【SS】にこ「乙女心と憂鬱な秋の空」

SS


 

1: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/09/27(日) 03:21:40.93 ID:jj2f6xra.net
穂乃果「ねえねえにこちゃん、明日どこ行こっか?」


穂乃果がこちらを覗き込みながら聞いてくる


にこ「んー……秋物があんまり買えなかったから服とか買いに行きたいわね」


少しだけ伸びをして、私は答えた


穂乃果「服かあ」

にこ「何よ」

穂乃果「んー、なんでもない」

にこ「……そう」


付き合ってそろそろ二ヶ月になる私たちだけど、少しだけ問題が発生している。
それは……


穂乃果「じゃ、また明日ねー」

にこ「ん」

にこ(また、キスしなかったわね……)


……最近、少しドライになってきたこと
 

27: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/09/27(日) 13:20:56.69 ID:jSeaaKU4.net
3: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/09/27(日) 03:26:29.42 ID:jj2f6xra.net
付き合って一ヶ月で初めてエ チして、そのままお互いの繋がりが深くなるかと思えば、段々そういうことに慣れてきて、今では友達に戻ったみたい
穂乃果は相変わらず楽しそうだけど……あの様子だと気付いてないみたいだ

教室で小さくため息をついていたら


絵里「にこ、どうしたの?」


なんて、付き合ってホヤホヤの絵里がこちらに歩み寄ってきた


にこ「んー……まあ、色々あんのよ」

絵里「色々じゃ分かんないわよー」


苦笑しながら空いてる席に絵里が座ってきた


にこ「……そういえばあんた、海未とはどうなの?」

絵里「海未と?……むふふっ」

にこ「なによ、その笑い方……?」


なんだか絵里はにやけているような、はにかんでいるような変な顔をしていた
 
4: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/09/27(日) 03:30:31.25 ID:jj2f6xra.net
絵里「それがね、この前ついにしちゃったのよ……」

にこ「え、まさか!?」


少し前のめりになる
もしかして……いや絵里って積極的そうだし……でも相手海未よね?なんて考えていたら、


絵里「この前ついに、キスしたの……///」


なんて顔を赤くして言うものだから、虚を突かれたような顔になってしまった


にこ「な、なんだキスね……てっきりもうしたのかと……」

絵里「……え、そういうこと!?」


絵里はかなり驚いた顔をした後、なにやら幸せそうに


絵里「そういうのは、お互い大人になってからって、海未と約束したのよ」

にこ「……ああ、はいはい」


自分から降った話なのに、のろけに少し呆れてしまった

それを、羨ましいことだと言うことは内緒にしておこうと思う。
 
5: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/09/27(日) 03:39:15.38 ID:jj2f6xra.net
今日は二年生組が生徒会の仕事で忙しく、練習が休みになった

にこ(とりあえず、部室で暇潰そうかな……)

絵里は海未を待つとか言ってたし、希は一年とそそくさと遊びに行ってしまって暇だった

にこ「……さすがに誰もいないわね」

にこ(……いつもみたいに、パソコンで情報を集めることにしようかな、ついでにPVの確認もして……)


とりあえず、やることは結構多そうだ

……………


だいたい一時間くらい作業に没頭していたら、勢い良くドアが開いた
大体予想はつくけど、振り向いたら穂乃果がそこにいた


穂乃果「やっほー、にこちゃんやっぱりここにいたんだ」

にこ「なんだ穂乃果ね……別に、連絡すればいいんじゃないの?」

穂乃果「んー、ちょっと携帯忘れちゃって」


照れ臭そうに頭をかきながら穂乃果はそう言った


にこ「携帯忘れるんじゃないわよ全く……」

穂乃果「あはは、ごめんごめん……ところでにこちゃんまだ部室にいる?」
 
6: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/09/27(日) 03:41:48.01 ID:jj2f6xra.net
にこ「いや、そろそろ帰ろうかなって」

穂乃果「じゃあ、一緒に帰らない?」

にこ「……断り入れる必要なんてないのに」


聞こえない声で小さくポツリとつぶやいた


穂乃果「ん?なんて言ったの?」


穂乃果が聞き返してくる。
それを無視して帰る用意をしながら


にこ「別に、なんでもないわよ」


と、一言返しておいた。
 
8: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/09/27(日) 03:49:23.95 ID:jj2f6xra.net
……………


帰り道、辺りは夏に比べて少しだけ暗さが早くなってきた


にこ「そういえば、生徒会はどうなの?」

穂乃果「……やっぱり、少し大変かなぁ」

にこ「あまり周りに迷惑かけんじゃないわよ」

穂乃果「そこは大丈夫!……多分……」


穂乃果は自信なさげだった。


にこ「なんかどことなーく心配になる生徒会長ね」


少しいたずらっぽく笑う
穂乃果は少し不本意そうにしてた。


穂乃果「もー、それ酷いよー」

にこ「まあ、がんばりなさいよ、生徒会長」

穂乃果「うん、ありがとにこちゃん!」


他愛もない話をして、暗がりに影を落とす

つなぐ相手が曖昧になってしまった右手が、宙を泳いでいた
 
11: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/09/27(日) 03:53:45.56 ID:jj2f6xra.net
昔は飽きるくらい好きだ好きだって聞いたのに、ここ最近は言ってないし聞いてもいない

気持ちは変わらないのに、なんでこんなに不安になるんだろう……

悩みが私の心の中にぐるぐると渦を巻いている


にこ(……眠れない)


結局その日は、一睡もすることができなかった
 
13: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/09/27(日) 03:59:26.57 ID:jj2f6xra.net
希「……にこっち、すごい顔になってるよ?」

にこ「……やっぱり?」


希に聞かれてバッグから手鏡を取り出す
目のクマがくっきりと見えていて、まるで……


絵里「パンダみたいよ、にこ」


……人のセリフをここで言うんじゃないわよ!
少し不機嫌になりつつ


にこ「……まあ、寝てればなんとかなるでしょ」

希「せやけど……うちらで良かったら話聞くからね?」

にこ「分かってるわよ、ありがとう」


始業のチャイムとほぼ同時に、私の意識は徐々に溶けていった
 
18: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/09/27(日) 04:06:45.48 ID:jj2f6xra.net
少し昔の景色を見た


付き合い初めて間もないころ、なにをするにもドキドキが止まらなかったこと

初めて付き合ってキスをして、すこし遠くに温泉に浸かって……心と体が一つになって


かつての思い出が走馬灯になって、早足で過ぎ去っていく


それをただ見送ることが少しだけ、もやもやしていた
 
24: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/09/27(日) 10:19:58.27 ID:jj2f6xra.net
希「にこっちー、お昼やよー」

にこ「んぁ……?」


希に背中を叩かれて、意識がだんだんとはっきりしていく

時刻は12時20分
お昼を少し過ぎている時間だった


にこ「うわ、すごい時間じゃない……どんだけ寝てんのよ私……」

希「先生ゆすっても起きないって諦めてたよ」


けたけたと希が笑う
その笑顔になんだか少し、癒される
もう一度手鏡を取り出す……さすがにクマは少し引いてくれていた


にこ(良かった、あんまりひどいと穂乃果に心配されちゃうし……でも)


……少し、心配されたいなって、思ってしまった
 
25: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/09/27(日) 11:14:53.03 ID:jj2f6xra.net
希「ところでにこっち、さっきから携帯鳴ってたよ?」

にこ「ん?……あ、穂乃果からだ」


♡ほのか♡<お昼、部室で待ってるね


にこ「……ちょっと行ってくる」

希「穂乃果ちゃん?」

にこ「ん、そんなとこ」


今ではこれも、なんとなく行くって感じになってしまっていた
希に軽く別れを告げて、部室まで向かうことにした
 
30: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/09/27(日) 21:34:52.33 ID:6pvoMu05.net
にこ「穂乃果おまたせ……ってあれ」


部室に行ってみると、穂乃果はすっかり寝てしまっていた
……愛しいのにな
頭を撫でながら、そんな事を考える
今の関係は、あまり私としては嬉しいことじゃないから
ふと、穂乃果がもぞもぞと動き出した


穂乃果「んにゃ……にこちゃんおはよぉ」


眼をこすりながら、穂乃果が眼を覚ました


にこ「別に、寝てても良いんだけど」

穂乃果「そうは行かないよー」


なんて、穂乃果は笑う
……やっぱり好きなんだけどな


穂乃果「……って今何時?」

にこ「え?……1時だけど」


穂乃果が飛び上がる


穂乃果「えー!?もうお昼終わるじゃん!」

にこ「あ、ちょっと」

穂乃果「ごめん、午後移動教室だから!」


そう言って、穂乃果は走り去ってしまった


にこ「……何よ、バカ」


結局、何も話さないまま、キスもないままお昼は終わってしまった
……本当に、今って付き合ってるって言えるのかな

なんて思いながら、机にかすかに残る彼女の温もりに触れた
 
31: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/09/27(日) 22:54:26.92 ID:6pvoMu05.net
昼まで寝てたみたいだけど、体はまだ少し重かった


にこ(今日の練習は、休もう……)


そう思い、穂乃果に連絡を飛ばしておいた
……なんだか少し、ふらつく
体の調子に違和感を覚えながら、その日は帰ることにした


…………


にこ(37.8度……)


案の定、風邪を引いていたようだった
体は昨日以上に重くなっているし、意識もあまりはっきりしない
幸い、今日は母が早上がりなので、心配の必要は無かった

体調管理もできないアイドルなんてダメね、と呟く
 
32: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/09/27(日) 23:30:17.26 ID:6pvoMu05.net
体が思うように動いてくれないので、大人しく寝ることにすると思った矢先、穂乃果から連絡が来た

♡ほのか♡<にこちゃん、帰りお見舞いに行く?

なんだか、少し嬉しいなって思う
心配されてるだけなのに
多分、私以外でも同じこと考えてくれるのに、すごく嬉しかった

それでも性格が災いして「大丈夫よ、ありがと」と返しておいた
すぐに返信が来る

♡ほのか♡<なんかあったら行くからね?

ほら、予想どおりの返事だった
もう少しだけ、食い下がってほしいと思いながらスマホを置いて夢の中に飛び込むことにした
 
33: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/09/27(日) 23:34:39.36 ID:6pvoMu05.net
ぴんぽーん、とドアのチャイムで目が覚めた


にこ(……居留守しとこ)


流石に、風邪気味で来客の対応をするのは無理な話なので、そのまま無視することにした
ぴんぽーん
チャイムがまた鳴る


にこ(早く帰ってよ……起き上がるのも結構辛いんだから……)


ぴんぽーん
チャイムはまだ鳴らされる。流石にすこしカチンと来て、文句を言いに玄関まで這うことにした


にこ「はい、どちらさまで……」

穂乃果「や、やっほ」


目を疑って、ついドアを勢いよく閉めた


穂乃果「ちょ、ちょっとにこちゃん!?」

にこ「な、なんであんたがここにいるのよ!?」
 
34: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/09/27(日) 23:54:13.52 ID:6pvoMu05.net
穂乃果「えっと……心配でつい」

にこ「てかまだ昼でしょ、学校は!?」

穂乃果「サボってきたー……みたいな?」


……呆れた
学校サボってまで来ることなんてないのに、本当にこいつはバカだと思う
それでも嬉しくて……にやけ顔が、抑えられなかった


にこ「家の前まで立たれてもやだし、上がんなさいよ」

穂乃果「うん、お邪魔しまーす……ちょっと酷そうだね」

にこ「……そんなに?」

穂乃果「うん、真っ青だよ」


近くの鏡を確認すると、確かにひどく青かった


にこ「……寝ることにするわ」

穂乃果「そうした方がいいよ、穂乃果診てるね」

にこ「……ありがと」
 
35: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/09/28(月) 00:02:32.14 ID:ow5dDfsj.net
……穂乃果が近くにいるから、眠るに眠れない
ベッドに横になってはいるけど、ずっと見られててとても寝られるような状況じゃなかった


にこ「……あの、寝るから別にここにいなくても」

穂乃果「わかった、じゃあリビングにいるね」


そう言って、穂乃果は部屋を出てくれた
……一緒にいて欲しかったのに、少し辛かったのはなんでだろ


にこ(来てくれたのは嬉しかったのに……)


自分の気持ちがよく分らない
すごく嬉しいのに、同時に少しだけ、余計な心配だなんて思ってしまう

変な考えになってしまうのは風邪のせいだと言い聞かせて、眠ることにした
 
41: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/09/28(月) 06:48:14.40 ID:lrNkGsNd.net
頭が、なんだか暖かい
そう思って目を開けたら


にこ「……穂乃果?」

穂乃果「あ、おはよー……なんだか心配で戻ってきちゃった」

そう言いながら穂乃果は頭を掻いた
嬉しいこと言ってくれるわね、こいつは
すこし頬が緩む。昔みたいなドキドキは無くても、やっぱり嬉しいものは嬉しかった


穂乃果「調子はどう?」

にこ「おかげさまで、大分良くなったわ」

穂乃果「本当?嘘ついたら穂乃果怒るよ?」


大丈夫だってば
そう返して、しばらく穂乃果と笑い合った
 
42: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/09/28(月) 19:20:19.13 ID:lrNkGsNd.net
穂乃果「じゃあもう帰るけど……大丈夫?」

にこ「ん。大分良くなったから大丈夫」


あれから一時間、特に大事なく過ごせたので穂乃果に帰ってもらうことにした


穂乃果「しっかり休んで、明日また会おうね」

にこ「ん」


軽く手を振る
穂乃果もそれに応え、短く別れを告げた
……ふう、と一息つく
さすがに風邪だとキスもなにもできないのは分かってるから、これでいい


にこ(でも、少し寂しいわね……)


部屋には、穂乃果の香りがまだ漂ってる気がした
 
43: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/09/28(月) 19:32:52.25 ID:lrNkGsNd.net
翌日は休んだ甲斐があって、すっかり元気になっていた


希「もー、にこっち心配したよ?」

にこ「ごめんごめん、もう大丈夫よ、ほら」


そう言いながら少し跳ねる。


希「あんまり無理せんといてね?」

にこ「大丈夫だって」


全く、どうしてこの親友はこんなに心配してくれるんだろう


希「んー……にしてもあれなん?やっぱ穂乃果ちゃんお見舞いに来たん?」

にこ「あー、そういえば来たわねあいつ。学校サボってまで来ることないのに」

希「ことりちゃんから聞いたときはびっくりしたよー、穂乃果ちゃんが飛び出したー!って」

にこ「へー……そんなことが」
 
44: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/09/28(月) 19:36:34.39 ID:lrNkGsNd.net
……本当に、そこまでする必要ないのに


希「なんか、最近のにこっち、穂乃果ちゃんといても楽しくなさそうやけど、なんかあった?」

にこ「ん?特にないわよ?」

希「じゃあ、なんでなん?」


希が前のめりになってくる
……なんでって、言われても……そんな


にこ「……なんでなのかしら?」

希「分からないん?」

にこ「ええ、なんとなく一緒にいるのが当たり前というか……」


すると、希は少し厳しめな表情になった
 
45: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/09/28(月) 22:50:50.98 ID:lrNkGsNd.net
希「ダメやよ、にこっち」

にこ「ん?なにがよ」思わず聞き返す

希「そんな当たり前だから、慣れたから、なんて言ってると、いざいなくなった時に大変よ?」

にこ「言われてみると……」


ずっと一緒にいるのが当たり前だったから、いなくなったら、なんて考えたことも無かった


希「いるのは当たり前かもしれないけど、当たり前だからって大事にしないのとはまた違うんよ?」

にこ「……そうかもしれないわね」


少し、楽になったような気がする
……でも、穂乃果も同じように考えてくれるのかな
それでも私の左手はまだ、繋ぐ相手を見失っているみたいだった
 
53: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/09/29(火) 20:36:55.61 ID:8Dv27+mz.net
まあ、ああは言われたけど、実感がわかない……
少し考え込みながら、部室の扉を開くとそこには


穂乃果「あれ、にこちゃん?」

にこ「ほ、穂乃果?なんでここに?」

穂乃果「んー、なんとなくかな?」


穂乃果が頭を掻きながら笑う。
なんとなくってなによ、と笑いながら椅子に座る


穂乃果「にこちゃんはなんで?」

にこ「え?……な、なんとなく……?」

穂乃果「穂乃果と同じじゃーん……ところでお昼もう食べた?」

にこ「?これからだけど」

穂乃果「よかったー、穂乃果もこれからなんだー」


ちょうどいいわね
なんて言って、お弁当を広げる私たちだった
 
54: (もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/09/29(火) 23:38:07.25 ID:vSF57QVs.net
にこ「今日はパンじゃないのね」

穂乃果「ちょっとご飯食べたくて」

にこ「へー……なんか新鮮ね」

穂乃果「そうかなあ?」


穂乃果の箸が止まる


穂乃果「そういえばにこちゃんって自分でご飯作ってるんだよね?」

にこ「ん、まあそうね」

穂乃果「お弁当も?」

にこ「まあ毎日じゃないけどね、ほとんどそうよ」

穂乃果「今日も?」


穂乃果の目がかすかに光る
なんのことだか察しつつ


にこ「今日も作ってきたわよ」


と返しておく
 
59: (もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/09/30(水) 23:43:52.68 ID:GfsPycro.net
穂乃果「ほんと!?」

にこ「あげないわよ」


あっさりとそう伝える
別にあげてもいいんだけど、なぜか意地悪してしまいたくなったのだ


穂乃果「穂乃果、まだなんも言ってないんだけど……」

にこ「よだれ垂らして説得力ないわよあんた」

穂乃果「え、うそ!?」

にこ「うそに決まってるじゃない」


そう言って、いたずらっぽく笑う
穂乃果はほっぺたを膨らませながら


穂乃果「なんかにこちゃん意地悪……」


と、拗ねるのだった
 
60: (もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/09/30(水) 23:44:23.84 ID:GfsPycro.net
すみません1レスですが今日はここまで
眠くて死ぬる
 
63: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/10/01(木) 20:47:46.82 ID:0KN8H9Ue.net
にこ「いいじゃない、たまには」

穂乃果「にこちゃんはたまにってレベルでやってないよ!?」

にこ「あーもーうるさいわね、食べたいんでしょ?ほらどれがいいの?」


めんどくさくなって弁当を差し出す
穂乃果は「むー」と唸りながら


穂乃果「卵焼き美味しそうだね」

にこ「卵焼きね、はい」

穂乃果「あー……ん!美味ひい!」

にこ「食べながらしゃべるんじゃないわよみっともない」


少し照れ隠しで毒を吐く
穂乃果はとびっきりの笑顔だった


穂乃果「美味しかったんだらしょーがないじゃん!」

にこ「……はいはい」


こうやって、食べ物を直接食べさせるのももうすっかりお馴染みの光景になった
……希に、言い返してやれば良かったわね

確かに隣にいるのは当たり前かもしれない、慣れてしまって、新鮮さも、初々しさもなくなったかもしれない
……だからと言って好きじゃないわけじゃない、気持ちは、ずっと穂乃果の方を向きっぱなしだって
そう言い返してやればよかったって、隣で笑顔を振りまく太陽を見ながら思った
 
65: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/10/02(金) 02:55:05.33 ID:fgpl2xWJ.net
穂乃果「にこちゃんも食べる?」

にこ「……どうせお母様が作ったやつでしょ?」


穂乃果は料理がそこまで得意ではない、というか下手な方だ
作ってもらったけど、塩と砂糖を間違える……という漫画みたいな失敗をしていたのは記憶に新しい
だから、基本的に穂乃果が料理をすることはない……のだけど、なぜか穂乃果はどこから来たのか分からない自信に満ちた顔をしていた


穂乃果「ふっふっふ、実はね、今日おかずちょっとだけ作ったんだよ!」

にこ「え、ほんと?」


思わず聞き返して、お弁当を眺める……確かに、いくつか不恰好なおかずがある


穂乃果「はい、ハンバーグだよ」


穂乃果のハンバーグを口に運ぶ


にこ「ん、あー……ん……うん、味なさすぎ硬すぎ玉ねぎ大きすぎ」

穂乃果「初めて作ったのに酷いよ!?」

にこ「……次回に期待するわ」


精一杯の素直さを出す、これが限界だった
本当は、泣きそうなくらい美味しかったから
味がどうということではなく、穂乃果が作ってくれたお弁当が、とても美味しくて、嬉しかった

そんなこと素直に伝えられないから、せめて希望を持たせてあげるのだった
 
70: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/10/03(土) 21:26:47.38 ID:2txUwrwo.net
穂乃果「にこちゃん、ここ、ごはんつぶついてる」

にこ「え、どこどこ?」

穂乃果「そこじゃなくてここだよー」

にこ「もー、どこなのよー!」


こういうのって、なんでか上手いこといかなくてイライラする
穂乃果は「もー、動かないでね?」と体をこちらに傾けて

はむ

……は?


穂乃果「はい、取れたよ」

にこ「……」

穂乃果「……にこちゃん?」


肩を少し揺さぶられ、ようやく意識がはっきりとする
……穂乃果に、ほっぺたを食まれた
冷静であるようにごまかしつつ「あ、ああ……ありがと」とかろうじて返す

……なんで、こんなドキドキするのよ
 
73: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/10/04(日) 12:04:06.50 ID:8FezBq8t.net
希「にこっちおかえりー……にこっち?」

にこ「……あ、ああただいま」

希「……どうしたの?」

にこ「ん?なんでもないわよ?」

希「でもその顔……」

にこ「顔?顔がどうしたの?」

希「……ううん、なんでもない」


……ほんと、なにがどうしたのよ
なんて考えてる私の顔が真っ赤になって、この上なくにやけていたことを、この時の私は知らない

ほっぺたには、まだ穂乃果の唇の感触が残っていた


にこ(なによ、今更じゃない……こんなこと)


胸の高鳴りは、まだ治ってくれなかった
 
74: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/10/04(日) 17:39:35.79 ID:bQx7W65c.net
帰り道は、久しぶりに一人で帰ることにした
特に理由はないけど、なんとなく、一人でいたかったから

頬を少し撫でる
まだ感触とか、体温が残っているような気がした


にこ「はあ……なんだってこんな……」


たかがほっぺたを食まれただけじゃない
と、頭の中で繰り返しても、ちっとも冷静になることができない

思い出すと顔が熱くなるわ暴れたくなるくらい恥ずかしくなるわで大変だ


にこ「まあでも……好きって、そういうことよね……」


言って更に恥ずかしくなる
滅多にしなくなったけど、キスだってもう慣れて当たり前みたいにしてたから、余計そう思う


にこ「はあ……ほんと、わかんないわね……」


この気持ちは恋で間違いない……とは思ってる
けれど、なんで今更、あんなことでこうなるのか不思議で仕方なかった
 
75: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/10/04(日) 18:17:09.57 ID:8FezBq8t.net
にこ「そういえば、海未と絵里も付き合ってるのよね……」


まだまだ付き合い始めだけど、絵里の様子を見ればわかる。とても楽しそうだ
私と穂乃果も、始めの頃は楽しかった思い出ばっかりだ


にこ「……楽しかった、か」


今が楽しくないわけじゃない、ただ……なんというか、上手いこと説明できないけれど、やっぱり慣れてきたってことは確か


にこ「そういえば、絵里ってどういう時にこうなるのかしら」


明日聞いてみよう
なんて思いながら、夕飯の買い出しのために進路を帰るのであった
 
76: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/10/04(日) 18:17:44.61 ID:8FezBq8t.net
>>75
進路を帰る

進路を変える、です……申し訳ありません
 
77: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/10/04(日) 21:28:41.91 ID:8FezBq8t.net
翌日
一晩眠って落ち着いたのか、昨日みたいな胸の高鳴りはどこかに消えた
少し早く学校に着いてしまい、暇そうに誰もいない教室から外の景色を眺めてたら、


絵里「あらにこ、早いわね」

にこ「ん?ああ、たまには早く来るわよ私だって」

絵里「ふふっ、真面目なのは良いことだわ」


結構早く起きて暇だったから、なんてお堅い「元」生徒会長には言うことはできない
……人も少ないし、今聞いてみるのも良いかもね


にこ「そういえばさ、聞きたいことがあるんだけど」

絵里「?ええ、なにかしら」


絵里が近くの席に座る


にこ「えーと……その……あんたって、どんな時に海未にドキドキする?」

絵里「……へ?」


素っ頓狂な声を上げるのは、まあ当然と言えば当然だと思う
私だって、なんでこんなこと聞きたいのかわかんないんだから
 
78: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/10/04(日) 22:34:24.93 ID:8FezBq8t.net
絵里「ご、ごめんごめん、まさかにこからそんなこと聞かれるなんて思わなかったからびっくりしちゃって」


絵里がはにかんで笑う


にこ「私だってなんでこんな……」

絵里「あはは……で、海未にドキドキする時だっけ?そりゃ、まだ付き合ってそんな経ってないからね、いつだってドキドキしてるわよ?」

にこ「……まあ、そりゃそうよねえ……」

絵里「それにしても……ふふっ」


絵里が含んだように笑う
……一体どうしたのだろう
 
83: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/10/05(月) 01:23:14.08 ID:LPk254en.net
にこ「なによ、そんなニヤニヤして」

絵里「え?……いや、まさかにこと恋バナするとはねーって思ったのよ」

にこ「へ?……いや、そんなんじゃないんだけど……?」


私は確か、あんな風にドキドキすることがあるかって聞きたかっただけなんだけど……?
絵里はあまり聞く耳を持つ気はないようで


絵里「良いじゃないんたまには。それに、最近あまりのろける機会も無かったし、お互いのろけましょうよ」


……ああもう、そんな幸せそうな顔しないでよ
そんな顔をされてしまっては断ることもできず、仕方がないので付き合ってあげることにした


にこ「まあいいわ……で?最近なんか進展とかあった?」


絵里は少し悩んだようで


絵里「え?……うーん……最近はそこまで進展ってほどはないわね……」


そりゃ、エ チは大人になってから、なんて言ってるしないわよね……なんて思っていたら


絵里「あ、でも最近海未からキスする時があるわね」

にこ「……え、まじ?」

絵里「うん、本当よ」


声はそのままなのに、絵里の顔は真っ赤っかだ


絵里「いつも通り私から……って思ってたらね、海未が『動かないでくださいね』って言うから止まってたらふいに、ね……いやあ、さすがにその日は照れちゃってどうしようもなかったわよ」


……はあ、羨ましい
 
84: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/10/05(月) 01:37:59.96 ID:LPk254en.net
私たちもそんな頃あっなあ……良いなあ、って考えていたら、絵里が身を乗り出して


絵里「で、にこたちはどうなの?」

にこ「……へ?」

絵里「私だけのろけてたら不公平じゃない?」


……それは、そうだけど
特に最近話すことがないのは確かで、のろけ、なんてもんは……ひとつあったけど


絵里「ねえねえ、どうなの?」

にこ「ま、まあ普通よ普通」

絵里「普通じゃわかんないわよ」


絵里が苦笑する
……いや、あるけどこれってそこまで話すことでも……うーん


にこ「この前、穂乃果に口でご飯粒とってもらって、なんかドキドキしたのよ……」


すごい興味津々な絵里を見ていたら、なんか話さないとなって思ったので、その話をすることにした
 
88: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/10/05(月) 22:30:36.97 ID:LPk254en.net
絵里「なんか、今更って感じだけど……なんかあったの?」

にこ「それが分からないから困ってるのよ……」


キスなんて飽きるほどしたし、その先ももう何度かしているから、本当に今更って感じ
絵里は少し悩むような顔をして


絵里「でもそれって、悪いことじゃないわよね?」

にこ「え?」


思わずきき返す


絵里「それってやっぱり、にこが穂乃果のこと大好きってことじゃないの?」

にこ「いやまあ、それこそ今更なんだけど?」

絵里「良いじゃない、もう一度恋しちゃっても」


もう一度、恋……そんなこと考えてもみなかった
 
89: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/10/06(火) 00:02:02.24 ID:TncqdX5H.net
にこ「……あんたって、たまに良いこと言うわよね」

絵里「たまにってなによ」


えりが頬を膨らませる
そんな風に変われたのもμ'sと、海未のおかげかなと思いつつ、他愛のない話で盛り上がるのだった


……………


にこ「ん?……穂乃果からだ」


♡♡ほのか♡♡<今日も部室だよね?先行って待ってるねー


にこ「はいはい……っと」


着信がくるだけでこんなに胸が高鳴るなんて、思わなかった
お弁当をバックから取り出し、少し早足で部室に向かった
 
93: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/10/06(火) 07:17:57.78 ID:VYIOHJuF.net
穂乃果「やっほー」

にこ「……ええ」


思わず目をそらす
……上手く顔が見られない、目を合わすとかのレベルじゃなくて、穂乃果の顔をまともに見られない


穂乃果「今日も少し作ってきたんだー」と、穂乃果がお弁当を取り出したのに合わせ、私も手提げからお弁当を取り出した


穂乃果「今日はね、このコロッケ作ってきたんだよー」

にこ「……揚げ物作れるのね」あくまで顔を見ずに返す。

穂乃果「にこちゃんのお弁当は彩りちゃんとしてるよね、やっぱ考えて作ってるの?」

にこ「んー、そんなことないわよ?」


良かった、会話は普通にできそうだ
 
94: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/10/06(火) 07:48:37.09 ID:VYIOHJuF.net
穂乃果「でも綺麗に作ってるよね」

にこ「でも、いつも結構適当なのよ」


それでもすごいよー、と穂乃果はお弁当を食べながら笑った


にこ「全然すごくないって」

穂乃果「すごいよー、あ、コロッケ食べる?」

にこ「ん」

穂乃果「じゃあ……はい、あーん」


ぴたり
と、体が固まってしまった


穂乃果「……にこちゃん?」


穂乃果が不思議そうに私を見る


にこ「あ、ああごめんごめん……あー……ん……今日のは中々ね」

穂乃果「お母さんにも少し手伝ってもらったんだ、よかった……ところでにこちゃんどうしたの?」

にこ「な、なんでもないわよ」


これは、まずい……自分でも自覚できるくらいには顔が真っ赤になっている
 
95: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/10/06(火) 08:03:06.11 ID:VYIOHJuF.net
穂乃果「でも、にこちゃん顔真っ赤だよ?」

にこ「な、なんでもないから!」

穂乃果「可愛いのにー」


……あーもう
そんなこと言われたら、もっと赤くなるに決まってる


にこ「……ばーか」


これは、精一杯の抵抗だ


穂乃果「えへへ、にこちゃんもなんかちょーだい?」

にこ「え、えーと……じゃあこれ」


卵焼きを差し出す
穂乃果は不機嫌そうに


穂乃果「いつもみたいに、にこちゃんから食べさせてよー」

にこ「わ、分かってるわよ!……ほら」


手汗がとんでもなく出て、震えてしまっている
……なんで、こんなに恥ずかしいんだろう


穂乃果「……ん!やっぱり美味しい!」


穂乃果が笑顔になる
……ああ、なんだ、絵里の言う通りじゃない


にこ「……もっと食べる?」

穂乃果「うん!」


私は、どうやら穂乃果にまた恋してるようだった
 
99: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(もも)@\(^o^)/ 2015/10/06(火) 23:38:21.94 ID:JNV0oXWB.net
自覚するとたちが悪く、先ほどより余計意識してしまうようになる
横顔、首、手、脚……普段目につかないところばかり気になってしまう


穂乃果「……にこちゃん?」

にこ「なっ、なんでもない!」


さすがに見すぎたからか、穂乃果に不自然に思われてしまった


にこ「ぼーっとしてただけよ、本当に」

穂乃果「この前みたいに倒れたら穂乃果怒るよ?」

にこ「大丈夫だってば」


なんて話をしながら、私たちの昼は過ぎていく
両想いなのに、片想いみたいな私の2度目の恋は、ここから始まった
 
101: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(もも)@\(^o^)/ 2015/10/06(火) 23:47:28.26 ID:JNV0oXWB.net
……………


穂乃果「でさぁー、真面目にやってるってのに海未ちゃんに怒られてさあ」

にこ「……いや、お菓子食べながら仕事してれば真面目でもだらしなく見えるでしょ?」

穂乃果「絵里ちゃんもやってたって言ってたよ?」

にこ「ほら、あいつは人前ではそういうことやらないタイプだし」


それもそうかあ、と穂乃果は諦めたように頷いた
今日の帰りは穂乃果と、いつも通りだけど最近はあまり一緒じゃなかったから少し新鮮だった

いつも通りじゃないことといえば……私の気持ちが変わったくらい
嫌いになったんじゃなくて、むしろ改めて好きになったというか、まあつまり惚れ直したと言えばあっさりしていると思う


にこ「あんたもやれば出来るんだから、もっと頑張りなさいよ」

穂乃果「はーい……なんかにこちゃん先輩みたい」

にこ「みたいも何も先輩でしょ?それ以外に何があるのよ」


穂乃果はさも当たり前のような顔をして、


穂乃果「え?彼女だけど」


なんて言うものだから、不意打ちを食らったように赤くなってしまった


にこ(そういえば私こいつと付き合ってるんだった……)


改めて自覚されると、とてつもなく恥ずかしくて、嬉しかった
 
102: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(もも)@\(^o^)/ 2015/10/06(火) 23:55:18.03 ID:JNV0oXWB.net
穂乃果「あれ、もしかしてにこちゃん照れてる?」

にこ「てっ、照れてなんか!」


顔を赤くして動揺してるもんだから、どうやったって隠せそうにない


穂乃果「なんか、こういうの久し振りで、かえって新鮮だね」


少し嬉しそうに笑う穂乃果に「そうね」とだけ返しておく


穂乃果「あ、でもそんなにこちゃんも可愛いよ?」


まったく、このばかは……
なんて言っても嬉しくなる私もばかなんだろうな、と思いつつ


にこ「当たり前でしょ、私を誰だと……」


ちゅ

……ん?
何か唇に柔らかさを感じる
それが穂乃果のものだと気付くのに、少し時間がかかった

2秒ほどして、体ごと穂乃果は私に離れていく


穂乃果「……また明日ねっ」


そう言って、穂乃果は走り去り、私は呆然と立ったままそれを見送った


にこ「なによ、あいつ……やっぱり……」


……大好き
うつむいて、誰にも聞こえない声で、そう呟いた
 
112: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(もも)@\(^o^)/ 2015/10/07(水) 21:27:51.70 ID:wdyUWnvy.net
冷静に考えてみると、穂乃果にドキドキさせられる機会は多かったけど、こういう風に恋って気持ちになるのは初めてだと思う
付き合う前から好きではあったけど、こういう感情ではなかった

なんて考えながら部室で暇してたら、海未が入ってきた


海未「今日は早いのですね、にこ」

にこ「まあやることないしね」


それもそうです、と海未は机にノートと筆記用具一式を広げだした。おそらく歌詞でも考えているのだろう

真剣な眼差しでノートに向かう海未を見ながら、ふとこんなことを思い、聞いてみることにした


にこ「そういえばあんたさあ」

海未「はい、なんでしょう?」と、海未が筆を止める

にこ「絵里のどこが好きなの?」


海未の顔が火をかけたヤカンのようになった


海未「い、いきなりなにを言い出すんですかにこは!」


私は少しいたずらっぽく笑う


にこ「たまにはいいじゃない」
 
113: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(もも)@\(^o^)/ 2015/10/08(木) 05:30:01.23 ID:AQnNnM02.net
海未「いきなりで驚いたじゃないですか!」

にこ「驚いてくれたなら成功ね」


くくくっ、と声を出して笑う
そんな私を見て観念したのか、海未は小さく肩を落とし


海未「……仕方ありませんね」


と、つぶやいた


海未「……絵里って、ああ見えて結構可愛いところあるんですよ」

にこ「例えば?」

海未「変にかっこつけてるのに少し真面目な話になるとすぐ照れたり、こ、このまえ……私からキスをしたのですが……あまりに衝撃だったのかそこから話せなくなってたみたいで……」


そんな話をする海未は幸せそうだ
……似たような話に心当たりがあるのは内緒だ
 
115: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(もも)@\(^o^)/ 2015/10/08(木) 22:03:08.91 ID:AQnNnM02.net
海未「あと、たまにですが、やはり歳上と感じる時も良いですね」

にこ「ふうん、そんなもん?」

海未「ええ、でも一番の理由は、『わからない』ですかね」

にこ「え、わかんないの?」


思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。わからない、とはどういうことだろう


海未「言葉通りの意味ですよ、わからないんです。でも、私は絵里じゃないとダメなんです、私は絵里が好きなんですから」


そういって海未はまた恥ずかしがる
……なるほど、そういうのもあるのか、と小さく頷く
海未は少し深呼吸して


海未「ええ、結局のところ、好きな所なんて後から考えるものだと思っています」

にこ「そうね、そうかも」


言われてることは分かる
今好きな理由は沢山あっても、それがつまり好きになる理由にはならないってこと
私が好きな人が穂乃果ってことだから、それだけで理由は十分過ぎる


海未「あ、そういえば、今日の練習で確認したいことが……」


そのあとしばらく、みんなが来るのを珍しい組み合わせの二人で待つことにした
 
118: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/10/09(金) 19:32:20.22 ID:oWkyd0gZ.net
恋は盲目である
なんてよく言ったもんだと思う
誰かを好きになるって、その人以外考えられなくなってどうしようもなくて、自分ですら全然制御できなくなる

で、今の状況はというと……


穂乃果「でさー、雪穂ったらすごい驚いた顔して、もうおかしかったよ」

にこ「そ、そうね……見てみたかったわ」


相変わらず穂乃果とお昼……なのだけど、少し事情が違う
……キスしたい、触りたい
なんて衝動と戦いながら穂乃果の話を愛想笑いで聞いている
だって、向かい合うならまだしも隣に穂乃果がいるから、余計変な意識をしてしまう


穂乃果「今日は肉じゃが作ってきたんだよ」

にこ「へー、結構上達してきてるわね」

穂乃果「最近は頑張ってるよー」


ふと、指先に目が行く。絆創膏が貼ってある
……多分、料理で指切ったのかなって考えたら、たまらなく愛おしくなった


にこ「あんた、その指……」

穂乃果「へ?ああ、これ?……実は今朝切っちゃって……」


そう言いながら穂乃果は指を隠す
 
119: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/10/09(金) 19:37:27.40 ID:oWkyd0gZ.net
にこ「あんた、それ……」

穂乃果「わかってるよー『アイドルなんだからそういうことは気をつけなさい』でしょ?今度は気をつけるから、ね?」

にこ「……そ、そうよ、気を付けなさい!」


……はあ、バカだなあ……私
本当は「大丈夫?」とか「作ってくれてありがとう」って、もっと優しい言葉をかけたかった
今回ばかりは自分の天邪鬼加減に嫌気がさす


穂乃果「まあまあ、とりあえず食べてみてよ」


さすがに他のおかずと違うので、弁当箱ごと差し出してきた
一口、食べてみると、やはり塩気は少しあるがそれでも十分美味しかった


にこ「……まあまあね」


それでも素直に言えない自分に腹がたつ


穂乃果「今回はことりちゃんに教えてもらったんだ」


箸が思わず止まってしまった


にこ「……ことりと?」
 
120: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/10/09(金) 19:42:33.54 ID:oWkyd0gZ.net
穂乃果「うん、ちゃんと作れたってことは成功したのかな?」


もや


にこ「……べ、別に肉じゃがくらいにこだって教えられるわよ?」

穂乃果「うーんと……にこちゃんじゃダメなんだよ、それは」

にこ「な、なんでダメなのよ!?」


思わず立ち上がってしまう


穂乃果「え?……えーと……秘密」

にこ「へー……秘密ねえ……そんなにこにも言えないことしてるのね……」

穂乃果「ち、違うよ?」


一度ざわついた心は収まってくれない


にこ「違うなら説明してよ!なんでわざわざ隠すの!?そんなにこは信用できない!?」

穂乃果「信用するとか、そういう話じゃないから……」

にこ「……もういい、戻るから」


そう言って、私は勢いよくドアを開けてその場から逃げるように立ち去った
 
121: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/10/09(金) 19:49:20.54 ID:oWkyd0gZ.net
廊下を早足で歩く。頭の中には
何故?
の文字が何度も浮かんでくる

私じゃダメなの?

私にも言えないことをしてるの?

なんで、そんな……

考えれば考えるほど頭の中はぐちゃぐちゃになってしまった

あてもなく屋上について、膝から崩れ落ちる

……この気持ちは、やきもちなんて可愛いものじゃない
嫉妬だ

にこ(ことりだって大事なμ'sの仲間だって頭ではわかってる、けど……)


汚くて、どす黒い感情が瞳からあふれ出してくる
私は、ただただそれが落ちるのを眺めることしかできなかった
 
127: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/10/10(土) 11:01:47.25 ID:OQEz2QZn.net
昼も過ぎたけど、わたしはただ空をぼーっと眺めていた
目は赤く腫れ上がって誰にも顔を見せられなくなっていた

誰が悪いというわけではない
そういうことじゃないってことは分かってる、頭では十分理解している

けど、気持ちはそういうものと割り切れないのも確か

これは、私の心が醜くて汚いから起きたことだ


にこ(……穂乃果に、悪いことしなたなあ……)


どんな顔をして彼女に会えばいいんだろう
もう、分からなくなっていた

ふと、屋上の扉が開いて、思わず身を隠そうとするが、少し遅かった


ことり「あれ、にこちゃん?」

にこ「こ、ことり……」


よりにもよって、こんな時に……
隣にことりが座る
……できれば離れて欲しいのに
 
128: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/10/11(日) 18:05:26.23 ID:sfjoAMLZ.net
ことり「あれ?にこちゃんその目どうしたの?」


さすがに気づかれてしまった
少し冷静に


にこ「これ?ちょっと石鹸入って腫れちゃった」


と返しておく
ことりは「大丈夫?」なんて言ってそこから特になにも聞いてこなかった


にこ「あ、そういえば肉じゃが美味しかったわよ」

ことり「へ?な、なんのこと?」


ことりはなにもないかのように取り繕うけど、もうすでに本人から聞いているから無駄な努力だ


にこ「穂乃果から聞いたわよ、教えてたんだって?まさかあんな進歩してるとはびっくりしたわ」

ことり「あー、穂乃果ちゃん、自分で言っちゃったのか……」


ことりが少し肩を落とす
……一体なんの話だろう
 
132: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(プーアル茶)@\(^o^)/ 2015/10/12(月) 12:15:49.81 ID:KyjKgxp4.net
にこ「ちょ、ちょっと待って……なんの話?」

ことり「えっとねー……穂乃果ちゃんには内緒にしてって言われてるんだけど……」


ことりは少し悩んだようにそう言った


にこ「いいから教えなさいよ」

ことり「実はね……にこちゃんのためなんだって」

にこ「は?」


思わず鳩が豆鉄砲食らったような顔になる


ことり「にこちゃん、一人でここあちゃんたちの面倒見てるでしょ?」

にこ「まあ、マ……お母さんが仕事だからね」

ことり「穂乃果ちゃんいつも手伝いに行ってもあまり役に立てないからって最近少し勉強してるんだよ」

にこ「なんだ……そんな別にいいのに……」

ことり「でもにこちゃん、なんか嬉しそうだね?」


ことりがにやにやしながらこちらを覗き込んでくる。
 
133: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/10/12(月) 20:33:29.74 ID:6Hvh+rSs.net
にこ「べっ、別にしてなんか」

ことり「……それで、にこちゃんはどうしたの?」

にこ「……どうってなによ」

ことり「その目、石鹸なんて嘘でしょ?」


流石に気づかれていたようだ
ことりは察しがいいから別に驚くこともないけれど
……言ってもいいんだろうか
八つ当たり気味に嫉妬した相手に対して


ことり「多分、ことりのせいだよね?」


そんなとこまで察しがつかれてしまっては、こちらも変に隠す必要はないと思い、話すことにした


……………


にこ「……ってことなのよ」


私が一通り話した後、ことりはすごい申し訳なさそうな表情をしていた
 
134: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/10/12(月) 20:38:20.51 ID:6Hvh+rSs.net
ことり「……ごめんなさいっ!」

にこ「いや、別に謝られても……私が勝手に嫉妬しただけだし」


そんなに必死に謝られると、逆に困ってしまう
それでもことりは何度も頭を下げてくる


ことり「だって、ことりのせいで……」

にこ「……ばーか」

ことり「あたっ」


たまらなくなってことりのおでこをコツンと叩く


にこ「あんたに悪気があったわけじゃないじゃない、謝られても困るだけなんだけど?」

ことり「ご、ごめんなさい……」


……いい子だなぁ
私は八つ当たりして一人で喚いていたのに、この子は本当にいい子だって、そう思う
 
138: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/10/13(火) 09:13:26.01 ID:6fC18jDg.net
にこ「はあ……本当にあんたって子は……まあいいか」


ことりは今にも泣きそうな顔をしている
……そんな、心配されるほどでもないのに


ことり「……それで、穂乃果ちゃんと話せた?」

にこ「さっきの今でそんな話せるわけないでしょ」

ことり「それも、そうだね……」


私のせいで穂乃果が傷付いたかもしれない、それは事実で、あんなことした手前穂乃果に顔向けできない、それも事実
ことりは少し悩んだ後


ことり「でも……多分、大丈夫だと思う」

にこ「なんでよ?」と聞き返す


ことりの顔はさっきと打って変わって自信に満ち溢れていた


ことり「だって……嫉妬するってくらい、にこちゃんは穂乃果ちゃんのことが好きなんでしょ?」

にこ「……まあ、否定しないわ」


否定しないどころか好きすぎてどうにかなりそうだ


ことり「穂乃果ちゃんは鈍感かもしれないけど……ちゃんと伝えれば分かってくれるよ」

にこ「かもね」


それくらい私だって知っている
今問題なのは、それを私が素直に伝えられないことだ
 
139: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/10/13(火) 09:36:01.91 ID:6fC18jDg.net
ことり「素直になるって大変かもしれないけど、ちゃんと言わないと気持ちは伝わらないと思うよ?」

にこ「なによ、分かったような……」

ことり「分かってるから言ってるんだよー」


ことりが、少し寂しそうに笑う
……どういうことだろう


にこ「私はこういう性格なの。無理よ、今更」

ことり「そうやって開き直るのは良くないですっ」

にこ「いたっ」


今度はことりにおでこを叩かれてしまった


にこ「な、なにすんのよ!」

ことり「そんなことばっか言ってるからダメなんじゃないの?変えようとはしないの?」


……確かに、ことりの言う通りだ
少しヒリヒリするおでこを触りながら


にこ「……そう、ね……あんたの言う通りだわ」


と返す
 
140: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/10/13(火) 09:52:40.19 ID:6fC18jDg.net
ことり「分かってくれたならいいのですっ」


と、ことりが胸を張る
……少し羨ましいなんて、思ってない


にこ「じゃ、まずは穂乃果のところに行かなくちゃ……素直に伝えられたら良いけど」

ことり「ことりにだって伝えられたんだから、きっと大丈夫だよ」

にこ「そうかもね、ありがと……そういえば」

ことり「なあに?」

にこ「あんた、好きな人とかいるの?」


ことりは少し頭を抱えながら


ことり「……いるにはいるかなあ」

にこ「あんたも、その子に伝えた方が良いんじゃない?片想いは辛いわよ?」


ことりはまた寂しそうな、けれども幸せそうな笑顔になりながら


ことり「好きな人が私を向いてくれなくても、幸せならそれでいいって……そんな恋もあるから。ことりは今のままで幸せだよ」

にこ「……そう、じゃあね」


それ以上は聞かなかった
……そういう恋も、あるんだなって思った
 
145: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(もも)@\(^o^)/ 2015/10/14(水) 00:40:22.21 ID:vVuKzD26.net
廊下を歩きながら、ことりの言葉を繰り返していた

好きな人が私を向いてくれなくても、幸せならそれでいい

確かにそうかもしれない
ことりの言葉には綺麗事を並べ多様な薄っぺらさも感じなかったから、きっと本心からそう言っていたのだろう


にこ(……でも)


私は嫌だ
確かに、自分の好きな人が幸せならそれで良いかもしれない。けれど、私はあいにくワガママなのだ

自分の大切な人が幸せであるなら、私もそうでありたいと願ってしまうからだ
アイドルとしてそれは失格かもしれない、だけど何度考えても結論はそれしか浮かばない

まずは、穂乃果と話そう

そして、伝えきれていない気持ちをもっと素直に伝えよう


にこ(結局、ことりに勇気付けられちゃったわね)


彼女は屋上で一人、どんな表情をして私を見送ったのだろう
笑っていただろうか、泣いていただろうか
きっとどちらでもないだろう、ことりはきっとそういう子だから

とりあえずポケットからスマホを取り出し、あいつに対してメッセージを飛ばすことにした
 
150: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(もも)@\(^o^)/ 2015/10/14(水) 22:44:47.61 ID:vVuKzD26.net
メッセージを飛ばした直後、穂乃果から電話がかかってきた
……取るのが、少し怖い
それでも勇気を出して、取ることにした


にこ「……なに?」

穂乃果『……そっちこそどうしたの?』


穂乃果の声が少し強張ってて、肩が思わず震える


にこ「なにって……話したいことがあるから明日暇かって送っただけじゃない」

穂乃果『話したいことなら今話しても良いじゃん』

にこ「今は……その……」


気持ちを伝えたいから、やっぱり直接会って話したい
そう思うだけで口にできなかった
穂乃果は『ふうん』と相槌を打って


穂乃果『わかった、明日は放課後暇だよ。校舎?』

にこ「……いや、少し離れたところが良いわ、こっちで考える」

穂乃果『……分かった、また明日ね』


そう言って、電話は切れた
……少しだけ、不安になってしまった
 
151: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(もも)@\(^o^)/ 2015/10/14(水) 22:49:32.60 ID:vVuKzD26.net
翌日
結局穂乃果とは放課後の今になるまで会うことはなかった
お互い避けていたから当然だとは思っている

そんな私は、校門前で生徒会の仕事をしている穂乃果を待っている


にこ(……遅いわね)


思えばあんまり穂乃果を待つことは最近なかったから、余計に長く感じる
……穂乃果も同じこと、考えてたのかしら?

なんて思ったら、背後から走り寄る足音がした


穂乃果「ごめんごめん、ちょっと忙しかった」

にこ「……遅いわよ」


穂乃果は「だからごめんってばー」と笑いかける
そんな笑顔が虚勢に見えたのは、伊達に付き合っていないからこそだと思っている


にこ「じゃ、早く行きましょ」

穂乃果「……どこに行くの?」

にこ「ちょっと、ね」


これから私が行きたいところは、穂乃果との思い出の場所だ
私の後ろを穂乃果がついてくる

つなぎたい相手を探す左手が、すこしざわついた
 
158: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/10/17(土) 09:13:22.30 ID:1QGQjkPN.net
穂乃果「ここ、懐かしいね」

にこ「一ヶ月記念の時はなんだかんだあってこれなかったじゃない?……私が忘れてたのはあるけど」

穂乃果「あはは、穂乃果も忘れてた」


今私たちは、観覧車に乗っている
ここで穂乃果に告白されて、私たちは交際することになった、いわば思い出の場所だ


にこ「付き合ってから、色々あったわね……」


外を眺めながら私はつぶやいた


穂乃果「穂乃果たちも、μ'sとしても大変だったね」と、穂乃果は応える


にこ「まあ、まだまだ油断できないからね、これからも頑張らないと」

穂乃果「……そうだね」


ここで、少し沈黙が訪れる
 
159: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/10/17(土) 19:40:35.78 ID:Amgd+rhH.net
穂乃果「そ、それで、話って……なに?」


1分ほどの沈黙を破ったのは、穂乃果の方だった


にこ「話?……ああ、そういえばそうだったわね」

穂乃果「うん……大事な話、なんだよね?」

にこ「……まあ、大事といえば大事ね」

穂乃果「……だよね」


穂乃果の肩が小さく震えている
なんだか、弱々しい穂乃果を見るのも久しぶりだ


にこ「えっと……その……」

穂乃果「うん……」

にこ「私ね……やっぱあんたの事が好きなのよ」

穂乃果「わかってる……そうだと思ってた……って、へ?」


穂乃果の顔が驚きで染まる
こっちは真っ赤になっているってのに
 
162: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/10/18(日) 13:35:13.14 ID:NI3+h75w.net
にこ「いや、どうしたのよ?」

穂乃果「……それだけ?」

にこ「え?……まあ、それだけだけど」


穂乃果の顔がみるみる真っ赤になっていく


穂乃果「……ってなんだあ~、良かったぁ……」

にこ「ちょ、ちょっと待って、どういうこと?」


穂乃果はなにやら慌てているようだ


穂乃果「いや、にこちゃん深刻な声で大事な話があるって言うから……てっきり別れ話かなって……」

にこ「な、なんで別れ話でこんなとこ選ぶのよ……あんたやっぱバカ?」

穂乃果「だって~!」
 
164: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2015/10/18(日) 22:10:36.94 ID:5uh4ONay.net
にこ「てか穂乃果……泣いてるの?」


穂乃果の目にはうっすらと涙がにじんでいる


穂乃果「だって……怖かったんだもん……」

にこ「わ、悪かったわよ……ほら、泣かないで?」

穂乃果「うん……それにしても」

にこ「ん?」


穂乃果は涙目ではあるけれど、少しにやけ顔になっていた


穂乃果「にこちゃんから好きって聞くの、結構始めてかも、どうしたの?」

にこ「……伝えなくても気持ちは届くかもしれないけど、やっぱり言葉にして言いたかっただけよ」


……もう、なんでこんなこと言うだけなのに赤くなっちゃうのよ
夕日が綺麗に差し込んでくれるから、誤魔化してくれているだろうか
 
167: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/10/19(月) 08:05:29.54 ID:2bpBBoeK.net
穂乃果「ねえ、にこちゃん……覚えてる?」


そう言いながら、穂乃果が私の首に腕を絡めてくる
そうしてほしいと言われたわけではないけれど、私は無意識に穂乃果の腰に腕を回す


にこ「覚えてるって……なにを?」

穂乃果「ここで結ばれる二人はずっと一緒にいられるって話」

にこ「……ええ、覚えてるわ」


穂乃果の顔が、吐息を感じられるくらい近くなる
その顔は、私と同じ色に染まっていた


穂乃果「二回も結ばれた私たちって……どうなるのかな?生まれ変わっても一緒にいられるのかな?」


私は「バカ」と呟いて穂乃果の頭を小突く


穂乃果「あたっ」

にこ「次なんてないわよ?今が最高に幸せなんだから、なんで次のこと考えないとなんないのよ」

穂乃果「……そうだね」
 
168: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/10/19(月) 08:11:20.08 ID:2bpBBoeK.net
にこ「だから、ね?……お互い生きてる限り、一緒にいましょう……違うわね、私が穂乃果といたいのよ」

穂乃果「私も、同じ気持ちだよ」


穂乃果の腕に力が入るのに合わせて、私も穂乃果を抱き寄せる


にこ「好きよ、穂乃果」

穂乃果「にこちゃん、私も大好きだよ」


さも当然のように、私たちはキスをする
それは今までしていたキスとは違って、幸せを全身で感じられるような、そんなキスだった

……ああ、なんでこんな簡単なこと、すぐにできなかったんだろう

夕暮れが、私たちを祝福してくれるように優しく光っていた
 
169: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/10/19(月) 08:16:20.97 ID:2bpBBoeK.net
観覧車から降りると、まるでそうするのが普通と言わんばかりに、私の左手は穂乃果の右手を捕らえていた


穂乃果「こうして手を繋ぐのも、なんだか久しぶりだね」

にこ「そうね」

穂乃果「……あったかいね」

にこ「……そうね」


少しの間、お互い無言になる
けれどここに来る前とは違い、それもなんだか幸せに感じる、そんな素敵な沈黙だった

ふと、穂乃果が私の顔を覗き込んでくる


穂乃果「あ、にこちゃん顔真っ赤!」

にこ「面と向かってあんなこと言ったんだから当たり前でしょ!……あんたも相当赤くなってるし」

穂乃果「あれ、ばれた?」


穂乃果がはにかんで笑う
そんな彼女の笑った顔を眺めていたら、愛しさが胸から溢れてきそうになった
 
170: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/10/19(月) 08:20:46.03 ID:2bpBBoeK.net
にこ「穂乃果、ちょっと動かないで」

穂乃果「へ?なにを……」


続けようとした穂乃果の言葉を、強引に塞いでやった


にこ「……ごめん、つい」

穂乃果「……いいよ、嬉しかった」


えへへ、と穂乃果が笑う


にこ「それじゃ、今日は帰りましょうか」

穂乃果「……んーと、今日はにこちゃんの家に行きたいなぁ」

にこ「良いけど、なんで?」

穂乃果「今までの練習の成果を見せたいから、かな?」


はー、と私は少し肩を竦ませる


にこ「……良いわよ、見せてもらおうじゃない」

穂乃果「頑張りますっ!」
 
171: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/10/19(月) 08:35:55.33 ID:2bpBBoeK.net
夕焼けは赤く、肌寒い風、空の高さは秋を感じさせてくれる


にこ「で、なに作るの?」

穂乃果「コロッケ、かなあ……一番マシになったから」

にこ「へえ……あ、ジャガイモないかも」

穂乃果「なら、買ってく?」

にこ「そうね、ちょっとスーパーに寄って行きましょう」


それから、下らない会話で私たちは盛り上がる

……これから、多分ドラマチックな事はそう起きないと思う
それでも私は彼女の事を、これからも数え切れないくらい好きになる、今はそう確信している


にこ「……寒くなってきたわね」

穂乃果「冬になったらスキーとか行きたいかも」

にこ「いいわね、みんなで行く?」

穂乃果「みんなと一緒も良いけど、にこちゃんと二人でも行きたいなぁ」

にこ「わ、わかってるじゃないの」


えへへと笑う穂乃果に、何をしてあげれば幸せになってくれるのかなって、一瞬だけ考える


穂乃果「とりあえずジャガイモでしょ……ひき肉ある?」

にこ「えーと……昨日半分くらい使ったけど残ってるわよ」

穂乃果「じゃあ挽肉は良いかな……あとは……」


……いや
そんな事より、今日の穂乃果のコロッケを楽しみにしていた方が、何倍だって有意義だ


穂乃果「ほらにこちゃん行くよー!」

にこ「ちょっと、引っ張るなあああ!!」
 
172: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/10/19(月) 08:38:27.10 ID:2bpBBoeK.net
まさかの特売で助かったねー

そうね……でもこんな量どうすんのよ!

あはは……ごめんついつい買っちゃった

まあ……分からなくもないけど

ねえ、にこちゃん

ん?

さっきの、もう一度聞きたいな?

……なにを?

私のこと、好きってやつ……ダメ?

……何度だって、言われなくても言ってやるわよ!私は……



言葉では伝えきれなくても、何度だって言ってやる


穂乃果のことが、大好き
 
173: @10/11名前欄変更投票・詳しくは議論スレへ(SB-iPhone)@\(^o^)/ 2015/10/19(月) 08:38:52.32 ID:2bpBBoeK.net
これにて終いです

お前らも良い恋しろよ
 

引用元: http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1443291700/

【SS】穂乃果「想いは遠く、秋の空」【ラブライブ!】
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