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1: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:00:03 ID:???00
『ラブライブ!決勝大会プレーオフ。優勝は──蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ!』
花帆(それは、おとぎ話のような夢の舞台……あたし達は、そんなラブライブ!で優勝して、そして……)
花帆(気づけば、もう三月……別れと出会いの季節が、やってきていた)
スタスタ…
花帆「……ここに来たの、一ヶ月ぶりくらいかな」ポツリ
花帆(……あたしは一人、バスを乗り継いで蓮ノ空から離れたこの場所に来た。ちょうど周りには誰もいなくて、あたしだけ)
花帆「ここで始まったんだ。あたしの……あの夢が」
花帆「……確か、この辺で話したっけ……?」キョロキョロ
花帆(そうして、一歩踏み出した瞬間──)
花帆「えっ……? わ、わぁ!?!?」ガタッ
花帆(──あたしは、“落ちる”感覚に襲われた。まるで、地面が急に溶け出したみたいに)
花帆(何が何だかわからないまま、あたしはただ、意識ごと何かに引きずられて……)
花帆「──っ……あ、あれ……? ここ、は……?」
花帆(それは、おとぎ話のような夢の舞台……あたし達は、そんなラブライブ!で優勝して、そして……)
花帆(気づけば、もう三月……別れと出会いの季節が、やってきていた)
スタスタ…
花帆「……ここに来たの、一ヶ月ぶりくらいかな」ポツリ
花帆(……あたしは一人、バスを乗り継いで蓮ノ空から離れたこの場所に来た。ちょうど周りには誰もいなくて、あたしだけ)
花帆「ここで始まったんだ。あたしの……あの夢が」
花帆「……確か、この辺で話したっけ……?」キョロキョロ
花帆(そうして、一歩踏み出した瞬間──)
花帆「えっ……? わ、わぁ!?!?」ガタッ
花帆(──あたしは、“落ちる”感覚に襲われた。まるで、地面が急に溶け出したみたいに)
花帆(何が何だかわからないまま、あたしはただ、意識ごと何かに引きずられて……)
花帆「──っ……あ、あれ……? ここ、は……?」
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2: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:01:00 ID:???00
花帆(目を開けると、そこには……あたしにとって、すごく馴染みのある光景が広がっていた)
花帆「は、蓮ノ空女学院の校門……!?!?」
花帆「え、え?? さ、さっきまで違う場所にいたのに……なんで一瞬で蓮ノ空に!? というか、急に寒いし……!」ブルブル
花帆(夢でも見てたのかな……? でもそれだと、蓮ノ空の校門前で、あたしは居眠りしてたことになっちゃうけど……?)ウーン
「あーーー!!!! やっとみっけた!!!」
花帆「!?!?」ビクッ
花帆「は、蓮ノ空女学院の校門……!?!?」
花帆「え、え?? さ、さっきまで違う場所にいたのに……なんで一瞬で蓮ノ空に!? というか、急に寒いし……!」ブルブル
花帆(夢でも見てたのかな……? でもそれだと、蓮ノ空の校門前で、あたしは居眠りしてたことになっちゃうけど……?)ウーン
「あーーー!!!! やっとみっけた!!!」
花帆「!?!?」ビクッ
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3: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:02:00 ID:???00
花帆「こ、この声は…………瑠璃乃ちゃん? ……って、え!?」チラッ
瑠璃乃「おおおおぉぉぉ!! さやかちゃん、花帆ちゃんの確保準備!!」ダダダッ
さやか「もちろんできています! 絶対に、花帆さんを逃がすわけにはいきませんから!」タッタッタッ
花帆「!?!? な、なんで二人とも、あたしの方に走ってきて……というか、確保って何!?」
花帆(い、いろんなことが一気に起こりすぎて、訳がわからないよ……!! と、とりあえず……逃げろーー!!)ダッ
瑠璃乃「あぁ、もう! 待て、花帆ちゃんーー!!」タタッ
瑠璃乃「おおおおぉぉぉ!! さやかちゃん、花帆ちゃんの確保準備!!」ダダダッ
さやか「もちろんできています! 絶対に、花帆さんを逃がすわけにはいきませんから!」タッタッタッ
花帆「!?!? な、なんで二人とも、あたしの方に走ってきて……というか、確保って何!?」
花帆(い、いろんなことが一気に起こりすぎて、訳がわからないよ……!! と、とりあえず……逃げろーー!!)ダッ
瑠璃乃「あぁ、もう! 待て、花帆ちゃんーー!!」タタッ
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4: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:03:00 ID:???00
────
花帆「──はぁ、はぁ……」ヘタリ
さやか「やっと捕まえましたよ、花帆さん……!」ギュッ
瑠璃乃「おう、もう逃げられないぜ、花帆ちゃん!」
花帆「ま、待って! 話を聞いて、二人とも……! も、もうどこにも行かないから……!」ハァハァ
瑠璃乃「いーや! 今日という今日は、絶対にダメ! そもそも、花帆ちゃんが逃げちゃうからいけないんだよ?」
花帆「い、いや、だって……追いかけられたら、逃げちゃうもん……」
さやか「なんですかその習性、ウサギじゃないんですから……」ハァ
花帆「──はぁ、はぁ……」ヘタリ
さやか「やっと捕まえましたよ、花帆さん……!」ギュッ
瑠璃乃「おう、もう逃げられないぜ、花帆ちゃん!」
花帆「ま、待って! 話を聞いて、二人とも……! も、もうどこにも行かないから……!」ハァハァ
瑠璃乃「いーや! 今日という今日は、絶対にダメ! そもそも、花帆ちゃんが逃げちゃうからいけないんだよ?」
花帆「い、いや、だって……追いかけられたら、逃げちゃうもん……」
さやか「なんですかその習性、ウサギじゃないんですから……」ハァ
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5: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:04:00 ID:???00
花帆「……っていうか、そもそも! あたし、どうして追いかけられてたの!?」
花帆(気づいたら蓮ノ空にいて、急に二人に追いかけられて……あたしだけ、状況が何もわかっていない)
瑠璃乃「はぁ……ルリ達がどれだけ心配したかも、わかってないみたいですぜ、さやかちゃん」
さやか「……まぁ、花帆さんのことですから。無断でいなくなったときから、なんとなく想像はしていました」ハァ
花帆「?? 無断でいなくなった……? それ、あたしのこと?」
さやか「えぇ……? その自覚さえなかったんですか……!?」
瑠璃乃「……花帆ちゃん、ルリ達のことを揶揄ってたり……?」
花帆「ち、違うって! あたし、本当にわからなくて……」
花帆(気づいたら蓮ノ空にいて、急に二人に追いかけられて……あたしだけ、状況が何もわかっていない)
瑠璃乃「はぁ……ルリ達がどれだけ心配したかも、わかってないみたいですぜ、さやかちゃん」
さやか「……まぁ、花帆さんのことですから。無断でいなくなったときから、なんとなく想像はしていました」ハァ
花帆「?? 無断でいなくなった……? それ、あたしのこと?」
さやか「えぇ……? その自覚さえなかったんですか……!?」
瑠璃乃「……花帆ちゃん、ルリ達のことを揶揄ってたり……?」
花帆「ち、違うって! あたし、本当にわからなくて……」
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6: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:05:00 ID:???00
瑠璃乃「……って、あれ?」ジー
花帆「? 瑠璃乃ちゃん?」
さやか「……! か、花帆さん、それ……」
瑠璃乃「さやかちゃんも気づいた? ……花帆ちゃんが、違う」
花帆「……え? 違う、って……?」
瑠璃乃「花帆ちゃんは花帆ちゃんだけど、ルリの知ってる花帆ちゃんじゃない……! だって、花帆ちゃんの、あの……」
さやか「か、髪飾りが……」
「「カエルじゃないなんて!!!」」
花帆「? 瑠璃乃ちゃん?」
さやか「……! か、花帆さん、それ……」
瑠璃乃「さやかちゃんも気づいた? ……花帆ちゃんが、違う」
花帆「……え? 違う、って……?」
瑠璃乃「花帆ちゃんは花帆ちゃんだけど、ルリの知ってる花帆ちゃんじゃない……! だって、花帆ちゃんの、あの……」
さやか「か、髪飾りが……」
「「カエルじゃないなんて!!!」」
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7: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:06:00 ID:???00
花帆「!? か、カエル!?」
瑠璃乃「そーだよ! ルリ、花帆ちゃんのトレードマークでもあるカエルの髪飾り、大好きなのに……」
花帆「か、カエルの、髪飾り……? あたしがそれを……??」
さやか「ええ、そうですよ。花帆さんといえば、カエルの“花帆ぴょん”ではないんですか!?」
花帆「……いや、誰それ!?」
瑠璃乃「そーだよ! ルリ、花帆ちゃんのトレードマークでもあるカエルの髪飾り、大好きなのに……」
花帆「か、カエルの、髪飾り……? あたしがそれを……??」
さやか「ええ、そうですよ。花帆さんといえば、カエルの“花帆ぴょん”ではないんですか!?」
花帆「……いや、誰それ!?」
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8: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:07:00 ID:???00
花帆「……」
花帆(話が全く噛み合わない……こういう状況、あたしは小説でも読んだことがある。もしかして、これって……)
さやか「ふむ……何か怪しいですね。先ほどから、花帆さん自身が不審な様子を見せていますし……」
瑠璃乃「うーん……花帆ちゃんがせっかく見つかったのに、話が上手く通じないなんて、予想外だぁ……」グヌヌ
花帆「……ね、ねぇ! さやかちゃん、瑠璃乃ちゃん!」
花帆(話が全く噛み合わない……こういう状況、あたしは小説でも読んだことがある。もしかして、これって……)
さやか「ふむ……何か怪しいですね。先ほどから、花帆さん自身が不審な様子を見せていますし……」
瑠璃乃「うーん……花帆ちゃんがせっかく見つかったのに、話が上手く通じないなんて、予想外だぁ……」グヌヌ
花帆「……ね、ねぇ! さやかちゃん、瑠璃乃ちゃん!」
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9: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:08:00 ID:???00
さやか「? 花帆さん、どうしたんですか?」
花帆「その……多分あたし、二人の知ってる“日野下花帆”じゃ、ないと思う」
瑠璃乃「……んん???」
さやか「それは……どういう意味ですか、花帆さん?」
花帆「えっとね、つまり……」
花帆「──あたしは、ここじゃない世界……“並行世界”から来たんじゃないか、って」
花帆「その……多分あたし、二人の知ってる“日野下花帆”じゃ、ないと思う」
瑠璃乃「……んん???」
さやか「それは……どういう意味ですか、花帆さん?」
花帆「えっとね、つまり……」
花帆「──あたしは、ここじゃない世界……“並行世界”から来たんじゃないか、って」
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10: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:09:00 ID:???00
瑠璃乃「?? へ、へーこーせかい……?」
さやか「並行世界……ある世界から分岐して、並行して存在すると考えられている別の世界のこと、ですよね」
瑠璃乃「……え、それって……今の花帆ちゃんは、こことは別の世界から来たってこと!?」
花帆「……うん。信じられないかもしれないけど、そういうこと」
花帆(……もう、そうとしか考えられない。あそこで“落ちて”、この世界に迷い込んじゃったんだ)
さやか「並行世界……ある世界から分岐して、並行して存在すると考えられている別の世界のこと、ですよね」
瑠璃乃「……え、それって……今の花帆ちゃんは、こことは別の世界から来たってこと!?」
花帆「……うん。信じられないかもしれないけど、そういうこと」
花帆(……もう、そうとしか考えられない。あそこで“落ちて”、この世界に迷い込んじゃったんだ)
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11: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:10:00 ID:???00
花帆「あたしは……そのカエルの髪飾りのことも知らないし、いつのまにかこの世界にいたから……確実に、そうだと思う」
花帆「でも、“この世界に迷い込んだ理由”は全然わからなくて……あたし、ラブライブ!で優勝してから、すっごく久々にあの場所に来てたから──」
瑠璃乃「!?!? ちょ、ちょっと、ストーーップ!!」バッ
花帆「……? どうしたの、瑠璃乃ちゃん?」
瑠璃乃「い、いい、今なんて言ったの、花帆ちゃん……?」ワタワタ
花帆「え?」
瑠璃乃「ら……ラブライブ!で何をしたって……?」
花帆「? ラブライブ!で優勝した……って言っただけだよ?」
瑠璃乃「!!!」
花帆「でも、“この世界に迷い込んだ理由”は全然わからなくて……あたし、ラブライブ!で優勝してから、すっごく久々にあの場所に来てたから──」
瑠璃乃「!?!? ちょ、ちょっと、ストーーップ!!」バッ
花帆「……? どうしたの、瑠璃乃ちゃん?」
瑠璃乃「い、いい、今なんて言ったの、花帆ちゃん……?」ワタワタ
花帆「え?」
瑠璃乃「ら……ラブライブ!で何をしたって……?」
花帆「? ラブライブ!で優勝した……って言っただけだよ?」
瑠璃乃「!!!」
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12: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:11:00 ID:???00
瑠璃乃「…………さやかちゃん、さやかちゃん」コソッ
瑠璃乃「ルリ、花帆ちゃんが突然変なこと言い出したから、ちょっち疑ってたけど……並行世界ってやつ、本当っぽいや」コソコソ
さやか「そう、ですね。……わたし達の知っている花帆さんなら、たとえ冗談だろうと口にはしないことを、今言いましたもんね……」コソコソ
花帆「……? どうしたの、二人とも?」キョトン
瑠璃乃「花帆ちゃん……ルリ達も、ラブライブ!は出たよ。決勝大会」
花帆「あぁ、二ヶ月前の……」
さやか「? いえ、今月のことですよ。今は一月。ラブライブ!決勝大会が終わって、ほんの数日ほどが経った頃なので」
花帆「…………えっ!?」
花帆(並行世界どころか、タイムトラベルまでしちゃってたんだ、あたし!?)
瑠璃乃「ルリ、花帆ちゃんが突然変なこと言い出したから、ちょっち疑ってたけど……並行世界ってやつ、本当っぽいや」コソコソ
さやか「そう、ですね。……わたし達の知っている花帆さんなら、たとえ冗談だろうと口にはしないことを、今言いましたもんね……」コソコソ
花帆「……? どうしたの、二人とも?」キョトン
瑠璃乃「花帆ちゃん……ルリ達も、ラブライブ!は出たよ。決勝大会」
花帆「あぁ、二ヶ月前の……」
さやか「? いえ、今月のことですよ。今は一月。ラブライブ!決勝大会が終わって、ほんの数日ほどが経った頃なので」
花帆「…………えっ!?」
花帆(並行世界どころか、タイムトラベルまでしちゃってたんだ、あたし!?)
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13: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:12:00 ID:???00
花帆「え、えぇと、それで……この世界では、そのラブライブ!決勝大会の結果は……?」
瑠璃乃「……負けちゃったよ」ポツリ
花帆「…………ぇ」
さやか「……蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブは、ラブライブ!決勝大会に出場し──準優勝に終わりました」
瑠璃乃「……負けちゃったよ」ポツリ
花帆「…………ぇ」
さやか「……蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブは、ラブライブ!決勝大会に出場し──準優勝に終わりました」
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14: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:13:00 ID:???00
瑠璃乃「ルリ達も、頑張ったんだけどね。絶対勝てるって思ってたのに、優勝には……届かなかったや」
さやか「……わたし達が信じていた未来は、いとも簡単に崩れ落ちました。努力が身を結ぶことなく、不条理に」
花帆「…………そう、なんだ」
花帆(あぁ……そっか)
花帆(…………これは、少しも違いがない並行世界でも、ただのタイムトラベルでもなくて……)
花帆(“あたし達がラブライブ!で負けた並行世界”へのタイムトラベルなんだ)
さやか「……わたし達が信じていた未来は、いとも簡単に崩れ落ちました。努力が身を結ぶことなく、不条理に」
花帆「…………そう、なんだ」
花帆(あぁ……そっか)
花帆(…………これは、少しも違いがない並行世界でも、ただのタイムトラベルでもなくて……)
花帆(“あたし達がラブライブ!で負けた並行世界”へのタイムトラベルなんだ)
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15: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:14:00 ID:???00
瑠璃乃「それにね、その後、立て続けに悪いことばかり起きちゃって……」
花帆「……? 悪いこと、って?」
さやか「決勝大会のすぐ後のことです。花帆さんが──忽然とその姿を消しました」
花帆「え!? す、姿を、消した……!?」
さやか「はい。……花帆さんは、クラブの中で一番、優勝のために全力を挙げていました。なので、負けたことに酷く責任を感じていて……」
瑠璃乃「うんうん。だからルリ達は……というかスクールアイドルクラブのみんな、いなくなった花帆ちゃんをずっと探してるんだ」
花帆「……? 悪いこと、って?」
さやか「決勝大会のすぐ後のことです。花帆さんが──忽然とその姿を消しました」
花帆「え!? す、姿を、消した……!?」
さやか「はい。……花帆さんは、クラブの中で一番、優勝のために全力を挙げていました。なので、負けたことに酷く責任を感じていて……」
瑠璃乃「うんうん。だからルリ達は……というかスクールアイドルクラブのみんな、いなくなった花帆ちゃんをずっと探してるんだ」
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16: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:15:00 ID:???00
花帆「あ、そっか……だからさっき、二人はあたしのことを見てあんなに必死で追いかけたんだ」
花帆(ラブライブ!に負けて、姿を消したこの世界の“日野下花帆”……)
花帆「……」
花帆(……もしかしたら、あたしがこの世界に迷い込んだ理由……そこには、その“日野下花帆”も関係するのかもしれない)
花帆(明確な根拠はないけど、きっと……あたしだって、この並行世界で、すべきことがある。そんな気がした)
花帆(ラブライブ!に負けて、姿を消したこの世界の“日野下花帆”……)
花帆「……」
花帆(……もしかしたら、あたしがこの世界に迷い込んだ理由……そこには、その“日野下花帆”も関係するのかもしれない)
花帆(明確な根拠はないけど、きっと……あたしだって、この並行世界で、すべきことがある。そんな気がした)
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17: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:16:00 ID:???00
花帆「……さやかちゃん、瑠璃乃ちゃん。だったら……あたしにも何かできること、あるかな?」
瑠璃乃「え、できること……? 別の世界から来たっていう、花帆ちゃんが……?」ウーン
さやか「……花帆さん。それでしたら、一つ……頼みたいお願いがあるんですが、いいでしょうか?」
花帆「! うん、もちろん! お願いって何、さやかちゃん?」
さやか「……不躾なお願いになってしまうかもしれませんが……」コホン
さやか「──“花帆さん”を、この世界で探し出してはいただけませんか?」
瑠璃乃「え、できること……? 別の世界から来たっていう、花帆ちゃんが……?」ウーン
さやか「……花帆さん。それでしたら、一つ……頼みたいお願いがあるんですが、いいでしょうか?」
花帆「! うん、もちろん! お願いって何、さやかちゃん?」
さやか「……不躾なお願いになってしまうかもしれませんが……」コホン
さやか「──“花帆さん”を、この世界で探し出してはいただけませんか?」
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18: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:17:00 ID:???00
花帆「……! それ、って……」
瑠璃乃「あ、それだ、さやかちゃん! ルリも賛成! 現状、ルリ達じゃ絶対、花帆ちゃんを見つけられないもんね」ウンウン
さやか「ええ。花帆さんの正確な心情を、わたし達が理解するのは非常に難しいですから……」
花帆「? どういうこと?」
さやか「そのままの意味ですよ。わたし達がどれだけ花帆さんを探し求めても……きっと、その本心までは掴むことができません」
瑠璃乃「うんうん。その点、花帆ちゃんなら、わかるわけっしょ? 自分自身の気持ち、になるわけだし」
花帆「自分自身の、気持ち……」
花帆(……夢を叶えられなかった“日野下花帆”が何を思い、何故いなくなったのかを、あたしが……?)
瑠璃乃「あ、それだ、さやかちゃん! ルリも賛成! 現状、ルリ達じゃ絶対、花帆ちゃんを見つけられないもんね」ウンウン
さやか「ええ。花帆さんの正確な心情を、わたし達が理解するのは非常に難しいですから……」
花帆「? どういうこと?」
さやか「そのままの意味ですよ。わたし達がどれだけ花帆さんを探し求めても……きっと、その本心までは掴むことができません」
瑠璃乃「うんうん。その点、花帆ちゃんなら、わかるわけっしょ? 自分自身の気持ち、になるわけだし」
花帆「自分自身の、気持ち……」
花帆(……夢を叶えられなかった“日野下花帆”が何を思い、何故いなくなったのかを、あたしが……?)
0
19: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:18:00 ID:???00
花帆「……」
さやか「無理にとは言いませんが……花帆さん自身も今はあてがないでしょうし、いかがですか?」
花帆「そう、だね…………うん。……わかった!」ガタッ
花帆「あたし、やってみるよ! この世界で──“日野下花帆”を探し出してみせる!」グッ
さやか「無理にとは言いませんが……花帆さん自身も今はあてがないでしょうし、いかがですか?」
花帆「そう、だね…………うん。……わかった!」ガタッ
花帆「あたし、やってみるよ! この世界で──“日野下花帆”を探し出してみせる!」グッ
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20: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:19:00 ID:???00
瑠璃乃「おおっ、本当に!? 花帆ちゃんが花帆ちゃんを探してくれたら、もうすぐにでも見つかっちゃいそうだぁ!」ウンウン
花帆「任せて、瑠璃乃ちゃん! ……って、あれ? でも、よく考えたら、あたしが違う世界からこっちに来ちゃったってことは……」
花帆「元々この世界にいた“日野下花帆”だって、別の世界に飛ばされちゃってる可能性もあるんじゃ……?」
花帆(もしそうなら、どれだけこの世界で探したって、絶対に見つけられないことになっちゃうけど……)
さやか「あぁ、いえ。それは絶対にありえませんよ」
花帆「任せて、瑠璃乃ちゃん! ……って、あれ? でも、よく考えたら、あたしが違う世界からこっちに来ちゃったってことは……」
花帆「元々この世界にいた“日野下花帆”だって、別の世界に飛ばされちゃってる可能性もあるんじゃ……?」
花帆(もしそうなら、どれだけこの世界で探したって、絶対に見つけられないことになっちゃうけど……)
さやか「あぁ、いえ。それは絶対にありえませんよ」
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21: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:20:00 ID:???00
花帆「……え? ど、どうして?」
さやか「? 何故って……花帆さんは、違う世界に逃げてしまうような人ではありませんから。必ず、この世界のどこかにいるはずです」
瑠璃乃「うんうん。ルリも、それはそう思う! だって、あの花帆ちゃんだよ? いつだって、逃げるな戦えー! って感じの子だもん」
花帆「そ、そうなの? ずいぶんとイメージが違うような……?」
さやか「そう、ですか? 花帆さんはいつも、そんな感じですよ。去年の一月から……ずっと」
さやか「? 何故って……花帆さんは、違う世界に逃げてしまうような人ではありませんから。必ず、この世界のどこかにいるはずです」
瑠璃乃「うんうん。ルリも、それはそう思う! だって、あの花帆ちゃんだよ? いつだって、逃げるな戦えー! って感じの子だもん」
花帆「そ、そうなの? ずいぶんとイメージが違うような……?」
さやか「そう、ですか? 花帆さんはいつも、そんな感じですよ。去年の一月から……ずっと」
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22: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:21:00 ID:???00
花帆(こうして──この世界のあたしを探す、“自分探し”が始まった)
花帆(……あたしがこの世界に呼ばれた理由。それは“日野下花帆”に会えば、必ずわかる。何故だかそんな確信が、あたしにはあった……)
花帆(……あたしがこの世界に呼ばれた理由。それは“日野下花帆”に会えば、必ずわかる。何故だかそんな確信が、あたしにはあった……)
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23: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:22:00 ID:???00
────
スタスタ…
花帆「えぇっと……こっち、だよね……?」キョロキョロ
花帆(この世界の“日野下花帆”……毎回こう言うのも面倒だし、カエルのイメージを貰って“花帆ぴょん”と呼ぶことにしちゃお)
花帆(あたしは、花帆ぴょんを探すため……というより、この世界でのクラブのみんなに会うために、部室にやってきていた)
花帆(とにかくまずは、この世界の情報を手に入れる必要があるもんね……)ウンウン
花帆「……でも」
花帆(…………ラブライブ!での敗退……しかも、梢センパイ達にとっては最後だったラブライブ!に負けた、なんて……)
花帆「……センパイ達に会うの、少し怖いなぁ……」ポツリ
スタスタ…
花帆「えぇっと……こっち、だよね……?」キョロキョロ
花帆(この世界の“日野下花帆”……毎回こう言うのも面倒だし、カエルのイメージを貰って“花帆ぴょん”と呼ぶことにしちゃお)
花帆(あたしは、花帆ぴょんを探すため……というより、この世界でのクラブのみんなに会うために、部室にやってきていた)
花帆(とにかくまずは、この世界の情報を手に入れる必要があるもんね……)ウンウン
花帆「……でも」
花帆(…………ラブライブ!での敗退……しかも、梢センパイ達にとっては最後だったラブライブ!に負けた、なんて……)
花帆「……センパイ達に会うの、少し怖いなぁ……」ポツリ
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24: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:23:00 ID:???00
ガチャ
花帆「し、失礼しまーす……」ヒョコ
「! かほ……?」
花帆「……!」
花帆(部室の中に一人……ただぼんやりと椅子に座っている“センパイ”の様子が、あたしの目に映った)
花帆「綴理、センパイ……」
花帆「し、失礼しまーす……」ヒョコ
「! かほ……?」
花帆「……!」
花帆(部室の中に一人……ただぼんやりと椅子に座っている“センパイ”の様子が、あたしの目に映った)
花帆「綴理、センパイ……」
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25: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:24:00 ID:???00
綴理「かほだ……夢じゃ、ない? ボク達、かほを探してたんだよ?」
花帆「……ぁ」
花帆(……綴理センパイの声が、かすかに震えていた。でも、気づかれないよう、それを隠しながら話している)
花帆(それは、あたしを……ううん、違う。花帆ぴょんを想う綴理センパイの気持ちが、痛いほど伝わってきてしまう声で……)
綴理「……嬉しいな。かほが、ここに戻ってきてくれるなんて。かほが何も言わずにいなくなって、ボク、怖かったから……」
花帆「い、いえ、あの、綴理センパイ……実はあたし……」
綴理「そうだ。久しぶりにいつもの、やってほしいな、かほ」
花帆「……ぁ」
花帆(……綴理センパイの声が、かすかに震えていた。でも、気づかれないよう、それを隠しながら話している)
花帆(それは、あたしを……ううん、違う。花帆ぴょんを想う綴理センパイの気持ちが、痛いほど伝わってきてしまう声で……)
綴理「……嬉しいな。かほが、ここに戻ってきてくれるなんて。かほが何も言わずにいなくなって、ボク、怖かったから……」
花帆「い、いえ、あの、綴理センパイ……実はあたし……」
綴理「そうだ。久しぶりにいつもの、やってほしいな、かほ」
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26: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:25:00 ID:???00
花帆「……?? いつもの、って何ですか?」
綴理「? カエルのかほぴょん……って。かほは、会うたびにいつもやってくれてたよね?」
花帆「カエル…………ま、また、それですか……本当、なんでカエルなのかなぁ……!?」
綴理「……かほ?」
花帆「んん……あ、あの、綴理センパイ! ……あたしには、カエルの花帆ぴょんはできないんです」
綴理「……え? ……何か、あったの?」
花帆「えっと、実は……」
花帆(言えば、こんなにも優しい綴理センパイを悲しませてしまう……そう、わかってた。けど……伝えなきゃ、ダメだよね)
花帆「……あたし、この世界の“日野下花帆”じゃ、ないんですよね」
綴理「? カエルのかほぴょん……って。かほは、会うたびにいつもやってくれてたよね?」
花帆「カエル…………ま、また、それですか……本当、なんでカエルなのかなぁ……!?」
綴理「……かほ?」
花帆「んん……あ、あの、綴理センパイ! ……あたしには、カエルの花帆ぴょんはできないんです」
綴理「……え? ……何か、あったの?」
花帆「えっと、実は……」
花帆(言えば、こんなにも優しい綴理センパイを悲しませてしまう……そう、わかってた。けど……伝えなきゃ、ダメだよね)
花帆「……あたし、この世界の“日野下花帆”じゃ、ないんですよね」
0
27: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:26:00 ID:???00
綴理「?? かほは、かほ以外のかほなの?」
花帆「いえ、あの、あたしは確かに日野下花帆なんですけど、ここじゃない世界の日野下花帆というか……」
綴理「んー……? 難しい話だ……」ウーン
花帆「えぇと、簡単に説明するとですね──」
花帆(とりあえずあたしは、今の状況をかいつまんで綴理センパイに伝える)
花帆「いえ、あの、あたしは確かに日野下花帆なんですけど、ここじゃない世界の日野下花帆というか……」
綴理「んー……? 難しい話だ……」ウーン
花帆「えぇと、簡単に説明するとですね──」
花帆(とりあえずあたしは、今の状況をかいつまんで綴理センパイに伝える)
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28: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:27:00 ID:???00
花帆「──と、いうわけです。だから今は、あたしもこの世界の“日野下花帆”を探している最中で……」
綴理「んー、なるほど……?」フム
花帆「つ、伝わってますか……?」
綴理「多分……? ボクの大好きな蓮ノ空は二つあった、ってことかな?」
花帆「二つだけかはわかりませんけど、大体はそういうことです!」
綴理「じゃあ、今のかほは、その二つ目の蓮ノ空のかほなんだ……そっか、こことは違う蓮ノ空、か……」ポツリ
綴理「……ねぇ、かほ。少し訊いてもいいかな?」
花帆「? はい、あたしに答えられることなら!」
綴理「んー、なるほど……?」フム
花帆「つ、伝わってますか……?」
綴理「多分……? ボクの大好きな蓮ノ空は二つあった、ってことかな?」
花帆「二つだけかはわかりませんけど、大体はそういうことです!」
綴理「じゃあ、今のかほは、その二つ目の蓮ノ空のかほなんだ……そっか、こことは違う蓮ノ空、か……」ポツリ
綴理「……ねぇ、かほ。少し訊いてもいいかな?」
花帆「? はい、あたしに答えられることなら!」
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29: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:28:00 ID:???00
綴理「それなら……かほのいた世界は、どんな感じ? こっちとはどのくらい違うのか、ボク、気になるんだ」
花帆「違い……」ウーン
花帆「……大きな相違点はやっぱり、ラブライブ!の結果、ですかね……」
綴理「! あぁ…………かほは、勝てたんだね」
花帆「違い……」ウーン
花帆「……大きな相違点はやっぱり、ラブライブ!の結果、ですかね……」
綴理「! あぁ…………かほは、勝てたんだね」
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30: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:29:00 ID:???00
花帆「……はい。あたし達の蓮ノ空は、決勝大会プレーオフに進んで……ラブライブ!優勝が、現実になったんです」
綴理「そ、っか……」
花帆(そう呟いて綴理先輩は……どこか遠くを、じっと見つめた)
綴理「……」ジー
花帆「綴理、センパイ……」
綴理「……ボク達もね、頑張ったんだ」
綴理「そ、っか……」
花帆(そう呟いて綴理先輩は……どこか遠くを、じっと見つめた)
綴理「……」ジー
花帆「綴理、センパイ……」
綴理「……ボク達もね、頑張ったんだ」
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31: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:30:00 ID:???00
綴理「ボク達も決勝まで進めた。誰よりも、かほが先導してくれて、勝つために頑張ってきたから……何も怖くなかったんだ」
綴理「でも……」
花帆「……負けちゃった、んですよね」
綴理「……うん。あと、少しだった。だけど……ダメだったんだ」
綴理「でも……」
花帆「……負けちゃった、んですよね」
綴理「……うん。あと、少しだった。だけど……ダメだったんだ」
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32: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:31:03 ID:???00
綴理「勝ったのは、廃校を救うためにラブライブ!に出てた高校。こずが、後でそれを教えてくれたんだ」
綴理「昔見たスクールアイドルみたいだ、ってこずは、笑って言っていた」
花帆「! それは……」
花帆(学校を廃校から救うために出場してた高校……それじゃあ、勝ったのはやっぱり瑞河女子だったんだ)
花帆(決勝大会で全てが決まり、プレーオフは存在しない。蓮ノ空が負けて瑞河が優勝した……これが、この世界の、今年のラブライブ!……)
綴理「昔見たスクールアイドルみたいだ、ってこずは、笑って言っていた」
花帆「! それは……」
花帆(学校を廃校から救うために出場してた高校……それじゃあ、勝ったのはやっぱり瑞河女子だったんだ)
花帆(決勝大会で全てが決まり、プレーオフは存在しない。蓮ノ空が負けて瑞河が優勝した……これが、この世界の、今年のラブライブ!……)
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33: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:32:04 ID:???00
花帆「……綴理センパイ。綴理センパイはやっぱり、最後のラブライブ!で優勝できなかったことを…………っ……」
花帆(途端に──声が詰まる。これを綴理センパイに訊くと思うと、自分自身の首を真綿で締めているような気分にさせられて)
花帆(でも……花帆ぴょんを探す上で、この世界のみんなの気持ちは、状況は、把握しておかなくちゃいけないから)
花帆「……残念に、思っていますか? もう二度とあの舞台に立てないことを悔しく思って……だとしたら、あたしは……」
綴理「──ううん。それは、ちょっと違うんだ」
花帆「…………え? そうなんですか……?」
花帆(途端に──声が詰まる。これを綴理センパイに訊くと思うと、自分自身の首を真綿で締めているような気分にさせられて)
花帆(でも……花帆ぴょんを探す上で、この世界のみんなの気持ちは、状況は、把握しておかなくちゃいけないから)
花帆「……残念に、思っていますか? もう二度とあの舞台に立てないことを悔しく思って……だとしたら、あたしは……」
綴理「──ううん。それは、ちょっと違うんだ」
花帆「…………え? そうなんですか……?」
0
34: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:33:00 ID:???00
綴理「うん。……確かに、ボクだってもちろん、ラブライブ!優勝を目指してた」
綴理「ボクはラブライブ!の舞台で、蓮ノ空がさいきょー、ってたくさんの人に……知ってほしかったんだ」
花帆「…………綴理センパイ……」
綴理「……だから、負けちゃったら、ボクはそれを伝えられない。知ってもらえないことが一番辛い……そう、思ってた」
綴理「……でも、違った。実際に負けて一番辛かったのは──ボクの大好きなみんなが、悲しい顔をしていたこと、だったんだ」
綴理「ボクはラブライブ!の舞台で、蓮ノ空がさいきょー、ってたくさんの人に……知ってほしかったんだ」
花帆「…………綴理センパイ……」
綴理「……だから、負けちゃったら、ボクはそれを伝えられない。知ってもらえないことが一番辛い……そう、思ってた」
綴理「……でも、違った。実際に負けて一番辛かったのは──ボクの大好きなみんなが、悲しい顔をしていたこと、だったんだ」
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35: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:34:00 ID:???00
綴理「ボクは……みんなには笑顔でいてほしい。それは、かほのことだってそうだ」
花帆「……! で、でも……」
花帆(夢が叶わなかった……花咲くことができずに散る姿を見て、“日野下花帆”が笑顔を見せられるわけ……ない)
花帆「……っ」
綴理「……ごめん。少し話しすぎたかな。かほは、かほを探してるんだよね? このこと、会ったら伝えておいてほしい」
花帆「…………わかり、ました」
花帆「……! で、でも……」
花帆(夢が叶わなかった……花咲くことができずに散る姿を見て、“日野下花帆”が笑顔を見せられるわけ……ない)
花帆「……っ」
綴理「……ごめん。少し話しすぎたかな。かほは、かほを探してるんだよね? このこと、会ったら伝えておいてほしい」
花帆「…………わかり、ました」
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36: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:35:00 ID:???00
花帆(瑠璃乃ちゃんが言っていた通り……やっぱりここは、蓮ノ空がラブライブ!で負けた世界、なんだ。……あたしのいた現実とは、正反対の)
花帆(……花帆ぴょんも、あたしと同じ“日野下花帆”なら……姿を消してしまいたくなる気持ちも、あたしはわかる気がした)
花帆(約束した夢。絶対に叶えたかった夢。……あたしの世界では上手くいって、この世界では失敗した……)
花帆(…………どうして、結末が変わっちゃったんだろう……? 同じあたしのはずなのに、一体何が違ってたのかな……)
花帆「……もう少し、情報を集めてみよう……」ボソッ
花帆(……花帆ぴょんも、あたしと同じ“日野下花帆”なら……姿を消してしまいたくなる気持ちも、あたしはわかる気がした)
花帆(約束した夢。絶対に叶えたかった夢。……あたしの世界では上手くいって、この世界では失敗した……)
花帆(…………どうして、結末が変わっちゃったんだろう……? 同じあたしのはずなのに、一体何が違ってたのかな……)
花帆「……もう少し、情報を集めてみよう……」ボソッ
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37: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:36:00 ID:???00
────
花帆「うーん……蓮ノ空自体は、やっぱり元の世界と全然違わないんだけどなぁ……」トコトコ
花帆(あたしは、ふらふらと校内をさまよって……ふと、寮の方に足を向けた──その時だった)
「え、花帆ちゃん!?」
「!?!? か、かほせんぱい、戻っていたんですか~!?」
花帆「ぁ……」
花帆(背後から、あたしにとって馴染み深い、明るい声が聞こえる。振り返る前にもう、誰だかはっきりとわかってしまった)
花帆「慈センパイと、姫芽ちゃん……」
花帆「うーん……蓮ノ空自体は、やっぱり元の世界と全然違わないんだけどなぁ……」トコトコ
花帆(あたしは、ふらふらと校内をさまよって……ふと、寮の方に足を向けた──その時だった)
「え、花帆ちゃん!?」
「!?!? か、かほせんぱい、戻っていたんですか~!?」
花帆「ぁ……」
花帆(背後から、あたしにとって馴染み深い、明るい声が聞こえる。振り返る前にもう、誰だかはっきりとわかってしまった)
花帆「慈センパイと、姫芽ちゃん……」
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38: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:37:00 ID:???00
花帆「あの、あたしは──」クルッ
姫芽「かほせんぱい~~~!!!!!」ギュッ
花帆「わぁ!?!?」ガタッ
姫芽「探しましたよ、かほせんぱい~~!!! 戻って来てくれてアタシは、アタシは……!!!」ギュー
花帆「え、え?? ど、どうしたの、姫芽ちゃん、急に抱きついて……」
姫芽「? 何言ってるんです、かほせんぱい? いつものことじゃないですか~。今さら訊きますか、それ~」クスッ
花帆「……へ?」
姫芽「かほせんぱい~~~!!!!!」ギュッ
花帆「わぁ!?!?」ガタッ
姫芽「探しましたよ、かほせんぱい~~!!! 戻って来てくれてアタシは、アタシは……!!!」ギュー
花帆「え、え?? ど、どうしたの、姫芽ちゃん、急に抱きついて……」
姫芽「? 何言ってるんです、かほせんぱい? いつものことじゃないですか~。今さら訊きますか、それ~」クスッ
花帆「……へ?」
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39: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:38:00 ID:???00
慈「全くもう……姫芽ちゃんってば、花帆ちゃんのこと大好きすぎ! めぐちゃんのこと置いて行くなんて酷いぞー!」タッタッ
花帆(遠くの慈センパイも、小走りであたしの方に来たけど……あの姫芽ちゃんが、慈センパイよりもあたしを優先した??)
花帆「え、あの……姫芽ちゃん、いつもこんな感じなんですか?」
慈「? 当たり前でしょ?」
姫芽「え……か、かほせんぱい、もしや記憶喪失ですか~!? アタシが送ったかほせんぱいLOVEは、どこへ~……!?」ガーン
花帆「えっと、その、実はあたし、別の──」
姫芽「──かほせんぱい~!!!!」ギュー
花帆「!?!?」
姫芽「アタシは、かほせんぱいのTOですよ~……!!! 思い出してくれないと、アタシは……」ズーン
花帆「……な、なんで姫芽ちゃん、そんなにショック受けてるの……!?」
慈「ふふっ、だって姫芽ちゃん──花帆ちゃんが一番の“推し”だもんね⭐︎」
花帆「………………はい!?!?」ガタッ
花帆(姫芽ちゃんの推しが……あたし!?)
花帆(遠くの慈センパイも、小走りであたしの方に来たけど……あの姫芽ちゃんが、慈センパイよりもあたしを優先した??)
花帆「え、あの……姫芽ちゃん、いつもこんな感じなんですか?」
慈「? 当たり前でしょ?」
姫芽「え……か、かほせんぱい、もしや記憶喪失ですか~!? アタシが送ったかほせんぱいLOVEは、どこへ~……!?」ガーン
花帆「えっと、その、実はあたし、別の──」
姫芽「──かほせんぱい~!!!!」ギュー
花帆「!?!?」
姫芽「アタシは、かほせんぱいのTOですよ~……!!! 思い出してくれないと、アタシは……」ズーン
花帆「……な、なんで姫芽ちゃん、そんなにショック受けてるの……!?」
慈「ふふっ、だって姫芽ちゃん──花帆ちゃんが一番の“推し”だもんね⭐︎」
花帆「………………はい!?!?」ガタッ
花帆(姫芽ちゃんの推しが……あたし!?)
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40: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:39:00 ID:???00
花帆「ま、待ってください、それってどういう……?」
慈「どうもこうも……姫芽ちゃんをスクールアイドルに誘ったのって、花帆ちゃんじゃん?」
花帆「え!?」
姫芽「そうですそうです~! あれは忘れもしない、去年の四月のこと……!」ウンウン
姫芽「みらぱが好きなアタシに、そんなユニットの垣根を壊して一つにしたかほせんぱいは、声をかけてくれましたよね~」
姫芽「アタシ、嬉しかったんです。即戦力として、アタシがかほせんぱいに拾っていただけるなんて、願ってもないことでしたから~!」ニコッ
花帆「ぇ……?」
花帆(……悪寒がする。この世界が決定的に、あたしのいた世界と違う点が、その分岐点が……わかってしまう予感がしたから)
慈「どうもこうも……姫芽ちゃんをスクールアイドルに誘ったのって、花帆ちゃんじゃん?」
花帆「え!?」
姫芽「そうですそうです~! あれは忘れもしない、去年の四月のこと……!」ウンウン
姫芽「みらぱが好きなアタシに、そんなユニットの垣根を壊して一つにしたかほせんぱいは、声をかけてくれましたよね~」
姫芽「アタシ、嬉しかったんです。即戦力として、アタシがかほせんぱいに拾っていただけるなんて、願ってもないことでしたから~!」ニコッ
花帆「ぇ……?」
花帆(……悪寒がする。この世界が決定的に、あたしのいた世界と違う点が、その分岐点が……わかってしまう予感がしたから)
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41: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:40:00 ID:???00
花帆「……め、慈センパイ!」コソッ
慈「? 花帆ちゃん?」
花帆「……あ、あの、姫芽ちゃんの言う『ユニットの垣根を壊した』って何のことですか?」
慈「んー? 何ってそりゃ……私達、去年の一月からずーっと、ユニットで活動はしてないじゃん? お休み、って言うのかな」
花帆「え? いや……シャッフルユニットが二月にありましたし、普通に三ユニットそれぞれで曲も作って……」
慈「シャッフルユニット?? 何それ?」
花帆「……えっ」
慈「? 花帆ちゃん?」
花帆「……あ、あの、姫芽ちゃんの言う『ユニットの垣根を壊した』って何のことですか?」
慈「んー? 何ってそりゃ……私達、去年の一月からずーっと、ユニットで活動はしてないじゃん? お休み、って言うのかな」
花帆「え? いや……シャッフルユニットが二月にありましたし、普通に三ユニットそれぞれで曲も作って……」
慈「シャッフルユニット?? 何それ?」
花帆「……えっ」
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42: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:41:01 ID:???00
慈「目標はラブライブ!優勝。部員全員で出場するんだから、ユニットに分かれて練習する意味なんてない……」
慈「花帆ちゃんが、そう言ったんだよ。だから、ユニットの練習を無くして一年間やってきたんじゃん」
花帆「な……」
姫芽「そうですよ~、かほせんぱい~!! アタシ、そういう勝負に対するかほせんぱいのアツい気持ちに憧れてるんです~!」
姫芽「その、ずっと勝つことしか考えてない姿勢が最高で~!! だからアタシ、かほせんぱいのこと、超リスペクトしてます~!」グッ
慈「花帆ちゃんが、そう言ったんだよ。だから、ユニットの練習を無くして一年間やってきたんじゃん」
花帆「な……」
姫芽「そうですよ~、かほせんぱい~!! アタシ、そういう勝負に対するかほせんぱいのアツい気持ちに憧れてるんです~!」
姫芽「その、ずっと勝つことしか考えてない姿勢が最高で~!! だからアタシ、かほせんぱいのこと、超リスペクトしてます~!」グッ
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43: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:42:00 ID:???00
花帆「そ、んな…………」
姫芽「? かほせんぱい、どうしたんですか~? いつもみたいに、勝利のための計画とか熱意とかを話してくださいよ~!」
慈「少しいなくなってたのも、もしかしたらそういう計画があるのかな、って思っててさ。実際、戻ってきてくれたわけだし」
花帆「…………慈、センパイ」
慈「ん?」
花帆「……っ」
花帆(深く息を吸い、吐いた。あたしは……核心に迫ろうとしているんだ)
姫芽「? かほせんぱい、どうしたんですか~? いつもみたいに、勝利のための計画とか熱意とかを話してくださいよ~!」
慈「少しいなくなってたのも、もしかしたらそういう計画があるのかな、って思っててさ。実際、戻ってきてくれたわけだし」
花帆「…………慈、センパイ」
慈「ん?」
花帆「……っ」
花帆(深く息を吸い、吐いた。あたしは……核心に迫ろうとしているんだ)
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44: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:43:00 ID:???00
花帆「……一つ、質問しても良いですか?」
慈「質問? まぁ、良いけど……?」
花帆「……あたしが、ラブライブ!優勝にこだわり出したのって、突然だったと思うんです。それって……具体的には、何月のことでしたか?」
慈「? えっと、確か……去年の一月からだったかな? ラブライブ!で負けて、花帆ちゃんも気合が入ったって感じでさ」
花帆「……!」
慈「質問? まぁ、良いけど……?」
花帆「……あたしが、ラブライブ!優勝にこだわり出したのって、突然だったと思うんです。それって……具体的には、何月のことでしたか?」
慈「? えっと、確か……去年の一月からだったかな? ラブライブ!で負けて、花帆ちゃんも気合が入ったって感じでさ」
花帆「……!」
0
45: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:44:00 ID:???00
慈「でも、それがどうしたの、花帆ちゃん?」
花帆「一月……」
姫芽「? かほせんぱい~?」
花帆「…………もしかして……」ボソッ
花帆「一月……」
姫芽「? かほせんぱい~?」
花帆「…………もしかして……」ボソッ
0
46: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:45:00 ID:???00
花帆(この世界での、さやかちゃんとの会話を思い出す。花帆ぴょんに変化があったのは去年の一月……思い当たる節は、一つ)
花帆(決勝大会の前、あたしが、元の世界で吟子ちゃんに向かって言ったこと……)
──
花帆『……ヘンだったのは、今までのあたしだよ』
花帆『あたし、ほんとは、もっと早くこうしてなきゃいけなかったんだ』
花帆『梢センパイを優勝させるって誓ったんだから、もっとちゃんと、勝つための努力をするべきだったんだよ』
花帆『楽しいとか、楽しくないとかじゃないの!』
花帆『あたし、約束したんだもん! 梢センパイを優勝させるって! 去年の一月から、もっと早く始めてたら、きっと、間に合ったのに!』
──
花帆(今の話を聞く限り、花帆ぴょんは……この言葉が現実になった場合のあたし、ってこと……なのかな)
花帆「……」
花帆(決勝大会の前、あたしが、元の世界で吟子ちゃんに向かって言ったこと……)
──
花帆『……ヘンだったのは、今までのあたしだよ』
花帆『あたし、ほんとは、もっと早くこうしてなきゃいけなかったんだ』
花帆『梢センパイを優勝させるって誓ったんだから、もっとちゃんと、勝つための努力をするべきだったんだよ』
花帆『楽しいとか、楽しくないとかじゃないの!』
花帆『あたし、約束したんだもん! 梢センパイを優勝させるって! 去年の一月から、もっと早く始めてたら、きっと、間に合ったのに!』
──
花帆(今の話を聞く限り、花帆ぴょんは……この言葉が現実になった場合のあたし、ってこと……なのかな)
花帆「……」
0
47: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:46:00 ID:???00
慈「花帆ちゃん? どうしたの、いきなり黙り込んじゃって……調子でも悪い?」
姫芽「え、か、かほせんぱいのお身体に何かご支障が……!? す、すぐにでもお休みになったほうがいいのでは~……!!!」
花帆「あ、いや……そ、そういうことじゃなくて……」
花帆「……」
慈「……花帆ちゃん?」
花帆(慈センパイも、姫芽ちゃんも……花帆ぴょんに深い信頼を寄せている)
花帆(この世界が、何もかも決定的に変わってしまったのは……“日野下花帆”が原因だったんだ)
花帆「…………ごめんなさい。あの、実はあたし──」
姫芽「え、か、かほせんぱいのお身体に何かご支障が……!? す、すぐにでもお休みになったほうがいいのでは~……!!!」
花帆「あ、いや……そ、そういうことじゃなくて……」
花帆「……」
慈「……花帆ちゃん?」
花帆(慈センパイも、姫芽ちゃんも……花帆ぴょんに深い信頼を寄せている)
花帆(この世界が、何もかも決定的に変わってしまったのは……“日野下花帆”が原因だったんだ)
花帆「…………ごめんなさい。あの、実はあたし──」
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48: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:47:01 ID:???00
────
花帆(──二人に今の状況……あたしが並行世界から来たことについて説明をした後、逃げるようにその場をあとにした)
花帆(だって……とてもじゃないけど、こんなの耐えられない)
花帆(今、あたしは……“あたしが失敗していたかもしれないifの世界”を、見せられている)
花帆(ほんの小さな違いなのに、何もかも大きく変わってしまっていた。梢センパイにだって、あたしは……!)
花帆(……楽しさを忘れて努力し続けて、結局報われずに夢が叶えられないまま終わるなんて、そんなの……)
花帆「……っ」
花帆(──二人に今の状況……あたしが並行世界から来たことについて説明をした後、逃げるようにその場をあとにした)
花帆(だって……とてもじゃないけど、こんなの耐えられない)
花帆(今、あたしは……“あたしが失敗していたかもしれないifの世界”を、見せられている)
花帆(ほんの小さな違いなのに、何もかも大きく変わってしまっていた。梢センパイにだって、あたしは……!)
花帆(……楽しさを忘れて努力し続けて、結局報われずに夢が叶えられないまま終わるなんて、そんなの……)
花帆「……っ」
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49: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:48:00 ID:???00
「かーほちゃん!」
花帆「! 瑠璃乃ちゃん……と、あれ? 小鈴ちゃん?」
花帆(すぐ近くで声がして……振り向くと、瑠璃乃ちゃんと小鈴ちゃんが並んで立っていた)
小鈴「あ、はい! 徒町です! 徒町、瑠璃乃先輩から事情はお聞きしました! 並行世界? から、いらしたとか……」
花帆「あ…………うん、そうだね……」コクリ
瑠璃乃「あれ? 大丈夫、花帆ちゃん? なんか元気ない、っぽいけど……あんま、順調じゃない感じ?」
花帆「え、っと……」
花帆「! 瑠璃乃ちゃん……と、あれ? 小鈴ちゃん?」
花帆(すぐ近くで声がして……振り向くと、瑠璃乃ちゃんと小鈴ちゃんが並んで立っていた)
小鈴「あ、はい! 徒町です! 徒町、瑠璃乃先輩から事情はお聞きしました! 並行世界? から、いらしたとか……」
花帆「あ…………うん、そうだね……」コクリ
瑠璃乃「あれ? 大丈夫、花帆ちゃん? なんか元気ない、っぽいけど……あんま、順調じゃない感じ?」
花帆「え、っと……」
0
50: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:49:00 ID:???00
花帆(少しずつだけど、この世界の輪郭が、花帆ぴょんのことが、掴めそうなのは確かで……“自分探し”自体は進んでいる)
花帆(だけど……)
花帆「……ううん。ただ“日野下花帆”のことが、まだよくわからなくて。ちょっと立ち止まって、ゆっくり考えようかな、って」
花帆(…………違う。本当は、“日野下花帆”によって変えられたこの世界の現実から、あたしは目を逸らしていたいだけだ)
花帆「……ごめんね、瑠璃乃ちゃん。すぐに見つけられたら、良かったんだけど……」
瑠璃乃「いやいや! まだ一日も経ってないんだから大丈夫だよ。むしろ、焦らせるようなこと言っちゃってゴメンね」
花帆「! ……ううん、全然」ニコッ
花帆(あたしは、精一杯の作り笑いを瑠璃乃ちゃんに見せた。あたしが今感じている焦燥と絶望を、隠したかったから)
花帆(だけど……)
花帆「……ううん。ただ“日野下花帆”のことが、まだよくわからなくて。ちょっと立ち止まって、ゆっくり考えようかな、って」
花帆(…………違う。本当は、“日野下花帆”によって変えられたこの世界の現実から、あたしは目を逸らしていたいだけだ)
花帆「……ごめんね、瑠璃乃ちゃん。すぐに見つけられたら、良かったんだけど……」
瑠璃乃「いやいや! まだ一日も経ってないんだから大丈夫だよ。むしろ、焦らせるようなこと言っちゃってゴメンね」
花帆「! ……ううん、全然」ニコッ
花帆(あたしは、精一杯の作り笑いを瑠璃乃ちゃんに見せた。あたしが今感じている焦燥と絶望を、隠したかったから)
0
51: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:50:04 ID:???00
花帆(……早く、話題を変えなきゃ)
花帆「えっと、それで……二人は、ここで何をしてたの?」
小鈴「はい! 徒町達は、花帆先輩が現在どこにいるかを知るべく、寮のお部屋を確認しに来ていました!」ビシッ
瑠璃乃「うんうん。で、結果としてわかったことといえば……花帆ちゃんは失踪以後、寮には戻っていないってこと」
花帆「? それって……」
瑠璃乃「つまり──今の段階だと、花帆ちゃんは“蓮ノ空から脱走”している可能性が高い、ということになるわけだね」ウンウン
花帆「えっと、それで……二人は、ここで何をしてたの?」
小鈴「はい! 徒町達は、花帆先輩が現在どこにいるかを知るべく、寮のお部屋を確認しに来ていました!」ビシッ
瑠璃乃「うんうん。で、結果としてわかったことといえば……花帆ちゃんは失踪以後、寮には戻っていないってこと」
花帆「? それって……」
瑠璃乃「つまり──今の段階だと、花帆ちゃんは“蓮ノ空から脱走”している可能性が高い、ということになるわけだね」ウンウン
0
52: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:51:00 ID:???00
花帆「だ、脱走……」
花帆(“日野下花帆”ならやりそうだなぁ……心当たりが、何故かものすごくある……)
瑠璃乃「蓮ノ空は余計、そういうのする生徒が多いから……もうちょい長い期間じゃないと、大ごととして扱ってくれないみたいでさ」
瑠璃乃「……実際問題、もし蓮ノ空の外にいるとしたら、ルリ達が探すのは難しくなっちゃうんだよね。範囲も広いし……」ウーン
小鈴「流石に、金沢市から出ていないとは思いますが……本当に、花帆先輩はどこへ行ってしまったのでしょうか……?」
花帆(“日野下花帆”ならやりそうだなぁ……心当たりが、何故かものすごくある……)
瑠璃乃「蓮ノ空は余計、そういうのする生徒が多いから……もうちょい長い期間じゃないと、大ごととして扱ってくれないみたいでさ」
瑠璃乃「……実際問題、もし蓮ノ空の外にいるとしたら、ルリ達が探すのは難しくなっちゃうんだよね。範囲も広いし……」ウーン
小鈴「流石に、金沢市から出ていないとは思いますが……本当に、花帆先輩はどこへ行ってしまったのでしょうか……?」
0
53: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:52:00 ID:???00
花帆「……あたしが、蓮ノ空の外で行きそうな場所…………」フム
小鈴「あぁ徒町、一刻も早く花帆先輩にお会いして、様々なことを学びたいです……」シュン
花帆「……! ……小鈴ちゃんも、他のメンバーみたいに、この世界のあたしから色々教わってたの?」
小鈴「はい!! 徒町は……花帆先輩に、楽しむことよりも何よりも、“勝つこと”こそが一番大事なのだと教えてもらいました!」
小鈴「徒町、幼い頃よりこのかた、色んなチャレンジに手を出しては失敗し続けてきましたが……今年は、たった一つだけに注力して」
小鈴「そう、それこそが、ラブライブ!優勝……! 徒町はやはり、花帆先輩の仰る熱い想いをこの身に受けたくて仕方がありません!」グッ
花帆「……ダメ、だよ。そんなの……!」ポツリ
小鈴「あぁ徒町、一刻も早く花帆先輩にお会いして、様々なことを学びたいです……」シュン
花帆「……! ……小鈴ちゃんも、他のメンバーみたいに、この世界のあたしから色々教わってたの?」
小鈴「はい!! 徒町は……花帆先輩に、楽しむことよりも何よりも、“勝つこと”こそが一番大事なのだと教えてもらいました!」
小鈴「徒町、幼い頃よりこのかた、色んなチャレンジに手を出しては失敗し続けてきましたが……今年は、たった一つだけに注力して」
小鈴「そう、それこそが、ラブライブ!優勝……! 徒町はやはり、花帆先輩の仰る熱い想いをこの身に受けたくて仕方がありません!」グッ
花帆「……ダメ、だよ。そんなの……!」ポツリ
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54: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:53:00 ID:???00
瑠璃乃「……花帆ちゃん?」
花帆「それじゃ、ダメだったんだ……勝つだけじゃ、夢は……」
花帆(あたしが、夢を叶えられたのは“楽しい”を忘れなかったから。それを思い出させてくれる仲間がいたから)
花帆(だから、もしもそれを曲げちゃったら……夢は、叶わない)
花帆「それじゃ、ダメだったんだ……勝つだけじゃ、夢は……」
花帆(あたしが、夢を叶えられたのは“楽しい”を忘れなかったから。それを思い出させてくれる仲間がいたから)
花帆(だから、もしもそれを曲げちゃったら……夢は、叶わない)
0
55: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:54:00 ID:???00
小鈴「花帆先輩……?」
花帆「……」
花帆(この並行世界は……夢が叶わなかった、花咲けなかったif世界)
花帆(しかも、それを引き起こしたのは紛れもない“日野下花帆”の選択で。間違った道を、進んでしまったからで)
花帆(だから、叶わなかった夢の、その重さは……花帆ぴょんを押し潰し、苦しめ、逃避の道に追い込んだのかもしれない)
花帆「……ごめん。あたし、ちょっと違う場所探してくるね──」スタッ
花帆「……」
花帆(この並行世界は……夢が叶わなかった、花咲けなかったif世界)
花帆(しかも、それを引き起こしたのは紛れもない“日野下花帆”の選択で。間違った道を、進んでしまったからで)
花帆(だから、叶わなかった夢の、その重さは……花帆ぴょんを押し潰し、苦しめ、逃避の道に追い込んだのかもしれない)
花帆「……ごめん。あたし、ちょっと違う場所探してくるね──」スタッ
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56: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:55:00 ID:???00
────
スタスタ…
花帆「……」
花帆(衝動的に逃げ出したけど、行くあてなんか無い。とにかく、ただ気を紛らわせたかった)
花帆(なんとなく足を踏み入れたそこは、一年生のフロア。ふと見れば、あたしの大切な──後輩の姿。それに、あれは……)
花帆「吟子ちゃんと……さやか、ちゃん?」
さやか「……! 花帆さんですか」ニコッ
吟子「花帆先輩、お疲れ様です」ペコリ
花帆「? どうして、さやかちゃんが一年生のフロアに……それも、吟子ちゃんと一緒だなんて」
スタスタ…
花帆「……」
花帆(衝動的に逃げ出したけど、行くあてなんか無い。とにかく、ただ気を紛らわせたかった)
花帆(なんとなく足を踏み入れたそこは、一年生のフロア。ふと見れば、あたしの大切な──後輩の姿。それに、あれは……)
花帆「吟子ちゃんと……さやか、ちゃん?」
さやか「……! 花帆さんですか」ニコッ
吟子「花帆先輩、お疲れ様です」ペコリ
花帆「? どうして、さやかちゃんが一年生のフロアに……それも、吟子ちゃんと一緒だなんて」
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57: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:56:00 ID:???00
さやか「? それは……二年生になってからは、クラブの後輩全員とも交流する機会ができたからですね。ユニットの枠組みが今は無いので、余計に」
花帆「……そっか」
花帆(花帆ぴょんがした決断は、こういうところにも影響が出てるんだ。ユニットじゃなくて、全体を優先したから……)
吟子「あ、あの……!」サッ
花帆「! えと、吟子ちゃん……その、あたしは……」ワタワタ
吟子「あぁ、大丈夫ですよ。花帆先輩の事情は、先ほどさやか先輩からお聞きしました。……こことは違う場所から来た、とか」
花帆「あ……うん。そう、だね。あたしは……違う“日野下花帆”だよ」
花帆「……そっか」
花帆(花帆ぴょんがした決断は、こういうところにも影響が出てるんだ。ユニットじゃなくて、全体を優先したから……)
吟子「あ、あの……!」サッ
花帆「! えと、吟子ちゃん……その、あたしは……」ワタワタ
吟子「あぁ、大丈夫ですよ。花帆先輩の事情は、先ほどさやか先輩からお聞きしました。……こことは違う場所から来た、とか」
花帆「あ……うん。そう、だね。あたしは……違う“日野下花帆”だよ」
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58: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:57:00 ID:???00
吟子「……随分と大変な目にあっているようで、心中お察しします。私でもお力になれることがあれば、何でも遠慮なく」ニコッ
花帆「! え、っと……」
花帆「……」
さやか「……花帆さん? どうされたんですか? 黙り込むなんて、花帆さんらしくないですけど……」
花帆「…………それは、そうだよ。だってあたしは、さやかちゃんの知っている“花帆さん”じゃ、ないんだし……」
花帆「! え、っと……」
花帆「……」
さやか「……花帆さん? どうされたんですか? 黙り込むなんて、花帆さんらしくないですけど……」
花帆「…………それは、そうだよ。だってあたしは、さやかちゃんの知っている“花帆さん”じゃ、ないんだし……」
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59: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:58:00 ID:???00
吟子「花帆、先輩……」
さやか「……そんなことは、無いと思いますよ、花帆さん」ニコッ
花帆(そう言ってさやかちゃんが……あたしの方に、向き直る)
さやか「花帆さんは、あることに夢中になれば、オンになってエネルギーを放出し……落ち込むとオフになって静かになる……」
さやか「その様は、はたから見ていると本物の蛍光灯のように目立っていて……ある意味、メリハリがついている方です」クスッ
さやか「そして……今、わたしの目の前にいる“花帆さん”もそれは、おそらく同じではないですか?」
さやか「……そんなことは、無いと思いますよ、花帆さん」ニコッ
花帆(そう言ってさやかちゃんが……あたしの方に、向き直る)
さやか「花帆さんは、あることに夢中になれば、オンになってエネルギーを放出し……落ち込むとオフになって静かになる……」
さやか「その様は、はたから見ていると本物の蛍光灯のように目立っていて……ある意味、メリハリがついている方です」クスッ
さやか「そして……今、わたしの目の前にいる“花帆さん”もそれは、おそらく同じではないですか?」
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60: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 22:59:00 ID:???00
花帆「…………で、でも……っ」チラッ
吟子「? ……花帆先輩?」
花帆「…………この世界の吟子ちゃんは、ラブライブ!に優勝するために、一年間必死に、苦しむくらい練習したんでしょ?」
吟子「え? あ、はい。それはもちろんです。信じるだけじゃ、夢は叶いませんから」
花帆「……それなら、あたしはやっぱり、何も言えないよ」
花帆(花帆ぴょんはきっと、クラブのみんな全員と一緒に“勝つためのスクールアイドル”を目指したんだ。楽しさを捨てて……)
さやか「花帆さん……」
花帆「あたしは、センパイの夢を叶えるために、この世界の“日野下花帆”が選んだ道は間違ってるって、思っちゃう、から……」
吟子「? ……花帆先輩?」
花帆「…………この世界の吟子ちゃんは、ラブライブ!に優勝するために、一年間必死に、苦しむくらい練習したんでしょ?」
吟子「え? あ、はい。それはもちろんです。信じるだけじゃ、夢は叶いませんから」
花帆「……それなら、あたしはやっぱり、何も言えないよ」
花帆(花帆ぴょんはきっと、クラブのみんな全員と一緒に“勝つためのスクールアイドル”を目指したんだ。楽しさを捨てて……)
さやか「花帆さん……」
花帆「あたしは、センパイの夢を叶えるために、この世界の“日野下花帆”が選んだ道は間違ってるって、思っちゃう、から……」
0
61: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 23:00:00 ID:???00
吟子「……花帆先輩」ギュッ
花帆「…………え? ぎ、吟子ちゃん?」
花帆(突然、吟子ちゃんが、あたしの両手を握りしめる。その目は、あたしをじっと見つめていて)
吟子「もしも、そうお考えなのでしたら是非──梢先輩にお会いになってみてください」
花帆「…………え? ぎ、吟子ちゃん?」
花帆(突然、吟子ちゃんが、あたしの両手を握りしめる。その目は、あたしをじっと見つめていて)
吟子「もしも、そうお考えなのでしたら是非──梢先輩にお会いになってみてください」
0
62: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 23:01:00 ID:???00
花帆「え……? 梢、センパイに……?」
吟子「はい。梢先輩と、二人で話してみてほしいんです」
花帆「っ……で、でも……梢センパイは……」
さやか「──花帆さん。それなら、わたしも大丈夫だと思いますよ」
花帆「……さやかちゃんまで……」
吟子「はい。梢先輩と、二人で話してみてほしいんです」
花帆「っ……で、でも……梢センパイは……」
さやか「──花帆さん。それなら、わたしも大丈夫だと思いますよ」
花帆「……さやかちゃんまで……」
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64: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 23:02:00 ID:???00
吟子「その通りです。今の花帆先輩を、梢先輩なら必ず導いてくれるはず、ですから」
花帆「……なんで、そんなはっきり……」
吟子「そうですね……その根拠と言えるかは、わかりませんが……」コホン
吟子「私も花帆先輩も、それから梢先輩も……スクールアイドルが大好き、ってことです」クスッ
花帆「……??」
花帆「……なんで、そんなはっきり……」
吟子「そうですね……その根拠と言えるかは、わかりませんが……」コホン
吟子「私も花帆先輩も、それから梢先輩も……スクールアイドルが大好き、ってことです」クスッ
花帆「……??」
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65: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 23:03:03 ID:???00
さやか「それに……見てください、花帆さん。これを──」スッ
花帆「! これ、は……!」ジー
花帆(──さやかちゃんのスマホには“とあるネット記事”が映っている。そしてそれを見た瞬間……あたしは、衝撃を受けた)
花帆(もしこれが本当なら、この世界は……花帆ぴょんがした選択は、間違いじゃないのかもしれない。……形が変わっただけ)
吟子「……花帆先輩。きっと、大丈夫です」
さやか「ええ。梢先輩と直接話せば、必ずわかりますよ」ニコッ
花帆「吟子ちゃん、さやかちゃん……」
花帆(蓮ノ空が負けて、瑞河が勝って……夢を叶える形も変わったんだ。せっちゃんも……それに、あたし達も)
花帆(……じゃあ、梢センパイの夢はどうなのかな……? あたしはそれを知らなくちゃいけないし、知りたい……そう、思えた)
花帆「! これ、は……!」ジー
花帆(──さやかちゃんのスマホには“とあるネット記事”が映っている。そしてそれを見た瞬間……あたしは、衝撃を受けた)
花帆(もしこれが本当なら、この世界は……花帆ぴょんがした選択は、間違いじゃないのかもしれない。……形が変わっただけ)
吟子「……花帆先輩。きっと、大丈夫です」
さやか「ええ。梢先輩と直接話せば、必ずわかりますよ」ニコッ
花帆「吟子ちゃん、さやかちゃん……」
花帆(蓮ノ空が負けて、瑞河が勝って……夢を叶える形も変わったんだ。せっちゃんも……それに、あたし達も)
花帆(……じゃあ、梢センパイの夢はどうなのかな……? あたしはそれを知らなくちゃいけないし、知りたい……そう、思えた)
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66: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 23:04:00 ID:???00
────
花帆「……」
花帆(蓮ノ空の音楽室。そこであたしは、一人、梢センパイを待つ。……センパイには、さやかちゃんが連絡を入れておいてくれた)
花帆(……本当は、二人きりで梢センパイと話をするのはすごく怖い。でも……あたしは……)
ガチャ
花帆「……!」
「──花帆!!!」ギュッ
花帆「……」
花帆(蓮ノ空の音楽室。そこであたしは、一人、梢センパイを待つ。……センパイには、さやかちゃんが連絡を入れておいてくれた)
花帆(……本当は、二人きりで梢センパイと話をするのはすごく怖い。でも……あたしは……)
ガチャ
花帆「……!」
「──花帆!!!」ギュッ
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67: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 23:05:00 ID:???00
花帆「…………っ、梢、センパイ……」
梢「花帆、花帆……どこに行っていたの……心配したのよ、本当に……」ギュー
花帆「梢センパイ……」ポツリ
花帆「……あたしは、梢センパイの思う、“日野下花帆”じゃ、ないですよ」
梢「……!! あ、あぁ……そう、だったわね」
花帆(梢センパイは我にかえったように、そう口にした後……あたしから、目を逸らした)
梢「……慈から聞いたわ。あなたは、あの花帆じゃない、って……」
梢「花帆、花帆……どこに行っていたの……心配したのよ、本当に……」ギュー
花帆「梢センパイ……」ポツリ
花帆「……あたしは、梢センパイの思う、“日野下花帆”じゃ、ないですよ」
梢「……!! あ、あぁ……そう、だったわね」
花帆(梢センパイは我にかえったように、そう口にした後……あたしから、目を逸らした)
梢「……慈から聞いたわ。あなたは、あの花帆じゃない、って……」
0
68: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 23:06:00 ID:???00
花帆「…………はい。あたしは……違う世界から来た“日野下花帆”なので。その……ごめんなさい、梢センパイ」シュン
梢「……いえ、謝らないでちょうだい。あなたに非は無いわ。私も……知っていたはずなのに早合点してしまったの」
梢「……そう、よね。花帆はまだ……」ボソッ
花帆「──あ、あの……!」ガタッ
花帆(今までで一番、心臓の鼓動が速くなる。でも……吟子ちゃん、さやかちゃんが背中を押してくれたから、あたしは……!)
花帆「……あたし、梢センパイに訊かなくちゃいけないことがあって……!」
花帆(あたし自身、もう何を言葉にしているのか全然わからないくらい、勢いで喋っていた)
花帆「梢、センパイは…………」
花帆「ラブライブ!に優勝できなかったことを…………どう、思っていますか?」
梢「……いえ、謝らないでちょうだい。あなたに非は無いわ。私も……知っていたはずなのに早合点してしまったの」
梢「……そう、よね。花帆はまだ……」ボソッ
花帆「──あ、あの……!」ガタッ
花帆(今までで一番、心臓の鼓動が速くなる。でも……吟子ちゃん、さやかちゃんが背中を押してくれたから、あたしは……!)
花帆「……あたし、梢センパイに訊かなくちゃいけないことがあって……!」
花帆(あたし自身、もう何を言葉にしているのか全然わからないくらい、勢いで喋っていた)
花帆「梢、センパイは…………」
花帆「ラブライブ!に優勝できなかったことを…………どう、思っていますか?」
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69: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 23:07:01 ID:???00
花帆(言い切ってから途端に、しまった、と戦慄してしまう。あたしは本当に、こんな質問をしてしまって良かったのかな……)
梢「…………花帆」
花帆「は、はい!」ビクッ
梢「私は……」
花帆(梢センパイはふと言葉を切って、逸らしていた目をあたしの方に向けた。……一呼吸入れて、梢センパイは続ける)
梢「…………これで、良かったと思っているわ。全部、花帆のおかげで、たどり着けたミライだもの」ニコッ
花帆「……」
梢「……本当はこれを早く、花帆に伝えていれば良かったのだけれど……」ポツリ
梢「…………花帆」
花帆「は、はい!」ビクッ
梢「私は……」
花帆(梢センパイはふと言葉を切って、逸らしていた目をあたしの方に向けた。……一呼吸入れて、梢センパイは続ける)
梢「…………これで、良かったと思っているわ。全部、花帆のおかげで、たどり着けたミライだもの」ニコッ
花帆「……」
梢「……本当はこれを早く、花帆に伝えていれば良かったのだけれど……」ポツリ
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70: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 23:08:01 ID:???00
花帆「…………そんなの、信じられないですよ」ボソッ
梢「……花帆?」
花帆「だって、去年の一月……“日野下花帆”が間違えた選択をしたせいで、梢センパイの夢は叶わなかったはず、ですよね」
花帆「だとしたら……“良かった”なんて、どうして言えるんですか……? まして“おかげ”だなんて、とても、あたしには……」
花帆(これまで会ったみんなの様子と、ラブライブ!敗退という結果……それを踏まえるとどうしても、あたしはそう感じてしまう)
梢「……花帆?」
花帆「だって、去年の一月……“日野下花帆”が間違えた選択をしたせいで、梢センパイの夢は叶わなかったはず、ですよね」
花帆「だとしたら……“良かった”なんて、どうして言えるんですか……? まして“おかげ”だなんて、とても、あたしには……」
花帆(これまで会ったみんなの様子と、ラブライブ!敗退という結果……それを踏まえるとどうしても、あたしはそう感じてしまう)
0
71: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 23:09:00 ID:???00
花帆「ぁ……」チラッ
花帆(……でも、梢センパイはそうじゃないらしい。あたしを見つめる梢センパイが、困った顔をしているのが、わかった)
梢「やっぱり、どうやらあなたも……あの子と同じ勘違いをしているのね。そうじゃないかと、薄々思っていたわ」ハァ
花帆「…………? 勘違い……ですか?」
梢「ええ、そうよ」コホン
梢「……だって、私の夢は──もう叶っているのだから」ニコッ
花帆(……でも、梢センパイはそうじゃないらしい。あたしを見つめる梢センパイが、困った顔をしているのが、わかった)
梢「やっぱり、どうやらあなたも……あの子と同じ勘違いをしているのね。そうじゃないかと、薄々思っていたわ」ハァ
花帆「…………? 勘違い……ですか?」
梢「ええ、そうよ」コホン
梢「……だって、私の夢は──もう叶っているのだから」ニコッ
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72: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 23:10:00 ID:???00
花帆「!! それ、って……」
梢「…………確かに、ラブライブ!優勝を叶えられなかった……というのは、私も否定しないわ」
梢「でも、私が憧れたスクールアイドルは……かけがえのない仲間と共に輝く存在。私も日々の中で、それを手にしていた。夢は……叶っていた」
梢「だから私は、ラブライブ!に優勝できなかったこの結末でも、十分満足しているわ。……これで、納得してもらえるかしら?」
花帆「…………で、でも……」
花帆(あたしが知っている“梢センパイ”も、同じようなことを言っていた。それはちゃんと、覚えている。けど……)
花帆「この世界じゃ、その道中が苦しくて辛いものに……あたしが、日野下花帆が、変えたせいで……!」
梢「…………確かに、ラブライブ!優勝を叶えられなかった……というのは、私も否定しないわ」
梢「でも、私が憧れたスクールアイドルは……かけがえのない仲間と共に輝く存在。私も日々の中で、それを手にしていた。夢は……叶っていた」
梢「だから私は、ラブライブ!に優勝できなかったこの結末でも、十分満足しているわ。……これで、納得してもらえるかしら?」
花帆「…………で、でも……」
花帆(あたしが知っている“梢センパイ”も、同じようなことを言っていた。それはちゃんと、覚えている。けど……)
花帆「この世界じゃ、その道中が苦しくて辛いものに……あたしが、日野下花帆が、変えたせいで……!」
0
73: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 23:11:00 ID:???00
梢「花帆。……同じ人間が、同じ過程を辿ったとしても、その結末まで同じだとは限らないわ」
梢「あなたの知っている“乙宗梢”が、どう思うかはわからないけれど……」コホン
梢「私は、楽しさを捨てて努力し続けたこの日々も……愛しいの」
花帆「……梢、センパイ……」
梢「……幻滅したかしら? でも……楽しいを忘れて進むだけじゃ夢は叶わない、なんて言わせたくない」
梢「他ならぬ花帆が、その選択をしたことを──私は否定したくないのよ」
花帆「……!」
梢「あなたの知っている“乙宗梢”が、どう思うかはわからないけれど……」コホン
梢「私は、楽しさを捨てて努力し続けたこの日々も……愛しいの」
花帆「……梢、センパイ……」
梢「……幻滅したかしら? でも……楽しいを忘れて進むだけじゃ夢は叶わない、なんて言わせたくない」
梢「他ならぬ花帆が、その選択をしたことを──私は否定したくないのよ」
花帆「……!」
0
74: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 23:12:00 ID:???00
花帆(──梢センパイの言葉が、あたしの胸にすとんと落ちた)
花帆(あたしがさやかちゃんに聞いた、あの事実も踏まえて……ようやく気づいた。夢は、“形が変わる”んだ)
花帆(梢センパイの夢は、形を変え……もう叶っていた。──じゃあ、花帆ぴょんは?)
花帆「……」グッ
花帆(……あたし、落ち込んでいる場合なんかじゃ、ない。やらなきゃいけないことがある)
花帆(あたしがさやかちゃんに聞いた、あの事実も踏まえて……ようやく気づいた。夢は、“形が変わる”んだ)
花帆(梢センパイの夢は、形を変え……もう叶っていた。──じゃあ、花帆ぴょんは?)
花帆「……」グッ
花帆(……あたし、落ち込んでいる場合なんかじゃ、ない。やらなきゃいけないことがある)
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75: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 23:13:00 ID:???00
梢「……私が、今こうして前を向き、ミライに進めるのは……花帆が、私の夢を叶えてくれたから」
梢「この言葉を、感謝を、私の大好きな“花帆”にも届けたい。何も言わずに勝手にいなくなるだなんて、私は望んでいないもの」
花帆「梢センパイ……」
梢「あなたも、あの子と同じ“花帆”なら、お互い協力したいのだけれど……どうかしら?」
花帆「……協力、ですか?」
梢「ええ。……私は、花帆に帰ってきてほしい……いえ、むしろ連れ戻したいの。また、あの子の花咲く笑顔を、私は見たいから」
花帆「!」
梢「この言葉を、感謝を、私の大好きな“花帆”にも届けたい。何も言わずに勝手にいなくなるだなんて、私は望んでいないもの」
花帆「梢センパイ……」
梢「あなたも、あの子と同じ“花帆”なら、お互い協力したいのだけれど……どうかしら?」
花帆「……協力、ですか?」
梢「ええ。……私は、花帆に帰ってきてほしい……いえ、むしろ連れ戻したいの。また、あの子の花咲く笑顔を、私は見たいから」
花帆「!」
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76: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/20(木) 23:14:00 ID:???00
花帆「……そっ、か。そうなんだ……」ポツリ
花帆(……あたしがずっと探してた答え、もしかしたら、見つけられたかもしれない)
花帆「あ、あの! 梢センパイ、それならあたし──」
花帆(……自分探しの旅も、もうおしまいにしなくちゃ。だって……)
花帆(あたしはもう、全部わかってるはずだから。自分探しの旅の終着点はきっと……!)
花帆(……あたしがずっと探してた答え、もしかしたら、見つけられたかもしれない)
花帆「あ、あの! 梢センパイ、それならあたし──」
花帆(……自分探しの旅も、もうおしまいにしなくちゃ。だって……)
花帆(あたしはもう、全部わかってるはずだから。自分探しの旅の終着点はきっと……!)
0
86: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/21(金) 22:00:00 ID:???00
────
花帆(いつか読んだ小説の主人公のように、あたしは金沢の漫画喫茶で一泊し……夜が明ける前、“あの場所”に向かった)
ヒュゥゥ…
花帆(──風が吹いている。冷たくて、凍えそうな金沢の風をあたしはただ受けながら……ここまで辿り着いた)
花帆「……!」
花帆(……やっぱり、この場所だったんだ。あたしなら絶対ここにいるはずだって予想、当たっちゃった)
花帆(あたしとあの子以外、ここには誰もいない。……話さなきゃ、だよね)
花帆(いつか読んだ小説の主人公のように、あたしは金沢の漫画喫茶で一泊し……夜が明ける前、“あの場所”に向かった)
ヒュゥゥ…
花帆(──風が吹いている。冷たくて、凍えそうな金沢の風をあたしはただ受けながら……ここまで辿り着いた)
花帆「……!」
花帆(……やっぱり、この場所だったんだ。あたしなら絶対ここにいるはずだって予想、当たっちゃった)
花帆(あたしとあの子以外、ここには誰もいない。……話さなきゃ、だよね)
0
87: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/21(金) 22:01:00 ID:???00
「……どうして、こんなことになっちゃったんだろう、あたし」ポツリ
「同じあたしでも、あんな未来があったなんて、知りたくなかった……あたしは、なんでああいう風になれなかったのかな……」
「あぁ、そっか…………そもそも……変えちゃ、いけなかったんだ……」ポロポロ
スタスタ…
「……!」クルッ
花帆「……やっと、見つけたよ」
花帆「この世界のあたし──花帆ぴょん、だよね?」
花帆ぴょん「……っ!」ビクッ
「同じあたしでも、あんな未来があったなんて、知りたくなかった……あたしは、なんでああいう風になれなかったのかな……」
「あぁ、そっか…………そもそも……変えちゃ、いけなかったんだ……」ポロポロ
スタスタ…
「……!」クルッ
花帆「……やっと、見つけたよ」
花帆「この世界のあたし──花帆ぴょん、だよね?」
花帆ぴょん「……っ!」ビクッ
0
88: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/21(金) 22:02:00 ID:???00
花帆ぴょん「…………なんで、ここに……?」
花帆「……それはきっと、あなたと同じだと思う。だってここは……“日野下花帆”の夢が始まった場所だもんね」
花帆ぴょん「……!」
花帆「卯辰山──良い景色、だね」ジー
花帆ぴょん「……」
花帆ぴょん「…………どうして」
花帆「……それはきっと、あなたと同じだと思う。だってここは……“日野下花帆”の夢が始まった場所だもんね」
花帆ぴょん「……!」
花帆「卯辰山──良い景色、だね」ジー
花帆ぴょん「……」
花帆ぴょん「…………どうして」
0
89: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/21(金) 22:03:00 ID:???00
花帆「え?」
花帆ぴょん「どうして、あなたが……あたしに会いに来たの……? ……っ」グスッ
花帆「……!」
花帆(目の前のあたしが、花帆ぴょんが……泣いている)
花帆ぴょん「…………あたし、全部……ここから、あなたのこと、見てたんだ……」ポツリ
花帆ぴょん「だから……あなたが正しい選択をしてきたことも、夢を叶えられた側の勝者だったことも、わかってる」
花帆ぴょん「もう散々思い知ったよ。……あたしは、“間違えたんだ”」
花帆ぴょん「どうして、あなたが……あたしに会いに来たの……? ……っ」グスッ
花帆「……!」
花帆(目の前のあたしが、花帆ぴょんが……泣いている)
花帆ぴょん「…………あたし、全部……ここから、あなたのこと、見てたんだ……」ポツリ
花帆ぴょん「だから……あなたが正しい選択をしてきたことも、夢を叶えられた側の勝者だったことも、わかってる」
花帆ぴょん「もう散々思い知ったよ。……あたしは、“間違えたんだ”」
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90: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/21(金) 22:04:00 ID:???00
花帆「……」
花帆ぴょん「ずっと今が続けばいいのに、なんて……あたし、ラブライブ!決勝大会の前に何度思ったかわからない」
花帆ぴょん「でも、その“今”さえ、あなたみたいに上手くいったものじゃなかった……もっと、上があった」
花帆ぴょん「…………あたしも、あなたみたいになりたかったな……同じ花帆でも、こんなに違うんだ……」グスッ
花帆「……ううん、違わない。同じなんだよ、あたし達」
花帆ぴょん「……え? 何、言って……」
花帆ぴょん「ずっと今が続けばいいのに、なんて……あたし、ラブライブ!決勝大会の前に何度思ったかわからない」
花帆ぴょん「でも、その“今”さえ、あなたみたいに上手くいったものじゃなかった……もっと、上があった」
花帆ぴょん「…………あたしも、あなたみたいになりたかったな……同じ花帆でも、こんなに違うんだ……」グスッ
花帆「……ううん、違わない。同じなんだよ、あたし達」
花帆ぴょん「……え? 何、言って……」
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91: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/21(金) 22:05:00 ID:???00
花帆(……伝えるんだ。あたしは、花帆ぴょんに言わなくちゃいけないことがある)
花帆「……あたし、元の世界では……自分を見つめ直そうとして卯辰山──あたしの夢が始まった、この場所に来たんだ。花帆ぴょんと、同じ」
花帆ぴょん「…………どういう、こと?? 全部上手くいったあなたが、今さら自分探し?」
花帆「……そう、だね。情けないかもだけど、あたし……春、必ず来るセンパイとの別れが少し……嫌になっちゃってたんだ」
花帆「でも……みんなはちゃんと、前に進んでいる。だから、焦ったあたしは、卯辰山で自分を見直そうとして……」
花帆(この世界に、“落ちた”)
花帆「……あたし、元の世界では……自分を見つめ直そうとして卯辰山──あたしの夢が始まった、この場所に来たんだ。花帆ぴょんと、同じ」
花帆ぴょん「…………どういう、こと?? 全部上手くいったあなたが、今さら自分探し?」
花帆「……そう、だね。情けないかもだけど、あたし……春、必ず来るセンパイとの別れが少し……嫌になっちゃってたんだ」
花帆「でも……みんなはちゃんと、前に進んでいる。だから、焦ったあたしは、卯辰山で自分を見直そうとして……」
花帆(この世界に、“落ちた”)
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92: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/21(金) 22:06:00 ID:???00
花帆ぴょん「……」
花帆「先月……ここの世界から見たら来月かな。あたし、梢センパイに訊かれたんだ」
──
梢『……ねえ、ふたりとも。あなたたちの次の夢は、なに?』
──
花帆ぴょん「…………次の、夢……?」
花帆「うん。夢は叶って終わりじゃない。あたし達は、何度でも新しい夢を見ても良いんだもん」
花帆「あたしは……ラブライブ!優勝を叶えた先にも、新しい夢がある。叶えたい夢が、ずっとあたしにはあるんだ」
花帆ぴょん「……酷いよ、そんなの」ポツリ
花帆「先月……ここの世界から見たら来月かな。あたし、梢センパイに訊かれたんだ」
──
梢『……ねえ、ふたりとも。あなたたちの次の夢は、なに?』
──
花帆ぴょん「…………次の、夢……?」
花帆「うん。夢は叶って終わりじゃない。あたし達は、何度でも新しい夢を見ても良いんだもん」
花帆「あたしは……ラブライブ!優勝を叶えた先にも、新しい夢がある。叶えたい夢が、ずっとあたしにはあるんだ」
花帆ぴょん「……酷いよ、そんなの」ポツリ
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93: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/21(金) 22:07:00 ID:???00
花帆ぴょん「あたしは……一番叶えたかった夢でさえ、叶えられなかったのに」
花帆ぴょん「別の世界のあたしは……全部、叶った上に、それ以上を望んでるっていうの……?」
花帆「…………花帆ぴょん、それは……!」
花帆ぴょん「──だってあたし、約束したんだよ!!」バッ
花帆「!」
花帆ぴょん「梢センパイと一緒に、絶対ラブライブ!を優勝する、って! あの景色を一緒に見る、って……!」
花帆ぴょん「それが梢センパイの、あたしの、大切な夢だった。それを叶えるって、約束…………したのに……」グスッ
花帆ぴょん「別の世界のあたしは……全部、叶った上に、それ以上を望んでるっていうの……?」
花帆「…………花帆ぴょん、それは……!」
花帆ぴょん「──だってあたし、約束したんだよ!!」バッ
花帆「!」
花帆ぴょん「梢センパイと一緒に、絶対ラブライブ!を優勝する、って! あの景色を一緒に見る、って……!」
花帆ぴょん「それが梢センパイの、あたしの、大切な夢だった。それを叶えるって、約束…………したのに……」グスッ
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94: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/21(金) 22:08:00 ID:???00
花帆「そっか。……だから、花帆ぴょんは……」
花帆ぴょん「……うん。優勝できなかったら、全部無駄になっちゃう。そう、わかってたはずだから……楽しんでる暇なんて、なかった」
花帆ぴょん「梢センパイを優勝させるために、あたしは、“勝つための努力”をすることを選んだ。……間違った選択だとも気づかずに」
花帆ぴょん「……これでわかったでしょ? 結局あたしは、ダメだった。あなたの方が、ずっと正しかったんだ……」ボソッ
花帆ぴょん「……うん。優勝できなかったら、全部無駄になっちゃう。そう、わかってたはずだから……楽しんでる暇なんて、なかった」
花帆ぴょん「梢センパイを優勝させるために、あたしは、“勝つための努力”をすることを選んだ。……間違った選択だとも気づかずに」
花帆ぴょん「……これでわかったでしょ? 結局あたしは、ダメだった。あなたの方が、ずっと正しかったんだ……」ボソッ
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95: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/21(金) 22:09:00 ID:???00
花帆「……違う、そういうことじゃないよ!!!」
花帆ぴょん「っ……!」
花帆(あたしの想像以上に、大きな声が出た。でも、あたしはそれだけ、本気で花帆ぴょんに伝えたいって思ってる)
花帆「正しいとか、正しくないとかじゃなくて! ……あたし、花帆ぴょんにどうしても言いたいことがあるんだ」
花帆「だから…………お願い。花帆ぴょんに、一つだけ訊いても良い?」
花帆ぴょん「……? 言いたいことがあるのに、逆にあたしに質問……? 別にあたしは、なんでもOKだけど……」
花帆「! 良かったぁ。……あたし、さやかちゃんに聞いたんだ。──瑞河女子、廃校がなくなったんだよね?」
花帆ぴょん「っ……!」
花帆(あたしの想像以上に、大きな声が出た。でも、あたしはそれだけ、本気で花帆ぴょんに伝えたいって思ってる)
花帆「正しいとか、正しくないとかじゃなくて! ……あたし、花帆ぴょんにどうしても言いたいことがあるんだ」
花帆「だから…………お願い。花帆ぴょんに、一つだけ訊いても良い?」
花帆ぴょん「……? 言いたいことがあるのに、逆にあたしに質問……? 別にあたしは、なんでもOKだけど……」
花帆「! 良かったぁ。……あたし、さやかちゃんに聞いたんだ。──瑞河女子、廃校がなくなったんだよね?」
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96: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/21(金) 22:10:00 ID:???00
花帆ぴょん「え? あぁ……うん。せっちゃんが嬉しそうに報告してくれたから、あたしも知ってるけど……でも、それが?」
花帆「それ!!! とっっっってもすごいことなんだよ!? 花帆ぴょんが想像してる数倍!!」
花帆ぴょん「……??」
花帆(花帆ぴょんが、あたしの勢いに押されて……少したじろいでるのがわかった)
花帆ぴょん「? え、だって……ラブライブ!って、一番有名なスクールアイドルの祭典だし、すごい注目されるものだよ?」
花帆ぴょん「瑞河女子の廃校がなくなったのは、そんなすごい大会に出た注目があったからなんじゃ……」
花帆「ううん、それは違うよ。……あたしの世界では、瑞河女子の廃校は、覆せなかったんだから」
花帆ぴょん「……え」
花帆「それ!!! とっっっってもすごいことなんだよ!? 花帆ぴょんが想像してる数倍!!」
花帆ぴょん「……??」
花帆(花帆ぴょんが、あたしの勢いに押されて……少したじろいでるのがわかった)
花帆ぴょん「? え、だって……ラブライブ!って、一番有名なスクールアイドルの祭典だし、すごい注目されるものだよ?」
花帆ぴょん「瑞河女子の廃校がなくなったのは、そんなすごい大会に出た注目があったからなんじゃ……」
花帆「ううん、それは違うよ。……あたしの世界では、瑞河女子の廃校は、覆せなかったんだから」
花帆ぴょん「……え」
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97: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/21(金) 22:11:00 ID:???00
花帆「……花帆ぴょんなら、せっちゃんの夢も知ってるよね? せっちゃんの夢は、瑞河のスクールアイドルとして、ラブライブ!に出ること」
花帆「この世界では、瑞河がラブライブ!で優勝したから廃校はなくなった。だから、形は変わったけど……ここでもその夢は、いつか必ず叶うはずなんだ」
花帆ぴょん「……! 夢……?」ポツリ
花帆「うん。……夢はたとえ形が変わったって、無くならない。どんどん新しい夢が生まれて……絶対に、叶えられる」
花帆(元の世界では、せっちゃんの夢を叶える道を模索して……あたしはあの時、ああいう選択をした。形は違うけれど、同じ)
花帆(梢センパイの夢も、せっちゃんの夢も……ここでも絶対、叶うんだ)
花帆(そしてそれは……あたしだって、そう。夢は……消えない。あたしは、これからも新しい夢を見続けることができる)
花帆「だから……やっと、わかったんだ。この世界に、あたしが迷い込んだ理由」
花帆「あたしが、この並行世界に来たのは……」
花帆「──あなたを花咲かせるため、だったんだよ。花帆ぴょん」ニコッ
花帆「この世界では、瑞河がラブライブ!で優勝したから廃校はなくなった。だから、形は変わったけど……ここでもその夢は、いつか必ず叶うはずなんだ」
花帆ぴょん「……! 夢……?」ポツリ
花帆「うん。……夢はたとえ形が変わったって、無くならない。どんどん新しい夢が生まれて……絶対に、叶えられる」
花帆(元の世界では、せっちゃんの夢を叶える道を模索して……あたしはあの時、ああいう選択をした。形は違うけれど、同じ)
花帆(梢センパイの夢も、せっちゃんの夢も……ここでも絶対、叶うんだ)
花帆(そしてそれは……あたしだって、そう。夢は……消えない。あたしは、これからも新しい夢を見続けることができる)
花帆「だから……やっと、わかったんだ。この世界に、あたしが迷い込んだ理由」
花帆「あたしが、この並行世界に来たのは……」
花帆「──あなたを花咲かせるため、だったんだよ。花帆ぴょん」ニコッ
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98: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/21(金) 22:12:00 ID:???00
花帆ぴょん「…………花、咲かせる……あたしを……?」
花帆「うん。あたしは、みんなを花咲かせたい! だから、花帆ぴょんの……“日野下花帆”の夢だって、叶わなきゃ!」
花帆「だってそれが……みんなを花咲かせるスクールアイドルになるのが、あたしの夢だから!」グッ
花帆ぴょん「……! そ、そんなの……でもあたしは、選択を間違えたから、そんな資格なんて……」
花帆「ううん。みんなと話してみて、わかったよ。花帆ぴょんはこの世界のクラブのみんなに、すごく慕われてるんだって」
花帆「うん。あたしは、みんなを花咲かせたい! だから、花帆ぴょんの……“日野下花帆”の夢だって、叶わなきゃ!」
花帆「だってそれが……みんなを花咲かせるスクールアイドルになるのが、あたしの夢だから!」グッ
花帆ぴょん「……! そ、そんなの……でもあたしは、選択を間違えたから、そんな資格なんて……」
花帆「ううん。みんなと話してみて、わかったよ。花帆ぴょんはこの世界のクラブのみんなに、すごく慕われてるんだって」
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99: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/21(金) 22:13:00 ID:???00
花帆「綴理センパイが言ってた。花帆ぴょんには、笑っていてほしいって」
花帆「慈センパイは、どんなことがあったとしても、何か計画があるはずだって、花帆ぴょんのことを信じてた」
花帆「そして……梢センパイは、花帆ぴょんが蓮ノ空に帰ってきてくれて、また笑顔を見せてくれることを願ってる」
花帆「──間違いなんかじゃないんだよ、花帆ぴょん! ただ、形が違うだけ。間違いかどうかを決めるのは自分なんだもん!」
花帆ぴょん「! そんな、わけ……」
花帆「慈センパイは、どんなことがあったとしても、何か計画があるはずだって、花帆ぴょんのことを信じてた」
花帆「そして……梢センパイは、花帆ぴょんが蓮ノ空に帰ってきてくれて、また笑顔を見せてくれることを願ってる」
花帆「──間違いなんかじゃないんだよ、花帆ぴょん! ただ、形が違うだけ。間違いかどうかを決めるのは自分なんだもん!」
花帆ぴょん「! そんな、わけ……」
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100: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/21(金) 22:14:00 ID:???00
花帆ぴょん「っ! あ、あなたに……“夢が叶った日野下花帆”に、あたしの何がわかるの……!」
花帆「わかるよ。同じ“日野下花帆”だもん。それに、ちゃんと全員と会って、あたしは話をしてきたから」
花帆ぴょん「……」
花帆「花帆ぴょん。今からでも、遅くないよ! だって、花帆ぴょんが本当に望んでいる夢は……梢センパイと話をして、そして……!」
「──花帆!」
花帆ぴょん「! ……ぁ」
花帆ぴょん「梢……センパイ……」
ザッ…
梢「……花帆」
花帆「わかるよ。同じ“日野下花帆”だもん。それに、ちゃんと全員と会って、あたしは話をしてきたから」
花帆ぴょん「……」
花帆「花帆ぴょん。今からでも、遅くないよ! だって、花帆ぴょんが本当に望んでいる夢は……梢センパイと話をして、そして……!」
「──花帆!」
花帆ぴょん「! ……ぁ」
花帆ぴょん「梢……センパイ……」
ザッ…
梢「……花帆」
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101: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/21(金) 22:15:00 ID:???00
花帆ぴょん「…………ど、どうして……」
梢「この子のおかげで、やっと居場所がわかったの。だから、迎えに来たわ、花帆」
花帆ぴょん「梢センパイ……っ」
梢「花帆。私はずっと、あなたを探していたのよ? 探して、待って……もうすっかり、待ちくたびれてしまったわ」クスッ
梢「さ、帰りましょう、花帆」ニコッ
花帆ぴょん「! ……で、でも! あたしは、梢センパイに合わせる顔なんて……ないのに……」
梢「……それは、どうして?」
花帆ぴょん「っ、だって……! 梢センパイの大切な夢を、高校生活を、あたしのせいで全部ダメにしちゃった、から……」
梢「この子のおかげで、やっと居場所がわかったの。だから、迎えに来たわ、花帆」
花帆ぴょん「梢センパイ……っ」
梢「花帆。私はずっと、あなたを探していたのよ? 探して、待って……もうすっかり、待ちくたびれてしまったわ」クスッ
梢「さ、帰りましょう、花帆」ニコッ
花帆ぴょん「! ……で、でも! あたしは、梢センパイに合わせる顔なんて……ないのに……」
梢「……それは、どうして?」
花帆ぴょん「っ、だって……! 梢センパイの大切な夢を、高校生活を、あたしのせいで全部ダメにしちゃった、から……」
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102: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/21(金) 22:16:00 ID:???00
梢「花帆。私達は何のために夢を叶えようとしていたのか、花帆は答えられる?」
花帆ぴょん「……? それは……梢センパイのため、です。去年の一月、梢センパイを優勝させるってあたしは誓ったから、それで……!」
梢「……本当に、それだけかしら?」
花帆ぴょん「…………え? それ以外になんて、あたしは……」
花帆ぴょん「……? それは……梢センパイのため、です。去年の一月、梢センパイを優勝させるってあたしは誓ったから、それで……!」
梢「……本当に、それだけかしら?」
花帆ぴょん「…………え? それ以外になんて、あたしは……」
0
103: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/21(金) 22:17:01 ID:???00
梢「いいえ。──花帆」サッ
花帆ぴょん「!」
花帆(梢センパイが花帆ぴょんに向かって手を伸ばした。そして、それと同時に──卯辰山に、朝日が差し込む)
花帆(あたしが梢センパイと一緒に見た、あの日の夜を思い出す光景で……すごく、綺麗だった)
梢「……夢は、星のようなもの。その明るさを見上げ、憧れを胸に秘めることで、人は、日々の生活を生きる活力を得ているの」
花帆ぴょん「!」
花帆(梢センパイが花帆ぴょんに向かって手を伸ばした。そして、それと同時に──卯辰山に、朝日が差し込む)
花帆(あたしが梢センパイと一緒に見た、あの日の夜を思い出す光景で……すごく、綺麗だった)
梢「……夢は、星のようなもの。その明るさを見上げ、憧れを胸に秘めることで、人は、日々の生活を生きる活力を得ているの」
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104: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/21(金) 22:18:00 ID:???00
梢「花帆はこの一年間、夢を追うなかで……その瞬間を全力で生きていた。何よりも、輝いていた。その輝きは、すなわち生きる意味にも等しい」
梢「夢を追うのは、生きるため。花帆はそんな、私の憧れた輝くスクールアイドルの生き方を──私に、見せてくれたのよ」ニコッ
花帆ぴょん「あたし、が……」
梢「ええ。私は、限られた時間の中で輝くスクールアイドルが大好き。だから、私にとっての夢は、やっぱり叶っているの」クスッ
梢「花帆自身も、本当は気づいているでしょう? あなたを慕うクラブのみんな……最初は、夢を追うために茨の道を進もうとした。でも、それでも」
梢「夢を追うのは、生きるため。花帆はそんな、私の憧れた輝くスクールアイドルの生き方を──私に、見せてくれたのよ」ニコッ
花帆ぴょん「あたし、が……」
梢「ええ。私は、限られた時間の中で輝くスクールアイドルが大好き。だから、私にとっての夢は、やっぱり叶っているの」クスッ
梢「花帆自身も、本当は気づいているでしょう? あなたを慕うクラブのみんな……最初は、夢を追うために茨の道を進もうとした。でも、それでも」
0
105: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/21(金) 22:19:00 ID:???00
梢「そんな、危険な道に九人で進んだこと、その思い出は……“大好き”なものだった」
花帆ぴょん「!」
梢「私も、花帆も……後悔はしていないはずよ。だってこんなにも、素敵な夢を見れたのだから」クスッ
花帆ぴょん「そっか…………そう、だったんですね。あたしずっと、この時間が──好き、だったんだ」
花帆ぴょん「!」
梢「私も、花帆も……後悔はしていないはずよ。だってこんなにも、素敵な夢を見れたのだから」クスッ
花帆ぴょん「そっか…………そう、だったんですね。あたしずっと、この時間が──好き、だったんだ」
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106: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/21(金) 22:20:00 ID:???00
花帆「! ……うん! そう、そうだよ、花帆ぴょん!!」ギュッ
花帆ぴょん「!? わ、わわ!?」バタッ
花帆(居てもたってもいられず、あたしは花帆ぴょんのところに飛び込む! ほとんど、無意識のうちの行動だった)
花帆「絶対に、絶対に、間違ってない! 花帆ぴょんも、花咲けるんだよ!」ギュー
花帆ぴょん「……!」
花帆「良かった……本当に、あたし……」グスッ
花帆ぴょん「もう……自分で自分のことをこんなに心配するなんて……」クスッ
花帆ぴょん「……でも、うん。ありがとう、花帆ちゃん」ニコッ
花帆ぴょん「!? わ、わわ!?」バタッ
花帆(居てもたってもいられず、あたしは花帆ぴょんのところに飛び込む! ほとんど、無意識のうちの行動だった)
花帆「絶対に、絶対に、間違ってない! 花帆ぴょんも、花咲けるんだよ!」ギュー
花帆ぴょん「……!」
花帆「良かった……本当に、あたし……」グスッ
花帆ぴょん「もう……自分で自分のことをこんなに心配するなんて……」クスッ
花帆ぴょん「……でも、うん。ありがとう、花帆ちゃん」ニコッ
0
107: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/21(金) 22:21:01 ID:???00
梢「花帆、私からも……お礼を言わせてちょうだい。おかげで、またミライに向かって私達は進んでいけるわ」
花帆「梢センパイ……! いえ、あたしも……色々と、ありがとうございました!」
花帆(あたしがこの世界で、“自分探し”を終えることができたのは、あたし一人の力じゃなかった)
花帆(みんなが、センパイが、なにより花帆ぴょんが……あたしにもう一度気づかせてくれたんだ。夢、大切なことを)
花帆「梢センパイ……! いえ、あたしも……色々と、ありがとうございました!」
花帆(あたしがこの世界で、“自分探し”を終えることができたのは、あたし一人の力じゃなかった)
花帆(みんなが、センパイが、なにより花帆ぴょんが……あたしにもう一度気づかせてくれたんだ。夢、大切なことを)
0
108: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/21(金) 22:22:00 ID:???00
チュンチュン…
花帆ぴょん「あ、もうすっかり、朝になっちゃいましたね……」
梢「ええ。さぁ、蓮ノ空に帰りましょう、花帆。クラブのみんなが待ってるわ」ニコッ
花帆ぴょん「そうですね……」ジー
花帆ぴょん「……あ、その前に、梢センパイ。少しだけ、待っててもらっても良いですか?」チラッ
梢「! ふふっ、ええ。もちろんよ」クスッ
花帆「?」
タタッ
花帆ぴょん「…………花帆ちゃん!!」
花帆ぴょん「あたしも、花帆ちゃんのおかげで、新しい夢ができたんだ! それは──」
花帆ぴょん「あ、もうすっかり、朝になっちゃいましたね……」
梢「ええ。さぁ、蓮ノ空に帰りましょう、花帆。クラブのみんなが待ってるわ」ニコッ
花帆ぴょん「そうですね……」ジー
花帆ぴょん「……あ、その前に、梢センパイ。少しだけ、待っててもらっても良いですか?」チラッ
梢「! ふふっ、ええ。もちろんよ」クスッ
花帆「?」
タタッ
花帆ぴょん「…………花帆ちゃん!!」
花帆ぴょん「あたしも、花帆ちゃんのおかげで、新しい夢ができたんだ! それは──」
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109: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/21(金) 22:23:00 ID:???00
花帆「!」
花帆(その言葉を、夢を聞いた瞬間、また……来たときと同じ、“落ちる”感覚があたしに襲いかかる)
花帆「……花帆ぴょん! それ、すっごく素敵な夢だね! あたし、応援するよ!」
花帆(残された時間で、あたしは精一杯叫ぶ。そうして意識が落ちる寸前、最後に見たのは……)
花帆ぴょん「うん! 絶対、叶えてみせるよ!」ニコッ
花帆(花咲いた花帆ぴょんの、幸せな笑顔だった)
花帆(その言葉を、夢を聞いた瞬間、また……来たときと同じ、“落ちる”感覚があたしに襲いかかる)
花帆「……花帆ぴょん! それ、すっごく素敵な夢だね! あたし、応援するよ!」
花帆(残された時間で、あたしは精一杯叫ぶ。そうして意識が落ちる寸前、最後に見たのは……)
花帆ぴょん「うん! 絶対、叶えてみせるよ!」ニコッ
花帆(花咲いた花帆ぴょんの、幸せな笑顔だった)
0
110: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/21(金) 22:24:00 ID:???00
────
花帆「──んん……」
花帆「あれ……ここ、は……」パチリ
花帆(眩しい日差し……まさしく春の陽気に満ちた、という雰囲気の光景が、あたしの目の前には広がっていて)
花帆「……!! ここって…………そっか。あたし、戻ってこれたんだ……」ポツリ
花帆(──卯辰山。あたしの夢が、始まった場所)
花帆「──んん……」
花帆「あれ……ここ、は……」パチリ
花帆(眩しい日差し……まさしく春の陽気に満ちた、という雰囲気の光景が、あたしの目の前には広がっていて)
花帆「……!! ここって…………そっか。あたし、戻ってこれたんだ……」ポツリ
花帆(──卯辰山。あたしの夢が、始まった場所)
0
111: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/21(金) 22:25:00 ID:???00
花帆「さっきまでと違って、すっごく暖かい……三月、だもんね」
花帆(三月──それは、別れと出会いの季節。その訪れは、誰にも止められない自然のもの)
花帆(……前までのあたしなら、それ自体に少し憂鬱な気分にさせられて、立ち止まっちゃってたかもしれない)
花帆「でも……!」グッ
花帆(“自分探し”の結果……あたしは、あたしの夢に改めて向き合うことができた。あたしにはちゃんと、叶えたい“夢”がある)
花帆(三月──それは、別れと出会いの季節。その訪れは、誰にも止められない自然のもの)
花帆(……前までのあたしなら、それ自体に少し憂鬱な気分にさせられて、立ち止まっちゃってたかもしれない)
花帆「でも……!」グッ
花帆(“自分探し”の結果……あたしは、あたしの夢に改めて向き合うことができた。あたしにはちゃんと、叶えたい“夢”がある)
0
112: ◆Ww1YypGq★ 2025/03/21(金) 22:26:00 ID:???00
花帆「……うん。大丈夫」
花帆(花帆ぴょんも今ごろ、新しい夢に向かって走り始めてる。あたしも……負けてられない!)
花帆「よーし! あたしも、帰らなきゃ! ──蓮ノ空に!」
花帆(絶対にあたし、日本中の……ううん、あらゆる“世界”中のみんなを花咲かせるスクールアイドルになるぞー!)グッ
おしまい
花帆(花帆ぴょんも今ごろ、新しい夢に向かって走り始めてる。あたしも……負けてられない!)
花帆「よーし! あたしも、帰らなきゃ! ──蓮ノ空に!」
花帆(絶対にあたし、日本中の……ううん、あらゆる“世界”中のみんなを花咲かせるスクールアイドルになるぞー!)グッ
おしまい
引用元: https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/11224/1742475603/