【SS】凛「縁側と短編小説」

SS


1: 2015/03/05(木) 13:17:32.55 ID:9Khi3BXT.net
短いのを思い付いたらぼちぼち投下するスレ。


ぽかぽか陽気に、澄み切った空気。
青々とした木々が、風に揺れる。

うららかな春日和ですなぁ。

縁側でごろんと寝転びながら、そんなことを考える。

「凛、お茶が入りましたよ」

今日は海未ちゃん家でお勉強を教えて貰ってたんだけど。
疲れたし、あまりにも天気が良いものだから、ちょっと休憩。

「またそうやって寝転んで…本当に猫になってしまいますよ?」

冗談っぽく海未ちゃんは笑うけど、海未ちゃん家の飼い猫だったら喜んでなるにゃー。

「猫になったら、ラーメンも食べれなくなりますよ」

…それは嫌だなぁ。

でも、猫になって、ずっとこの縁側でごろごろ出来たら、すっごく幸せなんだろうけどなぁ。

ほっぺをぺたん、と板の間にくっつける。ひんやりして気持ちいい。

…暖かい日差しが眠気を誘う。

ふわふわ、ぽかぽか。お日様に包まれてるみたい。

「…おや、寝てしまいましたね」

2: 2015/03/05(木) 13:20:29.56 ID:9Khi3BXT.net


んー… ちょっと寝ちゃったみたい。

頭の上の方で、ぺら、と、紙をめくる音が聞こえる。

顔をあげると、少し俯く海未ちゃんの顔。
背景には雲1つ無い青空と、新緑の木々たち。

青に映える海未ちゃんは、まるで女優さんみたいに綺麗。

「起きましたか。気持ち良さそうに寝てましたね」

縁側に腰掛ける海未ちゃんの膝には、1冊の本。

「ああ、これは、私が好きな作家の短編小説集です。最近、短編小説にハマっているんですよ。」

小説かぁ。凛は長い文章を読むの苦手だから…

「1話1話が短いから、本が嫌いな凛でも読みやすいと思いますよ。読み終わったら貸しましょうか?」

それなら、凛も大丈夫かも!海未ちゃんが読んだ小説を凛も読むなんて、頭が良くなったみたい!みんなに自慢しよっ。

「さて、凛も起きたことですし、勉強を再開しましょう」

えー…まだごろごろしてたいにゃー…

「今日は勉強をしに来たんでしょう!…それに、また来たいなら、いつでも寄って行って良いですから」

ちょっと気恥ずかしいのか、だんだん声が小さくなる海未ちゃん。
顔もなんだか赤くなってない?

3: 2015/03/05(木) 13:22:14.26 ID:9Khi3BXT.net
「ほら!はやく起き上がって!お茶も飲んでしまって下さい。新しいのを淹れなおしますから」

そういえば、海未ちゃんが淹れてくれたお茶、飲むの忘れてた。

起き上がり、冷めてしまった緑茶を、ぐい、と流し込む。

冷たいのが体の中を流れて、ちょっと目が冴えたかも。

「…まぁ、今日は天気も良いですからね。凛がちゃんと勉強を終わらせたら、また休憩しましょう」

そのひとことに、やる気が燃え上がる。

「ふふ、その調子です。では、やる気があるうちに、凛が大嫌いな数学からやりましょうか」

ええー!す、数学は嫌だけど…

縁側でごろごろのために、頑張るにゃー!

奥の座敷に行く前に、ちら、と縁側の方を振り返る。

さわさわとそよぐ草木が、『がんばれ』と言ってくれてるみたい。

家の中を通り抜ける風も、背中を押してくれる。

次の休憩の時は、海未ちゃんの短編小説をちょっと読んでみようかな。

「うー、頑張るにゃー!!」



おわり

6: 2015/03/05(木) 13:44:39.54 ID:9Khi3BXT.net
穂乃果「猫を飼いたい」

穂乃果のお家はお饅頭屋さんをやってるんだ!
老舗和菓子屋、って言うのかな?
地域のみなさんにご愛顧いただいてますっ!

でも、そのおかげで、ペットは飼ったことないんだ…

穂乃果だって、犬とか猫とか飼いたいなぁ。

7: 2015/03/05(木) 13:47:47.00 ID:9Khi3BXT.net
今日は部活も休みだから、お店番。

『穂乃果ちゃん可愛いから、お饅頭もう2つ買っちゃおうかな~?』なんて言ってくれる人も居るんだよ!えっへん。

…お客さんの大半は、おじいちゃんおばあちゃんなんだけどね。

でもでも、売り上げには貢献してるよね。
看板娘、ってやつですな。

8: 2015/03/05(木) 13:52:48.60 ID:9Khi3BXT.net
「こんにちはー」

おっ、お客さん…って凛ちゃんと絵里ちゃん!?

「穂乃果ちゃん家のお饅頭買いにきたにゃー!」

「散歩をしてたら、凛にばったり会ってね。一緒に穂乃果の家のお饅頭を食べに行こうってなったのよ」

海未ちゃんやことりちゃんは昔からよく来てくれるけど、凛ちゃんと絵里ちゃんは珍しいなぁ。

うちのお店でこのメンバーって、ちょっと新鮮。

9: 2015/03/05(木) 14:20:36.05 ID:9Khi3BXT.net
「凛は揚げ饅頭!」

「私も同じものにしようかしら」

揚げ饅頭はうちの看板商品。サックサクの衣に、上品な甘さのあんこが詰まった至高の逸品だよ!

「ここの席、良いかしら。ほら、凛も座って」

「穂乃果ちゃん家、ホント、老舗!って感じだよねー。オモムキがあるにゃ!」

目を輝かせながら興味津々に店を歩き回る凛ちゃん。

「もう、あまりウロウロしないの」

「はーい…」

とぼとぼと席に着く凛ちゃん。まるで、お母さんに叱られた小さい子どもみたい。

10: 2015/03/05(木) 14:40:27.15 ID:9Khi3BXT.net
「うわー!おいしそうにゃー!」

揚げたての揚げ饅頭を目の前にして、今日1番目を輝かせる凛ちゃん。

「冷めないうちにいただきましょう」

「いただきまーす!」

言うが速いか、凛ちゃんが揚げ饅頭にがっつく。

「あっちちち!!」

…はは、そりゃそうなっちゃうよね。
涙目になって舌を出してる。ちょっと可愛いかも。

「もう…揚げたてなんだから、気をつけないと」

「猫舌なの、忘れてたにゃー」

「はいはい、熱かったわね」

絵里ちゃんが凛ちゃんの頭を優しくナデナデする。凛ちゃんは険しい表情を崩し、ふにゃっ、としている。

いいなぁ絵里ちゃん、私もナデナデしたいよぉ…

…こうして見ると、凛ちゃんって、子どもってより…

猫っぽいよね。口癖も『にゃー』だし。

11: 2015/03/05(木) 15:12:13.47 ID:9Khi3BXT.net
穂乃果と凛ちゃんって、よく姉妹みたいって言われるけど、私が看板娘だとしたら、凛ちゃんは看板猫?

招き猫を置いとくと商売繁盛するって言うし、凛ちゃんがうちの看板娘になったら、もーっと売り上げあがるかな?

それに、凛ちゃんって猫っぽいから、穂乃果の「ペット飼いたい」欲求も満たせるし、良いことづくしじゃない??

一緒にこたつ入ってー、ごろごろしてー、凛ちゃんをナデナデしてー、猫じゃらしで遊んでー、たまにお散歩してー、夜は一緒の布団で寝るの!

「…穂乃果、顔がニヤけてるわよ」

はっ!つい、妄想に熱中しちゃった

「穂乃果ちゃん、何考えてたのかにゃー?」

…あなたをペットにする妄想をしていたなんて、口が裂けても言えません。

14: 2015/03/05(木) 16:31:57.76 ID:Eu+Ej8ru.net
「ごちそう様でした。美味しかったわ」

「ごちそう様!また明日、学校で会おうね!」

絵里ちゃんと凛ちゃんの背中を見送って、机の上の片付けをする。

「ただいまー。あ、お姉ちゃん、さっきそこで、絵里さんと凛さんを見かけたよ」

出掛けてた雪穂が帰ってきた。お土産は無いのかなぁ。

「凛さんってなんか猫みたいだよねー。年上だけど、愛でたくなる」

うむ…血は争えないな。

「へー、うちに饅頭食べに来たんだ。…あはは、凛さんをうちの招き猫にねー。あ、これお土産」

やったぁ!シュークリーム!ユッキー大好き!

「でも、うちはもうお姉ちゃんを飼ってるから、ペットは飼えないよ」

なんて失礼な妹。これでも私、看板娘なんだよ?
そんな妹は、こうだ!

「ちょっとお姉ちゃん!髪の毛ぐしゃぐしゃにしないでよ!」

お姉様に逆らった罰だよ。雪穂が恨めしそうに私を睨む。

15: 2015/03/05(木) 16:42:41.38 ID:Eu+Ej8ru.net
昔からペット飼いたいなーって思ってたけど、やっぱりいいかな。

家には遊び相手のユッキーが居るし、学校に行けば猫ちゃん…もとい、凛ちゃんが居るし。

ー人間とは、無いものねだりをする生き物であるー
…お、ちょっとかっこいいぞ。私。

明日になったら、今日出来なかった分、凛ちゃんをいっぱいナデナデするんだから。

はやく明日にならないかなぁ。




おわり

16: 2015/03/05(木) 17:34:37.94 ID:Eu+Ej8ru.net
希「みんなと居るあたたかさ」

最近、近くに足湯が出来たんやって。うち、温泉が好きやから、行かない訳にはいかんやん?
でも1人は寂しいなぁ…

絵里ちとにこっちでも誘ってみよ。

「足湯…名前は知ってるけど、実際に入ったことは無いわね」

「あー、近くに出来たとこでしょ?にこも妹たちを連れて行ってみようと思ってたのよ」

18: 2015/03/05(木) 18:12:03.82 ID:Eu+Ej8ru.net
「へぇ…足だけ浸かる温泉…それって、本当に全身が温かくなるの?足だけって、上半身が寒そうだけど」

うちに疑いの目を向ける絵里ち。ふっふっふ。絵里ちは足湯を舐めとるね?

「にこは1回だけ、家族と行ったことがあるけど。足だけでも、ずっと入ってたら汗かくぐらい全身が温まるんだから!」

「ハラショー…足だけなら気軽に浸かれるし、良いわね」

お、絵里ちも乗り気になってくれた。
んー、楽しみやなぁ♪

21: 2015/03/05(木) 19:34:43.84 ID:Eu+Ej8ru.net
「いい!?足湯に入りに行くんだから、タイツやストッキングを履いてきちゃ駄目よ!捲り上げにくいズボンなんかも!タオルも忘れず持って来るのよ!」

にこっち張り切ってんなぁ。家族旅行に行く前の、肝っ玉かあさんみたいやん。

「足湯に入るには、心構えが必要なのね…!」

うーん、そんな気い張って入りに行くようなもんでも無いんやけどな。

22: 2015/03/05(木) 21:21:45.34 ID:Eu+Ej8ru.net


うぅ、さぶい。外は風が冷たい。
はやくあったまりたいなぁ。

「これが足湯…本当に足だけなのね!ここに座って足を浸けるの?」

きらきらと目を輝かせる絵里ち。
昔、おもちゃの手裏剣をあげた時も、こんな顔してたっけ。

ちょうど、うちら以外に人は居ない。分かりにくい場所にあるもんな。

「ちゃんとズボンやスカートをあげるのよ!裾が濡れちゃうから」

にこっちお母さんは今日も張り切っとるな。

うちを挟んで、絵里とにこっちが椅子に腰掛ける。両手に花やんな♪

「寒いから、はやく浸かりたいわ!…あっつ!」

あーあー…絵里ちたら…こういうのは、ゆっくり…あっつ!!
予想以外にあっついわ!茹でる気ちゃうん!?

「あんたら、全然駄目ね!こういうのは、一気に突っ込むのよ!」

そう言って、勢い良く両足を足湯に浸けるにこっち。

「ゔぉぉ…」

アイドルらしからぬ声が出とるよ、にこっち…。

「ハラショー!にこ、凄いわ!」

「あ、当たり前よ…最初は熱いけど、だんだん…慣れてくるから…気持ちいいわよ…」

そんな険しい顔で言われても、説得力無いで…。

23: 2015/03/05(木) 21:38:39.27 ID:Eu+Ej8ru.net


「ふぅ…やっと足を全部漬けることができたわ…」

はー、やっぱり気持ちえーなー。

「それにしても、何故足だけなのかしら。普通に温泉に入れば良いのに」

絵里ちは分かってないなぁ。足湯は、服を脱がずに気軽に入れるし、内蔵にも負担が少ないんやで!

「何より、タダで入れるしね」

お金が無い学生にとって、最高のアクティビティやね!

「確かに、無料で入れるのはありがたいわね。でも…まだ入ったばかりだから、上半身が寒いわ…」

足は温泉に浸かってるけど、上半身は野ざらしやもんな。
…じゃあ、こうしたらあったかくなるんやない?

「うわぁっ」

「きゃっ」

両脇の絵里ちとにこっちを、ぎゅっと抱き寄せる。身体があったまるまで、3人でぎゅーってしとこ?♪

「の、希、恥ずかしいわよ…!」

「んー!離しなさいよ希!」

うちら以外に誰もおらんし、大丈夫やて♪
…あ、にこっちは胸に埋れて苦しそうにしとる。

25: 2015/03/05(木) 22:41:22.69 ID:Eu+Ej8ru.net
「…たまには、こういう風にゆっくりするのも良いわね。絵里と希と3人で出掛ける機会も、あんまり無かったし」

「そうね。今日は、誘ってくれてありがとう。希」

な、なんかそんなに素直に感謝されたら照れるやん?
あー、顔が火照ってきたわー。足湯の効果が出てきたんかな。

温泉には足しか浸かってへんのに、身体がぽかぽかする。

「また何かあったら誘いなさいよ。希も、絵里も」

今日は、絵里ちとにこっちを誘って本当に良かった。

身体もぽかぽか。…心もぽかぽか。

「ねぇ、今度はみんなで温泉に行かない?私、露天風呂に入りたいわ」

「良いわね!練習が無い日にでも行きたいわね。それにしても、絵里って意外と温泉好きなのね」

温泉かぁ…みんなの成長度合いを見れるチャンスやんな。

「希!あんた、今イヤらしいこと考えたでしょ!」

べっつに~♪

1人でお風呂に入るんも好きやけど、みんなで入るのも大好き。

だって、身体も心もぽかぽかできて、一石二鳥やん?

「はぁ…こんなに気持ち良かったら、足湯から出たくなくなるわね」

絵里ちが珍しく、ぽわーんとした顔をしている。キリッとした絵里ちも好きやけど、完全オフの絵里ちも好きやよ♪

「あんまり入ったら足がふにゃふにゃになるから、ほどほどにしないとね」

いつもはおどけてるけど、しっかり者で仲間思いのにこっち。からかったりするけど、本当は感謝しとるんよ?

…いつまでも、この3人で浸かっていられたら良いのになぁ。

のぼせるくらいに。




おわり

27: 2015/03/05(木) 23:51:23.77 ID:Eu+Ej8ru.net
海未「波打ち際に、ひとり」


ざざん、ざざん、と波の音

橙色の地平線が、太陽を飲み込んでいきます

きらきら、きらきら、と水面に遊ぶ光は無邪気

紺、紫、橙のコントラストの空は、今にも私を押し潰してしまいそう

海の上を飛ぶ鳥たちも、太陽を追って消えていきます

波打ち際に、ひとり。ぽつねんと私が残される

足元の石をひとつ、太陽に向かって投げてみた

ぽちゃん、と間の抜けた音を立て、水面に波紋を作るだけ

太陽には届くはずもなくて

もうすぐ、遊んでいた光たちも帰っていきます

潮風が奏でるメロディも、空に吸い込まれていきます




私はひとり、全てを見送って立ち尽くすのでした





おわり

28: 2015/03/06(金) 13:43:50.93 ID:WWbm/jSN.net
絵里「春と綿毛」


寒さも和らぎ、春めいてきた今日この頃。
ちょっと散歩にでも行ってみましょうか。

玄関を開けると、春風がひと吹き。

あたたか陽気を胸いっぱいに吸い込み、外へと踏み出す。
とくにあても無いけど、とりあえず歩いてみましょう。

ふと足元を見ると、可愛い黄色のタンポポ。
まるで小さい太陽みたい。

「絵里ちゃん?」

後ろから私を呼ぶ声。振り返ると、四角いバスケットを持った花陽。
どこかへお出掛けかしら。

「えへへ…今日は天気が良いから、ピクニックに行こうかと」

ピクニック…確かに、今日はピクニック日和ね。

「凛ちゃんと2人で行こうと思ってたんですが、絵里ちゃんも一緒にどうですか?」

花陽からお誘いなんて、珍しいわね。せっかくだし、ご一緒して良いかしら。

「やったぁ!絵里ちゃんとお出掛けなんてなかなか無いから、花陽、嬉しいですっ!」

ぱあぁっと満面の笑みを咲かせた花陽は、たたたっ、と走り出した。

「私と凛ちゃんがいつも行く河川敷があるんです。きっと絵里ちゃんも気に入ると思います!」

30: 2015/03/06(金) 14:14:29.29 ID:WWbm/jSN.net


花陽に引っ張られて連れて来られたのは、広い河川敷。
川の流れは穏やかで、まるで時間の流れもゆっくりになったよう。

青い土手では、春の花たちが楽しげに揺れている。

近くにこんな素敵な場所があったなんて、知らなかった。
花陽に感謝しなくっちゃね。

「凛ちゃんとはここで待ち合わせてるんで、もうすぐ来ると思います!ふふ、絵里ちゃんが居るなんて、凛ちゃんびっくりするだろうなぁ」

花陽は、好きなものの話をする時は、本当に目が輝くのね。凛とか、アイドルとか、ご飯とか。

「よいしょ…今日はおにぎりを作ってきたんです!いっぱい作ってきたんで、絵里ちゃんも食べて下さい!」

バスケットには、おにぎりが入ってたのね。…結構大きいけど、どれだけ作ってきたのかしら。

31: 2015/03/06(金) 16:59:39.18 ID:WWbm/jSN.net
「…あのね、絵里ちゃん。」

もじもじしながら、花陽が喋り出す。

「私、絵里ちゃんのこと、すごく尊敬してるんです。スタイルも良くて、ダンスも上手いし、頭も良いし、かっこいいし」

そんなに褒められると、流石に照れるわね。

「だから、その、私…絵里ちゃんのことが大好きなんです!」

顔を真っ赤にして叫ぶ花陽も可愛いわ。
…って…え、大好き!?こ、これは、告白というやつかしら…?花陽、いきなり大胆すぎじゃないの?

「えへへ、言っちゃった…」

どうしようかしら。落ち着くのよ、私。女の子が女の子に告白するのは、稀にあると聞くわ。…いや、まさか花陽が…

「前から思ってたんですけど、絵里ちゃんと2人で話す機会が無くて。これからも、私の自慢の先輩で居て下さい♪」

…ああ、これは『先輩』としての『大好き』なのね。何を勘違いしてたのかしら私。

「…あれ、絵里ちゃん顔赤くないですか?…もしかして、照れてる?可愛いっ!」

照れてるとはまた違うのだけれど。まぁ、そういうことにしときましょう。

33: 2015/03/06(金) 22:03:36.98 ID:WWbm/jSN.net
「あ、絵里ちゃん見て下さい!タンポポが咲いてます!」

この河川敷は日当たりが良いからか、すごく大きな花を咲かせている。
太陽の光をいっぱい浴びてきたのね。

「こっちのはもう綿毛になってますね」

綿毛のタンポポを摘むと、花陽は、ふぅーっと息を吹きかけた。
ほっぺを膨らませる花陽の横顔は、すごく愛らしい。

飛ばされた綿毛が春風に乗って、ふわふわと空へと舞い上がる。

あの綿毛たちは、どこに行くのだろう。
新しい土地が、日当たりが良いところだったらいいのだけれど。

「あ!かよちん見つけたー!…と、絵里ちゃん!?」

「来る途中に偶然会ったから、誘ったの」

「そうなんだ!絵里ちゃんとピクニック~♪嬉しいにゃ!…かよちんそれ、タンポポ?」

ぴょんぴょん跳ねる凛の目にとまったのは、タンポポの綿毛。

34: 2015/03/06(金) 22:03:47.84 ID:WWbm/jSN.net
「凛もやる!絵里ちゃんも飛ばそう!誰の綿毛が1番遠くに行くか競争にゃー!」

タンポポの綿毛を飛ばすなんて、何年ぶりかしら。
3人で、空に向かってタンポポの綿毛を飛ばす。
空に舞う白い綿毛が、まるで雪みたい。

「わぁ…なんだか、雪みたい」

ぽそり、と花陽が呟く。ふふ、同じこと考えてるわね。

「春に降る雪…なんだか、ロマンチックにゃー…」

ぐぅー、とお腹の音。

「にゃはは…走ってきたから、お腹空いちゃったにゃ」

もう、凛ったら。ロマンチストなのか何なのか、分からないわね。

「おにぎりいっぱい作ってきたから食べよ!」

「やったー!かよちんのおにぎり大好き!」

花より団子…いや、花よりおにぎりね。

タンポポを見ながらおにぎりを食べるのも、お花見に入るのかしら?

「もー、凛ちゃんたら」

「えへへー」

川の流れは穏やかで、時間の流れも穏やかで。
春の訪れって、こんなにも幸せなものだったのね。

今度、花陽にも私のとっておきの場所、教えてあげなくっちゃね。



おわり

37: 2015/03/08(日) 23:46:47.51 ID:DGrq4Yk9.net
──この彼氏がさぁ──

──えー、マジで?──

女の子は、恋愛話が大好きだ。

女の子が3人集まれば、そこはもう女子会。

お互いの恋愛事情はどうとか、あの子たちは最近ああだとか、話題は尽きない。

…でも凛は、そういう話、全然したことないんだよね。

実際、そういう浮いた話が無いっていうのもあるけど…

…本当は、怖いの。

私なんかが、恋愛なんか…って。

38: 2015/03/08(日) 23:48:33.82 ID:DGrq4Yk9.net


「「れ、恋愛~!?」」

2人とも、びっくりし過ぎだよ…。教室中の視線がこっちに集まる。

「り、凛ちゃん、誰か好きな人でも出来たの!?」

かよちんが、凄い剣幕で凛に詰め寄る。

別に、好きな人が出来た、って訳じゃない。

…ただ、周りの友達は、誰が好きとか、誰に好かれてるとかの話をしてるのに、凛はそういう話に全然ついていけない。

みんなに合わせて愛想笑いをして、共感するフリをして。

それが、自分だけ子どもみたいで、仲間外れみたいで、ちょっと悔しかった。

39: 2015/03/08(日) 23:49:29.18 ID:DGrq4Yk9.net
「なによー、びっくりさせないでよね」

真姫ちゃんは平静を装っていつも通り髪の毛をクルクルしてるけど、焦ってるの、丸分かりだよ。

「でも…私もあんまり恋愛の話とかしたこと無いなぁ…」

うん。かよちんとはずっと一緒に居るけど、そういう話聞いたことないもん。

「わ、私は…あ、あるに決まってるじゃない!」

ホントかなー?目が泳いでるよ。

40: 2015/03/08(日) 23:50:06.00 ID:DGrq4Yk9.net
「…ごめん、私もそういう話したことないわ…」

「役に立てなくてごめんね…でも凛ちゃん、なんで急に?」

んー、なんとなく?

「なんとなく…ねぇ」

訝しげな目で私をじろじろ見る真姫ちゃん。

しばらくした後、ニヤリとしてこう言った。

「…もしかして、気付かないうちに誰かを好きになってたり?」

41: 2015/03/09(月) 00:23:09.15 ID:qotnrqBb.net


凛が、誰かを好きになる──?

そんなの、あり得ないよ。

だって凛、髪も短いし、振る舞いもおしとやかじゃないし、可愛くないし…

それに、好きになるとか、好かれるだとか、凛にはよく分かんないよ。

はぁ、とため息をついて、ベッドにダイブ。

こんな凛に好かれても、きっと迷惑なだけだよね。

横を見ると、ベッドの上に無造作に放り投げられたファッション雑誌。

可愛くてキラキラした、ふわふわの女の子が誌面を飾っている。

…凛だって、こんな風に可愛くなりたかったよ。

──あー、星空がスカート履いてるー!──

…凛には、無理なんだろうな…

42: 2015/03/09(月) 00:24:42.11 ID:qotnrqBb.net


授業が終わって、放課後。さて、練習練習っと。

「…凛ちゃん、ちょっと良いかな?」

後ろからかよちんに呼び止められる。いつになく、真剣な表情をしている。

「2人っきりで話したいから、あっちの空き教室に行こう」

…2人っきりで話って、なんだろ?ちょっと怖いな…怒られたりしないよね?

「あの…昨日の話だけど」

昨日…ああ、恋愛の話かな。

43: 2015/03/09(月) 00:25:44.27 ID:qotnrqBb.net
「凛ちゃんもしかして、まだ自分に自信が持ててないの?」

自分に、自信…

「凛ちゃんは、可愛いよ!すごく可愛い!」

かよちんはいつもそう言ってくれる。でも、かよちんは優しいから。

「違うの!凛ちゃんは…凛ちゃんは、自分が思ってるより素敵な女の子なのっ!!」

珍しく声を張り上げるかよちんに、少しびっくりした。顔、真っ赤にしちゃって。

44: 2015/03/09(月) 00:26:48.61 ID:qotnrqBb.net
…じゃあさ、私がかよちんに、好きだ、って告白したら、かよちんは嬉しいと思う?

「…!!それは…」

…ほら、黙りこんじゃった。嬉しいはずないもん。こんな──

「嬉しいっ…!嬉しいよ…!!」

…かよちん、なんで泣いてるの…?

「だって、こんなに可愛くて、優しくて、キラキラしてる女の子から好きって言われたら、嬉しくて泣いちゃうよ」

「だからね、もうこれ以上、自分を女の子らしくないなんて言わないで」

「…誰からも好かれないだなんて…言わないでよぉ…」

45: 2015/03/09(月) 00:27:29.54 ID:qotnrqBb.net
大粒の涙を流しているかよちんを見ていると、胸が苦しくて、切なくて。

思わず、ぎゅっと抱きしめた。

「ご、ごめん…ね…えへへ…花陽、泣き虫…だから…」

ねぇかよちん。

なんでかよちんはこんなにも優しいの?こんな私を好きでいてくれるの?

なんでこんな私のために泣いてくれるの?

「凛ちゃん…凛ちゃんは、私のこと、信じてくれてるよね?」

当たり前じゃん。かよちんを信じなくて、何を信じるの?

46: 2015/03/09(月) 00:27:58.66 ID:qotnrqBb.net
「じゃあ、私が信じる凛ちゃんを…自分自信を、信じて」

自分を…信じる…

「ごめんね、本当に…こんなに泣いちゃって…へへ、恥ずかしいな…ってうわぁっ」

もう1度、かよちんをきつく抱きしめる。

謝るのは凛の方。ごめんなさい、かよちん。

47: 2015/03/09(月) 00:28:28.98 ID:qotnrqBb.net
凛は、ずっと逃げてたんだ。

『どうせ』『だって』『でも』

自分に嘘をついて、自分を騙してた。本当の自分の気持ちを、信じることが出来なかった。

「凛ちゃん…」

…こんな私でさえも、生まれ変わることは出来るんだ。

だから、もう少し待ってて。

もう少しで、新しい自分になれるから。

48: 2015/03/09(月) 00:55:54.31 ID:qotnrqBb.net


「あら、凛。その髪ゴム、可愛いわね」

でしょでしょ?真姫ちゃんお目が高い。にこちゃんと一緒にお買い物してきたの。

「…それに…シャンプー替えた?なんか良い匂いがする」

えっへへー。美容師さんオススメのヘアケアセットを買ってみたんだよ。値段はちょっと高かったけど…

49: 2015/03/09(月) 00:56:52.32 ID:qotnrqBb.net
「ふふ、なんか最近張り切ってるわね。この前の休みにみんなで遊んだ時も、可愛い服を着てて、みんなから揉みくちゃにされてたしね」

あ、あれはちょっとびっくりしたにゃー…

「凛って、本当変わったわよね…女の子らしくなったって言うか…いや、女性っぽくなったと言うか」

「…え?また恋愛の話?…恋をしちゃったかもしれない?」

「…そうね。凛がそう思うのなら、そうなんでしょうね」

やっぱり、そうなんだ。

ちょっとだけはやくなる鼓動、熱くなるほっぺた。



──待っててね。今、伝えに行くから──




おわり

50: 2015/03/09(月) 01:09:30.74 ID:qotnrqBb.net
絵里「てんさい?」


絵里「真姫、ちょっとこれ見て」ズイ

真姫「野菜ジュース…?」

絵里「ここ、成分表」

絵里「『てんさい』が入ってるのよ!」ハラショー!

絵里「このジュースを飲めば、天才になれるのかしら?」

絵里「まぁ、私は元から賢いから別に良いんだけどね!?」

真姫「…それは、野菜よ。大根の仲間。漢字だと『甜菜』になるわ」

絵里「…そうなの…」シュン

穂乃果「大変大変!!」バァン

絵里「どうしたの穂乃果、そんなに慌てて」

穂乃果「穂乃果、やばい野菜ジュースを見つけちゃった…」

穂乃果「『てんさい』になれる野菜ジュースだよっ!」

えりまき「…」


おわり

56: 2015/03/10(火) 23:09:07.03 ID:vQbnrrWf.net
凛「私に翼を」


穂乃果ちゃんたちが卒業して1年。

今日は、穂乃果ちゃんと久しぶりに2人で遊ぶ日。

『最近暖かくなってきたし、ちょっと遠くに連れてってあげる!』って言ってたけど、車でどこか行くのかな?

1年前のちょうどこれくらいの時期に『免許取ったよー』なんて言ってたし。

もうすぐウチに来ると思うんだけど…

あ、チャイムが鳴った。穂乃果ちゃんかな。

「やっほー!久しぶりだね!」

57: 2015/03/10(火) 23:10:47.96 ID:vQbnrrWf.net
久々に会った穂乃果ちゃんは、相変わらず元気だ。

格好はライダースジャケットにパ〇〇スタイル、足元はブーツ。

ちょっと見ない間に、趣味が変わったのかな?

「へへ、びっくりした?今日はね、この子に乗ってお出掛けします!」

にこにこ笑顔で紹介してくれたのは…

バイク!?穂乃果ちゃん、バイク運転出来るの!?

「実は、こっそり二輪免許を取ってたんだー。びっくりしたでしょ?」

「お父さんもバイクに乗ってて、カッコ良くて憧れてたんだよ。このバイクも、お父さんが昔乗ってたやつなんだ」

そうか…だから、『明日は上下長袖長ズボンね!』なんて服装を指定してきたんだ。

58: 2015/03/10(火) 23:12:21.27 ID:vQbnrrWf.net
山登りにでも行くのかと思ってたよ。

…でも、可愛い格好が出来なくてちょっと残念。

ていうか、2人乗りって大丈夫なの?

「大丈夫大丈夫!免許取ってから1年以上経ってるし、お父さん譲りのライディングテクは凄いんだから!」

「たまに雪穂を乗せて近所を走ってるし」

胸をどん、と叩く穂乃果ちゃん。…この引っ張られる感じも久々で、少し懐かしくなる。

「よし、行こうか。はい、ヘルメット。しっかりあごひもは締めてね。…よいしょっと」

穂乃果ちゃんがバイクに跨り、エンジンを掛ける。ブルルル、という低い音がお腹に響く。

「はい、後ろどうぞ」

59: 2015/03/10(火) 23:12:56.41 ID:vQbnrrWf.net
わぁ、バイクに乗るの初めて…ちょっと緊張するなぁ…よいしょ。

「膝は、私の腰を軽く締めて。手は、私のお腹に」

な、なんだか穂乃果ちゃんに抱きついてるみたい…

これで車道を走るなんて、ちょっと恥ずかしいかも…

「曲がる時は、力を抜いて私と一緒に体を倒してね。よーし、行くよ!」

穂乃果ちゃんとドキドキの凛を乗せて、バイクは走りだす。

「り、凛ちゃん、ちょっとお腹苦しいかな…」

あっ、緊張して、つい穂乃果ちゃんをぎゅーってし過ぎちゃった…

60: 2015/03/10(火) 23:13:33.52 ID:vQbnrrWf.net
「どう?初めてのバイクは」

…正直、まだ怖いけど…穂乃果ちゃんの背中に抱きついてると、なんだか安心する。

なんだろう…いつもカッコいいんだけど、今日の穂乃果ちゃんの背中は、いつもよりカッコ良く見える。

風を切って、景色はどんどん後ろに流れてく。

穂乃果ちゃんは、たまに足元でガチャガチャやってる。なんか、難しそうだなぁ…

「んー、バイクはちょっと難しいかもだけど、慣れたら最高だよ!」

「翼が生えたみたいに、びゅんびゅん自由に走れるんだよ。どこまででもね」

61: 2015/03/10(火) 23:13:55.44 ID:vQbnrrWf.net
翼…か。

あの穂乃果ちゃんに翼が生えちゃったら、もう無敵だよね。誰にも止められないよ。

「ん!?なんで笑うのー!?」

…なんか、バイクにも慣れてきたかも。

あぁ、バイクって、こんなに楽しい乗り物だったんだ。

速くて、自由で、ドキドキする。



「着いたよ!」

62: 2015/03/10(火) 23:14:18.05 ID:vQbnrrWf.net
目の前に広がるのは、一面の桜並木。

風に吹かれて花びらが舞い、空に流れてく。

桜の美しさに目を奪われて、しばらく立ち尽くす。

「どう?凄いでしょ!穂乃果も、小さい頃はお父さんにバイクで連れてって貰ってたんだよ!」

穂乃果ちゃんがヘルメットを脱ぐと、髪がふわり、と風で揺れる。

その色っぽさに、少しどきりとする。

63: 2015/03/10(火) 23:14:42.40 ID:vQbnrrWf.net
「今日はお弁当持ってきたんだ。桜の木の下で食べよう!」



「お話もいっぱいしたし、そろそろ帰ろっか」

楽しい時間はあっという間に過ぎていっちゃう。

ここを離れるのは名残惜しいけど…

「よしっ!凛ちゃん乗って良いよ!」

穂乃果ちゃんの背中は暖かくて、良い匂いがして。

まるで、お日様をだっこしているみたい。

64: 2015/03/10(火) 23:15:09.22 ID:vQbnrrWf.net
「凛ちゃんもバイクの免許取って、一緒にツーリング行こうよ!」

穂乃果ちゃんとツーリング…良いなぁ、凄く楽しそう。

…でも、こんな風に、穂乃果ちゃんの背中にくっついてるのも良いかな。

「バイク気に入ってくれて嬉しいよ。また、どこか行こうね!」

1つ心配なのは。

この胸のドキドキが、背中越しに伝わっちゃうこと。

そんな思いとは裏腹に、私はもう1度、穂乃果ちゃんの背中をぎゅっ、と抱きしめていた。



おわり

65: 2015/03/11(水) 00:27:00.05 ID:sPjODM7f.net
ことり「木漏れ日ティータイム」


ことり「部室、誰も来ないな…せっかく、マカロン持ってきたのに」

ことり「…なんだか、1人で居たら眠くなってきちゃった…」

ことり「ちょっとだけ…おやすみなさい…」

真姫「おつかれ様」ガチャ

真姫「…って」

ことり「すぅ…」

真姫「寝ちゃってる」

真姫「…」

66: 2015/03/11(水) 00:33:05.04 ID:sPjODM7f.net
真姫(ことりの頭のとさか…あれ気になってたのよね)

真姫(これどうなってんの?)ズイ

真姫(…あ、ことり、肌綺麗。化粧水とか何使ってるのかしら)

ことり「ふぁあ…ん…!!?」

真姫「あ…」

ことり「…えーと…顔、近くないかな?」

真姫「いや、違うのよ、ことりの髪型どうなってんのかなーって気になって…」アセアセ

ことり「あはは、そうなんだ…」

真姫「うん…」

ことり「…」

真姫「…」

ことまき(…なんか気まずい)

67: 2015/03/11(水) 00:37:32.93 ID:sPjODM7f.net
真姫(そもそもことりと2人っきりで話す機会なんてあんまり無かったし)

ことり(真姫ちゃんと普段何の話してたっけ…)

ことまき「「あの」」

ことり「あ、真姫ちゃんから良いよ」

真姫「いや、大したことじゃないし。ことりは?」

ことり「私も大したことじゃ…」

ことまき「…」

真姫(はやく誰か来なさいよ…)

ことり「あ、あの」

68: 2015/03/11(水) 00:47:38.84 ID:sPjODM7f.net
ことり「今日ね、マカロン持ってきたんだ。みんな遅いから、先に食べない?」

真姫「あら、ありがとう。…そういえば、昨日部室に紅茶を置いてったの。それを飲みながら食べましょう」

ことり「…あ、その紅茶、知ってる!パッションフルーツの香りがすごく良いよねぇ。だけど後味さっぱりなんだよね。私好きだよ」

真姫「へぇ、奇遇ね、私もこの紅茶大好きなの」

ことり「意外な共通点を見つけちゃった♪」

真姫「ふふ、そうね」

69: 2015/03/11(水) 00:52:30.49 ID:sPjODM7f.net
ことり「マカロンにも合うねぇ」

真姫「そうね。持ってきといて正解だったわ」

ことり「…真姫ちゃんは紅茶には詳しいの?」

真姫「んー、ママが紅茶に凝ってるから、それなりに知識はあるつもりよ」

ことり「実はね、最近ことりも紅茶にハマってるの♪」

ことり「だから…良かったら今度、一緒に紅茶専門店についてきてくれない?」

真姫「いいわよ。真姫ちゃんに任せなさい」

ことり「やったぁ!真姫ちゃんとデート、楽しみだなぁ♪」

70: 2015/03/11(水) 01:01:38.90 ID:sPjODM7f.net
真姫「で…デートって…//」

ことり「えへへ、冗談だよっ」

ことり「…ふわぁぁ…今日はお昼寝日和だねぇ」

真姫「そうね、木漏れ日が気持ち良いわ」

ことり「んー…」スヤァ

真姫「ことり…また寝ちゃった…」

真姫「…なんだか私も眠くなってきちゃった…」




穂乃果「やっほ!…ってあれ?」

海未「2人仲良くお昼寝…ですか」

穂乃果「シエスタってやつ?」

海未「どこで覚えたんですか、その言葉」

穂乃果「世界史の資料集!」

71: 2015/03/11(水) 01:03:14.41 ID:sPjODM7f.net
海未「…2人はしばらく寝せといてあげましょう」

穂乃果「私も…」

海未「あなたは宿題!」

穂乃果「ひぇぇ…」

ことまき「」スヤスヤ



おわり

73: 2015/03/12(木) 23:57:24.90 ID:cYh8h1BZ.net
亜里沙「かじかむ手を温めて」


学校帰りの帰り道。暦の上ではもう春なのに、空気はとても冷たい。

「うー、寒いねぇ、雪穂。」

亜里沙はロシアのクォーターだけど、だからといって寒さに強いわけではないのか。
そりゃそうか。

「あったかい飲み物買ってくるよ!」

急に思い付いたように走り出す彼女は、私には止められない。

「はい、雪穂♪冬はやっぱりコレだよね!」

…これ、おでんじゃん!飲み物じゃないじゃん!

…なんて、満面の笑みを浮かべた彼女には言えず。

公園のベンチで2人、寒空の下でおでん缶を食す。

「わー、あつあつだよ!…あちち…」

ふー、ふー、と一生懸命に息を吹きかけておでんを冷ます亜里沙は、寒さに頬を紅く染めている。

「んー、美味しい!おでんは日本の心だね」

満足げにおでんを頬張る彼女を見ていると、こっちまで幸せになってくる。

「あ、昆布…。亜里沙、昆布あんまり好きじゃないの。雪穂、食べてくれない?」

74: 2015/03/13(金) 00:11:27.15 ID:dpA++vxJ.net
おでんの昆布が嫌いだなんて。美味しいのになぁ。

「はい、あーん」

…周りに人が居ないとはいえ、公共の場ではちょっと恥ずかしい。

昆布を貰ったから、代わりにちくわぶをあげよう。

「わーい、ちくわぶ大好き!…あーん…え、あーんしてくれないの…?」

いやいや、何で私までしないといけないの…

…碧く透き通った眼。宝石みたいで吸い込まれそう。

そんな顔で見つめられたら、断れないじゃん。

「やったー♪あーん…美味しー♪」

こんなことで無邪気に喜ぶ亜里沙は、少しお姉ちゃんに似てる。

「おでん、美味しかったね。帰ろっか」

75: 2015/03/13(金) 00:26:54.63 ID:dpA++vxJ.net
おでんのおかげで、体が温まってくれた。

「あったまったねー。…うー、でも、手袋してないから手が寒いね」

「雪穂…、手、繋いで良い?」

やだよ!手ぇ繋いでるとこ人に見られるの、恥ずかしいじゃん!

私はさっ、と、自分の手をポケットに突っ込む。

どんな可愛い顔したって、これは駄目!

「…分かった!」

私の右ポケットに、勢いよく左手を差し込む。

その表情は、してやったりという顔。

「ほら、これなら繋いでるとこ、見えないよね?」

…そういうことじゃないんだけどな。

でも今日は寒いし、許してやろう。

今日だけなんだからね。

ポケットの中の2人分の体温は、思ったより心地良い暖かさなのでした。




おわり

77: 2015/03/15(日) 02:08:44.83 ID:dNjJlIHB.net
凛「臆病な手」

うみりん。ウミチャー誕生日おめでとう。


明日は海未ちゃんの誕生日。
穂乃果ちゃん家で、みんなでお誕生日パーティーをするんだ。

…あと5分で海未ちゃんの誕生日。

ベッドで寝転ぶ私の手には、スマートフォン。

『海未ちゃん、誕生日おめでとう!!』

誕生日の午前0時キッカリに送ろうと思って作ったメール。後は、送信ボタンを押すだけ。

…でも、迷惑じゃないかな?海未ちゃん、いつもこの時間は寝てるよね?着信で起こしちゃったりしないかな?

海未ちゃんの誕生日まで、あと1分。

海未ちゃん寝起き悪いから、怒らせちゃったらどうしよう。それに、私なんかが誕生日ぴったりにメール送ったりして、引かれないかな?

私の指先は臆病で、メールの送信ボタンを押せずにいた。

78: 2015/03/15(日) 02:09:21.42 ID:dNjJlIHB.net
そして3月15日。

メールの未送信BOXに、メールが1通増えちゃった。



「えー…今日は私のために、このような会をご準備いただき…」

『かたいよー』なんて穂乃果ちゃんからヤジを飛ばされて、赤面する海未ちゃん。

お誕生日会が始まってからも、ちょっと照れ臭そうにしてる。可愛いなぁ。

「よーし、じゃあ、海未ちゃんにプレゼント渡しターイム!トップバッターは穂乃果ですっ!」

「ありがとうございます、穂乃果」

「えへへー♪気合い入れて選んだよ。開けてみて!」

え。プレゼント、ここで開けちゃう感じ?

79: 2015/03/15(日) 02:10:53.95 ID:dNjJlIHB.net
…ちょっとやばいな。人前で開けられるのは恥ずかしいよ…

みんなのプレゼントは開けてるし、私のだけ開けないで、ってのはなんか不自然だよね…

「え?凛ちゃん、プレゼント家に忘れてきちゃったの?もー、ドジだなぁ」

「穂乃果にドジとは言われたくありませんね。明日でも構いませんよ」

ホントは、カバンの中にあるんだよ。

1ヶ月も前から、悩んで選んだプレゼント。大切な海未ちゃんへの贈り物。



「今日はありがとうございました。本当に楽しかったです」

「うん!また明日、学校でね!」

ことりちゃんが作ってきたケーキを食べたり、ゲームをしたりしてお誕生日会はお開きになった。

80: 2015/03/15(日) 02:12:01.59 ID:dNjJlIHB.net
「楽しかったー。凛ちゃん、帰ろ?」

「それでは。私たちはこっちなので。また明日」

海未ちゃんが背中を向けて、遠ざかっていく。

臆病な私の手が、拳を握る。

渡さなくちゃ。明日じゃ遅い。今日じゃないと駄目なんだ。

…待って!

海未ちゃんの袖を、ぐいと引っ張る。

「ど、どうしたんですか、凛。…話したいこと…?もう遅いですし、明日でも…」

「…まぁまぁ、海未ちゃん、可愛い後輩の話なんだし、聞いてあげて?ことりは絵里ちゃんたちと一緒に帰るから」

「私、晩ご飯作らないと行けないから、先に帰るね!」

…ことりちゃんとかよちんの口が、別れ際に『ファイトだよ』と動いたのは、気のせいではないと思う。

81: 2015/03/15(日) 02:12:47.28 ID:dNjJlIHB.net
「話とはなんですか?」

2人っきりになって、私の胸の鼓動は強く速くなって、頭にガンガン鳴り響く。

まるで自分の心臓じゃないみたい。

「…これ…プレゼント?家に忘れたんじゃあ…」

忘れる訳ないじゃん。1ヶ月も前から、悩んで悩んで、決めたプレゼントだもの。

「ありがとうございます。…開けて良いんですか?…これは…」

海未ちゃんの手には、銀色に光る2つのネックレス。

「わぁ…ペアになってるんですね…可愛いです。付けてみますね」

シルバーのチェーンが、白い海未ちゃんの肌によく似合う。ハートのチャームが胸元で揺れてキラキラしている。

82: 2015/03/15(日) 02:13:34.25 ID:dNjJlIHB.net
「似合いますか?…ふふ、そうですね、凛が選んでくれたんですから、似合わない訳がありません」

「凛も付けてみて下さい」

海未ちゃんの手が、私の首に回される。ちょっとくすぐったくて、照れ臭い。

「凛にもよく似合ってますよ。嬉しいです。大切にしますね」

高鳴る鼓動は鳴り止まない。

あぁ、自分はこの人のことが堪らなく好きなんだ。

「…ねぇ、海未ちゃん」

「はい」

「だーいすき!」

「ふふ、私もですよ、凛」

臆病な私は、もうおしまい。弱気な凛なんて、凛らしくないんだから。

83: 2015/03/15(日) 02:14:07.51 ID:dNjJlIHB.net
「…私の家までですか?でも、遠回りじゃ…。そうですね、今日くらいは、甘えさせてもらいましょうか」

おうちまでエスコートする、気分は王子様。

「…手、ですか?…仕方ないですね…今日だけですよ?」

差し出された海未ちゃんの手は、暖かくて、柔らかくて、優しくて。

私の臆病はすっかり解かされちゃったみたい。

「ねぇねぇ」

「なんですか、凛」

『海未ちゃん、誕生日おめでとう!!』



おわり

54: 2015/03/10(火) 00:48:50.06 ID:vQbnrrWf.net
一応、今まで単発でスレ立てしてきたやつ

海未「風鈴の音」 [転載禁止]©2ch.net・
http://hope.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1425228433/

凛「星空を見に行くにゃー!」 [転載禁止]©2ch.net・
http://hope.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1425281470/

にこ「穂乃果って…」穂乃果「にこちゃんって…」 [転載禁止]©2ch.net・
http://hope.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1425309612/

真姫「星座早見盤と天体望遠鏡」 [転載禁止]©2ch.net・
http://hope.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1425446861/

花陽「少しづつ、速く、強く」 [転載禁止]©2ch.net・
http://hope.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1425481729/

引用元: http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1425529052/

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