0
1: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:00:01 ID:???00
【開幕 小さく喇叭の音が聴こえている】
「さやか先輩~~~~!!!」
さやか「! 小鈴さん……それに泉さんも。どうしたんですか?」
小鈴「さやか先輩! ──もう直ぐ、軍楽隊による新年の行進が始まりますよ!!」
泉「ふふ。小鈴さんがぜひ一緒に見ようと提案してくれてね。さやか先輩も、どうかな?」
さやか「あぁ、軍楽隊の……そう云えば今日、でしたか……」フワァ
小鈴「あ、あれ? さやか先輩、何やら寝不足のように徒町には見受けられますが……だ、大丈夫ですか?」
さやか「……すみません、少し夕べ眠れなくて。ですがほんの私事に過ぎませんし、無理を押してでも向かいますよ」コホン
さやか「そもそも。国の催しを見ないなど不敬極まりないですし。わたし達はあの歴史ある『蓮ノ空女学院』に通う──」
さやか「軍人、なんですから」
「さやか先輩~~~~!!!」
さやか「! 小鈴さん……それに泉さんも。どうしたんですか?」
小鈴「さやか先輩! ──もう直ぐ、軍楽隊による新年の行進が始まりますよ!!」
泉「ふふ。小鈴さんがぜひ一緒に見ようと提案してくれてね。さやか先輩も、どうかな?」
さやか「あぁ、軍楽隊の……そう云えば今日、でしたか……」フワァ
小鈴「あ、あれ? さやか先輩、何やら寝不足のように徒町には見受けられますが……だ、大丈夫ですか?」
さやか「……すみません、少し夕べ眠れなくて。ですがほんの私事に過ぎませんし、無理を押してでも向かいますよ」コホン
さやか「そもそも。国の催しを見ないなど不敬極まりないですし。わたし達はあの歴史ある『蓮ノ空女学院』に通う──」
さやか「軍人、なんですから」
0
2: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:01:01 ID:???00
────
【時は大正 喫茶『田園』での会話】
カランカラン…
花帆「それで──軍学隊の行進って、どんな感じだったの?」
小鈴「もうとっっっっても素晴らしい出来でした!!」ガタッ
小鈴「行進と共に楽器の演奏が始まりまして……音楽は人の心を打つと云いますが、徒町、改めて感じ入りました……!!」ジーン
【時は大正 喫茶『田園』での会話】
カランカラン…
花帆「それで──軍学隊の行進って、どんな感じだったの?」
小鈴「もうとっっっっても素晴らしい出来でした!!」ガタッ
小鈴「行進と共に楽器の演奏が始まりまして……音楽は人の心を打つと云いますが、徒町、改めて感じ入りました……!!」ジーン
0
3: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:02:00 ID:???00
泉「ふふっ。流石、小鈴さんは良く本質を掴んでいるね」クスッ
泉「斯く言う私も……そうだ。先のあの演奏は、聴いているだけで情熱が燃えたぎるようだった。さやか先輩もそう思うだろう?」
さやか「え? あっ、そ、そうですね」コクリ
花帆「へぇー! それなら仕事を休んで、あたしも行けばよかったかなぁ……? でも、女給はあたし達2人しか居ないし……」グヌヌ
コトッ…
吟子「──失礼します。珈琲、お持ちしました」
泉「斯く言う私も……そうだ。先のあの演奏は、聴いているだけで情熱が燃えたぎるようだった。さやか先輩もそう思うだろう?」
さやか「え? あっ、そ、そうですね」コクリ
花帆「へぇー! それなら仕事を休んで、あたしも行けばよかったかなぁ……? でも、女給はあたし達2人しか居ないし……」グヌヌ
コトッ…
吟子「──失礼します。珈琲、お持ちしました」
0
4: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:03:00 ID:???00
泉「! やぁ。件の女給の吟子さん。ふふ、今日も可愛いね」クスッ
吟子「……どうも。でも、そういう浮気性な発言はセラスさんに嫌われますよ、泉さん」
泉「はははっ。セラスは案外、許嫁らしく私に一途だからね。この程度で私に愛想を尽かしやしないさ」ニコッ
花帆「うんうん! せっちゃんは泉ちゃんの事、だーい好きだもんね!」フンフン
泉「ああ、そうとも。何なら、セラスは吟子さんの事も大層気に入っているようだし……」ジト…
泉「今度は三人、此処でカフェーらしくお酒でも如何かな?」クスッ
小鈴「! わぁ泉ちゃん、誘い方が大胆……!」ドキドキ
吟子「あの……! 喫茶『田園』は最近流行りのカフェーと違って健全な純喫茶、なんですが!!」
※ 大正14年開業の『カフェー・タイガー』では、美人女給を揃えてキャバクラのような営業をしていた
吟子「……どうも。でも、そういう浮気性な発言はセラスさんに嫌われますよ、泉さん」
泉「はははっ。セラスは案外、許嫁らしく私に一途だからね。この程度で私に愛想を尽かしやしないさ」ニコッ
花帆「うんうん! せっちゃんは泉ちゃんの事、だーい好きだもんね!」フンフン
泉「ああ、そうとも。何なら、セラスは吟子さんの事も大層気に入っているようだし……」ジト…
泉「今度は三人、此処でカフェーらしくお酒でも如何かな?」クスッ
小鈴「! わぁ泉ちゃん、誘い方が大胆……!」ドキドキ
吟子「あの……! 喫茶『田園』は最近流行りのカフェーと違って健全な純喫茶、なんですが!!」
※ 大正14年開業の『カフェー・タイガー』では、美人女給を揃えてキャバクラのような営業をしていた
0
5: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:04:00 ID:???00
吟子「なんでこんな浮ついた女性が、軍人で在る上に可愛い許嫁まで居るんでしょうか……?」ハァ
泉「ふふ……私は軍人らしく、それに恥じない振る舞いをしろと、そう吟子さんは云う訳だね」クスッ
吟子「それが今の時代の当たり前ですから。ちゃんと分かっとるなら、泉さんも女誑しは程々にした方が良いですよ、……っと」カタッ
吟子「──こちら、クリームソーダご注文の方?」キョロキョロ
小鈴「あっ、はい! ソーダのオーダーは徒町です! ありがとう、吟子ちゃん!」ニコッ
吟子「! い……いえいえいえ!! 私は女給として、蓮ノ空の軍人で在られる小鈴さんに敬意を尽くしているだけですので……/」テレ
泉「私とはずいぶん扱いが違くないか?」
泉「ふふ……私は軍人らしく、それに恥じない振る舞いをしろと、そう吟子さんは云う訳だね」クスッ
吟子「それが今の時代の当たり前ですから。ちゃんと分かっとるなら、泉さんも女誑しは程々にした方が良いですよ、……っと」カタッ
吟子「──こちら、クリームソーダご注文の方?」キョロキョロ
小鈴「あっ、はい! ソーダのオーダーは徒町です! ありがとう、吟子ちゃん!」ニコッ
吟子「! い……いえいえいえ!! 私は女給として、蓮ノ空の軍人で在られる小鈴さんに敬意を尽くしているだけですので……/」テレ
泉「私とはずいぶん扱いが違くないか?」
0
6: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:05:00 ID:???00
吟子「だって小鈴さんは、あの蓮ノ空に通う軍人さんですから。敬うのは至極当然の話ですよ、泉さん」フフン
泉「私も蓮ノ空の104期生なんだが……」シュン
吟子「泉さんは浮気性を治してから言ってください。……本当に、蓮ノ空の伝統は、何よりも素晴らしい物なんですから……!」
吟子「歴史と伝統ある“軍学校”の蓮ノ空が、我が国を守ってきた為に──平和な大正時代が今日まで続いているんですし」フフッ
泉「私も蓮ノ空の104期生なんだが……」シュン
吟子「泉さんは浮気性を治してから言ってください。……本当に、蓮ノ空の伝統は、何よりも素晴らしい物なんですから……!」
吟子「歴史と伝統ある“軍学校”の蓮ノ空が、我が国を守ってきた為に──平和な大正時代が今日まで続いているんですし」フフッ
0
7: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:06:00 ID:???00
小鈴「徒町もそう思います! 蓮ノ空が、我が国の歴史を……徒町達が、その一端を担っているんですよね!」グッ
吟子「ええ。ですから、小鈴さんの様な御国と伝統を守る軍人は、私にとって太陽のような女性で……」
吟子「…………しょ、生涯の憧れ、なんです……//」ポツリ
小鈴「!! えへへ! 吟子ちゃん、ありがと!」ニコッ
吟子「……ッ!!」ドキッ
吟子「ええ。ですから、小鈴さんの様な御国と伝統を守る軍人は、私にとって太陽のような女性で……」
吟子「…………しょ、生涯の憧れ、なんです……//」ポツリ
小鈴「!! えへへ! 吟子ちゃん、ありがと!」ニコッ
吟子「……ッ!!」ドキッ
0
8: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:07:00 ID:???00
花帆「…………やっぱり吟子ちゃん、軍人の小鈴ちゃんがそう云う意味で大好きな事、全く隠そうともしてないよね……」フンフン
泉「ふふ。恋愛結婚という物は大正発祥の素晴らしき文化さ。とは云え私のように、許嫁の風習も残ってはいるけれど、ね」クスッ
さやか「!」ピク
さやか「…………」
小鈴「いやはやそれにしても! 蓮ノ空の軍人と云うだけでも、こんな徒町が一目置かれるなんて……!」ジーン
小鈴「徒町、たとえ補欠合格とは言え、そんな偉大な軍学校の蓮ノ空に入ることが出来、本当に良かったです!!」パァァ
泉「ふふ。恋愛結婚という物は大正発祥の素晴らしき文化さ。とは云え私のように、許嫁の風習も残ってはいるけれど、ね」クスッ
さやか「!」ピク
さやか「…………」
小鈴「いやはやそれにしても! 蓮ノ空の軍人と云うだけでも、こんな徒町が一目置かれるなんて……!」ジーン
小鈴「徒町、たとえ補欠合格とは言え、そんな偉大な軍学校の蓮ノ空に入ることが出来、本当に良かったです!!」パァァ
0
9: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:08:00 ID:???00
泉「小鈴さんは流石に謙遜が過ぎる。こんなにも芯を持った向上心の塊のような軍人……早々、見る物ではないというのに」フフッ
吟子「ええ。それに関しては私も、泉さんに完全同意しますね。その臙脂色の軍服もよくお似合いですし」クスッ
小鈴「え、えぇ!? で、でも……それを云うなれば、さやか先輩の方が! 徒町の尊敬すべき素晴らしきお方ですし……!」チラッ
さやか「………………」ズズズーン…
小鈴「──!? さ、さやか先輩!?!? 何故そんなにも暗い雰囲気で……!??」
吟子「ええ。それに関しては私も、泉さんに完全同意しますね。その臙脂色の軍服もよくお似合いですし」クスッ
小鈴「え、えぇ!? で、でも……それを云うなれば、さやか先輩の方が! 徒町の尊敬すべき素晴らしきお方ですし……!」チラッ
さやか「………………」ズズズーン…
小鈴「──!? さ、さやか先輩!?!? 何故そんなにも暗い雰囲気で……!??」
0
10: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:09:00 ID:???00
泉「おや? さやか先輩、何かあったのかい?」
さやか「…………いえ、すみません。大した事では、ないんですよ」
泉「……私が思うに、大した事では無いのなら特段、沈む理由もないと思うけれど?」
さやか「……、……それは」
小鈴「もし何か悩み事が在るのでしたら、徒町達に是非ともお聞かせください! 何でも力になりますよ!」グッ
花帆「あ、それならあたしもあたしも! さやかちゃんは喫茶『田園』の御得意様だからね!」フンフン
さやか「皆さん……そう、ですね」コホン
さやか「実は、本当に……余りにも唐突な話ではあるのですが」
さやか「“許嫁”、がわたしにも居たらしく……」ポツリ
さやか「…………いえ、すみません。大した事では、ないんですよ」
泉「……私が思うに、大した事では無いのなら特段、沈む理由もないと思うけれど?」
さやか「……、……それは」
小鈴「もし何か悩み事が在るのでしたら、徒町達に是非ともお聞かせください! 何でも力になりますよ!」グッ
花帆「あ、それならあたしもあたしも! さやかちゃんは喫茶『田園』の御得意様だからね!」フンフン
さやか「皆さん……そう、ですね」コホン
さやか「実は、本当に……余りにも唐突な話ではあるのですが」
さやか「“許嫁”、がわたしにも居たらしく……」ポツリ
0
11: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:10:00 ID:???00
小鈴「えっ!?!??! い、いいなずけ………………、こ、こここ、婚約者なる者が、さやか先輩に!?!?」ガタッッ
泉「……ほう? 私とセラスの関係と同じという事か」
さやか「そう、ですね。そう云う事になります」コクリ
さやか「紹介にあった方は、“夕霧”という家のご令嬢だそうで。村野家とは代々、ここ金沢の地で縁があったようなんです」
吟子「!? 夕霧家って、…………まさか」
吟子「あの──夕霧綴理、ですか?」
泉「……ほう? 私とセラスの関係と同じという事か」
さやか「そう、ですね。そう云う事になります」コクリ
さやか「紹介にあった方は、“夕霧”という家のご令嬢だそうで。村野家とは代々、ここ金沢の地で縁があったようなんです」
吟子「!? 夕霧家って、…………まさか」
吟子「あの──夕霧綴理、ですか?」
0
12: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:11:00 ID:???00
花帆「あれ? もしかして吟子ちゃん……その、何とかってご令嬢さんの事、知ってるの?」
吟子「知ってるも何も……有名人ですよ、彼女は!」
吟子「舞を始めとする様々な芸事に秀で、なかでも絵画の分野では“煌めき”なる物を描写した色彩が高い評価を受けているとか」
吟子「……ただ、その才覚ゆえに孤高の天才と持て囃される事も多く、周囲とも距離を置いている絶世の美女と云う噂もあって……」
泉「ふむ……芸術分野における天才、と云う訳か」
花帆「なんだか、才色兼備って感じだね!」フンフン
吟子「知ってるも何も……有名人ですよ、彼女は!」
吟子「舞を始めとする様々な芸事に秀で、なかでも絵画の分野では“煌めき”なる物を描写した色彩が高い評価を受けているとか」
吟子「……ただ、その才覚ゆえに孤高の天才と持て囃される事も多く、周囲とも距離を置いている絶世の美女と云う噂もあって……」
泉「ふむ……芸術分野における天才、と云う訳か」
花帆「なんだか、才色兼備って感じだね!」フンフン
0
13: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:12:00 ID:???00
さやか「……」
さやか「…………夕霧さん、は……」ポツリ
小鈴「さやか先輩?」
さやか「夕霧さんは本当に──孤高の天才、なのでしょうか?」
吟子「……えっ?」
さやか「あの方はただ寂しがり屋な一人の女学生で在られるようで。自分一人だけで何でも出来る天才とは、どうにも思えず……」
花帆「? その云い方、さやかちゃん、もしかしてもうその人に会ったの?」
さやか「…………はい」コクリ
さやか「先日、お会いしました。花のかんばせを持つ美しい女性だったんですが、その、問題もありまして──」
さやか「…………夕霧さん、は……」ポツリ
小鈴「さやか先輩?」
さやか「夕霧さんは本当に──孤高の天才、なのでしょうか?」
吟子「……えっ?」
さやか「あの方はただ寂しがり屋な一人の女学生で在られるようで。自分一人だけで何でも出来る天才とは、どうにも思えず……」
花帆「? その云い方、さやかちゃん、もしかしてもうその人に会ったの?」
さやか「…………はい」コクリ
さやか「先日、お会いしました。花のかんばせを持つ美しい女性だったんですが、その、問題もありまして──」
0
14: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:13:00 ID:???00
────
【回顧 夕霧家と初の顔合わせにて】
スッ…
綴理「直接会うのは、はじめまして……かな」
綴理「こんにちは、蓮ノ空の軍人さん」ニコ
【回顧 夕霧家と初の顔合わせにて】
スッ…
綴理「直接会うのは、はじめまして……かな」
綴理「こんにちは、蓮ノ空の軍人さん」ニコ
0
15: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:14:00 ID:???00
さやか「……ええ、はじめまして」ペコリ
さやか(──その女性を、一目見た時)
さやか(此処が現実かどうか、直ぐに確かめねばならないのではと錯覚を起こした。それ程までに彼女は、……美しかった)
さやか「お綺麗、ですね。夕霧様」
綴理「えっと……ありがとう。ボク、嬉しいよ。ちゃんと」
さやか「? え、ええ」
さやか(彼女の風体は、今は昔、明治の頃より抜け出たような……その『ボク』という一人称も、美しき女学生のそれであった)
※ 明治時代、「僕」の一人称を使う女学生が存在していた
さやか(──その女性を、一目見た時)
さやか(此処が現実かどうか、直ぐに確かめねばならないのではと錯覚を起こした。それ程までに彼女は、……美しかった)
さやか「お綺麗、ですね。夕霧様」
綴理「えっと……ありがとう。ボク、嬉しいよ。ちゃんと」
さやか「? え、ええ」
さやか(彼女の風体は、今は昔、明治の頃より抜け出たような……その『ボク』という一人称も、美しき女学生のそれであった)
※ 明治時代、「僕」の一人称を使う女学生が存在していた
0
16: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:15:00 ID:???00
さやか「さて。夕霧様は、村野家次女で在るわたしの……い、許嫁で在られるとの事でしたが」
綴理「……」
さやか「夕霧様?」
綴理「さや。そんなに堅苦しくしないでほしいな。ボクは、さやとは和気藹々……えっと、仲良くなりたいから」
さやか「!? さ、さや……? え、えぇと。でしたら……」
さやか「……夕霧さん、とお呼びさせていただきます。それで、宜しいでしょうか?」
綴理「! ……ん。ありがとう、さや」パァァ
綴理「……」
さやか「夕霧様?」
綴理「さや。そんなに堅苦しくしないでほしいな。ボクは、さやとは和気藹々……えっと、仲良くなりたいから」
さやか「!? さ、さや……? え、えぇと。でしたら……」
さやか「……夕霧さん、とお呼びさせていただきます。それで、宜しいでしょうか?」
綴理「! ……ん。ありがとう、さや」パァァ
0
17: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:16:00 ID:???00
さやか「……えぇと」コホン
綴理「……」
さやか「……」
綴理「……」
さやか「……」
綴理「……」
さやか「あの……夕霧、さん?」
綴理「! うん。どうかしたの、さや?」
さやか「会話を……しても構いませんか?」
綴理「さやがしたいなら、うん」
綴理「……」
さやか「……」
綴理「……」
さやか「……」
綴理「……」
さやか「あの……夕霧、さん?」
綴理「! うん。どうかしたの、さや?」
さやか「会話を……しても構いませんか?」
綴理「さやがしたいなら、うん」
0
18: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:17:00 ID:???00
さやか「で、では……えぇと…………」コホン
さやか「夕霧さんは……、今、何歳に成られているのですか?」
綴理「年齢……ボクは十九年二ヶ月くらい、に成ります。…………たぶん」
さやか「!? なんと、まだうら若き淑女ではありませんか!」
綴理「それを言うなら、さやだって、そうだと思うけど……? さやは十七、だよね」
さやか「夕霧さんは……、今、何歳に成られているのですか?」
綴理「年齢……ボクは十九年二ヶ月くらい、に成ります。…………たぶん」
さやか「!? なんと、まだうら若き淑女ではありませんか!」
綴理「それを言うなら、さやだって、そうだと思うけど……? さやは十七、だよね」
0
19: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:18:01 ID:???00
さやか「ええ、ですが軍人に年齢など関係ありませんから。それに……、わたしは後二週間程すれば十八にも成りますし」
綴理「え。そう、なんだ。おめでとう、さや」パチパチパチ
さやか「今、祝われましても…………一応、御言葉はありがたく受け取っておきますが……」
綴理「そっか。じゃあ当日も、さやをいっぱいお祝いしよう。楽しみだ」フフン
さやか「あ、ありがとうございます……? ……えぇと、他にも何か質問を……そうですね」
さやか「夕霧さんは……芸術で生計を立てているとお聞きしました。では、それに取り組まぬ休日は、どうお過ごしなんですか?」
綴理「え。そう、なんだ。おめでとう、さや」パチパチパチ
さやか「今、祝われましても…………一応、御言葉はありがたく受け取っておきますが……」
綴理「そっか。じゃあ当日も、さやをいっぱいお祝いしよう。楽しみだ」フフン
さやか「あ、ありがとうございます……? ……えぇと、他にも何か質問を……そうですね」
さやか「夕霧さんは……芸術で生計を立てているとお聞きしました。では、それに取り組まぬ休日は、どうお過ごしなんですか?」
0
20: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:19:00 ID:???00
綴理「おやすみの日? んー…………“煌めき”を探してる、かな。あと、よく迷子にもなる」
さやか「え? ま、迷子……ですか??」
綴理「うん。ボク、ふらふらー、って蓮ノ空近くの山の方まで朝から散歩に出て……。そのまま、夜までそこに居る事もあるかな」
さやか「夜に……!? えっ、であれば……その日の昼餉には、一体何を食べていらっしゃるのですか?」
綴理「おひるは…………えっと」
綴理「……」
綴理「…………食べてない、かも」
さやか「!!?!?」
さやか「え? ま、迷子……ですか??」
綴理「うん。ボク、ふらふらー、って蓮ノ空近くの山の方まで朝から散歩に出て……。そのまま、夜までそこに居る事もあるかな」
さやか「夜に……!? えっ、であれば……その日の昼餉には、一体何を食べていらっしゃるのですか?」
綴理「おひるは…………えっと」
綴理「……」
綴理「…………食べてない、かも」
さやか「!!?!?」
0
21: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:20:00 ID:???00
綴理「その。お昼食べるの、ボク忘れがちだから……」シュン
さやか「そ……それではいけませんよ! 女学生で在られるならば、健康は一番でしょう! 一体何故……!?」
綴理「でもボク、風邪は引いた事ないよ。健康優良児だから」ドヤ
さやか「いや、それはっ……!」
綴理「たぶん……ボクは食べなくても平気なんだよ、さや」
さやか「平気な訳ないじゃないですか! 人間ですよね!?」
さやか「そ……それではいけませんよ! 女学生で在られるならば、健康は一番でしょう! 一体何故……!?」
綴理「でもボク、風邪は引いた事ないよ。健康優良児だから」ドヤ
さやか「いや、それはっ……!」
綴理「たぶん……ボクは食べなくても平気なんだよ、さや」
さやか「平気な訳ないじゃないですか! 人間ですよね!?」
0
22: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:21:00 ID:???00
さやか「……あぁ、もう!」ハァ
さやか(夕霧さんの発言や挙措、これでは背の高い見た目に反し、まるで“幼子”のようです。こんな彼女が、わたしの許嫁……?)
さやか「…………」ジー
綴理「?」キョトン
さやか(……いえ、流石に判断が早すぎますね。きっと彼女にも何か事情が在るのでしょう。大人らしい深遠なお考えが……)
さやか(夕霧さんの発言や挙措、これでは背の高い見た目に反し、まるで“幼子”のようです。こんな彼女が、わたしの許嫁……?)
さやか「…………」ジー
綴理「?」キョトン
さやか(……いえ、流石に判断が早すぎますね。きっと彼女にも何か事情が在るのでしょう。大人らしい深遠なお考えが……)
0
23: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:22:00 ID:???00
綴理「──さや。許嫁に成るのなら、ボクから一つ、さやにお願いがあるんだ。いい、かな?」
さやか「! ええ、ええ、勿論聞きましょう。一体、御願いとは何ですか?」
綴理「さや、ボクに──子守唄を聴かせてくれないかな」
さやか「…………」
さやか「………………はい?」
さやか「! ええ、ええ、勿論聞きましょう。一体、御願いとは何ですか?」
綴理「さや、ボクに──子守唄を聴かせてくれないかな」
さやか「…………」
さやか「………………はい?」
0
24: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:23:00 ID:???00
────
【再び 喫茶『田園』での会話】
さやか「──あんな、目を離すと溶けて消えてしまいそうな、綿菓子の如き不安定な女性。わたし、人生で初めて見ましたよ……」ハァ
吟子「あ、あれ……?? どうやら噂とは違う様ですね……?」
吟子「噂では、やる事全てが完璧な一匹狼の天才との事だったのですが……」
さやか「狼どころか、あれは小さな仔犬同然ですよ。……本当に、距離感が余りにも近すぎて、一瞬花帆さんかと思った程です」コホン
花帆「えっ今あたしにまで飛び火した??」
【再び 喫茶『田園』での会話】
さやか「──あんな、目を離すと溶けて消えてしまいそうな、綿菓子の如き不安定な女性。わたし、人生で初めて見ましたよ……」ハァ
吟子「あ、あれ……?? どうやら噂とは違う様ですね……?」
吟子「噂では、やる事全てが完璧な一匹狼の天才との事だったのですが……」
さやか「狼どころか、あれは小さな仔犬同然ですよ。……本当に、距離感が余りにも近すぎて、一瞬花帆さんかと思った程です」コホン
花帆「えっ今あたしにまで飛び火した??」
0
25: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:24:00 ID:???00
さやか「悩んだ末に昨晩も眠れず……不覚にも、軍楽隊の行進を見逃す所でした。小鈴さんが呼びに来てくださり、助かりましたよ」
さやか「……とは云え。子守唄を要求する程の女性が、わたしの許嫁だとは。……はぁ」
泉「ふふ。初めて会った許嫁に、臥所を共にするお誘いまでされるとは。さやか先輩は随分と進展が早い」クスッ
さやか「そ、それはまた違うのでは……?」
花帆「なんだか、『恋景色大正浪漫』って感じだよね! でもやっぱり軍人さんと言っても女の子なんだから、恋愛は大事だよ!」フンフン
吟子「恋愛……ええ、ええ、ですよね……。わかります……恋するって、冒険ですし……」シミジミ
さやか「……とは云え。子守唄を要求する程の女性が、わたしの許嫁だとは。……はぁ」
泉「ふふ。初めて会った許嫁に、臥所を共にするお誘いまでされるとは。さやか先輩は随分と進展が早い」クスッ
さやか「そ、それはまた違うのでは……?」
花帆「なんだか、『恋景色大正浪漫』って感じだよね! でもやっぱり軍人さんと言っても女の子なんだから、恋愛は大事だよ!」フンフン
吟子「恋愛……ええ、ええ、ですよね……。わかります……恋するって、冒険ですし……」シミジミ
0
26: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:25:00 ID:???00
さやか「……。……はぁ」シュン
さやか「わたし、彼女と上手く夫婦に成れるのでしょうか。これから何度も会合が予定されているのですが、心配でなりません……」
小鈴「? えっと……さやか先輩が其のお方に、子守唄を歌ってあげれば良いだけ、の話では無いんですか?」
さやか「…………それはそう、なんですが……その、わたしは歌など特別に訓練した事もありませんし……」ウーン
花帆「ふふっ、さやかちゃんは真面目だねぇ。ウソとか一回も吐いた事無さそう」クスッ
さやか「急に何ですか??」
さやか「わたし、彼女と上手く夫婦に成れるのでしょうか。これから何度も会合が予定されているのですが、心配でなりません……」
小鈴「? えっと……さやか先輩が其のお方に、子守唄を歌ってあげれば良いだけ、の話では無いんですか?」
さやか「…………それはそう、なんですが……その、わたしは歌など特別に訓練した事もありませんし……」ウーン
花帆「ふふっ、さやかちゃんは真面目だねぇ。ウソとか一回も吐いた事無さそう」クスッ
さやか「急に何ですか??」
0
27: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:26:00 ID:???00
花帆「だってさ! 結局はさやかちゃん、その許嫁さんの“期待に応えられる程の歌”が歌える筈ない、って悩んでる訳でしょ?」
さやか「……」ギク
花帆「歌の上手い下手とかじゃなくて、許嫁に歌ってほしいってだけなんだろうし……別に悩まなくても良いと思うよ?」
さやか「そう、でしょうか。…………いえ、だとしても」コホン
さやか「そもそも、我が国は戦争が終わった後。……今のわたし達の任務は暗〇阻止の為の要人護衛や災害での救助、治安維持」
さやか「それらに従事する蓮ノ空の軍人が──愛だの恋だの、恋愛の些事にうつつを抜かすわけには、矢張りいきませんから」キッパリ
花帆「え、えぇ? うーん……そうかなぁ?」
吟子「あの……、さっき申しました通り、私は軍人さんでも恋は別に良いと思いますけど……」コホン
吟子「ですが、近頃の治安が悪い事については、私達女給も心配しているんですよ」
さやか「……」ギク
花帆「歌の上手い下手とかじゃなくて、許嫁に歌ってほしいってだけなんだろうし……別に悩まなくても良いと思うよ?」
さやか「そう、でしょうか。…………いえ、だとしても」コホン
さやか「そもそも、我が国は戦争が終わった後。……今のわたし達の任務は暗〇阻止の為の要人護衛や災害での救助、治安維持」
さやか「それらに従事する蓮ノ空の軍人が──愛だの恋だの、恋愛の些事にうつつを抜かすわけには、矢張りいきませんから」キッパリ
花帆「え、えぇ? うーん……そうかなぁ?」
吟子「あの……、さっき申しました通り、私は軍人さんでも恋は別に良いと思いますけど……」コホン
吟子「ですが、近頃の治安が悪い事については、私達女給も心配しているんですよ」
0
28: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:27:00 ID:???00
花帆「うんうん、最近は誘拐とか窃盗とかの事件も巷では噂されてるからねぇ。何か良くない事が起こりそうで不安だなぁ……」ポツリ
小鈴「ああ、それで……でしたらお二人とも、安心してください! 徒町達にお任せを!!」バッ
花帆「……えっ?」
泉「実は、あまりの犯罪者の増加に手を焼いた警察から──蓮ノ空の“軍人”へ、取り締まりの協力依頼が来ていてね」クスッ
吟子「取り締まり、ですか?」
さやか「ええ。なので我々が今後……春頃には、金沢の市中警備にも当たる事になると思います。見回りや警護任務、ですね」
小鈴「ああ、それで……でしたらお二人とも、安心してください! 徒町達にお任せを!!」バッ
花帆「……えっ?」
泉「実は、あまりの犯罪者の増加に手を焼いた警察から──蓮ノ空の“軍人”へ、取り締まりの協力依頼が来ていてね」クスッ
吟子「取り締まり、ですか?」
さやか「ええ。なので我々が今後……春頃には、金沢の市中警備にも当たる事になると思います。見回りや警護任務、ですね」
0
29: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:28:00 ID:???00
花帆「そうなんだ。蓮ノ空の軍人さん、さやかちゃん達も含めていつも忙しそうだね……と云うか、ちゃんと休めてる?」
小鈴「それはもう! そもそも徒町達軍人は国、ひいては国民を守る為に居るのですから、心配なさらず!」グッ
泉「ああ。それが私たちの果たすべき役割というものだからね。此処──喫茶『田園』の珈琲を飲んで、その分頑張らせてもらうよ」
泉「珈琲は、蓮ノ空の酒保でも買えるが……しかし、やはり此処のは格別だから、ね」クスッ
※ 酒保:軍人の利用する売店
小鈴「それはもう! そもそも徒町達軍人は国、ひいては国民を守る為に居るのですから、心配なさらず!」グッ
泉「ああ。それが私たちの果たすべき役割というものだからね。此処──喫茶『田園』の珈琲を飲んで、その分頑張らせてもらうよ」
泉「珈琲は、蓮ノ空の酒保でも買えるが……しかし、やはり此処のは格別だから、ね」クスッ
※ 酒保:軍人の利用する売店
0
30: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:29:00 ID:???00
吟子「でしたら、小鈴さん方が来店した時の為に美味しいクリームソーダを用意しておきますよ。……一応、上等な珈琲豆も」
泉「! ……ふふ。やはり、吟子さんは優しいね」クスッ
小鈴「──では! 明日はそれとは別件で、寝台列車の護衛任務が在るので、徒町達はそろそろお暇させて頂きます!」ガタッ
さやか「という訳で、ありがとうございました。また必ず来ますね」
花帆「! うん、お待ちしてます!」ニコッ
さやか「……ええ」ペコリ
カランカラン…
さやか「……」ハァ
泉「! ……ふふ。やはり、吟子さんは優しいね」クスッ
小鈴「──では! 明日はそれとは別件で、寝台列車の護衛任務が在るので、徒町達はそろそろお暇させて頂きます!」ガタッ
さやか「という訳で、ありがとうございました。また必ず来ますね」
花帆「! うん、お待ちしてます!」ニコッ
さやか「……ええ」ペコリ
カランカラン…
さやか「……」ハァ
0
31: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:30:00 ID:???00
────
【二週間後 涼やかな早朝の山奥】
さやか「はぁ……はぁ……」タッタッ
さやか「……ふぅ。これで終わり、っと」チラッ
さやか「はぁ…………やはり蓮ノ空は山奥にある分、この時間は空気が冷えますね」ブルッ
さやか「さて、鍛錬としての蓮ノ湖3周走り込みは終わりましたし、お次は……」チラッ
チュンチュン…
さやか「……」
さやか「…………」
【二週間後 涼やかな早朝の山奥】
さやか「はぁ……はぁ……」タッタッ
さやか「……ふぅ。これで終わり、っと」チラッ
さやか「はぁ…………やはり蓮ノ空は山奥にある分、この時間は空気が冷えますね」ブルッ
さやか「さて、鍛錬としての蓮ノ湖3周走り込みは終わりましたし、お次は……」チラッ
チュンチュン…
さやか「……」
さやか「…………」
0
32: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:31:00 ID:???00
さやか「……静か、ですね」
チュンチュン…
…ガサ
さやか「一見した所、今は誰もいませんし……ほんの少しだけ、なら」コホン
さやか「……」スゥ
さやか「~♪」
チュンチュン…
…ガサ
さやか「一見した所、今は誰もいませんし……ほんの少しだけ、なら」コホン
さやか「……」スゥ
さやか「~♪」
0
33: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:32:00 ID:???00
さやか「…………」
さやか「はぁ……やはり、駄目ですね」
さやか「……山奥で休日特訓をする度に、わたしが歌を練習しているなんて。誰かに知れたら、一体どう思われるのでしょうか?」
さやか「わたしのような何も無い軍人に……歌は、似合わないと云うのに」
さやか「それもこれも全部、あの許嫁──夕霧さんの言葉のせいですよ! 全くもう……」ポツリ
さやか「……」
さやか「……」スゥ
さやか「……~♪」
…ガサ
さやか「はぁ……やはり、駄目ですね」
さやか「……山奥で休日特訓をする度に、わたしが歌を練習しているなんて。誰かに知れたら、一体どう思われるのでしょうか?」
さやか「わたしのような何も無い軍人に……歌は、似合わないと云うのに」
さやか「それもこれも全部、あの許嫁──夕霧さんの言葉のせいですよ! 全くもう……」ポツリ
さやか「……」
さやか「……」スゥ
さやか「……~♪」
…ガサ
0
34: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:33:00 ID:???00
────
【回顧 夕霧家との四回目の会合】
さやか「夕霧さんは──その表現力を、努力して手に入れたのですか?」
綴理「? ん……」チラッ
綴理「……どうして、そう思ったの?」
さやか「それは、その」
さやか「…………今、夕霧さんが描いているその絵の色が。なんと申しましょうか、特にその“赤”色の捉え方が、特別だと感じて」
【回顧 夕霧家との四回目の会合】
さやか「夕霧さんは──その表現力を、努力して手に入れたのですか?」
綴理「? ん……」チラッ
綴理「……どうして、そう思ったの?」
さやか「それは、その」
さやか「…………今、夕霧さんが描いているその絵の色が。なんと申しましょうか、特にその“赤”色の捉え方が、特別だと感じて」
0
35: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:34:00 ID:???00
さやか(これは確かに、先日聞いた『芸術分野における天才』と云う評価も納得できる……。そういう絵であった)
綴理「んー……そう、かな?」
さやか「ええ。草木や世界の澄んだ空気さえも──夕霧さんの絵画の中では、現実以上に美しく色付いているように見えます」
綴理「……そっか」
さやか「芸術家と云うのは、得てして血の滲むような努力をしている者も多く……夕霧さんもそうではないか、と勝手ながら感じたのですが」
綴理「ううん。…………違う、違うよ」ポツリ
さやか「夕霧さん?」
綴理「さや。ボクはね」
綴理「この世界にある“煌めき”が見えるんだ」
綴理「んー……そう、かな?」
さやか「ええ。草木や世界の澄んだ空気さえも──夕霧さんの絵画の中では、現実以上に美しく色付いているように見えます」
綴理「……そっか」
さやか「芸術家と云うのは、得てして血の滲むような努力をしている者も多く……夕霧さんもそうではないか、と勝手ながら感じたのですが」
綴理「ううん。…………違う、違うよ」ポツリ
さやか「夕霧さん?」
綴理「さや。ボクはね」
綴理「この世界にある“煌めき”が見えるんだ」
0
36: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:35:00 ID:???00
さやか「……“煌めき”、ですか? 確か、それは……」
さやか「あぁ……、先日聞いたのを思い出しました。煌めきとは、夕霧さんが絵画に描写している概念、でしたよね」
綴理「……うん。そう皆は云ってくれる。でも、本当はそうじゃない。ただ、この世界が……本当に色彩豊かで、煌めいてるだけだ」
さやか「と、云うと?」
綴理「ボクはね、さや。──ボクの瞳に映った物を描いてるに過ぎない、って事だよ」
さやか「あぁ……、先日聞いたのを思い出しました。煌めきとは、夕霧さんが絵画に描写している概念、でしたよね」
綴理「……うん。そう皆は云ってくれる。でも、本当はそうじゃない。ただ、この世界が……本当に色彩豊かで、煌めいてるだけだ」
さやか「と、云うと?」
綴理「ボクはね、さや。──ボクの瞳に映った物を描いてるに過ぎない、って事だよ」
0
37: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:36:00 ID:???00
さやか「…………夕霧さんの目には、わたし達が生きる世界そのものがこの絵のように見えている、と?」
綴理「ん。現実の皆は、全部煌めいてる……歌ってる時のさやだって、そうだ。水色の“煌めき”を持ってるよね」ニコ
綴理「そう云う、その時ボクが見た……一瞬の“煌めき”」
綴理「ボクはそれを永遠にしたい。未完成でも熱を持った煌めきを、皆にも見てほしい」
綴理「だから……ボクは絵を描いているんだ。皆は、此処にある“煌めき”にただ気付いてないだけなんだよ」
綴理「ん。現実の皆は、全部煌めいてる……歌ってる時のさやだって、そうだ。水色の“煌めき”を持ってるよね」ニコ
綴理「そう云う、その時ボクが見た……一瞬の“煌めき”」
綴理「ボクはそれを永遠にしたい。未完成でも熱を持った煌めきを、皆にも見てほしい」
綴理「だから……ボクは絵を描いているんだ。皆は、此処にある“煌めき”にただ気付いてないだけなんだよ」
0
38: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:37:00 ID:???00
さやか「なる、ほど……」フム
さやか「……では、夕霧さんには天性の才が有ったのですね。わたしは軍人でありますから、芸術には疎く……申し訳ありません」
綴理「……」
さやか「であればいつか──わたしも、その世界を自らの瞳で見てみたいですね。許嫁である夕霧さんの隣に、立てるように」クスッ
綴理「…………え?」ピク
さやか「……では、夕霧さんには天性の才が有ったのですね。わたしは軍人でありますから、芸術には疎く……申し訳ありません」
綴理「……」
さやか「であればいつか──わたしも、その世界を自らの瞳で見てみたいですね。許嫁である夕霧さんの隣に、立てるように」クスッ
綴理「…………え?」ピク
0
39: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:38:00 ID:???00
さやか「? どうかしましたか、夕霧さん?」
綴理「……この話を聞いても、さや、ボクから遠ざからないの? 天才だからー、ってボクの世界から離れない?」
さやか「はい? 何を言ってるんですか。わたしは許嫁でありますし……それに、天才だろうと一人の人間じゃないですか」コホン
さやか「わたしは、夕霧さんが『天才』である以上に、『夕霧綴理』である筈だと。そう思っておりますから」ニコ
綴理「……!!」
綴理「そ、っか。……さやは、そうなんだ……」ポツリ
さやか「もっとも最近では、わたしも幼子のような夕霧さんから、文字通り目が離せなくなっていますし……っと、そうでした」パン
さやか「──お弁当、今日はわたしが作って参りましたよ。段々と寒くなって参りましたので、本日は“汁物”に致しました」ニコ
綴理「! わ。金沢のおでんの匂い……ボク、最近のこれ好きだな」フフッ
※ 大正12年、金沢市に「元祖おでん」のお店が登場した(現在残る最も古い金沢おでん屋さんは昭和2年創業)
綴理「……この話を聞いても、さや、ボクから遠ざからないの? 天才だからー、ってボクの世界から離れない?」
さやか「はい? 何を言ってるんですか。わたしは許嫁でありますし……それに、天才だろうと一人の人間じゃないですか」コホン
さやか「わたしは、夕霧さんが『天才』である以上に、『夕霧綴理』である筈だと。そう思っておりますから」ニコ
綴理「……!!」
綴理「そ、っか。……さやは、そうなんだ……」ポツリ
さやか「もっとも最近では、わたしも幼子のような夕霧さんから、文字通り目が離せなくなっていますし……っと、そうでした」パン
さやか「──お弁当、今日はわたしが作って参りましたよ。段々と寒くなって参りましたので、本日は“汁物”に致しました」ニコ
綴理「! わ。金沢のおでんの匂い……ボク、最近のこれ好きだな」フフッ
※ 大正12年、金沢市に「元祖おでん」のお店が登場した(現在残る最も古い金沢おでん屋さんは昭和2年創業)
0
40: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:39:00 ID:???00
さやか「恐らくは絵も丁度一段落ついたところでしょうし、先にお昼に致しませんか? おでん、美味しく出来たんですよ」フフン
綴理「うん。あ……でもその前に」スタッ
さやか「?」
綴理「ボク、さやに渡したい物があって……」ゴソゴソ
さやか「はて、鞄から何やら大きな物が……夕霧さん、それは一体?」
綴理「御誕生日の、贈り物。当日は祝えなかったけど……さや、十八に成った筈だから」ニコ
綴理「うん。あ……でもその前に」スタッ
さやか「?」
綴理「ボク、さやに渡したい物があって……」ゴソゴソ
さやか「はて、鞄から何やら大きな物が……夕霧さん、それは一体?」
綴理「御誕生日の、贈り物。当日は祝えなかったけど……さや、十八に成った筈だから」ニコ
0
41: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:40:00 ID:???00
さやか「……! あの時チラリと零した誕生日、まさか覚えてていて下さったのですか!?」
綴理「うん。その、ボクがさやにあげられる物は、たった一枚の絵くらいしか無いけど……良い?」
さやか「なんと……! ええ、勿論ですよ。ありがとうございます、夕霧さん。…………えぇと」チラッ
さやか「これ、は……」ジー
綴理「どう、かな?」
綴理「うん。その、ボクがさやにあげられる物は、たった一枚の絵くらいしか無いけど……良い?」
さやか「なんと……! ええ、勿論ですよ。ありがとうございます、夕霧さん。…………えぇと」チラッ
さやか「これ、は……」ジー
綴理「どう、かな?」
0
42: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:41:00 ID:???00
〖 藍のインキで縁取られた大きな絵が置かれる 〗
さやか「夕霧さん。この絵画は……、鳥を描いた物ですよね?」
綴理「ん。片翼しかない鳥がね、鳥籠の中で二羽重なり合ってる。そう云う、未来のボク達を想像して描いたんだー」ニコニコ
さやか「…………“比翼の鳥”、ですか」
綴理「知ってるの? 流石さや、博識だ」フフ
※ 比翼の鳥:中国の想像上の鳥。きわめて仲睦まじい夫婦の喩えにも用いられる
さやか「夕霧さん。この絵画は……、鳥を描いた物ですよね?」
綴理「ん。片翼しかない鳥がね、鳥籠の中で二羽重なり合ってる。そう云う、未来のボク達を想像して描いたんだー」ニコニコ
さやか「…………“比翼の鳥”、ですか」
綴理「知ってるの? 流石さや、博識だ」フフ
※ 比翼の鳥:中国の想像上の鳥。きわめて仲睦まじい夫婦の喩えにも用いられる
0
43: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:42:00 ID:???00
綴理「これはね。片方しかツバサを持たない、未完成な生き物なんだ。でも……だからこそボクは、この鳥に惹かれてしまう」
綴理「比翼の鳥って、ボクは、不完全だからこそ美しい芸術だと思うんだ。一羽じゃ飛べない鳥が、番となら“飛べる”。だから……」
綴理「…………」
さやか「……夕霧さん?」
綴理「ねぇ、さや。やっぱりボクは……、見たいな」
綴理「ツバサを持ってるさやが、水色に煌めくさやが……ボク一人の為に──“歌っている”姿を」
さやか「……!」ピク
綴理「比翼の鳥って、ボクは、不完全だからこそ美しい芸術だと思うんだ。一羽じゃ飛べない鳥が、番となら“飛べる”。だから……」
綴理「…………」
さやか「……夕霧さん?」
綴理「ねぇ、さや。やっぱりボクは……、見たいな」
綴理「ツバサを持ってるさやが、水色に煌めくさやが……ボク一人の為に──“歌っている”姿を」
さやか「……!」ピク
0
44: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:43:00 ID:???00
綴理「子守唄、どうしても歌ってくれないの、さや?」
さやか「……えぇと」
綴理「あれからずっと、頼んでもさやはボクの前で歌ってくれない……お弁当は作ってくれるのに……」シュン
さやか「そ……、それは、その! わたし自身の生まれ持った御世話体質が有りまして……」
綴理「最近だとボク、迷子にならないよう前もって道も調べるようにもなったし、五分前行動も心掛けるようになったのに……」シュン
さやか「ぐ…………で、ですが」コホン
さやか「子守唄も含め。わたしに歌は、…………歌えません」
綴理「……どうして?」
さやか「わたしは──伽藍堂、なんです」ポツリ
さやか「……えぇと」
綴理「あれからずっと、頼んでもさやはボクの前で歌ってくれない……お弁当は作ってくれるのに……」シュン
さやか「そ……、それは、その! わたし自身の生まれ持った御世話体質が有りまして……」
綴理「最近だとボク、迷子にならないよう前もって道も調べるようにもなったし、五分前行動も心掛けるようになったのに……」シュン
さやか「ぐ…………で、ですが」コホン
さやか「子守唄も含め。わたしに歌は、…………歌えません」
綴理「……どうして?」
さやか「わたしは──伽藍堂、なんです」ポツリ
0
45: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:44:00 ID:???00
綴理「がらん、どう……?」
さやか「ええ。わたしが軍人であるのも、その為です」
さやか「…………全部が全部中途半端で終わるのは嫌で、幼き頃より常に努力をし続けてきました。ですが……歌だけは違った」
さやか「歌はココロを映すのです。そして、それを表現する為の豊かなココロを、わたしは持ってはおりません」
綴理「? そんなこと無い。さやは、煌めいてるよ」
さやか「……先程も申した通り、わたしは夕霧さんと“見える世界”が違います。いつかはこの目で見てみたい、と願ってはいても」
さやか「今のわたしの瞳では、夕霧さんの云う“煌めき”を直視する事は出来ません。つまり、我が身にそんな物、無いと等しい」
綴理「……」
さやか「だから……、歌えない。夕霧さんの期待に、煌めきを持たぬ伽藍堂のわたしは、応えられない」
さやか「わたしは、自分の為にしか、歌えないのです」
さやか「ええ。わたしが軍人であるのも、その為です」
さやか「…………全部が全部中途半端で終わるのは嫌で、幼き頃より常に努力をし続けてきました。ですが……歌だけは違った」
さやか「歌はココロを映すのです。そして、それを表現する為の豊かなココロを、わたしは持ってはおりません」
綴理「? そんなこと無い。さやは、煌めいてるよ」
さやか「……先程も申した通り、わたしは夕霧さんと“見える世界”が違います。いつかはこの目で見てみたい、と願ってはいても」
さやか「今のわたしの瞳では、夕霧さんの云う“煌めき”を直視する事は出来ません。つまり、我が身にそんな物、無いと等しい」
綴理「……」
さやか「だから……、歌えない。夕霧さんの期待に、煌めきを持たぬ伽藍堂のわたしは、応えられない」
さやか「わたしは、自分の為にしか、歌えないのです」
0
46: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:45:00 ID:???00
綴理「……」
綴理「…………さや、は」
綴理「さやは、優しいから、そう云うんだ。……大丈夫。さやの歌は綺麗だ。期待に応えられる筈だって、ボクがそう保証する」ニコ
さやか「……聴いたことも無いのに、夕霧さんが言い切れる筈も無いでしょう」
綴理「えっ。……あ」
さやか「?」
綴理「その……ボクは聴いたこと、最近だとある……けど」ウーン
さやか「……は、はい?? それは、どう云う……」
綴理「う、ううん。ごめんね。よく分からないよね」
綴理「ただ一つだけ。──さやは我が儘になっていいと思うんだ」
綴理「…………さや、は」
綴理「さやは、優しいから、そう云うんだ。……大丈夫。さやの歌は綺麗だ。期待に応えられる筈だって、ボクがそう保証する」ニコ
さやか「……聴いたことも無いのに、夕霧さんが言い切れる筈も無いでしょう」
綴理「えっ。……あ」
さやか「?」
綴理「その……ボクは聴いたこと、最近だとある……けど」ウーン
さやか「……は、はい?? それは、どう云う……」
綴理「う、ううん。ごめんね。よく分からないよね」
綴理「ただ一つだけ。──さやは我が儘になっていいと思うんだ」
0
47: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:46:00 ID:???00
さやか「……我が儘、ですか」
綴理「一度きりの人生だ。そのココロに溶けた本当の願い事、さやはきっと、隠してるだけでまだ持ってる」
綴理「さやはボクの許嫁。比翼の鳥はボクとさや、二人のことで……ボクにとってのさやは、居なくちゃいけない存在なんだ」
さやか「ですが……煌めけぬわたしが、夕霧さんの隣には──」
綴理「ううん。さやが我が儘になれた時、さやは自分でも“煌めき”が分かるはずだよ。だから、大丈夫」ニコニコ
さやか「…………そんな、筈」
さやか「……いえ、すみません。しかし、夕霧さん。今もそんなにわたしに依存して……、わたしが明日死んだら、どうするんですか?」
綴理「? さやは絶対、死なないよ。強くて綺麗な軍人さんだ」ニコ
綴理「一度きりの人生だ。そのココロに溶けた本当の願い事、さやはきっと、隠してるだけでまだ持ってる」
綴理「さやはボクの許嫁。比翼の鳥はボクとさや、二人のことで……ボクにとってのさやは、居なくちゃいけない存在なんだ」
さやか「ですが……煌めけぬわたしが、夕霧さんの隣には──」
綴理「ううん。さやが我が儘になれた時、さやは自分でも“煌めき”が分かるはずだよ。だから、大丈夫」ニコニコ
さやか「…………そんな、筈」
さやか「……いえ、すみません。しかし、夕霧さん。今もそんなにわたしに依存して……、わたしが明日死んだら、どうするんですか?」
綴理「? さやは絶対、死なないよ。強くて綺麗な軍人さんだ」ニコ
0
48: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:47:00 ID:???00
さやか「…………」
綴理「ねぇ、さや」
綴理「いつか……歌を二人きり、ボクと面と向かった上で聴かせてほしいんだ。ボクとそう云う──約束をしてほしい」
さやか「……っ。約束、ですか?」
綴理「うん。さやは絶対、ウソだけは吐かないと思うから」ニコ
さやか「……」
さやか「…………わかり、ました」
さやか「では、誓いましょうか。夕霧さんが安心できるように……そして」
さやか「わたし達が、真に夫婦と成れるように」
綴理「ねぇ、さや」
綴理「いつか……歌を二人きり、ボクと面と向かった上で聴かせてほしいんだ。ボクとそう云う──約束をしてほしい」
さやか「……っ。約束、ですか?」
綴理「うん。さやは絶対、ウソだけは吐かないと思うから」ニコ
さやか「……」
さやか「…………わかり、ました」
さやか「では、誓いましょうか。夕霧さんが安心できるように……そして」
さやか「わたし達が、真に夫婦と成れるように」
0
49: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:48:00 ID:???00
──
────
【再び 山奥で軍人はひとり苦悩する】
さやか「…………はぁ」
さやか「……夕霧さんはわたしを、わたしの“煌めき”を、認めて下さった。しかし、……そこには何の根拠も無い」
さやか「わたしは、我が国を守る蓮ノ空の軍人。ウソを吐けないだけでなく……、表現力さえ持たぬ伽藍堂の、人間」
さやか「乏しい表現でわたしが歌えるのは、ただ、わたしだけの為。浅はかな軍人の歌に一体、何の意味が在るのでしょうか?」
────
【再び 山奥で軍人はひとり苦悩する】
さやか「…………はぁ」
さやか「……夕霧さんはわたしを、わたしの“煌めき”を、認めて下さった。しかし、……そこには何の根拠も無い」
さやか「わたしは、我が国を守る蓮ノ空の軍人。ウソを吐けないだけでなく……、表現力さえ持たぬ伽藍堂の、人間」
さやか「乏しい表現でわたしが歌えるのは、ただ、わたしだけの為。浅はかな軍人の歌に一体、何の意味が在るのでしょうか?」
0
50: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:49:00 ID:???00
さやか「自己満足の為、が一番でしょうか」
さやか「…………或いは」
さやか「自分以外の誰かを納得させる為、でしょうか?」
さやか「はぁ……」
さやか「……わたしを見限って欲しい。期待、しないで欲しい。そう伝えられたら、いっとう楽になると云うのに」
さやか「…………或いは」
さやか「自分以外の誰かを納得させる為、でしょうか?」
さやか「はぁ……」
さやか「……わたしを見限って欲しい。期待、しないで欲しい。そう伝えられたら、いっとう楽になると云うのに」
0
51: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:50:00 ID:???00
さやか「……そうやって逃げようとする以上。わたしは結局、伽藍堂でしか無いんでしょうね」ハァ
さやか「…………」
さやか「……であればせめて、一度くらいは」
さやか「……」スゥ
さやか「……~♪」
…ガサ
「……」ジー
さやか「…………」
さやか「……であればせめて、一度くらいは」
さやか「……」スゥ
さやか「……~♪」
…ガサ
「……」ジー
0
52: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:51:00 ID:???00
────
【約二ヶ月後 春の喫茶『田園』での会話】
さやか「…………」チラッ
さやか「遅い、ですね……」
小鈴「ふにゃぁああ……」グデー
花帆「?? えーーっと……? こ、小鈴ちゃん??」
小鈴「…………ひめちゃん……歌……」グデー
吟子「あの……小鈴さん? だ、大丈夫ですか?」
【約二ヶ月後 春の喫茶『田園』での会話】
さやか「…………」チラッ
さやか「遅い、ですね……」
小鈴「ふにゃぁああ……」グデー
花帆「?? えーーっと……? こ、小鈴ちゃん??」
小鈴「…………ひめちゃん……歌……」グデー
吟子「あの……小鈴さん? だ、大丈夫ですか?」
0
53: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:52:00 ID:???00
泉「ふふ。小鈴さん近頃もう二ヶ月はこんな調子でね。こうして三人で喫茶店に寄るのも、随分とご無沙汰してしまったよ」クスッ
花帆「? えっ、何かあったの? さやかちゃんは知ってる?」チラッ
さやか「あ。ああ、……ええ、勿論ですよ。わたしの大切な後輩の事ですから」コホン
さやか「先日、寝台列車の護衛任務が在った事はもう話したかと思いますが……、其処に泉さんと小鈴さんが配属されたのです」
花帆「護衛任務? あ、前来た時もそんな事言ってたっけ」フンフン
泉「ああ。だが生憎、その任務を経て小鈴さんは護衛対象である──“歌姫”に惚れ込んでしまったようでね」クスッ
吟子「へ? うた、ひめ……?」
小鈴「その…………か、“歌劇団”の護衛任務だったんです! 最近、流行ってるじゃないですか!!」バッ
※ 1914年(大正3年)、宝塚少女歌劇の第一回公演が行われ、その影響により大正時代は多くの歌劇団が誕生した
花帆「? えっ、何かあったの? さやかちゃんは知ってる?」チラッ
さやか「あ。ああ、……ええ、勿論ですよ。わたしの大切な後輩の事ですから」コホン
さやか「先日、寝台列車の護衛任務が在った事はもう話したかと思いますが……、其処に泉さんと小鈴さんが配属されたのです」
花帆「護衛任務? あ、前来た時もそんな事言ってたっけ」フンフン
泉「ああ。だが生憎、その任務を経て小鈴さんは護衛対象である──“歌姫”に惚れ込んでしまったようでね」クスッ
吟子「へ? うた、ひめ……?」
小鈴「その…………か、“歌劇団”の護衛任務だったんです! 最近、流行ってるじゃないですか!!」バッ
※ 1914年(大正3年)、宝塚少女歌劇の第一回公演が行われ、その影響により大正時代は多くの歌劇団が誕生した
0
54: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:53:00 ID:???00
小鈴「護衛の間、切っ掛けがあって歌を聴いたのです。それが余りに素晴らしく……た、ただ徒町は歌が好きなだけで、恋では……!」
泉「ふむ? あの歌劇団に所属していた、桃色の髪の少女……確か、安養寺姫芽さん、と云ったか」フム
泉「最近では、小鈴さんはあの子の為に劇場に通い詰めてるのだろう? であればそれは、紛れもなく──恋、だろうね」フフッ
小鈴「!??!? な、何故泉ちゃん、徒町が劇場通いをしている事をを知って……」
泉「…………ふふ、矢張り小鈴さんは非常に分かりやすい」クスッ
小鈴「え? …………あっ!? まさか徒町、カマをかけられましたか!?」
泉「ふむ? あの歌劇団に所属していた、桃色の髪の少女……確か、安養寺姫芽さん、と云ったか」フム
泉「最近では、小鈴さんはあの子の為に劇場に通い詰めてるのだろう? であればそれは、紛れもなく──恋、だろうね」フフッ
小鈴「!??!? な、何故泉ちゃん、徒町が劇場通いをしている事をを知って……」
泉「…………ふふ、矢張り小鈴さんは非常に分かりやすい」クスッ
小鈴「え? …………あっ!? まさか徒町、カマをかけられましたか!?」
0
55: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:54:00 ID:???00
さやか「小鈴さん、休日の度に姿を消しては劇団の機関誌を持ち帰ってくるので、割とバレバレではありましたが……」
花帆「じゃあつまり、小鈴ちゃんに好きな人が出来たって事?」
吟子「!?!??!??」ガタガタッガタッ
小鈴「あっ、いえ、あの……! べ、別に惚れるとか恋に落ちたとかでは無くて……かっ、徒町はただ歌が忘れられなくて……//」アセアセ
泉「言い訳せずとも、既に『恋心』は明らかだ。小鈴さんは確かにあの歌姫に恋をしている……そうだろう?」クスッ
小鈴「うう、ううぅ……////」カァァ
吟子「そ、そんな…………小鈴さんが、軍人であるのにも拘らず恋愛にうつつを抜かすなんて!!!!」
花帆「吟子ちゃん、嫉妬はなるべく隠したほうがいいよ? ……と云うか、前と違うこと云ってない??」
花帆「じゃあつまり、小鈴ちゃんに好きな人が出来たって事?」
吟子「!?!??!??」ガタガタッガタッ
小鈴「あっ、いえ、あの……! べ、別に惚れるとか恋に落ちたとかでは無くて……かっ、徒町はただ歌が忘れられなくて……//」アセアセ
泉「言い訳せずとも、既に『恋心』は明らかだ。小鈴さんは確かにあの歌姫に恋をしている……そうだろう?」クスッ
小鈴「うう、ううぅ……////」カァァ
吟子「そ、そんな…………小鈴さんが、軍人であるのにも拘らず恋愛にうつつを抜かすなんて!!!!」
花帆「吟子ちゃん、嫉妬はなるべく隠したほうがいいよ? ……と云うか、前と違うこと云ってない??」
0
56: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:55:00 ID:???00
吟子「云いますよ、そりゃ! 私の方が小鈴さんを一番よく知っとるんに、知らない歌い手に寝取られて……!」ジェラ…
泉「……おや? ふふ、三角関係とは面白いね。蓮ノ小三角、と云ったところか。私も是非混ざりたいね」クスッ
吟子「は?」
泉「ふふ、素直じゃないね、吟子さんも。私達もそろそろ出逢って三年に垂んとする頃合いなのだから……正直になろうじゃないか」ギュ…
吟子「!? な、なんなん……?」
泉「まぁ私が居ると、角が三つでは不足してしまうけれどね」クスッ
吟子「本当に何なん……??」
泉「……おや? ふふ、三角関係とは面白いね。蓮ノ小三角、と云ったところか。私も是非混ざりたいね」クスッ
吟子「は?」
泉「ふふ、素直じゃないね、吟子さんも。私達もそろそろ出逢って三年に垂んとする頃合いなのだから……正直になろうじゃないか」ギュ…
吟子「!? な、なんなん……?」
泉「まぁ私が居ると、角が三つでは不足してしまうけれどね」クスッ
吟子「本当に何なん……??」
0
57: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:56:00 ID:???00
さやか「……」チラッ
吟子「女誑しの泉さんは兎も角として。そんなに、その……歌劇団? は凄かったんですか?」
小鈴「!! はい! いや、軍楽隊に負けず劣らず凄いんですよ! 特にあの、劇中の『あいでんてぃてぃー』という歌!!」ガタッ
花帆「へ? あ、あいでん……てぃ、てぃ……?」
さやか「……聞いたところによると、異国の言葉らしいですよ。どうやら劇団の団員に、米国への留学経験者がいるとの噂でして」
泉「そうだったね。確か、その少女歌劇団の名は──」
スッ
「もしかして、なのだけれど。それは」
梢「──歌劇団『みらくらぱあく』の事じゃないかしら?」ヒョコッ
吟子「女誑しの泉さんは兎も角として。そんなに、その……歌劇団? は凄かったんですか?」
小鈴「!! はい! いや、軍楽隊に負けず劣らず凄いんですよ! 特にあの、劇中の『あいでんてぃてぃー』という歌!!」ガタッ
花帆「へ? あ、あいでん……てぃ、てぃ……?」
さやか「……聞いたところによると、異国の言葉らしいですよ。どうやら劇団の団員に、米国への留学経験者がいるとの噂でして」
泉「そうだったね。確か、その少女歌劇団の名は──」
スッ
「もしかして、なのだけれど。それは」
梢「──歌劇団『みらくらぱあく』の事じゃないかしら?」ヒョコッ
0
58: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:57:00 ID:???00
花帆「! オーナー!」
泉「おや……いつもは奥で紅茶を淹れているオーナー様が此方に出てくるとは。実に珍しい」クスッ
梢「あら、今日は“四月の始まり”だもの。心機一転、私がお客人の前に出るのも偶には良いでしょう? それに……」
梢「歌劇団『みらくらぱあく』の団長──藤島慈は、私の古い友人で腐れ縁なの。故に、話に少し混ざりたいのだけれど……」
小鈴「! なんと、オーナー様と繋がりがあったとは! 勿論、寧ろ徒町の方がお話をお聞きしたいです!」
梢「ふふ。ありがとう、小鈴さん」ニコ
泉「おや……いつもは奥で紅茶を淹れているオーナー様が此方に出てくるとは。実に珍しい」クスッ
梢「あら、今日は“四月の始まり”だもの。心機一転、私がお客人の前に出るのも偶には良いでしょう? それに……」
梢「歌劇団『みらくらぱあく』の団長──藤島慈は、私の古い友人で腐れ縁なの。故に、話に少し混ざりたいのだけれど……」
小鈴「! なんと、オーナー様と繋がりがあったとは! 勿論、寧ろ徒町の方がお話をお聞きしたいです!」
梢「ふふ。ありがとう、小鈴さん」ニコ
0
59: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:58:00 ID:???00
吟子「……」スゥ…ハァ…
吟子「…………どんな人、なんですか? 小鈴さんが夢中になる程の歌劇団を、取り仕切っているその団長とやらは??」ジェラ…
花帆「吟子ちゃん、まだ全然嫉妬を隠しきれてないね」
梢「そうねぇ……。彼女は一言で云えば、“天才”かしら」クスッ
さやか「!」ピク
吟子「…………どんな人、なんですか? 小鈴さんが夢中になる程の歌劇団を、取り仕切っているその団長とやらは??」ジェラ…
花帆「吟子ちゃん、まだ全然嫉妬を隠しきれてないね」
梢「そうねぇ……。彼女は一言で云えば、“天才”かしら」クスッ
さやか「!」ピク
0
60: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 00:59:00 ID:???00
梢「と云っても……生まれながらの才ではなく努力の才能を持っている子なの。努力家で、意地っ張りで、嵐のような女の子……」
泉「ほう? 嵐のような、とは穏やかで無いね」クスッ
小鈴「い、一体何があったんですか……!?」ゴクリ
梢「そうね。あの頃で一番騒ぎになったのは……」
梢「女学生時代、学校の屋上から“チョコレエト”、と云う甘味をばら撒き、後の歌劇団員と歌を披露して走り去った事……かしら」
吟子「えっ」
小鈴「それは…………べ、別な方の過激じゃないですか!??」
泉「ほう? 嵐のような、とは穏やかで無いね」クスッ
小鈴「い、一体何があったんですか……!?」ゴクリ
梢「そうね。あの頃で一番騒ぎになったのは……」
梢「女学生時代、学校の屋上から“チョコレエト”、と云う甘味をばら撒き、後の歌劇団員と歌を披露して走り去った事……かしら」
吟子「えっ」
小鈴「それは…………べ、別な方の過激じゃないですか!??」
0
61: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:00:00 ID:???00
梢「ふふ。本当にその通りね。……けれど」
梢「彼女はそれを、ココロの赴くままにやっていた……歌劇団の信条でも在る『楽しいが一番』に従っていただけなのよ」クスッ
小鈴「? たのしいが、いちばん……??」
花帆「はいはい! あたしその意味、説明出来ますよオーナー!」
花帆「それは、大好きに夢中になる事──つまり、花咲くって事とおんなじですよね!」フンフン
吟子「それじゃ説明になっとらんが……??」
梢「彼女はそれを、ココロの赴くままにやっていた……歌劇団の信条でも在る『楽しいが一番』に従っていただけなのよ」クスッ
小鈴「? たのしいが、いちばん……??」
花帆「はいはい! あたしその意味、説明出来ますよオーナー!」
花帆「それは、大好きに夢中になる事──つまり、花咲くって事とおんなじですよね!」フンフン
吟子「それじゃ説明になっとらんが……??」
0
62: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:01:00 ID:???00
小鈴「歌劇団の信条……であれば、徒町が姫芽ちゃんに惹かれた理由も、もしやそこに在るのでしょうか……でも、花咲く……?」ウーン
梢「え、えぇと。それは……恐らく、なのだけれど」コホン
梢「その姫芽さんと云う方もきっと、歌劇団団長の慈のように自分の『楽しい』に一直線だったのでは無いかしら?」
小鈴「楽しい、に……」ポツリ
花帆「うんうん! 自分の気持ちに素直になる事が、綺麗に花咲くコツなんだよね!」フンフン
吟子「あの……花帆先輩?? そんな自分なりの感覚と語彙じゃ、蓮ノ空の軍人さんには伝わりませんって……」
小鈴「……嗚呼、なるほど! 確かに……そうだったかもしれません! 姫芽ちゃんは花、咲いてました!!」パァァ
吟子「伝わっとる!?」
梢「え、えぇと。それは……恐らく、なのだけれど」コホン
梢「その姫芽さんと云う方もきっと、歌劇団団長の慈のように自分の『楽しい』に一直線だったのでは無いかしら?」
小鈴「楽しい、に……」ポツリ
花帆「うんうん! 自分の気持ちに素直になる事が、綺麗に花咲くコツなんだよね!」フンフン
吟子「あの……花帆先輩?? そんな自分なりの感覚と語彙じゃ、蓮ノ空の軍人さんには伝わりませんって……」
小鈴「……嗚呼、なるほど! 確かに……そうだったかもしれません! 姫芽ちゃんは花、咲いてました!!」パァァ
吟子「伝わっとる!?」
0
63: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:02:00 ID:???00
泉「ふふ。小鈴さんが見惚れた歌姫は実際、自身が所属する歌劇団『みらくらぱあく』に御執心だったからね」クスッ
小鈴「はい! 姫芽ちゃんは自分の好きに一直線で、そう云う歌を歌っていました!」
小鈴「……あ、だから」パンッ
小鈴「現在も尚、移り変わり行く“大正”の世だからこそ、自分らしく在った姫芽ちゃんに、徒町は惹かれた……んですね!」
小鈴「はい! 姫芽ちゃんは自分の好きに一直線で、そう云う歌を歌っていました!」
小鈴「……あ、だから」パンッ
小鈴「現在も尚、移り変わり行く“大正”の世だからこそ、自分らしく在った姫芽ちゃんに、徒町は惹かれた……んですね!」
0
64: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:03:00 ID:???00
泉「きっと、恋とは得てしてそう云う物なんだろうね。私も許嫁が居るからよく分かる。気高くて、目が離せないのが恋さ」クスッ
小鈴「そっかぁ……」
小鈴「じゃあ徒町も目を惹かれるような存在……そう、夜空に浮かぶ一番星のように成って、“煌めき”たいなぁ……」ポツリ
さやか「──!」ピク
──
綴理(歌ってる時のさやだって、そうだ。水色の“煌めき”を持ってるよね)
──
小鈴「そっかぁ……」
小鈴「じゃあ徒町も目を惹かれるような存在……そう、夜空に浮かぶ一番星のように成って、“煌めき”たいなぁ……」ポツリ
さやか「──!」ピク
──
綴理(歌ってる時のさやだって、そうだ。水色の“煌めき”を持ってるよね)
──
0
65: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:04:00 ID:???00
さやか「……。……もし、かして」ポツリ
花帆「あれ? さやかちゃん、どうかした?」
さやか「……いえ。今、漸く、夕霧さんの云っていた──“煌めき”と云う物の答えに思い至ったかも知れません」
花帆「??」
さやか「あぁ……やっと得心がいきました。これなら、『我が儘に成れば分かる』と云った、夕霧さんの発言も頷ける」
さやか「なれば、わたしがすべき事は一つ。なのですが……」チラッ
花帆「あれ? さやかちゃん、どうかした?」
さやか「……いえ。今、漸く、夕霧さんの云っていた──“煌めき”と云う物の答えに思い至ったかも知れません」
花帆「??」
さやか「あぁ……やっと得心がいきました。これなら、『我が儘に成れば分かる』と云った、夕霧さんの発言も頷ける」
さやか「なれば、わたしがすべき事は一つ。なのですが……」チラッ
0
66: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:05:00 ID:???00
梢「さやかさん? 先程から頻りに時間を確認しているけれど……どうかしたのかしら?」
さやか「…………その」
さやか「……わたしの、許嫁に。此処──つまりは喫茶『田園』に来て頂けないかと、本日お誘いをしていたのです」
花帆「えっ!? 今日、此処に許嫁さんが!?」ガタッ
吟子「確か夕霧綴理さん、ですよね……? はて、本日は御三方軍人さんがいらっしゃった他には、誰一人来ておりませんが……」
さやか「…………その」
さやか「……わたしの、許嫁に。此処──つまりは喫茶『田園』に来て頂けないかと、本日お誘いをしていたのです」
花帆「えっ!? 今日、此処に許嫁さんが!?」ガタッ
吟子「確か夕霧綴理さん、ですよね……? はて、本日は御三方軍人さんがいらっしゃった他には、誰一人来ておりませんが……」
0
67: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:06:00 ID:???00
さやか「……そう、ですか」
小鈴「約束したのに場所に現れない許嫁……? もしや、何か事件でしょうか!?」ガタッ
泉「いや、そう決めつけるのは早計かもしれないよ、小鈴さん。彼女はもしや、迷子に成っているのかもしれないからね」
小鈴「あっそっか、その可能性が! 流石、泉ちゃん!」
さやか「迷子……」ポツリ
──
綴理(最近だとボク、迷子にならないよう前もって道も調べるようにもなったし、五分前行動も心掛けるようになったのに……)
──
さやか「いえ。それだけは……決してあり得ません」
小鈴「約束したのに場所に現れない許嫁……? もしや、何か事件でしょうか!?」ガタッ
泉「いや、そう決めつけるのは早計かもしれないよ、小鈴さん。彼女はもしや、迷子に成っているのかもしれないからね」
小鈴「あっそっか、その可能性が! 流石、泉ちゃん!」
さやか「迷子……」ポツリ
──
綴理(最近だとボク、迷子にならないよう前もって道も調べるようにもなったし、五分前行動も心掛けるようになったのに……)
──
さやか「いえ。それだけは……決してあり得ません」
0
68: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:07:00 ID:???00
さやか「しかし、であれば一体、何処に……」ウーン
梢「彼女の事は心配だけれど……そろそろ遅い時間になってしまうわ。今日はもうお開きにするのが良いんじゃないかしら?」
花帆「うんうん、最近は治安も良くないからね……」
吟子「ええ、私も同感です。皆様方が来るほんの少し前、店の前で窃盗騒ぎがあったようで……暗くなる前に帰られた方が良いかと」
小鈴「!? せっ……窃盗騒ぎ!? なんと、そんな事が起こっていたんですか!?」
花帆「そう、そうなんだよ! 取り返そうと追いかけていく女性の姿まで、あたし見ちゃったし……怖いなぁ……」ガクブル
梢「彼女の事は心配だけれど……そろそろ遅い時間になってしまうわ。今日はもうお開きにするのが良いんじゃないかしら?」
花帆「うんうん、最近は治安も良くないからね……」
吟子「ええ、私も同感です。皆様方が来るほんの少し前、店の前で窃盗騒ぎがあったようで……暗くなる前に帰られた方が良いかと」
小鈴「!? せっ……窃盗騒ぎ!? なんと、そんな事が起こっていたんですか!?」
花帆「そう、そうなんだよ! 取り返そうと追いかけていく女性の姿まで、あたし見ちゃったし……怖いなぁ……」ガクブル
0
69: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:08:00 ID:???00
さやか「……、……?」
さやか(何か今、チラと引っ掛かる事物が有ったような……)
泉「ふむ。であれば、彼女がどんな人だったか、背格好などの特徴をお聞かせ願えるかな? 市中警護の一環として話を聞きたいからね」
花帆「あ、そっか! 今警護の期間だっけ……勿論、良いよ! 確か、追いかけて行ったその人は……」
、、、、
花帆「背の高い女性で──」
さやか「────っ!!!」ガタッ
さやか(何か今、チラと引っ掛かる事物が有ったような……)
泉「ふむ。であれば、彼女がどんな人だったか、背格好などの特徴をお聞かせ願えるかな? 市中警護の一環として話を聞きたいからね」
花帆「あ、そっか! 今警護の期間だっけ……勿論、良いよ! 確か、追いかけて行ったその人は……」
、、、、
花帆「背の高い女性で──」
さやか「────っ!!!」ガタッ
0
70: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:09:00 ID:???00
花帆「って、わわっ!??!? さやかちゃん、急に立ち上がって……な、何事!??」
さやか「…………申し訳ありません! お先に、失礼します!!」バッ
小鈴「さやか先輩!? そんなに慌てて、どうしたのですか……って」チラッ
カランカラン…
小鈴「あれ、もう居ない!?」
小鈴「……さやか先輩、軍刀一つで何処に行ってしまったのでしょうか──?」
さやか「…………申し訳ありません! お先に、失礼します!!」バッ
小鈴「さやか先輩!? そんなに慌てて、どうしたのですか……って」チラッ
カランカラン…
小鈴「あれ、もう居ない!?」
小鈴「……さやか先輩、軍刀一つで何処に行ってしまったのでしょうか──?」
0
71: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:10:00 ID:???00
────
【月夜 ガス灯に火を点ける軍人】
パツ
ガサ…
さやか「はぁ、はぁ……漸く、見つけましたよ」
さやか「まさか、ひと気のない路地に連れ込まれていたとは」
綴理「! ……さや!」
…ガサ
「…………誰だ?」
【月夜 ガス灯に火を点ける軍人】
パツ
ガサ…
さやか「はぁ、はぁ……漸く、見つけましたよ」
さやか「まさか、ひと気のない路地に連れ込まれていたとは」
綴理「! ……さや!」
…ガサ
「…………誰だ?」
0
72: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:11:00 ID:???00
〖 全身黒尽くめの小柄な人間が一人、行手に現れる 〗
「その藍鼠《あいねずみ》色の恰好…………蓮ノ空の軍人サン、か」
さやか「ええ。その通りです」
さやか「……貴方は此処で、何をしようとしていたんですか? 今ならば特別、理由も聞いて差し上げましょう」ジッ…
「……綺麗な娘っ子が要るんだ。なにぶん、高く売れるからなァ」
綴理「……」
さやか「つまりは誘拐、ですか。何と卑劣な……人の行う所業では有りませんね」
「ふん、だったらどうするんだ?」
さやか「…………」スッ…
さやか「──さぁさ、御覧じろ! 悪辣な誘拐犯め!」バッ
BGM→ ♪ ガランドFlash (Off Vocal)
https://www.youtube.com/watch?v=3TcuGvH1UmM
「その藍鼠《あいねずみ》色の恰好…………蓮ノ空の軍人サン、か」
さやか「ええ。その通りです」
さやか「……貴方は此処で、何をしようとしていたんですか? 今ならば特別、理由も聞いて差し上げましょう」ジッ…
「……綺麗な娘っ子が要るんだ。なにぶん、高く売れるからなァ」
綴理「……」
さやか「つまりは誘拐、ですか。何と卑劣な……人の行う所業では有りませんね」
「ふん、だったらどうするんだ?」
さやか「…………」スッ…
さやか「──さぁさ、御覧じろ! 悪辣な誘拐犯め!」バッ
BGM→ ♪ ガランドFlash (Off Vocal)
https://www.youtube.com/watch?v=3TcuGvH1UmM
0
73: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:12:00 ID:???00
「……!」
さやか「…………♪」ポツリ
さやか(小さく、歌を、口遊む)
「……、お前サン、何をするつもりだァ?」
綴理「さや……。キミは」
さやか「──人の為に歌えぬのなら。わたしは矢張り自分の為に、そして己が持つ我が儘の為に歌いましょう」
さやか「そして、その我が儘とは。貴女を此処で、救う事」
綴理「……!」
「何言って──」
さやか「──わたしは軍人、村野さやか!!」
さやか「我が国を、そして……“夕霧綴理”を守る、誇り高き──歌い手の名で在る!」
さやか「此処は舞台、観客も演者も揃っているならば……」バッ
さやか「あなたと、此処で……、──ヒーローショーです!!」
さやか「…………♪」ポツリ
さやか(小さく、歌を、口遊む)
「……、お前サン、何をするつもりだァ?」
綴理「さや……。キミは」
さやか「──人の為に歌えぬのなら。わたしは矢張り自分の為に、そして己が持つ我が儘の為に歌いましょう」
さやか「そして、その我が儘とは。貴女を此処で、救う事」
綴理「……!」
「何言って──」
さやか「──わたしは軍人、村野さやか!!」
さやか「我が国を、そして……“夕霧綴理”を守る、誇り高き──歌い手の名で在る!」
さやか「此処は舞台、観客も演者も揃っているならば……」バッ
さやか「あなたと、此処で……、──ヒーローショーです!!」
0
74: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:13:00 ID:???00
「……はっ? ヒーロー、だってェ?」
さやか「ええ。かの鞍馬天狗のようなヒーローが現れる、その事に注意を払っていなかったが為、貴方は御縄となるのです」
「大層な事を言ってくれる……! 痛めつけられても文句は言えねぇなァ?」
さやか「…………来なさいな。わたしが、貴方を切り捨てて差し上げましょう」スッ…
「……舐められたもんだなァ! 致命傷を負わせてやる──!」バッ
※ 大正時代、鞍馬“天狗”という覆面ヒーローの時代小説が書かれ人気を博した
さやか「ええ。かの鞍馬天狗のようなヒーローが現れる、その事に注意を払っていなかったが為、貴方は御縄となるのです」
「大層な事を言ってくれる……! 痛めつけられても文句は言えねぇなァ?」
さやか「…………来なさいな。わたしが、貴方を切り捨てて差し上げましょう」スッ…
「……舐められたもんだなァ! 致命傷を負わせてやる──!」バッ
※ 大正時代、鞍馬“天狗”という覆面ヒーローの時代小説が書かれ人気を博した
0
75: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:14:00 ID:???00
さやか「 は ぁ…… ッ !!!」グッ…
キィィィン…‼︎
〖 ──大喝とともに、軍刀を一閃 〗
「ッ!」
さやか「……平時は持てぬ軍刀ですが、市内警備の憲兵として、今だけ佩用を許されていたのは幸いですね」
さやか「刀があれば、悪しき貴方を取り締まる事が出来る。……不意をつくには、少し足りませんでしたが」チラッ
グググ…
「……ちっ、こうなりゃヤケだ! 軍人サンが、やれるもんなら──!」バッ
キィィィン…‼︎
〖 ──大喝とともに、軍刀を一閃 〗
「ッ!」
さやか「……平時は持てぬ軍刀ですが、市内警備の憲兵として、今だけ佩用を許されていたのは幸いですね」
さやか「刀があれば、悪しき貴方を取り締まる事が出来る。……不意をつくには、少し足りませんでしたが」チラッ
グググ…
「……ちっ、こうなりゃヤケだ! 軍人サンが、やれるもんなら──!」バッ
0
76: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:15:00 ID:???00
〖 両者 軍刀と短刀が交錯し、戦いの火蓋が切られる 〗
──キィィン‼︎
さやか「……ッ!」
「このっ……邪魔を、するなァ!」ブンブン
ヒュ…シュッ…
……
さやか「風を切るようなその粗雑な貴方の動き、剣技に慣れていないのが丸わかりですよ。……やぁッ!」バッ
…カン‼︎
「……クソっ、離れろォ…!!」ブンブン
──キィィン‼︎
さやか「……ッ!」
「このっ……邪魔を、するなァ!」ブンブン
ヒュ…シュッ…
……
さやか「風を切るようなその粗雑な貴方の動き、剣技に慣れていないのが丸わかりですよ。……やぁッ!」バッ
…カン‼︎
「……クソっ、離れろォ…!!」ブンブン
0
77: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:16:00 ID:???00
〖 軍人は的確に刀を振るい、手荒な誘拐犯は無茶苦茶に短刀を振り回す 〗
キン…ギィン‼︎
「……っ、動きが読まれて……!」
さやか「…………」ギュ…
スッ…
さやか「── は ぁ ッ !」ジャキッ
……キィン‼︎
キン…ギィン‼︎
「……っ、動きが読まれて……!」
さやか「…………」ギュ…
スッ…
さやか「── は ぁ ッ !」ジャキッ
……キィン‼︎
0
78: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:17:00 ID:???00
「……っ、……」
カチャ
「これじゃあちっとも歯がたたねェ……。なら、いっそ……」チラッ
綴理「……!?」ビク
さやか「!!」
さやか(まさか彼奴、誘拐した綴理さんを連れて逃走を図るつもりでは……!?)
「……、……今だッ!」ダッ
さやか「! ──待てッ!」
さやか「 大切なわたしの許嫁、に、近寄るなッ!!!」バッ
綴理「駄目だ、さや!」
─ザシュッ‼︎
カチャ
「これじゃあちっとも歯がたたねェ……。なら、いっそ……」チラッ
綴理「……!?」ビク
さやか「!!」
さやか(まさか彼奴、誘拐した綴理さんを連れて逃走を図るつもりでは……!?)
「……、……今だッ!」ダッ
さやか「! ──待てッ!」
さやか「 大切なわたしの許嫁、に、近寄るなッ!!!」バッ
綴理「駄目だ、さや!」
─ザシュッ‼︎
0
79: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:18:00 ID:???00
さやか「……#%*ッ!?」ガタッ
「かかった! はっ……良い切れ味だなァ! たとえ軍服だろうと切り裂いて、その下の肉までみじん切り、たんざく切り……」
さやか「……」ジッ…
「…………兎も角、これでは碌に動けまい! 此処で、このまま終わらせてやる──」
さやか「……。はぁ、はァ……ッ」
さやか「──甘いッ!!!」
「かかった! はっ……良い切れ味だなァ! たとえ軍服だろうと切り裂いて、その下の肉までみじん切り、たんざく切り……」
さやか「……」ジッ…
「…………兎も角、これでは碌に動けまい! 此処で、このまま終わらせてやる──」
さやか「……。はぁ、はァ……ッ」
さやか「──甘いッ!!!」
0
80: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:19:00 ID:???00
〖 決着 軍人は強く踏み込み、持ち上げた刀を振り下ろす〗
キラッ…
「……!」
さやか「月へ、届ケ! 自分らしくある事が“煌めき”ならば、わたしは──伽藍堂だからこそ、煌めける!!」ギュ
──ザッ‼︎
「……ッ、ぐ、はッ……!?」
さやか「──峰打ちです。其の命、決して無駄にせず……貴方が犯した罪を償う為に、遣ってください」
「……、……っ!」
ドサッ…
キラッ…
「……!」
さやか「月へ、届ケ! 自分らしくある事が“煌めき”ならば、わたしは──伽藍堂だからこそ、煌めける!!」ギュ
──ザッ‼︎
「……ッ、ぐ、はッ……!?」
さやか「──峰打ちです。其の命、決して無駄にせず……貴方が犯した罪を償う為に、遣ってください」
「……、……っ!」
ドサッ…
0
81: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:20:00 ID:???00
────
【静寂 音楽は止み、二人だけが残る舞台】
さやか「ふぅ……」カチャ
「……」
綴理「さや……、この人は」
さやか「…………今は意識を失っているだけですよ。警察に連れて行けば、じきに目を覚ますでしょう」
綴理「そっか、良かった」ホッ
さやか「……さて。遅くなりましたが……」コホン
さやか「お迎えに上がりました、綴理さん」
【静寂 音楽は止み、二人だけが残る舞台】
さやか「ふぅ……」カチャ
「……」
綴理「さや……、この人は」
さやか「…………今は意識を失っているだけですよ。警察に連れて行けば、じきに目を覚ますでしょう」
綴理「そっか、良かった」ホッ
さやか「……さて。遅くなりましたが……」コホン
さやか「お迎えに上がりました、綴理さん」
0
82: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:21:00 ID:???00
綴理「さや。…………ごめん。喫茶店の前で物を盗られて、追いかけたら急に、襲われて」
さやか「いえ、心配は非常にしましたが……こうして助ける事が出来たので、気にせずとも大丈夫ですよ」
さやか「……あの。綴理、さん」
綴理「? さや?」
さやか「…………先程のわたしは──期待に応えられるような光、我が身に、“煌めき”の光を宿せていた……でしょうか?」
綴理「……! うん、勿論だ」コクリ
綴理「でも最初から、キミはずっと煌めいてるよ。ボクは、よく知ってるんだ。さやの煌めく姿を、前からずっと」
さやか「……」
さやか「…………ええ」
さやか「気付いて、いましたとも」ニコ
さやか「いえ、心配は非常にしましたが……こうして助ける事が出来たので、気にせずとも大丈夫ですよ」
さやか「……あの。綴理、さん」
綴理「? さや?」
さやか「…………先程のわたしは──期待に応えられるような光、我が身に、“煌めき”の光を宿せていた……でしょうか?」
綴理「……! うん、勿論だ」コクリ
綴理「でも最初から、キミはずっと煌めいてるよ。ボクは、よく知ってるんだ。さやの煌めく姿を、前からずっと」
さやか「……」
さやか「…………ええ」
さやか「気付いて、いましたとも」ニコ
0
83: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:22:00 ID:???00
綴理「……え?」
さやか「休日は山奥にまで散歩に行く、と綴理さんが教えて下さったんですよ。わたしが特訓する間、いつも彼処に居たのですね」
綴理「!」
さやか「きっと今までもずっと、綴理さんは見ていたのでしょう? だから、直接会うのは初めて、なんて……、言い方、を……」
さやか「…………し……て」フラッ
バタン‼︎
綴理「──さや!?」
さやか「休日は山奥にまで散歩に行く、と綴理さんが教えて下さったんですよ。わたしが特訓する間、いつも彼処に居たのですね」
綴理「!」
さやか「きっと今までもずっと、綴理さんは見ていたのでしょう? だから、直接会うのは初めて、なんて……、言い方、を……」
さやか「…………し……て」フラッ
バタン‼︎
綴理「──さや!?」
0
84: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:23:00 ID:???00
さやか「……」ジッ…
綴理「もしかして、その脇腹の切り傷……? それ、赤くて……い、痛い、んじゃ」
さやか(つい先程……。あの悪辣な誘拐犯の凶刃が及ぼした、突きの構えで掻き切られた、自身の傷)
さやか(……そこから溢れ出る、生温いナニカ)
さやか「…………ッ……」ガタ…
さやか(あぁ、きっとこれは。──致命傷に、違いありません)
綴理「!? さや!」
綴理「もしかして、その脇腹の切り傷……? それ、赤くて……い、痛い、んじゃ」
さやか(つい先程……。あの悪辣な誘拐犯の凶刃が及ぼした、突きの構えで掻き切られた、自身の傷)
さやか(……そこから溢れ出る、生温いナニカ)
さやか「…………ッ……」ガタ…
さやか(あぁ、きっとこれは。──致命傷に、違いありません)
綴理「!? さや!」
0
85: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:24:00 ID:???00
さやか「…………」ヒュー…ゥ…
さやか(目の前の世界が歪む。呼吸が、荒く成る)
綴理「さや、待って……、ボクを置いていっちゃ、ダメだ」ギュ
さやか「……!」
綴理「…………ボクは、さやが好きだ」
綴理「さやだけが、“夕霧綴理”を見てくれたんだ。ボクはまだキミと居たい……許嫁として、夫婦に成りたい」
綴理「だから。行かないで、さや……」ギュ–
さやか「……、……」
さやか(……眩く走る走馬灯のような記憶の中、その瞬間、不意に思い出したのは)
さやか(今日は──“四月の始まり”。一年で一度だけウソが許される『四月馬鹿』の日、だという事)
※ エイプリルフールが『四月馬鹿』として欧米より日本に伝わったのは、“大正時代”の事である(諸説あり)
さやか(目の前の世界が歪む。呼吸が、荒く成る)
綴理「さや、待って……、ボクを置いていっちゃ、ダメだ」ギュ
さやか「……!」
綴理「…………ボクは、さやが好きだ」
綴理「さやだけが、“夕霧綴理”を見てくれたんだ。ボクはまだキミと居たい……許嫁として、夫婦に成りたい」
綴理「だから。行かないで、さや……」ギュ–
さやか「……、……」
さやか(……眩く走る走馬灯のような記憶の中、その瞬間、不意に思い出したのは)
さやか(今日は──“四月の始まり”。一年で一度だけウソが許される『四月馬鹿』の日、だという事)
※ エイプリルフールが『四月馬鹿』として欧米より日本に伝わったのは、“大正時代”の事である(諸説あり)
0
86: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:25:00 ID:???00
さやか「…………綴理、さ、ん」
綴理「さや! ごめん、痛いよね…………喋っちゃ、駄目だ」ギュ
さやか「……」
さやか(平時であれば、如何しただろうか。言われた通り喋らずに、ジッと静かな死を待つ事も、可能ではあった筈で)
さやか(ですが其れでは、綴理さんが悲しんでしまうでしょう。彼女の為に……つまりは、わたしの大切な許嫁の為に)
さやか「いえ…………これくらい、痛く、ありませんよ。ただ少し、掠っただけで、ありますから……」ニコ
さやか(わたしは自然と──“ ウソ ”を吐いていた)
綴理「さや! ごめん、痛いよね…………喋っちゃ、駄目だ」ギュ
さやか「……」
さやか(平時であれば、如何しただろうか。言われた通り喋らずに、ジッと静かな死を待つ事も、可能ではあった筈で)
さやか(ですが其れでは、綴理さんが悲しんでしまうでしょう。彼女の為に……つまりは、わたしの大切な許嫁の為に)
さやか「いえ…………これくらい、痛く、ありませんよ。ただ少し、掠っただけで、ありますから……」ニコ
さやか(わたしは自然と──“ ウソ ”を吐いていた)
0
87: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:26:00 ID:???00
綴理「! ぁぁ……、……さや」ギュ
さやか(本当は痛くてたまらない。恐らく内臓にまで刃先は達し、掠った程度では説明が付かないほど、血で“赤”くも染まっている)
さやか(……けれど)
さやか(綴理さんの云う……綺麗な“煌めき”の色。綴理さんの描く──特別な“赤”の色)
さやか(この状況でそれが……わたしの伽藍堂の瞳にも、閃光のように映ったと感じた。故に、後悔は無かった)
さやか(ただ、一つを除いて)
さやか(本当は痛くてたまらない。恐らく内臓にまで刃先は達し、掠った程度では説明が付かないほど、血で“赤”くも染まっている)
さやか(……けれど)
さやか(綴理さんの云う……綺麗な“煌めき”の色。綴理さんの描く──特別な“赤”の色)
さやか(この状況でそれが……わたしの伽藍堂の瞳にも、閃光のように映ったと感じた。故に、後悔は無かった)
さやか(ただ、一つを除いて)
0
88: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:27:00 ID:???00
さやか「……」
さやか「…………は、……す」
綴理「……さや?」
さやか「……約束は、必ず守ります。わたしは、未来で……、貴女に、歌を届け、て……」
さやか(言い終える間も無く、力が抜けた)
さやか(…………そうして、わたしは、静かに目蓋を閉じ──)
さやか「…………は、……す」
綴理「……さや?」
さやか「……約束は、必ず守ります。わたしは、未来で……、貴女に、歌を届け、て……」
さやか(言い終える間も無く、力が抜けた)
さやか(…………そうして、わたしは、静かに目蓋を閉じ──)
0
【 暗転 】
.
89: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:28:00 ID:???00
【 暗転 】
.
0
90: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:29:00 ID:???00
────
【閉幕 浴びる大喝采】
花帆「──どうだった!!!!!?!?」
瑠璃乃「!? ちょ……花帆ちゃん近いって……!」
姫芽「いや~、BGPの傍ら、みらぱ抜きで何やってるのかと思ってたんですけど、コレだったんですね~」
慈「ね。なんかちゃっかり梢と綴理も居るし。めぐちゃんも、名前だけじゃなくてちゃんと参加したかったー!」
【閉幕 浴びる大喝采】
花帆「──どうだった!!!!!?!?」
瑠璃乃「!? ちょ……花帆ちゃん近いって……!」
姫芽「いや~、BGPの傍ら、みらぱ抜きで何やってるのかと思ってたんですけど、コレだったんですね~」
慈「ね。なんかちゃっかり梢と綴理も居るし。めぐちゃんも、名前だけじゃなくてちゃんと参加したかったー!」
0
91: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:30:00 ID:???00
小鈴「その、徒町達も練習の時間が限られていましたので、みらぱの方まで連絡が回せなくて……」シュン
姫芽「あぁ気にしないで~。おかげで、アタシ達めっちゃ面白いの観れたから全然良いって~。小鈴ちゃんもお疲れ様~」ニッ
小鈴「……!」ドキッ
慈「ってかさぁ、めぐちゃんずーっと思ってたんだけど……」
慈「会話のあれ──ほとんどあの頃のDOLLCHESTRAのやり取りまんまだよね?」クスクス
さやか「……綴理先輩、実際の掛け合いを赤裸々に引用した台詞ばかり入れていたので……。わ、わたしも流石に恥ずかしかったですが……//」カァァ
綴理「……さや? さっきみたいに呼んでくれないの? 綴理さん、って」
さやか「いや、あの! ……わ、わたしにとっては、あくまで綴理先輩は綴理先輩ですから。と云うかそもそも、これは──」
さやか「──大正時代を舞台とした“ ウソ ”の演劇、なんですし」
姫芽「あぁ気にしないで~。おかげで、アタシ達めっちゃ面白いの観れたから全然良いって~。小鈴ちゃんもお疲れ様~」ニッ
小鈴「……!」ドキッ
慈「ってかさぁ、めぐちゃんずーっと思ってたんだけど……」
慈「会話のあれ──ほとんどあの頃のDOLLCHESTRAのやり取りまんまだよね?」クスクス
さやか「……綴理先輩、実際の掛け合いを赤裸々に引用した台詞ばかり入れていたので……。わ、わたしも流石に恥ずかしかったですが……//」カァァ
綴理「……さや? さっきみたいに呼んでくれないの? 綴理さん、って」
さやか「いや、あの! ……わ、わたしにとっては、あくまで綴理先輩は綴理先輩ですから。と云うかそもそも、これは──」
さやか「──大正時代を舞台とした“ ウソ ”の演劇、なんですし」
0
92: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:31:00 ID:???00
花帆「うんうん! ──『蓮華祭特別! 演劇部&スクールアイドルクラブ合同演劇』だからね!」
小鈴「はい! 大成功して良かったです!!」パァァ
慈「大正時代をイメージした軍人と芸術家の“恋物語”……。ま、確かにさやかちゃんと綴理にピッタリの出し物だったんじゃない?」クスッ
さやか「お話を頂き、脚本の段階から協力しましたからね。スクールアイドルクラブのわたし達らしさが出るように」
さやか「なので時間をかけた分……大正浪漫らしいデフォルメを効かせたストーリーになったかと思います」
綴理「うん。台詞にはね、ボクの実体験もいっぱい入れたんだ。“煌めき”も、ボクが提案したよ」フフン
小鈴「はい! 大成功して良かったです!!」パァァ
慈「大正時代をイメージした軍人と芸術家の“恋物語”……。ま、確かにさやかちゃんと綴理にピッタリの出し物だったんじゃない?」クスッ
さやか「お話を頂き、脚本の段階から協力しましたからね。スクールアイドルクラブのわたし達らしさが出るように」
さやか「なので時間をかけた分……大正浪漫らしいデフォルメを効かせたストーリーになったかと思います」
綴理「うん。台詞にはね、ボクの実体験もいっぱい入れたんだ。“煌めき”も、ボクが提案したよ」フフン
0
93: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:32:00 ID:???00
慈「へー。ちゃんとお話作りしてたんだ。たしかに、全体的に大正時代感? あったもんね」
花帆「あっ……。み、“峰打ち”だけは大正時代にはまだ存在してなかったので、あそこは一応フィクションですけど……」
花帆「でも、この演劇のために大正時代の文化は、あたし達もいーっぱい調べましたから!」グッ
さやか「ええ。ただ学生故の付け焼き刃ですので、あくまで雑学として受け取ってくだされば……。あとは、そうですね」
さやか「演劇で心情を声に出すのは難しかった為、台本で()になっている台詞は、予め録音して音響で流す……なんて事もしました」
花帆「そうそう! そうやって工夫を凝らしたおかげで、全体の大正っぽさも、最後の良いアクションシーンも作れたんです!」フンフン
花帆「あっ……。み、“峰打ち”だけは大正時代にはまだ存在してなかったので、あそこは一応フィクションですけど……」
花帆「でも、この演劇のために大正時代の文化は、あたし達もいーっぱい調べましたから!」グッ
さやか「ええ。ただ学生故の付け焼き刃ですので、あくまで雑学として受け取ってくだされば……。あとは、そうですね」
さやか「演劇で心情を声に出すのは難しかった為、台本で()になっている台詞は、予め録音して音響で流す……なんて事もしました」
花帆「そうそう! そうやって工夫を凝らしたおかげで、全体の大正っぽさも、最後の良いアクションシーンも作れたんです!」フンフン
0
94: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:33:00 ID:???00
瑠璃乃「アクション…………あっ」ピタ
瑠璃乃「そーいや、あの誘拐犯の役って誰がやってたの? 全身真っ黒でルリ分かんなくて……、演劇部の人?」
さやか「あぁ。いいえ、違いますよ。実は──」
「──そ、れ、は!」
ザッ
セラス「 わ た し で す 」ドヤ
瑠璃乃「!? セラスちゃん!?!?」
瑠璃乃「そーいや、あの誘拐犯の役って誰がやってたの? 全身真っ黒でルリ分かんなくて……、演劇部の人?」
さやか「あぁ。いいえ、違いますよ。実は──」
「──そ、れ、は!」
ザッ
セラス「 わ た し で す 」ドヤ
瑠璃乃「!? セラスちゃん!?!?」
0
95: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:34:00 ID:???00
姫芽「あ~、あの人めっちゃ小柄だな~とは思ってたんですけど、せらりんだったんですね~」
さやか「脚本の段階では配役を特に決めていなかったのですが、出演はクラブのメンバーで、という事だったのでやむなく……」
セラス「ええ、ええ。結果として、泉の許嫁である筈なのに、さやか先輩の許嫁を誘拐するという事になってた……セラスです」フフン
瑠璃乃「おおぅ、なんだそのドロドロ展開。昼ドラかな??」
セラス「そもそも、蓮ノ小四辺形だけで恋愛の矢印ぐちゃぐちゃなんで今更ですけど。泉が女誑しになってるくらいですし」クスッ
さやか「脚本の段階では配役を特に決めていなかったのですが、出演はクラブのメンバーで、という事だったのでやむなく……」
セラス「ええ、ええ。結果として、泉の許嫁である筈なのに、さやか先輩の許嫁を誘拐するという事になってた……セラスです」フフン
瑠璃乃「おおぅ、なんだそのドロドロ展開。昼ドラかな??」
セラス「そもそも、蓮ノ小四辺形だけで恋愛の矢印ぐちゃぐちゃなんで今更ですけど。泉が女誑しになってるくらいですし」クスッ
0
96: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:35:00 ID:???00
セラス「でも、〇陣の練習はすっごく楽しかったです。演技も泉や小鈴先輩に教えてもらって、一生懸命頑張りました」ニコニコ
小鈴「はい! 荒っぽい言葉遣いについては、徒町も広実さんから聞いた物をセラスちゃんに誇張してアドバイスしました!」グッ
姫芽「なぜ誇張して……? でも、ワルの演技すっごく上手だったね~。流石せらりん~」
セラス「ふふん、ありがとうございます」ドヤッ
セラス「そういえば、さやか先輩は脇腹、痛くありませんでしたか? けっこう役に入ってましたが」チラッ
さやか「まぁ、演技なので……って、セラスさんも、刀を振り回す間ノリノリでしたよね? たんざく切りってなんですか??」
小鈴「はい! 荒っぽい言葉遣いについては、徒町も広実さんから聞いた物をセラスちゃんに誇張してアドバイスしました!」グッ
姫芽「なぜ誇張して……? でも、ワルの演技すっごく上手だったね~。流石せらりん~」
セラス「ふふん、ありがとうございます」ドヤッ
セラス「そういえば、さやか先輩は脇腹、痛くありませんでしたか? けっこう役に入ってましたが」チラッ
さやか「まぁ、演技なので……って、セラスさんも、刀を振り回す間ノリノリでしたよね? たんざく切りってなんですか??」
0
97: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:36:00 ID:???00
ガヤガヤ…
綴理「……。ねぇ、さや」ギュ
さやか「? 綴理先輩?」
綴理「……」ギュー
さやか「どうかしましたか? もしや演劇が終わって今おねむなんですか?」
綴理「違う、ボクなんなの。…………あのね、さや」
綴理「軍人のさやが、あの劇で最後に言ってた──“約束”、の事なんだけど」
綴理「……。ねぇ、さや」ギュ
さやか「? 綴理先輩?」
綴理「……」ギュー
さやか「どうかしましたか? もしや演劇が終わって今おねむなんですか?」
綴理「違う、ボクなんなの。…………あのね、さや」
綴理「軍人のさやが、あの劇で最後に言ってた──“約束”、の事なんだけど」
0
98: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:37:00 ID:???00
さやか「あぁ。歌を未来で貴女に届ける──という物ですね」
綴理「そう。劇中のあの約束は……大正時代、止まらない時の中で歴史の影に消えてしまう……、そういう、儚くて綺麗な物」
綴理「ボクはそう知ってる。だけど、だからこそあれは……その」
綴理「……現実のボクも、受け取っていい、のかな?」
さやか「? と言うと?」
綴理「…………ボクだって、ボクの為だけに歌うさやの歌、聴きたい……から」ポツリ
さやか「……!!」
綴理「そう。劇中のあの約束は……大正時代、止まらない時の中で歴史の影に消えてしまう……、そういう、儚くて綺麗な物」
綴理「ボクはそう知ってる。だけど、だからこそあれは……その」
綴理「……現実のボクも、受け取っていい、のかな?」
さやか「? と言うと?」
綴理「…………ボクだって、ボクの為だけに歌うさやの歌、聴きたい……から」ポツリ
さやか「……!!」
0
99: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:38:00 ID:???00
綴理「……ごめんね。今のボクは少しわがままだ。さやが卒業して、これからは近くで会えるし、子守唄だって聞けるのが……嬉しいからかもしれない」
綴理「さや。ボクはボクの気持ちがよく分かるよ。さやとずっと何年だって一緒に居たいんだ。……だから」
綴理「劇中のその“約束”、現実のボクも貰っていい、かな……?」
さやか「……ふふっ。そんなの……、当たり前すぎますよ」クスッ
綴理「!」
さやか「もちろん、良いんですよ。……あの気持ちは、ここに居るわたしだって持つ大切な物。ウソでは、有りませんから」ニコッ
綴理「さや。ボクはボクの気持ちがよく分かるよ。さやとずっと何年だって一緒に居たいんだ。……だから」
綴理「劇中のその“約束”、現実のボクも貰っていい、かな……?」
さやか「……ふふっ。そんなの……、当たり前すぎますよ」クスッ
綴理「!」
さやか「もちろん、良いんですよ。……あの気持ちは、ここに居るわたしだって持つ大切な物。ウソでは、有りませんから」ニコッ
0
100: ◆QNfuRrxs★ 2026/04/01(水) 01:39:00 ID:???00
綴理「さや……」
さやか「それに……綴理先輩」コホン
さやか「劇中でも言ったじゃないですか。──“比翼の鳥”ですよ、わたし達は」
さやか「卒業して、鳥籠を出たわたしは、また次の鳥籠に向かって飛んでいく。けれど比翼の鳥が飛ぶ為には、二人一緒でなくてはならない」
さやか「であれば、わたしの居場所は……それこそあの大正時代から変わりませんよ。一緒なら飛べる、そうでしょう?」クスッ
綴理「……! そっ、か」
綴理「うん、さやの言う通りだ」ニコ
さやか「ふふ。なのでこれから宜しくお願いしますね、綴理先輩」
さやか「わたしは貴女の為に、──これからも、特等席で歌を届けますから!」ニコッ
おしまい
さやか「それに……綴理先輩」コホン
さやか「劇中でも言ったじゃないですか。──“比翼の鳥”ですよ、わたし達は」
さやか「卒業して、鳥籠を出たわたしは、また次の鳥籠に向かって飛んでいく。けれど比翼の鳥が飛ぶ為には、二人一緒でなくてはならない」
さやか「であれば、わたしの居場所は……それこそあの大正時代から変わりませんよ。一緒なら飛べる、そうでしょう?」クスッ
綴理「……! そっ、か」
綴理「うん、さやの言う通りだ」ニコ
さやか「ふふ。なのでこれから宜しくお願いしますね、綴理先輩」
さやか「わたしは貴女の為に、──これからも、特等席で歌を届けますから!」ニコッ
おしまい
0
101: ◆In5Y6b2k★ 2026/04/01(水) 07:46:48 ID:???00
素晴らしいSSをありがとうございます…😭
0
102: ◆BgxFrnjJ★ 2026/04/01(水) 08:36:50 ID:???Sa
称賛する他ない超良質な完璧SSを見た超乙
100レスあるのにサラサラ読めたのも素晴らしいわね
100レスあるのにサラサラ読めたのも素晴らしいわね
0
103: ◆WuTIwkfh★ 2026/04/02(木) 08:53:25 ID:???00
乙!めっちゃ面白かった!
引用元: https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/11224/1774969201/


