【SS】真姫「吸血鬼…なんて」

SS


1: 2015/12/09(水) 00:28:28.17 ID:JEuk6H5D0.net
夜 神田明神


穂乃果「ふぅ…」

穂乃果「夜のジョギングも気持ちいいなぁーっ!」


グイッ



穂乃果「えっ…!?」



穂乃果「やっ…やぁっ…!」





ドサッ ドサドサドサッ

2: 2015/12/09(水) 00:30:35.07 ID:JEuk6H5D0.net
夜 南家


prrrr prrrr

ことり「…電話?」


『高坂穂乃果』


ことり「…穂乃果ちゃんからだっ」


ことり「もしもし」

穂乃果『ことりちゃん? ごめんね、こんな時間に』

ことり「ううん、大丈夫だよ。…どうしたの?」

穂乃果『…ちょっと、家に入れてもらっても、いい…かな?』

ことり「う、うん… いいけど…」

穂乃果『ありがとう。玄関の前で待ってるね』

ことり「うん…?」



…穂乃果ちゃん、いつもと声色が違う…?

4: 2015/12/09(水) 00:33:14.56 ID:JEuk6H5D0.net
ドアを開けると、そこには穂乃果ちゃんが―――――



ことり「…穂乃果ちゃ…っ!?」

穂乃果「…えへへ、こんばんは」

ことり「ぴゃっ…な、なんでそんなに…」


ことり「血塗れなの…?」


穂乃果「ねえ、ちょっと、お邪魔してもいい?」

ことり「い、いいけど…だ、大丈夫、なの…? 病院に行って、診てもらった方が…」


穂乃果「ううん、だいじょうぶ」


穂乃果ちゃんは、ことりを優しく、両手で抱きしめてくれました。

顔が、どんどん熱くなるのがわかります。


ことり「へ…?」


穂乃果「ことりちゃん…」



…穂乃果ちゃんの目を見ていたら、ことり、なんだか…



ことり「ふぇ…」



なんだか、脳がとろけてるみたい…




穂乃果「…いただきます…」

ことり「は…はいぃ…」






そうして、穂乃果ちゃんの顔が近づいてきて―――――――

5: 2015/12/09(水) 00:37:28.26 ID:JEuk6H5D0.net
夜 西木野家

真姫「ふぅ…」

真姫「…今回の曲も、これで…」


prrrr prrrr


『パパ』

真姫「…パパ? まだ仕事中の時間のはずなのに…どうしたのかしら」

pi


真姫「もしもし?」

まきパパ『真姫!』

真姫「ど、どうしたの、そんなに慌てて…」

まきパパ『お前の友達が病院に運ばれてきた』

真姫「…え?」




夜 西木野総合病院


真姫「ことり!」

まきパパ「真姫…」

真姫「パパ、ことりはどうなの?」

まきパパ「…命に別状はない。奇跡的にな」

真姫「奇跡的に…?」

6: 2015/12/09(水) 00:39:42.68 ID:JEuk6H5D0.net
まきパパ「…これを見てくれ。…彼女がここに運ばれてきたときの、血液量なんだが…」スッ

真姫「…こ、これって…!? ど、どういうこと!? これじゃあ死んでても…っていうか、生きてるわけが…!」

まきパパ「私にもわからない。…さらに不可解なのは…」

真姫「…?」

まきパパ「家のどこを探しても、南さんの血は一滴も見つからなかった。外傷も、首の小さな2つの傷だけだ」

真姫「…」

まきパパ「…とりあえず、警察にも連絡しておいた。愉快犯の可能性もあるからな…」

真姫「…ことり」




ことり「…」



真姫「…みんなを呼んでもいい?」

まきパパ「いいぞ。まだ面会時間は大丈夫だからな」




真姫「…もしもし絵里? ことりが…」

絵里『…えっ、ことりが!? い、今すぐ行くわ!』



真姫「…凛!」

凛『どうかしたの?』

花陽『凛ちゃん? 誰から?』

真姫「花陽も一緒なのね!? あのね、ことりが…」

花陽『ほ、本当なのぉ!?』

凛『い、いいい、いますぐ行くにゃ!』





真姫「…あ、穂乃果!? ことりが…」

『高坂穂乃果です! ごめんね、今電話に出れないの…用事があるときは、ぴーって音がした後に、ファイトだよっ!』

真姫「…もうっ!」

7: 2015/12/09(水) 00:43:17.30 ID:JEuk6H5D0.net
真姫「…あ、もしもし? 高坂さんですか? あの、私、穂乃果さんの後輩の…」

雪穂『あ、真姫さんですか?』

真姫「…雪穂ちゃん? そう、真姫よ。あの、穂乃果は…」

雪穂『お姉ちゃんですか? さっき、ジョギングに行くって言ったっきり…』

真姫「まだ帰ってきてないの?」

雪穂『はい、まだです。…そういえば遅いなぁ…』

真姫「…わかった。もし帰ってきたら、うちの病院に来るように伝えて。ことりが大変なの」

雪穂『こ、ことりちゃんが!? だ、大丈夫なんですか!?』

真姫「…今のところは大丈夫。それじゃあ、よろしく頼むわね」




真姫「…希!」

希『…わかった。今すぐ行くね』

真姫「…随分落ち着いてるのね」

希『…まあね…』



真姫「海未!」

海未『こ、ことりが…!? い、今すぐ行きますっ!』




真姫「にこちゃん! ことりが…」

にこ『…チビたちの世話して、すぐに行くから。ちょっと待ってなさいよ!』





真姫「…あとは穂乃果だけなんだけど…」

8: 2015/12/09(水) 00:44:23.36 ID:JEuk6H5D0.net
prrrr prrrr

『高坂穂乃果』

真姫「来たっ!」

pi

真姫「穂乃果!? 今どこに…」

穂乃果『今? 今ね、ジョギングの帰りだよ』

真姫「今からうちの病院に来て! ことりが大変なの!」

穂乃果『へー、そうなんだぁ…』

真姫「…は?」

穂乃果『じゃあね』

真姫「ちょっと待ちなさいよ!」

穂乃果『なに?』

真姫「そうなんだじゃないでしょ!? ことりが倒れたまま起きないのよ!」

穂乃果『大変だよね』

真姫「っ! ちょっと、ほの…」

穂乃果『穂乃果、ちょっと忙しいから。またね』

真姫「穂乃果ぁっ!!」


ツー ツー


真姫「…なんなのよ」


真姫「こんのっ…あほのかっ!!」



真姫「…」



真姫「…血が極端に少ない」

真姫「ことりの血は、一滴も見つからない…外傷も、首の小さな2つの傷だけ…」

真姫「…まるで」


真姫「吸血鬼…なんて」


真姫「…そんなわけないわよね」

10: 2015/12/09(水) 00:51:38.78 ID:JEuk6H5D0.net
海未「…ことり」


病院でことりの状態について話を聞いた後、私は一人、夜道を歩いていました。

…どうもまっすぐ帰る気になれず、ふらふらと。


どんっ。

…いけません。よそ見をしていたら、誰かにぶつかってしまいました…


海未「きゃっ…す、すみません…」

穂乃果「…海未ちゃん」

海未「穂乃果…!」

穂乃果「うん?」

海未「…穂乃果?」

穂乃果「なに?」

海未「…どうしてそんなに落ち着いているのですか」

穂乃果「え、落ち着いてるかなぁ…」

海未「…ことりが倒れた、なんて聞いたら、あなたが真っ先に飛んでくると思いましたが…さっき、病院に来ませんでしたね」

穂乃果「それはほら、たまたま忙しかったからで…」

海未「今もこうして、病院に向かうわけでもなく、のほほんと歩いている」

穂乃果「…何が言いたいの?」

海未「…少し、腹が立っています。ことりがあんなことになっているのに、そんなに呑気なあなたに」

穂乃果「…もう、海未ちゃんってば短気だなぁ…」

海未「…穂乃果ッ!」


つい、穂乃果の胸ぐらを掴んでしまいます。

しかし、彼女は表情一つ変えることなく、私を冷やかな目で見ています。


海未「あなた…」



海未「本当に、穂乃果なのですか…?」

13: 2015/12/09(水) 00:57:49.95 ID:JEuk6H5D0.net
穂乃果「…まったく、酷いなあ海未ちゃんは…」


そう笑って、穂乃果を掴んでいる私の腕に手をかけます。


そして、軽く力を込められ…



骨の軋む音がしました。



海未「うあぁっ…!?」



穂乃果「…前にも思ったけど、海未ちゃんって結構暴力的だよね。穂乃果にビンタしたりさ」


私の腕にかかる力がどんどんと強くなっていきます。



穂乃果「そんな海未ちゃんは…」



腕にかかっていた力がなくなり、私は腕を抑えて崩れ落ちてしまいます。

…いったい、どこからこんな力が…明らかに、人間の…それも、ただの女の子の力ではない…


穂乃果「…海未ちゃん」


ぐいっ、と腕を引き上げられ、穂乃果に無理矢理立たされます。

そうして、穂乃果に優しく、ぎゅっ、と抱きしめられ…



海未「な、何を…?」



にやりと笑った穂乃果の口から、鋭い牙が覗いていました。

14: 2015/12/09(水) 00:58:37.14 ID:JEuk6H5D0.net
…そういえばさっき、真姫が言っていましたね…



ことりは、まるで吸血鬼にでも襲われたようだ、と…




そんな、まさか…ッ!



でも、あり得ない…そんなのは、あり得ないです…!





身の危険を感じ、穂乃果を振り払おうとした途端―――――



穂乃果「…いただきます」



さっきとは打って変わって、押し潰されてしまいそうな力で穂乃果に抱き締められ、


月の光で照らされ、妖しく光る穂乃果の艶やかな唇が。


鋭く光る、穂乃果の牙が――――――――

16: 2015/12/09(水) 01:04:51.56 ID:JEuk6H5D0.net
夜 道路


私は一人、家までの道を歩いていた。

少し頭を冷やしたかったから、いつもよりも遠回りをして。


真姫「…吸血鬼」


にこちゃんとか凛ちゃんは笑ってたけど、私は…結構、あり得ない話じゃないと思う。

サンタさんっていうすごい人がいるんだから、吸血鬼だって居てもおかしくない…わよね?



「…ぁ、あぁっ…」


…あれ?

あの後ろ姿…あのサイドテールは…



真姫「穂乃果…っ!」



実のところ、私はあの、穂乃果のヘラヘラした顔は嫌いじゃない…けど。

今は憎たらしくて仕方がない。

さっきの電話のこと、問い詰めてやるわ…


…あれ?


「ぁっ、ふぅっ…くぅっ…んっ…」


その奥に居るのって…海未?

…な、なんであんなに蕩けた顔して…




ま、まさか、こ、こんな道端で…!?



っていうか、二人ともそんな関係だったの…!?

17: 2015/12/09(水) 01:09:05.88 ID:JEuk6H5D0.net
…そんなことを考えてたら、穂乃果がこっちに気づいたらしく、ゆっくりと振り返る。


穂乃果「…なぁんだ、真姫ちゃんかぁ」


海未を抱いていた腕を離し、手をひらひらと振ってくる。


海未は、力なく崩れる。


…海未?




真姫「ちょっと、穂乃果…海未が倒れて…」

穂乃果「え? ああ、まあそうなっちゃうよね」

真姫「は…?」

穂乃果「ねえ、真姫ちゃん。見てた?」

真姫「な、何をよ…?」

穂乃果「…今の」


声のトーンが一気に落ちる。

…怖い。


真姫「…今のって、海未と…」

穂乃果「…ああ、見られちゃってたんだ」

真姫「…え、ええ…」

穂乃果「…じゃあ、仕方ないなぁ」

真姫「…そ、そんなことより、ことりの件…あの電話、どういうことなのよ!」

穂乃果「あの電話? …ああ。あれね」

真姫「ふざけるのもいい加減にしてよ。あなた、ことりを何だと思ってるのよ!」

穂乃果「だって本当に忙しかったし」

真姫「それでも、あの反応はないでしょう!?」

穂乃果「…んー、まあ、どうでもいいよね?」

真姫「はぁ!? あなたねぇっ…」

穂乃果「まあまあ、真姫ちゃん落ち着いてよ。どうせもう、関係ないんだから…」

真姫「…? 何言って…っ…」

18: 2015/12/09(水) 01:13:41.61 ID:JEuk6H5D0.net
ゆっくり近づいてくる穂乃果は、妙な威圧感があって。

私は身動きが取れなかった。


穂乃果は、そんな私の腕を掴んで、引き寄せる。


真姫「やっ…」

穂乃果「…真姫ちゃん…」


妙に艶めかしい表情で、私に詰め寄る穂乃果。


…ち、ちょっとドキっとしちゃうじゃない…


真姫「…な、何よ…」



少し目を逸らした間にもう、お互いの息がかかるくらいまで顔が近づいていた。



真姫「う、う゛えぇ…」



穂乃果「いただきます…」














「そこまでや!」

21: 2015/12/09(水) 01:21:50.47 ID:JEuk6H5D0.net
…?


どこからか声が…


真姫「…希!」

希「とうっ!」


民家の屋根の上から、希が飛び降りてくる。…希ってば、こんなことができたのね…



希「やっと見つけたで、穂乃果ちゃん」

穂乃果「…希ちゃん」

希「…早くお縄についた方が身のためよ」

穂乃果「…そういうわけにはいかないの。せっかくなんだから、存分に味わわせてもらうよ」

希「そういうわけには…いかないんよねっ!」



希はポケットから何かを取り出し、穂乃果に向かって投げつける。

穂乃果はそれから逃げるように飛び上がって、そのまま民家の屋根に飛び乗る。す、すごい…

…今投げたあれって…十字架?


穂乃果「…今日は引き上げるしかないか…ま、最初だし。こんなところ、だよねっ」


穂乃果はどこかに飛び去っていった。

にっ、と笑ったその口からは、鋭い牙が覗いていた。


…あの子、八重歯なんてあったっけ?

23: 2015/12/09(水) 01:29:05.76 ID:JEuk6H5D0.net
真姫「…いったい、なんだったのよ…?」

希「…真姫ちゃん、大丈夫? 噛まれてない?」

真姫「え、ええ…? 噛まれる…?」

希「…真姫ちゃん、今からちょっと付き合ってもらってもええ?」

真姫「それは大丈夫だけど…あ、そう! そうよ、海未が!」





救急車を呼んで、倒れた海未を病院に運んでもらった。


傷の大きさから、血の少なさまで、とにかく…ことりと全く同じ状態だった。




希「…真姫ちゃん、さっき病院で、ことりちゃんが吸血鬼に襲われたんじゃないか、って言ってたよね」


真姫「…ええ」


希「…大当たりやったよ」

25: 2015/12/09(水) 01:36:11.23 ID:JEuk6H5D0.net
夜 東條家


真姫「…お邪魔します」

希「どうぞどうぞー。自分の家だと思ってくつろいでね」

真姫「それはちょっと…」

希「あはは、そう言うと思った」


真姫「…それで、穂乃果のことなんだけど…本当に…」

希「ああ…うん。えっと、そうやなぁ…どこから話そうかな」


希「真姫ちゃん、吸血鬼になる条件って知ってる?」

真姫「何よ突然?」

希「まあまあ」

真姫「…小説とかで読んだ程度の知識しかないけど…たしか、血を吸われた人間が吸血鬼になるとか、死んだ人間が何らかの理由で吸血鬼として蘇る、とか…」

希「よく知ってるね。さっすが真姫ちゃん」ナデナデ

真姫「う゛ぇぇ…そ、それはいいから! どうして穂乃果はああったのよ?」

希「…実はね、穂乃果ちゃんは一回死んでしまったんよ」

真姫「…は?」

希「今日の19時頃かな。うち、バイトの忘れ物を取りに神田明神に行ったんやけど…」

26: 2015/12/09(水) 01:39:32.36 ID:JEuk6H5D0.net
希「あーもー…よりによって課題のノート忘れてくるなんて…」

希「…あ」

希(穂乃果ちゃんやん。こんな時間にジョギングなんて…流石穂乃果ちゃんやなぁ)

希(…でも、早く帰らせないと…この時期は…)




穂乃果「ふぅ…」

穂乃果「夜のジョギングも気持ちいいなぁーっ!」



グイッ


希(! 穂乃果ちゃんの足が…見えない何かに引っ張られて…!)


穂乃果「えっ…!?」



希「まずいっ…!」ダッ





穂乃果「やっ…やぁっ…!」





希「ま、間に合わな…っ」



ドサッ ドサドサドサッ




希「あ、あぁっ…穂乃果、ちゃん…」



穂乃果「…」

28: 2015/12/09(水) 01:47:07.72 ID:JEuk6H5D0.net
真姫「…」

希「…責めてくれていいよ。その場に居たのに、助けられなかった…」

真姫「…いや。そんなことしないわ」

希「…優しいんやね」

真姫「別に…それで、そこからどうして穂乃果が吸血鬼に?」

希「それは簡単。穂乃果ちゃんの足を引っ張ったのが吸血鬼だから」

真姫「…?」

希「あー…っと、そやなぁ…やっぱり、前提から話していかないと…」






その後、20分くらいかしら。希の話を黙って聞いてた。

希の話をまとめると…



希は、昔から霊感が強くて、こちらに引っ越してくる前から、不可思議な現象の研究をしていた。

親が転勤族で友達もいなくて、ずっと一人だったから…のめりこんだものが、その不可思議現象なんだって。

その中で、妖怪とか、その類のモノに憑りつかれた人たちを助けたり、戦ったりするようなこともあって。


そして、この私たちの住む町にある神田明神。

そこには、良い神様から、悪い霊や妖怪まで、色々なモノが集まってくるらしく。

神聖な場所だから、境内には悪いモノは基本的に入ってこないらしいけど…

今回、たまたま吸血鬼の魂が、神田明神の階段にまで入ってきてしまった。

運悪く、そこが穂乃果のジョギングコースに含まれていて。

吸血鬼の魂が穂乃果を引っ張り、階段から転げ落とした。

希は目の前で穂乃果が死ぬのを見ていて、そして死んだはずのの穂乃果が起き上がるのも見た。

穂乃果が起き上がったのは、吸血鬼の魂が一度死んだ穂乃果を乗っ取り、吸血鬼として蘇らせたから――――――



…ということらしい。


…普段の私なら、そう簡単に信じる、とは言えないけど…


状況が状況だし、信じるしかないわね。

32: 2015/12/09(水) 01:56:33.18 ID:JEuk6H5D0.net
希「真姫ちゃんってば、理解が早くて助かるわぁ」

真姫「希の話し方が良かったからよ」

希「うち、真姫ちゃんみたいな妹が欲しかったなぁ。そしたら転校ばっかりでも寂しくなかったのに」ギューッ

真姫「う゛ぇぇっ…や、やめなさいよっ!」カアァ

希「あ、真姫ちゃん赤くなってる~」ツンツン

真姫「もうっ!」ペシッ

希「…」

真姫「…ま、まったく…」

希「…ごめんなさい」

真姫「いや…」



真姫「それで、これからどうするの?」

希「吸血鬼の魂を、穂乃果ちゃんの身体から追い出す!」

真姫「そんなことできるの…?」

希「ふふん、うちを誰だと思ってるん? ゴーストスイーパー希よ~? 極楽大作戦や!」

真姫「…と言われても、本当かどうか証拠がないし…」

希「…たしかにそうやね」

真姫「ええ」



真姫「…希」

希「なに?」

真姫「穂乃果は一度死んでいるのよね。そして今穂乃果の身体を動かしているのは、吸血鬼の魂…」

希「…吸血鬼の魂を退治したら、穂乃果ちゃんまた死んじゃうんじゃ…ってこと?」

真姫「…ええ」

希「それに関しては心配しなくてええよ。確かに、今穂乃果ちゃんを動かしてるのは吸血鬼だけど…身体はちゃんと、生前と同じように機能してる。
  悪い魂さえ追い出しちゃえば、元通りになるんよ。今まで助けてきた人たちもそうだった」

真姫「…なんだ、そうなの」

34: 2015/12/09(水) 02:05:45.87 ID:JEuk6H5D0.net
希「…さて、真姫ちゃん。うちはこれから、穂乃果ちゃん救出作戦に向かうわけやけど」

真姫「…ええ」

希「…まず、戦いは明後日の…たぶん、夜になると思う。場所は音ノ木坂」

真姫「…まあ、日中は吸血鬼は出てこれないものね…。でも、なんで音ノ木坂? それに、明後日って…これからじゃないの?」

希「音ノ木は…穂乃果ちゃんもうちも、等しく知ってる場所。地の利がどっちにもない場所やから。
  うちが有利な場所に呼び出せば、あっちは警戒してくるし、逆にあっちが有利な場所なんかに行けば、うちがやられてしまうからね」

真姫「…ふぅん」

希「日程は、まあ、うちも色々と準備が必要やから…吸血鬼の弱点は多いから、時間をかけてでも、手数は増やした方がいいかなって」

真姫「…なるほどね」

35: 2015/12/09(水) 02:13:57.77 ID:JEuk6H5D0.net
真姫「…」

希「…ねえねえ、真姫ちゃん」

真姫「ん?」

希「バーン!」

真姫「きゃぁっ!」

希「…ふふっ、びっくりした?」

海未「人に銃口を向けないでよっ!」パシーン

希「…」ヒリヒリ

真姫「…っていうか、何よ、その銃…まさか、それで穂乃果を…?」

希「ううん、これはうちの切り札。その名も「ドリーム・トリガー」。悪いモノだけを打ち抜く、とってもスピリチュアルな銃なんよ?」

真姫「随分とご都合主義な銃ね…」

希「吸血鬼を退治する映画だって小説だって、そんなものやから」

真姫「それはそうだけど…っていうか、それがあるなら他に用意なんていらないじゃない」

希「いやいや。これはあくまで最後の切り札、トドメ用。たとえば真姫ちゃん、ポケモンを捕まえる時、弱らせてから捕まえるやろ?」

真姫「やったことないからわからないけど…」

希「…そっか」

真姫「ええ」

希「…と、とにかく。最初っから銃を向けられて、大人しく弾に当たってくれる人なんていないやん?」

真姫「まあ…そうね」

希「だから、油断させるなり、弱らせるなりの準備が必要なんよ」

真姫「…そういうこと」

36: 2015/12/09(水) 02:20:31.07 ID:JEuk6H5D0.net
真姫「…ねえ、希」

希「ん?」

真姫「…吸血鬼のこと、まとめて詳しく教えてくれない? …これからいちいち、希の話に口をはさむのもどうかと思うし」


希「ん、ええよ~」

38: 2015/12/09(水) 02:26:32.80 ID:JEuk6H5D0.net
~のぞみん講座 吸血鬼編~


じゃあ、吸血鬼について説明するね。


まず、簡単に吸血鬼の特徴について。

・驚異的な身体能力。
・血を吸う。吸うときは、相手の首筋から。
・鏡に映らない。ガラスとかにも写らないんよ。
・治癒力がすごい。
・眼を見るとか名前を呼ぶとかして、人の生気を吸うこともある。

このくらいかな?


ちなみに、吸血されるときって、「気持ちいい」…らしいよ。
…あ、今変なこと想像した? …ふふっ、その想像通りの「気持ちよさ」らしいで。

ただ、狙われやすいのは「美女」で「処〇」らしいから…穂乃果ちゃんが襲ってくれるかどうかは、わからんなぁ。

え? うちも気を付けろって? もう、褒めても何も出ないよ?




次に、吸血鬼になる条件について。
諸説あるけど…

・純潔(処〇/DT)である
・吸血鬼の血やエキスを注入される
・犯罪を犯したことがあった
・惨〇、自〇、事故死した
・現世に悔いがある
・死体の上を、猫やその他動物が横切った

こんな感じ。


穂乃果ちゃんの場合は、「事故死」…かな。それと、あの穂乃果ちゃんのことだし…「現世に悔いがある」のかもね。

あとは…察してな?

39: 2015/12/09(水) 02:38:57.19 ID:JEuk6H5D0.net
次は、吸血についてなんやけど…

・食事としての吸血
・仲間を作るための吸血

…って、目的が分かれてるらしいんよね。

人間で言うと、前者は食事。後者は…生殖行為、あるいは…性行為。

一応、食事としての吸血で〇された人も、吸血鬼として蘇ることもあるらしいんやけど…
さっき言った条件に適ってないと、死んじゃうとか、ゾンビになるとか。

ことりちゃんと海未ちゃんがされたのは、たぶん後者。そのうち、二人も吸血鬼として起きてくる…かもしれないね。
そうなる前に吸血鬼の魂を退治して、助けてあげないと。


…おおっと? ことりちゃんも海未ちゃんも、血を吸われて死んでないってことは~…

…こほん。




最後に、吸血鬼の弱点について。

・日光で死ぬ
・炎で死ぬ
・銀の弾丸で死ぬ
・木の杭で心臓を刺されたら死ぬ
・十字架が苦手
・ニンニクが苦手
・流水を渡れない。触れるとヤケドするらしいよ。
・他人の家には、招かれない限り入れない
・細かい粒を見かけたら、数えずにはいられない。…ただ、一瞬で数え終わっちゃって足止めにもならなかった…って話やけど

…実はもっともっといっぱいあるんやけど、とりあえずこのくらい。不死の代わりに、これだけリスクを背負うんやね…
…いや、炎とか弾丸とかは、うちら人間でも死ぬけど。




…あ、ついでに、ドリーム・トリガーのことも説明しちゃおうかな。

・見た目は少し変わったリボルバー拳銃
・弾数制限は無し
・悪霊だとか呪いだとか、そういう「スピリチュアルな悪いもの」だけを打ち抜いてくれる銃。ウイルスが原因の病気とかには効かないんよ。
・普通の銃とは違って重くない

…え、すさまじくご都合主義な代物だって? …別にええやん。



…というわけで、のぞみん講座でした。

56: 2015/12/09(水) 20:30:03.21 ID:JEuk6H5D0.net
翌朝


真姫「行ってきます」


真姫「…」

穂乃果「真姫ちゃん! おはよーっ」

真姫「ええ、おはよ…え?」

穂乃果「?」

真姫「ほ、穂乃果っ!? どうしてっ!?」

穂乃果「どうしてって…ダメなの?」

真姫「ダメっていうか…」

穂乃果「海未ちゃんもことりちゃんも、病院にいるから…だから、なんとなく真姫ちゃんのところに…」

真姫「あなた、日光は…」

穂乃果「日光?」

真姫「…牙! 牙を見せなさいっ!」

穂乃果「きば? うぇいくあっぷ!」

真姫「そんなボケはいらないのよっ!口を開けてっ!」グイッ

穂乃果「ほへー!? まひひゃん、にゃにひゅりゅにょ~!!」

真姫「…牙が…ない…!」

57: 2015/12/09(水) 20:34:53.85 ID:JEuk6H5D0.net
prrrr prrrr

pi

真姫「希っ! 穂乃果が、穂乃果が!」

希『穂乃果ちゃんがどうかした?』

真姫「今目の前にっ!」

希『えっ!? 今どこ!?』

真姫「私の家の前よ! 来れる!?」

希『うん、大丈夫! すぐ行く!』 pi


真姫「…」

穂乃果「…真姫ちゃん?」

真姫「…はい」

穂乃果「どうかしたの? なんかヘンだよ…? あ、もしかして、熱でもあるんじゃ…」

真姫「なっ…」ザッ

穂乃果「…なんで離れるの? 熱があるかどうか診てあげようと…」

真姫「…そんなことを言って、私の血を吸うつもりだったんでしょ…」

穂乃果「…血?」

海未「…」ジリ

穂乃果「真姫ちゃん、本当にどうしたの? …あ、もしかして読んだ小説の影響とか~」ニヘー

海未「…」ジリジリ

穂乃果「…ね、ねえ、真姫ちゃん…私、なにかした…?」シュン

海未「うっ…そ、それは…」

58: 2015/12/09(水) 20:41:33.22 ID:JEuk6H5D0.net
なんかたびたび真姫ちゃんが海未ちゃんになってる…

海未ちゃんは病院でお寝んねしてるので真姫ちゃんに脳内変換お願いします

59: 2015/12/09(水) 20:45:10.82 ID:JEuk6H5D0.net
希「真姫ちゃーん!」タッタッ

真姫「希!」

希「…穂乃果ちゃんも、おはよ」

穂乃果「希ちゃん! おはよー! ねえ、聞いてよ! 真姫ちゃんったら…」

希「…穂乃果ちゃん、これ見て」スッ

穂乃果「…十字架?」

希「…これは?」スッ

穂乃果「にんにく?」

希「これ」スッ

穂乃果「木の…杭?」

希「これは?」スッ

穂乃果「わ、かわいいビーズ!」

希「これは?」スッ

穂乃果「鏡?」

希「あ、寝癖ついとるよ。はい、鏡」

穂乃果「…あ、ほんとだ!」

希「これ、寝癖直し使ってな」

穂乃果「わーいっ! ありがとう希ちゃん!」

希「…ふーむ」

穂乃果「?」

希「…穂乃果ちゃん、実は今な…真姫ちゃんと一緒に、秘密の計画を立てていて…」

穂乃果「秘密の計画っ!? なになに、気になるっ!」

希「でも、これはみんなにも秘密で…もちろん、穂乃果ちゃんにも話せないんよ…」

穂乃果「えーっ…」

希「今日はその話をしながら、真姫ちゃんと学校に行こうと思ってて…だから、二人きりにしてくれんかな。今日だけでいいからっ! お願い!」

穂乃果「うーん…わかった! じゃあ、穂乃果先に行くね!」

希「ありがとう、穂乃果ちゃん! あとでパンおごったげる!」

穂乃果「やったー! じゃあじゃあ、新発売のイチゴクリーム味ねっ!」

希「はいはい、わかったよー!」

穂乃果「じゃあ、また学校でねー!」タッタッタッ…

60: 2015/12/09(水) 20:51:10.87 ID:JEuk6H5D0.net
1時限目 校庭


真姫(…穂乃果のクラスは体育なのね)


先生「よし、次は高さ90センチだ。よし、高坂ー」

穂乃果「はいっ! 穂乃果、いっきまーす!」


タッタッタッタッ ダンッ


穂乃果「えっ!?」


ボスッ


穂乃果「…」

先生「…ご、合格だ…」


モブ「わぁ、穂乃果ちゃんすごい!」

モブ「どうしたらあんなジャンプできるの!?」

穂乃果「え、えっと…私もよくわかんなくて…」


真姫(…今は吸血鬼じゃなくても、身体能力はそのままってこと…?)




昼休み 中庭


真姫(…あら、あれは)

穂乃果「ふんふふーん、希ちゃんにパン買ってもらっちゃったしーっ、食べよーっと…って、うわあぁっ!」コケッ ブゥン


ガシャアアン


うわあ、なんだ!?
ランチパック!?
ランチパックがガラスを突き破ってきたぞ!


穂乃果「…えっ、えっ、なんで…? 穂乃果のパン、あんなに飛んで…」

真姫(…)ダラダラ

61: 2015/12/09(水) 20:58:42.93 ID:JEuk6H5D0.net
ポーン コロコロ…


穂乃果「お?」

ソフトボール部「あ、高坂さーん!ボール取ってもらってもいいー?」

穂乃果「あ、うん! いっくよー!」



ビュンッ



ソフトボール部「…え」

穂乃果「…あ、あれ…?」


真姫(…ボールが一瞬で、遥か彼方まで…)




真姫(結局、あの後も何回か穂乃果を見かけたけど…超人的な身体能力で、周りも自分も驚かせていた)

真姫(…穂乃果)

63: 2015/12/09(水) 23:05:24.71 ID:JEuk6H5D0.net
放課後 3年廊下


絵里「え? 病院に?」

希「うん、ちょっと朝から体調よくなくて…」

絵里「…たしかに、朝から元気無かったものね」

希「ごめんなー」

にこ「気にすることないわよ。あんたの身が一番大事なんだから」

希「にこっち…」

にこ「…何よ」

希「…絵里ち…にこっち…大好きやで」ギュッ

絵里「ちょ、希? どうしたのよ突然…」

にこ「潰れる…」

希「…あ、それとっ」


絵里「?」

希「…あー」

にこ「…?」


希「…ことりちゃんとか海未ちゃんみたいなことになっちゃうかもしれんから、家に誰かを入れる時は慎重にっ!」ダッ



にこ「…希ってば、どうしたのかしらね。なんか変だったわ」

絵里「さあね。それに、希が変なのはいつも通りじゃない」

にこ「…そうだったわね」


希(…いくらなんでも、「穂乃果ちゃんを家に入れるな!」…なんて、言えないしね…)

64: 2015/12/09(水) 23:15:54.83 ID:JEuk6H5D0.net
夕方 西木野家



真姫「…いらっしゃい」

希「…お待たせ。…あの、真姫ちゃん、本当に…?」

真姫「…穂乃果のこと見てたら、ちょっと放っておけなくて」

希「…そっか。ありがとう」

真姫「いいえ。私の方こそ、わがまま聞いてもらっちゃって申し訳ないくらいよ」

希「ううん、わがままなんて…うち、ずっと一人で戦ってたから…仲間が出来て嬉しいんよ」

真姫「なっ…そ、そんなことよりも。…作戦は?」

希「ずばり、囮作戦」

真姫「…囮?」

希「うちが穂乃果ちゃんを引きつけてる間に、真姫ちゃんにこれで、穂乃果ちゃんを撃ってもらう」

真姫「これ…ドリームトリガー…だっけ」

希「そうそう。悪いものだけを打ち抜く、夢の銃」

真姫「でも…希、囮になんて……や、やっぱり、私、やめ…」

希「よしっ! そうと決まれば、さっそく射撃の練習やね!」

真姫「ちょ、人の話を…」

希「さー、れっつごー!」

真姫「ちょっと、希ぃ!」

65: 2015/12/09(水) 23:39:09.44 ID:JEuk6H5D0.net
夜 西木野家


希「…い、いやぁ…まさか、ここまでとは…」

真姫「はぁ、はぁ…」

希「これだけ練習して、一発も的に当たらないとは…」

真姫「わ、悪かったわね…」

希「…ま、本番なんとかなるって。じゃあ、うち帰るね」

真姫「ちょっ…!?」

希「だって仕方ないやん? それに…真姫ちゃん、μ`sの練習の時だって、恥ずかしいとかなんとかいいつつ、本番バッチリやってのけちゃうやん」

真姫「そ、それはそうだけど…」

希「そんな、本番に強い真姫ちゃんなら大丈夫やって!」

真姫「そ、そんな理由で…」

希「それじゃあね。お家の人にも迷惑やろし」

真姫「ま、待ちなさいよっ!」

希「お邪魔しましたーっ!」ピューッ

真姫「のぞみっ!」


真姫「…」

66: 2015/12/09(水) 23:48:49.93 ID:JEuk6H5D0.net
夜 東條家


希「…よしっ、と…使えそうな道具は、これくらいかな…」

希「…やっぱり、よくなかったよね…真姫ちゃんを巻き込むなんて…」

希「…あーっ、もう…希の寂しがり屋っ!」

希「…絵里ちにでも慰めてもらおかな」


prrrr prrrr


絵里『もしもし、希? どうしたの?』

希「あ、ごめんな絵里ち、こんな時間に。今大丈夫?」

絵里『ええ、大丈夫よ』

『絵里ちゃーん』

希「…っ!?」

絵里『ちょっと待ってて、今希と電話してるんだから』

希「え、絵里ちっ! い、今、誰か家に居るの!?」

絵里『何よ、そんなに慌てて…穂乃果が宿題教えてほしい、って言うから』

希「絵里ちっ! 今すぐ逃げてっ!」

絵里『…ち、ちょっとやめてよ。私がそういうの苦手って、知って…』

『…いただきます』

希「っ!」

絵里『えっ…? ほ、穂乃果…? ちょ、何を…ふぁ…っ』

希「絵里ち! 絵里ち!」

絵里『あ、ぁぁっ、ふぁ…んっ、んぁあっ…』


ブツッ

67: 2015/12/09(水) 23:54:47.64 ID:JEuk6H5D0.net
朝 音ノ木坂学院



希「…」


凛「あ、希ちゃん…」

花陽「おはよ~…」

希「…凛ちゃん、花陽ちゃん…」

にこ「…浮かない顔してるわね…ま、絵里と亜里沙ちゃんがあんなことになったわけだし…当たり前か」

希「にこっち…」


よかった…にこりんぱなの3人は無事やったんやね…


にこ「まだ体調悪いなら無理しないほうがいいわよ」

希「うん…ありがと」

にこ「真姫も体調崩して休みらしいし」

希「えっ…!?」


真姫ちゃんが…?


まさか…っ!


にこ「ちょ、希!? どこ行くのよーっ!」

希「胃腸炎とインフルエンザと結核と肺炎が一気に襲ってきたから帰るっ!」

凛「…そ、それにしては元気そうだったにゃぁ…」

花陽「う、うん…」

68: 2015/12/09(水) 23:58:39.06 ID:JEuk6H5D0.net
朝 西木野総合病院


真姫ちゃん…っ…!


がらっ。


ことりちゃんたちが眠る、病室のドアを開ける。そこにはベッドが5つ。


ことりちゃん、海未ちゃん、絵里ち、亜里沙ちゃん、そして―――――――


誰もいないベッドが一つ。



…あれ?


まきパパ「…ん? 君は…」

希「あ…ま、真姫ちゃんのお父さん! あの、真姫ちゃんはっ!?」

まきパパ「ああ、真姫なら、体調が悪いから今日は家で寝ているが」

希「へ…?」

まきパパ「…それはそうと、学校はいいのかい?」

希「えっ、あっ…ち、ちょっと、健康診断に…」





昼 西木野家前


早とちりして損した。

というか、最初からこっちに来るべきやったやん…


…相変わらず、すごい豪邸やなあ。



どきゅーん。



…今の、銃声…


まさか…!?

69: 2015/12/10(木) 00:00:43.92 ID:F7WHuKVz0.net
ぴんぽーん!ぴんぽーん!

うちは真姫ちゃん家のチャイムを何回も鳴らす。

出てきて、真姫ちゃん…!


真姫「ちょっと! うるさいわね! 集中できないじゃない!」

希「…あれ?」

真姫「…って…希…?」



希「…な、なんだ…そうだったんや…」

真姫「黙って休んだのは謝るけど…で、でも…銃の練習するから休むなんて、とてもじゃないけど言えないでしょっ!」

希「なんや、もう…よかったぁ…」

真姫「…ごめんなさい」

希「いやいや、ええんよ…真姫ちゃんが無事だったから…」

真姫「…あなた、学校はどうしたの?」

希「…休んじゃった」

真姫「馬鹿ね…」

希「真姫ちゃんが言う?」

真姫「…」

希「ふふっ」

真姫「…もう」クスッ

72: 2015/12/10(木) 00:20:28.12 ID:F7WHuKVz0.net
夜 音ノ木坂学院 校舎内


真姫「…希、できたわよ」

希「…よしっ。準備は完了やね」

真姫「…」

希「…どうかした?」

真姫「…ねえ、やっぱり囮なんて…」

希「あはは、大丈夫やって。伊達に戦ってきてないんよっ」

真姫「希…」

希「…真姫ちゃん、ここに隠れてて」

真姫「…このロッカーに?」

希「うちがここまで誘導してくるから。うちと穂乃果ちゃんが通り過ぎたら、狙いをつけて密かに背後から…」

真姫「…わかったわ」



ばたん。

真姫ちゃんの入ったロッカーを閉める。


真姫『…希』

希「ん?」

真姫『…気を付けるのよ』

希「…ありがと」

74: 2015/12/10(木) 00:34:43.46 ID:F7WHuKVz0.net
夜 音ノ木坂学院 校門前


prrrr prrrr


穂乃果『…もしもし?』

希「もしもーし」

穂乃果『なんだ、希ちゃんかぁ…どうしたの?』

希「…ちょっと、退治させてもらえへんかなーって」

穂乃果『わお…直球だねぇ』

希「うちは突進系ガールなんよ」

穂乃果『ふぅん…今、どこにいるの?』

希「んーと、オトノキの前やけど」


ばさぁっ。


目の前に穂乃果ちゃんが現れた。



穂乃果「…お待たせ」

希「さっすが。早いね」

穂乃果「えへへ、伊達に吸血鬼やってないからね」

希「そっかぁ」

穂乃果「…今日は、お腹空いてるんだよねぇ。お昼も希ちゃんからもらったパン、食べ損ねちゃって」

希「あれ、そうなん?」

穂乃果「うん。転んだ時に、穂乃果が吹っ飛ばしちゃって」

希「…まあまあ、元気出して。吸血鬼を退治したら、また買ってあげるから」

穂乃果「ううん、いいよ。大丈夫」

希「そう?」

穂乃果「今ここで、お腹いっぱいにして帰るから」

75: 2015/12/10(木) 00:51:19.51 ID:F7WHuKVz0.net
頭にぴりっとした感覚が走る。

こういう時のうちの勘の鋭さは充分アテになる。

すぐに飛び退き、締まっている校門を飛び越える。

え? このくらい、ダンスしてれば余裕やで?


穂乃果ちゃんもスイッチが入ったようだ。

軽く地面を蹴っただけで、一気に距離が詰められる。穂乃果ちゃんの顔は、唇が触れるくらいに近づいていた。

うっ…

妙に艶めかしい表情の穂乃果ちゃんに、一瞬ドキリとしてしまった。

油断した。

右腕をがっしりと掴まれる。骨の軋む音がする。



穂乃果「つっかまーえたーっ」

希「ぐっ…ぁっ…」

穂乃果「希ちゃーん…」

希「…っ」


空いてる左手で、ポケットに入れておいたケースの蓋を取り、空中に放り投げる。

…うちが見た映画では足止めにもなってなかったけど…


中には、大量のフレークシール。


穂乃果ちゃんはそちらに気を取られたらしく、うちから手を離す。


ラッキー…!

76: 2015/12/10(木) 00:59:42.30 ID:F7WHuKVz0.net
穂乃果「…252枚…さっき散らばったのは300枚だったから…あと48枚、どこにいったかなぁ…あのシール、可愛かったのに」

穂乃果ちゃんの趣味(シール集め)も影響しとるんかな…?


とにかく、うちは一目散に校舎内へ駆け出す。


穂乃果ちゃんがあと「47枚」、拾い終わる前に…


穂乃果「…あれ? あれー? さっき、ぜったい300枚あったのに…一枚足りないっ!」


なんとか玄関まで辿り着けた。


…よし。


希「穂乃果ちゃーん! 残りの一枚、うちが持ってるでー!」


さっき、ちょろっと一枚だけ回収しておいた。

手癖の悪さには自信がある。

穂乃果ちゃんの性格なら、一回気になったことはなかなか投げ出せない…と踏んだのが吉と出た。


穂乃果「えーっ!? いつのまに…」


穂乃果ちゃんがこっちに向き直り、


穂乃果「そのシールも…希ちゃんの血も、私にちょうだいっ!」


跳んでくる。

77: 2015/12/10(木) 01:15:25.65 ID:F7WHuKVz0.net
突進してくる穂乃果ちゃんを前転で避け、足元に転がってるホースを拾う。

ホースの先にはシャワーノズルが付いている。

さっき真姫ちゃんと用意したのだ。


穂乃果ちゃんに銃口(…銃口?)を向け、トリガーを引く。

シャワーだって立派な流水だ。


穂乃果「うぇっ…」


あっはっは、どうだー。近寄れまい。


穂乃果「…仕方ないなぁ」


ばたん。


穂乃果ちゃんが倒れた。


…え?

シャワーを止める。

うち、何かした?

水は一滴も、穂乃果ちゃんにはヒットしてないはず。

それとも、真姫ちゃんがここまで出てきて…?

いやまさか。



むくり。


穂乃果ちゃんが起き上がった。


シャワーを構える。



穂乃果「…ふぇ? あ、あれ?」

78: 2015/12/10(木) 01:16:59.22 ID:F7WHuKVz0.net
穂乃果「な、なんか、夜の学校ってワクワクするけど…これだけ暗いと、ちょっと怖いね…」

穂乃果ちゃんが近づいてくる。

希「穂乃果ちゃん、ストップ!」

穂乃果「ふぇ?」

希「…それ以上近づいたら、シャワー…浴びせちゃうよ」

穂乃果「シャワー? …あ、そういえば床が水浸し…もしかして希ちゃん、夜の学校で水遊び?」


イタズラっぽい笑顔を向けてくる。


穂乃果「でも駄目だよ、希ちゃん。夜の学校で遊ぶなんて…怒られちゃうよ?」


戸惑うことなくこちらに近づいてくる穂乃果ちゃん。

…穂乃果ちゃんの身体を傷つけたくはなかったけど、仕方ない。

うちはシャワーのトリガーを引いた。



穂乃果「うわっぷ…!」


穂乃果ちゃんが腕で顔を防御する。


穂乃果「つ、つめたぁい! の、希ちゃん、酷いよぉ!」


…あれ? 効いてない?


穂乃果「もうっ! さすがに穂乃果、怒っちゃうよ!」


…ど、どういうこと?


希「…ご、ごめん…」

穂乃果「謝る前にシャワー止めてよっ!」

希「う、うん…」

79: 2015/12/10(木) 01:18:10.93 ID:F7WHuKVz0.net
文章抜けてた >>78の前です


…〇気が消えた。

どういうこと?


希「…穂乃果、ちゃん?」

穂乃果「…希ちゃん? え、っと…あ、あれ!? ここ学校!? な、なんで希ちゃんが学校に!? っていうか、なんで私が学校にっ!?」


突然慌てふためく穂乃果ちゃん。

…うちを騙す演技か。

80: 2015/12/10(木) 01:22:53.03 ID:F7WHuKVz0.net
…〇気が消える前、穂乃果ちゃんは絶対、シャワーの水を恐れていた。

でも、今シャワーを浴びせても、何も起こらない。

強いて言えば、Yシャツが透けて可愛いブラが見えるようになったくらいだ。

…ふーむ、オレンジか。やっぱり、うちほどじゃないけど…いい胸してるなぁ。

…っていうのは、置いといて。



穂乃果「…もー、なんなの希ちゃんってば…今日ヘンだよ?」


変なのはどっちだ、と言いたいけど…


穂乃果「…ねえ、先生にバレちゃわないうちに、いっしょに早く帰…」



ふらり。

そこまで言いかけて、穂乃果ちゃんはまた倒れる。

うちはつい、穂乃果ちゃんの身体を支えてしまう。



がしっ。



希「…しまった!」




腕を掴まれる。











べきっ。

83: 2015/12/10(木) 01:44:23.20 ID:F7WHuKVz0.net
…遅い。


そろそろ私も、我慢の限界よ。


身体が痛くて仕方ない…まだなの、希?



「ああああああっ!!」




今の、希の悲鳴…!?








希「ああああああっ!!」

穂乃果「…ごめんね、希ちゃん。あんまり、こういうことしたくなかったんだけど…穂乃果も、不意打ちなんかで死にたくないから。でも、もうすぐ楽になるから大丈夫!
     …あ、もう片方の手で何かしようとしても駄目だよ。そしたらそっちも折っちゃうからね」

希「う、くぅっ…な、なんで…流水は、平気なの…?」

穂乃果「ううん、平気じゃないよ。今シャワーをかけられたら、たぶん全身やけどになっちゃう」

希「じゃあ、さっきは…ま、まさか…!?」

穂乃果「うんっ、まさかだよっ。私ね、穂乃果と穂乃果を使い分けられるんだよっ!」

希「…つまり、昼間は穂乃果ちゃんに身体を任せて…夜は、吸血鬼の方が、身体を動かしている…」

穂乃果「そうだよっ! しかも切り替え自由! いつ、どんなときも交代できちゃうの!」

希「なっ…」


穂乃果「ふふっ、それじゃあ希ちゃん…」

希「…」

穂乃果「いただきま…」



「そ、そこまでよ!」



希「…ま、真姫ちゃん…!?」

84: 2015/12/10(木) 01:46:57.77 ID:F7WHuKVz0.net
…間に合った。

…いや、間に合ったわけじゃないわね…希の腕、あり得ない方向に曲がってる。

ごめんなさい…


穂乃果「…なんだ、真姫ちゃんも居たんだ…好都合だねっ」

真姫「…そう」

穂乃果「前は吸いそびれちゃったけど…今回こそはっ」

真姫「…」



だんっ。

穂乃果がすごい勢いでこっちに飛んでくる。

地面を軽く蹴っただけでこの跳躍…吸血鬼って、ハンパないわね。



私の数センチ前で急停止した穂乃果は、両腕で私を優しく包み込む。

…この妙な安心感。

…吸血鬼になっても、穂乃果は穂乃果ね。



希「真姫ちゃん…」

真姫「…希、あとは頼むわよ」


…なんて。カッコイイ台詞、ちょっと言ってみたかったのよ。


穂乃果「…真姫ちゃん」

真姫「ふんっ」


わざとらしく、穂乃果に首筋を見せつけてやる。

…ふふ、綺麗な首筋でしょう?

ここに傷を付けられるんだから、光栄に思いなさい。



穂乃果「…いただきます」

85: 2015/12/10(木) 01:48:45.40 ID:F7WHuKVz0.net
希「真姫ちゃんっ…なんで、なんでアレを使わないんっ!?」




ずぶり。


首に二つ、穂乃果の牙が突き刺さる。


でも、不思議と痛みは感じない。


むしろ、気持ちいい。


そういえば、希が言っていたわね。性的快感を覚えるって。




真姫「ふぁぁっ…」



味わったことのない快感に、情けない声が漏れてしまう。

カッコつけたくせに…


穂乃果「…」


穂乃果は目を瞑って、キスでもしているかのような顔で、私の血を吸い始める。




…これでいい。

86: 2015/12/10(木) 01:59:38.20 ID:F7WHuKVz0.net
真姫「…捕まえたわよ」



快感で気を失いそうになったのを堪え、なんとか声を絞り出す。



穂乃果「ふぇ?」



真姫「…これで、外す心配はないわよね」



快感で震える手で、「夢の引き金」に手をかける。





穂乃果「ふぇっ、えっ…!?」




心臓は…この辺ね。




そうして、穂乃果の背中に銃口を突き付け―――――

88: 2015/12/10(木) 02:04:51.28 ID:F7WHuKVz0.net
翌朝


穂乃果「おはようっ、ことりちゃん! 海未ちゃん!」

海未「おはようございます、穂乃果…」

ことり「おはよ~…」

穂乃果「…あれ、二人とも辛そうだねぇ」

海未「当たり前です…ことりも私も、3日も寝たままだったのですよ!」

ことり「あはは…歩くのも久しぶりで…」

穂乃果「そっかぁ…そういえば、そうだったっけ…で、でもさっ、こうしてちゃんと無事に目が覚めたんだから! せっかくだから元気にいこうよっ! ねっ!」

海未「…まったく。調子がいいんですから…」

ことり「うふふっ」



希「…いつもの日常に元通りやね」

真姫「一応、ね。…っていうかあなた、その腕大丈夫なの?」

希「大丈夫大丈夫。大したことないって」

真姫「嘘つきなさいよ…」




ドリーム・トリガーのおかげで、穂乃果から吸血鬼の魂は消え去り、穂乃果は人間に戻った。

血を吸われて眷属にされかけてた4人からも、吸血鬼の血を消し去り、無事に目覚めた。


「一応」、一件落着ね。

90: 2015/12/10(木) 02:15:48.36 ID:F7WHuKVz0.net
希「しっかし、真姫ちゃんも無理するなぁ。当たらないなら、零距離で当てればいいなんて」

真姫「なっ…も、もういいでしょ!? その話は昨日済んだでしょ!」


…ただ、まるごと元通りというわけにはいかなくて…

希の腕の怪我と、そのことに対しての、私の罪悪感と…

あとは―――――



絵里「ね、ねえ穂乃果」

穂乃果「ふぇ? なに、絵里ちゃん?」

絵里「き、今日の放課後とか、空いてる?」

穂乃果「うん! どうしたの?」

絵里「…そ、その…私と、デートしないっ?」

穂乃果「で、ででででーとぉっ!?」


海未「ま、待ってください絵里! 放課後は、私が誘おうと思って…」

ことり「あぁんっ、絵里ちゃんも海未ちゃんもずるいっ! ことりも…」


穂乃果「あ、亜里沙ちゃんからメールだ~…って、あ、亜里沙ちゃんからも誘われちゃった!」



…噛まれた4人が、やたらと穂乃果に猛アタックを仕掛けるようになったこと。



穂乃果「…あ、真姫ちゃん! お~いっ」

真姫「!」


私を見つけた途端、元気いっぱいに手を振ってくる。


…人の苦労も知らないで…


私はなんとなく首を撫で、大きなため息をついてやる。そうしてから、軽く手を振り返してやった。


穂乃果は、飼い主に褒められた犬のように喜んで、笑顔を私に向けた。その笑顔は、まるで太陽 ―数時間前まで弱点だったくせに― のようで…

なんだかくらりとする。顔が熱い。



…まったく。私ってば、吸血鬼でもになっちゃったのかしら?

91: 2015/12/10(木) 02:16:14.88 ID:F7WHuKVz0.net
おわり

95: 2015/12/10(木) 02:26:10.01 ID:7tCcYlkA0.net
おつまきちゃん

96: 2015/12/10(木) 02:41:22.40 ID:CQHRtUd20.net
真姫ちゃんも吸血鬼になって戦うのかと

97: 2015/12/10(木) 02:42:14.10 ID:38tF0J5w0.net

99: 2015/12/10(木) 06:08:45.85 ID:bjsmZRjd0.net
おっちゅん(・8・)

116: 2015/12/10(木) 12:26:10.72 ID:gfGr+fYDd.net
面白かった!

120: 2015/12/10(木) 16:48:54.16 ID:z73VP+p20.net
面白かったぞ

引用元: http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1449588508/

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