【SS】かのん「1年生たちに切れたナイフ時代の恋ちゃんの映像を見せてみよう!」【ラブライブ!スーパースター!!】

Liella!ーSS


1: (あら) 2022/12/23(金) 20:45:09.38 ID:cTHjPEqe
すみれ「は? あんた、いきなり何を言いだしてるのよ?」

かのん「実は先週末に、可可ちゃんの家でお泊まり会をしたんだ」

かのん「そのとき、面白いものを見つけたんだよ」

すみれ「お泊まり会なんかしたの? 初耳なんだけど」

かのん「ああ、お泊まり会って言っても、一緒に曲を作ってて勢いでそのまま泊まったってだけだからさ」

かのん「私と可可ちゃんの2人だけだったし、別にすみれちゃんをハブったってわけじゃないから安心してよ」

可可「すみれは寂しがりデスねえ。いい子にしてたら、次はすみれも呼んでやりマスよ」クスクス

すみれ「べ、別に寂しがったりなんかしてないったらないわよ!」バンッ!

可可「すみれは素直じゃないデスねえ」ヤレヤレ

すみれ「あんたにだけは言われたくないわ」
 
2: (あら) 2022/12/23(金) 20:49:33.01 ID:cTHjPEqe
すみれ「それより、面白いものって何を見つけたのよ?」

かのん「これまでの私たちの映像だよ。結ヶ丘に入学してから今までのね」

すみれ「ライブとか動画配信の映像のこと?」

すみれ「でも、それじゃあ恋が丸くなった後の映像しかなくない?」

かのん「いや、それ以外の映像もたくさんあったんだ。みんなの色んな決定的瞬間のやつがね」

かのん「可可ちゃんが映像を記録する装置を作ってくれてたみたいでさ」

すみれ「映像を記録する装置?」

可可「聞いて驚けデス! クク謹製の撮影用スーパードローンたちデスよ!」ババーン!
 
3: (あら) 2022/12/23(金) 20:53:02.96 ID:cTHjPEqe
すみれ「ドローン? そんなものが飛んでるとこなんて見たことないわよ?」

可可「そりゃあそうデスよ。人の目に見える大きさではありませんから」

可可「1機が70ナノメートルほどのシリコン製デス。結ヶ丘を中心に5000万機ほどを散布しました」

可可「たとえ存在を知っていても、電子顕微鏡を使わないと確認すらできませんよ」

可可「このドローンは、コロナウイルスよりも少し小さいくらいの大きさデスからね」

可可「今だってそこらじゅうを飛んでるはずデスけど、分からないでしょう?」

すみれ「は?」

可可「空気中を漂って移動し、大気の対流を利用して自家発電を行うので、半永久的に情報収集が可能デス」

可可「どうデスか? すごいでしょ! すみれもかのんみたいにククを褒めても構いませんよ!」ドヤァ

すみれ「どうですかじゃないのよ! あんた、なんてもん作ってんのよ!」バンッ!

可可「他の学校には、物理法則や因果律を操るスイッチを作るスクールアイドルもいるそうデスからね」

可可「ククは手先の器用さには自信がありマスから、そこの強みを生かした作品というわけデス!」フフーン

すみれ「スクールアイドルの技術力はどうなってんのよ……」
 
8: (あら) 2022/12/23(金) 20:56:48.41 ID:cTHjPEqe
すみれ「っていうか、技術力がどうこうじゃなくて、私はプライバシーのことを言いたいんだけど!?」

可可「プライバシー? すみません、知らない日本語デスね」ハテ?

すみれ「あんた、その都合よく中国人になるのやめなさいよ……。っていうか、プライバシーは英語よ?」

すみれ「それに、かのんも可可を褒めてんじゃないわよ! 作ってくれてたって言い方はおかしいわよね?」

すみれ「ちゃんと可可に注意しなさい。リーダーとしての責務よ!」バンッ!

かのん「注意? なんで? そんなドローンを作っちゃうなんてすごいじゃん」

すみれ「いや、確かにそんなもん作れるのはすごいけど、人の秘密を覗くような真似はよくないでしょ?」

かのん「え? 人の秘密って、ばらすためにあるんだよね?」キョトン?

すみれ「……かのん、あんたホントに人の秘密に対する価値観は完全に頭バグってるわね」
 
9: (あら) 2022/12/23(金) 21:00:22.76 ID:cTHjPEqe
可可「映像はすべてククのサーバー上に保存されてマスから、いつでも見られマスよ」

かのん「なら今すぐ1年生たちを呼んで、一緒に見よう!」

すみれ「ちょっと待ちなさい! やめろって言ってるったら言ってるでしょ!」

かのん「えー、でも1年生たちだって見たがるはずだよ?」ネ?

すみれ「そう? あの子たち、そんなもの見たがるかしら?」

すみれ「っていうか、そもそもかのんはなんで尖ってた頃の恋を後輩たちに見せたがってるのよ?」

かのん「恋ちゃん、最近はすっかり丸くなったでしょ? 優しいっていうか穏やかっていうか……」

すみれ「いいことじゃない」

かのん「でも、そのせいで後輩たちに甘く見られてるような気がするんだよねえ」

可可「そうデス! レンレンは1年生たちからすみれの次に舐められていマス!」

すみれ「あー、そういうことね」

すみれ「それと、可可はちょっと黙りなさい」
 
11: (あら) 2022/12/23(金) 21:04:03.42 ID:cTHjPEqe
すみれ「かのんの言いたいことは分かったけど、それでもいいじゃない。平和が一番よ」

すみれ「あの子たちだってバカにしてるってわけじゃないし、怖がられるよりはいいでしょ?」

かのん「そうはいかないよ!」

かのん「私だって後輩たちにペコペコしろとは言わないけど、先輩なんだから一定の敬意は必要だよ!」

可可「長幼の序というやつデス! レンレンは上級生で生徒会長デスよ?」

すみれ「まあ、あんたたちの言うことも分からなくはないけどねえ」

可可「1年生たちには、きちんとレンレンの怖さを思い知らせてやらねば!」

可可「後輩たちのレンレンとの思い出を、恐怖と血に染めてやりマス!」

すみれ「可可、言い方」
 
12: (あら) 2022/12/23(金) 21:08:22.51 ID:cTHjPEqe
かのん「私は生徒会の副会長になって、恋ちゃんのすごさが改めて分かったんだ」

かのん「ナナミちゃんたちにかなり手伝ってもらってるのに、あれだけ大変なんだもん」

かのん「1年のときにあれを1人でやってた恋ちゃんは、ホントにすごい人なの!」

かのん「それが優しいからって後輩たちに舐められてるなんて許せないよ!」バンッ!

すみれ「うーん、あの子たちだって別に悪気があるわけじゃないと思うんだけど……」

可可「別に1年生たちに怒っているわけではありません。認識を改めて欲しいのデス」

すみれ「だからって、去年のあれやこれやを見せるのはちょっとねえ」

可可「というわけで、上映会の準備ができました!」

かのん「おっ! プロジェクターでスクリーンに大きく映すんだね!」

可可「はい! このプロジェクターはククのサーバーと繋がってますから、すぐにでも――」

すみれ「ちょっと待ちなさい!」
 
13: (あら) 2022/12/23(金) 21:12:08.39 ID:cTHjPEqe
すみれ「あの子たちに映像を見せるって、私はまだ同意したわけじゃ――」

きな子「お疲れ様っす」ガチャ

夏美「ナッツー! お疲れ様ですの!」

四季「あれ? 先輩たちは3人だけ?」

かのん「ちぃちゃんと恋ちゃんは、音楽科に用事があるらしくて今日は来れないってさ」

きな子「千砂都先輩、音楽科にも知り合いが多いっすよねえ」

メイ「あー、確かに恋先輩も用事があるって言ってたな」

可可「みなさん! 面白いのものを見せてあげマス! ほら、席に座ってください!」

きな子「面白いものっすか?」

可可「1年生の頃のレンレンの映像デス。昔のレンレンは今のように甘くはなかったのデス!」

四季「昔の恋先輩?」

可可「はい! それでは、ボタンを押して映像を――」

すみれ「ちょっと、可可! まだ私の話は終わって――」

かのん「まあまあ、すみれちゃん。いいからいいから」ガシッ!

すみれ「か、かのん!?」
 
15: (あら) 2022/12/23(金) 21:16:17.53 ID:cTHjPEqe
可可「それじゃあ、上映開始デス!」ポチットナ



恋『葉月恋は普通科と音楽科が手を取り合う学校を目指し、学園祭を共に盛り上げていくことを約束します』



かのん「あっ、これから始まるんだ」オー!

可可「生徒会の選挙のやつデスね。懐かしいデス」

四季「選挙、やったんですね」

夏美「無投票当選だと思ってましたの」

かのん「すみれちゃんが対抗馬として立候補したんだよ! ね、すみれちゃん」

すみれ「え、ええ。そうだったわね」

きな子「それは、また無謀なことをしたっすね。やる前から結果の見えた勝負っす」

すみれ「どういう意味よ」

きな子「いやあ、人望の差がエグいというかなんというか~」

すみれ「あんた、浅いところで私のこと舐めてるでしょ!」バンッ!
 
17: (あら) 2022/12/23(金) 21:20:02.38 ID:cTHjPEqe
メイ「でも、優しくて真面目な恋先輩らしい公約だよな」ウンウン

夏美「確かにそうですの。恋先輩は、私たち後輩の話もちゃんと公平に聞いてくれますの」



恋『音楽に関しては、どんな活動であっても他の学校より秀でていないと学校の価値が下がってしまうのです』

恋『音楽活動に関しては絶対に他校に劣るわけにはいかない』

恋『そのために、最初の学園祭は音楽科をメインに行うことと決定しました』



メイ「は?」

夏美「れ、恋先輩……?w」

かのん「いやぁ~、このときはホントに驚いたよねえ」

すみれ「当選後の所信表明演説でいきなりだったものね……」

可可「公約違反と公職選挙法違反が戦ったとかいう、大変な選挙になりました」

四季「公職選挙法違反?」

すみれ「ああ、千砂都に頼んで私たちはたこ焼きを配ったのよ」

可可「ギリギリでセーフだと思ったんデスけどねえ」

四季「それは普通にアウト」

きな子「公職ではないっすけどね」
 
18: (あら) 2022/12/23(金) 21:23:31.00 ID:cTHjPEqe
恋『音楽科がある結ヶ丘は、音楽に関しては他の学校より秀でていないと学校の価値が下がってしまいます』

恋『この学校にとって音楽はとても大切なものです。生半可な気持ちで勝手に行動することは慎んでください』

恋『音楽に力を入れるからこそ、勝手なことはやらないで欲しいのです』



四季「恋先輩って、こんなに音楽のこと推してましたか?」

可可「去年のレンレンはこんな感じでしたよ」ネ?

かのん「音楽で学校を盛り上げるんだって、それしか目に入らない状態になっちゃってたからねえ」

メイ「で、でも音楽に誇りを持つのはいいことだろ? 確かに、ちょっと言い方はあれだけどさ」

メイ「ほら、今だって作曲するときは真剣で、普段のほわっとした感じと違ってかっこいいなって――」



恋『学校のためには、スクールアイドルはない方がいい。それが、わたくしの考えです』

恋『残念ですが、今のラブライブであなたたちが勝てるとはとても思えません』

恋『どうしてもやりたいのであれば、他の学校に行くことですね』



きな子「え、スクールアイドルに反対してたっすか!?」ガーン!

夏美「今じゃ、あんなに楽しそうにしてますのに……」

メイ「そんな……」
 
20: (あら) 2022/12/23(金) 21:27:12.10 ID:cTHjPEqe
恋『このチラシを配っているのはあなたですね? 理事長の許可は取ったのですか?』

恋『スクールアイドルは相応しくないからです』

恋『答えは同じです。同じ説明を二度もしたくないのですが』

恋『話は生徒会を通してください。失礼します』



すみれ「かのん、あんた思ったより恋とバチバチやってたのね」

かのん「いやあ、可可ちゃんが可哀想だったし、言ってることが納得できなくてイラッとしちゃってさあ」

可可「このときのかのんは、とてもかっこよかったデス!」キラキラ

きな子「かのん先輩に、ちょっとヤンキーっぽいとこがあるのは知ってたっすけど……」

四季「恋先輩も負けてない」

夏美「というか、完全に悪役ですの……」
 
21: (あら) 2022/12/23(金) 21:30:51.47 ID:cTHjPEqe
恋『あなたたちが、この結ヶ丘の代表として恥ずかしくない成績をあげられますか?』

恋『やめた方がいいのではないですか? フェスで醜態を晒せば、この学校の評判にも関わります』

恋『嵐さんの練習の邪魔にならなければよいのですが』

恋『とにかく今日は帰ってください。音楽科の生徒の邪魔にならないよう』



メイ「……こんな高圧的な言い方をするような人だったか?」

夏美「それに、普通科よりも音楽科の方が上だっていう考えが激しく伝わってきますの……」

可可「最近はすっかり丸くなりましたけど、これがレンレンの本性なのデス!」

かのん「まあ、本性って言い方はさすがにあれだけどさ」

かのん「1年生たちが舐めた態度を取って怒らせたら、またブラック恋ちゃんが出てくるかもね」

すみれ「2人とも、あんまり後輩たちを恐がらせるんじゃないわよ!」

すみれ「あんたたち、安心しなさい。よっぽど失礼なことでもしない限り大丈夫だから」ネ?

四季「逆に言うと、失礼を働けばこの恋先輩が……」

きな子「ちょっと本気で怖くなってきたっす……」
 
22: (あら) 2022/12/23(金) 21:34:40.12 ID:cTHjPEqe
恋『やっと見つけましたよ。スクールアイドル!』

恋『校則第10条325項、結ヶ丘におけるスクールアイドルの活動はこの一切を禁止する! ひっ捕らえなさい!』

恋『歌えない結ヶ丘生など必要ない! 役立たずは退学です!』



すみれ「ちょっと! 可可、なんであんたの妄想が映像になってんのよ!」

可可「脳内の映像を出力するくらい簡単なことデス。だって、ククはスクールアイドルなのデスよ?」

すみれ「私もスクールアイドルのはずなんだけど、まったく同意できないわね……」

すみれ「かのん、あんたからも何か言ってやりなさい!」

かのん「……」

すみれ「どうしたのよ?」

かのん「……そうだよね。歌えない生徒なんて必要ないよね。音楽科に落ちて当然だよね」ズーン

可可「ああ、かのん! しっかりしてください!」アセアセ

すみれ「かのんが流れ弾を食らっちゃってるじゃない……」

すみれ「っていうか、最後の台詞は可可の妄想の中にすらなくなかった?」

可可「ちょっとした演出デスよ。ナッツの好きな言葉は、嘘も方便らしいデスし」

すみれ「さすがにやりすぎじゃないかしら……」
 
24: (あら) 2022/12/23(金) 21:38:27.83 ID:cTHjPEqe
すみれ「っていうか、1年生たちは? 大丈夫なの?」

1年生たち「「「「…………」」」」ブルブル

すみれ「大丈夫じゃなさそうね」

可可「あれ? どうしました?」

すみれ「やっぱり刺激が強すぎたのよ」

すみれ「この子たちは優しくて穏やかな恋しか知らないんだし、そりゃあショックでしょ」

可可「こんなに怖がるのは予想外デスが、効き目が強いならちょうどいいデス」

可可「ほら、みなさん! レンレンには厳しいところもあるのデスから、舐めてはいけませんよ!」

可可「ちゃんと敬ってください! ね、かのん」

かのん「あ、うん、そうだね。親しくするのはいいことだけど、軽く扱っちゃダメだよ」

かのん「恋ちゃんは本当にすごい人なんだから。……ねえ、分かった?」

1年生たち「「「「は、はいっ!」」」」ビクッ!

すみれ「あんたたち、あんまり気にするんじゃないわよ? 今の恋は絶対に理不尽に怒ったりはしないから」

1年生たち「「「「は、はい……」」」」
 
26: (あら) 2022/12/23(金) 21:42:46.00 ID:cTHjPEqe
次の日 練習中

恋「きな子さん、今のところのステップが違いますよ」

きな子「ひっ!」ビクッ!

恋「四季さんの方も、少し動きがぎこちなかったですね」

四季「あ、その……」オドオド

恋「まぁ、確かに難しいところですからね。もう一度、落ち着いて間違えたところだけを――」

きな子「恋先輩、ごめんなさいっ!」ペコペコ

四季「me too」ペコペコ

恋「え?」
 
28: (あら) 2022/12/23(金) 21:46:30.07 ID:cTHjPEqe
きな子「きな子、もう二度と間違えたりしないっす!」

きな子「だ、だから、きな子はいらないだなんて思わないで欲しいっす! 退学にしないで!」

四季「me too」

恋「え? いや、えっと……」

恋(2人とも、何を言ってるんでしょうか? ミスしたせいで、自信をなくしている?)

恋「大丈夫ですよ。とにかく、先ほどのパートをやり直してみましょう」

恋「まずはテンポを落として、動きを体に覚えさせるんです。2人なら、きっとできるはずです」

きな子「は、はいっす!」ビシッ!

四季「大丈夫、私はできる。私はできる。私はできる……」ブツブツ
 
29: (あら) 2022/12/23(金) 21:50:13.42 ID:cTHjPEqe
さらに次の日 放課後

恋「メイさん、そろそろ作曲をしましょうか」

メイ「は、はいっ!」ビクッ!

メイ「あ、すみません。もう時間ですか? ちょっと勘違いしてたみたいで……」

恋「いえ、まだ約束していた時間まで20分ほどありますが、特に何もしていないようでしたので」

メイ「す、すみませんっ! 1年生のくせに、ぼーっとしちゃって……」

恋「いや、別に空き時間にぼーっとするくらいまったく構いませんけど……」

恋「それより、その敬語はどうしました? 普段のような口調で何も問題ありませんよ?」

メイ「そ、そういうわけにはいかないです! 今まで後輩なのにタメ口だったのがおかしかったんですよ!」

恋「は、はあ。そうですか?」

メイ「尊敬している先輩にちゃんと敬語を使えるし、作曲だってそこそこはできる」

メイ「恋先輩、私は必要ですよね!?」ネ?
 
30: (あら) 2022/12/23(金) 21:53:57.08 ID:cTHjPEqe
恋「ええ、もちろん必要ですよ。作曲ができる後輩がいて、わたくしも助かっています」

夏美「恋先輩、私も作曲しますの!」

恋「え? 夏美さんも作曲の経験があるのですか?」

夏美「いや、それはありませんの……。楽器も何も弾けませんし……」

夏美「ですが、きっと私だって何か役に立てるはずですの! 必ず恋先輩のお役に立ちますの!」

夏美「オニナッツは、Liella!に欠かせない存在ですの!」

メイ「恋先輩、私からもお願いします! 夏美にチャンスを与えてやってください!」

恋「え、ええ。わたくしは構いませんが……」

夏美「あ、ありがとうございますの! ……メイ、本当にありがとうですの」ウルウル

メイ「おいおい、泣くなって。私たちみんなで生き残ろうぜ」ウルウル

恋「…………」
 
31: (あら) 2022/12/23(金) 21:57:50.92 ID:cTHjPEqe
さらにさらに次の日 昼休み

千砂都「どうしたの、恋ちゃん? 普通科に何か用事?」

恋「はい、普通科というか、みなさんに相談がありまして……」

千砂都「何かあったの?」

恋「最近、1年生たちの様子がおかしいんです。あまりにも素直すぎるというか……」

千砂都「素直なのはいいことなんじゃない?」

恋「いえ、なんというか、わたくしに怯えているような感じでして……」

恋「話しかけるとビクッとしますし、自分は役に立つから切り捨てないで欲しいと必死に訴えてきて……」

千砂都「ふうん、いつからそんな感じなの?」

恋「そうですね……。一昨日からだと思います」

千砂都「もしかして、私たちが部活を休んだ日に何かあったのかな?」ウーン

千砂都「何か心当たりがないか、あの3人に聞いてみよっか」

千砂都「今日は天気もいいから、屋上でお昼を食べる予定なんだ」

千砂都「3人は先に行ってるから、恋ちゃんも私と一緒に行こう」

恋「はい、お願いします」
 
32: (あら) 2022/12/23(金) 22:01:23.49 ID:cTHjPEqe
すみれ「ごめんなさい。私たちのせいよ」ペコッ

すみれ「いや、主犯はかのんと可可だけど、止められなかった私にも責任があるわ」

恋「どういうことですか?」

すみれ「えっと、かくかくしかじかで――」

恋「――れんれんこわこわというわけですか。って、何をしてるんですか!」イミワカリマセン!

かのん「え? 1年生たちが素直になったんでしょ? よかったじゃん」

可可「作戦は大成功デス! レンレン、感謝してくれて構いませんよ!」ドヤァ

恋「感謝するわけないでしょう! どうしてくれるんですか!」

恋「お2人のせいで、後輩たちがわたくしにやたらとビクつくようになってしまったんですよ!」
 
33: (あら) 2022/12/23(金) 22:04:49.79 ID:cTHjPEqe
かのん「どうしてくれるんですかって、別にどうもしなくていいじゃん」

かのん「恋ちゃんだって、1年生たちに甘く見られるのはイヤでしょ?」

可可「そうデス! かのんの言う通りデス。後輩たちは、生徒会長のレンレンを敬わなくては」

可可「君主は愛されるよりも恐れられていた方がいいと、あの有名なマキャヴェリも言っていマス」

恋「限度ってものがあるでしょう! わたくしはマキャヴェリズムは卒業したんです!」

かのん「マキャヴェリズム?」

千砂都「どんな酷い行為であっても、結果として全体の利益になるなら許されるっていう考え方だよ」

かのん「へー、学校のためなら何をしてもいいってわけだね」

可可「さすがレンレン!」パチパチ

恋「マキャヴェリズムは卒業したと言ったでしょう!」
 
34: (あら) 2022/12/23(金) 22:08:16.85 ID:cTHjPEqe
恋「このままでは後輩たちと気まずいんです! どうにかしてください!」

かのん「そんなこと言われても、見せちゃたものは仕方ないし……」

すみれ「まあ、忘れさせるなんて無理だものねえ」

かのん「……すみれちゃん、怪しい儀式で私の記憶を消そうとしたことなかった?」

すみれ「あんなの無理に決まってるでしょ。ちょっと怖がらせたかったってだけよ」

かのん「えぇ……」

可可「記憶を消す方法ならありマスよ」

恋「あるんですか!? 教えてください!」

可可「この電極を頭に付けてスイッチを入れれば、そのときに思い出していた記憶を消去できマス」

可可「50%の確率で他の記憶まで消してしまい、対象を廃人にするというデメリットがありマスが」

千砂都「さすがに失敗の可能性が高すぎるよ……」

すみれ「ちょっとデメリットが重すぎるでしょ……」
 
35: (あら) 2022/12/23(金) 22:11:41.06 ID:cTHjPEqe
恋「そんな危険なものを後輩たちに使うわけにはいきません。わたくしに考えがあります」

恋「後輩たちは、わたくしの過去の映像を見て怯えるようになったわけですから……」

恋「今度は逆に、わたくしが現在は別に怖くないという映像を見せればいいのです!」

かのん「なるほど! さすが恋ちゃん!」

恋「というわけで、かのんさんと可可さんには撮影に協力してもらいますよ」

可可「えー、せっかく1年生たちがレンレンを敬うようになったのに……」

恋「後輩たちは、以前からわたくしを敬ってくれていました。だから、怖がらせる必要などないんです」

恋「すみれさんも手伝っていただけますか? もう昼休みは終わりますから、放課後に撮影しましょう」

すみれ「分かったわ。私も悪かったしね」

千砂都「じゃあ、練習してる1年生たちは私が見てるね」

恋「すみません、千砂都さん。お願いします」
 
37: (あら) 2022/12/23(金) 22:15:19.54 ID:cTHjPEqe
放課後 部室

恋「まずは、すみれさんからです! 私が撮影しますから、こちらに向かって話してください」

すみれ「何を話せばいいの?」

恋「わたくしは怖くないということを説明してください」

すみれ「ああ、そういうこと。すごく直接的な方法ね。……まあ、分かったわ。じゃあ、始めるわよ」

すみれ「1年生たち、聞いてるかしら? 今の恋を恐がる必要なんてないの」

すみれ「確かに去年の恋は暴走してたけど、あれはちょっとおかしくなっちゃってたってだけなのよ」

すみれ「だから、今の恋まで怖がらないであげて。恋は優しい人なの。あなたたちも知ってるでしょ?」ネ?

恋「……はい、ありがとうございます。さすが、すみれさん。よかったですよ」
 
38: (あら) 2022/12/23(金) 22:18:44.54 ID:cTHjPEqe
恋「次は、かのんさんです! お願いします」

かのん「もう撮ってるの? あ、うん。分かった」

かのん「えっと、1年生のみんなに分かって欲しいのは……。まぁ、なんていうか、うん、その……」

かのん「前にも言ったと思うけど、恋ちゃんはすごい人なんだよ」

かのん「生徒会長だし頭もいいし、美人でスタイルもよくって、ダンスも得意で家も大きいし――」

恋「褒めてくださるのは嬉しいですが、もっと怖くないんだという方面の話をしてください」

恋「できれば、去年のわたくしをフォローしてくださると助かります」

かのん「えっと、去年の恋ちゃんは、その……。怖かったけど、学校のために一生懸命で、怖かったけど……」

かのん「怖かったけど、えーっと…………」

恋「そこで黙らないでください! というか、怖かったと連呼するのはおかしいでしょう!」バンッ!

かのん「ううぅ、ごめんね。やっぱり、こういうふうに撮られるのって苦手だなあ」
 
39: (あら) 2022/12/23(金) 22:22:12.93 ID:cTHjPEqe
恋「でしたら、先に可可さんです! 頼みますよ!」

可可「はい、任せてください!」

可可「1年生たち、レンレンはすごく優しいの人なんデス! あ、だからって舐めちゃいけませんけどね」

可可「ククも、レンレンの優しさには何度も助けられていマス。この前は、古文を教えてくれました!」

可可「あ、でも去年のレンレンには邪魔された回数の方が多かったかも……」

恋「余計なことは言わないでください! あぁ、撮り直しです!」

可可「す、すみませんっ!」

すみれ「前途多難ね」

かのん「映像じゃなくて、1年生たちに直に言うんじゃダメなのかな?」

すみれ「あんたら2人を見てると、生放送は危険な気がするわ」

かのん「あー、そうかも。緊張して変なこと言っちゃいそう」

可可「2人とも、話してないで助けてください! レンレンの指導が厳しすぎマス!」

恋「ほら、可可さん! もっと台詞に感情を込めてください。噛むなんて言語道断ですよ!」

可可「やっぱりレンレンは怖いの人デス~」ビエーン
 
40: (あら) 2022/12/23(金) 22:25:38.75 ID:cTHjPEqe
グラウンド

千砂都「ねぇ、みんな。ちょっといいかな」

夏美「なんですの?」

千砂都「最近、恋ちゃんのことを怖がってるよね。どうしてかな?」

千砂都「恋ちゃん、とっても悲しそうだったよ」

メイ「あっ、それは、その……。ちょっとあって……。なあ、きな子」ナ?

きな子「はいっす、その、ちょっとあったっす。ねえ、メイちゃん」ネ?

千砂都「ちょっと何があったの? その説明じゃ分からないよ」
 
41: (あら) 2022/12/23(金) 22:29:11.61 ID:cTHjPEqe
メイ「いや、去年の恋先輩の映像を見る機会があって、なんか怖くなっちゃって……」

きな子「今の恋先輩は違うっていうのは、きな子も頭では分かってるっす。だけど……」

千砂都「なるほど、そういうことかあ~」ウンウン

千砂都「確かに去年の恋ちゃんは、ちょっと怖かったかもしれないね」

千砂都「かのんちゃんに頼まれて、私も弱点を探したりしたもん。倒すべき敵だって感じで」

四季(千砂都先輩なら手段なんて選ばないだろうし、どうとでもなるのでは?)

千砂都「ん? 四季ちゃん? 何かな?」

四季「な、何でもないです!」ビクッ!
 
42: (あら) 2022/12/23(金) 22:32:47.74 ID:cTHjPEqe
千砂都「去年の恋ちゃんは今とは違うところも多いから、みんながギャップに驚くのも理解できるよ」

千砂都「だけどね、その本質は何も変わってなんかない。恋ちゃんは、去年からずっと優しい人だよ」

きな子「そ、そうっすか? 去年のあれを見ちゃうと……」

夏美「そうですの。とてもそうは思えませんの。去年の恋先輩は、すっごく怖い人ですの」

千砂都「そもそも、怖いからといって優しくないとは限らないと思うんだ」

千砂都「ねえ、みんなは私のことは怖いかな?」

メイ「あ、いや、それは……」オドオド

千砂都「さっき、四季ちゃんは私に怯えてるみたいだったね」

四季「すみません、勘弁してください」ビクビク

千砂都「他の2人は、どう思ってる?」

きな子「えっと、まあ、そうっすねえ……。あー、なんていうか、その……」アセアセ

夏美(沈黙は金ですの。私は貝になりますの)
 
44: (あら) 2022/12/23(金) 22:36:47.81 ID:cTHjPEqe
千砂都「ふふっ、ごめんごめん。みんなを恐がらせたいってわけじゃないんだ」

千砂都「部長として練習を厳しく仕切ってるわけだから、後輩たちに怖がられるのも織り込み済みだよ」

千砂都「もちろん愛されて恐れられるのがリーダーとしては理想だけど、それは難しいからね」

千砂都「どちらかしか選べないというのなら、私は怖れられる方がいい」

千砂都「そっちの方が絶対にLiella!のためになるし、みんなのためにもなると信じてるから」

きな子「……マキャヴェリの君主論っすか」

千砂都「うん、私はマキャヴェリストだからね」

夏美「似合いすぎて納得しかないですの」ボソッ

千砂都「夏美ちゃん、何か言いたいことがあるの? 沈黙は金じゃなかったのかな?」

夏美「…………」ブルブル

千砂都「沈黙は金って、四季ちゃんの好きな言葉だったよね」

四季「すみません、流れ弾は勘弁してください」ビクビク
 
48: (あら) 2022/12/23(金) 22:41:10.81 ID:cTHjPEqe
千砂都「こんなふうに後輩たちから怖がられてる私なわけだけど……」

千砂都「でも、嫌われてはないんじゃないかな」ネ?

千砂都「これが勘違いだったら、すっごく恥ずかしいけど……」

メイ「いや、嫌ってるなんてことは絶対にない! なあ、そうだよな!?」

きな子「メイちゃんの言う通りっす! 怖いかもしれないけど、嫌いってことはないっす!」

千砂都「ふふっ、ありがとう。でも、どうして? あんなに厳しくされると、嫌いになったりしない?」

四季「そんなことはない。私たちのために厳しくしてくれてるんだって、ちゃんと分かってるから」

夏美「そうですの! 沈黙は金ですが、これについては声を大にして言わせてもらいますの!」

千砂都「あー、よかった。みんなに嫌われてたら泣いちゃうとこだったよ」

メイ「千砂都先輩を嫌ってるなんてあるわけないだろ」

夏美「ですのですの」
 
49: (あら) 2022/12/23(金) 22:44:43.54 ID:cTHjPEqe
千砂都「でも、だったら恋ちゃんのことも受け入れてあげられないかな」

千砂都「去年の恋ちゃんがあんなだったのは、大切な学校を守るためだったんだから」

四季「学校を守る?」

千砂都「この学校って、恋ちゃんのお母さんが創設者なんだ。廃校になっちゃったのを復活させたらしくって」

千砂都「だから、恋ちゃんにとって結ヶ丘は本当に大切な場所なの」

きな子「創設者の娘だったっすか」ハエー

メイ「そういや、恋先輩は理事長先生と知り合いっぽい感じだったな」

千砂都「なんとか蘇らせたのはよかったけど、学校が軌道に乗るかの瀬戸際だったみたいで……」

千砂都「それで、恋ちゃんも必死だったんだよ」
 
50: (あら) 2022/12/23(金) 22:48:14.25 ID:cTHjPEqe
千砂都「確かに去年の恋ちゃんは、色々と間違えたかもしれない」

千砂都「それで傷ついたって人もいるだろうし、すべてをなかったことにはできないと思う」

千砂都「だけど、恋ちゃんは最初からずっと結ヶ丘のことを大切にしてくれてる」

千砂都「もちろん結ヶ丘の生徒であるみんなのこともね」

千砂都「もし後輩のみんなに何かあれば、真っ先に恋ちゃんが守ろうとしてくれるはずだよ」

千砂都「なかなか難しいとは思うけど、それだけは分かってあげて欲しいんだ」

1年生たち「「「「…………」」」」

メイ「私、恋先輩のとこに行ってくる」ダッ

夏美「待つですの! 私も行きますの!」ダダダッ

四季「千砂都先輩、ありがとうございました! メイ、待って!」タタタッ

きな子「千砂都先輩、失礼するっす! みんな、置いてかないでっすー」トタタタ

千砂都(ふうっ、分かってくれてよかった。……みんな、本当にいい子たちだな)フフッ
 
51: (あら) 2022/12/23(金) 22:51:43.46 ID:cTHjPEqe
廊下

恋(なんとか完成しました! この映像を見せれば、きっとみなさんも……)スタスタ

メイ「恋先輩!」

恋「メイさん! 実は、あなたに見てもらいたい──」

メイ「すみません、恋先輩! 恋先輩のこと、怖がったりしちゃって!」

恋「え!?」

夏美「確かに去年の映像の恋先輩は怖かったかもしれませんの。でも、それも結ヶ丘のためだったんですの!」

四季「去年の恋先輩が頑張ってくれたから、私たちも今の結ヶ丘で楽しく学校生活を送れてるわけだし……」

きな子「それに、恋先輩が後輩のきな子たちを心から大切にしてくれてるのは、ちゃんと伝わってるっす!」

メイ「恋先輩は、作曲だってあんなに丁寧に教えてくれてるのに……」

メイ「たった10分ぐらいの映像に惑わされるなんて、自分が情けない!」

1年生たち「「「「すみませんでした!!!!」」」」
 
52: (あら) 2022/12/23(金) 22:55:20.13 ID:cTHjPEqe
恋「はい、えっと……。まあ、分かっていただけたなら、それで……」

恋(昨日まではわたくしのことを怖がっていたというのに、いったい何があったんですか?)

夏美「ところで、恋先輩はスマホなんか握り締めてどうしましたの?」

恋「ああ、いや、これは……。なんでもありません」

恋「それより練習に遅れてしまい申し訳ありませんでした」

恋「今から屋上に行って、一緒にダンスの練習をしましょう!」

きな子「はいっす! 恋先輩と一緒に練習するの、きな子は大好きっす!」

四季「恋先輩のダンスの一番弟子は、この私だから。千砂都先輩にも師事してるけど」

メイ「おい! だったら作曲の一番弟子は私だぞ! 恋先輩と連弾する楽しさを知らないだろ!」

夏美「2人ともずるいですの! 恋先輩、私にも色んなことをたくさん教えて欲しいですの!」

恋「はい、もちろんです!」ニコニコ
 
53: (あら) 2022/12/23(金) 22:56:26.32 ID:cTHjPEqe
終わりです

なお、このSSは以下の素晴らしい作品に感銘を受けて書いたものです。
作者の方がここを見ている可能性は皆無でしょうが、この場を借りてお礼を申し上げます。

悟空「トランクスに悪人時代のベジータの映像を見せてみっぞ!」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1604931731/
 
55: (はんぺん) 2022/12/23(金) 23:34:38.28 ID:Ju/trgXb
乙!まさかのドラゴンボールSSリスペクトだったとは
 
57: (もんじゃ) 2022/12/24(土) 00:50:01.99 ID:2nDEiQ5v
その作者はいなくても作品を知っている人はこのスレにもいるくらい有名なんだね
 
54: (たこやき) 2022/12/23(金) 22:59:25.11 ID:waxLX6qT
乙でした
 

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1671795909/

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