【SS】恋「余物語」【ラブライブ!スーパースター!!】

SS


1: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 17:16:52.73 ID:uLme0475
スーパースター2期前の話
 
3: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 17:19:19.98 ID:uLme0475
――「Liella!のエース」
そう言われた時、最初嬉しかった。
去年、私の思い込みが原因で学校に生徒に多大な迷惑をかけてしまったことを振り返ると、その肩書がとても誇らしい。
でも、いつからかそんな思いの中に“疎外感”が芽生え始めて――。
 
5: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 17:22:29.13 ID:uLme0475
<音楽科教室>


音楽科生徒「ちょっと聞きたいんだけど……Liella!の嵐さんとかのんちゃんって、付き合ってるのかな?」


恋「……はい?」


音楽科生徒「前に噂で、嵐さんが普通科に移ったのってかのんちゃんといたいからって聞いて……その……」


恋「それは事実ですが、かのんさんと千砂都さんは幼馴染というだけで付き合ってはいないと思いますよ」


音楽科生徒「ほんとに!?よかったー!」


恋「まあ千砂都さんが普通科に移った理由はかのんさんのためですが……」


音楽科生徒「…………」ウルッ...


恋「ええっ!?あ、あの!私何か……」


音楽科生徒「ごめん……。実は私、かのんちゃんのことが好きなの……」


恋「はぁ…………はあ!?」
 
6: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 17:26:10.50 ID:uLme0475
音楽科生徒「文化祭とか、ラブライブの予選でLiella!のこと手伝ってたらかのんちゃんが声かけてくれて……」


恋「そ、そこから好きに……」


音楽科生徒「うん。きっかけはそれだけだけど、同じ学校って言ってもアイドルとファンだから……」


恋「えっと……ちょっと理解が……」


音楽科生徒「葉月さん!」


恋「はい!」


音楽科生徒「嵐さんにそれとなく聞いてもらっていい?」


恋「かのんさんにではなく千砂都さんにですか?」


音楽科生徒「かのんちゃんのことどう思ってるのかとか……」


恋「まあ、話を聞くくらいなら……」


音楽科生徒「ありがとう!さすがLiella!のエース!」

――この時はその娘のためというより、かのんさんと千砂都さん、二人の仲に入ることで私も二人に関わりたい―
芽生えていた疎外感を拭い去りたい。そう思っていました。
 
8: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 17:29:32.77 ID:uLme0475
<翌日 屋上>


千砂都「ほらほら!ラブライブ優勝するならこんなもんじゃダメだよ!」


かのん「はい!」


千砂都「よし!今日はここまでにしようか」


可可「はぁ……はぁ……可可一歩も動けまセン……。すみれ、抱っこ」


すみれ「何でよ。自分で帰りなさい」


可可「むぅ……」


すみれ「それよりかのん、新曲のことなんだけど……」


恋「千砂都さん、ちょっとよろしいですか?」


千砂都「どしたの?」


恋「あの……ちょっとここでは……」


千砂都「わかった。かのんちゃん、先に下で待ってて」


かのん「うん。おっけー」


千砂都「恋ちゃん、音楽科のレッスン室でいい?」


恋「はい」
 
9: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 17:32:02.46 ID:uLme0475
<レッスン室>


千砂都「それで、話って?」


恋「それは……その……」


千砂都「…………」


恋「あ、いえ……」


千砂都「ふふっ、なんか初めて話したとき思い出しちゃうね」


恋「そういえば、あの時もなかなか言い出せませんでしたね」


千砂都「それで……悩み?」


恋「いえ、悩みではないのですが……」


千砂都「もしかして、誰か好きな人ができた……とか?」


恋「!?」


千砂都「えっ!?図星!?」


恋「ち、違います違います!私ではなくて、友人のことで……」


千砂都「あー……友達の、ね」


恋「あの……思い切って聞きますが、千砂都さんとかのんさんはお付き合いをしているのですか?」
 
10: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 17:35:51.22 ID:uLme0475
千砂都「そういうことか……」


千砂都「その友達は、かのんちゃんのことが好きなんだね?」


恋「えっ?そうですが……」


千砂都「で、恋ちゃんを通して、私とかのんちゃんのことを聞いてほしい、と」


恋「どうしてわかったのですか?」


千砂都「これでもかのんちゃんの魅力は誰よりも知ってるから」


千砂都「でも説明しにくいなぁ……」


恋「どういうことでしょうか」


千砂都「前に私とかのんちゃんは幼馴染だって、話したよね?」


恋「ええ」


千砂都「その時からずっと今みたいな関係だから、どっちかが『好きだから付き合おう』って言った訳じゃないの」


恋「では、付き合ってはないと?」


千砂都「でもおそらく普通の恋人同士がやってることは、経験してるかも」


恋「そ、それは……キ、キスとか……ですか?」


千砂都「まあ、その辺は……ね」
 
11: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 17:38:57.40 ID:uLme0475
千砂都「多分かのんちゃんに聞いても同じような答えになると思う」


恋「そう……ですか」


千砂都「その友達には正直に全部話していいから」


恋「いいのですか?」


千砂都「誰かを好きになる気持ちはどうこう出来るものじゃないから……」


千砂都「この話を聞いて、その友達が諦めるのか告白するのかは彼女次第。それに口出しする権利は私にはないよ」


恋「ですがもし、かのんさんが告白を受け入れたら?」


千砂都「それはないよ」


恋「言い切るのですね」


恋「でもそこまで言うのなら、付き合ってしまえばいいのでは?」


千砂都「う~ん……今更恥ずかしいっていうのもあるけど、五人グループでカップルが何組も、っていうのはちょっと……ね」


恋「なるほど」
 
12: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 17:42:21.55 ID:uLme0475
――翌日私はその音楽科の生徒に千砂都さんの話を伝えました。



<翌日 音楽科教室>


音楽科生徒「そっか……やっぱりそうだよね……」グスッ...


恋「あの……これからどうするのですか?」


音楽科生徒「二人の中に今更割って入るなんてできそうもないから……」


恋「諦めてしまうのですか?」


音楽科生徒「うん……。悔しいけど私は嵐さんにはかなわない。嵐さんからかのんちゃんを奪う度胸も強さもないから」


恋「そうですか」


音楽科生徒「あっ、でもLiella!はこれからも応援するよ!」


恋「ありがとうございます」


音楽科生徒「でも、葉月さんて失恋したことなさそう」


音楽科生徒「あ、変な意味じゃないよ?なんかお嬢様だから、幼いころから許嫁が決まってて……みたいな」


恋「私は……」


――そういえば私は今まで失恋どころか、恋愛というものをしたことがありませんでした。
思えば、お母様がいたころはクラシックバレエに打ち込み、亡くして以降は学校のことで手一杯で……。
思えば色恋というものにずっと縁がなかった人生で……。
 
13: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 17:45:45.15 ID:uLme0475
<数日後>


千砂都「まあ、無理にするものじゃないからね。恋愛って」


恋「はあ……」


千砂都「ありきたりな言葉で言ったら『恋はするものじゃなくて、落ちるものだから』」


恋「そういうものでしょうか……」


千砂都「私だって昔からかのんちゃん一筋だったから、恋愛っていう恋愛はしてこなかったし」


千砂都「それに今はラブライブ優勝が目標だからね。恋してる暇なんてないよ」


恋「なるほど……」


千砂都「もし恋をしてみたいっていうんだったら、恋愛系のマンガとか小説はどう?」


恋「創作物で疑似体験するということですか」


千砂都「マンガとかなら私も読むし、登場人物の関係にドキドキして『私もこんな恋してみたいなあ』なんて思うかもよ」


恋「たしかに……。実践の前にちゃんと座学で学ぶ必要がありますね」


千砂都「ちょっと違うけど、まあそんな感じかな」


――そのあとすぐに私は図書館に行き、百年以上前の古典文学から同世代で今流行っているといわれてる
胸キュンマンガを借りては毎晩読みふける―そんな毎日を過ごすようになりました。


そんなある日――
 
15: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 17:49:35.79 ID:uLme0475
<数日後 部室>


可可「レンレン」


恋「あ、可可さん。いらしてたのですね」


可可「今度は何読んでるデスか?」


恋「え、えっと……スクールアイドルの子が幼馴染の女子生徒を押し倒すという……少々過激な……」


可可「はえ~……可可も読んでみたいデス」


恋「あの……よかったら今度貸しましょうか?」


可可「本当デスか?……って違いマス!」


恋「へ?」


可可「千砂都から聞きマシタ。レンレン最近恋愛を勉強中だと」


恋「ええ……まあ、お恥ずかしながら恋愛をしたことがなかったもので……」


恋「将来もし私が嫁いだ時のためにこうして勉強を……」


可可「レンレン!お願いがありマス!」


恋「!?な、なんでしょうか……」


可可「可可の……恋の応援をしてくだサイ!」
 
16: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 17:53:01.60 ID:uLme0475
恋「……恋の応援ですか……」


可可「はいデス」


恋「恋の……ってええっ!?恋ってその……つまり……」


可可「レンレン落ち着いてくだサイ!」


恋「す、すみません。つい取り乱してしまいました」


恋「しかし、恋というのは……」


可可「実は可可……す、すみれのことが……好きで……」ゴニョゴニョ


恋「すみれさんが!?」


可可「レンレンしーっ!声が大きいデス」


恋「はわわわ……。と、突然のことで頭の整理が……」


恋「でも意外でした。まさか可可さんがすみれさんのことを……」


可可「うぅ~……恥ずかしいデス……」


恋「しかし、私に応援というのは……?」


可可「はい。あのグソクムシは可可のことをただのクラスメイトとしか見ていまセン!」
 
17: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 17:57:16.12 ID:uLme0475
恋「そうでしょうか。すみれさんは可可さんにも気さくに接していると思いますが……」


可可「それでは意味がありまセン!」


恋「!?」


可可「すみれには可可のことを特別す、好きに……なってもらわなければ……」ゴニョゴニョ


恋「なるほど。私が可可さんの気持ちを代弁して、すみれさんに伝えればいいのですね?」


可可「全っ然違いマス!こ、告白は可可が自分でしマス……」


恋「では私は何を?」


可可「レンレンにはすみれに可可の良さをそれとなくアピールしてくだサイ」


恋「つまり、すみれさんからも可可さんに好意が向くように仕向ける、と」


可可「ステマデス!ステルスマーケティングデス!」


恋「?よくわかりませんが、私でよければ力になりましょう」


可可「よろしくお頼み申しマス!」


恋「どこで覚えたのですか?そのような日本語」
 
18: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 18:00:51.65 ID:uLme0475
<翌日 部室>


恋(ああああ~……。どうすればよいか考えているうちにもう放課後です……)


すみれ「かのん。ラスサビの歌詞割りなんだけど」


かのん「やっぱり変えたほうがいいかな?」


恋「……」チラッ


可可(レンレンほら!今デス!)


恋(何やら可可さんが先ほどから目で訴えてきます……)


恋「う~……わかりました!」ガタッ


4人「!?」


千砂都「恋ちゃんどうしたの?」


恋「……」ツカツカ


かのん「恋ちゃん?」


恋「……」ピタッ


恋「すっ、すみれさん!」


すみれ「な、何ったら何よ」


恋「私と付き合っていただけませんか!?」


4人「!!??」
 
19: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 18:03:47.12 ID:uLme0475
すみれ「……はい?」


かのん「れれれ、恋ちゃん!?」


千砂都「これはもしや……」


可可「ちょっと待つデス!」


千砂都「キターーーー!伝説のちょっと待ったコール!!」


恋「可可さん?」


すみれ「あんたまでどうしたっていうのよ」


可可「レンレン!ちょっとこっち来るデス」


恋「え?は、はい……」


可可「レンレンはこの後どうするつもりでシタ?」


恋「えっと……すみれさん可可さんの良さを知ってもらうためにプレゼンを……」


可可「……」


恋「何ですか?苦々しい顔をして」


可可「やはりレンレンに相談したのは間違いでシタ……」


恋「あのー……」


可可「わかりまシタ。レンレンはこれからすみれとカフェかどこかに行ってくだサイ」


恋「カフェですか」


可可「そこでさりげなく、本っっっ当にさりげなく可可を褒めてくだサイ」


恋「可可さんは一緒に行かないのですか?」


可可「可可がいないところで褒めるのが作戦の肝デス。可可は二人の後ろからこっそりついていきマス」


恋「わかりました」
 
20: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 18:07:22.58 ID:uLme0475
可可「ちなみに、レンレンは可可のことどう褒めるつもりデスか?」


恋「それはもちろん、衣装担当として素晴らしいセンスを持っていて……」


可可「うんうん」


恋「感情を表に出し、表情がころころ変わるところがとても愛らしく……」


可可「うん?」


恋「素直ではありませんが結構友情に厚いと」


可可「褒めてマスか?それ」


恋「もちろんです!」


すみれ「コソコソ話は終わった?」


恋&可可「「!?」」


可可「す、すみれ!?」


すみれ「ちょっと驚きすぎじゃない?」


すみれ「それで恋、さっきのことなんだけど……」
 
21: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 18:10:17.58 ID:uLme0475
恋「それは……」チラッ


可可「……」グッ


恋「あ、あの!これからカフェに行きたいと思い、すみれさんならおすすめの場所をご存じではないかと」


すみれ「ああ、そういうこと。いいわよ」


恋「本当ですか!?」


すみれ「なんか、大げさすぎない?ま、いいけど」


恋「ではこの後下で待っていてください。私もすぐに向かいますから」


すみれ「そう。なら先待ってるから」


恋「はい」


可可「いいデスか?さりげなくデスよ。さりげなく」


恋「任せてください。必ずやだだ下がりしている可可さんの評価を上げてみせます」


可可「え……?そこまで可可の評価低かったデスか……?」
 
22: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 18:13:44.56 ID:uLme0475
<校門>


恋「お待たせしました」


すみれ「用意できた?じゃ、行きましょ」


恋「ちなみにどちらに向かわれるのですか?」


すみれ「そうね……最近できた人気のお店で、ベーグルが美味しいらしいのよ」


恋「すみれさんも行ったことないのですか?」


すみれ「そうね。いつも並んでたり、なかなかタイミングが合わなかったりで、いつか行ってみたいと思ってたのよ」


恋「ベーグル……私も気になります!」


すみれ「なら、すぐに行くわよ。もう並んでるだろうし」


恋「はい!」


――……って、違います!今の私は大事な使命を帯びているのですから!しっかりしなくては!
しかしそれはそれとして、人気のベーグルは気になります!
 
23: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 18:18:17.64 ID:uLme0475
~~~~~~~~~~~~


可可「…………」ジーッ...


可可(なんだか楽しそうデス……)


千砂都「可可ちゃんお疲れ様のうぃーっす!」


可可「くぁwせdrftgyふじこlp;@:!!!!????」


千砂都「えっ!?なっ……」


可可「ち、ちち千砂都!しーっ」


千砂都「な、何?どうしたの……ん?すみれちゃんと恋ちゃん?」


可可「そうデス」


千砂都「ふぅん……放課後デートだ」


可可「デッ……!?違いマス!これには訳が……」


千砂都「?」
 
24: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 18:22:05.29 ID:uLme0475
~間~


千砂都「そういうことね。それであの二人が……」


可可「レンレンは可可の優秀な手先なのデス」


千砂都「……ふぅん、そっか」


可可「それで、なぜ千砂都まで付いてくるデスか?」


千砂都「なんでって……面白そうだから?」


可可「……」


千砂都「ごめんごめん。冗談だって。私にもちょっと原因があるし、ね」


可可「ぁえ?」


千砂都「ううん。こっちの話」


千砂都「でもいいの?このままだと見失っちゃうよ?あの二人」


可可「あっ!『レンレン追っかけ隊』行動開始デス!」


千砂都「え?何そのネーミング……」
 
25: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 18:26:21.59 ID:uLme0475
~~~~~~~~~~~~


<渋谷>


恋「この辺りはなかなか一人で来ないので新鮮です」


すみれ「平日とは言っても放課後になれば私たちみたいな学生でにぎわうから、迷子にならないでよ」


恋「は、はい……!あっ……!」


すみれ「前にかのんと休日に来たときはこれより酷くて、かのんが人ごみに飲まれて大変だったんだから……って恋!?」


恋「すみれさん、こっちです!」


すみれ「ちょっと、あんたまで迷子にならないでよ」


恋「すみません」


すみれ「何見てたの?」


恋「このブランケット、チビに似合いそうだと思いまして……」


すみれ「いや、まあ確かにかわいいはかわいいけど……」


恋「あっ、立ち止まってすみません。ベーグル屋さんに行きましょう」


すみれ「いいじゃない。ちょっと寄っていきましょ」


恋「あの、お店のほうはいいのですか?」


すみれ「別に今行っても並んでいるだろうし。それに今日は恋が誘ったんだから、恋が行きたいところにしましょ」


恋「ありがとうございます!」


すみれ「っていうか、ここは輸入雑貨……の店?」
 
27: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 18:31:32.31 ID:uLme0475
~~~~~~~~~~~~


千砂都「お店……中入っちゃったね。どうする?」


可可「う~……お店に入るのはさすがにバレてしまいマス……」


千砂都「う~ん……じゃあさ、少しだけ様子見て時間がかかりそうなら、帰ろ?」


可可「しかし……」


千砂都「恋ちゃんのことなら心配ないよ。確かに抜けちゃうところもあるけど、やるときはやってくれる。でしょ?」


可可「そうデスね……確かに抜けてマスが……」


千砂都「それに……あの二人、楽しそうにしてるよ?」


可可「…………それはそれでモヤモヤしマス……」


千砂都「可可ちゃん?」


可可「う~~……わかりマシた!後10分だけ待ってやるデス!」


千砂都「オッケー!じゃ、何か飲み物買ってくるね。可可ちゃん何飲む?」


可可「ココアお願いしマス!」
 
28: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 18:35:45.63 ID:uLme0475
~~~~~~~~~~~~


<輸入雑貨店>


恋「先ほどのブランケットもチビに似合いそうでしたが、こっちのも似合いそうです」


すみれ「へぇ……ここペット用のも売ってるのね……って値段がギャラクシーすぎる!」


恋「しかし色が……できれば、色は青がいいのですが……」


すみれ「別に青にこだわらなくてもいいんじゃない?」


恋「チビには青がいいんです!」


すみれ「う~ん……でもチビが白でスカーフが青なら……」ガサガサ


恋「すみれさん?」


すみれ「ブランケットは紫なんてどう?」


恋「ですから、うちのチビには……よさそうですね」


すみれ「でしょ?それか、思い切って赤……だと印象が散らかるから、少し色を寄せてオレンジとか」


恋「それいいです!」


すみれ「ね?青にこだわらなくても、かわいくなれるのよ」


恋「まあチビは元々かわいいですからね」
 
29: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 18:40:40.35 ID:uLme0475
恋「でも、さすがすみれさんですね」


すみれ「まあね」


すみれ「ま、でも本当のこと言うと、可可がかのんに言ってたことなんだけどね」


恋「そうだったんですか」


すみれ「だから今回のはただの受け売りよ」


恋「そんなことありませんよ」


すみれ「いいのよ、お世辞なんか」


恋「お世辞ではありませんよ。私はすみれさんのアドバイスでこのブランケットに決めたんです」


恋「それは可可さんやかのんさんではなく、すみれさんが勧めてくれたから決めたんですよ」


すみれ「恋……は、恥ずかしいったら恥ずかしすぎるのよ!」


恋「そうですか?」


すみれ「……でも、ありがと」
 
30: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 18:45:41.85 ID:uLme0475
~~~~~~~~~~~~


千砂都「う~ん……なかなか出てこないね」


可可「すみれとレンレンは中で何してるデスか」


千砂都「なんかペットグッズなんかも売ってる輸入雑貨のお店みたいだね。きっと恋ちゃんが行きたいところなんだろうね」


可可「……可可、もう帰りマス……」


千砂都「いいの?」


可可「きっとレンレンなら可可のミッションをこなしてくれるはずデス……」


千砂都「可可ちゃん……」


千砂都「そうだ!せっかくだからこの先のクレープ食べに行かない?」


可可「はい?」


千砂都「偶然、たまたま、ひょっこり、まるっと今ちょうどクーポン持ってるんだなー。そこのクレープ屋の」


可可「…………」


千砂都「だからさ……食べていかない?」


可可「……せっかくのクーポンを無駄にはできまセン。行きまショウ」


千砂都「よしきた!」


可可「レンレン……あとは頼みマス……」
 
31: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 18:50:24.20 ID:uLme0475
~~~~~~~~~~~~


恋「今日はありがとうございました!」


すみれ「後でチビの写真送りなさいよ」


恋「はい。それもそうですが、本当ならベーグルを食べに行くはずでしたのに」


すみれ「いいのよそれは。どうせ放課後はいつも混んでるし」


恋「でもいつか食べてみたいです」


すみれ「食べるならそうね……やっぱり平日の午前中かしら」


恋「しかし、午前中は学校が……」


すみれ「たまにはサボる?」


恋「いけません!そんな……」


すみれ「冗談ったら冗談よ」


恋「もうすみれさん……」


すみれ「悪かったわよ。じゃあ来週の土曜日、授業終わってからでどう?」


恋「来週の土曜……ですか」
 
32: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 18:53:55.99 ID:uLme0475
すみれ「その日ならかのんはお店の手伝いだし、たしか千砂都もバイトだったわよね」


恋「そう……でしたね」


すみれ「だから、その日に行かない?リベンジ」


恋「わかりました。その日にしましょう」


すみれ「あ、そうだ。ひとついい?」


恋「なんでしょうか?」


すみれ「恋もおすすめの場所を探すこと」


恋「私のおすすめ……ですか」


すみれ「そ。恋が行きたいところ。私にも紹介しなさい」


恋「しかし……」


すみれ「恋、自分のセンスを信じなさい。私はあんたのセンス気に入ってるんだから」


恋「すみれさん……」


恋「わかりました。頑張ってみます!」


すみれ「その意気よ」


恋「では、また学校で」


すみれ「また明日ね」
 
33: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 18:57:43.09 ID:uLme0475
<その晩 葉月邸>


チビ「BOW!」


恋「わあ~……!さすがチビです~~!世界一似合ってます~!」


サヤ「こちらが先ほどお嬢様がお話しされていた……」


恋「はい!すみれさんにコーディネートしていただいたブランケットです」


サヤ「そうですね。チビによくお似合いです」


恋「はい!」


   ピロンッ


恋「可可さんから?」


可可
≪作戦どうでした?≫


恋「作戦?」


恋「…………」


恋「………………っ!!!!」


サヤ「お嬢様?」


恋「どどどどうしましょう!!わた、私っ!」


サヤ「お嬢様、落ち着いてください」
 
34: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 19:03:17.61 ID:uLme0475
   bbbbbbbb...


恋「!?今度は電話?しかもすみれさんから……?」


恋「ちょっと、失礼します」


サヤ「はい」


恋「も、もしもし……」


すみれ『もしもし恋?』


恋「は、はい!」


すみれ『……何かあった?』


恋「い、いえ何も……。あっ!チビの写真ですよね!今送りま―」


すみれ『恋、可可と何かあった?』


恋「へぇっ!?なっ、ど……」


すみれ『やっぱり何かあったのね』


恋「えっと……はい」


すみれ『今日は楽しかったけど、恋から誘ってくるなんて珍しいもの』


恋「すみません……」


すみれ『別に謝らなくてもいいけど、私には言えないこと?』


恋「そのようなことは……」
 
35: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 19:07:02.55 ID:uLme0475
すみれ『可可のことなら大丈夫よ』


恋「はい?」


すみれ『どうせあの子、私と口論になったこと気にしてるんでしょ』


恋「いえ、そういう……」


すみれ『私もだけど、可可も本気でLiella!のこと思ってる』


すみれ『だから時々言い合いになることもあるの』


恋「それは分かりますが……」


すみれ『別に可可のこと嫌いだからとかじゃないから』


恋「……」


恋「では、好きなのですか?可可さんのこと」


すみれ『……そうね、あの子が本気だから私も本気でスクールアイドルをやれる。“ラブライブ!”を目指せる』


すみれ『だから好き……っていうより、ライバル……かしらね』


恋「そうですか……」


すみれ『ま、普段はほっとけない妹みたいな存在だけど』


すみれ『あ、このこと本人に言うと嫌がるから内緒ね』


恋「はあ……」
 
36: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 19:11:30.09 ID:uLme0475
すみれ『なに?恋は可可のこと苦手?』


恋「い、いえ!そのようなことは……」


恋「それに……」


恋「私は好きです!すみれさんと可可さんが仲良く言い争いしている姿!」


すみれ『恋……』


すみれ『ふふっ、何よそれ。言い合ってるのが好きって。あははっ』


恋「えっと……それは……」


すみれ『とにかく、私と可可のことは心配いらないわ』


すみれ『それに可可のことじゃなくても、私でよかったら相談のるわよ』


恋「ええ、ありがとうございます」


すみれ『じゃ、また明日』


恋「はい、また明日。おやすみなさい。」


すみれ『おやすみ』
 
37: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 19:15:10.74 ID:uLme0475
   Pi


恋「……ふう…………」


恋「とりあえず、可可さんに報告ですね」



≪あの後私のわがままで雑貨屋さんに行きました。そこで≫


恋「“そこで”……。これは正直に言うべきでしょうか……」


恋「…………」



≪言われたとおり、可可さんのこと話しました。≫


――これが初めての噓。


――しかし、取り返しのつかない嘘。


可可
≪謝謝。それでは明日作戦会議です!🙃≫


恋「明日から……そう明日から可可さんの力になれるよう頑張りましょう!」


チビ「BOW?」
 
38: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 19:19:32.57 ID:uLme0475
<翌日>


可可「レンレーン!」


恋「あっ、可可さん」


可可「今日も二人で頑張りまショウ!」


恋「え、ええ」


可可「戦いは数デス!レンレン。これでニブチングソクムシも振り向いてくれマス」


恋「あの、可可さんもアピールしてくださいね?」


可可「もちろんデス。昨日のカンジではどうでシタ?」


恋「えっと……こ、好感触でしたよ……」


――また嘘を……。本当は妹みたいとしか言ってなかったのに。
けれどこれも可可さんのため。可可さんとすみれさんが結ばれるための……。


恋「ですから、可可さんも積極的に行動したほうがいいと思いますよ」


可可「それは有益な情報デス!ありがとうございマス!」


――これで良いのです。これで。
そして私も可可さんのために……。
 
39: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 19:23:08.16 ID:uLme0475
<放課後>


千砂都「じゃあ、夜くらいに来週の練習メニュー送るから」


すみれ「かのん。前に言ってた動画撮影の話なんだけど、金曜の夕方からならうちの神社使っていいって」


かのん「ほんと?すみれちゃんありがとう!大好き!」


すみれ「はいはい」


可可「すみれー!」


すみれ「ああ、可可。どうしたの?」


可可「ヒッジョーーに遺憾ではありマスが、すみれの意見を聞きたく……」


すみれ「嫌そうに、何なのよ」


可可「入学式のステージの衣装のことデス」


すみれ「そのことなら、こないだ私が口挟もうとしたら「余計なお世話デス!」って突っぱねたじゃない」


可可「そ、それは……」


すみれ「今更何を聞くのよ」


可可「うっ……」


恋「すみれさん!そ、それは私の提案なんです」


すみれ「恋?」


可可「レンレン……!」
 
40: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 19:27:11.64 ID:uLme0475
恋「えっと……はっ!今度の曲のイメージとしては、現在の衣装にもう一つ何か欲しいと思いまして」


すみれ「それならかのんに聞けば?」


恋「それは……」


可可「可可はすみれがいいデス!」


恋「そうです!私もデザインに関してはすみれさんがいいと思います」


すみれ「……まあ、二人がそこまで言うならわかったわよ」


可可「すみれ……」


恋「ありがとうございます」


すみれ「それで?衣装どうしたいの?」


可可「あの……センターのリボンをどこにつけるかで悩んでまシテ……」


すみれ「それなら他のメンバーをタイにして……それで……」


恋「では私はこれで」


――そうです。何も難しく考えることはありません。
可可さんとすみれさんが仲良くするようアシストすればいいだけです。
そう思うと幾分気持ちが楽になりますね。
 
41: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 19:30:15.19 ID:uLme0475
――それから私は微力ながら可可さんの恋のお手伝いをこなしていきました。


<翌日 放課後>


千砂都「じゃ、私はこれからバイトだから」


かのん「うぃっすー」


千砂都「うぃっすー」


5人「うぃっすー!」


恋「すみれさん、ちょっとよろしいでしょうか」


すみれ「なに?」


恋「えっと……可可さんと帰りませんか?」


すみれ「はあ?」


恋「あ、いえ……そういうことではなく……。私もご一緒したいのですが、生憎生徒会がありまして……」


すみれ「いや、私はかのんと帰る約束してるから」


恋「そうなのですか!?なら、3人で……」


すみれ「……まあ、いいけど」


可可「すみれー!カバン持ちジャンケンしまショウ!」


すみれ「小学生か!」
 
43: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 19:34:28.58 ID:uLme0475
――微力ながら可可さんの恋のお手伝いを……。


<数日後 お昼休み>


可可「すみれー!ランチデス!可可は争奪戦を勝ち抜いたヤキソバパンデス!」


すみれ「うちの学校、パンの争奪戦とかないから。テンション高くない?」


可可「そうデスか?とにかく一緒に食べまショウ!」


すみれ「いいけど、その前にちょっといい?」


可可「はい?」


すみれ「恋、いつまで教室の前でうろうろしてるつもり?」


恋「ええっ!?気づかれていたのですか?」


すみれ「気づかれないとでも?」


恋「あの……お気遣いなく」


すみれ「はあ……一緒に食べる?お昼」


恋「いいのですか!?……あ、いえ違います」


すみれ「何言ってんのよ。ほら」


恋「はい……」
 
45: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 19:37:52.48 ID:uLme0475
――微力ながら恋のお手伝いを……。


<翌日 授業中>


可可「すみれー!体操着を忘れてしまったノデ、貸してくだサイ」


すみれ「同じクラスなんだから、貸せるわけないでしょ。私だって次体育よ」


すみれ「借りるなら恋のとこ行きなさいよ」


千砂都「音楽科は体育選択だから持ってないんじゃないかな」


可可「では下だけ!ブルマだけ貸してくだサイ」


すみれ「下だけ貸したところで意味ないでしょ。っていうか、ブルマとか持ってないわ」


可可「そうデスか……。なら、ククがこのブルマ履きマス」


すみれ「何よ。あんたが持ってんじゃない」


すみれ「いや履くな!」
 
46: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 19:42:03.57 ID:uLme0475
――微力ながらお手伝いを……。


<同日 授業中>


可可「すみれすみれー」コソッ


すみれ「何よ」


可可「可可教科書を忘れてしまったノデ、見せてくだサイ」


すみれ「あんた今日手ぶらで来たの?」


可可「はあ?何言ってるデスか。手ぶらなら衣装作れるわけありまセン」


すみれ「おう、喧嘩売ってんの?」


可可「ほらさっさとするデス」


すみれ「もうわかったわよ。ほら、こっちきなさい」


可可「は?何を言うデスか。すみれがこっち来るデス」


すみれ「なんでよ!」


千砂都「すみれちゃん、今授業中だから静かに」


すみれ「ギャラクシー!!」
 
47: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 19:45:11.63 ID:uLme0475
――微力ながら……。


<同日 夜 葉月邸>


恋(あれ?果たして私は役に立っているのでしょうか)


恋(というか、今日にいたっては何もしてませんよね?私)


恋「私、何のためにいるのでしょう……」ボソッ...


   ピロンッ


恋「!」


すみれ
≪明日ホームルーム終わったら部室待ち合わせでいい?≫


恋「明日……。あ、ベーグル屋に行く約束でしたね」



≪わかりました。明日は生徒会の用事もあるので、先に待っていてください≫


すみれ
≪りょ✌。恋のおすすめのお店も楽しみにしてるわよ≫


恋「あっ!そういえばそのような約束を……」


恋「えっと……週末に二人で行くのに最適なお店……」


恋「あそこしかありませんよね」



≪ご期待に添えられるよう頑張ります。≫


――そういえば、明日のこと可可さんに言ってませんでした。
 
48: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 19:48:07.14 ID:uLme0475
<翌日 渋谷>


恋「やはり前と比べると人出すごいですね」


すみれ「こないだみたいにボーっとしてると、本当にはぐれるからね」


恋「はい、わかりま……あっ」


すみれ「ほら、言わんこっちゃない」ギュッ


恋「えっ」


すみれ「手を繋いでおけば流されないで済むでしょ」


恋「あ、ありがとうございます」


――この時のすみれさんはいつもより頼もしくて、いつもより素敵で、いつもより……。


すみれ「ほら、あの行列になってるとこ。あそこよ、言ってたベーグル屋」


恋「……あっちのコンビニまで並んでますが」


すみれ「よかったわね。今日は短いほうよ」


恋「そうなのですか?」


すみれ「そうよ。ほら並んだ並んだ」


恋「あっ、はい!」
 
50: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 19:51:36.80 ID:uLme0475
~~~~~~~~~~~~


すみれ「悩んでたようだけど、何頼んだの?」


恋「私はトマトベーコンベーグルサンドと紅茶を。一番人気と書いてありましたから」


すみれ「ま、それがベターね」


恋「すみれさんは?」


すみれ「私は春限定の海老カツベーグルサンドよ。あとカフェオレ」


恋「それも美味しそうですね」


すみれ「シェアする?」


恋「はい!」


すみれ「と、その前に」


恋「?」


すみれ「インスタ用に写真撮らなきゃ、ね」


恋「なんか、すごく女子高生という感じがします」


すみれ「そういえば恋ってそういうSNSやってないわよね」


恋「そうですね。そういったものは苦手なので」


すみれ「やってみたら?」


恋「しかし……」


すみれ「ま、無理にとは言わないし、意外と恋みたいな子が炎上するのよね」


恋「それはどういう意味ですか?」


すみれ「そういうとこじゃないかしら……」
 
51: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 19:55:40.35 ID:uLme0475
~~~~~~~~~~~~


すみれ「でね?そこで私はソイツに言ってやったわけ。「ギャラクシー」ってね」


恋「ふふっ、さすがすみれさんですね」


すみれ「それからよ。私がショービジネスに好機を見出したのは」


恋「そうだったのですね」


すみれ「そしてかのんに出会って、救われてスクールアイドルになった」


恋「救われて、ですか」


すみれ「そうよ。でもこれ以上は秘密だから」


恋「確か、かのんさんがすみれさんをスカウトしたんですよね。かのんさんから聞きました」


すみれ「かのんってばホント……」


恋「なんかすみません」


すみれ「いいのよ。悪いのはかのんなんだから」


恋「あの可可さんとは?」


すみれ「可可?」


恋「前に妹でライバルだと」


すみれ「そうよ。ほっとけないっていうか、なんて言ったらわかんないけど」


恋「……」
 
52: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 19:58:09.67 ID:uLme0475
すみれ「忘れがちだけどあの子、家族の反対を押し切って一人で日本に来て頑張ってる……」


すみれ「改めてすごいと思うわよ」


恋「わかります」


――可可さんについて語るすみれさんはなぜだかとても優しそうな顔で、まるで本当に妹を思う姉のようで……。


――そしてどうして私はそんな風に語られる可可さんのことを少しうらやましく思ってしまうのでしょうか。


すみれ「恋、聞いてる?」


恋「はっ、すみません」


すみれ「そういう恋はどうなの?」


恋「はい?」


すみれ「恋は可可のことどう思ってるのよ」


恋「私は…………」


――仲間?親友?メンバー?どうして今言葉に詰まったのでしょう。


――私にとって可可さんは――――。


すみれ「あっ、時間!恋のおすすめの場所行く前に日が暮れちゃうじゃない!」


恋「そ、そうですね!ご案内します」


――今は可可さんではなく、私がすみれさんを楽しませなければ!


恋「では、もう一度手を繋いでもらえませんか?」
 
53: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 20:00:22.89 ID:uLme0475
~~~~~~~~~~~~


すみれ「この辺りって……」


恋「私がご紹介したいお店はこちらです!」


すみれ「“飲む焼いも”……」


恋「はい!」


すみれ「……正直恋をなめてたわ。だってここめちゃくちゃ有名じゃない!」


恋「頑張りました!」


すみれ「まさか恋とここに来るとは……あ、いや今のは失言だったわね」


恋「いいんです。白状すると少し千砂都さんの力を借りましたから」


恋「といってもここを選んだのは私ですし、千砂都さんにはそれとなく聞いただけですから」


すみれ「それとなく?」


恋「はい!「今度すみれさんと飲む焼きいもを食べに行くのですがどうでしょうか」と」


すみれ「さりげなく、ね……」


すみれ「ま、まあ今は飲む焼いもを楽しみましょ」


恋「はい!」


すみれ「え?これ上にフツーに焼き芋が乗ってるのね」


恋「はい!クリームにもサツマイモが使用されてるのでサツマイモ尽くしです!」
 
54: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 20:06:50.49 ID:uLme0475
~~~~~~~~~~~~


恋「これもインスタに?」


すみれ「当たり前じゃない。私だってこれ初めてなんだから」カシャ


すみれ「ほら、恋も」


恋「私もですか?」


すみれ「そうよ。ほらこっち来て」


恋「は、はい」


カシャ


すみれ「これでよしっと。じゃ、行きましょ」


すみれ「これならテイクアウトで飲み歩きできるわね」


恋「どこに向かうのですか?」


すみれ「決めてないけど、恋はどっか行きたいとこある?」


恋「いえ、特には……」


すみれ「なら町ブラと行きましょ」


恋「町ブラ?」


すみれ「ま、散策かしらね」


恋「なるほど。お供します!」
 
55: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 20:10:33.67 ID:uLme0475
~~~~~~~~~~~~


すみれ「この辺はよく来るの?」


恋「いえ、今回のことで初めて色々調べました」


すみれ「恋のことだから、てっきり通りの先にあるパン屋かと思ったわ」


恋「パン屋ですか?」


すみれ「そ。あそこのパン屋、パンも有名だけど手作りの季節限定芳醇果実ジャムも美味しいのよね」


恋「はい…………?」


すみれ「もしかして知らなかった?」


恋「なんですか?その甘美な名前のジャムは」


すみれ「いや、知らなかったのならいいの別に。ベーグル、芋ときて今からパンはさすがに炭水化物が……」


恋「ちょっと見るだけです!下見です下見!」


すみれ「わかったわ。行くだけ行ってみましょ」


恋「はい!そうと決まれば急ぎましょう!」


――ああ、大切な友人と放課後に食べ歩きをすることがこんなにも幸せだとは思いもしませんでした。


――できることなら、この時間が少しでも長く続けばいい。そんなありえない想いを抱いてしまいました。


恋「嗚呼、私を待つのは苺でしょうか、リンゴでしょうか」


すみれ「ふふっ、恋ってたまに子供みたいになるわね」


恋「それともブルーベ…………」


すみれ「恋?どうかしたの?って……」



可可「すみれ……レンレン……?」
 
56: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 20:14:13.93 ID:uLme0475
恋「なっ……く、可可さん……!」


可可「どうしてすみれとレンレンが一緒にいるデスか……?」


すみれ「あんたも渋谷のほう来てたのね。あ、もしかして新しくできた古着屋?」


可可「どうして!!」


すみれ「可可?」


恋「それは……」


すみれ「何?どういうこと?」


可可「……っ」ダッ


恋「可可さん!」


すみれ「ちょっと可可!」


恋「可可さん……」


すみれ「恋、どういうこと?追いかけたほうがよくない?」


恋「…………」


――今ここですみれさんにすべて打ち明けてしまいたい。
しかし、それをすれば本当に可可さんの気持ちを蔑ろにしてしまう。それだけは……。
 
57: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 20:18:03.11 ID:uLme0475
恋「私が追いかける資格はありません」


すみれ「ちょっとあんた何言って……」


恋「今は私からは何も言えません!ですが必ずすべてお話しします!だから……だから……」


すみれ「はあ……わかったわよ……」Pi


すみれ「もしもしかのん?ちょっといいかしら……。うん、可可のことで……」


――私はどうしたらよかったのでしょうか。可可さんを追いかける?
しかし、追いかけたところで何を言えば……。


――そもそもなぜ私はすみれさんと渋谷に来ているのでしょうか。


すみれ「ちょっと恋?」


恋「あっ!すみません」


すみれ「可可は千砂都が何とかしてくれるらしいわ」


恋「そうですか」


すみれ「悪いけど私は今からかのんのとこ行ってくるけど、恋はどうする?」


恋「私は……」


恋「私は一度帰ります」


すみれ「そのほうがいいわね」


恋「すみません」


すみれ「謝るくらいなら、今度ちゃんと説明しなさい」


恋「はい……」


――それから私は混乱する頭でどうにか帰宅しました。
 
58: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 20:22:36.27 ID:uLme0475
<その晩 葉月邸>


恋「可可さんに明日なんと言えば……」


   bbbbbbbb...


恋「千砂都さんから?」Pi


恋「もしもし」


千砂都『あ、恋ちゃん?今いい?』


恋「はい」


千砂都『可可ちゃんから聞いたよ。昼間のこと』


恋「……」


千砂都『今横に可可ちゃんがいるんだけど、代わるね?』


可可『もしもし可可デス……』


恋「可可さん……」


恋「あの、昼間はすみませんでした!」


可可『いえ、可可のほうこそ取り乱してしまいまシタ』


恋「それですみれさんには……」


可可『すみれにはさっき電話で話しまシタ』


可可『それで……すみれに告白しまシタ』


恋「告白……。それで?」


可可『可可、フラれマシた……』
 
59: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 20:27:19.06 ID:uLme0475
可可『すみれ言ってまシタ。可可のこと妹みたいダト……』


恋「…………」


可可『可可……せっかくレンレンや千砂都が協力してくれたのに……ずずっ……』


可可『……ぐすっ…………すみれは……しゅみれは……』


恋「わ、私のほうこそ何もできず申し訳ありませんでした!」


可可『いえ、レンレンは悪くないデス……可可が……』


千砂都『あー……よしよし』


可可『うわ~~~ん!!!』


恋「可可さん……」


千砂都『そんなわけだから、明後日は可可ちゃん練習休むかも』


恋「わかりました」


千砂都『恋ちゃんは悪くないよ』


恋「!」


千砂都『私も知ってるから、恋ちゃんは可可ちゃんのためを思ってのことだって』


千砂都『だからさ、気にしないで』


恋「はい……ありがとうございます」


千砂都『じゃあ私は可可ちゃんに夜通し付き合うから、月曜日にね』


恋「はい。おやすみなさい」Pi


恋「はあ……よかった……」
 
60: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 20:30:35.25 ID:uLme0475
――“よかった”?


―― 一体何が“よかった”というのですか?
可可さんのサポートを終えて解放されたから?
千砂都さんが可可さんのフォローをしてくれているから?
可可さんも千砂都さんも私のせいではないと言ってもらえたから?


――違う。


――私は可可さんがフラれて確かに安堵していました。


――なぜなら私は





――私はすみれさんのことが好きになっていたから。
 
 
 
 
 
62: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 20:36:20.68 ID:uLme0475
   bbbbbbbb...


恋「!?」


恋「今度はすみれさんから……」


恋「…………」


   bbbbbbbb...


恋「……」Pi


恋「……もしもし」


すみれ『全部聞いたわ』


恋「……」


すみれ『全部可可のためだったのね』


恋「はい……」


すみれ『これは私と可可の問題だから気にしないで……って無理な話よね』


恋「すみません」


すみれ『恋が謝ることないわ』


恋「あの……本当に可可さんのことを……」


すみれ『ええ。断ったわ』
 
64: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 20:40:59.56 ID:uLme0475
恋「そうですか」


すみれ『……』


恋「…………」


すみれ『私のほうは大丈夫だから、可可をよろしくね』


恋「……はい」


すみれ『じゃ、また学校 恋「あの!」


すみれ『恋?』


恋「あの……どうして断ったのでしょうか……」


すみれ『……』


――なんて不躾な質問。


恋「いえ、すみません。忘れてください」


すみれ『……言ったでしょ。妹みたいって』


恋「それだけですか?」


すみれ『何が言いたいの?』


――今訊くべきではない。言うべきではない。


恋「もしかしてどなたか他に好きな方が……」


すみれ『……いないわよ』


恋「そう……ですか」


すみれ『千砂都も言ってたでしょ「私たちが目指すのはラブライブ優勝。それしかない!」って』


恋「それはそうですが……」


すみれ『そういうことだから。じゃ、切るわね』


恋「はい……。おやすみなさい」Pi


――私って……嫌な女ですね……。
 
66: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 20:43:42.74 ID:uLme0475
<月曜日>


可可「レンレン!おはようございマス」


恋「あ、可可さん……おはようございます」


可可「……」


恋「……」


可可「レンレ 恋「あの!」


可可「?」


恋「もう……大丈夫なのですか?」


――またです。失恋してから数日しか経っていないのに。大丈夫な訳ないのに。


可可「はいデス!千砂都が可可のためにたこ焼きを作ってくれまシタ」


恋「そう……ですか」


可可「だからレンレンは気にしなくていいデス」


恋「……」


――正直、今日だけは可可さんに会いたくはありませんでした。
けれど表向きは立ち直った可可の表情は、確かに清々しいように思えました。


可可「もし……」


可可「もし今度レンレンに好きな人ができたら、可可に応援させてくだサイ」


恋「っ!?」


可可「きっとレンレンより上手くサポートできマス!」


恋「……」


――自分の気持ちに気づいた以上、可可さんのその言葉に何も言い返すことができませんでした。


――人を好きになるとは、こんなにも己をずる賢くさせるのでしょうか。
 
67: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 20:47:48.11 ID:uLme0475
~~~~~~~~~~~~


すみれ「可可、おはよう」


可可「あ……す、すみれ……」


すみれ「何よ、その覇気のなさは」


可可「ぁえ?」


すみれ「あー……私全部の教科書忘れたのよね」


可可「え、えと……」


すみれ「貸しなさい」


可可「はい……?」


すみれ「いいから貸しなさいったら貸しなさい」ガタッ


可可「すみれ……」


すみれ「何よ」


可可「……マッタク、すみれは本当にうっかり屋さんのグソクムシデス。略してリヤシデス」


すみれ「略すとこそこ!?」





――その日以降すみれさんも可可さんも表面上は以前の仲に戻っていて、
私たちLiella!も何事もなかったかのようにいつもの日常へと戻っていきました。
 
68: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 20:50:27.15 ID:uLme0475
<数日後 部室>


恋「入学式の後に新入生向けの部活紹介はありますが、そこでのライブはNGとなりました」


かのん「えー……」


すみれ「じゃあ、どうすんのよ」


恋「ライブやパフォーマンス自体は禁止ではないので、行うとしたら……」


千砂都「てことは屋上かなあ……」


すみれ「当日雨にならなければいいけど」


可可「そこは問題ありまセン。可可が雨をも防げるドゥウォーーム(ドーム)を設営してみせマス!」


すみれ「1ヶ月弱でできるわけ……いや、あんたなら作れそうな気がするわ」


可可「メットライフドームくらいなら作れマス!」


すみれ「メラドなめんな!」


千砂都「可可ちゃんメラドじゃ雨は防げないよ」


可可「はっ!シマッタ!」


恋「ドームなのになぜ雨を防げないのです?」


すみれ「そこ突っ込まないで」


――私だけが変わらずすみれさんへの恋心を抱きつつ、しかしこの5人の日常が心地よくもあり、
私は特に行動を起こすわけでもなく日々を過ごしていました。
 
70: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 20:54:01.46 ID:uLme0475
<数週間後 葉月邸>


恋「入学式までもうすぐ……」


恋「お母様、学校の皆さんのおかげで無事に2年目を迎えることができそうです」


   ピロンッ


恋「すみれさんから?」


すみれ
≪前に行きそびれた手作りジャムのパン屋行かない?≫


恋「!?」


――これはすみれさんと距離を縮める良い機会なのでは?
お花見の時はひたすらに四角いたこ焼きを食べていただけでしたし……。



≪光栄です!是非とも行きましょう!≫


すみれ
≪よかった。明日は空いてる?≫



≪構いませんよ。≫


すみれ
≪じゃあ、また明日≫


――もしかしたらこれは最後のチャンスなのかもしれません。
明日アプローチして手ごたえがないようなら諦めよう。
すみれさんへの恋心は捨てて、また同じスクールアイドルとして接しよう。
そう心に決めて明日に臨みました。
 
71: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 20:57:23.95 ID:uLme0475
<翌日 渋谷>


恋「ここがジャム屋さん……」


すみれ「パン屋ね」


恋「知っています!」


恋「いいですか?ジャムといえばパンとは切っても切れない間柄なんです!」


すみれ「……はい?」


恋「確かに紅茶にもヨーグルトにもジャムは合います。隠し味としてカレーに入れるといいという話も聞きました」


恋「しかし……しかしです!」


すみれ「え、ええ……」


恋「やはりジャムが一番輝くのはパン!ブレッド!」


すみれ「なんで英語にした」


恋「言うなれば、ジャムとパンは恋人ど……うし……」


すみれ「恋?」


――私とすみれさんはジャムとパン……?になれるのでしょうか。
いえ、なるんです!


すみれ「おーい恋、どうしたのよ」


恋「はっ、すみません。少し考え事を。入りましょう!」
 
72: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 21:00:33.20 ID:uLme0475
   カランカラン


店員「いらっしゃいませー」


恋「焼き立てパンのいい香りです!あっ、ここのお店はクロワッサンがおすすめなのですね」


すみれ「恋ってパンも詳しいのね」


恋「もちろんです。何と言ってもジャムはパンがないと成り立ちません!」


すみれ「それはさっき聞いたから」


すみれ「でもジャムだけの予定だったけど、パンも美味しそうね」


恋「よろしければジャムとパンの最高の組み合わせをお教えしますよ」


すみれ「それは……また今度にしてもらうわ」


すみれ「今日はジャムを見に来ただけだから。パンはついでよ」


恋「それは……」


すみれ「ねえ恋、この時期はどんなジャムがいいの?」


恋「えっと……やはりいちごジャムですかね」


すみれ「いちごジャムね……悪くなさそうね」


――この時生まれた小さな可能性という名の違和感。


恋「あのー……すみれさん?」


すみれ「んー何?」


恋「ひょっとしてそのジャム、プレゼント用ですか?」
 
73: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 21:03:18.16 ID:uLme0475
すみれ「まあね」


恋「それは好きな方に向けて……ですか?」


――いえ、違和感に気づかないふりをしていただけ。


すみれ「そう見える?」


恋「私の質問に答えない時点で肯定と捉えられますが」


すみれ「鋭いわね」


――なぜなら、恋心を受け入れてからずっと貴女を見ていたから。


恋「これでもLiella!の仲間……ですから」


すみれ「さすが“Liella!のエース”ね」


すみれ「でも残念。好きな人じゃなくて大切な人よ」


恋「大切な人……」


すみれ「そ。大切な人。あっ、アップルジャムなんてあるじゃない」


恋「……」


――小さな違和感は次第に私の心を侵食していき……。また私が嫌いな私になってしまう……。


恋「すみれさん……」


すみれ「なによ」


恋「カシスのジャムはナッツ系のパンによく合いますよ!」
 
74: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 21:07:04.93 ID:uLme0475
~~~~~~~~~~~~


店員「ありがとうございましたー!」


   カランカラン


すみれ「今日はありがと。私の買い物に付き合ってくれて」


恋「いえ。私も素晴らしいジャムとパンに出会えましたから」


――結局、あれ以上追及することができませんでした。


すみれ「この後時間ある?」


恋「え、ええ。まだ」


すみれ「よかったらさっき付き合ってくれたお礼させてくれない?」


恋「そんなお礼なんて……」


――私はすみれさんと一緒にいられたことだけで十分幸せです!
そのような台詞、言えるはずもなく……。


すみれ「時間あるんでしょ。ついてきなさいったら来なさい」


恋「えっと……どちらへ?」


すみれ「今度は私、平安名すみれがオススメのプチプラコスメ紹介してあげるわ!」


恋「ぷちぷら?」


すみれ「安いけど可愛くて十分映えるコスメのことよ」


恋「へえ……知りませんでした」


すみれ「そうだと思ったから誘ったの。どう?行かない?」


恋「行ってみたいです!」


――もう少しだけ貴女と一緒にいさせてください。
 
75: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 21:10:44.75 ID:uLme0475
<渋谷LOFT コスメコーナー>


すみれ「恋って普段どんなの使ってるの?」


恋「普段は……サヤさんが勧めてくれたのを使ってみたり、かのんさんが勧めてくれたのを使ってみたり」


すみれ「要するに自分で選んではないのね」


恋「お恥ずかしながら」


すみれ「じゃ、今日は私が選んであげる」


恋「ありがとうございます!」


すみれ「そうね……最近の流行だとさりげないクアンクメイクね」


恋「私に似合いますでしょうか」


すみれ「似合うわよ。やり方次第だけど」


恋「やり方……」


すみれ「例えばこのチークはワンポイントで乗せてぼかすように馴染ませるの」


恋「はえ~……」


すみれ「そうすれば血色がよく見え……ピンと来てないみたいだけど、やってみればわかるわよ」


恋「なるほど」


すみれ「他にも「こうなりたい」とかあるなら、探すけど」


恋「そうですね……では、いい感じにお願いします!」


すみれ「……優しい雰囲気を目指すわね」
 
76: (もんじゃ) 2022/12/30(金) 21:15:18.37 ID:uLme0475
――これが最後の初恋の思い出。


――なぜなら、ジャムを選んでいるときの表情が、恋をしているときの可可さんと同じだったから。


――いえ、本当はもっと前から知っていた。
でも自覚してしまった以上、もう戻れない。


――すみれさんには好きな人がいて、それは私ではない別の人。


――ならば私がすることは一つ。とる道は一つ。


――これから行うことは告白ではなく推察。


――これから伝えることは想いではなく真実。




<数日後>



≪明日の練習後、時間ありますか?二人で話したいことがあるのですが≫
 
85: (もんじゃ) 2022/12/31(土) 11:38:51.70 ID:bS79M4TV
<翌日 放課後 レッスン室>


すみれ「へえ……レッスン室なんて初めて来たわ」


恋「去年までは音楽科にしか解放されてませんでしたからね」


恋「音楽科は普段ここでバレエやダンスの練習しているんです」


すみれ「普通科には関係ないわね」


恋「来年度、いえもうすぐ普通科でも使えるようになりますよ」


すみれ「ふぅん……」


すみれ「それで話って?今更音楽科自慢しに来たわけじゃないでしょ」


恋「そ、それはもちろん!」


恋「あの……可可さんに告白された時のこと覚えてますか?」


すみれ「何よいきなり……。そりゃ覚えてるけど」


恋「その……その時もこんな感じでしたか?」


すみれ「…………」


恋「私、すみれさんが好きです」


すみれ「…………」
 
86: (もんじゃ) 2022/12/31(土) 11:43:38.07 ID:bS79M4TV
恋「驚かれないのですね」


すみれ「驚いてるわよ」


恋「嘘……ですね。ずっと好きで見てましたから、それくらい分かります」


すみれ「悪かったわね」


恋「まあ、私もすみれさんのことは言えませんが」


すみれ「そうね。はっきり言ってバレバレだったわよ。可可以外みんな分かってたから」


恋「うっ……恥ずかしいです……」


すみれ「ま、恋らしくていいけどね」


恋「それ、褒めてますか?」


すみれ「一応ね」


恋「では、改めて伝えます。私はすみれさんのことが好きです」


すみれ「ありがと」


恋「……」


すみれ「……気持ちはうれしい、けど私は……」


恋「他に好きな方がいるのですね」


すみれ「…………」
 
87: (もんじゃ) 2022/12/31(土) 11:48:00.25 ID:bS79M4TV
恋「以前一緒に訪れたジャム屋さんの手作りジャム、大切な方に渡せましたか?」


すみれ「だから、ジャム屋じゃないって……。なに?急に」


恋「まだ渡せてませんよね」


恋「なぜなら、誕生日まで1か月もあるんですから」


すみれ「恋……」


恋「すみれさんが好きな方は、かのんさんなんですよね」
 
88: (もんじゃ) 2022/12/31(土) 11:52:55.46 ID:bS79M4TV
すみれ「…………」


恋「練習後頻繁にかのんさんに話しかけていたり……」


恋「かのんさんの好きなカフェオレを飲むようになっていたり……」


恋「さりげなくオレンジ色のものを身に着けていたりと」


恋「思い返してみると、ずっと私にアピールしていたのですね。露骨すぎるくらいに」


恋「恋愛に疎い私にもわかるように……。「本命はかのんさん」だと」


すみれ「推理ごっこならどこか違う場所で披露しなさい。でも……その通りよ」


恋「そこまでして私に諦めて欲しかったのですか?」


恋「そこまでして私に告白されたくなかったのですか!?」


すみれ「…………」


恋「どうして……どうして他に好きな方がいてもなお、私に付き合ってくれたのですか……」


すみれ「……私にも相談できる相手が欲しかったのよ」


恋「それは……!」


すみれ「可可が私のことを恋愛対象としてみてくれてることはすぐに分かった。恋と千砂都が協力してることも」


すみれ「本当は私もあんたに相談するしたかったのよ」


恋「それならば直接言っていただければ……」


すみれ「言ってたら、あんた可可と私の板挟みになるじゃない」
 
89: (もんじゃ) 2022/12/31(土) 11:57:04.72 ID:bS79M4TV
恋「優しいのですね」


すみれ「あんたが不器用だと思ってるからよ」


恋「では、千砂都さんに相談すればよかったのでは?」


すみれ「は?何言ってるの?かのんは千砂都のことが好きなのよ」


すみれ「そして千砂都もかのんしか眼中にない」


恋「!!?」


すみれ「なに?気づいてなかったの?」


恋「それは……知りませ……あっ!以前千砂都さんが言ってました。「恋人同士みたいな間柄だけど付き合ってはいない」と」


すみれ「恋人同士だけど、付き合ってはない……か」


恋「ええ」


すみれ「恋……ありがとう」


恋「えっ?」


すみれ「私はかのんに告白するわ」


恋「ちょっと待ってください!今自分でかのんさんは千砂都さんのことが好きだと……」


すみれ「相手に好きな人がいるから止めとけ。そう言いたいの?」


恋「っ……。ですが……」
 
90: (もんじゃ) 2022/12/31(土) 12:01:15.86 ID:bS79M4TV
すみれ「別に恋がそうだったからとかじゃないわ」


恋「え」


すみれ「私は……平安名すみれは相手がいるからって、勝ち目がないからって理由で諦める女じゃないってことよ」


恋「そう……でしたね。私が好きなすみれさんはそういう女性です」


すみれ「知ってる?私が“Liella!の道化<ジョーカー>”って呼ばれてるの」


恋「……はい。なんとなく」


すみれ「私はこういう風にしか生きられないのよ。だから……」


恋「すみれさん!」


すみれ「なに?」


恋「図々しいかもしれませんが、改めてすみれさんを応援させてくれませんか?」


すみれ「っ……!?」


すみれ「……恋は、それでいいの?」


恋「ええ。決めました。私に見届けさせてくれませんか?」


すみれ「フラれたところを慰めても、あんたに心変わりしないわよ」


恋「えっ?いえ、そんなつもりでは……」


すみれ「冗談よ。でも、ありがとう」


――こうして、私の初恋は終わりを告げました。
 
92: (もんじゃ) 2022/12/31(土) 12:05:38.67 ID:bS79M4TV
――結局すみれさんは私の告白に一言も謝罪の言葉を口にしなかった……。


――それはきっとすみれさんなりの信念。


――私はそのようなすみれさんの姿が好きでした。
決して自分を曲げず信念を貫く姿に。


――だからこそ、私は失恋しても涙を流すことはありませんでした。


――だからこそ、心からすみれさんを応援すると決めました。
自らを“道化”と呼ぶすみれさんを……。


――だからこそ、私が次に進むべきは――。
 
94: (もんじゃ) 2022/12/31(土) 12:09:08.65 ID:bS79M4TV
――翌日、すみれさんはかのんさんに告白し、フラれました。


――フラれた理由は聞けませんでした……。
 
95: (もんじゃ) 2022/12/31(土) 12:14:32.65 ID:bS79M4TV
<すみれがフラれた翌日 中庭>


恋「千砂都さん」


千砂都「あっ、恋ちゃん」


恋「こちらにいらしたのですね」


千砂都「うん。練習の後は徐々に身体をクールダウンさせておきたいからね。軽くストレッチ」


恋「私もご一緒してよろしいですか?」


千砂都「うん、もちろん!」


恋「ありがとうございます」


千砂都「……」


恋「……」


千砂都「恋ちゃん」


恋「はい?」


千砂都「昨日さ、すみれちゃんがかのんちゃんに告白したんだ」


恋「そう……ですか」


千砂都「その反応、やっぱり知ってたんだね」


恋「…………」


千砂都「ってことは恋ちゃんもフラれたんだね」


恋「ええ」
 
96: (もんじゃ) 2022/12/31(土) 12:19:08.80 ID:bS79M4TV
千砂都「もう『知ってたんだ』とは聞かないんだね」


恋「すみれさん曰く、私は分かりやすいらしいので」


千砂都「自覚あったんだ……」


千砂都「で、どうするの?」


恋「どう、とは?」


千砂都「もう一度すみれちゃんにアタックする?今度は私も応援するよ」


恋「いえ。可可さんのこともありますし、すみれさんのことはこのまま大切な仲間でいたいと思ってます」


千砂都「そっか」


恋「…………」


千砂都「…………」


恋「千砂都さん」


千砂都「なに?」


恋「可可さんがすみれさんに告白した日、どうして可可さんに飲む焼いも屋のことを教えたのですか?」
 
98: (もんじゃ) 2022/12/31(土) 12:25:11.24 ID:bS79M4TV
千砂都「…………」


恋「正しくは、私たちと鉢合わせするよう可可さんを誘導しましたね」


恋「でなければ、自宅や学校から離れたところで同じ部活動の仲間が鉢合わせするなんてありえません」


千砂都「そんな……どうして……」


恋「私に付き合って芝居をしなくてもいいですよ」


千砂都「……そっか」


恋「先に言っておきますが、泣いたり怒った演技も結構です」


千砂都「そう。じゃあ話進めるけど、どうしてそう思ったの?」


ちさ「まさか恋ちゃんが何の根拠もなしにそんなこと言うはずないよね?」


恋「もちろんです」


千砂都「よかった。じゃあ聞かせてくれる?恋ちゃんの推理を」


 『すみれ「推理ごっこならどこか違う場所で披露しなさい」』


――きっとすみれさんはこうなることを踏まえて……。


恋「わかりました。けれど『私の推理』ではありません」


――すみれさん、ありがとう。


恋「私とすみれさんの推理です」
 
99: (もんじゃ) 2022/12/31(土) 12:31:08.69 ID:bS79M4TV
恋「飲む焼いも屋の件は可可さんに直接聞きました」


恋「千砂都さんに、渋谷に新しく古着屋ができたから行ってみたら?と」


千砂都「うん。確かに可可ちゃんに古着屋のこと話したよ?」


千砂都「でもそれだけだよ。まさか可可ちゃんが二人のデートと同じタイミングで渋谷に行くなんて……」


恋「先ほど演技はいらないと言いましたよ」


恋「古着屋の話とともに週末限定クーポンを送りましたよね」


千砂都「…………」


恋「新しくできた古着屋のクーポン。ファッションに詳しい可可さんなら間違いなく飛びつくはずです」


恋「さらに言えば、その日は各々の用事があり珍しく練習がありませんでした」


千砂都「……それだけ?」


恋「え?」


千砂都「恋ちゃんは、私が可可ちゃんにクーポン付きで古着屋を勧めただけで諸悪の根源扱いするの?」


恋「証拠ならあります」


恋「私が飲む焼いも屋の相談を持ち掛けたのが、午後8時23分」


恋「可可さんから送っていただいたスクショによると、千砂都さんが古着屋の話をしたのが午後8時49分」


恋「その約25分間に焼いも屋近くのクーポンを探して可可さんに送った、考えるのが妥当だと思いますが」
 
100: (もんじゃ) 2022/12/31(土) 12:37:25.81 ID:bS79M4TV
千砂都「そんなの偶然じゃないかな……って言っても信じてくれないよね」


恋「残念ですが」


千砂都「いいよ」


恋「やはり……」


千砂都「でも恋ちゃんの今の推理、肝心な部分が抜けてるよ」


恋「なんでしょうか」


千砂都「私が恋ちゃんの言う通りに焼いも屋の話から、クーポンのある古着屋を調べて可可ちゃんに送ったとして……」


恋「ええ」


千砂都「そんなことする理由は?」


千砂都「もっと言えば、可可ちゃんとすみれちゃんの関係をこじらせる理由は何?」


恋「それは……」


千砂都「私がそんなマルじゃないことすると思う?」


――確かにそれだけが最後まで分かりませんでした。
何か……重要なことを忘れているのでは?


千砂都「私はさ……恋ちゃんのことも応援したかったんだよ?」


恋「すみれさんのことは応援しなかったのですね」


千砂都「すみれちゃんは一人で抱え込むタイプだから」


恋「それだけですか?理由は」


千砂都「……」
 
101: (もんじゃ) 2022/12/31(土) 12:41:23.39 ID:bS79M4TV
恋「……千砂都さんには感謝しています」


恋「5人の中で疎外感を感じていた私に、恋愛というものを知らなかった私に色々アドバイスをしてくれました」


 『千砂都「もし恋をしてみたいっていうんだったら、恋愛系のマンガとか小説はどう?」』


恋「千砂都さんのおかげでこの何週間、スクールアイドルとは違った充実感がありました」


 『千砂都「私だって昔からかのんちゃん一筋だったから、恋愛っていう恋愛はしてこなかったし」』


恋「千砂都さんとかのんさん、すみれさんと可可さん、皆さんの間に溶け込むことができたと思います」


 『千砂都「それに今はラブライブ優勝が目標だからね。恋してる暇なんてないよ」』


恋「そして……心から好きな人ができて……」


 『千砂都「ありきたりな言葉で言ったら『恋はするものじゃなくて、落ちるものだから』」』


恋「失恋の痛みを知りました」


千砂都「それはどうも」


千砂都「それで?私がLiella!の仲を壊そうとした理由わかった?」


恋「……いえ」


恋「どうやら私の思い過ごし……」
 
102: (もんじゃ) 2022/12/31(土) 12:45:18.26 ID:bS79M4TV
千砂都「恋ちゃんの思い込みの酷さは知ってるけど、さすがに今回のは傷つくなー」


恋「本当にすみませんでした!」


千砂都「いいよ。ほら顔上げて」


恋「千砂都さん……」


千砂都「かのんちゃんも言ってたでしょ?「今年こそはみんなでラブライブ優勝する!」って」


恋「そうですね……」


 『千砂都「それに今はラブライブ優勝が目標だからね」』


恋「……」


 『千砂都「私だって昔からかのんちゃん一筋だったから」』


恋「…………」


 『すみれ「そして千砂都もかのんしか眼中にない」』


恋「もしかして……」


千砂都「ん?」


恋「もしかして千砂都さんは、かのんさん以外はどうでもいいと思っていませんか?」
 
103: (もんじゃ) 2022/12/31(土) 12:48:19.06 ID:bS79M4TV
千砂都「…………」


恋「かのんさんさえよければ私たちがどうなろうと関係ないと、そう考えて……」


恋「いえ、今回の場合……かのんさんに関係があるから千砂都さんが動いた……」


千砂都「…………」


恋「千砂都さんが大切なマルを乱してまで私たちに協力、いえ干渉する理由……」


恋「!」


恋「例えば、かのんさんもすみれさんのことが好きだった……とか」


千砂都「…………ふぅん……」


千砂都「でも」


恋「でも、それなら先にすみれさんと可可さんをくっつけてしまえばいい話……」


恋「ならなぜ……?」


――考えるのです葉月恋!そして振り返るのです。


――飲む焼いも屋に行った後、すみれさんの言葉でジャム屋に行こうとしたところで可可さんと鉢合わせた。


――そのあとすみれさんはかのんさんのところに、可可さんは千砂都さんのところに、私は一人帰宅しました。


――それから可可さんは電話ですみれさんに告白をして……。


恋「あぁ……本当に私の勘違いだったのですね」
 
104: (もんじゃ) 2022/12/31(土) 12:52:24.42 ID:bS79M4TV
千砂都「気づいた?」


恋「はい」


恋「私がすみれさんに明確に恋心を抱いたのは、可可さんが告白に失敗してから」


恋「それ以前は可可さんのために動いていました」


恋「それは千砂都さんも同じ……つまり可可さんに古着屋を教えたのは、本当に可可さんのことを思った結果だったですね」


千砂都「だからそう言ってるでしょ。可可ちゃんのためって」


恋「しかし、可可さんの告白は失敗しました」


千砂都「そうだね……」


恋「そして今度は私がすみれさんに告白しようと……」


恋「なぜその時千砂都さんは私に協力しなかったのですか?私の好意はバレバレだったはず」


恋「同じように私とすみれさんが結ばれれば、かのんさんは千砂都さんと……」


恋「いえ、かのんさんはすみれさんのことが好きだった……」


恋「しかし、でしたらなぜかのんさんはすみれさんの告白を断ったのでしょうか」


千砂都「じゃあ、その前提が間違ってるんじゃないかな」


恋「そうでしょうか……」


恋「千砂都さんが私とすみれさんに協力しなかった理由……」


恋「そしてかのんさんが断った理由……」
 
105: (もんじゃ) 2022/12/31(土) 12:56:00.85 ID:bS79M4TV
 『千砂都「五人グループでカップルが何組も、っていうのはちょっと……」』


恋「千砂都さん」


千砂都「なに?答えは出た?」


恋「もしかして……かのんさんと千砂都さん、すでに付き合っているのではありませんか?」


千砂都「……」


恋「それなら、二つの理由の説明がつきます」


恋「私がすみれさんに恋心を抱いているとき、あなたはかのんさんとの距離を縮めていた。だから私に協力しなかった」


千砂都「なるほどね……」


千砂都「それが結論?」


恋「はい」


千砂都「そうだね。それならまあ辻褄はあってるね」


恋「では、認めるのですか?自分がかのんさんを独占するために私たちを利用したことを」


千砂都「う~ん。それじゃあ反論させてもらうけど」


千砂都「今の話、事実といえるのが2つ」


千砂都「恋ちゃん、可可ちゃん、すみれちゃんそれぞれ恋心と、私が可可ちゃんに送ったメッセージしかないよね」


千砂都「他の事柄については、すみれちゃんとの会話から導いた恋ちゃんの推測でしかないよね」
 
107: (もんじゃ) 2022/12/31(土) 13:00:27.46 ID:bS79M4TV
恋「……残念ながら、そうなりますね……」


千砂都「さっきも言ったよ?『前提が間違ってるんじゃないかな』って」


恋「どういうこと……ですか?」


千砂都「恋ちゃんは……いや、恋ちゃんとすみれちゃんは私を貶めたいようだけど、それが間違ってるんじゃない?」


恋「だからどういう……」


千砂都「最初「恋ちゃんとすみれちゃんの推理」って言ってたけど……」


千砂都「どうしてこの場にいるのが恋ちゃんだけなのかな?」


恋「え?」


千砂都「私を断罪したいなら、すみれちゃん本人が来ればいい話なのに」


千砂都「どうして謎解き役を恋ちゃんにしたんだろうね……」


恋「それは……」


千砂都「今回の黒幕は私じゃなくて、すみれちゃんのほうなんじゃない?」


恋「なっ……!?」
 
108: (もんじゃ) 2022/12/31(土) 13:04:13.47 ID:bS79M4TV
恋「そっ……そんなはず……」


千砂都「『そんなはずない』?」


恋「っ……」


千砂都「『すみれちゃんはそんな絡め手なんか使わない』?」


恋「そ、そうです!すみれさんは……!」


千砂都「なら私がずる賢い手段を使ってもおかしくはないと?」


恋「それは…………」


千砂都「ま、無理もないよ。恋ちゃんはすみれちゃんのことが好きなんだもん。信じたいよね」


恋「違っ……」


千砂都「ううん。違わないよ」


千砂都「じゃあ、すみれちゃんは恋ちゃんにフラれた理由言った?」


恋「なっ……それは……」


千砂都「恋ちゃんが推理したことも、今私が言ったことも程度は同じ」


千砂都「問題はどちらの言葉を信じるか、ってこと」


恋「…………」
 
109: (もんじゃ) 2022/12/31(土) 13:08:26.21 ID:bS79M4TV
千砂都「恋ちゃんには今3つの選択肢がある」


恋「なんでしょうか……」


千砂都「一つはすみれちゃんを信じて私を断罪するか」


千砂都「一つは私を信じてすみれちゃんに刃を翻すか」


恋「それは……」


千砂都「でもこの二つはあんまりお勧めしないなー」


恋「なぜです……?」


千砂都「だってどっちを敵にしたって、かわいそうな目で見られるのは恋ちゃんなんだよ」


恋「……」


千砂都「このタイミングで恋ちゃんが話したところで周りは「すみれちゃんにフラれた八つ当たり」としか見られない」


恋「なっ……」


千砂都「最後の選択肢は、何もなかったとして心の奥底にとどめるか」


恋「そのもの言い、やはり千砂都さんが……」


千砂都「その次元の話題は、私の話に耳を傾けた時点で終わったよ」


千砂都「恋ちゃんが少なからず「すみれちゃんがもしかしたら……」と思った時点でね」


恋「…………」


千砂都「さ、どうする?」
 
110: (もんじゃ) 2022/12/31(土) 13:13:55.05 ID:bS79M4TV
恋「……私は…………」


千砂都「……」


恋「…………」


恋「………………」


千砂都「ふぅ……恋ちゃん、今日はもう帰ったら?明日入学式でしょ」


恋「えっ……」


千砂都「やっぱりすみれちゃんにフラれた傷消えてないんだね」


恋「はい?」


千砂都「恋ちゃんさ……自分で気づいてないでしょ」


恋「いったい何のことですか?」


千砂都「私を追い詰めてるときの顔、仕草……まるでLiella!に入る前の恋ちゃんだったよ」


恋「!!?」


千砂都「さっき迷い込んできた新入生の子みたいに、家まで送ってこうか?」


――完敗でした。
いえ、そもそも勝負として成り立ってはいませんでした。


――すみれさんと千砂都さん、果たしてどちらの言うことが正しかったのか、私にはわかりません。


――だから千砂都さんの言う通りこのまま黙って……。
 
111: (もんじゃ) 2022/12/31(土) 13:17:25.90 ID:bS79M4TV
~~~~~~~~~~~~


千砂都「…………」


千砂都「そういえばすみれちゃんって“Liella!の切り札<ジョーカー>”だったっけ」


千砂都「…………」
 
112: (もんじゃ) 2022/12/31(土) 13:20:27.84 ID:bS79M4TV
――“現状維持”。私がとった行動はこれでした。


――今思えば皆さんの間に入りたくて行ったことが、まさかここまで拗れてしまうとは思いませんでした。


<翌日 入学式>


音楽科生徒「続きまして。『在校生からの言葉』生徒会長葉月恋さん、お願いします」


――だから今度は自分の意志で余り者になろう。


――これからはLiella!を見届ける余り者として――。


恋「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます」





恋「余物語」  終
 
113: (もんじゃ) 2022/12/31(土) 13:26:13.96 ID:bS79M4TV
読んでいただきありがとうございました。
・かのちぃとクゥすみを見守る百合の妖精恋概念
・すみれん
・三角関係百合
やりたいこと全部入れました。

それではよいお年を
 

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1672388212/

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