【SS】ダイヤ「きっと、この時間はずっと」【ラブライブ!サンシャイン!!】

SS


1: 2020/10/08(木) 22:14:23.35 ID:NVb0IRSq
ダイよしSS

2: 2020/10/08(木) 22:15:00.81 ID:NVb0IRSq
ダイヤ「……」

ペラッ!

ダイヤ「はぁ……」


……私には最近、一つだけ悩みがあります


それは……


ダイヤ「……」


……この、進路希望調調査票、というものについてです

4: 2020/10/08(木) 22:16:09.49 ID:NVb0IRSq
先週配布された最後の進路希望調査票。実際に出願する大学や、就職を希望するならその旨を書いて先生に提出をするように言われました。ですが……


ダイヤ「……」


……私の将来設計は、未だに白紙のまま


もちろん私だって、勉強の方は努力してきたつもりですわ。元から進学することは考えていましたし、基礎科目も選択科目も受験が出来る段階にまで仕上げてはいるつもりです


進学の、受験の覚悟は固まっていた。そう覚悟してここまで歩いてきた、はずなのでしたけれど……


ダイヤ「……」

ペラッ

ダイヤ「……はぁ」


この選択が自分の将来を狭めてしまうこと、成りたい自分を諦めることに繋がってしまうと考えてしまうと、どうしてもペンが止まってしまって……


ダイヤ「……」

ダイヤ「……いざ書き込もうとすると、こんなにも迷ってしまうものなのですね」


ふいに窓から教室に吹いた冷たい風。季節はゆっくり進んでいても、私だけは踏み出せないままでした

6: 2020/10/08(木) 22:17:42.35 ID:NVb0IRSq
ダイヤ「……」

果南「おっ、ダイヤ!どしたのそんな深刻そうな顔しちゃって?」

ダイヤ「果南さん……」


……果南さんの意見でも、聞かないよりはマシなのでしょうか?一応こう見えてちゃんとしている部分もありますし


ダイヤ「その……これのことですわ」ペラッ!

果南「あー、進路希望調査?うそ、ダイヤまだ出してなかったの?」

ダイヤ「はい、実は……」

果南「ふーん、めずらし」

ダイヤ「……果南さんはなんて書いたのですか?」

果南「私?とりあえずダイビングのインストラクターの資格とりたいです、って書いたよ!」

ダイヤ「インストラクター……?」

果南「うん!ダイビングのガイドをやるには必要な資格だよ!あとゆくゆくは潜水士とかの資格も取ることになるのかな?わかんないけど」

ダイヤ「……」

果南「私、ずっとここで生きていくつもりだから。この内浦の海で。少なくとも今は、だけど」

ダイヤ「果南さん……」


やはり果南さんは、そんな先のことまで考えてらしたのですね

7: 2020/10/08(木) 22:19:15.04 ID:NVb0IRSq
果南「……ダイヤは違うの?」

ダイヤ「えっ?私、ですか?」

果南「うん。てっきりダイヤはお家を継ぐことになるんだってずっと思ってたし、だから進路とかも他の人に比べたらほぼ決まってるようなものだって思ってたんだけど……違うの?」

ダイヤ「そうですね……」


……確かに、私自身の将来は約束されている、といっても過言ではありません


黒澤の家に長女として生まれた者の宿命。それは家を益々発展させ、ひいては内浦という地域の存続に結び付けること。そのことは私自身が最もよく理解していることではあります


ですが……いいえ、だからこそ、どうしようもなく夢想してしまうのでしょうね


きっとどこか別の世界線には、運命に縛られない私がいて、彼女はきっと自分だけの選択をしていると。自分の心で、自分の足で、自由に、懸命に。彼女にしかできない人生を歩んでいるのだろうと


そんな妄想が、頭の中でどうしようもなく膨らんでしまうのです。そんな仮定に意味なんてないのですが


ダイヤ「……」

果南「……ダイヤ?」

ダイヤ「あ、すみません。少し考えごとをしていただけですから]

鞠莉「ハーイ、二人で何の話をしていたの?」

8: 2020/10/08(木) 22:19:54.53 ID:NVb0IRSq
ダイヤ「鞠莉さん……」

果南「うわ、出たよ。将来に悩みのないお嬢様が……」

鞠莉「え~、いきなり悪口?ということはもしかして、進路の話?」

ダイヤ「……まあ、そんなところですわね」

鞠莉「ふーん、だったらマリーは関係ないかもね~……」

果南「ほんと、これだから金持ちは……」

鞠莉「違うわ、マリーの場合は少しだけスペシャルだから、話を聞いても参考にならないかもって思っただけよ」

ダイヤ「……ちなみに、鞠莉さんは先日の進路希望調査、なんて書いて出したのですか?」

鞠莉「それはね、もっちろん!!世界のマリーになりますって書いたわよ!!」

ダイヤ「……はぁ?」

9: 2020/10/08(木) 22:20:51.41 ID:NVb0IRSq
鞠莉「マリーはここで終わるような人間じゃありまセーン!いずれは世界を相手にビジネスをして、その名を世界に轟かせる人物なのデース!!」

鞠莉「ほら、せっかく生まれたんだから何かおっきなことやってみたいじゃない?夢はでっかく、態度も大きくよ!!」

ダイヤ「はぁ……で、本当のところは?」

鞠莉「え~?それってもしかしてマリーのこと信用してないの~?」

ダイヤ「いくら鞠莉さんがふざけた人間でも、大切な調査票にふざけた内容は書かないと思いますわ」

鞠莉「……え、今私のことふざけた人間って言った?ひどくない?」

10: 2020/10/08(木) 22:22:27.03 ID:NVb0IRSq
果南「まあ鞠莉なんて根っこの部分からふざけた性格してるんだろうし、将来痛い目に遭うくらいがちょうどいいと思うよ」

ダイヤ「それもそうですわね。鞠莉さんが路頭に迷おうが私たちには関係ありませんし」

鞠莉「ちょっと!!?ひどくない!!?マリーのこと見捨てないでよ~!!かなん~!!ダイヤ~!!」ハグッ!!

ダイヤ「ふふふっ、冗談ですわ」ナデナデ


小さなころからずっと、私たち三人はこうしてふざけ合ってきました


大切なことから目を背けてきた、とも言えるのですが……今はそのことすらも心地良く感じられてしまうのです


鞠莉「んもう、心配するじゃない~!!」ハグッ!

果南「こら鞠莉寄るな、暑苦しい……」


果南さんと鞠莉さんは、今はこのままでもいいと、もう少しだけ子供のままでいてもいいよと言ってくれている気がして……


……窓から差し込む秋の太陽は、ずっと私たちを暖かく照らしてくれていました

11: 2020/10/08(木) 22:23:24.81 ID:NVb0IRSq
ダイヤ「……」


ですが結局放課後になっても踏ん切りがつかなくて、結局今日も調査票は提出できなくて……


ダイヤ「……」

千歌「じゃあ次の新曲のPVについて!!意見のある人、きょしゅ!!!」ビシッ!!

曜「せっかくの新曲だもんね~、なにかインパクトのあるものがいいと思う!」

梨子「そうね、インパクトはあるに越したことはないものね……」

ダイヤ「はぁ……」


……そのまま部活の時間になってしまいました

12: 2020/10/08(木) 22:24:34.69 ID:NVb0IRSq
Aqoursの活動も私にとって大切で、生半可な気持ちでいてはいけません。特に私たちは残された時間の少ない身、一つ一つを噛みしめながら励まなくてはなりません


わかっています。そんな簡単なことくらい百も承知ですわ。ですが……


……今日のところは、いいえ、最近はずっと進路のことだけが頭を悩ませていて……おんなじことがずっと頭の中をグルグルしています


ダイヤ「……」


選択とは将来を縛ること。可能性を切り捨てて、なりたい自分と決別すること


わかっています。現実に生きなくてはいけないことくらい。私はワガママになんてなれなくて、しがらみの中で生き続けなくてはいけないことくらい


でも、ひょっとしたら、もしかしてですが、きっと……


善子「……ふっ、そんなの決まってるじゃない!」ギランッ!!

13: 2020/10/08(木) 22:26:08.85 ID:NVb0IRSq
千歌「はい、善子ちゃん!!」

善子「新しいPV……それは!ぎらんっ!!」

シュバッ!!

善子「それはつまり!!世界を暗黒で染め上げることよ!!どこまでも墜ちていく黒の世界!!その闇を動画で表現すれば、再生数も爆上がり間違いなしよ!!!」

千歌「おぉ~!!なるほど~……」

ダイヤ「……」ジトーッ


……善子さん、またふざけたことを言いだしたのですわね


ふざけた意見が無意味だとは言いません。ですが現在の傾向や流行、さらにはスクールアイドルの歴史に照らして考えれば、あまりにも荒唐無稽な意見であると言わざるを得なくて……


ダイヤ「……はぁ、本当に自由ですわね」

14: 2020/10/08(木) 22:27:07.05 ID:NVb0IRSq
善子「!!」ピクッ!

ルビィ「……え、お姉ちゃん、今何か言った?」

ダイヤ「……」


もしかして私、今の、声に出ていましたか……?


頭の中で漫然と考えていた内容が、無意識のうちに口を突いていたとは……ひょっとして私も、疲れているのでしょうか?


ダイヤ「……いえ、なんでもありませ

善子「なんでもあるわよ!!絶対今ヨハネの悪口言おうとしてたでしょ!!!」

善子「ヨハネのヘル・イヤーをもってすれば、なんでもお見通しなんだからね!!」

曜「減る、いやー……?」

梨子「……多分、地獄耳ってことだと思う」

花丸「ほんっと、めんどくさい言い方するずらね、善子ちゃんは……」ジトーッ

15: 2020/10/08(木) 22:28:01.67 ID:NVb0IRSq
ダイヤ「……いえ、そんなことありませんわよ」

善子「ほんとにぃ?」ジーッ

ダイヤ「本当ですわ。だいたい善子さんの悪口を言う理由がないじゃないですか」

善子「それは……さっきのヨハネの案があまりにも空想的だった、とか」

花丸「最初から否定されることを予測してるなら、言わない方が身のためだと思うずらよ、善子ちゃん……」

善子「うっさいずら丸!!!」

ダイヤ「それに空想的な意見を述べることは別に悪いことではありませんわ。そもそも意見がなくては会議は進みようがありませんし」

善子「ダイヤ……」


……そう。最も忌避すべき状況は、選択に委縮してしまうがあまり意見が出ず、可能性が縮小されてしまう事なのですから


二の足を踏んで臆病になり、逃げて背けて後戻りする……ちょうど私の進路希望調査票のように


ダイヤ「……そんなことより千歌さん、会議を進めなくてよろしいのですか?早く決めてしまわないといけないのでしょう?」

千歌「あ、うん。じゃあ他に意見ある人……?」

………


16: 2020/10/08(木) 22:29:45.55 ID:NVb0IRSq
~生徒会室~

ダイヤ「……」カキカキ


集中できないままに練習も終わり、そのままズルズルと生徒会室へ。やるせなさと不快感をまとった生温かい空気が、私をずっと包んでいました


ダイヤ「……」

ケシケシ

ダイヤ「……」


特に仕事も溜まってはいないのでやるべきことはないのですが……進路希望調査は早く片付けておかねばならない、その義務感は、私だって理解はしておりました


ですが……未来の自分に顔向けできるような選択を、と思うと、いくら考えても正解ではないような気がしてしまって……提出にはまだ至っておりません

17: 2020/10/08(木) 22:31:02.36 ID:NVb0IRSq
ガチャッ!!

善子「失礼しまーす。ダイヤ、仕事残ってるならヨハネがてつだ……」

ダイヤ「……」


ふいに脳裏に浮かび上がったのは、先程の善子さんの突拍子もない意見。もちろんあの場では私が即座に却下しましたが……心の中ではどこか、すがってみたかったのかもしれません


現実に縛られずただひたすらに走ること。きっと誰もが一度は憧れたことでしょう


私はもう諦めてしまったのかもしれません。自由に未来へ走ることを、ただひたすらに可能性を追求することを


ダイヤ「……」

善子「ダイヤ……?」


ほんと、善子さんが羨ましいですわ。蛮勇だと言えば少し見下したような表現にはなるかもしれませんが、あの無鉄砲なまでの妄信が、私にはとっても眩しくて……


善子「ダイヤ、ねえダイヤ?聞いてる?」


善子さんは本当に強い人だと思います。束縛されず周囲に屈せず、寄る辺がなくとも自分で立ち上がるその強さは、私はずっと憧れで


善子「ダイヤ!!ダイヤってば!!!」

ダイヤ「!!!?」


よ、善子さん!!?

18: 2020/10/08(木) 22:32:18.16 ID:NVb0IRSq
ダイヤ「善子さん!!?いつからそこに!!?」

善子「さっきからいたわよ。それよりダイヤ、さっき私の名前出してぶつぶつ呟いてなかった?もしかしてヨハネに何か用事とか?」

ダイヤ「いえ、えっと……」


……やはり私、少し疲れているのでしょうか?


善子「それとダイヤ、今日のダイヤ少し変よ。何かあったとか……」

ズサッ!

善子「……?」

善子「これは……?進路希望調査?」

ダイヤ「なっ!!?」

ペラッ!

ダイヤ「!!!」

パサッ!!

ダイヤ「み、見ましたの!!!?善子さん!!?」

善子「いや、見たって言っても消しゴムの跡しか見えなかったけど」


……そうですわよね。先程書いた内容も全て消してしまったところでしたし

19: 2020/10/08(木) 22:33:23.15 ID:NVb0IRSq
善子「もしかして……ずっと考え事してたって、それのこと?」

ダイヤ「……私、善子さんに考え事してるって言いましたっけ?」

善子「それくらいわかるわよ。明らかに今日のダイヤおかしかったし」

ダイヤ「そうですか……」

善子「ええ」

ダイヤ「……」

善子「……あ、あのねダイヤ!!」

ダイヤ「……?」

善子「わ、私で良ければ!!話くらいなら聞けるわよ!!ほら、同学年だと話しづらいことだってあると思うし!!」

20: 2020/10/08(木) 22:34:46.38 ID:NVb0IRSq
善子「ヨ、ヨハネだってあんたの力になりたいって思ってるんだからね!!困ったときは頼りなさいよね!!」

善子「それに、ダイヤが変なままだとこっちまで調子狂うっていうか、安心してふざけられないっていうか……」

ダイヤ「善子さん……」

善子「……」

ダイヤ「……」

スタッ!!

ダイヤ「……」スタスタ

善子「ダイヤ……?」

ダイヤ「……お茶、用意してきますわ」

善子「ダイヤ……!!」パァァッ!!

善子「うんっ!!ありがと、リトルデーモン!!」


やっぱり善子さんのその無邪気な笑顔は、いつだって私の憧れです

21: 2020/10/08(木) 22:36:19.61 ID:NVb0IRSq
ダイヤ「……」

善子「……あちっ!」

ダイヤ「……」

善子「……」チビチビ

ダイヤ「……私、大学選びでまだ迷っていることがありますの」

善子「みたいね。ヨハネにはまだわかんないけど」

ダイヤ「……ねえ、善子さん」

ダイヤ「善子さんは……どうしてヨハネを続けていられるのですか?」

善子「……え?何よ急に」

22: 2020/10/08(木) 22:37:30.57 ID:NVb0IRSq
ダイヤ「……」

善子「ダイヤ……?」

ダイヤ「……私、時々不安になることがあるんですわ。本当は自分には何もないんじゃないかって」

ダイヤ「私は黒澤家の長女で黒澤家に従って生きている。ただそれだけの人間なんじゃないかって」

善子「……」

ダイヤ「……私が誇ることが出来るのは自分の血筋だけで、自分で勝ち得たものではない。本当の自分に資質なんてものは備わってなくて……能力も器量もない人間なのではないかって」

ダイヤ「それが将来を選ぶ足かせになっているのでしょうね……きっと」

善子「……どういうこと?」

ダイヤ「実は私、ずっと東京の大学へと進学したかったのですわ。社会を相手に自分がどこまで通用するのか、内浦を出て広い世界を見てみたかったのです」

ダイヤ「ですが……いざそうしようと思っても、どうしても足がすくんでしまうのです。自分にその資格があるのか、果たしてそれに意味はあるのかって」

善子「……」

ダイヤ「……はぁ、ほんと、ダメダメですわね、私は」ニコリ

善子「ダイヤ……」

23: 2020/10/08(木) 22:38:53.49 ID:NVb0IRSq
ダイヤ「……」


……きっと、こんな時善子さんならきっとすぐに決断できるのでしょうね


将来を決めるというのは、成りたい自分を選び取ることです。善子さんは常に自分を心の中心に描いている、そういう強さが、私にはまだわかりませんから


善子「……」


きっといつまでもわからないままなのでしょう。だって私たちは全く違いますから。生まれも育ちも性格も、信じるべき大切さも


善子「ねえ、その……ヨハネには受験とか大学とか、よくわかんないんだけど……」

ダイヤ「……?」

善子「……今の話って、そんな悩むほどのものなの?」

ダイヤ「えっ……?」

24: 2020/10/08(木) 22:42:03.72 ID:NVb0IRSq
善子「だってダイヤは東京で腕試ししてみたいんでしょ?だったらやってみればいいんじゃないの?」

ダイヤ「ですが、進路選択は一度しか出来ないので、もし失敗したら

善子「そんなの失敗してから考えればいいじゃない。それに一度の失敗で人生終了してるんだったら、今頃ヨハネは立派な引きニートよ」

善子「中学校だってろくに登校しなくても卒業できたくらいだし、その後ちゃんと高校にも通えるようになったし、案外なんとかなるものなのねってヨハネは思ったわ」

ダイヤ「……それは、中学校が義務教育で絶対に卒業できるからではないのでしょうか?」

善子「そうかもね。けどヨハネのネットの知り合いにはもっと頭のおかしい生き方してる人もいるみたいだし、案外なんとかなるものなんじゃないかしら?そういうのって」

善子「それに……」

ダイヤ「……それに?」

善子「……ダイヤ、私たちのこと見ててくれてるでしょ?いっつも」

ダイヤ「……」


見守っている……?私が、善子さんを?

25: 2020/10/08(木) 22:43:29.02 ID:NVb0IRSq
善子「ダイヤがいつも見守っててくれてるから、ヨハネは安心してヨハネでいられるの。私だっていつか恩返しはしたいって思ってるんだから」

善子「困ったときはお互い様よ。悩みがあるなら頼って欲しいし、ダイヤがなにやりたいかなんて知らないけど、でもヨハネだってダイヤの夢のその先を見てみたいって思ってるし!!それにダイヤなら絶対よくわかんないけどすっごいことやるんじゃないかって!!なんとなくだけど、そう、思ってるから、だから、え、えっと、なんかもうよくわかんなくなっちゃったけど……」

ダイヤ「善子さん……」

善子「だ、だから……あ、安心しなさいリトルデーモン!!貴女にはこの堕天使ヨハネの加護がついているんだから!!安心して無茶しなさいよね!!!//」

ダイヤ「……」

善子「な、何よ……?//」

ダイヤ「……うふふっ、善子さんは優しいなと思いまして」

善子「んにゃっ!!?//」

26: 2020/10/08(木) 22:44:30.87 ID:NVb0IRSq
ダイヤ「善子さんなりに励まして下さっているのですよね、ありがとうございます。ちゃんと伝わっていますわ」

善子「う、うん……//」

ダイヤ「……まあ自分で言ったセリフに自分で照れて、格好がつかないのはどうかと思いますが」

善子「んにゃっ!?//う、うっさい!!これでも結構頑張ったんだからね!!//」

ダイヤ「はいはい、わかっておりますわよ、善子さん」ナデナデ♪

善子「ううう~っ!!せっかくヨハネいいこと言ってあげたのに!!なんか負けた気分!!」プクーッ!!!

27: 2020/10/08(木) 22:45:30.04 ID:NVb0IRSq
善子「はぁ~……」ヘナヘナ

善子「……なんか真面目な話したら疲れちゃったわ、やっぱりヨハネにはあーゆー重っ苦しい空気は似合わないし」

ダイヤ「……」

コポコポ

善子「……っていうかダイヤ、失敗とか挫折とか考える必要あるの?」

ダイヤ「……?」

ピタッ!!

28: 2020/10/08(木) 22:47:58.34 ID:NVb0IRSq
善子「だってダイヤが挫折した姿とか全く想像できないんだけど。あんたほどの完璧優秀人間、挫折とか一生無縁なんじゃないの?」

ダイヤ「……善子さんは私のこと、そんなにすごいと思って下さっているのですか?」

善子「はぁ?当たり前じゃないそんなの。高校生の癖に学校経営の深い部分まで関わってるのとか、今でもバケモノじゃないかって思ってるわ。まあこれは鞠莉に対してもだけど」

ダイヤ「……そうですか、ありがとうございます」


私の真の実力、というものがどれくらい備わっているのかはわかりませんが……少なくとも善子さんは私を信じてくださっている


でしたら私も、私のことを信じてみてもいいのでしょうか……?


ダイヤ「……」


自信というものがどうやれば生まれるかなんてまだわかってはおりませんし、善子さんがどうしてあそこまで自分を貫けるのかなんて、私には一生理解が出来ないのかもしれません


ですがそれを若さゆえの過ちだというのなら……案外失敗というも、悪くないものなのでしょうか?それこそ善子さんがおっしゃるように


だから私も、今は失敗を恐れずに、自分を信じて、仲間を信じて。広くて大きな世界に、一歩踏み出して、この進路希望調査票を……


善子「ダイヤ……?」

ダイヤ「……いえ、なんでもありませんわ」

29: 2020/10/08(木) 22:49:15.36 ID:NVb0IRSq
ダイヤ「それより善子さん、お茶請け、召し上がりますか?」ガサッ!

善子「……いいの?それ、見るからに高いやつだけど」

ダイヤ「構いませんわ、元を正せば理事長の私物ですし。それにこういうのは来客をもてなすために使うものでしょう?」

善子「いや、ヨハネは客ってほどじゃ……」

ダイヤ「いいからいいから♪理事長にさえ黙っておけば大丈夫ですわ♪」

善子「じゃあ……いただきます」

ダイヤ「はい、めしあがれ♪」

パクッ!

善子「!!?」パァァッ!!

善子「なにこれ!!?すっごく甘い!!美味しい!!!」

ダイヤ「うふふ、ヨハネさんのお気に召したのなら良かったですわ♪」

善子「んなっ!!!?」

ダイヤ「……善子さん?」

善子「い、いや……さっきあんた、ヨハネのことヨハネって呼んだでしょ」

30: 2020/10/08(木) 22:50:04.74 ID:NVb0IRSq
ダイヤ「はい、そうですが」

善子「も、もしかして悪魔に身体を乗っ取られたとか……?それともあんた、ほんとはダイヤのドッペルゲンガー、とか……?」

ダイヤ「そんなことないですわ、ただそう呼んでみたくなっただけですわよ、ヨハネさん?」

善子「んにゃっ!!?きゅ、急にその名前で呼ぶなぁ!!調子狂うからっ!!!//」

ダイヤ「うふふ、承知いたしましたわよ、ヨハネさん」

善子「だから善子だってばぁ!!!!……って、あれ?」

ダイヤ「うふふっ、本当に善子さんとお話しするのは楽しいですわね♪」

善子「うっさい!!うっさいうっさい!!//ヨハネで遊ぶなぁ!!!//」

31: 2020/10/08(木) 22:51:29.84 ID:NVb0IRSq
ダイヤ「~♪」


強さの理由、自分の使命。将来の私がどうなっているかなんて、今の私には皆目見当もつきません。もしかしたら善子さんみたいに、変な方向に振り切った人生を歩むことになるかもしれませんし


ですが善子さんは、今の私を受け入れて下さいます。将来の私を信じてくれています。それだけで……こんなにも心が温かくなれるんです


ダイヤ「……」


善子さんのようになれるだなんて思いません。ですがきっと……ずっと、道しるべにはなって下さるはずです。忙しさに明け暮れて忘れかけた大切ななにかを、取りに帰るべき原点として


だって善子さんは、ずっと私を見守ってくれているはずですから。今日だって、ほら


だから……


善子「あ~むっ!」

パクッ!!

善子「ん~♡あま~い……♡ねえねえ!ダイヤも食べてみなさいよ!!これ!!」

32: 2020/10/08(木) 22:52:19.88 ID:NVb0IRSq
ダイヤ「え?」

善子「ほらほら!!すっごく美味しいんだから!!」

ダイヤ「では、一口だけ……」

パクッ!

ダイヤ「ん、確かに美味しいですわね……」

善子「でっしょ!!?さっすが高級菓子折りって言ったところね!!」

ダイヤ「はい、お茶の風味とのバランスが最高ですわ」

善子「ねえダイヤ!!もう一個!!もう一個だけ食べましょうよ!!」

ダイヤ「……善子さん、それ、本来は私たちのものではありませんのよ?」

善子「一個も二個も変わらないわよ!!それにほら、賞味期限も近いって書いてあるし!!在庫処分よ、在庫処分!!」

ダイヤ「もう、本当にしょうがないですわね……」


……ちょうど私も、色々と頭を使っていたので糖分が欲しくなっていた頃合いでしたし


ダイヤ「では……いただきます♪」

パクッ!!

ダイヤ「ん~……♡」


口の中いっぱいに、爽やかな甘さが広がりました

33: 2020/10/08(木) 22:52:52.75 ID:NVb0IRSq
終わりです、お粗末様でした
ここまでお読み下さり、誠にありがとうございました

34: 2020/10/08(木) 23:01:31.59 ID:JCNhWoK0
SIDダイヤさんいいゾ~

35: 2020/10/08(木) 23:26:14.92 ID:6qAcsIed
ダイよしもよいものですわね

37: 2020/10/09(金) 04:38:49.71 ID:WZAO0btp
だいよしさいこう!!

38: 2020/10/09(金) 06:14:25.88 ID:JDAZD9jz
素晴らしい!

40: 2020/10/09(金) 16:35:03.04 ID:c9d84Qat
最高だったけどあま~いで某えいえいおーを思い出してしまった

41: 2020/10/10(土) 15:01:01.40 ID:qOB8Wb5V
良かった乙

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1602162863/

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