SS「変な人と絵里」

絵里「ねえ希。この服どうかしら？」

希「ん～？いいんやない？」

絵里「何よその返事。やーね」

希「うん。ウチちょっとお手洗いに行ってくるわ」

絵里「そう。私ここに居るから」

希「はーい」

絵里「あっ！この服も可愛い」

男「あの…」

絵里「はい？」

男「これのXLサイズってどこにありますか？」

絵里「………え？」

男「これのXLってどこにありますか？」

絵里「あ～……あの…私ここの従業員じゃないんです」

男「はい。で、これのXLって…」

絵里「いや…ですから…私はここの店員じゃなくて…」

男「そうですよね」

絵里「そうなんですよ」

男「それでこれのXLって…」

絵里「えぇ…」

男「どこですか？」

絵里「店員さんに聞いた方が良いと思いますけど」

男「店員さん仕事中みたいなので」

絵里「えぇ……仕事…いや…えぇ…」

男「お姉さん綺麗ですね。モデルさんですか？」

絵里「え…いや…違いますけど…え…ナンパ？」

男「でも可愛いだけの女の子なんて存在しませんよね」

絵里「え…あぁ…どうでしょう？」

男「優しいだけの男も存在しませんよ」

絵里「そうですか…」

男「これ…似合ってますか？この服」

絵里「えっと…ちょっとサイズが小さいんじゃ…」

男「やっぱり？これのXLって」

絵里「XLだと…大き過ぎると思うけど…」

男「じゃあちょうど良いサイズをください」

絵里「くださいって…いやだから…それは店員さんに…」

男「お仕事中なので邪魔はしちゃダメだかなって」

絵里「えぇ…お仕事中って言うか…あなたの服を探すのも店員さんのお仕事だと思いますけど…」

男「お姉さんは何してるの？」

絵里「え？私？」

男「ここには今僕とお姉さんしかいませんよ。お姉さん天然ですか？」

絵里「………」

男「あっ！図星だ！」

絵里「絶句してるんです…」

男「で？お姉さん何してるの？」

絵里「え……服を…探しに…」

男「服？選んであげようか？」

絵里「いやいいです」

男「遠慮しないで。俺、女の子に服を選んであげるのが趣味だから」

絵里「いや本当に」

男「これと…これとこれを合わせて…どう？」

絵里「え………普通にオシャレ……」

男「じゃあこれにする？」

絵里「いやでもいいです」

男「どうして？」

絵里「どうしてって言われても…」

男「本当の事を言うよ」

絵里「本当の事？え？何？」

男「実は俺…君に隠してる事があるんだ」

絵里「隠し事をする様な間柄じゃないと思いますけど…私達…」

男「実は俺達…未来で結婚してるんだ」

絵里「……は？」

男「俺は未来から来た君の旦那さんだよ」

絵里「……違いますけど」

男「いや…そうなんだよ。ん～どうすれば信じて貰えるかな～」

絵里「どんな事があっても…信じませんけど…どんな事があっても…」

男「あっ！じゃあ！君の誕生日！8月3日だよね！」

絵里「え…違いますけど…」

男「え～8月3日だよ！」

絵里「違いますって…本当に…」

男「ん～え～嘘だ～」

絵里「嘘なんて…10月生まれだし…」

男「10月3日か！」

絵里「21…」

男「あ～そっかそっか！10月21日だ！勘違いしてたよ！」

絵里「いや…知らないでしょ」

男「知ってるよ～未来の旦那だよ？」

絵里「違うって…天地がひっくり返っても…」

男「天然なんだな～やっぱりB型だな！」

絵里「B型には見えないって言われるんですど…」

男「いやいや。でもあかりちゃんはさ」

絵里「あかりちゃん？」

男「あかりちゃん」

絵里「私の事？」

男「……」

絵里「違いますけど…」

男「……あかり」

絵里「いや…絵里…」

男「うん。その通り」

絵里「は？」

男「これ絵里に似合うと思う」

絵里「いや…だから…いいです…」

男「いつも制服ばかりだし…」

絵里「いつもって…私の何を知って…今日だってたまたま学校帰りで…」

男「三年生になったらこの時代の俺と同じクラスになって仲良くなるんだよ」

絵里「既に三年生です…うち女子校ですから…」

男「……知ってるよ」

絵里「いや…嘘ばっかり…何なんですか？」

男「ん～…………この時代だと音ノ木坂はまだ女子校なんだね」

絵里「ずっと女子校ですけど…」

男「未来だと共学なんだよ。少子化の影響で」

絵里「だとしても私とあなたが同じクラスになる事はないと思います。私三年生ですから」

男「妹のあかりちゃんは…」

絵里「妹もあかりじゃありません」

男「お姉さんの…」

絵里「姉も兄いませんから」

男「知ってるよ。義理の妹の事を忘れる訳ないからね」

絵里「いつからうちの妹が義理の妹になったんですか」

男「だって未来の」

絵里「旦那じゃないです。いい加減にして下さい」

男「その台詞、未来でもよく言ってるな～」

絵里「は？」

男「子供の頃からの口癖だもんね～」

絵里「高校で出会ったんじゃないんですか？」

男「高校から出会ったんだっけ？」

絵里「いや違いますけど」

男「幼馴染だもんね。お互い江戸っ子で」

絵里「……私ロシア生まれですから」

男「ロシアの江戸っ子」

絵里「違う…」

男「ロシアっ子」

絵里「ロシアっ子って何…」

男「この後どうする？」

絵里「どうもしません」

男「家に帰る？」

絵里「いや…教えません」

男「車乗ってく？」

絵里「乗っていきません。絶対に…」

男「大丈夫だよ」

絵里「何が大丈夫なんですか…全然大丈夫じゃない…」

男「取り敢えずお茶しようか」

絵里「しません」

男「お茶嫌いだっけ？」

絵里「そう言う事じゃなくて。結局ナンパ？」

男「夫婦だから」

絵里「違います」

男「でた！口癖」

絵里「え…もう意味が分からない」

男「何が？」

絵里「全てが」

男「この服はどうする？」

絵里「いや買いません」

男「ふ～ん。これのXLは？」

絵里「いやだから…XLじゃ絶対デカイから…」

男「どのサイズならいいかな？」

絵里「……Lじゃないですか？」

男「これのLってどこにあるの？」

絵里「それが置いてあった所にあるでしょう」

男「どこ？」

絵里「いやだから…」

男「ここから取ったんだよね」

絵里「知らないですけど。そこにあるんじゃないんですか？」

男「これかな？」

絵里「じゃないですか」

男「流石絵里だね」

絵里「……もういいですか？」

男「お礼に学校まで送ろうか？」

絵里「いや…結構です」

男「音ノ木坂」

絵里「本当に」

男「そう。じゃあ未来で待ってるよ」

絵里「だから…」

男「じゃ！」

絵里「…私…なにしてるんだろ…」

希「えりち～」

絵里「希…」

希「誰と喋ってたの？知り合い？」

絵里「いや…知らない変な人に…」

希「知らない変な人とあんなに長々と喋ってたの？」

絵里「それが…」

希「えりちって意外と変わってるよね」

絵里「え？私が変なの？」

おわり

こわい

絵里ちゃんかわいい

ホラーじゃん

南條が変な人に絡まれた話？

えみつんが助けてくれた話？