【ギャルゲ風安価SS】>>3「また一年が始まる」【ラブライブ!虹ヶ咲】

SS


1:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 07:27:49.55 ID:L4/YsWRN
前スレ
【ギャルゲ風安価SS】侑「また一年が始まる」

※ 安価がついてしまうのでスレタイを一部変更しています
 
2:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 07:29:13.49 ID:L4/YsWRN
本SSは、選択肢形式のギャルゲ風安価SSです。
主人公は侑で、選択肢によって行動が変化、様々なイベントが起きたり各キャラと交友を深めたりし、ひいては侑の物語(ルート)と特定時点での結末(エンディング)が異なります。
あまり自由度は高くありませんが楽しんでいってね!
 
3:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 07:32:13.23 ID:L4/YsWRN
ヒント1
カレンダーは2020年のものに倣っています。

ヒント2
遅くとも6月中旬で物語は結末を迎えます。

ヒント3
侑の選択や行動によらない固定のイベントがあることに注意しましょう。

ヒント4
侑の認識の外でも物語が進んでいることに注意しましょう。
 
4:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 07:34:58.28 ID:L4/YsWRN
5月8(金) 終了時点 各キャラまとめ
※ 現在は5月11日(月) 放課後終了
%title%【ギャルゲ風安価SS】>>3「また一年が始まる」【ラブライブ!虹ヶ咲】

 
5:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 07:36:39.89 ID:L4/YsWRN
5月11日(月) 夜…


昔は私もサッカーとかやってたかも。

近所に年の近い子が多いから、公園に行けばいつでも誰かしらサッカーしてたもんね。

…今でも案外いけちゃったりして?

ヘディングとかしてみたりして!


侑「よっ」ポイ

侑「…ふんっ」ヘロ


ティッシュ …ポト


侑「………なるほどね。」


なんて遊んでいると、スマホが震えた。

誰だろう。
 
7:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 07:38:50.80 ID:L4/YsWRN
侑「!」


『菜。:こんばんは』

『菜。:菜々です』


侑「菜々ちゃんからだ。さっそく連絡してくれたんだ…!」
 
8:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 07:41:04.63 ID:L4/YsWRN
『新しいメッセージがあります。友達ではない人からのメッセージは、通報することができます』


そんな不穏な警告は無視して『友達に追加』をタップする。


『こんばんは、菜々ちゃん!』

『連絡くれてありがとう!』

『菜。:拗ねられたら大変ですからね』


おっと、意外といじわるだ。


なにを話そうかな? >>9
1.名前可愛いね!
2.お昼のときの話だよね
3.気になったことがあるんだけど…
 
9: (茸) 2020/11/26(木) 07:44:27.46 ID:EjvqWxpn
1
 
10:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 07:52:22.90 ID:L4/YsWRN
『拗ねないよ!菜々ちゃんならすぐ連絡してくれるって思ってたもん』

『菜。:そうですか?』

『菜。:今日の勉強が終わったので連絡しました。遅い時間にすみません』

『私はまだしばらく寝ないから大丈夫だよ~』


と言いつつこの会話の切り口はまずいな。

さすが菜々ちゃん、『課題も出てないのに勉強してそう感』がどうやらそのまま事実っぽい。

私の勉強事情に話が及ばないうちに話題を逸らさなくちゃ。

えっと…


『ラインの名前可愛いね!』

『菜。だって!』
 
12:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 07:56:26.46 ID:L4/YsWRN
『菜。:そこに言及されると気恥ずかしいのですが』

『菜。:私はラインのアカウントをこれしか持っていないので、どちらでも使えるような名前にしたんです』


うん?どちらでも?


『菜。:どこでも、でした』


なるほどね!


『そうなんだ!ネットの友達とのグループに参加するために名前変える人とかいるらしいけど、そんな感じ?』

『菜。:そんな感じです。私はネット仲間のグループではありませんけどね』

『んー、それじゃなんのグループだろう…』

『菜。:詮索は無用ですよ!』

『はーい。いつか教えてね』

『菜。:そうですね』

『菜。:いずれ』
 
14:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 08:03:19.58 ID:L4/YsWRN
『菜。:ラインの名前といえば』

『なになに?』

『菜。:閏都市学園のBlu-rayボックスがとうとう発売されました』

『おお!そろそろだって言ってたもんね!』

『菜。:そこで侑さんにご相談したいことがあるんです』


『閏都市学園』は、私が菜々ちゃんに初めて会ったときにオススメしてもらった例のマンガだ。

あれからチェックし損ねてたけど、ブルーレイボックスもう出てたんだ。


『相談?なんでも言って』
 
15:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 08:07:25.30 ID:L4/YsWRN
ブルーレイボックス関連の相談ってなんだろう。

買おうか迷うんだよなぁ。

菜々ちゃんのオススメだし観てみたい気持ちはあるけど、やっぱりボックスともなると結構な金額になるもんね。

お小遣いと別に貯金もあるから買えないことはないと思うけど…

買えないことないかなぁ…?


『菜。:私がBlu-rayボックスを買います』

『ほう』

『菜。:ただ、侑さんの家で保管させてもらえませんか?』

『保管?』
 
17:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 08:12:18.45 ID:L4/YsWRN
『菜。:我が家の方針で、あまりアニメやノベルといった文化に触れることが喜ばれないんです』

『菜。:ノベルを一冊や二冊買ったところで即座に捨てられるというほど過激な反応はありませんが、Blu-rayボックスとなると恐らく話が変わって、多少のお小言になるのが見えているといいますか』

『菜。:お小言で済むのなら、と思うかもしれませんが』

『菜。:私は、自分の大好きなものを否定されたくないんです。』


侑「…!」


『菜。:自由に観ていただいて構わないので、侑さんの家に置いてもらうことはできないでしょうか』
 
19:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 08:19:54.77 ID:L4/YsWRN
自分の大好きなものを否定されたくない。

その気持ちは、すごくよくわかる。

小学生のときだったかな。

図工で『粘土で好きなものを作りましょう』って授業があった。

先生が「なんでもいい」って言うから私はさっき校庭で見かけたカエルを作ったんだよね。

そこそこ上手に作れたと思ったんだけど、それを見た先生に「先生、カエルはあんまり好きじゃないな」って言われてショックだったのを覚えてる。

その後すぐに歩夢が「ゆうちゃんのカエルさんちょうだい!」って自分が作った「ゆうちゃん」と交換してくれたから、それでもう気にならなかったけど。

あんな些細なことでも傷つくんだもん。

本当に大好きなもので、それを大切な相手から否定されたらと思うと──
 
20:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 08:25:05.90 ID:L4/YsWRN
『それくらいなら全然いいよ!』

『菜。:本当ですか。ありがとうございます!』

『私も観たくて買おうか迷ってたくらいだもん、っていうかそれなら半分ずつ出して買おうよ』

『菜。:いえ、これは私に買わせてください』

『でも私の方がいつでも観られるようになるし…』

『菜。:私がお勧めして興味を持ってくださったものですから、これは私が責任を持って侑さんにお届けするべきものです』

『菜。:私は──私の責務を全うします。そこにかかるお金は一円も出させません!』


そこまで言われちゃうと、これ以上出す出さないって繰り返すのもちょっとな…

…そうだ!
 
22:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 08:30:21.18 ID:L4/YsWRN
『わかったよ。それじゃ買うのは菜々ちゃんにお願いしようかな』

『菜。:はい。ぜひそうさせてください』

『でもうちに置くんだから、自由に観ていいんだよね?』

『菜。:それはもちろんです、擦り切れるほど観てください!』

『菜。:あ、でもミニドラマのネタバレはしないでください…』


ぷ、菜々ちゃん可愛い。


『そんなことしないよ』

『それより、最初のときは菜々ちゃんも一緒に観てよ』

『菜。:え?どういうことですか?』

『見どころとか面白いシーンとか、隣で観ながら教えてってことだよ!私の自由に観ていいんでしょ?そうやって菜々ちゃんと一緒に観たいな!』
 
23:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 08:37:28.03 ID:L4/YsWRN
『菜。:そういうことならばお安い御用です!』

『菜。:閏都市学園の魅力を全て伝え切るまで寝かせませんので覚悟してくださいね!』

『アニメ初心者だからお手柔らかにお願いします!』

『菜。:侑さんさえよければ、すぐに買ってもいいですか?Blu-rayの映像とミニドラマの内容が楽しみで楽しみで…』

『うん、いいよ。いつでもオッケー!』


買うのってネット注文なのかな。

もしそうじゃないなら…


『菜々ちゃん、今週どこか放課後空いてる?よかったら一緒に買いにいこうよ!』

『菜。:いいんですか!?』


そ、そんな食いつく…!?
 
24:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 08:41:50.31 ID:L4/YsWRN
『菜。:本当は店舗特典も欲しかったんです!ですが持って帰ると両親から隠すのが困難なのでネットで買うしかないかと思っていました…』

『菜。:ゲーマーズがいいです!』

『店舗特典とかあるんだね。ゲーマーズならちょうどいいね』

『菜。:放課後の予定ですが、明後日ならば空いていると思います。遅くなってもよければ明日でも構いませんが』

『ううん、それじゃ明後日にしよっか。終わったら校門で待ち合わせよ!』

『菜。:はい!楽しみです!』

『初めての放課後デートだね!』


──お返事が、途絶えました…
 
25:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 08:44:06.95 ID:L4/YsWRN
あ、あれ…変なこと言っちゃったかな。

いやまあ、変なことは言っちゃったけど。

菜々ちゃんこういう冗談あんまり好きじゃなかったかな。

歩夢はこういうの喜んでくれるから、癖で言っちゃった…


『菜。:デート』


侑「!」


『菜。:は』

『菜。:したことがないので、』

『菜。:よくわかりません』


侑「…!」


『菜。:制服でもいいんですか?』


か、可愛い………っ!!
 
26:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 08:47:15.62 ID:L4/YsWRN
『ごめんごめん、変な言い方しちゃった』

『デートっていうのは気にしないで。制服でいいよ、私ももちろん制服だしね!』

『菜。:そうですか』

『菜。:安心しました』


菜々ちゃんはまじめだから、あんまりからかうみたいにしちゃ悪いな。


『菜。:明後日、楽しみにしています』

『私も!』

『菜。:それでは、私はそろそろ寝ますね』

『菜。:侑さんもあまり夜更かししないでください』

『はーい!お休みなさい!』
 
28:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 08:51:29.03 ID:L4/YsWRN
菜々ちゃんとお買い物、楽しみだなぁ。

行くのがゲーマーズっていうのが変わり種だけどね。

さ、眠くなるまでなにしようかな~………ん?


『菜。:勉強は深夜よりも早朝の方が捗るという話もあるので、そっちでもいいかもしれませんね』

『菜。:お休みなさい』


侑「…」


夜更かししないで寝まーす!


菜々とお買い物の約束をしました! ▼
 
33:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 22:01:12.44 ID:7SEtDsca
翌朝…


侑「お待たせ~」タタタ

歩夢「行こっか」

侑「うん!」


うーん、なんだか今朝はすっきり目が覚めたな。

たまには早く寝るのもいいね!

これなら授業も集中して聞けそう!


歩夢「今朝、電車がすごく混雑してるんだってね」

侑「へー、そうなの?なんかあったのかな」

歩夢「東京駅の付近で人身事故があったんだって」

侑「うわ、そうなんだ…」

歩夢「電車で来る人達、大丈夫かなぁ」
 
34:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 22:06:11.04 ID:7SEtDsca
放課後…


歩夢「どうして膨れてるの?」

侑「だってー」ムー


自習になるかと思ってたのに。

なんと、一時間目から先生は時刻通りに教室にやってきた。

「電車がいくらか遅延した程度のことで遅刻するのは社会人として自覚が足りない人だけです」なんて誇らしそうに言うんだもん。

なーんか、面白くない。


歩夢「元々面白がっていいことじゃないよ、電車が遅れちゃうの大変なことなんだから」

侑「そうかもしれないけどー」


お昼はどうしよっかな? >>35
1.教室で食べる
2.中庭で食べる
3.食堂で食べる
4.生徒会室で食べる
 
35: (わんこそば) 2020/11/26(木) 22:06:30.17 ID:x9U6TvUw
4
 
36:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 22:12:24.19 ID:7SEtDsca
侑「はーあ。今さら考えたって仕方ないもんね。じゃ行こっか」ガタ…

歩夢「うん。今日はどこにする?」

侑「菜々ちゃんと食べよ!」

歩夢「あ…」

歩夢「…うん、そうだね」

侑「歩夢と菜々ちゃんが仲良くなってよかった!」

歩夢「……そうだねー」

侑「生徒会室にいるかな?一応ラインしとくね」

歩夢「うん」

歩夢「うん!?ライン!?いつ交換したの!?」

侑「行こー」

歩夢「侑ちゃん!!」
 
37:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 22:15:40.75 ID:7SEtDsca
生徒会室


侑「今日も来ちゃった」

菜々「ここも教室から近い距離ではないですし、気を遣わなくてもいいんですよ?」

侑「気を遣ってなんかないよ、菜々ちゃんとお話しできるの嬉しいんだもん!それに中庭に行くのと大差ないしさ」

侑「ねっ歩夢」

歩夢「うん」ニコニコニコニコ

菜々「そ、そうですか…?」

菜々 (おや、なんだろう。笑顔だよね?笑顔なのに…)
 
38:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 22:18:34.55 ID:7SEtDsca
歩夢「あ、菜々ちゃん。教えてもらった文法きちんと理解できたよ、ありがとう」

菜々「いえ、お役に立てたならなによりです」

菜々「侑さんは、勉強は捗りましたか?」

歩夢「え?」

侑「え?」

菜々「え?」

歩夢「侑ちゃん、いつ勉強してたの?」

侑「え?えーっと…」

菜々「あれ?あの後、勉強したんですよね?」

歩夢「え?あの後っていつ?」

侑「…」

菜々「…」

歩夢「…」


地獄かな?
 
39:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 22:28:57.56 ID:7SEtDsca
歩夢「侑ちゃん達、いつの間にか随分仲良くなってたんだね。知らなかったよ」ニコニコ

菜々「侑さんがすごく積極的に機会を作ってくれますからね。私はこんな性格なので、そうやって接してもらえて初めてなんとかついていけるという具合ですよ」

侑「だって菜々ちゃんと話すの楽しいんだもん。私、もっともっと仲良くなりたいと思ってるよ!あ、そうだ。二人ともマンガとか好きだし話合うんじゃないかな」

菜々「ゆ、侑さん…!」

侑「あれ、マンガ好きなのってナイショだったっけ。ごめん…」

菜々「…いえ、歩夢さんには知られて困ることでもありませんね。そうなんです、私、マンガやノベルが大好きで」

侑「私達、今よりずっと仲良くなれるよね!」

歩夢「………そうだねっ」

侑「…」

侑 (あれ…?)
 
41:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 22:37:01.67 ID:7SEtDsca
菜々「歩夢さんはどんなマンガが好きですか?」

歩夢「最近はあんまり読んでないけど、昔から好きなのは『内気なきなこ』かなぁ。知ってる?」

菜々「知ってますよ!きなこを読んで、何度猫を飼いたいと両親に頼んだか知れません…」

歩夢「私も。可愛いよね、きなこ。飼い主さんにもそうだけど、少しずつお隣さんに懐いていくのが可愛くて可愛くて…」

菜々「わかりますっ!セリフもあってないようなものなのに、手書きの線と豊かなバリエーションが如実にきなこの気持ちを表していて、なぜか言いたいことがわかるんですよね!」

歩夢「きなこは家に全巻あるから、今でもたまに読み返すよ。そのたびに猫飼いたくなって困っちゃうけどね」

菜々「くっ、話していたら私も読みたくなってきました…!」

歩夢「よかったら貸すよ。…侑ちゃんはきなこのこと『変なマンガ』とか言うけどねー」プクーッ

侑「…」
 
42:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 22:39:31.19 ID:7SEtDsca
歩夢「侑ちゃん?」

菜々「侑さん、どうかしましたか?」

侑「えっ」

侑「ああ、ううん。別に…」チラッ

歩夢「?」

侑 (いつも通り、だ)

侑 (勘違いだった…かな)

侑「ちょっとぼーっとしちゃってたよ。なんの話してたの?」

歩夢「侑ちゃんがきなこ『変なマンガ』って言うって話ですー」

侑「きなこ?ああ、あの変な猫のマンガね」

菜々「変じゃないですよ!」

侑「ぅえっ!?菜々ちゃんもあれ好きなの!?」
 
43:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 22:42:52.11 ID:7SEtDsca
菜々「可愛いじゃないですか、きなこ!どこが変だと!?ちゃんと読みましたか!?」

侑「よ、読んだけど…」

歩夢「うそ。一巻の途中でやめちゃったくせに」

菜々「それできなこのことをわかったつもりですか!」

侑「だって私、犬派だもん!あのマンガほとんどセリフなくて眠くなっちゃうし!」

菜々「く~~~っ、わかってない…わかってませんね侑さん!」

侑「な、なにが」

菜々「私だって元々は犬派でしたよ!!」クワッ

侑「推し変しちゃったの!?」

歩夢「そ、それはすごいね」
 
44:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 22:47:57.58 ID:7SEtDsca
菜々「歩夢さん!私がお借りするのはいつになっても構わないので、まずは侑さんにきなこを全巻読ませましょう!お話はそれからです!」

侑「よ、読まないよ!」

菜々「読、む、ん、で、す!」

侑「ぐぅぅ…っ、菜々ちゃんの頑固…!」グヌヌ…

菜々「生来の気性です。諦めてください」

侑「あ、あゆむぅ~」

菜々「残念ですが歩夢さんは私の味方ですよ!」


歩夢 ポカン…


侑「歩夢?」

菜々「歩夢さん?」
 
45:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 22:52:42.20 ID:7SEtDsca
歩夢「菜々ちゃんって、マンガのこと話すとき、そんなにおっきな声出すんだなって…ちょっと驚いちゃって」

菜々「!」//

菜々「す、すみません。忘れてください、今のは。少し熱が入ってしまっただけですので」サッ

歩夢「ううん、すごくいいと思うよ。とっても好きなんだなって伝わるし、こんな言い方失礼かもしれないけど、いつもより生き生きしてたもん。前に侑ちゃんが言ってたことの意味がやっとわかった」

歩夢「今みたいな菜々ちゃんが一番素敵だよ」

菜々「そ、そうですか…?」

侑「そうだよ!だから言ったじゃん!」

歩夢「侑ちゃんとの距離がすごく近く見えるのもお互いにわかり合ってますみたいな雰囲気も気にはなったけどね」
 
47:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/26(木) 23:00:16.01 ID:7SEtDsca
侑「菜々ちゃん、クラスでもマンガの話とかしてみたらいいんじゃない?そしたらきっとみんなも怖くないってわかってくれるよ」

菜々「い、いえ、それはまだ。お堅い生徒会長がマンガやノベルで興奮する姿なんて、見ていて楽しいものではないでしょうから…」

侑「そんなことないと思うけどなぁ」

歩夢「やっぱり興奮してたんだ」

菜々「それよりも侑さんはまずきなこを読んでください。明日までに二巻は読んでこないと知りませんからね」

侑「えーっ!」

歩夢「侑ちゃん、今晩うちでごはん食べる?」

侑「読むのから逃げられないやつじゃん!やだよ!」

歩夢「そ、そう…」ズーン…


菜々とお昼ごはんを食べました! ▼
 
55:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/27(金) 18:51:49.16 ID:QLAnIkoQ
放課後…


猫かぁ。

いや、好きだよ。全然好き。

はんぺんとかすごく可愛いと思うし、見かけたら撫でたりしたいなーって思うもん。

でも犬の方が好きだな。

おっきな犬に体当りされてじゃれつかれたい。

「やめろよー」って言いたい。

まあ、犬派だから『きなこ』読まないのかっていうと別に関係ないと思うけど。


今日はどうしようかな? >>56
1.一人で帰る
2.歩夢と帰る
3.寄り道して帰る(中庭、同好会、演劇部、お台場から選択)
 
56: (たまごやき) 2020/11/27(金) 18:52:21.60 ID:ee3CbQMd
2
 
57:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/27(金) 18:57:17.59 ID:QLAnIkoQ
侑「あゆ

歩夢「帰ろ、侑ちゃん!」

侑「む?」

歩夢「ねっ」ニコッ

侑「うん、帰ろっか。どこか寄ってく?」

歩夢「ううん、寄っていかない。まっすぐ帰ろ」

侑「むー…まあ、たまにはいっか」

歩夢「うんっ」

侑 (なんか歩夢ご機嫌で可愛いなぁ)

歩夢「えへへ、そんなことないよ」
 
58:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/27(金) 19:02:10.48 ID:QLAnIkoQ
帰り道


歩夢「侑ちゃん、今日は晩ごはんなに食べたい?」

侑「歩夢が作ってくれるの?」

歩夢「お母さんと、どっちがいい?」

侑「おばさんの料理も好きだけど、歩夢がいいな」

歩夢「わかった。じゃあ私が作るね」

侑「やったー!」

歩夢「それで、なにがいい?」

侑「そうだなぁ、ロールキャベツとか!」

歩夢「ロールキャベツね」

侑「作れる?」

歩夢「お母さんがいるから大丈夫だと思う。侑ちゃんも手伝ってね」

侑「キャベツはがしたらいいんだよね」

歩夢「もうちょっとたくさん手伝ってくださーい」

侑「はーい。…ところで、なんで歩夢が作ってくれるの?」

歩夢「今日は私の家にお泊まりするからだよ」ニコッ

侑「そっか~」
 
59:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/27(金) 19:06:18.11 ID:QLAnIkoQ
お買い物中…


侑「寄り道しないんじゃなかったの?」

歩夢「あー。そんなへりくつ言う子には美味しいの作ってあげないもん」

侑「あ~っ、やだやだ!ごめんってば、うそうそ!歩夢のごはん食べたいよ~」

歩夢「うふふ、そう?仕方ないんだから、侑ちゃんは」

侑 ホッ…

歩夢「お野菜とお肉たっぷりにしようね」

侑「私ニンジンたくさん入れてほしい!」ハイハイ!

歩夢「それじゃ大きいの買おっか」ヒョイ
 
60:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/27(金) 19:17:16.77 ID:QLAnIkoQ
歩夢「侑ちゃんのお家はトマト味なんだよね。いつもどのトマト缶使ってるかわかる?」

侑「え、どれだろう。うーん…一番見たことあるのこれかなぁ…」ム…

歩夢「それじゃこれで作ってみよっか」

侑「うん!トマト缶ってそんなに違いあるのかな?」

歩夢「カットの仕方と味付けが少しずつ違うんだよ。もし普段これじゃなかったら食感が違うかもしれないけど許してね」

侑「少しくらい違っても美味しく作ってくれるでしょ?」

歩夢「が、頑張ります」
 
62:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/27(金) 19:23:04.75 ID:QLAnIkoQ
歩夢 ンー…

侑「なに考え中?」

歩夢「主食どうしようかなって」

侑「ごはんじゃだめなの?」

歩夢「いいんだけど、例えばバゲットと合わせてみるのとか…どうかな」

侑「バゲット!食べたい!晩ごはんにパンってあんまり食べないから新鮮だね」

歩夢「せっかくだしやってみよっか」

侑「私、好きなフランスパンあるんだ。それでいい!?」

歩夢「もちろんいいよ。寄って帰ろうね」

侑「あれ、どこかわかる?」

歩夢「侑ちゃんの好きなパンだよ?」

侑「それもそっか~」
 
63:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/27(金) 19:27:30.74 ID:QLAnIkoQ
歩夢「こんなところだね。お会計に行くよ、侑ちゃん。アイスは今度にしなさい」

侑「はーい…まだ塩バニラ出てないなぁ」

歩夢「もう少し暑くならないと出ないかもね」

侑「残念」

侑「…今日おばさんいるよね?」

歩夢「いるよ。侑ちゃん来るよって伝えて、夕飯は私に任せてもらったの」

侑「私が行くときいつも、普段と全然違うメニューになってない?」

歩夢「いいの、お母さんも『考えなくていいから楽』って言ってるもん」

侑「じゃあいいんだけど。楽しみだなー」

歩夢「お腹空いてきちゃったね」

侑「うん、ぺこぺこ!」
 
64:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/27(金) 19:32:27.71 ID:QLAnIkoQ
歩夢の家


歩夢「それでは料理を始めます」

侑「はい!歩夢隊長!」

歩夢「侑ちゃんはまず…」

侑「キャベツ?キャベツやるよ!」

歩夢「…えっと、ここにメモしたのをボウルで混ぜてもらっていい?」

侑「キャベツは後で?」

歩夢「キャベツはその、私がやるよ。包丁使うから…」ボソッ

侑「歩夢ってたまに過保護だよね」
 
65:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/27(金) 19:35:31.17 ID:QLAnIkoQ
歩夢 トントントントン

侑「お~」

歩夢「見てても面白くないでしょ」

侑「そんなことないよ。私そんなに速くできないからすごいなーって思うよ」

歩夢「速く…?そうだね」トントン

侑「あっという間にみじん切りだ~」

歩夢「…よし。お湯が沸くの待つ間にひき肉と混ぜるけど…」

侑「やるやる!」

歩夢「うん、お願いしようかな」

侑「任せて!」
 
66:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/27(金) 19:39:00.17 ID:QLAnIkoQ
侑「これをキャベツで巻いたらいいんだよね」

歩夢「そうだよ。煮込むときに隙間からこぼれちゃわないように、強めにね」

侑「わかった!」

侑 ギュギュ クルクル…

歩夢 ギュギュ クルクル…

侑「やっと歩夢と同じ作業ができた」ギュギュ…

歩夢「ここまでは一人ずつでしかできない作業だったもんね」

侑「一緒にごはん作るの楽しいな」ニコッ

歩夢「侑ちゃん…」キュンッ

侑「……はっ!歩夢、離せなくなっちゃった!つまようじ取って!」

歩夢「うん♡」
 
67:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/27(金) 19:40:53.05 ID:QLAnIkoQ
歩夢「中火でっと」カチカチ…

侑「もう美味しそう…」

歩夢「まだキャベツもお肉も生だよ?」

侑「…いつでも火を通して食べるのは人間くらいだよね。ってことは、」

歩夢「私達は人間ですよ」メッ

侑「むぅ…」
 
68:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/27(金) 19:44:53.53 ID:QLAnIkoQ
ロールキャベツ テテーン


ゆうぽむ「「できたー!」」

侑「すっごくいい匂いするね!」

歩夢「侑ちゃん、頑張ったもんね。きっと美味しいよ」

侑「早く食べよ食べよ!」

歩夢「あっほら侑ちゃん、バゲットもう焼けるからこれも持っていって」

侑「ん~っ、パンの焼ける匂いも最高~♡」

歩夢「スライスチーズ余っててよかったね」

侑「チーズ味とマーガリン味どっちも食べられるなんて贅沢過ぎるなぁ」

歩夢「たまにはいいんじゃないかな」

侑「そうだよねっ」

歩夢「お母さん、できたよ。食べよう」オーイ
 
69:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/27(金) 19:47:58.46 ID:QLAnIkoQ



歩夢「あがったよ」ホカホカ

侑「歩夢、こっちに来て」

歩夢「うん。なに?」

侑「髪、乾かしたげるよ。座って」

歩夢「え…ええ?自分でできるよ」

侑「いいからいいから、今日のお礼に。ね!」

歩夢「う、うん。それじゃ…お願いします」トスン


ブォォオオオオ……


侑 クシクシ…

歩夢「はぁ、とっても幸せ…」

侑「痒いところないですかー?」

歩夢「侑ちゃんそれ違うよ~」クスクス

侑「そうだっけ~」エヘヘ
 
70:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/27(金) 19:53:07.46 ID:QLAnIkoQ
侑「今日は課題も出なかったし、寝るまで歩夢とゆっくりお喋りできるね」

歩夢「そうだね。そうしたい気持ちはやまやまなんだけど、まだやらなくちゃいけないことが残ってるよ」

侑「後で歩夢特製ココア飲むから歯磨きはまだだよ!」

歩夢「あ、それは決定してるんだ」

歩夢「そうじゃなくて」ゴソ…


っ『内気なきなこ』 サッ


侑「…」

歩夢「五巻くらい、寝るまでに読めちゃうよ♪」

侑「し──しまった……!罠だ、これ!」ガーンッ…

歩夢「もう逃げられませーん」ニコニコ


歩夢の部屋にお泊まりしました! ▼
 
81:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 07:57:24.09 ID:D/xESOtR
翌朝…


夢を見た気がする。

小さな頃の夢。

たくさんはしゃぎ回って、疲れて眠って。

大好きな匂いと柔らかな体温。

私はまどろみの中、それがなんなのかもわからないまま、ただただ心地よさにしがみついてた。

規則的で優しいリズムが頭を撫でる手だってわかったのは、ずっと後になってからだ──
 
82:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 08:01:09.71 ID:D/xESOtR
侑「んー……」モゾ

侑「…んー…?」

歩夢「おはよう、侑ちゃん」ナデナデ

侑「あゆむだ…おはよー…」

歩夢「そろそろ起きる時間だよ」

侑「んー……」

侑「なんであゆむいるの…?」

歩夢「ここね、私の家なの」

侑「そうなんだ…しあわせだねぇ…」

歩夢「うふふ。そうだね」

侑「わたしねるね…」モゾ

歩夢「起きてくださーい」ナデナデ…
 
83:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 08:06:39.72 ID:D/xESOtR
侑「」///

歩夢「侑ちゃん、早く食べないと置いていっちゃうよ?」

侑「ワカッテルゥ…」

歩夢「お泊まりの日はだいたいいつもあんなじゃない。今さら恥ずかしがらなくていいのに」

侑「恥ずかしがるよ!だいたいいつもあんなだから恥ずかしいんだよ!」クワッ

歩夢「それは私に言われても困っちゃうよ」

侑「ごもっともですぅー」///

歩夢「早く食べないと置いていっちゃうよ?」

侑「イタダキマス…」
 
84:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 08:10:33.10 ID:D/xESOtR
お昼休み…


昨日は歩夢の家だったから、お昼は教室がいいかな。

いや、今なら他にも一緒にお昼ごはん食べる相手っていっぱいいるんだっけ。

誰と食べようかなぁ。


誰とお昼ごはんを食べる? >>85
1.しずく
2.菜々
3.璃奈
4.かすみ
5.クラスメイト
 
85: (八つ橋) 2020/11/30(月) 08:13:40.04 ID:yGwJQwsB
3
 
86:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 08:20:05.09 ID:D/xESOtR
歩夢「侑ちゃん、お昼ごはんにしよ」

侑「うん。待ってね」スマスマ…

歩夢「机動かしとくね」

侑「中庭に行こうと思うんだけど、」

歩夢「…ねえ、今日は…」

侑「わかってるって。心配しないで」

歩夢「でも…」

侑「………あ、来た。ね?歩夢」っスマホ


『璃奈ちゃん:中庭』


侑「璃奈ちゃんとお昼ごはん食べよ!」

歩夢「!」パァ

歩夢「うんっ」
 
87:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 08:23:29.31 ID:D/xESOtR
中庭


侑「璃奈ちゃ~ん」ノシ

璃奈 ノ

侑「こんにちは。急に連絡しちゃってごめんね」

璃奈「ううん、平気」

歩夢「一緒に食べていい?」

璃奈「ちょうどよかった。かすみちゃん、急用って言っていなくなっちゃったから」

侑「あー…」

侑「…そっか、残念。今度は四人で食べられるといいね」

璃奈「でもパンは貰った」

侑「よかった」
 
88:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 08:28:21.64 ID:D/xESOtR
「「「いただきます」」」

歩夢「ねえ璃奈ちゃん、見て見て」

璃奈「なに?」

歩夢「ほら侑ちゃん」

侑「うん」っ弁当箱

歩夢 っ弁当箱 スッ

璃奈「おんなじお弁当」

歩夢「えへへ、気づいちゃった?そうなの!実は昨日侑ちゃんうちに泊まってね、夜ごはんも一緒に食べたしお弁当もお揃いにしたんだよ」

璃奈「お泊まり」

侑「もう、歩夢ってば毎回みんなに話したがるんだもんなー」

歩夢「だって嬉しいんだもん」

侑「ごめんね璃奈ちゃん、歩夢の癖だからあんまり気にしなくていいからね」

歩夢「あっ、侑ちゃん言い方ひどーい。きらい!」プイッ

侑「ごめんごめん。これ美味しいよ、歩夢が作ってくれたやつでしょ?」パクッ

歩夢「ほんと?よかったぁ♡」

璃奈「…いいな…」
 
89:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 08:34:31.51 ID:D/xESOtR
侑「今日はどんなパン?」

璃奈「チキン」モグ…

侑「デザートはカスタードのやつだ!私もこれ食べたよ、美味しかったなぁ」

璃奈「かすみちゃんのパン、いつも美味しいから、好き」

璃奈「でもかすみちゃんとお話ししながら食べるのが、一番好き。楽しい」

侑「…明日は私達来ないから、って、かすみちゃんに伝えておいて」

璃奈「? わかった」
 
90:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 08:36:08.02 ID:D/xESOtR
>>89
訂正

×侑「…明日は私達来ないから、って、かすみちゃんに伝えておいて」

○侑「…明日は私達来ないから、って、かすみんに伝えておいて」
 
91:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 08:40:21.39 ID:D/xESOtR
歩夢「今日ははんぺんちゃんにご挨拶した?」

璃奈「さっき。かすみちゃん、はんぺんにもパン持ってきてくれるから、いつもあげる」

侑「そうなんだ!かすみんのパン食べられるなんて贅沢だね」

璃奈「市販のパン食べなくなるかもしれない」

歩夢「そうなっちゃったら大変だね」

璃奈「責任持ってかすみちゃんの家に連れていく」

侑「あはは、責任重大だ」
 
92:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 08:45:36.78 ID:D/xESOtR
侑「…」ハタ…

歩夢「侑ちゃん?」

侑「璃奈ちゃん、動物の校則のこと知ってる?」

璃奈「動物の校則?」

侑「うちの学校にはね、『動物の放し飼い禁止』っていう校則があるんだって」

歩夢「そうなの?」

侑「うん。菜々ちゃんが言ってたから間違いないよ」

侑「酪農科の動物のための校則らしいんだけど…」

歩夢「はんぺんちゃん…」

璃奈「はんぺんは、飼ってるわけじゃないよ」

侑「そうだよね。たまたま心地よくて住み着いちゃっただけだけど、ふと、どうなのかなって思って」
 
93:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 08:52:01.90 ID:D/xESOtR
璃奈「はんぺんのこと禁止されたら、追い出されちゃうの?」

侑「…そんなこと、ないと思うけど…」


──歩夢「責任が生まれるし、期待もさせる」


侑「…!」


歩夢の言葉を思い出す。

今とは全然関係ないけど、私が後先考えずに言ったことが、取った行動が、かすみんを傷つけたこと。

なんの確証もないのに適当に楽観的なことを言っちゃだめだ。

もし、はんぺんが校則で認められないとしたら──
 
94:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 08:57:55.96 ID:D/xESOtR
侑「…確認してみるよ、はんぺんのこと」

歩夢「確認?」

侑「菜々ちゃんに聞いてみる」

璃奈「誰?」

侑「生徒会長の中川菜々ちゃんだよ。友達なんだ」

歩夢「…わざわざはんぺんちゃんのこと話すってこと、だよね…」

侑「うん…」

侑「…確かに、このまま黙っておけばはんぺんは見つからないかもしれない。野生の猫とは関係ない校則だって見逃されてたものが、私が話すことで問題になっちゃうかもしれない」

侑「でも、もし校則が野生の猫も認められないものだったとしたら、はんぺんは見つかった瞬間にすぐ追い出されちゃうよ」

侑「だから菜々ちゃんに確認してみる。確認してだめだったら、どうすればいいのか聞いてみるよ」
 
95:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 09:04:58.82 ID:D/xESOtR
璃奈「…」

侑「大丈夫だよ、璃奈ちゃん。はんぺんを追い出すなんてことには絶対ならないようにするから」

侑「うちの生徒会長は優しいんだから。心配しないで」

璃奈「…わかった」

璃奈「お願いします」ペコ

侑「うんっ、お願いされました!」

歩夢「放課後にでも話しにいってみようか。菜々ちゃん、予定ないかな?……部活、とか…」

侑「ああ、今日の放課後は予定ないって言ってたよ」

歩夢「そ、そうなの?それならいいけど、なんで知ってるの…?」

侑「あ、今日私菜々ちゃんと放課後約束してるんだよね。そのとき一緒に話しておくよ」

歩夢「なにそれ聞いてないよ!?」

侑「はんぺん同好会とか作っちゃえばいいかもね」

璃奈「楽しそう。入る」

侑「私もー」

歩夢「侑ちゃん!!」


璃奈とお昼ごはんを食べました! ▼
 
100:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 18:48:33.96 ID:D/xESOtR
放課後…


歩夢「あ…あの、侑ちゃん、菜々ちゃんとの約束、私も…」

侑「大丈夫」スッ

侑「私一人でも、ちゃんとはんぺんのこと話してこられるよ。任せて──」キリッ

歩夢「ゆ…侑ちゃあん!」
 
101:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 18:56:32.14 ID:D/xESOtR
校門傍


侑「あれ、菜々ちゃんいないな。てっきり先に来てるかと思ったけど…ホームルーム長引いてるのかな」キョロ

「…さん、侑さん」

侑「ん?」

菜々「侑さん、待っていましたよ」ス──

侑「ど、どうして向こう向いてるの?」オズ…

菜々「シッ!」

侑 ビクッ

菜々「こちらを向いてはいけません。赤の他人のように振る舞いましょう。私達は極秘任務を扱うエージェントなので接触したことは誰にも悟られてはいけないんです」

侑「な、なるほど」
 
102:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 19:01:42.27 ID:D/xESOtR
侑 エット…

侑 ス──

侑「こ、こちらYOUだ。時刻になった、任務を開始したい」

菜々「…誰にもつけられてないか?」

侑「え?」


──??「侑ちゃんが行くところには私も当然ついていくよ♡」


侑 キョロ…

菜々「YOU?どうした、応答しろYOU!」ヒソ

侑「あっああ、大丈夫だよ。今日は約束があるって…じゃなくて、もちろんそんなヘマはしてないさ」

菜々「よし」コク…

侑 (次は…)

菜々「では行きましょうか」スイ

侑「あれ!?もういいの!?」

菜々「はい、付き合ってくださってありがとうございます。満足しました」

侑「そ、そう…」
 
103:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 19:06:10.73 ID:D/xESOtR
菜々「本当は校門の上に座って、土地神風に出迎えたかったのですが。さすがに怒られてしまいますし、目立ちますからね」

侑 (今のもそこそこ目立ってたと思うけど…まあ、いっか)

菜々「自意識過剰と言われると返す言葉もないんですけど、どうしても全校生徒から一挙手一投足を監視されているような気持ちが抜けなくて。不用意にエージェントごっこもできません」フゥ

侑「監視ってことはないと思うけど、生徒会長だもんね。みんなに顔と名前を知られてるって結構厄介だね」

菜々「『みんな』ではないことが先日はっきりしましたけどね」ニコッ

侑「あっ…」//
 
104:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 19:12:09.60 ID:D/xESOtR
菜々「目の前で売り切れてしまっては悔いても悔いきれませんからね。行きましょうか」

侑「そんなに激戦かな?今日が発売日ってわけじゃないよね?」

菜々「発売日はとうに過ぎましたが、最後の一個をタッチの差で持っていかれるということはノベルやマンガの中では往々にして起こりますからね。油断してはいけないんですよ」

侑「菜々ちゃん流のメソッドだね!」

菜々「ところで、きなこは読みましたか?」

侑「ぉ…」

侑「読んだよー…読まないと歩夢がお話ししてくれなかったんだもん。五巻読みました!」

菜々「さすが侑さん。約束は守ってくれると信じていました」

侑「約束したかなぁ…」
 
105:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 19:17:06.22 ID:D/xESOtR
菜々「しかし、五巻一気に読んだんですか。読むのに時間がかかるタイプのマンガじゃないとは言え、たった一晩で…」

侑「歩夢のとこに泊まったからね。時間はたっぷりあったんだ」

菜々「歩夢さんとお家は近いんですか?」

侑「近いっていうか隣だよ。昔から家族ぐるみで付き合ってきたから、もう我が家の離れって感じ。小学生の頃なんか家出に使ってたくらいだもん」

菜々「家出で隣に行ったら、すぐに見つかってしまうのではないですか?」

侑「もちろんバレバレだったよ。でも歩夢の家にいるなら危険はないからって、お母さんもお父さんも私が満足して帰ってくるまで別に迎えにもこなかったな」

菜々「ふふっ、意外とやんちゃな幼少時代だったんですね」

侑「だねー」
 
106:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 19:27:37.49 ID:D/xESOtR
ゲーマーズ


菜々「あ」

菜々「ありましたぁぁあ………!!」パァァァ

菜々「侑さん見てください!Blu-rayボックスです!店舗特典付です!」

侑「う、うん、そうだね。よかったね」

菜々「これがミニドラマのディスクですね!」ココ!

侑「へ~、なんか一緒に収録されてるのかと思ったけど、しっかり別のディスクで付くんだね」

菜々「ミニドラマとは言うものの合計四十分尺ですからね。これは見逃せない──いえ聞き逃せません!」

侑「どんな内容なのかな?」

菜々「公開されているのはタイトルだけなので未知数ですね。ですがタイトルから察するに──」

侑「菜々ちゃん?」

菜々「これは侑さんに対してネタバレになってしまいます!言うわけにはいきません!危なかった…」

侑「お、お気遣いありがとう」

菜々「では買ってきますね!」

侑「うん」
 
107:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 19:35:33.67 ID:D/xESOtR
菜々「…♪」ニコニコ

侑「すっごく嬉しそうだよ、菜々ちゃん」

菜々「はい、とっても嬉しいです!大好きな作品なので!」

侑「こんなに歓迎してもらえたら、作品もボックスも喜ぶね」

菜々「そうでしょうか。ふふふ、Blu-rayになったことで新たな発見や気づきがどれだけあるのかと思うと…」

菜々「侑さん侑さん、いつ観ましょうか!?」

侑「あ、そうだね。アニメ一本観るってなると結構かかるよね。そうだなぁ…」

侑「>>108


1.金曜日からうち来る?
2.土曜日って空いてる?
3.放課後は忙しいよね?
 
108: (たまごやき) 2020/11/30(月) 19:37:39.69 ID:C28P/8bu
1
 
109:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 19:44:45.84 ID:D/xESOtR
侑「せっかくだし、金曜日うちにおいでよ」

菜々「え?放課後ですか?」

菜々「金曜日は少し遅くなるので、あまり長居することはできないと思いますが…」

侑「じゃなくってさ」

侑「泊まりにおいでよ!それで夜と土曜日をたっぷり使って楽しもう!」

菜々「と、まり…?」

侑「うん!晩ごはんも一緒に食べたりしてさ、私の部屋パソコンあるから部屋で観られるし!眠くなったら寝て、また次の日すぐ再開できるよ」

菜々「それは、とても…魅力的です…」

侑「へへ、そうでしょ?時間気にしながらじゃ充分に楽しめないもんね。帰ったらお母さんに話しておくよ──」

菜々「魅力的です、が」

菜々「外泊するとなると、両親に許可を取らなければいけません」

侑「あ、そっか…」
 
110:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 19:51:54.22 ID:D/xESOtR
菜々「これまで学校行事以外で外泊したことなどないので、どう反応されるのか予想できません」

侑「そういうもんかぁ」

菜々「…すみません」

菜々「私が、侑さんのお家の隣に住んでいれば。昔から家族で馴染みがあれば」

菜々「二つ返事で決めてしまえるのですが…」

侑「あははっ、そんなこと言ったって仕方ないんだから。菜々ちゃんが謝ることじゃないよ」

侑「それにもし泊まるのがだめだって言われたら、土曜日に来ればいいだけだもん。一日あれば余裕で観ちゃえるでしょ?」

菜々「それは、もちろん」

侑「だったら問題ないよ!金曜日から始めるか土曜日に始めるかだけの違いだよ」

菜々「侑さん…」

侑「だから、ね。そんなに申し訳なさそうなカオしないで。笑ってる菜々ちゃんが可愛いって言ったの忘れちゃった?」

菜々「わ、忘れませんよあんな強烈な言葉…!」
 
111:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 19:57:27.73 ID:D/xESOtR
侑「ご両親に聞いてみて。うちは全然オッケーなはずだからさ」

菜々「はい。改めて連絡しますね」

侑「うん」

侑「それ、私持とっか。間違って家に持って帰っちゃったらまずいでしょ?」

菜々「あ、そうですね。では──」

菜々「…」ジッ

侑「…ミニドラマだけ持ってく?」

菜々「いっいえ!我慢します!初めての内容なので一緒に聴きたいです…っ!」クッ…

侑「私が我慢できずに聴いちゃうかもなー」

菜々「な…なんということを!!」カッ

侑「じょ、冗談だよ!冗談!」アワワ
 
112:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 20:08:46.53 ID:D/xESOtR
菜々「しばしの別れですね…」

侑「私がしっかり預かっておくから安心して」

侑「ところでね、菜々ちゃん。聞きたいことがあるんだけど…いい?」

菜々「は、はい。なんでしょう。閏都市学園のことですか?」

侑「じゃなくて、んっと…ニジガクの校則のこと、なんだけど…」

菜々「うちの校則ですか?と言いますと…」

侑「えーっと…」

侑「菜々ちゃん、前に『動物の放し飼いは禁止』だって言ってたでしょ。あの校則って、まだあるよねぇ…?」

菜々「改定されたという話は聞きませんね」

侑 モジモジ…

菜々「…まさか侑さん、あなた…?」

侑「ね、猫とか…さ」

菜々「猫を飼ってるんですか!?学園の敷地内で!?」

侑「うわーっ待って待って!違うの!聞いて!」
 
113:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 20:14:53.15 ID:D/xESOtR
菜々「野生の猫、ですか…」

侑「たまたま中庭でお昼ごはんを食べてるときに見かけたんだけど、それから何回か見かけてね。追いかけてみたらちょっとした寝床みたいなのがあってさ」

侑「もしかしたら勝手に住み着いたのかなー、なんて…思ったりした、だけ…で…」

菜々「ふむ…」

侑「別に誰かの飼い猫ってわけじゃなさそうだし、ほんと、たまたま中庭の居心地がよかっただけだと思うんだよね。だから校則違反なんかじゃないとは思うんだけど…その…」

菜々「……」ジッ

菜々「………ごはん」

侑 ピク…

菜々「エサをあげてますね?」ニコッ

侑「うっ、なんでわかるの…!?」

菜々「侑さんはわかりやすいですから」

侑「菜々ちゃんにまで言われた…」
 
114:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 20:28:33.39 ID:D/xESOtR
菜々「要は、その猫を追い出さないでほしいというわけですね」

侑「その通りです」ヘヘー

侑「ね、菜々ちゃん。その校則って酪農科に向けたものでしょ?だったら野生の猫は…」

菜々「酪農科の飼育動物を対象とした校則なのは間違いありませんが、その条文には酪農科に限る旨の記載がないんですよ。順当に考えれば、『アニマル』には全て適用されるものと見なされるはずです」

侑「そんなぁ…」

菜々「…私が今この場で感じた見解としてもこうなります。公式の場で話し合えば、恐らくこっち向きの声が強くなるでしょう」

侑「だ、だったら今の話は忘れて──」

菜々「しかし、いつ誰がそれを議論の台に上げるかわかりません。誰の手引きもないまま議論を進めさせれば、それこそ侑さんが懸念している事態になりますよ」

菜々「侑さんも、それを見越して先手を打ったんですよね?」

侑「そう、です」

菜々 ムゥ…
 
115:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 20:35:16.15 ID:D/xESOtR
菜々「理事会とまで言わずとも、せめて生徒会役員の中でくらいは意見を好ましい方向に統一させておいた方がいいと思います」

侑「……できる…?」

菜々「…」

菜々「なんとか、やってはみます」

侑「菜々ちゃん…!」パァ

菜々「ですが、あまり期待はしないでくださいね。私も額面通りに考えれば校則違反と結論づけてしまいかねない案件ですから、骨は折れそうです」

侑「…うん。あえて話題にしたんだもん、その覚悟はできてる。菜々ちゃんの責任にするつもりだってないよ」

菜々「では、数日待ってください」

菜々「…その猫、名前はあるんですか?」

侑「はんぺんだよ。白くてふわふわしてるからって、一年生の子がつけたんだ」

菜々「はんぺんちゃん、ですか」

菜々「私も──撫でてみたいですね」

侑「うん!」
 
116:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 20:44:20.10 ID:D/xESOtR
それから、お話ししながらなんとなく商業エリアをぶらぶらした。

菜々ちゃんも鉄の意志を持ってるみたいで、色々なものに目移りする私を根気強く諭し続けてくれた。

そのおかげで余計な買い物をせずに済んだ。

一時間くらいの後、別れ際。
 
117:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 20:48:35.94 ID:D/xESOtR
菜々「ここで大丈夫ですよ」

侑「そっか。それじゃまた連絡してね」

菜々「はい。金曜日の件と、はんぺんちゃんの件ですね」

侑「じゃあまた──」

菜々「侑さん」

侑「うん、なに?」

菜々「私、その…」


菜々ちゃんは珍しく少しだけ言い淀んで、


菜々「…おかしいところは、ありませんでしたか…?」


まっすぐに私を見つめた。
 
118:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/11/30(月) 20:55:19.84 ID:D/xESOtR
侑「おかしいとこ?」

菜々「はい」

菜々「勝手がわからないなりに、せめて楽しめるように──楽しんでもらえるように、したつもりなのですが」

菜々「楽しかった、ですか?」

侑「…うん、もちろん!すっごく楽しかったよ!」

菜々「!」パァ…

侑「菜々ちゃんは?楽しかった?」

菜々「はいっ、とても…!」

侑「私も結構遊んでるうちに色んなこと忘れて楽しんじゃうタイプだからさ、菜々ちゃんも私といるときは難しいこととか考えないで、楽しんでくれたら嬉しいな」

菜々「そう、ですね」

侑「また買い物とか行こうね!」

菜々「──はいっ!」


菜々と買い物をして帰りました! ▼
 
123:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 07:51:30.34 ID:vbEqwthX
夜…


一足先にお母さんに菜々ちゃんのことを話しておいたところ、もうなんの抵抗もなくあっさりと許可が下りた。

『許可が下りた』なんて言い方が合わないくらい、お母さんも楽しみにしてそうな反応で…

まあ、渋い反応をされるよりよっぽどいいからいいんだけどね。


侑「…私、最近色んなことしてるな」


なにか考えておかなくちゃいけないこととか、漏らしてないっけ。


気になることはある? >>124
1.はんぺんのこと
2.かすみんのこと
3.同好会のこと
4.演劇部のこと
5.今は特にないかな
 
124: (SIM) 2020/12/01(火) 07:54:09.19 ID:WcusA5XW
3
 
125:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 08:13:42.57 ID:vbEqwthX
同好会、どうなってるかな。

話をしたのが金曜日だったから、…まだ一週間も経ってないんだ。

かすみんとも彼方ちゃんともエマ先輩とも話してないせいか、なんだか随分前のことみたいに思える。

かすみんと彼方ちゃんは仲直りしたかな。

ライブのステージの許可は取れたのかな。

曲はどうすんだろう。


侑「…みんな、元気かなぁ…」
 
126:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 08:14:18.68 ID:vbEqwthX
>>125
訂正

×曲はどうすんだろう。

○曲はどうするんだろう。
 
127:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 08:18:31.92 ID:vbEqwthX
かすみんには連絡しても返ってこなかったし、今日なんか会うのをわざわざ避けられてしまった。

彼方ちゃんはライフデザイン学科、エマ先輩は国際交流学科。

二人とも三年生で学科も違うから、会いにいったからって会えるとは限らない。

歩夢は事情を知ってるけど、私達の間で話したってなにがどうなるわけでもないもんね。

他に同好会のことを知ってる人は…

………いる、よね。
 
128:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 08:26:40.57 ID:vbEqwthX
同好会の部長、せつ菜さん。

部長さんであることを考えれば三年生だと思うけど、…そうじゃない可能性もある。

かすみんが『せんぱい』って呼んでたから一年生じゃないのは間違いないにしても、もし三年生だって確定しないのなら。


侑「…違ったら笑い話で済む、よね」


なーんだ勘違いしちゃったよ、って笑えばきっと笑ってくれる。

反対に、この想像が合ってるとしたら。

あえてなにも話をせずにいる今の状態が、一つの答えだったりするのかな。


侑「…わかん、ないなぁ…」ハァ…
 
129:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 08:31:17.06 ID:vbEqwthX
翌朝…


侑「お待たせ~」タタタ

歩夢「行こっか」

侑「うん!」


侑「はんぺんのこと、菜々ちゃんに話してみたよ」

歩夢「どうだったの?」

侑「正直、校則違反になっちゃう可能性が高いんじゃないかってさ…」

歩夢「そう…」

侑「でも菜々ちゃんにお願いして、なんとかそうならないように生徒会の人達とお話ししてくれることになったんだ」

歩夢「そうなんだ」

侑「璃奈ちゃんに伝えるのは、もう少し話が進んでからにしようと思うんだけど…どうかな?」

歩夢「うん、いいと思う。いい方向に進んでほしいね」

侑「だねー…」
 
130:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 08:38:35.17 ID:vbEqwthX
お昼休み…


私はできるだけ朝から台所を覗かないようにしてる。

朝ごはんの準備や片付けをするときには目を細めながらうろうろするから、たまに足とかぶつける。

それもこれも、全てはお弁当の楽しみをお昼休みまで奪われないため…!

まったく、お母さんだって私が起きたらお弁当箱見えないところに移してくれたらいいのにね。


今日のお昼はどうしよっかな? >>131
1.教室で食べる
2.中庭で食べる
3.生徒会室で食べる
4.屋上で食べる
 
131: (八つ橋) 2020/12/01(火) 08:39:26.11 ID:Ey4N0bNh
4
 
132:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 08:46:45.35 ID:vbEqwthX
歩夢「侑ちゃん、お昼ごはん食べよう」

侑「うん」


どこで食べようかな。

中庭は、かすみんと璃奈ちゃんがいるかもしれない。

ばったり会っちゃうのは、予想できるなら避けておきたいよね。

菜々ちゃん…と、話したいこともあるけど。


歩夢「?」


今じゃ、ないかもね。

どっちみち近いうちに話す機会があるはずだから、そのときにまとめて話せばいい。


侑「屋上でも行ってみよっか!」
 
133:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 08:49:27.33 ID:vbEqwthX
歩夢「屋上って珍しいね」トコトコ

侑「お昼休みは人が多いからあんまり好きじゃないんだよねー」トコトコ

歩夢「そっか。今日は曇ってるから、人少ないかもしれないもんね」

侑「え?」

侑「あ、そうだね!それを見越してた!」

歩夢「別になにも考えてなかったんだ…」

侑「見透かさないで…」
 
134:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 08:53:31.34 ID:vbEqwthX
屋上


キィ──


侑「…おお、ほんとだ。結構がっつり曇ってる」

歩夢「降ってきちゃったら大変だね。すぐ避難できるようにこの辺で食べよっか」

侑「賛成。でもそのおかげで人はいないね、やった!」

歩夢「侑ちゃんって人が好きなのかそうじゃないのかたまにわかんなくなるよ」

侑「好きだよ。でもたまにはさ、あー誰とも話したくないーってことあるでしょ?」

歩夢「ふうん、今日は一人にしましょうか?」

侑「歩夢は別!一人でお昼ごはんなんてヤだよー」

歩夢「うふふ。仕方のない侑ちゃん」

侑「いじわるー」

歩夢「さ、食べよう──」


キィ──
 
135:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 08:58:47.94 ID:vbEqwthX
「…あら?」

侑「あ…果林先輩!」

歩夢「こんにちは、果林先輩」

果林「こんにちは、二人とも。どうしたのよ、こんなに入口ギリギリで。今日はそんなに混んでないでしょ?」

歩夢「混んでないですけど、雨が降ったらすぐ避難できるようにと思って」

果林「そんなに怖がるくらいなら、よりによってこの曇りの日に屋上なんか来なきゃいいのに」フフ

侑「だって普段は混んでるんですもんー」

果林「そうね。私も同じ理由で上がってきたんだもの」

侑「ね、果林先輩。一緒に食べましょうよ!」

果林「えー?…ま、たまには他学年のコとも交流しておかなくちゃね。いいわよ」

侑「やったー!座って座って!」
 
136:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 09:03:43.07 ID:vbEqwthX
果林「わざわざ敷いて座るなんて偉いのね」ペン

侑「歩夢がいつも持ってきてくれるんですよ」

歩夢「侑ちゃん、昔から石とか木とかに座っちゃってはお尻汚して怒られてたので」

侑「ちょっと言わないでよ、果林先輩にさ~」

果林「ふふ…仲良きことは結構よ」

侑「果林先輩、よく屋上に来るんですか?」

果林「曇りの日はたまにね。上を目指せばいいだけだからわかりやすいもの」

侑「うん…?そうなんですね」
 
137:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 09:08:39.81 ID:vbEqwthX
果林「侑、どう?私が見立ててあげた服は。ちゃんと着てる?」

侑「き、着ました…」

果林「髪もきちんとセットしなくちゃだめよ」

侑「それは、しませんでした…」

果林「もう、それじゃ魅力が半減しちゃうでしょうに」

歩夢「私、まだその服見せてもらってないよ」

侑「み…見なくていいよ~!」

果林「どうしてよ。ばっちり着こなして見せてあげたらいいじゃない」

侑「恥ずかしいですから!」

果林「恥ずかしいのなんて最初のうちだけよ。せっかく女に産まれたんだから、オシャレしないともったいないわ」

歩夢「もっと言ってあげてください、果林先輩。侑ちゃん、自分の可愛さをわかってないので」

果林「歩夢もだけどね?」

歩夢「へ…へぇっ!?」

侑「そうだそうだー!」
 
139:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 09:19:50.15 ID:vbEqwthX
果林「最近のコって、こんなにオシャレに無頓着なの?オシャレにというより自分に、なのかしら」

侑「一つしか変わりませんけど…」

果林「私の周りにはそういうアンテナを強く張ったコしかいないのよ。だから新鮮」

歩夢「果林先輩、モデルやってるんですよね?それにライフデザイン学科だし…」

果林「関係ないわよ」

果林「そりゃ普通よりも少し意識レベルが高いコ達が多いかもしれないけど、そんなの誤差よ。毎朝鏡を見るでしょう?そこに映る自分が昨日より魅力的に見えるかどうか、それをどれだけ意識してきたかだけの違い」

果林「自分のこと、可愛がってあげないと可哀想よ。放っておいたらだめ」

侑「ぐう…説得力がある…」

歩夢「わかりました。私も、今日からちょっとずつ意識してみます」

果林「ええ!自分が昨日より魅力的だと思える毎日はとっても素敵なんだから」
 
140:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 09:24:47.37 ID:vbEqwthX
果林「たまには一緒に買い物にいって、お互いをコーディネートし合ってみるといいわ」

果林「それで、相手に勧められたものは信じること。いくらか自分の感覚とは違っても、あなた達が相手のために選んだものなら似合わないなんてことはないはずだから」

歩夢「…よし、侑ちゃん!土曜日お買い物に行こう!侑ちゃんコーディネートするから!」

侑「えっ…ええ!?急過ぎない!?」

歩夢「可愛くなろうとするのに早過ぎるなんてことは、」チラッ

果林「ありません」

歩夢 フフン

侑「な──なにその連携プレイ!?」

果林「どんな服を選んだのか、教えてね」ニコッ
 
141:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 09:31:00.64 ID:vbEqwthX
「「ごちそうさまでした」」

侑「お待たせしました」

果林「ん?」

果林「別に、待ってたわけじゃないわよ。急いで教室に戻る理由もないし、あなた達のお喋りを聞いてるのは楽しいしね」

歩夢「果林先輩、曇りの日は屋上に来ますか?」

果林「毎回ってことはないわね。曇りでも混んでる日もあるし、実習の準備をしながらお昼を済ませることもあるから。エマと時間が合う日は食堂のことが多いしね」

歩夢「そうですかぁ…」

果林「また会いたい?」

歩夢「あ、会いたいってそんな…!侑ちゃんの写真を見せたいので!」

侑「!?」

果林「コーディネートのね。それは確かに見たいから──」

果林「連絡先を交換しておきましょうか、歩夢」スッ

侑「!!?」
 
142:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 09:34:55.23 ID:vbEqwthX
果林「これでいつでも侑の可愛い画像を送り放題よ」

歩夢「はい、たくさん送りますね」

侑「お、送らなくていいよ!一枚も!」

果林「侑は?連絡先、いらない?信用できない相手には教えないけど…あなた達なら変なことに使うとは思えないし」

侑「えと…」

果林「ふーん、すぐにいるって言えないの。だったら教えてあーげない」プイッ

侑「あっ、や!いる!いります!果林先輩の連絡先欲しいです!美味しいものの画像たくさん送ります!」

果林「そう?そこまで言うのなら、教えてあげようかな」

侑「あ、ありがとうございます…」クタ

果林「ふふ…♪」


果林とお昼ごはんを食べました!
果林の連絡先を手に入れました! ▼
 
149:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 18:38:13.73 ID:RX2cEpoj
放課後…


ぽた、ぽた、ぽた。

そんな音が聞こえたかと思うと、あっという間に窓の外は雨模様になった。

カサないなぁ…なんてぼんやり考える。

もう少ししたら雨の季節になるから、そうなったらさすがに折り畳みガサを持ち歩かなくちゃいけなくなるね。

重いからやだなぁ。


どうしよっかな? >>150
1.歩夢とまっすぐ帰る
2.寄り道して帰る(演劇部、同好会、生徒会室、部室棟から選択)
 
150: (茸) 2020/12/01(火) 18:38:42.72 ID:HR9J/eRb
演劇部
 
151:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 18:44:34.83 ID:RX2cEpoj
ザァァ…


侑「…」ボーッ


ザァァ……


侑「……」ボーッ


ザァァ………


侑「………」

侑「あ」

歩夢「侑ちゃん、帰らないの?」

侑「歩夢、まっすぐ帰る?」

歩夢「………うん。帰るよ」
 
152:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 18:48:34.33 ID:RX2cEpoj
侑「帰るよね、そうだよね…」

歩夢「だから侑ちゃんも帰ろう?カサないでしょ?」

侑「ない」

歩夢「私、帰っちゃうよ。侑ちゃん帰るときまだ雨が降ってたらどうするの?濡れちゃうよ」

侑「そう、なんだけど…」

歩夢 ム…

歩夢「もう帰りまーす。ごー、よーん、さーん…」

侑「……っ」

歩夢「にーい、いーーー………」

侑「……」

歩夢「…誰の用事?また菜々ちゃん?」
 
153:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 18:55:22.20 ID:RX2cEpoj
侑「ううん、しずくちゃん」

歩夢「しずくちゃんってことは、演劇部だよね」

侑「うん。先週大事なこと話して、それっきりにしちゃってたなと思って」

歩夢「ラインとか電話でお話しするんじゃだめなの?」

侑「できれば、顔を見て話したいことなんだ」

歩夢「…スクールアイドル同好会のこと、忘れちゃった?」

侑「忘れてないよ。しずくちゃんのことは個人的な話で、演劇部にどうこうってつもりはないんだよ」

侑「応援するって約束したんだ。スクールアイドル同好会のことがあったからこそ、せめてしずくちゃんとの約束は責任を持って果たしたい」

歩夢「…私は、まっすぐ帰っちゃうよ」

侑「…うん、わかった。気をつけてね──」

歩夢「侑ちゃんの、ばかぁっ!」

歩夢 スタスタスタ…

侑「歩夢…」
 
154:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 18:57:40.19 ID:RX2cEpoj
昨日も菜々ちゃんとの約束があって一人で帰らせちゃったから、寂しいんだよね。

うう、ごめんね歩夢…

帰ったらちゃんと謝ろう。

でも、しずくちゃんとのことだって私はちゃんとしたいんだ。

少しだけ我慢しててほしい。
 
155:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 19:04:22.07 ID:RX2cEpoj
演劇部、部室前


侑「…あ」トコ…

しずく「侑先輩!」

侑「しずくちゃん、待っててくれたの?ありがとう」

しずく「見知らぬ部活の部室を訪ねるのはなかなか気後れしてしまうかと思いまして」

侑「急にごめんね」

しずく「本当ですよ!ご連絡があと少し遅かったら、気づくのが練習の後になっていましたよ」

侑「見学ってさせてもらえるのかな?部の活動じゃなくても、しずくちゃん個人をお手伝いできるならそれでいいんだけど…」

しずく「先輩方にはお話ししたので大丈夫ですよ。それに、部活動の時間中に個人的に練習する機会はしばらくなさそうですから。残念ですけどね」

侑「そうなんだ。それじゃ、端っこの方で見学してようかな」

しずく「はいっ」
 
156:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 19:07:08.21 ID:RX2cEpoj
演劇部


しずく「先輩。お話しした、高咲先輩です」

侑「!」

侑 (高咲先輩…なんだか新鮮)

先輩「桜坂さんから聞いてます。今日は見学していかれるんですよね」

侑「あっはい、よろしくお願いします」

先輩「ありがとう、桜坂さん。練習に戻って」

しずく「はい。それでは侑先輩、また後ほど」ペコ

侑「うん、頑張ってね!」

しずく タタタ…
 
157:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 19:11:07.13 ID:RX2cEpoj
先輩「…」

侑「…えっと、私はどこにいれば邪魔になりませんか?」

先輩「ああ、それじゃあそこに座りましょうか」

侑「はい」

先輩「演劇部の見学って聞いたけど、桜坂さんのことを見にきたんですか?」

侑「あー…はい、まあ。そうですね」

先輩「桜坂さんから聞きましたか?」

侑「なにをですか?」

先輩「…いえ、なんでもないです」

侑「えっ!?なんですか!?」

先輩「どうせすぐにわかるので、言いません」

侑「ええー…」
 
158:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 19:18:36.17 ID:RX2cEpoj
「ロングトーン、始め!」パン

「「「アーーーーーーーーー…………」」」


先輩「あれはロングトーンといって、腹式呼吸の練習ですね」

侑「腹式呼吸?」

先輩「呼吸には、胸で息を吸う胸式呼吸とお腹で息を吸う腹式呼吸の二種類があるんですよ。腹式呼吸は胸式呼吸に比べて大きな声が出るし息も長く続くので、長ゼリフなどもある舞台役者は腹式呼吸に慣れておくのがいいんです」

侑「へえ…」

先輩「桜坂さんは40秒を超えるんです。一年生でこれだけロングトーンが続く子は珍しいですよ」

侑「そう、なんですね」ジッ…

先輩「ピンと来ませんよね。そういうものだと思っておいてください」

侑「…はい」
 
159:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 19:25:59.96 ID:RX2cEpoj
「発声練習──」パン


侑 ジッ…

先輩「随分熱心ですね」

侑「そ、そうですか?」

先輩「桜坂さんとは、以前から演劇のことを?」

侑「四月に知り合ったばっかりなんですけど、結構面白い出会い方をしてくれて。しずくちゃんの演技を見たり一緒に演劇を観にいったりしてるうちに、応援したいと思うようになったんです」

先輩「そうでしたか」

先輩「…先週も桜坂さんと話したりしましたか?」

侑「え?そうですね、土曜日に。オーディションの日だったみたいですけど」

先輩「…なるほど」

侑「あの、なにか…?」

先輩「あ」

先輩「本格的な練習に移りますよ」
 
160:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 19:30:01.10 ID:RX2cEpoj
「全員整列!」


ザッ…


「今からパート練に移ります。舞台役者は部長と私で見ます、それ以外の部員は高梨と葉山の指示でそれぞれ練習してください」

「では始め!」パン


ザワザワ…
 
161:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 19:33:42.06 ID:RX2cEpoj
侑「舞台役者って、もしかして」

先輩「そうですね、来週の早公演に役者として立つメンバーのことです」

侑「あ──あの、しずくちゃんが受けたっていうオーディション、一年生から一人選ぶんだって聞いたんですけど、それって──」

先輩「あれが答えです」スッ


部員達 ゾロゾロ…

しずく トコ…


侑「…あっちのグループ、舞台役者さん達の方じゃ…」

先輩「はい」

先輩「桜坂さんが、オーディションで見事に役を勝ち取ったんですよ」

侑「………!!」
 
162:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 19:35:36.40 ID:RX2cEpoj
侑「そうですか………そうなんだ………っ!」

先輩「結果は聞いてなかったんですね」

侑「は…はい、私、ちょっと色々なことしてて聞くの忘れちゃってて…」

侑「そっか、しずくちゃん……そっかぁ…!!」

先輩「すごかったんですよ、桜坂さん」
 
163:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 19:48:49.62 ID:RX2cEpoj
先輩「今回オーディションを行なったのは、革命家の役だったんです」

先輩「役としてはシンプルな方で、王政の不満を民衆に呼びかけるワンシーンだけの出番です。なので、オーディションを受ける一年生達はみんな革命家としての強さや憤りを表現することに熱心でした」

先輩「それは絶対に必要な部分だし、正直に言えば桜坂さんより上手く表現できている子はたくさんいました。桜坂さんの役者性と照らせば、あまり向いてる役じゃないのは確かです」

先輩「でも、桜坂さんは他の一年生が誰一人やらなかったことをやったんです」

先輩「亡くした主人への想いの表現です」

先輩「実はこの役には、圧政の影響で主人を亡くしたという過去がありまして。いわば裏設定ですが、脚本に質問をしにきた一年生には全員同じ情報を与えたので、桜坂さんの他にもその裏設定を知ってる子は何人かいた」

先輩「もしかしたらその子達も同じように亡くした主人への想いを表現していたのかもしれませんが、私達に届いたのは桜坂さんの演技だけでした」

先輩「なぜ革命家になったのか。訴える言葉はなぜそれなのか。このワンシーンで、桜坂さんだけが脚本家の意図を正しく汲み取って表現できていました」

先輩「だから、オーディションの結果は満場一致でしたよ」
 
164:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 19:56:38.81 ID:RX2cEpoj
先輩「オーディションの前日までは、桜坂さんも他の子達とだいたい同じくらいに見えたんですけどね」

先輩「当日になってなにが起こったのかと思いましたよ。昨日までの演技とまるで違う、ストーリーとして頭の中に持ってただけのものを完璧に演技の形に仕上げてきましたからね」

侑「そうなんだ…」

侑「すごい…すごいなぁ、しずくちゃん…」

先輩「今は、自分の出番までに舞台上で行われることを、役として受け取る練習を繰り返してるみたいです。公演までにもっともっと素敵な役になると思いますよ」

先輩「観にこられるんですよね?」

侑「あ、行きたいんですけど。すみません、何日にあるのか知らなくて…」

先輩「来週の日曜日、24日です。11時開演で場所は講堂です」

侑「あ…ありがとうございます!」
 
165:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 20:01:23.87 ID:RX2cEpoj
「──────」

しずく「…っ」ギュ…

「────」

しずく「…!」ハッ

「────────」

「──────」

しずく フルフル…


怒りに肩を震わせて拳を握り締めたり、

その言葉が信じられないと目を見張ったり、

かと思えば唇を噛みながら一人耐えたり。

役者の人達が物語を進める傍ら、しずくちゃんはただ懸命に『彼女』の物語を進める。

本当だ。

しずくちゃんは、すごい──


先輩「オーディションの前に、桜坂さんに会ったんですよね」
 
166:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 20:04:47.67 ID:RX2cEpoj
侑「え?」

侑「あ、はい。朝から、しずくちゃんが部活に行く前に…」

先輩「そうですか」

先輩「『だから』、なんですかね」フッ──


侑「……………え…?」


侑「それって、どういう…」

先輩「…あー、その演技やめてって言ったのにな…」

先輩「すみません、高咲さん。私も指導に入りますね。三年生には高咲さんのこと話してあるので、向こうの練習も自由に見学してください」

先輩「それでは」

侑「あっ…」
 
167:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 20:08:35.99 ID:RX2cEpoj
シーンが進んでしずくちゃんの出番が近づいてきたような気がして、私は思わず椅子を立った。

舞台向けじゃない普通の演劇部の練習も見ておきたいし、しずくちゃんの演技は本番まで楽しみにしておきたいしね。

そんなことを、心の中で何度か繰り返した。

振り返ったとき、恐らくもうしずくちゃんの出番は終わっていて、安心と反省の半々みたいな表情で物語を見守る姿があった──
 
168:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/01(火) 20:13:51.28 ID:RX2cEpoj
「今日はここまで!お疲れ様でしたー!」

「「「お疲れ様でしたーーー!!!」」」


ガヤガヤ…


しずく「侑先輩っ」

侑「しずくちゃん、お疲れ様」

しずく「見学した感想はどうですか?…ってお話ししたいんですけど、私も片付けをしなくちゃいけないので。まだお時間は大丈夫ですか?」

侑「うん、平気だよ。待ってるから駅まで一緒に帰ろっか」

しずく「はいっ!もう少し待っていてくださいね」

侑「急がなくていいからね」


しずくちゃんと歩く短い帰り道、私の質問に答えたり演劇の知識を教えてくれたりする言葉があんまり耳に入ってこなかったような気がするのは──

気のせいだと、思った。


演劇部の見学をしました! ▼
 
174:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 07:16:41.41 ID:mRmwCV7B
夜…


侑「なんか、変だな…」


ごはんを済ませて部屋に戻るなり、ベッドに倒れ込む。

しずくちゃんの折り畳みガサに入れてもらいながら駅まで帰って、家までの道は「最寄り駅まで迎えにきてもらうので」との言葉に甘えてカサを借りてしまった。

少し濡れてひんやりと冷たい左肩と、じんわりと熱い右肩。

ごまかすようにお風呂に飛び込んで、そのまま晩ごはんを食べて、今。


侑「カサ、しずくちゃんに返さなくちゃ…」


まだ熱いように感じる右肩を撫でて呟く。
 
175:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 07:21:55.90 ID:mRmwCV7B
雨の日は歩夢に入れてもらうことが多くて、でもこれでもかってくらいくっついて歩くおかげで肩が濡れたことなんかないんだよね。

外側になる肩が冷たいことも、……歩夢と寄せた肩が熱いことだって、ないのに。


侑「なんなんだぁぁ………」ウウゥ


歩夢が寝ちゃわないうちに謝らなくちゃいけないのに、なかなか身体を起こせない。

これじゃ歩夢とお買い物に行けないよ。

あゆむー、あゆむぅぅ。

なんて一人でもぞもぞしていると、





スマホが震えた。
 
176:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 07:27:31.14 ID:mRmwCV7B
侑「…菜々ちゃん!」パッ


『菜。:こんばんは』

『菜。:明日の件ですが、両親に話して許可を貰いました』

『ってことは、泊まれる?』

『菜。:はい』

『菜。:お世話になります』


おお、やった!

文面は淡々としてるけど、話しぶり結構厳しいご両親みたいだし、きっと一生懸命説得してくれたんだよね。
 
177:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 07:31:37.63 ID:mRmwCV7B
『よかった!


入力しかけた手を止めて、ふと思い返す。

あれ──なんか、今日?昨日?歩夢と約束したのって──


──歩夢「…よし、侑ちゃん!土曜日お買い物に行こう!侑ちゃんコーディネートするから!」


…土曜日って、明後日のこと?だよね?


侑「…………やば…」


どうしよう…? >>178
1.菜々との予定を調整する
2.歩夢との予定を調整する
3.二人との予定を合わせる
 
178: (たこやき) 2020/12/02(水) 07:42:30.20 ID:KRBt830T
2で
歩夢ごめん
 
179:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 07:50:08.09 ID:mRmwCV7B
やば、やば、やば、やば。

え?なにこれ、もしかしてダブルブッキングした?

菜々ちゃんが明日から泊まりにくるでしょ。

泊まりにきて、土曜日の午前中には帰るんだっけ?

いやいや、そんなことないよね。

別に朝七時に起きてストイックに一気観するつもりなんかないし。

ミニドラマだって聴きたいし、きっと観終えたらお互いに感想を話し合ったり菜々ちゃんの好きなシーンを教えてもらったりするだろうし。

なんなら気に入った話とかもう一回観ようってなってもおかしくないし。

歩夢の「土曜日」っていうのは?午後五時から?

いやあ…違いそうだなぁ……


侑 サーーッ………


へへ…へへへ。

やばいなぁ。
 
180:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 07:54:47.81 ID:mRmwCV7B
侑「いやいや、落ち着け私」


もはや歩夢も呼んで三人でお泊まりしちゃうのはどうかな。

あ、これいいんじゃない?

歩夢と菜々ちゃん仲良くなったし、歩夢もアニメはキライじゃないはずだもん。

お客さん用のお布団があるはずだから、こう…それ敷いて、下に二人で寝てもらって…


──歩夢「…誰の用事?また菜々ちゃん?」


…えー、歩夢さん?

菜々ちゃんと仲良くなった、よね…?
 
182:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 08:03:13.13 ID:mRmwCV7B
侑「あーっ、だめだぁ…だめそうだぁ…!」


歩夢だって菜々ちゃんのことイヤなわけじゃない。

それくらい私にもわかる。

ただ、二年生になってから私が歩夢を置いて他の友達との時間を取るようになったから、寂しいんだ。

今までずっと一緒にいたんだもん、私が離れていくような気がしてるのかもしれない。

反対に歩夢が私を放ったらかして新しい友達とばっかり遊び始めたら、きっと同じ気持ちになるもん。

でも、菜々ちゃんともしずくちゃんとも仲良くなりたいけど、その代わりに歩夢がどうでもよくなるなんて話じゃない。

それは歩夢にもわかってほしいな…
 
183:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 08:10:49.26 ID:mRmwCV7B
菜々ちゃんと三人で──というより、二人きりじゃないことが焦点のはずで。

これから私は色んな友達と過ごす時間が増えていくかもしれないけど、そこに歩夢を加えればいい、ってことじゃない。

歩夢にとって私は特別なはずだし、私にとっても歩夢は特別な存在だもん。

歩夢との時間をきちんと取る。

他の予定で寂しい想いをさせたなら、それを補えるくらい楽しい時間を過ごす。


──しずく「侑先輩っ」

──菜々「侑さん」

──かすみ「侑せんぱい」


そうしていこう。

私は拡がっていく自分の世界も、歩夢のことも、どっちも大事にしたいもん。
 
184:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 08:18:14.98 ID:mRmwCV7B
『よかった!』

『明日、放課後は生徒会?終わる時間わかるなら迎えにいくよ』

『菜。:明日は生徒会の定例会議があるので、そこではんぺんちゃんの件も議題にするつもりです』


そっか、明日会議なんだ…


『菜。:その後、18時半頃まで用事があるので、45分頃には学校を出られると思います』

『わかった、それじゃそれくらいに校門で待ってるね!』


とメッセージを送って、すぐに歩夢に電話を鳴らす。
 
185:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 08:21:42.08 ID:mRmwCV7B
ベランダ


ガラッ


歩夢 ヒョコ…

侑「夜に呼んじゃってごめんね」

歩夢「ううん」フル…

侑「今日、一緒に帰れなくてごめんね」

歩夢「…いいよ」

歩夢「帰り、濡れなかった?」

侑「しずくちゃんにカサ借りたから、平気だったよ」

歩夢「そう。それならよかった」ホッ…
 
186:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 08:29:27.30 ID:mRmwCV7B
侑「私さ、最近たくさん新しい友達が増えたんだよね」

歩夢「…そうだね」

侑「しずくちゃんに菜々ちゃん、かすみん、果林先輩やエマ先輩、彼方ちゃんに璃奈ちゃんに愛ちゃん。学年も学科も違うのに、たくさん」

侑「この中だと……あれ、歩夢もみんな友達か」

歩夢「友達…なのかな。お話ししたことはあっても、お友達っていうのかわかんないや」

侑「あはは、そうだよね。私も全員を『友達』って括るのは難しいかもって思うけどさ」

侑「でも、せっかく知り合えたんなら、仲良くなりたいんだよね。好きなこと話したり一緒に楽しいことしたりして、どんどん仲良くなりたいと思う」

侑「そしたら歩夢と二人の時間が今までよりは減っちゃうかもしれないんだけど」

歩夢 ピク…

侑「それでも、そうしたいって思う」

歩夢「…」
 
187:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 08:38:01.08 ID:mRmwCV7B
侑「色んな人と触れ合うことで世界が拡がってくのを感じるんだ」

侑「演劇とかスクールアイドルとか、そういうのだけじゃなくても、自分になかった考えを聞いたりとか」

侑「それがすごく楽しいし、もっと!ってなって、わくわくしちゃうんだ」

歩夢「…」

侑「…歩夢と過ごす時間は減っちゃうかもしれない」

侑「でも、私が歩夢を大事に想う気持ちは変わらないから。時間が減ったらその分一回一回を楽しんで、今よりもっと歩夢と仲良くなりたい」

侑「寂しがらせちゃうのは、ごめん」

侑「こんなんじゃ…だめ、かな?」
 
188:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 08:39:07.41 ID:mRmwCV7B
歩夢 ジーッ

侑「…」

歩夢 ジーーッ

侑「……」

歩夢 ジーーーッ

侑「………」

歩夢 …ハァ

歩夢「いいよ、もう」

侑「!」
 
189:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 08:43:09.09 ID:mRmwCV7B
歩夢「侑ちゃんが新しいものとか面白そうなもの大好きなのは昔からだもん。今さらそれを変えてほしいなんて思わないよ」

歩夢「それに私は、そうやって目を輝かせてなりふり構わずに好きなものを追いかける侑ちゃんが好きなの」

侑「歩夢…!」

歩夢「結果私のことを放ったらかしちゃうとしてもね」ジト

侑「うぅ…あはは……」

歩夢「いいよ、もう」

歩夢「動物園でどれだけはしゃいでも、見たいもの好きなだけ見て回ったらちゃんと入口に帰ってくるもんね。これからは侑ちゃんからどんどん私に声をかけて誘ってよね」

侑「はいっ、そうします!」
 
190:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 08:45:54.73 ID:mRmwCV7B
歩夢「明日のお昼ごはんはどこにも行っちゃだめだよ」

侑「うん」

歩夢「放課後も寄り道しないで一緒に帰るからね」

侑「うん!」

歩夢「土曜日はお買い物に行くんだからね」

侑「あ、それ日曜日にずらせないかな?」

歩夢「え!?なんで!?」

侑「だ、だめ…?土曜日じゃないと空いてないお店とか行く予定…?」

歩夢「だめじゃないけど、なんで?土曜日は都合悪いの?」

侑「菜々ちゃんと約束があって…」

歩夢「また菜々ちゃん!!」
 
191:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 08:48:45.13 ID:mRmwCV7B
歩夢 ウーーッ…

歩夢 ムーーー…

歩夢 グヌヌヌ…

侑 ドキドキ…

歩夢「…菜々ちゃんと約束してたかもしれないけど、私とも約束したよね?」

侑「う、うん…でも先に約束したの菜々ちゃんだったんだ。歩夢とその話したとき、すっかり忘れちゃってて…」

歩夢 ムムムム…

歩夢「………日曜日は、絶対に付き合ってくれるの?」

侑「も、もちろん!」

歩夢「一日じゅう?朝から晩まで?他の子はなしで、私と二人で?」

侑「うん、うん、絶対約束する!」
 
192:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 08:56:17.76 ID:mRmwCV7B
歩夢「…………ワカリマシタ」

歩夢「先に約束してたのなら、そっちを優先すべきだもんね。私も侑ちゃんの予定を確認せずに決めちゃったから、そこは我慢します」

侑 (あ、その自覚はあったんだ…)

歩夢「はあ~~~もう」

歩夢「侑ちゃんのばか」

侑「ぅ…」

歩夢「侑ちゃんのいじわる、侑ちゃんのばか」

侑「ばかって二回言った…」

歩夢「口答えしちゃだめ!今日だって今から寝るまで私だけのものなんだから」プン

侑「あはは…はいはい、わかったよ」

歩夢「寝るまで手握ってて」ン

侑「え~、ここで寝るつもり?」ギュ

歩夢「そうに決まってるでしょー」

侑「風邪引いちゃうよ~」

歩夢「口答えしーなーいーでー!」

侑「わかった、わかったってば」ギュ…


菜々とラインで話しました!
歩夢と日曜日に約束しました!
やや寝不足になりました!   ▼
 
197:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 19:16:29.49 ID:mRmwCV7B
翌朝…


侑「お待たせぇ」フワ…

歩夢「行こっか」フワ…

侑「ふふっ。二人してあくびしてる」

歩夢「だって寝るの遅かったんだもん」クシクシ…

侑「歩夢がなかなか寝かせてくれなかったからだよ?」

歩夢「侑ちゃんがなかなか寝かせたくなくさせたんだもん」

侑「寝かせたくなく、なく…なく…?」

侑「ちょっとわかんない、難しい言い方しないで…」

歩夢「眠いもんね。授業大丈夫かなぁ」

侑「歩夢の居眠り姿が見られるなんて珍しいね」

歩夢「私が居眠りしちゃうのに侑ちゃんが起きてられると思う?」

侑「…言いっこなしで」
 
198:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 19:21:16.44 ID:mRmwCV7B
お昼休み…


一時間目、接戦(ギリギリ勝ち)。

二時間目、接戦(ギリギリ負け)。

三時間目、惨敗。

四時間目、いつ始まったんだろう…

ちなみに歩夢が居眠りする姿は見られなかった。

いつもより真剣な表情で黒板とノートを何往復もしてたのは、たぶん必死に眠気と戦ってたからだね。

私は、…えへ♡
 
199:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 19:27:03.83 ID:mRmwCV7B
侑「机くっつけるね」ガタ…

歩夢「うん」

優花「お、どこに行くかの相談もなく侑達が教室にいる」

香「ほんとだー」

歩夢「!」

侑「まだ地面とか乾いてなさそうだったからね。今日は教室」

優花「なるほどね。香パン?」

香「おべんとー。すぐ食べられるよ」

優花「おけおけ」

侑「あー…」
 
200:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 19:29:59.05 ID:mRmwCV7B
侑「優花、香。今日はね、だめ」

優花「お?」

侑「今日は私、歩夢と二人きりでお昼ごはん食べたいんだ」

優花「ほー…」

優花「なら、仕方ないね。次は一緒に食べようね」

侑「そうだね!」

香「んじゃ川崎ちゃん達のグループに突撃~」タタタ

優花「突撃禁止令~」スタスタ
 
201:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 19:32:49.10 ID:mRmwCV7B
侑「お待たせ」ガタ…

歩夢「侑ちゃん、今日は私と二人きりでお昼ごはん食べたかったの?」ニコニコ

侑「ええ?」

侑「そうだよ。優花達断っちゃうくらいにね」ニッ

歩夢「もう、侑ちゃんってば♡」ナデナデ

侑「な、なんで撫でるの!?ほらもう食べようよ~」

歩夢「はーいっ♡」


優花/香 ((まあ、でしょうね。))
 
202:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 19:40:54.02 ID:mRmwCV7B
歩夢「侑ちゃん寝てたでしょ」

侑「寝ちゃったよー、もう。無理だって古文と世界史の連続は…」

歩夢「私も危なかったよ。後半ほとんど『ユーちゃん』描いてごまかすしかなかったもん」

侑「ユーちゃんまだ描いてるの?」

歩夢「もちろんだよ。ユーちゃんにポイントを喋ってもらっておくと、すっごく定着するんだもん」

侑「もうやめようよ、高校生だよ。ノート提出したときとか先生にどう思われてるか考えると恥ずかしいよ…」

歩夢「オリジナルキャラクターだから大丈夫だよ」

侑「大丈夫じゃないよ!ほとんど私まんまじゃん、特徴捉え過ぎだよ!」

歩夢「そうかなぁ?」

侑「グッズ化するときはちゃんとお金払ってね」

歩夢「うふふ、他の誰にもユーちゃんを渡す気なんかないよ」
 
203:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 19:44:35.66 ID:mRmwCV7B
侑「私、結構なにかしながら寝ちゃうこと多いんだよね」

歩夢「ごはん食べながら寝てたこともあるよね」

侑「ある。歩きながら寝て電信柱にまっすぐぶつかったときはさすがにびっくりした…」

歩夢「でもその五分後にまたぶつかったんだよね」

侑「あれはね、自分でも驚きを隠せなかったよ。電信柱にぶつかっても覚めない眠気ってどういうことなの…」

歩夢「侑ちゃんは運転免許取っちゃだめだからね…」

侑「そうだね、取らない」
 
204:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 19:49:03.28 ID:mRmwCV7B
「「ごちそうさまでした」」

歩夢「寝なかったね」

侑「歩夢と話しながら食べてれば、さすがに…」

侑「って言いたいところだけど、ずっと眠かったのはほんとかも」

歩夢「あくびの回数すごかったよ」

侑「歩夢だって眠いでしょー?」

歩夢「侑ちゃんほどじゃないかもしれないけど、眠いのは眠いかな…」

侑「ね、歩夢」

歩夢「うん」

侑「お昼休みはまだ三十分あるんだけどさ」

歩夢「そうだね」

侑「お昼寝しない?」

歩夢「………賛成」
 
205:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 19:51:45.85 ID:mRmwCV7B
歩夢「せっかく二人なんだからたくさんお話ししたいけど、このままだと午後の授業で寝ちゃいそうだもん」

侑「歩夢の居眠りが見られるなら、なんとか我慢してもいいって気が…」

歩夢「侑ちゃんには見れないってば」

侑「なんで決めつけるのさー」ブー

侑「…うそ。やっぱ寝たいや」フワ…

歩夢「私も…」フワ…
 
206:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 19:55:37.72 ID:mRmwCV7B
ジャージ枕 モフ


侑「これでよし!よだれがついちゃっても、今日は金曜日だから持って帰って洗うだけ!」

歩夢「そんなことを堂々と宣言されても」

歩夢「侑ちゃん、椅子平気?もっと寄っていいよ」

侑「もうちょっと」ズリ…

侑「うん、これで大丈夫」

歩夢「お昼休み終わる前にアラームかけとくね」スマスマ

侑「あー、もうだめ。寝よう歩夢」ボフッ

歩夢「そうだね。お休みなさい、侑ちゃん」ボフ…

侑「おやすみー」
 
207:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 19:56:56.49 ID:mRmwCV7B
………スー…スー……


優花「いや、一つの机で一緒に寝るなんて有り得る?」

香「歩夢ちゃん達のやることを深く考えてもしょーがないよ、優花ちゃん」


歩夢とお昼ごはんを食べました! ▼
 
208:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 20:02:44.27 ID:mRmwCV7B
放課後…


侑「帰ろ、歩夢」

歩夢「うん」

歩夢「どこか寄り道したい?」

侑「んー…」

侑「ううん。歩夢とお話ししながらのんびり帰りたいかな」

歩夢「えへへ…そう?それじゃそうしよっか」

侑「うん!」
 
209:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 20:06:19.94 ID:mRmwCV7B
帰り道…


歩夢「どんなコーディネートしようか迷っちゃうなぁ」

侑「日曜日?お手柔らかにね…」

歩夢「普段から侑ちゃんが選ぶような服じゃ意味ないもん、とびっきりの選んであげるからね」

侑「お、お互いに似合うって思ったのを選ぶんだよ!?」

歩夢「わかってるよー。でも侑ちゃんに似合わない服なんかないから困っちゃうな…」

侑「その眼鏡は外しておいてもらった方がいいなぁ…」
 
210:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 20:09:58.33 ID:mRmwCV7B
歩夢「私、侑ちゃんに着てほしい服とかしてほしい格好はいっぱいあるんだよ」

侑「え、そうなの?」

歩夢「うん。でも侑ちゃんあんまり自分のお洋服に興味ないから、私が一方的に押し付けちゃうのもよくないかなって、我慢してるの」

侑「その我慢を果林先輩が解き放ったわけだ…」

歩夢「でもいっぱいあって困ってるの!ねえ侑ちゃん、いくつも選んじゃだめ?」

侑「えっ!?」

侑「い、いや、選んでくれるのは全然いいんだけど、やっぱり一式揃えるってなるとそんなに何着もは買えないっていうかさ…」

歩夢「私、お年玉たくさん貯金してるよ」ムフー

侑「絶対使わないでね!!?」
 
213:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 20:19:50.90 ID:mRmwCV7B
歩夢「っていうか、そうだよ!」

侑「ん?」

歩夢「私、侑ちゃんが果林先輩にコーディネートしてもらったって服、まだ見てないよ!」

侑「あ、ああ…」

歩夢「日曜日、それ着てきてね」

侑「なんで!?いっぱい試着するかもしれないんだからシンプルな格好にしようよ!」

歩夢「だって見たいんだもん。それに、そのコーディネートくらいは超えたいし」

侑「くらいって、一応読者モデルが選んだ服だよ?」

歩夢「読者モデルでもプロのモデルでも関係ないよ。侑ちゃんに一番似合う格好は、侑ちゃんのこと一番知ってる私が一番よくわかるもん」

侑「一番だらけでなにがなんだか」
 
214:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 20:26:40.24 ID:mRmwCV7B
侑「朝、一旦その服着て家行くから。一通り満足したら出かける前に着替えさせてね」

歩夢「仕方ないなぁ」

侑「仕方ないのは私かなぁ」

歩夢「果林先輩が選んでくれた服、どのくらい着てるの?」

侑「しずくちゃんと演劇を観にいったときの一回だけだよ。あんなに気合いの入った格好で出かける用事なんかそうそうないもん」

歩夢「…勝負服みたいになるの、ヤだな」ボソッ

歩夢「…でも、普段着になるのもヤだな。いつも果林先輩色でいることになっちゃうもん」ボソッ

歩夢「…私が勝負服になるのと普段着になるのと両方揃えてあげたらいいのかな。そしたら果林先輩の服どうするんだろう。捨てたりしてほしいわけじゃないけど、あんまり特別に扱われるのも、だからって当たり前の存在になるのもな…」ボソ…

侑 (うーん…)

侑 (歩夢は独り言が大きいなぁ)
 
215:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 20:32:31.09 ID:mRmwCV7B
歩夢「侑ちゃん、お互いにコーディネートするのもいいけど、今持ってる服を交換っこしてみるのも面白いんじゃない?」

侑「面白いとは思うけど、考え事聞こえちゃってたんだよねぇ…」

侑「歩夢と二人で買い物に行くの久し振りだし、せっかくコーディネートしてくれるって言うんだもん。楽しもうね」

歩夢「ほんと、久し振りだね。一年生の頃はずっと一緒だったのにね」

侑「そ、それはさぁ…」タジ…

歩夢「うふふ、ごめんね。ちょっぴりいじわる言いたくなっちゃっただけ。もう怒ってないよ」ニコッ

侑「それならいいけど」ホッ…
 
216:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/02(水) 20:37:41.05 ID:mRmwCV7B
侑「ただいまだ」

歩夢「お帰りなさい」

侑「歩夢もお帰りなさい」

歩夢「うん、ただいま」

侑「じゃあ、また明後日ね」

歩夢「菜々ちゃんに、よろしくね」ムー…

侑「あはは、伝えとく。うるさくしたらごめんね」

歩夢「うるさくするようなことするの?」

侑「え?いや、そんなことないとは思うんだけどさ」

歩夢「…まあいいや、詮索はしないの。侑ちゃんには侑ちゃんの時間とお付き合いがあるんだもんね」

侑「明日どんな一日だったか、聞かせてね」

歩夢「はーい」

歩夢「またね、侑ちゃん」ノシ

侑「またね」ノシ


…バタン


歩夢と帰りました! ▼
 
223:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 07:59:01.88 ID:8VQsNYZI
校門付近


侑「菜々ちゃん、半まで用事あるって言ってたよね。出てくるまでもう少しかかるかな」

侑「…用事、生徒会だけじゃないんだよね。会議の後にって言ってたし」

侑「…」

侑「まあ、今日か明日か聞いてみればわかることだもんね」

侑 ブラブラ…

侑「あれ?待てよ、もし菜々ちゃんの用事がそれだとしたら──」


タッタッタッタッタッタッ


侑「ん?」
 
224:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 08:03:12.02 ID:8VQsNYZI
侑「あ、菜々ちゃ──

菜々「行きましょう!」ガシッ

侑「え?」グイ

菜々「今週もありがとうございました!皆さん、よい週末をぉぉぉおおお!!」タッタッタッ

侑「わぁぁぁぁぁ………!?」トットットッ


「今のって生徒会長?」

「たぶん…」

「誰か連れていかれた?」

「たぶん…?」
 
225:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 08:07:59.56 ID:8VQsNYZI
菜々「ふぅ…ここまで走れば大丈夫ですかね…」ハァハァ

菜々「侑さん、迎えにきていただいてありがとうございます。と同時にいきなり走り出してすみませんでした──」

侑「」チーン

菜々「うわーっ、侑さん!?」
 
226:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 08:13:59.35 ID:8VQsNYZI
侑「………はっ!?」

菜々「ああっ息を…息を吹き返しました!」

侑「あ、菜々ちゃん。用事終わった?お疲れ様」

菜々「やや記憶が飛んでいるようですが…」

菜々「すみません、説明もなしに走るのに付き合わせてしまいました」

侑「え、あ…あー……そうだったね」

菜々「その、先ほどまでグループで活動する用事があったのですが、ああでもしないと他の部員と侑さんが鉢合わせしてしまうことに遅まきながら気づきまして」

侑「ああ…なるほどね」

侑 (他のグループ──まあ、そういうことだよね)

菜々「平気ですか?」

侑「うん。びっくりしたけどなんともないよ」
 
227:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 08:21:00.55 ID:8VQsNYZI
侑「それじゃうちに向かおっか。えっと…」キョロ

侑「結構変なところまで走ったね」

菜々「駅に向かう流れから離れなければという一心で、つい…!」

侑「あはは、菜々ちゃん面白いや」

菜々「も、もう。笑わないでくださいよ」

侑「ごめんごめん」

菜々「ここがどこかわかりますか?もう皆さん校門は抜けたでしょうから、一度戻ってからでも…」

侑「お台場に何年住んでると思ってるの?どこでも私の庭だよ、大丈夫」

菜々「頼もしいですね」

侑「ここだって、もう四回は迷って来たことあるからね!ばっちりわかるよ!」

菜々「庭…?」
 
228:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 08:28:04.96 ID:8VQsNYZI
侑の家


菜々「今晩お世話になります、中川菜々といいます。侑さんと同じ虹ヶ咲学園の二年生で、侑さんにはかねてより親しくしていただいています。学校からまっすぐ来たもので手ぶらでお伺いして申し訳ないのですが──」フカブカ…

侑「菜々ちゃんはニジガクの生徒会長なんだよ、いつもはまじめなんだけど話すと楽しくていっぱい笑ってくれるんだ~」

高咲母「あら、生徒会長さん!侑がいつもお世話になっているみたいですね」

菜々「いっいえ!お世話になっているのは私の方で、」

侑「そんなことないよ、私菜々ちゃんに甘えっ放しだもん!」

高咲母「侑がお世話してるはずないでしょう。そんなに緊張しないで、ゆっくりしていってね」

侑「あー、お母さんひどいー」ブー

高咲母「自分でも同じこと言ったじゃないの」

侑「自分で言うのとお母さんに言われるのとじゃ全然違うじゃん」

高咲母「はいはい。菜々ちゃん、苦手な食べ物はない?」

菜々「あ、はい。なんでもよく食べます」

高咲母「そう。あと三十分くらいで晩ごはんできるから待っててね」
 
229:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 08:34:08.98 ID:8VQsNYZI
「「「いただきます」」」

侑「お父さん今日遅番?」

高咲母「そうよ。終電になると思うから、わざわざ挨拶しなくていいからね。私から話しておくから明日の朝にでも会ったら一言話しかけてあげて」

菜々「わかりました」

菜々 モグ…

菜々「! 美味しい…!」

高咲母「美味しいって!」

侑「知ってるよ。お母さんの料理みんな美味しいけど、ピーマンの肉詰めはその中でも四番目くらいに美味しいもん!」

菜々「これで四番目ですか。一番から三番はなんですか?」

侑「なんだろうね?シチューとか美味しいよね」

菜々「具体的に思い浮かんでるわけではないのですね…」

高咲母「こういう子なのよ」

菜々「なるほど」モグモグ…
 
230:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 08:42:02.10 ID:8VQsNYZI
侑の部屋


侑「お風呂あがったよー」ガチャ

菜々「お帰りなさい。ドライヤーお返ししますね」

侑「なに読んでたの?」

菜々「今はこれを!」

菜々「なかなか渋いラインナップをしてますね、侑さんの本棚は」マジマジ…

侑「そう?まあ、王道系は少ないかもね」

菜々「『空さん』が全巻揃ってるとは」

侑「知ってる友達に会ったの、今、菜々ちゃんが初めてだよ」

菜々「でしょうね。ブックオフでも全巻揃ってる様子を見かけることは稀なくらいですよ」

侑「面白いのにな~」

菜々「無名の名作というのは世に溢れているものですからね…」

侑「ちょっと髪乾かすね」

菜々「はい。私はここまで読み切ってしまいます」


ブオオオオ…
 
231:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 08:48:10.69 ID:8VQsNYZI
侑「お待たせ!」カチッ

菜々「私もちょうど読み終えました。くうっ、ここでやめるのは生〇しの感が強すぎますね…!」

侑「あはは、なんならしばらく読んでていいよ?」

菜々「いえ、何度も読んだストーリーなので大丈夫です。今日はそれよりもやることがたくさんありますからね」

侑「だね。それじゃあ──」

菜々「はい。課題を済ませましょう!」

侑「──え?」

菜々「え?」
 
232:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 08:53:10.61 ID:8VQsNYZI
侑「え?課題?お泊まりなのに?」

菜々「課題、出なかったんですか?」

侑「出たけど…」

菜々「…?」

侑「本気の反応されちゃうと苦しいなぁ…」

菜々「侑さん、課題は出た日の夜以外にいつやるんですか?」

侑 (歩夢に言われた日か提出日だよ!とは、言えない雰囲気がある) ウム

侑「い、いや、お泊まり中だから後回しかなーなんて思っただけだよ。やろうか、課題!」

菜々「そういうことでしたか。先に済ませた方が、なにも気にすることなく後の楽しみを満喫できますからね。ぱぱっと済ませてしまいましょう」

侑「はーい」

侑 (ぱぱっと済みますように…!)
 
233:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 09:01:05.13 ID:8VQsNYZI
侑「へー、そっち進んでるんだね」

菜々「私達のクラスは梨山先生ですからね。淡々と進む分、速いのは確かです」

侑「あんまり範囲拡げないでほしいなぁ…」

菜々「ふふ、そうむちゃくちゃなことにはなりませんよ。ある程度まで進んだらテストまで復習と自習の時間になることが多いですから」

侑「そうなんだ。ちょっと安心した」

菜々「しかしあの速さで進められると一度躓くとそこから追いつくのが難しくなるので、理解度に開きが出てしまうのは問題ですね。あ、三問目、間違ってますね」チョイ

侑「…はい」
 
234:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 09:08:18.50 ID:8VQsNYZI
侑「……終わったー!」

菜々「お疲れ様でした」

侑「待たせちゃってごめんね」

菜々「いえ、おかげでここまで読めました」

侑「菜々ちゃん読むの速いよね」

菜々「伸び伸びと読むわけにいかない環境が多かったので、短い時間で多く読む癖がついてしまいましたね。本当はもっとじっくり読みたいんですけど」

侑「でも別に読み飛ばしたりすぐ忘れちゃったりするんじゃないでしょ?私読むの遅くて時間かかっちゃうから羨ましいな」

菜々「一長一短のないものねだりですかね」

侑「かもね」

侑 (これでやるべきことは終わったよね。ここからは完全に自由な時間だけど──)


どうしようかな? >>235
1.アニメを観始める!
2.はんぺんの話を聞く
3.気になってることを聞く
 
235: (たまごやき) 2020/12/03(木) 09:08:59.07 ID:peGq+cWr
3
 
237:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 09:13:19.97 ID:8VQsNYZI
菜々ちゃんは持っていたマンガを丁寧に棚に戻し、ちょこんと座り直した。

大きな理由があってお泊まりにきたとは言っても、あくまで進行は家主の私に委ねてくれるつもりみたいだ。

もちろんアニメは早く観たい。

観たいけど、話しておきたいことがある。

はんぺんのこと──も、聞きたいけど、それは私から切り出さなくても明日解散するまでに必ず菜々ちゃんから話してくれるはずだよね。

それなら、今のうちに話しておきたい。


侑「…菜々ちゃん」

菜々「はい」
 
238:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 09:17:31.77 ID:8VQsNYZI
侑「前から気になってることがあるんだけど、聞いてもいい?」

菜々「そう改まって切り出されると緊張してしまいますが…なんでも聞いてください。答えられないことや答えたくないことはそう言いますので」

侑 (答えられないことや答えたくないこと──)

侑「菜々ちゃんの、グループ活動のことなんだけど」

菜々「!」

菜々「…それは」

侑「今日も、生徒会の用事と他にそっちの用事もあったんだよね。それってもしかして、部活…だったりする?」

菜々「………そう、…ですね…」

侑「それは──それって──」
 
239:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 09:18:07.18 ID:8VQsNYZI
侑「────せつ菜、さん…?」

菜々「……………はい」
 
240:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 09:20:05.01 ID:8VQsNYZI
菜々「……」

侑「……」


もしかしたらごまかされるかもしれないと思った。

もしくは、違う可能性もあるかもしれないって。

でも、そっか──そうだよね。
 
241:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 09:23:31.72 ID:8VQsNYZI
菜々「もう黙っている必要はないようですね」

菜々「改めて、スクールアイドル同好会の部長、優木せつ菜です」

侑「優木?」

菜々「はい。スクールアイドルとしての名前です」

侑「芸名ってやつだね」

菜々「まあ、はい、そうですね」

侑「どんな漢字を書くの?」

菜々「待ってくださいね」スマスマ

菜々「こうです」っスマホ

侑「……ああ!だからラインの名前『菜。』なんだ!」

菜々「これなら菜々として接している相手にもせつ菜として接している相手にも説明ができますから」

侑「ははあ~」
 
242:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 09:28:20.92 ID:8VQsNYZI
菜々「歩夢さんには気づかれていたみたいですが、侑さんも気づいていたんですね」

侑「え?歩夢気づいてたの?」

菜々「確認したわけではありませんが、恐らく。先週部室でせつ菜として会ったときに、すぐ見抜かれたと感じました」

侑「そ、そうなんだ…言ってくれたらいいのに…」

菜々「私が菜々だと名乗らなかったので、尊重してくださったんだと思います。歩夢さんはそういう方ですよね」

侑「…そうだね。私から聞いたならまだしも、人の秘密を勝手に話しちゃうような子じゃないもんね」
 
243:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 09:34:59.68 ID:8VQsNYZI
侑「スクールアイドルで芸名を使う人って多いの?」

菜々「あまりいないと思いますよ。高校の名前を背負って活動するスタンスが強いので、プロのアイドルや芸能人より身近感を出す意味があるのかもしれません」

侑「菜々ちゃんが芸名を使ってるのはどうして?」

菜々「そうですね…」

菜々「実は、両親に話していないんですよ。スクールアイドルとして活動していることを」

侑「えっ!?」

菜々「できるだけ両親の情報網に触れないようにと苦肉の策で、というのが、だから理由ですね」

侑「よ、よくバレずに今まで来れたね…」

菜々「毎日が冷や汗モノですよ」

侑「度胸あるなぁ」
 
244:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 09:41:11.52 ID:8VQsNYZI
侑「…それで、私がこんなことを言い出したそもそもの話なんだけど」

菜々「わかってます」

菜々「同好会のことを、気にしてくださっているんですよね」

侑「…うん」

侑「私が余計に掻き回しちゃったってことはわかってるし、歩夢にもこれ以上無責任に踏み込んじゃだめって言われたんだけど」

侑「かすみんと彼方ちゃんのこととか、ライブのこととか、色々…どうしても気になっちゃって…」

菜々「………せっかく勇気を出して聞いてくださったのですから、その話をすることにしましょうか。時間はたっぷりありますし──」


菜々「──考え事をしたまま閏都市学園を観てほしくありませんし、ね」ニコ…


菜々が泊まりにきました! ▼
 
248:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 19:32:02.84 ID:8VQsNYZI
変わらず、侑の部屋


菜々「大まかに事態を言い表すならば、先日の一件から好転したことはありません」

侑「…!」

菜々「歌える曲は増えていませんし、部員同士の雰囲気も決していいとは言えない。正直なところ、直近のライブを開催することすら危ぶまれる状態です」

侑「ちょ…直近のライブって、いつなの?」

菜々「来週の日曜日です。31日ですね」

菜々「ライブステージの使用許可が取れたことが、こうなってはむしろ逆風にすらなりました。これでライブを開催できなければ、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会として同じステージを使わせてもらうことは今後ほぼ不可能になるでしょう」

侑「そんな…」

菜々「告知をまだ打っていなかったことだけは不幸中の幸いと言えますか。そもそも31日にライブの予定があることは、部員以外まだ誰も知りませんから」
 
249:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 19:34:57.68 ID:8VQsNYZI
侑「…っ」

菜々「侑さんが気にされていることは、これで回答になりましたか?」

侑「……なったよ。なった」

侑「なった、けど…」


なったけど、聞きたかったことは聞けたけど、だからなんなの?

歌える曲は増えてない。

部の雰囲気はよくない。

ライブができるかも怪しい──今回だけじゃなくて、もしかしたら今後も。

そんなたくさんの問題を改めて知って、

だから──なんなの?
 
250:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 19:37:15.03 ID:8VQsNYZI
菜々 ジッ

侑「…っ」

菜々「…侑さんが気にしてくださることはありがたく思っています」

菜々「ですが、部のことで私達が侑さんに頼ることは、ありません」

侑「……!!」ハッ…
 
251:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 19:43:02.26 ID:8VQsNYZI
菜々「虹ヶ咲学園に部、あるいは部に準ずる組織がいくつあるか知っていますか?」

侑「えっと…百は超えるって、聞いた…と、思う」

菜々「そうですね」

菜々「正確には、部が四十七。部に準ずる組織、つまり同好会が百九。合わせて百五十六です」

侑「そんなにあるんだ…」

菜々「人数にすると、延べ千二百人を超える生徒が部か同好会に所属しています」

菜々「スクールアイドル同好会以外に、部や同好会に所属しているご友人はいますか?」

侑「演劇部の知り合いが、いるけど…」

菜々「演劇部ですか。いいですね」コク
 
252:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 19:49:39.38 ID:8VQsNYZI
菜々「演劇部も部に昇格してからそれなりの年数が経過していて、毎年七~八名の新入部員を獲得しているみたいです。虹ヶ咲学園の代表的な部の一つですね」

菜々「他にも運動部、文化部、同好会──」

菜々「本当に様々な才能や興味を持った生徒がたくさんいて、それぞれが活気に溢れる毎日を送っていて、これぞ虹ヶ咲学園といった風景が毎日見られます。私は幸せですよ」

菜々「ですが、それだけの人間が各々やりたいことをし、やりたくないことを避けていれば、必然すれ違いや諍いは起こります。生徒会にも大小問わずに絶えず生徒の声が届いているんです」

菜々「その全てに向き合うことが、侑さんにできますか?」

侑「──…!」
 
253:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 19:57:02.62 ID:8VQsNYZI
侑「それ、は…できないよ…」

菜々「そうでしょう。そんなことは、七人で組織された生徒会ですらできません。重要性や緊急性が高いと判断した案件から順番に解決にあたってはいますが、全く追いついていないとすら言えます」

菜々「届く声の全てに向き合えない、単純に作業量が足りていない現状もさることながら、『重要性や緊急性』を判断しているのは生徒会の役員です」

菜々「解決すべき期日が明確であったり、より問題が大きくなったときの影響範囲が広かったり、その判断基準は様々ですが、当事者達にとってみればそんなことは関係ありませんよね」

菜々「私達にとって百件のうちの一件でも、本人にとっては一件きりの超重要案件です」

菜々「全ての生徒が学園生活を一つの不満もなく伸び伸びと満喫してくれるならそれに勝ることはありませんが、そんなことはどうしても不可能です。人と人が関わり合う限り、必ずわかり合えないタイミングというのは訪れるものですから」
 
254:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 20:02:51.44 ID:8VQsNYZI
菜々「なぜそんな話を、と思っていますか?」

侑「…えっと…」

菜々「侑さんがやろうとしているのはこれと同じことだと、私は思うからですよ」

侑「…!」

菜々「侑さんの気持ちを考えない言い方になってしまうことは、あらかじめ謝ります」

菜々「ですが、侑さんにとってスクールアイドル同好会の問題はたまたま出会っただけの一件です。たまたまかすみさんや彼方さんと面識があって、たまたま起こっている問題を知って、たまたまそれが表面化する瞬間に立ち会ってしまっただけですよ」

侑「そ、そうかもしれないけど…でもそのたまたまだって、私のことだよ!私の友達が抱えてる、私の問題だと思うのは間違ってる!?」

菜々「その『たまたまの一件』が侑さん自身の問題になるとすれば、それはあなたが当事者になる覚悟を決めたときです」

侑「当事者、に…」
 
255:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 20:09:16.73 ID:8VQsNYZI
菜々「私達の問題が私達の問題なのは、それがスクールアイドル同好会で起こっていて、私達がスクールアイドル同好会の一員だからです」

菜々「スクールアイドル同好会の一員でない侑さんは、どれだけ親身になったとしても、部外者なんですよ」

侑「ぁ…」

菜々「…例えば、あなたに部外者のままこの問題の解決に奔走してもらったとしましょう」

菜々「その途中で演劇部でも同じような問題が起こったら、どうしますか?続いてご友人が所属する他の部で、さらに他の部で、同じことが連発したらどうしますか?」

菜々「侑さんがその全ての当事者であれば、全てを自分の責任のもとで解決にあたる責任があります。ですが反対にその全ての部外者である侑さんには、いつでも全てを投げ出す権利があるんです」

菜々「…かすみさんが懸念したのは、そういうことだと思いますよ」


──かすみ「一つお願いしたら、きっと次も、次も、ってなりますよ。責任のない相手を予定に入れて考えるようになるのは危険です」


侑「………」
 
256:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 20:16:23.53 ID:8VQsNYZI
菜々「私達のことを心配して声をかけてくださったことには、本当に感謝しています。その上で、大変失礼な言葉をたくさん言ってしまったことを改めて心からお詫びいたします」ペコ…

菜々「全てを円満に解決してみせます、とは、なかなか言えないところですが」

菜々「なんとか最善の形に落ち着けられるよう、頑張るつもりでいます」

菜々「かすみさんやエマさんのファンだと言ってくれたのだと聞いています。その気持ちを裏切りたくないと、部員の全員が考えているんです」

菜々「結成したばかりでまだまだ不安定な私達ですが、どうか応援して、愛してくださると嬉しいです──」


そう言って深く頭を下げた菜々ちゃん──せつ菜さんに、私は小さく「はい」と声を捻り出すのが精いっぱいだった。
 
257:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 20:23:53.97 ID:8VQsNYZI
菜々「さ!暗い話はこれくらいにしましょう!」パン

侑「菜々ちゃん…」

菜々「もう、そんな顔をしないでくださいよ。かすみさんや彼方さんとは同好会と関係なく仲がいいんですよね?あまり身構えず、以前と同じように接してあげてください。こんなことで繋がりを失ってしまうのはとても悲しいことです」

侑「…うん、そうだよね」

菜々「そうですよ。私だってスクールアイドルの優木せつ菜ですが、同時に中川菜々です。侑さんとはこれからも仲良くさせてほしいと思っていますが、それすらも許してくれませんか?」

侑「そ…そんなことないよ!私だって菜々ちゃんと仲良くしてたい!」

菜々「だったらそれで充分じゃないですか」ニコッ

菜々「さあ、もう一つ話しておかなければならないことがありますよね。その話も今してしまいましょう」

侑「あ、はんぺんのこと…?」

菜々「そうです!」
 
258:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 20:26:00.45 ID:8VQsNYZI
菜々「こちらは朗報ですよ。端的に言って、はんぺんちゃんのことは不問となりました」

侑「不問?って、」

菜々「校内にいてはいけないとは言わないし、もちろん追い出すというようなこともない、ということです!」

侑「ほ…ほんと!?」

菜々「はい」
 
259:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 20:31:29.40 ID:8VQsNYZI
菜々「少し難しいのは、生徒会の総意として『はんぺんちゃんの存在を認める』のとは違うという点でしょうか」

侑「どういうこと?」

菜々「様々な意見が交わされたのですが、落ち着いたのは『はんぺんちゃんは校則とは関係がない』という結論です」

菜々「条文に特定の明記がないのを理由にはんぺんちゃんも例の校則の対象になると見なすべき、との声が途中まではかなり強かったのですが、そもそも論に立ち返って考えてみたんです」

菜々「はんぺんちゃんが校内にいることは、誰が校則違反を犯したことになるのか?と」

侑「誰が…?」
 
260:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 20:36:00.54 ID:8VQsNYZI
菜々「規則というのは、組織が組織たる秩序を保つために構成する人員へ課すものです。虹ヶ咲学園の校則は虹ヶ咲学園がその秩序を保つために定められたもので、課され守るべきはもちろん虹ヶ咲学園の生徒達ですよね」

侑「うん」

菜々「でははんぺんちゃんが学園の敷地内に住み着いていることは、誰が──どの生徒が校則違反を犯した結果のことなのか?ということです」

侑「ああ…!」

菜々「答えは、『誰も校則違反を犯してない』ですよね」

菜々「はんぺんちゃんは勝手に住み着いた野生の猫であって誰かが連れ込んだわけではないし、広い目線ではんぺんちゃんが校則違反を犯したかというと、それも違う」

菜々「はんぺんちゃんは動物を放し飼いにしてなどいませんからね」
 
261:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/03(木) 20:42:59.14 ID:8VQsNYZI
菜々「誰かが『飼っている』猫でない以上、はんぺんちゃんは例の校則とは──虹ヶ咲学園で定められたどんな校則とも関係がないんです」

菜々「もちろん、全ての校則を一から確認してそう結論付けました。新たな校則が制定されない限り、これは理論的に覆ることがないと言っていいと思います」

侑「す…すごい!すごいよ、菜々ちゃん!私だったら絶対に出てこない考えだ。きっと諦めちゃってたよ…」

菜々「苦肉の策でした。あのままでははんぺんちゃんを追い出さなければならないという結論に至りそうだったので、なんとか理屈を生み出したという感じです」

侑「それ、さらに他の人達から反論は出なかったの?」

菜々「ふっ…愚問ですね、侑さん」

侑「え?」

菜々「私がこれを唱えたとき、誰一人として反論する人はいませんでしたよ。むしろ全員が前のめりに賛同の意思を示してくれたほどです」

侑「そ、そうなの…?」

菜々「当然でしょう。だって──可愛い白猫を追い出したいと本気で思っている役員なんて、一人もいなかったんですから!」


せつ菜および菜々と色々な話をしました! ▼
 
270:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/04(金) 07:55:01.71 ID:MR4o79y5
翌朝…


ユラユラユラッ


侑「…!?」バッ

菜々「侑さん!おはようございます!」

侑「い、今なんか揺れなかった!?地震かな!?」

菜々「?」

菜々「いえ、揺れてないと思いますが」

菜々「それよりも早く起きてください、閏都市学園を観るんでしょう!?」ユサユサ

侑「…」ユラユラ

侑「あー…菜々ちゃん。起きたから。ね?もう揺すらなくていいよ」

菜々「おはようございます!」ペカー

侑「おはよう」
 
271:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/04(金) 08:02:13.78 ID:MR4o79y5
結局、昨日はあれからもなんだかんだお喋りしたりしているうちに菜々ちゃんの就寝時刻を迎えてしまった(結構早い)。

お泊まり中にも課題に取り組む姿勢とか寝る時間が変わらないのはすごいというか、私みたいな適当な感覚からすると驚くけど、それも菜々ちゃんらしさだよね。

まあ、電気を消して布団に入ってもお互いなかなか寝付かずに一時間くらいは話してたような感じがするんだけど。

…はんぺんのことはよかったとして、せつ菜さんとの話は堪えたなぁ。

部長のせつ菜さんとああしてきっちり話がついた以上、もう私が同好会の問題に関与することはきっとない。それこそ入部でもしない限りは。

でも、かすみん達との個人的な繋がりまでなくなるわけじゃない、って言われてはっとした。

そうだよね。

かすみんも彼方ちゃんも友達だし、エマ先輩ともまだまだたくさんお話ししたいもん。

しょんぼりするばっかりじゃ大事なものをみんな見失っちゃう。

前を向こうよ、私!
 
272:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/04(金) 08:06:14.34 ID:MR4o79y5
侑「菜々ちゃん、朝ごはんはパン派?ごはん派?」

菜々「私はどちらでも。家ではごはん食のことがほとんどですね」

侑「じゃあ今日はパン食べよっか」

菜々「そ、そんな風に決められるものなんですか?侑さんのお家、朝ごはんはビュッフェスタイル…!?」

侑「いや、ビュッフェスタイルではないよ」ノン
 
273:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/04(金) 08:11:18.61 ID:MR4o79y5
侑「なに飲む?牛乳、コーヒー、紅茶くらいだけど」カチャカチャ…

菜々「牛乳を飲みたいです。ごはん食中心なのであまり飲む機会がないんですよ」

侑「おっけー」

菜々「あまりお気遣いなく、それくらい自分でやりますよ」

侑「いいのいいの、お客さんなんだからゆっくりしてて!」

菜々「ですが…」

侑「あ、それじゃパン焼いてほしいな」

菜々「!」パァ

侑「オーブントースターの使い方、わかる?」

菜々「わ…わかりますよ!誰あろうこの中川菜々ですよ!?」

侑「あはは、どこの界隈で有名なの?」

菜々「朝食界隈ですかね!」ムフー
 
274:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/04(金) 08:19:14.19 ID:MR4o79y5
黒塊(原材料:ロールパン) デデドン


侑「ほう…」

菜々「期待よりも火が通ってしまいました」

侑「菜々ちゃん、オーブントースターの使い方…」

菜々「わ、わかりましたよ!使い方はわかりました!」

菜々「ですがその、『パン:2-3分』と表に書いてあって、マイナス一分をどう測るか考えているうちに…時間が…」

侑「魔法使いかな?」

菜々「すみません、パンをだめにしてしまって…」シュン

侑「平気平気、ロールパンは表が焦げちゃっても剥がせば中が無事だったりするから。スプーンでこうやってね」コンコン ペキペキ…

菜々「そ、そんな特殊技能が…!」

侑「魔法使いだからね、私」コンコン…
 
275:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/04(金) 08:23:11.89 ID:MR4o79y5
ガチャ…


侑「あ、お父さんおはよう」

高咲父「んー、おはよう侑…」

菜々「!」

侑「お母さんから聞いてると思うけど、昨日から泊まってる菜々ちゃん」

高咲父「お…」

菜々「おはようございます、中川菜々といいます!侑さんには日頃からお世話になっていて、昨晩からお邪魔しています!」ペコッ

侑「お世話になってるのは私の方だって~」

高咲父「これはこれは丁寧に、侑の父です。普段から侑が甘えっ放しだそうで」ペコ…

侑「そんなこと言ったの誰!?お母さん!?」

高咲父「侑も今自分で同じこと言っただろう」

侑「自分で言うのとお父さんに言われるのとじゃ全然違うよー!」

菜々「…ふふっ」クス
 
276:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/04(金) 08:28:20.42 ID:MR4o79y5
高咲父「歩夢ちゃんといい菜々ちゃんといい、侑はしっかりしたお友達が多いな」

菜々「いえ、私など全然」

侑「しずくちゃんの話もしたよね?しずくちゃんも一年生なのにすごくしっかりしてるんだよ!」

高咲父「しっかりした子ばっかりじゃないか!どうしたんだ!」

菜々「ひとえに侑さんの人柄のおかげだと思います。みんな周りに集まりたくなるんですよ」

侑「えへへ…そんなことないよ~」テレ…

高咲父「侑が抜けてるから、お世話しにしっかりした子が集まるということだね」フム

侑「だね、じゃないよ」

菜々「──……!」ピーン

侑「菜々ちゃん?なにに気づいたのかな?」

菜々「い、いえなにも!」アセ
 
277:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/04(金) 08:31:28.47 ID:MR4o79y5
高咲父「ごちそうさま」

侑「片づけとくからお仕事の準備してなよ」

高咲父「そうか?悪いな、ありがとう」

菜々「お仕事なんですね。いつもお疲れ様です」

高咲父「!!」

高咲父「…侑」

侑「なに?」

高咲父「菜々ちゃんはすごくいい子だな。大切にしなさい」ポン…

侑「わかってるわかってる、言われなくても充分大切な相手だから、早くお仕事行って」

高咲父「ゆうぅ~…!」
 
278:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/04(金) 08:35:30.38 ID:MR4o79y5
侑 カチャカチャ… (洗い物中)

菜々 ウロウロ…

侑「どうしたの?笑」

菜々「なにかお手伝いできることがないかと、でも特に思い浮かばず、かと言ってただ座って待っているのも…」

侑「え~、ゆっくりしてていいよって言ったのに。菜々ちゃんって気ぃ遣いだね」フフ

菜々「お…落ち着かないものですよ!」

侑「こっちあと流すだけだから、拭いてもらってもいい?」

菜々「は…はいっ!」パァ

侑「布巾はね、こう…拡げて、お皿を挟むように持って、水気を…」

菜々「さ──さすがに布巾は大丈夫ですよ!!」//
 
279:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/04(金) 08:37:58.42 ID:MR4o79y5
お皿達 ピカピカ…


侑「無事だ」

菜々「もうっ、侑さんひどいです!」ポコポコ

侑「あはは、ごめんってば~」

菜々「オーブントースターだって何度か練習すれば侑さんより上手く使いこなしてみせますもん!」ムーッ

侑 (そういう器具だっけな?)

侑「…じゃ、お待ちかねのイベントに移ろっか」ニッ

菜々「!」
 
280:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/04(金) 08:43:02.07 ID:MR4o79y5
『閏都市学園』 バーン


~♪(壮大なBGM)


菜々「うおおおおおっ、始まりましたァ!!」

侑「うわー、絵すっごくキレイだね!」


~♪(優雅なBGM)


侑「あれ?こんな感じだったっけ」

菜々「最近はアニメ化に際して原作から時系列や展開の順序を変えることも多いんですよ。このアニメはそのタイプですね!」

侑「へ~」


~♪(悲しげなBGM)


菜々「ゆ、ユキトぉ……っ!」グ…

侑「わかっててもつらくなっちゃうなぁ…」ギュ
 
281:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/04(金) 08:50:45.69 ID:MR4o79y5
『次回、閏都市学園第四話。「最低限の体温」』


侑「もう三話も観ちゃった…」

菜々「まずいですね、再生する手を止めることができません」ポチ


ウィーン パッ サッ ウィィ…


侑「ディスクを入れ替える作業が滑らか過ぎるよ、菜々ちゃん」

菜々「次の話が一つの山場ですね」

侑「そうなの?一巻もここまでだったから、未知の世界だな」

菜々「ネタバレにならない程度にお話しすると、この作品、原作はノベルなんです。ライトノベルですね」

侑「うんうん」
 
282:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/04(金) 08:55:33.88 ID:MR4o79y5
菜々「ライトノベル作品の特徴として、第一巻は次巻に続くことなく一旦の完結となることが大半なんです」

侑「そうなんだ」

菜々「加えて、ライトノベル作品をアニメ化するとなると、だいたい三~四巻分を1クールに収めるのが主流です」

菜々「このことから、ライトノベル作品のアニメは第四話で原作第一巻のラストを迎えることがとても多いように私は感じるんですよ」

侑「おー、なるほど」

菜々「ライトノベル原作のアニメを観る際にはそういう構成を意識してみるのもおもしろ


『これ以上おれからなにも奪うな!!』


侑 (あっ始まったから言葉止まった)

侑 (とりあえず集中して観よう)
 
283:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/04(金) 09:01:03.81 ID:MR4o79y5
『次回、閏都市学園第十二話。「崩れる決意」』


菜々 ポチ


ウィーン パッ…  ガシッ


菜々「!?」

侑「ストップ、菜々ちゃん」

菜々「な、なぜ止めるんですか!放してください!このままではユキトが──ユキトが──」

侑「一旦お昼ごはんにしない!?」

菜々「────」ハタ…


菜々「──いりますか?お昼ごはん──」


侑「いるよ。今かどうかじゃないの?もはや根本の疑問になるの?」
 
284:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/04(金) 09:04:47.95 ID:MR4o79y5
侑「あ、お母さん。お昼なんか作る?」

高咲母「そうねぇ、ピラフでよければ作ろうか?」

侑「うん!ありがとう」

高咲母「はいはい。菜々ちゃん、ピラフ好き?」

菜々「はい、好きです」

高咲母「じゃ気合い入れて作ろうかな」ヨイショ

侑「私も好きなんですけどー」

高咲母「知ってまーす」

侑「むー」

菜々「ふふふ…侑さんは、本当にご家族と仲がいいですね」

侑「え、そう?普通じゃない?」

菜々「いえいえ。高校生ともなると照れ臭さから冷たく接してしまう人も多いと聞きますよ。かく言う私も恥ずかしながらそう振る舞ってしまうこともあるので、とても羨ましく感じます」

侑「そ…そうかなぁ」ヘヘ
 
285:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/04(金) 09:12:24.45 ID:MR4o79y5
菜々「美味しいです!」ペカー

高咲母「あら可愛い」

菜々「…っ」// ササッ

高咲母 (あら可愛い)

侑「昨日はまだ緊張してたもんね」

菜々「は、はい…今朝はやっとお父様にもご挨拶できましたし、少し心に余裕が出てきたというか」

高咲母「そう、挨拶できてないのが気になってたのね。ごめんね、気を遣わせちゃったわね」

菜々「そんな、お母様が謝ることでは…!」

侑「緊張がほぐれたの、閏都市学園観て興奮したからでしょ?」

菜々「ゆ…侑さん!」//

高咲母「朝から楽しそうだったものねぇ」クス
 
286:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/04(金) 09:17:14.06 ID:MR4o79y5
高咲母「菜々ちゃん、話し方とても丁寧よね」

菜々「そうですか?」

高咲母「二年生でしょ?同じ学年なのに侑にも敬語で話して、さんを付けて呼んでるんだもの。どんな相手にも礼儀を持って接するのはすごくいいことだけどね」

侑「なんか、最初からこうだったからかな?慣れちゃった。歩夢にもそうだもんね」

高咲母「あだ名で呼んだり呼び捨てにしたりするお友達はいる?」

菜々「いない…と思います」

侑「一年生にも同じだもんね」

菜々「はい」

高咲母「へぇ…」
 
287:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/04(金) 09:21:39.31 ID:MR4o79y5
高咲母「ねえ菜々ちゃん、侑のこと呼び捨てで呼んでみて」

菜々「えっ!?」

侑「!?」

菜々「な、なぜですか!?」

高咲母「もっと侑と仲良くなってほしいから、かな。ねえねえ、呼んでみて」

菜々「ななな……っ」アワワ

侑「お…お母さん、あんまり菜々ちゃんに無茶なこと言わないでよ!」

高咲母「えー」

高咲母「でも、私のピラフ美味しかったもんね?」

菜々「!!」

侑「お母さん!」
 
288:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/04(金) 09:25:26.95 ID:MR4o79y5
侑「もー…すぐ変なこと言うんだから…菜々ちゃん、気にしなくていいからね。お母さんのピラフはいつでも美味しいから気にしないで」

菜々「…」

侑「菜々ちゃん?あれ、恥ずかしくてショートしちゃった…?」

侑「菜々ちゃーん…」

菜々 スッ

侑「ぉ」

高咲母 (お)

菜々 クルッ

侑「赤くなっちゃってるじゃん、お母さんのせいだからね──」


菜々「侑」
 
289:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/04(金) 09:26:51.86 ID:MR4o79y5
侑「」


侑「…?」


侑「」


侑「……?」


侑「ュ…」


侑「………?」
 
290:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/04(金) 09:29:10.59 ID:MR4o79y5
侑「ュゥ、菜々ちゃん、ん?なに、今、ピラフ、よくわかんなかった、けど」

侑「菜々ちゃん、なにか、言った?」

菜々「いつもお話ししてくださってありがとうございます。これからも私と仲良くしてもらえると嬉しいです」

菜々「侑」

侑「」

菜々 …………////

高咲母 ニマニマ…
 
292:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/04(金) 09:33:03.27 ID:MR4o79y5
侑「お」

侑「かーーーーさんが!変なこと言うから!!」

高咲母「わあ、我に返った」

侑「菜々ちゃんが変になっちゃったじゃん!!」

菜々 …//

高咲母「変なんて失礼な言い方しないの。嬉しかったでしょ?」

侑「う!!」

侑「…れ、し、かった…けどさ……」//

菜々「…!」//

高咲母「これからは菜々ちゃん、侑のこと呼び捨てしてあげてね」

菜々「い、今っきりじゃないんですか!?」

高咲母「んー、呼び捨てからさん付けに戻ったら距離が開いたみたいで寂しい感じしないかなぁ」

菜々「そ、それはいけません…!」ハッ

侑「いけなくない!いけなくないよ菜々ちゃん!私のことは気にしなくていいから!」
 
293:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/04(金) 09:36:39.82 ID:MR4o79y5
菜々「いえ。これもなにかの縁ですから」

菜々「これからは侑さんのことを、侑と!呼び捨てで呼ばせてもらいます!」

侑「な、菜々ちゃあん……」

侑「そういうの、ほら、抵抗ないの?みんなに同じように接してるのに、私だけとか、ほら」

菜々「抵抗や思うところがないと言えば嘘になりますが、私は侑が言った『嬉しかった』という言葉を信じます。その気持ちを信じたいんです」

侑「うう…もうすでに会話の中で自然に呼ぶぅ……」//

高咲母「よきかなよきかな」ウンウン
 
294:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/04(金) 09:40:14.72 ID:MR4o79y5
侑 (私、家族とか親戚以外に呼び捨てされたことなんか…)

侑 (ああ、果林先輩だけは呼び捨てで呼んでくれるけど、それはキャラがキャラっていうか……菜々ちゃんに呼び捨てされるのは、なんていうかこう、破壊力みたいなものが…)

侑「ううぅ……」

菜々「あまり気にしないでください。照れ臭いのはお互い様ですが、すぐに慣れるはずです」ポン

侑「菜々ちゃんは前向きだね!」


前を向こうよ、私!………なのかなぁ…


菜々とアニメを観たりして過ごしました! ▼
 
308:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/06(日) 12:33:38.83 ID:newA9xS9
翌朝…


歩夢「かわっこいい…!」ハワワ

侑「え、どっち?可愛い?かっこいい?」

歩夢「どっちも!一言で言い表せないんだもん!」

侑「ま、まあ…普段の私からは相当考えられないくらいのオシャレだよね…」

歩夢 カシャカシャ

侑「な──なんで撮ってるの!?」

歩夢「果林先輩に送ってあげるって言ったでしょ」カシャカシャ

侑「あ、そうだった…」

侑「って違うよ!それ今日のコーディネートの話でしょ!?果林先輩に選んでもらった服なんだから、これは送らないよね!?」

歩夢「バレちゃった」カシャカシャ

侑「何枚撮るの!?」
 
309:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/06(日) 12:40:30.03 ID:newA9xS9
歩夢「ふう…」ツヤツヤ

侑「卒業式より写真撮られた…」グッタリ

歩夢「さ、侑ちゃん。お買い物行こっか」

侑「私もう充分頑張ったよ、歩夢。この後また歩夢がコーディネートしてくれた服で写真撮るんだよね?お手柔らかにね…」

歩夢「侑ちゃんがかわっこよくなかったらそれもできるんだけどな」ウーン…

侑「それ私知らない感覚だよ…」

歩夢「着替えよっか。脱ぎ着しやすいようにシンプルな格好でね」

侑「はーい。…てっきり歩夢、この格好のままって言い出すかと思ったよ。肩肘張っちゃうから気楽な格好に着替えさせてもらえる方が助かるけどね」

歩夢「その素敵な侑ちゃんと歩きたい気持ちはあるの。あるけど、私が選んであげた服じゃないから…」

侑 (おっと、あんまり触れない方がよさそうな部分だ。着替えよ) ササッ
 
311:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/06(日) 12:44:23.01 ID:newA9xS9
侑「こんなもんかな」

歩夢「シンプルないつもの侑ちゃんスタイルだね」

侑「スタイルっていうのもおこがましいくらいだけどね」

歩夢「うふふ。コーディネートしがいがあるよ」

侑「お待たせ、行こっか」

歩夢「うん」
 
312:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/06(日) 12:48:21.91 ID:newA9xS9
侑「昨日はどんな風に過ごしたの?」

歩夢「課題やったり、お部屋の片づけをしたり…かな。あんまり集中できなかったけどね」

侑「え、どうかしたの?考え事とか?」

歩夢 ジッ…

侑「?」

歩夢「隣のお家から、大きなアニメの音とか賑やかな笑い声がずっと聞こえてたので」

侑「あっ…」
 
313:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/06(日) 12:55:01.00 ID:newA9xS9
歩夢「結構早い時間から一緒だったんだね。アニメ観る約束だったの?」

侑「う、うん。菜々ちゃんオススメのアニメのブルーレイボックスが出てさ、それを一緒に観ようってことになったんだ」

歩夢「菜々ちゃん、本当にアニメ好きなんだね」

侑「だねー。もう観てる間ずっとテンション高くてさ、普段の菜々ちゃんを知ってる身からするとアニメよりそっちの方が気になっちゃうくらいだったよ」

歩夢「侑ちゃんも同じくらい楽しそうだったよ?」

侑「ぅ」

侑「だ、だってほんとに面白かったし、隣であんなに楽しそうにされるとついこっちも気分が乗っちゃって…」//

歩夢「そんなに面白いなら私も観てみようかな…なんていうアニメ?」

侑「閏都市学園っていうんだけど、ボックスうちにあるからいつでも観れるよ!」

歩夢「どうして侑ちゃんのお家にあるの?」

侑「」
 
314:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/06(日) 12:57:54.53 ID:newA9xS9
歩夢「随分信頼されてるんだねー」スタスタ

侑「歩夢、待って歩夢。なんか歩くの速くなった」

歩夢「私も侑ちゃんにきなこ預けようかな」

侑「え、きなこを…?」

歩夢「いやそう」ジーッ

侑「そっそんなことないよ!」

歩夢「菜々ちゃんのアニメは預かるのに、私のマンガは預かってくれないんだ」

侑「菜々ちゃんはほら、お家の事情が…」

歩夢「私の家もきなこ禁止だもん!」

侑「そうだっけ!?」
 
315:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/06(日) 13:01:12.49 ID:newA9xS9
商業エリア


歩夢「さ!始めよっか」

侑「気合い入ってるね」

歩夢「だって侑ちゃんのコーディネートだよ?本気で臨まなくちゃ!」

侑「そこまで本気にならなくても…」

歩夢「侑ちゃんはわくわくしないの?」

侑「え?」

歩夢「私を、侑ちゃんだけの好きにできるんだよ。可愛く、かっこよく、ポップにも、シックにも──今日は侑ちゃんだけの私だよ?」

侑 ドキッ…

侑「そ、そうだね!そう言われると、うん、なんか楽しみになってきたかも!張り切っていこう!」

歩夢「おーっ♪」
 
316:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/06(日) 13:13:00.52 ID:newA9xS9
帽子のショップ


歩夢「どうして最初に来るのが帽子のお店なの?」

侑「んっとねー」キョロ

侑「あ、これ!歩夢にかぶってみてほしかったんだよね!」ヒョイ

歩夢「麦わら帽子?」

侑「うん。私は似合わないと思うんだけどさ、こういうザ・女の子!って感じのアイテム、歩夢が一番似合うと思うんだよね!はい、かぶってかぶって」

歩夢「え、ええ~…そんな言い方されると恥ずかしくなるよぉ…」

侑「あれ~?今日はお互いにコーディネートし合う日でしたよね?」

歩夢「む…むーっ!」

歩夢「わかった、侑ちゃんがその気なら覚悟しておいてよね!私だっていっぱい可愛いもの試してもらうんだから!貸して!」ヒョイ カブリ

歩夢「…どう?」

侑「かわいーっ!やっぱり似合うよ歩夢!まず帽子はこれにしよっか!」

歩夢「き、決めちゃうの早くない!?」
 
317:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/06(日) 13:15:54.87 ID:newA9xS9
歩夢「だいたい、似合わないと思うなんて言ったけど、侑ちゃんだって絶対似合うよ」

侑「いやあ、麦わら帽子って背が高くてすらっとした感じの人にしか合わないじゃん。私ちっこいし」

歩夢「それじゃ背が高くなくても合う麦わら帽子にしたらいいんだよ」

侑「そんなのあるの?」

歩夢「こっちの棚とか──」

侑「歩夢。そっちの棚はキッズファッションだよ」
 
318:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/06(日) 13:21:41.05 ID:newA9xS9
侑「そもそも私さ、ツインテールが邪魔であんまり帽子深くかぶれないんだよね」

歩夢「それは髪型を変えたらいいんじゃないかな」

侑「髪型考えたりセットしたりするの苦手だからさ」

歩夢「侑ちゃんは長さもちょうどいいし、そのままおろして流し方だけ少し整えるだけで特別にセットしなくてもいいと思うよ」

侑「そうなの?」

歩夢「うん。例えば、ほどくね」シュル

歩夢「前髪とかこっちに流してみて、後ろはそのまま…」クシクシ

歩夢「ほら、どう?今は結んでたクセがついちゃってるけど、朝から結ばなかったらつかないし。クセついちゃってるのも可愛いけどね」

侑「おー、こんなもんでいいんだ」
 
319:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/06(日) 13:29:44.61 ID:newA9xS9
歩夢「これだったらむしろ帽子でアクセントをつけてあげた方がファッションとしてはまとまるくらいじゃない?」

侑「歩夢に言われたらそんな気がしてきた…!」

歩夢「お客様、気になる帽子はございますか?」

侑「えー。キャスケットとかかなぁ。たまに見かけて可愛いなーって思うんだよね」

歩夢「キャスケットだったら…これとか」ヒョイ

侑「よ」ポス

侑「どう?」

歩夢「百点。これ買おっか」

侑「き、決めちゃうの早くない!?」

歩夢「大丈夫、大丈夫だから。私が買ってあげるからね」

侑「いいよ買ってくれなくて!お年玉持ってきたりしてないよね!?」

歩夢「………大丈夫だからね」

侑「歩夢さん!?」
 
320:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/06(日) 13:39:23.00 ID:newA9xS9
シューズショップ


歩夢「オシャレは足元からって言うもんね」

侑「あれ、歩夢その靴なに?初めて見たかも」

歩夢「あー、今さら気づいたの?この前新しく買ったんだよ。いいでしょ」

侑「うん、可愛いね」

歩夢「…普段よく履いてるやつと、どっちがいい?」

侑「え、どうだろう。あれも可愛いよね」

歩夢「……わかった。侑ちゃん、靴にあんまり興味ないでしょ」

侑 ギクッ!

侑「だ、だって…靴ってよくわかんないんだもん…」

侑「でもそれもいつものやつも可愛いなって思ってるのはほんとだよ!」

歩夢「ふーん…それなら許します」

侑「許されたぁ…」ホッ
 
321:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/06(日) 13:44:09.96 ID:newA9xS9
侑「あはは、見て見て歩夢!ローファーあるよ!学校みたいだね」

歩夢「…侑ちゃん、ローファーも定番のシューズアイテムだよ」

侑「うそぉっ!?」ガーンッ

歩夢「これから暖かくなるからシンプルなのが多いみたいだけど、冬頃には内側にファーがあるやつとかも出るんだよ。こっちのなんか軽いヒールがついてたり、ブーツとハーフタイプのもあるね」

侑「ろ、ローファーを…私服で履くんだ…」

歩夢「果林先輩といるときに言わなくてよかったね」

侑「笑われちゃうところだったよ~……」//
 
322:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/06(日) 13:50:11.55 ID:newA9xS9
侑「よく歩き回るから、靴はヒールとかブーツよりスニーカーの方がいいかなー」

歩夢「そうだね。ブーツも軽くて歩きやすいやつがたくさん出てはいるけど、高校生のうちは私もスニーカーがやっぱり一番気楽かも」

侑「今日、靴も買う?」

歩夢「うーん…お洋服の方を優先して、合わせたいのがあったらって感じかな?」

侑「ん、じゃそうしよっか。歩夢買ったばっかりだしね」

歩夢「今日行くのわかってたら買わなかったのに…」

侑「あはは、そんな言い方しちゃ可哀想だよ。それもすごく可愛いし似合ってるじゃん」

歩夢「そ、そう?えへへ…」
 
323:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/06(日) 13:58:32.66 ID:newA9xS9
レディースショップ


歩夢「もうサマーニットとか出てるんだね」

侑「ニットかぁ。これ中にシャツとか着なきゃいけないの?」

歩夢「そうしないと下着見えちゃうじゃない」

侑「そうなんだ。夏にニットと何枚も着るの暑そうだなーと思って」

歩夢「そのために透けてるんだよ。かなり薄く編んであるし風通しもいいから、着心地いいみたいだよ」

侑「へ~、タンクトップとかでいいなら楽かなぁ」

歩夢「タンクトップも合うんじゃない?ニットの色を明るめにしてインナーを落ち着いた色にすれば邪魔しないと思うよ」

侑「私、黒がいい!」

歩夢「侑ちゃんにはもっと可愛い色を着てほしいなぁ」
 
324:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/06(日) 14:05:36.72 ID:newA9xS9
侑「結構薄めの色が多いなー。ぱっと明るい服着るの苦手だから助かるけど……ん?」

歩夢 ジッ…

侑「気になるの?」ヒョコ

歩夢「えっ!?あ、ううん別に──」

侑「隠さなくたっていいじゃん。ピンクね、歩夢のイメージ通りだし似合うよ」

歩夢「い、いいよ…そういう子どもっぽい色合いはもう卒業なの!」

侑「せっかく好みがあるんだから、着たい服着ればいいじゃん。私なんかなんとなく派手じゃないのーってくらいしかないのに」

歩夢「う、うん…」

歩夢「でも私も、やっぱりあんまり派手過ぎない方が落ち着くから」

侑「そっかー…」

歩夢「それより侑ちゃん、このスカートとか!ね、似合いそうだよ」サッ

侑「…」
 
325:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/06(日) 14:12:01.62 ID:newA9xS9
試着中…


歩夢「侑ちゃん侑ちゃん、次はこっち!」

侑「ま──まだ着るの!?待って、まだ脱いでないから!」

歩夢「ほらーもう、慌てないの」

侑「歩夢が急かすんじゃ~ん!」

歩夢「だって着てほしいのいっぱいあるんだもん。あ、あそこに飾ってあるのも可愛くない?」

侑「歩夢さん!まだ試着できてないの三つも残ってるんですけど!」

歩夢「侑ちゃん早く!」

侑「む……無茶だぁ~~~っ!」ヒーンッ
 
326:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/06(日) 14:18:41.42 ID:newA9xS9
歩夢 ムム…

侑「ど、どう…?」

歩夢「…うん。やっぱり上半身はそれが一番いい」

侑「そっか、やっと決まったね…」

歩夢「下はさっきの二つ目のやつ合わせたいから、それ買って戻ろっか」

侑「二つ目のやつがどれなのかもう覚えてないけど…お任せします…」

歩夢「お疲れだね」

侑「何回着替えたかわかんないからね…」

歩夢「着てほしいものみんな着てもらったし、似合うのいっぱいあったから迷っちゃったけど──」

歩夢「侑ちゃん、その服、好きな雰囲気でしょ?」

侑「…うん!さすが歩夢だね!」

歩夢「任せて!」ニコッ
 
327:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/06(日) 14:22:06.45 ID:newA9xS9
「ありがとうございましたー」


チーン


侑「これで私の買い物は終わりっと」

侑「それじゃ歩夢の分だね」

歩夢「私まだ一つも買ってないけど、迷い中?」

侑「ううん、実はもう決まってるんだ」

歩夢「そうなの?」

侑「後からやっぱりこっちっていうやつが見つかったらイヤだから買うの後回しにしたんだけど、今まで試着してもらった中でもう決めたよ」

侑「買いに戻ろっか」

歩夢「ちょっぴり緊張するね。どれになったんだろう…」

侑「安心して。私、ファッションとかオシャレのことはそんなに知らないけど──」

侑「歩夢のことなら誰よりもわかってるからさ」
 
328:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/06(日) 14:29:54.55 ID:newA9xS9
潮風公園


二人とものお買い物を終えて、私達は近場の公園に来た。

全身をそれぞれのコーディネートに包んで。

目的は一つ、果林先輩に送る写真を撮るためだ。

天気もいいので自然の中で、ってことになった。
 
329:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/06(日) 14:36:14.62 ID:newA9xS9
歩夢「それじゃ撮るね」

侑「うん!」


私は、上半身は黒のアシメタンクトップにペールピスタチオカラーのシアーシャツ。

下はツートンカラーのデニムスカーチョ。

ついでに爽やかな色のスニーカーと、同色のハンチング帽で合わせている。

本当に歩夢が着せたかったのは明るくて優しいカラフルなコーディネートのはずだけど、私の気持ちを汲んで全体のトーンを抑えめにしてくれた。

私服でスカートを履き慣れていないことにも配慮してくれて、履き心地と見た目のいいとこ取りでスカーチョという選択はさすがだと思う。

「侑ちゃん、すぐに走り出しちゃうから」って笑いながらスニーカーを選んでくれたのには完敗だよ。

もちろん、帽子をかぶるために髪はおろして少しだけ歩夢に整えてもらった。


歩夢「…うん、可愛く撮れたよ」
 
330:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/06(日) 14:43:29.20 ID:newA9xS9
侑「それじゃ次は歩夢の番ね」

歩夢「可愛く撮ってね」


歩夢のは私が選んだ。

上半身はベージュのVネックニットベストと、アウターにデニムジャケット。

下はペールピンクのプリーツスカート。

足元は私とおそろいのスニーカー!

子どもっぽくなるのをイヤがってたから、髪型をハーフアップにしてしっかりした印象になった。

上半身と髪型でかなり落ち着いた雰囲気を出したことで、薄いピンクのロングスカートくらいじゃ子どもっぽさは全然ない。

鏡を見た歩夢の表情で、着心地に抵抗がないこともちゃんとわかった。

最近流行ってる(らしい)ペールカラーと、デニム、スニーカーなんか色違いの同じアイテムで、全体的にテイストを変えながらおそろいになったのもいいよね!


歩夢「…撮れた?」

侑「うん!世界一可愛く撮れたよ!」


もちろん、アイテムの名前は全部歩夢が教えたくれたんだけどね!
 
331:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/06(日) 14:47:40.97 ID:newA9xS9
侑「送信っと」

歩夢「どんな反応かな」

侑「きっと褒めてくれるよ。そんなに似合ってるんだもん」

歩夢「えへへ…侑ちゃんも似合ってるよ」

侑「ありがとう。全然着たことないようなアイテムばっかりなのに、すごく着心地いいよ。歩夢が選んでくれたからかな」

歩夢「だから言ったでしょ、侑ちゃんのことは私が一番わかってるって」

侑「だね」

歩夢「…果林先輩の服と、どう…?」


もじもじと手をいじりながらそんな質問が飛んでくる。

考えるまでもないや。

慣れないファッションの照れ臭さはほんの少しで、新しい季節を迎えたような心地よさ、歩夢とおそろいの安心感。


侑「もちろん、こっちの方がすごく好きだよ!」

歩夢「!」パァ…
 
332:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/06(日) 14:50:32.45 ID:newA9xS9
歩夢「侑ちゃん、せっかくコーディネートしたんだからこのままもう少し遊んで帰ろう?」

侑「賛成!」

侑「でも結構使っちゃったから、控えめにね」

歩夢「…まだお年玉貯金、全然使ってないよ?」

侑「だからそれ使うのナシだってば~!」

歩夢「うふふ、冗談だよ。コッペパンでも買ってきて、お喋りしながら食べよう」

侑「うん!」


歩夢とお買い物に出かけました! ▼
 
339:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/07(月) 07:49:12.39 ID:FtepUuYI
夜…


『果林先輩:遅くなってごめんなさいね』

『果林先輩:いい感じじゃない。歩夢の方もね』


歩夢とたっぷり遊んで帰って、自分の部屋に落ち着いた頃。

ようやく果林先輩からお返事が来た。

よかった、褒めてもらえた!

果林先輩に送った画像を改めて眺めてみる。

うんうん、いい感じだよね。


『果林先輩:私が選んであげた服より似合ってるわね』


お?

これは…


なんて返そう? >>340
1.そんなことないですよ!
2.やっぱりそうですよね!
 
340: (庭) 2020/12/07(月) 07:54:25.03 ID:fZWXyW83
2
 
341:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/07(月) 08:10:41.03 ID:FtepUuYI
『やっぱりそうですよね!』


えへへ…

だってよ、歩夢!


『果林先輩のコーディネートくらい超えてやるー!って意気込んでたんですよ、歩夢』

『果林先輩:私と歩夢じゃ、あなたへの理解が全く違うもの。侑を活かすコーディネートってことなら私が敵うはずもないわ』

『果林先輩が選んでくれた服も好きですよ。あんまり着慣れない系統なので照れちゃいますけど…』

『果林先輩:ふふ、フォローありがとう』

『果林先輩:でも着る側の気持ちまで考えきれなかったのは、純粋に実力不足ね』

『果林先輩:そういう点も含めて今回は歩夢の勝ちよ』


オトナだなぁ、果林先輩は。


果林とラインで話しました! ▼
 
342:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/07(月) 08:20:21.17 ID:FtepUuYI
翌朝…


侑「お待たせ~」タタタ

侑「…あれ!?」

歩夢「どうしたの?侑ちゃん」

侑「歩夢、その髪型…」

歩夢「あ…どう?似合うかな」


はにかむ歩夢、その髪型はいつもの特徴的なお団子じゃなくて、昨日も見たばっかりのハーフアップだった。


侑「似合う似合う、可愛いよ!」

歩夢「うふふ、よかった」

侑「髪型変えてくるの珍しいね。びっくりしちゃったよ」

歩夢「だって侑ちゃんがしてくれたんだもん。ほどくのもったいなくて」

侑「えっ、昨日からそのままなの!?」

歩夢「そんなわけないでしょ。冗談でーす♡」クスッ
 
343:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/07(月) 08:26:30.35 ID:FtepUuYI
お昼休み…


あだ名って不思議だよね。

同じ名前なのにあだ名にされる子もいればされない子もいて、かと思えば全然違うあだ名がついたりもする。

それがキャラクターってことなんだろうけど、高校生になるとなかなか個性的なあだ名を聞かなくなっちゃって、なんだか寂しいなぁ。


お昼はどうしようかな? >>344
1.教室で食べる
2.生徒会室で食べる
3.中庭で食べる
4.食堂で食べる
 
344: (たこやき) 2020/12/07(月) 08:32:33.60 ID:C+Xr096X
3
 
345:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/07(月) 08:38:02.98 ID:FtepUuYI
歩夢「侑ちゃあん!」タタタ

侑「わ、どうしたの歩夢」

歩夢「もー、みんなが面白がって私の髪をいじってくるの。助けて」

優花「よいではないかよいではないか、どういう心境の変化か知らないけども~」ジリジリ

香「写真とらせーい」ジリジリ

歩夢「こ、来ないでぇ」

侑「なにしてるの二人とも。歩夢が怖がっちゃってるじゃん」

優花「だって歩夢がお団子以外の髪型してるの初めて見たよ。なんかあったのかなーってさ」

歩夢「なにもないよぅ…」コソ…

香「ほんとかなー?」

侑「…」
 
346:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/07(月) 08:40:16.12 ID:FtepUuYI
侑「それ以上歩夢の髪いじるの禁止!」サッ

歩夢「ゆ、侑ちゃん…」

侑「いつもと違うから気になるのはわかるけど、そんなにしつこくするのはだめだよ」

香「ぅ…」

優花「…ごめん…」シュン

侑「歩夢、お昼ごはん食べよ。今日は中庭ね」

侑「行こ」ギュ

歩夢「う、うんっ」
 
347:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/07(月) 08:45:09.56 ID:FtepUuYI
歩夢「あの、ありがとう。侑ちゃん」トコトコ…

侑「え、なにが?」トコトコ…

歩夢「髪のこと、庇ってくれて」

侑「ああ」

侑「全然、たいしたことないよ。優花達、悪ノリが過ぎることあるしね」

歩夢「今の侑ちゃん、かっこよかった」

侑「そ…そう?そんなこと、普通だよ、普通」

侑「もういじってこないと思うし、もしまた言われたらすぐに教えてね」

歩夢「うん、ありがとう」

侑 (──なんか)

侑 (イヤだったんだよなぁ、ああいう風に歩夢にされるの…)
 
348:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/07(月) 08:49:20.72 ID:FtepUuYI
中庭


歩夢「いつものとこで食べる?」

侑「そう、だね」キョロ…

侑「…あ」


歩夢と中庭でお昼ごはんを食べるときによく使う木の近く。

二つの影がある。

璃奈ちゃんと──かすみんだ。


侑「…」

歩夢「…?」チラッ

歩夢「ぁ…かすみちゃん達…」
 
349:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/07(月) 08:51:42.92 ID:FtepUuYI
歩夢「別のところに行こっか…?」

侑「…ううん」フル

侑「あそこで食べよう。いつもの場所で」

歩夢「えっ」

歩夢「い、いいの?その…かすみちゃん、いるよ?」

侑「…遠慮することなんかないはずだよ」

侑「だって、璃奈ちゃんもかすみんも友達だもん」
 
350:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/07(月) 08:56:29.31 ID:FtepUuYI
侑「やっほー、璃奈ちゃん!かすみん!」

かすみ「……げっ!?」

璃奈「侑さん。歩夢さん」

歩夢「こ、こんにちは」

侑「二人とも中庭だったんだね。私達も一緒に食べていい?」

璃奈「いいよ」

侑「ありがとう」

かすみ「あ、り、璃奈ちゃん、かすみんちょっとお腹が…保健室にでも…」

侑「かすみん、大丈夫!?私が一緒に行こうか!?」

かすみ「………」
 
351:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/07(月) 09:00:17.47 ID:FtepUuYI
「「いただきます」」

侑「璃奈ちゃん、今日もかすみんのコッペパンだ。いいなー」

璃奈「美味しい」モグ…

侑「かすみんかすみん、私ね、次はレモンクリームみたいなやつ食べたいな。作れる?爽やか系の!」

かすみ「…できないことはないと思いますけど」

侑「ほんと!?作ったら教えて!絶対買いにいくから!」

かすみ「はあ…」

歩夢「かすみちゃん、飲み物は?」

かすみ「あっ、教室に置いてきちゃった…」

歩夢「大変。お茶でよかったら飲む?コップ私のだけど、こっちは口つけてないからね」コポ…

かすみ「あ…ありがとうございます」
 
352:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/07(月) 09:07:23.04 ID:FtepUuYI
侑「そうだ璃奈ちゃん、聞いて!いいニュース!」

璃奈「なに?」

侑「はんぺんのことね、問題なくなったんだよ!」

璃奈「ほ…ほんと?」

侑「菜々ちゃんが生徒会で話し合ってくれて、みんなで『はんぺんのことは気にしない』って結論になったって。これからもはんぺんと一緒にいられるよ!」

璃奈「……よかった…」

かすみ「はんぺんちゃんが、どうかしたんですか?」

歩夢「実は、学校の敷地内に猫が住み着いてるのはどうなんだってお話があったの。でも、生徒会長がなんとか丸く収めてくれたんだって」

かすみ「へえ。生徒会長、いい人ですね」

歩夢「そうだね」
 
353:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/07(月) 09:11:09.45 ID:FtepUuYI
侑「はんぺん、今日もいる?」

璃奈「いるよ」

璃奈「さっきパンあげたから、今は寝てるかもしれない」

侑「少しだけ、顔見にいってもいいかな」

歩夢「起こさないようにね」

侑「わかってるー」

璃奈「私も行く。かすみちゃんも行こう」

かすみ「…うん」
 
354:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/07(月) 09:13:23.90 ID:FtepUuYI
はんぺん スヤスヤ…

侑「ほんとだ、寝てるね」ヒソ

歩夢「すっかりここに落ち着いたみたいだね」ヒソ

侑「まったく、なんの心配もないよーって感じで寝ちゃって。こっちは大変だったんだぞ」

歩夢「大変だったのは侑ちゃんじゃないでしょ」

璃奈 ナデナデ

はんぺん モゾ… スヤスヤ…

侑「起きないんだ…」

歩夢「慣れてるね」
 
355:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/07(月) 09:16:05.03 ID:FtepUuYI
侑「かすみん、いつもはんぺんにパン持ってきてくれてるんだって?ありがとね」

かすみ「!」

かすみ「いえ別に、ちょっと切れ端とか用意するだけなので…たいした手間じゃありませんし…」

かすみ「そ、それに!猫だってかすみんのコッペパン食べて『かすみん好き好きー』ってなるかもしれないですし。…まだ撫でれてませんけど」

侑「あはは、そっか。私もまだ撫でれてないから、一緒だね」

かすみ「…そうですか」
 
356:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/07(月) 09:20:47.45 ID:FtepUuYI
侑「ねえ、かすみん。私ね、かすみんのファンでいたいって気持ち、なくなってないよ」

かすみ「…!」

侑「同好会のことは本当にごめん。細かいこといっぱい謝りたいけど、もう謝るのはこれっきりにするつもり」

かすみ「…かすみんは、謝ってほしいだなんて一回も思ってませんよ」

侑「そうだよね。だから今のは私がきちんとケジメをつけるために謝っただけ」

侑「私、かすみんのファンでいたいんだ」

かすみ「かすみんだけの、ファンですか?」

侑「かすみんのファンでいたいし、彼方ちゃん、エマ先輩、せつ菜さんのファンでいたい。虹ヶ咲のスクールアイドル同好会のファンでいたい」

侑「それって、だめなことかな」

かすみ「……全然、だめじゃないですよ」
 
357:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/07(月) 09:28:17.87 ID:FtepUuYI
侑「頑張るみんなを精いっぱい応援するファンでいたいし、ピンチのときに正しく応援できるファンでいたいんだ」

かすみ「ライブが心配だから手伝いたいとか、もう言い出さないんですか?」

侑「言わないよ。私は部外者だからね」

かすみ「…っ、それは…」グ…

侑「あ、違うのかすみん。そう言われたことをどうこうとかじゃなくてね、せつ菜さんと話して、きちんと納得したんだ」

かすみ「せつ菜せんぱいと…?」

侑「うん。同好会の問題は同好会のみんなで解決することだから、ファンとして応援して愛してほしいって言われた」

侑「私は当事者にはなれないけど、ファンでい続けることはできる。そういう形でスクールアイドルのかすみん達を支えていきたいって思ったんだ」
 
358:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/07(月) 09:31:56.44 ID:FtepUuYI
かすみ「…部長のせつ菜せんぱいとお話がついたのなら、かすみんから言うことはもうなんにもありませんよ」

かすみ「ファンとして、いつでも応援していてください」

侑「うん!」

侑「でも、それと別にね」

かすみ「はい?」

侑「私、スクールアイドルじゃないかすみんとももっと仲良くなりたいんだ」

かすみ「へ…」

侑「一緒にお昼ごはん食べたり、水族館に出かけたり、そんな普通の友達になりたい。だめかな?」

かすみ「な……っ」
 
359:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/07(月) 09:37:37.69 ID:FtepUuYI
侑「ファンと友達を両立するのって変かな?」

かすみ「変っていうか、普通、ファンのみんなとお友達になることはないですし…」

侑「友達がファンになることはあるよね」

かすみ「それはまあ、あると思いますけど」

侑「だったら私はそっちだね!」

かすみ「は…はあ!?かすみんがいつ侑せんぱいとお友達になったんですか!?」

侑「えー、一緒に水族館行ったじゃん」

かすみ「それは侑せんぱいがあんまりしつこいから仕方なくだって言いましたよねえ!?」

侑「また行こうよ。次こそしな水にさ」

かすみ「せんぱいが間違えなきゃ行けてたんですけどね…」

侑「言いっこなしだってば。かすみんも到着するまで気づかなかったんだから、おあいこだよ」

かすみ「なんでですかーっ!」
 
360:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/07(月) 09:40:09.24 ID:FtepUuYI
璃奈「それは、どういう表情?」

歩夢「…今だけは我慢するって決めた表情だよ」ニコニコ

璃奈「侑さんがかすみちゃんと仲良くなるの、いやなの?」

歩夢「いやじゃないよ。一人増えるだけだもん」ニコニコ

璃奈「怒ってる?」

歩夢「…………水族館は初耳だなって思っただけだよ」ニコニコ

璃奈「ふ、ふーん…」ナデナデ…


かすみと璃奈とお昼ごはんを食べました! ▼
 
368:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 07:58:51.70 ID:wHVgFDEf
放課後…


私は欲張りなのかもしれない。

あれもこれもしたくて、あっちにもこっちにも行きたくて、あの人ともこの人とも仲良くなりたい。

身体が二つあればいいのに。

三つあればいいのに。

そしたら──

お昼寝と、好きなもの食べるのと、友達と遊ぶのを一緒にやるのになぁ!


今日はどうしよっかな? >>369
1.まっすぐ帰る
2.寄り道して帰る(演劇部、裏庭、お台場から選択)
3.誰かに連絡する(しずく、かすみ、璃奈、果林から選択)
 
369: (もこりん) 2020/12/08(火) 08:01:08.43 ID:pbczBU6i
3
しずく
 
370:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 08:14:57.19 ID:wHVgFDEf
そうだ、しずくちゃんの演劇、来週…ううん今週の日曜日なんだっけ。

あんまり時間割けてないや。

でも練習は部でしっかりできてるはずだよね。

この前見学に行ったときだって、行われてる練習の一つも、説明されたことの一つも、知らなかった。

手伝いたい気持ちがあっても、演劇のことをなにも知らない私にできることなんかほとんどない。

しずくちゃんが頼ってくれない限り、なにをすればいいのかもわかんないんだ。

…見学、に、とりあえず…


侑 パッ


『16:31』


この時間なら、まだぎりぎり練習は始まってなかったはずだよね。
 
371:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 08:19:11.61 ID:wHVgFDEf
侑 スマスマ…

歩夢「侑ちゃん、帰らないの?」

侑「あ、うん。帰ろっか」

歩夢「調べ事?」

侑「そんなところ。私、みんなと違って得意なこととかあんまりないからさ。自分に知識がない分は調べたり詳しい人に聞いたりして補おっかなーって」

歩夢「私だって得意なことなんかないよ」

侑「そんなことないよ!歩夢、料理も上手だし頑張り屋さんだし」

歩夢「頑張り屋さんって得意なことかなぁ?」

侑「頑張れない屋さんの私にしてみればすごい才能だと思うよ」ウンウン

歩夢「うふふ、なにそれ。だったらもっと頑張ってくーださい」

侑「えへへー」
 
372:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 08:23:24.00 ID:wHVgFDEf
帰り道


侑「あれから優花達平気だった?」

歩夢「うん。お昼ごはんから戻ったとき二人にごめんねって言われて、似合ってるって褒めてくれたよ」

侑「よかった。たぶんそれを言いたかっただけだと思うんだけど、最初からそうしてくれたらいいのにね」

歩夢「ずっと同じ髪型だったのを変えたんだもん、仕方ないよ」

侑「そうかもしれないけど…って、なんで私がフォローされてるの?」

歩夢「だって侑ちゃんがあんな風に庇ってくれたから、私はもう気にしてないもん。それより侑ちゃんの方が気にしてるみたいで」

侑「んー、そうかな」


まあ、あんまりいい気分じゃなかったのはほんとだもんね。
 
373:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 08:27:49.08 ID:wHVgFDEf
侑「歩夢」

歩夢「なに?」

侑「髪型、どうするの?明日から」

歩夢「え?」

侑「いやほら、そのハーフアップ、続けるのかなって」

歩夢「…侑ちゃんはどうしてほしい?」


どうしてほしい? >>374
1.ハーフアップを続けてほしい
2.お団子ヘアーに戻してほしい
3.歩夢の好きな方にしてほしい
 
374: (庭) 2020/12/08(火) 08:29:02.69 ID:q0snSnxr
1
 
375:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 08:32:08.59 ID:wHVgFDEf
私は…


侑「続けてほしいな。ハーフアップ」

侑「お団子ももちろん似合ってるし『歩夢!』って感じするけど、それだって似合ってるしさ、それに…」

歩夢「それに?」


──歩夢「だって侑ちゃんがしてくれたんだもん。ほどくのもったいなくて」


なんだかすっごく可愛くて、なんて、


侑「………に、似合ってるし!」

歩夢「え~?なにそれ」クス
 
376:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 08:37:46.95 ID:wHVgFDEf
歩夢「でも、わかったよ」

歩夢「侑ちゃんがそんなに言ってくれるなら、しばらくこの髪型でいようかな」

侑「そ、そう?朝から大変だったりしない?」

歩夢「普段のお団子の方がよっぽど時間かかっちゃうから、むしろちょっぴり楽しちゃってるなって思うくらいだよ」

侑「そうなんだ」ホッ…

歩夢「侑ちゃん、そんなにこの髪型気に入ったの?珍しいね」

侑「ど、どうだろ。新鮮だからかな」

歩夢「ふーん?」

歩夢「侑ちゃんの新しい扉を開いちゃったかなぁ」

侑「えっ」

歩夢「普段そういうこと言ってくれない侑ちゃんが二回も『似合ってる』って言ってくれるなんて相当だもんなぁ」

侑「え、や、そんなんじゃないんだけど…!」

歩夢「これからずーっとハーフアップでいるように命令されちゃったりするのかなぁ」

侑「し…しないよー!」


歩夢と帰りました! ▼
 
377:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 08:43:36.47 ID:wHVgFDEf
夜…


『しずくちゃん:侑先輩』


晩ごはんを終えたくらいの頃、やっとしずくちゃんからお返事が来た。

19時半…たぶん、今まで練習してたんだよね。

公演まで一週間を切って大詰めなのはわかるけど、無理してないかな…


『しずくちゃん:リスト送ってくださってありがとうございました。とても役に立ちました』


放課後、私は『演技の幅』について調べて、目についたものを片っ端からしずくちゃんに送った。

部活の前だったから時間はあんまりなかったけど、送った瞬間に『既読』がつくのが止むまでひたすらに続けたおかげで、そこそこの量の情報を送ることはできた。
 
378:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 08:50:01.54 ID:wHVgFDEf
『ほんと?よかった』

『きちんと演劇部に所属して練習してるしずくちゃんに私がしてあげられることって思い浮かばなくてさ、調べて送るくらいしかできなかったけど』

『しずくちゃん:くらいなんてそんな!』

『しずくちゃん:私、昔から演技については映画や舞台を観て学んでいたんです』

『しずくちゃん:その方が感覚的に掴めるのでいいと思っていたんですが、よく考えたら本やネットで調べたことってほとんどなくて』

『しずくちゃん:先輩が送ってくださったもの、どれも理屈で説明してあって、それもすごくわかりやすかったです。感覚だけで培った演技の隙間を埋めてもらえたみたいでした』

『しずくちゃん:今日の練習にさっそく取り入れてみて、部の先輩達にも褒められたんですよ』

『しずくちゃん:侑先輩のおかげです♡』


『しずくちゃん:侑先輩のおかげです!』
 
379:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 08:52:33.62 ID:wHVgFDEf
『なんで二回言ったの?笑』

『しずくちゃん:打ち間違えてしまいました』

『ハートマーク?』

『しずくちゃん:調子に乗ってしまいました』


しずくちゃんの中でハートマークってそんなに神聖なものなのかな。


『可愛いじゃん、ハートマーク。私は好きだよ♡』


…お返事が、途絶えました…
 
380:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 08:55:58.09 ID:wHVgFDEf
あ…あれ!?なんで!?

なんか前にもこんなことあったような気がする、っていうかたまにお返事が来なくなるタイミングがあるな…

いやまあずっとラインに張り付いてる人ばっかりじゃないだろうし、そんなタイミングいくらでもあるとは思うんだけど。

自分でもちょっとノって打った自覚のある発言の直後に途絶えられると、さすがに焦っちゃう。

安易にハートマーク使わない方がよかったかな、しずくちゃんが反省した直後だったのに──


『しずくちゃん:私も好きです♡』


…ハートマークの、こと、だよね?
 
381:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 08:57:31.07 ID:wHVgFDEf
えっと…


『しずくちゃん:ごめんなさい』

『しずくちゃん:また調子に乗りました』


また調子に乗ったんだ。

わかんない、わかんないよしずくちゃん。

お互いに変なテンションで会話してるだけだと思っておけばいいのかな?
 
382:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 09:02:06.67 ID:wHVgFDEf
『私もよく調子に乗って歩夢に怒られるよ』

『しずくちゃん:怒られるんですか』

『しずくちゃん:私も侑先輩に怒られますか?』

『怒らないよ。なんなら調子に乗ってたのも気づかなかったくらいだもん』

『しずくちゃん:怒らないんですか…』

『怒ってほしいの?』

『しずくちゃん:怒りたいと思ったら存分に怒ってください!』

『怒りたいと思うことってある?』

『しずくちゃん:私はないです』

『私もないかなぁ』

『しずくちゃん:怒ってる間って、純粋に相手のことだけを考えてますよね。そう考えると怒られるのもそんなにイヤではないなと思います』


なるほど。
 
383:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 09:06:49.67 ID:wHVgFDEf
『しずくちゃん:調べた結果を送ってくれただけじゃないですよね』


ん?

あ、さっきの話かな。


『しずくちゃん:それぞれ、侑先輩がその情報から得たヒントや考えたことを一緒に書いて送ってくださったのが、すごく嬉しかったんです』

『的外れなこと書いてなかった?』

『しずくちゃん:いっぱい書いてありました』


侑「…」


『しずくちゃん:その正誤なんてどうでもいいんです』

『しずくちゃん:自分の知識分野以外の情報って、理解するのすごく大変だと思うんです。それなのに一つひとつ調べて、読んで、先輩なりに噛み砕いた意見を教えてくださった』

『しずくちゃん:そのこと自体が、すごくすごく嬉しいんですよ』
 
384:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 09:12:34.17 ID:wHVgFDEf
ああ、しずくちゃんは本当に──優しいなぁ。

部活前の時間がない中でやたらめったらに情報を送りつけてきた上級生に対して、こんな風に言えるなんて。

しかも的外れなコメントまで添えられてたのにね。

いっぱい。

思いつきで捻り出したようなお手伝いで申し訳ないなって思うのに、もうまたなにかしたいと思ってる。

それもこれもしずくちゃんが良い子だからだよね。
 
385:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 09:16:03.56 ID:wHVgFDEf
『私、もっとしずくちゃんの力になりたいんだ』

『なにかできること、ないかな?』

『しずくちゃん:侑先輩はいつもそんな風に私のことを気遣ってくれますね』

『しずくちゃん:ありがとうございます』

『しずくちゃん:私、』


『しずくちゃん:毎日侑先輩に会いたいです』


毎日…!

放課後は部活だから、お昼休みとか?

朝の時間か、私は近くだから部活が終わる頃にお迎えにいってもいいんだっけ──


『しずくちゃん:でも、会わないようにします』
 
386:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 09:20:05.91 ID:wHVgFDEf
『しずくちゃん:本当は毎日侑先輩に会ってお話ししたいです』

『しずくちゃん:今日はどんな風に過ごしたのか、なにがあったのか、聞いてほしいし話してほしい』

『しずくちゃん:短い道でもいいから隣を歩いて帰りたい』

『しずくちゃん:私がなにかを頑張った日には、頭を撫でてほしいです』

『しずくちゃん:そんな風に毎日を過ごしたい』
 
387:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 09:24:24.50 ID:wHVgFDEf
『しずくちゃん:ですが、私は今、桜坂しずくを謳歌するわけにはいかないので』

『しずくちゃん:今週の公演まで、彼女の人生を全うするまでは、私は満たされるわけにはいかないんです』


侑「…!」


『しずくちゃん:だから侑先輩にお願いすることがあるとしたら、私に会おうとしないでください』

『しずくちゃん:公演の日が近づくにつれて会いたくなってしまうと思います。私から連絡をしてしまうと思います』

『しずくちゃん:でも、どうか公演が終わるまで、鬼になって私を突き放してください』

『しずくちゃん:お願いします』
 
388:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 09:27:56.40 ID:wHVgFDEf
侑「──」


『わかったよ』

『しずくちゃん:ありがとうございます』

『しずくちゃん:あ、でもお返事くらいは下さると嬉しいです』

『しずくちゃん:わがままですけど、無視されちゃったら寂しいですから…』


侑「──」


『あはは、了解』

『すごいね、役者って自分の生活を懸けるものなんだね』

『しずくちゃん:誰かの人生を背負うのだから、それくらいのことは当然ですよ』


侑「──」


『今から本番が楽しみだなぁ!』

『しずくちゃん:彼女の決意に恥じない舞台にしてみせます!』
 
389:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 09:29:18.25 ID:wHVgFDEf
『しずくちゃん:そろそろ最寄り駅に着きます』

『しずくちゃん:またご連絡しますね』

『うん。私もなにか役に立ちそうな情報を見つけたら送るよ』

『しずくちゃん:ありがとうございます』
 
390:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 09:31:26.01 ID:wHVgFDEf
『しずくちゃん:侑先輩』

『なに?』

『しずくちゃん:日曜日、絶対に観にきてくださいね』

『もちろん行くよ!』

『しずくちゃん:公演が終わった後、時間を下さい』

『しずくちゃん:お話ししたいことがあるんです』


侑「──────」


『拍手し終えたら、一番に駆けつけるよ』

『しずくちゃん:ありがとうございます』

『しずくちゃん:それでは、お休みなさい』


しずくとラインで話しました! ▼
 
397:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 19:08:07.51 ID:oGPQUA2f
翌朝…


侑「お待たせ~」タタタ

歩夢「行こっか」

侑「うん!」


いつもと同じように私を起こしてくれて、いつもと同じようにベランダで一言だけ交わして、いつもと同じようにエントランスで私を待っててくれる。

そんな歩夢の髪は、ハーフアップで風にそよいでいる。

ほんのちょっとしたきっかけだけど、これまで一度もなかった変化だ。

なんだかそれがくすぐったくて──嬉しい。


侑「歩夢、今日もハーフアップだね」

歩夢「楽ちんで助かっちゃった」

侑「似合ってるよ」

歩夢「…やっぱり、フェチなの?」

侑「や、やっぱりってなに!?」ガーンッ
 
398:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 19:14:32.43 ID:oGPQUA2f
お昼休み…


「高咲さん、ちょっといいー?」

侑「ん?」


四時間目が終わるなり廊下から呼ぶ声がした。

何度か合同授業で話したことがあるな、くらいの顔見知りだ。

何組の子だっけ…


侑「どうかしたの?」トコ…

「これ預かったから、渡さなくちゃと思って」っメモ

侑「…なにこれ?」

「わかんない。私は部活の先輩から受け取ったんだけど、先輩も前の休み時間に友達から受け取ったんだって」

侑「ええ…?」

「ごめん、約束あるから行くね!」

侑「あ、うん。ありがとう」


『ゆうちゃんへ
 お昼休み、家庭科室に来られたし』カサ…


侑「……えっと…」


どうしようかな? >>399
1.一人で家庭科室に行く
2.歩夢と家庭科室に行く
3.無視する(お昼ごはんを食べる場所:教室、中庭、食堂、生徒会室から選択)
 
399: (たまごやき) 2020/12/08(火) 19:15:19.90 ID:ngwniaQ4
1
 
400:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 19:18:42.07 ID:oGPQUA2f
歩夢「侑ちゃん、どうしたの?」ヒョコ

侑「歩夢」

侑「なんか、こんなの渡されたんだけど…」

歩夢「…いたずら?」

侑「かなぁ」

歩夢「困っちゃうね。今日はお昼ごはんどこで食べよっか?」

侑「か、家庭科室には…?」

歩夢「えっ、行くの?」

侑「友達かもしれないし…」

歩夢「直接連絡してこないお友達?」

侑「うーん……」
 
401:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 19:23:14.65 ID:oGPQUA2f
侑「連絡先を交換してない友達、とか…?」

歩夢「それってお友達?」

侑「…」

歩夢「…」

侑「やっぱり、覗くだけ覗いてくるよ。無視してなにかあったら後味悪いもん」

歩夢「もう、侑ちゃんってば。すぐ変なことに首を突っ込むんだから」

侑「いや、まだ変なことって決まったわけじゃ…」

歩夢「ぱっと行って戻ってこようね」

侑「うん……って、歩夢はいいよ。先に食べてて」

歩夢「一人で?」

侑「…優花達と…」

歩夢 ジトー

侑「す、すぐ!ほんとすぐ戻るから!ね?」

歩夢「十分ね」

侑「い…行ってくる!」タタタ
 
402:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 19:26:13.13 ID:oGPQUA2f
なんだろう、一体。

見たことない字だと思うんだけど、誰だろう。

っていうか『ゆうちゃん』って私のことなのかな?

迷わず私の元に辿り着いたってことは、このメモを書いた人がそう伝言していったんだよね…

漢字を書けない人?

でも家庭科室は漢字だもんね。

『来られたし』とか言ってるし…

…うーん、謎だ…
 
403:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 19:27:46.21 ID:oGPQUA2f
家庭科室


先生に怒られるとかじゃないよね。

メモで呼び出す意味もわかんないし、そうじゃないことを祈って…


侑 コソ…

侑「……あ!」
 
404:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 19:31:04.46 ID:oGPQUA2f
侑「彼方ちゃん!」

彼方「お、やっと来た。待ってたよ~」

侑「なーんだ、彼方ちゃんだったんだぁ」

彼方「んん~?ちゃんとメモ渡したでしょ?」

侑「え?名前書いてあった!?」バッ

彼方「おいおい。彼方ちゃんに限ってそんな書き損じあるわけ…」


『ゆうちゃんへ
 お昼休み、家庭科室に来られたし』カサ…


彼方「…」

侑「…」

彼方「そういうこともあるかぁ」

侑「結構致命的なミスじゃない?これ」
 
405:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 19:33:25.63 ID:oGPQUA2f
彼方「まーまー、こうして無事に会えたんだから細かいことは気にしなさんな」

侑「細かいかなぁ」

侑「ところで、なにかあったの?」

彼方「んー、どうしようかなーって思ったんだけどねぇ」

彼方「約束したからさ、声かけなくちゃってね」

侑「約束…?」
 
406:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 19:38:39.32 ID:oGPQUA2f
グラタン ドン…!


侑「ぐ──グラタンだ!」

彼方「今日は加熱による栄養素の変化についての実習をやってね。彼方ちゃんはグラタンを作ったのだ」

侑「学校ではまず見ない料理で驚いてるよ…!」

彼方「なんでもいいって言うから、お家から器も持ってきたの」

侑「へ、へええ…」

侑「それで、その、これはもしかして…?」ゴクリ…

彼方「うん、侑ちゃんにあげる分だよ」

侑「や…やったあ!」パァァ
 
407:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 19:43:58.80 ID:oGPQUA2f
侑「あれ、でもこれ私が食べちゃったら彼方ちゃんはお昼ごはんどうするの?」

彼方「侑ちゃんのお弁当でも貰おうかなってね~」

侑「あ、お弁当教室に置いてきちゃった…」

彼方「彼方ちゃん、お昼ごはん抜きなの!?」ショック…

侑「えっ、それはまずいね!ちょっと待ってて、すぐに持ってくるよ」ガタ

彼方「とまあそんなこともあろうかと今日はパンを買ってあるんだけど」ゴソ

侑「んな…」ガクッ

彼方「でも侑ちゃんのお弁当を誰かが食べなくちゃいけないのは変わらないんじゃない?放課後まで残してても仕方ないもんね」

彼方「パンは明日の朝ごはんにでもできるし、よければ彼方ちゃんが食べるよ~」

侑「あー…歩夢も待たせてるんだった。どっちにしても一回教室戻らなくちゃだめかな?」

彼方「おっと………」
 
408:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 19:47:35.98 ID:oGPQUA2f
彼方「じゃ、お弁当は諦めよっか」

侑「え?」

彼方「歩夢ちゃんには悪いけど、よそでごはん食べてくるから戻らないって連絡しておいて」

侑「すぐ戻ってくるよ?」

彼方「んー」

彼方「たぶん、教室に戻ったらここに帰ってこないと思うんだよねぇ。侑ちゃん」

侑「あ、ああー…」

彼方「かと言って、歩夢ちゃんの前で侑ちゃんのお弁当と彼方ちゃんのお料理を交換っこして食べるのも…ちょっとねぇ」

侑「あ、ああー……」

彼方「ってことで、はい、席に着いた席に着いた。歩夢ちゃんにラインしといて」グイ

侑「わわっ。わかった、わかったから…」
 
409:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 19:51:50.60 ID:oGPQUA2f
「「いただきます」」

侑「うわー、彼方ちゃんのグラタンだぁ。美味しそう…!」

彼方「熱いから気をつけたまえよ」

侑「実習って四時間目だったの?だとしてもまだこんなに熱いなんてすごいね」

彼方「うん。実習中は焼き上げを軽くしておいて、仕上げの加熱をさっきしたんだよ。そのままその中に入れといたから保温にもなったしね」

侑「なるほど」

彼方「冷めないうちにどうぞ~」

侑 ハフ…

侑「…ん!おいひい!」

彼方「うんうん、よかったよかった」
 
410:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 19:59:44.21 ID:oGPQUA2f
彼方「じゃ彼方ちゃんもパンたーべよっと」モグ

侑「ん、ごめんね彼方ちゃん。お昼ごはんパンになっちゃって」

彼方「ん~?いーよいーよ、パン好きだもん」

彼方「それにそんな言い方しちゃパンが可哀想だよ」

侑「それもそっか。ごめんねパン、お昼ごはん彼方ちゃんになっちゃって」

彼方「それはなにをどう考えて出た発言かな?」
 
411:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 20:09:53.06 ID:oGPQUA2f
侑「五月に、しかも学校でグラタン食べるなんて思わなかったや」モグモグ…

彼方「しかもこれまでのグラタン歴を塗り替えちゃう逸品だなんてねぇ」モグモグ…

侑「彼方ちゃんって、のんびり屋さんなのに結構自信家だよね」

彼方「そうかね?戯れで言っちゃう分には足りるくらいの腕前だと思うしね」

侑「うん。ほんとに美味しいもんね!」

彼方「パンも美味しいよ」

侑「密かに人気の裏コッペパンって知ってる?」

彼方「裏コッペパン?知らないかも」

侑「たまに購買部の傍で一年生の子が自分で作ったコッペパン売ってるんだけど、それがもう超~~~絶品なんだよ!」

彼方「へー、そうなの?探してみようっと」

侑「食べたら感想聞かせてね」

彼方「うん~」
 
412:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 20:15:12.75 ID:oGPQUA2f
「「ごちそうさまでした」」

彼方「お粗末様~」

侑「あー、美味しかった。こんなサプライズにするんじゃなくてもっと早く言ってくれたらよかったのに」

彼方「サプライズにしたつもりはなくってね~。彼方ちゃん、侑ちゃんの連絡先知らないんだよね」

侑「あ」

彼方「ふっふっふ…ね?思い至らなかったでしょ?」

侑「なんか随分仲良くなったつもりでいるから、まさかって感じだよ…」

彼方「仲良しなのは間違いないよ。ライン知らなきゃお友達じゃないなんて言わないでしょ?」

侑「そうだね」

侑「…でも、交換しとこうか」

彼方「賛成~」
 
413:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 20:17:52.98 ID:oGPQUA2f
侑「……彼方ちゃんと、またこうして普通に話せてよかった」

彼方「ん」

彼方「同好会のとき以来だもんね」

侑「──彼方ちゃん、あの、私…」

彼方「謝らなくていいからね」

侑「っ……ぇ…」

彼方「むしろ私が不用意なこと言っちゃったせいでかすみちゃんにも火を着けちゃって、悪かったと思ってるのはこっちだよ」

侑「そ…そんなことないよ!あれは私がちゃんとしてなかったからで…」

彼方「そういうの、なしにしよ?」スッ
 
414:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 20:24:15.10 ID:oGPQUA2f
彼方「こんな言い方あれだけど、侑ちゃんが同好会に入るとか入らないとか、彼方ちゃんはどっちでもよかったんだよね」

彼方「そりゃ放課後一緒に部活できたら楽しいと思うけど、そうじゃなくてもこうしてたまにお昼ごはん食べたり、お休みの日に会ったら練習したりお買い物したりできるもん」

彼方「それに、もうこのお話はせつ菜ちゃんと済ませたんでしょ?」

侑「あ…うん。聞いたんだ…?」

彼方「せつ菜ちゃん、突っ走っちゃうことはあるけど、頭もいいし丁寧な子だからね~。昨日の部活で全員集めてそのこと話してくれたよ」

侑「そうだったんだ…」

彼方「だから、私達の間で変に気を遣うのはだめ。よそよそしくされたら、彼方ちゃん寂しくて泣いちゃうよぉ」シクシク…

侑「わっわっ、ご、ごめん彼方ちゃん!」アワワ

彼方「にひ。いーよ」パッ

侑「も…もう彼方ちゃぁん…」ヘナ
 
415:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/08(火) 20:29:09.87 ID:oGPQUA2f
彼方「侑ちゃんのライン聞いちゃったから、お休みの日いつでも呼び出せるようになっちゃった」

侑「できれば前の日までに連絡してくれると助かるかなぁ」

彼方「ん~、気まぐれでお菓子焼いた日は呼んじゃだめってこと?」

侑「それは絶対呼んで!」

彼方「わがままだなぁ、侑ちゃんは~」ケラケラ

侑「臨機応変っていうんだよー」ケラケラ


彼方とお昼ごはんを食べました!
彼方の連絡先を手に入れました! ▼
 
420:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/09(水) 08:03:06.25 ID:VyJVmJYQ
放課後…


うーん、満足感がすごいなぁ。

お昼には彼方ちゃんのグラタンを食べてその次の休み時間にはお弁当を食べたんだから、当たり前なんだけど。

お母さんが作ってくれたお弁当を食べずに持って帰るなんていやだもんね。

短い休み時間に黙々と食べる間、歩夢の視線が痛かったのだけが…あはは…


今日はどうしよっかな? >>421
1.一人で帰る
2.歩夢と帰る
3.寄り道して帰る(運動場、中庭、公園、お台場から選択)
4.誰かに連絡する(菜々、かすみ、彼方、果林から選択)
 
421: (茸) 2020/12/09(水) 08:04:10.05 ID:uy58ekuZ
お台場
 
422:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/09(水) 08:18:55.87 ID:VyJVmJYQ
侑「歩夢、帰ろ」

歩夢「お弁当箱洗ったの?」

侑「さっき洗ったよ」

歩夢「あーあ、侑ちゃんが休み時間にお弁当食べるんだったら私もお昼休みは我慢したのになぁ」

侑「優花達と食べたんでしょ?」

歩夢「食べたけど。侑ちゃんがいないとごはんの美味しさも半分になるの!」

侑「とんでもない仕組みだなぁ」

歩夢「…」ジー

侑「や、わかってるわかってる!突然放ったらかしちゃってごめんね、歩夢」
 
424:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/09(水) 08:21:38.32 ID:VyJVmJYQ
歩夢「今日は誰のところに寄って帰るんですか?」ムー

侑「誰のところにも寄らないよ。歩夢とお台場にでも行こうかなって思ってるから」

歩夢「そうなの?」パァ

侑「…ぷっ」

歩夢「え、なに!?」

侑「いや、歩夢は表情がころころ変わるなーって」

歩夢「ば…ばかにしてる?」

侑「してないよ。そういうところが可愛いんだってば」

歩夢「も、も~…」//

侑「さ、行こ!」

歩夢「うん」
 
425:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/09(水) 08:27:50.94 ID:VyJVmJYQ
お台場


侑「そろそろパスケース替えようかなー」

歩夢「今のだめになっちゃった?」

侑「そんなことないんだけど、なんとなく」

歩夢「侑ちゃんが替えるなら私も替えるよ」

侑「見にいこっか」

歩夢「うん!」
 
426:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/09(水) 08:31:44.08 ID:VyJVmJYQ
雑貨屋


侑「あー、やっぱ種類少なくなってるよね」

歩夢「五月だもんね」

侑「思いつくのちょっと遅かったなぁ」

歩夢「この辺とかだと色違いでおそろいにできるね」

侑「なるほどねぇ…」

歩夢 ヒョイ

侑「あれ、戻しちゃうの?」

歩夢「ときめいてないってカオしてるもん。違うんでしょ?」

侑「あはは、さすが歩夢。うん、ちょっと違うかな」

歩夢「これだ!って思わないなら買っちゃだめ。そんな風に買ってもまたすぐ替えたくなっちゃうよ」

侑「おっしゃる通りでーす」
 
427:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/09(水) 08:41:07.84 ID:VyJVmJYQ
歩夢「来月になったら品揃えも変わるかもしれないし、また見にこよ?」

侑「だね。まだまだおまえだって頑張れるもんなー」ツン

歩夢「だったらまだ使ってあげたらいいのに」

侑「…それもそうだね」

侑「パスケースって三年間使えるものなのかな」

歩夢「どうだろう。一年でも全然汚れてないし、使えそうだけど」

侑「だとしたら買い替えちゃうのも可哀想かなぁ」

歩夢「ユウチャン、ワタシ、マダイッショニイタイヨ」

侑「あはははっ!私それ好き!あははは……」

歩夢「久し振りに精霊の声出しちゃった」//

侑「パスケースの精霊にそう言われちゃったら替えらんないや、こうなったら三年間一緒にいようね」ツンツン

歩夢「クスグッタイヨー」

侑「あははは…それ、それやめて…!あははは…っ」ヒィヒィ
 
428:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/09(水) 08:45:18.75 ID:VyJVmJYQ
駄菓子屋


侑「ガブリチュウみーっけ!」

歩夢「あんまりたくさん買っちゃだめだよー」

侑「はーい。あ、でもほら歩夢!梅ミンツあるよ」

歩夢「あ…」

侑「はい、お買い上げ」ポン

歩夢「て、手に乗せないで!」

侑「カゴいる?」

歩夢「いらないもん!」

侑「ヤングドーナツもあるけど」ヒョイ

歩夢「うう…」
 
429:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/09(水) 08:48:00.84 ID:VyJVmJYQ
侑「お、ニンジンのやつだ」ヒョイ

歩夢「形がってだけでしょ」

侑「だってなんていうのかわかんないんだもん、これ」

歩夢「ライスパフとかじゃなかったっけ?」

侑「うーん…いや、ニンジンの方がわかりやすいよ」

歩夢「それは侑ちゃんの感覚じゃない…」

侑「二本買っとこうかな?」ヒョイ…

歩夢「一本にしなさい」メッ
 
430:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/09(水) 08:53:38.71 ID:VyJVmJYQ
侑「見てこれ歩夢!一緒に飲も!」

歩夢「うん」

侑「何味がいい?私コーラかな~」ゴソ

歩夢「私はピーチがいいな」

侑「これで30円って安いよね。来るたび買っちゃうよ」

歩夢「うふふ…ねえ、覚えてる?小学三年生の頃、侑ちゃんがソーダで私がグレープ買った日あるじゃない」

侑「ぅ…」

歩夢「侑ちゃん、ぎゅーって握り締めながら噛み切ったから、すごい勢いでジュースが出てきちゃってべとべとになったよね」クス

侑「だって開けるの難しいじゃん。今はそんな失敗しないから!」

歩夢「ハンカチあるからね」

侑「しーなーいーかーらー!」//
 
431:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/09(水) 09:01:09.71 ID:VyJVmJYQ
侑「たこ焼きのいい匂いするなぁ」クンクン…

歩夢「食べようなんて言い出さないでね」

侑「二人で分けっこすれば!…って言いたいところだけど、今日はさすがにいらないかな」

歩夢「ちゃんと晩ごはん食べられる?」

侑「あはは、平気だよ。普段だったらここでたこ焼き食べても晩ごはん食べられるくらいなんだけどな」

侑「…あれ?もしかして私、普段お弁当足りてないのかな?」

歩夢「そんなことないと思うよ」

歩夢「ごはんの時間を覚えちゃってるから、そこに合わせてお腹が空くようになってるんだと思うの。侑ちゃん、だいたいいつもごはんの時間同じでしょ?」

侑「ん、そうかも。なるほどー、便利な身体だね」

歩夢「ごはんを食べるのに本気だもんね」

侑「偉いぞ、私のお腹」サスサス
 
432:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/09(水) 09:09:40.61 ID:VyJVmJYQ
『お化け屋敷』


歩夢「…」

侑「…」

歩夢「ねえ、覚えてる?」

侑「あ、覚えてる。覚えてるけどさすがに言わないでほしい」

歩夢「うん…私もあんまり言いたくない」

侑「あの頃は小さかったからね。仕方ないよね」

侑「あれっきりほとんど近づきもしなくなっちゃったけど、歩夢、なんか怖さ抑えめのモードとか追加されたらしいよ」

歩夢「…だから?」

侑「い

歩夢「かない」

侑「はい」


歩夢とお台場に寄って帰りました! ▼
 
433:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/09(水) 09:15:50.20 ID:VyJVmJYQ
夜…


ごろごろ。

ベッドの上で体勢を変えながらスマホを眺める。


『このえかなた』


追加されたばかりのラインアカウント。

なんだか、彼方ちゃんらしくて好きだな。

『彼方ちゃん』に表示名を変更してから、ふと目がその少し下に留まる。


『菜。』


う~ん、いいなぁ。

いつもなら『菜々ちゃん』に変えるところだけど、これは変えたくない。

可愛すぎない?これ。
 
434:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/09(水) 09:22:18.29 ID:VyJVmJYQ
こうして見ると、本当に今年度になって友達が増えたなぁと思う。


『かすみん』

『しずくちゃん』

『彼方ちゃん』

『果林先輩』

『璃奈ちゃん』

『菜。』


いや、やっぱり菜々ちゃんが結構異彩を放ってる。

個性的だし好きだけどね。
 
435:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/09(水) 09:30:47.71 ID:VyJVmJYQ
歩夢とのトーク履歴は、基本着信履歴で埋め尽くされてるんだよね。

お休みの日にちょこっと連絡したり写真を送ったりすることもあるけど、なにかあったらだいたい直接話しちゃうもんなぁ。

ほんと、通話無料ってすごいよね。

毎朝壁を叩いて起こされたらやだもん。

いつか穴空いちゃいそうだし。

案外、穴の一つくらい空いてた方がコミュニケーション取るのに楽だったりするかな?

でもベランダでああして話すの好きだからなぁ。

それに、夜更かししてたら怒られちゃうかもしれないから…

やっぱり穴は空けない方向でいこう!


みんなのことを考えて過ごしました! ▼
 
441:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/09(水) 20:08:32.96 ID:VyJVmJYQ
翌朝…


侑「お待たせ~」タタタ

歩夢「行こっか」

侑「うん!」


いつも通りの朝、ふと思う。


侑「そういえば、エントランスに下りるの絶対歩夢の方が早いよね」

歩夢「朝の話?」

侑「うん、毎日私が『お待たせ』って言ってるなーって」

歩夢「…そうだね」

侑「え、そんなことない?」

歩夢「そんなことあるよ。絶対に侑ちゃんより早く下りるようにしてるもん」

侑「なんで?」
 
442:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/09(水) 20:13:04.51 ID:VyJVmJYQ
歩夢「……あれは小学二年生のときです。朝からリコーダーが見つからなくて家を出るのが少し遅くなっちゃったことがあるの」

侑 (あっ)

歩夢「前の日になんにも考えずに本棚に置いちゃったせいだったんだけど、遅れてエントランスに着いた私は驚いたよ」

歩夢「侑ちゃんがいないんだもん」

歩夢「いつもより遅かったんだからそんなはずないって思ったんだけど、一旦戻って侑ちゃんのお家に行ったら『もう出たよ』って言われて…」

歩夢「必死になって家とエントランスを何往復もして、結局遅刻ぎりぎりになるからってお母さんが車で学校まで送ってくれたら──」

歩夢「侑ちゃん、教室で黒板にお絵かきして遊んでたよね」ニコッ

侑「あ、あはは…そんなことも……あったかなぁ…」

歩夢「あれからだよ。私が絶対に侑ちゃんより先にエントランスに下りるようになったのは」

侑「こ、子どもって無邪気だね~」ハハ…
 
443:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/09(水) 20:19:29.75 ID:VyJVmJYQ
お昼休み…


思えば歩夢とはずっと一緒に過ごしてきた。

小学校では三年生に上がるときと五年生に上がるときの二回、中学ではそれぞれ進級のタイミングで二回、高校でも二年になるときにクラス替えがあって、入学でクラスの割り振りがあったタイミングも数えると相当な回数になるけど、今までずっと同じクラスなんだよね。

一年も離れたことがないせいで逆に当たり前みたいな感覚になっちゃってるけど、珍しいことかな。

確率で考えると結構低そうだよね…

歩夢とクラスが離れ離れの学校生活なんて想像できないや。


どこで食べようかな? >>444
1.教室で食べる
2.生徒会室で食べる
3.中庭で食べる
4.屋上で食べる
 
444: (たまごやき) 2020/12/09(水) 20:20:27.57 ID:CjqiS1Zq
4
 
445:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/09(水) 20:27:05.78 ID:VyJVmJYQ
だってクラスが違ったら、朝一緒に登校してから授業が始まるまでの時間、休み時間と昼休み、それに放課後しか一緒にいられなくなって………


歩夢「侑ちゃん、お昼どこで食べよっか」


…あれ?

授業中に話すことなんかほとんどないし、あんまり関係ない…?


歩夢「侑ちゃん?考え事?」


休み時間も昼休みも、会いにいったりきたりして、結局は一緒に過ごしてそうな気もする…

…あっ!でも、待って。


歩夢「侑ちゃ~ん。お~い」フリフリ…

侑「新しい友達ができちゃったら!?」

歩夢「きゃっ!?」ビクッ

侑「うわっ歩夢!?」ビクッ
 
446:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/09(水) 20:31:28.88 ID:VyJVmJYQ
歩夢「ど、どうしたの。大きな声出して…新しい友達…?」

侑「あ、ううん、なんでもないんだけど」


新しい友達ができるのは喜ばしいことだし全然いいんだけど、もし私よりその子と過ごす時間の方が楽しいって歩夢が思うようになったら…


歩夢「…?」


…それって、今の歩夢が感じてる気持ちなのかな。

歩夢より他の友達が大事だなんて思ってない、比べることでもないって思う。

けど、実際に歩夢と過ごす時間は前よりも減ってて…


侑「歩夢」

歩夢「う、うん。なに?」

侑「歩夢との時間、もっと大事にするからね!」ギュ(手)

歩夢「へ…へええ!?」//

侑「さ、お昼ごはん食べにいこっか!」ズンズン

歩夢「て…手繋いだまま行くの~!?」// アワワ…
 
447:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/09(水) 20:35:12.38 ID:VyJVmJYQ
歩夢「どこを目指してるの?」

侑「今日は屋上!」

歩夢「えっ?」

侑「あんまり人が多くないとこで過ごしたい気分なんだ。ほら、この前屋上が意外と穴場だってわかったじゃん?」

歩夢「えっと、果林先輩のとき…?」

侑「そうそう、果林先輩と三人とかだったらいいんだけどねー」

歩夢「侑ちゃん、その、屋上に人がいなかったのって確か──」

侑「ん?」
 
448:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/09(水) 20:38:18.61 ID:VyJVmJYQ
屋上


ガヤガヤ……ガヤガヤ……


侑「え。多っ」

歩夢「まあ、今日はお天気だから…」

侑「全然穴場じゃないじゃん」

歩夢「あれは雨が降りそうだからだって、果林先輩も言ってたでしょ」

侑「そ…そうだっけ!?あー、うん、そんなこと話したような気がする…」

歩夢「座る場所もないくらい混んでるね…どうしようか」

侑「う~ん………」

侑「…そうだ!」

歩夢「え?」
 
449:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/09(水) 20:40:11.67 ID:VyJVmJYQ
侑「ちょっと待ってね」スマスマ

歩夢「うん…」

侑「きっとすぐお返事くれると思うんだ」

歩夢「誰?」

侑「静かなとこでお昼ごはん食べてそうな人」

歩夢「それって…」





侑「!」

侑「ほらねっ!」っスマホ


『果林先輩:裏庭にいるけど』
 
450:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/09(水) 20:44:43.19 ID:VyJVmJYQ
裏庭


侑「果林せんぱーい」トコトコ

果林「ほんとに来たのね。歩夢もこんにちは」

歩夢「こんにちは」

侑「なるほど、裏庭かー。全然思いつきませんでした」

果林「日が当たらないからか、普段からあんまり人いないのよね。放課後は…たまに変な子がいるけど」

歩夢「変な子?」

果林「ううん、なんでもないわ。今からお昼ごはん?」

侑「はい!ここで食べていいですか?」

果林「どうぞ。私の土地でもないもの」

歩夢「お一人がよくてここにいたんじゃないんですか?私達、いたら迷惑じゃ…」

果林「静かなのが好きでここにいるのはその通りだけど、どうしても一人がいいってわけじゃないわ」

果林「あなた達の話を聞いてるの、面白いしね」ニコッ
 
451:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/09(水) 20:50:02.30 ID:VyJVmJYQ
「「いただきます」」

侑「果林先輩はお昼もう済んじゃったんですか?」

果林「そうね」

侑「またサラダ?」

果林「当然。ああ、でも今日は鶏胸肉入りのやつにしたのよ」

侑「…だけ?」

果林「だけ」

侑「うへえー」

果林「うへーとは失礼ね」

歩夢「侑ちゃん、ごはん大好きなので」

果林「私も野菜好きだから同じことよ」

侑「満足感とかなんかこう、全然違いますよ」

果林「慣れだってば。前も言ったでしょう?」
 
452:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/09(水) 20:56:06.94 ID:VyJVmJYQ
果林「そうだ、この間は画像送ってくれてありがとう、二人とも。よく似合ってたわね」

歩夢「果林先輩にそう言ってもらえるとほっとします」

果林「それはどっち?歩夢が選んだ侑の服の方?」

歩夢「ど、どっちも…」

果林「侑には言ったけど、私が見立てたコーディネートよりずっとよかったわよ」

歩夢「そんなこと…!」

果林「あるの。侑なんか私が謙遜してそう言ったのに『そうですよね!』なんて返してきたんだから」

歩夢「侑ちゃん…」

侑「えーっ!?今さら怒るんですか!?」

果林「ふふ…怒るわけないじゃない。私だって同じ意見だもの」

侑「ですよねー」ヘヘ
 
453:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/09(水) 21:01:59.80 ID:VyJVmJYQ
果林「あら?」

果林「歩夢、前からハーフアップだっけ?」

歩夢「いえ。コーディネートのときに侑ちゃんが合わせてくれて、それから続けてるんです」

侑「へへー、似合ってるでしょー」

果林「そうよね、やっぱり。なんだか特徴的な髪型だった気がしてたもの」

果林「でも、うん、いいんじゃない。前の髪型より大人びた印象になってるし、そういう意識で変えたのよね?」

侑「わ、よくわかりましたね。さすが」

果林「前の髪型だって歩夢をよく象徴してるみたいで素敵だと思ったけどね」

歩夢「あ…ありがとうございます。でもしばらくは、これでいこうかなって」テレ…

果林「…ふうん」
 
454:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/09(水) 21:06:45.20 ID:VyJVmJYQ
歩夢「果林先輩、お洋服どのくらい持ってるんですか?」

果林「さあ。たくさん」

歩夢「たくさんですかー…いいなぁ」

果林「仕事の内容によっては、撮影に使った服がそのまま報酬だったりすることもあるのよ。そうじゃなくても貰う機会は多いし、どんどん増えていっちゃうのよね」

果林「寮のクローゼットにも限りがあるから、そろそろどうにかしなくちゃいけないんだけど」

侑「フリマアプリとかで売ったらいいんじゃないですか?」

果林「フリマアプリねえ」

果林「よく聞くけど、私そういうの疎くて。どうすればいいのかわからないから、調べるのも面倒くさくて結局そのままにしちゃうのよ」
 
455:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/09(水) 21:11:25.30 ID:VyJVmJYQ
侑「よかったら手伝いましょうか?」

果林「え?」

侑「お洋服の片付け。フリマアプリで売るのとか」

果林「それは、ありがたいけど…」

歩夢「侑ちゃん、そういうの使ったことあるの?」

侑「ないけどやってみればわかるんじゃないかな」

歩夢「大丈夫…?」

果林「それで侑にできたら、私がまるでそういうのに疎いみたいじゃない」

侑「え、疎いんですよね?」

果林「う…疎くなくはないだけ!私がわからないのに目の前でさくさく使いこなされたら、…悔しいし」

侑「………ぷっ」

果林「笑ったわね!?」
 
456:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/09(水) 21:14:04.54 ID:VyJVmJYQ
侑「笑ってません!w」

果林「口元がもうにやついてるのよ」ムニー

侑「ひゃああ…ふみまへぇん」

果林「まったく」パッ

侑「いてて…でも、私がやってみてできれば、それを果林先輩に教えられますよ。そしたら自分でもできるようになるから!」

果林「…まあ、それもそうね」
 
457:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/09(水) 21:20:08.75 ID:VyJVmJYQ
侑「果林先輩、土日もモデルのお仕事ありますか?」

果林「あるときはあるけど、今週は特にないわね」

侑「じゃあ、えっとー…土曜日!やりましょうよ」

歩夢「わ、私もお手伝いします!」シュバッ

侑「いいですか?」

果林「私は全然いいけど…」

果林「その、二人はいいの?せっかくの土曜日をそんなことに使っちゃって」

侑「もちろん!尊敬する果林先輩の力になれると思えば!」ゞ ビシッ

果林「侑がどうして私のことを尊敬するのよ。調子がいいんだから」フフ

果林「…でも、ありがとう。甘えてもいいかしら」

ゆうぽむ「「はいっ!」」


果林とお昼ごはんを食べました!
果林と土曜日に約束しました!  ▼
 
460:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/10(木) 08:06:27.61 ID:2Zlou1o4
放課後…


ああ言った手前、ほんとになーんにもわかりませんじゃちょっとかっこ悪いので、休み時間にフリマアプリをダウンロードしてみた。

ふんふん、出品のページで写真を撮って説明文を書いて値段を決める、だけ。

その3ステップしかないんだとすれば割と簡単かもしれない。

試してみたいけど、学校のものを勝手に出品しちゃうわけにいかないし、やるなら帰ってからだよね。


どうしよっかな? >>461
1.一人で帰る
2.歩夢と帰る
3.寄り道して帰る(中庭、公園、お台場から選択)
4.誰かに連絡する(しずく、彼方、璃奈から選択)
 
461: (茸) 2020/12/10(木) 08:09:20.22 ID:aOt4O90t
しずく
 
462:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/10(木) 08:14:08.89 ID:2Zlou1o4
ま、フリマアプリのことは後で考えるとして…

しずくちゃんに連絡しちゃってもいいかなぁ。

会いにはいっちゃいけないんだよね。

まだ部活が始まるまでは少し時間があるはずだから、一言か二言話すくらいならできるかも。

じゃなきゃせめてなにか役に立ちそうなことを調べて送ろうかな…


どう連絡しようかな? >>463
1.他愛のない話を振る
2.練習の調子について話す
3.役に立ちそうな情報を送る
 
464:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/10(木) 08:22:43.00 ID:2Zlou1o4
部活前なんだから集中を邪魔するような話をしちゃだめだよね。

それに、せっかく役作りに徹してるんだからそれを壊すようなこともしちゃだめだ。

役の気持ちを崩さないまま受け取れて、役者としてのしずくちゃんのためになること──うん、やっぱりちょっとでも調べ事をして情報共有しようっと。

私だって演劇の知識を少しでも深めておきたいし、自分の勉強にもなると思って。


侑 スマスマ………
 
465:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/10(木) 08:28:05.74 ID:2Zlou1o4
一言か二言の相槌が来た後、すぐにそれはなくなった。

私のやろうとしてることをわかってくれたんだよね。

私はネットで調べたことをコピーして、もしくは少し打ち直したりしながら、粛々としずくちゃんに送る。

まるで一方的に見えるそんな作業に対して、送る端から既読がつくことがしずくちゃんの『返信』だ。

ただただ黙々と情報を取りにいってるのがわかる。

それが役者としての成長に、役としての説得力に繋がるんだって信じて。
 
466:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/10(木) 08:33:29.17 ID:2Zlou1o4
そんな会話をしばらく続けていると、既読がつかなくなった。

部活が始まったんだ。

ぼんやりと見詰めるトーク履歴の向こうに、しずくちゃんの一心不乱な表情が見えるような気がする。


『頑張ってね』


それだけ最後に送って一息つく。


歩夢「侑ちゃん、帰れる?」

侑「ああ、歩夢。ごめん、待たせてた?」

歩夢「なんだか真剣な表情だったから。もういいの?」

侑「うん。帰ろっか」
 
467:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/10(木) 08:37:30.68 ID:2Zlou1o4
帰り道


侑「これ落としてみたんだ」っスマホ

歩夢「果林先輩と話してたやつだよね。どう?使えそう?」

侑「そんなに難しくなさそうだよ。売りたいものの写真を撮って、説明文を書いて、値段を決めるだけなんだって」

歩夢「それで売れちゃうんだ。すごいね」

侑「ねー。リアカーに山盛り積んで公園でフリマに参加する時代じゃなくなったんだ」

歩夢「侑ちゃんそんな経験ないでしょ。どこで学んだのそんなこと…」
 
468:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/10(木) 08:40:37.49 ID:2Zlou1o4
侑「帰ったら試しに出品してみようと思うんだけど、なにがいいかな?」

歩夢「なんだろう。侑ちゃん、人に売れるものとか持ってるの?」

侑「持ってたかなぁ…目覚まし時計とか?歩夢が起こしてくれるから全然使わないんだよね」

歩夢「りんごの形のやつ?」

侑「そうそう」

歩夢「あれまだ持ってたの!?だって買ったの中学に上がるときだったよね?」

侑「心機一転って買ったけど、結局使ってないや」アハハ

歩夢「もったいないなぁ、もう」

歩夢「でもいいんじゃない?ちゃんと動くよね?」

侑「それは確認しとかなきゃだね」
 
469:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/10(木) 08:46:55.33 ID:2Zlou1o4
侑「売れるもの売れるもの…こうやって考えると案外難しいな」

歩夢「いらないものだったら捨てちゃってるはずだもんね。使えるのに使ってないものとか、だぶっちゃったものとか…」

侑「だぶったものだとあるかも!私、間違って同じ巻を買っちゃったマンガあるんだよね」

歩夢「あ、それいいかもね。まだキレイでしょ?」

侑「ピカピカだよ!間違って買ったけどゴミってわけじゃないし、読まないまま捨てるのもなーってそのままにしてるんだよね」

歩夢「一巻?」

侑「ううん、七巻」

歩夢「中途半端なところだね…」

侑「三巻がだぶったのと、最新の二十一巻がだぶったのもあるよ。待てよ、あれもだぶったんだっけ」

歩夢「フリマアプリに出すかどうかって以前に、同じ巻を買っちゃう間違いを治しなさい」
 
470:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/10(木) 08:54:21.85 ID:2Zlou1o4
歩夢「お洋服を出品してる人ってたくさんいるの?」

侑「待ってね。適当に『服』とかでー…」

侑「わ、めっちゃ出る!」

歩夢「ほんとだ。こんなにお洋服を売りたい人がいるんだね」

侑「この辺の値段ってどうなの?」

歩夢「んー…お店で買うよりは全然安いけど、誰かが着たお古にしては高い…かも?」

侑「歩夢だったら買わない?」

歩夢「どうかなぁ。前から欲しかったけど買えないままのアイテムとかがあったら買っちゃうかもしれないけど、普段のショッピングみたいな感覚では買わないかな」

侑「うーん、なるほど」マジマジ…
 
471:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/10(木) 08:58:32.15 ID:2Zlou1o4
侑「服もいくつか出してみよっかな」

歩夢「侑ちゃんの?」

侑「うん」

侑「土曜日まであんまりないから結果がわかるかわかんないけど、どのくらいの値段だったら売れるのかとか知っておいたらやりやすそうじゃない?」

歩夢「そう、だね」

侑「果林先輩、処分したい服たくさんあるみたいだし、できれば出したら早めに売れてほしいしさ」

歩夢「うん、それはいいんだけど…」

侑「なにか気になる?」

歩夢「…侑ちゃんのお古を他の人が着るのは、ちょっと…なぁ…」

歩夢「私が買い取ろうか?」

侑「それなんか意味ある!?」


歩夢と帰りました! ▼
 
472:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/10(木) 09:08:16.09 ID:2Zlou1o4
夜…





スマホから離れててもわかる受信の合図に、思わず飛びつく。


『しずくちゃん:練習終わりました』


やっぱりしずくちゃんだ。


『お疲れ様!』

『日に日に遅くなってない?大丈夫?』

『しずくちゃん:チームプレイの心得、とても参考になりました』

『しずくちゃん:大丈夫です。日ごとに彼女が私の中に降りてくるような感覚を得られて、毎日すごく充実してるんです』

『演劇もチームプレイなんだね。言われてみて初めて気づいたよ』

『そうなんだ。本番が待ち遠しいよ』
 
473:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/10(木) 09:10:35.41 ID:2Zlou1o4
侑「…」


『話が交差してるね笑』

『しずくちゃん:一人で成り立つ舞台というものは絶対にありませんもんね。わかってはいたつもりですけど、改めて意識するとまた新たな視点を持てました』

『しずくちゃん:そうですね笑』


交差しながらのそんな返信。

私達はスマホ越しに笑い合う。
 
474:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/10(木) 09:17:38.98 ID:2Zlou1o4
チームプレイの心得。

舞台演劇には、自分一人でやっているものだと錯覚してしまう役者も多い。

セリフを放ち、ライトを浴び、視線を集める。

自分が世界の中心にいるような錯覚。

だけど、そんなことはない。

そのセリフは誰に届けるものなのか。

そのライトは誰が落としてくれているのか。

その視線は自分のものでは決してないはずだ。

自分と、舞台に立つ役者達と、世界観を操る裏方達と、世界を見守るお客さん。

演劇は──どんなスポーツよりもチームプレイ。

そんな心得を私は知って、しずくちゃんに共有した。
 
475:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/10(木) 09:25:06.45 ID:2Zlou1o4
『しずくちゃん:自分が浴びるものではないライトにだって必ず意味があって、その意味と自分がどんな風に関係しているのか』

『しずくちゃん:そこまでを意識したことはありませんでした』


しずくちゃんは嬉しそうに語る。

私が手探りで拾い上げて形もはっきりしないまま渡した情報を、きっと何度も何度も繰り返して、自分のものにしてるんだ。


しずく「お客さんの視線が全て同じ場所を定めているとは限りませんよね。それこそ人生のように!」


まるで、陽のあたるカフェのテラス席で、向かい合って話してるみたいだ。
 
476:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/10(木) 09:33:02.60 ID:2Zlou1o4
演劇を観た帰りかな。

練習終わりのティータイムかもしれない。

「喉が乾いてしまいました」っていつもより大きなサイズのジュースを頼んだのに、待ちきれずにお冷やを飲み干しちゃうんだ。


しずく「私が認識していない部分にも世界はあるんですよね。それは誰かの世界の中心かもしれないし、認識していないだけで私の世界の一部なのかもしれません!」


しっかり話を聞きたくてホットを頼んだ私より、しずくちゃんのジュースの方が先に届く。

気づいたのか気づいてないのか、頬を少しだけ紅潮させて楽しそうに語る姿は変わらない。


しずく「両手が届く、それより先に拡がる世界をどれだけ掴み取れるか。そして役に還元できるか。その一点こそが役者として目指すべき高みなのでしょうか」


ホットカフェオレはすっかり空になって、ジュースの氷も解けて。

永遠に続くような心地いい時間が──しずくちゃんと私の間に、ずっと流れていけばいい。
 
477:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/10(木) 09:37:45.11 ID:2Zlou1o4
しずく「そろそろ最寄り駅に着きそうです」

侑「うわ、ほんと?しずくちゃんと話してるとあっという間だよ」

しずく「そうですね。本当にその通りです」


少しだけ、時間が止まる。

そして私達は、席を立つ。


『それじゃ、ゆっくり休んでね』

『しずくちゃん:侑先輩も。素敵な夜を』
 
478:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/10(木) 09:41:09.87 ID:2Zlou1o4
窓の外から届く電車の音。

リビングから聞こえるテレビの音。

遠く消えていく陽の暖かさは、そっか、私の頭の中にしかなかったんだっけ。


侑「────」


長い息を吐く。

素敵な夜を、か。


侑「もう、なったよ。しずくちゃん」


しずくとラインで話しました! ▼
 
481:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/10(木) 21:04:01.29 ID:2Zlou1o4
翌朝…


侑「お待たせ~」タタタ

歩夢「行こっか」

侑「うん!」


結局、今日もこうして歩夢が待っててくれる。

つくづく実感する、私って甘えてるんだなぁ。

「好きでやってることだからいいの」なんて歩夢はなんでも笑って言うけど、そうなのかな。


歩夢「フリマアプリどうだった?」

侑「あー、やってみたんだけどね…」

歩夢「なにか上手くいかなかったの?」

侑「お金振り込んでもらうための銀行を登録しなくちゃいけないんだってさ」

歩夢「ああ…」

侑「こんなのでお母さん達の銀行借りるわけにもいかないし、とりあえず保留にしたよ。果林先輩ならそれは心配しなくていいと思うしね」

歩夢「そうだね」
 
482:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/10(木) 21:11:43.76 ID:2Zlou1o4
お昼休み…


今日はすごく目が冴えてた。

一時間目から今まで一回も眠くならなかったもん。

おかげで授業をばっちり聞けたよ!

聞けは、したんだ…聞けは……


お昼はどうしよっかな? >>483
1.教室で食べる
2.生徒会室で食べる
3.中庭で食べる
4.食堂で食べる
 
483: (たこやき) 2020/12/10(木) 21:12:51.41 ID:/iDDs7U7
3
 
484:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/10(木) 21:16:29.61 ID:2Zlou1o4
歩夢「侑ちゃん、今日は眠くならなかったんだね」

侑「だよ!すごいでしょ!」

歩夢「すごいかなぁ。でも偉かったね」

侑「歩夢。ノートはちゃんと取ったからさ、後で教えてほしいとこあるんだよね」

歩夢「もちろんいいよ。私でわかる範囲ならね」

侑「歩夢がわかんない範囲なんかないでしょ~」

歩夢「わ、私そこまで勉強得意じゃないよ」

侑「万が一歩夢がわかんなかったら、菜々ちゃんに聞いてみるから大丈夫」

歩夢「私にわからない範囲なんかないから、安心してなんでも聞いてね」

侑「え?」
 
485:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/10(木) 21:20:51.51 ID:2Zlou1o4
中庭


侑「かすみん!璃奈ちゃん!みーつけた!」

歩夢「こんにちは、二人とも」

かすみ「ほらーも~、だから中庭はやめようって言ったのにー」

侑「あ!かすみん私達のこと避けようとしたの!?」

かすみ「歩夢せんぱいのことは避けようとしてませんよ」

侑「私だけーっ!」ガーンッ

璃奈「かすみちゃん、嘘はよくない」

璃奈「侑さんが声をかけてくれたとき、ちょっと嬉しそうだった」

侑「え…!?」パァ

かすみ「そ、そんなことないですよ!変なこと言わないでよ、璃奈ちゃん!」

璃奈「コッペパンいただきます」ハム

かすみ「ちょっとーっ!」
 
486:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/10(木) 21:22:30.80 ID:2Zlou1o4
歩夢「まあまあ、落ち着いてかすみちゃん。一緒にお昼食べていい?」

かすみ「もちろんですぅ!」

侑「私かすみんの隣ねーっ」ムギュ

かすみ「は、離れてくださいよぉぉ…」ギギギ

侑「押さないでぇぇ…」ギギギ

歩夢「二人とも子どもみたいなんだから。璃奈ちゃん、お隣に失礼するね」スッ

璃奈「うん」モグモグ…
 
487:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/10(木) 21:26:42.17 ID:2Zlou1o4
侑「二人は毎日一緒に食べてるの?」

璃奈「今のところ。かすみちゃん、欠かさずパン持ってきてくれる」

歩夢「大変じゃない?」

かすみ「べ、別に大変なんかじゃないですよ。もうパン作りはかすみんの日課の一つみたいなものなので…」

侑「あ、ねえかすみん。レモンクリームは?」

かすみ「まだ作ってませんよ」

侑「えーっ…」

かすみ「作ったら教えるって言ったじゃないですか」

侑「忘れてるだけかなーとか」

かすみ「ああ。作ったけど忘れてるだけかもしれませんね」

侑「そんなあ!?」

璃奈「持ってきたことないよ。レモンクリーム」モグモグ…

歩夢「そうだよね」ニコニコ
 
488:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/10(木) 21:33:55.48 ID:2Zlou1o4
璃奈「歩夢さん達、今日はお弁当同じじゃない」ジッ

歩夢「そうなの。本当は毎日私が侑ちゃんの分も作りたいんだけど」

璃奈「作らないの?」

歩夢「うん──…」

侑「これ以上歩夢に甘えたら私だめになるもん!朝も昼も歩夢に甘えっ放しなんてまずいよ!」

歩夢「って言うから」

かすみ「お昼はお弁当のことですよね?朝ってなんですか?」

侑 ギクッ

璃奈「朝ごはん、一緒に食べてるの?」

歩夢「毎日侑ちゃんのこと起こ

侑「そっそうそう!朝ごはんも毎日一緒だもんね、歩夢ぅ!」

歩夢「…そうだね」ニコッ

かすみ「随分仲良しさんなんですね~」
 
489:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/10(木) 21:42:00.81 ID:2Zlou1o4
侑「でも毎日一緒か~、いいね」

歩夢「私達でも毎日は一緒じゃないのにね」

かすみ「璃奈ちゃんにパンを渡しますからね。自然とそうなるんですよ」

璃奈「…」

侑「かすみんのパン食べたいっていうクラスメイトとか多いんじゃない?」

かすみ「前はよく声かけられましたけどね。璃奈ちゃんにあげる分だって毎日言ってたから、最近はそんなこともなくなりましたよ」

侑「そうなんだ~」

歩夢「学科が違うのに仲良しのお友達がいるのっていいことだよね」

侑「私は学年も違う友達がたくさんいるよ!」

かすみ「へえ、そうなんですか」

侑「かすみんとかね」

かすみ「あ、かすみん達のことですか…」

侑「なにその反応ーっ!?」
 
490:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/10(木) 21:49:13.97 ID:2Zlou1o4
歩夢「璃奈ちゃんはクラスのお友達とお昼ごはん食べること、ないの?」

璃奈「!」

璃奈「私、ごはんは一人で食べることが多い…から」

侑「そうなの?」

かすみ「えーっ、もしかしてかすみんと毎日ごはん食べるのイヤだった?」

璃奈「イヤじゃない。嬉しい」フル…

かすみ「えへっ、だよね♡こんなに可愛いかすみんと一緒にお昼ごはん食べられるなんて幸せだもんね!」

侑「私、一人でごはん食べてたら退屈になっちゃうんだよね。すぐ誰かと話したくなっちゃう」

歩夢「お休みの日でしょ?呼んでくれたら行くのに」
 
491:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/10(木) 21:52:51.20 ID:2Zlou1o4
侑「そうだ、一人ごはんの会とか作ろうよ!」

歩夢「一人ごはんの会?」

侑「うん。一人でごはん食べることになったら声をかけて、一緒に食べる会!どうかな?」

かすみ「…まあ、好きにしたらいいと思いますけど」

璃奈「一緒に食べるんだったら、一人ごはんじゃない」

侑「はっ!確かに!」

侑「それじゃ二人ごはんの会?ううん、三人とか四人で食べたいこともあるし…毎回会の名前を変えるのは…変かなぁ…」ウーン…

かすみ「侑せんぱいは忙しないですねぇ」

歩夢「そういうところも可愛いんだよ」

璃奈「…」


かすみと璃奈とお昼ごはんを食べました! ▼
 
496:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/11(金) 08:06:00.46 ID:vby7F7CF
放課後…


ふと思い出した。

朝出るとき、台所に大量のじゃがいもがあったな。

季節的に新じゃがなんだろうけど、なにもあんなに用意しなくても…

お母さん、極端なところあるもんなぁ。

今日の…っていうか、しばらくの晩ごはんが気になるね。


どうしよっかな? >>497
1.一人で帰る
2.歩夢と帰る
3.寄り道して帰る(演劇部、中庭、お台場から選択)
4.誰かに連絡する(菜々、璃奈、果林から選択)
 
497: (八つ橋) 2020/12/11(金) 08:18:47.74 ID:SgWjDtFQ
りなりーで
 
498:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/11(金) 08:28:03.11 ID:vby7F7CF
侑「うーん…」

歩夢「侑ちゃん、どうしたの?」

侑「ねえ歩夢、一人ごはんの会のことなんだけど」

歩夢「まだそのこと考えてたんだ…」

歩夢「なに?」

侑「活動って土日だけがいいのかな」

歩夢「私、よくその会の目的がわかってないんだけど…一人でごはんを食べることになったら、って言うんだったら平日でもいいんじゃないの?」

侑「そっかあ」

歩夢「毎日誰か誘おうとか考えてる?」ジッ

侑「いや~、さすがに毎日なんてつもりはないんだけど…」

侑「ちょっと、人に連絡してもいい?」エヘ

歩夢「お好きにどうぞ」ハァ
 
499:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/11(金) 08:34:37.28 ID:vby7F7CF
校門傍


侑「お待たせ、璃奈ちゃん」

璃奈「さっきぶり、です」ペコ

侑「ごめんね、急に帰るの誘っちゃって。用事とかなかった?」

璃奈「大丈夫」

侑「よかった!」

歩夢「璃奈ちゃん、お家どの辺なの?」

璃奈「あっち。有明の方」スッ

侑「割と近いよね?」

璃奈「頑張れば歩ける距離」

侑「だと思ったんだ。ゲームセンターで会ったもんね」
 
500:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/11(金) 08:38:48.83 ID:vby7F7CF
璃奈「侑さん達も、有明?」

侑「ううん、私達は東雲の方なんだ」

璃奈「…一緒に帰るの、難しそう」

侑「あはは。ここからもう反対方向だもんね」

璃奈「一緒に帰れて楽しかった、です」

侑「わー、待って待って!そうじゃないの!」

璃奈「?」

侑「璃奈ちゃん、よかったら今日うちで晩ごはん食べない?」
 
501:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/11(金) 08:43:10.20 ID:vby7F7CF
侑「だからねー、たぶんじゃがいものフルコースみたいになると思うんだよねー」トコトコ

歩夢「いいじゃない、じゃがいも。好きでしょ?」トコトコ

侑「好きだよ。好きだけど、あの量を見ちゃうとちょっとビビっちゃうっていうかさ」

侑「璃奈ちゃんはじゃがいも好き?」

璃奈「好き」コクン

侑「よかった。なににしてほしいとかある?お母さん、たぶん普通の料理ならなんでもできると思うから」

璃奈「…わかんない」

侑「んー、じゃがいもの料理って言われても確かにあんまり思いつかないかもね。歩夢、なにか思いつく?」

歩夢「新じゃがだったら形をそのまま使うことが多いと思うよ。やっぱり煮るのが多いんじゃないかな」

侑「煮っころがしってやつだ!」

歩夢「そうそう」
 
502:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/11(金) 08:47:30.50 ID:vby7F7CF
歩夢「甘辛煮が多いけど、のり塩のレシピとかもあるみたい」っスマホ

侑「はちみつもある!デザートみたいになるのかな?」

歩夢「じゃがいもだからデザートみたいにはならないんじゃないかなぁ…」

侑「グラタン、フライドポテト、ポテトサラダ…わ、ガレット?とかいうのもあるよ」

歩夢「やっぱりじゃがいもって色んなお料理に使えるんだね」

侑「どう?璃奈ちゃん。なにか食べてみたいものはあった?」

璃奈「これ」っスマホ


『絶品!新じゃがとお豆腐のお味噌汁』


侑「へー、お味噌汁か。簡単だしすぐ作ってくれるよ、きっと。お母さんに連絡しとくね!」スマスマ

璃奈「うん」
 
503:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/11(金) 08:53:34.01 ID:vby7F7CF
歩夢「璃奈ちゃんも、お家に連絡しておかなくて大丈夫?お外でごはん食べてくるって」

璃奈「うちは、平気」

歩夢「そう?それならいいんだけど」

侑「有明なら帰りも送っていくから心配しないでね」

璃奈「ありがとう、ござい、ます」

侑「もー、敬語じゃなくていいんだってば。私と歩夢のことはお姉ちゃんみたいなものだと思っていいからね。ね、歩夢」

歩夢「うん。なにかあったらいつでも言ってね」

璃奈「うん…」
 
504:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/11(金) 08:56:07.38 ID:vby7F7CF
歩夢「それじゃ、私はここだから」

璃奈「隣なんだ」

歩夢「そうなの。今日は自分の家でごはん食べるけど、今度は一緒に食べようね」

璃奈「うん」

侑「また明日ね、歩夢」

歩夢「また明日ね。侑ちゃん、璃奈ちゃん」

璃奈「さようなら」


…バタン


侑「で、私はこっちね。入って入って!」

璃奈「お…お邪魔します」オズ…
 
505:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/11(金) 08:59:50.47 ID:vby7F7CF
侑の家


侑「おかあさーん、ただいまー。璃奈ちゃん連れてきたよー」

高咲母「お帰りなさい。璃奈ちゃんは…」

璃奈「お邪魔します」チマッ

高咲母「あら、小さくて可愛い子ね」

侑「でしょー!一年生なんだけど、最近仲良くなったんだ」

高咲母「遠慮しないでゆっくりしていってね。苦手な食べ物はある?」

璃奈「ない、です」

高咲母「そう。もし食べられないものがあったら侑にあげたらいいからね。ごはんができるまで待っててね」

侑「私も苦手なものあったら璃奈ちゃんにあげよーっと」

高咲母「侑はだーめ」

侑「なんでー!」ブー
 
506:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/11(金) 09:03:37.51 ID:vby7F7CF
侑の部屋


侑「璃奈ちゃん、マンガとか好き?」

璃奈「たまに読む」

侑「私ん家、マンガくらいしか面白いものないからさ。気になるのあったら読んでいいからね」

璃奈 ジッ…

璃奈「…これ」チョン

侑「あ、閏都市学園知ってる!?」

璃奈「知ってる。観てた」

侑「そうなんだー、やっぱり有名なんだね!それ、友達のやつで預かってるんだ。あ、菜々ちゃんなんだけどね。観る?」

璃奈「…今はいい」

侑「晩ごはんまでに全然間に合わないもんね。借りたかったから言ってね、菜々ちゃんに聞いてみるからさ」
 
508:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/11(金) 09:08:24.51 ID:vby7F7CF
>>506
訂正

×侑「晩ごはんまでに全然間に合わないもんね。借りたかったから言ってね、菜々ちゃんに聞いてみるからさ」

○侑「晩ごはんまでに全然間に合わないもんね。借りたかったら言ってね、菜々ちゃんに聞いてみるからさ」
 
507:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/11(金) 09:07:18.70 ID:vby7F7CF
璃奈「今日、なんで誘ってくれたの?」

侑「え?」

侑「んー…なんとなく?」

璃奈「そう」

侑「かすみんは誘っても断られちゃうかなーって思ったのもあるんだけど、記念すべき一人ごはんの会第一回は璃奈ちゃんとがいいなって!」

璃奈「一人どころか、三人。四人?」

侑「お父さんは遅くなると思うから、三人だね。三人ごはんの会」

璃奈「いつも、お母さんと二人なの?」

侑「のことが多いかなぁ。お父さん、仕事の時間が日によって違うんだよね。もちろん一緒に食べる日だってあるよ」

璃奈「…そう」
 
509:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/11(金) 09:13:48.82 ID:vby7F7CF
侑「かすみんとはどう?」

璃奈「一緒にお昼ごはん食べるの、楽しい。いっぱいお話してくれる」

侑「いい子だよね、明るくて可愛いし」

璃奈「うん…」

侑「…どうかしたの?」

璃奈「…私、かすみちゃんの邪魔になってないかな」

侑「えっなんで!?なってないと思うよ!」

璃奈「かすみちゃん、私がいるから、クラスメイトとお昼ごはん食べなくなった、って」


──侑「かすみんのパン食べたいっていうクラスメイトとか多いんじゃない?」

──かすみ「前はよく声かけられましたけどね。璃奈ちゃんにあげる分だって毎日言ってたから、最近はそんなこともなくなりましたよ」


侑「…!」
 
510:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/11(金) 09:18:44.79 ID:vby7F7CF
璃奈「私、元々一人でごはん食べるの慣れてる」

璃奈「パンをくれた後も一緒にいてくれるの、やめてもいいって…」

侑「そんなこと、ない!」

璃奈「!」

侑「かすみんが無理やり璃奈ちゃんに付き合ってるとか、そのことで窮屈な思いしてるとか、そんなこと絶対にないよ!」

璃奈「どうして?」

侑「だって、璃奈ちゃんと話してるときのかすみんすっごく楽しそうだもん。それにコッペパン毎日持ってきてくれるんでしょ?璃奈ちゃん以外の友達とお昼ごはん食べたかったら、持ってこなきゃいいんだけなんだよ」

侑「あれから一日も欠かさずに持ってきてるなんて、璃奈ちゃんと一緒にお昼ごはん食べたいと思ってなきゃできないことだよ!」

侑「だから、そんな風に考えないで。かすみんだってそう思われたら寂しくなっちゃうよ」

璃奈「……うん」コクン
 
511:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/11(金) 09:24:28.73 ID:vby7F7CF
侑「でもいいなー、毎日かすみんのコッペパン。毎日種類違うの?」

璃奈「同じこともあるけど、だいたい違う」

侑「すごいよね、あんなに種類あったら材料費とかいっぱいかかっちゃいそうだし」

璃奈「もう少し払うって、言ったけど。100円でいいって言われた」

侑「あんなに美味しいんだからもっと高くても全然買うのにねー」

璃奈「買う」

侑「………って、100円!?」

璃奈「う、うん」

侑「私が買ったとき120円だったよ!?」

璃奈「そ、そう」

璃奈「この間かすみちゃんのスマホを見てあげてからは、80円にしてくれた」

侑「さらに下がったの!?ずるい!」

璃奈「ずるくてごめんなさい」

侑「あっいや、璃奈ちゃんを責めたわけじゃなくて…」
 
512:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/11(金) 09:27:38.06 ID:vby7F7CF
侑「はーーー」

侑「これが学年の差なのかなぁ。私が一年生だったら同じようにしてくれたのかなぁ…」

璃奈「スマホ見てあげたら?」

侑「私にはそんな技術ないよ…スマホ見てあげたって、調子悪かったの?」

璃奈「タップの効きが悪い箇所があったから、回路を少し調整した」

侑「り──璃奈ちゃん、そんなことできるんだ!」

璃奈「機械のことはわかる」

侑「情報処理学科ってすごいんだなぁ…!」
 
513:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/11(金) 09:32:42.82 ID:vby7F7CF
侑「…ん」

侑「璃奈ちゃん、機械とか強いんだよね?」

璃奈「それなりにわかる」

侑「スマホのアプリとか詳しい?」

璃奈「内部の作りまでは、そんなに」

侑「ううん、そんなんじゃなくて。普通に使い方とかすぐわかっちゃう方だったりするのかなーと思って」

璃奈「よっぽど凝ったものじゃなければ、だいたいのものはすぐわかる、と思う」

侑「なるほど…」

璃奈「なにか、わからないアプリがあるの?」

侑「私がっていうよりは他の人なんだけどね…」

侑「璃奈ちゃん、明後日の土曜日ってなにか予定あるかな──?」


璃奈と晩ごはんを食べました! ▼
 
523:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 07:44:16.21 ID:CZlXaVnw
翌朝…


侑「お待たせ~」タタタ

歩夢「行こっか」

侑「うん!」


今日は少し曇り空。

梅雨にはまだ早いけど、これから曇りや雨の日が増えていくのかなぁ。

朝から雨が降ってれば私だってちゃんとカサ差していくんだよ。

今日はないけど。


歩夢「朝ごはん、じゃがいものお味噌汁だったでしょ」

侑「さっすが歩夢、よくわかったね!」

歩夢「璃奈ちゃん喜んでた?」

侑「おかわりしてたから、たぶん。緊張もしてたみたいだけど」

歩夢「うふふ、そうだよね」
 
524:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 07:54:30.88 ID:CZlXaVnw
お昼休み…


お味噌汁に加えて、朝からじゃがバターを食べたのはさすがに驚いた。

じゃがバターって食べる前は重そうであんまり気が進まないんだけど、食べ始めるとやっぱり美味しくてぺろっと食べちゃうんだよね。

あんなに簡単なのにすごいなぁ。


どうしよっかな? >>525
1.教室で食べる
2.中庭で食べる
3.屋上で食べる
4.生徒会室で食べる
 
525: (たこやき) 2020/12/14(月) 07:58:39.39 ID:DaercXeV
4
 
526:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 08:04:41.84 ID:CZlXaVnw
今日はどこでお昼ごはん食べようかな~。

曇ってるけどまだ降りそうでもないし、中庭でもいいよね。

はんぺんと璃奈ちゃん達にも会いたいし…


侑「あ」

歩夢「どうしたの?」ヒョコ

侑「歩夢。今日、菜々ちゃんとお昼ごはん食べない?」

歩夢「…いいよ」

侑「行く前に連絡しとくね」スマスマ
 
527:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 08:08:51.67 ID:CZlXaVnw
侑「お弁当もじゃがいもかなぁ」トコトコ

歩夢「どうだろうね。作り立てでほくほくしてるときがやっぱり一番美味しいと思うけど、侑ちゃんのお母さんなら冷めても美味しいお料理を作ってくれそうだよね」トコトコ

侑「だよね。まさかじゃがバターは入ってないと思うけど」

歩夢「ホイル焼きくらいならあるかもね」

侑「台所から香ばしい匂いがしたんだよなぁ。なんだったんだろう」

歩夢「…おせんべい?」

侑「お弁当に!?」
 
528:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 08:13:01.73 ID:CZlXaVnw
生徒会室


侑「こんにちは、菜々ちゃん」

歩夢「こんにちは」

菜々「いらっしゃい、と言うのも変ですね。わざわざ来てくださってありがとうございます」

侑「わざわざなんてそんな。私から誘ったんだもん」

歩夢「侑ちゃんがいつも急に誘っちゃってごめんね」

菜々「本当ですよ。もっと計画性を持ってくださいね、何事も」

侑「もー、二人してそういうこと言うのやめてよ。はい、お昼にしよ!お説教終わり!」パン

菜々「まったく…」クス
 
529:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 08:17:07.34 ID:CZlXaVnw
「「「いただきます」」」

侑「…見て菜々ちゃん!」

菜々「わ。見事なまでのじゃがいも尽くしですね」

侑「お母さんがいっぱい買ってきちゃってね、昨日からこんな調子なんだよ」

菜々「お母様のことだから張り切ってらしたんでしょうね」

侑「昨日の夜も友達連れて帰ったんだけど、もうすっごく張り切ってたよ!」

菜々「あはは。目に浮かびますよ」

歩夢「ゆ、侑ちゃん。これじゃない?香ばしい匂いがしてたってやつ!」

侑「どれどれ?……これなに?」

菜々「薄焼き…でしょうか」
 
530:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 08:24:52.60 ID:CZlXaVnw
侑「薄焼き…も、なに?」

菜々「長野県の郷土料理です。お好み焼きのような生地で季節の野菜や果物を包んで焼いたものだそうですよ」

侑「へー、菜々ちゃん物知りだね!」

歩夢「これはチーズを生地にしてるみたい。カリカリしてて美味しそうだね」

侑「チーズかぁ。歩夢、一つ食べる?菜々ちゃんも」

歩夢「うん、頂こうかな」

菜々「頂いてしまっていいんですか?」

侑「いいよ!美味しいものはみんなで食べたいじゃん」

菜々「で、では遠慮なく…」

歩夢「代わりにお弁当から一番気になったおかずを食べられちゃうから気をつけてね」

侑「トンビみたいに言わないでよー」

歩夢「私の方は…梅ささみがいいよね」ヒョイ

侑「ありがと!さすが、わかってる!」

菜々「ふふっ。私のお弁当からはなにが欲しいですか?」

侑「んー………これ!貰ってもいい?」

菜々「もちろんです。どうぞ」
 
531:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 08:32:43.73 ID:CZlXaVnw
カリッ ジャクジャク…


侑「ん!美味しい!」

菜々「不思議な食感ですね」

歩夢「しらすの香りがいいアクセントになってるね」

侑「帰ったらこれなんなのか聞いてみようっと」

侑「もっと偏ったお弁当になってるかと思ったけど全然そんなことないね」

歩夢「そうだね。こっちのはたぶんオイスターソースで、のり塩、食感も味もそれぞれ違って飽きないお弁当になってそうだもん」

菜々「侑のお母様は本当にお料理が上手なんですね」

歩夢「………ん…?」

侑「えへへ~、いいお母さんを持ってよかったよ」

菜々「そう思えて、しかも素直に口に出せるのは侑のとてもいいところですよね」

侑「そうかな?」テレ

歩夢「……………………………侑?」
 
532:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 08:37:40.98 ID:CZlXaVnw
侑「菜々ちゃんのお母さんだって料理上手じゃん。このカツ美味しいよ!」

菜々「ふふ。昨日油を使っていた様子はないので、恐らくそれは出来合いのお惣菜だと思いますよ」

侑「あ、あれぇ…?」

菜々「先日のお礼も兼ねて、次は夕飯に招待させてください。父がいると気を遣わせてしまうと思うので、母だけの日にでも」

侑「お礼なんていいよ、私もお母さんも楽しかったもん。それよりまた食べにきてね。今日でもいいよ!」

菜々「きょ、今日というのは急過ぎますね…」

歩夢「侑ちゃん」

侑「うん、なに?歩夢」

歩夢 ジッ

侑「歩夢…?」

菜々「?」
 
533:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 08:43:49.65 ID:CZlXaVnw
歩夢 パク…

歩夢 …

歩夢 ニコッ…

歩夢「このチーズのやつ、すごく美味しいね。よかったらレシピ教えてほしいなってお母さんに伝えておいてくれない?」

侑「オッケー!歩夢も作れるようになったらいつでも食べられるようになるもんね」

歩夢「誰が侑ちゃんに作ってあげるって言いましたかー?」

侑「え~っ、作ってよー!食べたいよ!」

歩夢「うふふ…もう、仕方のない侑ちゃん。いいよ」

侑「へへ、やったぁ!」

菜々「歩夢さんもお料理が得意なんですよね、尊敬します」

侑「菜々ちゃん、歩夢に教えてもらったら?」

菜々「えっ」

歩夢「えっ」
 
534:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 08:47:44.41 ID:CZlXaVnw
侑「歩夢丁寧だし、料理も上手いし、先生にちょうどいいと思うんだ!」

歩夢「そ、そんな、私まだ人に教えられるようなレベルじゃないから…」

侑「菜々ちゃんも料理できるようになったら、私にもいっぱい作ってほしいなぁ」

菜々「それは…頑張ります…!」

歩夢「…っ」

菜々「お忙しくない日でいいので、歩夢さん、お料理を教えていただけますか…?」

歩夢「う、うん……」

歩夢「いいよ…」

菜々「本当ですか!ありがとうございます!」ペカー
 
535:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 08:54:48.86 ID:CZlXaVnw
菜々「というか、侑は教わらないんですか?」

侑「私は食べる専門なんだよね。ほら、誰かのために作る方が捗るって言うしさ!」

菜々「お互いに作り合えばいいと思いますが」

侑「一緒に作るとキッチンが混んじゃうからね」

菜々「合理性を求めた結果ということですか」

侑「そうそう、そういうことなの!」

菜々「なるほど…」

侑「歩夢がお菓子作ってくれてるときは、邪魔にならないようにお手伝いしてるんだよ。ね、歩夢」

歩夢「…」

侑「歩夢?」

歩夢「ぁ、うん、なに?」

侑「ぼーっとして、珍しいね。金曜日だし疲れちゃった?」

歩夢「あはは…そうかも」

侑「今日は早めに帰ろうね」

歩夢「うん、そうしよ」
 
536:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 08:59:31.02 ID:CZlXaVnw
「「「ごちそうさまでした」」」

菜々「お二人とご一緒していると、いつもお昼休みがあっという間に終わってしまいますね」

侑「楽しい時間は過ぎるのが早いからね」

菜々「本当にその通りだと実感しますよ」

歩夢「ギリギリまで生徒会室使っちゃってごめんね」

菜々「いえいえ。私が勝手に居着いているだけで、通常お昼休みは誰も使わない部屋ですからね」

歩夢「そろそろ行かなくちゃね」

侑「あ、歩夢ごめん。先に出ててもらえる?」

歩夢「え?」

侑「少しだけ菜々ちゃんと話したいことがあってさ」

歩夢「え?うん…私がいちゃ、だめなこと…?」

侑「ってわけでもないんだけど…えっと…」

歩夢「……わかった。お昼休み終わっちゃうから、早くしてね」

侑「うん、ありがと!」
 
537:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 09:04:18.71 ID:CZlXaVnw
…バタン


菜々「どうかしましたか?わざわざ歩夢さんを追い出してまで」

侑「せつ菜さんにお礼を言っとこうと思って」

菜々「! せつ菜に、ですか?」

侑「同好会のみんなに話してくれたんだよね、私と話したこと。そのお礼」

菜々「あ…ああ」

侑「あの後彼方ちゃんと話す機会があったんだけど、せつ菜さんが話しておいてくれたおかげでお互いに受け入れやすかったっていうかさ」

菜々「そのくらい、お礼を言われるようなことではありませんよ。部長として当然に果たすべき責任ですから」

侑「それでも。お礼言いたかったの!」

菜々「…頑固なんですから」クス
 
538:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 09:05:56.02 ID:CZlXaVnw
侑「せつ菜さんも同じくらい頑固だよー」

菜々「あ!言いましたね!?」

侑「褒め言葉だよ、褒め言葉。そういうところがせつ菜さんらしいし頼りになるってこと!」

菜々「あなたの中でせつ菜はどんなイメージなんですか、まったく…」

侑「えへへ…」
 
539:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 09:10:59.17 ID:CZlXaVnw
侑「ライブ、もう来週だね」

菜々「そう、ですね」

侑「楽しみにしててもいい?」

菜々「…期待に応えたいとは思っています。全員」

侑「…うん」

侑「私、スクールアイドルのライブってまだ観たことないんだよね。生で」

侑「だからすごく楽しみにしてるんだ。大好きな人達がやるんだから、なおさら」

侑「でも無理はしないでね」

菜々「──…!」

侑「たとえ来週ライブができなくても、今回のステージが使えなくなっちゃっても、私はずっと応援してるよ。いつになっても、どこになっても必ず駆けつけて最前席で応援するから!」

侑「だから、みんなが納得できるまで、諦めないでね」

菜々「────」

菜々「…はい、ありがとうございます。その気持ち、部員の皆さんにも伝えておきますね」

侑「うん!」


菜々とお昼ごはんを食べました! ▼
 
542:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 18:57:10.79 ID:CZlXaVnw
放課後…


歩夢「侑ちゃん。帰ろう」

侑「歩夢。待ってね、すぐ片付けるから」ゴソ…

歩夢「今日はまっすぐ帰らない?」

侑「>>543


1.そうしよう
2.どうしよっかな…
 
543: (やわらか銀行) 2020/12/14(月) 18:57:38.53 ID:x56ULGsx
2
 
545:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 19:01:39.69 ID:CZlXaVnw
侑「あー…」

侑「えっと、」

侑「どうしよっかなぁ」ハハ…

歩夢「…なにか約束でもあるの?」

侑「いや、約束があるわけじゃないんだけどさ」

歩夢「だったらいいじゃない」

歩夢「ねえ、帰ろう?」ズイ

侑「>>546


1.そうだね
2.しずくと話したいんだ
3.菜々と話したいんだ
4.かすみと話したいんだ
 
546: (もんじゃ) 2020/12/14(月) 19:05:24.90 ID:Xxk5mQrp
3
 
547:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 19:13:42.61 ID:CZlXaVnw
侑「菜々ちゃんに確認しときたいことがあるの忘れててさ、ぱっと連絡していい──」

歩夢「だめ」

侑「歩夢…?」

歩夢「なんで?なにを確認するの?さっき二人っきりで話したじゃない。私は外で待ってたのに、楽しそうに笑って…」

侑「あれはその、」チラッ


クラスメイト ワイワイ…


侑 (歩夢に話すのはいいとして、菜々ちゃんがせつ菜さんなのは一応他の子がいないところで話した方がいいよね)

侑「…後で話すよ、だから


バンッ!!!
 
548:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 19:15:51.28 ID:CZlXaVnw
シン……


侑「あ、歩夢……?」


「高咲さん、どうかしたの…?」

侑「や、ううん、なんでも…」

侑「どうしたの歩夢、机叩くなんてらしくない──」


歩夢 ポロポロ…


侑「…歩夢!?」ギョッ…
 
549:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 19:22:52.86 ID:CZlXaVnw
侑「あ、あゆむ、なん…泣いて……」オロ

歩夢「どうして?」

歩夢「どうして今話してくれないの?」

歩夢「菜々ちゃんとお話しする方が大事なの…?」ポロ…

侑「そんなんじゃないよ!ただここで話すのはちょっとって思っただけで…」

歩夢「だったら場所変えよう。屋上でも家庭科室でも裏庭でもお台場でも、話せるところならどこでも付き合うから」

侑「うん、うん、そうしよっか。他の人がいない方がいいってだけで、どこでもいいんだ。帰りながら話そ?ね?」

歩夢「校門で待ってたらいいの?菜々ちゃんとお話しするのどのくらいかかる?一緒に帰っちゃうんじゃないの?」ポロ…ポロ…

侑「ううん、菜々ちゃんのことはいいよ。帰ったらラインで話すから。待ってなくていい、すぐ帰ろうね」

歩夢 グス…

侑「カバン持つよ。歩ける?」

歩夢 コクン…

侑「びっくりさせてごめんね、みんな。また来週」ノシ
 
550:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 19:25:52.10 ID:CZlXaVnw
帰り道


歩夢 トボトボ… スン…スン…

侑 キョロ…

侑「歩夢、一旦座ろっか。あそこ、ね?」

歩夢 コク…

侑「飲み物買ってくるよ。ココアでいい?」


キュ


歩夢「やだ」

歩夢「飲み物なんかいらない。買ってこなくていいから」

歩夢「隣にいて」

侑「………わかったよ」
 
551:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 19:28:02.90 ID:CZlXaVnw
歩夢 スン………スン…………

侑 ポン…ポン…

歩夢 ………ヒク……………スン……

侑 ポン…ポン…

歩夢 ………………スン…

侑「落ち着いた?」

歩夢「…うん」
 
552:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 19:31:38.48 ID:CZlXaVnw
歩夢「………」

侑「…」

歩夢「………」

侑「…なんか、びっくりさせちゃったかな。私」

侑「歩夢があんな風に泣いちゃうなんて、きっと私なにか変なことしたんだよね。ごめんね」

歩夢「………」

侑「なにがイヤだったか、教えてくれる?」

歩夢「………」

侑「…」

歩夢「……菜々ちゃん、」

歩夢「侑ちゃん、の、こと…」

歩夢「………『侑』って、呼んでた」

侑「…そうだね」
 
553:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 19:35:52.90 ID:CZlXaVnw
歩夢「侑ちゃん、あんまり…呼び捨てにされること、ない…のに」

侑「…」

歩夢「……菜々ちゃん、前まで『侑さん』だったのに」

歩夢「今日は、『侑』って」

侑「だね。知らないうちに変わってたから驚かせたんだよね、ごめん」

歩夢「…………菜々ちゃん、」

歩夢 …ッ

歩夢「…菜々、ちゃん…と、」

歩夢「なにか………あった、…の?」

侑「ないよ。なんにもない」
 
554:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 19:39:33.71 ID:CZlXaVnw
歩夢「だっ

侑「お母さんが呼び捨てにしちゃえって煽ったんだよ、菜々ちゃんに」

歩夢「……っ、お母さんが…?」

侑「うん。ほら、週末菜々ちゃん来てたって言ったでしょ?あのときにね、同い年なのに敬語だったりさん付けだったりしてるのが面白かったみたいでさ」

侑「菜々ちゃんもまじめだから真に受けちゃって、私が口を挟むひまもないまま呼び捨てに変わっちゃったんだよ」

歩夢「…じゃあ…」

侑「うん。なんにもないよ」

侑「私と菜々ちゃんの関係性が変わったとか、そういうことは全くないから」

侑「驚かせてごめんね」
 
555:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 19:47:12.04 ID:CZlXaVnw
歩夢「……じゃあ…」

歩夢「じゃあ、お昼のは?私に聞かせないようにして、二人でなんの話をしてたの?」

侑「同好会のことだよ。スクールアイドル同好会」

侑「菜々ちゃんがうちに来たときにせつ菜さんともお話ししたんだけどさ、そのときのこと、すぐに同好会のみんなに共有してくれてたみたいなんだ。月曜日の放課後にね」

侑「その後彼方ちゃんと話したんだけど、せつ菜さんがその話をしてくれてたおかげで、お互いに変な気を遣わなくて済んだからさ」

侑「そのお礼を、ちゃんと言っておきたかったんだ」

歩夢「…」

侑「歩夢は菜々ちゃんがせつ菜さんだってわかってたみたいだけど、私達の間ではっきりその話ってしてないじゃん?だから、一応二人きりで話す方がいいかなと思って」

侑「余計な心配かけちゃったよね。ごめんね」
 
556:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 19:50:47.13 ID:CZlXaVnw
歩夢「…」

侑「さっき確認し忘れたって言ったのは、アニメのことでね」

侑「菜々ちゃんのブルーレイボックス預かってるって話したでしょ?あれ、明日璃奈ちゃんに貸してもいいかなーと思って、聞いときたくてさ。璃奈ちゃんも興味あるみたいだったから、せっかく明日会うんだしって」

侑「でも別にラインで話せばよかったよね。歩夢を放ったらかしてわざわざ直接話すようなことでもなかったよ」

侑「気が回らなくてごめんね」
 
557:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 19:53:00.96 ID:CZlXaVnw
歩夢「………」

侑「私が話しておかなくちゃいけないことは、これくらいかな」

侑「他に思い出せてないことあったらごめん、なにか気になってること、ある?」

歩夢「…………ううん、ない」

侑「そっか。よかった」ニコッ
 
558:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 19:56:51.84 ID:CZlXaVnw
歩夢「…………ごめん、なさい…」

侑「え?なんで歩夢が謝るの?」

歩夢「……私、侑ちゃんの話もちゃんと聞かないまま、一人で勝手に怒ったりして…」

侑「ううん、私がきちんと話してなかったからだよ。歩夢は悪くない」

歩夢「…クラスのみんなにも、心配かけちゃった…」

侑「あはは。それは月曜日にちゃんと謝ろうね。私も一緒に謝るからさ」

歩夢「………うん」
 
559:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 20:06:03.09 ID:CZlXaVnw
歩夢「…………」


それきり、歩夢は押し黙ってしまった。

たぶん、色々なことを考えてるんだ──この間ベランダで話したこととか。

歩夢は私のことをすごく大切に、特別に想ってくれてる。

だから、私との関係が変わっちゃいそうになると不安になるみたい。

クラスにすごく仲のいい友達ができたりしたときに、これまでにも二回こんなことがあった。

そのたびに歩夢が不安に思ってることを話してもらって、私は自分のよくなかったところを反省する。

そうして私達は今まで変わらない関係を──ううん、絆を強くしてきたんだよね。
 
560:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/14(月) 20:15:47.71 ID:CZlXaVnw
今回は一気にたくさんの新しい友達ができて、歩夢もいっぱいいっぱいになっちゃったんだと思う。

いつも支えてもらってるのに、やっぱり私は歩夢を不安にさせちゃうんだ。

起こしてもらったり、話を聞いてもらったり、お菓子を作ってもらったり、無駄遣いを止めてもらったり、勉強を見てもらったり──

他にもたくさん、たくさん支えてもらってる。

私は歩夢なしじゃだめなんだ。

私の一番はずっと歩夢だった。

これからもそれは変わらない。

歩夢との関係が変わっちゃうなんて、私の方からお断りだもんね。


侑「歩夢」

侑「私はずっと、歩夢の一番傍にいるからね」


その言葉が、決意が、

──────私の首を絞めることになるなんて、想像できてなかったんだ。


歩夢と帰りました! ▼
 
570:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/15(火) 07:50:59.55 ID:Qyx4yZ2o
夜…


侑「…」


浴槽に口元まで沈んで、右手をぼんやり眺める。

いつからだっけ、歩夢と歩くときに手を繋がなくなったのは。

手を引いたり引かれたりすることはあっても、固く繋ぎ合うことなんかもうここ数年なかったよね。

明日は笑顔。

そう約束してくれた代わりに、帰るまで歩夢は無言で、ただなにかを伝えるみたいに強く私の手を握ってた。


侑 ブクブクブク…


いつまでもこうしちゃいそうだな。

あがろうっと。
 
571:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/15(火) 07:57:10.08 ID:Qyx4yZ2o
部屋に戻ると、暗い部屋に緑の点滅。

見ると、


侑「!」


『しずくちゃん:侑先輩』


侑「しずくちゃんだ…!」パァ


『しずくちゃん:この声が届いていますか?』

『しずくちゃん:私の声が』


どうしようかな? >>572
1.メッセージを返す
2.電話をかける
3.反応しない
 
572: (茸) 2020/12/15(火) 07:58:31.69 ID:9ibUl6VX
2
 
573:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/15(火) 08:07:07.14 ID:Qyx4yZ2o
ごはんとお風呂と済ませてる間に、メッセージを受信してからそれなりの時間が経っちゃってる。

もう家に着いちゃうくらいかもしれない。


侑「…」

侑 スッ


──♪………


しずく『は、はいっ。桜坂しずくです!』

侑「…ぷっ。しずくちゃん、電話に出るときフルネーム名乗るの?」

しずく『そんなことないですけど、先輩が…急に…』

侑「もしもし、高咲侑でーす。今いいですか?」

しずく『も…もうっ、からかわないでください!』

侑「あはは、ごめんごめん」
 
574:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/15(火) 08:10:10.25 ID:Qyx4yZ2o
侑「今平気だった?電車の中とかじゃない?」

しずく『電車の中だったら出ませんよ。平気です』

侑「お返事遅くなっちゃってごめんね」

しずく『いえ、全然。お忙しかったりしたんじゃないですか?』

侑「お風呂入ったりしてたからスマホ見てなかっただけだよ」

しずく『そうでしたか』
 
575:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/15(火) 08:16:21.14 ID:Qyx4yZ2o
侑「もう駅には着いたの?」

しずく『はい、ちょうど降りたところでした。アナウンスが聞こえませんか?』アルキナガラノ スマートフォンノ ゴリヨウハ ホカノ オキャクサマノ ゴメイワクニモ ナリマスノデ………

侑「うん、すごく聞こえる」

しずく『うるさいですよね。もうすぐ改札を出るので待ってくださいね』

侑「聞こえるけど、話すのに影響ないくらいだから大丈夫だよ」

侑「ここからお家までどのくらい?」

しずく『歩くと結構かかってしまいますけど、迎えにきてもらうので──……』

侑「…しずくちゃん?」

しずく『やっぱり迎えにきてもらうのやめます』
 
576:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/15(火) 08:18:16.80 ID:Qyx4yZ2o
侑「え、なんで?」

しずく『ふふ』

しずく『侑先輩とお話ししながら帰りたいからですよ』

侑 ドキッ…

侑「そ、そうなの?遅くまで練習して疲れてるだろうから、迎えにきてもらったらいいのに」

しずく『早く通話を終わらせろということですか?』

侑「そういうわけじゃないよ…!私からかけたんだし!」

しずく『うふふ、冗談ですよ』

しずく『私なら平気ですから、侑先輩さえよければ家に着くまで付き合ってください』

侑「うん、ぜひ」
 
577:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/15(火) 08:28:47.17 ID:Qyx4yZ2o
しずく『それにしても、まさか先輩の方から電話を下さるとは思いませんでした』

侑「どうしようかなと思ったんだけどね、なんだか声聞きたくてさ」

しずく『…… …私もです』

侑「…?」

侑「演劇はもういよいよ大詰めってところだよね」

しずく『そうですね。今日も通し練習を一度やっただけで、それ以外は各自の練習になりました』

侑「慌ただしい?」

しずく『舞台に立たせてもらう役者は案外そうでもないですよ。それよりも裏方をしてくださる方々が会場の下見に設備の確認にと大忙しです』

侑「私も知識があれば手伝ったのになぁ」

しずく『だめですよ。侑先輩には私達が描き上げる物語を誰よりも純粋に見てもらわなくちゃいけないんですから。観劇者以外の立場で関わられては困ります』

侑「困られるんだ。それじゃまずいね」
 
578:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/15(火) 08:33:16.19 ID:Qyx4yZ2o
しずく『公演の時間と場所ってお伝えしましたっけ?』

侑「見学に行った日に部の人から教えてもらったよ。講堂で11時からだよね?」

しずく『よかった。明日じゃなくて明後日なので、間違えないでくださいね』

侑「間違えないよ~」

侑「しずくちゃんは明日も練習やるんだよね」

しずく『はい。時間はいつもより短めに、最終調整という側面が強くなりますけどね』

侑「なにか手伝えること……」


…は、一つだけ。

しっかりと言われたもんね。


侑「ううん、なんでもない」

しずく『? そうですか』
 
579:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/15(火) 08:40:57.47 ID:Qyx4yZ2o
しずく『侑先輩は、明日はなにをされるんですか?』

侑「人の家を片付けにいくよ」

しずく『え、どういうことですか?』

侑「あはは、そうなるよね」

侑「そのままなんだけど。三年生の先輩がいてね、いらない洋服とかが多くて片付けに困ってるって言うから、手伝うことになったんだ」

しずく『優しいですね』

侑「そうかな?」

しずく『先輩、部活動されてませんよね。私が言うのもなんですけど、三年生にもお知り合いがいるなんて交友関係が広いんですね』

侑「うんー。その先輩は今年度になってから知り合ったんだけどね。歩夢とクラス替えを見てたら話しかけられてって感じで」

しずく『不思議な出会い方をしますね』

侑「しずくちゃんがそれ言う?わざとぶつかってこられたんだよ?」

しずく『私は演技の練習でしたから!』

侑「え~、なんかずるいなぁ」
 
580:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/15(火) 08:54:45.84 ID:Qyx4yZ2o
侑「今日は?どんな一日だったの?」

しずく『そうですね、言語の成り立ちの授業があったんですけど、それがとても興味深かったです!』

侑「言語って英語?」

しずく『いえ、日本語です。中国由来の言語が渡ってきたことでそれまでの言語がどのように変遷していったかというもので、なんだか急に自分の使っている日本語の存在が輪郭を失ったようでした』

しずく『一つ確固として枠組まれたものだと思っていたのに、蓋を開けてみると何度も変化を繰り返してきた、小さな言語の集合体のようで』

しずく『どこまでが日本語で、どこからが日本語なのか』

しずく『そんなことを考えていたせいかもしれません』

侑「せい?」

しずく『私の言葉は周りの人に正しく届いているんだろうか?と、不安になったんです。口に出した言葉はその通りに届いているのかな、と』

しずく『それであんなラインを送ってしまったんだと思います』

侑「ああ…!」
 
581:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/15(火) 09:00:50.50 ID:Qyx4yZ2o
しずく『おかしいですよね』

しずく『文章は言葉と違いますもん。書いたら書いた形がはっきりと残って、誰の目にも同じように映るのはわかりきってます。形や音をしっかりと確認できない言葉とは違うのに』

しずく『それでも、なんだか怖くて…』

侑「届いてるよ、しずくちゃんの声。しずくちゃんの言葉」

しずく『!』

侑「文章でも言葉でも同じだよ。しずくちゃんが思ったこと、考えたこと、伝えようとしたこと。それを音や形にしてくれたら、私は必ず受け取るから」

侑「正しく伝わってるかわかんなくて不安だったら、何度でも確かめようよ。いっぱい話してさ」

侑「私の声だって、届いてるでしょ?」

しずく『──はい。届いてますっ』
 
582:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/15(火) 09:07:29.47 ID:Qyx4yZ2o
しずく『侑先輩はどんな一日でしたか?』

侑「そうだなー、私の方は特に変わったこともなかったかなぁ」

しずく『そうなんですか?』

侑「お弁当がじゃがいも尽くしだったことくらいかな」

しずく『うふふ、なんですか、それ』

侑「いや、ほんとに!おかずみんなじゃがいもだったんだよ。でもチーズのガレットってやつが入っててね、すごく美味しかったなぁ」

しずく『じゃがいもとチーズのガレットですか。それは食べたことがないです』

侑「またお母さんに作ってもらうから、一緒に食べようよ」

しずく『ぜひ!』
 
583:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/15(火) 09:11:13.98 ID:Qyx4yZ2o
侑「他には──………」

しずく『…』

侑「…うん、やっぱりじゃがいもが一番の事件だったよ」

しずく『じゃがいもごろごろ事件ですね』

侑「あはは、それじゃ具だくさんカレーみたい!」

しずく『本当。嬉しいお話になっちゃいますね』
 
584:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/15(火) 09:15:21.27 ID:Qyx4yZ2o
しずく『そろそろ家に着きそうです』

侑「わ、早かったね」

しずく『はい。侑先輩とお話ししながらだとあっという間でした』

侑「明日と明後日に備えてゆっくり休まないとね」

しずく『先輩も。お片付けのお手伝いに備えてゆっくり休んでください』

侑「そうだった。私も勝負の日なんだったよ~」

しずく『腕の見せどころですね!』

侑「頑張りまーす」
 
585:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/15(火) 09:16:45.94 ID:Qyx4yZ2o
しずく『…』

侑「…」

しずく『…侑先輩』

侑「…うん」

しずく『…』

侑「…しずくちゃん」

しずく『…はい』

侑「…」

しずく『…』
 
586:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/15(火) 09:18:47.26 ID:Qyx4yZ2o
侑「……また、ね」

しずく『…はい。また』

侑「お休みなさい」

しずく『お休みなさい。侑先輩、』

侑「素敵な夜をね、しずくちゃん」

しずく『あっ…』

しずく『もう、先輩ったら…』

侑「えへへ。いい挨拶だなーと思ってね」

しずく『そうですよね。侑先輩も、素敵な夜を』

侑「──うん」


しずくと電話しました! ▼
 
590:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/15(火) 19:28:35.41 ID:Qyx4yZ2o
翌朝…


侑「お待たせ~」タタタ

歩夢「行こっか」

侑「うん!」


まるで平日みたいなやり取り。

今日は土曜日だけど一階に出かけるから、いつもと同じようにエントランスで待ち合わせ。

歩夢は──うん、笑顔だ。


侑「土曜日にこうしてるの、なんだか変な感じだね」

歩夢「そうだね。私服だしね」

侑「確かに~!授業もないし最高だよ!」

歩夢「うふふ、授業がないのなんて当たり前じゃない。おかしな侑ちゃん」

侑「なんでも幸せな方が人生楽しくなるよ、歩夢」

歩夢「わ。それは…そうかも…」ムム
 
591:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/15(火) 19:35:20.80 ID:Qyx4yZ2o
歩夢「結局フリマアプリ使えなかったんだよね?」

侑「うん、私はね。銀行ないし」

歩夢「わかんなかったら調べればいいよね。銀行の問題さえなければ簡単そうだから、果林先輩もすぐにできちゃうかもしれないもんね」

侑「だねー」

侑「でもほら、今日は強力な助っ人を依頼したからさ」

歩夢「璃奈ちゃん、機械に強いんだね。全然知らなかったよ」

侑「私も。かすみんのスマホ直してあげたとか言っててさ、私も壊れちゃったら璃奈ちゃんに見てもらおうっと」

歩夢「落として画面割っちゃったのは対象外なんじゃない?」

侑「お…落とさないもん!」

歩夢「どうだか~」クスクス


※ 璃奈を誘ったことを歩夢に話すシーンを描写し損ねました。この件で歩夢が感情を大きく揺さぶられることはなかった(≒ルートに大きな影響のある会話シーンにはならなかった)ので、このまま進めさせてください。
 
592:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/15(火) 19:37:54.87 ID:Qyx4yZ2o
歩夢「璃奈ちゃんのお家、有明の方だって言ってたよね。お家まで迎えにいくの?」

侑「ううん、家じゃないんだ。璃奈ちゃんは用事があるから先に出てるってことだったから、途中で合流してから果林先輩のお部屋に行くよ」

歩夢「用事?土曜日の朝から?」

侑「毎週の日課なんだってさ。あれ、週課?」

歩夢「ふうん。どこで合流することになってるの?」

侑 ニッ…

侑「ゲームセンターだよ!」
 
593:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/15(火) 19:40:53.19 ID:Qyx4yZ2o
ゲームセンター


ガヤガヤ…


歩夢「久し振りに来たけど、うう…耳が痛いよぉ」

侑「平気?合流したらすぐに連れてくるから、表で待っててもいいよ」

歩夢「ううん、大丈夫」フル

歩夢「侑ちゃん、目を離したらゲームし始めちゃいそうだもん」

侑「あ、あはは…」

歩夢「どこにいるのかな?」

侑「たぶんこっちだよ」
 
594:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/15(火) 19:47:15.63 ID:Qyx4yZ2o
侑「どこかなー」キョロ…

歩夢「あ、あれじゃない?」

侑「ほんとだ。璃奈ちゃーん、おはよ~!」ノシ

璃奈「!」

璃奈「おはよう」テクテク

歩夢「おはよう、璃奈ちゃん」

侑「やっぱりクレーンゲームのコーナーだったね」

璃奈「これをやらないと、私の週末は始まらない」

歩夢「そこまでの日課なんだ…」

侑「──っていうか璃奈ちゃん、それ!」


璃奈 っパッケージと ギュ…


璃奈「さっき取った。お徳用チョコ30本パック」

歩夢「ええっ、すごいね」

侑「す…すごいよ、さすが師匠!いくらで取れたの!?」

璃奈「ざっと600円」

侑「すっごーーーい!!」

歩夢「………あれ…?それ、一本10円のやつじゃ…?」
 
595:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/15(火) 19:50:57.79 ID:Qyx4yZ2o
歩夢「でもちょうど取れたところだったなんてタイミングよかったね。それじゃ行こっか……」

璃奈「まだだめ」

歩夢「え?」

璃奈「これは自分用に取った分だから」

璃奈「人のお家に行くのに、お土産を持っていかないのは失礼だと思う」

歩夢「それはそうかもしれないけど、遊びにいくっていうんじゃなくてお手伝いだから気にしなくていいと思うよ」

璃奈「だめ」

侑 ──ハッ

侑「ま、まさか…師匠……!」ゴクリ…

璃奈 コクン

璃奈「うまい棒を、手土産にする」ザッ…!!

侑「うわあああああっ、また璃奈ちゃんのクレーン捌きが見られるんだー!」

歩夢「え、ええ……」
 
596:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/15(火) 19:54:16.67 ID:Qyx4yZ2o
璃奈「こういう大きな景品は──」

侑「バウンド!だよね!」

璃奈「そう」コクン

歩夢「侑ちゃんが得意げになっちゃうから、あんまりクレーンゲームの知識を与えないでほしいな…」


チャリーン

ウィィィン…

グイ…


歩夢「わ…!」


ベシ


歩夢「ああ…」
 
597:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/15(火) 19:56:45.42 ID:Qyx4yZ2o
歩夢「惜しかったね。持ち上がったのに、すぐに落ちちゃった」

侑「ちっちっち…歩夢、一回で取れるような設定にはなってないんだよ、クレーンゲームって。璃奈ちゃんは今のでアームの力と反応速度を確認したんだから」

侑「ねっ!」

璃奈「そう。本番はここから」チャリーン

歩夢「あ、そうなんだ。そろそろ約束の時間になっちゃうから早くしてね」

侑「いけーっ、師匠ー!」
 
598:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/15(火) 20:00:21.86 ID:Qyx4yZ2o
チャリーン…


チャリーン……


チャリーン………


…ポト


璃奈「!」

侑「と……取れたーーーーっ!!」ワーーイッ

璃奈「なかなか設定がきつい台だった」

侑「でも取れたよ、さすが璃奈ちゃん!」

璃奈「朝飯前」

歩夢「終わった?」ヒョコ
 
599:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/15(火) 20:03:49.38 ID:Qyx4yZ2o
侑「こっち私が持つよ。果林先輩にいいお土産ができちゃったね」

璃奈「これで安心して行ける」

侑「だねー」

歩夢「果林先輩、うまい棒って食べるのかなぁ」

侑「ぅ、確かに…」

璃奈「うまい棒、キライな人なの?」

侑「読者モデルやってる人なんだよね。それで毎日お弁当サラダだけとかなんだ…」

璃奈「だったら大丈夫。それ、サラダ味だから」

侑「────………!!」

歩夢「大丈夫かなぁ」
 
600:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/15(火) 20:10:52.98 ID:Qyx4yZ2o
璃奈「ここから近いの?」トコトコ

侑「うん。歩いて十分くらいかな」トコトコ

歩夢「学生寮なんだって。一人暮らしなんてすごいよね」トコトコ

侑「私なんかお母さん達に甘えっ放しだもんなぁ」

璃奈「…」

歩夢「大学に行ったら一人暮らしするんじゃなかったの?」

侑「できるかな~~」ウゥ…

歩夢「大学生になったら一人で起きられる?」

侑「無理!」

歩夢「即答しないで…」

侑「起きる努力はするけど、ちゃんと起こしてほしい!」

歩夢「もう、仕方ないなぁ」
 
601:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/15(火) 20:14:32.23 ID:Qyx4yZ2o
璃奈「…」トコトコ…

歩夢「璃奈ちゃん、緊張してる?」

璃奈「え?」

侑「緊張?なんで?」

歩夢「なんでって、璃奈ちゃんにとっては初対面の相手なんだよ。いくら私達と一緒だって緊張しちゃうよ。ね?」

璃奈「あ、うん」

侑「そっかー。でも果林先輩優しいから大丈夫だよ。背が高くて美人だから迫力はあるけど、落ち着いてて大人だもんね」

歩夢「そうだね。侑ちゃんが変なこと言っても笑って聞いててくれるもんね」

侑「へ、変なことなんか言ったことないよ!」

歩夢「へ~。後で果林先輩に聞いてみよっか」

侑「う、それは……」タジ…
 
602:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/15(火) 20:18:31.48 ID:Qyx4yZ2o
璃奈「……私…」

歩夢「うん、なあに?」

璃奈「侑さん達と一緒だから、全然緊張してなかった、けど」

璃奈「………考えたら、…怖くなってきた……」

歩夢「璃奈ちゃん…」

璃奈「私、こんなだから、果林、先輩、のこと、不快にさせるかもしれない…」

璃奈「…そしたら、侑さん達まで、…変な風に思われちゃう、かも…」ブル…ッ


侑「大丈夫だよ」ポン


璃奈「…!」

歩夢「怖くないよ。心配しないで」ソッ
 
603:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/15(火) 20:23:21.23 ID:Qyx4yZ2o
侑「私達は璃奈ちゃんがいい子だってちゃんとわかってるから。もし果林先輩が勘違いしちゃっても、わかってもらえるまで何度だって話すよ」

侑「璃奈ちゃんが、どんなにいい子なのかって」

璃奈「…」

歩夢「果林先輩、いつでも笑顔でいる人じゃないけど、私達と一緒にいるときはいつも優しく見守ってくれるの。璃奈ちゃんのこともきっと可愛く思ってくれるよ」

歩夢「こんなに一生懸命で可愛いんだもん」

璃奈「……」

ゆうぽむ「「だから、怖がらなくて平気だよ」」

璃奈「………わかった」

璃奈「ありがとう、侑さん。歩夢さん」

璃奈「二人とも、優しい。すき」

侑「へへっ、やったね!」ニコッ

歩夢「私達も好きだよ!」ニコッ


璃奈と合流しました! ▼
 
607:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/16(水) 08:02:25.58 ID:MkwL5rSO
寮、果林の部屋…


ゆうぽむ「「お邪魔しまーす」」

果林「どうぞ」

侑「果林先輩、こちら、話した璃奈ちゃんです」

果林「!」

璃奈「は…初めまし、て。天王寺璃奈、です」

果林「初めまして。朝香果林よ」

果林 ジーッ

璃奈「…」ソワソワ

侑「ほら璃奈ちゃん、渡すものがあるよね」ヒソ

璃奈「う…うん」
 
608:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/16(水) 08:06:52.88 ID:MkwL5rSO
璃奈「あ、あの」

果林「なに?」

璃奈「こ…これ、どうぞ」っパッケージ ズイッ

果林「…うまい棒?貰ってもいいの?」

璃奈「どうぞ、お土産、です」

果林「…ふっ」

果林「ふふ…うふふっ。面白い子ね、あなた。お土産にうまい棒をくれるなんて」ククッ

璃奈「美味しいし、いっぱい入ってる、ので」

果林「ええ、ええ、知ってるわ。そうね、美味しいしこれだけあったらたくさん食べられるわ」

侑「それ、クレーンゲームで果林先輩にって取ったんですよ。璃奈ちゃんすごく上手なんだよねー」

果林「そうだったの。わざわざありがとう、璃奈ちゃん。ありがたく頂くわね」ガサ

璃奈 ホッ…
 
609:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/16(水) 08:13:05.37 ID:MkwL5rSO
果林「そっちのチョコレートもお土産なの?」ス

璃奈「これは私の。一週間のおやつ」

果林「あらそう。それじゃ貰っちゃうわけにいかないわね」

侑「果林先輩、うまい棒って食べますか?取った後になって、もしかしてそういうのあんまり食べないかなーとか思ったんですけど」

果林「たまにはお菓子だって食べるわよ。なにも毎日三食サラダばっかりなわけないでしょう?」

侑「よかった!それもサラダ味だから、お昼ごはんにできますよ!」

果林「……こういうお菓子の『サラダ味』って、サラダ油を使ってるってことよ」

侑「…えっ」

果林「別にトマトやカボチャの味なんかしないでしょ?味付けはたぶんほとんど塩だと思うし」

侑「野菜ってことじゃないんだ…!?」

歩夢「野菜だと思ってたの…?」
 
610:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/16(水) 08:16:55.74 ID:MkwL5rSO
果林「立たせっ放しでごめんなさいね。さ、上がってちょうだい」

歩夢「失礼します」

璃奈 …クイクイ

果林「? どうかしたの?」

璃奈 ゴソゴソ…

璃奈「あげる」っチョコバー

果林「いいの?あなたのおやつが減っちゃうわよ?」

璃奈「チョコ、好きみたいだから。食べてください、です」

果林「…」
 
611:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/16(水) 08:20:26.96 ID:MkwL5rSO
果林 ゴソゴソ

果林「それじゃ、私もこれあげる」っうまい棒

果林「お土産に貰ったものを返すようで悪いけど、交換っこしましょう。これならあなたのおやつも減らないし、私もチョコが食べられる」

果林「ウィンウィンでしょ?」

璃奈「……ありがとう」

果林「こちらこそ」ニコッ
 
612:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/16(水) 08:26:31.19 ID:MkwL5rSO
服の山 コンモリ…


侑「これ、全部ですか…?」

果林「ええ。着るものは取り上げてクローゼットにしまってあるから、これはみんな処分しちゃっていい分よ」

璃奈「すごい量」

歩夢「そうだね…こんなにあったらファッションショーができちゃいそう」

果林「欲しいものがあったら持っていっていいわよ。合うサイズのものがあればね」

侑「うーん…」ヒョイ

侑「どう?」スッ

歩夢「裾が引いちゃいそうだね」

璃奈 ヒョイ スッ

侑「短めのワンピースみたいになってるよ」

歩夢「普通のシャツなのにね…」

璃奈「合うもの、なさそう」
 
613:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/16(水) 08:31:26.13 ID:MkwL5rSO
歩夢「まずはアイテムごとに仕分けしよっか。それからまとめて処分を考えよう」

侑「璃奈ちゃん、フリマアプリの使い方ってわかった?」

璃奈「完璧」コクン

侑「さっすが!それじゃ、璃奈ちゃんは果林先輩にフリマアプリの使い方を教えててもらってもいい?私と歩夢で服の仕分けやっちゃうからさ」

璃奈「わかった」

果林「あなた、アプリとか得意なの?」

璃奈「それなりに、わかる」

侑「璃奈ちゃんスマホとか直せちゃうんですよ。も~~、最強の助っ人です!なんたって情報処理学科だもんね!」

歩夢「学科がどうこうってレベルの話かなぁ」

果林「へえ。それなら私より詳しくて当たり前よね。気兼ねなく教えてもらえるわ」
 
614:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/16(水) 08:36:11.97 ID:MkwL5rSO
侑「それで、これどうやって分けたらいい?」

歩夢「まずはトップスとボトムスに分けちゃおっか。それからそれぞれの量を見てさらに細かく種類分けしよ」

侑「と、トップス…?ボトムス…??」

歩夢「上に着る服がトップスで、下に穿くものがボトムスだよ。ズボンとかスカートとか」

侑「こういうワンピースみたいなのは?」

歩夢「うーん…別枠にしておこっか。見た感じそれ系はあんまり多くなさそうだね」

侑「じゃあ私はワンピースみたいのとポップスを中心に集めていくね!」

歩夢「うん、お願い。あとトップスね」
 
615:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/16(水) 08:40:36.50 ID:MkwL5rSO
ワイワイ…


果林「歩夢がいるから向こうは大丈夫そうね」

璃奈「AndroidとiPhone、どっちです、か?」

果林「スマホの種類よね?えっと…スマートフォンよ」

璃奈「…」

果林「…」

璃奈「見せて」

果林「はい」っスマホ

璃奈「アプリを落とすから、プレイストアを開いて」

果林「うん。落とすのね?スマホを?」

璃奈「…」

果林「…」

璃奈「触ってもいい?」

果林「どうぞ」
 
616:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/16(水) 08:47:39.70 ID:MkwL5rSO
璃奈 スマスマスマスマ…

果林「へえ、さすが情報処理学科。慣れたものね」

璃奈「ここ、入力してください」スッ

果林「振込先口座を指定するのね。えーっと」スマスマ…

璃奈「読者モデル、なんですか」

果林「そうよ。侑達に聞いた?」

璃奈「はい」

璃奈「楽しい?」

果林 …ピタ

果林「どうかしらね」

果林「楽しい、と思う瞬間があるのは確かね。よりベストな角度を見つけたときとか、納得のいく写真を撮ってもらったときとか」

璃奈「…そう、ですか」

果林「はい、入力できたわ」

果林「興味があるの?」

璃奈「…わかんない、です」

果林「…そう」
 
617:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/16(水) 08:51:32.49 ID:MkwL5rSO
侑「終わったー!」

果林「ちょうどよかった。こっちも準備が整ったそうよ」

歩夢「私達の方はトップスとボトムスに分けただけなので、ここからもう少し分けていこうと思います」

侑「あれ!?まだ終わってない!?」

歩夢「もう、聞いてなかったでしょ」プクー

侑「あはは…」

侑「でもアプリの準備できたんですね」

果林「璃奈ちゃん、すごいわね。ほとんどみんな任せちゃった」

璃奈「ほとんどみんな任された」

歩夢「ありがとうね、璃奈ちゃん」
 
618:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/16(水) 08:58:33.32 ID:MkwL5rSO
果林「ふうん、こんな風に分けてみたことなかったから新鮮ね」マジマジ…

果林「…ん?」

侑「どうかしましたか?」

果林「このパ〇〇は穿くやつね。危ない、見落としてたみたい」ヒョイ

侑「わ、見つかってよかった」

歩夢「念のためさっと確認してもらった方がいいかもしれませんね」

果林「昨日ちゃんと見たもの、もう大丈夫よ。………あら、そのアウター…」ヒョイ

侑「…」

果林「これ来週の撮影に持っていこうと思ってたのよね…こっちはクリーニングに出してしまっておくやつだわ…」ゴソゴソ…

歩夢「…」

果林「んー…ちょっと待って、これかなり使いやすそうね。あのときのコーディネートにアクセントとして加えたらぐっとよくなりそう…」ゴソゴソ…

璃奈「…」

果林 ゴソゴソ…ゴソゴソ……

果林 …………………ハッ!!
 
619:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/16(水) 09:02:08.55 ID:MkwL5rSO
侑「…果林先輩、この山ってほんとにみんな処分しても…」

果林「だ、だめなやつが少し…少しだけ混じってる、かも…」

歩夢「…クローゼットにしまったっていう方には、処分するやつは残ってないですか?」

果林「それはさすがに…」

果林 スタスタ… ガラッ ガサガサガサ…

果林「………これと、…これ、…………これ、……これと」

果林「あと…これ。この辺はもう着ないわね」フム

ゆうぽむりな「「「………」」」ジーーーッ

歩夢「改めて、整理し直しましょうか」

果林「ご、ごめんなさい……」
 
620:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/16(水) 09:08:17.78 ID:MkwL5rSO
しばらくして…


果林「……………うん、バッチリ。こっちはみんな処分してよくて、だめなやつはクローゼットにしまったわ。完璧ね!」

侑「や、やっと終わったぁ…」クタ

璃奈「疲れた」パタリ

歩夢「アイテムが多いだけに時間かかっちゃったね」フゥ…

侑「見てるうちに果林先輩コーディネートとか考え出すんだもん。いるやつどんどん増えてっちゃうし…」

果林「わ、悪かったわね。今まで全部並べて見てみたことなんかなかったんだもの、新しい可能性がたくさん見えたのよ」

歩夢「そうやってすぐに組合せを判断できるのはすごいですけどね」

璃奈「私にはできないこと、尊敬する」

果林「続きやる前にランチにでも行きましょうか」

侑「さんせー!」

果林「いいお店に連れていくわ。…その、ちょっぴり迷惑かけちゃったお詫びに、ね」
 
621:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/16(水) 09:15:53.46 ID:MkwL5rSO
イタリアンのお店


「雲丹のペペロンチーノです」コト

侑「来たぁ!」

果林「これでみんな揃ったわね」

歩夢「それじゃ、手を合わせて」人

ゆうりな 人

果林「えっ?」

歩夢「…?いただきますしないんですか?」

果林「え、ああ、する…けど…」

果林 人…

「「「いただきます」」」

果林「い、いただきます…」//
 
622:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/16(水) 09:18:54.49 ID:MkwL5rSO
侑「ん!美味しい…!」

歩夢「果林先輩の、なんでしたっけ?」

果林「茸と松坂牛のタリアテッレよ」

侑「た、たりあ…?」

歩夢「私達には難しいね…」

璃奈 モグモグ…

侑「ああほら璃奈ちゃん、ソースついてるよ」キュ

歩夢「そう言う侑ちゃんもついてるよ」キュ

果林「…うふふ」

果林「たまにはいいわね、こういうのも♪」
 
623:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/16(水) 09:22:17.23 ID:MkwL5rSO
「「「ごちそうさまでした」」」

果林「ごちそうさま」

侑「大満足だよ~」

歩夢「だね」

璃奈「ミートソース以外のパスタ、初めて食べた」

果林「クリームペンネも美味しかったでしょ?」

璃奈「もちもちしてた」

果林「ここ、ピザと生ハムも美味しいのよ。また来ましょうね」

璃奈「うん」

璃奈 ジッ…

果林「どうしたの?」
 
624:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/16(水) 09:26:31.22 ID:MkwL5rSO
璃奈「果林、さん、ぱい」

果林 …クスッ

果林「果林でもさんでもいいわよ。なに?」

璃奈「どうして優しくしてくれるのかなって」

果林「どうしてって?」

璃奈「私、笑わない、から。『なにを考えてるのかわからなくて不気味』とか、その…」

果林「璃奈ちゃんに対して?思うわけないじゃない」

果林「侑達があなたのことを可愛がってる姿を見たら、悪い子じゃないことはわかるもの。それに、今日この時間までに話しただけでも、私自身もそう感じたわ」

璃奈「…」

果林「笑わないのを気にしてるの?」

璃奈「私、あんまり、感情を表現するの、得意じゃなくて」

果林 …フフッ
 
625:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/16(水) 09:29:58.33 ID:MkwL5rSO
果林「なあに、そんなこと」

璃奈「!」

果林「笑うのが女の愛嬌なら、笑わないのは女の仮面よ」

果林「ここぞというときにとびっきりの笑顔ができればそれでいいの。笑顔も涙も安売りしない女の方が、私は好きよ」ツン

璃奈「…」

侑「えー、璃奈ちゃん好きだって!いいないいな、果林先輩、私はどうですか!?」

果林「もっと落ち着きを持ちなさい」

侑「うっ」グサッ

果林「歩夢はいい女よ」

歩夢「やったぁ!」

侑「私だけやだぁ~!」


果林の部屋の片付けをみんなでやりました! ▼
 
629:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/16(水) 20:23:55.67 ID:MkwL5rSO
夕方…


歩夢「それじゃまたね、侑ちゃん」

侑「うん。お疲れ様~」


友達と遊んだ日にしては少し早めの帰宅。

果林先輩を友達って言うべきかはちょっと難しいところだけど…

とにかく、無事に全てのいらない服をフリマアプリに出品し終えたその帰り。


侑「ほんとにお疲れ様だったなぁ」クタ
 
630:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/16(水) 20:29:31.26 ID:MkwL5rSO
お昼ごはんから戻ってからの作業。

アイテムごとに一つひとつ写真を撮って、簡単な説明文を書いて、出品金額を決める。

なんてことないそんな作業もあれだけ数があるとさすがに堪えた。

四人で交代しながら出品作業をしつつ、手が空いたらおやつの買い出しに行ったりして、楽しく過ごす午後だった。

「適当にしまうと、売れたときにどれがそのアイテムかわからなくなる」という璃奈ちゃんの鋭い指摘に従って、アイテムごとにタグを作ってくっつけたり、番号を振って整理したり…

引越業者さんとかこんな感じなのかなぁ、なんて頭の片隅で思った。

ようやく全部終わったのがついさっきのことで、璃奈ちゃんをお家の傍まで送って、やっと二人で帰り着いたところだ。
 
631:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/16(水) 20:31:57.51 ID:MkwL5rSO
晩ごはんまではまだ時間がありそうだし、お母さんに呼ばれるまで寝ちゃおうかな。

ベッドに身体を放り投げてぼーっとしてるうちに、うとうと瞼が下りてくる………





侑「…ん」


かろうじて意識が途切れる寸前にスマホが震えた。


侑「……あっ」
 
632:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/16(水) 20:35:22.33 ID:MkwL5rSO
目が覚めた、とは言わないけど、声が漏れるほどには意識を取り戻す。


『しずくちゃん:もういくつ寝ると、あなたの傍へと行けるのでしょう』


すぐにもう一言、


『しずくちゃん:私は、明日、剣を取る』


侑「……」


どうしようかな? >>633
1.会いにいく
2.電話をかける
3.メッセージを返す
4.反応しない
 
633: (たこやき) 2020/12/16(水) 20:38:29.63 ID:V7WqgUj6
2
 
634:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/16(水) 20:42:22.75 ID:MkwL5rSO
いつもに比べると、時間が早い気がする。

…ああ、今日は短めなんだって言ってたっけ。

そっか、ってことはもう部活終わったのかな。

明日はいよいよ演劇の本番だもんね。

きっとしずくちゃん、一人で堪えきれないくらいの色々な気持ちを抱えてるんだろうな。

支えたいなぁ。

なにもできることなんかないけど、それでも傍にいたいなぁ。

頭を撫でてあげたら緊張を解くくらいのことはできるかもしれない。
 
635:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/16(水) 20:43:37.45 ID:MkwL5rSO
でも、


──『しずくちゃん:だから侑先輩にお願いすることがあるとしたら、私に会おうとしないでください』

──『しずくちゃん:公演の日が近づくにつれて会いたくなってしまうと思います。私から連絡をしてしまうと思います』

──『しずくちゃん:でも、どうか公演が終わるまで、鬼になって私を突き放してください』

──『しずくちゃん:お願いします』


たった一つだけのお願い事だもん、それくらいはせめて守らなくちゃね。
 
637:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/16(水) 20:47:37.59 ID:MkwL5rSO
鬼になって突き放す。

それって、会いにいかなければいいだけなのかな。

今のしずくちゃんは、しずくちゃんじゃない。

歴史の中に生きる一人の革命家。

いよいよ明日に迫ったこの瞬間に『私』が会いにいっちゃったら、きっと作り上げた役とか気持ちみたいなものがみんな壊れちゃうんだよね。

だから、会いにはいけない。

だったらどうすればいいんだろう。

会っちゃいけないけど、電話ならいい?

メッセージを返すのは?

………そのどれだって私は私で、彼女をしずくちゃんに戻してしまうような気がする。
 
638:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/16(水) 20:49:09.22 ID:MkwL5rSO
だったらここは鬼になって、無視をするのが正解──


──『しずくちゃん:あ、でもお返事くらいは下さると嬉しいです』

──『しずくちゃん:わがままですけど、無視されちゃったら寂しいですから…』


──じゃ、ない、はずだ。
 
639:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/16(水) 20:53:39.32 ID:MkwL5rSO
しずくちゃんはすごい役者だけど、そうである前に高校一年生の女の子だもん。

大舞台を控えた今、どんな気持ちでいるのか、これまでたいした大勝負なんて経験してこなかった私には想像すらできない。

だけど、『桜坂しずく』として誰かに縋りたいって本音がないわけがない。

そんな本音を私にぶつけてくれたんだ。

応えたい。

応えたい。

今、私ができる最善のことはなんだろう。

会いにいくことじゃない。

電話で話すことでもない。

メッセージを返すのも、無視をするのも違うなら。


『しずくちゃん:私は、明日、剣を取る』


しずくちゃんの心情に最も誠実に応えるには──
 
640:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/16(水) 20:57:19.49 ID:MkwL5rSO
『通話』ボタンにそっと触れる。

画面がぱっと切り替わって、特徴的な呼び出し音。

一秒。

私はすぐに『終話』のボタンを押した。
 
641:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/16(水) 21:03:41.57 ID:MkwL5rSO
侑「……………ふぅぅぅううう……」


スマホ画面がトークルームに戻ったのを見て、大きく息を吐く。

たった一秒のはずなのに、まるで限界まで息を止めてたみたいに心臓がばくばく暴れてる。

しずくちゃんが応答しちゃったらどうしようかと思った。

顔は合わせない。

言葉も交わさないし、触れることもない。

だけど、私はここにいるよ。

しずくちゃんが伸ばした手を確かに取ったから。

今は、ただ──一人の革命家として前を向いていてほしい。

これが、今の私にできるきっと最善だよね。

明日、しずくちゃんに戻ったしずくちゃんに会えたら──言いたいことが、たくさんあるから。


頑張れ。


しずくから連絡がありました! ▼
 
645:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 08:01:38.80 ID:J/biDMab
翌朝…


侑「お母さん、髪変じゃない?」

高咲母「変じゃない。もう、何回聞いたら安心するの?」

侑「だってえ…」

侑「演劇観にいくのにツインテールって子どもっぽいかな?ハーフアップの方がいい?」

高咲母「子どもでしょ」

侑「そういうこと言わないでよー!」

高咲母「侑は侑らしいのが一番よ。その髪型が一番可愛いってば」

侑「…そう?」

高咲母「そうよ。自信持って」

侑「うん…わかった、ありがとう」

高咲母「お餅何個食べる?」

侑「三つ!」

高咲母「はいはい」
 
646:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 08:04:39.67 ID:J/biDMab
侑「いただきます」

高咲母「どうぞ」

高咲母「今日、学校でやるのよね?お母さんも観にいこっかなー」

侑「んぐっ!?」

侑 ゴホッゴホッ

高咲母「ちょっと大丈夫!?はい、お茶飲んで!」サッ

侑 ゴクゴクゴク…

侑「っはぁぁ~~~………」

侑「いきなり変なこと言わないでよ!」

高咲母「そんなに変なこと言った…?」
 
647:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 08:08:53.95 ID:J/biDMab
侑「お母さんもお友達と出かけるんでしょ。余計なこと考えてないで、めいっぱい楽しんできてよ」モグ…

高咲母「余計なことって」

侑「ただの部活の演劇だよ。わざわざ予定変えて観にいくほどのものじゃないってば」

高咲母「しずくちゃんが出ないなら、そうよねえ」

侑 ピタ…

侑 ジロッ

高咲母「だって出るんでしょ?しずくちゃん」

侑「…出るけど、ちょっとだけだよ。主役は三年生達だって言ってたから」

高咲母「そう。どんなだったか教えてね」ニコニコ

侑「………うん」モグモグ…
 
648:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 08:14:52.85 ID:J/biDMab
時刻は10時。

開演の30分前には学校に着いておきたいし、そろそろ出なくちゃ。

ああ、なんだかどきどきしてきた。

人は多いのかな。

時間はどのくらいなんだろう。

くしゃみしちゃったらどうしよう。

ストーリー難しくないかな。

演劇を観にいくなんて初めて──じゃなかった。

じゃないのに、なんでこんなに。

前のときも楽しみだったけど、こんな緊張するような気持ちなんかなかったよ。

うう…

ああっもう、とりあえず行こう!
 
649:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 08:22:59.22 ID:J/biDMab
『出発します、お掴まりください…』


虹ヶ咲学園行きのバスに乗り込んで、がらがらの最後席に座る。

場所が学校でよかった。

深く考えずに制服を着ておけばいいから。

朝からこんな調子なのに格好まで考えなくちゃいけなかったら、もういっぱいいっぱいになっちゃってたに違いないもん。

ラインのトーク画面を開く。

夕方に発信した『応答なし』の通知っきり、メッセージは一通もない。

一言、応援の言葉を贈りたい気持ちはある。

でもそれはこの不在着信を上から塗り潰す行為だ。

ぐっと堪えて、私は遠く佇む虹ヶ咲学園をぼんやりと眺め続けた。
 
650:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 08:27:41.37 ID:J/biDMab
『終点、虹ヶ咲学園です。お忘れ物のないようご注意ください…』


何回こうしたかも数えられないくらい当たり前のことなのに、バスから降りる一歩が強張った。

ほんの一瞬、このまま折り返して帰っちゃおうかと思った。

運転手さんの不思議そうな視線を感じてすぐに降りたけど。

日曜日の学校。

初めてでもなんでもないのに、なんとも言えない緊張がずっと付きまとってる。

…いいよ。

今のうちに思う存分緊張しててよ、私。

その代わりに演劇が始まったら集中してよね。
 
651:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 08:33:04.30 ID:J/biDMab
講堂に近づくにつれて人は少しずつ多くなっていった。

日曜日だって部活動があるところはあるし、それになにより演劇の公演があるから。

入口に着く頃にはがやがやと喧騒を感じるくらいにはなってて、なんとなく、ほっとした。


侑「お手洗い行っとかなくちゃ」


入場受付はもう始まってるみたいだから、いい席が残ってたらいいんだけどな。

…いい席ってどこなんだろう。

他校の制服もちらほら見かけて、やっぱり虹ヶ咲の部活動は注目されてるんだなぁ、なんて思った。
 
652:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 08:37:56.98 ID:J/biDMab
講堂


侑 ストン…


ほとんど真ん中で、ちょっと前寄りの席。

ちょうどそんなところが空いてたからそこに決めた。

うん、舞台もよく見える。

前回はしずくちゃんに連れられて席に座ったし、そもそもどの席がいいかなんて考えることすらなかった。

一人で来るのはわかってたんだから、オススメの席くらい確認しとけばよかったな。

周りを見ると、広い講堂もそれなりに埋まってる。

うちの生徒、他校の生徒、保護者。

みんな隣に座る誰かと話をしていて、一人でぽつんといるのなんて私くらいだった。

でも、いいんだ。

私は誰と来たかったわけじゃない。

演劇を観るために来たんだもんね。
 
653:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 08:47:35.84 ID:J/biDMab
もう、開演の時刻がすぐそこまで迫ってた。

講堂内の喧騒は一番大きくなってて、私の両隣にも人が座った。

今さらながら、受付で貰ったパンフレットに目を落とす。


『名誉の涙』

『脚本・演出:葉月春奈(虹ヶ咲学園演劇部)』


大瀬夢見じゃない、よね。

そりゃそうだ。

でも高校の演劇って脚本まで部員が書くんだ。

すごいなぁ。
 
654:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 08:57:11.12 ID:J/biDMab
時代や国ははっきりと記されてないけど、王政ってことはフランスかイギリスなのかもしれない。

登場人物の名前もみんなカタカナだから、さすがに日本ってことはなさそうだよね。

あらすじを一言で表すなら、王政の崩壊を目指すレジスタンスの奮闘記、という感じだ。

暴君の末弟がお祭りの日に町へ抜け出して、そこで初めて王政への不満と民の暮らしに触れる。

自分の無知を恥じた末弟は密かに集められてたレジスタンスに加わって、たくさんの人達の想いを受け取りながら王政の崩壊へ踏み出す──

ストーリーとしてはわかりやすくて王道だ。

あんまり難しい政治の話が出てくるとまずかったけど、これくらいなら私もついていけそう。
 
655:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 09:03:21.08 ID:J/biDMab
末弟から始まって、役の名前と簡単な説明、役者の名前が並んでる。

そのページの最後の方に役者名だけが何人分か並んでいて、


『桜坂しずく(一年生)』


端役、としずくちゃんは言った。

役の名前もなければ説明もない、男か女かもわからない。

そんな役だけど、確かにここにいる。

『名誉の涙』といういくつもの人生の交差点に、一人の人間として登場する。

端役なんてものは存在しないんだ。

彼女は彼女の人生の主人公だもん。

私はそれを見届けるために、今日、ここに来たんだ──


客席の照明がゆっくりと落ちて、幕が上がった。
 
656:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 09:13:19.21 ID:J/biDMab
賑やかなお祭りの音楽が流れて、そこかしこで町の人達の踊りや歌、腕相撲を楽しんでいる。

明らかに浮いた衣装の男が物珍しそうに騒ぎの中を歩いて抜ける──主人公だ。

始めは無邪気にお祭りの様子を楽しんでいた主人公だけど、ふとした拍子に路地裏へ迷い込み、そこで表の賑わいとは全く異なる町の顔を知る。

城へ戻った後もその光景を忘れられなかった主人公は、今度は自分の意思で町へ下り、酒場でレジスタンスのリーダーに出会う。

王家の者に話すことなどない、とお酒をかけられたり、時には若いレジスタンスから追い回されたりもした。

それでも主人公は挫けずに、何度も何度も町へ足を運んではリーダーと話をしようと繰り返す。

次第に主人公のことを受け入れようという気持ちがレジスタンスグループの中に湧いてきて──
 
657:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 09:19:26.90 ID:J/biDMab
侑「………!」


とある酒場でのシーン。

明るく照らされた店内の隅、座る女の姿。

しずくちゃんだ。

髪型も服装も普段とはまるで違う。

壁を向いて飲み物を片手に俯いてる。

なに一つはっきり見えないけど、あれはしずくちゃんだ。

店内の中央で客同士の言い争いが始まる。

耐え忍ぶことこそが強さだという。

意思を示すことこそが強さだという。

そうして〇された者を何人も見てきた。

耐え忍んでいた者は一人も死ななかったか。

圧政で余裕がなくなった客達は、小さなきっかけを得たことで口々に本音を吐き出した。

店の奥に座る女の手は、小さく小さく──けれど強く強く──震えている。
 
658:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 09:27:14.59 ID:J/biDMab
とうとう客同士の争いが言葉のやり取りを超えかけたとき、奥で男が立ち上がった。


「耐え忍んで変わる明日ならば、なぜおれ達は今なおこんなにも苦しい!叫ぶだけで雲が晴れるならば、なぜこの町は今なお暗雲で覆われている!」

「それだけでは足りぬのだ。気づけ、皆!おれ達が求める明日がどうすれば手に入るのかを、考えろ!ここで酒を喰らうだけの日々がなにを生む!」


──ガタ──


「…明日もまた、同じ日が来るのだろう」

「幸福は一生訪れないのだ…!」

「けれども──  パァンッ


乾いた音が、若い女革命家の言葉を遮った。
 
659:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 09:32:53.67 ID:J/biDMab
「………っふ…」


吐息を漏らした女革命家は、一歩、二歩、よろよろと踏み出して──

そのまま酒場の床に倒れ込んだ。


「おまえらレジスタンスが余計なことをしたせいで、うちの畑は王家の奴らに持っていかれた!なにが明日だ、今日食う麦だってもうねえのに!」


男革命家は倒れた女に呼びかける。

客の一人が撃った男に殴りかかる。

逃げ惑う客、叫ぶ革命家、──店の入口で茫然と立ち尽くす王家の末弟。


物語は佳境を迎え、終わりへと動き出した──
 
662:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 19:04:45.61 ID:J/biDMab
そこからのストーリーもよかった。

立場と気持ちの板挟みに悩む末弟の葛藤も、

信じることも憎むことも捨てられないレジスタンス達の苦悩も、

勇気と恐怖でせめぎ合う民衆も、

みんなが輝いていた。

一生懸命に生きて、生きて、生き抜いて。

それぞれの想いや願いを叶えるために走った。

幕が下り始めたときにはすでに客席の全員が惜しみない拍手を送っていて、私もその一人だった。
 
663:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 19:10:59.55 ID:J/biDMab
前に演劇を観たときも、こんな熱気の中にいた。

一つのことが始まって終わった、その切なさや感動、心苦しさに達成感、胸の中に渦巻くそんな色々な感情を、ただただ拍手として吐き出すことしかできないんだ。

よかった。

よかった。

よかったんだ。

一時間と少しの間にわたって繰り広げられた物語の全てが、本当に。

それなのに、私は。


──「…明日もまた、同じ日が来るのだろう」

──「幸福は一生訪れないのだ…!」

──「けれども──っ」


たった一人の美しい革命家の姿しか、思い出すことができなかった。
 
664:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 19:16:43.80 ID:J/biDMab
やがて、下りた幕が上がって役者の皆さんが揃って挨拶をする。

もう一度大きな拍手が送られて、今度こそ『名誉の涙』は終わりを迎えた。

今すぐ走り出したい。

一番に駆けつけるって約束したんだ。

余韻の鎖に縛られたみたいに重い足を踏み出す。

会いたい──

会いたい──

しずくちゃんに、会いたい──


──侑「歩夢」

──侑「私はずっと、歩夢の一番傍にいるからね」


侑「………っ!」


私は… >>665
1.しずくの元へ行く
2.しずくの元へ行かない
 
783:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/21(月) 17:12:12.40 ID:fYxiZD39
>>781
確定です
この後にはエンディングしかありません
 
665: (庭) 2020/12/17(木) 19:18:15.72 ID:s3tIlbxC
2
 
667:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 19:27:09.38 ID:J/biDMab
しずくちゃん。

演劇が大好きな後輩。


──しずく「ご挨拶が遅れました、国際交流学科一年生の桜坂しずくといいます」

──しずく「私、演劇をやりたくて虹ヶ咲に来たんです。中学校には演劇部がなかったので、観るばっかりで。ずっと舞台に立ちたくて仕方がなかったので、家からは少し遠いんですが…演劇部の活動が活発な虹ヶ咲に」


私より年下なのにはっきりした目標を持ってて、そのために自分を強く律することができる女の子。


──しずく「ランチをご一緒する口実を見つけられたから、です」

──しずく「先輩、もう少しだけ──無でてほしいです──」


だけどやっぱり年相応の可愛さもあって、そんなギャップがどうしようもなく愛しくなる。
 
668:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 19:28:36.29 ID:J/biDMab
きっと、私はしずくちゃんのことが大好きで。

しずくちゃんも私のことを慕ってくれていて。


──しずく「愛しい相手に触れることができない、この気持ちを抱えていきます」


今、交わしたい言葉はたった一つしかなくて──


──『しずくちゃん:公演が終わった後、時間を下さい』

──『しずくちゃん:お話ししたいことがあるんです』


──『拍手し終えたら、一番に駆けつけるよ』


しずくちゃんに会えたら──言いたいことが、たくさんある。
 
669:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 19:32:21.05 ID:J/biDMab
たくさん、あるんだ。

あった、んだ。


侑 ………ストン


言うつもりだったたくさんのことを、それでも私は、言えない。


侑 ハァ…


約束したのに、

決めてたのに。


私はしずくちゃんのことを──選べない。


侑「………………………………あゆむ……」ポツ…
 
672:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 19:36:57.95 ID:J/biDMab
そのまま、どのくらい経ったんだろう。

何時かのチャイムが鳴る。

気づくと講堂には誰もいなくなってて、


「どうかしましたか?」

侑「──ぇ…」

先輩「あれ、あなた…」


あの日、演劇部の見学に行った日、しばらく傍にいてくれた先輩だ。


侑「………ぁ…」ヨロ…

先輩「待って」パシ
 
673:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 19:40:34.54 ID:J/biDMab
先輩「観にきてくださったんですね。ありがとうございます」

侑「…」

先輩「私達の劇、どうでしたか?」

侑「……とても、よかったです」

先輩「そうですか」

侑「…」

先輩「どうしてこんなところにいるんですか」

先輩「どうして、桜坂さんに会いにきてくれなかったんですか」

侑「……っ」

先輩「桜坂さん、ずっと控え室で待ってましたよ。メイクも落とさずに、衣装も脱がずに。役者のみんなが撤収した後も一人だけ」

先輩「──あなたを待ってるんじゃないんですか!?」
 
678:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 19:47:07.89 ID:J/biDMab
先輩「桜坂さん、すごくなかったですか?」

先輩「私、息を呑みましたよ」

先輩「昨日までだってものすごかった。一年生とは思えないほど完成された演技でした」

先輩「誰よりも彼女のことを知り、考えて。きっと脚本を書いた私以上に、桜坂さんは彼女のことを深く深く理解してましたね」

先輩「その彼女を完璧に演じきっていました。昨日までの桜坂さんは」

先輩「でも今日は、そんなレベルじゃなかった」

先輩「もう、桜坂さんなんて…桜坂しずくなんていませんでした。誰かが誰かを演じるという、そんな次元ではなくなってましたよ」

先輩「あのとき酒場にいたのは紛れもなく彼女で、全てを背負って立つ革命家の女でした」

先輩「無念のままに死んでいくその瞬間まで、私は──舞台の上に桜坂さんを見つけることは一秒もできませんでした」
 
680:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 19:52:47.50 ID:J/biDMab
先輩「一体、桜坂さんはどんな時間を過ごしたんでしょう。どんな風に役と向き合えば、あれほどまでになるんでしょうか」

先輩「憎しみも、悲しみも、悔しさも、怒りも、その全てをただ一人の亡くした最愛の夫を想う深い愛情の上に表現していました」

先輩「劇の後半を私は思い出せませんよ。彼女が撃たれたときに、私まで死んでしまったのかと思うほどです…」

先輩「……桜坂さんが彼女に成ったのは、あなたのおかげじゃないんですか?」

侑「………」

先輩「あなた達の間でどんなことがあったのかは知りません、それを知りたいと思うわけでもない。ただ、役者としての桜坂しずくを完成させてくださったことにお礼を言いたいです」

先輩「………それ、なのに!」

先輩「どうしてあなたは、こんなところでぼーっとしてるんですか!桜坂さんを迎えにいってあげないんですか!」

侑「……っ…」
 
682:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 19:57:37.88 ID:J/biDMab
先輩「桜坂さんを、応援したいんだって言ってましたよね」

侑「………はい…」

先輩「それってつまり、役者として大成してほしいという、本当にただそれだけの気持ちだったってことなんですか?桜坂さんの演劇への情熱を支える、それだけが目的だったってことなんですか?」

先輩「──役者として一人前になってしまった桜坂さんには、もう興味がないということなんですか……?」

侑「ち──違うッ!!」

先輩「だったら…だったら、どうして…」

侑「…っ、私は…私、には……」
 
683:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 20:00:41.05 ID:J/biDMab
先輩「……桜坂さん、まだ控え室にいると思います」

侑「!」

先輩「せめて、会いにいってあげてくださいよ」

先輩「せめて、あの一幕を褒めてあげてください」

先輩「私達の誰に言われたいわけでもないはずの言葉を、あなたがちゃんと言ってあげてください」

先輩「………せめて、それだけは…」ペコ…

侑「…………………はい…」
 
684:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 20:03:53.77 ID:J/biDMab
講堂ステージの控え室。

学校の行事で一回か二回、入ったことがある。

控え室なんていうのもおこがましいくらいの、なんにもない部屋だったと思う。

音も遮らなさそうな薄い扉の一枚向こう、

確かに人の気配がした。

誰かの──すすり泣く、声がした。
 
685:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 20:07:38.12 ID:J/biDMab
侑「…」


コンコン


「…」


小さく聞こえていた声が、しゃくるような声と共に止んだ。


「…入って構いませんよ」


掠れた声。

震えていて、か細い。

もうなにも喋ってほしくないと思った。


侑「……私、だよ」
 
686:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 20:10:39.50 ID:J/biDMab
侑「高咲侑、です」





侑「……あの…あの、ね……」





侑「………私……」





「あ、ごめんなさい先輩」

侑「え…?」
 
687:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 20:14:44.36 ID:J/biDMab
「今私、衣装を着替えてる真っ最中なんです。てっきり部の誰かかと思いました」

「さすがに恥ずかしいので入ってきちゃだめですよ」

侑「…うん」

「ってああ、もうこんな時間!この後みんなで打上げに行くことになってるんです。急がなくちゃ」

「先輩も、来てくださったのにすみません。今日はその、帰ってもらえると、その」

「また週明けにでもお話しましょうね」

侑「…っ、しずくちゃん。私……」

「それは、聞かなくちゃだめですか?」
 
689:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 20:17:49.88 ID:J/biDMab
侑「…っ!」

侑「…このまま、なあなあにするのは…」

「私は構いませんよ」

「なあなあにしておいてもらえたら、終わらないで済むじゃないですか」

侑「……」

「私、イヤですよ。この一時間で、もう充分傷つきました」

「これ以上、傷つかなくちゃ…だめですか……?」

侑「っ……」
 
690:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 20:26:23.70 ID:J/biDMab
侑「………私…」

侑「…私、は………」グ…

「そんなカオしないでください、侑先輩」

「私、この一ヶ月間とっても楽しかったですよ」

「先輩が応援してくれてる、見てくれてるって思うだけで、どれだけでも頑張れました。演劇に向かう熱意みたいなものが溢れて止みませんでした」

「なんとか役を勝ち取ることができたけど、役者を始めたばかりの身には難しくて、毎日ああでもないこうでもないって試行錯誤を繰り返して」

「もうわかんないって投げ出したくなることが何回もありました」

「でも、私の傍には先輩がいてくださったから」

「一人きりで汗まみれの稽古だって、もう全然つらくなかったんです」
 
692:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 20:31:41.31 ID:J/biDMab
「……そうだ」

「私のわがまま、聞いてくださってありがとうございました」

「昨日、最後の練習を終えて、本当にこれでいいのかって悩んでたんです。悩んで、連絡しちゃいました」

「間違ってないよ、それでいいんだよって言ってほしくて」

「でも、お話してしまうと重ねてきたものが全てまっさらに戻ってしまいそうで、本当は怖くて」

「先輩と話したい、話したくない、会いたい、会いたくないって、連絡してから頭の中でぐるぐる回ってました」

「…本当に、嬉しかったです」

「先輩がくれたお返事。あれで私、悩んでたこともみんな吹っ飛んでしまいました。ああ、こんなにも私のことを考えてくれる人がいるなんて、なんて幸せなんだろうって」

「そう、思いました」
 
695:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 20:34:17.03 ID:J/biDMab
「……………侑、先輩」

「ありがとうございました」

侑「………!」

侑「しず──

「先輩のおかげで私は役者として何段階もレベルアップできました。今日の舞台にも、心残りは一つもありません」

「今まで、ありがとうございました」

侑「……しずく、ちゃん…」
 
697:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/17(木) 20:36:57.91 ID:J/biDMab
「ねえ、貴方」

「私の勇姿は、どうでしたか?」

「貴方の理想の妻で、いられましたか──?」


侑「………っ」


「…格好よかったよ」


「…ふふ」

「よかったぁ…♡」


演劇を観にいきました… ▼
 
724:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/18(金) 08:12:23.64 ID:CR3WMUkV
夕方…


侑 トコ…


『上原』


侑 カチ


ピンポーン…


「はい」

侑「……侑、です」

「侑ちゃん?いいよ入って」

侑「…うん」
 
725:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/18(金) 08:17:02.56 ID:CR3WMUkV
ガチャ…


歩夢「珍しいね、インターホン鳴らすなん…て…」

侑「………歩夢…」

歩夢「侑、ちゃん…」

侑「歩夢………あゆむぅ……」ポロ…ポロ…

歩夢「──っ」タタッ


ギュッ


歩夢「大丈夫、大丈夫だよ侑ちゃん。私がここにいるからね。怖いことなんかないよ、大丈夫」ギュ…

侑 ヒグッ…ヒック……
 
726:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/18(金) 08:23:23.90 ID:CR3WMUkV
歩夢の部屋


侑 …スン………スンスン……

歩夢「落ち着いたみたいだね。ホットミルクとココア、どっちがいい?」

侑「…歩夢がいい」スン…

歩夢「私は飲み物じゃないよ」

侑 キュ

歩夢「もう、侑ちゃんってば子どもみたい」

侑「…」

歩夢「まだしばらくこうしてよっか」ギュ…

侑「うん…」
 
727:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/18(金) 08:28:00.79 ID:CR3WMUkV
侑「………私、ね」

歩夢「うん」

侑「今日、演劇を観にいってたんだ」

歩夢「演劇…それって、演劇部の?」

侑「うん…三年生の卒業公演みたいなやつ」

歩夢「そうだったんだ。誘ってくれたら私も行ったのに」

侑「……しずくちゃん、が」

侑「役者として、出演したんだ」

歩夢「…うん」
 
728:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/18(金) 08:36:35.03 ID:CR3WMUkV
侑「しずくちゃん、ね、オーディションで役が決まってから、ずっと頑張ってた」

侑「…ううん。役が決まる前、オーディションなんか関係なかった頃から、いつも一生懸命だった、よ」

侑「一緒にいて、話すこともほとんど演劇のことだったんだ。自分の演技はどうとか、いい舞台はどんな風とか、そんなことばっかり話してくれた」

侑「一緒に演劇を観にいったときもね、脚本の人が好きなんだとか、演劇を観るときの心構えとか、色んなこと話してくれた」

侑「昔からね、好きだったんだって、演劇。でも中学までは演劇部がなくて、ニジガクを選んだのは、演劇部があるからだって言ってた」

侑「ずっと舞台に立ちたかったんだって、そう、教えてくれた」

侑「だから、だから──私っ……応援したいって、思って…っ応援する、って…決めたんだ…」ック…
 
729:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/18(金) 08:46:08.41 ID:CR3WMUkV
侑「演劇やる人ってね、…すごいんだよ」

侑「役が決まったらね、その役のことを、誰よりも理解しようとするんだ」

侑「革命家なら強さとか決意とか、その人がどんな風に考えてるのか、感じてるのか、ずっとね、向き合って」

侑「…例えば、強そうに見える革命家も、旦那さんを亡くした過去とかが、あって。そしたら、革命家としてだけじゃなくて、一人の女性として、どうなんだろうって、考えるみたい」

侑「亡くなったのが王様のひどい政治のせいだったから、革命家になったんだけど、それって言うほど単純なことじゃないでしょ?」

侑「旦那さんが亡くなったからって、強く立ち上がれる人ばっかりじゃないと思うんだ。いつまでも泣くことしかできなかったり、八つ当たりするみたいになるとか、私だったらどうなっちゃうかわかんないけど、いっそ自分も…って思う人だって、いると思う」

侑「でもね、革命家になったからには、きっと強い覚悟とか気持ちがあったんだって、それは旦那さんを深く愛してたからだって、そこまで踏み込んでさ」

侑「その役に、なりきろうとするんだ」
 
730:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/18(金) 08:50:09.55 ID:CR3WMUkV
侑「旦那さんに会えないのは寂しいだろうなって」

侑「会いたくてどうしようもない日があるんだろうなって」

侑「その気持ちを理解するために、どうしたらいいんだろうって、考えて…さ」

侑「大好きな人に、自分自身が、会わないようにしたりするんだ…」

侑「会いたいし、話したり、頭を撫でたり、励ましてもらったり、したいって」

侑「どんなに、思ってても、ね」

侑「彼女のことを理解するために、そういうのを我慢して、できる、強い人だったんだ…」ズ
 
731:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/18(金) 08:55:54.76 ID:CR3WMUkV
侑「もっと、会えばよかったな、とか」

侑「もっと、話したかったな、とか…」ジワ…

侑「頭も撫でてあげればよかった。好きなところとか、いっぱい伝えて、自信を持ってくれるように…」

侑「今回の、役、すごかった。よかったけど、まだ終わりじゃないのに。しずくちゃんにはあと三年あって、演劇、続けていくのに」

侑「卒業した後も、役者とか…女優とか……きっと、すごい人に、なる、のに」グス…

侑「全然、終わりなんかじゃ、ないのに」

侑「もっと、もっと……力になりたかった」

侑「隣で、支えて、いたかったのに…なぁ…」ポロポロ…
 
732:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/18(金) 09:01:48.77 ID:CR3WMUkV
歩夢「………」グッ…

歩夢 ギュ……

歩夢「もう、隣にはいてあげられないの?」

歩夢「これからも応援してあげることは、できないの?」

侑 …コクン

歩夢「どうして?」

侑「……私、」

侑「しずくちゃんのこと、…好きだった」

歩夢「…」

侑「大好き、だった」

侑「でも、…でもね、選べなかったんだ」
 
733:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/18(金) 09:05:01.37 ID:CR3WMUkV
侑「しずくちゃんと、約束、したのに」

侑「終わったら一番に駆けつけるねって、……約束…した、のに…っ」

歩夢「…行かなかったんだね」

侑「………っ、…」

侑 コクン…

歩夢「…そっか」

歩夢 ポン……ポン……

歩夢 ギュ…

歩夢 ギュウゥ……
 
734:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/18(金) 09:11:41.39 ID:CR3WMUkV
歩夢「そう決めたのなら、それが侑ちゃんの答えだよ」

侑「………!」

歩夢「色んなことを考えたんだよね」

歩夢「侑ちゃんがしずくちゃんのこと、演劇部のこと、たくさん考えてたの知ってるもの」

歩夢「かすみちゃん達とのことがあって、それなのにまだ諦めなかったから、きっと本気なんだなってわかってたよ」

歩夢「それで、今日、しずくちゃんの演劇を観て、大きな決断があったんでしょ」

歩夢「色んなことを、考えたんだってわかるよ」

歩夢「その上で侑ちゃんが選んだ答えは、間違いにはならないよ。ううん、間違いだって思っちゃいけないの」

歩夢「その決断を、侑ちゃんだけは信じてあげなくちゃ」

侑「…………そう、…だよね…」
 
735:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/18(金) 09:16:51.11 ID:CR3WMUkV
私は、ひどい奴だ。

応援するって言った。

約束もたくさんした。

それなのに、たった一回きりの大切な決断を、しなかった。

しずくちゃんのことは好きだった。

だったじゃない、大好きだ。

でも、それ以上に──


歩夢「それに、侑ちゃんのその決断を信じるのは、侑ちゃんだけじゃないよ」

歩夢「私も一緒に信じるもん」

歩夢「だから、たくさん泣いたら──明日は笑おうね」ニコッ

侑「…うん」


歩夢と話しました! ▼
 
752:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/21(月) 07:58:28.03 ID:fYxiZD39
翌朝…





朝を告げる音。

いつか、歌って聞かせてくれたんだったと思う。

あれはいつのことだったっけな。

そう、確か──


侑「ふぁぁ…」トコ…


ガラッ


侑「おはよう、歩夢」

歩夢「おはよう、侑ちゃん」
 
753:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/21(月) 08:03:33.80 ID:fYxiZD39
歩夢「すっきり晴れてよかったね」

侑「ね。今日も中庭でお昼ごはん食べられそう」

歩夢「もう、侑ちゃんってばいつもごはんのこと考えてるんだから」

侑「そんなことないよ。他にもほら、えっとー…現代文今日から新しい物語だなー、とか」

歩夢「そうだね」

侑「ね?」

歩夢「今日は現代文ないけどね」

侑「あれ?」

歩夢「うふふ。もう一回時間割確認しておかなくちゃだめだからね」

侑「はーい」

歩夢「それじゃまた後でね」スイッ
 
754:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/21(月) 08:09:06.91 ID:fYxiZD39
侑「お母さん、おはよう~…」コソ

高咲母「おはよう、侑」

高咲母 ジッ

侑「…」

高咲母「うん、今日も可愛いわよ」

侑「もう気にならない?」

高咲母「うん」


くい、と目元を拭ってくれる。


高咲母「顔を洗ってきなさい。それでもう涙はみんな流れちゃうからね」

侑「…うん」

高咲母「目玉焼き食べる人?」

侑「二枚!」ニコッ
 
755:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/21(月) 08:15:45.16 ID:fYxiZD39
寝間着を脱いで、制服を着て。

紐タイを結んで、髪を結って。

歩夢の音で目を覚まして、お母さんのごはんを食べて、歯も磨いたしリップだって塗った。

今日もまた、私の一日が始まる。

一緒に朝を迎えるのは昔からずっと変わらない、大切な──


侑「…あっやば、教科書入れ替えなきゃ!」ハッ


月曜のげは現代文のげ!

ちょうど一年前に歩夢が笑いながら教えてくれた覚え方が、まさか二年になってあだになるなんてね。

大慌てで支度する私は、今日もこうして歩夢を待たせる。
 
756:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/21(月) 08:21:12.23 ID:fYxiZD39
侑「お待たせ~」タタタ

歩夢「行こっか」

侑「うん!」


ずっと続いてきた私達の朝。

歩夢は少しだけオトナっぽくなった。

それは髪型のせいかもしれないし、…私の気持ちのせいかもしれない。

歩夢の目に映る私はどうだろう。

昨日よりも、背は高く見えますか?


歩夢「侑ちゃん」ジッ

侑「な、なに?」
 
757:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/21(月) 08:26:09.82 ID:fYxiZD39
歩夢 スッ…


ツン


歩夢「リップ、お鼻の頭にちょっとついてるよ」

侑「…へ」

歩夢「もう、どうしたらそんなことになるのか全然わかんないよ」クス

侑「あ、あはは…なんだろうね。たまになるよね」

歩夢「ならないよ。…ねえ、覚えてる?侑ちゃんが十一歳のときの誕生日、うちで一緒にパーティやったじゃない?あのとき侑ちゃん、『誕生日にチョコレートのケーキなの初めて!』ってすっごくはしゃいでて──」

侑「気づいたら、おでこにチョコホイップつけてたんだよね」

歩夢「だね」ニコッ
 
758:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/21(月) 08:36:05.85 ID:fYxiZD39
侑「私、あんまり成長してないなぁ」

歩夢「ふふっ、そうだね」

侑「あー、認めた!そこは嘘でも否定してほしかったなぁ」

歩夢「侑ちゃんに嘘をつける私じゃないのでー」

侑「そういうことじゃないよ~」

歩夢「でもね、私だってあんまり成長してないよ」

侑「ええ、そう?歩夢はいつも頑張ってるし、毎日すごいなぁって思うよ」

歩夢「そう見える?」

侑「見えるよ。まだ弱くて子どものままの私を、いつも支えてくれたり引っ張ってくれたりするもん」

歩夢「だったらそういうことなんじゃないかな」

侑「え、どういうこと?」

歩夢「侑ちゃんがいるから私は成長してるってこと」
 
759:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/21(月) 08:43:13.86 ID:fYxiZD39
歩夢「私、一人じゃなんにもできないよ」

歩夢「臆病で、泣き虫で、進む道だって決められないの」

歩夢「でも、少しだけ先に侑ちゃんがいてくれるから、もう一歩、もう一歩だけ、って踏み出せる」

歩夢「侑ちゃんが転びそうになったら走れるし、悩んでうずくまってたら駆け寄れる。侑ちゃんと一緒に進みたい道だったら、私は一秒も迷わずに決められるの」

歩夢「昔からあんまり成長してない私達かもしれないけど、それって少しは成長してるってことでしょ?小さな一歩も、二人で歩めば二歩だよ」
 
760:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/21(月) 08:53:44.63 ID:fYxiZD39
歩夢「もし、侑ちゃんが色んなこと考えてもうわかんないってなったときには、私が前を歩くから。私が立ち止まっちゃったら、侑ちゃんが手を引いてくれるでしょ?」

侑「…もちろん!」

歩夢 ニコッ

歩夢「私達、これからもきっとたくさん悩んだり迷ったりすると思う」

歩夢「そんなときは、私のことを思って進んでほしい。私と二人でいる明日のために」

歩夢「そうすれば私達、いつまでも、なにがあっても、ずっとお互いの一番同士でいられるはずだから」

侑「そうだね」
 
761:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/21(月) 09:04:13.14 ID:fYxiZD39
侑「歩夢」スッ

歩夢「うん」


私より少し体温が低くて、細い指。

ずっと、ずっと、私の隣にいてくれた人。

これからもそうであってほしいし、そうあれる私でいたい。

選んだ道を、私は──歩夢と一緒に信じて進む。

どれだけ迷っても、悩んでも、またこの手を繋ぐ。

それだけ心に決めておけば、きっと私は大丈夫だ。


侑「ねえ、歩夢」

歩夢「なに?侑ちゃん」

侑「今日は、どこでお昼ごはん食べよっか──!」


【ギャルゲ風安価SS】侑「また一年が始まる」 ―終わり―
 
763:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/21(月) 09:09:26.36 ID:fYxiZD39
概ね二ヶ月間にわたり、ご支援いただきありがとうございました
賛否あるとは思いますが、このSSの本編としては以上で完結となります。

【ノーマルエンド】

です。
一応完結したのであまり長々と居座るつもりはないのですが、消化不良だという声はあると思うので、ご要望があれば可能な範囲で書きます

お疲れ様でした
 
779:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/21(月) 15:15:22.46 ID:fYxiZD39
たくさんの声をありがとうございます、
際限がなくなるので次スレに移行しないという範囲で書けるものを書きます
まずはしずくルートのEDでしょうかね
 
788:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/21(月) 19:16:56.97 ID:cFs yg0
やがて、下りた幕が上がって役者の皆さんが揃って挨拶をする。

もう一度大きな拍手が送られて、今度こそ『名誉の涙』は終わりを迎えた。 

今すぐ走り出したい。

一番に駆けつけるって約束したんだ。

余韻の鎖に縛られたみたいに重い足を踏み出す。

会いたい──

会いたい──

しずくちゃんに、会いたい──


──侑「歩夢」

──侑「私はずっと、歩夢の一番傍にいるからね」 


侑「………っ!」
 
789:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/21(月) 19:20:05.60 ID:cFs yg0
歩夢。

私の大切な幼馴染み。

大切で特別な、お互いにたった一人きりの相手。

ずっと支えられてきた。

ずっと頼りっ放しだった。

気づいてないだけで、きっと私も歩夢に同じだけのものを返してきたんだよね。

私達、二人で一つって言っていいくらいの関係だと思う。

思うんだ。

歩夢が傍にいない未来を私は思い描けないし、きっと歩夢もそうだよね。
 
790:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/21(月) 19:25:22.84 ID:cFs yg0
友達が百人できたって、

恋人ができたって、

家族ができて、子どもができて。

夢が見つかって別々の進路に向かったって、

いつしかお互いの道で連絡を取らなくなったって。

歩夢。

あなたは私の一番大切な存在だよ。

膝を抱えてあなたが泣くとき、私は全てを置いて駆けつける。

私が光を見失ったとき、きっとあなたがそうしてくれるようにね。

信じてるんだ、私は私達の絆を。

だから、今だけは──


侑「すみません、前通ります!」タタッ


抱き締めたい人がいるんだ。
 
791:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/21(月) 19:29:10.11 ID:cFs yg0
どこだろう。

講堂の舞台、脇に控え室があったと思う。


会いたい──


そこかな。

ろくに音も遮ってくれなさそうな薄い扉があるだけの、なんにもない部屋だったような気がするけど。


会いたい──


終わったばっかりじゃ、他の部員の人とかみんないるかもしれないな。

突然部外者が訪ねてきたら驚かせちゃうかも。

…別に、いっか。


だって私──なによりも大事な約束があるから!
 
792:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/21(月) 19:32:50.90 ID:cFs yg0
侑「…………はっ!」タンッ


『ステージ控え室』


ぼろぼろのプレート。

窓から明かりと興奮気味の談笑が漏れる、薄い木製扉の前。


侑「はぁ……はぁ………っ」


時代を飛んじゃったのかと思った。

物語で見るような欧風の服、さっぱりと整えられた髪。

腰には剣を携えてもおかしくないような革ベルト。


美しい革命家の女が、横たわっていた。
 
793:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/21(月) 19:34:56.91 ID:cFs yg0
侑「…!」タタタ…


駆け寄って、膝を付く。


侑「し  スッ


温かい人差し指が、私の言葉を遮った。


「やっと………会えた、のね」


侑「────……!」
 
794:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/21(月) 19:43:49.19 ID:cFs yg0
侑 スゥ…

侑 ハァ…

侑 ────


「もう、来てしまったのかい。随分と早かったね」

「…ええ。貴方に会いたくて、急いでしまったの」

「キミは昔からせっかちだね」

「貴方が、のんびり屋だから。…代わりです」

「そうか。そうだね」

「私の、最期を…見てくれた……?」

「ああ、もちろん。見たよ。とても格好よかった。誇りに思うよ」

「……嬉しい。離れている間、とても…寂しかった。怖くて、苦しくて、貴方に触れたいと…毎夜手を伸ばしては、空を掻きました」

「こんな手で、いいかな」キュ

「…この手がいいの。大好きな…貴方の、手」

「二度と離さない、そう誓うよ。別々に進んでしまった物語を、今また一緒に紡ぎ始めよう。ここからが、僕達の物語の新たな幕開けだよ」

「…………たくさん、待たせて、…ごめんね」

「平気だよ。僕は、のんびり屋だからね──」ナデ…
 
795:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/21(月) 19:52:25.35 ID:cFs yg0
しずく「……侑先輩」スッ

侑「……しずくちゃん」

しずく「えへへ。ありがとうございます、付き合ってくださって」

侑「もう、こういうことやるならやるって言ってよ。倒れてるからびっくりしたよ」

しずく「アドリブとは思えませんでしたよ。先輩、演劇部に入って役者をやる気はありませんか?」

侑「ありません」

しずく「そうですか…」

侑「でも、しずくちゃんの専属マネージャーをやれるんだったら入ってもいいかも」

しずく「…やっぱりだめです。侑先輩、部に入ったらきっとみんなの人気者になってしまいますから」ギュッ

侑「ええ?しずくちゃんが誘ったのになぁ」
 
796:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/21(月) 19:55:49.43 ID:cFs yg0
侑「これ、衣装でしょ?こんな風に寝転がっちゃっていいの?」

しずく「怒られてしまうかもしれませんね」

侑「とりあえず、ほら、起きよ」グイ

しずく「ぁ…」

侑「ん?」

しずく「…なんだかこの格好、どきどきしますね。まるで、抱きかかえられているみたいです…」//

侑「そ…っ!」

侑「……そういうこと言われると、恥ずかしくなるから…やめてよ……」//
 
797:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/21(月) 19:59:52.31 ID:cFs yg0
しずく「………」

侑「………」


腕の中に、優しい体温を感じる。

じわり、じわり、温かくなっていく。

すぐ隣からは止まない談笑、少し離れたエントランスからは解放された喧騒が届く。


きゅ、と肩に力が入ったのがわかった。


しずく「侑せんぱい──

侑「しずくちゃん。私ね、しずくちゃんのことが好きだよ」

しずく「──っ…」
 
798:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/21(月) 20:06:25.44 ID:cFs yg0
侑「演劇に打ち込む真剣な姿がかっこいいって思う」

侑「演劇のことを話す笑顔が可愛いって思う」

侑「ふとした拍子にすぐ演技しちゃうところが、…なんだろうね。大好きだよ」

しずく「…っ、もう…」プイ…

侑「私、しずくちゃんのこと、ずっと傍で応援したいんだ。次はもっと動く役をやって、その次はもっともっと動く役をやって、いつかしずくちゃんが主役の舞台に立つその日まで、ずーーーっと!一番近くで応援してたいんだ」

侑「だめかな?」

しずく「………だめなわけ、ないじゃないですか…」

しずく「どうして侑先輩の方から言っちゃうんですか!」

侑「え?」

しずく「私が!私から!言いたかったのにっ!」ポコッポコッ

侑「あ、いたっ、しずくちゃん、痛くはないけど、ちょっと」アワワ
 
799:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/21(月) 20:17:12.37 ID:cFs yg0
しずく「私、侑先輩と出会えてよかったです」

しずく「初めての舞台経験、不安なことばっかりでした。でも、いつも先輩が私のことを想ってくださって、傍で支えてくださったから」

しずく「きっと乗り越えられるって、信じてましたよ」

しずく「フリメルダと心を通わせることも、先輩なしには絶対にできませんでした」

しずく「あの日…オーディションの日、愛しい人に触れることができない苦しさを知ることがなければ、私はフリメルダの気持ちを知ることはできなかった。今日の舞台に立つことはなかったと思います」

しずく「それに、昨日。あのお返事が、私にフリメルダの抱える全てを理解させてくれました」

しずく「私の方こそお願いします」ギュ…

しずく「もう、この手を離さないでください。次の舞台に立つときも、その次も、主役としての人生を全うしたその後にも──決して、離さないでほしいんです」

しずく「…だめ、ですか?」

侑「だめなわけ、ないじゃん」ポン
 
800:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/21(月) 20:23:57.10 ID:cFs yg0
侑「私ね、やりたいことって今までなかったけど、やっとできたんだ」

侑「聞いてくれる?」

しずく「ぜひ、聞かせてください」

侑「──しずくちゃんの夢を応援すること」

侑「夢を追いかけるしずくちゃんを応援できたら、私も、きっとなにかが始まる。そんな気がするから」

侑「世界一の大女優になって、しずくちゃん。その隣に、私をいさせて」

しずく「…世界一の大女優になった後は、どこかへ行ってしまうんですか?」

侑「…まさか」フル…


侑「その後は、私だけのヒロインになってもらうんだよ!」

しずく「──はいっ♡」


【ギャルゲ風安価SS】侑「また一年が始まる」 ―終わり―

【しずくエンド】
 
801:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/21(月) 20:29:15.60 ID:cFs yg0
当然この一週間後には同好会ライブの予定日を迎えますが、現状しずくエンドとは直接の関係がないので描写は省略します

本日の更新は以上です、
明日からは菜々ルートを書いてみますが、スレの残数の兼ね合いがあるので日常のルートと直接関係がないパートは省くかもしれません
(どのくらいかかるかわからないのですが、恐らくルート進行イベントだけを書いてもギリギリだと思います)
 
811:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/22(火) 08:35:32.03 ID:ybKBdXbQ
侑自身の好感度や関係性の調整上、

しずく…演劇部の見学以降のイベントなし(2スレ目以降の接触描写を全て破棄)
菜々…ここまでの描写通り
歩夢…しずくに会いにいかなかった以降のイベントなし(最終接触 >> 629)

とした上で、5月25日(月)から開始します。
24日(日)は固定イベント演劇部公演がありますが、見学にも行っていないのでそもそも情報を把握しておらず、結果観劇にもいきませんでした。課題でも頑張っていたことにします

また、ルート進行上の重要な選択肢は安価を出さず最適な選択をしたものとして自動進行させます
この他、なにか描写上の矛盾や気になる箇所などあったらお声がけください
 
812:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/22(火) 08:48:08.09 ID:ybKBdXbQ
5月25日(月) 朝…


侑「お待たせ~」タタタ

歩夢「行こっか」

侑「うん!」


一昨日は果林先輩のお部屋で片付けをして、昨日はなんとか一人で課題を終わらせた。

なんだか、人としてしっかりした週末だったかも!


歩夢「はぁぁ…」シュン

侑「よしよし、朝になって思い出しちゃったんだね」

歩夢「みんな、私のこと変な子って思ったかな」

侑「そんなことないって。私だって授業中に寝てたらビクッてなって席から落ちたことあったけど、みんな笑ってくれただけだったじゃん」

歩夢「侑ちゃんはそういうキャラだから平気だったかもしれないけど~…」

侑「あはは。……え、私そういうキャラなの?」

歩夢「はあ。教室に行くのが憂鬱だよ…」
 
813:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/22(火) 08:53:00.52 ID:ybKBdXbQ
教室


優花「ああ、あったねそんなこと」ケロッ

歩夢「えっ」

香「なにー?」

優花「金曜の帰りさ、歩夢が大きな声出したんだよ。香はもう部活行ってたから聞いてないと思うけど」

香「そうだったんだ。侑ちゃんと話してたの?」

歩夢「そう、だけど」

香「じゃー痴話喧嘩でしょ」

優花「どうせ侑が変なこと言って怒らせたんだよね」

侑「そ、そんなんじゃないよ!…とは、ちょっと言いづらいけど…」

優花「ほらね。歩夢が大きな声出すなんて侑のことしか有り得ないし、侑のことなら有り得るし。誰も気にしてないでしょ」

ゆうぽむ「「そ、そうなんだ…」」ポカン…
 
814:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/22(火) 08:57:52.05 ID:ybKBdXbQ
お昼休み…


あれから他のクラスメイトにも謝ったけど、みんなだいたい似たような反応だった。

心配したほど問題視されてなくてよかったと思う反面、歩夢と私が周りからどう思われてるのか…

ちょっと不安になってきたなぁ。

でもみんないつも通り歩夢にも私にも接してくれるし、ほんとになんとも思ってないみたい…


侑「…まあ、みんなが気にしてないなら、いっか…」
 
815:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/22(火) 09:01:02.11 ID:ybKBdXbQ
歩夢「侑ちゃん、お昼ごはん食べよう」

侑「中庭行く?」

歩夢「うん…」

歩夢「ううん、教室で食べよ。優花ちゃん達と」

侑「だね。そうしよっか」

侑「優花、お昼一緒に食べようよ」

優花「お。賛成~」

香「やったー」トトト
 
816:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/22(火) 09:07:11.41 ID:ybKBdXbQ
「「「いただきます」」」

侑「香のお弁当、なんかすごく豪華だね」

香「いーでしょー。弟が遠足だからママが張り切って作ってくれたんだよ」

歩夢「へー、遠足。どこに行くの?」

香「葛西の水族館だって。『中学で水族館とかガキかよ』って言ってたけど、昨日めっちゃ魚の雑学とか調べてたんだよ」

侑「うわあ、可愛いね」

香「生意気盛りだけどねー」

優花「遠足なら台場の海でいいのにな。そしたら放課後遊んであげるのに」

侑「優花みたいなのに絡まれたら中学生怖くて泣いちゃうよ」

優花「なんだとー!?」
 
817:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/22(火) 09:16:14.11 ID:ybKBdXbQ
香「そういえば、石倉ちゃん転科試験受けるかもなんだって」

侑「転科試験?ってなに?」

歩夢「他の学科に移るための試験だよ。入学式で説明されたでしょ」

侑「そんな昔のこと覚えてないよ~」

優花「いつ?」

香「夏休み明けだって。試験に向けて勉強しなきゃーって言ってたよ」

侑「転科試験って難しいの?」

歩夢「難しいみたいだよ。学科別入試のレベルと、転科時期までに習う範囲が加わるから、範囲も広いんだって」

侑「うへ~」

優花「専門学校に途中で入るみたいなものだもんな。侑とか私には無理だなー」

侑「なんで巻き込むの!?私はいけるよ!」

優花「歩夢とクラス離れても勉強ついていける?」

侑「………」

香「黙っちゃうんだ」
 
818:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/22(火) 09:20:54.05 ID:ybKBdXbQ
優花「でもそんな試験受けるほどやりたいことが見つかるってすごいかもな」

歩夢「そうだね。入学してからこれまでの間にそういう気持ちになったってことだもんね」

香「なにがきっかけなんだろ。選択授業かな?」

優花「後で聞いてみよ」

香「うんー」


…そういえば、優花も私のこと名前で呼ぶんだ。

果林先輩、愛ちゃん、それに優花。

そのくらいかな。

やっぱり、呼び捨て自体がどうこうってことじゃなくて、関係性が変わったんじゃないかってことが気になったんだよね。
 
819:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/22(火) 09:26:00.69 ID:ybKBdXbQ
──菜々「侑」


正直、嬉しかった。

菜々ちゃんの交友関係は全然知らないけど、呼び捨てをする友達はいないって言ってたし、


──菜々「かすみさんやエマさんのファンだと言ってくれたのだと聞いています」


下級生にも上級生にもきっと態度はほとんど変わらないんだと思う。

そんな中、私にだけくれた、呼び捨て。

お母さんが煽ったのがきっかけっていうのは引っかかるけど、でもその事実は本当のことだもん。
 
820:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/22(火) 09:28:27.84 ID:ybKBdXbQ
例えば、例えばだけど。


──侑「菜々」


侑「…っ」


これは、結構照れるぞ…

歩夢も優花も香も呼び捨てなのに、一度定着した呼び方を変えるのって精神力を使うんだな。

…それを乗り越えようとしてくれてるんだ、菜々ちゃんは。

もっと仲良くなりたいなぁ。
 
821:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/22(火) 09:31:25.86 ID:ybKBdXbQ
歩夢「侑ちゃん?」

侑 ハッ

侑「うん、なに?」

歩夢「もー、月曜日からぼーっとして。話聞いてなかったでしょ」プクー

侑「ご、ごめん」ハハ…

香「あーあー、学ばないなー侑ちゃんは」

優花「ねー。今日も歩夢が大きな声出すかもなー」

歩夢「だ、出さないも~んっ!」


クラスメイトとお昼ごはんを食べました! ▼
 
825:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/23(水) 08:07:01.10 ID:Ej2F6ea/
放課後…


侑「歩夢、はんぺんの様子見にいかない?」

歩夢「いいよ。今日もかすみちゃん達お昼ごはんあげたのかな」


かすみんに連絡してみる?

でも今日はあげてなかったとしたら、責めるみたいになっちゃうかな。

厚意で持ってきてくれてるんだもん、それはよくないよね。


侑「どうだろう。購買覗いてパンでも買っていこっか」

歩夢「まだ残ってるといいね」

侑「だねー。早い日はお昼休みのうちに売り切れちゃったりするもんね」

歩夢「生徒が多いからね」
 
826:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/23(水) 08:11:45.75 ID:Ej2F6ea/
中庭


侑「やっぱりかすみんのとこに寄ってコッペパンの余りがないか聞いたらよかったかなぁ」トボトボ…

歩夢「そしたらはんぺんちゃんにあげた残りは侑ちゃんが食べられたのにね」

侑「うん、最近かすみんのコッペパン不足ー……って違うよ、そんなこと考えてないもん!」

歩夢「うふふ。どうかな~」

侑「もー、歩夢のいじわるー」

歩夢「…あれ?あそこ、誰かいるよ」

侑「え?璃奈ちゃんとか?」

歩夢「ううん、……あれは…」
 
827:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/23(水) 08:15:12.95 ID:Ej2F6ea/
侑「菜々ちゃん!」

菜々「!」

菜々「侑。それに歩夢さんも」

歩夢「…こんにちは、菜々ちゃん」

侑「珍しいね、中庭で会うなんて。生徒会のお仕事?」

菜々「いえ、お仕事ではありませんが…その…」サッ

侑「? それなに?」

菜々「…ぱ、パンです」

侑「パン?」

菜々「お昼休みに買ったのですが、余ったので、お弁当を持ってきていましたし、食べ損ねて、せっかくなら…その……」ゴニョ

侑「菜々ちゃん、パン余ってるの!?」パァ

菜々「え?ええ、はい、まあ…」

侑「それ、貰ってもいいかな!?」
 
828:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/23(水) 08:19:03.96 ID:Ej2F6ea/
侑「はんぺん、いるか~?」ヒョコ

はんぺん zzz...

侑「いたけど寝てるや」

歩夢「残念だったね、侑ちゃん」

侑「こんなに近づいても起きないなんて、のんびり屋だなぁ」

歩夢「起こしちゃうから撫でちゃだめだよ」

侑「わかってるってば。…璃奈ちゃんだったら起こさずに撫でられたりするのかな」

歩夢「かもしれないね」

菜々 ジーッ

侑「菜々ちゃんももっと近くにおいでよ。はんぺんがこうしていられるのは菜々ちゃんのおかげなんだから」

菜々「は、はい。それでは」オズ…
 
829:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/23(水) 08:23:09.92 ID:Ej2F6ea/
菜々「白い、ですね」ジ…

侑「…ぷっ」

菜々「!?」

菜々「な、なぜ笑うんですか!?」

侑「だって、そんなにまじめな表情で『白いですね』なんて言うんだもん。白猫なんだから当然だよ」ククッ…

菜々「し、白猫なのだから白いという感想が出るのは当然でしょう!?」//

侑「いや、そう、そうなんだけど。くっ…なんだか、面白くて…」プルプル…

菜々「そんなに笑わないでください!」

歩夢「侑ちゃん、一度笑い始めるとしばらくこうだから、放っといていいよ」

菜々「むぅ…釈然としませんが…」
 
830:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/23(水) 08:27:54.09 ID:Ej2F6ea/
侑「はぁ……はぁ……」

歩夢「やっと落ち着いた?」

侑「うん…」

菜々「忘れませんからね、このこと」キッ

侑「お、怒らないでってば~…」

歩夢「侑ちゃん、パンどうしよっか?」

侑「そうだね。ちぎって置いといたら食べるかな」

歩夢「食べてくれると思うよ。…あ、でも他の野良猫とかに取られたりしちゃうかな」

侑「あー…あるかなぁ…」

菜々「…恐らくですが、敷地内に他に野良猫はいないと思いますよ」

侑「え、そう?」

菜々「はい。ここ一週間、はんぺんちゃん以外に猫は見かけてませんから」

侑「そっか!」
 
831:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/23(水) 08:32:44.46 ID:Ej2F6ea/
侑「菜々ちゃんがそう言うなら間違いないよね。少し多めに置いといてあげよーっと」ブチ

歩夢「二つか三つに分けておいたら?」

侑「今日の夜ごはんと明日も食べられるように?ナイスアイディア、歩夢!」ブチ…


パン
パン はんぺん zzz...
パン


侑「なんだか捧げ物みたいになったね」

歩夢「あながち間違ってもないんじゃない?」フフッ

菜々「残ったパンはどうしましょうか」

侑「あ…」

歩夢「侑ちゃんが食べるのでご心配なく」

菜々「た、食べるんですか。はんぺんちゃんにあげた残りを」

侑「だ…だって!食べなくちゃもったいないよ!」アセ
 
832:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/23(水) 08:38:43.92 ID:Ej2F6ea/
菜々「元々私が買ったものですし、持って帰りましょうか」

侑「菜々ちゃん、食べる?」

菜々「食べ…ま、す。夕飯に支障を来たすといけないので今は食べませんが、勉強中にでも、コーヒーのお供に」

侑「あんまりパン食べないんだったよね?お弁当もあったのに買っちゃうなんて、よっぽど食べたかったんだよね」

菜々 ギクッ

菜々「そ、それは…」

侑「はんぺんにあげたかっただけだから、返すよ。少しちぎっちゃったけど」エヘヘ

菜々「あ、ありがとうございます」
 
833:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/23(水) 08:42:13.59 ID:Ej2F6ea/
侑「はんぺんも起きないし、そろそろ帰ろっか」

歩夢「そうだね。あんまり賑やかにして起こしちゃうと可哀想だもの」

侑「起きて撫でさせてくれてもいいんだけどな」

歩夢「侑ちゃんにはまだ早いよ」

侑「ちぇ~」

はんぺん zzz...

侑「私達からのパンだよって、書き置きしとこう」ゴソ

歩夢「ええ?はんぺんちゃんに?」

侑「そ!少しでも懐いてほしいじゃん」カキカキ…

菜々「…?」チラッ

歩夢「たまにこういうよくわからないことをする子なの…」

菜々「そうみたいですね…」
 
834:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/23(水) 08:47:00.95 ID:Ej2F6ea/
パン『侑』
パン『菜々』 はんぺん zzz...
パン『歩夢』


侑「よし!これで私達からの差し入れだってわかってくれるよね!」ムフー

歩夢「わかってくれるといいね」

菜々「どのパンを食べたかではんぺんちゃんが一番誰に懐いているか、占いみたいですね」クス

侑「!」

侑 スッ…

菜々「侑、なにを?」

歩夢「一番大きなのを自分のにしたみたい」

菜々「そうですか…」

侑「だ、だって菜々ちゃんがそういうこと言うから~!」


菜々とはんぺんのお世話をしました! ▼
 
835:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/23(水) 08:56:46.75 ID:Ej2F6ea/
翌朝…


侑「お待たせ~」タタタ

歩夢「行こっか」

侑「うん!」


あの後、一緒に帰ろうって誘ったけど、菜々ちゃんには「用事がある」ってことで断られてしまった。

今週末に同好会のライブがあるんだし、たぶんスクールアイドルの練習だよね。

…少しでも順調に進んでくれてるといいな。

でも同好会の活動の前に、なんで中庭にいたんだろう?


歩夢「学校に着いたら、はんぺんちゃんの様子覗いていこっか?」

侑「賛成!私のパン食べてくれてるといいな」

歩夢「大きいからって後回しにされてたりして」

侑「そしたら持ってっちゃうから!」

歩夢「やめなさい」クスクス
 
836:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/23(水) 09:00:44.37 ID:Ej2F6ea/
お昼休み…


結局、はんぺんはみんな食べてた。

パンは一つも残ってなくて、歩夢と「食いしん坊だね」って笑った。

ちょっと嬉しかったのは、私達の名前を書いたノートの切れ端が寝床の奥に持ち込まれてたこと。

わかったのかわかってないのか、なんだかお礼を言われたような感覚になっちゃった。


侑「はんぺんのネームプレートでも作ってあげようかなぁ」


あ、そしたら『飼ってる』ことになっちゃうかな。

難しいや。
 
837:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/23(水) 09:05:37.97 ID:Ej2F6ea/
裏庭


「「いただきます」」

侑「果林先輩いなかったね」

歩夢「あんまり、いつも同じところにいるイメージってないかも」

侑「ちょっと気まぐれそうだもんね。猫みたい」

歩夢「あー。果林先輩に言いつけちゃおーっと」

侑「えっ…ええ!?なんで、悪口言ったんじゃないよ!」

歩夢「だったら果林先輩に話しても問題ないよね」

侑「ん…んん!?あれ、確かに……いやでも待って、なんか私だったら怒られそうな気がする!」

歩夢「ほっぺたぐにーってされるんでしょ」

侑「やだぁぁ…」


歩夢とお昼ごはんを食べました! ▼
 
840:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/24(木) 07:20:19.91 ID:+nZdnLXw
放課後…


私なりに考えてみた。

直接同好会のお手伝いをすることはできなくても、例えば菜々ちゃんと話す機会を増やすことで、なにか心配事にヒントをあげられたりできるんじゃないかって。

あるいは、菜々ちゃんじゃなくて他の部員の誰かでもいいのかも。

でも、ライブ直前のこの時期、練習とかの時間は一秒だって惜しいはずだよね。

うーん…どうしよっかなぁ…


誰かに連絡する? >>841
1.菜々
2.かすみ
3.彼方
4.やめておく
 
842:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/24(木) 07:33:59.31 ID:+nZdnLXw
菜々ちゃん…も、あれだけはっきり言われた以上、そうそう私に頼ってはくれないよね。

かすみんには積極的に同好会の話を振りづらいし、かと言って自分から話してくれることはないよね。

私から『ファンとして応援したい』って伝えちゃったし、さすがに情けない気持ちもある。

一番気兼ねなく同好会の話をできる相手って、もしかして──


侑 スマスマ…


なんか、連絡しても夜にしか返ってこないみたいなことを誰かが言ってたような気がするけど。

連絡しておく分にはいいよね。
 
843:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/24(木) 07:45:46.40 ID:+nZdnLXw
帰り道


歩夢「今年の水着、もう発売されたんだって」

侑「へー、そうなの?まだ五月なのにね」

歩夢「年々早くなってる感じだよね」

歩夢「ね、侑ちゃん。今年はどんな水着にしよっか」

侑「え~?それじゃまるで毎年水着買い替えてるみたいじゃん」

歩夢「もう、こういうのはどれにしようかなーって考えてお話しするのが楽しいんじゃない」

侑「あはは、ごめんごめん。そうだなー、歩夢にはフリルがついた可愛いやつ着てほしいかも」

歩夢「侑ちゃんはお揃い?」

侑「私はフリルって柄じゃないからさ。こう、ストーンって繋がったやつ……あ、スク水でいいよ!」

歩夢「いいわけないでしょ。はい、一緒にお買い物に行くことが決まりましたー。一番可愛いの買うことに決定でーす」

侑「え~~、いいよ~~」


歩夢と帰りました! ▼
 
844:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/24(木) 07:49:51.68 ID:+nZdnLXw
夜…


『彼方ちゃん:やっぴ~』


侑「あ、彼方ちゃんだ」


放課後は同好会だったのかそうじゃないのか、お返事が来たのはもう晩ごはんもお風呂も終えて部屋に引っ込んだ頃だった。


『やっぴー?』

『彼方ちゃん:やっほーのすやぴだよ』


よくわかんないけど可愛いかも!
 
845:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/24(木) 07:58:14.43 ID:+nZdnLXw
『遅くまでお疲れ様?』

《彼方ちゃん:かなー?》

《彼方ちゃん:遥ちゃんと晩ごはん食べ終えたとこだよ~》

『遥ちゃん!私も会ってみたいな』

《彼方ちゃん:いいよ、いつでも遊びにおいでよ。私がうちにいる日ならね》

『彼方ちゃんって忙しいの?』

《彼方ちゃん:どうだろ?》

《彼方ちゃん:毎週末おうちでのんびりしてるってことはないかもだね》

《彼方ちゃん:連絡してくれたら予定あけとくから大丈夫だよ~》


※ 非常に見づらかったので、カッコを別表記にしています。他意はありません。
 
846:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/24(木) 08:06:57.39 ID:+nZdnLXw
かすみんも、彼方ちゃんの予定はよくわかんないみたいなこと言ってたもんね。

初めて会った日だってお買い物に出かけたはずが公園で居眠りしてたりしたし、なかなかライフスタイルを把握するのが難しそうだ。


『私は毎週末だいたいヒマしてるよ。反対だね!』

《彼方ちゃん:そうなの?》

《彼方ちゃん:若いんだからたくさん遊ばなくちゃだめだよ》

『彼方ちゃんが声かけてくれたらお買い物にも練習にも付き合うよ!』

《彼方ちゃん:そうだねぇ》


わざと『練習』って言葉を使ってみたけど、返信の速さは特に変わらない。

どうだろう、私からそっちに話題を持っていってもいいのかな…
 
847:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/24(木) 08:10:32.17 ID:+nZdnLXw
と、少し迷ってると、


《彼方ちゃん:ゆーちゃん、せつ菜ちゃんとお友達なんだっけ?》


侑「!」


『うん、そうだよ』


同好会に全員で集まった日、せつ菜さんが私達の名前を呼んじゃったんだよね。

せつ菜さんと友達かって聞かれると怪しいところだけど、菜々ちゃんは友達だもん。


《彼方ちゃん:明日の放課後って予定ある?》
 
848:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/24(木) 08:19:14.20 ID:+nZdnLXw
『ないよ。歩夢と帰ると思うけど、どこか寄り道するかなーどうかなーって感じ』

『なにか手伝う?』

《彼方ちゃん:歩夢ちゃんか~》

《彼方ちゃん:歩夢ちゃんもせつ菜ちゃんとお友達なんだっけ?》

『そうだよ』


そこで初めて、彼方ちゃんが迷ってるような空白の時間が生まれた。

なんだろう…

せつ菜さんと、私達と、その関係が気になるって。

…あれ、そういえばせつ菜さんが菜々ちゃんだって、同好会のみんなは知ってるのかな?

そう考え事をしてるうちに彼方ちゃんから来たメッセージは、


《彼方ちゃん:明日の放課後、せつ菜ちゃんと一緒にいてほしいなーって思うんだけど》

《彼方ちゃん:お願いできない?》
 
849:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/24(木) 08:26:42.37 ID:+nZdnLXw
『どういうこと?』

《彼方ちゃん:どこか遊びにいくのでも一緒に帰るのでもいいんだけど、せつ菜ちゃんの放課後の予定を抑えちゃってほしいの》


次は私がお返事の手を止める番。

それをすることにどんな意味があるんだろう。

安易にいいよって答えちゃってもいいのかな。

歩夢に、相談してみた方がいい…?


────♪………


侑「!」


『着信:彼方ちゃん』
 
850:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/24(木) 08:29:22.07 ID:+nZdnLXw
侑「も、もしもし!」

彼方『あ、侑ちゃん。やっぴ~』

侑「あはは、やっぴー、彼方ちゃん」

彼方『急に電話しちゃってごめんね。今大丈夫?』

侑「うん、平気だよ。よかった、どう返せばいいのかわかんなかったから」

彼方『だよね~。戸惑ってるのが画面の向こうからひしひし伝わってきたよ』

彼方『順を追って話したいんだけど、五分くらい話せる?』

侑「うん、いいよ。聞かせて」
 
851:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/24(木) 08:38:18.65 ID:+nZdnLXw
彼方『せつ菜ちゃんから聞いてるかな。彼方ちゃん達ね、今週の日曜日にライブの予定があるの』

彼方『今はそこに向けてみんなで練習してて』

彼方『前も言ったように、曲の数はどうしても足りないんだけど…それなら一曲一曲のパフォーマンスを高めて、短くても観てくれた人達に満足してもらえるようなライブを目指そうってことになったの』

彼方『それでみんななんとかやってやろう~って頑張ってはいるんだけど』

彼方『なかなか、温度感が合わなくってね。イマイチ上手く行ってない感じなんだ』
 
852:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/24(木) 08:46:00.69 ID:+nZdnLXw
彼方『練習メニューは今までとはちょっとレベルが違うってくらい激しくなって、放課後の数時間だけでもみんなへとへとになっちゃうの』

彼方『でも、決めたからにはライブを成功させたいって思いで、みんななんとかついていってる』

彼方『自分がしたいパフォーマンスでお客さん達に喜んでもらうには、それができるくらいの実力がなくちゃいけないからね。それをわかってるから、きつくても必要なことなんだってみんな踏ん張ってる…』

彼方『ん、だけどねぇ…』

侑「…ちょっと、きつ過ぎる…?」

彼方『ん~、さすが侑ちゃあん。よくわかってくれるね、彼方ちゃんの言いたいことを』

侑「うん…」
 
853:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/24(木) 08:53:24.17 ID:+nZdnLXw
彼方『元々ね、せつ菜ちゃんって毎日は練習に来なかったんだ』

侑「なんか、そうらしいね」

彼方『うん。同好会以外にもやってることがあってそっちにも顔を出さなくちゃいけないからって。水曜日と金曜日はお休みだったの』


金曜日…は、生徒会の会議があるって前に言ってたよね。

一緒にブルーレイを買いにいったのは週の中頃だったと思うけど、何曜日だったかな。


彼方『でもね、いざ会場の許可が取れてライブをやるのが決定してからは、毎日かなぁ…うん、たぶんほとんど毎日。用事があっても一時間くらいだけでも顔を出してくれてるんだよね』
 
854:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/24(木) 08:59:20.48 ID:+nZdnLXw
彼方『部長で色んなこと仕切ってくれるし、スクールアイドルの知識も一番あるから、頼りになるんだよ。それは全員思ってるの』

彼方『でも、あんまりにもパワフルっていうか…』

彼方『同好会みんなの体力が、せつ菜ちゃんのレベルについていかないんだよぉ』

侑「……なるほど」

侑「だから、私が明日せつ菜さんを連れ出すことで、みんなの身体を休めたいってことだね」

彼方『そうなの』
 
855:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/24(木) 09:05:48.45 ID:+nZdnLXw
彼方『もちろん、これからスクールアイドルとして活動していこうと思ったら、体力をつけたりハードな練習をこなしたりしなくちゃいけないんだってことはよくわかってるの』

彼方『でも、まだ発足したばっかりの同好会で、メンバーの体力もばらばらの状態で、続けるメニューじゃないって…彼方ちゃんは思うんだよ』

彼方『きちんと言わなくちゃいけないんだけど、やっと、なんとか目標ができて動き始めたのに、今それを言ってもし止まっちゃったら…』

彼方『…もう、二度と……みんなで同じ目標に向かおうって機会が巡ってこないような気がしてね、…怖いの』
 
856:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/24(木) 09:12:05.16 ID:+nZdnLXw
侑「わかった」

侑「明日は私がせつ菜さんを確保するよ。だから彼方ちゃん達はしっかり休んで!」

彼方『侑ちゃあん……!』

彼方『今週のライブまで頑張るんだ。それさえ乗り切ったら、振り返って反省って形できちんと言わなくちゃいけないことは言うから』

彼方『だから、明日だけ甘えてもいい?』

侑「任せて!ちょうど私も菜々ちゃんと話したいなって思ってたから。明日の放課後は私達と一緒にいてもらうよ!」

彼方『…』

彼方『ありがとう、侑ちゃん。また好きなもの作ってあげるからね~』

侑「ほんと!?やったー、なおさら頑張っちゃうよ!」
 
858:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/24(木) 09:21:58.40 ID:+nZdnLXw
彼方『結局私達の問題に巻き込むみたいにしちゃってごめんね』

侑「ううん、そんなことないよ。みんなの力になれるならどんな些細なことだってやりたいんだ。それに、私達の間で変に気を遣うのはなしだって、彼方ちゃんが言ってくれたことだよ」

彼方『おーっと、でしたでしたな~』

彼方『へへ…あー、よかった。侑ちゃんが連絡してきてくれて』

侑「ね!ちょうどよかったよ」

彼方『これで今夜は安心してすやぴできるなぁ』

侑「ちゃんとお布団で寝てね?」

彼方『すやぁ…』

侑「かなたちゃーーーん!」

彼方『えへへ~』


彼方と話しました! ▼
 
861:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/24(木) 20:24:09.35 ID:+nZdnLXw
翌朝…


侑「お待たせ~」タタタ

歩夢「行こっか」

侑「うん!」


今日の私は決意に満ちてる。

昨日の夜、彼方ちゃんと話したこと。

話したのがかすみんだったらきっとだめだったし、私じゃなければ彼方ちゃんも頼ってくれなかったと思う。

なんとか掴んだ、同好会のみんなの役に立てる機会。

ううぅ、頑張るよ…!


侑「歩夢、今日もお弁当だよね?」

歩夢「そうだよ。もしかして、侑ちゃんパン?いいよ、購買部に行くのくらい付き合うよ」

侑「あー…じゃなくってね」

侑「今日のお昼ごはん、菜々ちゃんと食べない?」

歩夢「………へえ?」
 
862:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/24(木) 20:32:06.86 ID:+nZdnLXw
お昼休み…


侑「歩夢、行こ」

歩夢「はいはい」ガタ…


あんな話をしたばっかりで菜々ちゃんとのごはんを提案するのは、さすがの私も結構覚悟が必要だったけど。

目的をきちんと話したら、歩夢も頷いてくれた。

この作戦には歩夢の協力が必須だもんね。


侑「手伝ってくれてありがと、歩夢」

歩夢「スクールアイドル同好会には口出ししないって言ったのに。今回だけだからね」

侑「わかってるー」
 
863:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/24(木) 20:34:58.88 ID:+nZdnLXw
『生徒会室』


コンコン


「います。どうぞ」

侑「なーなちゃんっ」ガラッ

菜々「侑。歩夢さん」パァ

侑「こんにちは、来ちゃった。一緒に食べない?」

菜々「お二人なら大歓迎ですよ。どうぞ入ってください」

侑「お邪魔しまーすっ」

歩夢「失礼します」ペコ
 
864:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/24(木) 20:38:34.99 ID:+nZdnLXw
「「「いただきます」」」

侑「菜々ちゃん、今日はパン買ってないの?」

菜々「んぐっ!」

菜々 ゴホッ…ゴホッ…

侑「ええっ!?だ、大丈夫!?」

菜々「大丈夫です、大丈夫…」ハァ

菜々「今日は、そうですね。買ってません。お弁当と両方は食べられないことがわかりましたからね」

侑「そりゃそうだよ~。もう、菜々ちゃんってば意外と食いしん坊なんだから」

菜々「は、はは…」

歩夢「お弁当とグラタン食べた人に言われたくないよね、菜々ちゃん」

菜々「え?」

侑「あ、歩夢!なんでそういうこと言うの!」

菜々「そんなに食べたんですか…?というか、学校でグラタン…?」

侑「あーもーほら~、変な目で見られたぁ!」
 
865:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/24(木) 20:43:46.57 ID:+nZdnLXw
侑「そういえばはんぺんのことだけど」

菜々「んぐっ!」

菜々 ゴホッ…ゴホッ…

侑「え…えええっ!?菜々ちゃん大丈夫!?今日なんかおかしいよ!」

菜々「だ、大丈夫です…」フゥ

侑「昨日、朝様子見にいったんだけどね、パン三つとも食べちゃってたんだよ。一晩で!」

菜々「そ、そうなんですか。へえ~…」チラッ

歩夢 ニコニコ

菜々「ぅ…」

侑「誰のパンを最初に食べたのかはわかんなかったけど、みんな食べてくれたからあいこだね!」

歩夢「名前の紙も大事にしてくれてたんだよ。お家の奥の方に持ち込んでたの」

菜々「侑達のことを覚えてくれているといいですね」

侑「うん!」
 
866:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/24(木) 20:49:11.00 ID:+nZdnLXw
侑「お昼はいつもかすみん達がパンあげてくれてるみたいだからいいけど、放課後とか朝とか、なにか持っていってあげた方がいいかな?」

歩夢「食パンも三日くらいもつし、一枚を何日かに分けて持っていってあげてもいいかもね」

菜々「…」

侑「ね、菜々ちゃん」

菜々「…そう、ですね」

菜々「せっかく触れ合える距離にいるのなら可愛がりたいという気持ちはよくわかりますが、あまりに構い過ぎるのは…」

歩夢「飼ってるってことに、なっちゃう?」

菜々「そう思われないようにしておくのが無難ではあると思います。はんぺんちゃんが見逃されているのはあくまでも『飼い猫ではないから』ですから」

侑「そっか…」

侑「じゃあ、毎日はんぺんの寝床の前を歩くときにうっかりパン落としちゃおうよ!」

歩夢「ヘンゼルとグレーテル?」

菜々「計画的に落とし物をしないでください」
 
867:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/24(木) 20:55:10.13 ID:+nZdnLXw
何気ない談笑。

屈託のない笑顔でお弁当をつつく菜々ちゃん。

その隙を突いてアイコンタクトを交わす私達。

自然に、自然に。

だけど、確実に。

──いくよ、歩夢!
 
868:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/24(木) 21:04:04.71 ID:+nZdnLXw
侑「ところで菜々ちゃん。今日の放課後、なにか予定ある?」

菜々「はい?」

菜々「そうですね、今日は──」

歩夢「うちに遊びにこない?」

菜々「え、歩夢さんのお家にですか?」

菜々「…すみません。お誘いはありがたいのですが、今日…というか今週末までは、」

侑「今日ね、歩夢がお菓子作ってくれるんだけどね!なんだっけー?」

歩夢「お…」

歩夢「お休みの日のとくべつドーナッツ、だよ」


菜々「──────!!」ピキピキーン
 
869:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/24(木) 21:06:49.60 ID:+nZdnLXw
菜々「今、歩夢さん、な…なんと…?」

歩夢「お…」

歩夢「お休みの日のとくべつドーナッツ、だよ」


菜々「──────!!」ピキピキーン


侑「二回目でもそうなっちゃうんだ」

菜々「それはその、なんというか、歩夢さんのお家に代々伝わる秘伝のレシピのドーナッツをそう呼んでいるとかそういうお話ですか?そ、それとも…」

歩夢「えっと、この間やってたアニメでそんなのを作ってて、私もやってみようかなって…」

菜々「ややややややっぱりそうだァーーー!!!」ドヒャーーーッ
 
870:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/24(木) 21:10:06.16 ID:+nZdnLXw
歩夢「基本は普通のドーナッツなんだけど、ハニーグレーズっていうお砂糖のシロップみたいなのをかけてね、」

菜々「しっしっ知ってます!!」

菜々「あっあっ、あぁあ……あんなに美味しそうなドーナッツを!歩夢さん!あなたは再現できるというんですか!?」フンスフンス

歩夢「ど、どうかな…そんなに難しくないだろうから、できる…と、思うよ…」

菜々「んんんんんんんっっっ!!」ピーッ

侑 (菜々ちゃん大喜びだなぁ)
 
871:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/24(木) 21:14:07.33 ID:+nZdnLXw
侑「どうかな?菜々ちゃん。みんなで食べたらきっと美味しいよ!おいでよ!」

菜々「ぅ、ぐ…っ!」

侑「歩夢が作るお菓子美味しいんだよ。作りたてのドーナッツなんて、考えただけでよだれ出ちゃいそうだよ!」

菜々「しかも、ただのドーナッツではなく……お休みの日のとくべつドーナッツ…っ!」

侑「ほら、歩夢に料理教えてもらうみたいな話もあったでしょ?まずは歩夢が作ってるのを眺めるだけでも勉強になると思うよ」

菜々「そ、それはっ……そう、でしょうけれど……!」

侑「どうする?」

侑「菜々ちゃん、自分で作れるようになっちゃうかもよ?お休みの日のとくべつドーナッツ」

菜々「行きますッ!!行かせてくださいッッ!!!」カッッ
 
872:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/24(木) 21:19:08.90 ID:+nZdnLXw
菜々 ────ハッ!!!

侑「やったーっ、行くって!!」

歩夢「やったね侑ちゃん」


パチン


菜々「あっ、や!ま…待ってください、今のはつい感情の赴くままに口が勝手に発言してしまっただけというか──」

侑「え、来てくれないの?行くって言ったよね?」

菜々「ううううっ」ギクッ

侑「菜々ちゃんと一緒にドーナッツ食べられると思ったのに…」シュン

菜々「あ…あのあの侑、すみません、例えば来週にするというのはどどどどうですか…」オロオロ

侑「ずっと前から楽しみにしてたのにな…」

侑「菜々ちゃんと稲妻」ポツリ

菜々「申し訳ありませんでした!!行きます、もちろん行きます!!この中川菜々、一度口にしたことを安易に取り下げるような教育は受けていませんからっ!!!」

侑「やったーっ!」ピョンピョン

菜々「く、くぅぅ……!」

歩夢「振り回されてるなぁ」
 
873:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/24(木) 21:26:44.67 ID:+nZdnLXw
侑「それじゃ菜々ちゃん、また放課後にね。授業が終わったらまっすぐ校門でね!」

菜々「せ、せめて一時間………」

侑「また後でね」ニコッ

菜々「……はい」ガクッ

歩夢「侑ちゃんに狙われちゃったらそうなるよね。わかるよ」ホロリ…

菜々「…」

菜々「行くと決めたからには思い切り楽しむことにします」スクッ

菜々「楽しみにしていますね。歩夢さん」

歩夢「うん。頑張って美味しく作るからね」

菜々「はいっ!」ペカー
 
874:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/24(木) 21:29:29.14 ID:+nZdnLXw
侑「…よかった、なんとか上手くいったね。ありがとう、歩夢」

歩夢「あんな方法で無理やり連れ出すなんて申し訳ないなぁ…」

侑「いいんだって、菜々ちゃんも吹っ切れて楽しみにしてるって言ってたし!」

歩夢「言わせたようなものでしょ。まったく」

侑「えへへ~」

侑「じゃあ歩夢、お願いします!」っスマホ

歩夢「ハニーグレーズなんか作ったことないのに~」ハァ…


菜々とお昼ごはんを食べました! ▼
 
877:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/25(金) 08:05:15.82 ID:vET/VGBt
放課後…


歩夢に任せっ放しにするのもよくないかなと思って一応レシピを見てみたけど、よくわかんなかった。

でもドーナッツが出来上がっていく様子が丁寧に画像で載ってて期待はすごく膨らんじゃった!

揚げたてって熱いのかなぁ。

楽しみだなぁ。


侑「帰ろう、歩夢!」ジュルリッ

歩夢「まずはお買い物しなくちゃだからね」

侑「わかってるー!」
 
878:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/25(金) 08:08:41.57 ID:vET/VGBt
侑「菜々ちゃ~ん」

菜々「今日も一日お疲れ様でした」ペコッ

歩夢「お疲れ様でした」ペコ

侑「なに言ってるの、二人とも。本番は今からだよ!」

菜々「侑は一日楽しく過ごせましたか?」

侑「うん!今日も楽しかったよ」

菜々「それはよかったです」

侑「でも今からの時間もきっと楽しくなると思うんだ!」

菜々「そうですね」クス

歩夢「材料を買わなくちゃいけないから、スーパーに寄って帰るね」

菜々「はい。よろしくお願いします」
 
879:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/25(金) 08:16:56.90 ID:vET/VGBt
侑「今日はなに買って帰るの?」

歩夢「小麦粉はどっちともあったはずだから、ドライイーストと牛乳が必要だね。ソース用のチョコレートと、ハニーグレーズ用にレモンとハチミツ、…あ、粉糖もいるんだね」

菜々「フントウとはなんですか?」

歩夢「お菓子用の粉状のお砂糖だよ」

菜々「普通の砂糖ではだめなんですか?」

歩夢「だめってことはないんだけど、粉糖と普通のお砂糖では役割が違うの。粉糖は生地をサクッとさせたいときに使うものなんだよ」

菜々「へえ…!歩夢さんは物知りですね」

歩夢「そんな。ずっとやってたから覚えちゃっただけだよ」

侑「砂糖って普通粉じゃないの?」

菜々「砂糖は結晶ですね」

侑「??」
 
880:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/25(金) 08:24:19.77 ID:vET/VGBt
スーパー


侑「菜々ちゃん、チョコはなにが好き?」

菜々「板チョコならやはりガーナではないでしょうか!」

侑「じゃガーナにしようっと。いいよね?歩夢」

歩夢「うん。種類はなんでもいいと思うよ」

菜々 キョロキョロ…

侑「どうしたの?」

菜々「私、あまりお菓子コーナーに来ることがないので。なんだか興味深くて」

侑「そうなんだ。普段からお菓子食べないの?」

菜々「母が買ってきて家に置いているものは食べますが、自分で買うことはほとんどありませんね」

歩夢「侑ちゃんなんかお菓子コーナーと駄菓子屋さんの常連なのにね」

侑「じょ、常連ってほどじゃないもん!」
 
881:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/25(金) 08:27:53.87 ID:vET/VGBt
歩夢「…よし、買い忘れはないね」

侑「やっとだー、楽しみだなぁ」ウキウキ

菜々「あ、お支払いは私がしますよ」

歩夢「え?いいよ、そんな」

菜々「いえいえ!ただでさえお世話になるというのに、材料費まで負担していただくわけにはいきませんよ!今日のお礼ということで、出させてください」

歩夢「そう…?それじゃ、甘えようかな」

菜々「お任せください!」
 
882:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/25(金) 08:29:52.10 ID:vET/VGBt
侑「菜々ちゃんってお金出したがるよね」

菜々「べ、別にそんなことはありませんが…」

侑「だってブルーレイボックスのときもそうだったよ」

菜々「あれは、私が欲しくて買ったものなので…」

侑「私も観たかったものだよ?」

菜々「こ、この話はもう済んだではないですか」

侑「ドーナッツも、私も食べたいものだしなぁ」

菜々「それはだから、」

侑「私も半分払うよ!あ、歩夢はいいからね!とびっきり美味しいの作ってね!」

菜々「工  ょっ侑…」オロ

歩夢「はーい」クス
 
883:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/25(金) 08:33:58.66 ID:vET/VGBt
歩夢の家


侑「ではお菓子作りを始めます!」

菜々「は…はいっ」ソワソワ

侑「そんなに緊張しないで、菜々ちゃん。歩夢がついてるから大丈夫だよ」

歩夢「そこは侑ちゃんじゃないんだ…」

侑「私は指示されたことしかできないからね!」フフン

菜々「まずはなにをするんですか?」

歩夢「ドーナッツは生地を寝かせて発酵させる時間が必要だから、まず生地を作っておかなくちゃいけないの」

菜々「ほう…」ジーッ

侑 ルンルン…

歩夢「…」
 
884:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/25(金) 08:38:05.40 ID:vET/VGBt
歩夢 トントン…

歩夢「これが薄力粉と強力粉。これがドライイーストで、お砂糖とお塩ね」

歩夢「これをみんなボウルに入れて、よく混ぜてもらってもいい?」

菜々「これが、ドーナッツの生地になるんですね。責任重大ですね…!」

歩夢「粉を混ぜるだけだから大丈夫だよ、あんまり気負わなくていいからね」

侑「歩夢はなにするの?」

歩夢「私はタマゴと牛乳を温めるよ。こっちは火を使うし加減があるから」

侑「へー、さすが~」

歩夢「侑ちゃんもなにかしたい?」

侑「できることあるかな?」

歩夢「…」

歩夢「私のが終わったら、一緒にやろっか」

侑「はーい!」
 
885:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/25(金) 08:44:25.15 ID:vET/VGBt
歩夢 ザクッザクッ

菜々「私の粉が、固まっていきます…」

侑「こういうの見てると面白いよね」

菜々「母が料理している様子はたまに見ますが、お菓子となるとまた全然過程が違うものなんですね」

侑「料理と違って、粉とか牛乳とかがみんな固まって形が変わっていくんだよね。それが不思議で面白いから、私は料理よりお菓子作り見る方が好きだな」

菜々「こう手際よく作れると楽しいでしょうね」

侑「ねー」

歩夢「…こんなものかな」フゥ

歩夢「今から生地をこねるけど、二人ともやりたい?」

菜々「生地をこねる!焼きたてジャぱんを何度も読んだので、もうプロ級の腕前ですよ!ぜひやらせてください!」

侑「はいはーい、私もやるー!」

歩夢「じゃあみんなでやろうね」
 
886:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/25(金) 08:48:47.91 ID:vET/VGBt
生地 モチーン


菜々「丸くて可愛いですね」

歩夢「これは一時間くらい寝かせるから、その間に洗い物済ませちゃうね」

侑「あ、それくらい私やるよ」

歩夢「そう?それじゃ──」

侑「菜々ちゃんは拭いてもらっていい?」

菜々「はい!」

侑「布巾はね、こうやって拡げて、お皿を挟むように持ってね」

菜々「だから大丈夫ですってば!」//

侑「あははっ、ごめんごめん。やろっか。歩夢は休んでて!」

歩夢「う…うん」
 
887:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/25(金) 08:52:21.42 ID:vET/VGBt
一時間後…


歩夢 ツンツン

歩夢「うん、よさそうだね」

菜々「!」

侑「完成?」

歩夢「完成なわけないでしょ。まだもう一回発酵させなくちゃいけないんだよ」

侑「また!?」

菜々「侑!」ガシッ

侑「ぅえっ、なに!?」

菜々「ドーナッツ作りはここが本番のはずですよ。ねえ、歩夢さん!?」

歩夢「え、えっと…そう、かな?」

菜々「ここからやることは私にもわかります。即ち──」
 
888:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/25(金) 08:56:34.10 ID:vET/VGBt
侑「わわ、上手くできないよ~歩夢~」

歩夢「大丈夫、一旦こうやって伸ばして…」グニ

侑「こう………わぁ、できた!」

歩夢「上手にできたね、侑ちゃん」

侑「見て見て菜々ちゃん、ドーナッツっぽくなったよ──」


菜々 グリ…グリ……

菜々 ジッ

菜々「少しあけ過ぎでしょうか。もっと詰まった感じでしたよね…」グリ…


歩夢「…菜々ちゃん?」

侑「あれは職人さんの目だね」

歩夢「一体なんの職人さんなの…?」
 
889:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/25(金) 09:00:59.03 ID:vET/VGBt
ドーナッツ型の生地達 ズラリ…


侑「楽しかった~。そっか、本番ってドーナッツの形を作ることだったんだね」

菜々「はい。これをせずしてドーナッツ作りは語れないというものです」ムフー

歩夢「すっかり満足げだね、菜々ちゃん」

侑「…一つだけ、ハニードーナツみたいなやつが混じってるけど…」

菜々「なにを言うんですか!お休みの日のとくべつドーナッツというからには、これがないと始まらないでしょう!」

侑「そ、そうだっけ」

歩夢「ここからまた寝かせるから、その間にチョコソースとハニーグレーズを作っちゃうよ」

侑「よく寝るなぁ、ドーナッツは」

菜々「寝る子は育つと言いますが、それが発酵という形でありありと見えるのは面白いですね」
 
890:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/25(金) 09:06:52.84 ID:vET/VGBt
やがて…


ジュワァァァアア………


菜々「ど、ドーナッツが出来上がっていきます…」

侑「いい匂い…!我慢できないよ~!」ウズウズ

歩夢「二人とも、ソースとお皿を用意しておいてもらえる?揚げ終えたらソースを着けて、冷めたら完成だよ」

侑「やったー!もうすぐ完成だー!」

菜々「侑、言われたことをやらなければ!ドーナッツが完成しませんよ!」アワアワ

侑「い…いけない!えっとソースとお皿…お皿…」ワタワタ


ジュワァァァアア………
 
891:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/25(金) 09:11:19.79 ID:vET/VGBt
ドーナッツの山 テテーン


侑「うわぁぁぁ………!!」

菜々「………っ!」

歩夢「やっぱりところどころ寝かせる時間があるから、結構かかっちゃったね」

菜々「し、七時ですか…」

侑「菜々ちゃん、お家大丈夫?連絡しておかなくていいかな?」

菜々「いえ、今から帰れば普段より少し遅いくらいにしかならないので大丈夫かと…」

侑「なに言ってるの、今からドーナッツ食べるんだよ!?」

菜々「い、今から食べるんですか!?もう夕飯の時間ですよ!?」

侑「今日の晩ごはんはドーナッツだよ!」

菜々「聞いていませんが!!」
 
892:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/25(金) 09:15:53.38 ID:vET/VGBt
歩夢「放課後から作り始めたら、こうなっちゃうよね」

侑「私はお母さんに晩ごはん歩夢のとこで食べるって話してるよ」

歩夢「そ、そうだったんだ。いつの間に…」

菜々「というか歩夢さんのお家のお夕飯に差し支えるのではありませんか?」

歩夢「………えっと、」チラッ


上原母 ……b グッ


歩夢「あ、大丈夫みたい」

侑「つまり後は菜々ちゃんだけだね!」

菜々「…ふふ、わかりました。今日は夕飯を食べて帰ると、母に連絡してきます。まさかドーナッツだとは言えませんけどね」

侑「小麦粉だからごはんだよ!」

菜々「なんですか、それは」フフッ
 
893:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/25(金) 09:20:37.39 ID:vET/VGBt
「「「いただきます」」」

菜々「こ、これが…夢にまで見た……お休みの日のとくべつドーナッツ…!」

歩夢「そんなに憧れのものだったんだ。美味しくできてるといいんだけど」

菜々「もうっ、もうっ…!これほど完璧に再現されていれば、文句のつけどころもありませんよ!私は今、武蔵境の住人になった気分でいっぱいです!」

歩夢「…?」

侑「ん、おいし~~~!」

菜々「ああっずるいですよ侑!私はこのつむぎさんドーナッツを…」

菜々「……くっ、可愛くて食べるのがもったいない…」

侑「チョコすごく手についちゃうよ!歩夢ティッシュ~!」

歩夢「………ふふっ」クスクス

侑「ねーえー、笑ってないでティッシュ取って~」

歩夢「はいはい」
 
894:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/25(金) 09:27:56.25 ID:vET/VGBt
菜々 ………フゥ

侑「あー美味しかった~」

歩夢「三つも食べるとお腹いっぱいだね」

侑「揚げたてのドーナッツなんて初めて食べたよ。ね、菜々ちゃん」

菜々「そうですね」

侑「疲れちゃった?」

菜々「いえ、少し考え事を思い出しまして」

侑「同好会のこと?」

菜々「…はい」

菜々「本当は今日も練習に顔を出さなければいけなかったのですが、皆さんどうしているかと…」

菜々「あっ、侑達を責めたいのではなくて!」

侑「わかってるよ」
 
895:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/25(金) 09:33:14.91 ID:vET/VGBt
侑「無理やり連れてきちゃってごめんね。今日はどうしてもって思ってさ」

菜々「謝らないでください。行くことを決めたのは私の意思ですし、最近は根を詰め過ぎていた自覚もあるので、いい気分転換と休息になりました」

侑「なら、よかった」

菜々「もう、日曜日ですからね。大詰めをしなければと思うとどうしても力んでしまって、皆さんにもきっと負担を──」ハタ…

侑「菜々ちゃん?」

菜々「歩夢さん、その…」

歩夢「…うん、わかってるから、大丈夫だよ。それに私はなにも聞いてないし、聞いたとしても口を出すことはないから」

菜々「…ありがとうございます」

歩夢「無理だけはしないでね」

侑「落ち着いたら、次は歩夢に料理教えてもらおうね」

菜々「はい。ぜひ」ニコ…


菜々とドーナッツを作って食べました! ▼
 
897:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/25(金) 09:35:27.57 ID:vET/VGBt
今朝はこの辺りで。
展開上、菜々ルートとせつ菜ルートは概ね統合されたものだと思っていただいて構いません
明日から生活ルーティンが変わる兼ね合いもあり、今晩以降、更新が不規則になるかもしれません
 
903:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/28(月) 07:43:15.66 ID:2w1/+vuk
翌朝…


侑「お待たせ~」タタタ

歩夢「行こっか」

侑「うん!」


昨日の夜、菜々ちゃんを家まで送っていった帰り、彼方ちゃんからラインが来た。

頼んでおきながらあのせつ菜ちゃんを本当に連れ出せるとは思わなかったよ~って、まったく彼方ちゃんったら!

でもおかげでみんなきちんと休息を取れたとのことで、ここからライブまではなんとかなりそうだって。

よかった。


侑「菜々ちゃんと料理するならなにがいいかな?」

歩夢「そうだなぁ、最初はやっぱりハンバーグとかじゃない?」

侑「ハンバーグ!いいね、菜々ちゃんにぴったりだと思う!」

歩夢「侑ちゃんが食べたいだけでしょ」クス
 
904:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/28(月) 07:50:58.86 ID:2w1/+vuk
お昼休み…


今日は食堂でお弁当を食べることにした。


侑 キョロ…

歩夢「誰か探してるの?」

侑「うん、エマ先輩に会えないかなと思ったんだけど」

歩夢「あれきり話してない?」

侑「うん。かすみんと彼方ちゃんとはお話しできたから、あとはエマ先輩だけなんだけどな…」

歩夢「ライブ、日曜日なんだよね。それが終わったら一回スクールアイドル同好会に挨拶に行ってみよっか。私も一緒に行くから」

侑「ほんと!?ありがとう、歩夢」

歩夢「いいよ。だから、それまでもうあんまり首を突っ込んじゃだめだよ」

侑「ぅ…はーい…」


項垂れる私をくすくすと笑うと、歩夢はエビフライを一本くれた。

こんなもので慰められる私じゃ…………美味しい。
 
905:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/28(月) 08:03:10.43 ID:2w1/+vuk
放課後…


日曜日の天気予報は晴れ。

普段見慣れない雨雲レーダーとやらも頑張って見てみたけど、うん、雲はなさそう!

会場がどこなのか聞きそびれたけど…

スクールアイドルっていうんだし、きっと学校の近くだよね?


侑「って、いやいや!応援しにいくんだから会場は聞いとかなくちゃだめでしょ!」ハッ


菜々ちゃんに連絡しとかなきゃね。


放課後どうしようかな? >>906
1.歩夢とまっすぐ帰る
2.お台場に寄って帰る
 
906: (たまごやき) 2020/12/28(月) 08:18:57.53 ID:dNkVPutO
2
 
907:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/28(月) 08:34:49.26 ID:2w1/+vuk
お台場


侑「歩夢、抹茶飲んでこー!」

歩夢「うん。私はホットにしようかな」

侑「暑い時期でも抹茶は温かいのが美味しいよね。私はどうしよっかなー…」ウーン…

侑「決めた!ほうじ茶ラテ!」

歩夢「抹茶じゃないんだ…」

侑「だっていい匂いがするんだもん!それに、」

歩夢「私の貰うんだもんね?」

侑「さっすが歩夢、わかってるぅー!すみませーん、抹茶ラテとほうじ茶ラテくださーい!」

歩夢「うふふ…」
 
908:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/28(月) 08:41:05.58 ID:2w1/+vuk
侑「どこで飲もっか」

歩夢「外の階段のところ行かない?」

侑「うん!ホット飲むなら外の方がいいね」

侑「クンクン…あ~、抹茶もいい匂いするなぁ」

歩夢「もう、すぐそこなんだから我慢してください」サッ

侑「ああっ、私の抹茶ラテ遠ざけないで!」

歩夢「侑ちゃんのじゃないもん」

侑 クピ…

侑「ぷへぁ」

歩夢「歩きながら飲まないの、お行儀悪いよ」

侑「はーい」
 
909:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/28(月) 08:47:27.99 ID:2w1/+vuk
フェスティバル広場


侑 クピ…

侑「ん~~~っ、美味しい」

侑「歩夢も飲むでしょ?」

歩夢「うん、貰うね」クピ…

歩夢「はぁ、ほうじ茶の香りが落ち着く」

侑「ねー」

歩夢「そういえば侑ちゃん、予備校のこと考えた?」

侑「ぅ」

歩夢 ジトー

侑「ほ、ほら、そういうのってじっくり吟味しないといけないでしょ?簡単に通うとこ変えられるものじゃないし。だから、ね」

歩夢「もう。後でうちにあるパンフレット渡すから読んでおいてね」

侑「はぁい……」


「え!せつ菜ちゃんライブやるんだ!」


侑「…………え?」
 
910:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/28(月) 08:52:41.79 ID:2w1/+vuk
侑「ねえ歩夢、今…」

歩夢「うん、なに?」

侑「せつ菜さんがどうって聞こえなかった?」

歩夢「え?そう…?」

侑 キョロキョロ…


「新しいグループのお披露目だって~」

「へー、せつ菜ちゃんグループ組んだんだー」


歩夢「ぁ…」

侑「やっぱり!ね!」

歩夢「うん、そうみたいだね。えっと…」キョロ

侑「………あれかも!」タタタ

歩夢「えっ侑ちゃん、ちょっと!」
 
911:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/28(月) 08:59:49.00 ID:2w1/+vuk
『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 お披露目ライブ』


ゆうぽむ「「………!」」

侑「5月31日、日曜日…」

歩夢「場所はフェスティバル広場、ここでやるんだね…」

侑「そうだったんだ。確かに、たまに小さなイベントとかやってるもんね」

侑「にしても、ポスター作ったんだ…」


せつ菜さん、彼方ちゃん、かすみん、エマ先輩。

緊張した表情の四人が並んで映る縦看板ポスター。

わかってた。

わかってたことだけど、こうやって告知したってことは──


──菜々「告知をまだ打っていなかったことだけは不幸中の幸いと言えますか。そもそも31日にライブの予定があることは、部員以外まだ誰も知りませんから」


もう、後には退けないってことだ。
 
913:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/28(月) 09:09:24.31 ID:2w1/+vuk
大丈夫──


──彼方「いやぁ、うちの同好会、曲の数がとっても少なくてね。ライブしたくても披露する曲が足りないんだよ」


大丈夫──


──エマ「うちの同好会、曲を作れる人がせつ菜ちゃんしかいなくて、でもせつ菜ちゃんも忙しいから最近は曲作りができてないんだって。だからひとまずせつ菜ちゃんが一人でやってた曲をやるんだけど──」

──かすみ「曲は、ライブまでになんとかします。だから、このことは黙っててくれませんか」


大丈夫──だよ──ね──?


──菜々「かすみさんやエマさんのファンだと言ってくれたのだと聞いています。その気持ちを裏切りたくないと、部員の全員が考えているんです。結成したばかりでまだまだ不安定な私達ですが、どうか応援して、愛してくださると嬉しいです──」


侑「……っ」ブル…
 
914:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/28(月) 09:15:07.92 ID:2w1/+vuk
歩夢「侑ちゃん」ソッ

侑「…!」

侑「歩夢…」

歩夢 コクン…

歩夢「一番前で応援しようね」


──侑「たとえ来週ライブができなくても、今回のステージが使えなくなっちゃっても、私はずっと応援してるよ。いつになっても、どこになっても必ず駆けつけて最前席で応援するから!」


侑「…っ、そう、だよね…」

歩夢「そうだよ」ニコッ

侑「会場に一番乗りしなくちゃね!」

歩夢「寝坊しないでね」

侑「…頑張ります!!」


歩夢とお台場に寄り道して帰りました! ▼
 
915:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/28(月) 09:30:55.15 ID:2w1/+vuk
夜…


ダイバーシティ東京プラザのサイトを確認してみたら、イベント一覧のページにも小さく記載があった。

熱心にここを確認してる人がどのくらいいるのかはわからないけど、確実に誰かの目には触れてる。

そのうちの何人かは観にくるはずだ。

友達とか家族を連れて、楽しみにして、来るんだ。


侑 ドキドキ…


誰かに連絡する? >>916
1.菜々
2.かすみ
3.彼方
4.しない
 
916: (茸) 2020/12/28(月) 09:35:09.08 ID:xNXpZzu2
かすみ
 
917:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/28(月) 09:41:59.63 ID:2w1/+vuk
侑 ドキドキ…


彼方ちゃんが練習してた、『スクールアイドルみんなの曲(だっけ?)』。

たぶん、せつ菜さんが一人でやってた曲っていうのとは違うよね。

これで二曲。


侑 ドキドキ…


スクールアイドルのライブって普通何曲くらいやるものなんだろう。

同じ曲を何回かやったりするものなのかな。

一人で歌って踊るよりは、みんなで歌って踊ってる方がなんだかアイドルって感じするし、じゃなきゃみんなで練習したり、そもそもグループを作ったりする必要もなくなっちゃうよね。


侑 ドキドキ…


どんな心構えで観にいけばいいんだろう。

他のライブを観て予習しておいた方がいいかな?

いやでも今他のスクールアイドルのこと考えたくないな。


侑「…………ああっだめだ緊張してきた!かすみんに連絡しよう!」バッ
 
918:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/28(月) 09:43:59.53 ID:2w1/+vuk
『かーすみんっ』

『こんばんは!』


送ってから我に返る。

なんでよりによってかすみんを選んじゃったんだ…

もうなんでもいいから誰かと話してないとそわそわしちゃって仕方なかったんだけど、

…なんでよりによってかすみんなんだ…


『かすみん:こんばんは』

『かすみん:どうかしたんですか?』


侑「!」


やばっ、お返事来た!

どうしよう!!
 
919:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/28(月) 09:48:28.32 ID:2w1/+vuk
思ったより返信が速くて驚いたのもある。

どう返そうか迷って、


『なんか、誰かと話したくて連絡しちゃった』

『今なにしてるの?』


思ったことをそのまま文章にしたような、どことなくごまかして適当に繋いだような、どっちとも付かない感じになってしまった。


『かすみん:さっき夜ごはんを食べ終えたので、お風呂に入ろうと思ってたところですけど』


うう、ごめんねかすみん…なんの用もないのに引き止めちゃったよ…


『あ、そうだったんだ。邪魔しちゃってごめんね』
 
920:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/28(月) 09:50:28.19 ID:2w1/+vuk
『かすみん:別にいいですけど』

『かすみん:侑せんぱいはなにしてたんですか?』


あれ、お話続けてくれるんだ。

…えへへ、やった。
 
921:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/28(月) 10:00:29.76 ID:2w1/+vuk
『私はごはんもお風呂も済ませちゃって、ぼーっとしてたとこだよ』

『かすみん:それで誰かと話したくなったんですか』

『かすみん:侑せんぱい、さみしがり屋さんなんですか?』

『え、そんなことないよ!』

『かすみん:わざわざ後輩に連絡しなくても、歩夢せんぱいとお話ししたらいいじゃないですか』

『歩夢とは放課後たくさん話したもん』

『かすみん:一緒に帰ったんですか?』

『そうだよ。お台場に寄ってからね』

『かすみん:ほんとに仲良しさんなんですね』

『まあね!羨ましいでしょ!』

『かすみん:別に羨ましいとは思いませんけど。かすみんだって璃奈ちゃんと仲良しですもん』
 
922:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/28(月) 10:12:24.82 ID:2w1/+vuk
『かすみん:璃奈ちゃんが嬉しそうでしたよ。せんぱいがごはんに誘ってくれたって』

『そうなんだよ!お母さんも璃奈ちゃんのこと可愛がってたし、また誘っちゃおうっと』

『次はかすみんも来るよね?』

『かすみん:考えときます』

『もー、かすみんってば素直じゃないんだから~』

『璃奈ちゃんとどこか遊びにいったりした?』

『かすみん:まだしてませんね』

『かすみん:今週までは忙しいので、そのうち行きたいですけど』


テンポよく続いてたラリーを、そこで止めてしまった。

聞きたい、と思ってしまったから。

練習の調子はどう?困ってることはない?昨日はちゃんと休めた?

でも、それを私から聞くのは──


『かすみん:まあまあ順調だと思いますよ、ライブの準備』


侑「!」
 
923:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/28(月) 10:22:44.20 ID:2w1/+vuk
『かすみん:昨日、せつ菜せんぱいが練習をお休みするようにしてくれたんですよね』

『かすみん:彼方せんぱいから聞きましたよ』

『かすみん:正直ちょっと疲れてたので、助かりました。ありがとうございます』


かすみん…!

なんだか、たったそれだけのことで、うっかり涙が出そうになってしまった。

いけないいけない、黙りっ放しになっちゃうよ。


『私もせつ菜さんと仲良くなりたかったし、いい機会だったよ。順調ならよかった!』

『かすみん:せつ菜せんぱいのプライベートって全然想像つかないんですけど、どんな風なんですか?』


う…っ。
 
924:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2020/12/28(月) 10:32:06.80 ID:2w1/+vuk
えっと…

この感じ、やっぱりせつ菜さんが菜々ちゃんだって同好会のみんなは知らない、のかな。

少なくともかすみんは知らないっぽいよね。

そうなるとなにを話していいのかも難しくなってくるけど…


『昨日は歩夢と三人でドーナッツ作ったんだけどね、せつ菜さんあんまり料理とかやらないらしくて興味津々で楽しそうだったよ』

『かすみん:お料理しそうなイメージはないですもんね。楽しんでたならよかったです』

『かすみん:放課後にドーナッツ作ったことの方が驚きですけど』

『すっごく時間かかったよ!だから昨日の晩ごはんは三人でドーナッツ食べたんだ~』

『かすみん:せつ菜せんぱいもですか?』

『そうだよ』

『かすみん:そういうの厳しそうですけど、なんか意外です。明日からかっちゃおうっと』

『え!?それ私がせつ菜さんに怒られない!?』

『かすみん:どうでしょうねぇ』

『なしなし!言っちゃだめだよ!』

『かすみん:どうしましょうかねぇ』

『ちょっと~!』


かすみとラインで話しました! ▼
 
931:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/31(木) 07:43:00.60 ID:Uz+NQcfq
翌朝…


侑「お待たせ~」タタタ

歩夢「行こっか」

侑「うん!」


結局、かすみんはあれからしばらくお話に付き合ってくれて、いい時間になってしまった。

流れで『璃奈ちゃんとお出かけしたら報告する』って約束までしてくれたけど、せっかくなら私も混ぜてほしいなぁ…なんていうのは図々しいよね。

それよりも菜々ちゃんに怒られないか、そっちの方が心配だよ。

かすみんが変にからかわなきゃ、そこまで怒られるようなことじゃないと思うんだけどなぁ…


歩夢「一昨日のレモンが余ったから、レモンティーを作ってきたよ。お昼のとき一緒に飲もうね」っ水筒

侑「わあ、レモンティー!甘いやつ?」

歩夢「ほんのりね。ハチミツで味を調えたの」

侑「楽しみになってきた!」ウキウキ
 
932:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/31(木) 07:49:15.46 ID:Uz+NQcfq
お昼休み…


侑「歩夢、レモンティー!」ズイ

歩夢「ゆ、侑ちゃん。ごはんにはたぶん合わないから、食べ終わったら飲もう?」

侑「そっかぁ」

歩夢「お昼ごはんどうする?優花ちゃん達と食べる?」

侑「…」ム…

歩夢「侑ちゃん?」

侑「…レモンティーって、四人で分けたら少なくなっちゃう?」キリッ…

歩夢「………ぷっ」

侑「え?」

歩夢「ふ……うふふっ。そうだね、今日は二人だけでお昼にしよっか」

侑「え?え?なに、なんで笑うの?」

歩夢「なんでもないよ。さ、行こ」クス…

侑「ねー、なんで笑うのー?」


歩夢とお昼ごはんを食べました! ▼
 
933:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/31(木) 07:55:39.62 ID:Uz+NQcfq
放課後…


裏庭を覗いたら誰もいなかったので、そこで歩夢とお昼ごはんを食べた。

果林先輩がいたら一緒にレモンティーを楽しめたのに、こう学校が広いとなかなか会えないものだね。

そういえば、前に果林先輩が『裏庭に変な子がいることがある』って言ってたけど、あれはなんだったんだろう…


今日はどうしようかな? >>934
1.歩夢とまっすぐ帰る
2.裏庭に寄って帰る
3.誰かに連絡する(果林、菜々、璃奈から選択)
 
934: (もんじゃ) 2020/12/31(木) 08:15:11.80 ID:WgERZiBN
2
 
935:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/31(木) 08:20:02.02 ID:Uz+NQcfq
歩夢「侑ちゃん、帰ろう」

侑「歩夢。ね、ちょっと裏庭寄ってっていい?」

歩夢「うん、いいよ。忘れ物でもしちゃった?」

侑「ってわけじゃないんだけどね。むしろ思い出したって感じかな」

歩夢「?」

侑「とりあえず行こ!」ギュ

歩夢「わわ…」トト
 
936:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/31(木) 08:23:55.80 ID:Uz+NQcfq
裏庭


歩夢「どうして急に裏庭なの?」

侑「ほら、前に果林先輩が『放課後はたまに変な子がいる』って言ってたでしょ。もしかしたら会えないかなーと思ってさ」

歩夢「ああ、言ってたかも。よくそんなこと覚えてたね」

侑「ふと思い出しただけなんだけどね。でも放課後になるとちょっと肌寒いくらいなのに、ほんとにこんなところに誰かいるのかな」キョロキョロ

歩夢「どうだろうね。果林先輩にしか見えないお友達だったりして」

侑「えっ!?それ、どういうこと…!?」

歩夢「どういうことかな~………あ、あれ…」ハタ

侑「ひぃっ!?な、なに!?誰かいた!?」ビクッ

歩夢「あそこ、誰か倒れてない…?」

侑「え…た、大変じゃん!行こう!」タタッ

歩夢「うん!」タタッ
 
937:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/31(木) 08:27:40.26 ID:Uz+NQcfq
侑「…ぁ」タタ…

歩夢「どうかしたんですか!?大丈夫ですか!?」

侑「歩夢」

歩夢「侑ちゃん、先生呼んできた方がいいかな!?」

侑「歩夢。大丈夫、たぶんなんともないよ」

歩夢「えっ、ど…どうして…?」

侑「よく見て、その人。彼方ちゃんだよ」

歩夢「え…」

歩夢「ほ、ほんとだ…」

歩夢「っでも、彼方先輩だったらなおさら心配じゃない。早く保健室に──」

侑「大丈夫だよ」スッ

歩夢「侑ちゃん…!」
 
938:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/31(木) 08:30:15.27 ID:Uz+NQcfq
侑「彼方ちゃん、彼方ちゃん。起きて」トントン

彼方 zzz...

侑「おーい、彼方ちゃ~ん。もう放課後だよ~」トントン

彼方「……………んむ……」

歩夢「!」

侑「彼方ちゃん。同好会の練習はいいのー?」

彼方「……んん~…同好会…………」

彼方「………はっ!せつ菜ちゃんに怒られちゃう!」バッ

歩夢「きゃっ」

侑「おっと。おはよう、彼方ちゃん」

彼方「あれ、侑ちゃんじゃん…おはよぉ」
 
939:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/31(木) 08:35:12.63 ID:Uz+NQcfq
侑「おはよ。よく寝てたね」

彼方「ふぁぁ………」

彼方「起こしにきてくれたの?ありがとねぇ」

侑「私達はたまたま通りかかって、そしたら彼方ちゃんが寝てたから驚いて起こしただけだよ。ね、歩夢」

歩夢「う、うん…」

彼方「お~、歩夢ちゃんもいたんだね。おはよぉ」

歩夢「お、おはようございます…?」

侑「もー、だめだよ彼方ちゃん。ここ陽もあたらないし寒いでしょ?」

彼方「彼方ちゃんがすやぴし始めたくらいの時間は、まだあったたかったんだけどなぁ」

侑「いつから寝てたの?授業は?」

彼方「彼方ちゃんの学科、午後は実習になることも多くてね~。早く終わったら片付けて帰っちゃっていいんだよ。そしたら同好会の練習まで空いちゃうから、誰もいないここでたまにすやぴしてるの」

侑「そういうことだったんだー」
 
940:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/31(木) 08:46:21.79 ID:Uz+NQcfq
彼方「やー、侑ちゃん達が通りかかってくれて助かったよ~。お寝坊したらせつ菜ちゃんに怒られちゃうからねぇ」

侑「今から同好会の練習に行くんだね」

彼方「うん。ラストスパート、頑張らなくっちゃ」

歩夢「明後日なんですよね。侑ちゃんと応援に行きますね」

彼方「ありがとう、歩夢ちゃん。観にきてくれたみんなに恥ずかしくないパフォーマンスができるように頑張るよ~」

侑「みんなの体力は大丈夫そう?」

彼方「ん~…ま、もう間もなく本番だからなんとか乗り切れると思うよ。これが来週だったらって考えると、さすがの彼方ちゃんもちょいとビビっちゃうけどね」

侑「そっか…」

彼方「そんなカオしないで」ポン
 
941:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/31(木) 08:50:44.94 ID:Uz+NQcfq
彼方「一昨日侑ちゃんが協力してくれたこと、本当にみんなのためになったんだよ。身体を休められた彼方ちゃん達だけじゃなくて、これはせつ菜ちゃんのためにもなったことなの」

彼方「こんなに近くで私達を応援してくれる侑ちゃんがいるから、みんな頑張れてるんだからね」

彼方「彼方ちゃん達のライブを観るときまでそんなしょぼくれたカオしてちゃだめだぜ~?」ウリウリ

侑「わわっ…や、やめてよ彼方ちゃ~ん」

彼方「さって!」スクッ

彼方「せっかく侑ちゃん達に起こしてもらったんだから遅刻せずに行かないとね」

侑「もう、髪ぼさぼさになっちゃったじゃん!」

彼方「いひひ。スクールアイドルの彼方ちゃんより可愛かったから、いじわるしちゃいました~」

侑「も…もーっ!」
 
942:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/31(木) 08:54:51.99 ID:Uz+NQcfq
彼方「そいじゃ彼方ちゃんは行くよ。ありがとね、二人とも」ノシ

侑「行ってらっしゃい!」ノシシシ

歩夢「頑張ってくださいね」ノシ

侑「………果林先輩が言ってたのって、彼方ちゃんのことだったんだね」

歩夢「みたいだね。お昼寝してただけなんて、びっくりしちゃったよ…」

侑「あはは。私は前にも公園で寝てる彼方ちゃん見たことあったから、今回もそうなんだーってすぐにわかったよ」

歩夢「だ、大丈夫なのかなぁ」

侑「やめなよって言ったんだけどな。ま、学校の中なら安全なんじゃない?」

侑「それより歩夢、髪やってー」

歩夢「はいはい。もう、こんなにぼさぼさにしちゃって」クシクシ

侑「わ、私のせいじゃないじゃ~ん!」


裏庭で彼方とお話ししました! ▼
 
943:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/31(木) 08:57:15.64 ID:Uz+NQcfq
夜…


侑「とうとう明後日かぁ。明日もみんな練習するのかな?あんまりやり過ぎないでほしいけど…」

侑「ライブが終わったらせつ菜さんときちんと話すって言ってたし、私が心配することじゃないよね…」

侑 ウーン…

侑「私にできることって、やっぱりもうないのかなぁ…」


考え事をして過ごしました! ▼
 
945:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/31(木) 17:37:42.68 ID:Uz+NQcfq
翌朝…


侑「んー…」ゴロ


朝日。


侑「…」ゴロ…


突っ伏す格好で目覚めた後、ぐるりと仰向けに寝返り。


侑「お腹、空いたなぁ…」


お腹が空きました。


どう過ごそうかな? >>946
1.お母さんに朝ごはん作ってもらう!
2.歩夢とランチに行く!
3.明日に向けて課題を終わらせる!?
 
946: (庭) 2020/12/31(木) 17:53:37.87 ID:wFtJ0r0t
2
 
947:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/31(木) 18:02:23.36 ID:Uz+NQcfq
侑「ん~~~」ムムム… ←仰向け

侑「…よし!今日は朝ごはん食べずに、歩夢と思いっ切りお昼ごはん食べよう!」

侑 スマスマ…

歩夢『はい。おはよう侑ちゃん』

侑「おはよう歩夢!もう朝ごはん食べちゃった?」

歩夢『ううん、まだ食べてないけど…どうかしたの?』

侑「今日さ、ランチ行こうよ!歩夢と行きたかったお店があるんだ~」

歩夢『うん、いいよ。えっと、もう出るってこと?遠いの?』

侑「遠くはないんだけど、お腹空いたから早めに行きたいなーと思って」

歩夢『朝ごはんは食べないの?』

侑「うーん…食べない。思いっ切りお昼ごはんを食べたいんだ!」

歩夢『なにそれ』クス

歩夢『わかった。それじゃ私も朝ごはん食べないことにするね』

侑「シャワー浴びたいから、んー…後で連絡するね!」

歩夢『はーい』
 
948:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/31(木) 18:04:38.59 ID:Uz+NQcfq
侑「お待たせ~」タタタ

歩夢「もう、誘っておきながらのんびり屋さんなんだから」

侑「えへへ、ごめんごめん」

歩夢「ところでどこに行くの?電車に乗るんでしょ?」

侑「うん。行きたいのはね、もんじゃ屋さんなんだ!」

歩夢「もんじゃ屋さん?…って、もしかして…」

侑「そう!愛ちゃんのお家に行ってみようよ!」
 
949:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/31(木) 18:09:47.59 ID:Uz+NQcfq
もんじゃ みやした


侑「んー………あ、ここかも」

歩夢「『宮下』だって。そうみたいだね」

侑「ちょっと着くの早かったかなぁ。まだ準備中かもしれないね」

歩夢「あれ?侑ちゃん、これ…」スッ


『本日貸切!』


侑「えーっ、貸切…!?」ガーン…

歩夢「あちゃあ。事前に確認したらよかったね」

侑「…」

歩夢「どうしよっか。せっかくこの辺まで来たんだし、神田辺りにでも行ってみる?」

侑「………いや!聞くだけ聞いてみる!」

歩夢「えっ、貸切って書いてあるのに!?」

侑「昨日から看板戻してないだけかもしれないからさ。すみませーん」ガララ

歩夢「え…ええっ、侑ちゃん…!」
 
950:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/31(木) 18:14:19.04 ID:Uz+NQcfq
「「「ハッピバースデー!!愛ちゃーーーん!!」」」


パン! パパン! パン!!


ゆうぽむ「「──うわっ!?」」ビクッ

「愛ちゃん何歳になったんだー!?」

「くそーっ、俺があと20歳若ければ~!」

「俺はまだまだ10代の気持ちだぞ!」

「わ、お客さん来ちゃった!ちょっと待ってみんな、ストップストップ!」

歩夢「な、なに…?」

愛「…って、侑じゃん!歩夢も!」

歩夢「あ、愛ちゃん…こんにちは…」

侑「愛ちゃん!私達ランチしにきたんだけど、今日ってほんとに貸切なの?」ズイッ

愛「おおっと」
 
951:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/31(木) 18:16:07.59 ID:Uz+NQcfq
歩夢 キョロ…

歩夢「あっ、侑ちゃん見て!」クイ

侑「え?」


『愛ちゃん お誕生日おめでとう!!!』


歩夢「もしかして今日って…」

侑「愛ちゃん、お誕生日なの!?」

愛「そうだよー!だから常連のみんなに集まってもらって愛さんの誕パやってんだー!」

侑「だから貸切だったんだ…!」
 
952:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/31(木) 18:23:45.64 ID:Uz+NQcfq
歩夢「そういうことだったんだね。タイミングがいいのか悪いのか…あ、愛ちゃん。お誕生日おめでとう」

愛「ありがと!ピチピチの17歳になりました!」ゞ

愛「あっという間に、もーもー17歳!ピチピチだけにピーチってね!」

侑「あはははっ……ピーチでもーもー17歳だって!あははは………!」ヒィヒィ

歩夢「お誕生日パーティやってるんじゃ、さすがにランチでお邪魔するわけにはいかないね…」

愛「へ?なに言ってんの、水臭いこと言わないでよ!」

歩夢「え?」

愛「こんなチョーサイコーのタイミングで来てくれたんだもん、一緒に祝ってってくれなきゃ愛さん悲しいぞ!」
 
953:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/31(木) 18:25:24.49 ID:Uz+NQcfq
歩夢「で、でも常連さんだけのパーティなんじゃ…」

愛「お祝いは誰にされたっていいわい!なんつって!誕パの日に友達追い返すなんて有り得ないっしょ!ねー、みんな!」

「そうだそうだ、せっかく来たんだから一緒にお祝いしようぜお嬢ちゃん!」

「愛ちゃんの友達なら俺達の友達みたいなもんだよなあ!」

「大将!みやしたスペシャルをあの子達に!」

愛「いやそれ愛さんが言うやつだからー!………ね?今日はランチの料金貰わないし、もう帰すつもりないからさ、入って入って!」

歩夢「それなら…お言葉に、甘えようかな。ね、侑ちゃん──」

侑 ヒーッヒーッ 床ベシベシ

愛「ちょっとちょっと侑~、今からそんなんじゃついてこらんないよ?今日は愛さん絶好調でダジャレ飛ばしまくってくからね!」

侑「か、勘弁してぇ…!」
 
954:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/31(木) 18:31:41.05 ID:Uz+NQcfq
愛「はいー!みやしたスペシャルに愛さんスペシャル、出来上がり!」

「おーっ、来た来た!」

愛「侑と歩夢にはこれもね!」

侑「あっこれ…!愛ちゃん特製のスペシャルドリンクだ!」

愛「お気にだったっしょ?いっぱい飲んでよ」

侑「ありがとう愛ちゃん!歩夢、これ前に話したやつ!」

歩夢「わぁ…!侑ちゃんに聞いてから飲んでみたかったの。頂くね、愛ちゃん」

愛「どーぞどーぞ」

ゆうぽむ ゴクビッ…

歩夢「……美味しい!」

愛「でしょーっ」ニカッ

侑「歩夢、それめちゃくちゃもんじゃに合うんだよ。食べよう!愛ちゃんも座って、一緒に食べようよ!」

愛「だね。もんじゃはみんなで食うもんじゃ!サイコーの加減で焼いたげるからちょい待ちね!」チャッチャッチャッ

歩夢「すごい手捌き…」

侑「ねー、これ見てるだけでも満足しちゃいそうだよ」グゥゥ…

歩夢「…満足してなさそうだね」

侑「もーっ、私のお腹~!」
 
955:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/31(木) 18:42:21.46 ID:Uz+NQcfq
「そんで課長が電話に絶対出たがらないんだよ。課長の内線にかかってきてるのに、一回こっちで出て繋がなきゃいけなくてさ~」

愛「内線に出ない選択があるんかい!ってね」

「聞いてよ愛ちゃん、主人が目も合わせてくれないから何度も詰め寄ったら、照れながら『結婚記念日の』ってピアスくれたのよ。用意したけどどうやって渡せばいいかわからなくて照れてたんだって!」

愛「おーっ、それはハッピーな明日になりそうだね!ピアスだけに!」

「愛ちゃん、まだビール飲んでいいかな!?かみさんがお義母さんとこ行ってて留守にしててさ、帰っても寂しいからここで飲んでっちゃいたいんだよ!」

愛「う~ん……今日は奥さんに代わって愛さんがゆるーす!留守の間だけね!」


侑「愛ちゃん、すごいね。大人気だぁ…」

歩夢「ね。料理も運んで焼くのもやってくれて、ああやってお話ししたり一緒に食べたりしてくれて、常連さん達ともみんな仲良しなんだね」
 
956:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/31(木) 18:48:17.88 ID:Uz+NQcfq
侑「こんなに楽しいお店なら、常連になりたくなっちゃうのもわかるよね」

歩夢「うん。もっと近かったらたくさん来ちゃいそう」

愛「学校からうちなんてすぐじゃん、そう言わないでいつでも来ちゃってよ!」ヒョコ

歩夢「わ、愛ちゃん。聞いてたの?」

侑「愛ちゃんが一つの部活に入らないのって、お店があるからなの?」

愛「え、どうかな。考えたことないけど、そうだね。たまに助っ人するのはいいけど毎日ってなるとなぁ、お店でこうやってみんなと話してるのが一番楽しいからね」

侑「へえ、楽しいんだぁ…!楽しそうだなぁ…!」

愛「お。侑、興味ある?愛さんと一緒に看板娘やる?」

侑「看板娘…!!」パァ

歩夢「えっ侑ちゃん!?」
 
957:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/31(木) 18:53:36.73 ID:Uz+NQcfq
愛「ま、愛さん一人いればホールは間に合っちゃうからさ。職場見学がてら、暇なときにでもやりにおいでよ!侑なら大歓迎だしみんな可愛がってくれるよ」

侑「うんっ、やるやる!」

歩夢「ちょっと侑ちゃん…!」

侑「たまにだってば、放課後なんにもすることなくて暇だーって日だけ!ね?」

歩夢「もう、またすぐそうやってやること増やすんだからぁ…」

愛「あははっ、なんなら歩夢も一緒においでよ。したら暇なとき連絡して、せずに来ても全然いいけど!」サラサラ…

愛「ほい、愛さんのライン」っ紙

侑「ありがとう愛ちゃん!」

歩夢「も、も~…!」

愛「今日もまだまだ楽しんでってよ。みんな、愛してるよ!愛だけにっ☆」


愛の誕生日パーティに参加しました!
愛の連絡先を手に入れました!    ▼
 
958:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸) 2020/12/31(木) 18:56:19.98 ID:Uz+NQcfq
今晩は…というか、今年はこれで最後の更新になると思います。
年内に完結させたかったのですが間に合いませんでした、年始何日から書けるか不明ですがもうしばらくお付き合いください。

皆さん、よいお年を!
 
966:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2021/01/03(日) 09:41:04.34 ID:oMXPABdg
翌朝…


侑「お待たせ~」タタタ

歩夢「行こっか」

侑「うん!」


ライブはお昼前、11時から。

少し早めに歩夢と待ち合わせて商業エリアに向かう。


歩夢「侑ちゃん、早かったね」

侑「寝坊なんかしないよ、この大事な日に」

歩夢「鳴らしても鳴らしても出なかったから、お家まで行っちゃおうかと思ったよ」

侑「ごめんごめん、起きたよって連絡すればよかったね」

歩夢「本当に楽しみにしてるんだね」

侑「──もちろん!!」
 
967:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2021/01/03(日) 09:50:49.59 ID:oMXPABdg
お台場、フェスティバル広場


侑「おお…」


開演より30分ほど前なのに、会場にはそれなりに人がいる。

みんながみんな同好会のライブを観にきた人達ってわけじゃないだろうけど、それはつまりアンテナを張ってなかった人達にも観てもらえる機会ってことだから、むしろいいことだよね。

当然中にはチラシを手に持ってる人もいる。


侑「すごいね歩夢、あそことあそこ、あっちの人も…ライブを観にきたみたい」

歩夢「うん。あのグループはさっき看板を眺めてたから、初めて知って立ち止まったのかも」

侑「ああ~っ、チラシたくさん取ってきたらよかった!開演までの時間で一人でも多くの人に宣伝したかったよ~!」

歩夢「せっかくこんなにアクセスのいい場所でやるんだもんね。待合せに早く着いちゃった人とか、いるかもしれないし」

侑「……私、チラシ探してくる!インフォメーションとかに置いてあるかな!?」ガタ…

歩夢「ま、待って待って侑ちゃん!もう行って取ってくるほどの時間ないよ。侑ちゃん自身が見逃しちゃうよ!?」ガシッ

侑「うおっと、そっか、それはだめだね…」フー…

歩夢「もどかしい気持ちはわかるけど、今日はしっかり応援することに集中しよう?ね、最前列で観るんでしょ?行こ」

侑「うん…!」
 
968:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2021/01/03(日) 09:58:13.64 ID:oMXPABdg
初めてのドキドキ。

ずっと楽しみにしてた映画の上映開始直前。

新学期に教室の扉を潜る瞬間。

クリスマスの朝、枕元のプレゼントをひらく気持ちにも似てるかもしれない。

しずくちゃんと観にいった演劇のときと同じ気持ちのような、違う気持ちのような。

期待と、不安と。

歩夢と繋いだ左手の温もりがなかったら、私はおとなしくしていられたかな。

周りのざわざわが大きくなったり小さくなったり、私の心臓に合わせるように様子を変えて──


コツ、と澄んだヒールの音が響いた。
 
969:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2021/01/03(日) 10:07:18.28 ID:oMXPABdg
侑 ──ハッ…


コツ、

コツ、

コツ──


赤をベースにした制服風の衣装。

黒のベーシックスカートを覆うようにはためくフリルとプリーツ。

力強く、鈍く、すらっと脚を包むハイブーツ。

サスペンダーと同じ色合いのネクタイが、明るい上半身の印象をぎゅっと引き締める。

太ももの花飾りと頭にちょこんと乗った小さなハットが可愛らしさも見せてくれる。


そんな──そんな、


「せつ菜ちゃーーーん!!!」


優木せつ菜が──現れた。
 
970:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2021/01/03(日) 10:18:21.43 ID:oMXPABdg
侑「歩夢、あれ…!せつ菜ちゃんだ…!!」

歩夢「う、うん…!」


心なしか歩夢の声も少し高い。

ぎゅう、と二人の手に力が入る。

目を伏せたまま、丁寧に階段を下りてくる。

周囲からちらほら飛ぶ声援はまるで聞こえないかのように、自分の意識だけを大切に抱えて。


──コツ


階段を下りきって中腹のステージに辿り着く。

口元は、笑ってる?噛み締めてる?震えてる?

どうにだって受け取れるように、控えめのルージュがチカッと照明を返した。


レザーのグローブが軋む音。

大きく息を吸ったのは、優木せつ菜か、お客さん達か、それとも──私か────


せつ菜「♪走り出した!思いは強くするよ 悩んだら、君の手を握ろう──」


優しく詩を詠むような透明に響く声、


せつ菜 ──フッ

侑「────っ……!」ドキン…



♪────ッッッ!!!
 
971:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2021/01/03(日) 10:39:41.33 ID:oMXPABdg
せつ菜さんが伸ばした手。

私はいつの間にか同じように右手を伸ばしてしまっていて、あと1cm──触れ合える直前、音と熱の暴力が私達の間を駆け抜けていった。

これまで動画でいくつか観たどんなスクールアイドルの曲よりも熱く、激しく、情熱的で、身体も意識も置いていかれるような魂のミュージック。

せつ菜さんの手が動く。脚が動く。

もしかして、せつ菜さんの身体が楽器で、その動きがこの強烈な音を奏でているの──?

声が、表情が、振り下ろす腕が、踏み締める脚が、

一つ一つ、ズシンと私の胸を揺らす。

心臓がどんどん速くなっていくのを感じてしまう。

伸ばしたまま下ろせずにいる右手は気づけば痛いほどに握り締めていて、駆け巡る血液があと少しでも速くなってしまったら血管が切れちゃうんじゃないかってくらい熱くて、熱くて、熱くて、熱くて──


せつ菜「────────────ッ!!!」


その叫びで、なにかが吹っ切れてしまった。

痛っ、と聞こえた気がしたけど、それどころじゃない。

全身が内側からこみ上げる感情の行き場を探してガタガタと震える。

届け!届け!届け!届け!

私は今、あなたに世界の全てを奪われたんだ。

終わる──終わってしまう──終わらないでほしい、もっと声を聞かせて──もっとお話ししよう──


せつ菜さん──!

せつ菜さん──!!

せつ菜さん────!!!
 
972:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2021/01/03(日) 10:51:40.22 ID:oMXPABdg
────ッ♪………


はぁっ……はぁっ………はぁっ…………


キラキラと輝きが舞い上がっていくように、曲は終わりを迎えた。

会場に響く歓声は、せつ菜さんの声より何倍も大きい。

だけど、私にはたった一人が奏でた音だけがじんじんと残っている。

胸を焦がすような高鳴りが、止まない。止まない。

瞼を閉じれば何度だって出会えそうなほどに焼き付いてしまった衝撃が私を捕まえて離さない。


──パタッ


侑「!」ハッ


ひとしずく、汗が石畳にはねて、ふと我に返る。


せつ菜 ──ニッ

せつ菜「皆さん、ようこそお越しくださいました!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のグループ結成ライブへ!」


そんな口上を聞いて、全身から力が抜けていく。


歩夢「……侑ちゃんっ」ガシッ

侑「あ、あゆむ…」

歩夢「だ、大丈夫?随分聞き入ってたけど…」

侑「ああ、うん、大丈夫。ありがとう」

侑「すごかったね。私、なんて言えばいいのか…わかんないくらい、…感動しちゃった」

歩夢「────」

歩夢「そう、だね。すごかったね。でもほら、今日のライブはせつ菜さんだけのものじゃないんだよ。みんな出てくるみたい」

侑「っと、そうだった。気を抜いてる場合じゃないよね」ットト
 
973:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2021/01/03(日) 11:09:00.50 ID:oMXPABdg
彼方ちゃん、エマ先輩、かすみんがそれぞれ思い思いの様子でステージに下りてくる。

かすみんは手をぶんぶん振りながら一段飛ばしで階段を駆け下り、一番にせつ菜さんの隣に並んだ。

エマ先輩は嬉しそうに瞳をきらきらさせながら会場を眺めるように視線をあちこちへ向けていて、私と歩夢に気がつくと小さく手を振ってくれた。

彼方ちゃんは最初に姿を見せたにもかかわらず、とぼとぼと歩くせいでステージに着いたのは最後だった。


ずらり、

ステージに四人の視線が並ぶ。

せつ菜さんがみんなに目配せをすると、それぞれ姿勢を変えて綺麗な陣形に移る──


歩夢「みんな、緊張してるね」

侑「そう、だね」


彼方ちゃんも、かすみんも、エマ先輩も。

口元こそ柔らかな曲線を描いてるけど、すごく力が入ってるのが目に見える。

目と眉はさまよわせる余裕もなく、ただただ前方に向けられるばかりで。

全員の様子を確認したせつ菜さんでさえ、さっきとは打って変わって──どこか、不安そうな表情を浮かべてる。


みんな、頑張れ──!


聞き覚えのあるイントロが流れ出して、二曲目が始まった──………
 
974:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2021/01/03(日) 11:25:06.83 ID:oMXPABdg


せつ菜「────本日は、ありがとうございました!」

「「「ありがとうございました」」」

せつ菜「これからも私達は、皆さんに応援していただき愛していただけるよう、精いっぱい精進していきますので、よろしくお願いします!」

せつ菜「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会でした!」


パチパチパチ…

まばらな拍手に見送られて、同好会のみんなは袖へと引っ込んだ。

歩夢と繋いだ左手、お互いに力がこもる。

二曲。

せつ菜さんの一曲と、四人での一曲。

今日のライブで披露されたのはそれだけで、時間はまだ11時半にもなってない。

たぶんだけど、他の曲をやる予定はあったんだと思う。

でもそれを、せつ菜さんが止めた。

二曲目が終わった後、せつ菜さんがステージの袖に視線を送る不自然な空白の時間があって、そのまま最後の挨拶に移った。

理由は──会場の空気だ。

せつ菜さんの曲で確かに盛り上がっていた空気は、二曲目が進むにつれて徐々に──徐々に──落ち着いていった。

それはきっとパフォーマンスをしてたみんなにも伝わってしまったはずで、これ以上続けるのはよくないってせつ菜さんが判断したんだと思う。

私達はいつの間にか離してた手を改めて繋ぎ直したし、お客さんの数は減った。
 
975:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2021/01/03(日) 11:35:52.77 ID:oMXPABdg
同好会のみんな、四人での曲は、決して悪くなかった。

少なくとも目立つような歌や踊りのミスはなかったし、きちんと最後までやりきった。

でも、それだけだった。

心を奪われるような熱とか、目を離せなくなるほどの圧倒とか、そういうものを感じなかった。

どちらかといえばハラハラしながら見守ってしまう気持ちの方が大きくて、正直なところ、パフォーマンスを充分に楽しめたとは言えない。


侑「…でも、結成したばっかりのグループなんだもん。最初はみんなそうに決まってるよね」

歩夢「そうだね」

侑「みんな、練習頑張ってたもん。次のライブはもっとよくなるし、その次はもっともっとよくなるよ」

歩夢「私も、そう思うよ」

侑「なのに、みんな…途中で帰っちゃったりして……ひどいよ…」

歩夢「……そう、だね」


二曲目が半分くらい進んだ頃、どこかから聞こえてきた会話。


──「せつ菜ちゃん、グループ組むんだね」

──「ね。ずっとソロでやるのかと思ってた」

──「なんでグループ組むんだろうね」


──「一人の方が、いいのに」


私はショックだった。

目の前でみんなが一生懸命パフォーマンスしてるのにそんな会話をされてることもそうだし、曲よりもそんな会話が耳に入ってしまったこともそう。

でもなによりも、


────確かにね…────


そんなことないって真っ先に思えなかった自分が、恥ずかしくて恥ずかしくて──悔しかったんだ。
 
976:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2021/01/03(日) 11:42:19.58 ID:oMXPABdg
すっかりいつもの風景に戻った広場で、私達はまだ手を繋いでぼうっと立っていた。


歩夢「侑ちゃん」

侑「うん」

歩夢「みんな、まだステージの近くにいるかもしれないよ」

侑「!」

歩夢「会いにいかなくて、いい?」ジッ

侑「会いに…」


侑「……ううん、いい」フル…

侑「今は私が会いにいくタイミングじゃないと思う。みんなだけで話したいことが、きっとたくさんあると思うんだ」

歩夢「…わかった」コク

歩夢「それじゃ、お昼ごはんでも食べてから帰ろっか」

侑「うん…」


同好会のライブを観にいきました! ▼
 
977:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2021/01/03(日) 14:59:32.67 ID:oMXPABdg
※ スレ残数の関係上、展開を詰めています。ご理解ください。


夜…


『菜。』


トーク履歴は何日か前のままで止まってる。

まずはライブを労いたかった。

でも、なんて言えばいいのかわからなくて、こんな時間になるまでメッセージを送れずにいた。

せつ菜さんのパフォーマンスが素晴らしかったこと。

感じた想いや胸の高鳴りをそのまま伝えたい。

それと、全体曲。ライブの話をすれば絶対に避けられない。

私はよかったと思った。

素人の目にもいくつか課題はあるように見えたけど、そんなことはきっとみんなが一番わかってることで、私がわざわざ言う必要なんかない。

だけどライブをあそこで止める判断をした、その引き金になったのであろう空気。聞こえた感想。

あまりにもかけ離れた二曲について、どんな風に話せばいいのかどうしても整理できずにいた。

もう、いい時間になっちゃう。

このまま明日を迎えたら、私は同好会のみんなと──せつ菜さんと、今日のライブの話をできなくなってしまうような気がする。


──歩夢「みんな、まだステージの近くにいるかもしれないよ。会いにいかなくて、いい?」


あのときみんなの元に行かなかったのが、そのタイミングじゃないと思ったからなのは嘘じゃない。

でも本当の理由は違って、私は、


侑「せつ菜さんと話したいんだ──」ポツ…


せつ菜さんと。

せつ菜さんだけと、話がしたい。


侑「…よし」


手近な上着を羽織って、お母さんに一言、家を出て電話を鳴らした。
 
978:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2021/01/03(日) 15:14:53.88 ID:oMXPABdg
近所の公園


菜々「侑」ジャリ…

侑「こんな時間に呼び出してごめんね」

菜々「本当ですよ。消耗品の管理ができない子だと思われたらどうするんですか」

侑「私は全然できてないから大丈夫だよ」

菜々「それは大丈夫ではありません」クス…

侑「隣、座らない?」

菜々「それでは失礼して」スッ

侑「…誰もいないね」

菜々「児童遊園ですよ?こんな時間に子どもが遊んでいる方が問題です」

侑「遊具もあんまりないから、私近所なのにほとんど来たことないよ」

菜々「私は…どうでしょうか。元々外で遊び回る幼少期ではなかったので、そうですね、あまり馴染みがないように思います」

侑「っていうかこんなに近所だったらニジガク入る前にも何回か会ってそうだよね」

菜々「会っていたかもしれませんね。まあ、とは言えこの辺には世帯が多いのでそんな相手はごまんといそうですが」

侑「もー、菜々ちゃんってばつれないなぁ。そこは実は幼稚園の頃一番の大親友だった相手ってことにしようよ」

菜々「ふふ。それは歩夢さんなのではないですか?」

侑「そうだね、間違いないや」

菜々「幼馴染み設定は上手く使うのが難しいものなんですよ」

侑「設定?」

菜々「ラノベの話です」

侑「ああ」クス
 
979:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2021/01/03(日) 15:21:47.37 ID:oMXPABdg
侑「…ライブ、お疲れ様」

菜々「…ありがとうございます」

侑「どうしても今日中に言いたくてさ、会いにきちゃった」

菜々「ラインや電話でもよかったのに。侑のそういうところ、素敵ですよ」

侑「……ううん、そうじゃないんだ」

菜々「と、言いますと?」

侑「なんて言えばいいのか…わかん、なくて」

侑「会えば言葉が出るかなって思ってね」

菜々「…そうでしたか」

侑「うん」

菜々「………侑」ス──

侑「うん、なに?菜々ちゃ──わっ!?」グイッ

菜々 ジィィィ…

菜々「私の顔が見えますか?」

侑「よ、よく見える…けど…」

菜々「言葉は出そうですか?」ニコッ

侑「ぁ…」

侑「……あぁぁぁ………もう、何事かと思ったよ…」ヘナ

菜々「会えば言葉が出そうだったと、侑が言ったんじゃないですか」

侑「そうだけど、菜々ちゃん…心臓に悪いなぁ…」ハァ

菜々「?」
 
980:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2021/01/03(日) 15:41:06.85 ID:oMXPABdg
侑「私ね、スクールアイドルのライブって生で初めて見たんだけど」

侑「せつ菜さんのパフォーマンス、すっっっごく、よかったよ!!」

菜々「!」

侑「熱くて激しくて情熱的で、もう…これだーっ!って感じだった。胸のときめきが抑えられなくて……あっそうだよ、うん…私、すっごくときめいたんだ!」

菜々「それは…とても、嬉しいです…」//

侑「せつ菜さんが友達だってこととか普段の様子とか吹き飛んじゃって、なんか…なんていうのかな…手とか伸ばしちゃった。触れたかったのかも」

菜々「伸ばしてくれてましたね」

侑「えへへ、見えてた?」

菜々「当然見えますよ。最前列にいてくれましたし、手を伸ばしてたのなんか侑くらいでしたから」

侑「だ…だってぇ…」

菜々「…」

菜々「………触れたかった、というのは」

菜々「どういう想いですか?」

侑「え?」

菜々「せつ菜のパフォーマンスが侑に響いたというのなら、それほど喜ばしいことはありません。たくさんのお客さんが来てくれていましたが、最も目を輝かせてくれていたのは侑でしたよ」

菜々「私もステージの上では日頃のことなどすっかり忘れてしまう方なので、一人のスクールアイドルとしてあなたというお客さんと向き合えたことが純粋に嬉しく思います」

菜々「ですが、せつ菜はやはりスクールアイドルとしての姿であって、私は──今の私は、菜々です」

菜々「せつ菜のことを語る侑の瞳が嬉しくくすぐったい反面、どこか…もやもやとしてしまうんです」

菜々「…侑」

侑「は、はい」

菜々「あなたが憧れ、手を伸ばし、触れたいと思ったのはきっとせつ菜なのでしょう。そんな侑の手を、『私』が取っては──いけませんか?」

侑「そ、れ…は」
 
981:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2021/01/03(日) 15:57:58.78 ID:oMXPABdg
じっと、視線が交わる。

ステージの上に見たせつ菜さんの燃えるような瞳とは違う、穏やかで凛々しい光。

このどちらも同じ人だなんて、見てしまった今こそどこか信じられない気分だ。

肩口で左右に結んで垂らした髪。

家用の髪型なのかな、生徒会室でよく会うときより雰囲気が柔らかい。

決して高くない背。

私より少し高く感じるのは、きりっとした印象のせいか、姿勢がいいせいか。


私が伸ばした手。

あれは、なにを求めたんだろう。

自分にない輝く意志を持った姿に、思わず伸びてしまったんだけど。

もしもあの手を取ってくれる誰かがいたなら、それは──せつ菜さんがよかった?それとも菜々ちゃんがよかった?

私は…


侑「…わかん、ない」

侑「あのときなんで手を伸ばしちゃったのか、自分でもわかんないんだ」

侑「触れたかった、のは、せつ菜さんがあんまりにもカッコよかったから。自分が持てないものを持ってるように、感じたから、かな」

侑「触れられないってわかってたから伸ばしたのかもしれない。もし触れられてたら、そこで憧れが違うなにかに変わっちゃってたのかも……なんて…」

侑「…あはは、ごめん、ほんとにわかんないんだ──」

菜々 スッ──


…ギュ


侑「…ぁ…」

菜々「触れて、しまいました」

侑「菜々、ちゃん…」

菜々「せつ菜の魅力が触れられないことにあるというのなら、この温もりは、『私』にしか与えられないものですね」

侑「────……っ…」ドキッ…
 
982:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2021/01/03(日) 16:34:50.07 ID:oMXPABdg
侑「あの、あの…菜々ちゃん…」

菜々「私、スクールアイドルを引退するつもりでいます」

侑「────えっ…」

侑「なん……なん、で…?」

菜々「小さな理由はいくつかあるのですが、あえてなぜと訊かれると、同好会の皆さんのため…でしょうか」

侑「同好会の、ため…?」

菜々「今日のライブを観ていて、わかったでしょう。こんなことを認めたくはありませんが、私──せつ菜の存在は、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会が活動をする上では邪魔にしかならないんです」

菜々「一年の活動実績がある私と活動を始めたばかりの同好会の皆さんでは、どうしてもパフォーマンスに差が出てしまいます。それは練習量や経験値などの積み重ねであって、一朝一夕で埋まるものではない」

菜々「今回、ライブに向けて皆さんの練習を私がまとめる形になったのですが、……控えめに言って最悪でしたよ」

菜々「私は生来手を抜ける性分ではないですし、せつ菜を客観的に見る視点も持ち合わせています。皆さんのパフォーマンスをせつ菜と同じところまで、せめて同じステージに立ってお客さんに違和感を与えないところまで引き上げるには、あまりに期間が短過ぎました」

菜々「時間が取れない分、質を高めようとすれば、高校生の身体には負担の強いメニューが続いてしまう。それがわかっていても、合理的に考えるとそうせざるを得なかったんです」

菜々「全員なんとか喰らいついてはくれましたが、限界寸前だったと思います」

菜々「…先日、侑達にドーナッツ作りへ誘ってもらえたこと、だから本当はよかったと思ったんです。あの日練習を休んでいなかったら、疲労で誰かがケガをしていたかもしれない」

菜々「……それをわかっていてもなお、私は止まることができませんでした」

菜々「私と皆さんが同じステージに立つのは、今の時点では現実的じゃない。ですがスクールアイドルである以上、同じ虹ヶ咲学園に通う私達が異なる組織として活動をすることもできない」

菜々「私はスクールアイドルを続けている限り、立てるステージを逃すという選択をきっと取れないでしょう。そして、同好会の皆さんはそのたびにせつ菜と並ぶための異常な練習をこなすことになる」

菜々「今回はなんとか全員無事に乗り切れましたが、次もそうである保証はない。誰かがケガをしてしまうか、あるいはスクールアイドルを諦めてしまうか。そんな未来が待っています」
 
983:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2021/01/03(日) 16:51:52.55 ID:oMXPABdg
侑「そんな…」

侑「菜々ちゃんっ……せつ菜さんは、本当にそれでいいの?」

侑「同好会のみんな、きっとこれからどんどんすごくなるよ。練習はきついかもしれない、次のライブではまだまだかもしれないけど、少しずつ上達していって、いつかせつ菜さんに並ぶよ。ううん、追い抜いちゃうかもしれない!」

侑「そんなみんなと一緒にライブしたくないの?見てるだけなんて、悔しくない!?」

菜々「………ふふ。なにを言い出すかと思えば…」

菜々「悔しいに決まってるじゃないですか」

侑「!」

菜々「優木せつ菜はいつだってその瞬間の自分ができる最高のパフォーマンスをしてきました。明日の自分には及ばなくとも、昨日の自分は絶対に越えてきたつもりです」

菜々「同好会の皆さんが日々成長するというのなら、私だって同じだけ──それ以上に成長します。共に切磋琢磨しながらどんどんお互いを高め合っていきたい。そうやって、虹ヶ咲学園こそがスクールアイドルのトップだと胸を張って言いたい」

菜々「…ですがそれを叶えるには、色々なものが噛み合いませんでした」

菜々「私が一年生だったのなら、どんなによかったでしょうか。いっそ彼方さんもエマさんも一年生で、かすみさんと四人でここから、今からスクールアイドルを始められたなら、どんなに」

菜々 ………フゥ…

菜々「私はスクールアイドルでいる自分が大好きですが、それと同時にスクールアイドルそのものの大ファンでもあるんです」

菜々「私がこれから立ったのであろうたくさんのステージで、私ではないスクールアイドル達がどんな風にパフォーマンスをするのか。隣からでは見えないそんな景色を存分に楽しむ生活に戻ろうと思います」

侑「……っ」グ…

菜々「…そんな日々を、一緒に過ごしてはくれませんか?」

侑「…ぇ…」
 
984:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2021/01/03(日) 17:19:22.98 ID:oMXPABdg
菜々「なにも侑の全てを私に下さいとは言いません」

菜々「ただ、今までせつ菜と共に過ごしてきた日々が終わりを迎える。守りたかった生活がなくなり、このままだと私は生真面目一辺倒の生徒会長に戻ってしまうでしょう。その隣に、いてほしい」

菜々「侑と過ごす時間が楽しいんです」

菜々「たくさんの感情を素直にぶつけてくれて、私が知らないことをたくさん教えてくれます。あなたのために、明日も頑張る私でいたいと思える」

菜々「侑」ギュ…


菜々「私にとって、明日も頑張る理由でいてくれませんか──?」


侑「…菜々、ちゃん…」


私は、

菜々ちゃんの笑う顔が好きだ。

ライトノベルやアニメのことを話すとき、心から楽しそうに、嬉しそうに話す顔。

調子に乗って失敗しちゃった私を見て呆れたように微笑む顔。

はんぺんのことでなんとか議論を勝ち取ったと語ったときの、どこかいたずらっぽく誇った笑顔。

初めて私の名前を、名前だけを口にして、戸惑いながらはにかんだ顔。

もっと色々な表情を見てみたい、私だってそう思う。

自分の夢を必死に追いかけてきた菜々ちゃんの決断に、私が言えることがもうないとするなら、

せめて。
 
985:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2021/01/03(日) 17:22:23.39 ID:oMXPABdg
侑「…せつ菜さんがいなくなっても、この温もりはなくなっちゃわないってことで、いいんだよね」ギュ…

菜々「はい、もちろんです」

侑「菜々ちゃんの隣にいても恥ずかしくないように、私も…毎日少しずつ、頑張ってみるね」

菜々「…ふふ」

菜々「私が、あなたの頑張る理由になってみせますよ。これからよろしくね、侑!」

侑「──ぁ…」

菜々「? どうしましたか?」

侑「…ううん、なんでもないよ。お手柔らかにね、菜々!」

菜々「はいっ!」ペカー


菜々「…………あれっ…!?」//


【ギャルゲ風安価SS】侑「また一年が始まる」 ―終わり―

【if...菜々エンド】
 
986:>>1 ◆1Y9DDrqNbw (しうまい) 2021/01/03(日) 17:27:01.55 ID:oMXPABdg
以上で、ifを含め完結となります。
思ったよりも相当ギリギリで、要望に応えられそうな部分とか書いてる場合じゃありませんでした。
話したいことや感想を聞かせていただきたい気持ちなどあってスレ残数が全然足りませんが、お付き合いいただきありがとうございました
拙い点も多かったと思いますがとても楽しかったです


明けましておめでとうございます、
今年もたくさん皆さんと話したりSSを読んだり書いたりできたらいいなと思います。
それでは、またお会いしましょう!
 
987: (もんじゃ) 2021/01/03(日) 17:44:40.42 ID:G1+iC1gX
楽しかった!乙
 
989: (もんじゃ) 2021/01/03(日) 18:04:10.49 ID:aduwKGNw
お疲れ様でした!
2スレに渡り、素晴らしいssをありがとうございました!
ひとまずはゆっくりお休みください!
(もしも、仮に、気が向くようなことがあれば、続編?もお願いします!)

菜々ちゃんかわええな。せつ菜も好きだけど、菜々も十分かわいい、いいね……
にしても、菜々エンド、かなりビターっていうか、退廃的なものを感じる苦さがあるもんですね……
 
992: (しうまい) 2021/01/03(日) 19:43:54.42 ID:ULFPVEug
次スレ行かないって言うからずっと書き込み我慢してたけどようやく書ける
おつでした!
しずくちゃん菜々ちゃん√本当にありがとう
菜々√についてはかなりビターな感じだけど見られてよかった
今はそういう結論でもせつ菜ちゃんと侑ちゃんならきっとこの先も色々な選択があるんじゃないかと妄想が膨らみますね
本当におつでした
めちゃくちゃ良かったです
 
993: (しまむら) 2021/01/03(日) 21:38:09.96 ID:kYwq255J
超大作になった分増分に楽しませてもらった!乙
 
994: (おにぎり) 2021/01/03(日) 23:47:08.91 ID:+LsSNK3Q
ちょっと前から1000レスに達しそうでスレ内に収まるかヒヤヒヤしてたけど書き切ってくれて本当に良かった
しずくルートと菜々ルートが両方見れて最高だった
菜々ルートでスクールアイドル引退は驚いたけど、せつ菜ルートとの差別化にはもってこいだと思うから納得

前スレからずっとこのSSが生き甲斐の1つだった、ありがとう
すごい丁寧な描写で感動したから今後の新作SSもすごい楽しみにしてる
 
998: (光) 2021/01/04(月) 20:29:21.58 ID:O9juxgA/
おつおつ!
最初の方から楽しく読んでたよ
次回作も楽しみにしてる!
 

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1606343269/

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1603494790/

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