【SS】梨子「放課後の美術準備室」【ラブライブ!サンシャイン!!】

りこ SS


2: (湖北省)@\(^o^)/ 2017/03/09(木) 13:05:05.81 ID:n8E+TmM7.net
いつものかなりこだけど一応SID風
長くないです



「ねっ?おねがーい梨子ちゃん!ほんの1枚、いやちょこっと書くかだけでいいから──── 」


私がスクールアイドルを始めてしばらくしたある日のこと。
それまで毎日のように続いていたジメジメした天気が嘘のように今日は快晴で、きっとなにかいい事がありそう────
そんな予感がして、ちょこっとだけウキウキしていたところに千歌ちゃんが1冊のノートを大事そうに抱えてパタパタと駆け寄ってきて────


「梨子ちゃんこの前の読書感想文の課題、先生に褒められてたでしょ?チカそれでぴーんってきたの」

「Aqoursのホームページを作って。みんなでかわりばんこに日記を書いてくの。ほら、μ'sもしてたって聞いたから──── どうかな?」

「あっ、心配しないで!チカも一緒に書くから。最初はチカと梨子ちゃんとでダブル掲載!梨子ちゃんはチカの書いたやつの後ろに載せる予定だからきっと目立たないよ」

3: (湖北省)@\(^o^)/ 2017/03/09(木) 13:08:40.14 ID:n8E+TmM7.net
「ちょ、ちょっと待って、急に私──── そんなの無理っ。日記?それも人に見せるなんて──── 」

「だいじょーぶ♪梨子ちゃんが書いたの読ませてもらったけどチカにマネできないくらいに上手だったし」

「最近起きた事とかそんな些細な事でいいから。あ、梨子ちゃん絵も上手だし絵日記みたいのでもいいかも!それじゃあ、これ週末までによろしくねー!」



台風──── そんな言葉が似合うくらいに言いたいことだけ言って走り去った千歌ちゃん。
残された私の手には千歌ちゃんが持ってきた一冊のノート。
ずっと大事に握りしめていたのか、千歌ちゃんの汗で少し湿っていて
きっと昨夜にでも思いついて、ウキウキで私に言ってきたんだろうなあって簡単に想像できました。
でも────

「もぉ。私、無理なんだって──── 」

4: (湖北省)@\(^o^)/ 2017/03/09(木) 13:10:09.08 ID:n8E+TmM7.net
──── ☆────

そんなイベントがあった日の放課後──── 私はひとり美術準備室に逃げていました。



5日ぶりの晴れ──── それも快晴でせっかくの練習日和だったけれど
曜ちゃんは水泳部の練習があって、花丸ちゃんとダイヤさんとルビィちゃんも家の用事がって────
9人のうち4人が用事で──── だったらもう練習は中止だーってなって。
雨が続いて本格的な練習もできなくて、少し気が滅入ってたところの快晴なのに──── 少しもったいない気がします。

内浦の子って活発で元気いっぱいでみんなみんなが晴れ女、晴れ男って印象なのに本当、天気って気まぐれですね。
私はどちらかと言えば──── 雨女かな。

5: (湖北省)@\(^o^)/ 2017/03/09(木) 13:13:18.29 ID:n8E+TmM7.net
窓を開ければ──── 綺麗な内浦の海と青い空、そして淡島がみえるここが私のお気に入りの場所なんです。
窓枠が額縁の代わりになって私の大好きな内浦の風景写真が自然と完成♪

最近練習が忙しくて来れない日が多く──── 久しぶりに訪れてみれば
春にみた内浦の景色とはまた違って────
これから夏を思わせるくらいに澄んだ空と、視界の奥でうっすら見えた入道雲。


「はぁ……」

すぐにでもパレット片手にこの風景を描きたいのだけど──── そんな気分になれない。
千歌ちゃんの無理難題が今朝から頭の中で自己主張を重ねていて────
どうしようかと机に突っ伏して目を閉じて考えてみます。

あ──── 絵の具の染みついた机の木の香りと、少しじめっとした美術準備室がとても落ち着く。

6: (湖北省)@\(^o^)/ 2017/03/09(木) 13:14:47.81 ID:n8E+TmM7.net
ふと、少しだけ──── どうにでもなっちゃえ。そう考えてしまいました。
千歌ちゃんの、なるようになれ!みたいな考え方が私にも移ったのかな?
クスクス──── そう考えるとさっきまで真剣に悩んでいたのが急におかしく感じて──── くすりと笑みがこぼれると


「あ、ごめん。起こしちゃった?」


聞き慣れた、だけどこの場所では聞き慣れない声がしました。
体を起こして振り返ってみると、頬っぺたに赤色の絵の具のついた果南さんがいて────

「先生に頼まれて備品を取りに来たんだけど、やっぱりうるさかったよね。ごめんね」

「いえ全然気づきませんでした」

7: (湖北省)@\(^o^)/ 2017/03/09(木) 13:16:55.53 ID:n8E+TmM7.net
みたところ、辺りをの棚や机から色々と取り出したりしてるから
来てすぐってわけじゃないみたい──── 本当に気づかなかった。
日記の事で考えすぎてたのかな?それともちょこっと居眠りしてたとか?


「それにしても先生の言っていた備品どこにあるんだろう?初めて来たしどこになにがあるのかわからないや」

「イーゼルってやつ?写真立てみたいなのだからすぐわかるって言われたんだけど」

「それならそこ、果南さんの後ろに立てかけてるのです」

9: (湖北省)@\(^o^)/ 2017/03/09(木) 13:18:40.37 ID:n8E+TmM7.net
「ああ、これか。クスクス、確かに写真立てだね。ありがと梨子、助かったよ。もし私ひとりだったら──── きっと探せなかったと思う」


そっか。美術は書道との選択授業だから美術を選択していないと美術室に来ないんだ。
それも美術準備室にだなんて好きで訪れる場所じゃないし。
三年生の果南さんでも入ったことのない教室ってあるんだって思うと──── なんだか不思議。
内浦に来て、千歌ちゃんや果南さんが東京になかった内浦の魅力をいっぱい教えてくれたのに
内浦の、それも浦の星女学院にちょこっとしか通ってないのに私の方が知っている事があるなんて。
美術準備室では私が先輩って感じがして──── 変な気持ちになりました。
きっと変な顔にもなってたと思う。それを隠すために──── 果南さんごめんなさい。


「果南さん。ほっぺたにケチャップ──── ついていますよ?」

10: (湖北省)@\(^o^)/ 2017/03/09(木) 13:20:39.06 ID:n8E+TmM7.net
──── ☆────

「そっか。千歌がねぇ。それで悩んでたってわけか。てっきりお昼寝してるのかと思ったよ」

クスクスと笑う私たちAqoursのお姉さん。
またかと言わんばかりの反応で──── 果南さん本当に千歌ちゃんのお姉さんなんだなって。


「千歌のこと許してあげて?きっと嬉しいんだよ」

「いまは曜や私だけじゃなくて、梨子やほかのみんながいるけどさ、ここ同年代の子が少ないから昔はひとりでいることが多かったんだ」


この前──── 私がスクールアイドルを始める前にも千歌ちゃんがそんなことを話してくれたっけ。
確かにクラスもひとつしかないし、クラスの人数だって東京の学校より少ないし
家も離れていて、気軽に会いに行ける距離じゃなかったり、そもそもバスの本数も少なかったりと不便な所が多くて────
ああ──── だから千歌ちゃん学校が好きなんだ。
学校に来るとみんなに会えるから────
そう思ってしまったらなんだか、千歌ちゃんのわがままにも付き合えちゃう──── そんな気がちょっぴりしたけど。

11: (湖北省)@\(^o^)/ 2017/03/09(木) 13:22:28.16 ID:n8E+TmM7.net
「でも梨子の日記か。ちょっと気になるかな。どんなの書くの?」

またクスクスと笑い、語り掛ける。
そう──── 日記だなんて、何を書いたらいいのかわからない。
どうにでもなれって思ったりもしたけど、適当には書けないし────
千歌ちゃんはなんでもいいって言ってたけど、それはそれで困って──── ああ、優柔不断な私。


「梨子の好きな物を書いたらいいんじゃないかな?」

「例えば──── そう。ここの風景とかさ。淡島も見えるし──── うんうん。私この風景好きだな♪」

私の表情から悟ったのか、果南さんが私にアドバイスをしてくれて
窓枠から上半身を乗り出して、気持ちいい♪って

12: (湖北省)@\(^o^)/ 2017/03/09(木) 13:24:29.15 ID:n8E+TmM7.net
「私のお気に入りの場所なんです」

「そうなんだ。いい場所だね。あーあ、もっと早く知っていれば私も来たのになあ」

「あ、でも私にもあるよ。お気に入りの場所。今は練習でよく使ってるけど、去年まではあまり人も来なかったから、ひとりで居たいときによく行ってたんだ」

クルっと振り返った果南さんが上を指さしてそう言って──── ああ、屋上か。
合点がいった、そう表情に出てたみたいで果南さんはクスッと笑って。


「クスクス──── いい景色だよね。青い海と空がどこまでも続いて、いつまでも眺めていたくなってさ」

「冬になるとあっという間に陽が沈むから星が観えるんだ。空気が澄んで本当に綺麗だから息をするのも忘れるくらいに飲み込まれて──── 」

「でもじいちゃんから早く帰ってこいって電話がくるから雰囲気が台無しだよね」


嬉しそうに話す果南さんの顔は普段はみせないとっても楽しそうな表情。
果南さんはいつもみんなのお姉さんで、少し後ろから私たちをみて、支えてくれていて────
そんな果南さんが私にみせてくれた一面──── なんだか嬉しくなって、またクスリと笑ってしまいました。

13: (湖北省)@\(^o^)/ 2017/03/09(木) 13:26:09.87 ID:n8E+TmM7.net
そうですね。
果南さんの助言通り、好きな物を書いてみることにします。
この部屋の──── 美術準備室から観える内浦の風景を、浦の星の隠れた絶景スポットとして紹介しようかな。
たくさんの人が訪れて、これまでの静けさがなくなってしまうかもって思うと少しだけ躊躇しましたが
この風景──── みんなにも観てもらいたいな。
そうだ。この風景の絵を描いて、日記に載せよう。
千歌ちゃんも絵日記みたいにしていいって言ってたから──── クスクス。決まりです。


それと────

「あの──── 果南さん。その、もしよければなんですけど──── 」

14: (湖北省)@\(^o^)/ 2017/03/09(木) 13:27:30.83 ID:n8E+TmM7.net
ついさっきみた光景
窓から乗り出した果南さん。結んだ髪が風になびいて、とても印象的で────
普段は風景画を描く事が多い私でも絵にしたいって思ってしまうほどに魅了されてしまいました。


「その、ええと──── 」

この気持ち、勇気を出して────

「に、日記に果南さんの絵を載せたいんです。──── 被写体をお願いできますか?」

「え、私?私でいいならいいけど。あ、でもこれを先生に届けてからになるけど、それもいい?」


精一杯の勇気を出したのに、あっさりとしたこの返しは少しだけズルいと思います。

15: (湖北省)@\(^o^)/ 2017/03/09(木) 13:29:05.32 ID:n8E+TmM7.net
「私がモデル、か──── 少し照れるけど、楽しみだな」

優しい笑顔で了承してくれた私たちのお姉さん。
千歌ちゃんや曜ちゃんには、ずっと昔からこんなに頼りになるお姉さんがいたんだって思うと
羨ましくてちょっぴり嫉妬しそうです。

もし私が悩んでいたとしても果南さんは、お姉ちゃんを頼って♪──── なんて言ってくれそう。
ううん。きっと言ってくれるはずです。



イーゼルを抱えて美術準備室を出ていく果南さんにむかってポツリと

「いってらっしゃいお姉ちゃん♪」

なんて────
ふと呟いてしまった放課後でした。


おしまい

16: (湖北省)@\(^o^)/ 2017/03/09(木) 13:29:46.51 ID:n8E+TmM7.net
最後まで読んでくれた方ありがとうございました。
最近かなりこが増えて嬉しいです。
ではさらばじゃ

引用元: http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1489032011/

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