【SS】千砂都「全国学校音楽コンクールのDVD?」【ラブライブ!スーパースター!!】

SS


1: (はんぺん) 2022/05/08(日) 21:36:09.08 ID:KNrAZbhd
──かのん's room──


~~~再生中♪


千砂都「あっ、かのんちゃん見っけ」

千砂都「ほんの1年くらい前なのに、ちょっぴり幼く見えて可愛い♪」

千砂都「そういえば中学の時は、いつもおでこ出して歌ってたっけ」

千砂都「前髪が掛かると顔が暗くなるし、気になって歌に集中出来なくなるから~とか言ってたかな」

千砂都「ふふっ、綺麗なまんまるおでこ。好きだなあ」
 
2: (はんぺん) 2022/05/08(日) 21:39:38.50 ID:KNrAZbhd
~~~~♪


千砂都「...」

千砂都「...」

千砂都「...あっ」

千砂都「この曲の歌詞、良い...」

千砂都「かのんちゃんの歌が好きなだけで、合唱曲そのものにあまり興味は湧かなかったけど」

千砂都「大人になったのかな?それともダンスで結果を出せて、心に余裕が出来たのかな」

千砂都「今なら、かのんちゃんが歌を世界中に響かせたい、って言ってた気持ちが、わかる気がする」

千砂都「こんなにいい歌があったんだね」

千砂都「あったかくて、心がまんまるになっていくよ」
 
3: (はんぺん) 2022/05/08(日) 21:41:41.62 ID:KNrAZbhd
~~~~♪

パチパチパチパチ...


千砂都「...」ポロ…

千砂都「あっ、もう...泣き虫は卒業したのに…。やだなぁ」グスッ

千砂都「声はうまく出せなかったかもしれないけど──」

千砂都「かのんちゃんの歌は、今の私にちゃーんと届いてるよ」

千砂都「だって、こんなに好きにさせてくれたんだもん」

千砂都「...なーんて」

千砂都「照れくさくて、言えないよね」
 
4: (はんぺん) 2022/05/08(日) 21:43:43.70 ID:KNrAZbhd
?ガチャ



かのん「お待たせ~。店の余りもの貰ってきたよ~」

千砂都「ありがと~」

かのん「──って、ちぃちゃん!?そのDVD見てたの!?」

千砂都「ああっ、ごめんね?暇だったからつい」テヘヘ

かのん「恥ずかしいよ。顔ガッチガチだし、声も出てないし」

千砂都「綺麗だったよ~?照明でまんまるおでこ光ってた!」

かのん「それも恥ずかしいの!///」

千砂都「まあまあ~。あっ、モンブランいただくね!」ヒョイッ

かのん「ちぃちゃんたらもう...」

かのん「...その歌、全然歌えなかったから、あまり良い思い出無いんだ」

かのん「できたら、早くしまってね」

千砂都「...」
 
5: (はんぺん) 2022/05/08(日) 21:46:08.38 ID:KNrAZbhd
千砂都「ご、ごめん、って。もう切るから!」ピッ!

千砂都「ほら、てっぺんの栗あげるから機嫌なおして?」アーン

かのん「む…。あーん」モグモグ

かのん「おいしい...」

千砂都「ふふ、かのんちゃんかわいい♪」

かのん「か、かわいくないっ...///」プイッ

千砂都「そういうところだよ~?」





千砂都(...)

千砂都(かのんちゃんは1人で歌えるようになったけど──)

千砂都(それでもうまく歌えなかった思い出には、まだ苦い部分があるのかも)

千砂都(.......よし。決めた)
 
7: (はんぺん) 2022/05/08(日) 21:48:32.05 ID:KNrAZbhd
──1週間ほど経った日の練習後...

千砂都「それじゃ私、先に帰るから!うぃっすー!」

4人『ういっすー!』


──...


恋「最近の千砂都さん、いつも1人だけ早く帰りますね」

すみれ「バイトのシフト増やしたんじゃないの?転科であれこれ買い直したでしょうし、今になって出費が響いてきたとか」

恋「それは無いかと。結女は生徒支援が厚く、経済面のサポートも充実していますので」

すみれ「あー、理事長が恋の親御さんゆすったんだっけ?」

恋「人聞きの悪いこと言わないで下さい!お父様の方から少しだけ融通してもらったのです!」

可可「話を脱線させるなデスグソクムシ!」

すみれ「なんですってー!」

かのん「まあまあ...」
 
9: (はんぺん) 2022/05/08(日) 21:51:05.89 ID:KNrAZbhd
可可「かのんは何か知らないのデスか?」

かのん「うーん...。今朝、ちぃちゃんの隣の席の子が教えてくれたんだけど」

かのん「最近授業中によく居眠りしてるみたいなんだ」

可可「真面目で明るい人なのに、珍しいデス」

かのん「それだけじゃない」

かのん「バイト帰りの夜に、渋谷でちぃちゃんを見かけたって子もいたんだ」

すみれ「あの子がバイトしてるのって原宿よね」

すみれ「しかも、高校生が夜に渋谷なんてヤバすぎて、私でもスカウトハンティングに行かなかったわよ」

かのん「そう。私もあそこの雰囲気は苦手。ちぃちゃんみたいな子は尚更近づかないはず」


恋「あのー...」


恋「...不謹慎で申し訳ないのですが、その...千砂都さんは"あの日"なのではないでしょうか...?」

恋「アレが来ると、なかなか寝付けなかったり、ストレスで注意が散漫になったりしがちではありませんか」

かのん「それは無いかも。ちぃちゃん、私と周期被ってるから」

恋「そうですか…。失礼しました」

すみれ(さらっとすごいカミングアウト来たわね...)
 
10: (はんぺん) 2022/05/08(日) 21:53:44.74 ID:KNrAZbhd
可可「寝不足...夜の街...──ハッ!まさか...!」

かのん「どうしたの?」

可可「いえ、千砂都に限ってそんなことは無いと思うのデスが...」

すみれ「もったいつけてないで話しなさいったら話しなさいよ」

可可「内浦という地に伝わるスクールアイドル都市伝説があるのデス...」

可可「スクールアイドル活動というのは、遠征に衣装代にライブ会場のレンタル代に大会出場費──」

可可「見た目の華やかさとは裏腹に、とにかくお金が掛かるもの...」

可可「そのためお金欲しさに、いわゆる女子高生が手っ取り早く稼ぐ手段に身を堕とす人もいると」

かのすみ『!?!?!?』

恋「?」
 
11: (はんぺん) 2022/05/08(日) 21:55:58.78 ID:KNrAZbhd
すみれ「え、それってつまり...その、アレよね?」

すみれ「大金やご飯を奢って貰う代わりに...って、奴よね?」

可可「さすがショービジネス界にいただけありマスね。枕営業にも詳しいデス」

すみれ「いや、ショービジネス関係ないし。微妙に日本語違うし」

恋「……わたくしにはまだ意味がよく分からないのですが」

恋「かのんさんは分かっていますか?」

かのん「い、一応...なんとなくは…」

恋「なら、わたくしだけですか。手っ取り早く稼げるのなら、わたくしも是非やってみたいです」

すみれ「やめなさいったらやめなさい。絶対に」

恋「なぜ?」

すみれ「なぜ、って。私の口から説明させるつもり!?」

恋「怒鳴らなくてもいいじゃありませんか!」

可可「可可が説明しマス」

すみれ「ちょっ、あんた──」

可可「レンレン、これは大金をもらう代わりに、自らの身体を差し出すということなのデス」

恋「身体を差し出す、とは?」

可可「ジャパニーズパパカツ──」

可可「つまり、性行為をするということデス」

恋「せ…っ───!?」

すみれ「...」

かのん「...///」
 
13: (はんぺん) 2022/05/08(日) 21:59:46.76 ID:KNrAZbhd
恋「そ、そそそ、そんな…!」

恋「あの高潔な千砂都さんが、そのような禁断のセカイに…!///」プシュー

すみれ「ああっ!恋が顔真っ赤にして倒れたわよ!」

可可「だ、大丈夫デス、レンレン!」

可可「こんなのあくまで都市伝説デス!本当なわけ──」

かのん「...いや、可能性はあるかも」

可可「!?!?!?」

かのん「ちぃちゃんがそんなことする訳ない。私だってそう思う」

かのん「けど、万が一本当だったとしたら?」

かのん「こんなこと誰にも話せるはずがない」

かのん「必死に隠しているけど、本当は気づいてほしいんだとしたら──」

かのん「っ!!」ダッ!!

可可「かのん!?」

かのん「可可ちゃんとすみれちゃんは、恋ちゃんの面倒を見てあげて!」

かのん「私、ちぃちゃんを止めてくる!!」タッタッタ…!



可可「ああっ、かのん!」

すみれ「行かせてあげなさいよ。かのんなら心配いらないわ」

可可「ううっ…。どうか無事でいてくだサイ。2人とも…」
 
14: (はんぺん) 2022/05/08(日) 22:02:32.59 ID:KNrAZbhd
──渋谷──


かのん「はぁはぁ、やっと着いた...」

かのん「学校を出てきた時はまだ明るかったのに、すっかり夜だよ…」


ガヤガヤガヤ...

シャチョサン!オヤスクシテオキマスヨ!

キミカワウィーネー!ドコスミ?テカラインヤッテル?


かのん「ラッシュアワーと被っちゃったか...」

かのん「うっ...人酔いしそう。やっぱり渋谷は苦手だよ…」

かのん「社会人や大学生の人ばかり。私、完全に浮いてる…」

かのん「.......ううん。弱音はいてる場合じゃない」

かのん「はやくちぃちゃんを見つけ──」

「おや、キミかな?」

かのん「へ?」
 
15: (はんぺん) 2022/05/08(日) 22:07:04.20 ID:KNrAZbhd
かのん「おじさん、誰?」

「誰、ってそりゃあ。わかるだろう?」

かのん「いえ、あの…さっぱり」

「最近の子は鈍いのか?ほれ、これでも分からんかね?」ピラッ

かのん(一万円札...っ!?もしかして──)

かのん(この人、手っ取り早く稼ぐ手段の──!?)

「おお、その顔。やっぱりキミだったんだねぇ」

かのん「ち、違います!私、そういうんじゃありません!」

「おや、そうかい?いや、でもキミかわいいねぇ」

かのん「それはどうも。私、急いでるんで──」

「おいおい、ちょっと待ちたまえ」グイッ

かのん「ひっ!?な、何するんですか!腕、離してください!!」

「良いねぇ。キミみたいなSっ気のありそうな目をした子に相手してもらうのも悪くない」

「来たまえ。今から私がホテルで禁断のセカイについて教えてあげよう」

かのん「い、ぃやっ…!いやだっ!離してっ!」

「何を怖がっている?そんな短いスカートで」

「誘ってるとしか思えないじゃないか。はっはっは」

かのん「ゃだっ…だ、だれかっ...!)

かのん(...!...っ!....!?)


かのん(こ、声が出ない…!?)


かのん(そんな、わたし...ただちぃちゃんを助けに来ただけなのにっ…!)

かのん(なんでこんな目にっ...!)
 
16: (はんぺん) 2022/05/08(日) 22:09:24.27 ID:KNrAZbhd
「涙目な顔もそそるねえ」

「キミ、なかなかいい声してるじゃないか。喘ぎも期待できるよ」

「さっ、早く私がベッドの上で可愛がってあげよう」

かのん(...っ!)

かのん(い、いゃ…!...いやあっ!!)

かのん(お願い…!だ、だれか...)

かのん(誰か、助けて...っ!)




























?「何してるの?おじさん」

かのおじ ((!?))
 
18: (はんぺん) 2022/05/08(日) 22:12:29.70 ID:KNrAZbhd
かのん(ち、ちぃちゃん!?)

千砂都「何してるのって聞いてるんだけど?」

「何ってそりゃあ、キミも女子高生だからこれくらいわかるだろう?」

千砂都「ぜんっぜん、分かんない」

千砂都「けど、なんか危なそうだから通報しておいたよ」?

「!?」

千砂都「私の幼馴染に手を出すなんて、良い度胸してるね」

千砂都「本当はちぃちゃんキックのひとつでも入れたいとこだけど」

千砂都「かのんちゃんは乱暴なことする私を見たくないだろうから、さっさとその手を離して、警察の人のお世話になってね」

かのん(だ、だめっ!ちぃちゃん!逃げて...!)

千砂都(ううん、大丈夫だよ)

千砂都(これ以上、かのんちゃんに手出しはさせない!)

「クソっ!美人局だったのか!私はハメるのは好きだが、ハメられるのは大嫌いなのだ!」

「白髪の小娘!貴様からおしおきだっ!」クワッ!



千砂都(──張り手が飛んでくる…!)


千砂都(でも、怖くない!)


千砂都(かのんちゃんが傷つくほうが、何倍も怖いもん!)


「大人が社会の厳しさを教えてやる!」


千砂都「っ!!」








バシィッ!
 
19: (はんぺん) 2022/05/08(日) 22:14:19.47 ID:KNrAZbhd
───.......







───.......







千砂都「.......」









千砂都「.......あれ?」

















警察「君、ちょっといい?」

「あ....あ...」

────
──

 
20: (はんぺん) 2022/05/08(日) 22:18:45.93 ID:KNrAZbhd
変態のおじさんは、暴行の現行犯で無事逮捕された。
あれから私たちは、警察の人に連れられ、被害者と目撃者として取り調べを受けた。
長時間拘束したお詫びでカフェオレを奢ってもらったけれど、かのんちゃんは好物さえ喉が通らない様子で、ずっと手を付けなかった。
今はパトカーで、かのんちゃんの自宅近くまで、送り届けてもらっているところ──。


けれど、かのんちゃんは自分の家に帰りたくなさそうだった。
当然──だと思う。私だったら恥ずかしくて、どんな顔すればいいか分からない。
かのんちゃんの家族にも、警察から当然連絡が行っている。心配させて、と怒られるだろう。ううん、怒られるだけならまだいいかも。
きっと、泣かれたりする方がもっと辛いだろうから。でも、あのおばさんはいつだって快活な人だから、泣かないと思う。
むしろ、かのんちゃんの方が、"表では怒ってたけど、もしかしたら裏では──"と、想像して思い詰めちゃうかもしれない。


かのんちゃんは、繊細だから。


車の中で、かのんちゃんはほとんど言葉を発さなかったけど、


「今日、一緒にいてほしい」

それだけ口にして私は──

「うん」


と頷いて、そっとかのんちゃんの手に自分の手を重ねた。
気のせいかもしれない。途端に、かのんちゃんの表情が少しだけ、ほっとしたようにまるく──柔らかくなったように見えた。
 
21: (はんぺん) 2022/05/08(日) 22:22:13.10 ID:KNrAZbhd
結果として──


おばさんはかのんちゃんをこっぴどく叱った。けど、それだけだった。泣くことも深く追及することもなく、ただ「無事で良かった」と、かのんちゃんを抱きしめ、背中を優しくトントン、と叩いた。
かのんちゃんは、何度も「ごめんなさい」と謝りながら泣いた。
私も一緒に謝ったけれど、おばさんは穏やかな顔でこちらを見て、首を横に振っていた。


あんなことがあった日に、人の家に上がるのは無神経も良いとこだけれど、おばさんは温かく受け入れてくれた。私の親に、電話で説得までしてくれた。曰く「親よりも、大切な友達が子を救うこともあるのよ」とのこと。その意味はすぐ理解出来た。


例えば、弱虫で何をしてもダメな私に、変わりたいと思うきっかけをくれたのはかのんちゃんだったし──
受験に失敗して、歌が好きな気持ちに蓋をしてたかのんちゃんを引っ張りあげたのは、可可ちゃんだったから。


あの頃の私は、まだかのんちゃんの横に立てるほど強くなかったから、何もしてあげられなかったけど──今は違う。
辛い思いをしたかのんちゃんを、私が助けるんだ。
 
22: (はんぺん) 2022/05/08(日) 22:25:48.26 ID:KNrAZbhd
──かのん's room──


かのん「...ごめんね。わがまま言って」

千砂都「気にしないで。私も、かのんちゃんをほっとけなかったから」

かのん「ほっとけない…。あはは。だよね」

かのん「私、本当にバカだもん」

かのん「1人で突っ走って、ちぃちゃんを危ない目に巻き込んで、警察のお世話になって、家族に心配かけて、いろんな人に迷惑かけた」

かのん「本当にどうしようもないよ…」

千砂都「危ない目だなんて思ってないよ」

千砂都「私は、あそこに居られて良かった」

千砂都「かのんちゃんを守ることが出来たから」

かのん「...」

千砂都「かのんちゃんが無事でいてくれるだけで十分だよ」


かのん「...」

かのん「...ありがとう」

千砂都「うん。そっちのほうが嬉しい」
 
23: (はんぺん) 2022/05/08(日) 22:27:56.45 ID:KNrAZbhd
かのん「ちぃちゃん」

千砂都「なに?」

かのん「...ぎゅってしても、いいかな?」

かのん「なんだか...まだ少し怖いの」

かのん「一人で渋谷の街に繰り出したことや、こわいおじさんに腕を掴まれたことだけじゃない」

かのん「もし、あの場にいたのが私じゃなくて、ちぃちゃんだったら──」

かのん「もし、あそこで会えてなかったらと思うと...」

かのん「すごく...怖くて...っ..」

かのん「ちぃちゃんが、ちゃんとここにいるんだって、感じたい...」

千砂都「いいよ。おいで」
 
24: (はんぺん) 2022/05/08(日) 22:30:06.02 ID:KNrAZbhd
私の背中にかのんちゃんの腕が回された。
いつも元気な彼女からは想像もできないほど、弱くゆっくりとした動き。加減を間違えれば壊してしまいそうな何かを、包み込むような優しい抱擁。


腕、胸、互いに触れ合った頬から伝わる熱で、私の存在を確かめると、安心したように抱く力がゆっくりと強まった。


私もそっと抱き返し、手でかのんちゃんの髪を撫でる。振るえていると気づいた時には、小さな嗚咽も聞こえた。


耳元をくすぐる声に、私もつられて泣きそうになる。
あそこで会えてなかったら──と思うと、心が鷲掴みされたように苦しくなったのは、私も同じだったから。
でも、小さい頃に私を励ましてくれた時のかのんちゃんは、決して泣かなかった。
私もそうありたくて、ぐっと堪えた。
 
25: (はんぺん) 2022/05/08(日) 22:32:11.33 ID:KNrAZbhd
かのん「ちぃちゃんは...ここにいるよね?」

千砂都「うん」

かのん「いつもの、私の大切な、ちぃちゃんだよね?」

千砂都「うん」

かのん「良かった…。本当に...良かった」

千砂都「うん。…うん」

かのん「心配、したんだよ…」

かのん「いつも1人で先に帰っちゃうし、ちぃちゃんが変だって話も聞いたし、もしかしたらイケないバイトしてるんじゃないか、って」

千砂都「安心して。私はたこ焼き屋一筋だよ」

かのん「そう…だよね」

千砂都「でも...そっか。心配させてたんだ。ごめん」

かのん「ぐすっ。...いいよ」

かのん「今は...ちぃちゃんがここにいてくれるだけで...っ..」

千砂都「──うん」

千砂都「...」

千砂都「私ね、ずっと歌の特訓してたんだ」

千砂都「かのんちゃんに、伝えたいことがあって」

かのん「...え?」
 
26: (はんぺん) 2022/05/08(日) 22:34:21.65 ID:KNrAZbhd
千砂都「バレないよう、わざわざ渋谷のスタジオまで借りちゃったりしたんだ」

千砂都「家に帰ってからも、お風呂で練習したり、どんな風に歌おうか考えたり、かのんちゃんの顔を思い浮かべたり、イメージを膨らませるために、何度もリピートして──」

千砂都「時間を忘れて、朝になっちゃったこともあったよ」

千砂都「でも、かのんちゃんを心配させるくらいなら、もう秘密にする必要はない」

千砂都「まだ自信は無いけど、私の歌を聴いて欲しいんだ」

千砂都「いいかな?」

かのん「...うん」

かのん「ちぃちゃんの歌、聞きたい」

千砂都「ありがとう」

千砂都「夜も遅いし、家族の皆さんの迷惑になるといけないから、このまま耳元で、小さな声で歌うね」


千砂都「これは、私の気持ちだよ」
 
27: (はんぺん) 2022/05/08(日) 22:38:24.49 ID:KNrAZbhd
──
────
─────────



♪いつか 君が僕を 守ってくれたこと



(!……この歌い出し、このメロディ──)



♪僕は ずっと ずっと忘れないよ



(中学生のとき合唱部で歌った、コンクールの自由曲──!)



♪いつか 君が僕を 守ってくれたから



♪次は僕が 誰かを守りたい



─────────
───
──
 
28: (はんぺん) 2022/05/08(日) 22:40:28.70 ID:KNrAZbhd
──


千砂都「...ありがとう。聴いてくれて」

かのん「ち、ちいちゃん...どうして、この歌を?」

千砂都「言ったでしょ。伝えたいことがあるって」

かのん「でも、私言ったよね?この歌には──」

千砂都「良い思い出が無い」

かのん「...っ」

千砂都「ちゃんと覚えてるよ」

千砂都「不思議だね。なんでそんな歌の入ったDVDを、今でも大切に取ってあるのかな?」

かのん「そ、それは....」

千砂都「私はね、苦い思い出が邪魔をしてるだけで、本当は大好きなんだと思ったよ」

千砂都「歌を諦めかけてた、あの時と同じで」

かのん「...!」

千砂都「だから、歌えたんだ」

千砂都「私もね、この歌が大好き」

千砂都「私の伝えたいことが、全部詰まってた」
 
29: (はんぺん) 2022/05/08(日) 22:42:37.83 ID:KNrAZbhd
どんなに不格好でも──

声が出せなかったとしても──

結果を出せなかったとしても──

かのんちゃんの歌は──

私に、勇気をくれたんだよ。



『ちぃちゃんをいじめちゃダメ!』



小さい頃、かのんちゃんが私を守ってくれたから──

私も、守りたかったんだ。

誰よりも大切な君を。



『ちぃちゃんのことは、わたしがまもるから!』



あの日のこと、ずっと覚えてる。

そしてこれからも、決して忘れない。

大人になっても、おばあちゃんになっても

どんな未来が待っていても──



「──かのんちゃんのことは、私が守るから」
 
30: (はんぺん) 2022/05/08(日) 22:44:21.27 ID:KNrAZbhd
かのん「....」

かのん「え、えへへ...」

かのん「ちぃちゃん、かっこよすぎるよ…」グスッ…

かのん「私、こんなに思われてたんだね」

千砂都「かのんちゃんが私を思ってくれたのと同じだよ」

かのん「──うん。ありがとう」

かのん「...私も、伝えたいことできちゃったよ」

千砂都「なあに?」

かのん「ぐすっ…。私、私ね──」
 
31: (はんぺん) 2022/05/08(日) 22:46:27.09 ID:KNrAZbhd
?bbb...bbb…






かのん「!」


Liella!(5)

可可:かのん!千砂都!2人とも大丈夫ですか!?

すみれ:連絡くらいしなさいったらしなさいよ!

恋:お願いです!お2人に何かあったら、わたくしは責任を取って生徒会長を辞任します!


かのん「あ...」


ポチポチポチ...


かのん:ちぃちゃんは大丈夫だったよ!報告遅くなってごめんね。

千砂都:かのんちゃんからいろいろ聞いたよ!心配させたみたいでほんとごめん!??

千砂都:でも、イケないバイトは無いよ!私そんなこと絶対しないもんね!??

可可:うぅ...!2人とも無事で良かったです!

すみれ:本当にね。そもそも可可が変なこと言い出さなきゃ平和だったのよ!

可可:ぐうの音も出ません…。面目丸つぶれです。お詫びに千砂都好みに頭を丸めます。

恋:これでわたくしも安心して眠れます。あと可可さん、面目無い、ですよ。

千砂都:頭も丸めなくていいから…。また明日会おうね!うぃっす~✌


──
───
 
32: (はんぺん) 2022/05/08(日) 22:49:23.05 ID:KNrAZbhd
かのん「これでよし」

千砂都「じゃあ、さっきの続きを聞かせてもらおうかな?」

かのん「う...。ごめん。なんか恥ずかしくなってきちゃった…」

千砂都「ダメ。ちゃんと聞かせて?」

かのん「どうしても?」

千砂都「当たり前。だいたい可可ちゃんの話を真に受けた、かのんちゃんもかのんちゃんなんだから」

かのん「反省、してます...」

千砂都「分かったから、早く。ね?」

かのん「...」

かのん「わたし───」










「 」










千砂都「うん!」



かのんちゃんが何と言ったのか──

それは私だけの秘密。
 
33: (はんぺん) 2022/05/08(日) 22:52:07.59 ID:KNrAZbhd
いつかこの歌を、Liella!の皆で演奏してみたい。

かのんちゃんがそう提案してきた。良いアイデアだと思う。

恋ちゃんが伴奏で、他4人でうまくパートを分けられるかな。

かのんちゃんは、もちろん主旋律でリードしていってね。

けど、今夜は2人だけでハーモニーを奏でよう。

まずは最初のフレーズから...








いつか君が僕を 守ってくれたこと

僕はずっと ずっと忘れないよ









おわり

引用:Nコン2011 高校生の部 課題曲 「僕が守る」
(作詞:銀色夏生)(作曲:上田真樹)
 

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1652013369/

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