来てほしいです。少しだけ、私にも勇気を分けてください」

しずく「…はい♪」

94: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:43:32.90 ID:b2uerZKp




しずく「そろそろ寝ましょうか」

せつ菜「はい。ところで、私はどこで寝たらよいのでしょう」

しずく「ここです♡」ポンポン

せつ菜「それはしずくさんのベッドじゃないですか。布団か何かあれば…」

しずく「ありません♪」

せつ菜「え、っと…じゃあそこのソファで…」

しずく「ダメです♪」

せつ菜「…床で」

しずく「それは身体痛めるので本当にダメです」

せつ菜「本当にって、じゃあソファはなんなんですか!?」

しずく「私が嫌なのでダメです」

せつ菜「」

95: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:44:46.06 ID:b2uerZKp
せつ菜(結局…)

・・・・・

しずく「…そんなに嫌がらなくてもいいじゃないですか」グスッ

せつ菜「わ、わかりましたっ。お願いですから泣かないでください」

しずく「わーい♡」ケロッ

せつ菜「」

しずく「言質は取りました」

せつ菜(や、やられた…!)

・・・・・

せつ菜(演劇部としてのしずくさん…油断しました)

しずく「…」

せつ菜(…しずくさんのベッドに、隣には本人がいて…)

せつ菜(しずくさんの匂いが強すぎるっ///)

せつ菜(……すー…はー…)

せつ菜(っ、何、やってるんですか私は…こんなのまるで…)

しずく「…私の匂い、好きですか?」

せつ菜「!?」

96: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:46:05.99 ID:b2uerZKp
せつ菜「な、何のことでしょうか」ドキドキ

しずく「…ふーん、誤魔化すんですか」

しずく「せつ菜さんの、むっつりすけべ♡」

せつ菜「―――っ///」カァ

しずく「私でそういう気分になってくれるってことは」

しずく「少しは期待してもいいんですか?♡」ギュ

せつ菜(腕…、当たって…///)

しずく「せつ菜さんになら、私はいつでも…」

せつ菜「何言ってるんですか///」

せつ菜「だめです、私たちまだ付き合ってないんですからっ」

しずく「…まだ、ですか?ふふ」

せつ菜「こ、言葉の綾です!」

97: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:47:15.89 ID:b2uerZKp
せつ菜「しずくさんの愛情表現は過激すぎます…」

しずく「でもせつ菜さんが私の匂いで興奮するから…」

せつ菜「やめてください!///言い方!!///」

しずく「ふふっ♡」

せつ菜「はぁ…もう、私が悪かったので許してください…」

しずく「はい♪」

せつ菜(本当に、こんな子が私の事を好きだなんて…信じられませんね)

せつ菜(私なんかにはもったいないくらい、魅力的な子)

せつ菜「…手、握りながら寝てもいいですか」

しずく「…はい。どうぞ」

せつ菜「…」ギュ

せつ菜(スクールアイドルをやめてほしくないと言ってくれたしずくさん)

せつ菜(あなたのその期待に応えたい―――)


――――
―――
――

98: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:48:29.40 ID:b2uerZKp
翌日

中川家・玄関前



せつ菜「…」

しずく「…菜々さんでなくていいんですか?」

せつ菜「はい。こっちの私を認めてもらうために来たんですから」

しずく「…そうですね」

せつ菜「…」ゴクリ

しずく「…」スッ

ギュ

せつ菜(!…心強い)

ピンポーン


ガチャ

せつ菜母「…おかえり」

せつ菜「ただいま」

せつ菜母「あら、あなたは昨日の…」

しずく「初めまして…ではないですが。桜坂しずくと申します。」ペコ

せつ菜母「そう、あなたが…。とりあえず、二人とも入りなさいな」

しずく「お邪魔します」

99: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:49:50.54 ID:b2uerZKp
せつ菜母「まずは桜坂さん。娘がご迷惑をおかけしました」

しずく「そ、そんなことありません。私が勝手にやったことですから」アセアセ

せつ菜母「それでも、菜々のこと気にかけてくれてありがとう」

しずく「いえいえ…」

せつ菜「お母さん…」

せつ菜母「菜々…。昨日は感情的になってごめんなさいね」

せつ菜「え…」

せつ菜母「あなたがまさか家を飛び出すなんて思わなかったわ」

せつ菜母「でも…」

せつ菜「すー、はー…」

しずく(…)ギュ

せつ菜「お母さん。禁止されてることを内緒にしてたことはごめんなさい」

せつ菜「でも、私にとってスクールアイドルは絶対に譲れない、やめたくないの」

せつ菜「スクールアイドルをやってる時が、一番私らしくいられるの」

100: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:51:00.03 ID:b2uerZKp
せつ菜母「…私は別に、あなたに意地悪したいわけではないのよ」

せつ菜母「でも、子供のうちにできることは限られてるわ」

せつ菜母「その貴重な時間を、有意義なものに使ってほしい」

せつ菜母「大人になった時に困ってほしくはないの」

せつ菜母「私にはそのスクールアイドルがあなたを幸せにするとは思えないわ」

せつ菜(…分かってる。私の親は厳しいけれど、決して愛されてないわけじゃない)

せつ菜(どう考えても我儘を言っているのは私。お母さんのほうが正論)

せつ菜(私には納得させる合理的な理由はない。感情に訴えるしかない)

せつ菜(でも…)



しずく「私からも、よろしいですか?」

せつ菜「えっ」

せつ菜母「ええ、どうぞ」

101: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:52:50.27 ID:b2uerZKp
しずく「お母様は、ライブ中の娘さんをご覧になられたことはありますか?」

せつ菜母「ないけれど…」

しずく「私は普段の菜々さんをお母様ほど詳しくは知りませんが」

しずく「きっとステージ上の菜々さんが見せる笑顔こそ本当の菜々さんなんです」

せつ菜母「…」

しずく「でも、普段の菜々さんが偽りだとも思っていません」

しずく「菜々さん、期待に応えるのは好きだとおっしゃっていました」

せつ菜「…」

しずく「スクールアイドルやアニメ好きな趣味も、生徒会長で優等生でいるのも」

しずく「全部含めて菜々さんなんです。どれか一つでも欠けたらいけないんです」

しずく「スクールアイドルを守るために生徒会長として、頑張ってこられたと思います」

しずく「なので菜々さんの大好きを…優木せつ菜さんを否定しないであげてください」

せつ菜(しずくさん―――!)

しずく「お願い、します…」グスッ

せつ菜「っ、お母さん、お願い!」ガバッ

102: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:54:42.40 ID:b2uerZKp
せつ菜母「…顔、あげてちょうだい」

しずく「…」

せつ菜「…」

せつ菜母「私たちは、確かにあなたに理想を押し付けて」

せつ菜母「私たちの思う幸せとあなたの思う幸せは同じだと信じて疑わなかった」

せつ菜母「…私自身も間違ってるとは思わないけれど、理屈だけの話じゃないのね」

せつ菜母「今までも別に学業が疎かになっていたわけでもないし」

せつ菜母「…分かったわ。ひとまず認めます。でも勉強もちゃんとやるのよ?」

しずく・せつ菜「!!」

せつ菜「ありがとう、お母さん!」ペカー

せつ菜母(!…なるほど。確かに、いい笑顔ね…)フフ

しずく「せつ菜さ、…本当に、よかった…っ」グスッ

せつ菜「しずくさん…しずくさんのおかげです。ありがとうございます」ナデナデ

しずく「…///」

103: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:55:57.25 ID:b2uerZKp
せつ菜母「菜々、いいお友達を持ったわね…」

しずく「そ、そんな私なんて…」

せつ菜「……」ジッ

しずく「…な、なんですか?」

せつ菜「違うよ、お母さん」

せつ菜母「え?」

せつ菜「しずくさんは友達じゃなくて、それ以上に―――」

せつ菜「―――私の、大切な人!」ダキッ


しずく・せつ菜母「!?」

104: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 21:58:46.54 ID:b2uerZKp
しずく「なな、何言ってるんですか!///お母様の前でっ///」

せつ菜母「おかあさまって、お義母様ってこと…!?」

しずく「よく分かりませんけど多分違いますよ!」アワアワ

せつ菜母「大事な娘が…家出して帰ってきたら、彼女を連れて…」ガクガク

しずく「~~~///、せつ菜さん!!」

せつ菜「昨日散々ベッドでいじめられた仕返しです!」

せつ菜母「ベッドで…いじめられて…!?」

しずく「違います!違いますから!!///」

せつ菜「そんな否定しなくても…一緒に寝た仲じゃないですか」

せつ菜母「―――桜坂さん」

しずく「ひっ!?」ビクッ

せつ菜母「菜々を…よろしくお願いします…」バタン

しずく「お、お母様ぁー!」

――――
―――
――

105: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 22:01:34.08 ID:b2uerZKp
しずく「もう、もう!せつ菜さんってばほんとにもう!」

せつ菜「もう、しか言ってませんよ…」

しずく「もう!」

せつ菜(…時々子供っぽくなるしずくさん、アリですね)フフ

しずく「笑わないでください!」プクー

せつ菜「…しずくさん」

しずく「…なんですか」

せつ菜「ありがとうございます」

せつ菜「私にあなたの大好きをくれて。私の大好きを守ってくれて。」

せつ菜「なんだかご都合的な展開でしたけど…」

しずく「お嫌いですか?」

せつ菜「まさか。ご都合主義でハッピーエンド、好きですよ!」

しずく「私もせつ菜さんのおかげで好きですよ」

106: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 22:03:10.81 ID:b2uerZKp
せつ菜「私も、そうやって真っ直ぐな大好きを伝えてくれるあなたに」

せつ菜「…いえ、そうじゃないですね」

せつ菜「私はもう、あなたが傍にいてくれないと嫌です」

せつ菜「理屈じゃありません。私の大好き、受け取ってください!」

しずく「―――」





―――何度も夢見た言葉

―――繰り返し繰り返し練習したその返事を

―――今度はちゃんと、目を見て言えますように…




おわり

107: (えびふりゃー) 2021/08/28(土) 22:05:08.27 ID:b2uerZKp
読んでくれた方ありがとうございました

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1630147166/

タイトルとURLをコピーしました