1:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:00:01 ID:???00
※アンペア風、活動記録と別時空の終末世界観
2:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:01:00 ID:???00
さやか「この辺りも、だいぶ荒れ果てていますね……まぁ、こんな世界ですし仕方がありませんが」
さやか「……さて、と。昼食を食べる間に、今日うかがう方の居場所を確認しておかなければ……」
「……」コソコソ
さやか「!」
「……」ソー
さやか「そこ──盗み食いはダメですよ、小さなコソ泥さん?」ギュッ
「!?? っ…………か、徒町は、ただ猛烈にお腹が空いて、食べ物を奪いにきただけの旅人です……は、離してください……!」
さやか「食べ物を奪うのは良くないことです、が……理由をきちんと話すあたり、どうやら泥棒にしては礼儀正しいようですね」チラッ
さやか「……」ジー
「…………?? な、なんですか?」
さやか「……いえ。あの人も、こういう気持ちだったのかと思いまして。あなたのお名前、うかがっても構いませんか?」
「? 名前……? え、っと」
小鈴「……徒町小鈴、ですけど、それが何か……」
さやか「小鈴さん。良ければなんですが……」コホン
さやか「──わたしと“一緒に”お昼ご飯を食べましょうか」ニコッ
さやか「……さて、と。昼食を食べる間に、今日うかがう方の居場所を確認しておかなければ……」
「……」コソコソ
さやか「!」
「……」ソー
さやか「そこ──盗み食いはダメですよ、小さなコソ泥さん?」ギュッ
「!?? っ…………か、徒町は、ただ猛烈にお腹が空いて、食べ物を奪いにきただけの旅人です……は、離してください……!」
さやか「食べ物を奪うのは良くないことです、が……理由をきちんと話すあたり、どうやら泥棒にしては礼儀正しいようですね」チラッ
さやか「……」ジー
「…………?? な、なんですか?」
さやか「……いえ。あの人も、こういう気持ちだったのかと思いまして。あなたのお名前、うかがっても構いませんか?」
「? 名前……? え、っと」
小鈴「……徒町小鈴、ですけど、それが何か……」
さやか「小鈴さん。良ければなんですが……」コホン
さやか「──わたしと“一緒に”お昼ご飯を食べましょうか」ニコッ
3:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:02:00 ID:???00
小鈴「………………は、はい!!? 徒町は盗みをはたらくくらいですし、食べ物なんて持ってませんよ!?」
さやか「ええ。それはもちろん、わかっています。なので……わたしが小鈴さんのために、食事を振る舞おうかと」フフッ
小鈴「!?!? ど、泥棒である徒町に、情けをかけるなんて……な、何が目的ですか……?」
さやか「あぁ、いえ、別に見返りを求めているわけではありませんよ。ただ……期待に応えるため、です」ニコッ
さやか「……わたしも昔、ある人に同じようなことをされましたから」ポツリ
小鈴「……?」
さやか「ええ。それはもちろん、わかっています。なので……わたしが小鈴さんのために、食事を振る舞おうかと」フフッ
小鈴「!?!? ど、泥棒である徒町に、情けをかけるなんて……な、何が目的ですか……?」
さやか「あぁ、いえ、別に見返りを求めているわけではありませんよ。ただ……期待に応えるため、です」ニコッ
さやか「……わたしも昔、ある人に同じようなことをされましたから」ポツリ
小鈴「……?」
4:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:03:00 ID:???00
小鈴「よ、よくわかりませんが……徒町、この終末世界で人を信じるほど警戒心が薄いわけではありません! どうかお引き取りを……」
さやか「……本当にいいんですか?」
小鈴「え?」
さやか「小鈴さんが良ければ今、即席で、出来立て熱々のとっても美味しい料理を作るんですが……」チラッ
小鈴「!! あ、熱々のとっても美味しい料理……」ハッ
小鈴「…………そ、そんなあからさまな餌に釣られるような徒町では……」グゥ
小鈴「! っ……」グゥゥ
さやか「ふふっ、小鈴さん、思わず盗みをはたらく程にはお腹が空いてるんですよね? さて、どうですか?」ニコッ
小鈴「ぅ…………」
小鈴「……徒町の負け、です。……どうかご相伴に預からせてください……」ペコリ
さやか「ふふ、素直な子は好きですよ。すぐに作りますので、期待して待っていてください」ニコッ
さやか「……本当にいいんですか?」
小鈴「え?」
さやか「小鈴さんが良ければ今、即席で、出来立て熱々のとっても美味しい料理を作るんですが……」チラッ
小鈴「!! あ、熱々のとっても美味しい料理……」ハッ
小鈴「…………そ、そんなあからさまな餌に釣られるような徒町では……」グゥ
小鈴「! っ……」グゥゥ
さやか「ふふっ、小鈴さん、思わず盗みをはたらく程にはお腹が空いてるんですよね? さて、どうですか?」ニコッ
小鈴「ぅ…………」
小鈴「……徒町の負け、です。……どうかご相伴に預からせてください……」ペコリ
さやか「ふふ、素直な子は好きですよ。すぐに作りますので、期待して待っていてください」ニコッ
5:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:04:00 ID:???00
さやか「さて。ではさっそく……」
カチャ チチチ…
小鈴「……! け、携帯コンロ……火を使って料理をするところなんて、徒町、直接見るのは人生で初めてです!」ジー
さやか「おや、そうだったんですね。では普段……あまりそういった類の食事は摂っていない、ということでしょうか?」
小鈴「え、は、はい。その……徒町、缶詰とかラムネとかの保存食? くらいしか食べたことがないので……」
カチャ チチチ…
小鈴「……! け、携帯コンロ……火を使って料理をするところなんて、徒町、直接見るのは人生で初めてです!」ジー
さやか「おや、そうだったんですね。では普段……あまりそういった類の食事は摂っていない、ということでしょうか?」
小鈴「え、は、はい。その……徒町、缶詰とかラムネとかの保存食? くらいしか食べたことがないので……」
6:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:05:00 ID:???00
さやか「……なるほど。こんな世界だと、そういう食生活にも自然となってしまいますよね」フム
さやか「栄養のある食材については、わたしの場合……頼れる食料担当がいるので、幸いにも大丈夫ですが」
小鈴「食料担当って、あの……」チラッ
鶏「コッコー」
小鈴「……さっきからずっとそこに居る、あの鳥のことですか?」
さやか「あぁ、ぺきん・だっくですね」クスッ
さやか「栄養のある食材については、わたしの場合……頼れる食料担当がいるので、幸いにも大丈夫ですが」
小鈴「食料担当って、あの……」チラッ
鶏「コッコー」
小鈴「……さっきからずっとそこに居る、あの鳥のことですか?」
さやか「あぁ、ぺきん・だっくですね」クスッ
7:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:06:00 ID:???00
小鈴「…………だっく??」
さやか「ぺきん・だっくです。彼女は、わたしの大切な人から託された……とても頼りになる、食料担当なんですよ」フフッ
さやか「彼女が産む卵は、栄養豊富で美味しいですし……こうやって焼くだけで料理になりますから、重宝しています」
ジュージュー…パチッ…
小鈴「! 美味しそう……」
さやか「ぺきん・だっくです。彼女は、わたしの大切な人から託された……とても頼りになる、食料担当なんですよ」フフッ
さやか「彼女が産む卵は、栄養豊富で美味しいですし……こうやって焼くだけで料理になりますから、重宝しています」
ジュージュー…パチッ…
小鈴「! 美味しそう……」
8:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:07:00 ID:???00
小鈴「……あの、これはなんてお名前の料理なんですか? 徒町、卵というものさえ初めて見たので……」
さやか「この料理の名前ですか? これは“目玉焼き”ですよ」
小鈴「…………!?? め、目玉を食べる料理だったんですか、これ!?」
さやか「あぁ、いえ。お魚が生存していた頃は、そういう料理もあったと言いますが……今の海は完全に汚染されていますから」
さやか「“目玉焼き”は、卵を焼いた見た目が目玉に見えるのが由来の料理です。昔は朝食として、よく食されていたと聞きますね」
さやか「この料理の名前ですか? これは“目玉焼き”ですよ」
小鈴「…………!?? め、目玉を食べる料理だったんですか、これ!?」
さやか「あぁ、いえ。お魚が生存していた頃は、そういう料理もあったと言いますが……今の海は完全に汚染されていますから」
さやか「“目玉焼き”は、卵を焼いた見た目が目玉に見えるのが由来の料理です。昔は朝食として、よく食されていたと聞きますね」
9:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:08:00 ID:???00
さやか「さて……そんな話をしているうちに、すっかり焼けましたよ。さぁ、小鈴さん」サッ
小鈴「……! ご、ごくり…………あっ、あの! 徒町、これ、た、食べてもいいんですよね??」グゥゥ
さやか「ふふ、待ちきれないみたいですが……食事の前には、『いただきます』を言うのがマナーですよ」フフッ
小鈴「あ……えと、い、いただきます……!」パンッ
小鈴「……! ご、ごくり…………あっ、あの! 徒町、これ、た、食べてもいいんですよね??」グゥゥ
さやか「ふふ、待ちきれないみたいですが……食事の前には、『いただきます』を言うのがマナーですよ」フフッ
小鈴「あ……えと、い、いただきます……!」パンッ
10:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:09:00 ID:???00
小鈴「えっと……そもそも、まずこれは……全部食べられる、んですよね?」
さやか「ええ。特に卵黄である黄身の部分には、たっぷりと栄養が詰まっていますから、残さず食べてくださいね」ニコッ
小鈴「は、はい! はむっ……んん、ん」ゴクッ
小鈴「……!」パァァ
さやか「お味はいかがですか?」
小鈴「その……えっと」
小鈴「……この、黄身? の部分はトロトロなのに、白い部分のふちはカリカリに焼けてて……美味しいです、とても……!!」
さやか「ふふっ、お口にあったようで何よりです」ニコッ
小鈴「…………あ、あの……!」ガタッ
さやか「ええ。特に卵黄である黄身の部分には、たっぷりと栄養が詰まっていますから、残さず食べてくださいね」ニコッ
小鈴「は、はい! はむっ……んん、ん」ゴクッ
小鈴「……!」パァァ
さやか「お味はいかがですか?」
小鈴「その……えっと」
小鈴「……この、黄身? の部分はトロトロなのに、白い部分のふちはカリカリに焼けてて……美味しいです、とても……!!」
さやか「ふふっ、お口にあったようで何よりです」ニコッ
小鈴「…………あ、あの……!」ガタッ
11:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:10:00 ID:???00
小鈴「もしや、あなたは料理人なのでしょうか? こんなに美味しいものを作れるなんて、徒町が知る限りではそれしか思い至らず……」
さやか「あぁ……いえ、違いますよ」コホン
小鈴「? では一体……?」
さやか「……わたしは、この終末世界を“カウンセラー”のお仕事をしながら周っている者です」ニコッ
小鈴「……? かうん…………何ですか、それ?」
さやか「カウンセラー。人の精神を癒す、専門職のことですね」
さやか「あぁ……いえ、違いますよ」コホン
小鈴「? では一体……?」
さやか「……わたしは、この終末世界を“カウンセラー”のお仕事をしながら周っている者です」ニコッ
小鈴「……? かうん…………何ですか、それ?」
さやか「カウンセラー。人の精神を癒す、専門職のことですね」
12:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:11:00 ID:???00
さやか「こんな時代ですので、心理士の資格や専門の学校で勉強した経験も無い、ある意味では闇医者のような者ですが……」
さやか「以前ある人に習った知識を活かし……人の心を癒すことでその方の生を導くような、そんな活動をわたしはしています」
小鈴「え……どうしてこんな荒れ果てた世界で、わざわざ人に関わる活動を? 徒町が思うに、ものすごく危険なのでは……」
さやか「……こんな世界だからこそ、ですよ。希望を失って苦しい時代、人は、人による温もりを……癒しを、求めるんです」
さやか「それに何より、期待に応えることができるこの活動自体が──わたし自身の“生きる意味”ですから」
小鈴「!」
さやか「以前ある人に習った知識を活かし……人の心を癒すことでその方の生を導くような、そんな活動をわたしはしています」
小鈴「え……どうしてこんな荒れ果てた世界で、わざわざ人に関わる活動を? 徒町が思うに、ものすごく危険なのでは……」
さやか「……こんな世界だからこそ、ですよ。希望を失って苦しい時代、人は、人による温もりを……癒しを、求めるんです」
さやか「それに何より、期待に応えることができるこの活動自体が──わたし自身の“生きる意味”ですから」
小鈴「!」
13:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:12:00 ID:???00
さやか「小鈴さんにも、きっとあるんじゃないですか? こんな終末世界ですし……生きる意味や、目的のようなものが」
小鈴「……えぇと」
さやか「先程の盗み食いは、明らかにダメな行いですけど……生きるために必要な行為とも言えますし」コホン
さやか「小鈴さんが、そうまでして旅を続けていた理由……差し支えなければ、聞かせてもらえるとわたしも嬉しいですね」ニコッ
小鈴「………………目的は、ないと言いますか……その……」
さやか「…………小鈴さん?」
小鈴「……」
小鈴「徒町、は」
小鈴「…………何者にもなれないで終わるのが、嫌、だっただけなんです」
小鈴「……えぇと」
さやか「先程の盗み食いは、明らかにダメな行いですけど……生きるために必要な行為とも言えますし」コホン
さやか「小鈴さんが、そうまでして旅を続けていた理由……差し支えなければ、聞かせてもらえるとわたしも嬉しいですね」ニコッ
小鈴「………………目的は、ないと言いますか……その……」
さやか「…………小鈴さん?」
小鈴「……」
小鈴「徒町、は」
小鈴「…………何者にもなれないで終わるのが、嫌、だっただけなんです」
14:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:13:00 ID:???00
さやか「……!」
小鈴「その……そもそも徒町は、何かすごいことを一つぶち上げられるようになりたくて家を飛び出したんです」
小鈴「……徒町、いつも失敗ばかりで何もできなくて。危ないことしないで、って昔からずっと、家族に守られていて」
小鈴「でも、だからこそ……このままじゃダメだと勢いのまま、家族のもとを離れ、一人旅を始めたんですが……食料は尽き」
小鈴「苦しくて、やけっぱちで行った盗み食いも失敗……やはり、徒町は何者にもなれないのだと思い知りました」
さやか「……」
小鈴「……なのでもう、この世界で夢……というか“生きる意味”なんて、今の徒町は持ち合わせていません……」シュン
さやか「…………小鈴さん」
小鈴「……はっ! す、すみません! 聞かれてもいないのに、徒町は勝手にペラペラ自分語りを……!」アワアワ
小鈴「その……そもそも徒町は、何かすごいことを一つぶち上げられるようになりたくて家を飛び出したんです」
小鈴「……徒町、いつも失敗ばかりで何もできなくて。危ないことしないで、って昔からずっと、家族に守られていて」
小鈴「でも、だからこそ……このままじゃダメだと勢いのまま、家族のもとを離れ、一人旅を始めたんですが……食料は尽き」
小鈴「苦しくて、やけっぱちで行った盗み食いも失敗……やはり、徒町は何者にもなれないのだと思い知りました」
さやか「……」
小鈴「……なのでもう、この世界で夢……というか“生きる意味”なんて、今の徒町は持ち合わせていません……」シュン
さやか「…………小鈴さん」
小鈴「……はっ! す、すみません! 聞かれてもいないのに、徒町は勝手にペラペラ自分語りを……!」アワアワ
15:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:14:00 ID:???00
小鈴「えと、徒町、あなたに頂いた一飯の恩は絶対に忘れません! ですので、これにて徒町は失礼し──」
さやか「いえ、少し待ってもらえますか、小鈴さん」ギュッ
小鈴「っ……!? あ、あの……!?」
さやか「……小鈴さん。一つご提案があるんですが、どうか、聞いてはいただけませんか?」
小鈴「……? 提案?」
さやか「はい。初めて会ったばかりで唐突ですけれど……小鈴さん。──わたしと一緒に、来ませんか?」
さやか「いえ、少し待ってもらえますか、小鈴さん」ギュッ
小鈴「っ……!? あ、あの……!?」
さやか「……小鈴さん。一つご提案があるんですが、どうか、聞いてはいただけませんか?」
小鈴「……? 提案?」
さやか「はい。初めて会ったばかりで唐突ですけれど……小鈴さん。──わたしと一緒に、来ませんか?」
16:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:15:00 ID:???00
小鈴「…………え? それは、どういう……?」
さやか「詳しく言うと、小鈴さんにはわたしの……“終末世界を巡る旅路”に、同行してほしいんです」
小鈴「え、えぇと……??」
小鈴「……あの、別にあなたの善意をふいにしたいわけではありませんが、何故こんな徒町にそんな提案を……?」
さやか「理由は二つあります」コホン
小鈴「二つも……!?」
さやか「ええ。小鈴さんのお話を聞いて、思ったんです」
さやか「今現在、夢……“生きる意味”が持てないのなら、それを新しくわたしの元で探してみてほしい、というのが一つ」コホン
小鈴「……!」
さやか「そしてもう一つは……」
さやか「小鈴さんには──わたしの後継者になってもらおうかと」ニコッ
さやか「詳しく言うと、小鈴さんにはわたしの……“終末世界を巡る旅路”に、同行してほしいんです」
小鈴「え、えぇと……??」
小鈴「……あの、別にあなたの善意をふいにしたいわけではありませんが、何故こんな徒町にそんな提案を……?」
さやか「理由は二つあります」コホン
小鈴「二つも……!?」
さやか「ええ。小鈴さんのお話を聞いて、思ったんです」
さやか「今現在、夢……“生きる意味”が持てないのなら、それを新しくわたしの元で探してみてほしい、というのが一つ」コホン
小鈴「……!」
さやか「そしてもう一つは……」
さやか「小鈴さんには──わたしの後継者になってもらおうかと」ニコッ
17:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:16:00 ID:???00
小鈴「…………え、こ、こうけいしゃ??」
さやか「はい。実は……わたしの後を継いで、カウンセリングをしてくれる人をずっと探してたんです。なにせ、最近は忙しく……」
さやか「人の癒しを必要としている存在は、想像よりも多くいます。わたしの手では、取りこぼしてしまうくらいに」
小鈴「あ、えと、だから……徒町を?」
さやか「ええ。生きる目的がないのなら、そういう生き方、そういった世界のことも、小鈴さんに知ってほしい……と」
さやか「それに小鈴さんのそのきらめきは……わたしの理想そのものだと、最初から密かに思っていたんですよ」クスッ
さやか「はい。実は……わたしの後を継いで、カウンセリングをしてくれる人をずっと探してたんです。なにせ、最近は忙しく……」
さやか「人の癒しを必要としている存在は、想像よりも多くいます。わたしの手では、取りこぼしてしまうくらいに」
小鈴「あ、えと、だから……徒町を?」
さやか「ええ。生きる目的がないのなら、そういう生き方、そういった世界のことも、小鈴さんに知ってほしい……と」
さやか「それに小鈴さんのそのきらめきは……わたしの理想そのものだと、最初から密かに思っていたんですよ」クスッ
18:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:17:00 ID:???00
小鈴「……後継者、カウンセリング…………もしかしたらこれは、徒町が何者かになれるチャンス? でも、果たして……」ウーン
さやか「……どうですか、小鈴さん?」
小鈴「その…………徒町自身、そんな重大な決断、すぐにはできないというか。す、すみません、優柔不断な徒町です……!」
さやか「そう、ですか。……いえ、こちらも答えを急ぎすぎましたね」コホン
さやか「それでしたら、幸いにもちょうど時間なので……実際に見てから、小鈴さんの考えを聞かせてはもらえませんか?」
小鈴「? 時間、って何のですか?」
さやか「──カウンセリング、ですよ。まもなく、予約していただいた相談者のもとに向かうところなんです。なので……」
さやか「……どうですか、小鈴さん?」
小鈴「その…………徒町自身、そんな重大な決断、すぐにはできないというか。す、すみません、優柔不断な徒町です……!」
さやか「そう、ですか。……いえ、こちらも答えを急ぎすぎましたね」コホン
さやか「それでしたら、幸いにもちょうど時間なので……実際に見てから、小鈴さんの考えを聞かせてはもらえませんか?」
小鈴「? 時間、って何のですか?」
さやか「──カウンセリング、ですよ。まもなく、予約していただいた相談者のもとに向かうところなんです。なので……」
19:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:18:00 ID:???00
────
小鈴「……ほ、本当に徒町が着いてきてよかったんですか??」
さやか「ええ。実のところ、現場を見ていただくのが一番早いですから。……さて、地図によるとこの辺りですが……」チラッ
「──誰だ!!」
小鈴「……ほ、本当に徒町が着いてきてよかったんですか??」
さやか「ええ。実のところ、現場を見ていただくのが一番早いですから。……さて、地図によるとこの辺りですが……」チラッ
「──誰だ!!」
20:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:19:00 ID:???00
小鈴「!?」ビクッ
さやか「…………桂城泉さん、ですね? 警戒を解いていただけますか?」
「……!」
さやか「わたしは……今回カウンセリングをさせていただく、村野さやかです。怪しいものではありません」
「……」ジー
ガサッ
泉「……ふむ、嘘ではなさそうだ」
さやか「…………桂城泉さん、ですね? 警戒を解いていただけますか?」
「……!」
さやか「わたしは……今回カウンセリングをさせていただく、村野さやかです。怪しいものではありません」
「……」ジー
ガサッ
泉「……ふむ、嘘ではなさそうだ」
21:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:20:00 ID:???00
泉「どうやら……私の送った手紙は無事あなたに届いていたようだね。鶏が文書を運んでくれるなんて、半信半疑だったんだが」
小鈴「あ、ぺきん・だっくってそういうこともできるんですね……」
さやか「彼女は食料担当でありながら、仕事の連絡担当でもあるので。……さて」コホン
さやか「早速ですが、今回の相談者──“セラス柳田リリエンフェルト”さんはどちらにいらっしゃいますか?」
小鈴「あ、ぺきん・だっくってそういうこともできるんですね……」
さやか「彼女は食料担当でありながら、仕事の連絡担当でもあるので。……さて」コホン
さやか「早速ですが、今回の相談者──“セラス柳田リリエンフェルト”さんはどちらにいらっしゃいますか?」
22:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:21:00 ID:???00
泉「……セラスは、少し奥で休んでいるよ。私以外に対しては、すっかり怯えてしまっている様子で、外には出られなくてね」
さやか「ふむ……なるほど。こんな世界ですし、仕方ありません」
泉「私は……セラスが“夢”を追っている姿を見るのが好きでね。彼女の為であれば、此の命さえ捧げる覚悟をも持っている」
小鈴「! 夢……」ポツリ
泉「だからこそ、私が生きるためにも、セラスには笑っていてほしいんだ。なので今回、こうして連絡をさせて頂いた」
さやか「ふむ……なるほど。こんな世界ですし、仕方ありません」
泉「私は……セラスが“夢”を追っている姿を見るのが好きでね。彼女の為であれば、此の命さえ捧げる覚悟をも持っている」
小鈴「! 夢……」ポツリ
泉「だからこそ、私が生きるためにも、セラスには笑っていてほしいんだ。なので今回、こうして連絡をさせて頂いた」
23:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:22:00 ID:???00
さやか「……ええ、わたしを頼りにしていただき、ありがとうございます。期待には、必ず応えさせて頂きますよ」
泉「そうしてくれると助かるよ。セラスの笑顔が失われてしまって以降、その体調も急に悪化してね……八方塞がりだったんだ」
さやか「体調も、ですか……」フム
小鈴「? 精神が健康に影響した、ってことでしょうか……?」
さやか「ふむ……そうですね。病は気から、とも言いますが……実際、心が磨耗した状態では身体にも影響が出てしまいます」
さやか「ですが……逆に言えば、心が癒されることで身体の健康も改善する、ということにもなりますね」
泉「……!」
さやか「泉さん。慌ただしくさせてしまって申し訳ないですが、セラスさんの居場所まで、すぐ連れて行っていただけますか?」
泉「ああ……ああ、もちろん。あなたの言うことならば、一向に構わないよ」
泉「しかし、そちらの方については……?」チラッ
小鈴「! か、徒町は、えぇと……」ワタワタ
泉「そうしてくれると助かるよ。セラスの笑顔が失われてしまって以降、その体調も急に悪化してね……八方塞がりだったんだ」
さやか「体調も、ですか……」フム
小鈴「? 精神が健康に影響した、ってことでしょうか……?」
さやか「ふむ……そうですね。病は気から、とも言いますが……実際、心が磨耗した状態では身体にも影響が出てしまいます」
さやか「ですが……逆に言えば、心が癒されることで身体の健康も改善する、ということにもなりますね」
泉「……!」
さやか「泉さん。慌ただしくさせてしまって申し訳ないですが、セラスさんの居場所まで、すぐ連れて行っていただけますか?」
泉「ああ……ああ、もちろん。あなたの言うことならば、一向に構わないよ」
泉「しかし、そちらの方については……?」チラッ
小鈴「! か、徒町は、えぇと……」ワタワタ
24:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:23:00 ID:???00
さやか「ご心配なく。この子は、今は見習いですが……わたしの後継者候補なので。良ければ見学させようか、と」
泉「ん、こんな時代に後継……? ……ああ、そういうことか」
泉「……了承した。どうやら、あなた方は先を急いでいるようだし、押し問答は不要だろう」
さやか「ご配慮、感謝いたします」ペコリ
泉「ふむ……では、早速セラスの元に案内しよう。こっちだ」
泉「ん、こんな時代に後継……? ……ああ、そういうことか」
泉「……了承した。どうやら、あなた方は先を急いでいるようだし、押し問答は不要だろう」
さやか「ご配慮、感謝いたします」ペコリ
泉「ふむ……では、早速セラスの元に案内しよう。こっちだ」
25:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:24:00 ID:???00
────
泉「──セラス。話を聞いてくれる優しい方々が、遠方から来てくれたよ」
小鈴「し、失礼します……」
さやか「……!」チラッ
セラス「けほっ……怖い……怖いよ。助けて花ちゃん……」ブルブル
泉「──セラス。話を聞いてくれる優しい方々が、遠方から来てくれたよ」
小鈴「し、失礼します……」
さやか「……!」チラッ
セラス「けほっ……怖い……怖いよ。助けて花ちゃん……」ブルブル
26:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:25:00 ID:???00
泉「……セラス、大丈夫だ。悪い人はここには来ない。私があなたを守ると、契約しただろう?」
セラス「泉…………でもやっぱり、わたしは……」ブルブル
さやか「──はじめまして、セラスさん」ニコッ
セラス「! あ、えっと……あなたが、泉が連れてきた優しいお姉さん……?」
さやか「ええ、村野さやかと言います。……さて」コホン
さやか「セラスさん。ゆっくりでいいので……わたしに聞かせていただけますか? あなたの持つ、不安を」
セラス「泉…………でもやっぱり、わたしは……」ブルブル
さやか「──はじめまして、セラスさん」ニコッ
セラス「! あ、えっと……あなたが、泉が連れてきた優しいお姉さん……?」
さやか「ええ、村野さやかと言います。……さて」コホン
さやか「セラスさん。ゆっくりでいいので……わたしに聞かせていただけますか? あなたの持つ、不安を」
27:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:26:00 ID:???00
セラス「え、っと……」
セラス「……」
セラス「……わたし」
セラス「ある人に…………“花ちゃん”に会いたいんです」ポツリ
小鈴「……? はなちゃん?」
セラス「あ、えっと、花ちゃんっていうのは……昔、長野の病院で一緒に過ごしてた、わたしの大好きなお友達のことで……」
さやか「ええ、知っていますよ。──“日野下花帆”さん、ですよね?」
セラス「……」
セラス「……わたし」
セラス「ある人に…………“花ちゃん”に会いたいんです」ポツリ
小鈴「……? はなちゃん?」
セラス「あ、えっと、花ちゃんっていうのは……昔、長野の病院で一緒に過ごしてた、わたしの大好きなお友達のことで……」
さやか「ええ、知っていますよ。──“日野下花帆”さん、ですよね?」
28:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:27:00 ID:???00
セラス「え! ……けほっ、な、なんでお姉さんが花ちゃんのことを……」
泉「おや……驚いたね。あなたは、セラスの言う“花ちゃん”に心当たりがあるかい?」
さやか「ええ。斯くいうわたしは、花帆さんの親友ですから。花帆さんから以前、仲のいい病院友達のことを伺っていて……」
さやか「今回、相談者のお名前を拝見したときにもしやと思ったんですが……実際その通りだったみたいですね」
セラス「……そ、っか。お姉さんは、花ちゃんと知り合い……あの、花ちゃんは元気にしてますか……?」
さやか「ええ。前に会ったときは変わりなく。花帆さんは今、ここから南に進んだ地にいるはずですが……」
セラス「あ…………それは風の噂で知ってます、でも……」ポツリ
セラス「……」
さやか「……会いに行くのが怖い、ですか?」
セラス「…………はい」コクリ
泉「おや……驚いたね。あなたは、セラスの言う“花ちゃん”に心当たりがあるかい?」
さやか「ええ。斯くいうわたしは、花帆さんの親友ですから。花帆さんから以前、仲のいい病院友達のことを伺っていて……」
さやか「今回、相談者のお名前を拝見したときにもしやと思ったんですが……実際その通りだったみたいですね」
セラス「……そ、っか。お姉さんは、花ちゃんと知り合い……あの、花ちゃんは元気にしてますか……?」
さやか「ええ。前に会ったときは変わりなく。花帆さんは今、ここから南に進んだ地にいるはずですが……」
セラス「あ…………それは風の噂で知ってます、でも……」ポツリ
セラス「……」
さやか「……会いに行くのが怖い、ですか?」
セラス「…………はい」コクリ
29:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:28:00 ID:???00
セラス「……この世界でわたしは、泉以外に頼れる人を見つけられませんでした。もし、花ちゃんが近くに居てくれたら……そう、何度も思ったんです」
セラス「だけど……この荒れ果てた世界を南に向かうとなると、その道中はきっと簡単じゃない、から」
さやか「……」
セラス「……わたし、今いる安全な場所から出ていくのが怖いんです。だけどここも、花ちゃんがいないから、怖くて……」
さやか「……それで、悩みが堂々巡りになってしまっている、というわけですね」
セラス「だけど……この荒れ果てた世界を南に向かうとなると、その道中はきっと簡単じゃない、から」
さやか「……」
セラス「……わたし、今いる安全な場所から出ていくのが怖いんです。だけどここも、花ちゃんがいないから、怖くて……」
さやか「……それで、悩みが堂々巡りになってしまっている、というわけですね」
30:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:29:00 ID:???00
セラス「……」コクリ
セラス「…………わたしの……たった一つの願いは、花ちゃんに会うこと、それだけなんです」
セラス「その夢を叶えたいのに、道中のことを思うと怖くて…………わたし、どうすればいいんですか?」
さやか「……そう、ですね」フム
小鈴「……」
小鈴「…………チャレンジ……」ポツリ
さやか「!」
小鈴「…………チャレンジ、してみればいいんじゃないかな、って、徒町はそう思う、かもしれません……」
セラス「…………わたしの……たった一つの願いは、花ちゃんに会うこと、それだけなんです」
セラス「その夢を叶えたいのに、道中のことを思うと怖くて…………わたし、どうすればいいんですか?」
さやか「……そう、ですね」フム
小鈴「……」
小鈴「…………チャレンジ……」ポツリ
さやか「!」
小鈴「…………チャレンジ、してみればいいんじゃないかな、って、徒町はそう思う、かもしれません……」
31:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:30:00 ID:???00
セラス「……? ……チャレンジ?」
泉「……ふむ」ジー
小鈴「! あっ……す、すみません! 徒町、何も知らないのに知ったような口を挟んでしまい……」
さやか「……いえ、構いません。小鈴さん、そのまま続けてください」
小鈴「え!? で、ですけど徒町……!」
セラス「──あの……チャレンジってどういう……!」グイッ
小鈴「あ、え、っと……」
泉「……ふむ」ジー
小鈴「! あっ……す、すみません! 徒町、何も知らないのに知ったような口を挟んでしまい……」
さやか「……いえ、構いません。小鈴さん、そのまま続けてください」
小鈴「え!? で、ですけど徒町……!」
セラス「──あの……チャレンジってどういう……!」グイッ
小鈴「あ、え、っと……」
32:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:31:00 ID:???00
セラス「……」ジー
小鈴「……」
小鈴「…………ね、セラスちゃん。こんな徒町でいいのなら、少し、話してみたいことがあって」
セラス「ぜひ。……なんでしょうか」
小鈴「……この終末世界で、セラスちゃんは──夢を持ってるんだよね? その、“花ちゃん”に会いたいっていう夢を」
小鈴「……」
小鈴「…………ね、セラスちゃん。こんな徒町でいいのなら、少し、話してみたいことがあって」
セラス「ぜひ。……なんでしょうか」
小鈴「……この終末世界で、セラスちゃんは──夢を持ってるんだよね? その、“花ちゃん”に会いたいっていう夢を」
33:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:32:00 ID:???00
セラス「……はい。花ちゃんに会いたいから、まずは頼れる人を探して、泉と契約した……そのくらい大事な“生きる目標”です」
小鈴「そっか。セラスちゃん、徒町と違ってちゃんと夢を持ってるなんて凄いなぁ……」
セラス「? あなたには、無いんですか?」
小鈴「えぇと……昔の徒町は、何者かになる、っていうチャレンジ……夢って言っていいのかな、それを持ってたんだけどね」
セラス「じゃあ……」
小鈴「でも──そんな“夢”を追って家を飛び出した、徒町のチャレンジは、大失敗だったんだ」
セラス「!」
小鈴「…………徒町は何もできないんだ、って思い知ったし、今の徒町はそれで“生きる意味”も無くなっちゃった」
セラス「……それは」
セラス「やっぱり……夢を追いかけて進んでも、失敗するんだから……意味なんて無い、ってことですか?」
小鈴「そっか。セラスちゃん、徒町と違ってちゃんと夢を持ってるなんて凄いなぁ……」
セラス「? あなたには、無いんですか?」
小鈴「えぇと……昔の徒町は、何者かになる、っていうチャレンジ……夢って言っていいのかな、それを持ってたんだけどね」
セラス「じゃあ……」
小鈴「でも──そんな“夢”を追って家を飛び出した、徒町のチャレンジは、大失敗だったんだ」
セラス「!」
小鈴「…………徒町は何もできないんだ、って思い知ったし、今の徒町はそれで“生きる意味”も無くなっちゃった」
セラス「……それは」
セラス「やっぱり……夢を追いかけて進んでも、失敗するんだから……意味なんて無い、ってことですか?」
34:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:33:00 ID:???00
小鈴「ううん。そうじゃなかった」
セラス「え……?」
小鈴「徒町……そこで、ある人に言われてね。『夢が持てないのなら、これから新しく“生きる意味”を探してみてほしい』って」
さやか「!」
小鈴「……簡単なことだったんだ。失敗したら、もう一度チャレンジすればいい! 無くなったのなら、新しく見つければいい……」
小鈴「きっと、一番ダメなのはチャレンジをしないこと。それじゃ、自分がダメかどうかすら知ることができないから」
小鈴「こんな徒町でも、そう思えるんだったら……大事なチャレンジが、夢が、あるセラスちゃんなら……」
小鈴「少し怖くても一歩踏み出せば、今よりもずっと──大きく何かが変わるんじゃないかなって! 徒町は、そう思う!」ニコッ
セラス「……!!」
セラス「え……?」
小鈴「徒町……そこで、ある人に言われてね。『夢が持てないのなら、これから新しく“生きる意味”を探してみてほしい』って」
さやか「!」
小鈴「……簡単なことだったんだ。失敗したら、もう一度チャレンジすればいい! 無くなったのなら、新しく見つければいい……」
小鈴「きっと、一番ダメなのはチャレンジをしないこと。それじゃ、自分がダメかどうかすら知ることができないから」
小鈴「こんな徒町でも、そう思えるんだったら……大事なチャレンジが、夢が、あるセラスちゃんなら……」
小鈴「少し怖くても一歩踏み出せば、今よりもずっと──大きく何かが変わるんじゃないかなって! 徒町は、そう思う!」ニコッ
セラス「……!!」
35:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:34:00 ID:???00
小鈴「今こうやって、セラスちゃんと話している徒町が居るのもそういうチャレンジによる、変化……とも言えるし、その……」
セラス「……」ジー
小鈴「えと…………あ、あわわ……ご、ごめんね! 徒町、勢いだけで具体性のないふわっとしたことばかり言っちゃって……」
セラス「……」
小鈴「セラスちゃん……?」
セラス「……」
セラス「……いえ」
セラス「すごく……ものすごく、心に沁みました」クスッ
セラス「……」ジー
小鈴「えと…………あ、あわわ……ご、ごめんね! 徒町、勢いだけで具体性のないふわっとしたことばかり言っちゃって……」
セラス「……」
小鈴「セラスちゃん……?」
セラス「……」
セラス「……いえ」
セラス「すごく……ものすごく、心に沁みました」クスッ
36:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:35:00 ID:???00
泉「……!」
セラス「きっと……そうなんですね。わたしも、本当はわかってて背中を押してもらいたかっただけなのかも」ポツリ
セラス「……何もしてないのに怖がって、知らないまま終わらせたら今と変わらない。……そんなの、花ちゃんだって望んでない」
セラス「わたしはやっぱり、花ちゃんに会いたい。その夢を追いかけるためにも……まず踏み出して、ダメかどうかを“知る”チャレンジをしなきゃなんですね」
小鈴「! うん……うん! それだよ、徒町もそう思う!」
セラス「ふふっ……それならわたしも、一歩進んでみたいです。なんだか、すごく元気が出てきました」
セラス「きっと……そうなんですね。わたしも、本当はわかってて背中を押してもらいたかっただけなのかも」ポツリ
セラス「……何もしてないのに怖がって、知らないまま終わらせたら今と変わらない。……そんなの、花ちゃんだって望んでない」
セラス「わたしはやっぱり、花ちゃんに会いたい。その夢を追いかけるためにも……まず踏み出して、ダメかどうかを“知る”チャレンジをしなきゃなんですね」
小鈴「! うん……うん! それだよ、徒町もそう思う!」
セラス「ふふっ……それならわたしも、一歩進んでみたいです。なんだか、すごく元気が出てきました」
37:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:36:00 ID:???00
小鈴「セラスちゃん……!」
セラス「こんな気持ちになれたのは、全部──“小鈴先輩”のおかげです。ありがとうございます、小鈴先輩!」ニコッ
小鈴「どういたしまして……って、えぇと? せんぱい……?」
さやか「“先輩”とは、自分より年が上の人につける敬称ですよ。昔は、学校や職場で使われた呼び名でしたが……」
さやか「今はそれらも機能していないので、形骸化してその単語だけが残っているんです。逆の立場……わたしにとっての小鈴さんなどは“後輩”と言いますね」
泉「……はは、セラスはずっと、頼れる先輩を欲しがっていたからね」クスッ
セラス「泉の言う通り。ふふ、小鈴先輩は、わたしにとって理想の“先輩”です」ニコッ
小鈴「徒町が……先輩……」ポツリ
小鈴「……は、初めてそんなこと言われました……!」
さやか「……」
セラス「こんな気持ちになれたのは、全部──“小鈴先輩”のおかげです。ありがとうございます、小鈴先輩!」ニコッ
小鈴「どういたしまして……って、えぇと? せんぱい……?」
さやか「“先輩”とは、自分より年が上の人につける敬称ですよ。昔は、学校や職場で使われた呼び名でしたが……」
さやか「今はそれらも機能していないので、形骸化してその単語だけが残っているんです。逆の立場……わたしにとっての小鈴さんなどは“後輩”と言いますね」
泉「……はは、セラスはずっと、頼れる先輩を欲しがっていたからね」クスッ
セラス「泉の言う通り。ふふ、小鈴先輩は、わたしにとって理想の“先輩”です」ニコッ
小鈴「徒町が……先輩……」ポツリ
小鈴「……は、初めてそんなこと言われました……!」
さやか「……」
38:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:37:00 ID:???00
さやか「……たった1回でこうも上手くいくとは。普通、カウンセリングは何度も重ね、心を開いていただくものなんですが……」
さやか「やはり、小鈴さんはこの仕事に向いているかもしれませんね。わたしの思った通りです」クスッ
さやか「…………小鈴さんは、人のことをよく見ることができる方……これなら……」ボソッ
セラス「──あの、質問なんですが……小鈴先輩たちは、これから何処に向かうんですか? もしかして、南の方に向かったり……」
さやか「やはり、小鈴さんはこの仕事に向いているかもしれませんね。わたしの思った通りです」クスッ
さやか「…………小鈴さんは、人のことをよく見ることができる方……これなら……」ボソッ
セラス「──あの、質問なんですが……小鈴先輩たちは、これから何処に向かうんですか? もしかして、南の方に向かったり……」
39:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:38:00 ID:???00
小鈴「! え、えぇと……」チラッ
さやか「ええ。他に寄る場所があるため少し遅れますが……わたし達の目的地も、実を言うとその場所なので」ニコッ
セラス「わぁ……! だったら、また小鈴先輩たちと会えるんだ……!」パァァ
泉「ふふ、嬉しそうだね、セラス」クスッ
セラス「泉も、これから南に行くために忙しくなるから笑っていられないよ。わたしの夢、とことん付き合ってもらうんだから」
泉「ふふっ……ああ。桂城泉は、あなたの夢の請負人さ。何処までだろうとお供しよう」
さやか「ええ。他に寄る場所があるため少し遅れますが……わたし達の目的地も、実を言うとその場所なので」ニコッ
セラス「わぁ……! だったら、また小鈴先輩たちと会えるんだ……!」パァァ
泉「ふふ、嬉しそうだね、セラス」クスッ
セラス「泉も、これから南に行くために忙しくなるから笑っていられないよ。わたしの夢、とことん付き合ってもらうんだから」
泉「ふふっ……ああ。桂城泉は、あなたの夢の請負人さ。何処までだろうとお供しよう」
40:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:39:00 ID:???00
さやか「では、これでしばしのお別れですね。また、何かあれば」
泉「ああ。この度は、あなた方に会えてよかった。セラスがまた笑顔を見せてくれるなんて……本当に、深く感謝しているよ」ペコリ
セラス「この先、何があろうと、わたし達もこの終末世界で“夢”を追って、生きているので……」
セラス「また──必ず会いましょうね!」ニコッ
小鈴「! うん、セラスちゃん、またいつか!」
泉「ああ。この度は、あなた方に会えてよかった。セラスがまた笑顔を見せてくれるなんて……本当に、深く感謝しているよ」ペコリ
セラス「この先、何があろうと、わたし達もこの終末世界で“夢”を追って、生きているので……」
セラス「また──必ず会いましょうね!」ニコッ
小鈴「! うん、セラスちゃん、またいつか!」
41:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:40:00 ID:???00
────
パチパチパチ…
さやか「さて。火も焚きましたし、今日はここで野営になりますね。少し大きいですが、小鈴さんの分の寝袋もありますよ」サッ
小鈴「あ、ありがとうございます……」
小鈴「……」
さやか「……どう、でしたか? 実際、こういう活動を目に……いえ、やってみた感想は」
小鈴「……え、っと」
パチパチパチ…
さやか「さて。火も焚きましたし、今日はここで野営になりますね。少し大きいですが、小鈴さんの分の寝袋もありますよ」サッ
小鈴「あ、ありがとうございます……」
小鈴「……」
さやか「……どう、でしたか? 実際、こういう活動を目に……いえ、やってみた感想は」
小鈴「……え、っと」
42:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:41:00 ID:???00
小鈴「その……上手く言えるかどうか、わからないですけど……徒町、今、どうしても言葉にして伝えたい気持ちがあって」
さやか「……ええ。ぜひ聞かせてください、小鈴さん」ニコッ
小鈴「徒町……今のこんな終末世界に生まれ落ちてからというもの、誰かのためにできた行動なんて一つもなかったんです。……だけど」
小鈴「あの子の……セラスちゃんの笑顔。それに、泉さんの真っ直ぐな感謝の言葉」
小鈴「…………そういうのを実際に見て、聞いて、徒町はなんだか、こんな世界なのに胸の内があったかくなって……」
さやか「……ええ。ぜひ聞かせてください、小鈴さん」ニコッ
小鈴「徒町……今のこんな終末世界に生まれ落ちてからというもの、誰かのためにできた行動なんて一つもなかったんです。……だけど」
小鈴「あの子の……セラスちゃんの笑顔。それに、泉さんの真っ直ぐな感謝の言葉」
小鈴「…………そういうのを実際に見て、聞いて、徒町はなんだか、こんな世界なのに胸の内があったかくなって……」
43:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:42:00 ID:???00
小鈴「……この気持ちが何なのか、徒町にはまだよくわからないけど、でも、これが“生きる意味”を見つける糧になるのなら」
小鈴「徒町は、これに──チャレンジ、したいです!」
さやか「……!」
小鈴「なので……あの! さっきのご提案、ぜひとも徒町はお受けしたいのですが、大丈夫ですか?」
さやか「ふふっ……ええ。こちらこそ、わたしとの旅路が、小鈴さんが“生きる意味”を見つけるその一助になれれば幸いです」
さやか「ですが、それまでは……わたしがあなたの“生きる意味”になりますね。わたしが見ている限り、生き続けてください」
小鈴「! ……はい! 不束者ですが、どうか徒町をよろしくお願いします!」ペコリ
さやか「ええ。よろしくお願いします、小鈴さん」ニコッ
小鈴「徒町は、これに──チャレンジ、したいです!」
さやか「……!」
小鈴「なので……あの! さっきのご提案、ぜひとも徒町はお受けしたいのですが、大丈夫ですか?」
さやか「ふふっ……ええ。こちらこそ、わたしとの旅路が、小鈴さんが“生きる意味”を見つけるその一助になれれば幸いです」
さやか「ですが、それまでは……わたしがあなたの“生きる意味”になりますね。わたしが見ている限り、生き続けてください」
小鈴「! ……はい! 不束者ですが、どうか徒町をよろしくお願いします!」ペコリ
さやか「ええ。よろしくお願いします、小鈴さん」ニコッ
44:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:43:00 ID:???00
さやか「さて……これで、わたし達はお互いにこの世界で一蓮托生。これからはペアになって行動することになります」
小鈴「ペア……」
さやか「と、いうわけで、改めてにはなりますが、明日の予定について確認しますね」コホン
小鈴「あ、は、はい! えっと確か……南に向かう、ってさっきセラスちゃんに言ってました、よね?」
さやか「はい。ですが明日は少し……コンパスに従い、南東のキャンプ地に寄り道をしようかと」
小鈴「? 寄り道ですか?」
小鈴「ペア……」
さやか「と、いうわけで、改めてにはなりますが、明日の予定について確認しますね」コホン
小鈴「あ、は、はい! えっと確か……南に向かう、ってさっきセラスちゃんに言ってました、よね?」
さやか「はい。ですが明日は少し……コンパスに従い、南東のキャンプ地に寄り道をしようかと」
小鈴「? 寄り道ですか?」
45:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:44:00 ID:???00
さやか「ええ。わたしの、もう一人の親友がそこにいるので、目的の前に会いに行きたくて」
小鈴「そう、なんですね…………徒町は何処までだってお供します…………ふわぁあ、んん……」ゴシゴシ
さやか「あぁ、すみません。夜も遅いというのに喋りすぎましたね。おやすみの準備をしましょうか」
小鈴「そうですね……徒町、寝袋お借りします……」モゾモゾ
小鈴「そう、なんですね…………徒町は何処までだってお供します…………ふわぁあ、んん……」ゴシゴシ
さやか「あぁ、すみません。夜も遅いというのに喋りすぎましたね。おやすみの準備をしましょうか」
小鈴「そうですね……徒町、寝袋お借りします……」モゾモゾ
46:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:45:00 ID:???00
さやか「あ、小鈴さん。寝る前に、子守唄を歌って差し上げますよ」
小鈴「……こもり、うた……?」
さやか「ええ。子守唄に限らず、歌は良いものですよ。不思議な力がありますからね」ニコッ
さやか「この夜を、ずっと落ち着いた気持ちで小鈴さんが眠れるように、その歌の力を借りようかと。……では」コホン
~♪
小鈴「……こもり、うた……?」
さやか「ええ。子守唄に限らず、歌は良いものですよ。不思議な力がありますからね」ニコッ
さやか「この夜を、ずっと落ち着いた気持ちで小鈴さんが眠れるように、その歌の力を借りようかと。……では」コホン
~♪
47:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:46:00 ID:???00
小鈴「……あぁ」
小鈴「徒町……もしかしたら、姉上にしてもらっていたかもしれません……その、子守唄というものを」
小鈴「癒されて、安心する歌です……んん、ふわぁ……」ウツラウツラ
さやか「……さぁ、小鈴さんも今日は疲れているでしょう。ゆっくり、休んでください」
小鈴「……わかり、ました…………」スゥ
小鈴「徒町……もしかしたら、姉上にしてもらっていたかもしれません……その、子守唄というものを」
小鈴「癒されて、安心する歌です……んん、ふわぁ……」ウツラウツラ
さやか「……さぁ、小鈴さんも今日は疲れているでしょう。ゆっくり、休んでください」
小鈴「……わかり、ました…………」スゥ
48:
◆oz9g3Mss★
2025/07/31(木) 19:47:00 ID:???00
小鈴「……zzz」
さやか「……」ジー
さやか「……小鈴さん」
さやか「ありがとう、ございます。……こんなわたしにその身を委ねてくれて」ポツリ
小鈴「……zzz」
さやか「……おやすみなさい、良い夢を」ニコッ
さやか「……」ジー
さやか「……小鈴さん」
さやか「ありがとう、ございます。……こんなわたしにその身を委ねてくれて」ポツリ
小鈴「……zzz」
さやか「……おやすみなさい、良い夢を」ニコッ
53:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:00:01 ID:???00
────
ザザ…ザ…
『……ぴんぽんぱんぽーん!』
『終末世界の皆さまに、ルリノ・オーサワがお届けします、みらくらラジオ~!』
『きょうも、みんなが楽しく今を生きられるよう、ルリがガンガンおしゃべりしていくぜ~!』
さやか「……ふふ」クスッ
小鈴「ふわぁ……」トコトコ
さやか「! おはようございます、小鈴さん。よく眠れましたか?」
小鈴「あ、はい! それはもうぐっすりと……」
小鈴「……って、あれ? それ、何ですか? 人の声が聞こえますが……?」
さやか「あぁ、これは防災ラジオです。と言っても……現在受信できる電波は、たった一つだけですが」
ザザ…ザ…
『……ぴんぽんぱんぽーん!』
『終末世界の皆さまに、ルリノ・オーサワがお届けします、みらくらラジオ~!』
『きょうも、みんなが楽しく今を生きられるよう、ルリがガンガンおしゃべりしていくぜ~!』
さやか「……ふふ」クスッ
小鈴「ふわぁ……」トコトコ
さやか「! おはようございます、小鈴さん。よく眠れましたか?」
小鈴「あ、はい! それはもうぐっすりと……」
小鈴「……って、あれ? それ、何ですか? 人の声が聞こえますが……?」
さやか「あぁ、これは防災ラジオです。と言っても……現在受信できる電波は、たった一つだけですが」
54:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:01:00 ID:???00
『ルリルリなんでも調査隊! 今日の最初のテーマは……ばばん! 暇な時間の過ごし方ー!』
『うんうん、することがなくて困っちゃうこと、ルリ達が生きるこの終末世界だとよくあるよねー、わかるわかる!』
『んー、ルリはそうだなぁ……何もしないで、ただただぼーっとして過ごす……とか? ルリ、たまにやるんだけど結構気持ち良くてねぇ』
『こんな世界だからこそ、静かで落ち着いてる時間も多いわけだし! そーゆーことで楽しむのも良いかなって、ルリ思う、ゆえにルリあり!』
『そんじゃ、次のテーマは──』
『うんうん、することがなくて困っちゃうこと、ルリ達が生きるこの終末世界だとよくあるよねー、わかるわかる!』
『んー、ルリはそうだなぁ……何もしないで、ただただぼーっとして過ごす……とか? ルリ、たまにやるんだけど結構気持ち良くてねぇ』
『こんな世界だからこそ、静かで落ち着いてる時間も多いわけだし! そーゆーことで楽しむのも良いかなって、ルリ思う、ゆえにルリあり!』
『そんじゃ、次のテーマは──』
55:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:02:00 ID:???00
小鈴「こんな世界で、誰が聞いてるかもわからないのに……こうやってずっと話し続けてる人もいるんですね」
さやか「そうですね。このラジオは、日本でなら何処でも聞けるものですが……実際、どれほどの人に届いているかは未知数かと」
小鈴「…………それなのに、どうして続けられるんでしょうか? やはりこの女性も自分だけの“生きる意味”を持っているから……?」
小鈴「うぅ……徒町もそれを新たに見つけると決めた以上、そういった人の考えも知ってはみたいのですが……」
小鈴「徒町ごときの頭では、考えてもとんと見当がつきません……どうしたものか……」ウーン
さやか「ふふっ、それでしたら小鈴さん。……直接、訊いてみるのはいかがでしょうか?」クスッ
小鈴「え? 直接って……?」
さやか「今日の目的地である、南東のキャンプ地にいるので、会いに行きましょう。その──ラジオのパーソナリティさんに」ニコッ
さやか「そうですね。このラジオは、日本でなら何処でも聞けるものですが……実際、どれほどの人に届いているかは未知数かと」
小鈴「…………それなのに、どうして続けられるんでしょうか? やはりこの女性も自分だけの“生きる意味”を持っているから……?」
小鈴「うぅ……徒町もそれを新たに見つけると決めた以上、そういった人の考えも知ってはみたいのですが……」
小鈴「徒町ごときの頭では、考えてもとんと見当がつきません……どうしたものか……」ウーン
さやか「ふふっ、それでしたら小鈴さん。……直接、訊いてみるのはいかがでしょうか?」クスッ
小鈴「え? 直接って……?」
さやか「今日の目的地である、南東のキャンプ地にいるので、会いに行きましょう。その──ラジオのパーソナリティさんに」ニコッ
56:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:03:00 ID:???00
────
ザッザッ…
小鈴「まさか、あなたがそのラジオの方と繋がりがあったなんて! すごい人脈ですね……!」
さやか「ふふっ。わたしも、彼女のような行動力のある優しい人が親友なことを、とても誇らしく思っているんですよ」クスッ
さやか「彼女がしているようなラジオは……一般的に言えばやはり娯楽であって、生きる上では無くてもいいのかもしれません」
さやか「ですが、それでもやはり人間には必要なものなんです。“楽しい”ことを切り捨てた先に、幸せな世界など訪れませんし」
小鈴「…………なるほど?」
さやか「ふふ、今はわからなくても大丈夫ですよ。実際に会ってよく話してみれば、小鈴さんの考えも深まるかと」ニコッ
さやか「それに……おそらく彼女の元にいるあの方なら、小鈴さんと……」ボソッ
小鈴「……?」
ザッザッ…
小鈴「まさか、あなたがそのラジオの方と繋がりがあったなんて! すごい人脈ですね……!」
さやか「ふふっ。わたしも、彼女のような行動力のある優しい人が親友なことを、とても誇らしく思っているんですよ」クスッ
さやか「彼女がしているようなラジオは……一般的に言えばやはり娯楽であって、生きる上では無くてもいいのかもしれません」
さやか「ですが、それでもやはり人間には必要なものなんです。“楽しい”ことを切り捨てた先に、幸せな世界など訪れませんし」
小鈴「…………なるほど?」
さやか「ふふ、今はわからなくても大丈夫ですよ。実際に会ってよく話してみれば、小鈴さんの考えも深まるかと」ニコッ
さやか「それに……おそらく彼女の元にいるあの方なら、小鈴さんと……」ボソッ
小鈴「……?」
57:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:04:00 ID:???00
さやか「さて、結構歩きましたし、おそらくそろそろ……」
小鈴「……あれ? 砂埃の向こう、遠くになにか……?」ジー
さやか「ふふっ、やはり見えてきましたね。どこからでも視界に入る、あまりにも大きな目印が」クスッ
「……あっ! さやかちゃーん!! ひさしぶりー!」
小鈴「……あれ? 砂埃の向こう、遠くになにか……?」ジー
さやか「ふふっ、やはり見えてきましたね。どこからでも視界に入る、あまりにも大きな目印が」クスッ
「……あっ! さやかちゃーん!! ひさしぶりー!」
58:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:05:00 ID:???00
さやか「──瑠璃乃さん。おひさしぶりです。前より少し大きくなりましたか?」ニコッ
瑠璃乃「大きく……なりたいなぁ……まぁ、後ろの“これ”と比べたら、ルリの背丈くらい誤差みたいなもんだけども、ね」ウンウン
小鈴「えっと……」ジー
瑠璃乃「……ん? あれ、君、初めて見る顔だね?」
小鈴「! あ、はい! えぇと……」
さやか「瑠璃乃さん、彼女はわたしの後継……んん、後輩の徒町小鈴さんです。彼女の紹介も兼ねて、今日は参りました」
瑠璃乃「大きく……なりたいなぁ……まぁ、後ろの“これ”と比べたら、ルリの背丈くらい誤差みたいなもんだけども、ね」ウンウン
小鈴「えっと……」ジー
瑠璃乃「……ん? あれ、君、初めて見る顔だね?」
小鈴「! あ、はい! えぇと……」
さやか「瑠璃乃さん、彼女はわたしの後継……んん、後輩の徒町小鈴さんです。彼女の紹介も兼ねて、今日は参りました」
59:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:06:00 ID:???00
瑠璃乃「……! おおっ、さやかちゃんもついに先輩に!? そっか……やっぱ、あのパイセンのため?」
さやか「……そう、ですね」ポツリ
小鈴「えと、はじめまして、徒町小鈴です!! あなたが、ラジオで喋っていたパーソナリティさん、ですよね……?」
瑠璃乃「あ、聞いてくれたの!? 嬉しいなぁ……ルリが作ったあのラジオ、ちゃんとこうして届いてるんだ!」ウンウン
瑠璃乃「じゃ、改めまして……ルリは大沢瑠璃乃! みらくらラジオの司会進行を務めさせてもらってます! 小鈴ちゃん、よろよろー!」ニコッ
さやか「……そう、ですね」ポツリ
小鈴「えと、はじめまして、徒町小鈴です!! あなたが、ラジオで喋っていたパーソナリティさん、ですよね……?」
瑠璃乃「あ、聞いてくれたの!? 嬉しいなぁ……ルリが作ったあのラジオ、ちゃんとこうして届いてるんだ!」ウンウン
瑠璃乃「じゃ、改めまして……ルリは大沢瑠璃乃! みらくらラジオの司会進行を務めさせてもらってます! 小鈴ちゃん、よろよろー!」ニコッ
60:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:07:00 ID:???00
小鈴「は、はい! よろしくお願いします…………えぇと」チラッ
瑠璃乃「?」
小鈴「つきましては……今まさに、徒町の眼前で存在感を放っている、“これ”について教えてほしいのですが……」
さやか「ふふっ。小鈴さん、先ほどからずっと瑠璃乃さんの後ろに興味津々でしたね」
瑠璃乃「あぁ! そっかそっか。今の、建物が崩壊しまくってる終末世界じゃこんな建造物だって普通見かけないもんね」ウンウン
瑠璃乃「これはね、ルリ達が作った──日本中どこにだって声が届くような、超でっかい“電波塔”!!」
瑠璃乃「?」
小鈴「つきましては……今まさに、徒町の眼前で存在感を放っている、“これ”について教えてほしいのですが……」
さやか「ふふっ。小鈴さん、先ほどからずっと瑠璃乃さんの後ろに興味津々でしたね」
瑠璃乃「あぁ! そっかそっか。今の、建物が崩壊しまくってる終末世界じゃこんな建造物だって普通見かけないもんね」ウンウン
瑠璃乃「これはね、ルリ達が作った──日本中どこにだって声が届くような、超でっかい“電波塔”!!」
61:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:08:00 ID:???00
小鈴「でんぱとう……?」
さやか「AMラジオの電波を飛ばすには、その送信アンテナが必要となります。そのための塔を、電波塔と呼んでいるんですよ」
小鈴「なるほど……か、徒町何人分の大きさなんでしょうか……」
さやか「その高さはなんと、ゆうに100mは超えている、とか。実測したわけではないですが」
小鈴「なんと!? そんなに高く……!?」
瑠璃乃「高くないと、遠くまで電波が届かないからね。ほんと、作るのめっちゃ大変だったなぁ……」ウンウン
さやか「AMラジオの電波を飛ばすには、その送信アンテナが必要となります。そのための塔を、電波塔と呼んでいるんですよ」
小鈴「なるほど……か、徒町何人分の大きさなんでしょうか……」
さやか「その高さはなんと、ゆうに100mは超えている、とか。実測したわけではないですが」
小鈴「なんと!? そんなに高く……!?」
瑠璃乃「高くないと、遠くまで電波が届かないからね。ほんと、作るのめっちゃ大変だったなぁ……」ウンウン
62:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:09:00 ID:???00
さやか「全て手作業で一から再建したんですよね? 古い文献も、花帆さんなどに探してもらって……」
瑠璃乃「うんうん。それで、電気を逃がすために地中にも銅線張らなくちゃいけなかったり、乾燥した地面だと良くないから工夫したり……」
瑠璃乃「けっこー大変な作業もあったけど、姫芽がその辺は請け負ってくれてね。いやー、上手くいってよかったよ」ニコッ
さやか「そういえば、瑠璃乃さん。その姫芽さんにもぜひ小鈴さんを紹介したいのですが……いらっしゃいますか?」
瑠璃乃「……! あ、なるほどね……そういうことかぁ」ウンウン
小鈴「?」
瑠璃乃「おっけ任せて、さやかちゃん! たぶん今の時間は電波塔の制御室に居ると思うから、さっそく向かおっか!」ニコッ
瑠璃乃「うんうん。それで、電気を逃がすために地中にも銅線張らなくちゃいけなかったり、乾燥した地面だと良くないから工夫したり……」
瑠璃乃「けっこー大変な作業もあったけど、姫芽がその辺は請け負ってくれてね。いやー、上手くいってよかったよ」ニコッ
さやか「そういえば、瑠璃乃さん。その姫芽さんにもぜひ小鈴さんを紹介したいのですが……いらっしゃいますか?」
瑠璃乃「……! あ、なるほどね……そういうことかぁ」ウンウン
小鈴「?」
瑠璃乃「おっけ任せて、さやかちゃん! たぶん今の時間は電波塔の制御室に居ると思うから、さっそく向かおっか!」ニコッ
63:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:10:00 ID:???00
コココンコン コンコン
瑠璃乃「おーい、姫芽ー? さやかちゃんと……あと、珍しい旅人さんが来たよー! ちょっち来てくれるー?」
「旅人さん……? よくわかりませんが、るりちゃんせんぱいがお呼びならばすぐ行きますよ~!!」
ガチャ
姫芽「お待たせしました、るりちゃんせんぱい~! ……って、あれ~……?」チラッ
小鈴「!」
さやか「姫芽さん、こちら、徒町小鈴さんです。わたしの後輩なので紹介しようかと」
姫芽「あ、え、さやかせんぱいの後輩さん~……!?!? なるほど、ということは実質、アタシの同期~……」フム
小鈴「えぇと……?」
瑠璃乃「おーい、姫芽ー? さやかちゃんと……あと、珍しい旅人さんが来たよー! ちょっち来てくれるー?」
「旅人さん……? よくわかりませんが、るりちゃんせんぱいがお呼びならばすぐ行きますよ~!!」
ガチャ
姫芽「お待たせしました、るりちゃんせんぱい~! ……って、あれ~……?」チラッ
小鈴「!」
さやか「姫芽さん、こちら、徒町小鈴さんです。わたしの後輩なので紹介しようかと」
姫芽「あ、え、さやかせんぱいの後輩さん~……!?!? なるほど、ということは実質、アタシの同期~……」フム
小鈴「えぇと……?」
64:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:11:00 ID:???00
姫芽「はじめまして~。みらくらラジオのテーマ考案をしてる、ラジオディレクター兼メカニックの安養寺姫芽です~!」ニコッ
小鈴「は……はじめまして! 徒町は、徒町小鈴と言います! その、旅に同行してここまでやってきた若輩者ですが何卒……」
姫芽「……」ワナワナ
小鈴「? えと……?」
姫芽「……──かわいいいい~~っ!!」
小鈴「!?!?」
小鈴「は……はじめまして! 徒町は、徒町小鈴と言います! その、旅に同行してここまでやってきた若輩者ですが何卒……」
姫芽「……」ワナワナ
小鈴「? えと……?」
姫芽「……──かわいいいい~~っ!!」
小鈴「!?!?」
65:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:12:00 ID:???00
姫芽「小鈴ちゃんって言うんだ~? 小さくて、かわいい~!!!」ギュー
小鈴「あわわ……!?」
姫芽「ん~、るりちゃんせんぱいと同じくらいの背丈でしょうかね~」ニコニコ
瑠璃乃「や、流石にルリの方が大きいと思う」ウンウン
小鈴「えぇと……よ、よくわかりませんが、身長なら僭越ながら徒町の方に軍配が上がるのでは、と……」
さやか「あまり大差ないと思いますよ?」
小鈴「あわわ……!?」
姫芽「ん~、るりちゃんせんぱいと同じくらいの背丈でしょうかね~」ニコニコ
瑠璃乃「や、流石にルリの方が大きいと思う」ウンウン
小鈴「えぇと……よ、よくわかりませんが、身長なら僭越ながら徒町の方に軍配が上がるのでは、と……」
さやか「あまり大差ないと思いますよ?」
66:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:13:00 ID:???00
姫芽「いや~、なんか、小鈴ちゃん見てると庇護欲がめちゃくちゃ刺激されて~……! 頭撫でたくなっちゃうな~」ナデナデ
小鈴「言いながらもう撫でてますけど……!?」
瑠璃乃「あははっ。もしかして姫芽、小鈴ちゃんのこと気に入った感じ?」クスッ
姫芽「はい、だってこの世界、同世代の女の子と仲良くなる機会ってほとんど無いですからね~。こんなかわいい女の子だったらそりゃ嬉しいですよ~!」ニコニコ
小鈴「言いながらもう撫でてますけど……!?」
瑠璃乃「あははっ。もしかして姫芽、小鈴ちゃんのこと気に入った感じ?」クスッ
姫芽「はい、だってこの世界、同世代の女の子と仲良くなる機会ってほとんど無いですからね~。こんなかわいい女の子だったらそりゃ嬉しいですよ~!」ニコニコ
67:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:14:00 ID:???00
さやか「姫芽さんはメカニック……確か、瑠璃乃さんのラジオのため、電波塔の整備を担当してらっしゃるんですよね」
姫芽「そうですね~。アタシ、機械いじりはけっこう得意なんで~。それに……こういう、人と繋がれるものも大好きですし」ニコッ
小鈴「人と、繋がれるもの……」ポツリ
小鈴「……あ、あの!」
姫芽「?」
瑠璃乃「ん、どーしたの、小鈴ちゃん?」
小鈴「先ほどから……いえ、ラジオを聞いた時からずっと、徒町、疑問に思っていたことがあるんですが」
小鈴「どうして……お二人とも、そんなに頑張れるんですか? 誰にも、届かないかもしれないのに」
姫芽「そうですね~。アタシ、機械いじりはけっこう得意なんで~。それに……こういう、人と繋がれるものも大好きですし」ニコッ
小鈴「人と、繋がれるもの……」ポツリ
小鈴「……あ、あの!」
姫芽「?」
瑠璃乃「ん、どーしたの、小鈴ちゃん?」
小鈴「先ほどから……いえ、ラジオを聞いた時からずっと、徒町、疑問に思っていたことがあるんですが」
小鈴「どうして……お二人とも、そんなに頑張れるんですか? 誰にも、届かないかもしれないのに」
68:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:15:00 ID:???00
さやか「……」
姫芽「ん~、確かに整備も大変だし、実際に反応を確かめることもできないし……小鈴ちゃんがそう思うのもわかるよ~」ウンウン
小鈴「え、それじゃあなんで……」
姫芽「何故なら……アタシ達には、頑張る理由となる“ある目標”があるから~! ですよね、るりちゃんせんぱい~?」クスッ
瑠璃乃「うんうん! ラジオをやってるのも、この終末世界で生きていけるのも……全部その目標があるからだと、ルリは思うなぁ」ウンウン
小鈴「? その目標って……」
瑠璃乃「それは──楽しいを世界中に広げて、誰も“ひとりにしない”こと!」ニコッ
姫芽「ん~、確かに整備も大変だし、実際に反応を確かめることもできないし……小鈴ちゃんがそう思うのもわかるよ~」ウンウン
小鈴「え、それじゃあなんで……」
姫芽「何故なら……アタシ達には、頑張る理由となる“ある目標”があるから~! ですよね、るりちゃんせんぱい~?」クスッ
瑠璃乃「うんうん! ラジオをやってるのも、この終末世界で生きていけるのも……全部その目標があるからだと、ルリは思うなぁ」ウンウン
小鈴「? その目標って……」
瑠璃乃「それは──楽しいを世界中に広げて、誰も“ひとりにしない”こと!」ニコッ
69:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:16:00 ID:???00
小鈴「ひとりにしない……?」
瑠璃乃「うん。ルリが思うに、この世界のどこかで“楽しい”を求めながら、助けを待ってる人が、孤独な人が必ずいる……」
瑠璃乃「そういう人ひとりひとりに、ルリは手を差し伸べたい。だから、無駄かもしれなくても続けなきゃダメなんだ」
瑠璃乃「こんな世界だからこそ、輪を広げて助け合う世界にしたい。ルリは……誰かの孤独を救うヒーローになりたいから!」ニッ
小鈴「!」
瑠璃乃「そーゆーわけで、誰かに“楽しい”を届けるためルリ達は行動し続けるのである! そう、ルリ思うゆえにルリあり!」グッ
瑠璃乃「うん。ルリが思うに、この世界のどこかで“楽しい”を求めながら、助けを待ってる人が、孤独な人が必ずいる……」
瑠璃乃「そういう人ひとりひとりに、ルリは手を差し伸べたい。だから、無駄かもしれなくても続けなきゃダメなんだ」
瑠璃乃「こんな世界だからこそ、輪を広げて助け合う世界にしたい。ルリは……誰かの孤独を救うヒーローになりたいから!」ニッ
小鈴「!」
瑠璃乃「そーゆーわけで、誰かに“楽しい”を届けるためルリ達は行動し続けるのである! そう、ルリ思うゆえにルリあり!」グッ
70:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:17:00 ID:???00
小鈴「なるほど……」フム
小鈴「ひとりの心細さは、徒町の身にもよく覚えがあります。そ、っか……だから、続けられるんですね……」ポツリ
瑠璃乃「こんな答えで、少しでも小鈴ちゃんのためになったかな? ルリ自身、まだまだ未完成の未熟な存在だけど」
瑠璃乃「大切なのは、届くかわからなくても祈ること。無駄かもしれなくても、信念を持って続けることだと、ルリは思うかな」
小鈴「……少し、徒町にもわかった気がします。お話を聞かせていただき、ありがとうございました!」ニコッ
瑠璃乃「うんうん! また何か疑問があったら教えてね」ニコッ
小鈴「はい!」
姫芽「……」ジー
小鈴「ひとりの心細さは、徒町の身にもよく覚えがあります。そ、っか……だから、続けられるんですね……」ポツリ
瑠璃乃「こんな答えで、少しでも小鈴ちゃんのためになったかな? ルリ自身、まだまだ未完成の未熟な存在だけど」
瑠璃乃「大切なのは、届くかわからなくても祈ること。無駄かもしれなくても、信念を持って続けることだと、ルリは思うかな」
小鈴「……少し、徒町にもわかった気がします。お話を聞かせていただき、ありがとうございました!」ニコッ
瑠璃乃「うんうん! また何か疑問があったら教えてね」ニコッ
小鈴「はい!」
姫芽「……」ジー
71:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:18:00 ID:???00
姫芽「……ねぇ、小鈴ちゃん~」コソッ
小鈴「? 姫芽ちゃん?」
姫芽「……この後、少し小鈴ちゃんと“二人だけで”お話しがしたいんだけど……いいかにゃ~?」コソコソ
小鈴「……え?」
小鈴「? 姫芽ちゃん?」
姫芽「……この後、少し小鈴ちゃんと“二人だけで”お話しがしたいんだけど……いいかにゃ~?」コソコソ
小鈴「……え?」
72:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:19:00 ID:???00
────
タッタッ…
小鈴「あ、あの! どうしてこんな離れた場所まで来て……話すだけなら、あのお二人の近くでも良いんじゃないですか?」
姫芽「それは~……あ、その前に小鈴ちゃん。アタシには敬語じゃなくていいよ~」
小鈴「え。えぇと、でも……」
姫芽「あはは、遠慮はいらないって~。だってアタシと小鈴ちゃんはもう、友達だからね~」ニコッ
小鈴「!? と、友達…………徒町が?」
タッタッ…
小鈴「あ、あの! どうしてこんな離れた場所まで来て……話すだけなら、あのお二人の近くでも良いんじゃないですか?」
姫芽「それは~……あ、その前に小鈴ちゃん。アタシには敬語じゃなくていいよ~」
小鈴「え。えぇと、でも……」
姫芽「あはは、遠慮はいらないって~。だってアタシと小鈴ちゃんはもう、友達だからね~」ニコッ
小鈴「!? と、友達…………徒町が?」
73:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:20:00 ID:???00
姫芽「うんうん~、この世界じゃ、一緒に過ごしたらもう友達でしょ~? 小鈴ちゃんのこと、アタシはもう友達だと思ってるよ~」ニコッ
小鈴「え、そ、そうなんでしょうか……あぁいえ! そう、なの?」
姫芽「そうに決まってるよ~。……っと、小鈴ちゃんに話したいことがあって、ここまで来てもらったんだった」
姫芽「……どうしても、せんぱいには聞かれたくないお話だからね~……」ボソッ
小鈴「?」
姫芽「……小鈴ちゃん」
姫芽「さやかせんぱいのこと……しっかり支えてあげてほしいんだ。“せんぱいが居なくなって”、不安定になってたからさ~」
小鈴「え、そ、そうなんでしょうか……あぁいえ! そう、なの?」
姫芽「そうに決まってるよ~。……っと、小鈴ちゃんに話したいことがあって、ここまで来てもらったんだった」
姫芽「……どうしても、せんぱいには聞かれたくないお話だからね~……」ボソッ
小鈴「?」
姫芽「……小鈴ちゃん」
姫芽「さやかせんぱいのこと……しっかり支えてあげてほしいんだ。“せんぱいが居なくなって”、不安定になってたからさ~」
74:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:21:00 ID:???00
小鈴「……え?」
姫芽「同じ立場……後輩っていう間柄で話せるの、小鈴ちゃんが二人目でね~。ぜひ話しておきたかったんだ~」
姫芽「さやかせんぱい、前はあの“せんぱい”に思いっきり依存してる、って感じで~……でもきっと、小鈴ちゃんがいれば……」
小鈴「?? えっ、え? あの人に“先輩”が……?」
姫芽「……ん、あれ? 小鈴ちゃんは、さやかせんぱいから何も聞いてない感じ~?」
小鈴「う、うん……徒町、そういったお話は特に……」
姫芽「同じ立場……後輩っていう間柄で話せるの、小鈴ちゃんが二人目でね~。ぜひ話しておきたかったんだ~」
姫芽「さやかせんぱい、前はあの“せんぱい”に思いっきり依存してる、って感じで~……でもきっと、小鈴ちゃんがいれば……」
小鈴「?? えっ、え? あの人に“先輩”が……?」
姫芽「……ん、あれ? 小鈴ちゃんは、さやかせんぱいから何も聞いてない感じ~?」
小鈴「う、うん……徒町、そういったお話は特に……」
75:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:22:00 ID:???00
姫芽「そっか~……えっと、ね」
姫芽「さやかせんぱいにも、るりちゃんせんぱいにも……一つ上に頼れる“せんぱい”がいたんだ~」
小鈴「そう、なんだ……?」
姫芽「まぁ、詳しいことは本人に聞いてほしいんだけど~……“せんぱい”が夢のために居なくなって、先が見えなくなったこともあったわけでして」
姫芽「そういう時、せんぱいを支えてあげられるのは……後輩のアタシ達だけ、なんだよ」
姫芽「さやかせんぱいにも、るりちゃんせんぱいにも……一つ上に頼れる“せんぱい”がいたんだ~」
小鈴「そう、なんだ……?」
姫芽「まぁ、詳しいことは本人に聞いてほしいんだけど~……“せんぱい”が夢のために居なくなって、先が見えなくなったこともあったわけでして」
姫芽「そういう時、せんぱいを支えてあげられるのは……後輩のアタシ達だけ、なんだよ」
76:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:23:00 ID:???00
姫芽「アタシも……その大好きなせんぱいに頼まれたんだ。るりちゃんせんぱいが頑張り過ぎちゃわないよう見てあげて、って」
小鈴「……それが、姫芽ちゃんの生きる意味?」
姫芽「? そんな大袈裟な言い方していいかわかんないけど~……でも確かに、アタシはそのために生きてるのかも」ウンウン
姫芽「るりちゃんせんぱいが“楽しい”を作ってくれる。なら、アタシはそれを一緒に楽しみつつ、みんなにも繋げてあげたい」
姫芽「それで、るりちゃんせんぱいが倒れちゃわないように支えるのが後輩……相棒として、隣に立つアタシの使命だからね~」ニコッ
小鈴「……それが、姫芽ちゃんの生きる意味?」
姫芽「? そんな大袈裟な言い方していいかわかんないけど~……でも確かに、アタシはそのために生きてるのかも」ウンウン
姫芽「るりちゃんせんぱいが“楽しい”を作ってくれる。なら、アタシはそれを一緒に楽しみつつ、みんなにも繋げてあげたい」
姫芽「それで、るりちゃんせんぱいが倒れちゃわないように支えるのが後輩……相棒として、隣に立つアタシの使命だからね~」ニコッ
77:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:24:00 ID:???00
小鈴「…………先輩のために生きる、かぁ……」ポツリ
姫芽「まぁとりあえず、今アタシが小鈴ちゃんに話したかったのはこれだけかな。あ、そういえば~……」
姫芽「小鈴ちゃん達ってこの後どこに行くの? 旅の途中、みたいだけど~?」
小鈴「あ、えっと……確か、日野下花帆さん? のいる南のほうに行くって……」
姫芽「! わ、かほせんぱいの所も行くの? だったら、小鈴ちゃんはあっちで吟子ちゃんにも会えるんだ~! いいな~」
小鈴「……? えと……その人は、姫芽ちゃんの知り合い?」
姫芽「まぁとりあえず、今アタシが小鈴ちゃんに話したかったのはこれだけかな。あ、そういえば~……」
姫芽「小鈴ちゃん達ってこの後どこに行くの? 旅の途中、みたいだけど~?」
小鈴「あ、えっと……確か、日野下花帆さん? のいる南のほうに行くって……」
姫芽「! わ、かほせんぱいの所も行くの? だったら、小鈴ちゃんはあっちで吟子ちゃんにも会えるんだ~! いいな~」
小鈴「……? えと……その人は、姫芽ちゃんの知り合い?」
78:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:25:00 ID:???00
姫芽「そうだよ~。吟子ちゃんはアタシと同じ後輩仲間で、とっても優しい女の子なんだ~」
姫芽「絶対、小鈴ちゃんとも気が合うと思うから、仲良くしてあげてね~。……あ、ちなみに~」ニヤッ
姫芽「吟子ちゃんのこと~、かわいいかわいい~って褒め倒してあげると、いい反応見せてくれると思うよ~」
小鈴「そうなんだ! うん、会ったらやってみる!」ニコッ
姫芽「絶対、小鈴ちゃんとも気が合うと思うから、仲良くしてあげてね~。……あ、ちなみに~」ニヤッ
姫芽「吟子ちゃんのこと~、かわいいかわいい~って褒め倒してあげると、いい反応見せてくれると思うよ~」
小鈴「そうなんだ! うん、会ったらやってみる!」ニコッ
79:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:26:00 ID:???00
────
──同時刻
瑠璃乃「いやー、小鈴ちゃん、純粋で良い子だねぇ。ルリの話を真剣に聞いてくれてさ」ウンウン
さやか「ごほっ、ごほっ……んん」
瑠璃乃「? さやかちゃん、突然咳き込んで……大丈夫?」
さやか「ええ、砂埃が少し……誰かが噂でもしているのでしょう、特段問題はありませんよ。それより……」チラッ
姫芽「~~」
小鈴「~~!」ニコッ
さやか「……遠目に見ても、二人が仲良くしているのがよくわかって……なんだか嬉しいですね」クスッ
瑠璃乃「ん、そうだねぇ……」ジー
──同時刻
瑠璃乃「いやー、小鈴ちゃん、純粋で良い子だねぇ。ルリの話を真剣に聞いてくれてさ」ウンウン
さやか「ごほっ、ごほっ……んん」
瑠璃乃「? さやかちゃん、突然咳き込んで……大丈夫?」
さやか「ええ、砂埃が少し……誰かが噂でもしているのでしょう、特段問題はありませんよ。それより……」チラッ
姫芽「~~」
小鈴「~~!」ニコッ
さやか「……遠目に見ても、二人が仲良くしているのがよくわかって……なんだか嬉しいですね」クスッ
瑠璃乃「ん、そうだねぇ……」ジー
80:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:27:00 ID:???00
瑠璃乃「……ねぇ、さやかちゃん」
さやか「……? なんですか瑠璃乃さん?」
瑠璃乃「今日、さやかちゃんがルリに会いに来たのって……全部あの子のためっしょ?」
さやか「!」
瑠璃乃「あはは、やっぱ図星かぁ。小鈴ちゃんを姫芽と会わせようとしたの、わりかし露骨だったし」クスクス
さやか「ば……バレてましたか……」
さやか「……? なんですか瑠璃乃さん?」
瑠璃乃「今日、さやかちゃんがルリに会いに来たのって……全部あの子のためっしょ?」
さやか「!」
瑠璃乃「あはは、やっぱ図星かぁ。小鈴ちゃんを姫芽と会わせようとしたの、わりかし露骨だったし」クスクス
さやか「ば……バレてましたか……」
81:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:28:00 ID:???00
さやか「……」
瑠璃乃「友達、って大事だもんね……ルリは、さやかちゃんや花帆ちゃんと対等な親友になれたから、終末世界でも希望がある」
瑠璃乃「さやかちゃんは、あの子……小鈴ちゃんが“ひとりになる”のを避けたかったんだ」
さやか「……そう、ですね」
瑠璃乃「優しいねぇ、さやかちゃんは。しっかり“先輩”できてるじゃん」クスッ
さやか「……いえ。わたしは……あの人には、敵いませんよ」ボソッ
瑠璃乃「友達、って大事だもんね……ルリは、さやかちゃんや花帆ちゃんと対等な親友になれたから、終末世界でも希望がある」
瑠璃乃「さやかちゃんは、あの子……小鈴ちゃんが“ひとりになる”のを避けたかったんだ」
さやか「……そう、ですね」
瑠璃乃「優しいねぇ、さやかちゃんは。しっかり“先輩”できてるじゃん」クスッ
さやか「……いえ。わたしは……あの人には、敵いませんよ」ボソッ
82:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:29:00 ID:???00
瑠璃乃「あ、そうだ、さやかちゃん。この後、花帆ちゃんの所にも行くんだっけ?」
さやか「はい。ひさしぶりに顔を見ようかと思いまして」
瑠璃乃「そっか、それなら……実はルリ、花帆ちゃんに届けてほしいものがあって……」サッ
さやか「……? これは……テープレコーダー、ですか?」
さやか「はい。ひさしぶりに顔を見ようかと思いまして」
瑠璃乃「そっか、それなら……実はルリ、花帆ちゃんに届けてほしいものがあって……」サッ
さやか「……? これは……テープレコーダー、ですか?」
83:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:30:00 ID:???00
瑠璃乃「そうそう。前会った時、花帆ちゃんから頼まれてたんだ。作曲の依頼、ってやつだね」ウンウン
さやか「作曲……? ……ああ、そういえば」
瑠璃乃「うん。ルリは『天使ちゃん』を託されてるからね。ルリ、花帆ちゃんと一緒に少しギターの練習してみてたんだ」
さやか「それで、曲作りまで習得したんですか。……しっかり、受け継いでいるんですね」
瑠璃乃「まぁルリが作ったこれは、ちょっとカッコいい感じにしすぎちゃったけど、ね」クスッ
さやか「今の瑠璃乃さん渾身の一曲、なんですね。花帆さんにそのテープレコーダーを渡す……確かに、承りました」
瑠璃乃「ありがとセンキュー、さやかちゃん! また次会ったときは、ルリのギター弾き語りでも聴いてってよ!」ニコッ
さやか「ええ。……できたら、そうします」ポツリ
さやか「作曲……? ……ああ、そういえば」
瑠璃乃「うん。ルリは『天使ちゃん』を託されてるからね。ルリ、花帆ちゃんと一緒に少しギターの練習してみてたんだ」
さやか「それで、曲作りまで習得したんですか。……しっかり、受け継いでいるんですね」
瑠璃乃「まぁルリが作ったこれは、ちょっとカッコいい感じにしすぎちゃったけど、ね」クスッ
さやか「今の瑠璃乃さん渾身の一曲、なんですね。花帆さんにそのテープレコーダーを渡す……確かに、承りました」
瑠璃乃「ありがとセンキュー、さやかちゃん! また次会ったときは、ルリのギター弾き語りでも聴いてってよ!」ニコッ
さやか「ええ。……できたら、そうします」ポツリ
84:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:31:00 ID:???00
────
小鈴「──時間ってあっという間なんですね……気がつかないうちに、もう夜になっていたとは……!」
さやか「そうですね。キャンプ用テントを瑠璃乃さんに貸していただけたので、昨日よりも快適に眠れそうです」クスッ
さやか「さて、小鈴さん。今日一日で、瑠璃乃さんや姫芽さんとたくさんお話ができたかと思いますが……何か、掴めましたか?」
小鈴「あ、えっと……ほんの少しですが、はい!」
小鈴「誰かにとっての“楽しい”を守り、届けることで、ひとりになる人を作らない。そのために、行動しながら今を生き続ける……」
小鈴「それも“生きる意味”の一つなのだと……姫芽ちゃん達のお話を聞いて、徒町も少し理解できた気がします!」
さやか「ふふ、小鈴さんの考えが深まったのならば良かったです。どうやら、ご友人もできたようですし」クスッ
小鈴「──時間ってあっという間なんですね……気がつかないうちに、もう夜になっていたとは……!」
さやか「そうですね。キャンプ用テントを瑠璃乃さんに貸していただけたので、昨日よりも快適に眠れそうです」クスッ
さやか「さて、小鈴さん。今日一日で、瑠璃乃さんや姫芽さんとたくさんお話ができたかと思いますが……何か、掴めましたか?」
小鈴「あ、えっと……ほんの少しですが、はい!」
小鈴「誰かにとっての“楽しい”を守り、届けることで、ひとりになる人を作らない。そのために、行動しながら今を生き続ける……」
小鈴「それも“生きる意味”の一つなのだと……姫芽ちゃん達のお話を聞いて、徒町も少し理解できた気がします!」
さやか「ふふ、小鈴さんの考えが深まったのならば良かったです。どうやら、ご友人もできたようですし」クスッ
85:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:32:00 ID:???00
小鈴「とは言っても、まだまだ徒町自身の新しい“生きる意味”は見つけられませんが…………あ」
さやか「?」
小鈴「そういえば、一つ気になったことがあって……」
小鈴「姫芽ちゃんとのお話しで聞いたんですけど、徒町と会う以前に、“先輩”がいたんですか?」
さやか「……!」ピタ
さやか「?」
小鈴「そういえば、一つ気になったことがあって……」
小鈴「姫芽ちゃんとのお話しで聞いたんですけど、徒町と会う以前に、“先輩”がいたんですか?」
さやか「……!」ピタ
86:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:33:00 ID:???00
さやか「……」
小鈴「……あ、もしやあまり触れてはいけない話題でしたかね!? すみません、徒町の思慮が浅いばかりに……!」
さやか「あぁ……いえ、そんなことはないんです。……これは、小鈴さんにはいつか話しておかなくてはいけなかったことですから」
小鈴「えぇと……」
さやか「ふむ……とは言うものの、どこから話せばいいのか……そう、ですね」コホン
さやか「……わたしと初めて会った時、小鈴さんは食べ物の盗みをはたらこうとしていたこと……もちろん覚えていますよね?」
小鈴「!? え、覚えていますが、なにゆえその話題を……!? ……そ、それについては本当に、徒町の不徳の致すところでして……」シュン
さやか「あぁ、いえ! 蒸し返して責めているわけではないんです。と言いますか、その……」
さやか「……わたしも昔、同じことをしていたので」
小鈴「………………え?」キョトン
小鈴「……あ、もしやあまり触れてはいけない話題でしたかね!? すみません、徒町の思慮が浅いばかりに……!」
さやか「あぁ……いえ、そんなことはないんです。……これは、小鈴さんにはいつか話しておかなくてはいけなかったことですから」
小鈴「えぇと……」
さやか「ふむ……とは言うものの、どこから話せばいいのか……そう、ですね」コホン
さやか「……わたしと初めて会った時、小鈴さんは食べ物の盗みをはたらこうとしていたこと……もちろん覚えていますよね?」
小鈴「!? え、覚えていますが、なにゆえその話題を……!? ……そ、それについては本当に、徒町の不徳の致すところでして……」シュン
さやか「あぁ、いえ! 蒸し返して責めているわけではないんです。と言いますか、その……」
さやか「……わたしも昔、同じことをしていたので」
小鈴「………………え?」キョトン
87:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:34:00 ID:???00
小鈴「同じことって、それはつまり…………盗みを、ですか?」
さやか「ええ。結局は未遂に終わりましたが、そうですね」
小鈴「……え、えええ!??」ガタッ
小鈴「し、信じられませんよ、そんなの! だって、こんな徒町にもすっごく優しいのに……」
さやか「ふふっ、そう言っていただけるのは嬉しいですが、本当なんですよ。若気の至り、と言いますか……」
さやか「終末世界で生きることに己の限界を感じ、なにか結果を出そうと焦っていたんです。人と馴れ合う気なんて全くなくて」
小鈴「! それ、は……」
さやか「ですがその時、盗みをしようとわたしが忍び込んだ先で、“ある人”に出会ったんです」
さやか「その人はわたしを捕まえるわけでもなく、突然、声をかけてきて──」
さやか「ええ。結局は未遂に終わりましたが、そうですね」
小鈴「……え、えええ!??」ガタッ
小鈴「し、信じられませんよ、そんなの! だって、こんな徒町にもすっごく優しいのに……」
さやか「ふふっ、そう言っていただけるのは嬉しいですが、本当なんですよ。若気の至り、と言いますか……」
さやか「終末世界で生きることに己の限界を感じ、なにか結果を出そうと焦っていたんです。人と馴れ合う気なんて全くなくて」
小鈴「! それ、は……」
さやか「ですがその時、盗みをしようとわたしが忍び込んだ先で、“ある人”に出会ったんです」
さやか「その人はわたしを捕まえるわけでもなく、突然、声をかけてきて──」
88:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:35:00 ID:???00
──
────
さやか「……正気ですか?」
「うん。ボクに、料理を教えてほしいんだ」
────
さやか「……正気ですか?」
「うん。ボクに、料理を教えてほしいんだ」
89:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:36:00 ID:???00
さやか「いや、あの……わたし泥棒ですよ?? 泥棒に食べ物を渡した上で料理を教えて、なんて何がしたいんですか……」
「? だから、料理を教えてほしい」
さやか「……はぁ」
「ボク、食べるのいつも忘れがちだから……キミなら、食べ物のこと、ぺきん・だっくのことも任せられる」
さやか「……根拠もないのに、こんな終末世界でよく人を信じられますね? わたしは、誰とも仲良くする気なんて……」
「でも、キミはボクのところに来た。ボクはみんなとわきあいあい……仲良く、したいな」
「? だから、料理を教えてほしい」
さやか「……はぁ」
「ボク、食べるのいつも忘れがちだから……キミなら、食べ物のこと、ぺきん・だっくのことも任せられる」
さやか「……根拠もないのに、こんな終末世界でよく人を信じられますね? わたしは、誰とも仲良くする気なんて……」
「でも、キミはボクのところに来た。ボクはみんなとわきあいあい……仲良く、したいな」
90:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:37:00 ID:???00
さやか「……!」
「ねぇ。キミのお名前、教えてほしいな」
さやか「…………村野さやか、です」
「さや。いい名前だ」
「ねぇ。キミのお名前、教えてほしいな」
さやか「…………村野さやか、です」
「さや。いい名前だ」
91:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:38:00 ID:???00
さやか「あの、ですがわたしは……」
「さや……ダメ、かな?」
さやか「~~~っ! ああ、もう! そんな純粋な目で見つめられたら断りづらいじゃないですか……」ハァ
さやか「…………少しだけ、ですからね!」
「! ふふ、ありがとー。よろしくね、さや」
さやか「…………一つだけ、聞かせてください」
さやか「どうして……わたしに声をかけたんですか?」
「んー……えっと、ね」
「“何か”を求めてきらめく色が見えたから、かな」
────
──
「さや……ダメ、かな?」
さやか「~~~っ! ああ、もう! そんな純粋な目で見つめられたら断りづらいじゃないですか……」ハァ
さやか「…………少しだけ、ですからね!」
「! ふふ、ありがとー。よろしくね、さや」
さやか「…………一つだけ、聞かせてください」
さやか「どうして……わたしに声をかけたんですか?」
「んー……えっと、ね」
「“何か”を求めてきらめく色が見えたから、かな」
────
──
92:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:39:00 ID:???00
さやか「……あの時は、その言葉の意味がわかりませんでした。ですが、今はよく理解できます」
さやか「似た人に、わたしは出会ってしまいましたから」クスッ
小鈴「……! それって……」
さやか「ふふっ。ええ、あなたのことですよ、小鈴さん」
さやか「あの時、盗み食いをしに来た小鈴さんが……“何か”を求めようと足掻いていた小鈴さんが、昔のわたしと重なって見えたんです」
小鈴「……」
さやか「似た人に、わたしは出会ってしまいましたから」クスッ
小鈴「……! それって……」
さやか「ふふっ。ええ、あなたのことですよ、小鈴さん」
さやか「あの時、盗み食いをしに来た小鈴さんが……“何か”を求めようと足掻いていた小鈴さんが、昔のわたしと重なって見えたんです」
小鈴「……」
93:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:40:00 ID:???00
さやか「……結局、わたしはずっと、あの人の隣で料理を作り続けました。きっと、料理の腕はそのとき磨かれたのでしょう」
さやか「その後も何故か関係は続き、人を癒すために終末世界のあちこちを二人で巡ったり、その過程で花帆さんや瑠璃乃さんとも知り合ったり……」
さやか「今思えば……あの日々は、本当に満ち足りたものでした」ポツリ
小鈴「…………その方は、大事な“先輩”なんですね」
さやか「ええ。終末の世界で、わたしに役目を与えてくれた偉大な先輩。わたしにとって、あの人は希望の星だったんです」
小鈴「えぇと……その人は、今……?」
さやか「……彼女は、学校を再建し教育者になるという夢を叶えるため、ここよりもっと人がいる都会に巣立って行きました」
さやか「その後も何故か関係は続き、人を癒すために終末世界のあちこちを二人で巡ったり、その過程で花帆さんや瑠璃乃さんとも知り合ったり……」
さやか「今思えば……あの日々は、本当に満ち足りたものでした」ポツリ
小鈴「…………その方は、大事な“先輩”なんですね」
さやか「ええ。終末の世界で、わたしに役目を与えてくれた偉大な先輩。わたしにとって、あの人は希望の星だったんです」
小鈴「えぇと……その人は、今……?」
さやか「……彼女は、学校を再建し教育者になるという夢を叶えるため、ここよりもっと人がいる都会に巣立って行きました」
94:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:41:00 ID:???00
小鈴「そう、だったんですね……」
さやか「……」
さやか「小鈴さん」
小鈴「? ど、どうしました?」
さやか「…………小鈴さんは」
さやか「今の選択が間違いではなかったと、言い切れますか……?」ポツリ
さやか「……」
さやか「小鈴さん」
小鈴「? ど、どうしました?」
さやか「…………小鈴さんは」
さやか「今の選択が間違いではなかったと、言い切れますか……?」ポツリ
95:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:42:00 ID:???00
小鈴「……え?」
さやか「……わたしは、あの人に拾われたことで救われました。先輩にしてもらったことは後輩に返していくものだ、と言われ」
さやか「そのためにわたしは、あの人の“期待”に応えようと小鈴さんに接していました。ですが……」
さやか「振り返ってみると、この選択が本当に正しかったのか、段々とわからなくなってきていて……」
小鈴「!」
さやか「小鈴さんを見出したのが、わたしではなく別の人……例えばあの“先輩”だったのなら。そんなifさえ自問自答してしまうんです」
小鈴「そ、そんなの……!」
さやか「……わたしは、あの人に拾われたことで救われました。先輩にしてもらったことは後輩に返していくものだ、と言われ」
さやか「そのためにわたしは、あの人の“期待”に応えようと小鈴さんに接していました。ですが……」
さやか「振り返ってみると、この選択が本当に正しかったのか、段々とわからなくなってきていて……」
小鈴「!」
さやか「小鈴さんを見出したのが、わたしではなく別の人……例えばあの“先輩”だったのなら。そんなifさえ自問自答してしまうんです」
小鈴「そ、そんなの……!」
96:
◆oz9g3Mss★
2025/08/01(金) 19:43:00 ID:???00
さやか「……いえ。すみません、こんな話を聞かせてしまい……少し不安になってしまっていました」コホン
さやか「でも、“大丈夫”です。小鈴さんは気にしないでください」ニコッ
小鈴「あの、えっと……」
さやか「……さて、明日からの道程は一層険しくなりますよ。今日のところはしっかり体を休めましょうか、小鈴さん」
小鈴「っ…………はい」
小鈴「……」
さやか「でも、“大丈夫”です。小鈴さんは気にしないでください」ニコッ
小鈴「あの、えっと……」
さやか「……さて、明日からの道程は一層険しくなりますよ。今日のところはしっかり体を休めましょうか、小鈴さん」
小鈴「っ…………はい」
小鈴「……」
101:
◆oz9g3Mss★
2025/08/02(土) 19:00:00 ID:???00
~幕間~
さやか(──それは、懐かしい日々の記憶)
さやか(旅の終わり。先輩方に花帆さんや瑠璃乃さん、その後輩を加えた合計八人で共同生活をしていた僅かな期間のこと……)
さやか(──それは、懐かしい日々の記憶)
さやか(旅の終わり。先輩方に花帆さんや瑠璃乃さん、その後輩を加えた合計八人で共同生活をしていた僅かな期間のこと……)
102:
◆oz9g3Mss★
2025/08/02(土) 19:01:00 ID:???00
さやか「……」
花帆「さやかちゃん、さやかちゃん!」ヒョコッ
さやか「花帆さん……と、瑠璃乃さんですか。……はぁ」ズーン
瑠璃乃「……落ち込んでるねぇ、さやかちゃん」
花帆「ねぇ、さやかちゃん。……やっぱり、センパイのこと?」
さやか「…………はい」
さやか「……これからは一緒にいることができない、そう先輩にハッキリと告げられたのが…………想像以上に、堪えていて」
花帆「さやかちゃん、さやかちゃん!」ヒョコッ
さやか「花帆さん……と、瑠璃乃さんですか。……はぁ」ズーン
瑠璃乃「……落ち込んでるねぇ、さやかちゃん」
花帆「ねぇ、さやかちゃん。……やっぱり、センパイのこと?」
さやか「…………はい」
さやか「……これからは一緒にいることができない、そう先輩にハッキリと告げられたのが…………想像以上に、堪えていて」
103:
◆oz9g3Mss★
2025/08/02(土) 19:02:00 ID:???00
さやか(前兆はあった。先輩が、叶えたい夢のために準備をしていたことも、わたしは確かに知っていました……けれど)
さやか「……わたしは、先輩に何も返せていないのに……」ポツリ
さやか(先輩の幸せを願えば願うほど……どうして先輩はわたしを置いていってしまうのか、と灰色の感情に苛まれてしまう)
瑠璃乃「んー……確かにルリ達、今の今までずっと、あの星……パイセン達に憧れて生きてきたからね。不安にもなっちゃうよ」
花帆「うん、わかる……わかるよ、その気持ち! でも、だけど!」ガタッ
瑠璃乃「? 花帆ちゃん?」
さやか「……わたしは、先輩に何も返せていないのに……」ポツリ
さやか(先輩の幸せを願えば願うほど……どうして先輩はわたしを置いていってしまうのか、と灰色の感情に苛まれてしまう)
瑠璃乃「んー……確かにルリ達、今の今までずっと、あの星……パイセン達に憧れて生きてきたからね。不安にもなっちゃうよ」
花帆「うん、わかる……わかるよ、その気持ち! でも、だけど!」ガタッ
瑠璃乃「? 花帆ちゃん?」
104:
◆oz9g3Mss★
2025/08/02(土) 19:03:00 ID:???00
花帆「瑠璃乃ちゃんやさやかちゃんの、そんな気持ちを吹き飛ばせるような! すごく良いアイディアがあたしにあってね──」フンフン
さやか「…………」
さやか(──言葉が、耳を通り過ぎます。……二人は、こんなわたしにも優しく接してはくれますが、それが、苦しい)
さやか(何故なら…………わたしにだけ“後輩”が未だ居ない。その事実が、依然、わたしを追い詰め続けているから)
さやか「…………」
さやか(──言葉が、耳を通り過ぎます。……二人は、こんなわたしにも優しく接してはくれますが、それが、苦しい)
さやか(何故なら…………わたしにだけ“後輩”が未だ居ない。その事実が、依然、わたしを追い詰め続けているから)
105:
◆oz9g3Mss★
2025/08/02(土) 19:04:00 ID:???00
さやか(どうしてこうなったのか。二人の後輩……吟子さんと姫芽さんは、元々この近くに住んでいたのだとお聞きしました)
さやか(終末世界だからこそ、近くの人は助け合って生きていく……ですが逆に、生まれた地から外に出て行くことはない)
さやか(花帆さんのようなバイタリティの塊は除き……荒れ果てたこの時代、都道府県を越えた移動は負担も時間もかかります)
さやか(この地に、これ以上人は居ない……であれば、何処か遠くからやってくる人間が現れない限り、新しい出会いはない)
さやか「はぁ……」ズーン
さやか(終末世界だからこそ、近くの人は助け合って生きていく……ですが逆に、生まれた地から外に出て行くことはない)
さやか(花帆さんのようなバイタリティの塊は除き……荒れ果てたこの時代、都道府県を越えた移動は負担も時間もかかります)
さやか(この地に、これ以上人は居ない……であれば、何処か遠くからやってくる人間が現れない限り、新しい出会いはない)
さやか「はぁ……」ズーン
106:
◆oz9g3Mss★
2025/08/02(土) 19:05:00 ID:???00
さやか(つまり、楽観的に考えても……わたしを慕ってくれるような“後輩”に出会える可能性など、皆無に等しいのでしょう)
さやか(受け取ったものは後輩に伝えればいい。そう言われようと、その後輩が居ないのであれば、どうしようも……)
瑠璃乃「……──るほどねー。さやかちゃんはどー思う?」
さやか「…………」
瑠璃乃「? さやかちゃん?」
さやか「……! あ、あぁ、えっと…………すみません。少し物思いに耽っていて。……もう一度内容をお願いできますか?」
さやか(受け取ったものは後輩に伝えればいい。そう言われようと、その後輩が居ないのであれば、どうしようも……)
瑠璃乃「……──るほどねー。さやかちゃんはどー思う?」
さやか「…………」
瑠璃乃「? さやかちゃん?」
さやか「……! あ、あぁ、えっと…………すみません。少し物思いに耽っていて。……もう一度内容をお願いできますか?」
107:
◆oz9g3Mss★
2025/08/02(土) 19:06:00 ID:???00
花帆「えー、仕方ないなぁ、さやかちゃん。もう一度だけだよ?」クスッ
花帆「……あたしね、ずっと考えてたんだ。夢を叶えるために、遠くに行っちゃうセンパイ達のこと」
さやか「……」
花帆「こんな世界だし、離れ離れは怖いけど……だからこそ“気持ちを伝える”ための方法があるんじゃないか、って、考え続けて……」
花帆「それで……あたし、やっと思いついたんだ! ──センパイ達に歌を贈ればいいんだ、って!」
花帆「……あたしね、ずっと考えてたんだ。夢を叶えるために、遠くに行っちゃうセンパイ達のこと」
さやか「……」
花帆「こんな世界だし、離れ離れは怖いけど……だからこそ“気持ちを伝える”ための方法があるんじゃないか、って、考え続けて……」
花帆「それで……あたし、やっと思いついたんだ! ──センパイ達に歌を贈ればいいんだ、って!」
108:
◆oz9g3Mss★
2025/08/02(土) 19:07:00 ID:???00
さやか「……歌、ですか?」
花帆「うん! だって、歌には不思議な力があるからね!」グッ
瑠璃乃「つまり、歌うことが……花帆ちゃんがさっき言ってた、センパイ達に“気持ちを伝える”方法ってやつなんだよね?」
花帆「そう! 大好きなセンパイへの想い……歌だったら、今あるモヤモヤした不安ごと全部、大きな声で届くんだよ!」
花帆「だから、歌おう! ステージを作って、姫芽ちゃんや吟子ちゃんも合わせて……みんなで!」ニコッ
花帆「うん! だって、歌には不思議な力があるからね!」グッ
瑠璃乃「つまり、歌うことが……花帆ちゃんがさっき言ってた、センパイ達に“気持ちを伝える”方法ってやつなんだよね?」
花帆「そう! 大好きなセンパイへの想い……歌だったら、今あるモヤモヤした不安ごと全部、大きな声で届くんだよ!」
花帆「だから、歌おう! ステージを作って、姫芽ちゃんや吟子ちゃんも合わせて……みんなで!」ニコッ
109:
◆oz9g3Mss★
2025/08/02(土) 19:08:00 ID:???00
さやか「…………そう上手くいくでしょうか」ボソッ
さやか(歌なんて……この終末世界で生きていく上では必要のない娯楽。何の力もないはずなのに)
瑠璃乃「んー……でも、花帆ちゃん。めっちゃ良い案だとは思うけどさ、そのルリ達が歌う曲はどうすんの?」
花帆「? どうするって?」
瑠璃乃「いやー、だって……ルリ達、誰も“作曲”できないじゃん」
花帆「………………あ!!」
さやか(歌なんて……この終末世界で生きていく上では必要のない娯楽。何の力もないはずなのに)
瑠璃乃「んー……でも、花帆ちゃん。めっちゃ良い案だとは思うけどさ、そのルリ達が歌う曲はどうすんの?」
花帆「? どうするって?」
瑠璃乃「いやー、だって……ルリ達、誰も“作曲”できないじゃん」
花帆「………………あ!!」
110:
◆oz9g3Mss★
2025/08/02(土) 19:09:00 ID:???00
さやか「……その問題もありましたね。確か花帆さん、前に先輩からギターの手解きを受けていませんでしたか?」
花帆「う、受けたけど、まだ全然だよー! 一曲弾き語りできるだけで、作曲までは流石に……」
瑠璃乃「……ルリも、ギター弾いてるのを横で眺めたことはあっけど、曲は作れないし……」ウーン
花帆「──! そうだ!」ガタッ
さやか「……花帆さん?」
花帆「う、受けたけど、まだ全然だよー! 一曲弾き語りできるだけで、作曲までは流石に……」
瑠璃乃「……ルリも、ギター弾いてるのを横で眺めたことはあっけど、曲は作れないし……」ウーン
花帆「──! そうだ!」ガタッ
さやか「……花帆さん?」
111:
◆oz9g3Mss★
2025/08/02(土) 19:10:00 ID:???00
花帆「思い出した! 確か、センパイ達三人が共同で作ったっていう、旅立ちを祝うための曲があったはず……」
瑠璃乃「……あぁ! そういやあの三人も昔、あるパイセン繋がりで出会ったんだったっけ。その時の曲かな?」
さやか「……なるほど」
さやか(先輩から貰ったものを返す……なればこそ、その“先輩”が“先輩”のために作ったものを繋ぐのは、良い考えかもしれません)
花帆「なら、それをセンパイ達に向けて歌えば……! これで、曲についての問題は解決だよ!」グッ
瑠璃乃「……あぁ! そういやあの三人も昔、あるパイセン繋がりで出会ったんだったっけ。その時の曲かな?」
さやか「……なるほど」
さやか(先輩から貰ったものを返す……なればこそ、その“先輩”が“先輩”のために作ったものを繋ぐのは、良い考えかもしれません)
花帆「なら、それをセンパイ達に向けて歌えば……! これで、曲についての問題は解決だよ!」グッ
112:
◆oz9g3Mss★
2025/08/02(土) 19:11:00 ID:???00
瑠璃乃「そっか、じゃあ曲は良いとして、次は……」
さやか「ステージ……でしょうか? こんな終末世界ですし、探すのも大変そうですが……」
花帆「ふっふっふ……! そこは大丈夫だよ、二人とも! 実はあたし、曲を歌う場所についてはもう考えてあるんだ!」ニヤッ
瑠璃乃「?」
花帆「ほら、本がいっぱいの、あの建物! あの場所なら、ライブステージみたいにできるんじゃないかな?」
さやか「“図書館”ですか……え、本を読むような静かな場所でライブを……?」
瑠璃乃「んー、まぁ、奇跡的に壊れず残ってるだけで、この終末世界で利用してる人なんていないし……ありっちゃありかもね」ウンウン
花帆「それなら決まり! あたし達みんなで、あそこを飾り付けて……」
花帆「センパイ達の“卒業”を祝う特別なライブを作ろう!」グッ
さやか「ステージ……でしょうか? こんな終末世界ですし、探すのも大変そうですが……」
花帆「ふっふっふ……! そこは大丈夫だよ、二人とも! 実はあたし、曲を歌う場所についてはもう考えてあるんだ!」ニヤッ
瑠璃乃「?」
花帆「ほら、本がいっぱいの、あの建物! あの場所なら、ライブステージみたいにできるんじゃないかな?」
さやか「“図書館”ですか……え、本を読むような静かな場所でライブを……?」
瑠璃乃「んー、まぁ、奇跡的に壊れず残ってるだけで、この終末世界で利用してる人なんていないし……ありっちゃありかもね」ウンウン
花帆「それなら決まり! あたし達みんなで、あそこを飾り付けて……」
花帆「センパイ達の“卒業”を祝う特別なライブを作ろう!」グッ
113:
◆oz9g3Mss★
2025/08/02(土) 19:12:00 ID:???00
────
さやか(“卒業”は、かつてあった言葉。学舎を巣立つ際に使われていたとされる、別れのための語彙)
さやか(花帆さんはきっと、先輩方が夢を叶えるための“旅立ち”にその単語の意味を当てはめたのでしょう)
さやか(その想いにわたしもあてられ、ステージのための準備や練習が、情熱を持って着々と進んでいき……)
さやか(そして──満を持して迎えた、“卒業公演”当日)
さやか(“卒業”は、かつてあった言葉。学舎を巣立つ際に使われていたとされる、別れのための語彙)
さやか(花帆さんはきっと、先輩方が夢を叶えるための“旅立ち”にその単語の意味を当てはめたのでしょう)
さやか(その想いにわたしもあてられ、ステージのための準備や練習が、情熱を持って着々と進んでいき……)
さやか(そして──満を持して迎えた、“卒業公演”当日)
114:
◆oz9g3Mss★
2025/08/02(土) 19:13:00 ID:???00
瑠璃乃「うーん…………花びら、かぁ……」ポツリ
さやか「どうかしましたか、瑠璃乃さん? 本番前ですが……」
瑠璃乃「あ、いや……」
瑠璃乃「今日歌う、この曲のタイトルのこと考えててね。こんな世界じゃ、花なんて一輪も咲いてないのになー、って」
さやか「! あぁ、確かにそうですね……」
さやか(……川も山も汚染された終末世界。こんな世界では、遥か昔と違い、花は幻のような存在となっています)
瑠璃乃「今更だけど、ルリ達もパイセン達もきっと誰も見たことがない“花”を、歌って表現できるのか、ちと不安で……」
さやか「どうかしましたか、瑠璃乃さん? 本番前ですが……」
瑠璃乃「あ、いや……」
瑠璃乃「今日歌う、この曲のタイトルのこと考えててね。こんな世界じゃ、花なんて一輪も咲いてないのになー、って」
さやか「! あぁ、確かにそうですね……」
さやか(……川も山も汚染された終末世界。こんな世界では、遥か昔と違い、花は幻のような存在となっています)
瑠璃乃「今更だけど、ルリ達もパイセン達もきっと誰も見たことがない“花”を、歌って表現できるのか、ちと不安で……」
115:
◆oz9g3Mss★
2025/08/02(土) 19:14:00 ID:???00
さやか「ふむ、一理ありますね。花の、表現方法……」ウーン
花帆「そこはね、発想の逆転をさせればいいんだよ、二人とも!」フンフン
瑠璃乃「? え、花帆ちゃんはどうすりゃ良いかわかるの?」
さやか「それは一体……」
花帆「ふふっ、とっても簡単なことだよ!」
花帆「だって、この世界に花が咲いてないなら──“あたし達が”花咲けばいいんだもん!」ニコッ
花帆「そこはね、発想の逆転をさせればいいんだよ、二人とも!」フンフン
瑠璃乃「? え、花帆ちゃんはどうすりゃ良いかわかるの?」
さやか「それは一体……」
花帆「ふふっ、とっても簡単なことだよ!」
花帆「だって、この世界に花が咲いてないなら──“あたし達が”花咲けばいいんだもん!」ニコッ
116:
◆oz9g3Mss★
2025/08/02(土) 19:15:00 ID:???00
さやか「……!」
瑠璃乃「あぁ……ふふ、そっかそっか! うんうん、ルリ達は今までもそうやってきたもんね!」
姫芽「──るりちゃんせんぱい~。こっちは準備できましたよ~」ヒョコッ
瑠璃乃「あ、ひめっち! セッティングありがとね!」
花帆「あ、そっか、もうそんな時間……! よーし、じゃあ行こっか、二人とも!」ニコッ
さやか「……ええ」
瑠璃乃「おー!」
花帆「あたし達は大地に根を張るお花……あの星まで、その花びらを届かせるために──大きく、咲こう!!」グッ
瑠璃乃「あぁ……ふふ、そっかそっか! うんうん、ルリ達は今までもそうやってきたもんね!」
姫芽「──るりちゃんせんぱい~。こっちは準備できましたよ~」ヒョコッ
瑠璃乃「あ、ひめっち! セッティングありがとね!」
花帆「あ、そっか、もうそんな時間……! よーし、じゃあ行こっか、二人とも!」ニコッ
さやか「……ええ」
瑠璃乃「おー!」
花帆「あたし達は大地に根を張るお花……あの星まで、その花びらを届かせるために──大きく、咲こう!!」グッ
117:
◆oz9g3Mss★
2025/08/02(土) 19:16:00 ID:???00
────
──
さやか(そのステージは、端的にいえば大成功に終わりました)
~♪
さやか(終末世界には存在しないはずの“花びら”が、この時ばかりは、その視界一面に舞っているような錯覚を覚える)
さやか(この光景を……わたしはきっと、今際の際まで忘れないのでしょう)
さやか(言葉で伝えきれない思いを、貰ってきた全てを、聴く人に与えることができるのが歌の力。……なるほど)
さやか(わたしにも、ようやくその力が……歌の持つ特別な力が理解できたような気がしました)
──
さやか(そのステージは、端的にいえば大成功に終わりました)
~♪
さやか(終末世界には存在しないはずの“花びら”が、この時ばかりは、その視界一面に舞っているような錯覚を覚える)
さやか(この光景を……わたしはきっと、今際の際まで忘れないのでしょう)
さやか(言葉で伝えきれない思いを、貰ってきた全てを、聴く人に与えることができるのが歌の力。……なるほど)
さやか(わたしにも、ようやくその力が……歌の持つ特別な力が理解できたような気がしました)
118:
◆oz9g3Mss★
2025/08/02(土) 19:17:00 ID:???00
────
ガヤガヤ…
花帆「さーやかちゃん」ヒョコッ
さやか「! 花帆さんですか」
花帆「さやかちゃん、こんなところにいたんだね、探したよー」ニコッ
さやか「……花帆さんこそ。あの打ち上げを抜け出していいんですか? 先輩方、もう翌日には出発すると言うのに」
花帆「あー……その、これ以上一緒にいると、もうあたし枯れるまで泣いちゃってドライフラワーになっちゃうかもしれないから……」アハハ
さやか「そうですか……ふふ、それはいけませんね」クスッ
ガヤガヤ…
花帆「さーやかちゃん」ヒョコッ
さやか「! 花帆さんですか」
花帆「さやかちゃん、こんなところにいたんだね、探したよー」ニコッ
さやか「……花帆さんこそ。あの打ち上げを抜け出していいんですか? 先輩方、もう翌日には出発すると言うのに」
花帆「あー……その、これ以上一緒にいると、もうあたし枯れるまで泣いちゃってドライフラワーになっちゃうかもしれないから……」アハハ
さやか「そうですか……ふふ、それはいけませんね」クスッ
119:
◆oz9g3Mss★
2025/08/02(土) 19:18:00 ID:???00
花帆「……」
さやか「……良い、ライブでしたね」
花帆「……うん」
花帆「ちゃんと……センパイ達に気持ちを伝えられた。この世界で、『ありがとう』を届けられたのがあたし、本当に嬉しくて」
花帆「出逢えてよかったなぁ……こんな終末世界でセンパイ達と会えたの、本当に、奇跡みたい……」ポツリ
さやか「ええ。……わたしも花帆さんも、ずいぶんと変わりましたよね。何より、先輩方のおかげで」
花帆「……! ん、そうだね」フフッ
花帆「それこそ、昔のさやかちゃんなんかは、すっごくとんがってたし!」クスッ
さやか「……良い、ライブでしたね」
花帆「……うん」
花帆「ちゃんと……センパイ達に気持ちを伝えられた。この世界で、『ありがとう』を届けられたのがあたし、本当に嬉しくて」
花帆「出逢えてよかったなぁ……こんな終末世界でセンパイ達と会えたの、本当に、奇跡みたい……」ポツリ
さやか「ええ。……わたしも花帆さんも、ずいぶんと変わりましたよね。何より、先輩方のおかげで」
花帆「……! ん、そうだね」フフッ
花帆「それこそ、昔のさやかちゃんなんかは、すっごくとんがってたし!」クスッ
120:
◆oz9g3Mss★
2025/08/02(土) 19:19:00 ID:???00
さやか「それは……ええ、人に対する遠慮も、生きている意味もない、傲慢な生き方をしていましたから」
花帆「そ、そこまで言わなくてもいいんじゃないかな……? ……でも、センパイがさやかちゃんを変えたんだ」
さやか「そうですね。あの時、あの先輩が、わたしを見出したことが救いでした。先輩のきらめきはわたしを魅了して……」
さやか「なので、わたしはいつまでもあの“先輩”の影を追い続けます。あの人の期待に応え、あの人のように、なりたいので」
さやか(わたし達がみな“花”ならば、わたしは……きらめきだけに焦がれ、その光を浴びていたい。そう考えてしまいます)
花帆「そ、そこまで言わなくてもいいんじゃないかな……? ……でも、センパイがさやかちゃんを変えたんだ」
さやか「そうですね。あの時、あの先輩が、わたしを見出したことが救いでした。先輩のきらめきはわたしを魅了して……」
さやか「なので、わたしはいつまでもあの“先輩”の影を追い続けます。あの人の期待に応え、あの人のように、なりたいので」
さやか(わたし達がみな“花”ならば、わたしは……きらめきだけに焦がれ、その光を浴びていたい。そう考えてしまいます)
121:
◆oz9g3Mss★
2025/08/02(土) 19:20:00 ID:???00
花帆「……」
さやか「花帆さん?」
花帆「その……さやかちゃん」
花帆「全然、悪い意味とかじゃないんだけど……センパイの期待をそんなに重く背負いすぎちゃうのは、あんまり良くないんじゃないかな」
さやか「……花帆さんから見て、今のわたしの生き方は危険なものに見えるんですか?」
花帆「き、危険というか……今のさやかちゃんはなんだか、先輩のための言葉の呪い? それに縛られてる感じがして……」ウーン
さやか「ふふ、花帆さんらしい文学的表現ですね。今のこんな世界では珍しいです」クスッ
花帆「むぅ……冗談じゃないのに」
さやか「花帆さん?」
花帆「その……さやかちゃん」
花帆「全然、悪い意味とかじゃないんだけど……センパイの期待をそんなに重く背負いすぎちゃうのは、あんまり良くないんじゃないかな」
さやか「……花帆さんから見て、今のわたしの生き方は危険なものに見えるんですか?」
花帆「き、危険というか……今のさやかちゃんはなんだか、先輩のための言葉の呪い? それに縛られてる感じがして……」ウーン
さやか「ふふ、花帆さんらしい文学的表現ですね。今のこんな世界では珍しいです」クスッ
花帆「むぅ……冗談じゃないのに」
122:
◆oz9g3Mss★
2025/08/02(土) 19:21:00 ID:???00
さやか「……呪いだろうと、なんだろうと」
花帆「?」
さやか「それは、わたしが先輩から受け取ったものを伝える“後継者”……その方が見つかりさえすれば、解けるものですよ」
さやか(あくまで先延ばしかもしれませんが……こんな世界だろうと、雨はいつまでも降り続けるわけではありませんし)
花帆「こ、後継者……? その言い方だと、なんだか自分の命が尽きた後のため、みたいな感じがして重いなぁ……」
さやか「……あながち、それも間違いじゃないのかもしれません」
さやか「わたしが明日死んだとしても、先輩が残したものが消えないよう“期待”に応えるのが、わたしの役目ですから」
花帆「?」
さやか「それは、わたしが先輩から受け取ったものを伝える“後継者”……その方が見つかりさえすれば、解けるものですよ」
さやか(あくまで先延ばしかもしれませんが……こんな世界だろうと、雨はいつまでも降り続けるわけではありませんし)
花帆「こ、後継者……? その言い方だと、なんだか自分の命が尽きた後のため、みたいな感じがして重いなぁ……」
さやか「……あながち、それも間違いじゃないのかもしれません」
さやか「わたしが明日死んだとしても、先輩が残したものが消えないよう“期待”に応えるのが、わたしの役目ですから」
123:
◆oz9g3Mss★
2025/08/02(土) 19:22:00 ID:???00
花帆「う、うーん……さやかちゃんは、言葉が強いところあるからなぁ、何ともいえないけど……」
花帆「……あんまり、思い詰めすぎちゃダメだよ? 瑠璃乃ちゃんも含めてあたし達は、いつでもさやかちゃんの仲間なんだから、ね」ニコッ
さやか「…………ええ、頼りにしていますよ」
さやか(二人にはわたしと違い“後輩”が居ます。……きっと本当の意味では、これからわたしはひとりになってしまう)
さやか(……今までは、あの先輩のために生きてきた。ですが、居なくなってしまうのであれば)
花帆「……あんまり、思い詰めすぎちゃダメだよ? 瑠璃乃ちゃんも含めてあたし達は、いつでもさやかちゃんの仲間なんだから、ね」ニコッ
さやか「…………ええ、頼りにしていますよ」
さやか(二人にはわたしと違い“後輩”が居ます。……きっと本当の意味では、これからわたしはひとりになってしまう)
さやか(……今までは、あの先輩のために生きてきた。ですが、居なくなってしまうのであれば)
124:
◆oz9g3Mss★
2025/08/02(土) 19:23:00 ID:???00
さやか「……」
さやか(……“先輩にしてもらったことは後輩に返していくもの”。その期待に応えることこそが、わたしの、これからの生きる意味)
さやか(そうですね……でしたら、あの人を真似て、カウンセリングのような人に関わる役割を探してみましょうか。そして……)
さやか(いつか、わたしのように希望を失った人に、先輩から受け取ったそれを全て与えることができたら。その時は……)
さやか(……“先輩にしてもらったことは後輩に返していくもの”。その期待に応えることこそが、わたしの、これからの生きる意味)
さやか(そうですね……でしたら、あの人を真似て、カウンセリングのような人に関わる役割を探してみましょうか。そして……)
さやか(いつか、わたしのように希望を失った人に、先輩から受け取ったそれを全て与えることができたら。その時は……)
125:
◆oz9g3Mss★
2025/08/02(土) 19:23:17 ID:???00
今日はここまで
明日は本編の続きを投稿します
明日は本編の続きを投稿します
130:
◆oz9g3Mss★
2025/08/03(日) 19:00:00 ID:???00
────
小鈴「──はぁ、はぁ……」
さやか「小鈴さん、ここを越えれば、目的地ですよ! 脇をしっかり閉めて、もう一踏ん張りー!」
小鈴「はぁ、はぁ……うぉぉ、頑張るぞー、ちぇすとーー!!」
小鈴「……っと、やった、徒町とうとう崖を上り切りました!」グッ
~♪
小鈴「…………あれ? 何か聞こえて……?」
小鈴「──はぁ、はぁ……」
さやか「小鈴さん、ここを越えれば、目的地ですよ! 脇をしっかり閉めて、もう一踏ん張りー!」
小鈴「はぁ、はぁ……うぉぉ、頑張るぞー、ちぇすとーー!!」
小鈴「……っと、やった、徒町とうとう崖を上り切りました!」グッ
~♪
小鈴「…………あれ? 何か聞こえて……?」
131:
◆oz9g3Mss★
2025/08/03(日) 19:01:00 ID:???00
~♪
小鈴「これは……歌、でしょうか?」
さやか「ふふっ、花帆さんがギターを弾きながら歌っているんですね。この声が聞こえる方へ向かいましょうか」クスッ
小鈴「これは……歌、でしょうか?」
さやか「ふふっ、花帆さんがギターを弾きながら歌っているんですね。この声が聞こえる方へ向かいましょうか」クスッ
132:
◆oz9g3Mss★
2025/08/03(日) 19:02:00 ID:???00
「ららら~~♪」
小鈴「……! あちらの方が……」
さやか「花帆さん。お久しぶりです」
「!」クルッ
花帆「──さやかちゃん! 待ってたよ!!」ニコッ
小鈴「……! あちらの方が……」
さやか「花帆さん。お久しぶりです」
「!」クルッ
花帆「──さやかちゃん! 待ってたよ!!」ニコッ
133:
◆oz9g3Mss★
2025/08/03(日) 19:03:00 ID:???00
さやか「? 待っていた……」フム
さやか「来訪を事前に伝えていなかったのに、その反応ということは……花帆さん、わたし達が来ることを知っていたんですね」
花帆「うん! 実は今、二人に会いたいって人がここに来てるからね。そろそろじゃないかなぁ、って思ってたんだ!」フフッ
小鈴「? 徒町たちに会いたい人?」
「見つけた──小鈴先輩!」
小鈴「……!!」
さやか「来訪を事前に伝えていなかったのに、その反応ということは……花帆さん、わたし達が来ることを知っていたんですね」
花帆「うん! 実は今、二人に会いたいって人がここに来てるからね。そろそろじゃないかなぁ、って思ってたんだ!」フフッ
小鈴「? 徒町たちに会いたい人?」
「見つけた──小鈴先輩!」
小鈴「……!!」
134:
◆oz9g3Mss★
2025/08/03(日) 19:04:00 ID:???00
小鈴「もしかして、この声…………セラスちゃん!?」
セラス「はーい。呼ばれて飛び出てじゃじゃーん。セラス柳田リリエンフェルトです。小鈴先輩、おひさしぶりですね」ニコッ
小鈴「わぁ、ひさしぶり! そっか……セラスちゃん、こっちにもう着いてたんだ!」
セラス「爆速で駆け抜けました」ドヤッ
泉「ふふ、セラスは一度こうと決めれば一直線だからね。さて、もちろん私も居るよ、先輩方」
さやか「泉さんも、おひさしぶりです」ペコリ
セラス「はーい。呼ばれて飛び出てじゃじゃーん。セラス柳田リリエンフェルトです。小鈴先輩、おひさしぶりですね」ニコッ
小鈴「わぁ、ひさしぶり! そっか……セラスちゃん、こっちにもう着いてたんだ!」
セラス「爆速で駆け抜けました」ドヤッ
泉「ふふ、セラスは一度こうと決めれば一直線だからね。さて、もちろん私も居るよ、先輩方」
さやか「泉さんも、おひさしぶりです」ペコリ
135:
◆oz9g3Mss★
2025/08/03(日) 19:05:00 ID:???00
花帆「あたし、話は全部せっちゃんに聞いたよ! さやかちゃんに小鈴ちゃんが、せっちゃんの“夢”を応援してくれたんだって」
花帆「ということで、そのお礼も込めて! せっかく人もこんなに居るんだし、今からあたしの弾き語りライブを──」フンフン
ガサッ
吟子「花帆先輩、またここで歌っとったの? いつもいつも、気が付いたら居なくなってるんだから……」
花帆「あ、吟子ちゃん!」
花帆「ということで、そのお礼も込めて! せっかく人もこんなに居るんだし、今からあたしの弾き語りライブを──」フンフン
ガサッ
吟子「花帆先輩、またここで歌っとったの? いつもいつも、気が付いたら居なくなってるんだから……」
花帆「あ、吟子ちゃん!」
136:
◆oz9g3Mss★
2025/08/03(日) 19:06:00 ID:???00
小鈴「……! もしや……」チラッ
吟子「? また新しく来客……? あの、私は百生吟子と申しますが、あなたは──」
小鈴「──あなたが吟子ちゃんですね!! 姫芽ちゃんが言ってた通りのかわいい人で、徒町感動しています!!」ギュッ
吟子「!?!? きゅ、急になんなん!?//」
小鈴「徒町は徒町小鈴です! 姫芽ちゃんから、吟子ちゃんに会ったら、かわいいと褒め倒すようにと助言を受けました!」
吟子「!?//」
吟子「? また新しく来客……? あの、私は百生吟子と申しますが、あなたは──」
小鈴「──あなたが吟子ちゃんですね!! 姫芽ちゃんが言ってた通りのかわいい人で、徒町感動しています!!」ギュッ
吟子「!?!? きゅ、急になんなん!?//」
小鈴「徒町は徒町小鈴です! 姫芽ちゃんから、吟子ちゃんに会ったら、かわいいと褒め倒すようにと助言を受けました!」
吟子「!?//」
137:
◆oz9g3Mss★
2025/08/03(日) 19:07:00 ID:???00
小鈴「綺麗な髪に端正なお顔! 徒町、吟子ちゃんのことをとってもかわいいって思います! かわいい!!」バッ
吟子「あああもう、敬語はいらんから、そのかわいいって言うのやめて……! ほんと、姫芽の入れ知恵のせいで……!!//」
小鈴「? たぶん徒町、姫芽ちゃんに言われなくても、吟子ちゃんのことはかわいい、って感じてたと思うよ!」ニコッ
吟子「~~っ! も、もう!//」
花帆「あははっ。吟子ちゃん、いいお友達ができてよかったね!」クスッ
吟子「か、花帆先輩は、なに目線なのそれ……」ハァ
花帆「吟子ちゃんのお友達の一人として、かな!」ニコッ
吟子「あああもう、敬語はいらんから、そのかわいいって言うのやめて……! ほんと、姫芽の入れ知恵のせいで……!!//」
小鈴「? たぶん徒町、姫芽ちゃんに言われなくても、吟子ちゃんのことはかわいい、って感じてたと思うよ!」ニコッ
吟子「~~っ! も、もう!//」
花帆「あははっ。吟子ちゃん、いいお友達ができてよかったね!」クスッ
吟子「か、花帆先輩は、なに目線なのそれ……」ハァ
花帆「吟子ちゃんのお友達の一人として、かな!」ニコッ
138:
◆oz9g3Mss★
2025/08/03(日) 19:08:00 ID:???00
ガヤガヤ…
泉「ははっ……それにしても、ここは本当に賑やかだね。セラスに導かれてやって来たが、実にいい居場所だ」クスッ
小鈴「あ、泉さんもセラスちゃんも、すごく幸せそうだよね!」
セラス「はい。花ちゃんも、会ったばかりの吟子も、とっても頼れる人だから安心できるし……何より、また小鈴先輩に会えた」
セラス「小鈴先輩の言葉で一歩踏み出して……チャレンジして良かったって思います」ニコッ
小鈴「! セラスちゃん……! 徒町も、セラスちゃんみたいな後輩にまた会えて嬉しい!」ニコッ
セラス「ふふ、セラス後輩を今後ともよろしくお願いします。……あれ、そういえば」
小鈴「?」
泉「ははっ……それにしても、ここは本当に賑やかだね。セラスに導かれてやって来たが、実にいい居場所だ」クスッ
小鈴「あ、泉さんもセラスちゃんも、すごく幸せそうだよね!」
セラス「はい。花ちゃんも、会ったばかりの吟子も、とっても頼れる人だから安心できるし……何より、また小鈴先輩に会えた」
セラス「小鈴先輩の言葉で一歩踏み出して……チャレンジして良かったって思います」ニコッ
小鈴「! セラスちゃん……! 徒町も、セラスちゃんみたいな後輩にまた会えて嬉しい!」ニコッ
セラス「ふふ、セラス後輩を今後ともよろしくお願いします。……あれ、そういえば」
小鈴「?」
139:
◆oz9g3Mss★
2025/08/03(日) 19:09:00 ID:???00
セラス「先輩方の目的地もここだ、って前に言ってましたけど……先輩方は、この場所で何をする予定だったんですか?」
小鈴「……はっ、南に向かう理由までは徒町も聞いていませんでした! あの、目的については……」チラッ
さやか「…………」
セラス「?」キョトン
小鈴「えと、あの……聞いてますか?」
さやか「……え、ああ。……すみません、ぼーっとしていたようで」コホン
小鈴「……はっ、南に向かう理由までは徒町も聞いていませんでした! あの、目的については……」チラッ
さやか「…………」
セラス「?」キョトン
小鈴「えと、あの……聞いてますか?」
さやか「……え、ああ。……すみません、ぼーっとしていたようで」コホン
140:
◆oz9g3Mss★
2025/08/03(日) 19:10:00 ID:???00
さやか「目的はその、個人的なものでして……ひとまず小鈴さんはここに着いたばかりですし、花帆さん方と談笑でもしていてください」
泉「……ふむ。……あなたはその間、どうするんだい?」
さやか「わたしは……ひとり、“図書館”の方へ行こうかと」
小鈴「? としょかん……?」
花帆「あ、さやかちゃん、図書館へ行くの?」ヒョコッ
さやか「花帆さん。ええ、まぁ。少し最後に見ておきたくて……あぁ、そういえば」ゴソゴソ
さやか「忘れないうちに渡しておきますね。これ、瑠璃乃さんから花帆さんへ、と」サッ
花帆「! テープレコーダー、さやかちゃんが受け取ってくれたんだ! ありがとう!」ニコッ
さやか「確かに渡しました。……では、席を外しますね」
花帆「うん、いってらっしゃい!」
泉「……ふむ。……あなたはその間、どうするんだい?」
さやか「わたしは……ひとり、“図書館”の方へ行こうかと」
小鈴「? としょかん……?」
花帆「あ、さやかちゃん、図書館へ行くの?」ヒョコッ
さやか「花帆さん。ええ、まぁ。少し最後に見ておきたくて……あぁ、そういえば」ゴソゴソ
さやか「忘れないうちに渡しておきますね。これ、瑠璃乃さんから花帆さんへ、と」サッ
花帆「! テープレコーダー、さやかちゃんが受け取ってくれたんだ! ありがとう!」ニコッ
さやか「確かに渡しました。……では、席を外しますね」
花帆「うん、いってらっしゃい!」
141:
◆oz9g3Mss★
2025/08/03(日) 19:11:00 ID:???00
吟子「……花帆先輩、さやか先輩について行ってそのまま小説読みたいー、とか考えてない? まだやること残っとるんだけど」
花帆「ぎくっ……! えー、あたしも行きたいのになぁ……図書館、本がいっぱいあって、しかもライブもできちゃう最高の場所なのに……」
吟子「多分だけど、さやか先輩は図書館に勉強しに行ってるんだろうから、花帆先輩が邪魔しに行っちゃダメでしょ……」
小鈴「あ、あの……」
小鈴「……“としょかん”、って何ですか? 徒町、不勉強でしてその言葉の意味をよく──」
花帆「あ、気になる!? 気になるよね、小鈴ちゃんも本のこと!!」グイッ
小鈴「!? え、えと……」
吟子「……ごめん、小鈴さん。花帆先輩、本のことになると勢いが激しくなるから……」
花帆「ぎくっ……! えー、あたしも行きたいのになぁ……図書館、本がいっぱいあって、しかもライブもできちゃう最高の場所なのに……」
吟子「多分だけど、さやか先輩は図書館に勉強しに行ってるんだろうから、花帆先輩が邪魔しに行っちゃダメでしょ……」
小鈴「あ、あの……」
小鈴「……“としょかん”、って何ですか? 徒町、不勉強でしてその言葉の意味をよく──」
花帆「あ、気になる!? 気になるよね、小鈴ちゃんも本のこと!!」グイッ
小鈴「!? え、えと……」
吟子「……ごめん、小鈴さん。花帆先輩、本のことになると勢いが激しくなるから……」
142:
◆oz9g3Mss★
2025/08/03(日) 19:12:00 ID:???00
花帆「図書館って言うのはね! 本がたっくさん置いてあって、綺麗で楽しい、あたしの大好きな場所のことなんだ!」ニコッ
小鈴「ほ、本…………その、こんな終末世界ですので徒町、そういった類のものはあまり……」
花帆「あはは、まぁ、そうだよね。……この世界、娯楽も限られちゃってて、図書館が残ってたのも奇跡みたいなものだし」
花帆「でも……! 人はパンのみにて生きるにあらず、だよ、小鈴ちゃん! 希望があるから、人は生きていけるんだ!」フンフン
小鈴「希望、ですか?」
花帆「うん。あたし──そういう希望に溢れた、みんなが“花咲く”世界を作るのが夢なんだ!」ニコッ
小鈴「ほ、本…………その、こんな終末世界ですので徒町、そういった類のものはあまり……」
花帆「あはは、まぁ、そうだよね。……この世界、娯楽も限られちゃってて、図書館が残ってたのも奇跡みたいなものだし」
花帆「でも……! 人はパンのみにて生きるにあらず、だよ、小鈴ちゃん! 希望があるから、人は生きていけるんだ!」フンフン
小鈴「希望、ですか?」
花帆「うん。あたし──そういう希望に溢れた、みんなが“花咲く”世界を作るのが夢なんだ!」ニコッ
143:
◆oz9g3Mss★
2025/08/03(日) 19:13:00 ID:???00
小鈴「夢……」
花帆「あ、吟子ちゃんの夢もすごいよ! あたしに負けないくらいビッグな目標だからね」グッ
小鈴「! なんと、それは一体……!?」チラッ
吟子「もう花帆先輩、無駄にハードル上げんといてよ……私の夢は、“伝統の再興”、かな」
花帆「あ、吟子ちゃんの夢もすごいよ! あたしに負けないくらいビッグな目標だからね」グッ
小鈴「! なんと、それは一体……!?」チラッ
吟子「もう花帆先輩、無駄にハードル上げんといてよ……私の夢は、“伝統の再興”、かな」
144:
◆oz9g3Mss★
2025/08/03(日) 19:14:00 ID:???00
吟子「私は……伝統あるお裁縫の技術を復活させたい。こんな世界になったせいで失われたものが、文化が、あまりにも多くて」
吟子「それを、生きる上で不必要だから消えた……なんて考える人もいるかもだけど。……絶対、そうじゃないはずだから」
吟子「どんな時だって、今を生きる私達が歴史の最前線。過去に囚われる意味なんて、まったく無いんだし」
小鈴「なるほど……」フム
花帆「すごいんだよ、吟子ちゃんは! あたしが出したアイディアを元に、ほんの数日でライブの衣装を仕立ててくれたこともあって!」
吟子「か、花帆先輩! もう、そんなに褒めても何も出んって……//」
吟子「それを、生きる上で不必要だから消えた……なんて考える人もいるかもだけど。……絶対、そうじゃないはずだから」
吟子「どんな時だって、今を生きる私達が歴史の最前線。過去に囚われる意味なんて、まったく無いんだし」
小鈴「なるほど……」フム
花帆「すごいんだよ、吟子ちゃんは! あたしが出したアイディアを元に、ほんの数日でライブの衣装を仕立ててくれたこともあって!」
吟子「か、花帆先輩! もう、そんなに褒めても何も出んって……//」
145:
◆oz9g3Mss★
2025/08/03(日) 19:15:00 ID:???00
吟子「……えっと、だから小鈴さんも、何か服飾で頼みたいことがあったら相談してほしいな」ニコッ
小鈴「あ、はい! 徒町は……」
小鈴「……」
小鈴「あの、プレゼントといった形式であっても、服は送れるのでしょうか? 徒町から、あの人に……」
吟子「? さやか先輩に、ってこと? うん、前に仕立てたこともあるし、大丈夫だよ」
小鈴「それであれば、徒町、あの人のために作りたい服があって……」
花帆「……あれ? そういえば、小鈴ちゃん」
小鈴「?」
花帆「ちょっと気になったんだけど……小鈴ちゃん、どうしてさやかちゃんの“お名前”呼ばないの?」
小鈴「あ、はい! 徒町は……」
小鈴「……」
小鈴「あの、プレゼントといった形式であっても、服は送れるのでしょうか? 徒町から、あの人に……」
吟子「? さやか先輩に、ってこと? うん、前に仕立てたこともあるし、大丈夫だよ」
小鈴「それであれば、徒町、あの人のために作りたい服があって……」
花帆「……あれ? そういえば、小鈴ちゃん」
小鈴「?」
花帆「ちょっと気になったんだけど……小鈴ちゃん、どうしてさやかちゃんの“お名前”呼ばないの?」
146:
◆oz9g3Mss★
2025/08/03(日) 19:16:00 ID:???00
小鈴「! あ、えーっと……」
吟子「そういえば……確かに。二人すごく距離が近いように見えるのに、小鈴さん、さやか先輩って呼んでないんだね」
小鈴「あぁ、それは……その」
小鈴「初めてあの人に会ったとき、名を名乗ったのは徒町だけだったので、何となくそのまま呼ぶ機会もなく、ズルズルと……」
小鈴「それに徒町は初め、後輩ではなく“後継者”としてあの人に誘われたので、そうならざるを得なかったと言いますか……」
花帆「……え」ピタ
吟子「そういえば……確かに。二人すごく距離が近いように見えるのに、小鈴さん、さやか先輩って呼んでないんだね」
小鈴「あぁ、それは……その」
小鈴「初めてあの人に会ったとき、名を名乗ったのは徒町だけだったので、何となくそのまま呼ぶ機会もなく、ズルズルと……」
小鈴「それに徒町は初め、後輩ではなく“後継者”としてあの人に誘われたので、そうならざるを得なかったと言いますか……」
花帆「……え」ピタ
147:
◆oz9g3Mss★
2025/08/03(日) 19:17:00 ID:???00
吟子「? どうしたの、花帆先輩?」
花帆「後継…………もしかして、さやかちゃん…………っ!」ハッ
花帆「ご、ごめん、小鈴ちゃん! ちょっとあたし、さやかちゃんに会いに図書館まで行ってくるね!」ガタッ
小鈴「え、あ、はい……??」
花帆「後継…………もしかして、さやかちゃん…………っ!」ハッ
花帆「ご、ごめん、小鈴ちゃん! ちょっとあたし、さやかちゃんに会いに図書館まで行ってくるね!」ガタッ
小鈴「え、あ、はい……??」
148:
◆oz9g3Mss★
2025/08/03(日) 19:18:00 ID:???00
────
──図書館
さやか「ごほっ、ごほっ…………っ……」フラフラ
さやか「……っ、身体が、重い……」
──図書館
さやか「ごほっ、ごほっ…………っ……」フラフラ
さやか「……っ、身体が、重い……」
149:
◆oz9g3Mss★
2025/08/03(日) 19:19:00 ID:???00
さやか「……これからを生きる小鈴さんに、先輩から受け取ったそれを全て与える。それが“生きる意味”だった。ならば……」
さやか「……もう、やり残したことは……」
さやか「…………」ジー
さやか「……思えばここが、あのステージだったんですよね。先輩を送り出した、あの前日の……」ポツリ
さやか「……もう、やり残したことは……」
さやか「…………」ジー
さやか「……思えばここが、あのステージだったんですよね。先輩を送り出した、あの前日の……」ポツリ
150:
◆oz9g3Mss★
2025/08/03(日) 19:20:00 ID:???00
さやか「…………今の小鈴さんには……セラスさんのような後輩、姫芽さんや吟子さんのような頼れる友達がついています」
さやか「それに……花帆さんや瑠璃乃さんならば、小鈴さんのこれからも支えてくれるはずでしょう。わたしがいなくても大丈夫……」
さやか「……」
さやか「…………わたしは、あの先輩のようになれたんでしょうか」ポツリ
さやか「っ……」フラッ
バタンッ…
さやか「それに……花帆さんや瑠璃乃さんならば、小鈴さんのこれからも支えてくれるはずでしょう。わたしがいなくても大丈夫……」
さやか「……」
さやか「…………わたしは、あの先輩のようになれたんでしょうか」ポツリ
さやか「っ……」フラッ
バタンッ…
154:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:00:00 ID:???00
────
吟子「花帆先輩、それ…………本当?」
花帆「……」コクリ
花帆「…………あのあと図書館に向かったら、そこに……倒れてるさやかちゃんがいたんだ」
吟子「花帆先輩、それ…………本当?」
花帆「……」コクリ
花帆「…………あのあと図書館に向かったら、そこに……倒れてるさやかちゃんがいたんだ」
155:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:01:01 ID:???00
泉「……ふむ」
花帆「今はさやかちゃん、簡易的に作った向こうの病室で眠っててもらってるんだけど──」
小鈴「──あ、あの! 命に別状は……ないんですよね?」
花帆「……うん。咳も熱もそれほど酷くないから、大事には至らないみたい。そこは安心して、小鈴ちゃん」
小鈴「ほっ……よ、良かったぁ……徒町、安心しました」
セラス「もしかしたら、疲れが出ちゃったのかもですね。ずっとここまで小鈴先輩と一緒に歩き通しだったんでしょうし」
小鈴「はっ、そういえば、なにかと咳払いをしていることが多かったような……」ハッ
花帆「今はさやかちゃん、簡易的に作った向こうの病室で眠っててもらってるんだけど──」
小鈴「──あ、あの! 命に別状は……ないんですよね?」
花帆「……うん。咳も熱もそれほど酷くないから、大事には至らないみたい。そこは安心して、小鈴ちゃん」
小鈴「ほっ……よ、良かったぁ……徒町、安心しました」
セラス「もしかしたら、疲れが出ちゃったのかもですね。ずっとここまで小鈴先輩と一緒に歩き通しだったんでしょうし」
小鈴「はっ、そういえば、なにかと咳払いをしていることが多かったような……」ハッ
156:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:02:00 ID:???00
小鈴「くっ……徒町に注意力があれば、休ませることもできたはずなのに……! 一生の不覚です……」シュン
吟子「ねぇ、小鈴さん。落ち込むよりも今は、さやか先輩が元気になるよう寄り添ってあげるのが、後輩のできること、じゃない?」
小鈴「! そう……ですね! 失敗は取り返すのが徒町です!」
小鈴「あの、どこで休んでいるのか居場所を教えていただけますか? 徒町が近くで看病を──」
花帆「…………」
セラス「? ……花ちゃん?」
花帆「…………ううん。ダメ、なんだ。それだけは……」ポツリ
吟子「ねぇ、小鈴さん。落ち込むよりも今は、さやか先輩が元気になるよう寄り添ってあげるのが、後輩のできること、じゃない?」
小鈴「! そう……ですね! 失敗は取り返すのが徒町です!」
小鈴「あの、どこで休んでいるのか居場所を教えていただけますか? 徒町が近くで看病を──」
花帆「…………」
セラス「? ……花ちゃん?」
花帆「…………ううん。ダメ、なんだ。それだけは……」ポツリ
157:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:03:00 ID:???00
吟子「……花帆先輩?」
小鈴「え、何言って……」
花帆「……」
花帆「……さっき、具合を見に行ったときにね。さやかちゃんが、言ってたんだ」
花帆「…………先輩の“期待”に応えることができたから、“生きる意味”も無くなった。全部、先輩が残したものは伝えた」
花帆「だから──もう、小鈴ちゃんとの旅は続けられないって」
小鈴「………………え?」
小鈴「え、何言って……」
花帆「……」
花帆「……さっき、具合を見に行ったときにね。さやかちゃんが、言ってたんだ」
花帆「…………先輩の“期待”に応えることができたから、“生きる意味”も無くなった。全部、先輩が残したものは伝えた」
花帆「だから──もう、小鈴ちゃんとの旅は続けられないって」
小鈴「………………え?」
158:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:04:00 ID:???00
小鈴「何、言って……」
吟子「……花帆先輩、それって」
花帆「うん。さやかちゃんはきっと、前から準備してたんだよ。小鈴ちゃんに全部託すことを。センパイの“期待”に応えるために」
花帆「さやかちゃんはこんな世界で……いや、こんな終末世界だからこそ、自分の“終活”をしてたんじゃないかな」
小鈴「え、え……?」
泉「……終活、か。……自分の後を継いでくれる人材を見つけ出したのも、その一環だったのだろうね」
吟子「……花帆先輩、それって」
花帆「うん。さやかちゃんはきっと、前から準備してたんだよ。小鈴ちゃんに全部託すことを。センパイの“期待”に応えるために」
花帆「さやかちゃんはこんな世界で……いや、こんな終末世界だからこそ、自分の“終活”をしてたんじゃないかな」
小鈴「え、え……?」
泉「……終活、か。……自分の後を継いでくれる人材を見つけ出したのも、その一環だったのだろうね」
159:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:05:00 ID:???00
小鈴「!? ……後継者、って、そういう…………っ……!」
小鈴「…………信じない。徒町は、徒町はだって、まだ……!」
小鈴「あの! それなら余計、どこに居るのか教えてください! 徒町が、会って、それで……っ!」
花帆「……」
小鈴「……言えないなら、徒町が、走り回ってでも探して──」ガタッ
セラス「こ、小鈴先輩。いったん落ち着いてください……」
泉「ああ、ここはセラスの言う通りだよ、小鈴さん。あなたもわかっているはずだろう?」
泉「生きる意味を、夢を、見失った者の精神が……その身体にまで影響することを。あなたは、セラスを見て知っている」
泉「さやか先輩がこうして倒れたのも、終活によりその精神が弱っていたからだろうね」
小鈴「! っ、でも、だったら……!!」
小鈴「…………信じない。徒町は、徒町はだって、まだ……!」
小鈴「あの! それなら余計、どこに居るのか教えてください! 徒町が、会って、それで……っ!」
花帆「……」
小鈴「……言えないなら、徒町が、走り回ってでも探して──」ガタッ
セラス「こ、小鈴先輩。いったん落ち着いてください……」
泉「ああ、ここはセラスの言う通りだよ、小鈴さん。あなたもわかっているはずだろう?」
泉「生きる意味を、夢を、見失った者の精神が……その身体にまで影響することを。あなたは、セラスを見て知っている」
泉「さやか先輩がこうして倒れたのも、終活によりその精神が弱っていたからだろうね」
小鈴「! っ、でも、だったら……!!」
160:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:06:00 ID:???00
小鈴「徒町は……あの人に拾われて、助けてもらって……だから今、その恩を返さなきゃ……!」
花帆「……小鈴ちゃん。…………ごめん」
小鈴「っ……なんで」
花帆「……さやかちゃんは今までずっと、センパイからの“期待”に生かされてたから。まるで、マリオネットみたいにね」
花帆「あたしの知ってるさやかちゃんのセンパイは、すっごく優しい人で。センパイから受け取ったものも、たくさんあって」
花帆「小鈴ちゃんに、そのセンパイからしてもらったのと同じ体験をさせてあげること。それがさやかちゃんの言う“生きる意味”だったんだ」
花帆「だから、やり切ったって思ってる今のさやかちゃんが、小鈴ちゃんと一緒に居たとしても……さやかちゃんは……」
花帆「……小鈴ちゃん。…………ごめん」
小鈴「っ……なんで」
花帆「……さやかちゃんは今までずっと、センパイからの“期待”に生かされてたから。まるで、マリオネットみたいにね」
花帆「あたしの知ってるさやかちゃんのセンパイは、すっごく優しい人で。センパイから受け取ったものも、たくさんあって」
花帆「小鈴ちゃんに、そのセンパイからしてもらったのと同じ体験をさせてあげること。それがさやかちゃんの言う“生きる意味”だったんだ」
花帆「だから、やり切ったって思ってる今のさやかちゃんが、小鈴ちゃんと一緒に居たとしても……さやかちゃんは……」
161:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:07:00 ID:???00
小鈴「……っ」
小鈴「…………じゃあ、あの言葉──」
──
さやか『……こんな世界だからこそ、ですよ。希望を失って苦しい時代、人は、人による温もりを……癒しを、求めるんです』
さやか『それに何より、期待に応えることができるこの活動自体が──わたし自身の“生きる意味”ですから』クスッ
──
小鈴「あの人が応えると言った“期待”は、全てその“先輩”のものだった、ってこと、ですか……?」
花帆「…………」
小鈴「…………じゃあ、あの言葉──」
──
さやか『……こんな世界だからこそ、ですよ。希望を失って苦しい時代、人は、人による温もりを……癒しを、求めるんです』
さやか『それに何より、期待に応えることができるこの活動自体が──わたし自身の“生きる意味”ですから』クスッ
──
小鈴「あの人が応えると言った“期待”は、全てその“先輩”のものだった、ってこと、ですか……?」
花帆「…………」
162:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:08:00 ID:???00
シン…
小鈴「……どう、して」
セラス「小鈴先輩……」
泉「ふむ……どうにも重苦しい空気だね」
吟子「桂城さん? それはだって、こんな状況じゃ……」
泉「? けれど、別に気にする必要はないんじゃないか? そのことに小鈴さんが反感を抱こうが、全てさやか先輩の勝手だろう」
小鈴「…………」
小鈴「……どう、して」
セラス「小鈴先輩……」
泉「ふむ……どうにも重苦しい空気だね」
吟子「桂城さん? それはだって、こんな状況じゃ……」
泉「? けれど、別に気にする必要はないんじゃないか? そのことに小鈴さんが反感を抱こうが、全てさやか先輩の勝手だろう」
小鈴「…………」
163:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:09:00 ID:???00
花帆「……」
吟子「は……桂城さん、今の、なに?」
吟子「さやか先輩だって、今までずっと、昔から先輩のことを追いかけて努力して……今は病床でひとりなのにその言い方──」
泉「──だがそれは、全てさやか先輩が望んだ通りじゃないか」
吟子「!」
セラス「……泉」
泉「さやか先輩はその“先輩”にしてもらったように、小鈴さんと旅をして各地を巡り、様々な人に触れ“生きる意味”を探させた」
泉「花帆先輩も納得している。では、さやか先輩が自分で満足し、隠居することに……私達が口を挟む道理があると思うかい?」
吟子「は……桂城さん、今の、なに?」
吟子「さやか先輩だって、今までずっと、昔から先輩のことを追いかけて努力して……今は病床でひとりなのにその言い方──」
泉「──だがそれは、全てさやか先輩が望んだ通りじゃないか」
吟子「!」
セラス「……泉」
泉「さやか先輩はその“先輩”にしてもらったように、小鈴さんと旅をして各地を巡り、様々な人に触れ“生きる意味”を探させた」
泉「花帆先輩も納得している。では、さやか先輩が自分で満足し、隠居することに……私達が口を挟む道理があると思うかい?」
164:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:10:00 ID:???00
吟子「っ……」
花帆「……」
小鈴「…………でも」
泉「?」
小鈴「あの人は……迷って、いました」ポツリ
泉「迷い……?」
小鈴「ある夜に一度、訊かれました。……この選択が間違ってるか。他の可能性があったのなら、と自問自答を繰り返していて」
小鈴「もし、期待に応えるというその“生きる意味”に本心から納得して、満足しているのなら……そうは言わないはずなので」
小鈴「あの人の勝手かもしれないけど、勝手だからこそ、徒町は……!」
花帆「……」
小鈴「…………でも」
泉「?」
小鈴「あの人は……迷って、いました」ポツリ
泉「迷い……?」
小鈴「ある夜に一度、訊かれました。……この選択が間違ってるか。他の可能性があったのなら、と自問自答を繰り返していて」
小鈴「もし、期待に応えるというその“生きる意味”に本心から納得して、満足しているのなら……そうは言わないはずなので」
小鈴「あの人の勝手かもしれないけど、勝手だからこそ、徒町は……!」
165:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:11:00 ID:???00
泉「……なるほど」フム
小鈴「だから、もし……あの人が今、昔の徒町のように夢を無くして苦しんでいるのなら、徒町は答えを出すことから逃げたくない……!」
小鈴「徒町は……何もないこんな徒町だったからこそ、さやか先輩に──“生きる意味”を与えたいんです!」
花帆「……!」
小鈴「だから、もし……あの人が今、昔の徒町のように夢を無くして苦しんでいるのなら、徒町は答えを出すことから逃げたくない……!」
小鈴「徒町は……何もないこんな徒町だったからこそ、さやか先輩に──“生きる意味”を与えたいんです!」
花帆「……!」
166:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:12:00 ID:???00
泉「……ふふ。であれば、私からいうことは何もないね」クスッ
小鈴「えっ?」
泉「なに、他でもない小鈴さんが教えてくれたことだろう? “チャレンジ”することが大事なのだと、ね」ニコッ
小鈴「……!」
小鈴「そ、っか。……徒町はとにかく、何度でもチャレンジをして、失敗しても次に行けばいい。だったら……!」グッ
小鈴「徒町が、徒町自身の気持ちを、あの人に十全に伝えるための手段…………何か……考えろ、考えろ……!」
『歌は良いものですよ。不思議な力がありますからね』
小鈴「……! ……そう、だ……思い出した……」ポツリ
小鈴「歌、だったら……!!」
花帆「!」
小鈴「えっ?」
泉「なに、他でもない小鈴さんが教えてくれたことだろう? “チャレンジ”することが大事なのだと、ね」ニコッ
小鈴「……!」
小鈴「そ、っか。……徒町はとにかく、何度でもチャレンジをして、失敗しても次に行けばいい。だったら……!」グッ
小鈴「徒町が、徒町自身の気持ちを、あの人に十全に伝えるための手段…………何か……考えろ、考えろ……!」
『歌は良いものですよ。不思議な力がありますからね』
小鈴「……! ……そう、だ……思い出した……」ポツリ
小鈴「歌、だったら……!!」
花帆「!」
167:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:13:00 ID:???00
セラス「歌? 小鈴先輩、それってどういうことですか?」
花帆「……もしかして、さやかちゃんが言ってた?」
小鈴「はい! 前に……徒町は子守唄を歌ってもらったことがあって。その時に教えてもらいました」
小鈴「歌には、不思議な力がある、って」
花帆「……もしかして、さやかちゃんが言ってた?」
小鈴「はい! 前に……徒町は子守唄を歌ってもらったことがあって。その時に教えてもらいました」
小鈴「歌には、不思議な力がある、って」
168:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:14:00 ID:???00
小鈴「徒町は、この旅路の中で……少し怖くても夢に向かって一歩踏み出すことの重み。そして」
小鈴「届くかわからなくても祈ること。無駄かもしれなくても、信念を持って続けること。その大切さを知りました」
小鈴「これは全部、昔の“先輩”とかに関係なく、あの人が居たからなんです! 徒町は、この情熱をもって“生きる意味”を伝えたい……!」
小鈴「……徒町だけじゃ上手くいくかわかりません。なので……お願いします!」
小鈴「あの人に届かせる歌を作るために──協力してはいただけませんか!!」
花帆「……」
小鈴「届くかわからなくても祈ること。無駄かもしれなくても、信念を持って続けること。その大切さを知りました」
小鈴「これは全部、昔の“先輩”とかに関係なく、あの人が居たからなんです! 徒町は、この情熱をもって“生きる意味”を伝えたい……!」
小鈴「……徒町だけじゃ上手くいくかわかりません。なので……お願いします!」
小鈴「あの人に届かせる歌を作るために──協力してはいただけませんか!!」
花帆「……」
169:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:15:00 ID:???00
花帆「そっ、か……やっぱり、歌、なんだね……」ポツリ
セラス「花ちゃん……?」
花帆「…………ふふっ」
花帆「……本当、小鈴ちゃんは、さやかちゃんにピッタリの後輩さんだ」クスッ
小鈴「!」
吟子「花帆先輩、その反応は……」
花帆「……うん。さやかちゃんはあたしの仲間で、ずっと一緒に生きていたい大切な親友。だから協力したい。……それに」
花帆「言葉だけじゃ伝えきれない想いを乗せられるのが“歌”だって、あたしは、誰よりも知ってるからね!」ニコッ
セラス「花ちゃん……?」
花帆「…………ふふっ」
花帆「……本当、小鈴ちゃんは、さやかちゃんにピッタリの後輩さんだ」クスッ
小鈴「!」
吟子「花帆先輩、その反応は……」
花帆「……うん。さやかちゃんはあたしの仲間で、ずっと一緒に生きていたい大切な親友。だから協力したい。……それに」
花帆「言葉だけじゃ伝えきれない想いを乗せられるのが“歌”だって、あたしは、誰よりも知ってるからね!」ニコッ
170:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:16:00 ID:???00
セラス「泉。わたし達も、小鈴先輩のために……」
泉「ああ、乗りかかった船だね。私達にもさやか先輩に届かせる曲作り、手伝わせてもらおうか」
小鈴「! あ、ありがとうございます……! 歌う曲の歌詞は徒町が書くので、あとは……」
吟子「作曲……かな? もちろん私も協力するけど、歌詞を乗せるための音楽は……」
花帆「あっ! それなんだけど、瑠璃乃ちゃんが渡してくれた“これ”、使えるんじゃないかな?」サッ
小鈴「……? これは……」
泉「ああ、乗りかかった船だね。私達にもさやか先輩に届かせる曲作り、手伝わせてもらおうか」
小鈴「! あ、ありがとうございます……! 歌う曲の歌詞は徒町が書くので、あとは……」
吟子「作曲……かな? もちろん私も協力するけど、歌詞を乗せるための音楽は……」
花帆「あっ! それなんだけど、瑠璃乃ちゃんが渡してくれた“これ”、使えるんじゃないかな?」サッ
小鈴「……? これは……」
171:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:17:00 ID:???00
泉「ふむ……カセットテープ、かな? もしや、何か音源でも記録されているのかい?」
花帆「うん。少し前に、瑠璃乃ちゃんに作曲を頼んでたんだ! みんなが花咲く世界を作るために、歌の力を借りたかったから」
花帆「……歌には、『ありがとう』の気持ちも、今思ってる不安な気持ちも、全部込められる。聴く人に伝えられる」
小鈴「!」
花帆「だから、小鈴ちゃん──精いっぱい、花咲こうね!」ニコッ
小鈴「……はい!」
花帆「うん。少し前に、瑠璃乃ちゃんに作曲を頼んでたんだ! みんなが花咲く世界を作るために、歌の力を借りたかったから」
花帆「……歌には、『ありがとう』の気持ちも、今思ってる不安な気持ちも、全部込められる。聴く人に伝えられる」
小鈴「!」
花帆「だから、小鈴ちゃん──精いっぱい、花咲こうね!」ニコッ
小鈴「……はい!」
172:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:18:00 ID:???00
────
──病室
さやか「……んん」パチリ
さやか「朝……」
さやか「…………まだ……わたしは、生きているんですね」ポツリ
──病室
さやか「……んん」パチリ
さやか「朝……」
さやか「…………まだ……わたしは、生きているんですね」ポツリ
173:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:19:00 ID:???00
さやか「……」
さやか「先輩がわたしに与えてくれたもの、それを確かに残すための“終末世界の旅路”……目的は、果たしました」
さやか「だから、もう──」
「──それを決めるのはっ、徒町です!!!!」バッ
さやか「先輩がわたしに与えてくれたもの、それを確かに残すための“終末世界の旅路”……目的は、果たしました」
さやか「だから、もう──」
「──それを決めるのはっ、徒町です!!!!」バッ
174:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:20:00 ID:???00
さやか「!? こ、小鈴さん!? ……花帆さんが、止めたはずでは」
小鈴「いえ! みんな手伝ってくれました。……徒町が、ここに来て、あなたに気持ちを伝えようとすることを」
さやか「………………どうして、そんな……」
小鈴「それだけみんな、徒町も含め、あなたに生きていてほしいからです! ……“期待”に応えたからって、逃げるつもりですか?」
さやか「っ、それは……」
小鈴「いえ! みんな手伝ってくれました。……徒町が、ここに来て、あなたに気持ちを伝えようとすることを」
さやか「………………どうして、そんな……」
小鈴「それだけみんな、徒町も含め、あなたに生きていてほしいからです! ……“期待”に応えたからって、逃げるつもりですか?」
さやか「っ、それは……」
175:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:21:00 ID:???00
小鈴「……」
小鈴「……徒町」
小鈴「あなたに会うまで……ずっと、苦しかったんですよ。徒町は何者にもなれないのか、って一人で歩く最中何度も思ってて」
小鈴「こんな世界が、徒町は大嫌いだった……あそこで、生きる意味をなくした徒町は、力尽きても構わなかったのに──」
小鈴「出会ってしまった。“生きる意味”を探そうって手を差し伸べてくれた人。徒町が、憧れて背中を追いたくなった人」
小鈴「それが──さやか“先輩”だった!!」
小鈴「……徒町」
小鈴「あなたに会うまで……ずっと、苦しかったんですよ。徒町は何者にもなれないのか、って一人で歩く最中何度も思ってて」
小鈴「こんな世界が、徒町は大嫌いだった……あそこで、生きる意味をなくした徒町は、力尽きても構わなかったのに──」
小鈴「出会ってしまった。“生きる意味”を探そうって手を差し伸べてくれた人。徒町が、憧れて背中を追いたくなった人」
小鈴「それが──さやか“先輩”だった!!」
176:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:22:00 ID:???00
さやか「……!」
小鈴「だから……さやか先輩が徒町を選んだことをっ! 間違いだった、なんて言わせたくないんです!」
小鈴「後悔なんて、あるわけが無い! 全部……全部っ! 決めるのは徒町だ! これが運命ならそれごと書き換えてみせます!」
小鈴「それに……さやか先輩は言ったじゃないですか──」
──
さやか『ですが、それまでは……わたしがあなたの“生きる意味”になりますね。わたしが見ている限り、生き続けてください』
──
小鈴「徒町は、徒町は……! さやか先輩が見てくれていたから生きていられた……それが、これまでの“生きる意味”だったんです!」
さやか「……っ」
小鈴「だから……さやか先輩が徒町を選んだことをっ! 間違いだった、なんて言わせたくないんです!」
小鈴「後悔なんて、あるわけが無い! 全部……全部っ! 決めるのは徒町だ! これが運命ならそれごと書き換えてみせます!」
小鈴「それに……さやか先輩は言ったじゃないですか──」
──
さやか『ですが、それまでは……わたしがあなたの“生きる意味”になりますね。わたしが見ている限り、生き続けてください』
──
小鈴「徒町は、徒町は……! さやか先輩が見てくれていたから生きていられた……それが、これまでの“生きる意味”だったんです!」
さやか「……っ」
177:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:23:00 ID:???00
小鈴「でも、さやか先輩が今、自分のそれを果たし、生きていられなくなったのだとしたら……」
小鈴「徒町が──さやか先輩の“生きる意味”になってみせます!! それが、徒町の新しい“生きる意味”だっ!」
さやか「……小鈴、さん……」
小鈴「だからっ! これからもずっと、徒町と一緒に生きてもらいたいから……! ──さやか先輩!」
小鈴「徒町の決意の歌を、聴いてください!」
~♪
小鈴「徒町が──さやか先輩の“生きる意味”になってみせます!! それが、徒町の新しい“生きる意味”だっ!」
さやか「……小鈴、さん……」
小鈴「だからっ! これからもずっと、徒町と一緒に生きてもらいたいから……! ──さやか先輩!」
小鈴「徒町の決意の歌を、聴いてください!」
~♪
178:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:24:00 ID:???00
────
「あぁ……」
「……ありがとうございます、小鈴さん」クスッ
「あぁ……」
「……ありがとうございます、小鈴さん」クスッ
179:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:25:00 ID:???00
────────
────数週間後
「──さやか先輩ー!」タッタッ
さやか「おや。おかえりなさい、小鈴さん。あたたかいお食事、できてますよ」ニコッ
小鈴「! わぁ……ありがとうございます、さやか先輩!」
さやか「今日のお昼は、ぺきん・だっくの卵を使った特製オムレツになります。産みたて卵なので美味しいですよ」コトッ
鶏「コッコー」ドヤッ
────数週間後
「──さやか先輩ー!」タッタッ
さやか「おや。おかえりなさい、小鈴さん。あたたかいお食事、できてますよ」ニコッ
小鈴「! わぁ……ありがとうございます、さやか先輩!」
さやか「今日のお昼は、ぺきん・だっくの卵を使った特製オムレツになります。産みたて卵なので美味しいですよ」コトッ
鶏「コッコー」ドヤッ
180:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:26:00 ID:???00
小鈴「流石さやか先輩、今日のお料理もすごくいい匂いですね! ……いただきます!」パンッ
さやか「ええ、召し上がれ」ニコッ
小鈴「ぱくっ……んん……! こ、この卵、いつにも増してふわふわとろとろですね……! とっても美味しいです!」モグモグ
さやか「ふふっ、ありがとうございます。そういえば小鈴さん、辺りの探索はどうでしたか? 何か、異常な点は……」
小鈴「いえ! 特に変わりなく、とても平和な終末世界でした!」ニコッ
さやか「ふふっ、それは何よりですね」
さやか「ええ、召し上がれ」ニコッ
小鈴「ぱくっ……んん……! こ、この卵、いつにも増してふわふわとろとろですね……! とっても美味しいです!」モグモグ
さやか「ふふっ、ありがとうございます。そういえば小鈴さん、辺りの探索はどうでしたか? 何か、異常な点は……」
小鈴「いえ! 特に変わりなく、とても平和な終末世界でした!」ニコッ
さやか「ふふっ、それは何よりですね」
181:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:27:00 ID:???00
さやか「あ、そうでした……そんな小鈴さんに実は見せたいものがありまして…………よ、っと」ガタッ
小鈴「? な、何やら重そうな……? さやか先輩、それは……乗り物、ですか?」
さやか「そうなんですよ。これは“バイク”という……とても速い乗り物です」ニコッ
小鈴「えっ、と……そもそもですが、それはこんな終末世界で使えるんですか? 壊れているのでは……」
さやか「ふふっ。いえ、ご心配には及びませんよ」クスッ
小鈴「?」
小鈴「? な、何やら重そうな……? さやか先輩、それは……乗り物、ですか?」
さやか「そうなんですよ。これは“バイク”という……とても速い乗り物です」ニコッ
小鈴「えっ、と……そもそもですが、それはこんな終末世界で使えるんですか? 壊れているのでは……」
さやか「ふふっ。いえ、ご心配には及びませんよ」クスッ
小鈴「?」
182:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:28:00 ID:???00
さやか「ほら、わたし達先日、瑠璃乃さん達のみらくらラジオ公開録音に参加しましたよね? 実はあの時に──」
小鈴「! あぁ、この間の! 瑠璃乃先輩のギター弾き語り、すごかったですよね! こう、心が打たれる感じがして……!」
さやか「ふふ、そうですね。わたしも、瑠璃乃さんとの約束をキチンと果たすことができたので……本当に良かったです」クスッ
さやか「それで、えぇと、話を戻すと……実はその際、姫芽さんに、このバイクの整備をお願いしていたんですよ」
小鈴「! あぁ、この間の! 瑠璃乃先輩のギター弾き語り、すごかったですよね! こう、心が打たれる感じがして……!」
さやか「ふふ、そうですね。わたしも、瑠璃乃さんとの約束をキチンと果たすことができたので……本当に良かったです」クスッ
さやか「それで、えぇと、話を戻すと……実はその際、姫芽さんに、このバイクの整備をお願いしていたんですよ」
183:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:29:00 ID:???00
さやか「と、いうわけで……これからは、バイクを足として使えますね。今はもう無免許運転が咎められる世界でもありませんし」クスッ
小鈴「わぁ……! それでしたら、徒町とさやか先輩でバイクに乗って二人旅ができるんですね……!」
さやか「ええ。移動も楽になるでしょうし、何より、こんな世界だからこそバイクで風を切るのは気持ちいいでしょうから」ニコッ
小鈴「そうですね! 風に煽られて、髪や服がはためく感じはきっと病みつきに……」
小鈴「…………はっ! そ、そうでした!」ガタッ
さやか「小鈴さん?」
小鈴「服といえば……徒町、さやか先輩に見せなくちゃいけないものがあるんです! 少し待っててください!」スタッ
さやか「……?」
小鈴「わぁ……! それでしたら、徒町とさやか先輩でバイクに乗って二人旅ができるんですね……!」
さやか「ええ。移動も楽になるでしょうし、何より、こんな世界だからこそバイクで風を切るのは気持ちいいでしょうから」ニコッ
小鈴「そうですね! 風に煽られて、髪や服がはためく感じはきっと病みつきに……」
小鈴「…………はっ! そ、そうでした!」ガタッ
さやか「小鈴さん?」
小鈴「服といえば……徒町、さやか先輩に見せなくちゃいけないものがあるんです! 少し待っててください!」スタッ
さやか「……?」
184:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:30:00 ID:???00
タッタッ…
小鈴「──持ってきました! これです!!」バンッ
さやか「! これは……“衣装”ですか?」
小鈴「はい!」ニコッ
小鈴「衣装のデザインは徒町が考えて、それを吟子ちゃんが仕立ててくれました。2着あって、徒町と……さやか先輩の、お揃いです!」
さやか「……どうして、お揃いの衣装を?」
小鈴「──持ってきました! これです!!」バンッ
さやか「! これは……“衣装”ですか?」
小鈴「はい!」ニコッ
小鈴「衣装のデザインは徒町が考えて、それを吟子ちゃんが仕立ててくれました。2着あって、徒町と……さやか先輩の、お揃いです!」
さやか「……どうして、お揃いの衣装を?」
185:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:31:00 ID:???00
小鈴「えぇと、その…………以前さやか先輩は、徒町との関係を“ペア”と言いましたが……」
小鈴「これからの徒町は、さやか先輩の隣に立っていたい……バディとかタッグとか、そういう関係になりたいんです」
さやか「……!」
小鈴「だからこれは、その証のためのお揃いというか……“何者か”になりたかった徒町の、決意の印です!!」
小鈴「これからの徒町は、さやか先輩の隣に立っていたい……バディとかタッグとか、そういう関係になりたいんです」
さやか「……!」
小鈴「だからこれは、その証のためのお揃いというか……“何者か”になりたかった徒町の、決意の印です!!」
186:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:32:00 ID:???00
さやか「……ふふっ」
さやか「ありがとうございます。小鈴さんのその気持ち、しっかり受け取りましたよ」ニコッ
小鈴「さやか先輩……!」
さやか「……小鈴さんには、本当に感謝しているんです。小鈴さんのあの歌は、過去のわたしを救ってくれましたから」
さやか「小鈴さんはもう、わたしの隣に立つ特別な存在です。何者にもなれなかった小鈴さんでは、もうありませんよ」
小鈴「! ……さやか先輩、あの!」
小鈴「徒町は……なんにもない荒野でも、たとえ希望の星を失ったとしても、さやか先輩と二人ならどこまでだって進めます!」
小鈴「なので──さやか先輩はずっと徒町の傍で生きていてください! 徒町も、そうするので!」グッ
さやか「ええ、もちろん。わたしのこれからの“生きる意味”は小鈴さんのためですから」クスッ
さやか「ありがとうございます。小鈴さんのその気持ち、しっかり受け取りましたよ」ニコッ
小鈴「さやか先輩……!」
さやか「……小鈴さんには、本当に感謝しているんです。小鈴さんのあの歌は、過去のわたしを救ってくれましたから」
さやか「小鈴さんはもう、わたしの隣に立つ特別な存在です。何者にもなれなかった小鈴さんでは、もうありませんよ」
小鈴「! ……さやか先輩、あの!」
小鈴「徒町は……なんにもない荒野でも、たとえ希望の星を失ったとしても、さやか先輩と二人ならどこまでだって進めます!」
小鈴「なので──さやか先輩はずっと徒町の傍で生きていてください! 徒町も、そうするので!」グッ
さやか「ええ、もちろん。わたしのこれからの“生きる意味”は小鈴さんのためですから」クスッ
187:
◆oz9g3Mss★
2025/08/04(月) 19:33:00 ID:???00
鶏「コッコー‼︎」バタバタ
小鈴「おや、ぺきん・だっくもやる気十分みたいですね! 旅の準備はバッチリです!」
さやか「ふふっ、そうですね。さぁ──今日も出発しましょうか、小鈴さん」ニコッ
小鈴「はい! さやか先輩!」
おしまい
小鈴「おや、ぺきん・だっくもやる気十分みたいですね! 旅の準備はバッチリです!」
さやか「ふふっ、そうですね。さぁ──今日も出発しましょうか、小鈴さん」ニコッ
小鈴「はい! さやか先輩!」
おしまい
引用元: https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read_archive.cgi/anime/11224/1753956001/