【SS】恋「私をかのんさんのベッドで寝させるべきです」【ラブライブ!スーパースター!!】

SS


1: (たこやき) 2022/05/31(火) 22:07:12.60 ID:50BfphHS
恋「というわけで、かのんさんのお宅にお邪魔いたします。予定をお聞──」

かのん「ちょちょちょ、ちょっと待って!」

恋「なんです?」

かのん「え?ごめん、もう1回言ってくれる?」

恋「ですから、私をかのんさんのベッドで寝させるべきだと」

かのん(聞き間違いじゃないぃぃひぃ!)
 
2: (たこやき) 2022/05/31(火) 22:11:13.10 ID:50BfphHS
かのん「──恋ちゃん、どこかに頭ぶつけた?」

恋「いいえ、どこも痛くありません」

かのん「間違ってお酒入りのチョコ食べたとかも?」

恋「ありません。素面です」

かのん(素面の発言でも困るんだけど…)

かのん「それなら…またパソコンでいけないもの見たとか?」

恋「いいえ。不愉快な画面と声で笑われはしましたが」

かのん(釣られてブラクラ踏んでるし…)

かのん「...本当に何も無い?マジ?」

恋「ええ。いたって真面目。大マジです」

かのん「──....なんで?」

恋「忘れたとは言わせません」

恋「かのんさん、作詞とグループ名決めの際わたくしのベッドに無断で寝転がったでしょう?」
 
8: (たこやき) 2022/05/31(火) 22:19:22.45 ID:50BfphHS
~かのんの部屋~


恋「お邪魔します。ここがかのんさんのお部屋...」

かのん「なんにも無いところで、ごめんね?」

恋「お構いなく。早速ベッドで横になってもよろしいでしょうか?」

かのん「え、もう!?」

恋「実は今日があまりにも楽しみで、夕べはほとんど眠れてなくて...」

恋「すこしだけ、休ませてほしいのです」

かのん「良いけど...。あんまり寝心地は期待しないでね?」
 
9: (たこやき) 2022/05/31(火) 22:22:40.47 ID:50BfphHS
──

恋「..すぅ…すぅ…」

かのん「...」

恋「...すぅ…すぅ…」

かのん「...」

かのん(恋ちゃんが私のベッドで寝てる...)

恋「...すぅ…すぅ…」

かのん(あれだけ『寝させるべき!』とか言ってた割に──)

かのん(いざとなったら静か…。いや、寝てるから当たり前なんだけど...)

かのん(何か反応とか感想は無いのかな?)

かのん(『においます』とか言われるよりはいっか)

かのん(ほ、本当に大丈夫、だよね?シーツも天日干ししたし、消臭スプレーだって掛けたし!)

かのん(けど、まあ──)

恋「....すぅ…」

かのん(よく眠れてるみたいで良かった)
 
10: (たこやき) 2022/05/31(火) 22:25:34.71 ID:50BfphHS
かのん(.......)


『今日があまりにも楽しみで、夕べはほとんど眠れてなくて...』


かのん(ふふっ、遠足前の小学生じゃないんだから)

かのん(背が高くて、綺麗で長い黒髪で、スタイルも良い)

かのん(見た目は私よりずっと大人っぽいのに──)

かのん(中身は案外子供っぽいのかな?)


恋「んっ...チビ...」

かのん(寝言まで言っちゃって。もう夢を見てるみたい)

恋「こら...。かのんさんをぺろぺろするのはメッ...」

かのん(夢の中で私、チビに舐められてる!?)
 
11: (たこやき) 2022/05/31(火) 22:28:25.75 ID:50BfphHS
かのん(そういえば、恋ちゃん家に行くたびに、襲われてるような…)

かのん(何故かやたら気に入られちゃってるよね...)

かのん(いや、犬って嗅覚が良いから──や、やっぱり私、におってる!?)

かのん「……」スンスン

かのん(うう。自分じゃ分からないけど、もっと良い柔軟剤とか使った方が──)

恋「かのんさんは良いかおりがしますから...気持ちは分かりますが...」

かのん「えっ!?///」
 
12:!:ken3(たこやき) 2022/05/31(火) 22:32:03.50 ID:50BfphHS
かのん(恋ちゃんに私、そんなふうに思われてたの!?)

かのん(良いかおり、って……。ううっ 、くさくはないみたいだけど恥ずかしい…///)

かのん(もう今度から一緒にストレッチできなくなっちゃうよ…)


恋「すぅ……すぅ...」


かのん(気持ちよさそうに寝ちゃって…。こっちの気も知らないで…!)

かのん(っていうか、恋ちゃんが私のにおいを嗅ぐなら、私も恋ちゃんのにおいを嗅いでいいんじゃない!?)

かのん(そうだよ!こないだの恋ちゃんの理屈で言えば、自分がされたことはやり返さないと不公平だよ!)


恋「……すぅ…」

かのん「れ、恋ちゃんが、いけないんだからね…」
 
13: (たこやき) 2022/05/31(火) 22:34:32.02 ID:50BfphHS
スンスン


かのん(あっ、いい匂い。いちごの香りがする)

かのん(確かいちごが好きなんだっけ。かわいいなぁ)

かのん(サヤさんが柔軟剤を恋ちゃんの好みに合わせたのかな?私もこのにおい気に入ったかも!)

かのん(えへへ、もう少しだけ堪能しよ!)スンスン

恋「...」

かのん(あっ...恋ちゃんのにおい、好き)スンスン

恋「...」

かのん(...!?)

かのん(──って、私なにやってるの!///)

かのん(友達が寝てる間にこんなに近づいて、においを嗅ぐなんて、いくら何でも変態じゃん!)

かのん(うう、ごめん!恋ちゃん...)


かのん(──にしても)

恋「...すぅ」

かのん(こんなに近くで恋ちゃんの顔を見たの、初めてかも)
 
14: (たこやき) 2022/05/31(火) 22:36:31.35 ID:50BfphHS
かのん(スクールアイドル禁止!ってピリピリしてた頃は、いつも不機嫌そうで、ずっと眉間にしわ寄せてたのに)

かのん(同じ人と思えないくらい、おだやかでかわいい寝顔)

かのん(結構まつ毛長いんだね。ほっぺもほんのり赤みが透けるくくらい色白で綺麗だし)

かのん(ふふ、これが本当の紅ほっぺって言うのかな?)


恋「ん……んん」ゴロン


かのん(!?……寝返りかあ。びっくりしたあ)

かのん(──っていうか、あんまり人の寝顔をジロジロ見るのって良くないよね!)

かのん(しばらく起きなそうだし、このまま寝かせてあげようかな)

かのん(──そうだ!今のうちにお母さんに今日の晩御飯はハンバーグとコンソメスープ、ってお願いしてこよう!)

かのん(ついでに食後のティータイムは、ダージリンティーといちごジャムのスコーンで決まり!うん、完璧なおもてなし!)

かのん(よし、それじゃ早速───)


恋「ま、待って....」

かのん(!?)
 
15: (たこやき) 2022/05/31(火) 22:38:21.07 ID:50BfphHS
恋「行かないで...」

かのん(寝言...?)


恋「お母さま...」


かのん(!)

かのん(お母さんの夢を、見てる...?)
 
16: (たこやき) 2022/05/31(火) 22:41:11.35 ID:50BfphHS
恋「...」ツーッ

かのん(泣いてる...)

かのん(──そうだよね)

かのん(いつも笑ったり、怒ったり、一緒に楽しく過ごしてたから忘れてたけど──)

かのん(恋ちゃんのお母さん、もういないんだよね)

かのん(寂しくないわけ、ないよね...)

かのん(...)

かのん(──私じゃお母さんの代わりにはならないけど)


ギュッ


かのん(手を握ってあげたら、安心するかな?)

恋「...ふふっ」

かのん(あっ、笑った)

かのん(うん。やっぱり恋ちゃんに涙は似合わない、だよ)

恋「...すぅ...すぅ...」

かのん(いい夢、見てくれてるのかな?)

かのん(しばらく、こうしていてあげよう──)
 
18: (たこやき) 2022/05/31(火) 22:44:08.55 ID:50BfphHS
~~~~~~~~

かのん『...ん、ここは...?』

かのん『どこかのお屋敷?でも、見覚えもあるような...』

かのん『あれ?私、お母さんに晩御飯を頼もうとしてたはずで...その後どうしたっけ?』


『お母様!』

『あらあら恋、どうしたの?』


かのん『!?』

かのん『あれって、恋ちゃんとお母さん──確か花さんって言ったっけ?どうして──?』

かのん『もしかして、ここは恋ちゃんの──!』
 
21: (たこやき) 2022/05/31(火) 22:46:23.04 ID:50BfphHS
恋『今日はね、とても嬉しい報告があるのです』

花『何かしら?』

恋『わたくし、初めて友人の家に外泊のお呼ばれをしたのです!』

花『まあ!その子はどんな子なの?』

恋『人の家のベッドに勝手に寝転がる、困った人です!』

恋『あらあら、結構やんちゃなのかしら』

かのん(えぇ...。そんなに根に持たれてたの...)

恋『けれど、とっても素敵な人』

かのん(!)
 
22: (たこやき) 2022/05/31(火) 22:52:51.64 ID:50BfphHS
恋『以前まで彼女とは、衝突が絶えなくて、その原因は私にあって──』

恋『何度も冷たくあしらったり、一方的に拒絶したり、あの人が友人と叶えたい夢を妨害したりもしました』

恋『それにも関わらず、あの人は屈することなく、わたくしに何度も食らいついてきました。何度も話をしようと、理解をしようとアプローチを繰り返してきて、家まで押しかけてきて...』

恋『私は本当に愚かで、自業自得で、結女の皆さんを巻き込むほどの大変な過ちをおかしてしまったのに...。こんな私と、一緒にスクールアイドルをしたいと言ってくれました』

恋「大抵の人は諦めるし、救いようが無いと放っておくはずです。自分を邪険にした相手を、なぜ助けなければいけないのかと』

恋『あの人はきっと、呆れるくらいのお人好しなんです」

かのん(──...)

恋「でも、そこが彼女の素敵なところ」
 
23: (たこやき) 2022/05/31(火) 22:56:51.20 ID:50BfphHS
恋『その人と居ると、とても落ち着くのです』

恋『おうちが喫茶店だからでしょうか。あの人から香るかすかな紅茶やコーヒーの香りが、幼い頃に家族皆で過ごしたお茶の時間を思い出させるのです』

恋『きっとチビがあの人を気に入ってるのも、そのせいなんでしょうね』

かのん(.......そういう、ことだったんだ)

恋『そしてわたくしも、そんなあの人のことが...好き』

かのん(...!)
 
24: (たこやき) 2022/05/31(火) 22:59:57.44 ID:50BfphHS
──あの人のにおいは、あの頃の家に似た懐かしさがあって、少しだけ切なさも混ざったような複雑な香り。


けれど、何故だか胸の奥がぽかぽかしてきて、その温かさに浸っていたくなる。


ああ、もっとこの人と一緒の時間を過ごしたいな、って。


わたくしが泣いてしまった時に、涙を拭ってくれた優しい人。


もしあの人が泣いた時には、今度は私が拭ってあげたい。


そんなふうに思える人なんです。
 
25: (たこやき) 2022/05/31(火) 23:01:59.61 ID:50BfphHS
かのん(......)

かのん(恋ちゃん...。私のことを...)

かのん(......)

かのん(そっか...。そう...なんだ...)



花『ふふっ。いつの間にか恋も、そういう年頃になったのね』

恋『ハッ!わたくし、なんだか変なことまで話してしまったような!///』

花『あなたのそれは「変」ではなく「恋」かもしれないわね』

恋『「へん」ではなく「わたくし」とは?』

花『ううん、なんでもない』
 
26: (たこやき) 2022/05/31(火) 23:03:13.47 ID:50BfphHS
花『その子には随分お世話になったみたい。お母さんからも、お礼とお詫びを伝えないといけないわね』

花『恋、あなたから伝えてもらえる?』

恋『今度わたくしの家に招待します!その時にお母さまが──』

花『いいえ。恋が直接伝えて』

恋『なぜ?』

花『お母さんはもう、この世にはいないのよ』

恋『...!』
 
27: (たこやき) 2022/05/31(火) 23:05:22.16 ID:50BfphHS
花『この時間も空間も、全て夢なの。きっと神様がくれた奇跡』

恋『そんな...待って!行かないで、お母さま!』

花『ごめんなさい。あなたを遺してしまって』

花『けど、恋は1人じゃない。サヤさんが居て、チビがいて、結女の皆がいる。遠く離れているけど、お父さんだって』

花『それに──』



花『いつもあなたに寄り添ってくれる、素敵な人に出会えたんでしょう?』



恋『...お母...さま...』

恋『...』グスッ

恋『はい。誰よりも素敵な人です!』
 
28: (たこやき) 2022/05/31(火) 23:06:30.22 ID:50BfphHS
花『あら。もしかしてその子、そこにいるんじゃないかしら?』

かのん『!!』

恋『かのんさん!?いつからそこに!?』

かのん『え、えーと...。さっきから?』

恋『じゃあ、今までの話も...!』

かのん『あー...うん。全部聞いちゃった』

恋『~~~~~~!!//////』

恋『き、聞きましたかお母さま!この人、盗み聞きを──っ』


シーン


恋『──あれ?いない...。お母さまは...?』

恋『お母さまっ!お母さまっ────』

─────
───

 
29: (たこやき) 2022/05/31(火) 23:09:29.58 ID:50BfphHS
~~~~~~~~


恋「──お母さまっ!」

かのん「う゛わ゛あああっ!!」ドンガラガッシャーン!!

恋「あ、あれ?かのんさん、どうしたのです?」

かのん「い、いきなり飛び起きるからびっくりしたよ...」

恋「そうでした...。私はかのんさんのベッドで寝て...」

かのん「ど、どうだった?寝心地は?」

恋「おかげさまでいい夢を見られました。かのんさんも寝ていたようですが?」

かのん「うん。恋ちゃんの手、握ってたらいつの間にか」

恋「えっ?///」

かのん「なんだか寂しそうだったから、握ってあげたくなって」

恋「そう...ですか。実は夢に母が出てきて...」

恋「それで...おかしな話に聞こえるかもしれませんが、あなたに感謝とお詫びを伝えたいと言っておりました」

かのん「...」
 
30: (たこやき) 2022/05/31(火) 23:13:20.06 ID:50BfphHS
かのん「ふふっ、そっか。不思議だね、向こうは私を知らないのに」

恋「私が夢の中で母にあなたの話をしたので...というか、かのんさん!あなたも夢の中で一緒に──っ」

かのん「?」

恋「──いえ、なんでもありません」


恋(同じ夢を見ていたなんて偶然、あるわけないですものね)

恋(私の勘違い...。それならば、かのんさんへの気持ちも、聞かれずに済んだということ)

恋(あんなに恥ずかしいこと、本人には言えません...!)
 
32: (たこやき) 2022/05/31(火) 23:14:37.94 ID:50BfphHS
かのん「──あーっ!私、今日の晩御飯をお母さんに伝えなきゃ、だったんだ!」

かのん「恋ちゃん、コンソメスープ好きだったよね!頼んでくるよ!」

恋「ええ!?そんな、お気遣いなく」

かのん「良いって良いって!今日は恋ちゃんをたっぷりもてなしてあげるんだ!ちょっと待ってて!」ピュー!


?バタン


恋「行ってしまいました...」

恋「...」

恋「ふふ、不思議ですね。かのんさんのベッドは」

恋「もう一度眠ったら、またお母さまに会えるでしょうか?」

恋「...いえ。いつまでも甘い夢に浸っていてはいけません」

恋「今日は夢よりも楽しい、かのんさんとの時間なのですから」
 
33: (たこやき) 2022/05/31(火) 23:17:04.85 ID:50BfphHS
?ガチャ


恋「──おや?かのんさん早いですね」

かのん「はぁ、はぁ。ちょ、ちょっと忘れ物しちゃって!」

恋「意外とおっちょこちょいなんですね。言ってくだされば、取りますよ」

かのん「ううん、違うの...!」

恋「違う、とは?」

かのん「恋ちゃん、あのね───!」










「私も、恋ちゃんのことが、好き!」










「これからもずっと───ずっと、よろしくね!」









おわり
 

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1654002432/

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