【SS】梢「残響」【ラブライブ！蓮ノ空】

慈「ひま」

梢「……」ﾍﾟﾗﾘ

慈「ひまひまひまひまひまーっ！」ｼﾞﾀﾊﾞﾀ

梢「……」ﾍﾟﾗﾘ

慈「……おい。無視すんな」ﾊﾞｯ

梢「あっ、ちょっと慈！　返しなさい！　今いいところなんだから！」

慈「うっさい。私をほったらかして優雅に読書とか生意気すぎ！　めぐちゃんに構えよ！」

梢「少しくらい待っていられないの？　我慢強く泰然自若と事を構える、それが──」

慈「あー、聞こえない聞こえない。めぐちゃんの耳は、たのしーことしか聞こえませーん」

梢「……もう、仕方のない娘ね。分かったわ。少しお話しましょうか」

慈「やり！　じゃ、何話そうかな～。ん～……」ﾁﾗｯ

ｻﾞｧ~…

慈「うん、今は生憎の雨。昼間なのに薄暗くて、電気を付けなきゃ文字だって見えやしない。こういうちょっぴりオカルトな雰囲気の時は、怖い話をするに限るよね」
　

梢「怖い話……。あなた、そういう怖い話とか怪談とかに明るいの？」

慈「いや、まぁ、ネットにある話とか、話題のホラー映画とかチェックする程度。でもいいじゃん、手慰みってことでここは一つ、ね？」

梢「……けれど」

慈「あ、な～に梢、怖いの？　お目目にうるうる涙溜めちゃうの～？」ﾆﾖﾆﾖ

梢「ち、違うわよ。ただ、余り明るくないものだから、期待に添えないかもしれなくて」

慈「ただの雑談になに肩肘張ってんのさ。んじゃ、私から話すね」

梢「ええ……」ﾁﾗｯ

ｻﾞ~…

梢「……」ﾌﾞﾙﾘ

慈「それでは。これはね、とある大学生のAくんが体験した話なんだけど──」
　

──

慈「──と、言うわけで、踏切の音が鳴り止まない怪談話でしたー。わー、ぱちぱち」

梢「……」ﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁ

慈「お。なんか顔青くない？　だいじょぶ？」

梢「だ、大丈夫よ。ええ、問題ないわ。それにしてもあなた、語り口が軽妙で流石って感じね」

慈「まぁね。配信で鍛えてますから」

梢「ふふっ、口から先に生まれてきたのよね、きっと」

慈「お？　それ皮肉か？」

梢「褒め言葉よ」ﾆｺｯ
　

慈「コイツ……、ふぅ。で、話は戻るけど」

梢「ええ」ｺｸﾘ

慈「今回の話もそうだけど、○○が鳴り止まない、○○が響き続ける、○○が終わらない、みたいなのって定番だよね」

梢「ふむ、例えば？」

慈「えっと、今回の踏切音が鳴り止まない、とか、玄関に誰もいないのにインターホンが鳴り続けるとか、いつまでも夏休みが終わらないとか、かな？」

梢「なるほど。確かに鉄板と言えば鉄板ね。不気味さを演出するには、繰り返しは効果的かも……あっ」ﾋﾟﾀｯ

慈「ん？　どした？」

梢「……いえ、実はね、身に覚えのある話……だと思って」

慈「……ぉ、お……？　それって……なに、流れ的に実体験、ってこと？」

梢「……」ｺｸﾘ

慈「へ、へー……、実体験、ですか」

梢「……ふふ、少し頬が引きつっているけれど、大丈夫かしら？」

慈「ひ、引きつってへんし」

梢「京言葉になってるわよ」ｸｽｯ

慈「う、うっさい。ほら、話してごらんよ。このめぐちゃんに、怖気を走らせてみぃ！」

梢「……ええ。それでは、期待に応えて一つ。これはね、私が花帆と──」
　

──

📱＜ｺｽﾞｴｾﾝﾊﾟｰｲ♪（フォーチュンムービーからトリミングした着信音）

梢「あ、ぽちっ、もしもし、花帆？」ｽｯ

📱＜あ、梢センパイ！　こんばんは！　日野下花帆です！

梢「うふふ。フルネームを言わずとも、着信音だけであなただって分かるわ」ﾆｺﾆｺ

📱＜えへへ。梢センパ～イ！

梢「なに？　花帆」

📱＜呼んでみただけでーす！

梢「あらあら。それじゃあ……かーほっ」

📱＜なんですか？

梢「私も、あなたを呼んだだけよ」ﾆｺｯ

📱＜もー、梢センパイってばー！

梢「おあいこよ、かーほっ」

📱＜あ！　また！　梢センパイ梢センパイ！

梢「なあに？　かーほっ」

📱＜梢センパイ梢センパイ梢センパイ！
　

…………

梢「──それで、えぇと、寝落ち通話？　だったかしら？」

📱＜はい！　梢センパイともやってみたいなー、って思って

梢「ええ。それはいいのだけれど、具体的に何をするの？」

📱＜ただ単純に、どちらかが寝ちゃうまでお喋りするだけですよー

梢「なるほど。至って単純ね」

📱＜はい！　今どうしてるか分かりませんけど、お耳にスマホを当てながら話すのもいいですし、スピーカーにして枕元に置いて会話ってのもありです！

梢「へぇ。ちなみにあなたはどちら？」

📱＜あたしは断然スピーカー派ですね。手に持ったままだと疲れちゃうし眠れないので

梢「それじゃあ私もそうしようかしら。えぇと……」ﾓﾀﾓﾀ

📱＜あ、スピーカーにするにはですねぇ──」
　

……

📱＜──それで瑠璃乃ちゃんったら、シャトルラン中に充電切れしちゃって

梢「うふふ。大変ね。それでどうしたの？」

📱＜それでそれで……ふわぁ～

梢「あら。おねむの時間？」

📱＜い、いやいや！　花帆はまだまだ元気もりもりですよ！　今晩は梢センパイを寝かせないんですから！

梢「うふふ。太陽みたいに元気いっぱいね。エクスクラメーションマークは当分取れなさそう」

📱＜え？　えくす……、なんですか？

梢「あぁ、エクスクラメーションマーク、びっくりマークのことよ。あなたって語尾にいつもそれが付いているイメージだから」

📱＜え、そうですか？　そうかもですねぇ。元気なとこはあたしの数少ない取柄ですから！

梢「数少ないだなんて。あなたにはたっくさんいいところがあるのに。例えば、笑顔が素敵なところ。あなたの笑顔を見ていると、こちらの心も温かくなってね、あっ、でも、本を読んでいる時とか、集中している時に見せる真剣な顔もつい見入ってしまって──」

📱＜わ、わーっ！　褒め〇される！！！
　

……

梢「それにしても、かほめぐ♡じぇらーとは色々な意味で刺激的だったわね」

📱＜色々、ですか？

梢「ええ。やっぱり、キュートな面が目立つ二人が並ぶととても華が合って、弁も立つものだからついつい頬が綻んでしまうのよね」

📱＜えへへ。あたしも楽しいので、それが伝わるのかもしれないですね

梢「そうねぇ。楽しい感じは画面越しで伝わるのだけれど、だから余計に、こう……」

梢「……」ﾓﾔｯ

📱＜梢センパイ？　おねむですか？

梢「あ……、そ、そうかも、しれないわね。何の話、だったかしら？」

📱＜えっと、かほめぐ♡じぇらーとの話、ですね。あっ、そういえばこの前の慈センパイの配信、破壊力すごかったですよね！

梢「破壊、力……？」

📱＜はい！　梢センパイも色々と印象的だったんじゃないですか？

梢「あぁ……ええ、そうね。少し、胸に来るような言葉も、幾つかあったわ」
　

📱＜ですよねですよね！　梢センパイが居場所を守ってくれてたとか、絆で結ばれてるなー、って思いましたもん！

梢「うふふ。あの娘も面と向かって言えばいいのに」

📱＜そーれ、慈センパイも同じこと思ってますよ

梢「うっ……」ｸﾞｻｯ

📱＜あはは、図星でしたか？

梢「そ、それはぁ……え、えぇと、ああ、そうね、さっきの破壊力というのは、なんだったの？」

📱＜露骨に話題を逸らしましたね……。破壊力っていうのは、途中でやってたASMRですよ

梢「あぁ、耳元でこそばゆいアレね」

📱＜そんな一言で括られるとアレですけど……でもでも！　瞬間最大風速すごかったですよね！　あの大好きって言葉！　ドキドキしちゃいました！

梢「そう、ね……。刺激的……ではあったわね。少し、限度を超えていると思ったけれど……」

📱＜えー！　あれくらいファンサじゃないですか！　いっぱい言いましょうよ！

梢「ファン、サ……。花帆は、そういうスタンスなのね」

📱＜え？
　

梢「大好き、という言葉は気持ちをストレートに伝えられるけれど、安易に使い過ぎると気持ちと言葉にズレが生じてしまうんじゃないかと思っていてね。経済の分野では、限界効用逓減の法則、なんて言われるけれど、正にそんな感じね」

📱＜え、えぇー、でもでも、慈センパイだっていっぱい大好き大好き言ってるじゃないですか！　なのにあんなに刺激的だったんですよ？　いっぱい使ってもいいじゃないですか！

梢「確かに、言いたいことは分かるわ。けれど、そう、ね……。慈の場合、巷でよく言われるギャップ萌え、的な部分があるのではないかしら？」

📱＜ギャップ萌え、ですか？

梢「ええ。大好きをよく使う彼女だけれど、今回のASMRでは違う様子だった。少し別の雰囲気を纏って言った大好きだからこそ、その落差に刺激を覚えたのでは無いかしら」

📱＜別の雰囲気って、具体的に何なんですか？

梢「慈って、普段は明るく元気に配信しているでしょう？　でも、ASMRの時は声量を控えめにして、日頃の感謝を伝えるために献身的に抑えて喋っていた。それがいじらしく儚い雰囲気を作り出して、大好きという気持ちが言葉以上に伝わった。そう、私は考えているわ」

📱＜なるほど……

梢「あぁ、他に例えるなら」

📱＜はい

梢「語尾にエクスクラメーションマークが付いていなかったから、とも言えるかもしれないわね」

📱＜……え？
　

梢「ふふ。短く言えばそういうことでしょう？　声量を控えめに抑えて喋るって、感嘆符が付かないじゃない。大きく膨らんだ気持ちを圧縮して、絞り出して、本心がほんの少しだけ顔を覗かせる。なんだかそれって、とても胸に響くと思わない？」

📱＜……

梢「……花帆？」

📱＜……

梢「あら？　途切れてしまったかしら」

📱＜……はっ、き、聞こえてますかー？

梢「あ、花帆。一瞬途切れた感じかしら」

📱＜そ、そうかもですねー。ラグいのかも

梢「らぐ……？」

📱＜あ、ラグいというのはですね──
　

──

梢「それで、ね……ふわぁ、え、と……あの、ね……」

📱＜……そろそろ、寝ましょうか

梢「ん……そう、ね……。瞼の重力に、そろそろ抗えなくなって……ふぅ、それじゃあ、通話をオフに──」

📱＜あ、切らないでください。寝言とか寝息を楽しむのも寝落ち通話の醍醐味なんですよ

梢「あ、あら。そう、なのね…、ふわぁ、それは、なんだか……含羞を浮かべ奉るわね……」

📱＜ふふっ。言葉がみょうちくりんになってますよ。ね、梢センパイ、眠る前に一つだけ、お願いがあるんです

梢「おねがい……？」

📱＜はい。もうちょっとスマホを耳元に近づけて欲しいんです。そうしないと寝言みたいな小さな言葉って聞こえないと思いますし

梢「あぁ……なるほど……よい、しょ……これで、いい？」ｿｯ

📱＜ありがとうございます。それじゃあ、おやすみなさい、梢センパイ

梢「ええ……。おやすみなさい、花帆」
　

📱＜……

梢「……」

梢「……」

梢「……」

梢「……」ｽｩ…、ｽｩ…

📱＜……

📱＜……

📱＜……

📱＜……寝ちゃい、ましたか……？
　

梢「……」ﾋﾟｸｯ

📱＜……

梢「……」

📱＜……梢センパイ

梢「……？」

📱＜……

📱＜……
　

📱＜……愛して、います……
　

──

梢「──その残響は、今も尚私の脳に響き続けているわ……」

慈「……」

梢「ねぇ、聞いて慈。花帆ってば最近、耳元にこそっと言ってくるのよ？　大好きですって、愛してますって。私、摩耗も風化もしない価値がこの世にあるって、花帆に会って初めて知ったわ」

慈「……」

梢「それで……どうだった？　あなたに怖気は、走ったかしら」

慈「惚気が走ったよ！！！」
　

これでおしまいだよ！　ぽ～ちっ♡
　

乙、こずかほ惚気助かる
　

かわいい
　

読了 最高やね😀
明日も頑張れる気がする💪
　

こういうね、こずかほめぐがね、ワシャ大好きなんじゃよ…乙
　

すき