【SS】梨子「花丸ちゃん、リボン曲がってるよ?」 花丸「ずらっ!?」【ラブライブ!サンシャイン!!】

はなまるhanamaru3434 SS


1: 2017/01/03(火) 21:53:26.80 ID:kF0GcWWe.net
梨子「ちょっと待ってて、今直してあげるからね」

チョイチョイ

花丸(梨子さん、顔が近いよ……)テレテレ

花丸(それにしても、梨子さん……いい匂い、お花の香りずら……)クンクン

花丸(……ん?)

梨子「これで良し、っと」

花丸「あ、あの……梨子さん?」

梨子「どうしたの?」

花丸「梨子さんのリボンも……曲がって、ますよ?」

梨子「えっ、ウソっ!? ……嫌だなぁ、私ったら……」カオマッカ

花丸「マルが、直してあげますね」

梨子「あ、ありがとう、花丸ちゃん……」テレテレ

花丸「うふふ、持ちつ持たれつ。お互い様ずら ♪」


終わり

8: 2017/01/03(火) 22:24:50.30 ID:kF0GcWWe.net
ーーー浦の星 図書室


花丸「うーん……困ったなぁ……」

梨子「……どうしたの? 花丸ちゃん」

花丸「あ、梨子さん。……あの1番上の棚の本が取りたいんだけど……マルの身長じゃとても……」

梨子「あの高さは私でも難しいなあ……。踏台は無いの?」

花丸「あるにはあるんですけど、ボロボロで使うのを躊躇うくらいで……」

梨子「うーん……でも、踏台が無いと絶望取れない高さだよ? ……そうだ。私が踏台に乗って取るから、花丸ちゃん、私を支えてくれない?」

花丸「え……そ、そんな危ないですよ、梨子さん……」

梨子「私の方が背が高いんだから、ここは……任せて欲しいな、花丸ちゃん」

9: 2017/01/03(火) 22:34:02.35 ID:kF0GcWWe.net
絶望←間違い

絶対←正解


梨子「……それじゃ、しっかり支えてね、花丸ちゃん」グラグラ

花丸「わ、わかりました! お願いします!」ガシッ

梨子「んしょ……んしょ……取れない、な……」

花丸(梨子さんの脚……すらっとまっすぐで綺麗ずら……)

梨子「背伸びしたら、取れるかな……」ノビッ

梨子「よい……っしょ! やった、取れた!」

梨子「取れたよ、花丸ちゃ……」

バキッ

りこまる「あっ」

10: 2017/01/03(火) 22:43:45.49 ID:kF0GcWWe.net
梨子「きゃっ!」

花丸「梨子さん!」


ドシーン


花丸「あ痛痛……だ、大丈夫ですか、梨子さ……」

ムニュリ

花丸(……梨子さんがマルのおっ〇〇に手を……!?)

梨子「……あーっ! あっ、ご、ごめんね! 私、花丸ちゃんを下敷きに……」アセアセ

花丸「いえいえ! マルは大丈夫ずら! 梨子さんの方こそ怪我は……」

梨子「花丸ちゃんが、下にいてくれたからなんとか……。ありがとう、花丸ちゃん」ニコッ

花丸「そ、そんな、本を取ってもらってマルの方こそ……」オロオロ

梨子「そ、それじゃあ、私、行くから……」

花丸「あ、ありがとうございました!」



スタスタスタスタ

梨子(花丸ちゃん……柔らかかったな……抱きごこちすごい、いいんだろうなあ……)テレテレ

15: 2017/01/03(火) 23:04:39.38 ID:kF0GcWWe.net
ーーー内浦 コンビニ


花丸「悩む、悩むずら……」

梨子「スイーツ売場の棚で何悩んでるの、花丸ちゃん」

花丸「……今日のマルのおやつ、どれにしようかな、と」

梨子「なるほど」

花丸「昨日はこのクリームあんみつを食べたから、今日は洋風なのを選ぼうかな、と思いまして……」

梨子「そうなんだ……。私も、選んじゃお、かな?」

16: 2017/01/03(火) 23:18:17.95 ID:kF0GcWWe.net
梨子(うーん……)ギンミギンミ

花丸(うーん……)ギンミギンミ

りこまる(あ、この一個残ったチーズタルト美味しそう……)


パシッ


りこまる(あっ、手が……)

花丸「……梨子さん、どうぞ」テレテレ

梨子「……それじゃ、ありがとう。遠慮なく……」

花丸「……」ジーッ

梨子(し、視線が……)

梨子「……花丸ちゃん、良かったら、半分あげようか?」

花丸「そ、そんな……、いいんですか?」

梨子「いいも何も、花丸ちゃんの目が、食べたがってるよ」

花丸「え、うぅ……恥ずかしいずら……」カオマッカ

梨子「目は口ほどに物を言う、って言うからね。後であそこのテーブルで食べましょ」



終わり

21: 2017/01/04(水) 00:09:30.31 ID:1VmfGhoa.net
ーーー今日は、花丸の家にお泊まりです



梨子「……」スーッ スーッ

花丸「……梨子さん」ボソッ

梨子「……うーん……花丸ちゃん、どうしたの?」ムニャムニャ

花丸「……すみません、ちょっと付き合ってもらっていいですか?」ボソッ ボソッ

梨子「……?」ムニャムニャ

22: 2017/01/04(水) 00:13:52.53 ID:1VmfGhoa.net
トタトタトタトタ


梨子(……付き合う、って……)

梨子(お手洗いのこと、だったのね……)

花丸「ごめんなさい、梨子さん。お家のトイレが壊れてて……本堂のトイレを使うしかなくて……」

梨子「それはわかったけど……花丸ちゃん、意外だなあ。夜中に1人でお手洗いに行けないなんて」クスクス

花丸「ち、違うずら! えっと……その、トイレまでの道程が問題でして……」モジモジ

23: 2017/01/04(水) 00:16:49.17 ID:1VmfGhoa.net
梨子「みち、のり?」

花丸「本堂のトイレまで行くのに、どうしても通らないと行けないところがあって……」

梨子「うん、それが……どうしたの?」

花丸「そこに、飾られてる絵が……問題、でして……」

梨子「……絵?」

24: 2017/01/04(水) 00:24:10.52 ID:1VmfGhoa.net
梨子「うわぁ……これは……」ゾゾゾ

花丸「地獄絵図、ずら……」ビクビク

梨子(これは確かに怖い、怖いよ……闇に浮かぶ血の池地獄に、怒りの鬼の形相が……)

花丸「……うぅ、怖いずらぁ……」ビクビク

梨子「花丸ちゃん、座り込んだらダメよ……!」

花丸「だって……閻魔様が怖い顔でオラを睨んでくるずら……」ガタガタ

花丸「やっぱりトイレまで行けないずら、オラここで漏らす、決めたずら……」メソメソ

梨子(それはダメーっ! ……花丸ちゃん、完全に怯えてる……)

26: 2017/01/04(水) 00:31:10.71 ID:1VmfGhoa.net
梨子「ほら、花丸ちゃん立って……」

花丸「うぅぅ……」ガタガタ ブルブル

梨子(……震えてる……)

梨子「……」

ダキッ

ギューッ

花丸「り、梨子さん……」

梨子「ほら、怖くない、怖くない。今は私もいるんだもの」

花丸「……」ギュッ

梨子「……震え、止まったね」ニッコリ

花丸「もう、大丈夫……です」

梨子「それじゃ、手を繋いで、行こう」

花丸「……はい」テレッ

27: 2017/01/04(水) 00:36:32.27 ID:1VmfGhoa.net
ーーーなんとか無事トイレまでたどり着き、無事用を足せました


ーーー花丸の部屋


花丸「あの、さっきはお見苦しいところを……ありがとうございました」ペコリ

梨子「いいよ、花丸ちゃんの意外な一面、見れたから」クスクス

花丸「だって、じっちゃんから昔から地獄の怖い話、聞かされてたから……」モジモジ

花丸「あの、梨子さん……」

梨子「なあに、花丸ちゃん?」

花丸「このことは……みんなに内緒にしてくださいね」カオマッカ

梨子「……うん。私と花丸ちゃんだけの……秘密だよ」ニッコリ


終わり

47: 2017/01/05(木) 00:43:34.61 ID:EO05iTUq.net
ーーー浦の星 中庭

ーーー今日は天気が良かったので、外でお昼ご飯を食べていました



花丸「千歌さん、曜さん、梨子さん」

千歌「あっ、花丸ちゃん。どーしたの、その、おっきなお重」

花丸「うふふ、開けてびっくり玉手箱ずら」パカッ

曜「うわぁ、おはぎだ!」

梨子「このおはぎ、花丸ちゃんが作ったの?」

花丸「いえ、これはばっちゃんが作ってくれたんですよ。いい小豆をたくさんもらったから、って」

48: 2017/01/05(木) 00:44:35.74 ID:EO05iTUq.net
曜「大きなおはぎだね……美味しそう……」ジュルリ

千歌「これ、食べちゃってもいいの?」ジュルリ

花丸「みんなで分けてね、ってばっちゃんが言ってましたから、どうぞ遠慮なく」ニッコリ

ようちか「それでは、いっただきまーす!」

アーン

パクーッ

梨子「2人とも、手づかみははしたないよ、……」

49: 2017/01/05(木) 00:45:42.56 ID:EO05iTUq.net
千歌「これは、絶品なのだ……!」モグモグ

曜「甘さがしつこくないから、何個でもいけるね」モグモグ

花丸「まだまだ、ありますよ」ニッコリ

千歌「それじゃ……」ジュルリ

曜「もう1個……」ジュルリ

よしみ「……あ、いたいた。2人とも、先生が呼んでたよ?」

50: 2017/01/05(木) 00:47:27.25 ID:EO05iTUq.net
ようちか「……えーっ、お昼休みに何の用なの?」

よしみ「この前の小テストのことがどうとかこうとか」

曜「……嫌な予感しか」ヒヤアセ

千歌「しないのだ……」ダラダラ

よしみ「ほら、早く行かないと」

ようちか「はーい……」


トボトボ トボトボ


花丸「行っちゃったずら……」

梨子「また、追試かな……」

51: 2017/01/05(木) 00:53:35.16 ID:EO05iTUq.net
花丸「梨子さんも、おはぎどうぞ」ニッコリ

梨子「ありがとう、花丸ちゃん。それじゃあ、頂きます」ニッコリ

梨子「えっと、お弁当のお箸で……」

花丸「……梨子さん、それはマナー違反ずら」

梨子「マナー、違反?」

花丸「おはぎをお箸で食べるのは、おはぎに対して大変失礼なこと、おはぎは手で掴んで食べてこそ、おはぎに対する最大の礼儀ずら」

梨子「……おはぎに対する礼儀、ってなに?」

花丸「とにかく! お手手で食べて欲しいずら!」

梨子「少し鼻息荒いよ、花丸ちゃん……」

52: 2017/01/05(木) 01:00:07.51 ID:EO05iTUq.net
梨子「それじゃ、お箸は辞めて、手掴みで……」

花丸「はい、それでお願いします」

梨子「……」アー

花丸「……もっと大きなお口で食べるずら!」

梨子「え、ええっ!? そこまで指示されるの!?」

花丸「おにぎりも海苔巻きもおまんじゅうもおはぎも、大っきなお口を開けて食べてこそずら!」

梨子「ちょっと、大きく口を開けるのは恥ずかしさが……」

花丸「……」ジトーッ

梨子「わ、……わかりました!」

53: 2017/01/05(木) 01:10:34.57 ID:EO05iTUq.net
アーンッ

パクーッ

梨子「……」モグモグ

梨子「……曜ちゃんの言ってた通りだ、ほどよい甘さで、しつこくない……」

花丸「ばっちゃんのあんこは、本当に美味しいんだあ……マルの自慢のばっちゃんずら」テレテレ

梨子「こんな美味しいおはぎを作ってくれるおばあちゃん……羨ましいな」ニッコリ

花丸「……うん」テレテレ

54: 2017/01/05(木) 01:22:21.02 ID:EO05iTUq.net
花丸「……あっ、梨子さん、口許にあんこが……」

梨子「あんこが付いてるの? えっと、ティッシュ無かったかな……」

花丸「ちょっとジッとしてて、梨子さん」

梨子「えっ……?」

ヒョイッ

パクッ

花丸「うん、これで取れたずら」ニッコリ

梨子「……今、何したの……」カオマッカ

花丸「口許のあんこを、指で取って、パクッ、って。拭いたらもったいないずら?」

梨子「……」カオマッカッカ

花丸「……なんかオラ、おかしなことしたのかな……?」



終わり

57: 2017/01/05(木) 11:15:45.67 ID:qdfzf3qB.net
>>54の後日談的な



花丸「んふふ~ ♪」ムグムグ

梨子「……あら、花丸ちゃん。今日ものっぽパン食べてるんだ」

花丸「のっぽは毎日食べても飽きないずら ♪」

梨子「ふふ、そのうち『のっぽパン』って書いて『花丸ちゃん』って読むくらいになっちゃうかもね」クスクス

花丸「そうなったら、本望ずら~ ♪」ムグムグ

58: 2017/01/05(木) 11:22:35.39 ID:qdfzf3qB.net
梨子「今日は何味を買ってきたの? 見せてもらってもいい?」ガサガサ

花丸「どうぞ~」ムグムグ

梨子「へぇ、塩キャラメル味……ん?」

梨子「このパン、約300キロカ口りーもあるんだ……知らなかった……」

キョロキョロ

梨子(ゴミ箱には、のっぽパンの袋が……3つ。……3つ!?)

梨子(300キロカ口りーのパンを3つだから900キロカ口りー!)

花丸「美味しいずら~ ♪」ムグムグ

梨子(そして今4つめ! 半分食べ終わってるから実質約1000キロカ口りー!)

梨子(これは、まずい、まずいよ……)アセアセ

59: 2017/01/05(木) 11:30:20.78 ID:qdfzf3qB.net
梨子(いくら大好きだからって、食べ過ぎだよ花丸ちゃん……。このままじゃ、体重に影響しちゃう……)アセアセ

花丸「……」アーンッ

梨子(あぁ、もうあと半分も食べちゃいそう……)

梨子(……止めなくちゃ!)

ガバッ

花丸「アーン……あっ。梨子さん、どうしたんです?」

梨子「……」パクーッ

60: 2017/01/05(木) 11:43:49.40 ID:qdfzf3qB.net
梨子「……」ムグムグ

花丸「……」ポカーン

ゴックン

梨子「……花丸ちゃん、のっぽパンが美味しいのはわかるよ。でも、パンは食べ過ぎちゃいやすいから、ほどほどにしないと後で大変なことに……」

花丸「……」テレテレ

梨子「……花丸ちゃん?」

花丸「梨子さんが……オラと……関節、キッスを……」テレテレ

梨子「え……あ、あ、あ……」アセアセ

花丸「……」モジモジ テレテレ

梨子(なんで私の口許についたあんこは平気で舐めたのに、今回のは恥ずかしがるの、花丸ちゃん……!)カオマッカ

梨子「……ご、ごめんなさい……花丸ちゃん……」アセアセ テレテレ

花丸「……」カオマッカッカ



終わり

64: 2017/01/05(木) 21:34:21.37 ID:qdfzf3qB.net
ーーー千歌の部屋



千歌「さーて、今日は徹夜で頑張るのだ!」

花丸「夜なべですね、千歌さん!」

千歌「ふふふ、夜通しで作詞を頑張ったら、きっとみんな驚くのだ……!」

梨子「……あんまり無理しちゃ駄目だよ、千歌ちゃん」

千歌「無理だなんて……もうね、今日の私も眠眠打破も飲んだし、やる気満々なんだから! 」

千歌「さあ! みんな頑張るぞー!」

花丸「おー!」

梨子「お、おー……!」

65: 2017/01/05(木) 21:36:40.86 ID:qdfzf3qB.net
ーーーそれから それから



千歌「……」フンガッ

花丸「千歌さん……」

梨子「あれだけ言っておいて……」

花丸「寝ちゃってるずら……」

千歌「へへ……作詞が捗るのだぁ……」フンガッ

梨子「……夢の中で、作詞を頑張ってるみたいだね……」

66: 2017/01/05(木) 21:41:55.11 ID:qdfzf3qB.net
ーーー千歌が先に寝落ちしてしまったので

ーーー2人で黙々と頑張っていました



花丸「……うーん……」ウトウト

梨子「花丸ちゃん……大丈夫?」

花丸「だ、大丈夫……。まだ、頑張れるじゅら……」ウトウト

梨子「……だいぶ船を漕いじゃってるよ?」

花丸「まだ、まだ眠らない……じゅら……」ウトウト

梨子「もう語尾の呂律が回ってないよ、花丸ちゃん……」

67: 2017/01/05(木) 21:46:20.15 ID:qdfzf3qB.net
花丸「……じゅら……」ウトウト

梨子「今日はもう、お終いかな……。2人を起こして、寝る用意をしないと……」

花丸「……」ウトウト

梨子「……花丸ちゃんのほっぺ、柔らかそう……。ちょっと触ってみたいな……」ドキドキ

梨子「……何考えてるの、私ったら……」アタマフルフル

チラッ

花丸「……」ウトウト

梨子「……少しだけなら、いいよね……」

68: 2017/01/05(木) 21:52:46.15 ID:qdfzf3qB.net
梨子「……」ソーット

フニュッ フニュッ

花丸「……」ウトウト

フニュッ フニュッ

梨子「弾力がすごい……プニプニだ……」

フニュッ フニュッ

梨子「ふふ、いい触り心地……」クスクス

花丸「……んー……」

梨子「あ、もしかして、起きちゃった……!?」アセアセ

花丸「……あ……」

カプッ

梨子(わ、私の指を……咥えちゃった!)ドキドキ

69: 2017/01/05(木) 21:58:37.68 ID:qdfzf3qB.net
花丸「むぅ……」

チュプ チュプ

梨子「何かと、勘違いしてるのかな……」

チュプ チュプ

花丸「……えへへ、ばっちゃん……美味しいよ……」

梨子「……夢の中で、おばあちゃんの作ったお菓子を食べてるのかな……」

梨子「……それなら、夢を壊しちゃ、いけないよね……」

ーーー花丸が咥えた指を離すまで、梨子はそのまま、優しく見守っていましたとさ



終わり

72: 2017/01/07(土) 01:04:57.14 ID:Q7fjrZg3.net
ーーーその日、マルは放課後の図書委員の活動を終え、帰宅の途に就こうとしていました。

ーーー友達のルビィちゃんや善子ちゃんは既にこの学校に残って居らず、マルは1人、渡り廊下を歩いていました。

ーーー西日が窓から差し込んで、マルの体よりも大きな影を、廊下の壁に映します。

ーーー今日借りた新しい文庫本をどこまで読み進めようか、夜更かしを控えるため、物語が進展する手前で止めておこうか。そんなことを考えながら廊下を歩いていたら、前の方から、弦を弾(ひ)く音色が、聴こえてきました。

花丸「音楽室に、誰かいるのかな……?」

ーーーこんな時間に、誰が弾いてるのだろう。気になって、階段隣の音楽室の前まで来ると、マルはドアの小窓から中を覗きました。

ーーー音楽室で、ヴァイオリンのような弦楽器を弾いていたのは、マルも知ってる身近な人でした。

花丸「あっ……梨子さんだ……」

73: 2017/01/07(土) 01:32:09.02 ID:Q7fjrZg3.net
ーーー台に乗せた楽譜を横目で見ながら、忙しなく右手の弓を引く梨子さん。

ーーーマルには何の曲を弾いているのか、さっぱりわかりませんでしたが、梨子さんの演奏する姿を、しばらく見つめていました。

ーーーやがて、右手の動きが止まり、持っていた楽器を下ろすと、窓越しのマルを気づいたのか、こちらに笑みを見せました。

ーーーそのままマルはドアを開け、音楽室の中に入っていきました。

梨子「花丸ちゃん、いつから見ていたの?」

花丸「ちょっと前からです。……さっきの演奏、凄かったです。梨子さんって、ヴァイオリンも弾けるんですね」

ーーーマルは素直に褒めたつもりでした。ですが梨子さんは、それを苦笑いで受け止めて言いました。

梨子「……まだまだ、だよ」

ーーー更に、梨子さんは続けます。

梨子「あとこれ、ヴァイオリンじゃなくて、ヴィオラなんだ」

花丸「ず……ずら!」

ーーーマルはその時、自分の無知を恥じました。

74: 2017/01/07(土) 02:04:55.86 ID:Q7fjrZg3.net
ーーーマルがヴァイオリンと勘違いをしたヴィオラという楽器。素人からすれば、見た目に違いは無いように感じましたが、梨子さんはヴァイオリンとヴィオラの違いを教えてくれました。

梨子「ヴィオラはヴァイオリンに比べたら、少しだけ大きいんだ。だから、音もヴァイオリンと比べると低い音が出るの」

ーーーそう言われると、確かにマルが聴いていた音色は、音楽の授業で聴いたヴァイオリンの奏でる音と比べると低かったな、と思い返しました。

梨子「……やっぱり、弦楽器って言われたらヴァイオリンの方をイメージするよね?」

花丸「いえ、そんなことは……」

ーーー否定しようにも、さっきのさっきでヴァイオリンと間違えていたマルは、言いかけてそのまま口を噤んでしまいました。

ーーー気まずくて視線をずらしたマルを見かねたのか、梨子さんは優しい口調で、マルに言いました。

梨子「でも、私はヴィオラの方が好きなんだ。だからこうやって、練習してるわけ」

花丸「なんで、好きなんです?」

梨子「この低い音もね、上手に弾ける人が弾いたら深くて甘い音色になるんだ。いつか私も、そういあ風に弾けたらな、って思ってるの」

75: 2017/01/07(土) 02:21:04.89 ID:Q7fjrZg3.net
ーーーいつもの優しい笑顔で、自分の憧れを語る梨子さんを見ていて、マルも、応援をしたくなりました。

花丸「梨子さん。……マル、梨子さんの演奏、もっと聴いていたいな」

梨子「……私の演奏、聴いてくれるの?」

花丸「『セロ弾きのゴーシュ』の動物みたいに、アドバイスはできないけど……でも、人が聴いているのと聴いていないのでは、違うんじゃないかな、って思います。マルも、聖歌を歌うとき……人がいたら、より上手く歌おう、って意識するから」

梨子「……ありがとう、花丸ちゃん。……言っておくけど、私、ゴーシュみたいに乱暴じゃないよ?」

花丸「……それはみんな、知っていますよ」

ーーーマルは、適当な椅子に腰をかけると、梨子さんは楽譜をめくって、さっきとは違う曲を演奏し始めました。

ーーー窓からの夕日が、梨子さんの艶やかな赤茶色の長髪と、肩に乗せたヴィオラを照らし、輝かせます。2人きりの演奏会が、始まりました。



終わり

79: 2017/01/07(土) 23:21:24.03 ID:PZT69iMz.net
やっぱりりこまるは最高やな!

80: 2017/01/08(日) 03:07:47.00 ID:ZJJj2AXn.net
りこまるとかいう優しさしかない世界

77: 2017/01/07(土) 13:56:58.98 ID:3ARFlFau.net
すごくいい

引用元: http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1483448006/

タイトルとURLをコピーしました