【SS】侑「PSYCHO-LES」【ラブライブ!虹ヶ咲】

SS


1: (ほうとう) 2022/10/28(金) 20:33:12.45 ID:EOCyFh6T
「こちら公安局です。現在この区域は捜査のため立ち入りを制限されています」

 「速やかに退去してください。繰り返しお伝えします。こちら公安局……」

侑「あの、すみません」

 「近隣住民の方ですか? ここは現在立ち入り禁止となっていますので……」

侑「そうじゃなくて、えっと」

 「いつサイコレズが現れるかわかりません。危険ですのでどうかご理解とご協力を……」

侑「……公安局百合課1係、監視官の高咲侑です」

 「監視官!?」

 「たた、大変失礼いたしました!! どうぞお通りください!」
 
2: (たこやき) 2022/10/28(金) 20:35:12.62 ID:xvPSieSL
侑「あの、もし知ってたらで良いので教えてほしいんですけど、これって何の捜査なんですか?」

 「えっ……? ブリーフィングは受けていないのですか……?」

侑「ここに来いとだけしか聞いてなくて……」

 「申し訳ございません、サイコレズに関する捜査の情報は極秘裏となっているため、末端の我々には……」

 「あなた、もう下がっていいですよ」

 「え?」

栞子「監視官の三船です。ここからの話はこちらで引き受けます。持ち場に戻ってください」

 「し、失礼します!!」

栞子「……名前と所属を」

侑「公安局百合課1係監視官、高咲侑です」
 
5: (たこやき) 2022/10/28(金) 20:38:36.19 ID:xvPSieSL
栞子「公安局百合課1係監視官、三船栞子です」

侑(同じ1係……? ってことは先輩……)

侑「あ、あの! よろしくお願いします!」

侑「監視官に成り立てでわからないことだらけなので、色々と教えて……」

栞子「監視官という役職上、あなたと私は常に対等です。上下関係はありません」

栞子「それは新入りだろうとベテランだろうと同じです。覚えるべきこと、必要なことは現場の中で吸収し、学んでください」

侑「……」

栞子「ただ、私たちはチームです」

栞子「皆で協力し、助け合い、事件解決のために全力を尽くしていきましょう」

侑「は、はい!」
 
8: (たこやき) 2022/10/28(金) 20:41:24.79 ID:xvPSieSL
栞子「ブリーフィングは済んでいますか?」

侑「すみません、ここに来てもう一人の監視官から指示を仰げとだけしか聞いてなくて……」

栞子「対象の名は鐘嵐珠(ショウ・ランジュ)」

栞子「街頭スキャナが異常値の百合係数を計測したため公安局に通報が入りました」

栞子「目標はショウ・ランジュの確保……百合係数次第では即時執行します」

侑「執行って……」

栞子「ここに立っているということは研修は済んでいる、という認識をしていますが」

侑「……」

栞子「既に執行官を向かわせています。デバイスに彼女たちの位置情報を送りますので、合流してください」
 
10: (たこやき) 2022/10/28(金) 20:44:43.92 ID:xvPSieSL
栞子「私は対象の痕跡を追いつつ、3rdに合流します」

栞子「あなたは5thと9thのところへ」

侑「わかりました」

栞子「執行官は全員スクールアイドルです」

侑「スクールアイドル……」

栞子「スクールアイドルについては知っていますか?」

侑「"レズ"をエネルギーにして科学では説明できない異能力……魔法のような力を行使する者、ですか?」

栞子「創作的表現を含んでいますが、概ねその通りです」

栞子「故に彼女たちの百合係数も異常値を叩き出す……」

栞子「ユリネーターもサイコレズ同様に作動します」

栞子「危険が及ぶと判断すれば、執行官であろうと躊躇せず執行してください」
 
12: (たこやき) 2022/10/28(金) 20:47:11.58 ID:xvPSieSL
侑「仲間、なんですよね……?」

栞子「それが私たち監視官に与えられた責務です」

侑「……」

栞子「引き金を引けない者は命を落とします」

栞子「私たちも……それを守る執行官も」

侑「っ……」

栞子「デバイスはいつでも通信状態になっています。何かあれば連絡をください」
 
13: (たこやき) 2022/10/28(金) 20:49:05.39 ID:xvPSieSL
  ────────────────────────────────
 

侑(規定値を逸脱した異常な百合係数を持ちながら、サイコレズを狩るために生かされた狩猟犬……執行官)

侑(私が命を預かる人たちの名前……)

侑(仲良く出来るかな……)

 
 『危険が及ぶと判断すれば、執行官であろうと躊躇せず執行してください』

 
侑(……そんな考え方を持つこと自体、間違いなのかもしれないけど)

 「ランデブーポイントに着きました。ナビゲーションを終了します」

侑「……? ここ、だよね……?」

侑(誰もいない……でもデバイスのナビは……)
 

 「動かないで」
 

侑「!」
 
15: (たこやき) 2022/10/28(金) 20:51:51.59 ID:xvPSieSL
 「ゆっくり両手を挙げて。手はそのまま頭の上に」

侑「だ、だれ!?」

 「はぁ……0点です。かすみんがサイコレズならとっくに死んでますよ? あなた」

侑「ユリネーター……? ってことは……」

かすみ「まったく、上は何を考えてるんですか……」

かすみ「いくら人材不足だからってこんなのに監視官させるなんて……」

かすみ「しかも直属だし……ほんっと信じらんない……」

侑「執行官……!?」
 
17: (たこやき) 2022/10/28(金) 20:53:56.21 ID:xvPSieSL
かすみ「ユリネーター」

侑「へ?」

かすみ「ユリネーター! 持ってるんでしょ! 出して!!」

侑「は、はい!」

かすみ「ってどこにホルダー付けてるんですか!? 本当に研修済ませたんですか!?」

侑「えっ、でもここのが出しやすいから……」

かすみ「出しやすいかどうかじゃなくて! 奪われにくいかどうかで付ける場所を考えるんですー!」

侑「ごご、ごめんなさいっ!?」

かすみ「22回! 22回ですよ!」

侑「な、何が……?」

かすみ「フラフラとここにやってきてから! 今この瞬間までの間に!」

かすみ「かすみんがあなたを〇そうと思えば〇せた回数ですよ!!」

侑「ひいぃっ!!?」
 
19: (たこやき) 2022/10/28(金) 20:56:54.67 ID:xvPSieSL
 
 
「まあまあかすみん落ち着いて落ち着いて。どーどーだよどーどー」
 

侑「!? 」

侑(だ、だれ!? てかいつの間にこんな至近距離に……!?)

かすみ「落ち着いてられませんよ! やっと補充されたと思った監視官がこれですよ!?」

かすみ「こんなの負担軽減どころか足手まといが増えるだけじゃないですか!」

 「いやいやわからないよー? なんてったって監視官だからね」

 「きっとゆうゆには何かすごい秘密があるんだよ」

侑「ゆ、ゆうゆ……?」

 「それに今こうやって見てる限りでもわかることあるし」

かすみ「はぁ? なんですかそれ、これ以上この人の何がわかるって言うんですか」
 
20: (たこやき) 2022/10/28(金) 20:59:51.58 ID:xvPSieSL
 「めっちゃ可愛い! あどけないながらもボーイッシュな顔つきしてるし、男装とか似合いそう!」

 「現に今の着られてる感満載のスーツ姿もなかなか……」

侑「ご、ごめん、もういいかな……?」

かすみ「あ"?」

 「んー?」

侑「もしかしなくても、二人は執行官、だよね……?」
 
 
 「……」スチャ

 
侑「なっ」
 
 
 『公安局百合課1係、監視官、高咲侑』

 『執行対象ではありません。トリガーをロックします』

 
 「便利だよねー、これ」

かすみ「もうっ……とっとと行きますよ」
 
21: (たこやき) 2022/10/28(金) 21:02:39.37 ID:xvPSieSL
 「えー、ちゃんと自己紹介くらいしようよー」

かすみ「思ってもないこと言わないでくださいよ、今は捜査中ですよ?」

かすみ「あなたも。私たちのことが知りたいならそれ使って見ればいいじゃないですか」

侑「……」スチャ


 『公安局百合課1係、執行官、中須かすみ』

 『百合係数オーバー242。任意執行対象です』

 『公安局百合課1係、執行官、宮下愛』

 『百合係数オーバー339。任意執行対象です』


侑(二人とも百合係数オーバー200……!?)

侑(これが、執行官……)

愛「自己紹介終わり。これからよろしくね」
 
22: (たこやき) 2022/10/28(金) 21:05:11.47 ID:xvPSieSL
  
──────────────────────────────────────────────────
 
 『ランジュ、昨日誘ってくれたライブの件なのですが……』

 『ライブ? ああ、席のことね』 

 『安心して、栞子のためにとっておきの場所を用意して……』

 『実は、その……せつ奈さんのライブと日時が被っていたんです』

 『え?』

 『ランジュから誘われたときは日程を知らされていなかったので、返事をするのは待った方が良いとも思ったのですが……』

 『まさかブッキングするなんて……』

 『あ、あのね栞子、今回のライブ、ランジュの日本で初めてのライブなの!』
 
24: (たこやき) 2022/10/28(金) 21:06:58.26 ID:xvPSieSL
 『向こうでやってきたことの全てを詰め込んだ、ランジュにとっての集大成のステージで……』

 『演出はプロがやるし、曲だって新曲を用意しているし、箱は都内で最大級の場所で……!』

 『ランジュのライブも、とても行きたいのですが……こういう時は先にした約束を優先するべきだと思いますので……』

 『……先に誘われていたからって、栞子はランジュよりせつ菜を優先するの……?』

 『それは……』

 『せつ菜のライブには何度も行ってるのよね……? 今回だって、何回もやってるうちの一つで……』

 『……私にとってせつ菜さんのライブは、どんな時も特別なものです』

 『ッ……!!』
 
25: (たこやき) 2022/10/28(金) 21:08:56.69 ID:xvPSieSL
 『もちろんランジュのライブも特別です』

 『他のどんな用事が入っても行こうと思ってました』

 『でも、今回は……』

 『……謝謝。わがまま言ってるのはランジュね』

 『同じだけ特別なら、先にした約束を優先する……そういうことよね』

 『本当にすみませんランジュ……次は必ず……』

 『無問題ラ。ランジュがアイドルである限り、ステージは何度でもあるんだから』
 
26: (たこやき) 2022/10/28(金) 21:11:01.91 ID:xvPSieSL
 『ライブの感想、また訊かせてね』

 『はい、それでは私は生徒会がありますので、これで』

 『……』

 『ね、ねえ栞子!』

 『?』

 『今日は、その……一緒に帰れる……?』

 『……もちろんです。放課後、迎えに行きますね』

 『っ……!』

 『好的!!』
 
27: (たこやき) 2022/10/28(金) 21:13:26.32 ID:xvPSieSL
  
────────────────────────────────────────────────────
  
栞子(ここがランジュの百合係数を一番最初に観測した区域……)

栞子(街頭スキャナや監視カメラが周囲の建物ごと激しく損壊している……)

栞子(これが"ライブ"の力だと言うなら……ランジュはもう……)

 
 『栞子ちゃん』

 
栞子『……璃奈さん。ちょうど良かったです。この周辺を簡易で結構ですので解析してもらえますか?』

璃奈『もう終わってる。栞子ちゃんの思ってるとおり、損壊してる建物や燃焼物からレズの残滓反応がある』

璃奈『スクールアイドルのものと見て間違いない』

栞子「嫌な予感がします。解析を進めてください」

栞子(この残滓反応……まさか……)
 
28: (たこやき) 2022/10/28(金) 21:15:51.34 ID:xvPSieSL
栞子『ミアさん、聞こえますか』

ミア『……なんだよ。今日のシフトは璃奈だろ』

栞子『今すぐ"ライブ"でせつ菜さんを探知してください』

ミア『はぁ? いきなりなに言ってるんだ』

栞子『早く』

ミア『意味がわからない、ちゃんと説明してくれ。そもそも今日せつ菜は非番だろ』

栞子『僅かですが、この周辺の損壊物からせつ菜さんのレズを感じます』

璃奈『!?』

ミア『おいおい……嘘だろ……』

栞子『嘘かどうかはやればわかります、早く』
 
29: (たこやき) 2022/10/28(金) 21:18:49.90 ID:xvPSieSL
ミア「チッ……疲れるから嫌なのに……」

璃奈「緊急事態、頑張って」

ミア「何もなかったら許さないからな……」

 
ミア「───"ライブ"! Stars we chase!!」

 
ミア「!」

栞子『どうですか?』

ミア『……栞子。そこから北北東に1キロ先だ』

ミア『せつ菜がいる』
 
30: (たこやき) 2022/10/28(金) 21:21:51.81 ID:xvPSieSL
栞子「はぁ……ぁ……!」

栞子(せつ菜さん、どうして……!?)

栞子(サイコレズの覚醒に気付いて一人で対応に向かった……?)

栞子(いや、そんな無謀なことをする人じゃない)

栞子(どんな緊急事態でも一人で現場に行くなんてありえない)

栞子(必ず私たちに連絡がくるはず……連絡をする暇もなく襲われた……?)

栞子「襲う……? ランジュが……?」

栞子(いや、ありえない……通報の段階ではランジュの百合係数は警告域だった……)

栞子(人に危害を加えるなんて、そんな……)

栞子(でも、ならこの状況は、この感覚はどう説明する……?)

栞子(この私のよく知っている、微弱で今にも消えそうなレズと……)

栞子(嫉妬と憎悪に満ち溢れた、突き刺してくるようなサイコレズを……どう説明して……)
 
32: (たこやき) 2022/10/28(金) 21:23:53.10 ID:xvPSieSL
ミア『栞子、着いたのか?』

璃奈『そのあたりのセキュリティシステムはすべて壊れてる』

璃奈『こっちからは何もわからない。状況の報告を』
 

 「………」
 

ミア「聞こえているのか! おい!」

璃奈「……確認してくる」

ミア「待って璃奈、危険すぎる。現場の執行官に行かせるべきだ」

璃奈「私が一番早い」

ミア「落ち着いて考え よ。覚醒したサイコレズがいるかもしれないんだぞ」
 
33: (たこやき) 2022/10/28(金) 21:26:18.94 ID:xvPSieSL
璃奈「栞子ちゃんの色相に強力なストレス反応が出てる、戦える状態にない……すぐに行かないと……」

ミア「"ツナガルコネクト"は目に見えている場所しか繋げないはずだ」

璃奈「!」

ミア「あの周辺のセキュリティシステムはすべてアウトしてる。どうやってここと向こうを繋ぐつもりなんだよ」

璃奈「っ……」
 
ミア『高咲監視官、聞こえてるか』

侑『えっ!? 誰っ!? なにっ!?』

ミア『栞子……三船監視官との連絡が』

栞子『待ってください』

ミア『栞子、無事なのか!?』

栞子『……大丈夫です。ご心配をおかけしました』
 
35: (たこやき) 2022/10/28(金) 21:29:32.58 ID:xvPSieSL
ミア『状況は?』

栞子『E4区域にて中川執行官を発見。……意識不明の重体です』

侑『え……?』

栞子『現在応急処置をしています。周囲の損壊が激しく、"ライブ"を用いた激しい戦闘が行われたと思われます』

栞子『璃奈さん、ツナガルコネクトでエマさんをここに呼ぶことは可能ですか?』

璃奈『"ライブ"はできる。エマさんは……すぐに掛け合う。ちょっと待ってて』

璃奈『来れなかった時のために他の応援と医療ドローンを要請しておく』

栞子『……ありがとうございます。監視官、聞こえますか』

侑『その人、大丈夫なの……? 意識不明の重体って……』

栞子『このまま応急処置を続ける必要があり、予断は許されない状況です』

栞子『応援が来るまで私はここに残ります』

栞子『あなたは引き続きショウ・ランジュの捜索を続けてください』
 
36: (たこやき) 2022/10/28(金) 21:32:06.82 ID:xvPSieSL
栞子『今から執行官たちにも情報を共有しますが……重体の執行官のことは伏せます』

栞子『この話は内密に。分かりましたか?』

侑『……了解です』

栞子『分析官、このまま全回線通信を』
 
 
 
栞子『全執行官、および監視官、聞こえますか』

栞子『ショウ・ランジュはサイコレズを覚醒させたスクールアイドルです』

栞子『極めて高い戦闘力を有していることから、脅威判定を更新します』

栞子『ユリネーターのみでの鎮圧が不可能と判断した場合は”ライブ"を行使してください』
 
37: (たこやき) 2022/10/28(金) 21:34:34.59 ID:xvPSieSL
かすみ『消してもいいってこと?』

栞子『……現場の判断に任せます』

侑『ちょ、ちょっと待って! 消すって……!?』

栞子『言ったはずです、極めて高い戦闘能力を有していると』

愛『ちょい待ち。どうして戦闘力が高いってわかるの?』

愛『サイコレズの覚醒そのものは残滓からわかるかもだけど、そこから能力傾向の特定まではできないよね?』

栞子『……』

愛『しおってぃー?』

ミア『通報があったポイント周辺の建物やセキュリティシステムが全部消し飛んでるんだよ』

ミア『このレベルの被害を出せるのはサイコレズを使った能力以外に考えられない』
 
38: (たこやき) 2022/10/28(金) 21:36:40.40 ID:xvPSieSL
かすみ『対象の力は? サイコレズの残滓反応から何か分からないんですか?』

璃奈『解析中。ポイントから手がかりを拾ってるけど、物理的な攻撃力を持った能力であることしかわからない』

栞子『高咲監視官は中須執行官、宮下執行官の2人を引き連れショウ・ランジュの捜索を続けてください』
 

 『私は何をすればいいのかしら?』

 
栞子『引き続き広範囲の捜索を。私も後から合流します』

栞子『何か質問は?』

侑『これって対象の確保が目的なんだよね……?』

栞子『対象がスクールアイドルと判明し、その力を行使した可能性がある以上……排除も視野に入れて動きます』

侑『排除って……私たちの仕事はサイコレズを救うことじゃ……!?』

かすみ『通信切りますね。この人にはあとでお説教しておきますので』
 
39: (たこやき) 2022/10/28(金) 21:39:29.34 ID:xvPSieSL
かすみ「はぁ……面倒くさいことになってきましたねー……」

愛「ユリネーター撃って定時退勤かと思いきや、スクールアイドルときたか……」

侑「あの、本当に消したりしないよね……?」

かすみ「それを判断するのはこの社会の審判者であるユリネーターです」

かすみ「ユリネーターが消すべきと判断したら私たちは引き金を引く……ただそれだけのことです」

侑「そんな……」

かすみ「一般人のサイコレズが異常値を出したくらいなら、あなたの考えてるとおり確保して治療施設にぶち込めばそれで終わりです」

かすみ「でもこれはもうそんな次元の話じゃないんです。スクールアイドルがサイコレズを覚醒させたんですよ?」

愛「まず考えるべきは自分たちの命。対象をどうするかはその次、だね」
 
40: (たこやき) 2022/10/28(金) 21:42:17.47 ID:xvPSieSL
侑「……」

愛「まあそんな怖い顔しなくても大丈夫だって」

愛「愛さんがいる限り誰も死なせなんてしないから」

愛「もちろん、ショウ・ランジュもね」

かすみ「愛せんぱーい、かすみんのことぉ、忘れてませんかぁ?」

愛「頼りにしてるっすよー」

侑「宮下さん、中須さん……」

愛「愛でいいよ? あと私たちの方が立場は下だしもっとくだけてくだけて」

侑「それは、まだちょっと早いような……」

愛「ゆうゆがフランクにしてくれないとこのノリで喋れなくなっちゃうから」

侑「でも……」

かすみ「お喋りするなら移動しながらにしてください。しお子に怒られちゃいますよ」
 
41: (たこやき) 2022/10/28(金) 21:44:47.11 ID:xvPSieSL
  
────────────────────────────────────────────────────
  
 『璃奈ちゃん、そっちの調子はどう?』

璃奈『街頭スキャナにもセキュリティドローンにも反応はない』

 『まあそうよね。こっちも何も感じないわ』

璃奈『果林さんと私でこれだけ広範囲を捜索して何も反応がないなんてありえない……』

果林『もう逃げちゃってたりして』

璃奈『この区画は警察が完全に封鎖している。考えにくい』

果林『物理的には、でしょ』

果林『強力なサイコレズを使った"ライブ"で何かした可能性もあるんじゃないかしら』

果林『例えば、璃奈ちゃんみたいにテレポートしたり』

璃奈『私の力は見えているものを繋いでるだけ」

璃奈『想像した場所にテレポートできるなら、それはとてつもない力……それこそあり得ない……』
 
42: (たこやき) 2022/10/28(金) 21:47:01.48 ID:xvPSieSL
果林『どうして言い切れるの? レズならともかく、サイコレズなら十分可能だと思うけれど』

璃奈『それは……』

果林『分析官は根拠なき論弁を唱えない』

果林『ねえ、せつ菜が受けた傷ってどんな具合なの?』

璃奈『……何の話?』

果林『ミアちゃんのStars we chaseは星の光に作用した探知能力……』

果林『私の力との相性、なのかは知らないけど、なんとなく誰を探知したのか分かっちゃうのよね』

璃奈『……』

果林『せつ菜は生きてるの?』

璃奈『……予断を許さない状況。今、栞子ちゃんが懸命に応急処置している』
 
43: (たこやき) 2022/10/28(金) 21:49:16.40 ID:xvPSieSL
果林『エマは?』

璃奈『別の事件の捜査中、らしい。上はそれ以上の情報を教えてくれない……』

璃奈『状況を説明して応援要請を出したけど……却下された』

果林『……この音声記録って上も聞いてるのよね?』

璃奈『緊急時以外はリアルタイムじゃない』

果林『今がその緊急時だと思うけど……繋げられるかしら?』

璃奈『システム権限がない……でも、できる』

果林『お願いしてもいい? 少しでいいから』

璃奈『わかった』

 

璃奈『"ライブ"──ツナガルコネクト──』
 
44: (たこやき) 2022/10/28(金) 21:52:14.46 ID:xvPSieSL
果林『ごきげんようおばさま方。全員聞こえてるかしら?』

果林『公安局百合課1係執行官、朝香果林よ』

果林『どういうつもりでエマを出し渋ってるかは知らないけど』

果林「せつ菜が死んだらあなたたち全員〇すわ』

果林『死にたくなかったらエマを今すぐこっちに寄越しなさい』

果林『以上』

 

璃奈『……』

果林『ごめんね、こんなことで能力使わせちゃって』

璃奈『ううん、大丈夫。カッコよかった。痺れた』

果林『そこまでストレートに褒められると照れるわね』
 
45: (たこやき) 2022/10/28(金) 21:55:14.05 ID:xvPSieSL
璃奈『果林さん、聞いてほしい話がある』

果林『愛の告白? それともせつ菜のこと?』

璃奈『……栞子ちゃんの指示で私からは話せなかった、ごめん』

果林『謝る必要はないわ。栞子ちゃんの判断は正しい』

果林『せつ菜がやられたとなると、かすみちゃんや愛が激昂して対象を〇しかねないわ』

璃奈『せつ菜さんは純粋なレズを力としたスクールアイドルなら最強……』

璃奈『ショウ・ランジュがそれを正面から打ち負かしたのなら、"ライブ"はサイコレズを力にした攻撃的なもの以外に考えられない』

果林『テレポートみたいな強力な"ライブ"がレズで作用することは?』

璃奈『世界最強のスクールアイドル、クラス1stでもそんな強力なレズは持ち得ない……』

果林『"ライブ"は攻撃性のもの。消えたり飛んだりできないのであれば、考えられる可能性は一つ……』

璃奈『協力者がいる』
 
48: (たこやき) 2022/10/28(金) 21:58:08.46 ID:xvPSieSL
果林『他にスクールアイドルがいるなら、力を使ってショウ・ランジュと逃げることだってできるわね』

璃奈『わざわざ公安局の捜査線のど真ん中に入ってくるなんてリスクが高すぎる……』

璃奈『協力者はいる、でもそこまでしてショウ・ランジュを助ける理由がわからない』

果林『助けてるのか、はたまた利用しようとしているのか……』

璃奈『利用……?』

果林『ここ最近、公安局の人間が被害に遭ってる事件が頻繁に起きてるわよね』

璃奈『!』

果林『仮に私たち百合課がショウ・ランジュのような強力なサイコレズに狙われているとしたら……今この状況で標的になるのは誰だと思う?』

璃奈『……満足に戦えない人』

果林『栞子ちゃんの状況、わかるかしら?』

璃奈『あの周辺の街頭スキャナや監視カメラは全部壊れてる……』

果林『急いだ方がいいわね』
 
49: (たこやき) 2022/10/28(金) 22:00:49.56 ID:xvPSieSL
 
────────────────────────────────────────────────────
 
 『栞子……』

 『?』

 『いつも一緒に帰ってくれて、ありがとう……』

 『ふふ、帰るだけなのにありがとうって……変なことを言うんですね、ランジュは』

 『うぅ……』

 『私たちは友達なんですから、これくらい当然です』

 『友達……』

 『ね、ねえ、栞子!』

 『?』

 『今週の日曜日……空いてる……?』

 『……すみません、その日は生徒会の活動があって』

 『……そう』
 
50: (たこやき) 2022/10/28(金) 22:03:36.75 ID:xvPSieSL
 『どこか行きたい場所でもあるのですか?』

 『行きたい場所じゃなくて、栞子と……』

 『?』
 
 『ううん、いいの。他の子を誘うわ』

 『そうですか。また誘って……いや、今度は私から誘いますね』

 『!』

 『では、また明日』


 

 『栞子が、誘ってくれる……」

 『また、今度……ふふっ……』


 『ランジュさん、ですよね?』


 『え?』
 
51: (たこやき) 2022/10/28(金) 22:06:25.98 ID:xvPSieSL
 『やっぱりそう。ショウ・ランジュさん』

 『私のこと、分かりませんか? 』

 『えっと……』

 『選択授業。音楽、受けてますよね』

 『音楽は受けてるけど……』

 『今度の発表、私たち同じグループですよ? ほら、思い出せませんか?』

 『ごめんなさい……ランジュ、やっぱりあなたとは初対面だと思うんだけど……』

 『そうですか……なら私の歌を聴いてみてください』

 『そうすればきっと、思い出しますから』

 『歌……?』

 『"ライブ"』
  

 『やがて一つになる物語』

  
 
52: (たこやき) 2022/10/28(金) 22:09:48.72 ID:xvPSieSL
  
────────────────────────────────────────────────────
  
愛「ダメだ、しおってぃー出ない」

かすみ『果林先輩、そこからしお子のところまで全力出して何分かかりますか?』

果林『どれだけ早くても20分以上はかかるでしょうね』

かすみ「ここからの方が早いですね……」

愛『りなりー、応援はどれくらいかかる?』

璃奈『百合課は常に人手不足。すぐに駆けつけられる人でも30分は必要』

かすみ「愛先輩、すぐにしお子のところに行ってください。愛先輩なら5分もかからないですよね?」

愛「ねえゆうゆ、ちなみにだけど"ライブ"は使えるの?」

侑「使えません……」

かすみ「え"っ」
 
54: (たこやき) 2022/10/28(金) 22:12:38.90 ID:xvPSieSL
愛「そっか。ならゆうゆも襲われる可能性があるわけだし、私はここを離れられないね」

かすみ「ちょっと待ってください! ……かすみんがいるんですけど?」

愛「流石のかすみんでもゆうゆを守りながら初見のサイコレズを相手にするのは無理だって」

愛「一人が時間稼いで一人がゆうゆと一緒に逃げられる三人でいるのが一番安全だよ」

かすみ「じゃあしお子はどうするんですか!?」

愛「大丈夫っしょ。監視官で三人しかいない数字持ちだよ? やられるわけないよ」

愛「頭も良いし一人で無茶するようなタイプでもないし、ちゃんと状況判断するって」

かすみ「それは……そうかもですけど……」
 
55: (たこやき) 2022/10/28(金) 22:15:19.59 ID:xvPSieSL
璃奈『……愛さん、かすみちゃん、落ち着いて聞いて』

璃奈『せつ菜さんが覚醒したサイコレズと交戦して意識不明の重体』

璃奈『栞子ちゃんはせつ菜さんの応急処置で力が使えない』

かすみ『は……?』

愛『……色々訊きたいことはあるけど、その時間も勿体ないね』

愛『取り急ぎ二つだけ。黙ってたのはしおってぃーの命令?』

璃奈『うん……』

愛『カリンは気付いてたの?』

果林『状況の共有を提案したのは私よ、あと今そっちに向かってる』

愛『わかった。私は今からしおってぃーのとこ行くから、カリンも急いで』
 
56: (たこやき) 2022/10/28(金) 22:17:11.79 ID:xvPSieSL
愛「かすみんはゆうゆ連れて今すぐ本庁に戻ろうか」

かすみ「……せつ菜先輩がやられたんですよ、愛先輩一人でどうにかなるわけないじゃないですか」

愛「わかってるって。しおってぃーとせっつー回収してすぐ逃げるから」

愛「無理そうならカリンが来るまで時間稼ぎ」

愛「それでいいよね? ゆうゆ」

侑「う、うん……」

愛「決まりだね」
 
58: (たこやき) 2022/10/28(金) 22:20:30.23 ID:xvPSieSL
  
────────────────────────────────────────────────────
  
せつ菜「……」

栞子(呼吸が安定してきてる……なんとか命は繋ぎ止めた……)

栞子(でもこれはあくまで応急処置……コンセントレイトで辺りに散らばったせつ菜さんの力を集めてるだけ……)

栞子(応援が来るまでここは動けない……力を解いたらせつ菜さんは……)

栞子『……璃奈さん、聞こえますか』

栞子『せつ菜さんの容態を安定させましたが、以前危険な状況が続いています』

栞子『応援が到着するまであとどれくらいかかりそうですか?』


 『……』

 
栞子『璃奈さん?』
 
59: (たこやき) 2022/10/28(金) 22:23:29.15 ID:xvPSieSL
栞子(繋がらない……システムエラー……?)

栞子(デバイスの故障? いや、オフライン機能に問題はない)

栞子(本庁のサーバー側の問題……? 一体何が……)
 
 
 「本当に……公安局の監視官と執行官だったのね」
 
 
栞子「!」

 
 「ずっとおかしいと思ってた……」

 「栞子は生徒会長で、せつ菜はスクールアイドルで……」

 「二人を繫ぐものなんてない、仲良くなるきっかけなんて何もないのに……」

 
栞子「ラン、ジュ……」
 
60: (たこやき) 2022/10/28(金) 22:26:30.81 ID:xvPSieSL
ランジュ「そうやってランジュの知らないところで仲良くして、二人だけの秘密を作っていたのね……」

栞子「公安局の職務は、機密事項で……」

ランジュ「ランジュと一緒に帰ったフリをして、せつ菜のところに行ってたのも機密事項なの……?」

栞子「!」

ランジュ「全部知ってるわ……」

ランジュ「ランジュに隠れて、栞子がせつ菜としていたこと、全部……!」

栞子「落ち着いてくださいランジュ、あなたが思っているようなことは何も……」

ランジュ「嘘よ! ちゃんとこの目で見たわ!」

ランジュ「栞子とせつ菜が生徒会室でキスしているところを!!」

栞子「なっ!?」
 
61: (たこやき) 2022/10/28(金) 22:29:17.93 ID:xvPSieSL
栞子「そそ、そんなことしてませんっ!? 」

ランジュ「この期に及んで認めないつもり……?」

栞子「事実無根です! 私とせつ菜さんはそんな関係じゃ……!」

ランジュ「じゃあランジュが見た光景はなんだって言うの……?」

栞子「何かの間違いです!」

ランジュ「間違い……?」

ランジュ「今だって栞子は大切そうにせつ菜のことを抱きしめてるじゃない……それも間違いだって言うの……?」

栞子「これは治療をしているんです!」

栞子「応急処置でなんとか容態を保っていますが、今も危険な状態で……!」
 
62: (たこやき) 2022/10/28(金) 22:32:30.72 ID:xvPSieSL
ランジュ「そう……せつ菜はまだ生きてるのね……」

ランジュ「完全に死んだと思ってたわ。随分と頑丈なのね、執行官っていうのは」

栞子「ッ……!」

栞子「やはりランジュだったのですね……! せつ菜さんを手にかけたのは……!」

ランジュ「先に仕掛けてきたのはせつ菜よ」

ランジュ「久しぶりに会ったと思えば、いきなり異常者扱いされたわ」

ランジュ「精神病院で治療を受けろって。完全に喧嘩売ってるわよね?」

ランジュ「本当に不愉快だったわ。でも聞いて? 最初は我慢したのよ?」

ランジュ「友達だと思ってたし、栞子とそういう関係にあるってことも知ってた」

ランジュ「だから無視しようとしたの。偉いでしょ?」
 
63: (たこやき) 2022/10/28(金) 22:35:40.21 ID:xvPSieSL
ランジュ「どうしようもないくらい憎くて疎ましい相手に変なこと言われてもちゃんと自制した」

ランジュ「それなのに、せつ菜はしつこく食い下がってきて……銃口を向けてきた……」

ランジュ「挙げ句の果てにはなんて言ったと思う……?」

ランジュ「記憶を消すって言ったのよ……?」

栞子「!」

ランジュ「せつ菜はッ! ランジュの栞子に関する記憶を消すって言ったの!」

ランジュ「ランジュが栞子のことを好きって気持ちを消すって! そう言ったのよっ!?」

ランジュ「栞子にとっての一番がランジュじゃなくてもいいって……」

ランジュ「栞子とせつ菜が想い合ってても、栞子が幸せならそれでいいって……」

ランジュ「そう思おうとしてたのに……我慢しようとしてたのに……!」
 
64: (たこやき) 2022/10/28(金) 22:40:09.83 ID:xvPSieSL
ランジュ「せつ菜はッ! 栞子だけじゃなくてっ、栞子のことが好きっていうこの気持ちまで奪おうとしたっ!!」

栞子「違います! せつ菜さんは奪おうとしたんじゃない!」

栞子「あなたを救おうとしたんです!」

栞子「強大なサイコレズは」

ランジュ「宿主の精神を蝕み続け、破壊する」

栞子「!」

ランジュ「サイコレズで壊れた心は凶悪な犯罪の温床になる……」

ランジュ「拉致、監禁、傷害、強姦、〇人……宿主やその周囲の人間を巻き込み、すべてを破滅へと導く」

ランジュ「終着点は死……救いを求めて自らの命を絶つ……」

ランジュ「だから、手遅れになる前にサイコレズの根源である恋心を記憶ごと消す」

ランジュ「そうするしか方法がないから」
 
65: (たこやき) 2022/10/28(金) 22:44:07.32 ID:xvPSieSL
ランジュ「あなたたちが持っている銃はそのための装置。引き金を引くのが執行官と監視官の仕事」

ランジュ「全部、せつ菜から教えてもらったわ」

栞子「ならどうして……!?」

ランジュ「記憶を消してくれなんて誰も頼んでないわ」

栞子「記憶を消さないと死んでしまうかもしれないんですよ!?」

ランジュ「この想いが消えるくらいなら……死んだ方がマシよ」

栞子「そん、な……」

ランジュ「どれだけ辛くても、どれだけ苦しくても……」

ランジュ「この想いも、痛みも、全部私のもの……私だけのものなの……!」

ランジュ「消すなんて絶対に許さない……!誰にも奪わせたりなんてしないわ!!」
 
67: (たこやき) 2022/10/28(金) 22:48:22.23 ID:xvPSieSL
栞子(サイコレズは"想う"力……)

栞子(ランジュのこれは、あまりに強すぎる……)

栞子(一体どれだけ強大な力が生まれたのか……)

栞子(その力を生むために、どれだけの命が今、こうしている間にも削られているのか……)

栞子(監視官として、親友として……見過ごすことはできないっ……)

ランジュ「そう……」

ランジュ「栞子も、ランジュに銃口を向けるのね」

ランジュ「あなたのことを好きでいることすら、許してくれないのね……」
 
68: (たこやき) 2022/10/28(金) 22:52:40.20 ID:xvPSieSL
栞子「……その"想い"を生んだのが、私だと言うのなら」

栞子「それを消し去るのは……私の使命です」

 
 『百合係数オーバー402。執行対象です』

 『執行モード、リーサル・イレイザー。対象の記憶を抹消します』

 『落ち着いて照準を定め、対象を排除してください』

 
ランジュ「言ったはずよ、誰にも奪わせないって」

ランジュ「引き金を引いたら今度こそせつ菜を〇すわ」

栞子「!」

ランジュ「試してみる? それをランジュに当てるのが先か、せつ菜が〇されるのが先か」

栞子「ッ……!」
 
69: (たこやき) 2022/10/28(金) 22:57:40.45 ID:xvPSieSL
ランジュ「どれだけ栞子が強くても、せつ菜を庇いながらランジュに勝つなんて無理よね」

ランジュ「それができるならとっくにそうしてる、違うかしら」

栞子「お願いです、ランジュ……抵抗しないでください……」

栞子「これはあなたのためなんですっ……!」

栞子「命以上に大切なものなんてないっ!!」

ランジュ「命より大切なものならあるわ。私はそのために生きてそのために死ぬの」

栞子「嫌です……あなたがいない世界なんて嫌……」

栞子「お願いです、生きてください…… 」

栞子「記憶を失ってもまたやり直せます、だからっ……」
 

 
栞子「私と、生きて……」
 
 
70: (たこやき) 2022/10/28(金) 23:01:15.46 ID:xvPSieSL
ランジュ「……バイバイ、栞子」

ランジュ「愛してるわ」

栞子「ランっ」


ランジュ「"ライブ"」

 
ランジュ「Eutopia」

  
 
71: (たこやき) 2022/10/28(金) 23:05:59.02 ID:xvPSieSL
 『公安局です。急患の搬送のため治療ドローンが通ります。周囲から離れてください』

 『繰り返します』

 『公安局です。急患の搬送のため治療ドローンが通ります。周囲から離れてください』


ランジュ「……」


 「ねえ」

 「それ、君がやったの?」
 
 
72: (たこやき) 2022/10/28(金) 23:10:33.60 ID:xvPSieSL
ランジュ「片方は重症よ。早く連れて行った方がいいわ」
 

 「質問に答えてくれないかな」

 
ランジュ「名前も知らない相手と話すことなんてないわ」


 「公安局百合課1係、執行官宮下愛」


愛「そこで倒れてる二人、友達なんだよね」

愛「君がやったの?」

ランジュ「栞子は寝ているだけよ」

愛「せっつーは?」

ランジュ「せつ菜のこと? サイコレズで内臓ズタズタにしてやったわ」

ランジュ「言っとくけど正当防衛よ。向こうが〇す気で来たんだからこっちも相応の力で返しただけ」

ランジュ「右半身吹き飛ばされたのよ? 本当に死ぬかと思ったんだから」
 
73: (たこやき) 2022/10/28(金) 23:15:13.82 ID:xvPSieSL
ランジュ「ねえ、執行官ってみんなあんなにも強いの?」

愛「せっつーはクラス4th。上から数えて4番目だよ」

ランジュ「せつ菜より強いのがあと3人もいるってこと? とんでもないわね、あなたたち」

ランジュ「ちなみに。ランジュのことを〇す気マンマンのあなたは何番なの?」

愛「私は5th。5番目だよ」

ランジュ「そう。なら心配なさそうね」

愛「うん、心配しなくていい」

愛「君の思ってる通り、せっつーが勝てなかった相手に私が勝つなんてことありえない」

愛「それくらい序列ってのは絶対だから。4と5って言っても1と100くらいは違うんだよね」
 
74: (たこやき) 2022/10/28(金) 23:19:58.07 ID:xvPSieSL
ランジュ「力の差がわかってるのにどうして挑もうとするの?」

愛「友達が酷い目に遭ったんだよ?」

愛「1発くらい本気でブン殴らないと気が済まないっしょ」

ランジュ「……」

愛「あと、せっつーにも勝っちゃう、半身無くなっても死なないような化け物相手だったら」

愛「本気出せるかなって」

愛「いや、ぶっちゃけさ、君のこと見たその瞬間から」

 

愛「そのことしか頭にないんだよね」

  
 
76: (たこやき) 2022/10/28(金) 23:25:28.79 ID:xvPSieSL
ランジュ「せつ菜は顔見知りだし、栞子の恋人だから〇さなかっただけよ」

ランジュ「見ず知らずのあなたには容赦しないわ、それでもいいの?」

愛「ふふ、お互い思いっきりやれそうでサイッコーだね……」

ランジュ「そんなに死にたいなら……〇してあげるわ」


ランジュ「"ライブ"!」

ランジュ「"Eutopia"!」


愛「"ライブ"!」

愛「"めっちゃGoing!!"」
 
77: (たこやき) 2022/10/28(金) 23:29:14.14 ID:xvPSieSL
愛「いち、にの、」

愛「ドン!!」

ランジュ(速ッ……!?)

愛「一つ!」

愛「訊いてもいいかな!」

ランジュ「なによっ!?」

愛「しおってぃーとせっつーデキてるってマジ!!?」
 
78: (たこやき) 2022/10/28(金) 23:34:43.28 ID:xvPSieSL
 
────────────────────────────────────────────────────
  
侑「はぁ……ぁ……」

侑「かすみちゃんっ……ちょっと、待ってっ……」

かすみ「まさかもう体力切れとか言いませんよね……?」

侑「こんなに、走ったのっ……生まれて初めてでっ……」

かすみ「死ぬ気で走ってください! 緊急事態なんですよ!?」

かすみ「せつ菜先輩を倒しちゃうような厄災級のサイコレズが覚醒しただけでもヤバイのに、本庁との通信まで切れてるんです!」

かすみ「これがりな子たちの言うとおり公安局へのテロ攻撃なら、一番危ないのは監視官であるあなたです!!」

かすみ「死にたくなかったらとにかく走ってください!」

侑「そんなこと言われても、もう動けないよっ……」

かすみ「ぐぬぬ……!」
 
79: (たこやき) 2022/10/28(金) 23:38:31.56 ID:xvPSieSL
侑「かすみちゃんは、すごいね……汗はかいてるけど、息は切らしてないし……」

侑「執行官って、みんなそんなに体力あるの……?」

かすみ「採用試験をクリアするためには基礎体力は必須です」

かすみ「これくらいの体力、みんな死ぬ気で身に付けますよ」

かすみ「誰も隔離施設になんて行きたくありませんから」

かすみ「逆にどうしてその体力で"ライブ"も使えないのに監視官になれたんですか」

かすみ「監視官の採用試験って地方支部でも倍率数千倍ですよ?」

かすみ「それこそ本庁直属の百合課1係はエリート中のエリートしか配属されないのに……」

侑「そ、そうなんだ……みんなすごいんだね……」
 
80: (たこやき) 2022/10/28(金) 23:41:34.82 ID:xvPSieSL
かすみ「あ、な、た、も!」

かすみ「すごいはずなんです!」

かすみ「1係の監視官なんて核兵器みたいな能力持ってる人しかなれないって言われてるんですよ!?」

かすみ「まさか……」

かすみ「ダメダメなフリしてかすみんたちを試してるんじゃ……?」

侑「してないしてない!?」

かすみ「今この状況も全部あなたが1係の実力を見るために仕組んだ訓練で……」


 「かすみさん」
  

かすみ「へ?」
 

 「久しぶりだね……」


かすみ「ななっ……!?」
 
95: (たこやき) 2022/10/29(土) 16:34:44.65 ID:6kEgqsIN
かすみ「しし、しず子っ!!?」

しずく「……」ギュ…

かすみ「なゃっ!?」

しずく「会いたかった……」

しずく「ずっと、ずっと……」

侑「だ、誰……?」

かすみ「前の学校の友達です……じゃなくて、こんなところで何して……?」

しずく「……もうすぐ、全部終わるから」

しずく「だから、もう少しだけ待っててね……」

かすみ「なに、言って……」
 
96: (たこやき) 2022/10/29(土) 16:40:40.42 ID:6kEgqsIN
しずく「大好きだよ、かすみさん」

しずく「これからもずっと、あなただけを愛し続ける……だから」

 
しずく「──もう少しだけ、力を貸して」
 

かすみ「!」

かすみ(この感じ……まさか……!?)

かすみ「侑先輩! 離れっ」

 
しずく「"ライブ"」

 
しずく「やがて一つになる物語」
 
97: (たこやき) 2022/10/29(土) 16:47:19.69 ID:6kEgqsIN
侑「かすみ、ちゃん……?」
 
 
かすみ「……」
 
 
侑「何をしたの……?」

しずく「わかりやすく言うなら、少し眠ってもらっただけです」

侑「眠ってるって……そんな様子じゃ……!?」

しずく「かすみさんは私にとって世界で一番大切な人です」

しずく「間違っても傷つけるようなことはしません」
 
侑「あなたは一体……」

 
 『公安局セキュリティードローンです』

 『公安局セキュリティードローンです』
 

侑「!?」
 
98: (たこやき) 2022/10/29(土) 16:53:56.91 ID:6kEgqsIN
   
  
 『サイコレズの異常反応を検知しました。潜在心理保護執行法第2条に基づきあなたを保護します』

 『近辺の警察署または公安施設に誘導しますのでドローンの案内に従い移動してください』

 『案内に従わないまたは抵抗する場合は潜在心理保護執行法第9条に基づき』
 

しずく「”ライブ”──Solitude Rain──」

侑「!?」

侑(ド、ドローンが……穴だらけに……)


 『セキュ、リ……ドロ……へ……損害……加え……と、ハ……潜、在……心……』


しずく「"ライブ"」


 『モ……ト……』


侑(凍った……)
 
99: (たこやき) 2022/10/29(土) 16:59:26.98 ID:6kEgqsIN
侑「スクール、アイドル……」

しずく「まるで何も知らない一般人みたいな反応をするんですね」

しずく「公安局の人間なら、私がかすみさんに能力を使った時点で気付くと思いますが」

侑「う、動かないで!」
 

 『百合係数オーバー482。執行対象です』

 『執行モード、リーサル・イレイザー。対象の記憶を抹消します』

 『落ち着いて照準を定め、対象を排除してください』
 

侑(百合係数482……!?)

しずく「ユリネーター……裁きの神……」

しずく「恋慕の略奪者……」
 
100: (たこやき) 2022/10/29(土) 17:03:41.70 ID:6kEgqsIN
侑(百合係数がどれだけ高くても、サイコレズに覚醒しているかまではわからない)

侑(でも、この子は間違いなく覚醒してる)

侑(かすみちゃんを眠らせた力とドローンを壊した力……2つの力が発現するのはサイコレズだけだから)

しずく「あなたは執行官ですか? それとも……」

侑「監視官だよ」

しずく「そうですか……お会い出来て光栄です」

侑「サイコレズのことは、知ってるの……?」

しずく「もちろん知ってますよ?」

しずく「覚醒していることも、セラピーではもう元に戻らないことも」

侑「……」

しずく「その鉄屑の引き金を引こうとした瞬間、私はあなたを〇します」

侑「!」
 
101: (たこやき) 2022/10/29(土) 17:08:32.75 ID:6kEgqsIN
しずく「人の一番大切なものを奪おうとするんですから、当然ですよね」

侑「違うよ……私たちはあなたたちを救うために……」

しずく「私たちは誰一人としてそんなことを望んでいません」

しずく「あなたたちはただ怖いんです、サイコレズが自分たちに危害を加えることが。だから消そうとする」

しずく「あなたたちが引き金を引くのは私たちのためなんかじゃない」

しずく「救いたいのは自分自信」

侑「そんな、こと……」

しずく「1つ質問に答えたので、私からも1つ訊かせてください」

しずく「あなた、監視官なんですよね」

しずく「どんな力を持ってるんですか? とても興味があるので教えてほしいです」

侑「……私はスクールアイドルじゃないよ。だから、すごい力なんて何もない」
 
102: (たこやき) 2022/10/29(土) 17:14:28.49 ID:6kEgqsIN
しずく「……つまらない嘘をつくんですね」

侑「嘘なんかじゃないよ、本当に何も……」

しずく「"ライブ"」

侑「なっ……」

しずく「見えますか? あの機械を穴だらけにして凍らせた力です」

しずく「Solitude Rainは雨粒を操る能力……」

しずく「今から高密度に圧縮させた雨粒の塊をあなたに飛ばします」

しずく「そこの機械みたいに穴だらけになりたくなければ、力を使って防いでください」

侑「ちょっ!?」

しずく「それっ」

侑「きゃああ!?」
 
103: (たこやき) 2022/10/29(土) 17:21:36.01 ID:6kEgqsIN
侑「って、あれ……? 痛く、ない……?」

しずく「やっぱり、あるじゃないですか」

侑「え……? なに、これ……」

侑「花……?」

しずく「それ、生やしたんですか? このコンクリートの地面から」

侑「分からない……こんなの、初めてで……」

侑「わあっ!? 」

しずく「結構硬いんですね。今のは強めに撃ったのに」

侑「や、やめてくれないかな……?」

しずく「どういう力か教えてくれたらやめますよ?」

侑「私が一番教えてほしいんだけど……」
 
104: (たこやき) 2022/10/29(土) 17:26:18.15 ID:6kEgqsIN
しずく「"ライブ"」

侑「何をしてるの……?」

しずく「凍らせた雨粒同士をぶつけて雷雲を作ってます。すごく大きいやつ」

侑「まさか……」

しずく「はい、あなたに雷を落とします。本気でやるので、そのつもりでお願いします」

侑「そのつもりでって言われても……!?」

しずく「音よりも速い光速の稲妻です。これ以上火力のある物理攻撃は私にはありません」

しずく「見てから防ぐのも反応して防ぐのも不可能です、でも何かしらで防がない限り必ずに死にます」

侑「嘘、だよね……?」

しずく「"ライブ"」

侑「きゃああああっ!!?」
 
105: (たこやき) 2022/10/29(土) 17:30:58.39 ID:6kEgqsIN
侑「生き、てる……?」

しずく「……今、色々と試しているところなんです」

しずく「邪魔しないてもらえませんか?」

 
 「とても興味深いけれど、監視官が目の前で襲われていて助けないわけにもいかないのよね」

 
侑「!」

しずく「百合課1係執行官、クラス3rd……朝香果林さん」

果林「あら、どうして知っているのかしら。こっちの顔は売れていないはずだけれど」

しずく「友人から教えてもらいました」

しずく「1係の数字持ち、3番以上は人じゃない……」

しずく「接敵したら何を置いてもすぐに逃げろ、って」

果林「あら、良い友達を持ってるのね」

しずく「はい、大切な友人です」
 
106: (たこやき) 2022/10/29(土) 17:36:56.17 ID:6kEgqsIN
果林「お友達の言う通り、逃げなくていいのかしら?」

しずく「逃げられると思ってませんので」

果林「賢明な判断ね……」スチャ

侑「!」
 

 『百合係数オーバー482。執行対象です』

 『執行モード、リーサル・イレイザー。対象の記憶を抹消します』

 『落ち着いて照準を定め、対象を排除してください』

 
果林「記憶を消す前に1つ訊いてもいいかしら」

しずく「なんでしょう?」

果林「そこで虚ろな目で倒れてるかすみちゃんは元に戻るの?」

しずく「私が死ねば一生そのままです。記憶を失って力の制御が出来なくなっても同様です」

果林「そう……あなたに解いてもらうしかないのね」
 
107: (たこやき) 2022/10/29(土) 17:49:22.87 ID:6kEgqsIN
果林「"ライブ"」
 

果林「──Starlight──」
 

しずく「ッ!?」

果林「何かされると面倒だから、目をもらうわ」

しずく(何も……見えない……?)

果林「私の"ライブ"は光を操る……さっきあなたの雷を逸らしたのもこの力」

しずく「……この世のすべての光を操れるんですか?」

果林「ええ、そうよ。やろうと思えば、次の瞬間あなたを失明させることもできるし、血液を沸騰させて〇すこともできるわ」

しずく「信じられない力ですね……」

果林「お互い様よ。あなたは水を操るんでしょう?」

果林「血液も水分なんだし、同じようなことができると思うけど」
 
108: (たこやき) 2022/10/29(土) 18:02:48.70 ID:6kEgqsIN
しずく「私が作用できるのは雨粒です。水そのものを操るなんて強大な力は持ち合わせていません」

果林「雨粒が一滴もない晴れた日なら、何もできないってこと?」

しずく「その通りです。力が使える今日は運が良かっただけ……」

しずく「私みたいな普通のスクールアイドルにとって、これくらいの制約は当然のことです」

しずく「あなたたちのような、世界規模で厳選された一握りの天才には無縁の話でしょうけど」

果林「随分と卑屈なのね。自分に自信を持つことは大切よ?」

しずく「この状況では気休めにもなりませんね……」

しずく「"ライブ"」

果林『無駄よ』

しずく『集めた矢先から雨粒が蒸発していく……これも光の力ですか?』

果林『そうよ』

しずく『レベルが違いすぎますね……何より相性が悪すぎる……』
 
109: (たこやき) 2022/10/29(土) 18:05:41.87 ID:6kEgqsIN
しずく『降参です。要求はすべて呑みますので命は取らないでください』

果林『かすみちゃんを今すぐ元に戻しなさい』

しずく『お断りします。それをしたら私は身を守るための担保を失ってしまいます』

果林『その気になるまで脳みその温度を一度ずつ上げてもいいのよ』

しずく『ふふ、いいんですか? そんなことしたらかすみさんも廃人になっちゃいますよ?』

果林『……』

しずく『優しいんですね、あなたたちはみんな冷酷な方だと思っていたので意外です』

果林『……監視官、この子のもう1つの能力について何か知っていることはある?』

侑『わかりません……かすみちゃんに抱きついたと思ったら、そうなっちゃって……』

果林『十分有益な情報ね』
 
110: (たこやき) 2022/10/29(土) 18:08:47.45 ID:6kEgqsIN
侑『何か分かるんですか?』

果林『かすみちゃんの様子と発動状況から考えて、この子のもう1つの力は精神に影響を及ぼす特殊なものよ』

果林『もしそれがサイコレズによる強力な力なら、絶体絶命のこの状況で使わないはずがない……』

侑『使わないんじゃなくて使えない……?』

果林『そのとおり、条件が満たされていない』

果林『可能性として高いのは対象が1人までであること』

果林『あるいは対象を捕捉しないと発動できないのか、能力の射程に入っていないのか……』

果林『とにかく近づくのは危険よ。前を歩かせるからあなたはかすみちゃんをお願い』

侑『この子、どうするんですか……?』

果林『このまま本庁まで護送して万全の体制で拘束するわ』

しずく『……本当にそれでいいんですか?』
 
111: (たこやき) 2022/10/29(土) 18:12:34.89 ID:6kEgqsIN
果林『何が言いたいの?』

しずく『ランジュさんと戦っている人……死にますよ?』

果林『……もうすぐ本庁から応援がくるわ。それに愛はそんなに柔じゃない』

しずく『ランジュさんはクラス4th……優木せつ菜を倒したスクールアイドルです』

しずく『5thの宮下愛が勝てると本気で思ってるんですか?』

果林『……』

しずく『彼女に勝てるとしたらあなただけです』

しずく『仲間を救いたいなら私のことは諦めて、今すぐ助けにいくべきだと思いますが』

果林『応援がくるって言ってるでしょ。日本の公安局は世界でも有数の巨大組織よ』

しずく『その巨大組織が誇る最高戦力のうち、4番目に力を持った執行官がやられたんです』

しずく『1係以外が何人来ようと犠牲者が増えるだけ……それがわからないほど公安局もバカじゃないでしょう』
 
112: (たこやき) 2022/10/29(土) 18:18:37.59 ID:6kEgqsIN
果林『分析官を抜いても1係はあと3人いるわ』

果林『1st、2nd、6th……1人でも間に合えばショウ・ランジュは鎮圧可能よ』

しずく『1stは1年前から昏睡状態。2ndは1stと本庁の警護のため身動きが取れない』

果林『!』

しずく『そして6th、1係執行官の近江遥は──』

 
しずく『私たちの仲間です』

 
果林『なっ……』

侑「え……?」

しずく『言いましたよね、友達から教えてもらったって』

果林『そんな、バカなことっ』

しずく『あるわけない、どうして言い切れるんですか?』

しずく『あなたたちは遥さんの何を知っているんですか?』
 
114: (たこやき) 2022/10/29(土) 18:22:54.38 ID:6kEgqsIN
しずく『私は知っていますよ』

しずく『夢も、想いも』

しずく『痛みも、怒りも』

しずく『そのすべてを語り合い、そうして心から通じ合ったんです』

しずく『私たちは隣人であり、友人であり、同じ目的を持つ仲間……同志……』

しずく『彼女の心をを何も理解できていないあなたたちに、それを名乗る資格はありません』

果林『……監視官、ここを任せられる?』

侑『え……?』

果林『愛のところに行くわ。ここより向こうの方が状況がまずい』

しずく『いいんですか? その人〇しちゃいますよ?』

果林『忘れたの? さっきこの子はあなたの力を完全に防いでいた』

果林『あの力がある限りかすり傷1つ付けられないわ』
 
116: (たこやき) 2022/10/29(土) 18:28:49.80 ID:6kEgqsIN
しずく『さて、どうでしょうか。さっきは軽く撫でただけなので』

しずく『本気でやれば〇せるかも』

果林『あの力はサイコレズよ。あなたのレズじゃ絶対に及ばない』

果林『力の上下関係はわかっていると思うけど』

しずく『サイコレズを持っているのは彼女だけじゃありません』

果林『発動できないなら同じことよ』
 

しずく『あなたはいつから──私のサイコレズが発動していないと思っていたんですか?』
 

果林『は……?』

しずく『あなたが私を消すことよりもかすみさんの命を優先した時点で、勝負は決まっていました』

果林『何を言ってるの……?』

しずく『一対一なら間違いなく負けていたでしょうね』

しずく『初手で脳を焼かれて終わり……とんでもない話です。あなたは強すぎるのでこのまま退場してもらいます』
 
117: (たこやき) 2022/10/29(土) 18:34:25.32 ID:6kEgqsIN
果林『Starlight!!』

しずく『無駄ですよ?』

果林『!』

しずく『やがて一つになる物語』

しずく『それが私のサイコレズの名……そしてここは私の"想い"が作り出した舞台……』

しずく『私はこの世界では脚本家であり演出家であり監督です』

しずく『主役であれど、一介の役者が物語の創造主に歯向かうことは許されない』

しずく『あなたは用意された"台本"通り自分の役をこなし、この物語を終わらせないとここからは出られない』

しずく『もちろん役者には台本を知る権利があります。そうしないと役を演じることができないので、当然ですよね』
 
118: (たこやき) 2022/10/29(土) 18:41:33.76 ID:6kEgqsIN
しずく『執行官朝香果林。それがあなたに与えられた役』

しずく『あなたは今から優秀な執行官として仲間のピンチに駆けつけ、その力を持ってして強大な敵、ショウ・ランジュを打ち倒す』

しずく『葛藤の末、あなたはショウ・ランジュの記憶を消そうとするも……応援で来たはずの執行官、近江遥に阻まれる』

しずく『そこであなたは、私たちの真意を聞くことになる』

しずく『お話はここまでです。先の展開が気になる、引きの強い内容になっていて素敵だと思いませんか?』

果林『……どうして私を〇さないの?』

しずく『力がそういう風に出来ていないだけです。登場人物が意味もなく死ぬような暗い話は嫌いなので』

しずく『そんなくだらないことをするよりも、この力はもっと素敵に便利に出来ています』

果林『どういうこと……?』

しずく『あなたは私が能力を使っていると教えなければ、この世界が現実世界であると認識し続けていましたよね?』
 
119: (たこやき) 2022/10/29(土) 18:48:16.16 ID:6kEgqsIN
しずく『例えば、この先の展開で宮下愛が死んだとしても、あなたはそれが創作であると認識できる』

しずく『でも、もしこの世界が創作であることを知らないまま舞台がエンドロールを迎え、現実世界に戻れば……』

果林『私は愛を死んだと思ってる……』

しずく『現実と創作の境界を曖昧にする、それがこのサイコレズが持つ本当の力です』

しずく『現実に起こっていないことを現実に起こったと錯覚させられるなら、色々と便利だと思いませんか?』

果林『まさか……ショウ・ランジュと遥ちゃんは……』

しずく『さて、休憩は終わりです。この舞台の続きを待ち望む観客があなたを待っています』

果林『あなたの目的は一体何なの!? どうしてこんなことを……!?」

しずく『今は舞台の最中です。過度なアドリブは観客が冷めてしまいますよ?』

果林『くっ……!』

しずく『さあ、続きを演じてください』

しずく『私の望むその舞台を』
 
120: (たこやき) 2022/10/29(土) 19:00:55.91 ID:6kEgqsIN
 
────────────────────────────────────────────────────
 
愛「はぁ……ぁ……」

ランジュ「……もういいわ。終わりにしましょう」

愛「まだ、まだっ……」

ランジュ「速度や強度、その他諸々すべての身体能力の強化」

ランジュ「それがあなたの力よね? それ以上はもう何もない」

愛「さあ、どうかな……? ここぞの切り札、持ってるかもしんないよ……?」

ランジュ「あるならとっくに出してるでしょ。死にかけじゃない、あなた」

愛「これくらいじゃ死なないよ…… 自然治癒力も、上がってるからね……」

ランジュ「トドメを刺さないといつまでも立ち上がってくるってことね」

ランジュ「ならもう楽にしてあげるわっ!」

愛「っ!」

ランジュ「その傷でよく避けるわね……」
 
122: (たこやき) 2022/10/29(土) 19:11:45.00 ID:6kEgqsIN
愛「君の力のこと、色々考えたんだけどさ……」

愛「理想を与える力、だよね」

ランジュ「……正解よ。すごいわね、あなた」

ランジュ「どうやって気付いたの?」

愛「まず打ち合ってる時に私と似たような力だと思った」

愛「強化状態の私のスピードより速いし、まともに殴り合ってそっちだけノーダメージ」

愛「この時点で身体の強化ができるのは確定。でも決定的に私と違うところがあった」

愛「それは君が落ちてたガラスの破片で私を切ったとき」

愛「信じられない切れ味だった。ユリネーターが真っ二つだよ?」

愛「どう考えてもガラスの破片が持つレベルの切れ味じゃない」

愛「力でガラスの切れ味を上げたとしか考えられない」
 
123: (たこやき) 2022/10/29(土) 19:12:48.99 ID:6kEgqsIN
愛「次に燃えてるペットボトルか何かを私に投げつけたとき」

愛「完全に避けたと思った瞬間、爆発したみたいに火力が上がった」

愛「それに呑まれて公安特製の防護スーツは黒焦げ。脱ぎ捨てた今でもバカみたいに燃え続けてる」

愛「あれっぽっちの火があそこまで燃焼するのも、防火性抜群のスーツがそんなにも燃えるのも、力で火力を上げた以外に考えられない」

愛「最後に。君のサイコレズの名前」

愛「Utopia──理想郷」

愛「君が触れたものは、身体も、物も、現象も。全部理想と呼べるような性質に変化していた」

愛「どんなものよりも速い足、どんなものよりも硬い身体」

愛「どんなものでも切れるガラス、どんなものでも燃やせる炎」

愛「それは全部、君の理想を元に現実に生み出されたもの」
 
124: (たこやき) 2022/10/29(土) 19:19:40.17 ID:6kEgqsIN
愛「そうあってほしいと思う最高の状態に物や現象を引き上げる……」

愛「理想を与える、それが君の力」

ランジュ「それ全部、戦いながら考えてたの?」

愛「そりゃ考えるっしょ。どういう力なのかわからないと対策のしようがないし」

ランジュ「本当にすごいわね、あなた」

ランジュ「でも、1つだけ訂正するわ。Utopiaの頭にはEがつく」

愛「"E"utopiaってこと?」

ランジュ「そうよ。意味は実現可能な理想郷」

ランジュ「私が与えられる力には現実に存在するものっていう限度があるわ」

ランジュ「この世に存在しない、発現できないような力は与えられない」
 
125: (たこやき) 2022/10/29(土) 19:29:59.82 ID:6kEgqsIN
愛「いや十分化け物じみてるっしょ」

愛「マッチの炎をミサイルの炎にできるし、身体を鋼鉄の硬さにできるわけでしょ?」

ランジュ「まあ、そうね」

愛「気休めにもならないなぁ」

ランジュ「で、何か対策は思いついたのかしら?」

愛「いやー、厳しいね。力のレベルもだけど相性が悪いよ」

愛「まず君の着ている服も身体も何殴ってんのかわかんないくらい硬い」

愛「比較的柔らかそうな顔とかブン殴ってもちょっと血出るくらいですぐに治ってるし、耐久力も治癒力もやばすぎ」

愛「完全に私の上位互換じゃん」

愛「精神攻撃できるサイコレズでもないと君に勝てる人いないんじゃないかな」
 
126: (たこやき) 2022/10/29(土) 19:30:49.75 ID:6kEgqsIN
ランジュ「その優秀な頭で考えた結論が出てるなら、さっさと消えて欲しいんだけど」

愛「本当にそう思ってるならとっくに消してるよね?」

ランジュ「あなただってそうじゃない、本気で勝てないと思ってるならすぐに逃げてるはずよ」

ランジュ「サイコレズ、使えるんでしょ。さっさと出しなさい」

愛「君もまだ1つ力を残してるよね、そっちが先じゃないかな」

ランジュ「私のレズは戦闘に向かないの。制約も強いし力も弱いから使っていないだけ」

ランジュ「どこにでもいる普通のスクールアイドルの力なんて、今さらどうでもいいでしょ」

ランジュ「心配しなくても、あなたたちみたいにサイコレズと渡り合えるようなレズは持ち合わせていないわ」

愛(敵の情報は1つでも多く仕入れときたいんだけど、この様子じゃ無理そうかな……)
 
127: (たこやき) 2022/10/29(土) 19:37:50.14 ID:6kEgqsIN
愛「分かった。1つ教えてもらったから1つ教えるね」

愛「私は覚醒者じゃない……サイコレズは使えないよ」

愛「力はめっちゃGoing!!だけ」

愛「めっちゃ速く動いたり、めっちゃ強く殴れたり、めっちゃ高く跳べたり」

愛「まあ身体能力に関することならおおよそ強化できるね」

愛「それが私の全部」

ランジュ「……この後に及んで出し惜しみする気?」

愛「本当だって。執行官がサイコレズなんて使えたら危なすぎて記憶消されちゃうよ」

ランジュ「……つまらない嘘をつくのね」

 
ランジュ「嘘をつく人は……大嫌いよ」

 
愛「……なにするつもり?」
 
129: (たこやき) 2022/10/29(土) 19:43:45.01 ID:6kEgqsIN
ランジュ「これ、撃った相手の記憶を消せるんでしょう?」

愛「無駄だよ、監視官と執行官しか撃てない。そういう風に作られてる」

 
 『ユーザー認証エラー。不正ユーザーです』

 『トリガーをロックします』

 
ランジュ「規定値を逸脱した百合係数を持つ社会的異常者に裁きを下す……これがこの鉄屑の役目」

ランジュ「百合係数はサイコレズとレズ……想う力と想われる力、表裏一体の二つの力を数値化したもの」

ランジュ「この鉄屑にそれを選り分ける力はない……」

ランジュ「常軌を逸脱したレズで人を魅きつけ、惑わし、常人をサイコレズへと堕とすあなたたち執行官も」

ランジュ「レズに魅入られ、心を執われて、サイコレズを覚醒させた私たちも」

ランジュ「この鉄屑にとっては区別する必要のない、同じ社会的排除対象だからよ」

愛「……何が言いたいの?」
 
132: (たこやき) 2022/10/29(土) 19:51:41.61 ID:6kEgqsIN
ランジュ「あなたたちが撃てて私に撃てない道理はない……」

ランジュ「"ライブ"」

 
 『ユーザー認証、ショウ・ランジュ。使用許諾確認』

 『適正ユーザーです』

 
愛「なっ……!?」

ランジュ「理想を与えたわ」

ランジュ「"私が撃てるユリネーター"」

ランジュ「やっと顔から余裕が消えたわね、執行官」スチャ

 
 『公安局百合課1係、執行官、中川菜々』

 『百合係数オーバー414。任意執行対象です』

 
ランジュ「3秒後、引き金を引くわ」

愛「!」
 
133: (たこやき) 2022/10/29(土) 19:57:49.88 ID:6kEgqsIN
ランジュ「大切な仲間の記憶を消されたくないなら……」

ランジュ「"想い"の力で止めてみせなさい」

ランジュ「3、2」

愛「ッ……!!」

ランジュ「1」
 
 
愛「"ライブ"!」

 

愛「サイコーハート!!」
 
 
143: (たこやき) 2022/10/31(月) 02:27:21.82 ID:4pD7P6rf
 
────────────────────────────────────────────────────
 
しずく「本当にすごい力ですね、こんなことまで防いじゃうなんて」

侑「ひぐっ……うっ、うぅ……」

しずく「例えば毒を飲んだりしても無効化してしまうのでしょうか、知的好奇心が止まりません」

侑「ぐずっ……もうっ、やだぁぁ……!!」

しずく「ごめんなさい、流石に高層ビルの屋上から身を投げるのは怖かったですよね」

しずく「でもまだ興味があるのでもう少しだけ頑張ってもらえませんか?」

侑「うっ……うぅっ……」

しずく「能力による攻撃はすべて無効化、物理的に危害を加えようとしてももちろんダメ、触れることすらできない」

しずく「火の中に飛び込ませても熱さを感じない、水に沈ませても何故か呼吸ができる、自らの意思での自傷もすべて防ぐ」

しずく「一番不思議なことはそれがあなたの意志に関係なく、オートで作動し続けているということです」
 
144: (たこやき) 2022/10/31(月) 02:32:46.91 ID:4pD7P6rf
しずく「レズにしろサイコレズにしろ、自らの意志を無視して力が発現するなんてありえない……」

しずく「つまり、意識がない時は作動しない……?」

しずく「侑さん、次の実験が決まりました。今から寝てもらえませんか?」

侑「むっ、むりっ、むりですっ」

しずく「なら意識を失ってください」

侑「できるわけないじゃんっ!?」

しずく「あの二人を〇すって言っても無理ですか?」

侑「っ~~~!!」

しずく「冗談です。今のはいじわるでしたね、ごめんなさい」

しずく「ちょっと疲れてきましたし、帰りましょうか」

しずく「美味しい物を食べてゆっくりすれば眠たくなるはずですから」
 
146: (たこやき) 2022/10/31(月) 02:37:42.87 ID:4pD7P6rf
しずく「ほら、行きますよ。立って」

侑(誰か……)

しずく「もう、言うことを聞かない悪いワンちゃんはお仕置きしちゃいますよ?」

侑(誰か……助けて……)

しずく「おーい」

侑「ぐずっ……えぅぅ……」

しずく(どうしよう、言うこと聞いてくれない)

しずく(完全に怖がらせちゃった……)

しずく(極限状態に追い込めば力が違う形で発現するかもって色々と酷いことしてみたけど、空振りだな……)

しずく(でもおかげでいくつか分かったこともあるし、まあいっか)

侑「ひぐっ……うっ、うぅ……」

しずく(こんなにも泣かれると流石に罪悪感あるな……)

しずく(この人自身も自分の力が何なのかを分かっていないみたいだし)

しずく(酷いことしちゃった私にできるせめてもの罪滅ぼしは……)
 
147: (たこやき) 2022/10/31(月) 02:42:47.21 ID:4pD7P6rf
しずく「あの、本当にごめんなさい」

しずく「色々と酷いことして……」

侑「……」

しずく(無理やり水に浸けられた猫みたいな顔してる……)

しずく「えっと、さっきは知的好奇心に負けて色々とさせちゃいましたけど」

しずく「もう何もしないし彼女たちにも危害は加えないので、怖がらないでくれませんか?」

侑「……ひぐっ」

しずく「さっきの諸々を踏まえて、あなたの力について色々と分かったことがあるんです」

しずく「それはあなたが身を持って証明した事実から考えられるもの……だから、あなたには知る権利がある」

しずく「聞いてくれますか?」

侑「……ゆるす」

しずく(許す)
 
148: (たこやき) 2022/10/31(月) 02:46:49.14 ID:4pD7P6rf
しずく「まずその力……サイコレズです。間違いなく」

しずく「身を守る力は色々あれど、あなたのそれは力の強度が桁違いです」

しずく「水中の中で息ができましたよね? 火の中にいても燃えもしなければ熱すら感じなかった」

しずく「つまり、宇宙に行っても呼吸ができるし身体が凍ることもない」

しずく「防御能力なんて生易しいものじゃありません。あなたを生かし続け絶対に傷つけないという凄まじい力です」

しずく「たぶん核ミサイルの直撃でも防ぎます。それくらい強大な力」

しずく「レズでそれだけの力を発現させることは不可能です。故にサイコレズ以外にありえない」

しずく「ならこのサイコレズはあなたのものなのか?」
 
149: (たこやき) 2022/10/31(月) 02:51:41.32 ID:4pD7P6rf
しずく「答えは否」

しずく「何故ならあなたの意志に関わらず、力が動作しているから」

しずく「高層ビルから飛び降りましたよね? 私に脅されたと言えど、あれは自らの意思に基づいた行為です」

しずく「仮に力があなたのもので、自分自身を守るために作用するのなら」

しずく「飛び降りようとしたその瞬間、あの花が足を掴み行動そのものを阻むはず」

しずく「例え脅されていようと、強大な力だろうと、死にたくないという自らの意志に抗えるはずがない……」

しずく「にも関わらずあなたは飛べた。自分の意志に力が介在していない証拠と考えます」

しずく「つまり、その力は誰かがあなたを守るために発現させている」

侑(私を、守るため……?)

しずく「途方もないくらい強い"想い"です。もし使用者の意志を離れて自動で動いているとしたら」

しずく「それはサイコレズそのものが意志を持っているといっても同義……信じられない現象です」

しずく「あなたのことをそこまで強く想う誰かに、心当たりはありますか?」
 
151: (たこやき) 2022/10/31(月) 02:57:10.52 ID:4pD7P6rf
侑「歩夢だ……」

しずく「……え?」

侑「上原歩夢……」

侑「私のたった一人の、大切な幼馴染……」

しずく「上原、歩夢……?」

しずく「赤みがかったピンク色の髪で、お団子をしている上原歩夢ですか……?」

侑「君、歩夢を知ってるの……?」

しずく(あの強大な力が上原歩夢のサイコレズだと言うのなら)

しずく(彼女の想いと願いがこの人を守り続けていると言うのなら、すべての辻褄が合う)

しずく(高咲侑……)


しずく(上原歩夢の、祈り子……)


侑「ねえ、教えてよ、歩夢とはどういう関係で……」
 
152: (たこやき) 2022/10/31(月) 03:04:42.06 ID:4pD7P6rf
しずく「侑さん、あなたの願いはなんですか?」

侑「願い……?」

しずく「私の願い……目的は……」

 
しずく「歩夢さんを目覚めさせることです」

 
侑「え……?」

しずく「大切な人なんですよね? かけがえのない存在なんですよね?」

しずく「あなたも歩夢さんを助けたいと、そう思いませんか?」

侑「君は、一体……?」

しずく「高咲侑さん、私と」


 「"ライブ"」


しずく「!」


 「Evergreen」
 
 
153: (たこやき) 2022/10/31(月) 03:08:32.55 ID:4pD7P6rf
しずく「"ライブ"!」

しずく「ッ……!?」

しずく(力が……使えない……?)

 
 「この騒動の主犯はあなたでいいんだよね」

 
しずく「……お会い出来て光栄です」

しずく「執行官クラス2nd──エマ・ヴェルデさん」

侑(クラス2nd……!?)

しずく「公安局の最高戦力が二人も出て来るなんて、大げさじゃないですか?」

エマ「話を大げさにしているのも、本庁のネットワークをアウトさせたのもあなただよね」

しずく「正確には私の仲間です」
 
154: (たこやき) 2022/10/31(月) 03:17:35.13 ID:4pD7P6rf
エマ「サイコレズが犯した罪は記憶の抹消を持ってほとんどは酌量される……でも本庁への攻撃は明確なテロ行為だよ」

エマ「記憶を消されるだけじゃ済まされない」

しずく「本庁が少し小突かれただけであなたほどの人間がここまで来るなんて、ありえませんよね」

しずく「鎮圧するだけなら現場の執行官で十分だし、刑事罰の範囲ならそれこそ警察の領分のはず」

しずく「目的は上原歩夢の祈り子ですか?」

エマ「!」

しずく「保護するだけなら安全な本庁施設で軟禁すればいい」

しずく「でもそうしなかった」

しずく「リスクを冒してまで彼女を監視官にしたのは、歩夢さんのサイコレズを少しでも解析したかったから……違いますか?」

しずく「万が一でも侑さんに危険が及ばないよう、監視官1人に執行官4人……」

しずく「そのうちの1人に本来特S級の事件じゃなければ動かないはずの3rdまで配置して」
 
155: (たこやき) 2022/10/31(月) 03:18:14.07 ID:4pD7P6rf
しずく「彼女のあの様子じゃ、現場に入るのはまだまだこれからの予定だったんじゃないでしょうか?」

しずく「今日はあくまで試運転。適当に空気感を見させて、あとは顔合わせ程度になるはずだった」

しずく「でも現実は4thが倒れ、3rdまで戦闘不能になる緊急事態……未曾有の危機……」

しずく「最後の切り札を出すには十分すぎる状況ですよね」

エマ「……話は終わり? そろそろ質問してもいいかな」

エマ「仲間は何人いるの?」

しずく「あなたたちに恨みを持つ人の数だけいますよ」

エマ「"ライブ"」

しずく「ッ……!!?」

エマ「次からは分かりやすい言葉で答えてくれるかな」
 
156: (たこやき) 2022/10/31(月) 03:23:56.80 ID:4pD7P6rf
エマ「公安局にあなたの"お友達"がいるらしいね、それは誰?」

しずく「すぐに、わかりますよ……あなたたちも、よく知る人物です……」

エマ「"ライブ"」

しずく「ッ~~~!!!」

エマ「あなたの能力はなに? 果林ちゃんとかすみちゃんになにをしたの?」

しずく「はぁっ……ぁ……!!」

しずく(頭が割れるように痛い……一体どんな力でっ……)

エマ「早く答えて」

しずく「私に、危害を加えることはっ……おすすめしません……」

しずく「私が、力を失えばっ……」

しずく「彼女たちは……っ、この世界には、帰ってこれない……!」

エマ「あなたの力はとっくに使い物になってないはずなんだけど」

しずく「止めているだけ、ですよね……? 消したわけじゃ、ないっ……」
 
157: (たこやき) 2022/10/31(月) 03:31:19.46 ID:4pD7P6rf
しずく「本当に、力が消えたなら……」

しずく「私は、サイコレズを感じないし……あの二人は、起きるはず……」

エマ「だから私にはあなたを裁けない、そう言いたいの?」

しずく「たかが、一人のテ口リストを排除するためにっ……」

しずく「執行官を二人も失うなんて……正気の沙汰じゃないっ……!」

エマ「この社会を揺るがしかねない不穏分子が力を持つ前に排除できる」

エマ「対価としては十分なんじゃないかな」スチャ

侑「!」
 

 『百合係数オーバー482。執行対象です』

 『執行モード、リーサル・イレイザー。対象の記憶を抹消します』

 『落ち着いて照準を定め、対象を排除してください』

 
しずく「ッ……」
 
159: (たこやき) 2022/10/31(月) 03:41:41.27 ID:4pD7P6rf
エマ「やっと表情から余裕が消えたね」

エマ「今とっても可愛い顔してるよ? 桜坂しずくちゃん」

エマ「どうして自分のことを知ってるかって? 調べたんだよ?」

エマ「あなたが何者なのか、どこで生まれて何をして育ったのか、誰とどんな風に生きてきたのか」

エマ「果林ちゃんのユリネーターがあなたを捕捉してから今この瞬間までの間に全部調べたの」

エマ「あなたのサイコレズを知るために」

エマ「あなたの祈り子を探すために」

しずく「!!」

エマ「力が消えるとかすみちゃんはどうなるんだっけ? 本当に死んじゃうのかな?」

エマ「でもそんなことどうでもいいよね」

エマ「もうすぐかすみちゃんのことは全部忘れるんだし、関係ないよね」

エマ「生きてようと死んでようと、ここで一生お別れなのは同じだもんね」
 
160: (たこやき) 2022/10/31(月) 03:48:35.83 ID:4pD7P6rf
しずく「……めてください」

エマ「なに?」

しずく「やめて、ください……」

エマ「やめないよ? 必ず執行する」

エマ「例え果林ちゃんとかすみちゃんの命が代償だとしてもあなたの記憶も力もここで消す」

しずく「ッ……!!」

エマ「嫌? じゃあ選択肢をあげるね」

エマ「どっちを選んでもいいよ? しずくちゃんが好きな方を選んで」

エマ「かすみちゃんのことは全部忘れて、かすみちゃんが死んだ世界で新しい人生を歩み直すか」

エマ「かすみちゃんの命もかすみちゃんへの想いも守って、公安局が管理する施設に収容されるか」

エマ「しずくちゃんのサイコレズはとても強力で特殊な力だから、私が進言すれば首輪付きにもなれるかもね」
 
161: (たこやき) 2022/10/31(月) 03:54:15.25 ID:4pD7P6rf
エマ「さあ、選んで?」

エマ「これはあなたの物語」

エマ「結末は自分自身で決めるんだよ」

しずく「……投降、します」

エマ「うん、しずくちゃんがいい子で良かった」

エマ「力を使えるようにしてあげる。二人を解放して?」

しずく「……」

エマ「反撃する元気があるならしてもいいよ」

エマ「好きなだけ力も使えばいい」

エマ「でも私に勝てなかった時は……」

エマ「どうなるかは分かってるよね」

しずく「っ……」
 
162: (たこやき) 2022/10/31(月) 03:59:33.71 ID:4pD7P6rf
しずく(選択肢がない……)

しずく(戦っても勝てるはずがない……力の次元が違いすぎる……)

しずく(このまま力を解かなかったとしても、彼女は躊躇なくトリガーを引く)

しずく(力を解いたとしても、彼女が言う通りにする保証はどこにもない)

しずく(仲間へのリスクが無くなったのなら迷う必要はない)

しずく(私が執行官ならすぐに引き金を引く)

しずく(不穏分子は、必ず消す)

しずく(どちらにせよ消されるなら……)

しずく(かすみさんへのリスクがない方を……)


エマ「……しずくちゃんが賢い子で本当に良かったよ
 
163: (たこやき) 2022/10/31(月) 04:05:39.54 ID:4pD7P6rf
しずく「……完敗です。悔いはありません」

しずく「消してください」

侑「!」

エマ「ううん、引き分けだよ」

エマ「あなたは自分のやるべきことをやったんだから」

しずく(全部お見通し、か……)

エマ「……かすみちゃんに言い残すことはある?」

しずく「生まれ変わってもあなただけを愛し続けると、そう伝えてください」

エマ「うん、必ず伝えるね……」

侑「ちょっ、ちょっと待って!!」
 
164: (たこやき) 2022/10/31(月) 04:06:47.26 ID:4pD7P6rf
侑「どうして消そうとしてるの……?」

侑「公安局の施設に連れて行くって話だったよね……?」

エマ「あれは力を解かせるための嘘だよ?」

エマ「この子は最初から分かってたみたいだから意味はなかったけど」

侑「そんな……」

エマ「侑ちゃんは優しいんだね。あんまり純粋だと悪い人に騙されちゃうよ?」

侑「……ダメ、消さないでください」

侑「彼女はまだ色々なことを知ってる、連れ帰って尋問するべきだよ。まだ利用価値がある」

エマ「尋問なんてしても意味ないよ。仲間を売るような子じゃない」
 
165: (たこやき) 2022/10/31(月) 04:12:37.64 ID:4pD7P6rf
侑「でもっ……」

エマ「この子のサイコレズは私以外には抑えられないくらい強大な力なんだよ?」

エマ「どういう力なのかわからないまま公安局に連れて行くなんて危険すぎるよ」

エマ「今こうしてる間も仲間が助けにくるかもしれない」

エマ「今執行しないと必ず私たちの脅威になる……わかるよね?」

侑「……私たちの仕事はサイコレズを救うことです」

侑「記憶を消すことは手段であって目的じゃない」

侑「この子の想いがかすみちゃんに向いているなら、救いの形が他にもあるはず」

エマ「……具体的にどうするつもり?」
 
166: (たこやき) 2022/10/31(月) 04:19:16.91 ID:4pD7P6rf
侑「1係は人手不足なんだよね?」

侑「なら、連れて帰って執行官になってもらおう」

侑「敵の情報も得られるし強力な力も味方にできる……公安局にとっても十分過ぎるメリットじゃないかな」

エマ「言ったよね、仲間を売るような子じゃないって」

侑「私が説得するよ」

エマ「認められない、危険すぎる」

侑「執行官、これは提案じゃない。監視官としての決定だよ」

エマ「!」

 
 『公安局本庁百合課1係、監視官、高咲侑』

 『執行対象ではありません。トリガーをロックします』

 
侑「そしてこれは命令。銃を下ろして」
 
167: (たこやき) 2022/10/31(月) 04:24:21.15 ID:4pD7P6rf
エマ「ねえ、本気で言ってるの?」

エマ「その子が仲間になったフリをして私たちを裏切ったらどうするの?」

エマ「公安局の内部情報を握られるだけならまだいい」

エマ「1係の人間に、私たちの仲間に手をかけたらどう責任を取るつもり?」

侑「それは……」

エマ「リスクとリターンが全然見合ってないよ。上も絶対に認めないし1係の人間のほとんどが反対する」

エマ「その子のことを救いたいって気持ちも分かるし、あなたの大切な人の手かがりだってことも知ってる」

エマ「だけど、今は冷静になって? 落ち着いて考えよう?」

侑「……あなたの言うことは、正しいと思う」

侑「でも記憶は絶対に消さないで。それだけは間違ってる」
 
168: (たこやき) 2022/10/31(月) 04:34:50.46 ID:4pD7P6rf
エマ「……その優しい気持ちを汲んで本当のことを言うね」

エマ「公安局に身柄が渡ればその子の記憶は必ず消される」

侑「!」

エマ「私が撃たなくても誰かが撃つ……」

エマ「果林ちゃんを戦闘不能にしたサイコレズを上が容認するはずがない」

エマ「公安局も、社会も。サイコレズを救うために引き金を引いてるんじゃないの」

エマ「救いたいのは自分自身、大事なのは保身」

エマ「その願いはサイコレズの脅威からの解放だけ……」

侑「そんなの絶対に間違ってる!!」

エマ「でも勘違いしないで」

エマ「少なくとも私たちは自分の信念に従ってサイコレズを執行している」

エマ「公安局やユリネーターの言いなりになって引き金を引いたことなんて……一度もない」
 
169: (たこやき) 2022/10/31(月) 04:40:46.86 ID:4pD7P6rf
エマ「ユリネーターは審判者であって執行者じゃない」

エマ「それがこの銃に引き金が付いている理由……」

エマ「裁きを下すのはユリネーターじゃない……私たち人間だよ」スチャ

 
 『百合係数オーバー482。執行対象です』

 『執行モード、リーサル・イレイザー。対象の記憶を抹消します』
 
  『落ち着いて照準を定め、対象を排除してください』

 
しずく「っ……!」

侑「と、止まりなさい! 執行官!!」スチャ

 
 『公安局百合課1係、執行官、エマ・ヴェルデ』

 『百合係数オーバー527。任意執行対象です』

 
エマ「その引き金が引けるなら……侑ちゃんも1係の仲間だね」
 
170: (たこやき) 2022/10/31(月) 04:49:25.95 ID:4pD7P6rf
侑「お願い、銃を下ろして……」

エマ「……」

侑「エマさん!!」

エマ「引き金を引けない人は何も守れないよ」

エマ「自分も、大切な人も」

侑「だ、ダメ……」

エマ(私は、もう……)

エマ(二度と間違えない)
 

侑「ダメーーーー!!」
 
 
──ドゥゥン
 
  
 
171: (たこやき) 2022/10/31(月) 04:55:17.79 ID:4pD7P6rf
エマ「……」

エマ「……」フラ…

 
──ドサ
 
 
しずく「どう、して……?」

侑「……君たちのことを大切にしている人の気持ちを……蔑ろにしたくないんだ」

侑「最期には消さないっていけないっていうのは分かってる」

侑「それしか方法がないことも」

侑「でも、大好きな人にさよならの一言も言えないなんて……」

侑「そんなの悲しすぎるよ……」

しずく「侑、さん……」
 
172: (たこやき) 2022/10/31(月) 05:02:12.98 ID:4pD7P6rf
侑「しずくちゃん、だよね」

侑「私と一緒に来て」

侑「あなたには訊きたいことも、一緒にしてもらいたいこともたくさんあるんだ」

しずく「そんな、こと……」

侑「みんな色々反対するかもしれないけど、私がちゃんと説得する」

侑「だから」

 
 『百合課1係の全執行官および監視官、聞こえていますか』

 『私はこの一連の騒動の首謀者の一人……』

 『公安局百合課1係執行官、近江遥です』

 
侑「!」
 
173: (たこやき) 2022/10/31(月) 05:12:18.96 ID:4pD7P6rf
遥『1係の総員に告げます。今すぐショウ・ランジュおよび桜坂しずくとの戦闘を停止してください』

遥『繰り返します。ショウ・ランジュおよび桜坂しずくとの戦闘を停止してください』

 
侑「……」

しずく「侑さん、助けていただきありがとうございました」

しずく「あなたの言葉、本当に嬉しかったです」

しずく「だからこそ私は……」

しずく「いや、私たちは……成すべきことを成します」

 
遥『私は現在、ミア・テイラーおよび天王寺璃奈の身柄を拘束しています』

遥『危害を加えられたくなければこちらの指示に──』
 
174: (たこやき) 2022/10/31(月) 05:13:13.77 ID:4pD7P6rf
侑「……1つだけ、教えてくれるかな」

しずく「……手短にお願いします」

侑「あなたたちの目的はなに?」

しずく「サイコレズが幸せに暮らせる世界を作ることです」

侑「璃奈ちゃんとミアちゃんを攫ったのもそのためなの?」

しずく「そうです。すべては私たちの理想に繋がっていきます」

しずく「私たちにとって今、この世界に救いはありません……」

しずく「想い人への恋心を持ち続ける限り、私たちは焦がれ、蝕まれ、自身が持つサイコレズに焼かれ続ける……」

しずく「あなたたちが与える"救い"にすがりつく同胞ももちろんいます」

しずく「でも、それは決して救いなんかじゃない……」

しずく「私たちにとっての救いはただ1つ……想い人と結ばれることだけです」
 
175: (たこやき) 2022/10/31(月) 05:20:07.48 ID:4pD7P6rf
侑「でも……それは……」

しずく「そう、簡単なことじゃない」

しずく「むしろ、辛く厳しい現実が私たちをより深く傷つけます」

しずく「すべての物語がハッピーエンドで終わるなんて、それこそ創作の中だけですから」

しずく「それでも、サイコレズを浄化させるのは祈り子からの愛だけなんです」

しずく「例えそれが偽りだとしても」

しずく「誰かに作られたものだとしても」

しずく「揺り籠の中で愛する人とずっと幸せに暮らせる世界があるのなら」

しずく「その理想郷に私たちは行きたい……」

侑「そんなの……」

しずく「夢物語だと思いますよね、でも、現実にするための鍵があるんです」

しずく「それこそがあなたの幼馴染……上原歩夢です」
 
176: (たこやき) 2022/10/31(月) 05:30:18.72 ID:4pD7P6rf
侑「どういうこと……?」

侑「どうして歩夢の名前が出てくるの……?」

しずく「あなたも知っている通り、彼女は1年前から深い眠りに付いています」

しずく「1年前に歩夢さんの身に何があったのか。知っていますか?」

侑「百合係数が異常値を出して、公安局に執行されたんじゃ……?」

しずく「執行にはユリネーターが使用されます」

しずく「サイコレズに使用される執行モードは2つ」

しずく「パラライザー、またはイレイザー」

しずく「前者は対象の鎮圧と確保を目的とし、後者は記憶の抹消を目的としています」

しずく「そのどちらで執行されたにせよ、通常は3日以内に意識が戻るそうです」

侑「嘘、だよ……だって、歩夢は1年以上意識がないままで……」
 
177: (たこやき) 2022/10/31(月) 05:39:04.33 ID:4pD7P6rf
しずく「歩夢さんはユリネーターで執行されたんじゃありません」

しずく「1係クラス1st……近江彼方との激しい戦闘の末、そのサイコレズで眠らされたんです」

侑「じゃあ、歩夢が今も目を覚まさないのは……」

しずく「1stが力を使い続けているからです」

侑「その人の力を解けば、歩夢は起きるの……?」

しずく「必ず目覚めます」

侑「……」

しずく「侑さん、私と一緒に来てください」

しずく「あなたの目的が歩夢さんを目覚めさせることなら、私たちとあなたは同じ場所を向いているはずです」

侑「……ごめん、それはできない」

侑「同じ場所を向いていても、同じ場所を目指しているとは限らないから」
 
178: (たこやき) 2022/10/31(月) 05:46:34.65 ID:4pD7P6rf
侑「歩夢のことやあなたたちのこと、公安局や1係のみんなのこと」

侑「その全部を私はまだ何も知らない」

侑「かすみちゃんや果林ちゃんはこんな私のことを必死に守ってくれた」

侑「エマさんは……私に未来を選ばせてくれた」

侑「歩夢のことは必ず起こすよ」

侑「でも……今はまだ、みんなのことをもっと知りたい」

侑「自分の目指すべき場所を考えるのは……それからだと思うんだ」

 
 『公安局です。この周囲から強いサイコレズの反応を探知しました』

 『セキュリティードローンが通ります。周囲から離れ捜査にご協力ください』

 『繰り返します』

 『公安局です。この周囲から強いサイコレズの反応を──』
 

しずく「……時間ですね」
 
179: (たこやき) 2022/10/31(月) 05:52:13.21 ID:4pD7P6rf
しずく「侑さん、助けていただきありがとうございました」

しずく「あなたの選択が間違いではなかったと、必ず示してみせます」

侑「助けたつもりはないよ。私は自分の信念に従っただけ」

侑「監視官の仕事はサイコレズの記憶を消すことじゃない……救うことだから」

侑「でも勘違いしないで。あなたたちの目的に協力するつもりはないよ」

侑「あなたは詳しいことをまだ何も話してない……」

侑「私はそれが本当に正しいのか判断することもできない、当然だよね」

侑「だから、ミアちゃんと璃奈ちゃんを攫った目的も分からない以上、二人は必ず助けにいく」

侑「その時にあなたを執行するべきだと思ったら……今度こそ撃つから」

しずく「……私たちのすべてを話すときは、近い将来必ず来ます」

しずく「また、お会いしましょう」
 
180: (たこやき) 2022/10/31(月) 06:01:48.56 ID:4pD7P6rf
侑(近い将来、か……)

侑(桜坂しずく……)

 
愛『もしもーし、誰か聞こえるー?』

 
侑『愛さん! そっちは大丈夫ですか!?」

愛『うん、なんとかね。せっつーとしおってぃーも無事だよ』

愛『ショウ・ランジュには逃げられちゃった』

愛『あれ以上やりあえば私も危なかったし、あの通信のあとだとね』

愛『そっちはどんな感じ?』

侑『えっと、かすみちゃんと果林さんは……たぶん大丈夫。すぐに起きると思う』

侑『でもエマさんが……』

愛『エマっちやられたのっ!!?』

侑『やられたというか、やってしまったと言うか……』
 
181: (たこやき) 2022/10/31(月) 06:08:16.09 ID:4pD7P6rf
愛「どういうこと……?』

侑『その色々あって……撃っちゃいました……』

愛『撃っちゃいましたぁ!?」

愛『まさかっ、イレイザーじゃないよねっ!?』

侑『そ、それは大丈夫、ちゃんとパラライザーにしたから』

愛『ふふ、あははっ……そっか、そりゃそうだよね……』

愛『君すごいね、エマっちにぶっ放すなんて……大物すぎるよ』

侑『うぅぅ、私、あとでめちゃくちゃ怒られると思う……』

侑『今考えてみると、色々すごいことやらかしてる気が……』

愛『まあ詳しくは後で聞くよ。とりあえずそっちに合流するね』

侑『いいの? 本庁からの帰還命令めちゃくちゃ来てるけど……」

愛『りなりーとミアチ攫われちゃったならもう戻る意味なくない?』

愛『カリンとかすみんの顔に落書きするのが優先だよ』
 
182: (たこやき) 2022/10/31(月) 06:17:11.38 ID:4pD7P6rf
侑『愛ちゃんは落ち着いてるんだね、こんなことがあったのに……』

愛『まあヤバイ時ほど冷静にってのもそうだけど、二人を攫ったのはハルちゃんだから』

愛『あの子なら大丈夫、絶対に酷いことはしないよ』

愛『なんか目的があってこんなことしたんだろうけど、まあ十中八九カナちゃん絡みだろうし……』

侑『……近江彼方さん、ですか?』

愛『……ゆうゆからその名前が出るとはね』

侑『どういう人、なんですか? 今は眠ってるって聞きましたけど……』

愛『その辺の話は色々と落ち着いてからにしよっか』

愛『武勇伝、色々聞かせてよ♪』

侑『あはは……」
 
183: (たこやき) 2022/10/31(月) 06:26:28.80 ID:4pD7P6rf
侑(お台場事変)

侑(公安局に多大な被害を出し、この社会を揺るがすサイコレズ集団が頭角を現したこの一連の騒動は後にそう呼ばれるようになって、ユリネーターによる統治を受けていた社会を激震させた)

侑(世界最強の力を持つ1係執行官たちに匹敵するサイコレズの登場、その組織化)

侑(1係分析官二人の拉致、クラス6th近江遥の造反)

侑(1係の人員が3人も失われたことに加え、近江遥の鎮圧に向かった2係3係の壊滅)

侑(結果、公安局本庁がその機能の半分を消失した未曾有のテロ事件になった)

侑(公安局の機能低下によりサイコレズによる犯罪の増加が懸念され、1係は緊急の任務が与えられた)

侑(分析官二人の奪還、お台場事変の首謀者であるサイコレズ3人の抹消)

侑(特に桜坂しずく、ショウ・ランジュ、近江遥の抹消は最重要任務として位置付けられた)

侑(もし彼女たちがこの事件の首謀者であると名乗りを上げ、その力を誇示した時……)

侑(全世界のサイコレズたちが彼女たちをカリスマと祭り上げ、その下に集い、組織が巨大化する危険性があるからだった)
 
184: (たこやき) 2022/10/31(月) 06:31:15.13 ID:4pD7P6rf
侑(そうなればもう彼女たちの存在を秘匿することはできない)

侑(このユリネーターによる統治社会を根本から揺るがしかねないテロ組織として世間に認知され、世界を混乱に陥れる……)

侑(1係と3人のサイコレズ……)

侑(この社会を、世界を賭けた戦いが今、始まろうとしていた──)

  
 『本日は虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会による映画上映会にご参加頂き誠にありがとうございました』

 『「PSYCHO-LES・後編~Dream with you~」は来たる11月に予定されている文化祭にて上映予定ですので請うご期待ください』

 『本編はスクールアイドル部のYou tube チャンネルにも投稿されますので、ご来場出来なかった皆様もぜひお楽しみください』
 
 『また、12月にはスクールアイドル部、演劇部の共同で舞台版「PSYCHO-LES」の発表も企画していまますので、続報をお楽しみください』

 『改めて、本日はご来場いただきありがとうございました』

 『足元にお気を付けの上、ご退場ください』

  
 
185: (たこやき) 2022/10/31(月) 06:32:42.42 ID:4pD7P6rf
  
 
 「めっちゃ良かったー!」

 「みんな超かっこよかったねー!」

 「エマさんのあんな姿、普段じゃ絶対に見れないから私はもう……!」

 「ここで終わるのあんまりじゃない!? 続き気になってしょうがないよ!!」

 
彼方「評判は上々みたいだねぇ」

愛「お客さんめっちゃ入ってたねー」

栞子「こんなにもたくさんの人に期待されると、後編もプレッシャーがかかりますね……」

ランジュ「ふふ、ランジュがいるんだから必ず良いものになるわよ」

ランジュ「期待して夜も眠れなくなるくらいがちょうどいいんじゃないかしら」

ミア「どこから湧いてくるんだよその自信は……」

しずく「ぐすっ……うっ、うぅ……」

歩夢「し、しずくちゃん? なんで泣いて……」
 
186: (たこやき) 2022/10/31(月) 06:35:12.42 ID:4pD7P6rf
しずく「脚本、演出、監督……そのすべてを今回手がけさせていただきました……」

しずく「総監督として企画から撮影までそのすべてを不退転で挑みましたが……みなさんの期待に応えられた安堵感と嬉しさで……」

果林「まだ後編があるんだから泣くには早いと思うけど」

エマ「でもとりあえずはこれで一安心だよね、お芝居なんて初めてだから緊張しちゃったよ」

愛「エマっちはかなり上手に出来てたよね? ミアチとかしおってぃーはガチガチの噛み噛みだったけど」

ミア「な、慣れてないんだからしょうがないだろ……」

栞子「台詞の少ない別の役がいいと言ったんですが、しずくさんに1時間近く私である必要性を説得されて……」

侑「役と言えば、何度見ても私がこの役で良かったのかなって思っちゃうな……」

侑「その、みんなのための映画なのに、目立ちすぎっていうか……」

璃奈「同好会のプロモーションムービーであるからこそ、現実の人間関係とある程度リンクさせる必要がある」

しずく「その通りです!だからサイコレズをランジュさんにしたとき栞子さんは監視官になるし、歩夢さんをサイコレズにした場合は侑さんが監視官になる必要があるんです!」
 
187: (たこやき) 2022/10/31(月) 06:36:19.84 ID:4pD7P6rf
しずく「サイコレズが恋慕から生まれるという設定上、あっ確かにこの二人はそうだな、この二人ならありえる、っていう説得力を生むのが大切で……!」

果林「本人たちの前ですごいこと言ってるって気付いているのかしら?」

栞子「?」

ランジュ「あぅ……」

侑「歩夢? 耳赤いけど大丈夫?」

歩夢「ゆ、侑ちゃんっ……」

エマ「でもしずくちゃんの言う通り、侑ちゃんの役が私とかだとおかしいよね?」

璃奈「リアリティの追求は大切」

せつ菜「ううぅっ~~!!」

ミア「い、いきなり大きい声出すなよ!? ビックリするだろ!?」

せつ奈「やっぱり何度見ても納得できません!!」

せつ菜「出番が少なすぎます!」
 
188: (たこやき) 2022/10/31(月) 06:38:28.13 ID:4pD7P6rf
せつ菜「いや、出番はあるんですけど瀕死の状態で倒れてるだけなんてあんまりです!!」

かすみ「そうですよ! かすみんもしず子に眠らされてそれで退場ってあんまりです!!」

せつ菜「ユリネーターを! カッコよく構えて!!」

せつ菜「愛さんや果林さんエマさんみたいに、カッコいいセリフを言いたかったです!!」

せつ菜「私も"ライブ"したかったですーーーー!!」

かすみ「そうですよ! せめて力を使わせてくださいよ!?」

かすみ「こんなの不平等ですーー!!」

果林「それを言うなら歩夢や彼方なんて喋ってすらいないじゃない」

せつ菜「お二人は個人ライブが近いから撮影時間が取れなかったって理由があるじゃないですか!?」

せつ菜「それに超重要人物で後編での活躍が約束されてますし……うぅ、こんなのあんまりです!!」
 
189: (たこやき) 2022/10/31(月) 06:40:54.66 ID:4pD7P6rf
彼方「私の胸で泣くがいいさ、せつ菜ちゃん」

せつ菜「うぅ、ずるいです……世界最強のスクールアイドルに加えて第1位なんてめちゃくちゃカッコいい設定もらってる彼方さんもずるいです……」

彼方「あはは……」

しずく「今回は脚本の都合上、せつ菜さんにはこういう形での出演になりましたが……」

しずく「実はもうあるんです」

しずく「愛さんと璃奈さんが1係に入るきっかけになったお話を描いた外伝の構想が」

せつ菜「!」

しずく「そしてそのメインキャストは……せつ菜さんです」

せつ菜「本当ですか!?」

愛「初耳なんだけど……」

璃奈「同じく」
 
190: (たこやき) 2022/10/31(月) 06:44:40.57 ID:4pD7P6rf
しずく「璃奈さんを守るためサイコレズを覚醒させる愛さん……」

せつ菜「その愛さんを最強のレズ『CHASE』で迎え撃つせつ菜さん……」

しずく「ピンチに駆けつけるのがユニット的に3rdの果林さんにするべきか」

しずく「最強のスクールアイドル1stである彼方さんにするべきかを悩んでいて……!」

かすみ「ちょっ、そこは出番的にかすみんでしょしず子!!」

しずく「かすみさんもちゃんと出るよ? 愛さんにやられちゃうけど」

かすみ「かませ犬じゃん!!?」

せつ菜「し、しずくさん! それはつまり次は脚本から関わらせて頂けるということでよろしいですか……!?」

しずく「もちろんです! せつ菜さんと璃奈さんからはこのPSYCO-LESのアイデアを得るきっかけを頂いたので!」

彼方「きっかけ?」

せつ菜「!?」

璃奈「……」

果林「初耳ね、どういう成り行きでこの話が出来たのかしら?」

しずく「実はですね……!」

せつ菜「ちょっ」
 
191: (たこやき) 2022/10/31(月) 06:48:15.24 ID:4pD7P6rf
 
────────────────────────────────────────────────────
 
せつ菜『あなたが凶悪なサイコレズですね!無駄な抵抗はやめなさい!』(歩夢の写真に銃を向けながら)

璃奈『百合係数オーバー600。リーサル・エリミネーター(激似)』

璃奈『執行対象です(激似)』

璃奈『慎重に照準を合わせ、対象を排除してください(激似)』

せつ菜『この社会の目であるドミネーターがあなたを裁きます!』

せつ菜『バシューーーン!!』

璃奈『フェアリーテイルはー』

しずく『……なにしてるんですか?』

せつ菜『はっ!?』

璃奈『……』

せつ菜『こ、これはですねぇ!? そのっ』

璃奈『せつ菜さんにやれって言われた』

せつ菜『璃奈さん!?』
 
 
 
しずく「ってことがありまして、そこから原作のアニメを見させて頂き妄想が捗りました!!」

歩夢「……せつ菜ちゃん? 」

せつ菜「こんなのあんまりですっ~~~~~~!!!」

 
終わり
 
 
192: (たこやき) 2022/10/31(月) 06:49:04.05 ID:4pD7P6rf
用事で投下遅れましたすんません
お付き合い頂きありがとうございました
 
195: (茸) 2022/10/31(月) 09:36:47.45 ID:SOyCbOe6
めちゃくちゃ面白いですやん
 
197: (もんじゃ) 2022/10/31(月) 10:30:08.85 ID:UxSaiaaJ
漫画化決定
 
200: (やわらか銀行) 2022/10/31(月) 10:50:41.51 ID:3KER+jq/
めっちゃ面白い絶対後編も書いてくれ
 
202: (しまむら) 2022/10/31(月) 15:50:45.72 ID:vNgPpY1W
外伝までお願いします!
 
206: (SIM) 2022/10/31(月) 19:53:06.40 ID:k2govwlh
マジで超面白かった!!
 

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1666956792/

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