【SS】かのん「すみれちゃん一人暮らし始めたんでしょ？行ってもいい？」

―かのんの喫茶店―


ｶﾞﾁｬ


かのん「いらっしゃいませー！何名さ……ま……」


すみれ「久しぶりね」


かのん「すみれちゃん！？」


すみれ「たまたまこの近くで仕事があったから、帰りに寄ってみたんだけど」


かのん「ちょ、ちょっと待ってて！」


かのん「お母ーさーん！今すみれちゃん来て……うん、Liella!の……」


すみれ「マンマルも久しぶり」


マンマル「……」


かのん「お待たせ。いつものでいい？」


すみれ「憶えててくれたのね」


かのん「そりゃあ、私が淹れたカフェオレを一番においしいって言ってくれたの、すみれちゃんだもん」


すみれ「良い話みたいに言ってるけど、美味しくなるまでずっとかのんの修行に付き合わされてただけよ。こっちは」


かのん「その節はどうもどうも」
　

すみれ「ありあちゃんは大学受験だっけ？今年」


かのん「そうなの。推薦で受けるから、成績落とさないようにって今予備校行ってるんだ」


すみれ「そう。頑張ってね、って伝えておいて」


かのん「ありがと。きっとありあも喜ぶよ」


かのん「はい、カフェオレお待たせ」


すみれ「ありがと」ｽﾞｽﾞｯ…


すみれ「はぁ……懐かしいったら懐かしい味だわ」


かのん「よかった。これで『味が違う！作った奴はどこのどいつだー！』って言われたらどうしようかと」


すみれ「私は雄山か」
　

かのん「ねえねえ、すみれちゃんさー」


すみれ「な、何よ」


かのん「すみれちゃんの部屋、行ってみたいなー」


すみれ「いきなりね」


かのん「だって、寂しかったんだよ？Liella!メンバーの近況をYoutubeで知るって」


すみれ「……アンタ、私のチャンネル見てくれてたのね」


かのん「もちろん！初期から応援してるし、チャンネル登録とか高評価だって……」ｺﾞｿｺﾞｿ


かのん「ほら！前、すみれちゃんが紹介してたエチュードのアイシャドウ買ったんだよ」


すみれ「ありがと」


かのん「それでさ、すみれちゃん動画で引っ越したって言ってたじゃん？」


すみれ「まあね」


かのん「色々ぼかしてたけど、いい部屋だったよね？家賃絶対高いよね？やっぱり芸能人って儲かるの？」


すみれ「ぐいぐい来すぎよ」


かのん「行ってみたいなー……」ｳﾙｳﾙ
　

すみれ「はぁ……家、引っ越したばっかで何もないわよ？」


かのん「荷解きだったら手伝うよ！」


すみれ「それはもう終わってるから」


すみれ「ごちそうさま」


かのん「あ、うん……」


すみれ「ほら、お会計したら行くわよ」


かのん「いいの！？」


すみれ「引っ越した部屋に友達呼ぶなんて普通でしょ？」


かのん「よっしゃあーー！！」


かのん「お母ーさーん！今からすみれちゃん家に……うん、泊りー……」


すみれ「ちょ……えっ！？」
　

―電車内―


車内アナウンス『ﾏﾓﾅｸ　ﾋｶﾞｼﾏﾂﾊﾞﾗ　ﾃﾞｽ』


かのん「ごめん。もしかして明日仕事だった？」


すみれ「アンタ、泊まる準備しといて、それ聞く？」


かのん「ごめん……」


すみれ「冗談よ。明日は夕方から動画撮影があるだけよ」


かのん「なんだ、よかった」


すみれ「切り替え早いわね」


かのん「そういえばさ、こないだ朝の番組で目黒のスタバ行ってたよね？」


すみれ「あー……お花見特集の」


かのん「そうそう。それで、すみれちゃんが飲んでた桜のマキアート。あれどうだった？」


すみれ「どうだったって、おいしかったけど……」
　

かのん「いいなあ……。私もああいう新メニュー開発したいんんだけどね」


すみれ「かのんの喫茶店とは毛色違うでしょ」


かのん「そうなんだけね……」


すみれ「ま、季節限定メニューってのはいいかもしれないわね」


かのん「季節限定か……う～ん……」


すみれ「新メニュー開発なら手伝うわよ」


かのん「ありがとう！すみれちゃん」


すみれ「そうね……。春ならやっぱり抹茶じゃない？」


かのん「すみれちゃんお茶好きだもんね」


かのん「でも、抹茶ってなかなか綺麗な緑になんないんだよねー」


すみれ「じゃあ後はフルーツとか？イチゴ、マンゴー……」


かのん「あ、マンゴーいいかも」


すみれ「ならマンゴープリンね」


かのん「プリンか……今度試してみよ。ありがとう」


すみれ「これくらいだったらいつでも協力するわよ」


かのん「ところで、どこで降りるの？」


すみれ「そういえば言ってなかったわね。最寄り駅は―」
　

―明大前―


かのん「思ったより近いんだね」


すみれ「さて、泊りなら何か食べるもの買って帰らないとね」


かのん「じゃあさじゃあさ。私、すみれちゃんの手料理が食べたいな！久しぶりに」


すみれ「えー……」


かのん「さっきカフェオレ奢ったじゃん」


すみれ「いや、私しっかり支払ったんだけど」


かのん「いいじゃん。すみれちゃん料理上手なんだし」


すみれ「アンタ、褒めれば何でもしてくれると思ってない？」
　

―スーパー―


すみれ「何か食べたいものある？」


かのん「う～ん……お刺身？」


すみれ「手料理は！？」


かのん「冗談だって」


かのん「すみれちゃんの作りたいものでいいよ」


すみれ「なら、卵かけご飯ね」


かのん「えー……それ手料理？」


すみれ「お刺身だって一緒でしょ」


かのん「あ！じゃあ、肉じゃががいい！おふくろの味！」


すみれ「別にいいけど、言うほど肉じゃがって、おふくろの味って思ってる？」


かのん「言われてみれば……。雰囲気かな」


すみれ「なによ、それ」


すみれ「あ、今日ひき肉が安いしハンバーグでいい？」


かのん「よっしゃー！」
　

かのん「あっ！すみれちゃん、アイスも買おうよ」


すみれ「さっきお菓子入れたでしょ」


かのん「お母さんか！」


すみれ「子供か！」


かのん「子供じゃないもーん。じゃあ、チューハイ買って」


すみれ「アンタまだ未成年でしょ」


かのん「バレた？」


すみれ「お酒買ってるとこ、週刊誌に撮られてみなさい。私一発で終わるわよ」


かのん「ごめん」


すみれ「まあ、私にパパラッチなんて付かないだろうけど」


かのん「そんなことないよ！すみれちゃんならパパラッチくらいすぐ付くよ。1ダースくらい」


すみれ「いや、それは勘弁してほしいわ……」


かのん「でも、もしさ……」


すみれ「何よ」


かのん「もし今パパラッチが私たち追ってたら、恋人同士に見られたかな？」


すみれ「…………元Liella!の二人が会ったってだけでしょ」


かのん「あー！すみれちゃん酷い」
　

―すみれ自宅―


ｶﾞﾁｬ


すみれ「ここが平安名すみれの新しい部屋よ」


かのん「おじゃましまーす……うわ！広っ！」


すみれ「まだ家具揃ってないからよ。荷物その辺にでも置いといて」


かのん「えー……でもオートロックだったし、1LDKでベランダあるし……」


すみれ「バルコニーね」


かのん「えっ！？ちょっと待って！ロフトあるじゃん！」


すみれ「まあね」


かのん「家賃いくら！？ここ」


すみれ「別にいいじゃない」


かのん「ほら、クローゼットも大きいし」ｶﾞﾁｬ


すみれ「何勝手に開けてんのよ」


かのん「私もここに住んじゃおうかなー」


すみれ「アンタ、カフェあるでしょ」


かのん「う～……」
　

すみれ「じゃ、今から作るから適当にくつろいでなさい」


かのん「あ、私も手伝うよ」


すみれ「ゲストなんだから、いいわよ」


かのん「じゃあ色々物色してていい？」


すみれ「いいわけないでしょ」


かのん「ロフト上っていい？」


すみれ「それくらいだったらいいけど、狭いし何もないわよ」


かのん「だってロフトなんて憧れちゃうもん……」ﾉﾎﾞﾘﾉﾎﾞﾘ


すみれ「ほら、そんな広くないでしょ」


かのん「決めた！今日わたしここで寝る！」


すみれ「エアコンついてないから暑いわよ。そこ」ﾄﾝﾄﾝﾄﾝﾄﾝ


かのん「♪ロフトでゴロン♬丸くなってゴロン♬」


すみれ「かのんの生歌なんて久しぶりね」
　

～間～


すみれ「さ、召し上がれ」


かのん「いただきまーす！」ﾊﾟｸｯ


かのん「……！？」ﾓｸﾞﾓｸﾞ


かのん「ねえ、これもしかして……」


すみれ「気づいた？前にかのんが教えてくれた味噌を隠し味に入れたのよ」


かのん「やっぱり」


すみれ「ねえ、かのん」


かのん「？」


すみれ「今度はお店のナポリタンの作り方教えてよ」


かのん「うん、オッケー！」
　

かのん「……あ」


すみれ「どうかした？」


かのん「私すみれちゃんに引っ越し祝い買ってなかった！」


すみれ「今思い出すこと？別に気にしてないわよ」


かのん「何がいい？」


すみれ「だからいいって」


かのん「そうだ！ねえ今度一緒に買いに行こう！」


すみれ「そうね。まあ、それは魅力的ね」


かのん「絶対だからね」
　

～間～


かのん「お風呂ありがとう」


すみれ「じゃ、私入ってくるわね」


かのん「って、私の布団ないじゃん！」


すみれ「アンタ、ロフトで寝るんでしょ」


かのん「えー……すみれちゃんも一緒に寝ようよ」


すみれ「寝るなら一人で寝なさいよ。っていうか、二人が寝れるほど広くないって……」


かのん「……じゃあ、すみれちゃんと一緒に寝る」


すみれ「はいはい。なら布団動かしといて」


かのん「あ、大丈夫。私もすみれちゃんのベッドで寝るから」ｺﾞｿｺﾞｿ


すみれ「セミダブルったらセミダブルよ！」


すみれ「てか、他人のベッドに潜り込むことに抵抗はないわけ？」


かのん「さすがすみれちゃん、ベッドも高級そう……」ｽﾔｧ


すみれ「……私ソファで寝るわ」


かのん「なんで！？」
　

～間～


すみれ「電気消すわよ」


かのん「うん、いいよ」


すみれ「ん」ﾋﾟﾋﾟｯ


かのん「すみれちゃん、もう寝た？」


すみれ「いや、早い早い」


かのん「だって合宿の時は必ずやってたじゃん。このくだり」


すみれ「懐かしいわね」


かのん「ねえ、すみれちゃん……」


すみれ「何よ」


かのん「私たち、その……付き合わないかな？」


すみれ「寝際でいうこと！？」
　

かのん「ホントは、今日すみれちゃんに再開してからずっと言いたかったんだ……」


すみれ「その割には好意ダダ漏れだったけど」


かのん「ごめん」


かのん「でもすみれちゃんと付き合いたいなっていうのは、本当だから……！」


すみれ「なんでこのタイミングで言うのよ……」


かのん「すみれちゃんが芸能界で忙しいのは分かってる。分かってるんだけど、今日久しぶりに会ったら止められなくなっちゃって……」


すみれ「……アンタもでしょ」


かのん「え？」


すみれ「知ってるのよ。かのん、CDデビューするんでしょ」
　

かのん「サプライズにするつもりだったけど、知ってたんだ……」


すみれ「これでもショービジネスで生きてるからね」


かのん「だよね」


すみれ「かのん今日ずっと私のこと話してたでしょ？」


かのん「うん」


すみれ「嬉しかったわ。私のこと見ててくれたんだなあって」


かのん「だって、すみれちゃんのこと好きだから」


すみれ「でもね……」


すみれ「私も同じくらいアンタのこと見てたのよ」


かのん「すみれちゃん……」
　

すみれ「卒業してもずっと曲作ってたり……弾き語りの動画上げてたり……」


すみれ「そんな頑張ってるかのんが好きったら好きなのよ」


かのん「すみれちゃん……」


すみれ「私の方こそ悪かったわね。なかなか言い出せなくて」


かのん「すみれちゃん！」ｶﾞﾊﾞｯ


すみれ「ちょっと……」


かのん「だって……うれしいんだもん」


かのん「本当は何度も言おうとしたよ？……でも、すみれちゃん料理やるのに夢中で、ハンバーグに夢中で……」


かのん「だからお風呂が終わったらすぐ言おうと思ってた。相談に乗ってもらおうと思ってた」


すみれ「急にボケられると冷めるんだけど」


かのん「ごめん」


すみれ「冗談よ」ﾁｭｯ
　

かのん「え？今……」


すみれ「アンタがボケたから台無しよ」


かのん「ごめっ……じゃあ、もう一回！もう一回キスして！」


すみれ「やめとくわ」


かのん「えー……」


すみれ「だって次キスしたら、これ以上止められなくなるから……」


HappyEnd
　

お付き合いいただきありがとうございました

最近かのすみ少なくね？って勢いで書いてしまった
　

かのすみ大好き
　

良かった
乙
　

好意と気安さのバランスがとても好みだった　乙です