【SS】ツバサ 「A-RISEってAも可哀想だわ……」

つばさ SS


4: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 20:10:14.49 ID:LcFihcsl
英玲奈 「どうしたんだ、ツバサ。ため息なんかついて」

ツバサ 「いやあのね? A-RISEで可哀想なのがいるのよ」

英玲奈 「可哀想だと? あのなぁ、ツバサもあんじゅも私も、可哀想なことはないと思うぞ? こうしてA-RISEに所属できてるんだ、十分幸せじゃないか」

ツバサ 「あっ、いやそうじゃなくて。文字の方よ」

英玲奈 「文字の方?」

ツバサ 「A-RISEってAが可哀想じゃない?」

英玲奈 「……は?」
 
5: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 20:10:43.09 ID:LcFihcsl
ツバサ 「私たちのグループ名、『A』と『RISE』に分かれてるでしょ、一本の線で」

英玲奈 「それがどうした」

ツバサ 「仲間はずれじゃない、Aだけ孤立してるなんて!!」

英玲奈 「お前は何を言ってるんだ。文字に孤立も何もあるか」

ツバサ 「じゃあ考えてもみてよ。例えばさ、英玲奈の名前」

英玲奈 「私の名前?」
 
6: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 20:12:01.62 ID:LcFihcsl
ツバサ 「統堂英玲奈が、統-堂英玲奈になってたら、統が可哀想じゃない!!?」

英玲奈 「いや、別に」

ツバサ 「仮に統堂-英玲奈だったとしても、二文字と三文字で、二文字の方が可哀想だと思わない!?」

英玲奈 「思わないな」

ツバサ 「じゃあ違和感は!? 違和感はあるでしょ!? 違和感すらないならあなたは人の気持ちを分かってないわ!!」

英玲奈 「いやそもそも人じゃなく、文字だろう……」
 
7: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 20:12:19.89 ID:LcFihcsl
ツバサ 「屁理屈はなし! どう、考えてみて? 名前を二つと三つに分けた場合を! 違和感あるでしょ!?」

英玲奈 「……」

ツバサ 「……」

英玲奈 (『統堂』と『英玲奈』だったら苗字と名前で違和感ないな……)

英玲奈 「むしろしっくりくる」

ツバサ 「ひとでなし!!」
 
8: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 20:12:44.17 ID:LcFihcsl
A 「まあまあ、喧嘩はやめましょう」

ツバサ 「だけどAさん、あなたの気持ちを考えると私、胸が苦しくて苦しくて……」

A 「ツバサさん、気持ちは嬉しいけれど、私のためにあなたが悩む必要はないわ」

英玲奈 「そうだぞ、ツバサ。文字にまで同情してたら、世の中生きていけないぞ」

ツバサ 「で、でも……」
 
9: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 20:13:05.00 ID:LcFihcsl
英玲奈 「まあ捉え方を変えるんだ、ツバサ。お前が心配しなくても、きっとAは自分の力で頑張れるはずさ」

A 「そうですよ」

ツバサ 「そうなのかぁ」

英玲奈 「そうさ、だから文字のことは気にせず……」

英玲奈 「っておい、おまえ誰だ」

ツバサ 「誰ってAさんよ?」

A 「こんにちは」 ペコッ
 
10: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 20:18:14.34 ID:LcFihcsl
英玲奈 「こんにちは、じゃないが!? なんだおまえは!! 文字が喋るわけないだろ!!」

A 「あっ、もしかして英玲奈さんって、文字は喋らないと思ってる人ですか?」

ツバサ 「えー、そんな人まだいたんだー、価値観のアップデートが遅れてるのね」

A 「英玲奈さん、ロボットみたいに喋るのにアプデはされてないんですねwww」

ツバサ 「OSバージョン2くらい?www」

英玲奈 「なんだこのうざい文字とチビは」
 
11: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 20:18:40.27 ID:LcFihcsl
A 「確かに英語で『うざい』を意味する単語『annoying』の頭文字はAですけど……」

ツバサ 「へー、英玲奈って英語はできるのね」

英玲奈 「そういうことを言ってるんじゃない!!」

ツバサ 「ていうか今私をチビって言った!?」

英玲奈 「ああ言った、間違ってるか?」
 
12: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 20:19:01.73 ID:LcFihcsl
ツバサ 「スーパー間違ってるわ!!! 私はあの綺羅ツバサよ!!! その私に向かってチビなんて、このロボット野郎!!!」

英玲奈 「ロボット野郎!?!?」

ツバサ 「ロボットが人間様に逆らうんじゃないわよ!!!」

英玲奈 「もうちょっと態度だけじゃなく背も大きくなってから偉そうに言うんだな!!!」

ツバサ・英玲奈 「「ぐぬぬぬぬぬ」」
 
13: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 20:20:47.72 ID:LcFihcsl
A 「お願い!! 私のために争わないで!!」

英玲奈 「お前のためになど争ってないが!?」

A 「なぜ人は私のために争うの……」 ポロポロ

ツバサ 「あぁ、泣かないでAさん!」

英玲奈 「文字が泣いたら涙の代わりに何が出るというんだ」

ツバサ 「今のやつ歌詞っぽくて良いわね」
 
14: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 20:26:09.04 ID:LcFihcsl
A 「そんな、争いなんて何も意味ない、完全にフルハウスよ!!!!」 ポロポロ

英玲奈 「いやおまえあんじゅだろ」

あんじゅ 「あっ、バレちゃった?」 テヘ

ツバサ 「ええ~なんでバレちゃったんだろう。Aの形の着ぐるみまで用意したのに!」

あんじゅ 「本当、姿勢キープするの大変だったのよ? ツバサも無理難題を強いるんだから」
 
15: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 20:29:47.49 ID:LcFihcsl
英玲奈 「なんでそんなバカなことをしたんだ、あんじゅ」

あんじゅ 「ほらAは、あんじゅのあでしょ?」

英玲奈 「そんな理由でこんな茶番を……?」

ツバサ 「まあ細かい事はいいじゃない」

英玲奈 「二人して私をからかったのか」

あんじゅ 「ふふ、英玲奈って反応が面白いから、つい」
 
16: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 20:30:17.82 ID:LcFihcsl
英玲奈 「あのなぁ、私たちは天下のA-RISEなんだぞ? 本来はこんなふざけた遊びをしてる暇はないんだ。常に一位を取るくらい、常に練習をしないと」

ツバサ 「それでも息抜きは必要よ、ねえ、あんじゅ」

あんじゅ 「英玲奈の困った顔を見てるだけで、練習意欲が増すわ」

英玲奈 「こ、こいつら……」
 
17: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 20:30:38.96 ID:LcFihcsl
ツバサ 「でもそれはそれとして、本当にA-RISEってAが可哀想じゃない? 一人だけ線で区分されちゃってさ」

英玲奈 「いや逆に捉えたらどうだ」

ツバサ 「逆?」

英玲奈 「センターだと考えるんだよ。一列目にA。バックがRISEって」

あんじゅ 「へぇー、面白い考えね」
 
18: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 20:30:55.20 ID:LcFihcsl
英玲奈 「それならAは可哀想じゃないだろ?」

ツバサ 「なるほど……確かにそれなら可哀想じゃない!」

英玲奈 「よし。これでAは可哀想問題は解決したな。じゃあそろそろ練習に入ろう。次のライブの曲なんだが……」

あんじゅ 「その曲は私がセンターね」

ツバサ・英玲奈 「「……はっ?」」
 
19: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 20:31:27.23 ID:LcFihcsl
ツバサ 「いやA-RISEのセンターは私なんだけど???」

あんじゅ 「だって『A』はセンターなんでしょ?」 ニコッ

英玲奈 「あれは捉え方の話だ!!!」

ツバサ 「私がセンターよ!!!」

あんじゅ 「Aがセンター理論、ツバサも納得してたじゃない」
 
20: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 20:35:57.45 ID:LcFihcsl
ツバサ 「それなら綺羅ツバサには『RA』と『BA』と『SA』で三個も入ってるんですけど~~!?」 キィーーー!

英玲奈 「それなら私だって『NA』があるっ!!」

あんじゅ 「私がセンターよ!」

ツバサ 「いーや! 私がセンターだねっ!」

英玲奈 「ここは私がセンターだろう」
 
21: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 20:36:15.32 ID:LcFihcsl
あんじゅ・ツバサ・英玲奈 「「……」」

英玲奈 「じゃんけんでいこう」

あんじゅ 「最初は」

ツバサ 「グー!」

英玲奈 「じゃんけん……ぽいっ!」

次のライブもセンターはツバサだった。

Part1.おわり
 
23: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 20:41:51.21 ID:LcFihcsl
ガチャ

マスター 「いらっしゃいませ、綺羅ツバサ様」

ツバサ 「いつものでよろしく」

マスター 「承知しました」

ツバサ (……ここは、知る人ぞ知る隠れた名店。バーのような雰囲気の店内の中で、ジュースをまるでカクテルのように提供する。そう、子どもでも大人の気分を味わえることがコンセプトの、そんなお店)
 
25: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:02:14.86 ID:LcFihcsl
マスター 「オレンジジュースでございます」 スッ

ツバサ 「……あなたのことは信頼してるけれど、一応聞いてよろしいかしら」

マスター 「……ご安心ください。ポンジュースです」

ツバサ 「それが聞きたかったっ!」 ゴクゴク

ツバサ 「……デリシャス!!!!」
 
26: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:07:28.43 ID:LcFihcsl
マスター 「……恐縮です」

ツバサ (それにしても、英玲奈やあんじゅにここを教えなくて正解ね)

ツバサ (ただでさえ、A-RISEの中で一番子供っぽいのは私なのに、二人にもっと大人っぽくなられちゃ困るわ)

ツバサ 「オレンジジュース、絶品ね」

スッ

カランッ

ツバサ 「!」
 
27: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:09:21.37 ID:LcFihcsl
マスター 「あちらのお客様からです」

ツバサ 「……こ、これはぶどうジュース!?」

?? 「やあやあ、こんなところで奇遇だな」

英玲奈 「ツバサ」

ツバサ 「え、英玲奈……!!」

英玲奈 「それにしても、ツバサはオレンジジュースか。お子ちゃまだな」

ツバサ 「なっ」
 
28: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:09:47.81 ID:LcFihcsl
英玲奈 「見ろ、このぶどうジュースの赤ワインにも似た深みを。どうだ、大人の世界に一歩入れた気分になるだろう」

ツバサ 「……」

英玲奈 「オレンジジュースは……まあ、子供っぽいツバサにはぴったりだろ」 フッ

ツバサ 「こ、このっ!!!!!」 ドタバタ

マスター 「お、お客様! 暴れられては困ります!」
 
29: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:10:07.14 ID:LcFihcsl
英玲奈 (……ふん、所詮子供だな)

英玲奈 (ツバサにはダンスや歌声やカリスマ性諸々……正直言って素晴らしいものはやまほどあるが、それでも大人っぽさならば、余裕で私の勝ちだ)

英玲奈 「おまえにはまだこのバーは早いよ」

ツバサ 「っっっっ!!!!」 ドタバタ

マスター 「stay! stay!」

スッ

カランッ

英玲奈 「!」
 
30: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:15:19.18 ID:LcFihcsl
マスター 「あちらのお客様からです」

英玲奈 「……こ、これはトマトジュース!?」

?? 「ふふ、こんなところで奇遇ね」

あんじゅ 「英玲奈」

英玲奈 「あ、あんじゅ……!!」

あんじゅ 「それにしても、英玲奈はぶどうジュースか……」

英玲奈 「なんだ、何か文句あるか」
 
31: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:16:05.55 ID:LcFihcsl
あんじゅ 「見なさい、このトマトジュースの美しい赤色を。私たちはアイドルなのよ? 常に健康に気を遣い、飲み物すら野菜を摂取する」

英玲奈 「……」

あんじゅ 「まあ、果物も野菜と近いけれど、ぶどうジュースなんて、所詮お子様ね」 フッ

英玲奈 「こ、このっ!!!!!」 ドタバタ

マスター 「お、お客様! 暴れられては困ります!」

ツバサ 「がるるるっ!」

英玲奈 「うがああっ!」

マスター 「二人は無理! 二人は同時に止められない!」
 
32: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:16:29.51 ID:LcFihcsl
あんじゅ (……こんな少しの煽りに怒るなんて、まだまだアンガーマネジメントが不十分ね)

あんじゅ (英玲奈にはダンスや歌声や正確性諸々……正直言って素晴らしいものはやまほどあるけど、それでも大人っぽさならば、余裕で私の勝ち♪)

あんじゅ 「あなたにはまだこのバーは早いわ」

英玲奈 「っっっっ!!!!」 ドタバタ

マスター 「stay! stay!」

スッ

カランッ

あんじゅ 「!」
 
33: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:19:46.40 ID:LcFihcsl
マスター 「あちらのお客様からです」

あんじゅ 「……こ、これは最高級トマトジュース!?」

?? 「トマト養分が足りてないようなので」

真姫 「どうぞ」

あんじゅ 「に、西木野真姫……!」

真姫 「健康に気遣ってトマトジュースを飲むのは素晴らしいわね。でも」
 
34: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:20:41.75 ID:LcFihcsl
真姫 「……それならなんで頼まないの? このバーでいちばんのトマトジュース。最高級トマトジュースを」

あんじゅ 「……っ」

真姫 「もったいない」

あんじゅ (……最高級トマトジュース)

あんじゅ (私だって本当はいつも飲みたいわよ。でも!)
 
35: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:21:00.56 ID:LcFihcsl
あんじゅ (額が違う!!!!)

あんじゅ (私だってお金をかける方だけど、流石に最高級トマトジュースを毎日飲み続けるのは無理!)

あんじゅ 「……」

真姫 「? どうしたの、飲まないの?」

あんじゅ (……目の前にあるのは西木野真姫からの奢り。そう、ライバルであるμ's、さらには歳下であるこの子からトマトジュースを奢られるなんて、それは私のプライドが許さない!)
 
36: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:21:30.42 ID:LcFihcsl
あんじゅ 「私はツバサよりも、英玲奈よりも、誰よりもクールな大人……」

あんじゅ 「こんなのでプライドを捨てたりしないわ」

真姫 「いらないなら私が飲もうかしら。別に一日二本飲んでもいいわけだし……」

あんじゅ 「健康と美肌に優るものなしっ!」 ゴクゴク

あんじゅ 「……デリシャス!!!!」






 
37: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:22:54.86 ID:LcFihcsl
マスター 「一人は店の端っこで落ち込んでるし、二人は喧嘩してるしどうすれば……」

あんじゅ 「……」 ショボーン

ツバサ 「英玲奈ぁぁぁぁぁぁぁ!」 ドタバタ

英玲奈 「黙れオレンジジュースぅぅぅぅぅぅぅ!」 ドタバタ

マスター 「stay! stay!」
 
38: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:23:23.50 ID:LcFihcsl
真姫 「やっぱり飲みもので、このトマトジュースに優るものはないわね」

スッ

カランッ

真姫 「!」

マスター 「あちらのお客様からです」

凛 「ラーメンは最高の飲み物にゃ」

真姫 「マスター。悪いんだけど、あっちに返しといて」

Part2.おわり
 
39: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:29:47.99 ID:LcFihcsl
ツバサ 「あんじゅの下駄箱に、偽物のラブレターを入れたわ」

英玲奈 「なんでそんなことを」

ツバサ 「思い出してみて。私たちのもとに届くファンレターの数を!」

英玲奈 「ファンレター? 確か、一番多いのがあんじゅで、次は私で、最後はツバサだったか?」

ツバサ 「ええ、その通りよ」

英玲奈 「それがどうしたんだ」
 
40: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:30:44.05 ID:LcFihcsl
ツバサ 「……なんかさ、ムカつかない?」

英玲奈 「完全なる私怨じゃないか!!」

ツバサ 「だってだって! なんで私が一番じゃないの!? センターは私なのにおかしくない!?」 ドタバタ

英玲奈 「おい駄々こねるな! いい歳して情けない!」

英玲奈 「それに、ファンレターの数はさほど問題ではないだろう? ファンレターを送ってくれた人がいる、その応援してくれてる気持ちに何より意味があるんじゃないか」

ツバサ 「それはそうだけどさ!」
 
41: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:31:25.61 ID:LcFihcsl
ツバサ 「それはそれとして、なんか、あんじゅに仕返ししたい!」

英玲奈 「あのなぁ」

ツバサ 「……ていうかそんなこと言ってさ、英玲奈」

英玲奈 「ん?」

ツバサ 「正直、英玲奈も興味津々なんじゃないの? あんじゅがラブレターを受け取ったらどういう反応をするか?」

英玲奈 「はあ?」
 
42: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:31:47.62 ID:LcFihcsl
ツバサ 「もしかしたら、あのあんじゅが、まさかの乙女みたいに顔真っ赤にしたり、しどろもどろになったりするかもしれないのよ?」

英玲奈 「……」

あんじゅ 『え、えっと……/// こ、告白なんて……///』

あんじゅ 『実は私、こう見えて、告白されたことなんてなくて……』

あんじゅ 『うぅ……どうすればいいの……///』
 
43: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:32:23.95 ID:LcFihcsl
ポタポタ

ポタポタ

英玲奈 「……」 ポタポタ

ツバサ 「英玲奈、鼻血」

英玲奈 「はっ!?」

ツバサ 「さっさとその鼻血拭いて、学校の玄関で待機しとくわよ! 後ろからこっそり反応を見るのよ、分かった?」

英玲奈 「……今回だけだからなっ」






 
44: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:33:19.41 ID:LcFihcsl
あんじゅ 「~♪」 フフン

ツバサ 「なんだか、ご機嫌ね」

英玲奈 「そうみたいだな」

ツバサ 「ふふ、ファンレターを一番もらってるあんじゅ言えども、ラブレターは滅多にもらったことないでしょ! きっと照れるに違いないわ!」

英玲奈 「ところで手紙にはなんて書いたんだ?」
 
45: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:34:17.12 ID:LcFihcsl
ツバサ 「シンプルよ。『あなたのことがずっと昔から好きでした。あなたに伝えたいことがあります。放課後に校舎裏に来てください』ってね」

英玲奈 「ふむ……」

ツバサ 「ふふ、どういう反応するのかしら」

英玲奈 「ひとつ聞いていいか?」

ツバサ 「なによ」

英玲奈 「もし、そのラブレターを読んで、放課後あんじゅが校舎裏に来たらどうするつもりなんだ」

ツバサ 「えっ?」
 
46: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:34:36.98 ID:LcFihcsl
英玲奈 「告白された時の反応だろう? まさかラブレターを書いた後のことは何も考えてなかった、なんてことはないだろうな」

ツバサ 「……」

英玲奈 「……ツバサ?」

ツバサ 「……時の流れに身を任せようってね」

英玲奈 「ノープランってことじゃないか!!!」
 
47: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:35:26.64 ID:LcFihcsl
ガチャ

あんじゅ 「……? 手紙かしら」

英玲奈 「まずい!! あんじゅがラブレターを見つけたぞ!」

あんじゅ 「……」

あんじゅ 「……へぇ」

あんじゅ 「えっと、確か」

あんじゅ 「今日の放課後は予定空いてるわよね」
 
48: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:35:53.92 ID:LcFihcsl
あんじゅ 「……」

ツバサ 「英玲奈の指示です、って今すぐにでも土下座しに行こうかしら」

英玲奈 「おまえだろ! 主犯は!」

タッタッ

タッタッ

英玲奈 「おいっ!! 校舎裏に向かってしまったぞ!?」

ツバサ 「どどどどうしよう!」 アセアセ

英玲奈 「このままじゃ、誰も来ないのに永遠に待たされることに……」
 
49: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:36:16.74 ID:LcFihcsl
ツバサ 「……」

ツバサ 「要するに私だってバレなきゃ良いのよね」

英玲奈 「は?」

ツバサ 「全然違う姿に変装して、告白しちゃえば良いのよ! どうせ振られるし!」

英玲奈 「変装って言ったって……普通バレるだろ」
 
50: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:36:35.74 ID:LcFihcsl
ツバサ 「そこをなんとかするのが、綺羅ツバサよ」

英玲奈 「かっこいい場面で言ってほしいな、そういう言葉は」

ツバサ 「衣装室に行ってくる! 英玲奈は先に校舎裏に行ってて!」 タッタッ

英玲奈 「ちょ! ツバサ!」

英玲奈 「……行ってしまった」

英玲奈 「本当に大丈夫なのか?」






 
51: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:39:36.54 ID:LcFihcsl
あんじゅ 「……」

英玲奈 「……」 ジッー

英玲奈 (あんじゅが待ってるな)

英玲奈 (ツバサはまだ来ないのか?)

タッタッ

タッタッ

あんじゅ 「!」

?? 「あ、あの……」
 
52: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:40:23.45 ID:LcFihcsl
あんじゅ 「あなたがホノカさん?」

ホノカ 「は、はい!」

英玲奈 (偽名に自分の推しの名前使うな!!)

あんじゅ 「この手紙のことだけど……」

ホノカ 「改めて言わせてください! 優木あんじゅさん、あなたのことが好きです!」

あんじゅ 「!」
 
53: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:40:42.94 ID:LcFihcsl
ホノカ 「練習を一生懸命する姿も、楽しそうに衣装を着る姿も、全部全部魅力的で、好きになってしまいました!」

ホノカ 「私は死にましぇーん! あなたが好きだから!」

英玲奈 (急にドラマのセリフ入れるな!! 恥ずかしいだろ!!)

あんじゅ 「……」

ホノカ 「付き合ってください!」
 
54: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:41:00.34 ID:LcFihcsl
あんじゅ 「……ありがとう、よろしくね」 ニコッ

ホノカ 「えっ?」

英玲奈 「えっ?」

ホノカ 「やったーーー! 嬉しーーーー!」

ホノカ 「……ーーー、えええええええええええっ!?!?!?!?」

英玲奈 「おい! そんなバカな!」
 
55: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:41:24.72 ID:LcFihcsl
あんじゅ 「え、えっと……/// 実は私、こう見えて、告白されたことなんてなくて……」

あんじゅ 「だからすごく嬉しいの! これからよろしくね、ホノカさん……///」

英玲奈 「ぶはっ!」 ポタポタ

ホノカ 「え、えっと、その!」

ホノカ (まずい!!!! 告白が成功するパターンなんて想像してない!!!!)

ホノカ (そ、それに、優木あんじゅ!! あなたは!!)
 
56: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:41:56.42 ID:LcFihcsl
あんじゅ 「それで最初のデートはどこにしようかしら、映画館? 水族館? それとも」

ホノカ 「ダメでしょ!?!? あんじゅ!!!!」

あんじゅ 「えっ?」

バッ

ツバサ 「よく見てこの顔!! ホノカじゃなくて、綺羅ツバサ! 綺羅ツバサよ!!」
 
57: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:42:27.72 ID:LcFihcsl
ツバサ 「それにアイドルが付き合っちゃダメでしょ!!!! A-RISEであることの誇りを一番持ってるのはあなたでしょ!?」

英玲奈 「そうだぞ! あんじゅ! こいつと付き合うなんて正気の沙汰か!?」 ポタポタ

ツバサ 「おまえはまず鼻血を拭け!!」

英玲奈 「ツバサと付き合うくらいなら、私が付き合ってやる!!(?)」

ツバサ 「何言ってるの!?」
 
58: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:43:19.43 ID:LcFihcsl
あんじゅ 「……ふふ」

あんじゅ 「ふふふふふ」

英玲奈・ツバサ 「「?」」

あんじゅ 「ふふふふふ、あははははは!」

英玲奈 「おいおい、どうした、頭でも打ったのか?」

ツバサ 「ごめんね、あんじゅ……! 私がドッキリさえ仕掛けなければ……!」
 
59: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:44:09.65 ID:LcFihcsl
あんじゅ 「あはははは……やっぱり二人は最高に面白いわ。分かってたわよ、このラブレターが二人のドッキリなことくらい」

英玲奈・ツバサ 「「は?」」

あんじゅ 「だって筆跡がツバサだし、英玲奈は木の裏に隠れ切ってなかったし……分かってたけど、つい面白いから騙されたふりしちゃった」

英玲奈 「なっ!?」

ツバサ 「そんな!! 私、本当に焦ったのに!!」
 
60: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:45:17.43 ID:LcFihcsl
あんじゅ 「最初に仕掛けたのはそっちよ。それに、ツバサが言ったように私はあのA-RISEの一員なのよ? 付き合うわけないじゃない」

ツバサ 「くっ……! またあんじゅの掌の上で踊らされた!」

英玲奈 「言っておくがあんじゅ。私はこいつに巻き込まれただけだ。ちゃんと止めたんだぞ」

ツバサ 「英玲奈もノリノリだったじゃない!!!」

英玲奈 「黙れ!! ファンレターの枚数が少ないくらいでこんなこと考えたおまえが全部悪い! 私を巻き込むな!」

ツバサ・英玲奈 「「ぐぬぬぬぬぬぬ」」 バチバチ
 
61: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:45:35.40 ID:LcFihcsl
あんじゅ 「……あはは、笑い疲れちゃった」

あんじゅ (ツバサのファンレターの枚数か……)

あんじゅ (きっと遠すぎる存在は、応援しにくいのね)

あんじゅ (だって、英玲奈も、ツバサも、私よりも何倍も努力して、何倍も輝いてるもの)

あんじゅ 「……私が誰かと付き合うわけないじゃない」

あんじゅ 「……それこそ、どっかのバカ二人組ぐらいじゃないとね」 ボソッ

Part3.おわり
 
62: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:46:51.98 ID:LcFihcsl
ツバサ 「くらえ! こしょこしょ!」

英玲奈 「あははははははははは!」

ツバサ 「……あんじゅ、この子怖いんだけど」

あんじゅ 「同感よ」

英玲奈 「なんでだよ!!」
 
63: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:47:06.36 ID:LcFihcsl
ツバサ 「いや、だってさ、めっちゃ声出して笑ってるのに」

あんじゅ 「動きは微動だにしないし、顔は真顔だし……」

ツバサ 「さらに笑い声がロボットみたい」

ツバサ 「本当にロボットだったりする?」

英玲奈 「そんなわけあるか!!!!」
 
64: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:47:49.51 ID:LcFihcsl
英玲奈 「バカなこと言ってないで、今日も練習始めるぞ」

ツバサ 「はーい」

英玲奈 「じゃあ走り込みだ」

あんじゅ 「もうそろそろ良くない? ランニング」

英玲奈 「バカなこと言うな、基礎体力が一番なんだぞ! ずっと頑張ってきたじゃないか!」

あんじゅ 「だけど可愛くなくない? ランニングって」

ツバサ 「……確かに!」
 
65: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:48:11.47 ID:LcFihcsl
英玲奈 「一見カッコよくも可愛くもない練習を重ねてこそ、いざというときにカッコよく、可愛く見えるんだよ!」

あんじゅ 「もー、英玲奈ったら相変わらず固いんだから」

ツバサ 「たまには気を緩めないと、本当に固くなっちゃうわよ? 岩タイプのポケモンくらい」

英玲奈 「私の大真面目は生まれついての性格なんだ。ほら、練習やるぞ」

あんじゅ・ツバサ 「「はーい」」






 
66: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:49:05.07 ID:LcFihcsl
毎日大変だった。

「はぁ……はぁ……もうダメ。ついていけない……」

夢のある世界。
だけどその過程は夢とは真逆の、まさに地獄の世界だった。

走ってばかり。
周りは才能ばかり。
なんとなくで始めたチャレンジ。
どんどんいろんな人が辞めていく。
いつしか、最初に私と仲良くなった人たちはみんな違うコースに入っていた。
 
67: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:49:23.88 ID:LcFihcsl
私はひとりぼっちだった。

「A-RISEになるのには、並大抵の努力じゃなれない。本当に死に物狂いの努力が必要だ」

「それと才能でしょ」

「……まあ、そうだな。ところで君はなんと言う」

「私は優木あんじゅ。この学校に来て、A-RISEを目指してることを早速後悔してる人間よ」

「なるほど。私は統堂英玲奈だ。ところで私も後悔してるよ」
 
68: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:50:24.08 ID:LcFihcsl
「なに? 辞めたいの?」

「いや、後悔してるのは『今までの私』だ。今までもっと頑張っていれば、今こんなつらくなかったのにな、と」

「……そう」

「あなたたち! 何そんな日陰で寂しく喋ってるのよ!! 私たちはスポットライトに当たるアイドルになるのよ!?」

「きみは?」

「綺羅ツバサ! A-RISEのセンターになって、アイドル王になる女だ!!」

「どこのジャンプ漫画よ……」
 
69: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:51:06.82 ID:LcFihcsl
「ここで会ったのも何かの縁! せっかくだから三人で後何周か走ってみない?」

「はあ? ようやく休めるって言うのにそんなことするわけ……」

「賛成だ。みんなが休んでるときこそ、差を縮められる」

「統堂さん!?」

「ところで、きみはどうする、優木さん」

「優木さんって言うのね! あなたも一緒に走るでしょ?」

「いや私はもう少し日陰に……」
 
70: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:51:53.97 ID:LcFihcsl
日なたに立っていたそいつは、まるでスポットライトのように、輝いて見えた。

汗もかいていて、髪もボサボサで、決してアイドルなんて言えない不恰好な姿だったのに。

その笑顔は、私の世界を変えた。

「私のスピード、遅いけど良い?」

「ダメ! だけど一緒に走ろ!」

「……この学校、ほんと自分に厳しい人向けよね」

ツバサが私を引っ張る。
英玲奈が私の肩を支える。

こうして、A-RISEは始まったのであった。






 
71: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:52:28.58 ID:LcFihcsl
ツバサ 「うわーーーーーーーーーん! 英玲奈ぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!」 グスグス

あんじゅ 「なんでツバサ、英玲奈にくっついてるの」

英玲奈 「どうやら、私が本物のロボットで、ロボット王国に帰ってしまう夢を見たらしい」

ツバサ 「英玲奈がいないと私何もできないよーーー! エレエモンーーーー!」 グスグス

英玲奈 「ドラえもんみたいに言うな」 ゲンコツ

ツバサ 「いてっ!」
 
72: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:53:54.92 ID:LcFihcsl
あんじゅ 「エレエモン。練習が楽になる道具出して」

英玲奈 「そんなものあるか! 強いて言えば、楽しむことだ」

あんじゅ (……今日は、懐かしい夢を見ちゃったわね)

あんじゅ (あの頃の夢も、宝物といえば宝物だけど)

あんじゅ (今は)

ツバサ 「エレエモンを倒さないと、エレエモンが安心して未来に帰れないんだ!」

英玲奈 「意味分からん!!」

あんじゅ (この三人で、未来への夢を追いかけたい!)
 
73: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:55:18.73 ID:LcFihcsl
あんじゅ 「エレエモン! こちょこちょ!」

英玲奈 「あははははははははは!」

あんじゅ 「……ツバサ、この子怖いんだけど」

ツバサ 「同感よ」

英玲奈 「なんなんだよ!!」

Part4.おわり
A-RISEはカタカナだと四文字だからここでひとまずおわり!
 
74: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 21:57:53.67 ID:LcFihcsl
ありがとうございました。
時間がかかって申し訳ないです。
以前に書いたA-RISEのssを参考にして、書いてみました。ふと見てみたらちょうど二年前でビビりました。

二年前に書いたA-RISEのss

ツバサ 「A-RISEってIだけ可哀想だわ……」
https://itest.2ch.net/fate/test/read.cgi/lovelive/1617111698/
 
75: (もんじゃ) 2023/03/30(木) 22:09:46.28 ID:I3yamXWH

冒頭のくだり既視感あると思ったらやっぱり前にも書いてた人か、前のも今回も面白かった
 
76: (らっかせい) 2023/03/30(木) 22:12:06.31 ID:ii8FpX18
うわー!なんか見覚えあるタイトルだと思ったんだよな
今回も面白かったし悪友感のある最高のA-RISEでした
 
77: (あら) 2023/03/30(木) 22:13:25.17 ID:5678kWJ0

ちょくちょくA-RISEのSS書いてる人だよね?
今回も楽しませてもらったよ 次も期待してます
 
79: (カボス) 2023/03/30(木) 22:31:01.75 ID:umgi/KNV
面白さも可愛さもあってよかった!ありがとう乙
 
80: (たまごやき) 2023/03/30(木) 22:40:39.54 ID:UtQFEvTw
このシリーズ懐かしいな
 

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1680174361/

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