【SS】小沢「しずくちゃんはさ。恋愛シミュレーション、やってる？」しずく「いえ……」【ラブライブ！虹ヶ咲】

おざしずです。
　

小沢「駄目だよ。青春真っ盛りのオンナノコなんだから」

しずく「でも私、恋愛には疎くて……」

小沢「それは一体なぜ？」

しずく「相手もいないですし」

小沢「だからこそ、頭の中でシミュレーションするのさ」
　

小沢「運命の人が現れた時、一番良いスタートダッシュを決めたいだろう？」

しずく「う～ん」

小沢「……演技の幅も広がるよ？」

しずく「！」

しずく「やってみます！」

小沢「そうこなくっちゃ」ﾌﾌﾝｯ
　

小沢「まず、しずくちゃんは好きな人に言われてみたい台詞とか……ある？」

しずく「そうですね……」

しずく「『君と一緒に毒を飲んで、僕だけ死にたい』……」

しずく「なんて……///」

小沢「」

しずく「？」

小沢「……」

しずく「だ、だめでしたか……？」

小沢「合格」ﾆｯ
　

しずく「あ、良いんですね？」

小沢「Excellent」

しずく「今の間は駄目なやつかと思いました」

しずく「ちなみに、小沢さんの言われてみたい台詞も伺って良いですか？」

小沢「そうだね……」
　

小沢「『先日助けていただいたモルモットです』」

しずく「メルヘンですね」

小沢「『うちの経営権、あなたに差し上げます』」

しずく「？？？」

小沢「それじゃあシュミレーション、やってみよっか」

しずく「は、はい！」ﾋﾟｼｯ
　

小沢「とりあえず俺がやってみせるから」


しずく（エチュードみたいな感じですよね？　よーし……）


小沢「しずくちゃんはそこで見てて」

しずく「え」

しずく「見てるだけ……ですか？」

小沢「ううん」ﾌﾘﾌﾘ

小沢「よく見てて？」

しずく「え、あ」
　

小沢「舞台は20XX年の大分県」

しずく「あの」

小沢「とある温泉旅館に、彼はいた」

しずく「始まっちゃいました」

小沢「おい女ァ！　次の持ってきやがれ！」ﾄﾞﾝｯ

しずく「！」ﾋﾞｸｯ
　

しずく（もしかして私、試されてる……？）


しずく「はい！　ただいま！」

小沢「はい！　ただいま！」

しずく「？？？？？」


しずく（本当に見てるだけ……？）
　

小沢「おいおいお客さん。あんまりうちの仲居をいじめてくれるなよ？」

しずく「違うおじさんが出てきましたね」

小沢「あぁ？　てめぇ、俺が誰だか分かってんのか？！」

しずく「嫌な人ですね」

小沢「はい、小沢さん」

しずく「そっちが小沢さんなんですか！？」
　

小沢「分かってんなら引っ込んでろ！　今日はもう水でも飲まなきゃやってらんねぇんだよ！」

しずく「しかも水だったんですか……」

小沢「男の名は小沢。別府の温泉を渡り歩く、旅人だ」

しずく「旅の範囲狭すぎません？」
　

小沢「ただし、あまり長くは浸かっていられないのだ」

しずく「おじいさんじゃないですか」

小沢「お気に入りの効能は関節痛だ」

しずく「おじいさんじゃないですか」

小沢「風呂上がりの瓶コーラは格別なのだ」

しずく「そこだけちょっと若いんですか」
　

小沢「女の名はナスノ。駆け出しの仲居」

しずく「絡まれていた女の人ですね」

小沢「実はこのナスノ、小沢に惹かれている」

しずく「嘘でしょう？」

小沢「二人は自然と恋人になった」

しずく「不自然不自然」ﾌﾞﾝﾌﾞﾝ
　

しずく（私が未熟なせいで、小沢さんの世界観についていけません……）

しずく（あ、そうだ！　前にかすみさんのお友達（？）の井戸田さんがこういう時の対処法を……）


しずく「小沢さん、"大至急"」

小沢「！」ﾄｺﾄｺ


しずく（本当にこれで一回止まってくれるんだ……）
　

しずく「ちょっと難解なので、もう少し分かりやすいお話にしてもらえませんか？」

小沢「大丈夫。ここからはシンプルだから」

しずく「本当ですか……？」ｼﾞﾄｰ

小沢「任せて」

しずく「……はい」
　

小沢「二人はある日のデートで、寿司屋に立ち寄った」

小沢「へいらっしゃ……ナスノちゃん？」

小沢「あなたは……盛本（もりもと）君？」

しずく「どういう状況ですか？」

小沢「寿司屋の店主――盛本とナスノは高校時代の同級生だったのだ。それもただの同級生ではない」
　

小沢「ひさしぶり、だね」

小沢「おう……」

しずく「何だか気まずそうですね」

小沢「そっちの男は……新しい彼氏かな？」

小沢「そんな感じ」

小沢「そっか。幸せそうで良かったよ」

小沢「……うん」
　

小沢「二人は元恋人。予想外の再会に心が揺れた」

小沢「男と女の時間が、今巻き戻る」

しずく「おお。三角関係ですね」

しずく「小沢さん、大丈夫でしょうか？」

小沢「たたた、大将！　ぼ、ぼくはおにぎり一皿で」

しずく「動揺してますね……」
　

小沢「と、その時。寿司屋の扉が破壊された」

しずく「？！」

小沢「我々は、『寿司ネタじゃないはず族』だ」

小沢「人間共へ復讐するためやってきた」

しずく「寿司ネタじゃないはず族」
　

小沢「俺は焼肉屋に就職予定だったのに、シャリに乗せられた」

しずく「イベリコ豚さん」

小沢「私は、ラーメンに浮かぶはずだった」

しずく「味玉さん」

小沢「オデ、若い女にモテるから、そんなに悪い気はしてない」

しずく「アボカドさん」
　

小沢「こんな寿司屋、我々がぶっ壊してやる」

小沢「ナスノちゃん！」ﾊﾞｯ

しずく「おお、小沢さん勇敢ですね」

小沢「盛本君僕も助けて～」ﾋﾞｸﾋﾞｸ

しずく「そっちが小沢さんですか……」

小沢「……ナスノちゃん。あの時は突然別れを切り出してごめん」

小沢「え？」
　

小沢「実はおいどんには、君と一緒に生きていけない事情があったんだ」

しずく「盛本さんの一人称おいどんだったんですか？」

小沢「小沢さん。おいどんは勿論あなたも助けますよ」

しずく「おいどん」

小沢「実はおいどんは」

しずく「おいどん」

小沢「先日助けていただいたモルモットです」

しずく「！」

しずく「小沢さんが言われたい台詞！！！」
　

小沢「魔法によってヒトに化けていたのです」

小沢「そんな……！」

小沢「この戦いでおいどんは命を落とすでしょう。だからその時は……」

小沢「うちの経営権、あなたに差し上げます」

しずく「小沢さんが言われたい台詞！！！」
　

小沢「も、盛本くーん！」

小沢「ばきっ！　どがっ！　ぐしゃ！」

しずく「あわわわわ」

小沢「……へへ。たとえ寿司ネタじゃないはずの食材でも、シャリに乗せれば立派なネタさ」ｾﾞｰｾﾞｰ

小沢「盛本君……君ってやつは」

小沢「盛本の手には、寿司ネタじゃないはず族たちを使った寿司が大量に握られていた」

しずく「勝ったんですね」
　

小沢「しかし、盛本の命は限界を迎えていた」

小沢「ナスノちゃん……最後に……」ｽｯ

小沢「これは……アボカド寿司？」

しずく「？」

小沢「君と一緒に毒を飲んで、僕だけ死にたい」

しずく「あー！　私が言われたい台詞です！」ｷｭﾝ
　

しずく「でも、どうしてアボカド……？」

小沢「モルモットにアボカドは毒なのだ」

しずく「いらない知識を得てしまいました」

小沢「小沢さん……」

小沢「店と、ナスノさんを……頼みます」ｸﾞﾀｯ

小沢「盛本くーん！！！」
　

小沢「こうして小沢は、ナスノと二人で盛本の店を引き継いだ」

しずく「ええ……」

小沢「そんなある日だ」

しずく「まだ続くんですか？」

小沢「小沢さん。わっち、実は隠していたことがあるんです」

しずく「わっち」
　

小沢「なんだよ。言ってみなよ」

しずく「どうしたんでしょうか」

小沢「わっちは、寿司ネタじゃないはず族の女……」

小沢「気付けば、ナスノの肌は紫色に染まっていた」

しずく「……え」

小沢「そんな……！」
　

小沢「わっちは、寿司ネタじゃないはず族の掟を破ってしまった」

小沢「？」

小沢「寿司ネタじゃないはず族では、共食いが禁止されているの」

しずく「あ……」

小沢「わっちはもうすぐ茄子の漬け物に戻る。そうなったら小沢さん」

小沢「わっちを、食べてくれる……？」
　

小沢「そんな！　君を食べるなんて！」

小沢「お願い！　このまましわくちゃになって腐るくらいなら、小沢さんに食べられたいの！」

しずく「ナスノさん……」ｳﾙｳﾙ

小沢「……できない」

しずく「小沢さん！」

小沢「……あなたは？」


しずく（あ！　入れた！）
　

しずく「小沢さんの相方さんの友達の友達の桜坂しずくです！」

小沢「しずくちゃん」

小沢「ずっと見ていたんですか？」

しずく「はい！　よく見ていろと言われたので！」

しずく「小沢さん！　ナスノさんを食べてあげてください！」

小沢「でも……」

しずく「私も女ですから、ナスノさんの気持ちがよく分かるんです」

しずく「お願いします！」ﾍﾟｺﾘ
　

小沢「……わかったよ」

しずく「！」ﾊﾟｧ

小沢「こうして、ナスノは今も小沢と共に……」

小沢「おわり」ﾌｧｻｯ
　

※※※


しずく「感動しました！」

小沢「しずくちゃん、演技かなり良くなったじゃない」

しずく「え？　そ、そうですか？」

小沢「さっきのしずくちゃんは、一体誰を演じてたのかな？」

しずく「実は、何も演じていなかったんです」

小沢「Marvelous」
　

小沢「演技とは、演じないことと見つけたり……ってね」

しずく「！」

小沢「自分がなりたい自分の追求。それが最高の演技への近道さ」

小沢「悩みは解決したかい？」

しずく「……ご存知だったんですか？」

小沢「相方の友達の女の子から聞いてたからね」

しずく「かすみさん？」
　

小沢「……おっと。俺はそろそろ帰らなきゃ」ﾌｯ

しずく「消えた？」

しずく「そういえば、栞子さんの前に現れた不思議なおじさんも突然消えたって……」

しずく「……ふふっ」


しずく（小沢さん、ありがとうございます）

しずく（目指してみます！　私の理想の私！）



小沢はクールに去るぜ。
　

ありがとうございました
前回↓

栞子「もう中学生も終わりですね……」？？？「終わらないよお」栞子「！？」
https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1646666694/