【SS】ありあ「お姉ちゃんが音楽科落ちた」【ラブライブ!スーパースター!!】

SS


3: (光) 2021/09/05(日) 16:03:39.97 ID:m/J7hAwM
-音楽科受験当日-


かのん「うぅぅぅっ」グスグス

ありあ「お姉ちゃん……」


その日、お姉ちゃんは晩ごはんを食べている最中に泣き始めました。

誰も何も聞かず、お母さんはただ肩を抱いて。お父さんはじっと目をつむって。


お皿の上には、一口だけ食べられたハンバーグが残っていました。

4: (光) 2021/09/05(日) 16:07:10.48 ID:m/J7hAwM
私のお姉ちゃんは音楽が得意です。

歌うのが上手で、ギターもできて、作曲だってヘンテコだけどできてしまう。

何よりお姉ちゃんの歌声は、歌うのが大好きだっていう気持ちが伝わってきて、みんなを幸せにしてくれます。

だから結女の音楽科だって合格できるはずでした。


ありあ(あがり症さえなければ、だけど……)


音楽科受験失敗という事件は、音楽が大好きなお姉ちゃんに、大変なショックを与えたことでしょう。

それからというもの、お姉ちゃんはすっかり落ち込んでしまい……。


いつしか、やさぐれていました。

6: (光) 2021/09/05(日) 16:10:17.26 ID:m/J7hAwM
かのん「は?」

かのん「いや押したでしょ? miss? すり抜けとかまじ」

かのん「はぁ~~」クソデカタメイキ

ありあ「お姉ちゃん! 起きてるなら朝ごはん食べなって」

かのん「んあー」

ありあ「もう! これ以上呼ばないから」

かのん「んいー」

ありあ「~~~~っ」ムゥゥ

7: (光) 2021/09/05(日) 16:13:26.82 ID:m/J7hAwM
お姉ちゃんは朝が遅くなりました。

高校に入学するまで特にやることがないのかもしれませんが、それでも今までのお姉ちゃんなら、朝からギターをいじっていたと思います。

起きたのにゴロゴロゴロゴロと、スマホゲームで遊ぶお姉ちゃんの背中は、とても小さくて寂しげです。

初めてお姉ちゃんのそんな姿を見たときはとてもショックでしたが、だんだん、慣れてきてしまいました。


今ではお姉ちゃんを起こすのが、私の朝の日課です。

8: (光) 2021/09/05(日) 16:16:38.80 ID:m/J7hAwM
ありあ「こないださー友だちから聞いたんだけど」

かのん「あー」

ありあ「なんかCDとかコレクションしたい! って思っても」

かのん「んー」

ありあ「したいって思ったまま、そのままになっちゃうことあるよね~って」

かのん「ん~」

ありあ「私あ~なるほどね~あるかもね~ってなって」

かのん「んあー」

ありあ「お姉ちゃんもあるよね?」

かのん「んー」

ありあ「ない?」

かのん「ない」

11: (光) 2021/09/05(日) 16:19:41.08 ID:m/J7hAwM
お姉ちゃんは反応も適当になりました。

返事をしているのか、ただの鳴き声なのかよくわからないことが多いです。

会話のようなものをしてくれるときも、あまり目を合わせてくれません。

私と比べて、お姉ちゃんの目はお母さんによく似てぱっちりとしていて、憧れというか、いいなぁと思っていたのですが、ここ最近はふてくされて半開きばかりです。

表情も希薄なせいで、いつも不機嫌なようにも見えますが、そういうわけではないことを、私は知っています。

14: (光) 2021/09/05(日) 16:22:46.08 ID:m/J7hAwM
ある日、偶然街でお姉ちゃんを見かけました。ちょっとした買い物に出かけていたようです。

声をかけようと思って近づいたのですが、これまた偶然に、私よりも先にお姉ちゃんの中学の同級生らしい人が現れたので、思わず距離をとります。


女の子A「かのんちゃん!」

女の子B「わ~久しぶり!」

かのん「ぁひっ……さしぶりだね~」


ありあ(あひって……)


悲鳴のような、あいさつのようなものを発したお姉ちゃんは、精一杯の笑顔で対応します。

明らかなハリボテでしたが。

15: (光) 2021/09/05(日) 16:26:03.74 ID:m/J7hAwM
女の子A「ほんと久しぶり! ねえ聞いて! 私たち買い物してたんだけどね」

女の子B「高校入ったらとことんオシャレしちゃおうと思って! みてみてちゃんとした化粧品とか買ってみたの」

かのん「わ、わ~~」


ありあ(お姉ちゃん……)


あぁ、ダメかもしれない、と思いました。

お姉ちゃんとは対照的に、あの二人は高校生活に希望を持って、前向きに臨んでいました。

高校デビュー、輝かしい青春の予感……そういったものは今のお姉ちゃんには縁のないもののようで。

目にしたくもないもの、であるのかも知れません。

16: (光) 2021/09/05(日) 16:29:07.55 ID:m/J7hAwM
ありあ(…………っ)ドキドキ


お姉ちゃんとあの二人がどれだけの仲の良さかはわからないけれど――少なくとも私の知っているお姉ちゃんの交友関係にはない人たちだけど。

もしかするとここは、勇気を出して、助け舟に突撃するべき場面なのかも……。


ありあ(んん……っ)ドキドキ


とはいえ年上の群れに飛び込む勇気は相当なもので、私がぱっと思い立ってできることではないのでした。

足を踏み込んだり、やっぱり戻したりとしているうちに……結局、事態は進行していました。

17: (光) 2021/09/05(日) 16:33:12.46 ID:m/J7hAwM
かのん「わぁ~~きれいだね!」

女の子A「だよね、だよね!」

女の子B「ね! 見てるだけで嬉しくなっちゃうの」

かのん「うんうんわかるなぁ~」

かのん「あ、ごめんね二人とも、私これからカットの予約してるから」

女の子A「あ、そうなんだ」

女の子B「ごめんね呼び止めちゃって」

かのん「ううん、久々に会えてよかった! またね」

18: (光) 2021/09/05(日) 16:36:23.65 ID:m/J7hAwM
またねと、笑顔でそういい合って、お姉ちゃんは足早に離れていきました。

お姉ちゃんの笑顔を久しぶりに見たはずなのに、まったく中身の伴っていないのが丸わかりなせいで、かえって寂しい気持ちになります。

あんな笑顔よりは、晩ごはんを食べながらテレビのくだらない冗談で冷笑しているときのほうが、生き生きしているように見えました。


あの後、私はすぐに帰宅しましたが、お姉ちゃんのほうが先に帰ってきていて。

もちろん、髪の長さはまったく変わっていませんでした。

どこか辻褄を合わせるように、お姉ちゃんが美容室に行ったのは、その2日後でした。

19: (光) 2021/09/05(日) 16:39:26.42 ID:m/J7hAwM
かのん『ばーか』


深夜、のどが渇いて、お水でも取りに行こうかと思って起きたときのこと。

お姉ちゃんの部屋から、小さく声が漏れているのに気づきました。


かのん『ばーか』

かのん『ざーこ』


びっくりして部屋の前で立ち止まります。無気力な声音で、お姉ちゃんの口から飛び出ているのは、子供みたいな暴言でした。

20: (光) 2021/09/05(日) 16:42:52.88 ID:m/J7hAwM
かのん『意気地なし』

かのん『弱虫泣き虫』

かのん『………っ』グス..


ありあ(…………)


静まり返った夜の廊下で、それでも注意深く聞き分けなければ逃してしまうほどの、小さな嗚咽。

たまたま、私が目を覚ましたこの日だけの出来事だったのでしょうか。それとも、受験に失敗してからずっと、お姉ちゃんはこんな夜を過ごしていたのでしょうか。


かのん『歌えない……このっ』グス

かのん『くず……っ』グスン

21: (光) 2021/09/05(日) 16:46:04.44 ID:m/J7hAwM
ありあ(…………)


それは自分に向けた言葉でした。

お姉ちゃんが音楽科に落ちて、お姉ちゃんを責める人は、もちろん誰もいませんでした。

すべての人はお姉ちゃんを優しくなぐさめ、時には優しく抱きしめ、時には言葉も必要とせずただ支えました。


だってそれは当然のことで、お姉ちゃんは誰かから求められて結女の音楽科を受験したわけではなくて、自分から望んでそうしたのですから。

責任も失望も、すべてお姉ちゃんの中で完結しているのでした。

22: (光) 2021/09/05(日) 16:49:11.65 ID:m/J7hAwM
今だってほんとうはこの扉を開けて、お姉ちゃんに寄り添いたいという衝動があります。

泣かないでと、お姉ちゃんは悪くないと、そう言って、お姉ちゃんの苦しみを分かち合いたい。


けれどその衝動はむしろ私のワガママであって、ほんとうにお姉ちゃんを思っての行動とは言えないのではないか、と胸の内で囁く自分もいて。

傷ついたお姉ちゃんに優しくすることに、罪深い自己満足の気持ちが混じっていないと、果たして言い切れるのか。

いまのお姉ちゃんに必要なのは、むしろ叱咤激励で無理やりにでも引っ張り上げることなんじゃないか――。

23: (光) 2021/09/05(日) 16:52:25.77 ID:m/J7hAwM
けれど、どちらにしたって、『妹』の私が『姉』であるお姉ちゃんにそういう気を使うということ、それ自体だってお姉ちゃんにダメージを与えてしまいそうな気がして。


かのん『………』グス..

ありあ(………)


あれこれ考えれば考えるほどに、言い訳ばかりが増えていって。

結局のところ、私にはこの場を動く勇気がないのでした。


大事な場面で歌えないお姉ちゃんのことを、こんなところですら勇気の出ない私が、どうやって元気づけることができるのか。

これもまた言い訳なのだと、わかってはいるのです――。

24: (光) 2021/09/05(日) 16:55:59.39 ID:m/J7hAwM
昔からお姉ちゃんは歌うのが好きで、基本的にはどこでだって歌うような人でした。
家族で車で出かけるときなんか、車の中で好きに歌うのですから、うるさくってかないません。周りになにもない田んぼ道に出ると、お姉ちゃんは窓を開けて外に向かって高らかに歌うのです。
やんちゃな車のオーディオと違って、やけに伸びのある歌声が響くのですから、聞いた人はぎょっとするでしょう。人がいない場所を狙っているみたいなので、聞く人はあまりいないでしょうが。
お父さんなんかは言葉にはしてないけれど、お姉ちゃんの歌が大好きみたいで、よく二人でドライブに出かけています。そんなとき、お姉ちゃんは後部座席に愛用のギターと一緒に乗り込んで、お父さんが海辺を走らせる後ろで即席の歌を奏でるのだそうです。
たまに録音したものをお父さんからお母さんに渡すことがあって、私も一緒に聞きます。エンジン音や、アスファルトでタイヤを切りつける音、それから猛烈な風の音がひどくてきれいには聞くことができませんが、雑音の奔流の中で、お姉ちゃんの演奏が遠くに聞こえてきます。
それを聞くと、うまく表現できませんが、お姉ちゃんが私の見えていないところでも変わらずお姉ちゃんなのだと実感するのです。

灯台、というものをイメージします。

私も中学生になってから、人並みにむしゃくしゃすることがありました。友だち関係とか、勉強関係とか、なんかもう、自分でも分類分けできてないような色々な気持ちの荒ぶりです。
それに対して、自分がどうするべきか、自分の進もうとしている方向が正しいのか、自分が今どこにいるのか、わからなくなることがありました。
そんなとき、お姉ちゃんの歌が聞こえてくるのです。実際には毎日かき鳴らされていて、聞き流している音楽ですけれど、そんなときこそ、すっと心の中に入ってくるのです。
お姉ちゃんの音楽はずっとそこにありました。灯台のように、海が荒れてどちらが前なのかわからなくなっても、灯りで私の居場所を教えてくれました。
導いてくれているわけではないのです。ただそこにあるだけ。
それだけで私は助けられました。それが私のお姉ちゃんでした。


なのに私は――。

25: (光) 2021/09/05(日) 16:59:35.41 ID:m/J7hAwM
-結女入学式の日-


ありあ「今日は入学式でしょ! 遅刻するよ」

かのん「わかってまーす」

ありあ「はやく!」

かのん「あーい」


この日も、私はただお姉ちゃんを起こすという日課をこなしただけでした。

26: (光) 2021/09/05(日) 17:03:16.86 ID:m/J7hAwM
かのん「行ってきまーす」

澁谷母「おはようは?」

かのん「……おはよう」

澁谷母「朝ごはんいいの?」

かのん「……うん」


短く答えて、身体を小さく丸めて足早にお姉ちゃんは出ていこうとします。まるで自分を見られたくないかのように。

でも、マンマルに声をかけている姿は普通のお姉ちゃんで、安心していたのですが。


澁谷母「かのん! 似合ってるわよ、制服」


ぎょっとしました。とんでもないセリフだと思いました。

27: (光) 2021/09/05(日) 17:06:37.28 ID:m/J7hAwM
かのん「……似合ってない!」


むすっと答えて、お姉ちゃんは出ていきます。

バタンと、ちょっと強めに入り口が閉まりました。


ありあ「……まだ受験の失敗引きずってるの」


なにか事前にお母さんと話でもあったのかと思って、確認のつもりで聞いたのですが、返ってきた言葉は「繊細だから」。

お母さんはあまりお姉ちゃんの現状を気にしてないのかもしれません。いや、そういう風に対応することに決めただけかも。

それにしたってなかなかパンチの効いたセリフだな、と思います。

28: (光) 2021/09/05(日) 17:09:45.34 ID:m/J7hAwM
朝はこんな調子でした。

だからまさか、帰ってきたとき、登校初日からお友達を連れてくるとは思いもしませんでしたし――それからわずかな日々で、お姉ちゃんがまた歌い始めるなんて! ……信じられない思いでした。


ありあ(お姉ちゃん……!)


またギターの音が聞こえはじめました。灯台にあかりが灯るのを感じました。


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29: (光) 2021/09/05(日) 17:13:12.87 ID:m/J7hAwM
しばらくして、私は『スクールアイドル』のお姉ちゃんをステージで見ることになります。

ステージの上で、たくさんの人の目にさらされているにも関わらず、力強く歌い上げるお姉ちゃんの姿を。

あたりは光にあふれていました。光の中で、お姉ちゃんはいっそう強く輝いていました。


『信じてる それだけじゃ 叶うわけないよ!』


順風満帆ではなかったことは、ただ見ているだけだった私でも知っています。

慣れないダンスで苦労したり、人前でまた歌えなくなったり。


でもいまこうして、お姉ちゃんに灯りは満ちて、そこにいました。

30: (光) 2021/09/05(日) 17:16:28.85 ID:m/J7hAwM
『叶うまで 走るしかない 暗闇つきぬけて』


このライブはここに集ったいろんな人に影響を与えるでしょう。それだけの力がありました。

身内のひいき目を差し引いても、そのように思います。


だって妹の私から見ても、今日のお姉ちゃんは可愛いと、いいたくなってしまったのですから。


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31: (光) 2021/09/05(日) 17:19:32.41 ID:m/J7hAwM
かのん『~~~♪』ジャンジャン♪

ありあ「……む~」


今日もまたお姉ちゃんは部屋でギターを奏でます。歌えるようになってからというもの、音の途切れる日はありません。

BGMになる日もあれば、耳ざわりだなぁと思う日もあるわけで、今日の気持ちはどちらかというと後者でした。

ひとことで言えば、うるさい。


澁谷母「ありあ、はいココア」

ありあ「わ、やった」

澁谷母「お姉ちゃんのぶんも作ったから、持っていってあげて」

ありあ「む」


こういうとき、妹の仕事になることが多いのが少し不服です。

まあ持っていきますけど。

32: (光) 2021/09/05(日) 17:22:56.37 ID:m/J7hAwM
ありあ「…………」


とんとんと、ココアをお盆にのせて階段を上りながら、思うことがあります。

こうしてお姉ちゃんの歌を聞いていると思考にのってくるお話なのですが――お姉ちゃんが歌わなくなったことについて。

思えば私もいろいろと気を使ったり、考えたり、頭を悩ませたりしましたけれど。


ありあ(終わってみれば、私とは無関係なところで解決したなぁ)


まあ、いいんですけどね。

33: (光) 2021/09/05(日) 17:26:10.38 ID:m/J7hAwM
ありあ「お姉ちゃんーココアー」

かのん「お! ありがとねぃ」


デコメガネスタイルでココアを受け取る私の姉。こうしていると、あのステージで光り輝いていたスクールアイドルと同一人物には思えません。


かのん「あ、そうだありあ、ちょっと来て」

ありあ「んー……?」

かのん「ほら、座って座って」

ありあ「えーなにー?」

34: (光) 2021/09/05(日) 17:29:24.48 ID:m/J7hAwM
言われるがままに、お姉ちゃんを背中にして座ります。すると、くしゃりと、後ろから私の髪にお姉ちゃんの指が入ってくるのを感じました。


ありあ「んー、んー?」

かのん「じっとしてるんだぞー」

ありあ「なんなのー?」


くすぐったくて、うっとおしいけれど……なんとなく温かくて、拒絶できませんでした。

くしゃりくしゃり、するりするりと、お姉ちゃんの指が私の髪の中をすべります。

35: (光) 2021/09/05(日) 17:32:32.81 ID:m/J7hAwM
ありあ「…………」


懐かしい気がしました。こんなことが前にもあったような気もしますし、なかったような気もします。でも、この温かさは初めてではありませんでした。


かのん「んーと、んー? あ、こーして、ここを止めれば……と」

かのん「できた! なんちゃって編み込みハーフアップ~~」

ありあ「ん……なんか重い」

かのん「ふふん。スクールアイドルはじめてから色んな髪型試すようになったんだよね~」

かのん「うんうん、お姉さんっぽいぞ~ あ、ぱっつんだからちょっとバランス悪いかな」

ありあ「うっさ」

かのん「ありあももっと伸ばしなよ。で、遊ばせて」

ありあ「やーだ。面倒だもん」


頭をゆらゆら揺らします。いつもと感触が違うのは当然として、さて、この姉、どういう風の吹き回しでしょうか。

ただのだる絡みかな。

36: (光) 2021/09/05(日) 17:35:41.12 ID:m/J7hAwM
やれやれと、立ち上がろうとしたときでした。

後ろからとん、と肩に身を寄せられて、耳元でお姉ちゃんの声。


かのん「――ありがとね、なんか、いろいろ」

ありあ「――――」


……ああ、よかったと思いました。顔を見られなくてよかった、と。

37: (光) 2021/09/05(日) 17:39:31.42 ID:m/J7hAwM
ありあ「何いってんの、もう、おやすみ」

かのん「うん、おやすみ」


お姉ちゃんのありがとうが、何に対してなのか具体的にはわからないけれど、気持ちが本物であることは、もう言葉にするまでもなくて。

しょうもないことに、面と向かって妹にお礼を言えない姉と、面と向かって姉からお礼を受け取れない妹が、そこにいたというだけの話で。


お姉ちゃんが音楽科に落ちてからというもの、自分でも気づかないうちに、私の腹の底で渦巻いていた不溶性の怪物は、いまこのときこそ晴れ消えて。


灯台を隣の部屋に感じながら、私はようやく、すっかり安心して眠ることができたのでした。



――翌朝ついたひどい寝癖を、お姉ちゃんに見つかる前に直したのは秘密です。

38: (光) 2021/09/05(日) 17:43:29.81 ID:m/J7hAwM
おしまい
失礼しました

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1630825038/

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