【SS】姫乃「スイスの中のイタリア?」【ラブライブ!虹ヶ咲】

ひめの SS


2: (SB-iPhone) 2021/06/16(水) 20:57:52.60 ID:FXEFI76M
姫乃「ふわぁ...」

母「姫乃、おはよう」

姫乃「おはよう御座います...」

父「おはよう姫乃」

父「昨日夜遅くまで起きてたみたいじゃないか。準備は出来たかい?」

姫乃「うん、ばっちり!」

父「そうか、じゃあ早くご飯食べちゃいなさい。お父さん送るから」

姫乃「ありがとうございます」

姫乃「えーっと、今日の朝ごはんは...」

母「焼き魚と納豆と、お味噌汁と漬物」

姫乃「ザ・日本って感じ....」

母「なんてったって今日は姫乃がスイスに旅行しに行く日ですもの。だから気合い入れて和風って感じのをね?」

姫乃「へ、へぇ...」

ご飯「早く食べてや」

姫乃「とりあえず、いただきます」パチン

父「いただきます!」

3: (SB-iPhone) 2021/06/16(水) 21:00:17.45 ID:FXEFI76M
車「ブッブーですわ」

父「いいなぁ...スイスかぁ...」

姫乃「お父さん、最近ずーっと同じ事言ってる」

父「お父さんが若い頃はなぁ...ヨーロッパは、まだEU発足前で外貨が高くて、手軽に旅行出来なかった頃なんだよ」

父「だから、羨ましくて、羨ましくて仕方ない」

姫乃「...ふぅん」

姫乃「じゃあ今度一緒に海外旅行とかは?」

父「それもいいな。ハワイとか行ってみたい」

姫乃「楽しみだね」

父「あぁ」

父「もうすぐ着くぞ。準備しといて」

姫乃「うん。あっ、先に言っておくね」

姫乃「お父さん、送ってくれてありがとう」

父「どういたしまして。姫乃がいないとお父さん、寂しくなって電話しちゃうかも」

姫乃「それは...通信量とかあるからちょっとやめて」

父「え~そこは頼むよぉ」

姫乃「断固拒否します」

父「まあ、困ったことがあったらすぐに連絡するんだぞ」

姫乃「エマさんが付いててくれるから大丈夫」

父「“エマさん”かぁ...」

4: (SB-iPhone) 2021/06/16(水) 21:01:42.92 ID:FXEFI76M
父「行ってこいよ!」

姫乃「うん!じゃあね!ありがとう!」バタン

姫乃「えーっと、第一ターミナルはこっち...」

皆さんこんにちは。お久しぶりの人はお久しぶりです。
私、綾小路姫乃大学1年生!日本文学を専攻しております。
大学受験なんてお茶の子さいさい、赤子の手を捻るより簡単でしたよ?

大学生って色々たーいへん!
ゼミに講義にサークル活動、多すぎて顔を覚えられない同期。まずは同じゼミ生から覚えていきました。それでも顔と名前が一致しない子が...

理系に比べたら文系は時間がある方だって先輩が言ってました!その分私はバイトを入れています。

初めてのバイトは...
バイトは.....
ポカやらかすばかりです...うぅ。

怒られたってへこたれちゃいけません!その分精進あるのみです!

さて、そんな日々もあっという間に過ぎて今は8月中旬。
今日から夏休みのバカンスです。
いざスイスへ!

麦わら帽子を一丁前に被ってみて、あたりを見渡します。

確かこの辺りで待ち合わせを...

5: (SB-iPhone) 2021/06/16(水) 21:06:37.86 ID:FXEFI76M
少し緑がかったまあるいフレームのサングラスを、おしゃれに身につけ、柱にもたれ掛かってる美人さんが1人。

おでこを出す様に纏められた前髪と、ノースリーブの上着。
青髪に真っ赤なルージュのコントラストが美しいですね。くぅ!カッコいい!

姫乃「果林さーん!」

果林「あら、姫乃ちゃん、おはよう」

姫乃「おはよう御座います!」

果林さんはサングラスを少し斜めにして、私にウィンクをします。

姫乃「果林さん、待ちましたか?」

果林「いえ、それほどじゃないわ」

果林「私も迷っちゃって、ぐるぐる歩き回ったから、着いたのはさっきなのよ」

果林「これからよろしくね!」

姫乃「はい!」

これからスイスまでの2人旅が始まります。

10: (SB-iPhone) 2021/06/16(水) 21:10:13.42 ID:FXEFI76M
羽田からスイスまで直接向かうわけではありません。

航空券を安くする為、一度モスクワで乗り換えをします。
この場合、料金は往復8万円ほど。

では直行便はどうかというと、料金は往復15万円ぐらいします。倍近く開きがありますね。

私達が今回使う航空会社は、ロシアのエアロフロート、という会社です。
過去に事件が....ゲフンゲフン...色々あったらしいですが、ロシア空軍から引退した方がパイロットをしている事が多いので、土壇場には強いらしいです。

さて、搭乗口でチェックインと預け荷物の検査を行って、パスポートをチェックしてもらって。

姫乃「ここまでは順調ですね」

果林「まだ日本だからね。モスクワでうまく乗り換えられるかが心配だわ」

果林「直前でゲートが変わることもよくあるらしいし」

果林「スイスまでつくかしら?」

姫乃「...うーん、天に運を任せるしか...」

果林「それはちょっと」

13: (SB-iPhone) 2021/06/16(水) 21:15:01.49 ID:FXEFI76M
果林「今回のスイス旅行は複雑ねぇ」

姫乃「スイスに直接向かう訳では有りませんからね」

果林「それ以外にもあるじゃない。イタリアからスイスに入るんでしょ?」

姫乃「目的地が目的なだけあって、私達、厳密にいうとミラノへ向かってますからね....」

姫乃「果林さん、心配する事はありません!私、第二言語はイタリア語取ってますから!」

姫乃「今日のためにいっっぱ~い単語覚えてきましたし、フレーズだって完璧です!」

アナウンス「ピンポンパンポーン、まもなくエアロフロートモスクワ行き、ゲートが開きます」

CAさん「はじめにファーストクラスの方はこちらにお並びください」

CAさん「次にエコノミーの方は~」

果林「いきましょうか」

果林「それじゃあよろしくね」

姫乃「はい!任せてください!」

16: (SB-iPhone) 2021/06/16(水) 21:19:37.77 ID:FXEFI76M
飛行機「ぶるるん!」

ふわり

機長「当機は無事に離陸しました」

姫乃「...」

姫乃「やっぱり離陸は慣れませんね」

果林「ジェットコースターのふわっとした感覚に似てるわね」

果林「わぁ...みて、お台場よ」

姫乃「わぁ...ちっちゃ~い!どんどん引き離されていきます」

果林「耳がキーンてしてきたわ。定期的に耳抜きが必要ね」ゴクリ

姫乃「果林さんお水飲みます?」

果林「今はいいわ。水なしでの耳抜きは慣れてるから」

果林「それより今回の移動ルートについて確認しましょう」

姫乃「そうですね、まずは...」

20: (SB-iPhone) 2021/06/16(水) 21:24:16.31 ID:FXEFI76M
ルートについて、はてな?と思われた方、大丈夫です。
ここで一旦、私達がどの様な旅のルートを送るかお話ししますね。

ちょっとその前に...
はじめに皆さんにお聴きします。
スイスって、何処にあるかわかりますか?

ちなみにスイスは内陸国です。
見ないでこの辺かなぁっていうところを指してみてください!

no title



えっ?ヒントですかぁ?

スイスではイタリア語とフランス語とドイツ語を話します。
これでざっくり地域を絞り込めたのでは?

22: (SB-iPhone) 2021/06/16(水) 21:29:54.32 ID:FXEFI76M
スイスを探す前に、イタリアとフランスを探しましょう。
イタリアはブーツの形をしています。フランスは五角形っぽい形をしてるのでここ。

no title

no title


ドイツは...ドイツは置いて置きましょうか。

その間に挟まれた内陸国...


no title



スイスはここです!
思ってる以上に小さいですね。スイスの面積は4万1285km2。面積は九州と同じぐらいで、人口は854.5万人です。日本の16分の1ぐらいですね。首都はベルンです。ジュネーヴでもチューリッヒでもありません。

スイスの位置が分かった所で、次に地理をおさらいしましょう。昔、エマさんが描いてくれたスイスの図はこちら


no title


なんて言えばいいんでしょう...
独特ですね。

今回の行き先はイタリア語が公用語として使われているティチーノ州です。
ティチーノ州はイタリアに隣接しています。すっごく昔の一時期、イタリア領だったりしたらしいので、イタリア色がとっても強いんだとか。

23: (SB-iPhone) 2021/06/16(水) 21:33:28.64 ID:FXEFI76M
>>13
エアロフロートではなくアエ フロートの間違いです

12: (しまむら) 2021/06/16(水) 21:12:01.73 ID:e8UlBJ3j
スイス領八丈島の人?

28: (SB-iPhone) 2021/06/16(水) 21:42:56.88 ID:FXEFI76M
24まで行ったので一旦ここまで

ゆっくり更新します
更新のない日は書き込みします

>>12
同じです

26: (SB-iPhone) 2021/06/16(水) 21:37:19.14 ID:FXEFI76M
地理的にはイタリアに近いので、今回はイタリアからスイスに入ります。

飛行機の最終目的地はミラノです。
と、その前にモスクワで乗り換えがあるのですが...

ミラノに着いたら一泊します。
翌日、ミラノから列車に乗ってスイスのルガーノという都市を目指します。

ここでエマさんと合流。
2日目はルガノ観光、3日目はリバーアクティビティと移動、エマさんのお家、ゴッタルドを目指します。そこから3泊して、3泊目の朝にミラノへ帰って、そのまま日本へ。

no title



約1週間のバケーション。
まあ日本からスイスは距離が距離なので、移動に2日半ぐらい取られてしまうのは仕方ないのですが....

ちなみに今乗ってるモスクワ行きは10時間ぐらいかかります。モスクワで乗り換え5時間待ち、モスクワからミラノは3時間です。

うぅ...移動に18時間はちょっとキツイですね。
まあ映画観たらそれなりに時間潰せるからまあいいや...

39: (SB-iPhone) 2021/06/16(水) 23:01:11.85 ID:FXEFI76M
姫乃「果林さん、スイカ食べます?」

果林「あら、いいの?いただくわ」

モスクワまでの機内では、食事が出ます。
今回の機内食は、炊き込みご飯と鰤の煮付け、スイカのデザートです。日本発の便だから和食でした。

果林「これがロシアから日本への便になると、機内食はロシア料理になるのよ」

果林「ソバの実とか出るんですって。彼方が言ってたわ」

姫乃「ソバって、あの蕎麦?」

果林「そうよ。ロシアでは粉にひかないで、実のままを茹でてご飯みたいに食べるらしいわ」

姫乃「へぇ...どんな味なのか気になりますね」


そういえば、アエ フロートでは機内での飲酒を禁止しています。理由は簡単、ロシア人はお酒が大好きだからです。

私はまだ未成年なので、ここでは飲みませんが。

41: (SB-iPhone) 2021/06/16(水) 23:07:48.74 ID:FXEFI76M
映画を後1、2本見てるともうモスクワです。

果林「忘れ物はないわね。降りましょう」スタスタ

姫乃「ここからが心配です。私はロシア語全然なので」スタスタ

姫乃「どっち行けばいいのか...」

果林「ここは私の番ね」

果林「昔、モデル仲間からロシア語を教わった事あるの」

果林「モスクワ空港の事も聞いたわ。ロシア人は笑ったり歯を見せたりしないから無愛想に見えるけど、グイグイ行けって」

果林「ゲートは...ターミナルは変わらないけど、この反対側ね。Dゲートね」

果林「荷物検査を早く終わらせて待ってましょ」クルッ

姫乃「あ、あの...」

果林「何かしら?」

姫乃「果林さん、向き逆です...そっちだとAゲートの方です」

果林「...ん!うん!そ、そうよね!」

姫乃「....」

42: (SB-iPhone) 2021/06/16(水) 23:14:07.87 ID:FXEFI76M
果林さんが空港職員にチケットを見せます。

二言三言、英語でやりとりをした後、私の方をクルッと向き直しました。

果林「ゲートあってるって。この時間帯だから変更もないそうよ」

姫乃「や、やったぁ!無事に乗り換え成功って訳ですね!」ハイタッチ?

果林「私にかかればこんなもんよ」ハイタッチ?

姫乃(でも迷子になりそうだったのは黙っておこう)

果林「エマに会うのが楽しみねぇ」

姫乃「エマさん、今何してるんだろう....」

姫乃「私、4月に久しぶりに果林さんにお会いした時、こんな事になると思ってなかったです」

姫乃「まさか私がスイスに行くなんて...」

43: (SB-iPhone) 2021/06/16(水) 23:28:22.09 ID:FXEFI76M
入学後の4月、私は2人に久々にお会いしました。

果林さんもエマさんも、都内の大学に進学しています。
果林さんは服飾とQOLを合わせた社会学っぽい事を、エマさんはスクールアイドルの魅力発信と映像技術のプログラミングっぽい事をしてると聴きました。

最初は受験のことから始まり、いつの間にやら話題はスイスに映って、エマさんがスイスいいとこ一度はおいでなんて言い出して。

少しお酒も入っていたせいもあり(私は飲んでいませんよ?)果林さんは本気にしだして、航空会社のページを開き、2人分のチケットを予約。

酔いが醒めて、キャンセルができないだのどーだのわーわー騒いだ挙句、結局スイス行きを決意。

しょーもない成り行きですが、スイスに行こうって提案された時から心が躍りっぱなしで...

スイスの為にバイトだって、勉強だってなんだって頑張れました。イタリア語もいっぱい勉強しました!

そんなこんなで今はモスクワ。
心躍らない訳がないですよね!

45: (SB-iPhone) 2021/06/16(水) 23:33:58.35 ID:FXEFI76M
エマさんは先にスイス入りしています。

家族と楽しいひと時を過ごしているのかなぁ?

果林「ゲート開いたわね」

果林「さて、行きましょうか」

姫乃「はい!」

これからどんな旅になるんでしょう?
ワクワクしてるのは果林さんも同じだと思います。
果林さんは、去り際までも気を遣って一つ一つの所作が美しいですね。

果林「あっ、ちょっとタンマ」

果林「トイレ行ってくるトイレ」

姫乃「へっ?急に?」

姫乃「あっ、果林さん、そっちはトイレの方向じゃないです!!」

46: (SB-iPhone) 2021/06/16(水) 23:49:01.86 ID:FXEFI76M
果林「モスクワからミラノまでは3時間と少しだったわね」

果林「寝る暇もなくて、あっという間だったわ」

姫乃「荷物も帰ってきましたし、これで安心してホテルで休めますね」

果林「そうね。違う人のバッグ取っちゃった時は恥ずかしかったけど、まあいいわ」

果林「ホテルまでシャトルバス出てるって言ってたけど、この列よね」

姫乃「あっ、日本人も並んでるみたいです」

姫乃「あのっ、すみません...ミランホテルはこちらですか?」

モブ日本人「ええ、このバスですよ」

姫乃「ならよかった。私も同じホテルなんです。ありがとうございます」

モブ日本人「ならよかった。良い旅をね!」

姫乃「はい、良い旅を!」


バスの中へぞろぞろと人が吸い込まれていきます。
ミラノ現地は夜の10時頃。

もうすっかり日も落ちて、皆眠りにつく頃です。
ゆらゆらバスに揺られる中、街並みがとても違うことに気付きます。
ようやくヨーロッパに来た事を実感します。

ふぁぁ...
ですが、眠い、眠い。
ホテルにチェックインしたらすぐ寝ましょう...

54: (SB-iPhone) 2021/06/17(木) 09:42:54.94 ID:AeECpLRW
~2日目~

姫乃「ふわぁ....」

姫乃「んっ~」ノビー

姫乃「??」

姫乃「あっ、今はミラノにいるんだった」

昨日はチェックインした後、直ぐに寝てしまいました。
髪の毛とメイクはちゃんと落としてありますよ?

今日はエマさんに会う日です。
少し早めにホテルを出たいですね。

モゾモゾ....

隣のベッドがモゾモゾ動いています。
果林さんとは料金の関係で同室でした。

まだ果林さんはお眠な様です。

55: (SB-iPhone) 2021/06/17(木) 09:49:30.86 ID:AeECpLRW
姫乃「果林さーん、起きてください」

エマさんからこういう時の対処を聞いています。
果林さんは朝が弱いので、ゆっくり毛布をめくってあげてね、と言っていました。

姫乃「果林さーん、毛布取っちゃいますよ」ペロン

姫乃「!?!?」

果林「姫乃ちゃん、まだ眠い」下着だけを身につけた果林

姫乃「ななななな、なんて格好してるんですか!?」

果林「私、寝るときは下着とシャネルの5番って決めてるから...」

姫乃「か、果林さん!早く服を着てください!」そっぽ向く

果林「姫乃ちゃんそんなに恥ずかしがる事はないのよ」

果林「こっち向いて」

姫乃「?」クルッ

果林「はい捕まえた」ギュッ

果林「このままお姉さんともう一眠りしましょ?」

姫乃「はわわわわわ!!」

ギュッとベッドに引き摺り込まれて、果林さんに拘束されて。

シャネルの5番でしょうか?大人な香りがします。
私は、このまま....このまま....!

56: (SB-iPhone) 2021/06/17(木) 10:13:24.98 ID:AeECpLRW
果林「やっぱり眠い...」ストン

姫乃「...//」

姫乃「....寝ちゃいました」

姫乃「ドキドキちゃった....///」

姫乃「ってそうじゃなくて、早く果林さん起こさないと!」

姫乃「果林さん、寝ちゃダメですぅ!起きてください」

果林「後5分...」

姫乃「ダメです!毛布引っ剥がしちゃいますよ!それっ!」

果林「やっ、やめて~」

57: (SB-iPhone) 2021/06/17(木) 12:56:28.53 ID:AeECpLRW
さて、そんなイチャイチャ?も終わり朝食です。

ここは安いホテルなので、そんな豪勢なものは出ませんが、サラダ、スクランブルエッグ、パン、そしてソーセージが並んでいます。

特にパンが...とっても種類が多いです。
平たいのから、お尻みたいにまあるいのまで。きっと一個一個名前があるのでしょうが、私にはまだわかりません。

早くエマさんに会って、聞きたいなぁ...

果林「はむっ...このパン随分と美味しいわね」

姫乃「はむっ...皮はちょっと硬めですけど、すごいもちもちしてます」

姫乃「こっちのジャムも出来合いだけど美味しいですね」

果林「姫乃ちゃん、エスプレッソ飲む?」

姫乃「あ、いえ私はいいです」

姫乃「こんなに美味しいパンが沢山ある地域なのに、エマさんは日本のパンが好きなんて不思議な人ですよね」

果林「たしかに不思議ねぇ...エマにあったら聞く事が一つ増えたわ」スクッ

そう言いながら果林さんはエスプレッソを取りに立ち上がりました。
あんなに苦いコーヒーが飲めるなんて大人だぁな。

や、私ももう大人だから早く飲める様にしないと...

58: (SB-iPhone) 2021/06/17(木) 13:22:06.06 ID:AeECpLRW
受け付け「Ti ridarò il tuo passaporto.(パスポートをお返しします)」

姫乃「Grazie.(ありがとう)」

50ユーロ(6500円)を支払ってホテルを後にします。

一旦空港までバスで戻って、そこからミラノ駅へバスで向かいます。

バス「プシュ~」

果林「なんかシンパシー感じる擬音語ね」

姫乃「?」

皆さん知ってますか?ミラノ空港って3つあるみたいです。それについて、果林さんから説明がありました。

果林「はじめにマルペンサ空港」

果林「日本からの直行便とか主な空港はこれね。私達も今はここにいるわ」

果林「次にミラノ・リナーテ国際空港(リナーテ空港)」

果林「リナーテ空港はイタリアの国内戦と近距離ヨーロッパからの国際線」

果林「最後にベルガモ・オリオ・アル・セーリオ国際空港よ。これは格安航空の空港ね」

果林「目的地に合わせて空港を変えるのもいいわね」

姫乃「なんでそんなに詳しいんですか?」

果林「服飾のゼミで何度かイタリアには来てるの。現地集合だったんだけど、空港を間違えて...」

姫乃「あー...」

姫乃「聞かなかった事にしますね」

果林「ありがとう」

60: (SB-iPhone) 2021/06/17(木) 17:55:05.25 ID:AeECpLRW
バスに揺られてゆらゆらと。
マルペンサ空港からミラノ中央駅までは直線的な道のりが続きます。
https://i.imgur.com/nchixJm.jpg

それにしても....ここって結構田舎?

建物が全くありません。

果林「意外と何もないのよねこのあたり」

姫乃「ヨーロッパってもっと都会だと思ってました」

果林「日本が都会すぎるのよ。あと、人口密度も高すぎだしね」

ふむふむと感心しながら外を見ます。
建物がまばらで、地平線の端の方まで畑で、平で...

じーっと何もない景色を眺めます。

時折ポツンポツンと糸杉の木。
ゴッホの糸杉やミレーの落穂拾いの景色がそのままひろがっています。

果林「ミラノまでは1時間。ゆっくりしましょう」

そう言って果林さんが私の肩にもたれかかります。
ふんわりと香水の香りがしました。

61: (SB-iPhone) 2021/06/17(木) 18:31:59.73 ID:AeECpLRW
姫乃・果林「「なんじゃこりゃ~!」」

おっきい!そして荘厳です!
ローマを彷彿させる柱、石の造りの建物。
あの柱の上なんて何か像が乗っかってます!

ミラノ中央駅は外見もさることながら、中も豪華です。

ここは美術館かな?って感じの柱の作りと開放的な天井の採光。天井がとっても高い!72mもあるそうです。

一つ一つがとっても大きくて、東京駅とは別の意味で気圧されてしまいました...

姫乃「ええっと、こっち、ですよね?」

果林「えぇ...多分そうよ」

果林さんもちょっとだけ弱腰です。

駅のホームも丸いアーチがいくつも、いくつも連なっていて...

近現代ヨーロッパを舞台にした作品で、昔こんなのを見ました。ここがモデルになってるのかも。

姫乃「あっ、えーっと、ホームはこっちみたいです」

電車の出発時刻が迫ってきています。
もうちょっと散策してみたかったけど、それは最終日に。

64: (SB-iPhone) 2021/06/17(木) 20:50:33.64 ID:AeECpLRW
姫乃「えーっと、私達の席は...」

果林「ここじゃない?姫乃ちゃん次窓際ね」

姫乃「ありがとうございます」

今回利用するのはRE Locarno鉄道さんです。
お値段は29ユーロ(3800円)ほど。
少し高いですけど、高いからと言って子供料金で誤魔化してはいけませんよ!そうとすると一発で事務所連れて行かれて、果ては刑務所、なんてありえます。

ミラノからルガーノまでは約80km、時間にして1時間20分ぐらいです。これは新宿から箱根と同じ距離ですね。
小田急は箱根まで1200円...ま、まぁロマンスカー乗ってるのだと考えれば、ね?

姫乃「列車の顔の形が全然違いましたね」

果林「新幹線と特急を合わせた様な...大きさもちょっと大きめね」

姫乃「内装は...バスみたいな感じがしますね」

果林「日本の列車・電車って内装が独特よね」

列車「プワン」

姫乃「そろそろ出発ですね」

果林「景色を楽しみながらゆっくり行きましょう♪」

姫乃「はい!」

66: (SB-iPhone) 2021/06/17(木) 21:00:04.20 ID:AeECpLRW
カタン...コトン

景色がだんだんと山に入っていきます。

姫乃「一気に山って感じが出てきましたね」

果林「ここら辺はアルプスの麓だから山が多いんだって」

姫乃「少しだけ耳が圧迫される感じがありますね。だいぶ標高高くなってるのかな?」

果林「そうね...でもエマの実家はもっと高い所に住んでるんですって。私達、高山病になったらどうしましょう」

姫乃「それは...気合いと根性で...」

果林「スクールアイドルみたいな事言うわね」

姫乃「果林さんもスクールアイドルだったじゃないですか」

果林「ふふっ、そうだったわね」

果林「さすがカヌーで八丈島まで来ちゃう人の言葉は重みが違うわ」

姫乃「もー、揶揄わないでください!」

67: (SB-iPhone) 2021/06/17(木) 21:08:34.08 ID:AeECpLRW
姫乃「あっ、そうだ」ゴソゴソ

姫乃「今のうちにカメラの調整しときます」

果林「姫乃ちゃんって随分と昔のカメラ使ってるわよね」

姫乃「実はこれ、おじいちゃんから受け継いだもので...」

姫乃「このカメラはバルナックライカって言って、すごく古いカメラなんです」

姫乃「だから、今でもフィルムとお手入れが必要で...」

姫乃「まだセット出来てなかったので、今やりますね」キリキリ

果林「へー、フィルムってこうなってるのね」

果林「私てっきり、最初からあの四角に分かれてるのかなって思ってた」

姫乃「あの四角は、撮った景色が焼きついたものです」

姫乃「だからシャッターを切るたびに一つ一つ作られていくものなんです」

姫乃「さて、あとは巻いて...」

姫乃「これで多分大丈夫。エマさんにあったらたくさん写真撮りたいです!」

果林「今私とってもいいのよ」

姫乃「したいのはやまやまなんですが...ちょっとこのカメラだと自撮りは厳しいので...」

姫乃「スマホでいいですか?」

果林「いいわよ。是非」


はいチーズ  パシャっ

68: (SB-iPhone) 2021/06/17(木) 21:23:01.21 ID:AeECpLRW
ゴー、ゴー、ゴー。

トンネルの中を通ります。
結構長いトンネルですね。

姫乃「果林さん」

果林「なあに、姫乃ちゃん」

姫乃「私、果林さんにとっても感謝してます」

姫乃「私1人じゃスイスに来れなかったから...」

姫乃「きっかけを与えてくれて、ありがとうございます」

果林「いいのよ。私だってここまでノリで来ちゃったんだし」

そう言って果林さんは笑います。
その時、ちょうど列車がトンネルから抜けました。

果林「わぁ~」

果林「姫乃ちゃん、外とっても綺麗よ!」


緩やかな山と、急な山。
その間にまばらに見える民間。遠くにうっすらと見えるアルプス。

姫乃「綺麗...」

果林「とってもいい所ね。エマが伸び伸びとした性格をしてる理由もよくわかるわ」

果林「もう少しでルガノね。降りる準備しときましょうか」

姫乃「私、ゴミまとめておきますねでこっちへ」

果林「ありがとう」

70: (SB-iPhone) 2021/06/17(木) 22:15:36.20 ID:AeECpLRW
姫乃「ふわぁ~長かったですぅ!ようやくルガノ!」

姫乃「わっ、駅出ていきなり山です。しかもあんな急勾配の中腹に家が!」

果林「日本じゃあんまりみない光景ね...」

果林「あっちの北の方が市街地なのかしら?たくさん住宅が密集してるわ」

姫乃「観光はひとまず置いておいて、先にエマさんといましょう...」

姫乃「エマさんはどこでしょう?」ガラガラ

???「Che belle donne!Sei libero in questo momento?」

果林「え?え?え?」

モブ男「Ehi ragazza, vuoi venire a fare un giro turistico con noi?」

姫乃「あっ、これもしかしてナンパ?」

姫乃「どうしよう、なんて断ればいいのかな...」

72: (SB-iPhone) 2021/06/17(木) 22:22:04.64 ID:AeECpLRW
モブ男「Ti porterò al tuo hotel.(ホテルまで案内するよ)」ベラベラ

モブ男「Terrò le mie tariffe basse.(料金安くしておくよ)」

果林「の、ノーサンキュー」

モブ男「Questa è l'Italia. Dovrà dirlo in italiano perché io lo capisca.(イタリア語で言ってみて)」

姫乃「はぅ...リスニングはできてもコミュニケーションが全然できない。どうしよう」

モブ男「ベラベラ....」

姫乃「うぅっ」

「Perché ti prendi gioco dei miei amici?
Perché è quello che fanno le persone con il cazzo.(私の友達を揶揄わないでくれる?このちんポコ野郎」

モブ男「!?」

姫乃「!?」

果林「?」

73: (SB-iPhone) 2021/06/17(木) 22:27:50.80 ID:AeECpLRW
エマ「Sei una truffa rivolta ai turisti. Ora vai a casa.(詐欺でしょ?警察突き出しますよ)」

モブ男「Dannazione, mi hai messo i bastoni tra le ruote!(ちっ、邪魔な奴め、覚えてろよ!)」

エマ「ふん!べーだっ!」

エマ「着いて早々変な人に絡まれちゃったね。ごめんね私がもっと早く着けばこんな事にはならなかった」

果林「エマ!」

姫乃「エマさん!」

エマ「2人ともお久しぶり!そしてようこそルガノへ!」

果林「私英語も十分にわからないのに変な人に絡まれて怖かったわ!」

姫乃「私は言い返せなくて...ありがとうございます」

エマ「いいのいいの。じゃあまずはホテル向かおっか」

75: (SB-iPhone) 2021/06/17(木) 22:58:55.11 ID:AeECpLRW
ciao!エマ・ヴェルデです。

今回は姫乃ちゃんに代わって、ティチーノ州の歴史とルガーノ、そして私の故郷、ゴッタルドについてお話ししたいと思います。

エマ「ティチーノ州はどこにあるかもうわかるよね」

エマ「わからないよっていう人は>>22の4枚目をもう一回みてね」

エマ「ティチーノ州はイタリアとスイスのヴァレー州・グラウビュンデン州と接しているよ」

エマ「その昔、一時期だけイタリア領だった事があるんだって。だからイタリア語を話すの」

エマ「後者二つはスイスの内でもドイツ語を話す人の割合が多い事で知られているよ」

エマ「だからティチーノ州の人はだいたいマルチリンガル!英語が通じない時はドイツ語を話してみるといいかもね」

エマ「私もちょっとだけならドイツ語話せるよ」

エマ「おっと脱線しちゃった。話は戻ってティチーノ州の地理について」

エマ「これは私の描いたティチーノの図だよ」

no title

76: (SB-iPhone) 2021/06/17(木) 23:06:22.07 ID:AeECpLRW
エマ「州都はベリンツォーナだけど、ルガノの方が人が沢山住んでて賑わっているの!」

エマ「ここら辺はちょっと日本人には理解出来ないかもだけど...」

エマ「ルガノはスイスの南の方だから気候が安定していて」

エマ「リゾート地としての需要も結構あるんだよ」

エマ「ルガーノの隣が“ロカルノ”」

エマ「ロカルノって聞くと色々思い出す人も居るかな?」

エマ「ロカルノ国際映画祭の地と、1925年のロカルノ条約の地だよ」

エマ「最後に、もっと北に行って、私の故郷であるゴッタルド!」

エマ「ここら辺はアルプスのお膝元だからすごくいっぱい山があって、それと同じぐらい谷もあって」

エマ「そんな高所で私の家族は酪農をしています」

80: (SB-iPhone) 2021/06/18(金) 12:38:23.77 ID:Ii/FhIv3
エマ「ふぅ~チェックイン終わって荷物もホテルに預けたし」

エマ「はじめはどこいきたい?」

果林「うーん...あっちの東の方に行きたいわ。なんかお洒落な通りがありそう」

エマ「旧市街地の方だね。姫乃ちゃんはどこか行きたい所ある?」

姫乃「私も旧市街地のほうに行ってみたいです」

エマ「じゃあ決まりだね。ついてきて」

81: (SB-iPhone) 2021/06/18(金) 12:44:01.40 ID:Ii/FhIv3
エマ「ルガーノも一応スイスだから坂が多いよ」

姫乃「ふぅ...ふぅ...」

姫乃「ちょっと疲れますね」

エマ「もうちょっとで...ほら、なんとなく建物の感じが変わってきたでしょ?」

果林「本当ね。窓とかモダンな感じになってきたわね」

エマ「アーチ状の柱とか沢山あって、出っ張ったベランダとかあって」

姫乃「イタリアっぽい感じがします」

姫乃「写真撮ってもいいですか?」

エマ「いいよ。あと私も撮って欲しいな」

姫乃「ええ、いいですよ」パシャリ

エマ「現像したら絶対に見せてね」

姫乃「もちろん!」

82: (SB-iPhone) 2021/06/18(金) 12:49:42.55 ID:Ii/FhIv3
果林「この街、すごく綺麗。私がまるで映画の中にいるみたい」

果林「沢山お店があるのね。道の途中で小さなお店を出してる人もいるわ」

果林「あっちが果物やさんで、こっちは甘栗?」

果林「あの看板は何かしら?」

果林「ナイフとフォークで、レストランっぽい事はわかるのだけれど、鍵のマークがついてるわ」

果林「エマ、あれはどうして?」

エマ「んー、それはねぇ...」

エマ「なんでだろう?」

果林「そこは説明してくれる流れじゃないの?」

エマ「だって私にもわからない事あるよね」

エマ「わからないからわからないの!」

果林「それでいいのかスイス人」

83: (SB-iPhone) 2021/06/18(金) 12:57:48.15 ID:Ii/FhIv3
エマ「ここの通りがメインストリートだね」

姫乃「ここも坂の途中にある通りなんですね」

エマ「ちょっとだけ勾配はきついけど」

果林「ここはカフェが多いのね。道の両端にテーブルが並んでいるわ」

姫乃「エマさんもこういうお洒落な所でお茶したりするんですか?」

エマ「ん~、私はあんまりしないかも」

エマ「あんまり気取った事はしたくないけど...でも外でご飯食べるのは気持ちいいだろうなとは思ってる」

エマ「...グー」

エマ「あっ」

姫乃「お腹の虫が鳴いてますね」

果林「そろそろお昼だったわね」

果林「エマ、オススメのレストランを教えてちょうだい」

エマ「うん!じゃあね...」

84: (SB-iPhone) 2021/06/18(金) 13:15:46.22 ID:Ii/FhIv3
カランカラン

店員「benvenuto (いらっしゃい)」

エマ「tre (3人で)」

店員「Ecco il menu consigliato per oggi.
Avrete bisogno di 10 minuti di tempo per mangiare.(オススメメニューはこちらです。料理出来上がるまで10分からお待ち下さい)」

エマ「Sì. Grazie.(わかりました)」

エマ「何たのもっか?」

姫乃「エマさんがいつも食べてるのとか、頼んでみたいです」

エマ「うーん、て言っても特別な物は食べてないからなぁ...ここら辺来たらいつもパスタとかピザとかだけど...」

エマ「あっ、これとかいいかも」

エマ「カルピオーネっていう魚料理だよ。南蛮漬けみたいな味付けしてるから食べやすいと思う」

エマ「あとは...ドルチェ...ドルチェ」

エマ「私のおすすめはいちごのパフェかな」

エマ「いちごは夏にしか出回らないから、特別な食べ物なの」

エマ「あとはニンジンのケーキかな?」

果林「私ニンジンのケーキがいいわ」

姫乃「じゃあ私はいちごのパフェ頼みたいです!」

エマ「私もいちごがいいかな」

エマ「えーっとメニューは、カルピオーネと小さいピザ一つと、いちご2つとニンジンケーキ1つ」

エマ「すみませ~ん」

エマ「あっ、間違えちゃった」

エマ「Vorrei ordinare~」

85: (SB-iPhone) 2021/06/18(金) 14:15:37.56 ID:Ii/FhIv3
姫乃「わぁ~」

姫乃「カルピオーネって魚丸ごと使うんですね」

エマ「ここは湖に近いから、お魚も丸ごと食べるの」

エマ「早速食べちゃおっか」

果林「いただきます」

エマ・姫乃「いただきます」

果林「まずはカルピオーネを...ぱくっ...」モグモグ

果林「ふむふむ、本当に南蛮漬けって感じね。酸っぱいのだけれど、こっちはワインビネガーを使ってる分少し味が違うわ」

果林「フルーティな香りが鼻に抜けるわね」

果林「マリネされたニンジンと玉ねぎ、とっても魚に合うわ」

果林「星三つ!」

姫乃「こっちのピザは...上に乗っているのは、きのこですか?」

エマ「ポルチーニだよ。それとグリュイエールチーズだって」

姫乃「どれどれ...パクっ」

姫乃「ポルチーニの香りって松茸と全然違いますね」

姫乃「お肉みたいな香りがします」

姫乃「その香りがチーズと相まって美味しい、美味しい...」

エマ「気に入ってくれた?」

姫乃「はい!」

86: (SB-iPhone) 2021/06/18(金) 14:29:25.65 ID:Ii/FhIv3
食事をしながらゆっくり語らいます。
ここまでの事、どうやって来たのかとか。
エマさんは電車でゴッタルドから出てきた様です。
1時間40分ぐらいかかるそうです。

あっ、まだお昼なのでお酒は飲みませんよ!

果林「それでね、彼方がね...」

エマ「...ソワソワ」

果林「どうしたのそんなにソワソワして」

エマ「いちご食べれるんだなって思ったら、ソワソワしちゃって」

姫乃「いちごってそんなに特別な食べ物でしたっけ?」

エマ「もー、2人とも日本人だからそんな事言えるの!」

エマ「さっきも言ったけど、スイスではいちごは夏にしか出回らない貴重な食べ物なんだよ!」

エマ「日本ではハウス栽培の技術が高いから冬でも食べれるけど、スイスの冬は厳しいから、ハウス栽培できないの」

エマ「そんな貴重な食べ物をパフェにして、生クリームを沢山乗っけて!」

エマ「ソワソワしないで居られるスイス人なんて居ないから!」

店員「Strawberry.(いちごどうぞ)」

エマ「わぁ~」きらきら

店員「Carote(ニンジンのケーキ)」

果林「グラッツェ」

店員「Panna fresca(生クリームになります)」

エマ「ひゃ~」きらきら

87: (SB-iPhone) 2021/06/18(金) 14:35:17.32 ID:Ii/FhIv3
エマ「姫乃ちゃん、いい?」

エマ「この生クリームをたーっくさんかけて食べるんだよ」

エマ「見ててね」トロトロ

エマ「も~見てるだけでボーノ、ボーノ!」

姫乃「こうですか?」トロトロ

エマ「そう、そして大胆に一口」パクっ

エマ「ん~Bono!」

姫乃「私も一口」パクっ

姫乃「ん!思ってるよりも甘酸っぱくてジューシーですね」

姫乃「生クリームとの相性がとってもいいです」

果林「なになに?そんなに美味しいの?」

果林「私にも一口ちょうだい」

エマ「果林ちゃん、あーん」

果林「あーん」パクっ

果林「ふふっ、美味しい」

果林「私からもケーキ一口あげるわ」

果林「エマ、あーん」

エマ「ん~」パクっ

88: (SB-iPhone) 2021/06/18(金) 22:39:53.88 ID:Ii/FhIv3
さて、食事を終えてまたルガノ市街地をぶらぶら。
お昼代はエマさんが払ってくれました。

少しギョッとしちゃうお値段だったのですが、エマさんは割と普通の顔をしていました。

曰く、これが普通だと。
物価が高い分、お賃金とかも高いらしいです。だからうまくやってけるのだと。

余談ですが、スイスはEUに加入していない為通貨の単位が異なります。スイス・フランが使われています。


エマ「ねえ、あっちに教会ががあるんだって」

姫乃「教会!行ってみたいです」

果林「私も興味あるわ」

エマ「行くの久しぶりだなぁ...いつ以来だろ」

89: (SB-iPhone) 2021/06/18(金) 22:49:10.64 ID:Ii/FhIv3
私達が今いる教会、サンタ・マリア・デッリ・アンジェリ教会はルガノでも有名な教会なんだそうです。
この教会は16世紀のルネッサンスのあたりに作られました。

教会の外見は石造で一見質素なのですが、がっかりしてはいけません。
中でも見どころなのが、ベルナルディーノ・ルイーニのフレスコ画。この人物は、あのレオナルド・ダ・ビンチと仕事を共にしたとかなんとか。

姫乃「おぉ~」

姫乃「キリストが真ん中に描かれた宗教画ですね」

果林「あれは磔刑に処されるキリストを描いたものね。あそこの長い槍を持ってるのが兵士ロンギヌス」

果林「彼は目が見えなかったのだけれど、キリストの血を浴びた後に見えるようになるの」

果林「この絵画で表す事は、奇跡とか、キリスト教への回心って所ね」

姫乃「へぇ...随分とお詳しいのですね」

果林「大学のカリキュラムで宗教学とか必修で、それでね」

エマ「そうだったんだ!初めて知ったよ!」

90: (SB-iPhone) 2021/06/18(金) 22:56:32.61 ID:Ii/FhIv3
果林「あら、エマは日本人の私達に比べたら、こういうのに詳しいと思ってたんだけど...」

エマ「一応私のおうちはカトリックの教会の庇護があるんだってお父さんもお母さんも言うけど」

エマ「私、あんまり教会に行った事もないし信じてもいないんだよね」

姫乃「え~!?どうして!?そんな事教会で言っちゃダメですよ!」

エマ「あはは、日本語だからバレない、大丈夫」

エマ「私って言うか、若い人の傾向なのかな?神さまを信じていないのは」

エマ「私達世代だとお菓子もらえる場所だと認知してるよ」

エマ「まあ、そこら辺は日本人と同じ。信じていないけど、時々教会にも行くし、その他の宗教の施設にも行く」

エマ「それが気楽で一番いいよ」

果林「なんだか意外だわ。エマがそんな事言うなんて」

エマ「そう?私ガッチガチのカトリックだと思われてたり?」

エマ「うーん、もうちょっと宗教をオープンにしたほうがいいかも」?

91: (SB-iPhone) 2021/06/18(金) 23:11:09.38 ID:Ii/FhIv3
引き続き、ルガノの街をぶらぶらします。
今はもう4時。いい具合の時間になってきました。

今は湖の辺りで一休みしています。

エマ「はぁ~本当こうやって一息つける瞬間が大切だよね」

エマ「はぁ~」

果林「あら、いつもに比べたら随分とのんびりしてるじゃない」

エマ「久しぶりに実家帰ったからね、したの妹と弟が私の引っ張り合いをする様になって、嬉しい悲鳴をあげてた所なの」

エマ「日本の事聞かせて、聞かせてって、絶え間なく、それはもう寝る時まで」

エマ「嬉しいんだけど、ちょっと疲れちゃったなぁ」

エマ「ん~っ」

果林「お姉ちゃんの深刻な悩みね」

92: (SB-iPhone) 2021/06/18(金) 23:22:57.30 ID:Ii/FhIv3
ゆったりベンチで過ごしていると、目の前にのそ、のそと歩いてくる物体が!

大きい!その正体は犬です!

姫乃「なんですかこの犬!大きいですよ!」わちゃわちゃ

果林「犬の背の高さが腰と同じぐらいだわ」わちゃわちゃ

私達のわちゃわちゃした雰囲気を感じ取ったようで、大きな犬は近づいてきます。
どうやら気性は温厚なようです。

犬「わう?」

飼い主「Ciao」

姫乃「...Ciao」

姫乃「エマさん、これってハイジのヨーゼフ?」

エマ「正解!セントバーナードだよ」

姫乃「実物ってこんなに大きいんですね...」

果林「私も一瞬狼かと思ったわ」

果林「あれ...?確かヨーゼフにはたてがみがあったわよね?」

エマ「ああ、あれはね...」

93: (SB-iPhone) 2021/06/18(金) 23:29:25.38 ID:Ii/FhIv3
エマ「アニメの中ではたてがみが描かれてるけど、本物のセントバーナードにはないの」

犬「WOWOW」

エマ「あはは、可愛い子だねぇ」

エマ「Posso toccarlo?(触ってもいい?)」

飼い主「Certo, certo.(もちろん)」

エマ「触ってもいいって」

果林「わぁ~」

果林「毛がふさふさねぇ...スイスはそこまで暑くない国で良かったわね。日本だったら刈り上げしたくなるわよ」

果林「わしゃわしゃ」

姫乃「うぅ...」

果林「姫乃ちゃん少し怖いの?」

姫乃「あっ、いつも見てる芝犬よりも5倍ぐらいあるので」

犬「くぅーん」

エマ「大丈夫だよ。ゆっくり手を伸ばしてみて」

姫乃「そーっと、そーっと」ぴたっ

犬「わふわふ」

姫乃「あっ、思ったよりも柔らかい」

エマ「あはは。触れてよかった、よかった」

94: (SB-iPhone) 2021/06/18(金) 23:43:06.77 ID:Ii/FhIv3
街中をざっくりと歩いた感想ですが、ルガノの街並みは、ちょっとイタリアっぽいです。
木造の家よりも、石造の家が多いです。そこは森が少ないとかと関係があるのかな?

あと気づいた事は二つあります。

はじめにスイス人は国旗と州旗が大好きなところ。
お土産のお店以外にも、パン屋さんのパンまでも赤字に白十字が象られています。
街の至る所にも国旗国旗国旗。



これはお土産屋さんで悩んでたひと時の話なのですが...

姫乃「うーん、お土産何にしよう...」

果林「これとかいいんじゃない?」

そう言って果林さんが差し出したのは、まあるい何か。
差し出された直後は分からなかったのですが、よく見るとそれは卵!国旗の色に着色されたゆで卵だったのです!

果林「あれ?イースターエッグだと思ったのに」

エマ「あっ、それは色付きゆで卵だね。生物だから持って帰るのはちょっとだめかも」

そうは言いつつも、エマさんは卵を購入していました。
少し塩味がついていて、小腹が空いた時に丁度いいんだとかなんだとか。

95: (SB-iPhone) 2021/06/18(金) 23:51:53.05 ID:Ii/FhIv3
二つ目に気づいた事は、名前の書かれた看板が随所にある事です。

これは、子供の看板と言われていて、その家で生まれた子供の名前が書かれているそうです。

やっぱり名前だけじゃ地味なので、カラフルだったり、ここにもスイス国旗があったり、キャラクターが描かれていたり。

子供の成長を祝うのはどこの国でも一緒ですね。



姫乃「エマさんのお家にもこう言うのってあるんですか?」

エマ「あるけど、私んl家はちょっと違うよ」

エマ「看板じゃなくて、名前が入った木が植えてある」

エマ「私はリンゴの木で、妹がアンズの木だったかなぁ?」

姫乃「自分専用の木があるってことですか?とってもおしゃれですね!」

エマ「毎年りんごを収穫できるから楽しいよ。家来たら見せてあげる!」

姫乃「とっても楽しみです」

96: (SB-iPhone) 2021/06/19(土) 00:09:35.13 ID:oQIfFyl1
突然ですが皆さん、私はどこのいると思いますか?

ここでーす♪ここ、ここ。
私は今、スーパーマーケットに来ています!

なぜスーパーに来ているかと言うと、夜と明日の朝の買い出しをしなければならないからです。
旅費、というか交通費があまりにも高いので、ホテルは素泊まりのを選んだためです。

さて、スイスのスーパーマーケットには何が売っているのでしょうか?

エマ「うーん、基本はパンと付け合わせの何かって感じだね」

エマ「このパン美味しいよ。サラミが入ってるの」

果林「名前はなんていうの?」

エマ「プリッツェルって言うんだよ」

エマ「こっちはデニッシュ。みんな知ってるやつだね」

エマ「スイスにはお惣菜と冷凍食品少ないからなぁ...」

エマ「うーん、食べ飽きてるけど、無難にライ麦パンとサラミとチーズでいいかな」

エマ「あとはお酒で」

97: (SB-iPhone) 2021/06/19(土) 00:19:41.80 ID:oQIfFyl1
パンの売り場もものすごい長かったのですが、チーズと干し肉の売り場はもっと長いです。

冷凍、棚に並べられた常温の物まで、何十種類ものチーズと干し肉が所狭しと並べられています。

姫乃「これ全部チーズと干し肉」

姫乃「すごい...あれ、豚の足が丸々売られてる」

エマ「姫乃ちゃんあれ欲しいの?買っちゃう?」

姫乃「冗談ですって。って言うか、あれ買ったら私たちの旅費が全部無くなっちゃいます!」

エマ「あはは、そうだよね」

エマ「あれのちっちゃいのだったら売ってるからそれにしよう」

エマ「グラウビュンデンの生ハムだよ」

果林「エマ~このチーズどうかしら?」

エマ「アッペンツェラーだね、分けるのも楽だから丁度いいかも」

エマ「お酒はさっき買ったから...もう会計だけど、2人とも何か買う物ある?」

姫乃「私はないです」

果林「私もよ」

エマ「了解。レジの外で待ってて」

姫乃・果林「はーい」

98: (SB-iPhone) 2021/06/19(土) 00:27:06.13 ID:oQIfFyl1
エマ「それでは、再会を祝してカンパーイ」cin

姫乃・果林「カンパーイ」cin

姫乃「ごくごく...」

さわやかな葡萄の酸味を感じたあと、香りが花を抜けます。

姫乃「スイスのワインって香りが濃いですね」

エマ「わかる?姫乃ちゃん大人~」

あれっ、姫乃ちゃん飲酒してない?と思われた方、スイスでは飲酒解禁年齢が日本よりも低いんです。

16歳でワインやビールなどの醸造酒を、18歳でウィスキーやリキュールの様な蒸留酒が解禁されます。

私はまだ子供ですが、スイスでは立派な大人ということですね。今ならワインの銘柄当てることもできそう、なんて...

99: (SB-iPhone) 2021/06/19(土) 00:36:03.06 ID:oQIfFyl1
エマ「アッペンツェラーはね、周りの硬いところは食べないんだよ」

そう言いながらエマさんがチーズをカットしていきます。
エマさんはビクトリノックスのアーミーナイフを使っていました。さすがスイス人。

エマ「そのまま食べても美味しいけど、さっき買ってきたハムと一緒に食べるともっと美味しいよ」

エマ「パクパク、ん~Delizioso!」ごくごく

エマさんは右手にチーズを、左手にボトルを持ちながら食べています。

一瞬二度見しちゃうその気持ち、わかります。私もしましたし。

101: (SB-iPhone) 2021/06/19(土) 00:41:57.32 ID:oQIfFyl1
スイスでは八時ごろにようやく日が沈みます。

その頃から、何を話したかとか、内容は全く覚えてません。今日はどうたったとかそんな無難な事を話したような気がします。覚えてないです。
ですが、とっても心地よかったと言う記憶はあります。

いい感じに酔ってきたみたいです。悪い酔い方をする前に早く寝ないと。とっとっと。歩けるけど力がうまく入らないなぁ...


シャワーを浴びて、化粧水つけて...乳液付けて

そのまま、ベッドへ、ベッドへ...ボフン


姫乃「zzzz」

おやすみなさい。

102: (SB-iPhone) 2021/06/19(土) 00:43:04.40 ID:oQIfFyl1
今日はここまで

明日もうちょっと多めに更新したいです。

105: (SB-iPhone) 2021/06/19(土) 14:28:11.12 ID:oQIfFyl1
~3日目~

すいすの旅も早いもので、もう3日が過ぎてしまいました。

おはようございます。
今日もアホ毛の角度は良好。張り切っていきましょう。

果林「おはよう姫乃ちゃん」

姫乃「果林さん...今日はお早いですね」

果林「お酒飲んだからかしらね?今日は早く目が覚めたのよ」

姫乃「そうなんですか。あれ?エマさんはまだ?」

果林「そうね。お眠みたいだわ。起こしに行かないと」

果林「エマ~起きてる?」コンコン

果林「あらっ、返事ないわね。どれどれ」ガチャ

姫乃「開いてる。不用心すぎる...」

エマ「Tut-tut... Ti amo, vino rosso.Mmm..」すやぴ

姫乃「ボトルを抱えながら寝てます。幸せそうですね...」

果林「はぁ...全くエマったらお酒大好きなんだから」

106: (SB-iPhone) 2021/06/19(土) 14:36:37.28 ID:oQIfFyl1
エマ「あはは、ごめんごめん」

果林「もー、スイスだからってハメ外しすぎよ」

エマ「今日は多分大丈夫。お父さんもお母さんもいるし」

果林「本当?」

エマ「本当だって。そんな目で見ないで」

そんな会話を横目に、私はパンを黙々と食べます。
出されたのはライ麦パン。普通のパンと比べてモソモソした食感と酸っぱさが特徴です。

エマ「またライ麦パンかぁ...」

姫乃「ライ麦パン好きじゃないんですか?」

エマ「嫌いってわけじゃないけど、食べ飽きてるんだよねぇ」

エマ「日本に留学して偶に食べる時がいいのであって、毎日食べるのは本当に飽きるの」

エマ「白いパンが食べたいよぉ...」


平地の少ないスイスでは、大麦・小麦を育てるのがとっても大変です。そのかわり、どんな土地でも生えるライ麦が一般的であって、当然パンもそれらから作られます。

逆に、白いパン、というのは大麦と小麦で作られたパンです。スイスの山間部では白いパンがと~っても貴重で、日曜日や休日の、楽しい日のお供なんだそうです。

エマさんが日本の食パンが好きな理由がちょっとだけ見えてきました。

107: (SB-iPhone) 2021/06/19(土) 14:43:33.48 ID:oQIfFyl1
姫乃「ライ麦パンだって、ジャムとバターつけたらとっても美味しいですよ」

エマ「そうだね。バターはいいの選んできたから美味しいね」

エマさんのお乳が大きいのと同じように、スイスでは酪農が盛んです。海外ではバターとパンが美味しいと殆どのガイドブックには書いてある様に、スイスのバターは滑らかで、風味豊かで、本当に美味しいです。

姫乃「舌の温かさでバターがゆっくり溶けていきます。同時に口の中いっぱいに広がる風味と強い甘み...これは日本じゃ味わえませんね」

果林「ジャムもいいわね。ゴロゴロ食感が残ってるのがアクセントをくれるわ」

果林「噛む度にジュワ~って味が広がるわね」

エマ「2人とも幸せそうだね。どうする?エスプレッソは飲む?」

果林「私はお願いしたいわ」

姫乃「私はカフェラテがいいです」

エマ「りょーかい!」

108: (SB-iPhone) 2021/06/19(土) 14:51:26.95 ID:oQIfFyl1
エマさんが出してくれたカフェラテを飲み干して1日が始まります。しゃっきりしました!

今日の予定は、10時から1時ぐらいまでリバーアクティビティ、途中お昼を挟んで4時にゴッタルドへ出発します。

6時にゴッタルドについて、そこからエマさんのご実家へという流れです。


はじめに、リバーアクティビティのために、ルガノ市内のアニョと言う地区に移動します。ここまではバスで10分ほど。

この辺りも石造の建物が多く、歴史を感じます。
ルガノ旧市街が洗練された近現代の建物なら、こちらは石住まいの中世という感じでしょうか?
集落の中心に高い塔を持った石造の教会があります。


エマ「いまから行くのはね、ガイドブックにも載ってない地元民知る人ぞ知るアクティビティ!」

エマ「2人とも、水着は持った!?」

姫乃「持ちましたエマ中尉!」

エマ「ならよろしい。突撃するぞ!」

姫乃「おー!」

果林「これなんの茶番?」

エマ「もー、果林ちゃんも乗っかってよそこは!」

109: (SB-iPhone) 2021/06/19(土) 15:54:04.27 ID:oQIfFyl1
スイスはヨーロッパの中では水が豊富な土地として知られています。

その理由はアルプスの雪解け水!
スイスの水道は世界一安全で美味しいと言われる理由はここにあります。

さて、そんな豊富な水源を利用したリバーアクティビティとはなんだと思いますか?

ずばり、キャニオリングです!
これは身一つで沢を下る究極のアクティビティです!

...とは大袈裟には言いましたけど、ここでは緩やかな沢と滝を滑って回るアクティビティです。

受付を済ませて、水着に着替えて、ウェットスーツを着て...
準備は万端、初めにガイドさんと一緒にストレッチをします。

エマ「いちにっさんしっ」

果林「アキレス腱伸ばして~」

果林「太ももも十分伸ばしましょう。肉離れ防止よ」

姫乃「ふうぃ~」

エマ「水も飲んでおこうね」ゴクゴク

110: (SB-iPhone) 2021/06/19(土) 15:58:09.51 ID:oQIfFyl1
ガイド「Prima tocchiamo l'acqua. L'acqua è bella e fredda.(水に慣れましょう。思ったよりも冷たいですよ)」

果林「ひゃー、冷たいわねぇ」

エマ「雪解け水だから少し水温が低いんだ」

姫乃「エマさん、果林さん!」

果林「?」

エマ「?」

姫乃「それっ!」パシャ

2人「「ぶっ!」」

エマ「やったなぁ!」

果林「覚悟しなさい!」バシャバシャ

ガイド「Ci sto!(俺もやる!)」バシャバシャ

姫乃「きゃっ!冷たい!」

姫乃「それそれ!」バシャバシャ

4人「あはははは」

111: (SB-iPhone) 2021/06/19(土) 16:14:35.70 ID:oQIfFyl1
遊びも終わり、いざ沢へ。
ガイドさんが注意事項を言って、エマさんが日本語に丁寧に翻訳してくれます。

ガイド「Non arrotondare la schiena. Tenetelo dritto. E tieni le mani in alto.」

エマ「背中は真っ直ぐ、手は上にだって」

姫乃・果林「OK」


いよいよ沢下りの時です!
そんなに落差もありませんし、角度もありません。
ちょっと急な滑り台みたいな筈なのですが...

姫乃「うぷ...ちょっと高い」

果林「ねえ、私一番最初に行ってもいいかしら?」

エマ「いいよ」

ガイド「Sei molto coraggiosa, signora dai capelli blu.
Andiamo, tre, due, uno!(勇敢だね、それじゃあ行くよ3、2、1!)」

果林「foo~!」

112: (SB-iPhone) 2021/06/19(土) 16:24:55.18 ID:oQIfFyl1
エマ「じゃあ次私!」

エマ「Tre, due, uno!」

エマ「foo~!」バシャン

姫乃「最後は私」

姫乃「よしっ」

ガイド「Puoi farlo?(大丈夫?)」

姫乃「Chiaramente(もちろん!)」

ガイド「Tre, due, uno!」

姫乃「foo~!」


滑り台の様だと形容しましたが、滑り台よりももっと、もーっと早いです!

きゃー、おかーさーん!

背中に冷たい水を感じて、するっと抜けて、あっという間に滝壺へ。



ボシャン!


姫乃「う~っ!」ぷはっ!

果林「姫乃ちゃんどうだった?」

姫乃「気持ちいいですねこれ!思ってるよりもスピードがあって楽しいです!」

113: (SB-iPhone) 2021/06/19(土) 23:41:26.51 ID:oQIfFyl1
姫乃「foo~」ボシャン

エマ「姫乃ちゃん、さっきまで怖がってたみたいなのにもう虜になっちゃったみたいだね」

姫乃「と~って楽しいです」

果林「姫乃ちゃんって一見大和撫子っぽいのに活発な所あるわよね」

姫乃「活発は情熱のエンジンって言いますし」

エマ「何それ初めて聞いた」

姫乃「今つくりました」

エマ「え~」

ガイド「Prossimo all'ultimo.(次で最後だよ)」

果林「早いわねぇ。遊び足りないぐらいだわ」

114: (SB-iPhone) 2021/06/19(土) 23:47:47.23 ID:oQIfFyl1
ガイド「Possiamo sederci tutti qui.(ここに座って)」

ガイド「Giù per il fiume come un centopiedi.(みんなで列になって川を下ろう)」

そう言ってガイドさんが見せてくれたのは、今までのよりも緩やかだけど、2倍ぐらい長い沢でした。

お腹でペンギンみたいに下ったら楽しそうなんて思ったり。

ガイド「Chi è in testa?(先頭は誰がいいですか?)」

姫乃「Sì! Lo farò io!(私が行きます!)」

エマ「おお、姫乃ちゃんやるぅ!」

果林「じゃあ私2番目でもいい?」

エマ「それで私が3番目で、ガイドさんが一番最後」

ガイド「Mettiti in fila, mettiti in fila.(それじゃあ並んで)」

姫乃「よいしょっと」

果林「よっこいせ」

116: (SB-iPhone) 2021/06/19(土) 23:55:29.42 ID:oQIfFyl1
ガイド「... Tre, due, uno.!」

姫乃「ひゃああああ!」

勢いを増して風が私の頬を撫でます。
後ろから果林さんとエマさんの叫び声が続きました。
振り向く間もなく前を見ます。
川の水面が目の前に、どんどん迫って、そして私は!

ドボン!

大きな水飛沫をあげて、私たちは滝壺に落ちました。
ライフジャケットをつけているため、自然と浮き上がってきます。

姫乃「ぷはっあははは!」

果林「あははは!」

エマ「ちょー楽しかった!」


初めは冷たく感じていたアルプスの水ですが、今は少し緩いぐらいに感じます。
それぐらい時間が経ったと言うことです。もうすぐ12時半...

欲を言うなら、もうちょっとだけ楽しみたかった...

117: (SB-iPhone) 2021/06/20(日) 00:06:47.00 ID:k/hWsesN
さわやかなスイスの風を浴びて髪を乾かします。
ルガノは太陽位置が高く、山も少ないため日光浴にはうってつけの場所です。


風が優しく流れていきます。
犬のしっぽみたいなヒマラヤスギの枝が揺れ、サワサワと音を立てました。

アニョにはいくつか石垣があります。
そんな石垣の隙間から、トカゲが1匹這い出て来ました。

姫乃「お前も日光浴かい?」

トカゲ「???」

姫乃「ふふっ、可愛い子だねぇ」

姫乃「一緒に日光浴しませんか?」

トカゲ「???」

うちの高校にはギョロちゃんがいたので、私は爬虫類全般大丈夫です。他、コオロギとかゴキも大丈夫になりました。逞しくなったなぁ私。

ライブにカメレオン出したり、馬を出したり竹刀フン回したり、思えば独特なライブパフォーマンスを行っていました。

みんなには秋になったら会えるかなぁ...
この事、話すの楽しみだなぁ...

エマ「おーい、姫乃ちゃん待ったぁ?」

姫乃「待ってませんよ。日光浴仲間がいましたから」

エマ「???」

119: (SB-iPhone) 2021/06/20(日) 00:16:39.38 ID:k/hWsesN
エマ「果林ちゃん、忘れ物ない?」

果林「3回確認したわ。大丈夫」

姫乃「あれ...果林さん、洗面所に歯ブラシ忘れてましたけど...」

果林「あっ!ありがとう」

エマ「も~」

果林「もう大丈夫よ。エマ、そんな目で見ないで!」

エマ「んもう果林ちゃんったら」


お昼を軽く済ませて次なる目的地、ゴッタルドへ向かいます。

ルガノからベリンツォーナで一旦乗り換え、そのままゴッタルドへの約100kmの電車旅。

2016年に、ゴッタルドへの新しいルートが開通されました。山をくりぬき、谷を横断し、そのトンネルの長さは57kmにも及びます。これは青函トンネルよりも4km長く、世界一の長さなんだそうです。

120: (SB-iPhone) 2021/06/20(日) 00:20:25.46 ID:k/hWsesN
エマ「早く早く!」

果林「エマ、歩くの早すぎよ。私たちは大きなキャリーケース持ってるんだから」

エマ「ごめんごめん、家族が待ってるって思ったらつい浮き足立っちゃって」あはは

姫乃「ふぅ...ふぅ...」

エマ「大丈夫?キャリーケース持つよ」

姫乃「ありがとうございます」

列車「プシュ~やで」

エマ「え~っと、6号車は...」ガラガラ

121: (SB-iPhone) 2021/06/20(日) 00:28:35.27 ID:k/hWsesN
ルガノからベリンツォーナまでは約20分、そこからゴッタルドまでは1時間と30分ぐらいかかるそうです。

今はベリンツォーナの列車の中。
山の傾斜はさらに険しくなり、上部が白いものもちらほら見えます。いよいよアルプスって感じがしてきました。

エマ「もうすぐトンネルに入っちゃうから、よく眺めていた方がいいよ」

エマ「トンネルは退屈だから」

姫乃「あのっ、エマさんに質問があるのですが」

エマ「なあに?」

姫乃「エマさんのご両親はどうしてそんな所に住んでるのですか?」

エマ「あー、それ不思議だよね。あんなアルプスのど田舎に家があるんだもん」

果林「それ、私も気になるわ」

エマ「うーん、どこから話したらいいのかなぁ?」

エマ「ゴッタルドの魔橋の伝説からかな...」

122: (SB-iPhone) 2021/06/20(日) 00:38:35.23 ID:k/hWsesN
エマ「ゴッタルドにはロイス川って言う川が流れているの」

エマ「アルプスの中流だから、川の流れは激しくて、渡るたびに死人が出るほどだったんだ」

エマ「そこで、あるスイス人牧夫が悪魔と契約して、悪魔に橋をかけてくれる様頼んだの」

エマ「悪魔はそれに応えて、橋を最初に渡った者を一番初めに生贄に捧げる様言ったの」

エマ「牧夫は人間の代わりにヤギを渡らせて生贄を回避したんだって」

エマ「で、ここまでは伝説」

エマ「実際には橋を完成させるために、沢山の石工がこの土地を訪れて」

エマ「その中の1人が、私のひいひいひいお爺ちゃん。工事が終わった後もゴッタルドの土地が気に入って住み始めたんだって」

エマ「その時、苗字も変わったらしいよ。元はピエトラ(石)って苗字だったらしい」

エマ「私はヴェルデ(緑)って名前気に入ってるからこっちの方が好き、なんてね」

123: (SB-iPhone) 2021/06/20(日) 00:47:53.98 ID:k/hWsesN
姫乃「歴史があっていい話ですね」

エマ「え~姫乃ちゃんの所程じゃないよ」

エマ「なんか話してて恥ずかしくなってきた...」

果林「十分立派よ。私なんてよくわからないのに八丈島生まれだし」

エマ「そうかなぁ?そうかなぁ?」

果林「自信持っていいのよ」

電車「ゴーっ!」

果林「わっ!?何?」

エマ「トンネルの中に入ったみたい」

エマ「ここから長いんだよね...何して暇潰そっか?」

姫乃「あっ、手遊びとかどうですか?アルプス一万尺知ってます?」

エマ「何それ?知らない、教えて」

果林「まずは私と姫乃ちゃんがお手本を見せるわね...」



アルプス一万尺~♪

小槍の上で アルペン踊りをさあ踊りましょう♪

124: (SB-iPhone) 2021/06/20(日) 00:59:34.71 ID:k/hWsesN
今までゴッタルドと言ってきましたが、実は降車駅はゴッタルドではなく、その手前のアイロロです。

列車「アイロロとゴッタルドはちょっと違うんや」

列車「ゴッタルドは峠の名前なんやで」

列車「間違えちゃってすまんなみんな」

姫乃「へぇ~」

果林「で、今いるのがアイロロ...」

エマ「うん、ここから少し車で行った所が私の家なんだけど」

エマ「お父さんの車は...」

車「ピギィ!」

エマ「あ、あった、あれ!」

音が鳴る方向を見ると、バス見たいな車が。
その中から熊みたいな赤毛の大男が降りてきました!

エマ「あっ、お父さーん!」

熊みたいな人「Emma!」

125: (SB-iPhone) 2021/06/20(日) 00:59:52.91 ID:k/hWsesN
一旦ここまで

126: (たこやき) 2021/06/20(日) 01:28:14.31 ID:wMt2nTrW

127: (SB-iPhone) 2021/06/20(日) 01:47:37.49 ID:k/hWsesN
ルガノの動画


[海外生活]スイスの中のイタリア・ルガーノを歩く|スイス生活vlog / 旅vlog / 街歩き|4K


Lugano Switzerland Things to See in 4k

128: (SB-iPhone) 2021/06/20(日) 12:19:35.02 ID:k/hWsesN
エマ「紹介します。私のお父さん」

父「Sentiti libero di chiamarmi Cesare. Ha ha ha.(気軽にチェザレさんでいいよ」

身長が高いです!果林さんより20cmぐらい高いです。
もしこの場面が絵の様に切り取られてたら、チェザレさんは顔半分見切れてるだろうなぁ...

果林「Nice to meet you,Cesare!」ギュッ

姫乃「Nice to meet you!」ギュッ

父「Piacere di conoscerti.(よろしくね)」

チェザレさんは熊の様な大きな手で、私達を優しく握り返してくれました。

父「Oh, che belle donne che sono. Lascia che ti offra un caffè.」?

姫乃「えっ?えっ?」

エマ「Papà, non prendere in giro i miei amici!」

父「scherzo...Emma, Non pizzicarmi il sedere!」

姫乃「あはは」

果林「??」

129: (SB-iPhone) 2021/06/20(日) 12:30:47.50 ID:k/hWsesN
荷物を車に積み込み、アイロロの村をドライブします。
エマさんのお家は村の端にあるようです。

山と山の間の小さな平地にアイロロ村は存在します。
右を見ても、左を見ても山だらけ。

山は雲とも霧ともわからない白いモヤモヤに沢山覆われています。それがずーっと続いて、一部が村に降りてきていました。

エマさんのお家へ行く途中、気になる物体が一つ。
牛乳瓶を逆さにしたような、大きなタンクがそこかしこで見られます。

姫乃「エマさん、あれは何ですか?」

姫乃「逆さにした牛乳瓶みたいなのは?」

エマ「あれはね、飼料タンクだよ」

エマ「あれに羊とか牛用のトウモロコシとか大豆のクズが入ってるの」

姫乃「羊とか牛ってとうもろこしも食べるんですね。初めて知りました」

エマ「牛でも、草ばっかりだと流石に飽きるでしょ?だから偶にあげる贅沢品だよ」

姫乃「人と同じですね...」

130: (SB-iPhone) 2021/06/20(日) 12:46:28.79 ID:k/hWsesN
エマ「よしっ、着いた!」

果林「ねえこれがエマの家?」

エマ「うん、酪農家だから普通の人に比べたら大きいかも」

果林「酪農家抜きにしても大きいじゃない!」

果林「何棟あるのよ!?」

見えてるだけで、大きな建物が3棟、ガレージが1棟。
多分あれが羊とかヤギがいる場所で...こっちが母屋?

にしても大きな平家です...

エマ「果林ちゃんたちが泊まるのはゲストハウスだから、あっちじゃないんだ」

果林「へ!?ゲストハウス!?」

エマ「うん。ヨーロッパの田舎じゃ普通だよゲストハウスなんて」

エマ「荷物置かなきゃいけないから、まずはそっちにね」


そう言って家の裏手にまわります。
そこにはこじんまりとした小さなログハウスが。

131: (SB-iPhone) 2021/06/20(日) 12:53:01.49 ID:k/hWsesN
エマ「ふぅ...疲れた」

父「Emma, mostrale il giardino di casa.(一息ついたら家案内してあげてね)」

エマ「Si, Ok.」

父「Torno a prepararmi per la festa.(私はパーティーの準備に戻るから)」バタン

エマ「capire(了解)」

果林「ん~ほんとここまで長旅だったわぁ...」

果林「これでしばらくゆっくりできそうね」ベッドに腰掛ける。

エマ「部屋軽く案内しておくね。シャワーがここで、トイレがここ」

エマ「水道はシャワーの所にあるから」

エマ「洗濯物あったら言ってね」

姫乃「ありがとうございます」

エマ「さて、もう一息ついたら私の牧場を案内するよ!」

果林「楽しみだわ」

136: (SB-iPhone) 2021/06/21(月) 23:09:47.85 ID:ylaHZOiD
さて、時刻は7時過ぎ。
8時に日が降りるスイスでも、いい時間帯になってきました。空はオレンジに、山々はピンク色に照らし出されています。

エマ「案内するね」

エマ「こっちの赤い屋根で、背が低い、長屋みたいな建物が羊舎とヤギ舎」

エマ「中入ってみる?」

エマ「この春に生まれた赤ちゃんもいるよ」

果林「見ていいの?」

エマ「もちろん」


近づいてるこの時点で、メー、ベー、という声が聞こえます。
赤ちゃん...気になりますね。やっぱりもふもふなんでしょうか?

エマさんがガチャガチャと鍵を開け、扉を開きます。
その瞬間、ヤギと干し草のにおいが私の鼻を突きました。

137: (SB-iPhone) 2021/06/21(月) 23:16:52.67 ID:BJoIyYKZ
エマ「みんな~まだ起きてるかい?」

ヤギ・羊「メー!」

ヤギ・羊をそのまま舎に入れてるわけではありません。
中にはいくつかの柵があり、ヤギと羊で大まかに区切られている様です。

来客者もなんのその。餌をくれるものだと思って、私達の方へ近づき、騒ぎ立てます。

べー、メー、ベー

エマ「ごめんね。今はそんな時間じゃないんだ」

エマ「ネーヴェちゃんいる~?」

エマさんが柵の奥の方へ歩き始めます」
私達も後をついていくと、そこにはヤギのための個室がありました。

エマ「ネーヴェちゃん、今日も元気?」


ネーヴェちゃん、いつもエマさんが話しているヤギさんですね。声をかけた後、エマさんは個室を覗くよう、仕切りに急かしてきます。

果林「なあに?何があるの?」

エマ「いいから、いいから」ちょいちょい

姫乃「そんなに言われると気になりますねぇ...」ヒョイ

するとそこには....

138: (SB-iPhone) 2021/06/21(月) 23:22:30.92 ID:B5mB0qg2
ぴぇ~!

果林「ヤギの赤ちゃんよね?」小声

果林「ぴゃ~って鳴いてる!かわいい」小声

姫乃「こんなに小さいんですね!」小声

エマ「ネーヴェちゃんは子ヤギのお守りが上手だから、若いお母さんと一緒の部屋にしてるの」小声

エマ「人間と同じで、誰かに頼らないとお母さんヤギも疲れちゃうから」小声

エマ「ネーヴェちゃん、いい子、いい子」なでなで

ネーヴェ「メ~」

子ヤギ「ぴぇ~」


子ヤギが一つ大きなあくびをしたところで私達は退散します。子ヤギの可愛さを文字だけでは皆さんにお届けできないのがなんとももどかしいです...

139: (SB-iPhone) 2021/06/21(月) 23:26:15.63 ID:B5mB0qg2
ヤギ羊舎のイメージ


Epic Running of the Goats

141: (SB-iPhone) 2021/06/21(月) 23:51:42.15 ID:RK3eD1xU
エマ「こっちのお屋根の青い建物は、加工場」

エマ「野菜を洗ったり、食料を貯蔵する場所だね」

エマ「そして最後は、私達の住んでるメインのおうち!」

エマ「さっ、みんなが待ってるよ。入って入って!」


素朴な、黄色い大きなおうちが私たちを待ち構えてくれています。あっ、煙突もある...

白いドアをエマさんは豪快に開けました。


エマ「せーの!」

エマの家族「Benvenuto nella Verde!(ヴェルデ家へようこそ!)」

なんと玄関から熱烈お出迎えです。
天井にはスイス国旗と日本国旗が至る所につけられ、陽気な音楽が流れています。

エマ「入って入って」

果林「みんな~ありがとう~」

姫乃「Grazie, Grazie,」

果林「ありがとう~」モゾモゾ

果林「あっ、玄関で靴脱ごうとしちゃったわ」

姫乃「ふふっ、果林さんったら」

142: (SB-iPhone) 2021/06/21(月) 23:58:08.85 ID:rYZ9Xpy4
エマ「はじめに私の家族を紹介するね」

エマ「この黒髪が、私の母、ダリア」

ダリア「こんにちは~」

エマ「お母さんと弟のフランコはちょっとだけなら日本語話せるの」

ダリア「よろしくね」

姫乃・果林「よろしくお願いします」

エマ「で、同じくこの黒髪の男性が、さっき言った弟のフランコ」

フランコ「フランコです。18歳です」

果林「18!?ダンディな顔してるのに?」

エマ「フランコ、イケメンだってよ」

フランコ「...あはは」

エマ「って何照れてるのさ」

エマ「じゃあ次!」

143: (SB-iPhone) 2021/06/22(火) 00:04:43.90 ID:dMmK4yis
エマ「こっちの凄い髪の毛の短いのが、ジーナで、今中学2年生」

エマ「ジーナの一つ下で、髪を纏めてるのがアンリエッタ」

ジーナ「...///」照れてれ

アンリエッタ「Ciao」

エマ「こっちの小さいのが、妹のイザベラとヨランダ」

エマ「...て、ヨランダがご飯食べてる!」

エマ「ヨランダ食べちゃダメ!」

ヨランダ「La sorella maggiore Emma è una lunga storia.(もっと短く喋ってよ。 お腹減ったの)」

エマ「仕方ないなぁ...お父さん、乾杯しよう」

チェザレ「OK!」

144: (SB-iPhone) 2021/06/22(火) 00:13:36.00 ID:zqj5LK3P
紹介しきれませんでしたが、エマさんには後2人弟と妹がいるそうです。エルリックさんとフェリーチャさんと言うらしいのですが、エルリックさんは軍隊へ兵役を、フェリーチャさんは医療の大学へ進学して今はいないそうです。



エマ「cin cin~」カツン

果林・姫乃「cin cin~」

郷に入れば郷に従えです。
特に変な意味はありませんよ?

今日の夜はラクレットチーズです。

チェザレさんが、大きな半月状のチーズを、豪快にガスバーナーで煽っていきます。

ブオオオオオ...

時折小さくぱつん、ぱつんと弾ける音がします。
チーズの表面がこんがり焼けてきました。

ダリアさんはそんなタイミングを見計らって、チーズを削いでいきます。

バターよりも柔らかく、ドロっと粘度のあるチーズが、お皿の上へ乗せられて...


姫乃「いただきます」

姫乃「ん~!美味しい!Buono!Buono!」

この世の楽園はここにありました!

145: (SB-iPhone) 2021/06/22(火) 00:25:13.59 ID:1fziBAnB
果林「ぷはっ、うまい!」

果林さんがチェザレさんへのお土産に持ってきたはずの島焼酎を飲んでいます。それに合わせるのはダリアさん。

ダリア「これ、美味しいね。私初めて飲んだ」

一方のチェザレさんはと言うと...

チェザレ「Emma, io ti sollevo.(エマ~高い高いしてあげる)」

エマ「いいよ~、っていうかできるの?」

チェザレ「essere fatto(もちろん!)」

エマさんもチェザレさんも、酔いに酔ってもうなんだかわかりません。

チェザレ「Io dico!(それっ!)」

エマ「わーい、本当に出来た!」


....カオスですね。これに下の妹達のヨーデルの大合唱も加わります。


姫乃「っま、ゲストだし、もうちょっと弾けちゃえ!」


ぐいっと島焼酎を一気飲みします。
グニャんと視界が歪んできました.....

姫乃「ウヘヘヘヘへ」


混沌の中、夜は過ぎていく....

150: (SB-iPhone) 2021/06/22(火) 12:00:41.99 ID:OkrpN3bZ
姫乃「はっ?」

ちゅんちゅんちゅるん。
小鳥の声がします。

むくり、と起き上がって辺りを見回します。
昨日エマさんに案内されたゲストハウスの中でした。

時刻は7時過ぎ。日本ならもう日も十分に登ってる頃ですが、山間のアルプスではようやく日の出と言ったところです。

果林さんがすー、すー、と寝息を立てながら隣で寝ています。昨日、あんなにどんちゃん騒ぎをしたので、今日はゆっくり寝かせて置いてあげましょう...

姫乃「ふわぁ~」

姫乃「よしっ」ガチャ

庭は自由に歩き回っていいという言葉を思い出し、外に出ます。おっと、いつもの相棒のカメラも忘れずに...

アルプスの夜明け、その言葉だけでとってもワクワクしてきます。今日はどんなものに出会えるのかな?

151: (SB-iPhone) 2021/06/22(火) 12:11:35.01 ID:OkrpN3bZ
夜明け前のアルプス...
村の方はまだ光は届きませんが、奥にあるアルプスの山々は光を受け黄金色に輝いてます。

まずはじめにこの景色を。
脇をしっかり閉め、腕をぴっちり固定して、ファインダーを覗いてパシャリ。

景色だけでなく、空気や空間そのものを切り取れたらいいのに...

カリカリとフィルムを巻いて次なる被写体を探します。
ああ、あの花は何て言う名前なんだろう...鳥が鳴いている、あの鳥はどこに姿を隠しているんだろう...

多少の寒さもすっかり忘れて歩き回ります。

すると、庭の一角に、とても小さな白い花が群生してる事に気付きました。

牧草の緑の中に映える白い一軍。
朝露を受けて、可憐に咲いています。

152: (SB-iPhone) 2021/06/22(火) 12:35:34.83 ID:OkrpN3bZ
姫乃「綺麗ですね...」

ゆっくり近づき、腰を下ろしてじっくり観察します。
どのアングルから撮ろうか悩んでいると...

「それ、エーデルワイスだよ」

姫乃「へ??」

驚いて後ろを振り向きます。
そこには作業着を着たエマさんがいました。

エマ「別名セイヨウウスユキソウ」

エマ「ドイツ語で気高い白い花って意味なの」

エマ「突然驚かせちゃってごめんね」

姫乃「い、いえ...」

姫乃「エマさんってお花に詳しいんですね」

エマ「エーデルワイスはスイスの国の花だからね」

エマ「スイス国民の大好きなお花だから...」

姫乃「エマさんとエーデルワイス一枚撮ってもいいですか?」

エマ「いいよ...この辺りかなぁ...作業着上脱いで...座ってと」

姫乃「エマさん、天使見たいです...」

エマ「エーデルワイスで天使かぁ...ふふっ」

姫乃「それじゃあ撮ります。3、2、1」パシャっ

153: (SB-iPhone) 2021/06/22(火) 12:45:05.76 ID:OkrpN3bZ
姫乃「所で、エマさんは早朝何をしてたんですか?」モグモグ

エマ「ヤギと羊達の餌やりだよ」モグモグ

エマ「餌やりが終わったら、舎から出してあげるの」

エマ「ほら、外でぴょんぴょん跳ねてるでしょ?」

朝食のライ麦パンを食べながら会話を交わします。
ルガノで買ったものより、少し皮が厚くてかみごたえがあります。モグモグごっくん。

果林「ふぁぁ~おはよう」

姫乃「おはようございます」

エマ「おはよう果林ちゃん」

食事に果林さんも加わり、ゆっくりモグモグ。あっ、このサラダおいしい。

今日の予定は、午前中にエマさんのお家で触れ合い体験、
午後にダリアさんのお友達のレオーネさんのお家へ行って、乗馬とチーズ作り体験をします。

169: (SB-iPhone) 2021/06/25(金) 00:46:14.49 ID:peTic64M
エマ「ピュルル」

エマ「Vieni qui. Vieni qui.(こっちへおいで~)」


エマさんがヒュルルっと指笛を吹きます。
すると羊とヤギ達は、こちらへ顔を向けて一心不乱に走ってくるのです。

1匹1匹はとってもかわいい羊達ですが、こんなにも沢山だとちょっと怖い...

果林「大丈夫よ。肉食動物じゃないんだから」

姫乃「うぅ...頭突きとかされませんよね?」

果林「まあ...機嫌と間合いをうまく取ってれば...」

羊「めぇええええ!」怒

果林「わっ!?何この子!?怒ってる!?」

果林「慌てない、慌てない...ゆっくり後ろに下がって...」

果林「....とっとっと...きゃっ!」すってんころりん

果林「いたた...前に気ばかり取られて後ろへの警戒を怠っていたわ...」

姫乃「大丈夫ですか?」つ手

果林「ええ...」

170: (SB-iPhone) 2021/06/25(金) 00:52:42.15 ID:peTic64M
果林「そうだ、姫乃ちゃん」ぐいっ

姫乃「わっ!」すってんころりん

果林「これで同じね」

羊「べ~!」

姫乃「きゃっ、羊と顔が同じ高さですぅ!」

羊「なんやなんや」ゾロゾロ

姫乃「あっという間に囲まれちゃいました...」

エマ「ヒュルル」

羊「あっ、この笛の音はエマねえちゃんが餌くれる音や」

羊「さよならねーちゃん、邪魔して悪かったな」

エマ「はーい、みんなこっち来て」

姫乃「すごい...羊達を飴と鞭で制御してる...」

エマ「と、まぁ私のこっちでの仕事はこんな風かな?」

エマ「いつもの慣れだからこれぐらいちょちょいのちょいだよ!」

果林「エマって実は結構すごい人なのよね...」

171: (SB-iPhone) 2021/06/25(金) 00:59:38.29 ID:peTic64M
ここからはエマさんの家族に付き合ってもらいます。
エマさんの弟のフランコさんが、子羊を連れてきてくれました。

フランコ「子羊にミルクをあげるよ」

フランコ「はい、これbiberon」

そう言って渡されたのは大きな哺乳瓶です。

果林「ありがとう」

姫乃「子羊ちゃん達~おいで~」

子羊「ぺ~!」ぱくっ ごくごく

子羊達は勢いよく哺乳瓶に食らい付きます。
そして時々、哺乳瓶を上に何度も何度も押し上げます。
これは、お母さんのお乳を刺激して、ミルクを出しやすくする動きであり、勢いがよければ良いほど健康な羊であるそうです。

姫乃「かわいい~」

姫乃「ちっちゃいのに、毛がもこもこしてる~」

172: (SB-iPhone) 2021/06/25(金) 01:06:13.55 ID:peTic64M
エマ「もうちょっと早くうちに来たら羊の毛刈りが見れたのにね」

フランコ「羊の毛刈り、見る事、楽しいよ」

果林「ニュースなんかでよく見るわね。エマの家ではハサミを使うのかしら?昔彼方の髪の毛揃えてあげた時、羊がどうたらって言ってたじゃない?」

エマ「うーん、今はバリカン使って刈り上げる事が多いよ。羊切りつける心配がないから」

エマ「バリカンなら得意だから、刈り上げたくなったらいつでも言ってね!」

フランコ「姉さん、バリカン、とっても上手い!」

フランコ「俺の髪の毛、姉さん切った!」

姫乃「わ、私は遠慮しておきます....」

エマ「え~」

173: (SB-iPhone) 2021/06/25(金) 01:25:52.33 ID:peTic64M
さてと、手を洗ってお昼をいただきます。
今日のお昼はトマトのブルスケッタです。

エマさんの4番目と5番目の妹のアンリエッタちゃんとジーナちゃんが、ソワソワしています。
この2人が育てたトマトで、今日、初めて収穫されたものだそう。

姫乃「Grazie a tutti e due.(2人とも、美味しいトマトをありがとう)」

アンリエッタ「....///」

ジーナ「.... Sì!」ガッツポーズ

照れ屋のアンリエッタちゃんは、にこやかに微笑み、ジーナちゃんは小さくガッツポーズをしました。


チン! という大きな音がして、ライ麦パンが焼き上がりました。

酸っぱい匂いの中に、ふんわりと、麦の香りを感じます。

この上に、ダイスカットしたトマトを乗せて...オリーブオイルを沢山かけて...塩をちょろっと乗せて...


姫乃「いただきます!」

さくっ、ざくっ、はふはふ。

少し酸味の効いたトマトが、塩によって味が引き立てられ、そこにオリーブオイルの風味も加わって...

姫乃「Buono!」

エマ「美味しい!」

もう一個、続いてもう一個!
この上にサラミを乗せてもいいですね...

果林「...ふふっ」

果林「あなた達、美味しいのはわかるけど、リアクション逆じゃない?」

姫乃・エマ「あっ...あはは」

176: (SB-iPhone) 2021/06/25(金) 01:58:43.72 ID:peTic64M
さて、今は午後。
ダリアさんの友人である、レオーネさんのお家に来ました。

エマさんの家から、歩いて10分ほどの、比較的近くにある、牛と馬を中心とした牧場です。

スイスの馬は、私達の想像する馬より少し小さいです。
馬の背と私の目線が同じくらいです。
ちょっと大きくした様なポニー?みたいな?

ダリア「紹介するわ、私の友人のレオーネ」

レオーネ「Io sono Leone.(レオーネです)」

ダリア「Signor Leone, insegnale a cavalcare.(お手柔らかにね)」

レオーネ「naturalmente(もちろん!」

178: (SB-iPhone) 2021/06/25(金) 23:29:55.69 ID:Xdgup3Ak
レオーネ「I cavalli che vivono nelle Alpi hanno gambe e piedi forti.(アルプスの馬は足腰が強いんだよ)」

レオーネ「Sarà anche un cavallo piccolo, ma è un cavallo potente.(小さいけどパワフルな馬さ)」

姫乃「へぇ~」

果林「姫乃ちゃん、なんて?」

姫乃「小さいけど、馬力があるそうです」

果林「なら心強いわね」

エマ「見てみて~」

エマ「Io dico!(それっ!)」パカラッパカラッ

果林「わお、早速凄いわね」

果林「私達、まだ馬に跨ってすらないのに」

姫乃「エマさん、私も負けませんよ!」

はじめに鎧にゆっくりと足をかけ、馬に乗ります。
真っ直ぐに腰を据え、重心を低くとり、乗馬に慣れている事を馬に感じ取ってもらいます。

こう見えても乗馬は慣れてるんですよ?
隼さんの愛馬をみんなでお世話していた事を思い出します。

馬「....」

姫乃「よろしくね」

馬「ぶるるん」ふんす

姫乃「はいや~」パカラッパカラッ

179: (SB-iPhone) 2021/06/25(金) 23:41:41.39 ID:Xdgup3Ak
果林「わっ、2人とも軽くこなしてるけど、結構難しいじゃない!」

果林「こ、こうでいいかしら?」

果林さんは意外にも手間取っていました。

レオーネ「Raddrizza un po' di più la schiena.(背中をまっすぐにね)」

果林「こうかしら?」

レオーネ「La prossima volta, darò un segnale al cavallo.(次にゆっくり合図をしてご覧)」

果林「馬さん、歩いてちょうだい」トントン

馬「....」

果林「....?」

レオーネ「Ummm...(うーん)」

果林さんの馬は、合図を送ってもうんとも、すんとも言いません。レオーネさんも少し困惑しています。

エマ「姫乃ちゃん、あれ」

姫乃「そうですね、果林さんが初心者なのを気遣って、お馬さんが動かないんだと思います」

エマ「果林ちゃん、もっと自信を持って蹴ってご覧」

エマ「初心者じゃないって馬を騙すの!」

果林「馬を、騙す...」

姫乃「馬を動かしてる人をイメージして、堂々と蹴ってください」

果林「堂々と...そうよ、私は暴れん坊将軍」

果林「それっ!」

馬「!!」ぶるるん

果林「ハイヤー」パカラッパカラッ

果林「凄いわ!乗馬ってこんな感覚なのね!風になった気分だわ!」

180: (SB-iPhone) 2021/06/26(土) 00:01:12.95 ID:62cddHDB
レオーネ「Camminiamo un po' più velocemente.(みんな出来たね。それじゃあ馬にもう少し早く歩いてもらおう)」

レオーネ「1、2...1、2」パカラッパカラッ

エマ「乗馬は気持ちいいね」

エマ「歌歌っちゃお」

エマ「la bella patria~」

la bella patriaは本来、アップテンポな曲ですが、即興アレンジを加えて、少ししっとりした曲に。

ゆったりとしたテンポは、周囲の景色と合わせて心を落ち着かせてくれます。

馬「パカラッパカラッ」

姫乃「君もわかるのかい?」


馬もそんな曲調に誘われてか、足がゆっくりになっていくのでした。

182: (SB-iPhone) 2021/06/26(土) 13:52:04.84 ID:sdGVKdIu
レオーネ「Grazie, ragazzina.(お嬢ちゃん力持ちだね)」

姫乃「Ero un idolo della scuola.(ふふっ、スクールアイドルでしたから)」

レオーネ「Gli idoli della scuola sono incredibili!(スクールアイドルってすごい!)」

乗馬体験を終え、今度はチーズ作りに移ります。
レオーネさんが持ってきてくれたのは、魔女が使う様な大釜、そして沢山の牛のミルク。

ミルクは今日搾ったものだそうです。干し草の香りが少しします。

果林「これでいいかしらね?」

エマ「うん、ばっちり」

エマさんと果林さんが、竈門に薪をくべらせます。
竈門に、先程の大釜を置き、ミルクをレオーネさんと注ぎ入れました。

今から私達は、とっても伝統的なチーズの作り方を体験します。

183: (SB-iPhone) 2021/06/26(土) 14:04:43.75 ID:sdGVKdIu
レオーネ「Mescolare il latte lentamente.(ゆっくり混ぜてね)」

エマさんは火力調節を、私と果林さんで、人肌になるまで、ゆっくりミルクをかき混ぜます。

種類にもよるのですが、10kgのミルクからできるチーズは1kgほどです。今回はミルク20kgを使い、2kgのバターを作ります。

ぐるぐる、ぐるぐる...

一気に熱しすぎると、上の方に脂肪の膜が張ってしまうので、釜のそこから押し上げる様に、ぐるぐる....

果林「結構疲れるわね」

姫乃「腰を使いますね...」

レオーネ「Ci sono quasi. Andiamo.(もう少し頑張って)」

果林「えぇ...」ぐるぐる


レオーネさんはと言うと、ミルクの様子を見ながら酵素を調節しています。
温めた牛乳に、この酵素を入れる事によって、固形物(カード)と液体(ホエー)に分離します。
そして固形物(カード)を押し固めた物がチーズになるのです。


レオーネ「Credo che sia giunto il momento.(そろそろかな?)」

レオーネ「Da qui in poi ci penso io.(ここからは俺がやるよ)」


レオーネさんと交代します。
酵素を混ぜ入れ、かき混ぜ棒を私達以上に、ダイナミックかつ繊細にぐるぐるしていると、ミルクがプリン状に固まってきました。

185: (SB-iPhone) 2021/06/26(土) 14:09:52.13 ID:sdGVKdIu
>>183
ミス
×バター
◯チーズ

187: (SB-iPhone) 2021/06/26(土) 14:53:45.86 ID:sdGVKdIu
レオーネ「Taglierò il formaggio.Aiutami.(切り分けるよ。手伝って)」

ぷるんと固まったカードをサイコロ状になるまで小さく切り分けていきます。
この時、チーズハープと呼ばれる大きな竪琴を使い、左右に動かして、小さく切っていきます。

果林「さっくり切れて行って楽しいわね」

エマ「ぐるぐる~いぇーい」

次にこの小さくなったカードを、ザルで掬い取り、チーズの形に入れます。

レオーネ「Assicuratevi di mettere il formaggio fino al segno.(目盛りまでカードを入れてね)」

姫乃「こんな感じですか?」

レオーネ「Sì...!(そうそう!)」

果林「形に入れるとチーズっぽいわね」

エマ「あとはこれを倉庫で発酵・熟成させると美味しいチーズになるよ」

188: (SB-iPhone) 2021/06/26(土) 14:59:33.09 ID:sdGVKdIu
レオーネ「Ti preparo un altro formaggio.(もう一つ簡単なチーズを作るよ)」

レオーネ「Userò il resto del liquido.(余った液体を使うよ)」

そう言って、レオーネさんは残ったホエーを熱し始めました。
すると、ホエーの中からふつふつと固形物が現れ始めて...

エマ「これはリコッタチーズって言う、生のチーズなの」

エマ「みんな名前は聞いたことあるよね!」

果林「あっ、よくサラダとかに使うのよね?」

エマ「うん、サラダもいいけど、私のおすすめはワインビネガーと胡椒で一緒に食べるのかな」

レオーネ「Mi piacerebbe mangiarlo adesso, ma dovrà aspettare.(夕飯まで少し待ってね)」

姫乃「はい!楽しみですぅ」

189: (SB-iPhone) 2021/06/26(土) 15:02:23.71 ID:sdGVKdIu
スイスチーズの参考動画


192: (SB-iPhone) 2021/06/26(土) 23:42:46.16 ID:y5TOYsv8
先程作ったチーズは、熟成後に日本に輸送してくれるそうです。楽しみですね。

日も傾き、今は夕方。
エマさんの家に一旦戻りました。レオーネさんも一緒に招き、夕食です。


ダリア「フォンデュ、出来たよ!」

チェザレ「Buon appetito! (うまそう!)」

レオーネさんの作ったチーズを使い、今日の夕飯はチーズフォンデュです。

スイス人というより、ヨーロッパでは毎食、数種類ものチーズを食べます。

今日の食卓にも、チーズフォンデュ用のエメンタールチーズと、先程作ったフレッシュチーズが、野菜と一緒に盛られていました。

エマ「果林ちゃん、今日はどっちがいい?」

果林「うーん、今日は赤の気分ね」

エマ「了解!Papà, passami il vino rosso.(赤ワインだって!)」

チェザレ「Beviamo un bel bicchiere di vino oggi.(オッケー、今日はいいの飲んじゃうぞ!)」ポン トクトク

エマ「はーい、それじゃあみんな!」

エマ「よき日、よき酒、よきチーズに、Cin Cin!」

「「「「Cin Cin!!」」」」

193: (SB-iPhone) 2021/06/26(土) 23:51:58.95 ID:y5TOYsv8
トクトク...トクトク

グラスに血の様に赤いワインが注がれていきます。

私はちょっと大人ぶって、香りを堪能してみたり、一口だけ口に含んで、味を見たりします。

でもやっぱり...

姫乃「ごくっ...」

一口、ゴクリと飲むのが好きですね...
お父さんもお母さんも、あまりお酒が好きな方ではないのですが、この豪快さは誰に似たのやら...

エマ「Lentamente, versare lentamente il vino...(ゆっくりワインを注いで)」ドボドボ

果林「うっ...ととと、あはは、ギリギリまで注いじゃったわ」

エマ「Puoi avere tutto il vino che vuoi.(全部飲むから大丈夫)」ごくごく

エマ・果林「「あははは」」

果林さんとエマさんは、もうすっかり出来上がって、チーズフォンデュ所じゃなくなっていました。

少しゆっくり飲んでいた私は、まだ意識があります。
何をチーズに付けようかな....

うーん、まずは定番のブロッコリーからでしょうか?

194: (SB-iPhone) 2021/06/27(日) 00:00:30.57 ID:xNYJTjmR
串にブロッコリーをさし、ソローッと手を伸ばして、フォンデュの中へ。

八の字を描く様に、丸く、丸く、チーズを満遍なく。

十分にチーズをつけたら、お皿に盛り付けて、今度はナイフとフォークでお上品に。

姫乃「いただきます」パクっ

口の中に、チーズの旨みが広がり、後からちょうどいい塩味がやってきます。

姫乃「~~!!」

ここに、ワインを一口...

姫乃「ん~!!美味しい!」

姫乃「次は何にしようかな?じゃがいも?ソーセージ?」

姫乃「迷っちゃう!」

至福のひと時はまだまだ続きそうです。

195: (SB-iPhone) 2021/06/27(日) 00:11:55.25 ID:xNYJTjmR
エマ「エマヴェルデ!歌います!」

果林「いえーい!」

エマ「目を閉じれば思い出す~故郷の景色」

エマ「って、あっ!今私スイスじゃん!」

エマ「失礼しました!」

エマ「辞めます!」

姫乃「...えぇ」

宴も少しおさまり、酔っ払い達の奇行に、少し困惑している頃...

エマ「ほら、ジーナもおいで!」

ジーナ「Cosa!?」

5番目の兄妹のジーナちゃんが、嫌々エマさんに付き合わされています。

ジーナ「Smettila, puzzi di alcol!(お酒臭いよエマねえ!)」

エマ「いいじゃん、いいじゃん」

これはちょっと...
止めなきゃいけない人が皆んな酔いつぶれているので、私が止めなければなりません。

エマさん、仕方ないなぁ...

196: (SB-iPhone) 2021/06/27(日) 00:23:10.32 ID:xNYJTjmR
姫乃「ほら、エマさんダメですよ...」

エマ「え~、ジーナもいいって言ってるし」

ジーナ「...」

姫乃「兄妹でもダル絡みはだめですよ」

エマさんを引き離します。
ジーナちゃん、災難だったね。

エマ「わー、もう姫乃ちゃんがジーナの代わり!」ギュッ

姫乃「へっ?」

姫乃「わっ!」

今度はエマさんが私に抱きついてきました。
エマさんと私の体格差は結構あります...
こう言うのは失礼かもですが...うぅ...重い...

エマ「姫乃ちゃ~ん」ギュッ

エマ「よーしよしよし」

そう言って撫で回すエマさん。

エマ「私ね、姫乃ちゃんに初めて会ったときね...」

エマ「スイスって呼ばれてる時からね...」

エマ「....姫乃ちゃんの事が....むにゃむにゃ」

続きが気になる所でエマさんが寝てしまいました。
体重が一気に私に覆い被さってきます。

姫乃「え、エマさん!?起きて、起きてください!」

エマ「むにゃむにゃ...」

197: (SB-iPhone) 2021/06/27(日) 00:42:50.66 ID:xNYJTjmR
姫乃「Prendi quello.(そっち持って)」

ジーナ「Si,(うん)」

姫乃「1、2、1、2」

ジーナ「1、2、1、2」

寝入ってしまったエマさんをお部屋に搬送します。
スイスまで来て、まさかこんな事をする羽目になるなんて、誰が想像しました?

階段を上がって、3つ目の部屋...

ドアノブをガチャリと回して、エマさんの部屋へ...

一人部屋ではなく、ジーナちゃんとの相部屋なんだそうです。
部屋は、エマさんの清潔さを表す様に、きちんと整頓されていました。本当、お酒が入らなければ、しっかりした人なんだけどなぁ...

ジーナ「La butto qui.(ここのベッドに投げとけばいいよ)」

姫乃「大丈夫かなぁ?」ボフッ

姫乃「Tornerò domattina.(明日の朝、また様子見に来るね)」

ジーナ「si,(分かったわ)」

姫乃「dormire(おやすみなさい)」

ジーナ「dormire(おやすみ)」バタン

ドアの前で、はぁ...と息を吐いて、一旦気持ちを整理させます。
なんと、エマさんの他にもまだ果林さんが残っているのです。

姫乃「まだまだ寝れそうにないですね...」

そう言ってトボトボ階段を降りていくのでした。

198: (SB-iPhone) 2021/06/27(日) 01:06:58.45 ID:xNYJTjmR
~3日目~

ん~おはようございます。
昨日の喧騒はどこへやら...アルプスの朝は静まりかえっています。

果林「おはよう姫乃ちゃん...」

姫乃「おはようございます...」

果林「ねえ、昨日、もしかして連れて帰ってくれた?あんまり覚えてないんだけど、ありがとう」

姫乃「い、いえ、大した事ないですよ」

エマ「二人とも、おはよう」

姫乃「おはようございます」

エマ「姫乃ちゃん、昨日はありがとうね」

姫乃「お礼なら、ジーナちゃんへ...」

エマ「あはは、そうだね...」

エマ「朝ごはんできてるから、早くね」

姫乃・果林「はーい」

205: (SB-iPhone) 2021/06/27(日) 15:06:30.06 ID:IhmuprBH
>>198
訂正
5日目

200: (SB-iPhone) 2021/06/27(日) 01:15:51.15 ID:xNYJTjmR
エマ「今日は白いパンが出るよ」

エマ「これはね、ツュップフって言う。意味は三つ編み」

エマ「私の大好きなパンなんだ」

姫乃「へぇ...名前の通り、編み込まれてますね」

果林「どれどれ?いただきます」パクっ

果林「ん!このパン、甘いのね」

エマ「バターを沢山練り込んでいるからね」

エマ「この味がたまらなく美味しいの!私の大好きなパンのうちの一つだよ」

姫乃「たしかに、ヨーロッパでは、塩辛いパンが多いので、これは異色な存在でありますね」

エマ「私、甘い味付けの方が好きで...思えば、日本のパンが好きな理由も同じなんだと思う」

エマ「日本のパンは甘い物が多いから」

果林「日本のパンが甘いだなんて意識した事なかったわね」

エマ「スイスに住んでみればわかるよ」

エマ「果林ちゃん、私のお嫁さんになってみる?」

姫乃「そ、そういうのはダメです!」

果林「そうね...エマ、まだお酒が抜けてないんじゃない?」

エマ「ふふっ、冗談かどうかはまあ任せるね」

姫乃「えー!?」

201:>>199マジですか!?輸送の値段同じだと思ってました(SB-iPhone) 2021/06/27(日) 01:33:23.81 ID:xNYJTjmR
歯を念入りに磨いて、アホ毛もしゃっきりさせて...
櫛を何度もかけて、ヘアアイロンも十分に...
今日は人に会う日なので、清潔感を大切に。

果林さんも横でおめかしをしています。

3日目の予定ですが、今日はアイロロ村の児童館にお邪魔します。そして午後にゴッタルド峠へ遊びに行きます。

児童館では、日本について、軽くプレゼンテーションとレクリエーションを。

実は、旅の日程が決まった際、エマさんの妹のヨランダちゃん経由で、アイロロ村に日本人がやってくると話が広まり、遂には学校の先生まで行き渡ったそうです。
普段は観光客が多いアイロロ村ですが、この機会にぜひと、日本について村のちびっ子達に紹介する事になったのです。

もちろん通訳はエマさん。リアルタイムで翻訳してくれます。

さてと、準備も出来たし、児童館へ...

202: (SB-iPhone) 2021/06/27(日) 01:47:07.31 ID:xNYJTjmR
先生「Oggi i nostri amici dal Giappone sono venuti a trovarci.(今日は日本からお友達が来てくれました)」

先生「Sono la signora Korin e la signora Himeno.(果林さんと姫乃さんです)」

果林・姫乃「「ciao」」

ちびっ子達「ciao~」

頭数にして40人ほどでしょうか?
年齢は7歳ぐらいから14歳ぐらいまで、様々です。

エマさんの妹達、ジーナちゃん、アンリエッタちゃん、イザベラちゃん、そしてヨランダちゃんの姿も混じっています。

果林「こんにちは。私の名前は朝香果林よ」

エマ「Il suo nome è Asaka Karin~」

果林「それで、こちらが綾小路姫乃ちゃん」

姫乃「今日はよろしくお願いします」

ちびっ子「per favore!」


みんなかわいいですね。
自然と口元が緩み、笑顔になります。
では初めに、日本の地理からおさらいして...

黒板に地図をカキカキ...
八丈島も忘れないでカキカキ...

よしっ、我ながらよく出来ました!

203: (SB-iPhone) 2021/06/27(日) 02:11:29.51 ID:xNYJTjmR
果林「という訳で、私は八丈島出身の日本人、姫乃ちゃんは東京出身よ」

果林「日本の地理はここまで」

姫乃「ここからは質問タイムです!」

姫乃「日本について、何か聞きたいことはありますか?」

モブショタ「Sì, ho una domanda.(はい!質問です!)」

モブショタ「Ci sono dei Ninja in Giappone?(ニンジャはいますか?)」

姫乃「いない...いやいるんですかね?返答に悩みます」

果林「うーん、お城とかには今でも一応いるわよ。パフォーマンスの人だけど...」

果林「いるけど、本物ではない、が答えかしらね」

モブショタ「Oh, sì...(そうなんだ)」

姫乃「でもニンジャの子孫とかはいるらしいですよ。ただ、子孫の方は普通の暮らしを送ってるらしいですが」

モブショタ「non deve!?(マジ!?)」

姫乃「マジ」

果林「次、質問ある人はいるかしら?」

モブメガネ「Sì, ho una domanda.(はい!質問です!)」

姫乃「何でしょう?」

206: (SB-iPhone) 2021/06/27(日) 15:19:22.48 ID:IhmuprBH
モブメガネ「In Giappone, è vero che si lavora quando si compiono 20 anni(日本では20歳ぐらいから働き始めるって本当ですか?)」

姫乃「へ?まあ、そうですけど...それが普通じゃないんですか?」

エマ「あー、スイスの事、説明してなかったね」

エマ「スイスは15歳までが義務教育で、その次に大学の為の教育課程か、職業のための教育課程かに分かれてて」

エマ「進学率は2~3割ぐらいかな?早い人だと15、6歳ぐらいで働き始めるんだよね」

エマ「日本に行きたかったから、勉強して大学の為の教育課程に入ったよ」

エマ「日本とスイスだと職業観念がちょっと違って...」

エマ「日本だとなりたい物になって働く、だけど、スイスだとちょっと違って」

エマ「自分の能力によって働くって所が大きいかな?」

姫乃「知りませんでした...」

姫乃「これは難しい質問ですね」

果林「じゃあ、これは私が答えるわ」

果林「日本では半分の人が大学に行くけど、もう半分の人達はそうじゃないわ」

果林「自分の能力によって働く人もいれば、なりたい物になって働く人もいる」

果林「そこらへんはやっぱり勉強による努力が大きい...」

果林「うーん、こんな感じかしらね?」

モブメガネ「Grazie.Non sono sicuro di cosa voglio fare della mia vita.(ありがとうございます。私は将来何をしたいか迷っていて)」

モブメガネ「Credo che sia lo stesso per i giapponesi quando si tratta di preoccuparsi della loro professione.(何になるか悩むのは、どこの国も同じですね」

姫乃「あなたが、将来良い職につける事を願います」

姫乃「次、質問がある人はいますか?」

207: (SB-iPhone) 2021/06/27(日) 15:45:34.46 ID:IhmuprBH
エマ「Il periodo delle domande termina qui.Poi passeremo alla ricreazione.(質問会はこれで終わり。次はレクリエーションだよ)」

果林「今回やるのは靴飛ばしのレクリエーションよ」

果林「さて、3チームに分かれて」

ちびっ子達「ぞろぞろ」

姫乃「3チームに分かれたところで、私たちがそれぞれのチームに入ります」

姫乃「私このチーム!」

果林「じゃあ私このチーム!」

エマ「Questa squadra! Piacere di conoscerti.(ここにしよ。よろしくね!)」

ちびっ子達「ニコニコ」


靴飛ばしのレクリエーションのルールは簡単。

初めに片方の靴を好きな方向に、好きな距離だけ飛ばしてもらいます。

飛ばせたら、チームごとに整列して....
一人ずつ片足けんけん飛びで、自分の飛ばした靴を取りに行ってもらいます。

どのチームが一番早く、みんなの靴を揃えられるかを競います。


姫乃「みんな、準備は出来た?」

ちびっ子達「ok~!」

姫乃「よーい、スタート!」

戦いの火蓋が切って落とされました。
けんけんに慣れないで、よろけてしまう子、ちょっとズルして両足で歩いてしまう子、近い所に靴を飛ばした子。

みんなちょこまか動いていてかわいいですね!

208: (SB-iPhone) 2021/06/27(日) 15:57:44.38 ID:IhmuprBH
勝負は最終コーナーを回って、私と果林さんとエマさんの真剣勝負へ。

私達の靴は一番遠くの、30m前方へ飛ばされています。

片足けんけんは、脚の差がリーチの差って言いますが、小さいからって甘く見ちゃダメですよ!私だって頑張ります!

モブ「Buona fortuna, sorella maggiore.(お姉ちゃん、頑張って!)」タッチ

姫乃「Ho capito.(任せて!)」

姫乃「ふっ、ふっ」

3頭身私がリードします。

エマ「はぁあああああ!ほっ!ほっ!」

果林「負けてられないわ!ほっ、ほっ!」

ちびっ子達「farlo~(がんばれ~)」

後ろから、二人が追い上げて、私に並びます。
私の靴は...あった!これです!

素早く履いて、また片足けんけんを...

姫乃「ふっ、ふっ、」

エマ「うをおおおおおお!」ぴょんぴょん

姫乃「何あれっ!?速っ!」

果林「はぁああああああ!」ぴょんぴょん

姫乃「こっちも速っ!」

姫乃「私だって、負けてられませんよ!」

姫乃「うぉおおお!」ぴょんぴょん

209: (SB-iPhone) 2021/06/27(日) 16:14:24.55 ID:IhmuprBH
姫乃「ゼェ...ゼェ...」

モブ子「Ottimo lavoro, sorella.(お姉ちゃん、お疲れ様)」

姫乃「...うん」ゼェ...ハァ...

なんとかリードを保てて無事一位です。
その次に、果林さんが続いて、エマさんが3番目。

ちびっ子達は、まだ飽き足らない様で、もう一回やろう、もう一回やろうとせがんで来ます...

ごめんね、お姉ちゃん達、もうスタミナが....

果林「負けちゃったわぁ...ごめんなさい」

モブ男「Non chiedere scusa. Facciamo un altro gioco.(謝らないで、そうだ!別のゲームしよ!」

モブ男「Prendetelo! (追いかけっこしよ!お姉ちゃん鬼!)」タッチ

果林「あわわっ...もう、その気になったら私は強いのよ!」

果林「待て待て~」

エマ「ヒュー、鬼さんこちら!」

果林「あっ、姫乃ちゃん...」

果林「タッチ!」

姫乃「えっ!?えー!?」

果林「追いかけなきゃ!」

姫乃「は、はい!」

ちびっ子達「Corri!(逃げろ~)」

211: (SB-iPhone) 2021/06/28(月) 00:27:02.52 ID:vrRUPopW
はぁ...とっても疲れました。
私が倒れても、みんなが私の事を起こして、追いかけっこの無限ループ...
子供の体力って無尽蔵ですね...私にもあんな頃があったとは思うのですが、はるか遠い昔になってしまいました。


フレッシュチーズのサンドイッチとカプチーノをいただき、食事の余韻に浸ります。

ゴッタルド峠へ行くのは1時間後です。歯磨きを長くとっても、まだ余裕がありますね。

エマ「ねえ、果林ちゃん、姫乃ちゃん」

果林「何かしら?」

エマ「3日目の最初に、私の名前が付けられた気があるって言ったの覚えてる?」

エマ「今はちょうど、早りんごとあんずの収穫時期なの」

エマ「サングリアっぽい物を作って、夕飯に飲もうと思うんだけど、一緒に収穫してみない?」

姫乃「エマさんの木、とっても気になります!」

エマ「ぷぷっ」

エマ「木が気になるなんてダジャレになってるね」

姫乃「い、いえっ、そんな気じゃ!」

エマ「わかってるって。それじゃあ家の裏手に行くからついてきて」

212: (SB-iPhone) 2021/06/28(月) 00:33:44.96 ID:vrRUPopW
エマ「ここだよ」

果林「随分と枝が大きく育ってるのね...幹も太いわね」

エマ「妹のフェリーチャの木がこれね」

エマ「フェリーチャって、ほら私の二つ下の、今は家にいない妹の」

エマ「あっちがフランコの葡萄の木」

エマ「こっちはまだ収穫時期じゃないね」

エマ「あんずは十分に熟してるみたいだから、ちょうどいいね」

果林「姫乃ちゃん、手届く?」

姫乃「うーん、少し届かないですね」

果林「なら私がとってあげるわ」プチっ

果林「はいどうぞ」

姫乃「あっ、ありがとうございます」

姫乃「少し小ぶりなりんごとあんずですね」

エマ「うちは農薬とか使ってないから...必然と大きな実は鳥に狙われて、小さな実だけ残るの」

エマ「でも味は同じだから、安心して」

果林「サングリア、とっても楽しみだわ」

213: (SB-iPhone) 2021/06/28(月) 00:37:55.72 ID:vrRUPopW
エマさんは取ってきたあんずとりんごの皮を丁寧に剥き、砂糖と一緒にビンの中へ入れていきます。

エマ「ねえ、リキュール入れてもいい?」

エマ「こうすると美味しくなるの」

果林「エマがおすすめしてくれるなら、それに従うわ」

エマ「じゃあ入れるね...ほんのちょっとだけ」ドボドボ

姫乃「これはどれくらい待てば飲めるようになりますか?」

エマ「うーん、1時間も有れば、十分だと思う」

エマ「ゴッタルドへ行って、帰ってくる頃にはそれはもう美味しくなってるよ」

姫乃「楽しみです」

214: (SB-iPhone) 2021/06/28(月) 01:33:58.04 ID:vrRUPopW
チェザレ「Guida con prudenza.(安全運転で)」ブロロ

エマ「Davvero?(本当)」


アイロロからゴッタルド峠へは、車であれば20分とちょっとぐらいで着きます。

ですが一つ問題があって...
道がめちゃくちゃに何度もスイッチバックを行うのです。

no title


チェザレ「Emma, metti una canzone.(エマ、曲をかけて)」

エマ「Eurobeat?(ユーロビート?)」

チェザレ「Si,(もちろんだ)」

入り組んだ道、ユーロビート、外車...あっ
イニシャルな何かが始まりそうです。ギュッと体を縮こめて、ことが過ぎるのを待ちましょう...

215: (SB-iPhone) 2021/06/28(月) 01:41:54.63 ID:vrRUPopW
車「ブッブーですわ!」

思った通りの少し荒めな運転。
そんなに激しいのではありませんが、体が左右に揺れます。

窓の近くのアシストグリップを掴み、酔わないようになるべく遠くを見ます。
あれは雪でしょうか?

見える景色からは、緑が徐々に消えて、そのかわり切り立った岩が剥き出しにみえています。
岩の無機質な灰色が緑を押しのけ、何度目かのカーブを曲がった際、それは見えてきました。

大きな石造の橋。

掛けることは不可能だと言われ、その難しさから魔橋と名付けられたゴッタルドの橋。

周りの石はフェイクで、石橋はコンクリートで作られているそうです。

217:ユーロビートではなく、イタロ・ディスコ?と言うらしいですね(SB-iPhone) 2021/06/28(月) 13:24:34.21 ID:vrRUPopW
ヒュオオオオ

さすがはアルプスのお膝元。
谷の間を素早く風が駆け抜け、私の髪の毛が大きく舞います。

果林「帽子は飛ばされそうだから置いておきましょう」

果林「それにしても、絶景ね...」

洗濯板の様な形をした岩が、いくつもいくつも重なり、絶壁をつくっています。
その間に、急流が流れ、水は空気を含んでエメラルド色に輝いているのでした。

ヒュオオオオ

強い風が私の頬を殴りつけてきます。
下は怖いから覗き込んじゃダメだ...
上を向かなきゃ。

チェザレ「Vuoi camminare sul lungomare?(遊歩道あるけど、歩いてみるかい?」

果林「是非行ってみたいわ!」

姫乃「えっ...ええ、行きたいです」

怖がってる私とは逆に、エマさんと果林さんは乗り気の様です。

218: (SB-iPhone) 2021/06/28(月) 13:38:36.80 ID:vrRUPopW
エマ「あそこにかかってる、コンクリート作りのアーチは新道、こっちの遊歩道が旧道」

エマ「私たちのひいひいひいひいお爺ちゃんは、きっとこっちの石切をしたと思うんだよね」

エマ「景色はいいけど、その分大変だったんだろうなぁ...」

果林「こんな急な所に足場をかけて、石を運んで...想像するだけでとっても大変だわ」

姫乃「人の力の偉大さを感じます....」

エマ「ここの渓谷でね、今年ね、雪だるま爆発のお祭りをやったんだよ」

果林「いきなり話変わりすぎじゃない?でも何?雪だるま爆発のお祭りって?」

エマ「元々はチューリッヒ地方の春を祝うお祭りなんだけど」

エマ「ベーグって呼ばれる、藁で作った雪だるまを用意するの」

エマ「ベーグの中には爆薬が入れてあってね、ベーグに火をつけて、着火した時間から頭が爆発するまでの時間で今年の夏を占うお祭りなんだよ」

エマ「頭が爆発する時間が早ければ早いほど、良い夏になるんだ!」

エマ「みんな、このお祭りが大好きで、国営放送で生中継だってするんだよ」

姫乃「か、過激ですね...」

果林「不思議なお祭りね...」

エマ「スイスの夏は短いから、その分だけ気合が入って言うか、みんなどんな夏になるのか知りたいって言うか...」

エマ「雨ばかり降りません様にって言うおまじないでもあるんだよ」

姫乃「へぇ...所以を聞いても爆発する意味がわからないです」

220: (SB-iPhone) 2021/06/28(月) 13:45:25.69 ID:vrRUPopW
スイス雪だるま爆発祭り参考


Burning of Boeoegg snowman moved to Swiss Alps

221: (SB-iPhone) 2021/06/28(月) 13:59:59.17 ID:vrRUPopW
再び歩道を歩きました。
洗濯板みたいなでこぼこした岩は、まだまだ続きます。
下は見ないように...見ない様に...

あっ、岸壁の真ん中に穴が空いてる。トンネルと繋がってるのかな?

こっちにはロシア国旗が掲げられてる。大きな十字架も掘られてる...なんだろう...

エマ「あれはね、すごい昔に、ここでロシア軍とフランス軍が戦った時の記念碑なんだよ」

エマ「うーん、どっちが勝ったとか忘れちゃった」

姫乃「そうなんですか...」

とても大きな石碑です。
ちょっと気になるなぁ。後で調べよう。

果林「ねえ、二人とも」

エマ「なあに?」

果林「セルフィーしない?」

姫乃「いいですよ」

果林「こっち来て」

姫乃(うぅ...よりにもよってセルフィの場所が橋の上...ちょっと怖いです)

エマ「あっ、もしかして姫乃ちゃん怖がってる?」

姫乃「いえっ、そんな事」

エマ「ほっぺつまんで、笑顔にしちゃえ」むにゅ

姫乃「いはいへふ(痛いです!)」

果林「私も姫乃ちゃんのほっぺ摘んじゃお」むにゅ

果林「いくわよ  3、2、1」

パシャっ

222: (SB-iPhone) 2021/06/28(月) 14:06:11.64 ID:vrRUPopW
少し怖かってけど、二人がほっぺをつまんでくれたので、多少怖さは和らげました。

セルフィで盛り上がってる中、チェザレさんが恨めしそうにこちらを見ます。

チェザレ「....」

エマ「?」

チェザレ「Facciamo un selfie con tuo padre.(パパと一緒にセルフィしないか?)」

エマ「Oh, no. Sono troppo imbarazzato.(恥ずかしいからやだ)」

チェザレ「Anche papà vuole farsi dei selfie. Mi manchi così tanto!(パパもエマとセルフィしたい!寂しいよぉ~!)」

エマ「Papà! Non abbracciarmi così all'improvviso.(パパ、急に抱きつかないで!みんなの前だよ!)」

チェザレ「Emma~(エマ~、お願い)」

エマ「Mi dispiace.(仕方ないなぁ...)」

果林「セルフィで大丈夫?キツそうだったら私撮るわよ?」

エマ「ううん、大丈夫そう」

エマ「Papà, ti faccio una foto.(パパ、セルフィするよ)」

チェザレ「Oh, mio Dio, io amo Emma.(ん~まっ!大好きなエマ)」

エマ「そんなにくっつかないで...」




パシャリ

223: (SB-iPhone) 2021/06/28(月) 17:04:46.56 ID:vrRUPopW
エマ「ちょ~っと待ってね、今服片付けるから」

エマ「よしっ、入っていいよ~」

果林「へぇ...エマのお部屋ってこうなってるのね...」

ゴッタルド峠から帰ってきて、夕飯までまだ時間があるので、エマさんのお部屋をお邪魔します。

ジーナちゃんとエマさんの相部屋。
シックな感じに統一されているのですが、所々に可愛らしい小物やぬいぐるみが置いてあり、女の子が住んでいる事を感じ取れます。

昨日気づかなかったのですが、沢山のクリアファイルと、沢山の日本の雑誌が並べられていました。

姫乃「エマさん、これ、全部日本語勉強のファイルですか...?」

エマ「うん、一応ね。あぁ、これとか懐かしいなぁ...」スッ

果林「これは、新聞の切り抜き?」

エマ「うん、日本の記事とか、スクールアイドルについてのウェブページとか」

エマ「小学生ぐらいだったかなぁ...ほら、日付がこんなにも前」

エマ「あの頃は日本語あんまり読み書き出来なかったから、私、すごい成長したよね」

果林「高校の頃から思ってたのだけど、エマの日本語って流暢すぎるわよね」

姫乃「本当、ネイティブレベルですよね。埼玉とかそこらへんから出てきたんじゃないかなって思うぐらい」

エマ「まぁ、努力すれば誰だってこうなるよ」

224: (SB-iPhone) 2021/06/28(月) 17:15:17.97 ID:vrRUPopW
果林「これは...フォトブックかしら?」

エマ「あっ...ねえ果林ちゃん、私の小さい頃の写真見たい?見たい?」

果林「見たいけど...そんなにしつこく聞かれると、見ないで欲しい様に感じるわ」

エマ「逆逆、見せたいの!」

エマ「下の子達の小さい頃の写真とかもあるし...」ペラペラ

姫乃「わっ、ちっちゃい頃のエマさん可愛い」

姫乃「エマさんはこの頃からおさげだったんですね。メモメモ」

エマ「これはスクールアイドルを知り始めた頃の写真で」

エマ「衣装とか自作したんだよ」

果林「すごいわね。このひらひらとか作るの大変なのに...」

エマ「そこは努力と根気でなんとかしたよね」

果林「あら、懐かしいわねぇ...高校の頃の写真もあるわ」

姫乃「これ、スクールアイドルフェスティバルの時の写真だ」

姫乃「懐かしいなぁ...」

姫乃「スクールアイドルをしてたから、皆さんに会えて、スイスを訪問して...」

姫乃「果林さん、エマさん、私スクールアイドルやってて良かったなって、実感しました」

姫乃「色々な出会いがあって...そのきっかけをくれたのがスクールアイドルで」

果林「私も姫乃ちゃんに会えた事に感謝してるわ」

果林「色々救われた事もあったしね」

エマ「今までのおかしな関係も、大好きだったし、これからもよろしくね」

姫乃「はい!」

226: (SB-iPhone) 2021/06/28(月) 21:15:26.73 ID:vrRUPopW
エマ「それでね、この時ね」

エマ「雪の中で遭難して、死にかけた後だったの」

果林「えぇ...色々と大丈夫なの?」

エマ「伊達に走馬灯は見てないよ!」

果林「そういうのは誇っちゃダメよ...」

ダリア「La cena è pronta.~(ご飯できたわよ)」ガチャ

エマ「はーい、今行くね」


階段を一歩一歩降りるたび、肉の焼けた香ばしい匂いが強くなっていきます。

ダリア「Yolanda, niente spuntini.(あら、ヨランダ、つまみ食いはダメよ)」

ヨランダ「...hummm」モグモグ

エマ「Cosa c'è per cena stasera?(今日の晩御飯は何?)」

ダリア「Cerbera, insalata di pollo e fagioli e rosti. E naturalmente c'è il formaggio.(セルベラと豆のサラダとチキンとレシュティよ。あとチーズ)」

エマ「セルベラ!?」

エマ「セルベラだ!やった!セルベラだ!」

227: (SB-iPhone) 2021/06/28(月) 21:24:35.99 ID:vrRUPopW
果林「セルベラ?」

姫乃「そんなに喜ぶ事ですか?」

エマ「うん!セルベラは、スイスの国民食って言われるほどポピュラーなソーセージで!」

エマ「すっごくおっきいの!バナナみたいにおっきいの!」

エマ「帰ってきてから初セルベラ...」

エマ「もう食べる前からうっとりしちゃう...」

エマ「あっ、サングリア忘れてた」

エマ「とっとっと...」

エマ「二人ともこれぐらいでいい?」

姫乃・果林「「はい(ええ)」」


チェザレ「Domani andiamo tutti a casa, quindi facciamo un'altra bella bevuta oggi.(明日みんな帰ってしまうから、今日はいいのを飲むぞ!)」

ダリア「Non hai detto la stessa cosa ieri?(昨日も同じ事言ってたわね)」

チェザレ「Non mi ricordo.(そうだっけ?)」

エマ「ねえ、果林ちゃん」

果林「?」

エマ「今日は果林ちゃんに乾杯の音頭を取って貰いたいなぁ」

果林「仕方ないわねぇ...」

果林「ん...んっ!」

果林「ヴェルデ家に乾杯~!スクールアイドルに乾杯!」

みんな「「「「乾杯・kanpai!」」」」

228: (SB-iPhone) 2021/06/28(月) 23:19:39.10 ID:vrRUPopW
果林「姫乃ちゃん、乾杯」

姫乃「乾杯」コチン

姫乃「エマさんも」

エマ「Cin Cin!」コチン


ふぅ...
ごくっ...

アンズの甘みが程よく溶けて、舌の上に余韻を残します。
エマさんは、ワインの他にリキュールも入れてましたけど、アンズとリンゴのお陰で、角が取れて度数があるのにするする飲めちゃいます。

ここはセーブして...ディナーをいただきましょう。

初めにセルベラから。
バナナの様に太いソーセージですね。
確か、牛の腸が使われているとか...

小さく切って、ピリ辛の玉ねぎソースをつけて、お上品に品よく...

パクっ...ぱりん

姫乃「ん~っ!美味しいです!」

姫乃「パリッと表面が焼かれているので食感がとてもいいです」

姫乃「程よく肉汁が滴り、甘い油が舌を包みます」

姫乃「玉ねぎソースなしでも美味しいですね」パクっ

エマ「でしょでしょ?」

果林「これ、大きいソーセージなのにぺろりと食べられちゃうわ」

果林「おかわり!」

エマ「はいはい、まだあるよ」

229: (SB-iPhone) 2021/06/28(月) 23:25:55.16 ID:vrRUPopW
エマ「早いねぇ...スイスに来てもう5日経っちゃった」

果林「でも移動に1日、スイス国内でも半日かかってるから、実質4日よ」

エマ「スイスは日本から遠すぎるんだよ」

姫乃「エマさんはいつも寂しくならないんですか?こんなに遠くて、家族にも会えないのに」

エマ「うーん、たしかにちょっと寂しいかも」

エマ「でも、これは自分で選んだ道だから、後悔してちゃだめなの」

姫乃「前から思ってたんですけど、エマさんって、大人ですよね」

姫乃「後悔とか、そういうの一歳捨て切ってて」

エマ「そうかな?」

果林「そうよ。やっぱり長女って強いのね」

果林「偶に甘えたり、抜けたりしてる時もあるけど」

エマ「え~?それどういう意味!?」

230: (SB-iPhone) 2021/06/28(月) 23:42:07.03 ID:vrRUPopW
昨日とは違い、お酒をセーブして、ゆっくりゆっくり飲みます。
頬は赤く火照り、皆お酒が進むにつれて饒舌になっていきました。

エマ「Ehi, ragazzi, venite qui.(みんなこっち来て)」

エマの妹達「??」

エマ「Io canterò e tu potrai ballare con me.(歌うから、一緒に踊ろう)」

エマの妹達「Sì!(うん)」

ズンドコ ズンドコ

エマ「し~あわせになろう~笑顔でララララ」

エマの妹達「くるくる」

果林「姉妹だけあって息ぴったりね」

果林「私も何か歌おうかしら?」

姫乃「私も歌います!」


ゆったり時間が過ぎていきます。
あぁ、明日移動なんて嫌だな。もうちょっと長く居たかったなぁ。

でも、エマさんの家族と仲良くなれた。
エマさんの勤勉な一面も知れた。

今日までの色々な事を思い出しながらお酒をまた一口、一口と飲みました。

231: (SB-iPhone) 2021/06/28(月) 23:57:01.45 ID:vrRUPopW
果林「すや..すや..」

姫乃「はぁ...」

寝れません。
お酒飲み過ぎたかな...

姫乃「お水飲もうかな...」

姫乃「...」ゴソゴソ

姫乃「...ごくっ...ぷはっ」

姫乃「あっ、外が明るい...月が出てるんだ」

姫乃「外出て歩けば寝れるかな」ガチャ


夜なのでそんな遠くまではいきません。
ログハウスの周辺をぐるぐるします。

月が明るく辺りを照らします。それは月明かりで影ができるほどに。
星が見えてたら、きっと物凄い綺麗なんだろうなぁ。
ちょっとだけ残念ですね...


おや?エマさん達の家の玄関の所に誰かいますね...

232: (SB-iPhone) 2021/06/29(火) 00:08:12.50 ID:vPRox887
エマ「...スパ~」たばこ

姫乃「!?」

エ、エマさんがたばこ吸ってる!

姫乃(何か見ちゃいけないもの見ちゃったかも)クルッ

ガサっ...

姫乃「あっ...!」

エマ「!!」

エマ「そこにいるのは誰?」

姫乃「あ、あはは...」

エマ「姫乃ちゃん...」

エマ「あっ、たばこ...」アセアセ

姫乃「エマさんってたばこ吸うんですね...」

エマ「見られちゃったかぁ...」

エマ「ほんの偶にだけど、吸いたくなるんだよね」

233: (SB-iPhone) 2021/06/29(火) 00:20:15.08 ID:vPRox887
エマ「ごめんね、こんな所見せちゃって」

姫乃「い、いえ...他人の趣味嗜好については口出ししないって決めてるので」

姫乃「たばこもべつに普通だと思いますよ」

エマ「そっかぁ...ありがとね」

姫乃「たばこは日本にいた頃から吸ってるんですか?」

エマ「ううん、日本は喫煙者に厳しいから。去年にスイス帰って来た時に、昔の友達に会ってね、それで勧められて」

エマ「そこからかな...」

エマ「もう一本吸っていい?」

姫乃「えぇ、どうぞ」


そう言って、エマさんはもう一本たばこを取り出しました。咥える仕草が色っぽいです。

日本のたばことは違い、フルーティな香りがします。
多分、タールがあまり含まれてないのを吸ってるんだと思います。

エマ「すぅ...はぁ...」プカプカ

ミュシャのジョブという、たばこの絵を知っていますか?
月明かりの下で、紫煙を纏うエマさんはそれと同じぐらい、色っぽくて、かっこよくて...
この一瞬を切り取りたいぐらい、美しくて...ドキドキしてしまいます。

エマ「ふぅ...これでおしまい」

エマ「姫乃ちゃんも早く寝るんだよ」

姫乃「はっ、はい...」

エマ「おやすみ」チュッ


エマさんがほっぺにキスをし、ハウスに戻っていきました。
辺りにはフルーティなたばこの香りが残されます。
その匂いが消えるまで、私はしばらく立ち尽くしていました...

242: (SB-iPhone) 2021/06/29(火) 01:20:34.73 ID:vPRox887
>>233
ミュシャのジョブ

no title

234: (SB-iPhone) 2021/06/29(火) 00:24:47.49 ID:vPRox887
~6日目~

ふわふわしながら起床します。
まだ昨日の、エマさんの衝撃が、頭の片隅に残っていました。

果林「おはよう姫乃ちゃん」

姫乃「...おはようございます」

果林「あら?どうしたの?ふわふわしてるじゃない?」

姫乃「い、いえ、なんでもないです」

7日目はスイスから日本の移動に取られてしまうので、実質今日が最終日です。

235: (SB-iPhone) 2021/06/29(火) 00:36:30.10 ID:vPRox887
ダリア「忘れ物に気をつけてね」

ダリア「洗濯物、置いておくね」

姫乃「ありがとうございます」

3回確認して、よしっ、忘れ物はないです。
後は帰るだけになりました。
ルガノ経由ミラノ行きの鉄道のチケットと、日本行きの航空券を確認して...どちらもありますね、大丈夫。

果林「帰る時って、行きよりも荷物が増えるのよね」

果林「その時を見越して、スペースを空けて来た筈なのに、全然入らないわ」ぎゅーぎゅー

果林「ここもうちょっと詰められるかしら?」

果林「ぎゅーっ、よしっ、入ったわ」

エマ「二人とも、準備出来た?」

エマ「パパがアイロロ駅まで送ってくれるって」

姫乃「ありがとうございます」

姫乃「あ、あの...帰っちゃう前に、みんなで集合写真撮りませんか?」

エマ「あっ、そういえば集合写真忘れてたね」

エマ「みんな~集合!」

ヴェルデ家一同「ぞろぞろ」

エマ「羊をバックに撮ろう。ここあたりがいいと思うよ」

姫乃「あっ、ちょうどいいですね」

姫乃「ここにかけてタイマーセットできるから...」

姫乃「5秒でいきますね」

姫乃「はいチーズ」





パシャっ

236: (SB-iPhone) 2021/06/29(火) 00:47:21.67 ID:vPRox887
エマさんの兄妹に先に別れを告げ、アイロロ駅へ。
チェザレさんとダリアさん、エマさんが見送りに来てくれています。

チェザレ「Torna a trovarci.(また来てね)」

ダリア「いつでも待ってるわ」

エマ「私は休暇いっぱい、スイスにいる予定だから、ここでお別れだね」

果林「楽しい1週間をありがとう。忘れられない1週間になったわ」

姫乃「エマさん、しばらく会えませんが、お元気で」

姫乃「このお礼は日本で」

果林「チェザレさん、ダリアさん、とっても楽しかったです」

姫乃「今度は日本にいらしてください。私達が案内します」

ダリア「楽しみね」

チェザレ「Ci vediamo allora.(その時はよろしくね)」

姫乃・果林「「はい!」」


ハグをして、頬に2回キス。
最後はスイス流の挨拶で別れます。

エマ「姫乃ちゃん」ぎゅ

姫乃「エマさん」ぎゅっ

エマ「姫乃ちゃん、昨日の事、果林ちゃんには内緒ね」ささやき

姫乃「はい。私達二人だけの約束です」コクリ

エマ「それじゃあね、バイバイ」チュッチュ

姫乃「さようなら」チュッチュ

237: (SB-iPhone) 2021/06/29(火) 00:57:32.98 ID:vPRox887
ぽー

エマ「じゃあね~!」

窓を開けて、小さくなっていくエマさんに手を振ります。
米粒よりも小さくなるまで、ずーっと手を振っていました。

駅を出てすぐ、ゴッタルドトンネルに入ってしまうので、当たりは暗く、ゴーという騒音に包まれます。

果林「楽しかったわね」

姫乃「えぇ...とっても」

果林「私達がスクールアイドルをやっていなかったら、この旅も、出会いも何もなかった」

果林「本当不思議よね、人の縁って」

姫乃「これからに縁があるなら、私達にはどの様な縁がこの先待ち構えているのでしょうかね?」

果林「何がきたって大丈夫よ」

果林「だって、私達、無敵のスクールアイドルだったんですもん」

姫乃「???」

果林「よくわからないけど最強なの。そして今も」

姫乃「よくわからないけど、最強って事ですね、理解しました」

238: (SB-iPhone) 2021/06/29(火) 01:03:05.71 ID:vPRox887
行きは色々と不安で迷ってしまいますが、帰りは心の余裕ができるので、あっという間に過ぎていきます。

果林「姫乃ちゃん、私こっちだから」

姫乃「果林さん、さようなら」?

果林「さようなら姫乃ちゃん」?

スイスとは違う、さっぱりした別れ方で空港を後にします。

姫乃母「姫乃~」

姫乃「あっ、お母さん!」

姫乃「今はクタクタに疲れちゃった。早くおうちに帰りたいな」

姫乃母「わかったわ。そうだ、カメラどうする?すぐに現像するのなら、カメラ屋さん寄ってから帰るけど」

姫乃「うん、早く現像したいから、カメラ屋さん寄って」

姫乃母「わかったわ」

239: (SB-iPhone) 2021/06/29(火) 01:15:03.16 ID:vPRox887
姫乃「わぁ~着いた」ボフン

姫乃「やっぱり自分のベッドは落ち着きますぅ...」すべすべ

姫乃「あっ、そうだ、写真現像したんでした」


最近のネガフィルムは、最短で1時間も有れば現像してくれます。昔は1週間ぐらい掛かって、ネガを郵送してもらったりしてたのに...技術の進歩は早いですね。

一枚一枚見返すと、その場面にあった思い出が浮かんできます。

お酒の席で、酔ったチェザレさんが銃を持ち出して来たシーンとか、これまたお酒の席で、エマさんの妹とシェルターに入った時のとか...


集合写真をしばらく眺めた後、便箋を机から出しました。


カキカキ

Cari signori Verde.(拝啓ヴェルデ家の皆様へ)

Come stai... Sto bene.......






おしまい

240: (SB-iPhone) 2021/06/29(火) 01:17:18.46 ID:vPRox887
参考動画

スイス(チューリッヒ)の食べ物

Swiss Food Tour - CHEESE FONDUE and Jumbo Cordon Bleu in Zurich, Switzerland!
https://www.youtube.com/watch?v=rrz1wiSSe_8


ティチーノ州の観光について

THE BEST OF TICINO SWITZERLAND
https://www.youtube.com/watch?v=5Eh2PboxRAM


アイロロの車載動画

Mountain Town - Airolo, Switzerland Górskie miasteczko Airolo, Szwajcaria
https://www.youtube.com/watch?v=dmtY55c8ijw


スイスと4つの公用語(日本語字幕あり)
https://www.youtube.com/watch?v=AnZY66wyd3M


マイピュア・スイス ~ ポント・ヴァレンティーノ
https://www.youtube.com/watch?v=jZz0QKiijEY

241: (SB-iPhone) 2021/06/29(火) 01:18:52.03 ID:vPRox887
前二つが無茶苦茶なSSだったので、まじめに丁寧にを目標に書いたらとても長くなってしまいました

途中でコメントくださった方、保守してくださった方ありがとうございます

243: (しまむら) 2021/06/29(火) 02:33:58.80 ID:tqZSUz/+
ありがと面白かった!
果林さん誕生日に完結、また読み返してみる

244: (たこやき) 2021/06/29(火) 02:49:30.39 ID:NaNRjQ7B
勉強熱心ですごい
乙でした

245: (SIM) 2021/06/29(火) 07:10:26.17 ID:8ihgqV4A
神SS
乙です

246: (光) 2021/06/29(火) 07:20:53.01 ID:WVoR6Oaq
スイス行ったことある人なのかな?
良かったわ乙

247: (茸) 2021/06/29(火) 10:14:32.75 ID:BWCB+IMS
おつおつ
描写も細かくて惹き込まれる良い旅行SSだった…

248: (たまごやき) 2021/06/29(火) 16:45:18.01 ID:gs+Mgh3c
凄い調べたんだろうなぁ、いろいろ知れて面白かったよ
乙でした

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1623844600/

【SS】姫乃「いずれスイスはスイスに。果林さんは八丈島に帰ってしまいます……」【ラブライブ!虹ヶ咲】
■約32000文字■5: 2021/05/20(木 姫乃ちゃんがスイスに行くお話と八丈島に行くお話どっちがいい? 6: 2021/05/20(木 >>5 八丈島 8: 2021/05/20(木 >>5 スイス領八丈島 10: 2021/05/20(木 風鈴「チリンチリン」 姫乃「あー、何にもやる事ないですぅ、暇ですぅ」 姫乃「ホームワークも、次の予習復習も終わって、ゴロゴロしてます」 姫乃「動画見たいけどギガが足りない...」 姫乃「テレビでもつけておこう...」ぴっ テレビ「今日の天気は」ピッ テレビ「アイドルが~」ピッ 姫乃「テレビつまんない」 こんにちは~郵便でーす 姫乃「はーい」 姫乃「今行きます~」スタスタ テレビ「ガー...ガー....」 テレビ「先月スイス領になった八丈島の件ですが、スイス側はEEZが....」
【SS】姫乃はカヌーを漕ぐ様です【ラブライブ!虹ヶ咲】
■約30000文字■ 姫乃ちゃんがカヌー漕いで八丈島目指すSS ザザーン、ザザーン。 波が静かにこだまする浜辺で、姫乃は一人決意をあらわにした。 姫乃「お父さん、お母さん、どうか旅立つ姫乃をお許しください」 少女の片手にはカヌーのパドル、そして傍には一人乗り用のアウトリガー付きのカヌーと食料一式。 少女はカヌーを浜から海に運び入れる。 ザザーン、ザザーン。 姫乃「そして果林さん...今行きますからね!」 穏やかな波の中、少女は一人出港した。
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