【SS】歩夢「1.2.3」【ラブライブ!虹ヶ咲】

SS


1: (浮動国境) 2022/04/24(日) 20:52:20.39 ID:vRwn22fV
春です。
 
2: (浮動国境) 2022/04/24(日) 20:53:40.27 ID:NkxZ7rvE
「ねぇ!」
 
3: (浮動国境) 2022/04/24(日) 20:54:27.98 ID:NkxZ7rvE
「ねぇねぇ!」


「ねぇったら!」


ガラガラッ

「ふあ〜ぁ……」

歩夢「おはよ〜」


「土が乾いてる!」


歩夢「ん?」


「カラカラだよ!」
 
4: (浮動国境) 2022/04/24(日) 20:55:12.10 ID:NkxZ7rvE
歩夢「うん」

歩夢「今日は、いいお天気だもんね」


「朝日がさんさん!」


歩夢「ふふっ、待っててね?」

歩夢「今、お水あげるから」


「お水!」


侑「ありがとう!」
 
5: (浮動国境) 2022/04/24(日) 20:55:45.20 ID:NkxZ7rvE
侑ちゃんが花になって一週間

今日も、私は彼女の植木鉢に水をやります。
 
6: (浮動国境) 2022/04/24(日) 20:56:28.83 ID:NkxZ7rvE
侑「あ、蟻が行進してるよ。動いてる!」

歩夢「うん」

侑「空は高くて街はでっかい。ここはキミんちのベランダ。素敵だね!」

歩夢「あはは、うちは素敵じゃないよ」

侑「家ってステキ!」

歩夢「そうかな?」

侑「ステキ!」

侑「キミが居るって分かる場所。それってステキ!」

歩夢「フフッ、なにそれ」
 
7: (浮動国境) 2022/04/24(日) 20:57:43.25 ID:NkxZ7rvE
ある朝、いつもの様にベランダへ出た私は
手摺りの下に、ポツンと置いてあった

一つの、植木鉢を見つけました。
 
8: (浮動国境) 2022/04/24(日) 20:58:11.77 ID:NkxZ7rvE
侑「わぁ!」

歩夢「え?」

侑「トリだよ!トリ!」

侑「前の私とおんなじ!」

歩夢「?」

侑「飛んで食べて生きて、たまーに暇が出来る。不思議!」

侑「暇って不思議!」

歩夢「不思議……?」
 
9: (浮動国境) 2022/04/24(日) 20:59:09.07 ID:NkxZ7rvE
そして、侑ちゃんが居なくなったと知ったのも
同じ日のこと
 
10: (浮動国境) 2022/04/24(日) 21:00:51.45 ID:0soKPU+N
歩夢「ねぇ、侑ちゃん」

侑「わたし!」

歩夢「侑ちゃんのお父さんもお母さんも、凄く心配してると思うの」

歩夢「うぅん。ご両親だけじゃない、同好会のみんなだって心配してる」

侑「あはは」

歩夢「本当に、他の人たちには分からないの?」

侑「私と君の繋がり。君との!」

歩夢「んん……?」
 
11: (浮動国境) 2022/04/24(日) 21:01:31.27 ID:0soKPU+N
入れ替わる様に現れた、この子は
しかし、他の人の目には映らず

今の様に顔のある花を開いては、よく分からない言葉を、私へ投げかけて来るのです。
 
13: (浮動国境) 2022/04/24(日) 21:02:14.83 ID:0soKPU+N
侑「つながり!つながり!」

侑「私とキミの花!」

歩夢「……えっと」

歩夢「侑ちゃんは、そのお花が好きなの?」

侑「お花も好き!」

歩夢「も?」

侑「贈り物!証明だよ!」

歩夢「わ、分かんないよぉ」
 
14: (浮動国境) 2022/04/24(日) 21:02:58.11 ID:0soKPU+N
そもそも、なぜこんな事になったのか。
この子は、本当に私の知ってる彼女なのか

その辺の問答も、何度か繰り返してみたのですが
 
15: (浮動国境) 2022/04/24(日) 21:03:42.30 ID:0soKPU+N
歩夢「侑ちゃんは、さ」

侑「ゆうちゃん!」

歩夢「侑ちゃんは、どうしてお花になったの?」

侑「最初の交差点!」

歩夢「へ?」

侑「縁もたけなわ!」

歩夢「???」

侑「えへへ」

歩夢「あー……」

歩夢「じ、じゃあ、花になった時の事は覚えてる?」

侑「わかんない!」
 
16: (浮動国境) 2022/04/24(日) 21:04:03.44 ID:0soKPU+N
この、あまり要領を得ない喋り方のせいで
未だによく分からないままです。
 
18: (浮動国境) 2022/04/24(日) 21:05:26.95 ID:0soKPU+N
「だって、一週間だもんねぇ」


愛「ゆうゆ、ホントにどこ行っちゃったのかなぁ……」

エマ「あ、愛ちゃんっ」

愛「!」

歩夢「……」

愛「ぁ……ご、ごめんね?」

歩夢「え?」

エマ「歩夢ちゃん、あんまり思い詰めないでね?」

歩夢「あ、いえ。少し考え事をしてただけですよ」

エマ「そ、そっか」
 
19: (浮動国境) 2022/04/24(日) 21:06:12.72 ID:0soKPU+N
せつ菜「大丈夫ですよ」

エマ「!」

せつ菜「侑さんは、必ず戻ってきます」

せつ菜「私は、そう信じてますから!」

かすみ「かすみんもです!」

璃奈「同じく」

歩夢「……」

果林「歩夢。私たちも居るんだから、辛くなったら何時でもいらっしゃい」

歩夢「え?あ、ありがとうございますっ」
 
20: (浮動国境) 2022/04/24(日) 21:06:48.96 ID:0soKPU+N
彼方「まぁ、ちょ〜っと旅でもしたくなったんだよ〜」

彼方「彼方ちゃんもそういう時ってあるから、な〜んとなく気持ちは分かるな〜」

せつ菜「いいですね!私も当て所ない旅、してみたいです!」

かすみ「お供します!かすみんの可愛さを、全国区に知らしめるために!」

果林「黙って行くのだけはダメよ?」

エマ「あ、あはは」

歩夢「……」
 
21: (浮動国境) 2022/04/24(日) 21:07:16.42 ID:0soKPU+N
私が学校に行ってる間って、
侑ちゃん、なにしてるのかな?

ちゃんと、お留守番出来てるかなぁ
寂しくなったりしてないといいんだけど
 
22: (浮動国境) 2022/04/24(日) 21:08:47.67 ID:0soKPU+N
歩夢「……」

歩夢「……大丈夫かなぁ」

せつ菜「もちろんです!」

歩夢「!」

せつ菜「侑さんは、大丈夫に決まってます!」

歩夢「そ、そうだよね」

せつ菜「そうです!」

せつ菜「信じる事も、大切な事ですから!」

歩夢「……」
 
23: (浮動国境) 2022/04/24(日) 21:09:28.91 ID:0soKPU+N
……分かってはいる。分かってはいるのだけど

こうして、彼女の顔を見るたびに、合宿で見たあの光景が蘇る。
 
24: (浮動国境) 2022/04/24(日) 21:10:34.11 ID:0soKPU+N
せつ菜「どうしました?」

歩夢「え?」

せつ菜「なんだか、少しぼーっとした様な顔をしてますけど」

歩夢「う、うぅん。そんな事ないよ?」

せつ菜「う〜ん……、そんな事ある気がするんですが」

歩夢「な、ないない。大丈夫」

せつ菜「……」

歩夢「あはは……」
 
25: (浮動国境) 2022/04/24(日) 21:12:11.91 ID:0soKPU+N
──あの日、

侑ちゃんは自身の心の裡を、私ではなくて、せつ菜ちゃんへ打ち明けていた。

アレが悪い事だとは、決して思わないけれど
それでも、何となく私の胸はモヤモヤしたまま

気が付けば、彼女との会話を忌避し続けている
そんな自分の心の狭さに、ただ嫌悪だけが募って行く
 
26: (浮動国境) 2022/04/24(日) 21:18:03.87 ID:wP8LDafv
そして、月明かりの差す自室で、不意に自身の将来を告げた侑ちゃん。

そんな彼女へ、思いの丈をぶつけた後も、私は未だに後悔していた。

アレは、本当に正しい事だったのか。
気持ちを伝える事が、あんなにも後ろ暗く、冷え冷えと感じるものなのか

そんな、日々懊悩する私に寄り添うかの様に
花となった彼女は、突然現れた。


「やぁ」
 
28: (浮動国境) 2022/04/24(日) 21:19:31.90 ID:IBvjjY2v
もちろん、最初は酷く取り乱した。

もう、元へは戻れないの?普通にお話しする事も出来ないの?
そう言った不安が、次々と押し寄せては吐き出されて、彼女自身も、それに応えようとアレコレ反応してくれたのだが

やはり、と言うか

それは、余り意味を成さない時間として、ただ今日まで消費されただけだった。
 
29: (浮動国境) 2022/04/24(日) 21:23:02.13 ID:Ywevm6yd
「ただいまぁ」


歩夢「うわぁ、もうこんな時間かぁ」

歩夢「暗くなるの早くなって来たかも。陽がないと少し肌寒いね」

歩夢「──よいしょっと」ガチャ

歩夢「侑ちゃん、遅くなってごめんね」

「かぜ!」

歩夢「え?」

侑「かぜ!」

歩夢「か、風邪引いちゃったの?」

侑「風が強いよ。乾いちゃった!」
 
30: (浮動国境) 2022/04/24(日) 21:25:21.91 ID:Ywevm6yd
歩夢「あ、そっちか」

侑「そっち!」

歩夢「ごめんごめん。今お水あげるからね」

侑「お水!うるおい!」

歩夢「ふふっ、た〜っぷりあげますからねぇ〜」

侑「多いのはダメ。ともだちブクブク」

歩夢「ともだち?」

侑「縁の下のともだち。住みやすくする!」
 
31: (浮動国境) 2022/04/24(日) 21:26:22.74 ID:Ywevm6yd
歩夢「???」

侑「栄養!」

歩夢「……あっ」

歩夢「も、もしかして……虫?」

侑「むし!」

歩夢「ひっ!い、いるの!?」

侑「縁の下!」

歩夢「ダメダメ!早く取らなきゃ!」

侑「ともだち!縁の下の!」
 
33: (浮動国境) 2022/04/24(日) 21:26:55.32 ID:Ywevm6yd
歩夢「だっ、だけど、取らなくちゃ部屋に入っちゃうし」

侑「ともだち!」

歩夢「ご、ごめんねっ」

侑「……」

侑「うぅっ!」ユサユサ

歩夢「!」

フワワ…

歩夢「ゆ、侑ちゃんっ、それやめて?」

侑「うぅぅっ」ユサユサ

歩夢「侑ちゃ〜んっ」
 
35: (浮動国境) 2022/04/24(日) 21:31:56.90 ID:Ywevm6yd
困ったことに、

この侑ちゃんは機嫌を損ねると、ユサユサと顔の……
もとい、花の部分を揺らして花粉を飛ばします。
 
36: (浮動国境) 2022/04/24(日) 21:32:29.66 ID:Ywevm6yd
侑「うぅうぅぅっ!」ユサユサ

歩夢「ごめんね侑ちゃん、取らないから」

歩夢「だから、それやめて欲しいの」

侑「うぅ……」

侑「……」

歩夢「お、落ち着いた?」

侑「お水!」

歩夢「あ、はいはい」

歩夢「……その前に、換気しなきゃ」
 
37: (浮動国境) 2022/04/24(日) 21:33:13.12 ID:Ywevm6yd
歩夢「でも、どうして虫が友達なの?」

侑「近くで生きてる。ぶつからない」

歩夢「んん……分かんない」

侑「お水!」

歩夢「あ、あぁうん。ごめんね」

侑「乾いちゃった。かぜが強いの!」

歩夢「は〜い、どうぞ〜」

侑「しっとり!しとしと!」

歩夢「ふふっ」
 
38: (浮動国境) 2022/04/24(日) 21:34:38.63 ID:Ywevm6yd
こうして、お水をあげる時
彼女は決まって、鼻歌を歌う。


侑「〜♪」

歩夢「ららら〜♪」


こんな彼女を見ている時は、
何故だか、ちょっとだけ幸せな気持ちになります。
 
39: (浮動国境) 2022/04/24(日) 21:35:57.17 ID:hAGLjOIJ
歩夢「あ、侑ちゃん」

歩夢「ほらほら、虹が出来てる!」

侑「ひかり!色々!」

歩夢「うん!綺麗だねぇ」

侑「綺麗って感じる。そんな余裕!」

歩夢「ホントに綺麗だよねぇ」

侑「色の橋!虹!」

歩夢「……」
 
40: (浮動国境) 2022/04/24(日) 21:36:30.82 ID:hAGLjOIJ
彼女の言うこと、その全てを理解出来ている訳じゃないけれど

感じている事は、きっと私と同じ
それだけは、今も変わらない

そう、信じている。
 
59:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/25(月) 20:43:11.62 ID:EpBzr/dk
「──歩夢ちゃん!」
 
60:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/25(月) 20:43:55.96 ID:EpBzr/dk
ある日の学校でのこと
校舎の入り口で、不意に呼び止められた
 
61:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/25(月) 20:45:34.44 ID:x1d9mZMz
「間に合ったぁー!」

歩夢「!」

「ごめんねぇ〜、いきなり声掛けちゃって」

歩夢「ううん、大丈夫だよ」

「あ、もしかして、いま急ぎ?」

歩夢「それも大丈夫。なにも急いでないよ」

「良かった〜」

「えっとね?実は……」

歩夢「?」
 
62:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/25(月) 20:46:48.94 ID:/8vbBz2v
兼ねてから、私のファンだと言ってくれていた
二人の同学年の子たち

その内の一人が、
今、私の前に何かを差し出した。
 
63:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/25(月) 20:50:35.24 ID:xbdlncHT
「これ、受け取って欲しいの!」

歩夢「え?」

「実はね、」

「歩夢ちゃんのステージを作ろうって、侑ちゃんから相談されてたんだ」

歩夢「!」

「でね?その時、私達みんなでお花を渡そうって、そう言って準備してたんだよ」

「でも、あんな事になっちゃって……」

歩夢「……」
 
65:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/25(月) 20:53:59.00 ID:aZeiUr3A
「ちょっと!」

「あ、ご、ごめんっ」

歩夢「……」

「この子もね、悪気はなかったの」

「だ、大丈夫だよ!侑ちゃんすぐに戻ってくるから!」

「歩夢ちゃん、ホントにごめんね?」

「ただ、侑ちゃんの気持ちを無駄にしない為にも、枯れる前に渡したかったの」

歩夢「……うん」
 
66:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/25(月) 20:55:01.40 ID:aZeiUr3A
なにか、謝っている様な気がしたけど
なにかは、良くわからなかった。

それよりも、私の知らない所で、侑ちゃんが色々な事を考えていてくれていたと言う、

その事実に、私は強い衝撃を受けていた。
 
67:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/25(月) 20:56:43.25 ID:aZeiUr3A
「……あの、コレ」

歩夢「あ」


そんな私の様子を見守っていた彼女は、包装紙に包まれた、綺麗な黄色い花を差し出してくれた。
 
69:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/25(月) 21:04:10.20 ID:mpP95gCK
歩夢「これって……」

「ガーベラって言うお花だよ」

歩夢「……」

「私たちからの。受け取ってくれる?」

歩夢「も、もちろんだよ!」

歩夢「わぁ、綺麗なお花……ありがとう」

「そ、それでね?」

歩夢「え?」

「本当は、侑ちゃんが用意してたお花もあったんだけど……」
 
71:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/25(月) 21:05:26.13 ID:C6q1VQKh
歩夢「!」

「だけど、そのお花だけ何処を探しても見つからないの」

「"ローダンセ"?ってゆー名前の」

歩夢「……」

「侑ちゃんと一緒に準備してたから、同じ場所にあった筈なんだけど」

「も、もしかしたら、侑ちゃんが持ったままなのかも」

歩夢「そ、そっか」

「お花を用意してる時の侑ちゃん、とっても楽しそうだったんだよ!」
 
72:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/25(月) 21:06:43.86 ID:YHCsdJB9
「……でも」

歩夢「え?」

「居なくなる直前の侑ちゃん、なんだか凄く悩んでる様な感じがしたの」

歩夢「ど、どう言うこと?」

「ボソッとね、独り言みたいに聞いてきたんだ」


『人って、そんな簡単に変われるのかな』

『もし変われなかったら、どうなっちゃうのかなぁ』


「てさ」

歩夢「……」
 
73:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/25(月) 21:07:13.72 ID:YHCsdJB9
ローダンセ……

後で、調べてみよう。
 
81:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/25(月) 21:17:06.98 ID:d6B0iYTC
慣れと言うのは、本当に恐ろしいもので
どんな不自然でも、やがては馴染んで行き

この国の、土地の、様々な人たちが織りなす
ある種、恒常性に似た力によって

それは、自然なものへと作り変わって行く。
 
83:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/25(月) 21:22:16.38 ID:DF7t1qnh
歩夢「あっ」

歩夢「涼しい風……」

侑「きたからきた!きたかぜ!」

歩夢「ふふっ、愛ちゃんみたいな事言ってる」

歩夢「前の侑ちゃんなら、お腹抱えて笑ってたと思うよ?」

侑「きたからきたかぜ!」

歩夢「……」
 
84:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/25(月) 21:22:43.11 ID:DF7t1qnh
歩夢「……」


私の心には、今もあの日の感情が
汚泥の様に沈んでいるんです。
 
101:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/27(水) 20:33:16.10 ID:i+UZ9EuN
「はーい!」


果林「それじゃあ、今日の練習はここまでにしましょう」

エマ「みんなお疲れ様ー」

かすみ「うへぇ……つ、疲れたぁ……」ゴロン

しずく「大丈夫?」

璃奈「運動直後に寝っ転がるの、あんまり良くない」

かすみ「じゃあおんぶしてぇ〜……」

彼方「ついでに彼方ちゃんもぉ〜」
 
102:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/27(水) 20:33:51.26 ID:i+UZ9EuN
愛「よーし!」

愛「それじゃあ、愛さんがおんぶしてあげようかな!」 ヒョイ

かすみ「うわっ!?」

彼方「おぉ〜、お姫様抱っこ」

愛「かすかす軽〜い!」

かすみ「は、恥ずかしい……っ///」

かすみ「──って!かすみんです!!」
 
103:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/27(水) 20:34:16.92 ID:i+UZ9EuN
彼方「彼方ちゃんもおぶっておくれぇ〜」

愛「はいよ!」

彼方「ぉお〜!楽チンだぜぇ〜」

愛「ぐるぐる〜」

彼方「うわぁ〜、人力ゴーランド〜」

しずく「私もして貰おっかなぁ」

璃奈「愛さん、私も」

愛「いや〜、愛さんモテモテだねぇ〜♪」

歩夢「あはは」
 
104:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/27(水) 20:35:09.31 ID:i+UZ9EuN
彼方「オェ……」

愛「き、きもちわる……っ」

かすみ「やり過ぎです!最後ジャイアントスイングになってましたよ!!」

しずく「とか言って、かすみちゃんも笑って見てたじゃない」

果林「彼方の髪がね、ムチみたいに飛んできたの……」ヒリヒリッ

璃奈「ヨシヨシ」

歩夢「ふふっ」


「歩夢さん」
 
105:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/27(水) 20:37:51.45 ID:i+UZ9EuN
歩夢「え?」

せつ菜「……」

歩夢「なに?」

せつ菜「……突然、侑さんが居なくなって悲しいですよね」

歩夢「!」

せつ菜「だから、そんなに無理して普段通りに振る舞う事はないですよ!」

歩夢「あ、あのっ」

エマ「せつ菜ちゃん!」
 
106:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/27(水) 20:44:34.94 ID:OdHitnMO
果林「せつ菜。急にそんな事言われたって、歩夢がただ困るだけよ?」

せつ菜「……」

彼方「まぁまぁ」

かすみ「っ」

せつ菜「……やっぱり、私たちじゃ力不足でしょうか」

歩夢「そ、そんな事ないよ!」

せつ菜「じゃあ!どうしてそんなに落ち着いていられるんですか!!」
 
107:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/27(水) 20:51:31.82 ID:CfXxwA2Z
歩夢「それはっ……」

せつ菜「歩夢さん。本当に、なんとも思ってないん──」

「せつ菜ちゃんっ!!!」

せつ菜「!?」

エマ「……」

せつ菜「は、はいっ」

エマ「……そんな事ないって、せつ菜ちゃんも分かってるでしょう?」

せつ菜「ッッッ」
 
108:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/27(水) 20:54:12.77 ID:CfXxwA2Z
せつ菜「うぅぅ……嫌ですぅ……」

歩夢「せ、せつ菜ちゃん」

せつ菜「もうっ、会えないかも知れないって……ずっと頭の中に響いてるんです……っ」

しずく「っ」

せつ菜「侑さん……嫌ですよぉ……」


せつ菜「"あの時"のお話が最後だなんて……」

歩夢「──ッ!!」



あぁ、ダメだ
 
109:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/27(水) 21:03:32.86 ID:eDGW2zT5
せつ菜「うっ……っ」

歩夢「……」

歩夢「ねぇ」

「あの時って?」

せつ菜「え?」

歩夢「それって、いつの話?」

せつ菜「い、いつの……ですか?」

せつ菜「侑さんが居なくなる前の日、侑さんからピアノのお話を聞いた時です」

歩夢「……っ」



止まって お願い
 
112:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/27(水) 21:08:47.24 ID:eDGW2zT5
歩夢「せつ菜ちゃん、知ってた?」

せつ菜「は、はい?」

歩夢「侑ちゃんはね、せつ菜ちゃんのライブを見て、憧れて」

歩夢「そして、スクールアイドルに興味が湧いたんだ」

せつ菜「えっ……そ、そうだったんですか?」

歩夢「そうなんだよ」

果林「あ、歩夢……」

エマ「っ」
 
113:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/27(水) 21:11:15.31 ID:eDGW2zT5
底の底で、物言わず潜んでいた汚泥が
静かに、表層へと舞い上がって行く
 
124:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/28(木) 21:50:42.31 ID:1K9knlhu
かすみ「ぇ……えっ」

しずく「っ」

璃奈「愛さん……」

愛「大丈夫。大丈夫だよ……」


心の縁がざわついて


歩夢「……」



もう、どうにも止まれない。
 
125:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/28(木) 21:51:24.09 ID:1K9knlhu
歩夢「……最初は、二人だけだった」

歩夢「私と侑ちゃんの、二人だけ」

せつ菜「っ」

歩夢「それが、ステージの上で踊る、貴方の歌とダンスを目の当たりにして」

歩夢「侑ちゃんは、彼女の言うところの"ときめき"を、アイドルに見出してた」

歩夢「それがきっかけで、私達は同じ目的で動き始めたの」

せつ菜「そ、それは光栄ですが……」

歩夢「でもね」

せつ菜「!」
 
126:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/28(木) 21:54:46.39 ID:1K9knlhu
歩夢「じゃあ、私にとってのアイドルって、なんだろうって、改めて考えてみたら」

歩夢「それは、やっぱり侑ちゃんの気持ちを汲む為の行いだって、そう思ったんだ」

歩夢「私の夢を、すぐ隣で見ていてくれる。そして、それを応援してくれる」

歩夢「コレは、彼女が言う"ときめき"を、ただ守る布石でもあったんだって」

せつ菜「なっ、なんですかそれ……っ」

歩夢「……」

歩夢「だって、そうしないと一緒にいれそうになかったから」
 
127:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/28(木) 21:55:17.37 ID:1K9knlhu
私は、
 
128:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/28(木) 21:55:54.09 ID:1K9knlhu
歩夢「あのプロジェクトも、合宿の事も、ピアノの事だってそう」

歩夢「彼女は、いつの間にか一人で歩き始めてたんだよ」

歩夢「同じ場所にいたのなんて、ほんの少しだけだった」

歩夢「彼女は、彼女の思いを日々強めながら、その視線の先に色んな人を捉えていたの」

歩夢「もう、こんなに離れてたんだって、今さら気付いたんだ……」

せつ菜「~っ」
 
129:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/28(木) 21:56:23.60 ID:1K9knlhu
私たちは……
 
130:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/28(木) 21:58:07.99 ID:1K9knlhu
歩夢「……」

歩夢「……もし」

歩夢「もしも、侑ちゃんと一緒に居れなくなる日が、これからやって来るのなら」

歩夢「それなら──」



『もう、夢なんて見なくていいかな』



果林「そ、そんなこと……」

彼方「っ」

しずく「うぅっ」

エマ「あ、歩夢ちゃん……っ」
 
132:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/28(木) 22:22:23.29 ID:uGSVuKJL
かすみ「っ……っっ」

璃奈「……」

愛「ッ」

せつ菜「──ッ!!」

せつ菜「馬鹿なこと言わないでくださいっ!!!」

歩夢「……どうして馬鹿なの?」

せつ菜「だって!二人で始めて、そして今ここまで来たんでしょう!?」

せつ菜「だったら、最後まで貫いてくださいっ!!!」
 
133:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/28(木) 22:25:24.99 ID:Oi7saFUR
歩夢「……」

歩夢「……うるさいな」

せつ菜「!」

歩夢「せつ菜ちゃん、よく知らないでしょう?私のことも、侑ちゃんのことも」

歩夢「私が、どう言う気持ちでここまで来たのかも。当然だよね」

せつ菜「関係ないですっ!!」

歩夢「っ」

せつ菜「よく知らないのなら、これから知ればいいだけじゃないですか!!」
 
134:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/28(木) 22:26:08.87 ID:Oi7saFUR
せつ菜「一緒に活動してる仲間なんですから、そんなの当たり前の事ですよ!!」

歩夢「……信じてなかったクセに」

せつ菜「!」

歩夢「侑ちゃんが帰ってくるって、信じてなかったクセに」

せつ菜「そっ……れは……っ」

歩夢「つまり、そう言う事なんでしょ?」

歩夢「結局、せつ菜ちゃんって──」
 
135:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/28(木) 22:27:18.94 ID:Oi7saFUR
「歩夢っ!!!」

歩夢「!」

果林「アナタ、なに言おうとしてるのよっ!!」

果林「おかしいわよ!?さっきから聞いてたら、私たちみんなの事なんとも思ってない様な言い方してるっ!!」

せつ菜「ッッッ」

果林「もう、絶対にそんな事言ったらダメよッ!!!」

歩夢「……」
 
136:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/28(木) 22:34:19.34 ID:E/AA5+3m
みんなのこと。わたしのこと。
ゆうちゃんのこと

高咲侑ちゃん
スクールアイドル同好会

大切な、彼女との時間
同好会のみんなとの時間

いつまで経っても
何処まで行ったって

この均衡は崩れない。
暖かくて、重たい価値


そう。私たちだけの……
 
137:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/28(木) 22:35:24.20 ID:E/AA5+3m
歩夢「……」

エマ「……今日は、もう解散しよう」

エマ「せつ菜ちゃんも歩夢ちゃんも、気持ちを整理する時間が必要だよ」

歩夢「……」

スッ

果林「あっ」

エマ「……」


「お疲れ様でした」


バタンッ
 
138:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/28(木) 22:36:45.71 ID:E/AA5+3m
エマ「……」

果林「っ」

かすみ「ヒゥ……ッ」

璃奈「ッ」

愛「……」

しずく「……」

彼方「……」

せつ菜「……歩夢さんっ」
 
139:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/28(木) 22:38:29.73 ID:vH2D0vyQ
──最初は、大丈夫だと思ってた。
 
140:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/28(木) 22:40:54.92 ID:eVn1LN6i
歩夢「……」


ほんのちょっと、不思議な事が周りで起こってる
ただ、それだけのお話なんだろうと

だって、例え花でも侑ちゃんは側に居てくれるし
学校だって、部活だってそうだもん。

何も変わり映えなんてない。だから、大丈夫

そう思ってた


思おうとしてた。
 
141:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/28(木) 22:41:26.68 ID:eVn1LN6i
なにもかも、そんな事はなかったのにね。
 
142:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/28(木) 22:44:13.77 ID:slb/F55O
ガチャン


歩夢「……」


歩夢「……ただいま」


…………。


歩夢「……」

歩夢「侑ちゃん、ただいま」


…………。
 
143:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/28(木) 22:45:06.06 ID:slb/F55O
歩夢「?」

歩夢「侑ちゃん?」


「ゆうちゃん」


歩夢「あ、良かった」

歩夢「侑ちゃん、ただいま」

歩夢「遅くなってごめんね?今日は少し雨が──」

歩夢「!?」


「えへへ」
 
144:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/28(木) 22:46:11.11 ID:slb/F55O
歩夢「ぁ……えっ」


花びらの色が燻んでる
葉も、大分しな垂れている。


侑「あめ。てんとよつゆのうた」


なにより、
侑ちゃんの声に、いつもの元気がない。
 
155:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 21:08:04.60 ID:7qBk/ECq
歩夢「どっ、どーしたの!!?」

侑「どうしたの」

歩夢「侑ちゃん!!どこか具合悪いの!!?」

歩夢「お水!?お水が足りてない!!?」

侑「うるおってる。たっぷり」

歩夢「えっと……じゃ、じゃあ病気!?虫とか!?」

侑「したはともだち。あとはゆうちゃん」
 
156:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 21:08:50.75 ID:7qBk/ECq
歩夢「ッッッ」

侑「きまった数とおわり」

歩夢「どーゆーこと!?分かる様に言ってよ!」

侑「つながり。少ないかも」

侑「しょーがない」

歩夢「っ」

歩夢「…………侑ちゃん」
 
158:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 21:31:19.27 ID:x9pnb2cZ
侑「あのね」

歩夢「侑ちゃんは、どうしてお花になろうと思ったの?」

歩夢「どうして、私の前だけに現れてくれたの?」

侑「最初の交差点だよ」

侑「縁もたけなわ」

歩夢「分かんないっ」

歩夢「分かんないよぉ……」
 
159:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 21:32:45.70 ID:x9pnb2cZ
歩夢「なんで?ちゃんとお話しようよ……前みたいに」

侑「お水をたしても、お湯にはなれない」

歩夢「急にお花になんてなれるんだもん、元に戻ることだって出来るんでしょ?」

侑「まえの。なごり」

歩夢「そ、それにさ?お花だと色々不便だったでしょう?大変だったもんね」

侑「私だけど、わたしじゃない」

歩夢「大丈夫。私も一緒に、侑ちゃんのご両親に説明するし、一緒に怒られるからさ?」

歩夢「だから……っ」
 
161:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 21:39:47.75 ID:09mbULFM
歩夢「~っ」

歩夢「ぅ……うぅぅぅっ、ゆ、ゆうちゃん……っ」

侑「ゆうちゃん」

歩夢「わたしっ……もう何処にも居られない……っ、だれもいない……」

歩夢「お願いっ、側にいて……ずっといてよぉ……」

侑「かふかの水」
 
162:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 21:40:47.62 ID:09mbULFM
歩夢「悲しいよっ……すごく苦しいのぉ……っ」

歩夢「だから、もう……何処にも行かないで……」

侑「となりととなり」

歩夢「ぅ……うぅ……っ」

侑「惹かれあった」

侑「──でもね」

歩夢「!」


侑「このままじゃ、なんにもならないから」
 
163:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 21:41:58.79 ID:09mbULFM
歩夢「侑……ちゃん?」

侑「だから、願ったの」

歩夢「な、なにを?」

侑「キミの窓に映る景色が、ちゃんと出来上がるまで、私が入らない様にって」

侑「そう願った」

歩夢「まど……?」

侑「でも、今はまだちょっとだけ映ってる」

侑「きっと、コレをキミに渡したかったんだ」

歩夢「コレって……」

侑「花。ゆうちゃん!」

歩夢「……」
 
164:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 21:42:30.79 ID:09mbULFM
前に、私が調べた
今、侑ちゃんが侑ちゃんでいる、この花

"ローダンセ"
 
166:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 21:44:37.11 ID:09mbULFM
侑「私だった時はね、何かを見つけなきゃって思ってた」

侑「何もないのが嫌だったから、ただずっと探してた」

歩夢「……」

侑「いつか終わりが来るまで、とにかく走って、走って、探し回ってたんだ」

侑「キミは、別に走りたくなかったのにね」

歩夢「!」

侑「あ、ヒトだ」
 
167:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 21:45:58.71 ID:09mbULFM
侑「私だった時はね、何かを見つけなきゃって思ってた」

侑「何もないのが嫌だったから、ただずっと探してた」

歩夢「……」

侑「いつか終わりが来るまで、とにかく走って、走って、探し回ってたんだ」

侑「キミは、別に走りたくなかったのにね」

歩夢「!」

侑「あ、ヒトだ」
 
169:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 21:47:26.94 ID:09mbULFM
侑「アッチもつがい。コッチもつがい。みんなくっ付いてる。変だね」

歩夢「……ぁ」

侑「わたしんち、キミんち、別々。当たり前だよね」

歩夢「……」


歩夢「……侑ちゃん」



そうだ
きっと、そうだったんだ。



侑「あはは、風。葉っぱ」



侑ちゃんが、花になったのって
 
170:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 21:47:46.41 ID:09mbULFM
歩夢「私のせいだったんだ」
 
171:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 21:48:32.22 ID:09mbULFM
私が、侑ちゃんに甘え続けた所為で
彼女は、自分の人生を捨ててしまった
 
172:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 21:49:20.32 ID:09mbULFM
侑「あはは」

歩夢「っ」


私が、そうさせたんだ。


侑「気持ち、前のわたしの」

歩夢「……っ」

侑「そうであって欲しいって、その気持ち」

侑「花は枯れちゃっても、気持ちは枯れない。あはは」

歩夢「~ッ」
 
173:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 21:50:18.09 ID:09mbULFM
ローダンセ:

花言葉は、変わらない思い
終わりのない友情

なのに……
 
174:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 21:51:06.04 ID:09mbULFM
侑「でも、キミの窓辺はキミの。それだけ」

侑「キミの生活はキミの」

侑「それだけ」

歩夢「ッッッ」ギリッ


どうして

なんで、そんな事ばっかり言うの?
 
175:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 21:52:19.65 ID:Tng4oVak
侑「空が見えて、床からビルが生えてて」

侑「葉っぱとスリッパ。そして、」

侑「わたしは、そこに居なくて──」

「やめてよっ!!!」

歩夢「わたしはっ!!」

侑「あはは」

歩夢「私は、そんなの望んでないっ!!」

歩夢「侑ちゃんを否定する様なこと、絶対にしたくないっ!!」

侑「はははっ」
 
176:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 21:52:48.67 ID:Tng4oVak
この花は
私と侑ちゃんとを繋ぐ、最後の縁
 
177:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 21:56:20.57 ID:RU2QG7BL
歩夢「したくないのに……っ」

侑「キミ。キミとわたし。別々」

歩夢「別なんかじゃないっ!!」

歩夢「私は、侑ちゃんと一緒に歩いて行ければ、それで良かったの!幸せなのっ!」

歩夢「だからっ……侑ちゃんには、侑ちゃんのままでいて欲しいかったのっ」

侑「違うよ、別々」

歩夢「ッ」

侑「べつべつ」
 
178:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 21:56:56.96 ID:RU2QG7BL
歩夢「…………ねぇ、侑ちゃん」

侑「ゆうちゃん」

歩夢「こんなの、もうやめよ?元に戻ろうよ」

歩夢「私も、頑張るからっ」

侑「ゆめ、ときめき」

歩夢「侑ちゃんが、私と違う夢を見るのは本当に寂しくて、悲しいけど……それでも、」

歩夢「侑ちゃんにはっ、幸せでいて欲しいからっ」
 
179:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 21:58:07.27 ID:0dKsF3G/
歩夢「…………ねぇ、侑ちゃん」

侑「ゆうちゃん」

歩夢「こんなの、もうやめよ?元に戻ろうよ」

歩夢「私も、頑張るからっ」

侑「ゆめ、ときめき」

歩夢「侑ちゃんが、私と違う夢を見るのは本当に寂しくて、悲しいけど……それでも、」

歩夢「侑ちゃんにはっ、幸せでいて欲しいからっ!」
 
180:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 21:59:09.64 ID:0dKsF3G/
歩夢「それに、本当は終わりになんてしたくない!」

歩夢「みんなの夢も、私たちの夢もっ!」


歩夢「ずっとずっと、追いかけてみたかったよっ!!」

侑「!」


歩夢「だからっ、お願いっ……戻って……っ!」

侑「……」

歩夢「ゆうちゃん……っ」

歩夢「うぅ……」
 
181:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 21:59:49.71 ID:0dKsF3G/
「──歩夢、」


歩夢「え?」

侑「……」

歩夢「い、いま、名前……」

侑「ねぇ、歩夢」

歩夢「な、なに?」

侑「枯れる前に決心が付けばって、そう思ってた」

侑「だって、このまま終わりになるだなんて、そんなの悲し過ぎるもんね」
 
182:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 22:01:42.41 ID:0dKsF3G/
歩夢「なんのはなしを……」

侑「1.2の3だよ」

侑「まずは、ゆっくり目をつぶって」

侑「それから、三つ数をかぞえるの」

歩夢「ゆう……ちゃん?」

侑「そうしたら──」


侑「私は、ここから居なくなるから」
 
184:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 22:06:51.34 ID:0dKsF3G/
歩夢「!?」

侑「高咲侑は、上原歩夢の幼馴染じゃなくなる」

侑「歩夢の生活は、似てるけどまったく新しい、別の形に生まれ変わるんだ」

侑「また、夢を追いかける為にね」

歩夢「そっ──!」

歩夢「そんなのっ、出来るわけないよ!!」

侑「……」
 
185:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 22:07:26.26 ID:0dKsF3G/
歩夢「侑ちゃんはね!?私の大切な幼馴染なんだよっ!!」

歩夢「私は、元通りにっ……今まで通りに戻って、やり直したかっただけなのっ!」

歩夢「それを、全部失くすだなんて……っ」

侑「あのね」

歩夢「ッ」

侑「ずっとずっと、歩夢と同じ道を歩いて来た。それなりの時間をかけて」

侑「それが、当たり前だと思えるくらいには」

歩夢「そ、それの……なにがダメなの……っ」
 
186:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 22:07:59.87 ID:0dKsF3G/
侑「当たり前になり過ぎてて、気付かなきゃいけない事まで、私たちは気付けなくなってたんだよ」

侑「あの日、君に言われるまで」

歩夢「あ、あの日……?」

侑「私の夢を伝えた時、歩夢はとっても悲しそうだった」

侑「当然だよね。歩夢の心を裏切ってたんだもん」

歩夢「っ」

侑「私は、私の夢を見つけた事に夢中になってて、その分、歩夢を蔑ろにしてた」
 
187:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 22:10:45.05 ID:0dKsF3G/
歩夢「そ、そんなことっ」

侑「私が、どっち付かずな態度を取ってる内に、歩夢は自分の夢まで見失っちゃって」

侑「そして、とうとう私なんかに依存しちゃったんだ」

歩夢「違うっ!依存だなんて……っ」

侑「こんな事になったのも、元を正せば全部、歩夢をその気にさせた私が悪いの」

歩夢「~っ」

侑「私が、歩夢の自由を奪ったんだ」

歩夢「わたしっ、は……」

歩夢「私は、侑ちゃんと一緒に居られれば……それで……っ」
 
188:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 22:11:43.85 ID:2w+5VEW3
侑「……」

侑「だから、歩夢が見ている窓辺。この外に出ようって、そう決めたんだ」

歩夢「っ」

侑「写ってる景色を、隅々までちゃんと見られる様になったなら」

侑「そうすれば、また歩夢は自分で歩き出す事が出来るって」

歩夢「そんなっ……」

侑「……」

侑「今にして思えば、歩夢に抱きしめられた時、あの時がきっと」

侑「お別れの合図だったんだよ」
 
189:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 22:12:19.34 ID:2w+5VEW3
歩夢「ぁ……」

侑「だから、もう行かなくちゃ」

侑「ここをね、私と歩夢との最初の交差点にする為に」

歩夢「最初……の……?」

侑「そう」

侑「私と歩夢の時間は、一度おしまいにしなくちゃならない」

侑「縁もたけなわって奴だね」

歩夢「そんなっ……そんなのって……」
 
190:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 22:13:12.34 ID:2w+5VEW3
侑「私達の道が、またいつ交わるかは分からないけど」

侑「それが、君の自由になるのなら」

歩夢「……」

侑「それにさ」

侑「歩夢にだって、待ってる人たちがいっぱいいるんだもん」

歩夢「でも……っ」

歩夢「でもっ!!」

侑「歩夢」
 
191:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 22:14:02.47 ID:3YHeF3ZE
侑「君は、本当に凄い子なんだよ?」

侑「その気になれば、何処までだって歩いて行けちゃう様な」

歩夢「ッ」

侑「自分の力で夢を見つけて、それに向かってずっとずっと歩いて行ける。そんな凄い子なんだ」

歩夢「違う……っ」

侑「だから、私一人の事で思い悩んでたら、ダメなんだよ」

歩夢「違うっ!!」

歩夢「私は凄くなんかない!みんなと一緒だもん!」
 
193:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 22:15:33.18 ID:3YHeF3ZE
歩夢「それに、侑ちゃんは友だち!私の一番のっ!!」

歩夢「思い悩むのなんて、そんなの当たり前だよっ!!!」

侑「ふふっ」

歩夢「ねぇ!」

侑「……」

侑「さようなら、歩夢」

歩夢「──ッ!」

侑「最後に、君を抱きしめたかったな」

歩夢「ま、まって!!」
 
194:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 22:16:25.04 ID:3YHeF3ZE
侑「さぁ、目を閉じて」

侑「私が枯れちゃう前に」

歩夢「待ってったらぁ……っ」

侑「そして、三つ数えたら、きっと何もかもを忘れられるから」

歩夢「待ってよぉ!待ってったらぁ!!」

侑「歩夢を縛ってるものは、もう全部無くなってるよ」

歩夢「侑ちゃんっ……イヤだ……っ!」

侑「そうしたらさ」


「あとは、思う様に歩いて行って」
 
195:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 22:17:32.92 ID:3YHeF3ZE
歩夢「ゆぅ…ちゃん……っ」

侑「歩夢」

歩夢「いやだっ……わたし……っ!」

侑「どうか、変わる前に」

侑「私たちの絆が、枯れない様に」

歩夢「ゆぅ……ちゃ……」

侑「……」

歩夢「っ」


歩夢「ッッッ」
 
196:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 22:19:21.38 ID:xYT38b8Q
「1」
 
197:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 22:19:52.99 ID:xYT38b8Q
侑「歩夢」

侑「今まで、本当にありがとう」
 
201:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 22:27:44.35 ID:xYT38b8Q
>>197>>198の間

「2」

が抜けてしまいました
本当に申し訳ありません。
 
198:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 22:20:44.42 ID:xYT38b8Q
侑「これまでの私達は、今日ここで終わるけれど」

侑「きっと、直ぐにまた逢えるからさ」


侑「だからね、その時はまた……」
 
199:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 22:21:09.74 ID:xYT38b8Q
『       』
 
200:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/04/29(金) 22:27:20.59 ID:xYT38b8Q
「3」
 
215:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 06:31:28.83 ID:7mO4mxcy
──────
───




チュンチュン!

チュン…チュンチュン


ピピピピピピッ!


「…………ん……」


ムクッ


「……」


「ふあ~ぁ」
 
216:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 06:33:03.52 ID:7mO4mxcy
「……」スッ


ガラガラッ


「……ん~っ!」


歩夢「今日は、いいお天気だなぁ」


歩夢「風も穏やかだし、お散歩したくなっちゃうね」

歩夢「──あれ?」

歩夢「わわ!もうこんな時間!?急いで準備しなきゃ!」
 
218:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 06:54:07.43 ID:9F150ujF
歩夢「なんでアラームズレてたんだろう?何かしたっけ?」

歩夢「昨日は犬猫動画観てぇ……ちょっと勉強して、それから……」

歩夢「んん~」

歩夢「ま、いっか」

歩夢「それより、早くみんなと会いたいなぁ~♪」
 
219:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 06:54:30.01 ID:9F150ujF
なんだか、恥ずかしくなる言葉だけども
思ってるんだから、しょうがないよね。
 
220:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 07:03:17.38 ID:GjdqnZ4n
歩夢「おはよー!」

「あ、歩夢ちゃんおはよー」

「ねぇねぇ、今度のライブ絶対観に行くから!」

歩夢「ふふっ、ありがとう」

「見てよコレ!歩夢ちゃん一色でしょ!?」

歩夢「え?……うわ!?」

「アンタ、本当よくやるよ」

「当然じゃん!わたし、歩夢ちゃん推しですから!」
 
221:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 07:04:29.55 ID:GjdqnZ4n
歩夢「あ、あははは……」

「他のファンの子たちには申し訳ないけど、このポジションだけは死んでも譲んないから!」

歩夢「こ、このポジションって?」

「推しと毎朝一緒に登校できる!教室も一緒!放課後もたまに遊びに行ける!お家デートも可!」

「冨は我が手に!!音を立てて崩壊するマルクス主義っ!!」

歩夢「~っ」

「ハァ……」
 
222:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 07:05:28.66 ID:GjdqnZ4n
「この、冨の偏在を私は──」

「ウザい」ドスッ

「あぅっ!?」

歩夢「!?」

「いっつもごめんね?この子アホだからさ」

歩夢「う、ううん。好きだって言ってくれるのは嬉しいから」

「私はせつ菜ちゃん推しだけど、歩夢のことも勿論応援してるから」

歩夢「うん。私もせつ菜ちゃん大好きだもん!」
 
223:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 07:06:52.69 ID:GjdqnZ4n
「……ねぇ、」

歩夢「ん?」

「今度さ、せつ菜ちゃんも連れて四人で遊びにとか……その……」

歩夢「ホント!?私もずっとそれ思ってたんだ~!」

「!」

歩夢「せつ菜ちゃんにも、そのお話伝えておくね!」

「あ、ありがとう!」
 
224:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 07:07:38.59 ID:GjdqnZ4n
歩夢「あ、そろそろ行かなくちゃ!」

「分かった。朝練頑張ってね」

「うぅ……歩夢ちゃ~……」

歩夢「二人も、また後でね」


日課の手ぇつなぐのまだぁ~っ!!

アンタうるさいからっ!!


歩夢「うふふっ」


歩夢「──よし!」
 
225:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 07:21:38.10 ID:82qpzBK2
今年の春に、同い年の子のライブを見て
私は、アイドルになる。と言う夢を手に入れた。

それ程に、ステージ上の彼女は
燦然と輝く一番星の如く、圧倒的な存在感を放っていたんだ。

……まさか、そのすぐ後に友達になるとは
夢にも思っていなかったんだけど

気が付けば、
目指すべき人は、私の先生の一人にもなっていた。
 
226:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 07:35:41.71 ID:Pim31Nbi
そして、志しを同じくした
八人の仲間たちと共に

私はいま、ここにいる。



歩夢「……」



……でも、
 
227:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 09:45:57.93 ID:3gsi9WSC
「さて」


果林「9人揃った事だし、そろそろ練習を始めましょうか」

歩夢「……」

彼方「ん~?どうかしたのぉ~?」

歩夢「……いえ」

歩夢「なんだか、少しだけ違和感がある様な気がして」

せつ菜「違和感ですか?」

歩夢「うん。なんて言うか」

歩夢「この部室に、何かが足りない様な……そんな感じがして」
 
228:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 09:46:24.88 ID:3gsi9WSC
かすみ「こ、怖い話なら、流しそうめんの部室でして下さいっ!」

愛「なんであそこなの?」

かすみ「だって、あの会って年がら年中夏仕様じゃないですか!」

しずく「別に夏仕様では無い気が……」

かすみ「流しそうめんって言ったら夏でしょ!?冬なんて寒くて無理だもん!」

せつ菜「では、お湯を流して温そうめんにしましょう!」

せつ菜「これなら寒くないですね!」

かすみ「ぉお!!」
 
229:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 09:46:53.42 ID:3gsi9WSC
璃奈「たぶん、倍の速度でふやける」

せつ菜「!?」

かすみ「ぇえ!?」

歩夢「……」

エマ「悩み事?」

歩夢「え?」

エマ「いつもの歩夢ちゃんと少し違ったから、何か悩んでるのかなって」

歩夢「……悩み、悩んでる事」

璃奈「さっきの違和感のことも気になる」

彼方「良かったらぁ~、お姉さんに話してごらぁ~ん?」
 
230:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 09:47:20.26 ID:3gsi9WSC
歩夢「……」

歩夢「何に悩んでるんでしょう」

エマ「へ?」

歩夢「何に悩んでるのか、それが全然分かんないんですよね」

かすみ「ハァ?」

歩夢「何か、悩んでる様な気もしたんですけど、コレと言って特には……」

しずく「歩夢先輩って、たまに面白い感じになりますよね」

歩夢「んん……」
 
233:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 12:26:27.49 ID:/QDDHQlc
せつ菜「大丈夫です!」

歩夢「!」

せつ菜「思い出したらでいいんですよ」

せつ菜「いつでも聞きますから!」

歩夢「……ありがとう。せつ菜ちゃん」

果林「ねぇ、歩夢」

歩夢「はい?」

果林「この地図のね、スイーツ店まで行きたいんだけど」


果林「コレ、どういう風に見たらいいのかしら」

歩夢「……」
 
234:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 12:28:35.24 ID:Voqz/4s8
果林「一応ね?上下回転しながら見てるんだけど、この子回転してくれないのよ」

果林「上って北よね?そうよね?」

歩夢「……果林さん」

果林「え?」

歩夢「このお店には、いつ行くんですか?」

果林「えっと、今週の日曜に行こうかなって……」

歩夢「私も行っていいですか?」

果林「あら、デートのお誘い?」
 
235:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 12:34:32.23 ID:3U+5/TKs
歩夢「そうです」

果林「!?」

果林「そ、そう。一緒に来てくれるのなら、私も嬉しいけど」

歩夢「分かりました。待ち合わせ時間は後で決めましょう」

果林「あ、はい……」

エマ(歩夢ちゃん、ありがとう)パチッ

歩夢(気にしないでください)パチッ

果林「?」
 
236:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 12:35:33.52 ID:3U+5/TKs
ほんの少しだけあった引っかかりも
この、なんでもない日々のやり取りのお陰で

綺麗さっぱり流れていきました。

そのくらい、とても楽しく過ごせています。
 
237: (もんじゃ) 2022/05/01(日) 12:54:20.09 ID:hHfIXsSy
@cメ*´•̥ _ •̥ リ ゆ、ゆ……
 
238:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 18:13:18.43 ID:RRSb5P7y
「歩夢ちゃ~ん!」

「これからまた練習あるんでしょ?」

歩夢「うん。今日は軽めだけどね」

「じゃあさ、ちょっとだけ時間ある?」

歩夢「大丈夫だけど、どうしたの?」

「次のライブの為に、みんなからのプレゼントがあるんだよ」

歩夢「次のライブのため?」

「女子力高めだよ~」

「ほら、コレ!」サッ
 
239:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 18:15:00.12 ID:RRSb5P7y
歩夢「!」

「ガーベラだよ」

「かわいくて、純粋で、いつも頑張っていて……」

「私たちは、そんな歩夢ちゃんが大好きなんです!」

歩夢「みんな……っ」

「あはは、なんか恥ずかしくなってきたね///」

「歩夢。受け取ってくれる?」

歩夢「ッッッ」

歩夢「……ありがとう。本当にありがとうっ」
 
240:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 18:15:38.23 ID:RRSb5P7y
出会ってきた、色々な人達との
感じた時間の流れと、その清濁

様々な、出逢いと別れの中で
私の窓に映る、この景色が出来上がった。
 
241:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 18:16:59.76 ID:RRSb5P7y
歩夢「うぅ……っ」

「ヤバッ……わたしも……っ」

「嬉しいねぇ」

歩夢「~っ」

「……あーあ!ライブの為にとっといた涙だったのになぁ!」

「水いる?」

「トイレ行きたくなるからいらなぁーい!」

「ハイハイ」
 
242:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 18:17:26.38 ID:RRSb5P7y
それは、生活と言う線で縁取られ
感情と言う絵の具で彩られた

私だけの景色。
 
243:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 18:18:18.01 ID:RRSb5P7y
歩夢「ぁ、この花って」

「んん?そんなんあったっけ?」

「あぁ、それはローダンセだね」

歩夢「……」

「花言葉は、変わらない思い。あと、終わりのない友情だって」

歩夢「ローダンセ……」

「綺麗だよねぇ」

歩夢「うん……」
 
244:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 18:21:45.09 ID:RRSb5P7y
「そういえばさ」

「明日、フェスの相談で東雲学園の人が来るんだって」

歩夢「そうなんだ。どんな人?」

「生徒会長だって」


「高咲さんって言うらしいよ」


歩夢「……」

「知ってる人?」

歩夢「え?う、うぅん」

「なんかね?歩夢ちゃんの大ファンなんだって!」

歩夢「な、なんか恥ずかしいなぁ///」
 
245:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 18:22:50.19 ID:VdJ8laiq
「凄いよね!校外の人までファンになっちゃったんだよ!」

「しかも生徒会長だからねぇ」

歩夢「うぅ~っ///」

「あとは、ライブに向けて目一杯歩夢ちゃんを盛り上げて行くだけだ!」

「歩夢。応援してるからね」

「頑張って!」

歩夢「うん!」


歩夢「えへへ」
 
246:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 18:23:34.66 ID:VdJ8laiq
私の名前は、上原歩夢。
 
247:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 18:24:44.59 ID:VdJ8laiq
「歩夢ちゃーん!」


歩夢「!」


「オーイ!!」

「せんぱーい!練習始めますよー!」

「置いてっちゃうからねー!」
 
248:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 18:24:57.85 ID:VdJ8laiq
きっと、これからもずっと
夢を目指して、それに向かって歩いていけたら
 
249:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 18:25:30.22 ID:VdJ8laiq
歩夢「……うん」


歩夢「いま行くよ!」
 
250:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 18:25:54.23 ID:VdJ8laiq
そうしたら、何かを果たせる様な

そんな気がします。
 
251:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 18:26:46.27 ID:VdJ8laiq
──あ、


貴方、上原歩夢ちゃんだよね!?

私、高咲侑っていいます!


実はわたし、貴方の大大大ファンなんです!

ステージの貴方、すっごくキラキラしてて私、一目でトキメいちゃったの!


……ねぇ、もし良かったら、私と
 
252:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 18:27:04.37 ID:VdJ8laiq
『友達になろうよ!』
 
253:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 18:27:27.75 ID:VdJ8laiq
お粗末さまでした。
 
254:◆5UDbDqhWOk (浮動国境) 2022/05/01(日) 18:27:47.18 ID:VdJ8laiq
元ネタ
伊藤サチコ【1.2.3】/sm2692687
 

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1650801140/

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