【SS】ことり「さよならハイブリッドスカイ」

SS


3: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/07(木) 16:37:27.75 ID:to7bNfWo.net
夕暮れ

乾いた空に届く放課後のオーケストラ

秋風になびくサイドテール

私の恋

私の思い出
 
4: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/07(木) 16:38:23.06 ID:to7bNfWo.net
「南さん、ちょっといい?」

「はっ、はい!」

「これなんだけど……」

私は今、服飾の専門学校に通う傍、都内のデザイナーのお店の手伝いをしている
夢に向かって一歩ずつ、進めている感じが嬉しかった


「ここは……この方が可愛いと思います」

「なるほどね……さすが南さん勉強してるわね」

「いえ、それじゃ私は失礼しますね」


お疲れさま、と先輩に挨拶をして店を出る
空は少し、泣いているような曇り空だった
 
5: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/07(木) 16:40:03.68 ID:to7bNfWo.net
天を覆うカーテンに少しの眩しさを感じて、目を細める

翼をはためかせた鳶が、ここではない何処かへと去っていく


(……そういえば、あの時もこんな空だったな)



あの時のように、あの時のままで

縫い付けられるように、私の心は止まったままだ
 
6: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/07(木) 16:42:34.75 ID:to7bNfWo.net
いつから好きなの?


わからない、だって気づいたら好きだったから


どこが好きなの?


わからない、好きになってからは全てだけど


なんで好きなの?


好きだから

これが答え
気付いたら目で追っていて、その気持ちが恋だと気付くのにさほど時間はかからなかった
 
7: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/07(木) 16:43:43.47 ID:to7bNfWo.net
ずっと側にいた幼馴染
たとえ同性だったとしても、好きになるのは必然に近いようなものだった


「ねえねえことりちゃん、進路って決まってる?」


彼女がこちらを覗き込む


「うーん……やっぱり音ノ木かな、お母さん理事長やってるし、家からも近いし」

「やっぱり!?穂乃果もおんなじなんだー」


何かに安心したのか、彼女がほっと胸をなで下ろす
隣にいた黒髪の綺麗な彼女は少し驚いたように



「二人もですか?私も音ノ木坂にしようと思っていたんです」

「海未ちゃんも?」

「ええ、中々本格的な弓道場がありまして」

「そっか、海未ちゃん弓道続けたいって言ってたもんね」

「みんなお揃いだね!」


太陽のように眩しい彼女が、さらに笑顔になる
 
8: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/07(木) 16:45:13.52 ID:to7bNfWo.net
「こうしていつまでもみんなで一緒にいたいね」


隣にいた海未ちゃんが、少し怪訝な顔をする


「さすがにそれは無理ですよ、いつまでも一緒にいられるなんて」

「えー!確かに無理かもしれないけどさ、そう思うのはいいことじゃないかなあ?」


ちょっとだけ大げさに、彼女が嫌そうな顔をした

……私もみんなと一緒がいいな
 
10: (もも)@\(^o^)/ 2016/01/07(木) 16:53:35.79 ID:rp0zly+q.net
すかさず私も参加する


「ことりも、穂乃果ちゃんの意見に賛成かな、みんなとずっと一緒にいられたら」

「ことりまで……でも、私も同じ気持ちです」

観念したのか、海未ちゃんは隠しきれない本心をあらわにする
 
14: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/07(木) 18:07:57.87 ID:to7bNfWo.net
……そして、願わくば彼女が笑う隣には

なんてつまらないことを考えながら、空を見上げると、紅蓮に燃える空を背に、夏鳥が暖かさを求め南へ飛び立っていく

中学二年生
空はまだ、秋を感じさせない夏の夕暮れのようだった
 
19: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/07(木) 22:30:17.41 ID:to7bNfWo.net
……最近、穂乃果ちゃんの様子が少しだけおかしい

一見するとそうは見えないのだけど、何かそわそわしている


「穂乃果ちゃん、なんかあった?」


たまらず声をかけると、彼女の肩が少しだけ跳ねる


「え!?……い、いやあ……なんでもないよ」


嘘つき、顔に出てるよ?
なんて言えず「あはは……そうなんだ」と愛想笑いをすることしかできなかった
 
20: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/07(木) 22:36:43.53 ID:to7bNfWo.net
「いやね、ちょっと気になることがあるんだ」

「どんなこと?」

「うーん……なんていうのかなあ……」


穂乃果ちゃんは何か考え込んでしまった。


「なんか……そわそわするんだよね」


「何に?」と、聞いてみると穂乃果ちゃんは「それがわからないから困ってるんだよ」とさらに頭を抱えてしまった


「何か気になることでもあるの?」

「……うーん……やっぱ気のせいかも、うん!気のせいだ!」


と、言うや否や、穂乃果ちゃんは元の明るさを取り戻した

何故だか少し、胸がざわついた
 
39: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/08(金) 05:53:49.66 ID:0AKgP9kQ.net
原因は程なくして判明した
それはある日のこと、休日いつもみたいに海未ちゃんと穂乃果ちゃんと3人でお出かけしてた時のこと

お店をふらふらしていた穂乃果ちゃんが何かに気がついていの一番に駆け出していった

視線の先には、黒髪のツインテールが何やら怪しい格好でCDを買いに来てたようだった


「やっほー、にこちゃん奇遇だね!」

「ん?ああ、穂乃果?良くこんなとこ来たわねあんた」

「ことりちゃんと、海未ちゃんもいるよ!おーい!」


と、ここで大声で穂乃果ちゃんが私たちに呼びかける
海未ちゃんは「こんな公共の場で迷惑ですよ!」と、眉を吊り上げながら向かっていく


……あれ?
何か不思議な違和感を覚えた私も「あはは、まあまあ海未ちゃん」と海未ちゃんを宥めながら穂乃果ちゃんのところへ向かうのだった
 
42: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/08(金) 11:20:35.41 ID:0AKgP9kQ.net
結局にこちゃんとも合流して、なんだか奇妙な4人組になってしまった


「ちょっと、ベタベタくっつかないでよ恥ずかしい」

「もー、ひどいよー!」

「あんたが離れれば済む話でしょ!?」


まるで、痴話喧嘩
第一印象がそれだった

穂乃果ちゃんがにこちゃんに抱きついて、にこちゃんがそれに怒る……なんだか微笑ましい

と、同時にまたもや胸がざわつく

ああ、なんか嫌な気持ちだなあ


誰に対して?


私に対して


「……ことり?」


海未ちゃんに呼び止められて、はっと正気を取り戻した
私は上手く笑えないまま「大丈夫」と、一言つぶやいた
 
43: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/08(金) 18:37:43.82 ID:0AKgP9kQ.net
ああ、なんだ、やっぱりそういうことかぁ

と、心の中で勝手に納得することにした

だって、ずっと一緒にいたからそれくらい分かってしまう

まずあの笑顔

いつも見せているそれとは違うのということは、多分私くらいしか気づかないと思う


「はー……まったくあんたって子は……」

「えへへー」


そして、にこちゃんもめんどくさそうな顔をしているけど、どこなく幸せそうだった

そうか、これがそういうことなんだね


「……ことりちゃん?」


何かを勘付かれたのか、穂乃果ちゃんがこちらを覗き込む
慌てて笑顔を作り、「なんでもない」と答える私だった
 
44: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/08(金) 23:31:43.79 ID:0AKgP9kQ.net
間違いなくあの二人は両想いだ

見てるだけで幸せが伝わってくる……苦しいくらいに

なら、私にできることって……何?

答えはひとつだけ、もう決まっていることだった

だから、こんな事をつい口走ってしまう


「そろそろにこちゃんのお誕生日でしょ?たまには二人でお祝いしたら」

「え!?……で、でも……迷惑じゃない、かな……?」


穂乃果ちゃんはもじもじとしている
……可愛いなぁ、でも……

その気持ちは必死に押し〇すことにした
だって、少しでも気を緩めると爆発しそうだから

嬉しそうな彼女の顔を眺めている方が、ずっと幸せだから
 
50: (笑)@\(^o^)/ 2016/01/09(土) 17:14:33.37 ID:w6GBbRX9.net
それからしばらくして、夏休みを迎える少し前、私は絶望の祝福を送ることになる

理由はとっても簡単な話
穂乃果ちゃんとにこちゃんが、晴れて付き合うことになったから


「ことりちゃんが教えてくれたおかげだよ」


なんて、穂乃果ちゃんは照れ臭そうに笑う

……違うよ、それは私のおかげなんかじゃない

それでも必死に笑顔を作って祝福を送る

幸せそうな穂乃果ちゃんを見ていると、こちらもたまらなく幸せになった


……本当に?
 
51: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/01/09(土) 23:49:58.14 ID:z9/3ym78.net
幸せになるのは本心からだ





こちらを振り向いてくれなくても、相手が幸せなら、それで……


それも、嘘


「……嘘つき」


誰にも聞こえない呟きは、風に乗って何処かへ消えていった


「……ことりちゃん?どうしたの?」

「ん?大丈夫だよ?」


そんなわけないくせに
今すぐ泣き出したいくせに、彼女の前では少し強がりで

それでも心配してくれるあたり、やっぱりこの子はとてもいい子だ


急ぎ足でどこかへ向かう鴉の鳴き声が、ひび割れた空から響いて届く

高校二年生
泣き腫らしたような、夕立明けの茜空だった
 
56: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/01/10(日) 11:32:04.95 ID:krK4lXLO.net
これは、私にとってのささやかな絶望だ

告白する勇気も持てず、現状というぬるま湯に浸かっていた私にはお似合いだ

……なら、告白していたら何か変わった?

両想いになれた?

付き合うことができた?

だから、これは私の精一杯だ


「なら、お料理教えてあげようか?」

「いいの!?」

「だって、秘密にしたいんでしょ?」

「ま、まあね……」
 
61: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/01/11(月) 00:42:59.49 ID:JP9m4FJs.net
照れ臭そうに彼女が笑う
本当に、幸せそうで、こちらも少し照れくさくなる


「あ、でもことりが手伝ってるって知ったらにこちゃん妬いちゃうかもしれないね」

「あー……にこちゃんああ見えて独占欲強いんだよねえ……」


ああ見えて……って、どう見てもそうなんだけど……
どうやら気づいてないみたいだけど黙っておく
 
62: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/01/11(月) 10:09:10.79 ID:txLyE5HZ.net
「へー、そうなんだ」


と、あくまで知らないふりをしてそう返す
穂乃果ちゃんは自慢のような、めんどくさいような表情をしながら


「うん。穂乃果が他の人と遊んでると結構機嫌悪いっていうか……」


それはそうだと思うけど……
鈍感な彼女の愚痴とも言える惚気を、しばらく聞いていた
 
63: (SB-iPhone)@\(^o^)/ 2016/01/11(月) 13:54:10.41 ID:EDaVT/hl.net
一緒にいると、自分の気持ちと、どうしようもない現実に直面してしまう

こうして危なかっしく包丁を握る彼女を眺めながらそう思う


「皮むきって苦手だなあ……」

「そんな持ち方したら危ないよ?ほら、こんな感じ」

「こ、こう?」

「そうそう!あんまり力入れすぎないでね」


彼女は飲みこみ自体は早い方だと思う
勉強については……ノーコメントで
とにかく、一度やると決めたことは最後までちゃんとやり遂げようとする子だ

それが、私に向けたものでないのがひどく残念だけど
 
64: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/01/11(月) 20:57:17.26 ID:xsyo6/W0.net
「……よし!出来た!味見してよことりちゃん!」

「……うん、美味しいよ!穂乃果ちゃん!」


指を傷だらけにして、ようやく出来たコロッケは、とても美味しかった


「……これでにこちゃんも喜んでくれるかなあ」


えへへ、と穂乃果ちゃんが笑う

ずき

やっぱり、好きだ


「あのね、穂乃果ちゃん……」

「え?」

「……えっとね、ことり……」

「どうしたの?」

「……ううん、なんでもない」


それ以上は、言えなかった
 
66: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/01/11(月) 21:57:50.40 ID:iJmDxqo/.net
好きって気持ちをどこかにしまいこんで、私と穂乃果ちゃんの奇妙な関係は少しの間続いた

今だけは、私を見てくれる穂乃果ちゃんがいることが幸せだった

だから、目を腫らした彼女を見つけた時、現実に引き戻されるようだった


「ちょっと石鹸入って腫れちゃった」


嘘つき
それでも私は「大丈夫?」と聞いて、隣に腰掛ける
しばらくの沈黙を破って、にこちゃんが問いかける


「そういえば、肉じゃが美味しかったわよ」


ぎくり、とした
さすがに焦って「へ、な、なんのこと?」と思わず声が裏返る
にこちゃんはこちらを真っ直ぐ見つめながら


「穂乃果から聞いたわよ、教えてたんだって?まさかあんなに上達するとは思わなかったけど」


……穂乃果ちゃん、やっぱり自分で言っちゃったんだ
少し、肩を落とすとにこちゃんは不思議そうな顔をしていた
 
67: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/01/11(月) 22:02:45.23 ID:iJmDxqo/.net
「ちょ、ちょっと待って……なんの話?」


にこちゃん、気づいてないのかな?
きっと似た者同士だから、にこちゃんも鈍感なんだな


「穂乃果ちゃんには内緒にしてって言われたんだけど……」


どちらかと言うと私が内緒にして欲しかったけど、ごめんね

そうして経緯を話すと、にこちゃんはホッとしたような、嬉しいような不思議な表情をしていた


「……ごめんね」

「ばーか」


いたっ、と小さく呟く
おでこが少しだけ、ヒリヒリする


「あんたに悪気があったわけじゃないじゃない、謝られても困るんだけど?」


……ああ、本当にいい子だな
羨望と、後悔で少し、泣きそうになる
 
68: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/01/11(月) 22:07:51.53 ID:iJmDxqo/.net
「……それで、穂乃果ちゃんとは話せた?」

「さっきの今でそんな無理よ」


……そうかもしれないけど


「でも大丈夫だと思う」

「なんでそんなこと分かんのよ」


だって、貴女の好きな人は、私の好きな人だから
好きな人のことだから、分かると思う

だから、後悔だけはして欲しくないから


「素直になるって大変だけど、ちゃんと言わなきゃ伝わらないよ?」

「何よ、わかったような……」

「……分かるから言ってるんだよ」


素直になれなかった自分に対して、そう告げる

しばらく話したあと、最後ににこちゃんが


「そういえば、あんた好きな人いるの?」


貴女の好きな人
なんて言えなかった
少しおどけた風に「いるにはいるかなあ」と返す
 
69: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/01/11(月) 22:12:11.37 ID:iJmDxqo/.net
「ならあんたも、その子に伝えた方が良いんじゃない?片想いは辛いわよ」


伝えた方が、残酷だから
なんて、にこちゃんは分からないんだろうな


「相手が幸せなら、それでいいんだよ」


だから、少しだけ強がっておく


「そう、じゃあね」


それからにこちゃんは振り向かず、去っていく

……多分、あの二人はもう大丈夫

空を見上げると、雨が降っていない曇り空

雫が静かに、頬を撫でた
 
74: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/01/12(火) 09:57:46.27 ID:21YK/tuj.net
それから色々なことがあって、私は今ここにいる
今の生活もそれなりに楽しく、充実している

けれど、私の頬をくすぐる後悔は、未だ消えないでそこにある

だからと言って、告白していれば何か変わったのかと言われたら、それは否だ

結果として今があるから
告白したって過去は存在しないのだから、それでいい
 
75: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/01/12(火) 09:58:17.91 ID:21YK/tuj.net
色んな未来があったかもしれない

隣で笑うのはあの子じゃなくて私だったかもしれない

どこかで告白して、潔く玉砕したかもしれない

結果、どれも出来なかった

一歩を、踏み出せなかったから、ここにいる
 
76: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/01/12(火) 09:59:17.38 ID:21YK/tuj.net
「……あれ?あんた……」

知った声に呼ばれた気がして振り向いてみると、かつて見慣れた黒髪の彼女がそこにいた


「……にこちゃん?」

「……久しぶりね」


髪を下ろして、少し大人っぽさが出ているけれど……


「さすがにそのカッコは目立ちすぎるんじゃないかなあ……」

「い、いいでしょ別に!」


顔に不釣り合いなほど大きいサングラスに、これまた大きいマスク
流石に苦笑いせざるを得ない


「はー……ところであんたどっか用事?」

「え?いや、用事ってほどはないよ?」


にこちゃんが、少し真面目な顔になる


「そ、だったらちょっと付き合ってよ」

「うん、わかった」


15時くらいで時間としてもちょうどいい
少し早足で歩くにこちゃんを追うようについていくことにした
 
77: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/01/12(火) 10:03:38.05 ID:21YK/tuj.net
「それにしても忙しそうだね、にこちゃん」

「最近ようやく軌道に乗ってきたからね、アイドル活動……あ、すみませんコーヒーと……あんた何飲む?」


ミルクティーかな
じゃ、コーヒーとミルクティーでお願いします


「……そういえば、穂乃果ちゃんとはどう?」

「どうって……変わんないわよ、いつも通り」


いつも通り、仲が良いんだね
聞かなくても、その幸せそうな顔を見ていればわかる
少し面倒くさそうだけど、笑顔だったから


「それよりそっちはどうなの?」

「うーん……順調と言えば順調かな」

「早くあんたの衣装でステージに立ちたいわね」

「いやいや、それは早すぎるよ」


と、苦笑い
 
80: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/01/12(火) 19:27:15.46 ID:OPvCfhmC.net
「……色々あったわね」

「……そうだね」


にこちゃんは何か言いたそうな、言いたくなさそうな変な顔をしていた
気にはなったけど、あえてそれに触れなかった


「そういえば聞いた?絵里ちゃんと海未ちゃん、そろそろ同棲するんだって」

「あー、絵里から聞いたわよ、なんかアドバイス欲しいって言われたけど……」

「なになに、どんなこと言ったの?」


あー、と頭を掻きながらにこちゃんは


「別に、大したことは言ってないわよ、過干渉しすぎんな、とは言ったけど」

「過干渉?」

「一緒にいるからって踏み込まれたくないこととか、結構あるのよ」


あー、何か見ちゃったんだろうな……
にこちゃんの気まずそうな恥ずかしそうな表情を見ているとなんとなく分かる
 
81: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/01/12(火) 23:56:57.39 ID:OPvCfhmC.net
「ところであんたは?」

「へ?」

「前に聞いたわよ、もてるんだって?」


あー……穂乃果ちゃんかな、前飲んだ時そんなこと言ったかも……


「今は夢に向かって頑張る方が楽しいから、そういうのはいいかな」


と、苦し紛れに返す


「あっそ、別にいいけど」


にこちゃんが苦虫を噛み潰したような顔で素っ気なく返す
……どうしたんだろ
 
84: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/01/13(水) 10:20:41.12 ID:o9OnOPXH.net
「はー……回りくどいのってやっぱ苦手」

にこちゃんが苛ついたように頭を掻き毟る
私はミルクティーに手を伸ばしながら「へ?なんのこと?」と返すと


「あんた……穂乃果のこと、好きだったでしょ?」


思わず、手が止まってしまった


「……ばれてた?」


私は苦し紛れにそう返した
にこちゃんはコーヒーに口を付けた後、小さくため息をつきながら


「そりゃね。同じ人を好きになったんだから、分かるでしょ?」

「……それも、そうだね」
 
87: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/01/13(水) 11:36:02.50 ID:nMalMqBH.net
「わかんないのは、あんたが告白しなかったことよ」

「……残酷なこと言うんだね」

「言うわよ、現に後悔してるんじゃない」

「そんな、分かったようなこと……」

「分かってるから言ってるのよ」


にこちゃんの目は、真っ直ぐこちらを見据えていた
直視できないくらいに、眩しかった


「あんたの顔見てれば分かるわよ、いつまでも引きずってるじゃない」

「そんな、こと……」


ない
なんて、言い切れなかった
 
88: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/01/13(水) 11:43:45.34 ID:nMalMqBH.net
後悔が残ってるから、今がむしゃらになってるだけだ
忘れようとして、振り払おうとして


「そんな気持ちでやってて、本当に良いものって出来るの?」


にこちゃんは、変わらず真っ直ぐ私を見据えている


「忘れろって言いたいわけでもないけどさ……いつまでも未練タラタラじゃ穂乃果に笑われるわよ?」

「……やっぱりにこちゃんって、残酷な事を言うね」

「あら、嫌いになった?」

「まさか、それはないよ」


むしろここまでストレートに言ってくれるから、自分の甘えに気づかせてくれた


「じゃ、そろそろ私は行くから」

「うん、またね、にこちゃん」


あ、と何かを思い出したようににこちゃんは


「そういえば、あんた……今でも好きなの?」

「……それは内緒っ」

「……そ、じゃあね」


にこちゃんの顔を私は見なかった、にこちゃんもまた、私の顔を見ていないと思う
多分、それで良いんだって、心のどこかで分かってたから
 
89: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/01/13(水) 15:37:06.21 ID:ZV42xHaK.net
それからしばらくして、私はまたふらりと街を歩いている

好きなの?

答えはいつでも一つだけ

好きだった

何回唱えても足りないくらいに、大好きだった

きっと気持ちの話だけなら、誰にも負けていなかった

すぐに導けた簡単な一つの答えさえも、私は行動に移せなかった


「……あれ、ことりちゃん?」


……今日は、色んな人に会うなあ
振り向くと、サイドテールを解いた私の初恋がそこにいた
 
90: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/01/13(水) 17:59:29.35 ID:UeyCEKMU.net
「久しぶり、いつぶりだっけ?」

「えーと……この前飲みに行った時以来だから……1ヶ月?」

「もーそんな経つのかぁ、早いなあ」


暇つぶししてた穂乃果ちゃんに連れられる形で、私と穂乃果ちゃんはその辺をぶらぶらしていた


「そういえば、さっきにこちゃんに会ったよ?」

「え、本当?……暇だったら連絡くれてもいいのに」


一緒に暮らしてるのになんか変だね
うん?まあ、いつも通りだよ

なんて他愛のない話をしながら、穂乃果ちゃんと並んで歩く

まるで、デートみたい?

最近穂乃果ちゃんは髪を伸ばし始めている
昔に比べて少し大人っぽくなって、なんというか

……綺麗だな
 
91: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/01/13(水) 21:01:16.11 ID:O2hzYT9n.net
「ねえ、ことりちゃん聞いてる?」

「あ、うんごめんごめん」


……危なかった
見とれてしまっていた


「でさー、にこちゃんもデリカシーってもんがないんだよ、この前もさ……」

「あ、あはは……」


穂乃果ちゃんも、ない方だと思うけど……
これはさすがに黙っておくことにした


「……懐かしいなぁ」

「昔はこうやって色んなところで色んな話してたね」

「うん……でも、今もすっごく楽しいよ」


穂乃果ちゃんは変わらず太陽のような笑顔を振りまいた


「色々大変だけど、にこちゃんもいるし、みんなとはまだ仲良くできてるし……今が幸せ!ってね」

「……そうだね」


私も、同じ気持ちだよ
 
92: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/01/13(水) 21:06:35.01 ID:O2hzYT9n.net
「なんか、ことりちゃん元気なさそうだったから、ちょっとお説教みたくなっちゃった」

「へ?そ、そんなことないよ?」

「嘘だよー、だって顔に書いてある」


そ、そうかな?


「うん、だって、ずっと一緒にいたからね」


……ああ、そうか……そんな、簡単なこと
それはずっと認めたくなかった、一つの事実


「でもなんか今のことりちゃん、ちょっと明るくなったね」

「うん……ありがとう」

「いやいや、穂乃果はなんもしてないよー」


と、穂乃果ちゃんは照れ臭そうに顎をかく

……ううん、違うの
これが今の私の本当の気持ちだって、気づかせてくれたから


「……ん?あ、にこちゃんからだ……おっ!なんか暇だから遊びに行きたいって!ことりちゃんも行く?」

「んー……大丈夫」

「そっかー、残念だなぁ」

「また今度、みんなで遊ぼうよ」

「……うん、約束ね!」


次会う時は、もっと笑顔でいられるように
昔の私には、もうさよならしなきゃ
 
93: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/01/13(水) 21:11:44.49 ID:O2hzYT9n.net
出せなかったのは、勇気だった

置いて行けなかったのは、後悔だった

捨てられなかったのは、未練だった

やっとそのことに気づくことができた
今が、今を、一番幸せだって、そう思えるようになるまで、この気持ちを、この想いを、大切にしよう

それだけは、確かに大事にしていかなきゃいけないから

先ほどまで雨が降っていた空を見上げると、一羽の鳥が、何処かへと流れて消えていく


幸せになれた人

幸せになろうとしている人

そして、幸せを諦めたひと

色んな想いが、願いが、混じり合って一つに溶けた空

それはこれからも、いつまでも、続いていく
 
94: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/01/13(水) 21:13:41.00 ID:O2hzYT9n.net
おしまい

最後は駆け足でしたが、これにて幕切れです
 

引用元: http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1452152178/

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