【SS】歩夢「相手が知らない昔の話でマウントを取るとか最低だよね!」かすみ「えぇ……」【ラブライブ!虹ヶ咲】

ぽむ SS


1: (あら) 2021/09/11(土) 18:29:20.55 ID:5farYAXO
土曜日 お台場

かすみ「こうやって休みの日に外で誰かと偶然に会えるのって、なんか嬉しいよね」

しずく「ふふっ、そうだね」

せつ菜「かすみさんは、愛さんとお出かけしてたんですね!」

璃奈「珍しい組み合わせかも」

かすみ「そうなんですよぉ。愛先輩から、かすみんと一緒に遊びたいって連絡が来たんです!」

かすみ「かすみんったらモテモテで困っちゃいますねぇ」ヘヘーン

愛「りなりーとカリンにLINEしたら、2人とも予定があるって言われちゃってさ」

愛「2年組にも聞いたんだけど、みんな何かあるみたいで……」

愛「それで、じゃあ今日はかすかすかなって」

かすみ「優先順位が低い! それと、かすみんですぅ!」

2: (あら) 2021/09/11(土) 18:33:01.09 ID:5farYAXO
せつ菜「せっかく連絡してもらったのにすみません」

愛「いや、急な連絡だったし、それは別に仕方ないよ」

愛「でも、せっつーはりなりーとしずくの3人で遊んでたんでしょ?」

愛「そっちも珍しい組み合わせだよね」

しずく「私からお願いしたんです。お2人に教えていただきたいことがありまして」

かすみ「りな子とせつ菜先輩に教えて欲しいこと?」

しずく「来月に演劇部で、有名な漫画を題材にした演目をやることになったの」

しずく「ただ、その漫画を私は読んだことがなくって……」

3: (あら) 2021/09/11(土) 18:36:09.65 ID:5farYAXO
しずく「それで、璃奈さんにどんな内容か聞いてみたんだ」

璃奈「私は読んだことはあったんだけど、そこまで詳しいってわけじゃなくて……」

璃奈「どうしようかなって考えてたら、前にせつ菜さんが大好きだって言ってたのを思い出したの」

しずく「だから、せつ菜さんにもお聞きしたんです」

せつ菜「はい! 私のお気に入りの作品なんです。名作ですよ!」ペカー

璃奈「それで、今日は3人で色々と資料を集めてたってわけだよ」

せつ菜「単行本は私が持ってますので、お貸しできますけど……」

せつ菜「小説版とか他にも買ってないものもありますから、この機に揃えてしまおうと思いまして!」

4: (あら) 2021/09/11(土) 18:39:25.97 ID:5farYAXO
愛「へえー、演劇部って漫画をもとにした劇とかするんだ」

かすみ「確かにあんまりイメージないですね」

しずく「脚本を担当している先輩がドハマりしたらしくって、絶対にこれにするんだって」

しずく「校内だけの小さな舞台だし、こういうのもたまには悪くないって部長も言ってて」

璃奈「今ちょっと思ったんだけど、著作権とか大丈夫なの?」

しずく「あんまり変な内容だとあれだけど、高校の演劇部でお金を取らずにやるなら大丈夫みたい」

璃奈「へえー」

せつ菜「私は絶対に見に行きますよ! その脚本担当の方ともお話ししたいですしね!」

かすみ「かすみんも、しず子を見に行きたいです!」

愛「予定が合えば、同好会のみんなで行ってもいいかもね」

5: (あら) 2021/09/11(土) 18:42:03.95 ID:5farYAXO
愛「ところで、これからどうする?」

愛「愛さんたちは、何か食べようかって話してたんだけど」

せつ菜「いいですね! 私たちもまだですし、ご一緒したいです!」

璃奈「お腹すいた」グー

かすみ「ご飯を食べにお店に行ったら、他の先輩たちもいたりしないかな?」

しずく「ちょうどここに半分いるし、残りの半分の人たちも一緒にいたりしたら素敵だよね」

愛「確かにそれは素敵だけど、多分ないかな。3年組は勉強会らしいからさ」

せつ菜「勉強会?」

愛「そうなんだよ。このままだとカリンが留年しちゃうかもしれないらしくって」

6: (あら) 2021/09/11(土) 18:45:07.66 ID:5farYAXO
しずく「留年ですか!?」

愛「まだ再試に落ちただけで再々試も課題提出もあるからって、本人は余裕そうだったけど……」

愛「エマっちとカナちゃんが、絶対に一緒に卒業するんだって張り切ってたからね」

かすみ「果林先輩もダメダメですねぇ。かすみんだって、再試はちゃんと受かりますよ?」

かすみ「いっそのこと留年しちゃえばいいんですよ。そしたら、かり子って呼んでやります!」

せつ菜「たとえ果林さんが留年しても、まだかすみさんと同じ学年にはなりませんよ?」

璃奈「3年の先輩たちが卒業していなくなるとさみしいもんね。かすみちゃんは特に懐いてるし」

かすみ「分かってますよ! 冗談です! っていうか、先輩たちに懐いてるのはりな子もでしょ!」

しずく「かすみさんは、先に自分の心配をしないとだよ?」

しずく「だって、来年は私をしずく先輩って呼ばなきゃでしょ?」ネ?

かすみ「かすみんは留年なんかしないけど!?」

7: (あら) 2021/09/11(土) 18:48:01.29 ID:5farYAXO
せつ菜「なら、残りは歩夢さんと侑さんですね!」

せつ菜「愛さんが連絡したとき、お2人はなんて言ってましたか?」

愛「予定があるとは聞いたけど、どんな予定かまでは聞いてないんだよなあ」

しずく「あの2人なら、一緒にいても何もおかしくないですよね」

かすみ「じゃあ、侑先輩と歩夢先輩を探しにお店に行きましょう!」オー!

せつ菜「はい!」ペカー

愛「いや、別に2人を探しに行くわけじゃないでしょ」

璃奈「ねえ、あれって歩夢さんじゃない?」

かすみ「えっ? どこどこ?」

璃奈「ほら、あの道路の向こう側にいるの……」

愛「あっ、ホントだ」

9: (あら) 2021/09/11(土) 18:50:44.89 ID:5farYAXO
璃奈「誰かと話してるみたいだけど……」

しずく「なんか男の人に絡まれてませんか?」

かすみ「あっ! あの人、歩夢先輩の頭を掴みましたよ!」

せつ菜「歩夢さんっ!」ダッ!

愛「ちょっと待った! せっつー、危ないって!」ガシッ!

せつ菜「でも、歩夢さんが!」

愛「いや、この道路を渡るのは無理だよ! 絶対に轢かれるって!」

しずく「かなり広いし交通量も多いですからね。危険ですよ!」

璃奈「あっちに歩道橋がある!」

せつ菜「歩夢さん! 今、行きますっ!」ダダダッ

11: (あら) 2021/09/11(土) 18:54:31.06 ID:5farYAXO
愛「せっつー、アタシも行くよ!」

愛「りなりーたちは、ここで待ってて!」ダッ

璃奈「ねえ、どうする?」

かすみ「私たちも行くよ! 当たり前でしょ!」

しずく「でも、逆に迷惑になったりしないかな?」

しずく「あの男の人に捕まって、せつ菜さんと愛さんの足を引っ張っちゃったりとか……」

かすみ「ちょっと離れたとこにいれば大丈夫だよ! ほら、今も歩夢先輩は怖い思いを――」

しずく「……反撃してるね。ゲシゲシ蹴ってる」

璃奈「意外とアグレッシブ」

かすみ「もうっ! とにかく行くよ!」タタタッ

しずく「待って、かすみさん! 璃奈さん、私たちも行こう!」タッ

璃奈「うん」トタタタ

13: (あら) 2021/09/11(土) 18:57:59.36 ID:5farYAXO
せつ菜「歩夢さん!」

歩夢「ん? あっ、せつ菜ちゃん」

せつ菜「歩夢さん、大丈夫ですか!?」

歩夢「え? 大丈夫って、何が?」

せつ菜「どこか怪我でもしてませんか!? 痛いところとかありません!?」サワサワ

歩夢「え? え? どうしたの? もー、くすぐったいよ」フフッ

愛「歩夢!」

歩夢「あ、愛ちゃんもいたんだ。せつ菜ちゃんと一緒だったの?」

歩夢「せっかく誘ってもらったのに、断っちゃってごめんね。外せない用事があって……」

歩夢「でも、それはもう終わったから、よかったら私も――」

愛「そんなことはいいから、大丈夫だったの!?」

歩夢「せつ菜ちゃんも言ってたけど、大丈夫って何が?」

14: (あら) 2021/09/11(土) 19:01:00.10 ID:5farYAXO
せつ菜「さっき、男の人に絡まれてたでしょう!?」

歩夢「絡まれてた? ……あぁ」

かすみ「歩夢先輩!」

しずく「どうやら大丈夫みたいですね」

璃奈「さっきの人、いなくなってる」キョロキョロ

愛「1年組は待ってろって言ったでしょ!?」

かすみ「ごめんなさい! でも、じっとしてられなくて……」

愛「もー、分かるけどさあ」

歩夢「1年生のみんなも一緒だったんだ」

歩夢「これからどこかに行く予定なの? お邪魔じゃなければ、私も連れていって欲しいな」

せつ菜「もちろんそれは構いませんけど、さっきのは何だったんですか?」

歩夢「……あれは、みんなが気にする必要なんてないやつだよ。もう行っちゃったしね」

15: (あら) 2021/09/11(土) 19:04:16.52 ID:5farYAXO
しずく「あの男の人、歩夢さんのお知り合いなんですか?」

歩夢「まあ、知り合いというかなんというか……」

かすみ「あっ! もしかして彼氏とか言いませんよね?」

せつ菜「歩夢さんの彼氏!?」ガーン!

かすみ「絶対にダメですよ! スクールアイドルだって、そういうのはスキャンダルなんですから!」

歩夢「そんなわけないでしょ! 冗談でもそんなこと言わないで!」

しずく「じゃあ、あれはどなたなんですか?」

歩夢「……あれは、その、お兄さんなの」

愛「へえー、歩夢ってお兄さんがいたんだ」

璃奈「知らなかった」

せつ菜「私も知りませんでした。なるほど、歩夢さんにはお兄さんが……」

歩夢「そうじゃなくて、あれは侑ちゃんのお兄さんなの」

17: (あら) 2021/09/11(土) 19:07:01.47 ID:5farYAXO
璃奈「そっか、侑さんのお兄さんなら、歩夢さんとも知り合いだよね」

歩夢「私と侑ちゃんは、幼稚園の頃からずっと一緒の幼馴染だからね」フフーン

歩夢「昔から、よくお互いの家にも遊びに行ってるんだ。お隣だしね」

歩夢「でもそういうとき、お兄さんもなんか家にいるの。本当に邪魔なんだから……」ブツブツ

かすみ「なんかいるって、そりゃいるでしょ」

しずく「お兄さんからすれば自宅ですからね」

璃奈「邪魔って言われても困っちゃうよね」

愛「ねえ、歩夢。ゆうゆのお兄さんって、どんな人なの?」

愛「愛さんにもおねーちゃんがいるから、ちょっと気になるかも!」

歩夢「どんなって言われても、ただ侑ちゃんの兄だってだけで、わざわざ説明するようなこともないよ」

歩夢「そんなことにみんなの時間を使うのは、すごくもったいないっていうか……」

しずく「さっきからやたらと辛辣ですね」

18: (あら) 2021/09/11(土) 19:10:09.07 ID:5farYAXO
せつ菜「でも、私も少し気になります」

璃奈「私も」

歩夢「そう? まあ、みんながそんなに言うんなら……」

歩夢「すっごく嫌な人だよ。美里さんと比べること自体が失礼ってくらいに」

せつ菜「そうなんですか?」

歩夢「そうなんだよ! 侑ちゃんはあんなにいい子なのに、なんでなんだろ!?」

しずく「一発でエンジンかかったね」ヒソヒソ

かすみ「なんかすごいね」ヒソヒソ

歩夢「きっと侑ちゃんは、下に溜まってた素敵なオイルからできてるんだね!」

歩夢「それで、お兄さんは上に浮いてた水みたいに薄いオイルからできてるんだよ!」

璃奈「ドラえもんかな?」

かすみ「オイルって薄いとダメなんですか?」

愛「っていうか、そもそもオイルってとこからおかしいでしょ」

19: (あら) 2021/09/11(土) 19:12:59.18 ID:5farYAXO
歩夢「さっきもたまたま会ったんだけど、これから侑ちゃんと映画を見に行くんだって自慢してきたの!」

歩夢「羨ましいだろーとか言って、頭に触ってきて髪の毛ぐしゃぐしゃにするし……」

歩夢「ホント最低だよ!」

愛「ゆうゆの予定って、お兄さんと映画に行くことだったんだ」

歩夢「それもおかしいよね! 侑ちゃんは私と映画に行くべきでしょ?」

しずく「それは侑さんに言ってください」

歩夢「女子高生の髪の毛に勝手に触るとか大罪だよ! 私が訴えたら捕まるよ!」

歩夢「最近はポリコレとかあるし、その場で死刑だね! 間違いないよ!」

かすみ「ポリコレ? なにそれ? ポリス・コレクションとか?」

璃奈「警察を集めてどうするの?」

しずく「ポリティカル・コレクトネスだよ。その場で死刑になるほどヤバくはないはずなんだけどなあ」

20: (あら) 2021/09/11(土) 19:15:32.48 ID:5farYAXO
歩夢「そもそも普段から、お兄さんは自慢してきてばっかりなんだよ!」

歩夢「それも何回も何回も同じ話をしてさ! きっともうボケてるんだね!」

せつ菜「どんな自慢話をされるんですか?」

歩夢「侑ちゃんが生まれて最初に話した言葉が、『お兄ちゃん』だったって何度も言うの!」

歩夢「『なあ、知ってる? 侑が1歳になる直前に、初めてしゃべった言葉が何だったか?』って聞くの!」

歩夢「飽きるほど聞いたから知ってるよ! 耳にタコができてるよ!」

歩夢「もう100匹はいるよ! たこ焼きにして、そのうるさい口に詰め込んでやる!」

愛「歩夢、落ち着こ? 言ってることが、わけ分かんなくなってきてるよ?」

歩夢「でも、たこ焼きはもんじゃ焼きのライバルだから、愛ちゃんの敵でしょ!?」

愛「いや、それはほら。ライバルだけど仲間だからさ」ネ?

せつ菜「愛さんも混乱してませんか?」

かすみ「っていうか、たこ焼きが敵だったとしたらなんなんです?」

しずく「そもそも耳にタコのタコって、海にいるタコじゃなくて、指とかにできる硬いやつですよね?」

21: (あら) 2021/09/11(土) 19:18:11.70 ID:5farYAXO
せつ菜「まあ、いいじゃないですか。兄妹仲がよくて、微笑ましいくらいですよ?」

歩夢「でも、私が初めて会ったときには、もう侑ちゃんは日本語ペラペラだったから……」

歩夢「だから、侑ちゃんの最初の言葉を『歩夢』にできるわけないじゃない!」

歩夢「……酷いよ。こんなのってないよ。そんなのあんまりだよ……」

しずく「そんなこと狙ってたんですか?」

璃奈「日本語ペラペラって表現を、日本人の侑さんに使うのはどうなの?」

歩夢「他にも侑ちゃんが初めて歩いたときのこととか、生まれたときから毛先が緑色だったこととか……」

歩夢「そういう昔の話を色々と聞かせてくるの」

歩夢「そんな話をされても、私が知ってるわけないでしょ! だって、まだ私は出会ってないんだから!」

歩夢「相手が知らない昔の話でマウントを取るとか最低だよね!」

かすみ「えぇ……」

23: (あら) 2021/09/11(土) 19:21:42.16 ID:5farYAXO
歩夢「かすみちゃんもそう思わない? そんなことでしかマウントを取れないなんてバカだよね?」

かすみ「これ、かすみんはどうしたらいいんですか?」オロオロ

かすみ「そうですねって言ったら、歩夢先輩もバカにしてることになりません?」

愛「あー、どうだろうねえ。なるかもしれないねえ」

歩夢「璃奈ちゃんもそう思うよね? ね?」ネ?

璃奈「いや、『ね?』と言われても……」

しずく「まあまあ、歩夢さん。お気持ちは分かりますけど、ご家族は仕方ないですよ」

しずく「お兄さんだけでなく、ご両親も生まれたときから侑さんを知っているでしょう? 当然ですけど」

しずく「そこを気にしても意味がありません。その人たちは、家族なんですから」

しずく「歩夢さんは侑さんの初めての友達でしょうし、家族を除けば最も古い付き合いだと思えば」ネ?

25: (あら) 2021/09/11(土) 19:23:51.56 ID:5farYAXO
歩夢「頭では分かってるんだけど、やっぱりどうしても羨ましいの」

歩夢「だって、侑ちゃんがお母さんのお腹の中にいたときから知ってるとか言うんだよ?」

歩夢「『俺は母さんにお腹をなでさせてもらったけど、歩夢は?』とかバカみたいな自慢をされるんだよ?」

歩夢「私は侑ちゃんの一番になりたいの。どんなことでも侑ちゃんの一番として輝きたいって……」

歩夢「なのに何も言い返せないんだよ? ゼロだったんだよ? 悔しいじゃん!」

歩夢「悔しい。……やっぱり私、悔しいんだよ」

しずく「歩夢さん……」

愛「というか年が同じなんだから、ゆうゆが中にいるお腹を歩夢がなでるのは無理でしょ」

せつ菜「歩夢さんの誕生日は3月1日で早生まれですしね。侑さんはいつでしたっけ?」

歩夢「気合で侑ちゃんより早く産まれて、侑ちゃんのお母さんのお腹を這い回ってやる……」

しずく「急にホラーみが溢れてきましたよ」

かすみ「想像すると普通に怖いんですけど」

璃奈「赤ちゃんって普段は可愛いけど、状況次第ですっごく怖くなるよね」

27: (あら) 2021/09/11(土) 19:27:35.00 ID:5farYAXO
せつ菜「ですが、歩夢さんの気持ちは私にも分かります」

せつ菜「大好きな想いがあれば、今も未来も変えていけると私は信じています」

せつ菜「でも、過去は変えられません」

せつ菜「大好きな人と自分より多くの過去を積み重ねている誰かがいるのは、確かに辛いですよね」

せつ菜「歩夢さんの悔しさが、言葉でなく心で理解できます」

歩夢「せつ菜ちゃん……」

かすみ「過ごした時間の長さなんて関係ないですよ! そんなの気にしちゃダメです!」

かすみ「歩夢先輩! 過去の積み重ねなんかより、今が大切なんですよ!」

歩夢「は? 幼馴染のことバカにしてるの? 時間の積み重ねは大事でしょ?」ハ?

かすみ「なんでですかぁ」エーン

せつ菜「しずくさんが先ほど言っていたように、お兄さんはノーカウントにしましょう」

せつ菜「認識しなければ、存在しないのと同じですから!」ペカー

愛「まあ、自分より優れたものをすべて消せば、いつだって自分が一番だからね」

璃奈「ちょっと考え方がラジカルすぎない?」

30: (あら) 2021/09/11(土) 19:30:35.49 ID:5farYAXO
歩夢「気にしないのが一番だっていうのは、私も分かってるんだよ?」

歩夢「でも、お兄さんに侑ちゃんのことを自慢されると、どうしても気になっちゃって……」

せつ菜「そうやって兄妹マウントを取るのは、侑さんとの絆に自信がない証拠です!」

せつ菜「そんなマウントを取ってくるような人に、歩夢さんが負けるわけがありません!」

歩夢「せつ菜ちゃん!」

しずく「せつ菜さん、普段の幼馴染マウントのことは、記憶から消すことにしたみたいですね」

愛「せっつーは、どうも歩夢に甘いんだよなあ」

歩夢「お兄さんの兄妹マウントを、私の幼馴染マウントでやっつければいいんだね!」

歩夢「よーし、やってやるよ! 侑ちゃんを取り戻すんだ!」オー!

璃奈「歩夢さん、自分がマウントを取ってる自覚があったんだ。璃奈ちゃんボード『マジかよ』」

しずく「せっかく幼馴染マウントについて、せつ菜さんが触れないでいてくれたのに」

かすみ「かすみんに幼馴染マウントを取るのは、侑先輩との絆に自信がないからじゃないんですかぁ?」

せつ菜「……歩夢さんのマウントは綺麗なマウントですから、その例には当たりませんよ」

愛「だから甘いんだよ」

32: (あら) 2021/09/11(土) 19:33:41.19 ID:5farYAXO
せつ菜「それに、単純な時間の長さで負けていたとしても、それだけで勝負が決まるわけではありません!」

せつ菜「過ごした時間の密度で勝っていればいいんです!」

歩夢「時間の密度?」

せつ菜「そうです! 同じ学校に通っているとか、学科も同好会も一緒だとか……」

かすみ「なるほど。それは大事ですね!」

せつ菜「スクールアイドルとして同じステージに立っているとか、ユニットも同じだとか……」

愛「おや?」

せつ菜「そういう濃密な時間をともに過ごすことで、時間の長さなんて凌駕できるんですよ!」

歩夢「そっか、量より質が大切ってことだね!」

しずく「私、A・ZU・NAにいても大丈夫かな?」ヒソヒソ

璃奈「ああやって共通点を数えるのは、端的に言って怖い」ヒソヒソ

34: (あら) 2021/09/11(土) 19:37:08.80 ID:5farYAXO
せつ菜「私たちはこの虹ヶ咲学園でともに学んで、さらに同好会で同じ時間を過ごしているんです」

せつ菜「そもそも虹ヶ咲は女子校ですから、お兄さんは立ち入ることすら許されません」

せつ菜「少なくともお兄さんより、私たちの方がよほど濃い時間を共有していると思いませんか?」

歩夢「なるほど! 確かにそうだよね!」

歩夢「お兄さんは、侑ちゃんと同じクラスになったこともないくせにね!」

愛「なったことあったらまずいんだよなあ」

しずく「ああ、かすみさんや果林さんの間で流行っているという留年ですね」

かすみ「だから、かすみんは留年なんかしないの!」

璃奈「まあ、侑さんが飛び級したのかもしれないしさ」

せつ菜「歩夢さん、これは試練です。過去に打ち勝てという試練と私は受け取りました!」

歩夢「そうだよね! 生まれたときから一緒だからって、それで勝ちって決まってるわけじゃないもんね!」

せつ菜「はい! 幼稚園の頃からずっと一緒だからって、私が勝てない道理はないんですよ!」

しずく「この絶妙に噛み合ってない感じ、今後の展開にワクワクしますね」フフッ

愛「愛さんは、ハラハラして仕方ないかな」

38: (あら) 2021/09/11(土) 19:40:13.97 ID:5farYAXO
せつ菜「歩夢さん、大丈夫ですよ。私と一緒に頑張りましょう!」

歩夢「あ~ん❤ せつ菜ちゃん、すきすき❤」

かすみ「ちょっと! それ、かすみんのですよ!」プンプン

しずく「別にかすみさんのものではないでしょ」

璃奈「かすみちゃん、落ち着いて」

歩夢「せつ菜ちゃん、優しい。せつ菜ちゃん、すき……」

璃奈「おい、ふざけるなよ」ピキピキ

しずく「わあ、すごい顔」

愛「りなりー、せめてボード使おう?」ネ?

39: (あら) 2021/09/11(土) 19:43:03.36 ID:5farYAXO
歩夢「せつ菜ちゃんにアドバイスしてもらって、すごく気が楽になったよ」ヘヘッ

歩夢「もっと色々と聞いて欲しいな。こんなこと、せつ菜ちゃんにしか相談できないから……」

歩夢「よかったら、お泊まり会とかしない? ほら、明日もお休みだしさ」

せつ菜「はい、もちろんです!」

せつ菜「……と言いたいところですが、今日は先約があるんですよね」

歩夢「先約?」

璃奈「うん。私の家でお泊まりする予定なんだ」

しずく「私も一緒です。お2人に教えて欲しいことがありまして」

せつ菜「ですから、またの機会にお願いします!」

せつ菜「いつでも歩夢さんの予定に合わせますから!」ペカー

41: (あら) 2021/09/11(土) 19:46:36.11 ID:5farYAXO
歩夢「ねえ、そのお泊まり会に、私も行ったりしちゃダメかな?」

せつ菜「家主の璃奈さんと相談者のしずくさんがよければ、もちろん私は構いませんが……」

せつ菜「話の内容からして、歩夢さんを退屈させてしまうんじゃないかと……」

歩夢「しずくちゃんの相談の内容って、私が聞いても大丈夫な感じ?」

しずく「次に演劇部でやる演目の元ネタの漫画について、お2人に教えてもらう予定なんです」

歩夢「演劇部がやる劇の元ネタの漫画?」

歩夢「あっ! それって、私のクラスの子が脚本を書くってやつだよね?」

歩夢「この前、その子とちょっとそのことでお話ししたんだ」

しずく「ああ、そう言えば歩夢さんと同じクラスでしたっけ」

歩夢「だったら大丈夫だよ。その作品は私も好きだし、一家言あるからね」

璃奈「そうなの?」

42: (あら) 2021/09/11(土) 19:49:27.99 ID:5farYAXO
歩夢「そうなんだよ! 原作の漫画は名作みたいだけど、ゲームにはいかれた作品が多いんだ!」

歩夢「エネルギーが溜まっている分だけ無料で遊べちまうゲームは、あり方からしてクソなのがいいよね」

歩夢「フルプライスなのに課金があるっていうのを、直前まで隠すってスタイルのクソさは嫌いじゃないよ」

歩夢「グラフィックだけは綺麗なのもいいよね。これで他がこうだったらなあって思えるからさ」

歩夢「それに、クロスレビューが満点だったのも素敵だよね。期待値からの落差って大事だもん」

歩夢「このゲームをやるなら時給が出ないと無理だって心の底から思わせてくれるの!」

歩夢「∞回も死ねるRPGは、ネタから作られたフリーゲームってことで期待してたんだけど……」

歩夢「普通に面白くてがっかりしたなあ。あの生まれ方で完成度が高いのは詐欺でしょ」

歩夢「でも、他にもPS2とかSFCとかに、いい感じのクソゲーが多いんだ!」キャッキャッ

かすみ「ねえ、まずいよ。歩夢先輩の言ってることがまったく分かんない」

璃奈「大丈夫だよ。私にも半分も分からないから」

しずく「それの何が大丈夫なの?」

せつ菜「歩夢さんはゲームにも造詣が深いんですね。さすがです!」ペカー

愛「せっつーは、あんまり歩夢を甘やかしちゃダメだよ?」

43: (あら) 2021/09/11(土) 19:52:28.80 ID:5farYAXO
せつ菜「でしたら、歩夢さんも一緒にお泊まりするということでいいですかね?」

璃奈「うん。たくさん来てくれた方が、賑やかで私は嬉しい」

しずく「私からもお願いします」

歩夢「ふふっ、ありがとう」

歩夢「じゃあ、夜は璃奈ちゃんの家でお泊まり会をするとして……」

歩夢「今からは何をする予定だったの?」

愛「みんなで何か食べに行こうって話してたんだ」

歩夢「へえ、そうだったんだ。ちょうど私もお腹がすいてるかも!」

歩夢「よければ私もついて行っていいかな?」

愛「もちろんだよ。どこの店に行こっか?」

44: (あら) 2021/09/11(土) 19:55:45.92 ID:5farYAXO
せつ菜「先ほどの歩夢さんの話にも出てきましたし、たこ焼きミュージアムなんてどうですか?」

せつ菜「確か、ここからすぐ近くでしたよね?」

愛「は? たこ焼きなんてものを食べるくらいなら、もんじゃ一択でしょ?」ハ?

歩夢「イメージガールにあるまじき発言だね」

愛「もんじゃにはタコが入ってるやつもあるしね。たこ焼きごときに負けるわけないじゃん」

かすみ「ごときって、たこ焼きは仲間じゃなかったんですか?」

璃奈「やっぱり、ライバルは敵なのかな?」

しずく「難しい問題だね」

愛「ってかさ、たこ焼きがもんじゃに勝ってるとことかある? ないでしょ」

かすみ「丸いとこが好きだって人もいるかもですよ。丸いものが大好きだとかで」

愛「味じゃなくて、形で決めるの? そんな人がいるわけないじゃんw」

しずく「かすみさんは、もう少し考えて物を言おうね?」

かすみ「なんでですかぁ! いるかもしれないじゃん!」ワーン

46: (あら) 2021/09/11(土) 19:58:52.90 ID:5farYAXO
せつ菜「なら、愛さんの店にしますか? でも、ここからだと少し遠いですよね」

愛「ここら辺にあるもんじゃの店なら、いくつか知ってるよ。前に敵情視察で来たことあってさ」

かすみ「ついに、もんじゃ焼きでも他の店は敵になったね」

璃奈「やっぱり、自分以外はすべて敵なんだね」

しずく「悲しい現実だね」

愛「愛さんは離乳食としてもんじゃを食べて育ったからさ。うちのもんじゃへの愛着が強くってね」

愛「それに、生まれてからずっともんじゃを食べてきてるわけじゃん?」

愛「だから、普通の人よりも色々と詳しいんだよね。ちょっと店を見ただけで味まで分かるしさ」ヘヘーン

歩夢「人は誰しも、時間の長さでマウントを取る誘惑に逆らえないんだね」

せつ菜「というか、宮下家の子育てはそれで大丈夫なんですか?」

49: (あら) 2021/09/11(土) 20:01:26.81 ID:5farYAXO
しずく「だったら私も、小さい頃から演劇に興味を持って、色々と研究してますからね」

しずく「そこらの女子高生とは、知識でも経験でも雲泥の差がありますよ?」フフーン

璃奈「みんなで順番にマウントを取ってく流れなの?」

せつ菜「私も先ほどの漫画を、連載開始の日から今日までずっと追い続けてますからね!」

せつ菜「アニメで評判になったから読んだような、にわかとは違うんですよ!」ドヤァ

歩夢「私だって、あのたけしの挑戦状を発売日に買ってからずっとクソゲーを嗜んでるからね」

歩夢「クソゲースレの住人として選評を書いてる女子高生は少ないんじゃないかなあ」クソゲークソゲー

璃奈「2人とも何歳だっけ?」

かすみ「かすみんだってぇ、生まれたときからずーっと可愛いんですよぉ❤」

しずく「いや、それは趣旨が違うでしょ?」

愛「かすかすさあ、ちゃんと話を聞いてた?」

歩夢「ふふっ、クソゲーみたいな読解力だね」

せつ菜「かすみさんには、国語の勉強が必要ですね」

璃奈「かすみちゃん、空気を読んで」

かすみ「だから、なんでですかぁ!」ウワーン!

50: (あら) 2021/09/11(土) 20:02:21.75 ID:5farYAXO
終わりです

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1631352560/

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