【SS】ツバサ「紳士な淑女たち」

A-RISEーSS


1: (おにぎり) 2021/12/12(日) 22:15:18.79 ID:4mVMmy5t
【穂むら】

ガラガラッ

穂乃果「いらっしゃいませー! あ、ツバサさん!」


ツバサ「穂乃果さん。いつものやつ、お願いね」ニコッ


穂乃果「ほむまんとほうじ茶ですね。しばらくお待ちくださーい!」


 
Prrrrrrr...ピッ

ツバサ「…もしもしあんじゅ? 丁度よかった、今こっちからかけようとしてたの」


ツバサ「それで今夜なんだけど、久しぶりに三人で集まらない?」


ツバサ「場所は……もしもし? 誰か他の人が来てるの?」


   
ガラガラッ  


穂乃果「あ、いらっしゃいま――……え?」


   
ツバサ「もしもしあんじゅ? 誰なの?」


     
コツ…コツ…


「さようなら…綺羅ツバサ」チャカッ


ツバサ「――!!」


     

―――パァァァァン!  ビチャッ
   
 

2: (おにぎり) 2021/12/12(日) 22:21:40.14 ID:4mVMmy5t
――

――――

―――――――


キィィィ…


英玲奈「ただいま」


英玲奈(と言っても、応えてくれる者はいないんだがな…)


英玲奈「……」ハァ


英玲奈(一杯呷って一息つくか)


ガチャ


英玲奈「…ん? このボトルは……たしか未開封でとっておいたはずだが…」


 
カランカラン


「おかえりー」
 
5: (おにぎり) 2021/12/12(日) 22:27:18.35 ID:4mVMmy5t
英玲奈「!?」クルッ


「やー、遅かったから先に始めさせてもらってたよ♪」グビグビ


英玲奈「君は…」


英玲奈「一体どういうつもりだ、東條希」


希「ぷはーっ//」


英玲奈「小賢しい私立探偵の君が、どうして私の家にいる?」


希「それはもちろん、探偵のウチが動くのは事件のある時よ」


希「そのことについては、英玲奈さんの方がよーく分かってるんじゃない?」


英玲奈「何の話だ…」
 
6: (おにぎり) 2021/12/12(日) 22:33:11.52 ID:4mVMmy5t
希「今日は言伝を預かってるの」

希「ウチのボスのにこっちが、英玲奈さんのボスに買い取ってほしいものがあるんだって」


バサッ

英玲奈「なんだこれは」

希「今日までウチが苦労して撮りためた、秘蔵の写真や会話記録」

希「あ、え ちなのは無いよ? そちらさんにとってはある意味いや~んなものかも知らんけど」

英玲奈「……」


希「あとこれ、今までの取材記録に基づいてウチが書いた映画の脚本! これは中々の力作よ」

希「タイトルはそうだね……『実録!王綺羅ツバサ最後の日』なーんてピッタリじゃない?」

英玲奈「…ふざけているのか」

希「真面目も真面目、大マジよ」

希「にこっちはこれら全部あわせて2000万で売ってもいいって言ってる」
 
7: (おにぎり) 2021/12/12(日) 22:38:58.26 ID:4mVMmy5t
英玲奈「…悪い冗談だな」

希「それについては同感。だからこうして個人的に会いに来たの」


希「英玲奈さん。あなたとウチならいい関係を築けると思ってる」


希「だから取引しよ?」


希「2億円。ポンとウチ個人に払ってくれれば、今回のことは全部なかったことにするよ」


希「にこっちへの報告も、そっちへの脅迫もなし。ウチと英玲奈さんの間でマルッと綺麗に収めて、後はめでたしめでたしよ」


英玲奈「……話が飛躍しすぎてついていけないな」

英玲奈「なぜ2000万で済むものを、その10倍も出して君個人から買わねばならないんだ」

英玲奈「全てにおいて説明が圧倒的に不足している。その調子では、君の書いた脚本とやらも読めたものではあるまい」

英玲奈「よって、そこの紙束にそれほどの価値は無い」
 
8: (おにぎり) 2021/12/12(日) 22:44:25.63 ID:4mVMmy5t
希「あー言ったね? こんなお買い得な案件はないのに」

希「ハリウッドに売り込めば倍くらいの値がついてもおかしくない出来なんよ?この話」


希「はぁ……そこまで言うなら実際に聞いてもらおうではないか。ウチの努力と執念のトゥルーストーリーを!」

希「もちろん、これは英玲奈さんたちの物語でもあるから。顔見知りの人たちも沢山出てくるし、楽しめると思うよ?」

希「…それに最後まで聞けば、英玲奈さんはきっと2億出してこの脚本を買いたくなるはずだから」

英玲奈「……」

希「ではでは、しばし皆さまの耳目を拝借しましてー……愉快痛快のんたん劇場の、はじまりはじまりー」
 
10: (おにぎり) 2021/12/12(日) 22:49:52.21 ID:4mVMmy5t
――そもそもの発端は二ヶ月前、

デスクでふんぞり返ったにこっちのこんな一言から始まったんよ


――

――――

―――――――


にこ「あんた、今日から綺羅ツバサの周りに張り付きなさい」

希「綺羅ツバサって、あの王の?」

にこ「あのツバサよ。あんなのが何人もいてたまるもんですか」

にこ「最近、彼女が引退したがってるって噂があってね」

にこ「熱心に“栽培事業”の売却相手を探してるんですって。なんとも急な話じゃない?」

にこ「きな臭いトラブルの香りがプンプンするわ。ついでにゼニの匂いもね…」ニヒヒ

希「…いちおー訊いておくけど、綺羅ツバサはにこっちの憧れの人よね?」

にこ「そーよ。だから?」

希「職権乱用して生写真隠し撮りさせたり、お花とか手紙も毎月送ってたよね」

にこ「そんなこともあったかしらねぇ」

希「…そんなに堪えたん? この前のパーティでコケにされたのが」

にこ「どぅぁ~かぁ~らぁ! そのことは思い出させないでって言ってるでしょー!?」
 
11: (おにぎり) 2021/12/12(日) 22:55:07.76 ID:4mVMmy5t
 

~~


にこ『あ、あの! 綺羅ツバサさんですよね?』

ツバサ『あら、あなたは…』

にこ『矢澤探偵社のにこです! ほら…その…毎月個人的にお花とか送らせてもらってます…』エヘヘ

ツバサ『ああ…あなたが例の…』

にこ『あの…にこは、昔からあなたの大ファンで…! よければ握手を…』

ツバサ『そう』

にこ『………あのー? 握手とか…もしよろしければ…』

ツバサ『……』

にこ『ぁく、しゅ…』

ツバサ『……』スッ


パクッ

ツバサ『うん…このローストビーフ、中々いけるわね』モグモグ

英玲奈『それはローストポークというんだ』

あんじゅ『人違いよおバカさん』


クスクス… アハハハハ


にこ『………』プルプルプル
 
12: (おにぎり) 2021/12/12(日) 23:00:11.13 ID:4mVMmy5t




希「いや~、その件に関してはにこっちにも非があると思うよ?」

希「前にウチらが暴いた激安ラーメン不正表示疑惑の社長、ツバサさんの取引相手だったんよね?」

希「お陰で取引はご破算。社長さんも事業から撤退しちゃったし」

希「間接的に砂かけられた相手に握手求められて、応じる人なんてそうそう居ないやん」

にこ「そりゃそうかもしれないけど! だけどそれがうちの仕事だし!」

にこ「第一フォーマルな場だったのよ? プロの世界に生きる者同士、それはそれ、これはこれって割り切る場面じゃなくて?」

にこ「綺羅ツバサならそこら辺分かってくれると思ってたのに!」キィー
 
13: (おにぎり) 2021/12/12(日) 23:05:43.67 ID:4mVMmy5t
希「それで失望してアンチに転身したん?」

にこ「……ツバサのファンを辞めたわけじゃないわ」

にこ「好きが高じてこんなパパラ…調査会社まで興しちゃったくらい、あの人はにこの人生の指針だった…」

にこ「でもそれはそれ、これはこれよ! ツバサのこと敬愛はしても、人として風下に立ってたつもりはない」

にこ「私の王はこの私、矢澤にこなの!!」

にこ「この世の誰にもそれを踏みにじらせはしない……受けた屈辱は何倍にもして叩き返してやるわ」ヒクヒク
 
14: (おにぎり) 2021/12/12(日) 23:12:43.88 ID:4mVMmy5t
にこ「それに…あの場では思わぬ収穫もあったことだし」

希「?」

にこ「パーティに来てた西木野病院のお嬢さま……ほら、あの高慢ちきで有名な」

にこ「どうもあの子、ツバサの事業に興味津々って面してたのよねぇ」ニヤリ

希「またにこっちの勘か」

にこ「当たる勘よ。今ごろ二人してこっそり会って、事業譲渡の相談でもしてるんじゃないかしら」

にこ「というわけで希、早速確かめてきて」

希「やれやれ、人使い荒いんだから…」
 
15: (おにぎり) 2021/12/12(日) 23:17:58.04 ID:4mVMmy5t




ブロロロロロロ…


真姫「……」クルクル


ツバサ「目的地までもうすぐよ、お客さま」


真姫「……本当に、ここにあなたの“農園”があるの?」


真姫「私の眼には、何もない一面の原っぱしか映ってないんだけど」


真姫「おまけにさっきからチラホラ散歩に来てる人たちまで見かけるし…」


真姫「こんな所で人目に触れず大規模なクサの栽培なんて可能なの?」


ツバサ「そこが問題だったのよね」


ツバサ「ご存知の通りこの国は狭い……失敬、この東京(まち)は、だったわ」


ツバサ「かといってどこぞの学生よろしくベランダ栽培じゃ、とても年間50トンなんてノルマは達成できない」


ツバサ「そこで目を付けたのが土地を遊ばせてる地主たちよ。主に地方のね」


ツバサ「十分な地代と引き換えに、私がそのフロンティアを有効活用させてもらってるの」


ツバサ「彼らも負債にしかならない土地を抱えて困ってたし、お互いウィンウィンってやつね」
 
16: (おにぎり) 2021/12/12(日) 23:23:22.94 ID:4mVMmy5t
真姫「…それで? 私が聞いてるのは」

ツバサ「わかってる。どうやって人目を忍んでクサを育てているか、よね?」


キキィ

ツバサ「その答えはすぐそこよ。さ、降りてちょうだい」バタン


 

真姫「…なに、この小汚いコンテナは」

ツバサ「入ってみれば分かるわ」ガチャン


ギィィ…


ツバサ「ようこそ、年商200億の工場の入口へ」
 
17: (おにぎり) 2021/12/12(日) 23:28:37.57 ID:4mVMmy5t
真姫「ふーん…ずいぶん質素な工場だこと」

真姫「その長机とハンマーだけで、何を作ればそんなに儲かるのかしら?」

ツバサ「一見で判断しちゃ駄目よ」カチッ


ガタガタ…ウィーン


真姫「っ…!? 机が割れた…?」


 
ゴウンゴウンゴウン…


真姫(床が下に降りてる……コンテナの中が、丸ごとエレベーターになってるの?)


   
真姫「ふん……安っぽいスパイ映画みたいね」


ツバサ「いいえ、A級予算のギャング映画よ」
 
18: (おにぎり) 2021/12/12(日) 23:36:27.14 ID:4mVMmy5t
ツバサ「昨今はご近所から緑が消えて久しいとか何とか」


ツバサ「そんなことを言う人たちは、この国の本当の広さが分かってないの」


ツバサ「ビルが上へ上へと伸びるように、緑は土の下にその新居を求めた」


 
ゴウンゴウン…ガシャン


ツバサ「ここが、私の王国(ジャングル)よ」


   
真姫「………驚いた」


     

【イw(´ヮ`ハ 室温管理 87.4℉厳守 (・8・)】


花陽「~♪」チョキチョキ


ことり「えへへ…早く大きなぁれ」ジョヨジョロ


花陽「あ…凛ちゃんダメだよぉ、それ売り物なんだから」


凛「これだけあるしバレっこないにゃ~……ぁ゛っ」


海未「りーーんーー? そのクサの山を一体どうするおつもりで?」パキポキ


ニャア゛ア゛ア゛ア゛ア゛…
 
19: (おにぎり) 2021/12/12(日) 23:41:50.96 ID:4mVMmy5t
ツバサ「ご覧の通り、うちには最高の設備とスタッフが揃ってる」

ツバサ「そしてこれらを提供してくれる地主たちとのコネ」

ツバサ「全部ひっくるめてそっちのものになると考えれば、400億って売値は良心的にすぎるくらいよ」

ツバサ「きたる医療用大麻解禁の波も、あなたには追い風になるはず。ね、Dr.西木野さん?」

真姫「わっかんないわねー」クルクル

真姫「私が引っかかるのは、どうしてこんな美味しい事業をみすみす手放す気になったのかよ」

真姫「そこのところハッキリさせてくれないと、こっちだって安心して引き取れないデッショー」


ツバサ「……あなたの言う通り、この事業はここからが伸び盛りよ」

ツバサ「でもそのためには、私が合法なビジネスを続けてきたことを国のお偉方に示す必要が出てくる」

ツバサ「その過程で、互いの痛い腹を探り探られするのは正直……キツイのよね」
 
20: (おにぎり) 2021/12/12(日) 23:47:11.53 ID:4mVMmy5t
ツバサ「いえ…正確に言えば不可能ではないわ」

ツバサ「これまで通り、私がこの事業を続けていくことも」

ツバサ「でもね、今さらそこまでする意義が……昔みたいな気力が湧いてこないのよ」

ツバサ「もうここらでいいかなって……引退して、日向の道を散歩するのも悪くないわ」

ツバサ「捻りのない答えで申し訳ないけど…でも、これが真実よ」

真姫「……」クルクル

真姫「半分、ってとこかしら」

真姫「まだまだ肝心な部分を教えてもらってないわ」

真姫「農家の話は聞き飽きたから、次は市場の話をしてちょうだい」

真姫「そこまでして初めて、あなたのビジネスを引き継げるってものでしょ?」

ツバサ「ここから先は有料よお嬢さま。続きは400億揃えてきた取引の場で…」ブーブー

ツバサ「っと、失礼……もしもし、あんじゅなの?」ピッ


ツバサ「――え? 今すぐそっちへ?」
 
21: (おにぎり) 2021/12/12(日) 23:52:46.59 ID:4mVMmy5t
【優木モーターガレージ】


ダンシンダンシン ノンストップダンシン♪

あんじゅ「リムジン40台を一括で?」

可可「はいデス!」

あんじゅ「…えっと、日本語間違えてるとかじゃないのよね?」

あんじゅ「ここにあるのと同じリムジンを40台、うちにタダでくれるっていうの?」

可可「だからそう言ってマス」

可可「気にしないでクダサイ。可可の国は今バブルなので」

可可「可可はあなた方を心から尊敬してるのデス。これはお近付きの印だと思ってもらえレバ」
 
22: (おにぎり) 2021/12/12(日) 23:57:52.53 ID:4mVMmy5t
あんじゅ「はぁん…なるほどね」

あんじゅ「それで、見返りに何か欲しかったりするの?」

可可「可可はあなたのボスにお会いしたいのデス!」

あんじゅ「…ツバサは私のボスじゃないわ」

可可「アリェ? それは大変失礼を……でも絶対に後悔はさせまセンノデ!」

可可「では連絡お待ちしてマス! 再见~♪」

あんじゅ「……」
 
23: (おにぎり) 2021/12/13(月) 00:03:03.18 ID:ymnxula1
――
―――

あんじゅ「ということがあったんだけど…」

ツバサ「唐可可といえば、鍾嵐珠の組織のNo.2ね…」

あんじゅ「そうなんだ…組のツートップが香港人と上海人って、上手くやれるものなの?」

ツバサ「あそこはボスがよくも悪くも豪放だから……下はどう思ってるか知らないけど」

あんじゅ「じゃあ、あのですますチャイナの独断って可能性も…」

ツバサ「わからない。でもここまでされた以上、確かめる必要はありそうよ」

ツバサ「明日にでも会ってみるわ。英玲奈を連れてね」

あんじゅ「気を付けなさいよ。ただでさえ引退の噂が広まってるこの時期に」

あんじゅ「みんながあなたの足元を掬おうと狙ってるはずなんだから」

あんじゅ「忘れないで。ジャングルの王でいるには…」

ツバサ「振る舞いだけでなく、王そのものであれ」

ツバサ「ちゃんと分かってるわよ。女王サマ」
 
24: (おにぎり) 2021/12/13(月) 00:08:23.70 ID:ymnxula1
【翌日――穂むら】


ガラガラッ

穂乃果「いらっしゃいませー! おひとりですか?」


可可「イエ、待ち合わせデス…」キョロキョロ


可可「ア! ツバサ大姐! 你好,我是可可!」パタパタ


ツバサ「……」


可可「やーっとお会いできて可可は感謝感激が止まりマセヌ! 嵐珠大姐もよろしくと言ってマシタ!」


ツバサ「……その前に、ここお座敷だから靴を脱いで?」


可可「おっとスミマセン……興奮するとつい忘れちゃいそうになりマス…」ヌギヌギ


可可「可可の国では、人前で足先を晒すのは大変な失礼にあたるノデ…」
 
25: (おにぎり) 2021/12/13(月) 00:13:48.99 ID:ymnxula1
ツバサ「突然一方的に高価な贈り物を押し付けるのは失礼ではないのかしら?」

可可「お気に召さなかったのなら謝りマス。可可はただキッカケが欲しかったのデス」

可可「あんなリムジンなど物の数でない…」

可可「“園芸業界”から退くあなたの為の充分な退職祝いの用意があるト」ポチポチポチ

可可「そのことをお伝えしたクテ、今日はここに来まシタ」っスマホ

可可「…どうデスカ。今だけの破格のお値段デスよ」


ツバサ「……そうね。破格すぎて、ゼロが二つほど足りないわ」


ツバサ「そうでなくとも、あなた達には売らない」


ツバサ「分かったら、速やかに私のジャングルからお引き取り願えるかしら」
 
26: (おにぎり) 2021/12/13(月) 00:19:28.48 ID:ymnxula1
可可「…身の丈を越しすぎるのは良くないことデス」

可可「あなたはジャングルの空を舞う鷹で、王だったかもしれまセン…」

可可「デスがそれも昨日までの話」

可可「もしジャングルにドラゴンがやって来たとしたら……とっとと逃げた方が身のためデスよ」


ツバサ「……」ズズ

ツバサ「はぁ……ここのお茶は美味しいわ」

ツバサ「あなたは飲まないの? 冷めちゃうと勿体ないわ」

可可「生憎喉は乾いてませんノデ」

ツバサ「そう……でもせっかくだし」


 
ツバサ「あなたも味わっていきなさいな」バシャッ


可可「!!アチッ」


   
――BANG!
 
28: (おにぎり) 2021/12/13(月) 00:24:55.72 ID:ymnxula1
 
ガシャァン!

可可「ッッッ~~! 熱っ…アッツ…痛ぅ??!」ボタボタ


可可「エ……ナンデ?ナンデ? 今日はアノ日ではないはずデスのに…!」


可可「なのにナンデ…可可の珍棒が赤チン棒になってるのデスカぁぁ~~!!」ズリズリ…


   
ツバサ「…さっき脱いだ靴でも探してるの?」シュウウウウ


ツバサ「でもその前に、そのみっともない豆タンクをしまった方がいいわよ?」ギュムッ


可可「啊♡」


ツバサ「龍だかリーユーだか知らないけど…あなたのドラゴンさんは随分と情けないご様子ね?」グリグリ…


可可「啊♡啊♡ ;駄目デス…それ以上は…♡」ハァハァ


ツバサ「いいこと? ジャングルの掟はただ一つ」


ツバサ「鷹は、腹が減れば喰らう……それだけよっ」BANG!BANG!BANG!BANG!


 
~~~~~~~~~~~~~~~


~~~~~~~~


~~~
 
29: (おにぎり) 2021/12/13(月) 00:30:08.91 ID:ymnxula1
~~~


~~~~~~~~


~~~~~~~~~~~~~~~


英玲奈「待て待て。おい待てと言ってるんだ東條希」

希「んー?」ジュウウウウ

英玲奈「君は何を当然のような顔をして、他人の家で、他人の肉を、他人の鉄板を使って焼き始めてるんだ?」

希「いやだって、話してたらお腹減ってきたからつい…」

英玲奈「君の日本語は文法以外間違いだらけだよ」

英玲奈「…今の話にしたってそうだ。君は話を無駄に盛り過ぎている」
 
30: (おにぎり) 2021/12/13(月) 00:35:20.35 ID:ymnxula1
英玲奈「私の知るツバサは、少なくとも馴染みの店でドンパチをやらかす人間ではない」

英玲奈「唐可可の描写についても……方々から苦情が来ても知らんぞ?」

英玲奈「第一、実際の現場には私自身や唐のボディガードたちも居合わせていたんだ。簡単に撃ち合いなど起こるはずもない」

希「わかってる、それはわかってるんよ。けどね」

希「映画化にあたって大事なのは、みんなが期待してるものを見せることやん?」

希「だからある程度のフィクションに、派手なアクションも混ぜないと……焼肉屋に来て野菜しか出てこなかったらがっかりするでしょ?」

英玲奈「私は菜食主義だ」

希「あー…三食カ口リーメイトとかのイメージだったわ」
 
31: (おにぎり) 2021/12/13(月) 00:40:25.62 ID:ymnxula1
―――ゴホン、

じゃあ英玲奈さんのご要望にお応えして、

実際の状況に近いバージョンで再上映するね?


 
――

――――

―――――――


    
可可「――デスがそれも昨日までの話」

可可「もしジャングルにドラゴンがやって来たとしたら……とっとと逃げた方が身のためデスよ」


ツバサ「……」ズズ


ツバサ「ふぅ……」


ツバサ「………あなた達は故事的なものが大好きなようだから、こちらもとっておきのを披露するわ」


ツバサ「あるところに間抜けなドラゴンと狡猾な鷹がいました」

ツバサ「ドラゴンが縄張りを分けてくれと、何度断っても迫って来るのにうんざりした鷹は」

ツバサ「ある時ドラゴンを散歩に連れ出して、頭に五発の銃弾を撃ち込んで〇してしました」

ツバサ「おしまい」


可可「………ハ?」
 
32: (おにぎり) 2021/12/13(月) 00:46:08.81 ID:ymnxula1
ツバサ「どうも何かの教訓がこめられた話らしいんだけど」

ツバサ「私…センターとか共通とか受けずに今の進路に進んじゃったクチで」

ツバサ「筆者の気持ちを考えよ~的なのは苦手なのよね」

ツバサ「あなたは賢いって評判だから、もしよければ解説してもらえると助かるんだけど…」ズズ

可可「……」


英玲奈「…ツバサ、そろそろ時間だ」

ツバサ「そう、じゃあ行きましょうか」ガタッ


ツバサ「穂乃果さん。今日も素敵なお菓子とお茶をご馳走様」

穂乃果「えへへっ、またいつでもお越しくださーい」


 
可可「…ツバサ大姐」

ツバサ「そうそう。あのリムジンは40台、耳を揃えて丁重にお返しさせてもらうわ」

ツバサ「あんな手垢のついた盗品デッキを組む趣味は、私にもあんじゅにも無いから」

可可「ッ~~」


ガラガラッ アリガトーゴザイマシター
 
33: (おにぎり) 2021/12/13(月) 00:51:22.49 ID:ymnxula1
~~~


~~~~~~~~


~~~~~~~~~~~~~~~


希「とまあ、こんな感じ?」

英玲奈「概ねな」

英玲奈「実際には中国人たちに先にお帰りいただいた」

英玲奈「やつらの怒りの矛先が店に向かないよう、ツバサが配慮した結果だ」

希「いい話やん。でもそれだとちょっとテンポ悪いかも」モグモグ

希「やっぱり多少の脚色は必要よ。その方が話もすっきりして、喉通りもよくなるし」ゴクン

英玲奈「ここまででも満腹で、これ以上付き合わされるのはうんざりなんだが…」

希「あー!もうお肉無くなっちゃった」

希「ちょい待ってて。新しいのをとってくるから」

英玲奈「待て。君はもう、そこを動くな。私が行く」


英玲奈「いいか。絶対にそこを動かず、何も動かすな」


英玲奈「……絶対だぞ」スタスタ


 
希「……」ソロ~


   
英玲奈「!!」クルッ



希「」从[´・֊・]从✌


   
英玲奈「……なんだそれは」


 
希「来るときに拾った」


   
英玲奈「……寄こせ。ついでに捨ててくる」
 
35: (おにぎり) 2021/12/13(月) 00:56:41.35 ID:ymnxula1
   

スタスタ…


英玲奈(はぁ……何をやっているんだ私は)


英玲奈(だがあの東條という女は油断できない)


英玲奈(やつが今回の事件についてどこまで知っているのか)


英玲奈(今しばらくは好きに喋らせるのが得策か…)


 


ガチャガチャ

英玲奈「むっ? 冷凍庫の扉が開かない…?」


英玲奈(中で“アレ”が引っかかってるのか…?)ガチャガチャガチャ


英玲奈「……まったく、どいつもこいつも」


英玲奈「手間をかけさせる………なっ!!」ガチャコンッ


ドサドサドサ――!!!

英玲奈「ぅおっ!?」
 
36: (おにぎり) 2021/12/13(月) 01:02:05.27 ID:ymnxula1
 


英玲奈「っっ……少し軽率だったか」


英玲奈「大体私は嫌だったんだ…なぜ菜食主義者がこんなものを…」


英玲奈「食べもしない肉をこうして拾い集める必要がどこに……」 ――ドサッ


英玲奈「…………」クルリ


英玲奈「……やはり君の仕業だったか」


   
氷漬けの女『―――』


 
英玲奈「……五月蠅くしてすまないが、今は厄介な客が来てるんだ」ヨッコラセ


英玲奈「もうしばらくはその中で大人しくしててくれ……」ドサッ


    
氷漬けの女『―――』


 
英玲奈「……そんな目で見るなよ」
 
37: (おにぎり) 2021/12/13(月) 01:07:17.10 ID:ymnxula1
―――さてさて、

英玲奈さんがお肉を取りに行ってる間に、こっちは話を進めちゃうよ?


ここからはお待ちかねのアクションシーン

しかも今度のは脚色ゼロ、全部ホントにあったことなのだ


時系列はツバサさんが可可ちゃんの誘いをすげなく袖にした日の晩


ツバサさんの所有する“地下農園”の入口に、こっそり忍び込もうとする九つの影が―――


ありゃりゃ、何だか絶妙にタイミングが良すぎるような……?


はたして農園の運命やいかに……!
 
38: (おにぎり) 2021/12/13(月) 01:12:33.89 ID:ymnxula1
――

――――

―――――――


ゴウンゴウン…


凛「あれれ? 誰かエレベーター動かしてる?」

花陽「みんなここに揃ってるけど…?」

海未「妙ですね…ボスからは何も聞いてませんが」


 
ゴウンゴウンゴウン…


「いいのかなぁ。侑ちゃんに内緒でこんなこと…」

「なーにビビってるんですかっ、サプライズが目的なんだからこれでいいんですよ!」

「かすみさんの言う通りです!!!!」

「ってヤバ、人いるし! みんな“ボーっと”してないで、早くボードで顔隠して!」

「こんな時のために用意してた甲斐があった。璃奈ちゃんボード『量産型』」


ことり「…?」


ガシャンッ
 
39: (おにぎり) 2021/12/13(月) 01:17:41.91 ID:ymnxula1
 
/パッ\


ベベン♪(歌舞伎的なSE)


jΣミイ[˶º ᴗº˶]リ 「今宵…不義の香りに誘われて」

从[>ᴗ<]从「推参したるは、黒暗に架かる九色の虹」

@cメ*[◉ _ ◉]リ 「わ、我ら、地獄の徴税人……あ、あれ? なんか私だけ表情怖いっ?」

⁄/*イ`[^ᗜ^]リ 「ここからは、私たちのステージです!!!!」

╰*[ ..>ヮ<..] *╯ 「Va cagare! Figlio di puttana!」

ノレcイ´[=ω=] 「…Zzz」


从cι[˘σ ᴗ σ˘]* 「………でえええっ??? 果林先輩がいないんですけど!??」

ζ㎗[òヮó]リ 「愛さんボード『wwwww』 クサだけに!!」

从cι[˘σ ᴗ σ˘]* 「か、かすみんが代わりま「うおおおおおっ燃えてきました!!!!!」ちょっと被せないでくださいよ!!」
「歌舞伎だけに……なんつってー!!」「愛さん、しつこい」「草だよー」「というかこれどれだけあるんですかね…」「侑ちゃんに画像送ってあげよっと」ポムリン
「動画の方はお任せください」「帰りどこ寄ってくー?」「打ち上げならシェー〇ーズ一択です!!!!!」「あ゛あ゛あ゛あ゛も゛う゛うるさいなぁぁぁあ」



ことり「……ひとりずつ喋れや」チッ
 
 
40: (おにぎり) 2021/12/13(月) 01:22:36.24 ID:ymnxula1
日曜洋画劇場


               ラブライブ!× ジェントルメン
 
41: (おにぎり) 2021/12/13(月) 01:27:58.25 ID:ymnxula1
ジェントルなウーメンたちまとめ


【王】ツバサ

・引退のために事業の売却相手を探す


【令嬢】真姫

・きたる医療大麻解禁に向け、ツバサの事業に興味津々?


【チャイナマフィア】可可

・ランジュの組織のNo.2で、ツバサの事業を買い叩きたい


【女王】あんじゅ

・会員制の高級車ガレージを経営、リムジンは趣味じゃない


【右腕】英玲奈

・ツバサの用心棒兼片腕
・(現在)希と一緒に事件を振り返るハメに


【探偵】希

・にこの指示でツバサの周囲を嗅ぎまわる
・(現在)事件をまとめて映画化を目論む?


【冷凍庫の死体】

・???


【謎のボード集団】

・????
 
42: (おにぎり) 2021/12/13(月) 01:33:53.63 ID:ymnxula1
もしかしたら更新が不安定になるかもしれませんが毎日投下できるよう頑張ります
 
45: (おにぎり) 2021/12/13(月) 22:25:30.67 ID:ymnxula1
ここまでのあらすじ


王ツバサが事業を手放す――その噂を聞きつけ、瞬く間に金に汚い有象無象が群がり始めた

後釜候補の金満ドクター、利権目当ての中華マフィア、口止め料と映画化狙いの私立探偵etc...

様々な思惑が交錯する裏社会の渦中で、はたしてツバサは無事引退することが出来るのか

そして今、彼女の所有する大麻畑の一つに、所属不明のボード集団が殴り込みをかけ……
 
46: (おにぎり) 2021/12/13(月) 22:32:17.80 ID:ymnxula1
【同刻――ヤクドナルドハンバーガー お台場店】


店員「こ、困りますぅ…私には心に決めた人が…」

千砂都「へへ…ちょっとくらいいいじゃんかYo!」

かのん「私たちと遊んだほうが絶対楽しいってw」

平安名「ヘイヨー,お見知りおきに自己紹介♪ 私の名前は平安名(以下略)」

恋「啖呵切る~そなたとヤリたい~愚息虫~」

店員「短歌でないのに季語が入ってませんよぅ…」

恋「ナンパですので」


 
ヒソヒソ ナニアレ ダレカタスケナヨ…


「はぁ……やれやれやれ」ガタン

「まったくさっきから聞いてればノイジーちゃんたちは…」ガタッ
 
47: (おにぎり) 2021/12/13(月) 22:37:44.27 ID:ymnxula1
かのん「あ゛ぁ? そこの二人、なんか文句でもある?」


侑「あのね…ハンバーガーを食べてる時は、なんというか救われてなきゃあダメなんだよ…」

ミア「同感だね。キミたちはジャンクフードの王への礼儀を欠いてる」


恋「どちら様で?」

ミア「ボクはここの店員さ。恰好で分かるでしょ」

平安名「店員がどうして客と一緒の席で食べてるのよ」

ミア「そこにハンバーガーがあるからに決まってるだろ、頭ハッピーセットなのか?」


ミア「…それよりキミらは自分たちの心配をした方がいい」

ミア「ボクの隣にいる彼女が誰か、本当に分かってるのか?」

かのん「はぁ…? そこのヒョロチビがどうしたって…」


かのん「……あれ? その肩に羽織ったクソダサジャージって、まさか……」カタカタ


かのん「しゃ、シャバいよみんな…! この人、“ジャー”マネだっ!!」
 
48: (おにぎり) 2021/12/13(月) 22:44:03.65 ID:ymnxula1
千砂都「ジャーマネって、虹ヶ咲ジムの!?」

恋「あの問題児たちの性ど…まとめ役を務める陰の実力者…!!」ワナワナ

平安名「マズイったらマズイのよよよっっ」Yo!

ミア「じゃあ、ボクは仕事に戻るよ。あとはキミ一人で十分だろ?」スタスタ…


 
侑「……フーッ、4対1か。久々に本気出しちゃおっかな」コキコキ


かのん「か、勘弁してください…! もしケガでもさせたら…」


侑「安心して。最近練習してる非っ〇技があるんだ」


侑「こうして、相手のアゴを一撃で………しゅっ!」ゴキィ


侑「………」


侑「…………ごめん………肩、外れちゃったみたい……」プルプル
 
49: (おにぎり) 2021/12/13(月) 22:54:38.85 ID:ymnxula1
 

侑「グスッ…わっ、悪いんだけど……誰か、救急車呼んでもらえると………あれ?」プルプル


 

チレカ平「知らない知らない!!!! 私たちのせいじゃないも~ん!!!!」ドタバタピュー


   


侑「…………いっちゃった」プルプルプル


侑「自分で何とかしなきゃ……こっちの腕でケータイを……」プルプルプルプル


 

侑「………あ、歩夢としずくちゃんからLINEきてる」


侑「……これって、動画のリンク…?」ポチポチ
   
 
50: (おにぎり) 2021/12/13(月) 23:03:29.67 ID:ymnxula1



【NIJIGAKU Presents...】


【NIJI 4th FIGHT CLUB!】カンカンカーン


 

――ガサガサガサザザッ……ブブッ……なた達、ここのクサが誰のものか、分かっているのですか?』


⁄/*イ`[^ᗜ^]リ 『はい!!! 今日から私たちのものです!!!!』

ζ㎗[òヮó]リ 『こっちは9人で、そっちの倍以上いるんだよ?』

╰*([ ..•ヮ•..]) *╯ 『正しくは迷子の果林ちゃんを除いて8人だねー』


凛『あはっ、そんなカンタンな計算も出来ないのー?』

凛『こっちには海未ちゃんがいるから、1+1+1+100で300にゃ! そっちの10倍だよ10倍!』


从cι[˘σ ᴗ σ˘]* 『バッカですねぇーー!! 何をどうしたら3と8を間違え……あれ? 言われてみれば結構似てる…?』

从cι[˘σ ᴗ σ˘]* 『………うわっヤバ、ほんとに10倍差じゃん! どうするんですかコレ!? かすみんまだ捕まりたくない~~!!><』


 
『問題ない。私が300人分になる』
 
51: (おにぎり) 2021/12/13(月) 23:09:18.63 ID:ymnxula1
 
ズウン… ズウン…


花陽『んな……ななな、ナニアレ…!!』


凛『ひょ、ひょ、ひょっとして映画とかで見るパワードスーツ的なアレかにゃ!??』


   
ズゥーン…..

从[´・֊・]从 『正解。璃奈ちゃんボディ【パワードきんにくん】』ピクッピクンッ


 


/バツンッ\


『電気が消え……!』


『なんにも見ないよーー!!』


『おそらく果林ちゃんの仕業だね~』


『今だみんな! ボードの暗視機能をオンにして!』


 
ブゥゥゥゥゥン―――ザザザッ…


从cι[˘σ ᴗ σ˘]* 『うっひょー! こちらだけスケスケですよぉーー!!』


海未『くっ…かかってきなさ――がはっ!?』


ことり『大変…!ハッパさんが痛んじゃ…ぴぃ!?』ズデーン


⁄/*イ`[^ᗜ^]リ 『さあ!!!! パーティの始まりですねっ!!!!!』
   
 
52: (おにぎり) 2021/12/13(月) 23:15:10.83 ID:ymnxula1
PC『ワーワー…ニャァ゛ァ゛ァ゛…』

あんじゅ「…なぁにこれ。ハロウィンの出し物?」

英玲奈「ライブ配信されたものの切り抜きらしい。一部で大変な騒ぎになっている」

あんじゅ「はぁ…今のコたちってこういうのが好きなの?」

英玲奈「まだそんなことぼやく歳じゃないだろ」

あんじゅ「5歳も違えば5億光年離れたエイリアンと同じよぅ」

ツバサ「…映ってるのは私の農園ね」

英玲奈「さっき確認を入れたが、残念ながら襲撃は事実だった」

英玲奈「多勢に無勢で警備は全員ノックアウト。クサは根こそぎ持っていかれたそうだ」
 
53: (おにぎり) 2021/12/13(月) 23:20:35.86 ID:ymnxula1
ツバサ「中国人をフッた途端にこの始末…」

ツバサ「出来すぎてるわ」

あんじゅ「ツバサ…」


英玲奈「もう一つ悪い知らせが」

英玲奈「西木野のご令嬢からお前宛にラブコールだ」っ受話器

英玲奈「動画を観たらしく、完全にとさかにきたキラートマトだ。完熟を通り越して破裂寸前のな」

ツバサ「貸して。貴族サマのご機嫌取りには慣れてるわ」
 
54: (おにぎり) 2021/12/13(月) 23:27:27.70 ID:ymnxula1
【虹ヶ咲ジム】


かすみ「むふふー♪ 今回もかすみん可愛く撮れてますねぇ」カチカチ

しずく「というかここ、かすみさんだけ顔見えちゃってるね」

かすみ「げっ、ホントだ! りな子ぉ、ちゃんと編集しといてよ~」

璃奈「璃奈ちゃんボード『うっかり』 でもかすみちゃん顔隠すの嫌がってたし、このままでも」

かすみ「いやいやダメでしょ。このままじゃかすみんのプリティフェイスが全世界の視聴者に…ってサイコーじゃんそれ」

しずく「そもそもなんで戦いの最中にボードを脱いだの?」

かすみ「だってアレさー、ストームトルーパーのヘルメット並みに視界が…」


<ドタバタガチャ!

侑「ちょっとちょっとちょっと!!! どうしてうちのジムがジャングルになってるの!?」ガサガサガサッ 
 
55: (おにぎり) 2021/12/13(月) 23:33:23.23 ID:ymnxula1
かすみ「侑先輩! かすみんたちの動画…」

侑「観たよ!! さっき入口で、クサの積み下ろしをしてるエマさんたちにも会ったよ!!」

侑「しかも私の車からね!! みんな何考えてるの!? 再来月には試合なんだよ? それをあんな無茶苦茶……ケガとかしなかった?」

しずく「全員かすり傷一つありませんね。侑先輩はどうして腕を吊ってるんですか?」

侑「わ、私のことはいいの! それよりこのクサの山と例の動画を「侑ちゃーん♡@cメ*˶ˆ ᴗ ˆ˵リ」ってのわあああ!??歩夢ううう!??」ズデーン!
 
56: (おにぎり) 2021/12/13(月) 23:40:11.24 ID:ymnxula1
かすみ「お、歩夢先輩、さっそく侑先輩相手にニジガクタックルの練習ですか?」

@cメ*˶ˆ ᴗ ˆ˵リ 「えへへ♡ 侑ちゃ~ん♡♡」ポムポムペロリン 

侑「あ、歩夢…!?なんか顔つきが変だよ!? そしていつにも増して舌圧が凄い!!!」


jΣミイ˶º ᴗº˶リ 「あー…それは多分このクサの所為かと」

从cι˘σ ᴗ σ˘* 「ほら、ウィスキーボンボン食べて酔っちゃう人っているじゃないですか。歩夢先輩もきっとそのタチなんですよ」

从cι˘σ ᴗ σ˘* 「まーこれだけのクサに囲まれてたら、香りだけで脳内ジャングルフィーバーになっても無理はないですけど♪」

侑「って言ってるかすみちゃんたちもだ!?」

从cι˘σ ᴗ σ˘* 「あ~、わかります? 実はさっきからかすみんもいい気分でぇ……侑先輩も一緒に気持ちよくなりましょうよぉ」ヒヒッw

侑「ちょ、まっ…だ、誰か二人を止めてー!!」

从´・֊・从 「無理。一度こうなった侑キチたちを止めるのは、バズった動画を消そうとするのと同じ徒労」

从´・֊・从 「今の侑さんは発情したウサギの穴に飛び込んだ獲物も同然。璃奈ちゃんボード『南無レズダブルピース』」


ザッ… 

ユウ~? ユウサン!!!!! ユウユー♡ ユウチャン コッチニオイデ-?


侑「み、みんな……私、ケガ人だからお手柔らかに……しずくちゃんも撮らないでってば! あ、やめ……ん、ンアーーー!!!⎛(cV„≧ Д ≦V⎞」バキボキトキメキィ


―――

 
57: (おにぎり) 2021/12/13(月) 23:47:27.11 ID:ymnxula1
【数日後――優木モーターガレージ】


ツバサ「あんじゅ、あなたにお土産よ」

あんじゅ「なぁにこの箱。チョコレート?」

ツバサ「開けてびっくり。中身は小さなおハジキよ」

あんじゅ「…拳銃じゃない。しかも成金趣味丸出しの…」ピカピカ

ツバサ「送り主の察しはついた?」

あんじゅ「……西木野さんね。はぁ…何でこんなもの」

ツバサ「それで警備を固めなさいって。あの動画の体たらくじゃ自分が買う頃には草一本残ってないって、散々な嫌味と一緒にね」

あんじゅ「当てつけなのは分かるけど、こんな22口径のデリンジャーでもこの国じゃ違法なのよ?」クルクル

ツバサ「今の段階では…ね。うちの商売と一緒。お嬢さまは皮肉もお上手ね」

あんじゅ「…後で燃えないゴミに出しとこっと」
 
58: (おにぎり) 2021/12/13(月) 23:53:54.51 ID:ymnxula1
ツバサ「そんなわけで、私と英玲奈はしばらく街を空けるから」

ツバサ「これ以上お嬢さまのケツ圧が上がっちゃう前に、全国の農園を周って警備体制を強化しなきゃ」

あんじゅ「…どうするのが一番効果的かしら」

ツバサ「例のボード集団にここの農園を嗅ぎ付けられた理由は未だ謎よ」

ツバサ「ハイエナどもに他の農園の所在もバレてるとしたら、盗られて困るものを無くすしかない」

ツバサ「ってことで、全ての農園を一時的に閉鎖しようと思うの」

あんじゅ「あらぁ…地主さんたちはさぞ残念がるでしょうね」

あんじゅ「…地代もとい口止め料は払い続けろって、ブー垂れる人が出てこなきゃいいけど」

ツバサ「その分のご機嫌取りも兼ねてよ。ああ、愉快な旅になりそう…」
 
59: (おにぎり) 2021/12/13(月) 23:59:59.54 ID:ymnxula1
――――

―――――――


【内浦――黒澤家(第12番農園)】


ダイヤ「……そうですか。ここを閉じられると…」

ツバサ「一時的なものよ。引き払う際にも迷惑はかけない」

ツバサ「あなたとはこれまでいい関係を築けてきた。この先もそうでありたいもの」

ダイヤ「………そう、ですね……」

ツバサ「…調子悪そうね? 地代は払えなくなるけど、何か力になれることがあれば…」

ダイヤ「……お金の話ではないのです」

ダイヤ「実はわたくしの妹………ルビィが、行方知れずになりまして………」
 
60: (おにぎり) 2021/12/14(火) 00:06:08.94 ID:mCsLIc+z
※※※※※


にこ「黒澤ルビィは薬中よ」

にこ「ま、自分ちの庭で他人がクサ育ててるんですもの。さもありなんね」

にこ「…問題はクサ以上のものに手を出し始めたこと」

にこ「ヤク友に会いに函館に行った時に、向こうでロシア人の子にそそのかされてね」

にこ「しかもそのヤク友ってのが、これまたツバサとねんごろな大地主の妹ときたわけ!」

にこ「最ッ高のネタじゃない! 綺羅ツバサ、商品で汚れなき令嬢たちを食い物にする」

にこ「次の●春の見出しはこれで決まりよ!!!」


※※※※※
 
61: (おにぎり) 2021/12/14(火) 00:12:05.93 ID:mCsLIc+z




英玲奈「家出した黒澤の妹を連れ戻すだと?」

ツバサ「…実は函館の鹿角さんからも同じような頼み事をされてるの」

ツバサ「家出した二人に共通してるのは育ちの良さ、周囲の期待、優秀な姉、胸の薄さ…そして身近にヤクがあったこと」

英玲奈「…ヤク満だな」

ツバサ「それに関しては、こちらにも幾ばくかの責任はあるわけだし…」

ツバサ「英玲奈、任せられてくれる…?」
 
62: (おにぎり) 2021/12/14(火) 00:17:24.92 ID:mCsLIc+z
英玲奈「……」フーッ

英玲奈「そう言うだろうと思って、既に調べは付けてある」

ツバサ「…だからあなたは最高なのよ」クス

英玲奈「いや、何も最高じゃない。二人の居所はこの辺りでも最底辺のゴミ溜めだ」

英玲奈「悪餓鬼とクソレズどもの吹き溜まりにそびえ立つマンションの一室に籠って、仲間たちとヤクに溺れるエヴリデイだ。野球ならコールド寸前の二死無走者だよ」
 
ツバサ「それでも…あなたなら何とかなるって信じてる」

英玲奈「………園田と星空を連れて行っていいか」

英玲奈「先日の一件で落ち込んでるようだし、挽回の機会をくれてやりたい」

ツバサ「すべて将軍のお気に召すままに。頼んだわよ」ポン

英玲奈「………」

――――
――
 
63: (おにぎり) 2021/12/14(火) 00:24:47.68 ID:mCsLIc+z




ピンポーン


ピンポーン ピンポーン


 

コンコンコン…


   

『ザザッ……誰?』


   
英玲奈「黒澤ルビィと鹿角理亞の友人だ」


英玲奈「ここにいると聞いた。会わせてくれるか?」


    
『………』


『……あんたなんか知らない…プツッ』


   

英玲奈「………」ハァ


英玲奈「だから言ったんだツバサ…」


英玲奈「善行には必ず罰が下る…この世界の鉄則だぞ…」


   


「悲観主義者ここに極まれり、って感じやね」
 
64: (おにぎり) 2021/12/14(火) 00:31:25.68 ID:mCsLIc+z
英玲奈「!?」


希「やっほー♪ 頑張ってるみたいね」


英玲奈「東條…? 君が何故ここにいる?」


希「フフフ…語り部の特権だよ.......ってのは冗談で」


希「実はこの時、ウチもしっかりこの場にいたんよね」


英玲奈「…なに?」


希「にこっちの指示でね。恰好のゴシップネタになりそなルビィちゃんたちを張ってたトコに、ちょうど英玲奈さん達まで現れたってワケ」

希「ね? ウチってラッキーガールやん」

英玲奈「…見ていたのか」

希「これから起こることぜんぶね。やー、まさかあんなことになるなんて…」

英玲奈「言うな。聞きたくない」
 
65: (おにぎり) 2021/12/14(火) 00:36:46.48 ID:mCsLIc+z
希「さてと」


希「お寒く、時制も無視して、脳を混乱させる……まるでバッドトリップみたいな幕間はこの辺にしとこか」 


希「なにせここからはいよいよドミノが全方位へと倒れ出す起爆点」


希「英玲奈さんが主役の第二部、内浦疾走編が始まるんだから!」


英玲奈「………5分で終わらせてやるさ」ピポパ


希「あそう? ほな、お互い頑張ろうね~」


 
英玲奈「……もしもし、園田か? 始めるぞ、予定通りだ」
 
66:今日はここまで(おにぎり) 2021/12/14(火) 00:42:21.32 ID:mCsLIc+z
月曜ロードショー


               ラブライブ!× ジェントルメン
 
69: (おにぎり) 2021/12/14(火) 22:23:31.54 ID:mCsLIc+z
ここまでのいきさつ


仕事って、いざ引退しようとするとハチャメチャ大変

引き継ぎ相手从廿_廿从のご機嫌を取りつつ、それ以外の跡目狙い6cƠᴗƠ∂を牽制して

かと思えば怖いもの知らずの若手たち@cメ*˶ˆ ᴗ ˆ˵リに足を掬われてストレスでおデコがマッハ

お陰で地主たち|c||´.-`|| (q|`˘ ᴗ˘)ʅʅのご機嫌取りなんてサブクエストまで発生しちゃって

ヤク中シスターズ⌒°( ・ω・)°⌒ ノJ(`σ_ σ´リノしの引きこもる象牙の塔に今まさに突入せんとするのは我らが英玲奈さん

結局いつの時代も苦労するのは中間管理職なのよねというお話やん
 
70: (おにぎり) 2021/12/14(火) 22:33:45.38 ID:mCsLIc+z
 
――バキィ!!! ガシャンッ


理亞「」ビクッ

理亞「なっ…なに??」


海未「お静かに。全員その場を動かぬよう」

海未「用件が済めばすぐ出ていきます」


 
コツ…コツ…


英玲奈「……煙たいな。少し換気したらどうだ」ガラガラ


   
理亞「ちょっと! あんた何様のつもりで…」


英玲奈「いいから座ってろ鹿角理亞………君もだ、澁谷ありあ」


ありあ「……なんで私たちの名前を」


英玲奈「ここにいる全員のを知っている」


英玲奈「……そこの金髪、君は唯一の例外だ」

 
金髪女「……」プカプカ


英玲奈「だが結局同じことだ。君らはもれなくヤク吸う金欲しさに臆面もなく同性のアソコを吸「うゆしゃいっっ!!!」
 
71: (おにぎり) 2021/12/14(火) 22:40:02.52 ID:mCsLIc+z
ルビィ「おねぇちゃぁのくしょに言わりぇて来たんれしょ!!」

ルビィ「りゅびぃはじぇったい、あんなくしょ溜めになんかけぇれないから!!」

英玲奈「…言葉遣いが酷いな。それもヤクのせいか?」

英玲奈「ヘロインなんぞ吸うからそうなるんだ。汚れた龍(ダーティ・ドラゴン)とはよく言ったものだろ?」


金髪女「ありひゃは、とらどんなんかじゃありあへんよぉ~」トローン


英玲奈「………君は静かに一人でトリップしててくれ」


英玲奈「とにかく黒澤…とついでに鹿角。君らはこんな所にいるべき人種じゃない」


英玲奈「ご家族も心配されている。だから私と一緒に…」


ルビィ「だまりぇぇぇっ!!! どいちゅもこいちゅもおんなじことばっかり!!!!」


ルビィ「お前りゃなんかにりゅびぃの気持ちがわかってたまりゅかっ!!!!」


ルビィ「ええかげんせぇと、こりぇでブッこりょしゅぞ!!!」チャキッ
 
72: (おにぎり) 2021/12/14(火) 22:45:30.48 ID:mCsLIc+z
海未「…!」ガタッ


英玲奈「いいんだ園田。私に話させてくれ」


ルビィ「フーッ、フーッ…」


英玲奈「黒澤……こんなことを私が言うのもなんだが」


英玲奈「実のところ、そのオモチャでケチな犯罪に走るくらいなら、自室に籠ってヤクをやる方がいい」


英玲奈「犯罪は見知らぬ他者を傷つけるが、ヤクが傷つけるのはせいぜい自分と身内くらいのものだからな」


英玲奈「君は大したお利口さんだよ、黒澤ルビィ」


英玲奈「大したお利口さんだ……ご家族に代わって褒めてやろう」


ルビィ「……………」
 
73: (おにぎり) 2021/12/14(火) 22:50:49.01 ID:mCsLIc+z
ルビィ「……………アホくさ」


ルビィ「…………………もう帰る」


ありあ「え…? ルビィさん…?」


英玲奈「…君なら分かってくれると思ったよ」


理亞「ま…待って! ルビィが行くなら私も…」ガタッ


英玲奈「大変結構だ。他にも帰りたい者がいれば乗せていくぞ?」


英玲奈「……では園田。私はこの二人を車まで送っていく」

英玲奈「その間、ここで園児たちが悪さしないか見ていてくれるか」

海未「承知しました」


英玲奈「それではお嬢さん方、これで失礼する」
 
74: (おにぎり) 2021/12/14(火) 22:56:26.56 ID:mCsLIc+z
 
ギィィ…バタン


金髪女「……」プカプカ


海未「………ケホッ」

海未「…吸うなとは言いませんが、せめて窓の近くでやりなさい」

海未「……聞こえているのですか」


金髪女「………ぁああ~っ!!」

金髪女「はなた、ラブアローの人でひゅよね?? ありひゃ大ファンなんでひゅ!」トタタッ


海未「は…? 何を言ってるのですか、人違いですっ……ちょ…放しなさい!!」
 
75: (おにぎり) 2021/12/14(火) 23:02:52.56 ID:mCsLIc+z




【マンション玄関前】


千歌「へいへーい、いい車乗ってんじゃ~ん」

花丸「MIR●Iずら」

善子「カギ貸しなさいよ。ウィングを堕天使仕様にしてあげる」


凛「失せるにゃガキども。見世モンじゃないよ」シッシッ

凛「凛のアメあげるから、さっさとおうちに帰るにゃ」

凛「…ムチが出てくる前にね」シャー


善子「…こっわw」

花丸「口調の割に可愛いカッコして、このお姉さんきっとこれからデートずらよw」

千歌「それで気が立ってるんだ~」ヒューヒュー

凛「にゃあ゛っ!?」


 
ヴィーン

英玲奈「…待たせたな星空。二人とも連れて…」
   
 
76: (おにぎり) 2021/12/14(火) 23:08:32.03 ID:mCsLIc+z
 

金髪女「ありひゃにもばぁんってやってくだひゃい、ばぁんって!!」モギュー

海未「知りませんよ…! ええい、離れなさい…!!」ドンッ

金髪女「あっ…」

海未「あ」


   
~~~~


 
ちかよしまる「デート!!デート!!デート!!」


凛「英玲奈さぁぁん!こいつら何とかして………にゃ?」


   


「はらひょおおおおおおおおおおおおおお」ヒューーーーーーーン↓↓↓↓


     


――――グシャァァァァァッ!!!!
 
77: (おにぎり) 2021/12/14(火) 23:14:12.24 ID:mCsLIc+z
英玲奈「ッ!? マズい、二人とも出るな…!」

理亞「え…? え…?」

ルビィ「…なにがハラショーだよ…必要なのはパラシュートでしょ…」ブツブツ


 
千歌「うっわ! 人降ってきた!」

善子「まさか新たな天界勅使!?」

花丸「とりあえず記念撮影ずら」ピロリン


 
【物陰】

希(シャッターチャンスやんね)パシャパシャ
 
78: (おにぎり) 2021/12/14(火) 23:20:51.79 ID:mCsLIc+z
 

金髪女「」ジワァァァ…


凛「え?これ死んでるの…? ……死んでるにゃ」


千歌「いぇーい、セルフィー♪」ピロリンピロリン


英玲奈「星空、そいつらから携帯を取り上げろ!」


千歌「やっべ! みんな逃げるのだ!」ダッ


英玲奈「三手に分かれたぞ! 見てるだろ園田! 君も来いっ」  /ハイッ!\


 
希(うひゃー、ベランダ伝いにSASUKEスタイルで降りて来よった)


希(さてさて、楽しい鬼ごっこの始まりやんね)
 
79: (おにぎり) 2021/12/14(火) 23:26:28.88 ID:mCsLIc+z




タッタッタッタッ…


千歌「へいへーい、鬼さんこちら~!」


 
英玲奈「……山猿がっ」


   
タッタッタッ…


     
千歌「……ハァハァ、さすがに疲れてきたのだ…」


 
タッタッ…


   
英玲奈「どうした、もうお仕舞……っ」


     
ゾロゾロ…


むつ「おー千歌じゃん。なになにどしたん?」


千歌「助けてむっちゃん達! あのT-1000型がしつこいのだ!」
 
80: (おにぎり) 2021/12/14(火) 23:32:15.48 ID:mCsLIc+z
果南「なに? うちの千歌に手ぇ出そうっての?」パキポキ


英玲奈「…落ち着け。誤解があるようだ。私はただ…」


千歌「あいつがチカのケータイ寄こせって!」


英玲奈「タダでとは言ってない。ここに10万ある」スッ


いつき「わっ、成金?」


英玲奈「これでそいつを売ってくれないか?」


 
内浦のクソガキども「………」

内浦のクソガキども「………」ニィィ


    
千歌「50よこすのだ」


英玲奈「……50万か?」
 
81: (おにぎり) 2021/12/14(火) 23:37:43.73 ID:mCsLIc+z
果南「もっといい手があるよ」

果南「そのお金だけおいて、とっとと消えなよ」

千歌「チカたちは画像を売ってさらに儲けるのだ!」

よしみ「あったまいい~」ヒューヒュー


英玲奈「お前たち……」


曜「お?お? やるでありますか?」シュシュッ

梨子「曜ちゃん、私にも味見させてね」


ゾロゾロゾロ…


英玲奈「…悪たれどもめ」


英玲奈「仕方ないな…」


英玲奈「できればこれは使いたくなかったんだが」ゴソゴソ
 
82: (おにぎり) 2021/12/14(火) 23:43:23.45 ID:mCsLIc+z
 
――DoDoDoDoDoDoDoDoDoDo!!!!!!!


クソガキども「!!!!!」


英玲奈「…全員近づくな」シュウウウウウウウ


英玲奈「まあ…言っても信じないとは思うが、この銃は…」


果南「うわヤバ!あれ本物だよ!ダイヤんちで見たのと同じやつだ!」

曜「逃げるであります!!!」


ドタバタピューン=з=з=з=з


 
千歌「あ、あ、ちょっとみんな……ぐぇ!」ビターン


千歌「いちち……なんてハクジョーなやつらなのだ………あっ」


ジャリ…


英玲奈「それで、幾らで売ってくれるんだ?」チャカッ
 
 
83: (おにぎり) 2021/12/14(火) 23:49:33.88 ID:mCsLIc+z
――
―――

善子「ギャー!!ごめんなさいごめんなさい!!」

善子「スマホはあげるから逆さ吊りはやめてーーー!!」ジタバタ

英玲奈「…どういう状況だ?」

海未「堕天堕天とうるさいので、一度実地体験させてあげようかと」グググ

英玲奈「その辺にしといてやれ……ところでもう一人の方は」

海未「凛ならそこにいますよ」


   
花丸「星空お姉さまぁ…」キラキラ

凛「えっとね、なんか懐かれちゃって」

英玲奈「こっちはこっちで何があった?」


 
英玲奈「…ともかくこれで一安心だな」

英玲奈「さあ、家に帰るぞみんな」
   
 
84: (おにぎり) 2021/12/14(火) 23:57:40.95 ID:mCsLIc+z
~~~


~~~~~~~~


~~~~~~~~~~~~~~~


希「と、ここで視点は【現在】の英玲奈さんちに帰ると」

英玲奈「自分で言うなよ……トイレはそこを右だ」

希「いやー、ごめんね? ちょいとお酒飲み過ぎちゃったみたいで」

英玲奈「肉の方だろ?食べ過ぎたのは……」

希「だってあの和牛さん最高やったし……なんで食べもしないのにあんないいお肉を?」

英玲奈「……あんじゅ達が食べるんだ」

希「ふーん? あそうそう、こんな話知ってる?」

希「日本に来たロシアの人にお肉をご馳走したら、高級な和牛には目もくれずに鶏肉ばかり食べてたって話」

希「あっちの牛はゴムみたいな硬さと味だから、煮込みにでもしなきゃ食べられたもんじゃないって。最近はそうでもないみたいだけどね」

英玲奈「…それがどうした」
 
85: (おにぎり) 2021/12/15(水) 00:03:40.99 ID:sH37gcd1
希「ロシア人のタタキだよ、英玲奈さん」

希「マンションの6階から地上に叩きつけられた金髪の子は、ルビィちゃんにヘロの味を教えたロシア人だった」

英玲奈「…そんなことは知っている。だが、今更それがなんだ?」

英玲奈「黒澤たちは無事家に戻った。あとの問題はロシア人の死体だが」

英玲奈「実際の現場には、園田と星空のほかにあと二人……南と小泉がいて、死体をすぐに片付けてくれた」

英玲奈「隠蔽工作は完璧だ。他に目撃者はいない」

希「ウチを除いてね」

希「ところでその死体はどこにしまっちゃったん?」

英玲奈「……君のすぐ近くさ」


英玲奈「…………肉は美味かったろ?」


希「え………」
 
87:>>86訂正(おにぎり) 2021/12/15(水) 00:14:51.25 ID:sH37gcd1
<ドアガチャッ

「わわわっことりちゃん、もっとしっかり足の方持ってくれないと落としちゃうよぉ」ユサユサ

「ごめぇん…でもこれ冷たくて手に張り付いちゃうから……へ?」


英玲奈「………」

希「………」


 
花陽「……」っ氷漬けの死体⊂ことり「……」


    
氷漬けの死体「―――」


 
希「………あー、あれがカチコチ硬いロシア人の…冷凍お肉?」


英玲奈「……」ハァ


花陽「あのー…何かまずかったでしょうか…」


英玲奈「…次から来るときは事前に電話をくれ」


ことり「ごめんなしゃい…」


英玲奈「もういい…早く持って行ってくれ」
 
88: (おにぎり) 2021/12/15(水) 00:20:19.40 ID:sH37gcd1




―――んもー、英玲奈さんてば冗談キツイんよ

これから一生お肉が食べられなくなるところだったやん……


さて、映画の方はまだまだ続くよ?

視点は変わりまして、問題児だらけの虹ヶ咲ジムへ


ツバサさんのクサを、そうとは知らずに盗んじゃった彼女たち

何も知らないこの子らに、クサの在処を教えたのは一体誰なんだろね?


ニジガクのジャーマネこと高咲侑ちゃんだけは、もの凄く焦ってるみたいだけど……
 
89: (おにぎり) 2021/12/15(水) 00:26:04.26 ID:sH37gcd1
――

――――

―――――――


侑「綺羅ツバサ!?」

ミア『ああ。最近ウワサになってるよ』

ミア『彼女が自分の農園を荒らした犯人たちを探してるって』

ミア『まあ、そのStupidちゃんらには同情するね。なにせ彼女はカネと暴力の借りを作る相手としちゃ最悪だ』

ミア『ステイツのマリワナマーケットにもその名は轟いてたくらいだし………ハロー? 聞いてる?」
 
侑「…………ウン、マタナニカアッタラ、ヨロシクネ……」ピッ


侑「………最近大量のハッパを強奪した8人くらいの顔面ボード集団」


侑「まず間違いなく私たちじゃん、それ………」ガタガタガタ
 
90: (おにぎり) 2021/12/15(水) 00:32:54.94 ID:sH37gcd1
璃奈「農園の場所を垂れ込んできた相手?」

侑「うん。そういえば聞いてなかったなって思って」

侑「ほら、私はみんなのマネージャーだから。侑ちゃんボード『会ってお礼がしたくて⎛(cV„Ò ᴗ ÓV⎞』」


    
果林「………」チラリ

エマ「果林ちゃん? どうしたのスパーの途中で」ハァハァ

果林「……何でもないわ」


 
侑(綺羅ツバサ……私でも名前くらい聞いたことあるよ)

侑(私たちの年頃には既に組織『A-RISE』の大物だったレジェンド。間違っても敵に回していい人じゃない…)

侑(今は試合を目前に控えた大事な時期……みんなには余計な心配をしてほしくないし)

侑(やっぱりマネージャーの私が何とかするしかないよね………虹ヶ咲ジムは、私が守ってみせる!)
 
91: (おにぎり) 2021/12/15(水) 00:38:27.59 ID:sH37gcd1
火曜
ロードショー


               ラブライブ!× ジェントルメン
 
93:今日はここまで(おにぎり) 2021/12/15(水) 00:45:16.87 ID:sH37gcd1
ジェントルなウーメンたち(仮題) 東條人物メモ


【問題児たち】虹ヶ咲

・農園を襲いツバサのクサを盗む


【令嬢】真姫

・農園が襲われたことにプッツントマト


【王】ツバサ

・農園の一時閉鎖を決意、地主たちのご機嫌取りに勤しむ


【右腕】英玲奈

・ツバサの指示でルビィらを連れ帰る


【探偵】希

・にこの指示で英玲奈を尾け回す


【冷凍庫の死体】亜里沙

・(現在)英玲奈宅から運び出される


【ジャーマネ】侑

・このジムを守りたい
 
96: (おにぎり) 2021/12/15(水) 23:36:35.22 ID:sH37gcd1
【数日後――穗むら】


ガラガラッ イラッシャイマセー


英玲奈「…君か? ツバサに話があるというのは」


侑「は、はい…! ええっと、その…」


侑「こ…この度は、大変申し訳ありませんでしたっ!!!」ドゲザー


 
英玲奈「…では本当なんだな? 君の仲間たちがうちの農園を襲ったというのは」

侑「今まで名乗り出なくてごめんなさい……クサがツバサさんのだと知ったのはつい先日で」

侑「動画にはかすみちゃんの顔がばっちり映ってたし、もうとっくにバレてると思ってたんですけど…」

英玲奈「………それで?」
 
97: (おにぎり) 2021/12/15(水) 23:42:14.37 ID:sH37gcd1
侑「みんなは個性的で暴走しがちなところもあるけど根は悪くない、素直ないい子たちばかりなんです…」 

侑「今回のことも…もうすぐ誕生日な私のためにサプライズプレゼントをしたかったって……ホントにそれだけで…」

侑「すべての責任はマネージャーの私がとります…盗んだものはもちろん、足りない分は私が何でもしてお返しします!」

侑「だからみんなのことを許してください!! この通りです!!!」


英玲奈「………顔を上げてくれ」

英玲奈「その包帯まみれの身体でその体勢はキツかろう。……ダンプにでも轢かれたのか?」

侑「えぁ、これはその…連日の全身運動が祟っちゃってですね…」ハハ

英玲奈「……君も苦労してそうだな」

侑「へ?」

英玲奈「とにかく、まずはどうやってうちの農園の所在を突き止めたか教えてもらおう。話はそれからだ」

侑「………そのことなんですけど」

侑「私より、外の車にいる子に訊いてもらった方が早いかなって…」
 
98: (おにぎり) 2021/12/15(水) 23:48:37.39 ID:sH37gcd1




ガチャガチャ…ガチャリッ


 
ガパッ


    
栞子「ンー! ムーッ、フー!」ジタバタクネクネ


 
英玲奈「…なるほどな」

英玲奈「このトランクで縛られたまま全身運動中の彼女は、君らとどういう関係だ?」


侑「栞子ちゃんは、最近うちのジムに出入りしてる子なんです」

侑「鍾嵐珠っていう中国マフィアの偉い人が、動画で見たうちの歩夢たちを気に入ったらしくて、ぜひ組織に欲しいとかで」

侑「その橋渡し役になってるのが、ランジュさんと古い付き合いだっていう栞子ちゃんなんです」

侑「みんなは私のいない時に、この栞子ちゃんから農園のことを教えられたって言ってました」


侑(もしかすると……私たちと仲良くなろうとしてランジュさんが、農園の情報を……?)
 
99: (おにぎり) 2021/12/15(水) 23:54:50.31 ID:sH37gcd1
英玲奈「よし、栞子とやら…君はどうやって農園の場所を知った?……おい、口のガムテープを剥がしてやれ」

侑「ごめんね栞子ちゃん…」ベリベリ

栞子「っぷはぁ…」

栞子「ハァ…ハァ…」キッ

英玲奈「中々強情そうだな……君はその身体でよく彼女を捕まえられたな」

侑「知り合いにちょっとした発明家の子がいまして…」

栞子「………」

侑「お願い栞子ちゃん…本当はこんな風に無理矢理連れて来たくはなかったんだよ」

侑「話したくない気持ちも分かるけど。誠心誠意事情を説明して謝れば、わかってくれない人じゃないから…」

侑「私が保証するよ。だから二人で一緒にごめんなさいしよう。ねっ?」
 
100: (おにぎり) 2021/12/16(木) 00:00:48.50 ID:bEgnLMW9
栞子「………を……んです…ゴホゴホッ」

英玲奈「…なんと言った?」

栞子「……みません………が痺れて、うまく呼吸が…」ケホッ

英玲奈「待て。今起こしてやろう」


ドサッ

栞子「ッゼェ…ぁりがとうございます…」

英玲奈「もう一度最初から言うんだ」

栞子「ですから、跡を尾けたのです…」

栞子「何ヶ月もかけて……ケホコホッを」

英玲奈「はっきり話せと言ってるだろう…」ミミチカヅケ

栞子「すみません……」


 
栞子「っ……!!」ダッ
 
101: (おにぎり) 2021/12/16(木) 00:06:53.59 ID:bEgnLMW9
英玲奈「しまっ…逃げたぞ!」

侑「へあっ?一応手足は縛っておいたのに…」

英玲奈「いいから追うんだ!」


 

タタタッ…

栞子(申し訳ありません高咲さん…)


栞子(ですがあなたの考えは甘すぎます。彼らはあなたの思うような生易しい人種ではないのです…)


栞子(ついでに拘束も甘かったので、トランクの中でガムテを剥がして八重歯で噛み切っておきました)


栞子(………こんなことだから、彼女の頼みを聞くのは嫌だったんです)         


栞子(しかしなんでしょうかこの疾走感―――身体の軽さ―――森羅万象と一体になったようなコンセントレイションは)


栞子(今なら円周率をすべて暗唱できる気も―――宇宙の法則や確率を超えた何かが我が身に降りてきてるのを感じます)  プァァァァァン...>


栞子(この感覚―――今気づきましたが、ひょっとすると私にはアスリートの適性がばらっ??!!)ドツン!!!!!!


 

キキィィィィィィィ―――!!!!     …バタンッ


   
鞠莉「Oh...やっちゃった…」
 
102: (おにぎり) 2021/12/16(木) 00:13:46.08 ID:bEgnLMW9
――
――――

ツバサ「車に轢かれたですって?」

英玲奈「街中で120キロは確実に出ていた」

ツバサ「それで栞みたくペラペラになっちゃったの?」

英玲奈「いや、私たちが見た時はまだ生きているようだった」

英玲奈「こちらが何かする前に、どこからか現れた所属不明の黒服たちが三船を運び去ってしまったんだ」

ツバサ「なんてこと…それじゃあ結局黒幕の名前は…」

ツバサ「……いえ、その子が鍾嵐珠と繋がりがあるのが分かっただけでも」

ツバサ「オーケー、こうなったら私が話をつけるしかないみたいね」

英玲奈「鍾嵐珠に会うのか?」

ツバサ「お茶を飲んで世間話を少々ね」

英玲奈「注意しろ。中国人はiPhoneよりも世代交代が早いと聞く」

英玲奈「ランジュとやらがトップにいるのがいい証左だ。お前と同じ、相当な切れ者だぞ」

ツバサ「なら、同じくさっさと引退させてあげるのも手かしら」
 
103: (おにぎり) 2021/12/16(木) 00:19:46.65 ID:bEgnLMW9
短いですが今日はここまでで
 
106: (おにぎり) 2021/12/16(木) 23:43:38.07 ID:bEgnLMW9
※本日の放送は休止になります、申し訳ありません
 
110: (おにぎり) 2021/12/17(金) 22:21:57.06 ID:9Yl4ctc5
【都内某所――高級中国料亭】


ランジュ「きゃあっ♪ ツバサ!アナタと会えてとっても嬉しいわ!」

ツバサ「こちらこそランジュさん。お噂はかねがね」

ランジュ「さん付けなんてよそよそしいわ。ランジュたちはお友達になるんだから、別に呼び捨てでも無問題ラ!」

ランジュ「今日はランジュたちの貸し切りよ。たっくさんご馳走を用意させたから、遠慮せずお腹いっぱい食べていってちょうだい!」

ツバサ「気持ちは嬉しいけど、今はあまり食欲が…」

ランジュ「あら、ダメよそれじゃあ。ランジュたち上に立つ人間はたくさんエネルギーが必要なんだから。お肉食べなさいお肉!」

ツバサ「そうね…でも私、結構味オンチなところあるから」

ツバサ「この前のパーティでもビーフとポークを間違えちゃってね。また笑われたくないし、ひとまずお茶を頂こうかしら」

ランジュ「好的! いいジャスミンティーの茶葉があるから淹れさせるわ♪」

ツバサ「いえ、私の分はコーヒーにして頂ける? あればだけど」

ランジュ「もちろんよ! 日本ではそれもお茶するって言うのよね。ランジュ、ちゃんと勉強してるんだから!」
 
111: (おにぎり) 2021/12/17(金) 22:27:22.82 ID:9Yl4ctc5
ツバサ「……」ズズ

ツバサ「ふぅ…」

ツバサ「いい香りね……お互いに」

ランジュ「そうでしょそうでしょ。アナタもこっちが飲みたくなったら遠慮なく言いなさい」

ランジュ「このジャスミンティーは味も香りも最高だし、食後の消化促進にダイエット、美肌にも効果的な成分をたっぷり含んでて…」

ツバサ「でも、それだけじゃないわよね」

ランジュ「ラ?」

ツバサ「そのお茶…見たところ玉露ベースのようだから、このコーヒーの二倍近いカフェインが含まれてることになる」

ツバサ「カフェインはドラッグと同じよランジュさん。摂り続けるのは、毒を打つのと変わらない」
 
112: (おにぎり) 2021/12/17(金) 22:34:51.63 ID:9Yl4ctc5
ランジュ「それはそうだけど……でも代謝をあげたり、身体にいい面だって多いわ」

ランジュ「要はランジュたち一人ひとりが自分で気を付ければいいのよ! 何だってそうでしょ?」

ランジュ「ランジュはみんなよりたくさん食べるけど、健康にも人一倍気を使ってるからスタイルも体調も無問題ラ♪」

ツバサ「そうね…それはあなたの美徳の一つかもしれない」

ツバサ「知っての通り、私は大麻中毒という悪徳を持っているわ……吸うのではなく売る方のね」

ツバサ「でも私はこの悪徳を存外気に入ってるの……なぜだか分かる?」

ツバサ「私の扱う毒は人を〇すことが無いからよ。そこが好きなの」

ツバサ「もちろんもっと儲けたいなら、あなた達のように白や茶色の粉に手を出す選択肢もあった」

ツバサ「けれどそうはしなかった。あの汚れた龍(ダーティ・ドラゴン)は……昔から変わらずこの世界を蝕み、破壊し続けている猛毒だから」

ツバサ「あなたはそのことを理解している?」

ランジュ「ちょ…ちょっと待って。アナタはランジュとお友達になりに来たんじゃ…」

ツバサ「私はここに茶飲み話をしにきたのよ、鍾嵐珠さん」
 
113: (おにぎり) 2021/12/17(金) 22:43:21.23 ID:9Yl4ctc5
ツバサ「……先日、ルビィさんが内浦の自宅で倒れたわ。あなたのヘロインのオーバードーズでね」

ツバサ「幸い一命はとりとめたけど……今では地球を食べると言って、毎日庭のアリ塚をほじくるのに夢中だそうよ」

ツバサ「ああなってしまっては死ぬより酷い……近頃は姉の方までおかしくなって、二人で夜通しお祭り騒ぎを…」

ランジュ「だから待ってよう!いったい誰のことを話して――」

ツバサ「ええそうよね。自分の身内以外は知ったこっちゃない…あなた達の道徳は重々承知してるつもりよ」

ランジュ「……その人、友達だったのね? 謝るわ、ごめんなさい!」

ランジュ「ツバサの友達はランジュの友達よ!だから…」

ツバサ「その必要はないわ。だって私はあなたの友達じゃないし、私が怒ってるのはそのことについてじゃないもの」

ランジュ「?…???」


ランジュ「……っぷ」


ツバサ「……」


ランジュ「!?……ック、……う゛っ」


 
ランジュ「オ゛ホ゛エ゛ぁ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛っ」ビシャビシャビシャ
 
114: (おにぎり) 2021/12/17(金) 22:50:18.23 ID:9Yl4ctc5
ビチャビチャビチャ…

ツバサ「…毒が回ってきたようね」

ランジュ「ぅぷ……ぉえぁっ…ォェ」

ツバサ「この店の茶葉すべてに、赤痢菌の特別強力なやつを混入しておいたの」

ツバサ「これから1~2時間ほどかけて今日食べた物を口とは反対側の穴からすべて吐き出し、床を祖国の色に染めて死ぬ気分はどう?」

ランジュ「ェク……ゃあ…んで、こんあこと…」ゼェゼェ

ツバサ「あなたが私に戦争を仕掛けたからよ」チャカッ

ツバサ「部下の唐可可をけしかけて、私の事業を買い叩かせようとした。違う?」
 
115: (おにぎり) 2021/12/17(金) 22:56:54.75 ID:9Yl4ctc5
ランジュ「ップ…クサがぬひゅまれたことを言っヘるの…!? あれはランジュじゃなぃら!」

ツバサ「お友達の三船さんが話してくれたわ。バレないとでも思ったのかしら?」カチリ

ツバサ「それとも彼女が独断でやったとでも? はたまた他の誰かが? どうなのほら?答えなさいな」グリグリ

ランジュ「ら゛ぁぁ…」ボタボタ…

ツバサ「あなたの組織があのボード集団に私の農園を襲わせた…そうなんでしょ? そこまで吐き出したんだからもう一息よっ」


ツバサ「答えなさい! あなた達はいったい、なにを考えていたのっ?」ガチャリッ


ランジュ「ひぅ…!!」


 
ツバサ「……」ググ…


ランジュ「~~! っ…!」フルフル


   
ツバサ「………」


 
ツバサ「………フーッ」カチリ
 
116: (おにぎり) 2021/12/17(金) 23:04:11.89 ID:9Yl4ctc5
ランジュ「っく……ぅ゛ぇぇ…」ポロポロ

ツバサ「………もしまたあなたや、あなたの仲間がこちらにちょっかいを出してきたら」

ツバサ「今度こそその宣戦布告に応じることになる……言ってる意味は分かるわね?」

ツバサ「私にはあなたの厨房にも手を回す力がある。そのことを忘れないで」

ランジュ「……っ」プルプル

ツバサ「……よろしい」

ツバサ「さて…赤痢というものは普通放っておいても自然治癒するものだけど、今回のはそうもいかない」

ツバサ「解毒剤を用意しておいたけど、生憎どのテーブルの料理に入れたか忘れちゃってね」

ツバサ「探すなら急いだ方がいいわ。私のためにたくさん作ってくれたようだし」
 
117: (おにぎり) 2021/12/17(金) 23:10:29.63 ID:9Yl4ctc5
バタンッ


スタスタ…


英玲奈「……これでハッキリしたな。少なくとも鍾嵐珠は何も知らない」


英玲奈「…少々やりすぎたかもな」


ツバサ「確かに彼女は貧乏くじだったけど、ホントは死ぬほどの毒じゃないし」


ツバサ「それにここまでやれば、あとは彼女の方が始末をつけてくれるわ」


ツバサ「お茶でも飲んで吉報を待ちましょう」


―――――

――
 
118: (おにぎり) 2021/12/17(金) 23:17:53.33 ID:9Yl4ctc5
――

――――

ランジュ「一体どういうことなのよ可可!」

可可「嵐珠大姐、お久しぶりデス。少し太りマシタ?」

ランジュ「逆よ逆! あれ以来お腹の調子が悪すぎて、先週だけで5キロも痩せちゃったわ!」

ランジュ「今消化器に負担をかけるとヤバいって、医者にビュッフェも禁止されちゃって」

ランジュ「でもホラーマンみたいな見た目のランジュなんて許されないから、さっきまでお粥とはんぺんだけで体重を戻してたの。その甲斐あってあと1キロで元通りよ!」

可可「さすが大姐デス。ハリウッドに進出しても十分やっていけマスね」

ランジュ「きゃはっ!いいわねそれ…ってそんな話をしに来たんじゃないのっ」

ランジュ「アナタ、ランジュに内緒で綺羅ツバサに会ったそうね」

ランジュ「ツバサの事業を買い叩けなんて、ランジュはそんな指示を出した覚えはないわ」

ランジュ「栞子のことについても全く訳が分からない………アナタひょっとして、アタシが言ったことにしてあの子に何か――」

可可「…すべては組織のためを思ってやったことデス」

可可「可可はここのNo.2。組織を今よりも強く大きくする責任がありマスノデ」
 
119: (おにぎり) 2021/12/17(金) 23:23:54.83 ID:9Yl4ctc5
ランジュ「それはランジュが決めることよ! アナタ達はアタシの決めたことに従えばいいの」

ランジュ「すべてをこのランジュに委ねちゃえば――」

可可「無問題と考えてる人は、それほど多くはないようデスよ?」

可可「嵐珠大姐のやり方に不満な声もそこかしこで耳にしマス。今こそ組織改革の時なのデス!」

ランジュ「そんなの認めないわ! 可可、残念だけどアナタは更迭よっ」

ランジュ「向こうに戻ってしばらく頭を冷やしなさい!」

可可「…ではその前に、可可の参謀としての最後のお仕事をさせてくだサイ」ガラガラ

ランジュ「?」
 
120: (おにぎり) 2021/12/17(金) 23:32:07.10 ID:9Yl4ctc5
バサッ

可可「どうデス!増量中の大姐のためにお肉のフルコースを用意しマシタ! 鶏なので胃腸にも優しいデス」

ランジュ「きゃあきゃあっ♪ 気が利くわね可可!それでこそランジュの片腕よっ」

ランジュ「早速いただいちゃうわね!……ん~好吃♡ 一週間ぶりのお肉はサイコーだわぁ…ちょっと後味が独特だけど」モグモグモグ

可可「それはきっと可可の家に代々伝わる秘伝の漢方成分デスね。料理の隠し味にはもってこいナノデ」


可可「…そして同じく唐家には代々受け継がれてきた格言があるのデス。きっと大姐も気に入ると思いマス」


ランジュ「ラ…?」グギュルゥゥゥ…


可可「組織とiPhoneのアップデートはお早めに……DEATH」ニタァ


ランジュ「く…可可……ランジュ…急にお腹の調子が……し、失礼するわ……あ、ダメ…ちょっと見ないで…嫌、イヤらっ、らぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛啊゛啊゛啊゛啊゛ッ」

―――

 
121: (おにぎり) 2021/12/17(金) 23:46:28.74 ID:9Yl4ctc5




可可「――…そうデス。嵐珠大姐に不測の事態がありマシタ」


可可「ドクターの話では、この先何年かは排泄パック付きの車椅子が手放せないだろうと。あれでは今まで通りの業務は無理デス」


可可「やったのは綺羅のコンチクショーデス……全てが終わればそういうことになりマス」


可可「これからは可可がゲームを仕切りマス……とうとう可可の時代が来たのデスよ」
 
122: (おにぎり) 2021/12/17(金) 23:52:33.94 ID:9Yl4ctc5
【数日後――穂むら】


ツバサ「…ここに来るのもしばらくぶりね」


英玲奈「ツバサ、分かっているとは思うが」


ツバサ「はいはい、時間が無いのは百も承知よ」


ツバサ「10分だけ車で待っててもらえる?」


ツバサ「それくらい息抜きしたってバチは当たらないでしょ」


英玲奈「……10分だぞ」


ツバサ「ありがと。じゃ行ってくるわ」
 
123: (おにぎり) 2021/12/17(金) 23:59:17.26 ID:9Yl4ctc5
ガラガラッ

穂乃果「いらっしゃいませー! あ、ツバサさん!」

ツバサ「穂乃果さん。いつものやつ、お願いね」ニコッ

穂乃果「ほむまんとほうじ茶ですね。しばらくお待ちくださーい!」


 
Prrrrrrr...ピッ

ツバサ「…もしもしあんじゅ? 丁度よかった、今こっちからかけようとしてたの」

ツバサ「それで今夜なんだけど、久しぶりに三人で集まらない?」





【優木モーターガレージ】


あんじゅ「――いいわね。場所はどこにするの?」


 
ガチャッ…キィィ


    
「失礼しマス」


   
あんじゅ「!……ちょっと、今日はもう閉店よぅ」


    
コツ…コツ…


 
可可「いいから電話を切って、お客さまの話を聞くデス」ジャリッ
 
124: (おにぎり) 2021/12/18(土) 00:11:18.65 ID:oIS4ylbu
あんじゅ「………嫌よ」


可可「大人しくその電話を切りやがれデス」


『場所は……もしもし?』





ツバサ「――誰か他の人が来てるの?」


 
ガラガラッ  


穂乃果「あ、いらっしゃいま――……え?」


     
ツバサ「もしもしあんじゅ? 誰なの?」


 
コツ…コツ…


女「さようなら…綺羅ツバサ」チャカッ


     

『いったい何の用かしら……唐可可さん?』


ツバサ「――!!」


 

―――パァァァァン!  ビチャッ
 
125: (おにぎり) 2021/12/18(土) 00:16:39.27 ID:oIS4ylbu
~~~


~~~~~~~~


~~~~~~~~~~~~~~~


希「と、ここで物語はやっと冒頭に繋がるわけで……ふぃー、疲れるわこれ」

英玲奈「…終わりか? もう寝るぞ」

希「待って待って。別に焦らしてるわけじゃなくてね」

希「ウチがハッキリ見てたのはここまでで、その後は英玲奈さんたちのことを見失っちゃったのよ」

希「なにせあんなことが起きた直後だし……撃たれた死体が転がってる穗むらの中にすぐ踏み込んでくわけにもいかないしね」

希「だからこの先は、英玲奈さんの口から続けてほしいんだけど…」


英玲奈「………君はとんだ悪趣味だな」


英玲奈「ここからのことを、私に話させたいとは………」
 
126: (おにぎり) 2021/12/18(土) 00:23:33.62 ID:oIS4ylbu
――

――――

―――――――


 
―――パァァァァン!  ビチャッ


     

ドサッ…


 

女「」ボタボタ…


    


ツバサ「………」クルッ


 

英玲奈「……大丈夫か」シュウウウウ


    

ツバサ「……ええ」


 
英玲奈「こいつは誰だ…?」


    
ツバサ「……おそらく唐可可の放った刺客よ」


 

ツバサ「………あんじゅが危ないわ」ガタッ
 
127: (おにぎり) 2021/12/18(土) 00:28:53.04 ID:oIS4ylbu
~~~~

あんじゅ「いったい何の用かしら。唐可可さん?」

可可「大麻栽培の件デス」

可可「この件に関してあなたのボスと話がつくまでの間、可可と一緒に来てもらいマスよ」

あんじゅ「残念だけど、私はどこへも行かないわ」

あんじゅ「それとツバサは私のボスじゃないって言ってるでしょ…」\Prrrrrr/

可可「…電話には出ない方が身のためデスよ」

可可「一言でも喋れば、それがあなたのデスポエムになるデショウ」

あんじゅ「……」
 
128: (おにぎり) 2021/12/18(土) 00:35:05.26 ID:oIS4ylbu
Prrrrrrrr...

英玲奈「ダメだ、電話に出ない」

ツバサ「ッ、飛ばすわよ!つかまって!」


 
ブォォォォォォォォォ…!  ププーッ  キキィ!  


   
英玲奈「気持ちは分かるが、少し減速しないとぶつかるぞっ」

ツバサ「いいから、あなたは電話をかけ続けて!」


ツバサ(あんじゅ……!)
 
129: (おにぎり) 2021/12/18(土) 00:41:10.23 ID:oIS4ylbu
Prrrrrr! Prrrrrr!

あんじゅ「…まあそんなに青筋立ててイキらないで。せっかくの可愛い髪型がアレみたいよぅ」


あんじゅ「落ち着いて話しましょう。このチョコレート食べる?」


可可「結構デス。今日の可可は辛口の気分なのデ」


あんじゅ「そう……遠慮しなくていいのよ?」カパ


あんじゅ「どうせゴミに出そうとしてたやつだから」チャカッ


可可「…デリンジャーデスカ」


可可「22口径がたった2発しか入らない豆デッポーで、可可のチャイナドラゴンを止められマスか?」ムクムク


あんじゅ「そのまま下がって。入ってきたところから出ていきなさい」


可可「イエ、これから出たり入ったりされるのはあなたの方デス」ニチャア
 
130: (おにぎり) 2021/12/18(土) 00:47:51.01 ID:oIS4ylbu
ププーッ! キキィ!

英玲奈「おい……ト――を着けろ…っ」


ツバサ「えっ? なんですって!?」


英玲奈「シートベルトを着けてないぞお前! 待ってろ、私がしてやる」


ツバサ「そんなのいいわよもうっ」


英玲奈「いいから前見て運転しろ……あまり身体を動かすなよ…」モゾモゾ


 

カチッ


英玲奈「よし…これで………………っ!?ツバサ右だ!!右から車が」ドシャアアアアン!!!!!


ツバサ「がッ――――」


 

ガアアアァァァ↑アアン―――グシャアア↓アアア―――ゴロゴロゴロ… 


   

キキィィィィィィィ―――!!!!     …バタンッ


 

鞠莉「Oh...またやっちゃった…」
 
131: (おにぎり) 2021/12/18(土) 00:54:05.06 ID:oIS4ylbu
 

シュウウウウウ…


   

ツバサ「っ……ぁ……」


英玲奈「っ……ツバサ…」


ツバサ「ぅぅ………っく」ズル…ズル


英玲奈「ま…て……今うごいては…」


ツバサ「あんじゅぅぅ……」









あんじゅ「…動くと撃つわよ」


可可「撃てるもんなら撃ってみやがれデス」


可可「それとも可可のチャイナドラゴンとどっちが早いか勝負しマスカ?」ジリッ…


あんじゅ「………っ」


可可「さあ観念して可可に射射されるデス、この…エーット…おっ〇〇フルハウス!」


 
―――BANG!BANG!
   
 
132: (おにぎり) 2021/12/18(土) 01:00:44.30 ID:oIS4ylbu
プシュウウウウ… ザワザワ


鞠莉「あ、もしもしマリーだけど?…そーなの、またぶつけられちゃったのよねー。早く回収班を呼んでもらえると助かりマース」


 

ジャリッ…


ツバサ「………あんじゅ」フラフラ


鞠莉「あ、そこを動かないで! 今救急車を呼んだから…」


ツバサ「あんじゅううううううっ」ガシッ


鞠莉「いやあああああ!!!!?」
 
133: (おにぎり) 2021/12/18(土) 01:06:55.27 ID:oIS4ylbu




あんじゅ「はぁ…はぁ…」シュウウウ


可可「……2発撃ちましたネ」ポタポタ…


可可「マッタク…そんな豆デッポーは効カヌと言ってマスのに!」ブンッ


あんじゅ「きゃっ!?」ガシャァァン


可可「まあ…引き替えに可可の玉玉も二つお亡くなりになりマシタが、オマエを屈服させるにはこのゴジラタワー一本あれば十分デス!」
 
135: (おにぎり) 2021/12/18(土) 01:12:32.54 ID:oIS4ylbu
可可「ホラ、その机に手をつくデス! 生意気なメスクイーンには後ろからタップリおしおきしてやりマス!」グググ…


あんじゅ「ぐっ…っぅ」


可可「ではお毛並み拝見デス♡ …ウッヒョーたまんね~!この茂みに今から可可のコドモドラゴンを放ちマス!!」ポロン


あんじゅ「…バサ……れな……」


可可「好的日中性交正常位記念!! 射射茄子!!」
 
136: (おにぎり) 2021/12/18(土) 01:19:42.54 ID:oIS4ylbu
 
――プァァァァァァァン


   
可可「アリェ? 何の音デショウ?」


 

ププーーーッ――――バリバリガシャァァァアァァァン!!!!!


   
鞠莉「CHAAAAAAAAAAAAAAARGE!!!!」ツバサ「…!!!」


 
あんじゅ「ツバサ!?」

可可「ハッ…? 車が、壁を突き破っテ…!?」


   

壁壁壁壁壁壁壁壁壁
     

(あ)(可)<エ…

  (車)
  ↑↑


   

ドンッ!!!!!!――――キキィィィィバリバリグシャアアッッッ



   

壁壁壁可壁壁壁壁壁
  (車) プシュウウン…
  ↑↑   
(あ)↑↑


 


パラパラ…


鞠莉「ワーオ…ツッコむ前に突っ込んじゃった…」


ツバサ「これで新しい壁紙に張り替える手間が省けたわ……可可(カベ)だけに」ゼェハァ
 
137: (おにぎり) 2021/12/18(土) 01:25:26.58 ID:oIS4ylbu
ガチャッ


ツバサ「遅れてゴメンなさい…道が混んでたの」ヨロヨロ


 
ツバサ「…あんじゅ、大丈夫だった?」


あんじゅ「………時速130キロの鉄塊が、お尻スレスレをかすめていったのよ…?」


あんじゅ「……ちょっとイッちゃったじゃない、もぅ」


ツバサ「……」クスッ
 
138: (おにぎり) 2021/12/18(土) 01:33:31.72 ID:oIS4ylbu
 
タッタッタッ…


英玲奈「ッ…ゼェハァ…」ヨロヨロ


 

英玲奈「っ………二人とも…!」バッ


 

あんじゅ「…これで敵は全部?」


ツバサ「ええ、始末したわ」


あんじゅ「ああ…ツバサ」ダキッ


ツバサ「勝ちよ…私たちの」ギュウ


    
英玲奈「………」


 
鞠莉「イエーーー!! HAPPY ENDデスネ~~!!」USA!USA!
 
139: (おにぎり) 2021/12/18(土) 01:39:04.01 ID:oIS4ylbu
~~~


~~~~~~~~


~~~~~~~~~~~~~~~


希「とはいかないのが、この世界の面白いとこよね」

英玲奈「……」

希「実は今まで黙ってたけどこの脚本……まだ未完成なの」

希「だってあと一人、何とかしなくちゃいけないラスボスが残ってるんだもん」

英玲奈「…君のことだろ?」

希「んー、それは見方によるかも」

希「ウチを味方にするか敵にするかはそちらさんの選択次第」

希「ウチの掴んだラスボスに関するマル秘ネタ……2億払ってでも聞いとく価値あると思うけどな~?」

英玲奈「…勿体ぶらずに今話してみろ」

希「じゃあ先っちょだけ」
 
140: (おにぎり) 2021/12/18(土) 01:44:38.92 ID:oIS4ylbu
希「はい、この写真なーんだ?」スッ

英玲奈「…!!」
 
希「お、いいね今のリアクション。英玲奈さんのそういう顔が見たかったんよ♪」

希「…これは車でペシャンコにされる数日前の可可ちゃんを写したものよ」

希「場所はとあるアイドルのライブ会場。ここで可可ちゃんはご覧の通り、“ここにいるはずのない人”と密会してた」
 
141: (おにぎり) 2021/12/18(土) 01:50:04.72 ID:oIS4ylbu
希「二人が会うのはこれが初めてじゃない。ある時はモールのベンチで、またある時は映画館の前後席で」

希「この二ヶ月、毎度騒がしい場所を選んで、お二人さんは何度もお忍びデートを重ねてたの」

希「そんな所で一体どんな愛の言葉を囁くんだろうね? 失礼ながら出歯亀させてもらったところ、どうも普通の乳繰り合いとは違うみたいで」

希「……もう何が言いたいか分かるよね?」

希「そのお相手こそ、可可ちゃんと一緒にこれまでの悪事の計略を練りながら」

希「表では涼しい顔してそちらさんサイドの人間みたく振舞ってた不届き者」

希「つまるところ、ユダなんよ」


 


希「……統堂英玲奈さん」


   
希「まさかあなたがそうだったなんてね」


    
英玲奈「………」
 
142: (おにぎり) 2021/12/18(土) 01:56:34.70 ID:oIS4ylbu
金曜
ロードショー


               ラブライブ!× ジェントルメン
 
143:今日はここまで(おにぎり) 2021/12/18(土) 02:02:30.85 ID:oIS4ylbu
ジェントルなウーメンたち(仮題) 東條人物メモ


【ジャーマネ】侑

・ジムのみんなを守るため、英玲奈に協力
 

【チャイナマフィア】可可

・下剋上と大麻事業買い叩きを目論むも、道半ばで壁紙に


【王】ツバサ

・暗〇を逃れ、可可とケリをつける


【右腕】英玲奈

・可可と密会を重ねていた
・(現在)希に脅迫と協力を提示される


【探偵】希

・(現在)“ユダ”の存在を示唆、情報を2億で売り付けようとする
 
149: (おにぎり) 2021/12/19(日) 22:15:16.21 ID:uuOapQEr
希「ここに一本の動画があります」

希「数日前のライブ会場に来てた英玲奈さんたちを、関係者席から超望遠盗撮したものです」

希「そこで二人が何を喋ってたのか。さすがに音声は録れなかったから、口元を読んで台本に書き起こしてみたんだけど」

希「果たしてこれで合ってるのかどうか、ウチと一緒にチェックしてくれない?」

希「ウチが可可ちゃんの台詞を読むから、英玲奈さんは自分のをお願いね」

希「数日前の自分をもう一度演じるの! 面白いでしょ?」

英玲奈「東條……君は」

希「あ、もしかして恥ずかしい? うんうん、気持ちは分かるよ」

希「でもよりよい映画作りに犠牲はつきものやん?」

希「もちろん、どーしても嫌ならウチが寂しく一人芝居するけど…」チラッ

英玲奈「………心底、悪趣味なやつだ」
 
150: (おにぎり) 2021/12/19(日) 22:20:31.36 ID:uuOapQEr
希「その気になってくれた? じゃあここ、隣座って」ポンポン

希「これ台本ね。太字になってるとこが英玲奈さんの台詞…本人だし見れば分かるか」

希「じゃあ可可ちゃんが喋るとこからね……はい、アクション!」


 
希「――…そうでデス。嵐珠大姐に不測の事態がありマシタ」


希「ドクターの話では、この先何年かは排泄パック付きの車椅子が手放せないだろうと。あれでは今まで通りの業務は無理デス」


希「やったのは綺羅のコンチクショーデス……全てが終わればそういうことになりマス」


 
英玲奈「………アマリ賢イ手トハ言エナイナ」


希「はいカーット!!!」

希「んもー英玲奈さん、外国人の可可ちゃんより片言ってどゆこと? もうちょい気持ちを込めて!」

希「ひょっとして緊張しとる? 声、震えてるけど」

英玲奈「お前…」

希「ウチはモノづくりには妥協しないよ。はいもう一度、アクション!」
 
151: (おにぎり) 2021/12/19(日) 22:25:16.60 ID:uuOapQEr
英玲奈「……」コホン


英玲奈「………あまり賢い手とは言えないな」


希「偉そうに言うなデス。綺羅のコンチクショーに振り回されるのには疲れたと言って可可に近付いてきたクセに」


希「チ――ットモ、こちらに有益なコトを教えてくれないではありまセンカ」


希「違うと言うなら、ここに綺羅の首の一つでも持ってきてみやがれデス。これでは協力関係の意味がありマセン」


英玲奈「あいつが居なくなれば、売却話そのものが無くなってしまう。少しは考えて物を言え」


英玲奈「………それに、情報ならある」


希「ほー? 何デスカ」


英玲奈「それは……」


英玲奈「………」


希「……英玲奈さん? 続けて?」


英玲奈「…………」


英玲奈「近く……あんじゅの警備が手薄になるタイミングがある」


英玲奈「そこまで言えばわかるだろう。あとは君の好きにするといい」
 
152: (おにぎり) 2021/12/19(日) 22:30:14.15 ID:uuOapQEr
希「可々ッ…可ー可可可ッ!!! 一緒に組織を作った盟友の一人を売るのデスカ!」


希「ひょっとして、この数日でロボットにでも改造されましたデスカ? 人の心をインプットし忘れてマスよ?」


英玲奈「………君に私たちの何が分かる」


英玲奈「…………分かるものか」


希「可々々…言われなくても好きにさせてもらいマス」


希「もう可可は誰の指図も受けマセン…」


希「これからは可可がゲームを仕切りマス……とうとう可可の時代が来たのデスよ」
 
153: (おにぎり) 2021/12/19(日) 22:35:23.71 ID:uuOapQEr
希「ふぅ……なかなか迫真の演技だったね?お互いに」

英玲奈「………」

希「まあ、このあと可可ちゃんは可可(カベ)ちゃんになっちゃうんだけど」

希「でも辻褄はあってるよね。ツバサさんじゃない誰かがあの農園を丸ごと手に入れたとして、いきなりそれまでと同じように運営するのはまず無理」

希「効率的な経営にはそのノウハウを知ってる助言役が必要よ。ちょうど英玲奈さんみたいな」

希「いいコンビになれたかもしれないのに……事故で傷だらけの身体を引きずって、息せき切ってあんじゅさんのガレージに駆けつけてみれば」

希「目にしたのは壁紙にされちゃった共犯者と、間一髪で難を逃れた二人の抱き合う姿じゃ、さしもの英玲奈さんも

英玲奈「もういい。黙れ」

英玲奈「これ以上、君の勝手な妄想に付き合わされるのはうんざりだ…」
 
154: (おにぎり) 2021/12/19(日) 22:40:36.94 ID:uuOapQEr
希「…不快にさせたのならゴメンね? でも英玲奈さんには知っておいてほしかったんよ」

希「ウチの仕事に2000万じゃなく2億支払う価値があるってことをね」

希「多少の誇張や脚色は入ってたけど……この脚本は今回の抗争の克明なドキュメントであると同時に、英玲奈さんの裏切りの軌跡でもあるの」

希「今ならそのことはウチの中だけに仕舞っておける。一度にこっちの手に渡してしまえば、その先のことは保証できないからね」

希「すべてが明るみに出ちゃえば、ツバサさんは火星にでも高飛びしなきゃいけなくなるし、英玲奈さんに至っては……」


希「……でも、ウチのことを地獄の連れション相手にしようとするのだけは勘弁ね」

希「もしこの身に何かあった時は、ウチの仕込んだ“保険”が発動して、にこっちを大喜びさせるだけの結果に終わっちゃう」

希「そんな味気ない結末は、お互い望んでないでしょ?」

英玲奈「………」


希「…三日後にまた来るよ。それまでによく検討してみて?」

希「お肉とお酒ご馳走様ね。じゃ、おやすみ~」
 
155: (おにぎり) 2021/12/19(日) 22:45:48.62 ID:uuOapQEr
ギィィ…バタン


 
英玲奈(………なるほど)


英玲奈(東條……君は確かにやり手だ)


英玲奈(だが最後に笑うの誰か……)ヴーヴー


ピッ


英玲奈「………もしもし?」


 
英玲奈「……………わかった、すぐに向かおう」
 
156: (おにぎり) 2021/12/19(日) 22:51:15.69 ID:uuOapQEr
【一時間後――某埠頭】


プァーン プァーン


英玲奈「……」


 
コツ…コツ…


    
「そこで止まりなさい」



英玲奈「……」スッ


 
摩央「悠奈、ボディチェックを」


悠奈「パァ…!」ゴソゴソ


    
英玲奈「…聖澤悠奈と柊摩央か」


英玲奈「通称“勇者”と“魔王”の傭兵コンビ……今は誰の飼い犬をやってるんだ?」


 
摩央「……奥でお嬢さまがお待ちよ。そのまま真っすぐ進んで」
 
157: (おにぎり) 2021/12/19(日) 22:56:43.35 ID:uuOapQEr
――
―――

英玲奈「…やっとお目通しがかなったな、お嬢様」


「……私の存在に気付いてたの?」


英玲奈「唐可可と何度か接触して感じたのは、この買い叩きは彼女一人のプランではなさそうだということだ」

英玲奈「彼女のさらに上で絵図を描いている者がいる。それが鍾嵐珠なのか、それ以外の誰かなのかは分からなかったが」

英玲奈「逆に言えば、だからこそ私も安心してこの計略に乗り続けることが出来たんだ」

英玲奈「唐可可のツバサをも喰らわんとする野心は気に入ったが、背中を預けるには些か以上に危なっかしい相手だからな…」

英玲奈「その点、今の今まで徹底して姿を見せなかった君の用心深さはそれだけで信頼に値する。それがようやくこうして現れる気になった理由は?」


ザッ…


真姫「ふん……可可のバカは先走ったけど、あなたの情報は確かに使えるみたいだったからね」クルクル


英玲奈「君としても好都合だろう? 手綱を握れない持ち駒が退場するのは」


真姫「あなたは違うとでも言いたいわけ?」
 
158: (おにぎり) 2021/12/19(日) 23:01:49.64 ID:uuOapQEr
真姫「………幾ら欲しいのよ」


英玲奈「私は外にいる傭兵たちとは違う。カネの問題ではないんだ」


真姫「じゃあどうやってあなたを信用すればいいのよ」

真姫「お金以外で、長年の相棒に背を向ける理由は? 何か個人的な恨みでもあるとか?」


英玲奈「恨みか……」


英玲奈「確かにあいつには苦労ばかりさせられている………」


英玲奈「ろくでもない地主たちのご機嫌取り、その尻ぬぐいに奔走させられ……菜食主義だというのに“肉”の自宅保管を余儀なくされ、農園荒らしの犯人探しもほとんど私一人でやった…」


英玲奈「衝突事故に遭えば車内に放置され、心配されるのはもう一人の相方ばかり……代わりに相手役としてあてがわれたのは、コウモリとヒルを足して二で割らないようなずる賢い探偵ときた」


英玲奈「……だがこれらのことはあくまでぼやきの範疇で、本質ではないのだろう」
 

英玲奈「私がここにいる理由………正直、今の今まで自分でもよく分かっていなかった……」


英玲奈「私は……出会った時から常に私たちの王であり続けた綺羅ツバサの」


英玲奈「その更に上手をいってみたい……常に泰然自若としたやつの双眸を…驚きに見開かせてみたいのかもしれないな…」
 
159: (おにぎり) 2021/12/19(日) 23:07:35.20 ID:uuOapQEr
真姫「……たったそれだけのために、ここまでのことを? 意味分かんない…」


英玲奈「元より部外者に分かってもらおうとは思わない。私たちのことは」


真姫「ていうか……えらく遠回しな下剋上ってことよね? 結局…」


英玲奈「解釈は自由だ。どうしても信用できないならこの場で始末をつければいい」

英玲奈「もっとも、こちらも大人しく掃除されるつもりはないが」


真姫「………今回も何か手土産は持って来てるんでしょうね」


英玲奈「農園の経営状況に関するデータ。特にここ二ヶ月とそれに基づくここから先の展望のな」

英玲奈「数字は誰より嘘を吐かず雄弁だ。このままいけば、遠からず組織の財政は破綻する」

英玲奈「ツバサは一刻も早くこの金食い虫を手放したがってるはずだ」

英玲奈「ほどなく声がかかるだろう。それは価格折衝の場で値下げの裏付けにでも使うといい」


真姫「ふん……あなたもとんだ悪党ね」

真姫「でもまあ…買収後に農園の管理を任せるなら、可可よりあなたの方が遥かに適任だったのも事実だし…」クルクル

真姫「……ところで、ヒルみたいな探偵に引っ付かれてるって言ってたけど。そっちの方は大丈夫なの?」


英玲奈「任せてくれ。君の手を煩わせはしない」

英玲奈「我々の勝利は目前。それまでにいかなる障害も排除してみせるさ」
 
160: (おにぎり) 2021/12/19(日) 23:12:43.69 ID:uuOapQEr





スタスタ…


英玲奈「……もしもし、私だ」


英玲奈「………ああ、まずは矢澤にこから始めよう」
 
161: (おにぎり) 2021/12/19(日) 23:19:23.36 ID:uuOapQEr
――――

―――――――

【矢澤探偵社――地下駐車場】


にこ「~♪」

にこ(希のやつ、やーっと何か掴んだみたいね)

にこ(これで大したネタじゃなかったら承知しないんだから。はーっ、約束の土曜が待ち遠しいわ)

にこ「さーて早くうちに帰ろっと。えっと、車どこに停めたっけ…」


 
ブロロロロロロロ…キィィ 


バタンバタン 


愛「お、このちんまいのが例の? 写真よりカワイイじゃん」

しずく「しかしこうして見ると実物は…」●REC

かすみ「侑先輩にちょっと似てるかもですね?」

歩夢「かすみちゃん? 全然似てないよ?」


にこ「な、なによアンタ達……警備は何してんの?」


愛「まー細かいことはいっか。とりあえずさらっちゃえ☆」

彼方「みんなかかれ~♪」


にこ「はっ? ちょ…にこが誰だか分かって…むぐっ、む~~~っ!!」ジタバタ
 
162: (おにぎり) 2021/12/19(日) 23:24:44.01 ID:uuOapQEr
侑(ごめんなさい矢澤さん…そしてみんなも、結局巻き込んじゃってゴメン…)


果林「なんて顔してるのよ」

侑「果林さん…」

果林「その様子だとまた私たちに申し訳ない…とか考えてるんでしょ」

侑「あはは…果林さんには何でもお見通しだね…」

果林「侑が分かり易すぎるのよ…今回のことだって」

果林「私たちに心配かけたくないって気持ちは嬉しいけど、これはジム全体の問題なんだから」

果林「最初からちゃんと言ってほしかったわ。ライバルだけど仲間…が、うちのモットーでしょ?」

侑「果林さん……」

果林「それに……」

サワッ

侑「ひぅっ!?」

果林「ちゃんとこっちの方で埋め合わせしてもらえれば、私たちは一向に構わないわ」ツツー

果林「ねぇ…? 仲間で膣トレ器具の高咲さん…?」ササヤキ 

侑「あ…あ…あっ」ガクガク


―――――

――
 
163: (おにぎり) 2021/12/19(日) 23:30:42.64 ID:uuOapQEr







にこ「………はっ!」ガバッ


にこ「………何処よここは…?」キョロキョロ


侑「あ…目が覚めたんだね」

にこ「な、なにアンタ…! ちょっと…寄らないで! 私、そっちの気はないんだから…!」

侑「ごめんなさい…怯える気持ちは分かるけど話を聞いて」

にこ「い、今なら何もなかったことにしてあげるからっ、私をここから出しなさい!」

侑「……そこに畳んで置いてある服を着たら、帰ってもらって大丈夫です」

にこ「え…?」

にこ「………なんで服着てないのよ私………」

侑「……」

にこ「……あ、あんたたち…にこを攫って何が目的だったのよ…?」
 
164: (おにぎり) 2021/12/19(日) 23:36:01.29 ID:uuOapQEr
<コンコン ユウチャーン


侑「あ、ちょっとお待ちを」スクッ


 
スタスタ…


   
ハイコレ オチャト エイヨウドリンクダヨ

アリガトアユム

タイチョウノホウハ ダイジョウブ?

キノウハスゴカッタモンネ♡

ハ、ハハ…


 
にこ「……?」


   
スタスタ…


侑「これどうぞ…気つけの飲み物です」

侑「両方飲んだら、帰る前に一つ約束していってください」

侑「今後一切、ツバサさんの周りを嗅ぎ回らないって…」
 
165: (おにぎり) 2021/12/19(日) 23:42:35.06 ID:uuOapQEr
にこ「あ…あんた! やっぱりツバサの指示を受けてやったのねっ?」

侑「…そうです。私が至らないばかりに…ジムのみんなやにこさんを巻き込んじゃって、申し訳ない気持ちでいっぱいです…」

侑「……ジムのみんなは、にこさんを攫うのに協力する代わりに、私のことを一晩好きにさせろって言ってきました……」

侑「私は…他に選択肢もなかったから……事前にみんなでお酒を飲むことを条件に了承したんです…」

にこ「……何の話をしてるのよ…?」

侑「でも私はやっぱり怖くなって……それで、みんなのお酒に混ぜ物を……」

侑「盗んできたハッパ……ここに連れてくる時、暴れるにこさんにも同じものを吸わせて……」

にこ「………あんたまさか…」

侑「うああ、ゴメンなさいゴメンなさい!! ……でも、にこさんも割とノリノリだったていうか」

にこ「ぬぁっ、ぬぁに言ってんのよアンタ…!!!でででデタラメを言うんじゃないわよ…!!?」

侑「……ここに、しずくちゃんが撮影してた動画があります」

侑「これと引き換えに……どうか私たちとツバサさんのことは忘れてください…!」
 
166: (おにぎり) 2021/12/19(日) 23:49:04.85 ID:uuOapQEr
――

――――

―――――――

『とぉーどぉーけ~~おほぉぅ♡ えがおの んほおぉおぉぉ♡♡♡みんなをしあわせにぃ~~~♪♪♪にっこりの んほぉぉおおぉぉァァッ♡♡♡』

英玲奈「……酷いな」

英玲奈「これ、考えたのは君か?」

侑「……」ガクガクガク

英玲奈「…まあいいさ。これでやつは…」

侑「あの…!これで仕事は終わりなんですよね?」

英玲奈「いや、もう少しだけ付き合ってくれ」

侑「あ…はい」


侑(頼まれたことは全部やったはずだけど……まだ何かさせられるのかな)

侑(……まさか歩夢たちが心配してたみたいに、このまま一生骨までしゃぶりつくされるなんてことは)

侑(でも仕事と引き換えに例の件は大目に見てくれるって約束したし……英玲奈さん誠実そうだし何だかんだで優しいし……大丈夫…だよね?)


ピンポーン ピンポーン
 
192: (おにぎり) 2021/12/21(火) 00:40:25.96 ID:O7JkZ9hB
次回で完結させます

>>169
最後に書いたのはだいぶ前ですが
〇〇洋画劇場形式なら自分です
 
170: (おにぎり) 2021/12/20(月) 22:52:20.34 ID:tRTcCRuX
ピンポーン ピンポーン

英玲奈「…どうやらもう一人のお友達が来たようだ」


 

ガチャ

希「やっほー英玲奈さん。例の件、考えてくれた?」


希「……ありゃ? なんで虹ヶ咲ジムの子がここに? 二人してなに観てるん?」


英玲奈「丁度いい。君も一緒に観賞するか?」
 
171: (おにぎり) 2021/12/20(月) 22:57:08.85 ID:tRTcCRuX




希「やーん…まいったね」

希「これじゃにこっちもウチから情報を買いたいなんて言わなくなっちゃう」

希「商売あがったりだよ…今回はウチの負けやね」

英玲奈「いや、これで終わりなはずがない」

英玲奈「抜け目のない君のことだ。彼女以外にも何人かの顧客……飢えたマスメディアのアテを確保しているんだろ?」

希「…さあて、どうだろね」

英玲奈「そのはずなんだ。我々の調査ではな」

英玲奈「高咲、見せてやってくれ」
 
172: (おにぎり) 2021/12/20(月) 23:01:59.65 ID:tRTcCRuX
侑「よっ…よっこいしょっと…!」ドサドサボキッ

希「……それって」

英玲奈「高咲の仲間たちが集めてくれた」

英玲奈「君の言う“保険”とやらの写真や動画に記録媒体たちだ」

英玲奈「保管場所は多岐に渡ったので回収も一苦労だった。そうだな?」

侑「10人で手分けして、丸二日かけてやっとだったよ。駅のコインロッカーからネットの海にまで、希さん用心深すぎ…」

英玲奈「あまりにも数が多いのでリストを作った。これで全部か、君の目でチェックしてもらえるか」

希「……うそーん……ホントに…?」ピラッ

英玲奈「漏れはないはずだ」

英玲奈「この三日間……いやその前から、私たちは君を監視していたからな」
 
173: (おにぎり) 2021/12/20(月) 23:07:38.21 ID:tRTcCRuX
英玲奈「君が我々の周りをうろちょろしていることには気付いていた」

英玲奈「この商売を続けていると覗かれることには慣れてくる……その逆にもな」

英玲奈「とはいえ君もやり手だ。その観察力と直感を欺くのは容易でないことは分かっていた」

英玲奈「三日前の晩、“君のために用意した”高級和牛と一本15万のスコッチで、ご自慢の観察眼と警戒心が鈍った頃合いで」

英玲奈「君がトイレに立った時に、玄関の靴に高咲の仲間が作った発信機を仕込んでからは随分と話が楽になった」

英玲奈「今の時代、電子機器に強い味方は心強い。勘の鋭い君を尾行するには、人より街中の監視カメラを利用するのが安全だった」

英玲奈「彼女がうちの近くに置き忘れたらしい私物のボードを見られたときは一瞬肝が冷えたがな」

希「……そういえばそんなんあったね…」


英玲奈「君の“保険”はまるで時限爆弾の様に、一定期間放置されると自動で各々のアテに転送される仕組みだったようだが」

英玲奈「この三日間、タイマーのリセットと物の確認を兼ねて保管場所を周ったその用心深さが仇になったな」

英玲奈「君は自ら“保険”の隠し場所を我々に教えてくれたんだ」

英玲奈「……どうだ。漏れはあったか?」
 
174: (おにぎり) 2021/12/20(月) 23:12:12.97 ID:tRTcCRuX
希「……うむむむ」


希「ひぃふぅみぃ………あー…困ったね」


希「ウチの記憶だと、あと一つだけ足りない気がするんよ」


英玲奈「…数が合わないとでも?」


希「残念だけど、何度数え直してもね」


英玲奈「……」


希「ウチだって、万が一のことを考えてなかったわけじゃないよ」


希「だからこの三日間で、あえて一つだけ保管場所を周らないでおいたの。いわば隠し玉、保険の保険やね」


英玲奈「…ハッタリだろ? 君の得意技だ」


希「と思わせてホントだったり。ウチの得意技やん」


英玲奈「…なら言ってみろ。それはどこへ転送される?」ザッ


希「わわわっ、待ってよ今思い出すから。物騒なのはナシね?」


希「えっと、転送先は……」


希「あそうそう」ポン


希「たしか、ツバサさんのところだったかな?」
 
175: (おにぎり) 2021/12/20(月) 23:17:04.40 ID:tRTcCRuX
【20分前――都内某所 黒澤水産加工場】


ツバサ「ようこそ。私の市場(マーケット)の入口へ」

ツバサ「ここではクサのパッケージングや冷蔵保管に出荷作業なんかの諸々を行ってるの」

ツバサ「詳しくは担当者に聞いてちょうだい。まだ興味があればだけど」

真姫「……」クルクル

真姫「あんまり連絡がないから、忘れられたかと思ったわ」

ツバサ「ごめんなさい、色々とゴタついててね。でもあらかた片付いたから」

ツバサ「…それにしても、今日はすごいお友達が一緒なのね」チラリ


悠奈「パァ…!」

摩央「…」ペコリ


ツバサ「“勇者”と“魔王”。一騎当千の伝説の傭兵ペアじゃない。このあと紛争地帯で診療の予定でも?」

真姫「そりゃ護衛くらいつけるわよ」

真姫「だってあなた達、クサってもヤクザじゃない。あ、引退するんだったかしらね」

真姫「…そんなことより、さっさと売却の最終価格を詰めちゃいましょ」
 
176: (おにぎり) 2021/12/20(月) 23:21:34.62 ID:tRTcCRuX
ツバサ「あら、それに関しては400億で話が纏まってるはずだけど」

真姫「二ヶ月前まではね。でも今は状況が変わってるでしょ?」

ツバサ「…と言うと?」

真姫「いい? 400億はあなたの農園すべてと流通ルート込みの値段よ」

真姫「その一つが現在閉鎖状態。言うまでもなく例のおバカさんたちに襲撃されたせいでね」

真姫「彼女たちの動画は一時期滅茶苦茶にバズってたの、知ってるわよね?」

真姫「当然警察の目にも留まったはず。安全のために、少なくとも一年は他の農園も閉鎖しないと」

真姫「その間、スタッフを確保しながら移転場所を探す手間とコスト……」

真姫「さる筋から私が手に入れたデータによれば、事業が元の規模を取り戻すのに最低三年はかかると見積もられるわ」

真姫「そういった諸々が採算に与える打撃を考慮すると、最初に言ってた400億の売値は」

真姫「今じゃせいぜい…130億がいいところね」クルクル
 
177: (おにぎり) 2021/12/20(月) 23:24:56.67 ID:tRTcCRuX
真姫「大事なのは最初じゃなく、最後に倒れたドミノの形がどうなってるかよ」

真姫「こんなこと、私に説明されなくてもあなたが一番よく分かってるでしょ」

真姫「そのドミノに、現在進行形で押し潰されそうになってるはずなんだから」

ツバサ「……」

真姫「でも私ならその穴埋めを手伝ってあげられる」

真姫「100億。それなら今すぐ用意して支払えるわ」

真姫「会計士に電話すれば一時間とかからない」

真姫「どう? 現実的ないい折衷案よね」


ツバサ「………少し、二人で話せるかしら」

真姫「フン…いいわよ」

真姫「あなた達、そこで待ってて」


ゆうまお「」コクッ
 
178: (おにぎり) 2021/12/20(月) 23:28:13.72 ID:tRTcCRuX
 
ガチャ…ギィィ


真姫「……寒っ」

真姫「なによこのコンテナ……また何かの地下施設への入口?」ブルッ

ツバサ「ただの保冷庫よ…クサらせないための」

ツバサ「それでさっきの話だけど、一つ口を挟ませてもらっていい?」


ツバサ「最後のドミノが大事なのはその通り」


ツバサ「でも私が気になってるのは、最初のドミノを倒したのが誰かってことなの」


真姫「……そんなこと、私が知るわけないじゃない」


ツバサ「なら紹介するわ。彼女が最初のドミノよ」カチッ


ヴィ-ン…ガラガラガラ


凍可可「」ガラガラ
 
179: (おにぎり) 2021/12/20(月) 23:32:36.94 ID:tRTcCRuX
真姫「っ!!」


真姫「……なによっ、悪趣味ね…」


ツバサ「驚いてもらえたようね」


真姫「あ、当たり前でしょ? 突然カチコチの死体が出てきたら誰だってビックリするわよ…」


ツバサ「彼女に見覚えは?」


真姫「氷漬けの北京原人の知り合いなんていないわ」


ツバサ「そう…」


ツバサ「でもこの賢い北京原人さんは私に“価格交渉”を迫ってきたのよ。誰かさんと同じくね」


真姫「…私がグルだとでも? 言いがかりはよして」


真姫「この人とは今が初対面よ。解凍して本人に聞いてみたら?」


ツバサ「…じゃあそうしましょうか」


真姫「は…?」


ツバサ「ただし、解凍するのはこのスマホに送られてきたファイルの方よ」スッ


ツバサ「……実は、ついこの間タレコミがあったの」ポチポチ


ツバサ「まさかあなた達が私に内緒でこんなことしてたなんてね――」
 
180: (おにぎり) 2021/12/20(月) 23:37:18.90 ID:tRTcCRuX




希「――たしか、ツバサさんのところだったかな?」


侑「えぇっ? それって…」


英玲奈「時限爆弾どころか、核ミサイルの発射装置というわけか」


希「どんな時でも残しておくものでしょ? 最後の切り札ってやつは」


 

英玲奈「…もう一度聞くが、ハッタリなんだろ?」


希「さあてね…ウチならやりかねないかもって思わない?」


 

侑(確かに、この人ならもしかすると……)


侑(それを確かめる術がない以上、ハッタリでも“その可能性”を提示されただけで、私なら動けない…)


 
希「繰り返し言うけど、英玲奈さんの裏切りをツバサさんが知ったら、お互い身も心も深く深く傷付け合うことになっちゃう」


希「だから二人のためにもウチを…」


英玲奈「いや、その必要はない」


英玲奈「君の言う切り札とやらなら、既にツバサに送信してある。今から45時間前にな」


希「……んん?」
 
181: (おにぎり) 2021/12/20(月) 23:41:29.18 ID:tRTcCRuX
~~~~

『ふん……可可のバカは先走ったけど、あなたの情報は確かに使えるみたいだったからね』

『君としても好都合だろう? 手綱を握れない持ち駒が退場するのは』

『あなたは違うとでも言いたいわけ?』


真姫「こ、これって…」


ツバサ「そう…三日前のあなたとあなたの患者の会話を盗聴させたものよ」

ツバサ「うちの優秀な患者…もとい“間者”である英玲奈に張り付けておいた尾行の手でね」


真姫(二重スパイ…?? 統堂英玲奈が…?)


真姫(まさか、ありえない……だって彼女は、優木あんじゅを…)
 
182: (おにぎり) 2021/12/20(月) 23:46:06.47 ID:tRTcCRuX
~~~~~

希「――じゃあ英玲奈さんは、本当の黒幕である真姫ちゃんを誘い出すために、組織を裏切ったフリを…?」


英玲奈「最初に農園が襲われた時から、西木野真姫は最重要の監視対象だった」


英玲奈「私たちの知る限りで、農園の所在を知る部外者は彼女しかいないはずだからな」


英玲奈「今日まで君のことを泳がせていたのも、西木野たちについて何か掴んでくれるのを期待してだ」


英玲奈「いわば君は、我々の放ったネズミの一匹だったんだよ」


英玲奈「だが彼女は尻尾を出す素振りさえなかった」


英玲奈「そこで私は作戦を変え、もう一人の容疑者である唐可可に接近することにした」


英玲奈「その過程で嗅ぎ取った唐の背後にいる黒幕の臭い……鍾嵐珠ではない何者か…」


英玲奈「慎重なそいつを表舞台に引きずり出すためには、その信用を得るための何か決定的な出来事が必要だと私たちは結論付けた」


 
希「……あんじゅさんの警備の穴について、可可ちゃんにリークしたのはそういうワケだったと……」


   
侑「でもそのせいであんじゅさんは本当に危ない目に遭いかけたんだよね? よくそんな綱渡りなこと…」


 
希「……これ、少なくともツバサさんの考えた作戦じゃないよね」


   
英玲奈「その通り。これはあんじゅのアイデアだ」


英玲奈「彼女が発案し、私に実行させた。ツバサには内密で」


英玲奈「……昔から、私は彼女のことが空恐ろしくなる時がある」
 
183: (おにぎり) 2021/12/20(月) 23:50:32.56 ID:tRTcCRuX


~~

英玲奈『私が情報を流し、お前が囮になるというのか…?』

英玲奈『だとしても、本当に人払いをするなど言語道断だ。あまりに危険すぎる』


あんじゅ『ここまで慎重な相手よ? 信じ込ませるにはそれくらいしなきゃ』

あんじゅ『敵さんが現れた途端に警備がわらわら出てきたら、いかにも待ち伏せてたって感じがしちゃうでしょ?』

あんじゅ『何のためにあなたやツバサが私のお店の近くに居合わせる時間帯を選んだと思ってるのよ』


英玲奈『私たちに助けに来させるつもりなのか……ツバサはこんな計画を認めないぞ』


あんじゅ『あの子には知らせなくていいの』

あんじゅ『むしろその方がいいのよ。ツバサなら、何があっても私のこと助けようと全力で動いてくれるもの』クスッ


英玲奈『……繰り返すが、危険が大きすぎる』


あんじゅ『だからこそ相手も納得するのよぅ。囮役の私が助かって、かつあなたが黒幕さんの信頼を勝ち取るにはこれしかないわ』

あんじゅ『…スリルって大事よ? こういう機会も久々だし、せっかくなら楽しみましょうよ……ふふっ』
 
184: (おにぎり) 2021/12/20(月) 23:54:53.21 ID:tRTcCRuX
英玲奈「君らの考えている通り、相当に危険な賭けではあった」


英玲奈「しかしあんじゅはそれを受け入れた…むしろ嬉々として」


侑「…ハッパ吸ってたの?」


英玲奈「そういう女なんだ…昔から」


英玲奈「だが相手を搦めとる算段には必要以上に長ける。唐可可にリークしたXデーの日付は、鍾嵐珠が退いてからたったの数日後」


英玲奈「正式な後任の拝命を待たず、独断で動かざるを得ない唐が手勢を連れて来るにしても、そう数は多くないであろうこと」


英玲奈「さらには下っ端ではなく、王であるツバサが救援に駆け付けるという荒唐無稽さ」


英玲奈「それが虫のいい救出劇にむしろ破天荒な説得力を与えること……全てあんじゅは計算し読んでいたんだ」


英玲奈「実際、ほぼその読み通りに事態は進行した……あの衝突事故を除いてだが」


英玲奈「まあ、結果としてそれが事態の迫真性に彩りを添えることになったのは、皮肉としか言えないがな…」チャキッ


希「あ…ちょい待って? ウチはまだ英玲奈さんの知らない情報を…」


英玲奈「東條…君にもわかったはずだ。この世には観察した事実や推測からだけでは読み切れないこともあると」


英玲奈「だからこれで…ゲームは終わりだ」
 
185: (おにぎり) 2021/12/20(月) 23:58:53.33 ID:tRTcCRuX
~~~~~

真姫(まだ…まだ終わりじゃない)


真姫(ひとまずここは悠奈と摩央を壁にしてこの場を…)ガチャ


 

ギィィ…


   

凛「……」

海未「……」シャリシャリ


 
真姫(え…? 二人は…)


ツバサ「…勇者と魔王は竜宮城を探す旅に出かけてしまったようね」

ツバサ「でも安心して。すぐにあなたも追い付けるよう手配してあげられるわ」
 
186: (おにぎり) 2021/12/21(火) 00:02:37.78 ID:O7JkZ9hB
真姫「こ、これはビジネスの問題だったはずよ……」


真姫「だからビジネスで話をつけましょう……いくらで買い取ればいいの?」


ツバサ「そうね……あなたの計算によれば、今回の件で生じた損失は」


ツバサ「400億引くところの130億……270億だそうだから」


ツバサ「それが私たちに支払われるまでの間、あなたにはそこの冷凍コンテナに入ってもらいましょうか」


真姫「っ……」


ツバサ「中はマイナス25度だから、凍死までに一時間」


ツバサ「凍傷で得意のメスが握れなくなるのに20分ってところね」


ツバサ「そんなことになる前に、会計士への送金指示を急いだ方がいいわよ」


ツバサ「それと、一つ勘違いしてるようだから言っておくけど」


ツバサ「あなたに事業は売らない。引退はやめたわ」


ツバサ「だからこれはビジネスではなく落とし前なのよ。私たちの世界のルールに則った…」
 
187: (おにぎり) 2021/12/21(火) 00:06:13.47 ID:O7JkZ9hB
真姫「…わ、わた


ツバサ「落とし前は270億。1円たりとも負けないし、それ以上も受け取らない」


ツバサ「私、実のところお金にはそれほど拘らない性質なの」


ツバサ「……でも仲間に手を出されたことは許せない」


ツバサ「私たちの女王に………本来なら、首を刎ねられても文句は言えないわよね?」


真姫「~~っ」


ツバサ「子の不始末は、その親に責任を取ってもらうのが筋よ」


ツバサ「そしてその分は、お金とは別の形で払ってもらう」


ツバサ「あなたは育ちが良くて教養も深いでしょうから」


ツバサ「“ヴェニスの商人”、なんてどうかしら」
 
188: (おにぎり) 2021/12/21(火) 00:10:43.27 ID:O7JkZ9hB
海未「…」スッ


ツバサ「このよく研がれた出刃包丁で、あなたの肉を1ポンドもらうわ」


真姫「お肉を…1ポンド?」


ツバサ「グラムにして453.6g。全部でそれだけあれば、身体のどの部分でも構わない」


ツバサ「園田さんの手を借りてもいいけど、刃物の扱いはあなたの方が上手でしょ?」


ツバサ「自分で選んで斬り取って。ただしこちらも、1グラムとて負けるつもりはないから」


ツバサ「きっかり払い終えるまで、コンテナの扉は開かないと思って」


真姫「……」ゴクッ


ツバサ「本当にどこでもいいの……顔でも胸でもお腹でも……けどあなた、全体的にすらっとしてるから…」サワサワ


ツバサ「ああ……あるじゃない。たっぷりお肉のついた可愛いトマトさんが……」ギュウウ


真姫「ヴぇええ…」


   

ツバサ「じゃあ二人とも…あとは任せるわ」


 
海未「…これがホントの『ヴぇニスの商人』ですね」

凛「ちょっ寒にゃ……防寒着着てきてよかったー」


   
ギィィィ…ガシャン
 
189: (おにぎり) 2021/12/21(火) 00:17:22.91 ID:O7JkZ9hB




シャクッ


英玲奈「…」っトマトモグモグ


侑「あの、じゃあ私はこれで…」


英玲奈「む…そうか。ご苦労だったな」


侑「…あのぅ」


侑「これで清算は済んだ…ってことでいいんですよね…? 腎臓とか肝臓とか触覚とか売らなくても…」


英玲奈「ふむ。君はバラ売りしない方が高値がつきそうだが」


侑「ひっ!」ビクゥ


英玲奈「冗談さ…約束は守る。君たちは自由だ」


侑「あ……ありがとうございますっ! うぅ…よかったよみんなぁ…」


 
侑「…!!」ペコペコ


 

タタタッ… バタン


 
英玲奈「……さて。これで二人きりだな、東條」
 
190: (おにぎり) 2021/12/21(火) 00:23:57.53 ID:O7JkZ9hB
英玲奈「さっきの続きだが……たしかに君は観察眼に優れている」


英玲奈「その上であえて三日前の発言を反復するが、君に我々の何が分かるというんだ?」


英玲奈「…つまりは二ヶ月程度の付き合いで、十年来のチームである我々の全てを理解した気になってもらっては困るという話さ」シャクッ


英玲奈「我々の関係は、傍から見れば均衡を欠いた、歪なものに映ることもあるだろう」


英玲奈「しかし私たちはずっとこれでやってきた。三人がそれぞれ王と女王と右腕としての役割をこなす…」


英玲奈「それこそが、この歪なユニットを駆動させる最善にして唯一の方法だと理解しているからだ」


英玲奈「そこに何の異存も疑義もない……それらは破滅への引き金になるからな」


英玲奈「我々は三人で一つの超個体なんだよ……理解してもらえただろうか」


英玲奈「……それとも、もう唇が凍り付いてしまったか?」


 
『………――るよ』
 
191: (おにぎり) 2021/12/21(火) 00:28:23.47 ID:O7JkZ9hB
冷凍庫『……――滅への引き金……まだあるよ――……』ガタガタ


英玲奈「…何か言ったか?」


冷凍庫『―――穂むらでツバサさんを撃とうとした人――!』


冷凍庫『脚本の一ページ目……物語の最初に出てきた……』


冷凍庫『あれは可可ちゃんの放った刺客じゃないんよ…』


冷凍庫『「さようなら」って日本語で喋って――変だと思わなかった? このままだと大変なことに――』


ガチャ


英玲奈「30秒やる。話してみろ」


希「ふぃーありがと…なんだかんだで話聞いてくれる英玲奈さん好きよ…」ブルブル
 
195: (おにぎり) 2021/12/21(火) 21:59:45.19 ID:O7JkZ9hB
【正面玄関】

侑「WAR~WAR~争いはストッペ♪ WAR~WAR~愚かさ消え去りし」

ヴーヴー

侑「あ、歩夢からだ。はいもしもし?」


『……侑ちゃん。そのまま落ち着いて聞いて』


『綺羅ツバサさんのことだけど………私たちが……から』


『……ちゃんは何も心配しないで……くそこから避難して…』


侑「…歩夢? よく聞こえないんだけど……電波が悪いのかな」


『――奈ちゃんが……を高速で撃ち出すボタンを……』


『弾は体内で溶け………対に証拠は残らないって』


『…かなきゃ…一旦切るね……お願いだから早く逃げ…』


侑「あゆっ…」ツーツー


侑「…なんなの? みんな、また私に内緒で何か…」


 
ガサガサッ


侑「!!」
 
196: (おにぎり) 2021/12/21(火) 22:04:27.36 ID:O7JkZ9hB
~~~~~

希「アリサ・アヤセ」


希「三日前までこの冷凍庫にお泊まりしてた子の名前ね」


英玲奈「内浦で私たちが窓から突き落としたロシア人か…」


希「正確にはクォーター。あれでもスラヴ四分の一なの、ビックリよね」


希「あの子には元スペツナズで現役のロシアンマフィアなお姉さんがいて、ウチとはちょっとした知り合いだったりするんだけど」


英玲奈「…続けろ」


希「お姉さんの…エリー・アヤセに頼まれて、ウチはアリサちゃんの仇…英玲奈さん達のことを教えたの」


希「……そんな目で見ないでよ。情報料と銃弾のどっちが欲しいかって取引だったんだから」


希「けど報酬はお掃除完了後の後払いで、そしてそれは英玲奈さんのお陰で無期延期になっちゃった」


英玲奈「それがあの時の……だがあの刺客は日本人だった」


希「足がつかないようフリーの子を使ったんでしょ。クォーターだから日露両方に顔が利くしね」


希「そんなこんなで報酬をもらい損ねたウチは、そこで一旦作戦を練り直すことにしたの」
 
197: (おにぎり) 2021/12/21(火) 22:08:52.90 ID:O7JkZ9hB
英玲奈「待て、作戦だと?」

希「それも今しがたパァになっちゃったけどね…」タハハ


希「まず英玲奈さんに会いに行って、情報と引き換えに2億を頂戴する」

希「それからあのおっかないエリちが始末をつけた後で、約束の報酬もきっちりもらう」

希「締めににこっちに記事を売って宣伝してもらった上で、話題沸騰の事件の実写化脚本を映画会社に売る。これが一番儲かるベストな方法やん?」


英玲奈「……君という人間は」

希「生まれも育ちも関西なもんで…」ブィ

英玲奈「戯言をほざくな。大体そのアリサとやらを手にかけたのはツバサや私じゃない」

希「それは向こうさんに言ってよ。使用者責任ってことじゃない?」

英玲奈「かもな。だが、“そういうこと”であれば君にとっても都合がいい」


英玲奈「ずっと不思議だったんだ。どうして極道である我々に君がそこまで強気に出れるのか」

英玲奈「2億を脅し取った後で、我々をロシア人たちに掃除させることで後腐れを無くす……これも“保険”の一種か」

希「いやぁ…さっきから話が飛躍しすぎてついてけないよ……英玲奈さん、探偵にでもなったら?」チラッ

英玲奈「ふざけろ……今なぜ時計を見た?」
 
198: (おにぎり) 2021/12/21(火) 22:13:45.59 ID:O7JkZ9hB
希「…もうすぐゴミ収集の時間だから」


希「英玲奈さん…ロシアの人は同じ失敗を二度繰り返さないの」


希「絶対に横槍が入らない状況で、まず魚市場のツバサさんを片付けて」


希「それから前回邪魔立てしてくれた相手のことも…」


英玲奈「っ…」ガタッ


希「ほら、ウチのお陰で英玲奈さんは命拾いできる。だからウチのことも見逃してよ、ね?」


英玲奈「そこを動くな。まずはツバサに電話してからだ」スマスマ


Prrrrrrrr...


英玲奈「………出てくれ、頼む…」


希「ねえ、ウチらだけでも逃げよ? ぐずぐずしてるとこっちまで…」


英玲奈「黙れ」


 
英玲奈(ツバサ―――!)Prrrrrrrr...
 
199: (おにぎり) 2021/12/21(火) 22:19:37.44 ID:O7JkZ9hB
【20分前――黒澤水産加工場】


送迎車『』キキィ


 
ガチャ…バタン


 
ツバサ「ふぅ…ヒデコさん、出して」


   
ブロロロロロ…


   
ツバサ(さてと、まずは英玲奈たちに電話ね)


 
ツバサ「……あら?」


ツバサ「ヒデコさん…? そっちはヘリポートの方へ入ってく道だけど…」


   
「ヒデコ? 知らない子ね」


   
ツバサ「――!」


   
絵里「今は私が送迎手よ。地獄へのね」チャカッ
 
200: (おにぎり) 2021/12/21(火) 22:23:54.56 ID:O7JkZ9hB
絵里「電話、こっちに寄こして」


ツバサ「……」ポィ


ツバサ「で…どちら様?」


ツバサ「ひょっとして、うちに加入希望の人?」


絵里「ニェット。あなた達は今日で解散だもの」


絵里「…心配しなくても、英玲奈って子にもすぐ後を追わせるから」


絵里「あっちでも寂しくないわ…ね?」カチリ


ツバサ「……」


絵里「ダスビダーニャ(さようなら)…綺羅ツバサ」ググッ…
 
201: (おにぎり) 2021/12/21(火) 22:28:19.93 ID:O7JkZ9hB
ブロロロロロロ――キュイイ!


絵里「…ッ!? なにっ?」


絵里「あの車、突然割り込んで…」


 
ヴィーン

かすみ「綺羅ツバサ、かくごぉー!」チャキン

愛「今がまさしく“撃ってつけ”ってね!」チャキッ

せつ菜「あくまでボタンです!あくまで!」ガチャッ

璃奈「璃奈ちゃんボタン『火火火のビーム』」ポチッ


 
絵里「なっ…」


ツバサ「ッ――」バッ


――DoDoDoDoDoDoDoDoDoDoDo!!!!!!!! バリィィィン!ガシャァァン!・・・
 
202: (おにぎり) 2021/12/21(火) 22:33:44.28 ID:O7JkZ9hB




――ZuDoDoDoDoDo!!!!


英玲奈「ッ――!?」


希「わわっ」フセッ


英玲奈「…くっ」チャカッ


   
英玲奈「いいか、絶対にそこを動くな?」ダッ


 


   

―――ズドドドドドドドドッ

              ガガガガガガッ―――


 

英玲奈(敵は何人いる――? 銃声は複数、それも交互に……まるで撃ち合いでもしてるかのような――)


英玲奈(火元は正面玄関………だとすれば、脱出するにはこの窓から)ヨジッ


 
ドサッ


英玲奈(ッ――庭に人影はなしか……いや、どこかに潜んでいるか分かったものでは…)


 
ガサガサッ


英玲奈「!!」チャキッ

 
侑「わ、わ、待って! 撃たないで!!」

 
英玲奈「高咲侑……?」
 
203: (おにぎり) 2021/12/21(火) 22:38:15.69 ID:O7JkZ9hB
ガサッ

歩夢「…侑ちゃん? その人…!」


侑「歩夢ストップ! 手を出しちゃダメ!」

侑「他のみんなも! 絶対にこの人を傷つけないで!」

侑「もう私たちは解放されてるんだYO!」


英玲奈「…どういうことだ?」

英玲奈「まさか君らがロシア人の手先というのは……ないよな」

侑「ロシア人? じゃあさっき歩夢たちが入口のところで鉢合わせたのって…」


 
―――ZuDoDoDoDoDoDoDoDo!!!!!
 
204: (おにぎり) 2021/12/21(火) 22:43:11.34 ID:O7JkZ9hB
侑「わわわわぁー!??」

歩夢「侑ちゃん伏せて!」ダキッ

英玲奈「くっ…」


―――DoDoDoDoDoDoDoDo!!!!!
――ZuGaGaGaGaGaGaGa!!!!!!!
―――BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!

彼方「弾の嵐なんだぜ…」

しずく「…エマさん、門のところにいる二人を狙えますか?」

エマ「ここからだと難しいかも……弾もさっきほとんど使っちゃったし」

彼方「ささーっとお片付けして帰る予定だかったからねぇ」


英玲奈「……なるほど。清掃業者同士がバッティングしたという訳か…」

侑「あ…いや違うって言うか…!みんなは私のこと迎えに来てくれただけで……そうだよね、みんな…?」
 
205: (おにぎり) 2021/12/21(火) 22:47:52.32 ID:O7JkZ9hB
―――GaGaGaGaGaGaGaGaGaGaGaGa!!!!!

歩夢「…本当に、侑ちゃんや私たちは解放されたんですか?」

英玲奈「今私が君らを問題にしている場合だと思うか?」

歩夢「……」

侑「…歩夢? さっきからどうしたの…? 顔色が…」

歩夢「……大変なの」

歩夢「私たち…もしかしたら取り返しのつかないことを…」

侑「え…?」


 
――

―――――

【15分前――黒澤水産 ヘリポート】


 
送迎車『』ブスブス…シュウウウウウウ


かすみ「にひひ…見事に蜂の巣ですね」

せつ菜「今日もまた世界を救ってしまいました!」

愛「よっしゃ、騒ぎになる前にてっしゅー!!」


ブロロロロロ…
 
 
206: (おにぎり) 2021/12/21(火) 22:52:29.64 ID:O7JkZ9hB
侑「せつ菜ちゃんたちがツバサさんを!?」

侑「大変だ…急いで呼び戻さなきゃ…!」

しずく「もう手遅れかと…」

彼方「それに今は自分たちの心配をするべきじゃないかな…」



――ZuGaGaGaGaGaGaGa!!!!!!!

            
          ZuDoDoDoDoDoDoDoDo!!!!!―――


英玲奈「ッ、十字砲火か………完全に囲まれたな」

侑「い、家の中に逃げようよっ」

エマ「待って!今身体を起こしたら一瞬で蜂の巣にされちゃうよ?」

しずく「『俺たちの明日はない』のラストみたいですね。あれ一度演ってみたくて」

彼方「よかったねしずくちゃん。あと10秒くらいで私たちも同じ運命だ…」


英玲奈(全くその通りだが、事実こうして身動きがとれない)


英玲奈(反撃にしようにもこの位置からは敵の姿が……そして頭を上げればやられる)


英玲奈(動いても動かなくても結果は同じ……それなりの練度の集団に先手と地理的優位を取られた時点で)


英玲奈(客観的に分析してこの状況は……詰んでいる)



ZuDoDoDoDoDoDoDoDo!!!!!!! ――チュンチュンチュンチュンチュン!!!


            
侑「ひゃっ…た、弾が当たる音…すぐそこまで…!!」         

歩夢「侑ちゃん…!」ギュッ

侑「あゆむぅぅ…」


英玲奈(………君たちはまだ幸運だな)


英玲奈(こんな最期でも、見知った誰かが側にいるというのは…)
 
207: (おにぎり) 2021/12/21(火) 22:57:29.16 ID:O7JkZ9hB
―――ダララララララララララララッ


―――バラララララララララララララッ


―――バラバラバラバラバラバラバラバラバラ―――!!!!


侑「うっ――うるさぁぁぁっ!!! 何この爆音!!? せつ菜ちゃんじゃあるまいし――」

歩夢「え――? 侑ちゃん何か言った!?」


 
英玲奈(なんだ――!? 銃声が掻き消され――)


 
キュイイイイイイン―――――ゴオオオオオウウウウウッッッッ!!!!!



エマ「か、風がすごいよーー!!」タユンタユン


彼方「一体何なんだぜ…」


しずく「……ヴァルキューレの騎行ですよ」


 

ヘリ『』バラバラバラバラバラバラバラバラ――!!!!!!


   

「まったく…あんじゅの時に続いて二度も……これじゃ『遅刻の黙示録』ね…」


   
ツバサ「というわけで遅れてゴメンなさい英玲奈!! 」


 
英玲奈(ツバサ―――!!!)
 
208: (おにぎり) 2021/12/21(火) 23:02:05.51 ID:O7JkZ9hB
ツバサ「さあて、地上の悪い子たちを五分刈りにしてあげようかしらね」ガコンッ


 
バラバラバラバラバラ――――!!!!!


侑「うひゃあああ!?? ヘリが急降下で突っ込んで――??」

英玲奈「そのまま伏せていろッ」


 
ギュオオオオオオオオオオオン――――DoDoDoDoDバスバスッグチャッ バラバラバラ―――!!!
            

   
彼方「……なんか銃声とプロペラ音に混じってえげつない音が」


エマ「二人とも見ちゃダメだよー」


しずく(『ブレインデッド』……いえ、『28週後...』のクライマックスあたりが近いでしょうか?)
 
209: (おにぎり) 2021/12/21(火) 23:09:19.65 ID:O7JkZ9hB
バラバラバラバラバラ―――!!!!


ツバサ「ふぅ……ついでに庭の芝刈りもしといてあげたわよ?」


 
英玲奈(………まったく)


英玲奈(お陰でうちの庭が滅茶苦茶だ……血しぶき塗れの草花が、ローターの風で巻き上げられて)


英玲奈(まるで台風でも通ったような……だが、それでこそ)


英玲奈(お前は、私たちA-RISEの――……)


 

バラバラバラバラ――――ビュオオオオオオオオ――――バサバサバサッ…   


   

ヒラ…


  ヒラ…


 

ポトッ

   

歩夢「あ…この花…」


 

英玲奈(朱に染まった白のローダンセ……)


 
英玲奈(花言葉は飛翔……そして、厚い情――か)


 
英玲奈(……これで今度こそ、全ての問題は…)


   

英玲奈「………そうだ、東條のやつは――」
 
210: (おにぎり) 2021/12/21(火) 23:14:05.99 ID:O7JkZ9hB




【一週間後――映画会社『虹映』オフィス】


希「――と、ここで主題歌のイントロがかかって画面が暗転、光る頭文字がスライドしてタイトルロゴがドーンと!」


希「ロケ地の夜景をバックにスタッフロール、序盤で虹ジムの子たちが撮影してたPVの完全版をワイプで流すのもいいかも」


希「…そんな感じでどう? 虹映企画製作部の部長さん?」


演劇部部長「……うーん」ペラッ


演劇部部長「まずまずの線とは思うけど、このクライマックスはちょっとね」  


演劇部部長「やりたいことは分かるけど、それを優先しすぎて色々無茶があるよね。一応実録物をうたってるわけだし…」


希「そんなの演出と劇伴の勢いでどうにでもなるやん。それに娯楽は娯楽、そーいうのもお楽しみの一つでしょ」


希「多少の矛盾や脚色はサービスのためと思って? 1+1を200にも2億にも魅せられるのが映画のいいところなんだから」


演劇部部長「…それにしたって、幕切れが少し唐突かな。エピローグとかは無いの?」


希「そこは今考え中。いいのが思いついたら連絡するから」


希「まあ検討してみて? ウチは飛行機の時間があるからこの辺で。ほんじゃま、よろしくー」ヒラヒラ
 
211: (おにぎり) 2021/12/21(火) 23:19:00.67 ID:O7JkZ9hB




ププー


希「あ、タクシー!」フリフリ


キキィ… バタン


希「羽田まで急ぎでお願いできます? 次のロス行きの便に間に合わせたくて」


 
「…ほぅ。今度はハリウッドにでも高飛びするのか?」


 
希「………あれれ、この声はもしかして……」


ヴィーン


英玲奈「一週間ぶりだな、東條希」
 
212: (おにぎり) 2021/12/21(火) 23:23:26.89 ID:O7JkZ9hB
希「英玲奈さん……近ごろのヤーさんは色んなシノギやってるんだね…はは」


希「ウチ、ちょいと急用を思い出したからここで降り…あ、あれ? 開かなっ」ガチャガチャ


英玲奈「行きたい所があるなら私が送ってやろう。それまで二人でこの前の話を続きをしようじゃないか」


英玲奈「なに、時間はたっぷりあるさ…」キュルルルルル


希「ああんもぅ、こんなオチはあかーーん!!!!」


ブロロロロロロロ…

―――

 
213: (おにぎり) 2021/12/21(火) 23:26:53.54 ID:O7JkZ9hB
――

――――

―――――――


キィィィ…


英玲奈「ただいま」


ツバサ「おかえりー」

あんじゅ「おかえりなさぁい」
 
214: (おにぎり) 2021/12/21(火) 23:31:24.57 ID:O7JkZ9hB
ツバサ「今回はお疲れだったわね」

あんじゅ「お陰で私は楽チンだったけど。することなくて」

英玲奈「…よく言う」

英玲奈「だがまあ、さすがに二重スパイの真似事は今回限りにしてほしいところだ」

英玲奈「よもや本当に裏切ったのではと疑われて、お前たちに撃たれる可能性を少しでも考えなかったと言えば嘘になるし」

英玲奈「それにある女いわく、私は演技の素養が皆無だそうだからな」
 
215: (おにぎり) 2021/12/21(火) 23:35:20.38 ID:O7JkZ9hB
ツバサ「そう? でもこの時とか結構迫真だったわよね、あんじゅ?」カチッ

『ザザッ……私は……出会った時から常に私たちの王であり続けた綺羅ツバサの』

『その更に上手をいってみたい……常に泰然自若としたやつの双眸を…驚きに「や め ろ」カチッ

ツバサ「えー、ここからがいいところなのに」クスクス

あんじゅ「その辺にしときなさい。今なら本当に〇されるわよ」

あんじゅ「でもまあ…これが演技なら英玲奈も大した女優よねぇとは思ったけど」

英玲奈「………」ポリポリ
 
216: (おにぎり) 2021/12/21(火) 23:39:22.70 ID:O7JkZ9hB
英玲奈「……あの時の私は、何一つ嘘は言ってなかったからな。向こうが勝手にこちらを味方と勘違いしただけだ」

ツバサ「…なるほどね」

英玲奈「……驚いたか?」

ツバサ「全然。っていうか、英玲奈が本心で話してるのなんて聞けばすぐ分かるわよ。何年の付き合いだと思ってるの?」

英玲奈「…なら、私が本当に裏切ったとは欠片でも思わなかったのか?」

ツバサ「だって、あなたが私たちを裏切るわけないじゃない」

ツバサ「私たちがあなたを裏切らないようにね」

英玲奈「……お前に勝てる日はまだ遠そうだな」フッ
 
217: (おにぎり) 2021/12/21(火) 23:46:34.60 ID:O7JkZ9hB
ツバサ「…私ね。今回のことでよく分かったの」

ツバサ「ジャングルの王は、振る舞いだけではダメ」

ツバサ「王は、王のままで居続けなけきゃいけない」

ツバサ「立ち止まることは即ち破滅……もしその時があるとすれば、せめて舞台の上で」

ツバサ「…どう? また一緒にあのステージに立って、踊り続ける気はある?」


英玲奈「……困ったやつだな。ついこの間まで引退後の心配をしてた癖に」

あんじゅ「昔からずっとこの調子なんだから。着いてくのも一苦労よぅ」


ツバサ「…よかった。これで三人揃ってただいまが言えそうね」クスッ



ツバサ「で、早速なんだけど。私たちがカムバックしたことを手っ取り早く業界に周知したいじゃない?」

ツバサ「何かいい手はないかなって……誰かアイデアある人ー」


英玲奈「ふむ…そうだな」


英玲奈「……一本、映画でも撮ってみるか?」



Fin
 
218: (おにぎり) 2021/12/21(火) 23:50:02.12 ID:O7JkZ9hB
劇終です

ラ板は久しぶりで投下がグダついてしまいすみません

元ネタも昔のガイリッチー節が帰って来た的な作品でお勧めです

現実のA-RISEにもまた何かしらの機会にカムバックしてもらいたいです

ここまで読んでくれた人ありがとうございました
 

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1639314918/

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