【SS】花丸「スタンドパワーずら!」【ラブライブ!サンシャイン!!】

SS


1: 2020/04/05(日) 21:58:51.76 ID:MlCLkmCK
二人の囚人が鉄格子から外を眺めた。
一人は泥を見た。一人は星を見た。

~フレデリック・ラングブリッジ 「不滅の詩」より~



雑誌で見た憧れの彼女は一際輝いていた。
可憐で、かわいらしくて、黄金のようにきらきらと。
瞬く星空を見上げ、今日も思いに耽る。
星の光を見ていたい。
いつの日か憧れを越えて、夢のこれからを黄金を越えて輝かせたい。

2: 2020/04/05(日) 22:00:07.29 ID:MlCLkmCK
善子「クックック……」

花丸「こんな真昼間から今日は何の儀式ずら。屋上で勝手に落書きしたら怒られちゃうのに」

善子「守護霊召喚の儀式よ。天候と秘石の矢が指し示す方角で取り憑く守護霊を占うの」

花丸「一年だけで自主練って聞いたからせっかく集まったのに……ルビィちゃんも急用で休みだし……」

善子「さあずら丸、この円陣の中に立ちなさい!」バッ

花丸「マルを軸に善子ちゃんがチョークで描いてるから既に円陣の中ずら。後で自分で消しておいてね」

善子「ヨハネ! 円陣の『中心』に立ちなさい。今立っているのは中心の少し外よ。特異点に悪魔的意志と意思を集約させる事で」ブツブツ

花丸「(せっかくいい天気なのにな~……)」

4: 2020/04/05(日) 22:05:16.32 ID:MlCLkmCK
善子「そしてこれを手の平に置きなさい」スッ

花丸「これは……?」

善子「さっきも申し上げたでしょう。これは秘石の矢。矢をルーレットの様に回転させた後に指し示す方角と天候で貴方の守護霊を降臨させるのです!」

花丸「完全に入り込んでる……(矢にしては棒の部分が短いような……?)」

善子「今日の天気は雲一つない快晴。クックック……どうやら貴方の守護霊は大した強さではないみたいです」

花丸「どういう理屈ずら」

6: 2020/04/05(日) 22:09:04.45 ID:MlCLkmCK
善子「深淵より舞い降りる悪魔的守護霊は何よりも闇を好むのです。こんなにも快晴では守護霊の力は大幅に弱体化……まあ、方角次第ではあらゆる事象が反転滅絶する事も否定は」

花丸「悪魔なのか守護霊なのかハッキリするずら……それにオラは別に悪魔」

善子「静かにっ! これ以上機嫌を損ねるつもりですか」

花丸「誰の、どんな機嫌ずら(早くお昼食べたいなあ)」

善子「来てる……来てますっ……!」

花丸「……」

ビュウウウウウウ

花丸「……!!」

7: 2020/04/05(日) 22:11:45.07 ID:MlCLkmCK
善子「円陣と五芒星により導かれしエナジーが集約されています。さあ、矢を廻すのです」

花丸「いや、これただの強風……!」

ビュウウウウウウ

善子「今です!!! 廻して!!!」

花丸「(よくわからないけど、早くお昼ご飯食べたいから終わらせなくっちゃ)」バッ

クルクルクルクル

ビュオオオオオオオオッ!!!!!

クルクルクルクル

花丸「……っ!!!!!!」

ピクアァア

花丸「!?(矢が勝手に……マルの方を向いて……!?)」

8: 2020/04/05(日) 22:16:48.27 ID:MlCLkmCK
善子「方角は…………えーと、これは……『北北東』……!!!」

花丸「(勝手に止まっ……)」

ブスゥッ

花丸「痛っ!」

ボタタッ

善子「!!?」ビクゥッ

花丸「ッ……(矢が指に……! 血が……!)」

善子「ど、どうしたの……?」

花丸「矢が指に刺さって血が……」

善子「刺さったの!?」

9: 2020/04/05(日) 22:17:43.66 ID:MlCLkmCK
花丸「う、うん…………あれ」

善子「見せてっ!」グッ

花丸「血が……」

善子「どこっ!?」

花丸「……出てないずら」

善子「はあっ!?」

花丸「い、今確かに刺さって血が出たずら! 血が地面にボタボタって」

善子「どこ?」

花丸「ほら、足元に! ……ないずら」

善子「何よもう~! びっくりしたじゃない」

10: 2020/04/05(日) 22:20:06.14 ID:MlCLkmCK
花丸「ごめんなさい……ってなんでマルが謝らないといけないの」

善子「知らないわよ……」

花丸「血は出てなかったけど、刺さったのは確かだよ」

善子「傷が無いのに?」

花丸「こんなものどこで……」

善子「学校に来る時に拾ったの。狩野川に浮いているのを見つけて珍しい形だから儀式に使えるなと思って」

花丸「とにかくこれは危険ずら。マルのような被害者を出さない為にもどこかに埋めておかないと」

11: 2020/04/05(日) 22:20:56.18 ID:MlCLkmCK
善子「ふっ……承知したわ。じゃあお昼ご飯の後は封印の儀式を!」バッ

花丸「練習ずら!!!」

善子「うぅ……」

花丸「ちなみに『快晴で北北東』だとどういう結果だったの?」

善子「え? ああ、今日のずら丸にとっては吉の方角よ……快晴は快晴でも雲一つない天気だから『特大吉』ね」

花丸「なんと!」

善子「ま、悪魔的観点から見れば弱体化も甚だしいけどね。理想は漆黒の嵐が吹き荒ぶ中で十字の星が天を穿つ時に」ブツブツ

花丸「(血が出たように見えたのはマルの見間違いだったのかな……)」

12: 2020/04/05(日) 22:24:00.01 ID:MlCLkmCK
その日の夕方

善子「栄光の矢……この出逢いに感謝。しかし闇にその才を見出されたとしてもずら丸を傷付けてしまった以上別れは必然。これもまた運命……」

花丸「……」

バッ!

善子「堕天シール(封印)・完了!」

花丸「ただ校庭の隅に埋めただけずら」

善子「何よ! 情緒がないわね」

花丸「善子ちゃんは情緒不安定ずら」

善子「ヨハネ! てかそれは言い過ぎじゃあ……」

花丸「さ、帰ろっか」

善子「ちょっ! 待ってよ~!」

13: 2020/04/05(日) 22:26:23.32 ID:MlCLkmCK


自宅

練習の疲労が全身を生温く襲う。
今日は結局のところあまり練習ができたとは言えなかった。ついつい善子ちゃんノリにのせられて付き合ってしまう。
ルビィちゃんが来てくれていればもっと集中して臨めたのかもしれない……と弱気な言い訳が頭をよぎる。
腕を伸ばし両手を広げた。

花丸「(昼間の血はやっぱり見間違いだったのかな……)」

幼馴染みのあまりよくわからない儀式に付き合った結果ケガをした。
正確にはケガは無いけど矢が刺さって一瞬血が出た。
しかし気がつくと流れ出ていた血は消え失せていた。既に痛みも感じなかった。

14: 2020/04/05(日) 22:29:04.02 ID:MlCLkmCK
花丸「(少しだけ読もうかな)」

スクールアイドル活動を始めてからも趣味の読書は継続している。
今日はどの世界に行こう。
自分の身長よりもずっと背の高い本棚を眺めて想いを馳せる。
お気に入りの本はすぐに手の届く段に並べている。たまには上の段の本でも読んでみよう。
そう思い手を伸ばす……届かない。
文庫本の背中に指先こそ掠めるが掴み取るまでには僅かに至らない。

花丸「ん~マルの身長じゃあ少し届かない……あともう少し……!」ググッ

ドキュウウゥーン

不意に本が掴めた。危うげなく背中をしっかりと掴んで。
身長が伸びた? いやいやそれはあり得ない。でも踏み台も無しに取れそうになかった本がいきなりどうして……

15: 2020/04/05(日) 22:30:38.59 ID:MlCLkmCK
そんな些細な疑問は読書の世界に入るとすぐに雲散霧消した。
現実ではあり得ない出来事も文字の上では関係ない。


気づけば0時を過ぎていた。
早く寝ないといけない。お茶を飲んで寝よう。

花丸「……あれ」

勉強机に湯呑みが置かれていた。
没頭し過ぎて気づかなかった? ノックの音にも?
いや、それでも声くらいはかけてくれるはずだ。

花丸「いつの間に……」

今日はどうも調子が悪かったらしい。
見間違いや思い違いが多い。
善子ちゃんの儀式の影響? そんなはずはない。

16: 2020/04/05(日) 22:31:29.12 ID:MlCLkmCK
数日後

花丸「またこんなに本が……」

ここ数日、身の回りで不思議な事が立て続けに起きている。
自分の物じゃない本が部屋に出現するようになった。
文庫本、辞典、文学雑誌……家族に訊いても心当たりは無かった。
不可解な現象には法則があった。
それは『マルが家にいる時だけ』起きる現象。
勉強している時、ご飯を食べている時、本を読んでいる時、ふと気がつくと本の山が積まれている。
偶然かはわからないが読んだことのない本だらけだった。

……そしてまだ誰にも話していない秘密ができた。
どこからか本を部屋に運び込む『悪霊』が見えるようになった。

17: 2020/04/05(日) 22:33:51.50 ID:MlCLkmCK
花丸「ヨハネちゃん!」

善子「善子! ……あれ?」

花丸「今、今マルの悪霊を見てもらうことはできるっ!?」

善子「クッ! 姑息なずら丸め! 私を引っ掛けようなどと……って悪霊?」

花丸「悪霊ずら! この前練習の合間にやった儀式の」

善子「あー……この前のは守護霊の」

花丸「そう! 『特大吉』って言ってくれたあの! ……マルの部屋に本を」

善子「ふっ……降臨は成功したようですね……!」

花丸「どんな姿ずらっ!?」

善子「す、姿っ!?」

花丸「マルには両腕の姿だけ見えて……」

善子「えーと……今は水晶玉が無いから……」

花丸「ここに用意してあるずらっ!」バッ

18: 2020/04/05(日) 22:35:08.38 ID:MlCLkmCK
善子「なっ! ……なるほど、わかりました。貴方もいよいよ堕天する決心がついたのですね。わかりました。まずはリトルデーモンの性質と種類から」

花丸「それよりも早くマルの守護霊を見て欲しいの!」

善子「ぐっ……今は守護霊を御姿を見通すには魔力が不足して……」

花丸「……つまり、善 子 ち ゃ ん に は 見 る こ と が で き な い ?」ジーッ

善子「うるさいわねっ! それに今のトレンドは『黒舞踏烏羽根の灯』っていう占いよ! それなら今やってあげてもいいけど」

花丸「ノーセンキューずら、善子ちゃん」

善子「ヨ・ハ・ネ~!」

19: 2020/04/05(日) 22:36:24.93 ID:MlCLkmCK


自宅

きっかけとして明らかなのはあの儀式……じゃなく、『矢が刺さって』から不思議なことが起きるようになってしまったこと。
そして善子ちゃんにはこの悪霊が見えていない。
悪霊が持ってくる本は日を追うごとに減っていった。
その代わりに悪霊の姿が徐々にハッキリと視認できるようになってしまった。
お昼休みに善子ちゃんに相談した時は腕だけだったのに、今では上半身まで姿を露わにしている。

花丸「……っ!!!」

この悪霊は何も言葉を発しない。
半透明な幻の姿ではあるものの、確かにそこにいる。
オラにしか見えない悪霊。いや守護霊……?
何かしてくる訳でもない。ただ横に佇んでいる。
マルの守護霊が筋骨隆々の男の人……?

20: 2020/04/05(日) 22:38:28.42 ID:MlCLkmCK
強く念じると思い通りの動きをしてくれる。
自分の代わりに物を取ってくれたり、すごく上手な絵を描いてくれたり……。
今までどこからか勝手に本を持って来ていたのはうまくコントロールできていなかったからなのかもしれない。
そしてこの守護霊の特にすごいと思う点はとても素早くて力が強い。

花丸「っ!」

シュババババ!

目で追い切れないほど早くて重い拳。
もし本気で殴ったらどうなるのかな……。
好奇心が足を動かした。

21: 2020/04/05(日) 22:40:09.69 ID:MlCLkmCK
花丸「この鐘なら……!」

とっても罰当たりだけど、殴っても壊れなさそうな物で思いついたのが境内にある鐘だった。
大きな木で打っても傷付かないこれなら……!
深呼吸し、狙いを定める。やるなら全力で。
念を込めて守護霊を出現させ拳を構える。
ここでふと気づく。
本気で何かを殴った事はこれまで一度もない。
殴るとしたらどんな風に? 暴力的に?
どんな気持ちを込めて? どんな掛け声で? マルがイメージする暴力……???
思考が定まらないまま雑念を振り払うように拳を思いきり振り切った。

花丸「オラァッ!」

ゴオオオォォーーーーン!!!!!!

花丸「~~~ッッッ!!!(鐘が……!)」

あまりの音の大きさと鐘の惨状を目の当たりにしてオラは両手で耳を覆い隠しながら後悔した。
家族に見られないうちに部屋へと急いで逃げた。

22: 2020/04/05(日) 22:43:06.03 ID:MlCLkmCK
さらに数日後

ルビィ「新しいライブ衣装できたから部室に運んでおくね」

ダイヤ「私も手伝います」

花丸「オラと善子ちゃんも手伝うから任せるずら!」

善子「しょうがないわね」

花丸「こういうのは率先して後輩が引き受けるもんずら。ね、善子ちゃん?」

善子「ヨハネ! てか、なんで私だけ名指しなのよっ!」

曜「お、さすが元気一杯一年生!」

千歌「私たちも負けてられないよ~!」

23: 2020/04/05(日) 22:45:44.94 ID:MlCLkmCK
ルビィ「それじゃあ行こっか」

曜「あ、階段気を付けてね。箱大きくて足元見づらいと思うから」

ルビィ「うん、わかった」

善子「思ったより軽いわね」

花丸「ルビィちゃんと曜ちゃんの努力の賜物ずら」

ルビィ「エヘヘ、今回のコンセプトは」

ズルッ

ルビィ「あっ」

ダイヤ千歌曜善子「「「「!!??」」」」

曜「ルビィちゃん危ない!」

ダイヤ「っ……!!!(ここからじゃあ届かない……!)」バッ

24: 2020/04/05(日) 22:48:08.52 ID:MlCLkmCK
ルビィ「おね……」

ドキュウウゥーン!!!!!

「オラァッ!」

ガッシイィッ シュバババババッ

ダイヤ「!?」

千歌曜「ルビィちゃん!!」

花丸「ルビィちゃん、大丈夫?」

ルビィ「う、うん。花丸ちゃんが助けてくれだんだ、ありがとう」

花丸「どういたしまして」

善子「お、おお姫様抱っこ……あの一瞬で……!」

ダイヤ「い、今のは……!」

25: 2020/04/05(日) 22:51:14.18 ID:MlCLkmCK
曜「いや~びっくしたー……」

千歌「ルビィちゃんが無事でホッとしたよ~……」

ルビィ「心配かけてごめんね……あ、衣装は……!」

曜「大丈夫! ここにあるよ」

千歌「それにしても花丸ちゃん、ファインプレーだよ! ホントは運動神経いいんじゃ……?」

花丸「ううん! たまたまルビィちゃんの横にいたから……」

善子「ずら丸の深淵深きに潜む潜在能力を解き放ったまで……」

26: 2020/04/05(日) 22:52:08.70 ID:MlCLkmCK
花丸「!?」

善子「さすがは我がリトルデーモン!」

花丸「ほっ……」

ダイヤ「ルビィ、怪我はありませんか」

ルビィ「大丈夫みたい」

ダイヤ「そうですか……花丸さん、ありがとうございました」

花丸「ルビィちゃんが無事でなによりずら」

ダイヤ「…………」

27: 2020/04/05(日) 22:54:49.89 ID:MlCLkmCK


私は見た。
事の一部始終を階段の上から。
ルビィが足を滑らせた瞬間、突然何もないところから腕が飛び出てルビィを抱え花丸さんへ優しく手渡した。そしてダンボールから舞い上がった衣装を一瞬でかき集めて収納した上で踊り場に置いた。

私以外誰もその事に気が付かなかった。目にも留まらぬ早技だから?
いえ、気付かなくて当然!
まさか私以外に『能力』を持つ人がいるだなんて……!!!

28: 2020/04/05(日) 22:56:37.20 ID:MlCLkmCK
部室

千歌「さてっと、じゃあ今から衣装に着替えてサイズの微調整とダンスのフォーメーションを確認しよっか」

ダイヤ「あの、ちょっといいですか」

果南「どうしたの、ダイヤ?」

ダイヤ「花丸さんに折り入ってお話しがあります。ここではなんですので少し席を外そうかと」

花丸「ずら?」

鞠莉「Oh~♪ 花丸と二人きりでナイショのお話?」

ダイヤ「ええ、まあ」

千歌曜梨子「!!?」ガタッ

善子「なっ……ダイヤがすんなり肯定するだなんて……! これは堕天使ヨハネへの叛逆の密約をずら丸と交わすつもりね!」

ダイヤ「では先に始めておいてください。花丸さん、お願いします」

花丸「あ、はい」

ダイヤ「……」

29: 2020/04/05(日) 22:57:28.19 ID:MlCLkmCK
屋上

ダイヤ「いきなり連れ出してすいません」

花丸「あの、話っていうのは」

ダイヤ「まさか花丸さんが……」

花丸「?」

ダイヤ「『スタンド能力』を持っていただなんて……!」

花丸「!?」

ダイヤ「その反応、間違いありませんね。さっき見えてしまったのです。ルビィを助けてくれたスタンドの腕が」

花丸「み、見えるずらっ!? ダイヤさんに!」

30: 2020/04/05(日) 22:59:14.13 ID:MlCLkmCK
ダイヤ「はい、見えます。とても素早い動きでしたが」

花丸「この力に『すたんど』っていう名前があるずらか……!!!」

ダイヤ「そう、『スタンド』です。精神エネルギーが具現化したものですわ」

花丸「精神エネルギー……?」

ダイヤ「そうですわ。大雑把に言ってみれば守護霊みたいなものです」

花丸「守護霊、ですか」

ダイヤ「ええ。既にお気づきかと思いますが、普通の人には見えません」

花丸「じゃあ善子ちゃんには」

ダイヤ「見 え ま せ ん」

花丸「デスヨネー」

31: 2020/04/05(日) 23:03:41.77 ID:MlCLkmCK
ダイヤ「一応は善子さんも普通の人だという事です」

花丸「どう考えても普通じゃないずら。ところでどうして『スタンド』……?」

ダイヤ「“傍に立つ(stand by me)”という意味を込めて勝手ながら名前をつけました。スタンド側は人や物に触れられるけど逆はありません」

花丸「ふんふむ」

ダイヤ「花丸さんのスタンドは一体どんな能力を?」

花丸「の、能力!?」

ダイヤ「私と花丸さんが人間として違うようにスタンドも違う能力があるはずですわ! ……もっとも、花丸さん以外のスタンドを見たことはありませんけど」

花丸「オ、オラのスタンドは」

ダイヤ「はいっ」ウキウキ

32: 2020/04/05(日) 23:08:46.31 ID:MlCLkmCK
ドキュウウゥーン!!!!!

花丸「素早く豪快なパワーと精密性の高い正確な動きができるずら! 大まかにわかったのはつい最近だけど……」

ダイヤ「これが花丸さんのスタンド!(なんて力強くてたくましい……! それにここまではっきりとした姿を……!)」

花丸「例えば写真みたいにものすごく精巧に絵を描いたり、一瞬で物を拾ったり、硬いものを拳でボコボコにしたり……」

ダイヤ「なるほど、最後は少し物騒ですわね……」

花丸「こんな感じで! オラオラオラオラオラ!!!!!」

シュバババババババババ

ダイヤ「!!?(は、速すぎて残像が……!?)」

花丸「頼もしい守護霊……じゃなくてスタンドずら! ダイヤさんのスタンドは?」

ダイヤ「私のスタンドですか……」

33: 2020/04/05(日) 23:09:54.27 ID:MlCLkmCK
花丸「はい」

ダイヤ「……」

ドヒュウウゥン!!!!!

ダイヤ「これが私のスタンドです」

花丸「マルのとは姿が全然違うずら……!」

ダイヤ「……まずは私の能力の説明の前に。先程ルビィを助けてくれて本当にありがとうございました。重ねてお礼申し上げます」

花丸「そ、そんな。無我夢中だったので」

ダイヤ「私の能力は『修復する力』! 私が意志を込めてこのスタンドの拳を当てると壊れた人や物を元の状態に直す(治す)事ができます! ただし、自分自身は治せません。例えばですが……」

花丸「?」

34: 2020/04/05(日) 23:10:46.72 ID:MlCLkmCK
ダイヤ「ドラァですわ!」

バキィッ!!!

花丸「あっ……!」

ダイヤ「こんな風にバキバキに壊れてしまったスマートフォンも……!」スッ

花丸「!?」

パアァッ

ダイヤ「この通り直せますわ!」

花丸「み、未来ずら~……!!!」

ダイヤ「……つまり」

花丸「?」

35: 2020/04/05(日) 23:13:48.81 ID:MlCLkmCK
ダイヤ「先程ルビィが怪我をしたとしても私がすぐに治してあげることができました」

花丸「……ああ、だから」

ダイヤ「けど、私が間に合わなくとも花丸さんがルビィを助けて下さりました。私はそれが本当にうれしかったです。完璧に治せるとしても怪我をしないに越したことはないので」

花丸「……」

ダイヤ「これからもルビィと同じ学年のメンバーとして、その頼もしい力でみんなのことをお願いします」

花丸「は、はいっ」

ダイヤ「同じスクールアイドルとしてだけでなく、スタンド仲間としても」

花丸「スタンド仲間……」

ダイヤ「そうですわ!」

36: 2020/04/05(日) 23:14:55.50 ID:MlCLkmCK
花丸「ダイヤさんはいつからスタンドを使えるように……?」

ダイヤ「去年の夏ぐらいです」

花丸「!! ちなみにきっかけに心当たりは?」

ダイヤ「もしかすると……くらいの心当たりですが、去年の夏に家族で県内にある砂丘に行きました。大昔に流れ星……隕石が落ちたことで有名な」

花丸「本か何かで読んだことがあるような」

ダイヤ「砂丘を歩いていると突然砂嵐が発生したのです。風が止み、やっとの思いで目を開くと家族とはぐれて一人になっているのがわかりました。ルビィと手を繋いでいたはずなのに」

花丸「……」

ダイヤ「とても長い間砂の上を歩き続け、気がつくと五本の岩に囲まれていました。見渡す限りこんなものは無かったはずなのに突如として現れたのです。その並びはまるで人間の手の平の様でした。それを見ていると急に目眩がして……」

花丸「それで……!」

37: 2020/04/05(日) 23:18:05.91 ID:MlCLkmCK
ダイヤ「次の瞬間に私はお父様とお母様とルビィに起こされました。聞くところによると、助け起こしてくれたのは砂嵐が収まって10秒もしない事だったそうです」

花丸「え? それじゃあはぐれたっていうのは」

ダイヤ「さっきまで一人で遭難していたと言うとみんな笑うのです。10秒でこんなに近い距離で遭難するわけない、と。私が意識を失っていたことすら気づいてない様子でした」

花丸「……」

ダイヤ「それならさっきまで長時間一人で歩いていたことは? いきなり出現した岩々は? 全ては一瞬で見た夢……? 少し休憩してから、砂丘入り口にある博物館に戻ると館内の地元の方から興味深い話が聞けました」

花丸「……!」

ダイヤ「砂丘には大昔から伝わる呪いがあると。それは『悪魔の手の平』と呼ばれているものでそれに飲まれたんだと教えてくれました……!」

花丸「……急にきな臭い話になったずら」

ダイヤ「ほ、本当の話ですっ!」

38: 2020/04/05(日) 23:20:38.79 ID:MlCLkmCK
花丸「なんだか善子ちゃんが好きそうな内容だな~って」

ダイヤ「ち、ちがっ」

花丸「ジーっ……」

ダイヤ「と、とにかくっ! その砂丘には隕石がもたらした災厄と呪いがうごめいていると伝えられているそうです。私もその影響を受けたのかもしれません。心当たりがあるとすればそれくらいで……」

花丸「呪い……」

ダイヤ「そういう花丸さんは心当たりはありますの?」

花丸「マルの場合はこの前自主練した時に善子ちゃんがいきなり守護霊を占うー! とか言い始めてその儀式が……」

ダイヤ「……その話も大概きな臭いような」

花丸「話にまだ続きがあるずら! 善子ちゃんの儀式はどうでもよくって! その時に矢を手渡されて……」

ダイヤ「矢を……?」

39: 2020/04/05(日) 23:23:42.66 ID:MlCLkmCK
花丸「矢がマルの指に刺さってからこの力に気づいたからもしかしたらそれがきっかけかも」

ダイヤ「さ、刺さったのですか!?」

花丸「一瞬、血が出たように見えたけど気づいたら傷口がもう塞がっていて」

ダイヤ「ちなみにその矢は今どこに……?」

花丸「危ないと思ったから校庭の隅に埋めたずら!」

ダイヤ「なっ」

花丸「ま、まずかったずら!?」

ダイヤ「……いえ、この学校も次の春で閉校。この土地の次の使用予定までは知りませんが、誰かがわざわざ校庭の隅を掘り返すようなこともないでしょう」

花丸「善子ちゃんが口を割らなければ大丈夫ずら」

ダイヤ「その点に関しては少し心配ですがまあ大丈夫でしょう。善子さんにスタンドの事は?」

40: 2020/04/05(日) 23:26:49.00 ID:MlCLkmCK
花丸「今のところ誰にも話してないずら。この力を試してみようと撞木の代わりにスタンドで鐘を叩いた時にバレそうになったけど多分大丈夫。鐘はおもいっきり凹んだけど」

ダイヤ「なるほど……鐘はまた家にお邪魔した時にでも私の能力で直しましょう」

花丸「ほ、本当にっ!? 直せるずら!?」

ダイヤ「もちろんです」

花丸「助かるずら~! ……ちなみにダイヤさんは誰かに話したりは……?」

ダイヤ「私も誰にも話していません」

花丸「それはどうして?」

ダイヤ「同じスタンド使いの花丸さんですら、さっきの砂丘の話を疑われたんですから話したところで誰にも信じてもらえるとは思えなくて……」

花丸「た、確かに」

41: 2020/04/05(日) 23:33:38.98 ID:MlCLkmCK
ダイヤ「ルビィには話してもいいかもしれないとは思いましたが何となくタイミングを逃してしまって……それにもしメンバーのみんなに打ち明けたところで信じてもらえないどころか、“Aqours”での立ち位置が善子さんと同じ位置になりかねません!」

花丸「哀れ善子ちゃんずら……」

ダイヤ「実演するにしても花丸さん以外にはスタンド像が見えませんし、いくら直せるからといって先程のように無闇に器物を破壊するのも品位がありません」

花丸「(試し打ちで鐘を殴ったマルは罰当たりずら)」

ダイヤ「それに今はラブライブ優勝に向けて混乱させたくない」

花丸「たしかに……」

ダイヤ「でもまあ自分以外に、しかも同じ“Aqours”中でスタンド使いに出逢えたのは奇跡かもしれませんわ」

花丸「……」

44: 2020/04/05(日) 23:40:06.13 ID:MlCLkmCK
ダイヤ「もしかすると、スタンド使いとスタンド使いは見えない運命の糸の様なもので引かれ合うのかもしれませんね」

花丸「マルも自分以外にこんな力を持っている人が、しかもそれがダイヤさんだったなんて未だに信じられないずら……」

ダイヤ「…………発現がもう少し早ければもしかしたら、この能力で……」

花丸「なおしたいものがあったずら?」

ダイヤ「ええ、ありました。一年生の時に」

花丸「一年生の時…………あっ」

ダイヤ「もし……もし一年生のあの時に能力が発現して鞠莉さんのケガを治せていればと思うと……!」

花丸「…………」

ダイヤ「──学校や“Aqours”の運命が少しは変わっていたのかもしれませんね」

45: 2020/04/05(日) 23:43:16.76 ID:MlCLkmCK
花丸「…………」

ダイヤ「これは機会がなかったので試したことはありませんが、この能力は死んだ人を治すことはできません。こちらは確実ですが…………傷付いた人の心も……」

花丸「…………」

ダイヤ「あの時の鞠莉さんと果南さんの心も……」

花丸「…………」

ダイヤ「ごめんなさい。新しいスタートを切った身として、もちろん今は幸せですが後悔も多くて」

花丸「いえ……」

ダイヤ「……残念ながら廃校は確定してしまいました」

花丸「……」

46: 2020/04/05(日) 23:47:30.54 ID:MlCLkmCK
ダイヤ「……しかし、それでもラブライブ優勝を目指して頑張る権利は残されています」

花丸「絶対に“Aqours”のみんなで優勝してみせるずら」

ダイヤ「共に歩みましょう!」

花丸「がんばるずらっ!」

ダイヤ「…………そ、そういえば花丸さんは」モジモジ

花丸「?」

ダイヤ「その……スタンドのなm」

千歌「お~い、二人とも~! いくらなんでも待たせ過ぎだよー!」

ダイヤ花丸「「あ」」

果南「早くしないと置いてっちゃうよ~」

花丸「今行くずら~!」

ダイヤ「すぐに行きます!」

花丸「あ、さっき言いかけてたのは……」

ダイヤ「えっ!? い、いえっ! やっぱり何でもありません!」

花丸「?? そうですか」

47: 2020/04/05(日) 23:49:32.15 ID:MlCLkmCK
数週間後

サアアアアアァッ

花丸「はっ……! はっ……!」

ルビィ「花丸ちゃんもスクールアイドル部に入る前と比べると体力ついたね!」

花丸「そ、それでもキツイものはキツイずら……(あれからスタンド能力もっとコントロールできるようになったのに持久力は思うようにいかないずら~!)」

善子「雨の中は気分がどんよりするわ」

ルビィ「ここ最近雨ばっかりだね……」

ダイヤ「本番が迫っている以上、多少天候が悪くとも気を抜くことは許されませんわ!」

善子「そういうダイヤもそこまで体力ある方じゃないしね」

48: 2020/04/05(日) 23:53:11.20 ID:MlCLkmCK
ダイヤ「そのための特訓です! ……確かに善子さんは足は早いですよね」

善子「堕天使ヨハネにかかれば疾風迅雷……そう、雷のように!」

ピシャアアァン!

善子「ぎゃっ!」

ルビィ「ピギィッ!」

ダイヤ「ピギャッ!」

善子「か、雷……?」

ビュオオオオオオオオッ

花丸「風が急に強く……天候が不安定ずら……! 」

ルビィ「うぅ……雷怖い……」

ダイヤ「学校まであとほんの少しですので行きましょう!」

49: 2020/04/05(日) 23:58:04.93 ID:MlCLkmCK
ザアアアアアッ

善子「酷い雨……」

ダイヤ「ずぶ濡れですわ……」

ルビィ「そういえば去年の台風の時に海沿いの道路が陥没したって……」

善子「台風の時でしょう? まさかそんな……」

ルビィ「でもずっと降りっぱなしだし……」

ダイヤ「……」

ビュオオオオオオオオッ

花丸「!?」

ズズズズズズ……!!!!!

ダイヤ「なっ……!」

善子「土砂崩れ……!?」

ルビィ「ピ……!」

ダイヤ「花丸さん!」

50: 2020/04/06(月) 00:01:46.03 ID:J4C66LB/
花丸「……善子ちゃんッ!!!(スタンドで善子ちゃんを!)」

ドキュウウゥーン!!!!!

ガシィッ

善子「!?」

ダイヤ「ルビィ! 手を伸ばして!」

ルビィ「おねいちゃん!」

ドヒュウウゥン!!!!!

ギュッ

ルビィ「!!」

ズズズズズズ……

51: 2020/04/06(月) 00:04:45.60 ID:J4C66LB/
ダイヤ「おさまった……」

善子「はぁっ……! 何なのよこれ……!」

花丸「善子ちゃん大丈夫!?」

善子「なんとかね……突風に押されたから助かったのかしら……」

ダイヤ「ルビィ! 怪我は!?」

ルビィ「お姉ちゃんが助けてくれたから大丈夫だよ」

ダイヤ「(スタンド能力が無ければ二人は巻き込まれていた……!)」

善子「ダイヤとずら丸は平気?」

花丸「平気ずら。たまたま境界にいたおかげでだけど」

善子「運がいいのね……あー……死ぬかと思った」

ダイヤ「……まったくです」

ルビィ「みんな大丈夫かな……?」

ダイヤ「もう着いているとは思いますが念の為連絡しておきましょう。今はこの場から早く……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴッッッ

ルビィ「今度は何っ!?」

52: 2020/04/06(月) 00:10:24.41 ID:J4C66LB/
花丸「!!?」

善子「ら、落石……」

ゴオオオオオッ

ダイヤ「(大きい……! こんなのとても……)」

ルビィ「ひっ」

善子「これで終わり……」

花丸「(助けないと……!)ダイヤさん! やってやるずら!」

ダイヤ「!!」

花丸「一人は無理でも二人でならっ!」

ダイヤ「わかりましたっ! いきますわよ、花丸さんっ!!!」

花丸「応ッ! ずら!!!」

53: 2020/04/06(月) 00:14:02.83 ID:J4C66LB/
ドキュウウゥーン!!!!!
ドヒュウウゥン!!!!!


花丸「オラオラオラオラオラオラオラオラオラ」
ダイヤ「ドララララララララララララララララ」

ドドドドドドドドドドドドドッッッ!!!!!

ルビィ善子「二人ともっ……!!?」

花丸「早く離れて……!」

ダイヤ「ルビィ……善子さん……!」

善子「……っ! ルビィ! 二人が守ってくれている今のうちに!」

ルビィ「で、でも……!」

善子「ダイヤと花丸を信じなさいっ! さあ!」

ルビィ「……ッ!!!」

花丸「(善子ちゃん……!)」

ダイヤ「(ありがとう……!)」

54: 2020/04/06(月) 00:18:29.05 ID:J4C66LB/
花丸「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!!!!!!!」
ダイヤ「ドラララララララララララララララですわあああああぁーっ!!!!!!!!!!!」

ボゴォッ!!!!

善子「(二つに……)割れたっ!? あっ……」

花丸「(岩が逸れて……二人へ……!)」

ルビィ「おねいちゃん! 花丸ちゃんっ!」

善子「(私の人生……ここまでっ……)」

ダイヤ「ドララララララララララララララ」

花丸「オラオラオラオラオラオラオラオラ」


危ない! 助けないと!
オラのこの能力で!
今助けるから! スタンドで……


花丸「(ま、間に合わない……! とても……!)」

55: 2020/04/06(月) 00:23:33.17 ID:J4C66LB/
お願い! お願い! お願い!
もっと早く、速く、疾く、敏捷く……!!!

────もっと“光速く”……!!!!!!!



ドォーーーーン!!!!!!!


花丸「!!?」


岩が止まった!
ダイヤさんも! ルビィちゃんも善子ちゃんも!
マル以外の時間が全て止まっている……!?
これが走馬灯……!?
いや、そんなことよりも助けないと!

花丸「……二人ともちょっと痛いけどごめん!(二人を投げ飛ばす!)」

グッ

花丸「オラァッ!」

ズシャアッ

グオゥン!

花丸「!?(時間が……戻った!)」

56: 2020/04/06(月) 00:27:44.75 ID:J4C66LB/
善子「いてて……」

ルビィ「あれ? 何ともない……」

ダイヤ「ドラララララララララララララララ(!!? いつの間に二人があんなところに!?)」

花丸「ダイヤさん! こんな岩まだまだこれからずら!」

ダイヤ「……ブッブーですわ。これで終わらせます! 合わせてください!」

花丸「了解!」


花丸「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!!!!!!!」
ダイヤ「ドラララララララララララララララですわあああああぁーっ!!!!!!!!!!!」

57: 2020/04/06(月) 00:32:19.11 ID:J4C66LB/
バッコオオオオオオン!!!!!

善子「やった!」

花丸「やった……」

ダイヤ「やりましたわ……花丸さん……」

ルビィ「!! 危ないっ!」

ダイヤ「!!」

花丸「!!(砕けた石つぶてが……!)」

善子「ダイヤ!」

──もう一度だけっ……!!!

58: 2020/04/06(月) 00:38:40.44 ID:J4C66LB/
ドォーーーーン!!!!!!!


花丸「(時間を止められた……!)オラァッ!」

バコオッ

花丸「(これでダイヤさんは安全……)」

グオゥン!

花丸「(時は動き出す……)」

ダイヤ「花丸さんっ!!!」

花丸「えっ」

ガッ……

59: 2020/04/06(月) 00:46:37.99 ID:J4C66LB/



誰かの声がする。とても眠たい。
今は夜? それなら朝がくるまで寝ていよう。
白金のように星が輝いている。

星がマルを照らしている。
誰かが呼んでいる。

「花丸ちゃん」

思い出した。行かないと。
みんなが待っている。

──スクールアイドルになるために。

60: 2020/04/06(月) 00:52:22.76 ID:J4C66LB/
「……さんっ!」
「……丸っ!」
「……ちゃんっ!」

花丸「はっ」

ダイヤ「よかった……間に合った……!」

ルビィ「花丸ちゃんっ……!」

善子「これ以上……心配させないでよっ!」

花丸「ずら……?」

ダイヤ「最後の岩が砕けた時に礫が花丸さんへ飛んでいたのです。それが頭に……」

善子「石が二人に目掛けて飛び散ったの」

ルビィ「お姉ちゃんに向かっていった石は直前で砕けたんだけど……」

花丸「そっか……よかった……」

善子「アンタの頭に当たったんだから良くないわよっ! とにかく急いで救急車に……」

62: 2020/04/06(月) 00:59:04.86 ID:J4C66LB/
花丸「マルは大丈夫ずら」

ルビィ「石が頭に当たったんだから安静にしないとっ!」

花丸「だいじょーぶ! ほら、傷も無いし……ね、ダイヤさん?」

ダイヤ「え、ええ……まあ……傷が無いということは実は当たっていなかったとか……?」

善子「なっ……ダイヤまでっ!?」

花丸「矢の怪我の仕返しずら。あの時も傷はなかったよ? あの時と同じずら」

善子「あ、あれは……うーん……」

ダイヤ「とにかくこの場から離れましょう。少し遠回りになりますが学校へ避難しましょう」

ルビィ「う、うんっ!」

花丸「……ダイヤさん」

ダイヤ「どうしましたか」

花丸「……ありがとう」

ダイヤ「こちらこそ、どういたしまして。お疲れ様でした」

花丸「ふふ……」

ルビィ善子「??」

63: 2020/04/06(月) 01:07:10.46 ID:J4C66LB/
後日

ダイヤ「この前はありがとうございました。あの時はどうなるかと」

花丸「こちらこそ。ありがとうございました。ダイヤさんのおかげで命拾いしたずら」

ダイヤ「ところで、私に落ちてきていたという石を砕いたのはもしかして花丸ですか?」

花丸「そうずら」

ダイヤ「ハッキリとは覚えていませんが私たちの間隔は5m近く開いていたハズ……スタンドが届かないのでは……?」

花丸「ふっふっふっ……」

ダイヤ「そ、そんなにおかしいですか?」

64: 2020/04/06(月) 01:09:33.85 ID:J4C66LB/
花丸「マルには新しい能力が発現したずら! ずばり『時間を止める能力』!」

ダイヤ「じ、時間を!? そんなまさか……」

花丸「時間が止まっているのに変な話とは思うけど約2秒間止められるずら!」

ダイヤ「……そうでしたか。私のスタンドは自身の傷は治せない……おかげで命拾いしました」

花丸「お互い様ずら」

ダイヤ「……そういえば」

花丸「?」

ダイヤ「以前聞きそびれたのですが、名前は決めてないんですの?」

花丸「名前……?」

ダイヤ「そうですわ。スタンドに名前を付ければ愛着も湧きますし。何よりも必〇技みたいで……」モジモジ

65: 2020/04/06(月) 01:10:30.44 ID:J4C66LB/
花丸「あー……名前……」

ダイヤ「ちなみに私のスタンド名は『クレイジー・ダイヤモンド』です。海外の音楽から頂きました」

花丸「クレイジー……」

ダイヤ「別案で『シャイニング・ダイヤモンド』もありましたが、鞠莉さんの口癖がどうしても頭をよぎってしまって」ゴニョゴニョ

花丸「うーん……」

66: 2020/04/06(月) 01:12:54.62 ID:J4C66LB/
ダイヤ「はっ……! ま、まあそんなにすぐに決まるものでもないですし……また決まった時にでも教えて下さい」

花丸「(名前……)」

──黄金さえのようにとても眩しい笑顔を振りまくあの人のように。
何度も読み返した名前。
あんなスクールアイドルに憧れた。
自身もスクールアイドルになって『憧れ』が越えるべき目標に変わった。


ダイヤ「さ、暗くなってきましたしそろそろ帰りましょう」

花丸「……いや、決まりました」

ダイヤ「も、もう決まったのですか」

67: 2020/04/06(月) 01:13:59.67 ID:J4C66LB/
花丸「はい。もし名前を付けるとしたらこれだと思うずら」


──憧れの輝きを越えてみせる勇気を!


ダイヤ「よろしければ教えてもらえますか?」

花丸「名前は……」


──初めて憧れたスクールアイドル「星空 凛」さん。
いつかマルもあの人のようにきらきらと輝きたい……あの黄金の輝きを越えて……!
オラは星を見ていたい。


花丸「星の白金『スタープラチナ』ずら!」


おわり

69: 2020/04/06(月) 01:26:56.70 ID:IbUB1Ec1

続きあったら読みたいなぁ

72: 2020/04/06(月) 01:38:42.07 ID:eAqgklww
おつ

これは、是非とも続きが見てみたい

77: 2020/04/09(木) 04:51:08.81 ID:xPVW096Q
いい話だった
この設定でもっと読んでみたい

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1586091531/

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